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【安価でのわゆ】久遠陽乃は勇者である【3頁目】
- 713 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/15(土) 21:50:20.61 ID:Eg1ftFkMO
- 2
- 714 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/15(土) 22:21:50.92 ID:KsGmZGnIo
-
陽乃「もう一つの方、行ってみましょ」
陽乃達がいるのは諏訪大社の中の一つ、諏訪大社本宮と呼ばれているところだ。
ほかに上社前宮、下社秋宮、下社春宮と呼ばれる境内がある。
すでに下社の方はバーテックスの襲撃に耐えられず崩壊し、
結界の外になってしまっているため、近づくことはできない
陽乃「……」
陽乃なら強行することも可能だが。
『神としての自覚でも芽生えたかや?』
陽乃は、揺れる自分の影を見つめて、ため息をつく
狐の形をしたその影は、
降り注ぐ陽の光など関係なく、動いている。
陽乃「まさか」
神様としての仕事なんて、結界の維持以外をする気は毛頭ない。
陽乃「でも、次に壊されるとしたら間違いなくそっちになるでしょ? 状態を見ておきたいわ」
『状態なら、外に出る方がよいと思うが』
陽乃「まぁ、そうなのだけど」
『心労はかけたくないと?』
陽乃「……後々、面倒なことになるのを避けたいだけ」
- 715 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/15(土) 22:44:57.66 ID:KsGmZGnIo
-
民家の立ち並ぶ県道をまっすぐ歩く
ここに来るまでは、諏訪は建物よりも畑が多い。なんて、
意味の解らない考えも片隅にあったが、見渡す限り家ばかり。
そのほとんどが、無人化している。
結界の外に家を置いてくることになった人々が、
家主を失った家を利用していることもあるらしいけれど、それでも、大部分がもぬけの殻だ。
陽乃「……」
『人間の気配が少ないのう』
陽乃「ええ」
諏訪の神々の代理となってからというもの、なぜだか、そういった感覚が強くなった。
気配というか、命というか
そこに存在している力を、感じる。
「おや、見ない子だねぇ」
陽乃「……ん」
ふと、声をかけられて顔を上げる
高齢の女性
腰もやや曲がった感じのおばあさんは、
陽乃のことをじぃっと見つめて「あぁ」と得心が言ったように声を漏らす。
「歌野ちゃんが言ってた、四国の方から来た勇者様」
- 716 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/15(土) 23:01:06.96 ID:KsGmZGnIo
-
「えぇっと……そうそう。久遠陽乃さん。だったかねぇ」
陽乃「名前、知ってるんですね」
「どんな子かって話は、聞いてたの」
杏と球子については、何度も外に出ているし
四国の状況などの話も担当していたから、容姿を知っているらしい。
名前も併せて知っているから、
まだ見たことのない少女、久遠陽乃というのが3人目だと考えたのだろう。
「本当に、きれいな桜色の髪をしているわねぇ……染めているの?」
陽乃「は、え、あ、いえ……これは、元からです」
おばあさんの、やせ細った手が陽乃の髪に触れる
嫌だと振り払うわけにもいかず、軽くうなずいて答える。
これは地毛だ。
どうあがいても変えられない、桜の髪
「ここにきてすぐ、入院したって聞いていたけど……もう、大丈夫なの? 休んでいなくて平気?」
陽乃「……大丈夫です」
- 717 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/15(土) 23:22:47.44 ID:KsGmZGnIo
-
「そう、よかったわ。元気になって」
嬉しそうに笑うおばあさんは、陽乃の髪から手を離す。
「一人?」
陽乃「ええ、少し散歩を」
陽乃は、少し困った笑みを浮かべて答える。
陽乃「上社前宮に……参拝をしに行こうかと」
「そう……大丈夫? 道分かるかしら」
陽乃「ありがとうございます。大丈夫ですよ」
敵意は感じられないし、ただの一般人
突っ撥ねる必要もないだろうと、
陽乃は、努めて柔らかく答える。
上社前宮に行ったことはないが、
感覚で、位置がなんとなくだがわかっている。
そう遠くはないし、道なりに行けば問題はなさそうだ。
陽乃「では失礼します」
「あぁ、はい。気を付けてね。無理は、しないでね」
陽乃「……大丈夫です」
