マリオ「最近、テニスやパーティーにゴルフばかりで…何かを忘れているような」

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144 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/24(水) 03:21:17.57 ID:LZaBQCbMo
着地の直前にヒップドロップで何故かノーダメージの64マリオさんすき
145 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/24(水) 05:06:17.29 ID:p9pFDgIMo
移動前もそうだったけどRPGの彼は本当に涙腺にくる…
乙です
146 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/24(水) 07:30:46.26 ID:agqJ1GrJo
マリオオールスターで感動した
ペイントを出してくるとか...
147 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/24(水) 10:06:55.79 ID:C+lqcoIaO
前のスレでも思ったけど、マリオ復活のシーン読むとマリオやりたくなってくる
148 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/24(水) 17:58:52.97 ID:ZumxGm4AO
>>144
当時あらゆる壁を貫通して跳ね回っていた尻が落下程度でダメージを受けるわけが無いんだなあ

149 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/24(水) 21:11:47.00 ID:Zhw0TPmI0
ペイントとはなんぞやと読み返したがマリオとワリオか
マリオペイントといったらハエ叩きの断末魔やら犬が吠えて一手前のことを全てなかったことにする機能やらが出てきたのかと
150 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/27(土) 00:21:13.98 ID:Ofd+FNnE0


ワルイージ「ハァ!?俺のマシンを寄越せだとォ!?」

マリオ「ああ、頼む」





ワルイージ「ぐっ…こ、この野郎…こいつは特注製なんだぞ
            滅多糞に金が掛かったってのにィ〜!」

マリオ「金じゃ命は買えないだろう?」ニィ


ワルイージ「そ、そりゃあ、そうだが…」




"金じゃ命は買えない"

 全くのド正論だが、この男がそう言うと何故か
説得力が欠けるように思えるので不思議である
 命知らずの冒険野郎がッ!と自分は棚に上げて彼は内心で悪態を吐いた



ワルイージ「良いかッ!"貸すだけ"だからな!!壊すんじゃねぇぞ!」

マリオ「ああ、十分さ!」




―――
――






ゲドンコ星人D「ギッ?」





一匹の異星人は奇妙なモノを見た

彼等が乗り込んだ機体は未だ"狩り"の真っ最中だった



空想物語によくありがちなシンプルな形状の飛行物体は
依然変わらず高度20m<メートル>を維持、速度は地表を走る自動車に合せる

 航空機特有の翼に掛かる揚力もプロペラも何もあったもんじゃない
現代航空工学を完全に無視したソレに乗り込んでいたパイロット達も
その奇妙なモノに首を傾げた



ゲドンコ星人E「ギギィ?」

ゲドンコ星人F「ウケキャ!!」


 空飛ぶ円盤内部は人間が見れば思わず目を背けたくなるような
毒々しい色合いの電子光で彩られていた


我々、人類が…脳が生理的に嫌悪する、否定したくなるような心理の色

異星人たる彼等には心落ち着くような色合いなのだろうが…


さて、そんな異色な色彩を放つ計器達
【高度計】から【磁気コンパス】…etc、その中で人類が未だ見る事の
叶わないだろう未知の測定器もある

そして…その一つ、テレビ画面のような小さな画面を彼等は凝視する
151 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/27(土) 00:22:27.47 ID:Ofd+FNnE0

 小さな窓枠のような正方形のモニタリング
そこから溢れだす色合いだけは人類にとって救いであり
彼等にとっては"ゲドンコ流のテラフォーミング"したくて堪らない光景


愛すべきこの惑星の景色が映し出されていた…



ゲドンコ星人F「ギィィ?」チラッ

ゲドンコ星人E「!…!ケヒャッ!」


ゲドンコ星人F「!!…キヒャヒャッ」ニタァ



モニターに映し出されたのは母なる大地
そして先程まで彼等が執拗に追い回していた一台の"原始的な乗り物"


技術の発達した彼等から見て、あの乗り物は"原始的"なモノだ
そう結論付け、見下していた

その様を象徴するかのように上空から…!



そうッ!まるで…!無邪気な子供が道端で蟻の巣を見つけ
   "お遊び感覚"で潰してやろうとでも言うかのようにッッ!!





 追い回す円盤とそれに乗り込む仲間達と通信機で話していた
誰が一番にアレを壊せるか遊ぼうぜ、っと…



もう一度言う、彼等は正しく"狩り"の真っ最中だった





"狩り"の対象は車輪を停め、その場に留まった

それを画面越しに見て彼らは仲間の顔を見やり笑った




  『ああ、ついにコイツは観念したんだな』っと






ゲドンコ星人F「キッキッ!」ゲラゲラ

ゲドンコ星人E「キャキャキャ!」ゲラゲラ





ゲドンコ星人たちは高らかに笑い、そして獲物を嗤った
低速飛行ゆえに風圧を物ともせず開いたハッチから顔を覗かせていた
同胞に戻って来いと合図を送り…、そして



 ゲドンコ星人D「キーッ!キキキッ!」

 ゲドンコ星人「「「キキッー!」」」


 絶望し、諦めたのであろう相手を完膚無きまでに蹂躙し尽くしてやる
そう考えた残虐な異星人共はあえて破壊力の高い機体に備え付けらえた
熱線銃の方を使い盛大な花火にしてやろうとコンソールを弄る
152 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/27(土) 00:23:39.11 ID:Ofd+FNnE0














    読者諸氏よッッッ!!!あえてもう一度言おうッッ!!



 彼等、ゲドンコ星人は……まさしく"狩り"の真っ最中だったッ!








  そう…! "狩り"の真っ最中…『だった』…ッ!























           バシュンッ!ジイィィィ――――ッ!


           ギュィイィィィ――――ッ!










―――指先に掛けられた引鉄は引かれた

―――破滅への光は放たれた



―――フットペダルは強く踏みつけられた

―――急停止からの急加速、エンジンの魂は勢いよく燃え始めた




  ―――――光は放たれ、熱線は砂利をガラス状にするほどに焼き
              地表は爆炎と赤黒い煙を天へと昇らせる


破滅への光は放たれた、そして今ッ!
       "彼等"を殲滅せんとする序章の狼煙が上がったのだッ!
153 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/27(土) 00:24:54.63 ID:Ofd+FNnE0

ワルイージ「ぎにゃああああああああああああ!?!?!?」ガクンッ!


【ダッシュキノコ】3つ分相当の超加速に加え背後で起きた爆風を
推力にした常識外れな機動


言葉通り"爆発的な"加速を見せたそれは一気に彼等との距離を稼いだ



元より円盤とワルイージのカートは相当距離を詰められており
遅かれ早かれ、あの状態ではいつ追いつかれてもおかしくなかった

 いくらドライバーの運転テクニックが良かろうと機体性能に差が
有り過ぎるのだ、向こうは障害物もコーナーサイトも無視した
航空機、こっちはそれらを無視できない四輪車









 そこで運転を変わった英雄は特注製のエンジンを最大限に
生かす方法を瞬時に察したのだ

機体性能の特徴を簡潔に言われた彼は考えた

エンジンを意図的に暴走させる急加速も一度使えば暫くの間
クールタイムが必要となる

更に先述の通り、敵は障害物も何も関係なく飛んでくるのだ


このままいけばジリ貧なのは分かり切っていた





だから"一度の加速"で数回分の差を開くことにしたのだッ!




 GYUROOOOOOOOoooooooo―――−!!!!!


どの道追いつかれる程に詰められた距離を逆に利用する

 マリオはワザと機体を停車させ、相手が打ち込んでくる事を狙った
何度も戦い抜いた相手ゆえ諦めた素振りを見せればタチの悪い彼等は
最大火力で殺しにかかって来ると分かっていた


彼等をギリギリの位置まで引きつけ、打ち込んでくる武装の火力による
爆風すらも推進剤の代わりにしてぶっ飛ばすッ!


・停車した事で慢心した敵方は的中させるべく減速する

・宇宙船の主砲を避ける為の急加速で距離を開く

・それに付け加え、背後で起きるであろう爆風でぶっ飛ぶ


通常の【ダッシュキノコ】一回では不可能な距離の取り方が完成である




……当たり前の事だが、ビーム砲は"光の速さ"で跳んでくるのだ
      ちょっとでも加速のタイミングが遅れれば機体は爆散

コンマ0.1秒の遅れも許さない機械のような精密性が必要とされる作業



この赤い帽子の男……ブランクがあるだろうに平然とやってのけた…!

154 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/27(土) 00:29:16.24 ID:Ofd+FNnE0

ワルイージ「ヒッ、ヒィィィィ!!ばっきゃろォ!!!
       こんなとこでそんなん使ったらァぁぁあああ!!!!」


曲がりくねった道の多い渓谷の車道

ワルイージも逃れる為とはいえ、ほぼ直進しかない場面でしか
加速装置を使用しなかったのだが…






ワルイージ「あばばばばばば!ぶつかるゥゥゥ!?」

マリオ「大丈夫だ、人間この程度じゃ死なんさ!」ギュィィン!!


そう言って更にペダルを踏みしめ速度を上げる命知らず馬鹿
 ハナっからぶつかる事が前提の発言である


ワルイージは…、今にも失神しそうな彼は薄れゆく意識の中で思った



   ‐ワルイージ『あぁ!神様でも悪魔でも何でも
              良いから誰か助けてくれぇぃ!!』‐



 …確かに神様でも悪魔でも何でも良いから助けろと叫びはしたが

 何故よりによって自分以上の命知らずな冒険馬鹿野郎に縋ったのか…

 過去に戻れるなら数刻前の自分をぶん殴ってやりたい、と思った

















  マリオ「…すまんな、壊しはせんが傷は付きそうだ
            心配するな、修理費は俺持ちだから、な?」




 申し訳なさそうに言う英雄の言葉が耳から入り

 集中線が見えるような気のする視界が前方に白いガードレール

 そして…その先に広がる青空とゴツゴツの岩肌、谷底の奈落




  ワルイージは思った


 「あっ、オレ、これ死んだわ」



 ズバッ、ベキャッ、ゴシャバキィィィ―――ッ!



 赤い帽子の英雄は大空を飛ぶ鳥の気持ちになった

 顎長男は目を剥いて精神が大空を飛んでいった
155 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/27(土) 00:38:04.01 ID:Ofd+FNnE0



ゲドンコ星人はその有様を見て硬直した




彼等は残虐非道な宇宙生物である




が、…同時に彼等にも【感情】と呼べるモノはある


指導者の名の元に結託し合い、同胞が倒されれば怒り狂う事もあるし

余りにも強大な敵を前にすれば怯える事も無くは無い




今、彼等が抱いた感情は呆れとも、驚愕とも言えない



四輪車が空を飛んだのだ、しかも…










ダンッ‼! ダダンッ!! ―――ズドンッ!ギャギャギャッ!ギュルッ!


BUROOOOOOOOoooooooo…!!



子供がよく河原で遊ぶ際に水切りと呼ばれる遊びがある

 拾った小石を水面に回転を掛けながら投げる遊びで
小石が遠心力によって如何に遠く、何回飛んでいけるかを競うお遊戯



 ガードレールをぶち破った鉄の塊はそのまま奈落の底から
突き出るように生えたタケノコ岩を踏み台にしてバウンド…




かつて…英雄兄弟<マリオ・ブラザーズ>達が【レインボーロード】で
幾度となく魅せ続けてきた大ジャンプであった…




ズドンッ!と一際大きな音を渓谷中に響かせ、"向こう側"の車道に着地

着地と同時横滑りしながらスピンした機体を何処にもぶつけることなく
平然とした大道芸をやってのけたマシンは走り出した





   ゲドンコ星人F「ヽ§ヽΘζ…」



   ――――冗談だろ…おい‥


語源は誰にも理解できないが、恐らくそう言ったのだろうな…

156 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/27(土) 00:39:51.50 ID:Ofd+FNnE0


マリオ「ふぅ…!いやぁ…!久しぶりにやったなぁ!」ハッハッハ!


