Pの姉妹はトレーナー!【アイドルマスターシンデレラガールズ】

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45 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/06(水) 12:03:09.02 ID:NY0UoauB0
卯月「詠さんと同じ国立に行きたいので頑張ります!」

詠「そうですか、じゃあ俺も精一杯教えます」

俺が教えると卯月ちゃんは一生懸命聞いてくれる。
必然的に距離が近づいて少しドキドキしてしまう。

凛「……」

詠「あれ、凛ちゃんは特に問題なさそうですね?」

凛「合ってる?」

詠「よくできてますよ」

俺に教えてもらう必要も無いくらいに、次の試験範囲をしっかり押さえてあった。
どうして教えてなんて言ってきたんだろう?

凛「そっか。ここは?」

凛ちゃんは尋ねてくるたびにずいっと距離が縮まる。
端正な顔立ちが目の前にあって、俺は緊張をなんとか隠す。さっきの疑問は露と消えた。

慶「高校の問題ってこんなに難しかったっけ?」

詠「……何で慶ちゃんがここにいるんだ?」

慶「お兄ちゃんがいたいけな美少女に手を出さないか、監視するためだよ」
46 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/06(水) 12:03:40.43 ID:NY0UoauB0
詠「出さないっての」

慶「わからないじゃん。ね、卯月ちゃん、凛ちゃん?」

卯月「あはは……」

凛「はぁ……」

二人とも困ったように返事をする。

詠「こら、慶ちゃん。あんま二人の勉強の邪魔しちゃダメだよ」

慶「はーい」

凛「手出されても別にいいけど……」

卯月「詠さんならいいですけど……」

二人とも何かぼそっと呟いたけど聞こえなかったので「何か言いました?」と聞いてみた。
しかし、二人とも「何も言ってません」と否定するだけだった。

詠「そろそろ帰ろうか」

時間も遅くなってきたので社用の車を使って二人を送る。慶ちゃんも、一人で返すのは危ないので一緒に乗せる。
助手席に慶ちゃん、後部座席に凛ちゃんと卯月ちゃんが乗る。

幸いというべきか二人の家は会社からあまり離れていない。
47 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/06(水) 12:04:47.35 ID:NY0UoauB0
詠「凛ちゃんのお家は花屋さんでしたよね?」

凛「そうだよ。その通りをずっと真っ直ぐ」

五分ほど走ると花屋の前に着いた。まあ何回も通っているので分かるのだが。
凛ちゃんのお母さんが家の前で待機している。
おそらく凛ちゃんが連絡しておいたのだろう。

凛「ありがとう、詠さん」

詠「いえいえ、私にできることなら何でも言ってください」

俺は先に車を降りて後部座席を開ける。
凛ちゃんと一緒に凛ちゃんのお母さんの元まで歩き、俺は挨拶する。

詠「こんばんは。346プロダクションの青木詠と申します。遅い時間まで娘さんを拘束してしまって申し訳ありません」

深々とお辞儀した。

凛ちゃんはその様子を見てポカンとしていたと思う。

凛母「いえ、こちらこそ凛がいつもお世話になってます」

凛ちゃんの面倒を見てるのは主にお兄さんなのだけど。
凛ちゃんは家では俺の話ばかりしてくれるらしいので、凛ちゃんのお母さんも俺のことを知っていたようだ。

凛「ちょっとお母さん、余計なこと言わなくていいから」

凛ちゃんはそう言いながら顔を赤くする。
48 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/06(水) 12:05:44.99 ID:NY0UoauB0
凛「詠さん」

いったん落ち着いてから俺の名前を呼び、こちらを向く。

詠「何でしょう?」

凛「ちょっとしゃがんで」

詠「? こうですか?」

よくわからないけど、言われたままに俺は凛ちゃんの前にしゃがみ込んだ。
凛ちゃんはきょとんとしてすぐ吹き出した。
……かと思えば俺と同じようにしゃがみ込む。

凛「詠さん、しゃがみすぎ」

次の瞬間、彼女の唇が俺の頬に触れる。

凛「今日はありがとう。そのお礼だよ」

俺はきょとんとしてたと思う。
しばらくしゃがんだまま動くことができなかった。何というか……意外だった。

凛ちゃんのお母さんは「大胆ねぇ」とか言ってた。

慶「お兄ちゃん」

慶ちゃんに声を掛けられてハッとした。

詠「お、おう! 次行くか! それじゃあ……」
49 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/06(水) 12:06:48.64 ID:NY0UoauB0
凛ちゃんはさっきより顔を赤くして手を振ってくれた。
隣のお母さんはニヤニヤしていた。

凛「詠さん、そういうことだから!」

詠「わかりました。ありがとうございます。少し時間をください」

これで気づかないほど俺も馬鹿ではない。
告白されたんだ。どうしたものか……。

恋愛感情は抱いてない。でも今彼女を女性として意識し始めてしまったのも事実だ。
何より可愛いし美人だし魅力的な少女だ。
そんな子が俺を好きって言って……ないけど、行動で示してくれた。
確かに大胆だったけど。

悶々としながら運転席に戻る。
何だか空気が重い。

詠「どうしたの?」

慶「べっつにー!」

卯月「……」

車を出してからは質問攻めだった。

慶「どうするの? 付き合うの? アイドルだよ? 恋愛禁止じゃないの?」

詠「そんないっぺんに聞くなよ。付き合うことは……今はできないけど、彼女とはちゃんと向き合って考えるよ。正直、さっきの出来事で女性として意識してる」

慶「本当に手出したら犯罪だからね?」
50 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/06(水) 12:07:24.83 ID:NY0UoauB0
どことなく慶ちゃんの口調が強い。責められてる気分だ。
どうせすぐ職場に広まるんだろうなと関係無いことも考えたりした。

詠「わかってる。だからちゃんと向き合うってば」

そういえば俺は誰かを好きになった事なんて一度も無いような気がする。

詠「好きって、どういうことなんだろうな……」

慶「そう言えばお兄ちゃんの恋愛話聞いたことなかったかも」

詠「人を好きになったことない……のかな?」

慶「でも私のこと好きでしょ?」

詠「それは……好きだけど」

卯月「私はどうですか?」

不意に卯月ちゃんも後ろから話しかけてくる。

詠「卯月ちゃんのことも好きだと思います」

慶「誰でもいいのか!」

なんて冗談っぽく言って笑う慶ちゃん。
51 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/06(水) 12:07:59.52 ID:NY0UoauB0
詠「いや、でもみんなそういう好きじゃない」

なんというか……好きだけど好きじゃない。

詠「恋愛的な意味で好きってことじゃないと思う」

正直に答える。

詠「でも恋愛的な意味での好きってのもよく分からないんだけどな」

明るく返したつもりだったが、卯月ちゃんは少し真面目なトーンで言葉を紡ぐ。

卯月「恋って、いつもその人のことが頭から離れなくて、触れたいと思ったり、求められたいと思ったり、その人のこともっと知りたいと思ったり、その人と子供を……」

そこで不自然に途切れたのでバックミラーを見てみると、卯月ちゃんはうつむきがちになり、顔をほのかに赤らめている様子だった。

詠「そうなんですか。僕にはまだよくわからないですね」

慶「お兄ちゃんの年齢だったらそろそろ焦った方がいいよー。相手がいないって問題でしょ」

詠「結婚とか恋愛とか考えたこと無かったな」

多分両親が死んだときから全く考えてなかっただろう。
青木家に引き取られてそれなりに幸せな生活を送って、どうやって恩返ししていこうかとか考えて、そしたら自分の幸せはすっぽり抜けて……。
そうじゃなくて、今の両親と姉妹の幸せが俺の幸せなんだろう。
52 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/06(水) 12:08:31.36 ID:NY0UoauB0
だから自分のことは二の次だった。

詠「ま、向き合ってみようかな?」

慶「凛ちゃんと付き合うの?」

詠「それは……どうしよう」

好きか嫌いかで言えば好きだ。
勇気を出して告白してくれたことも無下にはできない。
けれども、俺の言う『好き』は『愛してる』とは違う感情だと思う。
それで付き合うのは凛ちゃんに対して失礼ではないか?

悶々と考え事をしていると卯月ちゃんの家の前に着いた。
葉月さんがお出迎えのため家の前に立っていた。

先ほどと同様に俺も卯月ちゃんと車を降りて挨拶する。

詠「葉月さん、妹さんを遅い時間まで拘束してすみません」

葉月「ううん、気にしないでください。卯月ちゃんから連絡きてたので」

続けて「卯月がお世話になりました」とお辞儀までしてきて何だか恐縮した。

卯月「詠さん、今日はありがとうございました!」

葉月「明日もお願いしますね」

詠「あ、はい」

明日も勉強会をすることが決まった瞬間だった。
53 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/06(水) 12:09:10.87 ID:NY0UoauB0
詠「じゃあ私はこれで……」

と踵を返そうとすると、袖をきゅっとつかまれる。
卯月ちゃんがうつむいたまま俺の袖を握っている。

卯月「詠さん!」

俺の名前を呼びながら、ぱっと顔を上げる。

卯月「私も好きですっ!!」

さっきの会話のやり取りから勘違いを避けるためか「……れ、恋愛的な意味で」と付け足した。

詠「え……」

俺は意外なことが続けて起こったことに対して、完全に固まってしまった。

卯月「す、すみません……詠さんが困っちゃうって思ったんですけど……」

少し涙ぐむ卯月ちゃん。
彼女も困惑してるように見えて、俺の戸惑いが薄れていく。

卯月「凛ちゃんの告白見たら私も勇気出さなきゃって思って……。それに、詠さんが誰かと付き合うのを黙って見ていられませんでした」

きっと彼女も悩んで選択した答えなんだろう。
凛ちゃんに対する罪悪感や、先を越されたという焦りが感じ取れる。
例え早まったとしても、それでも卯月ちゃんの想いに嘘偽りが無いことは伝わった。
54 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/06(水) 12:09:41.62 ID:NY0UoauB0
卯月「だから、わがままですけど、自分勝手で最低な話ですけど! 詠さん、私と付き合ってほしいです! ……って言ってはダメですか?」

卯月ちゃんは泣いていた。
俺も感情が昂って、思わず泣きそうになってしまった。

言うだけならいいじゃないか。
よくよく考えたらそれこそ酷い話だと思う。
後で分かった事なのだが、恋愛ごとで相手に希望を残しておくのはとても残酷なことなのだ。

けれども俺は「考えさせて」なんて命乞いをするみたいに醜い延命行為のようなことを言ってしまった。
決断できない。優柔不断。傍から見れば二人の女性をキープしてるようなクズ野郎にも見えるかもしれない。

嬉しいはずが苦しくなってきた。今すぐこの世から逃げ出したいとさえ思った。

詠「必ず、答え出しますから」

俺にはそう言うのが精一杯だった。

卯月ちゃんは自身をわがままだとか最低だとか言っていたけど、俺は本当に良い子だと思う。
55 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/06(水) 12:10:09.51 ID:NY0UoauB0
卯月「私、詠さんがどんな答えを出しても大丈夫ですから」

でなきゃ、そんな言葉と笑顔は出てこない。

卯月ちゃんの隣で葉月さんは彼女の頭を撫でながら、俺にも優しい笑顔を向けていた。
どんな答えでも大丈夫だから気にしないでと言ってるようだ。
俺にはその優しさが辛かった。

