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【安価でのわゆ】久遠陽乃は勇者である【3頁目】
- 713 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/15(土) 21:50:20.61 ID:Eg1ftFkMO
- 2
- 714 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/15(土) 22:21:50.92 ID:KsGmZGnIo
-
陽乃「もう一つの方、行ってみましょ」
陽乃達がいるのは諏訪大社の中の一つ、諏訪大社本宮と呼ばれているところだ。
ほかに上社前宮、下社秋宮、下社春宮と呼ばれる境内がある。
すでに下社の方はバーテックスの襲撃に耐えられず崩壊し、
結界の外になってしまっているため、近づくことはできない
陽乃「……」
陽乃なら強行することも可能だが。
『神としての自覚でも芽生えたかや?』
陽乃は、揺れる自分の影を見つめて、ため息をつく
狐の形をしたその影は、
降り注ぐ陽の光など関係なく、動いている。
陽乃「まさか」
神様としての仕事なんて、結界の維持以外をする気は毛頭ない。
陽乃「でも、次に壊されるとしたら間違いなくそっちになるでしょ? 状態を見ておきたいわ」
『状態なら、外に出る方がよいと思うが』
陽乃「まぁ、そうなのだけど」
『心労はかけたくないと?』
陽乃「……後々、面倒なことになるのを避けたいだけ」
- 715 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/15(土) 22:44:57.66 ID:KsGmZGnIo
-
民家の立ち並ぶ県道をまっすぐ歩く
ここに来るまでは、諏訪は建物よりも畑が多い。なんて、
意味の解らない考えも片隅にあったが、見渡す限り家ばかり。
そのほとんどが、無人化している。
結界の外に家を置いてくることになった人々が、
家主を失った家を利用していることもあるらしいけれど、それでも、大部分がもぬけの殻だ。
陽乃「……」
『人間の気配が少ないのう』
陽乃「ええ」
諏訪の神々の代理となってからというもの、なぜだか、そういった感覚が強くなった。
気配というか、命というか
そこに存在している力を、感じる。
「おや、見ない子だねぇ」
陽乃「……ん」
ふと、声をかけられて顔を上げる
高齢の女性
腰もやや曲がった感じのおばあさんは、
陽乃のことをじぃっと見つめて「あぁ」と得心が言ったように声を漏らす。
「歌野ちゃんが言ってた、四国の方から来た勇者様」
- 716 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/15(土) 23:01:06.96 ID:KsGmZGnIo
-
「えぇっと……そうそう。久遠陽乃さん。だったかねぇ」
陽乃「名前、知ってるんですね」
「どんな子かって話は、聞いてたの」
杏と球子については、何度も外に出ているし
四国の状況などの話も担当していたから、容姿を知っているらしい。
名前も併せて知っているから、
まだ見たことのない少女、久遠陽乃というのが3人目だと考えたのだろう。
「本当に、きれいな桜色の髪をしているわねぇ……染めているの?」
陽乃「は、え、あ、いえ……これは、元からです」
おばあさんの、やせ細った手が陽乃の髪に触れる
嫌だと振り払うわけにもいかず、軽くうなずいて答える。
これは地毛だ。
どうあがいても変えられない、桜の髪
「ここにきてすぐ、入院したって聞いていたけど……もう、大丈夫なの? 休んでいなくて平気?」
陽乃「……大丈夫です」
- 717 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/15(土) 23:22:47.44 ID:KsGmZGnIo
-
「そう、よかったわ。元気になって」
嬉しそうに笑うおばあさんは、陽乃の髪から手を離す。
「一人?」
陽乃「ええ、少し散歩を」
陽乃は、少し困った笑みを浮かべて答える。
陽乃「上社前宮に……参拝をしに行こうかと」
「そう……大丈夫? 道分かるかしら」
陽乃「ありがとうございます。大丈夫ですよ」
敵意は感じられないし、ただの一般人
突っ撥ねる必要もないだろうと、
陽乃は、努めて柔らかく答える。
上社前宮に行ったことはないが、
感覚で、位置がなんとなくだがわかっている。
そう遠くはないし、道なりに行けば問題はなさそうだ。
陽乃「では失礼します」
「あぁ、はい。気を付けてね。無理は、しないでね」
陽乃「……大丈夫です」
陽乃は、どうにか笑みを浮かべた。
- 718 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/15(土) 23:45:49.23 ID:KsGmZGnIo
-
上社本宮を出てから、道なりに歩いて約30分程度
距離としては2キロくらいだろうか
民家に囲まれた道、
それなりに開けた道
ゆっくりと歩いてたどり着いた、諏訪大社の上社前宮
本宮に比べれば、やや控えめに見える社殿
参拝客は、今はいないようだ
陽乃「……」
『だいぶ、弱まっておるのう』
陽乃「そう、みたいね」
上社本宮と同じように、上社前宮にも御柱がある
だいぶ、力は弱まってしまっているようだが。
『参拝、するのじゃろう?』
陽乃「神様が、参拝するの?」
1、参拝
2、御柱へ
3、拝殿へ
↓2
- 719 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/15(土) 23:47:55.05 ID:eTMKo6760
- 1
- 720 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/15(土) 23:48:43.05 ID:YnAKmBn4O
- 1
- 721 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/15(土) 23:48:54.78 ID:83lKEGpDO
- 1
- 722 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/15(土) 23:55:06.46 ID:KsGmZGnIo
-
では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であればお昼ごろから
- 723 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/16(日) 00:04:09.82 ID:pOTIqBaFO
- 乙
おばあさんに見せた優しさを杏たちにも見せられたらいいのになぁ…
- 724 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/16(日) 00:49:38.11 ID:ZkYemofQO
- 乙
優しさは伝わってると思うけどな
- 725 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/16(日) 17:07:41.66 ID:Nw76iqsHo
- では少しずつ
- 726 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/16(日) 17:08:13.56 ID:Nw76iqsHo
-
陽乃「まぁ、参拝するって言っちゃったものね」
陽乃はそういって、鳥居の前で立ち止まる
陽乃「私、一応神様の代理だし……手順を省いても怒られないかしら」
『妾が知るわけなかろう』
陽乃「冗談よ」
九尾の素っ気ない答えに陽乃は苦笑して、一度頭を下げる。
こんな世界になる以前から、陽乃は参拝に行くこともあれば、参拝に来る人を多く見かけてきた。
それでも、鳥居をくぐる前に一礼をする人はそう多くはなかった覚えがある。
絶対にしなければならないという、決まりがあるわけではない。
あくまで、そういった所作もある。といった程度のものだ。
陽乃「……神降ろしをしたからって、人が神様になれるわけではないもの。
あくまで、私は神職を担う巫女として、一線の外側だって自覚を持っているべきだわ」
『面倒なものじゃな』
陽乃「でも、久遠という姓が代々受け継いできた巫女としての役割を担う人はもう、あとは私しかいないでしょ?
その私が、いくら、不満があるからって捨てるわけにはいかないじゃない?」
陽乃はそう言って、困ったように笑う。
九尾はいるが、周りにだれもいないからか、
普段より一段と、声色は柔らかい。
- 727 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/16(日) 18:02:04.88 ID:Nw76iqsHo
-
木々の多い境内、虫の声もせわしなく、
皮膚を焼くような木漏れ日を感じながら、
略式的なお清めの手水舎を過ぎて、内鳥居の方に近づく
陽乃「ねぇ、貴女ならミシャグジ様がどういうものなのか、知ってるんじゃない?」
『知らぬ』
陽乃「そう……」
諏訪の土着の神として、ミシャグジ様と呼ばれる存在がある。
神様とは言うが、本当に神様なのかどうかも不確かだというのは、
人を誑かす妖狐と、神獣としても考えられている九尾と、少し似ている。なんて、陽乃は小さく笑う
陽乃「石の神、木の神。九尾はどっちだと思う?」
『ふむ……木じゃな』
陽乃「どうして?」
『白蛇は屋根に住むといわれておるじゃろう? 石の屋根に取り込まれた蛇は死骸となるが、木ならば、死することも少なかろうて』
陽乃「なにそれ」
くつくつと、九尾はのどを鳴らして笑う。
『ご神体など、関係はなかろう。妾がそうであるように、宿れるものあればそれに宿る。それだけじゃ』
- 728 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/16(日) 18:20:45.98 ID:Nw76iqsHo
-
石段を進んで、少しばかりの登り道を歩く。
上社前宮の拝殿と、
それを囲むように点在している御柱が見える
陽乃「……弱いわね」
『言うたであろう』
陽乃「でも、思った以上だわ」
力もそうだが、
見た目からして、今にも崩れてしまいそうなほどに、御柱は弱っている。
綺麗に整えられているはずの表面には苔が生え、一部が腐り、
前宮……の部分から先の文字はすでに消えてしまっている。
子供の力で押せば、へし折れてしまいそうな感じだ
陽乃「御柱が、その役目を担い切れてない」
『そのために、主様を頼ったのじゃろう』
陽乃「……」
本宮の方は、どちらかといえばまだ無事だった。
だが、前宮の方はもうすでに限界が来ていて、無理矢理に支えったされているような雰囲気さえある。
陽乃「……これ、私が維持しているってことでいいのかしら」
『触れてみればよかろう』
陽乃「どうせまた、崩れ落ちるんでしょう?」
1、御柱に触れる
2、拝殿の方へ
3、清流の方に向かう
↓2
- 729 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/16(日) 18:22:14.53 ID:ZkYemofQO
- 1
- 730 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/16(日) 18:22:55.27 ID:IamtyawgO
- 2
- 731 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/16(日) 18:47:48.51 ID:Nw76iqsHo
-
陽乃「力の引継ぎはもう完了してるし、これまで崩しても面倒なことになるだけだわ」
『それもそうか』
御柱には触れずに、拝殿の方に向かう。
『主様、賽銭はあるのかや?』
陽乃「一文無しよ」
陽乃は意味もなくポケットをまさぐって、首を振る
拝殿にきて、お賽銭なしというのも変だが、
ないものはない。
ポケットを叩いても、増えたりしない。
『仕方があるまい』
九尾がそういうと、影が揺れて女性が現れる。
長い金色の髪に日が当たって……少しまぶしい。
九尾「ここは妾が貸してやろう」
陽乃「貴女、お金あるの?」
九尾「くふふっ、いくらでもあるぞ」
九尾はそういって、手のひらに一万円札を出す。
1枚、2枚、3枚……次から次へと、どこからともなく見せる。
陽乃「人は化かせても、神様は無理だと思うけど」
- 732 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/16(日) 18:54:43.43 ID:Nw76iqsHo
-
払いのけると、
散らばっていく紙幣は、瞬く間に木の葉へと姿を変える
陽乃がお金を持っていないのだから
九尾だって、持っているわけがない。
素直に諦めて、鈴を鳴らして、基本のあいさつ
お賽銭がないことの謝罪をお祈りの代わりとした。
九尾「欲がないのう」
陽乃「無駄な希望を抱かないだけよ」
九尾「じゃから、小娘どももあしらうと?」
陽乃「理由の一つでは、あるわね」
陽乃は軽く答えて、九尾を置いて拝殿を離れる。
- 733 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/16(日) 19:29:41.39 ID:Nw76iqsHo
-
拝殿の隣には、清流が流れているとされていた。
だが、今はもうその流れはほとんど感じられない。
晴れていてもしっかりと流れていたはずなのに、
干乾びてしまったかのように、ほとんどの土が乾いている。
本来流れている分の、半分程度だろうか。
陽乃「……流れが、止まりそうね」
九尾「主様がおれば、元に戻るじゃろうが、時間は少しかかるやもしれぬな」
陽乃「だから残る。なんて、私は言わないわよ」
九尾「妾も、残れとは言わぬ」
陽乃の少し冷めた声に、九尾は顔色一つ変えずに返す。
二人の空気にまわりが静まり返って
九尾「主様には残れぬ理由があるのじゃろう? ならば、思うがままに行動するがよい」
陽乃「言われなくても、そのつもりよ」
諏訪を出て行く。
誰がなんて言おうと、関係ない。
ここに残りたい人がいようと、置いてでも向こうに帰らなければならない。
そうしなければ、陽乃の母親が危ういからだ。
九尾「……」
九尾は、弱い流れのそばに腰を下ろしている陽乃を一瞥して、何も言わずに姿をまた影へと消した
- 734 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/16(日) 19:30:48.65 ID:Nw76iqsHo
-
√ 2018年 9月1日目 夕:諏訪
01〜10 水都
34〜43 杏
67〜76 歌野
87〜98 球子
↓1のコンマ
※ それ以外通常
- 735 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/16(日) 19:36:04.70 ID:VYeHfS11O
- あ
- 736 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/16(日) 19:57:33.32 ID:Nw76iqsHo
-
√ 2018年 9月1日目 夕:諏訪
諏訪大社の、上社本宮
陽乃達が今住んでいる神社へと戻ると、
参集殿の近くにいた人影が、陽乃に気づいたのか駆け寄ってきた。
歌野「久遠さん!」
陽乃「……なに?」
歌野「どこに行ってたの? いつもの部屋にいないし、誰も何も聞いてないしで心配したのよ?」
陽乃「少し散歩をしていただけよ」
上社前宮に行った後に、
暫く、適当にふらついていただけだ。
自転車も車もなく、
徒歩だったから少し時間はかかったが、そのくらいでしかない。
陽乃「部屋に引きこもっていたって、暇だったんだから……結界の外に出なければ何していたっていいでしょう?」
歌野「それは違いないけど、久遠さんの場合結界の外にもいきそうだから」
陽乃「否定はできないわね」
- 737 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/16(日) 20:16:14.80 ID:Nw76iqsHo
-
陽乃「まぁ、勝手に単身突撃する気はないわ。今のところはね」
この状況で、わざわざ禍根を残すようなことをする気はない。
何の知らせもなしに単身で周囲のバーテックスをせん滅しても、
次の動きが遅れることになる。
その遅れが、四国までの道のりを険しくさせる可能性があるのだ。
陽乃「その様子だと、それを疑って結界の外にまで見に行ったわけじゃないんでしょう?」
歌野「ええ」
歌野は頷いて、ほっと息を漏らす。
歌野「伊予島さんたちが、散歩を勧めたって言っていたから、そうだろうと思ってたし……」
歌野は、自分の胸のあたりに手を当てて、少し悩ましそうな顔をする。
ちらっと陽乃を見たかと思えば、胸元の手に、ぎゅっと力がこめられた。
歌野「なんとなく、久遠さんのことを感じられる……気がしたから」
陽乃「そう……力のつながりかしら」
歌野「みーちゃんも、同じような感覚があるって言ってたわ。久遠さんがどこにいるのかまでは解らないけど
でも、少し遠くとか近いとか、そういうのは解るって、私と同じように」
- 738 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/16(日) 20:59:41.20 ID:Nw76iqsHo
-
歌野「久遠さんのことを考えた時に、そういうのを感じるわ」
陽乃「……そう」
陽乃は特に意識しなくても、みんなのことを感じ取ることができる
みんなよりも、歌野や水都
もともと諏訪の神々とのつながりを持っていた二人は特に感じやすい
だが、それは神様の力を授かった恩恵で歌野や水都にはないと思っていたが、
そういうわけでもないらしい。
力の繋がりを逆探知している……といえばいいのか、
とにかく、その力の主である陽乃を意識していると、感じ取れるようだ。
歌野「それはそれとしても、心配したわ。無事……だろうとは感じていたけれど
ほら、久遠さんんってば、何があるかわからないから」
陽乃「だから、もう体に問題はないって言ったじゃない」
歌野「でも、万が一があるわ」
陽乃「……」
もとはといえば、消えかけていた神様の力だ。
それが加わったからと言って、
もう全く心配いりません。というのは、歌野的には無理があるらしい
1、散歩くらい、一人でいいでしょう?
2、過保護ね
3、放っておいて
4、感じられるなら、それでいいじゃない。
5、はいはい。悪かったわね
↓2
- 739 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/16(日) 21:06:51.69 ID:cO4PAH8l0
- 5
- 740 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/16(日) 21:07:04.97 ID:VYeHfS11O
- 2
- 741 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/16(日) 21:07:16.71 ID:ZkYemofQO
- 4
- 742 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/16(日) 22:02:19.81 ID:Nw76iqsHo
-
陽乃「過保護ね」
歌野「久遠さんは私たちの全てだから」
結界を維持するための要であり、
歌野に力を与えている根源でもある。
陽乃が死ねば結界は一瞬で食い破られ、
歌野は諏訪を守る力を失い、ただの少女に戻ることになる。
歌野「万が一も何もないようにしたいの。過保護……だとは思うわ。でも、そうしなきゃ」
歌野は、少し申し訳なさそうにしながらも、笑みを浮かべる。
不安の色が、見え隠れしている。
歌野はポジティブな子だと聞いたが、
陽乃の前では、その印象はやや薄い。
歌野「久遠さんから感じる力は、何も問題ないわ。むしろ、強いくらい」
陽乃「なら心配しなくていいじゃない」
歌野「久遠さんってば、意地悪だわ」
歌野はそう言って、困ったような笑い声を漏らす。
歌野「その強い力も、久遠さんがいなければ消え失せちゃうでしょう?」
- 743 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/16(日) 22:33:22.37 ID:Nw76iqsHo
-
歌野「だから、過保護でも許して欲しいわ」
お願い。と、続きそうな歌野の表情
それに対する陽乃の表情は、少し、申し訳なさそうで。
けれど、閉じた歌野の瞼の奥、瞳にその姿は映らない。
歌野達にとって、なくてはならないもの
神様によって、無理矢理に作り替えられたものだ。
陽乃「……そうね」
歌野「でも、安心して? 四国に行けば多少は緩くできると思うから」
諏訪の結界維持という、重大な要素が無くなれば、
健康になった陽のなら、そこまで過保護にならなくてもいいのではと、歌野は思う。
陽乃「諏訪を捨てること、恨まないの?」
歌野「今更だわ。久遠さんには久遠さんの目的と理由があるでしょう?」
歌野は優しく、応えて。
歌野「何より、それがあって、単独で突破できるだけの力があって、一人でさっさと出て行かずにいてくれてるだけ、感謝だわ」
歌野は、そう言った
- 744 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/16(日) 22:35:41.60 ID:Nw76iqsHo
-
↓1コンマ判定 一桁
0,3,8 歌野「なんだかんだ言って、みんなのことを考えてくれてるのよね」
ぞろ目 特殊
- 745 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/16(日) 22:39:20.13 ID:ZkYemofQO
- あ
- 746 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/16(日) 23:10:22.45 ID:Nw76iqsHo
-
歌野「なんだかんだ言って、みんなのことを考えてくれてるのよね」
陽乃「別に、考えてるわけじゃないわ」
陽乃はその好意的な言葉に対して、首を横に振る
陽乃「ここには勇者が3人いる。それを捨てるわけにはいかないだけ」
歌野「3人じゃないわ。5人よ。久遠さんとみーちゃんがいるから」
陽乃「なら、4人ね。そこに私を数える必要はないもの」
陽乃は、笑みを浮かべる。
水都は巫女だが、
彼女を勇者と言いたいのなら、それで構わない。
だが、自分を加える必要はないと。
陽乃「いずれにしろ、それが理由よ。私が、理由なしに他人を助けるなんてないわ。一般の人は、あくまでついでよ」
歌野「……」
陽乃のそれは、謙遜ではない。
拒絶だ。
歌野「ついででも十分よ。おいて行けって、言わないんだから」
- 747 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/16(日) 23:30:36.22 ID:Nw76iqsHo
-
歌野も、杏も球子も
みんなが諏訪の住民たちを一緒に連れ出そうとしているから、仕方がない
そう言われるかもしれないが、だとしてもだ。
歌野「そもそも、お母さんのために向こうに戻りたいって言うんだから、それ以外は必要ないわ」
陽乃「そう」
素っ気ない返し
でも、その口で母親がいるから戻らなければいけないと、言ったのだ。
少なくとも、大切な人がいて
何があっても、そのために行動できる心がある
なのに、今すぐに……とは言わないでいてくれている。
十分だ。
陽乃の態度がどうであれ、それだけで。
歌野「……」
歌野は、小さく笑う。
声に出さずに、口元だけ。
歌野「ねぇ、お夕飯は一緒におそばを食べに行くのはどうかしら。おすすめがあるの」
1、お断りよ
2、別に、いいけど
3、勝手にしたら?