マリオ「…あー、やっぱり機体に傷ついちまったか…
     すまんな、…事が終わったらちゃんと修理費は―」クルッ









ワルイージ「」ブクブクブクブク




マリオ「……」


マリオ「……これからはもうちょい安全運転をすべきか…」ポリポリ



口から泡を吹いて気絶している彼を見て
後ろ頭をポリポリとかくマリオ…





  ズドォォォォン!!!




マリオ「むっ!」バッ!



遠くで爆発音、そして黒煙が上がるを見て何事かと身構えた
だが、その正体がなんであるか彼は察した



マリオ「……そうか、あっち側には確かルイージが居たんだったな」


 ズドォォォン!!  ドガシャァァァァン!!  ゴォォォォ…!



岩肌が赤い閃光に照らされ、一瞬、焦げ茶色に見えてる

 鳴り止まない破壊音、上がる黒煙
遠目にチラッと見える火を噴きながらどうにか逃げようとジグザグに
飛行し…あと一歩の所で最終的に地表からすっ飛んできた投石で
撃沈される宇宙船の影


今頃、向こう側はクレーターと残骸だらけなんだろうな…




マリオ「…さて、コイツも此処まで避難させとけば安全だろう」


目を醒ます様子が一向に見受けられない気絶者に背を向け

マリオはサンセット色に染まる向こう側へと歩き出した



彼は…『完全に記憶を取り戻した』のだッ!


―――
――

157 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/27(土) 00:55:57.58 ID:Ofd+FNnE0


ボコンッ!!


革靴の底が叩き出したのは金属がめり込んだ音

立ち昇るのは黒煙と聴きなれない言語と金切声

天へ昇る悲鳴と煙、対を成すのは地の底へ堕ち征く歪んだ円盤だ







―――チュドオオオオオオオォォォン!



墜落と同時それらから噴き出していた焔は更に勢いをあげ
終いには機体そのモノが一つの火球と化す



     「ギィィィイイイイイii」「アギィィィャァァaa――」ボジュゥ…



 パチパチと焚き木が出す音のようなソレと金属製の塊が崩れ落ちる音
そしてド派手な爆発音のハーモニーの中に紛れる生き物のような声は
炎に包まれかき消される…




一匹のゲドンコ星人が機体の窓からソレを見て2頭身を震わせる


異星人の目には空を駆ける一人の悪魔…否ッ!死神の姿が目に映るッ!








   ルイージ「ッらああああぁぁぁ!!」メシャァアアアアッッ!





猛々しく咆えた漢はまたひとつ…!またひとつ!と強靭な足腰で
外来の科学技術を鉄屑へと変えていくッ!

鼯鼠<ムササビ>が木から木へと飛び移るように彼は跳ぶのだ


文字通り鉄骨並み…いや、それ以上の規格外骨格と
超人の域である筋力が円盤のウイング部に当たる部分を踏み抜く





…脆い

なんと脆いものか…っ!


それを比喩するならば正しく
『冬の初め頃にできたちっぽけな
 凍った水溜りを長靴の子供がお遊び感覚で踏んで砕く』それに等しい




外宇宙からやって来た金属は薄い氷の膜のようにぶち割られる…


158 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/27(土) 00:58:56.08 ID:Ofd+FNnE0


"普段、温和な人間ほどキレた時の恐ろしさは破格である"




現代人なら誰しもが一度は小耳に挟むこの思想を説いた人物は
どのような実体験からそう言い広めたのやら…



頼りない髭、永遠の2番手、気苦労の絶えない凡夫…




前線で戦う彼の姿を見ぬ一般人の率直な感想だ



今の姿を見ればその認識は上書きされるだろう…


次々と鉄屑に変わる宇宙船と業火の渦に悲鳴諸共飲まれ炭化する同胞
窓から空と地獄絵図に変わる地を交互に見て居た1匹のゲドンコは…
思わず悲鳴を上げた



…? 何故悲鳴をあげたかって? 理由は至って単純だ…















           "次は自分達の番だから"









シュタッ! ボコンッッッ




飛来してきた"人間兵器"

直後、安定性抜群の機体が大きく傾き
異常を知らせるアラームのけたたましさが彼等の命運を物語る


幼子を護る揺り籠のような優しい揺れは嵐に遭い転覆寸前の船を…
けたたましさは搭乗員の命のリミットを…

それぞれよく表現していた…



【窓ガラスの向こうに映るルイージ】「…」ギロッ


ゲドンコ星人「キ キィィィィ!!!!!!! ! ! ! ! 」ビクッ


兄を殺された

その感情を持って飛来してきた漢と目が逢った…
異星人はその瞳に確かに鎌を持った髑髏が映るように錯覚する
159 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/27(土) 01:01:13.76 ID:Ofd+FNnE0

ゲドンコ星人の宇宙船は実に頑丈な創りであった

窓ガラスはクッパ軍の【キラー】砲ですら傷一つつかない程の物質で
出来ている…この星の強化硝子なんぞとは強度が段違いだ


彼等の星の光線銃でさえ、防ぎきる



【窓ガラスの向こうに映るルイージ】「…」グググッ!


握り拳を創った白いグローブを彼はこれ見よがしに見せつける
腕を思いっ切り引き延ばし、一発の右ストレートを繰り出す




瞬間ッッッ!拳は音速を超えたッ!!



強化硝子をぶち抜き、金縛りにあったゲドンコの鼻先で
寸止めされた握り拳と割れた硝子の音に搭乗員は一斉に見る




ゆっくりと…



ゆっくりと……



ゆっくりと………っ




ゆっくりと……………ッッッ!




ビデオテープに録画された植物の蕾が花を咲かせるまでを
早送り再生で見せるように…握り拳は開かれる…




――――――――ポゥ…




 パーの状態になった掌中心部に緑色の粒子のような何かが集まる!




 目と鼻の先で開かれた白いグローブ付きの手に集まる美しい緑の輝き

それは…翡翠<ヒスイ>の如し美しさ…彼は畏怖の念さえ忘れ、思わず見惚れ






          ルイージ「【ファイアボール】」




―――ジュウゥゥゥ!!!!



           彼は世を去った

160 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/27(土) 01:05:54.13 ID:Ofd+FNnE0



後方へと仰向けになるように倒れ込む姿は実にスローモーションだった


倒れ込む同胞の顔が見え始めて彼等は絶句する


焼け爛れた顔、眼球も唇も2本だけの歯も何もかも…紫色の肌も
こんがりウェルダン状態だ


キノコステーキの芳ばしい香りが船室に漂う




…ドサッ!



1、2回床にバウンドした時彼等は漸く我に返る





何を呆けているのだッッッッ!!!



次は誰の番だ!?次は"自分"なのだぞッッ!!




「「「―――――――――ッッッ!!」」」



恐怖の波は彼等の心のダムを決壊させる

完全に恐慌状態に陥り、反撃も動くことも忘れ竦みあがる


次は誰だ…ッ!

自分なのか…ッ!それとも隣の仲間か!?後ろの仲間なのか!?


緑の悪魔が次に指先を向けるのは"誰"なのか、僅かな寿命と
隙さえあらば逃れられるか、という淡い希望を抱く
彼等の予測はどれでも外れだ





ジュボォォォオオオ!!


生命活動を終え、大の字で倒れた仲間の身体全身が二度目の火球で
完全に燃え上がり炎の塊と化す



ルイージ「たあああああぁぁ―――ッ」ゲシャッッ‼



彼は力の限り右脚を使って緑炎の塊を蹴り飛ばした

燃える塊からゲシャッ!と骨が砕け散る音が聴こえたが
 そんなことはどうだって良い、何ら躊躇いの無い死体蹴り

 ボウリング場でストライクを取った時のような爽快感だった
燃える焼死体は"残りのピン"を巻き込んで
宇宙船内のメインコンピューターに突っ込む


誰が次に死ぬか、ではない、彼等の予測は全て大外れ


正解は全員が同時に命を落とす、である
161 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/27(土) 01:16:28.26 ID:Ofd+FNnE0



―――チュドオオオオオオオォォォン!



…こうして、また一機、黒煙を上げて墜落していく

墜落の間際に鼯鼠<ムササビ>のように他の機体に飛び移る姿が
また別の誰かの目に止まっていく




―――ドオオオオオオオォォォン!

――――――ドゴシャアアアアァァァン!!


<ギッ! ギィィィ―――!
<アギャアアアアアァァ!!



―――バッグオォォォォン!!

―――――ズガシャァァァン!!



 ズドォォォン!!  ドガシャァァァァン!!  ゴォォォォ…!







渓谷にクレーターと宇宙船の残骸が幾つも積み重なる
大穴が空いた地面、それを埋め尽くし新たな山を築く鋼鉄製のガラクタ





ルイージ「もう終わりかい…?」シュタッ





 ゴゴゴゴゴゴゴ…!


  ドドドドドドド…!






ルイージ「キミ達は僕の兄さん、越えるべき壁を壊した"強敵"だ」


ルイージ「誰もが認める英雄を倒した強者なんだ」





ルイージ「そんな強敵が"僕如き"に
           あっさり負けるのかい?」ゴゴゴ…!


ルイージ「そんなんじゃあ、僕の気が収まらないよ」ゴゴゴ…!

ルイージ「その程度じゃないだろうッ!
        掛かって来いッッッッ!!!!!!」ゴゴゴ…!




       「…その辺にしとけよ、ルイージ」シュタッ!
162 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/27(土) 03:21:57.08 ID:Ofd+FNnE0
*********************************


           今回は此処まで!



    もうすぐ、前スレ分は全て此方にもって来れそうですね

*********************************
163 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/27(土) 14:48:44.91 ID:7aMyv1tqO
留慰ー次声ぇぇぇ!
164 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/29(月) 08:04:43.64 ID:uR2yMxzko
乙ですよー
前スレの時からこのルイージ無双のところほんと好きだわ
165 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/30(火) 21:09:47.21 ID:sckCzWUw0


ルイージは思わず息を飲んだ


 まだ目前には浮遊する異星の兵器達がある、が…そんなことさえも
忘れてしまう程に彼は眼を見開いて、背後を振り返る



「らしくないぞ、お前がそんなに青筋立ててキレるなんて」



ルイージ「…っ!…!」パクパク



金魚の物真似か?と目の前の男は声も出せない彼を見て肩を竦める


トレードマークの赤い帽子にオーバーオールと白いグローブ…
年季の入った革靴で砂埃舞う渓谷の地を踏みしめる姿







ルイージ「にい…さん…!」

マリオ「おっと、ワルイージにも言ったが俺は幽霊じゃあないぞ?
    この通り脚だってある」ポンポン



ほら、見て見ろよ?と右手で片足を叩くリアクションを見せる




ルイージ「っ…な、なんだよ…心配、させやがって!!」

ルイージ「本気で死んだかと…思ったじゃんかよっ!」



――生きていた、"生きててくれた"

―――声は震えてたし、涙は無意識に流れる


かつて、キングテレサに囚われていたマリオを救い出した時と
同じように彼は身内の無事に心から涙した…!



マリオ「ははっ!まさか!俺の不死身さはお前が一番知ってるだろう」

マリオ「ルイージ…」フッ…



彼は此方に歩み寄り、小さく握り拳を創る、そして…





  マリオ「オラァッ!」バキィィ

 ルイージ「ぶべらっ!?」ベキョッ




思いっ切り弟の顔面をぶん殴った



ルイージ「ぐ…あ、あがが…な、なにふふんだひょ!!」
   訳(ぐ…あ、あがが…な、何するんだよ!!」

166 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/30(火) 21:14:50.38 ID:sckCzWUw0


マリオ「ふぅーっ」コキコキ!


