【ミリマス】中谷育と、ワケあり女性P

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/01/16(水) 00:44:32.33 ID:AQjaemd70
――朝、育の家の前


プロデューサー(以下P)「おはよう、育」

育「おはようPさん! もう、約束の時間より5分遅刻だよ」

P「ごめんごめん、ちょっと渋滞に巻き込まれちゃってね。育こそ、忘れ物はない?」

育「だいじょうぶ! お仕事の資料も、学校の荷物も、ちゃんと忘れずに持ってきたんだから」

P「オーケー。それじゃあ次は環を迎えに行くよ。ちょっと飛ばすから、シートベルトはちゃんと締めておいてね」

育「Pさん、交通ルールはちゃんと守らなきゃダメだよ」

P「もちろん。大事なアイドルを乗せてるんだもの。安全運転なら任せなさい。それじゃ、行くよ」
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/01/16(水) 01:58:02.65 ID:AQjaemd70
作者注:バグの影響でRに立っています。なのでR要素ありませんがこのまま続けます。
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/01/16(水) 01:58:48.91 ID:AQjaemd70
先輩、お元気ですか。

私が正式に先輩から765プロのプロデューサーを引き継いでから、なんだかとても長い月日が経ったような気がします。

最初は先輩のいない日々を寂しがっていた765プロオールスターズのみんなも、今では後輩たちを引っ張る良き先導役になりました。

先輩が私に托してくれた39プロジェクトも、順調に進んでいます。

アイドルたちと一緒に成長できる日常は、忙しいですがとても充実したものになっています。先輩のおっしゃったとおりですね。

気が向いたらで構わないので、アイドルたちにもご一報ください。みんなきっと喜びますよ。

それでは、また。
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/01/16(水) 01:59:15.71 ID:AQjaemd70
――その少し後、765プロライブ劇場


美咲「おはようございます、このみさん、莉緒さん」

このみ「おはよう美咲ちゃん、朝早くからご苦労さま。あら、テレビ観てたのね」

莉緒「そうそう。育ちゃんと環ちゃんが朝の子供向け情報番組にゲスト出演するの、今日だったわね」

美咲「はい。この次のコーナーで出番みたいですよ」

このみ「何をするのかしら。楽しみね」

お姉さんA『モニスタ、トレンドガールズ!』

お姉さんB『このコーナーでは毎週女の子たちが大注目するコンテンツを紹介するよ!』

お姉さんA『本日はゲストに来てもらっています! 今話題の人気アイドル、中谷育ちゃんと大神環ちゃんです!』

莉緒「イェーイ!」

このみ「待ってましたヒューヒュー!」

美咲(このみさんたち、きっと企画の内容知らないはずだし、びっくりするだろうなぁ…)
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/01/16(水) 01:59:47.11 ID:AQjaemd70
莉緒「あら? なんか紹介だけされてVTRが始まっちゃったんだけど…」

このみ「女の子たちが注目するトレンドを紹介するコーナーだから、その流れで出てくるんじゃないかしら」

ナレーション『今巷のイケてるガールズたちに大人気なのが……そう、男装女子!』

このみ「えっ」

莉緒「」

美咲「どうやら『空猫珈琲店』での莉緒さんの名演が、ローティーンの女の子たちにも大好評みたいですよ♪」

莉緒「まさかこの企画、Pちゃんの持ち込みだったりしないわよね?」

このみ「そういえばあの“悠利くん”のイメージも、Pと莉緒ちゃんがそれぞれの思うイケメン像をすり合わせて形にしたんだっけ?」

莉緒「そうなのよ。あのときのPちゃんのノリの良さったらなかったわ」

ナレーション『今日は人気アイドルの二人が、漫画の中から飛び出してきた王子様に大変身するよ!』

このみ「育ちゃん、こういうの凝るタイプよ。環ちゃんはポテンシャル高いしバッチリ決めればきっとすごいことになるわ」

莉緒「桃子ちゃんがこの仕事パスした理由がなんとなくわかった気がするわ」
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/01/16(水) 02:00:20.26 ID:AQjaemd70
お姉さんA『お待たせしました! それではお二人に登場していただきましょう、どうぞー!』

(BGMとして少女漫画原作映画の主題歌が流れる)