4、何も言わない
↓2
- 748 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/16(日) 23:30:51.24 ID:yiweYbBN0
- 2
- 749 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/16(日) 23:36:26.18 ID:cO4PAH8l0
- 2
- 750 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/16(日) 23:43:36.84 ID:Nw76iqsHo
-
では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
- 751 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/16(日) 23:50:16.97 ID:VYeHfS11O
- 乙
あれだけ突っぱねたり問題起こしたりしても信じてくれるうたのん優し過ぎる…
- 752 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/17(月) 01:13:46.71 ID:HDS9blGeO
- 乙
みんなでお蕎麦イベントか
馴染んできたな
- 753 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/17(月) 22:33:10.37 ID:/RCL9s8jo
- では少しだけ
- 754 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/17(月) 22:36:57.70 ID:/RCL9s8jo
-
陽乃「別に、いいけど」
歌野「えっ、いいの!?」
陽乃「冗談じゃないならね」
歌野の思ってもみなかった反応に、陽乃は顔を顰める。
歌野「冗談なんかじゃないわ! ただ、久遠さんのことだから断ると思ってただけで」
陽乃は、よくよく突っ撥ねる
水都には時々付き合っているのは見かけるが、
巫女として、必要だからという理由がある。
必然じゃない夕食の同伴なんて、9割断られてもおかしくはなかった。
歌野「だから……ふふっ、嬉しいわ」
陽乃「……そっ」
陽乃への弁明のような形になった、困り顔
けれど、そこには笑みもあった。
陽乃はいつも通り素っ気なく返して。
陽乃「で? ほかの人には言ってあるの?」
歌野「これから言うわ。でも、大丈夫よ」
絶対にみんな来てくれる。
歌野はその確信があった
- 755 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/17(月) 23:16:40.87 ID:/RCL9s8jo
-
歌野が思っていた通り、みんなは二つ返事で外食を決定した。
普段は、蕎麦よりもうどんだという球子も、さすがに文句ひとつ言わなかった。
陽乃「お蕎麦しかないって、話だけど」
球子「たまには、悪くない」
陽乃「そう」
杏「私、こんな時間に子供だけで外食するのって、初めてです」
水都「私は……うたのんとだったら、何回もあるよね」
歌野「ふふっ、そうね」
数えられないくらいあった。と、歌野が嬉しそうに言うと
水都も併せて、笑みを浮かべる
球子「タマもないな……普通に中学生だったら、部活に入ったりして、部の仲間と打ち上げみたいなのもあったかもしれないけど」
杏「四国だと……夕方以降は基本的に寄宿舎待機だったもんね」
指示が出ていたわけではない。
けれど、不思議とみんな、そうだった。
それと比べると、諏訪はあまりにも自由だ
- 756 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/17(月) 23:50:52.57 ID:/RCL9s8jo
-
球子「そうだなぁ……千景は、夜出歩くと久遠さんに何されるかわからないわって、言ってたな」
陽乃「へぇ」
球子「陽乃の噂は、結構……なんていうかな」
杏「声が、大きかったからね」
言葉に迷う球子の隣にいる杏が、代わりに言う。
千景は当然のように知っていたし、
球子や杏達だって、悪い話ばかり聞いていた。
もちろん、杏はそれを鵜呑みにはしなかったし、若葉や友奈は慎重だった。
歌野「でも、実際に生活してて久遠さんが残虐な人だって感じることはなかったでしょ?」
球子「残虐かはともかく、油断できないやつだとは思ってた」
水都「……積極的に声をかけたりとか」
球子「しなかったな。避けられてるなーって感じはあったし、タマも避けてた。若葉は、ちょくちょく絡んでたけど」
球子は、あの頃は悪かったなと、困り気味に笑って。
球子「陽乃の分は、タマがおごってやるぞ!」
陽乃「はぁ?」
杏「たまっち先輩……」
球子が奢らなくても、ここは奢りだ。
球子が奢る隙はない
1、向こうに戻ったら、そばは食べにくくなるわよ
2、白鳥さんたちは食べ納めしておくことね
3、別に気にしてないわ。事実、避けていたし
4、今はこうでも、貴女達も、向こうでの私の評判を聞いたら怖くなるわよ。
↓2
- 757 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2021/05/17(月) 23:51:25.96 ID:TtfSK4n00
- 踏み台
- 758 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/17(月) 23:53:10.85 ID:HDS9blGeO
- 4
- 759 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/18(火) 00:12:09.68 ID:OBe6ft3Go
-
陽乃「今はこうでも、貴女達も、向こうでの私の評判を聞いたら怖くなるわよ」
水都「久遠さん自身から、話を聞いてるのにですか?」
陽乃「私が本当のことを語ってるって?」
水都「うん、信じてる」
客観性がないと陽乃は言いたくなったが、
その部分はもう、杏達が埋め合わせしてしまっている。
それはきっと、じゃっかん陽乃寄りの話だろうけれど
でも、それでも水都の返事は変わらないだろう。
「みんな、おまたせ〜」
空気を割くように、お蕎麦が運ばれてくる。
歌野達行きつけのお蕎麦屋さんで
夏場には決まってこれ。となる、ざる蕎麦
天ぷらだったり、とろろだったり
付け合わせは様々だが、基本は一緒だ。
水都「わたし達は、向こうでのうわさがどうであれ……ここで見てきた久遠さんを信じる」
歌野「そうね。自分で見聞きしたものを信じる。それだけよ」
- 760 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/18(火) 00:18:08.83 ID:OBe6ft3Go
-
では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
- 761 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/18(火) 00:23:18.74 ID:PRs0j5HnO
- 乙
仲良しパートが続いててほっこりする
- 762 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/18(火) 00:26:35.19 ID:I1X/wmbNO
- 乙
陽乃さん編になってからこういう日常シーンがすごく貴重に感じる
四国に戻っても平和な場面ができるようになるといいな
- 763 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/18(火) 22:07:30.74 ID:OBe6ft3Go
- では少しだけ
- 764 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/18(火) 22:08:04.50 ID:OBe6ft3Go
-
陽乃「言っておくけれど、私の味方をしたところで、いいことなんて何一つないわよ」
諏訪でなら、何にもないが
向こうで陽乃の味方なんて姿勢を見せていたら、石を投げられるだけで済めばいい方だ
杏達が、実際に被害にあいそうだったし
絶対に無理だったが、陽乃を殺そうとしているような状態だった。
陽乃「今のうちに、あらためておいた方が良いわ」
歌野「……そうねぇ。じゃぁ、ナスの天ぷら上げる」
陽乃「は?」
水都「山芋の天ぷらもどうぞっ」
陽乃「ちょっと……」
陽乃の天ぷらの小皿に、歌野と水都から一つずつ加えられて。
歌野「山芋は違うけど、ナスは私が育てたの。食べて食べて」
考えを改めるべきだといったのに、
そんなこと気にも留めていないかのようだ。
歌野「少なくとも、今の私たちには無理よ。今だって、十分に考えての上なんだから」
そんなことより。と、歌野と水都は「いただきます」と手を合わせる
歌野「食べましょ。伸び……ないけど、新鮮なうちにね」
- 765 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/18(火) 22:51:12.15 ID:OBe6ft3Go
-
球子「それにしても、陽乃って捻くれてるくせに、ちゃんとしてるよなー」
陽乃「貴女とは育ちが違うのよ」
水都「土居さんにも、当たり強いですよね……」
なぜだか、ちょっぴり羨ましそうな物言いの水都
一瞬迷って、手を止める。
水都「でも、確かに久遠さんって色々……なんていうか、丁寧ですよね」
言葉遣いや人付き合いは粗いが
布団を畳んだり、衣類を畳んだり、球子が見ていた食べ方とかだって、そう。
しっかりとしている
水都「やっぱり、巫女として勤めていたからですか?」
陽乃「……そうね」
球子「なのに、野宿だって平気でするんだからすごいよな」
陽乃「野宿くらい、貴女だってするでしょ」
球子「タマがするのはキャンプだ! いや、野宿も……まぁ、悪くはないけど」
杏「……」
賑やかな隣の球子をよそに、杏は悩まし気に手元に視線を落とす。
初めから野宿が平気だったわけではないはずだ。
だから、それをできなければならないくらいの変化があったということだろう。
それが、勇者に選ばれたから。というものであればいいが、きっと、そうではないと杏は考えて。
杏「そういえば、諏訪から四国に戻るときは……どうしますか?」
- 766 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/18(火) 23:04:19.73 ID:OBe6ft3Go
-
歌野「ん〜……車は無理なのよね?」
陽乃「無理ね。徒歩で行くしかないわ」
勇者が一人一台、持ち上げて歩くことはできるかもしれないし、
九尾の手を借りれば、バスくらいどうにかなるかもしれない。
だが、勇者の手をふさぐわけにはいかないし
九尾はさすがに、そんなことに手を貸してはくれないだろう。
水都「まず、何日くらいかかるかを計算して、食料がどのくらい必要かとかも考えて……」
陽乃「自分の食糧は自分で持ってもらうべきね」
球子「でもさ、もてない人もいるんじゃないか?」
陽乃「……足手まといね」
杏「久遠さんっ」
陽乃「事実でしょ」
自力で荷物が持てないとなると、誰かが肩代わりしなければならない。
なにより、自分で荷物を持てない人が一緒だと、それだけ余計に時間がかかる。
自分で荷物を持てないだけならまだいい、まともに歩けない人もいるとしたら……
歌野「……」
1、前から四国行きを決めてた人たちはどうするつもりだったの?
2、そこは、貴女達がどうにかしなさい
3、それも救いたいなら、頑張って
4、自分で代理を探してもらえばいいんじゃない?
↓2
- 767 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/18(火) 23:05:24.09 ID:PRs0j5HnO
- 1
- 768 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/18(火) 23:05:55.22 ID:q4eH1uQKO
- 1
- 769 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/18(火) 23:54:16.82 ID:OBe6ft3Go
-
陽乃「前から四国行きを決めてた人たちはどうするつもりだったの?」
歌野「自力でどうにかできない人は躊躇ってたわ……それもあって、
家財を失いたくないからって言い訳にしてた人も中にはいると思う」
いつ起こるかわからない総攻撃
それの後に移動する予定のため、答えは変わるかもしれないが、
完全に撤退すると言っても、ここに残るつもりの人は少なくないかもしれない。
陽乃「……」
出かけた時に、声をかけてきた人
ただ見かけただけの人
普通に歩けてはいるが、重い荷物を背負って四国までの道のり……と考えると、
難しい人が多かったように思う
水都「何か気になりますか?」
陽乃「別に……自分でどうにもならないって諦めてるならそれでいい
私は助けるつもりなんてないし、予定になったら気にせずここを離れるわ」
歌野「久遠さん……」
陽乃「冗談では言ってないわよ? 私には他人にかまけてる余裕なんてないんだから」
- 770 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/18(火) 23:57:06.89 ID:OBe6ft3Go
-
↓1コンマ判定 一桁
0,3 杏「もし、助けてくださいって言われてもですか?」
5,8 水都「本当に、見捨てますか?」
- 771 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/18(火) 23:58:09.34 ID:q4eH1uQKO
- あ
- 772 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/19(水) 00:28:32.54 ID:HyTR2RJOo
- では途中ですが、ここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
- 773 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/19(水) 00:33:14.71 ID:z0xjt9M3O
- 乙
不穏な空気に
- 774 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/19(水) 00:48:07.48 ID:HafthrRnO
- 乙
住人の全員避難はかなり厳しいか…
諏訪の神様の力でどうにかならないかな
- 775 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/19(水) 23:52:04.11 ID:HyTR2RJOo
- すみませんが本日はお休みとさせていただきます
再開は明日、可能であれば通常時間から
- 776 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/20(木) 00:28:18.19 ID:hO3EqLW3O
- 乙
- 777 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/20(木) 21:20:54.10 ID:x54E8tI2o
- では少しだけ
- 778 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/20(木) 21:21:42.07 ID:x54E8tI2o
-
球子「それでも、本当に見捨てることなんて出来ないだろ」
陽乃「母親以外を置いてきた私が、赤の他人を見捨てることに抵抗がないとでも?」
陽乃は球子を見ずに答える。
本当は置いてきたわけじゃない。
母親を救えた時点で、そこにはもう、母親しか残っていなかっただけ。
置いていったんじゃない、置いていかれたのだ。
陽乃「平気よ。自分の手で殺すよりは楽だわ」
杏「……っ」
実際に陽乃は、人を殺したことがある。
球子と杏そして、杏の両親
その他多くの人たちの前で、一人の命を奪った。
あれは、明らかに過剰だった。やりすぎだった。
……けれど。
武器をもって立ち向かってきた人への、抵抗
その結果だった。
殺したくて、殺したわけではないはずだ
杏「でも、久遠さんの意見は一理あります。正直な話、他人に他人の分を背負って欲しいというのは状況的に難しいですから」
- 779 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/20(木) 21:44:38.76 ID:x54E8tI2o
-
球子「杏まで」
杏「でも、現実的に考えるとそうなると思う。もちろん、私だってみんなが助かるようにしたい。けど……」
杏は、竹ざるの隅に残る細かい蕎麦を見つめる。
多くを救っても、どうしても救いきれないものはある。
それが絶対に救えないというわけではないが、
このひとかけらのためにもう一度手を動かさないといけないように
もう一度、諏訪と四国を行き来しなければならないのではないだろうか。
だとしたら、それはあまりにも非現実的だ。
理想を語れなくなったら、勇者としては終わっている。杏は、少しだけそう考えているけれど、
小説の物語ではないのだ
勝利が約束された主人公ではないのだ。
現実で、非現実的な理想を語り続けるのは容易なことではない。
杏「どうしても、見切りをつける必要があると思う」
水都「……」
歌野「現実を見れば、確かにそうなるわ」
出来る限り諦めたくないけど、と、歌野は小さく付け加える。
- 780 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/20(木) 22:11:27.75 ID:x54E8tI2o
-
球子「歌野もあきらめるのか?」
歌野「私一人残って守れるならいいけど、でも、そうもいかないじゃない?」
歌野一人残っても、
陽乃が離れれば、諏訪は終わりだ
だからと言って、諏訪に残ってくれ。なんて強要も歌野はできない。
いや、しようとはしたが、
向こうに大切な人がいる以上、やはり、できない。
杏「久遠さんが離れると、結界も、白鳥さんの力も……」
球子「いや、歌野が残る以外にも何か……ほら、どうにかして、動けない人連れていくとか」
陽乃「貴女がバスでも背負って行けばいいのよ」
球子「無理言うな!」
杏「どうだろう? バーテックスを投げ飛ばしたりできるなら、バスも……無理かな?」
水都「体力的に無理……じゃないかな」
1、私を説得するって言う手もあるわよ
2、諦めなさい。諦めてる人なんて
3、恨んでもいいのよ? 私のせいだもの
4、何も言わない
↓2
- 781 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/20(木) 22:13:00.88 ID:hfhZGk01O
- 1
- 782 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/20(木) 22:13:41.69 ID:q4wF335x0
- 1
- 783 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/20(木) 22:34:01.95 ID:x54E8tI2o
-
陽乃「私を説得するっていう手もあるわよ」
水都「説得、されてくれるんですか?」
陽乃「話は聞いてもいいわ。応えるかは別だけど」
球子「うわっ」
聞く気ないな。と、あからさまに嫌そうな顔をする球子から顔を背ける
向こうには母がいる。
簡単にそれを覆す気はないし、
何を言われようがされようが、ここを出て行くつもりだ。
陽乃「説得しないの?」
杏「久遠さんのお母さんが向こうにいるんですよね? なのに、ここにいてくださいなんて言えません」
向こうに、その母の支えとなってくれる人物がいるなら、少しは話も変わってくる。
杏の母親などは、それがいる。あるいは、ある。
だから、顔を合わせられないことは少し不安にもなるけれど、大丈夫だと思っている。
けれど陽乃の母には、それがない。
そして、陽乃は自分以外の人々を信用していない。
それなのに、目も声も何も届かない距離の場所に残したままなんて、無理だ。
- 784 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/20(木) 23:02:53.77 ID:x54E8tI2o
-
歌野「じゃぁ、久遠さんにここにいる間に恋人でも出来たらどうなる?」
陽乃「はぁ? 出来るわけないじゃない」
向こうに比べれば、諏訪の人々からの印象はいいものだ。
それが異性的な好意であるのかは別の話だが、
もし、中にそんな好意を持ってくれている人がいたとしても、
陽乃は、その人を信用できないし愛せない。
陽乃「無理よ。私には」
球子「わかんないだろ、好きになってくれる人いるかもしれないぞ?」
陽乃「そもそも、恋愛なんかにうつつを抜かしている場合じゃないでしょ
どこぞの男の子が、ピンチに現れてあとは任せろ。なんて言ってくれたって私は恋もできないわ」
杏「現実ですからね」
以前は、自衛隊の人たちがバーテックスに対抗しようとしてくれていたが、
そういったものではほんの少しの足止めになるかどうかという程度。
格好良く守ってくれるような何かなんて存在しない。
なにより、勇者は今のところ数人で、それもみんな女の子だ
陽乃「いずれにせよ、私には……無理よ」
- 785 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/20(木) 23:19:53.92 ID:x54E8tI2o
-
水都「でも、いつかまた、そういう余裕がある世界を取り戻したい……かな」
歌野「あら。だれか気になる人でもいるの?」
水都「そういう意味で気になってる人はいないけど、でも、そう思わない?」
一般の人々もそうだが、
何より、勇者に選ばれた少女たちが普通に恋をできるような世界
それはきっと、間違いなく、平穏な世界だ
