イケメン「……君が好きだ」美少女「……え?」男「やべぇ変な玩具の音がとまんねぇ」

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350 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/13(水) 22:48:40.54 ID:xOs5jK1A0
>>349
一応出番は考えてはいます・・・
中々出せないだけで忘れてはないです・・・
351 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/14(木) 04:42:34.21 ID:UP6Hsbri0
そして、当然にその理由を尋ねようとして、

イケメン
「どうしたんですか?
 そんなに怖い顔し――」

刑事「――クソガキ、黙れ」


ぐい、と胸倉を掴まれた。


イケメン
「なっ、何するんですか?
 暴力は駄目ですよ」

刑事「暴力は駄目だぁ? ……お前そんなこと言える立場かよ」


刑事は寄せた眉根を緩める事なく、
イケメンを睨み付ける。

イケメンは「ハァ」とため息をひとつ付いた。


イケメン
「刑事さん……あなた勘違いしてますよ。
 俺じゃない、悪いのは薬ですよ。
 こんな事件を起こしたのも、
 真犯人もすべて薬なんです。
 捕まえるべきは俺じゃなくて薬なんですよ」

刑事「……頭おかしくなったフリか何かか? 
   そうすれば許されるとでも思ったか?」

イケメン
「だから、許されるも何も俺はそもそも悪くない」

刑事「……まあ良いさ。どれだけ狂ったフリしようが、お前は間違いなく死刑だよ」

イケメン
「死刑だなんて……俺は最高学府の学生ですよ?」

刑事「……それがどうした?」

イケメン
「……法曹界には俺の大学のOBが沢山居ます。
 だから、俺が悪くないという言葉を信じてくれるハズ。
 死刑になんてならないですよ。
 それ所か有罪にもならない」


イケメンは酷く落ち着いた様子で、
ぺらぺらと言葉を吐き出した。

喋りながら思い出していた事は、
最初に薬を渡された時のフツメンとのやり取りだった。


――なあ、法曹界には俺らのOBが多いんだぜ?
――自分の後輩、守りたくなるのが人間だろ?
352 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/14(木) 15:28:57.00 ID:UP6Hsbri0
スローペースで毎日申し訳ないです
夕方には戻って続き書きます
353 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/14(木) 18:58:44.50 ID:9nwajTKD0

>>1のペースで大丈夫だよ
354 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/15(金) 01:22:30.80 ID:9DF+sDw30

だがこれは……、
決して今回のような事件の、
その揉み消し方を指した言葉では無い。
普通に考えれば分かる事ではある。

しかし、今のイケメンの思考はどうにも正常では無かった。


刑事「……ふざけるのもさぁ、大概にしようよ」


イケメンは自らが喋り終えた後に、
これで刑事も理解するだろうと思っていたのだが、
表情を見るとさらに怒りを溜めたように見える。

あと一押しが足りなかったのだろうか?

そう考えたイケメンは、
今度は親の存在について言及した。


イケメン
「それに俺の親をご存知ですか? 官僚ですよ官僚」

刑事「ああ、そいつはもう知ってるよ」

イケメン
「俺は官僚の子ども。その俺が信じて貰えないのはおかしいでしょ」

刑事「……」

イケメン
「日本の中枢に居る人間の子ですよ?
 つまり俺を疑うということはこの国そのものを疑うって言うのと同じです。

 そんな馬鹿馬鹿しい事出来るわけがない。

 ……刑事さん、もうこんな所に俺を閉じ込めるのは止めましょう。
 何の得にもならない」

刑事「……それ、親の前でも言ってみろよ。ちょうど来ている」


刑事は鬼の形相で笑うと、
扉を開けてイケメンの両親を招き入れた。

スーツ姿の初老の男性と、
歳相応の服装をした妙齢の女性。

刑事の言葉に嘘偽りはなく、
その二人はイケメンの両親だった。

イケメンは一瞬きょとんとしたものの、
すぐに父親に向かって乾いた笑みを向けた。


イケメン
「父さん……官僚なんだから早くなんとかしてよ。
 まあ別に俺は裁判になっても負けるわけないけど、
 でもそんな労力も勿体ないし――」


と、そこまで言った所で、
すぱん、とイケメンの頬がぶたれた。
ぶったのは他の誰でもない……イケメンの父。


イケメンの父
「お前っ――何だその言い方は! 自分が何をしたのか分かっていないのか!?」

イケメン
「と、父さん……?」

イケメンの父
「いいか……? お前のした事は、お前のした事は……っ」


……イケメンの父は、
頬をぶった瞬間に怒号を見せたかと思えばすぐに一転して、
今度は大粒の涙を止め処なく流し、がくりと膝を落とすと、
イケメンの脚に縋り付いた。


イケメンの父
「どうして、どうしてこんな事をぉぉ……」
355 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/15(金) 03:58:14.48 ID:9DF+sDw30


イケメンの父が泣きじゃくり始めると、
傍で見ていた母親も、
ハンカチで顔を覆い咽び泣いた。


イケメン「えっと……」


イケメンは言葉に詰まった。
両親が来た事については、
一瞬戸惑ったものの、
いずれは来るだろうとは思っていたので、
特に不思議はない。

だからそれではなくて、
イケメンにとっての予想外は、
自らの足に縋り付いて泣く父親と、
鼻を啜るように泣く母親の行動だった。


刑事「……これを見ても、まだ言えるか?」


イケメンは刑事に言葉を返せなかった。

言えますよ、と言いたかったけれど、
口が動かなかった。

良くは分からないけれど、
ずしりと重い何かが、
そんな何かが自らを蝕んでいく感覚に陥り始めていたのだ。

正常では無かった思考が、
少しずつ戻り始める。

振り続けるメトロノームにもいつか終わりがくるように、
緩やかに、徐々に……。

そしてやがて、


イケメン「ア゛……ア……アアアッ・・・…アアア゛ア゛ア゛ア゛ー!!」


全てを正常な思考で理解してしまった瞬間に、
一気に許容量を超える罪悪感が流れ込み、
それにあわせて自らの犯した罪の詳細を鮮明に思い出した。


親子三人の慟哭が響く……。


刑事「……やっと受け入れるか。

   これで……薬の出所を素直に吐いてくれると良いが。

   ……あの逃げた女子大生についても、
   いったいどう関係なのか、
   吐いて貰わねぇとな。

   まったく……最近は嫌んなる事件ばかりだよ」ボソッ



………
……


……
………
356 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/15(金) 14:17:58.76 ID:9DF+sDw30
>>353
ありがとう
357 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/16(土) 00:37:33.27 ID:0+kT16PQ0