挨拶をしてすごすごと車に戻る。

慶「お兄ちゃん……」

か細い声を出す慶ちゃんを横目で見る。
心配そうに、あるいは呆れたようにこちらを見つめていた。

詠「なあ、俺ってモテるの?」

慶「妹にそれ聞く?」

詠「いや冗談だよ。ごめん」

慶「謝ることないけど……」

数秒の沈黙。
卯月ちゃんたちは自宅へ戻ったけど、俺は車を発進できないでいた。

慶「とりあえず帰ろうよ」

詠「ああ……」

慶ちゃんに促されてようやく帰路に着く。
車のキーを会社に返して、徒歩で家に向かう。
56 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/06(水) 12:14:21.58 ID:NY0UoauB0
中断します。
R要素はそのうち出ます。
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/12/06(水) 14:08:22.96 ID:5eSXr+/R0
おつ
R要素期待
58 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/12/06(水) 16:15:19.55 ID:2X2zhBUnO
ハーレム期待
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/12/06(水) 18:30:39.81 ID:dHu7+5rdo
おつ
某同人の某女系家族みたいな感じにならなければいいのだけれど
60 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/12/06(水) 19:43:59.92 ID:2skxTVQoO
慶ちゃんはブラコンかわいい
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/12/06(水) 22:34:29.98 ID:IcMo+sFzO
実際ルキトレちゃんが一番かわいいしエロいよね
62 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/07(木) 13:36:43.49 ID:xyRsIsvV0
慶「お兄ちゃんさ」

不意に口を開く慶ちゃんに相槌を打つ。

慶「自分で気づいてなかったと思うけどモテるよ? 紹介してって言われたこと何回かあるし、麗ちゃんたちも言われてたんじゃないかな?」

詠「まじか……いや、一回くらい告白されたことはあるけどさ……」

慶「振ったんだよね、その時」

詠「そうだったな。付き合うってことがよくわかんなくて結局無かったことにした気がする」

慶「あはは、最低だ!」

けらけら笑いながら「女の子が可哀想だー」と続けた。

慶「ま、お兄ちゃんがどんな答えを出しても私はいいんだけど……」

そこでいったん言葉を区切っているように思えた俺は、歩きながら横にいる慶ちゃんの顔を見た。
うつむきがちで表情は読み取れないが、少しもの悲しそうな雰囲気が伝わってくる。

慶「……実は私も好きなんだよ」

意を決したようにつぶやいた。声は震えていた。
俺は黙っていた。なんとなく、そう言われるかもしれないと察していたのだと思う。
63 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/07(木) 13:37:51.20 ID:xyRsIsvV0
慶「恋愛的な意味で、だよ?」

こちらに顔を向ける。身長差は大きく、慶ちゃんは俺を見上げる。
無理に笑顔をつくっているようだ。

詠「でも俺たち……」

兄妹だからと言いそうになったが、やめた。
そういうことを言い訳にしたくない。彼女は本気なのだから。
そうやって逃げるなんてずるい。ださい。かっこ悪い。

慶「義理じゃん」

何を言おうとしたのか分かったようで、慶ちゃんはそう言った。

慶「小さい頃から優しくしてくれるお兄ちゃんが好き」

慶ちゃんの話が続く。
小学生の頃、慶ちゃんの手を引いて遊びに連れて行ったこと。
俺が中学に上がって勉強を見てくれたこと。
高校の制服を可愛いって言ってくれたこと。
大学に進学するのを勧めてくれたこと。

慶「いつも私たちのために頑張ってくれてたこと、知ってるよ」

詠「俺はそんなつもりじゃ……」

慶「好きなの。愛してるの」

俺はどうしてこうも優柔不断なのだろうか。
諦めさせるには振ればいいだけの話だ。それができない。
傷付けるのが嫌なんだ。
64 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/07(木) 13:38:52.30 ID:xyRsIsvV0
けれども引き延ばせば引き延ばすほど、彼女を傷付けてしまうだろう。
分かっていても言葉にならない。

詠「……今は……付き合えない」

慶「今は? いつならいいの?」

詠「ちょっと待って、急な話で頭が追い付かない」

本日で三人目。
慶ちゃんは本気だ。からかいではない。

慶「そうだよね、ごめん。ゆっくり決めて。返事待ってるからね」

詠「ああ……」

それからは無言。気まずくて息が詰まりそうだった。

詠「ただいま」

慶「ただいまー」

リビングに行くと、三人の姉ちゃんが「おかえり」と言ってくれた。

麗「……どうした?」

いち早く様子がおかしいのを察知した麗姉ちゃん。鋭い。
65 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/07(木) 13:40:12.19 ID:xyRsIsvV0
詠「や、それが……」

ちらっと慶ちゃんの方を見る。
慶ちゃんもこちらを見ていて、緊張したような面持ちだ。
一つ頷いて慶ちゃんは姉ちゃんたちの方に向き直る。

慶「私、今日お兄ちゃんが好きって言った」

空気が固まったみたいだ。
けれども全員ポカンとはしていない。黙って聞く姿勢だ。

慶「男の人として見てるって言ったの……それだけ」

麗「そうか……。それで詠は?」

詠「考えさせてくれって……」

麗「慶はそれでいいのか?」

慶「うん! お兄ちゃんがちゃんと返事くれるならいいよって」

そう言って慶ちゃんは俺に抱き付いてくる。

詠「わっ! こ、こら!」

慶「本当にどんな答えでもいいからね?」

ぎゅっと抱き付いたまま、こちらを見上げる慶ちゃんはとても愛らしく、さらにあんなことがあった後だと、意識しすぎて心臓がちぎれそうになった。

慶「お兄ちゃん、すっごい心臓ドキドキ鳴ってるね」
66 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/07(木) 13:41:12.41 ID:xyRsIsvV0
詠「やめろって……。慶ちゃんも真っ赤じゃん」

慶「えへへ……」

照れくさそうに笑うのが可愛い。
頭に血が流れ込んでくるような感覚がした。

聖「ちょっと待った!」

俺が慶ちゃんの様変わりした対応に焦っていると、聖姉ちゃんがずかずかとやってきた。

聖「それは許さない」

まあ普通に考えて義理と言えど兄妹が恋愛関係になるのは嫌だろう。まだ恋人となったわけではないが。
それに凛ちゃんや卯月ちゃんの件も無視できるはずがない。

詠「そりゃそうだよな」

けれどもこれで慶ちゃんは諦めてくれるのではないか。

聖「お前は私と結婚してもらう!」

詠「はぁ!? 何言ってんの!?」

聖「昔約束しただろ? 大きくなったら結婚する! って」

慶「聖ちゃん、小さい頃の約束は時効だよ。それに私もそういう約束したことあるし」

明「待って! それなら私も詠と結婚!」
67 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/07(木) 13:41:57.88 ID:xyRsIsvV0
次から次へと何が何やら……。

明「私も詠のこと大好きだし!」

聖「いや、詠は私のものだ!」

詠「ちょちょちょ、ちょっと待って! 落ち着いて!」

麗「……ならば間を取って私が」

あれ、麗姉ちゃんってそんなこと言うキャラだっけ?

わちゃわちゃしたけど何とか落ち着いて……少しだけ話し合いをした。

麗「つまり実は全員、詠に想いを寄せていたということだな」

聖「いつもアプローチしてただろ!」

明「聖ちゃん、詠がにぶちんなの知ってるでしょ?」

慶「そんなんじゃ動じないよね」

詠「いや近付かれるとドキドキするんだけど……」

聖姉ちゃん、誰に対してもそんな感じだと思ってた。

……要するにみんな俺が好きってことだな。なんだよそれ。
俺はもうどうやってリアクションすればいいのか分からず、ぼけっとしていた。
68 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/07(木) 13:42:37.67 ID:xyRsIsvV0
麗「詠、聞いてるか?」

詠「ああ、なんとか……」

麗「ならいいんだが」

詠「俺、どうすりゃいいの?」

麗「好きにすればいい」

そうは言っても、その選択を取ることは俺にはできない。
白黒決着つけたいのだ。一つだってうやむやにしたくない。

詠「今、答えを出すなんて無理だ。卯月ちゃんや凛ちゃんのこともあるし」

聖「それもそうか、この変態」

明「女ったらし」

慶「最低」

詠「麗姉ちゃん、結婚しよう」

「「「わー! ウソウソ!」」」と麗姉ちゃん以外の三姉妹が必死になる。

麗「あのな、そんな決め方されたら私も困るだろ」

ごもっともです。
呆れる麗姉ちゃんは真剣な顔つきで俺を再び見る。
69 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/07(木) 13:44:25.20 ID:xyRsIsvV0
麗「時間をかけてもいいからじっくり決めるんだぞ? ましてや渋谷と島村は現役女子高生アイドルなんだからな?」

詠「わかってる。彼女たちのどちらかに気が向いても引退まで待つよ」

麗「お前が好んで距離を縮めるのはいいんだが、問題は起こさないように頼む」

詠「うん……」

聖「詠、私なら問題にならないぞ」

明「私もならないよ」

慶「お兄ちゃん! 私もだよ!」

詠「そうか。なら卯月ちゃんや凛ちゃんは先に婚約しないといけないな……」

婚約をあらかじめ済ませてしまえば電撃結婚にならずに済むという戦略。
世間的には電撃婚と変わらないが。

聖「無視するな!」

ギャーギャーわめく三人を放っておいていると麗姉ちゃんは遠い目をしていることに気が付いた。

麗「もう結婚のこと考えてるのか……」

これは婚期を逃しそうで焦っている女の目だ。
自分も早く結婚するべきだったと、後悔してもしきれないような念を感じる。
70 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/07(木) 13:47:17.44 ID:xyRsIsvV0
詠「そうだよ。選んだ人と結婚しないとみんなに失礼な気がして……」

聖「当たり前だ。私は許さないからな」

慶「私はお兄ちゃんが中古でもいいよ?」

明「私も別にそうやって経験を積むのは悪くないと思うけど……」

聖「ならお前らが経験値稼ぎの相手になってやれ」

慶「じゃあ始めは私ね!」

聖「それはダメだ」

明「聖ちゃん、わがまますぎない?」

詠「くだらねー」

麗「くだらん」

よく麗姉ちゃんとは意見が合う。
一つ溜め息をついて、首を横にふるふると振るう。

というか中古とか経験値稼ぎってなんかムカつくなぁ。
まあ確かにそういう経験はあるんだけど。

詠「ごめん、すぐに答えだせない。今日は寝るね。おやすみ」

わいわいしていた姉妹たちも「おやすみ」と返事した。
71 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/07(木) 13:48:19.57 ID:xyRsIsvV0
どうせ翌日も同じようなルーティーンに違いない。
だから深くは考えずに……と思ってもそういうわけにいかない。
結局1時間は布団の中で悶々と考えこんでいた。

詠「選り取り見取りか……」

そんなこと口にする俺は最低だな。心底嫌いだ。自分のことが。

詠「そんなやつが好きな人と付き合う資格なんてあるのか?」

好きな相手が嫌いな相手と付き合うって考えたら吐き気がする。
もういっそ全員振ってしまおうか。

それは失礼なのか?

