とある妄想科学の猟奇殺人(ニュージェネレーション)

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/25(日) 20:39:20.38 ID:0u3i+OR/0
注意事項。

・禁書とカオスヘッド・カオスチャイルド、及び科学ADVシリーズとのクロス

・クロスと言っても一人を除けば禁書キャラしか出ないから、禁書しか知らない人でも問題なし

・グロテスクな描写が多数

・間違ってもミステリーではない
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/25(日) 20:41:01.70 ID:0u3i+OR/0
ただ重苦しい静寂が広がっていた。
あまりに濃くてあまりに重い。それだけで窒息してしまいそうなほどに。

周囲には理解のできない奇妙なもの。
でも、目の前にあるものは酷く分かりやすかった。

「……ごめん。終わったんだよ。……もう、終わっちまったんだよ」

どこで間違えた? 何を間違えた? どうすれば、こんな終わり方を回避できた?
考えることに意味はない。もう今更どうにもならないんだから。

彼女の唇が僅かに動く。
その言葉に何が込められているのか、もう俺には分からない。
もしも時間を遡ることができたら、もう一度チャンスをくれたら、こんなことにはならなかったんだろうか。

口の中に鉄の味が広がっていく。
自分が情けなくて、あまりに無力で、ひたすらに拳を握る。
言葉が零れた。

「                  」

それは許されない。そんなことをする権利は、ない。
膨れ上がるそれに抗いながら、俺は僅かに手を伸ばす。
もう掴めるものなどないと分かっているのに。

「                  」

彼女の唇が、三度動いた。それだけで奇跡とさえ言えるのかもしれない。
彼女のその返事を聞いて。彼女のその顔を見て。
俺は、膨れ上がり続けたそれに、ついに抗えなくなった。

なんで、そんなことを言うんだ。
なんで、そんな顔をするんだ。

その時、その瞬間――――――上条当麻は頬を伝い落ちる一粒の透明な滴と共に、全てを諦めた。
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/25(日) 20:41:42.75 ID:0u3i+OR/0







If you are God, and the delusion becomes reality. About what kind of the noids you get?
Is it the sensual world? The despotic society? The destructive sanctions? Or...





4 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/25(日) 20:42:21.61 ID:0u3i+OR/0


9月7日。
学園都市で異常な猟奇殺人事件が発生した。


そして9月19日。
二件目の猟奇殺人事件が発生。


然程間を置かずして起きたこの二つの事件は、すぐに結び付けられて考えられた。
独立した事件と考えるには、余りにもその際立った異常な殺害方法が共通していたからだ。

この猟奇事件に対して、学園都市の住人の反応は早かった。
恐怖する者、憤る者、捜査の遅れを指摘する者、他人事として楽しむ者。
反応は様々だったが、たった一つ。ほぼ全員が口を揃えてこう言った。


『事件は、まだ続くぞ』


おそらく具体的な根拠なんて誰もが持ち合わせていなかった。
ただ多くの者が直感していた。
ネットは大いに騒ぎ立て、街を歩けば誰かが事件のことを話しているのを耳にした。


そして。それらを肯定するかのように、第三の事件の発生を許してしまうことになる。


この第三の事件の前後から徐々にネットの『祭り』の様相は激化し、面白おかしく茶化す者が増え始めていた。
程度の差はあれ現実でも似た現象がみられるようになり、どこかの誰かから、事件にキャッチーな名前がつけられ始めた。


第一の事件、『露出橋』。


第二の事件、『ヴァンパイ屋』。


凄惨な殺人現場や死体の様相からとられた通称はSNSなどを通して次第に浸透し、その名を口にする者は加速度的に増えていった。
第三の事件に対しても、同様に。
中には面白がって更なる事件の発生を望んでいるかのような呟きも、事件が起きる度に散見されるようになっていった。

ネットを介すことで現実味が失われ、連続猟奇殺人という形で人の死すらエンターテインメントになっていく状況。
それらを包摂し、やがてこの一連の猟奇殺人事件に一つの名称がどこからともなくつけられた。
人々はこの事件のことをこう呼ぶ。


『ニュージェネレーションの狂気』、と――――――。
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/25(日) 20:43:28.05 ID:0u3i+OR/0


第一章 狂気と邂逅するは幻想殺しの少年 Welcome_To_Chaos_World.




