淫魔の国と、こどもの日

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312 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/13(水) 23:06:04.02 ID:OJMDy9A40

*****

数日しても、相変わらず体格は戻らない。
淫魔の国の奇病を患った時とは違い、戻る兆しがまるでない。
堕女神が解呪を試みても、魔術呪術の類いではないようで――――まるで効き目がない。
ならばと魔法薬を煎じてみても、その苦みに胃がひっくり返りそうな思いをして終わりだった。

そうしているうちに、皮肉にも体は段々と慣れていってしまい――――今となっては、以前と遜色なく動き回る事ができるようになった。
もはや階段でつんのめる事もなく、段差の大きさにも慣れて、目を閉じていても昇降できる。

その一方、堕女神はまだ身体の小ささに不慣れなのか――――転びこそせずとも、危うい足取りがまだ残る。
サキュバスBが姉に見えるほどの体躯にもどかしさを感じるのか、口数も少し減った。
喜々として“いじり”を加えようとしたサキュバスCすら気を遣って黙ったほどだ。

313 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/06/13(水) 23:06:57.62 ID:OJMDy9A40

勇者「……もどかしい」

サキュバスB「んぇ……?何です陛下、いきなり。どうしました?おっぱい触ります?」

勇者「触らない。……普段言わないだろう、お前。そういう事」

サキュバスB「そうですかね?……いや、反省します。どうも……調子が狂ってるのかも」

屋外の洗濯場で洗い替えのシーツを干している彼女へ、聞かせるでも無くぼやく。
するとサキュバスBは時折振り返りながらも、手を止めずに次々と物干しのロープに洗濯物を引っ掛けていく。
燦々と輝く日は、暗く沈んだ勇者の顔とは違い、明るく昼前の城を照らし出していた。

勇者「……はぁ、もどかしい」

サキュバスB「さっきから言っていますけど……何がです?何かあったんですか?お姉ちゃんで良ければ聞きますよ」

勇者「……大した事じゃないんだ」

サキュバスB「みんなそう言いますよー。……不安、なんですか?」

勇者「ああ、もちろんそれもある。だけど……」

サキュバスB「だけど?」


勇者「酒が飲みたいんだ」
314 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/06/13(水) 23:07:53.46 ID:OJMDy9A40

サキュバスB「うっわあ……」

勇者「……堕女神も。サキュバスAも。どれだけ言っても出してくれない。サキュバスCにいたっては『坊やはミルクだろ?』と鼻で笑いやがる」

サキュバスB「……Cちゃん、使ってみたかったセリフなんでしょうかね?」

勇者「そればかりか、『おうちで大人しくしてろ、無料ミルクサーバー』だとよ」

サキュバスB「うわっ……。ひど。……で、何でわたしに?」

勇者「もう、お前に頼むしか……」

サキュバスB「いや、堕女神さまとAちゃんが駄目ならわたしも駄目ですよ。今は子供なんですし……御控えになられたほうが」

勇者「別に飲んだくれたいとは言ってない。……このままだと怖い。自分が大人だった事すら忘れそうだ。頭がおかしくなる」

サキュバスB「……マジメですよね、陛下。でもお酒飲めたら大人、っていうのがすでに子供っぽい考えと言いますか……」

勇者「お前に言われると死ぬほど腹が立つな」

サキュバスB「……というか、陛下ってそんなにお酒好きだったんですか?」

勇者「……いや、元々は。弱くはないけど、好きじゃなかった」
315 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/06/13(水) 23:08:35.10 ID:OJMDy9A40

酒には、いつも思い出がある。
人間界で、“僧侶”と“魔法使い”と交わした安宿の、安物の葡萄酒での乾杯。
“戦士”を迎えた地での、数樽を空けた麦酒のひと時。
草原の騎兵達とは馬乳酒を過ごして、氷の諸島の戦士達とは蜂蜜酒とホットワイン。
巨人達の国と噂されていた、人々も馬も全てが巨体だった国では無味無臭の、火がつくほどキツい蒸留酒を。
呪われた島へ行くために無茶を通してくれた武装船の乗組員とは、揺れる甲板の上で糖蜜を利かせた強い酒を酌み交わした。

冒険の旅は――――世界の人々と語り合い、杯を交わし合う旅だったからだ。

人間界を偲べる数少ない手段のひとつが、“酒”なのだ。

サキュバスB「なるほど。……ともかくお酒はダメです」

勇者「ここまで話聞いておいて……?」

サキュバスB「ダメなものはダメです。……それはそれとして。陛下。覚えてますか?……お風呂場で、訊いたの」

勇者「風呂場……。ああ、覚えてる」

彼女から、もし訊ねられるなら――――という体で聞いた、問いかけ。
否――――思い遣りだ。
316 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/06/13(水) 23:09:07.76 ID:OJMDy9A40

魔王を討ち、人の世界に留まるのをやめようと思った最期の時。
その時――――“さみしく、なかったか”。
“大切な人に、お別れをきちんと言えたのか”。
“食べたいものは、あったのか”。
“憧れていた事はあったか”。

勇者「――――寂しくは、なかったな。だって、俺は……あの時。魔王城の崩れる時。一人じゃ、なかったんだ」

サキュバスB「……そうなんですか?」

勇者「二つ目。……結局、お別れを言えたのは仲間にだけだったな」

崩れる城の中で、最後に話せたのは三人の仲間達だけ。

勇者「……でも仲間に話せなくても、敵だから開ける心だってあった。意外と、すっきりしてたよ。あの時は」
317 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/06/13(水) 23:10:06.12 ID:OJMDy9A40

サキュバスB「……とりあえず、そろそろ戻りましょっか。わたしもお仕事終わっちゃいましたし……何か甘いものでも作ります?」

勇者「絶対に遠慮する」

サキュバスB「ひどっ!?」

勇者「酷いのはお前だ。この間……お前が取り分けただけのケーキの味が変わったんだぞ。どういう事なんだ、あれは。何をした」

サキュバスB「分かりませんよ!ただ普通に切ってお皿へ分けただけなのに……あんな酷い……うぷっ」

勇者「どうしてただ切るだけでマズくなるんだ……意味が分からないぞ。何の能力だ」

サキュバスB「う、ぐっ……。そ、それはそうと!陛下、お聞きになりましたか?また、今度は城下街で……真っ白い羽根が落ちてたそうですね」

勇者「何?」

慌てて矛先を逸らした彼女の言及は、思いのほか――――関心を惹いた。
この国に、白い、それなりに大きな羽根を持つ生き物はいない。
サキュバスAが拾ってきたそれは、大型の鳥でなければ持てないサイズのものだ。
淫魔の国に決して落ちないはずの白い羽根。

勇者「……穏やかじゃないな。仕方ない、堕女神のもとへ戻るよ」

サキュバスB「それじゃ、行きましょう。あ、後で差し入れに」

勇者「いらんっての!」

サキュバスB「それとも出し入れの方がいいですかね?やだなぁ、おませさん」

勇者「…………」
318 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/06/13(水) 23:11:24.75 ID:OJMDy9A40

サキュバスAのみならず、ここ数日ではサキュバスBすらこの調子だ。
舞いあがっているのか何なのか、からかわれる事があまりに多い。
そんなところもまた、一刻も早く元の姿に戻りたいと思う原因の一端だが――――。

――――方法が、分からない。

酒の味も忘れかけ、膝小僧に風を受ける短ズボンの穿き心地にも慣れてきた。
目線が低くなってしまっているせいで、城の内外を行き来する淫魔達の腰の高さになり、必然的に、見えてしまうのだ。
彼女らの張り詰めた太もも、スカートを持ち上げて生えた尻尾、くびれて腰骨と筋肉が艶めかしく浮いた腰。
わざとらしく、あてつけがましく、ふりふりと振って歩く柔尻まで。
時にはわざわざスカートをめくって悪戯っぽく見せつける者までいた。

そんな、慣れたくもない“慣れ”の日々が続いて。

唐突に――――それは、訪れた。

319 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/06/13(水) 23:12:55.57 ID:OJMDy9A40
今夜の繋ぎ分投下終了です

ではまた次回
320 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/13(水) 23:24:30.98 ID:M6q2UcDQo
お疲れ様です
321 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2018/06/13(水) 23:25:35.62 ID:iqcE7sm+0
やはりシリアスパートも良い・・・
人間界で酌み交わした酒からどんな国だったのか見えてくるらへんが好きです
322 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/14(木) 00:14:10.04 ID:h47CZgGP0
乙!
サキュBとの小気味よい軽口が新鮮でした
「切り分けたケーキの味が変わる」には草
323 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [Sage]:2018/06/18(月) 09:19:03.01 ID:N+R16MMRO
作者多忙なんだな...(・ω・`)
324 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/18(月) 22:46:41.32 ID:xNoOLc570
申し訳ない
推敲修正に加え、書き溜めをちょっとやりたくて長引いてしまった