待たせて期待させ続けるのも失礼に違いない。
でも咄嗟に選べと言われたら……選べない。

詠「やばいな」

自分のクズっぷりに呆れながらも瞼は重くなり、ようやく睡眠に就けるという感覚を得た。

次に目を覚ましたのはやはり明姉ちゃんに起こされた時だ。
もはや日課の早朝ランニング。

詠「……おはよう」

普段より寝れなかったので少し眠たい。
布団を引っぺがされて落ち着かない。
72 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/07(木) 13:49:09.72 ID:xyRsIsvV0
明「……」

明姉ちゃんからの返事は無い。そのことを不思議に思ったが、彼女の顔は明らかに戸惑いを呈している。

詠「どうしたの?」

起き上がろうとしても身体が動かないことに気付いた。
動かないというよりは身体が重くて動かしづらいといったところだ。

明「何してたの?」

冷たい声で言われて俺もすぐに気付いた。

慶「……」

慶ちゃんが俺の布団の中に潜り込んでいた。しかも下着姿で。

詠「は?」

俺の胸に頭を乗せ、脇腹あたりに手を回している。片足を俺の股下に突っ込み、お互いの足を絡ませている。
慶ちゃんが俺の上に乗っていたのだ。
73 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/07(木) 13:54:35.99 ID:xyRsIsvV0
中断します。ハーレム展開になっちゃいました。
ここからコメディを展開できれば最高なんですけど、ギャグセンス皆無な自分には難しいですね。
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/12/07(木) 14:39:44.99 ID:Ob9zKRhpo
期待しております
75 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2017/12/07(木) 22:55:18.81 ID:v5KcvF8k0
ハーレム展開でもギャグにはならない



つまりドロドロのサイコサスペンスになる?
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/12/08(金) 14:56:02.17 ID:KSeTa0KNO
もうパンツ脱いでいい?
77 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/13(水) 11:49:21.05 ID:xMWvGEAO0
明「詠……」

詠「違う。誤解だ」

明姉ちゃんの視線が俺の下腹部へ……。

明「何興奮してるのよ?」

詠「これは違うって」

俺は慌てて否定した。ただの朝立ちだ。
とりあえず慶ちゃんを起こす。

慶「んぅ〜……お兄ちゃん、朝早い……」

めっちゃ眠そう。
こいつ昨日何時に寝たんだよ……。

詠「とにかく明姉ちゃん、これは違う。知らない。慶が知らないうちに入ってきてただけだって」

明「……」

じとーという効果で表現できそうな視線が俺を襲う。
かと思いきや、嘘のようにケロッといつもの態度に戻った。

明「あはは! 冗談! 慶が悪いの知ってるから安心してよ」

詠「はぁ!?」
78 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/13(水) 11:50:27.50 ID:xMWvGEAO0
明「ほら慶! あんたは自分の部屋に帰れ!」

明姉ちゃんは再び俺の上で寝始めた慶ちゃんの後ろ襟をつかむ。

慶「にゃ〜、お兄ちゃん……たしゅけて……」

明「この!」

ぐいぐい。寝ぼけ眼の慶ちゃんは俺の服を掴んで必死の抵抗。呆れたを通り越してちょっと微笑ましい。

詠「姉ちゃんいいよ。俺が連れてく」

充分に覚醒したので俺は慶ちゃんを抱っこして持ち上げ、彼女の部屋に移動した。

慶「お兄ちゃん……しゅき……」

ベッドに寝かせるときに慶ちゃんはそんなことを言った。

詠「もう潜り込むなよ」

簡単に注意して部屋を後にしようとしたが、慶ちゃんに両手で頭を抱きかかえられた。
俺は体勢を起こそうとしてたので、急に加わる力に対処できず慶ちゃんの胸に飛び込むように倒れてしまった。

慶「お兄ちゃん♪」

詠「ちょっと……」

困った。
そもそも慶ちゃんってこんなに好き好きしてくる子だったか?
と疑問に思ってしまうほどだ。
79 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/13(水) 11:51:09.37 ID:xMWvGEAO0
彼女の中で何かが吹っ切れたのだろうか。
だとすれば間違いなく原因は昨日の件だろう。

しばらくその体勢のままだったが、すぐに慶ちゃんは静かに寝息を立てた。
俺は緩んだ拘束からするりと抜けると自室へ戻りランニングの準備をする。

明「遅いよー」

詠「ごめん」

ちょっとだけ不機嫌な明姉ちゃんに詫びを入れる。

明「うん、じゃあ行こっか」

およそ30分のルーティーン。
だが、いつもと違う感じがした。
違和感の正体にはすぐに気付いた。いつもより距離が近い。

普段なら人一人分の間があるのに、今日は腕と腕が触れそうな距離で走ってる。
こつこつと腕が当たるたびにお互い謝って、走るのを続ける。

明「あのさ」

詠「何?」

明「私ももうあまり我慢しないよ?」

詠「……ああ、うん」

家の前に着く手前で明姉ちゃんが俺にそう話した。
その後特に何事も無いまま玄関に着いた。
80 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/13(水) 11:51:47.20 ID:xMWvGEAO0
詠「ふぅ……今日も疲れたな」

今日は少しハイペースだったかもしれない。

気を紛らわすため俺は独り言を言ってしゃがみ、靴紐をほどく。
すると背中にぴとっとした感触を覚えた。

詠「……我慢しないってそういう?」

明「ま、まあ……」

少し上擦った声で答える明姉ちゃん。

詠「汗かいてるから離れてくれ」

明「私、別に嫌いじゃないよ」

それは湿ったウェアが? それとも汗の匂いが?
どう質問しても困惑する答えしか返って来なさそうだったので、聞かないことにした。

詠「とりあえずシャワー浴びてきたら?」

明「……もうちょっとこのまま」

詠「……」

いつもならすぐ風呂場へ行くのに、初めてそんなこと言われたので軽く戸惑った。
81 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/13(水) 11:52:35.68 ID:xMWvGEAO0
明「せっかくだし……一緒に入ろ?」

耳元でささやかれてドキッとする。
酷く暑い。きっとランニングで体温が上がったからだ。
こめかみまで動悸が響いてくるなんて疲れすぎだろう。

詠「はは……姉ちゃん疲れすぎ。確かに今日はペース上げ過ぎたよな」

俺は靴紐をほどき終わり、立ち上がる。
明姉ちゃんの方に振り返る。このとき俺は彼女のことを見なければよかったと後悔する。

懇願するような上目遣い。赤く染まった頬。
お互いの顔は息がかかるくらい近くにあって、艶のある唇が半分ほど開いていたのがいやに官能的だった。

数秒の間、俺はその光景に目を奪われ、自分の心臓の鼓動が大きく脈打ってくるのをしっかりと感じ取った。

明姉ちゃんの顔が自分に近づいてくるのを認めて、初めて俺は彼女から顔をそむけることができた。

詠「は、は、は、早く行って来いって!」

明「……いくじなし」

そう言いながら彼女はすっと俺の横を通り抜けていった。

詠「ごめん。でも軽々しくできないから」

明姉ちゃんに限らず、最初の人と付き合わなきゃいけない気がした。
だから勢いに任せて決めたくなかった。
82 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/13(水) 11:53:39.24 ID:xMWvGEAO0
明姉ちゃんは何も言わずに風呂場へ向かった。

詠「やば……」

俺は心臓の鼓動が止まらず、先ほどの艶っぽい彼女が頭から離れず、しばらく悶々とする羽目になるのだった。

詠「トイレで……いやいや、相手は姉ちゃんだぞ! 我慢だ我慢! すぐ治まる!」

麗「何がだ?」

詠「おわぁっ!!」

キッチンで朝食を作っていると麗姉ちゃんが後ろから声をかけてきた。
どうやら独り言を聞かれたらしい。

詠「お、おはよう」

麗「ああ、おはよう。どうした? そんなに驚いて」

詠「や、何でもないよ」

麗「ふむ。それならいいんだが……」

少し怪しまれたようだが、麗姉ちゃんは詮索してくる人ではない。

麗「ところで、焦げ臭くないか?」

詠「へ? ……ああっ!!」

言われて気付いて、慌てて火を止める。
83 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/13(水) 11:54:39.09 ID:xMWvGEAO0
玉子焼きは焦げてしまった。

時間が経ち、聖姉ちゃんも起きてくる。

聖「おはよう」
詠「おはよう」

聖「焦げたか?」

詠「うん、ごめん」

聖「いや、いいんだが。珍しいんじゃないか?」

不思議そうに俺を見たが、聖姉ちゃんはつかつかと俺の後ろにやって来ると、ガバッと背中から抱き付いた。

詠「うおっ! や、やめろって!!」

聖「んー? どうした? 今日はやけに焦ってないか?」

詠「や、風呂まだだし、汗臭いだろ? 恥ずかしいんだよ」

聖「はぁ? 詠、いつもそんなこと言わないだろ」

麗「確かに珍しい気もするが、聖にきっぱり拒絶したということでいいんじゃないか?」

聖「恥ずかしがるなよー」

「こいつめ!」とか言って俺の耳にふっと息を吹きかけてくる。
ビクッとして声も出てしまった。恥ずかしい。
84 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/13(水) 11:55:45.96 ID:xMWvGEAO0
詠「まじでやめろ!」

聖「はっはっはー。可愛いやつだなぁ」

明「聖ちゃん、相変わらずだなぁ」

お風呂上がりの明姉ちゃん登場。
お風呂上がりだと女性はなぜこうも色っぽく見えるのか……。

俺は今すぐ逃げて落ち着かせるべきだと思った。

詠「じゃあ俺入ってくるわ」

すぐに椅子から立って、風呂場へ直行。

聖「……ちょっと待て」

その場を離れようとする俺の腕を聖姉ちゃんが引っ張る。

詠「な……」

「何?」って言おうと思ったが聖姉ちゃんの目を見ると、彼女の視線が俺の下腹部あたりに注がれている。

詠「行くからっ!!」

俺は無理矢理腕を振りほどき、小走りで風呂場へ向かう。
見られた……。寝起きだからと言い訳できない。
85 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/13(水) 11:56:31.71 ID:xMWvGEAO0
聖「詠〜」

呼ばれたのでリビングと廊下を繋ぐドアから顔だけ出して応える。
にんまりと素敵な笑顔の聖姉ちゃんがこちらを見ている。

聖「手伝うぞ?」

軽く握った拳を上下に振るジェスチャーで問いかけてくる。心底楽しそうなのがムカつく。

詠「いらねーよ! バーカ!」

ちらりと見えたが麗姉ちゃんはいつもと変わらず平常だ。
明姉ちゃんは逆に顔を真っ赤にさせて居心地悪そうにしてた。

麗「聖、あんまからかってやるな」

明「聖ちゃんってバカよね」

聖「明はそういうの苦手だよな」

明「……私だって勇気出したんだから」

聖「ほう、抜け駆けか?」

麗「別にいいだろう。詠へのアピールは自由だという話を昨日つけたじゃないか」

聖「じゃあ私のもありだろう?」

麗「別に誰も聖を責めてないだろ」
86 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/13(水) 11:57:22.66 ID:xMWvGEAO0
俺は風呂場でガシガシと頭を洗ったり、ゴシゴシと強く身体を洗う。そうすることで自然と治まってきた。
しかし少し思い出すと反応してしまう。