手首を鳴らして、彼は一呼吸、そして弟に言い放つ


マリオ「今、なんで俺がぶん殴ったか分かるか?ルイージ」


ルイージ「いっつぅ〜…なんでだよ」ヒリヒリ






マリオ「…この一年近くお前は
      俺に記憶の事を黙ってた今の一発はソレな」



記憶喪失のマリオに要らんお節介を焼いた事での一撃



ルイージ「そ、それは…!」


マリオ「で、だ!」グッ


再び拳を創る英雄……その強靭たる肉体の鉄拳は…ッ!



              バキィィ!!!



ルイージ「に、兄さん!?」

マリオ「っ…ったた…結構痛いもんだな、コレ」





今、弟の顔面を殴りつけた拳はそれ以上の強さで
マリオ自身を殴りつけた…


これには弟も困惑した、兄は何を考えたのか?やはり頭か何処か
後遺症でも残っているのでは!?と


マリオ「おう…今、失礼な事でも考えなかったか?」


ルイージ「(ギクッ)ま、まっさかぁ〜…」




マリオ「…」

マリオ「今の一発は……」




マリオ「お前やヨッシー…姫…それに国の色んな人達に
      心配ばっか掛けた自分勝手な修行馬鹿への怒りだ」



マリオ「今の今まで…お前たちの僅かな気遣いや、何が何でも
    俺に過度なトレーニングをさせないために色々してきた事…」

マリオ「色々と、な…思い出すと
      同時に客観的にも視えるようになったからな」

マリオ「…すまん、今までお前にも迷惑を掛けた」
167 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/30(火) 21:22:24.41 ID:g/NpJ/aSO
He's one gigantic motherfucker.
168 :>>167 いえーす、むきむきまっちょめーん [saga]:2017/05/30(火) 21:24:50.98 ID:sckCzWUw0






――――…渓谷は静まり返っていた、ただただ…そこには静寂があった





いや、厳密に言えば廃材と化した宇宙船が燃える音や未だ浮かぶ
ゲドンコ星人の機体の浮遊音もあっただろう




だが…この兄弟の周囲には入り込める音など無かった…



片や、思いっ切り腫れた頬を抑え
片や血が滲み出ている口元なんて気にせず頭<コウベ>を垂れる







…今、ルイージの目の前にはマリオが居る…


そう…かつて、幾多モノ"冒険"を経験した真の英雄が帰って来た






 -今、実に1年振りに"本当の意味で"この兄弟は…邂逅できたのだ-




 悟られぬ為に…そんな想いからの真の意味で本心を語らず、明かさず
血の繋がった兄弟だというにも関わらずどことなく余所余所しい


見ようによっては上辺っ面だけの家族関係
そんな冷めた見方にもなり得るモノとは違う…


おおよそ365日近く間の開いた本音の同士の語り合い…ッ!それが!
目の前に在るのだッ!





マリオ「…本当に大事なモノを俺は見失ってたさ」





『焦る必要はないさ!キミは…そうだな少し頑張り過ぎただけなんだ』

『たまには落ち着いてよーく周りを見る事だって大切なんだぜ?』





マリオ「夢ん中で…友達に教えられたよ」


マリオ「…英雄<ヒーロー>たるモノが
      こんな大事なモン見落としてたんだ、笑っちまうぜ」


ルイージ「…兄さん…」
169 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/30(火) 21:27:04.52 ID:sckCzWUw0

 マリオは天を仰ぐように…そして遠い何処かに居る友人の姿を視る
かつて【カジオー軍団】との闘いで、共に在りし日を駆け抜けた友を…




 マリオ(今ならお前たちの名前を呼んでも良いだろう…?
                 なぁ、"ジーノ"…"マロ"…)






 マリオ「俺を殴れ、ルイージ、今まで姫や国民…そして―――」



 ―――そして…俺の好敵手<ライバル>達に





マリオ「―――…色んな人に迷惑を掛けたこの俺をッ!!」

マリオ「童話の走れメロスのラストシーンみたいに思いっ切り
     音が出るくらいぶん殴れッ!」






ルイージ「…っぷ!」

ルイージ「ぷっはははははははっ!」



ルイージ「ようやく記憶が戻ったと思えば…くっく…!」

ルイージ「弟を思いっ切りぶん殴ってしまいにゃ
      次に自分も殴れ、か…やっぱり変わらないな…」



ああ、これだ

これでこそ、あの"英雄"なんだ
自分が憧れ、そしていつの日にか追い抜くべき高み…っ!





ルイージ「オーケーだ!歯ぁ食いしばりなよッ!
      さっきの仕返し込みで喝を入れるからさッ!」グッ!



―――――ベキィィ!!



マリオ「おごッ!?…」ヨロッ


マリオ「…なんだよ、俺が筋トレを怠けてた間に鍛えてたのか?」


ルイージ「ふふんっ!これがスーパールイージさんの実力さ!」





マリオ・ルイージ「「…」」


     「「…っぷ! あっはっはっは!!!!」」

170 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/30(火) 22:50:17.82 ID:sckCzWUw0


マリオ「は、はは…あっ!、久しぶりに大笑いしたから
                   くく!腹が痛いな」



ルイージ「本当だよね、…僕等がどんだけ兄さんを遊びに連れてっても
      此処まで笑ってくんなかったのにさ〜」




マリオ「俺には…やはりこの生き方が性に合ってるようなんでな」スッ

ルイージ「そっか…それが兄さんにとって
             幸せな人生なら…仕方ない、か」スッ




邂逅の末に大笑いした英雄兄弟は…ゆっくりと同じ方角を見据えて
目つきを細めた



マリオ「なぁ、久しぶりに勝負しないか?」


ルイージ「勝負だって?奇遇だね、僕も記憶が戻った記念で
      ちょいとばかし兄さんと競いたい事があったんだよ」



マリオ「そりゃ奇遇だ…なら勝負事の内容はこんなのでどうだ?」



マリオ「今、現在進行形でキノコ王国内に現れたゲドンコの宇宙船を
     どっちが多くぶっ潰すか?」






2人は同じ方角を見る、同じ空の同じ空間の同じ機体共を



ルイージ「なら、この事態の引鉄は何か?黒幕は居るのか?何者か?
      それも調べ上げて事件を解決したらボーナス得点付きに
      しようぜ、その方が燃えるだろ?」





マリオ「よく分かってるじゃないか」ニヤリ

ルイージ「伊達にアンタの弟やってないからね」ニィ!





マリオ「…ド派手に…」

ルイージ「ああ、やってやろうぜ…!」











    -  英雄兄弟<マリオブラザーズ>の復活だッ!   -


171 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/30(火) 23:24:21.67 ID:sckCzWUw0
―――
――



渓谷にて紅と碧が天を駈け始めるとほぼ同時刻…




         【キノコ王国 〜城下町〜】




「うわああぁぁ!!!テロだァ!!テロリストが攻めて来るぞッ!」

「は、早く逃がして!!!」

「うぇ〜ん!ママ〜!」



        ワー! ワー! キャー! キャー!



ヨッシー「はいはい!そこの人!ちゃんと避難指示を出してる方に
      従ってくださいね〜!」

ワリオ「おうコラ!!そこのテメェ!列を乱してじゃんあねぇぞ!」



キノピオ「こっちです!皆さん!指示に従って避難施設へ!」







ワリオ「チッ!こいつぁ不味ぃぞ!
         …どいつもこいつもパニックってらぁ」

ヨッシー「そりゃそうですよ、此処長い事平和が続いてたって時に
      突然『戦車に搭乗した武装テロリストが攻めて来た』!
      なんて報告が来れば国内大騒ぎですよ」



キノピオ「すいませんっ!お二人共、お手伝い頂いて」


ワリオ「へっ!とんだゴタゴタに巻き込まれたモンだがよォ〜!」

ワリオ「ちゃんとお国から
    お手伝いの恩賞金っつーモンが貰えんだろォ!」


ワリオ「期待しとくからな!…おい!そこの老夫婦!
        早く避難所へ…あぁん!?孫が居ねぇだァ!?」





<クソガ!ショーガネー オレガサガシテキテヤルゼ!





ヨッシー「それにしても"旧クッパ軍"…ですか」


ヨッシー「やれやれ、平和なご時世とやらが
        よっぽどお嫌いなんでしょうかねぇ」



キノピオ「はい…この目で見たんです!間違いありません!」

172 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/31(水) 01:44:58.68 ID:MRuYfKl50


ヨッシー(ふむ…クッパ軍団の人員が今回のお祭り屋台に
                全員出払ってたわけでない)

ヨッシー(…クリボーくん言ってましたねぇ…なるほど…
         クッパ軍全員ではなく…一部の人員ですか)

ヨッシー(ノコノコさんとはよく文通してましたし…大体
      キナ臭い話も小耳に挟みはするんですよね、私)




ヨッシー「もうそろそろ、この辺りの避難は
        完了と言ったところでしょうね」


キノピオ「はいっ!」







ヨッシー「…ワリオさんが戻って来次第、私は
      この非常識なお客様方を見てきますね」


キノピオ「そ、それって…」



ヨッシー「折角のお祭りで、マリオさんとルイージさんの一騎打ちが
     見れそうだったのに、それが台無しですよ?」


ヨッシー「この有事が臨時ニュースで国内に報道
      おかげでレース中継も屋台のご馳走もおじゃんです」


ヨッシー「怒ってますよ?私」



ペロン…っ!と舌を出す仕草を見せる緑の友達に
キノピオは何と声を掛けていいか分からない


あえて言うなら…





キノピオ「あのぅ…できれば穏便に…」



ヨッシー「…まぁ、手加減はしますよ?多分ですけど」トテトテ…





そういう彼の手にはタマゴがしっかりと抱えられていた…






その昔、コウノトリが落とした双子の赤子を守り抜いたという
伝説的な卵の狙撃手の腕は未だ健在である…



ズルズル…


トテトテと靴を履いたトカゲが歩いて征く、その背を5個の卵が
追いかけて行く…ッ!
173 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/31(水) 03:20:15.68 ID:MRuYfKl50
*********************************


           今回は此処まで!


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174 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/31(水) 22:43:41.02 ID:IZaMupHco
あら、こっちに引っ越してたのか
久しぶりに読むね

175 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/04(日) 01:38:21.81 ID:bN8df6pu0

 キノコ王国はピーチ姫の代から急速な発展を遂げた国家である
特筆すべきは先述の通りガソリンエンジン式の乗用車と国道関連だ


それ以前の交通機関と言えば、先々代の時代より建設されたキノコ鉄道
港にある昔ながらの帆船であった


 国内南部に位置する港も時代の変化に伴い変わっていく
かつて大海原へ風力と潮、漢達の直感だけを頼りに航海した船は
機械的なモノへと姿を変え、名残のあるモノは今や少ない





そんな港湾はすぐ近場に飛行場<エアポート>も備わっており
諸外国へ旅立つ者ならば誰しもが訪れるであろう場所となった














  王国でテロが起きた時ッ!友好国からの援軍が来ると
           すれば間違いなく此処に到達するのだ…ッ!






彼奴等が此処を放置しておくはずがないッ!








キュルキュル…!

ドドドドドドド…ッ!




港にそびえ立つ古ぼけた灯台にて羽を休めていた鴎は異常を察し
飛び立った、それは憩いの場が戦火に包まれると本能で察したが故か

 設立記念公園の中央にある日時計周辺のパンジーは不安げに揺れ
威風堂々とした佇まいで正午過ぎを示していた晷針もまた
招かれざる客人の行進曲にその身を震わす




ノコノコ達を素通りし、幾つかの部隊に別れた戦車隊

その一端が我が物顔で地響きをあげる、我、此処に行進ス…!