あと5〜6回分ぐらいの投下で今回の本編を閉じましょう




本編はな
325 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/06/18(月) 22:47:53.12 ID:xNoOLc570

*****

ちょうど、変化から二週間目の夜中の事だった。
夜中、散歩の一環として眠気を呼ぼうと運動を兼ねて歩いていた時。
ふだんは城内、出ても中庭に面したテラスに出て夜の締まった空気を吸うだけだったのに――――今日は、違った。

城下の酒場から預かった、あの“仔豚”が気にかかったのだ。
間違いなく勇者の胃に入り、堕女神と淫魔二人の酒宴の肴にもなったというのに、依然として満足な五体を宿している、無尽の肉を供する豚。
あれ以来、特にその周りへ変化は起きていない。
だが、聞けば――――実際に、城の淫魔がその豚から肉を切り取っても、翌朝には本当に元に戻っていたという。

その肉が、現在の勇者と堕女神へ影響を与えたかは分からずとも――――その異常性は、とても捨て置けるものではなかった。

魔法を使えるでも無く言葉を話せもしない、しかし無限に再生する豚。
それを無視など、できるはずもなく。
326 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/06/18(月) 22:49:16.08 ID:xNoOLc570

勇者「……よ」

ナイトメア「またきた。……ひまくそ国王」

勇者「……相変わらず口悪いな」

ナイトメア「さしいれぐらい持ってこい。なついてほしく、ないか」

厩舎に入れば、すぐに出迎えてくれたのはこの厩の主。
房のひとつに高く積み上げた寝藁の上に仰向けに身体を投げ出して――――ずぶずぶと大きく沈ませて寝そべったまま、
顔も向けずに辛辣な言葉を浴びせかけられる。

勇者「あの豚は?」

ナイトメア「いまはおくのへや。……いそうろう、ふやすな。せまい」

勇者「いや、狭くはないだろ……」

ナイトメア「……わたしのたてがみ、かじる。ぬけた。とてもいたい」

勇者「……遊んでやってるのか」

ナイトメア「たまに。何しにきた」

勇者「様子を見に来ただけだよ、寝る前に。何か変わった事はあったか?」
327 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/06/18(月) 22:50:09.37 ID:xNoOLc570

そう訊ねると、突如ナイトメアの体が藁山の上で反転し、転げ落ちるように身を投げ出して降りる。
直後――――その小さく細い体の着地とは思えないほどの重い音とともに、厩が揺れた。

ナイトメア「なにか、じゃない。なきごえがうるさくて寝れない。かまれる。なんとかしろ」

勇者「それに対しては、その……」

ナイトメア「やくそくしろ。今、ここで。しろ。……するんだ。しろ」

立ち上がりながら恨みがましく見つめる気迫に押され、返事をするでもなく――――つい、頷く。
奥の馬房から物音に混じり、喉を低く鳴らすような鳴き声がようやく聴こえた。

ナイトメア「あいつ、さっさとハムにしろ。ソーセージでもいい」

勇者「しても元通りになるぞ、きっと」

ナイトメア「なら、ずっと焼きっぱなしにしておけばいい」

勇者「地獄か……?」

ナイトメア「やつにじごくをみせてやる。ぶたのようになけ」

幼女の姿のまま、そら恐ろしい台詞を吐いてしまう彼女へいささか戦慄するとともに――――その仔豚がいるという、奥の馬房を目指す。
328 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/06/18(月) 22:50:38.87 ID:xNoOLc570

果たして、そこには……今しがたの地獄の責め苦の相談を聞いていなかったように、仔豚一頭には広い房の片隅に“闖入者”の姿がある。
一番低くに差し渡した柵がわりの馬栓棒の真下を、その気になればくぐりぬけられるだろう。
本来は馬を止めて置くための馬房であり、仔豚を入れてはおけない。
恐ろしい牢名主までいるというのに――――当の豚は、先ほどの物音で目が覚めたか、鼻をふごふごと鳴らしながら馬房の中をうろつき回る。

勇者「……見れば見るほど、普通の豚だよな」

その肉を削り取ったというのに、豚はピンピンとして――――毛艶も整い、健康そのもので今もいる。
勇者と堕女神に降りかかった災難と関係があるのかどうかは、未だ怪しい。
試しにもう一度捌いて食べてみようと思いはしたものの、何か別の事が起きるという懸念のため、却下となった。
最後の確証が持てないままいくら調べても、“再生する”という特性以外は何も掴めない。
無論、淫魔の国にこんな動物は存在しない。

まさしく――――降ってわいたように現れた、“謎の豚”なのだ。
329 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/06/18(月) 22:51:15.37 ID:xNoOLc570

二本渡した柵がわりの棒を飛び越え、馬房の中へ踏み入る。
獣臭は感じず、むしろ涼やかだった。
敷かれた寝藁を踏み締め、近寄れば仔豚は警戒もせず、むしろ“撫でろ”とでも言うように近づいてきた。
それを見て――――勇者は、思い出した事もある。

勇者「……何だ?人慣れしてるな、お前」

警戒せず、積極的に寄ってくる。
サキュバスCに対してすらこの仔豚は物怖じせず、鼻面を、体をこすりつけていた。
それはすなわち――――この仔豚には、飼い主がいるという事に他ならない。
警戒心のなさは、野性の世界で生きていたものではない証明だった。

だが、この仔豚は淫魔の国、少なくともその周辺界隈に生息する生物ではない。
勇者は膝立ちのまま、適当に撫でてやりながら――――その身体を探ってみる。
もしも畜主がいるとすれば、どこかに焼き印が施してあるかもしれない。
ひと通りは調べてあり、今さら見つかる訳もあるまいが――――せめて、何か手がかりでもあればと。
当然ながら焼き印などなく、目印がわりの毛刈りもなく、蹄の手入れは多少荒れているが……これは、淫魔の国へ来てからのものだろう。

故郷の村にいた頃。
隣家の豚の世話を手伝っていた頃の事を思い出すうち――――自然と、懐かしくなった。
330 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/06/18(月) 22:51:45.67 ID:xNoOLc570

父の木槌の音に返事をするように混じる、庭へ放した鶏の声。
何も起こらない、何にも脅かされない、何も無い日々をただ安穏と送っていた、“勇者じゃない日々”の事が。
故郷に残した父母と妹、星々を眺めながら、必ず戻ると約束した幼馴染。
サキュバスBの言ったとおり――――お別れは、言えなかった。

出立の朝も、村の皆が目を覚まさぬうち、太陽がようやく顔を覗かせた時間に、誰も起こさずに発った。
別れは言えず、送り出す言葉も聞けず。
ただ――――朝焼けに染まる村へ背を向け、滲み波立つ視界に赤い灯を受けて、“勇者”として世界へ向かった。

勇者「遠くに、来たんだな」

ぽつりと呟くその言葉は、目の前の迷い仔豚へ。
農民から勇者へ、そして淫魔の国の王になった――――自身と、その両方へ向けてのものだ。
問いかけの意味など知るはずもない仔豚は小首を傾げ、ぷきゅっ、と喉を鳴らして――――ぷい、と離れると寝床へ体を横たえ、眠った。

勇者「本当に……懐かしい、なぁ。……っ?」
331 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/06/18(月) 22:52:28.64 ID:xNoOLc570

そう、独白すると――――右側。すなわち厩舎の廊下、柵棒をすり抜けるように、風とともにこぼれおちて掌を撫でたものに気付く。

勇者「……これは」

薄暗い馬房の中で、それでもはっきりと見て取れたのは――――灯火を弾くように光る白銀の羽根だ。
さながら大剣のような形にぴんと張り詰めた、白鳥の風切り羽根。
それがひとつ、ふたつ。
サキュバスAが見つけて渡してきたものではない。それは今、執務室にあるはずだ。

それとともに馬房の外に、今まで覚えのないような気配が感じられた。
その気配に色を付けるとするのならば寂しげに燻された白銀。
黒でも、紫でもなく。尖り、鈍った、使い込まれた武具のような曇った白銀の気配。
曇天の下で流血とともにひとり立つ孤高の英雄――――そんな光景を幻視するかのようだった。

加えて、確かに――――静かに、細い息遣いがある。

ゆっくり、ゆっくりと、視線を先導させるように首を回して振り向く。
そこにいる者は、確実に……この城の者ではないから。

???「――――そこで、何をしている?」

誰何する声は、誰のものでもない。
まして、この城、この国の王へ向けるものではない。
332 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/06/18(月) 22:53:33.05 ID:xNoOLc570

