狸吉「華城先輩が人質に」アンナ「正義に仇なす巨悪が…?」【下セカ】

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298 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/15(火) 00:23:22.23 ID:mkdjd76E0


(あぶうぇえええなんでなんでなんっで!?)

 こっそり尾行していた僕もそうだけど、アンナ先輩の発言には全員絶句しかなかった。

 ただ《雪原の青》が、無感情な声のままだ。

「どういう了見?」

「言ったとおりですわ。わたくしは、自分と世界、どちらを変えるかを考えて、世界を変える方を選びましたの」

「……アンナ会長と私達の考えがあっているとはとても思えないわ」

「そうですわね。わたくしも、あなた方の立場なら困惑することでしょう。ずっと敵同士だったのですから。ただ、目標は違っても、目的は同じだと思いませんこと?」

「なら手は組めると言いたいわけ? どうだか。あなたにはさんざん辛酸を舐めさせられたわ。……とは言ってもね」

 《雪原の青》はそこで睨みつけるようにアンナ先輩を見た。

「ここで断れば、あなた、今ここで私たちを捕縛するつもりでしょう?」

「そう考えるのが、普通ですわね。ですが今日は捕縛しませんわ。今日はわたくしのために時間を取っていただいたのですし、そのような品性を欠く行為はしたくないものですから」

「けど、引き下がる気もない、そうよね?」

「そうですわね。《SOX》に入れなければ……、わたくしが一から組織を作り上げるしかありませんわね」

 父親の入れ知恵があったとはいえ、風紀委員の実績もあるアンナ先輩には十分可能だろう。

 いや、絶対にする。能力云々じゃなく、アンナ先輩の執念がそうさせる。

「同じような理念を持った組織がいくつもあるという状況は、ただ戦力を分散させるだけ……そうですわね。一年。一年で、《SOX》と同じ規模と練度の組織を作り上げてみせますわ」

 アンナ先輩は獣の笑みを崩さない。

「想像してみてくださいまし。同じ規模と練度の組織が、ただ潰しあう消耗戦を」

「な、何の得があるんだぜ、そんなの……」

 ゆとりの思わず出たという感じの言葉に、しまったと慌てて口を閉じるも、勿論アンナ先輩には聞こえている。

「重要なのは、その後ですわ。変革には破壊から、基本ですわよ?」

「……潰し合いの後の混乱を狙うっていうの?」

「ええ。ぶつけ合い、潰し合い、それぞれの組織が疲弊したところを合併させる。そうすれば、今の《SOX》よりも、さらに巨大な組織が出来上がりますわ」

 今までのアンナ先輩にはない思想だった。元々アンナ先輩の中で、組織そのものを動かす意思が薄かったからだろう。生徒会長なんて、皆の支持があっても基本が学校の雑用だしな。

「《雪原の青》」 

「何?」

「ここで確実に敵になる分子を放っておくんですの? それよりも、わたくしを仲間にしてみません?」

299 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/15(火) 00:23:50.15 ID:mkdjd76E0


「騙されちゃダメッス! あいつ、隙あらば《SOX》を乗っ取るつもりでいるっスよ!!」

 鼓修理が叫ぶ。そっか、アンナ先輩の狙いはそこにあるのか。勢いに負けてて気づかなかった。さすが《SOX》随一の腹黒女子だ。

「いやですわ、どうもわたくしの思考はわかりやすいようで。困りましたわね」

 獣の笑みは消えない。だけど、これが最後通牒なのは、暴雪の気配からわかる。

「《SOX》の影響力を考えると、潰し合いよりはすでに出来ている組織を広げていく方が手がかからない、そう判断しただけですわ……《センチメンタル・ボマー》そこにいますわよね?」

 三人が驚く気配があった。く、風下にいたはずがいつの間にか風の向きが変わってアンナ先輩の嗅覚に僕の臭いが届いていたらしい。

 パンツを被って、草藪の中から立ち上がる。

「わたくしを仲間にしてくれるのでしたら、あなたも含めて全員、命を狙うことだけは致しませんわ。きっと、奥間君も許してくださるでしょうし」

 こくんこくんこくんと頷く。アンナ先輩を仲間に入れると命の危険性がなくなるのは正直助かる。アンナ先輩のことだ。実は裏で善導課に僕達を売るとか、そういうやり方ではなく、真っ向から乗っ取るだろう。

「まあ、時間は必要ですわね。明後日わたくしどもは第一清麗指定都市に帰る予定なので、そうですわね。明後日の午前中には返答をいただきたいですわ」

「無茶にもほどがあるぜ! あんたが今まであたしらにしたことを考えたら、そんな二択、どっちも受け入れられるわけがねえぜ!」

 ゆとりが吠えるが、アンナ先輩には負け犬の遠吠えよりも興味のないことになり下がったらしく、すでに獣の笑みから聖女の笑みに戻っていた。

「それでは、ごきげんよう」

 全員、アンナ先輩が見えなくなるまで、一言も喋らなかった。

「狸吉、なんで来たのよ」

 パンツを脱いで、《雪原の青》から華城先輩に戻ったら、またブスッとしている。僕やゆとりも鼓修理も、(上の)パンツを脱ぐと、

「いや、その、いざとなったらトランクス撒く準備をしていたんですけど」

 まあ、最近のアンナ先輩はそんなレベルじゃもう止められないんだけどな。

「だって、華城先輩やゆとりや鼓修理のことも気になったし、アンナ先輩のことも気になったし」

「こいつ、全員……まさか、5P目的!!?」

「違えよ! アンナ先輩が暴れたら、僕が囮になろうって考えてみたんだけど……」

 どうやら、そういう次元の話じゃなかったようだ。三次元が二次元になればいいのに。

300 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/15(火) 00:25:04.84 ID:mkdjd76E0

あああ、仕事があるのになんでSS書いてんだ……明日も早いのに……
301 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/15(火) 03:07:29.51 ID:mkdjd76E0


 この部屋は昔は密会に使われていて、まあ今僕のやろうとしていることと変わらないことを昔の偉い人もしていたという。

 とにかく、アンナ先輩の精神状態が不安なのは本当だった。ただ、卑猥が悪だと知ったアンナ先輩を、それを受け入れられていないアンナ先輩を、いつもしているからの延長線上でやってしまっていいのだろうか。

 襖を開けると、布団が二組、隣り合って敷いてあって、

「奥間君……んっ……あ」

 すでに全裸のアンナ先輩からぴちゃぴちゃと湿った水音が聞こえてましたとさ。どっとはらい。これで終わりにできねえかな。無理だな。

「ねえ、奥間君……どうしてこれが、卑猥なのでしょう……? こんなに、気持ちのいいことが……愛じゃないなんて……」

「……母さんが言ってました。衝動をむやみやたらに振り回してケダモノのように貪るのが卑猥なのであって、お互いを尊重し合えれば……大丈夫ですよ、きっと」

「……奥間君は、優しいですわね。わたくしとは、大違いですわ……ん!」

 ビクンビクン!と腰を跳ねさせる。アンナ先輩は、どこか泣きそうだった。

「もしこの優しさに包まれていたなら、わたくしは何を敵に回しても構いはしないのに」

「アンナ先輩……」

 アンナ先輩が視線で唇を求めた。もうそれが視線だけでわかるぐらいには、僕とアンナ先輩は身体を重ねすぎたのかもしれない。

「はむ、ん、じゅる、あ、はふ、ぴちゃ」

 こんな時でもアンナ先輩のキステクは見事だった。泣きそうな女の子相手に興奮する趣味は僕にはないはずだったのに、愚息が一瞬でおっきした。

 さすがに僕も慣れていて、アンナ先輩の舌使いに負けない動きができるようになってはきたけど、それもアンナ先輩のリードによるものなんだと思う。

 ゴクリ、と僕の唾液を、見せつけるように飲み込む。

「服を脱いでくださいまし」

 最近は鎖で天吊りに羽箒ばかりで発射していなかったので、溜まりに溜まりきっている。ズボンを脱ぐと、愚息がビン!と天を向いた。

「アンナ、先輩」

「いい香りですわ……ああ、本当に、わたくしは、もう」

 焦らすこともなく、アンナ先輩は存分にフェラテクを披露してくれた。「う、あ……!」アンナ先輩、と声をあげることもできず、アンナ先輩の口の中に発射する。

「ん……いつも通り、美味しいですわ……」

 ちゅるちゅる、とわざと音を立てて(これが息子に響くんだ)残った愛の蜜を啜ると、僕に跨ろうとする。対面座位、アンナ先輩が一番気に入ってる体位だ。

「アンナ先輩……その、避妊、しないと」

「…………おかしいですわ」

「え?」

「何故、愛し合って生まれた子供に、祝福が与えられないのでしょう?」

「…………」

「そんな世界は、間違っていますわ。奥間君は、そう思いません?」

「……確かに間違っていると、思います」

「……すみません、わたくしったら……愛し合っている最中に」

 いつの間にかゴムをアンナ先輩が持っていた。仇敵のような目でゴムを睨むと(愚息が少しへこんだ)パッケージを破り、愚息にかぶせていく。アンナ先輩に避妊という概念が生まれて本当に良かったと思う。


 ズン!


「う!」

「ああん!」

302 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/15(火) 03:08:26.38 ID:mkdjd76E0


 重心が一点にかけられ、全体重すべてが結合部に集まるように姿勢を制御した結果として、僕の息子は一気にアンナ先輩を貫いていた。

「ふー、ふー、ふー、あふ、ああん、奥間君……!!」

 キスをせがまれ、また僕の唇を啜られる。アンナ先輩は僕の首に腕を回して密着しようとする。その間、腰をグラインドすることも忘れてない。僕も腰を突き上げる。

「ん。んんんーううん……!!」

 がくがくがく!と全身が揺れる。姿勢が崩れないように抱きしめるが、中も痙攣して、僕の息子を搾り取ろうとぎゅうぎゅう締め付ける。発射の予感、

「アンナ先輩、出ます!」

 びゅるる、と白濁液が出る快感にアンナ先輩から身体を離してしまわないよう、無意識に強く抱きしめる。

「――ん、ん!」

 アンナ先輩は中の壁を動かすことに夢中で、一回息子を引き抜くことができずにいた。

「アンナ先輩、避妊具、取り換えないと」

「ん、煩わしいですわね……!」

 身体を浮かせて一瞬で取り換えた後、(こんなに早く取り換えられるの?)また中に息子が入り、壁が蠢く感触を味わう。

 二人とも数回ビクンビクンしたのが効いて、会話の余裕が生まれる。ダーリントラップ、なんて言葉が再生される。

「アンナ先輩、どこかに行ってましたか?」

「ちょっと、散策に……何故ですの?」

「いや、月見草がいないって珍しいなって」

「不破さんが、風邪を引いたようなので、ん!」

 軽く痙攣。ぴくぴくするのを我慢する様子って絶対男の子は好きだと思うんだよ、みんな。ぎゅうと入り口が絞られる。

「――いえ、奥間君には、言わないと、いけませんわね」

 ――本題だと直感した。急がずにあえてアンナ先輩の胸の先端に吸い付き、「ああああんん!!」「う!」アンナ先輩の背中が反り、中の壁が収縮する。頭を打たないように支えると、その姿勢を利用する形で僕がアンナ先輩に覆いかぶさった。




「わたくし、《SOX》に入ろうと思っていますの」




「…………」

 演技ではなく、本当に言葉が見つからない。知ってたはずのことなのに。

 僕の動きが止まったのをどう見たのか、足を巻き付け、腰を擦り付けるように動かしてくる。

「《SOX》の、影響力は、強くなる、一方ですわ。それを、利用しようと、思いますの」

「……利用って」

「数は、あるだけで、力ですから」

「どう、したいんですか?」




「――この世界を、変えますの」




「…………」

「わたくしは、正しい、ことしか、教わって、こなく、て、あ、あ、」

 アンナ先輩は焦れったそうに腰の動きを速めるけど、僕は動けない。

「だから、間違えて、罪を、犯して」

 悲壮な告白のはずなのに。

303 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/15(火) 03:09:04.95 ID:mkdjd76E0


「あ、誰にも、祝福を、綾女さんにすら、受けられずに、」

 アンナ先輩が恍惚と笑っていたから。

「奥間君はわたくしが間違っても、受け入れてくれるのでしょう?」

 そこだけ、はっきりと声に出していて、

「あ、あ――――!」

 パシャン、と熱い水が痙攣とともに湧き出た。

「――だから間違ったやり方で、世界を変えてみようと思いましたの……《SOX》のように」

「……なんで、《SOX》なんですか?」

 まだ合体したままだけど、引き抜く余裕がなかった。

「あふ、わたくしにとって《SOX》は『間違い』の象徴なんですの……『卑猥は絶対悪でならなければならない』でしたわね……」

 派手に痙攣したからか、幾分大人しく、その分幸せそうに笑って。




「悪いことって、気持ちよくって、楽しいんですのね」




「〜〜〜〜!!」

 本能がアンナ先輩の変化に先に気付き、身体を引き剥がそうとしたけど、そんなことをアンナ先輩が許すわけがなかった。

「知ってますでしょう? わたくし、苦痛を与えるのが好きですの」

 背中に回された手が拳を握って、一部を押すと「がはっ」肺の空気が全部なくなった。

 血に飢えた猛獣の瞳で、僕を愛おしそうに見つめる。

 耳の中に舌を入れ、軽く耳たぶが噛まれる。

「奥間君の血……飲みたいですわ……」

「き、傷は付けないって、約束したじゃないですか」

「ええ、だから……ふふ、“悪いこと”、なんですわ」

 まだドッキングしたままだったアンナ先輩の中が蠢き始める。

「ああ、その恐怖の顔……素敵ですわ……奥間君のすべての感情はわたくしのもの……今この恐怖も、わたくしが与えていますのね……」

 ツウ、と背筋を指で撫でられる。反射としてぞくっとした僕を見て、アンナ先輩の嗤う気配。

「美味しそう」

 ぎゅる、と内臓の音がした。明らかに子宮じゃない、何かの腹の音。

 た、助けて! 僕、殺される! 食べられる!

 こんな時にもおっ勃つしな、僕のバカ息子は!

304 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/15(火) 03:10:36.49 ID:mkdjd76E0


「壊したいですわ……何か……なんでも……!」

 ぎりぎりと蛇のように力で僕を締め上げる。ミシミシと不吉な音がする。




「世界が壊れる時って、どんなに気持ちいいのでしょう?」




「そ、れって……?」

 その一言には無視できずに思わず反応してしまう。

「ああ、こんなことを想像して、気持ちよくなってしまうなんて、わたくしは“悪い子”なんですわ……!」

 答えはなかった。多分、抽象的な、概念的なものなんだろう。

 誰だって、ふっと“何か”を壊してやりたいと考え、どうなるかなと考えることはあると思う。

 でもアンナ先輩には、『やろうとさえ思えば壊せるモノ』が、あまりにも多すぎた。

 アンナ先輩は、理性的に計画的に、執念深く物事を考えられる一方で、本能的な衝動に身を任せることを覚えてしまって。

「奥間君」

 そんな僕の恐怖を見抜いて、アンナ先輩はゾクゾクと快感を覚えてしまって。

「わたくしは、《SOX》に入り、“悪い子”になりますわ」

 なのになんで。

 僕の涙を舐めて、それでもアンナ先輩は破瓜のあの時みたいには止まらなくて、アンナ先輩自身がそんな自分に傷ついてて、それでも僕の愛を信じて、世界に抗おうとしていて。

「綺麗で健全でなくなって、ごめんなさい、奥間君――」

 それは、最後通告だったのかもしれない。

 ごめんなさい、華城先輩。

 僕じゃ、無理でした――
305 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/15(火) 03:16:19.04 ID:mkdjd76E0

あらまあ、徹夜だわー
306 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/15(火) 13:58:28.60 ID:G/12HkuD0
これは闇堕ちしてるのかな?
307 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/16(水) 12:54:52.46 ID:zIH+smKtO
いつの間にか徹夜よくある。
人間なら誰しもダークサイドある闇堕ちある。
アンナ先輩は素で純粋な真っ黒なんだけどね。
308 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/17(木) 20:40:19.29 ID:mnLqZVgVO
アンナ先輩の理想の世界って何さ

逆レが合法化される世界なんてやーよ
309 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/18(金) 10:10:15.56 ID:wpQTugN0O
赤城大空先生の新刊本日発売
310 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/19(土) 02:45:08.69 ID:NNdaJwWB0



 化け物の処遇については『入れるしかない』と『絶対に嫌だ』の感情論になっていた。

 鼓修理だって、《SOX》に入れるしか選択肢がないのはわかっている。第三の選択肢など都合よく存在しない。第三の性器が存在しないように、というと色々と議論が起こりそうなのでやめておいた。