水都「うたのん……は、そっか。野菜か……」
歌野「ワッツ……こほんっ。解らないでしょ?」
球子「いいや、何か想像つかない」
杏「たまっち先輩だって、想像つかないけど」
球子「なんだとぉっ!」
さっきまでの、真剣な話がそっちのけで始まるどうでもいい話。
陽乃はそれに耳を傾けることなく、増えたせいで残っていた天ぷらをつまむ。
陽乃「……ばかみたい」
陽乃は、たとえ平穏な日常が戻ってきたとしても、無理だと思う
- 786 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/20(木) 23:23:22.98 ID:x54E8tI2o
-
↓1コンマ判定 一桁
0,3,8 水都「久遠さんは、どんな男の子が好みなんですか?」
ぞろ目 特殊
※そのほか交流終了
- 787 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/20(木) 23:25:21.11 ID:hfhZGk01O
- あ
- 788 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/20(木) 23:40:30.62 ID:x54E8tI2o
-
では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
- 789 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/20(木) 23:45:35.81 ID:hO3EqLW3O
- 乙
相変わらずみーちゃんコンマ強いな
- 790 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/20(木) 23:46:45.87 ID:hfhZGk01O
- 乙
そういえばここまでシリアス続きで恋バナのこの字もしてなかったな
そしてゾロ目補正でどんな話題になるのだろうか
- 791 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/21(金) 22:10:31.80 ID:eLxkLxlio
-
では少しだけ
- 792 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/21(金) 22:11:13.06 ID:eLxkLxlio
-
水都「もしも勇者が、うたのん達みたいな女の子じゃなくて、物語によくあるような男の子だったら
そうしたら、何か、もっといい方に変わってたのかな」
陽乃「私みたいな面倒くさいのはいないかもって?」
水都「そ、そうじゃなくて……」
困り顔の水都は、ちいさくため息をつく。
面倒くさいのは、否定できない。
陽乃からしてみれば水都達も面倒な人たちに思えて仕方がないのだろうから
おあいこ……だなんて、心に思って。
水都「もっと、救いがあったのかなって」
歌野「女の子から男の子に変わったとして何かあるかしら?」
杏「意志とか、力そのものとかは違うかもしれません」
熱血な人とか、正義感の強い人とか、
逆に血気盛んだったり……と、杏は候補を引き出す。
杏「久遠さんみたいに事情がなくても、アウトローな人はいたかも」
球子「逆に悪用するやつとか?」
陽乃「そんなの、男女関係ないじゃない」
九尾「そもそも、主様は神樹とは関係がないからのう。むしろ、討伐対象として付け狙われておったかもしれぬぞ」
陽乃「は?」
水都「えっ!?」
- 793 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/21(金) 23:00:31.57 ID:eLxkLxlio
-
5人で座っているため、
蕎麦屋の中でも広い座敷を利用していた陽乃達。
その、余っていたはずの場所に座っている金色の長い髪の女性
真横にいた水都でさえ、それがいつ来たのかもわからずに、
思わず声を上げて、歌野の方にぐっと身を寄せてしまう。
歌野「……だれ?」
九尾「ふむ……妾にも蕎麦を頼む」
陽乃「私はお金ないからね」
九尾「窮乏じゃな……まったく」
ため息をついた女性――九尾は、歌野の質問に答えもせずに、
陽乃の小皿の上に残っていた、山芋の天ぷらを指でつまんでかじる。
球子「……陽乃の知り合いか?」
杏「もしかして、九尾さん?」
九尾「うむ。さっきの話じゃが、主様はまた別の存在じゃからな。
たとえ、勇者に男が選ばれようと主様が妾らの力を与えられることに変わりはなかろう」
それは、陽乃が拒絶でもしない限り変わらなかっただろう。と、九尾は言う。
九尾「なにより――あの場に、たどり着ける勇者はおらぬ」
- 794 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/21(金) 23:36:43.42 ID:eLxkLxlio
-
九尾の言葉に、水都がびくっと体を揺らす。
九尾「それに、変えられぬものを仮定する意味などなかろう」
水都「そう、ですけど……」
球子「そんないい方しなくたっていいじゃないか」
むっとして、反論する球子を九尾は横目に見て、
口元だけで、ふっと笑う
球子「何で笑うんだっ」
九尾「得られぬものを望んで何の意味がある? まだ、小娘が勇者として戦えるようになりたいと望む方がよかろうに
変えられぬ過去より、いかようにでもできる未来をどうにかしようと話すのが普通じゃろう?」
陽乃「そうね」
杏「なら、藤森さんが勇者として戦うことも可能だと?」
九尾「ふむ……」
陽乃「食べたければどうぞ」
陽乃から手渡された皿を受け取って、
九尾はまた一つ、天ぷらをつまんでかじる。
九尾「巫女になれたならば、勇者になることも不可能とは言えまい。無論、容易ではないが
主様が諏訪の神の代行者ならば、少しくらい、その遊びもできるじゃろうな」
- 795 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/21(金) 23:55:49.71 ID:eLxkLxlio
-
水都「遊び……でも、可能なんですか?」
陽乃「どうせ、死ぬやつでしょう?」
九尾「くふふっ」
ひなたがそうであるように、
許容量を超えた力の譲渡は、最悪死に至る。
九尾の力ほどではないにしても、
普通の力だって、普通の巫女である水都二はきっと、耐えられない
耐えられる可能性もないとは言えないが、試すわけにはいかないだろう。
九尾「そうじゃな。間違いなく死ぬな」
歌野「だったら、それも無駄な話じゃないかしら」
九尾「一度きりで死ぬとしても、その瞬間に役立つならばそれでよかろう? 出来もしない過去の変化を望むよりはのう?」
球子「二人そろって……」
意地の悪い奴だなとでもいうかのような球子に
それでも、九尾は笑って。
九尾「それと同じように、主様の説得も無意味じゃぞ」
水都「……」
九尾「無駄な時を過ごさぬようにと、心優しい妾からの助言じゃ」
- 796 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/22(土) 00:16:24.36 ID:6rcIRENLo
-
心優しくない九尾の笑み
だが、実際に無意味なことには変わりがなく、
それが、もし仮に可能であっても途方もないことだとわかっているみんなは、
九尾の意地の悪い話に、強く言い返したりはしなかった。
向こうに、大切な人がいる。
それを、捨てろというなんて、誰にもできることではないからだ。
歌野「それは、わかってるわ。大丈夫よ」
水都のこともあってか、歌野の声はやや冷たい。
九尾「ならば、なすべきことをなすのが先決じゃろうて」
陽乃「……貴女、何のために出てきたのよ」
前触れもなく、
意地悪いことを言って。
ただ、陽乃が余していた天ぷらを食べに来たわけではないはずだ
九尾「主様、覚悟はしておく方がよいぞ。時間は、なさそうじゃ」
陽乃「総攻撃が、起きるの?」
九尾「いいや、起きぬやもしれぬ……起こるとしたら、向こうじゃな」
そう答えた九尾は、指をぺろりと舐める
九尾「あやがあるか……。総攻撃ほどではなかろうが、間違いなく向こうに何か起こる」
1、冗談や嘘じゃないのよね?
2、どうして?
3、なんでそう思ったの?
4、今すぐ、帰るわ
↓1
- 797 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/22(土) 00:17:34.98 ID:jTB7PFH8O
- 2
- 798 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/22(土) 00:18:36.72 ID:TdYngnZAO
- 3
- 799 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/22(土) 00:23:09.15 ID:6rcIRENLo
-
では短いですがここまでとさせていただきます
明日は、可能であればお昼ごろから
- 800 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/22(土) 00:25:05.30 ID:TdYngnZAO
- 乙
若葉と千景がピンチだなこれ、勇者二人しかいないし
考えようによっては向こうに意識が向いてる今こそみんな連れて移動する好機なのかも
- 801 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/22(土) 00:28:25.79 ID:jTB7PFH8O
- 乙
珍しく人間体の九尾がみんなの前に出てきたと思ったら不穏な情報が…
そろそろ四国に戻らないとマズいか?
- 802 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/22(土) 20:33:46.95 ID:6rcIRENLo
- では少しだけ
- 803 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/22(土) 20:34:23.61 ID:6rcIRENLo
-
陽乃「どうして?」
九尾「それは無論、主様がここにいるからじゃろうな。告げたろう?」
陽乃が来たせいかおかげか、
諏訪の結界はいぜんよりも強固なものになったという話だった。
それがきっかけとなり、
諏訪には手を出さない……出せなくなった。という可能性があるというのは九尾も言っていたことだ。
あくまで可能性だったが、現実味を帯びてきたからこそ九尾は姿を見せたのだろう。
杏「じゃぁ、今も……」
歌野「少なくとも今は無事なはずよ。いくら、久遠さんに不信感を抱いているとはいえ、そういう情報を伝えてこないとは思えないから」
水都「うん。通信の状況はあんまりよくないけど、間違いないと思う」
だが、今は。と、歌野と水都は神妙な面持ちで目を細める。
水都「通信はともかく、内容は"異常なし"だったんです」
歌野「乃木さんほど多くは語らないというか、乃木さん以上に淡白で義務的、まるでコールセンターにつなぐ機械音声を相手にしているみたいで」
うたのん。と、水都に突かれて歌野の愚痴が止まる
九尾「特に、外に警戒に出ているわけでもなかろうからのう」
- 804 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/22(土) 21:12:25.08 ID:6rcIRENLo
-
杏「四国が襲撃されるまでの猶予は解りませんか?」
九尾「向こうにつながっているならばともかく、今の状況では不可能じゃな」
素っ気ない返しをする九尾は、そもそもまだ絶対ではないと続ける。
九尾「じゃが、襲撃が行われる可能性は低くはなかろうて」
球子「なら、戻るしかないんじゃないか?」
九尾「ふむ……人間を連れてかや? それではつく前に襲撃されるぞ?
なにより、連れ出した人間の幾人かは命を落とすことになる。それでも戻るかや?」
九尾は、にやりと嫌な笑みを浮かべる
悪だくみをしているかのような、ほほ笑み。
間違いなく面白がっている。
その目は、陽乃に向いていた。
陽乃「……私を見ないでよ」
九尾「主様じゃろう。鍵は」
陽乃は四国に戻りたいと考えていた。
一般の人々を連れ帰るのはあくまでついでという考えで
今回、一般人を連れ帰る場合、四国が襲撃されるまでには間に合わない可能性が高い。
だが、陽乃が一人で出て行けば諏訪の結界が消えてしまう。
つまり、
四国を諦めるか、諏訪を諦めるか。陽乃次第ということになる。
しかし、諏訪を諦める場合は、そこに住む人々を諦めるということでもある
- 805 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/22(土) 21:40:41.62 ID:6rcIRENLo
-
球子「タマ達だけで戻るっていうのはどうなんだ?」
杏「戻れる、かな……」
歌野「久遠さんが離れられないなら、私も離れられないわ」
水都「人数的には2人ずつでちょうどいいけど……でも」
外は今、バーテックスが溢れている。
総攻撃を行うために準備されてきた、かなりの数が。
その一部が四国の方に向かったとしても、たった二人でどうにかできる数ではないだろう。
陽乃「……」
四国が落とされたら、疎ましい人々を一掃できる。
だが、あそこには母がいる。
放っておくことなんて出来るわけがない。
99が不快でも、1がそうではないから救わないわけにはいかない。
球子「陽乃、タマ達に任せてくれないか?」
杏「たまっち先輩、戻るの?」
球子「戻るしかないだろ……どう考えても」
向こうには友奈、若葉、千景の三人がいる。
しかし、いきなりの大規模な襲撃に耐えられる保証はない。
球子「こう、前と後ろから……バンッって感じでバーテックスを叩く」
球子は強く両手を叩き合わせる。
1、任せられるわけないじゃない
2、諏訪を諦めるわ
3、少し、時間を頂戴
4、2人でどうにかなるとは思えないわ
5、諏訪周辺なら、私が潰してあげてもいいわ
↓2
- 806 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/22(土) 21:44:23.67 ID:tO6yh9Ip0
- 5
- 807 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/22(土) 21:44:24.36 ID:TdYngnZAO
- 3
- 808 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/22(土) 22:33:07.52 ID:6rcIRENLo
-
陽乃「少し、時間を頂戴」
九尾「時間はないと思うが」
陽乃「……分かってるわよ」
悩む時間を作れば作るだけ、
向こうに戻るのが遅れ、そして、その分だけ被害が拡大する可能性がある
九尾の意地悪な忠告なんて必要ない。
解っている。
自分の都合のみを考えるなら、
迷わず諏訪を捨てていくべきだと。
九尾がいやらしいことを言ってくるのは、
陽乃が普段はそんな姿勢であるくせに、ここで躊躇っているからであることも。
陽乃「すぐに答えは出すわ。私が決めるしかないんだから」
歌野「……そうね。でも一人で悩まなくてもいいのよ? 私たちだって無関係じゃないんだから」
陽乃「貴女達の答えなんて、聞くまでもないわ」
杏と球子を信じろとか
あるいは、向こうに残した勇者たちを信じろだとか
そんな "信じて" だろうと陽乃は首を振る
陽乃「聞くだけ無駄だわ」
- 809 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/22(土) 22:49:30.27 ID:6rcIRENLo
-
球子は念押ししなくてもみたいな表情をしてはいるが、何も言わない。
杏も、歌野も、水都も
みんな、口を閉ざしている。
説得を聞かないのとは話が違う。
でも、確かに、無駄だろうとみんなわかっていた。
みんな、信じて欲しいからだ
陽乃以外の勇者を、人々を。
それが難しいことをわかっていながら、それでも。
歌野「じゃぁ、そろそろお開きにしましょうか」
歌野はテーブルの上のお皿がきれいになっているのを見て、笑顔で言う。
食べている途中でも、今のこの話は中断すべきだ
歌野「久遠さん、答えはちゃんとみんなに教えて欲しいわ」
一人で行くなんて言えば、確実に反対されるし止められる
だから、陽乃的には何も言わない方が楽といえば楽なのだが。
陽乃「……それも、考えておくわ」
陽乃はそう答えて、まだ手に持っていた箸をおく。
陽乃「ご馳走様」
- 810 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/22(土) 22:54:18.45 ID:6rcIRENLo
- ↓1コンマ判定 一桁
5,8 水都「久遠さん、食後のお散歩はどうですか?」
2,9 杏「久遠さん、少し時間を貰えませんか?」
※その他、交流終了
- 811 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/22(土) 22:55:44.97 ID:wQiJwJ5B0
- あー
- 812 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/22(土) 22:55:59.78 ID:TdYngnZAO
- あ
- 813 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/22(土) 23:01:59.30 ID:6rcIRENLo
-
√ 2018年 9月1日目 夜:諏訪
05〜14 球子
27〜36 杏
41〜50 歌野
52〜61 水都
↓1のコンマ
※それ以外は通常
- 814 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/22(土) 23:02:40.74 ID:OA16KQKWO
- あ
- 815 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/22(土) 23:06:41.82 ID:TdYngnZAO
- あ
- 816 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/22(土) 23:38:14.14 ID:6rcIRENLo
-
では本日はここまでとさせていただきます
明日は可能であればお昼ごろから
- 817 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/22(土) 23:46:18.50 ID:OA16KQKWO
- 乙
みんなを信じることが困難突破の近道な気がするけど
肝心の陽乃さんの心を開くにはどうすれば良いんだろう…
- 818 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/23(日) 00:04:45.21 ID:1YjnlgOXO
- 乙
球子たちに先行して四国に向かって貰って陽乃たちは諏訪のみんなと一緒に後追いが無難かなあ
もしかしたらピンチになってても粘ってるところに間に合うかもしれないし
なんにせよ早く決めなきゃな
- 819 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/23(日) 18:32:49.36 ID:hWsNg6FAo
- では少しだけ
- 820 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/23(日) 18:35:36.28 ID:hWsNg6FAo
- √ 2018年 9月1日目 夜:諏訪
陽乃はいつもの部屋で、一人テーブルに突っ伏す。
暗い部屋は影と影も交じり合って、一つの深い闇のように感じる。
そんな黒々とした場所を、睨む。
諏訪を見捨て、人々を捨て、四国に向かうか
母を諦め、四国を委ね、諏訪に残るか
陽乃「……信じる。ね」
杏達は間違いなく、自分を信じて欲しいというはずだ。
そして、四国に残してきた勇者たちのこともまた、信じて欲しいと
信じたら、何があるのか。
最良の結果が返されるとでもいうのだろうか?
いいや、陽乃にとっての最良は母の無事以外にはなく、
それが最も確実なのは陽乃が四国に戻ることだ。
しかし、ここで諏訪を捨てれば、
杏と球子の目の前で人を殺したことよりも酷いことになる。
そしてそれは、言い訳のしようもないほどに、陽乃の責任。
陽乃「……はぁ」
間違いなく、優柔不断だと陽乃はため息をついた
- 821 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/23(日) 19:31:52.14 ID:hWsNg6FAo
-
だれも信用できない、
誰も自分には関係ない
そうやって切り捨てていくなら、迷う必要はない。
だが、陽乃は答えをためらった。
関係ない、今すぐ四国に戻るわ。そう、言えなかった。
陽乃「迷ってるの……? ここの人を見捨てるかどうか」
来る前も、来た当初も
歌野と水都はともかくとして
ほかの人は見捨てるつもりでいた。
なのに、ふたを開けてみればこれだ。
陽乃「……」
みっともないというべきか
情けないというべきか
陽乃「……みんなには、聞くだけ無駄なのよね」
信じて欲しい。そういわれるだけだから。
九尾に関しては、少なくともからかい半分で来るだろう
- 822 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/23(日) 20:03:49.45 ID:hWsNg6FAo
-
陽乃の行動ですべてが決まる。
諏訪の神々の嫌がらせによって、諏訪の結界の要になってしまった結果だ
陽乃が望んだわけでもないのに押し付けられた役目。
陽乃「あぁもう……」
可愛さも余らずに、憎さが増すばかり。
この押し付けさえなければ、
何も迷うことなく、出て行くことができた。
陽乃「……」
まるで、試されているみたいだ
人を救う勇者たり得るか
それとも、そんなこともしない、勇者なり得ない存在なのか。
もしここで、
神々を裏切って諏訪の人を見捨てたら、祟られるのだろうか?
