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アライちゃんのいる日常5

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499 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/17(水) 23:07:50.78 ID:wCLQVwPxo
乙一
インタビュー通りだとどっちにしても楽園送りになる未来なんだよなぁ
逆に言えばそれまでは生き残れると言うことだが
500 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/17(水) 23:16:27.32 ID:6a0sx6s1o
501 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/17(水) 23:44:38.74 ID:FLxXIf1Q0
どういうルートか見えない
とりまタマさんアライ話ってだけで満足
502 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/18(木) 06:52:12.56 ID:+gmZXpJR0
乙でしゅ。飼い主さんの決断やいかに
この個体は粗相を正直に報告できる優秀な個体だと思いますね。まーペットとしては・・・ですけど
503 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/18(木) 13:09:19.91 ID:2cwurvsq0
ここまで怯えてると、逆に虐待に目覚める人いそう
ゾクゾク来る的な!
504 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/18(木) 22:46:43.10 ID:p18AaqR4o
人が人に、自分の言うことを聞かせるには、どうすればよいだろうか。

そのアプローチ方法は、大きく分けて4つに集約される。

1つ目は、規則と罰、そして恐怖によって行動を支配するというものだ。

法律や、独裁政権の圧政、暴力団の上下関係がこれに当てはまる。

命令に従わなければ罰を与え、財産を没収したり、拘束したり、体罰を与えたり、社会的な将来性を絶たれたり…
場合によっては、殺したりする。

この方法には、非常に低コストで命令に従わせられるという利点がある。

だが、革命や反乱によって上下関係が崩れた時、復讐としてこれまで味わわせてきた以上の苦しみを味わわされることになるであろう。
505 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/18(木) 22:53:47.29 ID:p18AaqR4o
2つ目は、報酬の対価として労働させるというもの。

企業が労働者を働かせるのがこのパターンだ。

この方法には、指示者と被命令者が良好な関係を築き、互いに助け合えるという利点がある。

さらに、恐怖による支配と違って労働者には余裕と自由があるため、成果向上のために自ら率先して工夫をする可能性も期待できる。

しかしながら、労働者へ与える報酬を用意しなくてはならない。

更に、その報酬は、労働者が納得するものでなくては、この働かせ方はできないのである。

人間であれば、金銭を渡せば間違いないだろうが…

農家で余った柿が報酬だよ、などと言っても、従う者はいないだろう。
506 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/18(木) 23:17:22.87 ID:p18AaqR4o
3つ目は、カリスマによって従わせるというもの。

強烈な魅力で虜にし、応援したくなる気持ちで掻き立てることで、無償で手を借りようというものだ。

クラウドファンディングであったり、あるいは街頭やネット上で呼び掛けて有志を募り、共に活動する…などの例があるだろう。

だが、これを狙ってうまくいくことなど稀である。

人々に夢を与えるセンスと信頼、人柄が揃っていなくては、実現は難しいだろう。
507 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/18(木) 23:24:59.10 ID:p18AaqR4o
そして最後に、4つめ…
「良心に委ねる」というものだ。

これはボランティア参加者の募集であったり、ゴミのポイ捨て防止の啓蒙活動であったり…

基本的に、実利を伴わない活動に依るものである。

向上心や自尊心が高く、自ら良くあろうと心掛ける者ならば、賛同し動いてくれることもあるだろう。

だが、それは理想論だ。

実際には、ゴミやタバコの吸殻、空き缶をポイ捨てする者などザラである。

自発的に良くあろうとする意識がない者などこの世にはいくらでもいる。

そして彼らは、決して少数派などではない。

…そんな者達を、『良心に委ねる』つもりで意のままに従わせようとしても、動くはずがないのである。
508 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/18(木) 23:31:42.12 ID:p18AaqR4o
これら4つが、人が人に対して、自分の言うことを聞かせるための四大アプローチだ。

そしてこれは、そのまま人ならざるもの…

動物や、アライちゃんに対しても通用する。

どうにかしてアライちゃんへ言うことを聞かせたいならば、この四つのうちいずれのアプローチをとるか、明確にしなくてはならない。

…いや…
実際は三択だ。

何故なら『良心に委ねる』ことで従う可能性は、とうてい期待できやしないからだ。

それは一体何故か?
509 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/18(木) 23:38:35.79 ID:p18AaqR4o

その答えは…

『アライさんが本質的にワルモノだから』
『アライさんは人間でなく害獣だから』

…と決めつけるのは、いささか短絡的であり、早計だ。

ある命題が正しいかを検証するには、その待遇をとればよい。

つまり、『アライさんは人間でなく害獣だから良心が無く、良識を守らない』という命題の待遇は、すなわち『害獣でない人間ならば良心があり、良識を守る』となる。

この待遇となる命題は、果たして正しいと言えるだろうか?

アライさんでなく人間ならば、その良心に委ねることで、必ず良識を守った行動をとるのだろうか?
510 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/18(木) 23:44:46.05 ID:p18AaqR4o
アラ助「かいぬししゃんっ…もーおねしょしないから…しないからああっ…!こよしゃないでええっ…!」ブルブルウルウル

飼い主男「………」

おねしょをしたことを、素直に謝り、反省を誓うアラ助。

その態度は立派なものだ。
きちんと工場で教わった通りの心がけをしているのだろう。

表面的には、その態度は明らかに善良な振る舞いといえる。

少なくとも、野良アライちゃんならば絶対に見せない態度といえる。

では…

アラ助は、そんな善良な態度を、『何故』とっているのであろうか?

己の良心に従っているからであろうか。

工場は、先程の四つのアプローチのうち…
どの方法を選択し、アラ助に言うことを聞かせているのだろうか…。
511 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/18(木) 23:45:15.65 ID:p18AaqR4o
つづく
512 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/19(金) 00:48:21.57 ID:bfLjCk1aO
ファンタジーのそれではなく、リアルな洗脳っていうのもあるにはある。
何らかの手段で判断力を無力化するっていう
513 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/19(金) 02:22:18.98 ID:e0mayi0J0
乙でしゅ
このアラ助、今でこそ謙虚ではあるが今後どういった性格になるのかが気になりますね
514 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/19(金) 02:30:43.21 ID:DbI4mQ/mo

人間と同じ様な精神構造を持ってたら害獣扱いされてない気がする
515 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/19(金) 04:41:13.03 ID:ALE6Igmoo
アラ虐開始5秒前かな?
516 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2018/10/20(土) 00:42:39.42 ID:j7JWfXIh0
人間は成長する過程でいろんなアプローチはあるけど結局は、たいてい「大人」になる。
現実社会との折り合いをつけていく。

アラ助が従順なのは基本「1」なのかな。

社会性は野良アライちゃんを見ても結局育っていなさそうだから。
ペットアライちゃんも結局は教えられ、罰を与えられるから従うだけで、
実際の他者との衝突で罪悪感を得ているわけではなさそうだから。


アライさんが成長とともに傲岸不遜になっていく(アニメの「アライさん」になる)のは、
社会性が育たなくて「2」に当てはまらず、成獣になっていくことで「3」が自分をカリスマとして自己崇拝し始め、
体が大きくなっていくとともに「1」を克服して「けもの」になってしまうからなのか。
517 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/20(土) 00:50:14.09 ID:j7JWfXIh0
さげ忘れたのだ・・・・。
作者さんごめんなさいなのだ
518 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/22(月) 00:46:05.23 ID:VmEF6ECh0
最高に惨めですき
519 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/23(火) 00:08:19.33 ID:i1OhJAq9o
飼い主男「…」