勇者「…………い」

???「いつから、ここにいるのだ?」

返そうとした言葉を遮られ――――訊こうとした事を、訊かれた。
その“何者か”のなりは、異様なものだ。
足を固めるのは、素肌を覗かせながら脛までかかる革のブーツ。
少し上がれば眩しい太ももを大胆に覗かせた白のスカートを腰のベルトで止め、
左腰に留めた鉄輪にむき出しの直剣が鞘代わりに鍔を掛けるように差されている。

袖なしの胸甲は光沢ある緑に輝き、細い肩を覆う肩当てもまた同様。
そこから伸びる二の腕は暗闇の中でもはっきり見えるほどに白く艶めき、指先にいたるまで隙が無い。
右手に持つ槍もまた研ぎ抜かれており――――業物である事は疑いようもなく
そればかりか、人間界で目にした如何なる名槍ですら叶わない神秘のような輝きを持つ。

???「……淫魔め。人間の子と豚を同じ檻へ処すか。何という事か」

白磁の如き肌をもつ顔は、どこか愁いを帯びた、それでいて、したたかな美しさを帯びた女のものだ。
そして、羽根の正体――――肩に掛けた白鳥の羽衣が、虚空へ流れる長い栗毛を浮き立たせていた。

???「心配はいらない。私に任せよ。……怖がらずとも良い。私はワルキューレ。其方を、無事に連れだしてみせよう」

333 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/06/18(月) 22:55:28.94 ID:xNoOLc570
今夜分を投下終了でございます

いくらなんでも五日は空け過ぎだぜ自分……


では、ひとまずまた明日お会いしましょう
334 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/18(月) 23:09:09.25 ID:iDBoS90V0
乙!
急展開きた
335 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/18(月) 23:17:52.05 ID:P3IASCJ/0
おっつおっつ。
主よ、「本編は」と言ったな。

楽しみにしてます。
336 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [Sage]:2018/06/18(月) 23:46:54.33 ID:8XAcHzHn0
ワルキューレ本編登場キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
337 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/18(月) 23:57:48.14 ID:iTQa5o4n0
無かったことにされたワルキューレ?
338 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/19(火) 00:20:42.53 ID:MjfQL8Z7O
ワルキューレさんの勘違いとドジっ娘属性にポンコツパワーをぶち撒けてるのに凛々しい美人感好き乙
339 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/19(火) 00:36:37.54 ID:rOxNxJlqO
ナイトメアかわいい。
マジで好き。
340 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/19(火) 01:03:32.60 ID:99pFhSrqo
ワルキューレ!?
341 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/19(火) 12:40:22.11 ID:EM0OY/zjO
『勇者に負けた』ワルキューレか、『新たな』ワルキューレかで、天魔大戦が発生しかねないな・・・。
342 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2018/06/19(火) 14:10:10.76 ID:DM2HL4180
異常性を持った仔豚・・・確保、収容、保護
343 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/19(火) 23:16:09.54 ID:iDptxh1+o
オブジェクトクラスは?
344 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/19(火) 23:31:53.64 ID:yeC697wZ0
こんばんは

予定通り今日の分を始めましょう
345 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/06/19(火) 23:33:29.43 ID:yeC697wZ0

勇者「何……で……ここ、に?」

羽衣からこぼれ落ちる白羽は、厩舎の中に弱く吹き込む風に運ばれる。
堂々たる立ち姿は、人間界で伝え聞いた戦乙女の伝説、そのものだ。
氷の島々に生きた男達が心に描き、その“迎え”が来ると信じて戦った――――麗しの介添達。

よもや目に出来るとは思えなかった。
ましてや、この淫魔の国で――――。

ワルキューレ「気にする事では無い。子供。それより、今はここから逃げる事だ。君と、もうひとつ……“それ”もだ」

房内にいる、もうひとつの生き物に鋭い視線が注がれる。
寝息を立てたばかりの仔豚は、彼女の気配にも動じずに眠りこけたままだ。

勇者「……こいつを?」

ワルキューレ「我らが許より逃げ出してしまったのだ。どこをどう通ったかは分からんが、そもそも天界から何故こんな……まぁ、それは良いか」

勇者「天……」
346 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/06/19(火) 23:35:03.11 ID:yeC697wZ0

ワルキューレ「それにしても、まぁ……随分と肝の据わる子もいたものだ。将来が有望だな。さて、いつまでもこうしてはいられないな。
         この畜舎から逃げるぞ。牛馬と同じ扱いとは……酷い事をする」

勇者「待った。馬……?女の子がいなかった?」

ワルキューレ「……ふむ?君とその豚、それと……あぁ、白馬が一頭いたか。良い毛並みをしていた。
         特に私を見ても何も……。ともかく、子など他にいないぞ」

勇者(……あの野郎……!)

心中で呟くと、あてつけのように“馬”の鼻息が聴こえた。
この状況でなおも無関心を貫く違和感もあったが――――それより今は、情報を引き出す事が先決と考えられた、が。

ワルキューレ「さぁ。淫魔どもに気付かれる前に発つぞ。心配はいらん。私が人界へ送ろう」

彼女はあくまで早々にここを去る気のようであり、柵棒も音を立てぬようすでに外されていた。
呼びかけられた仔豚は“主人”の姿を認めて、引っ込んでいた片隅から出てその足もとをうろついている。
347 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/06/19(火) 23:36:50.93 ID:yeC697wZ0

この、異界からの侵入者に対するに――――剣は持ってきていない。
雷を射掛ければあるいは通じるかもしれないが、相応の反撃があるはずだ。
いつまで経っても馬房から出ようとしない勇者を見て、段々とワルキューレは訝し気な表情へと移っていき、
槍の石突で木の床を穿つようにしながら手招きしていた。

ワルキューレ「どうしたというのだ……。よもや、淫魔に何かの魔術でも掛けられたか」

何よりまずい事に、この戦乙女は慮る声こそかけてきているが……その実、一瞬たりとも警戒を解いていない。
疑いをかけられている訳ではないだろうに――――それでもなお、不用意に動けばその槍がいつ閃くものか読めない。
声を出す、口笛を吹く、雷を一発鳴らす。
どう動いても制圧されるだろう。
何より今は、無力な子供の姿であるというのが――――最も大きい。

ワルキューレ「さぁ。……人間界に帰してやる。ここにいる事が君の本懐ではあるまい」

しびれを切らしたように、彼女に手を差し伸べられた。
その時――――勇者の脳裏を過るものがあった。

世界を跨ぐ選択を問われた、“勇者”の最後の日。

ワルキューレ「……いい加減にしろ、何をためらう?人間だろう、君は」

あの時、答えた言葉は。

勇者「……行かない。俺はここにいる」
348 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/06/19(火) 23:38:46.56 ID:yeC697wZ0

ワルキューレ「……何と。いったい何を言っているか分かっているのか?それともよもや、他に人質を……」

勇者「違うよ。俺はこの国にいる。しなきゃならない事が――――まだ、ここにはあるから」

ワルキューレ「理解できん。君。……ここにいては吸い尽くされるだけだぞ」

勇者「そうだとしても。例え、それでも。しかしそれでも。俺は――――戻らない」

人間界には、戻らない。
今ならばきっと、人としての生を歩み直せると分かっていても。
故郷に戻り家族に会う事はできないとしても――――もう一度、“ヒト”としてやり直せるのに。

ワルキューレ「問うて何だが、やはりそうは行かぬ。こんな場所は、人の子のいるべき所ではない。力づくででも――――」

がしゃ、武装の音を立ててワルキューレが一歩、聞き分けのない子を叱るように馬房へ踏み入る。
勇者は身構え、後ずさりするが――――その時、彼女の肩越しに見えた影がある。

ワルキューレ「っ!?」

独楽のように目の前で白銀の乙女は翻り、右手に携えていた槍にて“影”の頭部を目掛けて突き出す。
が、その鋭い突きは仕草の最中、振り抜く事もできないまま不自然な体勢で止められていた。
見れば“影”が――――鏃のように尖った尾の先端で槍の穂先を突き合わせるように防ぎ止めていた。
散った火花に煌めいた、薄暗い厩の中でもはっきりと見て取れる妖しく揺らぐ紫水晶の瞳が勇者を見つめた。



サキュバスA「未成年誘拐は見過ごせませんわね。……“事案”と見てよろしいかしら?」
349 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/06/19(火) 23:41:29.27 ID:yeC697wZ0