小洒落たカフェの一角で、
男達は美少女の話の一通りを聞いた。

大学生による飲み会から、
警察署から逃げだすまでの一通りを。



男「なるほど……」

白髪少女「ふむ……」

ゴリマッチョ「そいつぁ……」



経緯を聞いて、
納得したかのように男達は頷いた。
特にゴリマッチョは、
自分と重なる部分があるのか、
しきりに顎をさすっては深く息を吐く。


男「……あんたと似たような感じだな」チラッ

ゴリマッチョ「そうだな」

美少女「え? 似たような……とは?」

男「いや実は……このガチムチも犯人じゃないのに疑いを掛けられてるそうなんだよ」

美少女「……そう、なんですか」

男「うん……あと、それでその……ちなみになんだけど」

美少女「はい?」

男「……いつまで腕を組んでるつもりなの?」

美少女「えっと……駄目ですか?」

男「駄目って言うか何て言うか……」



男はゴリマッチョとの類似点がある事を指摘しつつ、
美少女がしきりに絡めてくる腕についても言及した。

何せ移動した時に絡めてきて以来、
ずっと解こうとしないのだ。


白髪少女
「ははっ、役得か何かだと思えば良いのでは無いか? ん?」フフッ


からかうような白髪少女の言葉に、
男が所在無さげに眉根を寄せると、
何を思ったのか美少女がその言葉に噛み付いた。


美少女「……からかうの止めて貰って良いですか?」キッ

白髪少女
「すまない。悪気があったわけでは」フフッ

美少女「何ですか? その表情イラッと来ますね」

男「あの……今そんな事で争ってる場合じゃないと思うんだけど。なんでそんな事で争うの」

白髪少女
「ああいや、私はそんなつもりはないんだ」

美少女「はぁ? 何ですかその自分は悪くない突っかかる私が悪い見たいな言い方」

男「あのだから……」


……どうにもこの二人は相性が悪いらしい。
移動の途中でも、
どことなくそういった節は見え隠れしていたものの……、
まさかここまでとは男も思い至らなかった。
358 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/16(土) 02:40:30.41 ID:0+kT16PQ0

美少女の一連の流れは聞いた。
だから、今からはこれからどうするか、
と言う事について、
話をしなければならないと言うのに……。

緊張感がどうにも足りない気がする、
と男が口元を歪ませるていると、
ゴリマッチョが救いの手を差し伸べてくれた。


ゴリマッチョ
「まあまあ落ち着こうや。
 ひとまずこれからどうするかについて、
 話をしよう。

 あんちゃんも早くその話をしてぇよな?」

男「あ、ああ。結構急を要する話だしな」

美少女「わ、私は別に話を逸らしたかったワケじゃ……」

白髪少女
「ふむ……そうだな。大事な話だな」

美少女「は? だから何その自分は悪くな――」

白髪少女
「――このままでは男も困ってしまう。
 それは私の本意ではない」

美少女「――っ」



男「……すまない。助かる」

白髪少女
「……いや、良いんだ。
 そこのお嬢さんも、色々と気が立っているのだろう。
 配慮出来なかった私が悪いんだ」チラッ フフッ

美少女「……」青筋ピクピクッ



ゴリマッチョ
「――さ、さっ、それじゃあどうするかだな。
 あんちゃんはどうすれば良いと思う?」

男「え……? 俺?」

ゴリマッチョ
「……なんでい、駄目か?」

男「俺より……あんたの方が詳しいんじゃないのか?
  まがりなりにもヤク○なんだろ。
  この手の事の治め方とか知ってそうだけど」

ゴリマッチョ
「そりゃそうだが、そうは言ってもなあ……。
 俺も今じゃ追われてるかもな身の上だ。
 間違われて追われる事を何とか出来る方法知ってるなら、
 自分の方なんとかしてるって」

男「それもそうか……」
359 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/16(土) 21:12:58.95 ID:0+kT16PQ0
よし、今日はなるべく進められるように頑張るぞ(`・ω・´)
360 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/16(土) 22:24:48.68 ID:yOIM38C70
追いついた、支援
361 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/16(土) 22:36:15.19 ID:Zm0UPI8A0
見とるで…

この先の展開にあまり心引かれないが
物語に動きがあるのを松
362 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/16(土) 22:38:53.88 ID:0+kT16PQ0

ゴリマッチョ
「って事で、何か良い方法考えつかねぇか?」

男「うーん。良い方法ねぇ」


ううむ、と男はしばし悩む。
しかし、良い考えなどそう簡単には思いつくワケもなく、
無情にも時間だけが過ぎて行った。

そして、ようやくの思いで出てきた結論は、


男「……警察に行って、事情やその時の気持ちをきちんと伝えるしかないんじゃないかな」


今一度、改めての説明を警察にした方が良い、
と言う物だった。

今回の美少女の件に関しては、
真犯人が別に居るとかそういう類の事では無いのだから、
警察に恐らく与えたであろう誤解を解かない限り、
終わりが無い。

だから、早めにきちんと誤解は解いた方が良いと言う、
非常にシンプルな解決方法を思い至ったのである。



ゴリマッチョ
「……それでなんとかなるかね」

男「大丈夫だと思うけどね。

  あんた見たいな背景があるならまだしも、
  そうじゃないなら話くらいきちんと聞いてくれるだろ」

ゴリマッチョ
「それもそうか」フゥ

男「……とまあ、これが最善だと思うんだけど、どうかな?」チラッ

美少女
「……男さんが、そうしろって言うなら」

男「そうしろって言うならって……別に強要するわけじゃない。
  君が誤解を解くのを嫌がるなら無理にとは言わないし」

美少女
「ご、誤解を解くのはそうしたいって思います。
 なので別に、い、嫌ってわけじゃないです、けど……」

男「けど?」

美少女
「……ひ、一人で行くのは嫌です。……勇気出ないです」

男「……なるほど、わかった。俺で良ければ付いていくよ」

美少女
「良いんですか……?」

男「別に構わないよ」

美少女
「あっ、じゃ、じゃあ行きます!」
363 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/17(日) 05:02:47.18 ID:AUCUDwpG0