飼い主男は、職場ではそれなりの役職の男である。

彼は感情的にならず、冷静であった。

飼い主男「なんでおねしょしちゃったんだ?」

アラ助「ぴぃ!?」

飼い主男「もうやらないと言っても、原因が分からないと対策もできないだろう。…どうしておねしょしちゃったんだ?」

アラ助「ご、ごめんなさいなのりゃあ…!うゆぅ…なんでって…わかんないのりゃあ…」プルプル

飼い主男「…」

そりゃそうだ。
自分がなぜおねしょしたか、どうすれば対策できるか。

アライちゃんでなくとも、人間の幼児ですらそれを自力で考えるのは難しいだろう。
520 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/23(火) 00:20:09.05 ID:i1OhJAq9o
アラ助「ありゃいしゃんがわゆかったのりゃあ…」

飼い主男「…」

『自分が悪かった』と認め、謝る行為。

一見すると、誠実で立派な振る舞いのようにも見える。

だが飼い主男にとっては、そこで終わってしまうのは逆に不誠実な行為に思えていた。

謝った後の、繰り返さないための行動こそが最も肝心だと、飼い主男は考えるの。

『自分が悪い』と言い、自分を責めて己の人格否定へと話をすり替えるのは、それこそ不誠実であると。

反省とは、己の過ちを責めて戒めるために行うのではない。
己の過ちを認め、改善し、二度と繰り返さないように知恵をつけるために行うのだと。

アラ助「かいぬししゃん…ありゃしゅけ、どーすればいいのりゃあ…?もーおねしょしたくないのりゃあ…!」シッポフリフリ

飼い主男「…」

だが、我が子ならともかく、子犬や子猫等のペットにそこまでしっかりと反省させる飼い主などいるまい。

そして、アラ助は紛れもなくペットである。
それ以上でも以下でもない。
521 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/23(火) 00:25:21.62 ID:i1OhJAq9o
飼い主男「…次からは気を付けるんだぞ」

アラ助「はいなのりゃー!」シッポフリフリ

…結局、飼い主男は、曖昧にしたまま叱るのを終えた。

その日の夕方、飼い主男はアラ助を散歩に連れていった。


〜公園〜

アラ助「なのりゃー!」ヨチヨチヨチヨチ

飼い主男「運動は大事だぞ」スタスタ

リードを引いて、アラ助と一緒に散歩する飼い主。

すると、そこへ…
522 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/23(火) 00:36:53.60 ID:i1OhJAq9o
おじさん「おや、こんばんは」スタスタ

子アライグマ「キュルルルル」ヨチヨチヨチヨチ

飼い主男「ああ、どうも」ペコリ

アラ助「…!」ピタリ

ペットの子アライグマを連れて散歩しているおじさんがいた。

…アライグマ。

今、日本でもそれなりに人気のあるペットだ。

大分前に、「あらいぐまブツカル」というアニメの大ブームにより、アメリカから輸入されてきたペット。

幼少期はよくなつくが、成体になるとひどく狂暴になり、飼えなくなって自然へ逃がす飼い主が多発した。

政府は、アライグマのペットとしての飼育を禁止することも考えたが…

ペット業者たちの間で構築された『アライグマの楽園システム』のおかげで、幼少期の人懐っこい頃だけ飼育することが可能になった。

また、アライグマの楽園システムによる選別で、ほんの少しずるペットアライグマは品種改良が進み、最初に日本へ来た時よりも大人しくなりつつあるという。

…そう。
アライさんの楽園システムは、『アライグマの楽園システム』を流用したものである。
523 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/23(火) 00:43:54.38 ID:i1OhJAq9o
アラ助「なのりゃー!≧∀≦」ヨチヨチシッポフリフリヨチヨチシッポフリフリ

アライグマ♀「キュルルルル」スリスリ

このアライグマは雌のようだ。

アラ助と頬擦りしたり、毛繕いをし合ったりしている。

飼い主男「ほら、もう行くぞ」クイクイ

アラ助「うゆぅ!もっとあそびた…」ピクッ

アラ助は我が儘を言おうとしたが、途中で青い顔をした。

アラ助「…ぴぃ!ごめんなさいなのりゃあ!わがままいわないのりゃああ!。≧д≦。」 プルプル

飼い主男「よしよし、いい子だ。行くぞ。では、また…」スタスタ

おじさん「どうもでーす」スタスタ

子アライグマ♀「キュルルルル!キュルルルル!」ズルズル

アラ助「…」ヨチヨチチラッヨチヨチチラッヨチヨチチラッ

アラ助は、ちらちらと後ろを振り返りながら進む。

…どうやら、飼い主男以外の遊び相手との別れを惜しんでいるようだ…。
524 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/23(火) 00:46:28.84 ID:i1OhJAq9o
つづく
525 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/23(火) 04:00:33.98 ID:lsLqJVGA0
乙でしゅ
普通のアライグマ(幼体)が飼育可能な世界とは興味深いですね
そしてアラ助への教育が今後どう転んでいくかも楽しみです
526 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/23(火) 08:55:25.22 ID:mzMnfHMJo
乙一
アライグマも殺処分してたのか
527 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/23(火) 09:40:30.70 ID:YO67QhrDO
害獣が普通に飼われている危険な世界ですね
はやく駆除しないと
528 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/23(火) 11:06:49.41 ID:Vk1GnTprO
アラキレスとアラ助ってキャラかぶりしてる気がする。
作者さんキャラ増やしすぎて収拾つかなくなってきてない?
529 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/23(火) 12:40:24.75 ID:litwm4zz0

前にペットショップの店員が規制される前にアライグマを売りさばきたいとか
最後まで責任取って飼える人がオススメとか言ってたから今はアライさんの楽園だけでアライグマの楽園の方は無くなってるのかな?
530 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/24(水) 00:04:22.16 ID:FxSTFveu0
野生のアライさんとペットアライちゃん。
野生のインターンシップとペットの楽園システムのせいで完全にベクトルが分かれてる。
ほとんど進化で枝分かれする瞬間のような状態なんだな。
続きが気になる。
531 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/24(水) 01:16:43.67 ID:ADN6Kz+R0
アラ助は過去のキャラでおそらくもういないから大丈夫やぞ。ペットアライちゃんに個性も糞もないし
532 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/24(水) 06:30:36.15 ID:ExK+Zoct0
ペットアライちゃんは規格品だからな
ある程度想定された範疇の性格に育たなきゃ殺処分されるわけで、キャラかぶりは当たり前
粗末に扱って死んだところで新しく買えば同じようなもんなnだし効率がいいと思うわ
533 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/24(水) 09:31:33.83 ID:LFBDveQAO
虐待不足で面白くない
534 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/24(水) 09:54:25.51 ID:7ABHqT8Ko
>>532
値段は工場によって違うみたいだから欲しいアライちゃんの性格に合わせて買えるってのも良いよね
535 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/24(水) 10:10:12.04 ID:ywFztrJSo
しっかり手間かけて躾てるところは高いんだったな
536 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/24(水) 10:53:36.77 ID:s4lOrpoGo
>>533
前スレ見てこい
537 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/24(水) 11:23:15.93 ID:EtzfkQVso
>>533
>>1-3を読むこと
538 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/25(木) 22:21:00.04 ID:I4fI14lDo