ワルキューレ「誘拐はどちらだ。そして貴様は……何者だ」

サキュバスA「お馬鹿さん」

ワルキューレ「何?」

サキュバスA「“ここ”がどこかはお分かりでしょう。闇に忍ぶ黒翼の美人。それでも名乗らなければ駄目かしら?……それにね」

押し合う槍と尾の尖端は拮抗したまま震える。
ぐん、とサキュバスAの身体が沈み込み――――穂先どうしを突き合わせ止めたまま、ゆらりとしなだれかかるように距離を詰める。
直後、すぐに――――

サキュバスA「“サキュバス”は誘拐などしない。ただ、いつだって――――“誘惑”するのみよ」

勇者の目で辛うじて終えたのは噴き上がる旋風のような、真上に向けての切り裂くような一蹴。
直前に防ぎはすれど衝撃は殺せず馬房の屋根を突き破り、蹴りを受けたワルキューレは夜の空へ打ち上げられた。

勇者「……!」

勇者は降り注ぐ梁の木片、屋根の破片と舞い散る埃から身を守る。
やがて、埃が落ち着いた頃にすぐ前を見れば、彼女が微笑みながら佇んでいた。

サキュバスA「陛下、ご無事ですわね?」

勇者「ああ……一体、何が?」

サキュバスA「説明でしたらあとでじっくり、ねっとりと。ともあれ、あの戦乙女をむざむざ逃す手はございませんわ。
         さて――――舐め擦り蕩かして差し上げましょうか」

勇者(……言葉はよく分からないが……とにかくすごい自信だ!)
350 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/06/19(火) 23:43:51.74 ID:yeC697wZ0
今夜終了、五レス分だが文字数は割と多いのでお許しを……。

ワルキューレは今回正式登場になりました
以前のあれは、剪定事象とかそういう感じで思っていただけると助かります

それでは、恐らくまた明日
351 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/20(水) 00:15:32.67 ID:7NQvR26a0
よかった道に迷うようなうっかりワルキューレは夢だったんだね!!
352 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/20(水) 00:22:44.31 ID:p0xG95+lO
堕女神が幼女化してるから、ポチの出番になるのかな・・・。
353 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/20(水) 00:43:14.59 ID:5nH3ivomO
あのワルキューレ見てから戦乙女=真面目だけどうっかりポンコツ娘って図式が脳内に乙乙
354 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/20(水) 03:25:44.26 ID:gfqsIGRbo
戦乙女と触手はセットだよな?
355 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [age]:2018/06/21(木) 09:12:54.87 ID:2twO6dYX0

サキュバスAの安心感たるや
356 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/21(木) 09:59:24.09 ID:KWTzNmwpO
何気にサキュバスAの戦闘描写は初だった気が。
357 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2018/06/22(金) 18:07:52.27 ID:PB2qx1zk0
おいぃぃ
仕事サボりつつ読み耽ってたらまだ完結してないやんけ(ノシ 'ω')ノシ バンバン
続きは全裸待機するしかねーな
358 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/22(金) 23:50:37.34 ID:3dPT9Jgf0
こんばんは、誤字をちょっと見てから投下いたします

十分少々お待ちを
359 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/23(土) 00:03:44.67 ID:TzAQuzSE0

追って厩舎の屋上へ飛び上がったサキュバスAの姿を追い、勇者は外へ脱出する。
ナイトメアの馬房の前を通りすぎる頃にはすでに裂かれる空気の獰猛な唸りと、戦乙女の気迫、
そして媚態を混じえて挑発するかのような息遣いが聴こえていた。
外に出て、改めて厩の屋上を見やると――――。

ワルキューレ「……あくまで邪魔立てするか、貴様」

サキュバスA「ええ。……あの可愛い坊やを連れて行かせる訳にはいかないの」

上弦の月が、対峙する白と黒を照らし出し見守っていた。
見上げて、右側には白鳥の羽衣を夜風にはためかせ、右半身に構え、その穂先をゆらりと向けて淫魔を射圧する戦乙女がいた。
微かな風を受けて栗色の髪が揺れ――――こぼれ落ちる白鳥の羽根が舞い、月光に煌めく。

左手側には、ワルキューレの槍を嘲るように無手のままで背筋を伸ばし、爪先まで揃えて正対する蒼肌と黒翼の魔。
その表情はあくまで涼やかであり、突きつけられた槍も、向けられる凄まじい殺気にも動じない。
しきりに手指の股や指先をねぶり、挑発的な仕草も忘れず――――臨戦態勢の戦乙女に、彼女はただ淫魔としての妖艶さを忘れず、対峙する。

サキュバスA「……ふふっ」

再び打ち合う時は、彼女が唾に光らせた指先をくいくいと曲げる、開戦の合図で始まった。
360 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/23(土) 00:04:23.70 ID:TzAQuzSE0

*****

ワルキューレ「貴様ッ……!」

サキュバスA「ふふっ……そんなに太くてご立派な槍をお持ちですのに……貫けないのでは、ねぇ」

厩の屋根の上、白刃の交錯する残響が連なる。
離れている勇者にさえ聞こえる、空を破裂させる槍の唸りは生半な熟達によるものではない。
何百、何千年と鍛え続けた武技が到達する高みにあるものだ。

だが――――そんな、文字通りの神域の槍は、ひとりの淫魔に届かない。
常人には目で追う事さえできず、恐らくは貫かれてなお気付かないであろう一突きが――――ほんの一度たりとも、かすりもしない。
それも狭く、足を開いて立つ事さえできない幅の屋根の頂で。
サキュバスAは余裕の表情を崩さないまま、踊るように身を交わしていた。

ワルキューレ「貴、様……ただの、低級な淫魔では……!」

サキュバスA「いいえ。私はただの……一介の淫魔でしてよ。……その槍、納めてはいただけないかしら?私、手荒な事は嫌いよ」

ワルキューレ「我が槍を捌きながら、どの口で言うか?」

サキュバスA「……そうねぇ、哀しい事だけれど。……嫌いだけれど、苦手じゃないの」
361 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/23(土) 00:05:54.26 ID:TzAQuzSE0

返答代わりに繰り出された渾身の突きをいなして、サキュバスAは空中へ躍り、
気まぐれな折れ線のような鋭角の方向転換とともに空中を飛翔し、ワルキューレの懐へ迫る。
胸甲に向けて突き出された貫手はしかし虚しく空を切り、後退したワルキューレも彼女に倣うように羽衣をはためかせ、飛翔する。

月夜を背追い、ふたつの翼は幾度も交錯して澄んだ残響音を立てた。
サキュバスAの爪が、翼爪が、尾が幾度も――――ワルキューレの槍と、胸甲を打ち、奏でる。
もはや高空に戦場は移り、その表情までは勇者にはもはや追えない。
ただひとつ、奇妙な違和感を覚えるのに精いっぱいでもあったから。
厩を破壊する音は、確かに聴こえたはずだ。
こうしている戦闘音も、聴こえていないはずがない。だが、堕女神ですらも出てはこない。

サキュバスA「……遅いのね。それに……軽い」

ワルキューレ「何を!」

サキュバスA「私がかつて看取った人類の兵士にも、貴女は及ばないと言ったのよ。貴女の槍は、何もかもが軽い」

重力の枷を振り切りながら、二人は高空で鳥の戯れのように刺し合う。
真上から直下へ向けて、見えない壁に“直立”するような姿勢の突き。
それを避けたサキュバスAは急降下して避けると翼を二打ちして更にワルキューレの背後を取る。
362 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/23(土) 00:06:59.69 ID:TzAQuzSE0

サキュバスAはやがて、数合ほど翼を交わすと――――おもむろに、構えを解いた。

ワルキューレ「何のつもりだ、貴様……」

サキュバスA「貴女こそ何のつもりなの?こんな淫魔の地で長々と私を追って。何故乗ったのよ。私を殺して何になるの?
         ……ならないわよ。私なんて。サキュバス、なんて……いなくても、誰も困らないのだから」

ワルキューレ「……何?」

サキュバスA「だから私達は、せめて……“ヒト”に返したいモノがあったのかしら。“ヒト”に、私達を、認めてほしかったのかしらね」

中空を気まぐれに漂い、緩やかに舞うような仕草で宙を泳ぐサキュバスAに対し、ワルキューレは突きかからない。
その蠱惑的な仕草ひとつとっても、まるで隙が無いからだ。
背を向けたと思えば尾先はずっと喉へ狙いを定めて、翼は常にワルキューレの死角を作るように踊る。
不用意に近づけば、己が槍の穂先にも劣らぬ爪の一撃が胸甲ごと心臓を穿つと分かっていた。

ワルキューレ「……次で終わりだ。本意ではないが、貴様に我が光を見せてやろう」

サキュバスA「やる気充分なのは良いけれど。残念ね。……もう済んだのよ、私の仕込みは」

ワルキューレ「何を……ひんッ!?」
363 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/23(土) 00:08:06.24 ID:TzAQuzSE0

