俺「アライさんパーク?」

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1 : ◆/87jeglEwfUL [sage]:2018/03/30(金) 20:30:58.32 ID:gP+KXu5o0
友人「アライさんパーク、って知ってるか?」

俺「アライさんパーク?」
2 : ◆/87jeglEwfUL [sage]:2018/03/30(金) 20:31:38.69 ID:gP+KXu5o0
モンスターを狩るゲームに夢中になっている俺に、友人がそう尋ねてきた。

俺「アライさん、ねぇ... 名前ぐらい、か、なっ!」

アライさん。

アライグマが人型になった存在で、フレンズと呼ばれていること。
そして、人型になっても、元の獣と同じように振舞っていること。

これくらいしか知らない。

友人「ニュース見ねぇのかよ。」

俺「あんまり。」

報酬画面から切り替わったタイミングで、俺は友人の顔を見た。

俺「で、それがどうしたんだ?」

友人も雑誌から目を離し、こちらを見た。

友人「今度の休み、一緒に行かないか?」

意外だった。
友人が提案してくることは滅多に無いからだ。

俺「急にどうした?」

友人「たまには外に出て、遊ぼうぜ。」

確かに、俺は仕事以外に関しては出不精だ。
部屋に籠って、ゲームや漫画で時間を潰しているだけ。

俺「いいぜ。」

友人「よし、決まりだな。」

友人と来週の予定を決めて、友人は帰っていった。

俺は、布団に体を預けると、先ほどのことを振り返った。

俺自身、外に遊びに行くことを了承するなんて意外だな、って思った。
だけど、それには理由がある。
友人の目が今まで見たことのない色をしていたから。

俺が人のことを心配するなんて、な。
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/03/30(金) 21:27:01.81 ID:uY3TNDXYo
久々の新しいアラ虐スレか期待
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/03/30(金) 21:42:52.15 ID:S4arhtMy0
おおおおおおお!
5 : ◆/87jeglEwfUL [sage]:2018/03/30(金) 22:02:59.39 ID:gP+KXu5o0
アラ虐を書きますが、アライさんパークにたどり着くまで、描写はないつもりです。
ご了承ください。
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/03/30(金) 23:39:26.38 ID:3xUvbxpi0
なんか「〜〜〜〜〜〜。」が気になる。
7 : ◆/87jeglEwfUL [sage]:2018/03/31(土) 12:11:31.67 ID:T40RhOzB0
そして、あっという間に1週間が過ぎた。

それまでの間、仕事の合間とかに「アライさんパーク」なるものを検索してみたが、何も引っかからなかった。
ついでに、アライさんについても調べてみた。

どういう原理かは知らないが、突然動物が人の姿になったらしい。
その中でも、害獣と言われているアライグマは酷い、とのこと。
見た目が人に変わっただけで、やっていることは動物の時と変わらないみたい。
まぁ、駆除したくても人殺しみたいになっちゃうから、抵抗あるみたいだな。

そんで、他の害獣はっていうと、特に目ぼしい記事が見当たらなかった。
要は、よく分からん、ってとこ。

友人「よぅ、おまたせ。」

最寄り駅で待っていた俺の前に、ワゴンに乗った友人が現れた。

俺「デカすぎだろ...」

友人「とりあえず、助手席に乗れよ。」

俺は助手席に座った。

バタン

俺「なぁ、他に誰か来るのか?」

友人「いぃや、俺とお前の二人だけだぜ。」

そういうと友人は、車を発進させた。

俺「二人だけなのに、なんでワゴン?」

友人「アライさんパークに行く前に積むものがあってな。」

俺「アライさんパークって、キャンプ場か何かなのか?」

友人「着いてのお楽しみ、ってね。」

俺「あと、時間早すぎない?」

そう、集合時間は朝の5時だった。

友人「積むものが多いからね。」

それから、俺たちの会話は途切れてしまった。

別に、会話が途切れてもこいつとの空気感、っていうのが心地よかった。
久しぶりに感じる人の温もりがそこにはあったような気がする。

つーか、どんどん山に入っていくんだが、大丈夫か?
8 : ◆/87jeglEwfUL [sage]:2018/03/31(土) 12:12:48.03 ID:T40RhOzB0
友人「とうちゃーく、っと。」

俺「山だな。」

友人「とりあえず、降りろよ。」

俺「おぅ。」

バタン

久しぶりに山に来た。
小さいときに遊んで以来かもしれないな。

友人「しばらく、山を登るぞ。」

俺「こんなところに、アライさんパークがあるのか?」

友人「違うって。」

友人が何やら、色々と支度をしているみたいだった。

友人「ワゴンに積むものがあるって言っただろ?」

そういえば、そんなことを言っていた気がする。

俺「で、俺は何か手伝えばいいのか?」

友人「物分かりがよくて助かるぜ。」

友人は、俺に籠を渡してきた。

俺「背負えばいいのか?」

友人「あぁ、頼む。」

俺「栗でも拾うのか?」

しかし、今の季節は初夏。
栗にしては早すぎる。

友人「違うものを拾うのさ。」

そういうと、何かを挟む道具を渡してきた。

友人「火バサミも渡しとくよ。」

これ、そんな名前なんだ。

俺「こんなところに、何があるんだか。」
9 : ◆/87jeglEwfUL [sage]:2018/03/31(土) 12:18:03.35 ID:T40RhOzB0
友人「何か聞こえてくるだろ?」

俺「何って?」

とりあえず、耳を澄ませてみる。

『...のだ!』
『...のりゃ!』

俺「女の声だな?」

友人「何だと思う?」

俺「今流行りの山ガールか?」

友人「そんなことは知ってんのな。」

俺「アニメでちょっとな。」

俺たちが声のする方に近づいていった。
そして、それがだんだん明らかになっていく。

???「あ、人が来たのだ!」
???「ひとしゃん、おかーしゃんをたしゅけてほちいのりゃ!」

そこには、籠罠に手足を曲げて収まっている女の子。
そして、籠の外には、その女の子を手のひらサイズにしたくらいの、小さい女の子がいた。

違和感としてあるのは、彼女達の頭に動物の耳、そして、尻尾があることだった。

友人「これが、巷で噂のアライさん。」

衝撃的だった。
噂程度でしか知らなかったとはいえ、ここまで人とそっくりなのか。

俺「これ、どうすんだ?」

友人「このまま、ワゴンに積むんだよ。」

俺「マジかよ...」

俺は、固まったままそこから動けなかった。
10 : ◆/87jeglEwfUL [sage]:2018/03/31(土) 12:18:30.03 ID:T40RhOzB0
でも、友人は違った。

