かなふみ全然わからんがかなふみこんな感じだったらいいなと妄想したアイドル百合SS

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1 : ◆2DegdJBwqI [saga]:2017/07/02(日) 23:38:50.51 ID:JoaRaUi7o

・スレタイ紛らわしいけど、かなふみだけではなくデレマスも、アニメ見たくらいしか触れた経験がないので、
アニメでしかわかっていない

・なので、1.05〜1.75次創作くらいのアイドル百合SS

・プロットは完成しているが、プロット眺めてると先は長そうな気がするので、レスを肥やしにしながら鈍足更新予定

・地の文多量
2 : ◆2DegdJBwqI [saga]:2017/07/02(日) 23:42:04.85 ID:JoaRaUi7o

タイトル:『柔らかい土ふまず』



 雨音を、何か言葉で表現するならば。
 ざあ、ざあ。しと、しと。ぱらぱら。ぽたぽた。
 どれも、紙に踊る文字として見れば、雨音らしく、見えるけれど。
 声に出すと、どれも違う。

 ざあ、ざあ。しと、しと。ぱらぱら。ぽたぽた。
 雨の音ではない。
 現実との乖離。
 音と文字。
 言葉を成す二つの要素。

 私は文字が好き。本が好き。小説が好き。
 小説は、私と「世界」を近づけてくれる。
 私の「世界」を広げてくれる。
 私にとって、「世界」は、現実ではない。
 現実よりも、「世界」は大きい。
 それが、私の「世界」。
 私は、現実よりも、更に広大である「世界」を求めた。

 だけど今は――
3 : ◆2DegdJBwqI [saga]:2017/07/02(日) 23:44:34.85 ID:JoaRaUi7o

 雨音の記憶。
 音の記憶。
 音は、現実を私に近づける。
 彼女が、地に足をつける現実に。
 記憶の底で、開かれたビニール傘がくるりと回った。
 傘布を透かして、細く筋張った銀色の傘の骨に遮られながら、彼女の透き通った白い肌、容易く手折れそうなほど華奢な首と肩が覗いている。

 水色のノースリーブと、基調の白に模様の群青が織りなす水玉のプリーツスカート。
彼女が繰り返し地面を踏みつける足のリズムに合わせて、スカートのひざ元で襞がくしゃくしゃと動く。
その裏にある彼女の形のいい膝小僧を私は想像する。

 はじめてのことだった。
 現実が、あんなにも近しく感じられたのは。
 あんなにも、完璧に、全てが調和して見えたのは。
 得体のしれない感情がこみ上げた。
 それは、小説のなかでしか、私には見つけられないはずの感情だった。

 水音が繰り返し耳朶をうつ。
雨音ではない。水たまりから、飛沫が跳ねる音。ハイヒールで、彼女がアスファルトの地面を叩く音。
 彼女の硬い土踏まずが「世界」とぶつかる音。
 次第に雨音が意識のなかで薄れ、私は彼女の音でいっぱいになってゆく。
4 : ◆2DegdJBwqI [saga]:2017/07/02(日) 23:45:58.18 ID:JoaRaUi7o

「タイミングが悪いわね」
「え……?」

 特定の音に集中していたものだから、反応が遅れ、思わず間の抜けた聞き返しをしてしまった。
 彼女がこちらを一瞥する。
 赤面する。
 そんな私の動揺を気にかけることなく、彼女は自らのペースで話し続ける。
傘を透かして、どこか遠くの雲を見つめて。

「通り雨、このタイミングで降っちゃったら、撮影、長引いちゃうじゃない?」
「ああ……」

 私は頷いた。ぼんやりと。
 タイミングが悪いとは、全く思っていなかったが。
 雨のなか、水たまりと戯れ続ける彼女。
 それさえあれば、私の視覚を、私の鼓膜を、彼女が満たしてくれるのであれば、私の時間は、無聊をかこつことなく、無限に過ぎてゆきそうだと思われた。
5 : ◆2DegdJBwqI [saga]:2017/07/02(日) 23:47:50.04 ID:JoaRaUi7o

「私、こういうときの雨は、嫌いだわ」
「どうして……ですか?」
「だって、時間の無駄じゃない。この、手持無沙汰で待ってる時間」

 そう言って、彼女は片脚のつま先をブラブラ前に振る。つまらなそうに。
雨粒が、ハイヒールと露出した足先の肌の両方を濡らす。
 雨滴の冷たさが、私の足をも同時に濡らすという錯覚を覚える。

「無駄……なのでしょうか?」
「どうして? あなた、雨、好きなの?」
「別に……好きでは……ないですが……」
「好きじゃあないのね。ふーん。そうなんだ。じゃあ、あなたの好きなものって、何?」
「好きなもの……ですか?」
「ええ、そう。好きなもの」
6 : ◆2DegdJBwqI [saga]:2017/07/02(日) 23:49:06.59 ID:JoaRaUi7o

「本です」
「本?」
「小説です」
「小説」
「あの、好きな作家は――」
「ちょっと待って」
「はい」
「歌とか、ダンスとかは、どうなの?」
「歌とか……ダンスとか……」
「だって、アイドルになったんでしょ。なのに、好きなものを聞かれて、本が出てくるのよね。わかるわかる、お仕事だもんね。
でも私は、好きよ、歌も、ダンスも。好きなものを訊かれたら、まずは映画鑑賞って答えるけど。あなたは、どう? 歌とかダンスとか、好き?」
「歌とか……ダンスとか……」