陽乃は、どうにか笑みを浮かべた。
- 718 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/15(土) 23:45:49.23 ID:KsGmZGnIo
-
上社本宮を出てから、道なりに歩いて約30分程度
距離としては2キロくらいだろうか
民家に囲まれた道、
それなりに開けた道
ゆっくりと歩いてたどり着いた、諏訪大社の上社前宮
本宮に比べれば、やや控えめに見える社殿
参拝客は、今はいないようだ
陽乃「……」
『だいぶ、弱まっておるのう』
陽乃「そう、みたいね」
上社本宮と同じように、上社前宮にも御柱がある
だいぶ、力は弱まってしまっているようだが。
『参拝、するのじゃろう?』
陽乃「神様が、参拝するの?」
1、参拝
2、御柱へ
3、拝殿へ
↓2
- 719 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/15(土) 23:47:55.05 ID:eTMKo6760
- 1
- 720 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/15(土) 23:48:43.05 ID:YnAKmBn4O
- 1
- 721 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/15(土) 23:48:54.78 ID:83lKEGpDO
- 1
- 722 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/15(土) 23:55:06.46 ID:KsGmZGnIo
-
では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であればお昼ごろから
- 723 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/16(日) 00:04:09.82 ID:pOTIqBaFO
- 乙
おばあさんに見せた優しさを杏たちにも見せられたらいいのになぁ…
- 724 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/16(日) 00:49:38.11 ID:ZkYemofQO
- 乙
優しさは伝わってると思うけどな
- 725 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/16(日) 17:07:41.66 ID:Nw76iqsHo
- では少しずつ
- 726 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/16(日) 17:08:13.56 ID:Nw76iqsHo
-
陽乃「まぁ、参拝するって言っちゃったものね」
陽乃はそういって、鳥居の前で立ち止まる
陽乃「私、一応神様の代理だし……手順を省いても怒られないかしら」
『妾が知るわけなかろう』
陽乃「冗談よ」
九尾の素っ気ない答えに陽乃は苦笑して、一度頭を下げる。
こんな世界になる以前から、陽乃は参拝に行くこともあれば、参拝に来る人を多く見かけてきた。
それでも、鳥居をくぐる前に一礼をする人はそう多くはなかった覚えがある。
絶対にしなければならないという、決まりがあるわけではない。
あくまで、そういった所作もある。といった程度のものだ。
陽乃「……神降ろしをしたからって、人が神様になれるわけではないもの。
あくまで、私は神職を担う巫女として、一線の外側だって自覚を持っているべきだわ」
『面倒なものじゃな』
陽乃「でも、久遠という姓が代々受け継いできた巫女としての役割を担う人はもう、あとは私しかいないでしょ?
その私が、いくら、不満があるからって捨てるわけにはいかないじゃない?」
陽乃はそう言って、困ったように笑う。
九尾はいるが、周りにだれもいないからか、
普段より一段と、声色は柔らかい。
- 727 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/16(日) 18:02:04.88 ID:Nw76iqsHo
-
木々の多い境内、虫の声もせわしなく、
皮膚を焼くような木漏れ日を感じながら、
略式的なお清めの手水舎を過ぎて、内鳥居の方に近づく
陽乃「ねぇ、貴女ならミシャグジ様がどういうものなのか、知ってるんじゃない?」
『知らぬ』
陽乃「そう……」
諏訪の土着の神として、ミシャグジ様と呼ばれる存在がある。
神様とは言うが、本当に神様なのかどうかも不確かだというのは、