9/23


「俺を、見るな」

小さく呟いてみる。こんな時、稀に感じるのだ。
誰かの視線。誰かの目。誰もいるはずがないのに。

『その目誰の目?』

言葉に特に意味はない。ただ俺にとっては一種のおまじないのようなものだった。
こう唱えると何となく楽になるような気がする。

「はぁ……」

目の前の画面を見て思わずため息を零す。
一台のノートパソコン。貧乏苦学生上条当麻にそんなものを買う余裕は残念ながらない。
あらやだ自分で言ってて悲しくなってきた。

ただこれは、おそらく高校の入学祝いか何かで両親辺りから贈られたものなのだろう。
つい最近部屋から発掘された一品だが、諸事情で記憶が吹っ飛んだ俺には断言はできなかった。

「どいつもこいつも……」

やる気が削がれた俺は思わずブラウザをバックさせる。
元々俺はネットに噛り付いたりそこに溢れる情報を追っていったりする人間じゃない。
そんな暇があったら青春したいのだ。だって割と本気でことあるごとに死にかけてるから仕方ないじゃない。

俺にだって人並みにはそういう欲求はあるんです!!
学校帰りに二人乗りで汗を流しながらデートしたり何だり!!

分かってる、そんなリア充行為は神に選ばれた選民共にしかできない高貴な遊びだ。
今も窓の向こうから仲良さげな男女の声が聞こえてくる。
クソッ、お前ら爆ぜろ。出会いがほしいちくしょう。

「……ってそうじゃねぇ」

閉じたノートPCを押しやりテレビをつけると、予想した通りのニュースが流れていた。
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/25(日) 20:44:29.18 ID:0u3i+OR/0
『……この相次いだ二件の事件ですが、上坂さん、どう見ますか?』

『そうですねぇ……。二人の被害者には全く関連性がないということなので、まず怨恨の線は薄いでしょうね』

『となるとどういう狙いがあるんでしょうか』

『殺害方法が普通ではないことを考えると、自己顕示欲を満たす手段の一つ、ということは可能性として考えられると思います。また劇場型犯罪の……』


「……」

まただ。一件目の事件から日が経つと報道は下火になっていっていた。
しかし第二の事件が発生し両者が結び付けられて考えられるようになると、報道は一気に過熱したのだ。
キャスターたちが事件を整理し、犯罪心理学などの知識人たちが犯人像の分析などをしている。
当然、それが当たっているのかどうか確かめる手段はないんだが。

「これで終わってくれるといいんだけどな……」

冷蔵庫を開けて中を見る。
そこにはコーラ、ドクペ、スコール、マウンテンビューと珍妙な飲み物が並んでいた。
青ピたちと遊んだりした時になんやかんやでこんな並びになってしまった。
普段はドクペだのスコールだの、まず飲まないのにな。

まあ捨てるのも勿体なく、こうしていつか来るだろう飲まれる時を静かに待っているわけだ。
とりあえず無難なコーラを取り出して一口呷る。


『……とにかく、犯人もまだ捕まっていないわけですから、十分気をつけていただきたいですね』


コメンテーターがそう締めると番組は次のコーナーへと移っていった。
テレビを消すと同時に、俺はふと思い出した。

「そういやインデックスの奴、もう帰ってくるころだよな」

同居人であるインデックスは現在散歩へ出かけている。
あれでもシスターだからかあいつは割と早起きなんだ。
そういう時、まだ俺が寝ていると時間を潰すためかぶらりと外に出ることがあった。
7 :妄想トリガー [saga]:2018/11/25(日) 20:45:15.55 ID:0u3i+OR/0