男が小さく頷くと、
ゴリマッチョと白髪少女も倣うように頷く。
どうやら、どちらも異存は無いようだ。


男(……まあ仮に反対されたところで、
  これ以上に良い方法は今の所思いつかないけどな)


――と、その時だった。


男(……ん?)


男はふと、目線の先にある、
奥の方の席に座っている男性客の様子、
それがおかしい事に気づいた。

呼吸を荒げながら、
何か粉状の薬のようなものを口に含み、
コーヒーで喉の奥へと流し込んでいる。

一見して……不審者と言って良いかも知れない。


白髪少女
「……どうかしたのか?」

男「ああいや、あそこに座ってる男性客なんだが……」

白髪少女
「ん……? あれか」

ゴリマッチョ
「なんだ? 何か変な客でも――うおっ、ありゃあ……」

美少女
「……やだぁ、何か怖いです」男の腕ギュ




不審者―――フシュウ、フシュウ、フシュウウウ……―――ハァハァ




白髪少女
「……かなり強い薬でキメてしまっているように見えるが」

ゴリマッチョ
「ように見える、じゃなくて正にそうだろ。つか、こんな店中で堂々とかよ……」

美少女
「……」ギュウウ

男「早めに出るか……。巻き込まれると――」

白髪少女「――伏せろ!」グイッ


ゆっくりと男が席から立とうとした瞬間、
男は白髪少女に頭を掴まれ、
強引にテーブルの下に引きづり込まれた。


そして幾秒も経たない間に、
タタタタタッ、と言う発砲音が聞こえた。
364 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/17(日) 08:14:39.25 ID:AUCUDwpG0

――キャアアアア!
――ウワアアッ……アッアッ……。
――何ガッ、何ガオキ――ウゲッ………。


人々の悲鳴が聞こえる。
一体何事だと男は目を瞬かせていると、
遅れてゴリマッチョと美少女がテーブルの下に潜り込んで来た。


ゴリマッチョ
「な、なんだァ……?」

美少女
「……き、急に、何これ」ガクブル

男「何が起きてるんだ……」

白髪少女
「どうやらあの薬をキメてた男がテロを起こしているようだ」

ゴリマッチョ
「……冗談じゃねぇや」

白髪少女
「いかんな。
 だいぶ血走った目をしていた。
 見境が無い様子だ。

 このままでは……こちら側に来るのも時間の問題だろう。
 ただ現状こちらに銃火器は無し、分が悪い」

ゴリマッチョ
「……何だか随分と慣れてる感じだな」

白髪少女
「郷国ではこのような事は日常茶飯事であったからな」

ゴリマッチョ
「随分とおっかねぇ所の産まれだこと」

男「……そんな話は今は置いておいて、今はここから逃げないと」

白髪少女
「……そうだな。
 それが一番だ。

 だが、逃げるにしても気づかれたら終わりだ。
 完全な隙が必要になる」

ゴリマッチョ
「隙ねぇ……武器持ってる相手にそれを求めるのはちとキツいんじゃねぇかな」

男「……なら俺が囮になろう。
  その間に白髪少女は美少女を連れて逃げてくれ」

ゴリマッチョ
「わーお、男前ェ」

男「こんな時にからかうな。
  それで……やってくれるか?」チラッ

白髪少女
「……突然何を言う? ……本気か?」

男「本気だ。
  何しろ現状それが適任だろう。
  白髪少女の郷里での詳しい話は前に聞いた。

  正直……嫌なこと思い出させるようで悪いんだが、
  こういった場面に慣れてるだろう?」

白髪少女
「それは……」
365 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/17(日) 10:46:32.81 ID:AUCUDwpG0
男「あのラリパッパが自暴自棄の単独犯なら良いが、
  もしもそうではなくて仲間が居た場合、
  守りながらの逃走は素人の俺には厳しい。

  ……適任は場慣れしてる白髪少女しかいないんだ」

白髪少女「……」

ゴリマッチョ
「……何だかあんちゃんも落ち着いてるなァ。
 まあ得たいの知れねぇ俺の話を聞いてくれたぐらいだし、
 肝は据わってると思ってたがよ……。

 ……というか、話の腰折るようで悪いんだが、
 俺の事忘れてねぇか?」

男「……忘れてないよ。
  で、あんたにも悪いけど、
  ここで俺と一緒に残ってくれると助かる。
  荒事得意そうだし」

ゴリマッチョ
「……用心棒するって言っただろ。
 まだ期限内だよ」

男「……そっか。……ありがとう。
  ……よし、それじゃあ白髪少女にもう一回聞くが、頼めるか?」チラッ

白髪少女
「……もしも嫌だと言ったら?」

男「……困ってしまうな」

白髪少女
「……私の見立てでは、あれは単独犯の可能性が高い。
 であればこそ、男と私の役割を変える、
 と言う提案をするとしたらどうする?
 場慣れしている私が、
 より危険な方を担うと言う提案だ」

男「……単独犯ならそれはそれで良いさ。
  と言うかむしろ好ましいな。
  危険な役割をお前に頼まなくて済む」

白髪少女
「……」

男「悩んでる時間はもうあまり無くてだな……」

白髪少女
「……はぁ。わかった……。
 ただし、一つ約束してくれ」

男「何だよ」

白髪少女
「必ず生きてまた会う、と」

男「……善処しよう」
366 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/17(日) 10:46:58.97 ID:AUCUDwpG0
いったん寝ます
367 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/17(日) 14:07:09.22 ID:a1KvFshQ0
なんだかきな臭くなってきたな しかも国内で
まぁ最初からか
368 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/17(日) 14:35:02.41 ID:m5wOqCE6O
ピエールおはよー
369 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/17(日) 22:05:05.36 ID:AUCUDwpG0
よし
370 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/18(月) 03:22:55.16 ID:Fj6oTsSt0