 私は考える。
 そして、答えを出す。
7 : ◆2DegdJBwqI [saga]:2017/07/02(日) 23:50:36.88 ID:JoaRaUi7o

「歌とか、ダンスとかは……特に、好きじゃないです。
私は、文字が好き。本が好き。小説が好き。歌とかダンスとかは……よくわからない」

 彼女は、びっくりした顔をする。
 それから、満面の笑みを浮かべる。
 首だけをこちらに向けていた彼女は、身体ごと私を向いて、そのときはじめて、私の目をまっすぐ見つめる。
 そして、形のいい唇に笑いじわを寄せながら、近づいて来て、仮設テントの隅で雨を避けていた私に、いきなり顔を寄せ、テントの覆いの下で、傘を二人の頭上に向けて差しながら、ウキウキと耳元に囁いてくる。

「――あなた、面白いアイドルね」

 私の耳を、彼女の声が満たす。
8 : ◆2DegdJBwqI [saga]:2017/07/02(日) 23:52:27.89 ID:JoaRaUi7o



 私がアイドルになったのは、一人の男性プロデューサーがきっかけだった。
私はスカウトされた。そしてそれを受けた。

 なぜ、スカウトを受けたのか。
 一つは、本の趣味が彼と合っていたから。
 最初話しかけられたときは、ナンパだと誤解した。
 恥ずかしいから、誰にも言ったことはないし、内心で認めたくないとも思うけれど、私には、一般的な美醜の尺度に照らすと自分の顔が整っている方だという自覚が昔からあって、だから男性からナンパされるという状況には、一瞬驚きはしたが、なんとなくの納得があった。
 彼の第一声はこうだった。

「ねえ、何読んでるの」

 これではナンパだと誤解されても、仕方がないのではないだろうか。
 私は、はやく本の続きを読みたかったが、元来の気性ゆえに彼を無下にあしらうことがどうしてもできず、やむなく会話のキャッチボールにしばらく甘んじる決心をした。
 店内には――私はカフェテラスで、買ったばかりの本を無心に読み進めていた――他にもたくさん人がいたから、気が緩んでいたのはあった。
 一人だったら、きっと、怖くなって、さっさと逃げ出していただろう。見知らぬ大人の男性から、突然馴れ馴れしく話しかけられるだなんて。
9 : ◆2DegdJBwqI [saga]:2017/07/02(日) 23:54:14.80 ID:JoaRaUi7o

 とはいえ、彼と実際に話してみると――意外と楽しかった。
 本の趣味が合う。好きな本について、どこが面白いのか、意見が合う。
 普段、他人と本について話をする機会なんてほぼなかった私にとっては、貴重な体験だった。
 もっと、この人とお話をしてみたいかも、とわずかではあるが私が感じ始めたところで、彼は本題である「アイドルにならないか」という問いを切り出してきた。
 状況が、一気にうさんくさくなってしまった。
 しかし、完全に心の距離を置いてしまったこちらの様子に慌てることなく、彼はスマホを弄り始め、その時間たまたま近くにいたアイドル数人をその場へ呼び出した。
 テレビで、見たことがある少女たちだった。
 私は、改めて、アイドルにならないか、と訊ねられた。契約書など、数々のそれらしい物証が鞄から取り出され、私に示された。
 私は考えた。
 アイドルになると、本を読む時間が目減りしてしまう、と真っ先に思った。
 しかし――
 悩む私に、

「本が好きなのはわかるよ。本は面白い。自分の世界を広げてくれる。
でも、君には才能がある。アイドルの才能が。新しい世界を、見てみたくはないかい?」

 と彼は前進を促す。
10 : ◆2DegdJBwqI [saga]:2017/07/02(日) 23:54:55.75 ID:JoaRaUi7o

 世界。
 その言葉に、強く惹かれた。
 私を誘うのに、彼がその言葉を使ったという事実に。
その偶然の巡り合わせに。

 「世界」。

 私が「世界」という言葉に込めてきたもの。

 私は――

 私は、頷いた。ぼんやりと。
 そうしてその日、私はアイドルになった。
11 : ◆2DegdJBwqI [saga]:2017/07/02(日) 23:56:39.05 ID:JoaRaUi7o



「なんだか、らしいよね。アイドルになるまでの経緯がさ」

 彼女は私に腕枕をしながら言った。
お前のことは、なんでもわかっている。知っている。そんな言い方だった。
悪戯っ気が首をもたげて、私はごろんと寝返りをうち、鼻を彼女の腋にくっつけて、スンスンと鳴らすと、

「ちょっとやめてよ」

 グイと頭を後ろに引っ張られて、額に軽くかかった前髪を親指で押し上げられながら、ペチンとおでこを残った指の腹ではたかれた。
二人で顔を見合わせて、笑った。二人とも裸だ。さきほどシャワーを浴びたあとだったからだろう。彼女からはなんのにおいもしなかった。

 ベッドの上だった。ホテルのダブルベッド。
きちんと皺を整えられ、まっすぐに伸ばされたパリッとしたシーツが、脱力し寝そべる私と彼女の身体をスプリングの力で心地よく支える。

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