詠「仕事から帰ったらさっさと寝よ」

一日跨げば記憶も薄れる。
考え込まずに今日も変わらず仕事をしよう。

コンコン! 風呂場を叩くノックの音だ。
思わず身体が跳ねそうになる。
聖姉ちゃんのやつ、マジで来たんじゃないだろうな……。

麗「詠」

違った。聖姉ちゃんではないことに安堵し、俺は「何?」と用件を尋ねた。

麗「長いが大丈夫か? のぼせてないか?」

詠「うん、大丈夫」

麗「そうか。私たちはもう行くぞ?」

詠「え、もうそんな時間?」

麗「ああ、慶のことよろしくな」

詠「お、おう。行ってらっしゃい」

どうやら仕事に向かったらしい。

身体を拭いて風呂場から出る。
87 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/13(水) 11:58:45.06 ID:xMWvGEAO0
慶「ふぁぁ……」

詠「……」

欠伸しながら入ってきた慶ちゃんとご対面した。

慶「……」

ぽけっとした表情ながらもじっくりと俺の身体を目に焼きつけているようだ。
俺の自意識過剰かもしれないが、慶ちゃんは目に焼きつけているのだ。
特に陰部を。恥ずかしげもなくじっくり見てる。

詠「出てって」

慶「早くしてね」

詠「わかってる」

この間で優に10秒は経っていただろう。

慶ちゃんは「別に気にしないのになー」なんてのんきに言いながら脱衣所もとい洗面所を出た。

詠「悪い。もういいよ」

慶「本当に早いね」

と言いながら慶ちゃん再び入室。
パンツはいただけだから。
88 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/13(水) 11:59:29.15 ID:xMWvGEAO0
慶「お兄ちゃんって結構いい身体してるね」

下を隠してもまじまじ見てくる。デリカシーの無い妹だ。
おまけにペタペタと触ってくる。

詠「そんな触るなよ」

慶「照れてる〜。私も結構鍛えてるんだ」

ほらほら、と自分の腕を見せつけてくる。
引き締まった程よい肉付きで、生活が乱れてる割には健康的に映える。

詠「綺麗だな。夜も早めに寝ればもっと綺麗になれるのに、もったいない」

慶「お兄ちゃんは、もっと綺麗な方がいいの?」

詠「お兄ちゃんじゃなくても、もっと綺麗な方がいいと思うけど」

慶「ふーん」

詠「慶ちゃんも学校、遅れないように行きなよ」

慶「うん、今日三限からだから大丈夫だよ」

詠「そっか」

朝食を食べ終える。
洗濯が終わるまで時間があるし、歯を磨いたり、髪整えたりしておこう。
一通り自分の洗面が済む。

慶「お兄ちゃん、まだ出ない?」

ちらっとこちらの様子を見て慶ちゃんが尋ねてきた。
89 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/13(水) 12:00:42.81 ID:xMWvGEAO0
詠「ああ、洗濯物干したら出る」

慶「じゃあ髪梳いて?」

自分でやれ、と思ったが時間もあったので引き受ける。
妹のお願いはあまり無下にできない。頼られるのは好きでもある。

櫛が引っ掛かるところは手で梳いてやる。
時折、頭をポンポンなでなでしてやると、慶ちゃんは小動物がうっとりしたように気持ちよさそうな顔をする。

慶「これ好きぃ」

兄に甘える妹の無邪気な笑顔。
俺もそれが大好きなのだ。

詠「はいはい、おしまい」

離れようとすると、正面から腰に手を回してぎゅっと抱き付いてきた。

詠「どうした?」

慶「私、お兄ちゃんのこと好きなの本気だから!」

詠「わかってるって」

抱きしめ返して頭を撫でる。
これは妹に対する愛情表現……ということにしておきたい。

ピピッ! という洗濯終了の合図が俺たちの間に割って入った。

詠「お、終わったか。じゃあ干したら行くから」

俺はテキパキと洗濯物を干して会社に向かう。

慶「行ってらっしゃい」

わざわざ玄関まで見送りに来てくれた。

詠「行ってきます」

慶ちゃんは扉を閉めるまでひらひらと手を振ってくれた。
90 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/13(水) 12:02:06.32 ID:xMWvGEAO0
中断します。
91 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/12/13(水) 22:50:16.14 ID:SKjakshQ0
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/12/14(木) 02:24:04.67 ID:gvageeUZo
おつー
93 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/15(金) 19:37:20.52 ID:meYxdbSz0
出勤中、会社の前で肩を叩かれる。

蓮「よう」

詠「蓮さん! おはようございます」

蓮さんは少しニヤついた表情で俺の隣を歩く。

蓮「凛に告られたんだってな?」

ドキッとした。

詠「え、ええ……すみません」

蓮「何を謝ってんだよ。お前だったら任せられる。凛のことよろしくな」

爽やかに笑って言われた。
まだ返事してないんですけど……。

なんだかんだ妹想いな蓮さんのことだ。
「付き合ってません」とか言ったら殺されるのでは?

詠「はは……」

なので俺は愛想笑い。

その後、蓮さんの妹さんの話を聞かされつつ、事務所に入る。
94 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/15(金) 19:37:47.75 ID:meYxdbSz0
葉月「おはようございます」

蓮「おう、おはよう」

詠「おはようございます!」

葉月さんはすでに出社。朝から働く頑張り屋さんだ。
そんな彼女は俺に気付くと、トテトテとやってきて眩しい笑顔を見せてくる。

蓮さんと二人で眩しさに目を逸らす。

葉月「詠くん! 卯月ちゃんのことよろしくお願いします!」

蓮「ん?」

詠「はは……」

乾いた笑いしか出てこない。
俺はその場で土下座した。

蓮「ちょ……」
葉月「ええっ!?」

詠「申し訳ございません」

この二人なら話してもいいだろうと思い、昨日あった出来事を説明する。
95 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/15(金) 19:38:39.58 ID:meYxdbSz0
2人ともそれぞれの妹が俺に告ったことは把握済みだったらしいが、何を勘違いしたのか付き合うことになると思ったらしい。

蓮「あー、そうだったのか」

葉月「ご、ごめんなさい。私ったら勘違いしてしまって」

詠「いえ、僕の方こそごめんなさい。いろいろありすぎて頭こんがらがってます」

蓮「だよなぁ……まさか義理といえど姉妹からも交際を申し込まれるなんてな……」

葉月「詠くんはいい子ですからね」

詠「それで、誰が好きとか、まだそういうのわかんないので保留にしてる状態です」

うーん、と二人は考え込む。

蓮「恋愛感情が曖昧に感じる原因は間違いなくお前の姉妹たちだろうな」

葉月「そうですね。お姉さんたちから向けられる好意が当たり前すぎて、他の女の子のアピールに気付かないって感じで育ってますよね」

蓮「鈍感は作られるものなのか……」

葉月「もともと詠くんの持つ恋愛感情が乏しいっていうこともあると思いますけど」

蓮「とにかく、誰かが傷つくのは避けられないからな。ウジウジ悩むよりきっぱり決断しないとダメだ」
96 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/15(金) 19:39:25.54 ID:meYxdbSz0
詠「それは分かってるんですけど……」

葉月「そうですよ渋谷くん。青木くんは今誰が好きかわからないっていう状態ですから、好きかどうかわからないのに一人を選ぶなんて全員に失礼ではないですか?」

蓮「一理あるが……」

うむぅ……とまたみんなで考え込む。
俺は一緒に悩んでくれる先輩に申し訳ない気持ちになった。

蓮「ならいっそ全員振れば?」

葉月さんは「え?」という感じで、一瞬ゴミを見るような眼で蓮さんを見た気がするが、気のせいだろう。
あの聖人みたいな葉月さんが、天使のような笑顔の葉月さんがそんな顔するわけない。気のせいに違いない。

葉月「うーん、確かに詠くんの気持ちを尊重すべきですよね」

蓮「要するにそういうことだよな」

詠「自分で決める……」

蓮「そういうこと。ま、相談には乗るからよ」
葉月「私たちを頼ってくださいね!」

詠「はい、ありがとうございます」
97 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/15(金) 19:39:54.78 ID:meYxdbSz0
しかしあれこれ悩んでも時間は待ってくれず、気が付けば夕方。

未央「おっはよーございまーすっ!」
茜「おはようございますっ!!!!」
藍子「おはようございます」

三者三様、元気な挨拶をいただいた。

詠「おはよう」

未央「今日はどんな仕事が待ってるのかなー?」

ルンルンと俺に聞いてくる未央ちゃん。

詠「ごめんね。今日もレッスン」

茜「レッスンですか!! わかりました!!!!」

やる気十分の茜ちゃん。両の拳をぐっと握る。
未央ちゃんはというと眉間を抑えながら変わらぬテンションで

未央「知ってました。ええ、知ってましたとも!」

とか言って笑ってる。

詠「でも急にどうしたの?」

未央「まあ、レッスンも結構やったしそろそろお客さんの前でライブもいいかなーなんて」

どうやらモチベーションは高いらしい。
98 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/15(金) 19:40:28.32 ID:meYxdbSz0
藍子「未央ちゃんってばずっと『武道館まだかなー?』って言ってるんです」

楽し気な様子で藍子ちゃんが教えてくれた。

詠「ははは、武道館とは目標高いなぁ」

茜「目標は高ければ高いほどいいものですよ!!」

詠「そうだけどさ……」

自信無いなぁ……。

未央「プロデューサーがそんなんでどうすんのさ! 見てよ! 私たちはこんなにやる気だよ!?」

藍子ちゃんをチラッと見ると、彼女も胸の前で小さくガッツポーズを作った。

詠「善処するよ」

何だか元気をもらえる。

詠「三週間後にミニライブあるから、まずはそこからだな」

茜「何ですとぉっ!!?」
未央「聞いてないよ!」
藍子「ええっ!?」

詠「ごめん。言ってなかった」

まあ三週間後だしなぁ……。
99 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/15(金) 19:41:20.66 ID:meYxdbSz0
未央「やるじゃん、プロデューサー! こうしちゃいられないね!」

藍子「そうだね。もっとたくさん練習しないと」

茜「では、今から走ってレッスンルームに行きましょう!!」

未央「走らないよ!」
藍子「走らないよ!」

詠「気を付けて行ってらっしゃい」

俺は3人を見送ろうと立ち上がった。

未央「せっかくだし、あれやっとこうよ!」

詠「あれって何だ?」

未央「これこれ!」

と言って未央ちゃんは藍子ちゃん、茜ちゃんと円になってお互いの右手を重ね合わせた。
ちょうど一人分入るスペースを開けているので、俺が入るのだろうと察しは付く。

詠「はは……」

ちょっと照れくさいながらもフレッシュな雰囲気にあてられたのか俺もその輪に加わって三人の手の上に自分の手を重ねた。
100 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/15(金) 19:41:50.57 ID:meYxdbSz0
詠「……」