陽乃「厄介だわ」
- 823 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/23(日) 20:20:47.47 ID:hWsNg6FAo
-
これで祟られるのならあまりにも理不尽だが
それが神様というものだろう。
もう諦めるしかない。
だが、人は。
陽乃「……っ」
悩む時間は短い方が良い。
早ければ今すぐにでも四国に発っておくべきだ。
球子と杏に委ねるのなら、なおさら。
陽乃のように、半日でたどり着けるわけではないのだから。
陽乃「……九尾が、送り迎えだけしてくれる。わけがないし」
九尾が可能なら、
球子と杏を四国に送ってもらえばいい。
何が起こるかはわからないが。
道中の安全と、長い距離はそれで解消できる。
陽乃「……どうせみんな、私が優しいから悩んでるんだとか、変な誤解するんだわ」
1、九尾を呼ぶ
2、伊邪那美を呼んでみる
3、みんなのところへ
4、陽乃が四国に向かう
5、任せる
↓2
- 824 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/23(日) 20:24:36.90 ID:PQppQQvIO
- 1
- 825 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/23(日) 20:25:02.02 ID:5zCyBKyI0
- 1
- 826 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/23(日) 20:48:19.94 ID:hWsNg6FAo
-
陽乃「九尾、どうせいるんでしょう?」
陽乃がそう声をかけると、
暗闇の中に一人分の形が浮き上がって、女性の姿で九尾が姿を見せる。
相変わらず、自然発光しているかのように目に悪い。
九尾「何を悩む必要がある」
陽乃「言いたいことは解るけど」
九尾「勇者の不興を買うのが怖いのかや?」
九尾はそう言っておきながら、いいや違う。と否定する。
陽乃は目を向けたが、
暗い部屋の中では、九尾の表情の変化まではつかめない
九尾「捨てきれておらぬのじゃろう? 無駄な情を」
陽乃「……私は」
向こうで散々な目に合った。
だから、諏訪の人々もみんな同じような人々。
そうやって一くくりに出来ればいいのに、
陽乃はそれができていない。
九尾「主様は、人を憎むことができておらぬのじゃな。できておるならば、悩むはずがない」
- 827 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/23(日) 21:37:22.11 ID:hWsNg6FAo
-
陽乃「憎んでるわよ」
九尾「ならばなぜ見逃し、悩み、躊躇う? 人が憎いならば、みな同じであると見限ることができるならば今ここでそうしている主様はおらぬはずじゃろうて」
九尾は息を吐く。
ため息ではないのに呆れている感じが強い。
九尾「だれに止められるでもなく、むしろ妾を止めるであろう?」
陽乃「……でも」
九尾「憎いかや? なら、人間など救う価値がないと切り捨てればよい」
助けた結果があれなのだから。
救ってあげたところで、
噂に流されて陽乃を悪く言う人も少なくなかった。
救えば救うほどその声が大きくなると思えば、
九尾が言うように、切り捨ててしまうべきだ。
九尾「主様、ここが分岐点じゃぞ。他人を諦めるのか、救ってしまうのか」
母親と、赤の他人
ここで母親をとれなかったのなら、陽乃は他人を諦めることができないことの証になる。
杏も、球子も、歌野も水都も
きっと、目障りだなんて突っ撥ねることが難しくなるかもしれない。
何を言ったって結局、陽乃は他人を思うことのできる少女だと、言い返されるだろうから
1、諦める
2、諦めない
3、貴女なら、どうする?
↓2
- 828 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/23(日) 21:40:22.10 ID:5zCyBKyI0
- 2
- 829 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/23(日) 21:41:19.92 ID:PQppQQvIO
- 3
- 830 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/23(日) 22:24:43.52 ID:hWsNg6FAo
-
陽乃「貴女ならどうする?」
九尾「くふふっ、愚問じゃのう」
九尾が笑うと、女性には似つかわしくない牙が見える。
段々と夜目にもなれて、顔がやんわりとわかる。
赤い瞳は細く、口元はニヤリとしていて
九尾「妾は人間など救わぬ。有象無象など投げ捨て己の欲に従う」
陽乃「諏訪が滅ぶとしても?」
九尾「妾に関係があるかや?」
陽乃「いろいろお世話になったとしたら?」
九尾「人間が自分勝手に行ったことじゃろう? 妾が望まぬともそれを行い、見返りがなければ悪だと言う。そんな人間など捨て置けばよい」
九尾は悩むことはない。
それが当然だと疑っていないのだ。
九尾「何じゃ主様、世話になったなどと気にしておるのかや?」
陽乃「多少はね」
九尾「向こうでは、世話になった主様を邪険にしているというのに?」
- 831 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/23(日) 22:51:22.44 ID:hWsNg6FAo
-
陽乃「だからって同じことしたら、私も同じ人間になっちゃうじゃない」
九尾「そういう言い訳かや?」
陽乃「そんなつもりはないけど」
九尾「主様はやはり、甘いな」
九尾の声は不審なほどに柔らかい。
九尾は陽乃が人間を見限ることができないと思っているようだ。
それを悪いとは言わないが、悪いと思っているかもしれない。
闇の中の赤い瞳が消える
九尾「主様が、人間を諦められないというならばそれでも良い。妾は、救う価値などないとは思うがのう。
妾は妾、主様は主様じゃ。その選択によって、後悔するのもまた、主様じゃ」
陽乃「貴女、後悔するって思ってるのね」
九尾「うむ。以前の主様はそうじゃろう?」
- 832 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/23(日) 23:11:58.72 ID:hWsNg6FAo
-
九尾「人間を救ってどうする。あの場所に連れ帰ってどうなる。人間など、間引いてもよかろう」
陽乃「……間引く、ね」
九尾は人間ではない。
人の形をしてはいるが妖狐だ
だから情なんてなく、非情なことでも決断できる
九尾「これ以上、余計なものは抱え込まない方がよいと思うが」
九尾はのどを鳴らす。
九尾「なにより人間を連れ出すならば時間が足らぬ」
その場合は杏と球子
そして、向こうに残してきた勇者たちに委ねなければならないと、九尾は言う。
陽乃もそれは解っている。
九尾「妾はあの小娘らよりも、聞くだけ無駄であろう? なにせ救う気などないのじゃからな」
陽乃「ええ」
全くの無駄だったわと、陽乃は首を振る。
- 833 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/23(日) 23:24:14.33 ID:hWsNg6FAo
-
陽乃の反応を見て九尾はくつくつと笑う。
口元に手をあてがって隠す少し上品ぶった仕草をして
細められた赤い瞳が陽乃を見据える
九尾「諏訪を捨てるならば妾も手を貸そう。じゃが、主様は小娘どもから睨まれることになろう」
陽乃「なのに見捨てるべきだってあなたは言うんでしょ?」
九尾「無論じゃ。主様にとっての母のような存在がおるならば他人のことなど気にする必要もない」
そして、本当に突き放したいなら
あえて恨まれる選択をするべきだ。
みんなは諏訪のことを考えてくれるようにと思っている。
だが、そうすれば母が助かる可能性は、低くなるかもしれない。
最悪、四国が崩壊してしまう可能性だってある。
陽乃「っ……」
杏と球子は、一応ここに来てから実戦経験を積んでいる。
模擬戦の約束ははたしていないけれど。
陽乃「私は……」
1、杏達に任せる
2、杏達に任せない
3、みんなのところへ
↓2
- 834 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/23(日) 23:27:33.19 ID:72OKy929O
- 3
- 835 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/23(日) 23:28:40.94 ID:1YjnlgOXO
- 1
- 836 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/23(日) 23:28:55.66 ID:5zCyBKyI0
- 3
- 837 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/23(日) 23:49:45.11 ID:hWsNg6FAo
-
陽乃「いいわ。あの子たちに任せる」
九尾「ほう?」
陽乃「白鳥さんが3年間耐えられたんだから、2人を含めた5人での防衛なら凌げるはずだし
なにより、私がこの先もお母さんと生き残ることを優先するなら、無駄に不興を買う必要はないわ」
そして、2人がいなくても諏訪の防衛はできる。はずだ
陽乃「それに、通信に上里さんを引き出せる可能性もある」
九尾「四国に戻るならば、不要じゃが」
陽乃「今回の件で、バーテックスの動きに変化があって諏訪に長く残る必要ができるかもしれないじゃない」
九尾「ふぅむ……そうじゃな」
九尾は納得したようにうなずく。
九尾「ならば、小娘に主様の母親をこっちに連れてこさせるのはどうじゃ?」
陽乃「そこまでの信頼はしてないわ」
九尾「そうか」
陽乃は九尾を睨んで、拒絶する。
平和だったころならまだしも、そうではない陸路の旅路
多少の実戦経験があろうと、許せない
陽乃「それはそれ、これはこれ。四国を任せるだけで母の身の安全まで任せる気はないわよ」
- 838 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/24(月) 00:24:34.40 ID:iSEXsu9wo
-
九尾「みなの意を酌んだと思われて厄介なことになるやもしれぬぞ?」
陽乃「別にいいわよ」
事実を言ったって、
どうせ、みんなはそれを曲解する
今まで厄介だったのだから、これからも厄介になろうと関係はない。
陽乃「2人を四国に戻せば、2人まで手にかけた話も消えるだろうし」
九尾「そんなこともあったのう」
千景はその噂を信じているのだったか
どちらにせよ、陽乃への憎さは変わらないだろうが、
勇者を手にかけたという噂一つ減れば
ほかのうわさも……と、連鎖するかもしれない。
とはいえ、人一人殺した事実がある以上はどうにもならない。
九尾「まぁよい。主様がそうするならば、妾は従おう」
陽乃「天ぷらあげたんだから、そうじゃなきゃ困るわ」
九尾「くふふっ、次は蕎麦で頼む」
九尾のからかうような声に何も言わずに、
陽乃はさっと、部屋を出て行く
- 839 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/24(月) 00:28:50.21 ID:iSEXsu9wo
-
では途中ですが本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
- 840 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/24(月) 00:48:29.63 ID:YH32QPXyO
- 乙
諏訪の人たちを裏切れないしな……
- 841 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/24(月) 06:10:39.35 ID:fCgq3hjvO
- 乙
とりあえず陽乃さんが諏訪を出るのは頃合いを見てという感じかな
- 842 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/24(月) 22:51:02.80 ID:iSEXsu9wo
- 遅くなりましたが、少しだけ
- 843 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/24(月) 22:53:32.29 ID:iSEXsu9wo
-
陽乃「というわけで、貴女達の案に乗ってあげるわ」
球子「上からだなぁ……」
陽乃「母のことを任せられるとは思っていないけど、でも、貴女達が生きていることの証明もできるし
私の評判はともかく諏訪との往復が可能なこと、諏訪にはまだ生存者がいること。伝えるべきことが多いから」
陽乃は少し考えて、球子を見る
陽乃「とはいっても、貴女達が向こうにたどり着けなければ意味がないわ」
九尾の力を借りなければ、どう頑張っても半日で戻るのは不可能だ
不眠不休で、全力
それならどうにかなるかもしれないが、それはバーテックスがいないこと前提になる。
途中で戦闘する危険性を考慮すると、
注意力をそぐようなリスクをわざわざ背負う必要はない
陽乃「絶対に生きて戻ることができるのよね?」
球子「でき――」
杏「……外の状況次第です」
出来ると言おうとした球子
それを、杏は遮って偽りなく答える。
自信満々に言うべきだっただろうか。なんて、迷っていない。
杏「約束したいです。気持ち的には絶対だって言いたいです。でも、その約束はできません」
- 844 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/24(月) 23:13:32.72 ID:iSEXsu9wo
-
球子「杏はタマが守るぞ」
杏「ありがと……もちろん、たまっち先輩のことは信じてる。でも、諏訪の周辺で数回戦って思ったんだ
どれだけ力があっても、やっぱり、物量で押し込まれることがあるんだって」
歌野と球子、そして杏
三人で、襲撃に対応したこともあった。
その時も一人当たり数えるのも手間なほどだったが、
想像以上に力のある歌野を起点に、それをカバーするような形でどうにか切り抜けることができたというだけ。
今回は、その歌野さえいないのだ
歌野「道中、無理に戦う必要はないと思うけど」
杏「もちろん、可能な限り戦闘は避けようと思ってます。だけど、総攻撃の準備が行われた諏訪周辺
襲撃の可能性が控えている四国周辺。そして、その中間地点。どこも安全な場所がないと思っておいた方が良いと思います」
球子「ならどうするんだ?」
杏「……頑張るしかない。と、思う」
球子「そんな根性でどうにかなんて、言う方がおかしくないか?」
杏「本来の時間よりも、かなり時間をかければ安全に行けるかもしれない。でも、それだと間に合わないから急がないといけない
なのに、一度戦いになれば次から次へとバーテックスが来るかもしれない」
水都「九尾さんは、力をお借りできないんですか?」
- 845 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/24(月) 23:28:41.97 ID:iSEXsu9wo
-
陽乃「あのひねくれ者が力を貸してくれると思う?」
飼い主に似るんだな。なんてつぶやきが聞こえたが、
聞こえなかったふりをして球子を一瞥する。
にこりとしたつもりだったが、球子はさっと顔を背けてしまった。
陽乃「私になら力を貸してくれる。でも、貴女達のために力を貸してくれるとは思えないけど」
聞くだけ、聞いてみようか?
なんて、どうせ聞いているだろうけれど、思ってみる。
聞いているならさっきみたいに口挟んでくれてもいいものだが。
諏訪周辺だけでも、陽乃が蹴散らしてしまうのも一つの案だ
水都「そもそも、久遠さんから離れたら逆に久遠さんが力を使えなくなっちゃったりするとか」
陽乃「それは、ないと思うわ」
九尾以外にも力はある。
今の状況なら扱えるという話だが、あまり確かめたくない力が。
1、九尾を呼ぶ
2、諏訪周辺は、私が蹴散らしてあげるわ
3、自信がないなら、私が行くけど?
↓2
- 846 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/24(月) 23:30:00.41 ID:huUzHgVQO
- 1
- 847 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/24(月) 23:30:34.36 ID:ynMoTjBf0
- 1
- 848 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/24(月) 23:55:53.92 ID:iSEXsu9wo
-
陽乃「九尾、どうせ聞いてるんでしょ?」
陽乃が呆れながら言うと、足元から延びる影が歪んで、揺れて
不自然に盛り上がったかと思えば、人の形に変わって、生まれる
歌野「わぁお……」
九尾「くふふっ、妾はめのこでも構わぬぞ」
なびく金色の髪、深紅の瞳、色白の肌
スタイルもいい女性としての姿に感嘆の声を漏らした歌野を、九尾は悪い目で見る
陽乃「そういうのはいいから」
九尾「ふぅむ……」
九尾は肩を落として見せるものの、顔つきは全然だ
九尾「まぁよかろう。じゃが、妾は小娘を運ぶなどしてやるつもりはないぞ」
歌野「どうしても?」
九尾「今の主様ならば、小娘二人減っても問題はなかろう」
球子「なっ!」
九尾「それと結論から言えば、主様は妾がいなくとも力の行使は可能じゃ。もっとも、必要な場合を除いて使うべきではないがのう」
- 849 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/25(火) 00:00:03.22 ID:CYW+9YxIo
-
では途中ですがここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
- 850 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/25(火) 00:10:44.72 ID:WGQ/5I0CO
- 乙
できたら九尾の説得したいけどダメなら諏訪周辺をなんとかするのが先かな
- 851 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/25(火) 01:36:50.71 ID:72bwNrPBO
- 乙
少しでもいい方向に向かってくれることを祈るしかない
厳しいと思いつつも前向きなあたりは球子と杏もさすがに諏訪の人々見殺しにするのはと思ってくれてるんだろうか
- 852 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/25(火) 21:08:27.13 ID:CYW+9YxIo
- では少しだけ
- 853 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/25(火) 21:12:34.34 ID:CYW+9YxIo
-
水都「それで久遠さんがまた倒れる可能性もあるということですか?」
九尾「ある」
心配そうな水都に、九尾は断言する
今の陽乃はちょっとやそっとのことでは影響を受けない
しかし、それはあくまで九尾の力であればという話だ。
もう一体の、切り札ともいうべき存在の力は九尾のそれをはるかに凌駕している。
力を使うでもなく、ただ姿を見せた状態で陽乃が昏倒するほどだったのだから
実際に力を使った場合の影響は使ってみなければわからない。
だが、ないことだけはありえない。九尾がそう、判断したということだ。
水都「なら、久遠さんにその力を使ってもらうわけにはいかない」
歌野「そう、ね。九尾さんはそもそも嫌だと言うし、残念だけど四国には二人でどうにか戻ってもらうことになるわ」
杏「もともと、そのつもりです」
球子「楯をぶん投げて乗り物に出来たりしたらいいんだけどなぁ……あの、なんか、投げた丸太に乗る的な」
歌野「その楯の大きさじゃ、ちょっとね」
- 854 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/25(火) 21:51:31.52 ID:CYW+9YxIo
-
陽乃「楯を大きくしたらいいじゃない」
球子「平然と無茶言うなよ」
陽乃「九尾は大きくも小さくも人間にもなれるから、貴女もどうにかしなさい」
球子「だから無理だって!」
声を上げて頭を抱える球子は、
それが出来たら苦労しないんだよと、テーブルに額を叩きつける
陽乃「伊予島さん、ルートは?」
杏「えぇっと……たまっち先輩どいて」
球子「ぉぁっ」
球子の頭をグイっと押しのけて、
陽乃が考えている間に用意していた地図をテーブルに広げる。
杏「まっすぐとはいきませんが、九尾さんの力で飛び越えてきた道の下を進もうかと思ってます」
陽乃「……京都じゃなくて奈良側を通った方がいいんじゃない?」
歌野「それだと時間がかかるわ。敵が多いのは承知の上で、可能な限り見つからないように行くしかないって言うのが私たちの考えよ」
- 855 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/25(火) 22:23:29.96 ID:CYW+9YxIo
-
陽乃「兵庫岡山ルートよりは時間もかからないのに……まぁいいわ。大きく遠周りしてもたどり着けるとは限らないし」
陽乃は地図に影を落として、ふっと息を吐く
陽乃「九尾はどう思う?」
九尾「手堅い道などあるまい。ならば、時を重んじるのはむしろ堅実とも言える。問題はなかろう」
陽乃「そう……」
問題は、それで本当に無事にたどり着けるかということ
それだけはもう運だ。
そして、球子と杏の戦闘における実力次第。
残念ながら、不安しかない。
陽乃「九尾――」
九尾「断る。妾は小娘どもを背に乗せる気はない」
水都「久遠さんが倒れるかもしれないので、それは大丈夫です」
水都は陽乃に首を振る。
そんなことはされても困ると。
陽乃に万が一のことがあれば、歌野まで駄目になる。
そんな危険は冒せない。
陽乃「……」
1、諏訪周辺、私が潰すわ
2、いいわ。ならそれで頑張りなさい
3、出発は?