 今、狸吉が身体を使って(文字通りの意味で)時間を稼いでいるのに、綾女様と画家は『入れるしかない』自分とゆとりは『絶対に嫌だ』の二択しかなくなっていた。

 狸吉は入れるしかないと答えるだろうから、多数決で決めるならば化け物を入れるしかない。

 だけどここで単なる多数決で決めたら、組織としては割れる。化け物は《SOX》の乗っ取りが目的なのだから、その割れ目を無視することはないはずだ。

「私も、代案があるならそれに乗るわよ? 騎乗位のごとく! でもあのアンナを止める方法なんて……」

「無理じゃな。それよりわしを早く解放させてくれんかの」

 画家はどちらかといえば中立よりで、むしろ今すぐ化け物と狸吉の痴態を見に行きたいらしく、会議を抜けたがっていた。鼓修理としてはどうでもいいが、画家が覗きで死ぬことになると厄介なため、止めている状態だ。

「正体がバレたらどうするんだぜ?」

「それも、ね」

 鼓修理もゆとりも、駄々をこねているだけの状態になりつつあった時。

「鼓修理。今夜12時、今日会った場所でと伝えられるかしら?」

「……できますけど、何をするんっスか?」

「私だけ、正体を話すわ」

 シン、と部屋が静かになった。賢者タイムはこれより静かなのだろうか。

「危険っス! 無理っスダメッス!」

「…………」

「ゆとり、なんで黙るっスか!?」

「何か事態の進展を考えるなら、それしかねえかもとかは思ったんだぜ」

 ゆとりの目は真剣だった。

「失敗したときはどうすればいい?」

「他のメンバーの正体はばらさないで、アンナをメンバーに引き入れるわ。私は死んでいるだろうけど」

「だから! そんなのは鼓修理がダメって言ってるっス!!」

「鼓修理、わかりなさい。私だって何も勝算なしに行くわけじゃないわ」

「どうせ引き入れることになるんじゃ、正体に関しても絶対意見が割れるじゃろ。今のうちに様子を見ておいた方がというのは正論じゃないかの?」

「〜〜〜〜!! もういいっス!!」

「鼓修理!」

 部屋を思わず飛び出した鼓修理に対し、ゆとりが声を投げかけてくるけど、無視して廊下を走る。と、

「う、わ!?」

 撫子に捕まってしまった。撫子は呆れたようにこちらを見ている。

「なあにやってんだい、外にまで声聞こえちまうよ」

「撫子……」

 綾女様がばつの悪そうな顔をするも、撫子は気にも留めずに、

「アンナはお前の親友なんだろ?」

「……ええ、そうよ」

「ならやることは決まってんだよ、おい鼓修理。さっさとPMでメール送りな。別に私から手紙って形で出してもいいんだからね?」

「……わかったっス。勝算は、あるんスよね?」

「ええ、あるわ」

 《雪原の青》としての顔で、きっぱりと言い切ったその言葉を、鼓修理はどうしても信じられなかった。


311 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/19(土) 02:46:28.32 ID:NNdaJwWB0


 華城綾女は《雪原の青》として、深い森の中にひっそりと立っていた。

 帰ってきた狸吉にもかなり反対されたけど、綾女が折れないことがわかったのか、最後は送り出してくれた。

 本道ではない別の近道を通ってきたため、アンナとは別に部屋を出ている。

(アンナ……)

 卑猥じゃない部分の楽しさや優しさは、すべてアンナに教えてもらったと言っても過言じゃない。

 アンナは言った。自分と世界、自分を否定してくる世界の方が間違っていると、はっきりそう言った。

 それは、自分と同じ考えだ。自分も自分が正しいと信じて、自分自身を否定してくる世界が間違っていると信じて、下ネタテロリストになった。

 アンナは同じ道を辿ろうとしている。




「お待たせしましたわね」




 聖女の笑みを浮かべた、アンナが現れた。

 月光の光ぐらいしかない中で、銀髪は月光に負けない輝きを放っている。

「《雪原の青》一人ですの?」

「……そうね。他のメンバーはいないわ。先に言っておくと、基本はあなたの思い通りになると思うわ。私達にあなたを止めることはできない、という意味で、《SOX》に入ることを認めざるを得ないのよ」

 どこか感慨深げな《雪原の青》の言葉に、アンナは殺気を放ったりも、慈愛に満ちた笑みも浮かべなかった。

「あのね、アンナ」

 とうとう、私は《雪原の青》から華城綾女になる。




「私、本当に、あなたのこと、親友だと思ってる」




 そして、上のパンツを脱ぐ。顔面が一気に凍るような寒さに包まれて、痛いほどだった。

「――――綾女さん? 綾女さんが、《雪原の青》……?」

「否定されるって、辛いわよね。それも、自分の根幹を否定されるのは。……アンナの場合は、狸吉への愛だったわけだけど、きっと近いうちに似たようなことは、きっと起きてた」

「…………」

 アンナの顔は、月光だけではよく見えない。ただ銀髪の陰に隠れるだけ。

312 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/19(土) 02:47:24.57 ID:NNdaJwWB0

「裏切っていた、と思ってくれて構わないわ。どう思われようと、私が《雪原の青》であることは変わりないから。騙していたことには、変わりないから」

「――あなたも? 綾女さん」

「……?」

「あなたも、両親の作り上げた《育成法》の、被害者ですの?」

「私はマシな方よ。アンナ、あなたこそ《育成法》最大の被害者だと私は考えているけど、そのあなたは――何をする気?」

「世界を壊すんですの。愛を愛として認めない、この世界を。そして新しく、愛を愛として認められる世界に作り替えるんですの」

 

  ――そして、《育成法》の破壊を。



「綾女さん」

「…………」

「今までずいぶんと、悪巧みしてこられたのですわね。……ズルいですわ」

 破壊に飢えた獣が、嗤う気配がした。

「わたくしにも、悪巧みの楽しさを、教えてくださいまし」

「充分にできると思うわ。あなたはもう、“知ってしまった”のだから。私なんかより、ずっとうまくできると思うわ……」

「……綾女さん?」



「私は表向きの活動を引退するわ。《SOX》全てのリーダー、その後釜に、アンナを据えようと思うの」



「…………」

「乗っ取りはそれで完了するはずよ」

 ――一瞬で、距離を詰められる。そして、

「わひゃ!? わひゃ、脇はダメ、第5の性感帯なのぉ!」

「ふふふ。そんなに急がなくてもよろしいじゃありませんの。《雪原の青》あっての《SOX》であることぐらいはわかりますわ。……綾女さん」

 あなたが泣いてくれた時、嬉しかったんですのよ。

「わたくしも、たくさん変わってしまって、失くしたものもたくさんありますが……それでも綾女さんを親友だと、思っていますわ」

「アンナ……」

「乗っ取りの計画に関しては、もう少し先の話としましょう。強引なやり方でなく、もっと組織として合理的な判断で以て」

「鬼頭慶介の約束はどうするの?」

「そこまで知っているんですのね。まあ、不穏分子が中にいる組織というのは基本的に脆いものですので、それでごまかしつつ、二重スパイみたいな形になると思いますわ」

「大丈夫? アンナ、搦め手は苦手でしょう?」

「世界の変革には清濁飲み込む力がないと、結局は変革できませんわ。その程度のことができないなら、わたくしにはその力がないということですの」

 そこまでわかっているなら、大丈夫だろう。アンナの不安定な部分は狸吉が支えてくれるだろう。

「明日、出発前、またここに来てくれる? 《SOX》としての正式な回答を送るわ」

「ええ、わかりましたわ……綾女さん」

「…………」

「《センチメンタル・ボマー》は、奥間君でしたの?」

「……ええ。明日、正式に紹介するけど」

「……そう、ですの。色々と言いたいことはありますけど、まあいいですわ」

 そういって、アンナは去っていく。

 ……大丈夫、全部言いたいことは言ったし、アンナも頭に血が上らず冷静に聞いてくれていたと思う。だから、大丈夫。

 でも、アンナって、あんなに心を見せない人間だったっけ?
313 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/19(土) 02:48:37.63 ID:NNdaJwWB0
ちょっと書いてみましたー。場面的にはかなり大変な場所なんですが。

ちなみにアンナ先輩は逆レの意識はありません。あの張り紙のせいです。なんてこったい
314 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/20(日) 08:50:30.25 ID:n3joLe16O
あぁ…自分が愛している男性が別の女性と大きな秘密を共有していたなんて、許せないよね。親友なら余計に。
修羅場ヤンデレ制裁ルート一直線ですわ。
それとこの期に及んで逆レの意識のないアンナ先輩はもうどうしたら。
315 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/21(月) 23:24:34.66 ID:qiesvTN40


「ぎゃあ、ちょっと待ってアンナ先輩話を聞いてぎゃあ!!?」

「アンナ、ちょ、嘘つき! ……ご、ごめんなさい何も言ってないわ私は何もげふ!?」

 翌日、《SOX》が全員集まり、アンナ先輩が来たところで和やかに自己紹介タイム。それが終わったらアンナ先輩に僕と華城先輩が簀巻きにされ、木に吊るされた。

 何も変化がなかった、という時点でおかしいと思ったけど、やっぱりアンナ先輩的には浮気的な面で黒判定だったらしい。一時間ほど公開処刑が行われるのを、早乙女先輩に鼓修理にゆとりは黙って見てるしかなかった。

 まあ、確かに身体に傷は負わなかったけど、心に傷は負ったんだよなあ、これが。

「ふう、これぐらいにしておきますわ。身体も温まったことですし、綾女さんが奥間君と、わたくしにナイショで大きな秘密を抱えていたことについては、とりあえずは許して差し上げますわ……これ以上は傷つけないことが難しそうですし」

 拷問吏の残念そうな顔に、心底ほっとする。一時間で済んだなら僕としては慣れている方だった。それもどうなんだ、というツッコミは誰からもなかった。

「さて、綾女さん」

 ぴぅ!とおっぱいから声出したみたいな悲鳴を上げる。アンナ先輩は僕と華城先輩を解放すると、華城先輩を複雑そうな、悲壮とも言えそうな目で見つめる。

「…………?」

「次は、綾女さんの番ですわ。わたくし、あなたに大怪我させたこと、忘れていませんのよ」

「…………」

「色々と、言いたいことはありますけど。……全部わたくしのため、でしたものね。なのに、わたくしは……」

「正直に言っていいかしら?」

「……なんですの?」

「私は色々と、忘れたいの、痛いこととかそういうの。SMはね、お二人でやってちょうだい!」

 PM無効化してまで言うことか! SMじゃない、よな? 僕ってえ? M? なのか?

「Sえ、?」

「アンナ先輩ストップストップ!! 禁止単語です!!」

「ん、……本当に綾女さんが、《雪原の青》なんですのね」

 アンナ先輩が、銀髪を陽光に透かしながら完璧な聖女の微笑で振り向いた。

「後顧の憂いも今、失くしましたし、これからよろしくお願いいたしますわ」

「よ、よろしく……っス」

「よろしく……だぜ」

「アンナの嫉妬に狂う微笑も、絵になるのお」

 一人だけずれたことを言う早乙女先輩はいつものこととして、ゆとりも鼓修理も納得はしてないけど(公開処刑みせられたし)アンナ先輩を《SOX》に受け入れざるを得ないことはわかったようだ。

 心にダメージを負った僕と華城先輩をよそに、いったん清門荘に戻る。そこにいたのは女将モードではない、いつもよりも余裕のない感じの撫子さんだった。撫子さんもアンナ先輩の武勇伝については色々知ってるしね。

「まさか錦ノ宮夫婦の子供がねえ……」

 現実はわからんね、と呆れたように軽く言う。「反抗期ですの」とアンナ先輩も軽く返した。

「で、昨日起こしたあの騒ぎであのざまなんだけど、あの不破ってバカはどうしたらいい?」

 不破さんが月見草と一緒に栄養ドリンク改を作ろうとして清門荘が火事になりかけた件について、いつか時間があったら話そうと思う。不破さん、今は熱で頭が回っていないようだし、月見草は基本言われたことしかできないから事故と言えば事故なんだけどな。


316 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/21(月) 23:25:01.60 ID:qiesvTN40


「不破さんは《SOX》に入れませんの?」

「あー」

 華城先輩と顔を見合わせる。不破さんについては全員賛同するだろうけど、ぶっちゃけタイミングを忘れてたというかなんというか。

 清門荘の一室に戻ると、完全に風邪でダウンしている不破さんがいた。

「今寝付いたところです」

「お疲れ様ですわ。月見草さんも、休んでくださいまし」

 スケッチブックに先ほどのアンナ先輩の形相を描きたいらしい早乙女先輩を傍において、月見草は菊の間で休ませる。

 そして今できる、アンナ先輩の修行内容について撫子さんと一緒に考える。

 まあ答えは決まっていて、

「正しい知識、だな」

 禁止単語やその意味、社に置いてある不健全雑誌の熟読、《育成法》が生まれる前の、そもそも卑猥とは何かなどの価値観など、とにかく性知識について徹底的に教えなければならない。

 僕にしたことについてショックを受けるかもしれないけど、もう正直言って、どうこうできる問題じゃなかった。逃げられないなら、今をいい機会とするしかないんだと思う。

 ……アンナ先輩の性欲が薄まることは、多分ないだろうけど、それでもちょっと期待してしまうのは、僕悪くないよね?

「おい、綾女。お前教えろ」

「え!? そんな、急に言われてもゴムも何も準備ができていないわ!」

「谷津ヶ森の不健全雑誌があるだろうが! いいから社で勉強だ!」

 その様子を見て、アンナ先輩が慈しむように、僕にだけわかるようにクスッと笑った。

「撫子さんと綾女さんって、似てますわね」

「そうですね。義理とはいえ、お母さんと娘ですからね」

「……親子、反抗する子供」

 アンナ先輩は、悲しげに長いまつげの影を作る。

「……わたくしは、世界を必ず変えてみせますわ。両親の作った、この日本という国を」

 悲しげではあっても迷いはなかった。

 アンナ先輩と華城先輩は、社に向かった。


317 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/21(月) 23:25:29.75 ID:qiesvTN40

「さて、と。これからどうするんだぜ?」

 今日帰る予定だったが、不破が風邪を引いた以上、動けない。置いて帰るのも薄情だろうというのがゆとりの意見だ。

 特別に往診してもらって、薬は出してもらっている。ただ昨日のバカ騒ぎ(自分たちは知らなかったけど何かやらかしたらしい)で病状が悪化したとのことだ。

 明日も休みなので、一日延ばそうと考えてはいる。でもそれ以上は、学校が始まるのでどうすればいいか考えている最中だ。

「あの化け物、本当に二重スパイなんかやるんスかね?」

「その話をしたらキリがないから信じるしかないって言ったじゃないか」

 狸吉がうんざりしたように反論する。鼓修理も自分がしつこいのは自覚していたようで、「わかってるっスけど」と不機嫌そうに返した。

「あの化け物とクソ親父が繋がってると考えると、ろくでもないことしか考えられないっスね」

「表向きでもアンナ先輩が敵でなくなったのは、《SOX》にとっては楽になったよ」

「いつ乗っ取りされるかもわからないのにっスか?」

「だあ、止めろお前ら、ややこしい!」

 ゆとりにはどうしてもそういう駆け引きが合わない。油断はできないし、危険性もあるが、それを言ったら鼓修理だって鬼頭家の一人娘だし、狸吉にいたっては善導課の《鋼鉄の鬼女》の息子なのだ。

「ここにいてもあの女将に見つかったら何かやらされそうだし、あたしも社見てみたいぜ」

「ゆとりはちゃんとは見たことなかった? 僕もあの不健全雑誌呼んで予習しとこうかな……僕で試される前に」

「ひ、卑猥だぜ! そんな、日中から!」

 ゆとりが蹴りを入れるが、慣れている狸吉はひょいと躱す。

「ま、どんな感じで勉強してるかを見るのはありっス。ここで適性試験に失格とかいちゃもんつければ……」

「あー、アンナ先輩に限ってはそれ無理だと思うよ」

 一応、撫子に社の様子を見てくることを伝え、清門荘から社に向かう。


318 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/21(月) 23:27:05.75 ID:qiesvTN40

不破さん、いろいろやらかしていたようです。
とうとうアンナ先輩がちゃんとした知識を付けていきます。どうなることやらなのです。

ちなみに希望があれば、不破さんがやらかした短編も書く用意はできております、はい。
319 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/22(火) 00:55:05.08 ID:XNH/9rFA0