このみ・莉緒・美咲「かわいい〜〜!!」


育『アイツのことなんて忘れさせてやる。だから……僕だけを見て』

美咲「育ちゃんは少女漫画の一途な男の子をイメージしたみたいですよ」

このみ「ああっ私たちのかわいい末っ子が、挑発的な眼差しで女の子に壁ドンしてる…」

莉緒「これは予想外だったわ。育ちゃんにこんな引き出しがあったなんて」


環『心配するな。お前のことは……必ず俺が守る』

美咲「環ちゃんはクールな役作りに苦労していましたが、Pさんが特撮のブルーをイメージしようとアドバイスしたら途端に上達して」

莉緒「あぁ〜ん、私もこんなワイルドな男子に守られた〜い」

このみ「莉緒ちゃん……それにしても二人とも末恐ろしいわね。Pもよくここに目を付けたものだわ」

莉緒「きっかけが私の男の子役っていうのは、セクシーレディとしてちょっと複雑だけどね」
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/01/16(水) 02:01:00.66 ID:AQjaemd70
――収録後、テレビ局


P「おっ、二人ともお疲れ様」

環「おやぶ〜ん! ねぇどうだった? たまき、ちゃんとブルーできてた?」

P「うん、最高だった。スタッフさんからも大好評で私も嬉しいよ」

環「くふふ〜。いくもバッチリ決まってたね!」

育「ありがとう環ちゃん。男の子役は初めてだったから緊張したけど、とっても楽しかった!」

P「衣装も似合ってたよ。反響が良かったら、劇場のライブ衣装に取り入れてみても面白いかもしれないね」

環「それじゃあたまき、今度はブルーじゃなくてレッドみたいな格好がしたいぞ!」

P「オーケー、後で青羽さんにも伝えておくよ。育はこれから何かやってみたいお仕事とかある?」

育「わたし、もっとお芝居をやってみたい! トゥインクルリズムのときのけいけんを活かして、映画やドラマに出てみたいな」

育「男の子の格好をするのも楽しかったけど、わたしはやっぱりこの間の桃子ちゃんみたいな大人っぽい役がしたい!」

P「『屋根裏の道化師』のことね。ああいう大きな作品となるとオーディションや撮影もかなり大変だけど、頑張れそう?」

育「まかせて! わたし前に劇団にいたから演技には自信あるし、桃子ちゃんだってがんばってたんだから、わたしもがんばりたい!」

P「わかった。二人が楽しくお仕事できるように私も頑張るから、二人も学校での勉強しっかり頑張ってね」

育・環「はーい!」
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/01/16(水) 02:01:36.36 ID:AQjaemd70
――数日後


桃子「おはようお姉ちゃん」

P「おはよう桃子。昨日ご所望してたオレンジジュース、冷蔵庫に冷やしてあるから飲みたければ飲んでね」カタカタ

桃子「なぁにお姉ちゃん、後輩ならそういうのは普通、コップに注いで持ってくるまでやってくれるものじゃないの?」

P「そうしたいけど今は手が離せない」カタカタ

桃子「そっか、なら仕方ないね。で、何してるの?」

P「営業のための書類作り。ほら、育がお芝居の仕事をしたがってるの、桃子も知ってるでしょう?」

桃子「うん……そっか。お姉ちゃんもちゃんとお仕事してるんだね。ちょっと感心したかも」

P「静香みたいなこと言わないの」

桃子「それで、育はどんなお仕事をするの?」

P「一応それらしいドラマや映画のオーディションをいくつかピックアップしてるから、まずはそこにエントリーできるよう調整中」

桃子「ふーん……だから育、次の定期公演をお休みするんだね」

P「そういうこと。今日からしばらく、以前通ってた劇団の先生に稽古をつけてもらうことになったよ」
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/01/16(水) 02:02:03.75 ID:AQjaemd70
P「もしかして桃子ってば育に会えなくて寂しいの?」

桃子「べ、別にそんなこと言ってないじゃん。仕事の予定が埋まってるのはプロとして喜ばしいことでしょ」

P「さすが桃子ね。定期公演に一人欠員が出て色々バタバタしてるけど、まあそれも嬉しい悲鳴なわけだから」

桃子「あれ? その日は環が代わりに出るって話になってたはずじゃなかったの」

P「それが環に急な仕事のオファーが来ちゃってね。昆虫の生態を学ぶ教育番組のアシスタント。先方からのご指名なんて、またとない機会でしょ?」

桃子「そのオファーも、この間の朝番組がきっかけ?」

P「そうなの。元々は男の子を起用する予定だったみたいだけど、この間の環を見て、そういう固定観念は捨てようってことになったそうだよ」

桃子「ふーん。なら桃子、その日のスケジュールまだ空いてるし、レッスン時間さえ確保してもらえるなら出てあげてもいいけど?」

P「本当? ありがとう、助かるよ。なら早速、今から始まるレッスンに参加してもらえるかな」

桃子「もちろん大丈夫だよ。なんたって桃子はプロなんだからね。じゃあ当日のメンバーで今日レッスンに来ている人を教えて」

P「えっと……紗代子、のり子、歩、昴、海美、エレナ、まつり、麗花――」

桃子「ちょ……わかったよ。それよりよりお姉ちゃんこそ、さっきから手が止まってるよ。ちゃんとお仕事してよね」

P「はーい」

パタン
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/01/16(水) 02:04:54.57 ID:AQjaemd70
P「……」


