天空橋朋花「子作り逆レ●プのお供と言えば葡萄酒ですよ〜」

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1 : ◆FreegeF7ndth [saga]:2020/05/11(月) 23:16:59.42 ID:i9qakCF1o
・仮まえがき
P×天空橋朋花

あらすじ:なんやかんや(捏造設定多め)→イラマ(夢)→逆レイプ(現実)→孕ませ(現実、♥多め)→孕ませポリネシアンセックス(現実)
本文はぜんぶで※52までありますが、逆レイプから読みたい方は ※27 まで読み飛ばしてください。

天空橋朋花
https://i.imgur.com/4jrMk9y.png
https://i.imgur.com/FJPZRbz.jpg
2 : ◆FreegeF7ndth [saga]:2020/05/11(月) 23:17:36.34 ID:i9qakCF1o


 誰に似たのか、『聖母』は自分のことを救えないらしかった。


3 : ◆FreegeF7ndth [saga]:2020/05/11(月) 23:18:27.95 ID:i9qakCF1o

※01

「あのね、おとうさんっ。おかあさんは、むかし、アイドルだったんだって」

 どたどたフローリングを叩く足音と、りんりん高い鈴のような声をぶつけられる。
 まだ3歳と何ヶ月かの娘に『アイドル』の概念がわかるんだろうか?

「そうか。お父さんは、知らなかったな」
「むっ、おとうさーん。おかあさんに『ウソはいけませんよ〜』っていわれちゃうよ?」

 ウソはあっさりバレた。
 勘の良いところは、もう母親に似ている。

「ところで、『おかあさんは、むかし、アイドルだった』って、誰から教えてもらった?」
「えぇと、その……きれいなおねえさん!」

 ……昔の知り合いだろうか。

「亜利沙さんのことですよ、あなた。さっき外を歩いていたら、顔を合わせることがありまして」
「ああ、ありがとう朋花……『ありさ』って、まさか、松田の亜利沙さん?
 あの人が、こんなところに来る用事でもあったのか」

 咎めるように俺の膝を叩く娘の手を握り、リビングに行くと、朋花が麦茶を注いでくれていた。
 麦茶を作り始める季節。アイドル業界は真夏〜晩夏の書き入れ時に向け、準備に追われている時分のはず。

「39プロジェクトが、10周年ですから。そのイベントがらみと聞きました」
「それで、朋花が……もしかして『天空橋朋花』が? えぇ……?」
「どうでしょうかね〜。なにせ765プロは『みんなまとめてアイドルマスター』ですから」

 朋花はニコニコと柔和に笑っていた。
 その笑いが、喜んでいるのか、呆れているのか、怒っているのか、
 それともほかの感情の上にかぶせられたものか、わからない。
 まるでアイドルだった頃のような微笑だった。

4 : ◆FreegeF7ndth [saga]:2020/05/11(月) 23:19:01.69 ID:i9qakCF1o

※02

「ねえ! わたし、おかあさんのアイドルだったところ、みたい!」
「お母さんにお願いして、見せてもらいなさい」

 娘のせがむ顔をちらと見た。
 『聖母』の子供……豚を2千頭ばかり崖から飛び降りさせてしまうかもしれない、
 などと悪趣味な冗談が浮かんで消えた。

「あなたは、見たくないのでしょうか〜?」
「見なきゃおしおきっ! って程度なら、おしおきをもらう」
「であれば、亜利沙さんのお話は、お断りしておきましょうか」

 朋花が独り言のようにつぶやく――『お話』か。

「松田さんからどのぐらい『お話』聞けた?
 あの人、だいぶえらくなったらしいから、すごく忙しいはずだが」

 松田亜利沙は、アイドルオタクが昂じて自分もアイドルになったクチで、
 朋花とは765プロのほぼ同期・同世代にあたる。

 俺や朋花がいなくなったあとは、アイドルのプロデューサーまで兼任して、
 自分がアイドルやりながら後進をプロデュースしているというムチャをやっていると聞く。
 しかもそれが調子いいとの評判だ。そんなヒマじゃないはず。

 この街は、めぼしいハコもないし、765プロゆかりの人間もいないし、交通の便もよろしくない。
 売れっ子のアイドル兼プロデューサーがやってくる理由が思いつかなかった。

 ……朋花を除いては。

「今の私から『聖母』の面影を見つけられて、私の金縛りに抗える人……ということで、
 亜里沙さんがお越しくださった……と、うかがいました。話しぶりは、相変わらずでしたね〜。
 『せめて、名刺だけでも――ふ、ふぉぉぉぉ……! い、一度言ってみたかったんです! この台詞!』
 などとおっしゃっておりました」

