狸吉「華城先輩が人質に」アンナ「正義に仇なす巨悪が…?」【下セカ】

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202 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/05(土) 17:12:13.99 ID:9iu5sKBf0

狸吉のお母さんは比較的バランス感覚を持っている気がします。
行動は過激ですが、話の通じない人間が多すぎる下セカの中では比較的話が通じる気がします。

アンナ先輩、明日はいかに!?
203 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/05(土) 17:14:06.27 ID:9iu5sKBf0
せっかくなのでここまでを急いで書いてみました。
狸吉のお母さんが男女逆でも強姦は強姦という意識を持っていて、本当に良かったと思います。
204 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/05(土) 17:22:09.48 ID:0VPjNObI0
何気に不破さん巻き込まれていて草生える

いや展開はヤバいけどさ。場合によっては強姦罪か。準強姦罪とかにはならないのかな
205 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/05(土) 17:25:34.94 ID:9iu5sKBf0
>>204

準強姦罪は暴力などを使わず相手が抵抗できない状態での暴行です。薬とかお酒とかで眠らせたりですね。
強姦罪より軽い罪、という意味ではないのです。アンナ先輩は暴力で暴行を加えているので、強姦罪になります。

……詳しい方、合ってますよね? 教えてくださいお願いします。
206 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/05(土) 17:44:47.29 ID:Yx7KQxOiO
え?ちょっと待って。狸吉は、母さんがアンナ先輩のレイプを隠蔽していた事を知らなかったの?

だとしたら、狸吉、迂闊すぎない?面会の時、側にいる警官がたまたま性知識が無かったから良かったけど、もし違ったらアンナ先輩のレイプがバレるじゃん

てっきり、狸吉は母さんから全部事情を聞いてると思ってました。テロリーダーを確保している警官は全て母さんの息が吹きかかった連中で、狸吉はそれを把握しているから、面会で色々ぶちまけられたのだと

というか、狸吉がアンナ先輩の身を案じているなら、不破さんにアンナのレイプを証言したか聞くはずだし。それなら狸吉がアンナ先輩のレイプがバレたことを知らないなんて無理があるように思うんだけど……


それと、睡眠薬で眠らせた場合、準強姦罪じゃなくて普通に強姦罪になると思います

酒と違って、睡眠薬は本人に無許可で飲ませるのがほとんどかと。無許可で薬を飲ませて眠らせたら傷害罪になるはずなので、暴力扱いで強姦罪だと思われます

まぁ私も法律のプロではので、違っているかもしれませんが
207 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/05(土) 17:56:40.53 ID:tQdPywmW0
まあ矛盾は生まれるって。
たぬきち母さん1人に収めてないと隠蔽も難しいだろうし。不破さん1人話さなくても目撃者が多いから無理だろうし。
逆レの話はまあ迂闊だけど、以前の月見草みたいなやつなのが分かってたならある程度言える範囲がわかったんじゃないかなって解釈してるよ
208 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/05(土) 18:12:10.73 ID:9iu5sKBf0
すみません、私が言いたかったのは、>>204さんが準強姦罪が強姦罪より軽い罪と思っているように見えたので、そうではないと言いたかったのです。ご指摘ありがとうございます。後、いろいろ矛盾点もそろそろ出てきてますが、みんな疲れているのです、きっと。……いえ、本当にすみません。

皆さん真剣に考えてくれてうれしいです。答えを出せるかどうか、ちょっと不安ですが、頑張ります。
209 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/05(土) 18:47:31.56 ID:9iu5sKBf0


 アンナ先輩を高級マンションまで送った。(愛し合いたい)オーラがプンプン出てたけど、明日のことを思えばそれどころじゃなかったから何とか逃げた。

 アパートにつくと、華城先輩に通話して相談してみることにする。

『そう、アンナが……いえ、狸吉のお母さんでよかったのかもしれないわ。善導課主任、いわばプロだもの』

「そうですけど……」

 どうやったってアンナ先輩には酷な日になると思う。

『それよりソフィアに殺されないかを考えたらどう?』

「あ、じゃあ棺にはケモミミ娘の完全版をお願いします」

『そうね、用意しとくわ』

 …………。

「あの」

『狸吉、あなた。……アンナと結婚しない?』

 ぶほぉわ!?と本日二回目のせき込みだった。しかも相手が真面目なところまで同じだった。

『あなたがアンナを受け入れて、結婚すれば……そしたら、アンナは救われるわ』

「……でも」


 ――僕は、アンナ先輩を、愛しているのか?


 そんなの、わかるわけない。


 ――心も化け物なんだから。


 それは違うと、はっきり言える。でも、そうなる可能性を秘めているのは、間違いない。

「見捨てられない、です。でも……結婚とか、そういうのは」

『まあアンナの両親が許さないでしょうけどね。正直、自然に別れるのは難しいと思うわ。童貞とオナホの関係のように』

 どうあったって、アンナ先輩を傷つけるしかない。あとオナホバカにすんな。

『…………ごめんなさい、私も考えてみるけど、少し時間を頂戴』

 僕が何を言う暇もなく、通話は切れた。ゆとりや鼓修理はアンナ先輩を《育成法》の被害者としては見ていないし、早乙女先輩は役に立たないし……、


210 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/05(土) 18:48:34.79 ID:9iu5sKBf0


「……ごめん、本当に」

 負担をかけっぱなしだが、仕方がない。

『おや、奥間さん。明日の件ですか?』

「ああ、もう善導課から話来てるんだ……」

『言っておきますが、アンナ会長があなたを襲ったことについては何も話していません。奥間さんが《SOX》に誘拐された件も、善導課はおそらく知らないでしょう』

「じゃないと困る……」

『わたしの証言は主にあのリーダーに対することになると思います。わたしは意図して話しませんでしたから。まあ、犯人グループが全部話しているでしょうけど。わたしは知識がないのでわからないと誤魔化しました』

 不破さんでそれが通るのかよ。恥識欲の塊のくせして。

「不破さんは、その……」

『罪は償うべきでは? 常識的に考えて』

「……それが罪だと、知らなかったとしても?」

『卑猥の犯罪は潜在的に増えていると言います。人の愛し方がわからず、強引に手を出して。その流れから、アンナ会長も逃れられないでしょう』

「……そう、だね」

『わたしは明日は、聞かれたら答えます。わたしにできるのは、それだけです』

「……うん、本当に、ごめん」

 短い通話で、切れてしまった。

 明日、アンナ先輩が、壊れるかもしれない。

 そうなったら、どうなるのか。

 わからない。何一つ。思考は精子一つも駆け巡りはしなかった。


    *


「……アンナ?」

 何か用事で出なければいいのにと思った祈りは通じずに、親友は通話に出てしまった。

『綾女さん。怪我はどうですの?』

「まあ大丈夫。そっちは? 善導課のしごきはきついって聞くけど」

『まあ、勉学や体を動かすのはいいのですが、奥間君や綾女さんと会えなかったのはさみしかったですわ』

「そう。……明日も何かあるんですって?」

『ええ、どうしてそれを?』

「奥間君から相談されて、大丈夫かなって……」

『…………』

「あ、あのね、私」

『綾女さん。わたくしは社会の規範より、奥間君の言葉を信じることに決めたんですの』

「……それは、テロリストのリーダーにさせたっていう怪我とか、そういうのも奥間君が決めたことなの?」

『いいえ、わたくしの意思で、間違えたのです。明日はそれを弾劾されるのですわ、きっと』

「…………」

 アンナなりに、明日何かが起こることはわかっているみたいだった。だけど、何が起こるかまでは、わかっていない。


211 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/05(土) 18:49:04.05 ID:9iu5sKBf0


『わたくしが間違えるのは、奥間君も望んではいなかった。だけどそれでいいのですわ。……奥間君は優しいから、わたくしが間違えても、大丈夫なんですの』

「どういうこと?」

『何もかも受け入れてくれるって、こんなに幸せなんですのね……甘えないようにしないといけないとは、わかっているんですけれども……この前の事件は、どうしても許せなくて』

「……そうね。アンナが来てくれて、嬉しかったわ。でも……アンナはそのせいで、傷つけられたのよね?」

『罰はもう、与えましたので』

 淡々と言っている。親友であるはずの自分にも、アンナの感情が読めない。

『明日はお母様と、奥間君のお義母様との話し合いですわ。……男女の関係であることをお母様にはもう、隠せないでしょうね』

「大丈夫?」

『ありがとうございます。お母様だって、奥間君がどれだけ立派な人間かわかれば、きっとわかってくれるはずですわ』

 そうはならない。アンナ自身の行為によって、きっと二人は引き剥がされる。

『長電話は身体に毒ですわよ。もうお休みになってくださいまし』

「あ、ありがとう、アンナ。……あのね」

『綾女さん?』

「私は、アンナが傷ついたら、そばにいたいと、そう思ってるから」

『……ありがとうございますですの。それじゃ、また』

 通話は切れた。

「……下ネタも、言う相手がいないと張り合いがないわね」

 二人がどうなるのかなんて、わからない。さっきは引き剥がされると思ったけど、もしかしたら責任を取って狸吉とアンナは婚約するかもしれない。

「……そうなったら、いいのよね。一番、アンナが傷つかなくて……私も、そばにいることができて……」

 嫌われるよりかは、親友の恋人として接する方が、ずっとマシだ。アンナは基本的にはいい子なんだから。間違っても、受け入れてくれるのは、本当なんだから。

 ずっと正しいことしか許されなかったアンナにとって、それはどれほどの救いだろう。

「……休もう、もう」

 下ネタという概念のない退屈な世界より、下ネタいっぱいの楽しい夢を見たかった。

 だけど現実は、二人が結婚式を挙げてそれを祝福するという――

 ――悪夢だった。


212 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/05(土) 18:50:10.48 ID:9iu5sKBf0

ようやく話し合いというか取り調べの日が来ます。さてさてどうなることやら、です。
213 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/05(土) 19:16:13.41 ID:YilfewEz0
書くの早いなww

アンナ先輩、引き剥がされそうになって現実逃避にたぬきち誘拐に1票

華城先輩も地味にややこしい事になってるな
あと不破さん巻き込まれすぎで草だわほんと
214 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/05(土) 20:09:13.56 ID:MEtzAMIYO
うん、一夫多妻制の国に行こう、それが良い
大体みんなもうこんな国は嫌でしょ
215 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/05(土) 21:13:41.21 ID:9iu5sKBf0
うーん、物足りなく思われるかもしれませんが、こうなるよねって感じになりました。
投下したいと思います。
216 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/05(土) 21:14:51.16 ID:9iu5sKBf0


 目覚ましが鳴り、時間ぴったりに起きる。こんな時でも中学時代の母さんの指導が行き届いていて、正直もっと夢の中で眠っていたい。

 さすがにアンナ先輩は夜這いには来なかった。15日間、律義にオナ禁しているけど、朱門温泉で鍛えられてるしまあまだ大丈夫。

 とりあえず、今日が僕の寿命にならないように何とか頑張りたい。精子の寿命って案外長いらしいね、膣の中だと2週間とかなんとか。

 場所は善導課の取調室だ。行くとアンナ先輩とソフィア、不破さんはもう来ていた。

「おはようございます、皆さん」

 頭を下げておく。これからのことを考えるとこれでも足りないけど。

「おはようございますですわ」

「おはようございます」

「……おはようございます」

 三者三様の挨拶を交わすと、取調室に入っていく。

 取調室ではPMが外されるケースも多い。規制単語を教える際には特に。

 今回はアンナ先輩への再教育という名目で、取調室の一室を借りている。

(不破さん、ごめんね)

(問題ありません。アンナ会長の反応には興味がありますし)

 ゲスいな!

 母さんが取り調べをするときの鋭い目になる。全員が自然と緊張する。



「今回はアンナ・錦ノ宮の強姦罪について詳しく取り調べをする」



「……は? なんですか、それ」

 まず声を上げたのがソフィアだった。母さん、いくらなんでも切り込みすぎでない?

「ごうかんざい……?」

「まず先にテロリストリーダーに対する罪状を。傷害罪は理解しているか?」

「はい。手足を折り、耳たぶを引きちぎりましたわ。あと、テロリストの一人にはろっ骨を何本か折る怪我を負わせましたわ」

「……それは! 相手が実銃なんて持ってる以上」 

「少し黙っててくれないか、ソフィア。最後まで聞いてほしい」

 母さんに取り調べモードでそう言われると、さすがのソフィアも何も言えないようだった。


217 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/05(土) 21:15:51.87 ID:9iu5sKBf0


 一方のアンナ先輩は、冷静だった。罪を罪として認識しているんだろう。それを後悔しているかはともかくとして。

「それとは別に、アンナはリーダーにしていることがあった。そうだな?」

 視線が不破さんに向けられる。「はい」と冷静に答えると、

「アンナ会長はテロリストリーダーに対して上着を破り、胸部を揉みしだき、先端をつまんでいました。下着も破り、鼠径部に手のひらを当てて……」

 そこで初めて、不破さんが視線を逸らした。

「リーダーの《赤ちゃん穴》に指を入れ、掻き混ぜているように見えました。排泄孔にも指を入れ、掻き混ぜているように見えました」

「なっ」

「…………」

「事実か?」

「はい」

 アンナ先輩は、あくまで冷静だった。代わりにソフィアがわなわなと震えている。

「なぜそんなことを?」

「『愛の罰』を与えるためですわ。わたくし、《赤ちゃん穴》から愛が生まれ、《愛の蜜》が溢れることを発見しましたの」

 ダメだ、アンナ先輩独自の価値観と言語によって大人たちがフリーズしている。

「リーダーは部下を使ってわたくしを穢そうとしたのですわ。ですから愛を教え込もうとしたのですが」

 ふ、っとそこで初めて笑う。あの、人の血の味を覚えた、獣の笑みを。

「やはり愛し合っていないと無理のようですわね。まあそもそも同性ですから最初から無理なことはわかりきっていましたわ」

「……排泄孔に指を入れた、という証言もあるが」

「事実ですわ。排泄孔も、うまく使うと愛を感じることを知りましたの。ですから同時に弄ってみたのですわ。答えはまあ、愛の感覚に絶望していたようでしたが」

「〜〜〜〜あなた、何を言っているのです!? そんな卑猥なこと!?」

「? 卑猥? 何故ですの? どちらも愛しい人に挿入れてもらえると、すごく愛を感じ、幸せになれますわ」

 愛は絶対でしょう? と獣の瞳で、しかし無垢な笑みを浮かべる。

「奥間君の突起物がわたくしの《赤ちゃん穴》に挿入ってきたときは、とても痛かったですけど、わたくしは幸せでしたわ」

 今僕は死にそうです。突起物がちっちゃくなっちゃうよう。

「な、な、な、な!?」

「落ち着け、ソフィア。まだしばらくは黙っていてくれ、頼む」

「奥間君は言いましたわ。“初めて”を喪失ってほしくない、僕なんかに穢されたくない、とても痛いことだから、だから止めてほしい、と」

 熱に浮かされたかのように、アンナ先輩は僕の方を愛おしそうに見る。

「そこまで奥間君はわたくしの身を案じ、愛の儀式を行うことを最後まで気遣ってくれましたわ。ですが、そんなに痛いなら、愛を乗り越えるために必要な痛みなら、わたくしはそれを受け入れましたの」

 発情しつつある。僕、オナ禁15日目だからね。そろそろいい匂いがしだすころなんだろうな。

「それは、狸吉の意思を無視した、と捉えていいか?」

「うーん、愛の儀式に関してはそう言えるかもしれませんわね」

「奥間さんは愛の儀式とやらを行うのを最後まで抵抗していましたよ」

 不破さんが補足する。アンナ先輩は頷いた。どこまでも正直だった。

「…………」

 ソフィアは絶句している。

218 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/05(土) 21:16:24.93 ID:9iu5sKBf0


「ソフィア、これが現実だ」

 母さんも、どこか辛そうに見える。

「アンナは善悪が分かっていない。卑猥が何か、わかっていない」

「? 何故愛し合うことが卑猥になりますの?」

「あ、アンナ、愛の儀式というのは、キスぐらいのことですよね?」

「鱚? 魚がどうかしまして?」

「男女が行う繁殖行為のことです。わたしは奥間さんからそのあたりの相談を受けていたので知っています」

 不破さんが重ねて説明すると、

「――――」

 ソフィアは卒倒しそうになりながら、

「こいつが!」

 僕を掴み上げてきた。ぐえ、アンナ先輩並みに力強い!