P(育の希望は、桃子たちが出演したような大きな作品……育の演技の腕なら大舞台でも心配ないけど、問題はそこじゃない)

P(いくら最近特撮ドラマに主演した実績はあっても、知名度的にはまだ新進気鋭の事務所の新人アイドルでしかない…)

P(大手の子役とオーディションで渡り合うには技術だけでは厳しい。理想を言えば、これまでの仕事の人脈を活かして指名のオファーを獲れたらいいんだけど…)

P(それにしても、この映画――ただの偶然とはいえ、まさか主演が彼女だとは…)

P(……いけない。今はとにかく育の仕事のことを考えてあげなきゃ)カタカタ
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/01/16(水) 02:05:33.91 ID:AQjaemd70
――翌日


のり子「桃子、お疲れ様〜!」

昴「また明日なー!」

桃子「うん、また明日ね」

桃子(案の定、二日続けて地獄のレッスンになっちゃったな…。まあいいけど)

桃子(今日は育だけでなくお姉ちゃんもいなかった。美咲さんが、お姉ちゃんは朝からずっと外回りだって教えてくれたけど…)

ブルルル…

桃子(電話……育からだ)

桃子「もしもし?」

育『桃子ちゃん、聞いて聞いて! さっきPさんから電話があって、わたし映画のオーディションを受けることになったんだよ!』

桃子「本当? すごいじゃん。やったね」

育『うん! それで主演の女優さんがすごいんだよ。あの勝組劇代さんなんだ!』

桃子(勝組劇代――ハリウッド映画にも出演した若手トップ女優。須五井プロダクション俳優養成所が輩出した最高傑作…)

桃子(主演が彼女なら、須五井プロは子役にも自軍の有望株を起用したいはず。しかも映画の注目度が高いなら、どの事務所も必ずエースを送り込んでくる)
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/01/16(水) 02:06:10.37 ID:AQjaemd70
桃子「ねぇ育、今の状況が大変だってこと、ちゃんとわかってる?」

育『もちろん! オーディションを受けに来る子はみんなすごい役者さんばかりだから、わたしもレッスンいっぱいがんばらなきゃ』

桃子「そう……わかってるならいいけど」

育『勝組さんきれいだし、かっこいいよね。大人の女の人って感じで』

桃子「そうだね。莉緒さんや歌織さんと同い年みたいだけど、良い意味でそんな風に見えないよね」

育『わたしもああいうすてきな演技ができたらいいなぁ』

桃子「……」

育『わっ、もう休けいおわっちゃう。ごめんね桃子ちゃん、レッスンがおわったらまたかけるね!』

桃子「え? うん、頑張ってね」

ピッ

桃子(育、本気なんだ。難しいオーディションなのに全然怖じ気づいてない……)

桃子(しかもオーディションの予定が決まってもお姉ちゃんが帰ってこないってことは……他にもまだ受けさせるつもりなのか)

桃子(もし今回が不合格だったとしても、諦めず別のオーディションを受けたいって言うに決まってる。育はそういう子だもんね)
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/01/16(水) 02:06:53.38 ID:AQjaemd70
美咲「育ちゃんの最終オーディション、いよいよ今日ですね。なんだか私まで緊張してきました」

P「大丈夫。一次選考で同じブロックになった子の中では、育の実力は飛び抜けていました」

P「最終選考に残った4人のライバルたちはきっとみんな強力ですが、今の自分をしっかりアピールできればチャンスは十分ありますよ」

美咲「良い報告を楽しみに待っていますね」

P「ええ。それじゃあ劇場のこと、よろしくお願いしますね」

美咲「はい。いってらっしゃ〜い」
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/01/16(水) 02:07:40.28 ID:AQjaemd70
――オーディション会場、待合所


P「育、番号札が歪んでるよ」

育「え? あっほんとだ」

P「直してあげるからちょっとこっち向いて」

育「もう。これくらい一人でできるよ」

P「まあそう言わず。育が演技に集中できるようにするのも私の仕事なんだから。ね?」

育「うん。…ありがとうPさん」

P「よしっ、できた。エントリーナンバー5、ちゃんと見えてるね」

スタッフ「それではオーディションを始めます。エントリーナンバー1番から5番のみなさん、こちらにお願いします」

育「あっ、そろそろ行かないと……じゃあねPさん。わたし、がんばってくる!」

P「いってらっしゃい。いつもどおり、育らしく楽しんでおいで」
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/01/16(水) 02:08:24.75 ID:AQjaemd70
助監督「えーでは3番の方、ありがとうございました」

