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【安価でのわゆ】久遠陽乃は勇者である【2頁目】

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1 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/18(金) 22:46:15.49 ID:IXkdx2t5o
このスレは安価で

乃木若葉の章
鷲尾須美の章
結城友奈の章
  楠芽吹の章
―勇者の章―

を遊ぶゲーム形式なスレです

目標

生き抜くこと。


安価

・コンマと選択肢を組み合わせた選択肢制
・選択肢に関しては、単発・連取(選択肢安価を2連続)は禁止
・投下開始から30分ほどは単発云々は気にせず進行
・判定に関しては、常に単発云々は気にしない
・イベント判定の場合は、当たったキャラからの交流
・交流キャラを選択した場合は、自分からの交流となります

日数
一ヶ月=2週間で進めていきます
【平日5日、休日2日の週7日】×2
期間は【2018/07/30〜2019/08/14】※増減有

戦闘の計算
格闘ダメージ:格闘技量+技威力+コンマ-相手の防御力
射撃ダメージ:射撃技量+技威力+コンマ-相手の防御力
回避率:自分の回避-相手の命中。相手の命中率を回避が超えていれば回避率75%
命中率:自分の命中-相手の回避。相手の回避率を命中が超えていれば命中率100%
※ストーリーによってはHP0で死にます

wiki→【http://www46.atwiki.jp/anka_yuyuyu/】  不定期更新 ※前周はこちらに


前スレ

【安価でのわゆ】久遠陽乃は勇者である【1頁目】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1601649576/
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/18(金) 22:50:32.11 ID:jLQA3ZlhO
立て乙
そして祝スレ復活
3 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/18(金) 22:53:01.81 ID:IXkdx2t5o
前スレ段階のまとめ


1日のまとめ

・ 乃木若葉 : 交流有(長野、単独断念)
・上里ひなた : 交流無()
・ 高嶋友奈 : 交流有(電話、若葉に変更)
・ 土居球子 : 交流有(不許可の場合、信じてもいい)
・ 伊予島杏 : 交流有(味方の証明、不許可の場合、信じてもいい)
・  郡千景 : 交流無()
・   九尾 : 交流有(長野にいけるか、伊予島家の守護、襲撃の予兆、偽の神託)

√ 2018/08/03 まとめ

 乃木若葉との絆 58→62(普通)
上里ひなたとの絆 56→56(普通)
 高嶋友奈との絆 51→52(普通)
 土居球子との絆 40→43(普通)
 伊予島杏との絆 46→50(普通)
  郡千景との絆 21→21(険悪)
   九尾との絆 61→63(普通)
4 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/18(金) 23:20:17.40 ID:IXkdx2t5o

陽乃「九尾の力を解析させてあげれば、どうにかできるかしら?」

杏「難しいのでは?」

球子「力がありすぎる……と、思う」

未知の力は脅威ではあるけれど

既知の力になったとしても、

九尾の力は若葉達と比べて別格過ぎるのだ

現実に大きく影響を及ぼすレベルの力は、脅威であることに変わりはないだろう

球子「それに、協力なんてしてくれるのか?」

陽乃「私は――」

球子「久遠さんじゃなくて……九尾の方」

自分に向けられたのかと、

否定しようとした陽乃に球子は首を振る

球子「なんか、してくれなさそうな気がするんだが……」

杏「どうでしょう?」
5 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/19(土) 00:14:52.34 ID:u5VjQhcHo

陽乃「……どう?」

『断る』

陽乃「私のためでも?」

『不要じゃろう』

分かっていたことではあるけれど、

九尾は大社に関しては協力する気がないらしい

自分の力を解析させるなんて言語道断だろう

『妾の力を解析など、出来ぬ』

陽乃「本当に?」

『神樹と同様の力と思うておるならば、不可能じゃ』

杏「久遠さん、どうですか?」

陽乃「ダメそう……」

球子「久遠さんが従えてるやつじゃないのか?」

陽乃「従えているというより、協力してる関係だから」
6 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/19(土) 01:07:53.41 ID:u5VjQhcHo

従えているのではなく、

協力している関係だから強制することはできない。

それでも多少のことは願えばやってくれる

願い通りではないけれど。

陽乃「仮に、九尾の力が解析できたとしても……警戒はされちゃうのよね……」

『偽ることもできるがのう』

陽乃「それって、あれのように?」

神託のように偽れるのかと訊ねた陽乃に、

九尾は笑い声で答える。

神託よりも、偽ることは容易だと

杏「久遠さん……?」

九尾の声は二人には聞かせていない為、

陽乃は独り言を言っているような状況だからか

杏と球子は訝し気な目で、陽乃を見つめる
7 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/19(土) 01:08:29.75 ID:u5VjQhcHo

ではすみませんがここまでとさせていただきます
明日は可能であれば少し早い時間から
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/19(土) 02:04:13.37 ID:vtsbNDLzo

偽ったら偽ったで面倒なことになりそうだな…

それはそれとして新スレ立ってよかった
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/19(土) 05:51:53.02 ID:8q1uihKkO

この際だから二人には九尾とのあれこれの情報共有もありかもね
あとほぼ毎回追ってるからスレが復活してて嬉しい
10 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/19(土) 23:48:43.95 ID:u5VjQhcHo

遅くなりましたが、少しだけ
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/19(土) 23:50:15.85 ID:oemZjDGXO
あいよー
12 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/19(土) 23:56:40.02 ID:u5VjQhcHo

陽乃「あぁ、ごめんなさい……九尾と話してるの」

球子「なるほど……」

球子は気を悪くしないで欲しいんだけどさ。と

前置きをしてから、陽乃を見つめる

球子「タマ達には独り言言ってるようにしか見えない……というか、変な奴?」

杏「タマっち先輩っ」

球子「いや、ほんと……純粋にさ」

悪いんだけど……そう言う球子は、

本当に純粋に感じたことを口にしただけなのだろう

陽乃は軽く笑うと、

確かにそう見えるでしょうねと頷く

これに関しては、球子が正しい

陽乃「でも、九尾と話してるのは本当よ?」

球子「今更疑わないよ」

杏「みんなの前で……あんなことがありましたからね」
13 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/20(日) 00:07:45.33 ID:OgeQcfG/o

神社で、友奈の姿を模して出てきた九尾

あんなことがあったら、

陽乃が独り言言ってるだなんて、思わない。

けれどそれは理由を知っている人だけであって、

理由を知らない人達にとっては……それこそ。

杏「忌憚のないことを言えば、九尾さんには姿を見せていて貰った方が良いかと」

陽乃「でも……」

『断る』

陽乃「………」

陽乃が独りで逃げているときは姿を見せることは多かったけれど

あれは、必要だったからそうしていただけだ

今はもう必要がない

だから、九尾はそれを拒む
14 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/20(日) 00:23:34.26 ID:OgeQcfG/o

陽乃「……ねぇ、二人にはこの影どう見えてる?」

杏「影……ですか?」

陽乃の指さした影を、二人が見つめる

陽乃には狐の頭の形をしているように見えるが、

二人は揃って顔を見合わせたかと思えば、首をかしげる

杏「普通の影です……けど」

球子「普通に人の影だぞ? 何かあるのか?」

陽乃「ここに九尾がいるのよ」

陽乃はそう答えると、

自分には影が人の形ではなく、

九尾の狐の頭の形をしていると話す。

二人はもう一度影を見るが……首を振る

陽乃「もう……」



1、九尾、姿を見せて頂戴
2、九尾は見せたくないって
3、この調子じゃ、どうにもならないわね


↓1
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/20(日) 00:25:28.57 ID:HQ+Vu4QAO
2
16 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/20(日) 00:27:05.63 ID:OgeQcfG/o
では短いですがここまでとさせていただきます
明日は可能であれば早い時間から
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/20(日) 00:27:34.04 ID:dGXrl9GxO
1
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/20(日) 00:30:03.39 ID:HQ+Vu4QAO

なんとか杏たち連れて長野行きたいけどなあ
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/20(日) 00:35:29.11 ID:NqZcnVb6O

九尾も頑なに姿を現さないな…
杏たちもひなたみたいに信頼できるような関係にならないと厳しいか
20 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/20(日) 23:54:13.64 ID:OgeQcfG/o

遅くなりましたが少しだけ
時間も時間なので、安価はない予定です
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/20(日) 23:55:11.21 ID:YFJbRNZCO
りょーかい
22 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/21(月) 01:21:05.25 ID:KjmzBbipo

陽乃「九尾は姿を見せたくないって」

球子「そっか……まぁ、見せられても困るけど」

杏「も〜またそんなこと言って……」

球子「いや、だってさぁ……素直だと逆に怖くないか?」

陽乃「……その気持ちは、分かる」

陽乃に同意されて驚いたように目を見開いた球子だが

小さく笑うと「そりゃよかった」と目を背ける

陽乃自身、九尾が素直に承諾してくれたらくれたで、

何か裏があるのではと、ちょっぴり怖い

陽乃「見せてくれなくても声を聴かせて貰えればいいんだけどね」

杏「そうですね……それだけで……」

球子「タマ達は良いけどさ、声だけ聞こえたら怖くないか?」

杏「確かに……」
23 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/21(月) 02:09:48.86 ID:KjmzBbipo

やっぱり、九尾に姿を見せて貰うのが一番だ

しかし、九尾はそれを拒んでいる

陽乃が孤独なら出てきてくれるのに

陽乃が誰かと一緒にいるのなら、出てきてくれない

優しいのか優しくないのか

杏「九尾さんは久遠さん以外には心を許していないんですね」

陽乃「私にも許しているかどうか……」

ただ、陽乃と同様にひなたのことも気に入っているようなので

ひなたの前になら姿を見せてくれるかもしれない

結局

九尾が気に入っているかいないかだろうか。

杏はともかく

球子に関しては殺してしまえとまで言われているし

しばらくは難しい
24 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/21(月) 02:16:15.43 ID:KjmzBbipo

杏「大社からの心象を良くするのは、九尾さんの力を解析させても難しいですし、姿を見せても……」

きっと、恐れられるだけだと杏は思う。

民衆に蔓延している噂があろうがなかろうが

九尾の力は万能で、凶悪だからだ

だったら

むしろ謎のままにしておいた方が良いのかもしれない

その方が……擁護のしようがあると。

けれど、杏たちは知らないだけで

もうすでに

九尾の力の一端は千景によって伝わってしまっている

球子「……長野、行けた方が久遠さんは幸せだったかもしれないな」

陽乃「一人でなら、ね」

杏「それは駄目ですよ」

球子「久遠さんが一人が良いって言ってるんだから放っておきゃいいのに」
25 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/21(月) 02:25:12.38 ID:KjmzBbipo

そう言った球子は、

しかし……ふと、顔をしかめて首を振る

陽乃「土居さん?」

球子「……いや、久遠さんは一人になりたいのか?」

陽乃「その方が楽だもの」

球子「そりゃ、守らなくていいからな」

陽乃「ええ。裏切られることもないし」

苦笑いを浮かべながら、

自虐気味に零す陽乃を、球子はバツが悪そうに見つめる

ここに友奈がいたなら、もっと違う言葉をかけていたはずだ。

陽乃の友人だという少女に、頼まれたから。

彼女は孤独だと言われたから

球子「……久遠さんにとってはタマ達なんて雑魚だろ?」

陽乃「そんなこと思ってないわよ。まだ、正確な力量さえはかれてもいないのに」

杏「バーテックスとの戦闘経験ならタマっち先輩にもあるよね?」

球子「でも、誇れるほどじゃない」

陽乃「私だって同じよ」

球子「別に誇ってもいいだろ……救われたって言ってる人が、少なくとも3人はいるんだから」

杏「それはタマっち先輩もでしょ」

そう言われた球子は、

杏を一瞥するだけに留めて、顔を背けた
26 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/21(月) 02:25:41.39 ID:KjmzBbipo

では短いですがここまでとさせていただきます
明日も出来れば通常時間から
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/21(月) 06:09:05.35 ID:UBGodPdpO

こうなってくるとやはり偽神託を出してもらった方が良さげかな?
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/21(月) 12:20:32.33 ID:tXTa4NWKO

陽乃さんもどうにか自信を取り戻して欲しいなぁ
29 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/21(月) 23:08:18.56 ID:KjmzBbipo

遅くなりましたが少しだけ
30 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/21(月) 23:10:57.55 ID:KjmzBbipo

√ 2018年 8月4日目 昼:伊予島家

03〜12 杏
37〜46 球子
51〜60 友奈
72〜81 若葉
89〜97 大社

↓1のコンマ

※それ以外は通常
※若葉、友奈の場合、一桁奇数で訪問

※ぞろ目で付近の住民 奇数悪
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/21(月) 23:33:57.01 ID:4017Ob9f0
32 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/22(火) 00:36:10.58 ID:Biq8j/Puo

√ 2018年 8月4日目 昼:伊予島家


昼になって、杏の母親が作ってくれた昼食を4人で食べる。

杏は元からそうだったが、

球子も、初日ほどの警戒心はなさそうに感じる

もしかしたら、

ここに来てからは勇者として丸亀城のところに連れ出されてからの数年以上に

関わりを持ったかもしれないから、当然かもしれないけれど。

陽乃「……ずっと家にいるというのも窮屈ね」

球子「仕方がないだろー……自由なわけじゃないんだから」

陽乃「土居さんは平気なの?」

球子「平気じゃないけど、仕方がないじゃんか」

球子は杏と違って非常にアクティブだ

自由に外に出られない鬱憤も溜まっていることだろう

それでも、

杏を護るか否かの件を除いて八つ当たりもしてこないのだから

相当我慢しているに違いない
33 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/22(火) 01:27:16.62 ID:Biq8j/Puo

球子「無理矢理付き合わされてるならともかく、自分で選んだからな」

それなら我慢するよ。と、球子は眉を顰める

杏のためではあったけれど、それを選んだのは球子だ

陽乃…・・ましてや

杏がついてきて欲しいと頼んだわけではない

杏「タマっち先輩……なんだか、先輩っぽくなった?」

球子「前から先輩っぽかっただろっ?」

杏「え〜?」

球子「あ〜ん〜ず〜っ!」

からかうように笑う杏と

それにちょっぴり怒った様子の球子

相も変わらず仲の良い二人を、陽乃は外側の人間として見つめる
34 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/22(火) 01:40:21.28 ID:Biq8j/Puo

こうしている間にも

長野の勇者……白鳥歌野は戦っているかもしれない

陽乃は可能であれば救援に行きたいと今も思っている

けれど、それは大社から却下されてしまった

なのに

寄宿舎に戻ることも許されていない

そのためにはひなたを大社預かりにしておかなければならない

陽乃「はぁ……」

杏「久遠さん?」

陽乃「あぁ、気にしないで」

ここ数日、同じことばかり考えている陽乃は

いい加減どうにかしなければと……思ってはいるが。

ひなたを取るか

自分を取るか

普通なら迷う必要もないのだけれど、迷う

球子「疲れてるんなら寝ててもいいんじゃないか? どうせ、出来ることなんてないんだし」

杏「それもそうだよね……」
35 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/22(火) 01:41:16.29 ID:Biq8j/Puo

では途中ですがここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/22(火) 03:05:08.17 ID:0TyH7It40

はるのんのヤキモキしてる気持ちが痛いほどわかる
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/22(火) 06:35:50.71 ID:ue7XFP9nO

陽乃さんじわじわと精神的に疲弊してきてるな…なんとかしなければ

あと今日でくあゆシリーズ6周年おめ
38 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/22(火) 22:28:05.23 ID:Biq8j/Puo

遅くなりましたが、少しだけ
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/22(火) 22:30:26.27 ID:5x+HDVr8O
よしきた
40 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/22(火) 23:21:42.37 ID:Biq8j/Puo

陽乃「大丈夫……別に疲れているわけじゃないの……」

球子「ほんとか?」

陽乃「ええ、ほんとう……」

伊予島家に来る前

あの野宿の苦しさも取り払われたし、疲れも無くなった。

朝昼晩の、美味しい食事

お風呂だって毎日入ることが出来ていて

ちゃんとした布団で眠ることが出来て……虫が入ってくるような心配もしなくていい

十分だ

疲れなんて、感じていない

『ふむ……主様、少し小娘共とでも鍛練をしたらどうじゃ』

陽乃「鍛練?」

『勇者としての実力を見ておいた方が良かろう?』

そう言った九尾は、

少しなら力を使っても、二人が死ぬことはないだろうと囁く
41 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/22(火) 23:42:53.61 ID:Biq8j/Puo

九尾の力を使っても本当に死なないかどうかは

陽乃の手加減にかかっているだろう

そのくらいのことは陽乃にもできる

けれど……二人がそれを受けてくれるかどうか。

陽乃との鍛練なんて

特に球子からしてみれば、

お前をぶん殴ってやる。なんて果たし状を叩きつけられるようなもののような気がする

杏「九尾さんが何か?」

陽乃「えっと……特には」

球子も、もしかしたら体を動かすという点には賛成してくれるかもしれない

けれど、今は

そんなことよりも、気にしておくべきことがある

しかし

若葉からの連絡は……まだ来ていない


1、電話を借りる
2、ねぇ、鍛練しない?
3、九尾と話す
4、杏と話す
5、球子と話す
6、二人と話す
7、イベント判定


↓1
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/22(火) 23:44:26.55 ID:SjvJk2Pr0
6
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/22(火) 23:45:23.76 ID:5x+HDVr8O
2
44 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/23(水) 00:22:47.13 ID:qwU1qTr6o

陽乃「ねぇ、正直に答えて欲しいのだけど」

陽乃はわざわざそう前置きをする

しなくても単刀直入に答えてくれた気はしなくもないけれど

陽乃「私と上里さん、どっちと暮らしたい?」

球子「ひなただな」

杏「えっと……そう、ですね」

球子は忖度なしにはっきりと即答してくれたものの

杏は悩ましそうにして……考えて。

杏「家事スキルはお二人ともあるので……戦力面で考えて久遠さんかもしれません」

陽乃「あら、優しいのね」

杏「今の世界を前提として、情報を基に客観的に考えただけですよ」

陽乃「私の力が危険だっていう情報はどこ行ったの?」
45 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/23(水) 00:30:12.78 ID:qwU1qTr6o

杏「力は解析できていないので、不安要素はあります」

けれどそれを加味してなお

戦力になるという点を捨てることはできなかったと杏は言う

バーテックスは凶悪だ

杏は、ほんの少しそれを見ただけに過ぎないけれど

あれが及ぼした影響の大きさは知っている

それに対抗できる貴重な戦力と共にいられるのは……これ以上ないほど安全だとも言える

だから、陽乃を選んだ

球子「そこまで深く考えてなかったけど……護れるって自信がないなら答えは変わらないな」

陽乃「そうでしょうね」

球子「……実際に戦えば、そっちの方が強いくせに」

球子は顔をしかめて

ため息をつくように、陽乃から目を背けた

球子「守ってやるから付いてこい……くらい、言えるだろ」

陽乃「………」
46 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/23(水) 00:30:39.54 ID:qwU1qTr6o
では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/23(水) 00:40:50.00 ID:PYAu55f3O

修行開始!
みんなで鍛えてるうちに仲良くなりたいな
48 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/23(水) 00:43:59.63 ID:a49zjCYJO

杏は最初から優しいけどタマもきちんと物申す辺り良い子だな
あと交渉が長引いてるのか若葉の動向も気になる
49 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/24(木) 23:55:59.16 ID:yaJBgBWQO
連休かな
50 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/25(金) 22:43:37.44 ID:LocRaVTPo

連日できませんでしたが、本日は進めていきます
51 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/25(金) 22:47:03.82 ID:llcaeggQO
やったぜ
52 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/25(金) 23:10:23.20 ID:LocRaVTPo

陽乃「その守ってあげられる自信がないって言ってるのよ……」

球子「……」

球子はムッとして

その間に割って入るかのように杏が口を開く

杏「まぁまぁ……慢心するよりはいいんじゃないかな」

球子「タマが慢心してるっていうのか〜?」

杏「そ、そんなこと言ってないよっ」

球子「分からなくもないけどさぁ……」

慢心してしまうよりは

多少なりと警戒心を残しておくべきだという考えは球子も理解がある。

しかし、まったく自信を持たないというのは問題だ

球子だって、絶対に守ると豪語しているけれど

絶対に守り切れるだなんて慢心をしているわけではない

常に、そう言う心持で挑んでいるという話だ。

球子「でもやっぱり、久遠さんは自信を持たなすぎるって思うだろ?」
53 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/25(金) 23:28:01.85 ID:LocRaVTPo

杏「それは……」

杏は考え込むようにしながら、表情を曇らせていく

球子が杏のことを言っているとは思っていないものの

杏も、自分自身に力があるだなんて自信を持ててはいないのだ。

だから、自信を持たないことを責めるその言葉が、

勇者でありながら、それを信じ切れていないような自分のことを責められているようで……

杏「私も、自信ないから」

球子「あんず……」

顔を背ける杏を一瞥した球子は、

困り果てて……もどかしさを誤魔化すように頭を掻く

球子「あぁぁぁぁぁぁぁぁ……っも〜っ!」

唸って、いきり立って

球子「久遠さん……いいやっ、陽乃っ!」

陽乃「なに?」

球子「タマと勝負だ!」

杏「タマっち先輩!?」



1、嫌よ
2、……良いけれど、勇者の力使えるの?
3、そういうの、あんまり好きじゃないのだけど


↓1
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/25(金) 23:32:05.94 ID:qt+f6vRx0
2
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/25(金) 23:33:31.75 ID:llcaeggQO
3
56 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/25(金) 23:57:46.89 ID:LocRaVTPo

陽乃「……良いけれど、勇者の力は使えるの?」

球子「無論だ!」

そうでなければ、陽乃の捜索なんて任されないし

こうして陽乃を見張る役割なんて担えるわけがない

しかし……。

杏は不安そうに首を振る

杏「ただ、私達は試作の物を貸し与えられているだけなんです」

陽乃「戦装束が万全じゃないって言ってたわよね? どの程度なの?」

杏「勇者同士で試験運用した結果的には……持続時間が短いみたいです」

球子「攻撃に対しての耐性もほとんどないな……生身で攻撃を受けるのと大差ないって」

陽乃「それで良くも私なんかと……」

陽乃は、自分がみんなを護れるなんて自負はしていないものの

それが危険な力であることくらいは認識している。

もちろん、

勇者であれ、生身で受けて良い力ではないと断言できる。
57 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/26(土) 00:09:03.12 ID:ofFBWIgko

けれど、陽乃が断りそうだとみてか

球子は顔をしかめて「でもさ」と切り込んでいく

球子「自信持てるような力じゃないんだろ?」

杏「なんで挑発してるの!?」

球子「陽乃が自分で自信ないって言ってるんじゃないか」

杏「そうだとしても……」

それはバーテックス相手の話で、

勇者相手で考えれば

千景と友奈を戦闘不能に叩き込んだ挙句、若葉の全力でどうにかというレベルなのだ

球子がいくら頑丈な楯の持ち主だとは言っても、

押し込まれる可能性が高い

球子「それとも、力に自信があるのか〜?」

陽乃「……そんなに、認めさせたいの?」

球子「さぁ?」

ニヤリと笑う球子だけれど、その魂胆は透けて見えている

どうしても、球子は認めさせたいらしい

球子の力ではなく、陽乃自身の力をだ
58 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/26(土) 00:09:38.66 ID:ofFBWIgko

では途中ですがここまでとさせていただきます
明日も可能であれば少し早い時間から
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/26(土) 00:13:10.33 ID:E0ITuxuuO

陽乃さんのために体を張るタマっち先輩イケメンや…
60 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/26(土) 00:28:34.39 ID:QQDloN4e0

タマっちいいやつだな
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/27(日) 22:52:36.38 ID:y6Oms8HSO
ここ最近連休が増えたなぁ…大丈夫だろうか
62 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/28(月) 15:41:38.08 ID:BweajsbYO
師走だし
63 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/28(月) 22:16:53.81 ID:EC3BPActo

遅くなりましたが、本日は少しだけ
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/28(月) 22:19:18.92 ID:dmGaYCHEO
待ってたぞー
65 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/28(月) 22:27:38.07 ID:EC3BPActo

陽乃「貴女に、得があるの?」

球子「タマが……いいや、私が納得したい。それじゃダメか?」

陽乃が弱いなら、弱いで良い

もちろん、強いなら強いでも構わない

けれど、それがあやふやなままなのが許せなかった。

杏達から聞いた話では、陽乃はとても強い勇者だと思われるけれど

球子は、それを自分の目で確かめたわけではない

それでも杏が言うなら信じたいのに……

陽乃自身がそれを否定するから、もどかしい

陽乃「なるほどね」

杏「危ないよ……タマっち先輩」

球子「陽乃が本当に弱いなら平気だ」

杏「久遠さんも止めてくださいっ」

陽乃「そう言われてもねぇ……」


1、戦う
2、戦わない


↓1
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/28(月) 22:28:54.06 ID:bkMTBs+y0
2
67 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/28(月) 22:52:22.58 ID:EC3BPActo

陽乃「悪いけれど、戦えないわ」

球子「殺すのが怖いのか?」

陽乃「万全な状態で戦う方が実力が図れるでしょう?」

球子「屁理屈だな〜」

そう、これは屁理屈でしかない

けれど球子はそれでも別に良いと考えているようで

呆れたというような表情を浮かべながらも、

猛反発するようなことはなくて。

球子「杏も若葉達も久遠さんの実力を認めてる」

陽乃「だから、なに?」

球子「今は久遠さんが強いって思っておいてやる……反対したいならタマを倒すんだな」

杏「もーっ、タマっち先輩?」

球子「あっはっはっはっはーっ!」

陽乃「……」

球子「認めろ。強いって」
68 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/28(月) 23:18:32.33 ID:EC3BPActo

陽乃「まったく……」

球子ではなく

陽乃と杏が呆れて、ため息をつく

暴論……ではないかもしれないが

戦って勝っても、戦わずに終わっても球子は陽乃を強いと決めつけるらしい

陽乃「認めさせたいなら、私に負けることね」

球子「なんだとーっ!」

やるかこんにゃろ〜! なんて

わざとらしく言う球子は笑みを浮かべている

杏「も〜……」

冗談だと分かっているから、杏も怒ったりはしない

むしろ、

犬猿の仲にも見えた二人が仲良くしているように見えるのは、嬉しくて。

杏も笑っていた

陽乃「茶番だわ」
69 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/28(月) 23:31:12.75 ID:EC3BPActo

仲の良い二人

そして、それと関係はあるが仲がいいわけではない自分

だったはずなのに。

ここでの生活は、かつてのようで

だから……緩んでしまいそうになる

陽乃「……強いと思いたいなら思ってもいいけれど」

けれど、陽乃は守るなんて約束はできない

守りたくても守れなかったものがたくさんあって

守った結果、裏切られるような形になって

だから……もう、約束なんてしたくない

陽乃「私は認めないから」

杏「久遠さん……」

球子「装束が出来たら、真っ先に決闘して白黒つけてやるからなっ」

突き放すような陽乃の言葉に、しかし、球子はそう返した

強引に行けばどうにかなると、言っていた少女を思い出して。
70 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/28(月) 23:31:47.70 ID:EC3BPActo

では短いですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/28(月) 23:51:32.93 ID:dmGaYCHEO

戦わなかったけどタマとは少しでも打ち解けてるといいな
あと実力試すならいっそいずれ行くだろう長野の道中でもいいかも
72 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/29(火) 01:36:04.27 ID:MOVjBFjCO

長野遠征楽しみだな
73 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/29(火) 23:30:45.50 ID:z4d2LnGUo

すみませんが本日は休みとさせていただきます
明日は可能であれば通常時間から
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/29(火) 23:32:14.30 ID:SBw2L4hYO
了解、乙ですー
75 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/31(木) 23:52:13.90 ID:+NhM4vmvO
今日も休載っぽそうだけど、良いお年を
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/01(金) 00:26:22.85 ID:iLXx6dfso
明けましておめでとう
あんまり無理すんなよ
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/01(金) 23:04:37.88 ID:wsqDnskzO
体調でも崩したのかな…?
こんな断続的な連休って今までなかったと思うから凄い心配なんだけど…
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/01(金) 23:37:03.13 ID:423CoCaIO
実家でも帰ってんでしょ
正月だし
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/02(土) 00:29:45.07 ID:paeCWFVeO
年数的に結婚しててもおかしく無いからな…
80 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/02(土) 21:47:34.94 ID:DtQ4+tPPo
連日お休みになってしまいましたが、本日は少しだけ
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/02(土) 21:51:15.38 ID:yRROLT99O
新年一発目待ってたぞー
82 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/02(土) 22:07:38.02 ID:DtQ4+tPPo

√ 2018年 8月4日目 夕:伊予島家

03〜12 若葉
37〜46 友奈
51〜60 杏
89〜97 九尾

↓1のコンマ

※それ以外は通常
※若葉、友奈の場合、一桁奇数で訪問
※ぞろ目で付近の住民 奇数悪
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/02(土) 22:10:02.92 ID:yRROLT99O
84 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/02(土) 22:44:26.85 ID:DtQ4+tPPo

√ 2018年 8月4日目 夕:伊予島家


『面倒じゃのう……先延ばさずに殺めてしまえばよかろう』

陽乃「殺す前提なのやめて」

『じゃが、煩わしかろう』

陽乃「そんなこと……」

あの勢いは、かつて陽乃を包んでいたもので

そして奪われ、失ったもの。

正直、今の陽乃には心の負担になるばかりで

あんなもの無くなってしまえと思わないこともないけれど

でも、

失われていいものだとは思っていない

陽乃「それは置いておいてね。乃木さんから連絡がないのが気になるんだけど……」

『そうやって、内に秘めるだけで――』

陽乃「良いでしょ、別に」

『良いことでは無かろうに』

不満げな九尾は、

けれど、それ以上何も言わない

陽乃「貴女だって、上里さんの安否が気になるでしょう?」
85 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/02(土) 23:08:32.03 ID:DtQ4+tPPo

『ふむ……あの娘に何かがあれば妾ならば分かる』

陽乃「分かるってどんなふうに?」

『あの娘の精神状態を察知することも可能じゃぞ』

九尾はそう言うと、陽乃の影に混ぜ込んでいる自分の姿を映し出すと

尻尾を立たせて、揺らめかせる

『妾の尾が一つ欠けて見えるじゃろう? それがあの娘に憑いた加護じゃ』

陽乃「それで?」

『あの娘の死を悟ることもできる。無論、妾のそれを媒体としてあの娘のもとに往くことも可能じゃが』

陽乃「……怖い力ね。貴女」

『くふふっ、妖狐としては当然じゃ。もっとも、それを主様が扱うことはできぬぞ』

陽乃「出来ちゃったら大変な事になるでしょ?」

出来たら便利だとは思うけれど

より凶悪さが増すばかりか

危険度が跳ね上がる為、使えない方が良いと思ってしまう

とはいえ……使えたら戦闘面では非常に心強いのだが
86 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/02(土) 23:25:20.84 ID:DtQ4+tPPo

『あの娘には現状、問題は起こっておらぬ』

陽乃「……覚悟してたってことね」

陽乃を寄宿舎に戻すなら

自分がその場に残らなければいけないこと

二度ととは言わずとも、

しばらくは若葉に会えなくなること

様々なデメリットがあることを承知の上で……問題が無いと考えているのだ

『うむ、あの娘は良い』

陽乃「私より?」

『うむ』

陽乃「なら、上里さんを勇者にしたらいいじゃない」

『いいや、あの娘にはその適正……じゃったか。それがない。特に妾らは不可能じゃ』

陽乃「力を与えることはできるんでしょう?」

『即死するぞ』

陽乃「あぁ……」

九尾や、まだその力を秘めている伊邪那美様

その力の影響を、ほかの人は耐えられない

陽乃は吐血することもあるが、それでもまだ軽い方なのだ
87 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/02(土) 23:35:37.45 ID:DtQ4+tPPo

『して、どうする主様』

陽乃「………」

『このままなら、主様は寄宿舎に戻ることになるぞ』

しかしそれは陽乃の望んだ形ではない

ひなたを犠牲……というのは過言かもしれないが、

ひなたを寄宿舎に戻さないという条件があって成立する

その場合でも、若葉達は理解してくれるだろうが

きっと、千景はそれを許さない

千景は特別ひなたを思ってはいないだろうけれど

あいつのせいだと、睨んでくるだろう

陽乃「はぁ……」

『やるかや?』

陽乃「やらない」

『傷害は排除してこそであろう?』

陽乃「殺すのは短絡的過ぎるってば」

血の気が多いというか

来るものを蹴飛ばす九尾のやり口は恐ろしい


1、遠征、行っちゃおうかな……
2、私の力、誤魔化してくれない?
3、ひとまず、上里さんは諦めるしかなさそうね
4、残念だけど……大社に戻るわ


↓1
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/02(土) 23:37:28.39 ID:00onjZlB0
1
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/02(土) 23:38:09.10 ID:yRROLT99O
1
90 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/02(土) 23:41:46.63 ID:DtQ4+tPPo

では、本日はここまでとさせていただきます
明日は可能な限りお昼ごろから


遅くなりましたが今年もよろしくお願いします
91 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/02(土) 23:58:53.86 ID:yRROLT99O

改めて今年も楽しみにしてます

そしていざ長野へ…!
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/03(日) 00:35:17.42 ID:cH8cI+yaO

いろいろ行くまでやること多いけどさあどうなるのか
93 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/03(日) 18:47:27.34 ID:sO+2PzI9o

遅くなりましたが、少しだけ
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/03(日) 18:57:53.45 ID:QTrQvTvnO
来てたか
95 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/03(日) 19:20:33.56 ID:sO+2PzI9o

陽乃「遠征、行っちゃおうかな……」

『ほう?』

陽乃「それしかないような気がするのよ」

杏達のことを思えば

それが円満な解決策とは言えないかもしれないけれど

でも、それが一番だと陽乃は思う

この世界において、陽乃は厄介者だ

未知数な力を持っていて

見せている片鱗でさえ……世界を崩壊させかねないものだから

陽乃がいなければ、ひなたは若葉達のもとに戻ることができる

それが当たり前で

それが普通のことだった

その普通を奪ったのは、間違いなく陽乃の存在

だから、いない方が良いと

そして、だからこそ。

ただ幽閉されるよりも有意義な時間の使い方をするべきだと陽乃は思う
96 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/03(日) 19:59:19.39 ID:sO+2PzI9o

陽乃の影として見えている九尾は

それを人の形へと転化させて……ひなたに変わる

ひなた「良いと思いますよ。ここにいたって何があるわけでもありませんし」

陽乃「なにもないなんてことはないと思うけど」

ひなた「悪いことの方が多いかと」

陽乃「でしょうね」

ひなた「良いですよ? 私は協力を惜しみません」

陽乃「積極的ね……」

九尾が積極的だと少し怖い

でも、陽乃に危害を加えることはないから

ただただ、この世界が気にいらないというだけだろう。

ひなた「それで、どうしますか?」

陽乃「伊予島さん達?」

ひなた「行くと言えば、彼女たちはついてきますよ?」
97 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/03(日) 20:06:28.34 ID:sO+2PzI9o

だったら言わないという手もある

杏達には何も言わずに

こっそりと抜け出して……長野へと遠征に行く

問題はいくつかあるかもしれないけれど

でも、それなら荷物を抱えることはなくなる

陽乃「乃木さんにだけとか」

ひなた「若葉ちゃんだと、止められますよ」

陽乃「……郡さんは?」

ひなた「冗談にもなりませんね」

陽乃「そうよねぇ……」

なら高嶋さん。

なんて……それもまたいうだけ無駄なことで。

ひなた「何も言わずに出ていけばいいじゃないですか。仲良くする気は、無いのでしょう?」

陽乃「………」


1、こっそり、出ていきましょう
2、ねぇ、装束のデータ収集、私達が協力したら早く終わらないかしら
3、……イレギュラーなのは私だけでしょう? 彼女たちは無謀なことしない方が良いわ


↓2
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/03(日) 20:11:34.68 ID:bAX+cCkf0
3
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/03(日) 20:11:47.38 ID:cH8cI+yaO
2
100 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/03(日) 21:15:17.57 ID:sO+2PzI9o

陽乃「ねぇ、装束のデータ収集、私達が協力したら早く終わらないかしら」

ひなた「終わると思いますよ」

陽乃の力は、若葉達とはまるで異質なものではあるが

しかしその身に纏う加護と、

その力そのものは若葉達のデータ収集のは大いに役立つことだろう

九尾が扮しているひなたは、やや不機嫌そうに溜息をつく

ひなた「だから、私は模擬戦でもどうかってすすめたんですよ?」

陽乃「だからって……そんなの、言われなきゃ気付かないわ」

ひなた「そうでしょうか……」

陽乃「当たり前でしょう」

球子達に対して殺意ばかりの九尾の言葉

そんなものから、

言われてもないことを察してくれと言うのは

無茶も過ぎていると陽乃は顔をしかめる

陽乃「なら、模擬戦するべきよね」

ひなた「力の証明、することになりますよ?」

陽乃「貴女が勧めてきたことでしょ?」
101 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/03(日) 21:42:00.67 ID:sO+2PzI9o

ひなた「ただ、今の彼女たちの装束では久遠さんの全力は防ぎきれませんよ」

陽乃「全力出したら、どうなっちゃうの?」

ひなた「最悪死にますね」

そもそも、以前から言っているように

陽乃が扱う力には少なからず蝕む穢れが含まれている

陽乃と戦うだけでそれによる影響はあるし

それが長時間なら、より影響は大きくなっていく

陽乃「……化け物じゃない。私」

ひなた「そう言われてますよね。ずっと」

陽乃「まぁ……そうよね」

力を扱う適性のある陽乃自身でさえ蝕み

いずれは死に至らしめることのある力

それを、適性のない相手が耐えられるわけもなくて。

ひなた「模擬戦するなら、適度に力を抜いたうえで……短期決着ですよ」

陽乃「なにそれ……でも失敗したら殺しちゃうんでしょ?」

ひなた「最悪ですよ最悪。場合によっては重症程度ですから」

陽乃「笑い事じゃないってば」
102 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/03(日) 21:58:06.94 ID:sO+2PzI9o

ひなた「連れていくんですか?」

陽乃「戦えるようになっていれば、いても問題ないでしょう?」

ひなた「なるほど、それで郡さんを置き去りにするんですね」

陽乃「しないわよ」

九尾に細工して貰わない限り

全員を連れていくなんていうのは不可能だ

その場合

まず間違いなく千景を連れていくわけにはいかない

当然、そうなれば友奈もつれていけないので

最大でも

若葉、杏、球子の三人になってくる。

陽乃「郡さんは悪くないわ。だれだって……あんな風に思うもの」

ひなた「そうは思いませんけど」

陽乃「でも、私はそう思ってる」

それでいいでしょう? と、陽乃は笑った
103 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/03(日) 21:59:57.09 ID:sO+2PzI9o

√ 2018年 8月4日目 夜:伊予島家

03〜12 杏
37〜46 若葉
51〜60 友奈
89〜97 大社

↓1のコンマ

※それ以外は通常
※大社の場合、一桁奇数で訪問
※ぞろ目で付近の住民 奇数悪
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/03(日) 22:00:30.32 ID:cH8cI+yaO
105 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/03(日) 22:07:55.50 ID:sO+2PzI9o
では、少し早いですが本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/03(日) 22:19:06.45 ID:cH8cI+yaO

道筋はできてきたのかな?
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/03(日) 22:31:28.81 ID:T5tZJ8ODO

偽神託ってまだ使わないのだろうか
なんやかんや九尾が細かく手配してくれそうだけど
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/05(火) 23:12:27.86 ID:yleqLdHMO
早く長野に行きたいなぁ…
109 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/07(木) 08:15:10.46 ID:tu1TUWOsO
昨日もお休みだったか…
数日とはいえ休載が長く感じるな
110 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/07(木) 20:25:33.98 ID:OIILG4JVo

連日お休みを頂いてしまいましたが
少しだけ
111 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/07(木) 20:28:20.30 ID:ZVscdyYTO
よっしゃー!
112 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/07(木) 20:36:23.95 ID:OIILG4JVo
√ 2018年 8月4日目 夜:伊予島家


陽乃はこの四国から出て

長野の勇者達のもとへと遠征することを決めた

しかし、単独での走破は不可能ではないが可能とも言い難い

そのうえ、杏達は付いて来ると言っているし、大社からの許可は無い

この際、大社からの許可は無くても問題はないが

確実に長野にたどり着き、極力死人を出さないようにしなければならない。

特に、勇者のうちの誰かが死ぬというのは致命的だろう

一番は、戦力になる勇者を連れていくことだけれど

今の勇者達は生身に近く

とてもではないが遠征に耐えられるとは思えない

出ていくか

装束が完成するように協力して……連れていくか。

陽乃の力ならば、

それを促進させられるという話ではあるけれど

最悪殺すというのが、怖い
113 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/07(木) 21:15:10.14 ID:OIILG4JVo

陽乃単独でも体の負荷という部分に目を瞑ってさえしまえば、

どうにかして……長野にたどり着くことはできる

そうするなら杏たちには知られないように出ていく必要があるし

連れていくなら、

協力してあげなければならない

その場合は杏たちに声をかけた方が良いだろう

陽乃「………」

話をするなら、今日だろう

出ていくのなら、今

あるいは明日の早朝

大社がまだ答えを渋り

若葉からの動きがない今のうちが適切だ



1、出ていく
2、杏たちに話す


↓2
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/07(木) 21:21:52.41 ID:iavYUUaZ0
1
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/07(木) 21:24:29.22 ID:ZVscdyYTO
2
116 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/07(木) 22:07:16.24 ID:OIILG4JVo

陽乃「……というわけ」

球子「なぁにがと言うわけ。だ!」

杏「た、タマっち先輩! しーっ!」

もう夜だから大声出さないでと諫めようとする杏

球子は悩まし気に頭を抱えて

枕へと頭を打ち付ける

球子「正気か!?」

陽乃「正気で言ってるのよ」

これ以上こんな場所にいたところで

改善されていくとは思えない

もちろん、杏の家は居心地がいいけれど

でも、それに甘んじているだけではいけないと思う
117 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/07(木) 22:45:48.96 ID:OIILG4JVo

陽乃「私、向こうに戻りたくないし」

かといって

ひなたを大社預かりのままにしておきたくはない

それになにより、長野のことが気になる

九尾は長野にいる勇者は、

ここにいる勇者の誰よりもバーテックスとの闘いに慣れているから

役に立つだなんて言っているけれど。

杏「なら、私たちを連れていってください」

球子「そうは言ったってなぁ……装束が機能しないだろ?」

杏「でもっ!」

球子「でももすもももあんずも無しだ!」

杏を止めた球子は、

しかし、杏の気持ちを酌んでか少し考えて陽乃へと目を向ける

球子「杏を守れるか?」

陽乃「約束は出来ないわ」

球子「だろうと思ったよ……」
118 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/07(木) 22:53:01.41 ID:OIILG4JVo

もはや分かり切っていたことのように零す球子

呆れる素振りもなく

ただ確認のために聞いただけのような笑いを零して……

球子「だったら、杏は行かせられないな」

杏「ううん、私も行く」

球子「駄目だ……駄目に決まってるだろ」

私、死にに行ってきます

なんて笑顔で言っているようなものだという球子は

杏が行くのを絶対に止めるつもりのようだが、

逆に、杏は絶対に行くつもりのようで。

陽乃「そこで一つ、提案があるのだけど」

球子「ろくでもなさそうだなぁ……」

陽乃「否定はしないわ」

でも、聞いておいて損はないと思う。と

陽乃は自信なさげに、苦笑する

球子「それで?」
119 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/07(木) 23:04:38.84 ID:OIILG4JVo

陽乃「貴女達の装束を完成させる手助けが出来るかもしれないの」

杏「それって……模擬戦をするっていうことですか?」

陽乃「端的に言ってしまえばそうなるわね」

球子「ふぅん……それで?」

ただそれだけじゃないと見抜いている球子は

それがどれだけユニークな話なのかと

むしろ楽しんでやろうとでもいうかのように笑っていて。

陽乃「別に面白い話じゃないのだけど……」

杏「何かデメリットがあるんですよね?」

陽乃「ええ。まぁ、もうみんな知ってることだけど」

陽乃は小さく答えて一息

隠す必要もなく、はっきりと告げる

陽乃「私と戦うと最悪死ぬわ……手を抜いても長く戦うと体を蝕まれて死に至る」

杏「そんな……」

球子「脅しじゃなくて、本当にか?」

陽乃「こんな脅しが必要だと思う?」

球子「そりゃそうか……」

千景なら殺しに来そうな挑発文句

けれど、今の球子と杏には意味がない
120 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/07(木) 23:17:26.50 ID:OIILG4JVo

球子「なるほど……で?」

陽乃「で? って」

球子「久遠さんと戦えば死ぬ可能性があるなんて、タマはずっと考えてたことだぞ」

杏の言葉を信じているならば

陽乃の力が絶大なのはまず間違いがない

だから、死ぬことなんて前提だった

少なくとも球子はそれもあり得ると考えながら話していたのだ

死ぬ可能性があるなど、今更だ

球子「データを取るのは一人で十分だろ?」

杏「タマっち先輩まさか……」

球子「杏はどうしてもついて行きたい。タマは久遠さんの実力が知りたい」

それって利害の一致ってやつだろ? なんて球子は笑みを浮かべる

少し違う気もするけれど

陽乃は何も言わずに、小さく首を振る

本気かどうかなんて聞くだけ無駄そうだ

球子「やろうじゃんか……いいだろ?」


1、相手は郡さんが良いかな……
2、ええ。良いわよ

↓2
121 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/07(木) 23:19:57.79 ID:ZVscdyYTO
2
122 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/07(木) 23:21:20.06 ID:iavYUUaZ0
2
123 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/07(木) 23:38:09.83 ID:OIILG4JVo

ではここまでとさせていただきます
明日も可能な限り通常時間から
124 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/07(木) 23:57:01.88 ID:ZVscdyYTO

杏が優しさ故に結構前のめりな分タマが良い感じなストッパーになってくれてるな
そしてようやくタマの希望してた決闘回来たか
125 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/08(金) 00:25:33.71 ID:ArtNBEA00

ここにきてちょっと心配になってきたぞ
126 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2021/01/09(土) 11:30:15.09 ID:QLL9S4yU0
長野まで何日かかるんだろ
ライフラインとか残ってんの?
127 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/09(土) 21:18:18.33 ID:H7u4cG/hO
じっくり描写すると片道だけでも相当時間かかりそうだし判定でもいいかもね

今日は更新あるといいなぁ
128 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/09(土) 22:54:45.06 ID:anLKq5RWo

遅くなりましたが、少しだけ
129 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/09(土) 22:58:47.26 ID:TKfcg570O
よしきた
130 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/09(土) 23:21:26.33 ID:anLKq5RWo

陽乃「……ええ。良いわよ」

球子か杏か

どちらが最も安全かと考えたら、必然的に答えはそれになる

そう思いつつも

陽乃は球子の戦い方次第では、

球子と自分の相性は最悪だと思っているのだが。

陽乃「大丈夫、殺さないように気を付けるわ」

球子「それ、タマじゃなかったらキレてるからな〜?」

陽乃「なら……手加減はさせて貰うわ。の方が良い?」

球子「郡さんが聞いたら大鎌振りかぶって迫ってくるやつだな」

陽乃「そう……」

困り顔の球子は杏を一瞥して眉を顰め、

また陽乃へと向き直る

球子「それで? どこでやるんだ?」

子供の小競り合いならともかく

勇者としての力を振るうのであれば、

家の前の私道だの、ちょっと広い公道だの

人通りが比較的多いような公園等ではさすがに無理だ

陽乃「私の神社で良いじゃない」
131 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/09(土) 23:47:22.09 ID:anLKq5RWo

杏「良いんですか?」

陽乃「良いも何も、もう壊れちゃってるし……」

まだ現存している。と言って良いのかは微妙なところではあるが

今ある廃墟を丸ごと吹き飛ばすほどの戦いをするつもりはないし

それなりに更地となっている上に

悪い噂ばかりで中々に人が来ることがなさそうだから、うってつけの場所だ

最悪、吹き飛んでしまってもいいし

なんて、陽乃は苦笑する

陽乃「あそこなら、気兼ねなく戦えるでしょう?」

球子「久遠さんが良いなら良いけどな」

杏「タマっち先輩の武器的にも屋外が良いし、それでいいなら良いと思う」

陽乃「言っておくけど私の力を真正面から受けるだけなら……死ぬからね?」

球子「やってみなきゃわからないだろ」

陽乃「あっそう」

やって欲しくない

やれば死ぬ可能性があるから

などとは言わずに

陽乃は握り拳を作っては開いてを繰り返して、ため息をついた

陽乃「なら、早速明日の朝に行きましょ。予定、どうせないでしょ?」
132 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/10(日) 00:17:45.21 ID:fa7u1rV7o

球子「……久遠さん、小学生の時からそうなのか?」

陽乃「そうって、なに?」

球子「いや、なんていうか」

今この状況下で個別に用事などあるわけもなく

それは当然ではあるのだが

杏と球子がここにいなければならず、予定がないのはある意味陽乃のせいである

その点を責めるつもりはないけれど

それなのに「どうせないでしょ?」と言うのは聊か引っ掛かりがある。

球子「……友達いた?」

陽乃「それなりにはいたし、今ほど嫌われてなかった」

球子「そっか」

もちろん、以前の陽乃はそんなことはなかった。

あれから今まで色んなことがあったせいで

突き放すことを大前提としたひねくれた考え方になったため、

少しばかり、キツい。

それが余計に敵を作ることになるが、味方を作りたくないのだからそれは必然だと言ってもいい
133 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/10(日) 00:39:18.56 ID:fa7u1rV7o

球子「もう少しさ……柔らかい感じになれないのか?」

陽乃「私に何を求めてるのよ」

杏「でも、もう少し……その、優しくしたら印象変わると思います」

陽乃は球子たちに対して当たりがきついのに対して

杏の両親に対してはとても礼儀正しい

何かあれば率先して手伝いに行くし、

それがまた、丁寧で……二人からの評価は良く、信頼も厚い

初めからその態度だったなら

千景ともここまでこじれることはなかったのではないかと杏は思う

陽乃「……無理ね」

杏「でも」

陽乃「優しくしてあげてた結果が、コレなのよ。残念だけど」

そう言った陽乃は笑っていたけれど

杏と球子は笑えずに目を合わせて……首を振る

陽乃「明日は模擬戦とはいえ、戦うんだからもう寝なさい」

球子「………」

スレてない陽乃が気になるけれど

それを知る由もなく、球子はため息をつくだけだった
134 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/10(日) 00:41:32.20 ID:fa7u1rV7o

では短いですがここまでとさせていただきます。
明日もできれば少し早い時間から
135 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/10(日) 00:51:36.59 ID:YL7htGFHO

陽乃さん、間違いなく優しさは残されてるけど心は既にボロボロだな…
二人がどれだけ陽乃さんの心を癒せるかが重要になりそう
136 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/10(日) 01:15:33.94 ID:VkF3ActwO

ドキドキするなあ
137 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/11(月) 22:19:21.28 ID:4jWb+DGro

遅くなりましたが少しだけ
138 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/11(月) 22:28:14.04 ID:MhzhfUajO
きてたか
139 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/11(月) 22:28:55.11 ID:4jWb+DGro

1日のまとめ

・ 乃木若葉 : 交流無()
・上里ひなた : 交流無()
・ 高嶋友奈 : 交流無()
・ 土居球子 : 交流有(戦わない、脱出相談、良いわよ)
・ 伊予島杏 : 交流有(戦わない、脱出相談)
・  郡千景 : 交流無()
・   九尾 : 交流有(遠征、勇者との協力)

√ 2018/08/04 まとめ

 乃木若葉との絆 62→62(普通)
上里ひなたとの絆 56→56(普通)
 高嶋友奈との絆 52→52(普通)
 土居球子との絆 43→46(普通)
 伊予島杏との絆 50→53(普通)
  郡千景との絆 21→21(険悪)
   九尾との絆 63→63(普通)
140 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/11(月) 22:31:12.36 ID:4jWb+DGro

√ 2018年 8月5日目 朝:伊予島家

03〜12 若葉
37〜46 大社
51〜60 友奈

↓1のコンマ

※それ以外は通常
※一桁奇数で訪問
※ぞろ目で付近の住民 奇数悪
141 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/11(月) 22:42:12.72 ID:/OAD9NIo0
142 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/11(月) 23:05:08.39 ID:4jWb+DGro

√ 2018年 8月5日目 朝:神社


約束の朝

誰かに邪魔されることもなくすんなりと神社に辿り着いた陽乃達

やっぱり、人気のない神社

呪われるだとか祟られるだとかで周囲の家屋にもまばらで

これなら、多少暴れても問題はないだろう

陽乃「一撃先に入れたほうが勝ちで良いかしら?」

球子「そしたらタマが有利過ぎじゃないか?」

楯のある球子と、ない陽乃

どちらが有利かで言えば

当たり判定を隠せる球子の方が有利と考えられる

陽乃「なら、相手が気絶するまでやる?」

杏「三回攻撃を当てる……でも、タマっち先輩が有利になっちゃうかな?」

球子「攻撃の当たり判定って言うのがそもそもたまに有利だな」

陽乃「じゃぁ、ハンデで良いんじゃない?」

球子「へぇ?」
143 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/11(月) 23:39:30.73 ID:4jWb+DGro

球子「余裕じゃないか……負けても知らないぞ?」

陽乃「負けても良いわよ別に」

陽乃は勝たなければならないわけじゃない

負けたっていい

球子達勇者の装束のデータ収集の手伝いになればそれでいいからだ

球子「張り合いがないなぁ」

陽乃「負けても良いけど、負けるつもりはないわ」

球子「どっちなのかはっきりしろよな〜」

そう言いつつも嬉しそうな球子

杏はそれを一瞥して

崩壊してしまっている神社へと目を向ける

かつては人の願いを祈られた場所が

今では、人の憎悪によって変わり果てている

ここで奉られていた神々が人類を滅ぼそうとしても止められる気がしない

陽乃「伊予島さんは審判をお願いね?」

杏「あ、はい……役者不足かもしれないですけど」

球子「心配するな。タマが勝つ」
144 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/12(火) 00:06:58.09 ID:7pquXyOWo

『主様、手を抜いても良いが……』

陽乃「大丈夫、分かってるわ」

手を抜きすぎてもダメだし

本気を出し過ぎてもダメ

それは球子の実力に関わらず、装束が耐え切れないからである

長引かせないためにも、

一撃あるいは、三回攻撃を与えたら終了が望ましい

陽乃「一回が良い? 三回が良い?」

球子「どっちの方がデータがとれるのかだろ?」

陽乃「一番データがとれるのは、土居さんが死ぬまで殴ることだけど……」

杏「久遠さん……」

さすがにそれはあり得ない

かといって

超短期決戦になりかねない一撃決着は控えるべきかもしれない

しかし、それが一番安全だ

陽乃「そうねぇ」

安全性を取るか、データを取るか

相手が折れるまでというのは危険ゆえに、一撃決着か三撃決着


1、一撃決着
2、三撃決着


↓1
145 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/12(火) 00:10:46.26 ID:REAxeky+O
1
146 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/12(火) 00:34:12.88 ID:7pquXyOWo
ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
147 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/12(火) 00:42:52.49 ID:REAxeky+O

千景の時も一撃当たるのに意外と時間かかってたし一回で十分だと思う
なにより長引いて万が一のことがあると困るからな

148 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/12(火) 02:20:12.62 ID:6mrF0VrIO

緊張してきた……
149 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/13(水) 23:31:44.17 ID:X/cQNO5mO
平日は厳しい感じ?
150 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2021/01/13(水) 23:34:55.02 ID:QklJrBRo0
もしかして戦闘が長引くと暴走する?
151 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/14(木) 21:08:20.52 ID:E21gN6KWo

遅くなりましたが、少しだけ
152 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/14(木) 21:11:01.72 ID:VFx1hKfnO
やったぜ
153 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/14(木) 22:33:21.99 ID:E21gN6KWo

陽乃「じゃぁ、一撃決着で決めましょうか」

球子「おう、やってやる」

意気込む球子は陽乃から距離を取って、

ポケットから取り出した端末を操作する

陽乃「……あら」

端末からあふれ出していく神々の力

それが球子の体を包み込んでいき、

身に纏っていた衣服をどこかへと消滅させて……戦装束へと変えていく

陽乃「なるほど」

球子「どうだ、凄いだろ」

杏「作ったのはタマっち先輩じゃないのに」

大社の中でも

そう言った力を研究する部署が作り上げた技術

それは確かに神々の力に満ちている

満ちてはいるが。

陽乃「力の纏まりがないわね……分散してるように見える」

まとまりがないから

その真価を発揮できていない

これでは、大して力を防げない
154 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/14(木) 23:21:31.74 ID:E21gN6KWo

杏「久遠さん、力が見えているんですか?」

陽乃「見えるというか、感じるというか……でも、見えてると思って貰って良いわ」

神の力

小さい頃からそれに触れてきた陽乃は

九尾の力を借りずにそれが察知できるようにまでなってきている

九尾の力を借りれば

それがさらに……鮮明になっていく

陽乃「九尾、できるかしら」

『無論』

端末の操作をすることなく

ただ力を貸してくれる九尾に声をかけただけで

陽乃の装いを戦用の装束へと一変させる

黒を基調とした、暗晦な雰囲気を感じるそれは

陽乃が巫女として勤めていた頃の装束をモチーフとしたものでできていて

一見すると、酷く動きにくいように見えるが

陽乃「懐かしいわね……もう二度と着ることなんてないと思ってたんだけど」

球子「黒いな……」

杏「赤と白じゃなくて、黒と白……独特だね」
155 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/14(木) 23:42:09.68 ID:E21gN6KWo

球子「本当にそれで戦えるのか?」

陽乃「ええ、何の問題もない」

巫女装束は、演舞の際にも身に纏っていたものだ

戦闘と比べると動きに派手さはないかもしれないけれど

それなりの運動量を、通常の巫女服で行っていた陽乃としては

それように調整されたものであれば、何も問題にはならなかった

陽乃「準備は良いかしら?」

球子「あぁ、どんとこいだ!」

陽乃「ふぅ……」

普通の模擬戦なら

戦力的に優位な陽乃が後攻で、球子が先攻となるべきだ

しかし、

陽乃の攻撃を受けてこそだから――今回ばかりは譲ることが出来ない

陽乃「手加減するからちゃんと避けてね」

球子「避けたら意味ないだろ」

陽乃「まぁ、それもそうなのだけど……」

楯を、狙うべきだ
156 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/14(木) 23:47:13.42 ID:E21gN6KWo