未央「プロデューサー」

詠「何?」

未央「気の利いたこと言ってよ」

昨今のJKは唐突にこんなことを振ってくるのか。
茜ちゃんも目を輝かせてこちらを見ている。
藍子ちゃんは苦笑い。俺を気の毒そうに見ていた。

詠「てか考えとけよな……」

少しだけ考えて一つ咳払いした。

詠「三週間後のミニライブ絶対成功させるぞー!」

「おー!!」と三人が合わせる。

俺は満足げに笑う三人の頭を、頑張って来いという思いを込めて撫でる。

未央「わ、何をするぅ!?」
茜「プロデューサーさんなりの気合注入ですね!」
藍子「わぁっ! えへへ……」

彼女たちはもう一度気合を入れ直して部屋から出て行く。
俺も一緒に廊下に出て、事務所のドアの前で見送った。
101 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/15(金) 19:42:33.32 ID:meYxdbSz0
詠「うーん、我ながらちょっと過保護かな?」

凛「本当だよね」

突然後ろから声を掛けられて情けなくも飛び上がりそうなほど驚いた。

凛「ふふっ! 詠さん驚き過ぎ」

口元を片手で押さえて笑っている。

詠「な、あ……」

一方で俺はというと、昨日あった出来事を思い返してしまいばつが悪いと感じるばかりだ。
ていうか気まずい。

しかし凛ちゃんはさも気にしてない様子で俺に話しかけてくる。

凛「おはよう、詠さん」

詠「あ、うん、その、おはようございます」

凛「どうしたの? そんなに慌てて」

詠「いや、そんなことないです」

凛「嘘、昨日のこと気にしてるんでしょ?」

図星を付かれて狼狽えたけれど、何とか頷くことができた。
102 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/15(金) 19:43:39.35 ID:meYxdbSz0
凛「あーあ!」

そう言って急に大きくため息をつく凛ちゃんにまたしても身体がビクつく。

凛「さっき兄貴から聞いたよ。卯月にもお姉さんたちにも告られたって」

詠「あー、その、はい……まあ……」

俺は渋りつつも肯定する。というか蓮さん口軽いな……。

凛「別に責めてないからね。なんとなく、お姉さんたちが詠さんのこと好きなのわかってたから」

凛ちゃんは笑顔で言ってくれる。また「兄貴はデリカシーが無い」と付け加えた。
しばらく沈黙したが、意を決して自分の想いを相手に伝える。

詠「あの、正直好きって気持ちよくわからなくて……昨日ずっと考えたんですけど……」

凛「ごめん。私が負担になるようなこと言ったよね」

詠「いえ、そんなことないです」

凛「でも……」

詠「凛ちゃん、聞いてください」

そう言うと凛ちゃんは口を噤んだ。
103 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/15(金) 19:44:31.91 ID:meYxdbSz0
詠「告白されたの、嬉しかったです。凛ちゃんの想いに誠実に応えたいです。だから、もうしばらく待ってもらっていいですか?」

凛「……うん」

俺は言い切れたこと、返事をもらえたことに対して安堵した。

凛「詠さんのそういうとこも、好き」

顔を赤くした凛ちゃんが俺とは目を合わせずに呟く。

詠「ありがとうございます。でも、社内ではあんまりそういうこと言わない方がいいですよ」

この歳のアイドルにスキャンダルは御法度なのです。

凛「あはは……それもそうかも」

詠「……ちゃんと答え出します」

俺はもう一度凛ちゃんに目を向けた。
答えを出すこと。それは断るかもしれないという意志を突きつけることでもある。

凛ちゃんは真っ直ぐ俺の目を見ていた。
透き通るような瞳から視線を外す。
彼女が着慣れてるであろうカーディガンは少しよれているように見えた。
104 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/15(金) 19:45:01.59 ID:meYxdbSz0
詠「仕事に戻ります」

凛「うん、私も事務所に入るから」

二人で事務所に戻る。
あまり注目を受けるということは無いのだが、この時は他の二人からの視線が気になった。
蓮さんと葉月さんではない。

凛ちゃんの友人であり、ユニットを組んでる『北条加蓮』さんと『神谷奈緒』さんだ。
ユニット名は『トライアドプリムス』。

北条さんは少し病弱な体質らしいが、それを感じさせないほど明るい子だ。
神谷さんは普段鋭い目つきをしているがアニメが好きらしく、可愛い一面もあると聞く。

加蓮「おはようございます」
奈緒「おはようございます」

二人とも同じ挨拶で俺に軽く会釈したので、同じように返す。

俺は自分の座席に着いてキーボードに手を置いた。
トライアドの三人は事務所にあるソファに座って談笑していた。

加蓮「なんか距離縮まったんじゃない?」

奈緒「だよなぁ。ちょっと前までどうやって話しかけようか悩んでたくらいなのに」

凛「二人とも声でかいよ」

ああ、なんとなく俺の話をしてるのだと察する。
仕事が思うように進まない。
105 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/15(金) 19:45:54.50 ID:meYxdbSz0
卯月「おはようございます!」

急にかけられた挨拶に対し、変な声で返事してしまった。

卯月「あ、驚かせちゃいましたか? ご、ごめんなさい」

詠「あ、いや、謝ることじゃないですよ。こっちこそ驚いてしまってすみません」

卯月ちゃんに気を使わせてしまった。

響子「おはようございます!」
美穂「お、おはようございます!」

卯月ちゃんの後に続いて入ってきた子たちは『五十嵐響子』ちゃんと『小日向美穂』ちゃんだ。

五十嵐さんは五人兄弟の長女で一番お姉さんらしい。面倒見が良いとよく耳にする。
小日向さんは人見知りなのだろうか、あまり目を合わせてもらえたことが無いが可愛らしい女の子だ。

詠「おはようございます」

卯月ちゃんを含めた三人でユニットを組んでおり、『ピンクチェックスクール』と言う名前で活動している。

デビューシングルのラブレターは俺もたまに口ずさむくらいに好きな曲だ。

詠「みなさん早いんですね」

卯月「えへへっ……今日は三人でお喋りしようって」

響子「そうなんです。お菓子も作ってきたんですよ」

美穂「わ、私はかな子ちゃんに手伝ってもらって……」

卯月ちゃんはクッキー、五十嵐さんがパウンドケーキ、小日向さんはブラウニーをそれぞれ作ってきたようだ。
106 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/15(金) 19:46:44.51 ID:meYxdbSz0
「詠さんもどうぞ!」と紙皿を渡され、タッパーやバスケットに入っているお菓子をその皿に置いてもらった。

詠「ありがとうございます」

響子「あとで感想聞かせてくださいね!」

彼女たちは蓮さんと葉月さんにも同じようにお菓子を配ると、事務所にあるソファに向かう。

卯月「あ、凛ちゃん! おはようございます」

凛「おはよう、卯月」

二組のユニットは仲が良いみたいで、全員にお菓子を分けながら賑やかに談笑をしていた。

俺はクッキーを口に運ぶ。サクサクほろほろで美味しい。
紅茶が欲しくなる。
そういえば給湯室にあったかな、などと考えながら俺は席を立った。

給湯室にはいろいろ揃っていた。ティーパックも当然のようにあったので一リットル程度のポットに入れて紅茶を作る。

トレイに、今いる人数分のカップを乗せて紅茶を注いで持って行く。

詠「蓮さん、葉月さん、紅茶淹れましたのでよかったらどうぞ」
107 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/15(金) 19:47:18.34 ID:meYxdbSz0
蓮「お、気ぃ利くな。サンキュ」

葉月「ありがとうございます」

二人は微笑みを浮かべ紅茶を啜った。

談笑しているアイドルの子たちにも「どうぞ」とカップを渡す。

加蓮「ごめんね、私たち何にもやってなくて」

詠「お気になさらず」

凛「ありがとう、詠さん」

他の子たちも、ありがとうございますとお礼を言ってくれた。

俺もデスクに戻り、紅茶とお菓子を楽しみながら仕事を続ける。
彼女たちに貰ったお菓子を全部平らげてから数分して事務所のドアが勢いよく開け放たれる。
俺を含め、事務所にいた数人がビクッとした。

現れたのは聖姉ちゃんだった。
ドアは独りでにゆっくりと閉まった。

詠「ちょ、聖姉ちゃん。びっくりするからさ……」

俺の言葉に意を介することなく、無言でスタスタと俺の元まで歩み寄ってくる。
後ろに立たれて落ち着かない。
108 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/15(金) 19:48:52.31 ID:meYxdbSz0
詠「何?」

椅子を回転させ聖姉ちゃんに向き直り、腰かけたまま問うと、聖姉ちゃんは俺の椅子を正面、つまりデスク側に戻した。

次の瞬間、彼女は腕を俺の背後から、前に回して抱きしめてきたのだった。
突然の出来事に一瞬理解が追い付かなくなるが、すぐに顔が赤くなっていったのは自分でも分かった。

詠「なななな何してんだよ?」

動揺でどもりまくるがお構いなし。
聖姉ちゃんの顔は俺の顔のすぐ左隣にある。

聖「我慢できなくってな……」

耳元でそう呟かれた。
それだけでもピクリと身体が震えたのに、聖姉ちゃんは耳をハムッと軽く咥えた後、ふぅーっと息を吹きかけてきた。

俺は左肩と左側の首筋を中心にゾワゾワとした感覚に襲われ、思わず椅子から転げ落ちた。

聖「おっと、大丈夫か?」

詠「ばっ、ばばば……バカなんじゃないか!?」

聖「あははは! いや、なんだか急に恋しくなってしまってな。仕事終わりに顔を見たくなった」

詠「俺はまだ仕事中だっての!」

過去最高に取り乱す俺とのんきに笑う聖姉ちゃん。
そんなことはどうでもいいとばかりに、尻餅をついた体勢の俺にさらに迫ってくる。
109 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/15(金) 19:50:19.11 ID:meYxdbSz0
今度は正面から抱き付かれる。

聖「詠……好き……」

警鐘を鳴らすかのように、心臓とこめかみがバックンバックンと振動し始めた。
無理にでも引き離そうと思ったが、好きと言われると何だか無下に扱いづらくて、俺は硬直せざるを得なかった。

詠「こっこ、ここ! ここ、職場だから!!」

鶏の鳴き声みたいに声を発しながらも、言葉で必死に説得を試みる。

しかしながら一向に聞く耳持たない聖姉ちゃん。
俺はついに諦めようとしたが、聖姉ちゃんの身体が離れていく。

聖「わっ」

凛ちゃんと卯月ちゃんの二人が両脇から聖姉ちゃんを抱えて引っ張ったみたいだ。

凛「詠さんが困ってます」
卯月「お、お仕事の邪魔しちゃダメですよ!」

冷たい声で言う凛ちゃん。
顔を赤くして注意する卯月ちゃん。

俺の目の前には二人の天使がいるように見えた。
110 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/15(金) 19:50:47.03 ID:meYxdbSz0
中断します。
111 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/12/15(金) 20:48:52.96 ID:TehtWS+E0
すごく良い...
期待して常に全裸で待機してます
112 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/18(月) 12:25:19.42 ID:suI/ujXf0
聖「むぅ……」

