七尾百合子は空想から恋する

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1 : ◆TDuorh6/aM [saga]:2017/11/20(月) 20:08:42.98 ID:KwRwNAaZO

これはミリマスssです
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/11/20(月) 20:09:22.23 ID:KwRwNAaZO



「百合子……俺のものになれ」

「そ、そんな。いきなり過ぎて、私……心の準備が……っ!」

「そんなに顔を赤くして……可愛いな、百合子」

「ひゃっ、か、かわいい……えへへ……か、可愛いですか……」

「……おーい百合子ー、帰ってこーい。そんなの台本にないぞー」

 ある晴れた秋の昼下がり。
 俺の家で(何故か居る)百合子の演技練習に付き合っていた。

 オフだというのに「より一層、演技力を鍛えたいんです!」と言っていたから感涙に咽び泣くほどでは無いものの感動したはいいが、その台本は百合子の自作恋愛小説的なもので。
 なんだか台本の名前が百合子と俺の名前で設定されており。
 歯の浮くような小っ恥ずかしい台詞マシマシな台本を全力で演技させられ。
 尚且つ(ここで壁ドン、ここで顎クイ、しっかり相手の目を見つめて!)等動作の指示までされている。

 まだ全部を読みきった訳ではないが、些か少女漫画じみて甘ったる過ぎないだろうか。
 ついでに屋内だから大丈夫だが、外でこれと同じ事をしたら即通報ものだろう。

 しかも……

「ぷ、プロデューサーさん!きちっと最後までしっかりお願いします!」

「台本にない事言い出したの百合子だぞ……」

 俺以上に百合子が照れまくっていた。
 何故だ、自分で書いたのではないのか。
 俺だってかなり恥ずかしくて若干自棄になっていると言うのに。
 壁ドンなんて生まれて初めてやったぞ。
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/11/20(月) 20:10:13.88 ID:KwRwNAaZO



「あ、アドリブ力も大事ですから!」

 そういうものなのだろうか。

「もう一回、もう一回最初からお願いできませんか?!」

「え、また俺誰かからの告白を断ったていで走ってこなきゃいけないのか?」

「はいっ!リアリティが大切ですので、少し息を切らして下さい!」

 注文が物凄く多い。
 注文の多い料理店よりも注文量が多い。
 それでいて百合子が照れて演技が止まる度最初からやり直させられるので、俺の息が切れ始めていた。
 何故俺は過ごしやすい晴れた秋に自宅で腿上げなんてやっているんだろう。

 とは言え。
 照れてる百合子がとても可愛いのは事実だし。
 まぁ役得と考えて楽しもう、なんて。
 そんな自分がいる事も否定できなかった。

「……ふぅ……いくぞ、百合子」

「はい、準備万端です!」

 他に生徒のいない図書室で一人、集中出来ず本を捲る百合子の元へと走って向かい。
 膝に両手をのせて息を整えるところから始まる。

 まず最初に、百合子の台詞からだ。
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/11/20(月) 20:11:35.68 ID:KwRwNAaZO


「……どうして、こんな場所に来たんですか?」

「ふー……お前が図書室に居るって……クラスの奴に聞いたから……」

「……あの子の所には行かなくていいんですか?ラブレター、渡されたんですよね?」

 今時の子はラブレターなんて渡すのだろうか。
 ラインじゃ味気ないとは言え、なんとなくラブレターと言うワード自体がこそばゆい。
 ついでに年齢的に俺が生徒は無理があるよな、なんて。

「断ってきたよ」

「……っ?!どうして、ですか……?」

 ドンッ、と。

 台本の指示に従って俺は百合子に壁ドン(正確には本棚ドン)をした。
 今日だけで俺は一体何度この壁に掌を叩きつけただろう。
 
「……俺は、お前のことが好きだからだ」

 きちんと指示通り目を見つめて呟く。
 正直ここが一番恥ずかしい。
 何度言っても絶対に慣れる気がしない。
 呟かれた百合子も、顔を真っ赤に染めて耐えていた。

 ここでしばらくの沈黙が入るらしい。
 台本の指示とは言え、その沈黙が物凄く痛い。
 そして、百合子が目をそらす。
 そこを俺がすかさず顎クイして、耳元で告げた。

「……百合子……俺のものになれ」

「そ、そんな。いきなり過ぎて、私……心の準備が……っ!」

「そんなに顔を赤くして……可愛いな、百合子」

 演技とは言え、恥ずかしがる百合子がとても可愛い。
 あと百合子の顎に当てた手をいつ離せばいいのか分からない。

「……校舎内は、走っちゃいけないんですよ?」

「ごめん……でも、少しでも早く百合子の元に向かいたかったから」

「本当に……しょうがない人ですね……」

 涙目で微笑む百合子。
 そんな演技力に内心で感動しつつ、俺は次の台詞を口にする。
 ついでにシチュエーションに合ったアドリブを挟む。
 少しくらいならバチは当たらないだろう。
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/11/20(月) 20:12:14.87 ID:KwRwNAaZO


 ぎゅっ、と。
 力強く百合子を抱きしめて。

「……百合子。俺と付き合ってくれ……!」

「……はい……っ!」

 悪くない演技が出来たのではないだろうか。
 なんとなく抱きしめてみたが、良い方向へ転んでくれた。
 抱き締めたまま離してくれない百合子から一度片手を離し、俺は近くに置いた台本を捲った。
 さて、次のシーンは……

「……百合子」

「はい……私、もう準備は出来てますから……」

「いやあの、そうじゃなくて」

「ふふっ、照れてるんですか?ここまで私をときめかせておいて」

 違う、そうではない。
 まだ読んでいなかった台本のページを捲れば。
 その一行目に『キスをする』と書いてあった。
 しかも(一度目は唇と唇が触れるだけの軽いキス)と注釈が入っている。

「……え、あの百合子さん」

「もうっ!せっかくここまでミスなく来れたんですから、早く続きをお願いします!」

「おっ、おう」

 百合子に急かされてしまった。
 いいのだろうか?
 演技の練習とはいえ、百合子にキスをしてしまっていいのだろうか。
 ……いや、そもそも。

 百合子とのキスを、演技の練習ということにしてしまっていいのだろうか。
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