「こいつが、私のアンナを誑かしたのです! 間違いありません!!」

「ち、ちが……!」

「お母様! 止めてくださいまし!!」

「あなたは黙ってなさい! い、息の根を止めなければ……!!」

「どう言おうと、テロリストに行った行為に関しては否定できんよ、ソフィア」

「〜〜〜〜!! 爛子さん、あなたはどっちの味方なのですか!?」

「……狸吉の意思を無視した、と考える方が、辻褄が合うことが多いのだ、ソフィア。それでも狸吉は恋人同士ということもあって――」

「なっ、そんな話聞いてません!!」

「……お母様に言う暇がなかったんですもの」

 アンナ先輩はなぜソフィアがこんなに過剰な反応を示しているのかわからない、という顔をしている。

「…………」

「もしかして爛子さん、あなたは知っていたのですか!?」

「いや、その、言うタイミングは見ていたのだ」

「い、いつから、いつから!?」

「五月の頭ぐらいからですわ。奥間君がわたくしを助けてくださって、それ以来相思相愛の仲ですの」

「に、妊娠は!?」

「残念ながら予兆はありませんの。子供は5人ぐらい欲しいのですけど」

「学生が妊娠だなんて、そんなことが許されるはずがないでしょう! あ、愛の儀式などと、いったいなぜそんなことを言うようになったのですか?」



「――愛は絶対の正義だって、教えたのはお母様じゃありませんの」



 話が通じない相手がいる。

 それは、害意があろうとなかろうと獣と同じなのだと、ソフィアもようやくわかってきたようだった。


219 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/05(土) 21:16:57.30 ID:9iu5sKBf0


「わ、別れなさい! 今すぐに! あなたも!」

「ぼ、僕ですか!?」

「時岡学園の生徒に性知識を教えたら退学だと、入学の時に言い含めましたよね!?」

「……ソフィア、それは違う。狸吉が性知識を教えたなら、アンナはこんな怪物にはなっていない」



 ――怪物。化け物。


 《育成法》が生んだ、被害者ではなく、化け物――。



「お母様の言葉でも、それは聞けませんわ。何故なら、愛し合っていますもの」

 少し前まで絶対だったはずの母親の言葉に、今は反対する。あの夜と同じ、暴雪を伴う気配。



 微笑を浮かべる。以前の無垢で繊細な美は、迫力さを持って他者を傅かせる美に変貌していた。それは決してマイナスの意味ではなく、無条件にこの人の言葉が絶対なのだと思わせ、従わせ、心酔させるものに。以前から持っていたカリスマ性を、さらに進化させて。

 少女から女に、天使から女神に。



 それが、アンナ先輩の変化だった。気配の変化に、母親二人が一瞬、絶句する。

 ただ二人ともただものではないので、立ち直りは早かった。

「アンナを強姦罪で引っ張る」

「ちょ、ちょっと待って、爛子さん、これは何かの間違い、そう、間違いなのです!」

「――以前のわたくしなら、正しくなければ見捨てられると、そう思ったでしょうね」

 でも今は大丈夫、と、ただ無垢な信頼と愛情を、僕だけに向けて。

「奥間君はわたくしを見捨てたりしませんから」

 ――また、アンナ先輩は、この正しく狭量な世界よりもさらに深く狭い世界に、閉じ込められつつあるのか?

 アンナ先輩は何があっても大丈夫と言った自信を纏い、立ち上がる。母さんは事務的にアンナ先輩を別室に連れていく。

 残されたのは、母親と、恋人かどうかわからない僕だけ。

「どうしますか? お二方」

 不破さんの声も、ソフィアの耳には届いていない。

 ただよろよろと、PMを操作しながら、多分弁護士かなんかと相談しつつ、取調室を出ていく。

 僕は取調室を出て、椅子に座り、アンナ先輩と母さんが出てくるのをただ待つことしかできなかった。


220 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/05(土) 21:18:55.89 ID:9iu5sKBf0
……………………えーっと

あれー、ここでストーリー的には終わるはずだったのに、アンナ先輩開き直りが凄すぎて、まだ続く予感しかしないぞー
221 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2020/09/05(土) 21:32:57.94 ID:PscThPoM0
だから早いなww

たぬきちはともかく、リーダーに対してのレイプは誤魔化し効かない気もするが。

話が通じないって1番怖いよな。知識という共通言語がないからな。
222 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/05(土) 22:47:17.32 ID:TpS/26b20
原作だと追い詰められてからの拒絶だったから読んでて辛かったけど、

こっちはある種の安心があるからか、逆に怖いな
話が通じない化け物ってその通りだし
223 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/06(日) 11:19:16.85 ID:WNXNjvtDO
しかし、アンナ先輩を強姦罪で引っ張ったところで、どこに隔離するつもりなんだ…
アンナ先輩が相手じゃ、仮にリボーンの復讐者の牢獄みたいな、粘性の高い液体の水槽に入れたって難しいぞ
224 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/06(日) 13:08:27.51 ID:fFBIkeMu0


「何をしている、狸吉」

 気づくと母さんが立っていた。

「アンナは今、講習を受けている。経歴に傷はつかないだろう、今の日本では」

 健全に育ったはずの娘が強姦を行っていたとなると、アンナ先輩の両親の影響力は下がらざるを得ない。

 だから必死で、情報操作するだろう。相手が犯罪者で、さらに恋人と認識されている僕なら比較的簡単な話なんだろう。

 罪を罪として認められない。

 それもまた、この国の歪みだ。

 あとはアンナ先輩が、どう向き合うかだけ。

 絶対悪としてきたものが、愛情表現として今まで僕にしてきたことを、どう受け止めるか。

「貴様はどうしたいのだ、狸吉」

「……見捨てられない」 

「どういう意味だ」

「どうあっても、アンナ先輩を変えてしまったのは僕だから」

「……恋愛は人を変える。私の持論だ」

「え?」

「アンナは変わった。確かに変わった。良い方向にも悪い方向にも変わっている。アンナはそれを否定しなかった」

「…………」

「テロリストどもが暴れる前、少し話したな。この変化はすぐに悪い方向に向かってしまう、と。自分自身が研鑽を積まなければ、すぐに悪い方向に向かう、危ういものだと。変えてくれた貴様のために、自分はより良い変化に変えていきたいと、アンナは言っていた」

 ……確かに、そんなことを言っていた気がする。

「貴様はアンナに出会ってから変わった。小学三年の時だったか。それまでは大変だった。善十郎が逮捕された時のお前の暴れっぷりはシャレにならんかった」

「…………それを救ってくれたのが、アンナ先輩だった。僕はアンナ先輩に、救われたんだ。……だから、今、アンナ先輩が苦しんでいるなら、救いたい」

 これは本音だ。なのに。

 何故、下ネタを言っている華城先輩の顔と声が思い浮かぶのだろう。

「もうすぐ講習は終わる。ただ年内は続くだろう」

 講習で終わるあたり、すでにソフィアが何かしたのだろうか。

「母さんは、怒らないの? 僕を」

「お前の意思が介入していないのに、怒りようがないだろう」

 そう言うとおり、戸惑いの方が大きく見える。

「……愛の儀式か。何も知らないと、そういう結論になるんだな」

「母さん。衝動は、止められないよ。いくら遠ざけたって、知識を切り離したって、それは本能だから、必ず行きつく。知識がなければ、歪みも歪みとわからないんだ」

「アンナを見てれば、貴様の言うことはなんとなくはわかる。だが、それでも、卑猥からは守らねばならない」

「卑猥は絶対悪でなければならない、だっけ」

「なんだそれは」

「《群れた布地》の時に言った、《SOX》の言葉」

「貴様、あんなテロリストの戯言を脳に入れる暇があれば、アンナを迎える準備をしておけ」

 ――アンナ先輩が、講習室から出てくる。

 その瞳は、銀髪の陰に隠れて、見えなかった。


225 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/06(日) 13:10:04.26 ID:fFBIkeMu0


「奥間君、今日はうちに来て欲しいんですの」

 まだ仕事がある母さんを警察署に残して、僕らはタクシーでアンナ先輩の家に向かっていた。

「ソフィアさんは……?」

「いたらいたで、きちんと紹介がしたいですし……」

「いなければ?」

「……もう、二週間以上、ですわ」

 湿った声に、僕は背筋がぞくっと、愚息が勃っちゃうのは、もはや条件反射に近くなっている。

「その前に、話があります」

「ええ……あ、やはり……」

 タクシーの運転手にPMで地図を送信する。ちらっと見えたのは、この前行った超高級ホテルだった。

「ここに行ってくださいまし」

「……えっと」

「欲情を抱えたままだと、わたくし自身、抑えが効かなくなりそうですので」

 うん、多少の知識を得たぐらいじゃ本質は変わらないね! 知ってた!

 ホテルに到着し、アンナ先輩は慣れた様子でチェックインする。

 この前も通された部屋に入ると、すぐさま襲う!

 かと思いきや、アンナ先輩は発情の気配がありながらも沈み込んでいた。器用だな。

「お母様のいない場所で話を一度したかったんですの。お母様は交際に反対するだろうって、奥間君のお義母様が仰ってて」

 あの状況じゃそりゃそうだろう。



「わたくしが奥間君にしてきた愛のアプローチは、卑猥でしたの?」 



「…………」

 いきなりの直球に、何も答えられなかった。それで充分答えになっていた。

「やっぱりわたくしは、奥間君のことしか、信じられませんわ」

 表面上は冷静だが、やはり危うかった。慎重に言葉を選ばないといけない。

「……はい。何も知らないアンナ先輩のアプローチに、応えるわけにはいかなくて」

「そう、でしたの」


226 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/06(日) 13:11:06.94 ID:fFBIkeMu0


「善導課の、母さん達は……いや、その前に、アンナ先輩がテロリストにしたことは?」

「両親が不問にするよう腐心していますわ。……わたくしは刑務所に入っても構わないのですけど」

 祠影やソフィアにとっては都合が悪いってか。ふざけんな。

「アンナ先輩。ご両親の言葉だけがすべてじゃないように、僕の言葉もすべてじゃないんです。誰かの言葉がすべてなんて、あり得ません」

「…………」

「僕の父親は奥間善十郎、稀代のテロリストです。そして母は、《鋼鉄の鬼女》とも呼ばれる、善導課伝説の人です。テロリスト側も体制側も両方持つ僕の言葉は、ふらふらしていて、とても誰かを導けるものじゃありません」

「……ずるい人」

 ――アンナ先輩の言葉の中で、一番ショックだったかもしれない。

 だけど、逃げるわけには、絶対にいかない。

「先輩も今、混乱しています。落ち着きましょう。色々あって、疲れるのが当たり前なんです。傷つくのが当たり前で、僕達はそれを乗り越えないといけない」

 ああもう、僕も何を言っているかわからなくなってきた。それでもアンナ先輩と目を合わせる。

「アンナ先輩、人を傷つけるのは、やっぱり愉しいですか?」

「……ええ。『愛の罰』を与えている時、愛の蜜が溢れだしていましたわ。……奥間君の匂いもなかったのに」

 アンナ先輩は自嘲の笑みを浮かべる。

「愛の蜜は、快感を覚えれば、愛がなくても出るものなのですね」

 ……母さんはそこまで教えたのか。今のアンナ先輩なら理解っているんだろう。

 愛情と性欲は違うってことが。そしてアンナ先輩の性癖は、極めて危険なものだってことが。

「性衝動も、破壊衝動も、どっちも満たすことは、難しいかもしれませんけど……」

 そこでやっと、やっと。

 僕はアンナ先輩の瞳に気付く。

 理性的な表情や言葉の中で、隠されていたものが、現れる。

 血の味を覚え、性にまみれた、危険としか言いようのない獣の瞳だ。

「奥間君」

 抱きしめられる。強く、逃がさないと言いたげに。

 じっとりとした熱を帯び、舌なめずりをし、スンスンと首筋の匂いを嗅ぎながら。

「わたくし、ずっと思っていましたの。奥間君を壊したら、どれだけ気持ちのいいことになるか」

 サーっと血の気が引いた。いやマジで。愚息もしゅんとなっている。

「身体を壊したりはしません。痕にも残りません。ただ、少しだけ、痛みを与えさせてくださいまし……」

「ちょちょちょちょちょ!」

「…………」

 まだ中だしセックスの方がマシだった。えっと、こんな時はどうすればいいんだっけ? SMの規制本ちらっと読んだ限りでは確か、そうだ!

「キキキ、キーワード!!」

「?」

「本当にダメなときは、キーワードを言うので! それを聞いたら止めてください、お願いします!!」

「…………何にいたしますの?」

「えっと、NO! NOで!」

「わかりましたわ。……大丈夫、精神が壊れるほどではありませんわ」

 全然安心できないけど、これから始まるのは、そんな特殊SMプレイらしかった。遺書残して来ればよかった。

227 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/06(日) 14:35:43.30 ID:fFBIkeMu0


 母さんの調教で多少痛みに慣れているとはいえ、今のアンナ先輩に付き合うのは正直辛い。

「避妊具は持っていますの?」

 よかった、その認識が生まれている!!

「今は妊娠するわけにはいかないようですので……奥間君のお義母様がそう仰っていましたの」

 ……着床したいオーラを感じるけど、無視しておかないと精神が破綻する。

「さ、財布に入ってます」

 いつ襲われても大丈夫なようにね! 5枚用意しているけど普通はこれで足りるよね? アンナ先輩が限界まで挑戦したいとか言い出したら即座にNOと言おう。

「そう、ならお腹の中を掻き混ぜても大丈夫そうですわね」

 残念そうに聞こえるのは気のせいじゃない。

 ゆっくりと、焦らすように服を脱いで、脱がせていく。獣の瞳はそのままで、笑っている。

 ぺろ、と首筋を舐める。そこが以前、僕を食べようとしたときの傷痕を舐めていることには、すぐに気付いた。

「少し、痛みますわよ」

 背中の一部を、軽く押され

「げふっ!?」

 肺の空気が全部吐き出された。どんな芸当でこんなことができるんだ!?

「〜〜〜〜!! ああ、」

 僕が痛みにむせている姿を見て、恍惚に酔いしれている。今度はわき腹「が!?」ぐりぐりと目つぶしを握ったものを脇腹に入れていく。

 ぴちゃぴちゃと湿った水音が、大きくなった。

「ああ、ああ……やはり、わたくしは」

 今度は唇を貪る。いつもと違うのは、感じるポイントじゃなく、舌を啜り、歯で噛み千切らんばかりに強く噛んだこと。

「んー! んー!」

 唾液を啜り終えると、少し不満げにこちらを見る。

「な、なんですか?」

「……本当は、舌を噛み千切りたかったのですけど。……奥間君の血の味が、欲しいんですの」

「あの、身体は傷つけないって……」

「ん、先に舌を満足させますわ。……愛の蜜をくださいまし」

 アンナ先輩は僕の愚息に口づけをする。ここは素直におっきした。条件反射みたいなものだから仕方ないよね。


 じゅぼ、じゅぼ、じゅぼ、じゅぼ!


「〜〜〜〜!! アンナ先輩、出ます!!」

 どびゅるる、と勢いのある精液が、アンナ先輩の小さな口の中に全部入る。飲み込むのがもったいないのか、起き上がり視線を合わせ、笑みを浮かべながら舌の上でころころと味わった後、喉を反らし見せつけるように飲み込む。

「あ、はあ、やっぱり溜め込んだ奥間君の愛の蜜は美味しいですわ……!」

 騎乗位になり、僕の上にまたがろうと膝立ちになる。あ、ゴム着けなきゃ。

「……愛の蜜がお腹の中で広がらないのは、寂しいですわね」

 それしたら妊娠するから仕方ないね。

 ゴムを付けると、ゆっくりと飲み込んでいく。「うっ」呻いたのは僕の方だった。アンナ先輩の中は凄まじく、グネグネとうごめきながら搾り取ろうとする。

 アンナ先輩が、笑った。

228 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/06(日) 14:36:44.81 ID:fFBIkeMu0


「ひぎぃ!?」

 い、いや、ぼ、ぼくのちくびをつねらないで!! そこはダメ、ダメなのぉ!!

