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【安価でのわゆ】久遠陽乃は勇者である【1頁目】
- 402 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/21(水) 05:35:20.91 ID:A+V+oM4EO
- 乙
接触しなかったのは良かったのか悪かったのか
- 403 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/21(水) 08:04:29.89 ID:8mV2FyURO
- 乙
後はどこまで誤魔化しが効くかだな
看護師服は病院までかもだが
- 404 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/21(水) 20:28:56.19 ID:nkYjHLfFo
-
では少しだけ
- 405 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/21(水) 20:37:40.45 ID:yESLdBI9O
- よしきた
- 406 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/21(水) 20:55:15.44 ID:nkYjHLfFo
-
陽乃「……凄い」
病室から、病院の外に出るまで
陽乃は何度か声をかけられることがあったものの
誰も、拘束されているはずの久遠陽乃だとは思わなかった。
むしろ、
同僚の一人として気さくに声をかけられるくらいだった。
『くふふっ、無論じゃ』
心なしか弾んだように感じる九尾の声
自分の力が認められるということは嬉しいのだろうか
陽乃「私、この格好のままで良いの?」
『ふむ……』
院内やその付近であれば看護師の衣装でも問題はないけれど、
ある程度離れてしまったら違和感が出てきてしまう。
それを心配する陽乃に、九尾は絡みつくように影を伸ばす。
一瞬、視界が真っ暗になったかと思えば、陽乃が普段着ていた私服に切り替わっていた。
陽乃「何でもありなのね」
『妾が知るものにしか変化はさせられぬ。万能ではない』
陽乃「貴女が知るものだけでも十分何でもありだわ」
実際にはどんな格好なのか……というのは抜きにしてしまえば、
本当に万能な力だと陽乃は思った
- 407 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/21(水) 21:31:48.40 ID:nkYjHLfFo
-
陽乃が隔離されていた施設は、町はずれの病院だった。
三年前の惨劇によって人口が大幅に減少することになったが、病院に余裕はない。
というのも、多くの人々が発症した【天空恐怖症候群】があるからだ。
天空恐怖症候群は精神的な病である。
症状としては、
一つ、外出を嫌うようになる
一つ、襲来時のフラッシュバックなどによる精神汚染と日常生活への影響が出る
一つ、幻覚などの症状が頻発に見られるようになり、薬を手放せなくなる
一つ、自我が崩壊し、発狂にまで至る
といったものがあり症状別4段階に定められていて、
陽乃の病室から離れるにつれて軽い症状の人が入院していたようで
ベッドに空きがあるようには感じられなかった。
そんな精神病院と呼ばれてしまうような病院の周囲の住宅には、人の気配がほとんど感じられない。
庭先の雑草が伸び切っていたり、崩れてしまった建物もある。
人の出入りがあると感じられるのは見る限りで数軒
陽乃「……この辺りも、だいぶ」
『人間の気配がまばらじゃな』
- 408 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/21(水) 21:51:08.81 ID:nkYjHLfFo
-
全員が死んでしまったとは考えたくない。
しかしながら大半が亡くなってしまっただろうし、
それと同じくらいの人々が心に傷を負ってしまったのだ
かつても、歩いていれば多くの人とすれ違うなんて言う人口密度は感じられなかったが、
それでも、人の気配があった。
時折聞こえる犬の声、車の音、子供たちの元気な声
確かな日常がそこにあったのだ
陽乃「………」
『主様の責ではあるまい』
陽乃「でも、私が守らなければならないことだわ。これ以上酷くならないように、これ以上戻れなくなってしまわないように」
『主様を悪としている人間じゃぞ』
陽乃「それでもよ……私は助けたいと思ったから力を借りたんだもの。たとえ、それが悪魔の力であっても……」
助けた人々から迫害されるのだとしても、
自ら選んで掴んだのだから、自分は自分の目的を見失わずにいられればいいのだ
その果てが理不尽な結末だろうと。
――本当に?
陽乃「っ」
『主様、寄宿舎に戻るつもりかや?』
- 409 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/21(水) 22:11:37.26 ID:nkYjHLfFo
-
総毛立つような悪寒を感じたのと同時に九尾の声が聞こえる
聞こえるのは陽乃にのみなのではたから見れば独りぼっちだが、
陽乃の身体から延びる影は体以上に大きく広がり、
近くの木陰に重なっている部分からは、狐のような顔が陽乃を覗いている
そう言った感覚に鋭敏な人がいたら、悲鳴を上げて逃げ出すことだろう。
『主様は正式な退院ではなかろう? 少々厄介なことになると思うがのう』
陽乃「そう……よね」
何も考えていなかったとはいえず、頷く。
足を止めた陽乃は近くの車止め用のポールに腰かけた。
陽乃の生活に必要な数々の私物はすべて寄宿舎の自室である
端末は取り上げられているので、無し。
当然所持金もない。
陽乃「私一文無しなのよね」
『そこらの人間に取り入ってしまえばよい。妾ならば容易じゃぞ』
陽乃「でしょうね……」
九尾の力はついさっきから十分に分からされている
そのうえで、九尾の狐の伝承を考えれば、言葉に偽りがないのは明白だった
1、友達の家に行くわ
2、それが出来るなら、寄宿舎に行くくらいは余裕でしょう?
3、このまま、四国から出たいって言ったら、どうする?
4、取り入るってどうするつもり?
↓2
- 410 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/21(水) 22:13:43.08 ID:yESLdBI9O
- 1
- 411 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/21(水) 22:14:08.37 ID:r8gL4IbP0
- 4
- 412 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/21(水) 22:27:46.61 ID:nkYjHLfFo
-
では少し早いですがここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
- 413 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/21(水) 22:39:06.07 ID:yESLdBI9O
- 乙
九尾も物騒なことさえしなければ世話焼きな良い奴なんだけどなぁ
あと友達ってもしやさおりんのご先祖…?