白髪少女
よし「……では逃げるタイミングは私の判断で決めさせて貰う」

男「……頼んだ。

  あと……そうだな、手伝い料じゃないが、
  あとで何か一つくらいなら言う事を聞くから、
  考えておくと良い」

白髪少女
「……ふふっ、そうか。それでは何か考えておく事にしよう」

男「俺に出来る範囲の事でな。
  さて……それじゃあそろそろ動くとするか」

ゴリマッチョ
「話は終わったか。……よし、で、どういう風に囮になる?」

男「いきなり飛び出しても蜂の巣だろうし、
  こういうのを使う」



男はそう言うと、
テーブルの上に置いてあった灰皿を手に取った。



男「これ以外にも、他のテーブルにも色々あるだろ?
  そいつらをぶん投げながら抑えに行く」

ゴリマッチョ
「シンプルだねぇ。分かりやすくて助かるぜ」

男「それ以外に方法も無い」

ゴリマッチョ
「……ちげぇねぇ」

男「んじゃ、俺がこいつ投げたらスタートって事で」

ゴリマッチョ
「あいよ」


男は一呼吸置いて、
灰皿を投げる体勢に入る事に決める。
……が、その前に、
目を瞑って小刻みに震える美少女が視界に入ったので、
軽く声を掛けた。


男「……白髪少女の言う事をちゃんと聞くんだよ?
  仲が良くは無さそうだけど、
  それは今は抑えてね。

  ……お願いね」

美少女「……おね、がい、ですか?」

男「そう、お願い。……守れる?」

美少女「……まも、れます」コク

男「良い子だ」ワシワシッ


美少女が頷いたのを見て、
男は美少女の頭をわしゃわしゃと撫でる。

すると美少女の頬は真っ赤になり、
いくらかは安心も出来たのか、
震えが止まったようだったのだが……。

しかし、男はそれに気づく事無く、
1、2、3と小さく数えてから、
身を乗り出して灰皿を投げつけ走った。


不審者――ウ、ウガァアアッ!?――
371 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/18(月) 16:52:27.50 ID:Fj6oTsSt0
おきたった
372 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/18(月) 17:31:02.15 ID:Fj6oTsSt0


男の灰皿は不審者には当たらず、
その近くを通り過ぎただけたった。
が、驚きを与えるには十分だったようだ。

銃の発砲が一瞬止み、
一体何事かと不審者の目が大きく開いている。


男「――よし」


作戦の効果が有用であった事を噛み締めながら、
男は次々にモノを投げながら近づいていく。


ゴリマッチョ
「――ったく、チャカなんぞどっから持ってきたんだかよ」


呆れたような声を出しながら、
ゴリマッチョも男に続いた。


不審者――ウガガガッ!!――


二人がモノを投げつけながら不審者へと近づくと、
ようやくこちらの意図に気づいたのか、
不審者が怒りをあらわにした表情になり、
発砲を再び開始した。

狙いは当然に男とゴリマッチョの二人。


男「――おっと」

ゴリマッチョ
「あぶねぇっ」


向けられた銃口を見て、
男とゴリマッチョはすぐさまに物陰やテーブルの下へと隠れた。

――次の瞬間。

銃弾が床や壁、物に当たる音が響く。


男「……一気に行けるかもとは思ったんだけど、そう上手くは行かないか」



出来れば一瞬で決めたかったなと、
男はため息をつきながら、
自身が元居たテーブルの下を見やった。

するとそこにはもう、
白髪少女も美少女も居なかった。
どうやら上手く逃げおおせてくれたらしい。



男「……あいつすげぇな」

ゴリマッチョ
「何をぶつくさ言ってるんだ」

男「ちゃんと逃げてくれたようで、安心したなってだけだ」

ゴリマッチョ
「……おお、本当だな。やるなあ、あのネェちゃん」
373 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/19(火) 01:05:04.57 ID:jzfUS3kL0


男は安堵しつつ、
口元をぐにぐにと動かしながら、
不審者の様子を見やる――

――と、それと同時に銃口がこちらに向く。


タタタタッ。


男「――っ」


慌てて再び男は物陰に隠れる。
間一髪の所であった。
銃弾が頬を掠めている。


男「くそ……」

ゴリマッチョ
「やっこさんも必死だねぇ」


はーあ、と首を横に振りつつ、
ゴリマッチョが物を投げつけると、
ガンッと鈍い音がした。


不審者――ググッ……ウゴグッ――


呻き声が聞こえる。
どうやら不審者の頭部に当たったらしく、
ちらっと様子を見ると、
よろめいているのが分かった。


男「命中したなぁ」

ゴリマッチョ
「――しゃあ、一気に行くか!」

男「はいよ」


男とゴリマッチョの二人は、
この機を逃すまいと、
一気に距離を詰めて抑えにかかった。

男が不審者の脚を抑え、
ゴリマッチョが背後から羽交い絞めつつ、
銃を取り上げ放り投げ、そのまま倒れこむ。


男「――よっしゃ」グググッ

ゴリマッチョ
「――ハッハー、終わってみれば案外楽だったぜぇ」ギチギチ

男「……このまま警察来るまで押さえつけておくか」


多少は不安があったが、
意外となんとかなったなと、
二人は互いに目配せをした。

どちらもが軽く笑んでいるのは、
二人掛かりで抑えているのだから、
そう易々とは振り解けないだろうと、
もう決着は着いたと、
そう思っているからだ。

だが……、


不審者――ウガウルッ! アガウアウッ!――


不審者の力は予想以上に強かった。
あるいは薬物の影響で、
肉体のリミッターと言うものが外れているのかも知れない。
374 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/19(火) 08:04:19.55 ID:10/rD12MO
薬物あるある
375 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/19(火) 11:52:36.07 ID:jzfUS3kL0