↓2
- 856 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/25(火) 22:23:59.38 ID:72bwNrPBO
- 1
- 857 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/25(火) 22:24:53.09 ID:E7+vm2nF0
- 1
- 858 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/25(火) 22:45:44.48 ID:CYW+9YxIo
-
陽乃「諏訪周辺、私が潰すわ」
水都「えっ」
陽乃「予定通り、私が単独で諏訪周辺のバーテックスを一掃してあげる」
歌野「それなら私も!」
陽乃「貴女は駄目よ。温存させてもらう」
手を挙げた歌野を、陽乃は制止する。
歌野は3年間を戦い抜いたうえ、
今では陽乃の力で強化まで施せる
勇者の中で一番力があるのは、歌野だ
それなら、総攻撃にだって耐えうるかもしれない
陽乃「私の力で諏訪周辺を一掃してバーテックスの注意を引くわ。白鳥さんはそのあとの対処に回ってもらう
伊予島さんたちはその隙に、抜け出していきなさい」
杏「久遠さんを囮にしろと?」
陽乃「野宿で虫には慣れたから、誘蛾灯くらいにはなってあげるわ」
球子「大丈夫なのか?」
陽乃「貴女達よりはずっと問題ないと思うけど」
- 859 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/25(火) 23:05:59.30 ID:CYW+9YxIo
-
球子はそりゃそうだとうなづく。
諏訪にいる勇者……陽乃は自分を数えないが、
数えた4人の中で1番と2番の2人と3番4番の2人
どちらがより問題なのかは明白。
否定する理由もなくて、球子は笑う。
球子「良いよ。わかった。でも、やりすぎないでくれ」
陽乃「……以外に素直ね」
球子「陽乃の力は認めてるし、必要なことだから仕方がない」
球子はそういって。
球子「それにさ、陽乃が自分の力を認めてるってことだからな」
杏「その代わり、絶対に四国にたどり着きます」
陽乃「……約束なんてしなくていいわ」
約束しますと、胸に手を当てた杏に陽乃は冷たく言い返す。
けれど、杏は笑って。
杏「約束は出来ないって言ったじゃないですか」
陽乃「そうね」
杏「だから、結果で示します。私達が信じるに値する友人だってことを」
陽乃「……」
球子「任せろ。うまくやってみせるさ」
- 860 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/25(火) 23:35:53.60 ID:CYW+9YxIo
-
陽乃「……変わらず勝手なこと言ってくれるじゃない」
陽乃は呆れたように言って、球子たちから目を離す。
こんなのはまるで、約束すると言っているようなものだ。
陽乃「やるというならやり遂げて見せなさい」
杏「はいっ」
水都「久遠さん、殲滅はいつ行いますか?」
陽乃が行動してからの移動になるから、
やはり、これもまた陽乃次第になってくる。
あれもこれも決定権を与えられると困ると陽乃は顔を顰めたが
自分が言い出したことだ。
陽乃「そうね……」
なるべく早い方が良い
陽乃が一掃した後、2人の移動がある。
陽乃が1日後に行えば、球子たちの到着が1日遅れる
1、明日早朝
2、明日昼
3、明後日早朝
4、明後日昼
5、それ以外 ※再安価
↓2
- 861 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/25(火) 23:36:59.60 ID:WwfpkGlFO
- 2
- 862 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/25(火) 23:37:02.67 ID:72bwNrPBO
- 1
- 863 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/25(火) 23:39:13.22 ID:CYW+9YxIo
-
では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
- 864 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/25(火) 23:48:13.71 ID:WwfpkGlFO
- 乙
最終的に陽乃さんたちもいつか諏訪を出るだろうし次の日早々に動いたほうがいいか
それにしてもやっとのことで団結して役割分担できるようになって嬉しい
- 865 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/26(水) 00:17:46.88 ID:B9FoOLikO
- 乙
朝飯前という具合で片付けてしまおう
諏訪の人たちもいつか大移動しなきゃいけないし杏たちが頑張ってる間こっちも移動できるように準備がんばろう
- 866 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/26(水) 23:38:26.79 ID:gY6RsURNo
- 遅くなりましたが少しだけ
- 867 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/26(水) 23:39:07.96 ID:gY6RsURNo
-
陽乃「明日の早朝、さっそく出てくるわ」
球子「準備はいいのか?」
陽乃「必要ないわ。十分、ため込んだもの」
杏「なら、早く休まないとですね」
杏は少し残念そうに笑う。
もう少しここで、みんなで過ごしていけると思っていたのが、
急に、明日別れなければならなくなったからだ
歌野は少し悩んで、頷く
歌野「そうね。早く寝なきゃ。久遠さんも今日はさすがに寝るでしょう?」
陽乃「ん……」
正直眠くはない
相変わらず、覚めきっている
九尾「今の主様なら、寝ずともよかろう」
水都「駄目です。体は人間なんですから、精神的に問題がなくても、体が壊れます」
九尾「ほう? 小娘が妾に言うか」
水都「明日の朝、すぐに決行するなら休んでください。無理にでも」
九尾の視線を受けても、
水都は怯むことなく、陽乃へと目を向ける。
- 868 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/26(水) 23:58:33.60 ID:gY6RsURNo
-
水都「今は平気でも、時間になって何かがあったら困ります」
陽乃「解ってる」
今まで、遅寝早起きで何か問題が起こったなんてことは一度もなかった。
だが、明日もないとは言えない。
陽乃「仕方がないわね。従っておくわ」
球子「……意外だな」
陽乃「言ってることは正しいわ。早く起きる分には問題ないし」
杏「ですね。私たちも早起きしないといけないし……久遠さんが起きてくれたら、一緒に起きられそうな気がする」
球子「早起きは問題ないだろ。もう、みんな慣れっこだ」
球子の笑い交じりの言葉に、水都は同意して笑って歌野に目を向ける。
朝早くから畑に出向くことも多い歌野
それについていく水都、そして水都と同じように手伝いを買って出て早起きしていた杏と球子
陽乃はそもそも、歌野と同じかそれ以上に早起きだったため、
ここにいるみんな朝が早い。
- 869 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/27(木) 00:20:12.85 ID:x02yumYuo
-
杏「今日で、ひとまずみんなが揃うのは最後ですね」
球子「タマたちがいないからって、だらけるなよ?」
陽乃「貴女ね……」
九尾「あまりに程度が過ぎるならば、食らうぞ」
そう言って……一瞬にして美しい女性の顔立ちが狐に変わる。
体は人間、頭は狐
その歪で異様な姿に、九尾に慣れかけていた水都も体を震わせて、
威嚇された球子は目を見開いて口元をひくつかせる
球子「……ごめん」
水都「この部屋も、また余計に広くなっちゃうかな」
球子「心配すんな。すぐに、5人で戻ってくるよ」
いや、それは難しいか? と、球子は自分で訂正しかけて、笑顔でごまかす。
球子「とにかく寝るなら布団敷くぞ……いつもの感じでいいか?」
杏「うん、いいと思う」
水都と歌野が横並び、
その下で、球子と陽乃と杏で並ぶ二段の敷き方
最初は、陽乃がこっそり逃げ出さないようになって、囲む算段だったそれも、
早々に無意味とわかって、形だけが残った
陽乃はその細やかではあるが、せわしない5人の空気を眺めて、小さく息を吐く。
これで、それも最後だ。
- 870 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/27(木) 00:26:26.95 ID:x02yumYuo
- √ 2018年 9月2日目 朝:諏訪
↓1コンマ判定 一桁
0,9 球子
1,8 杏
2,7 歌野
3,6 水都
ぞろ目 特殊
※そのほか 通常
- 871 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/27(木) 00:27:12.63 ID:FRXUlxyNO
- あ
- 872 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/27(木) 00:34:01.03 ID:x02yumYuo
-
ではここまでとさせていただきます
1日のまとめは明日、再開時
水都単独交流→殲滅戦
- 873 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/27(木) 00:54:00.98 ID:FRXUlxyNO
- 乙
陽乃も独りよがりにならずにきちんとみんなやれることやってる感じでようやく一つのチームに慣れた気がするな
- 874 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/27(木) 06:12:48.09 ID:akQVKU99O
- 乙
あとは杏たちを行かせた後どのタイミングで諏訪を脱出するかだな
- 875 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/27(木) 21:14:16.33 ID:x02yumYuo
-
では少しだけ
- 876 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/27(木) 21:15:42.09 ID:x02yumYuo
-
1日のまとめ(諏訪組)
・ 白鳥歌野 : 交流有(過保護ね、一緒に外食、怖くなる、住民の処遇、陽乃を説得、特殊、時間、杏達に任せる、諏訪周辺をつぶす、最速)
・ 藤森水都 : 交流有(一緒に外食、怖くなる、住民の処遇、陽乃を説得、特殊、時間、杏達に任せる、諏訪周辺をつぶす、最速)
・ 土居球子 : 交流有(死なれても困る、模擬戦、一理ある、暇な時、一緒に外食、怖くなる、住民の処遇、陽乃を説得、特殊、時間、杏達に任せる、諏訪周辺をつぶす、最速)
・ 伊予島杏 : 交流有(死なれても困る、模擬戦、一理ある、暇な時、一緒に外食、怖くなる、住民の処遇、陽乃を説得、特殊、時間、杏達に任せる、諏訪周辺をつぶす、最速)
・ 九尾 : 交流有(四国襲撃、九尾なら、杏達に任せる、諏訪周辺をつぶす、最速)
√ 2018/09/01 まとめ
白鳥歌野との絆 55→63(普通) ※特殊交流3
藤森水都との絆 70→78(良好) ※特殊交流7
土居球子との絆 60→70(良好) ※特殊交流2
伊予島杏との絆 76→86(良好) ※特殊交流4
九尾との絆 68→70(良好)
- 877 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/27(木) 21:46:06.64 ID:x02yumYuo
- √ 2018年 9月2日目 朝:諏訪
まだ、朝とも言えない4時頃
陽乃は目覚ましの音もなく目を覚ます。
陽乃「ん……」
歌野達も起きていない中、水都の布団だけが空になっているのが見えた。
テーブルの方にも、窓際にもいない。
陽乃「人に寝ろとか言っておいて」
自分はただの人間のくせに、
陽乃よりもずっと早く起きて、どこかに出ている。
いや、どこかではない。
陽乃「……まったく」
布団を自分の分だけまとめて、
畳むのは後回しにして、身支度を整える
部屋を出て左に曲がり、突き当りをさらに曲がる
参集殿から繋がっている、斎館へ向かう
- 878 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/27(木) 22:15:17.37 ID:x02yumYuo
-
棚には一人分の着替えとバスタオルが用意されていて、
浴室からは、入浴中の音が聞こえる。
ただ入浴しているわけではないだろう。
扉を軽くたたく
陽乃「一人でやるのは危険だって、話したはずだけど」
ばしゃんっと水が跳ねる音が聞こえて、静まり返る
少しの沈黙ののちに、浴室特有のくぐもった声が返ってきた。
水都「やっておいた方が良いと思って」
陽乃「神託は来ないわよ」
水都「神託がなくても、やっておきたいんです」
陽乃「伊予島さん達の無事を祈ってるって? それなら沐浴じゃなく水垢離の方にしなきゃだめよ
貴女、浴槽に水を貯めて浸かっているだけでしょう? それじゃやり方が間違ってるわ」
水都「そ、そうなんですね……」
- 879 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/27(木) 22:36:42.79 ID:x02yumYuo
-
陽乃「まぁ、穢れているよりはいいわ」
沐浴……禊を行っておくのは決して悪いことではない。
水垢離という、祈りのために行う行為とは別になるが、
この後に、儀式として巫女舞を行うなどするのなら、むしろ正しい。
陽乃「で、いつ起きたの?」
水都「……30分くらい前、ですね」
水都は少し申し訳なさそうに言って
水都「ぱっと目を覚ましちゃって……そのままこっちに来ちゃいました」
陽乃「私より先に起きるなんて異常だわ。貴女こそ、体調崩すんじゃない?」
水都「私が崩すのはいいんです。ただの巫女ですから」
陽乃「……」
水の中で動く音がする。
滴り落ちる音、排水溝に飲み込まれていく音、水都の深い吐息
黙っていると、いろんな音が聞こえてくる
水都「……すみません。よくないですよね」
1、さぁ? 私は別に
2、白鳥さんとしてはよくないと思うわ
3、そうね。
4、中に入る
5、何も言わない
↓2
- 880 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/27(木) 22:38:47.15 ID:OCW+qBXe0
- 2
- 881 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/27(木) 22:39:09.80 ID:pGfa5oyrO
- 4
- 882 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/27(木) 23:17:39.80 ID:x02yumYuo
-
陽乃「……」
棚の方を見て、バスタオルなどが一式予備であるのを確認する。
普段から、禊のためにこの場を利用することの多い水都や陽乃の分に始まり、
楽をしようと考えた球子の分まで、ある程度の予備がしまわれている棚。
自分たちしかいないからと言って、やや自由が過ぎるだろうか。
陽乃「まぁ……」
服を脱いで、畳んで収める
代わりに、白衣を身に纏う
水都「……久遠さん?」
会話が途切れたからか、確認するように水都が名前を呼ぶ。
それに答えず、応えのように扉を開けて中に入っていくと、
水都は顔を上げて、すぐに、陽乃に背中を向けた
陽乃「何してるの?」
水都「く、久遠さんこそっどうして……」
陽乃「日課よ」
水都「私が出てからでも……」
陽乃「そんなに時間があるわけでもないから」
水都「……そう、ですよね。すみません」
陽乃「そんなに照れる必要はないと思うけど」
- 883 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/27(木) 23:38:14.31 ID:x02yumYuo
-
陽乃に背中を向けたままの水都を一瞥して、さっと水を浴びる
冷たい水が、肌を流れていく。
ついさっきまで温もりに包まれていた体への、刺すような刺激
体の内側から外側へと湧き出るような熱量を感じながら、
それを二回、三回と繰り返して。
陽乃「……ん」
流し終えてから、浴槽にたまった水に触れる。
陽乃「いつもより水温が高いわね」
水都「あっ……」
水都は肩を震わせて、ゆっくり陽乃へと振り向いた
水都「すみません……自分しか使わないと思って、ちょっとだけ」
陽乃「……別にいいわ。このくらいなら大差ないから」
水都「……」
- 884 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/28(金) 00:02:26.16 ID:B9Ff/cJYo
-
水都「……しばらく、一緒に沐浴をするのもなくなりますね」
陽乃「そうなの?」
水都「土居さんたちがいなくなる分、久遠さんも歌野んも警戒する必要があるじゃないですか。
今までと違って、あえて陽動するわけですし……襲撃への警戒は強める必要がありますよね?」
陽乃「警戒は今までだってしっかりしてたでしょう? 大して変わらないわ」
陽乃は常に参集殿にいたし、
歌野は隔日で控えていたりした。
球子達の部分を陽乃がカバーするだけ。
今までと何一つ変わらない。
もちろん、襲撃があった場合はその対応をしなければならない。
たった2人で。
それによる疲労も考慮して、水都は時間が無くなると考えているようだ。
水都「……ありがとうございます」
陽乃「何よ急に」
水都「諏訪のみんなを、見捨てずにいてくれたじゃないですか」
- 885 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/28(金) 00:02:53.92 ID:B9Ff/cJYo
- では途中ですがここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
- 886 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/28(金) 00:15:19.46 ID:4cfe1NkBO
- 乙
今作のみーちゃんはメンタルが超強化されてて精神面で頼もしいよなぁ
- 887 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/28(金) 00:16:44.04 ID:LbnXZ7p70
- 乙
諏訪来てから陽乃が前よりずっと優しくなったのほんとみーちゃんのおかげだよな
- 888 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/28(金) 01:38:40.62 ID:k87VISWtO
- 乙
陽乃の物腰も柔らかくなったし本当に助かる
- 889 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/28(金) 23:39:21.59 ID:B9Ff/cJYo
-
すみませんが、本日はお休みとなります
明日は、可能であれば早い時間から
- 890 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/28(金) 23:41:20.55 ID:KsULZKMxO
- 乙ですー
- 891 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/29(土) 21:22:18.63 ID:TvXvk1u/o
- では少しだけ
- 892 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/29(土) 21:22:51.23 ID:TvXvk1u/o
-
陽乃「別に、そう思ってくれてもいいわ」
水都「否定しないんですね」
陽乃「私が否定したって、貴女達はそう思うでしょ? 無駄な労力を使う気はない」
水都「……そうですか」
水都はやや素っ気ない返しをされても嬉しそうに笑うと
体に馴染んだ水の冷たさを手に受け止めて、顔にぶつける。
水都「そうですね。そうだと思います。久遠さんには何か別の考えがあって、
諏訪を見捨てないのは、ここに残ってくれるのは……そのついでだとしても」
水都はちいさく息を吐く。
前髪の先から、一滴が水面へと落ちる。
水都「結果的に諏訪に残ってくれたから、否定しても変わらないと思います」
陽乃は思った通りの返しに返事もなく、黙っていて。
水都の周囲と違って陽乃の体の周りはまるで揺れない。
その微動だにしない沈着冷静な様子は、水都がいつもこの場所で見ているものだ。
実際に戦わない水都ですら、これから大きな戦いがあると緊張しているのに
陽乃はいたって、いつも通り。
水都はその堂々とした姿勢に羨望のまなざしを向けて
水都「久遠さん覚えてますか? 前に、放っておいて欲しいって言ったこと」
- 893 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/29(土) 22:12:04.41 ID:TvXvk1u/o
-
水都「今みたいな……巫女としての所作を教えてくださいってお願いを引き受けてもらう代わりに
何か、久遠さんにはお願いありますかって聞いた答えが、それだったんですよ?」
先月のことだ。
それを忘れるほど記憶力に問題は出ていない。
かといって、覚えておくほどのこととも思わない。
いつも陽乃が思っていたことだし、求めていたこと
特別なことではなかった。
水都「あの時は、少し怖かったです」
陽乃「……」
怖かったと言う割には、
怯えているのではなく、申し訳なさを感じる水都の表情
じっとみると、顔を背けられた
陽乃「そう……」
1、覚えてないわ。
2、そのお願い、結局聞いてくれなかったわよね
3、謝らないわよ
4、それが?