 痛みでビクンと跳ねた身体の衝撃を全身で受け止めるかのように、アンナ先輩はころころと僕の乳首を転がす。

「うふふ、可愛い顔……」

 アンナ先輩はあくまで動かず、僕の身体に衝撃を与え、そこから伝わる振動で感じているようだ。ダメだ、鍛えられてないところばかり責められると体力が持たない!

 アンナ先輩のおっぱいに手を出そうとすると、

「ダメですわよ? 勝手に動いては」

 一瞬で手を上に拘束される。アンナ先輩は片手なのに、僕は両腕の力を使っても全く動かない。

 アンナ先輩が動いた。グネグネと腰を蠢かし、恍惚を移すように、奪うように、そのたびに昂ってきて、キスもいつもの激しいものに変わる。愚息も慣れたプレイに戻ったからか、一気に大きくなっていく。

「あ、あ、あ、あ!!」

 ばしゃあと、アンナ先輩が潮を吹いた。僕も二度目の発射をし、アンナ先輩から抜く。

「お、奥間君、やっぱりわたくし、奥間君の愛の蜜を身体の中で感じたいんですの」

「で、でもそれだと」

「排泄孔に、挿入れてくださる?」

 瞬時に計算、今のアンナ先輩を刺激するより後ろの穴プレイの方が危険度低いと認定!

 バックの姿勢になり、排泄孔にあてがう。

「ゆっくり、挿入れますね」

 今のアンナ先輩に指で慣らすなんてことは必要ないだろう。予想通り、力の加減を完璧に習得したのか、挿入するときはたやすく、抜くときはきつい。痛いほどだ。

「う、先輩、きつい、です」

「ふふふひ、そうしているんですわ。早く動かしてくださいまし」

 ちんこもげそうなぐらいの力で絞る排泄孔の括約筋ってどうなってるんだ。うわ、本当にもげそう。でもヤバい、中は気持ちいい。

 ぐっ、ぐっ、ぐっ、ぐっ、

 前の穴と違って自分が主導だからか、征服感みたいなのがあって、それが背筋にゾクゾクを走らせる。

 ぐっ、ぐっ、ぐっ、ぐっ、

「う、先輩、出ます!!」

 びゅる、びゅるるる!

 三回目ともなると勢いは減るかと思ったけど、そんなことはなかった。むしろ根元を押さえられ、勢いが増したほどだ。

「あ、アンナ先輩?」

 最初こそ痛かったけど、思ったより普通のプレイで少し安心して、愚息を抜く。まだ少しおっきしてる。

「うふふふふ、やっぱり、あれがいいんですの」

 ……何の話だ。

「奥間君、わたくしの排泄孔に愛の蜜を注ぎ込んだでしょう? ……わたくしもしたいんですの」

 (アンナ先輩は知らないだろうけど)前立腺プレイかあああああああ!!

 あれはきつい、死ぬ、搾り取られて死ぬ!!


229 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/06(日) 14:37:20.31 ID:fFBIkeMu0


「の、の」

「えい」

 かわいい声だったが、細く長い指はあっという間に僕の排泄孔を犯し、ポイントにたどり着いて



「あああああああああああああああひいいいいいぎゃあああああああ!!」



 ぴゅっぴゅっとあっという間に射精。

「ああ、やっぱり、悲鳴って素敵ですわ……」

 NOと言いたいところだったけど唇を塞がれる。いつの間にか前も挿入していたけど(避妊はどうした)、後ろの刺激にそれどころじゃない。

 またぴゅぴゅと射精して、今度は腰ががくがくと勝手にうごめいた。

「あん、激しい! これ、これ、これ!! これがいいんですの!! ああ、痛みを与えている時の顔も素敵ですけど、こちらの苦痛の表情もなかなか……う、ひひひひ!!」

 四回の射精とドライを二回を経験して、半分意識が飛びながら「N,NO……」やっと言えた。

「……これからですのに」

 仕草だけ見るとかわいらしいけど、結局前にも出してるからね!! 四回も!!

「奥間君、まだできますわよね?」

 全力で首を横に振る。出し切った。言い切れる。

「……やっぱり、わたくしは、人が苦痛に喘いでいる時の顔が好きなんですの……」

 自分の性癖を改めて自覚したんだろう。僕は割と知ってたけど。

「奥間君なら辛うじてブレーキがかかるのですけど、他の方だと無理なんですの」

 あのリーダーにしたことを知っていればわかりますとも。

「その、僕も、どうすればいいか考えますので……」

「……《赤ちゃん穴》に愛の蜜を注ぎ込んでしまいましたわ」

「あの、妊娠阻害薬〈アフターピル〉っていうのがあって……一応、持ってます。アンナ先輩が暴走した時のために」

 今まさにこの状態のために。

「避妊に失敗したときに使う薬です。……前も飲みましたよね?」

「……風邪薬と言われたやつですの?」

「すみません。そう言わないと説明が浮かばなかったので」

「……薬に頼るわけにはいかないようですわね。副作用の激しい薬のようですから」

「らしいですね。だから、避妊具は絶対つけましょうねって話で……」

 アンナ先輩がこちらを向いている。なんだろう。

「……奥間君、小匙スプーン一杯でいいから、奥間君の血が飲みたいんですの」

「……えっと」

「避妊具は絶対つけますので」

「…………一滴じゃダメですか?」

「…………」

 不満そうな顔になったけど、結局はそれで了承してくれた。

 僕自身が小指を噛み千切って、アンナ先輩が啜るその図は、凄絶の一言だった。僕、マジで食われてる。


230 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/06(日) 14:37:58.02 ID:fFBIkeMu0

…………、

ぶっちゃけ、あんまり変わらない気がする!!
231 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/06(日) 14:49:54.65 ID:FZ7pOzX30
アンナ先輩、前回小指食おうとしてたし、確かに変わりないかも(自覚生まれたのはいいけど)
232 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/06(日) 15:47:11.10 ID:q3+qDowjO
あー、こういうプレイ知ってる…
ヤラレる側は自分が嫌なプレイはNOで断れると思ってるけど、唇ふさぐとかされたら受け入れるしかないんだよね
ひどい時にはギャグボールとか使われて何も言えなくなるし、エロ漫画あるあるだわ
233 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/06(日) 17:33:59.30 ID:fFBIkeMu0


 タクシーでアンナ先輩のマンションに来た後、ソフィアがいたらどうするか考えていたのだけど、誰もいなかった。

 シャワーは先ほどホテルで浴びたのだけれど、僕にはわかる。アンナ先輩はまだ足りてない。そして、誰もいない。

 でももう僕の残弾は出尽くしていて、セックスしようがない。さてどうするか。

 アンナ先輩は僕の傷ついた小指をペロッと舐めた後、笑った。

「服を全部脱いでくださる?」

 逆らえるはずもなく、言うとおりにする。「あ、あの」ああ声が情けなくなってる。

「さっきの続き、僕はもう……」

「大丈夫ですわ。奥間君を鑑賞したいだけですから」

 鑑賞? 浣腸じゃなく?

 全裸になると、アンナ先輩は満足そうに、

「しなやかで、結構逞しい身体をしていますわよね……」

 僕の胸板を優しく撫でる。それが酷く恥ずかしい。

「あ、アンナ先輩のプロポーションには絶対敵いませんよ」

「うふふふ、ありがとうございますですわ。……手枷を嵌めますわよ」

 え?

 と思う間もなく、あっという間に手枷が嵌められた。

 今、僕の手は頭の上に上げている状態だ。手枷にさらに長い鎖を嵌めると、天井の大きなフックに通す。

 そしてキリキリと上げていく。

「あ、あの、アンナ先輩?」

「一度やってみたかったんですの。ん、もう少し鎖を短くしてもよろしくて?」

 鎖が短くなり両腕が上がっていく。

「くっ」

 自由が利かない。アンナ先輩の思うが儘なのが、恐ろしく怖い。

「……もう少しだけ」

 とうとう僕は、つま先立ちになるまで鎖を短くされた。そこで天井のフックに鎖を固定する。

「ああ、素敵ですわ。とっても素敵……先ほどあれだけ満たしましたのに、またお腹の中がうずうずしてくるぐらい」

 ちなみに僕の息子はあろうことか半勃ちになっていた。おまえ、元気だな!

「……これもきっと、卑猥の罪なんでしょうね」

 唐突に真面目な話をされる。え、これ結構きついんですけどこの状態続くの?

「実は、お母様がもうすぐ来ますの。奥間君の意思ではなく、わたくしの意思だと表明するには、これが一番早いかと思いまして」

「ちょっと待ってええええ!!!」

 ソフィア卒倒するぞ!!? あと僕ソフィアに攻撃されたら抵抗できないじゃないか!!

 ご丁寧にハンカチを利用した口轡を嵌めたあたりで、


 ピンポーン


「来ましたわ」

 え、僕、放置プレイ?


234 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/06(日) 17:34:28.78 ID:fFBIkeMu0


 ――アンナ、いいですか、あなたはあの男に騙されているのです!

 ――いいえ、お母様。わたくしが選んだ方ですわ。

 ――こちらに来ていただくのが早いと思いますわ。



 ちょっと待ってこんな急ピッチ!?

 カチャ、と静かに扉の開く音がした。



「――――――な、な、な、な、!?」

「鎖も天井のフックも、わたくしが自分で用意したものですわ」

「な、なななな、なんて破廉恥な!? なんで、なんでこんな!?」

 僕も聞きたい。

「このつま先立ちっていう体勢、結構辛いのはお母様もわかるでしょう? ……わたくし、大好きな方の苦しそうな顔を見ますと、こう、愛の蜜が溢れてくるんですの」

「〜〜〜〜こ、こ、この!!」

「――――――ソフィア、落ち着け!!」

「あら、お義母様も一緒だったのですわね」

「アンナ、ソフィアもだ、君たちは混乱している! だからついてきた!」

 ありがと母さん、本当に感謝!

「わたくしは落ち着いていますわ。愛の蜜入りのクッキーを食べさせたり、そう、この突起物を」

 よりにもよって、僕と自分の母親の前で、口に含む。舌を使い、いつもより丁寧に、見せびらかすように。

「こうすると、すごく幸せな気持ちになれますの……ん」

 いつもよりも僕の反応が鈍いけど、尿道口を舌を使ってぐりぐりしたり、ハーモニカのように唇を滑らせたり。

 いくらソフィアでも、これが娘の意思で行われていることに、気付いたようだった。

「なんで、なんでこんな……私の教育は間違ってなどいないのに、なぜ? 不健全雑誌を身体に巻いてまで、デモを起こしたというのに、娘が傷害? 強姦? こんな破廉恥なことまでするようになったのです……?」

 口轡を乱暴に母さんがはがす。「げほっげほっ」

「お前も何か言え!!」

「……アンナ先輩は……いえ、人間は、衝動には逆らえません。それは自分の中にあるものだからです」

 聞いてくれているのかわからない。だけど言うしかない。

「性衝動も破壊衝動も、アンナ先輩にはちゃんとありました。だけどみんな、なかったことにしていた。見て見ぬふりをしていた。それでも、アンナ先輩の歳まで奇跡的に成り立っていたのは、本当に奇跡なんだと思います」

 ………これを言うと、もう後には戻れなくなると、わかっていた。

 だけど、言うしかない。だって、アンナ先輩を変えたのは、僕だから。

「僕は、アンナ先輩を尊敬して、時岡学園に入りました。それは、今でも変わりません。アンナ先輩は、本質は、変わってなんかない。ただ隠さなくなっただけなんです」

 だから。だから。



「僕はアンナ先輩を、受け入れたいと思います。ありのままのアンナ先輩を。ソフィアさんは、時間がかかるかもしれませんが、ありのままを見てほしいんです」



 多分、これは告白なんだろうなと。

 心のどこかで、気付いていた。

 できればもう少し、マシな告白がよかったな……鎖で全裸とかじゃなくてさあ。
235 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/06(日) 17:35:02.78 ID:fFBIkeMu0


 正月が終わるまでは善導課の講習や家族内での不和があって、アンナ先輩は首都に帰って会えなくなった。電話もろくにできていない。

 占い屋で作ったおそろいのペンダントを見るたびに、これでいいのか、思う。

「アンナに告白とはお主生意気じゃのう」

 偉そうに正月気分を無視してハンバーグ800gを食べている早乙女先輩は、いつもの調子だ。

「僕、《SOX》をどうすればいいでしょう?」

「はやく止めるっス、死人が出るっス」

「止めるしかねえな、狸吉を犠牲にするしかねえぜ」

 ひでえ。

「華城先輩はどう思いますか?」

「私は別に? アンナ抱き込めばテロ活動もやりやすくなるだろうし」

 華城先輩は、いつもの元気がない。病み上がりだからかと思うけど、なんか違う気もする。


 カランコロン


「あら、皆さんもここにいましたの」

 銀髪の影が、喫茶店に入ってきた。

「あ、アンナ!? 首都に帰ってたんじゃなかったの!?」

「そうですよ!!?」

 全員がワタワタしていた。そりゃそうだ。

「お母様が思ったより強情で、お父様もよくわからない意見だったので、奥間君のお義母様に相談してみたら、少し離れた方がいいと結論に達しまして」

 まあ、そうかもしれない。でも何でここに?

「奥間君のアパートに行ったらお留守でしたので、匂いをたどって」

 あー、やっぱりそうだよなーあはは。

「あー、えっと。アンナ先輩はこれからどうするんですか?」

「お母様はわたくしを転校させたいようなのですけど、そうはいきませんので」

「遠距離恋愛も悪くないと思うわよ」

 華城先輩は黙っててください!!

「それも考えたのですけど、わたくしは確かめたいことができまして」

 確かめたいこと?



「そのためには、《SOX》と接触しなければなりませんの」



「「「「「…………」」」」」



 僕たち《SOX》の活動には、まだまだ困難が付き添うようだ。



   ――END――


236 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/06(日) 17:38:41.89 ID:fFBIkeMu0
続きを書いてもよかったんですけど、一応テロリストからの救出という点においては事件として終わっているので、こういう形で〆させてください。

続きは書きたいですけど、別スレ立てるか悩んでいます。


あとこう見えてもアンナ先輩は狸吉に依存しているから安定しているように見えるだけで、まだまだ不安定なのでひと悶着はあると思います!