友人「アライさん、他に家族はいないの?」

屈んだ友人は、優しくアライさんに話しかけていた。

アライさん「ヒトには教えないのだ!」

友人「教えてくれたら、おいしいものを上げるよ。」

友人は、腰のポーチからお菓子を取り出して、アライさんに分け与えていた。
アライさんはそれを素早く奪い取ると、それを食べ始めたのだった。

アライさん「おいしいのだ!」クチャクチャ

汚い。
まるでマナーのなってない、小学生みたいだな、ってその時思ってしまった。

友人「おいしかった?」

アライさん「おいしかったのだ!」

友人「じゃあ、家族のこと、教えてくれる?」

アライさん「ここから大きい樹が見えるのだ?」

ここからでもはっきり分かる。
この山の長というべき樹なのだろう。

アライさん「あそこでチビが5匹待っているのだ!」

友人「アライさんはこの中で休んでいて。運んであげる。」

アライさん「これはラクチンなのだ!」

重そうな籠を軽々と持ち上げる友人の姿に唖然となった。
そんなに力があったなんて。

アライちゃん1「うゆ? あらいしゃんはどうしゅりゅのりゃ?」キョトン

友人「アライちゃんも運んであげるよ。」

友人は俺から火バサミを奪い取ると、それでアライちゃんを捕まえた。
そして、それを俺の背負い籠に丁寧に入れた。

友人「アライちゃんはここで我慢してね。」

アライちゃん1「わかったのりゃ!」キャッキャッ

こうして、俺たちはアライさんの案内で場所を移動した。
11 : ◆/87jeglEwfUL [sage]:2018/03/31(土) 12:20:58.31 ID:T40RhOzB0
俺の感想は、何も言えない、そんな感じだった。
本来は、雄大な存在で圧倒されるであろう大樹が、所々腐りかけて悪臭を放っていたのだ。

俺は思わず吐きそうになってしまった。

アライさん「フハハハハ! いい匂いなのだ!」

俺は、正気を疑った。

これが、いい匂い?
この樹をこんな風にしたのは、こいつらなのか?
どうして?

俺の思いを悟ったのか、友人は顔を横に振ると、アライさんに話しかけた。

友人「アライさん、家族を呼んでくれるかい?」

アライさん「チビ達! 出てくるのだ!」

「「「「「のりゃー!」」」」」

樹の根元から、5匹のアライちゃんが這い出てきた。
正直、気持ち悪かった。

アライちゃん2「おしょかったのりゃ!」プンプン
アライちゃん3「このひとたちはなんなのりゃ?」キョトン
アライちゃん4「おなかしゅいたのりゃ!」ビエーン
アライちゃん5「もうねむいのりゃ...」フワー
アライちゃん6「のりゃ!」シッポフリフリ

友人「これで全部かい?」

アライさん「そうなのだ。これがアライさん自慢のチビ達なのだ!」

友人「そうなんだね。」

そういうと、友人は素早く、俺の背負い籠にアライちゃんたちを入れていった。

アライさん「チビー!」

友人「一旦、ワゴンに戻るぞ。」

俺「お、おぅ...」

アライさん「おい、嘘を付いたのか!?」

ガン

友人が持っている籠を地面に落とした。

友人「うるせぇぞ。殺されたくなかったら、黙ってろ。」

アライさん「ひぃ!」ブルブル

その時の友人の顔は、俺から見ても怖かった。
いつも温厚なあいつの怒りを見たのは、この時が初めてかもしれない。
12 : ◆/87jeglEwfUL [sage]:2018/03/31(土) 12:23:43.69 ID:T40RhOzB0
友人とワゴンに戻ってきた。

友人は、アライちゃんを手早く1つの籠罠に詰めていった。
これでワゴンの荷台に籠罠が2つある状態だ。
まぁ、2列目も席を倒しているので、ほぼ荷台のようなものだけど。

聞いた話では、アライさんの力では籠罠は破壊することが出来ないらしい。

アライさん一家が何かを言っているようだったが、友人は力強くトランクをしめた。

バンッ

友人「さて、もう1回行くぞ。」

俺「すまん、あと何回くらい続けるんだ?」

友人「罠のポイントを全部回収するまで、かな。」

俺は、ここに来たことを後悔した。

俺「まだ、あんな光景を見なきゃいけないのか...」

すると、友人が振り向いた。

友人「あんなのマシな方だぞ。」

俺は絶句した。
あれがマシな方、ってなんだよ。

友人「これを使わない限りな。」

友人の指さすもの。
それは、猟銃だった。

俺「お、お前は、人を、撃つ、のか...」

喉が渇いていた。
声が枯れてうまく出ないなりに、音にした。

友人「あいつらは、人の皮をかぶった獣だ。」

友人「この世から排除しなきゃいけないんだよ。」

いつの間にか、友人と住む世界が違っていたことに気付いてしまった瞬間だった。
13 : ◆/87jeglEwfUL [sage]:2018/03/31(土) 12:25:19.44 ID:T40RhOzB0
全ての罠を確認して戻ってきたころには、ワゴンの荷台は大変なことになっていた。

臨時エンカウントも含めると、アライさんが7匹、アライしゃんが16匹、アライちゃんが49匹。

アライちゃんとは、産まれたばかりのアライさんのことらしい。
で、アライさんとアライちゃんの中間ぐらいの成長を、アライしゃんと呼ぶらしい。

俺「これを運ぶのか?」

友人「あぁ。」

バンッ

俺「臭くないか?」

友人「ファブってるし、大丈夫でしょ。」

俺「それだけ?」

友人「運転席側との間に仕切りがあるから、匂いは来ないぜ。」

俺「そうだといいな。」

バタン

友人「声はうっすらと聞こえるけどな。」

今日は、衝撃的なことが多すぎる。
頭がパンクしそうだ。

友人「さて、当初の目的に行きますか。」

俺「どこだっけ?」

友人「アライさんパークだよ。」

俺は、もしかしたらこの時点で分かっていたのかもしれない。
でも、拒絶したかった。

そして、友人がどうしてこうなってしまったのか、知りたくなってしまった。
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/03/31(土) 12:30:37.55 ID:FVfy0GWUO
これ荷台に乗るのか…?
車すっげー重そう
15 : ◆/87jeglEwfUL [sage]:2018/03/31(土) 18:33:39.83 ID:T40RhOzB0
>>14
荷重計算してませんでした。
そこは、気にしない方向で、お願いします。
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/03/31(土) 19:13:03.76 ID:3FmPc8+y0
今日はこれでお終いかな?
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/03/31(土) 20:36:01.80 ID:1WITLBruo
ワゴンっつーか、もはやバスだったんだろうな
18 : ◆/87jeglEwfUL [sage]:2018/03/31(土) 20:52:19.48 ID:T40RhOzB0
俺たちは、高速道路を走っていた。
行き先はおそらく、アライさんパークなのだろう。