〜ある休日〜

絹男「なあ飼い主男、うちの蚕小屋に害獣が住み着いてるみたいなんだ…。いい業者知らねえか?」

飼い主男「害獣…やっぱりアライちゃんか」

絹男「そーなんだよ!あークソ!」

飼い主男「うーん…ネットで探してみたか?」

絹男「ああ…でも高いんだな、ああいう業者に頼むと」

飼い主男「ケチってても仕方ないだろ…」

絹男「うー…!…とにかく見に来てくれよ!」

飼い主男「ふむ…そうだ。うちのペット連れてっていいか?何かの役に立つかも」

絹男「ああいいぞ、害にならないならな…」

飼い主男は一旦家に戻ると、アラ助を車に乗せて、絹男の蚕小屋へ向かった。
539 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/25(木) 22:26:46.85 ID:I4fI14lDo
〜蚕小屋〜

アラ助「おおー!はじめてかいだにおいなのりゃー!ここなんなのりゃ?」シッポフリフリ

飼い主男「ここは蚕小屋。虫を育ててるんだ」

アラ助「むししゃん?」シッポフリフリ

絹男「うわ、見ろよ!糞が落ちてやがる!どこだ…?やっぱ住み着いてんだ…」

アラ助「なのりゃー」ヨチヨチ

アラ助は、蚕小屋の柱を登ろうとするが…

アラ助「う〜」コスリコスリ

ヨチライフ手術済みのペットアライちゃんであるアラ助に、木登りはできない。

飼い主男「見るか?よっと」ヒョイ

アラ助「おおー!」

アラ助の目の前には…


蚕たち「むしゃむしゃ…」ウゾウゾ


…大量の蚕が、桑の葉を貪っているのが見えた。
540 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/25(木) 22:30:45.09 ID:I4fI14lDo
アラ助「むしいーっぱいいゆのりゃあ!」

アラ助は興味津々なようだ。

アラ助「かいぬししゃん!あのむしどーしゅゆのりゃ?たべゆのか?」シッポフリフリ

絹男「チッ(舌打ち)」

飼い主男「違う違う。食べ物じゃない。こいつらは成長すると、繭を張って蛹になるんだ」

アラ助「さなぎ…」

散歩中に、芋虫や蛹を見たことがあるアラ助。

アラ助「これちょーちょになゆのりゃ!?きれーにぱたぱたとぶのりゃ〜!≧∀≦」シッポフリフリ

飼い主男「…」



絹男「…いいや、飛べねえよ。こいつらは」

アラ助「うゆ?なんでなのりゃ?」クビカシゲ
541 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/25(木) 22:42:10.42 ID:I4fI14lDo
絹男「見ろ、これが繭だ。この繭を取って、糸にするんだ」スッ

繭「」

絹男は、窓際で天日干しにされ乾燥させられている蚕の繭をいくつか見せた。

どうやら今は、蚕の終齢幼虫が繭になりはじめる時期らしい。

アラ助「おおー!きれーなのりゃ!これをぶちやぶっておとなのちょーちょでてくゆのりゃ!」シッポフリフリ

アラ助は繭から蚕の幼虫達へと視線を移した。

アラ助「あれはあかちゃんなのりゃ!あらしゅけとおんなじなのりゃ〜!いっぱいごはんたべておーきくなって、りっぱなおとなになゆのりゃー!≧∀≦」ワクワク

絹男「いやいや。こいつらが立派な大人になったら…繭が破れちまうだろ」

アラ助「うゆぅ」コクコク

絹男「そうしたら糸は取れない。せっかく今まで育ててきたのが水の泡だ。だから…」



絹男「…殺すんだよ、こんな風に」パッ

繭たち「」ボチャンボチャンボチャン

繭は、お湯を張ったタライに落とされた。

アラ助「ぴっ…!?」ビクゥ

蚕に自己投影していたアラ助は、突然の出来事にビビった。
542 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/25(木) 22:51:16.76 ID:I4fI14lDo
繭「」プカプカ

これらの繭は、10日目あたりに冷凍され、その後乾燥させられていたものである。

つまり、お湯に沈められる前からとっくに死んでいた。

アラ助「うゆうぅ!?なんで!?なんでこよちたのりゃあ!?おとなになゆとこだったのにぃい!?」

アラ助は、自分の姿を重ねていた蚕が目の前で殺された(ように見えた)ためか、ひどく狼狽えている。

アライさんは、人間に比べて共感能力が低い生き物である。

だがそれでも、幼い頃は育ての親に可愛がってもらうために、それなりに顔色を伺う力はある。

すなわち、幼い頃は、成体よりも共感能力が強いといえる。

絹男「さっき言っただろ。こいつらは大人になっちまったらもう価値がなくなるんだ。そうなる前に…価値があるうちに殺すんだ。糸をとるために」

アラ助「で、でも、でも!そのいもむしは!おとなになゆためにごはんくっておーきくなったのりゃ!そのまゆも、うぅ、おとなになりたいからつくったんじゃないのりゃ…?」コスリコスリ

飼い主男「…アライちゃんもいろいろ考えるんだな…意外だ」
543 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/25(木) 22:52:00.98 ID:CNZ+0mwJo
どんな虫かと調べたけど蚕って成体になっても飲み食いしないで交尾した後ぐ死んじゃうのか…
544 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/25(木) 22:57:19.08 ID:mWN5hfXno
蚕はゆりかごから墓場まで人間の助けなしでは生きることができないからね
ペットアライちゃんも一緒だね
545 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/25(木) 22:58:24.06 ID:I4fI14lDo
絹男「…そうかもな。こいつらは、大人になりたいのかもな」

アラ助「な、なら…!」

絹男「さっきから何度も言ってるが…だからといって、こいつらが大人になりたいからといって…大人になられると、困るんだ」ホグシホグシ

絹男は、繭をほぐして絹糸をとっている。

ほどけた繭から、ミイラのようになった蛹がぼろりとこぼれ、お湯にぷかぷかと浮いた。

絹男「確かにこいつらが葉っぱを食い、繭を作るのは、大人になるためだろう」

絹男「俺たちは、それを利用する。こいつらが大人になろうとするために作る『副産物』である繭…。それだけが欲しい。その『副産物』をとるためだけに、こいつらを育てている」
546 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/25(木) 22:59:50.68 ID:I4fI14lDo
アラ助「う、うゆうぅ…わかんないのりゃあ…」ピヨピヨ

アラ助はそろそろ話についてこれなくなっている。

しょせんは幼獣、赤ちゃんの頭である。
あまり難しい話をされるとついてこれないようだ。
547 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/25(木) 23:08:17.66 ID:I4fI14lDo
飼い主男「…絹男、あんまりそういう話は…」