顔をしかめて両脇のアイドルをちらりと見る聖姉ちゃん。
渋々といった様子で彼女たちに従った。

俺もようやくパニック状態から我に返る。

詠「そうだぞ姉ちゃん。俺まだ仕事中だから邪魔するな」

立ち上がってそう言った。

聖「詠のくせに生意気だぞ」

詠「何だよそのジャイアニズムは……」

聖「家に帰ったら覚えとくんだな」

詠「はいはい、おつかれさまでした」

聖姉ちゃんはまだ何か言いたげだったが、恨めしそうな顔で俺を見てから帰っていった。

それにしても複雑だ。
凛ちゃんと卯月ちゃんからすれば聖姉ちゃんは恋敵なわけなのだから。
113 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/18(月) 12:26:54.81 ID:suI/ujXf0
それはそうと一連の事件とも呼ぶべき流れを始終見ていた先輩とアイドル達は様々な反応を見せていた。

蓮「おいおい、あんな聖さん初めて見たぞ?」
葉月「本当ですね〜……意外というか……でも可愛かったですよ」

奈緒「な、な、な、な……」
加蓮「うっわ。大胆」
美穂「はわわわわ……」
響子「あははは……」

アイドルたちは全員が顔を真っ赤にさせていた。

詠「帰りたくねぇ……」

さっきの聖姉ちゃんのセリフを思い出して、俺はがっくりと肩を落とした。

蓮「そんで、あんなに取り乱す詠も初めて見た」

詠「すみません、お恥ずかしいところを……」

凛「いつもあんな感じなの?」

詠「いえ、あの姉は積極的ではありますけど、普段はからかってくるような感じで……きっと今のもからかい半分ではあると思いますけど、彼女の本気を多少感じました」

卯月「詠さん、いつもと口調違うんですか?」

詠「はは……猫かぶってるので……」
114 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/18(月) 12:27:41.23 ID:suI/ujXf0
葉月「帰ったらいやらしいことされるんですか?」

詠「私が拒めば無いと思いますけど、聖は下ネタには寛容なタイプです」

凛「絶対受け入れちゃダメだよ?」

詠「流されるつもりはありませんので」

などと怒涛の質問攻めを食らい、それに答えるのであった。

加蓮「はっ! 実は他のトレーナーさんもあんな感じなの?」

気が付いたように尋ねてくる北条さん。
ソファに座っていた組も当然気になるご様子らしい。

詠「どうでしょう? 妹の慶はそれなりに積極的ですね」

慶ちゃんの話をしたのはいいが、今朝のことを思い出して顔が暑くなってきた。

美穂「ええっ!? そ、その様子だと何かあったんでしょうか?」

詠「も、黙秘で……」

響子「じゃあ明さんはどうですか!?」

これ楽しくなってきてるな。
女の子は恋愛話が好きと聞いたけど、間違いではないのかも。
115 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/18(月) 12:28:52.06 ID:suI/ujXf0
詠「えーと、明は普段は大人しいんですけど、ちょっと変わったかもしれません」

明姉ちゃんとの今朝の出来事も思い出して、引いてきた熱がまた上がる。

奈緒「詠さん、赤くなったり戻ったり大変だな」

苦笑いする神谷さんだが他の子たちと同じく俺の様子を楽しそうに見ている。

詠「一番上の姉だけが普段通りですね」

もうここまで言ったらしかたないので、麗姉ちゃんのことも先に話した。

蓮「へぇ……やっぱ動じねぇんだなぁ」

葉月「麗さんの指導はみんな受けたことないですね」

詠「そうですね。麗は高垣さん、安部さん、十時さん辺りの指導を主にしてますね」

美穂「す、すごい! みなさん売れっ子じゃないですか!」

蓮「流石だよな。彼女が指導したら確実に売れるって話らしいじゃん?」

詠「たまたまじゃないですか?」

葉月「そんなことないですよ。それに麗さんの指導を受けるには妹さんたちの推薦が必要だとか……」

詠「そんな話聞いたこと無いです」

俺は笑って流した。
姉妹たちがそんな重要なポジションにいるわけないし。
116 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/18(月) 12:29:42.32 ID:suI/ujXf0
そんなこんなで雑談していると、ポジティブパッションの三人が帰ってきた。
明姉ちゃんを引き連れて。

明「失礼します」

蓮「噂をすればか?」

明「? それよりも蓮さん! トライアドプリムスのレッスン時間ですよ!」

蓮「うぉ! もうそんな時間か!? 凛、奈緒、加蓮!」

「やば、忘れてた」とばかりに四人揃って慌て始める。

未央「たっだいま、プロデューサー!」
茜「まだまだトレーニング足りないです!!」
藍子「おつかれさまです」

詠「はい、お帰りなさい。おつかれさま。帰るなら送ろうか?」

三人とも、うーんと唸り考え込む。

未央「プロデューサー、勉強教えてよ!」

テスト近いんだよねー、と付け加える未央ちゃん。

藍子「私もお願いします」
茜「お願いします!!」

詠「まあ仕事の合間に見てあげる程度ならいいけど……」
117 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/18(月) 12:31:24.79 ID:suI/ujXf0
未央「やったー!」

詠「てか俺でいいのか?」

藍子「慶さんが、プロデューサーさん頭良いって言ってました」

詠「あ、そうなんだ。じゃあ応接室空けとくから、分からなくなったら俺に聞くこと」

茜「はい、わかりました!!」

応接室を開放すると三人は入って勉強の準備をする。
俺も早めに仕事を終わらそう。

俺は一時間ほどで本日の業務を終了させ、蓮さんと葉月さんに挨拶してから応接室に向かった。

尖らせた口にペンを乗せる未央ちゃん。
分からないのか、うんうんと頭を抱える茜ちゃん。
黙々と勉強してると思いきや、こくこくと眠そうな藍子ちゃん。

おそらく勉強の仕方がイマイチなのだろう。集中力が欠落していた。

詠「勉強捗って……ないみたいだね」

未央「あ、プロデューサー。いやー、全然進まなくってさ」

詠「俺に聞きに来ればいいって言ったのに」

茜「プロデューサー忙しそうだったので!!」

詠「ほら、藍子ちゃんも起きて」

藍子「ふわぁ……」
118 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/18(月) 12:32:16.57 ID:suI/ujXf0
未央「難しいよプロデューサー!」

詠「今から教えてあげるから……」

アイドルでありながら女子高生でもある彼女たち。
もちろん将来、アイドルだけで生計を立てるわけにはいくまい。
なので学業との両立はしっかりとやってもらいたいところだ。

俺は教科を絞って、一時間ほど講義を行った。当時、得意だった数学。

茜ちゃんは二年生だが、一年生の内容もあまり理解していない様子だった。
未央ちゃんと藍子ちゃんが一年生だったので、まずはそちらの内容を勉強していく。

茜ちゃんは別で数学U・Bの補修が必要そうだ。

さて、それぞれ自習に取り掛かろうかというところで応接間の扉が開かれる。

凛「詠さん、勉強を……」

凛ちゃんが入ってきて、言葉を詰まらせた。
卯月ちゃんも不安そうな顔で、凛ちゃんの後ろから様子を見ている。

未央「しぶりん! しまむー! 二人も勉強?」

卯月「は、はい。そうです」

詠「あ、おつかれさまです」

たった今部屋に入ってきた二人も、おつかれさまですと軽く会釈してくれた。
119 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/18(月) 12:34:12.91 ID:suI/ujXf0
藍子「そういえばプロデューサーさんって凛ちゃんや卯月ちゃんには敬語なんですね」

詠「え? 確かに、そうだね」

未央「お姉さんたちにはめっちゃラフなのにね〜」

私たちにもね〜と付け加えて笑う未央ちゃんに少し恨めしそうな視線が二つそそがれる。

詠「や、従姉妹というか姉妹だしな」

明「義理のね」

詠「いたのか」

明姉ちゃんは、まあねと言うと、部屋の外側のドアノブに手をかけたまま俺に視線を向ける。

明「一緒に帰ろうと思ったけど……」

アイドル達をちらっと一瞥する。

明「まだ授業中みたいね。頑張ってね先生! 皆さんもうちの弟をよろしくお願いします」

にひひと笑う。明姉ちゃんはあっさり帰ったみたいだ。

六人で行う勉強会。
トラプリとPCSの他のメンバーは先に帰ったらしい。
120 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/18(月) 12:34:59.54 ID:suI/ujXf0
俺は茜ちゃんと卯月ちゃん二学年の子たちを中心に勉強を見る。

さらに時間は過ぎ、九時頃。
元気よく応接間の扉は開かれた。

慶「お兄ちゃん、帰ろー!」

入ってきた人物に全員が注視する。

詠「びっくりするなぁ……」

慶「あー、お勉強中だったか」

無遠慮に入ってきた慶ちゃんはアイドル達に挨拶をする。
彼女たちも笑顔で返す。
慶ちゃんの性格も関係あるが、歳が近いこともあり、仲が良いらしい。

慶「まだ終わらない?」

詠「うーん……みんなはどうする?」

卯月「もうちょっと頑張ります!」
凛「私は続ける」

二人ともほとんど同時に答えた。

対するポジパはぐぐっと伸びをすると、帰宅する旨を伝えた。
121 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/18(月) 12:35:55.53 ID:suI/ujXf0
未央「慶ちゃん、一緒に帰ろうよ!」
茜「いいですね!」
藍子「迷惑にならなければ……」

未央ちゃんの提案に少したじろぐも、慶ちゃんは愛想の良い笑顔で了承した。

詠「気を付けて帰るんだぞ」

はーい、と上機嫌な返事が三つ。
四人は、お疲れさまでした、と言って応接間から出ていった。

詠「それじゃあ、後一時間ですけど頑張りましょう」

凛「うん」
卯月「はい!」

相変わらず凛ちゃんはあまり止まることなく解き続けていく。
少しヒントを出せば、答えまでたどり着けるようだ。

ということで俺は大体卯月ちゃんに付きっきりだった。

そろそろ十時になるということでお開きになった。

凛「あーあ、私も詠さんにいっぱい構って欲しかったな」

なんて、深読みすれば失礼に聞こえなくもないことを凛ちゃんが言うのだが、これが全く嫌味ったらしくないのだった。

卯月「えへへ、ごめんなさい」

舌をちろっと見せて、困ったように笑う卯月ちゃん。
凛ちゃんもその様子を見てフッと破顔する。
122 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/18(月) 12:36:41.92 ID:suI/ujXf0
十時を回ったあたり、さあ帰ろうと立ち上がったのと同時に、またしてもドアが開かれた。

麗「詠……と渋谷と島村の、妹か」

麗姉ちゃんが、予想通りだなといった風に表情を緩める。

詠「あれ、どうしたの?」

麗「いや、さっきレッスンが終わったのだが、詠がまだ残ってると聞いてな。一緒に帰ろうと思ったのだ」

詠「そっか。ちょうどこれから二人を車で送るところなんだ」

麗「そうか、なら私も同行しよう」

詠「了解」

麗「二人もよろしく頼む」

凛「は、はい……」
卯月「こ、こちらこそよろしくお願いします!」

麗姉ちゃんは妙に威圧感あるからなぁ。二人とも緊張しちゃってるみたいだ。

そうして昨日と同じく車に三人を乗せて送っていく。
123 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/18(月) 12:37:38.04 ID:suI/ujXf0
凛ちゃんの家の前では、やっぱり彼女の母がお出迎えしていた。
挨拶をすると、にこにこと返してくれる。