人を誑かす妖狐と、神獣としても考えられている九尾と、少し似ている。なんて、陽乃は小さく笑う
陽乃「石の神、木の神。九尾はどっちだと思う?」
『ふむ……木じゃな』
陽乃「どうして?」
『白蛇は屋根に住むといわれておるじゃろう? 石の屋根に取り込まれた蛇は死骸となるが、木ならば、死することも少なかろうて』
陽乃「なにそれ」
くつくつと、九尾はのどを鳴らして笑う。
『ご神体など、関係はなかろう。妾がそうであるように、宿れるものあればそれに宿る。それだけじゃ』
- 728 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/16(日) 18:20:45.98 ID:Nw76iqsHo
-
石段を進んで、少しばかりの登り道を歩く。
上社前宮の拝殿と、
それを囲むように点在している御柱が見える
陽乃「……弱いわね」
『言うたであろう』
陽乃「でも、思った以上だわ」
力もそうだが、
見た目からして、今にも崩れてしまいそうなほどに、御柱は弱っている。
綺麗に整えられているはずの表面には苔が生え、一部が腐り、
前宮……の部分から先の文字はすでに消えてしまっている。
子供の力で押せば、へし折れてしまいそうな感じだ
陽乃「御柱が、その役目を担い切れてない」
『そのために、主様を頼ったのじゃろう』
陽乃「……」
本宮の方は、どちらかといえばまだ無事だった。
だが、前宮の方はもうすでに限界が来ていて、無理矢理に支えったされているような雰囲気さえある。
陽乃「……これ、私が維持しているってことでいいのかしら」
『触れてみればよかろう』
陽乃「どうせまた、崩れ落ちるんでしょう?」
1、御柱に触れる
2、拝殿の方へ
3、清流の方に向かう
↓2
- 729 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/16(日) 18:22:14.53 ID:ZkYemofQO
- 1
- 730 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/16(日) 18:22:55.27 ID:IamtyawgO
- 2
- 731 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/16(日) 18:47:48.51 ID:Nw76iqsHo
-
陽乃「力の引継ぎはもう完了してるし、これまで崩しても面倒なことになるだけだわ」
『それもそうか』
御柱には触れずに、拝殿の方に向かう。
『主様、賽銭はあるのかや?』
陽乃「一文無しよ」
陽乃は意味もなくポケットをまさぐって、首を振る
拝殿にきて、お賽銭なしというのも変だが、
ないものはない。
ポケットを叩いても、増えたりしない。
『仕方があるまい』
九尾がそういうと、影が揺れて女性が現れる。
長い金色の髪に日が当たって……少しまぶしい。
九尾「ここは妾が貸してやろう」
陽乃「貴女、お金あるの?」
九尾「くふふっ、いくらでもあるぞ」
九尾はそういって、手のひらに一万円札を出す。
1枚、2枚、3枚……次から次へと、どこからともなく見せる。
陽乃「人は化かせても、神様は無理だと思うけど」
- 732 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/16(日) 18:54:43.43 ID:Nw76iqsHo
-
払いのけると、
散らばっていく紙幣は、瞬く間に木の葉へと姿を変える
陽乃がお金を持っていないのだから
九尾だって、持っているわけがない。
素直に諦めて、鈴を鳴らして、基本のあいさつ
お賽銭がないことの謝罪をお祈りの代わりとした。
九尾「欲がないのう」
陽乃「無駄な希望を抱かないだけよ」
九尾「じゃから、小娘どももあしらうと?」
陽乃「理由の一つでは、あるわね」
陽乃は軽く答えて、九尾を置いて拝殿を離れる。
- 733 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/16(日) 19:29:41.39 ID:Nw76iqsHo
-
拝殿の隣には、清流が流れているとされていた。
だが、今はもうその流れはほとんど感じられない。
晴れていてもしっかりと流れていたはずなのに、
干乾びてしまったかのように、ほとんどの土が乾いている。
本来流れている分の、半分程度だろうか。
陽乃「……流れが、止まりそうね」
九尾「主様がおれば、元に戻るじゃろうが、時間は少しかかるやもしれぬな」
陽乃「だから残る。なんて、私は言わないわよ」
九尾「妾も、残れとは言わぬ」