ゴリマッチョ
「んだっ、こいつっ!」

男「なんて力してんだよっ!」


男は全力で押さえつけにかかっていたし、
ゴリマッチョもまたそうであろう。

だがしかし、
不審者の抵抗はそれを上回りつつあった。

ミシミシと体の軋む音を響かせつつ、
不審者はゆっくりと体勢を立て直し始めた。


男「――くそっ」

ゴリマッチョ
「――腕の一本でも折っとくか」


ゴリマッチョが舌打ち交じりに、
不審者の腕に力を込めると、
鈍い音と共にその腕があらぬ方向に折れ曲がった。


ゴリマッチョ
「痛ぇだろ? これでちったぁ大人しく――」


――だが、不審者は一瞬顔を歪ませたものの、
すぐさまに激昂し、
折れた腕を鞭のように振るって攻撃としてきた。


不審者――ウガッ、ウガガガガッ!――

ゴリマッチョ
「……ぐっ」


折れているせいか、
不審者の腕は不規則な軌道を描き、
ゴリマッチョの顔面に強打した。


ゴリマッチョ
「な、なんちゅうヤツだ……」


うぅ、とゴリマッチョがよろけ、
そして不審者はその隙を逃さなかった。
思い切り暴れて二人の拘束から逃れてしまったのだ。
376 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/19(火) 12:07:27.37 ID:jzfUS3kL0

男「――いっつぅ」

ゴリマッチョ
「く、くそがっ……」


二人と不審者の視線がかちあう。
薬物の影響なのか、
不審者の瞳は真っ赤に血走っていたのが分かった。


ゴリマッチョ
「……こいつぁ、押さえつけるのは無理そうだな」

男「……なるほど、って事は警察が来るまでの間、
  喧嘩するしかないって事か。

  ……この肉体の限界超えてそうなヤツと」

ゴリマッチョ
「そうなるな。……しかも殺さないように、だ。
 殺しちまったらこっちも悪モンになる」

男「……銃を取り上げたのがまだ救いか」


肉体の損壊をものともしない人間と殴り合いの喧嘩などしたくない。
誰だってきっとそう思うだろう。
しかし、やらざるを得ないのである。
だから――警察が来るまでの間。
男とゴリマッチョの二人は、狂った男と戦い続けた。



………
……
……
………



白髪少女は美少女を連れて店の外に出ると、
辺りを警戒した。


白髪少女
「……人影も無く、どこかに待機している様子も見受けられない」


単独犯である可能性が高い、
という白髪少女の読みはどうやら当たっていたようだ。
怪しい人影や気配の類は読み取れない。


白髪少女
「しかし油断は禁物だな。……はぐれないように私の後をついてくると良い」


白髪少女は美少女に向かってそう告げる。
だが……告げられた美少女の表情は、
どうにもよろしくないものだった。


白髪少女
「なんだ? どうした?」

美少女
「え、えらそうに言わないで。
 私があなたについていくのは、
 男さんがそうしろって言うからってだけだから……」


先ほどの現場から少し離れたからだろうか?
美少女からは極度の怯えは消えていて、
代わりに恋敵に対する勝気な部分が戻りつつあるようだ。

まったく、と白髪少女は頭を引っ掻く。


白髪少女
「私に対して敵対心を持つのは別に構わない。
 だがそれは後にしてくれ。
 今はそういう時では無いのだ」
377 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/19(火) 12:13:00.41 ID:jzfUS3kL0
すみません一旦寝ます。
起きたら再開します。
378 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/19(火) 22:40:09.55 ID:jzfUS3kL0
よし!
379 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/20(水) 07:42:10.51 ID:IY1OFIi50
よしとか言いなら書けずに朝を迎えてしまった・・・
なんとか2レス分くらいは今から投下出来るように頑張ります
380 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/20(水) 07:43:12.82 ID:pZ/7g1gnO
がんがれ
381 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/20(水) 08:35:53.75 ID:IY1OFIi50


白髪少女から深いため息が出る。

自身が良く思われていないのは既知ではある。
が、こういった事態においては、
そういう態度は取って欲しくは無かったのだ。

恋に溺れやすい若き乙女だとしても、
さすがに幾らかの物事の分別は出来るであろうと、
そう踏んではいたのだが……。


仕方あるまいと呟くと、
白髪少女は実力行使に出る事に決めた。
大胆に美少女に近づき、
その髪の毛を掴んで思い切り引っ張ると、
低い声音で耳元で囁く。


白髪少女
「……いい加減にしろよ、牝豚。

 そんなガキみたいな事を言ったりやったりするから、
 お前はあいつから相手にすらされんのだ」

美少女
「っ……な、何を知った風な口を。
 相手にされてないなんて、
 そんなこと無いんだからッ……」

白髪少女
「いいや、されていないさ。
 そうだな……それを証明してやろう。

 ほら、これを見てみろ」


白髪少女はゆっくりと目を細めると、
懐の中から一枚の写真を取り出した。
一人の男の子が、
老齢のイタリア人と一緒に映っている写真だ。
男の子は満面の笑みで老人と手を繋いでいる。


美少女
「な、なに急に……」

白髪少女
「あいつの小さい頃だ。
 お前はこの場所がどこか分かるか?」
382 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/20(水) 09:08:10.46 ID:IY1OFIi50

美少女
「……え?」

白髪少女
「答えられないだろう。
 では次に……、
 一緒に映っている老人との関係は分かるかな……?

 ああいや――分からないだろうな。
 知らないだろう。
 ちなみに……当然だが私は全て知っている。
 私はあいつの事を深く知っているよ。

 だがお前は、私が知っているあいつの事を何ひとつ知らないようだ。

 つまりあいつはお前に自身の事を言っていない、という事だな。
 ……で、そのザマをどう解釈すると相手にされている、となるのだ?」


まるで写真も情報も、
男本人から受け取ったかのように語りながら、
白髪少女は畳み掛ける。

これらは実際は、
男からではなくてその父親からのものである。
だが、それを教えてやる義理は無い。


美少女
「……う、うそつかないでよ」

白髪少女
「うそなんかじゃない。
 なんなら、この写真が本物かどうか、
 後で男に直接見て貰うか?