助監督「監督、いかがでしたか?」

監督「……」ボンヤリ

助監督「か、監督?(小声)」

監督「え? ああ。上手だったんじゃないかな」ボンヤリ

脚本家(監督のやる気に火をつけるほどではなかったってところか。まあ突出したインパクトを感じなかったのは確かだ)

助監督「それでは次の方、どうぞ」

演美「4番、矢場杉児童劇団所属、天斎演美です。よろしくお願いします」

脚本家「では母親と再会するラストシーン、どうぞ」

演美「お母さん……お母さん!」

監督「……!?!?!?!?」

演美「お母さん、会いたかった……うわぁぁぁん!!」

監督「これだッ!!!!!」ガタッ

助監督「えっ」
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/01/16(水) 02:08:54.06 ID:AQjaemd70
監督「間違いない。私が求めていた演技はコレなんだよ。天斎さん、合格だ! 君たち、今すぐ打ち合わせを始めるぞ」

脚本家「えっ!? 今からですか?」

監督「当たり前だろう。これほどの人材、十年に一度出逢えるかわからん。出番も増やしたいから今すぐシナリオ修正しないと撮影に間に合わんぞ」

脚本家「ちょ、勝手に決めないでくださいよ……しょうがないなあ」

助監督「あの、オーディションはどうしますか……まだあと一人残ってますよ」

監督「もう時間がないのだよ! バイトでもなんでも、手の空いてる人間に任せておきなさい。さあ天斎さん、君も一緒に来てもらおうか」

演美「はい。ありがとうございます!」ペコリ

……パタン

育「えっ……どうしよう…」


1番「あーあ、あの子演技見てもらえなかったじゃん。ひどくない?」ヒソヒソ

2番「かわいそ。同情するわ」ヒソヒソ

3番「代わりに来るバイトって誰よ。まさか高校生だったりしないでしょうね。まあどうでもいいけど」ヒソヒソ
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/01/16(水) 02:09:39.29 ID:AQjaemd70
――待合所


P(さっきからスタッフの人たちが妙に慌ただしい……何かあったんだろうか)

ガチャ

育「ありがとうございました…」


P「育――どうしたの。何があったの?」

育「わたしの前の番号の子が、その場で合格が決まって……わたし、監督さんたちに演技を見てもらえなかった」

P「なんですって…」

P(迂闊だった……あの監督、確かに偏屈で有名だったけど、まさか大きい事務所のホープ子役が集結したオーディションでもやらかすなんて)

P「ごめんなさい、育。こういうことは、本当はあってはならないことなの。すぐに社長の名前で正式に抗議するから――」

育「ううん、いいの。だって4番の子がいちばん上手だったのはまちがいないから……」

P「育……」

育「わたし、もっと上手くなりたい。今回のオーディションで、本当に演技が上手な子がたくさんいるってわかった。だからわたし、負けたくない!」

P「……そうだね。オーディションに参加できる作品は他にもある。まずは次のチャンスのためにできることをしよう」

育「うん!」
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/01/16(水) 02:10:19.65 ID:AQjaemd70
――その後、765プロライブ劇場


美咲「……それは、大変でしたね」

P「ええ。育には辛い経験をさせちゃいました。抗議に関しては高木社長が任せてくれとおっしゃってくれたけど…」

美咲「育ちゃんの気持ちが切れていないのが幸いですね」

P「理不尽な経験を重ねて人は強くなるんだから我慢しろ――なんて昔の人だったら言うんでしょうけどね…」

美咲「Pさん、あまり気を落とさないでくださいね。ほら育ちゃんがよく言ってるじゃないですか。上を向かなきゃ上に行けないんだよって」

P「そうですね。…ホントにそう。私が育に励まされてばかりなんだから」

P「……よしっ、じゃ気を取り直して営業いってきます」

美咲「えっ!? この時間から外回りですか?」

P「以前春香たちがお世話になったドラマの制作会社さん、今日の日没後なら時間が取れるそうです。明日にするつもりだったけど、早い方がいいですからね」

美咲「あ、あのPさん、気をつけてくださいね――行っちゃった…」
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/01/16(水) 02:10:57.65 ID:AQjaemd70
――数日後


ドドドドド… バタン!