↓2
- 894 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/29(土) 22:12:52.83 ID:fgatdJSUO
- 2
- 895 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/29(土) 22:13:13.22 ID:LgO5Q0QJ0
- 2
- 896 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/29(土) 22:47:49.57 ID:TvXvk1u/o
-
陽乃「そのお願い、結局聞いてくれなかったわよね」
水都「す、少しは久遠さんのこと気にしないようにしてたと思いますけど」
水都はそう言ったが、
すぐに、首をかしげて思い出したように苦笑する。
水都「そういえば、全然だったかもしれません。
でも、それはあれですよ。久遠さんが御柱に触れてあんなことになったから……」
陽乃「言い訳?」
水都「それは狡くないですか? あのお願いの後だとしても、あんなことがあったら放っておけないよ」
陽乃半分、自分半分
水都のその呟きは水風呂の中に消えていく
水都「久遠さん自身、私たちにかかわってきましたよね?」
陽乃「そうだったかしら」
水都「自分から会いに来たじゃないですか……それで、自分一人で戦いに行くなんて危ないこと言いだして」
陽乃「……そんなこともあったわね」
水都「みんな止めたのに、結局、それ頼りになっちゃいましたね」
- 897 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/29(土) 23:07:00.17 ID:TvXvk1u/o
-
陽乃「別に、私じゃなくたって白鳥さんならできるはずよ。それでも、単身でやってもらうけど」
水都「うたのんのこと、信頼してるんですか?」
陽乃「3年間の実績に私の力を貸し与えられるんだから、そうじゃなきゃおかしいってだけよ」
水都「それも、信じてるって言えるような気がしますけど」
陽乃「私は……」
水都はただ、思っていることを口にしているだけだろう。
歌野なら、同じように単独で戦闘しても問題ないと考えている。
そこに実績があり、唯一信頼している自分の力が加わればとは言うけれど、
だとしてもそれはやっぱり "歌野が勝つと信じている" のではないかと。
陽乃は顔を顰めて、すぐに、その感情を鎮める
陽乃「私は誰も信じようなんて思ってないし、信じる気もない」
水都「結果を示してもですか?」
陽乃「頼る気はないから」
水都「でも、頼ってくれたじゃないですか」
水都はそう返して、下を向く。
水都「……頼ったじゃないですか。伊予島さん達のこと」
陽乃「頼ったわけじゃないわ。あの子たちがそうしたいって言うからそうさせてあげるだけ」
水都「……言葉の綾では?」
陽乃「言った本人が使わないのは初めて聞くわね。それ」
- 898 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/29(土) 23:29:37.22 ID:TvXvk1u/o
-
水都「事実じゃないですか」
陽乃「そう?」
水都「そうですよ」
陽乃は拒絶することもあるが、
完全な拒絶は、あの1度きり。
それ以外は勝手にしたら? と言ってくれるし、
やや放置気味ではあるけれど、許してくれている。
信頼しないとは言っているけれど、
でも警戒だってそこまで強くしていない。
だけど――信頼しないと言い切る。
行動が、考えが、言葉が、
信頼の上に成り立つものであっても、陽乃はそれを信頼ではないと否定する。
信じる気はないと首を横に振って、認めない。
だから、言葉の綾
もう、ただそういう言い回しをしているだけというか。
水都はそう思って、思わず笑ってしまう
1、そう思いたければ思っていればいいじゃない
2、私はお願いを聞いて、貴女は聞かずに不履行なのは問題よね
3、あまり、調子に乗らない方が身のためよ
4、何も言わない
↓2
- 899 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/29(土) 23:31:10.93 ID:LgO5Q0QJ0
- 2
- 900 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/29(土) 23:32:12.00 ID:fcatyV2PO
- 3
- 901 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/29(土) 23:57:43.22 ID:TvXvk1u/o
-
では本日はここまでとさせていただきます
明日は能であればお昼ごろから
- 902 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/30(日) 00:04:28.70 ID:7GecOfb/O
- 乙
みーちゃんの勢いに陽乃さんが普通に押し負けてる感じがする
早く心を開く日が来るといいな
- 903 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/30(日) 01:10:27.79 ID:TT4N8EDyO
- 乙
陽乃も久遠さんみたいに押しに弱そうだからな
押せ押せ
- 904 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/30(日) 18:31:47.53 ID:MOqeND+zo
-
では少しずつ
- 905 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/30(日) 18:34:35.12 ID:MOqeND+zo
-
陽乃「あまり、調子に乗らない方が身のためよ」
水都「すみません」
水都は素直に、答える。
今までの自分と比べて明らかに積極的になっているのはわかっていたことなのだろう。
少し罪悪感を抱いているような視線が、陽乃に向けられた。
水都「でも、そのくらいじゃないと久遠さんと関われないですよね?」
陽乃「関わらなくていいって話、忘れたの?」
水都「覚えてます」
残念そうに言った水都は、困って顔を顰める
それは覚えている
覚えているから、申し訳ない。
陽乃が起こした御柱の崩壊と、諏訪の神々の力の継承
陽乃にとって不幸なそれがあったからこそ、それをなかったことのように接することができているからだ。
水都「でも、久遠さんはいまや諏訪の神様のようなものですし、巫女である私はつかず離れずでいた方が良いと思いませんか?」
- 906 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/30(日) 19:02:03.29 ID:MOqeND+zo
-
陽乃「そういうのが調子に乗ってるのよ」
水都「でも、久遠さんはそこにいてくれているじゃないですか」
ここには一人で来た。
朝早く……とさえも言えないような早起きをして
眠れないからと、沐浴に来た
なのに、今は陽乃がいる。
呼んでいないしお願いしてもいないけれど、
同じ水風呂に入っている。
陽乃「私の対応が悪かったって言いたいのね」
水都「別にそうじゃないですよ」
陽乃「そうとしか受け取れないわ」
水都「久遠さんには少し積極的な方が良いって、土居さんも言ってましたし」
陽乃「……やっぱり、私の対応が悪かったんじゃない」
- 907 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/30(日) 19:10:53.74 ID:MOqeND+zo
-
水都「え?」
陽乃「甘やかしすぎたのね」
水都「あんまり、甘やかしてはないと思いますよ」
陽乃「貴女のことじゃない」
水都「?」
甘やかしているというには、陽乃の態度はややきつめだ
根気強さがなかったり、
球子からの"積極的に"という話がなければ、早々にリタイアしているくらいには。
だが、放っておいてといいつつ、
好きにしたら、勝手にして、なんて許しを与えていることは、
甘やかしていると言えなくもないだろうか。
水都は話題に対して、まだ穏やかな陽乃を見て笑みを見せる。
水都「なら、土居さんですか?」
陽乃「そうね」
あの時、友達などと騙って接触したのが間違いだった。
それがなければ、球子がこれまで強く接してくることも、
水都に勢いつけさせるような助言をすることもなかったはずだ。
それなら、今、水都は隣にいなかったかもしれない。
陽乃「選択を誤ったわ……ほんと」
- 908 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/30(日) 19:25:06.55 ID:MOqeND+zo
-
疲れた口ぶり、後悔を感じる表情
球子と何かあったのは明白
水都は、そんな陽乃を見て……躊躇って口を閉じる。
そこに首を突っ込むのは、調子に乗るどころか飛び越えているというものだ。
水都「緊張してないんですか?」
陽乃「緊張? なにに?」
水都「この数時間後には、戦いじゃないですか」
陽乃「何があってもやれるって確信があってこそのことよ。それに緊張する方がおかしいわ」
水都「……なにが、あっても?」
陽乃「ええ。バーテックスの数が想定より多かろうと、なにか奇策を用意していようと、何があろうと」
水都「そうですか」
水都は、思わず笑ってしまう。
陽乃にとって当然の答えに対しての水都の笑みは、嬉しさから来るものだった。
1、なにがおかしいの?
2、貴女が喜ぶこと?
3、雑念が多すぎるわよ
4、怒らせたいの?
↓2
- 909 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/30(日) 19:27:12.96 ID:G/HKcNUPO
- 3
- 910 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/30(日) 19:28:45.06 ID:cqHj336O0
- 4
- 911 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/30(日) 19:40:48.65 ID:MOqeND+zo
-
陽乃「怒らせたいの?」
水都「あ……いえ、すみません」
水都は首を振って、否定する。
怒らせたいわけじゃない。
水都「久遠さんが自信を持ってくれているから、私たちも安心できるなと、思って」
水都が嬉しかったのは、陽乃が一切の不安も緊張もなく、
何があろうと間違いなく成し遂げられると言っている分の安心感があってこそだ。
実際に戦っているところを見た覚えはない
だけど、杏も球子も実力に問題はないと言っている。
なにより、諏訪の神様ですら認めた人だ。
そんな人が、自分に任せろと言い、何も問題はないと言い切っている。
ネガティブに考えれば、失敗の予兆ともとれるが、
ポジティブに考えれば、そんなことはない。
水都「今、諏訪にいる人たちはうたのんがいても、不安がないと言えばウソになると思います。
御柱が崩壊したこともあって、余計に不安になっているだろうし、怖いと思うんです」
陽乃「……私だって、壊したかったわけじゃないわ」
水都「知ってます。ただ、現実はそうなんです。
結界は壊れていない、歪んでもいない、大丈夫ですって説明で落ち着いたように見えても、不安は拭えません」
- 912 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/30(日) 19:59:20.09 ID:MOqeND+zo
-
陽乃「貴女も不安になった?」
水都「そうですね。申し訳ないですけど……不安になりましたし、怖かったです」
結界を支えている要とも言える御柱の崩壊
襲撃ではなく、
陽乃が触れたことによる崩壊ということ
以前までと違って、結界までも砕けたわけではないため、
多少の抑制はあったが、それでも不安はあった。
水都「でも、神様が久遠さんの力を頼って委ねたって聞いて、大丈夫だって思いました」
陽乃「意味不明ね」
水都「そんなことないですよ。突き放されたこともありましたけど、それ以前から思ってた久遠さんの印象を神様が保証してくれたようなものなので」
陽乃の眉がぴくっと動く。
また怒らせたいのかと言われるかと水都は一息飲む。
水都「とにかく、だからこそ久遠さんの自信がある態度で安心できるんです。
住民の人たちには、久遠さんの戦いを間近で見せることはできないですけど、でも、勇者の自信は安心につながるんです」
水都は嬉しそうに語って。
水都「私だったら、不安で、怖くて、緊張していると思います。
それしかない。そう思って陽動作戦に立候補したとしても、今ここにいるのは恐怖と不安を落ち着けるためだったと思います」
陽乃「……そう」
水都「そうなんです。久遠さんがそう思っていなくても、久遠さんが自信を持ってくれているだけで助かります」
- 913 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/30(日) 20:03:40.28 ID:MOqeND+zo
-
↓1コンマ判定 一桁
0,3,9 水都「だから、嬉しいです。感謝しています」
- 914 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/30(日) 20:05:52.03 ID:0FjXhuAAO
- あ
- 915 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/30(日) 20:28:22.44 ID:TT4N8EDyO
- みーちゃんマジでつよい
- 916 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/30(日) 20:39:41.68 ID:MOqeND+zo
-
水都「だから、嬉しいです。感謝しています」
陽乃「感謝なんて」
水都「久遠さんたちが来てくれるまでは、内心、もうダメだと思っていたんです」
約3年前
諏訪が結界に覆われたころの話になるが、
その時は、いつか準備が整ったら救援が来るという話だった。
なのにこれだけ時間がたっても誰かが訪れることも、
四国との通信で吉報が告げられることもなかった。
だから、もう、限界だと。
水都「住民の人たちもそうです。うたのんが頑張ってくれているからというだけで
外部からの救助を期待している人なんていないと言ってもいい状態でした」
陽乃「……」
水都「でも、久遠さんたちが来たんです。外界の危険な道のりを超えて、久遠さんがその命を懸けて
こんな隔離された、最前線に来てくれたんです。うたのんに、私に、住んでいる人たちに、希望を与えてくれたんです」
今にも感涙を流しそうな様子で水都は言葉を紡ぐ。
ああいえばこういうな陽乃も、口を閉じて水都を見る。
水都「だから私も、変わろうと思って……その一歩が、命がけで勇者を連れてきてくれた久遠さんに接することでした。
もちろん、いろいろと気にかかってた部分があったのもありますけど」
水都は照れくさそうに笑う。
水都「2人が言ってました。久遠さんは大社の反対を押し切ってここに来てくれたって
たとえ、そこに何か裏の理由があったとしても、来てくれたことには変わりがないから」
だから、ありがとうございます。と、水都は言った。
- 917 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/30(日) 21:03:45.71 ID:MOqeND+zo
-
陽乃「結果的に、貴女達の得になったから裏があろうと関係ないと?」
水都「はい」
陽乃「私が勇者である白鳥さんだけいれば十分だと思っていたとしても?」
水都「だとしても、現実はその思いの通りではなかったみたいなので」
歌野だけいればいい。
そうして体調が戻ったら歌野を連れて出て行く。
なんてことにはならなかった。
だから、陽乃のその返答は水都にとって話半分
いいや、半分ですらないかもしれない。
水都「そのうえ、諏訪の神様が結界を維持させるために久遠さんに代行を求めたりして
久遠さんは不本意だったかもしれませんが、そのおかげで安心できています」
陽乃が倒れさえしなければ結界には影響が出ないという話。
バーテックスが大挙してきても、やすやすと押し返せそうな陽乃の自信。
水都「感謝してもしきれません……けど、そのお礼を聞くと、久遠さんはまた、放っておいてって言うんですよね?」
1、間違いないわ
2、言ったって無駄でしょう?
3、まずは前の分をどうにかしなさい
4、だったらなに?
↓2
- 918 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/30(日) 21:06:41.04 ID:cqHj336O0
- 4
- 919 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/30(日) 21:07:47.09 ID:0FjXhuAAO
- 1
- 920 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/30(日) 21:48:21.65 ID:MOqeND+zo
-
陽乃「間違いないわ」
水都「よかったです」
拒絶にもなる、放っておいて欲しいという願い
その予測が間違っていないという答えに対する、水都の笑み。
その意図は解るが、
拒絶される結果になるということを気にしていないかのようで、陽乃は顔を顰める
陽乃「……馬鹿なの?」
水都「馬鹿かもしれません」
冷たくあしらわれたり、
強く突き放されたり、
なのに今もこうしているのだから、馬鹿といえば馬鹿なのだろうと水都は認める。
水都「……」
陽乃は冷たいことがある。
けれど、それも、慣れてしまえば実は温もりがあるような気がしてくる。
突っ撥ねたり、勝手にしてと許してくれたり、冷たいのか何なのか。
水都「私は……」
水都は一度言葉を飲み込んで、小さく笑みを浮かべて。
水都「みんなを守ってくれて、こうして巫女についてのことも教えてくれていますし
結果論というか、現実をちゃんと見てもやっぱり……私は、陽乃さんが優しくて良い人だって思います」
- 921 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/30(日) 22:26:30.24 ID:MOqeND+zo
-
陽乃「そんな期待されても、私は応える気はないわよ」
水都「期待じゃないです。結果論です」
水都は、あえてそんな言葉を使ってみる。
結果的にそうなっただけ。
でも、だとしたら結果的にそう思えるだけだと返す。
陽乃は怒らせたいのかと言ってくるかもしれないけれど。
陽乃「調子に乗らない方が良いって、言ったばかりよね?」
水都「事実を言ってるだけでも、駄目ですか?」
陽乃「……」
最初に比べると、
だいぶ、強かになったものだと陽乃は水都を見つめる。
最初はすぐに謝ったりなんだりと、弱弱しい印象だった
だが、今に至ってみれば、これである。
陽乃「もう、勝手にしたら?」
水都「今まで通りですね」
陽乃「……そうね」
- 922 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/30(日) 22:37:31.55 ID:MOqeND+zo
-
今日、杏と球子の二人が四国へと発つ
陽乃はその移動を悟られないよう、そして、道中が少しでも楽になるように
陽動として、諏訪周辺のバーテックスを一掃する手はずになっている。
陽乃の役割は重要だ。
ここで失敗すると後発に響く。
球子と杏の出発ができたとして、
陽乃に被害が及んだ場合、諏訪はもちろん、歌野の戦闘力にまで影響が出る。
陽乃「今まで通り、いつも通り。それでいいのよ」
緊張せず、不安も恐怖もない。
淡々と、バーテックスを屠って終わる。
一人で戦うのは約3年ぶりになるが、今の体の調子を考えれば問題はないだろう。
水都「今日は、お願いします」
陽乃「期待に、応える気はないからね」
頑張ってとも言わず、
軽く頭を下げるように言った水都を一瞥して陽乃は繰り返す。
陽乃「沐浴にしては、雑念が多すぎるわ」
水都「すみません……嬉しかったので、つい」
初めからその予定があったのではなく、偶然
それも、陽乃から近づいてきてくれたことが。と、水都は心の中だけで思った。
- 923 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/30(日) 23:02:40.53 ID:MOqeND+zo
-
√ 2018年 9月2日目 朝:諏訪
歌野「じゃぁ、改めて……準備はいいかしら」
水都との沐浴を終えてから、少し経って
みんなが起き、準備と確認そして朝食を終えた後
ようやくと、歌野が切り出す。
行きの時よりも、やや重装備な杏と球子
普段通りの陽乃、巫女装束に身を包んでいる水都