→POSITIVE

NEGATIVE




8 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/25(日) 20:47:44.15 ID:0u3i+OR/0
―――――――――――――――


「……そうか」

そうだった。あいつは今、いないんだ。
だったら今のうちに着替えておこう。学校がある。

「えっと、確かこっちの引き出しに……」

あまりにも汚れてしまったため、お財布を痛めながら仕方なくクリーニングに出した制服。
返ってきたそれのあまりの綺麗さに感動し、ちゃんと引き出しの中にしまっていた。
そしてその引き出しを開けると、

「なん……だと……?」

そこには綺麗に畳まれた小さい布が並べられていた。
なんだこれ。見覚えがない。
突然目の前に姿を現した未知なる物質の正体を白日の下に晒すべく、俺はそれを一つ手に取る。

なんだこの可愛らしいデザインは。
なにやら折り畳まれていたので広げてみる。
そこで初めてこの白い布の正体が判明した。

「これは……男たちの夢(ホワイト・ドリーム)だ」

そうか。流石にこういうものはインデックスが自分で仕舞っていたからうっかりしていた。

「とうま?」

「っ!?」

反射的に身が縮み上がる。
心臓が止まるかと思った。鼓動がヤバい。
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/25(日) 20:48:52.60 ID:0u3i+OR/0
っていうかなんでインデックスがここにいるんだ!?
全く接近に気が付かなかった。
まさか音を殺して歩くのがクセになっているのか!?

「とうま、それ……」

「……!! い、いや違うんだインデックス。誤解するな。まずは話し合おう」

そうだった。そんなことを言ってる場合じゃないんだ。
何故なら俺は今、その右手にドリームを持っている。
こんなのまるで留守中に女の子の下着を漁ってるただのHENTAIじゃないか……!!

いや待て。待て待て。
考えるんだ。相手はインデックスだぞ。

これがたとえば美琴とか吹寄とかだったら、速く重い一撃を頂戴した後風紀委員なり警備員なりに通報されてお縄コース不可避だっただろう。
しかしインデックスであれば、ヘビーな噛みつきくらいで何とかなる可能性があるのではないか!?

「インデックス、これは……」

「それ、欲しいの……? とうま……」

「は!?」

なんだそれ。なんだそれ!!
あまりにも想定外すぎる言葉に上ずりまくった声を上げてしまう。
その発言にも問題だらけだが、どうしてお前はそんな満更でもなさそうな顔をしているんだ!?

「私は、いいよ……。とうまが望むなら……。今まで家賃とかも払ってなかったし……」

誰か。誰か、この状況を説明してくれ。
急展開すぎる。青ピ風に言うなら『これなんてエロゲ?』

「お、おいインデックスあなたさまはいったいなにをおっしゃっているのですか?」

「だから、ね……? 今までの分も、これで払うんだよ……」

インデックスは顔を赤らめながらその修道服を脱いでいく。
こ、これは……いいのか? そういうことでいいのか?

今まで散々苦労してきた。レベル5や聖人なんて化け物とぶつかったこともあった。
それらのご褒美が今、舞い降りようとしている!!
すまん青髪ピアス。すまん土御門。俺はこれ以上お前らと同じ道を歩むことはできないようだ。

インデックスの白い肌が見える。
俺はゆっくりと手を伸ばす。おかしい。何故俺は今になってインデックスを意識してしまうんだ。
だがもうそれはいい。上条当麻、いざ参る!!