絹男「おっと、まずいか?」

飼い主男「…もし蚕たちが自分が育てられている理由を知ったら、みんな一目散に逃げていくかもな」

絹男「はは、違いないな。自分が殺されると分かっていたら、こんなとこいられないだろ」

飼い主男「だが、こいつらにそんなことは気付けはしない。餌を与えられ、大事に育てられているのは、立派な大人に育てて貰うためだと信じて疑わない」

絹男「虫にそんなこと考える頭はねえだろうけど…まあ、そういうことだな。だからこそ、逃げ出さずに小屋の中で大人しくしているわけだ」

絹男「…もっとも、逃げようにも逃げられないだろうけどな。きちんと囲って、脱走防止はしてるから…。ま、逃げないだろうけど」
548 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/25(木) 23:16:35.32 ID:I4fI14lDo
アラ助「うゆぅ…かいぬししゃん…」ヨチヨチ ギューッ

アラ助はなんだか怖くなり、飼い主男の足にしがみついた。

飼い主男「おーよしよし」ヒョイッ

飼い主男は、ハムスターよりちょっと大きい程度のサイズであるアラ助を拾い、優しく胸に抱いた。

アラ助「な〜のりゃ〜♪かいぬししゃん、しゅきしゅきなのりゃあ〜♪」スリスリ

飼い主男「おーよしよし。可愛いなぁ」ナデナデ

アラ助は、大好きな飼い主にたくさん甘えた。

どんなに不安でも、どんなに怖いことがあっても。

飼い主は自分を守ってくれる。

己が非力で、一人では生きられない、脆弱な存在だと自覚しているアラ助。

自分を育ててくれている飼い主男が、本当に本当に大好きなようだ。

もっと飼い主に愛されたい。

もっと飼い主に可愛がられたい。

だからアラ助は、芸を覚えたり、飼い主の機嫌を取って、気を引く。

飼い主に好かれるために。

いや…



…自分が、生きていくために。
549 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/25(木) 23:19:19.66 ID:CNZ+0mwJo
種の繁栄じゃないってのがペットアライちゃんらしい
550 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/25(木) 23:20:51.72 ID:I4fI14lDo
飼い主男「えーと、で…」

絹男「ああそうだ。アラ助…だっけ?お前鼻いいんだろ。これと同じニオイ、どっかからしてこないか?」スッ

絹男は、床に落ちている糞を指差した。

飼い主男「どうだ?」スッ

飼い主男は、アラ助を床に置いた。

アラ助「ん?くんくん…」クンクン

アラ助は、大便のにおいを嗅いでいる。

アラ助「うぅ〜…?こっち、なのりゃ…?」ヨチヨチヨチヨチ

アラ助は、小屋から出ようとしている。

絹男「んん…?」ノソリノソリ

飼い主男「…」ソソクサ

二人は、足音を立てないようにしてアラ助のうしろをついていく。
551 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/25(木) 23:25:37.08 ID:I4fI14lDo
アラ助「のりゃ!のりゃ!」ヨチヨチヨチヨチ

アラ助は、小屋の裏…納屋の方へ向かって這っている。

やがて、納屋の壁のとこで急に止まった。

アラ助「きゅるるるる!おともだちなのりゃ?」コスリコスリ

アラ助は、小屋の壁に向かって喋りかけた。

すると…

野良アライちゃん「うぅ?だれなのりゃ?はぐはぐ…」モゾモゾ

…壁の下の地面に空いた穴から、蚕の幼虫を咀嚼しているアライちゃんが、ぬっと顔を出した。
552 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/25(木) 23:26:08.39 ID:I4fI14lDo
つづく
553 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/25(木) 23:30:32.34 ID:CNZ+0mwJo
乙一
自分達が生き残る為に媚びているのが結果として
アライちゃん喫茶とか工場が幾つも出来る位のブームになっているのがある意味凄い
554 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/25(木) 23:44:10.42 ID:FJ1Ar/zDo

アラ助ちゃんお友達ができてよかったね!
555 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/26(金) 01:45:49.22 ID:TcFLy0QP0
乙でしゅ
蚕の幼虫は宇宙食ってイメージが個人的にあります
そんな食材を食い荒らすとは許せません。他にも野良がいないかも気になりますね
556 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/26(金) 01:50:57.35 ID:TcFLy0QP0
乙でしゅ
蚕の幼虫は宇宙食ってイメージが個人的にあります
そんな食材を食い荒らすとは許せません。他にも野良がいないかも気になりますね
557 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/26(金) 01:52:22.97 ID:TcFLy0QP0
二重投稿してしまいました、申し訳ございません。次回も楽しみにしてます
558 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/26(金) 02:03:09.37 ID:uakZau32o
でしゅ君はなぜ半コテなんていう茨の道を選んだのか
559 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/26(金) 05:46:24.40 ID:z1TuAcL40
これは久しぶりの虐シーン到来かな?(◯ l v l ◯)
560 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/26(金) 10:10:59.55 ID:HJqSsR190
アライちゃんの声録音して流すだけでも巣穴から出てくるかな?
561 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/26(金) 17:56:25.58 ID:q1ySAMR20
虎は死して皮を残す
蚕は死して繭を残す

さて、野良アライちゃんは何を残すのだろうか
562 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/26(金) 22:37:56.16 ID:ks/1nI6H0
>>561
愉悦と精神的充実感(ただしほぼほぼマッチポンプ)
563 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/26(金) 23:30:03.96 ID:Uzb79nf9o
つまり使い勝手がいい使い捨てのおもちゃですね
564 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/27(土) 01:37:12.13 ID:XmG1Lnrl0
家畜を食べるけものは昔から虐殺殲滅根絶と相場が決まっている。

かつてニホンオオカミがそうだったように。
アメリカの狼もまた滅んだように。
いま再びツキノワグマが狩られるように。

それがどんなに必死に生きていたとしても。


絹男の怒りの行き場と今後の展開が気になる。
565 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/27(土) 16:52:49.35 ID:L2gbVGqOO
アライちゃん使ったアライちゃん狩り
566 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/27(土) 19:45:12.43 ID:w9CPwb5KO
アラ助「のりゃー!ありゃしゅけとおんなじかおなのりゃ!」シッポフリフリ

野良アライちゃん「うぅ〜、かわったにおいなのりゃ」クンクン

野良アライちゃんは、巣穴から這い出てきた。

アラ助「いっしょにあそぶのりゃー!≧∀≦」シッポフリフリ

野良アライちゃん「うぅ?あそぶのか?あそぶのりゃー!くちゃくちゃ、ごっくん!」ゴクン

野良アライちゃんは、食ってる途中の蚕の幼虫を飲み込んだ。

アライちゃんは、野良もペットも遊ぶことが大好きである。

なぜなら、子供は遊ぶものだ…
…というアレではなく。

遊びとは、高度な知能を有する生き物にとって、知能の発達に必要不可欠な行為といわれている。

好奇心を充足させ、探求心を満足させ、新たな運動行動を身に付けたいという欲求。

それは即ち、『学習』を本能的に行うための習性といえよう。

野良アライちゃん「みんなー!でてくゆのりゃあ!おねーしゃん!いもーとぉー!」シッポフリフリ

野良アライちゃんは、穴の中へ向かって叫んだ。

野良アライちゃん2〜4「なのりゃー!」モゾモゾモゾモゾモゾモゾ

穴から、3匹のアライちゃんがぞろぞろと這い出てきた。
567 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/27(土) 19:56:47.78 ID:w9CPwb5KO
…飼い主男と絹男の二人はその様子を、遠くからこっそり見ている。