- 414 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/22(木) 07:59:57.36 ID:U/j/ghEAO
- 乙
何気に九尾は陽乃さんとしか会話できないのか
- 415 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/22(木) 21:59:27.85 ID:OppCUMBno
-
では少しだけ
- 416 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/22(木) 22:02:23.25 ID:PpZ3nN4kO
- かもん
- 417 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/22(木) 22:17:45.28 ID:OppCUMBno
-
陽乃「取り入るって、どうするつもりなの?」
『魅了してしまえばよい。妾の力ならばそれも容易にこなせようぞ』
陽乃「魅了って……つまり、洗脳みたいなことをするってこと?」
『人間を蠱惑することが、主様にとって洗脳というのであればそうであろうな』
九尾の伝承は、そのほとんどが魅力的な女性として知られており、
その魅力ゆえに国を滅ぼすこともあったとさえされている。
九尾にとって、それは力の一端でしかない。
人間を魅了すること、それは九尾の誤認させる力―幻術―の一端でしかなく、
洗脳かどうかなど、彼女には関係ないらしい。
陽乃「……私を、その誰かの子供にしたりもできるの?」
『実の娘というのは状況によって無理があろうが……遠縁の娘としてなら無論じゃ』
陽乃「でも、貴女としては子供なんて不自由だと思うのでしょう?」
『異論があるかや? 子は親という厄介な存在がおるではないか。解放されて早々に己に枷をつける必要張るまい』
陽乃「それは」
九尾の言いたいことも、陽乃は分かる
けれど、と……陽乃は顔を顰めた
陽乃「それってつまり、誰かの恋人とかそういう存在に成り代わるってことでしょ? 無理だわ」
- 418 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/22(木) 22:58:20.69 ID:OppCUMBno
-
陽乃は首を振って、九尾の影から目を背ける。
三年前、まだ平和だったころの陽乃には異性同性関係なしに友人がいた。
しかし、あくまで友人であって恋人ではない。
何より、まだ高校生にも至っていない陽乃には、大人の女性という立ち位置は聊か無理があるだろう。
陽乃自身もそう思っているからか、困った顔で息を吐いた
陽乃「百歩譲って、娘という立場ならどうにかなると思うわ」
『娘ならば何の心配もいらぬ』
九尾ははっきりと言い切る
『妾の力ならば、容易じゃぞ』
陽乃「それは分かっているんだけどそもそも、誰かの子供なんて……」
九尾の力ならば絶対になり切れるという信頼はある
ただ、陽乃が鳴りきる誰かの保護者は亡くなったか、天空恐怖症候群によってどうにもならなくなってしまったか
とにかく、悲しい過去を持っているということになることだろう
そして、そのことに同情されることだろう
陽乃はそれが受け入れられなかった
- 419 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/22(木) 23:21:50.19 ID:OppCUMBno
-
『ふむ……ならば主様は妾の連れ子とするのも一つじゃな』
陽乃「貴女に人の心がわかるの?」
『うむ。人間の雄の心を奪うなど容易いことよ』
九尾はくすくすと笑う
とても楽し気なのに、底知れない不安を感じる声
九尾に騙されてしまった人がどうなってしまうのか……
陽乃は最悪の想像をしかけて、息を吐く
陽乃「その人、どうなっちゃうの?」
『仮初とはいえ妾の旦那様となるお方じゃ。少しは妾に付き合ってもらわねばならぬからのう?』
笑み交じりの少し高い声で答えた九尾は喉を鳴らして、
尻尾の影がゆらゆらと揺れる
それと同時に風が吹いて、木々がざわめいた
『死なせはせぬが……どうにかなるであろうな』
死ぬかもしれないが死なせはしない
陽乃との口約束にも満たない言葉を、九尾は守るつもりのようだ
- 420 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/22(木) 23:47:39.57 ID:OppCUMBno
-
陽乃「あの子の家なら……」
『主様を知る人間に会うのは危険じゃろうて』
陽乃「ん………」
『その娘が絶対に裏切らぬ人間であるならばよいがのう? そんな人間などおらぬ』
九尾は断言する
心なしか影の口元が唸るように動いたように見えた
陽乃「あの子は優しい子よ。私の一番、近くにいたの」
『それが娘の本性かや? 今と過去とは違えておろう?』
陽乃「ええ」
三年前と、今は違う。
なにより、三年間一度も連絡を取っていないのだ
過去の関係をすべて放棄していなかったとしても、
彼女だって子供だから周りの言葉に逆らえるだけの力は持っていないはずで
裏切られないという保証はない
圧力によって屈してしまったことを裏切りというのは――理不尽だろうか。
陽乃「どうしたものかしら……」
1、九尾の連れ子設定
2、誰かの子供になりきる
3、恋愛げぇむ
4、友人に会いに行く
5、寄宿舎へ
6、四国を出る
7、ホームレス
↓1
- 421 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/22(木) 23:51:10.07 ID:xeHnNUY+O
- 4
- 422 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/23(金) 00:00:59.56 ID:u0h5r4HJo
-
↓1コンマ判定 一桁
0 00 最悪
1〜3 悪い
4〜5 普通
7〜9 良い
ぞろ目 最良
- 423 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/23(金) 00:01:37.63 ID:GeE5gbsiO
- こい
- 424 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/23(金) 00:03:08.18 ID:u0h5r4HJo
- ではここまでとさせていただきます
明日は可能であれば少し早い時間から
- 425 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/23(金) 00:11:52.50 ID:GeE5gbsiO
- 乙
うーむとことん引きが悪い…
もし追い返されるようなら九尾の連れ子作戦もありだが…
- 426 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/23(金) 00:22:00.83 ID:UrJr2G1OO
- 乙
まあ3年会ってなかった子が突然来ても困るよね……
- 427 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/23(金) 18:49:54.69 ID:5zfZ4fLFo
-
では少しだけ
- 428 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/23(金) 18:51:59.29 ID:5zfZ4fLFo
-
陽乃がかつて住んでいた伊予市
比較的人通りの多かった通りも閑散としていて、
どこかから人の叫び声が聞こえるとまた別の悲鳴が響いて来る
三年前の恐怖の伝播
元に戻れるという保証はなく、
外の世界に蔓延っているバーテックスを殲滅でもしない限り、
鬱屈とした死の空気は晴れないのだろうと陽乃は市内を歩きながら思う。
陽乃「あっ」
様子を確認しながら歩いていた陽乃は店の一つの前で足を止める。
立ち寄ったことのない個人商店はシャッターが下りており、
営業はしていないようだが、そのシャッターに描かれた落書きに陽乃は足を止めざるを得なかった。
陽乃「……私の家、無くなっちゃたせいかしらね」
シャッターには生き延びた久遠家、おそらくは陽乃に向けての憎しみが言葉にされている。
なにも無関係のところにこんなことしなくてもと思うが
陽乃の実家や神社が放火されたことを考えれば、それがただの暴徒化しているよりはましなのかもしれない。
彼らは【久遠家の責任】というものを信じてしまっている。
人身御供など聞いたこともないだろうに、そうであったのだと断言している。
陽乃「クシナダヒメになった気分だわ……家には白羽の矢じゃなくて白煙が上がったけど」