「あーあー、聴こえっか?
  これから予定通り俺らは空港を占拠すっぞ」




先頭の車両から後続へと指示が飛ぶ
176 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/04(日) 01:56:38.71 ID:bN8df6pu0


「あぁ〜、青い海、白い雲
    んでもって清々しい波音…くぅ!良いねぇ」





一両の戦車が向きを変える
波止場から少し右方面…そびえ立つは真っ白な灯台



「こう天気が良くて思わず欠伸が出ちまいそうな
             ポカポカした日にゃあよォ〜」






















  ドン・チュルゲ「打ち上げ花火<センカ>が
             無性に見たくなるよなァ〜!」チュウッ!










そしてッ!一発の凶弾は放たれるッ!


グローブを嵌めた手はサングラスをほんの少しだけ上げて
 破壊衝動を秘めた眼光を覗かせる、fireの合図と共に火を噴く砲身

チュルゲ自慢の火薬を詰め込んだ鉛玉は大気を震わせ
時化の日も船乗りを救ってきた白い灯台に着弾する



まだ夕暮れには早すぎる時刻、時間にして1秒にも満たない僅かな合間

港はセピア色に包まれる…それは一日の終わりを振り返る色とは違う
かつての美しい光景に"さよなら"を告げる始まりの色なのだろう





光に遅れて耳を劈くような爆音が港全体を震撼させた

それは古き時代から憩いの場であった港の悲鳴なのかもしれない


立ち昇る黒煙、炎上しながら灯台"だったモノ"は黒ずんだ瓦礫を落す

 吹っ飛ばされた灯台の破片は爆発と同時に流星の如く流れ
近場の船乗りご用達のバーから倉庫、記念公園の建物に落ち…

それは新たな火種となる…


チュルゲ「ンン〜!良いねぇ!スカッとするぜ!」チュッ!
177 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/04(日) 02:12:11.25 ID:bN8df6pu0



"耳を劈くような音"…当然ながら搭乗員の多くは眉を顰め
一部の者は耳を塞いだ




―――チュドオオオオオオオォォォン!


――ドゴォォォン!




一発の砲撃から生まれた二次災害、灯台の破片が落ちた倉庫群の中には
火気厳禁の物資が保管されていたコンテナもあったし

船乗りが酒を煽るバーに至っては酒蔵目掛けてピンポイントだ


このネズミ男がそこまで計算してやったかどうかは乗り組み員の誰にも
識別できないでいた、ただ…


 優雅なクラッシック音楽でも聴いているかのように
悦に浸った顔の爆弾魔が末恐ろしき人物であるという認識だけは増した





キャサリン「……アンタって本当、サイっっテー…」


チュルゲ「あ゙?なんか言ったかカマ野郎」





キャサリン「言ったわよクソネズミ、こっちはロープで
       身体グルグル巻きなのよ?おかげで騒音が耳を直撃よ」



あー、やだやだ、と悪態つく元同僚にネズミ男は振り向きもせずに
「おー、そうかい、そうかい、堪能できてよかったじゃねーか」と告げ



チュルゲ「うっし!おめーらのボスも言ってたろ?此処の現場担当は
      全部俺に一任するってよ!
       俺の言う通りバリバリ働いてもらうぜ!」



と、爽快に笑う…今のドン・チュルゲは頗る機嫌が良い
後ろでキャサリンがどれだけ罵倒しようがどこ吹く風と言った所なのだ




チュルゲ「海面にぷかぷか浮いてるお舟も飛行場の航空機も動く奴ぁ
      全部まとめてボン!だ」

チュルゲ「船着き場も滑走路さえも跡形もなく吹っ飛ばす」









チュルゲ「何者もこの国から逃げられねぇ、誰もこの国に来させねぇ」

チュルゲ「平和ボケした、餓鬼どもによォ…
             戦争ってのを教えてやるのさ」ニタァ

178 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/04(日) 02:57:26.69 ID:bN8df6pu0


心底喜びに打ち震えていた

心底嫌悪の念に駆られていた




チュルゲと旧クッパ軍の認識の違いだった





武人として、強敵と闘える事を誰よりも誇りに思い、戦地にて
持てる技術・技巧の限りを尽す




 彩るは華、咲き乱れ、枯れ果てるまでの僅かな時の中で懸命に輝く
灯火のような儚さ…閃光のように鮮烈で鮮明に脳裏に焼き付く気高さ





確かに彼等も街の占領や、各国の行政を司る城や軍務担当の砦の占拠は
過去幾度となくやって来ただろう













だが、――それでも、"無差別な破壊だけは嬉々として遂行しなかった"




戦略上、必要と判断した破壊行為こそしても…



破壊活動そのものに悦びを覚える



そんな気狂いの男と英雄と拳を交える日々を夢見た戦士達では
違いすぎるのだ…




闘いを求めてクーデターに賛同した者

平和をただ「つまらない」と一蹴しテロ活動を起こす者


同じようで似通らない思想





彼等からして見れば、必要な事とは言えチュルゲのような男は
下劣な輩でしかないのだ、…溝鼠よりも汚らしい、品性の無い気狂い


179 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/04(日) 03:41:49.96 ID:bN8df6pu0

チュルゲ「なぁんだぁ?随分としけた面じゃねーかよ?」


チュルゲ「折角の花火大会だぜ、もっとパーッと盛り上がろうぜ」チュッ!





「…自分達はまだ作戦の遂行中であります」
「予期せぬ事態はいついかなる時も起こり得ますので」
「気を緩めすぎては全体の士気にも悪影響ですから、ハイ」



チュルゲ「ケッ!そうかい、そうかい、おー!ヤダヤダ
      これだから軍人さんってのは、つれねーの何の…」




両手を大袈裟に広げ、おちゃらけたように悪態をつく…彼奴の眼光は
相変らず黒レンズの向こう側に隠されている

だが、その口元がサングラスの向こう側がどのような眼つきをしているか
その程をよく窺わせた





チュルゲ「んじゃま!ちょっくら作戦を完了させちまうとすっか
      全車両に通達だ!港地区ニ於ケル我カ作戦ヲ遂行ス!
      ちったぁ!格好つけた分にして送ってやんな!ははっ!」








本格的な破壊行動の電報が送られんとする、今まさにその時であった























 ――――プロロロロロロロ…





無線手の役割を担う搭乗員は通信機器から思わず手を離した

彼は空の彼方から此方へ向かってくる"プロペラ音"を聴いたからだ




行き場を失った手は宙に、双眼は焦点が合わず、唇はパクパクとさせ

顔の色は蒼白を通り越して血気の失せた死人色だったと後に隣に居た
無線手の友人は語る
180 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/04(日) 03:52:14.83 ID:bN8df6pu0


「――ぁまだ」


「は?」



掠れた声に眉を顰め、なんだ一体?と尋ねた





すぐにわかる事になる、何故隣に居たこの戦友がこのような顔をしたのか








         「そ!空に機影を確認ッ!こちらに接近中ですっ」





チュルゲ「あぁん?ゲドンコ共…もう終わったのか?
     おう!おめーら早いトコやっちまわねぇと手柄持ってかれんぞ」



  「…違います、"プロペラ"の音がするんです…
         そんなのゲドンコ星人の機体に使われてません」


死人色の彼はどうにか声を絞り出す、だが声は身体と同じで震えていた





チュルゲ「あ"?んじゃ何か?
      もうどっかの国からか軍がスクランブルしてきたってのか」




 「違うんです……」





 「……ぁ」

 「…う、ぅぁあ、ああぁ…っ!」








彼等は気がついた…その"聞きなれたプロペラ音"が何であるか


空の彼方に映る機影が徐々にハッキリとしてくる…



 そう…道化師<ピエロ>を模したその空飛ぶ物体の輪郭が
              それに乗っている人物が誰かわかったのだ

181 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/04(日) 04:01:46.43 ID:bN8df6pu0


      -『――ぁまだ』-


先程の無線手の掠れた声が脳内でリピートされる


今なら分かる、あれは『―――様だ』とそう言葉を漏らしたのだ、と





























ノコノコ「おお!見えてきましたね!」

クリボー「ッスね!飛べるテレサを先にキノコ王国に向かわせて
      俺らが城に戻るっ!なんとか間に合ったってトコか!」














―――プロロロロロ!…シュバッッ!!!   ヒュゥゥゥゥゥン



門番を務めるノコノコとクリボーはあの御仁をお連れ致したのだ

プロペラ式の小型飛行船から彼は飛び降りた



 けたたましい落下音、舞う粉塵と降り立った彼の地点を中心に
大地すら揺るがす振動の波が広がる

吹き飛ぶ火煙衝撃で崩れ落ちる家屋…そう










            "大魔王"が空からやって来た



182 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/04(日) 04:03:32.84 ID:bN8df6pu0
*********************************


           今回は此処まで!


            引っ越し完了


*********************************
183 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/06/04(日) 11:55:42.69 ID:IJPsW7pVo
おつおつ
184 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/06/04(日) 14:19:42.37 ID:EaSfskXi0
食っちゃ寝様だ?
185 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/06/05(月) 08:00:22.69 ID:XQQWbs8UO
ついに登場か…
186 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/06(火) 22:12:19.88 ID:X4P2p47R0


 静寂、不気味なまでに辺りは静まり返った
先刻まで駆動音を響かせた戦車にもし心があるのだとすれば人で言う所の
畏怖の念があったかもしれない


火を噴いた砲身は未だ熱が篭り続け
発煙は降ってきた"彼"から逃げる様に天へと舞い上がる…



爬虫類特有の尻尾と甲羅、それは"彼"の部下の多くと同じであった

ただ、彼の場合は象牙や牛の角のようにトゲ状に骨が変質した骨棘を尾に
有していて、背中の甲羅にも10本の棘が生えており
 更には燃えるような真っ赤な鬣の両脇にも雄雄しい角を携えていた


 その様は亀というよりもジュラ紀に君臨した
肉食獣の帝王達に近しいモノがあった



 鍛え抜かれたその逞しい筋肉はどこぞの王朝時代の彫刻に匹敵する
ある種の美を感じさせ、その両腕に黒鉄製の腕輪
そして首元に同じ材質の首輪をつけており、これまた彼の存在を
象徴するかの如くトゲがついていた






「あ、あぁぁ…」ガタガタ
「く、く・・・く…!!」ブルブル











 「クッパ様だ…!クッパ様が…っ!自ら御出陣なされたのだ…!」






誰かが口を開いた



 これがかつての自分達がキノコ王国へ攻め入る時ならば彼等の士気は
爆発的に上がっただろう、在る者は熱狂的なまでに雄たけびを挙げ
在る者は攻める前から勝利さえも確信した


在る者は鬼神の如き強さに敬意と恐怖を交え声をあげて、身を震わせた




が、今はまるで状況が違う




自分達を"常勝"へと導いてきた軍神は…今ッ!まさにこの瞬間に!


 自分達を処罰すべく此処にはせ参じたのだッッッ!!





彼等は悪い意味で身を震わせるだろう
187 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/06(火) 23:00:16.14 ID:X4P2p47R0


チュルゲ(…チッ、タマのちいせぇ野郎共が)



鼠男は覇王の出現と共に縮こまりだしたし乗り組み員達に内心、舌を打つ


黄色く堅い皮膚、何物をも容易く切り刻む鋭い爪
口元から覗かせる凶悪な牙を持つ怪物の顎は巨岩さえも嚙み砕く




一言で表すなら言葉通りの"怪獣"


それも怪獣の王である




未だ舞い上がった粉塵のベールに包まれた彼はその全身を
鮮明に見ることは叶わない


だがらこそ、表情の分からない窺えないシルエットがより一層
威圧感を出していた


心なしか大魔王の殺気すら放たれているように思えるのだから
彼等が縮こまるのは致し方ない



余りにも巨大な存在の前で「嗚呼、自分達は所詮雑兵に過ぎないのだ」と
取るに足らない矮小な…ちっぽけな存在でしかない、と








 その恐ろしさを誰よりも知る彼等は脳裏にその楔を叩き込まれる



圧倒的なまでの実力差…ッ!