後ろから時折驚きの声が聞こえたが、無視することにした。

俺「なぁ、聞いてもいいか?」

友人「何だ?」

俺「どうして、猟師になったんだ?」

友人「...やっぱ、聞いてくるよな。」

俺「言いたくないなら、別にいいけど。」

友人「いや、お前には聞いてほしい。」

俺は、友人の言葉を待った。
長い沈黙の後、友人が口を開いた。

友人「アライさんのせいで、実家が無くなった。」
19 : ◆/87jeglEwfUL [sage]:2018/03/31(土) 20:52:46.20 ID:T40RhOzB0
俺は、理解が出来なかった。
必死に意味を考えているところに、友人が続けた。

友人「実家が荒らされてさ、両親と祖父母が殺されたんだ。」

衝撃的だった。
そんな素振りを一度も見せたことが無かっただけに、驚きを隠せなかった。

俺「いつ...なん、だ?」

友人「3年前だよ。ほら、夏に遊ぼうって言って、俺がブッチした時。」

そんなことは知らなかった。
こいつは人気者だから、色んな所から声を掛けられて、時間を過ごしていたのかと思っていた。

いつも週末は遊んでいたから、長期の休みぐらいは特に気にしていなかった。

友人「お前はさ、こまめに連絡してこないだろ?」

確かに、俺は他人との交流が極端に無い。
他人に関心が無いのかもしれない。

友人「あん時は、それで助かったよ。気持ちの整理も出来てさ。」

俺「そういえば、弟と妹がいる、って言ってなかったか?」

友人「弟は短大に通ってて一人暮らし、妹は友人の家でお泊り会。」

俺「無事だった、のか?」

友人は小さく頷いた。

友人「実家を襲ったと思われるアライさんは、猟友会に殺処分されたって聞いた。」

友人「でも、俺の心は納まらなかったんだ。」

友人のハンドルを握る力が強くなるのを感じた。

友人「だから、俺は猟師の資格を取って、アライさんを狩りつくすことを決めたんだ。」

俺「免許は?」

友人「2年前に取ったよ。」

俺「復讐、なのか?」

友人は小さく頷いた。

俺「アライさんを狩りつくしたら、どうするつもりだ?」

友人「まだ、分からねぇよ。」

俺「そっか。」

やっぱり、友人とは住む世界が違うんだな、と改めて実感した。
20 : ◆/87jeglEwfUL [sage]:2018/03/31(土) 20:53:13.85 ID:T40RhOzB0
とりあえず、今日はここまで
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/03/31(土) 21:06:50.96 ID:GeCUADVyo

人殺しているほど危険ならテレビで、もっと報道したりしなかったんだろうか
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/03/31(土) 21:37:01.88 ID:fRGMm+qRo

木からウジャウジャ出てくるアライちゃんがいいですね
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/04/01(日) 00:06:25.02 ID:W8Vulg7+0
乙、わたアラと同じ危険で凶暴なアライさんと言うことか
アライさんパークとはどんな場所なんだろう?
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/04/01(日) 00:57:35.13 ID:T/BS+W5B0
乙です
良作の予感で超楽しみです!
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/04/01(日) 01:14:38.37 ID:4rl0XzJw0

細かい設定やアライさんの処理の仕方とか気になりますね。次回も楽しみです
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2018/04/01(日) 02:12:35.10 ID:B+SbQzrU0
>>14
アライさんを40kg、アライしゃんを20kg、アライちゃんを1kgとした場合、話の匹数だと649kgになる。
ハイエースなら、いけそう。
27 : ◆/87jeglEwfUL [sage]:2018/04/01(日) 22:42:45.84 ID:B+SbQzrU0
高速道路を降りると、また山に向かって走り出す。
カーナビには何も表示されていない。

俺「なぁ、本当にこっちで合ってんのか?」

友人「合ってるよ。」

俺は何度も、前の道とカーナビを見直していた。

友人「アライさんパークは、秘密のエリアなんだ。」

俺「そういえば、サイトも無かったな。」

友人「そりゃ、そうさ。」

しばらく走っていると、看板が見えた。
看板には、左が駐車場、右が関係者入り口と示されていた。

普通なら、「ようこそ、○○へ」みたいな案内の看板が出ていてもおかしくない。
でも、ここはそういったものが何もなかった。

友人は分かれ道を迷うことなく、右へ曲がった。

俺「おい、そっちは関係者入り口だぞ。」

友人「大丈夫だって。」

さらに、森の中を走っていく。
周りは木々しか見当たらない。

俺「本当に、隠されているんだな。」

友人「アラ信に見つかると厄介だからな。」

俺「アラ信?」

俺の疑問に友人はため息をついた。

友人「お前、本当に外のことは無関心だな。」

俺「すまん。」

友人「アライさんのことに限らず、少しは外のことも興味持てよ。」

俺「考えとくよ。」

俺は窓にもたれ掛かり、外を見ながら到着するのを待つことにした。
28 : ◆/87jeglEwfUL [sage]:2018/04/02(月) 00:07:34.08 ID:pqARhX2F0
しばらくすると、料金所ゲートのような物が現れた。

警備員「はい、止まって。」

警備員の指示に従って、友人は車を止めた。

警備員「通行証、見せて。」

ゴソゴソ

友人「これで。」

友人は警備員に何かを見せていた。

警備員「はい、行っていいよ。」

友人「お疲れ様。」

警備員に一言かけて、友人は車を発進させた。

俺「さっきの何だったんだ?」

友人「関所みたいなもんだよ。」

俺「そんなのあるんだな。」

友人「アラ信対策も兼ねてね。」

俺には、アラ信が何なのか、イマイチ理解できなかった。
29 : ◆/87jeglEwfUL [sage]:2018/04/02(月) 00:09:02.40 ID:pqARhX2F0
さらに進むと、建物が見えてきた。