「本当に、いいんだな。インデックス」

「うん。きて、とうま……」


―――――――――――――――
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/25(日) 20:49:48.75 ID:0u3i+OR/0
―――――――――――――――



「そこで何してるの?」

「うぉわっ!?」

び、びっくりした。驚かさないでくれ。
というか何してるってなんだ。普通に服もちゃんと着てるし。

「お、お前が何してるんだよ!!」

「何してるって、今帰ってきたところなんだよ」

そうだった。そういやそういう時間なんだった。
ここ最近、何故かやけにこんな風に妄想することが多くなった。
落ち着け。よく考えたらインデックスに欲情するなんて絶対にあり得ない。いくつかの意味で。

「……まあ、とにかくだ。朝飯にしようぜ」

俺はいつものように簡素な食事をちゃっちゃと作ると、それをテーブルの上に並べる。
そこに特別なものは何もない。年中無休で財政難なのだ。

「むぐむぐ……美味しいんだよとうま!」

「そりゃどうも。お前はいっつもそれだよなぁ」

美味しいと言ってもらえるのはありがたいが、こいつは何を出してもこう言うのだ。
コンビニで買ってきたおにぎりや菓子パン、弁当でも、安売りセールの冷凍食品でも、とにかく何でも。
インデックスの胃は全てを受け入れる。差別のない理想郷なんだ。

「テレビつけるんだよー」

「別に構わねえよ」

そう言ってインデックスがリモコンを操作する。
テレビ画面には二件の猟奇殺人事件についての特集がまだ続いていた。
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/25(日) 20:50:19.87 ID:0u3i+OR/0
(……しまったな。さっき見たままチャンネル変えてなかった)

「これ……」

「飯時に見るようなニュースじゃないだろ。変えた方がいいぞ」

「…………」

「……? どうかしたのか?」

「ううん、別にそういうわけじゃないんだけど……」

「何だよ煮え切らないな」

「……何だか、ちょっとだけ怖いな、って思ったりして」

……やはり失敗だったかもしれない。

「魔術が絡んだ魔術的事件なら慣れてるけど……こういう普通の殺人事件は経験したこと多分ないかも」

「普通はないって。それよりほら、さっさとその一口食っちまえ。俺もう学校いかなきゃいけないし」

慌ててご飯にかぶりつくインデックスを尻目に、俺はチャンネルを変えると自身の食器を流しへと運んだ。
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/25(日) 20:56:05.54 ID:0u3i+OR/0
とりあえずここまで。時系列は完全に原作とはパラレル
一応説明すると妄想トリガーはクロス先のカオスヘッド・カオスチャイルドにあるシステムで、ポジティブを選ぶと基本的にピンクな展開、ネガティブを選ぶとホラーな展開になるやつ
でも本編にはどっちを選ぼうと一切影響はない。妄想だもの。結構ぶっ飛んだ展開が多くて面白いよ

今のこの板にどれくらい人がいるのか知らないけど、次回からは安価でポジ・ネガを選んでもらおうかなと思ってる
ある程度経っても誰も選ばなかった時はこっちで勝手に決めるかな。人減ってるらしいし

科学ADV特有の設定とか用語がこれから出てくるけど、禁書しか知らない人でも分かるようちゃんと説明していくつもり
ただ科学ADVネタは多く入れてるから両方知ってると一番良いとは思う

次回はまた
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/26(月) 22:11:00.05 ID:0PTk5Vl60
見てる人いるのかな?
まあもう少し書いてく
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/26(月) 22:11:48.71 ID:0PTk5Vl60
適当に後片付けを済ませ、俺は家を出た。
天気は快晴。気温も今日は丁度よく、降り注ぐ太陽の光が肌に心地いい。
こんなに余裕を持った登校は珍しかった。

新調したばかりのポケコンで時間を見る。ポケットコンピューター、略してポケモ……じゃなくポケコン。
正式名称は『フォンドロイド』なのだが、すっかりポケコンで定着している。