瞬間、ワルキューレは大きく身震いし――――引いて構えた槍を保つ手を緩めてしまい、取り落としかけた。
空中でばたつくように内股へ閉じ、漏れたのは鼻にかかるような吐息。
それでも、彼女は体勢を立て直すと再び槍を握り……きっ、と視線をサキュバスAへ向けた。

ワルキューレ「き、さま……何を……した……!」

サキュバスA「ふふ……♪よくご覧なさいな」

サキュバスAがとんとん、と自らの下腹部を指し示す。
つられてワルキューレが自らの、胸甲に覆われたそこを見ると、“印”はあった。
その淫魔の瞳と同じ、深みを湛えた紫色に輝き脈打つ、魔の紋章形が……くっきりと、爪痕の代わりに刻まれている。

ワルキューレ「これは……!?」

サキュバスA「見ての通り。……素肌に刻む必要も無し。呪印は、その身に欠かさず身に着ける物へ施すもの」

ワルキューレ「な、に……くあ、ぁぁぁっ……ひ、ぃっ……!」

戦乙女は、その言葉の合間にも胸を掻き抱き、脚を閉じ、もじもじと堪えるように身を強張らせる。
その肉体を内側から灼く――――未知の炎へ。
彼女を襲うのは、局部へ、硬い胸甲に覆われた乳首へ、ちりちりと襲う昂ぶり。
364 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/23(土) 00:09:37.29 ID:TzAQuzSE0

ワルキューレ「う、あ、あぁぁぁぁ……!き、きさ、ま……止め……!!ひぃぃあぁぁっ!!」

サキュバスA「もう一度言いましょう。肌ではなく物にだって刻んでしまえるのよ。……“淫紋”のお味はいかが?」

湛えた微笑みは、戦乙女の媚態が、痴態へと変わりゆくのを見届ける。
目論見の進んだ満足感と、仄暗い嗜虐心とで魔性の笑みを形作りながら、サキュバスAは言葉を続けた。

サキュバスA「貴女のあられもない悲鳴を聴きながらいたぶるのも悪くないけれど。……こう見えても私、目的をきちんと先にこなす主義なのよ」

ワルキューレ「何、を……ん、あぁぁっ!や、止め……止め、ろ……止め……!」

昂ぶった肌の感覚は、互いの翼の生み出す風ですらも受け取って、快感へと転換させていく。
もはや槍は指先で必死にもがき、絡め取るように保持する有り様で、
軒昂であった戦意は今、己の内に浸食する快感を食い止める事にだけ注がれていた。
間合いを保つ、という……本来なら身についていた、眠っていてさえこなせたはずの事までも彼女は失った。

やがて波を越え、息を整えようと顔を上げた彼女が見たのは、吐息のかかる距離にまで詰めてきた、淫魔の美貌だ。
既に槍の間合いではなく、剣の間でも、拳の間ですらもない。
その背へ回され、羽衣の内に差し入れるように背を撫でているのがその魔手であると気付き、戦乙女は戦慄する。

ワルキューレ「きさ、ま……卑劣、な……あ、くっ……んふぅぅ……!」

サキュバスA「……私の勝ち。それに」


サキュバスA「淫魔が淫らな真似をして、何がいけないのかしら?」
365 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/23(土) 00:11:07.86 ID:TzAQuzSE0
今夜投下終了です

ではまた
366 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/23(土) 00:35:15.88 ID:EDMmG+pf0
平行世界の目隠し焼き拷問はほんとうによかった
367 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2018/06/23(土) 00:39:50.54 ID:8NCQlpXB0
初めてリアルタイムで読んでます!
サキュバスAかっこええ…
368 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/23(土) 01:07:03.66 ID:E2c/zmRlO
ワルキューレに完全完勝て・・・。勇者より強くないか・・・?
369 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/23(土) 02:20:58.99 ID:jRcL7lDTo
淫紋はさいこうですね!
370 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/23(土) 02:37:27.76 ID:PMR4APKt0
乙!
昔の話で、サキュCがサキュAの戦闘能力の高さをちょびっと言っていたのを思い出したよ
371 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/23(土) 04:04:15.09 ID:+NyvMerNO
淫魔の国もう何度読み直したか分からんけど何回読んでも見事すぎる
文章力の化け物

いつもありがとう>>1
372 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2018/06/23(土) 08:43:23.75 ID:pg/s7W/FO
焼き拷問が終わったあとのAがいいんだろうが(憤慨)
373 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/25(月) 01:57:16.64 ID:w5q0kpwW0
こんばんは
クソったれな月曜の深夜に投下いたします
今日含め、たぶん三回?で本編終了といたします
374 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/25(月) 02:00:23.51 ID:w5q0kpwW0

*****

堕女神「……まさか本当に“ワルキューレ”が、とは。それも、我らが領土へ」

勇者「そろそろ説明しろよ、サキュバスA」

サキュバスA「ええ。……元はと言えば、あの仔豚。かの天界にて勇士へ供する食材でしたわね。それが何の悪戯か、
         彼女らが英霊の魂を迎えに行った際の時空の綻びを抜け、人界へ。そして人界から今度はここ、淫魔の国へ。
         恐らくはこちらの淫魔が人界を見に入った際、空間の“閉じ”が不完全でしたのでしょう。……と考えましたが、真相は違いましたわ」

勇者「え……?」

勇者、堕女神、サキュバスAは捕縛したワルキューレをひとまず幽閉した地下牢の一室に集まり、横たわるその姿を見守りながら話し込んでいた。
その内容は、眼前の存在への驚愕から――――ようやく見つけ出した、風変わりな事態の真相へ迫るものへと。

サキュバスA「というのも。……城下の店の長、狐女将。よりによって彼女は人界へ赴き、風雅に月見酒を過ごしていると
         たいへん美味しそうで可愛い仔豚を見つけ――――連れ帰ったのです」

勇者「……あいつが犯人か!」

堕女神「……きつく申し渡しましょうか。外来の生物を持ち込むような真似はそもそも……」

勇者「元に戻れてからだ。この姿で厳重注意してもどうせ聞かないだろ」

溜め息は深く、眉間の皺も深く。
それでもワルキューレは未だ起きる気配がなく、槍だけは取り上げたものの、鎧も羽衣も剥いでいない。
375 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/25(月) 02:01:47.01 ID:w5q0kpwW0

勇者「で。……彼女がここに現れた理由は、仔豚を回収しに……だろうが、何故ここが?」

サキュバスA「ああ、それ。……私が触れ回りましたのよ。“城の厩舎に、再生する仔豚がいる”と」

堕女神「何故……そのような事を?返答によっては……」

サキュバスA「先日見つけた白い羽根。それらは続けざまに何本も発見されましたわ。となればその持ち主はこの王都の中、
         あるいは周辺に身を隠していると。捜索するよりおびき寄せる方が確実でしたもので」

勇者「……どうして言わなかった?」

サキュバスA「それを申されるのなら、何故あそこにいらしたのです?用もないでしょうに」

勇者「いや、俺は…………いや、確かに、そう……か」

サキュバスA「ともあれ、まだ不透明な事ばかり。さて、どうしたものでしょう?噴乳絶頂の淫紋をちょっと描きましょうか?」

勇者「普通に起こせばいいだろ、普通に!」

サキュバスA「……ふむ。かしこまりました」
376 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/25(月) 02:02:50.24 ID:w5q0kpwW0

答えると、サキュバスAはゆったりと、静かな足取りで、石造りの床へ身を横たえるワルキューレへ近づく。
続けて、這い、寄り添うようにその耳もとを隠すように流れる金髪をすくい取り、
あらわにさせた白い耳介へ口を寄せ――――ぼそぼそと、何事かを呟き始める。

サキュバスA「――――貴女は、これより…………カウント……しぶかせ……イって……力、抜けて……くったりと……身を任せ……」

ワルキューレ「……んっ……あ……っ。ふぅぅっ……!」

ぼそぼそ、ぼそぼそ、呟くごとに戦乙女の身体はふるふると打ち震えていく。
もじもじと内股を擦り合わせ、喉からは悩ましい声が。昨夜の凛としたものとは真逆のそれが漏れ出した。
しなやかに鍛えられた露わな太ももは桃色に染まっていき――――床にすり付けていた美貌もまた、同様。
薄く開いた目は未だ覚めず、隙間からは潤んだ涙が雫を形作る。

勇者「おい」

サキュバスA「……では……3……2……1…………ゼ、ロ」

ワルキューレ「ひ、きぃっ……!っ……はぁ、ぅぅぅ……っ!」

サキュバスAが数え下ろすと――――捕らわれの戦乙女は、身を震わせ、
眠ったまま達し――――彼女の詠唱をなぞるように脱力し、再び体を弛緩させた。

勇者「だから普通に起こせって言ってるだろうがっ!!」
377 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/25(月) 02:03:52.32 ID:w5q0kpwW0