凛ちゃんと俺を交互に見て、うふふっ、と嬉しそうに笑っていた。

凛「な、何?」

凛母「何でも〜?」

凛ちゃんは、面倒くさいな……と言わんばかりに表情を歪める。
こちらを窺うように、ちらりと視線を彷徨わせて俺と目が合う。
俺は相好を崩して見せるが、それも歪だったと思う。

かっ、と凛ちゃんの耳から頬まで赤く染まり、恥ずかしそうに俯いた。

凛「ば、バイバイ……」

彼女は控えめにちょこっと手を振ると、慌てたのか、もつれた足取りで花屋の奥に引っ込んでしまう。

凛ちゃんのお母さんは、ごめんなさいね、と言ってにこやかに笑った。

俺がもう一度花屋の奥に目を向けると、凛ちゃんが顔を出してこちらを見ている。
自分の母親と俺が話すのが気になるのだろうか。

俺は覗いてる凛ちゃんに小さく手を振って応えると、彼女もまた小さく振り返した。

そして再び凛ちゃんのお母さんに頭を下げ、車へと戻る。
124 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/18(月) 12:38:33.15 ID:suI/ujXf0
次は卯月ちゃんの家。
こちらも昨日と同様、葉月さんが玄関から出て待っていた。

葉月「詠くん、今日もお疲れさまでした。卯月ちゃんのことありがとうございます」

葉月さんのお礼に倣って、卯月ちゃんも頭を下げる。

詠「いえ、大したことはしてないですよ」

二人の笑顔を見ると、俺も自然に笑みがこぼれる。

葉月「卯月ちゃんのこと気に入ったら、ぜひお嫁さんにどうぞ!」

卯月「お、お姉ちゃん!?」

やめてよー! と両手を振って葉月さんを止める卯月ちゃん。

頭のてっぺんから鎖骨あたりまで真っ赤にさせた卯月ちゃんは、ぐるぐると混乱したような瞳と不安げな表情を俺に向けた。

詠「あはは……私にはもったいない気もしますけど……」

葉月「そんなこと無いですよ。ね、卯月ちゃん?」

卯月ちゃんはカクカクとしたロボットみたいな動きで何回も頷いた。
125 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/18(月) 12:39:19.10 ID:suI/ujXf0
卯月「逆に、無個性の私にはもったいないくらいです……」

詠「無個性なんてことありませんよ。美味しいお菓子も作れますし、私にも気遣ってくれて優しいですし、それに笑顔も素敵ですし……」

卯月「あ、あ、あ、ありがとうございますっ!」

すごい勢いで彼女は頭を下げる。
俺が彼女の良いところを挙げると、とても驚いていたように口をパクパクさせていた。

卯月ちゃんは顔を上げると、おやすみなさい! と言って足早に家に入ってしまった。

扉を閉められる前に俺もなんとか、おやすみなさいと声を掛けることができた。

葉月さんとも挨拶をして、車に戻る。

麗「本当にみんな詠のことが好きなんだな」

運転席に戻ったら麗姉ちゃんにそんなことを言われた。

詠「え、そ、そう?」

麗「お前は鈍いよな」

詠「そんなこと無いから」

麗「いや、あるだろう……」

社用車を返した帰り道、麗姉ちゃんと並んで歩く。

街灯にぼんやりと照らされる麗姉ちゃんを盗み見る。
126 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/18(月) 12:40:22.41 ID:suI/ujXf0
正面をキリっと見据え、凛々しく美しい瞳。
ほのかに朱に染めた頬と、柔らかい笑み。
下ろした髪は女性らしく、だが、正しい姿勢は男らしい。

しかし麗姉ちゃん。前は見上げてたように思うけど、今は見下ろすほどに身長差が開いているのか。

麗「どうした? さっきからこっちを見て」

詠「あ、気付いてたの?」

麗「まあな」

詠「そう。別に理由は無いけど……」

俺は顔を逸らした。

麗「そうか」

麗姉ちゃんはただ一言、そう言った。
彼女は今喜色だろうと思わせるような声色だった。

俺は気が付けば彼女の手を取っていた。

麗「……おい」

訝し気に俺を見つめるが、振り解こうとはしなかった。
127 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/18(月) 12:40:58.51 ID:suI/ujXf0
詠「……手、繋いでもいい?」

そう言うと、麗姉ちゃんはきょとんとした後、空いてる手で口を押さえて控えめに笑い出した。

麗「ふふっ……繋いでから言うのか?」

詠「そういうこともある」

麗「でも急にどうした? お姉ちゃんに甘えたくなっちゃったか?」

詠「……そうかも」

麗「可愛いやつだな! だったら存分に甘やかしてやる!」

うりゃー!! と言わんばかりに俺は抱き寄せられ、がしがしと頭を撫でられる。
ヘッドロックされてるみたいになっているが、気にならない。

むしろ心地よく、懐かしい気分なのだ。

ほどなくして麗姉ちゃんから解放された俺。
そこから家までは手を繋いで帰ったのだった。

「「ただいまー」」

玄関のドアを開けて、そう声をかけると、居間の方からバタバタと騒がしい足音が聞こえてきた。
128 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/18(月) 12:42:16.38 ID:suI/ujXf0
慶「お帰りお兄ちゃん!」

抱きつかんばかりの勢いで俺の前までやってきた。

詠「お、おう……ただいま」

慶「麗ちゃんもお帰りなさい」

麗「ああ、私はついでか?」

麗姉ちゃんが呆れたような視線を慶ちゃんに向けると、そんなことないよぉ、と言ってヘラヘラ笑って誤魔化していた。

詠「あれ、他の二人は?」

慶「明ちゃんはリビングにいるよ。聖ちゃんは寝ちゃった」

詠「そうか」

聖姉ちゃんがまだ早い時間に寝てしまうのは珍しいと思った。

慶「ていうか、いつまで手繋いでるの?」

詠「あ」

俺は慌てて力を抜いたが、麗姉ちゃんはがっちりと握ったままだった。

麗「別にいいだろう? それとも慶、嫉妬してるのか?」

そう言われた慶ちゃんは顔を赤らめて、むすっとした表情で麗姉ちゃんを見た。
129 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/18(月) 12:43:09.04 ID:suI/ujXf0
慶「嫉妬ってほどじゃないけど……何か妬ける」

ふいっと麗姉ちゃんから顔を逸らして、俺の方をちらちらと見ている。

詠「どうした?」

彼女の答えは聞けなかったが、空いてる右手をとられる。
そこに俺の意思なんか無く、ぐいぐいと引っ張られた。
靴を放るように脱ぎ捨て、ずかずかと居間まで連れていかれた。

詠「ちょっと慶ちゃん」

玄関ではやれやれと、いつの間に手を離した麗姉ちゃんが、俺の靴を整理していた。

明「お帰り〜」

のんびりとした調子で、ソファにてくつろぐ明姉ちゃん。

ただいま、なんて言う暇も無くソファ――明姉ちゃんの隣――に座らせられる。

明「どうしたのよ?」

訝し気な様子で俺と慶ちゃんに問う明姉ちゃん。こっちが聞きたい。

詠「いや、わからん……」

かろうじて、何が起こってるか分からないことを伝えられた。

そんなことはお構いなしに、慶ちゃんは俺に跨ると、俺の顔を押さえて向かい合うように固定される。
130 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/18(月) 12:43:56.24 ID:suI/ujXf0
詠「だから――」

――どうしたんだ? と問う直前に、俺の口は慶ちゃんの口に塞がれた。

詠「!?」

合わせるような軽い接吻から、何度も求めるようなものへとその質は変わり、果てには舌を入れて快楽に身を任せるような激しいキス。

突然のことであったのと、激しさを増すごとに力が抜けていく感覚に、俺は抵抗することができなかった。次第に官能的になっていく感情。

明「こ、こら!!」

まずは驚き、呆然としていた明姉ちゃんが我に返って止めに入る。

麗「慶っ!」

次にリビングに入って現状を把握した麗姉ちゃんが駆け寄ってくる。

二人は慌てて俺から慶ちゃんを引き離した。

明「あんたってば、油断も隙も無いわね、本当に!」

慶「てへ、ちょっと気持ちよくなっちゃって……」

麗「まったく……」

てへ、じゃないよ。
俺だって下が大変なことになっちゃったんですけど……。
131 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/18(月) 12:44:36.93 ID:suI/ujXf0
明「詠もなんで抵抗しないのさ!」

詠「や、急に襲われたら無理だぞ、多分」

麗姉ちゃんは呆れたのだろう、溜め息を吐く。

麗「アプローチは自由とは言ったが、そういうことはお互いの合意の上でやるべきではないのか?」

慶「お兄ちゃん……イヤだった?」

うわ、こっすい。上目遣いで甘えるような視線を向けられ、耳に優しい猫撫で声を聞かされれば嫌とは言えない。

詠「嫌じゃないけどさ……」

ついつい妹に対して甘くしてしまう。

慶「これで合意の上だね!」

明「ずるい!」

麗「詠も慶に甘いんじゃないか?」

詠「そうかも」

少しだけ怒られる。
132 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/18(月) 12:45:26.95 ID:suI/ujXf0
明「なら私もしていいよね!?」

明姉ちゃんが突然そんなこと言いだした。

詠「ちょっと落ち着いて」

明「そうじゃなきゃ不公平よね?」

詠「本当に待って、今されたら我慢できるか分からん」

明「しなくていいわ! 最後までしよう!」

この子目が血走っていらっしゃる。
暴走している明姉ちゃんを何とかしてなだめる。

麗「こら、明も何言ってるんだ。落ち着け」

最後の良心である麗姉ちゃん。

麗「姉の私が先だろ」

そんなことはありませんでした。

結局、俺は姉二人にキスすることでようやく解放されるのだった。
133 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/18(月) 12:46:27.94 ID:suI/ujXf0
詠「やばい」

部屋に戻った俺は沈んだ気持ちでそう呟いた。

何がやばいのか、それはもう明白で、ここ二日で姉妹――というか我が家――の貞操観念みたいなものが著しく変化してしまったらしい。

とにかくやばい。

義理とはいえ、何年も同じ家屋で過ごしてきた姉妹に発情するのもやばいのだが、そんな彼女たちが特に気にすることもなく俺を襲ってくるということがやばい。
それを嫌だと思ってない俺もやばい。

つまりは常識的な思考が麻痺しつつあるということが、俺に危機感を抱かせていた。

自分で言うのもなんだが、俺は硬派な男である……はずだ。
しかし信じられないことに、たった二日で軟派な人間へと早変わりしてしまったではないか。

そんな急激な変化に困惑している。
当然、卯月ちゃんや凛ちゃんに後ろめたいという気持ちが拭い切れずにいるのだった。

詠「とりあえず風呂」

気分転換という意味も込め、次に何をするかをわざわざ口に出す。

廊下に出て数歩離れたところにある洗面所。風呂場には誰も入ってないらしい。
というのも暗闇が如実に示してくれていた。
134 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/18(月) 12:47:46.97 ID:suI/ujXf0
上を脱いで下を脱ぐ。
下着を脱ぐ際、陰部に若干の引っ掛かりを与えて俺は少し顔を顰めた。
ぺちりと下腹をたたくモノ。