圧倒的なまでの戦闘能力…ッ!








目の前に広がる絶望の滝………ッッ!

勝てる道理など万が一…否、億が一にも存在しないという事実を改めて
脳細胞の奥深くに突き立てられるのだッ!






チュルゲ「なぁ〜にビビってんだぁオイ?
        おしっこ漏れちゃったのか軍人さんよォ」チュッ


チュルゲ「ケッ!…マジで糞野郎だな」チュッ!


「なな、な、なんだと‥!」



チュルゲ「相手はなんだ?年老いた時代遅れの糞爺<ロートル>だ
                   何を恐れてやがるんでい」チュッ
188 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/06(火) 23:53:48.31 ID:X4P2p47R0



チュルゲ「てめー達はなんで今此処に居やがる?
       こうやって一つのお国相手に喧嘩ふっかけんのはなんでだ
      それどころかあの大将の考えに背いてんのはなんだ?」





チュルゲ「今のてめーらの大将はあのロートル大王じゃねぇ
     "指揮官さん"だろうがッ!億んでんじゃあねぇぞ軍人共ッ!」





  「!?」「うっ!」「…っっ!」「それは―――」





チュルゲ「てめーらの指揮官さんは雪山で
       そりゃ大層ご立派な演説をしただろーが」



チュルゲ「俺もちょいと聞いたがありゃ目からウロコだぜ、うん」


チュルゲ「諳んじやろうか?え"っ?いってやらぁ!
     『闘いこそが全て勝利の余韻、戦士を称える名声こそが
               ワシ等の人生そのものと呼べた!』」




 「…ゴクッ」「俺達の…全ては!!」「勝利、戦士の名声」






チュルゲは失意の眼に野心を灯していくモノたちを見て
 これだから単純な馬鹿は扱いやすい、とほくそ笑む


チュルゲ「『ワシ等の主君クッパ様にはかつての覇気は
          無く、ただ堕ちたとしか言いようが無い!』」


チュルゲ「『故にこれは決して主君への謀反に非ず!
    クッパ軍団の輝かしき黄金時代を取り戻す為の行為!』』






そこまで言い、間を置く、呼吸を一つ、そして最後の一押しとばかりに








チュルゲ「『我等が主にあるべき姿に戻っていただく為の行為である』」




チュルゲ「違うか?」ニィ




「そ、そうだ…俺達のしてる事は!」「裏切りなんかじゃない‥!」
「クッパ様に正気に戻って頂くための…ッ!」

189 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/07(水) 01:35:55.62 ID:u3QymEy90


兵士は立ち上がるッッ!

己が内に巣食う【恐怖】という名の怪物に打ち勝つためにッ!


笑う膝に握り拳を叩き付け、音を鳴らす奥歯を噛みしめ自身を奮起すべく
猛々しく吼えるッ!


脳に打ち込まれた恐怖と言う名の楔を吹き飛ばすように喝を入れるッ!



チュルゲは彼等をただ"利用する為だけに"聞こえの良い言葉を口にした

それだけに過ぎない





だが、彼奴の言葉は指揮官の熱弁を思い出させる

闘志がその眼に宿り彼等は意を決したッ!






そうっ!!相手が我らが主君、クッパ様であろうと死力を尽くそうッ!


































…っというのが一部の勇気の意味と蛮行を履き違えた愚か者の思想だった


冷静なモノだけはちゃんと無謀と勇気を理解していたという




 「メカキャサリン!!出撃準備完了!」
「こちら砲撃手!いつでも行ける!装填急げ!」

「「「おうっ!!」」」


「え、ええーい!!クソッタレ!こうなりゃヤケだ、やるしかない!!」


冷静に理解はしてても既に退路など無い、すべきは一つである
190 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/07(水) 01:37:42.23 ID:u3QymEy90
*********************************


              今回は此処まで!







             次回予告ッ!



           (敵が)圧倒的絶望


*********************************
191 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/06/07(水) 03:00:02.32 ID:3yfHUmiW0
オラワクワクすっぞ!!!
192 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/06/07(水) 18:40:26.87 ID:CNqhFG6DO
悲しいなぁ(敵が)
193 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/06/07(水) 19:36:49.72 ID:1pmVoHLRo
不抜けたからと言ってもいつでもマリオとの再戦に向けて鍛えてるやろ
つまりモブは死ぬ
194 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/06/07(水) 22:04:25.42 ID:5I8XQaTLo
クッパ様に勝てると本気で思ってるのかい?
195 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/06/08(木) 00:38:52.91 ID:XkJe0Pqo0
もうだめだぁ・・・おしまいだぁ(敵が)
196 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/13(火) 21:55:31.08 ID:FPgEIYWe0


心拍数は2倍速でリズムを刻み、手にはべったりと手脂が滲む程だった

 それは怖れであり、畏怖であり…戦士として"強敵を相手にする悦び"に
打ち震えていた証拠でもあった





キュロキュロ…キュルキュル‥‥!

       ギュルルルル…!!!





旧クッパ軍が修繕した車両の中で最大規模を持つ機体から
オリジナルを容易く打ち破った鋼の蜥蜴が駆動音を轟かせて飛び出す


 陸上巡洋艦の名を冠する程に大掛かりなソレは全60t近い重量を持つ
機械仕掛けのドラゴンを格納し走行できる馬力すらも持ち合わせていた


 ゆえに彼等は自分達こそが今作戦の戦略の上で要となる存在だと
そう信じていたし、港ならびに空港の占拠・破壊命令という大役を
授かるだけの戦力を有していた



だから、その"心許ない武装"でクッパが倒せると過信したのだ



「【キラー砲】装填完了!いつでも撃てます!」

「出し惜しみはするなッ!全弾放てぇぇっっ!!」





  ズドォォォン!!

           ドドンッ!!





人の背丈を優に2回りも超える巨獣は何も言わず一歩片足を前に出す

発砲音と重なり、それが恰も彼の大魔王の出陣を盛り上げる伴奏のようで
遠巻きに見ているノコノコとクリボーには滑稽に見えた



クリボー「なぁ、俺らは行かなくて良いんスかね?…いやクッパ様が
       そうご命令なされたんスけど」

ノコノコ「良いんです、足手まといにしかなりませんから」




クリボー「……手加減、してくれっかなぁ」

ノコノコ「…灸を据えるだけだ、と申しましたから
         死人は出ないでしょうな、たぶん」








メカキャサリンの背後から垂直に飛んでくるキラー砲の援護射撃が
クッパの身体に命中するのを見て彼等は呟いた

197 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/13(火) 22:11:23.07 ID:FPgEIYWe0


「!? …っ、あ、当たったぞ…」

「ど、どういうことだ!?」

「た、確かにクッパ様は協定の日以来、御体を鍛えては―――」



ザワザワ…!

      ガヤガヤ!



年老いた帝王、時代遅れのロートル、チュルゲの言葉が彼等の心に
染みのように広がっていく






 「…やれる」ボソ





 誰が口火を切ったか分からなかったが、その一言が上がれば後は
小石を投じた水溜りの波紋の如く周囲は口を揃えだす






 「やれるぞッッ!!あれだけの砲撃を受けたんだ!!!
    如何にあの御方といえど無傷で済むはずが無い!!」


 「う、うおぉぉぉぉぉぉぉぉー―−――っっ!!!」



 「クッパ様も、と、年老いたのだ!!!我らでも勝機があるぞォ!!」












 肉眼でも分かる、派手な爆炎にその巨体が包まれていったのが
一発の砲弾で地を抉り、焦土とする自慢の火薬の塊

それがゲリラ屋にして爆破のプロの手で更に強化されていた
 湧き上がり浮足立つ乗員は次の瞬間、凍り付く









ヒュゥゥゥゥ――――





          クッパ「…」




両腕を組んだ全く以って傷一つ無い帝王の姿に戦慄する
198 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/13(火) 22:53:35.21 ID:FPgEIYWe0

クッパ「…」ハァ


眼を細め、君主は紅色のため息を吐く…


生ある者を瞬時に焼き殺すであろう高温の吐息は大気の温度と混じり消え

 黄土色の鱗に付着した煤をまるで
お気に入りの一帳羅についた汚れを払う様に煩わし気に片腕で叩き落とす

 雄雄しく唄っていた砲塔のコーラスはピタリと鳴り止み
ソレが車両内の様子を物語る…意気消沈と戦意が失せた兵士

恐怖の楔が倍になって突き刺さり奥歯で心境を詩にした雑な合唱を
演奏し始める戦士の顔ぶれが…




クッパ「嘆かわしいことだ、もう止めたのか
         それで吾輩の部下を名乗るだと…?」








      クッパ「半端者共が、恥を知れ」




声は届かずとも視線は届く『どうせやるのならば捨て身で来い』と
『勝てぬと分かっていても死力を尽くすのが我が軍の誇りであろう』と

謀反を起こした者への叱咤を含めた一瞥をくれてやった




 キュラキュラと機械仕掛けの爬虫類の方がまだ可愛いものだと
心底、帝王は質の落ちた自軍に落胆した


こんな玩具<ガラクタ>でさえ進軍して来るというのに
 なんだその程度の志で戦<イクサ>をする気だったのかと




ズシンッ、ズシンッ!

キュララララ…!




味方の援護射撃で舞う爆炎、火薬の匂い…煤の霧雨の中を鋼鉄の竜が

年老いた、されどその肉体は覇王たる風格を漂わせる大怪獣が



戦地に立つ、猛る者は吼え、怖れ慄く者は泣き叫び
体裁も形振りさえも構わずに哭く





 優に一年ッッッ!!365日に渡り魔王が律してきた
             その剛腕を振るう時がやってきたのだッッッ!





     【クッパ VS メカキャサリン&戦車隊】

           戦闘開始ッッッ!
199 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/06/13(火) 23:40:08.43 ID:gQ1ng7RiO
パナイ
200 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/14(水) 00:53:35.06 ID:kn7634gs0

チュルゲ「オイ!糞共何してやがる!!さっさっと撃ちやがれねぇか!!」


「だ、駄目だ…勝てる訳が」ガタガタ
「と、取り返しのつかない事をしちまったんだ…」ガクガク
「逃げよう!!!い、今ならまだ、まま、間に合う!」


戦場の軍神を…っ!

傷一つ付かぬ化け物を目の当たりにして彼等は…っ!クッパを見た兵は!



      『 クッパ を みて どうよう している !』



 その狼狽えぶりは【カジオー軍団】の力に屈服し、やむを得ず君主に
反旗を翻さずを得なかったあの日を彷彿させた

違いがあるとすれば、それは圧倒的な武力を前に君主も居らずで
支配下に置かれる事を強請られた事

そして、今回は誰かの意志ではなく自らの意志で背いたという違いだ



 つまり弁明も何もあったもんじゃあない
屠られたとしても文句の言える立場に非ず




チュルゲ「…」ツカツカ…



ドン・チュルゲは蚯蚓のような尻尾をうねらせ、1人の搭乗員の前まで
歩いてきた、そして…


――――ブンッッッ!


「…ぇ」



紫色のパンチグローブを嵌めた右腕でアッパーカットを下顎に喰らわせた





            ボッッッッ!ゴォォォォォォン!!!