 ……これが本物だと分かったらお前はどうするんだろうなぁ。
 それでもウソだとでも喚くか?」


白髪少女が挑発するように言葉を紡ぐと、
美少女は大きな涙を目の端に溜め始めた。


美少女
「……なん、で」

白髪少女
「ん?」

美少女
「なんで……私を追い詰めるの。

 あんたなんか死ねば良い!
 早く死んで消えて!」

白髪少女
「なんで私がお前に命令されて死ななきゃならないのだ?」

美少女
「だって邪魔なんだもん。
 あんたが居なきゃ、
 きっと全部上手く行ってたんだもん。

 ……あんたが居なきゃ男さんともっと仲良くなれたし、
 仲良くなれてたら、
 あんな飲み会の誘いもいくら友達に言われても、
 一生のお願いされても断ったし、
 そしたらこんな事になんてならなかった……。

 だから全部あんたが悪い!」

白髪少女
「……とんでもない言いがかりだな」
383 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/20(水) 10:45:06.18 ID:S6GGKmoi0
sage進行したいならそれでもいいけどsage外した方がスレが上に行くから読まれやすくなるよ
作者はフィルターを外すためのsagaだけでok
384 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/20(水) 10:51:43.50 ID:OjhBJ5xA0
美少女がまーんさんのほうが多少読みごたえあるな
385 :1 ◆mUjz4FCa2c [saga]:2019/03/20(水) 19:01:36.28 ID:IY1OFIi50
おきたった

>>383
わかりました
386 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/20(水) 23:42:21.34 ID:YX9SoYUlO
この速度でよくVIPでやろうと思ったな
387 :1 ◆mUjz4FCa2c [saga]:2019/03/21(木) 00:53:43.96 ID:16G7CkiF0
>>386
すみません
速報来てスレが基本まず落ちないって知って
ペースがvipに居た頃よりかなりのんびりになってしまいました
388 :1 ◆mUjz4FCa2c [saga]:2019/03/21(木) 01:26:40.48 ID:16G7CkiF0

白髪少女が眉根を寄せると、
反抗するかのように、突然に美少女が暴れだした。

美少女はお返しとばかりに白髪少女の髪の毛を引っ張ると、
その頬に平手打ちを何度も何度もぶつける。

美少女
「……言いがかりなんかじゃないっ。

 ……ねえ、お願いだから死んでよ。

 ――死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで
 ――死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで
 ――死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで」


美少女は呪詛のように「死んで」と繰り返す。
抑揚のない声音が、
この女の異常性を現しているかのようだった。


白髪少女
「くそがき……」


白髪少女は正直な所、
平手打ちを避けようと思えば避けれた。
だが、煽ったのは自分であるから、
こうなった場合には、
多少は我慢しようと考え避けなかったのである。
そして……その上で、

これでお互い様にしよう。
手打ちにしよう。

と、こう話を持っていくつもりをしていたのだが……、
しかしまさか、美少女が――ここまで急激に病的になるとは、
さすがに白髪少女にも予想がつかなかった。


美少女
「死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで」


美少女は口から「死んで」を漏らしつつ、
すぐ隣に見えた食器店、
その店先にあるワゴンの中の商品――
――金属製のフォークを手に取ると、
白髪少女の顔を突き刺そうとしてきた。


白髪少女
「そ、それは洒落にならん……」
389 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/21(木) 05:41:26.04 ID:Ao0yxnlA0
友2も浮かばれねえな…
390 :1 ◆mUjz4FCa2c [saga]:2019/03/21(木) 13:37:41.08 ID:16G7CkiF0


白髪少女は頬を引きつらせると、
一瞬のうちに美少女の腕を掴んで捻り、
無理やりにフォークを手放させ、
その勢いのままに美少女の体を地面に押さえ付けた。


美少女
「死んで死んで死ん――っぅ」

白髪少女
「――やめるんだ」


淀みのない随分と鮮やかな手口であるが、
もとより日本に来る前から、
ある程度の荒事は経験をしてきたのが白髪少女だった。

突然の凶行には驚いたものの、
その相手が素人である美少女であるならば、
この程度の制圧は造作も無い事である。


美少女
「――放して、放して! あんた殺すんだから!」


押さえ付けられながらも、
美少女の敵意は止まらず、
一体どうしたものか、と白髪少女は悩んだ。

手を放せば再び襲ってくる事は容易に想像出来る。
しかしかと言って、押さえ付けたまま、と言うワケにも行かないだろう。

通行人がちらちらとこちらを見ている事からも分かるが、
この状態を維持では、あまりに人目に触れすぎるのだ。
391 :1 ◆mUjz4FCa2c [saga]:2019/03/21(木) 13:38:54.18 ID:16G7CkiF0
一旦寝ます。
すみません。
色々考える事があってこれまたいつも以上のスローペースとなってしまいました……。
392 :1 ◆mUjz4FCa2c [saga]:2019/03/21(木) 20:08:39.12 ID:16G7CkiF0
よし、今日は少し頑張ろう
393 :1 ◆mUjz4FCa2c [saga]:2019/03/21(木) 21:39:40.17 ID:16G7CkiF0

どうにも頭が痛くなりそうだと思いつつ、
白髪少女は未だに騒ぎ続ける美少女を見やった。


――放して!
――放せよ!
――泥棒猫!