陽乃⇒球子
↓1コンマ判定 一桁

0、5 00  最悪
1、4、6、7、8 防ぐ
3     回避
9、2 楯以外命中
157 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/15(金) 00:00:07.18 ID:3g6k813aO
ふむ
158 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/15(金) 00:00:51.74 ID:WZQiFFk/o
ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
159 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/15(金) 00:26:07.53 ID:pYae/x1PO

とりあえず成功なんかね?
160 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/15(金) 05:28:40.79 ID:kRkartdWO

何気に陽乃さんの戦装束的なものが出たのは初めてか
憑依と性能に違いがあるのか気になる
161 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/16(土) 23:46:43.31 ID:c56LLfC+O
休みか…年末辺りから更新が激減してて寂しい
162 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/16(土) 23:57:24.44 ID:lnuodNX7O
SSスレって何日に一回の更新がデフォみたいなもんだしまあ気長に待とうよ
163 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/17(日) 17:58:40.19 ID:TlnyH0rzo

遅くなりましたが、少しずつ
164 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/17(日) 18:45:01.52 ID:TlnyH0rzo

陽乃「土居さん、動かないでね」

球子「避けてやるからな!」

陽乃「もう……」

さっきと言ってることが違うわよ。と、

小さく笑いながら、力強く地面を踏み込む

陽乃の戦闘スタイルは友奈と同じく超近接戦闘

零距離にまで近づいて拳を打ち込むその戦い方は曰く、防御の突破においては若葉達を大きく上回る

踏み潰され、砕かれる小石がギャリギャリと音を立て

少しずつ滑るようにかかとが浮き上がって、体重が前へ前へと推移する

陽乃「すー……はぁ……」

強く、強く

陽乃「ふっ!」

静かに呼吸を整えて、一気に飛び込んでいく

球子「!」

球子との距離は百数メートル程度

地面を蹴り飛ばし、駆け抜け……距離を詰める

それは、球子から見ればほんの一瞬で――

陽乃「せぇぁぁぁああッ!」

球子「うおあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

――勢いづいた蹴りが、球子の構えた楯を撃ち貫く
165 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/17(日) 18:55:33.17 ID:TlnyH0rzo

球子「おわぁっ!」

蹴り抜かれ、球子の小さな体が吹き飛ぶ

球子は数回地面を跳ねるように転がって、

最奥の木にぶつかる前にどうにか立て直し――ふらりと膝をつく

球子「おっ……おぁ……痛ったぁぁぁぁぁぁ!?」

陽乃「……大丈夫?」

球子「あんず! 腕、腕くっついてるか!?」

杏「ちゃ、ちゃんとついてるから大丈夫だよ!」

球子「楯が砕けるかと思った……」

球子の腕につけられている楯は、まだヒビも入っていない

けれど、蹴り飛ばされた球子の体はあちこちに擦り傷が出来ていて、汚れていて

激戦の真っただ中にいるかのようにボロボロだった

球子「くっそー……タマじゃなかったら死んでたぞ」

陽乃「土居さんなら大丈夫だと思ったのだけど」

球子「ば、馬鹿にしやがってぇ!」

やってやるからな! と叫ぶように唸った球子は、

擦りむいた膝から流れる血を叩いて、大きく息を吐く

球子「やられたら――やりかえぇぇぇぇす!」
166 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/17(日) 19:07:01.15 ID:PKoDgcvYO
タマ頑張れー
167 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/17(日) 19:11:22.85 ID:TlnyH0rzo

球子⇒陽乃
↓1コンマ判定 一桁

1、4、6 防ぐ
3、2、5 回避
8、9  撃ち落とし
7、0  命中
168 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/17(日) 19:12:07.87 ID:PKoDgcvYO
169 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/17(日) 19:22:59.30 ID:TlnyH0rzo

球子「くっ……」

骨が軋む

噛みしめた歯の隙間から血がにじむような気がする

歯が抜けたかもしれない

足が痛い

腕が吹き飛びそうな感じがする

でも、だけど、それでも

球子「くらぇぇぇぇ!」

陽乃「っと……」

勢いよく踏み込む多摩湖から、飛びのいて距離を取る

球子の戦い方は、話で聞いた程度しかない

だが、それでも何をしてくるかは察しが付く

球子「ぬおぉぉぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

陽乃「!」

振り抜く腕は、陽乃が想像したよりもずっと早い

足先から、腕

そうして楯へと神々の力が多く流れ込み――それは急激に巨大化して

球子「ぁぁぁぁぁああああああッ!?」

球子の腕をもぎ取るような力強さで投げ飛ばされ、陽乃へと直撃する
170 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/17(日) 19:35:05.96 ID:TlnyH0rzo

陽乃「っ!」

別に馬鹿にしているわけではなかった

けれど、それでも球子の攻撃が当たることはないだろうと思っていた

いや――その油断がなかったとしても

陽乃は球子の攻撃を躱しきることはできなかったかもしれない

陽乃「くっ……っ!」

巨大な楯は陽乃の腹部に直撃し、抉るような回転に弾き飛ばされ、

受身を取って転がった陽乃はすぐに体を起こして――戻ってくる巨大な楯を躱す

球子「おわぁ!?」

陽乃「………」

球子の腕に戻った楯は通常サイズに戻っている

球子が容易に受け止められる辺り、暴発と言うわけではなく

完全に、球子自身の力がそうさせたということだろう

陽乃「ん……私の負けね」

杏「あっ、そ、そうですね」

一撃入ったら終わりの模擬戦闘

陽乃の一撃は楯に当たり、球子の一撃は陽乃を直撃した

杏「タマっち先輩の勝利!」

球子「な、納得いかない……」
171 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/17(日) 19:47:27.00 ID:TlnyH0rzo

球子「納得できるかぁーっ!」

陽乃「えぇ?」

球子「おかしいだろっ! 無傷じゃないか!」

陽乃「当たり前でしょう? あのくらいで怪我するようにはなっていないもの」

球子「ぐぬぬぬ……」

球子の予想外の力を喰らっても、

受身を取った土汚れこそついているものの、陽乃の装束は傷一つついていない

一方で、球子はボロボロだ

擦り傷、汚れ、打撲のような痕

装束だって所々破けてしまっている

陽乃「力の収束が甘いのよ……あの小さいのはともかく、集合体相手には通らないかもしれないわ」

杏「集合体……」

球子「つまり、久遠さんは集合体と同レベルってことか……?」

陽乃「それ以上かもしれないわよ?」

球子「くそっ……もっと集中しないとダメか」

杏「私たちの装束も、久遠さんくらいの頑丈さがないと簡単に食い破られちゃうってことですよね?」

陽乃「でしょうね。正直、土居さんの装束は私から見たら体操服の上からジャージを着てる程度だもの」

球子「マジか……」

陽乃「ええ」
172 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/17(日) 20:49:29.31 ID:TlnyH0rzo

陽乃「ちゃんとしていれば、私のさっきの攻撃でそんな風にはならないはずよ」

球子「でも本気だったら?」

陽乃「最悪、楯が砕け散るとおもうけど」

球子「だろうな……腕がまだ痺れてるし」

球子の体を守っていた神々の力が霧散して、装束はまた私服へと戻る

怪我はそのままではあるけれど

多少の擦り傷程度なら普通に手当てすれば問題はないだろう

陽乃「打撲の方は平気? 骨折れてない?」

球子「折れてない……っていうか、なんか。こう、あれだな……」

陽乃「なに?」

球子「優しくて怖い」

陽乃「……もう一戦、してあげても良いのよ?」

球子「わー! 無理無理!」

一度楯を蹴られた程度でボロボロなのだ

もう一度撃ち込まれたら今度こそ骨折まで行くかもしれない

杏「ふふっ、でも。私たちの装束や武器にはまだまだ理解が足りていないって分かりましたね」

陽乃「もう少し解析できれば大丈夫でしょうけど、時間がかかりそうね」

陽乃とのデータが活用されればその進捗も良くなるはずだが


1、伊予島さんも、やっておく?
2、土居さん。もう一回くらい頑張れない?
3、ねぇ九尾。私の力の余波だけを与えた場合って、どうなるのかしら
4、でも、危ないし止めておきましょうか。お疲れ様


↓2
173 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/17(日) 20:50:49.26 ID:PKoDgcvYO
1
174 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/17(日) 20:52:08.83 ID:9/AUbuf90
3
175 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/17(日) 21:39:59.11 ID:TlnyH0rzo

陽乃「ねぇ九尾、私の力の余波だけを与えた場合ってどうなるのかしら」

『ふむ……模擬戦を行わずに試したいのかや?』

陽乃「下手に怪我を負わせなくて済むなら、伊予島さんにも協力して貰えるでしょう?」

『そうじゃのう……』

九尾はしばらく考えるように黙り込むと、

影を揺らめかせて、小さく口を開くようなそぶりを見せた

『小娘共の今の状態では病に侵されるやもしれぬ』

陽乃「そんなに?」

『身体の内側を蝕むゆえ、大した加護なき衣服など障害にすらならぬぞ』

もちろん、

その状態だからこそ、侵蝕していく力をその身に受ける。という経験は有益かもしれない

九尾はあえてそう口にしたが、

しかし、それは当然ながら危険なことで……

最悪殺してしまうなんて生易しいものではない

戦いで命を落とすよりも苦しむことになる
176 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/17(日) 21:50:39.17 ID:TlnyH0rzo

杏「どうですか?」

陽乃「病気になっちゃうかもしれないって」

杏「っ……」

球子「でも、勇者なら治るんじゃないのか?」

普通の人間なら、そんな病気に侵されれば大変な事になる

だが、勇者ならそこまで重くならないのではないか

少し休む必要はあるかもしれないが

一生ダメになってしまうことはないのではないか

そう考える球子の問いに、

聞こえもしない声で、九尾は笑う

『穢れに蝕まれれば、早死にするが』

陽乃「え……」

『重くなければ良いが、重ければ死ぬ。それは主様にも話しておろう?』

蝕む陽乃の力は、耐性がない人間なら即死もあり得る。

それはただの余波であっても、同じ

球子「ん?」

陽乃「場合によっては、早死にするって言ってるわ」

球子「えぇ……」

杏「でも、加減して貰えれば……有益なデータが取れるんですよね?」
177 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/17(日) 21:59:44.51 ID:TlnyH0rzo

陽乃「ええ……まぁそうなのだけど」

球子「無理はさせたくないって顔してるなー……」

杏「………」

陽乃「別に殺したいわけじゃないもの」

球子の視線から逃れるように顔を背けた陽乃は、

小さく首を横に振って、息を吐くと

地面に広がる狐の形をした自分の影を見つめる

九尾は、陽乃がやると言えば手を貸してくれるだろう

杏たちも、

陽乃がやってみましょう。と言えば、やるかもしれない

けれど、これはさすがにハイリスクが過ぎる

杏「信じて貰えませんか?」

球子「あんず、無理したら死ぬぞ」

杏「でも、タマっち先輩よりは無茶じゃない」

球子「いいや、無茶だ。ただの攻撃ってわけじゃないんだろ?」

陽乃「ええ。言葉にするのが難しいのだけど……ただの物理攻撃ではないわ」

杏「……でも。それがあれば、私達がちゃんと戦えるようになるかもしれません」

陽乃「………」


1、やらない
2、やる


↓2
178 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/17(日) 22:02:27.89 ID:PKoDgcvYO
1
179 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/17(日) 22:06:49.99 ID:g3B8NQ8zO
1
180 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/17(日) 22:44:35.78 ID:TlnyH0rzo

陽乃「ダメよ。やらない」

杏「久遠さん!」

陽乃「無理しなければならないほどの状況ではないでしょう?」

有益な情報が得られるのだとしても、

無理する必要があるのなら、それは最終手段だと考えるべきだ

今すぐにデータをかき集めて、

装束を完成させて戦いに出なければならないならいざ知らず

まだまだ時間があるであろう状況下では必要ないだろう

陽乃「今はまだ、土居さんをタコ殴りにするだけで良いでしょう?」

球子「タコ殴りはやめてくれ」

陽乃「それでも平気なようになりなさいって言ってるのよ」

球子「あんなの何発も受けられるわけ――」

陽乃「受けられるようになるのよ。貴女が本当に人を護る楯なら……私の全力であっても受けられるだけの力をつけて欲しいの」

そうでなければならない

バーテックスは尋常ではない化け物だ

今の集合体が全てではなく、さらに上位になるのであれば、

陽乃の本気の一撃でさえ上回る力を持っている何かがいるかもしれない

陽乃「そうなれるように……毎日殴ってあげる」

球子「こっわ! 殺意しか感じないぞ!」

陽乃「貴女、さっき後ろに伊予島さんがいたらどうなっていたのかを考えた方が良いわ」

球子「それは……」

陽乃「絶対に護る。その言葉の重さ、分かってくれたかしら?」
181 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/17(日) 22:46:06.05 ID:TlnyH0rzo

では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
182 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/17(日) 22:58:53.75 ID:dTsn1kXVO

短い戦闘だったけどそこそこ収穫あったみたいでやって良かったな
そういえば陽乃さん、タマだけでなく千景にも先手で一本取られてるけど今作の西暦勇者って中々強いのでは?
183 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/17(日) 23:46:20.23 ID:TclUbvRgO

2人が本当に強く思う気持ちが力に乗った感じかね
そして陽乃さんの優しさがもう隠しきれてない
184 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/18(月) 00:24:37.78 ID:CJUcZc5yO

前向きに話進んできてホッとしてる
185 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/18(月) 21:37:24.81 ID:SJx99iW9o
では少しだけ
186 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/18(月) 21:43:40.83 ID:sl4ADOXCO
よっしゃ
187 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/18(月) 21:53:02.38 ID:SJx99iW9o

球子「……そうか」

球子だって、軽はずみに守るだなんて言っていたわけではない

杏と出会ったあの日

自分の力が守るためにあるものだと悟ったあの瞬間から、

球子はそうあれるようにと、ずっと思い続けている

それは、球子の経験した戦いが決して簡単なものではなかったからこその自負でもある

けれど――自分は手を抜いた一振りで蹴り抜かれた

後ろに杏がいたら、その守るべき身体ごと吹き飛ばされて

自分の身体で圧殺していた可能性だってある

球子「タマは……弱いか?」

陽乃「弱いわ」

球子「見込みはあるか?」

陽乃「さぁ? 私の知ったことじゃない」

球子「……杏を、守れると思うか?」

陽乃「知らないわよそんなこと」

陽乃は素っ気なく返して、

普段と打って変わって俯いてしまっている球子を一瞥する

陽乃「貴女が守りたいなら、守れるようになるしかない。そうなれる保証なんて、私はしてあげられないわ」
188 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/18(月) 22:05:22.63 ID:SJx99iW9o

球子「でも、手伝ってくれるんだろ?」

陽乃「私が手伝うのはデータ収集であって貴女の特訓じゃないわ。勘違いしないで」

球子「くっ……ふ、あはははははっ」

陽乃「笑えるようなこと言った?」

傷の痛みに呻きながらも笑う球子に、陽乃は顔を顰める

球子の笑い二嘲笑じみたものが含まれているようには感じられないけれど

それでも、笑えるような場面で笑われると、少々気にもなるもので

首をかしげながら球子を指さす陽乃に問いかけられた杏は、小さく首を振る

笑えるようなことは言っていない

それは間違いない

けれど、球子が笑いたくなる気持ちもわかる

杏「久遠さん、さっきタマっち先輩のことをタコ殴りにするって言ってたじゃないですか」

陽乃「それが?」

杏「いえ、それだけです」

それを受けられるようになれと、陽乃は言った。

そのあとに全力でさえも受け止められるようになれと言った

最後まで付き合ってくれるかはともかくとして、

多少は、付き合ってくれると言っているようなものなのに。

陽乃「言っておくけれど、本当に付き合う気はないからね? 装束のデータさえ万全になってくれたらあとはどうでもいいんだから」
189 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/18(月) 22:44:13.94 ID:SJx99iW9o

球子「あぁ、分かった」

それでもいいよ。と、

球子はまた笑みを浮かべて、陽乃を見上げる

先日まであった敵意も

話し合いを重ねれば落ち着いていくもので、柔らかい

球子「好きなだけ殴ってくれ」

陽乃「嫌よ。名実ともに人殺しになる気はないわ」

球子「そうならないようにしてくれるって話だったはずだぞ」

陽乃は強い

間違いなく、球子よりもはるかに力を持っている勇者だ

今でもその考えに変わりはない

しかし、それでも守れると言いきらないだけの理由があるのだと納得した

自分が守れると言い切ってはいけない強さであると自覚させられた

球子はもう、躊躇いなく陽乃へと手を差し出す

陽乃「……なにしてるの?」

球子「タマも、仲間になってやる……いや、そんなこと言える立場じゃないな」

そうじゃないだろう。

そうである必要はないだろう。

球子「今は友達だ! それで我慢してくれ」

陽乃「は?」

球子「なっ? 宜しく頼むぞ!」

戸惑って動かない陽乃の手を球子は掴みに行く

今はその距離感

でもそれでいい、今はまだその程度の力しかないのだから

いつか言えればいい

お前も守ってやるからと。そう、いつか言って……引っ張ってやれればいい
190 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/18(月) 22:47:12.18 ID:SJx99iW9o

√ 2018年 8月5日目 昼:伊予島家

03〜12 若葉
37〜46 大社
51〜60 友奈

↓1のコンマ

※それ以外は通常
※一桁奇数で訪問
※ぞろ目で付近の住民 奇数悪
191 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/18(月) 22:47:56.14 ID:sl4ADOXCO
192 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/18(月) 23:01:03.80 ID:SJx99iW9o
√ 2018年 8月5日目 昼:伊予島家


陽乃「友達……? 友達って……」

球子は友達だと言った。

その言葉の意味が分からないほど馬鹿ではないが

だからこそ理解が出来ない

呆然と多摩湖に握られた手を見つめる陽乃の視界の奥、

ベッドの影と混じり合う陽乃の影が動き、

人もいないのに、人影が出来上がる

『主様が、友人などと言ってあやつらに関わったゆえのことであろう』

陽乃「でも、だからってこうなる?」

『押しに弱いから……だったかのう?』

くつくつと喉を鳴らして笑う九尾

陽乃は人影を踏むが、

実体のないその影は踏まれたことなどまるで気に止めてはいない

陽乃「バカなことをしたわ……友達なんて、私」

『守りたいなら、守れるようになるしかなかろう』

陽乃「それも、私が言ったわよ……分かってるってば……」

自分の発言には責任を持てと。

そう言いたいのだろうと悪態をつく陽乃は、ベッドに腰かけながら、頭を抱えた
193 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/18(月) 23:03:32.76 ID:SJx99iW9o

では短いですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
194 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/18(月) 23:10:58.04 ID:sl4ADOXCO

殴りあいの末にタマと和解できて良かった良かった
あと陽乃さんのツンデレっぷりや思い悩む姿がシリーズの原点回帰感があるな
195 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/19(火) 00:49:16.64 ID:PB8vztjmO

殴り合って友情深まるとかベタやん?
素敵やん?
196 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2021/01/19(火) 23:50:37.88 ID:KnmDDQFr0
「納得できるかぁーっ!」は「こんな勝利いるかァッ!」を彷彿させるから好き
197 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/21(木) 20:35:26.64 ID:JG4oPmLUo

では少しだけ
198 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/21(木) 20:49:22.94 ID:xXa/LR6iO
やったぜ
199 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/21(木) 20:56:39.88 ID:JG4oPmLUo

陽乃「仲良くなるつもりなんてなかった」

『じゃろうな』

陽乃「友達だなんて……私、責任とれない……」

『しかし、主様が招いたことであろう?』

陽乃「ええそうよ……そう。そうよね……」

あの人は押しに弱い

そんな余計な一言のせいだろうか

それとも、その一言がなかったとしても

杏のせいで、球子は結局こうなっていただろうか

――今は友達

陽乃「取り消せないかしら」

『往生際が悪いぞ』

陽乃「だって……」

もう、失いたくない

目の前で奪われるのなんて……我慢できない

そう思っていたのに

それが一番あり得る勇者の友人なんて

陽乃には一番、辛いものだ
200 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/21(木) 21:28:44.59 ID:JG4oPmLUo

『諦めて友人になってしまえばよかろう』

陽乃「嫌よ」

『もうなってるつもりじゃろう。あの娘は』

陽乃「そうだけど……」

けれど、九尾は加えてそれを認めろという

無理な話だ

難しい話だ

それを認めてしまったら、

球子や杏を友人にしてしまったら

陽乃は、それを守らなければいけなくなる

そうできなかった時の苦しみを、

また、味わう恐怖に怯えなければならなくなる

陽乃「私はそんなに……強くないの」

自分の力が強いと、自負できない

強いのならば、誰一人失うことはなかったはずだから

自分の心が強いと、自負できない

強いのならば、今もなおこんなにも苦しんでいるはずがないから


1、あとは、貴女に神託を出して貰う必要があるわ
2、無理。友達にはなれないわ
3、杏と交流
4、球子と交流
5、イベント判定

↓2
201 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/21(木) 21:29:45.02 ID:xXa/LR6iO
1
202 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/21(木) 21:31:15.92 ID:17WGecZO0
1
203 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/21(木) 22:18:26.87 ID:JG4oPmLUo

陽乃「それは、とりあえず置いておいて……」

『置いておける話しかや?』

陽乃「考えたってしょうがないのっ!」

陽乃が何といおうと、

球子はもう今更、あの発言は撤回しないだろう

陽乃が悪いことをしでかそうと、

それがなぜなのかを……しっかりと考えてくれてしまうだろうから。

陽乃「もう……最悪だわ」

そうぼやいた陽乃は、もうそれはいいから。と、首を振る

陽乃「あとは、貴女に神託を出して貰う必要があるわ」

『ふむ……よかろう』

陽乃「今すぐには、ダメよ?」

『あの小娘共の装束じゃろう?』

陽乃「ええ……あれが完成してからじゃないとダメ」
204 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/21(木) 22:54:07.45 ID:JG4oPmLUo

少なくとも、杏と球子はついてくることになるから

あの二人の分だけでも完成してくれなければ、大変な事になる

『主様が護ればよいではないか』

陽乃「貴女、それだと私が死ぬって話だったでしょ……」

死んでほしいならそう言いなさいよ。と

悪態をつく陽乃を見上げる影は揺らいで、

喉を鳴らすような笑い声が部屋に零れる

陽乃「それに守ってあげられる自信がない」

『自信をつければよい』

陽乃「無茶言わないで……死にたくないわ」

言葉通り死ぬ気でやればどうにかなる

けれど、そんなことをしてあげるつもりは毛頭ない

陽乃「二人、貴女から見て伸びしろは?」

『一人は知らぬが、もう一人は主様も分かっておろう』

陽乃「……やっぱり」

『うむ。今のあの楯では、いずれ砕けるぞ』
205 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/21(木) 22:55:09.67 ID:JG4oPmLUo
では途中ですが、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
206 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/21(木) 23:10:21.59 ID:xXa/LR6iO

仲間と打ち解けると陽乃さんの心が抉られてくとは…
このトラウマをどう克服すればいいものかなぁ
207 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/22(金) 00:09:30.65 ID:2s2s5i4yO

仲良く修行してるうちにはるのんも柔和にならないかな
208 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/23(土) 19:24:57.92 ID:sLBlnzOMo

では少しだけ
209 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/23(土) 19:28:48.83 ID:mVcox4qJO
かもーん
210 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/23(土) 20:01:00.76 ID:sLBlnzOMo

陽乃「なら……どうにかする必要があるわね」

球子自身を強くして、

神々の恩恵をより強く受け止められるようにするか

楯を扱う戦闘における技術力を磨いてもらうか

そうしなければ、ただ装束が完成したところですぐに限界が来てしまう

『何じゃ主様。あの娘どもに手を貸すのかや?』

陽乃「諏訪に行くとき、足手纏いになられても困るってだけよ」

『くふふっ、そうかや』

陽乃「そうよ……そう」

諏訪にたどり着ける可能性を少しでも高めたい

諏訪から勇者達を連れて来られる可能性を少しでも高めたい

そして何より、生き残ることができる可能性を高めたい

球子と杏は貴重な戦力だ

『主様、死ぬぞ』

陽乃「死なないために、あの子達を使うのよ」

それがなければ協力なんてしないと陽乃は言うが

それがなかったとしても陽乃は手伝うだろうと九尾は目を細める

陽乃は、決して見限ることのできない愚か者だからだ
211 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/23(土) 20:21:13.10 ID:sLBlnzOMo

『して、主様や』

陽乃「そうね……神託の内容でしょう?」

九尾による惑わしの力は、神託でさえ成り済ますことが可能だ

九尾が語っていたことのため、本当にそうなのかは分からないが、

それがないと陽乃は大社に無断で出ていかなければいけない

大社に義理を通さなくても良いとは思うが、

後々へと余計な禍根を退かさないためには

あくまでも、大社からの指示と言う大義名分があった方が良い

特に、郡千景との溝は……これ以上広げるのは得策ではない

陽乃「貴女ならどう出す?」

『諏訪に兆し有り……とでも告げればよかろう。ことの良悪は語る必要もあるまいて』

陽乃「どちらともとれる神託を出すと、迷って判断が遅くなるんじゃないかしら」

『明晰では勇者を残さぬ可能性もあるが……良いか?』

陽乃「それは危険ね……」

しかし、全員が最も確実ではある


1、九尾に任せる
2、諏訪の危機を明確に神託する
3、久遠陽乃を諏訪に行かせるように神託する

↓2
212 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/23(土) 20:26:32.14 ID:mVcox4qJO
2
213 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/23(土) 20:30:12.88 ID:byrQhzFz0
2
214 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/23(土) 21:06:29.95 ID:sLBlnzOMo

陽乃「良いわ。九尾、明確にしましょう」

『良いのかや?』

陽乃「じゃないと、私は連れていかれないと思うし……」

曖昧な状態の場合、

調査をかねての派遣になることだろう

そんな大事な役目を陽乃に与えてくれるとは限らない

むしろ、ほぼ確実にここに残していかれるとみて良い

その一方で、明確に危険であると知らせれば、勇者達みんなを派遣してくれる可能性は高い

そうなれば、必然的に陽乃も連れ出されることになる

……はず。

どれもこれも希望的観測ばかりだ

陽乃「上手く行くかしら?」

『さて……妾にはいえぬことじゃ』

陽乃「そうなの?」

『うむ……諏訪が捨て駒であるのならば、大社は勇者を出さぬ可能性もある』
215 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/23(土) 21:42:12.34 ID:sLBlnzOMo

陽乃「……本気?」

『じゃろうな』

大社が諏訪を捨て駒として考え、

救う気が無いのだとしたら

勇者の派遣は行わずに、勇者たちの力を温存しようとする

その可能性は確かにある

だが、神託はいずれにしても出しておくべきだ

その結果、

大社が【諏訪は必要な犠牲】とでもいうのであれば、

その時は、誰が何と言おうと壁をぶち壊してでも出ていけばいい

陽乃「それ、どうにかならないの?」

『することは可能じゃが……面倒なことになるぞ』

陽乃「たとえばどんなふうに?」

『あ奴らの元々の計画から強引に切り返すからのう……違和感はあるじゃろう』

その違和感から看破されてしまうと、

千景からの情報で陽乃の仕業であることも気づかれてしまうこともあり得るし

そうなると……面倒なことになってしまう
216 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/23(土) 22:03:58.51 ID:sLBlnzOMo

『得策ではないだろう』

陽乃「……そう」

『その時は、行くがよい』

大社なんて気にせずに

自分がしたいことをするために、行動してしまえと。

九尾の言っていることは非常に危険なことだ

しかし、そうしなければならないのなら、するしかない

陽乃「貴女としては、その方が良いのかしら?」

『わざわざ死ねとは言わぬ』

陽乃「ならいいけれど」

陽乃の力でなら、諏訪まで突破は可能だ

それを成し遂げるための犠牲は払う必要があるが。

それを最小限に抑え込むためにも、勇者の助力が欲しい

そのための神託だ

陽乃「神託……頼むわよ」

『承ろう』

九尾はそういうと、影を揺らして陽乃の影を元に戻す

陽乃「……捨て駒。ね」

そんな決断をする大社なんて――。
217 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/23(土) 22:15:48.87 ID:sLBlnzOMo

√ 2018年 8月6日目 夕:伊予島家

05〜14 若葉
27〜36 大社
52〜61 球子
81〜90 友奈

↓1のコンマ

※それ以外は通常 判定追加
※一桁奇数で訪問
※ぞろ目で付近の住民 奇数悪
218 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/23(土) 22:25:38.15 ID:byrQhzFz0
219 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/23(土) 22:30:20.40 ID:sLBlnzOMo

追加判定

一桁奇数 陽乃連れ戻し

↓1
220 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/23(土) 22:31:51.62 ID:mVcox4qJO
そおい
221 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/23(土) 22:48:26.94 ID:HjzWbx1kO
セーフ!
222 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/23(土) 23:08:41.02 ID:sLBlnzOMo
√ 2018年 8月6日目 夕:伊予島家


杏たちの戦装束は、

陽乃から得られるデータが膨大とはいえ、

今日一日でデータ十分になってくれればいいがそう甘くはない

まだまだデータ収集する必要があると思っておく方が良いだろう

データ収集の必要がないとしても

あと数回……あるいは

せめて一度楯を砕くほどの力で殴っておくべきだ

球子の力は、楯にしては脆い

九尾が述べたならそれは事実だ

友達になどなりたくないと思うけれど

陽乃は死んでも良いとは思っていない

いいや……もう

彼女に死なれた場合、陽乃は傷つくことになる

陽乃「あぁもう……もうっ!」

横に振り抜いた拳は、壁に当たる寸前で止まる

陽乃「ここに……来なければ良かった」
223 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/23(土) 23:49:51.94 ID:sLBlnzOMo

杏の両親は、優しい

杏も球子も、陽乃を放っておいてはくれない

最初は敵対していたはずなのに、友達になるとまで言われてしまった

それが悪いわけではないが

守れないことを恐れ、

失うことに怯えている今の陽乃には相性が悪かった

陽乃「土居さん……」

土居球子

他者を守る楯の力を授けられた戦いにおいて最も死に近い少女

よりによって、彼女に友人だと言われてしまった

言わせてしまった

あのうどん屋での失言があろうとなかろうと

この場に来てしまったことで、こうなっていた可能性はある

が……いずれにしても自分の言動の結果だ

突き放すように言葉を紡ごうが、無駄になった

陽乃「っ……何、してるのよ……私」


1、球子
2、杏
3、電話を借りる
4、イベント判定

↓1
224 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/23(土) 23:50:29.20 ID:mVcox4qJO
2
225 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/23(土) 23:53:30.52 ID:sLBlnzOMo

では本日はここまでとさせていただきます
明日は可能であればお昼頃から
226 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/24(日) 00:07:28.40 ID:P2uHr1ouO

かといって陽乃さん、孤独なままはむしろ苦手まであるから難しいよなぁ
あと時間経過する度に連れ戻される判定があるのも地味に怖い…
227 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/24(日) 00:41:08.01 ID:YLcM+8jYO

もうこうなったら死なないように鍛えるしかねえよ!
228 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/24(日) 14:38:06.70 ID:EnrKGhruo

では少しずつ
229 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/24(日) 14:43:03.72 ID:lvuiuSmCO
よっしゃ
230 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/24(日) 14:57:01.72 ID:EnrKGhruo

陽乃「伊予島さん?」

杏「久遠さん、どうかしたんですか?」

陽乃「土居さんは?」

杏「タマっち先輩なら、庭に出てますよ」

ほら。と、

差し向けられた先に目を向けてみると、球子がシャドーボクシングに興じているのが見える

勇者としての装束に切り替えているので、

力の制御についての鍛錬……のつもりだろうか。

陽乃「あの子……私の監視役だったはずでしょう?」

杏「久遠さんなら大丈夫だって思ってくれたんですよ」

杏は嬉しそうに笑っているけれど、

陽乃は苛立たし気に顔をしかめて、首を振る

陽乃「あの子、打撲してるのに」

杏「言ったんですけど……諏訪に行く途中で打撲したからって休めるのかって」

陽乃「無茶をするのは今じゃないでしょうに」

杏「……心配。してくれているんですか?」

陽乃「戦力が減ると困るのよ」

杏「ふふふっそうですねっ」
231 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/24(日) 15:18:45.82 ID:EnrKGhruo

陽乃「なによ」

杏「いえ、別に」

陽乃「嘘や照れ隠しで言ってるわけじゃないわよ?」

杏「それは、はい……分かっています」

陽乃が本気でそう言っているのは分かっている

けれど、

それが本気であるからこそ、杏は嬉しかった

陽乃は、人を拒絶し……懐に入れまいとしている

多くの人々から疎まれ、畏れられている

なのに、その心の内にある優しさだけは変わらずそこにあると分かるからだ

だからこそ、杏は傍にいたいと思う。

陽乃がどれだけ拒絶しようと

その振り払う手の内側に居ようと思う

少なくとも自分だけは味方でありたいと思う

陽乃「それで、データは送ったの?」

杏「送るというか……戦闘データは随時送られているんです」

陽乃「大社から連絡は?」

杏「何が起こったのか。と言う確認がありました」
232 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/24(日) 15:46:55.63 ID:EnrKGhruo

陽乃に襲撃の疑いがかけられたものの

データ収集に協力して貰っただけだと説明をして、どうにか事なきを得た

ただ、向こうは疑わしく思っていることだろうけれど。

それでも、陽乃を連れ戻すなんて言うことにはならなかったのは奇跡だろう

いや、球子から得られた情報量を見て……それは出来ないと断念したという方が現実味がある

杏「久遠さん、体は問題ありませんか?」

陽乃「土居さんに比べればあの程度かすり傷にも――」

杏「タマっち先輩の攻撃じゃありません……久遠さん自身の力の影響です」

陽乃「それなら何の問題もないわ」

あの一瞬とも言える模擬戦程度でどうにかなるほどではない

杏「久遠さんの力は異質です……あまりにも」

陽乃「だから?」

杏「……私達を、頼っては貰えませんか?」

陽乃「はぁ?」

杏「弱いですけど……力はないですけど……」

でも……だけど

杏は自分の弱さを認めて、言う

杏「それでも久遠さんの力になりたいです」


1、お断りするわ
2、弱い人に命を預けるなんて出来るわけないじゃない
3、頼られたいなら強くなったらいいじゃない
4、馬鹿なこと言わないで


↓2
233 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/24(日) 15:50:30.84 ID:Vfxhzuz3O
3
234 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/24(日) 15:54:54.90 ID:4AM1KpDmO
4
235 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/24(日) 16:49:30.30 ID:EnrKGhruo

陽乃「馬鹿なこと言わないで」

杏「っ……」

陽乃「土居さんも貴女も……笑えない冗談だわ」

一人は友達だと言い出して一人は頼ってくれと言う

自分が弱いと分かっているのに

それでも友達だとか、頼ってとか

陽乃にとってはふざけているにもほどがある戯言だ

陽乃「私はね。友達なんて作るつもりはないし、ましてやこの命を赤の他人に委ねるなんて絶対にしたくない」

杏「私達が弱いからですか?」

陽乃「貴女達が強かろうと……他人なんかに任せたくない」

自分の命は、自分で守る

信用ならない他人なんかに委ねるなんて、死にたくないならやらないべきだ

陽乃「頼ることなんて何もないわ」

杏「久遠さん一人では守り切れないものだって――」

陽乃「私は私の命以外守る気はないわ……ううん、私とお母さんの命以外はどうだっていい」

杏「久遠さん一人で倒せない敵が現れたらどうするんですか?」

陽乃「その時は、潔く心中するわ。もちろん、その敵とだけど」
236 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/24(日) 17:08:37.02 ID:EnrKGhruo

杏「久遠さん!」

陽乃「冗談で言ってるわけじゃない」

杏「だからこそです!」

陽乃「目ざわりなのよ。貴女達みたいなのが一緒に戦うなんて」

一般人のように一方的に嬲られることはないはずだ

しかし、かといって生き残れるとは限らない

死ぬことはあるのだ

殺されてしまう可能性はあるのだ

それこそ……あの日のように、目の前で。

陽乃「っ」

杏「久遠さん……」

陽乃「私に傷一つつけられないような力で、頼れだなんてふざけたこと言われたって」

悲鳴が聞こえた

自分に向かって延ばされる手が見えた

貪りつくされ、砕かれていく音を聞いた

腕や頭、足が千切れ落ちるのを見せられた

一つや二つではなく……何度も何度も……

陽乃「っ……足手纏いだって言ってるのよ!」
237 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/24(日) 17:39:49.55 ID:EnrKGhruo

陽乃「どうして私に嫌がらせするのよ」

杏「嫌がらせなんて……」

陽乃「友達とか、一緒にいるとか迷惑なのよ」

杏「でもっ、一人でいたら久遠さんは」

陽乃「私が、何? 辛いって? 馬鹿じゃないの?」

独りでいるのにはもう慣れた

頑張って守り抜いた地区の人々に生贄として捧げられた挙句

家を焼かれ、神社を壊され

勇者として丸亀に来てからも、

陽乃が特異と言うだけで隔離しているような状態のまま三年間

その間に千景にまで目をつけられて

久しぶりの再会を果たした友人からは拒絶されて……

もう十分だ

もう嫌だ

独りで良い……独りが良い

陽乃「今は行き場所がないからここにきているだけで、あなた達と仲良くする気なんてないんだから――勘違いしないで」
238 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/24(日) 17:54:24.02 ID:EnrKGhruo

√ 2018年 8月6日目 夜:伊予島家

05〜14 若葉
27〜36 大社
41〜50 杏母
52〜61 球子
81〜90 杏

↓1のコンマ

※それ以外は通常 判定追加
※一桁奇数で訪問
※ぞろ目で付近の住民 奇数悪
239 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/24(日) 18:00:57.39 ID:ckgqHe3DO
はい
240 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/24(日) 18:05:38.31 ID:EnrKGhruo

↓1コンマ判定

データ収集率

※70以上またはぞろ目で完
241 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/24(日) 18:09:42.21 ID:L+n5bmVoO
242 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/24(日) 18:27:44.88 ID:EnrKGhruo
√ 2018年 8月6日目 夜:伊予島家


陽乃に強く拒絶された杏は

しかし、両親の前では態度を変えたりはしなかった

変わらず陽乃に声をかけ、答え

極めて近い距離に居座った

陽乃「………」

拒絶したはずだ

友達は嫌だと

頼るのは嫌だと

なのに、杏は笑顔でそこにいる

陽乃「冗談……だとでも?」

杏は陽乃の発言を笑って受け流すこともあった

だが、今回ばかりは本気だと思うのが普通なのに

カーテンを閉め切った暗い寝室の中、

腰かけるベッドの薄い掛布団を握りしめる

甘んじてしまった結果、得られた利便性

けれどこうなるくらいなら

あの時点でいなくなるべきだったと……思う
243 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/24(日) 18:46:27.47 ID:EnrKGhruo

陽乃「どうしろっていうのよ……」

殴ったら友達になって

拒絶したら余計に距離が近づいた

陽乃「……諏訪遠征」

あの二人は確実について来る

神託を出して

勇者達にはここに留まって貰った上で

単独で行くのも視野に入れるべきだろうか

あの二人は、陽乃の最も近くにいるつもりだ

それは戦いだろうと、そうでなかろうと

そんなことをされたら、陽乃は二人を守らなければならない

そうしなければ、逆に陽乃を守って死ぬ可能性があるからだ

厄介だ

目ざわりだ

足手纏いだ

陽乃「最悪……っ」

四国に残るか出るかを決めたあの日

そこで出ていっていればと……悔やんでしまう

1、球子
2、杏
3、九尾
4、伊予島両親
5、電話を借りる
6、イベント判定

↓2
244 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/24(日) 18:48:18.31 ID:VhcmnwG90
4
245 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/24(日) 18:49:08.51 ID:L+n5bmVoO
4
246 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/24(日) 18:50:43.99 ID:EnrKGhruo

では少し中断いたします
再会は20時頃から
247 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/24(日) 18:56:31.08 ID:L+n5bmVoO
一旦乙
陽乃さんの闇が深い…
248 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/24(日) 20:12:42.68 ID:EnrKGhruo

ではもう少しだけ
249 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/24(日) 20:46:03.40 ID:EnrKGhruo

陽乃「夜分遅くに申し訳ありません」

「いいえ。大丈夫よ」

「なにかな?」

杏の両親は、陽乃の呼びかけに答えて

夜にも拘らず、時間を作ってくれた

父親の方は声色こそ厳しく感じられるが、とても温厚な人だ

母親も、とても穏やかな人で

流石杏の両親と言ったところだろうか

「杏は何も言ってきていないから、家を出ると言う話でもないだろう?」

陽乃「そう……ですね」

「やっぱり、他人の家では息苦しいかしら?」

陽乃「そんなことは……」

「ふふっ、無理はしなくても良いのよ。そういう気持ちも理解はあるもの」

陽乃「………」
250 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/24(日) 21:12:58.48 ID:EnrKGhruo

「……久遠さんのおうちと神社については、先日改めて拝見させて頂いたわ」

陽乃「見ても面白いものではなかったと思いますが」

「ええ、本当に。酷いものだったわ」

「あれが人の手によるものであるなら、神様がお怒りになられるのも無理はないと思ったよ」

陽乃「いえ……私がお役目を投げ出した結果です」

「けれど、そうしなければ貴女が亡くなっていたのでしょう?」

二人は憐みの目を向けてくる

仕方がないと、許そうとしてくる

陽乃の血縁者ではないけれど

大人として、子供である陽乃を守ってあげたいという優しさを感じるその声は、

陽乃にとっては、やはり……イヤなものだった。

この両親から口添えをして貰えば、杏と球子は陽乃について来ようとしなくなるだろうか

この両親を害する意思を見せれば、流石の二人も離れていってくれるだろうか

陽乃「っ……」



1、娘さんを説得してはいただけませんか?
2、手を出す
3、一芝居……ご協力いただいてもよろしいですか?
4、お二人がいなくなれば、娘さんは戦う理由を無くしてくれるでしょうか?
5、周辺の方々からは何も言われていませんか?


↓2
251 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/24(日) 21:26:56.46 ID:L+n5bmVoO
5
252 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/24(日) 21:28:46.23 ID:VhcmnwG90
5
253 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/24(日) 21:36:03.31 ID:EnrKGhruo

↓1コンマ判定 一桁

偶数 なし
奇数 あり

※0〜9 (少〜多)
254 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/24(日) 21:47:22.94 ID:VhcmnwG90
255 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/24(日) 22:21:06.44 ID:EnrKGhruo

陽乃「失礼な話になってしまうのですが」

「なぁに?」

陽乃「周辺の方々からは何も言われていませんか?」

「何も言われてないかって……そうねぇ」

「私は何も言われていないが?」

「ええ。私も何も言われてない……わね」

陽乃「……そうですか」

嘘を見抜ける洞察力

それが自分にあるかどうか確証はないが、

陽乃は嘘をついてはいないだろうと判断する

周囲の人が陽乃の存在に気付いていないのか

気付いていても、見て見ぬふりをしているのか

出かけたのが今朝の一度だけと言うのを考えると、前者だろうか

「それが心配だったの?」

陽乃「私、家を焼かれるくらいには恨みを買っているので」

「あぁ……だが。大丈夫だよ。キミは気にしなくても良い」

陽乃「自分の娘が殺されてもそう言えますか?」

「キミがそうするわけではないだろう?」
256 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/24(日) 22:35:20.57 ID:EnrKGhruo

陽乃「私を起因として杏さんが亡くならないとは限りません」

「そんな可能性を考える必要はないわ」

陽乃「いえ、考えていただかなければいけません」

「杏と……土居さんがキミを守ると付き従おうとしているからかな?」

「あなた……それは」

「悪いね。聞くつもりはなくても聞こえてしまうこともあってね」

陽乃「いえ……」

この家で話をしている以上、

会話が筒抜けになってしまうことも致し方ないし

陽乃はそれを悪いことだとも思っていない

大社に言うなら言ってくれてもかまわないとさえ思っている

言われたところで、

陽乃の評価は最底辺から大差ないからだ

陽乃「そういうことです」

「あの子は、危険だと分かっていてそうすると言っているんだろう?」

陽乃「まさか、止められないと?」

「そうだな……もう止めてはいるよ」

「あの子ね。それでも貴女の力になりたいって言って聞かないのよ」
257 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/24(日) 22:39:08.25 ID:EnrKGhruo
では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
258 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/24(日) 22:56:03.76 ID:L+n5bmVoO

杏のご両親は前作までの春信さんと瞳さんみたいな立ち位置か
こんなに良くしてくれてるのにその後娘を死なせたら本当に会わせる顔がないな
259 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/25(月) 00:40:45.48 ID:FtP20GHgO

駄目だなこれは陽乃さんが余計に苦しむ流れだ
260 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/25(月) 21:02:22.49 ID:w8ZnKiRoo

では少しだけ
261 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/25(月) 21:03:14.86 ID:w8ZnKiRoo

陽乃「……どうにかなりませんか?」

「ごめんなさい。手は尽くしたわ」

「三年間だ。三年間、私達はあの子に無理はしないようにと言い続けた」

陽乃「………」

それでも……と、杏はやめなかった

陽乃の傍にいたいのだと

力になりたいのだと

そう言って聞かず、ずっと言い続けた親の想いを振り払っていた

両親には止められなかったのだ

杏は、命の危険があるからこそ陽乃の助けになりたいと。

「キミは、キミを起因としてあの子が亡くなるかもしれないと言ったが、あの子はいつものその逆を言っていたよ」

陽乃「私が死ぬ? 伊予島さん達の為に?」

「ええ。貴女はそういう人だからって、あの子はずっと言っていたの」

陽乃「そんなわけ……」

「けれど、ここ数日見ていて確信したわ。貴女……間違いなく心根の優しい子だって」
262 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/25(月) 21:18:00.95 ID:tGS4X3CvO
来てたか
263 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/25(月) 21:47:21.41 ID:w8ZnKiRoo

「久遠さん。貴女、他人を見捨てられる子には思えないわ」

どれだけ関係が悪かろうと

足手纏いで、目障りであろうと

見捨てられず、救いの手を差し伸べて

いずれそれらを庇って命を落とす

杏は、自分の力がその助けになるとは思えていないが

その終わりを一日でも先延ばしに出来たら。

それでいいと考えている

「守ってあげてとは言わないわ」

陽乃「その結果、救えなくても?」

「あの子は……あの子とはもうたくさんお話をしたから」

だから?

それでもう十分だと思えているような表情ではない

当たり前の話だ

杏はまだ中学生の少女で、先の長い人生がある

「お前……それはこの子が気負うからしないという約束だったはずだが」

「……ごめんなさい」
264 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/25(月) 22:16:25.27 ID:w8ZnKiRoo

陽乃「っ……」

父親は母親を抱き寄せて、顔が見えないように自分の方へと押し付ける

けれど遅い

見えてしまった

今にも涙を零しそうな悲しげな顔が

辛さと苦しさを感じてしまった

陽乃「気負う……なんて」

「否定しなくていい。言われただろう? キミが心の根優しい娘だと分かっていると」

陽乃「私はっ!」

椅子を蹴飛ばすように立ち上がるとテーブルが揺れて、

注がれたままだったカップからお茶が迸ってテーブルクロスを汚す

陽乃「私は……」

「私の見る目はないかもしれないが、妻の見る目は確かだ」

陽乃「………」

「君は間違いなく、人のために生きてしまうのだろう」
265 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/25(月) 23:03:04.40 ID:w8ZnKiRoo

「否定はしなくていい。否定しても、そうではないことは明白だからね」

陽乃「やめてください」

杏の父の声は温かく、

まるで、陽乃を本当の娘のように思っているようだ

布巾で零れたお茶を拭い、もう一度椅子に座りなおす

陽乃「私はそんな立派な子供ではありません」

「そうか……だが、ここ数日の君の様子を鑑みればそういう結論になると分かって貰えるだろうか?」

勇者様として、丁重に扱う必要がある

陽乃達が何もしなかろうと、

問題なく世話をして貰うことは可能だったのだ

にもかかわらず、

陽乃は家事を率先的に手伝って

この家の人々はともかく、民衆から酷く疎まれているのに、礼儀正しさを忘れていない

「先ほど、周囲からの反応を聞いたのも、君が原因で私達に何かないかと心配してのことだろう?」

陽乃「ご自由に解釈なさってください」

「そうか。ならそうしよう」

父親は困ったように笑う

相変わらず、素直ではない

「そして申し訳ないが、杏を君の傍から離してあげることは出来ない」

陽乃「そうですか……」

杏はどうしようもないし

両親にも認められてしまっている

脱走でもしないと……どうにもならなそうだ
266 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/25(月) 23:04:25.89 ID:w8ZnKiRoo

√ 2018年 8月5日目


0 00 最悪
1〜3  良い
4〜6  普通
7〜9   悪い
ぞろ目 最良

↓1

※模擬戦による、大社影響
267 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/25(月) 23:04:42.88 ID:oDZam8OGO
268 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/25(月) 23:07:22.81 ID:tGS4X3CvO
ここでまさかのゾロ目
269 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/25(月) 23:08:38.62 ID:w8ZnKiRoo

ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
270 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/25(月) 23:09:50.12 ID:oDZam8OGO

装束完成&遠征許可かな?
271 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/25(月) 23:26:41.97 ID:tGS4X3CvO

ご両親もすっかり貴重な理解者になってくれてるな
あとはこの良さげなゾロ目がどう転ぶか気になる…
272 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/26(火) 09:31:53.41 ID:XMXo4/lPO

やったじゃん
いい方向に話が転がってきて嬉しい
273 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/28(木) 00:24:15.92 ID:5Tbua185o
すみませんが本日もお休みとさせていただきます。
明日は可能な限り、通常時間から


本日は1日のまとめのみ。


1日のまとめ

・ 乃木若葉 : 交流無()
・上里ひなた : 交流無()
・ 高嶋友奈 : 交流無()
・ 土居球子 : 交流有(模擬戦、勝利)
・ 伊予島杏 : 交流有(模擬戦、やらない、馬鹿なこと言わないで)
・  郡千景 : 交流無()
・   九尾 : 交流有(神託、明確)

√ 2018/08/05 まとめ

 乃木若葉との絆 62→62(普通)
上里ひなたとの絆 56→56(普通)
 高嶋友奈との絆 52→52(普通)
 土居球子との絆 46→49(普通)
 伊予島杏との絆 53→55(普通)
  郡千景との絆 21→21(険悪)
   九尾との絆 63→63(普通)

模擬戦:大社影響+α
274 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/28(木) 06:08:26.98 ID:hYuKDg7cO

杏とタマの絆値がガンガン上がっていくな
275 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/28(木) 21:07:11.00 ID:5Tbua185o

では少しだけ
276 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/28(木) 21:26:25.63 ID:vcQsOeigO
かもん
277 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/28(木) 21:42:05.65 ID:5Tbua185o

√ 2018年 8月6日目 朝:伊予島家

05〜14 若葉
27〜36 大社
41〜50 九尾
52〜61 球子
81〜90 杏

↓1のコンマ

※それ以外は通常 判定追加
※一桁奇数で訪問
※ぞろ目で付近の住民 奇数悪
278 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/28(木) 21:46:01.97 ID:vcQsOeigO
279 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/28(木) 21:54:16.47 ID:5Tbua185o

↓コンマ判定

1,3,9 大社
280 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/28(木) 21:57:38.96 ID:j6qDkfyq0
281 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/28(木) 22:44:39.61 ID:5Tbua185o
√ 2018年 8月6日目 朝:伊予島家


陽乃「……どういうこと?」

杏「久遠さんの協力の結果ですね」

陽乃「それは分かってるのだけど」

球子「良かったじゃないか。見方が変わった? ってやつだろ?」

陽乃「そこまでじゃないと思うけど……というより、困るのよ」

球子との模擬戦から1日

杏と球子のもとには、その解析による連絡が来ていて、

久遠陽乃の協力に感謝を……と言う旨の記載もあった

今までの大社ならば、

間違いなくこんな反応ではなかった

陽乃「急に、感謝されても……」

杏「良かったと思います……だって、久遠さんは実際に私たちを助けてくれたんですから」

陽乃「助けたつもりはないわ」

球子「久遠さんがそうだろうと、それを受けた側はそう思わなかったんだろ」

タマは実際にそうだしな……と、

照れくさそうに笑う
282 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/28(木) 23:05:16.72 ID:5Tbua185o

球子「あの模擬戦が、タマ達の力の解析を早くしてくれたんだ」

杏「いつ、戦う日が来るか分からない今、力の解析が進む協力は感謝されると思いますよ」

陽乃「勇者を殺そうとした挙句、看護師にトラウマ植え付けて病院から抜け出した重罪人でも?」

球子「それは……まぁ、どうなんだろうな」

杏「……それはありますが、それを踏まえた上でも……」

本当にそうだろうか。と、疑ってしまう

陽乃自身が殺したかったわけではないけれど、

九尾の介入によって友奈や千景たちを殺しかけたことは事実

一般人である看護師に対して、九尾が手を出したことでトラウマを植え付けてしまったし、

あまりにもな待遇に嫌気がさして、病院から抜け出したことも事実

そんな中で、陽乃と球子の模擬戦

心中は穏やかではなかったはずだ

なのに、感謝

裏があるのではと思ってしまうのも無理はないことだろう
283 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/28(木) 23:25:48.17 ID:5Tbua185o

陽乃「でも、悪いけれどそれですり寄られても困るからね」

杏「すり寄るなんて……」

球子「久遠さんって、性格悪くはないけど悪いよな〜」

陽乃「ええ、悪いわよ」

杏の両親には、まるでそう思われていないけれど

それは無関係な一般人相手に厳しく当たる必要はないと思ってのことだ

もちろん、一宿一飯……どころではないが

その恩義と言うものもある

だが、勇者は違う

特に……死にたがり相手は。

球子「またまた〜タマだけに〜」

陽乃「はぁ……」

球子「そんなため息つかなくたっていいじゃないか」

杏「今のは私でもため息つくかも……」

球子「なっ……」

この騒がしさに、加わらないはずだった

はずだったのに……。


1、部屋に戻る
2、電話を借りる
3、で、どうするの? 今日も殴られたいの?
4、それで? 装束は完成したのかしら
5、イベント判定


↓2
284 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/28(木) 23:29:45.52 ID:vcQsOeigO
4
285 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/28(木) 23:31:31.57 ID:j6qDkfyq0
4
286 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/28(木) 23:42:38.44 ID:5Tbua185o
では途中ですが本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
287 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/28(木) 23:59:21.57 ID:vcQsOeigO

杏たちのためになるとはいえ大社の手のひら返し感が凄くていまいち信用がなぁ…
288 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/29(金) 00:35:32.31 ID:w2Pg1vPwO

装束かあ
ワクワクしてきたわあ
289 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/30(土) 22:08:35.70 ID:9sU1CK2Io

遅くなりましたが少しだけ
290 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/30(土) 22:21:02.08 ID:9nc//YioO
おk
291 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/30(土) 23:51:45.11 ID:9sU1CK2Io

陽乃「それで、装束はかんせいしたのかしら?」

杏「いえ、まだ完成はしていないみたいです」

球子「昨日の今日で完成は難しいだろ」

陽乃「世界の命運がかかっているってときに、暢気なものね」

球子「だからなぁ……」

いちいちきついんだって……と。

苦笑いを浮かべる球子を見向きもせずに、陽乃は息を吐く

きついとは思えない

化け物だと、敵だと

常に腫れもの扱いしてきている相手には、むしろ優しいくらいだろう

装束が完成しなければ、

勇者を連れ出すなんて出来るわけがない

それが遅れれば遅れるほど

諏訪にたどり着くのが難しくなる可能性だってあるのだ

たった一日、されど一日だ
292 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/31(日) 01:22:52.98 ID:uLsgft2zo

杏「大社の言葉に偽りがなければ、明日か明後日にはバージョンアップしたものを戴けるそうです」

陽乃「そう……」

偽りないとは思えないけれど、

少なくともバージョンアップしたものは勇者達に展開されるだろう

最悪完成品ではないかもしれない

でも、今のものよりも良くなるのならそれで十分……だろうか?

ジャージの上からウインドブレーカー着込んだだけだったら

それこそ、球子をタコ殴りにでもするしかない

陽乃「なら、バージョンアップが終わったら、再調整してあげるわ」

球子「殴るのか? 蹴るのか?」

陽乃「殴るわ」

球子「手は抜いてくれるんだよな……?」

陽乃「殺すつもりはないもの」

前回と同じだ

手を抜いて……力を抜いて殺さないようにする

装束がちゃんとしていれば、一回や二回問題なくなるはずだ





293 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/31(日) 01:37:20.42 ID:uLsgft2zo

杏「装束が完成していたら……諏訪遠征、行きますか?」

陽乃「そうねぇ……」

装束が完成したら即日諏訪遠征に出るのは可能だが性急すぎる気がすると陽乃は眉を顰める

もちろん、神託によって今すぐにでもなんて内容を付け加えれば

大社とて、大急ぎで割り当ててくれることだろう

けれど、

装束が完成したからと言って完ぺきとは限らない

さっきも話したように

一度くらいは模擬戦をしておくのが良いかもしれない

陽乃「ただ、土居さんを殴っておきたいわ」

球子「怖い! 怖すぎる!」

陽乃「貴女が殴られたいって言ったんじゃない」

球子「言ったがそうじゃない!」

杏「でも、タマっち先輩が殴られてくれるお陰で装束の性能が試せるわけだし……」

球子「杏まで!」

そうじゃないだろ!