ここまで付き合ってくださって、ありがとうございました! 本当に、ありがとうございました!
237 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/06(日) 18:09:48.83 ID:SRc4PU9U0
SOXを殲滅じゃなくに会うか……書いてくれー無理ない範囲で
238 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/06(日) 18:19:32.15 ID:/FStR6Q6O
続きを投下するのは何ヶ月も先になりそう?
それなら、別スレ立てた方が良い

そして乙
ぶっちゃけ続き書いて欲しい。何年も待たされてこれだとアッサリし過ぎというか、消化不良というか……
とにかく待ってます
239 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/06(日) 20:50:26.69 ID:fFBIkeMu0
うう、すみません、ちょっと急いだ感はありましたね……

10日ぐらい開けるかもしれませんが、何か月もということはないと思います。多分このスレで、続き頑張って書いてみますね。
240 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/06(日) 21:47:32.64 ID:BRHXYaDKO
りょーかい、待ってる
もし別スレ立てたら、このスレはHTML依頼出す必要あるから忘れないでね
おつ
241 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/06(日) 21:57:54.23 ID:fFBIkeMu0

   <不破氷菓の一日>



 不破氷菓は科学者の端くれである。

 そう自負しているのだが、中には発明者と勘違いされている節もある。

 例えば、昨日こんな依頼が来た。



「アンナ会長の性欲を何とかしてほしい?」



 奥間狸吉からの依頼だ。正月の三が日も終わったばかりなのに何を言っているのか。

「無理に決まっているでしょう」

『そんなこと言わないで! 頼むから話を聞いて』

「毎日搾り取られていればいいじゃないですか」

『……合体』

「ほう」

『成功するかはわからないけど、アンナ先輩との合体の観察にアンナ先輩を協力してみるよ』

「そこまで言うとはよほど切羽詰まってらっしゃるんですね。わかりました、引き受けましょう」



   *



 喫茶店で会うことにした。

「アンナ先輩、僕を鎖で釣り上げたかと思えば寸止めして焦らすんだよ……」

「奥間さんの愛の蜜が溜まるまで?」

「愛の蜜が溜まるまで」

 そんなプレイスタイルは《SOX》がばらまく不健全絵画にもなかったので、非常に興味がわいた。

「いいんですか? そんなことを話して。生徒会でしょう?」

「生徒会長があんなのだからいいんだよ、きっと」

 奥間がそれでいいならそれでいいのだろう。以前の奥間なら断固拒否していただろうに、よほど疲労が激しいらしい。目にクマができている。人のことは言えないが。

「鎖でつま先立ちまで天井に引っ張る……なるほど、拷問と似ていますね」

「その状態で、その……いろんなところを羽箒でさわさわしたり」

「なるほど」

「本当に、地獄なんだよ……この前なんか見下すような視線だけでもう無理になりそうになったし」

「ほう、それは興味深いですね」

「恥的好奇心満たしてないでさ、なんとかしてくれぇ!」

「会長からもリサーチしたいところですね」

「……アンナ先輩に? わかった」

 一瞬、気まずそうな顔をしたが、すぐにPMを繋いだ。

242 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/06(日) 21:59:11.82 ID:fFBIkeMu0


『奥間君? どうかされましたの?』

「あの、不破さんをアンナ先輩の部屋に連れて行ってもいいですか?」

『? 何故?』

 以前なら即浮気を疑っていたのに、今は正妻気取りである。余計な嫉妬が来ないのは助かるが。

「あの、前からの事件で色々不破さんに迷惑かけちゃったじゃないですか……それで、前から興味を持っていた」

『……愛の儀式を見たい、と?』

「あの、やっぱりだめですか? アンナ先輩も僕相手じゃ鬱憤が溜まるでしょう?」

『わたくしはすごく楽しいのですけど……、奥間君に負担がかかるのは、わかっているつもりですわ』

「拷問ですしね、基本が」

 PMはその一言を拾わなかったらしく、熟考の気配だけがする。

『お母様相手に披露したこともありますし、何も言わない、喋らない、手を出さないなら、いいですわよ』

「え、いいんですか!?」

『少しでも奥間君に触れたら、わたくしにとっては愉しい事態になるでしょうね』

「それはつまり拷問ですよね」

 …………、絶対に触れないようにしよう。

 PMが切れると、「よっしゃこれで光明が見えた!」みたいな顔をしている。

「性欲の解消には、たいてい疑似的な単為生殖にふけることが多いのですが」

「僕はもうそれでいいよ……」

「以前、奥間さんのものを疑似的に再現したブツがあったのですが、取られたのですよね?」

「アンナ先輩の箪笥の引き出しに大事にしまってあるよ」

「まずはそれを取りに行きましょうか」


   *


「いらっしゃいですわ」

 ここに来るのは二回目だが、相変わらず白を基調とした品のいい部屋だった。

「あら、早乙女先輩もご一緒ですの?」

 あれから「奥間よ不破よ、わしをそんな素晴らしいシーンに呼ばんとは寂しいではないか!」とどこからか聞きつけ、一緒に来ることになった。自分は構わないが、奥間は嫌そうにしている。

「ブツはどこに?」

「大事にとってありますの」

 取り出したブツは、洗って綺麗にしてあるらしく、汚れ一つついていなかった。

「使わないのですか?」

「え? まあ本物がありますし」

 それもそうかと納得する。ということは、本物にできない動きを付加すればより快感を得られるのだろうか。ただ素材にあまり柔軟性がない以上、無理な動きはさせづらい。

「使ってみての感触はいかがでしたか?」

「それはもう満足ですわ。ただ、自分で抜き差しするのは、味気ないですわね」

 そこでいきなりきょとんとアンナ会長が、「これは卑猥な会話に当たりますわね」といきなり爆弾を投げ始めた。

「あーえっと、その、ほら、性衝動の正しい解放は大事なんですよ! 母さんも言ってましたけど、それで不快な思いをさせなければいいわけで、むやみに人に見せびらかすわけではないし」

「お二人が見ることになりますわ」

「納得づくなら問題ないでしょう!」

 二人とも助けて! と念波が送られてきたので、頷いてみた。

243 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/06(日) 21:59:45.58 ID:fFBIkeMu0


「ならいいんですけど」

 どうも最近のアンナ会長の価値観はわかりにくい。元からわかりにくい人ではあったが、あの立てこもり事件以来、卑猥に対する価値観を信用しなくなったような、いびつさがある。

「この近くに粗大ごみ置き場はありますか?」

「ありますけど、何を致しますの?」

「材料拾いです」


    *


 さすがに高級マンションの粗大ごみ置き場だけあって宝の山だった。パッと見る限り、修理すれば十分使えるものばかりだ。

「これはなんですか?」

 見慣れないものがあったので、素直にアンナ会長に訊いてみる。

「ロデオマシンですわね。確か最近、ジムが閉鎖になったとか聞きましたわ」

 ふむ、と考える。組み合わせたら使えそうだ。

「これを持って帰りましょう」

「え、重いよ?」

「わたくしが持ちますわ」

 奥間が持てなかったものを軽々持ち上げると、部屋に戻っていった。


   *


「…………」

 奥間が何か言いたそうにしているが、気にしないことにする。

「完成しました」

 構造としては非常に単純で、ロデオマシンを修理し座る部分にブツを固定しただけの代物だ。

「なるほどのう」

「では実験してみますか?」

「え、ロー……潤滑油なしに?」

「天然の潤滑油はもう十分なようじゃがのう」

「では全裸になってください」

「……明るいですわ。間接照明だけでもよろしくて?」

 ここで機嫌を損ねても仕方ないので、頷いた。間接照明だけでも十分に明るく、観察には問題なさそうだ。

「奥間君も、全裸になってくださいまし」

「え、僕も?」

「せっかくですから、このまま愛の儀式に移行してしまいましょう」

 《赤ちゃん穴》から大量の潤滑油――愛の蜜が太ももにまで流れ落ちている。声は平静でも、欲情の火がともっているのがわかった。

「スイッチの回数で強弱とオンオフがつけられますので。後は黙っています」


 そして、実験と儀式は始まった。

244 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/06(日) 22:00:35.39 ID:fFBIkeMu0


 奥間が胸部を舐めている。それだけで「ああん」と甘く高い声を出して、背中を反らす会長は、美という観点から見ても完ぺきだった。

 そして《赤ちゃん穴》に指を挿入され、しばらく上下に動かされた後、ガクガクガク!と痙攣がおこり、愛の蜜とやらがさらにぼたぼたと流れ落ちる。

 そして、ロデオマシンに跨る。

「ゆっくりでいいですからね……痛かったら言ってください」

 そしてブツが、中に挿入されていく。

「はうん! は、は、あ、」

 一番弱い刺激だからか、物足りないようだ。前にハンドルのようなバーがあったが、そこを握らせず奥間はアンナ会長を後ろ手に手錠で固定する。

 すると、身体を固定することができず、より振動を強く受け取ることができる。なるほど、と氷菓は納得した。

「あん、奥間君の、いぢわる……」

 むしろ嬉しそうにそういう会長はまだ余裕がありそうだった。奥間もそう思ったのか、第二段階にスピードを上げる。

「はああん! あ、ああ、ああああ!」

 気持ちよさそうに声を上げる会長は既に涎まみれだった。はあ、と奥間がベッドに座る。

 気持ちよさげに声をあげながらも、会長はス、と視線を奥間の突起物に目を注ぐ。奥間はう、っと呻きながら、共鳴を起こしたかのようにグググ、と戦闘態勢になった。

(この前なんか見下すような視線だけでもう無理になりそうになったし)

 なるほど、こういうことかと納得する。自分も熱気に充てられ、潤滑油が流れ出してきた。

「あ、あ、あ、あ、あ、あ、奥間君、これじゃダメ、ダメですの……!」

 どうやらこれでも物足りないらしい。だけど奥間は動かず、時計を見る。

「アンナ先輩、あと10分、我慢できますか?」

「10、10ふんも、ああ! ああん、奥間君のいぢわる……」

 そう言いながらも嬉しそうだ。よくわからない関係の二人だと思う。


 10、

 9、

 8、

 7、

 6、

 5、

 4、

 3、

 2、

 1、


「あ、あ、奥間君……!」

 そこで一度、奥間はスイッチを切った。

245 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/06(日) 22:01:11.33 ID:fFBIkeMu0

「あ、あ、あ、あ、なんで……?」

「ちょっと位置調整しましょう」

 アンナ会長は素直に頷くと、潤滑油でぬるぬるになった鼠径部を上下左右、動かし、「あ、ここ、ここがいいですの!」何やらポイントを見つけたらしい。

「じゃあ、一番強いの、行きますね」

「あ、あ、あ、あ、あ、あ、!!」


 ガタンゴトンガタンゴトンガタンゴトン!!!


 氷菓の目から見ても激しく前後左右上下に揺れる。「ふ、ふわああああああああん!!!!」身体を反らし、全身で快楽を享受したようだが、機械だから止まらない。

「10分、我慢しましょうね。危なくなったら切りますから」

 奥間の声はどこまでも優しい。

「お、あ、おお、うぁ、あああああ」

 もはや会長の声に涼やかさはなく、獣のそれと同じになっていた。


 10、

 9、

 8、

 7、

 6、

 5、

 4、

 3、

 2、

 1、


「終わりましたよ」

「…………」

 呆然自失だった。機械的な刺激というのは得てして強すぎるのかと氷菓が心配した時、

「アンナ先輩ならよく気絶とかするから大丈夫だよ」

 奥間が言うならそうなんだろう。

 気絶しているアンナ会長をベッドまで運ぶ。丁寧に扱っていた。

「ありがとう、これでアンナ先輩が物足りない時なんとかなりそうだよ!」

「……奥間君……?」

246 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/06(日) 22:01:43.09 ID:fFBIkeMu0


 ビクン、と文字通り奥間が跳ねた。

「ふふ、いぢわるなとこも好きですわ……でもすっごく良かったんですもの。けれど、奥間君が足りないでしょう?」

 いつの間にか起き上がり、奥間の腰を後ろから掴んでいる。

「い、いや、止めて! 排泄孔だけは!!」

「うふふふふふ……今度は奥間君の番」

 奥間に負けず劣らず優しい声で、しかしその瞳だけは欲情の獣の瞳だった。



「いやああああぎやああいひひひいいいいいふはあああああああああああああ!!」



 もう言語とも思えない発声が奥間の喉から響く。

 人間はこんな声を出せるのだと、氷菓は身を以て知った。


   *


 創作意欲がわいた! わきまくりじゃ! と何かの祭りのごとくダッシュで帰っていく。そういえば早乙女先輩の気配が途中からなかった。

 直接の合体は見られてないなと気付いたが、今の時点でこれ以上は罰が当たる。あのロデオマシンの有用性もわかったし、今日はいい日だった。

 しかしそれにしても。

「愛、とは不可思議ですね」

 慈しんだり嫌がったり、それを無視してみるとより快楽が発生したり。

「まだまだ探究心は衰えそうにありません」

 とりあえず、いつかは本当の合体が見てみたいと思う、氷菓なのだった。


247 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/06(日) 22:03:11.46 ID:fFBIkeMu0

本編と本編の間の話な感じで。アホ話。

アンナ先輩、大体愛の蜜が溜まるまでは狸吉を吊り下げて、紅茶を飲んだり読書をしたり、鑑賞物として楽しんでらっしゃるようです。
248 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/06(日) 22:31:30.81 ID:7yMJ9NmL0
たぬきち切羽詰まってたんだな……
なんつーか、本編ではペット扱いだけどこっちじゃ奴隷扱いな気がする。天吊りって結構キツイらしいね
249 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/06(日) 23:01:05.33 ID:lLhoANhrO
なにこれアタマおかしい
って、原作からしてそうだったわ
つまり、これは忠実な原作再現つーことか。なんてこったい
250 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/08(火) 15:46:19.80 ID:67K1aiTg0
アクションを書く練習ですので、下ネタが入ってないと書いた後で気付きました。なんてこったい。

まあせっかくなので投下します。
251 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/08(火) 15:47:46.38 ID:67K1aiTg0


 12月26日


「悪いね、母さん。変なことを頼んじゃって。休みの日なのにさ」

「構わん。最近の署員には緊張感が足らんしな」

 僕は今、なんと善導課の柔道場に来ている。

 アンナ先輩は事件でいろんな功罪を背負った。功を奏して罪の方は軽く済んで、(本来ならあり得ないのだけど両親が無理を通した形だ。僕と轟力先輩のBLぐらい無理を通している)講習を受けている。だけどアンナ先輩は優秀すぎて、カリキュラムが一瞬で終わるというほぼ意味のないことになって、上層部が困っていたのだという。

 そこで時間を持て余し気味のアンナ先輩を見かねて僕が母さんに頼んだのが、組み手だった。

 アンナ先輩は衝動を持った。性衝動だったり破壊衝動だったり、その他もろもろ。それは生きていくうえで必須なんだけど、アンナ先輩は正しいことしか詰め込まれておらず、抑圧されて生きてきた。だからその衝動の発散の仕方を知らず、特に破壊衝動の方は持て余し気味だった。性衝動の方は僕で遊んでなんとかなってるけども。むしろこっちを何とかしたいのだけど、みんな僕一人の犠牲で済むならということでごまかされている。ひでえ。

 まあなんだ、発散の仕方を知らないって色々辛いよね。ナニがとは言わないけどさ。

 だけどアンナ先輩の場合、人の壊し方を知っているという点でとにかくシャレになっておらず、素手で人を殺すことも可能な人だ。いや普通の人もできるのかもしれないけど、握力だけで首の骨を折るってできる? 僕はできないよ?

 柔道場へ行くと、すでにアンナ先輩が柔道着に着替えて待っていた。黒帯。アンナ先輩の可憐な容姿と黒帯のギャップが珍しいのか、ちらちらと善導課だけじゃなく警察全部の課の猛者で埋め尽くされている柔道場の視線を一身に受けていた。

「奥間君、お義母様」

 アンナ先輩が笑うだけで、むさくるしい柔道場の一角にそこだけお花畑が生まれたようだった。

「今日は、お稽古を?」

「まあ正直、君のストレス発散にしかならない連中だろうがな」

 善導課の生きる伝説《鋼鉄の鬼女》の言葉に、何人かがざわつく。母さんは今日、柔道場を仕切っていた警官に声をかけると、

「全員注目!」

 全員が稽古を止めて、僕達――というか母さんを見た。

「今日は彼女、アンナ・錦ノ宮の特別講習に付き合ってもらう。実力が足りないものは見学していろ、あとで私が可愛がってやる」

 ……皆さんごめんなさい。

「アンナ・錦ノ宮と申します。今日はよろしくお願いいたします」

 ざわつきが生まれる。アンナ先輩はどうやら柔道界では有名らしい。そりゃな。

「具体的には彼女の乱取り稽古に付き合ってもらいたいのだが……、おい、貴様」

「は、はい!」

「貴様ならアンナ相手でも、そうだな、15秒立てていたら誉めてやろう」

 空気が軋む。アンナ先輩相手に15秒立てるというならそれなりの猛者なんだろうけど、それだけの猛者ならプライドも高いだろう。

「あの……」

「かまわん。アンナ、不必要なプライドはへし折ってやれ。それが奴のためだ」

「……わかりましたわ」

 本来、今日この柔道場を仕切っていた警官が審判することになった。

「はじめ!」


 ドン!