海美「みんなああ! 大変だよおおお!!」

奈緒「だああっ!? そんなに慌ててどないしたんや海美! 心臓飛び出るかと思ったわ」

海美「とにかくホントに大変なんだってば!!」

琴葉「海美ちゃん落ち着いて。とりあえず、要点だけ先に言ってみて」

海美「隣の駅前に、他の事務所のアイドル劇場ができたんだよ!」

一同「ええ〜〜〜っ!?」

……

瑞希「須五井プロダクション次世代アイドルシアター、近日始動……事務所のHPに特設サイトが作られています。イメージ画像もこちらに」

琴葉「確かにあの駅前には長らく工事中だった土地があったね……それがこのアイドル劇場だったんだ」

奈緒「なになに、『登壇予定のアイドルはこの10名!』――うわ、みんなテレビや雑誌で見たことのある顔ばっかりやで」

紗代子「収容人数もウチよりはるかに多いし、こんな劇場が近所にできたら……」

奈緒「私らの劇場、ちょっとマズいんとちゃうか…」
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/01/16(水) 02:11:32.28 ID:AQjaemd70
海美「とにかくこのこと、Pにも早く知らせなきゃ!」

小鳥「大丈夫。その必要はないわ」

琴葉「小鳥さん、春香ちゃん――お、お帰りなさい。知らせる必要がないってことはつまり…」

小鳥「ええ。Pさんもこの劇場に関する情報は既に把握済みよ」

春香「私もさっきの現場からの帰りのタクシーで通りかかったとき見つけて、小鳥さんから教えてもらったばかりなの」

春香「だから……動揺する気持ちは私もみんなと同じだよ。でも私たちには私たちのお客さんが待ってる。今まで通り、できることをしようよ」

紗代子「春香さん……そうだよね。私たちにだって今まで頑張ってきた自負があるもの」

瑞希「はい。ライバルは強い方が燃えるという考え方もできます。負けていられないぞ……メラメラ」

春香「さあ、みんな揃ったところだし、レッスンの準備を始めようよ。私もすぐに着替えて向かうから」

海美「そうだ、私も着替えなきゃ! じゃあみんな、先にレッスンルームに行ってて」

奈緒「よっしゃ、なんか燃えてきた気がするわ」
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/01/16(水) 02:12:18.06 ID:AQjaemd70
琴葉「それにしてもP、こんな大事なことをどうして黙ってたんだろう。どうやら美咲さんも知らなかったみたいだし…」

紗代子「私たちを動揺させないため、かな……知っていたのは小鳥さんと、あとは多分、社長くらいなのかな」

瑞希「それでもあれだけ大きな建物です。黙っていてもいずれ私たちも知ることになっていたでしょう」

奈緒「うーん、このタイミングでPさんがいてへんっちゅうのも間が悪いというかなんというか…」

琴葉「最近ずっと外回りばかりなのも、このことを知っていたからこそ、なのかもしれないね」

紗代子「育ちゃんのオーディション、早く良い結果が出るといいね」
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/01/16(水) 02:13:12.39 ID:AQjaemd70
亜利沙「須五井プロといえば、日本を代表する大手プロダクションの一つです。抱えているタレントも俳優・子役・声優・アイドル・お笑いなど多岐に渡ります」

亜利沙「最大の特徴は、全国主要都市に各部門の養成所を設けていることです。各地の養成所から見出された精鋭たちが練習生として東京に集い、しのぎを削り合います」

恵美「ひゃーっ、せっかく養成所をパスしても、まだ競争を勝ち抜かなきゃならないの!?」

亜利沙「そうです。そしてこの精鋭たちの中から正式に事務所に登録されるタレントはごくわずか……つまり所属タレントは皆精鋭中の精鋭ということになります」

昴「なるほどな。ハリウッドクラスの実力者が現れるのもわけないってことか」

桃子「狭き門だけど、正式に須五井プロのタレントになれれば、厳しい競争を勝ち抜いた実力とタフさの証明になって、業界に顔が利くようになるの」

のり子「そっか。言ってみれば肩書き自体が称号になるってわけだね」

海美「それでありりん、このすっごいアイドルたちに勝つための作戦、何かないの?」

亜利沙「任せてください! ありさは既に須五井プロのアイドルちゃんたちの情報もリサーチ済みです」

昴「要注意バッターとかいないのか?」

亜利沙「そうですね、ありさ要チェックのアイドルちゃんは……このメンバー最年少、耳度志麻子ちゃんですね」

昴「耳年増??」

亜利沙「耳度志麻子ちゃんですよ! 間違えないでくださいね! 志麻子ちゃんは11歳。桃子ちゃんと同い年になります」

昴「すっげー……めちゃくちゃ大人びてるじゃないか。髪も長くてクルクルだし、とても小学生には見えないや」

亜利沙「既にアイドル歌手として地盤を固めつつある志麻子ちゃんですが、最近ではお芝居のレッスンにも力を入れているそうです」

のり子「お芝居にも……ってことは、この先育とオーディションでかち合う可能性があるってこと?」

亜利沙「そうなります。一見育ちゃんとは全く異なる印象を持つ志麻子ちゃんですが――この写真を見てください」
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/01/16(水) 02:13:48.44 ID:AQjaemd70
のり子「ショートボブで着物を着てる……すごい、さっきとはまるで別人だよ」