もっと言い方があるだろ。と、叫ぶように球子は言って

優しさがない。なんて……嘆いた
294 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/31(日) 01:39:43.80 ID:uLsgft2zo
では短いですがここまでとさせていただきます
明日は可能であればお昼ごろから
295 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/31(日) 02:51:18.07 ID:5+ksSFQ0O

殴られ予定のタマで笑った
296 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/31(日) 05:18:53.31 ID:rE+b18qsO

タマっち先輩サンドバッグ扱いで草
それでもずっとシリアス続きだったから少し明るい展開になりそうで良かった
297 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/31(日) 17:49:22.68 ID:uLsgft2zo

遅くなりましたが少しだけ
298 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/31(日) 18:00:59.10 ID:u3MOhdtuO
きてたか
299 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/31(日) 18:31:02.22 ID:uLsgft2zo

陽乃「私が優しいわけないじゃない」

杏「久遠さん……」

球子「いいや、杏。久遠さんは意地が悪いぞ!」

心根は優しいが、それの表れ方が歪んでしまっている

殴るっていう話も

言い換えれば模擬戦の相手をしてくれるというだけのことだ

なのに、それを殴るだのタコ殴りにするだの

人によっては反発しそうな言い方と態度ばかり

陽乃「私、貴女のこと嫌いだし」

球子「……つまり好きってことか?」

陽乃「やめて」

球子「裏を返せば、そういうことだろ?」

杏「そう……かな?」

陽乃「悩まないで」

球子「でもまぁ……嫌いか。嫌いなのか」

陽乃「ええ」

球子「そっか。嫌いなのに模擬戦には付き合ってくれるんだな」

陽乃「違うわ。嫌いだから、殴るのよ」

杏「やっぱり、言い方ひとつで凄く印象変わるよね……」

球子の言葉に納得したのだろう

杏は困ったように、呟いた
300 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/31(日) 18:47:35.22 ID:uLsgft2zo

√ 2018年 8月6日目 昼:伊予島家

05〜14 若葉
27〜36 大社
41〜50 九尾
52〜61 球子

↓1のコンマ

※それ以外は通常
※一桁奇数で訪問
※ぞろ目で付近の住民 奇数悪
301 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/31(日) 18:58:41.43 ID:u3MOhdtuO
302 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/31(日) 20:10:40.72 ID:uLsgft2zo
√ 2018年 8月6日目 昼:伊予島家


『くははっ主様、弄ばれておるぞ』

陽乃「冗談じゃないわ」

『じゃが、まんざらでも――』

陽乃「冗談じゃないって……言ったでしょう」

本当に、冗談ではない

あんな思い込みをされてしまったら

本当に何を言っても無駄になる

突き放すつもりで何かをしても

あの二人は、そうとは思ってくれないのだから

『ならば……消してしまえばよい』

陽乃「消すって」

『うむ。そのままじゃ』

陽乃「ダメよ。勇者が減るのは困る」

『それを言い訳にしておるのかや?』

陽乃「言い訳じゃない」

『ふむ……躾けてやればよい』

陽乃「……また、面倒なことになりそうだし」

『主様はほんとうに、愚物じゃのう』


1、装束完成すると思う?
2、なによ。愚物って
3、殺す以外に方法はないの?
4、他人事だと思って……
5、イベント判定

↓2
303 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/31(日) 20:31:45.41 ID:1B6s6Mwa0
1
304 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/31(日) 20:34:32.80 ID:u3MOhdtuO
5
305 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/31(日) 21:12:11.59 ID:uLsgft2zo

01〜10 杏
11〜20 球子
21〜30 両親
31〜40 近所
41〜50 若葉
51〜60 友奈
61〜70 ひなた
71〜80 大社
81〜90 九尾(状況:悪)
91〜00 荷物


↓1のコンマ
306 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/31(日) 21:13:12.22 ID:u3MOhdtuO
307 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/31(日) 22:46:14.68 ID:uLsgft2zo
√ 2018年 8月6日目 昼:伊予島家


「久遠さん、少し良いかな?」

部屋のドアが軽く叩かれて、外から声が飛んでくる

扉越しの声ではあるけれど

無遠慮な球子はそもそもノックをしないし

杏の声とは違う……親の声

陽乃「はい。どうぞ?」

返事をすると、

杏の両親が部屋へと入ってきて

陽乃「何か? もしかして、ご近所から――」

「いや。それは問題はないよ」

「あのね? 貴女さえよければ、明日のお昼に少しお手伝いを頼めないかと思って」

陽乃「お手伝いですか? それは全然……」

「快く引き受けてくれるのはありがたいのだが、少し問題があってな」

「実はね。地域で行ってるボランティアの活動なの」

陽乃「……なるほど」

3年前の襲撃による影響は少なくなってきてはいるものの

それでも、完全に癒えたわけではない

そのため、地域で協力して何かをしていくことで

少しでも前向きになれるようにしよう……という目的での活動が行われている

「だから、必然的に近所の人達と関わることになるの」
308 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/31(日) 23:17:23.54 ID:uLsgft2zo

陽乃「ならどうして、私を?」

よほど人手が足りていないのなら、

杏や球子を連れていけばいい

それで手が足りなくても、陽乃を誘うのは無理がある

最悪の場合、ボランティア活動どころではなくなるからだ

陽乃「汚名を返上させたい……みたいなところですか?」

「端的に言ってしまえばそうなる」

「私たちから見て、久遠さんには何にも問題ないように見えるわ。だから……」

最初の内は厳しい目で見られてしまうことになると分かってはいるが

それは何をしようとそうなるのは必然だろう

だからせめて、

少なからず味方がいるうちにその一歩を踏み出しておくべきではないかと考えているようだ

陽乃が針のむしろに座らされる思いをするかもしれない

だから、簡単には言えないし

だからこそ、味方がいるべきだとも思っていると、母親は言う

陽乃「………」

「もちろん、強制ではないし断ったからと言って久遠さんがどうだなんて思うつもりもないわ」


1、……良いですよ。請け負わせて頂きます。
2、すみません。お断りします
3、考えさせてください
4、そこまでの価値が私にありますか?

↓2
309 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/31(日) 23:20:15.51 ID:8F2YkdYPO
1
310 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/31(日) 23:22:56.55 ID:1B6s6Mwa0
4
311 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/01/31(日) 23:37:15.62 ID:uLsgft2zo
ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
312 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/31(日) 23:45:00.23 ID:XNyg5f+PO

ボランティア活動で信頼を得るか伊予島家ごと地獄を見るかの二択か…
ここは賭けに出るべきか悩みどころだな
313 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/01(月) 08:18:26.13 ID:tDC6948XO

杏の両親めっちゃ気にかけてくれてるな
314 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/01(月) 08:20:49.13 ID:ig5OzGAHO

陽乃さんは意図して「殴る」を使ってんだろうけど「模擬戦に付き合う」と「殴る(戦う)」で同じなんだけど全然違うな
千景だったら間違いなくキレる
315 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/01(月) 21:17:51.27 ID:zYto4Ydmo

では少しだけ
316 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/01(月) 21:18:55.56 ID:n0DIlkxcO
よしきた
317 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/01(月) 21:31:45.43 ID:zYto4Ydmo

陽乃「……そこまでの価値が私にありますか?」

「価値?」

陽乃「伊予島さんの……極論、今後の全てを賭ける価値が私にはありますか?」

言葉通り極論ではあるが、

しかしそれ程のことを引き起こしかねないのが、陽乃なのだ

地域住民と協力してのボランティア活動

とても立派だと思うし、

煩わしいと思う人もいるかもしれないが、決して間違った行いではないだろう

そこに陽乃を連れ出して

そんな立派なことを率先して参加してくれる子なんて広報活動はプラスに働く可能性はある

けれど――

なぜあの子を。なんて、白い目を向けられるなんてこともある

例のあの子を匿ってるだなんて話になるかもしれない

協力者だなんて話になるかもしれない

その汚名は、二度と拭い去ることも返上することもできない

少なくとも、杏の両親には。

陽乃「何かがあった場合、私は一切の責任を負えません。この家が放火されようと、どちらかが後ろから刺されても」

「……君は、それを心配してくれているのか」

陽乃「違っ……」

首を振って、目を背ける

陽乃「私はただ……あとから難癖をつけられても困るから、予めそのリスクはあるんだと自覚して貰いたいだけで……」
318 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/01(月) 22:00:07.99 ID:zYto4Ydmo

陽乃「とにかく、そのリスクを背負うだけの価値が私にはあるのかを答えてください」

将来を諦めるだけの価値

今まで積み上げてきた過去を水の泡にするだけの価値

人は普通、そんなことを問われたら否と返す

相当仲が良くても、

答えを濁したりして誤魔化したり、考えさせてとでもいうだろう

「君はやはり、優しい子だな」

陽乃「やめてください」

「それらしい理屈を並べてはいるが、結局のところ迷惑をかけたくないと見える」

陽乃「そういうわけでは……」

「ふむ……やは――」

「もう。話が進まないからあなたは黙ってて」

夫をせき止めるように言い放った杏の母は、

面倒な人でごめんなさいね。と、

困ったように笑みを浮かべる

「それで、久遠さんのことだけど……はっきり言わせて貰うわね?」

陽乃「ええ、ぜひ」

「私達は、久遠さんにはそれだけの価値があると思っています」
319 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/01(月) 22:33:27.73 ID:zYto4Ydmo

陽乃「えっ……?」

「価値だけに着目するのなら、久遠さん。貴女は杏と同じように勇者をやっているでしょう?」

陽乃「利用価値があると?」

「そうね。勇者という世界の命運を左右するほどの価値があると思っているわ」

淡々と

まるで説明をするかのように話す杏の母

父は咎められたからか口を挟まずに腕を組んでいる

「だけど、それだけじゃないの」

そう言った母の視線はとても優しい

他人の子だとも思っていない

それはまるで……

「貴女は、あの子が連れてきたお友達ですもの」

陽乃「友達って……そんな、その程度で、そんなことで赤の他人の私に人生を賭けるんですか?」

「君たちがいなければすでになかった人生だ。と、言えばいいのだろうか?」

陽乃「それは……」

「どうしても理由が欲しいのなら、恩返しとでも思って欲しいの」
320 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/01(月) 22:55:15.23 ID:zYto4Ydmo

「貴女は、私達を救ってくれた」

陽乃「私一人じゃありませんし」

「そうかもしれない。でも、その数人の中にいるのは間違いないでしょ?」

陽乃「………」

だから、どうしても理由が欲しいのなら恩返し

陽乃には価値がある

人生を賭けてでもその身を守ってあげる価値が。

それがあろうとなかろうと

守ってあげるべき子なのだと、両親は言う

「君は子供なんだ。頼っていい。わがままを言っていい」

「他人だなんて、思わなくていいのよ? あの子が初めて連れてきた大切な子だもの」

陽乃「………」

それは無理だ

なんて理由をつけようと、

二人は杏の親であって、陽乃には関わりがないのだから。

限度と言うものがある

けれど……それでもいいと言っているのだ


1、ありがとうございます。でも、今回は遠慮させてください
2、分かりました……ただ、本当にどうなっても責任はとれません
3、すみません。やっぱり、考えさせてください


↓2
321 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/01(月) 22:55:59.23 ID:gL2e7//d0
2
322 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/01(月) 22:57:06.80 ID:pVE6atNiO
2
323 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/01(月) 22:57:18.90 ID:n0DIlkxcO
2
324 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/01(月) 23:19:47.75 ID:zYto4Ydmo

ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
325 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/01(月) 23:36:52.13 ID:n0DIlkxcO

世間の反応が怖いけどここまで言われたら断れないよな
陽乃さんにとっても何か良いきっかけになってほしい
326 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2021/02/02(火) 00:07:48.17 ID:TgXXBI4X0
デビルマン√を辿らないように
327 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/02(火) 00:54:20.69 ID:kgp3ui/pO

ちょっと怖いな
328 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/03(水) 20:30:38.72 ID:ay58p5UUo
では少しだけ
329 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/03(水) 20:44:13.09 ID:VuVivKanO
やったぜ
330 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/03(水) 20:54:01.57 ID:ay58p5UUo

陽乃「分かりました……ただ、本当にどうなっても責任はとれませんよ?」

伊予島家が迫害されるようになっても

家を焼かれても

誰かが生贄とされても

誰かが、悪魔に魅入られたとでも言われて殺されても

陽乃は何も出来ないと言う

陽乃「私は、それをどうにかできるほど特別なんかじゃありませんから」

特別だとしたら

家は焼かれなかった

父親を失わなかった

味方になってくれただろう親類を殺されずに済んだ

陽乃「私に出来るのは、そこから逃げることだけです」

「そんなことないわ。ありがとう、無理を言ってごめんなさいね」

陽乃「いえ……すみません」

この二人にそれを言うだけ無駄なのだ

二人が何もできないからではなく

二人は、陽乃の件に関わりがないから

だから、言う必要はない
331 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/03(水) 21:44:42.89 ID:ay58p5UUo

「明日のお昼、宜しくね」

「手持ちは特に必要ないが……動きやすい洋服はあるかい?」

陽乃「えぇっと……ない、ですね」

陽乃は着の身着のままで病院に監禁され

そのまま逃亡して、ここにいる

当然ながら、服など持っていない

「そうか……杏、では難しいか」

「あの子と久遠さんじゃ、少し足りないわ」

身長的に陽乃の方が高い

家の中で着る寝間着などであればどうにかなるけれど

外に着ていくとなると、やや不格好だ

「ふむ……なら、用意しようか?」

陽乃「用意って、あの、まさかですよね?」

「あぁ、気にしなくていいんだ。私たちからのお願いみたいなものだからね」

杏の父は、そのお礼とでも思ってくれればいい。と言うけれど

それはさすがに世話になりすぎだと陽乃は思う

そのお願いだって、結局は陽乃のためのもの。

こちらkらお礼をするならいざ知らず

一方的に与えられては困ってしまう


1、それはさすがに困りますっ
2、……ありがとうございます
3、私は娘ではないのに


↓2
332 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/03(水) 21:51:28.05 ID:VuVivKanO
2
333 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/03(水) 21:52:39.14 ID:iUGzw+J30
3
334 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/03(水) 22:39:45.20 ID:ay58p5UUo

陽乃「私は娘ではないんですよ?」

「それは分かっているとも」

「気を悪くしたらごめんなさいね? でも、放っておきたくないの」

陽乃「赤の他人、ですよ?」

「ええ」

陽乃「………」

今までも地域ぐるみのボランティア活動に精を出していたとは限らないが、

でもきっと、出していたのだろうと陽乃は眉を顰める

何か利益があるわけではない

だけど、放っておけないからと誰かを助け続けてきたように見える

少なくとも、今の両親はそういう人間だ

3年前の悲劇

あれによって、子を失った親は多い

それと同じように親を失った子供だって少なくはなかった

そう言った身寄りのない子供達を、二人は支援しているのだろうか。

「せめて、この家にいる間だけでも満足な生活を送って欲しいの」

送らせてあげたいの。と、母親は言う

裏はない

恐らく、純粋な善意だろう

陽乃「それは……」

それは、ありがたくない

陽乃「私は、今でも十分です。ほんとう、十分ですから」

「せめて、ジャージのようなものでも用意しよう」

陽乃「自分でどうにかできるので、問題はありません」

「そう……?」

陽乃「はい。ですので、お気持ちだけで十分です。ありがとうございます」

これ以上、恩で塗り固められるわけにはいかない

どうせ仇で返すことになるのだから。

傷つけることが分かっているのなら、以下にそれを最小限に抑えるか

考えるべきことはそれだけだ。
335 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/03(水) 23:23:38.60 ID:ay58p5UUo

√ 2018年 8月6日目 夕:伊予島家

05〜14 若葉
27〜36 大社
41〜50 九尾
52〜61 球子

↓1のコンマ

※それ以外は通常
※一桁奇数で訪問
※ぞろ目で付近の住民 奇数悪
336 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/03(水) 23:24:41.00 ID:VuVivKanO
337 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/04(木) 00:05:29.46 ID:HqLtBC+Wo

ではここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
338 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/04(木) 00:12:24.78 ID:ElZZMa8MO

陽乃さんが心を開くのはまだまだ時間かかりそうだな
そしてまた妙なタイミングでゾロ目か…偶数だから何事もなければいいけど
339 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/04(木) 01:37:42.95 ID:aK89klWmO

偶数だからまあ大丈夫じゃない?
ちょうどボランティアしようとしてたところだしベストタイミングちゃベストタイミング
340 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/04(木) 21:56:19.66 ID:HqLtBC+Wo
では少しだけ
341 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/04(木) 21:57:37.55 ID:kHOU0LieO
かもーん
342 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/04(木) 22:45:04.43 ID:HqLtBC+Wo
√ 2018年 8月6日目 夕:伊予島家



夕方、だんだんと日が傾きつつある伊予島家の庭に、陽乃は出てきていた

完全な外出は許されないが、庭に出る程度なら問題はない。

なにより、その庭ではバットを一生懸命に振るう球子がいる。

球子「明日の参加するんだな」

陽乃「貴女も誘われているの?」

球子「そりゃ、誘われるに決まってるだろ?」

球子は、

何言ってんだと言いたげに笑いながら、バットを振るう

杏の両親に頼んで用意して貰った金属バット

これから野球をやるわけではなく

楯を投げるからと、腕力をつけたいらしい。

陽乃「参加するの?」

球子「お……気になるか?」

陽乃「別に興味はないわ」

球子「じゃあ聞くなよな〜」

球子の返答は至って穏やかだ

それどころか、とてもフランクなものになってきている。

本当に、友人と思っているということだろうか

球子「もちろん、参加するぞ」

陽乃「……でしょうね」

球子「杏もな」

陽乃「監視対象だものね」

球子「監視かどうかは関係ないぞ。大社に聞かれちゃ、困るけどな」
343 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/04(木) 23:00:14.76 ID:HqLtBC+Wo

陽乃「問題だわ」

特に、陽乃に影響が大きいだろう。

場合によっては陽乃が惑わせただの操ってるだの

何か難癖をつけられて、責められて、面倒なことになる。

球子と杏は、大丈夫かもしれないが。

球子「……心配か?」

陽乃「心配? 何が?」

球子「自分が嫌われてるかもって」

陽乃「そんな分かり切ってること、今更不安になると思う?」

球子「そりゃそうか」

否定しない。

それがあたりまえだと、陽乃も鼻で笑う

球子「じゃぁ、なんで明日のこと聞いてきたんだ?」

陽乃「心の準備が必要だから」

球子「なんだ、かわいいところあるじゃんか」

陽乃「貴女に絡まれるのが嫌なの。不意に声かけられたら反射で顔を殴っちゃうだろうし」

球子「怖いなぁ」

陽乃「………」

口でそんなこと言いながら、

顔は普通に面白がって笑っている

陽乃がそんなことをしないと信頼しているからだろう。

そういう反応が、陽乃は嫌なのだ。

陽乃「土居さ――」

「あら、今日は一人じゃないのね」

球子「こんばんは!」

庭先が見えてしまう隣家からかけられる女性の声

球子はバットを振り止めて、元気良く挨拶を返す

初対面ではなさそうだ
344 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/04(木) 23:25:19.66 ID:HqLtBC+Wo

「そちらは……」

陽乃「………」

顔を伏せる

今の成長した陽乃の養子を知らない人は多いだろうけれど

分かる人は分かる

特別な髪の色、瞳の色

親は遺伝だと言った桜色の髪は、あからさまに久遠陽乃と言う少女だ

「えぇっと……もしかして、陽乃ちゃん。かしら?」

陽乃「………」

その呼び方が出てきた時点で

この隣人は陽乃のことを知っている

大方、3年前までに神社に参拝に来たことがあるとかだろう。

陽乃「……っ」

「やっぱり、そうよね? 陽乃ちゃんでしょう?」

球子「どうした?」

陽乃「人、違いです」

「そんなこと、無いはずよ……」

嘯いてみるものの、

隣人の女性は食い下がってくる



1、違います
2、だったらどうですか?
3、そっちに余計なことはしないので、放っておいてください
4、すみませんが、部屋に戻ります
5、明日のボランティア。私も参加します


↓2
345 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/04(木) 23:27:12.06 ID:kHOU0LieO
2
346 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/04(木) 23:31:21.63 ID:FUTbRUMQ0
2
347 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/04(木) 23:48:20.78 ID:HqLtBC+Wo
ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
348 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/04(木) 23:57:09.45 ID:kHOU0LieO

どうやら陽乃さんを悪く思ってる人ではなさそうだけどヒヤヒヤするなぁ
349 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/05(金) 01:14:49.95 ID:p9bD6cWaO

緊張感たっぷりだな
350 :以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします [sage]:2021/02/05(金) 03:03:58.74 ID:2vv8dtEa0
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
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351 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/06(土) 18:36:03.08 ID:E2SpQbCAo

では少しだけ
352 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/06(土) 19:00:53.11 ID:E2SpQbCAo

陽乃「だったらどうですか?」

「どうって……」

球子からの「お前……」というような視線を感じながら、

陽乃は隣人を見つめる

二回りほど歳を上回っているであろう女性

場合によっては子供がいるだろうし

もしかしたら3年前に、失ってしまっているかもしれない

そうでなくても、世論から見て陽乃を良くは思わないはずだ

逃げ出した生贄

厄災の権化

人ならざる者

そんな陽乃がここにいると彼女は知った

警察に通報する?

周りの人たちを集めて、匿う伊予島家を叱責する?

それとも、陽乃に石でも投げるのか

陽乃「私が、あの久遠陽乃だったとして。どうなるんですか?」

「陽乃ちゃん……」
353 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/06(土) 19:17:41.48 ID:E2SpQbCAo

「どうにもならない……でしょうね」

陽乃「他人事ではないと思いますが」

「………」

隣人の女性は悲痛な表情を浮かべる

陽乃から顔を背けようとしたのか、僅かに動いたけれど

視線だけは陽乃に向けられたままで。

「ずっと、ずっと……どうなってしまったのかと、思っていたの」

陽乃「私が?」

「みんなよ。陽乃ちゃんと。陽乃ちゃんのご両親たち……みんな」

陽乃達を生贄としたあの人々は、

もちろん、この世界の全人類と言うわけではない

その暴挙に加担しなかった人だっている。

彼女もその一人とみて間違いない

「祭事の時、いつも頑張ってた貴女を見守ってたご両親とは、それなりに交流があって」

陽乃「父ならいません。母なら……まだ大社の方にいますが」

「……陽乃ちゃんは? 貴女は、今までここにお世話になっていたの?」

陽乃「3年間、一度も見かけなかったなら、違うと思いますが?」

球子「性格悪いな……」

陽乃「貴女は黙ってて」
354 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/06(土) 19:21:19.63 ID:zdmeqybyO
いい人だったか
355 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/06(土) 20:37:14.71 ID:E2SpQbCAo

「それもそう……ね」

3年間、部屋に引きこもっていたとも考えられる

陽乃が3年前に経験したことなんて

人だけでなく世界を恐れて部屋から出られなくなってもおかしくはないからだ

隣人の女性も、そうではないかと目を細めたが

違うというのなら違うと、首を振る

「……ごめんなさい」

陽乃「なん……です?」

「みんながみんな、久遠家を悪く思っているわけではなかったの」

けれど、過激化して暴徒と化した集団に目を付けられるのを恐れて、

誰一人として、彼らの行為を咎めることはしなかった

その結果、

陽乃の家や神社が燃やされたり、叩き壊されたり、荒らされたり……どうにもならなくなった

「止めてあげるべきだった」

陽乃「あんな、誰からも狙われるようなところに戻れるとは思っていませんでしたし」

「そうだとしても、大切な場所だったはずよ」

陽乃「別に、どうでもいいことです」
356 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/06(土) 21:30:00.87 ID:E2SpQbCAo

「……そう」

昔の陽乃を知っているから、言葉に詰まる

陽乃は明るい子だった

とても優しい子だった

冷めた目で見てくることはないし、突き放すような言葉遣いでもなかった

なのに、

それが今では酷い目をしている

どこか荒っぽく、素っ気ないことを言う

可哀想……とは、言えない

陽乃の3年間を知らないが、3年前の時点で凄惨な目に遭わされたのは知っている

それだけでも荒むのも仕方がないと言えるが

だとしても、言えない

「あの……ね。周りに知らせたりはしないから」

陽乃「そうして貰えると助かります」

そうしなかった場合、

九尾がこの家を守るために何かする可能性もあるので

命の保証は出来ない

球子「もうちょっと、こう。言い方とか……」
357 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/06(土) 21:53:42.21 ID:E2SpQbCAo

陽乃との会話を黙って聞いていたかと思えば、

また口を挟む……つもりはなかったのか

囁く程度の小声を漏らした球子

陽乃が目を向けると、肩をすくめてため息をつく

陽乃「………」

言い方と言われても困る

下手にすり寄られたくはないし

下手に敵対されても困る

なにより

過去のことで止めるべきだったと言われても困る

止められなかったのが現実だし

あれを止められないのは経験した陽乃が一番分かっている

特異な力を持っている陽乃でそうなのだから

ただの一般人である隣人には不可能だと断言できる


1、知らされたら、大変なことになる
2、今更謝罪されても、意味はない
3、信用できないもの
4、でも、噂の私らしいじゃない
5、なんだっていいでしょう。貴女には関係ないんだから


↓2
358 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/06(土) 21:55:51.41 ID:foJNr9iD0
2
359 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/06(土) 21:57:07.98 ID:zdmeqybyO
1
360 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/07(日) 00:02:00.05 ID:t3OcwK7qo

陽乃「知らされたら、大変なことになるわ」

球子「それはそうかもしれない……っていうか、だったらなおさらだろっ」

もう少し丁寧に話して、

穏やかに話しを進めるべきだと球子は思っているのだろう

まったくもってそうするべきなのだが、

それでまた杏の両親のようになられては困るのだ

だから、冷たい言い方で突き放す

――とは、球子には言わない

陽乃「聞いたことがあると思うけど、余計な手出しをすると痛い目を見るわ」

「噂は本当なの?」

陽乃「噂? 私が化け物だって噂ですか?」

「陽乃ちゃんに関わると死ぬ……ううん。殺されるって。陽乃ちゃんに歩けなくされたとか、どうとか」

陽乃「……私、そういう時は目撃者を残さないと思うけど」

陽乃と言うよりは、九尾だが。

間違いなく、殺すときは全員だ

陽乃が止めない限りと言う条件付きではあるけれど。

球子「何言ってんだ……」

陽乃「事実でしょ。誰かが止めないと、皆殺しにするわ」
361 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/07(日) 00:16:38.36 ID:t3OcwK7qo
では途中ですがここまでとさせていただきます
明日はできればお昼ごろから
362 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/07(日) 00:26:15.66 ID:GdkJYn/mO

少なくともこの町の人なら陽乃さんの故郷よりは味方してくれる人は多いかも知れない…?
ボランティアの日がとにかく大事だな
363 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/07(日) 07:38:03.51 ID:XRP1H9+pO

この人もボランティアに出るのかな?
364 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/07(日) 16:19:54.23 ID:t3OcwK7qo

では少しだけ
365 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/07(日) 16:35:02.84 ID:mbvI2PfUO
きてたか
366 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/07(日) 16:37:44.63 ID:t3OcwK7qo

球子「はぁ……」

陽乃「どうにもならないのよ」

「えぇっと……陽乃ちゃんの意思には関係ないってこと?」

陽乃「いえ、そういうわけではないですけど……」

「でも、どうにもならないのでしょう?」

陽乃「……そういう部分もあります」

意思には関係ないことをすることもあるが、

陽乃が介入する余地もある

予め制止しておけば……ある程度被害は抑えられる

陽乃「怖いですか? 恐ろしいですか? 化け物だって――」

球子「陽乃」

陽乃「あら、珍しい」

球子「そこまでにしといた方が良いと思うぞ」

「大丈夫。大丈夫よ……化け物だなんて、思ったりしないわ」

隣人の女性はそういうものの、

僅かに強張ってしまっているのは誤魔化せない

「本当のことを言えば恐ろしいわ。でも、陽乃ちゃんには、それをする権利があると思うの」

陽乃「権利……?」

「ええ。私達を……殺す権利」

言ってはいけないことだとでも思っているのだろう

苦渋を感じる表情を浮かべながら、女性は切り出した
367 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/07(日) 17:32:32.76 ID:t3OcwK7qo

「酷い話だけど……そう思ってるわ」

球子「それは、言いすぎなんじゃないか?」

「いいえ、陽乃ちゃんを含めて多くの人を死なせてしまったんだもの」

化け物であるバーテックスの襲来による死者とはまるで違う

人の意思によって、意図的に奪われることになった命

その一つになりかねなかった陽乃は、それを目論んだ人々を憎む権利がある

殺された親類縁者の分、

その恨みを晴らして、命を奪う権利がある。

それは間違っていることではあるが、

しかし、隣人の女性には否定できることではないし、

それが誤りだなどと、ご高説たれることなどできない

球子「だ、だとしてもっ!」

陽乃「黙ってて」

球子「いいや、黙れるか! 間違ってるだろ!」

陽乃「………」

陽乃の邪魔になると判断したのだろう

影が揺れるのが視界の端に見える


1、いいから。余計な被害を出させないで
2、殺されたいの?
3、私が人を殺すような子だと思っているってことでいい?
4、そうね。そうかもしれないわね


↓2
368 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/07(日) 17:34:43.91 ID:5Rp1iiX30
4
369 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/07(日) 17:35:09.16 ID:mbvI2PfUO
1
370 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/07(日) 18:02:35.51 ID:t3OcwK7qo

陽乃「良いから。余計な被害を出せないで」

球子「余計な被害って……」

陽乃「いいから」

球子「………」

陽乃を見る球子の目は、訝し気だ

とはいえ、実際に陽乃が何かをすると疑っているよりは、

何言ってるんだ。という疑いの方だろう

九尾がいるのは分かっているはずだが。

陽乃「……貴女、いえ。お隣さんもです。余計なことは控えてください」

「そう……ね。そうよね。ごめんなさい」

陽乃「謝らなくていいです」

「……ええ。それじゃ……また、お話してくれる?」

陽乃「その頃にはここにいないと思いますけど」

「そう……そうね。無事で、良かった」

隣人の女性はそれでも申し訳なさそうな表情を浮かべていて

思わず謝罪を零してしまいそうに、唇をかんだ
371 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/07(日) 18:20:16.51 ID:t3OcwK7qo

球子「まだ、暫くはここにいるだろ」

陽乃「さぁ? どうなるかしらね」

大社からの印象は少し良くなったのかもしれない

けれど、それを鵜呑みにするわけにはいかないし

大社がどうであれ、

民衆に広まってしまった陽乃の悪評が解消されたりはしない

陽乃がここにいることが知られ、

焼き討ちに遭う可能性もあるのだ

無いと思いたいけれど、あるかもしれない。と言う時点で安心は無理だ

陽乃「明日にでもここを発つかもしれない」

「そう……明日、ボランティアで集まりがあるんだけど……」

陽乃ちゃんは参加させられない。

そう思った女性とは正反対に、球子ははっとして頷く

球子「それなら参加するぞ」

「えっ?」

陽乃「黙っててって言ってるでしょう」

「そう、なの?」

陽乃「……不本意ではありますけど」

「そう……そうなのね。ありがとう」

陽乃「別に、感謝されるためではないので」

そう言ってそっぽを向く陽乃を、

隣人の女性はしばらく見つめて……申し訳なさそうに家の中に入っていった
372 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/07(日) 18:37:39.13 ID:t3OcwK7qo

√ 2018年 8月6日目 夜:伊予島家

01〜10 大社
21〜30 球子
41〜50 杏
81〜90 九尾

↓1のコンマ

※それ以外は通常
373 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/07(日) 18:49:57.14 ID:mbvI2PfUO
374 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/07(日) 19:26:41.93 ID:t3OcwK7qo
√ 2018年 8月6日目 夜:伊予島家


陽乃「はぁ……」

庭先に出るくらいなら問題ないだろうと思ったのが間違いだった

その結果、隣人に見られてしまったし、

余計な話を聞かされてしまった。

陽乃「……ダメよ」

影を踏んで、首を振る

あの人は自分たちを殺す権利があると言っていたけれど

陽乃がそれを認めた瞬間に、この影は喜んで殺すだろう

そうしてしまうべきだと考えている九尾に対して

当人が殺す権利がある。などと口走るのはあまりにも危険だ

陽乃「もう……最悪」

元々、全人類が自分のことを嫌っているとまでは思っていない

しかし、その極少数の自分の味方であろう人が、

もしも、隣人のように【殺す権利】を押し付けてくるのだとしたら

陽乃は認めるわけにはいかない
375 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/07(日) 19:48:57.72 ID:t3OcwK7qo

味方だろうと敵だろうと、

陽乃は……いや、九尾は殺してしまう。

そうして良いと言っているから。と、容赦なく殺めることだろう。

それは駄目だ

たとえ、敵であろうとも許すわけにはいかない

九尾は愚か者だというけれど、

それを許してしまったら、

本当に駄目になってしまいそうな気がするからだ

陽乃「………」

球子が、ボランティアについて漏らしてしまったし、

あの人はそれがなくても、参加する予定だったはず。

何か起きないとは言い難い

今からでも、キャンセルすることはできるだろうか。


1、球子を殴る
2、キャンセルを申し出る
3、杏と交流
4、九尾と交流
5、イベント判定

↓2
376 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/07(日) 19:54:13.42 ID:5Rp1iiX30
1
377 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/07(日) 19:55:02.96 ID:zqdYjcLuO
3
378 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/07(日) 20:46:37.61 ID:t3OcwK7qo

陽乃「ねぇ、土居さんを黙らせることできないかしら」

杏「えっ!?」

陽乃「あの人、余計な事しか言わないから」

杏「あの人……ですか」

陽乃「貴女から言えばどうにかなるでしょう?」

杏「久遠さんに関してはどうともならないと思いますけど……」

陽乃「はぁ……」

深いため息

本当にどうにかしたいと思っていると感じる

球子はいったい何をやらかしたのかと、杏は眉を顰めて

杏「タマっち先輩、嫌いですか?」

陽乃「好きなわけないじゃない」

杏「そ、そうですよね」

陽乃「あの人のせいで、隣人にボランティア参加がバレたの」

杏「え……そ、それで、何か?」

陽乃「その人は私について肯定的だったから特には」

杏「そう、ですか」

ほっと安堵の息を吐いた杏

陽乃は一瞥に留めて、目を背けた
379 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/07(日) 21:26:22.80 ID:t3OcwK7qo

杏「久遠さんを肯定的な人、ほかにもいてよかったですね」

陽乃「ぜんぜん、良くないわ」

杏「ダメ、なんですか?」

陽乃「味方が一人二人いたところで、何かが変わるわけでもないでしょう?」

杏「それは……」

そうかもしれない。

けれど、いないよりはましだと杏は思う

だが、陽乃はそう思っていないし

思うつもりもないように見える

杏「でも、少なくとも一人はいたんですよ?」

杏の両親のように、

陽乃とは別の勇者を子や知り合いに持っているわけでもなく、

他人でありながら、味方でいてくれていたのだ

それは、悪いことではない

杏「もしかしたら、ボランティアの人たちみんなが良く思ってくれているかもしれません」



1、私がそう、暢気に考えられると思う?
2、やめて。あり得ないわ
3、それはどうだっていいから、土居さんを何とかして
4、そんな恐ろしいこと、考えたくもない


↓2
380 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/07(日) 21:32:42.32 ID:zqdYjcLuO
1
381 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/07(日) 21:37:03.00 ID:5Rp1iiX30
3
382 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/07(日) 22:03:35.49 ID:t3OcwK7qo

陽乃「それはどうだっていいから、土居さんを何とかして」

杏「どうでも良くないと思います」

陽乃「やめて」

杏「………」

陽乃「貴女まで、頭痛くさせないで」

杏「そんなですか?」

陽乃「そんなよ」

今の自分が話そうとしていることを、球子が事前に話したとは考えにくいけれど

詳細ではなく、大まかに似通ったことを話した可能性はある

それを繰り返すのは、得策ではないと判断した杏は、小さく息を吐く

杏「タマっち先輩も、久遠さんのことを思ってのことなんだと思います」

陽乃「有難迷惑って、知らないの?」

杏「知ってますけど……でも」

陽乃「知ってるなら、無駄に話す必要もないと思うけど」

杏「………」

取り付く島もない

これでは、困る
383 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/07(日) 22:04:38.27 ID:t3OcwK7qo

コンマ判定↓1

1,3,9 杏「そういうの、やめた方が良いと思います」

それ以外 通常
384 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/07(日) 22:15:14.86 ID:NuyVDyaVO
385 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/07(日) 22:19:17.20 ID:t3OcwK7qo

ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
386 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2021/02/07(日) 22:37:22.86 ID:lQb+8G6JO

選択肢までもが徹底的にネガティブな陽乃さん…
今作はさおりんみたいな相方ポジションの子が不在で心を癒せないのが辛いな
387 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/08(月) 08:02:05.66 ID:BBSdOf0hO

このメンタルだともし隣人が悪い人だったら本当にやらかしてたな…
388 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/08(月) 22:17:55.56 ID:3KRMEiDFo

では少しだけ
389 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/08(月) 22:20:09.31 ID:3nSAsTDLO
おk
390 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/08(月) 22:39:02.12 ID:3KRMEiDFo

杏「……そう、ですけど」

やめるべきだ。

無理に突き離そうとするのも、そうあるべきだと自分を律するのも

けれど、今の陽乃にはそれを言うだけ無駄なのだ

球子だって、それが間違ってると思っているから突っかかっているのだと杏は分かっている

それを陽乃は嫌がっている

球子を拒んで、杏を拒む

そうなれば孤立しかねないけれど……陽乃はむしろそれを望んでいる

それではダメだ

孤立させたくないのに、孤立させる流れは不味い

杏「でも、遠征に行くなら少しは仲良くなる必要があると思います」

陽乃「仲良くなって、どうするの?」

杏「連携して戦ったり……その、外の世界の状態を見て、気が滅入ることがあるかもしれませんし……」

陽乃「目の前で人が食べられたりしたのに、気が滅入る光景なんてそうそうないと思うけど」

杏「そう、ですよね……」

陽乃「連携だって、出来ると思う?」

杏「今の状態では難しいと思います……でも、もう少し仲良くなれたら。出来るかもしれません」
391 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/08(月) 23:21:26.35 ID:3KRMEiDFo

陽乃「無駄な期待はしない方が良いと思うわ」

杏「したくないですか?」

陽乃「守る気はないもの」

守る気はない

守れる保証がない

だから、背中を預けられても困る

杏と球子は陽乃が何と言おうと一方的に守ってくれるだろう

けれど、それに対して何もできない

いや、出来る限りのことを陽乃は尽くそうとするはずだ

しかし、その結果失うことになる可能性がある以上

陽乃は背中を預けたくないし

預けられたくもない

陽乃「貴女には土居さんがいるんだから、欲張らない方が良いわ」

杏「タマっち先輩だけじゃなく、若葉さん達もいます。でも、必ず一緒にいられるとは限りません」

陽乃「ん……確かに私と二人きりになっちゃう可能性もあるわね」
392 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/08(月) 23:55:38.53 ID:3KRMEiDFo

杏「そうですっ」

押し切ろうとでもいうのか、

前のめり気味に言う杏を見ることもなく、陽乃は首を振る

陽乃「そうなったら死を覚悟しておいて頂戴」

杏「もちろん、その可能性もあります」

遠征の道中がどうなっているかは分からない

しかし、その最中に二人きりになるなんて故意になるとは考えにくい

何かが起きてそうなったと考えるのが自然だ

その場合、安全を保障できないのは当然で、

死を覚悟しておく必要があるというのも真っ当な話だ

杏「でも、その状況から生還する確率を上げるためにも、協力できるようにしておくべきだと思います」

陽乃「なるほどね」

陽乃は素っ気なく言うけれど、一理あると、ため息をつく

陽乃「よく言うわね。間違ってない」

杏「なら……その、仲良くして貰えませんか?」



1、仲良くなる気はないわ。共闘ならしてもいいけれど
2、連携できる程度なら
3、嫌よ
4、なら取引よ。土居さんをどうにかして


↓2
393 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/08(月) 23:57:00.86 ID:C3QV0l730
2
394 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/08(月) 23:58:42.21 ID:95SAunfzO
2
395 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/09(火) 00:12:01.08 ID:CF0RLH+Ao

ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
396 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/09(火) 00:23:32.34 ID:tY0eYVnhO

どんなに突っぱねられても諦めない杏
連携から徐々に仲良くなっていけるといいなぁ
397 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/09(火) 00:47:52.18 ID:xr3tw/N0O

杏のこのガッツはありがたい
陽乃はそろそろデレて
398 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/09(火) 22:33:01.54 ID:CF0RLH+Ao

では少しだけ
399 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/09(火) 22:39:16.01 ID:CF0RLH+Ao

陽乃「……そうねぇ」

陽乃は少し考える素振りを見せる

見せはしただけで、その内では特に何も考えていなかった

考える必要がない

陽乃「連携できる程度なら」

杏「本当ですかっ!?」

陽乃「気が変わらないうちに、大人して貰えないかしら」

杏「す、すみません」

必要最低限の協力体制

それが必要なのは陽乃でも分かっていることだ

だが、護ってあげられる保証がない以上

易々と引き受けたくはない

けれど……遠征云々と口にされれば、妥協すべきではある

生き残れる可能性を高めるために勇者を連れ出すのに

その勇者が役に立たないというのは、結果的にリスクを高めるだけになってしまう
400 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/09(火) 22:51:20.66 ID:cMu9i+/YO
せやな
401 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/09(火) 23:08:52.13 ID:CF0RLH+Ao

杏「でも、それだけでも十分です」

ありがとうございます。

笑顔でそう言う杏を一瞥して、陽乃は顔をしかめる

これは間違いなく一歩踏み込んだ

球子はともかく

杏との関係は近づく結果になっただろう

必要最低限の関係

その枠を出られるのは困る

それを出ていなくても……ではあるけれど。

杏「明日はお昼からボランティアの活動ですけど……もしかしたら、その時にアップデートが届くかもしれません」

陽乃「そうね」

杏「明日届いた場合、明後日タマっち先輩と模擬戦を行って……」

陽乃「少なくとも今日を含めないで3日は遠征にいかないと思うわよ。保証はしないけど」

杏「分かりました。でも、最低限の用意はしておきます」

陽乃「用意?」

杏「遠征用の荷物とか、用意した方が良いと思うので」

食料や寝袋など

外がどうなっているか分からない以上、それなりの準備をするべきだ

杏「ところで、鯖缶って好きですか?」

陽乃「嫌いじゃないわ。好きでもないけど」
402 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/09(火) 23:16:35.25 ID:CF0RLH+Ao

1日のまとめ

・ 乃木若葉 : 交流無()
・上里ひなた : 交流無()
・ 高嶋友奈 : 交流無()
・ 土居球子 : 交流有(装束、認める、大変な事になる、被害を出したくない)
・ 伊予島杏 : 交流有(装束、球子不満、連携程度)
・  郡千景 : 交流無()
・   九尾 : 交流無()

√ 2018/08/06 まとめ

 乃木若葉との絆 62→62(普通)
上里ひなたとの絆 56→56(普通)
 高嶋友奈との絆 52→52(普通)
 土居球子との絆 49→51(普通)
 伊予島杏との絆 55→58(普通)
  郡千景との絆 21→21(険悪)
   九尾との絆 63→63(普通)
403 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/09(火) 23:29:26.03 ID:CF0RLH+Ao

↓1コンマ判定

奇数なら装束完成日

※偶数なら、翌日
404 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/09(火) 23:32:02.87 ID:i01xjQP30
405 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/09(火) 23:40:45.94 ID:CF0RLH+Ao

√ 2018年 8月7日目 朝:伊予島家

01〜10 大社
21〜30 球子
41〜50 杏
57〜66 若葉
81〜90 九尾

↓1のコンマ

※それ以外は通常
※一桁奇数で訪問
※装束完成日
406 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/09(火) 23:41:16.80 ID:je3h87lK0
407 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/09(火) 23:53:30.67 ID:CF0RLH+Ao
√ 2018年 8月7日目 朝:伊予島家


杏「久遠さん、今日装束のアップデート版が展開されるそうです」

陽乃「そう……」

杏「興味、ありませんか?」

陽乃「お昼が憂鬱なのよ」

ボランティアの集まりはお昼からになっている

それまであと数時間あるものの、朝から気が重い

杏曰く、味方はいた

だとしても、それ以外の人達が陽乃を受け入れるとは限らない

陽乃を認めた杏の両親、その隣人

今度は彼らが害される可能性がある

陽乃「……なんて」

頼んだわけじゃない

だから、得があったのかは知らないが自業自得というものだ

杏「なにか?」

陽乃「何でもない」

そう割り切れるような性格ならば

九尾が悪態を付くようなことはないだろう
408 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/09(火) 23:55:44.29 ID:CF0RLH+Ao

では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
409 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/10(水) 00:06:46.51 ID:cAlQw2BSO

なんやかんやで装束完成してよかったなぁ
それにしてもあの深刻な8月開始からやっと一週間か…これでまだまだ序盤というね
410 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/10(水) 00:44:36.17 ID:PeJF1qSrO

ボランティアやって連携して遠征して
道筋見えてきたな
411 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/11(木) 20:22:13.22 ID:7yGlth3Bo

では少しだけ
412 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/11(木) 20:28:30.10 ID:7Bvke3DRO
やったぜ
413 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/11(木) 20:31:22.08 ID:7yGlth3Bo

陽乃「土居さんは?」

杏「外に出てます。お昼からいっぱい動くからその準備運動だって」

陽乃「元気ね……」

杏「タマっち先輩ですし」

小馬鹿にしているような笑い声

けれど、本当に馬鹿にしているわけではない表情は

そんな球子を快く思っているからこそのものだろう

球子も、馬鹿にしてるだろ。なんて突っ込みを入れるかもしれないけれど

仲が良いことを前提としたものになる

杏「神託の件はどうしますか?」

陽乃「どうもこうも無いわ。装束の性能チェックした後ね」

性能が良いなら、問題なく連れ出せるが

悪いなら必要最低限にとどめておくべきだ

最悪の場合、外の世界で全滅する可能性だってある

死ぬ覚悟をしている球子と杏は何が何でも付いて来るだろうから

陽乃、杏、球子

それだけで行かせるような神託を出さなければならない


1、貴女達二人より、乃木さんの方が良いのだけど
2、貴女、本当に戦えるのよね?
3、もしかしたら、両親を喪う可能性もあるって、覚悟しておきなさい
4、イベント判定


↓2
414 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/11(木) 20:34:14.36 ID:7B/QW9Hq0
2
415 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/11(木) 20:37:09.78 ID:7Bvke3DRO
3
416 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/11(木) 20:48:02.32 ID:7yGlth3Bo

陽乃「伊予島さん、あなた本気で付いて来るの?」

杏「はい」

覚悟を決めている表情

けれど、恐れが残る瞳の揺れがあるのを陽乃は見逃さない

覚悟が出来ていれば怖くないなんてことはない

以前の世界なら、一度は出たことがあるかもしれない世界も

今では人類の未踏領域と化している

陽乃「そう……なら、もしかしたら両親を喪う可能性もあるって覚悟しておきなさい」

杏「お母さんたちを……?」

陽乃「今日の件、私がバッシングを受ける状態なら連れ込んだ貴女の両親の立場が危うくなる」

杏「そうですね……」

陽乃「言っておくけれど、だとしても放置していくわ」

陽乃を保護していること

陽乃に肩入れしていること

それらを攻め立てられて、陽乃と同様に敵視され

放火され、生贄として捧げられるのだとしても

陽乃は目もくれずに去っていくと、宣言する

陽乃「貴女はそれでも付いて来るのね?」
417 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/11(木) 20:59:17.04 ID:7yGlth3Bo

付いて来ると言えば両親を見捨てると言う事にもなる

自分の発言ながら酷いことを聞くものだと陽乃は眉を顰めて、

口を閉ざした杏をまっすぐ見つめる

願わくば「考えさせて欲しい」と口にしてと思いながら。

杏が控えれば、球子も控えるかもしれない

戦力として申し分ないならば快くとまでは行かなくても

連れていくことに問題はないけれど

そうではない二人……特に、まだ勇者としての経験のなさそうな杏は連れていきたくはない

球子が50%の確率で死ぬのなら、

今の杏は80%の確率で死んでもおかしくないからだ

陽乃「一宿一飯の恩はある。でも、私のすべきことを取り止めるほどの恩はないし」

なにより、

リスクがあることはすでに話している

その責任を負うことは出来ないという話もしている

今日のボランティアに参加した結果、周辺住民からどれだけの誹謗中傷を浴びせられようと

自分には自業自得だとしか考える気はない

その結果、杏の両親が死のうと「だから言ったのに」としか思う気はない
418 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/11(木) 21:02:44.46 ID:7yGlth3Bo

↓1コンマ判定 一桁


ぞろ目 特殊

149 杏「覚悟は、出来てます」

それ以外 杏「……」
419 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/11(木) 21:03:37.15 ID:7Bvke3DRO
どうだ
420 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/11(木) 21:21:03.34 ID:7yGlth3Bo

杏「………」

杏は難しい顔をして、黙り込んでいる

ただ普通に両親をこの場に残していくのなら

悲しませることになるかもしれないと思う程度で済むかもしれない

だが、両親を喪う可能性があると言われたらそれではすまない

陽乃「今すぐじゃなくて良かったわね」

杏「私……」

陽乃「よく考えた方が良いと思うわ」

本当に両親を置いて行っていいのか。

もちろん、今日のボランティア活動で問題が無ければ何も問題はない

しかし、間違いなく何かがある

全員が否定的ではなかったとしても

比率としては否定派が大多数を占めると考えておくべきだ
421 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/11(木) 21:45:42.17 ID:7yGlth3Bo

陽乃「………」

『くふふふっ……何事もなければよいがのう?』

陽乃「何が言いたいの」

『さてのう?』

にやにやと笑っているのが分かるような声色

足元の影は揺らめいて、

杏に巻き付くようなそぶりを見せるが、見せるだけで手は出さない

陽乃が不機嫌になると分かっててやっているのだろう

ただの意地悪だ

陽乃「はぁ……」

九尾のことだ

万が一のことがあった場合、

杏の両親を見捨てて四国を出ていくことは出来ないと勘繰っているに違いない

なのにもかかわらず、

杏にそんなことを言うものだから「何言ってるんだ」とでも噴飯ものだっただろうか。

陽乃「……分かってるわよ」

言われなくたって、分かっている
422 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/11(木) 22:05:31.40 ID:7yGlth3Bo

√ 2018年 8月6日目 夜:伊予島家

05〜14 若葉
27〜36 友奈
71〜80 友人

↓1のコンマ
423 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/11(木) 22:06:48.96 ID:7B/QW9Hq0
424 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/11(木) 22:21:16.94 ID:7yGlth3Bo
√ 2018年 8月7日目 昼:???


↓1コンマ判定(肯定派) + ゾロ目補正+20

↓2コンマ判定(否定派)


※ぞろ目なら2倍
425 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/11(木) 22:23:26.12 ID:7Bvke3DRO
それ
426 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/11(木) 22:26:49.93 ID:7B/QW9Hq0
427 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/11(木) 22:31:50.09 ID:7yGlth3Bo
√ 2018年 8月7日目 昼:???

(肯定:否定=32:93)
428 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/11(木) 22:33:33.95 ID:7Bvke3DRO
世の中そんなに甘くなかったか…畜生
429 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/11(木) 23:06:02.75 ID:7yGlth3Bo
√ 2018年 8月7日目 昼:???


髪の色は脱色も染色もできずに変えられなかったために変化はないが、

三年経って陽乃は背も伸びたし、多少なりと顔つきも変わった

伊予島家、隣家の人のように一目見て気付く人もいれば

気付かない人もいる

分かりやすい容姿でありながら、気付かないのは【そこにいて欲しくない】という思いがあるからだろう。

しかし、

誰か一人でも気づき 「あそこにいるのは久遠陽乃ではないか」 と口にしてしまえば、

その存在を認めざるを得ない

陽乃「……だから言ったのに」

ボランティアに集まった、この地区にしては大人数な集団

総勢、50人ほどだろうか

その半分以上の人達がざわつき、陽乃を指さし、

化け物を見るような顔をしたり、仇敵を見つけたかのような表情の人もいる

なぜ、どうして……と、困惑と苛立ちと憎悪が入り混じって

「伊予島さん、これは……どういう。ことかな?」

比較的、優しそうではあるけれど

陽乃を畏れて避ける班長のような男性が、杏の両親へと疑問を投げかけた
430 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/11(木) 23:08:02.92 ID:7yGlth3Bo
では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
431 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/11(木) 23:19:28.81 ID:7Bvke3DRO

陽乃さんとことんツイてないなぁ
せめてご両親や味方してくれる人には悪影響がなければいいけど…
432 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/12(金) 01:15:38.60 ID:cUG1KKteO
補整+20でもこの差よ…単純に61差で61%が否定的なのかね
補整無しで81%だったと思うと…
433 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/12(金) 21:16:57.96 ID:zQ5add/mo

では少しだけ
434 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/12(金) 21:34:57.78 ID:Fmf8YJuAO
きてたか
435 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/12(金) 22:56:05.60 ID:zQ5add/mo

「娘の杏が勇者として大社のもとに出向しているのは存じていることかと思います」

「それは、まぁ……」

「娘が休暇を戴いてお友達を連れてきたのですが――」

「ま、まさかその化け物が勇者様の友人などとは言わないですよね!?」

野次のつもりなのか、

杏の父親の言葉を遮って叫ぶように言った女性

近くにいる男性に隠れるようにしながら

陽乃を睨む姿勢はまさに、虎の威を借る狐のようだ

だが、本当の狐は陽乃の足元で鼻をヒクヒクと鳴らしている

その狐は、虎などよりもはるかに恐ろしいが。

「あの時、その娘が死体の山の傍で佇んでいるのを見た人だっているんだ!」

「自分の家の役目を放棄して逃げたって話があるわ!」

「実際に殺されかけた人だっているんだぞ!」

「人の頭を鷲掴みにしてたって聞いたわ!」

あちこちから聞こえてくる、陽乃への敵意

そんなことをした覚えがないという噂ももちろんあって、

どこの誰から出てきた話なのかと……問い詰めたくなってくる
436 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/12(金) 23:08:39.30 ID:zQ5add/mo

陽乃の一挙手一投足にビクビクしている多数派

けれども陽乃を認めてくれるのは少数派で、それは言いすぎなのでは。と、小さく話すばかり。

陽乃「はぁ……」

「ひっ」

陽乃「ため息一つで人を殺せるとでも思ってるの?」

ため息をつけば、息を引く間抜けな声を漏らす男性

陽乃が睨むと、男性の後ろにいた女性は別の人の影に隠れる

陽乃「隠れるくらいなら、黙っておけばいいのに」

何が "化け物" なのか。

殺される覚悟も無いのなら、縮こまっていればいいのに。

陽乃のため息一つで、曲解して狐が噛みつかないとも限らないのだから

「彼女……久遠さんは、勇者様の教官をしているそうですよ」

陽乃「えっ?」

「きょ、教官……? あの子が……?」

危険だ、嘘だ、殺そうとしているのかもしれない

そんな言葉が飛び交ったり、

脅されているのではないかと、杏の両親を心配する声がちらほら聞こえる
437 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/13(土) 00:10:01.95 ID:1LDkWQUvo

「知っている人も……いるのでは?」

陽乃「ん……」

昨日話しかけてきた隣人の女性

数少ない肯定してくれる一人である女性は、

恐る恐ると……口を開く

「確かに、噂にあるような姿を目撃した方がいるかもしれません。でも、そうではない姿も多くの人が見たはずです」

血塗れの少女

山ではなくとも、死体の近くに佇んでいる少女

その姿を見た人も少なくはないだろうが、

その死体を食い漁っていた本当の化け物と戦う少女を見た人もいるはずだ

襲われそうになっている赤の他人を助け、恐れられ、

逃げるを追わず追わせず歯を食いしばっているのを、見た人だっているはずだ

「だけど、それは役目を放棄したせいだって話じゃないか」

「しっかり役目を果たしてれば、今頃元の生活に戻れていたかもしれないだろ」

「自分の命惜しさにその何百倍もの犠牲者出したって事なんでしょ?」

球子「っ」

陽乃「………」

陽乃の影が揺らめいて

それよりも強く、すぐそばの小柄な勇者がこぶしを握り締める


1、それの何が悪いの? もしかして、貴女だったら喜んで死ぬの?
2、ええ、そうよ。それで?
3、言わせておきなさい
4、余計なことしないで
5、九尾、脅かすだけよ?


↓1
438 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/13(土) 00:16:49.98 ID:TPS7cAChO
4
439 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/13(土) 00:17:22.05 ID:pXk6mbYC0
1
440 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/13(土) 00:37:33.86 ID:1LDkWQUvo
ではここまでとさせていただきます
明日もできればお昼ごろから
441 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/13(土) 00:44:27.49 ID:67JAPitLO

陽乃さんが大勢に罵倒される姿を杏とタマは目の当たりにして辛いだろうな…
442 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/13(土) 01:10:29.73 ID:HROQPm1TO

誰か助けて
443 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2021/02/13(土) 16:16:11.67 ID:ov0JqW660
言わせておいて、ボランティア活動だけして帰ろう
444 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/13(土) 17:11:28.61 ID:1LDkWQUvo

では少しずつ
445 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/13(土) 17:27:26.30 ID:V9yHNhxxO
よっしゃ
446 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/13(土) 17:56:18.38 ID:1LDkWQUvo

陽乃「余計なことしないで」

球子「でも――」

陽乃「良いから、二度とやらないで」

昨日許されたのは、相手が陽乃を認めてくれていたからでしかない

そうではない相手に突っかかられたら、

廻りめぐって……陽乃が被害を受けることになる

勇者まで洗脳してるとか

どうとか

きっと、陽乃が悪者扱いされるだろう

そう、ならなかったとしても。

球子の立場が悪くなるだけだ

「なんでそんなやつ連れてきたんだ!」

「落ち着いて――」

「その子のせいでこんな……こんな最悪な世界になったんでしょ!?」

陽乃「ん……」

目の前で人が死んだのは、自分が護れなかったからだ

だけど、そんな人が死ぬ世界にしたのは自分ではない

しかし、それを言ったところで何も変わらない

「この……化け物!」

一人の子供が、近くにあった石を拾って――投げる

小さな子供の弱い投擲だが、当たれば痛い石は害意を纏っている

だから……動く影を踏み潰す

陽乃「ダメ!」

周りに人がいようと関係なく、

人の老若男女など気にすることもなく

それは、容赦なく命を奪うからだ
447 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/13(土) 18:33:57.14 ID:1LDkWQUvo

陽乃「貴女も、余計なことしないで……」

足元の影にそう言い聞かせて顔を上げると、

陽乃から距離を取っていた人々はさらに距離を取ろうとしていて

目が合って悲鳴を上げる人もいれば

その場にへたり込む人や、身を隠そうとする人もいる

陽乃「……はぁ」

口を出さなければ、人が一人死んでいたかもしれない

それよりは悪くない空気だと陽乃は割り切る

「や……やっぱり、人殺しだ!」

「こっち睨んでるわ!」

「なんでこんな奴が生きてるんだ」

「どっかいってよ!」

「お前が死ねばよかったのに!」

杏「そんな――」

陽乃「良いから、黙ってて」

杏の両親も宥めようとしているけれど、

陽乃への恐れと怒りが入り混じった阿鼻叫喚な場は治まらない

陽乃「良いから……もう、誰も余計なことしないで」
448 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/13(土) 19:09:03.37 ID:1LDkWQUvo

一つの地域の、小さな集まり

それも、ボランティアなんていう比較的穏やかな目的の集団

そんな人々でさえ、多くが陽乃を否定する

陽乃の存在を憎み、恨み、恐れる

それが、現実だ

杏「久遠さん……」

球子「余計な事かよ……」

球子達は、千景から陽乃がどれだけ憎まれているかを聞かされたことがある

ネットの掲示板を見せられて。

これだけ誹謗中傷を受けているのだと

こんなうわさがあるのだと

これだけ憎まれているのだと聞かされた。

けれど、それはあくまで "匿名" だった

でも、これは違う。

今まさに目の前で行われている。

中には陽乃がいたからこそ、今ここに居られている人だっているはずなのに。


1、私は帰るわ
2、九尾、威嚇
3、これに懲りたら、友達の自称なんてやめることね
4、活動、しないの?