 俺は、松田亜利沙の周りで仕事をする人間の苦労を思わずにいられなかった。
 彼女のオタク基質がそのままだったら、仕事の詳細まで口を出すだろう。
 たぶん実績や人徳も持っているから、口を出される側が『いいから黙って見てろ』と言い返しにくい。

 俺や朋花を39プロジェクトに引っ張り込んだ……765プロ最初のプロデューサーも似たノリだった。
 高木社長ぐらいデーンと構えてくれたほうがよっぽどやりやすかったのに。

「もっとも、亜里沙さんも年の功で、人並みにずる賢くなったかもしれません〜。
 私が邪険に扱いにくいよう、わざわざこの子と一緒の時を狙って、声をかけてきたようですから。」
「そこまでするって、まさか本気で朋花をステージに引き戻そうとしてるとか?」

 朋花は微笑のまま顔を近づけてくる。俺の目や頭蓋骨の裏を覗かん勢い。
 いつもなら、そんな詰問じみた視線なしに、こちらの内心など看破してくるのに。

5 : ◆FreegeF7ndth [saga]:2020/05/11(月) 23:19:40.10 ID:i9qakCF1o

※03

「……これはこれは、あなたは本当に、お嫌そうですね」

 娘は、俺の視界の下の方で『おかあさんのステージ、みたい!』と言いたげな風だったが、
 それを言いかけながら俺の顔を見上げ、声がへし折れたように黙ってしまった。
 俺はそんなに険しい表情をしていたらしい。

「やるとしたら、俺は見ないつもり」
「では、それはお断りします。あなたの目がないと、張り合いが足りないので〜」

 朋花は、かつて『聖母はこれから何回も、何度だって、ステージに立ちますからね〜』
 などと宣(のたま)っていたのに比べると、変われば変わるものだった。

「……とはいえ、ただお断りも不躾というか不義理と言うか。
 朋花がこっち来た時、秋月さんにはたいそう世話になった」
「そうやって、情に訴える算段かもしれません〜。
 実際、私も亜里沙さんのお顔を拝見して、懐かしいという気持ちには、なりましたから」

 朋花は微笑のままこちらを眺めていた。

「……花で、どうか」
「フラワースタンド、ですね」

 それぐらいが落とし所として無難だろうか。
 ひとまず『絶縁ではありませんよ』のメッセージにはなる。
 39プロジェクトも大きくなったらしいので、何かおいしい仕事につながらないかなぁ、と下心もあった。

「大きいのがいいな。半分出すから俺も連名にしてくれないか」
「……載せてもよろしいのですか?」
「広告宣伝費とか接待交際費で落ちたらいいな。先生に相談する」

 朋花が『もういいか』とでも言いそうな、ちょっとぞんざいな感じで、ようやく俺から目線を外す。
 そんなに疑うならお上手な口で問い詰めてくれれば……いや、娘の前だとしづらい話だった。

「ところで……『天空橋朋花』のお名前、今も使えるんでしょうか?
 芸名としては、処理をあなたに丸投げしてしまいましたし」

 それも確認をとらなければならなかった。765プロだけの問題ではなかったし。

「……もう天空橋でなくなってから、それなりに経ちますので〜」
6 : ◆FreegeF7ndth [saga]:2020/05/11(月) 23:20:26.53 ID:i9qakCF1o
※04

「……どうしても、糸で吊って宙を?」

 昔の俺は、疑問文にしてはかなり刺々しい声音を出してしまっていた。

 俺と朋花が初めて顔を突き合わせたのは、
 朋花のデビュー曲『Maria Trap』のお披露目公演のための打ち合わせだった。

「ええ。聖母は、可能な限り平等に、子豚ちゃんたちへ恵みが届くようにするものです。
 客席後列の子豚ちゃんにも……となると、そういう手が必要なんです……ですよね? プロデューサー」

 俺は『Maria Trap』の作詞作曲からミックスダウンまでを担当していた。
 そしてこのぶんだと、お披露目公演の音響も口を出さざるを得なくなりそうだった。

「音屋さんとしては、不本意かも知れませんが、演出として汲んでいただきたいのです」

 朋花の当時の担当プロデューサー――朋花をオーディションで採用した、765プロ生え抜き――が、横からダメ押ししてきた。
 彼の『音屋』というおおざっぱな呼ばれ方に、在りし日の765プロの懐事情が透けていた。