陽乃の少し冷めた声に、九尾は顔色一つ変えずに返す。
二人の空気にまわりが静まり返って
九尾「主様には残れぬ理由があるのじゃろう? ならば、思うがままに行動するがよい」
陽乃「言われなくても、そのつもりよ」
諏訪を出て行く。
誰がなんて言おうと、関係ない。
ここに残りたい人がいようと、置いてでも向こうに帰らなければならない。
そうしなければ、陽乃の母親が危ういからだ。
九尾「……」
九尾は、弱い流れのそばに腰を下ろしている陽乃を一瞥して、何も言わずに姿をまた影へと消した
- 734 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/16(日) 19:30:48.65 ID:Nw76iqsHo
-
√ 2018年 9月1日目 夕:諏訪
01〜10 水都
34〜43 杏
67〜76 歌野
87〜98 球子
↓1のコンマ
※ それ以外通常
- 735 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/16(日) 19:36:04.70 ID:VYeHfS11O
- あ
- 736 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/16(日) 19:57:33.32 ID:Nw76iqsHo
-
√ 2018年 9月1日目 夕:諏訪
諏訪大社の、上社本宮
陽乃達が今住んでいる神社へと戻ると、
参集殿の近くにいた人影が、陽乃に気づいたのか駆け寄ってきた。
歌野「久遠さん!」
陽乃「……なに?」
歌野「どこに行ってたの? いつもの部屋にいないし、誰も何も聞いてないしで心配したのよ?」
陽乃「少し散歩をしていただけよ」
上社前宮に行った後に、
暫く、適当にふらついていただけだ。
自転車も車もなく、
徒歩だったから少し時間はかかったが、そのくらいでしかない。
陽乃「部屋に引きこもっていたって、暇だったんだから……結界の外に出なければ何していたっていいでしょう?」
歌野「それは違いないけど、久遠さんの場合結界の外にもいきそうだから」
陽乃「否定はできないわね」
- 737 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/16(日) 20:16:14.80 ID:Nw76iqsHo
-
陽乃「まぁ、勝手に単身突撃する気はないわ。今のところはね」
この状況で、わざわざ禍根を残すようなことをする気はない。
何の知らせもなしに単身で周囲のバーテックスをせん滅しても、
次の動きが遅れることになる。
その遅れが、四国までの道のりを険しくさせる可能性があるのだ。
陽乃「その様子だと、それを疑って結界の外にまで見に行ったわけじゃないんでしょう?」
歌野「ええ」
歌野は頷いて、ほっと息を漏らす。
歌野「伊予島さんたちが、散歩を勧めたって言っていたから、そうだろうと思ってたし……」
歌野は、自分の胸のあたりに手を当てて、少し悩ましそうな顔をする。
ちらっと陽乃を見たかと思えば、胸元の手に、ぎゅっと力がこめられた。
歌野「なんとなく、久遠さんのことを感じられる……気がしたから」
陽乃「そう……力のつながりかしら」
歌野「みーちゃんも、同じような感覚があるって言ってたわ。久遠さんがどこにいるのかまでは解らないけど
でも、少し遠くとか近いとか、そういうのは解るって、私と同じように」
- 738 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/16(日) 20:59:41.20 ID:Nw76iqsHo
-
歌野「久遠さんのことを考えた時に、そういうのを感じるわ」
陽乃「……そう」
陽乃は特に意識しなくても、みんなのことを感じ取ることができる
みんなよりも、歌野や水都
もともと諏訪の神々とのつながりを持っていた二人は特に感じやすい
だが、それは神様の力を授かった恩恵で歌野や水都にはないと思っていたが、
そういうわけでもないらしい。
力の繋がりを逆探知している……といえばいいのか、
とにかく、その力の主である陽乃を意識していると、感じ取れるようだ。
歌野「それはそれとしても、心配したわ。無事……だろうとは感じていたけれど
ほら、久遠さんんってば、何があるかわからないから」
陽乃「だから、もう体に問題はないって言ったじゃない」
歌野「でも、万が一があるわ」
陽乃「……」
もとはといえば、消えかけていた神様の力だ。
それが加わったからと言って、
もう全く心配いりません。というのは、歌野的には無理があるらしい
1、散歩くらい、一人でいいでしょう?