- 429 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/23(金) 19:13:24.42 ID:5zfZ4fLFo
-
嘲笑めいた笑みを零した陽乃は、シャッターの文字を軽く撫でて首を振る
陽乃の影におさまっていた九尾はシャッターに映りこむと、その瞳を陽乃へと向けた
『それでも、主様は守らねばというのかや?』
陽乃「私が守るのは私自身の心よ」
人を救う価値がないなどと切り捨ててしまったら、
心までもが彼らの言うような化け物になってしまうかもしれない
陽乃「なんて……ただ、私は人でありたいだけだわ」
『人間ならば恨み、憎み、怒り、己を虐げる者共に相応の報復を与えるものじゃろう』
だが、陽乃はそうしない。
それを是とする九尾を止めさえしている
『主様は化け物じゃろう。あ奴らの語る理不尽ではなく、ただ人になり得ない存在じゃ』
陽乃「……愚かだって思うんでしょう?」
『愚問であろう』
陽乃「貴女も災難ね。そんな人……そんな化け物に憑いてしまったんだから」
『久遠の人間がここまで愚者に育つとは、妾も思わなんだ』
くつくつと笑った九尾は影を翻す
『主様が手を出さぬから助長する。下手に伸びてからでは草の根を狩るのも難しかろうに』
陽乃「だとしても、踏み外したくはないの」
九尾の不満げに零れた吐息を感じたが、陽乃は気にせずにその場からは離れてまた歩く
友人の家に辿り着くまで数人見かけたが、誰一人として陽乃に気付くことはなかった。
- 430 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/23(金) 19:33:27.32 ID:5zfZ4fLFo
-
陽乃の友人の家は幸い崩れたりしておらず、人が住んでいる気配が感じられる。
インターホンに手を伸ばした陽乃は、押すか迷って息を吐く
音信不通になって、三年
それは陽乃が自分の意思で交流を断ったのではなく
大社による言動の制限によって生じた弊害として、旧知の仲であっても断たざるを得なくなっただけだ。
だが、それでも相手から見れば一方的だっただろう。
陽乃「ねぇ、私は久遠陽乃として見られるのよね?」
『主様がそれを望んだのであろう?』
陽乃「そうだけど」
『妾はすべきではないと忠告し、主様はされど会うと決めた。なれば何を恐れる。己が望んだならばゆくがよい』
それの結果がいかなるものであろうと、
自らが選び進むと決めた道すがら、翻すなどという行いを九尾は是としない。
分かっている。
陽乃は自分でも、そんな中途半端なことはしたくないと思っているけれど
彼女は一番の友人だった。
多くの人々が自分を誹謗中傷する中で、しかし彼女はそうではないと心のどこかで思っている。
だから――。
陽乃「はぁ……」
勇者らしからず、緊張に高鳴ってしまう胸に手をあてがって深呼吸
そうして、インターホンを押した
- 431 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/23(金) 19:55:36.50 ID:5zfZ4fLFo
-
数秒もまたせずに、インターホンから元気な声が聞こえてくる
何度も何度も聞いた声
陽乃の家で、彼女の家で、
インターホン越しに、電話越しに……繰り返し聞いて馴染んだ間接的な声色
誰が来たのかちゃんと確認しないのは相変わらずで、
在宅を知らせるためだけの応答をした彼女の部屋を駆ける音が玄関口へと近づいて
「はーい!」
勢いよく玄関の扉が開いた。
「どち……あっ」
陽乃「……久しぶり、ね」
「………」
緊張からか声が上ずってしまったものの、
陽乃の友人は、しばらく呆然としてそれを聞き逃したのか
はっとして辺りを見渡すと、扉を盾にするようにして――
「帰って!」
強く拒絶を叫んだ
- 432 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/23(金) 20:01:40.41 ID:c1E5OH4UO
- つらい…
- 433 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/23(金) 20:44:55.08 ID:5zfZ4fLFo
-
「あの日、助けて貰えたのはすごく感謝してる……でも、もう二度と会いに来ないで」
陽乃「待っ」
扉は固く締められて、続けざまに鍵が締まる音が響く
鍵だけでなくドアチェーンまで使ったのだろう
金属の音が聞こえた
陽乃「待って……」
『ふむ……』
陽乃「ダメッ!」
自分自身の影が、
陽の光もなく不自然に彼女の家の方に伸びていくのが見えて、
陽乃は叫んで制止する
影は止まって、狐の口に似た先端が開くように揺れた
『躊躇う必要はなかろう。勇者とやらとは違って主様の力にはならぬ』
陽乃「それでも……っ」
友人に、待ってと伸ばせなかった手を固く握りしめて
陽乃は首を振る
九尾は殺すつもりなのだ
1、ごめんなさい
2、無事、なのね……元気でやっているのね?
3、一つだけ聞かせて、拒絶は貴女の意思だって、思っていいの?
4、何も言わずに立ち去る
↓2
- 434 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/23(金) 20:48:38.53 ID:3Od0l6D40
- 4
- 435 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/23(金) 20:49:17.15 ID:c1E5OH4UO
- 3
- 436 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/23(金) 21:40:16.65 ID:5zfZ4fLFo
-
陽乃は少し考えて、インターホンをもう一度押す
出てくれなければそれで終わり
普段は数秒も待たせないインターホンは、
一分以上、沈黙して
諦めて立ち去ろうとしたところで「待って」と声が聞こえた
『……なに?』
陽乃「一つだけ聞かせて欲しいの」
そうだと言われるのが怖い
けれどこのまま曖昧にしていたって、きっとそうなのだろうと心は勝手に疑う。
だからはっきりさせようと、陽乃は意を決して
陽乃「拒絶は……貴女の意思だって、思っていいの?」
『………』
陽乃「お願い……それだけ、聞かせて貰えればすぐに居なくなるから」
同情を求めてしまっているような声
歯を食いしばっても
違うと言って欲しいと願う心は出てきてしまう
けれど――。
『そうだよ。私が、陽乃ちゃんに会いたくない』
- 437 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/23(金) 22:05:04.83 ID:5zfZ4fLFo
-
『陽乃ちゃんと会ってるのが知られたら、もうここにいられなくなっちゃうから』
陽乃「……そっか」
小学校時代は、学校が惨劇の場となったこと、
精神病を患ってしまった教師や生徒が多数出てしまったことで
暫く休校していたという話を聞いている。
そこから今まで
友人に何があったの分からないけれど、
きっと、陽乃のことで色々とあったのだろう
その他大勢が知らなくてもクラスメイトは知っていた
その子供達から親が話を聞いていたかもしれない
そして、それらから……彼女は「あの娘を知っているだろう?」となったかもしれない
陽乃「そうだったんだね」
だとしたら、仕方がない
だったら、どうにもならない
陽乃となんて関わり合いになりたくないだろうと……
陽乃「うん……分かった」
『その……感謝は、してるから』
陽乃「いいよ。出来ることをしただけだから……ただ、それだけだから」
陽乃はそう言って、笑おうとして
上手く、笑えそうもなくて――
インターホンの画面には映らないように顔を隠しながら、足早に立ち去った
- 438 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/23(金) 22:30:20.58 ID:5zfZ4fLFo
-
『良いのかや?』
陽乃「仕方がないでしょ……私と関わってたら巻き込まれちゃうんだから」
友人の家からしばらく歩いて、よく遊んでいた公園のベンチに腰掛ける
時間はまだお昼ごろだが
公園には人の姿はまるで見られず、
あまり、遊ばれているような雰囲気は感じられなかった
陽乃「私と一緒に居るだけで、あの子の家族を不幸にしてしまうなんて、私が嫌だもの」
『気に病む必要はなかろう。恩が有りながら仇と返す愚物なれば、使い捨ててしまえばよい』
陽乃「九――」
『異を唱えるならば処分してしまえばよい。問題が生じるというならば妾が腹に入れてやろう』
陽乃「貴女……」
『無論、妾は戯れておるわけではないぞ』
利用できないならば処分してしまえばいい
利用できるなら利用して処分してしまえばいい