俺「あれは?」

友人「集積所みたいなもんかな。」

目の前で、人が車を誘導していた。
すると、友人は窓を開けた。

友人「何番に止めればいいですかー?」

誘導員「2番にお願いしまーす。」

友人「了解でーす。」

友人は窓を閉じると、2番と書かれたエリアにバックで停めた。

友人「ちょっと話があるから、ここで待ってて。」

俺「おぅ。」

バタン

俺は車内に取り残された。

すると、トランクの開く音がした。
透明の仕切り越しに後ろを見ると、罠籠が回収されて集積所の中に入っていくのが見えた。
そして、誰かとやり取りする友人の姿も見えた。

しばらくすると、友人が戻ってきた。

友人「おまたせ。」

俺「ここで、アライさんを引き取ってもらっていたのか?」

友人「そうだよ。」

俺「アライさんパークって、アライさんの引き取り所のことだったのか?」

友人「まさか。」

友人は来た道とは反対の、奥へと車を進めた。

俺「まだあるのか?」

友人「今のは導入部分だよ。」

物語なら、ここからが本編、といったところなのか?
30 : ◆/87jeglEwfUL [sage]:2018/04/02(月) 00:10:06.01 ID:pqARhX2F0
しばらくすると、駐車場があった。
友人はそこに車を停めると、降りるように促してきた。
それに従い、俺は車を降りた。

友人「着いたぜ。」

俺「何だ、ここは...」

動物園などで見られる、チケット売り場とゲートが見える。
しかし、看板は見当たらない。
これでは、ここが何なのか分からない。

友人「行くぞ。」

俺「あぁ。」

俺は意を決して、進んでいった。
31 : ◆/87jeglEwfUL [sage]:2018/04/02(月) 00:11:02.85 ID:pqARhX2F0
まず、チケット売り場にやってきた。

係員「いらっしゃいませ。」

友人「これなんですけど。」

友人が何かを見せている。
おそらく、警備員にも見せていたものだろう。

ピッ

係員は、それにバーコードリーダーをかざして、何かを読み取ったみたいだ。

係員「えーっと、今回はすごいですね。」

カタカタ

係員「今回は、こちらになります。」

係員から、入場用のチケットが渡されたかと思ったが、違った。
そこにあるのは現金だった。

友人「どうも。」

係員「そちらの方は?」

友人「俺の連れです。」

係員「同伴は1人まで大丈夫ですので...、はい、あちらからどうぞ。」

やり取りが終わったのか、こちらに戻ってきた。

友人「ほら、バイト代。」

友人は、俺に1万円札2枚を渡してきた。

俺「何もしてねぇだろ。」

友人「積み荷の手伝いしてくれただろ。」

俺は、一応受け取ることにした。
断ったら、あとが面倒だと思ったからだ。

俺「...ありがと。」

友人「よしっ、早速入ろうぜ。」
32 : ◆/87jeglEwfUL [sage]:2018/04/02(月) 00:11:56.38 ID:pqARhX2F0
俺たちが中に入ろうとした時だった。

係員「お客様。」

係員が呼び止めてきた。

友人「どうしました?」

係員「お連れ様にこれを。」

係員が渡してきたのは、腕章と園内マップだった。

係員「園内ではこの腕章を見える位置につけていてください。」

俺「分かりました。」

俺は、早速腕章を身に着けた。

係員「お連れ様もいるので問題ないかと思いますが、こちらが園内マップになります。」

俺「どうも。」

俺は、園内マップをその場で見ようとした。
すると、友人が俺の腕を掴んだ。

友人「それは、園内でしか見ちゃいけないんだよ。」

そのまま連れていかれる形で、園内に入ることになった。

俺「ちょっ、待てって。」

係員「ごゆっくりお楽しみください。」

係員に向かって会釈し、俺たちは中へと入っていった。
33 : ◆/87jeglEwfUL [sage]:2018/04/02(月) 00:21:29.32 ID:pqARhX2F0
ある程度進んだところに、椅子があった。

友人「とりあえず、ここで座ってゆっくり見ろよ。」

俺「ってて...」

友人の引っ張る力があまりに強かったため、腕を擦りながら腰を下ろした。

俺「さて、何があるんだ?」

俺はマップを見て、簡単に見回してみた。
そこでようやく、アライさんパークの意味を理解した。
34 : ◆/87jeglEwfUL [sage]:2018/04/02(月) 00:22:11.66 ID:pqARhX2F0
『アライさんパークへようこそ。』

『ここでは、色んな方法でアライさんの駆除を体験できます。』

『【スポーツエリア】、【ゲーセンエリア】、【レーシングエリア】、【ショーエリア】、【
35 : ◆/87jeglEwfUL [sage]:2018/04/02(月) 00:23:38.46 ID:pqARhX2F0
バン

俺は思わず、園内マップを閉じた。
乱暴な閉じ方をしたため、園内マップがクシャクシャになってしまった。

そんなことはどうでもいい。

俺は、息苦しくなっていくのを感じた。
何がどうなってる?

頭が考えることを拒否しているかように、視界が回る感覚に襲われた。

俺「うっ!」

突然の吐き気。

友人「大丈夫か!?」

俺「ト、トイレは...」

友人「あっちだ!」

連れて行こうとする友人の手を俺は押しのけた。

俺「大、丈夫、だから...」

フラフラになりながらトイレの個室に入り、盛大に吐いてしまった。

俺「オゥエッ!」

ここでようやく気付いたんだ。
ヤバい領域に、俺は踏み込んでいるんだ、ということに。
36 : ◆/87jeglEwfUL [sage]:2018/04/02(月) 00:24:10.05 ID:pqARhX2F0
とりあえず、ここまで。

園内は、次回更新で書きます。
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/04/02(月) 16:45:33.67 ID:xeIYPMMtO
乙です。
俺さんはアラ虐側に立つのだろうか、それともあくまで外側に立つ人であり続けられるのだろうか…
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/04/02(月) 23:39:10.56 ID:FEQXhhzu0
やべえ
楽しみすぎるぜ
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/04/03(火) 01:04:08.09 ID:nSkzrrJc0
なんかホラー映画みたいで続きが楽しみです
40 : ◆/87jeglEwfUL [sage]:2018/04/03(火) 23:13:49.40 ID:Uqr1f5Pf0
俺はだいぶ落ち着いてきた頃に、個室から出た。
蛇口で顔を洗い、口を濯ぐ。