↓2
449 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/13(土) 19:10:53.40 ID:V9yHNhxxO
4
450 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/13(土) 19:11:00.42 ID:HROQPm1TO
4
451 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/13(土) 20:18:00.85 ID:1LDkWQUvo

陽乃「それで……活動、しないの?」

「は?」

「あ、あんたみたいなのがいたら出来るわけないじゃない!」

「後ろから襲う気なんだろ!」

「さっさと消えてくれよ!」

陽乃「だって」

杏「……すみません」

陽乃「別に責めてるわけじゃないわ」

振り返った陽乃の困った笑顔に、杏は言わずにはいられずに謝罪を口にしてしまう

ボランティアに誘ったのは杏ではなく杏の両親だ

だから、杏が謝る必要もないけれど。

「早く出ていけよ!」

陽乃「っ」

ごつんっと……背中に当たる少し大きめな石の感触

目を向けただけで怯むのに、怯むだけ。

多勢に無勢だなんて考えているからだろうか。

いくつも石がぶつかって、

せっかく用意して貰ったジャージが無意味に汚れる
452 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/13(土) 20:42:30.39 ID:1LDkWQUvo

陽乃「……ん」

土汚れを手で払って、

地面に落ちていく石ころを拾い上げる

陽乃の手には小さな石

力一杯に投げれば、それなりに痛いだろう。

九尾の力で投げつければ、

人間の柔らかい肉なんて、貫けるだろうか。

陽乃「簡単そうね」

九尾の力で人の体を貫くのも

そんな力を使わずに、誰かに石を命中させるのも

陽乃「……」

杏の両親に目を向けると、

陽乃に対しての言動を押さえようとしていて

けれど、抑えきれていない

流石にここまでとは想像していなかったのかもしれないけれど、

だから言ったのに。と、陽乃は首を振る

無駄なのだ

こんな活動への参加なんて。
453 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/13(土) 20:51:28.44 ID:1LDkWQUvo

コンマ判定↓1


2,4,9 悪い方

それ以外、通常
454 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/13(土) 20:52:23.64 ID:V9yHNhxxO
たのむ
455 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/13(土) 20:53:59.97 ID:V9yHNhxxO
終わった…
456 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/13(土) 21:12:40.41 ID:HROQPm1TO
ある意味引きが強い
杏の両親かな……
457 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/13(土) 21:54:45.18 ID:1LDkWQUvo

「あんたたちが匿ったんだな!?」

その声は唐突に上がった。

矛先が杏の両親に向かうことは元々考えていたけれど

本当に向かってしまったことに、陽乃は思わず眉を吊り上げた

「あなた達が匿ったせいで、大勢の犠牲が出たんじゃないですか!?」

「あんな化け物の味方をするなんて、どうかしてる!」

「人殺しなのよ!」

「今すぐにでも外に放り出すべきだ!」

陽乃「はぁ……」

三年前と違って、壁に覆われている四国

一般人がその向こう側に行けるわけもないのに

どうするつもりかと呆れる陽乃がため息をつくと、

一斉に刺々しい視線が向けられて――

バチン……と、目の前で石が粉々に砕け散った

陽乃「……九尾」

『小石ならばともかく、主様の手ほどのものは許さぬ』

陽乃「別に、自分で対処できるのに……」

石を投げたであろう若い男性は、

前触れなく石が砕けたことに恐れおののいて、目を見開いている

彼らにとっては……噂に違わない化け物に見えただろう
458 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/13(土) 23:13:33.52 ID:1LDkWQUvo

「そうだ……もう一度連れていけばいいんだ」

「おちつ――」

「黙れ!」

「そうよ……もう一度捧げれば良いのよ!」

「今度こそ逃がすな!」

杏「お母さんっ! お父さんっ!」

彼らの一番近くにいた杏の両親が真っ先に取り押さえられる

相手が怪我をする事なんてまるで考えていないかのように

無理矢理引き倒して、のしかかって

球子「ま、待て待て待てって!」

それほど、希望がないのか

それほど、恐ろしいのか

それほど、憎まれているのか

それとも……全てか

暴走する否定派と、自分まで巻き込まれることを恐れる傍観者達

陽乃達を取り囲むようにして、大人たちが近づいて来る

正直、本気で相手をすれば所詮一般人な大人の力など陽乃には赤子のようなものでしかない

けれど、まだ本調子ではなく

対人に不向きな球子と杏は抵抗しきれないだろう

杏「久遠さん……」

陽乃「責任は取れないって、ちゃんと言ったわよ」



1、無視して離脱する
2、九尾を呼び出す
3、大人を殴り飛ばす
4、大人しく捕まる


↓2


※1〜3は判定次第で死人が出ます
459 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/13(土) 23:14:33.79 ID:HROQPm1TO
4
460 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/13(土) 23:20:04.10 ID:o1x2bc+R0
3
461 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/13(土) 23:26:58.27 ID:1LDkWQUvo

↓1コンマ判定 一桁

  0   死者2
1、4    死者1
3、6、2、7 重傷
5、9、8   重傷者複数 


00 死者複数
462 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/13(土) 23:28:01.81 ID:Wmmwd4YRO
463 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/13(土) 23:36:13.68 ID:1LDkWQUvo

ではここまでとさせていただきます
明日もできればお昼ごろから
464 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/13(土) 23:40:10.16 ID:HROQPm1TO

とうとう死人が……
465 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/13(土) 23:41:46.77 ID:l/3MWn07O

まさかボランティアに参加したばっかりにこんな鬱展開になるとは…
杏がトラウマになりそう
466 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/14(日) 00:10:32.73 ID:erZ2fHJRO
杏のお父さんお母さんどっちが死ぬかとか地獄みたいなコンマ判定来るのかな?
467 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/14(日) 17:04:51.04 ID:lLbFIcFmo

では少しずつ
468 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/14(日) 17:07:19.12 ID:9V06vbX+O
あいよ
469 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/14(日) 17:08:45.70 ID:lLbFIcFmo

球子「あ、あんずっ!」

杏「っ……お母さんっ、お父さんっ……」

球子「くそっ」

陽乃だけでなく、球子や杏の方にも男性が近づいて

両親を助けに行こうとする杏を阻み、置いていけない球子を足踏みさせる

球子「た……わ、私達は勇者だぞ! こんな、こんなことっ!」

「本当に勇者様ならあんなやつと一緒にいるなんてありえない」

「本当に勇者様ならあの化け物退治してくださいよ!」

「そうしなかったのが嘘をついている証拠だ!」

球子「ちょ、ま、はぁ!? 杏ッ!」

躊躇わずに迫ってくる大人たちの言葉

その目も危ういものだと感じた球子は、とっさに杏へと手を伸ばして突き飛ばす

杏「っ……」

球子「ダメだっ逃げ――」

杏「タマっち先輩……」

球子よりも一回りも二回りも大きい男性によって、

球子の体が地面に押さえつけられていく

突き飛ばされて尻もちをついた杏にも、その手は近づいてくる

逃げ場はない

勇者と比べれば力もない一般人を、どうにかしない限り
470 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/14(日) 17:38:32.97 ID:lLbFIcFmo

陽乃「………」

リスクがあることは、事前に話していた通りだ

それによってどんな被害があろうと

自分にはその責任を負うことはできないことも忠告した

杏の両親が取り押さえられ、

ボランティア活動で使う予定だっただろうビニールで縛られていても

土居球子が男性に馬乗りになられていても

伊予島杏が呆然自失としてしまっていても。

自分には関係ないと、陽乃は首を振る

陽乃「だから言ったのに」

本当に。

自分には関わるべきではないことも、

何が起こるか分からないことも

あんなにも……忠告をしてあげたのに

「あとはお前だ!」

陽乃は、勇者の中ではそれなりに背が高い部類に当たる

それでも、大人の男から見ればまだ小さい子供にしか見えない

だからなのか、大した武装もなく近づいて来る男性を……陽乃は一瞥して。

「このばけ――」

躊躇なく、殴り飛ばした
471 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/14(日) 17:56:04.18 ID:lLbFIcFmo

「あ……ぁ゛……うぶ……」

殴り飛ばされ、地面を転がっていった男性はうめき声を漏らして完全に沈黙する

陽乃を取り囲んでいた大人たち

杏や球子を取り押さえる大人たち

杏の両親を縛り上げる大人たち

ただの傍観者な大人たち

みんなが、その異常な光景に息を飲む。

化け物だとしていても、それが事実化け物めいた力を持っていることを知る人間はそう多くはない

なぜなら、知っている人間は救われた人間だからだ。

だからこそ、

ただの少女にしか見えない "化け物" が体格も良いはずの男性を殴り飛ばし、気絶させたのは異常だった。

陽乃「私は、これでも自分のことを人間だと思ってる」

球子「っ……」

何をしてるんだ。と、苦悶の表情を浮かべる球子を無視して、

陽乃は殴った左手で握り拳を作る

陽乃「でも、あなた達にとっては化け物なんでしょ?」

「あ……ぅ……そ、そうだ!」

「今まさに化け物みたいな力で人を殴ったじゃないか!」

「ひ、人殺し!」

「化け物! 取り押さえて殺せ!」

耳障りな怒鳴り声を、さも聞こえないかのような表情で陽乃は笑う

杏「久遠さん……」

陽乃「そうよね。ありがとう」

「何がっ」

陽乃「これで心置きなく "自分を人間だって思いこむ化け物" を殺せるわ」

球子「やめろっ!」

陽乃「もう遅い……もう、遅いのよ」
472 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/14(日) 18:17:11.27 ID:lLbFIcFmo

陽乃はそもそも、勇者とは違った異質な力を身に纏っている

それによって、常人離れした身体能力を得ているため

勇者と相対しているのでもなければ、

大人が数十人いたところで、御しきれるような少女ではない

陽乃「はぁ……」

どうにか取り押さえようとした十数人の大人が気を失うまで殴り、蹴り

草刈り用の鎌を持ち出した男性の命を陽乃が奪ったことで、争いは収束した。

武器を持ったら手を抜けないと、忠告はした。

死にたくないならやめて。と、宥めようとした。

けれど、その男性はそれでも陽乃に向かってきたのだ

陽乃を恐れ、逃げ出した人もいれば

その場から動けなくなってしまった人もいる

ごめんなさいごめんなさいと謝罪を口にする人もいる

この場にいた人々にとって、

正真正銘、化け物になったと……陽乃は眉を顰める

杏「……」

球子「ばかやろう! なんで……なんでっ!」

陽乃に害されるのを恐れて男性が逃げたことで自由になった球子は、

真っ直ぐ、陽乃へとぶつかっていく

球子「なんで……そうなんだッ!」

陽乃「さぁ? 化け物だからじゃないかしら?」
473 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/14(日) 18:20:58.85 ID:lLbFIcFmo

↓1コンマ判定 一桁

1 子供
3 妻
9 兄弟

※それ以外 なし
474 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/14(日) 18:23:28.16 ID:9V06vbX+O
475 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/14(日) 18:45:47.57 ID:lLbFIcFmo

陽乃「邪魔だから離れて」

球子「離れられるか!」

陽乃「腰でも抜けたわけ?」

球子「そう言う話じゃ……」

陽乃「いいから――やめて」

球子の腕を払い除け、体を突き飛ばす。

倒れて動かない男性は、もう息をしていない

不幸中の幸いとも言えないが、

血反吐を吐くようなこともなく、長く苦しまなくて済んだのは良かったのかもしれない

陽乃「………」

ボランティアの集まりがあってから、常に一人でいた男性だ

家族がいないか、失ったか。

でなければ、死ぬと言われても武器を持ってくることはないはずだ

恐らく、あの日にすべてを失ったのだろう

だから、久遠陽乃は元凶であると憎み、恨み、殺意を持っていた

陽乃「誰もそんなこと、望んでなんていなかったと思――」

「近づくな!」

陽乃「………」

「人殺しめ……どっか行けよ!」

陽乃「じゃぁ、後処理しておいて」

陽乃はそう言い残して、男性の傍を離れた
476 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/14(日) 18:54:50.70 ID:lLbFIcFmo

杏「久遠さん!」

陽乃「………」

杏「待って、待ってくださいっ!」

杏や球子

杏の両親の誰にも目もくれずに立ち去ろうとした陽乃の腕を、今度は杏が掴む

今ここで逃してしまったら

もう、会えなくなる気がして。

杏「どこに……行くんですか?」

陽乃「教えられないわ」

杏「どうして……」

陽乃「他人に知られたくないことだから……なんて」

聞きたいのはそうじゃないんでしょ? と、

陽乃は困ったような笑みを浮かべて、杏の腕を振り払う

杏の問いの真意を分かっていても、答えてあげる義理はない

どうしていなくなろうとしているのか。

そんなの、言うまでもないだろう。



1、諦めなさい
2、あの人のように死にたくないなら、もう近づかないで
3、向こうには一人で行くわ
4、私の行き先なんて、貴女が一番分かっていることだと思うけど
5、謝るつもりはないから


↓2
477 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/14(日) 19:01:52.94 ID:Md1vWggq0
3
478 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/14(日) 19:05:13.27 ID:xf3Tmo84O
4
479 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/14(日) 19:51:51.42 ID:lLbFIcFmo

陽乃「私の行き先なんて、貴女が一番分かっていることだと思うけど」

杏「それは……でもっ」

突き放したのに、杏は縋る

腕では振り払われるからと、裾を力一杯に掴む

意味もなく土汚れたジャージに皺が走る

杏「でも……まだ、まだ先の話じゃないですか」

陽乃「だから?」

杏「だから……」

少なくとも、三日間は先の話

なのに、今からこの場を離れて……どこに行くつもりなのか。

どこでその短くも長いであろう時間を過ごすつもりなのか。

けれど、匿えるだろうか。

今での両親は受け入れてくれるだろうか

周りから被害を受けたりはしないだろうか

杏「っ……」

陽乃「もう、放して貰えるかしら」
480 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/14(日) 20:09:15.68 ID:lLbFIcFmo

陽乃の神社も、家も燃え尽きて、崩れ落ちた

偶然でも、事故でもなく

人が悪意を持って故意に行った火事だった

今になって、そうだと確信が持ててしまう。

そんな恐ろしいことが、自分の家に行われないとは限らない

家が燃え、親が殺されるかもしれない

多くの人が、陽乃を化け物だと言った

殺すべきだと、死ぬべきだと

口々に罵って、憎悪と殺意を向けていた

それは人でありながら、化け物のようで。

陽乃「……ね?」

杏「っ」

肩が叩かれる

とても優しい力だ

人を拒絶するどころか、傷つけられそうもない力

杏「………」

裾を掴む力を強くして

少しだけ緩めて……また強くする
481 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/14(日) 20:10:39.75 ID:lLbFIcFmo
↓1コンマ判定

58以下 杏「……勇者が責任を持って身柄を拘束します!」

※ぞろ目 特殊
482 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/14(日) 20:15:16.62 ID:Md1vWggq0
483 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/14(日) 20:41:57.34 ID:lLbFIcFmo

杏「ごめん……なさい……」

止められない。

止めるための言葉が思い当たらない。

人々にとって、もはや陽乃は人を殺した化け物だ

たとえそれが正当防衛から超えてしまった過剰防衛だったとしても。

本当の化け物がどちらなのかと……分からなくなってしまっていても。

杏「ごめんなさい……」

自分には失いたくない人がいる

失ってはならない場所がある

それは、陽乃の味方をすることで奪われるかもしれないほどに脆い

陽乃「何のことか、分からないのだけど」

陽乃は吐き捨てるように言って、杏の手を弾く

「勇者なんだろ! なんとかしろよ!」

「人殺しなのよ!? なんとかしなさいよ!」

陽乃「それもそうね……」

一緒に拘束しようとしていたのに

自分達では無理だからと勇者に頼る

陽乃「今ここで、殺しておいた方が良さそうだわ」

杏「!」

球子「っぁぁぁああああああああっ!」

杏を引き倒して、球子が割り込む

球子「この――」

陽乃「ばか……っ」

球子の腹部には陽乃の回し蹴りが叩き込まれて、地面を転がっていく

中途半端に入った蹴りは、間違いなく球子の防御の隙間を縫って

臓器の一部に突き刺さっただろう

暫く、起き上がれないはずだ
484 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/14(日) 20:57:56.45 ID:lLbFIcFmo

杏「タマっち先輩!」

陽乃「あなた一人で、私を止めてみる?」

杏「っ……」

球子を一瞥し、陽乃を見上げて……球子へと駆け寄っていく杏を見送る

それでいい

そうでなければ、さらに面倒なことになるかもしれない

陽乃「死にたければ……いつでもどうぞ」

球子や杏、両親

立ち向かってきた大人たちにそう告げて

陽乃は一人で歩いていく

杏の家に衣服を置いてきてしまったけれど、

代わりにジャージを貰ったと思えば、悪くない

陽乃「はぁ……」

最低三日後の予定だった遠征

今すぐにでも行ってしまおうかと……少しだけ考える
485 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/14(日) 21:06:42.32 ID:lLbFIcFmo

√ 2018年 8月7日目 夕:

1、神社
2、丸亀城
3、壁の近く
4、廃屋


↓2

※陽乃の居場所
486 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/14(日) 21:09:58.60 ID:Md1vWggq0
3
487 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/14(日) 21:11:51.39 ID:7SKJbhnkO
2
488 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/14(日) 21:20:03.84 ID:lLbFIcFmo

05〜14 若葉
28〜37 友奈
52〜61 千景

↓1のコンマ

※それ以外なら見つからない
489 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/14(日) 21:20:39.23 ID:7SKJbhnkO
490 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/14(日) 22:07:47.31 ID:lLbFIcFmo
√ 2018年 8月7日目 夕: 丸亀城


こっそりと、丸亀城の宿舎に忍び込む

運よく誰にも会わずに自分の使っていた部屋にたどり着き、

ベッドの方へと近づいて……膝から崩れ落ちる

陽乃「っ……」

殺したくはなかった

そんなつもりなんてなかった

でも、一般人とはいえ

明確な殺意を持って向かってくる相手に手を抜くことはできなかった

球子と模擬戦するのとはまるで違う

死が、そこには確実に存在していたからだ

陽乃「私……っ」

人殺しだ

元々、護ることができなかった自戒を込めて、

自分のことを人殺しと思ってはいたが

本当に人殺しになってしまったのだ

陽乃「お母さん……っ……」

なんて言えばいいのだろう

何が出来るのだろう

この手はもう――握らせるわけにはいかない

綺麗に見えるだけの、人殺しの手だから。
491 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/14(日) 22:28:55.61 ID:lLbFIcFmo

陽乃「なんで……なんでっ……なんでっ!」

そんなことしても無駄だって言ったのに。

責任なんて取れないって言ったのに。

それ以上は駄目だって言ったのに。

手加減は出来ないって言ったのに。

殺すことになるって言ったのに

なのに……

結果的に、陽乃は人一人を自分の手で殺すことになった

武器を持っていた。

簡単に人を殺せるものだ。

陽乃だったら死なないかもしれない。

けれど、

杏や球子、杏の両親は確実に死ぬ。

武器が有効だと思わせるわけにはいかなかった。

大人しく捕まるわけにもいかなかった

けれど、だけど、それでも――

陽乃「まだ……ダメなの……っ?」

突き放して、突き放して、突き放して

それでも、良くも悪くも周りに人が集まってくる

頑張って独りになろうとしているのに、それを嘲り笑うように集い暴走して崩壊していく

陽乃「やだ……もうやだよ……っ……」

冷徹さをどれだけ装うと……陽乃はまだ、子供だ。


1、一人で遠征に行く
2、死にたい
3、助けて
4、何もしない


↓2
492 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/14(日) 22:30:03.64 ID:7SKJbhnkO
3
493 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/14(日) 22:31:49.01 ID:erZ2fHJRO
3
494 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/14(日) 22:32:35.31 ID:Md1vWggq0
2
495 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/14(日) 22:35:55.53 ID:lLbFIcFmo

では本日はここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
496 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/14(日) 22:41:04.68 ID:7SKJbhnkO

これは流石にほぼBADENDでは…?
今回ばかりはあまりに悲惨過ぎて前日からやり直したいなぁ
497 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/14(日) 22:56:12.63 ID:erZ2fHJRO

コンマが死にきってるからな
だがやり直しなどない
前に進むしかない
498 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/15(月) 08:01:11.65 ID:1JeA25D8O

何もかも失ってここから巻き返せるビジョンが見えない…
前作の久遠さんがいかに環境的に恵まれてたかがわかるな
499 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/15(月) 21:01:56.16 ID:K2SsYy4jo

では少しだけ
500 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/15(月) 21:02:27.81 ID:K2SsYy4jo

陽乃「助けて……誰か……」

人と関わらない様にしようとしてきた。

関わってくる人を突き放したし、拒絶した

可能な限り、自分の目の前では被害に遭わないようにしてきた。

その結果、人一人を殺す羽目になった。

関われば、多くの人が縋ってくる

関わらなければ、多くの人が付け狙う

陽乃「助けてよ……」

どうしたら良いのか。

どうすれば、この地獄のような状況から抜け出せるのか

陽乃が人を殺したことは、間違いなく大社に伝わるだろう

拘束と監視

そればかりだった今までが自由だと錯覚するほどに酷いことになるか

正式に、勇者による討伐が行われるか。

前者ならばともかく、後者は非常にまずい

千景は殺意マシマシで殺しに来るけれど、

球子や杏、友奈と若葉はそれを出来るような強さがない。

大社はそれを許すだろうか

いいや、許すはずがない

陽乃に味方するような言動は、罰せられてしまうに違いない。
501 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/15(月) 21:03:32.69 ID:8hbJOjJHO
よしきた
502 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/15(月) 21:15:02.90 ID:K2SsYy4jo

陽乃「私……ただ、死にたくないだけだったのに……」

目の前で奪われていく命

その一つでも救うためにと、力を得た

それをもってしても、護れた親類は母親のみ

その死に物狂いの生還が、人々の憎悪の対象になっている

ならば、死ねばよかったと?

あぁ、死ねばよかったのだ。

みんながみんな、それを声高に叫んでいた

陽乃「死にたく、無いのに……」

『なにゆえ、主様が行った』

陽乃「貴女だったら、皆殺しにしていたでしょう?」

『奇妙なこと言うものじゃのう。アレらに、生かす意味があったのかや?』

陽乃「……だって、あんな人たちにだって、大切な人が」

『いるから……なぁに?』

陽乃「え……」

九尾の声が、急激に女性めいた高いものに変質する

狐の形をしていた影が歪んで、どろどろとした汚泥のように立体感を持ち始めて

それはやがて、一人の女性の姿へと変わる
503 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/15(月) 21:31:10.03 ID:K2SsYy4jo

「そんなもの……殺してしまえば良いと思いますよ」

陽乃「九……尾……?」

九尾は、様々な姿を模すことのできる幻術を得意とする妖狐だ。

もちろん、女性の姿にだって切り替わることができる

だが、纏う雰囲気が異常だ

九尾とはまるで違う、憎悪に塗れている力

「もし仮に、貴女が言うようにそれらに大切な人がいたとしましょう」

陽乃「……っ」

「それらも含めて、殺してしまえばいいんです」

女性は、容姿に見合わず高い声で言う

子供のように甲高い、頭に響く声

けれど言葉は……純粋に殺意に満ちている

「みんな、殺してしまいましょう」

陽乃「やめて……」

「私を辱めた男の子供達が、私の子供をまた辱めたのだから」

陽乃「やめ――……ぁっ……」

立ち上がろうと床に手を突いた瞬間、視界が揺れる

下を向くと、血が滴る

九尾の力なんて比較にならないほどの、体への負担

陽乃「ぁ……ぅ……ごぷっ……」

身体の中身が捻り潰されるような痛み

それだけでなく、血が溢れ出ていく

「貴女 "私達の子" なのね」

陽乃「私……たち?」

「私とあの人の子だからそんなに苦しいのでしょうね。でも、大丈夫。貴女が死ぬ前に、この国の人間を皆殺しにするくらいは容易いですから」
504 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/15(月) 21:46:11.63 ID:K2SsYy4jo

酷く冷たい手が、陽乃の頬を撫でる

九尾が先日話してくれた、九尾ではない力

彼女をもってして、最も厄介だと言わざるを得ない存在

――伊邪那美命

陽乃「わた……し……」

九尾は言った

貴女が滑稽にも人を殺めることを良しとしないからなりを潜めている。と

だが陽乃は今日、人を殺してしまった

九尾の力によるものでもなく、自分の力で。

多くの人に裏切られ、石を投げられ、憎悪の対象とされていた

彼女が表に出てくる理由としては十分すぎると言っても良い

「貴女は私の子。可愛い子。お願いを聞いてあげても良い」

だから。と、人の形をした憎悪は笑う

「人間なんて、殺してしまいましょう。貴女を傷つける人間も、それらの世界も。全部殺してしまいましょう」

それが、救い

それが、施し

「貴女はゆっくり、眠りなさい。私の可愛い子」


1、だめ……
2、殺してほしくない人もいるの
3、だったら……力を貸して……遠くに行く、ための力
4、私、死にたくないの

↓2
505 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/15(月) 21:47:58.99 ID:8hbJOjJHO
2
506 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/15(月) 21:48:32.16 ID:9NAOKT0K0
1
507 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/15(月) 22:09:29.54 ID:7eeVrDswO
マジで誰か助けて
508 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/15(月) 22:09:36.57 ID:K2SsYy4jo

陽乃「だめ……」

「どうして? 生かしておく必要があるの?」

心まで凍り付きそうな、冷めきった手

瞳には感情が感じられず、声も冷たい

「貴女を傷つける人間を守ってあげる意味があるの?」

陽乃「それは……」

杏の両親みたいな人もいる

けれど、ほとんどの人がそうではない

この神は、そんな違いなど考慮せずに皆殺しにするはずだ

陽乃「だめ」

「貴女を辱める人間なんて、生きていても仕方がないでしょう?」

陽乃「でも……私は殺したくない……」

「理解が出来ない」

かの神は、呟くように繰り返す

憎悪が影のように揺れて……陽乃の身体へと負荷が重くのしかかる

眩暈がする

口の中も気持ちが悪い

鼻血も出ているのか、血のにおいしかしない
509 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/15(月) 22:34:24.58 ID:K2SsYy4jo

人を一人殺した

九尾に操られたわけでもない

自分の意思で、正当防衛の一つとして過剰に打撃を加えたことで死に至らしめた

それは、かれらが陽乃を敵視して向かって来たからだ

杏の両親の提案を受けてボランティアに参加しようとした

けれど

化け物だと言われ、石を投げられ、殺意を持ってぶつかられた。

だから

殺すことになった。

「貴女をずっと見てきたけれど……人間なんて生きているだけ無駄だとしか思えない」

陽乃「………」

「この先の未来で貴女を傷つける人間を生かしておく理由なんてある?」

陽乃「でも……ぅ……げほっ……」

「殺してしまいましょう?」

陽乃「だめ……」

瞼が重い

全身が気怠くて、動かなくなっていく

口元から血が滴り、床に倒れこんでしまう
510 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/15(月) 23:01:22.14 ID:K2SsYy4jo

止めるものがいなければ、伊邪那美命は殺しに行ってしまう

けれど、その制御をするだけの余力が陽乃にはなかった

人を殺してしまったこと

初めての神の顕現

その心身の負荷は耐えきれるようなものではなくて

陽乃「ぁ……ぅ……」

陽乃の体中から流れ出ていく血が溜まりとなって

凄惨な事件現場が出来上がっていく

陽乃「ぁぇ……」

「貴女の半分があの人だから、そんなにも愛してしまうの?」

もうあがりさえしない手を伸ばす陽乃を見下ろす神様は、

陽乃の震えるだけの手を優しく包んで、頬を撫でる

「不要な人間なんて愛したって傷つくだけなのに」

とても

とても悲しそうな声だった

やがて、陽乃の意識は薄れ――消えていく

霞んだ視界に見える女性は、

その瞼が閉じる瞬間までは、そこにいてくれた
511 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/15(月) 23:09:48.98 ID:K2SsYy4jo

√ 2018年 8月7日目 夜:

08〜17 若葉
34〜43 友奈
67〜76 九尾

↓1のコンマ

※ぞろ目 悪(場所移動)
512 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/15(月) 23:10:45.58 ID:8hbJOjJHO
513 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/15(月) 23:16:07.79 ID:K2SsYy4jo

ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
514 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/15(月) 23:21:11.90 ID:8hbJOjJHO

流れ的にゲームオーバーかと思ったらまだ続くみたいだけどこの状況どうするんだろう…
あと九尾が最早悪霊と化してて辛い
515 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/15(月) 23:31:12.43 ID:jR2Qo/2IO

陽乃さんが死ぬまでBADENDにはならないでしょ
あと殺そうとしてるのは九尾じゃなくてイザナミ様では?
516 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/16(火) 00:06:27.67 ID:LSRW9k5fO

まだまだ踏ん張れるぞ
陽乃の底力を信じろ
まあとりあえず杏か球子メンタルケアしにきて(他力本願)
517 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/16(火) 20:28:38.28 ID:hcbXZnOQo
では少しだけ
518 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/16(火) 20:29:07.27 ID:hcbXZnOQo

√ 2018年 8月7日目 夜: 丸亀城(寄宿舎)


陽乃「ぅ……」

ゆっくりと目を覚ますと、

鈍い頭の痛みがじわじわと広がっていき、思わず呻いてしまう

口の中にはまだ血の味とにおいが残っていて

喉の渇きを潤そうとする唾液に交じって流れ込んでくる

陽乃「ぁ」

体を起こすだけの力が入らない

頭以外の全てが自分のものではないかのように微動だにしてくれない

声も出ず、かろうじて出来る呼吸と瞬きだけが今の陽乃の力だった

頭も動かせないので、見えるのは天井くらい

空気にも血のにおいが混じってしまっているけれど、居場所くらいはぼんやりとした頭でも分かる

失神する直前にいた、丸亀城の寄宿舎

それも、自分に与えられた部屋だ

陽乃「………」

不可解なのは、姿勢ただしくベッドの上で横になっていること

気を失ったのはベッド脇の床

自分が吐き、滴らせた血だまりの中に倒れこんだはず

なのに、気が付けばベッドの上

誰かが助け起こしてくれたと見て間違いない

問題は、誰が。という点だろう
519 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/16(火) 20:50:29.16 ID:hcbXZnOQo

杏や球子である可能性は万に一つもない

二人には行先を告げていないし、まさかこんな場所に戻ってくるだなんて予想はしないだろうから。

せいぜい、久遠家の家だった場所や神社が候補に挙がるくらいだ

自分からこんな危険な場所に乗り込むなんて考えない……だろうか?

諏訪遠征よりも危険ではない

それなら、可能性の一つとして考えるのも無理はない

陽乃「っ」

だが、だとしたらこの場にいないのがおかしい

どちらか一方が偶然その可能性を見出して様子を見に来たとして、

残ったもう一方を呼ばないわけがない

事情聴取を受けるということになっていたとしても

杏か球子のどちらかは必ずこの部屋に残るだろうし

どうしてもと言うのなら、友奈か若葉のどちらかに見ていて貰えるようにお願いするはずだ

陽乃「ぁぅぁ……ぁ……」

声を出そうとすると、喉が焼けるように痛む

伊邪那美命……九尾よりもはるかに強力な、本当の神を呼び起こした代償

ほんの数分の会話だけでこれだけ影響が出るのだから

長時間の戦闘など行おうものなら、途中で力尽きるのが関の山だろう

もしくは、九尾のように慣れれば少しは耐えられるようになるのかもしれない

耐えられたとして、その力を使う影響が恐ろしいけれど。
520 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/16(火) 20:56:25.98 ID:u4BkQIP6O
ダメージは受けたままか…
521 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/16(火) 21:02:35.95 ID:hcbXZnOQo

陽乃「ん……」

杏や球子と同じように、若葉や友奈が見つけてくれていたとしたら

誰かがいてくれるだろうし、

もしも千景が見つけていたなら、

首から上が床に転がっているだけで、ベッドの上には置いてくれていないはずだ

床に転がる自分の体を見せるなんて猟奇的発想があるなら別だけれど。

そもそも、そこまで来たら陽乃はさすがに死んでいる

病院ではなく寄宿舎の自室と言うことから、大社でもない。

つまり、元から考えるまでもなく助け起こしてくれた人物は一人しかいないのだ

今は目を覚ましたことも呼び出すことも自力では難しいが。

陽乃「ぅ……ぃ……ぅ……げほっ……げほっぁっ……ぅぶっ……ぉぇえ゛……」

どうにか呼ぼうとして、喉奥を掠めた空気に咳き込む

渇いた喉がそれ傷つけられて、血が滲んで詰まり、吐血して……そのまま嘔吐する

痛めた喉を通っていく胃酸の刺激に胸やけがして、胸の奥の痒みが生まれて不快感に満ちる

陽乃「ぃぅ……」

死ぬ。

このまま死んでしまうのではないかとさえ思うほどの辛さ

それでもいい

見つけた人に、なんて惨めな姿だと嘲笑されるような死に様でも

この苦しみから解放して貰えるのならそれでもいいかもしれないとさえ、少し思う

血と胃液の混じり合った異臭のする布団

こんな状況では普通、眠れるはずもないのに眠れそうなのは神社での野宿のたまものだろうか。

それとも、それほど憔悴しきっているか。


1、無理に動く
2、無理に声を出す
3、眠る


↓2

※1〜3 判定有
522 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/16(火) 21:05:40.28 ID:pPLYJs5S0
3
523 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/16(火) 21:06:15.27 ID:u4BkQIP6O
3
524 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/16(火) 21:19:07.42 ID:hcbXZnOQo

01〜10 杏
11〜20 球子
21〜30 伊邪那美命
31〜40 過去
41〜50 九尾
51〜60 友奈
61〜70 若葉
71〜80 大社
81〜90 九尾
91〜00 千景


↓1のコンマ
525 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/16(火) 21:22:43.87 ID:Z3ZK3xwQO
526 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/16(火) 22:02:14.98 ID:hcbXZnOQo

陽乃「ぅ……っ……」

眠るというよりは、意識の消失に近い眠気

だんだんと瞼が降りていく中に

ふと、どこからともなく人型の何かが映りこむ

九尾「主様、眠るのかや?」

陽乃「ぁ……っ」

九尾「ふむ……」

気を失う前に聞いた女性の声とは違って

良く聞いた声

これは、九尾の声だ

九尾「妾と違って、かの神は容赦がないのう」

頬に、大きな手が触れる

優しい手だ

冷たくない、人肌の温かみを感じる手

九尾「しばし休むとよい」

陽乃「っ……」

九尾の指が口元を拭う

鼻の部分にもその細長い指先が走って

血の味とにおいが消えていく
527 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/16(火) 22:43:41.41 ID:hcbXZnOQo

九尾の手は、

顔から首、胸、腹部……と、ゆっくり下へと下がっていく

九尾「……」

九尾の手が触れた部分は、どうしてだか感覚が戻ってくる

鋭い痛みの後に、鈍い痛み

そうして、痛みがそのまま消える

九尾「祟りが深いのう……」

陽乃「ゅ……うび……」

九尾「かの神は可能な限り呼ぶでないぞ」

陽乃「っ……ぅ、ん……」

九尾「もっとも……」

そう、もっとも

かの神、伊邪那美命は陽乃の許可もなく

なにより、九尾が前面に出ていたのもお構いなしに塗りつぶす形で表へと表れた

それだけ力が強いということになる

分かっていたことだが、余りにも凶悪だ

一番の問題は " かの神は陽乃の生死に興味がない " ことだ

そしてもう一つ

九尾程度ではまるで防波堤になっていなかったこと

神と妖

当然なのかもしれないが、力量差は圧倒的だ


528 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/16(火) 23:25:40.73 ID:hcbXZnOQo

九尾「こんなものかのう」

陽乃の全身を通して撫でた九尾は、静かに手を引く

苦しそうなうめき声を漏らすばかりだった陽乃は、穏やかに寝息を立てている

身体の外側に問題はない

だが、中身がズタボロだ

無理矢理に何かをねじ込んだかのように歪になってしまっている

痛みを含めた感覚を失うのも無理はない

それを、九尾の力でただ誤魔化し補っているだけ。

九尾の力だけではここまでだろうか。

九尾も容赦なく人間を殺す

だがそれは、陽乃の害になる人間に限定される

そして、陽乃が望まない場合は特例を除いて手を引く

しかし、かの神は違う

陽乃の害になろうとなるまいと、今の限られた世界の人間すべてを滅ぼす

そして、陽乃が望まなくともそれを決行する

しかし、陽乃が力尽きたことで今回ばかりは運よく事なきを得た

かの神が満足に人を殺めるには、陽乃はまだ人間味が濃いのだろう

九尾「主も神の端くれならば、主様の体くらい癒してみよ」

九尾は静かに告げて、目を閉じる

陽乃は神に愛されている

だから、生命力を高める神もいるのだ

生まれる前から、神聖なものに触れてきたからこその寵愛

だがそれは間違いなく、呪いだ
529 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/16(火) 23:33:59.36 ID:hcbXZnOQo

1日のまとめ

・ 乃木若葉 : 交流無()
・上里ひなた : 交流無()
・ 高嶋友奈 : 交流無()
・ 土居球子 : 交流有(余計なことしないで、活動、大人を殴る、陽乃の行き先)
・ 伊予島杏 : 交流有(失う覚悟、余計なことしないで、活動、大人を殴る、陽乃の行き先)
・  郡千景 : 交流無()
・   九尾 : 交流有(眠る)

√ 2018/08/07 まとめ

 乃木若葉との絆 62→62(普通)
上里ひなたとの絆 56→56(普通)
 高嶋友奈との絆 52→52(普通)
 土居球子との絆 51→53(普通) ※
 伊予島杏との絆 58→60(普通) ※
  郡千景との絆 21→21(険悪)
   九尾との絆 63→63(普通)

※陽乃の評価・殺人を目撃
530 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/16(火) 23:37:04.02 ID:hcbXZnOQo

√ 2018年 8月8日目 朝:丸亀城(寄宿舎)

01〜10 九尾
21〜30 友奈
41〜50 若葉
81〜90 大社

↓1のコンマ

※それ以外は通常
※ぞろ目特殊
531 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/16(火) 23:40:47.51 ID:puei3vJoO
532 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/16(火) 23:44:00.83 ID:hcbXZnOQo

では本日はここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
533 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/16(火) 23:58:37.19 ID:QNMt/gJVO

あの九尾すらどうにもならないとはとんでもない神様を覚醒させてしまったか…
それと何気に人間体の九尾久しぶりに出てきたけどこちらの方がやっぱり馴染みがあるな
534 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/17(水) 01:33:58.83 ID:tLGsWPbaO

ここにきて話がどう転ぶかわからなくなってきたな
535 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/17(水) 20:08:35.76 ID:8J6MLlino
では少しだけ
536 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/17(水) 20:11:58.05 ID:8J6MLlino
√ 2018年 8月8日目 朝:丸亀城(寄宿舎)


陽乃「っ……」

目を覚ますと、伊予島家の戻っているなんてことも

ここ数日がただの夢で、まだ病院に監禁されているわけでもない景色が見える

約三年間過ごしてきた丸亀城に隣接して用意された寄宿舎の自室

陽乃「あれ……」

頭が動かせる

体も起こせるし、手足の感覚もしっかりとしている

吐き捨てた血に塗れているはずの布団も綺麗に真っ白で、

赤黒く汚れているはずの床まで綺麗になっている

陽乃「夢……じゃ、無いわよね?」

気を失うまでの出来事の記憶ははっきりとしている

九尾が悪戯したわけではないのなら、あれは現実に起こったことのはずだ

九尾を押しのけ、陽乃を瞬く間に衰弱させてしまうほどの力を持つ、伊邪那美命

あの感覚は忘れらない

あの感覚が、まやかしであるはずがない

陽乃「はぁ……」

どっちにしろだ。と、陽乃は溜息をつく

人を殺したことも、

その現場と誹謗中傷を杏たちに知られてしまった現実は変わらない
537 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/17(水) 20:11:59.55 ID:W4oF1bDPO
かもーん
538 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/17(水) 20:27:43.32 ID:8J6MLlino

陽乃が出来ることは限られている

まず、勇者や大社に見つかるわけにはいかない

杏や球子ならどうにかなるかもしれないが

若葉や友奈は危害を加えなくとも、大社に引き渡そうとするはずだ

千景にいたっては殺しに来てもおかしくない

大社に引き渡されたら最後

死ぬまで監禁か、モルモットか、処刑か

少なくとも良い結果は得られない

しかも、そのいずれにせよ、

人間は滅ぶべきだというかの神は陽乃の障害を消し去り、人類を滅亡させる可能性が非常に高い

それだけは避けなければならない

――いいや、避ける必要があるのだろうか?

こんな世界なんて、いっそ滅んでしまったらどうだろうか

陽乃「………」

なんて、考えてしまう

幸いにも、力を使い果たして死に至る結果が目に見えているため、

誰もいなくなった世界に独りぼっちなんてことにはならない

陽乃「幸い……? 幸い、幸い……何を馬鹿な……」


1、諏訪遠征に向かう
2、九尾を呼ぶ
3、伊邪那美命を呼ぶ
4、街に出る

↓2
539 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/17(水) 20:30:11.71 ID:W4oF1bDPO
1
540 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/17(水) 20:35:17.40 ID:Bp7HrvT00
1
541 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/17(水) 20:56:37.43 ID:8J6MLlino

こうなったら、仕方がない

勇者達の装束のアップデートは確認できていないけれど

諏訪の遠征に出てしまうべきだろう

いつまでも寄宿舎には居られない

もちろん、大社の目がある四国にだっていられない

久遠陽乃が本当に人殺しであるという話は、大社に関わらず民衆に広がっていく

今でも酷い噂は出回っているけれど

確たる証拠のあるそれは、信憑性のある噂……つまりは真実として知られることになる

そうなっていく以上

陽乃は寄宿舎の外だって自由にはいられない

だから、遠征に行く

人殺しである陽乃を大社が諏訪遠征のメンバーとして考えるとはとても思えないし

そうでなくとも、

行方不明である危険人物を野放しにしたまま、捨て駒として想定されている諏訪遠征に人員を割くはずがないからだ

杏と球子には悪いが

二人を待っている余裕は陽乃には残されていないのだ
542 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/17(水) 21:28:23.81 ID:8J6MLlino

陽乃「遠征に行くわ」

『主様、よいのか?』

陽乃「神託を出したとして……最短でも1日をこっちで生きていかないといけない」

そのたった一日を無事過ごせるとは限らない

神託があっても、久遠陽乃と言う危険分子を放置するわけがないので

場合によってはだとしても放置するという決定が下されるだろう

そうなれば、本当に救いようがない

そんな判断は聞きたくもない

『単独で、良いのかや?』

陽乃「私が死ぬって?」

『痛みはなくとも、先の祟りの残滓はいまだに抜けきっておらぬ。無理をすれば死ぬぞ』

陽乃「こっちにいたら殺されるわよ」

それも、人間に。

可能性は低いが、無いとは言い切れない。

『神託も無しに、往くのじゃな?』

陽乃「ん……」

神託がなければ勇者は動けない

杏と球子は抜け出すかもしれないが、

二人が今から行く壁のところにいなければ連れてはいけない

そうなれば、一人だ。


1、神託を出す
2、神託を出さない

↓2

※出す場合、遠征実行判定
※出さない場合、合流判定
543 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/17(水) 21:33:34.71 ID:Bp7HrvT00
1
544 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/17(水) 21:36:26.84 ID:h6umhvitO
1
545 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/17(水) 22:05:05.62 ID:8J6MLlino

陽乃「ん……分かったわ。神託を出しましょ」

『よいのか?』

陽乃「もう……そうやって悩ませるの止めて」

『くははっ良いではないかよいではないか』

心から楽しんでいるかのような声

上機嫌な明るさに陽乃は眉を顰めて首を振る

溜息をついて、ベッドに座る

足元の影は狐の形をしたままだ

『神託を出すのは良いが、全員出せとは言わぬほうが良かろう』

陽乃「そうね。全員出せって言うと……私のせいで却下されるかもしれない」

『ならば人数は指定せぬほうが良かろうな……ふむ。神託らしく、あやふやに兆しを示そう』

陽乃「調整、どこまでできるの?」

『夢に干渉する程度じゃ。無だろうと有だろうと自由じゃぞ』

陽乃「なるほど……内容は任せるわ。諏訪の遠征に出られるようにして頂戴」

『うむ』

影が崩れて消える

神託を出した当日に即行動に移ってくれればいいのだが

きっと、そう簡単にはいかないだろうから

陽乃「最大、1日ね」

待てるのは、明日の朝までだ
546 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/17(水) 22:21:33.83 ID:8J6MLlino

陽乃「はぁ……」

『何じゃ主様』

陽乃「っ……まだいたの?」

『妾は常におるぞ』

陽乃「神託は出してくれた?」

『うむ。兆しを与えるくらいこの場からでも容易じゃ』

なにしろ、寵愛を授けた上里ひなたが向こうにいる

ひなたを中継地点として力を拡散させれば、

向こう一帯に神託を感知させるくらい容易いのだという

陽乃「上里さんに影響はないのよね?」

『通常に人間よりは感度が上がる程度じゃ。問題はなかろう』

陽乃「そう……神託が伝わったかどうかもすぐに分かる?」

『無論』

陽乃「なら、どうなったか結果をすぐに教えて貰っていい? 決行でも却下でも保留でも」

『良かろう』

決行なら良し

保留なら、明日の朝以降になる場合は無視

却下だったら……

それはその時だ
547 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/17(水) 22:26:18.43 ID:8J6MLlino

↓1コンマ判定 一桁

0 00 陽乃が見つかる
1、7、4 決行
3、6、2 保留
5、9、8 却下


※保留の場合、二桁目の日数分保留
※結構の場合、二桁目偶数で即日 奇数で2日以上先
548 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/17(水) 22:28:51.56 ID:Bp7HrvT00
549 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/17(水) 22:42:23.64 ID:8J6MLlino

√ 2018年 8月8日目 昼:丸亀城(寄宿舎)

01〜10 千景
21〜30 友奈
41〜50 若葉
81〜90 大社

↓1のコンマ

※遭遇判定
※それ以外は通常
550 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/17(水) 22:42:38.58 ID:tLGsWPbaO
551 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/17(水) 22:46:28.38 ID:8J6MLlino
では本日はここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


大社は諏訪遠征を保留しています(5日後までに決定)
552 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/17(水) 22:52:20.88 ID:H5MkI+e/O

現状だと四国にはもう居場所がないし諏訪に関してもあまりモタモタしてる余裕もないしで早めに行きたいけど…
杏たちは今頃どんな反応してるのか気になるな
553 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/18(木) 00:18:10.33 ID:XTEi82qoO

もう保留の結果待たずに行くかもしれないだけど杏たちついてきてくれるかなあ
554 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/18(木) 19:57:28.88 ID:QoCov0zMo

では少しだけ
555 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/18(木) 19:58:11.22 ID:QoCov0zMo

√ 2018年 8月8日目 昼:丸亀城(寄宿舎)


お昼にもなれば、流石に神託が下ったことは大社に広がり、

それについての会議も執り行われることになる

幸いにも、巫女の中でも特に秀でているのがひなたと言うこともあって

一般の巫女には伝わらないような内容も、ひなたにだけは伝わってきたりもする

そのせいで力を通して九尾に伝わり、九尾から陽乃へと筒抜けになっていたりもするのだが。

陽乃と九尾を除けば、ひなたを含めても誰も知らないのだからどうしようもないのだろうけれど。

その結果、遠征の有無は5日後まで答えの先延ばしが行われると、陽乃へと伝えられた。

陽乃「……は?」

『5日後までには答えを出すそうじゃ』

陽乃「それは聞いたわ。どうして?」

『ふむ……』

1つ、諏訪は元々時間稼ぎとして考えられていたこと

1つ、諏訪まで行くには、勇者の経験が浅すぎること

1つ、諏訪襲撃後に、四国が襲撃を受けた場合に防衛出来ない可能性があること

1つ、久遠陽乃という危険人物が国内に留まっていること

理由としてはこんなものだと九尾は並び立てて、一息つく

言われれば確かにと納得する話ではある。

即時棄却とならず、保留となったのがむしろ運が良かったとさえ言える状況だ

『主様、言わずとも承知と思うが……人間どもは見捨てるつもりじゃぞ』

陽乃「ええ、分かってるわ……」
556 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/18(木) 20:09:53.24 ID:QoCov0zMo

大々的に神託が降りた以上、まったく聞く耳を持たないというのは

巫女はもちろん、神々に対しても非常に無礼なふるまいである

大社という組織が、それを進んで行うとは思えない

熟考したという体裁を整え、やはり状況的に送ることは出来ない。という判断になるだろう

もちろん、その逆に "ご神託なのだから遂行すべき" ということにならないとも限らない。

しかし、それでも今日明日に答えが出るはずがない

最低でも2日3日はかかるだろうし、5日後までと言うのならそれだけの時間を浪費する。

『小娘共を呼ぶのかや?』

陽乃「連絡手段がないし……」

それに、呼んだところで犠牲者を増やすだけになるかもしれない

あの二人は勇者だ

今は脆くても、いずれまともに戦えるようになる

その頃には、久遠陽のなんて化け物も討てるだけの力が備わっているかもしれない

なにより、この諏訪遠征は陽乃の我儘に様なものでしかなく、

本当に必要な行為ではないのだから。

ここで無理して死ぬのは、ただの犬死でしかない

なにより――

陽乃「私、あの二人の目の前で人を殺したのよ? そんな私が、付いてきてなんて言えるわけないじゃない」

『死して然るべき有象無象を殺めたところで、問題などあるまい』

陽乃「あなた達基準では。でしょう……私達は違うの」
557 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/18(木) 20:21:14.37 ID:QoCov0zMo

陽乃「それに、あなたの言う有象無象にとって、死ぬべき存在は私よ」

自分を名指しして、胸元に手をあてがう

人を一人殺したのに

多くの人にそれを見られ、より一層責め立てられる側に立たされたというのに

杏と球子

陽乃の友人だと言い張る二人の勇者の目の前でそれを行ってしまったというのに

心臓の音はまるで高鳴ったりしない

緊張も恐怖もなく平穏無事、まるで些末なことを語っているかのよう

でも少しだけ、痛みを感じる

陽乃「そんな私が、あの二人と一緒にいるのを見られるわけにはいかない」

『殺せばよい』

陽乃「馬鹿言わないで」

『不服なのじゃろう?』

陽乃「望んでたことだもの」

『妾に主様の戯言が通じるとでも』

陽乃「だとしてもよ」

俯く視線の先には狐を模した影が見える

そこに、九尾がいるのだ

陽乃「私の望んでた結果であることに違いない」

『抜かしおる』

陽乃「もう、裏切られるのも……手を伸ばされるのも嫌だから」
558 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/18(木) 20:36:17.05 ID:QoCov0zMo

あの二人は、本当に善良なのだろう

民衆曰く化け物である陽乃を友人とまでいうのだから。

裏に何かを秘めているのでなければ、馬鹿なだけだと思いたくなるほどに優しいのだ。

だが、その二人は人々の声を聞いた

陽乃に対して何を思い、抱き、行動しようとしたのかを知った

それに対しての陽乃の態度を目の当たりにし、果てには人を殺す瞬間までもをその目に焼き付けた

勇者が守るべき一般の人間を、陽乃は殺したのだ

杏と球子が勇者であることは、あの場の人々の誰もが知っている

その二人と陽乃が、今後行動を共にしていることを知られれば、

杏の家は多大な被害を被ることになるだろうし、もしかしたら球子の家だって被害を受けるかもしれない

今は勇敢に立ち向かい、蹴り飛ばされた勇者だと言われる程度かもしれないが

知られた後はもう、化け物の仲間に成り下がる

そうなったら取り返しはつかない

陽乃「独りが良いって、初めから言ってたことじゃない」

『よいのか?』

陽乃「いいの。これで」

『一人で往くのかや?』

陽乃「そうね……向こうで合流しなかったら。一人になる」


1、遠征に行く
2、明日の朝、出発 ※9日目朝
3、1日待つ     ※9日目昼

↓2


※1 合流判定1回
※2 合流判定3回 + 大社(千景・若葉・友奈)遭遇判定
※3 合流判定4回 + 大社(千景・若葉・友奈)遭遇判定
※大社遭遇の場合、判定により戦闘
559 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/18(木) 20:38:20.15 ID:JDCxj5WHO
2
560 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/18(木) 20:41:52.64 ID:gPjknOjEO
2
561 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/18(木) 21:07:00.31 ID:QoCov0zMo

陽乃「出発は明日の朝にするわ」

『見つかるやもしれぬが』

陽乃「まさか……こんな場所で待ちぼうけるつもりなんて毛頭ない」

寄宿舎は真っ先に大社が詰めかけてきてもおかしくない場所だ

昨日の今日でまだ人が来ていないこと自体奇跡だと言える

そんな場所に、いつまでもいられない

神社……は、もう無理だ

一度、あの場所が潜伏地だと晒してしまったのだから

捜索となればすぐに人が来る

瀬戸大橋の方、壁のところで待機が妥当だろう

陽乃「また野宿になるかもしれないけど……廃屋くらいはあるはずだし」

廃屋だろうと、あの神社よりはマシだ

『見つかれば厄介なことになるぞ』

陽乃「ええ」

『くふふふっそうか……ならば妾は何も言わぬ』

好きにするがいい。と、

九尾は喉を鳴らしながら笑った
562 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/18(木) 21:27:19.78 ID:QoCov0zMo

陽乃「………」

杏と球子は陽乃が遠征に行こうとしているのは知っている

陽乃がたとえ一人であろうと

遠征に向かう意思があるということも

ただ、杏には最低でも三日後と言ってある

そのまま考えているなら、

杏たちが向こうに行くのは明後日

特に約束の場所を決めたわけでもないし、

時間だって決めてもいない

合流する可能性は限りなく低いと言っていいだろう

いや、しない方が良い

したところで、二人が以前のように協力関係にあるとは限らないのだから。

場合によっては、その場で戦いになることもある。

陽乃「っ……」

いずれにしても、ハイリスクだ

最悪の展開でさえなければ……どうにかなるが。

陽乃「来ないで、くれると良いのだけど」
563 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/18(木) 21:39:03.05 ID:QoCov0zMo

15〜24 大社
58〜67 若葉
83〜92 友奈

↓1のコンマ

※ぞろ目 千景
※それ以外は通常
564 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/18(木) 21:41:23.59 ID:M2X/2sudO
565 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/18(木) 22:00:30.83 ID:QoCov0zMo

外を駆ける足音が聞こえた。

まだここにいても問題が無かったころに何度も聞いた音

鍛練に努めているそれは、若葉の――

陽乃「あ……」

違う。

足音は間違いなく若葉のものだ

しかし、それはいつも聞いていた走り込みではなく

もっと、慌ただしい

その音は陽乃のいる部屋の前で途絶えると、

ドアノブが音を立てる

ドアの鍵をかけているおかげで、一度で入ってくることはなかったが、

しかし、若葉はなぜか合鍵を使って容易く侵入してきた

若葉「っ……」

陽乃「久しぶりね」

窓から逃げ出すことも考えたが、

そうしたとして、千景たちに見つかる可能性がないとは言えない

だったら、まだ話し合う余地のある若葉と対峙したほうが楽だと考えたのだ
566 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/18(木) 22:10:25.06 ID:QoCov0zMo

若葉「ここに、いたのか」

陽乃「いると思ったから来たんでしょう?」

若葉「半信半疑だった」

昨日、なぜだか背筋が凍る思いをした寄宿舎

ドアの前にまで来て一度は開けようかと思ったが、開けられずにいたが

今日は開けるしかなかった

若葉「……指示が来たんだ。久遠陽乃を見つけろ。と」

声を絞り出して、

血が滲みそうなほど強く拳を握る

陽乃「それで?」

若葉「それで、だと……?」

陽乃「ええ。どんな話が来たかってことくらい、分かってるわ」

若葉「くっ……っ……なぜだ! なぜなんだッ!」

陽乃「………」

若葉「なにがあったんだ! どうして……人を殺したんだ」

陽乃「大社? それとも土居さん達?」

若葉「そんなことどうだって――」

陽乃「土居さん達でしょ……じゃないと、疑いから入らないのがおかしいもの」

若葉「茶化さないでくれ!」
567 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/18(木) 22:54:12.45 ID:QoCov0zMo

若葉は、勇者としての装束をすでに着込んでいる

青を基調としていて、清楚さを感じさせる装束

左の腰に鞘を構え、まだ納めたままの刀の柄をゆっくり握る

若葉「頼む……怪我をさせたくない」

陽乃「良いの? 人を殺した私に手加減なんて」

若葉「迫害を受けた件は聞いた」

若葉は、大社から陽乃捜索の命令を受けた

しかも、生死を問わないというのだから相当な何かがあったのは明白

すぐに杏と球子に連絡を取って何があったのかを聞いたのだ

若葉「最悪の場合、伊予島の両親まで被害に遭いそうだったのも聞いた。だとしても……殺す必要なんて」

相手が武器になるものを持っているのも聞いている

しかし、それでも聞かずにはいられなかった

若葉「頼む……本気になりたくない」

陽乃「……馬鹿な人」



1、窓から逃げる
2、生かしておく価値がなかった。それだけよ
3、武器が有効だなんて、思われたら面倒だもの
4、だって、私は化け物だもの
5、いいわ。その装束の性能、テストしましょう