多くの機能が搭載されたタッチパッドデバイスで、近年急速にその普及台数を伸ばしている。
そしてつい最近、俺もポケコンデビューを果たした。要は最新の携帯端末だ。

もっとも、俺の場合いつ何時不幸さんが仕事するか分からないので油断はできない。
毎日のように張り切って仕事している不幸さんはきっと時給が高いのだろう。

「お」

「おっす、カミやん」

そんな下らないことを考えていると、隣の部屋から金髪にグラサンという明らかなチンピラが出てきた。
しかし俺は知っている。この髪色やサングラスは、女子にモテるための無駄な、無駄な努力だということを。

「おはようさん。土御門、今日は早いな」

「おう、おはようだぜい。それを言ったらカミやんもだにゃー。
俺は舞夏がいる限りきっちり起きられるんですたい」

「結局舞夏頼りかよ」

「それに何が悪いってか人の妹呼び捨てにするんじゃねーぜよ!」

「でも舞夏俺のことお兄ちゃんってこの前呼んでくれたし。
ほらそれよりさっさと学校行くぞ、折角平和なスタートなんだからチンタラして遅刻なんて御免だ」
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/26(月) 22:12:35.49 ID:0PTk5Vl60
「待て待てそれマジか!? マジならイギリス清教総力を挙げて潰すが……って引っ張るな話はまだ終わってねーんだにゃー!?」

「いやー、それにしても二学期が始まってしまいましたなぁカミやん。鬱ですなぁカミやん」

「別に俺は夏休みがリア充ライフだったとかそんなことはなかったぜ!! というかお前もよーく知ってるだろ!!」

「にゃはは、夏休みも魔術も科学も合わせて色んな事件と仲良くしてきただけあるぜい」

「お前もその一因だからな!?」

「!?」

「え、なんでそこで驚くの!? なにその私全く関係ないのにみたいな顔は!?」

「ひ、ひでーにゃーカミやん……。オレはただのしがない高校生だっていうのに……」

「うるせぇ二重スパイ!!」

「ば、馬鹿、声が大きいにゃー!!」

土御門は顔をきょろきょろさせて周囲を確かめる。
どうせならちょっとくらいバレてしまえばよかったのに。

(寝ている間にベッドごと担ぎ出されたりとか、買い物途中に車で拉致られたりしたの忘れてねぇからな)

全く、散々な目に遭ってきたものだ。
それでも活動できているのだから、我ながらタフな体だと思う。

「ま、まあそれより。今日のテストはどうなるかにゃーカミやん?」

「は!?」

思考が停止した。こいつ、一体何を言っているんだ。
こいつは一体何を言っているんだ。
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/26(月) 22:13:17.04 ID:0PTk5Vl60
「ちょっと何言ってるか分かんないですね」

「いやいや、この前の授業で説明された通り今日数学の小テストがあるぜい?
ただでさえ出席日数がギリギリ限界sparking!! してるカミやんとしては僅かでもポイント稼ぎをしておきたいところですたい」

絶望が、俺の身体を蝕んでいくのが分かった。
当然そんな記憶は俺にはなかった。というか多分その日は俺が欠席か遅刻かした日だろう。

こんなことって許されるのか?
どこで間違えてこんなことになったんだ?

「俺の進級を何とかしてくれーっ!!」

「カミやん、それはできない。それは神の力を大きく超えている」

これはもう駄目かも分からんね。
というかそんな話があったなら教えてくれてもいいだろ土御門!!
そう思って問い詰めたら、

「だってその時カミやんの携帯ぶっ壊れてたし。魔術師との戦闘というカミやんにとっての日常で」

というとても正論で、とても悲しい答えが返ってきた。
何かがおかしい!! 俺はやり場のない悲しみと怒りを持て余していた。




俺のターン!! ドロー!!
テキストを確認、意味不明。
俺は白い部分が大きく残った答案用紙を机に一枚伏せ、テストエンドだ。
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/26(月) 22:14:10.51 ID:0PTk5Vl60
チャイムの音と共に、人が一斉に動き出した。
その多くはたった今二つの意味で終わったテストの話だったが、俺は話すだけの中身すらなかった。
くそっ、聖人だのレベル5だのとぶつかる時より怖かった。