詠「変態だな」

戒めるように、あるいは忌々しく独り言を呟いた。

入浴中、俺は先の出来事を反芻していた。仕事のことを考えようと目を閉じるが、どうにも姉妹たちの積極的な姿がその思考を妨げる。
結果、俺は勃起したり萎縮したりを繰り返して悶々と苦悩した。
何度か自分の陰茎を握ってはみたものの、なかなか扱くことができない。
やはり姉妹をネタにして……というのは罪悪感が凄まじい。
結局一発も射精せずに風呂から上がる。

普段なら俺は風呂を上がって裸のまますぐに歯を磨くのだが、今日は、いや、おそらく今後もそんなことはしないだろう。
姉妹に性的な目で見られることを怖いと思ってしまった。
もちろん自分も彼女たちで興奮するし、性的な目で見ることもある。
だが襲ったことはない。

今日、無理やり接吻されたとき、ちょっと怖かった。それは襲われた人間にしか分からないものなんだろうと思った。

なので自室で俺は服を着てからまた洗面所に戻ることにした。

寝る準備はつつがなく整い、俺は二十三時を回ったあたりで就寝する。

次に目を覚ますのは五時半くらいだろうか……。
と思っていたのだが、人為的に起こされるような感覚で飛び起きた。
明らかに不十分だという睡眠の感覚であったが、もう一度眠りにつくには状態が異常であることに気が付いた。
135 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/18(月) 12:49:02.80 ID:suI/ujXf0
中断します。
次回がっつりR要素入るのでお気を付け下さい。
136 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/12/18(月) 15:09:16.93 ID:D+wFQPYRO
わっふるわっふる
137 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/12/18(月) 21:28:22.57 ID:3nRH+43D0
トレーナー四姉妹の奴は珍しいし期待
138 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/20(水) 22:09:25.48 ID:XpHju3a80
詠「な、何やってんの?」

聖「夜這い」

一点の曇りもなく、迷いなく、淀みなく、清々しく、聖姉ちゃんは言い切った。
彼女が早く寝た理由だが、聞かずともわかったような気がする。

詠「ちょっと、服は?」

聖「もう脱いだが?」

何を今更……とでも言いたげに小首を可愛らしく傾げて見せている。

詠「何やってんだ!」

聖「だから夜這いだ!」

小声で怒る俺に、何故かキレる聖姉ちゃん。

聖「ちょっと黙ってろ」

詠「何を……うわっ……」

驚いて声が出たのも束の間、呼気が荒く漏れ出る俺の口は聖姉ちゃんの口で塞がれたのだから。

彼女の口は俺の唇を覆うように、あるいは食らうように包み込んで離さない。
目が慣れてきた頃にようやく聖姉ちゃんの顔が遠ざかる。

外から入り込むわずかな光が、唾液で濡れた姉ちゃんの唇を、艶めかしく照らし出す。
139 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/20(水) 22:10:29.58 ID:XpHju3a80
ありったけの火薬を詰め込んだかのような心臓は、俺の全身に隈なく血を巡らせる。

どっくん、どっくん、と文字通り頭に血が昇り何かを言おうと口を開けるが、言葉が紡がれることはない。
それを発するための口ごと聖姉ちゃんが食べてしまった。

姉ちゃんの舌が俺の舌に絡み付き、入念に唾液を交換させている。
貪るように求めるため、時折、歯がカチカチと音を立てて騒ぎ出す。
歯に響く不快感は絶妙な快感の香辛料へと変わる。

お互いにどんどん息が荒くなり、ついに抱きしめ合う。強く、強く。
決して華奢なわけではなく、健康的で引き締まった細身と、女性特有の柔らかさ、出るところは出ている肉付きの良さなど、それらは俺の理性を失わせるには十分すぎる要素だった。

詠「聖姉ちゃんっ!」

聖「詠、来て」

俺は上体を起こすと、聖姉ちゃんを自分の腿に乗せて、抱きしめ合ったまま接吻を続ける。
それから押し倒し、聖姉ちゃんに愛撫する。
俺の舌は聖姉ちゃんの口を離れて、首筋をなぞるように幾度も往復し、次に耳を犯す。

聖姉ちゃんの左耳を甘噛みしたり、舌を入れたりする度に、彼女の口から甘い吐息と淫らな喘ぎ声が漏れる。さらに身体を、ぴくっ、ぴくっ、と小さく震わせ始める。

聖「うぁっ……あっあっ……詠っ……詠ぃ!」

声が一層大きくなる。
耳元で発せられるそれが、俺にさらなる嗜虐心を与えた。
140 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/20(水) 22:11:24.40 ID:XpHju3a80
俺の右手は彼女の左手と指を絡めて繋ぎ合わせているので、空いた左手で彼女の身体に触れる。
右耳を優しく触り、時に強く握り、柔らかな頬をなぞり、唇を触わる。

姉ちゃんは俺の指を赤子のように舐めて、吸う。指先からぞわぞわとした感触を受ける。
口内の天井を指で優しく撫でてやると、言葉にならない喘ぎ声と、びく、びく、と震える身体で応えてくれる。

俺は姉ちゃんの口に突っ込んでた指を引き抜くと、自分の口に入れる。
その様子をまざまざと見せつけた。

聖姉ちゃんの紅潮しきった顔、汗でしっとりと張り付いた髪、目じりに浮かべた涙。
彼女は自分の口に入ってたものが義弟の口に入るのを認めると、羞恥と驚きで複雑に歪んだ表情を見せた後、潤んだ瞳を逸らした

俺はいつもとは違う見慣れぬ聖姉ちゃんに、大いに興奮していた。
普段の大きな態度や、下ネタを恥ずかしげもなく口にする下品な姉はどこにもなく、しおらしさや羞恥心があるばかりだ。

聖「ふぅっ……ふあぁぁっ……!!」

愛撫を続けると、先ほどよりも大きく痙攣する聖姉ちゃん。

詠「ダメだよ、聖姉ちゃん……声、我慢しなきゃ、止めちゃうよ」

聖「嫌だっ! 止めないで……続けて……最後まで……」

詠「じゃあ、ちゃんと我慢して?」

聖「うん……」

俺はこの時、嗜虐心に満ち満ちていたに違いなかった。というのも後から冷静になって考えればという話なのだが……。
141 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/20(水) 22:13:22.49 ID:XpHju3a80
こくりと頷く聖姉ちゃん。素直な返事は珍しい。それだけで可愛らしく、愛おしい。

俺は愛撫を再開した。
またキスをして、今度は下へ。
鎖骨を左の人差し指で撫で、舌を胸に這わせる。
脇を厭らしく触った後、双丘の突起に触れぬように、指と舌で何度も円を描いた。

必死に漏れ出る声を押さえようとしている聖姉ちゃんが可愛くてついつい虐めたくなってしまう。

ぴくぴくと腰が浮き沈みを繰り返してるのに気づき、俺は一度間を置いて彼女の乳首をきゅっと摘まんだ。

聖「ああああっ! ……っ!!」

慌てて、両手で自分の口を押さえる聖姉ちゃん。
懇願するような涙目になっていて、俺の腹辺りにびりびりと電撃が走っていくような、奇妙な快感に襲われる。
思わず口端が吊り上がってしまいそうだ。

詠「聖姉ちゃん……」

聖「違う、違うんだ……止めないで……」

俺の服を無造作に鷲掴みにしている。

詠「しょうがないな。じゃあ声出ないようにしてあげる」

相変わらず胸を掌で撫で、先を指で転がす。
彼女の声は、俺が口を塞ぐことで、漏れ出るのを防いだ。
代わりに、ぴちゃぴちゃと淫靡な音を立てる。
142 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/20(水) 22:20:04.04 ID:XpHju3a80
俺は息を荒げて、彼女の腹を撫でてさらに下に手を這わせる。
陰部に触れないままさらに下、太腿に手を這わせ、臀部を弄る。
指を割れ目の中心まで近づけるが決して触れない。

俺は聖姉ちゃんの唇や舌の動き、微妙に変化する表情で彼女の反応を窺いながら、それに興奮しているのを自覚していた。

聖「はぁっ……はぁっ……! もう、我慢できないぃ……詠ぃ……」

聖姉ちゃんは目の端からは涙を、口の端からは涎を、それぞれ流して、くしゃっとさせた顔で縋ってくる。

詠「聖姉ちゃんっ!!」

もう一度、抱きしめる。今度は優しく。

聖「詠っ!!」

彼女も俺の首に手を回したまま、さらに身を寄せる。

一旦、聖姉ちゃん距離を離し、俺は下の寝間着と下着を順に脱いだ。
暗がりの中で、血液を集中させて激しく勃起した陰茎を剝き出しにした。

聖姉ちゃんは一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに恍惚とした瞳を向けて俺の陰部に手を伸ばす。
143 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/20(水) 22:20:34.34 ID:XpHju3a80
ぴとりと、鈴口に触れる指先。それだけで絶頂してしまいそうな快感に襲われる。
続いて、恐る恐る指先で、つつ、と裏筋を経て陰嚢までなぞった。

聖「き、気持ちいいのか?」

詠「ま、まあ……」

無邪気に聞いてくる聖姉ちゃんに、恥ずかしがりながら俺はそう返事した。
聖姉ちゃんはさっきとはうって変わって、にま〜っとした笑みを浮かべる。

聖「そうか、そうか」

喜色満面。それからも――これは? これは? と触っては気持ちいいかどうかを尋ねてくる。正直に言うと、恥ずかしい。

聖「なあ、舐めたら気持ちいいのだろう?」

普段の調子を取り戻したように挑発的な微笑み。
しかし顔は真っ赤で、舐めることに対して若干の躊躇いと期待感が見え隠れしている。

詠「そ、それは……上手な人は、まあそうだけど……」

俺も童貞ではない。経験人数は少ないが、愛撫の技術に個人差があるのは確かだ。

てか、聖姉ちゃん処女っぽいな。
初めてにこだわってたのが何となくわかった気がした。
というか初めてのくせにキスは上手いな。
144 : ◆Xx4o45zWU. [saga]:2017/12/20(水) 22:21:07.50 ID:XpHju3a80
俺があれこれ考えていると聖姉ちゃんは意を決したようで、舌先でちろちろとソフトクリームみたいに舐め始めた。
どこで知識を得たのか、亀頭にキスするわ、睾丸を吸うわ、舌の先と腹をうまく使い分けるわ、挙句には亀頭を頬張って厭らしい音を立てながら顔を動かし始めるわ……。
どうやら天性のエロ女らしい。
歯を立てられると思ったが別にそんなこともなく、今までで一番気持ちいいほどだった。

聖「ほお? ひおひぃ?」

竿を口に入れたまま喋るものだから、ちゃんと言えてない。
――どう? 気持ちい? と聞いているのだと思う。

詠「うん、やばい……」

刻々と慣れてきたのだろう。
どんどん早くリズミカルになる聖姉ちゃんの前戯。

詠「姉ちゃん、もう、入れたい」

我慢できなくなって俺は覚悟も適当に、ただ自分の性欲に従ってそう言った。

聖「ああ、私も……してほしい」

俺は聖姉ちゃんの陰部に手を触れ、陰唇を広げて指を挿入する。
くちゃ、くちゃ、と姦濫な音を立てると同時に、姉ちゃんが声を押し殺せず、時折、大きく声を上げる。
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