サキュバスA「サキュバスの普通と申しますと……指やお口で致しますか、殿方なら跨ってから揺すり起こすか。そのどちらかになってしまいますわね」

勇者「……なるほどそれでなのか。いつもいつも俺を起こしに来たと思えば……」

サキュバスA「ああいえ、違います。あれは面白がっているだけですもの。夢精させて起こして差し上げる事を」

勇者「面白がるな!」

堕女神「陛下。陛下。……ともかく、彼女は……目を覚ましたようですよ」

勇者「ん、あ……ああ、そうだった」

堕女神に止められ、床に倒れていた戦乙女を振り向くと――――彼女はもう目を覚まして身じろぎし、
寝そべった状態から片手をつき力無く体を起こそうと試みていた。
その眼は、サキュバスAと勇者、堕女神を交互に見比べ、やがて――――サキュバスAへ向いた。

ワルキューレ「貴、様……っ私に、何を……」

サキュバスA「何を、“した”でしょうか?……それとも、“するつもりだ”かしら?前者であれば答えられるけれど。後者は貴女次第ね」

ワルキューレ「……っ」
378 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/25(月) 02:04:26.32 ID:w5q0kpwW0

彼女はその双眸に気迫を込め、サキュバスAを力強く睨むも……その当人は、涼やかに微笑みながら見つめるだけだ。
ぶるぶると震える手で体を起こそうと試みては、かくりと力が抜けて床へ頬を押し付ける事になった。

ワルキューレ「体、に……力が……」

サキュバスA「それはそうでしょう。貴女……もしかして、処女かしら」

ワルキューレ「ん、なっ……!?き、貴様、何を言って――――いや、それより……その子は……」

サキュバスA「ああ、こちら?貴女が連れ去ろうとした、大切な私達の……」

ワルキューレ「恥を知れ……!」

サキュバスA「そう仰られましても。たっぷりと貴女に“恥”を教えてあげる事ならできるのだけれど……」

ワルキューレ「貴様ら……幼気な子らを慰み者にするなど、許されるものかっ!」


サキュバスA「……?」

堕女神「……“ら”?」
379 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/25(月) 02:05:26.68 ID:w5q0kpwW0

その時、牢獄の外に別の足音がぱたぱたと響く。
軽い足取りは、曲がり角で一度軽い悲鳴とともに途絶え――――やがて、その主は顔を見せる。

サキュバスB「失礼します。……な、何か……怒ってるんですか?誰か……」

サキュバスA「あら、貴女も来たの。……いや、待って頂戴。これじゃ……」

ワルキューレ「貴様ら……恥ずかしくないのか……!よってたかり、幼子らを……卑劣な……!」

勇者「いや、その……」

サキュバスB「えっと……何か、誤解して……?」

ワルキューレ「黙れ、何が違う!大方、何も知らぬ男児を手籠めにして、あられもない姿を弄び、精気を味わったのだろう!」

サキュバスB「うぅっ……!?ど、どうして……!」

勇者(当たり……)
380 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/25(月) 02:06:57.22 ID:w5q0kpwW0

ワルキューレ「やはりか!くっ……貴様らは……!ここから出せ!さもなくば……」

サキュバスA「……ちょっと。ちょっと待って頂戴。あのね。……貴女、どうして私に言っているのよ?」

激する言葉も、刺すような視線も、彼女へ向けて放たれたものだ。
敗北を喫した相手に向けるのならそれは当然であるものの――――あまりに込められたそれは、異常だ。
眼前にある物、今自分をこうさせている物、全てを彼女へ詰問するような、剣呑な気迫だった。

勇者「あの。……お前は、多分最初から何か……」

ワルキューレ「君は、こいつらをかばうのか。……痛ましい……!」

堕女神「もしや……」

ワルキューレ「あなたも。我らが主に似た……しかし、澄み渡るような気配。いずこかの神の眷族と御見受けする」

サキュバスA「……それで、何なの。私を何だと思っているのかしら」

ワルキューレ「とぼけるな。貴様は――――」

サキュバスA「私は?」

ワルキューレ「貴様は、淫魔どもの女王なのだろう!?」


サキュバスA「…………え?」

サキュバスB「え?」

勇者「…………まぁ」

堕女神「……そう見えてしまいますね」
381 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/25(月) 02:07:39.27 ID:w5q0kpwW0
今日の分、投下終了いたします

ではでは
382 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/25(月) 02:32:26.86 ID:72PufSLC0
仕事が終わってスマホを開くと新しい投下がある
今日も良い日だ
383 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/25(月) 07:15:35.20 ID:xBba705hO
やっぱりドジっ娘…?ワルキューレさん良いよね乙乙
384 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2018/06/26(火) 21:59:49.48 ID:nItXmK8P0
クソ真面目過ぎるが故のポンコツ・・・いい・・・
385 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2018/06/27(水) 13:32:18.03 ID:oreut8MV0
『おうちで大人しくしてろ、無料ミルクサーバー』wwwwww
386 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/28(木) 02:33:09.02 ID:GTEJu7md0
こんばんは

投下しますー
387 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/28(木) 02:33:38.86 ID:GTEJu7md0

*****

それから――――誤解を解くのに、更に昼過ぎまで説き続ける事となった。
サキュバスAはまず、淫魔の国の女王では無いという事をサキュバスBが必死に説得する。
ならば女王は誰か、という事になり――――今この国を治めているのは女王ではなく“王”だという事を必死に。
しかしその途上でもやはり、“人間の子供を無理やりさらって王にしようとしている”と誤解を受け、更に話は明後日の方向へこじれた。

そこから、更に説得は続き――――どうにか現状を説明しきる頃には日は傾いてしまい、
それでも彼女の疑念を晴らし切れてはいないようで、疑いの目は残っていた。

そこから勇者が堕女神とサキュバスAへ命じて、牢獄ではないワルキューレの部屋を用意してやり、ようやく彼女なりに納得した様子で、
不承不承ながら“豚”の特性を、語る。


*****
388 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/28(木) 02:34:19.27 ID:GTEJu7md0

ワルキューレ「……要はあの豚。我らが英霊達へ供する豚の事だ。あの豚を食うと――――望んだ時点の自らの姿へ変わるのだ」

勇者「……“怪我が治る”んじゃなくてか?」

ワルキューレ「それは、望むからだ。我らが天界に至った勇士の目的は、自己を高める事。その為に日夜鍛錬を積み重ねる。
         ……彼らは、そこで鍛錬にて負傷する前の姿に戻る事だけを願っていた」

勇者「伝承のとおり、か」

話の場は、薄暗い地下牢獄ではなく――――城内に設けた議席へ移されていた。
もはやワルキューレを縛めておく事もなく、差し向かい、淹れた茶の湯気が互いの間をのぼり、暖めていた。
場へ立ち会うのは、堕女神とサキュバスA。
二人は勇者の隣席にそれぞれ座り、堕女神は耳目を傾ける一方――――サキュバスAは、片手の爪を眺めながら、話だけをつまらなそうに聞く。

堕女神「……つまり?元に戻るためには……」

ワルキューレ「もう一度、あの仔豚の肉を食えばいい。戻りたい姿を想いながら。それで解決するだろう」
389 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/28(木) 02:35:30.62 ID:GTEJu7md0

勇者「……ひとつ、腑に落ちない。どうして俺と堕女神だけが?サキュバスAも食べたし、城下の酒場でも出されていただろう。
   なのに、同様の騒ぎがあった報告はない」

ワルキューレ「あの豚は、人類の勇士と神々をもてなし、供するもの。魔族や、我が眷族に効き目はないのだ。
         食う事自体はできるが、単なる肉に過ぎぬ」

サキュバスA「…………いえいえ。私は今の自分に満足しておりますもの。そのせいでしたのかと」

ワルキューレ「……他に、訊きたい事は?……今回の件は、我らにも落ち度がある。申し訳なかった」

勇者「……いや、特にない。戻る方法さえ分かれば。だが、念のため明日までいてくれるか?
    もし今夜から明朝で戻れなかった場合、別の方法が必要かもしれない」

ワルキューレ「……構わないが、良いのか?」

堕女神「はい。陛下の仰せのままに」

サキュバスA「では、私からよろしいでしょうか?」

勇者「サキュバスA?」

ワルキューレ「……何だ」

サキュバスA「これから……体で払っていただきましょうか」

ワルキューレ「え…………!?」
390 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/28(木) 02:36:15.72 ID:GTEJu7md0