「これと、これはどう違うんですの?」

「えっとね、ヴァギナと膣と《赤ちゃん穴》はね……」

 まず禁止単語表なるもの(1000ぐらいはある)を叩き込んでいた。

 まあアンナなので、すぐに表そのものは覚えたのだけど、意味を理解するのに若干苦労していた。谷津ヶ森から奪った不健全雑誌の写真を使って、あるいはもう教育現場では使われなくなった精巧な人体模型を使って説明していく。

 まあ言葉だけでは理解できないだろうと、アジトにある2、3冊を除いたすべての不健全雑誌やコピーをアンナに見せて、ほとんど独学でやらせている。疑問に思ったところを解説した方が早い。

「……これが卑猥ですの?」

 アンナの声には戸惑いがあった。アンナにとっては無意識の愛情表現が、卑猥と断定されているのだから当然だった。

 善導課からも指導されてはいるだろうけど、それはあくまで一部の偏った知識だけだ。特に愛の蜜関連はきちんと教えなければならない。

「愛の蜜は男女で違うんですのね。奥間君は、男性の愛の蜜が女性の《赤ちゃん穴》に入ってきたら、妊娠すると仰っていましたわ」

「……うーん、それで大体合ってるわ」

 あってるのかな、この教育法はと、綾女の方が戸惑いを覚え始める。アンナが読んでいるものは不健全雑誌と言って想起されるような、いわゆるエロ本だけでなく、昔の保健体育の教科書や医学書も含まれている。これは谷津ヶ森のものではなく昔から社にあったものだが、下半身にガツンと来ない! 下ネタ思い浮かばない! と有り体に言うと面白くなかったので、社に放りっぱなしだったものまでを読んでいる。

「綾女さん、今更疑うわけではないのですが、この本が正しいという根拠はありますの?」

「……アンナなら本能でわかってるんじゃないの?」

「……わたくしには、なぜお父様とお母様がこれらを不健全だと禁止するのか、よくわかりませんの」

「アンナ、あなたなら身に覚えはあるんじゃないの? 初めてのこととか、エッチなこととか」

「…………それが、卑猥?」

「……そうね、猥褻なアプローチを狸吉にしてきたのは間違いないわ」

「…………」

 しばらく無言だった。不安になって、「アンナ」「綾女さん」――二人同時に、呼びかけた。

「わたくしは、“悪い子”になるんですの。だって、“悪いこと”って、楽しいんですもの」

「そうね。下ネタは楽しいわ。でもね。行き過ぎると、傷つけるわ」

 ある文字を指した。『レイプ』――強姦。精神の殺害ともいわれた、《育成法》成立前でも最悪の罪。

「…………」

「あなたがあのリーダーにしたことよ」

「……両親がもみ消したい気持ちが、よくわかりましたわ。ふ、ふふひ、あは、娘が卑猥の最上級の罪を犯したのですわ。当然ですわね」

「アンナ。今からでも両親と仲直りできるなら、」

「それでも、知っていたら、わたくしはしていなかったのですわ」

 アンナはどこか泣きそうで、何も言えなくなる。「その言葉が本当か?」なんて、訊けもしなかった。

「知ってさえいれば、間違えなかったのに」

「…………」

「でもいいんですの。間違えても、奥間君は受け止めてくれるのですわ。――勉強に戻りますわね」

 間違えても、狸吉が受け止めてくれるから、だからわざと間違えてやる。

 今のアンナの行動原理はこんなもので、根本は狸吉と愛以外を信用していない。

 足音、

320 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/22(火) 00:55:49.60 ID:XNH/9rFA0

「……狸吉、鼓修理にゆとりも」

「調子はどうかなって。アンナ先輩、大丈夫ですか?」

「……ええ。勉強自体ははかどっていると思いますわ」

 軽い調子の狸吉たちに、アンナも笑顔で答える。

 多分、この笑顔のまま、アンナは人を殺せる。根本が正義と愛以外を信用していなかった頃と、変わっていない。

 それを綾女は、わかっていた。

「色っぽいポーズ、というのは何ですの?」

「え? えーっと」

「ゆとりに教えてもらったらどうっスか、まあ胸部がなぶほ!?」

「あー今日は暑いぜー」

「ゆ、ゆとり、靴ありは反則っス……」

「一月で暖房もないのに暑くはないと思うのですけど、あの、鼓修理ちゃん、大丈夫ですの?」

「あー、大丈夫だぜ。こいつ、結構慣れてるんだぜ」

 でもどこかで、信じていたかった。

 こんなふうに親友が自分たちと混ざってバカ騒ぎするのを、どこかで夢見ている。



 ピピピピピピピピピ



「鬼頭慶介さんですわ」

 アンナが人差し指を立て、静かに、とジェスチャーを送る。

 全員が静かになったところで、「もしもし」と電話に出た。



 ――暴雪の気配が漂った。



「鼓修理ちゃんのお義父様。お疲れ様ですわ」

 ちなみに鼓修理と慶介はアンナの中では、紆余曲折を経て義理の親子となっている。

『やあ、鼓修理のことは知ったんだね。お嬢さんは、返事の方をどうするか、まだちゃんとは聞いてないなーって思ってね』

 電話越しにもこの気配は伝わっているはずなのだが、慶介は軽いノリのままだ。

「お受けしますわ。色々とご協力してもらってる身ですもの、少しでも恩返ししたいんですの」



321 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/22(火) 00:56:26.35 ID:XNH/9rFA0


『奥間狸吉君との結婚にそこまでするなんて、よっぽど愛しているんだねえ』

「ええ、愛、していますわ」

 愛、にアクセントがおかれる。ここだけは絶対に本音で、ビクン!と狸吉が跳ねた。

『じゃあ、お嬢さんには良くないお知らせだ。錦ノ宮の口座から5000万円引き出されているよ』

「? 5000万円……?」

『早いとこ、ご両親に電話した方がいいかもね、これは確実に奥間家への口止め料と手切れ金だから』

「――――」

 アンナ落ち着いて、とメモで書く。アンナは頷いた。

 ただ、暴雪の気配が、さらに冷たさを帯びてくる。

「用件は、それだけですの?」

『うーんとね、どこまで入り込めたかなあって』

「主要メンバーの名前と顔は、覚えましたわ」

『なるほど、順調だ。じゃあ君も忙しくなりそうだし、切るねー。じゃあねー』

 ツーツー。

「……手切れ金? まさか、わたくしの両親は、愛を、お金で解決しようとしてるんですの?」

「落ち着いて、アンナ。《鋼鉄の鬼女》の性格を考えて、そんなお金簡単に受け取ったりはしないわ」

「そうですよ! うちの母親に限って、そんな……」

 狸吉の目が泳いだ。「とにかく、電話してみます」――金をもらわなくても、狸吉の母親はこういう問題のエキスパートのはずで――




  『祝福を受けたい』




 アンナもPMを操作する。

 殺気立った目に、誰も何も、言えない。

322 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/22(火) 01:02:18.94 ID:XNH/9rFA0
多分だけどアンナ先輩にとって1番やってはいけないことじゃないかなと思ってみました。
うん、多分ですが。
323 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/22(火) 14:35:28.76 ID:R4IhwTaNO
性犯罪を金で誤魔化して被害者を黙らすとか……

これ、卑猥な上に卑劣なんじゃ。旧世界でソフィアが一番憎んでた事やないの
324 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/22(火) 17:28:12.06 ID:XNH/9rFA0


 奥間爛子は第一清麗都市の第二オフィスビルの最上階にいた。善導課に関わる用件ではない。むしろ私的な事柄になる。

 呼び出した張本人たちが、爛子がついてからすぐに表れた。

「ずいぶん早いな」

「お待たせするわけにはいかないので」

 呼び出したのは、錦ノ宮夫婦と、もう一人、おそらくは弁護士がついていた。

「お座りください」

 弁護士の名刺を受け取り、爛子は座る。さすがというか、全員爛子のカタギには見えない風貌に気圧されることのない連中だった。

 錦ノ宮夫婦はソフィアがデモを起こしてから不仲になったと聞いていたが、愛娘の事件にはそれどころじゃないらしい。

 アタッシェケースが取り出され、中身を見せつけられる。

「5000万円あります。もちろん、贈与税などを抜きにした金額です」

「何が言いたい」

「……そちらのご子息と、うちのアンナの、慰謝料と手切れ金です」

「犯罪を隠すために金とコネで隠蔽するか。私の知っているソフィアはそんなことをもっとも毛嫌いする人間だったがな」

「……爛子さんに軽蔑されるのは、承知しています」

 さすがにプライドの高いソフィアは消沈していた。代わりに旦那の、祠影が口を開く。

「間違ったやり方かもしれません。ですが、娘を守りたいという親心は、あなたも子供がいる以上、理解できるでしょう?」

「守るの意味が違う以上、話にならんな。私はこんな金を受け取りはしない」

「では、どうしたら、アンナを守れますか?」

 ソフィアは虚ろに呟く。すがるように、爛子を見る。

「弁護士なら知っているだろう。婚約もしていない学生の恋愛に手切れ金など必要ない、と」

「恋愛だけならばそうですが、今回は犯罪が絡んでいるとのことでしたので」

「…………」

「アンナさんが狸吉さんに本人の合意なく性交にいたったことは、こちらも認めております」

 本来なら『性交』は禁止単語なのだが、弁護士などの法律用語としては許可される。今回もそのパターンだった。

 善導課は証拠として鎖を回収している。

「徹底的に争うのかと思ったが、意外だな」

「……あんな、アンナを見せつけられては……」

「……そうだな……」

「私には信じられません。お二人から話を聞いてもです」

 祠影が口を挟む。清楚なお嬢様にしか見えないアンナが鎖につないだ狸吉の性器を口に含み、コロコロと美味しそうに転がしていたのはあまりに衝撃的な光景で、自分も狸吉の口から聞いただけなら一笑に付したかもしれない。実際、祠影は信じ切れていない節がある。

「慰謝料と手切れ金は、受け取ってもらえないでしょうか?」

「本人に話も通さずに答えなど出せない。17歳と16歳だ、その程度の頭はあると信じている。夫妻はアンナと話をしたのか?」

325 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/22(火) 17:28:39.95 ID:XNH/9rFA0


「……拒絶されています。『愛のために必要な儀式だった』『奥間君は間違っても受け止めてくれる』など、わけのわからないことを言って……」

 ソフィアのことだから感情的に責めてしまったんだろう。アンナからすれば、ソフィアや祠影の方が拒絶しているのだろう。

「アンナは言い出したら聞かないタイプみたいだな。ソフィアのようだ。……このことは逆効果になるぞ」

「……それでも。卑怯で卑劣でどうしようもなくても」

 ソフィアは感情のままに突っ走っていたころとは嘘のように、沈み込んだままで。

「娘のために、ご子息には別れてほしいのです」

「…………」

「このままじゃアンナはダメになります」

 祠影が消沈したソフィアの代わりに言葉を紡ぐ。

「今のアンナは間違っています。間違った元から離れなければ、さらに悪くなる一方です」

「うちの愚息に原因があると?」

「いえ、アンナは《育成法》の奇跡的な成功例だったのです。奇跡的なバランスで保たれていたのが、恋心で崩れたのでしょう。奥間狸吉君でなければもっとひどいことになっていたかもしれないし、そうでないかもしれない。わかっているのは、これ以上狸吉君と一緒にいさせるわけにはいかないということです」

「全部、親としての理屈だな。子供の立場を考えていない」

 だが正直なところ、爛子にもどうすればいいかなんてわからない。こんなに消沈しているソフィアも見たことがない。



 ピピピピピピピピピ



 爛子のPMが鳴った。『奥間狸吉』と出ている。

「うちの愚息からだ。失礼だが、この場で出させてもらう」

 ハッとして、ソフィアもサイレントにしていたPMを確認する。『アンナ』と出ていた。



「「――もしもし」」


326 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/22(火) 17:47:57.59 ID:XNH/9rFA0


「母さん」

『なんだ?』

「今、アンナ先輩から、アンナ先輩の家が5000万円も引き出したって聞いて」

『事実だ。その件で今話をしている』

「口止め料と手切れ金で?」

『どこから聞いたんだ、その話は。……私は受け取らない。お前が決めろ、狸吉』

「……わかった」

『切るぞ』


 ツーツー、


  
   *



「お母様」

『アンナ』

「何を、しようとしてらっしゃるのですか?」

『……私達は、アンナのために』

「嘘を吐かないでくださいまし! 《育成法》も、欺瞞ばっかりで! こんなやり方で、正しいことだけを詰め込んだら、正しい人間ができると、お母様は本気で思っているのですか!?」

『アンナ……』

「知ってさえいれば、わたくしは間違えなかったのに……!」

『アンナ。お願いです、戻ってくるのです』

「……お母様は、お父様も、わたくしと奥間君を、別れさせたいのでしょう?」

『アンナ』

「わたくしが間違えたのは、奥間君のせいではありませんわ。それに……」

『アンナ、わかりました、私達は色々話し合わないといけないんです』

「わたくしは奥間君を愛していますわ。奥間君も……何故、愛が祝福を受けられないのですか? お母様……」

『…………』

「わたくしには、話し合うことなんてありません。手切れ金を用意する必要もありませんわ。だって、一生、わたくしと奥間君は愛し合うのですから」

『アンナ、落ち着いて、それは……間違っています』

「ならどう間違っているのか、説明してくださいまし!!」

『――あなたが不幸になるのが耐えられないだけです……!!』

「……もういいですわ。話になりませんもの」

『アンナ、待ちなさい、アンナ!』



 ツーツー、『着信拒否』

327 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/22(火) 17:52:15.18 ID:XNH/9rFA0

これは、「親の心子知らず」なんでしょうか?
立場を守りたいとか打算もあるとは思いますが、ソフィアもそうだし祠影も、アンナのためにと思って動いてはいます。それが正しいかは別として。
328 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/22(火) 17:56:44.04 ID:XNH/9rFA0
あと、アンナが一番祝福を受けたい相手はやっぱりご両親なんですね。当たり前か。
329 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/22(火) 18:14:15.77 ID:tkldBrmI0
ソフィアは子供や信念の為ならプライド捨てれるんだよなぁ、不健全雑誌身体に巻いたり
今回の手切れ金もソフィアにとっては屈辱なんだろな、でもやるあたりは親なんだなと思う。
まあ間違ってるんだけど
330 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/22(火) 21:42:34.51 ID:XNH/9rFA0


 アンナ先輩の失望と絶望からの無表情は、今までとは違う意味で冷たさがあった。

「アンナ、不健全雑誌はコピーを取って第一清麗都市に持ち帰って、アジトで勉強しましょう」

「ええ」

 華城先輩も言葉少なだった。

 だけど、今の日本では珍しくない光景でもある。さすがに極端な例ではあったけど、僕やゆとりのような社会的に弱い立場の子供の縁談は昔より格段に厳しいと聞く。

 もし何もなくても、今とは逆の意味で僕とアンナ先輩じゃ釣り合わないのが現状だ。アンナ先輩はそういう部分からも切り離されていたんだろうけど。

「奥間君」

「はい!?」

 思考が別のところに行っていたせいで反応が遅れた。いやね、母さんやアンナ先輩の躾によって返事には即答せねばならないという条件反射がもう身に沁みついてて……。

「わたくしは、奥間君がいれば、幸せですわ」

「……はい」

 そう答えるしかなかった。

 だって、この人が変わったのは、やっぱり僕のせいだから。

 そのせいで降りかかる不幸からは、守りたかった。

 でも――



『本当に、愛してる?』



 誰の言葉だっただろう。もう精液が夢精で空っぽになってしまったかのように忘れてしまった。

「PMの電子マネーが凍結されたらどうするんスか?」

 鼓修理が現実に戻してくれる。いかんいかん、夢精なんかしたらアンナ先輩にお仕置きからの前立腺プレイが始まってしまう。

「私の家に来ればいいじゃない。アンナのマンションほどじゃないけど、アンナが泊まれないほど狭くもないわ」


331 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/22(火) 21:43:19.38 ID:XNH/9rFA0


「まあ狸吉の家は、くっくっく」

 鼓修理の邪悪な笑みは「化け物に散々搾り取られれば自動的に綾女様の隣は自分のものに!」みたいなことを考えているだけなので無視しとこう。

「まあ、そんな強硬な手段には出ないと思いますわ」

 このあたり、アンナ先輩と僕らでソフィアに対する意識の乖離とでもいうのか、ソフィアは意外とアンナ先輩には甘いというか。まあこんだけ完璧超人だったらな。

「マンションにいる方が風紀委員の見張りもありますし、両親にとっては好都合ですわ」

 あとあのクローゼットで僕を監禁したりとか。

「まあ帰ってからのことは帰ってからにして、明日までどうするんだぜ?」

「うーん」

 アンナ先輩が可愛らしく小首を傾げる。

「現実の問題として、《SOX》は武力が足りないように思うのですわ」

「下ネタテロに!」

「武器もお金もいらないんス!」

 華城先輩と鼓修理が合わせて卑猥な拳を作る。にこっとアンナ先輩は軽くスルーした。意味は分かっても、面白さは理解できないようだ。

「奥間君のお義母様をわたくし一人で引きつけるのは、正直自信がありませんわね」

「「「「いやいやいやいや」」」」

 僕と華城先輩と鼓修理にゆとりの合唱が広がる。勝てるとしたらアンナ先輩ぐらいしかいないだろう。

「奥間君? 勝つ必要はないんですのよ。こういうのは、ヒットアンドアウェイで無差別に出没して逃げるが勝ちなんですの。逃げられたらそれでいいんですわ」

 さすがにこの前まで僕達を追っていただけはある。ヒットアンドアウェイで逃げるが勝ちが嫌だから僕を誘拐に差し出したんだしね。

「皆さんの身体能力を知りたいですわ、特に綾女さんと、ゆとりさん。表に出る場面が多いですし、鼓修理さんや早乙女先輩は陰で別の仕事があるでしょう?」

「あれ、僕は?」

 アンナ先輩の頬が、ポ、と赤くなった。

「――知り尽くしていますもの」

 うん! もう身体の部分で知らない場所はきっとないんじゃないかな!