見回して、一息。
歌野「久遠さん、もしあれなら助っ人を呼んで」
陽乃「必要ないわ。終わるまで絶対に出てこないで」
邪魔だから。と続きそうだが、実際には、陽乃の力の影響を受ける可能性があるからだ。
歌野と結界は、諏訪の神々の代行となっている陽乃の力の影響を受けずに済むだろうが、
杏と球子に関しては受けかねない。
杏「私たちの方も大丈夫です。サバイバル……というか、野宿とかについては、たまっち先輩もいるし」
球子「任せタマえ」
自信満々に言う球子に、杏は軽く笑う。
やや、緊張しているようだ。
- 924 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/30(日) 23:17:32.04 ID:MOqeND+zo
-
陽乃「2人は私が周りを一掃してから出て頂戴。タイミング外して巻き込まれても責任は取らないわ」
球子「怖いこと言うなよ……分かるけど」
杏「大丈夫です」
陽乃「白鳥さんは藤森さんと一緒に行動して」
歌野「申し訳ないけど、わかってるわ」
本当なら、手を貸したい。
けれど、陽乃が全力で力を使うというし、
万が一の保険として控えは必要だから出るわけにはいかない。
水都「私たちは各区の班長に話を通して住民を本宮の方に集めておきますね。何もなければそれでいいですけど……」
陽乃「それでいいわ」
今後のことについてもそうだし、
杏と球子のことなども話しておく必要がある。
杏「四国は任せてください」
歌野「私が言えた義理じゃないかもしれないけど、乃木さんたちをお願いね」
球子「大丈夫だ。どうにかなる」
それより。と、
球子は陽乃を見て。
球子「そっちこそ頼む。扱いは面倒だけど、悪い奴じゃないからな」
陽乃「結界の外に蹴飛ばすわよ。貴女」
- 925 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/30(日) 23:27:44.83 ID:MOqeND+zo
-
陽乃はそういいつつ、深く息を吐いて目を閉じる。
力は十分に満ちている。
四国にいたころとは比べ物にならないほど調子もいい。
これなら存分に力をふるうことができる。
諏訪の神々の恩恵
戦闘面においては、陽乃のデメリットを補って余りあるものだ。
歌野「ふぅ……ちょっとドキドキするわね」
水都「今まで、襲撃されることはあっても奇襲をするなんてなかったもんね」
球子「タマ達は奇襲したことあるぞ」
杏「奇襲……かなぁ?」
今まで通りを装いつつ、緊張を感じる空気。
陽乃は、それでも冷静に目を瞑る。
やることは単純だ。
あとは、力をどう扱うか
1、伊邪那美命の力を借りる
2、九尾の力のみを借りる
↓2
- 926 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/30(日) 23:34:55.47 ID:iEzPZ8OEO
- 1
- 927 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/30(日) 23:35:22.77 ID:cqHj336O0
- 1
- 928 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/30(日) 23:46:06.26 ID:MOqeND+zo
-
では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
- 929 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/31(月) 00:01:15.01 ID:gsxSv+K4O
- 乙
最早否定する言葉が何一つ通用しないみーちゃん強すぎる…
そしていよいよ殲滅作戦だけど伊邪那美命の力の反動は大丈夫だろうか
- 930 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/31(月) 01:54:28.75 ID:CiA/u1RlO
- 乙
みーちゃんこれからもグイグイといってほしい
力の方は不安は不安だけどこうなっても諏訪の力で強化されてるから多少は大丈夫なんじゃないかなあ
- 931 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/31(月) 21:51:06.64 ID:+4S7IN/Jo
- では少しだけ
- 932 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/31(月) 21:52:02.85 ID:+4S7IN/Jo
-
陽乃「……本気で、つぶしに行ってみるか」
水都「え?」
陽乃「こっちの話」
この万全な状態は、おそらく諏訪限定だ。
ここにいるから、ここがあるから
諏訪の土地と、そこに住む人々の信仰
それがあるからこそ得られる恩恵
向こうにみんなを連れ帰ったところで、
今のように、何をしても問題がなさそうな体にはならないはずだ。
だからこそ、使ってみるべきかと思う。
想像しえない代償を払うことになりかねないが、
ここに多くの戦力を割り振らなければならないという印象をバーテックスに与えられる力の誇示としては、最適。
なにより、今しか使えそうにない力だ。
――伊邪那美命
彼女の力はどれほどのものか。
かの神は死の力を持っていると九尾は言った。
九尾も似た力を持っているが、それなど比にならないほど強い力を持っていると。
水都「陽乃さん?」
歌野「陽乃さん? えっ?」
陽乃は水都の疑問の声にはっとして、笑みを噛む。
陽乃「何でもないわ」
- 933 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/31(月) 22:04:06.63 ID:+4S7IN/Jo
-
無意識に目を向けてしまっていたらしい。
場合によっては……いいや、それなりに低くくない確率で陽乃は何らかのダメージを負うことになる。
その結果一番騒ぐのは水都だから、意識が行ったのだろう。
陽乃「白鳥さん」
歌野「は、えっ? 私?」
陽乃「貴女以外にいないでしょ」
なぜか驚く歌野に陽乃は淡々と言って。
陽乃「私の後は貴女がどうにかするんだから、しっかりして頂戴」
歌野「ええ、任せて頂戴」
歌野は戸惑いながら答えたものの、すぐに「あれ?」とこぼす。
斜め下に向かっていた視点が陽乃の方に向く
歌野「え、それだけ?」
陽乃「それだけよ。他意はないわ」
歌野「そう……? ん〜……そっか」
水都「うたのん、何か気になるの?」
歌野「大したことじゃないんだけど……陽乃さんって呼ぶようにしたのね」
水都「あっ、うん」
球子「ははぁ……なるほどなぁ」
自分は少し前からだと、自慢げな球子
私もまだ呼んでいないのにと、陽乃に視線を送ってくる杏
ちょっぴり困った様子でありながらはにかむ水都
これから有事を引き起こそうというのに、緊張感はどこかへと跳ねのけられている。
陽乃「それじゃ、私はもう行くから」
陽乃はそう切り込んで、立ち上がる。
- 934 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/31(月) 22:11:10.27 ID:+4S7IN/Jo
-
まだ7時にもなっていない、朝早い時間
二度と帰れないかもしれない戦いの場に行くはずのその姿は、ただコンビニに買い物行くかのように軽やかだった。
杏「久遠さん」
陽乃「今更、止めるのは無しよ」
杏「体に気を付けてください。私たちがいないから、諏訪の神様の恩恵があるからとか、関係なく、一人の人間として気を付けてください」
陽乃「今言うこと?」
杏「一旦、お別れなので」
杏は寂しげに笑う。
杏「久遠さんには元気でいて貰いたいんです」
陽乃「貴女に気遣われるまでもなく私は健康でいるつもりよ。そうじゃなきゃ早死にするだけじゃない」
杏「そう、ですね」
寂しさは残ったまま、でも、どこか嬉しさのにじむ杏の表情。
ここで暫く分かれることになるのが、そんなに気がかりなのだろうか。
陽乃は、思考でとぼける。
そうではないことくらい、わかってしまう程度には人間観察の力があるつもりだ。
陽乃「私を案じるよりも貴女には考えるべきことがあるはずよ。余計なことに使わないで必要なことだけに注ぎなさい」
球子「つまりあれだろ? 集中しろってことだろ? 変な言い方するなって」
水都「心配しないでって言ってるとも取れるけど……」
陽乃「……勝手にして」
陽乃は吐き捨てるように言って、部屋を出る
伊邪那美命の力を借りることは、やはり、言わないでおくべきだ
- 935 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/31(月) 23:19:58.51 ID:+4S7IN/Jo
-
諏訪の結界の外にまで来て、陽乃は深く息を吐く。
九尾なら、九尾と声をかければ出てきてくれる。
だが、伊邪那美命はそうとは思えない。
以前出てきたのは、陽乃の要求でなく、彼女の独断だ。
陽乃「……さて」
九尾の時とは違って、一応は本格的な神降ろしになる
失敗は……最悪酷いことになるが、
運よく何もなければ、九尾に変わりを願うしかない
陽乃は諏訪大社から拝借した扇を取り出す。
もっといろいろと拝借したかったが、見当たらなかった。
陽乃「ふぅ」
右手に扇を持ち、ゆっくり開きながら左肩から手先の方へと動かして、
翻しながら、右側へと動かす。
音も何もない、略式の神楽
それがどこまで許されるか。
陽乃「掛けまくも畏き 伊邪那美大神……」
祝詞を唱えながら、一手一手、納めていく
神降ろし――それに応えるように、体からどんどんと力が抜けていくのを陽乃は感じた
- 936 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/31(月) 23:44:31.54 ID:+4S7IN/Jo
-
陽乃「っ……は……」
九尾を呼ぶのとは比べ物にならない、息苦しさ
諏訪の神々の恩恵があってなお、重くのしかかって、眩暈がする。
陽乃「っ……」
向こうが勝手に姿を現したとはいえ、
一度は呼び出したことのある神
前回よりは負担も軽いはずなのに、
それがまるで感じられない辛さに陽乃は噴き出す汗を振り払いたい気持ちを抑えて、舞いを続ける
途中で止めていいものではない。
私事を優先していいことではない。
巫女神楽の奉納も終わりが近づいたころに、ようやく、それは姿を現す。
まるで、陽乃が苦しんでいるのを傍で眺めていたかのように、
柔らかに、自然に、そこに初めから存在していたかのように
陽乃「っ……」
乱れる息を整えて、陽乃は現れた女性に頭を下げる
陽乃「諸諸の禍事、罪、穢を祓い給え清め給えと白す事を……聞こし食せと恐み恐みも白す」
女性は何も言わない。
ただただ、陽乃を見つめて……陽乃の頬に触れる。
顔をあげさせ、目を合わさせ――溶け込む
陽乃「っあ……ぅ゛っ」
抜け出ていた力が、けた違いに膨れ上がって押し返された感覚
瞬く間に体の熱が上がって、のどが焼けるように痛んで、どこかが切れたのか吐血する
- 937 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/06/01(火) 00:01:04.62 ID:pJHqbQGwo
-
諏訪の周囲に漂うだけだった白い塊たちが、一斉に向きを変える。
何かしているぞと、遠巻きに見ていた少女の異質さが跳ねあがったからだろう。
見逃してはいけないと、
許してはいけないと、
惹かれたように、導かれたように、
白い粒は一つの大きな塊ともとれるほどに群がって、
諏訪の結界の手前に立つ赤黒い巫女装束に身を包んだ ” 異物 ” へと降り注いで――
陽乃「そうそう……それでいいのよ。それで」
陽乃は、体の中にたまった力を一気に解き放つ。
辺りを埋め尽くしていたバーテックスの白さが消え失せて、黒く染まる。
見えていたはずの太陽さえも見えなくなるほどの暗闇。
朝から夜へと、時が飛んだかのような静寂さに包まれて
ふっっと、陽乃の体から力が抜けて膝をつく
陽乃「っ……あっ、痛っ……」
ごつんっと膝を強打した猛烈な痛みを感じて陽乃は呻いて、顔を上げる。
陽乃「……なる、ほど」
群がっていたバーテックスは影も形もなく消え失せて、
生い茂っていた草木さえも、不自然にその生命力を失って枯れ果てていた。
周囲に死を与える、非常識なほど凶悪な力。
振り返ってみれば、わずかに結界が揺らいでいるのが見えたが、すぐに持ち直す。
体の痛みも、徐々に和らいでいく
陽乃「これは――」
これは間違いなく、勇者の命さえ奪いかねない力だ。と、
改めて自覚すると、ぐらりと体が揺れ落ちて、誰かに抱きかかえられる。
一人か、二人か、三人か
うすぼんやりとした視界の中に、人影が見えたところで陽乃は気を失った
- 938 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/06/01(火) 00:02:49.62 ID:pJHqbQGwo
-
√ 2018年 9月2日目 昼:諏訪
05〜14 67〜76 水都
27〜36 89〜98 歌野
45〜54 九尾
↓1のコンマ
※ぞろ目特殊
※そのほか通常
- 939 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/01(火) 00:04:15.09 ID:GOwvYtnMO
- あ
- 940 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/06/01(火) 00:12:54.21 ID:pJHqbQGwo
- √ 2018年 9月2日目 昼:諏訪
陽乃「……」
目を覚ますと、見慣れた景色が映って
視界の端に引っかかっていた時計に焦点を合わせる。
壁掛けの丸い時計
真ん中のあたりにある、月日と曜日の表示を見てみると、
戦いからそんなに時間が経っていないのが分かった。
水都「……約4時間です」
陽乃「ん……」
声がした方向に体を向かせると、
陽乃とは違って、正しく巫女装束に身を包んだ水都がいた。
ややご立腹なのが、表情から見て取れる。
水都「陽乃さんのおかげで、周辺のバーテックスが一掃されたのは、うたのんが確認してくれました。
伊予島さんたちも問題なく出発して、おおむね予定通りに進んでます」
陽乃「……怒ってる?」
水都「怒ってます」
- 941 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/06/01(火) 00:21:07.67 ID:pJHqbQGwo
-
水都が言うには、陽乃が力を使ったのとほぼ同時刻、
諏訪は大きな地震に見舞われたそうだ。
その結果、諏訪大社の前宮に合った御柱が倒壊してしまったらしい。
幸いにもけが人などはおらず、
結界の規模などの縮小なども起こってはいないが、
もしかして。と、
焦った歌野達が飛び出してみれば、陽乃がちょうど気を失う寸前だったとのこと。
陽乃「……なるほど」
水都「なるほど。じゃありません!」
陽乃「っ……」
水都「心配したんですよ? 伊予島さん達は陽乃さんがそこまでしてくれたからって、私たちに任せて発ってくれたからいいですが
本当に、また、酷いことになるんじゃないかって、私……」
水都は、怒鳴ったかと思えば、ぽろぽろと涙をこぼす。
横になっている陽乃を見下ろしているせいか、涙が早く落ちてくる。
1、結界なら、大丈夫だったでしょ?
2、目を覚ましたんだから、いいじゃない
3、もう少し、大丈夫だと思ってたのよ
4、大げさね
5、悪かったわね。想定外だったのよ
↓2
- 942 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/01(火) 00:23:57.75 ID:fGfChIErO
- 下1じゃないんやな
安価下
- 943 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/01(火) 00:24:09.33 ID:JXdvZ6d4O
- 3
- 944 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/01(火) 00:24:31.55 ID:GOwvYtnMO
- 4
- 945 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/06/01(火) 00:27:50.52 ID:pJHqbQGwo
-
では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
- 946 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/01(火) 00:33:40.16 ID:GOwvYtnMO
- 乙
戦闘シーンがコンマ判定すらなく瞬殺とは恐るべし…
諏訪の神様のおかげか反動もなんとかなりそうだな
- 947 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/01(火) 02:11:19.41 ID:JXdvZ6d4O
- 乙
相変わらずみーちゃんにコンマが吸い寄せられてくな
- 948 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/06/01(火) 21:34:54.90 ID:pJHqbQGwo
- では少しだけ
- 949 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/06/01(火) 21:36:02.78 ID:pJHqbQGwo
-
陽乃「もう少し、大丈夫だと思ったのよ」
水都「そんな軽い気持ちで命を懸けないでくださいっ!」
陽乃「……」
水都「忘れちゃったんですか? あんなに苦しんで、辛そうで、痛そうなことになったこと」
陽乃「忘れてはないけど……でも」
水都「でもじゃないんです」
水都は陽乃を声で押さえつける
でも、だけど、そんなのは聞いていられないと言わんばかりだ
水都「こんな無理をしないといけないほどぎりぎりだったんですか?」
陽乃「使っておく必要があったのよ」
諏訪でしか使えない可能性がある力。
諏訪の土着神というわけではなく、
単純に、普通では陽乃の体が持たない超常的な神の力だからである。
陽乃「私の中にある力だから知らぬ存ぜぬではいられないし、確認しておくべきでしょ?」
水都「なにも、こんな大事な時にしなくたって」
陽乃「今だからこそよ」
- 950 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/06/01(火) 21:53:10.03 ID:pJHqbQGwo
-
守る必要のある結界は、陽乃の保護下にあって
周りにはほかの勇者が控えていることもない。
万が一力が暴走して、周囲一帯を巻き込んだとしても大きな被害を出さずに済む可能性が極めて高かった。
その目論見通り……とはいかなかったが、
結界内の御柱の倒壊と地震が起こる程度で済んだ。
水都は周りを巻き込む力だと聞いてもやや不満そうだったけれど、
わかりました。と、軽く頷いた。
水都「体はどうですか?」
陽乃「……平気」
水都「声もはっきりしてるみたいで、よかったです」
断続的な枯れた声、寝返りもままならず、すぐに悪化したり、吐血したり
凄惨だった先月の陽乃を思い返してか、水都は物憂げながらほほ笑んだ
水都「でも、二度としないでください。せめて、ひとこと言ってください」
陽乃「言ったら止められるじゃない」
水都「なら、説得してくれたらいいんですよ」
水都は満面の笑みで言う。
昨日のことをそっくりそのまま投げ返せたのが嬉しいのだろうか。
それに対しての定型句を返せば、
また、陽乃と似たようなことを返してくるだろう。
調子に乗るなと今朝言ったばっかりだったはずなのに。
陽乃は少し顔を顰めた。
陽乃「調子に乗らない方が良いわよ」
- 951 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/06/01(火) 22:02:57.39 ID:pJHqbQGwo
-
水都「今回は、陽乃さんが悪いと思いませんか?」
陽乃「やるべきことをしただけだわ」
諏訪の神々の恩恵があること前提での行為だったが、
結果的には体調も問題がなさそうだし、バーテックスも一掃できた
心配して欲しいと頼んだ覚えはない。
むしろ放っておいて欲しいと願っていたくらい。
勝手に心配して、それは陽乃のせいだというのは理不尽だ。
陽乃「……理不尽」
水都「へ?」
陽乃「こっちの話よ」
随分と振れ幅の大きい言葉だ
かつて受けた理不尽な仕打ちから、今水都から押し付けられている理不尽な責任
どちらも同じ理不尽などと、何とも康寧な話ではないか。
1、私が倒れてから問題は?
2、白鳥さんは?
3、悪いとは思ってないわ
4、定期連絡は?