*****

ワルキューレ「ふ、ざ……何だ、これは……どうして、私が……!」

サキュバスA「ほぅら、この程度で休んではいられませんわ。自分のした事を何だと思っておいでなのかしら?情けない……」

ワルキューレ「嫌、だ……もう……やめ……っ!」

サキュバスA「アハハハハっ!せっかくの美体、活かしてもらわなくては困りますわね?」

ナイトメア「……さっさとしろ、やすむな、たて。どれい」

ワルキューレ「誰、が……っ!」

ナイトメア「おまえだ。じぶんのたちば、わかってるのか?からだでかえせ」

サキュバスA「ふふ、言うわね……貴女も」

ナイトメア「あのぶたのぶんも、おまえのからだでしはらってもらう。たすけ、は、こないぞ」

ワルキューレ「くっ……!」


*****
391 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/28(木) 02:36:43.25 ID:GTEJu7md0

ワルキューレ「……いや、おかしいだろう!どうして私が……!」

ナイトメア「ひとのいえ、こわしたのだれだ」

仔豚のいた房の天井に空いた風穴を塞ぐべく、戦乙女は駆り出されていた。
初撃で蹴り上げられ、屋根まで打ち抜いてしまったのをサキュバスAは忘れなかった。
羽衣も鎧も脱がせ、木槌と釘をにこやかに手渡し、ただ一言。
“肉体で支払え”と――――。

サキュバスA「ほぅら。馬車馬のように働きなさい。手を休めないの」

屋根の上に優雅に腰を下ろし、野次を浴びせるのはサキュバスA。
厩舎の中からはナイトメアが、それぞれワルキューレを監視する。

ワルキューレ「貴様、誰のせいだと!?貴様が私を蹴り上げたのが発端だろう!?」

サキュバスA「お馬鹿さん。子供でも知っているルールでしてよ?」

ワルキューレ「何?」

サキュバスA「原因はどうあれ、最後に触ったのは貴女です」

ナイトメア「さいごにさわったひとがかたづける」

ワルキューレ「貴様ら……!」
392 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/28(木) 02:38:15.48 ID:GTEJu7md0

サキュバスA「それとも、さっきみたいに抵抗してみるかしら?……淫紋は消えてない事を忘れていたようね。はしたない……」

ワルキューレ「……くっ……」

サキュバスA「“殺せ”、とは続けないのかしらね」

ワルキューレ「……それは、屈辱も苦痛も受け入れたくない故に慈悲を願う台詞だ。私は吐かん。
         辱めたければそうしろ。私の四肢を千切りたければそうするがいい」

サキュバスA「そんなに血生臭い女じゃないのよ、私。……それに。貴女……」

ワルキューレ「?」

サキュバスA「処女でしょう」

ワルキューレ「んなっ……!?」

ぽろ、と取り落とした釘が屋根に沿って滑り、軒下の石畳に跳ねて音を立てた。
硬直したワルキューレの肌が一瞬で燃えるように紅潮し、あわあわと唇を揺らしてサキュバスAへと向き直る。

サキュバスA「……あの高尚ぶった“吸血鬼”の殿方達と一緒よ。赤を好むも白を好むも、さしたる違いは無し。乙女は大切に扱わなければね」

ワルキューレ「そ、な……わた、し……が……しょ……とは、言って……」

サキュバスA「あら、違った?夜毎に殿方を誘っては肉欲の炎に焦がれていたの?いやらしい。私も一歩譲らなきゃいけないのかしら」

ワルキューレ「っ――――――貴様とは口を聞かん!!」

サキュバスA「結構。お仕事に集中していただけるのね」
393 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/28(木) 02:39:38.04 ID:GTEJu7md0

――――傾く陽が夕暮れに変わっていく頃まで、間に合わせの木槌の音が響く。
戦乙女を働かせている間、ずっと淫魔は傍を離れず、きつくなり始めた陽射しを浴びても日陰にすら行かずにいた。
その頃には、どちらともなく――――ぽつりぽつりと言葉を交わすようにもなる。

サキュバスA「……どんな気分が、するものかしら」

ワルキューレ「……何がだ、淫魔」

サキュバスA「貴女達に召し上げられた人間達の事よ。……私は、貴女達が気に入らないのよね」

ワルキューレ「気に入る必要もないだろう。……訳があるなら、聞いておこうか」

サキュバスA「貴女の使命は、戦死した勇士の魂を天界へ導く事。死ななければ、貴女達には会えない。でも私達は違う。
         私達は……ヒトに、命がある内しか出会えないのよ」

ワルキューレ「……役目の違いだ」

サキュバスA「そこなのよ。……ねぇ、ワルキューレ。私達、サキュバスに……“存在している意味”なんて、あるのかしら」

ワルキューレ「何……?」
394 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/28(木) 02:43:26.77 ID:GTEJu7md0

重い問いかけに、木槌はしばし休む。
ワルキューレが汗を滲ませた顔を上げると、サキュバスAは夕日に顔を向けたまま続ける。

サキュバスA「……私達は、吸血鬼のように人類を餌袋と捉える事もできなかった。……愛おしかったから。
         私達はあの生き物を踏みにじる事など、……できなかった」

ワルキューレ「……それを、罪だとでも?」

サキュバスA「少なくとも、尊いとは私は思えないのよ。……私達淫魔はかつて、ヒトに手を貸し魔王を討つ一助となった。
         ……同族を手にかけてまで、何故かしらね。私には分からないわ。……貴女達と違って、使命などない種族なのに」

ワルキューレ「……何故、そんなことを私に吐露する?」

サキュバスA「だぁれにも言えないからに決まっているじゃない。サキュバスにも。堕女神様にも。
         ……陛下になんて特に言えない。あの方はとても優しいから……きっと、困ってしまうわ」

何も、繋がりのない。
一度別れれば二度と会う事のない相手だからこそ――――割れる腹もある時がある。

――――“淫魔に、何の存在価値があるのか”。

ワルキューレ「……誓おう。今の言葉、私の胸に仕舞っておく事を。そして、答え……」

サキュバスA「ああ、いいの。答えなんていいのよ。……もう、とっくに辿りついてしまったから。だから……私の“自分探し”は、おしまい。
         ……汗をかいたわね、お疲れさま。お風呂でもどうかしら?……心配しなくても、何もしないわよ」

そして、日は沈む。

曙光の翼と、闇夜の翼の過ごした一時の対話は――――そうして、終わる。


395 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/28(木) 02:44:52.75 ID:GTEJu7md0
今夜分投下終了

さて堕女神はなんで子供に戻ってしまったやら


では、ラスト、遅くとも土曜日にお会いしましょう
396 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/28(木) 02:50:59.74 ID:8LIVwIxSO
DIY系戦乙女
397 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/28(木) 03:41:12.31 ID:2MDE2d7G0
yeah
398 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/28(木) 04:07:24.86 ID:uMo2V04V0

夕暮れ時に、しんみりと語る姿がちょっぴり寂しく思えるのが好き
399 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/28(木) 07:35:53.97 ID:Bs+kzVWKO
このワルキューレさんにちょくちょく遊びに来いよと言いたい乙乙
400 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/29(金) 21:11:30.17 ID:Ur3ZmS7Q0
帰宅

十一時まで待ってくれ
401 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/29(金) 21:50:57.14 ID:+Vv+guQWO
ナイトメアちゃん愛でながらまt
402 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/29(金) 23:44:15.30 ID:tYOhOMjq0
ナントメア「じゅういちじ、と、いった。どようび、とは、いってない」
403 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/30(土) 02:12:48.27 ID:Au+5k+YW0
すまない寝落ちしかけた
本当にすまない
すまないorz


始めます、最後にちょこっと誤字だけ見てから
404 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/30(土) 02:32:38.94 ID:Au+5k+YW0

*****


勇者「……これで、明日になれば本当に元通りになるのか?」

その日の夕食は、ワルキューレから教えられた通りにあの仔豚の肉を出された。
肉を切り分け、それでも――――翌朝には、仔豚は何事もなかったように蘇って元気に動き回るだろう。

変わらず美味な仔豚肉のローストに舌鼓を打ち終え、最後の一品、
細長いグラスに氷菓、焼き菓子、飴細工、果物、クリームを幾重もの層状に詰め込んだ菓子へと移る。
色鮮やかに積み重ねられた層が透き通る硝子の器越しに覗ける、宝石の詰め合わせのような菓子だった。

それを食べ進めるうち、もう一人の被害者……少女の姿へ変わった堕女神が、半減した歩幅でおずおずと近づいてくる。

堕女神「……お味はいかがでしょう、陛下」

勇者「ん……いつも通り。美味しかった」

堕女神「何よりです。……お体にお変わりは?」

勇者「いや、何も。寝て起きたら変わるんだろう。堕女神もそうだったんだろ」

堕女神「はい。……自室へ戻り、眠り、目が覚めると……」
405 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/30(土) 02:33:21.38 ID:Au+5k+YW0