↓2
568 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/18(木) 22:55:15.50 ID:M2X/2sudO
1
569 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/18(木) 22:57:07.57 ID:9bPO1skl0
3
570 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/18(木) 23:01:10.06 ID:QoCov0zMo

では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
571 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/18(木) 23:11:43.25 ID:M2X/2sudO

若葉の装束の初登場がこんな形になるとは…
立場上見逃す訳にはいかないし辛いだろうなぁ
572 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/19(金) 00:26:43.53 ID:RM8QrF/kO

マジでどうなってしまうのか……
573 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/19(金) 20:55:16.28 ID:6J3Qg0q7o

では少しだけ
574 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/19(金) 20:55:48.66 ID:6J3Qg0q7o

陽乃「武器が有効だなんて、思われたら面倒だもの」

若葉「武器なんて、久遠さんには何の意味もないじゃないか」

陽乃「そうね」

若葉「私たちの……いや、神々の力を宿したものでなければ、久遠さんには傷一つつけられない。だろう?」

陽乃「そうよ。化け物らしく、私の体は丈夫だわ」

簡単にに血反吐を吐くし

昨日なんて、途中で失神したうえに今朝までまともに話すことさえできない状態だったけれど。

それはあくまで、自滅

自分よりも一回り大きい大人から暴力を振るわれたところで

今の陽乃には、痛くもかゆくもない

陽乃「でも、武器の一つが通用しなければ二つになるし、刀が駄目なら銃にもなるでしょ?」

若葉「だからって……」

陽乃「抵抗する意思がある限り終わらない。だから、その心を折る必要があった」

自分達では不可能なのだと

自分達ではただ殺されるだけなのだと

そう思わせてしまうのが武器が通用しないと思わせるうえで一番、手っ取り早い

陽乃「相手が武器を持って私が怖気づいたら、みんなが武器を手にするからそれは出来ない」

若葉「だろう、な」

陽乃「武器を持った人をただ打倒しても、武器の数や種類が変わるだけ」

若葉「………」

陽乃「だから……私言ったのよ? それを手にしたら手加減は出来ないって、殺すって」

でも、彼は退かなかった

蛮勇にも挑み、そうして陽乃が討った

陽乃「もう、笑うしかなかった」
575 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/19(金) 21:03:23.81 ID:P62HRT/7O
陽乃さん…
576 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/19(金) 21:03:30.39 ID:6J3Qg0q7o

陽乃「私の武器はこの拳1つ。分かるでしょう? この手で、人を1人殺したのよ」

若葉「っ……でも、殺す気はなかったんだろう? 事故だったんだろう?」

陽乃「殺せるだけの力を自覚しておきながら、手を抜かなかったんだもの。それはもう、故意だわ」

若葉は目を見開き、

嘲笑交じりに自分の右手で拳を作って見せる陽乃から足元へと視線を下げる

怒りか、悲しみか

若葉に握られる刀がその体の震えによって微かな音を立てる

それはそうだろう

他人がどう言おうと、勇者だと思っていた人が人を1人殺したのだから失望もする

陽乃「人質を持ち出されても面倒だもの。あの瞬間は殺すしかなかったのよ」

若葉「人質は、有効だからか?」

陽乃「まさか」

若葉「土居や伊予島だけでなく、あの場には伊予島の両親がいた……それを見過ごせる人じゃないはずだ」

陽乃「関係ない。赤の他人だし」

若葉「久遠さん!」

陽乃が何を思い、そうしたのか

分かっているのは本人とその身に宿している九尾くらいだろう

しかし、それがどんなものであれ、いかなる理由であれ

陽乃が人を殺したという事実に変わりはなく、それを多くの人に目撃されてしまったことも変わらない

そこから派生した久遠陽乃を討てという命令もまた、どうにもならない

若葉「頼む……大人しく私と一緒に来てくれ」
577 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/19(金) 21:19:22.04 ID:6J3Qg0q7o

陽乃「そんな、今から戦います。みたいな状態で何言ってるのよ」

若葉「念のためだ」

陽乃「私が大人しく付いてきてくれるって、思ってる?」

若葉「思ってないから、お願いしてるんだ」

若葉は歯を噛みしめるように、首を振る

陽乃は自由奔放とは少し違うが、大社が関わることに置いて素直に従ってくれるとは思えない

しかし

若葉「ここで従って貰えないと、困るんだ」

陽乃「勇者の肩書に傷がつくから?」

若葉「それはもうついてる……二人が久遠さんを止められなかったからな」

陽乃「……そう。申し訳ないことをしちゃったかな」

若葉「従って貰えなければ、戦う必要がある」

陽乃「なるほど」

千景とは出会って即戦闘になると考えていた陽乃だが

若葉とも戦闘は避けられないような雰囲気だ

諏訪遠征に行くには、ここで大赦に拘束されるわけにはいかない

まず間違いなく断罪されるだろうし監禁されるだろうし

以前とは比べものにならないほどに厳重な拘束をされることになるだろう

若葉「従ってくれ」

陽乃「私を殺せたら、英雄だって称賛して貰えるのに」

若葉「そんなもの……そんなものに何の意味もない!」

陽乃「ごもっとも」



1、悪いけれど、諏訪に旅行する予定があるから……逃げるわ
2、どうしてもと言うなら、力づくでかかってきなさい
3、不意打ち
4、代わりに、諏訪遠征に行ってくれるなら考えてあげる

↓2
578 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/19(金) 21:21:46.67 ID:P62HRT/7O
1
579 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/19(金) 21:24:48.43 ID:a5XBiBmH0
1
580 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/19(金) 22:05:08.40 ID:6J3Qg0q7o

陽乃「でも悪いけれど、諏訪に旅行する予定があるから……逃げるわ」

若葉「諏訪……? 諏訪って、まさか諏訪か? 白鳥のいる長野か?」

陽乃「そうよ」

若葉「っ……だめだ」

陽乃「それはそうよね」

陽乃が諏訪遠征にいけば今回の件が落ち着く……わけがない

陽乃が四国から出ようと、

そのあとに戻ってきたら意味がない

大社でしっかりと管理されなければならないし

大々的に捕らえたことを示さなければならないかもしれない

そうしなければならないくらいには、陽乃の存在の影響は大きかった

若葉「白鳥が心配なのはわかる。だが……」

陽乃「別に心配なんてしてないわよ。ただ、ここに居たって良いことないから出ていきたいだけ」

若葉「嘘は良い。助けに行こうとしているんだろう?」

陽乃「そうしたら自由にして貰えるって思ってたんだけど……まぁ、もう無理だと思うし」
581 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/19(金) 22:18:41.86 ID:6J3Qg0q7o

最初こそ、

長野の勇者を救い出してここにまで連れてきたら戦力になるだとか、

大社からの評価も手のひら返しになるだとか

そんな打算的な考えを持っていたけれど

今となってはもう、どうあっても好転する気がしなかった

陽乃は人を殺した

その事実が揺るぐことも拭われることもない

何か善行を成したところで

あの娘は人を殺したと、化け物なのだと

そう言われてしまうだけな気がしてならない

少なくとも、勇者と組ませることはないはずだ

陽乃「だから、ほんとうに……もう、助けるだとかは考えてないから」

若葉「……っ」

陽乃は困ったように笑って、手をひらひらと振る

見逃せば、陽乃は出ていくだろう

そうして、諏訪へと向かう

居場所がないと陽乃は言った

もう、取り返しのつかないことをしてしまったのだから

それは "かもしれない" の域を超えている
582 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/19(金) 22:40:05.30 ID:6J3Qg0q7o

陽乃は否定しているが、

陽乃が向こうの戦力に加わる恩恵は計り知れない

それこそ、

もし仮に今月中に諏訪がバーテックスに突破されることが未来的に決定していたとしても

陽乃がそこに割り込むことで、今月どころか来年以降も健在でいられる可能性が出てくるくらいには。

そもそも、一人で守っている状態から

2人で守るという形に変わるだけで、十分力強いことだろう

白鳥歌野と諏訪そして久遠陽乃

そのすべてにとって、

今ここで見逃すことこそが正しい選択のように思える

いいや、きっと正しい

壁の外は危険だ

そこで陽乃が殺されてしまう可能性はある

けれど、今ここで拘束したって、

大社に捕らわれて処刑されたり、飼い殺しにされたりするだけだ
583 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/19(金) 22:50:53.99 ID:6J3Qg0q7o

若葉「……くそっ」

陽乃「どうする?」

若葉は考え込んで、

そうして、舌打ちをするように顔をしかめる

若葉「……この部屋を荒らしていいか?」

陽乃「どうして?」

若葉「ただ一刀、ここで久遠さんに向けさせて貰う……逃げるついでに躱してくれ」

陽乃「簡単に言っちゃって……」

若葉「何を言うかと思えば……簡単だろう。適当なところで追いかけるのは辞めるが、今日か明日中には出て行ってくれ」

若葉は軽く笑って申し訳なさそうに首を振ると

居合の一刀を放つべく、身構えていく

陽乃「手間をかけてごめんなさい」

若葉「……こうならないように手を打ちたかった……すまないッ!」

若葉は護るためにと鍛えたその最速の一刀を全力で振り抜く

その切っ先は決して陽乃に触れることのない距離

けれども、勇者としての力強い斬撃は、

壁を傷つけ、布団を切り裂き、陽乃のもとへと風を叩きつける

それに押し込まれるように、陽乃は自分から窓へとぶつかって――外へと逃げる

二階からの転落も、常人離れした体には痛みもない

若葉「待てッ!」

陽乃「なにこれ……バカみたいっ」

けれど、

こうしなければいけないのだと陽乃は笑って、若葉から逃げた
584 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/19(金) 22:59:45.77 ID:6J3Qg0q7o
√ 2018年 8月8日目 夕:

↓1コンマ判定


01〜10 87〜96 ぞろ目 遭遇

23〜32 千景

45〜54 大社
585 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/19(金) 23:01:57.93 ID:a5XBiBmH0
586 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/19(金) 23:06:59.61 ID:6J3Qg0q7o

ではここまでとさせて頂きます
明日もできれば少し早い時間から
587 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/19(金) 23:14:04.61 ID:P62HRT/7O

諏訪を救ったところで犯罪者扱いのままならどうすればいいんだろう…
あと大社や千景とは別の判定の遭遇って誰が来るのか
588 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/20(土) 02:09:57.47 ID:4ujeuV3ZO

最近コンマすかりまくりだったから遭遇だけでもありがたいわ
589 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/20(土) 20:59:44.21 ID:H62J04Zco
では少しだけ
590 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/20(土) 21:00:48.18 ID:H62J04Zco
√ 2018年 8月8日目 夕:


陽乃「はぁ……もう……」

大橋の傍にある、道の駅

芝生広場を通って展望台の方へと登った陽乃は、ようやく一息つく

若葉は本当に途中から姿が見えなくなった

病み上がりな陽乃の足の速さは、

無意識にセーブしてしまっていることもあって

若葉なら追い越したうえでゴールテープを張っておくことができるくらいに遅い

それでも追い抜くどころか後ろからいなくなっていたのだから、

若葉が自分から撒かれてくれた以外にあり得ない。

陽乃「……ん」

陽乃は、自分の体調面を考慮しなければ、

死ぬまで誰かに見つかることはない

というのも、常に九尾の力を借りて姿を誤魔化しておけば、

誰一人として、それを見破ることは出来ないからだ

もっとも、それを24時間続けようものなら数日で体調を崩すだろうし

そのまま回復できずに死に至るだろう。

もちろん、そんなことは出来ない為

必然的に人気のない場所に身を顰めるしかない

そういうのもあって、

立ち入り規制が行われている瀬戸大橋付近は陽乃にとってはこれ以上ないほどに好条件だった

――の、だが。

陽乃「っ!」

展望台までの階段をすっ飛ばして飛び込んでくる人影

まだ本調子には感じられない体は鈍く、それを躱しきれずに押し倒される

その力は常人離れしたもので……

目を向ければ、見知った顔に怒りが滲んでいる

球子「杏の読み通りだな」

闖入者は勇者の一人である、土居球子だった
591 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/20(土) 21:17:16.90 ID:H62J04Zco

陽乃「っ……痛い……」

球子「放したら、逃げるだろ」

陽乃「簡単に押し倒される程度の私が、逃げ切れるわけないじゃない」

球子「……だとしても、ダメだ」

球子は少し迷う素振りを見せたけれど、

首を横に振って、力を緩めない。

陽乃「見張ってたの?」

球子「まぁ、そうだな……諏訪に行くにはここを通るしかないだろ?」

陽乃「明日かもしれないし、一週間、一ヶ月もっと先かもしれないのに?」

球子「いや、あんなことがあったし……ここに居る理由が無くなったらすぐにでも行くと思った」

って、杏が言ったんだ。と、球子は困ったように言う

その読みが当たったのに、

球子は喜ぶどころか、不満気だった

球子「一人で行くつもりだったろ」

陽乃「私は別に、二人がいなくてもいいし」

球子「タマの体当たりも躱せないような状態でか?」

陽乃「色々あったのよ……仕方がないじゃない」

球子「仕方がないから死にに行くのかッ!?」

陽乃「ぃっ……痛いっ……」

押さえつける力がより強くなって、

陽乃は思わず呻いて、顔をしかめる

そろそろ、九尾が出てきてもおかしくない
592 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/20(土) 22:16:53.84 ID:H62J04Zco

球子「ふざけんなッ!」

陽乃「………」

球子「勝手に消えて、勝手に死ぬつもりだったのかッ!?」

球子は本気で怒っている

陽乃のためか、杏のためか、自分自身のためか

怒りながら、悲しそうな瞳をしていた

球子「生きたいんじゃなかったのかよ……」

陽乃「死ぬつもりなんてないけど」

球子「でも死んだって良いって思ってるだろっ」

陽乃「その時はその時って思ってるだけ」

球子「っ……そうなったら、あんずはどうなる。母親だって、大社にいるんだろ?」

杏のことを出されても、陽乃は大して響かない

けれど、母親が出された瞬間に

陽乃は苦虫を噛み潰したような顔をして、球子を睨む

だが、すぐに顔を背けた



1、そんなに熱くならないでよ
2、人を殺した娘なんて、死んで貰った方が良いに決まってるわ
3、だから、なに? 大社に従ってこのまま私を捕まえるの?
4、どうだっていいじゃない。あなた達なんて赤の他人なんだから


↓2
593 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/20(土) 22:18:12.93 ID:MPCf7yOn0
2
594 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/20(土) 22:18:17.99 ID:4ujeuV3ZO
3
595 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/20(土) 22:19:36.63 ID:0GZh8e3xO
1
596 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/20(土) 22:51:19.96 ID:H62J04Zco

陽乃「だから、なに? 大社に従ってこのまま私を捕まえるの?」

球子「……知ってるのか」

陽乃「昨日は寄宿舎に戻ってたのよ」

球子「はぁ!?」

陽乃「で、さっき乃木さんに見つかって逃げてきたの」

球子「寄宿舎に戻るなんて、おま……マジかよ……」

球子はそんなバカなと呟く

灯台下暗しと言う言葉もあるが、

まさか実際にそんなことをするとは思わないだろう

唖然としながらも、力は抜けない

球子「あんずも聞いたらびっくりするだろうな」

陽乃「で……どうするの?」

両手を押さえる球子の手

腰周りを圧迫する球子のお尻

頑張れば足で球子を蹴ることができるが、

勇者としての力を行使している今、大して力の入っていない蹴りではびくともしない

陽乃「捕まえる? それとも、首を絞めて殺す?」

球子「捕まえるって言ったら?」

陽乃「乃木さんから逃げたのに、貴女に良いよ。なんて言うとでも思ってる?」

球子「そりゃそうだ」
597 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/20(土) 23:41:24.23 ID:H62J04Zco

球子「行くんだろ? 諏訪」

陽乃「ええ」

球子「だったら、予定通りタマとあんずも連れてけ」

陽乃「死ぬ気?」

球子「あんずが言ったんだ」

止める方法があったはずだと

あの悲劇は止められたのだと

陽乃に対する人々の態度を目の当たりにしておきながら

それがただの人間だからと、躊躇してさえいなければ

こんなことにはならずに済んだはずなのだと。

そして――

球子「……分からなくなったんだ。あんなのを守るのが勇者の役目なのかって」

陽乃「そんなこと言って、勇者の力没収されても知らないわよ?」

球子「勝手に喧嘩売って、ダメだと分かったら勇者に投げて、それでもだめだからって勇者を野次って……原因作ったくせに、勝手だろ?」

呆れた。とでも言うかのように笑う球子は、

それでも、陽乃を手放そうとしない

球子「連れていくって約束するなら、解放する」

陽乃「断ったら?」

球子「このまま簀巻きにして連れていく」


1、良いわ。来たければ来なさい
2、なにそれ。どっちにしろじゃない
3、死んでも責任は取らないわ
4、悪いけど――使えない人を連れていく気はないの


↓2
598 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/20(土) 23:45:44.94 ID:MPCf7yOn0
3
599 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/20(土) 23:47:22.27 ID:0GZh8e3xO
1
600 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/20(土) 23:52:55.74 ID:H62J04Zco

ではここまでとさせていただきます
明日はできればお昼ごろから
601 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/21(日) 00:03:38.48 ID:0pXau1WgO

タマっち先輩ほんといい人や…
最初は嫌ってたのにいつの間にやら前作までの夏凜みたいな立ち位置になってきた気がする
602 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/21(日) 00:25:09.73 ID:yEi0MtLhO

何はともあれついてきてくれるのは心強いな
603 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/21(日) 00:46:44.32 ID:vC19mVtw0

合流して3人で出て行くってのはもう解決として
なんとか次の日までに少しでも体調戻したいな
604 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/21(日) 15:12:29.49 ID:da4fqDl/o
では少しずつ
605 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/21(日) 15:14:34.53 ID:da4fqDl/o

陽乃「良いわ。来たければ来なさい」

球子「そう言って、夜中にこっそり出て行ったりとかするんだろ?」

陽乃「しないわよ……ここまで来たらもう、する意味もない」

諏訪遠征に行くことを伝えていた以上、

2人は陽乃が数日以上ここに姿を見せず、

四国内のどこにも見当たらないとなったらいよいよ、外へと出ていくだろう。

たとえ陽乃が本当に出ていったという確固たる証拠がなかったとしてもだ

無駄死にさせないという陽乃の目的は、

陽乃が遠征に行くという話を2人が知った時点で潰えている

陽乃「心配なら、首輪でも手錠でも足枷でも自由にどうぞ」

球子「そんなことするかっての」

陽乃「予定は明日の朝」

球子「早いな」

陽乃「私の現状を考えれば、むしろ遅いと思うけど」

球子「見つかったら何されるか分からないからな……確かに遅いかもしれない」

陽乃「ただ、言っておくけど――」

球子「分かってる。タマ達を守る気はないんだろ? 分かってる……分かったさ。もう」
606 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/21(日) 15:15:44.76 ID:7D9/5LRhO
おk
607 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/21(日) 15:36:33.69 ID:da4fqDl/o

球子はようやく陽乃を押さえる力を抜くと、

気まずそうに顔をしかめて、首を横に振る

陽乃が守るのは無理だと言いたくなる気持ちを身をもって知った。

友達だなんだと言っておきながら、

あの場で庇うことすらできなかった

それは違う、間違っていると

そう叫ぶことさえもできなかった。

球子「そっちに比べれば軽いことかもしれないけどさ……分かったんだ。軽々しく言いたくないっていうのが」

陽乃「そう……」

球子「守ってやりたかったんだ」

陽乃「あそこで庇ってどうするのよ。貴女達まで付け狙われることになるのよ?」

球子「一緒に諏訪に逃げようって話した後にそんなこと聞くなよな」

球子は笑う

もう今更だ

それを聞かれるのも、それを言うのも

球子「でも今度こそ……何があっても、私が守ってやる」

陽乃「またそうやって、軽々しく言うのね」

球子「そんなつもりはないぞ。ほんとに、今度こそ絶対だ」

とても優しい表情を見せる球子

罪悪感と後悔が入り混じったその視線から、陽乃は顔を背けた
608 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/21(日) 15:49:22.62 ID:da4fqDl/o

球子「あんずの家に行くぞ」

陽乃「馬鹿言わないで」

球子「心配すんな。許可は取ってる」

陽乃「そういう問題じゃ――」

球子「分かるだろ? もう一回、会えるなら会いたいって言われてるんだ」

陽乃の手を取って、立ち上がらせる

押さえつけるほどの力ではないが、

放すまいとしている力強さが伝わる

陽乃「正気とは思えないんだけど」

球子「あの連中よりはずっと正気だろ。どう考えても」

陽乃「あの連中なんて言わない方が良いんじゃない?」

球子「あの化け物って言ったり、役立たずって言ってくる相手でもか?」

気にしてられないだろ?

なんて、球子は茶化すように言うと、少し考えて。

球子「変装できるか?」


1、無理よ
2、まぁ、なんとか
3、だから、行かないってば


↓2
609 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/21(日) 15:52:37.90 ID:7D9/5LRhO
2
610 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/21(日) 15:53:46.84 ID:zTXokEB5O
2
611 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/21(日) 16:53:26.61 ID:da4fqDl/o

陽乃「まぁ、なんとか」

球子「無理なら無理って言ってくれていいからな」

陽乃「無理じゃない」

無茶とは言えてしまうかもしれないが

今の身体でも、少しの間姿かたちを誤魔化す程度なら何の問題もない

陽乃「最悪、血反吐はいても助けてくれるんでしょ?」

球子「ふざけんなっ」

陽乃「っ……痛いってば……」

球子「吐くのか? それだけぼろぼろなのか?」

強く手を握られた陽乃の小さなうめき声

本当に痛がっている

球子「あ、悪い……」

陽乃「色々あってそこまで万全じゃないのよ」

球子「……そっか」

球子は陽乃を一瞥すると

ポケットを弄って、スマホを取り出す

球子「じゃぁ、迎え呼ぶか」

陽乃「本気で言ってるの?」

球子「必要なら呼んでくれって言われてるからな。必要だろ?」

陽乃「どうなっても知らないから」

球子「分かってるよ」
612 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/21(日) 17:09:57.06 ID:da4fqDl/o

球子はささっと連絡を取って迎えを呼ぶ

呼んだのは杏の両親だ

車で迎えに来てくれるとのことなので、時間近くになったら

立ち入りが許されているギリギリのところで合流する予定だそうだ

細やかな段取りを話す球子を横目に、

陽乃は大橋の方へと目を向ける

陽乃「……怪我は?」

球子「怪我?」

陽乃「貴女が伊予島さん庇ったから、めり込んだでしょ」

球子「あ〜……めっちゃ痛かった」

陽乃「痣でも残った?」

球子「痣は出来てないけど触ると痛いな……ちょっとだけど」

陽乃「貴女が割り込むからいけないのよ」

あんずを蹴るふりではなかった

確実に蹴り飛ばすつもりだった

でも、つま先がめり込んだ球子と違って、

足の甲の部分で蹴るというよりもすくい投げるようにするつもりだったのだ

それを球子が割り込んだばっかりに

腹部へと足がめり込む見事な一撃となったのだから、仕方がない
613 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/21(日) 17:22:44.16 ID:da4fqDl/o

陽乃「そんな調子で、明日から平気なの?」

球子「平気だよ。血反吐吐くほどじゃないし」

陽乃「そう……」

球子「………」

陽乃「なに?」

ただ独り言ちただけなのに、視線を感じた陽乃は顔を顰める

球子はそれでも陽乃を見たままで、

数回瞬きすると、なぜだか笑った

陽乃「なんなの?」

球子「心配した?」

陽乃「穴開けられたいの?」

球子「今のタマの防御力を舐めて貰っちゃ困るなっ!」

陽乃「私の本気も知らないくせに調子に乗らないで」

球子の本気も知らないけれど

あの憎悪に満ちた神の力は、おそらくだが球子たちの扱う神々の力さえも食い破って抉るに違いない

九尾の話が全て事実なら。だが。

陽乃「血の海になるんだから」

球子「ならないから安心しとけって」

陽乃「はぁ……そう思うならそれでいいわよ。別に」

誰の血で染まるか。と言うのを加味しなければ、

間違いないのは、事実だった
614 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/21(日) 17:24:39.02 ID:da4fqDl/o
√ 2018年 8月8日目 夜:伊予島家

01〜10 大社
21〜30 若葉・友奈
41〜50 杏
81〜90 伊予島両親

↓1のコンマ

※ぞろ目で付近の住民 奇数悪
※それ以外は通常
615 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/21(日) 17:26:33.69 ID:cPMtSqR4O
616 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/21(日) 18:11:35.51 ID:da4fqDl/o
√ 2018年 8月8日目 夜:伊予島家


あんなことになるとは思わなかった。なんて言い訳のような言葉もなく

軽率なことをしてしまったと

もう少し思慮深く行動を起こすべきだったと

ただ真っ直ぐに、杏の両親は謝罪を口にした。

陽乃がいることが知られないようにと気を付けながら、

もう一度、家へとあげてくれた

陽乃「むしろ、巻き込まれた側なのに」

自業自得とは言ったが

陽乃がこの家に来ることさえなければ、そんな行動を起こすことだってなかった

初めから、ここに来さえしなければ。

諏訪でもそうなるのではないだろうか

陽乃が来たせいで均衡が崩れ

何か取り返しのつかないことになるのではないか

そんな不安が胸を過る

陽乃「……はぁ」

諏訪の守りが強固になることで

今度は四国が攻められるようになる可能性もある

そうなったら、いるはずなのにいない2人が欠けた3人で乗り越えなけばならない

諏訪と四国で3人ずつと考えれば、ちょうどいいかもしれないが
617 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/21(日) 18:37:59.39 ID:da4fqDl/o

陽乃が諏訪に行くことについては、若葉が知っている

陽乃が諏訪に行くと言って姿をくらましたのなら、

同じように姿が見えなくなった二人も諏訪にいったのではと推測してくれるかもしれない

けれど、最悪の場合

そう、万が一死人が出た事も考えて

2人にも事前に伝えておいて貰う方が良いだろうか。

伝えた相手―おそらくは若葉―に止められる可能性があるが、

それでも2人は行くと言って聞かないはずだ

陽乃「……っ」

首を振る

そんなのはまるで、信じているみたいで不愉快だ

陽乃「んっ」

血を吐きそうになったりはしないが、

まだ少し体が重い感じがする

明日の朝に出発するのだから

もう寝てしまうのも、一つの選択だろう


1、もう休む
2、九尾
3、球子・杏
4、伊予島両親
5、イベント判定

↓2
618 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/21(日) 18:45:15.17 ID:OBv7ZIQPO
3
619 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/21(日) 18:47:40.19 ID:Frfjoky90
4
620 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/21(日) 19:24:09.43 ID:da4fqDl/o

陽乃「……明日の朝には、出ていきます」

「部屋から出るのは難しいと思うけれど、ほとぼりが冷めるまでここに居てくれてもいいのよ?」

「そのほとぼりが冷めるまでどれくらいかかるか分からないだろう」

「そうは言うけれど……」

陽乃「大丈夫ですよ。私にも、やらないといけないことがあるので」

四国には居られないから向こうに行く。

本心ではそうだけれど、

正直に言っても、杏の両親はこの家を居場所だと言ってくれるだろうから、言わずにおく

2人は気にしない

けれど、陽乃を部屋に軟禁状態にしておいたからと言って安全なわけじゃない

足音1つでもバレるときはバレてしまう

お風呂の回数、お手洗いの回数

足音、漏れてくる声

そこから推測されて、押し入られたりなんだり。

伊予島家が被害に遭わないとは限らない

「……今回は、本当に申し訳ないことをしてしまったわ」

陽乃「いえ、分かっていたことなので」

「分かっていたとしても、傷口を広げるような結果になってしまったことは非常に申し訳ない」

謝って済むことではないと前置きしつつも、

2人はまた、頭を下げた
621 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/21(日) 19:47:29.77 ID:da4fqDl/o

陽乃「その……」

「あぁ、娘から話は聞いているよ」

母親の方は何を言うのかを察して顔を伏せるように目を背けてしまったが、

父親の方は穏やかな表情で頷く

「諏訪の方に行くという話だろう?」

陽乃「ええ、まぁその……」

「無理を言った。と、2人から聞かされたんだ」

陽乃がお願いしたわけでも、

無理強いしてきたわけでもなく、

寧ろついて来なくていいと言われていた事も両親は聞いている

諏訪への遠征

それが、かつての旅行のようなモノではなく

命懸けの作戦であることも聞いている

「もちろん、私達からも考え直すようには言ったよ。だけど、それでも行くと2人は言っていてね」

2人が二度と会えなくなるかもしれないのに

父親は困ったものだと言いたげに笑みを浮かべて、

すぐに、また普段の表情へと戻る
622 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/21(日) 19:58:57.24 ID:da4fqDl/o

「遠征に必要な食品等は、私たちの方で用意させて貰ったよ」

陽乃「そんな」

「大事な事なんだろう?」

諏訪に行くのも、そのための準備も

しなければならないことだから、

出来る限りの支援はしてあげたいと、父親は言う

陽乃「………」

2人が諏訪遠征に行きたいと言い出したのは、

言ってしまえば陽乃が行くといったからだ

陽乃がそう言いだしさえしなければ、

球子と杏が諏訪に行くだなんて言わなかっただろう。

陽乃は別れを惜しむ母親と、

比べて普段通りな父親の両方に目を向ける

守れるだなんて約束はできない

本当に死なせるかもしれない

そうなれば、そうしたいと言い出した原因である陽乃のせいではないだろうか。



1、すみません。私のせいで
2、約束はできませんが、可能な限り無事に送り返します
3、支援だけで十分です。ありがとうございます
4、どうなっても、私は責任とれません

↓2
623 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/21(日) 20:04:28.76 ID:Frfjoky90
1
624 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/21(日) 20:09:00.26 ID:OBv7ZIQPO
1
625 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/21(日) 20:56:15.50 ID:da4fqDl/o

陽乃「すみません、私のせいで」

「いや、それを言うなら私たちのせいでもあるだろう?」

陽乃「いえ……諏訪遠征は昨日の件がなくても元々計画していたので」

その時点ですでに、2人はついてくる気だった

昨日の件があって断固とした意志になったのだとしても、

無かったとしても、2人は同じくらいに強情だったと思う。

それはやっぱり、陽乃のせいだ

陽乃「私が諏訪に行くことを教えなければ良かったんです」

「それは、ダメだと思うわ」

「2人が知らなければ君一人だった。と言うことなら、それこそ許しがたいことだと思うよ」

母親も、父親も

2人そろって厳しい表情を見せる

「娘を贔屓するわけではないが、杏一人とっても君に恩を感じているんだ。なのに、人知れず出ていくのは恐ろしい」

三年前に救われたっきりで

それ以降、顔を合わせるどころか名前も聞かない

そんな疎遠な状態であったならいざ知らず

同じ寄宿舎で生活し、顔を合わせたりしていたのなら、

やっぱり、何も言わずに姿を消して欲しくはないはずだ

「なにより、たとえ君が何も言わずに諏訪へと旅立つのだとしても、きっと誰かが気付いていただろう」
626 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/21(日) 21:19:40.70 ID:da4fqDl/o

「なんと言えば良いか……」

父親は困った様子で母親を見る。

代弁してくれること期待するその視線に、

母親は小さく笑って、ため息をついた

「久遠さん……ううん、陽乃ちゃん。そんなに、全部を自分で背負おうとしなくてもいいの」

陽乃「私は、別に……」

「陽乃ちゃんは、いつも自分が責任を負う前提で考えているんじゃない?」

諏訪遠征に2人が参加すること

昨日のボランティア活動のこと

両親がちゃんと知っているのはそのくらいしかないけれど、

でも、そのたった二つだけでも強く感じる

常に、その責任を考えている。

何かがあったとき、それが自分の手に負えることなのかどうか

真っ先にそれを考えて

過去の経験からだろう……難しいと判断している

「陽乃ちゃん一人で手に負えないのは当たり前のことなの。だって、ほら、貴女の手はまだこんなに小さいんだもの」

陽乃「……」

一回りほど大きな杏の母親の手が、陽乃の手を包む

勇者とは呼ばれず、化け物だと呼ばれ

ただただ責任だけを追及され続けている目の前の少女は、ただただ、少女なのだ。

「信じられる人を見つけて、頼って、一緒に一つずつ成し遂げていけばいいの」

陽乃「っ……」

「あんなことがあった後で信用がないのは分かるけど。でも、まずは……危険な旅に同行したいって2人を信じてあげて。ね?」
627 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/21(日) 22:41:41.89 ID:da4fqDl/o

陽乃の手を包んでいた母親の手が、今度は陽乃の頬へと触れる

本当の娘のように

強い愛情を感じるその優しい手つきに、

陽乃はゆっくり、目を閉じる

「ちゃんと、帰ってきてね」

陽乃「……厄介ごとに巻き込んだ張本人ですよ」

「巻き込んだんじゃない。自分から首を突っ込んだの。何かがあったとしてもそれは、陽乃ちゃんのせいじゃない」

絶対に大丈夫と言う保証はなく、寧ろリスクの高い行いだった

それを両親から誘い、

陽乃は自分には責任が取れないと念押ししていた

なのに、

何かがあったら自分のせいだなんて考えてしまっている

「だから」

これを言ってもいいのかと、母親は少し迷う

その迷いを感じ取ったのか、

控えていた父親が、陽乃をまっすぐ見つめた

「まだ数日の付き合いだ。信頼を置くことも難しいかもしれない。それでも、キミさえよければ……ここを帰る家と思って欲しい」

陽乃「……私はお二人の子供でもないのに」

「そんなこと、気にしなくてもいい」

杏の両親はあんなことがあってもまだ、陽乃を信じてくれている

受け入れてくれている

頼って欲しいと、迎え入れてくれている

陽乃は唇を噛んで……首を振る

それでも、両親の優しさは揺らがない

「今は助け合って生きていかなければいけない時だ。キミにしかできないことがあるように、私たちにしかできないこともある」

それだけだよ。と

父親は限りなく優しい声で、言った
628 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/21(日) 22:44:01.44 ID:da4fqDl/o

√ 2018年 8月9日目 朝:


01〜10 若葉
23〜32 千景
67〜75 大社
ぞろ目 特殊

※そのほか通常


↓1
629 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/21(日) 22:47:23.82 ID:3kSRXyo0O
630 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/21(日) 22:51:06.09 ID:da4fqDl/o

では本日はここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


1日のまとめは明日
9日目朝は遠征出発で固定
631 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/21(日) 23:02:58.94 ID:Ed7N8PzoO

伊予島家が奇跡的に無事だったおかげでほんの少しだけ希望が見えてきたのは大きいな
そしていよいよ出発だけど遠征ってどんな感じに進めてくのか気になる
632 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/22(月) 00:09:49.79 ID:jzgy1I5TO

最後の最後に大社とか千景の追撃きたらヤバいなって思ってたけど何もなくてよかった
633 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/22(月) 19:54:34.26 ID:N25V4BBPo
では少しだけ
634 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/22(月) 19:55:07.15 ID:N25V4BBPo

√ 2018年 8月9日目 朝:瀬戸大橋


まだ人々が寝静まっているであろう早朝、

点々と雲は見えるものの

幸いと言うべきか、十分に晴れていると言える空模様を眺める

大社を警戒したが、姿は見えない。

若葉達勇者もこの場所にはいないようだ。

球子「流石に、寝てるんじゃないか?」

陽乃「乃木さんは起きてるわ。上里さんも」

杏「分かるんですか?」

陽乃「私じゃなくて、九尾がね」

九尾は、陽乃を除けばもっとも強い繋がりとして上里ひなたを選んでいる。

ひなたが何か行動を起こせば伝わるし、何かひなたに伝わってきたらそれもまた九尾へと筒抜けになる

スマホを後ろから覗き見している。と言うと非常に犯罪的なものだが、

実際にそんな状態だ。

今、ひなたはもうすでに起きている。

久遠陽乃捜索の助力と言う建前で若葉と連絡を取り合える状態にある為、

若葉からそのことの報告は受けている

受けた上で、隠している。

九尾曰く、

例の神託が陽乃による何らかの介入があった可能性も考えているというのだから、手強い。
635 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/22(月) 20:03:30.63 ID:N25V4BBPo

球子「で、予定ではどのくらいで着くんだ?」

杏「真っ直ぐ突っ切るにしても生存者を探したりしていくなら、最低でも5日くらいかな」

陽乃「人手が足りないわ。生存者がいても置いていくしかない」

球子「出来もしないこと言うなよな」

陽乃「別に、貴女がいなくたって――」

杏「ま、まぁまぁ! そこまでにしようよっ! タマっち先輩も挑発しないで」

球子「挑発って言うか、事実だろ。生存者がいたらどうするんだよ。本当に置いていけるのか?」

球子は真剣な表情で陽乃を見上げる。

生存者を置いて行かなければならない本当の理由は、陽乃が戻れないからだ。

正式な遠征であれば、生存者救助のための一時撤退だとでも言えるだろう。

だが、今回は正式ではないし陽乃は追われている身だ

そんな状態で戻るのは突っ切るよりもリスクがある。

球子「その置いていった人を、また自分が殺したって背負うんだろ?」

陽乃「見殺しにしたって意味では事実だと思うけど」

球子が言っていることはもっともだ

陽乃は偶然見つけた生存者を放置して平然としていられるほど冷徹な人格をしていない

寧ろ、それを気に病んでいくタイプだ

身体はどうとでもなったとしても、心が持たない

出来るなら、見つけた生存者は保護して助けたい。

けれど、出来ない

たとえば岡山で生存者を見つけたら、諏訪まで連れていくのか。

そんなことをしたらどれだけの時間がかかるか。
636 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/22(月) 20:10:42.17 ID:N25V4BBPo

球子「別に、夏休みの間にたどり着くとか戻るとか考えなくていいんだから、どうしたいか考えればいいんじゃないか?」

陽乃「足手纏いを増やすのが嫌なのよ。それで死ぬのは私かもしれないんだから」

杏「……なら、行きは生存者を探さずにただ全速力で突っ切って2日。帰りに捜索はどうですか?」

陽乃「場合によっては諏訪からの連れ出しがあるんだから却下。行きも帰りも捜索しない」

球子「本気か?」

陽乃「嫌なら一人で探せばいいんじゃない?」

球子「それで大丈夫なのか? 自分は」

陽乃「………」

自分は。と、訊ねてくる球子を睨む。

いるかも分からない生存者を気にしているようで、

今気にしているのは陽乃のことかのような口ぶりだ

まるで、勇者らしくもない。

陽乃が受けている被害を目の当たりにして、迷ってしまったからだろうか。

陽乃「そもそも、勇者の力を使えば早ければ1日で到達だって可能なはずだけど」

球子「死ぬ気かよ。タマ達が平気でもそっちが辛いだろ」

杏「極力接敵を避け、適度に休憩を挟みつつ、一直線で確実に辿り着くことを目的とするならやっぱり2日くらいかかると思います」
637 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/22(月) 20:24:02.41 ID:N25V4BBPo

球子「道中のバーテックス全部潰していく方が休憩が増えるって考えれば、最低3日、最大は……7日か?」

陽乃「そんなことしたら私、途中で力尽きると思うけど」

主に自滅で。

そんな陽乃を一瞥し、杏が小さく手を上げる

杏「では、仕方が無いので捜索は諦めて諏訪に直行。夜の休憩を挟んで2日目の到着を目標に行きましょう」

勇者としては生存者を探したい気持ちがある。

だが、自分たちの身の安全も保障しきれていない状態で

今もなお隠れ潜むことが出来ている生存者を無理矢理に連れ出すメリットが見当たらない

外の世界で隠れて生きていけているなら、

もうしばらく、それを維持して貰っておくのがベストな選択だ。

杏「久遠さんの力は強い分、負担が大きい……ですよね?」

陽乃「ええ」

球子「なら普通の白餅と戦うならタマと杏だけ。やばいのが出てきたら頼む」

陽乃「油断は――」

杏「してません。だからこその温存です」

球子「肝心な時に血反吐吐かれたら困るんだ」

球子の呟きには、一理ある。

白餅……おそらく、白くて丸い体を持つバーテックスのことだろう。

あれの次、進化体とされているモノが出てきた時に陽乃がもう戦えませんは言えない。

球子「なんか、車とかで移動できたらいいのになぁ」

杏「免許は仕方ないにしても鍵もガソリンも何もないだろうし、無理だよ」

道だってきっと、荒れ果てている

陽乃「車……あ……道中を2人に任せられるなら……」

球子「ん?」

移動は陽乃……九尾に任せてしまえばいい。

以前、乗せて諏訪まで行くことができると言っていたし、

その際は戦闘の懸念があると言う話だったはず。

それを球子と杏……遠・中距離専門の2人に委ねてしまえば、

移動しながらでも十分に対応できるのではないだろうか。

陽乃「足は、九尾がいるわ」
638 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/22(月) 20:38:59.16 ID:N25V4BBPo

九尾の足なら、人間どころか勇者にだって負けない速さで駆け抜けていくことが可能なはず。

そのうえで、敵との遭遇したとしても立ち止まらずに遠・中距離の攻撃で対応していくことができるなら、

2日も掛からず、1日どころか半日で踏破することだって可能かもしれない。

もちろん、道中で対応しきれない数のバーテックスに囲まれたりしたら大変な事になるが、

その時は止まって対応したらいい。

その頻度と、疲労度合いによっては2日かけたって何の問題もない。

杏「九尾さんを呼んでる間、久遠さんは大丈夫なんですか?」

陽乃「戦うよりは軽いわ」

球子「そもそも乗せてくれるのか?」

陽乃「どうかしら……貴女はお腹の中にいて貰うことになるかも」

球子「へぇ〜狐にもお腹に袋あるのかー」

陽乃「ええ。胃袋がある」

球子「待てっ、死ぬだろそれッ!」

吠える球子をしり目に、

陽乃はふっと息を吐いて胸元を押さえる。

死にかけた一昨日の夜

約2日経って、胸やけのような感覚もない

この状態なら、九尾を呼んでおくくらいは問題が無いはずだが。

杏「体調に不安があるなら、時間をかけてでもいいので普通に行きましょう」


1、九尾を呼ぶ
2、呼ばない


↓2
639 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/22(月) 20:42:08.39 ID:6WmpSPfM0
1
640 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/22(月) 20:43:26.32 ID:sKN+TC3HO
1
641 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/22(月) 21:45:36.55 ID:N25V4BBPo

陽乃「九尾、お願いできる?」

『小娘を喰ってよいのか?』

陽乃「ダメ」

陽乃の足元から影が伸びる

球子の影と陽乃の影が繋がって、

球子の足元の影が狐の口のように開いて――

球子「ぬわぁぁぁぁっ!?」

不意を突いて実体化する影は瞬く間に大きな狐の形を作り出し、

球子の体を飲み込んだかと思えば、

牙のような歯で球子の服を咥えこんでいる

球子「なっ、なん……やめろぉっ!」

九尾「お主は胃の中に収めよ。と言うのが我が主の命じゃ」

球子「やめろっ死ぬっ! 死ぬからっ!」

止めてくれと叫ぶ球子をよそに、

陽乃は九尾の身体を見上げる

四つ足の状態で標準的な建物一階の天井に接しそうな大きさの九尾

子供三人なんて、簡単に乗せられそうだ

陽乃「伊予島さん、馬に乗ったことはある?」

杏「ない、ですけど……」

ちらりと、球子を見上げる杏

ずり擦りと服が脱げ始める球子の叫びを聞き届けて

杏「まずは、タマっち先輩を降ろしてあげてください」
642 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/22(月) 22:33:12.51 ID:N25V4BBPo

陽乃「それで九尾、頼めるかしら」

九尾「ふむ……よかろう」

陽乃「この二人も乗せて平気?」

九尾「主様が望むならば致し方あるまい」

そう言って九尾は屈んでくれたけれど

それでもかなり高い位置にある

球子「毛を毟ってやるからなっ」

九尾「喰い殺すぞ小娘」

陽乃「投げ飛ばすわよ」

球子「なんだよ……なんだよぉっ!」

杏「私が後ろから持ち上げてあげるから……」

球子「そういう問題じゃなぁいっ!」

喚き散らす球子をよそに、

一足先に九尾の背中へと上がった陽乃は、自分の胸に触れる

力を使っている感覚はあるが、

まだ大丈夫そうだ

杏「ほらっ、タマっち先輩! 急ごうよ」

球子「ぐぬぬ……もう少し優しくしてくれたって良いじゃないかっ」

陽乃「そうしてあげる理由がないもの」

2人が九尾の背中に上った野を確認した陽乃はそう言って、九尾の首筋を撫でる

陽乃「お願い。私を諏訪に連れて行って」

九尾「振り落とされるでないぞ」

九尾は言うや否や、駆け出す

自転車なんて比にならないほどの早さで駆け出す勢いに、3人は九尾の体に縋る

かなりの距離があるはずの瀬戸大橋は、あっという間に過ぎていく
643 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/22(月) 22:42:59.98 ID:N25V4BBPo

11〜20  バーテックス
41〜50  バーテックス
81〜90  バーテックス

↓1のコンマ

※ぞろ目 人
※バーテックスの場合は再判定
644 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/22(月) 22:44:46.17 ID:yWy3eSjVO
645 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/22(月) 22:46:50.33 ID:8O6NXwWcO
きたか…
頼むぞ杏タマコンビ
646 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/22(月) 22:54:29.86 ID:N25V4BBPo

↓1コンマ

01〜99

※コンマ=バーテックスの数
647 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/22(月) 22:56:28.07 ID:6WmpSPfM0
648 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/22(月) 22:58:13.99 ID:N25V4BBPo

ではここまでとさせていただきます
明日も可能であればお昼ごろから

バーテックス7体
649 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/22(月) 22:59:14.36 ID:8O6NXwWcO

よかったよかった
肩慣らし程度だな
650 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/22(月) 23:09:45.30 ID:yWy3eSjVO

この数ならパパッと片付けて先に進めそうだな
あとなんとなく陽乃さんが心を開き始めてきた感じがして嬉しい
651 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/23(火) 15:27:50.49 ID:zO5DXF6Lo
では少しずつ
652 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/23(火) 15:28:33.58 ID:zO5DXF6Lo

陽乃「ん……」

全力で走る九尾

その背中に跨る娘3人

狐の体は、馬のようになだらかな背中をしていない。

走るときも、

後ろ足が前に出る際に背中の部分が盛り上がったりもして、

少なくとも人を背中に乗せるような構造をしていないし、乗り心地は最悪だ。

球子「ぬわぁぁぁぁああああああっ!?」

杏「痛っ……っあっ!?」

陽乃「下手に喋ると舌を噛むわよ」

振り落とされかねない勢いに叫ぶ球子

身体が浮いたかと思えば、股座を九尾の背中に直撃する杏

そんな2人の前で平然としつつ、

降りた後が怖いと自分の擦れ具合を気にする陽乃

九尾「主様っ!」

陽乃「どうしたの?」

九尾「異形共の気配がある。数は少ないが――真っ直ぐ向かってきておる」

球子「てってき……敵かっ!?」

杏「うっ……うぷっ……」

陽乃「バーテックスだけど、対応できるの?」

球子「タマにまかせタマ……うぉぁっあ゛っ!?」

不安しかない。
653 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/23(火) 15:49:50.13 ID:zO5DXF6Lo

九尾が感知してからすぐに、建物の隅から数体のバーテックスが飛び出してくる

合計、7体の白餅バーテックス

進化体の名称はまだ出来ていないし、

単純に白餅で良いだろうか。

陽乃「白餅7個! いける!?」

球子「いけっ……いっ……うにゃっ!?」

杏「く、久遠さっ……」

陽乃「あぁもう……っ!」

乗馬の経験があろうがなかろうが、

九尾の背中に乗った状態で流鏑馬めいたことをしろと言うのは無理がある

足を止めて戦うなら、陽乃が戦えば良い

7匹程度連れていくのも無理ではないが、

それが増え続けるのは避けたい

陽乃「出来るの? 出来ないの?」

杏「っはっ……建物の上っ……せめて一度、滞空時間を作って下さっ……ひゃぁっ!?」

陽乃「九尾!」

九尾「軟弱な小娘共め、捕まっておれ」

より速く、九尾の体が動く

足元のがれきを蹴飛ばし、崩れかけの建物の側面を蹴り上がって

まだ崩れていないビルの屋上へと辿り着く

陽乃「2人とも!」

白餅は後ろからついてきている

お手並み拝見だ

杏「っ」
654 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/23(火) 15:51:40.37 ID:zO5DXF6Lo

↓1コンマ判定 一桁

0〜9

※杏の撃破数
※7以上で終了
655 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/23(火) 15:54:59.76 ID:CM/W5uIlO
656 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/23(火) 15:59:16.00 ID:zO5DXF6Lo

↓1コンマ判定 一桁

0〜9

※球子の撃破数
※1以上で終了
657 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/23(火) 16:03:42.64 ID:fDowCT9+O
658 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/23(火) 16:24:05.24 ID:zO5DXF6Lo

杏「………」

九尾の背中の揺れ、体にぶつかってくる風

ただでさえバランスが悪いのに、杏は今日が初めての実践だった。

バーテックスに襲われた経験はあるけれど

それを撃退した経験が杏にはないのだ。

自分の武器を模したものを使っての戦闘訓練を行ったことはある。

それはあくまで木の板だったり、

模擬戦として若葉達ほかの勇者に向けたものだった。

初戦闘。

怖くないと言えば嘘になる。

怖くて、不安で、苦しくて、辛い

けれど……戦えなければ足手纏いだ。

あの日、救われた時と何一つ変わらない

本気で力を使って抵抗すれば振り払えたにも関わらず、

それをせずに抑え込まれ、目の前で陽乃が大人を殴り飛ばすのを見ていることしかできなかったのと何も変わらない

杏「っ……はぁ……」

後悔した。

大人一人を怪我させてでも力を振り絞り、

あの場で立ち上がって、たった一言 "勇者に委ねろ" と言えばよかったと。

そんな後悔は、もうしたくない。

陽乃「跳ぶわよ!」

杏「はいっ!」

ビルの屋上から九尾が跳ぶ

長い胴体をまっすぐ伸ばして、限りなく平坦を保つ。

口にはしない九尾の気遣いに杏は小さく礼を述べて、クロスボウを構えた
659 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/23(火) 17:02:07.84 ID:zO5DXF6Lo

狙えば横にも縦にも切り開ける球子の楯……旋刃盤と違って

杏の武器はその射程こそはるかに長いが、一直線に進んでいくだけの代物だ

敵の動きが直線的なら問題ないが、

縦横無尽に逃げ回れる状況では、命中精度という部分に難がある

だから当然――鍛練ではそれを重点的に鍛え上げている

杏「……ふぅ」

九尾が動いているならともかく、

跳躍中の滞空時間なら、偏差射撃はそう難しいことではない。

九尾の体が落下していく、減算

バーテックスが建物の影から飛び出してくる、加算

ほぼ風のない今、計算すべきはそれだけで十分だ

杏「タマっち先輩は私の後にお願いッ!」

球子「お、おうっ!」

球子の攻撃による乱れは、狙いさえも不確かにする

だから、球子には後出しを願いバーテックスの動く先を狙って――連射する

次から次へと、近づいて来るバーテックスに金色の矢が突き刺さり、撃墜していく

一つ、二つ、三つ

躱そうと動くバーテックスをも巻き込んで

杏「タマっち先輩! 一つ!」

球子「まっかっせ――ろぉッ!」

逃れに逃れ、近づいて来る最後の一匹へと球子の旋刃盤が投げ込まれて、直撃する
660 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/23(火) 17:17:37.23 ID:zO5DXF6Lo

7匹いたバーテックスはあっという間に砕けて消え去り、

九尾の足が目の前に迫ってきていたビルの屋上へと触れる

杏「っあ――いっ……いったぁぁぁぁ!?」

着地までの滞空による浮遊感

地に足着いた九尾の体を追いかける杏の身体を、

駆け出す九尾の背中が迎え撃った激痛に悲鳴を上げて蹲る杏

球子「ちょまっ――落ちるぅぅぅぅぅぅ!!!」

投げた旋刃盤を受け止める体勢に入っていた球子は

バランスを崩し、足が離れた危機感に叫ぶ口が塞がる前に九尾のしっぽが球子を巻き取る

九尾「喚くな小娘共」

球子「ちょっとは加減してくれよっ!」

九尾「妾の顕現が長引けば長引くほど主様が消耗する。迅速でなければならぬ」

杏「うぅ……っ……く、お、んさんはっ……平気ですか?」

陽乃「戦いでは消耗していないから、まだまだ平気」

杏「それなら、良かったです……っ……」

目元に涙を浮かべる杏は安心したように呟きながら、

九尾の身体に全身を使って抱き着く姿勢のまま顔を伏せる

陽乃「大丈夫?」

杏「暫く、お風呂には入れないかもしれません……」

陽乃「……でしょうね」
661 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/23(火) 17:44:28.21 ID:zO5DXF6Lo

あっという間に岡山の瀬戸内市に入り、

通り過ぎて、兵庫の姫路をまっすぐ突き抜けていく

陽乃「戦うときは移動しながらは厳しそうね」

杏「えっと……初めてだからっていうのもあると、思います」

陽乃「それだけ?」

杏「………移動しているものを狙う、偏差射撃については鍛練を積んでいるのでどうにか。問題はその、やはり体の揺れですね」

杏は、

的が動いている状態、自分が動いている状態

その両方が動いている状態

その全てのパターンをどうにかすべく、鍛錬を積んできている

自分の足で走っている場合は、

自分の身体の動きと言うのもあって、体の揺れを調整するのも把握するのも容易だ

しかし、それが他人となると勝手が違う。

意識していない時に上下左右に振られると、当然ながら照準はブレる

狙うのをやめて乱射するというのも手段の一つだが

今回みたいな少数の敵には効果が薄い

杏「でも、慣れればどうにかできると思います」

陽乃「そう……で、貴女は?」

球子「タマは踏ん張りが利かないと難しいな。雑魚は良いけど固い奴には弾かれる」
662 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/23(火) 18:04:09.91 ID:zO5DXF6Lo

陽乃「だとすると、やっぱり足を止めた方が良いんじゃない?」

杏「そう、ですね……」

杏は少し考える。

足を止めて対応するのが一番楽だが、

それでは時間を出来るだけかけずに向かうという計画が損なわれる。

なにより、回避を足の速い九尾に委ねておくというのは安心感が違う

敵に奇襲を受ける可能性もグッと低くなるはずだ。

今後も陽乃と共に戦うなら、

この状態での戦いには慣れておくのが吉だと考えられる。

杏「いえ、次は乱射で対応してみます」

球子「タマも戦い方をもうちょっと考えてみるべきか……」

九尾「お主はそのまま投げ飛ばせばよかろう」

球子「踏ん張りがきかないって言ってるだろ」

陽乃「九尾の尾を使って土居さんを投擲するのはありだと思うけど……」

球子「そうだと思ったよッ!」

今回は数が少なかったお陰で、

多少グダついても難なく対応することは出来ただろう

しかし、

進化体が出現したり、数が増えた場合はそううまくいくとは思えない

不得意な状況での戦闘方法もしっかり考えておくべきだ
663 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/23(火) 18:15:45.55 ID:zO5DXF6Lo

31〜40  バーテックス
60〜69  バーテックス
81〜90  バーテックス

↓1のコンマ

※33・66・88で進化体
※バーテックスの場合は再判定
664 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/23(火) 18:17:51.53 ID:+Myakom30
はい
665 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/23(火) 18:57:21.32 ID:zO5DXF6Lo

兵庫を駆け抜け大阪へと入ったはいいものの、

特に観光名所らしきところも何もない地区をまっすぐ走って京都にたどり着く

金閣寺があったであろう方向にも、もはやその影もない

杏「3年間……たったそれだけでこんなにも荒れちゃうなんて」

崩れた建物は多く、

そうなっていない建物も九尾が足場にしてしまえば崩れるのではないかと不安になる

人影なども微塵もない

動物がいるような雰囲気も感じられない

ただ。

球子「空気は悪くないな……キャンプ場とかで感じるような良い空気を感じる」

陽乃「人がいなくなった方が地球には優しいって話?」

球子「ん……まぁ、簡単に言えばそうだな」

ある意味、荒れていたのは今までであり、

これはむしろ、あるべき姿に戻っていっているとも考えられるのではないか。と、3人は感じる

水や土の状態を確かめる気はないが、

空気を信じるなら、それらも良くなっている可能性は十分にある

杏「……人が荒らし過ぎたからバーテックスが現れたとか?」

球子「無いとは言い切れないな……っていうか……いや、何でもない」
666 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/23(火) 19:24:59.55 ID:zO5DXF6Lo

京都から滋賀

愛知には入らず、岐阜に入って真っ直ぐ諏訪を目指す

人がいた頃よりも自然が見える世界

建物は崩れ、

雑草が生い茂り、

アスファルトは割れて……微かに緑が見える

そんな街並みを一瞥して、球子は奥歯を噛みしめる。

球子「これなら車よりも早いんじゃないか?」

九尾「小娘2匹がおらねばより早くたどり着けるがのう」

陽乃「そんな速さで動かれたら、私でも振り落とされるわよ」

今でも、振り落とされないようにとそれなりに頑張る必要がある

なのに、今以上に速く走るなんてことになったら

その風圧に耐えられない可能性がある。

早朝に出発して、戦闘を挟んで、今は昼過ぎ

戦闘があった分減速して警戒を強めているからだ。

近くにバーテックスの反応はないが、

遠くにはバーテックスの反応が強く感じられるらしい。

それも、諏訪に近づけば近づくほど多くなってきているという

杏「諏訪への集中攻撃を目論んでいるんでしょうか?」

陽乃「遅かれ早かれ、総攻撃が行われると思うわ」
667 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/23(火) 19:59:46.85 ID:zO5DXF6Lo