↓2
- 952 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/01(火) 22:07:04.64 ID:QCnsox1HO
- 1
- 953 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/01(火) 22:08:01.83 ID:T18sBNc70
- 2
- 954 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/06/01(火) 22:38:58.84 ID:pJHqbQGwo
-
陽乃「白鳥さんは?」
水都「うたのんなら、定期連絡してます」
陽乃「伊予島さん達のこと、話すの?」
水都「聞き入れて貰えるかはともかく、連絡はしておくって言ってました」
報連相は大事だ
相談……は、していないけれど。
若葉から大社から派遣されてきた担当の人に変わってしまった通信
陽乃に対する忠告をするが、陽乃達がこちら側にいるという話を信じては貰えていない
陽乃「向こうが襲撃される可能性については?」
水都「それも話すそうです」
陽乃「……」
陽乃の怪訝な表情に水都ははにかむ
気持ちはわかるとでもいうようで。
水都「乃木さんではないので、襲撃のご神託が下っていても知らされていない可能性はありますね」
- 955 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/06/01(火) 23:03:39.73 ID:pJHqbQGwo
-
こちら側の話が信用されないのは前提
酷い話だけれど、襲撃を受けたなどの話は受けてくれるように感じるが、
陽乃や杏達の件については、話半分。
だから、こちらから情報を提供することより
向こうの情報を仕入れるというのが目的になっている。
しかし、それもままならなそうだ。
陽乃「せめて襲撃があるのかどうかだけでも把握してくれていると助かるんだけど」
水都「うたのんの交渉術次第ですね」
陽乃「そうね」
一度でもひなたさえ引き摺り出せていれば、
九尾とのパスを繋げて神託を受け取ることが出来ていたかもしれない。
陽乃「白鳥さんの交渉術がどうであれ、向こうの担当にそこまでの権限がなければどうにもならないわ」
水都「勇者と接することが可能なくらいには、位が高いと思いますけど」
陽乃「神託は最高機密だと思うから、勇者と接することができるかどうかではないと思う」
- 956 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/06/01(火) 23:52:07.66 ID:pJHqbQGwo
-
水都「そうですよね……私は独りしかいないから特別なだけですよね」
自分が関われているから誰でも関われている
そう考えていたらしく、傲慢だとでもいうかのように肩をすくめた。
水都「実は、陽乃さんに安静にしていて貰うために、ずっとそばにいたんです」
陽乃「それが?」
水都「でも、体調には問題がなさそうですし……今からでも、通信施設のところに行きますか?」
陽乃「もうすぐ終わりじゃない?」
水都「いつもと違って報告もあるので、まだ終わっていない可能性もあります」
陽乃「で、私に話をしてみろって?」
水都「そうですね……通信の状態もかなり酷くなっていてもしかしたらもう、通信が途切れてしまう可能性さえあるので必要であれば」
陽乃「聞いて貰えるとは思えないし話すこともないのだけど」
上里ひなたを連れてこい。なんて言うだけ無駄だろうから。
力を使って、通信回復を試みてみるのもいいだろうか
1、わかったわ。行ってみましょう
2、通信回復を試みるわ
3、やめておくわ。どうにもならないし
4、九尾を呼ぶ
↓2
- 957 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/01(火) 23:55:37.92 ID:T18sBNc70
- 1
- 958 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/01(火) 23:56:17.74 ID:zRNi7qpbO
- 2
- 959 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/06/01(火) 23:59:40.18 ID:pJHqbQGwo
-
では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
- 960 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/02(水) 00:09:51.52 ID:OAsBe+cpO
- 乙
後々の事を考えながらみーちゃんと相談してるところを見るに陽乃さんの素はかなり真面目だよな
- 961 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/02(水) 01:27:49.75 ID:2GDin3s2O
- 乙
みーちゃんの努力の賜物だなそこは
- 962 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/06/02(水) 20:37:26.05 ID:q+hJpbORo
-
では少しだけ
- 963 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/06/02(水) 20:37:52.30 ID:q+hJpbORo
-
陽乃「通信回復を試みるわ」
水都「また力を使うんですか?」
陽乃「反動があるような力を使う気はないわよ」
またむっとする水都に陽乃は呆れたように首を振る。
今の陽乃にとっての脅威は伊邪那美命の力による反動
九尾の力を使うくらいなら何も問題はなかった。
水都はそれでも心配なようで、陽乃をまじまじと見つめる
水都「いつもはそうでも、消耗した今の状態でも同じ保証はありますか?」
陽乃「証明のために力を使えばいいの?」
水都「……そうじゃないですけど」
証明のために消耗させていては、
ならその次は大丈夫なのかと気になってしまう。
陽乃は自分に問題がないと確信があるからいいが、水都の中では勝手に堂々巡りである。
陽乃「貴女から見て私と通信どっちが余裕がないのよ」
水都「それは通信ですけど」
けど。と、水都は渋った。
水都「大事なのは、陽乃さんの方です」
- 964 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/06/02(水) 20:52:53.13 ID:q+hJpbORo
-
陽乃「はぁ」
水都「本気で言ってるんですよ……?」
陽乃「それはそうでしょ。私がいなくなったら諏訪が終わるんだから」
不満げな水都を一瞥する陽乃の呆れた反応には、
水都もまた深く、顔を顰める
陽乃はどちらかといえば察しが良い
しかし、察したからと言って寄り添ってくれるというわけでもなく。
水都「諏訪の代行じゃなくてもですよ」
陽乃「貴重な戦力だもの。分かってるわよ」
水都「……」
利用価値があるから。
それを大前提とした陽乃の答え。
水都はそうっと手を伸ばして、陽乃の頬をつまむ
陽乃「……なに?」
水都「なんとなく、うたのんの気持ちが分かった気がして」
陽乃「なんなのよ」
水都「こっちの話です」
にこやかな水都の反応は、やはり、さっきの仕返しか
陽乃は目を細めたが、水都は気にせず陽乃の頬を手放す。
水都「……似てるなと」
陽乃「私が? 白鳥さんに?」
水都「どうでしょう?」
- 965 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/06/02(水) 21:07:51.75 ID:q+hJpbORo
-
陽乃は暫く水都を見つめていたが、
ため息をつくと、さっと目を逸らして自分の手を動かす。
握る力、持ち上げる力、曲げる力何一つ不自由はない。
陽乃「似てないわよ」
水都「え?」
陽乃「以前ならともかく、今は」
歌野と水都、どちらに似ていると誰が言ったか。
思い返した陽乃はそれを不鮮明に否定する。
今は到底似ていない。
陽乃「貴女は代わりに寝ててもいいわよ」
体を起こし、手足の不自由がないのを確認して、服の皴を伸ばす。
私服ではなく、寝間着
着替えさせられたのだろう。
水都「え、そのまま行くんですか」
陽乃「外に出るでもないし、これでいいわ。見るのは白鳥さんくらいだし」
水都「だ、だめですよ! 万が一があるかもしれないですから着替えてください!」
水都が回り込んで陽乃を阻む。
陽乃「……何か企んでるの?」
水都「ないですけど、とにかく、駄目です」
水都は企んでいない
企んでいないが、御柱の倒壊と地震はけたたましい警報の後に起こった災害である。
それ以前に人々を神社に集めていたので人的被害は皆無だったが、問題はそこだ。
参集殿は立ち入り禁止となっているが、境内には人が多い。
焦る水都を陽乃は睨むように見て、渋々と着替えを手に取った。
- 966 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/06/02(水) 21:13:51.39 ID:q+hJpbORo
-
↓1コンマ判定 一桁
1,4,9 通信終了
- 967 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/02(水) 21:19:48.20 ID:TyVoPUIGO
- あ
- 968 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/06/02(水) 22:05:25.59 ID:q+hJpbORo
-
歌野『ですから、何度も言っているようにこちら側にも巫女がいるんです!』
陽乃達が通信施設に向かうと、まだ通信中の歌野の声が聞こえてきた。
口調こそ礼儀を感じるが、声はひどく荒々しい。
苛立っているのを感じるそれに、陽乃の傍らにいた水都が肩を震わせる。
陽乃「……」
歌野『その巫女が神託を受けたんです!』
歌野の言う巫女と言えば水都のことのはずだが、陽乃が振り向くと水都は首を振る。
水都が嘘をついていなければ神託を受けていない
なら、歌野が言う神託を受けた巫女というのは陽乃のことだ。
陽乃がそう言っていた、陽乃の使役している精霊がそう言っていたと伝えるより、
明言せずに巫女という枠を使った方が良いとの判断だろう。
しかし、向こうはそれを素直に受け止めてはいないように感じる。
陽乃「なるほど」
水都「え?」
陽乃「向こうはその神託を受けていないって返答をしたのね」
- 969 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/06/02(水) 22:13:27.80 ID:q+hJpbORo
-
向こうの巫女が神託を受けたか否かを把握していなければ、歌野からの情報を受け止めて上に伝えるだけでいい
だが、そうはしていない
していれば歌野が声を荒げるはずがないからだ。
なら、どうなっているか。
通信の相手は神託の有無を把握しており、歌野が言う神託が偽りであるのではないかと考えている。
だから歌野が怒鳴った。
陽乃「……私か」
水都「陽乃さん?」
陽乃「こっちの話」
陽乃に何かされたとか、
あるいはそもそも、連絡しているのが陽乃で混乱させようとしていると疑っているのではないだろうか。
四国が襲撃されるかもしれないという重大な話。
それが、諏訪で行われて四国で行われていないというのは確かに奇妙な話である。
1、ノックしてはいる
2、忍び込む
↓2
- 970 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/02(水) 22:15:18.08 ID:TyVoPUIGO
- 1
- 971 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/02(水) 22:18:16.97 ID:TyVoPUIGO
- 1
- 972 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/02(水) 22:20:14.74 ID:dR9Y9S110
- 1
- 973 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/06/02(水) 22:41:48.48 ID:q+hJpbORo
-
軽く息を吐いて、コンコンコンッっと、三度扉を叩いて引き戸を開く。
和室として作られ、一部を通信用の設備によって作り替えられている部屋
その中央にいる歌野は驚いた様子で振り返っていた。
陽乃「失礼するわよ」
歌野「な、え、みーちゃんっ」
水都「体は問題なさそうだったから」
陽乃は水都と歌野のやり取りを無視して、
通信ようの機械から延びるコード、その終点にあるヘッドセットに目を向ける
歌野の頭から離れたそのヘッドホン構造の部分からは、かすかに声が聞こえる。
四国側の通信担当だろう。
歌野「久遠さん、どういうつもり?」
陽乃「あら、来たら行けなかった?」
歌野「そういうわけじゃ……」
- 974 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/06/02(水) 23:11:59.77 ID:q+hJpbORo
-
歌野は少し気まずそうな顔をしている。
水都も察して困った表情になっていたが、陽乃はヘッドセットを手に取って半分を耳に当てる。
『勇者様。ご返答ください』
聞いたことのない男の声
若葉でも千景でも友奈でもないし、ひなたでもない。
女性でなく、男性であることに疑問を覚えたが、別におかしなことではないと思い直す。
『勇者様』
歌野「……」
男性の呼び声
歌野は陽乃を見る。
自分が続けるのかそれとも陽乃が変わるのか
どうするのかと問うような視線。
いくら生の声ではないと言っても、
さっきまで聞いていた声と、陽乃の声が違うという判別くらいはできるだろう。
1、杏と球子を送ったことを話す。
2、陽乃のことを通信担当に話す。
3、呪い殺されたいの? と、脅す
4、歌野に任せる
5、何も言わない
↓2
- 975 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/02(水) 23:14:00.32 ID:21xZzaypO
- 1
- 976 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/02(水) 23:14:12.94 ID:2GDin3s2O
- 1
- 977 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/06/02(水) 23:17:34.34 ID:q+hJpbORo
-
では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
- 978 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/02(水) 23:37:17.86 ID:eUletyuYO
- 乙
今の大社の人が陽乃さんとの対話でどんな反応するんだろうか…
あと普段温厚なうたのんがキレ気味で怒鳴るとは結構珍しいシーンでは
- 979 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/03(木) 02:04:02.29 ID:QGN7+Dh0O
- 乙
まあもうこちら側から出来ることこれくらいしかないしな……
- 980 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/06/03(木) 22:36:53.31 ID:oGugrJ6Vo
- では少しだけ
- 981 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/06/03(木) 22:39:17.00 ID:oGugrJ6Vo
-
陽乃「代わるわ」
歌野を制すように手を差し向けて、マイクを自分の口に近づける。
歌野がいくら言ってもダメだったなら、陽乃が言ったところで変わりはあるのかと疑問ではあるが、
直接、どういう対応かは身に感じておきたかった。
『勇者様? 何か――』
陽乃「伊予島杏と土居球子をそっちに送還したわ」
問題があったのか。そう続きかけた通信手の声を遮る。
『は……白鳥様?』
陽乃「聞いてる? 二人をそっちに送り返したと言ったのだけど」
水都「……陽乃さん」
水都が、普段から接している陽乃とはまるで違う冷たい声
威嚇し、軽蔑し、相手の恐怖心を煽る陽乃の雰囲気に水都は息をのんだ
『藤森水都さん。でしょうか』
陽乃「はぁ……」
会話の内容よりも、相手が気になっているようだ。
顔の見えない相手。警戒するのは解るが、曰く"陽乃はいない"のではなかったか。
1、冷たく接する
2、自分が陽乃だと告げる
3、話を続ける
↓2
- 982 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/03(木) 22:40:54.94 ID:6pEFNWhDO
- 3
- 983 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/03(木) 22:42:10.14 ID:l3VZzIJm0
- 2
- 984 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/06/03(木) 23:12:11.11 ID:oGugrJ6Vo
-
陽乃「陽乃。久遠陽乃」
『そんな、まさか』
陽乃「信じるも信じないも結構だけど、ここ半月の捜索で成果は得られたのかしら」
『……本当に、ご本人なのですか?』
陽乃「貴方達にとって災厄以外の何物でもない名を騙るもの好きがいるとでも?」
『……』
通信手からの声が途切れる。
深く考え込んでいるかのような沈黙の後、通信手側からため息のような音が漏れてきた。
『本当に久遠様なのですね?』
陽乃「ご自由にどうぞ」
判断は委ねるという陽乃の姿勢。
一転して、怒っていないし呆れてもいないが、関心もないといった様子の陽乃
水都と歌野は固唾をのんで見守る。
『では、そこには白鳥様はいないと?』
陽乃「さっきまでと声は違うと思うけど、通信じゃ不鮮明かしら」
『……先ほどまでは』
- 985 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/06/03(木) 23:23:22.59 ID:oGugrJ6Vo
-
陽乃「じゃぁつまり、さっきまでは勇者ともわからない誰かと情報のやり取りをしていたってわけね」
『そ、そういうわけでは! 以前から担当させて頂いており、白鳥様ご本人だと認識して――』
陽乃「最初に白鳥歌野以外が、白鳥歌野を名乗っていたとしたらどうなのかしら」
歌野「ちょっと、久遠さん!」
さすがにかく乱のし過ぎだと歌野が口を挟む。
声が向こうに届いてしまったらしく、「白鳥様」と、通信手の声が聞こえた。
当初から歌野ではなかったかもしれないという疑念
それを植え付けてしまったら、今後の通信に支障が出かねない。
いや、あるいは、通信手が疲れているのだと、別の人に変わるかもしれない。
陽乃「分かってるわよ。あまりにも、話を聞いてくれないんだもの」
歌野「だからってこれはよくないわ」
陽乃「……はいはい」
素知らぬ顔で答えた陽乃はため息をつく。
限度くらいは解っている。
陽乃「四国から、久遠陽乃、伊予島杏、土居球子がいなくなっていたことは把握しているでしょう?」
『存じております』
陽乃「三人で諏訪に来ていたのよ。無理だと思っているのだろうけど、本当にね」
- 986 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/06/03(木) 23:32:37.64 ID:oGugrJ6Vo
-
若葉からの報告を受けていたはずだが、
通信の不調などを理由にそれを完全に信じてはいなかった大社
今回のやり取りでも、信じてくれると思っていないが
言うだけは言っておくと、陽乃はつづけた。
陽乃「でも、事情が変わった。白鳥さんが言っているように、こっちよりもそっちが危ないと神託が下ったのよ」
神託などなく、九尾がその可能性が高いと言っただけ。
九尾が神獣として知らせを持ってきたと思えば
神託と言えなくもないが。
陽乃「だから二人をそっちに送り返したの」
『ですが、白鳥様にお伝えした通り我々にはそのような神託は下っておりません。最も巫女としての適性をお持ちである、上里様にでさえ、そのような神託は下っていないと伺っております』
陽乃「なるほど……」
想定内の返し。
神託を受けるべき側が神託を受けていない
だから、その神託は信ぴょう性に欠けている。というのは、決して間違っていない考えだ。
特に、陽乃を警戒しているのならなおのこと。
向こうに、上手く言う方法はあるだろうか
――そもそも、言ってやる必要は。
1、信じなくて結構よ
2、こっちの方が優秀だとは思わないわけ?
3、そうね。実際は " 諏訪の危機は遠のいた " という神託だとしたら?
4、何も言わない
↓2
- 987 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/03(木) 23:35:29.77 ID:hRCQGhrHO
- 3
- 988 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/03(木) 23:37:07.27 ID:RZZMlcHIO
- 3
- 989 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/06/03(木) 23:38:08.97 ID:oGugrJ6Vo
-
では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
- 990 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/03(木) 23:47:48.62 ID:RZZMlcHIO
- 乙
伝えるべきことをきちんと伝える姿勢を見せていい方向に転がってくれるといいなぁ
これで後で仇で返されたらもうどうしようもないけど
- 991 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/04(金) 01:54:44.83 ID:ebOCihHdO
- 乙
そもそも球子たちすら間に合う保証はないもんな
- 992 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/06/04(金) 22:14:44.48 ID:zaoAiUXvo
-
では少しだけ
- 993 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/06/04(金) 22:15:34.70 ID:zaoAiUXvo
-
陽乃「そうね。実際は”諏訪の危機は遠のいた”という神託だったとしたら?」
『……言い換えれば信憑性が増すと?』
陽乃「むしろ逆。ことが重大だと思ってもらえるようにわざわざそっちが危険だって言っていたのに
神託が来ていないからありえないって跳ねのけられちゃうんだもの」
陽乃はわざとらしく苦笑する。
その笑い方は、知っている人が聞けば九尾の嘲り笑うようなものに通ずるものがあって、
歌野はやや緊張してしまう。
目の前で通信を代わった陽乃が張るのではなく九尾だったら、どうなってしまうのか。
水都が連れてきたから、陽乃本人であると思いたいけれど、
そもそもから切り替わっていたりしたら、水都でも気づけないのではないだろうかと。
陽乃「その神託の後、諏訪周辺からバーテックスの数が減っているのを確認したし、そっち側に移動しているような形跡も感じられた。
提示できる証拠はないし、信じなくても結構よ。これはあくまで形式的な報告でしかないんだから」
ほとんどでっち上げである。
神託は誇張で、数の減少もちゃんと確認したわけではないし、形跡なんて調べてもいない。
陽乃が外に出た時、来た時より明らかに数が多いのは感じたが、減ったという印象はなかった。
そんな口から出まかせ状態の陽乃から水都へと視線を移動した歌野は、小さく笑う。
- 994 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/06/04(金) 22:26:48.09 ID:zaoAiUXvo
-
水都「……」
水都は黙っているが、その表情は穏やかだ。
陽乃が九尾である可能性なんて微塵も疑っていない。
陽乃「だけど、私たちは言うだけは言ったわ。取り合わなかったのはそっち。どれだけの損害が出ようが自己責任で処理して欲しいの」
陽乃はそういって顔を顰める。
大社は自己責任とするかもしれないが、民衆は違うだろう。
実際に人を殺めてしまった影響が大きく出てくるはずだ。
やはりあの娘を差し出さなかったからだと、余計に荒れるかもしれない。
それこそ自己責任ではないだろうか。
『本当に諏訪の安全が確保されたと?』
歌野「ええ。諏訪周辺のバーテックスは一掃されました。そこは、諏訪の勇者、白鳥歌野が保証いたします」
陽乃に顔を近づけて、歌野が答える。
瞬時に入れ替わっているだけと思われたら反論の余地もないが、
陽乃が認めるよりは歌野が認める方がまだいいだろうとの判断だ。
『……承知いたしました』
- 995 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/06/04(金) 23:03:58.15 ID:zaoAiUXvo
-
考えるように、通信担当は答える。
歌野が証言しているとはいえ、歌野が陽乃に何かされていないとは限らない。
もちろん、この場にいる誰もそれは疑わないが、
顔の見えない向こう側は、疑わざるを得ないのだろう。
陽乃のことを警戒しているなら、仕方がないことだ。
陽乃「それと二人を帰しはしたけれど、間に合う保証はないから」
『どれほどの時間がかかると?』
陽乃「さぁ? そこは二人の頑張り次第ね」
『……承知いたしました。お伝えいたします』
歌野「通信、調子いいわね」
陽乃「私だから」
向こうからのつながりはともかく、
こっち側からのアクセスは陽乃の力で補強されている。
それでも、十分とは言えない
1、上里さんを呼んで貰える?
2、そっちの勇者の状況は?
3、私の扱いはどうなってるの?
4、終了する
↓2
- 996 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/04(金) 23:05:06.46 ID:nI0VOlHNO
- 2
- 997 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/04(金) 23:07:10.13 ID:gmxgEi/a0
- 1
- 998 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/06/04(金) 23:15:36.82 ID:zaoAiUXvo
-
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- 999 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/04(金) 23:16:19.12 ID:nI0VOlHNO
- 了解ですー
- 1000 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/04(金) 23:58:58.66 ID:BDhqnAdKO
- 乙
- 1001 :1001 :Over 1000 Thread
- / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
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古き良きAA雑談 @ 2021/06/03(木) 20:12:43.85 ID:3rjFeyP6O
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