「ああもう、はいはい。私がいつも撫子とクンニ、じゃなかった組手してるとこがあるから、そこ借りましょ」

 やいややいや言いながら僕は華城先輩とアンナ先輩が前で談笑してるのを見る。

 この光景が、いつまでも続けばいいのに。


332 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/22(火) 21:43:57.27 ID:XNH/9rFA0


「《鋼鉄の鬼女》と互角、か」

 そこは50畳ほどの、畳敷きの離れだった。全員が貸し出されたジャージに着替える。

「じゃあ、まずは綾女さんから」

「き、緊張するわね。アンナとこんなふうに組むなんてことなかったから」

「そういえばそうですわね。わたくしは構えないので、どこから来ても構いませんわ。撫子さんは、わたくしの直すべき点を見ていただけません?」

「いや、多分ないと思うぜ」

 ゆとりの言葉をきっかけにして、鼓修理が「はいスタート」とあえて気の抜けた声で試合開始を告げた。

「…………」

 華城先輩は動けずにいる。アンナ先輩からは殺気も何もなく普段通りの聖女の笑みで、それが逆に余裕を現していた。

「来ませんの?」

「行けるかー! どんだけアンナにはトラウマがあると思ってんのよ!?」

 全員がうんうんと頷いていた。包丁を投げつけられた鼓修理や首を絞め殺されそうになったゆとりは必死だった。

「仕方ありませんわね、それぞれ独自の筋力トレーニングを作ったほうが早そうですわ。皆さん、服を脱いでくださいまし」

 アンナ先輩以外の視線が僕に集まった。「ああ」とアンナ先輩も思い出したように、

「卑猥の知識を持っていると、自然と裸に羞恥心を持つようになるのでしたわね。わたくし、どうもそのあたりが繋がらなくて、申し訳ありませんわ」

 というわけで、僕一人追い出された。まあアンナ先輩は僕の身体のことを知り尽くしているし、筋力トレーニングメニューも常識の範囲内でやると思うし、今はとりあえず不破さんところへお見舞いに行こうかな。


333 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/22(火) 21:44:46.57 ID:XNH/9rFA0

 ゆとりはTシャツとスパッツ一枚、上半身下着下半身下着という冬場には似合わない服装を強いられた。

 浴場でも見たけど、なんでこの化け物女はこんなに肌が白くて胸部も大きいのだろうか。完璧にもほどがあると思う。

 全員が何となく自然とストレッチをして、「まずは綾女さんから」と化け物女が綾女に近寄る。腕を押したり、太ももを押したり、筋肉を手で測っているようだ。

「勿論、綾女さん他、皆さんの身体能力は平均を超えていますわ。ですが、細かい部分を見ると、やはりずれが出てきますの」

 PMのメモ帳にチェックポイントだろうか、そんなのを記入していく。

「骨盤のずれとか、背骨のずれとかですわね。骨がずれると全てが狂いますから……綾女さん、うつぶせになってくださいまし」

「ん、こう?」

「そう、楽にしてくださいまし」

 ゆっくりと背中を押していく。パッと見は整体みたいで、骨を直すといったところからあながち間違ってはなさそうだ。

「錦ノ宮さん」

「アンナでいいですわ」

「アンナって、ああ、うん。そう呼ぶ」

 ゆとりの言葉に「ありがとうですの」と笑いかける。それは中学時代の狸吉が目指していたもので、完璧な聖女の笑みだった。

「……はあ」 

「綾女さん。気持ちいいですの?」

「んー? すごい、気持ちいい」

 今にも寝そうな綾女に、化け物女はやっぱり化け物女らしく爆弾を放った。

「綾女さんたちは、わたくしや奥間君みたいに愛――性の感覚を知っていますの?」

「ひぎぐぐ!?」

「あ、痛かったですの?」

「じゃ、じゃない、びっくりして。なんで急に?」

「だって《SOX》って性知識の流布が目的なのに、その感覚を知らないなんておかしいでしょう?」

「わ、わ、わ、私は!?」

「えい、えい」

「いやああ、脇はらめぇぇぇ!! 第五の性感帯なのおおぉぉぉ!!」

 大型の肉食獣が人間でじゃれているといった様子だった。何も知らなければ女子高生の戯れに過ぎないのだろうけど、ゆとりにはアンナ・錦ノ宮という存在はバイアスがかかりすぎている。


334 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/22(火) 21:45:16.98 ID:XNH/9rFA0


「《育成法》制定前は、みんな自然とオ、」

「オナニーね!」

「ああ、そうそう。自然と覚えていったらしいですわね……わたくしも、奥間君と出会ってから、自然と覚えていきましたもの」

 な、生々しい。

 鼓修理は綾女の下ネタ教育に慣れているためか、この程度ではびくともしなかった。

「《SOX》が配った卑猥な絵画とか見たら、大体愛の蜜ぐらいは出るんじゃないっスか? あ、女は、の話っス!」

「……そう、なんですの。皆さん、では、経験あるんですの?」

 どうもまだ化け……アンナはそのあたりの羞恥心がわからないらしく、純粋に疑問として聞いてくる。

「わたくしは《センチメンタル・ボマー》としての奥間君に胸部の先端を吸われた時、身体中ががくがくとして、特にヴァ……《赤ちゃん穴》がびくびくして、愛の蜜が溢れだしましたの」

 善導課に追われた時、アンナも一緒にやってきて、追い込まれた狸吉がアンナの乳首を吸って覚醒させたあの事件だ。

「……、あー、ごめんなさい。あれは狸吉が悪いから」

「いえ、うん、まあ……外で善導課の皆さんが見ている状況は恥ずかしいですわね。で、皆さんは経験あるんですの? あの気持ちよさを」

「……ない」

「……ないぜ」

「あったらパパが泣くっス」

「そ、そのね、アンナ。私は、冗談としての下ネタは好きなんだけど、生々しい話になると、なんか、えっと、ひいちゃって」

「――そういうとこ狸吉に似てるんだぜ」

「――そっくりっス」

「まだ皆さんには愛し合った人がいないんですの?」

「……いない、わ」

「……はあ、その、いないんだぜ」

「鼓修理に見合うやつがこの世にいるんスかね」

 三者三様の答えに、アンナは納得したのかどうか、頷いた。

「愛する人ができるといいですわね。愛ほど幸せなことはありませんから」

 そういうアンナはあくまで自然な笑みで。

 自分や綾女の好きな奴が狸吉だっていうのは、疑いもしてない顔だった。

335 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/22(火) 21:46:44.48 ID:XNH/9rFA0

華城先輩が一番乙女だよね、わかります。
知識を知ってるからこそ羞恥心が生まれるんだよね。わかります。
336 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/22(火) 22:14:59.16 ID:rxnYxl2/O
耳年増って尊いよね
ギャルビッチが実は処女だったという夢のような感じが素敵すぐる
華城先輩はセクハラされまくれば良いと思うの
337 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/23(水) 01:13:36.39 ID:msSntneGO
しかしアンナと狸吉、親の目線から見れば別れた方が良いんだよね。
強姦で成立させた恋愛関係を肯定するのはヤバイ。それやったらアンナは強姦で成功体験を得てしまう。下手したら狸吉と子供を作ってその子に教育として強姦を働くかもしれん。
親なら反対するに決まってる。世間体だけの問題じゃない。
レイプから始まる恋?普通は無いですよ。普通なら。

あ、不破さんの話は普通に読みたいです。
338 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/23(水) 01:48:18.08 ID:o6hf/Cgn0
多分間違ってるのは親子共々話し合う気がないところだと思う、問答無用で金で解決しようとしてるところが
父親の方は、アンナ先輩が育ったのは奇跡って確か本編でも言ってたね
このアンナ先輩とたぬきちは別れないとあかんのは確か、けどたぬきちは責任感じてるからなぁ
339 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/23(水) 02:15:08.62 ID:o6hf/Cgn0
まあアンナ先輩も、今じゃ殆ど仇敵みたいに両親(《育成法》)を見てるから、話し合えばなんて無理なんだけどね
不破さん読みたいです
340 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/23(水) 13:52:15.98 ID:TT0vQFCHO
アンナ先輩がソフィア達と話し合えないのはしゃーない、まだ未熟な女の子だもの

でもソフィア達までそんなじゃダメでしょ
ソフィアは子供の都合のいい部分しか見たくない、だから今のアンナ先輩と話し合えない
子供はみんな純粋で可愛い、それでも悲劇が起きるのは悪い大人や性知識のせいって思ってる
産まれながらの悪も中にはいるんですぜ、お嬢ちゃん
341 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/24(木) 15:33:48.00 ID:9NE0O72D0
どこまでいっても親は子供に理想を押し付け、そんなだからラブホスピタルなんてモンが作られる
ソフィアは私欲が入ってないだけ金子玉子よりはマシだが
342 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/26(土) 04:07:32.14 ID:1ADphy2e0


 様子を見に行ったけど、まだ不破さんは寝ているらしく、月見草も休んでいるとのことだった。

「早乙女先輩は、いつもの通りですね」

「そうでもないぞ。アンナが入ってきたからのお、これからが楽しみじゃ」

「余計なこと言わないでくださいよ」

「なんじゃい、信用しとらんのかい。こういうことはの、自然に発展してこそじゃて」

「???」

「なんじゃ、わかってないのは奥間の方ではないか」

 ケッケッケと笑う様子は、ちょっとした座敷童っぽく見えなくもない。実際はデバガメなんだけど。

「アンナはお前と別れないためならなんでもするぞ。“なんでも”じゃ。せいぜい、気を付けるんじゃぞ」

 そういうと、またスケッチに入る。この状態になると何の耳も持たなくなるので、不破さんを起こさないように外に出た。

 何しようか悩む。あの道場っぽいとこに行ってもまだ女子は何かしてるだろうし、手切れ金のこともある。誰かに相談したいけど、誰がいいだろうか。

「撫子さん、いるかな」

 女将だから仕事きついかなと思いつつ、一応聞いてみると、存外簡単に時間を空けてくれた。

 人に話を聞かれない別室に移り、手切れ金のことを話してみる。

「錦ノ宮夫婦、そりゃ愚策に出たね」

「ですね、そんなことでアンナ先輩が諦めるわけがないのに」

「お前はどう思ってるんだい、あのアンナって子をさ」

「見捨ててはいけないと思っています」

 即答した。

 もし見捨てたら、それは《育成法》の被害者であり加害者である人を見捨てたことと同じだ。

「そうじゃない、男と女としての話さ。あんた、色んな罪を犯したアンナをパートナーにする気かい? いや、できるのかい?」

「…………」

 率直すぎるほど率直に言われ、言葉に詰まる。 

「錦ノ宮夫婦は愚策に出たけどね、あんたとアンナはくっつけてはいけないと思うのは親心さ。加害者と被害者の関係なんだ、綾女がアンナと同じことをしたらあたしもそうしてるね」

「でも、知らなかったんです、アンナ先輩は」

「そうやってずるずると傷つけたくないから言い訳を作っていく気かい?」

「僕は……僕には、責任がありますから」

「……そうかい」

 撫子さんは、心なしか感傷的に苦く笑った。

「あんたも難しい子と抱え込んだね」

「かもしれません。だけど、それでも」


343 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/26(土) 04:08:02.60 ID:1ADphy2e0


 ――見捨てたくない、という気持ち。それだけは、アンナ先輩に確かに抱いている思いで。

「アンナを《SOX》に入れたのも、どう転がるかね」

「…………」

「おい、訊いてるんだよ。答えな」

「……不安定には、なっていると思います。アンナ先輩だけじゃなく、ほとんどみんなが」

「ま、この前まで最上の敵が二重スパイなんて爆弾抱えていたら、普通だわな」

 ……それだけなのだろうか。それだけでいいのだろうか。

 撫子さんがこっちを見ていた。

「なん、ですか?」

「いんや」

 撫子さんは、やっぱり苦く笑って。

「難しいね、こればっかりはね。正直、子供だけでは無理な話かもしれないさね」

「……母さんとも相談します」

「それがいい。まあ、まず別れろって言われる覚悟はしときな」

「……はい」



 ピピピピピピピピピ



 『アンナ・錦ノ宮』と出ていた。

「あ、はい、もしもし」

『もしもし、奥間君。先ほどの場所に来ていただけませんこと? 皆さんジャージに着替えましたので』

「あ、早かったですね、今行きます」

 ピ

「わざわざ時間取っていただいて、すみませんでした」

「いいよ別に。こればっかりは、子供の手に余りそうだしね。まあ大人でも難しいことではあるけどもさ」

「やっぱり……そうですよね」

 撫子さんの言葉を胸に、先ほどの離れに戻る。

 あーあ、子宮回帰できればいいのになあ。胎児だったころに戻りたい。


344 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/26(土) 04:08:44.36 ID:1ADphy2e0


 アンナは愛しい人の様子がおかしいことにすぐに気付いた。

「どうしたんですの? 沈んでらっしゃいますわ」

「あー、その……なんというか。……さっきの、ほら」

 両親のことを言っているのだと思った。抑えきれない気持ちが湧き出てくる。

「……!」

「わたくしは、奥間君以外はいらないですわ……そして“悪い子”になるって決めましたの」

 ふふっと、呼気とともに笑声が漏れる。それは笑みのようで笑みでないことに、自分では気づかなかった。

 ただ、両親のことを考えると、『奥間君とわたくしを引き裂く敵』のことを考えると、

 ――唾液を飲み込んで、意図的に気配を柔らかくする。そうじゃないと、すべてに手を出してしまいそうだった。

「綾女さん、何か壊してもいいものはありません?」

「……壊してもいいもの……」

 綾女でもぱっとは思い浮かばないようだった。なら仕方ない。

「ああ、いえ、ちょっとだけストレス解消にしたくて。ないなら大丈夫ですわ」

 奥間君の方を見ると、すぐに意図を察してくれる。じゅん、と下腹部が熱くなる。前に借りた部屋をもう一度お願いしようか、と思ったところで、

「アンナ、ちょっといいかい?」

「? 撫子、どうしたの?」

 女将の撫子が現れた。様子を見ていた全員が撫子に注目したのを見て、

「鬼頭慶介からの招待状だよ」

「!」

 全員が招待状とやらを見てみる。
345 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/26(土) 04:09:13.50 ID:1ADphy2e0


「Show Time Village?」

「怪しすぎて何が何だかっスっけど」

「あたしには意味すらわからないぜこれ」

「男女ペアで。実質アンナと狸吉ね」

「これは何なのか、撫子さんはおわかりですの?」

 どうやら何かのイベントらしいということしかわからない。しかも会員制のVIPチケットらしい。ただそう書いてあるだけだったが。

「ここではね、身分もどこの組織に所属してるかも関係ないんだよ。顔がわからないようにするのが条件だけどね」

 はあ、と撫子が溜息を吐く。

「隣の隣の街さ。今日の19時から、ね。見るだけでもいいし、参加してもいい、相手も参加者の同意があれば変えていい、そういうところさ」

「それってまさか」

 PM無効化を綾女さんがして、

「SEXするためだけの……!?」

「そういうことさ」

 撫子は苦い顔だった。自分も似たような顔になっていたと思う。

 アンナにとって性は愛する人とのコミュニケーションが前提にあって、見知らぬ人間と快楽を追求するためのものではない。知った以上は余計にそう思う。

「止めましょう、アンナ先輩」

 即座に愛しい奥間君が判断した。

「下らないですよ、罠に決まってます」

「奥間君の言葉は、とてもうれしいですわ。皆さんも、同意見ですの?」

 ゆとりや鼓修理は呆れている。判断は《雪原の青》に任せた、無言でそう主張していた。

「何時がタイムリミット?」

「18時には出ないと間に合わないね。まあ別に遅刻しても構わないようなイベントなんだけどもさ」

 今が16時とある。

「一時間、時間をちょうだい。それまでに決めるわ」

 アンナはきょとんとしてしまう。

 《雪原の青》もきっと奥間君と同じ考えだと思っていたから、違う意見なのは、意外だった。


346 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/26(土) 04:35:35.57 ID:1ADphy2e0