 俺が関わり始めた頃の765プロは、高木社長、所属アイドルが10人かそこら、
 プロデューサーと事務員が一人ずつというささやかなアイドル事務所だった。

 俺は765プロから外注で楽曲作り『など』を受けていた。
 765プロは制作費が少なく、上流から下流まで可能な限りすべて面倒見る器用貧乏を必要とし、
 そのうちの音関係を駆け出しだった俺がよく受けていた。

 765プロの高木社長やプロデューサーは、作詞作曲から音場づくりまでまとめて『音屋さん』な人だった。
 ……スマートフォンを何でもiPhoneと言ったりするオジサン・オバサンみたいだ。
 違い意識してないせいで、俺にすべて丸投げだったのかもしれない。ムチャを言う。

「自分、アウトボードや音源を買いすぎて財布が薄かった頃、現場で日雇いやってたんです。
 そこじゃ『1メートルは一命取る』って言いましたよ」

 朋花と、彼女のプロデューサーは、ピンときていないようだった。
 確かに、建設業や製造業ならともかく、アイドル事務所で掲げる標語ではない。

 人に乱暴な丸投げの仕方をする代わりなのか、高木社長には人集め・金集め、
 プロデューサーには企画・営業の能力がエグいほどあった。
 彼らのプロデュースするアイドルは、数年もせずアイドル戦国時代の台風の目となった。
 俺も印税で潤い、業界で名前を売ることができて、『音屋』の活動を軌道に乗せることができた。

 そのぐらいの時期に朋花たちがやってきた。

「ご心配はありがたいのですが、安全確保はあなたの仕事・責任ではございませんよね〜」
「……飛び回っているときは、まともに歌えないと思ってください。
 こちとら、もとはDTMerですので。凝った音場がほしければ、本職へご相談ください」

 朋花――天空橋朋花――は、765プロが勢力拡大のため発足させた『39プロジェクト』で、
 新たに採用されたアイドルの一人だった。俺は彼女のデビュー曲を発注された。それで、こうなった。
 765プロが少数精鋭(?)から、それなりの規模と体制を築くまでの過渡期にあたって、
 どうも朋花のデビュー周りの流れは、まだ小世帯だった折のやり方を引きずっていた。

 朋花と出会って間もない頃の印象は、正直に言うと『歌はうまいが、なんだこいつ』であった。

「天空橋朋花は、一言でいうと、聖母なんですよ」

 曲を発注された時、プロデューサーから朋花のイメージについて、
 『聖母』とか『騎士団』とか『子豚ちゃん』の設定を説明された。
 俺はその説明を丸呑みして曲作りを進めた。

 その後、レコーディングで朋花の歌を聞いたとき、
 『如月千早ぐらいの見込みがありそうだ』『正統派で売れよ』と思った。

 俺は『日本でそんなこってりしたキャラづけでシーン作った歌手、あまりいないですよ』と、
 プロデューサーへ『今からでも遅くないから方針を変えろ』と暗に突っ込んだ。

 突っ込みが通ったら『Maria Trap』は調整し直しだが……
 朋花の歌声は、そのくらいの手間は払ってやっていいものだった。

 プロデューサーは苦笑いしながら『そうは行かないんです』とだけ返事した。

 それから俺は、プロデューサーの苦笑いの意味を、嫌ほど味わう羽目になる。
 しかも『天空橋朋花の担当プロデューサー』として。
7 : ◆FreegeF7ndth [saga]:2020/05/11(月) 23:21:05.52 ID:i9qakCF1o

※05

 39プロジェクトが順調に売上を伸ばすと、いよいよプロデュースする手が足りなくなったせいか、
 朋花のほか、如月千早やジュリアなど、ヴォーカル重視のアイドルを担当してほしい、
 との話が俺にやってきた(松田亜利沙とも、そのときからの付き合いだった)。

 俺はプロデュース業が未経験で、先のプロデューサーほどうまくできる気もしなかったが、
 あとに活きる業界の人脈が作れそう……という打算多めで、契約社員で引き受けた。

 俺の魂胆を見抜いていたのか、『聖母』天空橋朋花と俺はソリが合わなかった。

「あなたは堅実で計画的な感じですが、行動原理が少し不純な方のようですね」
「細工は流々仕上げを御覧じろ、と言いますよ。天空橋さん」
「朋花で……呼び捨てで構いません」

 天空橋朋花という少女は、その不満をズケズケと俺に言う。

「あなたにも、説明が必要ですね〜。私がアイドルとなった理由は、子豚ちゃんたちに愛を与えるため。
 子豚ちゃんというのは、私のことが好きで好きで仕方がない、困ったちゃんなファンのことです。
 中でも特に熱心な人たちは天空騎士団と呼ばれていますね。ファンクラブとか、親衛隊的なものでしょうか」
「親衛隊がいるアイドルは、大昔はよく居たようですが、
 デビュー前から親衛隊を率いているアイドルは、寡聞にして存じません」