絹男「な…!くそ、地面にいたのか…!天井裏や木の穴ばっか探してて、盲点だった…!」ヒソヒソ

飼い主男「…」

絹男は、アライちゃんが人間より耳のいい生き物であることを知っている。

自分が潜んでいることに気づかれまいと、小声でひそひそと呟いている。

…怒っているようだが、己を冷静に保っているようだ。

絹男「ぞろぞろぞろぞろと…!よくもうちの蚕たちを…!全員皆殺しに…」ヒソヒソ

飼い主男「…なあ」

絹男「なんだよ?」

飼い主男「…駆除するのはもう少しだけ、待ってくれないか?」ヒソヒソ

絹男「あ?なんで…」ヒソヒソ

飼い主男「…もちろん、あの野良どもがアラ助を虐めようとしたり、あの場から去ろうとしたら、すぐに駆除すればいい」
568 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/27(土) 20:00:53.81 ID:w9CPwb5KO
飼い主男「だけど…」

絹男「…」


野良アライちゃん「おにごっこしゅゆのりゃー!おまえおになー!」ヨチヨチヨチヨチ

アラ助「まてー!まつのりゃー!≧∀≦」ヨチヨチシッポフリフリヨチヨチシッポフリフリ

野良アライちゃん2〜4「ここまでおいでなのりゃー!」ヨチヨチヨチヨチ



飼い主男「…あんなに楽しそうなアラ助の顔は、初めて見たよ…」

絹男「…」

飼い主男「…あいつは、仕事から帰って来た俺に、甘えて、じゃれついて、癒してくれる。どんなに職場の愚痴を吐いても、俺を全面肯定してくれる」

絹男「…話を理解してないからとりあえず頷いて媚を売ってるだけじゃねえか?」

飼い主男「『だとしても』。だとしても…。…いや、『だからこそ』か。…そんな風に、俺を何でも肯定してくれる者なんて、親も前の彼女にもいなかった」

絹男「…」

飼い主男「…俺は救われているんだ、あのペットに」

絹男「…」

飼い主男「だから、今だけは。アラ助への恩返しとして…。遊ばせてやることを許してはくれないか」

絹男「…」



飼い主男は、アラキレスの飼い主であるバイトのようなサディストではない。

ペ虐動画を投稿し続ける狂人卍のような、動物(?)虐待愛好者でもない。

この日本に生きるごく当たり前の感性を持った男性だ。

そんな彼には、たとえ相手が害獣であっても…。

自分のペットが楽しそうに一緒に遊んでいる『お友達』を、この場で即殺処分するという非情な判断はできなかった。
569 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/27(土) 20:10:02.44 ID:w9CPwb5KO
絹男「…ちょっと道具持ってくる。見張っててくれ」スタスタ

飼い主男「…ありがとう」

飼い主男は、野良アライちゃんを見張った。

いや…

ペットのアラ助を見守った。

もしも虐められるようなことがあったら、即座に駆け付けるつもりだ。



野良アライちゃん2「おまえあしおそいのりゃ!おにごっこよわいのりゃー」シッポフリフリ

野良アライちゃん3「おしゅもーもよわいのりゃ」シッポフリフリ

アラ助「うぅ〜、だったら、しっぽのてにすしゅゆのりゃ!たあ〜!」ペチッ コロコロ

アラ助は地面に転がっている松ぼっくりを尻尾で弾いた。

野良アライちゃん2「たあ〜!たのちーのりゃあ!」ペチッ コロコロ

野良アライちゃん4「おぉ〜!こんなおもちよいあそびはじめてなのりゃ!おかーしゃんもしらなかったのりゃ!」ペチッ コロコロ

野良アライちゃん3「いーおともだちができてうれしーのりゃあ!たあ〜!」ペチッ コロコロ

アラ助&野良アライちゃん2〜4「「たのちーのりゃあ〜!≧∀≦」」



飼い主男「…」

アラ助の屈託のない笑顔。

それを見た飼い主は、やはり普段アラ助を退屈させてしまっているのだということを、嫌でも実感できてしまった。
570 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/27(土) 21:05:15.54 ID:w9CPwb5KO
野良アライちゃん3「おぉ〜!このあそび、きのこしまいもよんでやゆのりゃあ!」ヨチヨチシッポフリフリヨチヨチシッポフリフリ

野良アライちゃん3は、倉庫の壁の方へ向かった。

アラ助「きのこしまい?」

野良アライちゃん「しらないのか?このへんには、あらいしゃんたちのほかにも、もーひとりしまいがすんでゆのりゃ。それがきのこしまいなのりゃ!」

野良アライちゃん3「おーい、きのこしま…うゆ!?」ヨチヨチヨチヨチ

茸取りアライちゃん1「きゅるるる!おまえたち、さっきからおもしろそーなあそびしてゆのりゃ!」モゾモゾ
ヨチヨチヨチヨチ

倉庫の壁の下の地面に空いた巣穴から、アライちゃんがぴょこっと顔を出した。

どうやら先ほどから、アラ助たちの様子を伺っていたようだ。

茸取りアライちゃん2「ありゃいしゃんたちもまぜてなのりゃ〜!」ガサガサッ ヨチヨチヨチヨチ

野良アライちゃん「うゆ!きのこしまいきたのりゃー!」

茸取りアライちゃん1「いもむししまい、それありゃいしゃんたちにもやらせゆのりゃあ!」シッポフリフリ

茸取りアライちゃん2「あっそび♪あっそび♪たのちーあそび♪」ヨチヨチシッポフリフリ

アラ助「すごいのりゃ、おともだちいーっぱいなのりゃあ!よーし、じゃあちっぽのさっかーやゆのりゃ!ずっとやってみたかったのりゃ!」

野良アライちゃん達「なにー!?もっとたのちーあそびあゆのかあ!?」キラキラ

野良アライちゃん達はキラキラと目を輝かせている。
571 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/27(土) 21:30:27.66 ID:w9CPwb5KO
1匹のペットと6匹の野良は、わいわいと無邪気に、楽しそうに遊んでいる。

絹男「…もうすぐ40分だ。もういいだろ。…ほら、パンくずだ」スッ

飼い主男「…ああ」ガシィ

絹男は、右手に持っているパンくずの入った袋を、飼い主男へ手渡した。

その左手には、なにかの道具を持っていた。

絹男「大丈夫か?虐められたり、共食いされたりしなかったか?野良アライちゃん達って共食いするんだろ」

飼い主男「…大丈夫だったよ」

絹男「…今日は助かった。いつかまたアラ助連れてきてくれ」

飼い主男「ああ」スタスタ

飼い主男は、パンくずを持って、アライちゃん達の方へ向かった。

野良アライちゃん「ぴぃ!?ひとしゃんなのりゃ!」ビクゥ

茸取りアライちゃん1「に、にげゆのりゃあ!」ビクゥ

野良アライちゃん達は、飼い主男が来たのに気づいた。
警戒し、逃げようとしている。

アラ助「うゆ、かいぬししゃん!だいじょーぶなのりゃ、かいぬししゃんはやさしくていだいなんだぞぉ!」ヨチヨチ

アラ助「かいぬししゃーん!のりゃっ!のりゃっ!」ヨチヨチシッポフリフリヨチヨチシッポフリフリ

アラ助は嬉しそうに飼い主男のほうへ這い寄ってくる。
572 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/27(土) 21:57:40.78 ID:w9CPwb5KO
つづく
573 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/27(土) 22:05:43.80 ID:RwV2d5XUo
乙乙
寂しさ対策でアライちゃんなら多頭飼いでも躾次第でいけそう
574 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/27(土) 22:13:59.01 ID:PIwO2jm20
>>573 ヨチライフ手術は忘れずにね?