その言葉と共に、
怨嗟の篭ったような、
ギラついた酷く暴力的な瞳が、
白髪少女を射抜く。

どうやら……ちょっとやそっとでは大人しくなる気が無いらしい。

白髪少女
「疲れたりしないのか? ある意味凄いな……」


白髪少女は一際大きなため息を吐くと、
「仕方ない」と呟き、自らの腕を美少女の首に回した。


美少女
「なっ、何す――」

白髪少女
「騒ぎ続けるのであれば、こうする他には無い……」


白髪少女は、きゅう、と美少女の首を一瞬の内に絞める。


美少女
「あ――あっ……ァっ――ぅ」


首を絞められて、
美少女は声にもならない声を漏らし、
その瞳から徐々に光が失わせていく。


白髪少女
「……別に殺しはしない。安心しろ」


美少女の意識が完全に落ちた事を確認して、
ヤレヤレと首を横に振ると、
徐々に野次馬が集まりだしていたことに白髪少女は気づいた。


白髪少女
「――見世物ではない」


白髪少女が、キッ、と強めの視線を送ると、
野次馬は蜘蛛の子を散らすようにバラけて行って――

――ふと、肩をポンポンと叩かれた。

一体何だ、と白髪少女が振り返る。
するとそこには、
前掛けエプロンを着けた、
どこかの店の女性の店員が居た。

女性の店員は、
少し迷った顔をしながらも、
こう切り出してきた。


女性店員
「そこのフォークなんですけど、うちの商品なんですよね。

 男の取り合いか何か分からないですけど、
 勝手に使わないで頂けると……。

 あと……もうあれ商品にならないので……買ってくれますよね?」


白髪少女の眉がハの字になった。
394 :1 ◆mUjz4FCa2c [saga]:2019/03/22(金) 05:29:22.65 ID:6Mqf2XeC0

………
……
……
………



パトカーが窓の向こうに見えた時、
息を荒げていた男とゴリマッチョの二人は、
ほっと胸を撫で下ろした。


男「よ、ようやくか……」


戦闘開始をしてから、
およそ十分〜二十分くらい経ったが良い所だ。

しかし、男の体感時間はその何倍もあった。


ゴリマッチョ
「……やっとか。ったく、もう俺らボロボロだっつの」


ゴリマッチョと男両名の体は、あざだらけの傷だらけだった。
まあ……こちらは殺さぬよう手加減しているが、
薬でキマってリミッターも外れてる不審者は、
一切の手加減をしてこないのだから、それも致し方は無いのだが。

男「……」

男がちらりと見やると、
不審者はまだまだ元気そうだった。
折れた腕をプランプランと振り回しながらも、汗一つ掻いていない。


不審者――ウゴルガッ ウガガガッ!――


不審者が威勢良くこちらに投げ飛ばしてきた椅子を避けながら、
男は血が流れ出している鼻を指で擦った。


男「なんて体力だよ……ああいや、薬でキマってるからか」

ゴリマッチョ
「薬、か……。
 ただの薬にしちゃあ何かヤベェけどな。
 普通の薬じゃここまでなんねぇよ。
 こいつが使ってる薬……、
 もしかしてだが、
 連続殺人犯の使ってたのと同じじゃねぇか?」
395 :1 ◆mUjz4FCa2c [saga]:2019/03/22(金) 09:43:23.20 ID:6Mqf2XeC0

男「あんたの組が関わってたって言う、
  例の薬を使ってるって事か?

  ……まあ、ありえなくはないか」


男は思い出す。
確かゴリマッチョは言っていた。
自らの属していた組が、
中国マフィアのガキに危険な薬を大量に売った、と。


男「……って、待てよ」


ゴリマッチョの過去の発言について振り返っていると、
ふと、男はある可能性について思いついた。


ゴリマッチョ
「あん? どしたい」

男「あんた確か、無罪の為にも連続殺人犯追ってるんだよな?」

ゴリマッチョ
「そうだが……」

男「こいつがそれだって可能性、あるんじゃ……」


男は目の前の不審者の事をさして、そう言った。
そう――男が思いついた可能性とは、
目の前の不審者が、
ゴリマッチョの追っている連続殺人犯と同一人物である可能性だ。


男「ありえなくは無いだろう。
  明らかにおかしい薬を使っていて、
  こうして似たような事件を起こしている」


男が辺り見回すと、
血を流しながら床に倒れている人がそこかしこに居るのが見えた。
呻いている人も居れば、ピクリとも動かない人も居る。
恐らく死者も出ているだろう。

これは間違いなく惨状で、
あるいはこれを引き起こした不審者が、
以前に報道された連続通り魔と同一人物だとしても、
何ら違和感が無くもある。


ゴリマッチョ
「……言われて見りゃあ、そうかも知れねぇな」


男に指摘されて、
ゴリマッチョの眉間に皺が寄った。
396 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/22(金) 10:23:11.39 ID:InJvnyOjo
男の精神どうなってんだ
397 :1 ◆mUjz4FCa2c :2019/03/22(金) 15:10:08.89 ID:6Mqf2XeC0

男「警察の調べた結果次第だが、
  もしかしたら疑いが晴れるかもな」

ゴリマッチョ
「……そうだな。
 疑いが晴れりゃあ、
 俺もこそこそ警察に追われんでも――」


と、ゴリマッチョはそこまで言って、
突然に言葉を飲み込み、
その様子を怪訝に思った男は「どうした」と訊ねた。

すると、


ゴリマッチョ
「いやあのよ……今、外に警察居るよな?」

男「いるな」


男が窓の外を眺めると、
警察が突撃準備を始めているのが分かった。


ゴリマッチョ
「……だよな。
 で、俺思ったんだけどよ、
 いまおそらく追われているであろう俺の面を、
 知ってる警官が一人でも居たらヤバくねーか?」


ゴリマッチョの疑問に、
男は一瞬押し黙った。

――と、次の瞬間。

店内の四方八方から、
警官が流れ込むように突撃してくると、
一目散に不審者に突っ込んで行った。


不審者――ッ! ウガガガグッ!――


やはり警官と言うからには、
捕縛術にも精通しているのだろうか。
複数人掛かりではあったものの、
警官たちはあっというまに不審者を取り押さえてしまう。


警官1「ハイ確保ー」

警官2「ちっ、何か嫌な予感すると思ったら、ラリってるだろコイツ」

警官3「鎮静剤持ってこーい」


それは非常に見事な手際だった。

警官たちは不審者の首筋に注射器を、
恐らく言葉から察するに鎮静剤を、
息のつく間もなく不審者の首筋に打ち込んだ。


不審者――ウギギギッ、ギギッ……――


徐々に不審者の威勢は弱くなり、
やがてぐったりと泡を吹いて力を失う。

……何とも随分とあっさりと、
短くも長い戦闘が終わりを告げた。

男とゴリマッチョの二人が、
その一瞬の様子をただただ眺めていると、
警官の一人がこちらに声を掛けてきた。


警官4「えーと、あなた達は……状況から察するに、もしかして犯人を?」
398 :1 ◆mUjz4FCa2c [saga]:2019/03/22(金) 15:42:35.11 ID:6Mqf2XeC0