九尾はそれを明言して……反り立つ尻尾の影をくるりと丸める
『あやつは生かしておく価値があるかや? 主様』
陽乃「私の友達なの」
『今もかや? 切って捨てられた、今でもかや?』
- 439 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/23(金) 23:01:39.71 ID:5zfZ4fLFo
-
わざとらしい言葉遣いで問いかけてきた九尾は、
ベンチに座ったまま、何も言わず首を振る陽乃を見つめて、目を細める
影が不自然に伸びて陽乃の隣に人の形を作ると
それは次第に物質化して、完全に人間……
陽のも知っている、上里ひなたの形をとった
ひなた「そしたら、どうしますか?」
陽乃「……上里さんもできるのね」
ひなた「久遠さんの状況は……控えめに言っても悪いです」
一つ、帰れる場所がない
一つ、所持金も所持品もない
一つ、認識を誤魔化さなければ捕らえられてしまうかもしれない
九尾は指を立てながらそう話して
困りましたね。と、ため息をついた
ひなた「数人、殺してもかまいませんか?」
陽乃「上里さんの声でやめて……」
ひなた「運が良ければ一人で済みますよ? お金を持っていそうな人を――」
陽乃「駄目だって言っているでしょう」
1、寄宿舎に帰るわ
2、もう、ここを出ていく
3、貴女の娘になるわ
4、しばらく一人にして
5、大丈夫だと思っていたけれど……やっぱり、辛いわね
↓2
- 440 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/23(金) 23:05:43.01 ID:3Od0l6D40
- 1
- 441 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/23(金) 23:06:10.57 ID:T+csMsRmO
- 1
- 442 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/23(金) 23:21:39.10 ID:5zfZ4fLFo
-
√ 2018年 8月1日目 昼:
01〜10 ひなた
21〜30 友奈
40〜50 千景
61〜70 若葉
81〜90 球子
コンマ判定 ↓1
- 443 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/23(金) 23:22:33.47 ID:JmJwWUNUO
- あ
- 444 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/23(金) 23:30:46.75 ID:5zfZ4fLFo
-
ではここまでとさせていただきます
明日も可能であれば少し早い時間から
- 445 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/23(金) 23:41:49.34 ID:BfbU9vEnO
- 乙
帰宅したとたんにまたもや千景と遭遇か…
お互いに真逆の闇を抱えているからかやたらと縁があるな
- 446 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/24(土) 05:38:03.11 ID:vEHw73cGO
- 乙
まだまだ序盤なのに怒涛の鬱展開の数々だな…
- 447 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/24(土) 11:22:17.62 ID:lKIiv3knO
- 乙
まああのまま話さない方が気まずいからこれからのこと考えると早く会えて良かったかも
- 448 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/24(土) 17:02:44.57 ID:xtj8VY0so
- では少しずつ
- 449 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/24(土) 17:03:53.57 ID:xtj8VY0so
-
せめて家が無事ならば家に帰ることも出来るが、
無事ではない陽乃は、寄宿舎に戻るしかなかった。
九尾は途中までひなたの姿でついてきていたが、
勇者に遭遇するのを警戒してか、人目がなくなったあたりで影と消えて
寄宿舎と学校となっている丸亀城の中間に近い道で、彼女と出会ってしまった。
陽乃「ぁっ……」
千景「?」
声に気付いて足を止めた千景だったが、
陽乃を見ても嫌悪感を感じさせるような表情を浮かべていない。
千景「なにか?」
陽乃「えっと……」
千景「体のことなら、もう平気よ」
千景は怒っていないどころか
普段、陽乃に向けているような嫌な感情さえも向けてはこない
あの模擬戦によって変わったのかもしれないが
陽乃はそう思えなくて、もしかして。と、影に視線を落とす。
『うむ。久遠陽乃としてでは問題があろう。あやつには別の人間に見えておる』
千景「どうしたの……? 伊予島さん」
陽乃「えっ」
千景「土居さんなら、見ていないけれど……」
- 450 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/24(土) 17:28:12.19 ID:HopcWwKvO
- 誰が最初に幻術と気付くかな
- 451 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/24(土) 17:29:23.31 ID:xtj8VY0so
-
千景の目には陽乃が伊予島杏に見えているらしい。
なぜ杏なのかと陽乃は困惑したけれど、友奈を選ばなかったのは正解だろう。
千景は勇者の中で一番友奈と親しくしている。
親しくしている……というよりもさせて貰っているように思えるのだが、
どちらにしても、ちょっとした違和感を疑問に思うかもしれない。
その点、杏たちならば誤魔化しやすいし、気にすることも少ないはずだ
陽乃「あぁ、その……怪我は本当に大丈夫?」
千景「……平気よ。もう痛みもない」
陽乃でなくても千景はやや冷ややかな反応をする。
それなりに明るく接するのは友奈だけで
杏が気遣っていても、あまり良い反応を見せてはくれない
陽乃「久遠さんは――」
千景「知らないわ……あんな人」
千景は久遠という言葉だけで顔を顰めると、
吐き捨てるように呟いて、首を振った。
模擬戦は合意の上で行ったものだったし、陽乃自身は何があったのか記憶にないけれど
話を聞いただけでも、語られる以上に何か良くないことがあったことだけは分かっている
- 452 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/24(土) 17:51:31.72 ID:xtj8VY0so
-
陽乃「なにが、あったのかな……」
千景「また……その話……?」
陽乃「えっ、ぁっ……その……」
千景は陽乃―彼女にとっては杏―に目を向けると、
その奥を見透かそうとしているかのようにも感じる尖った瞳を細めて、
少しだけ、嫌悪感を見せた。
千景「貴女は……ずっと彼女を気にかけているわね」
陽乃「それは……」
千景「けれどそんなこと関係なく……彼女は殺そうとするわ……」
千景の表情に影が差す
噛みしめていると分かる唇が固く結ばれて、
拳が戦慄くのが見えた
千景「あの人は高嶋さんを傷つけた……ッ!」
陽乃「っ」
千景「貴女だって……殺される……すり寄ろうだなんて無駄よ……」
声を張り上げてしまったことにはっとして、
またいつものような声色で忠告を口にする
杏を気にしているというよりも、
陽乃を畏れている彼女の言葉には、怒りが滲んでいるように感じた
1、陽乃に戻して貰う
2、郡さんは、久遠さんを殺したいと思ってる?
3、千景さんは、久遠さんを殺したいと思ってる?
4、久遠さんだって苦しんでいると思います……多くの人を護ったのに、ただ恨まれるだけで
5、もし、傷つけたのが久遠さんの意思ではなかったら?
↓2
- 453 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/24(土) 17:53:28.48 ID:Re3Mwq1s0
- 1
- 454 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/24(土) 17:54:18.85 ID:z/kQdCq1O
- 5
- 455 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/24(土) 18:23:45.43 ID:xtj8VY0so
-
陽乃「もし……」
聞いて良いのだろうか?