 僕はすぐに華城先輩を問い詰めた。

「どういうことですか、華城先輩!」

「まだ何も決めてないでしょ」

「それがおかしいんですよ、罠に決まってるじゃないですかこれ!」

「あー、あたしも同意見だぜ、綾女」

「あのクソ親父のイベントですからね、罠でなくても怪しすぎるっス」

「ここでノーと言えばアンナと慶介の繋がりが脆くなるわ」

「まあ、そうですわね。おそらくこれは、『わたくしがこの場に《SOX》を呼べるか』という試験でもあると思いますの」

「……僕達にメリットがないじゃないですか」

「メンバーの顔の隠し方の程度にもよりますけど、財界や政界の主要人物ならわたくし、多分わかりますわ。目を隠してる程度なら何とか」

「その割には《雪原の青》の正体とかわからなかったっスね」

 鼓修理のあてこすりに、

「綾女さんや奥間君だとは思わなかったんですもの」

 ちょっと自信なさげになってしまう。本来は観察力ある人なんだけど、思い込みが激しいので何とも言えない。

「でもそんなイベントに出席してる連中の正体が一人でもわかれば、これは朗報よ」

「まあ、あのクソ親父は関わっていることはわかったっスけどね」

「アンナが嫌ならいいんだけど」

「僕の意思は……?」

「できれば参加してもらえないかしら。キツイ場面もあるかもしれないけど」

「わたくしは構いませんけど」

 アンナ先輩は小首をかしげた。

「とりあえず顔隠しには奥間君のトランクスを借りて」

「それは決定なんですね……」

「だって、わたくしの髪は目立ちますし、ウィッグも用意するには時間が足りないんですもの」

 まあ、確かにアンナ先輩の容姿は目立つけれども。絶対趣味入ってるだろ。

「え、僕も《SOX》スタイルで?」

「えっと、『顔が隠れること』『偽名を使うこと』が条件みたいよ」

「パ、あれ用意してないんですけど……」

「じゃあサングラスとマスクでいいわね、《SOX》と喧伝する必要もないんだし」

「結局行くんスか?」

「みたいですわ。まあこれぐらい乗り越えられないなら、わたくし共ももっとひどい罠にはまって終わり、そういうことですわ」 

 アンナ先輩の軽く、だけど自信にあふれた言葉に、もう不平の言葉は出なかった。

347 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/26(土) 04:39:10.32 ID:1ADphy2e0
>>350
アンナ先輩の二つ名、『雪原の青』的な感じでお願いします。

ゆとりはペニス@マスターってあるんですけど一応。鼓修理はないですよね? 記憶にないだけでしょうか。

本来はない予定でしたが、ちょっとやってみたかったイベントです。


こういう性規制がされたら、絶対こういう裏でのイベントが出てくると思うんですよ、禁酒法みたく裏で出回るものです。
348 : ◆86inwKqtElvs [sage]:2020/09/26(土) 07:14:53.81 ID:1ADphy2e0
安価下

人いないんだった(ノ≧?≦)☆
349 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/26(土) 09:57:42.77 ID:ZiP5HCOsO
アンナ先輩の二つ名?
厨二っぽいのが良いんですよね?

それなら『獣愛の飴』で。
(じゅうあいのあん)

>>1的にもっと良さそうのあったら、そっちでOK。
350 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/26(土) 10:35:33.52 ID:HsBKuFXK0
獣欲の銀愛《じゅうよくのシルバーラブ》

うーんラブマシーンとかぶるか

気に入らないなら安価したでok
351 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/26(土) 17:21:39.58 ID:1ADphy2e0
皆さんがいいなら>>350でいいですか?
352 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/26(土) 17:27:27.26 ID:yujQg04dO
いっそ、【逆姦獣(ぎゃかんじゅう)アンアン】ってのはどうよ。
アンナ先輩ならどんな名前でも名前負けしないから困る
353 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/26(土) 17:32:08.35 ID:yujQg04dO
>>351
ごめん、来てたの気づいてなかった。
作者さんがその名前でしっくりくるなら、こちらからは何も言わない。>>350本人が別の名前を望んでいるなら違うかもだけど、今のところ何の反応もないしね。
自分が考えた名前採用されなくて残念って気持ちはあるけど、そんなの安価ものじゃ良くあることだし。
354 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/26(土) 18:16:57.83 ID:Dy3byLkG0
移動中だからID違うかもだけど、>>350GETした者です
自分は使ってくれたらそりゃ嬉しいな、作者がいいならさ、あんま安価取ったことないしw
355 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/27(日) 15:51:43.26 ID:rL5XD5y+O
乱交パーティー会場って…

わざわざ隠れてやるくらいなら、海外でヤリまくれば良いのに
356 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/28(月) 22:48:57.36 ID:TwDEMAj70


 僕はサングラスと帽子を持っていき、アンナ先輩は僕のトランクスを持ってタクシーに乗った。それでいいのか。

 降りた場所で地下に案内され(なんかエレベーターの操作盤をややこしい起動方法を使って表示のない階に降りてた)そこで顔を隠すように言われ、帽子とサングラスにトランクスと訳の分からない組み合わせでVIPルームに入る。

「やあ、ようこそ」

「こんばんはですわ。今日はどのようなイベントなのでしょう? わたくし、とても楽しみですの」

 本心と表情が乖離した駆け引きは、僕も苦手だ。どちらかと言えば情に訴えるタイプだしね。アンナ先輩はトランクスで見えないけど、声音は涼やかに笑っている。

「今日は特に……えーっと、偽名なんだっけ?」

「獣欲の銀愛《じゅうよくのシルバーラブ》ですわ」

 ちなみに華城先輩が一秒で名付けた。アンナ先輩がいいならいいけど、いいのだろうか。

「今日はね、趣向が特別なんだよ」

 カーテンが開かれる。カーテン? 地下でカーテン?

 開かれた窓には、上から見渡せるようになっていた。



 そこにはボンテージ服の男女がいろんな方法で痛めつける、いわゆるSMプレイをしていた。



「わざわざ日本でやらなくてもいいのにねえ。ま、今は日本を離れるのが難しい情勢なのはあるけど」

「こんなものを見せてどうしたいんですか?」

 音が聞こえないため、動いている姿だけだったけど、それでも50人ほどはいるだろうか、それらが一斉に、しかも倒錯したプレイをしている姿は、正直なところおっきしていた。

「《センチメンタル・ボマー》?」

 咎める声が聞こえるけど、仕方ないじゃない、だって絵ですらこんなに厳しく取り締まられているこの世界で身近に! こんなに! 発情している人間がいる!

「なんで性はダメなんだろうね。人間は気持ちよさを追求する生き物なのにさ。あ、君たち、ここ、入ってみる?」

「……なぜそうなりますの?」

「君たちの世界を広げる必要があると思ってね」

 君たち、と言っているが、これは僕じゃない。アンナ先輩に向かって言っている。

 でも正直に言うと、これに似たことは結構してるんだよなあ、僕たち。

 なんだかんだでアンナ先輩も発情した人間を見て、うずうずしているのがわかる。

「大人は卑怯だよ」

 慶介の自嘲に満ちたような、不思議な声だけが、非現実的なこの空間に響く。

「あとで動画取られていても困りますわね」

「それはない。それをするとこのパーティーの信用がガタ落ちだからね。僕の場合はたまたま近くに来ていた君たちへの、純粋な好意さ」

「…………」

 淫獣モードのアンナ先輩が吟味しているのがわかる。あと慶介、アンナ先輩のビーストモードを直接は見たことはなかったのか、だらだらと汗をかいている。アンナ先輩から、くちゅ、くちゅと鼠径部から音がしている。

「乗り気、みたいだね?」

「……《センチメンタルボマー》、わたくしは今ここで帰っても何の収穫もないと考えますわ」

「見学だけでもOKだよ」

 つまり参加したいんですね、わかりました。

 ちょっと僕もこの空気にあてられて、おかしくなっていたんだと思う。でもしょうがないじゃない、狂うよこれは。


357 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/28(月) 22:49:51.40 ID:TwDEMAj70

 さすがにその姿じゃ空気が壊れるとのことで、着替えることになった。僕は革のパンツに仮面、アンナ先輩は、ボンテージ服に仮面とウィッグだ。アンナ先輩の銀髪は目立つからウィッグは必要不可欠とのこと。

 ぴっちりとした素材に、チャックが上からついていて、局部を露出させられるつくりになっている。昔の人は良く考えたよなあ。

「お待たせしましたわ」

「…………」

「やっぱり、似合いませんか……?」

 ウィッグがあるので印象が違うが、妖精のように整った顔立ちも完璧なプロポーションも、仮面やボンテージでは隠し切れなかった。上品さもあって、不思議な存在感がある。

「綺麗、です。とても」

「……もう」

 そこでウェイターらしき人間が、ドア前で説明を始めた。

「ではご案内いたします。当パーティーの参加は初めてでしょうか?」

「はい」

「パートナーを変えるには合意が必要となります。あまりありませんが、断ってもしつこいようでしたら当スタッフをお呼びください。こちらも見張っておりますので何かあったら駆け付けます」
 
 警備員がいるのはわかっていた。明らかに雰囲気の違うガチムチな野郎がいたからね。
 
「道具を使いたい場合はあそこのバーに貸し出しを申し出てください。無料で貸し出しております。使い方がわからない場合は、バーテンダーにお聞きください。ドリンクはお二人の場合はソフトドリンクのみと伺っていますが、よろしいでしょうか?」

 はい、と頷く。そこだけ法律順守かよ。慶介の価値観もわからねえな。

「以上となります。ご不明点はございますか?」

「いえ、わからない時はまた伺いたいと思いますわ」

「かしこまりました。では、ごゆっくりお楽しみください」

 そして、扉が開く。


   *


 むせかえるほどの艶香が、まず鼻を直撃した。なんというのか、下半身に直接響く匂いだ。

 初めての客は珍しいらしく、特にアンナ先輩は雰囲気を変えても何か格のようなものが違うのが皆わかるらしく、注目が集まる。

「あれ、使いたいですわね」

 ……天吊りの鎖だった。そりゃそうですよねー。

「先、バーいきませんか?」

「いらっしゃいませ」

「スポーツドリンクを二つ。それと、あの鎖は使えますの?」

「はい、只今ご使用いただけます」

「じゃあ、これと、……これは何に使いますの? あとこれは?」

 質問攻めにあっても表向きはバーテンダーの職務をこなし、いくつかを借りてくる。それらをまとめて袋に入れて、

「じゃあいきますわよ」

358 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/28(月) 22:51:09.12 ID:TwDEMAj70


 アンナ先輩、なんだかんだでいつもより昂っているらしい。僕は手枷を付けられ、天井に吊るされる。まだ両足がつくぐらいの高さだ。

「ふふふ……」
 
 袋から取り出したのは、……家でもおなじみの羽箒だった。

「ひっ」

 羽箒で僕の乳首を撫でる。思わず変な声が出た。

 撫でながら僕の革のパンツのジッパーを下すと、ぼよんと僕の愚息が飛び出す。

「美味しそう……」

 家ではもう少し焦らすのだけど、今はアンナ先輩も興奮していて、あっという間に僕の愚息はアンナ先輩の口の中に吸い込まれた。



 ぐちゅ、ぐちゅ、ぐちゅ、ぐちゅ!!



「はあ、ああ、出……!」

「まだですわ」

「痛い!?」

 見ると、根元をアンナ先輩が握りしめていた。

 アンナ先輩が視線だけで、鎖の操作する人に指示する。


 きり、きり、きり


 鎖三つ分上がって、つま先立ちになる。ゆらゆらと揺れる感覚が不安で、怖くて、それがスリルとなる。

「そこでいいですわ」

 鎖が止まった。

 アンナ先輩のクロッチの部分は開いていて、愛の蜜が駄々洩れだ。

 アンナ先輩の局部が、僕の愚息に押し付けられる。豊かな胸部も、革越しに伝わるとまた違った感触になる。

「はあ、はあ、はあ、はあ」

 アンナ先輩が僕の唇を奪うと同時に、僕の愚息がアンナ先輩の中に入る。




 ぐちゅ、ぐちゅ、ぐちゅ、ぐちゅ!!



「ふ、ふうん、あ、ん、んんんん!!」

「はふ、あ、あ、れ、れます!!」

 アンナ先輩が、視線で笑った。

 ゾクゾクとその視線に快感が来て、同時に発射する。

 抜くと二つの愛の蜜が交じり合ったものがこぼれ、そのこぼれたものを指ですくうと、アンナ先輩は舐めた。

 そしてもう一回、今度は口で僕の愚息を舐めると、今度は位置を調整しながら挿入れなおす。

 揺れる鎖は不安定で、それが感覚としてアンナ先輩は好きらしく、ゆらゆらと揺れる。

 右足を上げ、僕に巻き付ける。

 アンナ先輩の笑みが笑いから嗤いに変わった。

「さあ、存分にイッてくださいまし……!!」

「う、う、あ、あ、あ!!」

 ――連続で二回、放つ。でもまだ足りない。アンナ先輩を味わいたい。僕からアンナ先輩をイカせたい――

359 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/28(月) 22:51:58.63 ID:TwDEMAj70


「……ベッドはありますの?」

 鎖を操作してる人に聞く。空いてるベッドを指示されたので、そちらに向かう。

 アンナ先輩から抜いても、まだ息子は勃ち上がったままだった。

 ベッドに座ると、アンナ先輩が上から乗っかる。対面座位の姿勢は一番のお気に入りだ。当たり前のように僕の息子はアンナ先輩を刺した。

「ううん……!」

 刺激が足りなくなってきたのがわかったので、「何か袋にありますか?」訊いてみると、

「排泄孔に、入れるためのものが入ってますわ……」

 袋を探ると、長さ25センチはあるアナルパールだった。横幅も三センチはある。

「え、これ入れるんですか?」

「ダメですの?」

「……いえ、せっかくだから試しましょうか……痛かったら、言ってくださいね」

 どうせ指で弄るつもりだったし、アンナ先輩なら大丈夫だろう。多分。

 ローションなんて贅沢品がついてきたので、アナルパールにかけ、少しずつ挿入れていく。

「い、ひ、やん、あ、あ、い、やああああん……!」

 全部入りきったころには、アンナ先輩の顔は法悦しかなかった。

 アンナ先輩の腰を持ち、上げて、落とす。それを繰り返す。

 アンナ先輩が体重が一点にかかるようにしてくれているので、衝撃が凄い。自分も下から突き上げる。革の隙間から舌を入れ、胸部の先端を啜る。

「はああああああああんんん……!」

 がくがくがく! と腰が揺れ、「ぐ、搾り、取られる……!」びくびくびく!と中の壁が収縮し、僕の息子を搾り取ろうとする。けど三回はイッた僕の息子は満足しなかった。

 下からの突き上げを止めない。

「あ、ひい!?」

 アンナ先輩が連続でイく。こうなるとアンナ先輩は止まらない。ふと、何かのスイッチを見つけた。

「こ、これなんですか?」

「あ、それは……あ、あ、い、ま、うしろ、の、スイッチ、ですわ……!」

 アナルパールのスイッチか。

 とりあえず、押してみた。



 ウィンウィンウィン



「はうう!!」

 アンナ先輩の締め付けが強まり、後ろ側の壁から何か異物感がある。どうやらぐにゃぐにゃと蛇のように蠢いているようだ。

「あ、あ、あ、あ、気持ちい、気持ちいいんですの!!」

 左手はたわわに実った胸部を揉みしだき、右手はクリトリスをつまんだ。

「ひ、いや!?」

 パシャン、と熱い水。潮を吹いたアンナ先輩はビクンビクンと痙攣しているのにまだまだ足りなさそうで、周りからの視線もアクセントにさらに嗤いながら腰を蠢かす。

 僕もそれに付き合っていいと思えるぐらいには、この空間に酔っていた。

360 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/28(月) 22:52:31.91 ID:TwDEMAj70


 慶介への挨拶もそこそこに、僕らはタクシーで清門荘に戻る。

 八回はイッた。全部アンナ先輩に搾り取られた。腰が痛い。

「その、よかったんですけど……、何か意味ありました?」

「行く前に言ったとおり、何人かの名前と顔は一致しましたわ……」

 まじかよ、そんな余裕なかったよ。

「利用できますわね」

 冷徹に笑う。変化する前は見たことのない顔で、僕は苦手な顔だった。

「アンナ先輩、」

「帰ったらどう話しましょう?」

「……あー、」

 単にSMプレイやりまくりましたじゃなあ。

「まあいいですわ……明日説明しましょう。今日は奥間君も疲れましたでしょう?」

「あ、はい、ものすごく」

「不破さんの状態は気になりますけど、明日は帰らなくては。……ふふふ、奥間君」

「は、はい」

「やっぱり、わたくし、“悪いこと”が好きなんですわ……とても、よかったんですの」

「…………」

「……清門荘についたら、起こしてくださいまし」

「はい」

 眠ってしまったアンナ先輩を見て、僕は気付いた。

 そういえばアナルパール入れっぱなしじゃなかったっけ?