亜利沙「どんなイメージにコーディネートしても一目見ただけで只者ではないと思わせる絶対的オーラ。それが志麻子ちゃんの魅力です」

亜利沙「ただ知名度こそ抜群ですが、子役としての力はまだ未知数です。お芝居の仕事をするとなれば、必ずオーディションからの出場となるでしょう」

海美「それってつまり、育りんがオーディションでこの子に勝てたら心強いってことだよね?」

桃子「簡単に言うのは気が引けるけど……それができれば理想的なのは確かだね」

亜利沙「須五井プロのタレントよりも高いパフォーマンスを見せたとなれば、きっと業界全体が765プロに注目します」

桃子「大きな事務所だけど961プロと違って圧力をかけてくることもないだろうし、正々堂々真正面から戦うことになるよ」

海美「なら育りんがオーディションに集中できるようにみんなでサポートしようよ!」

昴「そうだな。育が定期公演に出られないときは、みんなでスケジュールを調整し合ってカバーしようぜ!」

のり子「もちろんアタシらも、何かの仕事で須五井プロの子と一緒になるときにはしっかりアピールしたいよね」

恵美「そんでもってレッスンと仕事以外の時間はしっかりリラックスしよ。気を張ってばかりいてもしょうがないもんね」

のり子「育があんなに頑張ってるんだもの。落ち込んでなんかいられないよ。ね、桃子!」

桃子「えっ…うん、そうだね」

桃子(一大事だと思ったけど、誰も落ち込んでないし、むしろ一体感が強くなったみたいで良かった)

桃子(それにしてもお姉ちゃん、須五井プロ劇場のこと知ってて黙ってたなんて……)
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/01/16(水) 02:14:21.57 ID:AQjaemd70
――その頃、テレビ局


テレビ局員「765プロダクションさんですね。その節は大変お世話になりました」

P「いえ。改めて本日はよろしくお願いいたします」

テレビ局員「こちらこそ。早速ですが、資料を拝見させていただきました。中谷育ちゃん、快活そうな可愛らしい子ですね」

P「ありがとうございます。こちらも台本を確認の上検討し、中谷が最も適任と考え推薦させていただきました」

テレビ局員「殺人犯として疑われた女性の心の拠り所となる存在、という役どころですね。確かに役のイメージにぴったりではあるんですが…」

テレビ局員「765さん、申し訳ないんですがこの役、周防桃子ちゃんに引き受けてもらえませんでしょうかね」

P「え? ええ。スケジュールさえこちらで調整すれば可能ですが……差し出がましいようですが、何か周防をご指名いただく理由があるのでしょうか?」

テレビ局員「いえね、765さんにお声掛けしているとスポンサーに伝えたところ、ならぜひ周防桃子ちゃんを起用して欲しいとの意見が出ましてね」

P「なるほど、そうでしたか」

テレビ局員「『屋根裏の道化師』私も拝見させてもらいましたよ。いやあ彼女の演技は実に見事でした。さすが子役としてキャリアを積んでいただけはある」

テレビ局員「クールな印象の子ですがあの演技力ならこういう明るい役もしっかり演じきってくれることでしょう。いかがですか? 引き受けてくださいますか?」

P(どうやら先方の意思は堅そうだ。これ以上強引に育を推す理由もないし、指名のオファーを逃す手もない。ここは受け入れよう)

P「かしこまりました。それでは周防桃子をそちらの二時間ドラマに起用させていただくということで、よろしくお願いいたします」

テレビ局員「ありがとうございます! いやあ良かった。オーディションの手間が一枠省けるとなると、スタッフも大助かりですよ」

P(刑事ドラマの主な客層は主婦と高齢者……『トゥインクルリズム』の客層と合致しない。宣伝材料としては乏しかったか)

P(とはいえ最近の桃子の評判は目覚ましいな。うちに来るまでは業界でも悪名高かったなんて嘘みたい。後で何かご褒美をあげなくちゃ)
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/01/16(水) 02:14:54.25 ID:AQjaemd70
――帰り道