杏「……あの、久遠さん」

陽乃「なに? お手洗いなら最悪止まっても良いけど」

球子「それ以外止まらない気かよ……」

杏「あ、いえ……それも、あの。そうなんですが」

杏は思わぬ言葉に気恥ずかしそうにしながら、

首を振る。

今したい話はそれではない。

なにより、今はちょっと、辛い。

杏「諏訪周辺のバーテックスを一部叩いてしまうのはどうですか?」

陽乃「自分から戦いに行くってこと?」

杏「そうです。総力戦が行われることが確定しているなら、その戦力を削って負担を減らしてみませんか?」

球子「そうは言うけど、突っ込めばその分敵が来るじゃんか。そうなったら諏訪に入れないだろ」

杏「九尾さんの速度なら、頃合いを見計らって離脱できるのでは?」

九尾「無論可能じゃが、主様が消耗する」

つまりは却下。ということだ

九尾はそんな余計なことをする気はないらしい



1、大丈夫。少しくらい削っておきましょ
2、死にたくないって言ったでしょ。さっさと諏訪入りするわ


↓2
668 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/23(火) 20:01:05.02 ID:+Myakom30
2
669 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/23(火) 20:01:29.16 ID:9uHeQKL8O
1
670 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/23(火) 20:02:31.33 ID:f/kCLqhz0
2
671 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/23(火) 20:36:53.85 ID:zO5DXF6Lo

陽乃「大丈夫。少しくらい削っておきましょ」

九尾「主様」

陽乃「大丈夫、少しはね」

陽乃は胸元に手をあてがう

ここに来るまで、ずっと九尾の力を使い続けている

四国を出る前は痛みもなかった体

今は少し、胸の内に違和感を感じる

けれど口の中に血の味はない

血を吐くような兆候も感じられないし、

今しばらくは力を使っても問題ないはずだ

球子「本当に大丈夫か?」

杏「あの、無理をして欲しいわけでは」

陽乃「いずれにしろ、通り道なら叩くだけだわ」

九尾「主様、分かっておると思うが妾を出したまま戦うのは負荷が重いぞ」

陽乃「分かってる」

総攻撃は阻止することは出来ない

だが、総攻撃を延期させたりその戦力を削ぐことは出来る

延期でも戦力減少でもどちらでもいい

総攻撃を乗り越えた後に諏訪を脱出して四国に戻るのが一番いいだろうか。

いや、あるいは。

そのまま諏訪の防衛に努めるというのも悪くない話だ
672 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/23(火) 21:34:32.35 ID:zO5DXF6Lo

長野西部、岐阜県側からの長野への進入を試みる

四国のように、付近を広く巻き込んでの強力な結界は発生しておらず、

諏訪湖を含むほんの一部の区画のみが結界によって守られている

岐阜との県境などはもう、守られていない

陽乃「……結界、弱ってるわね」

九尾「三年前に比べればもはやないも同然の状態じゃな」

球子「三年前? 来たことあるのか?」

陽乃「ううん、九尾が感じ取ってくれただけ」

目視では確認できないが、

九尾曰く、四国の結界に似た力を感じるのは諏訪湖の南東の部分だけだという

そこから展開されている微弱な結界によって

どうにか維持されているという状態のようだ

杏「敵が一番多いのは、どのあたりですか?」

九尾「ふむ……やはり結界の要付近じゃな。そこから散っておる」

陽乃「散ってるって、どの程度?」

九尾「数十は下らんな」

数十……十数匹ではない。

極端に言えば、99匹いる可能性もある

陽乃「私も、少しは力を使うから大丈夫ね」

球子「少しだぞ。杏とタマもいるんだ。ちゃんと協力してくれ」

陽乃「期待はしないでおくわ」
673 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/23(火) 21:38:27.54 ID:zO5DXF6Lo

↓1コンマ

01〜00

※ぞろ目2倍
※01〜09の場合、+再判定
674 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/23(火) 21:42:05.39 ID:9uHeQKL8O
675 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/23(火) 22:25:02.61 ID:zO5DXF6Lo

バーテックスの戦力の一部を削るための、ルート変更

当初の予定では、

岐阜方面から諏訪大社に直行する手はずだった

しかし、バーテックスの数を減らすとなると、

最も狙われている諏訪大社の付近からは入れない。

寧ろその真逆

諏訪湖北側から侵入するのが一番だ

そこなら敵も手薄なはずなので

総攻撃を行う際の戦力を削りつつ、

こちら側に被害を出さない絶妙な戦況になる

最も、本当にそうなるかは賭けだ

球子「バーテックスの数は?」

九尾「ふむ……そう多くはないな」

杏「……そう、でしょうか」

鉢盛山の麓の影に隠れつつ、様子を窺う

陸地や、建物に張り付いているように見える白餅の数々

埋め尽くしているそれらは数えていられない 

陽乃「準備は出来てる? 最悪、ここで死ぬ可能性もあるって思っておいて」

球子「死ぬかもなんて思いながら戦えるかよ」

球子は首を振って、陽乃を見る

球子「勝てなくてもいいけど、生きていたいじゃんか」

杏「今回は勝てないと困るけど……でも。そうだよね。死ぬかもしれないけど、でも生き残れるって信じましょう」

陽乃「そう……まぁ、死んでも責任は取らないから勝手にしなさい」

陽乃は素っ気なく言い捨てて、胸を押さえる

まだ平気、まだ大丈夫

深く息を吐いて――九尾の背中に跨る

陽乃「行くわよ!」
676 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/23(火) 22:35:14.31 ID:zO5DXF6Lo
↓1コンマ判定 一桁 球子
↓2コンマ判定 一桁 杏


0〜9

※ぞろ目倍
677 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/23(火) 22:36:06.40 ID:9uHeQKL8O
678 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/23(火) 22:41:17.18 ID:f/kCLqhz0
679 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/23(火) 22:47:14.71 ID:zO5DXF6Lo

球子 ⇒10
  杏 ⇒8

39−(10+8)=21
680 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/23(火) 23:24:21.74 ID:zO5DXF6Lo

せっかくの奇襲と言う利点を活かさない理由はない

中・遠距離の攻撃可能な球子と杏に先んじて仕掛けさせる

球子「頼むっ、タマをぶん投げてくれ!」

九尾「回収はせぬぞ」

球子「してく――」

球子が反応するよりも早く、

九つの尾の一つが球子の身体を巻き上げて、背中から引き摺り落とす

投擲に備えて力を蓄える九尾の尾は、

背中に跨るよりも酷く揺れ動く

その勢いが頂点に達する寸前に、がくんっと下がって――

球子「ぬおぁぁぁぁぁぁ!」

九尾は前足でブレーキをかけると、

身体をぐるりと回転させて、横向きに球子の身体を放り投げる

叫びながら消えていく球子

それを見ることなく九尾は投げた勢いをそのままに体を回してまた駆け出す。

球子「ぅ……ぉぁっ……」

投げ出された体は空気に押しつぶされ、

圧迫される肺から酸素が逃げ出してしまう

腕と足がもぎ取られるような感覚が伝わってくる

苦しい、辛い、痛い……苦しい……苦しい……

意識が消えそうなほどの勢いをその身に受けながら

それでも球子は歯を食いしばって、楯を構える

球子「がふっ……ふっ……ふーっ……ん゛っ」

楯を掴み、息を吐いて、吐いて、吐いて

身体の中から空気が抜けたまま、心臓の動きを止め、息を止め

力の全てを構える右手に集中させ――

球子「ぶっっっっとべぇぇぇぇぇッ!」

九尾によって生み出された勢いをその一投に含めて、バーテックスの大群へと投げ込む
681 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/23(火) 23:43:55.07 ID:zO5DXF6Lo

陽乃「動いたわよっ、伊予島杏!」

杏「!」

九尾の身体から投げ出されないように必死にしがみ付いていた杏が顔を上げる。

はるか上空の赤い光が瞬き、一筋の星が流れ落ちて――

バーテックスの密集地を爆発させる

もちろん、球子の攻撃によって爆発したわけではなく、

建物や地面を粉砕したが故の爆音に似た轟と粉塵が舞っただけだが

それでも、それなりの数のバーテックスが吹き飛び、圧殺され、叩ききられた

その奇襲を受けて、白い球体上のバーテックスがぞろぞろと空中に散らばっていく

杏「はぁ……っ……」

空に広がりつつあるバーテックスへと

今度は杏がクロスボウを向け、狙いを定めることなく乱射する

陽乃「九尾……真っ直ぐ!」

九尾「うむ」

杏と球子の奇襲攻撃によって、

半分に近いバーテックスが消えていく

それでもまだ視界を埋め尽くすばかりの数いる

そして諏訪は今まで、それ以上の襲撃を受けてなお健在なのだ

陽乃「諏訪の勇者……白鳥歌野さん。ね」

九尾「主様!」

陽乃「分かってるってば」
682 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/24(水) 00:03:01.60 ID:jDukJghDo

空から球子が降ってくる

九尾は回収しないと言っていたけれど、

このまま駆け抜ければ無事に球子を回収することができるだろう

陽乃「伊予島さん、土居さんを回収するために真っ直ぐ駆け抜けて」

杏「久遠さんは?」

陽乃「まだ残ってるバーテックスがいるから、殴りに行くわ」

杏「久遠さんっ!?」

上に投げ出された球子、九尾に跨ったままの杏

2人は遠距離からの攻撃が可能なため、

安全地帯からでもバーテックスの撃退が出来る

だが、陽乃はそうではない

その拳を叩きこむのが、普通の戦闘スタイルだ

だから――九尾と杏を先に行かせて飛び降りる

陽乃「九尾、5分!」

九尾「たわけ! 三つじゃ!」

言うだけ言って走り去っていく九尾を一瞥し、

陽乃は胸を押さえる

陽乃「ちょっと痛いけど……まだ、平気」



1、全力で戦う
2、中くらいの力で戦う
3、加減して戦う

↓2

※それぞれ討伐補正有
※それぞれ陽乃の体調判定追加
683 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/24(水) 00:05:53.04 ID:7nveebhUO
3
684 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/24(水) 00:09:56.87 ID:PLjZzSiQO
2
685 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/24(水) 00:14:19.84 ID:jDukJghDo

↓1 コンマ判定

1桁+2桁

※ぞろ目はさらに倍
686 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/24(水) 00:17:03.00 ID:mqlKCH9IO
ゾロ目出したいな
687 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/24(水) 00:19:50.11 ID:Gc14lahSO
このゾロ目はひょっとしてオーバーキル?
688 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/24(水) 00:23:41.46 ID:7nveebhUO
0という可能性も
689 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/24(水) 00:24:36.77 ID:jDukJghDo
ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


(10+10)*2=40
バーテックスの残数(21)超過のため終了
690 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/24(水) 00:34:15.35 ID:mqlKCH9IO


やったぜ
やっぱり久遠さんはつえーや
691 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/24(水) 00:34:31.13 ID:Gc14lahSO

陽乃さん圧倒的な戦闘力だな…
杏とタマも活躍してサクサク進めてるのもいいね
692 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/24(水) 00:37:20.15 ID:7nveebhUO

圧倒的じゃないか!
693 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/24(水) 20:43:54.66 ID:jDukJghDo

では少しだけ
694 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/24(水) 20:46:28.54 ID:jDukJghDo

陽乃「ふぅ……っ……」

陽乃が自覚している本気としては、二通りある。

一つは、九尾の力を用いた身体強化を最大限まで行うこと。

血の一滴、取り込む酸素、髪の先から爪の先まで。

久遠陽乃と言う人間を形成するすべてに力を流し込んでいく戦い方だ

それをすると外側だけでなく内側にまで力が巡る為、かなりの力を得られる

けれど、吐血は免れないし意識の混濁や消失が起こる。

もう一つが九尾ではない力、伊邪那美命の御力を借り受けること。

ただ、これに関しては未知数としか言いようがない。

九尾ですら抗うことのできない強力な死の力

間違いなく九尾より強いが、それがどのような効果を発揮するのかは分からない。

ただ姿を見せているだけで吐血し、瞬く間に気を失うほどの負荷がかかる力だ

その力を持って戦うなら、死の覚悟は必須

陽乃「はぁ……」

それは出来ない

それをするのは今ここではない

であれば、確実に生き延びるための戦い方を選ぶ。

九尾の力を身に纏い、ゆっくりと握り拳を作る

陽乃「ふぅ……っ、げほっ……」

喉は痛むが、血は吐いていない

まだ平気だ。何も問題ない

視界も良好、霞んでいない

足元を確かめて、バーテックスを見上げた
695 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/24(水) 20:55:22.96 ID:jDukJghDo

白餅と言いかえたバーテックスの軍勢は、

空から落ちてくる球子ではなく、眼下に見える陽乃の方を向いている。

一匹残らず陽乃へと向き、しかしながらむやみやたらと突撃してくることもない。

まるで、陽乃が触れてはならない天敵であると学習しているかのように。

陽乃「っ……」

割れたアスファルトを踏みしめて、摺り足気味に下がっていく右足に力を籠める

踵が低く上がり、つま先に力が上乗せされていく

強く、強く

陽乃「はぁー……」

敵を前にしてもなお、冷静に。

穏やかに、強く

陽乃は5分と言ったが、九尾は3つと言った。

猶予はたったの3分間

残った敵は目視が正確なら21

1分で7体叩ければ、確かに3分で終えることが出来る

陽乃「時間がないの……来てくれないのなら、こっちから行かせて貰うわ」

地面を抉るように蹴りだして、すぐそばのビルの側面を足場にさらに高く飛び上がる

数秒前まで見上げていた白い巨躯を見下ろすこともなく、体をひねって――

陽乃「ふっ!」

バーテックスの身体に踵を叩きこむ。
696 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/24(水) 21:05:57.02 ID:jDukJghDo

白餅のように潰れて歪んだ体はそのままねじ切れて真っ二つに割れ、消えていく

バーテックスに仲間意識があるのかは定かではないが、

すぐ横に居た同類が消え去ったことを察知したのだろう、

目らしきもののない、口だけの表面を陽乃へと向けるが――

陽乃「っ!」

陽乃は後ろにいたバーテックスに蹴りこみ足場として、正面のバーテックスを殴り飛ばし

突撃してきたバーテックスを蹴り潰して、体をひねり、上から落ちて来ていたもう一つの個体を殴り飛ばす。

足場が減り、落ちていく陽乃を追いかけるように白い体が迫ってくる

地面に落ちた瞬間からあれが降ってきたら、流石の陽乃でも無事では済まない

しかし、落下しないという方法は存在しない。

陽乃は当然空を飛べないし、足場になってくれる建物もなければバーテックスもいない。

だから――潔く落ちて、すぐに受身を取って体を回し、バーテックスの落下軌道から外れる

陽乃「かふっ……ふっ……」

九尾の顕現と、戦闘での力の利用

徐々に体が蝕まれていくのが分かる不快感と痛み

咳き込みそうになる喉の奥にはじわじわと鉄臭さが滲んでいるような錯覚を覚える

それでも陽乃は、拳を握り、足場を踏みしめて前を向き、

人間の言葉を理解しているとは思えないが、

陽乃は苦笑交じりにバーテックスを見上げる

九尾がくれた3分

その残り1分半くらいを生き延びることが出来たら、褒美に身体を齧らせてあげてもいい

なんて。

陽乃「まだあと1分以上あるし……耐えきれたら、私のことを食べても良いわよ?」

そんな挑発をして、

向かってくるバーテックスを殴り飛ばし、蹴り潰し、叩き潰して――

陽乃「ほら、もっと口を開かなきゃ」

バーテックスの口のような器官に手を突っ込み、引き裂く

九尾が球子と杏を乗せて戻ってくるころにはもう、バーテックスは跡形もなく消滅していた
697 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/24(水) 21:16:23.05 ID:csA3/lWCO
つよい
698 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/24(水) 21:17:23.36 ID:jDukJghDo

杏「久遠さんっ!」

陽乃「あんまり大声出さないで」

杏「なら出させないでくださいっ……戦うならまだしも、一人であんな大量のバーテックスを相手にするなんて」

球子「って言ってもタマがいるにもかかわらず、あいつら見向きもしなかったしな……」

空を飛ぶことも出来ない勇者が空中にいるというのは、

敵にとってはこれ以上ないほどにねらい目と言うべきか、最高の的のはずだった。

楯を持つ球子は突撃を防ぐのも容易く、空気抵抗を持たせられるという意味でそれなりに有利

かつ、楯を下にして落下する隕石爆撃めいた突貫技も出来なくもない。

だとしても、ほとんど無防備に近い状態だったのだ。

なのに、バーテックスは陽乃に釘付けだった。

その姿をあるのかも分からない視界に捉えたまま、陽乃が動き出すまで動くことすらなかった

杏「でもっ、それならそれで引き付けて連れてきてくれるだけで良かったのにっ」

遠距離攻撃かつ、連射可能な杏と

中距離かつ、それなりの広範囲を攻撃できる球子

その一方で、体一つで戦わなければならない陽乃は手数が圧倒的に足りない。

にもかかわらず、あの数に立ち向かい、陽動するでもなく殲滅してしまったのだから

陽乃の身を案じる杏としては気が気ではなかったらしい。

杏「久遠さんは確かに強いです。あの数なんて気にもならなかったと思います。でも、万が一もあるって、分かってくださいっ」

陽乃「だから5分……九尾のせいで3分だけって時間制限したでしょ。その間だけ私が戦う。残ってたら私一人では厳しかったってだけで、殲滅出来たらそれで終わり」

杏「っ……武器があるわけじゃないんですよっ?」

球子「あんずっ、落ち着け」
699 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/24(水) 21:29:53.28 ID:jDukJghDo

球子は前のめり気味に陽乃へと迫る杏の肩を掴んで、

自分の方へと引き寄せるように引っ張る

球子「あんずらしくないぞ。もっとわかりやすく言ってやれ」

杏「分かりやすく……?」

球子「そんな回りくどく言って "ごめんなさい" とか "分かった" とか言ってくれると思うか?」

陽乃「回りくどくなくても言わないけど……」

球子「ほらな? だからもう、とりあえず言いたいこと言っとけ」

球子は困ったように笑いながら、杏の身体を押す。

揺れた体はまっすぐ伸びて、

もう一度、その視界に陽乃を映した

杏「単刀直入に言います……力を使いすぎないでください」

陽乃「この戦いを提案したのは貴女よ。伊予島杏」

杏「はい。でも、私とタマっち先輩がいるから、倒しきるほど力を使う必要はなかったはずです。それこそ、半分倒してあとは任せるって言って欲しかった……」

陽乃にとっては、些細な事だろう。

たった20匹程度の敵だ。

準備運動にも満たないような容易い戦いだったかもしれない。

でも、それでも疲労は蓄積する。

陽乃「私はそんなに貧弱じゃないわ」

杏「でもっ……無理をしたら血を吐くことだってある。気を失っちゃうことだってある。だったらっ……必要ない時は最小限でいてくださいっ」

お願いしますと杏は願う。



1、死なないためには、常に最善を尽くすこと。手を抜くなんて死にたがりのすることだわ
2、はいはい。考えておいてあげる
3、馬鹿なこと言わないで

↓2
700 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/24(水) 21:31:12.19 ID:csA3/lWCO
1
701 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/24(水) 21:33:59.70 ID:pzoP6hMm0
1
702 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/24(水) 21:53:11.64 ID:jDukJghDo

陽乃「死なないためには、常に最善を尽くすこと。手を抜くなんて死にたがりのすることだわ」

杏が死んでほしいと思っているなら話は別だ。

けれど、話を聞く限りでは杏はそんなことなど毛頭考えていない

寧ろ、死んでほしくないからこそ物申している。

球子は顔をしかめたが、反論はしない。

いや、出来ないが正しいだろうか。

何も言わない杏を見ると、球子は口を開いた

球子「そりゃそうだ。油断大敵……だったっけ」

杏「でも、久遠さんの場合は力を使うこと自体が死にたがりに通じているのでは?」

陽乃の言葉に一理ある。

だがそれでもと、杏は首を横に振った。

化け物相手に手加減するのは死にたがりの愚行

けれども陽乃の力は身を滅ぼす諸刃の剣

杏「……久遠さんが戦わなくていいくらいに強くなればいいですか?」

陽乃「そうね……私が戦わなくてもいいならそれが一番ね」

陽乃の力は最終兵器

バーテックスと戦うのはほかの勇者5人に任せて、

陽乃は進化体に備えて温存……なんてことが出来るのが理想だろうか。

杏「久遠さんの代わりを、諏訪の勇者様が担うことは出来ないかな……」

球子「次元が違うからなぁ……でも、普通のあの、白丸いバーテックス相手なら出て来なくても問題なくなるんじゃないか?」
703 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/24(水) 22:15:05.39 ID:jDukJghDo

杏「なら、是が非でも諏訪から四国に移送したいな……」

陽乃「諏訪の生存者がそれを望まないと無理だと思うけど」

球子「ん〜……交渉次第だろ。たぶん」

球子はそう言って、バーテックスがいなくなった周辺を見渡す。

ついさっきまでバーテックスが住処としていた場所。

球子の爆撃にも似た一撃によって多くの建物が倒壊したが、

それがなくても荒れ地となっていた長野の町

四国に比べて酷く小さく、貧弱と言われた結界

いつ壊されるかも分からない結界の中にいるよりも、

辿り着けさえすれば、今しばらく生きていくことのできる四国に行きたいという人は少なからずいるはずだ。

いや……そうとは、限らないだろうか?

球子「とりあえず、早く結界の方に行くぞ」

杏「そう、だね」

陽乃「ふぅ……」

四国から諏訪までの九尾の顕現

そして、今さっきの戦闘

力を使ったことによる負荷を感じる

球子「ここからは歩くか?」

陽乃「平気よ。気にしないで」

九尾に跨り、球子と杏も同じように引き上げてまた走る

そうして――九尾のおかげで半日程度で結界の中へと辿り着いた
704 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/24(水) 22:20:58.37 ID:jDukJghDo

↓1コンマ判定


01〜00 (00=100)

九尾+10、中力+20

※計20〜50でダメージ小
※計51〜70でダメージ中
※計71〜100でダメージ大
※100以上はアウト
705 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/24(水) 22:22:36.68 ID:pzoP6hMm0
706 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/24(水) 22:27:16.42 ID:7nveebhUO
あっぶねえ
707 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/24(水) 22:43:25.92 ID:jDukJghDo

√ 2018年 8月9日目 夕:諏訪


九尾に跨ったまま入るのはと、

その直前で九尾を隠して歩きで結界の中へと入る

杏「あっ……」

「おや……見ない顔だねぇ……」

諏訪までの道中、人の気配は全くしなかった。

崩れそうな建物、崩れた建物

割れたアスファルト、無造作に伸びた雑草

以前は人がいたはずなのに、

すっかりもぬけの殻となってしまった世界

それらを見てきたからこそ、

ここまで来てようやく、自分達以外の人の声を聞いた球子と杏は思わず涙を零しそうになる

「ま、まさか外から来たのかい?」

杏「はい……えっと、その……ここに勇者様がいると聞いたのですが」

「それなら神楽殿の方に――!」

見たこともない少女たちの登場に共学を隠し切れていなかったおじいさんの目が、より見開く

悍ましいものを見てしまったかのような、血の気が失せていく顔

何なのかと困惑する球子は声をかけようとして――

陽乃「ごぷっ……ぁ……はっ……ははっ」

すぐ後ろで、あからさまにヤバい声が聞こえて、振り返る

口元を押さえる手は真っ赤に汚れて、目元も赤く

空気と共に吐き出されているのか、指の隙間から血しぶきが飛んで……陽乃の体が崩れ落ちる

杏「久遠さん!」

杏の悲鳴にも似た声に、陽乃は何も返せなかった
708 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/24(水) 22:45:36.05 ID:jDukJghDo

では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


68(コンマ)+30(九尾+戦闘)=98
100は越えていないので死にはしません
709 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/24(水) 22:55:30.16 ID:csA3/lWCO

陽乃さん早くも倒れてしまったか…
総攻撃翌来るまで絶対安静だな
710 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/25(木) 00:23:52.10 ID:E/FBUjIiO

まあひとまずは長野でゆっくりしよう
711 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/25(木) 20:34:08.57 ID:M/BybS93o
では少しだけ
712 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/25(木) 20:34:41.70 ID:M/BybS93o

√ 2018年 8月9日目 夕:諏訪


夏の陽射しも傾き始めるころ、

諏訪湖の近くにある病院の一室に勇者が集まっていた。

元から諏訪で勇者として活動していた白鳥歌野

歌野を補佐している巫女である藤森水都

四国から来た伊予島杏と土居球子

そして……諏訪に到着してから体調を崩し、今は眠りについている久遠陽乃

杏は陽乃の傍のパイプ椅子に腰かけ、雲ってしまっている酸素マスクを見つめる

杏「……どうして」

球子「昨日、会ったときからヤバそうだったからなぁ……」

瀬戸大橋の付近にある展望台で陽乃を見つけた時のことを思い出して、球子は首を振る。

あの疲労感が壱日で回復したとは思えない

そこに九尾の顕現と戦闘

そこから休まずに結界内までの移動

それらがまとまってのしかかってきたのだとしたら、

ああなるのも無理はないのかもしれないと球子は考えて、顔をしかめた

陽乃は手で押さえながらも血を噴出して崩れ落ち、気を失って

それでも止まらずに陽乃は口や目から血を流し続けた。

血反吐を吐くと陽乃は自己申告していたが、

まさかあそこまでとは思っていなかったのだ

球子「……切り札だよなぁ」

歌野「……えぇっと、そろそろ話を聞いても良いかしら」

眠ってしまっている仲間を気にする気持ちを察しつつ、歌野は切り出す
713 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/25(木) 20:40:00.84 ID:bZyNQFZaO
うたのん達も来たか
714 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/25(木) 20:43:25.09 ID:M/BybS93o

歌野「四国の勇者である乃木さんからこっちに勇者が来るって話は聞いてたけど……何があったの?」

杏「久遠さんに関しては力を使う代償のようなものなので、これと言って大きなことはありませんでした」

道中に生存者は見られなかったこと

点々とバーテックスの存在を確認しており、諏訪湖周辺の一団を潰してきたことを杏は話し、

もし、希望があれば諏訪から四国に全員を護送するつもりもあるということを伝えた。

もちろん、

それなりのリスクがあることと、全員が生きたままたどり着ける保障がないことも含めて。

だが、四国での陽乃の扱いは流石に伝えられない。

歌野「そっか……やっぱり、外はもう」

水都「うたのん……どうする?」

歌野「ん〜……とりあえず私達が勝手に決めて良いことじゃないと思う」

歌野は少し考えて、答える

歌野「それに、もし一人でもここに残りたいって人がいるなら……ここから離れるわけにはいかないわ」

水都「でも……」

水都は言い淀む。

正直、諏訪はもう限界が近い。

4つあった結界の要である御柱も、その内2つがすでに破壊されてしまっている。

歌野はかなり頑張っているけれど、3つ目が破壊されるのも時間の問題だろう。

そして、結界が破壊されれば安住の地は無くなる

出来るならここから出て新しい場所を探した方が良い

昔の神託では、国土を取り戻していけるという話だったけれど、

でも、もう、そんな希望が残されているようには見えない

水都「とりあえず、みんなを集めて四国への移住について話してみよっか」

歌野「そうね、そうしましょう」

病室と言うのもあって、歌野は少しトーンダウンして同意すると

陽乃を見て、目を細めた

歌野「乃木さんからは、とってもデリケートって聞いてたけど想像以上ね。本当に戦えるの?」

杏「一騎当千の力はあるんです。ただ、その分の負荷が重くて無理すると今回みたいになっちゃうみたいで」

歌野「そっか、まぁ回復するまでは安静にしてて貰った方が良いわね」
715 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/25(木) 20:54:48.17 ID:M/BybS93o

球子「そういえば、若葉からどんなふうに話を聞いてるんだ?」

歌野「近々、四国の勇者がそっちに行くと思うから、受け入れてやって欲しいって言われたわ」

歌野はなぜだか困った様子で、水都を一瞥する

球子「何か問題があったのか? 来たらダメだったとか」

水都「えっと……そう言うわけじゃないんですけど」

水都も少し困惑した様子で、

小さくため息をつくと姿勢を正して……視線だけは下向きだった

水都「その連絡が今日の定時連絡で来たばかりだったので、数日後かと思ったんです」

歌野「今日出発だから、5日くらいかかるかもって話だったのに当日中でしょ? もう、何が何やら」

球子「あぁ……」

杏「それはそうですよね……」

その最速到達の理由は、陽乃の九尾だ

瀬戸大橋方面から結界外に出て分かったことだが、

まず車での移動は無理だ

飛行機などでなければ、道中で動けなくなる。

仮に飛行機があっても、軍用のなにがしかでもなければバーテックスに撃墜されかねない

つまり、1日2日で到達するには勇者であっても不眠不休でなければならない

それを、陽乃達は半日で踏破したのだから驚くのも無理はなかった。

杏「それも、久遠さんのおかげなんです。力の一つを使って、ここまで運んでくれました」

歌野「それなら――」

杏「いえ、数人しか運べないと思います。さすがに数十人一度は……」

歌野の言葉を遮って、杏は首を振る

九尾に全員を一度に運んでもらうのは不可能だ
716 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/25(木) 21:07:07.03 ID:M/BybS93o

歌野「無い物ねだり。ね。それと周囲にバーテックスが展開してるって言うのが気になるわね」

杏「もしかしたら、総攻撃をしかけてくる可能性もあります」

球子「久遠……ん、陽乃が万全なら、総攻撃だろうと凌ぎきれる可能性はある」

水都「でも、この人は力を使う負荷が重いんですよね? だったら……あてにはできないんじゃ」

水都の言い分はもっともだ

いや、戦力としては十分に宛に出来る

陽乃が本気を出してくれるなら、もしかしたら一人で総攻撃を耐え凌いでくれる可能性だってなくはない。

けれど、その場合は確実に陽乃が死ぬ。

総攻撃において陽乃にどれだけの負担がかかるのかは分からないが、

それでもかなりの重症に陥るのは免れないと言える

球子「昨日、すでに疲れ切った状態だったからなぁ……それがなければここまでじゃなかったと思うぞ」

杏「諏訪への攻撃の程度を知りませんが、通常の襲撃は私たちで対処して久遠さんには総攻撃まで大人しくして貰うべきだと思います」

歌野「今までも私一人だったし、3人に増えるならもうイージーね。それもベリーな」

簡単なことだと歌野は笑って言うが、水都は少し怪訝そうな表情を浮かべていた。

歌野は実力がある

もちろん、実績だって申し分ない

しかし、それでもバーテックスの襲撃によってそれらが破壊されないとは限らないのだ

ネガティブなのは分かっている。

水都「あんまり過信しちゃだめだようたのん。何があるか分からないんだから」

けれど、不安だった

それは杏と球子の二人が戦力として加わってきてくれても拭いきれない。
717 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/25(木) 21:16:30.39 ID:M/BybS93o

√ 2018年 8月9日目 夜:諏訪

↓1 コンマ判定

0 00 最悪
1、7、4 お目覚め
3、6、2 歌野
5、9、8 球子

※ぞろ目特殊(00以外)
718 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/25(木) 21:18:08.54 ID:bZyNQFZaO
719 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/25(木) 22:01:45.66 ID:M/BybS93o

√ 2018年 8月9日目 夜:諏訪


陽乃「う……げほっ……けほっ……」

目を開くよりも先に、咳き込む

喉の奥から血があふれ出して、

真っ白な枕を汚す代わりに酸素マスクの中を赤黒く満たしていく

身体の内側から感じる熱い痛みは変わらず、

一度咳き込めば、その反動でナイフがより深く刺さったかのように痛みが増す

陽乃「あ゛っ……い゛っ……ぁっ……ごぷっ……」

手が動かない

足も動かない

吐血する体の痙攣だけが、しばらく続いて

すぐそばにあった心拍数を計測する機械がけたたましくアラートを発する

陽乃「っ……こ、こって……」

血の匂い、血の味、霞む視界

自分の居場所でさえまともに理解も出来ないまま、

慌ただしい足音が部屋に駆け込んでくるのをただただ聞いていることしかできなくて。

「久遠さん? 久遠陽乃さん?」

陽乃「ぅ……」

看護師らしき人の呼び声にも、返せる言葉がなかった
720 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/25(木) 22:37:34.17 ID:M/BybS93o

目を覚ましてから1時間ほど経過した頃、

医師による処置と検査を終えた陽乃は、体を起こすことが出来るくらいには回復していた。

ベッドから降りた途端に膝から崩れ落ちるくらいには、力を失っているけれど。

「こちらをどうぞ」

看護師から渡されたお茶を飲み、

陽乃はふっと一息ついて、もう一口

「喉の痛みはどう?」

陽乃「少し、痛むけど」

「声も少し枯れているわね……」

看護師は心配そうに言うと、陽乃の前髪の部分を払う

看護師の女性は陽乃よりも二回りほど年上だ

子供がいれば、陽乃と同じほどの年齢でもおかしくない

だからか、看護師の瞳はとても優しいものだった

「声は極力出さないようにね。でも、咳き込むのを我慢したらダメよ?」

陽乃「あり……っ……げほっ……」

「……ごめんなさいね」

話しかけてしまったせいだと、

看護師は申し訳なさそうに陽乃の背中を撫でる
721 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/25(木) 23:14:10.29 ID:M/BybS93o

「そうそう。今はまだ万全ではないから、他の勇者様は呼んでいないの」

陽乃「ん……」

陽乃が目を覚ましたことについてはすでに連絡しているのだが

動けない上に長く話せない陽乃を友人に囲ませるわけにもいかない為

早くても明日の面会にして貰うようにしていた。

それで来られないみんなが、

陽乃には会いたくないなんて勘違いされてはと、看護師は説明をする

「だから、安心してね」

陽乃「………」

ここは四国ではなく、長野だ

3年前の大規模な襲来によって

四国から諏訪への連絡手段は勇者間の連絡を除いて、喪失している

そのため、

久遠陽乃と言う人物が一体どのような人間なのか

そして、四国ではどのような境遇にあるのか

そういった情報は一切伝わってきていない

だから……陽乃に対しても敵意も憎悪も、警戒心さえもない

そしてなにより、好意的だ

「あまり無理してはいけないわ」

陽乃はそれに言葉を返すことなく頷く

礼は言いたいけれど、言って咳き込めば心配させるだけだ

「今日はゆっくり寝るのよ? 無理にでも眠らなきゃだめだからね」

そう言って陽乃から離れた看護師の女性は、

出る前にもう一度陽乃に目を向け、手を振って出ていく

本当に、好意的だ


1、休む
2、九尾を呼ぶ
3、体を動かす

↓2
722 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/25(木) 23:15:46.95 ID:E/FBUjIiO
1
723 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/25(木) 23:19:10.32 ID:lpmF/gAP0
1
724 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/25(木) 23:20:48.71 ID:M/BybS93o

ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
725 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/25(木) 23:24:56.76 ID:bZyNQFZaO

陽乃さんにとってはやっと楽園にたどり着いた感じがする
あとは元気になってうたのんと対面したいな
726 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/26(金) 00:12:43.27 ID:grRhFOLYO

今はとにかく体調戻さないとな
727 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/26(金) 20:04:58.62 ID:i2IEf3Bco
では少しだけ
728 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/26(金) 20:05:37.83 ID:i2IEf3Bco

看護師が病室からいなくなると、途端に静かになる

目を覚ましはしたがろくに動く事が出来ず、

また悪化するかも分からないため、

ベッドサイドモニタが稼働している電子音は相変わらず聞こえているが。

陽乃「はぁ……っ……」

意識していなくても口の中に溢れてくる唾液

それを飲みこむと、動く喉の痛みにえづきそうになる

陽乃「………」

看護師はゆっくり寝るべきだと言っていたし、

処置と検査を行ってくれた医師からも、暫く安静にしているようにと言われた。

そのあとでベッドから降りようとして膝から崩れ落ちたので、

本当に何にもできない

球子達勇者のみんながお見舞いに来ることが出来なくても

陽乃の傍には常に九尾がいる。

姿を出させるのは力をより多く使う必要があるために出来ないが

影の中に潜む九尾と話をするのは可能だ。

とはいえ、それも今は声と喉の調子が悪くて出来ない。

やっぱり寝るしかないかな。と、陽乃は目を瞑る
729 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/26(金) 20:13:31.12 ID:i2IEf3Bco

3年前、陽乃は護るために力を得て多くを失い、けれども必死に守れるだけを守った。

まだ小学生の小さな手を伸ばし、

取りこぼしてしまったいくつもの命を目の当たりにして傷つきながら、苦しみながら

それでも、今やれるだけのことをやろうともがいて、もがいて――そうして、生贄になれと捧げられた。

仲の良かった従姉妹が目の前で喰い殺され、庇ってくれた父が殺され、

ただ一人、母だけしかその手の中には残らなかった。

命懸けで母を守り、戻った世界は陽乃を受け入れなかった。

それは、陽乃が多くの命を取りこぼしてしまったからだ。

目の前で頭部をかみ砕かれた女性を救えていれば、

伸ばされた手を取り引き出すことが出来ていれば、

もう少し早くたどり着き、人間を食い荒らすバーテックスが落ちるよりも先に手を打てていれば

きっとそうはならなかったはずだ。

陽乃「っ……」

それは無理な話だ。

出来たかもしれない。なんて話ですらない。

努力と運があっても、それはどうしようもなかった話だ。

たった一人で四国という、一人には広すぎる地を駆けまわっていたのだから。

けれど――化け物を殺せる化け物にはそれが出来たはずだと誰かが言った。

なぜ、どうして、と……恨みが生まれた。

生贄を拒み、母と共に生き残ったことが人類への裏切りとされ、

それこそが惨劇の引き金であると言われ、憎まれ、疎まれ、死を願われるようになった。
730 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/26(金) 20:30:15.39 ID:i2IEf3Bco

その一方で諏訪にいる人々はこれからの陽乃が何かをしでかさない限り、

その存在を疎むことも憎むこともない。

けれど、この諏訪という小さな世界はもうじき壊れてしまう。

九尾の力のおかげか

それとも、今すでに満身創痍に陥るほどに身体が神の祟りに冒されているからか

諏訪を守る結界がどれほど傷つき、脆くなっているのかが感じられる。

球子と杏の二人が参戦することによって、

一回一回の襲撃による被害は大幅に軽減されるはずだけれど

だとしても少しずつ傷ついていき、やがて一つ、また一つと御柱は砕けて侵入を許すことになる

正直に言ってしまえば、

陽乃は四国に母を残しているという一点を除いて、戻る理由がない。

一度は許しかけた大社も、人一人殺めたとあってはついに許しておくことが出来なくなっただろうし、

人々に蔓延していた言われもない憎悪はその事実を持って真実となり、陽乃を潰しに来ることだろう。

味方であるべき勇者だってそうだ。

若葉は迷っている

けれども、千景は"殺すべきだった"と激怒しているはずで、

人を殺めた陽乃を、高嶋友奈は止めないわけにはいかないと考えている。

話しが聞きたい。なんて言いながら陽乃の前に現れて立ち塞がり、何が何でも連れ帰ろうとするはずだ

だから、きっと。

願い、叶うのであればこのまま諏訪に永住するのが陽乃にとって最も幸せな道なのだろう。
731 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/26(金) 20:48:38.57 ID:i2IEf3Bco

諏訪は陽乃にとって、守るだけの価値がある世界だと言えるかもしれない。

けれど、それを守れるだけの力があると陽乃は思えない。

誰一人として死なせることなく、守り抜くだけの力があるとは思えない。

だから陽乃は自分を勇者とは言いたくないし、人々を守るだなんて口が裂けても言いたくはなかった。

約束しなくても、守れなければ恨まれる

なのに、約束なんてしてしまったらより一層その怒りが強くなるからだ。

医師の男性も、看護師の女性も

みんながみんな陽乃を気遣い、優しく接してくれた。

大社に軟禁されていた時とはまるで違って、一人の人間として扱ってくれていた

それが一変してしまう可能性だって秘めている。

陽乃「ぅ……うぅ……」

陽乃は "守れないのが怖くて" 仕方がなかった

この場所は間違いなく、守っていきたいと思える世界だ。

けれどそれを守ることができなかった時が、たまらなく恐ろしかった。

手のひらを返され、お前のせいだと憎まれ、恨まれ、悪意をぶつけられるのが怖かった。

一度経験してしまった恐怖を、陽乃は忘れられない。

人々から向けられる憎悪と悪意

それの宿った瞳を忘れることが出来ない。

初めから嫌ってくれていれば、それで終わる。

互いに何もなければ、守れても守れなくても傷なんて負わないからと誤魔化せるから。

だから、陽乃は決して人を近づけたいとは思わなかった。

今までも、これからも。

陽乃はそう思いながら、固く目を瞑る

寝よう、寝ようと……必死に、目を閉じ続けた
732 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/26(金) 21:03:20.57 ID:embYSk5cO
病んでるなぁ…
733 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/26(金) 21:08:01.00 ID:i2IEf3Bco


↓1コンマ判定一桁 歌野

↓2コンマ判定一桁 水都

※ぞろ目2倍
※絆値+(初期40)
734 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/26(金) 21:08:59.64 ID:embYSk5cO
735 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/26(金) 21:10:13.66 ID:sON9xrkU0
736 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/26(金) 21:14:54.72 ID:i2IEf3Bco

1日のまとめ(四国組)

・ 乃木若葉 : 交流無()
・上里ひなた : 交流無()
・ 高嶋友奈 : 交流無()
・  郡千景 : 交流無()

√ 2018/08/09 まとめ

 乃木若葉との絆 62→62(普通)
上里ひなたとの絆 56→56(普通)
 高嶋友奈との絆 52→52(普通)
  郡千景との絆 21→21(険悪)


1日のまとめ(諏訪組)

・ 白鳥歌野 : 交流無()
・ 藤森水都 : 交流無()
・ 土居球子 : 交流有(遠征、九尾、戦闘、体調不良)
・ 伊予島杏 : 交流有(遠征、九尾、戦闘、体調不良)
・   九尾 : 交流有(遠征、九尾、戦闘、体調不良)

√ 2018/08/09 まとめ

 白鳥歌野との絆 44→44(普通) 
 藤森水都との絆 52→52(普通) 
 土居球子との絆 55→55(普通) 
 伊予島杏との絆 62→62(普通) 
   九尾との絆 63→63(普通)
737 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/26(金) 21:19:53.76 ID:i2IEf3Bco

√ 2018年 8月10日目 朝:諏訪

01〜10 球子
21〜30 水都
41〜50 杏
81〜90 歌野

↓1のコンマ

※それ以外は通常
738 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/26(金) 21:21:26.52 ID:sON9xrkU0
739 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/26(金) 21:53:50.34 ID:i2IEf3Bco
√ 2018年 8月10日目 朝:諏訪


一定のリズムを刻む電子音を聞きながら眠り、

その音を聞きながら目を覚ます。

クリーム色に近い病室の天井を眺めながら、ゆっくりと手先足先へと意識を向けていく

昨夜は上手く伝わりきらなかった感覚も、今は伝わっている

陽乃「っ……」

布団の中から手を出して、顔の前に掲げる

第二関節まで曲げると、震えてしまう

感覚はあるが、力がまだうまく入らないのだ

陽乃「こんなじゃ、戦うなんて不可能ね……」

九尾の力をもってすれば、

こんな感覚なんて無視して戦うこともできるだろう

けれど、その負荷は積み重なって

二度と体が動かなくなる可能性もあるわけで。

今はまだ、そこまでする必要もないだろうと陽乃は布団の上に手を落とす

陽乃「………」

すぐそばのベッドを動かすリモコンを手に取って、上半身を起こしていく

枕を腰のあたりに下げて、支えにする

足を動かすこともできるけれど、骨が軋むような感じがする

冬場の厚い布団だったら、身動き一つ出来なかったかもしれない
740 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/26(金) 22:27:22.76 ID:i2IEf3Bco

部屋は昨日の夜と同じように静かだ

ただただ、電子音が聞こえるだけの病室

外から入り込む虫の声はあるけれど、それくらいしかない。

端的に言ってしまえば、手持ち無沙汰だった。

陽乃の手元には本もスマホもないし、

病室にはもはや役立たずとなったテレビが設置されているわけもなく。

そもそも、本もスマホも今の陽乃は持っていられない

陽乃「……」

昨日の夜、看護師の女性は目が醒めた連絡だけはしたと言っていた。

時間と陽乃の容態を見て、昨日は様子を見に来ないようにとも。

なら、朝になったら来てくれるものではないかと思うけれど――

陽乃「別に、来なくていいけど」

諏訪の勇者である白鳥歌野

そのサポートを担当しているらしい、藤森水都

2人にはもう、会ったのだろうか。

どこまで話して、どうなっているのか。

陽乃は考えて、息を吐く。



1、九尾を呼ぶ
2、寝ておく
3、イベント判定


↓2
741 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/26(金) 22:35:09.55 ID:sON9xrkU0
1
742 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/26(金) 22:36:08.65 ID:embYSk5cO
1
743 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/26(金) 22:57:23.15 ID:i2IEf3Bco

では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば、お昼ごろから
744 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/26(金) 23:06:12.82 ID:embYSk5cO

意外にもうたのんよりみーちゃんの方が絆値高くなるとは…
しかし陽乃さん人どころか自分の力すら信用してなくて精神的に深刻だな
745 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/27(土) 00:16:03.57 ID:X3Q55+lLO

相変わらずメンタルが不安定だなあ
746 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/27(土) 13:47:30.95 ID:FPyLwFj9o

では少しずつ
747 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/27(土) 13:48:29.45 ID:FPyLwFj9o

陽乃「九尾、いるんでしょう?」

横に伸びる影に向かって声をかける

そこには誰もいないけれど、潜んでいる

陽乃「姿を見せなくてもいいから、色々聞かせて欲しいのよ」

枕元の自分の影を撫でると、

ひそかに揺れて、人の形から狐の形へと歪んでいく。

差し込む光がそうさせているのではなく、九尾が混じっている証拠

『良いのかや?』

陽乃「うん。少しくらいなら話しても問題なさそうだし」

『ふむ……まさか主様があそこまで貧弱とは思わなかった』

陽乃「疲れが溜まってたのよ……たぶん。違うの?」

『いかにも』

そもそも、

かの神―伊邪那美命―を顕現させたことによって、陽乃は体の内側がボロボロになっていた。

それをまた陽乃が持つ別の力を用いて強引に治癒能力を高めて癒したのだ。

ただそれだけの身体で、逃亡し、たった一日休んだだけでの遠征

九尾を呼び続け、力を纏って戦ったのだから

運が悪ければ、癒したばかりの身体の内側がまた酷いことになる可能性があった

そして、

その最悪の結果……いや、最悪の一歩手前になってしまった
748 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/27(土) 14:12:08.19 ID:FPyLwFj9o

『数日はおとなしくしておく方が良い』

陽乃「そんなに?」

『拳も握れぬ体で、何を成すというのかや?』

陽乃「それはそうなんだけど……」

九尾の声を聞きながら、もう一度手を上げてみる

握りしめるほどの力は出なくて、

球子に押し倒されたときよりもさらに衰弱しているのが分かる

あの時は若葉からの逃走劇なんて言う茶番もあったが

今の状態で窓から飛び出したら受身も取れずに骨折の一つや二つは免れなかったかもしれない。

『昨夜、主様が眠っている間に小娘共が四国への移住を提案しておる』

陽乃「そう……で、答えは?」

『諏訪の娘どもでは決められぬと、言うておったのう』

陽乃「それはそうよね……」

当たり前と言えば当たり前の話だ

歌野がこの場を離れてなお結界が残ったとしても、それを守る人がいなければ容易くバーテックスに食い潰される。

そうなったら、ここに残った人々は殺されてしまう。

だから、歌野は人々の話を聞く

自分が行くからついてこいだなんて、言わない

『良いのかや? あの国に戻る理由など、主様にはなかろうて』

陽乃「お母さんがいるわ」

『あの国に戻るほどの理由では無かろう』

疎まれ、憎まれ、呪われ、虐げられるだけの場所

母がいるというのは、そこに戻るだけの理由にはならないだろう、九尾は考えている。

だが、九尾からしてみれば戻ろうと戻るまいとどっちでもいい

害になる何かしらがあるのなら、排除するだけである。


1、ねぇ。結界はどうにかできる?
2、白鳥さんを呼んでくれない?
3、この体、もう少し早くどうにかできない?
4、みんなが戻りたいって言うなら、戻るしかないでしょうね


↓2
749 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/27(土) 15:05:43.58 ID:EjDNhoNRO
2
750 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/27(土) 15:08:05.82 ID:AteTOpZkO
2
751 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/27(土) 17:42:40.23 ID:IasRBKWBO
752 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/27(土) 17:49:34.69 ID:FPyLwFj9o

陽乃「ねぇ、白鳥さんを呼んできてくれない?」

『何じゃ。見舞わぬのが気に入らぬのかや?』

陽乃「違うわよ。話、しないといけないでしょ」

球子たちがある程度話してくれてはいるみたいだけれど

陽乃も話しておく必要がある。

球子と杏は陽乃のことについて話していないようだし、

それどころか、四国移住についての話を進めている。

そうするというなら、陽乃にはどうしようもないけれど。

結界についてや、今までの戦い

これからのことなど、

色々と聞いておきたい話もある

陽乃「呼ぶのが難しければ、別に良いのだけど」

『ふむ……呼ぶこと自体は容易じゃな』

陽乃「なら、お願い」

『うむ……よかろう』

陽乃の影が揺れ動いて伸び、

そうして、ゆっくりと薄れて消えていく
753 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/27(土) 18:01:57.18 ID:FPyLwFj9o

九尾の影が離れてから、

歌野が陽乃のもとに来るまで、時間はほんの数十分しか掛からなかった。

陽乃「九尾……また余計な事……」

自然の声に満ちていた病院の外が急激に騒がしくなり、

病院の中にまでその喧騒は広がって、

そうして――なぜか、水都が歌野の腕を掴んで病室へと引っ張りこむ

水都「連れてきたよ!」

歌野「み、みーちゃんったら……一体全体、どうしたの?」

驚きに戸惑い、肩で息をする歌野と、

凄く張り切っている、諏訪の巫女である藤森水都

水都は陽乃の方を見てとても嬉しそうに手を振っているけれど、

陽乃は、初対面だ

陽乃「えぇっと……」

水都「初めまして、藤森水都です!」

歌野「みーちゃん……なんか、変よ? 大丈夫、えっと……何かあった?」

陽乃「……私が呼んできてってお願いしたの」

とっても元気な水都を一瞥した陽乃は、

困惑を隠せない歌野へと目を向けて、ため息をつく

どれだけの付き合いがあるのかは知らないけれど

藤森水都と言う人物の言動に、白鳥歌野が違和感を覚えているのだとしたら

それはきっと、間違っていない

歌野「呼んできてって……」

陽乃「九尾。貴女、藤森さんの観察不足だわ」

水都「え〜? そうかな? うたのんと二人きりの時はこんな感じだったと思うんだけど」

歌野「ノーよ! 全然違うわ!」

水都「そっかぁ……でも、連れて来れたから、オッケーだよね?」

呼ぶこと自体は容易とは、よく言ったものである
754 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/27(土) 18:16:16.52 ID:FPyLwFj9o

お茶らけた様子なのは、本当に藤森水都なのか

それとも九尾の悪ふざけなのか、

頭を痛めているような歌野を見た陽乃は、後者だと察して首を振る

陽乃「九尾、もういいから戻って」

水都「何か必要なことがあったら、呼んでねっ!」

そう言い残して、

瞬く間に消えうせる水都を横に見た歌野は、呆然として

おもむろに、陽乃を睨む

歌野「みーちゃんは? 本物のみーちゃんはどこ!?」

陽乃「家にいるか、どこかのお店にいるか、お手洗いか……とにかく、どうにもなっていないはずよ」

歌野を呼んできてとは言ったけれど

こんなやり方をされては、話がこじれるどころの問題ではない

陽乃「大丈夫だから、ほんとうに」

歌野「………」

歌野はしばらく疑わしそうな目をしていたが、

少し考えこんで、軽く頷いてくれた

厳しい表情は、変わらないが。

歌野「あれが、えぇっと……久遠さんの力なの?」

陽乃「私と言うより、私の精霊……って言えばいいかしら。その力ね。惑わすことに長けているのよ」

若葉達がされているように、神々からの加護とは言えない為、

一先ずは精霊として説明する。

ひなたは神獣の類と言っていたので、神の御使いと言っても良かったかもしれない。
755 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/27(土) 18:31:22.30 ID:FPyLwFj9o

歌野「……体は、もう?」

陽乃「万全とは言えないけれど、話すくらいは問題ないわ」

長々と話し続けると、

また喉の奥に違和感を覚えて吐血するかもしれないけれど

そう易々と血を吐いたりはしないはずだ

……たぶん。

陽乃「朝のうちに面会に来ると思っていたけど、来なかったから呼ばせて貰ったんだけど……平気?」

歌野「ん〜……平気、と、言えば平気。かしら。色々やりたかったこともあったけど」

そう零した歌野は、

別に久遠さんに会いたくなかったわけじゃない、と、首を振る。

歌野「昨日の夜、目を覚ましてもまだ予断を許さない状態だって言うもんだから、早くてもお昼の方が良いと思ってたの」

陽乃「そう……まぁ、別に来なくても良かったんだけど」

歌野「そんなわけにはいかないわ……久遠さんも、勇者なんでしょ?」

陽乃「さぁ? 戦う力はあるけど……勇者かどうかは微妙なところね」

歌野「え?」



1、それで、これからはどうするの?
2、現状を教えてくれる?
3、私、四国には戻るつもりはないわ
4、ここは、守っていけそうなの?
5、私を戦力として数えるのだけはやめて頂戴


↓2
756 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/27(土) 18:43:11.09 ID:QKq5+CeuO
1
757 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/27(土) 18:45:20.96 ID:slGjnfDG0
2
758 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/27(土) 19:06:13.52 ID:FPyLwFj9o

陽乃「とりあえず、現状について聞かせてくれる?」

歌野「そうね……簡単な説明になっちゃうけど……」

土居さん達に説明したのと同じような話になると前置きした歌野は、

今の四国の現状について、改めて陽乃に話して聞かせた。

元々は4つだった結界の御柱も、今は2つまで減少し、

すでに結界は諏訪湖の東南の一帯を守るのがやっとの状態であること

住民の規模は数十人程度と非常に少ないこと

襲撃は日に日に厳しさを増してきており

近々3つ目の御柱も破壊されてしまう恐れがあること

外部との連絡は、勇者が用いる通信設備でのみ可能であること

それもやや不安定になりつつあること

今は自給自足でどうにか生活を続けていることなど、

四国と比べて、非常に厳しい現実にあることを、歌野は話してくれた。

どうにか明るくしようという声色ではあったが、

その瞳が陰っているのを陽乃は見逃さなかった

陽乃「ならやっぱり、ここの維持は難しいのね」

歌野「ええ。みんなが協力してくれたとしても、日に日に力が衰えていっているらしいから……たぶん」

陽乃「ここで死にたいって人はいるのかしら」

歌野「必ず助かる保証があるわけじゃない。助かっても、すべてを捨てていかないといけない。それが嫌だって人は、やっぱりいるわ」

今なお生きている人の中には、

この地で、大切な人を喪い、弔っている人もいる。

どうせ死ぬなら、そんな相手の眠る場所でともに眠りたいと願うのは、

無理もない話だと歌野は思う。
759 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/27(土) 19:06:48.11 ID:FPyLwFj9o

では少し中断いたします
再開は21時頃からを予定しています
760 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/27(土) 19:23:35.09 ID:slGjnfDG0
一旦乙
流石に諏訪に残るのは無理そうだな
761 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/27(土) 21:41:56.54 ID:FPyLwFj9o

陽乃「そういう人もいるのね」

歌野「久遠さんは、違うの?」

陽乃「違うかもしれない」

陽乃に残っている大切な人は、母親だけしかいない。

母親は四国に骨を埋めることになるだろうけれど、

陽乃は特別、そうでなければいけないだなんて思わない。

あんな場所に骨を埋めたくない

あんな場所で自分のお墓を立てたくない

自分のいなくなったあとのそれが、ハンマーでたたき壊されてしまいそうで。

そうなったら、一緒に眠るかもしれない母が可哀想だ

陽乃「ひっそり、どこかで朽ち果てるのも悪くないって思ってる」

歌野「そんな、怖いこと言わない方が良いわ」

陽乃「本気よ」

歌野「………」

陽乃「そう、まじまじ見つめても。本気なのは変わらない」
762 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/27(土) 21:49:58.01 ID:671IIM9qO
お母さんまでいなくなったら本格的にヤバい…
763 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/27(土) 22:28:54.38 ID:FPyLwFj9o

歌野の視線は訝しむようなものではなく、

とても心配してくれているものだった。

陽乃が演技派の少女でなければ、

今浮かべている笑みは本物だということになる。

本気で、

人知れず朽ち果てることを考えていると言うことになる。

それは、あまりにもあんまりだ。

陽乃「そんな顔、させるつもりはなかったのだけど」

歌野「久遠さん……」

陽乃は優しい勇者を一瞥して首を横に振る

その優しさは、有難迷惑だった

歌野「久遠さん。諏訪防衛の戦いは、基本的に私達で対応するわ」

陽乃「なるほど……私の力のことも聞いたわけだ」

歌野「使えば使うほど蝕まれていくって言ってたのだけど」

陽乃「事実よ」

歌野「だったら、何か大きな戦いでない限り久遠さんは戦わないで欲しいの」
764 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/27(土) 23:04:23.99 ID:FPyLwFj9o

陽乃「2人に言えって言われた?」

歌野「ううん……久遠さんの惨状を見て聞いた」

陽乃が着ていた服を血塗れにし、それでもなお吐血している姿を見た

その始まりを目撃してしまった住民の話を聞いたりもして

それがどれだけ酷いものであるのかを知った

あれは、些細なことで起こっていい現象ではない

陽乃「あのおじいさん、トラウマになってたりしない?」

歌野「ええ、大丈夫だったけれど……凄く心配していたから目を覚ましたって教えたら凄く安心していたわ」

凄く、凄く。

それがもしも、四国の人だったなら。

陽乃が吐血しての入院は吉報で、

回復してしまったことは凶報となったことだろう。

歌野は小さく笑って、陽乃の震えている手を握る

歌野「私も……凄く心配したわ。もちろん、みんなも」

陽乃「私、貴女にとってのヒーローか何かなの?」

歌野「どういうこと?」

戸惑う歌野から目を背けて、目を閉じる

陽乃「ちょっとだけ、貴女が小説のヒロインの立場に思えただけ」

歌野「あははっ、なにそれ! 久遠さん、ユニークね!」
765 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/27(土) 23:45:13.89 ID:FPyLwFj9o