今の自分の言葉は、すべてが伊予島杏の言葉となってしまう。
彼女の知らない場所で、
彼女の姿で、彼女の声が……言葉を紡ぐ。
なのに……けれど。
でなければ、陽乃は知ることが難しいだろうから。
心の中で、杏に詫びながら陽乃は杏の姿で千景を見る
陽乃「もし、傷つけたのが久遠さんの意思ではなかったら?」
千景「乃木さんも言っていたわ。彼女は彼女ではなかったって……」
陽乃「………」
千景「高嶋さんはそれを信じるって言った」
千景は、自分もそうしてくれるような
少しだけ、寄り添うような雰囲気を感じさせながらも……鼻で笑う
千景「ありえないわ」
陽乃「っ……」
千景「彼女の意思かどうかなんて……そんなことはどうだっていい」
千景は杏から目を逸らし、
怒りに震える拳をゆっくりと開く
千景「あの人は私達を殺そうとした……それに変わりなんてないでしょう……」
- 456 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/24(土) 18:40:49.23 ID:xtj8VY0so
-
千景「伊予島さん、貴女は……例えば、土居さんが目の前で殺されかけても彼女を擁護するの……?」
陽乃「そんなこと……っ」
千景「あり得ない。だなんて……言わせないわ」
千景は否定の言葉さえ言わせない
陽乃には近づこうとしない千景の足が動く
一歩一歩、杏に見える陽乃のもとへと近づいて
千景「あの人は上里さんさえ殺すと言っていたらしいわ……一般人である彼女でさえ、あの人は殺す気だった……」
陽乃「なっ」
千景「そんな人が、五人の内三人を殺そうとした人が……残り二人だけは見逃すとでも……?」
威圧するように千景は言う
久遠陽乃は確実に殺すのだと
若葉も、湯女も、千景も、ひなたも
そして、残される二人、杏と球子でさえも
彼女はそう断言する
そうではない可能性を――一切、考えてはくれない
千景「媚び諂って……すり寄って……命乞いでもしたら……見逃して貰えるとでも思っているの……?」
陽乃「そんなことっ」
千景「無駄よ……だとしたら、高嶋さんが被害に遭うことはなかった」
- 457 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/24(土) 18:52:45.09 ID:xtj8VY0so
-
千景「三年前……死ねばよかったのに……」
陽乃「そんなっ……こと……っ」
生きたくて、死にたくなくて
大切な人を護りたくて……一生懸命に頑張った。
それは多くの人に恨まれるほどのことだったのだろうか
それは、死ねばよかったのにと言われるほどの悪い行いだったのだろうか
理不尽だ……あまりにも。
確証もなく身勝手に人柱とされただけでなく
死に物狂いで生き残り、人々を救ったことが呪われるようなことだと……
――なれば。
陽乃「っ」
首を振る
それは答えてはならない言葉
九尾のそれとは違う
憎悪に満ち満ちた、決して触れてはいけない闇
千景「分かったら、あんな人なんて関わらない方が良い」
陽乃「……」
千景「別に……私はどうでもいいけど……高嶋さんが悲しむと思うから……」
- 458 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/24(土) 19:28:32.99 ID:xtj8VY0so
-
千景が踵を返すと、
九尾の影が千景のもとへと素早く伸び――
千景「ふぐっ」
何もない、平坦な場所で千景が転ぶ
数秒動かなかった千景は顔を上げて
陽乃―杏―の姿を思い出して振り返り、逃げるように走っていく
『……殺めるなと、主様が言わねば刈り取るものを』
陽乃「ごめんなさい……」
『妾が、排除してやっても良いのじゃぞ』
九尾の声は今までになく優しかった。
しかしながらその言葉は厳しく、重い
陽乃はそれに何も言わず、
千景の姿が見えないことを確認して、また寄宿舎の方へと向かって歩く
陽乃「貴女、皆殺しにする気だったのね」
『くふふふっ、無論。本気であれば生きてはおらぬがのう』
陽乃「……脅しにしても、そこまでしたらどうなるか考えなかったの?」
『どうなれど、阻むものなり得るならば――消せばよいだけであろう』
九尾の声は仄かに笑みを含んで、少しだけ響いて感じた
- 459 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/24(土) 19:30:40.10 ID:xtj8VY0so
-
01〜10 ひなた
21〜30 友奈
61〜70 若葉
81〜90 杏
↓1のコンマ
※それ以外は通常
- 460 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/24(土) 19:33:06.10 ID:Re3Mwq1s0
- あ
- 461 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/24(土) 20:30:28.66 ID:xtj8VY0so
-
陽乃が部屋に帰ると、
元々散らかっていなかった部屋は誰かの手が入ったかのように、保たれていた。
掃除がされ、
カーテンが開けられて……窓が開いていて
陽乃「……馬鹿なことをする人がいるものね」
『伊予島杏。であろうな』
陽乃「どうして?」
『郡千景曰く、娘はお主を気遣っている。なれば、この場を保つのも不思議ではあるまいよ』
陽乃「……なるほど」
確かにそう言われれば、そうかもしれない
陽乃と杏は殆ど関わり合いになった覚えはないけれど
彼女はとても優しい人だ
勇者でなくてもよい、温もりのある心を持っている
陽乃「さて……」
その優しさには悪いが、
ここから出ていかなければならない
その準備をしようかというところで、
九尾のせいで伸びる影に別の誰かの影が触れた
ひなた「杏さん……?」
陽乃「上里さん……」
- 462 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/24(土) 20:41:55.98 ID:xtj8VY0so
-
扉は締まっていたはずだが、
音もなく開かれたのか、音に気付かなかったのか
恐らくは後者だろうと陽乃は自分の無防備さに眉を顰めてひなたへと顔を向ける
九尾の幻覚を見せる力は、
今もなお、伊予島杏と認識させているらしい
ひなた「どうして……こちらに?」
陽乃「上里さんこそ、どうして……」
ひなた「上里……?」
陽乃「あっ、あはは……久遠さんのこと考えてたのでつい」
ひなたは不思議そうに首をかしげたが、
深く掘り下げるつもりはないようで
そうだったんですね。と、笑みを浮かべて部屋を見渡す
みんなと一緒に居る場面が限りなく少ないせいで、
普段、杏がひなたをどう呼んでいるのかも分からず、誤魔化すしかなかった。
上里さんに疑問を抱いたのなら「ひなたさん」だろうか。
- 463 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/24(土) 20:59:00.39 ID:xtj8VY0so
-
見たところ、ひなたには体のどこかを庇うような様子もないので、
殺そうとしただけで全く手は出さなかったのだろう。
その心を読んでか、
九尾もそれには『然り』と息を漏らした。
陽乃が予め止めなければ殺されていたので
とめておいて良かったと、改めて思う。
ひなた「この部屋を見て、どう思いましたか?」
陽乃「え?」
ひなた「若葉ちゃんの部屋も似たようなものですが、もう少し……生活感が感じられるんです」
もしかしたら私のせいかもしれませんけど。と、
ひなたは笑いながら呟いて、
陽乃の部屋の、8割が何もない棚を一瞥する
ひなた「その点、久遠さんは私物をほとんど持っていません。一番初め、読書や映画が好きだと言っていたのに」
陽乃「それは……」
街には行けず、誰かに代理を頼めるわけもない。
通販なんてもってのほかで
そうなってくると、陽乃には私物らしい私物を入手することなんて難しい話だった
ひなた「瀬戸大橋を護った勇者である彼女が、疎まれ、憎まれ、呪われ、蔑まれ……趣味に触れることさえできない部屋にいたんですよ」
陽乃「………」
ひなた「酷い、話ですよね」
1、陽乃の姿に戻して貰う
2、ひなたさんも、久遠さんに殺されかけたんですよね?
3、久遠さんはどうなるんでしょうか?
4、噂……どうにか払拭することは出来ないのでしょうか?