ペッ

トイレから出ると、友人が心配そうに待っていた。

友人「大丈夫か?」

俺「まだ、気分が整ってないや。」

俺は友人の隣に腰かけた。
そして、俺たちはしばらく沈黙した。

その空気を打破したのは、俺からだった。

俺「お前はさ、俺に何かを見せたくてここに連れてきたんだろ?」

友人は、顔を上げて俺の方を見た。
そして、小さく頷いた。

俺「俺が無知だったから、あんまりスムーズに行かなかったみたいだけどな。」

友人「ここまで社会に興味が無いとは思ってなかったよ。」

俺たちは軽く笑いあった。
ようやく、本来の調子が取り戻せたような気がした。

友人「今日は、とりあえず帰るか?」

俺「いや、腹は括った。」

俺は友人を見た。
真剣な表情のつもりだ。

俺「お前が見せたかったものを見せてくれ。」

友人「園内マップを軽く見ただろ?」

俺は軽く頷いた。

友人「ここまで来てなんだけど、お前は狂気の世界を見る勇気はあるか?」

俺「自ら、狂気の世界、って言っちゃうんだな。」

友人「まぁ、間違ってないし。」

俺は、友人にこう告げた。

俺「案内してくれ。」

俺の体は震えていた。
自分でも結構強がっている方だと思う。

友人「分かったよ。」

友人もその姿を汲み取ってくれたのか、案内してくれるようだ。

俺は、友人の案内で狂気の世界へと入っていった。
41 : ◆/87jeglEwfUL [sage]:2018/04/03(火) 23:14:48.87 ID:Uqr1f5Pf0
俺たちの現在地から近いエリアは、【ゲーセンエリア】だった。

俺「この建物か?」

見た目は、古びたゲーセン、といったところだ。

友人「そのまんまだけど、ゲーセンの感覚でアライさんを駆除するアトラクションが集まった場所だ。」

俺「料金って、どうなってるんだ?」

友人「料金?」

俺「ほら、プレイ料、ってやつ。」

友人「それなら、入場料に含まれてるよ。」

俺「俺、払ってないんだが。」

友人「関係者は、アライさんを連れてくるのが料金代わりだから。」

俺「そうだったんだ。」

友人「あと、ここは保健所まがいもしてるから、捕まえた数に応じて報酬もゲットできる、ってわけ。」

俺「関係者は、捕獲の苦労の代わりに顔パス、ってわけか。」

友人「そういうこと。」

俺たちは、建物の中へと入っていった。
42 : ◆/87jeglEwfUL [sage]:2018/04/03(火) 23:15:48.54 ID:Uqr1f5Pf0
建物の中は、混沌としていた。

『やめるのだー!』
『助けるのだー!』
『痛いのだ―!』
『おかーしゃーん!』

アライさんの叫び声が常に響き渡っていた。
正直、気味が悪かった。

友人「これ、付けてろよ。」

友人から、無線機と耳栓を渡された。
片耳に無線機のイヤホンを、片耳に耳栓をする。

友人『こうすれば、アライさんの叫び声を軽減できるから。』

俺『なるほど、ね。』

建物の中にある設備は、どこのゲーセンにもありそうなものばかりだった。
アライさんが絡んでいることを除けば。
43 : ◆/87jeglEwfUL [sage]:2018/04/03(火) 23:17:10.98 ID:Uqr1f5Pf0
とりあえず、ここまで。

各アトラクションは、後日公開します。
2,3個小分けにして更新する予定です。
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/04/03(火) 23:33:27.09 ID:hLc+SQpv0
乙です
アラ虐Wikiの載ってるアライスポーツセンターを思い出した
45 : ◆/87jeglEwfUL [sage]:2018/04/03(火) 23:53:27.95 ID:Uqr1f5Pf0
>>44
そこから、インスピレーションされたのはあります。
なので、すでに公開されているネタと被る可能性があります。

それだけ、ご了承ください。
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/04/03(火) 23:58:55.66 ID:LY6iMqlGo

アライさんがどう駆除されるのか楽しみだわ
47 : ◆/87jeglEwfUL [sage]:2018/04/04(水) 21:49:39.00 ID:EJcyKcjm0
<アライバスケ>

俺『バスケットのゴールがある。』

友人『みたことあるだろ?』

俺『やったことないけどな。』

俺は設備を見回した。

俺『どこに駆除要素があるんだ?』

友人『じゃ、俺が試しに見せてやるよ。』

友人がフリースローゲームの前に立ち、会員証をかざした。

ピッ

どうやら、かざすエリアが作られており、それで管理しているようだ。

『ヨウコソ、タノシンデイッテネ』

無機質な音声が流れる。

ウィーン

何かが動いているようだ。

そのとき、俺は気づいた。
ゴールの真下に、四角い穴が空いていることに。

ガシャン

そこに現れる形で、アライちゃんがセットされた。
両手両足は、固定されているようだ。

アライちゃん1「あらいしゃんをかいほうするのりゃ!」ガタガタ

『ゲームスタート』

ガシャン

ゲートが解放されて、ボールが転がってくる。
友人は一つ一つ丁寧に、ゴールへ納めていく。

ポイ ポイ ポイ

ガコン ガコン ガコン

ゴン ゴン ゴン

アライちゃん「いた! やめ! ぴぎぃ!」

バスケットゴールに収まったボールが落下する。
そのとき、アライちゃんに当たることでダメージを与え、結果として駆除に繋がるようだ。

このとき、アライちゃんの叫び声が聞こえる。
耳栓をしていても聞こえるとは、不快だ。

何よりも、人の姿をしたアライちゃんが痛めつけられる姿が受け入れられなかった。

そして、ボールが当たるたび、どんどん弱弱しくなっていく。

アライちゃん「あ、あらい、しゃんが、かわいしょう、なのりゃ...」ピクピク

そして、制限時間がどんどん少なくなっていく。

ピーッ

『ゲームシュウリョウ』

結果は...
48 : ◆/87jeglEwfUL [sage]:2018/04/04(水) 21:50:57.45 ID:EJcyKcjm0
アライちゃん「...」シーン

顔の原型は留めておらず、血まみれの体がそこにはあった。

俺『こういうことか...』

人が死ぬ。

厳密には、《人》ではないのだが、人の形をしたものが目の前で死ぬのは衝撃的だった。
体の震えが止まらない。

友人『こういうことだ。』

ゲームを終えた友人が近づいてきた。

友人『アライさんを詳しく知らないお前にとっては、人が殺されているのを見るのと同じかもな。』

俺は、返答が出来ず、立ち尽くすだけだった。

友人『まだ設備はあるけど、見てみるか?』

友人が俺の肩に手を乗せた。

俺は、友人の方をを見て小さく頷いた。
ここで出てしまったら、ここに来た意味がない。

友人『よし、次に行くか。』
49 : ◆/87jeglEwfUL [sage]:2018/04/04(水) 21:53:53.66 ID:EJcyKcjm0
友人『ちなみに、アライさんを痛めつける行為を「アラ虐」っていうんだ。』