歌野はとても明るい性格だった。

球子に通じるものがあるほどの賑やかさ

けれども、いや、球子もそうだが

陽乃のことを気遣って、大騒ぎと言うレベルには達しない

歌野「お願いね」

陽乃「いずれにしても、暫くは何にもできないわ」

手を握り返せないし、

ベッドから降りて歩いていくこともできない

それだけ衰弱しきってしまった体

意識があって、言葉を発せて、温かくて、中身が綿以外のもので。

そんな違いがあるだけの、人形のような何か。

なんて……言ったら怒られるだろうか。

陽乃「大人しくしておくから安心して」

歌野「治ってもよ」

陽乃「……それは、あなた達の頑張り次第だと思うわよ」

陽乃はそう言って、小さく息を吐く

そんな、疲れを感じる陽乃を歌野は優しく見守る

歌野「さっきの、良く分からないけど……でも、久遠さん達は私たちのヒーローだと思うわ」

独りで守らないといけなかった3年間

ずっとこのままで、最終的には壊されてしまうのではないかという不安が無いと言えば嘘になる。

だから

歌野「来てくれて、嬉しい……ありがとう」

歌野は気遣いではなく本心で、そう言った。
766 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/27(土) 23:47:04.32 ID:FPyLwFj9o

√ 2018年 8月10日目 昼:諏訪

01〜10 球子
41〜50 杏
81〜90 水都

↓1のコンマ

※それ以外は通常
767 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/27(土) 23:48:07.99 ID:671IIM9qO
768 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/27(土) 23:53:35.15 ID:FPyLwFj9o

ではここまでとさせていただきます
明日も可能であればお昼ごろから
769 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/28(日) 00:02:27.54 ID:G4/m29cSO

うたのんの暖かい言葉を聞くと諏訪の人たちを是が非でも助けてあげたくなるなぁ
それにしても先祖も子孫もベッドの上で満身創痍な場面が多いこと多いこと
770 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/28(日) 06:41:18.61 ID:cUdHBzkQO

四国をあんな場所と呼ぶとは相当トラウマになってるな
771 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/28(日) 17:33:14.63 ID:iWKJhhBSo

では少しだけ
772 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/28(日) 17:33:56.76 ID:iWKJhhBSo
√ 2018年 8月10日目 昼:諏訪


連行されてきていた歌野も畑の手入れの続きをしなければいけないと席を外して、また一人

もしあれならほかに人が来るまで一緒にいてくれると言ってはいたけれど、それは断った

他にやることがあるなら、そっちを優先して欲しいと言ったのは陽乃だ。

歌野は優しい

球子たちと同じように、陽乃を気遣ってくれている

でもだからこそ、

陽乃にはそれが重かった

その優しさを与える理由に、自分が値するだけの何かを差し出せるとは思えない

歌野は、小規模の戦闘には参加しなくていいと言ってくれた

大規模な……それこそ総攻撃レベルの戦いの為に温存しておきたいらしい

陽乃「過度な期待は困るのだけど……」

総攻撃であっても、

陽乃がいればどうにかなると思われているのだとしたら、

それは誤解だとはっきり断じておくべきだろうか。

全力で力を使えばそれなりの貢献は出来るだろうけれど、

そこまで大きな期待をされても困ってしまう
773 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/28(日) 17:47:13.94 ID:dhmr8vcEO
きてたか
774 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/28(日) 18:36:27.82 ID:iWKJhhBSo

諏訪の結界は残り二つ

一つが壊されても、もう一つが壊されなければ完全な侵攻にはならないらしいけれど

一つ壊されたら結界の範囲はまた小さくなる

自給自足の生活をしている諏訪の住民にとって

生活区域がまた狭まるというのは死に直結するような問題だろう

なによりここまで来て

さらにバーテックスの侵攻を許してしまうという精神的なダメージは許容できるものではないと思う

それを考えると、

諏訪の住民は決死の思いで四国に逃げると考える可能性はある

ここで死ぬつもりの人々と

四国に行く人々

そう別れることになったら、歌野はどうするのだろうか

歌野のことだ、自分は諏訪に残り

球子たちに四国に行く人々を護衛して貰おうと考えそうだと、陽乃は思う
775 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/28(日) 19:36:08.23 ID:iWKJhhBSo

陽乃「……結界は残り二つ、ね」

結界の外を見ても、

ひと固まりだけで40近い数いるバーテックスの一団がかなりの数ある

独りで防衛しきれるような数ではなかったし

あれの半分でも攻めてきていたら結界が持たなかったはず

球子と杏が参戦しても、

結界の一つが破られてしまう可能性はある

時間がない。

はたして、総攻撃までに体の調子を取り戻せるのだろうか

陽乃「結界の要がどうなってるのか知りたいけど……」

知ってどうにかできるとは思えないが、

もし本当に九尾が言うように神様に愛されているのなら、

この地域の神様にも何らかの干渉が出来るかもしれない。

陽乃「諏訪大社……諏訪大社って、祭神は誰だったっけ……」

神社の繋がりで色々と学んだ覚えはあるけれど、

それから離れて3年

色々あって、記憶があいまいだ

自力で動ければ、調べたりもできるが、今は無理だ



1、九尾を呼ぶ
2、休む
3、イベント判定

↓2
776 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/28(日) 19:37:07.44 ID:ymICilyk0
1
777 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/28(日) 19:38:02.88 ID:dhmr8vcEO
3
778 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/28(日) 19:49:00.87 ID:iWKJhhBSo

01〜10 九尾
11〜20 球子
21〜30 歌野
31〜40 杏
41〜50 水都
51〜60 看護師
61〜70 バーテックス
71〜80 杏
81〜90 ご神託
91〜00 水都


↓1のコンマ
779 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/28(日) 19:51:06.94 ID:dhmr8vcEO
780 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/28(日) 20:56:38.07 ID:iWKJhhBSo

歌野達が作ったという野菜たっぷりな病院食を食べている最中に、扉が叩かれた

「すみません、今大丈夫ですか?」

陽乃「病室を間違えていなければ」

聞き覚えのない声に答えると、

少し間を置いてから、扉が開かれる。

水都「あって、ます……えぇっと、藤森、水都です。久遠さん」

陽乃「藤森さん? 貴女、巫女なのね」

水都「は、はいっ……そうです」

巫女装束を着ているので、

藤森水都と言う少女が巫女であることは、一目瞭然だ

陽乃「何か神託でもあった?」

水都「いえ、その……うたのんから話も出来そうだって聞いたので」

陽乃「なるほどね」

巫女の正装で着たのは、自分が巫女だと分かって貰うための措置だったそうで、

歌野の畑手伝いをしてから

わざわざ一度帰宅して、身だしなみを整えてきたらしい
781 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/28(日) 22:34:06.76 ID:iWKJhhBSo

陽乃「ついて早々吐血したって聞いて驚いたでしょ」

水都「驚いたなんて話じゃなかったですよ」

陽乃と一緒にいた球子と杏は大慌てで、

最初に陽乃を見たときのお医者様は、

最悪助からない可能性があるだなんていうほどに。

だから、水都も気が気ではなかった。

水都「でも、だからこそ驚きました……あれからたった半日足らずで意識取り戻して、ここまで回復しているんですから」

陽乃「気味悪い?」

水都「いえ、凄いと思いました」

正直に言ってしまえば、異常だ

勇者の回復力は歌野の傍にいる水都は良く分かっているつもりだったが、

だとしても、その比ではない回復力だった。

出血多量によって死んでもおかしくなかったのに

もう、話せるくらいに回復している

それは、確かに気味が悪いと思えなくもない

水都「久遠さんはその回復力が、勇者としての力なんですか?」

陽乃「いえ、違うわ」

水都「誰かを癒す分、自分が傷つくみたいな力とか」

陽乃「全然、違うわね」
782 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/28(日) 23:28:04.78 ID:iWKJhhBSo

陽乃「もしそんなご立派な自己犠牲特化の力があっても、私は対象外よ」

水都「そうですか……」

そもそも

神々の力は武器に宿る

拳だったり、剣だったり、楯だったり

特定の、超常的な能力を与えるというのは普通ではない

九尾だって、陽乃に与えられた力と言うよりは

九尾自身が持っている力と言う感じだ

陽乃「……この野菜、白鳥さん達が作ってるって聞いたわ」

水都「たぶん、今朝採れた野菜だと思いますよ。新鮮なの食べさせてあげたいんだって、うたのん張り切ってたので」

嬉しそうに話す水都は、陽乃を見て少し迷う

中々上がらない手を震わせて、

どうにか握っているフォークで刺しながら食べている陽乃は

凄く辛そうに見えるからだ

野菜が嫌いというわけではないだろうが……

――カチャンッと、フォークが皿の上に落ちる

水都「あの……良ければ手伝いましょうか?」



1、大丈夫よ。気にしないで
2、じゃぁ、お願いしようかしら
3、そんなことより、神託は受けてないの?
4、貴女、白鳥さんとは仲良いの?

↓2
783 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/28(日) 23:30:20.58 ID:dhmr8vcEO
2
784 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/28(日) 23:33:12.46 ID:ymICilyk0
2
785 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/28(日) 23:44:35.94 ID:iWKJhhBSo

ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
786 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/28(日) 23:51:36.71 ID:dhmr8vcEO

こういう弱っている時こそ人を頼りにして絆を深めるのが大事だな
787 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/01(月) 02:31:55.89 ID:TCokldgN0

休まなきゃだしお話しいっぱいできるな
788 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/01(月) 20:24:24.83 ID:qnW33cAQo

では少しだけ
789 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/01(月) 20:25:02.49 ID:qnW33cAQo

陽乃「……じゃぁ、お願いしようかしら」

食事を始めてから、すでに数十分経っている

それなのに、まだ5分の1も食べられていない

フォークで刺して口に運ぶだけでも時間がかかるし、

それを咀嚼するのにも時間がかかる

手伝ってくれるというのなら、手伝って貰う方が良い

このままでは、半分も食べられずに終わってしまう

陽乃「迷惑じゃ無ければだけど」

水都「迷惑だったらそもそも言わないですよ」

皿の上に落ちていたフォークを手に取った水都は、

まだ刺さっているサラダを陽乃の方に差し向ける

陽乃は躊躇わずに咥えて、噛みしめる

水都「ゆっくり食べてくださいね」

陽乃「私なんかの手伝いしてて平気なの?」

水都「うたのんには言ってありますし、私、こう見えても巫女なので」

こう見えても何も、

巫女であるのは明白な格好をしている。

陽乃が小学生時代に見た、

友人が着ていたコスプレの巫女衣裳のような物ではない

ほんとうに、ちゃんとした装束だ

水都「久遠さんが完治するまでは、お世話させてください」
790 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/01(月) 20:31:47.21 ID:0E+tKQ8VO
久々に尊いシーン
791 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/01(月) 20:43:56.58 ID:qnW33cAQo

陽乃「本気で言ってるの? 何もできないわよ。私」

着替えも、お手洗いも、入浴も

何一つ、今の陽乃には自力で出来ない

食事だって、かなりの時間をかけなければいけない。

常人離れしている回復力とはいえ、明日には万全と言うわけにはいかないだろう。

伊邪那美命の顕現による身体的ダメージは、2日経っても完治しなかった。

それが治る前に、

上乗せで酷使したことによる後遺症は、どれだけ時間がかかるか。

水都「大丈夫です。それをサポートするのも巫女の役割なので」

陽乃「そう……貧乏くじを引いたわね」

水都「いえ、そんなことは」

水都はまだ子供で、女の子で、陽乃をどうこうできるほどの力もない。

食事を与える、着替えを手伝う……させられて、この程度だろうか。

陽乃は少し考えて、水都を見る

諏訪の勇者、白鳥歌野

諏訪の巫女、藤森水都

勇者が歌野一人であることは聞いていたが、巫女も一人きり。

大社のような組織が無いのが幸いだろう。

水都「私に出来るのは……このくらいですし」

陽乃「このくらいも、私は出来ないけどね」
792 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/01(月) 20:51:36.53 ID:qnW33cAQo

水都「あっ……っ……すみません」

陽乃「別に謝らなくていいわよ。ただの皮肉だから」

自分に出来るのはこのくらいしかない。

それは諦めと言うよりも、自信のなさの表れだろうか。

水都が嫌味ではなく、

ただ本当に自分にはそれくらいしか役立てないと思っているからこその発言だと分かっているが、

陽乃には、そんなことは関係ない。

事実、陽乃は食事さえまともにできない。

着替えも入浴も……お手洗いにだって行くことが出来ないからそれも手伝いが必要だ

水都「……」

陽乃「2人からどう聞いたのかは知らないけど、私は基本的に役に立たないって思っておいて」

水都「えっ?」

陽乃「到着早々血を吐いて気絶するし、力を使えばまた血を吐くし、治ったと思えばこんな状態だし。ね? 役に立たないでしょ?」

水都「それは……力を使ったからじゃないですか」

陽乃「使えばこうなるんだから、使えない。使えないから使えない。だから、あんまり期待しないで」

水都は陽乃のことを良く知らない

だから、陽乃が自分を気遣ってくれているのかもしれないと思うし、

そうではなく、本当に自分を役立たずだと思っているのかもしれないとも思う

表情から、その判断材料は得られない
793 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/01(月) 21:05:09.96 ID:qnW33cAQo

水都「でも、久遠さんが二人をここに連れてきてくれたんですよね?」

陽乃「連れてきたというか、付いてきたというか」

水都「どっちでも、ここに来てくれたことに変わりはないです」

ご飯をお箸で摘まんで差し出しながら、水都は言う。

水都「お陰で、もう少しだけ頑張れます」

杏と球子が歌野に協力することで、結界への影響が減らせる

球子と杏は四国の勇者であるため力の根源が違うから、

諏訪の神の力が弱くなっていても、影響がない。

被害0は出来ないかもしれないし、

このまま諏訪を残し続けることが出来るとは思っていない

それでも、歌野一人よりはずっといい

水都「久遠さんって、代償が重い分強い力を持っているんですよね?」

陽乃「普通よりは強いと思うけど……やめてよ? 期待なんて」

水都「………」

陽乃はそう言うが、

一緒に来た杏や球子は一騎当千の力があると言っていた

評価が180度変わっているから

どっちかが嘘を言っているのかもしれない。

だとしたらそれは……

水都は陽乃を見て、箸を運ぶ手を止めた

水都「久遠さん、どうして。そんなに自分を卑下するんですか?」


1、貴女に話すことじゃないわ
2、別に。事実を語っているだけよ
3、期待されたくないし頼られたくもないからよ
4、守れなかったものがたくさんあるからよ


↓2
794 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/01(月) 21:07:27.13 ID:0E+tKQ8VO
4
795 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/01(月) 21:10:29.66 ID:63WYk73N0
4
796 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/01(月) 22:05:07.34 ID:qnW33cAQo

陽乃「そうねぇ……」

別に聞かれたからと言って答えてあげる義理はない。

適当なことを言ってもいいし拒否したって良いだろう

陽乃は水都の動かない手を見て、ため息をつく

水都が手を止めたら、陽乃もお預けをくらってしまう。

陽乃「守れなかったものがたくさんあるからよ」

水都「守れなかったもの……」

水都は繰り返すように呟いて、目を伏せる

勇者である陽乃が守れなかったと言うモノ

自分を卑下するようになるような何か。

水都「………」

陽乃「そんな考えなくても、聞かれたら答えるわよ。早く食べたいし」

水都「へっ? あっ、す、すみませんっ!」

慌てて差し出してくれたおかずを咥えて、軽く噛む

思った以上に慌てさせたのか、

次を摘まんでいる水都を見た陽乃は、早めに飲み込んで

陽乃「たくさん、目の前で死んじゃったのよ……3年前。藤森さんだって経験があるんじゃない?」
797 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/01(月) 22:47:19.06 ID:qnW33cAQo

水都「それは……」

経験はある。

勇者ではなかった水都は、

目の前で襲われる人々を助ける術を持っていなかった

逃げてくる子供を庇ったりすることはできたけれど、それだけ。

けれど、水都はバーテックスを倒すことなんて出来なかった

自分には元から力の及ばないことだと諦めがついてしまっていた

でも、陽乃は違う。

守れる力があって

それでもなお、目の前で奪われてしまったのだとしたら

それは、どんなにか……

水都はそこまで考えて、歯を食いしばる。

水都は自分の弱さを知っている

いいや、自分の弱さしか知らない

水都「………」

陽乃を見る

腕は上がらず、足も動かない

咀嚼だって辛そうで、飲み物を飲むのだって一苦労

そんな状態にならざるを得ないほどの代償を払う力を持っている陽乃はきっと、

四国の勇者が言うように値千金の力を持っているに違いない

だからこそ、守れなかった後悔は重いのかもしれない。

そんな人に、口出しできるような立場では――ない。
798 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/01(月) 23:25:06.65 ID:qnW33cAQo

↓1コンマ判定

01〜52 水都「守れなかったからこそ、守れるようになるんじゃないですか?」

※ぞろ目 特殊
799 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/01(月) 23:26:25.46 ID:cpGD6QmfO
800 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/01(月) 23:36:50.99 ID:qnW33cAQo

ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
801 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/01(月) 23:52:14.44 ID:12KJDdz/O

みーちゃんがまさかの初対面からの自己主張するとは…
あと陽乃さんもだんだん反応が素直になってきた気がする
802 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/02(火) 00:29:07.85 ID:X3iVKvi+0

よくやってくれた
803 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/02(火) 20:21:31.55 ID:3VSruPD+o
では少しだけ
804 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/02(火) 20:22:19.94 ID:3VSruPD+o

水都にはバーテックスと戦うための力がない

陽乃の痛みを知らないし、苦しみを知らないし、辛さを知らない。

それと同等のものを与えられることだって、きっとない

だから、自分には何も言う資格がないことくらい分かっている。

けれど――

水都「……守れなかったからこそ、守れるようになるんじゃないですか?」

陽乃「貴女――」

水都「分かってますっ! 分かってます……ただの一般人みたいな私が、そんなこと言う資格がないってことくらいっ」

陽乃が何かを言う前に水都は遮る

叫ぶように声を張って、お箸を握りしめて、

顔を上げたいのに……上げられなくて。

あぁやっぱり、自分は弱いと思いながら……吐露する

水都「でもっ……でも……守れなかった後悔があるから、次はもう失いたくないって気持ちになるんじゃないんですか?」

それはたぶん、希望だ。

歌野が見せてくれる、勇者としての力強さ

与えてくれる勇気は野菜を育む空の輝きのように温かく、

水都にとっては、それはこれ以上ないほどに特別だった。

なのに

同じ勇者であるはずの陽乃は、しかし、そんなものは感じられない。

自分の力を信じていない。

役に立たないと切り捨てて、期待しないでと笑って、

自分は何も特別なんかではないと言い切っている。

謙遜なんてものではなく、完全に自分と言うものを認めていない。

それは……水都が自分にしているものと、ほとんど同じものだ
805 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/02(火) 20:24:35.58 ID:V+U+FMZiO
よしきた
806 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/02(火) 20:37:30.85 ID:3VSruPD+o

勇者であるはずの人が、

一般人である自分と、何も変わらないなんてそんなわけがない。

多くを守れなかったと陽乃は言った

それが嘘だとは思えない。

それで挫折してしまったのかもしれない。

だとしても――そこで折れては欲しくない。

水都「久遠さんは、本来数日かかるはずの距離をたった半日で踏破させられる力を持っているんです」

それだけじゃない。と、水都は呟く

水都「同行したお二人は、久遠さんに一騎当千の力があると言っていました」

陽乃「そんなことないわ」

水都「あるかもしれないじゃないですかッ!」

陽乃「っ……」

水都がいきり立って、テーブルが揺れる。

危うく飲み物が落ちそうになって、反射的に動いた体の痛みに陽乃は思わず呻く

そんな陽乃を水都は見て、顔をしかめて、首を振る

水都「久遠さんは、私と似てます……色々あって自信がなくて周りからの評価を素直に受け止めることもできない」

なのに、こんなことを言うなんてどうかしている

自分が信じられていないのに、ほかの人には信じろなんてあまりにも勝手だ。

けれど、でも、

同じように感じられるからこそ、水都は願わずにはいられなかった

水都「そんなままじゃ、きっと……守りたいものも守れなくなっちゃう……」
807 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/02(火) 20:47:22.13 ID:3VSruPD+o

水都は、守りたくても守れない。

勇者として戦う歌野を水都は守りたい、助けたい

けれど、そうする力が水都には与えられなかった。

向かっていく背中を見送って、

傷だらけで帰ってくる体を支えてあげるくらいしか、自分には出来ない。

その傷の治療も出来ない

歌野が言う、日常の中の一つとしてそこにいることだけが、水都の出来ること。

巫女としての役目なんて、大した内容でもない

だから、思う

水都「戦う力があるのが羨ましいです……守りたいと思えば守れる力が羨ましいです……なのに」

陽乃「………」

水都「そんなに卑屈になっている久遠さんが……妬ましいですっ!」

陽乃「……そう」

陽乃は、偶然力を与えられたわけではない

そこに力を与えてくれる何かがいて、

力を得るか得ないかを選ぶ権利が陽乃にはあった。

選ばなければ死ぬしかなかったのかもしれないが、

それでも、力を得ないという選択は、確かにそこに存在していた。

けれど、陽乃は力を得た

――なぜ?

陽乃「私に何があったかも知らないで、羨ましいだの妬ましいだの。そのお気楽な頭の方が私にとっては羨ましいわよ」
808 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/02(火) 21:02:18.24 ID:3VSruPD+o

水都「っ」

陽乃の声は、さっきまでのが猫を被っていたのではないかと思うほどに、冷たかった

言葉選びも厳しくて、怒らせたのではないかと水都が震えてしまうほど。

けれど、言っていることは間違っていないと水都は思った。

境遇がまるで違う。

多くの命を守りたくても守れなかったのなら、

それでも……なんて、立ち上がることなんて簡単な話ではない。

なにより、陽乃に何があったのかを水都は知らない。

だから、自分勝手な理想を押し付けてしまう。

水都「……でもっ……私は……」

陽乃「謝罪、しないのね」

水都「え?」

陽乃「ほんの30分足らずで貴女に3回は謝られたものだから、てっきりすぐに頭を下げるものだと思ったのだけど」

陽乃の声色は素っ気ない

知人どころか、どうでもいい赤の他人と話しているかのような感じだ。

水都は少し悩んで、陽乃を見る

水都「だって……久遠さんには自信を持って貰いたいから」

陽乃「どうして?」

水都「それは……」

陽乃「ここまで来たなら躊躇わないでよ」

一度口を閉じたのを見て、陽乃は小さく笑う。

ここで言うのを止めようが止めまいが、もう遅い

それなら言いたいことはすべて言ってしまうべきだ

何度も謝るような性格でありながら、ここまで主張したのだから。

水都「……また守れなかったら辛いじゃないですか」
809 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/02(火) 21:32:19.19 ID:3VSruPD+o

血を吐いて気を失う……そんな、命にかかわるような代償を必要とする力を使って

数日かけて来たら良い距離を、半日で突き進んできた。

それだけでなく、

3年前の大災害のことを今でも気に病んで、抱えて、苦しんでいる

陽乃は優しい人なのだろうと、水都は思う

優しいから、忘れられない

あの日に響き渡った悲鳴も、

欠損した身体の一部も

すぐそこにいた人が消え去ってしまうあの光景も

そのすべてを忘れることが出来なくて

それを救えるだけの力が自分にはあったからこそ、諦めることが出来ない

だから、期待して欲しくない

自分がそれに応えてあげられる自信がないから

その人々から伸ばされた手を全て取れる自信がないから

それらが自分の手から零れ落ちていく恐怖を、忘れられないから。

――全部妄想だ。

だけど……。

水都「自信がないと100%の力を発揮できないって聞いたことがあるので……もしそれでまた守れなかったら、久遠さんが辛いと思って」

陽乃「………」

水都「さっき、久遠さんは対象外だって言ってましたけど、久遠さんのそれこそまさに自己犠牲で成り立っている力じゃないですか」

水都は考えて、でも躊躇わない。

言いたいことは、一つだけ。

水都「久遠さんは優しい人だと思うから、これ以上……変な迷い方をして欲しくないんです」

どこまでも壊れていく可能性を水都は知っている。

歌野と出会わなかった自分の末路こそがそれだと、今もまだ恐れている

だから、水都は言う。

水都「その体を無暗に犠牲にしていく姿を、誰も見たくないと思います」


1、言ってること、全然分からない
2、優しい? 私が? まさか……
3、何も知らないくせに、勝手なこと言ってくれるじゃない。
4、そんな人、いないでしょ
5、私、人を殺して逃げてきたのよ


↓2
810 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/02(火) 21:34:05.77 ID:V+U+FMZiO
2
811 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/02(火) 21:46:10.25 ID:xZvXvhE50
3
812 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/02(火) 23:24:31.27 ID:3VSruPD+o

陽乃「何も知らないくせに、勝手なこと言ってくれるじゃない」

水都「っ!」

陽乃「貴女と私が同じ? 守れなかったら辛い? 優しい人? 馬鹿なこと言わないで」

手足が出せないのが辛いが、

寧ろ出せなくて良かったのではと、思う

出せてしまったら、

目の前のテーブルに置かれているものすべてを薙ぎ払っていたかもしれない

陽乃「私はね? 期待されたくないの。分かるでしょ? 手のひらを返されるのが嫌なのよ」

水都「手のひらを返されるって……」

悪い方向ではなく、いい方向に

評価が変わったのを実際に目にした水都は、

陽乃はその逆を経験したのかもしれないと……目を見開く

水都「久遠さん、もしかして」

陽乃「そうね。手のひら返しをくらったわ。自慢にもならないけどね」

水都「そんな……」

陽乃は笑っているけれど、

決して面白い話なんかではない

沢山のものを守れなかった

その結果、手のひら返しをくらったのだとしたら……それは

水都は首を振って、歌野のことを考える

歌野が率いてきた3年間

いつ死んでもおかしくなくて、覚悟をしてて

どんな辛い目に遭っても、人は必ず立ち上がれる。なんて志までも抱いて

だから、きっと。

水都「私達はそんなことしません……何があっても、戦ってくれたみんなのことを、絶対に責めたりしません」

陽乃「あなた一人のそれは、ここに住むみんなの言葉だって言えるの?」

水都「それは……」

言えない。

そんなわけがない

黙ってしまった水都を一瞥して、陽乃は小さく息をつく

そんな保証なんて、どこにもないのだ
813 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/02(火) 23:33:02.52 ID:3VSruPD+o

では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
814 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/02(火) 23:45:58.07 ID:V+U+FMZiO

陽乃さんのネガティブ思考がみーちゃんよりも遥かに上回ってるな
せめて明確に味方してくれてる人だけでも信じてあげて欲しいけど…
815 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/03(水) 00:40:54.32 ID:g1HXYBCH0

いろんな人にメンタルケアしてもらおう
816 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/03(水) 21:32:39.44 ID:jpagfzUMo
では少しだけ
817 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/03(水) 21:33:19.40 ID:jpagfzUMo

勝手なこと、馬鹿なこと

確かにそうだ

諏訪に構築されている結界の内部に住んでいる全員の言葉を代弁できるような立場でもない。

陽乃は手のひら返しをくらったといった。

煩わしく思って、嘘をついたのかもしれないと水都は頭の片隅に備えながらも、

それを疑ってしまったら……と、息を飲む。

水都「でも……一人くらい、自分の味方がいるって信じてみませんか?」

目を逸らす。

水都自身、まだそれを出来ていない。

唯一の友人で、味方と言える歌野の言葉ですら "歌野がいるから" と切り捨ててしまっている。

でも、それを信じられたら

歌野の言葉を信じて、少しでも自分に自信を持つことができれば

俯かずに、せめて、前を向くことができたのなら。

きっと、何かが変わるはず。

水都「伊予島さん、土居さん、うたのん……それと、私も。少ないですけど……でも、私達は絶対に責めたりしません」

水都は、真っ直ぐ陽乃を見つめる

陽乃の視線が自分へと向けられていても――逸らさない

水都「これは、絶対だって言えます」
818 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/03(水) 22:45:49.94 ID:jpagfzUMo

陽乃「………」

水都の瞳は、さっきまでと打って変わって力強い

まるで、覚悟を決めたかのよう

自分の言葉が間違ってはいないと、

みんなを信じているかのよう

陽乃「そう……」

水都「ダメ、ですか?」

陽乃「私が決めることじゃないもの。ダメも何もないわ」

水都「そういうことじゃなくて……」

陽乃が言っているのは、

責めるかどうかについてだろう。

水都が言っていることはそうではないと分かっているだろうに、

あえて、そっちを言う

水都「信じて貰えませんか?」

陽乃「貴女達を?」

水都「はい」
819 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/03(水) 23:40:54.91 ID:jpagfzUMo

陽乃はすっかり止まってしまった水都の手を一瞥して、

水都の目を見つめる。

さっきまでは伏せることもあった目は、まっすぐ見つめ返してくる

手のひらを返されるのが嫌だと陽乃が言ったから

そんなことは絶対にしないと、水都は示したいのだろう

そして、それを信じて欲しいと言う

諏訪の人は、陽乃の評判を知らない

生贄となるべきだったことも

そうしなかったから惨劇が起きたと責められていることも

人を殺してしまったことも。

陽乃「……無理よ」

水都「どうして……どうしてもですか?」

今度は、陽乃が目を伏せる

無理なものは無理だと

そう言ったところで、水都は引き下がってくれるだろうか?


1、無理だからよ
2、どうしてもよ。諦めて
3、じゃぁ……私が人を殺していても、同じことが言える?
4、貴女が何も知らないからよ

↓2
820 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/03(水) 23:42:25.45 ID:dD1iaF+3O
4
821 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/03(水) 23:43:12.83 ID:S0va8D6C0
3
822 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/03(水) 23:44:16.74 ID:jpagfzUMo

ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
823 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/03(水) 23:53:55.28 ID:dD1iaF+3O

みーちゃんが陽乃さんのために凄い踏ん張ってくれてる…
あとは真実を知ってもなお説得しきれるかだな
824 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/04(木) 01:48:03.42 ID:xHMLsfEnO

これからが本番だな
825 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/04(木) 21:36:16.76 ID:W+qS3eyUo

では少しだけ
826 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/04(木) 21:36:52.73 ID:W+qS3eyUo

正直、驚きだった。

水都は陽乃が眠っているところを見たかもしれないが、

言葉を交わすのは今日が初めてだ。

前知識も何もなく、力を使えば血を吐いて失神する役立たずだと思うべきだった

なのに、水都は執拗に詰め寄ってくる

守れなかったからこそ守れるようになる。なんて言って

羨ましいだの妬ましいだの言って

果てには自分を信じて欲しいとまで言う。

球子や杏も強引ではあったけれど、水都は少し違った強引さがある。

陽乃は溜息をついて、水都を睨む

陽乃「じゃぁ……私が人を殺していても、同じことが言える?」

水都「え……」

陽乃「守れなかったからとか、そういうのじゃなくてこの手で殺してても言える?」

水都「久遠さんが?」

陽乃「ええ。攻撃の流れ弾とかでもないわよ? ほんとうに、私の意思で人を殺したの」

水都「っ……」

嘘だと思いたい

そう思っているのが感じられるほどに困惑している水都

自分の意思で人を殺したと言われては、流石に動揺も隠せない
827 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/04(木) 21:38:04.19 ID:sFO9GHV8O
かもん
828 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/04(木) 21:52:56.68 ID:W+qS3eyUo

↓1コンマ判定

ぞろ目 または70〜80 水都「それでも、責めたりしません」
829 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/04(木) 21:55:41.70 ID:wwJ4KB0Q0
830 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/04(木) 22:01:39.08 ID:sFO9GHV8O
みーちゃん快進撃
831 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/04(木) 22:09:41.74 ID:W+qS3eyUo

水都「それでも、責めたりしません」

陽乃「は?」

水都「………」

人を殺したのが、本当のことだとして

もしかしたら知っているかもしれないけれど、

球子と杏がそれを知らないとして

それでも水都は信じたいと思った

水都「久遠さんに何があったのかは知りません。でも、だからこそ……なにか、そうしないといけない理由があったんだって思います」

陽乃「無かったら?」

水都「無かったら、久遠さんには自分を代償にするような力なんてなかったと思います」

陽乃「力を得た後に殺したのよ?」

水都「殺すような人じゃないから、勇者に選ばれて……そんな人だからこそ、人のために身を削るような力を与えられたんだと思います」

贖罪の為に、そんな自己犠牲を必要とする力を与えられた可能性だってもちろんあった。

けれど、水都はそう考えない

元から人を傷つけるような人は勇者にはなれないと信じる

水都「信じます」
832 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/04(木) 22:36:24.99 ID:W+qS3eyUo

陽乃「っ……」

諦めると思ったのに

言葉を失って、終わってくれると思ったのに

なのに、水都はより一層堂々とした態度で答えた

何も知らない

だからこそ、いい方向に考えたいから信じるって繰り返して

確かに、理由があった。

そうしなければならなかったかはともかくとして

そうしなければ別の、陽乃ではない誰かが傷ついていたかもしれなかったから。

けれど、水都は知らないはずなのだ

球子と杏から聞いていれば

ここに至るまでにそれらしい反応をしているはずだから、絶対に。

なのに。


1、馬鹿じゃないの?
2、私は人を殺したのよ!?
3、……嫌


↓2
833 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/04(木) 22:39:10.76 ID:sFO9GHV8O
1
834 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/04(木) 22:39:38.52 ID:M75hbQ1E0
2
835 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/04(木) 22:46:56.15 ID:W+qS3eyUo

ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
836 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/04(木) 22:56:10.54 ID:sFO9GHV8O

あの頑なな陽乃さんを逆に動揺させるとは…
このまま陽乃さんの心を救えるといいな
837 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/04(木) 23:04:49.81 ID:M75hbQ1E0

みーちゃんとかいうはるのんの精神安定剤
長野に来たかいがあったな
838 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/05(金) 00:56:13.17 ID:h9RbeiYZO

対応がめちゃくちゃイケメンで笑った
839 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/05(金) 20:41:59.72 ID:lJdzeDhLo

では少しだけ
840 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/05(金) 20:42:27.73 ID:lJdzeDhLo

陽乃「私は人を殺したのよ!?」

思わず声を張り上げてしまう

喉を酷使するような感情の昂りに痛みを覚えて、陽乃は顔をしかめる

陽乃「っ……げほっ……っ……げほっ」

水都「久遠さんっ!」

陽乃「触らなっ……けほっ……かひゅっ……」

水都「嫌です……」

もう迷わない。

躊躇う必要だってないと、水都は陽乃の身体を抱きしめる

陽乃の口元を拭った袖口が赤く染まっていく

水都「嫌です……ごめんなさい」

陽乃「っ……けほ……ごほっ」

陽乃の瞳に涙が浮かんでいるのは、咳き込む息苦しさからかもしれない。

けれど――

感情的な叫びは

それを携えた辛そうな表情は

水都にも無視できるものではなくて。

水都「久遠さんのことは、諦めません」

陽乃の背中を擦り、撫でて……もう一方の手でナースコールを押す

大声を出したせいではあるが、血を吐いた以上は呼ぶべきだ
841 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/05(金) 20:53:57.70 ID:Gd//VFq5O
このみーちゃん強い…
842 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/05(金) 20:59:50.93 ID:lJdzeDhLo

陽乃「ぅ……けほっ……」

水都「横になってください」

抱きしめながらベッドを操作して平らにし、

ゆっくりと陽乃の体を寝かしていく

口元を拭って、拭って、血に汚れた肌をきれいにする

陽乃「私……」

水都「良いんです……そんな、無理矢理に一人にならなくても」

人を殺してしまったことなんて、

ここでは言われなければ知ることなんて出来なかっただろうし、

もし四国に逃げ伸びたあとで赤の他人から言われても、信じることだってなかったと思う

だから、自分から言う必要はなかった

なのに、陽乃は自分から言って、叫んで、苦しんで。

それほどまでに人を拒もうとした

それだけ嫌な思いをしたのだと水都は思う

陽乃の希望に沿うなら、離れるべきかもしれないけれど

それではきっと、報われないだろう

――それでいいはずがない

信じてくれる人のありがたみを、水都は知っている

たった一人でも味方がいてくれることの安堵を知っている。

それを受け入れなければどうなるかを知っている。

それは、陽乃がなるべきものではないと断言できる

水都「私は絶対、久遠さんを信じますから」

水都はそう言って、

看護師が到着するまでずっと、陽乃の手を握り続けた
843 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/05(金) 21:28:57.25 ID:lJdzeDhLo
√ 2018年 8月10日目 夕:諏訪


05〜14 歌野
27〜36 杏
41〜50 球子
52〜61 九尾

↓1のコンマ

※それ以外は通常 (水都)
844 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/05(金) 21:31:37.14 ID:Gd//VFq5O
845 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/05(金) 22:38:50.47 ID:lJdzeDhLo
√2018年 8月10日目 夕:諏訪


昼からまた体調を崩した陽乃が目を覚ましたという連絡を受けて、

歌野が陽乃のいる病室へと訊ねてきた。

杏と球子のどちらか

あるいは両方が来るかと思っていたけれど

来たのは歌野だった

歌野「みーちゃん、大丈夫?」

水都「うん。私は全然大丈夫……久遠さんはお話は控えるようにって言われちゃってるけど」

歌野「そう……伊予島さん達は四国の方の現状説明を大人たちに要求されちゃってね。抜けられなかった」

陽乃「別に、聞いてない……」

陽乃の枯れてしまっている声に、歌野は顔を顰める

朝よりも少し、悪いように感じたからだ

歌野「大丈夫?」

陽乃「…………」

陽乃は力なく頷くだけで、目を向けようとはしない。

一緒にいる水都にも目を向けないし、

死に際のように、ゆっくりと瞬きをするだけ。

それが不安になったのか、歌野は一瞬躊躇って口を開く

歌野「良ければ、2人を連れてくるわ……説明も大変そうだったし」
846 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/05(金) 22:57:10.35 ID:lJdzeDhLo

陽乃が比較的心を許せるであろう、四国から連れてきた二人。

自分達よりも杏や球子の方が良いのではと考えた歌野の気遣いだろう

けれど、陽乃はうんともすんとも言わずに、

歌野を一瞥して、瞬きする

歌野「えぇっと……じゃぁ、歌とか歌ってあげましょうか?」

水都「うたのんっ、しーっ」

歌野「み、みーちゃん……」

陽乃は大した反応を示してくれないし

水都はちょっぴり騒がしい歌野に困った顔を浮かべる

自分は来ない方が良かったのかも。なんて、

歌野は少ししゅんとして椅子に腰を落ち着ける

歌野「そうね……そうよね。ごめんなさい。静かに休みたいわよね」

陽乃「さっきまで……寝てたのだけど」

水都「でもだからって、起きたりしたらダメですよ」

歌野「………」

朝とは雰囲気の違う水都

陽乃に向ける表情も柔らかい

何があったのか気にはなるものの……ここで聞くのは間違いだろうか。と、首を振る
847 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/05(金) 23:05:58.06 ID:lJdzeDhLo

歌野「子守歌だと思って、聞いておいてね」

歌野はそう前置きをして、

小さく、ゆっくりとした柔らかい声で話し始める

歌野「一応、四国に移住できる可能性があることを話したの」

水都「……それで?」

歌野「ん〜……行きたい。って強く思ってる人は少なかったわ」

どうしようもなければ、そうするのも一つの選択肢

けれど、

出来るだけ、ここに残りたい

出来るのなら、ずっとこの場所で生きていきたい

そういう人がほとんどで

まだまだ、諦める気のない人たちばっかりだったと、歌野は小さく笑う

それは嬉しいことではあるけれど、

限界が見えてきているのを察しているからか、喜べるものでもないらしい

水都「そうなっちゃうよね」

陽乃「………」


1、黙っておく
2、休む
3、貴女達は、どうしたいの?
4、馬鹿な人たちね


↓2
848 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/05(金) 23:09:19.22 ID:kuGD92ex0
4
849 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/05(金) 23:11:08.31 ID:Gd//VFq5O
3
850 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/05(金) 23:17:37.79 ID:lJdzeDhLo
ではここまでとさせていただきます
明日は可能であればお昼ごろから
851 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/05(金) 23:30:56.08 ID:Gd//VFq5O

諏訪組二人は最初から好感度高めな対応でありがたく感じるな
特に今作のみーちゃんの精神的な頼もしさよ
852 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/06(土) 00:08:24.50 ID:f0FSxTgFO

いい方に風向きが変わってきたな
853 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/06(土) 21:08:56.02 ID:we9r2hPfo
では少しだけ
854 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/06(土) 21:09:24.76 ID:we9r2hPfo

陽乃「貴女達は……けほっ……どう、したいの?」

水都「無理に声を出したら駄目ですよ」

声を発するたびに、咳き込み血を吐くと思われている過保護感

陽乃は苦しさが勝るのか、不満そうには見えないけれど、

その目は水都に向けられている

歌野「私は、ここで生きていきたい人がいるなら、残るわ」

水都「私は、うたのん……ううん、勇者がここに残るのなら残ります」

歌野「……!」

歌野は思わず声を上げそうになったのを控えて、水都を見る

昨日、眠っている陽乃の傍で話した時、水都は言い淀んだ挙句に話を逸らした

なのに、1日足らずで水都は堂々と言い切るようになった

何かがあったのだ

何かは分からないけれど

水都の意識を変える何かが。

歌野「そっか……」

水都「?」

歌野「ふふっ、何でもない」

歌野は水都の視線を感じて首を振り、小さく笑う

歌野「そう言うことだから……もしあれなら、避難したい人達を連れて四国の勇者達で戻って欲しいって思ってる」
855 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/06(土) 21:12:28.19 ID:PcZfl0JKO
今度はこっちの説得か
856 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/06(土) 22:16:15.74 ID:we9r2hPfo

陽乃「みんな……置いていけって?」

歌野「みんなじゃないわ。一部は――」

陽乃「かわらない……っ……ごほっげほっ……」

水都「っ」

水都は咳き込む陽乃の体を支えて寝返りを打たせて背中をさすり、

席が泊まったのを確認すると、

枕を腰と背中に当てながらベッドをリモコンで動かして、体を起こさせる

そして、すぐそばの水を手に取って陽乃の口元に宛がう

水都「ゆっくり、飲んでください」

陽乃「ん……」

水都は静かに、ゆっくりとペットボトルを傾けて陽乃の口の中に流す

手つきはとても慎重だが、それでも陽乃の喉が動く速さよりも流れる水の量が多く、

すぐに唇の端から溢れていく

陽乃「っ……ぅ」

歌野「みーちゃん、ストップ……ステイよ。一旦止めた方が良いわ」

水都がペットボトルを引くと、歌野が陽乃の口元をハンカチで拭う

まるでただの介護だと……陽乃は自己嫌悪してしまうが、

2人はまるで気にすることなく、陽乃を気遣う
857 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/06(土) 23:13:16.28 ID:we9r2hPfo

歌野「あんまり、考えさせる話はしない方が良さそうね」

水都「うたのんが変な子守歌口ずさむからだよ」

歌野「ソーリー、真面目過ぎたわ」

注意されたのに、なぜか嬉しそうな反応を見せた歌野

すぐに申し訳なさそうに眉を顰めて、陽乃の額に張り付く前髪を払い除ける

歌野「ここで生きていきたい人は私達が助ける。だから、ここを出て生きていきたい人たちを助けて欲しい」

みんなを置いていくわけじゃない。

れっきとした協力

適材適所

誰も見捨てるわけではないと歌野は言う

歌野「今日はもう、眠った方が良いわ」

歌野はそう言って、水都へと目を向けた

歌野「みーちゃん、頼める?」

水都「うん、大丈夫。何かあったらナースコールもあるし」

歌野「……そっか」

驚かず、嬉しそうな声

優しい笑顔を浮かべて……また、陽乃を見る

歌野「ゆっくり休んで」
858 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/06(土) 23:40:51.27 ID:we9r2hPfo

陽乃「っ……ごほっ……」

歌野「ほら、無理に話さなくていいから」

陽乃「ま……」

まだ話すべきことがある。

総攻撃が行われるよりも前に避難させるつもりなのか

それとも、総攻撃を受けた後に避難をするつもりなのか。

前者である場合、

諏訪がそれを耐えきる可能性は0と言っていいかもしれない

だが、

総攻撃を受けた後では……耐えられる可能性はあるが、

犠牲者は少なからず出ることになるだろう

どちらが良いか。と言うのは中々に判断しにくいことだけれど、

元のさやに納まる選択は、間違いなく前者だろう。

しかし、それは諏訪を囮として見捨てるということだ

歌野「少しでも多く助かる人がいるなら、その方が良いと思うわ」

歌野と水都に助けられながら、またベッドに横になる。

歌野はもう、それ以上話を長引かせる気はないようで

水都に任せて、病室を出ていく。

陽乃に声を出させたくないという気遣いだろうが、

聊か狡いと、陽乃は顔をしかめて……重い瞼を閉じた
859 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/06(土) 23:46:29.66 ID:we9r2hPfo
√ 2018年 8月10日目 夜:諏訪


05〜14 球子
41〜50 九尾
52〜61 杏

↓1のコンマ

※それ以外は通常 (水都)
860 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/06(土) 23:52:47.48 ID:Xd/rnQnfO
861 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/06(土) 23:54:13.06 ID:we9r2hPfo

では短いですがここまでとさせていただきます
明日は可能であればお昼ごろから
862 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/06(土) 23:58:36.32 ID:Xd/rnQnfO

全員生存させて四国に避難が理想だけど住人たちの意向を考えると難しい判断を迫られそうだな
863 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/07(日) 00:04:22.68 ID:TpsG6BK0O

うたのんや水都は結局救えそうにないの辛いな
864 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2021/03/07(日) 00:16:04.16 ID:M/sMOw9k0
陽乃のテーマは「頼まれなくても生きる」系だと思っていたが、
死に場所を諏訪に決めた場合どう話を転がすんだこれ
865 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/07(日) 18:48:11.46 ID:jeG9ohHno
では少しだけ
866 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/07(日) 18:49:29.29 ID:jeG9ohHno
√ 2018年 8月10日目 夜:諏訪


声が聞こえる。

聞き覚えがあるのに、無いようにも感じる不思議な声

とても優しく、穏やかな……女性の声

陽乃が目を開けると、もう見ることが出来ないはずのものが見えて――目を見開く。

九尾「主様、気が付いたかや?」

陽乃「なんで……どうなって……」

傍らにいる九尾を一瞥して、体を起こす

眠る前までの気怠さはなく、喉の調子も悪くない。

身体の内側から響く痛みもなくて、むしろ……良いくらいの状態だ

しかし、陽乃が驚いたのは病室ではなく、かつて住んでいた自分の部屋にいることだ

丸亀城の寄宿舎ではなく、両親と住んでいた家

その、自室

荒らされ、焼け落ちたはずなのに。

九尾「夢のようなものじゃ。主様、現ではまともに話も出来なかろう」

陽乃「なるほど……明晰夢みたいな?」

九尾「うむ」

これも九尾の力だろうか
867 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/07(日) 18:56:22.47 ID:jeG9ohHno

陽乃「まさか、この部屋をもう一度見ることになるとは思わなかったわ」

九尾「望めば、模倣することくらい可能じゃろう」

陽乃「しても、意味はないわ」

机の引き出しを開くと、シャーペンの予備やノート

その日は使わない教科書などが入っている。

箪笥の中も、いつかは分からないがしっかりと洋服が入っていて

手に取ることもできた。

陽乃「それで?」

九尾「主様はどうするつもりかと思うてのう」

陽乃「残るか、帰るか?」

九尾「死ぬか生きるかじゃな」

残れば、死ぬ可能性が高いが

帰れば、辿り着きさえすれば暫く死ぬことはないだろう

陽乃「………」

諏訪の四国移住希望者を連れていくとなると

それなりの日数と、犠牲を覚悟する必要がある。

しかし、

そもそも勇者である歌野を連れ帰ることができないなら、ここに来た本来の意味は果たせない
868 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/07(日) 19:22:50.65 ID:jeG9ohHno

陽乃「諏訪はもう、本当に駄目なの?」

九尾「じゃろうな。残りの御柱を一つに束ねようとも、じきに崩壊する」

陽乃「私の力は?」

他の勇者達と違い、

陽乃は神々の力を扱うことができる。

もちろん、使える分の代償はほかの勇者の比ではないため、

使えるが、使うべきではない

しかし

九尾「主様が "死ぬ" ならば可能性もあるじゃろうが、望むことではあるまい?」

陽乃「出来るのね」

九尾「人柱……人身御供となり、主様が結界の要足る御柱の一つとなればよい」

九尾は淡々と答えると、

浅く息を吐いて、陽乃に目を向ける

九尾「それも長くはもつまい。平時ならばともかく、今はのう」

陽乃「そっか」

諏訪はいずれにしても、尽きる運命にあるということだ

陽乃のような人身御供を用意し続ければ保つこともできるかもしれないが、

それは現実的ではない
869 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/07(日) 19:37:05.79 ID:jeG9ohHno

つまり、ここに残る歌野や水都はこのままでは死ぬことになる。

2人もそれは理解しているだろう

けれど、ここに残るつもりの人々がいる以上、2人はここを出ていかない

ここを死に場所としている一般人を説得するのは簡単ではないはずだ

陽乃「白鳥さん達を連れ戻さなきゃ、意味がないわ」

九尾「人間を皆殺しにしてしまえばよいではないか」

陽乃「馬鹿なこと言わないでよ」

一人殺してしまった以上、

もう、後戻りできるような状況にはない

けれど、だからと言って何もしていない人々を殺すほど壊れてもいない

九尾「ならばどうする」

ここに残って、守り、死ぬか

ここから出て、守り、生きるか

死にたくないという思いを維持し続けるなら――間違いなく出ていくべきだ

だが。

陽乃「どうするって、言われてもね……」


1、九尾はどうすべきだと思う?
2、2人を連れ出す方法、ないかしら
3、残るわ。手ぶらで帰ったって何も変わらないし
4、帰るわ。死にたい人は死ぬしかないもの


↓2
870 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/07(日) 19:37:19.35 ID:TpsG6BK0O
2
871 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/07(日) 19:39:09.45 ID:uP/LdZ8SO
2
872 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/07(日) 20:02:42.68 ID:jeG9ohHno

陽乃「2人を連れ出す方法、ないかしら」

九尾「人間を皆殺しにするのは駄目かや?」

陽乃「ダメに決まってるでしょ」

九尾なら陽乃の犯行だと気づかせることなく実行は可能かもしれないが、

それは愚策ですらない蛮行だ

九尾も一度否定されているからか、本気ではないらしい

目を細めると、ため息をつく

九尾「ならば、結界を壊させるしかあるまい」

陽乃「結界を壊させるって……守らないってこと?」

九尾「結界を完全に破壊させたうえで、2人を含めた人間共を守り総攻撃を凌げばよい」

陽乃「それは、えぇっと……」

確かに、

結界が完全になくなってしまえば、

流石に残ると言う人はいないかもしれない

歌野達だって、

そうなっては致し方ないと四国に移住することを推奨するだろうし、

加護が消えたなら……頷く人も少なくないはず。

だが……負担が尋常ではない
873 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/07(日) 20:20:09.43 ID:jeG9ohHno

結界が健在であるなら、

その中にいる人々の心配をする必要はない。

彼らが襲われることはないし、

いちいち警戒をし、守ってあげる必要だってない。

しかし、

結界が破壊されて武器らしい武器もない人々が野ざらしになった場合、

勇者達はそれを守らなければいけない。

気を使い、警戒し、盾になる必要だってあるかもしれない

そうしなければ、人々は簡単に奪われていく

陽乃「っ……」

かつて、陽乃が目の当たりにしたように

とても

とても簡単に

陽乃「ぅ……」

九尾「ふむ……恐れておるのかや?」

陽乃「違う……ただ、嫌なだけよ」
874 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/07(日) 20:40:26.21 ID:jeG9ohHno

あれから3年も経った

以前から力はあったが、今はより力をうまく扱えるようになっている。

今は満身創痍だけれど、

それは今まで使ったことのない伊邪那美命による影響が残っていたからだ。

無理に無理を重ねた結果だから、

普通の状態なら何も問題はない。

回復に専念して数日過ごせば、大丈夫なはずだと陽乃は思う。

なのに……恐れるわけがない。

滴る血も、

零れ落ちる人の腕も

転がる頭も

散らばる骨も

響き渡る断末魔も

なにも――

九尾「主様」

九尾のやや強い声色にハッとする。

陽乃「っ!」

九尾「妾に虚勢など意味もあるまい」
875 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/07(日) 21:10:59.70 ID:jeG9ohHno

陽乃「私は……別に」

九尾「無論。今の主様……いや、万全な主様ならば何も問題はなかろう」

確実に守ることができるはずだ

後々、

血反吐を吐き零して、血だまりに倒れ伏すかもしれないが

それでも、死にはしない。

九尾「それでも主様は恐れておるな」

陽乃「だからっ」

九尾「繰り返すことを、恐れておる」

頑張って、頑張って

守れなかった人々の残骸に心を痛め、

なのに、守れなかった人がいるのを責められて

バーテックスが攻めてきたのはお前のせいだと責められて

そして――

陽乃は首を振って、考えを払う

陽乃「知らないわよ……そんなこと。何人殺されようが、私は」

もう、信じない。

そうされるんだって思っておけば、痛くもない

九尾「ならば良いがのう。して、どうする?」


1、それしかないなら、するしかないわね
2、考えておくわ
3、そんなリスクは取れないわ


↓2
876 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/07(日) 21:20:52.83 ID:uP/LdZ8SO
1
877 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/07(日) 21:22:27.25 ID:IkvscxiS0
1
878 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/07(日) 22:01:08.26 ID:jeG9ohHno

陽乃「それしかないなら、するしかないわね」

九尾「ふむ。そうか」

陽乃「でも、まだ時間はあるんでしょう?」

外の状態からして、総攻撃が行われるのはまず間違いない。

だが、少なくとも今月中は問題ないように思える

それまでにも、何度か襲撃が来るかもしれないが、3人の勇者で対応しきれるはず。

それだけあれば、陽乃も万全になれる。

総攻撃が行われ、結界が完全に破壊されても、

陽乃が後を考えずに力を使えば人々を守り切れるだろう。

陽乃「時間があるなら、別の手を取れるかもしれないし……一先ずの予定ね」

九尾「結界が割れる前に参戦することになるはずじゃ。手を抜くのじゃぞ」

陽乃「守っちゃいけない。のね」

九尾「うむ」

陽乃は九尾が頷くのを見て目を背けると

溜息をついて自分の唇に触れる

陽乃「守らなくても良いって、気が楽ね」

九尾「出来ればよいがのう」

陽乃「出来るわよ。大丈夫」
879 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/07(日) 22:21:58.75 ID:jeG9ohHno

バーテックスの侵攻は結界が防いでくれる。

結界が壊れるまでは、人々に直接的な被害は出ないはずだ

人が死ぬわけではないし、断末魔が轟くわけでもない。

結界が壊れたら、ちゃんと戦って守ってあげれば良い

大丈夫。

陽乃「………」

九尾「結界を守り切れぬことを糾弾されるやもしれぬが」

陽乃「……大丈夫。責められるのは、慣れてるわ」

陽乃は笑って、答える

覚えのあること、無いこと

頑張ったことを無視されて、ただただ、悪いことだけを引き出されて

守った意味が分からなくなるくらい

色々と責められてきたから。

結界を守れなかったことを責められるくらい、何でもない。

だって、守れないのではなく守らなかったのだから。

自分の意思での被害なら、責任があるのは当たり前だ

陽乃「明日には、普通に話せるかしら?」

九尾「興奮しなければ良い。声を張るでないぞ」

陽乃「ん……分かったわ」
880 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/07(日) 22:59:33.64 ID:jeG9ohHno

陽乃「私、何にもできないわね……」

九尾「あの小娘を利用してやればよい」

陽乃「藤森さん?」

陽乃の問いに九尾は頷く

藤森水都、諏訪で生き残っていた巫女

水都はなぜだか陽乃に親近感を抱き、

その悩み、苦しみをひっくるめて寄り添おうとしている。

今も、病室で横になっている陽乃の傍にいる

陽乃「私を諦めないって、言ってたわね」

九尾「娘が望んでいるのならば、好きに使い捨ててもよかろう?」

陽乃「まぁ、そう……なんだけど」

それで離れてくれるとは思えない

人を殺したことを話しても、

それでも……と、寄せてきたのだから。

陽乃「……はぁ」

発端は食べるのを手伝って貰ったことだろうか。

あれは軽率だったかもしれないと……陽乃はベッドに身体を倒して目を瞑る

懐かしい、自分の部屋

布団も枕も、あの頃と同じ感触で

けれど

陽乃「ベッドは……ちょっと狭く感じる」

あの日で時間が止まってしまったのを感じながら、落ちていく
881 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/07(日) 23:00:30.60 ID:jeG9ohHno

√ 2018年 8月11日目 朝:諏訪

01〜10 歌野
21〜30 球子
41〜50 杏
81〜90 襲撃

↓1のコンマ

※それ以外は通常(水都)
882 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/07(日) 23:08:06.78 ID:uP/LdZ8SO
883 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/07(日) 23:09:45.96 ID:jeG9ohHno

ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


再開時にまとめ
884 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/07(日) 23:15:35.99 ID:uP/LdZ8SO

決してリターンが小さい訳ではないけど最悪諏訪の人々にまで恨みを買ったり陽乃さんが死亡したりするかもで大分綱渡りだな
885 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/08(月) 06:50:40.10 ID:UEph28OEO

結界壊すとか結構スパルタ気味な方法だけど致し方ないか
886 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/08(月) 08:03:57.24 ID:xu5V3FmnO

つっても諏訪に残るのも悲劇でしかないからなあ
887 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/08(月) 21:48:27.29 ID:kuR+76Z/o
では少しだけ
888 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/08(月) 21:48:56.78 ID:kuR+76Z/o

1日のまとめ(諏訪組)

・ 白鳥歌野 : 交流有(現状説明、意思確認)
・ 藤森水都 : 交流有(守れなかったもの、勝手なことを、人殺し、意思確認)
・ 土居球子 : 交流無()
・ 伊予島杏 : 交流無()
・   九尾 : 交流有(歌野を呼ぶ、2人を連れ出す方法、結界破壊)