アライちゃん「やめるのりゃ!あらいしゃんのあしとらないでほしいのりゃ!」ジタバタ

???「君に最初から主導権があるとでも思っていたのかい?(○??v??○)
575 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/28(日) 00:42:43.27 ID:7+Q275hB0
アライちゃんは野生・ペット問わず、基本的に社会性はないんだよな・・・・。
こんなに楽しそうに遊んでいるけど、鉄火場に送り込まれるとすぐに算盤弾いて自分の命を最優先にしてしまう。
命がかかっていなくても、相手の命がかかっていても自分のわずかな損失を避けることを優先してしまう。

ペットショップのアライちゃんはちょっと違ったけど。

言葉は喋るし、コミュニケーションも取れるが薄皮一枚はがせば、ただのケダモノ。
そんなアライちゃんをうまく書いているのがこの作者さんの魅力なんだと思いながら見てます。
576 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/28(日) 22:59:37.44 ID:mMXTEjXI0
更新きてた乙でしゅ。どんな駆除をするのか楽しみですね
577 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/28(日) 23:32:00.15 ID:2w7BuSI6o
飼い主男「お〜よしよし、パン食うか」スッ

飼い主男はパンくずを差し出した。

アラ助「いただきましゅなのりゃあ〜!はぐ!はぐ!あむあむあむあむっ!んん〜!おいちいのりゃあ〜っ!(≧'ω(≦ )」ムシャムシャモグモグ

アラ助はいつも通り口を閉じ、クチャクチャ音を鳴らさずに食べた。

ペットアライちゃん工場の職員が厳しく躾した成果の賜物である。

野良アライちゃん「うぅ…」グーギュルルー

茸取りアライちゃん1「きのこよりおいちそーなのりゃあ…」グーギュルルー

飼い主男「君たちも食べるかい?」スッ

野良アライちゃん2「い…いいのかあ!?」

飼い主男「よいしょ」ポイッ

飼い主男は、パンくずを入れた袋を投げた。

袋は地面に落ちた。

野良アライちゃん達「「「なのりゃああああ〜〜〜〜〜〜っ!!!!≧∀≦」」」ヨチヨチヨチヨチヨチヨチヨチヨチ

野良アライちゃん達は、パンくずの入った袋へ猪突猛進した。

野良アライちゃん「はぐっ!はぐっ!」ムシャムシャモグモグ

野良アライちゃん2「おいちーのりゃあ!いもむしよりおいっちーのりゃああ!」クッチャクッチャ

野良アライちゃん3「あぐあぐ、むふぅ、クチャクチャクチャクチャ」

野良アライちゃん4「あむあむあむあむあむあむっ!あむあむあむあむっ!」ムシャムシャモグモグ

一方の野良アライちゃん達は、パンくずを一心不乱にクチャクチャとむさぼっている。

別に野良アライさんの全てがクチャラーというわけではない。

だが、アライさん自身は他人のクチャラー音を全く気にしないため、この汚い咀嚼音を立てていることが良くないということにすら気付くことができない。
578 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/28(日) 23:44:50.62 ID:2w7BuSI6o
茸取りアライちゃん1「ありゃいしゃんのなのりゃあ!はぐがぶ!」クッチャクッチャ

茸取りアライちゃん2「ありゃいしゃんももっとたべゆのりゃあ!あむあむ!」クッチャクッチャ

飼い主男「…アラ助、帰るぞ」ガシィ ヒョイッ

アラ助「うゆぅ!?」

飼い主男「っ…」タタタタタタタ

飼い主男は走って自家用車のところへ向かう。

アラ助「うゆぅ…!」チラッチラッ

アラ助は、本当はまだまだ野良アライちゃん達と遊びたかった。

だが、わがままを言わないように、徹底的に教育…いや、『調教』…
…否、『洗脳』されている。

アラ助「…またここつれてきてほちーのりゃ」ギューッ

飼い主男「ああ。また連れてくるよ。またお友達を探すといい」スタスタ

飼い主男は、アラ助を助手席へ乗せ、車を走らせて蚕小屋から去っていった。
579 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/28(日) 23:49:48.69 ID:2w7BuSI6o
野良アライちゃん「げぷぅ、たべたのりゃ〜」シッポフリフリ

野良アライちゃん2「そろそろおうちかえっておねむしゅゆのりゃ…」クルッ

野良アライちゃん2は、巣穴がある壁の方を向いた。

野良アライちゃん2「ぴぃ!?」ビクゥ

野良アライちゃん3「どーちたのりゃ?」

野良アライちゃん2「あ、ありいしゃんたちの、おうちが…」ユビサシ

アライちゃん達の棲み家である、壁の巣穴は…



https://i.imgur.com/wGOEzcD.jpg


…いつの間にか、コンクリートブロックが置かれて塞がれていた。
580 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/28(日) 23:52:48.09 ID:2w7BuSI6o
つづく
581 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/29(月) 00:05:29.43 ID:RWSWyNZoo

野良アライちゃん達の末路が楽しみです
582 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/29(月) 05:00:09.21 ID:o+Yj6XCZ0
乙でしゅ。狩り開始ですね
583 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sagem]:2018/10/29(月) 06:08:17.16 ID:3sO+jbvg0
さて次回の虐シーンに期待(○IvI○)
584 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/29(月) 08:15:45.14 ID:9NOWpQ0e0
アライちゃん風情が安住の地を得てはならない(戒め)
585 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/29(月) 11:17:39.93 ID:OUeHvWVrO
そんな塞ぎかたで大丈夫か?
586 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/29(月) 20:27:59.91 ID:ik7hEZK8o
野良アライちゃん1「な…なんで…」

その時。

???「ヴィィイイイイインィイイイインインインィイイイイインヴィイイイイイインッ!!!!」ギュィイイイイイイイ

突如、野良アライちゃん1の近くで機械の高速駆動音が鳴った。

野良アライちゃん1「ぴぃ!?」クルッ

振り返った野良アライちゃん1の目の前にあったのは、高速で回転する円盤だ。


それは…



https://i.imgur.com/IR9CXmr.jpg
587 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/29(月) 20:34:22.84 ID:6E/jomU80
草刈機ならぬアライ刈機
588 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/29(月) 20:43:39.56 ID:ik7hEZK8o
絹男「だらぁ!」ヴィイイイン

それは、レインコートを着てバイク用ヘルメットを装着した絹男が持つ草刈機の刃であった。

ヘルメットはこんな↓感じで、目は透明なシールドで保護されている。
https://i.imgur.com/B4r9vAG.jpg

野良アライちゃん1「じびぎゅ!」ブヂャアアアグシャアアッ

野良アライちゃん1は、草刈機で一瞬のうちに首を切断された。

野良アライちゃん1の頭「」ドチャッ ゴロン

野良アライちゃん1の体「」ドサァ ビグンッビグググッジタバタジタバタビビグンビッタンバッタンシッポフリフリフリフリフリフリビビグンジタバタ

首を刎ねられた野良アライちゃん1の体は、小便を漏らしながら手足と尻尾をばたつかせ、魚のように地面を跳ねた。

野良アライちゃん2「≦∀≧」!?
野良アライちゃん3「≦∀≧」!?
野良アライちゃん4「≦∀≧」!?
茸取りアライちゃん1「≦∀≧」!?
茸取りアライちゃん2「≦∀≧」!?