俺『「アラ虐」?』

友人『そう。アライさんを虐げる、の略かな?』

俺『その反対が、「アラ信」ってわけか?』

友人『そう。アライさんを信仰する、の略だったかな?』

俺『何で疑問形なんだよ。』

友人『そこまで、把握する必要ないかな、って。』

俺『適当だな。』

俺たちは、移動中にそんな会話をしていた。
50 : ◆/87jeglEwfUL [sage]:2018/04/04(水) 23:12:21.34 ID:EJcyKcjm0
他のゲームは、後日書きます。
51 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/04/04(水) 23:44:00.08 ID:Ub5UiY9A0
乙です
もっとエキサイトするアラ虐スポーツが見てみたい
52 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/04/05(木) 00:07:46.17 ID:88f1pvQw0
>>51
今はゲームセンター編なので、スポーツ編はだいぶ後になる予定です。
ご了承ください。
53 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2018/04/05(木) 14:40:55.46 ID:cr/T7R3mO
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/04/06(金) 01:03:31.28 ID:HZiXolyA0
乙です
いよいよ始まりましたな!
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/04/06(金) 17:59:05.95 ID:XWMH566CO
楽しみに待ってます
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/04/06(金) 22:52:04.55 ID:A3r1/R7q0
最高過ぎる、ここはアラ虐の楽園か
57 : ◆/87jeglEwfUL [sage]:2018/04/06(金) 22:54:37.25 ID:OIVhAQGc0
>>43 での発言撤回します。

1個ずつ、あげるようにします。
最低、1週間に1アトラクションを目標にします。
58 : ◆/87jeglEwfUL [sage]:2018/04/06(金) 22:56:15.64 ID:OIVhAQGc0
<アライパンチ>

俺『何だ、これ?』

縦長の画面とグローブしかない設備があった。

友人『パンチングマシン、って知ってるか?』

嫌な予感がした。
大体の予想が出来てしまったのだ。

俺『アライさんがいないぞ。』

念のため、友人に確認してみる。

友人『まぁ、そこで見てろよ。』

俺『あぁ。』

ピッ

友人は会員証をかざすと、設備の床からサンドバックがせり出してきた。

ウィーン

そこには、十字架に張りつけられたように、アライちゃんが固定されていた。
予想通りだった。

俺『アライちゃんにしては大きいな。』

友人『これ、アライしゃんだぞ。』

区別がイマイチ分からない俺にとっては、同じに見えてしまう。

アライしゃん1「さっさとアライしゃんをかいほうするのら!」ガタガタ

サンドバッグに固定されたアライしゃんは、抜け出そうとしているのか、ひたすら暴れていた。

『フハハハハ! ヒトナンテ、イチコロナノダ!』

無機質な音声とともに、後ろの画面にアライさんが映し出された。

アライしゃん1「そうなのら!」

アライしゃん1「いまのは、られなのら?」キョロキョロ

アライしゃんは声の主が分からずに、辺りを見回していた。
それによって、一時的に暴れるのを止めてしまった。

『ラウンド、ワン! ファイ!』

そして、ゲームが始まった。

ドガン

アライしゃん1「ぎゃびぃ!」

画面の音声に合わせる形で、友人は勢いよくストレートを決めた。
しかも、アライしゃんの顔面にクリーンヒットしていた。

『グワー、ヤラレタノダ!』

機械音声が流れた。
画面上のアライさんは倒されていた。

俺は、起き上がってこないサンドバッグの方を見てみた。

アライしゃん1「...」シーン

一発KOだった。
目や鼻、口といった顔中から、血が流れ出ていた。
もし暴れ続けていれば、致命傷は免れたのかもしれない。
59 : ◆/87jeglEwfUL [sage]:2018/04/06(金) 22:57:18.61 ID:OIVhAQGc0
ウィーン

サンドバッグが倒れたまま床下に下がっていった。
すると、新しいサンドバッグがせり出してきた。

俺『何回やるんだよ。』

友人『全3ラウンドだよ。』

アライしゃん2「うー! はずれないのら!」ガタガタ

サンドバッグに固定されたアライしゃんは、先ほどのアライしゃんと同じように、暴れていた。

『フハハハハ! カタキウチナノダ!』

無機質な音声とともに、後ろの画面に新しいアライさんが映し出された。

アライしゃん2「られかいるのら?」キョロキョロ

今度のアライしゃんも声の主を探すように、辺りを見回していた。
そして、暴れるのを止めてしまった。

『ラウンド、ツー! ファイ!』

ドガン

アライしゃん2「ぼぎゅっ!」

画面の音声に合わせる形で、友人は勢いよくストレートを決めた。
だが、アライしゃんの顔面からすこしそれてしまったようだった。

友人『失敗したなぁ。』

『マダ、ヤラレテナイノダ!』

機械音声とともに、サンドバッグが起き上がってくる。

アライしゃん2「は、はすへえ、おしい、おあ...」ピクピク

顎を砕かれたのか、上手く喋れないアライしゃん。
見るに堪えられない光景だった。

俺は恐る恐る聞いてみた。

俺『チャンスは何回あるんだ?』

友人『各ラウンドで、1回までだな。』

俺『なら、このラウンドはこれがラストか。』

『レディー! ファイ!』

ドガン

今度は顔の上部を狙ったようだ。

『グワー、ヤラレタノダ!』

機械音声が流れ、画面上のアライさんは倒されていた。
60 : ◆/87jeglEwfUL [sage]:2018/04/06(金) 22:57:50.82 ID:OIVhAQGc0
おそらく、サンドバッグに張り付いていたアライしゃんは死んだのだろう。

大体のゲーム内容は理解した。

仕組みは分からないが、後ろの画面のアライさんとサンドバッグのアライしゃんが連動しているようだ。
そして、アライしゃんが死ぬと、画面のアライさんを倒したことになる。

俺『こういうことだろ。』

友人『大体そんなとこ。』

ウィーン

サンドバッグの交換が始まった。
これが最後のラウンドだ。
61 : ◆/87jeglEwfUL [sage]:2018/04/06(金) 22:59:44.48 ID:OIVhAQGc0
アライさん1「このー! アライさんを離すのだ!」ジタバタ