√ 2018/08/10 まとめ

 白鳥歌野との絆 44→45(普通) 
 藤森水都との絆 52→58(普通) ※特殊交流 
 土居球子との絆 55→55(普通) 
 伊予島杏との絆 62→62(普通) 
   九尾との絆 63→64(普通)
889 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/08(月) 21:49:32.89 ID:kuR+76Z/o

√ 2018年 8月11日目 朝:諏訪


まだ、瞼が重い

意識が覚醒するにつれて、

身体の節々の痛みまで戻ってくる

腕を上げるだけで、骨が軋む

震えてしまって握り拳もまともに作れない

昨日大声を出してしまったのが相当、負担になっているらしい

正しく言えば、大声を出したというより興奮してしまった事だろうか。

陽乃「ん……けほっ……けほっ」

喉の異様な渇きに咳き込む。

潤いを失っているせいか、ピリピリとした痛みを感じる

陽乃「誰……か……」

身体がまともに動かせなくて、起こすことすら難しい陽乃は

ナースコールを押そうと手を動かす

けれど、頭の横の方にあるそれに手を伸ばす事すらできない

水は冷水だと刺激が強いということもあって、

常温保存のために近くのテーブルの上に新しいペットボトルが置かれているけれど、取れない

陽乃「けほっ……げほっ……っ……ごほっ……」

水都「久遠さんっ」

陽乃「ぅ……」

水都「待ってください。今用意しますから」

陽乃の目が向けられている方向とは逆側から水都の声がしたかと思えば、

ばたばたと慌ただしい音を立てて、視界の端に水都が入り込み右から左へと駆け抜ける
890 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/08(月) 22:02:08.91 ID:kuR+76Z/o

慣れた手つきで陽乃の身体を支えてベッドを操作しつつ体を起こさせると

ペットボトルを手に取り、キャップを開けて薬飲み器に注ぐ

陽乃「それ……」

水都「昨日、ペットボトルだと大変そうだったので用意して貰ったんです。飲みやすいはずですよ」

陽乃「……っ」

薬飲み器を受け取ろうとしたものの、自分の口にまで持ち上げられそうにない

陽乃の表情を酌んで、水都はそうっと陽乃の口元に吸い口を宛がう

陽乃はストローなどで吸い上げることも難しいため、

水都にゆっくりと流し込んでもらう

陽乃「んっ……んっ……っ……」

5秒程度流し、一旦離してまた数秒流す

それを数回繰り返して、陽乃の喉を潤していく

陽乃「っは……はっ……んっ……」

水都「大丈夫ですか?」

陽乃「大丈夫……」

体を起こして貰い、水を与えて貰い、口を拭って貰う

それだけして貰わなければいけない状態が大丈夫と言えるのならだけれど。
891 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/08(月) 22:18:28.05 ID:kuR+76Z/o

水都「昨日の夜、凄く魘されていて……心配しました」

陽乃「魘されてた……?」

水都「はい」

声をかけても、体を揺すっても目を覚まさない

ナースコールを押して医者を呼んだが、

通常の手段はどうすることもできないとなって……見守っているしかなかったのだという。

幸いにも数時間経って治まったが

再発する可能性も考えて、水都はずっと隣に控えていたらしい

陽乃「そう……ずっと起きてたわけではないのね」

水都「すみません、寝ちゃいました」

陽乃は水都へと目を向ける

昨日と同じ巫女装束は皺だらけで

髪は元々ふわふわしていたが、今はぼさぼさで

頬には装束の袖の痕がくっきりと残っている

昨日から着替えてすらいないらしい

陽乃「別に責めてはいないわ」

昨夜……だろうか。

九尾の何らかの力によって陽乃はかつての自室にいた

そこで二人きりで今後のことを話し、

あえて守らずに結界を壊させることにした

それを知ったら、今度こそ藤森水都は離れてくれるだろうか?
892 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/08(月) 22:39:57.94 ID:kuR+76Z/o

水都「食事はできそうですか?」

陽乃「……噛まないものなら」

水都「そう伝えておきます。入浴と、あの……えぇっと」

陽乃「そうね。色々と頼みたいわ」

もちろん、それらの世話はさすがに水都ではない

ちゃんと看護師を呼んで、対応して貰う。

水都はその間に身なりを整えてくるだろう

陽乃「私、外出できると思う?」

水都「許可を戴けると思ってます?」

手足がまともに動かせないし、声を張れば血を吐くし悪化する

そんな病弱極まっている状態の陽乃を外に出すなんて不可能だ

水都「どこか行きたいところでも?」

陽乃「諏訪に来てからずっと、病院にいるのもつまらないから」

水都「ならまず、体を休ませてください」

まさにその通りだし、それしか無理だ

陽乃はため息もつけずに小さく息を吐く

水都「私も一旦帰ります。久遠さんの準備が終わったころにまた来ますね」


1、もう来なくていいわ
2、どうして?
3、白鳥さんは良いの?
4、伊予島さんと土居さんを呼んできて


↓2
893 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/08(月) 22:40:48.43 ID:I7dDBD61O
3
894 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/08(月) 22:42:43.24 ID:JAhn8ZwWO
4
895 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/08(月) 23:15:14.32 ID:kuR+76Z/o

陽乃「だったら、伊予島さんと土居さんを呼んできて」

水都「え……」

水都は思わず驚きを露わにしてしまう。

陽乃からのお願い

水都から問い、陽乃がそれに答えたものではなく、

陽乃からこうして欲しいと言ったのだ

驚きは瞬く間に喜びへと変わっていく

水都「は、はいっ!」

陽乃「あまり……大声出さないで」

水都「すみません……つい」

一旦帰る

だったらもう、来なくていいと言われる可能性さえあった

もちろん、それでもまた来るというつもりではあったが、

陽乃はそれなら……と、頼みごとをしてくれた

水都「分かりました。絶対に連れてきますね」

水都は安堵したように、息をついて答える

その二人は勇者だ

四国移住についての話などもあって忙しいかもしれない

でも、絶対に連れてこようと頷く

水都「任せてください」
896 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/08(月) 23:16:29.66 ID:kuR+76Z/o
では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
897 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/08(月) 23:26:21.80 ID:JAhn8ZwWO

みーちゃんの絆値が既にタマを超えてるとは陽乃さんも妹分に好かれやすい傾向があるな
あと陽乃さんのヨボヨボぶりを見るとこれからの戦いを乗り切れるのか心配だ…
898 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/08(月) 23:47:05.46 ID:5AqfBPTAO

みーちゃん嬉しそう
久遠さんはとりあえずお休みだな
899 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/09(火) 00:31:40.06 ID:3Jcdz4D0O
乙 ほんとに長野来てよかったなあ
900 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/09(火) 20:17:28.23 ID:QYG8xpm4o

では少しだけ
901 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/09(火) 20:18:14.93 ID:QYG8xpm4o

水都「それにしても、静かに話すなら問題なさそうで何よりです」

陽乃「貴女のせいで悪化したのよ」

水都「すみません……嫌なことを言ってしまって」

陽乃が感情的になったのは、

水都が諦めてくれなかったからだ。

人を殺したことを話しても、

水都はそれを信じないのではなく、

信じた上で、それでも……と寄せてきたのだから。

水都も、そこまでしてしまったのは申し訳なかったと思っている

しかし、そこまでしたからこそ本心を感じられたと思う

水都「でも、久遠さんの話が聞けて良かったです」

陽乃「……悪化させたいの?」

水都「すみません」

すみません。と、謝罪するのは口だけ。

興奮出来ないから、穏やかなだけだと分かっているのに

水都は嬉しさを隠しきれていない

水都「あと1日……最低でも2日は入院した方が良さそうですね」

陽乃「最低3日くらいじゃない? こんなだもの」

水都に見えるように左手を上げて見せる

ベッドに放っていた左腕が臍の上にまで上がったところで、酷く震える

ベッドに落として握り拳を作るけれど、棒の一本すら握っていられそうにない

陽乃「足なんて、こんな掛布団を払い除ける力さえないのよ」
902 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/09(火) 20:22:43.31 ID:G74wZ8R+O
来てたか
903 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/09(火) 20:39:20.29 ID:QYG8xpm4o

水都「せめて、自分で飲み物を飲めるくらいにはなると良いですね」

陽乃「この手でペットボトルを持ったらお漏らしするって約束できるわ」

水都「何言ってるんですか」

とはいえ、

今の陽乃は、ペットボトルを持つこともできない。

500mlでさえ、その手から滑り落ちてベッドにぶちまける事になる

吸い飲み器でさえ、傾いて同じ結果になるかもしれない

水都「遠慮なく頼ってください」

陽乃「だったら、二人を連れてきて貰える?」

水都「看護師さんたちの準備が整うまではお傍にいます」

お手洗いとか、入浴とか、食事とか。

水都では難しい、いくつかの介助を行うための準備がある。

それが終わるまで、陽乃が一人にならないようにしたいらしい

水都「目を離した時に悪化されたら……って、不安で」

陽乃「貴女がいなければ悪化しないから」

水都「だ、大丈夫です。大人しくしておくので」

水都はそう言って、看護師が来るまで本当に静かだった。

飲み物は必要か、体は辛くないか

時々、そういう確認はしていたけれど、

陽乃のことを根掘り葉掘り聞こうとはしなかった。

水都「久遠さん……その、出来たら名前で呼んで貰えませんか?」

陽乃「名前って、藤森さんではなく?」

水都「はい……水都。藤森水都なので、水都で」


1、意味が分からないわ。お断りよ
2、考えておくわ
3、で、貴女は私を名前で呼びたいのね
4、さん? ちゃん? 呼び捨て?


↓2
904 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/09(火) 20:40:33.03 ID:G74wZ8R+O
3
905 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/09(火) 20:42:46.73 ID:Yj4tfjV10
2
906 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/09(火) 21:37:15.70 ID:QYG8xpm4o

陽乃「……分かったわ。考えておく」

水都「あ、ありがとう……」

陽乃「なんでそうなるのよ」

照れくさそうに礼を呟く水都を一瞥した陽乃は、

ゆっくり瞬きをして、小さく息を吐く

陽乃「断られると思った?」

水都「う、うん……断られると思ってた」

ならなんで言い出したのか……なんて、

陽乃は聞かずに目を背ける

首を横に振るのすら今は辛い

陽乃「考えておくとしか言ってないんだけど」

水都「それでも良いです」

すぐに断るのではなく、考えてくれる

たとえ後々嫌だと言われても

考えてくれたというだけで十分だと、水都は嬉しそうに笑みを見せる

だから、ありがとう。なのだ
907 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/09(火) 22:10:15.26 ID:QYG8xpm4o

水都「そう言えば、久遠さんって今何歳なんですか?」

陽乃「15よ。今年で」

水都「じゃぁ、私よりも一つ上ですね」

正直、たった一つ上には思えないのだが、

かといってそこで嘘をつく意味もないだろうと思う

冗談……も、今の体調からしてそんな無駄話をする気にはならないはずだ

水都「うたのんも同じで久遠さんより一つ下なんですけど……でも、なんだかそうは思えない感じで」

陽乃「それはそう……でしょうね。普通じゃないもの」

普通に生きていれば絶対に経験しないであろう経験をした

目に見て、手に取って、鼻を通って、肌に感じた

そんなことがあってもまだ、普通の中学生でいられたのだとしたら

それはどこか壊れてしまっているとさえ思う。

もちろん、陽乃がした経験はもっと性格が歪むものだったし、

それを参考には出来ないけれど。

陽乃「普通でいられたら、良かったけど」

水都「……そうですね」

陽乃「でも、そうじゃ、ないのよ」

水都「わかってます」
908 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/09(火) 22:57:30.48 ID:QYG8xpm4o

もう普通ではいられない。

みんなが失って、もう二度と取り戻せないかもしれないもの

けれど、歌野はその中でも日常を作り上げようとしている

凄いと思う。

立派だと思う。

自分にはそんなこと、絶対に出来ない

陽乃「もう帰ったら?」

水都「ぁっ……」

陽乃「貴女が何を悩んで、いても……私は知らないし、聞く気もないわ」

水都「すみません」

水都は反射的に謝って、首を振る

きっと今の自分は分かってしまう表情だろうから。

陽乃が何があったのかなんて聞いてくれるだなんて思っていないし、そうして欲しかったわけでもない。

ただ、考えてしまっただけ。

水都「もう大丈夫です。私は私の出来ることをするって、決めたので」

陽乃「そう……羨ましいわね。私は出来ること、なにもないから」

水都「しばらく休めば、大丈夫ですよ」

嫌味っぽい返し

歌野だったら絶対しないそれは少し、特別な感じがした
909 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/09(火) 23:01:17.59 ID:QYG8xpm4o

√ 2018年 8月11日目 昼:諏訪

01〜10 歌野
34〜43 襲撃

↓1のコンマ

※それ以外は杏・球子交流
910 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/09(火) 23:02:14.31 ID:lUi51s83O
911 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/09(火) 23:08:47.29 ID:QYG8xpm4o

ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
912 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/09(火) 23:13:20.24 ID:DrSN0yFgO

陽乃さんに共感してるのもあってかグイグイ引っ張っていくみーちゃんってなんだか新鮮だなぁ
913 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/10(水) 00:49:10.47 ID:QZ40bTIRO

みーちゃんグイグイ来てくれるの助かる
914 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/10(水) 21:14:09.03 ID:5E/bhfpKo

では少しだけ
915 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/10(水) 21:14:35.66 ID:5E/bhfpKo

√ 2018年 8月11日目 昼:諏訪


杏「思っていたより、大丈夫そうですね」

陽乃「まぁ……そう、ね」

球子「会いたかったのに、中々会えなくて悪かったな」

陽乃「別に」

何もできなかったうえにまともに話すこともできなかったし、

杏と球子とはそこまで親しいわけでもない。

諏訪にいる人々の中では、距離が近いとは思うけれど

その程度。

病床に伏せっているときに会いたくなるかと言われれば、特別、そうでもない

陽乃「諏訪はどう?」

杏「向こうに比べると、色々と不足しているように感じます。食料とか……みんなで畑を耕して頑張っているからこそ、って感じで」

球子「でも、活気はあるな……もしかしたら、これに関しては四国よりも良いかもしれないぞ」

人口が関係しているかもしれないが、

諏訪は四国に比べて、バーテックスに対しての恐れが重くない

天空恐怖症候群と言われているあの精神的な病気の発症が見られないのだ

久遠家に関する噂などもないので、

妙な緊迫感と言うか、後ろ暗い雰囲気が感じられない

球子「歌野のお陰だろうな。たぶん」
916 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/10(水) 21:37:16.51 ID:5E/bhfpKo

陽乃「そう……諏訪は良い場所なのね」

杏「みんな優しくて、温かくて、凄くいい場所ですよ。久遠さんのことも凄く気にかけていました」

陽乃「私? どうして……」

歌野がむやみやたらと広めるとは思えない

水都も、同じように余計なことを言うようには思えない

では――と、陽乃が球子を見ると、

球子は不思議そうに目をしばたたかせて、はっとする

球子「た、タマは何にもしてないぞ!」

陽乃「何も言ってないのだけど……」

球子「こっち見たじゃないかっ!」

杏「タマっち先輩、しーっ」

球子を宥めた杏は、大丈夫だよ。と笑って

杏「久遠さん、いきなり血を吐いて倒れたから……見てた人が凄く驚いちゃって」

それが広まっていったのだと、杏は言う。

外から来ただけでもあり得ないことなのに、

それで血を吐いて気絶した挙句、それが歌野が紹介した四国からの使者……勇者だっていうのだから、

陽乃のことがあっという間に広まるのも無理はなかった。

目は覚ましたのか、体は大丈夫なのか

色々と気にかけてくれているらしい。

陽乃「向こうじゃあり得ない、わね……」
917 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/10(水) 21:49:58.39 ID:5E/bhfpKo

杏「久遠さんは、諏訪に残りたいですか?」

陽乃「残ったって……」

杏「そうですね。厳しいと思います」

諏訪の結界は長く持たない

陽乃達が防衛に参加したとしても

多少の延命が出来るだけで、最終的には無くなってしまう

だから、出ていかなければならない

またあの場所に戻らなければならない

その時、陽乃の評判はどうなっているのだろうか。

本当に人を殺めてしまった久遠家の娘は、果たして……どう扱われるのか。

球子「でもまぁ、出来る限り守った方が良いんじゃないか?」

杏「でも、白鳥さんは安全なうちに希望者を連れて行って欲しいって言ってたよね」

球子「そうは言ったって、総攻撃があるか分からないけどそれの後じゃないと危険だろ」

杏「うん……」


1、貴女達はどうしたいの?
2、私、総攻撃でここの結界を壊させようと思ってるの
3、総攻撃の後、私は荷物になると思うわ
4、気を付ければ大丈夫でしょ。どうにかなるわ


↓2
918 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/10(水) 21:59:26.69 ID:SE+y8YCcO
2
919 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/10(水) 22:00:51.51 ID:Zm/l+IhX0
3
920 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/10(水) 22:30:11.61 ID:5E/bhfpKo

陽乃「総攻撃の後、私は荷物になると思うわ」

球子「あぁ……確かに」

杏「確かにって、タマっち先輩言葉を選ぼうよ」

球子「事実だから仕方がないだろ」

総攻撃では、流石に陽乃も参戦する

結界を破壊させる予定ではあるが、

そうではなかったとしても、全力で力を使うのであれば、今みたいな状況に陥るのは確定と言ってもいい

そうなった場合、

陽乃は置き去りにされたら、確実に死ぬ。

恐らく、そうなったなら九尾が出てくるだろうけれど。

球子「その時はタマが運んでやるから安心して良いぞ」

陽乃「貴女だって戦いで傷ついているはずよ」

球子「腕が取れてたら難しいけど、そうじゃなきゃ大丈夫だ」

杏「も〜変な事言わないで」

球子「なる可能性もある……だろ?」

もちろん、なる気はないが

万が一なってしまう可能性も考えて、球子は言う

自分が勇者だから。なんて、慢心はない

球子「その時は杏が頼む」
921 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/10(水) 23:19:44.38 ID:5E/bhfpKo

杏「私、久遠さんをおんぶして歩く自信がないよ」

少しなら歩けるかもしれない

勇者の力があるから、それなりに支えることは出来るだろうけれど

杏だって、勇者として戦う立場にある。

球子のように腕を奪われずにいたとしても

そうなってしまった球子の分、頑張らなければならない

球子「台車に乗せるしかないな……」

陽乃「……置いていくって選択肢はないの?」

杏「ありえません」

球子「ないな」

陽乃「そう……」

向こうにいる人々や、千景、大社からしてみれば、

陽乃は遠征から帰ってくることなく死亡し

代わりに歌野が新たに加わってくれる方が良いと思うはずだ。

陽乃「連れ帰らない方が良いんじゃない?」

球子「そりゃ、向こうじゃそうかもしれないけどな……それとタマ達は別だろ」

杏「久遠さんを置いていくなんてありえません。諏訪が安全なら、それも考えますけど……そうじゃないなら、絶対に」
922 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/10(水) 23:24:32.70 ID:5E/bhfpKo

では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
923 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/10(水) 23:44:24.16 ID:SE+y8YCcO

陽乃さんにとっては四国に戻るメリットがないのがな…
諏訪に残る選択をしてたらどうなってたんだろうか
924 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/11(木) 00:08:17.69 ID:Ap3yDi3OO

なんにせよ総攻撃を退けないと
925 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/11(木) 20:37:48.34 ID:TfbGYnvMo
では少しだけ
926 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/11(木) 20:38:30.76 ID:TfbGYnvMo

杏「四国への移住に関しても、なんにしても。私たちの予定としては総攻撃の後になります」

球子「絶対にあるとは限らないからな、適度に外の状況を確認して総攻撃起きないくらいにバーテックスが減っていれば……ってのも考えてるけどな」

陽乃「期間、は?」

杏「持てば半年くらいは考えています」

総攻撃が起こらず、

諏訪の周辺からバーテックスが一掃できるまで、少しずつ襲撃があることも考えて、

そのくらいの期間があれば、周辺も少しは落ち着くはずだと考える。

それが、半年くらいだという想定だ

もちろん、結界が持つ前提の話になる。

持たなければ早々に出ていかなければならないし、

そうなってしまったら最悪、歌野達は諦めなければならない

杏「でも、おそらく総攻撃があるのは確定だと思います……昨日、時間を見て結界の外を覗いたんですけど、バーテックスは増えているように感じたので……」

球子「通信の回線も繋がりにくくなってるみたいだからな。バーテックスのせいか力が弱ってるせいかは分からないけど」

陽乃「通信……四国、と、だったっけ……」

四国……若葉との定時連絡

向こうでは、若葉とひなたと共にその場にいたこともあるので、

少しくらいは状況を分かってはいる。

陽乃が向こうで聞いたときは、通信には何の問題もなかったが、

それに影響が出始めているというのは聊か不穏だ
927 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/11(木) 20:55:06.38 ID:WLXA3S+1O
来てたか
928 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/11(木) 21:36:54.17 ID:TfbGYnvMo

杏「一応、向こうはまだ襲撃とかは起きていないみたいです」

陽乃「そう……」

手薄になったことにバーテックスが気付き、

四国にも攻撃を始める可能性も少なくはないと思う。

陽乃達がいなくなってまだ1日だ

昨日今日は平気でも、

明日は襲撃されるかもしれない

そうなったとき、向こうは耐えられるのだろうか

若葉は戦闘経験があると聞いているけれど

2人はどうだったか……

陽乃に対して武器を手に取れるのなら、千景は大丈夫かもしれない

陽乃「動けないって不便ね……」

諏訪を見て回ることもできないから

全部、話を聞かなければならない


1、乃木さん達はどんな感じだった?
2、それで? 私のことも聞いたんでしょう?
3、向こうが心配じゃないの?
4、総攻撃以外は任せて良いのよね?

↓2
929 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/11(木) 21:39:34.32 ID:WLXA3S+1O
1
930 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/11(木) 21:41:30.51 ID:PWAjTl4E0
2
931 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/11(木) 21:58:14.17 ID:TfbGYnvMo
↓1コンマ判定 一桁

1269 聞いてない
5378 聞いた
  40 聞いた(特殊)


※特殊 歌野達
※奇数 悪 ぞろ目 最悪
※偶数 普通 ぞろ目 良
932 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/11(木) 22:00:06.75 ID:PWAjTl4E0
933 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/11(木) 22:49:10.55 ID:TfbGYnvMo

陽乃「それで? 私のことも聞いたんでしょう?」

球子「あー……まぁ、その」

杏「……聞いてます」

露骨に揺らぐ言葉

陽乃からそれていく視線

話しは聞いたけれど、

少なくとも朗報ではなかったと分かる仕草

嘘が苦手なのだろう

杏「ただ、えぇと……なんと言えば良いか」

球子「聞いたって面白くないぞ」

陽乃「……私の、ことでしょ」

自分自身のことだから

つまらない話だから聞かなくていいとはならない

杏「大社は正式に久遠さんを拘束するようにって、要求しているみたいです」

球子「……勇者の力を使ってでもな。タマ達はスマホが圏外になってるから内容は見れないけどな」

陽乃「圏外?」

杏「あ、はい。四国を出てから途中までは電波が届いていたんですけど、今は圏外です」
934 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/11(木) 23:01:20.96 ID:TfbGYnvMo

杏「お陰で、大社からの通達を確認せずに済んでます」

そう言って笑った杏は、

またすぐに……表情を曇らせる

大社からの通達がそれほどまでに問題なのかもしれないと、

陽乃は小さく息を吐く

球子「話すのか?」

杏「うん……」

球子の不安そうな問い

それだけでも少し怖いが、杏の神妙な面持ちが余計に不安を煽る

杏「実は郡さんが私達を久遠さんが殺したのでは。と、大社に詰め寄ったらしいです
  事実無根ですが、この通り圏外で全く連絡がつかないせいか……証明が出来なくて」

陽乃「あの通信を……使えば良いんじゃ、ないの?」

球子「言ったろ? 繋がりにくいって。そのせいで本当にタマ達がいるって証明にはなってないんだ」

そもそもビデオ通話のような、顔見せが出来るわけではないので

声だけでは本人じゃないと言われたら困ってしまう。

流石に、杏や球子の両親を連れ出して通信に対応して貰うわけにもいかないだろうから。

陽乃「なるほど……ね。私、嫌われて……るから」

千景は嫌がらせでも、杏たちを心配してでもなく

本気で陽乃のことを嫌悪し、疑っているのだ

まして、本当に人を殺したとあっては疑わざるを得ないのだろう
935 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/11(木) 23:05:01.34 ID:TfbGYnvMo

では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
936 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/11(木) 23:15:47.33 ID:WLXA3S+1O

ますます四国に戻りづらい状況だな…
千景に至ってはもう仲直り出来そうにないのも辛い
937 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/12(金) 00:22:46.60 ID:p3EG15nMO

でも千景の行く末考えたらお互いがお互いに本当の理解者になれるかもしれん
938 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/12(金) 20:52:23.00 ID:MXPySprAo
では少しだけ
939 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/12(金) 20:53:23.72 ID:MXPySprAo

陽乃「そこは、あなた達が無事に……帰れば解決するでしょ?」

球子「それはそうだけど」

杏「でも、だからって諏訪を放って帰るわけにはいきません」

諏訪から四国へと移住することを選んでくれた人々を連れて四国への帰還をすることが出来れば

外の状況、諏訪の現状

そして杏と球子の無事を伝えることが出来る。

諏訪への総攻撃の可能性を伝え、

若葉達を連れて諏訪の加勢に来ることだって敵うかもしれない

けれど。

そうはならないかもしれないのだ。

道中で襲撃を受け、多くの犠牲者が出るかもしれない。

大社が陽乃の力を知っているせいで、杏と球子が本人であると思われず、

一定期間拘束されることになるかもしれない

そうならなくとも、加勢に行くことは止められる可能性が高い

だから、総攻撃を退けた後の出発を考えている

そこで何かしらの被害が出るとしても、諏訪を諦めるのと諦めないのとでは話が変わってくる

杏「……そこで一つ問題があるんです」

杏は困り果てた顔で、切り出す

杏「総攻撃後に久遠さんが動けなくなって、諏訪の結界が破壊されてしまっていた場合……久遠さんが回復するのを待たずに四国に連れて帰ることになります」
940 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/12(金) 21:20:00.58 ID:MXPySprAo

今もこうして陽乃が療養できているのは、

諏訪に医療施設があり、結界で守られているからこそだ。

そうでなければ、いつバーテックスに襲われるかも分からないあの緊迫感の中で

身も心も中途半端な休息をとらなければいけなくなる

そんな状態では陽乃の体が元に戻るとは思えない。

四国に着いた後、大社に知られることなく安全に逃がすことは不可能だと言っていい

杏「でも、総攻撃で力を温存して欲しいとは言えません」

球子「総攻撃の規模にもよるけど、やばいだろうからなー。まぁ、そこはタマ達も死ぬ気で頑張るってことで」

気落ちした様子の杏の一方で、

球子は張り上げることなく、明るい声で笑う。

そうするしかないという諦めもあるのかもしれない

けれど――球子はお茶らけて見せているだけで、内心は本気のように感じられる

球子「絶対に諏訪を守る。結界の一つは壊されるかもしれないけどな……もう一つは絶対に守ってやる。だから安心して、ぶっ倒れてくれ」

杏「倒れないのが一番なのにっ」

球子「そ、そうなっても良いってはなっ――」

杏に詰め寄られて、椅子から転げ落ちる球子

鈍い音と、椅子が倒れる騒音が病室に響いたかと思えば、

すぐさま廊下をかけてくる音が聞こえて、看護師や水都達がなだれ込んできた

「お静かに願います。大きな音でも頭に響いたりすることもあるんですから。説明したように絶対安静ですし、そもそもここは病院なので……
 それが守れないのであれば、いくら勇者様と言えど出入り禁止にさせていただきますからね」

看護師は陽乃に何かがあったわけではないと安堵しつつも、

お尻を押さえて蹲る球子へと、注意を叩きつけた
941 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/12(金) 21:30:46.99 ID:MXPySprAo

√ 2018年 8月11日目 夕:諏訪

01〜10 歌野
21〜30 九尾
81〜90 襲撃

↓1のコンマ

※それ以外は通常(水都)
942 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/12(金) 21:31:51.78 ID:5h9B8SQLO
943 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/12(金) 22:19:32.50 ID:MXPySprAo
√ 2018年 8月11日目 夕:諏訪


騒がしさを運ぶ球子を杏が連れていき、また静かになった病室

けれど陽乃一人になったわけではない

陽乃「貴女は帰らないの?」

水都「久遠さんが眠るまでは、傍にいます」

球子や杏の使っていた椅子を片付けて、

新しいペットボトルを用意して

陽乃の腰下まで下がっていた布団を引き上げていく

水都「横になりますか?」

陽乃「……そうね」

腰を支えていた枕を外し、

ベッドの角度を整えて、陽乃の体を横向きに寝かせる

水都「少し、体ほぐしますね」

陽乃「そこまでしなくても大丈夫よ」

水都「そうですか?」

陽乃「そういうのは、看護師さん達がやってくれるから」
944 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/12(金) 23:37:29.25 ID:MXPySprAo

水都「声、ちゃんとしてきましたね」

陽乃「そう……?」

水都「水以外も飲めるかどうか、看護師さんに確認しますね」

陽乃の喉が非常に弱っていること

喉だけでなく、体の内側まで傷ついていたため、

炭酸飲料はもちろんのこと、

下手にジュースなどを飲ませるわけにもいかなかった

けれど、やはり勇者の身体

治りは早いらしい

大人しくしておけば……だが。

水都「……四国との通信ですが、乃木若葉さんも久遠さんのこと凄く気にしていましたよ
    絶対に無理するはずだって、言ってました」

陽乃「まだ何の役にも立ってないって、ちゃんと言った?」

水都「言ってませんよ」

そんなこと、絶対に言わないです。と

水都は首を横に振る

水都「ただちょっと、最近はノイズが入るようになってきたのが心配です」
945 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/13(土) 00:12:26.49 ID:xSHr3uk2o

前から、

数回に一度、ほんの数秒程度にノイズが入るのはあった。

けれど最近は一回の通信中に何度も途切れたり、ノイズが入ったり

確実に乱れていると感じる

いつ通信できなくなってもおかしくはない

水都「本当に近いうちに総攻撃が行われるかも、しれません」

陽乃「神託は?」

水都「まだ、ありません……」

陽乃「そう」

神託がどのくらいの精度で行われているのかを陽乃は知らない

数日前に来るのか、本当に直前に来るのか

水都の巫女としての素質は、九尾がもてはやさないのを見るに

そこまで高くはないのだろう

そして、諏訪の神々の力が弱まってきているのなら、

神託も遅れるのではないかと、陽乃は目を細める

水都「すみません……私、巫女としての素質はそこまでないので」

陽乃「一般人よりは、貴女の方が素質はあるでしょ……直前でも知れるなら、襲われてから気付くよりはマシだわ」
946 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/13(土) 00:14:34.38 ID:xSHr3uk2o

では途中ですがここまでとさせていただきます
明日も可能であればお昼ごろから
947 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/13(土) 00:35:05.45 ID:nM4LZMLmO

水都ちゃん本当に面倒いいな
ボロボロになって陽乃のメンタルケアには助かる
948 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/13(土) 07:21:08.00 ID:7sSax0rsO

うたのんやみーちゃんをこのまま死なせたくないなぁ
949 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/13(土) 18:20:01.88 ID:xSHr3uk2o
では少しだけ
950 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/13(土) 18:21:04.06 ID:xSHr3uk2o

水都「そうですね……何か神託があったらすぐにでも報告します」

陽乃「私に報告してどうするの?」

水都「もちろん、うたのん達に伝えるのが先にはなると思います
    でも、万が一総攻撃だと思われる神託があったなら、真っ先に久遠さんに伝える必要があるかなって」

陽乃「総攻撃なら、私に出る出ないは選べないと思うけど」

水都「そうかもしれないですけど……」

陽乃の素っ気ない対応にも、

水都は悲しそうというよりも、訳知り顔で小さく笑う

水都「久遠さんはほかの人よりもずっと、命懸けですから」

陽乃「命懸けなら、そこに差はないわ」

水都「じゃぁ、死んでしまう可能性が一番高いから。というのはどうですか?」

死ぬ可能性なんて、0か1かだ

バーテックスに殺される可能性があるのはみんな一緒だが、

陽乃には自分の力で死ぬ可能性がある

だとしても生きるか死ぬかでしかないと陽乃は息を吐く

陽乃「総攻撃で一番死にやすいのは、最も誰かを守ろうとする愚かな勇者よ」

水都「だとしたら、久遠さんかうたのん……かな?」

陽乃「私が誰かを守ろうとするわけ、ないでしょ」
951 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/13(土) 18:27:30.05 ID:wcBlFO34O
来てたか
952 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/13(土) 19:04:26.64 ID:xSHr3uk2o

水都「そうですか」

肯定するような口ぶりではあるけれど、

水都の表情は柔らかで、まるで信じていないように見える

陽乃が他人を守らないはずがないと、信じているのだろう

陽乃「勝手な事ばっかり」

水都「……だって、久遠さんの自己評価と伊予島さん達の話が全然違うから」

陽乃が自分を悪と言うとすれば、

杏たちは揃って、陽乃は善だと言う

だったら、陽乃は他人を救ってしまう人だ。

水都「そう言えば、久遠さんの体について少し調べてみました」

陽乃「私の身体?」

水都「そうです。勇者の力は神様から頂いた力なので、それに類する何かがあったんじゃないかなって」

陽乃「……で?」

水都「まだ古文書の翻訳中です。ただ、神様の力を借りるって言う点で憑依が怪しいのではと思ってます
    所謂、神降ろしですね。それによる代償として久遠さんは体を供物として捧げているのではないかと」

陽乃「へえ……」

水都「その供物として捧げられた体の一部を実際に神様が口にしているから、身体の内側が傷ついている。とか」

陽乃「たくましい想像力ね……枯渇したサブカルチャーを担えそう」

水都「それはちょっと難しいです」
953 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/13(土) 19:38:21.35 ID:xSHr3uk2o

水都「とにかく、久遠さんの体はなんだかすごく……普通じゃないと思います」

普通に検査しても、

陽乃の体は異常な回復力を持つ女の子の身体でしかない

水都が知る歌野よりも優れた回復力ではあるけれど、

勇者としての力が強いことを加味するなら、普通と言えるかもしれない。

だけど、力を使って体の内側を削られるなんて普通ではない

それでも回復する陽乃もまた、おかしい

水都「気を付けて欲しいのは、回復したからと言って本当に元に戻ったとは限らないということです」

陽乃「……また妄想?」

水都「ただの杞憂であって欲しい心配です。
    久遠さんは明らかに普通の勇者とは違うので、治った体が普通から外れていっている可能性もあるんです」

神降ろしは母も語っていたことだ

久遠家は依り代としての役割を持っており、

生贄に捧げられるべき血筋であると

もしもそれが、巫女ではなく勇者となることで歪んだのだとしたら。



1、余計な詮索はしない方が良いわ
2、四国との通信、どうにかする方法はないの?
3、私の血筋は、そもそもそういうことを主としたものだから
4、どこかに禊が出来るような場所、ある?


↓2
954 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/13(土) 19:39:40.63 ID:wcBlFO34O
4
955 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/13(土) 19:40:56.13 ID:yBHkfTbT0
3
956 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/13(土) 20:20:32.26 ID:xSHr3uk2o

陽乃「私の血筋は、そもそもそういうことを主としたものだから……」

水都「そういうことって、神降ろしとかですか?」

陽乃「……ええ」

水都は驚き、戸惑った様子で視線を彷徨わせる。

神降ろしをしている状態ではないかと想像はしたが、

実際にそれを行っているという確証はどこにもなかった。

しかし、陽乃がその家系の子であるというなら話は変わってくる

水都「もしかして、久遠さんは巫女の家柄なんですか?」

陽乃「そう、なるわね」

水都「巫女で、勇者……」

陽乃「そうなるわね」

歌野は、ただの女の子から勇者になった。

杏と球子も同様だったと聞いている

だが、陽乃はそうではなく巫女の家系として存在していたのに、

巫女ではなく勇者となった

普通じゃないのは、それがあるからだろうか。

水都「神降ろしを行う巫女の家系……それって、まさか人身御供っていうのとも――」

陽乃「関係があるか無いかで言えば、あるわね」
957 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/13(土) 21:23:26.08 ID:xSHr3uk2o

水都「……あの、もしかしたらなんですけど」

陽乃「なぁに?」

水都「久遠さんが特別なのは、初めからそれだけの力を使えているだけで
    本来は勇者だったら使えるっていう可能性はありませんか?」

陽乃は力が強すぎると言われている

しかも、それには代償まで伴うという

だが、歌野の力には代償らしい代償もない

力を使ったら内側がダメージを受けるなんてことはないし吐血もない

それがもし、

力の扱い方、あるいは力の差でしかないのだとしたらどうだろうか。

水都「久遠さんが憑依させる形で力を使っているとしたら、うたのん達は表面的に力を纏わせている程度でしかないってことです」

陽乃「………」

巫女の素質と言う言葉を借りるなら

陽乃は勇者としての素質と巫女としての素質がありすぎて、

表面上に力を纏うなんてことは出来ず、内側に取り込むことしかできない

水都「久遠さんと同じような強い力を、うたのん達も使える可能性があるんじゃないでしょうか」
958 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/13(土) 22:22:29.67 ID:xSHr3uk2o

間違いなく使わない方が良い力と言うことになるだろうけれど

けれど、今の陽乃と同等の力をみんなも使える可能性がある。

陽乃は、その素質のせいでそんな危険な使い方しかできないのかもしれない

土地次第では作れない作物がある様なものだろうか。なんて考えて、

それは違うと、水都は首を振る

陽乃「他の人が使えるから、なに?」

水都「えっと……その、久遠さんだけが無理しなくても良くなるかもしれないって」

陽乃「私がこうなるのに?」

水都「……です、よね」

陽乃「普通の人がこんな力を使ったら大変な事になるでしょ」

陽乃のことをみんな切り札と呼ぶが、

やはり、その力もまた切り札だ

そんなものを当てにするわけにはいかない

水都「……久遠さんのこと、もう少し教えて貰えませんか?」

陽乃「教えることなんて、無いわ」

水都「でも、一番大事なこと教えてくれたじゃないですか」
959 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/13(土) 23:27:40.57 ID:xSHr3uk2o

家が、巫女の血筋であること

離さなくても良いことを陽乃は水都に話した。

人を殺してしまったことと比べれば、

大したことではないのかもしれないけれど

陽乃「だから、貴女になら全部曝け出すって?」

水都「そうしてくれたら嬉しいな。とは、思っています」

水都は睨まれても、笑みを浮かべる

まだ、1日2日の知り合いでしかない

それで何でもかんでも話して貰えるだなんて思えない

水都「私はただ、久遠さんのことを知ることができれば、力になるかなって思っただけで……」

そう言った水都は、

ちょっぴり照れくさそうに笑うと、自分の胸に手を当てる

頑張るって決めたから

水都「今回みたいに体が弱ることがないように対策できるかもしれませんから」

陽乃「それは無理よ」

水都「出来るかもしれないってだけです……とにかく、可能な限り調べてみますね」

陽乃の目に入りそうな髪を払い除けると、

水都はペットボトルを手に取って、飲み器へと注ぐ

出来ることを頑張ると決めたから、少しずつやっていければ良いのだ

――時間が許す限りではあるけれど。
960 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/14(日) 00:15:45.12 ID:vJTXdnq1o

√ 2018年 8月11日目 夜:諏訪

01〜10 歌野
21〜30 水都
61〜70 球子
81〜90 杏

↓1のコンマ

※それ以外は通常
961 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/14(日) 00:21:32.18 ID:RVRUeXZvO
962 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/14(日) 00:23:00.21 ID:pHS3jJ9AO
963 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/14(日) 00:27:07.56 ID:vJTXdnq1o

では遅くなりましたが本日はここまでとさせていただきます
明日は可能であればお昼ごろから
964 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/14(日) 00:34:33.87 ID:RVRUeXZvO

陽乃さんこのままだと普通に死にそう…
せめてこの状況を切り抜けるためにもみんなとできるだけ情報を共有したいなぁ
965 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/14(日) 02:15:28.39 ID:zHVJXKIKO

とりあえず柱壊されてから総攻撃に対する反撃に転じようとしてるってのは共有したいけどなあ
少なくとも杏たちには
966 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/14(日) 14:31:43.76 ID:vJTXdnq1o
では少しずつ
967 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/14(日) 14:32:10.43 ID:vJTXdnq1o
√ 2018年 8月11日目 夜:諏訪


陽乃「はぁ……」

声は出せるようになったし、

足は持ち上げるのは無理だが、横に動かすことは出来る

腕はまだ上げられそうにないし震えも残っているけれど。

少しずつ回復していっていることだけは分かる

もう数日休めば、出歩くこともできるだろうか

諏訪を見て回るか

若葉との通信に参加するか

出歩けるようになったからと言って、

1日中の外出はきっと許されないだろうから、考えておく方が良いかもしれない

陽乃「そんな制約、真に受けてあげる義理もないのに」

向こうだったら間違いなく抜け出している。

いいや、大人しく病院で療養すらしなかったかもしれない

なにせ、大社管理の病院に入院させられてそのまま監禁されるのだから。

けれどここでは水都を除けば、

みんな久遠陽乃と言う人物がどういうものかを知らないから、

ただの勇者として丁重に扱ってくれている

陽乃「知ったら……こんな部屋に放っておかれたりしないでしょうね」

身体が動かないなんて関係なしに拘束具はあるだろうし、

監視カメラだって設置されるだろう

陽乃「……結界の維持、できるのが一番なんだろうけど」

それは、出来ない
968 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/14(日) 14:33:51.14 ID:vJTXdnq1o

↓1コンマ判定 一桁

19 圏外
3  通信

※ぞろ目特殊
969 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/14(日) 14:34:41.92 ID:CrBY5vzcO
970 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/14(日) 15:34:32.36 ID:vJTXdnq1o

通信が乱れているのが総攻撃の兆候だと考えるなら、

早くて今月末

遅くても来月中にはそれが来ると考えておいた方が良い

その間に襲撃がないのなら問題ないが、

バーテックスがそんな生易しいことをするとは思えない。

バーテックス達は、

諏訪の戦力が増強されたことに気付いているはずだ。

実際にバーテックスに被害を与えたし、

そのうえで諏訪に合流したのだから、確実に。

白くて丸い体のバーテックスではなく、

進化体と呼ばれる、強力な形態のバーテックスをいくつも投入してくるか、

物量で押しつぶしに来るか。

その両方か。

どちらか一方であれば勝機はあるかもしれないけれど

その両方だったなら、

手を抜くかどうかなんて考えも必要なく、蹂躙される気がしてならない
971 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/14(日) 16:26:46.02 ID:vJTXdnq1o

水都が言うように、

陽乃と同レベルの力を使えるようになった方が良い気がすると、

陽乃は考えてすぐに目を閉じる

仮に、自分の素質が高いとして

それでもあれだけの代償が必要なのだとしたら

球子たちがそれを使うにはどれだけの代償を伴うのだろうか。

陽乃で吐血したりするなら

球子たちの体はどれだけ傷つくのだろう

それを考えると、水都に言ったようにあてにはできない

陽乃「……どうするべきかしら」

総攻撃に参戦するのは確定だ

だが、それ以外の戦いには不参加の予定

しかし、そこに進化体が現れた場合、

球子たちだけで対応できるかどうか。



1、休む
2、九尾を呼ぶ
3、球子たちの力について
4、通信について
5、イベント判定

↓2
972 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/14(日) 16:27:55.35 ID:w96GhjoK0
1
973 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/14(日) 16:30:08.05 ID:F/qqPojHO
3
974 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/14(日) 17:32:19.25 ID:vJTXdnq1o

陽乃「切り札……」

球子たちの切り札の力

それが神々の力なのか、

九尾のように妖といった一段階下がる力なのか

前者であればその反動は間違いなく重いものになるけれど

後者であれば、影響は最小限に抑えられるのではないだろうか

もっとも、九尾はひなたが言っていたように神獣クラスの力を持っている

それに匹敵する力では、やはり代償が重いかもしれない

陽乃「……ん」

単純な戦闘能力を底上げするには、

やはり、それぞれに戦い方を考えて貰うのが一番だ。

球子の武器と、杏の武器

それらの長所を生かして、短所を庇い合って

――なんて、出来れば一番だが。

陽乃「土居さんには、楯を投げた後の隙があるのよね……伊予島さんは一手一手が弱い」

球子に火力があって手数が少ないとしたら

杏には火力がなくて手数が多い

白餅……初期バーテックスが相手なら杏のそれで十分だが、

相手が進化体にもなれば、力不足感は否めないだろう
975 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/14(日) 18:03:33.22 ID:vJTXdnq1o

陽乃「戦い方を極めるか、力をそもそも底上げするか……」

そこを決めるのは陽乃ではない

球子達がどう考えるかだ

陽乃「そう言えば、端末が圏外なんだったっけ」

陽乃は、常に九尾を連れているため

端末なんてなくても勇者としての力を扱うことができる

しかし、球子たちはそうではない

神樹様という神々が集った強大な根源から、

端末を通して力を身に纏い、武器に宿し、戦う

以前は武器に宿すだけだったのだから、進歩していると言ってもいい

問題は、その端末が圏外であることだ

もし、この圏外が

ただ単にネットワークに繋がらないだとか、

電波が届かないとかではなく、

いつも借り受けている神々の力そのものにアクセスできていないという状態であるなら、

2人の力は、そのうち使用できなくなるのではないだろうか? と、

陽乃は目を細める
976 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/14(日) 18:45:55.92 ID:vJTXdnq1o

ここに来るまで、半日

その間勇者の力を使い続けて、二度の戦闘

杏は外に出たと言っていたし

その時にも勇者の力を使っているかもしれない。

繋がりの絶たれた球子たちの力が有限なら

それはあとどれだけ使えるのか

そして、諏訪の結界が突破されて力が失われたとき、

歌野の勇者としての力はどうなるのか。

陽乃「……もし、みんなの力が使えなくなるとしたら」

球子たちが有限で、

歌野が諏訪の結界が崩壊するとともに勇者ではなくなってしまうとしたら

そうなったら、もう、全滅するほかない

いいや、陽乃が死ぬ気で戦えばどうにかなるかもしれない

その場合、生き残れたとしても数日の入院では済まないだろう

陽乃「……九尾なら、分かるかしら」


1、九尾を呼ぶ
2、今日は休んでおく

↓2
977 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/14(日) 18:52:10.20 ID:w96GhjoK0
2
978 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/14(日) 18:54:15.07 ID:UkgDMqkPO
2
979 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/14(日) 19:38:01.41 ID:vJTXdnq1o

陽乃「……明日、でもいいかな」

少し考えて陽乃は目を閉じる

小さく息を吸い、吐き出す

諏訪の病院の一室も、もう見慣れたと言えるだろうか。

白い天井は見飽きたし、

横に控える電子機器の音も聞き飽きた

病院で使われるシャンプーと薬品の匂いも……

全く体を動かせないせいで、

見える景色がほぼ変わらないのが原因だ

陽乃「身体、早く治さないと……」

そのためにも、夜更かしはすべきではない

きっと、見回りも来るだろうし

九尾に聞くなり、杏たちに確認するなり

あとは、襲撃にも警戒して――

陽乃「……ん」

今日は、水都はいない

別にどうでもいいことだと陽乃は息を吐く

身体から力を抜いていくと、

今の自分の体がどれほど追い詰められているのかがはっきりしてくる

両手足、胸の内、腹部……まだ違和感がある
980 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/14(日) 20:11:08.50 ID:vJTXdnq1o

身体が使えない分、頭を使いたくなる

けれど、使ってしまったらまた疲労が蓄積する

今日はもう休んでしまうべきだろう

明日は自分で水を飲めるくらいにはなるだろうか

それとも、車椅子に移るくらいは出来るだろうか

そのどちらも、まだ難しいかもしれない

陽乃「明日も藤森さん……くるのかしら」

あの調子なら、きっと来る

自分を水都と呼んで欲しいとまで言ってきたのだから

人を殺したこと

自分が巫女の家系であること

内側のことを話してしまった唯一の相手

陽乃「はぁ……付け込まれたわ……」

身も心もボロボロだったとはいえ

聊か気を許し過ぎたかもしれないと陽乃は思って、薄く開いた瞳でどこかを睨む
981 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/14(日) 20:19:50.33 ID:vJTXdnq1o

1日のまとめ(諏訪組)

・ 白鳥歌野 : 交流無()
・ 藤森水都 : 交流有(杏と球子を呼んで、名前呼び、血族)
・ 土居球子 : 交流有(総攻撃、陽乃について)
・ 伊予島杏 : 交流有(総攻撃、陽乃について)
・   九尾 : 交流無()

√ 2018/08/10 まとめ

 白鳥歌野との絆 45→45(普通) 
 藤森水都との絆 58→62(普通) ※特殊交流 
 土居球子との絆 55→56(普通) 
 伊予島杏との絆 62→63(普通) 
   九尾との絆 64→64(普通)
982 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/14(日) 20:33:18.79 ID:vJTXdnq1o

√ 2018年 8月12日目 朝:諏訪

01〜10 歌野
21〜30 九尾
51〜60 杏
81〜90 球子

↓1のコンマ

※ぞろ目 襲撃
※それ以外は通常(水都)
983 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/14(日) 20:35:46.21 ID:ku9Eb8SyO
984 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/14(日) 20:43:38.73 ID:vJTXdnq1o

√ 2018年 8月12日目 朝:諏訪


諏訪に来てから、もう3日目の朝

朝でなくてもいいなら今日で4日目になる

初日に気を失って、それからずっと病院の景色

そのほとんどにいる藤森水都の姿は

今日に限っては、見えなかった

九尾「目が醒めたかや?」

陽乃「九尾……?」

水都でも歌野でもなく

球子たち諏訪の勇者の誰でもない、女性

金色の髪に、赤い瞳のその人は、

馴染んだ声色で問ながら、陽乃の頬に触れてくる

九尾「案ずるな。妾がこの場にいても大した負担にはならぬ」

陽乃「それは良いのだけど、どうして」

九尾「主様は妾に問いがあるのじゃろう?」

喉を鳴らすような、笑い方

見た目で言えばとても綺麗な女性の瞳は、つり上がって鋭い
985 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/14(日) 21:48:28.24 ID:vJTXdnq1o

九尾「あの小娘共の力は有限では無かろう。しかし、安心はできぬな」

陽乃「普通に使えるんでしょう?」

九尾「四国との通信があるじゃろう? あれが有効ならば、小娘共も問題なく力を使えるはずじゃ」

四国と諏訪の通信技術

あれは神の力を織り交ぜた普通ではない方法で行われている

それが四国の神々と球子達の架け橋となって、

力を供給してくれるはずだと九尾は言う

しかし、今はそれが乱れている状態で、より一層酷くなっていると言う話がある

だから安心はできないのだ

九尾「主様の目的を達成するならば、小娘共は勇者としての力を一時的に喪失する可能性はある」

陽乃「そんな話……」

九尾「圏外とやらは知らぬが、力の供給が足りておらぬとは思わなんだ」

くつくつと喉を鳴らすように笑うと

わざとらしく手の甲で口許を隠す仕草を見せて、細めた瞳で陽乃を見る

九尾「通信だけならば、妾でどうにでも出来るが」

陽乃「……本当に?」

九尾「通信に用いる力を強制的に書き換えて安定させるだけじゃからのう……妾にも出来ることではある
    向こうに上里ひなたを残しておるじゃろう? あの娘が場におらねばならぬが」
986 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/14(日) 21:56:57.99 ID:vJTXdnq1o

ひなたに授けた加護もまた、九尾の力だ

それが通信設備に接することで同じく接した九尾と力を繋ぎ合わせ、

織り交ぜられている神々の力の代替とするのだと言う。

もちろん、それでも陽乃には多少の負荷がかかることになるが、

万全であれば、それほど大きな負担ではなく

少し疲労感を覚えるという程度らしい

九尾「じゃが、問題は妾の力を織り交ぜたからと言って、小娘共に力の供給が出来るとは限らぬということじゃな」

陽乃「出来るかもしれないし、出来ないかもしれないってこと?」

九尾「運次第。と言うやつじゃな」

楽しそうに九尾は笑うけれど、全然笑える話ではない。

通信が出来なくなるだけなら良いが、

それによって球子たちが戦えなくなるというのは大問題だ

それもまた絶対ではないらしいが、

その可能性があるという時点で……不安が残る。

総攻撃を乗り越えても、四国に戻れないかもしれないのだ



1、対策は?
2、ねぇ、白鳥さんはどうなの?
3、通信、回復させましょ
4、みんなを呼んできて貰えないかしら


↓2

※4は昼使用
987 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/14(日) 21:59:39.54 ID:ku9Eb8SyO
3
988 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/14(日) 21:59:48.38 ID:pHS3jJ9AO
3
989 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/14(日) 22:32:49.22 ID:vJTXdnq1o

陽乃「通信、回復させましょ」

九尾「良いのかや?」

陽乃「ただ音信不通になるよりはましだわ」

通信を回復してもしなくても

球子たちの力が使えなくなる可能性はある

四国とのつながりが完全に断たれてしまうのなら

通信を回復しない方が、そのリスクは高いと言える

陽乃「……一応、みんなには話すべきだとは思うけどね」

幸いにも、

ここには大社という組織が存在していない

歌野も水都も球子たちも協力的だ

可能性があるならと、承諾してくれるに違いない

だが、問題は向こう側だ

陽乃「上里さんって、確か大社預かりよね?」

九尾「うむ。そう言う話じゃったな」

陽乃「戻ってきてると思う?」

九尾「思わぬな」
990 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/14(日) 23:09:40.77 ID:vJTXdnq1o

諏訪側の説得は容易いが、四国側の説得が簡単ではない。

現状、すでに通信は乱れているという。

伝わるまで繰り返して、若葉にひなたを連れてくるよう求められたとしても

若葉がひなたを連れ出せるように説得するのは難しい

今、四国のどこかに陽乃がいるのではないかという話になっているはずだ

ひなたが陽乃に殺されないために大社が匿っているという建前は、今や本音になっているかもしれない

陽乃が四国には居ないことを証明するには、

通信で陽乃が話す必要がある

しかし、通信のノイズを理由にそれを認められない可能性がある

陽乃「悪いことばかり考えていても仕方がないけど、乃木さんに説得して貰うしかないのよね?」

九尾「ふむ……出さねば諏訪を潰すとでも脅すかや?」

陽乃「……それなら、みんなには話せないわね」

絶対に反対される

水都はもちろん、球子や杏にも

歌野は……どうだろうか。

演技だからと説得することは可能だろうか?

いや、難しいだろう
991 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/14(日) 23:51:55.63 ID:vJTXdnq1o

陽乃「どうやって上里さんを連れてきてもらうか、考えた方が良いわね」

九尾「主様が考える必要はなかろう」

陽乃「それはそうなんだけど……」

お願いする手前――じゃなくて。

陽乃「スムーズに話を進めたいじゃない」

九尾「ならば、やはり脅せばよい」

陽乃「私は良いけど、みんなが許さないでしょ」

向こうに戻ったとき、また一段と陽乃の立場が悪くなる

今以上に悪くなるのかと言う疑問はあるけれど、

だとしてもみんなが許してはくれないはずだ

九尾「黙らせればよいではないか」

陽乃「貴女はまたそうやって……」

九尾「惑わせばよい」

陽乃「………」

九尾の手段が一番早い……かもしれない

ただ、それを聞くのは若葉だ

その若葉の言葉を大社が鵜呑みにしてくれなければいけないのだ

陽乃「とりあえず、話してからになるわね」

ひなたを連れて来させる方法を検討して

らちが明かなそうなら――九尾の言うやり方

というのが一番だろうと、陽乃は困ったようにため息をついた
992 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/14(日) 23:53:37.61 ID:vJTXdnq1o

√ 2018年 8月12日目 昼:諏訪

01〜10 歌野
34〜43 杏
67〜76 襲来
87〜98 球子

↓1のコンマ

※ぞろ目 襲撃(悪)
※それ以外は通常(水都)
993 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/14(日) 23:56:05.03 ID:ku9Eb8SyO
994 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/14(日) 23:57:06.28 ID:vJTXdnq1o

では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
995 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/15(月) 00:03:50.14 ID:YOQqXu37O

陽乃さんに負担や気苦労が次々と襲ってくるなぁ
とにかくみんなと相談しないと
996 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/15(月) 21:35:47.65 ID:YUZDJJSio
では少しだけ
997 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/15(月) 21:36:46.72 ID:YUZDJJSio

√ 2018年 8月12日目 昼:諏訪


歌野「だいぶ元気になったみたいで、良かったわ」

陽乃「ええ……おかげさまで」

ここに来てからずっと入院、安静、付きっ切り介護

一回悪化させたせいもあるけれど、ここまで過保護にされていては、

休まる以外にはないだろう

もっとも、手足が動かせず水もろくに飲めないのだから当然ではあるが。

陽乃「それで、どうしてここに?」

歌野「久遠さん一人じゃ食事もできないって聞いたから」

陽乃「あなた達が来なくたって――」

歌野「そうね。看護師さん達が手伝ってくれる。けど、手伝いたかったの」

歌野はそう言いながら、

新しく用意されたスポーツドリンクを飲み器に注ぐ

水かお茶かスポーツドリンクかで選んだ一つ

風邪を引いたときなどに良く見たそれは、むしろ今の陽乃には適しているそうだ。

歌野「個人的に話したいこともあったから」

陽乃「……それほど親しい中でもなかったと思うけど」

いや、親しくないから話があるのか、

それとも藤森水都から何か話を聞いたのか。

陽乃が少し考えつつ歌野に目を向けると、笑みが返ってくる

歌野「少し飲む?」

陽乃「じゃぁ、少し」

水都ではなく歌野というのが少し違和感があったけれど、

飲み物の流し方は、不思議と歌野の方が丁寧で優しく感じられる

歌野が水をやり慣れているというのが、理由だろうか
998 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/15(月) 21:39:13.41 ID:YUZDJJSio
次スレ続きはこちら

【安価でのわゆ】久遠陽乃は勇者である【3頁目】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1615811898/
999 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/15(月) 21:41:14.09 ID:00N4qW91O
1000 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/15(月) 21:46:09.43 ID:wGMuDTc2O
了解
1001 :1001 :Over 1000 Thread
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