 ……4秒だった。僕から見ても見事な、アンナ先輩の一本背負いが決まっていた。


「貴様、女相手とみて油断するとはたるんどる!!」

「ひぃ、すみません!!」

「思ったよりもたるんどるようだな。鍛えなおさねばならん」

252 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/08(火) 15:48:30.59 ID:67K1aiTg0


 母さんは周りを見渡すと、

「しかし、これでは今日いる者では相手にならんな。仕方ない、私が相手をしよう」

「お義母様と?」

 アンナ先輩の困惑をよそに、母さんはさっさと柔道着を着替えに出て行ってしまった。

 警官たちから声をかけられるかと思ったけど、母さんが怖いらしく黙って正座している。

「奥間君はその……どう見えましたの?」

「え? えっと、僕は武道のことわからないので何とも言えないんですけど」

 ちょっと考える。流麗で見事な動き。しかし、何かが足りない。

「アンナ先輩も、遠慮してましたよね? 遠慮というか、エンジンが入ってないというか」

 アンナ先輩と言えば敵に対してはもっと容赦のないイメージだ。なんというのか、武道というよりスポーツといった感じだった。

「ん……、そうかもしれませんわね」

 これじゃあ、衝動の発散の練習にならないかもしれない。そんなことを危惧しているうちに、母さんが柔道着で戻ってきた。

 ……やっぱり迫力あるなあ。カタギには見えん。

「これより、奥間爛子とアンナ・錦ノ宮の乱取り稽古を行う」



「はじめ!」



 シュババババ!と無数の攻防が繰り広げられる。正直僕には見えない。一瞬、距離を取り、また無数の攻防が繰り広げられる。互いに決め手がない感じだ。

 警官たちは目を剥いている。母さんと互角の人間なんて数えるほどしかいないだろうしな。それがこんな美少女じゃびっくりもするわ。


「それまで!」


 結局一戦目は引き分けに終わった。

「……ふむ」

 母さんも納得いってないようだ。アンナ先輩が本気じゃないというわけじゃなく、アンナ先輩にとって柔道はあくまでルールのあるスポーツなんだろう。

 それでも衝動を発散させることはできるだろうけど、うーん。

「今のままじゃ足りんな。狸吉」

「僕無理だよ!?」

 あんな化け物同士の戦いに入れるもんか。

「お義母様?」

「……少しルールを変えるか」

「?」

 いや僕を見られても困る。柔道のルール自体知らないし。

253 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/08(火) 15:49:21.22 ID:67K1aiTg0


「アンナ、お前は何をしてもいい。殺す気で来い」

「ちょ、母さん!?」

「何を、というのは、その、どこまでですの?」

「反則はない。目潰しも何でもありだ。本気で来い。こっちはそんな貴様を捕縛する。それでどうだ?」

「…………」

 奥間君、と小さく呼ばれたので、母さんに背を向け、囁きに耳を傾ける。

「……よろしいんですの?」

「えっと」

「……本当に殺しても、よろしくて?」

 これじゃ意味なくない?

「…………母さん、ルール変えた方が」

「もう決まっていることだ。貴様らに心配されるほど衰えてはおらん」

「……それでは、お言葉に甘えさせていただきますわ」

 すでに血に飢えた猛獣の瞳になっていた。僕もう無理。


   *


「どちらかが参ったといった時点で勝敗は決する。では、はじめ!」

 アンナ先輩も母さんもいきなり動いたりはしなかった。互いに互いを見定めている。アンナ先輩は獲物の食べ応えを、母さんは捕縛対象の実力を。

 先ほどとは全く違う、アンナ先輩から漂う冷気のような殺気に、観客となった警官たちが唖然とした瞬間、アンナ先輩が動いた。

 自身の身長ほど高く飛び、母さんの頭をめがけて飛び膝蹴り。え、マジで殺す気? 母さんは当然のようにガードし、逆に足を持ち捕縛しようとするが何かの関節技の要領で抜けると、アンナ先輩は高さを利用して肘をみぞおちに入れようとする。

 アンナ先輩は嗤い、母さんは鬼のような形相となる。怖ええ!!

「でええい!!」

 くるりと母さんは旋回し避け、アンナ先輩の肘は床に突き刺さる。衝撃に床が揺れた。嘘だろ柔道場だぞここ!?

 アンナ先輩はバック宙の要領で距離を取ろうとするが母さんはあくまでも距離を詰める。母さんはというか、基本的に警官は自分から攻撃を仕掛けるのが(こういう次元の違う話でいうと)苦手なのだろう。まず攻撃を塞ごうとする癖がある。

 そしてアンナ先輩には、攻撃を塞ぐ壁を破壊する力と技を持っている。

「ふっ!」

 アンナ先輩の突きの威力に、いなしていた母さんの体勢が崩れた。好機とみてアンナ先輩のかかと落とし。ぎりぎりでかわしアンナ先輩の腕が母さんの腕に引っ掛かり、母さんが求めていたであろうインファイトにもつれ込んだ。


254 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/08(火) 15:50:49.42 ID:67K1aiTg0


 普通の柔道ならここで一本なのだろうが、獣となったアンナ先輩は自分の不利をむしろ楽しそうに嗤いながら、

「!?」

 小さな口が大きく開かれ、首元に食らいつこうとする。急いで母さんが腹に蹴りを入れて距離を取り、一時の静寂が訪れた。

 プッと噛み千切った髪の毛を吐き出す。お腹に入った蹴りの痛みも今のアンナ先輩には命のやり取りのスパイスでしかないようで、血に飢えた獣の嗤みは消えない。

 静寂が消えるのは早かった。一瞬で今度は母さんの方から距離を詰めると、関節に決め込もうとする。もちろんアンナ先輩もそうはさせず、逆にへし折ってやろうと動いていく。

「悪く、思うな!!」

 プロレスでいうバックドロップというのか、柔道でいうと裏投げというのか、とにかくそんな感じの技でアンナ先輩を頭から投げる。おいこれ危ない技じゃないのか!? そこまで追い詰められたということなのだろう。

 アンナ先輩は頭を逆さにされたが、不吉な笑みは消えていなかった。

 両手を放し、逆立ちの状態になり、そのまま腕のばねを利用して跳ね上がり、両足を母さんの首に巻き付ける!

「ちっ……!」

 このままじゃ首をへし折られるのがわかりきっている。巻き付きが終わる前に母さんはアンナ先輩の足を力で強引に引き剥がす。一瞬動きが止まり、その間に母さんは脱出した。

 そして再び、両者距離を取っての睨み合い。

「さすがですわ、お義母様」

 はあはあと、さすがに息を切らしている、ように見えて単にアンナ先輩は衝動の解放への期待に酔いしれてるだけだ。多分この中で僕だけがわかっている。言葉も余裕と期待に溢れていた。

 母さんはふう、と一息。瞬発力と力のアンナ先輩に、持久力と技の母さん、といった感じだろうか。

 両者は普通のルールの時では互角だった。殺してもいいとまで言った何でもありのアンナ先輩と、あくまで捕縛目的の母さんとでは、アンナ先輩が有利すぎる。

「厄介すぎるな」

 あの《鋼鉄の鬼女》を以て『厄介』と言わしめるアンナ先輩を、それこそ化け物を見る目でみんな見ていた。おい、機動隊の人間もいるのにそんな目で見られるってアンナ先輩、どんだけだよ。まあ知ってたけど。



「ストップ、ストップ、ストップ!」



 この中に入っていくのは正直死ぬ思いだったけど、アンナ先輩はこのままだと母さんを本気で殺す気がしてきた。

「えっと、実力差を考えると、アンナ先輩に有利すぎるんじゃないかと思っ、たり、思わなか、ったり」

 母さんからの殺気がすげえ、なんだよ母さんのことを思って止めたのに。母さんにもプライドがあるだろうけどさあ! 

「奥間主任、私の目から見ても今のままのルールでは許可できない」

 審判役を務めてくれていた警官が僕の言葉に賛同してくれた。「ちっ」と舌打ちした後、どこかに去っていく。

「終わりですの?」

 アンナ先輩は物足りなさそうだ。だけどすぐに場をわきまえた。

「いえ、感謝しますわ。臨場感があって、つい我を忘れてしまう面もありましたの」

 多分、噛みつきのとこだろうな。あのあたりのビーストモード覚醒感は半端なかった。「君、警官に、いや機動隊に入らないか?」訓練が非常に厳しいことで有名な機動隊員にも、アンナ先輩なら軽々となれるだろうなあ。



「まだ終わっとらん」



 母さんが何やら棒を持って出てきた。警棒?

255 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/08(火) 15:51:48.64 ID:67K1aiTg0


「お義母様、それは?」

「練習用の警棒だ。これでも当たれば痛いし、怪我をさせられるぞ」

「…………」

 お、奥間主任が警棒を解禁だと!?みたいな空気が流れている。なんだよその伝説の剣みたいな扱い。

「素手じゃちと分が悪い。剣道三倍段という、先ほどまでの私と思うな」

 アンナ先輩は獣の笑みに戻る。

「ふふふ……、ええ、わたくしはいくらでも受けて立ちますわ」

 審判役の警官は、もう止められないと思ったのか、諦めて審判に戻るようだった。

「だ、大丈夫なんですか?」

「アンナ、貴様は一度2、3本は骨を折っていてもよさそうだ」

「それはお義母様の教育であっても、嫌ですわね」

 誰だって嫌だよ!



「はじめ!」



 シュ、と警棒をアンナ先輩のみぞおちめがけて突く。短期戦に持ち込む気なのはわかった。

 当然のように避けると、アンナ先輩は母さんではなく警棒の方を手刀で攻撃する。「ちっ」どうやら狙ったところに当たらなかったらしく、小さく舌打ちが聞こえた。そのまま警棒の持つ手に膝を入れる。まず武器を手放させようとしていた。

「させるか!」

 アンナ先輩は警棒が直接身体に当たれば怪我は免れないと判断したらしく、大きく距離を取った。だけどそれ以上に速く母さんの追撃。だけど追撃は追い込みすぎた。アンナ先輩は紙一重でかわすと、わきで棒を挟み込み、先ほどとは逆にインファイトに持ち込もうとする。これだと警棒の間合いの有利がなくなる。

 簡単に警棒を動かせなかったらしく、一瞬母さんが硬直、その隙をアンナ先輩は見逃さず、頭突きを食らわす。目で見る以上の威力があったのか、母さんが倒れた。

 そのまま垂直に全体重を乗せた踵を入れようとする! 母さんは辛うじて避けたが鎖骨部分に踵が当たり、アンナ先輩は流れるようにそのまま関節を決める。

「勝負あり、ですわ」

 アンナ先輩の勝利宣言に、しかし母さんは屈しなかった。先ほどの噛みつきの意趣返しとでもいうように、足で掴んだ警棒を口で噛み、頭を振ってアンナ先輩の顎にぶつける!!

「ぐ!」

 思った以上の威力にアンナ先輩の関節から脱出できたようで、母さんは警棒を持ち直し体制を整え、アンナ先輩はゆらりと立ち上がる。

 アンナ先輩は嗤っていなかった。それでも僕にはわかる。獲物ではなく、敵を叩き潰す快感を思い出している顔だ。《雪原の青》にしたような。

 うずうずしているのがわかる。暴雪の気配を感じ取っているのか、柔道場全員の沈黙が痛い。

256 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/08(火) 15:52:30.72 ID:67K1aiTg0


 わずかにアンナ先輩の唇が切れていて、血が流れている。舌で舐めとり、僅かにアンナ先輩が顰め面をする。

「もう少しで脳を揺さぶられるところでしたわ」

「自分で唇を噛んで意識を保ったのか」

 その執念に思わずぞっとする。

 さて勝負再開か、と全員が緊張した時。

「狸吉」

 母さんが僕をいきなり呼んで、びくうと震えた。

「あとは任せたぞ」

 え、何それ死亡フラグっぽいの。

「次で最後だ」

「…………」

 アンナ先輩は無言で距離を詰める。自分が怪我をするかなんて頭になさそうだった。いかに最小限に傷を押さえるかが目的で、警棒がかすっても動きに乱れはない。

 次元の違う攻防が繰り広げられる。どっちの動きも武道経験者でない僕にはもう視えなくなってた。

 母さんの回し蹴りと、アンナ先輩の回し蹴りがかち合う。そして母さんの警棒の突きを最小限でかわし、懐に入り、鳩尾にアンナ先輩の拳が入る!

「ぐっ!」

「が……っ!」

 アンナ先輩の背中に警棒が打たれる。うわっ、痛ったいあれ。だけど拳の威力も凄まじかったらしく、アンナ先輩と母さんは同時に倒れた。

「……参りました、ですわ」

「参った」 

 二人が同時に言って、試合ならぬ死合は終わった。

 審判役の人や他の人が怪我がないか診ていく。僕も慌てて二人のところに走った。

「大丈夫!? アンナ先輩も!!」

「お互い、一週間は痛むだろうな」

「ですわね」

 ……なんか友情っぽいのが芽生えてるけど、異次元の友情なんだろうなあ、これ。



    *


「アンナ先輩、唇切ってましたけど、大丈夫ですか?」

「柔道に不慣れな昔はよくあることでしたわ。お気になさらないで、奥間君。お義母様も」

 私服に着替え、傷を化粧で隠し、貞淑なお嬢様モードに戻ったアンナ先輩は、だけど見てわかるほどに楽しそうだった。

 それなりに衝動の発散に役に立ったみたいで、僕としてはいいんだけど、正直毎回こんなのだと精神が削れる。

「私も久しぶりに勉強ができた。満足だ」

 ……お互いが満足できたならそれはそれでいいけど。

(奥間君)

 こっそりと、囁く声には愛欲の欲情があった。

(今日は一晩中、楽しみたいですわ)

「…………」

 ……あちゃー、性衝動も刺激してしまったようだ。

 後片付けがあるという母さんを警察署に残して、僕らはアンナ先輩のマンションに向かった。

 参ったって言ったら止めてくれ……るわけがないよね、うん。

257 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/08(火) 15:56:09.86 ID:67K1aiTg0

アクション書く練習をしています。いつも弱いなあと思っています。
ですがせっかく書いたので投下。狸吉母さんはアンナ先輩と比べるなら、持久力と技に優れていると勝手に思ってる。力は互角かな? そんなイメージです。
258 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/08(火) 17:12:31.76 ID:LyJcD27S0
アクション描写、出来てると思うけどな
本編だと

シュババババッ、何これ互角!?