↓2
- 464 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/24(土) 21:00:55.58 ID:60UsvB4WO
- 4
- 465 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/24(土) 21:02:04.99 ID:Re3Mwq1s0
- 1
- 466 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/24(土) 21:05:08.83 ID:xtj8VY0so
-
では少し中断いたします
再開は22時頃を予定しています
- 467 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/24(土) 21:13:24.47 ID:60UsvB4WO
- 一旦乙
ひなたや杏は優しいな…そして千景との溝の深さが辛い
- 468 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/24(土) 21:57:19.15 ID:xtj8VY0so
-
ではもう少しだけ
- 469 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/24(土) 22:10:51.15 ID:xtj8VY0so
-
陽乃「まず……上里さん、ごめんなさい」
ひなた「はい?」
一言先に謝った陽乃は、ふっと……息を吐いて
自分の影を見下ろして、頷く
九尾はそれだけで察したのだろう
影が揺らめいて、口が開いた
『よいのかや?』
陽乃「…………」
ひなたには聞こえない九尾の声
唐突な謝罪に困惑するひなたの前で陽乃が頷くと、
九尾の、幻覚を見せる力が解かれていく
ひなた「なっ……」
陽乃「……ごめんなさい。私なのよ」
ひなた「どうや……って……いえ、それは、想像が……」
驚愕に後退りしていくひなたは、
背後の壁に背中をぶつけて、下を向いてしまう
ひなた「千景さん達にも施した……幻を見せる力ですね?」
陽乃「そう……幻覚を見せるの。幻惑、誤認させるって言ってもいいかもしれない」
- 470 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/24(土) 22:29:24.77 ID:xtj8VY0so
-
ひなた「ここには、荷物を取りに?」
陽乃「まぁね……行くところがなかった。というのもあるけれど」
陽乃は薄く笑って、ひなたから目を背ける
唯一頼れそうだった友人には
二度と会いに来ないでと突き放されてしまったし、
自宅は三年前の火事で焼け落ちているのでどうしようもない。
自宅にバーテックスが落ちてきたことによって帰る場所を失った人々のいる仮設住宅もあるにはあるが、
陽乃はきっと……そんな場所に行ったら襲われることになる。
ひなた「まるで気付きませんでした」
陽乃「ほんと、驚きよね」
若葉の姿で現れたり、ひなたの姿で現れたり、
陽乃を杏に見せたり、一般人に見せかけたり
千景や友奈を重傷に勘違いさせたり
言ってしまえば何でもありだ
陽乃「……ごめんなさいね。貴女の話、私が聞いて」
ひなた「あっ……あぁ、えぇ……まぁ……ふふっ、他人に話すのは良くても本人に聞かれていたとなると……」
恥ずかしいものですね。と、
ひなたは照れくさそうに笑って見せてくれる
陽乃は勇者を殺そうとした悪魔のような人で
ひなたのことですら手にかけようとした、許しがたい人のはずなのに
- 471 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/24(土) 23:20:26.81 ID:xtj8VY0so
-
ひなた「久遠さん、せっかくですからここでお伝えしておきたい話があります」
ひなたは柔らか威空気を引き締めるように声色を少しだけ変えて
陽乃のことをまっすぐ見つめた
恐怖か、緊張か
唇はきゅっと結ばれている
ひなた「大社は、久遠さんの勇者としての権利を剥奪することを検討しています」
陽乃「なるほどね」
ひなた「あまり、恩恵はなかったと思いますが」
陽乃「……まぁ」
母親を匿ってくれている。という部分だけはかなりの恩恵を得られていると言っても良いけれど、
それ以外の点においては、何の恩恵も得られてはいなかった
寧ろ、縛りがきつくさえ感じられて、窮屈だ
陽乃「それ、乃木さんには?」
ひなた「いえ……若葉ちゃんは、久遠さんのことを本当に勇者だと慕っていますから」
陽乃「そう、言われてもね……」
ひなた「いかなる理由があったとしても、あの日……瀬戸大橋の手前でバーテックスに立ちはだかっていた姿は勇者だったと思います」
ひなたはそう言うと、ふっと息を吐いて
ひなた「民衆の声が……あまりにも大きいんです。貴女を差し出せと」
1、だったら、差し出してしまえば良いと思うわ
2、大社はどうするって?
3、ほんと、嫌われちゃってるわね
4、ねぇ……追放したことに出来ないかしら?
↓2
- 472 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/24(土) 23:22:05.85 ID:Re3Mwq1s0
- ksk
- 473 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/24(土) 23:28:10.16 ID:Bl/9HPULO
- 3
- 474 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/24(土) 23:28:49.32 ID:dU/gQsgfO
- 4
- 475 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/24(土) 23:38:22.58 ID:xtj8VY0so
- ではここまでとさせていただきます
明日は可能であればお昼ごろから
- 476 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/24(土) 23:46:49.69 ID:fWhVmChzO
- 乙
戦いで大きな被害が出たからならまだしも戦う前から四面楚歌状態だな…
- 477 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/25(日) 00:19:06.29 ID:U4U4YGP0O
- 乙
救いがない…
- 478 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/25(日) 13:37:11.88 ID:Jsf9kLfNo
-
では少しずつ
- 479 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/25(日) 13:38:22.68 ID:Jsf9kLfNo
-
陽乃「ほんと……嫌われちゃってるわね」
ひなた「街の人達に関しては嫌われているというより……期待されているというのが正しいかもしれません」
人々は陽乃を人身御供として差し出すことで、
救われるかもしれないという話に希望を抱いている
そして、本来の役目を逃げ出したという罪の烙印を押されてしまった陽乃は、
まだ子供である若葉たちに重責を担わせるくらいよりも、
供物として差し出すことへの罪悪感が薄いのかもしれない。
それらが集うことで……より、声が大きくなっていく
ひなた「久遠さんを供物とすることは、勇者が戦う以上の希望なんです」
陽乃「私が死ぬことで治まるなんて……」
『ふむ……ないとは言えぬぞ』
陽乃「え?」
ひなた「?」
『久遠家は人身御供で捧げられる家系であるが、それを除いても神々に仕え平安を守る巫女でもある』
陽乃「そんな話……」
『主様の神社では、年に一度行われている特別な祭事を知っておろう?』
九尾はひなたには聞こえない状態のまま、
とても重要なことを、軽く話す
陽乃「えぇと……大体三月ごろにやるやつ?」
『うむ。それが名残として残っておった調和の祭事じゃ』
旧暦で2月、新暦で言えば大体2〜4月の初午の日に行う祭事
陽乃も巫女として手伝うことのあったそれは確かに、主祭神の一人である平穏を護った神の御姿を借りている
『久遠とはそもそも、その平安が永遠に続くようにと授けられた名じゃぞ』
- 480 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/25(日) 13:46:12.15 ID:WdqbfS1rO
- きてたか
- 481 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/25(日) 14:04:12.78 ID:Jsf9kLfNo
-
ひなた「あの、久遠さん……?」
陽乃「あぁ、ごめんなさい」
ひなたには九尾の声が聞こえていないので
陽乃が一人で俯いて独り言ちているようにしか見えない
九尾だって、ひなたにも声を聞かせることは可能なのに、
それを不要として聞かせないのだから、困ったものである
ひなた「九尾さん……と、お話を?」
陽乃「ええ」
ひなた「本当に、特別なんですね……」
陽乃「あら、代わってくれる?」
陽乃の特別は、残念ながら人々から忌避されるようなものであり、
陽の個人としては、
誰かが代わりになってくれるのであれば、なって貰っても良いと思う
もちろん、自分たちの命の保証がされることが前提ではあるが。
ひなた「いえ……私にはとても……」
- 482 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/25(日) 14:13:35.70 ID:Jsf9kLfNo
-
人々を四国へと連れ帰って来た勇者、乃木若葉
その巫女として付き添って来た上里ひなた
ひなたは、見初められた巫女の中でも適性が随一であるとされていて
大社からの信頼も厚い
大社からも、他の巫女からも頼りにされているのだ
しかし……ひなたは浮かない表情で首を振る
ひなた「巫女としての適性が最も高いのは、おそらく久遠さんだと私は思っています」
陽乃「そうかしら? 無垢じゃないわよ。私」
ひなた「そもそも、精霊とされている九尾の狐は神獣の一種であるともされていて、神に等しい位の高さを持っているんです」
陽乃「そうなの?」
『くふふふっ、さてのぅ?』
知ってはいるが、あえて訊ねた陽乃に九尾は嘯く
声色は柔らかいので、ひなたの誉め言葉に少し喜んでいるのかもしれないと、
陽乃は眉を顰めた。
ひなたは、九尾に聞いたその言葉が自分に向けられたと考えてか、頷いた。
ひなた「はい……ですので、私が仮に九尾さんのお声を聞くとなると神託という形になって、抽象的な何かを見せられることになるだけだと思います」
陽乃「普通に会話することは出来ない……?」
ひなた「恐らくですが」
『ふむ……』
- 483 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/25(日) 14:30:22.06 ID:Jsf9kLfNo
-
九尾は悩ましげな声を漏らして、ひなたの方へと影を伸ばしていく
殺意も敵意も感じられず、
むしろ、ひなたの言葉に喜んでいたので、害はないだろうと見過ごすと
不意に、ひなたが悲鳴を上げた
ひなた「なっ、なっ……きゃっ……」
陽乃「何してるの?」
『くふふっ、いやなに……少し試しただけのこと』
九尾がくつくつと笑って影を引っ込めていくと
顔を赤くしているひなたは体を抱きしめるようにして、
壁に沿ってズルズルと、座り込んでしまった
ひなた「い……今のは……」
陽乃「九尾が上里さんに近づいたの。大丈夫?」
ひなた「はい……ただ、その、ぞわぞわっとして……腰が抜けてしまって」
『主様のように、あやつに取り入ることは妾には出来ぬ』
陽乃「それって声を聞かせることも?」
『それは可能じゃぞ。妾が人の形を取り人間の領域に降りてやればよいだけじゃからのう』
それとは違って。と、九尾は続ける
『主様は己の体を依り代とした神降ろしを行っておるのじゃが……あやつにもその器はある。しかし、妾を降ろせば器が砕ける』
陽乃「つまり、代わりには出来ないって言いたいのね」
『うむ。妾とは合わぬ』
1、だったら、人の姿で出てきてあげてくれない?