「「「「!?!?」」」」



          「…カ"ッ…ひぇっ、ふ?」プスプス…パタッ




チュルゲ「俺ぁ爆破のプロでなァ、俺のグローブは
             ちょいとした特注品なんだわ」

チュルゲ「此処ンとこ、よぉ〜く見てみ?
      ナックルの部分が盛り上がってんだろう、殴ると火を噴く
      チュルゲ製の魔法の薬莢が組み込んであんだわ」


耐火性能抜群、自身の拳だけは爆破の熱からも衝撃からも護り抜く
 そのグローブで一人の下顎を打ち砕いた鼠男は底冷えする程に
極めて冷徹に言い放った


チュルゲ「臆むな、戦って死ね、さもなくば此処で今すぐ死ね」
201 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/14(水) 03:12:40.81 ID:kn7634gs0

黒光りのレンズの奥に沸々と苛立ちを募らせた


炎のように粗暴で狂的で、ソレで居て極めて冷静で残酷な冷血漢は
 敵前逃亡を図るなら此処で自害しろ、と言うのだ


前門は大魔王、後門は狂人である




車両内は嫌に寒かった、氷点下の世界に投げ込まれたんじゃないかと
錯覚するほどに底冷えしていた

 目の前にはプスプスと煙を上げ、肉の焼け爛れる悪臭を熱と共に
立ち込めさせる同志が倒れ伏せる


熱が漂うのに、背筋には氷を突っ込まれた気分だ




「か、顔の肉が…うっ…お、おえぇぇぇっっ!!」ビチャビチャ

「っ!…ぜ、全員!持ち場に戻れ!衛生!衛生ッ!応急処置を!早く!」




 見事に皮膚が焼け剥がれた同胞を見て
前門よりもすぐ間近にある後門から逃れるという選択を彼等は下した


―――
――


メシャッ!!ベチャッ!!!

 メカキャサリンの口部型砲塔より吐き出される巨大卵を正拳突きで
打ち砕く、破片が鋼鉄のボディーに突き刺さるが
痛みを感じぬは痛覚を持たぬ機械の利点である

 卵による物量弾が通用しないとAIが判断するや否やキャサリンを倒した
【マグナムキラー】級の火薬弾の発射、そしてサブで
備え付けられた火炎放射の筒管が人で言うところの喉の部分に出始めた



拠点破壊用の主砲、回避行動を取られた際に逃げ場を無くすよう
満遍なく周囲一帯を火の海に帰る、そういう攻撃パターンを組まれているのだ





  ボウッッッ!!!




クッパ「そんなモノッッ!!!」ガシィィィ!!!ズザザザザザ−z__!!



両の腕でそれを掴み、脚に力を入れ、爪を地に立て踏ん張る
それだけで城の城壁を倒壊させる兵器は止まったのだ





クッパ「ハアアアアアアアアア ア アァ ァ ッ ッ!!」ブンッ!



−―――ヒュゥゥゥ!! ドボンッッ!


腕を振り上げ、巴投げのように振り飛ばされた砲弾は風を切る音と共に
大海に沈む、そのまま浮かび上がることは無いであろう
202 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/14(水) 03:42:06.62 ID:kn7634gs0


メカキャサリン「キュピピ!ピーーーーッ!」ガコッ


 眼をチカチカと点滅させ、がこんっ!と口部のシャッターを開く
喉元まで上がっていた火炎放射の機関が顔を覗かせた

オリジナルのキャサリンもドラゴン族、故に火を吐く事ができ
多機能性を持たせるべくチュルゲはそこに目をつけ設計図に組み込んだ



本来のモデルに似せた性能、しかし本来のモデルを上回る強さをと!


殺戮マシーンの口部が鈍い輝きを見せる

 鋼鉄の口内で炎色反応を起こす可燃性の高い化学液が
花火の美しさと火の恐ろしさを瞳へ焼き付かせるべく
前準備を完了させた合図だった




メカキャサリン「ジュゴォォォォォォォォォ」ボワッッッ!!!




赤、青、緑、黄と彩艶やかな、これから火葬される者への手向け




それは帝王の身を包み、焼かんとする











  クッパ「なんだ、こんな時に花火とはお目出度いヤツだな」






目を薄らと細め、春の暖かな日差しの中で日向ぼっこを
楽しむ無邪気な子供のような顔で大魔王は笑った、いや…"嘲笑った"


煉獄に焼かれ苦しむどころか、大きく息を吸い、噴き出された猛火を
喰らい始めたではないか…っ!



クッパ「ガッハッハ!愉快な奴め…!余興の礼をしてやろう…」スゥゥゥ…!



顎を、大口を、牙の門を開き…!

深い…深い…っ とてつもなく深い深呼吸……っっッ!!


火炎と共に燃え続ける酸素を大きく吸い込んで、そして―――!





     - 灼熱の吐息<ブレス>とはこうするのだ…ッ! -




 大魔王は"地獄"を吐き出した…!
203 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/06/14(水) 04:07:00.63 ID:3XZAwkMH0
あのマリオですら入れないほどの高温の風呂に親子で浸かってるんだからな倒したきゃ最低でも溶岩ぶつけなきゃ
204 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/14(水) 05:39:57.39 ID:kn7634gs0


鋼鉄の蜥蜴が噴き出したソレを打ち上げ花火と喩えるならば

怪物王の吐き出した"地獄"は活火山の噴火口から噴き出す獄炎である



 渦を巻き周囲の炎さえもそれに惹かれ渦に飛び入ったかのように巻かれ
大火事が一つのうねりをあげる大蛇となりて機械の頭部があった場所を
通り過ぎ、後にはドロリと表面が溶鋼状となり地表に零れ出した鉄屑が…






(首なし)メカキャサリン『ぎ ぎぎぎ ギイイイ』バチ! バチチチ…





―――ボタッ! ボトッ! ジュゥゥ!!




溶鉱炉から溢れだした液状金属のようになった頭部

8割が融け出し、バチバチと剥き出しの回路が火花をスパークさせる


直後トチ狂ったように全速前進を初め、クッパ目掛けての突撃を開始した
殺戮目的の機体に感情などはない



 然るに、この機体が顔を溶かされ、醜悪な容姿に変えられた事に
怒りを露わにして駄々を捏ねる聞き分けの無い子供が大人に衝動的に
八つ当たりをするソレと見紛うような行動に出たと思えても
それは気のせいである







メカキャサリン『ぎ ぎぎぎ ギイイイ ギギイギギイギイイイイイイイ』バチバチッ!




塗装も焼け剥がれ、痛々しいとさえ思う程に変わり果てた機械は
渾身の力を以てしてクッパ大王に挑む……が





  ガシッ!







クッパ「ほう、今度は相撲か?それともなんだプロレスか?
        良いぞ、好きなだけ来るが良いワガハイが遊んでやる」





メカキャサリン「ぎ、ぎぎぎ…!?」メキッ メキメキ バキィッ




 60t…s<キログラム>に換算する事、重さ60000sに及ぶ鉄の塊を
受け止めた剛腕は枯れ木の小枝へし折るより簡単にその鉄腕をへし折った
205 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/14(水) 05:48:16.80 ID:kn7634gs0
*********************************


           今回は此処まで!



>>198


『訂正』

クッパ「嘆かわしいことだ、もう止めたのか
         それで吾輩の部下を名乗るだと…?」



クッパ「嘆かわしいことだ、もう止めたのか
         それで ワガハイ の部下を名乗るだと…?」





ごめんなさい、クッパならワガハイを漢字で言わないですね…







           次回予告ッ!


      (敵が)圧倒的絶望編part2



*********************************
206 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/06/14(水) 10:08:26.71 ID:033jtNR4O
乙。
強すぎかっこいい
207 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/06/14(水) 20:22:57.32 ID:1HlmFIx5O
マジパナイ
208 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/06/15(木) 00:43:02.81 ID:uoOYAveY0
ブレスや肉弾戦だけじゃなく魔法まで使えるってよく考えるととんでもないキャラだよな...
209 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/06/15(木) 06:09:19.41 ID:ovJ+VzJSO
スーパーマリオRPGの両目から涙が天秤になってるクッパすき
210 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/06/15(木) 12:17:21.58 ID:aWOSO3F50
>>208
しかも64だと尻尾掴もうと接近するとテレポートするんだせコイツ…
211 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2017/06/16(金) 10:33:06.62 ID:Qqj9+tE3O
でもマリオのファイアボールでやられる
…まぁそれはマリオが特別だという事で(アレ水中でも消えないし)
212 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sagd]:2017/06/20(火) 20:17:41.03 ID:wXC8uF530
スマブラやマリルイ3で巨大化もするしな
213 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/20(火) 22:37:29.79 ID:pBVrEI260


クッパ「脆い腕だな」ポイッ



取っ組み合いが始まって1分も経たぬ間に試合は終わった

 腕力に物を言わせてへし折り、剰え引き千切った金属製のソレを
興味無さげに放り投げた

ひび割れ、焦土と化した大地に鉄屑が落ちては甲高い音がエコーする


 頭部は熔かされていた…

 最大火力の【マグナムキラー】砲も、火炎放射器も使い物にならない
 縦しんば使えたとしよう、この化け物に効果が一度でもあっただろうか

 60tの重量と四輪駆動での突撃、その身を武器とした渾身の突撃は
 何の意味も為さなかった




―――初めから闘いですら無かったのだ…




クッパ「むっ?もうネタ切れなのか…
          なんと芸が無い、つまらんヤツだ」ググッ



 茫然と立ち尽くすしかなかった、剥き出しの配線コード
火花散らす頭部の電子回路、今しがた腕を捥いだ化け物の腕は
鋼のボディーを逃げぬように掴んでいた


 攻撃手段を奪われ、逃げるという選択さえも無くなった
そして殺戮兵器のAIは考えることを止めた


 クッパはこれから鷲掴みでするように右手を広げる
ジュラ紀の肉食獣の牙をも凌駕する爪を…っ!

顔の熔けた頭部目掛けての鋭い貫手という型で放った…ッ!





        メジャッ ッ ッ ッッ ッ ッ!!




鉄の融点は1538℃…凡そ溶岩の持つ熱量より300℃以上の高温である

獄炎の吐息により熔鉄と化した頭部へ追い打ちのような形で突き刺した腕

 右腕の皮膚が焼ける、その行為は自らの腕に痛みを伴わせる行い
クッパは"あまりにも張り合いの無い相手"へ敢えてそれを行った



クッパ(…つまらん、本当につまらん…あまりにも"満たされん"ぞ)



腕に溶岩を上回る熱量、痛みが迸る…



 かつて、彼が"心の底から認めた好敵手"との対決で

     幾度となく経験した痛み…唯一

       生命を賭した死闘を…誇りを実感できたソレ…




  クッパ「貴様の顔は見飽きたぞ、消えろ」グシャ
214 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/06/21(水) 00:18:56.89 ID:bU/XzqM+0
マリオ復活を知ったら作戦の何もなくピーチ姫を攫っていきそうな勢いだなww
215 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/06/21(水) 20:20:21.47 ID:pI+qwjJDO
姫をさらう理由が「マリオと闘いたいから」になってそう
216 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/06/21(水) 22:55:29.13 ID:1o5EvbNSO
キノコ王国で対決したら国が滅びそう
だからマリオはわざとピーチ姫をさらわせてたりしてw
217 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/06/22(木) 00:31:37.05 ID:jfcD4atp0
ピーチ城で対決した時も最終的には唐翌揚げ食べーるだったから大丈夫大丈夫
218 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/06/22(木) 04:47:04.88 ID:r4aQrKeN0
マリオ達が老いたって事はピーチもいい年なんじゃ・・・おや、こんな時間に誰だろう
219 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/24(土) 23:40:14.62 ID:jogv/lkn0


 殺戮兵器の脳髄を鷲掴む、貫手突きからのアイアンクローへの派生だ
そのまま腕を引き抜き、数本の焼け焦げた配線ごと引っこ抜く


退屈凌ぎにもならない相手を一瞥し、右手のそれを林檎のように握り潰す



 ピクリとも動かなくなった鉄屑を「邪魔だ、どけ」と押し退けクッパは
その巨体を前へと進ませる


 燃え盛る炎の大草原を大魔王は一人歩いていく
揺らめく真紅の芝生を掻き分け、"お仕置き"を遂行するべく…っ!