みたいな感じだったしいいんじゃね
259 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/08(火) 18:03:35.73 ID:67K1aiTg0


 1月2日



「あ、あ、アンナ先輩、そこ、そこは……!」

 今、僕はアンナ先輩に全裸にされ鎖で天吊りされ、つま先立ちにさせられながら羽箒で乳首を撫でられていた。

「ひ、は、ああ」

「ああ、その声。痛みに悶える声も好きですけれど、疼きに堪える声も素敵ですわ……!」

 アンナ先輩、どんどん効率よく、いかに僕を傷つけずに虐めるかの習得というか発想の方面が素晴らしく豊かで、今は主にこちょこちょ地獄がお好みのようだった。

 僕の愚息の裏筋からカリまでを、羽箒で撫でる。

「は、は、あ、アンナ先輩!」

「うふふふ……」

 正月といったら、もっと正月らしいイベントがあるんじゃないかなあ。母さんが僕のアパートに住むとそれはそれで厄介な問題が起こるので(母さんがいるのに寝込みを襲おうとしていた)このまま精液搾取されて終わるのかなあ。

「あ、そうそう」

 鎖を三つ分、下げてくれた。両足が床につく。だいぶ楽になった。

「綾女さんにお願いしていたのですけど、朱門温泉に行きません?」

「温泉ですか?」

 羽箒で僕を撫でるのは止めて、パンフレットを取り出す。

「月見草さんも経過は良好ですし、慰安旅行というのも悪くはないと思いますの。朱門温泉は傷にもいいそうですから」

「僕は……その……、かまわないんですけど」

 これはこれで頭が痛い問題が待っている。

「宿題が終わってなくて」

 ずっとこうやって鎖で天吊りされたりとかされてたからね。頭空っぽにもなるわ。

「わたくしが手伝いますわ」

「いやあ、その、……アンナ先輩、全裸で勉強させようとか考えてません?」

「だって、少しの間も愛し合いたいんですもの」

 当然のように考えてらっしゃった。テスト勉強の時、足コキされたからね、僕。アンナ先輩のマンションだともっと激しいことをされるに違いない。問題が解けるまで寸止め地獄とか。

 寸止めって、本当に地獄なんだよなあ。不健全イラストのせいで気持ちいいみたいに思ってる女性って多いみたいだけどさ。

「でもなんで急に温泉なんです?」

「奥間君はご存じないでしょうけど」

 《センチメンタル・ボマー》として朱門温泉にいたことになっているので、僕は朱門温泉に行ったことがないのである。なんじゃそりゃ。



260 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/08(火) 18:04:03.46 ID:67K1aiTg0


「わたくし、夏休み、家出をしていて。綾女さんに協力してもらったんですのよ。お代はわたくしが出しますから、一緒に行きません?」

「えっと、月見草や華城先輩も一緒ってことですか?」

「ゆとりさんや鼓修理ちゃんも。早乙女先輩や不破さんにも招待は出しますわ。事件で迷惑をかけた皆さんに出す予定ですのよ」

 うわお、ほぼオールスター。

 不意に、アンナ先輩の表情が暗くなる。

「話を聞く気もないのに、両親が帰ってこい、転校させるとばかり言うものですから。わたくしも気分転換がしたいんですの」

「…………」

 そう言われると断れない。まあ断るつもりもなかったけど。

「いつからですか?」

「5、6、7、8日の三泊四日はどうでしょう?」

 登校日が休日のずれもあって10日だから、妥当なところか。

「部屋、空いてますかね?」

「空いているそうですわ。融通してくださったみたいで、綾女さんには頭が上がりませんわ」

 そう言えば、事件以来、ちゃんと華城先輩と話してない。





『遠距離恋愛も悪くないと思うわよ』

『それも考えたのですけど、わたくしは確かめたいことができまして』




『そのためには、《SOX》と接触しなければなりませんの』




 華城先輩とも《SOX》について話したいし、アンナ先輩も《SOX》について考えが変わった部分があるみたいだし、いろいろある。

 でもとりあえず、今は宿題が先かな。……寸止め地獄をアンナ先輩が思いつきませんように。


261 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/08(火) 18:05:03.40 ID:67K1aiTg0
続き、少しずつ書いていきまーす

華城先輩の気持ちが色々と複雑なようです。アンナ先輩は立場が複雑すぎてもう何が何だか。
262 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/08(火) 18:06:40.18 ID:67K1aiTg0
>>258

アクション描写、できてますか? ありがとうございます!
それでもやはり、私の苦手な部分ですね。精進します。
263 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/08(火) 18:42:58.53 ID:tDU0Kf1QO
乙。ありがたや、ありがたや……
母ちゃん苦戦しまくってるけど、そりゃそうよね。
スペック云々だけでなく、アンナ先輩を『人間』として扱って戦闘したら、誰も勝てないと思う。
某チート吸血鬼漫画にもあったけど、『化け物』に、対人間用の兵士を送り込んだところで、あわれな肉塊を生産されるだけ。
264 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/08(火) 19:19:59.31 ID:nap7XDlG0
乙です

喉元噛み付くとかヤク中のやることやで、義理の母にすることじゃないわ、いくら反則なしでも
まあ華城先輩に(パンツ目当てだけど)やってたし、やっぱベースが獣なんだな、性欲以外でも

温泉回か、楽しみにしてます
265 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/08(火) 21:23:57.45 ID:67K1aiTg0


 鬼頭慶介は正月休みも返上して働いていた。

「うーん、どうしよっかなぁ」

 アンナ・錦ノ宮があれほどの爆弾持ちだったとは、さすがに見抜けなかった。後処理を貸しにこうして年末年始を返上している。

 爆弾を持っているとはいえ、それだけの価値がアンナ・錦ノ宮にはある、と慶介は踏んでいた。

 《鋼鉄の鬼女》にも負けないほどの身体能力に様々な才能、カリスマ性、何より爆弾――敵に対する冷徹さと残虐さが、彼女にはあった。

「アンナ・錦ノ宮の件でしょうか。……スマホ×ガラケー」

 《羅武マシーン》が問うてきた。慶介は後半の掛け算を無視して答える。

「錦ノ宮ご夫妻は今、大変だよ。僕どころじゃなくてね」

 森の妖精スタイルじゃない、高級スーツだった。

「でも何とかするだろうね。今までのアンナお嬢さんの評判がまずそうさせない。人っていうのはそういうもんだ」

「そうですね。ピザ×トマト」

「そんなお嬢さんがまさか狸小僧に惚れるなんて、よくわからないよなあ。ああめんどくさい。人の恋路に口を出すのは野暮だけど、今回は別だ」

「アンナお嬢さんが《SOX》に協力した場合の話でしょうか? 8×8」

「そ。純粋無垢だからこそ落としやすい。まああの狸小僧が意図的にするわけないけど、あの冷徹さと残虐さは放っておいたら身を滅ぼすよ。だけど、コントロールできれば?」

「鬼頭グループの力になる、と。O×T」

「そう、そのコントロールを狸小僧にやらせるのは非常に惜しい。《SOX》を抜きにしても勿体ないんだよ。だからと言って錦ノ宮ご夫妻にできるとは思わない。ああいうのはね、社会が作り上げた化け物っていうんだよ。社会そのものである錦ノ宮ご夫妻には到底理解できないだろうね」

 どこか自嘲気味になってしまった。らしくない。

「いっそのこと《SOX》をアンナお嬢さんが滅ぼしてくれれば楽になるんだけどね。《SOX》はやりすぎた。で、調べてくれた?」

「はい、奇妙なバイク事故が12月の頭にありました。クリスマス×節分」

「ほほう……」

 パラパラと事故の概要をめくる。概要自体は珍しくないものだ。だが、できすぎている、ともいえる。

「その日のアンナお嬢さんの行動を調べてみてくれる? 場合によっては使えるかもね?」

 《羅武マシーン》はただ頷いた。

 現状を見ると、《SOX》とアンナお嬢さんは今現在だけでも敵対しているが――《群れた布地》の件のように目的のためならば手を組むこともあるのがアンナお嬢さんの怖いところだ。

「悪いけど、アンナお嬢さんと狸小僧との仲をどうするかは、僕達が決めようか」


266 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/08(火) 21:26:06.83 ID:67K1aiTg0
次回予告みたいな感じで、こんな感じになるかな、と。

アンナ先輩レベルの人だと、自由に恋愛できないようです。どうなることやら。
267 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/08(火) 21:28:51.39 ID:67K1aiTg0


 <綾女「わ、私が好きなのは……」アンナ「好きなのは?」(殺気)>


 START!!
268 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/08(火) 23:13:02.62 ID:dhd+ybvp0
SOXと華城先輩とアンナ先輩の立場と色々ピンチなたぬきちであった

今はアンナ先輩の残虐性が表に出てるけど、本当は優しいんだって言いたい。衝動をテーマにしてるのはわかるし、持て余してるのもわかるから、批判じゃなくてね
アンナ先輩は今卑猥についてどういう認識なんだろ
269 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/09(水) 07:28:55.71 ID:LOvGTmpSO
お義母様は今日いる者では相手にならんて言ってるが、今日いない者にアンナの相手が出来たんですかね…?
270 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/09(水) 19:47:08.97 ID:Bu8fg99v0


 今、朱門温泉は色んなデモやテロの影響で客足が少なくなっているらしく、八人という団体客は大歓迎だった、なんて華城先輩はいうけど。

 正月休みでもこれほど少ないものなのか……? 夏の喧騒を知っているだけに寂しさを覚える。

「清門荘よ」

 生徒会モードなのでブスッとしているが、表情は明るかった。

 しかし何度見ても圧倒される。僕が入れるような場所じゃねえ。

 ちなみに招待した全員が来ていた。断る理由もないし高級旅館だし、何よりアンナ先輩の誘いを断るのは怖いし、といったところかな。こういう部分はアンナ先輩は寛容なはずなんだけど、どんどんアンナ先輩のイメージが壊れてるというか、僕自身把握できていないので何とも言えない。今の華城先輩が下ネタを言えないようにって、なんか親指を巻き付けた卑猥なグーをしていたのが見えて、華城先輩は変わらないなと安心した。

 宿に足を踏み入れると、ぴったりのタイミングで撫子さんが姿を現した。

「本日は遠いところお疲れ様です。お待ちしておりました。わたくし、この清門荘で女将を務めさせていただいております、華城撫子と申します」

 二度目でも慣れない丁寧な挨拶に、「本日から四日間、お願いいたしますわ」と従業員に失礼のない丁寧な態度で挨拶をするアンナ先輩は、さすがの風格だった。

「これからどうするのじゃ?」

 どうやらコンクールとか、今回はそういう縛りのない早乙女先輩は無邪気に聞く。

「自由行動でよいのでは?」

「お前、協調性ねえぜ……」

 不破さんのマイペースな言葉に呆れるゆとり。ちなみに不破さんはぺスをペットホテルに預けてきたそうで、そのペットホテル代もアンナ先輩持ちだった。

(今回は何か混浴とか修行とかないですよね?)

(アンナがいるのよ、無理に決まってるでしょう)

 ひそひそと華城先輩と相談する。不破さんも一般人枠だしな。一応。

「今日は移動で疲れましたでしょう。お湯をいただいて、それからご飯を食べて、談笑というのはいかがでしょう?」

「鼓修理はそれでいいっス」

 鼓修理にしては言葉少なに(アンナ先輩がいるからね)賛同する。誰も反対しなかった。

「では、菊の間、華輪の間、百合の間、薔薇の間にご案内いたします。どうぞこちらへ」

 撫子さんの女将モードに、しかし拭えない違和感を感じる。元ヤンの方の顔に慣れてるからかな。

 菊の間は僕と月見草、華輪の間は華城先輩とアンナ先輩、百合の間は早乙女先輩に不破さんと、薔薇の間はゆとりと鼓修理。うん、妥当だろう。

 それぞれが移動して、お風呂に入ることにする。前は露天風呂だったけど、今回もそれだといいな。なんかいろいろありすぎて、疲れてるし。




271 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/09(水) 19:47:41.39 ID:Bu8fg99v0


「うーん、さすがに露天風呂は無理か」

 普通の大浴場だったが、ちゃんと効能のある温泉らしく、ちょっと熱めの温度が身に染みわたる。

「ふいー、月見草、お前大丈夫か?」

「何がでしょう?」

「傷とかさ。ちょっと熱いぞ、ここ」

 月見草が手でお湯を触って確かめる。

「問題ありません、入ります」

「待て、お前もしかして、温泉のマナー知らないのか? 入る前にかけ湯をするとか、タオルをお湯につけないとか、泳いじゃいけないとか」

 一通り教え、シャンプーにする。月見草のやつ、長髪だからかリンスなんて持ってきてる。

「それ、お前が選んだの?」

「シャンプーとコンディショナーは、アンナ様にいただいたものを使っております。私は石鹸で十分だと言ったのですが、『勿体ない』と仰られ」

 リンスじゃなかったらしい。女性の感性だな。そういえば銘柄がアンナ先輩のマンションにあるやつと同じだ。男のくせに贅沢なと思う反面、アンナ先輩の月見草に対する態度が見えて、なんだかほっとする。

「月見草、大丈夫か?」

「傷に問題はありません」

「じゃなくて……その、アンナ先輩のこと」

 月見草は目の前でアンナ先輩を守れなかった。

 その事を月見草はどう思っているのだろう。

「祠影様は私に死ぬように命じられたのですが、それをどうしても受け入れられないでいると、アンナ様が今日、ここに連れてきてくださいました」

「そんな命令!? 聞かなくていいぞ、月見草!!」

「……祠影様の命令が、至上命令ですので」

 本当は違うだろうに。でも今オーバーヒートを起こさせて、傷に障ったら良くないしな。

「しかしまあ、なんだ」

 アンナ先輩の家は、予想以上にねじ曲がっているのかもしれない。金玉がねじ曲がったら直してもらわないと困るように、今、修復の時期なのかもしれない。

 そうは言っても、不安は拭えなかった。きっと僕一人じゃ、ダメなんだ。

272 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/09(水) 19:48:44.31 ID:Bu8fg99v0


「視線が胸部に向いているのは何故ですか?」

「よかったっスね、ゆとり。不破氷菓はゆとりよりっス」

「てめえ余計なお世話だぜ!!」

「ほほう、眼福眼福」

「化け物は……化け物級っスね」

「化け物女だからもう何を見ても怖れがましいぜ」

「? なにか?」

「いえ! 綺麗な体をしてるなって!」

「ありがとうございますですわ」

 化け物女はさすがのプロポーションだった。肌にも傷やシミ一つない。なんでだ。どこかに弱点があれ。

 そんなゆとりの呪いとは別に、全員でシャンプーとコンディショナーをした後、ゆっくりと湯船につかる。

「はあ、気持ちいいですわね」

「明るいうちからのお風呂は格別よね」

 綾女は言葉が少ない。体調が悪いのか、下ネタが言えなくて不満があるのか、よくわからない。

「ところでアンナ会長、今日は奥間さんと繁殖活動はしないのですか?」

「ぶほぉ!?」

「もう、不破さんったら。愛の儀式はそうそう簡単なものじゃありませんのよ?」

 今は頼むから、ビーストモードになりそうな言葉は言わないでくれ……! 幸い、化け物女は不破の戯言はスルーしてくれたようだ。

「ふむ、残念じゃの」

 バシャン、と画家の頭を温泉にロックオンしておく。

「あ〜きもちがいいぜ〜!」

「今日は用事がありまして。奥間君と愛し合うことができそうにないんですの」

「用事? こんなところで?」

 綾女は探りを入れるが、

「心配なさらずとも、大丈夫ですわ」

 化け物女は聖女の笑みを浮かべて、何も言わなかった。


 *


 川魚と山菜を主催にした豪華な料理を堪能した後、アンナ先輩と月見草はどこかに行ってしまった。不破さんはフィールドワークとやらに出かけたようだ。

「…………なーんか、嫌な予感がするっス」

「そうね。私もこう、第六感が膣痙攣並に響いているわ」

 やっと下ネタイマーの時間がやってきたのか、意気揚々と話し出す。

「というわけで狸吉と私がアンナ達を尾行してくるわ。鼓修理も来る? カモン、カモン!」

「鼓修理もいくっス!」

「人数多すぎても尾行はしにくいだろうから、あたしはパスしとくぜ」

「何かあるなら、撫子さんに聞いた方が早くないですか?」

「撫子が話さないのなら、知らないか、知っていてすっとぼけているかよ。必要なら教えてくれるわ。さて、アンナ達がイッちゃうわよ! 急いで急いで」

 僕が行かないとダメなのかなと思ったけど、僕の気配察知能力がないとアンナ先輩見失っちゃうしな。月見草が怪我人だからあんまり無理はしないだろうけど。

 確かに何か、嫌な予感はしていたのだけど、まさかこんなことだなんて思わなかった。


273 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/09(水) 20:16:43.09 ID:Bu8fg99v0


 アンナ先輩は森の中を散策しているように見えた。一月ということもあって、本来は適した気温じゃない。もう月も出ているのもあって、湯冷めしていくのがわかる。

「お部屋で待っていてもよかったんですのよ?」

「アンナ様のお傍を離れぬよう、ご命令を承っておりますので」

「……そうでしたわね」

 声がかすかに聞こえてくるぐらいの距離を保っていた。森の中は静かだ。



 すると、森の妖精が現れた。



(うげろげろげろげろ)

(ちょ、しっかりしなさい、鼓修理! 大変、息してないわ! 狸吉、人工呼吸!)

(やらせるかっス!!)

(痛い!?)