「上条、何を浮かれない顔をしているわけ?
もしかしてテストが全くできなかった、なんて言うわけじゃないでしょうね」

「ああ、吹寄……おはようございます」

「それは朝に聞いたし今は昼よ!! 全く、折角朝は珍しくちゃんと来たと思ったら……」

「上条くん。このまま順調に行けば。留年待ったなし」

容赦なく心を抉ってくるな、こいつら。
吹寄と姫神。この二人は多分こんなテストなんて難なくこなしたんだろう。

「そもそもテストの存在すら知らなかった俺には最初から希望はなかったんだよ……」

「じゃあ聞くけど、テストだって分かってたらばっちりだったわけ?」

「……うん。まあ、うん」

「貴様には呆れたわ……」

「常に留年にチェックをかけ続けるのが。上条くんのジャスティスなの?」

「ぐふっ」

当然ながらそんなジャスティスはなかった。

「カーミやーん、テストは絶好調だったみたいで安心したぜい」

「良い性格してるよなぁお前……」
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/26(月) 22:15:14.42 ID:0PTk5Vl60
ろくに言い返す気力もなかった。
それに土御門はこう見えても頭は決して悪くない。
裏の顔を考えれば当然なのかもしれないけど、とにかくこいつはデルタフォースの裏切り者なのだ。

「というか青ピはどうした青ピは」

「あいつなら弁当忘れたとかで壮絶なラッシュになってる食堂に駆け込んでいったにゃー」

「上条くん。私のおかず。一つ分けてあげるから元気出して」

「ううっ、ありがとう姫神」

「こらこら、あまり上条を甘やかさないの」

「たまには甘くしてくれたっていいじゃねぇか……」

「吹寄がカミやんを甘やかすなんて、考えただけで天変地異の前触れだにゃー。
モノポールが空から突然降ってくるよりあり得ないぜい」

「なんだその謎のたとえ」

「じゃあ。タダで分けるとは言っていないということで。その卵焼きと私の煮つけをトレード」

「それくらい構わねぇけど。ほら」

「ん。美味しい」

「姫神のもな。やっぱ違うよなぁ」

「姫神さんの料理の腕は本当に折り紙つきだからね。そりゃ美味しいに決まってるわよ」

「んじゃあそう言う吹寄も俺と一品だけ交換してみないかにゃー?」

「ええー、正直ちょっと貴様のは味が心配というか……」
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/26(月) 22:16:20.71 ID:0PTk5Vl60
「まあまあ、ものは試しっていうし?」

「じゃあほら。一つだけよ」

「おお、グッドだぜい!! じゃ俺のはどうかにゃー?」

「……あれ、美味しい。それも物凄く……」

「吹寄、それ作ったのこいつじゃないぞー」

「え……あっ、舞夏ちゃんね!! 道理でおかしいと思ったのよ!!」

「にゃはは、舞夏の腕前にひれ伏すがいいぜい!!」

「にしても、こんなタイミングにテストなんて悪魔の所業じゃねぇか?
今はなんたってあの大覇星祭の真っただ中だっていうのに」

そう。今、学園都市は大覇星祭開催中なのだ。
俺の両親は今回はどうしても折り合いがつかず来られないとのことだったが、大覇星祭中は広く一般開放されるため多くの親族や観客が押しかける。
街のあちこちで皆が青春の汗を流している中、俺たちはテストと洒落こんでいたわけだ。