―――
――



血気盛んな漢達は…この世の終わりでも来たように絶望しきっていた


頼みの綱であったメカキャサリンは赤子の手を捻るよりも楽に屠られ
 戦車隊の武装は主君相手にまるで歯が立たない




 クッパ大王が若りし頃より仕えていた旧クッパ軍の壮年達、それこそ
門番三人衆が一戦交えた【ブーメランブロス】のような玄人も乗っていた









 しかし、割合で言うのであれば、新参の若者がこの部隊には多かった…









百戦錬磨の兵<つわもの>と入隊して間も無い野心溢れる若造共では
場数があまりにも違いすぎる、己の感情も律せない者が喚き宣うのも必然




一種のパニック状態、恐慌に乗り組み員の殆どが陥っていた



「だ、駄目だ!勝てるわけがねえぇ!!撤退だ!」

「落ち着け!狼狽えるんじゃあない!」



チュルゲ「逃げるんじゃねぇ!!死にてぇのか!!」


「どっちにしろ死ぬんだろうが!ならマシな方へ傾くのが道理だ!」
「じゃあアンタには倒せる算段があるってのかよ!」


220 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/06/25(日) 09:32:34.74 ID:oGjJWPqSO
>>218
キノじい「わしじゃよ」
221 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/06/25(日) 09:38:15.98 ID:oGjJWPqSO
テレサの熊本弁すき
222 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/27(火) 21:52:10.15 ID:5by3wFo50


鼠男は腸が煮え繰り返るような思いだった



 数刻前までの彼は頗る上機嫌であった、幼少の頃から"何かを壊す事"を
愛して止まなかった


 小さい頃は積み木を重ねたモノを蹴り飛ばし
公園の砂場に作られたトンネルやお城を踏みつぶす

 成長するにあたり、火薬の製法、ゲリラ屋の戦術、テロに必要な知恵
成人してからと言えばそれら犯罪に必須の学術へと情熱を打ち込んだ



 全ては数刻前に港の灯台目掛けて打ち上げた花火のように頬を綻ばせる
傍迷惑な芸術作品を生み出す為であった







そんな彼奴の芸術は重い腰をあげた壮年の皮膚は愚か、甲羅のトゲにすら
傷一つ付けられないのだ

更には車両内から湧き上がる臆病者どもの喚き声







糞野郎どころか蛆虫以下とさえ、吐き捨ててやりたい苛立ち…







 さっきだって一人、クッパ大王が砲弾の嵐に呑まれて無傷だったことに
逃げ腰になった奴にアッパーカットをお見舞いし―――
















             チュルゲ「…ぁ?」











煮え繰り返る怒りの熱はそのまま脳に伝っていた
火に掛け湯が沸騰するやかんや鍋のように脳も熱かった


が、その熱が急速に冷めていく、頭は驚くほどクリアに、冷静になる



 冷汗が首筋から垂れ始める、1つ、ある可能性が浮かびゾッとした
223 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/27(火) 22:15:24.05 ID:5by3wFo50


車両をゆっくりと見渡す、首を動かす


油の切れた機械人形のようにぎこちない動きで


車両内に居るのは旧クッパ軍の古参…と野心を持った若い連中






先述の通りだ


玄人も乗ってはいる…だが圧倒的に"古参と比べて新参の若者が多い"のだ








チュルゲ(…まさかっ!?)バッ!








ドン・チュルゲ


火薬のプロフェッショナル、裏稼業でその名を聴けば誰もが口を揃える
 過去に夢の王国の侵略者たちの誘いに乗り、キャサリンやヘイホー達と
英雄兄弟<マリオ・ブラザーズ>相手に戦う前はその胸の内にある狂気を以て
あらゆる地域を凄惨な阿鼻叫喚の地獄絵図へ変えて来た




 そんな彼が今回、数両の戦車を率いて、航路、空路を押さえるという
大役を"指揮官殿"から授かった

ご丁重に部隊の兵を自由にできる指揮権限までくれた上でだ




港湾、飛行場<エアポート>、同盟国からの軍隊の上陸、補給線を断つ役割を


【ブーメランブロス】のような実力相応の中堅や古参の漢達ではなく
そんじゃそこらの壊し屋風情に任せたのだ






 チュルゲは"指揮官殿"の演説を諳んじた
いともたやすく頭の悪いヤツは乗せられた

そして一部の勇気と蛮行の違いが分かる冷静な玄人たちは自棄になった




  チュルゲ「…ょッ」






  チュルゲ「ちっっっきしょおおおおぉぉぉぉ!!!!
                 そういうことかよぉぉぉっ!!」

224 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/27(火) 22:52:51.67 ID:5by3wFo50

奇しくも鼠男の憤りが劈くように上がると同時だった


"指揮官殿"を乗せた本隊が国道を進み首都を目視できる距離に到達した


「クッパ城とキノコ王国、その中間の位置に港湾はある」



「ワシ等が今日を作戦決行の日と決めたのはそこにある」

「ええ、マリオ達はカートで遠くへ、戻るのに時間が掛かるでしょうな」

「うむ、そして…」




"指揮官殿"が続く言葉を促す



「…クッパ様、ですね」


「遅かれ早かれ、ジュゲムTVの中継で事はあの御方のお耳に入る
  王国を…ピーチ城を可及可能な限り迅速に制圧
 記憶の戻らぬマリオはともかく弟、それに歴戦の戦士も多数居る」


「英雄兄弟がすぐには戻れぬ状況
  少しでも戦力の薄い状態で挑まねばならぬ
 協定を結んでおるクッパ様もこの事態には御出陣なさるじゃろう」






 嗄れた<しわがれた>声で、老兵は憂いを帯びた目を伏せたまま嘆いた






「…クッパ軍は…我らが栄光のクッパ軍団はあまりにも肥大し過ぎた」

「お前たちとワシ等は長い付き合いじゃな」


「「「はっ!」」」



「…ワシが前線に出たのは【ルドウィック】様らとの世界侵攻作戦の時
  それ以前は城で見張りをしとったわい」

「あのクッパ様が赤子の頃からのお付き合いじゃて」




「…皆が"忠義"をもっておった、じゃが…どうしたことか?
  【ゲラコビッツ】の時を覚えておるか?」


「【カジオー軍団】に洗脳された時とは訳が違う、自らの意志で
  あの御方を裏切る不義の者が出始めた…っ!!」


「…あの御方ですら御し切れぬほどに肥大しすぎた、だから…"選別"した
  僅かな足止めで構わなかった、クッパ様が無視なさるのなら
 そのまま港の摂取とすればよいだけじゃ」




「野心だけを持つ不忠不孝の若造共には生贄の羊となってもらったわい」



225 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/06/28(水) 15:36:20.81 ID:Jg7fJv2A0
クッパを赤ん坊の頃から支える老獪な魔導士が暗躍していたか...
226 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/06/28(水) 19:53:27.64 ID:Uyy6TGLoo
ほう
227 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/07/06(木) 23:25:50.72 ID:UAExNQhU0
栄光の光が強いほど闇も強いな...
228 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/11(火) 21:11:05.46 ID:9Wamlz1Y0

―――
――



 初めから自分達が"捨て石"だと分かり切っていて既に
諦めの色を顔に浮かべていた玄人の兵




漸く事態に気がつき始めた者

未だに戦車を降りて走って逃げればまだ助かる、と淡い幻想を抱く新人




指揮系統は混乱を極めており最早、誰も戦おうとしなかった



チュルゲ「クソッタレぇ!!」ガンッ!



チュルゲ「……っ」ギリッ









それは混乱の騒ぎに紛れ誰の耳にも聴こえはしなかった




チュルゲ「ゲリラ屋を…この俺を道具として利用しやがったってのか…
         この俺を…っ!爆破のプロフェッショナルを…!!」




チュルゲ「―――っけんじゃねぇ
      舐め腐りやがってッ!この落とし前つけてっやらぁ」







 この状況下なら誰も彼もが怯え、狼狽え
戦意喪失から立ち直れないだろう…この狂人を除いて



 爆弾狂は目先のクッパなど見ていなかった
見るべきは自分をコケにした老兵ただ1人ッッ!!










ゴソッ…



キャサリン(……不味いわね)


キャサリン(あと少しで縄抜けができそうだってのに、このまんまだと
        アイツ諸共クッパ大王にやられちゃうじゃないの!)
229 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/11(火) 22:16:16.77 ID:9Wamlz1Y0

 魔王の快進撃を余所にドラゴン族は拘束から解き放たれるべく
縄抜けを試みていた、平和という湯に浸かり骨抜きとなっていたのは事実



とはいえキャサリンも腐っても強者の部類に属する

悟られぬよう関節を外し、黙々とその作業に没頭していた




 幸いにもチュルゲ以下他の乗り組み員も皆が
迫りくる悪夢にばかり気を取られていて、一言も発さずに事に及んでいた
彼女(?)を訝しむ者はいなかった


 いや、それだけ余裕が無いのだ、気がついていたとして
それをどうこうするより目先のアレをどうにかしたい、と




「おい見ろ!」
「あっ!あいつら…先に逃げる気だ!」


 モニター画面に映る最前列に居た車両の履帯が動き出す
あまりにも遅すぎた戦線離脱を試みたのだ


我先にと逃げ出すそれに続くように他のモノたちもまた撤退を始める


「ど、どうする…」チラッ
「どうったって…」チラッ





チュルゲ「――−ブツブツ」フーッ…フーッ






気でも触れたか



此方の武装が全く以って歯が立たぬ状況に平然とした態度を
保てなくなったか、年若い男達は思った


サングラスの向こうはモニター画面を見てなどいない、息は荒く
 何かを延々と呟いていた






その考察は半分正しい



若手の兵隊ですら、チュルゲの異様さに気がついたのだ

歴戦の兵が気付かなぬ訳が無い、これまで以上の狂気を鼠男から感じる


敵前逃亡を試みる味方を撃ち殺せだの、今にも逃げようとする
乗り組み員を先程のように爆殺しようとすらしない




ただ、"自分を嵌めた老兵"への呪詛を完全に
          イっちまった眼で唱える異様さに身震いを覚えた

230 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/11(火) 23:15:23.71 ID:9Wamlz1Y0







 クッパ『 聴 こ え る か ! 降 伏 し ろ ! 』





「うわっ!?」キーン
「耳がぁっ…」キーン



 モニター画面に映る大怪物は天すら裂ける大音量で
声を発していた、スピーカーは軽い耳鳴りを起こすそれを拾い丁重に
戦場に居る全ての兵の鼓膜を直撃させる






 クッパ『今から車両を全て破壊する…死にたくなければ降りろ』







"死にたくなければ"





今、車両を出れば地獄のような"お仕置き"が主君から執行されるのは明白


だが、主君は部下の命までは取らない
お優しい懐をお持ちの御仁で在らせられるのだ…



 精々、二度と謀反を企てようなどと
思いたく無くなるくらいにお灸を据える程度で済ます



 年老いた今のクッパなら溶岩の真上に縛り上げ
じわじわと皮膚を焼き焦がす熱で炙る程度で許すだろう、お優しい事だ







―――
――







クッパは声をあげたあと、相手方の出方を見ていた


どう出るか…



その答えはすぐだった


231 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2017/07/12(水) 08:54:22.18 ID:5g8uRPVLO
なんとおやさしい