2、でも、上里さんに器があるってことは神様を降ろせるのよね?
3、あんまり変なことしないであげて
4、それで……上里さん。急で悪いのだけど。私、ここを出ていくことにするわ
↓2
- 484 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/25(日) 14:33:03.99 ID:rE7Y+k9xO
- 1
- 485 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/25(日) 15:16:00.93 ID:WdqbfS1rO
- 1
- 486 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/25(日) 16:09:57.07 ID:Jsf9kLfNo
-
陽乃「だったら、人の姿で出てきてあげてくれない?」
『必要があるかや?』
陽乃「その方が話がスムーズに進むでしょう?」
『ふむ……』
九尾は少し不満そうな吐息を漏らしたが、
ひなたの方へと顔の部分を向けると、
公園でしていたように、
ベッドに腰かける形で影を人の姿へと作り替えて――
千景「これで、良いかしら?」
陽乃「っ……」
ひなた「どうしてわざわざ……千景さんの姿を」
千景の姿を取って見せた九尾は、
陽乃を一瞥すると、鼻で笑って両手を上げて見せる
千景「私は嫌だって……言ったけれど、彼女がどうしてもって言うから」
陽乃「嫌がらせってわけね」
千景「そう思うなら……勝手にどうぞ」
- 487 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/25(日) 16:24:39.02 ID:Jsf9kLfNo
-
千景が陽乃の部屋にいるのは異様としか言えない。
もちろん、実際には九尾であって彼女ではないのだけれど
雰囲気は、彼女そのものだ
その千景はベッドの上に座ったまま、陽乃ではなくひなたを見る
千景「私と話したいなんて……上里さんは……変な人ね」
ひなた「申し訳ありません……」
陽乃「上里さん……?」
怯えたように声を絞り出すひなたは体を震わせていて
目を見開いて、ゆっくりと頭を下げていく
陽乃にとって今の九尾はいつもと変わりない
ただ少しばかり不機嫌なだけの様子だが、ひなたにはそう感じられていないのだろう。
だんだんと呼吸が荒くなって――唐突に千景が笑い声を零した。
千景「ふふっ、ごめんなさい」
ひなた「っ……」
千景「別に、貴女を取って食おうとか思っていないから安心して」
笑みを浮かべた千景は、
陽乃のことを見ると、肩をすくめて見せて、その姿をまた別の勇者
ひなたが最も身近に感じられる乃木若葉へと切り替える
若葉「すまない。少し試してみたくなってな……怖がらせるつもりはなかったんだ」
- 488 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/25(日) 16:56:26.10 ID:Jsf9kLfNo
-
ひなた「若葉……ちゃ……」
若葉「ひなたは確かに巫女の適正とやらが高く感じられる。だが、それはあくまで……素質があるというだけだ」
陽乃「えっと……つまり何が言いたいの?」
若葉「あまり無理をさせるな。という事だ」
自分が無理をさせたことは棚の上にあげ、
額に汗を浮かべて、
肩での呼吸にまで動揺してしまっているひなたをベッドの上に寝かせた若葉―九尾―は、
その横に腰かけて、ひなたの汗を拭う
若葉「生れ落ちてから神々と共に在った久遠さんとひなたでは、強度に天と地の差がある。と言えば分かるだろうか?」
陽乃「ええ、それなら……分かるわ」
若葉「器はあるが脆すぎる。久遠さんに行ったように力を纏わせたりしたら、ものの数分で精神が崩壊する」
ひなた「っ……はぁ……神託を受けた疲労感の、比では……ありませんでした……」
若葉「そうだろうな。ひなたに与えたのは神託ではなく祟りに近い物だったからな」
陽乃「え……九尾っ!」
祟り。
それは人間が成し得るものではなく、
超自然的な何等かによって引き起こされる、呪い以上に危険なものだ
それをしたとあってはさすがに咎めるべきだと声を上げた陽乃を制するように、若葉の姿をした九尾は息をつく
若葉「ひなたは私を神の御使い足る神獣であると評した。なら、私が害する理由はない」
陽乃「でも、祟りなんて」
若葉「近い物だと言っただろう? 毒にも薬にもなり得る神に近しい私の加護だよ」
九尾は若葉の体で、若葉の声でそう優しく声をかけると
ひなたの前髪を軽く払って、額に口付けをする
若葉「私を神獣と呼んだこと。殺めてやると言った私に臆せず歩み寄るその愚かさへの褒美だ」
- 489 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/25(日) 17:44:30.84 ID:Jsf9kLfNo
-
若葉……九尾の口づけを受けたひなたはゆっくりと瞼を閉じて、眠ってしまった
吐息は聞こえるので、別に亡くなったわけではない
若葉「全く……人間というものは愚かだな」
陽乃「上里さんは大丈夫なのね?」
若葉「私の加護の重さに耐えられず眠っただけですよ。じきに目を覚まします」
陽乃「上里さんが気に入ったの?」
若葉「久遠さんさえ言わない神獣と言った娘ですよ? そのうえ、殺意を向けた私に歩み寄ろうとしたんだ。褒美の一つもくれてやるさ」
そう言って笑った若葉は隣で眠るひなたを一瞥すると、
もう一度若葉らしい笑みを浮かべて見せて、小さく息を吐いた
褒美とは言うが、気に入っているようだ
若葉「ただ人で唯一守ってやるというだけですよ」
陽乃「私の部屋で寝ていたら不信じゃない?」
若葉「どうせ伊予島しか来ないですよ。勇者の中でも貴女は近づいてはいけない人ですから」
若葉は困り顔で零し、
ひなたを起こさないようにとベッドから立ち上がる
若葉「さて、これからどうする? まさかこのままここに居座るわけにもいかないだろう?」
1、焼け落ちた自宅
2、焼け落ちた神社
3、国外
4、公園
5、いいえ……姿を変え続けて潜伏するわ
↓2
- 490 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/25(日) 17:58:33.79 ID:0LiFRTWj0
- 5
- 491 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/25(日) 18:00:38.33 ID:WdqbfS1rO
- 2
- 492 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/25(日) 18:27:55.56 ID:Jsf9kLfNo
-
陽乃「神社に行きましょ」
若葉「久遠家の神社か? あそこで暮らすつもりか?」
陽乃「敬語を使わないの?」
若葉「ひなたは寝ているんだ。もういいだろう」
九尾はそう吐き捨てると、
一応はひなたを一瞥してから、ため息をつく
若葉「久遠さんがそうしたいというのなら、構わないが……有様に嘆かないことだ」
陽乃は自宅や神社が放火され、
焼け落ちたという話を聞いただけで
その現場を見たわけでも、
そのあとの惨状を目にしたわけでもない。
九尾はそれを思ってか、困ったように首を振る
若葉「一応、姿は変えておく」
陽乃「もし、私だってバレたら?」
若葉「死人が増える」
陽乃「……分かったわ。宜しく」
陽乃が陽乃だと知られた場合、
九尾は陽乃に手を出そうとする人々を容赦なく殺すだろう