男「……え? あっ、あぁ……まあそうですね。
  被害が出ないようにって色々頑張ってました」


警官4「おおっ、そうでしたか。感謝致します。

    ……ところで、それであればなんですが、
    色々とこうなった状況の前後とか詳しく聞きたいので、
    少しお怪我もされているようなので、
    病院で診て頂いてもらった後で大丈夫ですので、
    良かったら署の方に来て頂ければ――ん?

    隣のあなた……」


警官は半眼になると、
隣のゴリマッチョの顔を訝しげに見つめた。


ゴリマッチョ
「な、なんだい……」

警官4「ああいえ、どこかで見た顔だなと……」


どうやら、
先ほどゴリマッチョの言いかけた不安は当たっていたようで、
顔を見知ってる警官が居たらしい。

ただ、どうにもまだ確信が持てていないようではあるが。


ゴリマッチョ
「き、気のせいだろう。
 それより……ほら、もう事件も解決だし、
 俺らは帰るとするよ」


ゴリマッチョは、
まだ完全にはバレていない事を機敏に感じとったらしく、
「気のせい」と言う魔法の言葉を駆使して、
この場の乗り切るつもりをしているようだった。


そして……案外とそれは上手く行った。


店内には未だ死傷者が結構居る事もあってか、
警官はそこまで熱心に思い出そうとはしなかったのだ。


警官4「そうでしたか……確かに気のせいかも」

ゴリマッチョ
「お、おうよ。」

警官4「……では、ひとまず改めて感謝を」


警官はそう言うと、
敬礼のポーズを取り、
急ぎ死傷者の救助や確認へと行動を移し始めた。
399 :1 ◆mUjz4FCa2c [saga]:2019/03/22(金) 22:33:51.66 ID:6Mqf2XeC0
去り際に、
×○署でお待ちしておりますので、
という一言を残して。


ゴリマッチョ
「危ねぇ危ねぇ……」


警官からの疑いを何とか切り抜けた事で、
安堵したのか、
ゴリマッチョは大きく息を吐いた。


ゴリマッチョ
「なんとかなったぜ……」

男「まあでも、後で署に来いって言ってたけど」

ゴリマッチョ
「良かったら、だろ?
 俺はあんま行きたくねぇから行かねぇ。
 まあその……今回のこいつが真犯人だってなったら、
 行ってやらんでも無いがな」

男「ふーん……」

ゴリマッチョ
「で、そっちはどうすんだい。行くのか?」

男「何か面倒くさそうだから、
  正直行きたくないけど、
  でも……明日には一応は行くよ。
  行かない事で何か変な憶測立てられても困るし」
400 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/23(土) 14:50:35.92 ID:icu+7N/H0
ぬぽーん
401 :1 ◆mUjz4FCa2c [saga]:2019/03/24(日) 10:06:57.07 ID:tH90iyp20
ごめんなさい
少しお休みします
再開がちょっと未定になります……
402 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/24(日) 13:43:04.93 ID:orzCYjwkO
失踪キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
403 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/24(日) 13:50:10.58 ID:3XCj+RjA0
おうちゃんとお務めしてこいよ
404 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/24(日) 14:07:25.45 ID:vGsP7YZTo
薬なんかに手を出すから……
405 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/24(日) 15:24:48.17 ID:au6fEbsso
どうせなら書きためとけ
406 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/24(日) 16:22:14.19 ID:xLOI/Rqto
こんなんでよくVIPに立てたな
407 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/25(月) 07:09:25.12 ID:HHfbhulOo
もとはVIPだったな
場所変えて正解というか元来こんなスレ立てたのが不正解というか
408 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/25(月) 13:30:50.19 ID:YAIKppnpO
というか中断するならHTML化してもいいのでは
このスレも荒らしとかで読みづらくなってるしそもそも中途半端なところから始まってるし
再開する時に新スレ立てて最初から貼るのが一番良さそう
凄いめんどくさいだろうけど
409 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/25(月) 15:33:24.15 ID:vpR3uSxXO
そんなことしたら、もう書かないのでは?
410 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/25(月) 15:52:27.70 ID:hL3KcNlHO
どっちみちもう書かない可能性の方が高いでしょ
411 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/27(水) 16:41:01.46 ID:4+jF6w5hO
すげえ遅筆だな
412 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2019/03/29(金) 22:39:59.58 ID:XC8wpERSO
もう書くつもり無いだろうな
413 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/29(金) 22:58:07.67 ID:RbdkYJU/o
書かないんだったらスレの処理くらいはしていけよ
ここは勝手には落ちないんだから
414 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/29(金) 23:37:45.52 ID:EUaq2d5M0
2か月くらい書き込み無かったら落ちるよ
415 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/29(金) 23:55:10.51 ID:osDEaMChO
何が最後まで書くだよ
荒らしてた奴が正解だったわけだ
416 :1 ◆mUjz4FCa2c [saga]:2019/03/30(土) 11:33:53.58 ID:B8rC0vbw0
生存報告です。
html化の依頼出します。

書き溜めて完結させてから次回はスレ立てします。
417 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage]:2019/03/30(土) 11:39:04.20 ID:B8rC0vbw0
依頼出して来ました。
418 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/30(土) 16:01:32.19 ID:OQtJy2eVO

元気でな
419 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/04/01(月) 08:38:47.38 ID:4KubK/zxO
ダメだったか
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