RRR…

P「社長か――もしもし、お疲れ様です」

高木「やあ君、営業は順調かね?」

P「はい。先ほど一つ新しい仕事が決まりました。詳細は追ってご報告します。――ところで、ご用件は?」

高木「そうそう。先日から始まった大神環くんの教育番組、当然君も観ているよね?」

P「ええ。昆虫マニアで知られる俳優さんがMCとして熱く語る姿が話題ですよね」

高木「そう! その俳優さんから直々のオファーがあってね、今度自身が主演するドラマにぜひ環くんをゲストとして起用したいそうなんだ」

P「本当ですか!? 願ってもみない大チャンスじゃないですか。本人もきっと喜びますよ。私も大歓迎です」

高木「君ならそう言ってくれると思ったよ。それじゃあ先方には承諾の方向で私の方から連絡を入れておくよ」

P「ありがとうございます。お手数をおかけしますが…」

高木「これくらい構わないよ。いやあ、39プロジェクト、実に順調で何よりだ」

P(あの名優にすっかり気に入られちゃうなんて、さすが環ね。この調子で、育にも早く良い報告ができれば…)
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/01/16(水) 02:15:24.95 ID:AQjaemd70
高木「それと、さっき音無くんから連絡があったよ。……須五井プロダクションの劇場の件、アイドル諸君の耳にも入ったそうだ」

P「……そうですか」

高木「何というか、これも因果というものなのだろうかね」

P「どうあれ私は765プロのプロデューサーです。今後もすべきことを続けるまでです」

高木「そうか……それでは、今後ともよろしく頼むよ」

P「はい。お任せください」

ピッ

P「……」

P(因果、か。それによってアイドルたちが傷つくようなことだけは、絶対に起こさないようにしないと)
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/01/16(水) 02:15:53.28 ID:AQjaemd70
――その翌日


育「おはようございます!」

P「おはよう育。早いのね」

育「だって劇場でのレッスン久しぶりなんだもん――あっPさん、エプロンつけてる! もしかして、お料理するの?」

P(どうしようか……育はこのところ毎日演技の個人レッスンばかりだったし、良い気分転換になるなら――)

P「ちょうど良かった。これからホットケーキを焼くんだけど、手伝ってもらえる?」

育「うん! 今日のレッスン、久しぶりに桃子ちゃんといっしょなんだよね。もしかして、そのホットケーキって桃子ちゃんのために?」

P「えっと……実はそれも理由の一つ。今日は春香がいないから、育に手伝ってもらえるなら心強いよ」

育「まかせて。おかあさんと一緒に何度も作ったことあるから、Pさんが失敗しそうになったらわたしが教えてあげるね!」

P「それじゃあ荷物を置いて制服を着替えたら台所に集合ね。育のエプロンだけど……このみさんのを借りようか」
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/01/16(水) 02:16:21.88 ID:AQjaemd70
P「――よし。多めに作るからタネは二つのボウルに分けて混ぜよう。育はそっちのボウルをお願いね」

育「はーい。材料は量らなくていいの?」

P「ええ。パッケージの裏に書いてあるとおりに私が分けておいたから、卵と一緒にそのままボウルに入れちゃってね」

育「わたしが着替えてくる前にもう分けちゃったの? わたしだってそれくらいできるのに…」ムスッ

P「でも混ぜ方のコツがよくわからないから、育に教えてもらえると助かるな」

育「ホント? じゃあおかあさんがいつもやってる混ぜ方、Pさんにも教えてあげる!」

……

ガチャガチャ

P「じゃあ焼いてくよ。育はフライパンにバターを入れてくれる?」

育「うん!」

ジュー…

育「わぁ、とってもいい匂い。桃子ちゃん喜ぶだろうなぁ」

P「……」
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/01/16(水) 02:17:31.37 ID:AQjaemd70
P(気分転換になればと思って誘ってしまったけど、考えるまでもない。こんなのあんまりだ)

P(元々は育にやってもらう予定だった仕事が桃子に決まって、その桃子のための激励のホットケーキを育に作らせるなんて)

P「……ねぇ、育……あのさ」

育「なぁに? Pさん」

P(育がそんなこと気にしない子だとわかっていて甘えているのは私――私が育の立場だったら、絶対耐えられない…)

育「あっPさん、早くひっくり返さないと! こげちゃうよ」

P「あっヤバ――ギリギリセーフ、かな…?」

育「もーう。ちょっとこげちゃってるよ。フライパンに火をつけたら、ちゃんと見てなきゃダメなんだからね」

P「ゴメン! この1枚は私が責任を持って食べるから。次は……ちゃんとできると思う」

育「しょうがないんだから。それでPさん、何を言おうとしてたの?」

P「ううん、何でもないの。気を取り直して次の分を焼きましょう」

P(そう、次こそは必ず……私ができることはそれしかない。ごめんなさい、育…)
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/01/16(水) 02:18:09.93 ID:AQjaemd70
――数日後、次の映画のオーディション会場