 朋花にとってアイドルは、『聖母』として『子豚ちゃん』『天空騎士団』を統率・拡大する手段らしかった。

「困ったことに、私のことが好きすぎて、時々ケンカをしてしまう子豚ちゃんがいたんです。
 それを同級生に相談したらアイドルになることを勧められたんです。
 アイドルになれば、聖母の愛を、平等に分け与えることができるのではないかと」
「それで、空を飛びたがったんですか。俺はおかげでたいそう苦労しました」

 俺が『あんなムチャは二度とやらないでくださいよ』と釘を差したら、
 『私がアイドルを続けているのは、子豚ちゃんたちのためですよ〜』と、つれない返事。

 朋花の『聖母』というのは、自称であり、『子豚ちゃん』たちが奉る称号でもある。
 『子豚ちゃん』の熱狂と統制は名高く、俺が担当を引き継いだ時点で、もう一部に知られていた。

「子豚ちゃんたちがケンカをしないよう、指導する……それが、天空騎士団の紳士淑女のお役目なのです〜。
 集団でも、個人でも、ある程度の規律というのは大切ですからね〜」
「担当プロデューサーとしては、ファンが自発的に治安維持に取り組んでくれるのはありがたいことですね」

 規律は確かに重要だ。
 しかし、ファンコミュニティに『指導する/される』という序列の構造がある――しかも、名目上は平等である――なんだそりゃ。
 朋花は15歳らしからぬカリスマ性を持つ……が、まさか彼女だけでこんな手が込むシステムは作れまい。
 悪いオトナが後ろに居て、ツボだの水だの売ってそうな薄気味悪さを覚えてしまう。

「……何か言いたげですね。あなたに差し支えがなければ、遠慮なくどうぞ。
 あなたは子豚ちゃんではありませんから、気にすることはありません」
「あの『聖母』に遠慮せず物を言ってもいいと? 王様が抱えていた宮廷道化師みたいですね」

 お似合いなことに、音楽は宮廷道化師の芸の一つだった。
 しかし俺の立場はプロデューサーになってしまった。道化師では、いけない。

「これからは、『聖母』らしからぬ役割も、演じてもらいますよ」
「あなたが何の役割を考えているのか、楽しみにさせていただきます〜」
8 : ◆FreegeF7ndth [saga]:2020/05/11(月) 23:21:39.64 ID:i9qakCF1o

※06

 俺は、朋花に『聖母』の枠を外れた仕事をふるようにした。
 サーベルを振り回す女騎士、番町皿屋敷のごときお化け、金棒を握り虎皮をまとう鬼……

「なかなか、多彩な役柄ですね」
「目が回りそうですか?」
「……いいえ」

 それから、チアリーダー、女番長、魔王、女装少年ヴァンパイア……

「……演じる、というのは興味深い体験ですね。
 ヴァンパイアのクリスが、エドガーと出会って世界の見方がかわったように、
 私も、世界の見方が少し変わったような気がします」

 俺がふった仕事の意義を、朋花は取り組む前はいささか訝しんでいたが、
 やってみるとそれなりに楽しみや収穫を感じた様子だった。

「俺も『子豚ちゃん』たちの欲しがり具合が、多少は分かってきた気がしました。
 『今は満ち足りていても、刺激には慣れて、すぐに次を求めるようになってしまう』と」

 かつて朋花が聞かせてくれた言葉だった。
 『聖母』だけあって、朋花はファン――つまり崇拝者――の移ろいやすさを、俺に先んじて喝破していた。
 熱心な崇拝者は、当人以外から見ると奇妙なほど、崇拝対象の乗り換えがお上手でいらっしゃる。

「そのとおりです。ですから私達は、現状で満足していてはいけないのですよ〜。
 常に二手、三手先を読み、子豚ちゃんたちを幸せにする方法を、ともに考えてもらわなくては」

 ただ、演じる役がいかに多様でも、それはまだ『聖母』という幹を彩る花と枝葉にすぎない。

「……朋花」
「なんでしょうか〜?」

 あの『Maria Trap』は、ある意味で台無しにされた。次こそ俺の意を汲んでもらう。

「次の曲では、鳥籠に閉じ込められてもらいます」
9 : ◆FreegeF7ndth [saga]:2020/05/11(月) 23:22:27.76 ID:i9qakCF1o