「仕方がないのよ。今日はこの学校が出る競技はないし、うちはそこまで授業に余裕のあるところじゃないし今日が特別ね」

「だからこそ。テストの周知はちゃんとされていたはず。それに。もう一限で下校だから早帰りではある」

「にゃー。カミやん、明日の障害物競走は頼りにしてるぜい」

「つっても、相手は確かレベル3もそこそこいる中堅校じゃなかったか?
まともにぶつかっても勝てる相手じゃないだろうし、作戦は考えないとな」

「安心しなさい、作戦なら既に考案済よ。あとは細かい調整だけね」

そう言って吹寄は一枚の紙を鞄から取り出した。
手書きの絵や図をふんだんに使ったものだ。

ん? よく見たら一番上のタイトルが……『作戦計画書?』
しかも隅の方には無駄に『TOP SECRET』とある。
超ノリノリじゃねぇかこいつ。
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/26(月) 22:17:41.02 ID:0PTk5Vl60
「……ちょっと待てこのスタートと同時にありったけの能力で足元を爆破するってのは?」

「ああ、こっちはうちの切り札であるレベル3の能力者が防いでくれるから自爆の心配はないぜい」

「それに。相手に向けて撃つんじゃなくて。地面に向けてだからセーフ」

「そうじゃねえ!! 不意を突かれたら相手が挽き肉になっちまうわ!!」

「でも、相手チームはこれくらい避けるからね」

「そうなの!?」

「そして私たちの作戦は、その噴煙に混じって相手チームを……」

「ロケットランチャーで。粉々に爆破するのね?」

「そ、そこまではちょっと……」

さらっととんでもない発言をかますなおい。
自分で触れた大会のルールはどうした、というか普通に捕まる。

(まあでも、姫神もクラスに馴染んできたよなぁ)

何だかんだ、姫神が転校してきてから二十日ほどが経つ。
このクラスの連中は揃いも揃ってキャラの強い奴らだし、良い奴らでもあるから馴染むまでそれほど時間はかからなかったようだ。
前にいた霧ヶ丘女学院と比べれば天と地ってくらいにレベル差はあるけど、楽しそうな顔を見ると心配はいらなそうだった。

そんなこんなで昼食を終え、最後の授業を終えた。
明日はまた競技があるため、それぞれ動きの確認など好き勝手な話し声が教室に漏れる。

「…………」

しかし、割と最近起きた『サンクラッシュ』の話がもうほとんど話題にあがらないのが驚きだ。
史上最大の太陽嵐が地球を襲い、世界中で電子機器が破損した世界的大事件。
各国がインフラに大打撃を受け、一部パニックになったのだ。
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/26(月) 22:18:39.98 ID:0PTk5Vl60
一部では毎度お馴染みの陰謀論も囁かれているらしいが、それほどの事態だった。
世界で最も科学の発達したこの学園都市は、同時に世界で最もサンクラッシュの被害を小さくとどめた街でもある。
そのせいなのかは知らないが、話題に出せば「ああ、そんなこともあったね」で流されてしまいそうなほどその存在感が薄くなっている。

情報の溢れたこの時代、人は何かに飽きるとすぐに次のネタに食いついていく。
これも時代の流れか、とらしくもないことをちょっと考えてみる。

俺が椅子に座ったままポケコンを触っていると、突然やかましい奴が騒ぎ始めた。

「カミやーん、一体何して……ハッ!?
ま、まさかまた可愛い女の子と約束してるんか?
それで『明日の競技……君のためにも必ず勝つよ。見ていてほしい』とか言っちゃうんやろ!?
そんでそのままデートなんてアカン!! ボクは許さへんでそんなの!!」

「一人でうるせぇ!! 何だその少女漫画に出てくるサワヤカイケメンみたいなヤローは!?」

「といってもカミやんがサワヤカイケメンかどうかはともかく、可愛い女の子との約束ならあり得る話だにゃー。
そもそもこの野郎は自分の境遇を理解せず出会いが欲しいとか言っちゃう奴だし……」