最後のサンドバッグは、先ほどよりも一回り大きい。
そして、アライしゃんではなく、アライさんが固定されているようだ。

『フハハハハ! ココガキサマノ、ハカバトナルノダ!』

無機質な音声とともに、後ろの画面に新しいアライさんが映し出された。
こちらも、今までのアライさんより一回り大きい。

アライさん1「うるさいのだ! このっ! 外れないのだ!」ジタバタ

今までの個体と違い、ひたすら暴れているため、頭が安定していない。
これでは、頭を狙うのは難しいだろう。

『ファイナル、ラウンド! ファイ!』

ドガン

アライさん1「いっ!」

今度のストレートは頭を狙っていなかった。
鳩尾を狙ったのだ。

『マダ、ヤラレテナイノダ!』

機械音声とともに、サンドバッグが起き上がってくる。
アライさんは呼吸困難になっているようで、項垂れていた。

俺『暴れるのが治まったから、頭が狙いやすいな。』

『レディー! ファイ!』

友人『アライさん、大丈夫か?』

友人はアライさんに声を掛けていた。
それに反応するように、アライさんは顔を上げた。

ドガン

友人は顔にめがけてストレートを決めていた。

『グワー、ヤラレタノダ!』

サンドバッグも起き上がってこない。
おそらく、この個体も死んだのだろう。

確認したい気持ちもあったが、やはり見てられない気持ちが勝っていた。

『ゲーム、シュウリョウ!』

画面に、クリアという文字が表示されていた。
どうやら、ゲームは終わったようだ。
62 : ◆/87jeglEwfUL [sage]:2018/04/06(金) 23:00:16.92 ID:OIVhAQGc0
俺『最後のあれ、何だったんだ?』

グローブを外す友人に、声を掛けた理由を聞いてみた。

友人『あーやって、声かけて顔をあげさせないと狙いづらいからな。』

俺『手慣れてるなぁ。』

友人『何回もやればコツは掴めるさ。』

こんなものの何が楽しいのか、さっぱり理解が出来なかった。
63 : ◆/87jeglEwfUL [sage]:2018/04/06(金) 23:00:44.33 ID:OIVhAQGc0
今回はここまでです。
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/04/07(土) 00:09:01.57 ID:2PRMAVjN0
乙です!
読者としては沢山読みたいですが、作者さんの無理のないように…
応援してます!
65 : ◆/87jeglEwfUL [sage]:2018/04/07(土) 00:19:19.82 ID:hz8GN70U0
>>64
単純に、書くネタはたくさんあります。
大雑把に方向性も考えてあります。

詳細に落とし込むことが出来てないだけです。

というより、大量のアライさんが出てくるので、言い回しが被らないように考えるのがツライ。
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/04/07(土) 05:42:19.71 ID:V+HtjhDX0
乙です。他のゲームのプレイ描写も楽しみです
言い回しが被るの気にする人おるんかね?
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/04/07(土) 10:45:52.41 ID:Spj4udpCO
ワンゲームで三匹が死ぬのか
すぐに深刻なアライさん不足になりそう
68 : ◆/87jeglEwfUL [sage]:2018/04/08(日) 00:14:32.81 ID:zaCjXKhS0
<アライ叩き>

俺『モグラ叩き?』

3×3の計9か所に穴が空いた設備があった。
だが、穴には仕切りがあり、中を見ることが出来ない。

しかし、アライさんが見当たらない。
そういうことなんだろう、と理解した。

俺『ここから出てくるのがアライさんなのか?』

友人『厳密には、アライしゃんなんだけどな。』

設備の隣に、ハンマーが提げてあった。
ハンマーの先端を触ってみると、革で覆われていて柔らかかった。
おそらく、中に綿か何かが入っているのだろう。

俺『トンカチじゃないんだな。』

友人『そんなんでやったら、的を外した時に設備が痛むだろ?』

俺『俺は、心が痛んでるよ。』

友人『今回も見てるか?』

俺は頷いた。

友人が設備の前に立ち、会員証をかざした。

『ヨウコソ、タノシンデイッテネ』

また、無機質な音声が流れた。

友人はハンマーを手に取り、構えていた。

『モウスコシ、マッテテネ』

準備中の機械音声が流れる。

俺『待って、って何を?』

友人『裏で、スタッフが仕込んでるんだよ。』

俺『全部壁際にあるのって、そういう理由なのか?』

友人『いつ来るか分からない設備に放置してて、衰弱してるアライさんを倒しても、爽快感が無いだろ?』

友人の感性が理解できなかった。

爽快感?
アライさんに何を求めているんだ?

友人『会員証をかざしてるのは、裏のスタッフに客が来たことを知らせるためなんだよ。』

スタッフは、ある意味地獄の仕事をしているわけか。

『ジュンビ、カンリョウシマシタ』

友人『よしっ、いっちょ叩き潰しますか。』

また、頭を潰されるところを見るのか。
少し憂鬱になるな。

『ゲームスタート』

機械音声とともに、穴の仕切りが取り除かれた。
69 : ◆/87jeglEwfUL [sage]:2018/04/08(日) 00:17:07.63 ID:zaCjXKhS0
アライしゃんA1「ようやく、えられたのら!」プハー
アライしゃんA2「ここは、おこなのら?」キョロキョロ
アライしゃんA3「アライしゃんをかいほうするのら!」ジタバタ
アライしゃんA4「あれか、たすけるのら!」ジタバタ
アライしゃんA5「おかーしゃーん!」ビエーン
アライしゃんA6「アライしゃんは、なにもわるいことなんてしてないのら!」ジタバタ
アライしゃんA7「え、えられないのら!」ピョンピョン
アライしゃんA8「おなかすいたのら!」ビエーン
アライしゃんA9「アライさんはかしこいのら!」ニッコリ