野良アライちゃん達は、何が起こったのか理解できていないようだ。

だが、徐々に顔が青ざめ始め、仲間の死を理解したようだ。
589 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/29(月) 20:50:21.70 ID:ik7hEZK8o
絹男「ッ…!」タタタッ ヴィイイイン

絹男は死体には目もくれず、生きた野良アライちゃん達の方へ駆け寄る。

野良アライちゃん達「「「ぴ…ぴぃいいいい〜〜〜〜っ!!!にげゆのりゃああああ〜〜〜っ!!」」」ヨチヨチシッポフリフリヨチヨチシッポフリフリヨチヨチシッポフリフリヨチヨチシッポフリフリ


インターンシップを始めて間もない野良アライちゃんの中には、自分は最強であり何でもやっつけられると勘違いする個体もいるらしい。

だが、そんな自信過剰な自惚れ屋は、1ヶ月以内に野良猫やカラスに戦いを挑み、捕食され命を落とす。

そんな無惨な姉妹の姿を見た生き残り達は、日々の厳しい生活の中で、自分達が貧弱極まりない生き物だと嫌でも実感する。

敵から生き残るために必要なのは、闘争でなく逃走なのだと心底理解する。

この野良アライちゃん達も同じだ。

仲間の首を一瞬で切断するような相手に、戦いを挑む者などいなかった。

野良アライちゃん2「やなああああああ!やああなああああああああっ!」ヨチヨチシッポフリフリヨチヨチシッポフリフリ

野良アライちゃん3「ごああいいいいいいいーーーっ!こっちくゆなああああーーーっ!」ヨチヨチシッポフリフリヨチヨチシッポフリフリ

野良アライちゃん4「おがーーしゃああああーーーんっ!」ヨチヨチシッポフリフリヨチヨチシッポフリフリ

茸取りアライちゃん1「ぴいぃいいい〜〜〜っ!ぴぃいいいーーーっ!」ヨチヨチシッポフリフリヨチヨチシッポフリフリ

茸取りアライちゃん2「きちがいなのりゃああああっ!こっちくゆなああああーーーーっ!」ヨチヨチシッポフリフリヨチヨチシッポフリフリ

突然現れた敵から生き残るために、小さな命達は必死に逃げた。

尻尾を振り、短い手足をヨチヨチと動かし、四つん這いで必死に逃げた。
590 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/29(月) 21:03:18.36 ID:ik7hEZK8o
野良アライちゃん2「たかいとこにげゆのりゃあああっ!」ヨジヨジヨジヨジヨジヨジ

野良アライちゃん3「きのぼりしゅゆにりゃああ〜っ!わっちぇ!わっちぇ!」ヨジヨジヨジヨジヨジヨジ

野良アライちゃん2&3「「わっちぇ!わっちぇ!」」ヨジヨジヨジヨジヨジヨジ…

野良アライちゃん2と3は、木の幹をすいすいと登った。

流石アライちゃん、木登りは大得意だ。
高いところへ逃げ切れば、猫はともかく犬やドブネズミ、素手の人間に殺されることはなくなる。

…時に、アライちゃんはなぜ四足歩行をするのだろうか。

骨格や筋肉が、四足歩行に適しているから…
…ではない。

アライちゃんの骨格や筋肉の付き方は、人間の赤ちゃんと同じ。

つまり、むしろ四足歩行は苦手なのである。

アライちゃんが四足歩行をする理由、それは単純な筋力不足である。

赤ちゃんであるが故に、重くてデカい頭を支えて二本足で立ちバランスをとるだけの筋力がないのである。

だが、これは科学的に矛盾している。

人間と同じ骨格であれば、どう考えても、二足歩行をするより木登りをする方が必要とする筋力は多いはずだ。

だが、二足歩行ができないほど筋力の弱いアライちゃんは、当たり前のようにスイスイと木登りをやってのけるのである。

一体なぜアライちゃんにこんな芸当ができるのか…
研究者達が解明のために頭をひねっているが、全く解明は進まず、頭を抱えるばかりだという。
591 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/29(月) 21:17:18.05 ID:ik7hEZK8o
だがまあ…
そんなことは、今この状況では至極どうでもいい。

絹男「よっと」グイイッ

なぜなら、長い棒の先端についている高速回転する刃は、木登りしているアライちゃんへ容易に届くのだから。

野良アライちゃん2「もーすこしでてっぺ…」ヨジヨジヨジヨジ

刃「ギュゥィイイイイイイイイイインッ」

野良アライちゃん2「びぎゅぅうう!!」ヨジヨジグシャアアブシャブヂャグチャアアア

野良アライちゃん3「≦∀≧」!?

絹男「二匹目…」ベチャベチャ

飛び散った野良アライちゃん2の血と肉片と臓物が、絹男のレインコートにへばりついた。

絹男が、草刈機を持ち出した理由。

それは草刈機が、高いところまで届き…

何より、DPS(ダメージ効率)が凄まじく優れているからである。

バットや刃物でアライちゃんを仕留める場合、それらを1匹へ振りかざし、当てる必要がある。

致命傷にならなかった場合、何度も何度も繰り返し攻撃しなければならない。

その間に、他のアライちゃんに物陰に隠れられたら、多くの取り逃がしをしてしまうことになる。

だが草刈機は、刃をアライちゃんにあてがうだけで即死級のダメージ、致命傷を与えることができる。

脳のつまった頭。
頭と胴をつなげる首。
脊椎の通った背中。
内臓のつまった腹。
一本でも欠けたら移動不可能になる手足。
ヨチヨチ歩きのバランサーとして必要不可欠な尻尾。

草刈機の前では、アライちゃんの身体中すべての部位が急所となるのである。

絹男「よいしょ」ヴィイイイン

野良アライちゃん3「う…うゆ…!」

絹男はそのまま、刃を縦に動かし、野良アライちゃん3も続けて仕留めようとした。
592 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/29(月) 21:24:41.84 ID:ik7hEZK8o
野良アライちゃん3「おまえがしぬのりゃああああ〜〜っ!たああ〜っ!」ピョーン