育「……」ドキドキ

P(実際に撮影が進行中の現場のすぐそばの建物でオーディションするなんて、なかなかすごいな。スケジュールの都合だろうけど…)

監督「カットォ! ダメだよ。そこはもっと激情を爆発させなきゃ。もう一回!」

P(さすがに現場の声が漏れ聞こえてくる状況じゃ、育が緊張するのも無理ないな…)

P「ねぇ育、ジュースいらない? 私喉渇いちゃって。ついでだから育の分も買ってくるよ」

育「え? うん……じゃあアップルジュース」

P「わかった。すぐ買ってくるからここで待っててね」

P(えっと、自販機は……建物の外か)
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/01/16(水) 02:19:00.79 ID:AQjaemd70
チャリン ピッ ゴトン

P(次は自分のコーヒーを…)

口先和瑠江「先輩――」

P(なっ……!?)

和瑠江「あら失礼。“元”先輩、でしたね」ニヤ

P(口先和瑠江……そうかこの子、この映画の出演者なのか)

和瑠江「こんなところで会うなんて偶然ですね。まさかまだ役者を続けてたとか? そんなわけないわね。だって今日この建物は子役オーディションにしか使ってないもの」

P「……っ」

和瑠江「スーツ姿に地味なバッグ……その格好、まさか子役のマネージャーにでもなったとか?」

和瑠江「アハハハ、傑作ね。須五井プロ黄金世代でただ一人練習生から昇格できなかった負け犬が、マネージャーに転身してまで業界にへばりつくとは。未練タラタラじゃない」

和瑠江「モラトリアムも大概にした方がいいわ。あなたみたいな無能な女は、早く田舎に帰ってそこそこの男とくっついた方がよっぽど幸せになれるわよ」

和瑠江「まあそれが嫌だっていうなら、私に止める権利なんてないけど……せいぜいこの大都会で野垂れ死なないよう気をつけて生きてくださいね。セ・ン・パ・イ」クスッ
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/01/16(水) 02:19:33.52 ID:AQjaemd70
耳度志麻子「口先さん、撮影お疲れ様です。こちらにいらしたんですね。……あら、そちらの方はお知り合いですか?」

和瑠江「あら志麻子ちゃん――いいえ。知り合いに似ていると思ったのだけれど、気のせいだったわ。じゃ、私はそろそろ休憩が終わるから失礼するわ」

志麻子「はい。では後ほど」

志麻子「……ふう。どうやらうちの事務所の者が失礼を働いたようですね。申し訳ありません。謝罪させてください」

P「えっ? えっと、あなたは確か――」

志麻子「耳度志麻子といいます。本日はこちらのオーディションに出場するために参りました。どうぞよろしくお願いいたします」

P「あ、こちらこそ…(噂には聞いてたけど、めちゃくちゃ丁寧な応対をする子ね)」

志麻子「口先さんは大変素晴らしい女優さんなのですが、少々気弱な面がありまして、気持ちに余裕がないとああやって弱者に対してマウントを取ってしまうのです」

P(ええ熟知してますとも――と、この様子だとどうやら会話の全てまでは把握してないみたいね)

志麻子「ですから大手ではない事務所や制作会社のスタッフの方を傷つけるような真似を――」

P「いえ、お気になさらず。あなたこそもうすぐオーディションでしょう?」

志麻子「あっ、そうでした。おや? あなたの担当タレントの方はどちらに」

P「あ、えーっとね――」
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/01/16(水) 02:19:59.65 ID:AQjaemd70
育「あっPさんここにいたんだね。もう、遅いから心配して探しちゃったじゃない」

P「ごめんごめん」

志麻子「なるほど、こちらの方が……初めまして。私、耳度志麻子と申します」

育「こんにちは。わたしは中谷育です! よろしくね」

志麻子「ええ。本日はお互い悔いの残らないよう、全力を出し尽くしましょうね。……ではまた後ほど」ペコリ

スタスタ

育「きれいな子……あの子もオーディションを受けるんだよね」

P(今回も主要キャストに須五井プロの俳優が複数いる。となればやはりライバル筆頭は彼女か)

P「確かに魅力的な子かもしれないけど、育には育だけが出せる個性がある。他の子のことは気にせず、いつもどおりしっかり自分をアピールしよう」

育「もちろんだよ。わたし、負けないからね!」
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