※07

「――デューサー、プロデューサー?」

 FitEarのBluetoothイヤホンを、いきなり耳から引っこ抜かれた。
 ここは劇場内、関係者以外は立入禁止な部屋、そんな狼藉を働くのは誰だ……? と思ったら、

「朋花ですか。いま、良いところなんです。あとにしてください」
「聖母の問いより優先すべきことがおありですか?」

 俺は仕方なく、ノートパソコンとKORGのnanoKEY2から、声のほうへ顔を向けた。
 左手にイヤホンをつまんだままの朋花と、その後ろに半分隠れたジュリアがいた。

「ジュリアも――公演の打ち上げ、もう終わったんですかね」
「打ち上げは……たぶん、まだあっちの部屋でやってるだろ。でも、プロデューサーがいないから……」
「何かトラブルでもありましたか」
「そういうワケじゃない、が……その、あたしと朋花はね。もう少し、担当プロデューサーとして……
 その、今回の反省点とか? もっとコメント、聞きたかったんだけど……」

 ジュリアは気まずそうに、朋花は当然のような顔をして、椅子に座ったままの俺を見下ろしていた。

「今回の公演は、ファンの反応も上々。担当プロデューサーからしても、大いに刺激となりました。
 おかげさまで……その答えは、うまくすれば、もうすぐ形になります」
「カタチに……とは?」
「デモ音源なら明日にでも聞かせて差し上げましょう、ということです。朋花」

 二人は、開きっぱなしだった俺のノートのモニターへ目をやった。

「……プロデューサー、あんたがDTMerとは知ってたけど、作業を見るのは初めてだ」
「ふだんはノートで作業しないです。これだって、前にTraks BoysのCrystalが、
 『東京から長野に帰る間の新幹線で作業すると、なぜかすごくはかどる』って言ってたの聞いて、
 真似できたら面白いと思って持ち歩いてただけです」
「……DTMer、ってなんです?」

 ジュリアは自分も作曲をやるせいか、朋花と違って、
 俺がDTM(デスク・トップ・ミュージック)の作業中だということを察していたようだ。

 そういえば、ラップトップで作業をしててもデスクトップって言うのだろうか?
 今じゃLogicもタブレットで動かせるご時世なのに。

「要はパソコン上で、作曲や編曲やミックスやらをしているということです」
「……譜面が見えないので、私が見ても、どんな曲か想像もつきませんね。
 それに、そういう機材は、ものすごく大掛かりなものだと思っていましたが」
「私も画面だけではわかりません。いじるのは、音波ですから、五線譜も鳥籠も映っていないです。
 ハイレゾで細かい場合、トラックごとの音量を0.05デシベル刻みぐらいで……デモは、そこまでしませんが。
 機材は……昔は、そういう大きなのが必須でした。今でも愛用者はいます」

 朋花は作曲というと、楽器を鳴らしたり、楽譜に鉛筆を走らせたりのイメージだったようだが、
 DTMでは楽器ができなくてもスコアが読めなくてもコード名がわからなくても、一人で音が作れる。

 作れてしまうので、必要になるまで勉強しないまま……なんてことも。
 自分で作った曲について『このコードの名前なんですか?』と聞かれ、耳でしか覚えていないので、
 名前がわからず慌ててネットで調べる人が、プロにもぼちぼちいる。

「作業スタイルは人によりけりですが、私は思いついたらその瞬間にiPhoneにボイスメモで録りためて、
 作る必要が出てきたときに取り出して、機材の前で弄り回して……というのがいつもの手順です。
 今は、あんたがたの公演のおかげで気分ができたから、手持ちの道具で勢いでやってます」
「もしかして、あなたが時々、電話が来たふりをしながら鼻歌を歌っていたのは……」

 朋花はようやく合点した顔つき……合点する前、俺は何をやってたと思われてたんだろうか。

「デモ音源なら明日にでも……ってプロデューサーさっきアッサリ言ったけど……新曲か?」
「朋花のソロですが」
「私の……ですか」

 朋花は、指で摘みっぱなしのイヤホンと、ミニキーと、モニターに何度か目線を行き来させた、
 もっとも、モニターはスクリーンセーバーが立ち上がっていたが。

「DTM、面白いですよ。俺なんて、学生時代からこのかたコレより面白いことが見つからず、この有様です。
 興味があるなら、機材を譲ります。ちょうど、あんたがたの稼ぎのおかげで、買い足すつもりでしたし」
「そりゃ気前のいい話だけど……あたしは、いいや。スコアとギターが、あたしのやり方だから」
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