361 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/28(月) 22:53:53.69 ID:TwDEMAj70

書いてみたかっただけパート。なんかアンナ先輩のマンションとあんまり変わんないな。しいて言うなら、ボンテージ服のアンナ先輩は絶対最高です。
362 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/29(火) 21:19:44.54 ID:Y9iAHKDp0


「何人か知っている人を見かけましたわ」

 帰った後、アンナ先輩はそう報告した。

 ちなみにアナルパールはやっぱり抜いてなくて、これは後で買取するらしい。

 不破さんと月見草は結局治らなくて清門荘専用の送迎者に乗せて帰ってもらってる。僕たちは今、電車の中だ。

「でも、そのこと誰にも言えねえんだぜ?」

「今は、ですわね」

「…………」

「綾女さんの心情的には反対のようですわね」

「秘密を握ってとか、そういうのはね。効果的なのはわかるんだけど」

「綾女さんらしいですわ」

「結局あのクソ親父の思惑がわからないままっていうのが悔しいっスね」

「わたくしを引き入れたいのでしょう」

「それと、乱交パーティーを見せられることに何の因果があるのかしら?」

「陥れたいのかもしれませんわね。わたくしを、とことんまで」

 若干鼓修理がばつの悪そうにつぶやく。

「うちのクソ親父がすみませんっス」

「鼓修理ちゃんは悪くないんですのよ。わたくし共の事情ですわ」

 妹に対するように、アンナ先輩は優しく笑った。

「闇堕ちしたアンナか、それはそれで絵になりそうじゃの」

 この人は、本当に何でも絵のモチーフにするな……。

「さあ、明日から学校よ。どちらも両立していきましょうね、奥間君」

「はい」

 ……これでいいんだよな?


363 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/29(火) 21:20:37.02 ID:Y9iAHKDp0
ここから三月まで時間が飛ぶのですが、

せっかくなので掌編を一つか二つ。どちらも不破さん視点が入ります。
364 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/29(火) 21:23:27.77 ID:Y9iAHKDp0

*アンナ先輩はゆとりからもらったアフターピルと、低用量ピルを現在は使用しています。


  1/16


 不破氷菓は科学者である。自分ではそう自負している。

 だが時に発明者と思われる節も多々ある。

 今回の依頼は――



「不破さん? ちょっと、ご相談がありますの」

 アンナ・錦ノ宮会長だった。化学部の部室にまで来るとは珍しい。

「どうしました? なにかありましたか?」

「ええ。ここ、人は来ないですわよね?」

「滅多に来ませんね。それで、どうしましたか?」

 なかなか用件を言い出さないのは珍しい。促すと、一枚の雑誌のコピーと思われる紙を取り出した。

「朱門温泉にあった、不健全雑誌のコピーの一部なのですけど……」

「ほう。拝見してよろしいのですか?」

「今はわたくしも《SOX》ですから」

 どういうわけか、この会長も《SOX》になってたらしい。その話はおいおい聞いていくとして、

「珍しいタイプの不健全雑誌ですね。グッズのカタログとは」

「そこに、トレーニングの話があるでしょう? それについて、相談したいんですの」

「ふむ」



『これで彼もあなたも快楽絶頂! レッツ膣トレ!!』



「《赤ちゃん穴》も排泄孔も、筋肉でできているので、トレーニングができるらしいですの。鍛えれば、わたくしも奥間君もさらに気持ちよくなれるらしいのですが……、鍛え方がわからないんですの……」

「会長は十分筋肉はあると思いますが」

 とはいえ興味深い話だった。この手の方向の知識は氷菓にはなかったからだ。

「まずはアンナ会長のク、おっといけない、CスポットやGのスポットの位置を測らせてくれますか?」

 カタログにある形を模倣することは難しくはない。ただこれは万人向けのものだ。せっかくだからアンナ会長にあった形にした方がいいだろう。

「え……、えっと、不破さんが、わたくしの局部に触るんですの?」

「いけませんか?」

「いえ……お願いしますわ」

 アンナ会長がスカートを下す。そしてショーツを脱ぐと、銀の陰毛に隠された性器が見えた。

 あくまでも無表情に、しかし興味津々に見つめる。以前は余裕がなくて見れなかったが、陰毛は銀なのか。手入れらしい手入れはしていないようだが、絡まったりせず纏まっている。

「そ、そんなに見つめないでくださいまし……恥ずかしいですわ……」

「失礼しました。触りますね」

 一気に大陰唇を広げる。「きゃ!?」クリトリスと膣口が見えた。ついでに愛の蜜がドバドバと落ちていくのも見えたが、これはいつものことだろう。

「あまりひくひくしないでくださいね」

「そ、そんなこと、言われたって……! ひん!」

 クリトリス、8mm、膣口までの長さ、約3.2cm

「測れましたよ」

 さすがに形状が特殊なためか、PMにも引っかからなかった。このまま3Dプリンターで型を作ってしまおう。

365 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/29(火) 21:23:57.49 ID:Y9iAHKDp0


 作っている間に、もう一つ。

「排泄孔は、そうですね」

 カタログを見る。

「そもそも排泄孔は使ったことはありますか? 使ったならどの程度まで使いましたか?」

「……奥間君の突起物を……奥まで……」

「充分です、ありがとうございます。ならこの細いものを、せっかくなので20cmほどの長さと、1.5cmの連なりにして作ってみましょう」



 ガタンゴトンガタンゴトン



「できました。まず排泄孔から説明しましょう」

 排泄孔は傷つきやすいので、氷菓手作りのローションをかけ、「中に挿入れますね」「自、自分で入れますわ」アンナ会長が自分で、「んっ……」艶めかしい声を出しながら挿入れた。

 最後の部分は少しだけ大きく、2cmにして、さらにリングを付けている。

「どうですか?」

「……刺激は、あまり……」

「トレーニングですから刺激は念頭に置いていません。筋肉を絞っている意識はありますか?」

「ん、こうでしょうか? んん……!」

 ぎゅうと絞られるのが見えた。リングを引っ張る。

「きゃ!?」

 ずる、と抜けた。

「このように、抜けることがないようにするのが排泄孔のトレーニングです」

 そのまま挿入れなおす。抜き差しの感覚を得たようで、「ああ……!」愛の蜜がさらにドバドバとこぼれる。

「こちらも」

 クリトリスを覆う形状にトゲトゲをつけ、氷菓が指で確かめたGスポットの位置まで伸びる特殊な形状にしている。下の部分には排泄孔用のと同じ、リングがある。

「これは、Cの部分を広げて……このように装着します」

「ん、なんか、当たってないように思うのですけど……」

「締めれば当たるようにできています。締めてみてもらっていですか」

「あ、これ、中も、外も、両方、当たって、……!」

 ビクンビクン!とアンナ会長の腰が蠢いて、膣用と排泄孔用、両方のトレーニング器具が落ちた。

「まずは筋肉を締めるところを意識してみてください。会長ならすぐできるでしょう。明日、また来てください」

 まあそれ以上に、愛の蜜の処理の方が大変そうだが。

「これは……今までで一番辛いトレーニングになりそうですわ……」

366 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/29(火) 21:24:48.37 ID:Y9iAHKDp0


「そんなものを作らせたんですか」

 アンナ先輩の家で、呆れて僕はそう言った。ちなみにいつもの天吊り状態で、僕はパンツ一枚の状態だ。

 そしてアンナ先輩は、そのトレーニング器具とやらを二つ着けているだけ状態で、

「それで、奥間君も頑張ってほしいことがありますの」

「……なんです…………っ――!?」

「これ。身に覚えがありますでしょう?」

 《鋼鉄の童貞》朱門温泉でもらってきた貞操帯だ。

 アンナ先輩が僕のパンツを剥ぐ。

「ちょ、ちょっと待ってください、先輩、それ……」

「10日、頑張りましょう? できますわよね?」

 アンナ先輩が優しい声で励ましながら、ビルドアップした僕の息子に1cm幅の革のベルトを付け、それだけでも射精できないのに《鋼鉄の童貞》を無理やりに付けた。

 これでもう、射精はおろか、勃起もできない状態になっている。

「ひ、ひ……う、あう」

 思わず漏れた苦しみの声も、アンナ先輩は恍惚のまなざしで聞いていた。

「ああ、愛に悶える声は、やはり素敵ですわね……! わたくしも耐えなければ……!」

 アンナ先輩はコツをつかんだのか、イッても落とさないようにはなっていた。ただ何度もイッているため、乳首が服にこすれるだけでイケてしまうようになっている。

 天吊り状態を解除された僕は、しかし不安しかなかった。

 鍵を見せびらかすようにひらひらと振りながら、しかしお互い10日間の地獄を我慢しなければならないのだ。



   *


「ふ、不破さん……いますの?」

 ぽたぽたと愛の蜜を垂らしながら、それでも内またで歩いてくるアンナ会長は、明らかに淫獣の目をしていた。

「一日で慣れましたか?」

「こ、コツは掴んだと思いますわ」

 そして奥間も射精管理されていることを知った。かわいそうに。

「エビ○スと亜鉛と整腸剤の組み合わせがいいらしいですよ。ドラッグストアで買えます」

「いいことを、聞きましたわ……うふふひっ」

「さて、診せていただけますか」

 前と後ろのリングを同時に引っ張る。「はあん!!」ビクンビクンと鼠径部を大きく振動させ、へなへなと倒れこんだ。

「……《赤ちゃん穴》に、指を入れてもいいですか?」

「え?」

「締りがいいか悪いかを判断するので。嫌ならば結構です」

「…………」


367 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/29(火) 21:25:23.41 ID:Y9iAHKDp0

 浮気でないかどうかを判断しているのだろう。結果、浮気ではないと判断したらしい。

 氷菓はアンナ会長の《赤ちゃん穴》に指を一本、挿入れる。

「んん……」

「締めてください」

 ぎゅうと締まる。氷菓も自分で触ったことがあるが、それよりも格段に締りが良かった。

「充分じゃないでしょうか」

 快楽を与えるのが目的ではないので、すぐに抜く。

「奥間さんも幸せだと思いますよ」

「……限界まで挑戦したいんですの」

「……ふむ」

 床に落ちてしまったので、いったん、器具を水で洗ってから、もう一度挿入れなおす。「はふん……!」

「このリングに重りを付けます。少し、リングを引っ張りますね」

 くい、くい、

「ああん!」

「結構です。まずは、アンナ会長なら……」

 250gと350gの重りを、取り出し、250gの方を前に、350gの方を後ろに着ける。

「負荷は、確かに、大きい方が、筋力トレーニングには、なりますが……!」

 一気に重くなったので、辛そうだ。

「これを一週間、頑張ってみてください」

「い、一週間!? い、一週間もなんて、あああん!」

 ビクンビクンと痙攣した途端、ゴトンと落ちた。

「やり直しですね」

「はふ……!」


   *


 アンナ先輩に三つの瓶を渡された。これを毎日決まった量飲まないといけないらしい。

 おそらく精液を作るための材料だろう。これを飲み続けるだけでも理論上は5日で満杯にはなるのに、

「あん、ああん……!!」

 ビクンビクンとし続けるアンナ先輩を見続けても、勃起すら許されない。アンナ先輩は外でも学校でも(!)つけているらしく、その時は気を付けてはいるそうだが、やはりもじもじしてるらしい。そりゃそうだ。

「奥間君、これ、食べてくださいまし……!」

「…………」

 うん、これが美味しいことは知ってる。アンナ先輩の作る料理は僕とつながるようになってからは異物混入しなくなったし。

 だけど、明らかに滋養強壮を目的としているというか、これ朱門温泉秘伝のレシピじゃなかったのかよ。

 もうやけになってがつがつと食べる。お腹の底の方が熱い気がする。薬も飲む。

 アンナ先輩と一緒のベッドで、それぞれ器具以外は外して、裸で就寝、できるか!!とツッコミたい。

 もう僕のムラムラは、2日目で限界に来ていた。


368 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/29(火) 21:26:26.08 ID:Y9iAHKDp0

 8日が経った。どうなっているだろう。

「あ、ああああんん!!」

 指への締まりが明らかに良くなっていた。奥も排泄孔もそうだろう。

「……400gと500g、一気に増やしてみますか?」

「あ、う、おねがいしますわ……ああ、これ、重いんですの!! お、お、あ、し、締めなくては……!!」

 さすがにきついらしく、イケばすぐにでも抜け落ちそうだ。

「奥間さんの様子はどうですか?」

「あ、ああああんん!!」

 ビクンビクン! ゴトンゴトン!

「あ、接吻しかしていませんの!! ああ奥間君の臭い、濃くなって、ああ、あと12日、わたくしの方が持つかどうか……!!」

 最初は10日と言っていたような気もするが、まあいいだろう。

「ふ、ふひひひひ!」

「…………」

369 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/29(火) 21:26:54.69 ID:Y9iAHKDp0


 約束の、10日。

 滋養強壮にいいものばかり食べさせられて、帰ってきたら発情しっぱなしのアンナ先輩の隣にいて、僕はとうに限界だった。

「は、外してください! お願いします!」

「んー……、ふふ、やっぱりやめましたわ」

「え……?」

「ああ、いいですわね、その絶望の顔……!! ふふふふひ!!」

 気づいた。アンナ先輩は最初から10日で解放する気なんてさらさらなかったのだ。

「お、お願いします! は、外して、何でもする、します! だから、お願いします!!」

「……そうですわね、じゃあ」

 アンナ先輩が愛の蜜だらだら状態でM字開脚をする。器具だけが入った状態で、あとは裸の、最近の夜の状態だ。

「まずは、わたくしの器具を、両方抜いてくださいまし……口だけで」

「は、はい……!」

 リングがついているからそこを噛む。「!?」重た!? え、こんなの付けて毎日平然とした顔で学校行ってたの?

「ん……!」

 ずる、と前の器具が抜ける。後ろも同じくリング部分を歯で噛んで引っ張る。

「あああああん……!」

 びくん! と痙攣した。最近のアンナ先輩はイキっぱなしなのでこれがイッたのかはわからないけど。

「じゃあ、その指で、手で、口で、私の胸部や局部をこねくり回してくださいまし……!」

 口で愛の蜜を直接啜る。排泄孔に指を入れ、かぎ状に動かす。胸部を揉みしだく。

「はああああああああんんん!!! あ、あ、あ、指、入れてくださいまし……!!!」

 声も何もかもが全部が僕の五感全てを刺激する。もう僕は限界のところを綱渡りさせられている。

 痛い。勃起できない! いや、嫌だ、辛い!! 助けて、

「助けて、アンナ先輩、これはずしてぇぇえぇ!!」



「だーめ、ですわ」



 アンナ先輩が僕の貞操帯からはみ出た睾丸を揉む。より強く精子と精漿が掻き混ざり、精液が作られていく。

 思わずアンナ先輩の手首を握って外そうとするけど、力比べでアンナ先輩に勝てるわけがなかった。

 逆の僕の手を自分の《赤ちゃん穴》に誘導する。自然と中指と薬指を入れてしまう。

「!?」

 締まりが凄い。凄まじい。でも硬いわけじゃなく、ざらざらとした部分がちょうどいい弾力で跳ね返ってきて心地いい。

 ああ、いれたい、いれたい、いれたい!!

「あ、あ、あ、あああああん!!」

 潮を吹き、アンナ先輩は何回目か数えるのを忘れるほど、イッた。

 ――結局、鍵を開けてくれないまま。

370 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/29(火) 21:28:07.17 ID:Y9iAHKDp0

「今日が、最終日ですか」

「ありがとうございます。いい経験になりましたわ」

 20日目。アンナ会長は今日は器具を嵌めてなかった。

 筋肉には休む時間も必要だという。柔道の経験もあるアンナ会長がそういうのならそちらの知識の方が正確だろう。

「わたしも今回はいいデータが取れました」

「ふふふ、今日は特に楽しみですわ……!」

「まあ、愛を育んでください。奥間さんが壊れない程度に」



   *



 僕はアンナ先輩が帰ってくるのをひたすら待っていた。

 かちゃ……

「!!」

「ただいまですわ。……ふふ。もうすでに裸だなんて……」

「あ、アンナ先輩、僕、本当に、もうだめで……!!」

「20日間。よく頑張りましたわ……奥間君」

 《鋼鉄の童貞》を外してくれた!