2、過保護ね
3、放っておいて
4、感じられるなら、それでいいじゃない。
5、はいはい。悪かったわね
↓2
- 739 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/16(日) 21:06:51.69 ID:cO4PAH8l0
- 5
- 740 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/16(日) 21:07:04.97 ID:VYeHfS11O
- 2
- 741 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/16(日) 21:07:16.71 ID:ZkYemofQO
- 4
- 742 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/16(日) 22:02:19.81 ID:Nw76iqsHo
-
陽乃「過保護ね」
歌野「久遠さんは私たちの全てだから」
結界を維持するための要であり、
歌野に力を与えている根源でもある。
陽乃が死ねば結界は一瞬で食い破られ、
歌野は諏訪を守る力を失い、ただの少女に戻ることになる。
歌野「万が一も何もないようにしたいの。過保護……だとは思うわ。でも、そうしなきゃ」
歌野は、少し申し訳なさそうにしながらも、笑みを浮かべる。
不安の色が、見え隠れしている。
歌野はポジティブな子だと聞いたが、
陽乃の前では、その印象はやや薄い。
歌野「久遠さんから感じる力は、何も問題ないわ。むしろ、強いくらい」
陽乃「なら心配しなくていいじゃない」
歌野「久遠さんってば、意地悪だわ」
歌野はそう言って、困ったような笑い声を漏らす。
歌野「その強い力も、久遠さんがいなければ消え失せちゃうでしょう?」
- 743 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/16(日) 22:33:22.37 ID:Nw76iqsHo
-
歌野「だから、過保護でも許して欲しいわ」
お願い。と、続きそうな歌野の表情
それに対する陽乃の表情は、少し、申し訳なさそうで。
けれど、閉じた歌野の瞼の奥、瞳にその姿は映らない。
歌野達にとって、なくてはならないもの
神様によって、無理矢理に作り替えられたものだ。
陽乃「……そうね」
歌野「でも、安心して? 四国に行けば多少は緩くできると思うから」
諏訪の結界維持という、重大な要素が無くなれば、
健康になった陽のなら、そこまで過保護にならなくてもいいのではと、歌野は思う。
陽乃「諏訪を捨てること、恨まないの?」
歌野「今更だわ。久遠さんには久遠さんの目的と理由があるでしょう?」
歌野は優しく、応えて。
歌野「何より、それがあって、単独で突破できるだけの力があって、一人でさっさと出て行かずにいてくれてるだけ、感謝だわ」
歌野は、そう言った
- 744 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/16(日) 22:35:41.60 ID:Nw76iqsHo
-
↓1コンマ判定 一桁
0,3,8 歌野「なんだかんだ言って、みんなのことを考えてくれてるのよね」
ぞろ目 特殊
- 745 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/16(日) 22:39:20.13 ID:ZkYemofQO
- あ
- 746 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/16(日) 23:10:22.45 ID:Nw76iqsHo
-
歌野「なんだかんだ言って、みんなのことを考えてくれてるのよね」
陽乃「別に、考えてるわけじゃないわ」
陽乃はその好意的な言葉に対して、首を横に振る
陽乃「ここには勇者が3人いる。それを捨てるわけにはいかないだけ」
歌野「3人じゃないわ。5人よ。久遠さんとみーちゃんがいるから」
陽乃「なら、4人ね。そこに私を数える必要はないもの」
陽乃は、笑みを浮かべる。
水都は巫女だが、
彼女を勇者と言いたいのなら、それで構わない。
だが、自分を加える必要はないと。
陽乃「いずれにしろ、それが理由よ。私が、理由なしに他人を助けるなんてないわ。一般の人は、あくまでついでよ」
歌野「……」
陽乃のそれは、謙遜ではない。
拒絶だ。
歌野「ついででも十分よ。おいて行けって、言わないんだから」
- 747 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/16(日) 23:30:36.22 ID:Nw76iqsHo
-
歌野も、杏も球子も
みんなが諏訪の住民たちを一緒に連れ出そうとしているから、仕方がない
そう言われるかもしれないが、だとしてもだ。
歌野「そもそも、お母さんのために向こうに戻りたいって言うんだから、それ以外は必要ないわ」
陽乃「そう」
素っ気ない返し
でも、その口で母親がいるから戻らなければいけないと、言ったのだ。
少なくとも、大切な人がいて
何があっても、そのために行動できる心がある
なのに、今すぐに……とは言わないでいてくれている。
十分だ。
陽乃の態度がどうであれ、それだけで。
歌野「……」
歌野は、小さく笑う。
声に出さずに、口元だけ。
歌野「ねぇ、お夕飯は一緒におそばを食べに行くのはどうかしら。おすすめがあるの」
1、お断りよ
2、別に、いいけど
3、勝手にしたら?