そうならないようにと、陽乃は九尾へと声をかけた
- 493 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/25(日) 18:35:58.59 ID:Jsf9kLfNo
-
↓1コンマ判定 一桁
0 00 最悪
1〜3 良い
4〜6 悪い
7〜9 普通
ぞろ目 最良
- 494 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/25(日) 18:44:59.32 ID:rE7Y+k9xO
- ふみゅ
- 495 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/25(日) 19:01:56.88 ID:lZXNrZw40
- なんか判定だといっつも1〜3ばかり出るイメージ
- 496 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/25(日) 19:18:33.79 ID:Jsf9kLfNo
-
√ 2018年 8月1日目 夕:神社(壊)
久遠家が管理していた神社は、それなりに規模の大きいものになっている。
本殿を除いて社が九つあり、
それぞれに祭神が祀られている
いや――祀られていた。
陽乃「……酷い有様だわ」
神社は本殿のみならず、目に見える全てが焼け落ちていた
それが延焼してしまったのか
狙ってそうされたのかは考えるまでもないだろう。
『主様、九美社に向かってくれるかや?』
陽乃「いいけれど……」
参拝順路に従って、
しかし、見るも無残な状態に顔を顰めながら、
本殿の裏……正しくは南に存在していた九美社に向かう。
赤と白を基調とした木造の社は、見る影もない
陽乃「……駄目ね」
『ふむ……見るまでもなかったが、やはりすべて落ちておるのう』
- 497 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/25(日) 19:53:02.46 ID:Jsf9kLfNo
-
陽乃「ただ、それなりに片付けがされてるわ」
『ほう?』
陽乃「放火されて、焼け落ちて……ボロボロだけど、そのまま放置されたわけじゃないみたい」
『盗人がいたようじゃがのう?』
陽乃「それとは別」
九尾は分かっているだろうけれど、陽乃はあえて否定する
九美社から離れ、ほかの社や本殿も見て回ったが、
九尾が言うように盗みに入られた形跡がある。
明らかに焼失ではなく、消失しているものが複数あったし、
酷いものは何かでたたき割られていたから、確実だろう
陽乃「一応、雨風はしのげそうね」
『本気でここに住むつもりかや?』
陽乃「他に行けそうなところないでしょ?」
ここから近い実家に帰ることも考えたが、
そこはむしろ、周囲の目がある可能性が高い
見つかった場合にその人が殺されることを考えると
雨風がしのげる本殿に隠れ住むのがベストだろう
- 498 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/25(日) 20:37:33.10 ID:Jsf9kLfNo
-
『外に出てしまうのも手ではあるじゃろう』
陽乃「そんなことしたらお母さんがどうなるか分からないじゃない」
『乃木と上里に言うてみたらどうじゃ』
陽乃「その二人なら……」
助けてと言えば、二人なら助けてくれるかもしれない
たとえ陽乃が勇者の権利を剥奪されたとしても
母親を匿うことに協力してくれるかもしれない
ただ、母親はそれを望まないだろう
陽乃の母は、あくまで巫女として大社に属しているだけだ。
それがなければ、匿われるなんて拒否することだろうし
陽乃の代わりに、人身御供として喜んで捧げられるはず。
陽乃「はぁ……」
『主様の母親は、本来ならば死していた人間じゃぞ』
陽乃「だとしても、助けられたじゃない」
『そうじゃ。主様は不要な人間を助け、己に枷をしておる。無駄で愚かで阿呆じゃのう』
- 499 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/25(日) 21:34:08.96 ID:Jsf9kLfNo
-
喉を鳴らして笑った九尾は、
焼け残っている本殿の一部分
そのさらに片隅で座り込んでいる陽乃の隣に人型を作りだす
友奈「こんな場所で隠れていなくちゃいけないなんて……おかしいです!」
陽乃「こんな場所でも、私の大切な場所なんだけどね」
友奈「あ……ごめんなさい。でも、雨しか防げませんよ」
扉なんてない
鍵なんてない
屋根となれる程度のものがあるくらいで、
強風なら、容赦なく雨が吹き込んでくるだろう
友奈「帰ってきて貰えませんか? あのことなら……全然、問題ありませんからっ」
陽乃「それをやったのは貴女でしょ」
まったく。と、
陽乃は呆れてため息をつく
友奈の姿をしているが九尾は九尾だし
例の件を行ったのは、その九尾だ
- 500 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/25(日) 22:08:42.27 ID:Jsf9kLfNo
-
球子「仕方がないだろー……ああでもしなきゃ、久遠陽乃の力は示せない」
陽乃「本気を出さなかったくせに」
球子「そもそも、勇者自体が本気を出していないからな」
そう言った九尾は、
先刻言っただろう? と、球子の声で笑う
球子「久遠さんがしてるのは神降ろし。完全に同じことは出来ないにしても、勇者はみんな神降ろしに類似した現象を引き起こす器がある」
陽乃「それって……ほんと?」
球子「もちろん、久遠さんのように常時行うなんて出来ないだろうけどなー一時的にならできるはずだぞ」
球子の姿で
球子らしい仕草をして見せるものの
浮かべている笑みには、九尾の怪しさが感じられた
球子「タマだってきっと凄いことが出来るぞ。まぁ、その反動で大変な事になるだろうけどな」
陽乃「私よりも酷いことになりそうっていうのだけは分かる」
巫女の中で最も適性があるひなたでさえ、
神降ろしすることで、壊れてしまうと九尾は言った。
神の力を借り受ける勇者であれば、ひなたよりも耐えることは出来るかもしれないが
やはり、その影響は大きいだろう
- 501 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/25(日) 22:31:37.54 ID:Jsf9kLfNo
-
神社に逃げてから、九尾と二人きり
今までよりも話をしてくれるので
思っていたよりは寂しさを感じないけれど
部屋とさえ言えないありさまには、さすがに心が疲弊する
友人に拒絶され、千景に死ねと言われて、
唯一休むことの出来ていた部屋にはもう戻ることは出来なくなって
布団いちまいさえない焼け落ちた本殿で、寝泊まり
わびしいどころの話ではない。
だからこそ、九尾は寄り添ってくれているのかもしれないが。
千景「久遠さんは現状、敵しかいないと言っても良いわ」
陽乃「最低でも半分は貴女のせいだけど」
千景「本当にこのまま逃げ隠れし続けるだけでいいの?」
陽乃「言っておくけれど反旗を翻すなんて、私はしないからね」
1、郡さんの姿は止めてくれない?
2、ねぇ、勇者が使える神降ろしって具体的にはどんなものなの?
3、そう言えば……最初に貴女、私に憑いているひと柱って言ってなかった?
4、それで? 貴女はほかに何ができるって思っているの?
5、例の……貴女の子供になる作戦はまだ有効?
↓2
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