 ボン、と爆発するように、息子が天にそびえ立つ。

「ふわあ、いい匂い……!!」

「せ、先輩、最後まで、お願いします!!」

 最後の根元のベルトが、外してくれない。これがなければ射精できるのに!!

「さあ、仰向けになって……奥間君」

「あ、あ、」

 逆らうこともできず、ほんの少し押されただけで僕はベッドに仰向けになる。

「我慢のお汁が凄いですわね……! パンパンですわ。これが、わたくしの中に入るかと思うと……!」

「ひっ! お願い、止めて、先輩の、先輩の中、気持ちいいこと僕知ってるから!!」

「ああ、嬉しいですわ!! でも、まずはこっちから……!」

 SMパーティーから持って帰ったアナルパールを挿入れるように要求された。

 ズチュ、ツルン、ズルズルルル!

「ああ……、後ろが、いい感じに……!! さあ、本番といきましょうね……」

「アンナ先輩、お願い、ベルト外して!!」



 ズ、ズチュ、チュ、ズ、ズ……



「アンナ先輩、い、一気に入れて、このベルト外して!! ああ、締まりが! 前と全然違います!!」

371 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/29(火) 21:29:00.23 ID:Y9iAHKDp0


「ああ、その表情、狂いかけのその表情、素敵ですわ……! くす、動きますわよ」

 ズ、ズ、ズ、ズ、ズチュ……

「あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、」

 アンナ先輩はわざとゆっくり動いている。その代わり締め付けがぎゅうぎゅうと本当にすごかった。ちんこもげそうになるぐらい凄い。

 だからこそ、この膣内に出したい!!

「ああ、この20日間、奥間君がどうなるか、ずっとずっと楽しみでしたのよ……! その表情、本当に素敵ですわ……!」



 このまま狂わせたいぐらい可愛い――



「ああ、でも狂ってしまったら、色々これからが困りますものね。わたくしもどれくらい溜まったかが楽しみですし、外しますわ……その前に」

 ま、まだ……何かあるのか?

「奥間君が愛しているのは誰ですの?」

「あ、あ、あ、アンナ先輩、です」

「聞こえませんわ。もっと大きな声で」

「アンナ先輩です!!」

「いいですわ、いきますわよ!!」

 根元が、ぶつん、と外れる音がした。


 ズンズンズンズン!!


「う、」

 ズ、

「うわあああああ……………!!!!!」



 ズチュウウウウウウウ、ズチュウウウウウウ、ブチュウウウウウ



 まるで尿道口が裂けるような、射精感の時間と感覚を引き延ばしたような、押し出す感じ。

 身体中全ての血液が精液になったのかと勘違いするほど、僕の息子に力が集まる。

 それでも一回力を込めただけではイキきれずに、二回、三回と力を込めて、ゼリーを通り越して半分固体状になった精液を押し出した。

 この世の射精感をすべて集めたような、凄まじい快感だった。

「あん、どろどろですわ、ん」

 膣内に入りきらなかった分を、指ですくってアンナ先輩が舐める。

「ふわあああん……!!」

 ぎゅうううううと半固体の精液が搾られる。
 
「また、また、またイキます!!」

「いいですわよ、何度でも、何度でも……!! 今夜は愛の蜜を搾りつくしますわよ!!」

 一回目ほどではないけど濃い射精感の予兆に、僕とアンナ先輩は震えた。

 僕は動けない。アンナ先輩が搾り取る快感をただ享受するだけの存在になり下がった。

 ただアンナ先輩だけがそれを悦ぶように、舌が僕の耳を舐めた。

 僕の排泄孔にアンナ先輩の指が入っても、もう抵抗する気力は残っていなかった。



 あ、あ、あ、おおおおおお、ふわあん、ひゃん、いぎやああああ、おおおおおお!!!

372 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/09/29(火) 21:33:28.32 ID:Y9iAHKDp0

射精管理はアンナ先輩の判断により特別な月にのみ行われるようになったとさ。誕生月とか。どっとはらい。

バレンタインデーも書きたいなあ。

次回予告っぽいもの


    *


三月に入り、アンナ先輩に迫る「転校」の文字。

錦ノ宮夫婦に迫る、「離婚」の文字。

そしていまだに捨てきれない、狸吉の華城先輩への思い――

そして《SOX》としてのアンナの活躍はいかに!?


 こうご期待!
373 : ◆86inwKqtElvs [sage]:2020/09/30(水) 01:01:51.76 ID:KEfK2ub40
…………

おっきした人いたら挙手!ノ
374 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/01(木) 05:43:24.32 ID:5oj7niIKO
これは拙者も思わず前かがみでござるよ ノ

不和さんとのエッチなやりとりが最高すぎて
女の子同士でこういうのいいぞ〜

男の子同士だとこういうのできないからね
やっても狸吉の腐った薄い本みたいになっちゃうからね
375 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/10/03(土) 12:38:19.86 ID:DfToxJPx0
えへへ、ありがとうございます。
番外編、行きます!
376 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/10/03(土) 12:39:20.98 ID:DfToxJPx0

 2/13


 明日はバレンタインデーである。

 濡衣ゆとりはもちろん本命なんて渡せなかった。

「奥間君は苦いのと甘いの、どちらが好きですの?」

 人前では清楚で可憐にしか見えないアンナは、袖口を掴んで小首をかしげて聞いてくる。ここ《SOX》のアジトなんだけど。

「ビター……どっちかっていうとホワイトの方が好きですかね」

「え、精液? 精液好きなのって珍しい男ね! やっぱりBL……」

「違っげえよ、どう考えても明日のことだろうよ!!」

「こういうことには目ざといんじゃの」

「最近はイベントがないっスからね」

 第三次ベビーブームが来て、特別やることがなくなった。今はまだ『安心確実妊娠セット!』を配れていない都市に配布する段階だ。

「…………」

「…………」

 綾女とゆとりの様子を見て、はあ、と困ったように微笑するアンナは、しょうがない、とでもいうように。

「奥間君、これから女性同士のナイショの話があるんですの。すみませんが、席を外してくださる?」

「あ、はい。じゃあ晩御飯何がいいですか?」

「材料は大体あると思うので、お任せしますわ」

 今、アンナと狸吉は同居している。

 ゆとりはそれに、イライラしていない、とは言えなかった。

 今、すごく中途半端な位置にあるのに、二人はそれについて何も考えていないように思えて。

 そんなアンナは、ゆとりを見る。優しい笑みだったが条件反射的に体が強張る。

「ゆとりさんは優しいんですのね」

「え? えっと、そうなのか? だぜ?」

「以前の、変わる前のわたくしなら気付かなかったでしょうが。綾女さん、ゆとりさん」

 にこっと、聖女の笑みで。



「二人とも、奥間君のこと、好きですわね?」



 ブォフ!と飲んでたコーヒーを二人同時に吹いた。同時に鼓修理はさっと地階の方に逃げ、デバガメ画家は面白そうにカウンターから見ている。

「えっと、私達はその、えっと、好きと言ってもそれは」

「男女の仲としての好きでしょう? できるならば、わたくしの位置を望みたいでしょう?」

 いやそれはない。もう少し普通がいい、とは言い出せなかった。

 血に飢えた獣の目になってきている。

377 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/10/03(土) 12:40:36.87 ID:DfToxJPx0


「不戦勝でいいんですの? わたくしと奥間君は確かに愛し合っていますけど、今は外的要因で引き離される可能性も高いんですのよ? その隙を狙わないんですの?」

「…………」

「…………」

「だから、言ったんですの。優しいんですのね、ゆとりさんも、綾女さんも」

 言葉とは裏腹に、女王のような、不遜な目で。

「勿論、わたくしは引き離されるつもりはありませんわ。そのつもりで準備もしていますもの」

「準備って?」

「貯金を投資で増やしています。今で1000万円ほどでしょうか。あと二倍か三倍にはして、マンションが一括で買えるぐらいがいいですわね」

 コイツ本気で何ができないんだよ……。

「ですが、わたくしもわかりますの。愛が受け入れられていない時、わたくしは熱暴走を起こしそうでしたわ」

 聞いたことがある。起こしそうではなくほとんど起こしていたらしいと綾女から聞いていた。

「告白の機会ぐらいは、与えてもいいかもしれない。そんな気分になっているんですの。そしてそのうえで奥間君がわたくしを選んだら」

 ゾクゾクゾク!と寒気がする。暴雪と獣の気配が混在して、背筋を這いまわる。

「それは愛の証明ですの。違うんですの?」

「……アンナにしては優しいじゃない」

「あら、自分が選んだ男性がモテること自体は、嬉しいことだと思いませんの? それに、奥間君が他の女性を選ぶなんてこと、万に一つもあり得ませんわ」

 つまりこれは。

 アンナにとっては、ゲームの一つに過ぎないのだ。

「〜〜〜〜! やってやらあ!」

「ちょ、ゆとり!」

「ホワイトチョコが好きらしいですわよ」

「聞いてらぁ!!」

「ちょ、ゆとり、口調がおかしいわよ!?」

 挑戦を受けるように、あるいは逃げるように、喫茶店を後にした。

 その後ろを、綾女が追いかけてくる気配を感じたまま。

378 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/10/03(土) 12:41:05.05 ID:DfToxJPx0


(あわわわわわ……)

 場合によってはゆとりもしくは綾女が殺される。ゆとりはともかく綾女様が殺されるのは何としてでも避けたい。

 それが鼓修理の本音だった。

「お、お姉ちゃん?」

「なんですの、鼓修理ちゃんもお義兄ちゃんにチョコレート作りますの?」

「いや、作らないっス。もしお姉ちゃんが選ばれなくて、他の人が選ばれたらどうするの?」

「……何も」

「え?」

「嫉妬に任せて殺すのも面白そうではありますわ。ですがそれじゃ、――足りないんですの、きっと」

(あわわわわわ……!!)

「わたくしは我慢を覚えなくてはならなくて……ん、あ、」

 くちゅくちゅとスカートの中から音がしてきた……。

「ですから、奥間君の選択に従いますわ」

「…………」

「……ごめんなさい、変な話を聞かせましたわね」

「いや、その、鼓修理は大丈夫っスけど……お義兄ちゃんがアンナお義姉ちゃんを選ばなかったら?」

「わたくしは一度ならず、何度も間違えています」

「?」

 話が飛んでよくわからない。

「ですが、その間違いをすべて受け入れてくれると言ってくれたのが、奥間君なのですわ」

「……そう……」

「ですから、大丈夫。それに、本気で殺したりはしない、多分、きっと、おそらくは……んん……!!」

 ビクンビクンと腰が跳ねた。カップの取っ手がこするように握り潰された。

「……すみません、今日は18時まで警察署で特別講習があるので、そろそろ行かなくては。それでは」

 特別講習って確か、12月に行ったのと同じアンナを模擬犯人にした実践訓練だったか。



『知識さえあれば間違えなかった』



 アンナはそう信じている。それはある程度は正しいとは思う。

 けど、鼓修理が見る限り、アンナにはそういう素質があったとしか、どうしても思えない。性と破壊に悦びを見出す獣と、周囲に服従を強いる暴雪の女王の二つの素質は、どこに行き着くのだろうか。

 それをどう、あのクソ親父が見ているのかも、不安で仕方なかった。


379 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/10/03(土) 12:41:38.32 ID:DfToxJPx0

「ふう」

 やはりお義母様との対戦は楽しい。もっとルール無用だったらいいのだけど、それでは遊びとしても面白くない。

 そう、今のアンナにとって、奥間の言葉以外はすべてが遊びだった。もっと言うならどうでもいいことだった。

 法律も倫理も親の言葉も、すべてがどうでもいい。愛さえあれば、奥間君さえいれば、他はどうでもいい。

 でもそれだと奥間君の負担もかかる。だから適度に息抜きを入れるよう、できる限り努力していた。この警察の特別講習もその一つだ。

「バレンタインデー×2月!!」

「? ああ、《羅武マシーン》さん」

 正直こういう二重スパイも、嫌いじゃない。比重は今でこそ《SOX》に傾いてはいる。けど条件次第では自分は裏切るだろうとも思っている。

 それが奥間君のためになるなら、自分の欲望をかなえるためなら。

「何か御用でしょうか?」

 《羅武マシーン》はスーツを着て、一見そこらのキャリアウーマンといった感じだ。

 並ぶと《羅武マシーン》が録音機器の類を持っていることもあって、マスコミ関係者とインタビューされる側にしか見えない。

「定期報告はしているはずですけど」

 《雪原の青》がチェックした内容を送っているので《SOX》には害にもならない程度のものだが。

「慶介さんは足りないと仰っています。……離婚×結婚」

「今は《SOX》も活動を抑えていますから、これ以上を言われても……」

「何故抑えているのでしょうか? アイスボーン×溶岩」

「わたくしの存在でしょうね。大胆な行動に出るには、わたくしが信用されていないのですわ。それと単純な、情報不足……。!」

「何か思いついたようですね? アンナ×狸吉」

「ええ、思いつきましたわ。それが実現可能かはわかりませんので今は言えませんが」

「ぜひそれを――」

 暗がりに《羅武マシーン》を引きずり込み、喉を舐め上げる。胸部を握りしめ、腿と腿で《羅武マシーン》の腿を挟み、相手の動きを封じる。

「ひっ……!」

「《羅武マシーン》さん。わたくし、決してあなたのこと、慶介さんのことが嫌いなわけではありませんわ。

 だからこそ、申し上げますの。わたくしを、《SOX》を、《育成法》に潰れそうな子供たちを、甘く見てはいけない、と」

 もう一度喉を舐め上げる。今度は少し噛んでみた。薄く化粧が塗られているため、味が美味しくない。やっぱり奥間君がいい。

「あ、あ、化、け物……!」

「最近では聞き慣れましたわ……《育成法》はわたくしのような“化け物”を量産する法律ですのよ」

 暴雪の気配を吹雪かせる。

「壊しますわ。何もかも。まずは父母を、そして《育成法》を。わたくしの目的はあくまでそれだと、慶介さんによろしくお伝えくださいまし」

 暴雪の気配を消し、無垢な子供の笑みで《羅武マシーン》を離す。咳き込んでいるため背中をさする。

「両親はきっと離婚するでしょうね。まあ書類の関係があるので別居かもしれませんが。父が母のデモを許していませんから。母も折れることはないでしょうし。わたくしは一応母についていくつもりですわ。まあ両親次第ですが」

 これは《SOX》の連中にも言っていない、いわば錦ノ宮家の秘密だった。それを《羅武マシーン》は言外に理解したようで、

「わかり、ました。B×P」

「ごめんなさいね、少しはしゃぎすぎましたわ。ではまた」

 アンナは去って行った。《羅武マシーン》がポツリと漏らす。

「あの子は《育成法》の正負両方の象徴……その象徴が《育成法》を壊したら、いったいどうなるのでしょうか……?」

 初めて独り言で掛け算を使わずに一息に話すと、立ち上がって慶介に報告を試みた。

380 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/10/03(土) 12:42:12.79 ID:DfToxJPx0

「鼓修理助けてくれ、お前料理あたしよりできるだろ!?」

『いやっス! 修羅場に飛び込んだゆとりがバカっスよ、なんでいちいち相手の挑発に乗るんスか!?』

「乗らざるを得ないだろ! あれは!」

『勝っても負けても地獄じゃないっスか!』

「いや、そうだけどさ……」

 途端にゆとりのトーンが落ちた。

「あの化け物女と思ってたアンナが、気付いてたとは思わなくてさ……綾女やあたしのことに」

 もじもじと、言葉を何とか紡ぎだす。

「ああでも言われないと勝負に乗らないだろうし、負けたら負けたで……気持ちに見限り付けれるかなって気もする……んだぜ」

『はあ、本当にバカっス。綾女様もたいがいですけど』

「え」

『喫茶店にいるっスよ。材料持ってくるならマスターが教えてくれるって』

 PMを切るのも忘れて、材料を片手に家を飛び出した。


   *


「何よ、まな板」

「言うに事欠いてそれはないんだぜ!?」

「まあ平等性ということでいいんじゃないのかの。アンナの料理の腕は皆認めるところじゃろ?」

「異物混入がなければね……」

「あの、マスター、その」

「はい」

「……教えてほしい、んだぜ、です」

「メニューは決まっていますか?」

 ぶんぶんと頭を横に振る。料理自体はともかく、そういったことが全然できないのがゆとりだった。

 綾女は既に決まって湯銭でチョコを溶かしている。白くどろどろとした、ダメだ思考を犯されている。

「初心者でもできるものをお願いだぜ……」

「じゃあとりあえず、湯煎しましょうか」

381 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/10/03(土) 12:43:47.88 ID:DfToxJPx0

 2/14


 学校帰りに華城先輩とアンナ先輩から大事なようがあると言われ、喫茶店に来てみれば。

「「「…………」」」

 余裕の表情のアンナ先輩に、断崖絶壁状態の華城先輩とゆとりだった。

「今日はチョコレート対決ですの。匿名で三つ、一番おいしいものを選ばれた人が勝ちですわ」

 アンナ先輩を選ばないと全員が死ぬ奴じゃないですかーやだー。

「ではまずこれから」

 ちょ、マスター待って、心の準備が、

「……おお……」

 なんだろう、紗々っていうお菓子をハイヒール状にしたっていえばわかる? 白と黒の斜めの線でできたハイヒールだ。正直、食べるのがもったいない。

「次です」

 シフォンケーキだった。普通においしそうだ。

「最後です」

「…………」

 チロルチョコだった。

「最後なんだよこれ!」

「いいから全部食べなさい。あ、ザーメンっぽくて無理なわけ?」

「昨日と同じネタは通用しませんよ、いただきます!」

 ハイヒールチョコを食べる。うん、普通にチョコだ。パリパリした触感も行ける。

 シフォンケーキを食べる。甘い。でも作り手の温もりが伝わる気がする。

 チロルチョコは一口で放り込んだ。

「うーん」

 答えは二択なんだろうな。





下3レスで

ハイヒールチョコなら1
シフォンケーキなら2

多い方でちょっとだけルートが変わります。
382 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/03(土) 13:11:00.06 ID:+A9/Lgkv0
1
383 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/03(土) 15:30:05.69 ID:8ArxqhumO
1
384 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/10/03(土) 16:01:26.65 ID:DfToxJPx0
あ、決まりましたね!
書いていきたいと思います。
385 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/10/03(土) 16:16:36.05 ID:DfToxJPx0

「このハイヒールのチョコが、見た目も綺麗でかわいいなって思います」

 悩んでもどうにもならないので、素直に直感で答える。――誰だ、これは?