絹男「むっ!?」

なんと野良アライちゃん3は、木からジャンプして絹男の頭上へと飛びかかった。

野良アライちゃん達はインターンシップの掟により、自分から人間を攻撃することを固く禁じられている。

だが、自衛のためなら攻撃が許される、と教わっている。

中には拡大解釈によって、自分の縄張りに足を踏み入れた人間なら殺してよいと思っている野良アライちゃんもいるらしいが…。

ともかく、野良アライちゃん3は今、逃走よりも闘争を選んだ。

野良アライちゃん3「たああ〜〜っ!」ガバァ

野良アライちゃん3は果敢にも、絹男の急所である頭へとボディプレスを仕掛けたのである。

絹男「ッ…!」ヴィィイイン

草刈機は、縦に伸び縮みするものではない。

刃の先端以外に攻撃力はないのである。

完全に不意を突かれた絹男は、もはや野良アライちゃん3のダイビングプレスをかわすことは不可能である。
593 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/29(月) 21:29:38.97 ID:ik7hEZK8o
だが…

https://i.imgur.com/B4r9vAG.jpg

ヘルメット「」ガァン

野良アライちゃん3「ごぶうぅぅ!」ビタァーーーンッ

…絹男が被っているフルフェイスタイプの硬いヘルメットに、野良アライちゃん3の柔らかい腹が打ち付けられた。

野良アライちゃん3「ぐぶぇえええ!」ドサァ

絹男の頭の上でゴム毬のようび弾んだ野良アライちゃん3は、そのまま地面にぼとりと落ちた。

野良アライちゃん3「ごほっげほっ!ぴぎゅるるぅ!ぴぎいいいい!おながいぢゃああいいいーーーっ!いっぢゃああああーーいいいーーーっ!おがああああしゃあああーーんっ!」ピギイイイシッポブンブン

不意を突かれたからどうだというのだ。
あらかじめ不意打ちに備えた装備をすればいいだけのことである。

腹を打った野良アライちゃんは、苦しそうに絶叫して地面の上でごろごろと悶絶した。
594 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/29(月) 21:36:09.16 ID:ik7hEZK8o
野良アライちゃん3「のぉぁああーーーんっ!の゛ぉ゛ぁ゛あ゛ぁ゛あ゛あ゛ーーーーーぁ゛あ゛ん゛っ!」ピギイイイ

絹男「3匹目」グシャア

野良アライちゃん3「ぐぶふぅぅーーっ!」グチャボギメシャブヂャア

移動しない野良アライちゃん相手には、もはや間合いをとって草刈機を使う必要さえない。

絹男は70キロの体重を踵に集中させ、野良アライちゃん3の腹を踏み潰した。

野良アライちゃん3の口からは、水鉄砲のように血が吹き出し、絹男のレインコートを赤く染めた。

野良アライちゃん3「ご…びゅ…」ビグッ

絹男「次」タタタタタタタ

瀕死の状態で弱々しく痙攣する野良アライちゃん3に、絹男は興味すら示さず、次の敵へ駆け寄った。
595 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/29(月) 21:48:59.01 ID:ik7hEZK8o
茸取りアライちゃん1「ひぃ、ひぃぃ!ぜったいにげていきのびゆのりゃあ、いもーとぉ!」ヨチヨチヨチヨチヨチヨチ

茸取りアライちゃん2「ぜーはー、ぜーはーっ!おねーしゃ!おねーしゃぁあっ!」ヨチヨチヨチヨチヨチヨチ

必死に逃げる茸取りアライちゃん1&2。
どうやらこの二匹は姉妹のようだ。

きっと以前はもっと姉妹がいたのだろう。

だが、猫に食われたか、罠にでもかかったか、毒物でも食べたか…

減りに減って、かけがえのない血を分けた姉妹の生き残りはこの二匹となったようだ。

茸取りアライちゃん1「ふぅーふぅー!いもーとがんばゆのりゃあああーーっ!」ヨチヨチシッポフリフリヨチヨチシッポフリフリヨチヨチシッポフリフリ

茸取りアライちゃん2「おねーしゃもがんばゆのりゃああーーーっ!」ヨチヨチシッポフリフリヨチヨチシッポフリフリヨチヨチシッポフリフリ

先を進む茸取りアライちゃん1と、その2メートル程後ろに続いてヨチる茸取りアライちゃん2は、互いを励ましあっている。

絹男「逃がすか」タタタタタタタ ギュィイイイイイイイ

茸取りアライちゃん1「ぴいいぃ!」ヨチヨチヨチヨチヨチヨチヨチヨチ

茸取りアライちゃん2「は、はやいのりゃああ!」ヨチヨチヨチヨチヨチヨチヨチヨチ

だが、距離はすぐに詰められていく。

茸取りアライちゃん1「ぴぃい!」ヨチヨチヨチポテッ

茸取りアライちゃん2「おねーしゃ!」ヨチヨチヨチヨチ

だが、姉の茸取りアライちゃん1は地面の小石につまづき、転んでしまった。
596 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/29(月) 21:57:57.70 ID:ik7hEZK8o
茸取りアライちゃん1の足首「」ボギィ

茸取りアライちゃん1「ふぎゅうぅ!?」ズキン

転んだせいで、茸取りアライちゃん1の足首は捻挫してしまったようだ。

茸取りアライちゃん1「ひぃ、ひぃ、にげ、れな、いぃ…!」ズキズキ

絹男「ッ…!」タタタタタタタ

絹男との距離はぐんぐん縮まっていく。

もはや自分が草刈機の刃から逃げられないことを悟ったようだ。

茸取りアライちゃん2「おねーしゃ!はやくよちよちしてにげゆのりゃあ!えっほ、えっほ!」ヨチヨチヨチヨチヨチヨチ

姉を追い抜き逃げようとする茸取りアライちゃん2。
597 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/29(月) 22:00:39.29 ID:ik7hEZK8o
だが、そのすれ違い様に…

茸取りアライちゃん1「たあ〜!」ガシィイッ

茸取りアライちゃん2「ぴいぃい!?」ビターン

なんと姉は、妹に後ろから飛びかかって捕まえた。

茸取りアライちゃん2「な、なにしゅゆのりゃおねーしゃ!?」ジタバタ

茸取りアライちゃん1「ふぅーっ!ふぅーっ!くゆな!くゆなあああーーっ!」グイグイ

なんと茸取りアライちゃん1は、妹を羽交い締めにして、絹男の方へ向けている。

血を分けた妹を盾にして、刃を防ごうというのである。

茸取りアライちゃん2「はなちて!はんちてえええっ!ふぎゅるるるうる!ぴぎゅるるるるぅっ!はなぜえええええ!」ピギイイイジタバタシッポブンブンシッポブンブン

姉に羽交い締めにされている茸取りアライちゃん2は、脱出しようとして必死にもがき暴れている。
598 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/29(月) 22:10:16.94 ID:ik7hEZK8o
茸取りアライちゃん1「ふぅーふぅー!きたらぶっこよすぞぉお!ふぅーっ!」ガクガクブルブルグイグイ

足首を捻挫し逃げられなくなった茸取りアライちゃん1は、妹を盾にして、ついに草刈機の刃に立ち向かう。

果たして、茸取りアライちゃん1は、無事に刃を防ぐことが…

絹男「だらぁ!」ズガアァア

茸取りアライちゃん2「じびゅぅうう!」ズパァァアアッ
茸取りアライちゃん1「びぎゃあああああっ!」ズブグシャアアアアッ

…なんて言っている間に、姉妹は仲良く上半身と下半身を真っ二つにされた。

刃の回転で吹っ飛んだ上半身は、地面の上で重なりあった。

茸取りアライちゃん1「ッ…」ビグッビグッ

茸取りアライちゃん2「ッ…」パクパク

横隔膜が切断され、喋ることのできない姉妹は、互いを見つめあったままぱくぱくと口を動かしている。

果たして死にゆく二匹の血を分けた姉妹は、相方に何を伝えようとしているのか…

絹男「次で最後だ」タタタッ

…だが絹男は、そんな事にはまるで興味を示さず、最後の一匹を仕留めに向かった。
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