 鼓修理の頭突き浣腸を食らってもだえる僕をよそに、場の空気は真剣なものになる。



「こうやって、お父様と密談していたのですか?」

「いやあ、もう少し温かいところがいいけどね。この格好じゃ入れるところが少なくてね」


 ならやめるっス!という娘の憤りを無視して、会談は進む。


「この度は、わたくしの処遇に関して、父と母と協力していただき、誠に感謝いたしますわ」

「将来、娘と仲良くしてね」

「はい、もちろんですわ」


 いつの間に娘の将来の切り売りを!と鼓修理がわめきそうになるが、将来を切り売りしてまで皆を助けようとしたアンナ先輩を見ているだけに、僕からは何も言えない。

「それで、お願いというのは?」

「簡単だよ」



「《SOX》を潰してほしい。徹底的にだ」



 僕たちの方がシン、としたところで、アンナ先輩はクスリと笑う。

274 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/09(水) 20:17:13.92 ID:Bu8fg99v0


「わたくしにそんな力は」

「あのテロリストを鎮圧したんだ。僕はその中身を知っているんだよ? 今更取り繕うこともないさ」

「わたくしは頼まれなくても無傷捕縛を目指して、日々精進しているつもりですわ」

「無傷捕縛じゃ、足りないんだ。支持者が、影響力が大きくなりすぎている。それは僕らにとっても、祠影さんとも利害が一致しない。不安なら聞いてみるといい」

「……徹底的に、というのは? それになぜ、ご自身の力ではなく、こんな小娘に頼るのです?」

「君が思う“徹底的”で構わない。後者の質問は、組織が組織を潰すと厄介なことになるんだ。利害が絡むからね。でもお嬢さん個人に、《SOX》に絡む利害はないだろう?」

「利害は、ありませんわね。無傷捕縛の願いは、あくまでも信条の問題ですわ」

「あのテロリストにしたことを考えると、君が心から無傷捕縛を望んでいるとは、思えないけどね。君は敵を叩き潰す快感を知っている。そのやり方も知っている。ならなぜやらないんだい?」

「……もし、断れば?」

「君の恋人の結婚の後押しができなくなるね」

「……少し、考えさせてくださいまし」

「うん。あ、これ、PMの番号。君みたいなお嬢さんならいつでも大歓迎だよ」

「…………」


 身体が冷め切っていたのは、湯冷めだけのせいではなかった。

 アンナ先輩が、組織の思惑に巻き込まれつつある。

(華城先輩)

(戻るわよ。それとなく話を聞いてみないと)

 華城先輩も、真剣だった。

 その真剣さの理由が、僕と微妙にずれていることには、気付かなかった。


275 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/09(水) 20:18:21.00 ID:Bu8fg99v0

少し短いですけど、今日の分の更新おしまいです。
はてさて、どうなることやら、です
276 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/09(水) 20:31:42.84 ID:GYz5FcLD0
なんかアンナ先輩が殺し屋の請負人みたいになってる
277 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/11(金) 19:52:33.00 ID:q130nAiu0


「アンナ、お帰り」

「ただいまですわ、皆さんはトランプを?」

「アンナ先輩もどうです?」

「わたくしは湯冷めしてしまったので、もう一度温泉に浸かろうかと思いますの」

「あ、じゃあ私も入りに行こうかな」

「綾女さんも? ええ、次は別のお風呂にしたいですわね」

 自然と役割分担が決まり、トランプをしていたふりを止め、華城先輩はアンナ先輩とともに先ほどとは別の大浴場に行った。

「月見草、悪いけどお前はアンナ先輩たちが戻るまでお土産を見てきてくれるか?」

「かしこまりました」

 文字通り、見てくるだけなんだろうな、コイツ。これでも自分の意思が見え始めた方なんだけどな。

「早乙女先輩、ちょっと……、あれ、不破さんは?」

「大浴場行ったぞー、ウォー、ホホ、インスピレーションが湧きまくる!!」

「すみません、絵は描きながらでいいんで話聞いてくれますか?」



 ――――……、



「わしは《SOX》を抜けるぞ、奥間」

「結論早っ!?」

「あ、あの化け物女に……お前の父親はあの化け物女の怖さを知らなさすぎなんだぜ?」

「鼓修理が一番それを言いたいっス! こういう時だけ着信拒否しやがって、あのクソ親父……!」

「でもさ、鼓修理がいるのに、アンナ先輩に『徹底的に』なんて言うかな? アンナ先輩がやってることを知ってるんだよ、森の妖精は」

「ぐふっはあー!!!」

「しっかりしろだぜ、お前しかあの腹黒親父の思考をたどれる奴はいねえんだぜ!」

「ぐふ、ふう……」

 ようやく鼓修理が落ち着き、まともな会話になる……といいな。

「……あの化け物を鬼頭グループに取り入れたいんじゃないっスかね」

「取り入れる?」

 まああれだけの才能に血統を持った人なら、誰でも欲しがるだろうな。アンナ先輩にできないこと、いまだに知らないし。

「《SOX》が綾女様に狸吉が関わっていたと知ったら、ただでさえ不安定なあの化け物は、きっと何を信じればいいか更にわからなくなるっスからね。そこに付け込む気っスよ、きっと」

「お前のおやじ、相変わらずえげつねーぜ」

「今のアンナの気持ちはどうなのかの?」

「わかんないんですよね……、話してくれなくて」

 というか、酷く話しにくいというか、その話題になろうとすると酷く哀し気で儚くなってしまう。何も言えなくなってしまう。

「狸吉が腰砕けなだけっス、いつもこってり搾られてるだけっスか?」

「はいはい、森の妖精森の妖精」

「ぐはあ!?」

「まあ、綾女の方がいいのかもしれねえけどだぜ? ……はあ」

「ああもうどいつもこいつもめんどくさい奴らっス!」

「なんだよ」

 妙にゆとりがアンニュイになって、ゆとりがいらいらし始めた。そして現実逃避か何か、早乙女先輩は絵を描き始める。

 ま、いつもの光景だよな、これ。

278 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/11(金) 19:53:14.82 ID:q130nAiu0


「こちらはぬるいんですのね。長湯にいいですわね」

「そうね、血行にいいらしいわ」

 シャンプーとトリートメントは先ほどしたので、かけ湯をして直接湯船につかる。

「わ!? マッ、えっと、不破氷菓、どうしたの?」

「温泉に来て温泉に入ってはいけませんか?」

 ラブホに来てセックスをしてはいけませんかレベルの当たり前だと言いたげな無表情に、なんというかマイペースを通り越して心臓に陰毛が生えているレベルだと思う。

 と思っていたら、不破氷菓がくしゅん、と何度か連続でくしゃみをした。頭の中がびくびくんしちゃったのかしら?

「少し外に出すぎていたみたいです」

「まあ、風邪を引いたら大変ですわ」

「撫子……、女将に葛根湯用意させるわ」

 PMでメールを送る。すぐ用意すると返ってきた。

「よろしいのですか?」

「ええ、あなたにはお世話になったし」

「ええ、綾女さんに限らず、わたくしにできることがあれば、仰ってくださいまし」

「では、訊いてもいいですか?」

「? どうぞ」

「先ほど、珍妙な格好をした男性と何やら話していましたが、何を話していたのですか?」

279 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/11(金) 19:53:42.56 ID:q130nAiu0


 辛うじて、息が止まる程度で済んだ。不破氷菓には衣装の奇妙な男としてしか認識できなかったらしい。

「うーん、そうですわね」

 ちょっとだけ困惑を混じらせた微笑を浮かべて、アンナは生徒会長モードの聖女の笑みを浮かべると、

「……少し、説明が難しいのですけど。それでも聞きたいのですか?」

「あの珍妙な男性がどんな人物かは興味があります」

 大浴場は自分たち三人しかいない。しばらく静寂があった。

「鼓修理ちゃんのお父さんですわ。わたくしの両親と同じぐらいの地位を持つ、立派な方だと伺っています」

「……あの森の妖精が」

「恰好は関係ないと思いますわ。実際に、わたくし共に協力していただきましたし……」

「そんな人が、両親を通さずアンナ会長と?」

 自分の代わりにずばずば聞いてくる。不破氷菓の棺にはたくさんのBL本を入れてあげよう。

「色々と、都合がありましたの。向こうにも、こちらにも」

「…………」

 しばらくアンナは黙っていた。表情は愁いを帯びていて、早乙女先輩ではないけど非常に絵になる光景だった。

「綾女さんには言ってませんでしたわね。わたくし、今回、たくさんの罪を犯しましたのよ。……いいえ、それ以前から」

 善導課である奥間君のお義母様に教えていただきましたの、と小さく呟いた。

「この衝動が、愛が罪というのであれば、わたくしが今まで信じてきたものは何だったのでしょう?」

 見た目は落ち着いている。だけど不安定で、危うい。 

「《SOX》に会えば、答えがわかるかもしれませんわ」

「どうして、そこで《SOX》の名前が?」

 やっと綾女が口を挟めた。前も《SOX》に会わなければならないと言っていた。動機次第では、《SOX》は崩壊する。

「……《こうのとりインフルエンザ》の心配は、必要ないと、わたくしのお母様も奥間君のお義母様も言いますの。だから、おそらく一番卑猥の知識を持っている《SOX》に会って、確かめてみたいんですの。

 ――わたくしのやってきたことは、罪なのかどうかを」



「……そこで罪だと言われて、アンナは納得するの?」



「……そう、そうですわね。でもいずれ……近いうちに、《SOX》とは会わないといけないのですわ」

 微苦笑を浮かべるアンナに、自分も不破氷菓も何も言えない。

 その微苦笑は、どこか助けを求めるような、子供が泣きたいのを押し殺しているような、そんな危うさが、どうしてもあって。

 近いうちに《SOX》として会おうと思うには、充分だった。

280 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/11(金) 19:55:17.06 ID:q130nAiu0

華城先輩パートだとどうしても下ネタをうまく挟めない……あれは赤城先生の才能だわ……
281 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/11(金) 21:50:45.25 ID:q130nAiu0

 アンナ先輩や不破さん、月見草が寝静まったのを見て、僕、華城先輩、早乙女先輩に鼓修理にゆとりと撫子さんとで男女混交風呂で会議をすることになった。

「「「「…………」」」」

 女性陣は撫子さん以外が端っこによって、僕も逆の端っこに寄っている。早乙女先輩はさほど気にしてなさそうだったけど。

「《SOX》として、《雪原の青》としてアンナに会うんだな?」

「撫子、なんで混浴が会議室みたいになってるの!?」

 混浴をPM無効化して、撫子さんに突っかかる。最初ぎゃあぎゃあ言ってたけど(これが大変だった)まだ女性陣は納得してないらしい。納得してないと言えば僕もなんだけど、僕はお風呂でもどこでもアンナ先輩がいるから、ハハ……。ちなみに僕は後ろを向こうとしたけど、撫子さんによって無理矢理女性陣の方に身体を向けさせられている。

「そうね、まあこっちの意思に関係なくアンナなら私達を見つけ出すでしょうけど」

「正直パパの狙いもわかんないっス。まだ情報を集めてからの方がよくないっスか?」

「あ、あたしは鼓修理に賛成だぜ……ってこっち向くなぁああ!!」

 カポン、と風呂桶を投げつけられる。理不尽。

「僕、《センチメンタル・ボマー》として出た方が……」

「アンナを刺激するような真似はさせたくないのよ。ただでさえ、アンナの本心が、アンナ自身にすらわからないのに」

「…………」

 なんか僕、《SOX》としては全く役に立っていない気がする。アンナ先輩相手だから仕方ないのかもしれないけど、なんというか、意図的に外されているというか。アンナ先輩が寸止めするみたいに、気持ちいいところをわざとさあ、あれきっついんだよな。

「もし、パパの依頼を受けたらどうするんっスか?」

「……だからこそ、《雪原の青》一人でアンナと会うのよ」

「それは嫌っス!」

 バシャアと立ち上がり、「こっち見んなっス!!」風呂桶第二弾がやってくる。お湯が入っていやがった、重いし痛え!!

「それで前大怪我したじゃないっスか!! もう鼓修理、そんなのは嫌っスよ!!」

「あたしも同じ意見だぜ、《雪原の青》。どうせ化け物が本気になったら全員殺られるに決まってんだ、なら全員で向かうほうが潔いってもんだぜ」

「じゃあ僕も!」

「狸吉はダメ」「お前は来るなっス」「画家と一緒に留守番だぜ」

 やっぱり仲間外れされてない?

「はあ、ダメだね、こりゃ。本っ当、ダメダメだ」

 撫子さんの呆れ声に、僕は頷くしかなかった。

282 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/11(金) 21:51:18.64 ID:q130nAiu0


 ――眠れない。

 ふ、と隣を見てみると、親友である綾女がいなかった。今は四時とある。どこにいったのだろう。

 PMのメールに、『鬼頭慶介』とあった。そこには簡単に、地図と日時の指定だけ。

「《SOX》……」

 

『……そこで罪だと言われて、アンナは納得するの?』



「できないに決まっていますわ」

 この愛を、衝動を、罪と断じられたとして、それからどうする?

 あの愛の試練を乗り越えたとき、痛みを乗り越えたとき、そのあとの幸福が訪れたとき、自分は思った。

 この愛を否定するなら、世界の方が間違っている、と。 

 その時の激情は、いまだに覚えている。思い出すだけで、愛の蜜が溢れてきた。

「奥間君……わたくしが唯一信じられるのは、あなたへの愛だけですわ」

 だけど同時に、敵を、人間を壊す快感も知ってしまった。いくらでもやり方が思い浮かぶ。その衝動も、自分の中に確実にある。

 受け止めてくれる、愛しい人はそう言った。だからせめて、律したい。自分を、衝動を、そして立派な人間になって、みんなからの祝福を得たい。

 愛だけは絶対で、アンナの中には今はもう、それしかない。



 だけど、壊してもいい玩具が与えられたら、無垢な子供はどうする?