異様な光景だった。
穴からアライしゃんの頭だけが出ていた。

俺『これぐらいなら、出てこれそうなんだけど。』

俺は、疑問に思ったことを口にした。
すると、友人の手が止まった。

友人『手と体を固定するように紐で巻き付けてあるんだって。』

俺『だったら、ジャンプすれば出てこれそうな気がするけど。』

友人『底と足を、紐で固定してるみたいだぞ。』

そういうと、友人はアライしゃんを見回し、腕を振り上げた。

友人『そこだ!』

ボスッ

アライしゃんA8「じびぃ!」ゴキッ

何かが折れる鈍い音だった。
それを見て、ヤバいと思ったのだろう。

他のアライしゃんが穴に隠れようとした。

友人『逃がすか!』

ボスッ

アライしゃんA5「おがっ!」ゴキッ

また、鈍い音がした。

気付いた時には、7つの穴にアライしゃんが引っ込んでしまった。
そして、舌を出し、情けなく死んでいるアライしゃんが2匹いた。

アライしゃんA5「...」シーン
アライしゃんA8「...」シーン

ズルッ

あ、重力に負けて穴に入っていった。

さて、残りの処分はどうするのか?
プログラムで動くモグラ叩きとは違い、出ないという意思であれば、叩くことが出来ない。

俺『それを蹴って脅かすとか?』

友人『いや、自分のものじゃないからマズいでしょ。』

台バンがダメってなると、どうするんだ?
70 : ◆/87jeglEwfUL [sage]:2018/04/08(日) 00:18:04.88 ID:zaCjXKhS0
アライしゃんA1「...」ジーッ

1匹、頭を出してるな。

ボスッ

あ、カラぶった。

アライしゃんA1『のらららら! まぬけなのら!』ケラケラ

これがキッカケとなったのか、他のアライしゃんも真似をしだす。
それに食らいついていく友人。

完全に、アライしゃんに弄ばれてるじゃねぇか。

でも、その間に1匹は仕留めてるんだよなぁ。

アライしゃんA3「え...」ピクピク

こいつも重力に負けて、穴に入っていった。
そのうち、死ぬんだろう。

残りは、6匹。

友人『残りの奴ら、疲れてるみたいだな。』

俺『そうなのか?』

友人『ハアハア、言ってるぞ。』

すると友人は、ハンマーを元の位置に戻すと、設備から下がった。

俺『どうした? まだ終わってないぞ?』

友人『これから始まるんだよ。』

俺は理解が出来なかった。
71 : ◆/87jeglEwfUL [sage]:2018/04/08(日) 00:19:19.06 ID:zaCjXKhS0
『アナカラ、デテコナイネ』

キュイィン

何か、金属音がする。
しかも、穴の中が騒がしいような...

友人『心しておけよ。』

俺『何がだよ。』

俺の問いかけに、友人は無言で設備の方を指さした。

『カットノジカンダヨ』

ギャウィギュウィギャウィギュウィ

何かを切る鈍い音と、アライしゃんの叫び声が聞こえてきた。

アライしゃんA1『ぎぃにゃー!』
アライしゃんA2『やべげー!』
アライしゃんA4『たしゅげ!』
アライしゃんA6『ぴぃぎゅる!』
アライしゃんA7『のびゃー!』
アライしゃんA9『おが!』

しかも、9つの穴から血飛沫のようなものが噴出している。

俺の理解が追い付いていなかった。

友人『一定時間、全てのアライしゃんが出てこないと、あぁやって強制終了になるのさ。』

俺『あれ、どうなってるんだ...?』

友人は俺の顔を見た後、設備の方を見た。

友人『筒の半分くらいの高さに丸ノコがセットされていてな。』

その言葉で、大体理解した。

俺『すまん。続きは聞きたくない。』

友人『悪い。配慮が足りなかったな。』

そんなやり取りをしていると、機械音声が流れてきた。

『ゲームシュウリョウ』

そして、穴の仕切りが締められた。

『マタ、アソンデネ』

ちなみに、仕切りが締まるまでの間、呻き声が聞こえていた。
おそらく、穴の中のアライしゃんが辛うじて生きていたのだろう。

気持ちが悪かった。
72 : ◆/87jeglEwfUL [sage]:2018/04/08(日) 00:19:52.05 ID:zaCjXKhS0
俺『こんな悪趣味なゲーム、考える奴の気が知れないな。』

友人『おい、顔色がヤバいぞ。』

このゲームは、かなりダメージがデカかった。
だけど、俺は首を振った。

俺『次に行こうぜ。』

友人『出なくていいか?』

俺『次は、軽めで頼む。』

友人『分かったよ。』

俺たちは次の設備へと向かった。
73 : ◆/87jeglEwfUL [sage]:2018/04/08(日) 00:20:18.51 ID:zaCjXKhS0
今回は、以上です。
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/04/08(日) 01:12:23.36 ID:mVWXR25iO
乙です
75 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/04/08(日) 03:00:31.39 ID:sRqvr4MI0
乙。このゲームは特にアライしゃんの消費が激しいね、いつでもプレイするのが難しそう
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/04/08(日) 09:58:04.65 ID:T20ZaGng0
アライしゃんを叩くのがめんじゃなくて、最後丸ノコで裁断されるのを見て楽しむがメインなんだろうか?
次のゲームにあわせて生き残らせようとしないのは、それだけアライが大繁殖してるということか
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/04/08(日) 12:39:57.52 ID:80uYCx1T0
野生のアライちゃんがいなくなったらここで養殖しそう
78 : ◆/87jeglEwfUL [sage]:2018/04/08(日) 13:22:23.81 ID:zaCjXKhS0
現在書こうとしている、残りのゲームセンターネタは以下の通りです。

UFOキャッチャー
エアホッケー
ピンボール

他にゲームセンターにありそうなもので、アラ虐出来そうなものってありますか?
ヒントください。
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/04/08(日) 13:58:39.59 ID:yszYIVqqo
競馬ゲームでアライちゃんがゴールするまでに色々な罠が仕掛けてあるとか
メダルゲームでアライちゃんを箱に閉じ込めて、当たりを出すと上からメダルが
降ってきて圧死するとかですかね
80 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2018/04/08(日) 18:00:09.49 ID:ZkqUM/VB0
操り人形形式でストリートファイター(早く終わらせるために拳にスパイクを付けて)

ヨチダービー(メダルゲーの競馬形式?)。シュレッダーに追いかけられる。勝っても負けても殺処分

レース系のゲーム。ランニングマシンの上をヨチらせる。左右の誘導は電気ショック
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/04/08(日) 21:30:09.61 ID:CinkTMGpO
アライさんを轢くのを競うレースゲームとか?
ゲーム内でアライさんを轢く事に裏で処分とか
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/04/08(日) 21:36:28.97 ID:T20ZaGng0
>>80
アラスコのシロウ先生がアライさんの脳に電子回路を取り付けて、
ゲームのコントローラーで操作が出来た実験をやってたな
アライさんを操作して対戦格闘ゲーム(リアルけもフレふぁいと!)とか面白そう
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/04/08(日) 23:27:22.91 ID:dhglw8wZ0
電撃イライラ棒ならぬ電撃ヨチヨチ棒
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