「いやいや、それに関しちゃ間違ってはいないだろ。出会いが欲しい……ぐぶぁっ!?」

「命に関わるパンチをするでカミやん!?」

「もう殴った後じゃねぇかこのエセ関西野郎!!
大体何なんだその青髪、神の領域に辿り着いた最強の戦士リスペクトか?
だったらまずは赤から入りやがれ!!」

「いやいやカミやんの周りが女子で溢れてるのは事実!!
ねーちんとか他にも色々そっち方面の知り合いが大勢いるはずだぜい!!」
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/26(月) 22:19:48.09 ID:0PTk5Vl60
「確かにいるけど、それはあくまでも知り合い、仲間だろ!!
そうじゃなくて、こう恋愛相手的な意味での話だ!!」

「うわあああああ!! カミやんが恋愛とか言ってるううううううう!?」

「にゃあああああ!? 世界大戦の始まりだにゃあああああああああ!?」

「な……何が可笑しいッ!!」

「き・さ・ま・ら……」

その時。グゴゴゴゴゴ、という凄まじいオーラの気配を感じた俺たちは、ゆっくりと振り向いた。
そこにいたのはまさに怒れる女帝。
眠れる獅子に祟りなしどころかその目玉を枝で突っつきまわしたみたいになっていた。

これはだ、駄目だ。
もう逃げられない。そう思った時には既に事は起きていた。
音もなく一瞬で伸ばされた両手に青ピと土御門を掴み、その頭を正面衝突させ二人を沈没させていた。

「少しは静かに……しな、さいっ!!」

そしてそのまま繰り出された渾身の頭突きが、俺の顔面に三センチないしは四センチほど無事めり込んだ。

「流石。第六位説が囁かれるだけある」
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/26(月) 22:22:38.17 ID:0PTk5Vl60
見てる人いるなら続ける
カオスヘッド・カオスチャイルドのネタバレもあると思うからそこは一応要注意で
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/11/26(月) 23:23:40.28 ID:AV/MGbKkO
カオス・ヘッドは妄想トリガー全部ネガティブでやったな

その後パソコン壊れたせいで出来なくなったけどタクを桃色妄想全開童貞にすればよかった
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/11/27(火) 01:07:11.78 ID:CkNv+xbr0
うろ覚えだけどカオヘ怖いんだよなぁ。禁書が痛快にブッ飛んでる
世界ならカオヘは日常の陰惨な恐怖というか。黒子や佐天さんが
マジで心配になる
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/11/28(水) 00:41:55.27 ID:XKxlUocB0
ギガロマでなければセーフだろ

禁書キャラでギガロマ候補になりそうなのいるな……
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/28(水) 21:12:22.85 ID:n0b/+xFf0
>>24
ちょっともったいない気もする、妄想トリガーは妄想科学シリーズの売りだから
トリガー出たらそこでセーブ→片方見る→ロード→もう片方見るで必ず両方見てた
ハムサンド好き
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/28(水) 21:13:26.16 ID:n0b/+xFf0
少しして息を吹き返した俺は周囲を見渡して状況の把握に努めた。
ああ……吹寄にワンパンでノックアウトされたんだっけ。
正確に言えばワンパンというかワンデコだけど。おのれワンデコマン。

「あ゛ぁあっ!?」

「勝手に心を読まないで!?」

謎のポテンシャルを見せた吹寄はともかく、青ピがいなくなっていた。
バイトの時間らしい。好き勝手言った挙句いつの間にか帰ってるとは。
その分明日の競技で活躍してもらおう。というか盾にしよう。

「……やっぱり吹寄は怒らせちゃ駄目だったにゃー」

鼻が真っ赤に膨れ上がり、真っ赤なお鼻のみんなの笑いものみたくなった土御門がぼやく。

「二人とも。大丈夫?」

「何とかな……」

「それより、上条。貴様がさっきポケコンで見ていたのは何?」

吹寄の表情が多少真面目なものへと変わる。
しまった。見られていたのか。
29 :妄想トリガー。しばらく経って誰も選ばなかったら適当に決める [saga]:2018/11/28(水) 21:14:30.90 ID:n0b/+xFf0


POSITIVE

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