 くちゅ……くちゅ……



 それ以上考えたくなくて、今、愛しい人のもとに向かったらすべてを壊してしまいそうで、自分で自分を慰めるけど、圧倒的になりない。

 胸部の先端をつまみ、愛の蜜が溢れる場所を弄ったところで、そんなものでは全然足りない。

 ――明日、午後2時。

 自分の中で答えを出さなければならない時が、嫌でも近づいてくる。

283 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/11(金) 21:53:08.08 ID:q130nAiu0
アンナ先輩も悩むあたりは成長したと言えなくもない(多分)
284 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/11(金) 22:47:46.56 ID:chctOZB80
乙、アンナ先輩は能力と精神の差が激し過ぎるからな

人質に行く前は安定して見えたけど、こんなに簡単に揺らぐんだな、やっぱ
285 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/11(金) 23:54:54.14 ID:q130nAiu0


 昨日、化け物が慶介と会っていた場所とは違う、より鬱蒼とした森の中にいた。 

 多少の睡眠不足気味だが、今から起こりうることを考えると気を引き締めないわけにはいかない。

「パパ経由でメール送ったっス。確実に来るっスよ」

 パンツを被って緊張過多なのは鼓修理だった。震えは寒気のせいじゃないだろう。

「昨日はお前にしては、殊勝なこと言ってたぜ」

「……あの化け物は、心まで化け物になったんス。綾女様と意見が違ってても、鼓修理はこの意見に変わりないっス」

 あのテロリストのリーダーにしたことを考えたら当然だろうと思う。

「いいんスか、狸吉をあの化け物のところに置いといて」

「手段が思い浮かばねえし、《雪原の青》も『恋愛は自由』で言うこと聞かねえんだぜ」

 肝心の《雪原の青》は自分と鼓修理の会話も聞こえているだろうに、黙っている。

「あんなの、恋愛じゃねえのに」

「しっ。来たわよ」

 ――銀の影が、森の中に姿を現した。



「あら、今日は三人ですの? 《センチメンタル・ボマー》はいらっしゃらないんですのね」



 声には聖女の余裕だけがあった。性に、破壊に飢えた獣ではない、何も知らなければ人に安心しか与えないであろう声音。

「思ったより早く再会できて、わたくし嬉しいですわ」

「こっちは再会したくなかったわ」

 牽制か、吐き捨てるように《雪原の青》が答える。


286 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/11(金) 23:55:25.33 ID:q130nAiu0


「…………」

「どうしたの?」

「わたくし、困っていますの」

 あくまで鈴の鳴るような、この一月という寒い季節でも目を楽しませる粉雪のように軽やかな声で以て。




「今ここで皆さんを潰すべきか、それとも少し先延ばしにするべきか」




 ――暴雪の殺気に、身体が凍える。《雪原の青》はそれを無視して続ける。

「先延ばしにする方法ならわかっているわ」

「あら? なんですの?」

「アンナ会長、あなた、性知識が欲しいのでしょう?」

「…………」

 《雪原の青》は厳重に密閉された袋を投げた。

「《安心確実妊娠セット》よ。私達が配っているもの……知っているでしょう?」

「何故、私が性知識を欲しているだなんて思うんですの? 《こうのとりインフルエンザ》に罹るかもしれないのに」

「善導課の《鋼鉄の鬼女》にあなたの母親、ソフィア・錦ノ宮はそう思ってないみたいよ? 何が正しいか、知りたいのでしょう?」

「……少し、確認の時間を」

 そういうと、袋を拾い、中身を確認していく。本当に確認しているのかというスピードで冊子をめくっていたが、「そうですの」と納得したようだった。

「……これを見る限り、母は正しいことをしているのですね」 

「そうね。何せソフィア・錦ノ宮に不健全雑誌を提供したのは私達だもの」

 初めてここで、《雪原の青》が視線を逸らした。提供の話は一番《雪原の青》が反対していた経緯があるからだろうか。とにかく化け物女はその意味には気付かずに、言葉の応酬は続く。





「じゃあ、わたくしの愛は……卑猥という、悪でしたの?」





 《雪原の青》は初めてここで口を閉ざした。

287 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/12(土) 00:01:26.29 ID:BHl92OUE0
義母や母親の言葉を信じないで《SOX》の言葉を信じるのか?という疑問が起こりそうなので説明すると、

どの意見も信じたくなくて、信じられない状態にあるのです。ちなみにソフィアは感情的に否定するので、アンナは信用できなくなっているようです。だめだこりゃ。
288 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2020/09/12(土) 01:33:47.59 ID:d9m/jyGd0
アンナ先輩の『徹底的に』は組織の人間皆殺しじゃすまなさそう
289 : ◆86inwKqtElvs [sage]:2020/09/12(土) 13:51:32.37 ID:BHl92OUE0
ちょっと、1週間ほど仕事が忙しいので、しばらく書き込めないかもです。
なにかあってもなくても遠慮なく書き込んでください!
290 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/12(土) 20:44:57.88 ID:BHl92OUE0


 《雪原の青》は初めてここで口を閉ざした。



「……何故、私に訊くのかしら?」

「卑猥の知識の流布が《SOX》の目的なんでしょう?」

「…………」

「もし、あの時点でわたくしが妊娠していたら……、奥間君は……、」

「…………」

「祝福を受けなかった……、誰からも、きっと」

 《雪原の青》は無言のまま、化け物女の話を聞いている。




「何故、絶対に正しいはずの愛が、祝福してもらえないのでしょう?」




「あんたが、間違ってたからだぜ」

 狸吉の気持ちをまるで無視している化け物女の言葉に、我慢ならなくなった。

「ちょっと……!」

「間違っていた……? 愛が? あの、衝動が?」

「相手の気持ちを無視して話を聞かないからそうなるんだぜ。あんた、今まで恋人とやらの言葉を聞いたことがあるのか?」

「奥間君はわたくしの愛を受け入れてくれましたわ!!」

 暴雪とは違う、じっとりとした熱気を帯びた、欲情にも似た殺気に動けなくなる。

「奥間君はわたくしを受け止めてくれましたの!! あの幸福も安心感も、すべては奥間君がいるからこそですわ!! もし、もしも」

 化け物女は、とうとう言ってしまう。




「この愛が間違いだというのなら、世界の方が間違っているのですわ!!」




 はあはあと、一言にすべてを込めた化け物女は、それだけで疲れ切っていた。

「だったら、どうするの?」

 恐怖で動けなくなった自分に代わり、《雪原の青》は無機質に、呟くように。もう声が届かないことをわかりきったような、諦めを含んだ声音で。

「うふ、ふふふひっ」

 獣の狂気を混じらせた、不吉な笑みを漏らすと、「お願いがありますの」と化け物女は、言った。




「あなた方《SOX》も、世界と戦う者。なら――

 ――わたくしを、《SOX》に入れてくださいまし」




 化け物女の目からは、何も読み取ることができなかった。

291 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/12(土) 20:45:34.99 ID:BHl92OUE0
ではしばらくよろしくお願いします。ここまでは書きたかった……!
292 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/12(土) 21:24:25.20 ID:MDHpuM+j0

話が急転したな
293 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/13(日) 15:02:29.82 ID:+hOzOpuLO
おつ、待ってます。
そして間違ってるのは自分ではなく世界の方か……
この世界の日本は世界から見て完全に間違ってるが、アンナ先輩の行動は日本から見ても世界から見ても間違ってるんだよね……

だれか両さんを呼んできてくれ。親も教師も見放したアンナ先輩を殴れるのはあの男だけだ
294 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/13(日) 23:21:35.36 ID:VVTicaHJ0
アンナ先輩に必要なのって殴られることじゃなくないかい?
とにかくひとりじゃないってことに気付くことだと思う。アンナ先輩、このSSだとまだ孤独だから
295 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/14(月) 21:07:16.07 ID:OWnZRGGH0
アニーとか、6、7巻以降に出てきたキャラを出すか迷ってるなう、アニー出せばPM無効化が色々あるのですが……

今の時点で3月以降の時間軸も書く事になりそうな予感がします。アニーや藻女さんとか出せないよキャラ多すぎやでって事で、アンナ先輩に搾る、間違えた絞る気でいます。アニーや藻女ファンいたらごめんね
296 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/14(月) 21:31:01.33 ID:1nUQaWC10
>>1に文句言ったら罰当たりだ、ifものとして楽しみにしてたよ。アニメ当時いたよ、2章は読めてなかったけど、再開してくれて嬉しい、やっとここまで読めた
ただ、今は原作だとどのへんだっけ? そういうのがあったら教えて
297 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/14(月) 21:50:18.87 ID:OWnZRGGH0
うわ、のんびりしてたら返信が来てびっくりしてました。当時の読者もやっぱりいらっしゃるんですね、あの時はすみません。
7巻が12中旬からクリスマスイブで、8巻が1月末〜2/14のバレンタインですね。(今確認した)

ここのSSの時系列的には、アンナ先輩の破瓜が12月上旬(6巻エンディング前、《SOX》分裂騒ぎ直前あたり)、
病院ジャックが12月中旬後半、温泉旅行(今書いてるとこ)が1月の5、6、7、8日となってます。今は6日です。

あんまり明確には考えてはいないのですが、多分だけど温泉旅行が終わったら一気に日にちが飛ぶ気がしてます。3月とか。はい。そんな感じですかね。
298 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/15(火) 00:23:22.23 ID:mkdjd76E0


(あぶうぇえええなんでなんでなんっで!?)

 こっそり尾行していた僕もそうだけど、アンナ先輩の発言には全員絶句しかなかった。

 ただ《雪原の青》が、無感情な声のままだ。

「どういう了見?」

「言ったとおりですわ。わたくしは、自分と世界、どちらを変えるかを考えて、世界を変える方を選びましたの」

「……アンナ会長と私達の考えがあっているとはとても思えないわ」

「そうですわね。わたくしも、あなた方の立場なら困惑することでしょう。ずっと敵同士だったのですから。ただ、目標は違っても、目的は同じだと思いませんこと?」

「なら手は組めると言いたいわけ? どうだか。あなたにはさんざん辛酸を舐めさせられたわ。……とは言ってもね」

 《雪原の青》はそこで睨みつけるようにアンナ先輩を見た。

「ここで断れば、あなた、今ここで私たちを捕縛するつもりでしょう?」

「そう考えるのが、普通ですわね。ですが今日は捕縛しませんわ。今日はわたくしのために時間を取っていただいたのですし、そのような品性を欠く行為はしたくないものですから」

「けど、引き下がる気もない、そうよね?」

「そうですわね。《SOX》に入れなければ……、わたくしが一から組織を作り上げるしかありませんわね」

 父親の入れ知恵があったとはいえ、風紀委員の実績もあるアンナ先輩には十分可能だろう。

 いや、絶対にする。能力云々じゃなく、アンナ先輩の執念がそうさせる。

「同じような理念を持った組織がいくつもあるという状況は、ただ戦力を分散させるだけ……そうですわね。一年。一年で、《SOX》と同じ規模と練度の組織を作り上げてみせますわ」

 アンナ先輩は獣の笑みを崩さない。

「想像してみてくださいまし。同じ規模と練度の組織が、ただ潰しあう消耗戦を」

「な、何の得があるんだぜ、そんなの……」

 ゆとりの思わず出たという感じの言葉に、しまったと慌てて口を閉じるも、勿論アンナ先輩には聞こえている。

「重要なのは、その後ですわ。変革には破壊から、基本ですわよ?」

「……潰し合いの後の混乱を狙うっていうの?」

「ええ。ぶつけ合い、潰し合い、それぞれの組織が疲弊したところを合併させる。そうすれば、今の《SOX》よりも、さらに巨大な組織が出来上がりますわ」

 今までのアンナ先輩にはない思想だった。元々アンナ先輩の中で、組織そのものを動かす意思が薄かったからだろう。生徒会長なんて、皆の支持があっても基本が学校の雑用だしな。

「《雪原の青》」 

「何?」

「ここで確実に敵になる分子を放っておくんですの? それよりも、わたくしを仲間にしてみません?」

299 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/15(火) 00:23:50.15 ID:mkdjd76E0


「騙されちゃダメッス! あいつ、隙あらば《SOX》を乗っ取るつもりでいるっスよ!!」

 鼓修理が叫ぶ。そっか、アンナ先輩の狙いはそこにあるのか。勢いに負けてて気づかなかった。さすが《SOX》随一の腹黒女子だ。

「いやですわ、どうもわたくしの思考はわかりやすいようで。困りましたわね」

 獣の笑みは消えない。だけど、これが最後通牒なのは、暴雪の気配からわかる。

「《SOX》の影響力を考えると、潰し合いよりはすでに出来ている組織を広げていく方が手がかからない、そう判断しただけですわ……《センチメンタル・ボマー》そこにいますわよね?」

 三人が驚く気配があった。く、風下にいたはずがいつの間にか風の向きが変わってアンナ先輩の嗅覚に僕の臭いが届いていたらしい。

 パンツを被って、草藪の中から立ち上がる。

「わたくしを仲間にしてくれるのでしたら、あなたも含めて全員、命を狙うことだけは致しませんわ。きっと、奥間君も許してくださるでしょうし」

 こくんこくんこくんと頷く。アンナ先輩を仲間に入れると命の危険性がなくなるのは正直助かる。アンナ先輩のことだ。実は裏で善導課に僕達を売るとか、そういうやり方ではなく、真っ向から乗っ取るだろう。

「まあ、時間は必要ですわね。明後日わたくしどもは第一清麗指定都市に帰る予定なので、そうですわね。明後日の午前中には返答をいただきたいですわ」

「無茶にもほどがあるぜ! あんたが今まであたしらにしたことを考えたら、そんな二択、どっちも受け入れられるわけがねえぜ!」

 ゆとりが吠えるが、アンナ先輩には負け犬の遠吠えよりも興味のないことになり下がったらしく、すでに獣の笑みから聖女の笑みに戻っていた。

「それでは、ごきげんよう」

 全員、アンナ先輩が見えなくなるまで、一言も喋らなかった。

「狸吉、なんで来たのよ」

 パンツを脱いで、《雪原の青》から華城先輩に戻ったら、またブスッとしている。僕やゆとりも鼓修理も、(上の)パンツを脱ぐと、

「いや、その、いざとなったらトランクス撒く準備をしていたんですけど」

 まあ、最近のアンナ先輩はそんなレベルじゃもう止められないんだけどな。

「だって、華城先輩やゆとりや鼓修理のことも気になったし、アンナ先輩のことも気になったし」

「こいつ、全員……まさか、5P目的!!?」

「違えよ! アンナ先輩が暴れたら、僕が囮になろうって考えてみたんだけど……」

 どうやら、そういう次元の話じゃなかったようだ。三次元が二次元になればいいのに。

300 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/15(火) 00:25:04.84 ID:mkdjd76E0

あああ、仕事があるのになんでSS書いてんだ……明日も早いのに……
301 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/15(火) 03:07:29.51 ID:mkdjd76E0


 この部屋は昔は密会に使われていて、まあ今僕のやろうとしていることと変わらないことを昔の偉い人もしていたという。

 とにかく、アンナ先輩の精神状態が不安なのは本当だった。ただ、卑猥が悪だと知ったアンナ先輩を、それを受け入れられていないアンナ先輩を、いつもしているからの延長線上でやってしまっていいのだろうか。

 襖を開けると、布団が二組、隣り合って敷いてあって、

「奥間君……んっ……あ」

 すでに全裸のアンナ先輩からぴちゃぴちゃと湿った水音が聞こえてましたとさ。どっとはらい。これで終わりにできねえかな。無理だな。

「ねえ、奥間君……どうしてこれが、卑猥なのでしょう……? こんなに、気持ちのいいことが……愛じゃないなんて……」

「……母さんが言ってました。衝動をむやみやたらに振り回してケダモノのように貪るのが卑猥なのであって、お互いを尊重し合えれば……大丈夫ですよ、きっと」

「……奥間君は、優しいですわね。わたくしとは、大違いですわ……ん!」

 ビクンビクン!と腰を跳ねさせる。アンナ先輩は、どこか泣きそうだった。

「もしこの優しさに包まれていたなら、わたくしは何を敵に回しても構いはしないのに」

「アンナ先輩……」

 アンナ先輩が視線で唇を求めた。もうそれが視線だけでわかるぐらいには、僕とアンナ先輩は身体を重ねすぎたのかもしれない。

「はむ、ん、じゅる、あ、はふ、ぴちゃ」

 こんな時でもアンナ先輩のキステクは見事だった。泣きそうな女の子相手に興奮する趣味は僕にはないはずだったのに、愚息が一瞬でおっきした。

 さすがに僕も慣れていて、アンナ先輩の舌使いに負けない動きができるようになってはきたけど、それもアンナ先輩のリードによるものなんだと思う。

 ゴクリ、と僕の唾液を、見せつけるように飲み込む。

「服を脱いでくださいまし」

 最近は鎖で天吊りに羽箒ばかりで発射していなかったので、溜まりに溜まりきっている。ズボンを脱ぐと、愚息がビン!と天を向いた。

「アンナ、先輩」

「いい香りですわ……ああ、本当に、わたくしは、もう」

 焦らすこともなく、アンナ先輩は存分にフェラテクを披露してくれた。「う、あ……!」アンナ先輩、と声をあげることもできず、アンナ先輩の口の中に発射する。

「ん……いつも通り、美味しいですわ……」

 ちゅるちゅる、とわざと音を立てて(これが息子に響くんだ)残った愛の蜜を啜ると、僕に跨ろうとする。対面座位、アンナ先輩が一番気に入ってる体位だ。

「アンナ先輩……その、避妊、しないと」

「…………おかしいですわ」

「え?」

「何故、愛し合って生まれた子供に、祝福が与えられないのでしょう?」

「…………」

「そんな世界は、間違っていますわ。奥間君は、そう思いません?」

「……確かに間違っていると、思います」

「……すみません、わたくしったら……愛し合っている最中に」

 いつの間にかゴムをアンナ先輩が持っていた。仇敵のような目でゴムを睨むと(愚息が少しへこんだ)パッケージを破り、愚息にかぶせていく。アンナ先輩に避妊という概念が生まれて本当に良かったと思う。


 ズン!


「う!」

「ああん!」

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