今や、この姿へ戻りたかった、“勇者の”理由は分かり切っていた。

勇者「“勇者”じゃない人生をしてみたかったんだな、俺は。……そうか。あの、魔王の……城でも、そうだったな」

堕女神「……ワルキューレから、打診を受けたとお聞きしております。よろしかったのですか?陛下は……人間、界へ……」

あの突然のワルキューレの来訪にも、答えはしなかった。
子供の姿へ戻り、人間界へ転移し、再び“やり直せる”機会を。
だが、それでも。
しかしそれでも――――首は、縦には動かなかった。

勇者「いいんだ。……気の迷いというか、“弱り”だったんだろうな。でも、俺はやっぱり。……あの姿になるまでの時間を。
    人間界を救うための戦いを。……堕女神と、淫魔達と出会えた姿を。なかった事になんて、したくないんだ。
    ……どれも、俺の大切な時間だったんだ」

田舎の農村の日々も、外へ憧れる青年の日々も、“勇者”の力に目覚めた日も、誰も起こさずひっそりと救世の旅に出立した朝も。
仲間達と過ごした戦いの日々も、“世界”の時を稼ぎ繋いだ人々達との邂逅も。

――――“魔王”と過ごした、ひと時の語らいですらも。

堕女神との、淫魔達との“再会”も。

どれも、無かった事になどしたくなかったから。
406 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/30(土) 02:33:48.16 ID:Au+5k+YW0

勇者「……それと、不便も多かったな。今でも、あの朝にぶつけた脛が痛むぞ」

堕女神「あれは……痛ましい事でした」

勇者「堕女神は無かったのか?歩きづらかったとか、転びそうになったとか……」

堕女神「いえ、……逆、でしたら」

勇者「逆?」

堕女神「その……いつも足下が……見えなかったものですから……」

勇者「あぁ……なるほど」

堕女神「……何処をご覧に?」

勇者「何も」

すとん、と真っ直ぐに下りた平坦なボディラインを無意識に見回すと、拗ねたような口調で堕女神に釘を刺された。
そこには、下への視界を遮るほどの乳房がなく――――まっすぐに爪先を見られるだろう事が窺い知れたから。
だが、彼女のそんな姿も今日が見納めになる。
ぷりぷりと怒る背伸びする子供のような微笑ましさも、明日にはもう見られない。
407 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/30(土) 02:34:20.20 ID:Au+5k+YW0

勇者「……それで、堕女神はどうして?」

堕女神「は……?」

勇者「どうしてその姿になったんだ。確か、子供だった時代なんてないって……」

堕女神「…………いざ考えてみると、思い当たりません。特にやり残しも、思い残しも。
     眼と髪の色が変わらなかったという事は、かつての神の座へ未練も……特に無かったのでしょう」

勇者「分からないか。……何か思い出せたら言ってくれ。俺に出来る事ならするよ」

堕女神「はい。……私の、やりたい事……ですか……」

そう呟き、それきり堕女神は思索に耽る。
小さな姿になってしまったからには何かがあったはずだ。
その姿にならなければ叶えられない、ふとした何かが。

寝収めになる、広く天蓋の高い寝台に潜り込んで考え込むも、勇者には考え付かなかった。
段々と遠くなり、深く落ちていく眠りに身を任せて――――落ちる一瞬だけ、何かに気付きかけた。
だがその気付きもまた、どろりと引きずり込むような眠りの中へ道連れになり、消えた。
408 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/30(土) 02:34:47.40 ID:Au+5k+YW0

*****

そして翌朝、目が覚めると――――。

勇者「……戻った?」

子どもの姿にはきついはずの、厚い毛布が軽く持ち上げられた。
体を起こせば、見慣れたはずの懐かしい高さから室内の風景が望めた。
変化に備えて裸で眠ったから、自分の身体に刻まれたいくつもの傷がすぐに分かる。
旅のさなかに負った傷の数々は、礼服にかけられたいくつもの勲章のように朝の光に照らされていた。

呆気もなく、そして特に感動もなく。
あっさりと――――拍子抜けするように、元の姿へ戻れてしまった事は、むしろ物足りなささえ感じさせた。
もしや、この数週間の日々は長い夢だったのではないかとすら思えた。
しかし。

堕女神「失礼いたします。……あ……!へ、陛下、その御姿は……!?」

勇者「おはよう。どうやらあの肉、本当に効いたみた……堕女神?その……」

朝を告げるべく入室してきた堕女神の姿は――――子供の姿から、全く変わっていない。
着替えて立ち上がると、彼女の背丈の小ささがことさらに伝わった。
腰の高さに彼女の頭があり、さながら今の身長差――――父親と、娘。
409 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/30(土) 02:36:03.40 ID:Au+5k+YW0

勇者「……もしかして、効かなかったのか!?」

堕女神「い、いえ……実は、私……昨夜は食さなかった、ので」

勇者「どうして!?」

堕女神「……っと、ともあれ……朝食にいたしましょう。私の事は今は……!」

珍しく歯切れの悪い調子で、すたすたと小さなままの堕女神は歩いて行く。
歩幅の小ささ故にすぐ追い付いてしまうため、また勇者は気を遣う。
立場も逆転して、あの朝、手を引いて歩いてくれた堕女神が今は頼りない足取りだ。

そして、途中で――――サキュバスAと出くわす。

サキュバスA「あら。……見慣れない殿方。もしかして、先日までいらした坊やの父君かしら?」

勇者「……ええ、息子がお世話になりましたね」

サキュバスA「“息子”様のお世話でしたらお手のものですわ。どうでしょう?ひとつ、これから……」

勇者「おい、乗りすぎだ」

堕女神「朝から止めてください、サキュバスA。……?ワルキューレ様は、どちらへ?」

サキュバスA「ああ、彼女でしたら……」
410 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/30(土) 02:36:52.47 ID:Au+5k+YW0

がしゃがしゃと慌ただしく鳴り響く高い靴音と、防具の擦れ合う金属音が荒く近づいて一行へ迫る。
やがて廊下の奥から姿を見せたワルキューレは、矢のような勢いで三人へ迫り、その中――――サキュバスAへ掴みかかり、迫る。

ワルキューレ「ふざけるなよ貴様、ふざけるな!私に何をした!!言え!何だアレは!」

サキュバスA「あら、怖ぁい。暴力はいけないのよ?」

ワルキューレ「貴様っ……!」

サキュバスA「どうしたのかしら。落ち着きなさいと言っているの。……何かあった?」

ワルキューレ「……!」

寝乱れたのか金髪はあちこち跳ねて、汗の玉が光り、白い肌はぽうっと紅潮していた。
更に、サキュバスAに訊ねられると発火したように赤みは増す。

勇者「おい……落ち着け。何が……」

ワルキューレ「……あっ……ぅ……!うぅ……!」

勇者「?俺が、どうか……」

ワルキューレ「う、うるさい、何でも無い!元に戻れたのなら私は帰る!世話になった!」

勇者へ視線を向け、硬直したかと思えば――――更に、更に顔は染められていく。
そのまま、彼女はさっさと踵を返すと別れの挨拶もそこそこに立ち去ってしまった。
411 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/30(土) 02:37:25.66 ID:Au+5k+YW0

勇者「……お前何した」

サキュバスA「さて、何の事でしょう……ふふっ」

堕女神「……よろしいのですか?彼女を帰して……」

勇者「いい。……何かされた訳でもないし、何かしに来た訳でもないだろう。……どうせ監視ならサキュバスAがしてくれてただろ」

サキュバスA「さて……何の事でしょう」

勇者「それに、あの女将が仔豚を勝手に連れ帰ったのも原因だ。……あまり強く出られる立場でもない気がしてさ」

堕女神「陛下を連れ去ろうとした事については……」

勇者「あれも誤解の末だ。……並べてみると、甘いかな」

サキュバスA「ですが……少し、嬉しそうにも見えますわね」

勇者「ああ。きっと、そうかもしれない。……それより彼女、帰れるのか?」

堕女神「来られたのですから、帰る事もできるでしょう。……陛下のご選択でしたら、御意のままに」

彼女を強く裁くつもりになれなかったのは――――きっと、嬉しかったからだ。
戦い、散って行った戦士達を迎えてもてなす天界の眷族が、本当にいてくれた事が。
かつて人間界で力を貸してくれた男達の魂の行き場所が、きちんと用意されていた事が。

勇者は、せめて次に彼女が来る事があれば、事前に伝えてくれるよう祈り、道中の無事をも祈る。
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