「私よ」

「え、華城、先輩……」

 それじゃ、この、シフォンケーキが……

「……あたしだぜ……」

 おおい!?

「昨日は忙しくて作る時間がありませんでしたの」

 いやアンナ先輩なら規制品でももっといいやつ買うんじゃないの? どういうこと!?

「お二人、奥間君のことが本当に好きみたいですから、チャンスをあげようと思いまして」

 え? え?

「ほら、綾女さん」

「う、うー、ち、ちんぽ! ま○こ!」

「もう、脇をくすぐりますわよ。えい、えい」

「きゃ、だからそこは第五の性感帯だって!! わ、わかったわよ、言うわよ」




「すすすす、す、好きよ。言わされてるとかじゃなくて、本当に……好きで……」




「でも」、と悲しそうに。

「アンナに勝てるわけ、ないもの」

 それが本心かはわからなかった。

 ただ、僕は。僕は、いったい、何を、どうすれば、

「…………華城先輩、僕は……ゆとりも、ありがとう。だけど……」




「アンナ先輩を変えたのは僕だから。だからアンナ先輩からじゃない限り、僕からは離れないつもりで……いる……」




 勝手に言葉を紡いでいた。

 いたたまれなくなってきた。二人とも、本当に泣きそうだったから。

 それをアンナ先輩が、嫉妬でも殺意でもなく、真剣に見ていたから。

「奥間君は、……まあいいですわ」

 何かを言いたそうにしているアンナ先輩は、別のことを話し始めた。


386 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/10/03(土) 16:17:09.05 ID:DfToxJPx0


「綾女さんは『恋愛は自由』と言いますが、さすがにこの状態はわたくしの心が持たないので」

 くるんくるん、とケーキを切り分けるナイフを回す。あわわわわわわ、嫉妬心が持たなかったか。二人もぞーっとした顔をしている。

「わたくしが無理矢理この場を作りましたの。もしわたくしが振られていたら……どうしていたでしょうね」

 確実に監禁からの拷問コースですね、わかります。

「でも、奥間君は……わたくしのことを……」

 少しだけ、アンナ先輩は寂しそうだった。

 理由がわからず、「アンナ先輩……?」思わず呼びかけると、

「お二人とも、納得を今すぐしろというのは難しいでしょうが、今はこれでよろしいでしょうか?」

「アンナにしては強引ね」

 常に強引だった記憶しかないけど、華城先輩は変わる前のアンナ先輩を一番よく知っているから、きっとそうなのだろう。

「実はわたくし、4月を以って転校するかもしれませんの」

「え?」

「なんだよそれ?」

「首都に戻って来いと、両親がうるさくて」

 面倒そうだった。今のアンナ先輩にとって僕だけでいい世界ならば、両親の心配も偽善も保身もすべてが煩わしいものでしかないんだろう。

「それで、昨日奥間君のお義母様には了承を得たのですけど」

 やっと、アンナ先輩を視線が合った。ある種の決意めいたものがある、そんな感じの。

「来月、私とお義母様と一緒に、首都に行ってくれません? 両親も交えて、5人で話したいんですの」




「――――」




「狸吉!? 狸吉、しっかりしなさい!!」

「これは、その、きついぜ……?」

「結婚には反対していますが、必ずしも両親の許可は必要ないんですのよ?」

「大変! 狸吉が泡を吹き始めているわ!!」

「ちょ、アンナは黙ってろ、それ世間一般ではきついから、めっちゃきついから!!」

 ――三月まであと半月。

 しっちゃかめっちゃかな三月になりそうだった。


387 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/10/03(土) 16:36:27.70 ID:DfToxJPx0


  3/14



 僕は三人に平等にお返しすると(アンナ先輩は余裕の表情だったのでいいのだろう、多分)二人とも一応は感謝してくれた。よかった。

 今日は卒業式。アンナ先輩が送辞を述べる。

 生徒会は今まで大忙しだった。轟力先輩の代わりの人材となると、あの人ああ見えて頭よく事務能力が高いので、代わりの人材となると全く持って困る。

 轟力先輩は号泣しながらアンナ先輩から花束を受け取ると、その日は旧三年生は解散となった。午後からは新しい三年生であるアンナ先輩と華城先輩が引き続き役職を担当する――と思いきや。

「わたしに生徒会長のオファーが来るとは、世も末ですね」

「ごめん、不破さんぐらいしかいないんだ」

「メリットがありません、お断りします」

 アンナ先輩みたいにずば抜けた能力を持った人なら、一年からでも生徒会長というのは務められるのだけど、基本は二年生から選ぶものであって、今年もそれに倣った形だ。

 本来ならアンナ先輩は推薦で一番いい大学を受けるため、受験には余裕があるはずなのだが、

「わたくし、首都に戻って転校するかもしれませんの」

 アンナ先輩が僕の言葉を引き継いだ。

「実務能力と生徒の人気、両方を持っているのは不破さんぐらいとみています」

「それはどうも」

「はあ。アンナ、やっぱり言っちゃう? ってかアンナは言ってるんだっけ?」

「ええ、わたくしが《SOX》の一員であることは話しましたわ」

「生徒会長を引き受ければ《SOX》に入れてもらえるとでも?」

 アンナ先輩と、そして華城先輩がにっこり笑った。

「その通りよ《蟲毒試験管》(ちゅうかんのおんな)!」

 《雪原の青》モードの華城先輩に、僕もパンツを被る。アンナ先輩も僕のトランクスを被り、華城先輩も三つ編みをほどきパンツを被った。

「……やっと話してくれましたか」

 まあ気付いているだろうな。陰毛一本からでも不破さんなら気付きそうだ。

「それで、その名前は何ですか?」

「え? 虫大好きっ娘でしょ? いい名前だと思うんだけど」

「サンプルに虫しか取れなかっただけで、別にハエちゃんたちが特別好きというわけでは」

「ちゃんを付けている時点で語るに落ちてるよ、不破さん」

「まあいいでしょう。そういうことならば引き受けます。ところで気になっているのですが、アンナ会長が転校、ですか?」

「まだ決まっていませんけども。明日、奥間君と奥間君のお義母様と一緒に、首都にあるわたくしの実家に話し合いに行く予定ですわ」

「…………」

 胃の痛い問題を思い出してしまった。でも避けては通れないことなのだ。排泄孔が裂けてはいけないけどね!

「その結果次第では、わたくしは首都に戻らなければなりませんの」


388 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/10/03(土) 16:36:59.11 ID:DfToxJPx0


「ずいぶん急ですね。というよりは、アンナ会長がごねてると言った方が早いのでしょうか?」

「当たり前ですわ。……奥間君と引き離そうなんて、絶対に許されませんの」

 目には両親への殺意があった。この人、両親でも殺す気でいるよう。

「僕の母さんは、まあ仲介役というか。僕がまだ未成年だしね」

 ソフィアもアンナ先輩並みに体力お化けらしいし、母娘が喧嘩(物理)を始めたら止められるのが母さんしかいない。

「…………大変ですね」

 それしか言えないよねー。

「ところで不破さんはサイバー端末に詳しいですの?」

 唐突な切り替えに、「まあ普通の人よりは」と言葉を濁した。



「この機会に、父と母のサイバー端末から情報を盗もうと思っていますの」



「……なるほど、それは……」

 アンナ先輩の考えは華城先輩にも知らされてなかったらしく、深く頷いていた。

 今は家にあるのは昔のPCと違ったサイバー端末が主流となっている。企業だとそうでもないのが日本らしい。

「パスワードはわからないのですね?」

 アンナ先輩は頷いた。

「確かサイバー端末に詳しい友人が、ハッキング用のメモリ端末を開発していたように思います。出発はいつですか?」

「ぎりぎりまで延ばして、14時ごろでしょうか」

「今、連絡を取りました。今日の深夜、何時になっても構いませんか?」

「ええ、大丈夫ですわ」

「わかりました。できる限り急ぎますが、都市が遠いので時間がかかる可能性が高いです。設定も必要なはずですし、あとを残さないようにするプログラムも書いてもらわないと……」

「これはあくまでお願いですが、この機を逃したらわたくしも第一精麗都市と首都の行き来ができなくなるかもしれないので」

「善処します。連絡は取りましたので、今からその人物のところに行ってきます。《SOX》の件についても理解ある人ですから、ご心配なく」

「私も行くわ。場合によっては《SOX》の依頼という名目が必要になるかもしれないから」

「……わかりました。早速大忙しですね」

「じゃあ今日はこれで私と《蟲毒試験管》とは早退するわ。アンナと狸吉、お願いね」

 ……この書類の量、全部やるのか……。

 華城先輩とアンナ先輩、僕はパンツを脱ぐと、急いでそれぞれの仕事にとりかかった。

389 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/10/03(土) 16:38:42.79 ID:DfToxJPx0

こ、これで国会図書館とかセクシャリティー・ノーとかに触れられる! ようになりました!

《蟲毒試験管》の二つ名、自分は一発で思いついたのですが、つまり私は好きです。
390 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/03(土) 16:51:03.04 ID:8ArxqhumO
不和さんってそんなに生徒に人気あるの?なんで?

顔が良いから?
391 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/10/03(土) 16:58:11.44 ID:DfToxJPx0
9巻の初めに「不破さん自身、支持率が高い」と公式に設定されているのです。なので私の設定ではないのですが、デモとかいろいろ指揮していたのでカリスマ性はあると思います。
392 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/03(土) 17:05:30.70 ID:w334XzvG0
たぬきちは意地でも『愛してる』と言わんな

奴ヶ森の指揮もしてたし、アンナ先輩とは違うカリスマ性はあるんじゃないか?
393 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/04(日) 01:49:47.10 ID:2iC/ctDH0
アンナ先輩のラスボス感がすごいのは自分だけか…?
394 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/10/04(日) 14:12:57.83 ID:E76adJb10
ところで皆さん、狸吉の態度についてはどう思います?
アンナ先輩にかまけて華城先輩たちを無視しているように見えるか、それとも別の見方をしているのか、よければ教えてください
395 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/10/04(日) 14:55:43.93 ID:E76adJb10


「間に合いますかね」

「何を気にしている、狸吉」

「いや、友達がさ、見送りに来てくれるってさ」

 今13:32。チケットは14:01。

 首都に入ると前歴(未成年者の前科のようなもの。不破さんには条例違反がある)を調べられることもあるため、首都に直接送ってもらうのは微妙だ。

 今ここで受け取れるのがベストなんだけど。男と女がイくのが同時であるのがベストであるように。

「あ、来ましたわ」

 不破さんが珍しく(なんとなく運動しているイメージがない)走ってくる。

「説明書というほどではありませんが、使い方はこの中に」

 紙袋を渡すと、さっさと帰って行った。

「……淡白だな」

「まあ不破さんはそういう人だよ」

 行動自体はアクティブな人なんだけどな。隈がいつもより3割増しだったし、徹夜したに違いない。感謝しないと。

「まあいい。用事が済んだならホームへ行くぞ」

 そして新幹線を待つ。

 僕にとっては久しぶりの首都だった。

396 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/10/04(日) 14:56:21.06 ID:E76adJb10


 奥間善十郎、僕の父はテロリストとしての悪名が名高いが、その前は何と国会議員をやっていたのである。今でも信じられない。

 まあそうじゃなきゃテロリストとなってからじゃ善導課主任の母さんと結婚するには遅いわな。

 そんなわけで首都に生まれてから10年ほど、滞在していたことがある。母さんが首都浄化作戦に参加したり、僕とアンナ先輩が出会ったのもその時だ。

 まあ、そっからは風紀優良校最底辺の地域に、母さんいわく『左遷』させられたんだけどね。

 母さんだけ通路を挟んだ離れた席に座っている。アンナ先輩は窓側だ。

 母さんは眠っている。夜のことを考えると、今は休ませておこう。

「それで、なんて書いてありましたの?」

 不破さんの袋が気になるらしい。僕も気になるので開けてみてみる。

 見ると、メモリ式カードが二枚、入っていた。

『これをサイバー端末に刺せば、あとは自動で全てやってくれます』

 ひどくお手軽だな、おい。追伸、なんだ?

『メモリ式カード×サイバー端末で早乙女先輩がBLを考えてくれるそうです』

「…………」

「……わたくし、この概念がよくわからないんですの」

「アンナ先輩が腐ったらこの世の終わりです……!」

 僕の排泄孔が犯されるのはアンナ先輩の指だけでいいんです。よくはないけどそういうことにしておかないと仕方ないことって結構ある。

「奥間君にとって、首都はどんなイメージですの?」

「んー、あんまり覚えてないというか。父さんと一緒に卑猥なことしかやってなかった記憶しかないですね」

「好きだったんですね、お義父様のこと」

「そうですね。ヒーローでした。逮捕された時は荒れた、ってこの話前もしましたよね」

 横目で眠っている母さんを見る。

「母さんも、今は厳しいイメージしかないですけど。中学に上がってアンナ先輩みたいになりたいって言いだすまでは、もう少し優しかったですよ」

 そのあと軍隊並に厳しくなったんだけどね。

「……わたくしは……悪人の素性を、考えたことがありませんでしたわ。悪は悪、正義は正義だと、社会の規範に則った形での基準でしか考えられない人間でしたの」

 奥間君も知っての通り、とどこか自嘲的に話す。

「でもきっと、わたくしが捕まえてきた“悪”には、いろんなものが詰め込まれていたのでしょうね」

 奥間君、ともう一度、囁くように。

「“悪いこと”は“楽しいこと”でもありますわ。卑猥は、楽しいし、気持ちいいこと……。だからこそ守らなければならない女性や子供などの弱者もいるでしょう。でも」

 全てを切り離す《育成法》は、間違っていますの。

「奥間君は、《育成法》の撤廃を、手伝ってくれますか?」

「……はい」

 自信を持って言える。きっと華城先輩も頷くはずだ。

 アンナ先輩が《SOX》にやっと入ったような、気がした。


397 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/10/04(日) 14:59:31.09 ID:E76adJb10
今日はここまでー
アンナ先輩が逆レに成功していたらのIFから始まった物語なので、ある意味アンナ先輩はラスボスですね。
アンナ先輩がどういう変遷を遂げるかという感じ。まあ趣味がかなり入ってるんで、何故か狸吉とはSMの関係になってる感がありますけど、そこはほら、二次創作なので気にしすぎないでください。
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