やはり耄碌されたか
232 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/07/12(水) 18:50:52.30 ID:7K7yFLLc0
クッパ大王もかつてはエッジガタガタの荒いドット絵だったのが、今じゃ甲羅の曲線も滑らかに表現されたポリゴンだ
誰だって歳をとれば角が取れて丸くなるのさ
それは耄碌とは違うんだよ
233 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/07/26(水) 23:23:23.78 ID:PDZzAv9ho
493 名前: ◆u5jU/0ZJi2[saga] 投稿日:2017/07/26(水) 00:52:06.08 ID:aEebzfjh0
>>492
ご安心を、以降は此方は使わない予定なので…

494 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[sage] 投稿日:2017/07/26(水) 00:54:49.63 ID:w8vUfrwto
>>493
なんでこっち使わないの?
Rとかわざわざ専ブラに入れてまで見る気ないからむしろこっちでやって欲しいんだけど
今現在までの投下見ても何もR18要素無いし

495 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[sage] 投稿日:2017/07/26(水) 01:19:06.89 ID:aEebzfjh0
…不用意にsagaて失礼、浮上する気はありませんでした


1つ勘違いをなされてらっしゃる…Rスレは別に100%R要素が必要とは誰も一言も言ってない



要するに一昔前、分離する前の速報と全く同じなんですね





だからマリオも何もかも持って行った、こっちで書きたいと1ミリも思いませんので
234 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/08/02(水) 00:59:27.33 ID:CEiesOB1O
>>233
うわぁ…これ>>1
235 :遅れてしまい申し訳ありませんが少しだけ再開します >>234 はい [saga]:2017/08/02(水) 05:15:51.28 ID:CO028NKz0

藪を突けば蛇が出る、蜂の巣を棒で叩けば兵隊がわんさか出る


 輝かしき旧クッパ軍の軍旗という反旗を靡かせていた戦車からは
ぞろぞろと兵士は降り立った、顔色はどれもこれも死人色で
これからを思えばこそ生きた心地など微塵も無かったであろう



「…おい、早く降りろよ」
「うるせぇよ…」




どの声も覇気がない、通夜を迎えたように
そして何かに憑かれ脚を前へ進ませる以外の術を忘れたように歩き出す










   クッパ「…キサマ等、全員降りたのか」




   クッパ「一度は自分達で"旗を掲げた身"でありながら…」




   クッパ「誰一人として今の自分が信ずるモノの為に戦わんのか!」









         …い、命だけは…
…ヒッ!                で、出来心だったんですっ
     …お、お助けを…







若い兵は縮こまり、その場に跪いた

老いた兵は、何も言わず打ち震えた









   クッパ「……」


   クッパ「もうよい…」


   クッパ「命まで取らずともワガハイ自ら鉄槌を下そうかと思った」





   クッパ「もう……怒鳴り散らす気力さえ消え失せた」

236 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/08/02(水) 05:40:55.14 ID:DPY+BE3so
来た!
237 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/08/02(水) 05:57:01.33 ID:CO028NKz0


その言葉を聴いて兵は何を想うたか?

主君を悲しませたことへの哀しみであろうか
武人としての器の小ささを思い知った事であろうか



ならば可愛げもある


生贄の羊として切り捨てられた男達は苦渋のあまり皺だらけの顔を歪めた






 だが、跪いてベソをかいていた者は事もあろうにそれを聞き
安堵の息を吐いたのだ


 疫病にでも犯された病人と見紛う程に悪かった顔色は
血行の良い赤みが出た顔へと変わり
絶望のどん底に居る様を表した口角は天にも昇る気持ちを表現した




拳を振るいあげ、石畳の上に叩き付ける





            [<つきでろボボーン>]





           バ コ ンッ ッ ッ!!





梃子の原理、石畳をぶち割りさらには地盤の層をも揺るがす一撃

震撼させた大地は劈くような悲鳴をあげた





その悲鳴は目先にあった一両の底面装甲を突き破る…!


 元より戦車というのは被弾率の高い前面、側面、そして後面の順に厚く
造られる代物なのだ


 取り分けて、戦車装甲の中で弾が最も当たらない底面と上面が薄い
それゆえに爆撃機と地雷が天敵とされている




コストパフォーマンスに特化させた木材と薄い金属板とは言え、それを
ぶち抜く地脈の槍にそれに乗っていた搭乗員は青ざめた


 最初の犠牲となった戦車は大岩の穂先に持ち上げられ、5m程
上がった所で"真っ二つ折れた"
 一枚のビスケットのど真ん中をフォークで突き刺して力を込め
ぱきっ!とへし折るように、それは真っ二つだ


 拉げた燃料タンク、スプリンクラーの散水を彷彿とさせる
ガソリンの飛び散り…電気系統の千切れた配線から飛び出るエレキテル


港町にまた一つ、人工物が燃える音が加わった
238 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/08/02(水) 06:33:05.96 ID:CO028NKz0

 両肩から先に生える2本の太鼓桴は次々と地盤を叩きあげ
破壊音が小気味の好い爽快な拍子を取っていく


ガラガラと音を立てて崩れる炭化した灯台の上部

燃え上がる港酒場の酒庫は酒樽に引火する度に景気の良い花火が上がる

宙ぶらりんになって、"耐え切れなくなった"戦車の木片と金属板の落下音




 ドン・チュルゲの優雅なクラシック音楽に勝るとも劣らない
 狂気的なお祭り音頭が朗らかに冴えわたる




設立記念公園に咲き乱れていたパンジーの花弁も愉快な民謡に堪らず
踊り出したくなったのでだろう




茎から先っぽがもう何も無い





風にひらひら舞い、火の粉と手を取り合って華麗に踊っている











夏祭りの会場に落ちて溶けたかき氷のような頭をした鉄屑の真上をひらり


祭りに来て迷子になった子供みたく泣きじゃくる兵の頭上をひらりひらり


軒並みの屋台のようになった戦車の残骸をひらりひらり










たった一両を残して全滅した戦車隊







さぁ、お祭り最後の締めは頭のイかれた花火職人の乗った御神輿だ!





クッパ大王の鼻先で燃えるパンジーの花弁<はなびら>がひらり…



               ―――ブンッッ!



…鼻先で踊った花弁は鬱陶しそうに払われた腕でかき消された
239 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/08/02(水) 06:58:21.17 ID:CO028NKz0
―――
――





- 溝鼠、いつだって俺は言われてきた


- 最っっ高の褒め言葉だぜ


- そんじゃそこらの在り来たりな綺麗事並べる野郎共より正々してらぁ




-ママに教わったでしょ?人は生きてるならイイコトしなきゃ駄目なのよ
   悪い事すると閻魔さまにベロを抜かれちゃうのよ?





-どいつもこいつも糞だ、道徳だぁ?

-悪い事はしちゃいけないんですぅ?






- 反吐が出るぜッッッ!! 鳥肌は立つわ、聴くだけで蕁麻疹が出やがる

   
- いつだって自分がしたいようにやって、したいように生きた





- 見てて虫唾の走る野郎はケツ穴に爆竹突っ込んでガタガタ言わせた

- 俺様特製の爆竹さ!最後は涙と鼻水と糞撒き散らしてザマァ見ろだ!





- イイコトしろだぁ?するなら綺麗なネェちゃんとイイコトしてぇな!







- 俺に指図する奴ぁ誰彼構わず爆殺した

- 利害が一致するなら多少は何も言わねぇでやった





-生まれてこの方、俺は一度だって舐められた事ぁねぇ


-裏稼業にその人ありと呼ばれた火薬のプロフェッショナル


- いつしかそう呼ばれるまでになった


- "その筋"で首領<ドン>とまで呼ばれるようになった



- そんな俺をこうも舐め腐りやがった…

240 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/08/02(水) 07:02:32.64 ID:CO028NKz0



























            チュルゲ「―――」ブツブツ ブツブツ




















   狂人は動かない




   1人では運用不可能な…もはや巨大な棺桶とかした車両の中で

   誰に聞かせるでもない呪詛を呟いていた











            チュルゲ「―――」ブツブツ ブツブツ








            チュルゲ「―――」ピタッ






            チュルゲ「…ふへ、ふへへ…ヘヘヘ」
241 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/08/02(水) 07:17:10.06 ID:CO028NKz0




チュルゲ「ああ、良いさ…やってやらぁ」ニタァ




チュルゲ「糞ジジイが……テメェの大好きな
            ロートル大王をやってやるよ」チュッ








チュルゲ「裏の業界で成り上がった男の意地だ…
          まさか虎の子のコイツを使うとはな」ジャコッ



チュルゲ「"コイツ"をキノコ王国の城に撃ち込んだら
               さぞスカッとしたろうによぉ」










サングラスの裏にある瞳は闇市界隈切っての火薬売りとして集めた資金で
購入した秘蔵の兵器を見つめていた






―――
――




戦車に搭載された砲、メカキャサリン、【マグナムキラー】

どれだけの火力を以てしても大魔王は止まらなかった


 あの戦車に詰め込んだ全ての弾薬を全て撃ったとしても
チュルゲに勝機など無い

それが降伏した兵たち、遠目で見てるノコノコとクリボーの見解だった



クリボー「…!ノコノコ見ろよ
      敵さんの大将がパッチ開けて顔出したぞ!」

クリボー「勝ち目ねぇから遂に白旗あげるんスかね…?」


ノコノコ「いや、よく見るんだ…何か様子がおかしい」



クリボー「…あん?なんだぁありゃ…なんか脇に抱えてんな」

ノコノコ「…筒状の物に見えますな…少し車体を前に進ませましょう」



ブロロロロ…!


242 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/08/02(水) 07:29:32.34 ID:CO028NKz0

フットペダルを踏み、排気ガスを出しながらカートは前へと動き出す





火薬のプロが脇に抱え込んだ筒状のソレ



バズーカ、…いやロケットランチャーか…何れにせよ
【キラー】の直撃でもビクともしない覇者に効く筈など無く

やけっぱちになった狂人の最期の悪足掻きかと誰しもが思った

















          ――――その時までは













彼奴がそれを構えた途端に戦場に居る皆が顔色を変えた



クッパ大王でさえも驚いた







クリボー「オイオイ…マジか、あれってマジモンかよオイ!?」

ノコノコ「なんてことだ…まさかあんなモノまで…確かにあれなら
      マグナムキラー砲どころの威力ではないっ!
     あのサイズなら車内で誰にも気づかれずに隠し持てる訳だッ」



闇市場でそれがどういった経緯で売られていたのか?

盗難か、横流しか…はたまた故障品を誰かが修理したのか、分からない






  クッパ「…そうか…!面白い、面白いぞっ!!」ニヤッ




大王はかつて煮え湯を飲まされたその兵器を見て…


        "[スーパースコープ]"を構えた男を笑ったッッッ!!
243 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/08/02(水) 07:42:56.90 ID:CO028NKz0
*********************************



           今回は此処まで!

      長らくお待たせ申し訳ございませんでした






           【解説】

『スーパースコープ』

SFCソフト【ヨッシーのロードハンティング】でマリオがヨッシーに跨り

敵を撃ち抜いてきたビーム兵器、燃料は乾電池である。



※実際に電池を入れてスーファミの2Pに取りつけた赤外線センサーを
 テレビの上に置いて遊ぶゲームソフトです。



 最近の認識で言うならスマブラのアイテムと言った方が分かりやすい
 連射式からボタン溜め押しで強力な一撃を放つ奴ですね


原作で全身鎧に身を包んだフルアーマー状態のクッパすら倒す驚異の兵器

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