4、何も言わない
↓2
- 748 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/16(日) 23:30:51.24 ID:yiweYbBN0
- 2
- 749 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/16(日) 23:36:26.18 ID:cO4PAH8l0
- 2
- 750 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/16(日) 23:43:36.84 ID:Nw76iqsHo
-
では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
- 751 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/16(日) 23:50:16.97 ID:VYeHfS11O
- 乙
あれだけ突っぱねたり問題起こしたりしても信じてくれるうたのん優し過ぎる…
- 752 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/17(月) 01:13:46.71 ID:HDS9blGeO
- 乙
みんなでお蕎麦イベントか
馴染んできたな
- 753 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/17(月) 22:33:10.37 ID:/RCL9s8jo
- では少しだけ
- 754 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/17(月) 22:36:57.70 ID:/RCL9s8jo
-
陽乃「別に、いいけど」
歌野「えっ、いいの!?」
陽乃「冗談じゃないならね」
歌野の思ってもみなかった反応に、陽乃は顔を顰める。
歌野「冗談なんかじゃないわ! ただ、久遠さんのことだから断ると思ってただけで」
陽乃は、よくよく突っ撥ねる
水都には時々付き合っているのは見かけるが、
巫女として、必要だからという理由がある。
必然じゃない夕食の同伴なんて、9割断られてもおかしくはなかった。
歌野「だから……ふふっ、嬉しいわ」
陽乃「……そっ」
陽乃への弁明のような形になった、困り顔
けれど、そこには笑みもあった。
陽乃はいつも通り素っ気なく返して。
陽乃「で? ほかの人には言ってあるの?」
歌野「これから言うわ。でも、大丈夫よ」
絶対にみんな来てくれる。
歌野はその確信があった
- 755 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/17(月) 23:16:40.87 ID:/RCL9s8jo
-
歌野が思っていた通り、みんなは二つ返事で外食を決定した。
普段は、蕎麦よりもうどんだという球子も、さすがに文句ひとつ言わなかった。
陽乃「お蕎麦しかないって、話だけど」
球子「たまには、悪くない」
陽乃「そう」
杏「私、こんな時間に子供だけで外食するのって、初めてです」
水都「私は……うたのんとだったら、何回もあるよね」
歌野「ふふっ、そうね」
数えられないくらいあった。と、歌野が嬉しそうに言うと
水都も併せて、笑みを浮かべる
球子「タマもないな……普通に中学生だったら、部活に入ったりして、部の仲間と打ち上げみたいなのもあったかもしれないけど」
杏「四国だと……夕方以降は基本的に寄宿舎待機だったもんね」
指示が出ていたわけではない。
けれど、不思議とみんな、そうだった。
それと比べると、諏訪はあまりにも自由だ
- 756 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/17(月) 23:50:52.57 ID:/RCL9s8jo
-
球子「そうだなぁ……千景は、夜出歩くと久遠さんに何されるかわからないわって、言ってたな」
陽乃「へぇ」
球子「陽乃の噂は、結構……なんていうかな」
杏「声が、大きかったからね」
言葉に迷う球子の隣にいる杏が、代わりに言う。
千景は当然のように知っていたし、
球子や杏達だって、悪い話ばかり聞いていた。
もちろん、杏はそれを鵜呑みにはしなかったし、若葉や友奈は慎重だった。
歌野「でも、実際に生活してて久遠さんが残虐な人だって感じることはなかったでしょ?」
球子「残虐かはともかく、油断できないやつだとは思ってた」
水都「……積極的に声をかけたりとか」
球子「しなかったな。避けられてるなーって感じはあったし、タマも避けてた。若葉は、ちょくちょく絡んでたけど」
球子は、あの頃は悪かったなと、困り気味に笑って。
球子「陽乃の分は、タマがおごってやるぞ!」
陽乃「はぁ?」
杏「たまっち先輩……」
球子が奢らなくても、ここは奢りだ。
球子が奢る隙はない
1、向こうに戻ったら、そばは食べにくくなるわよ
2、白鳥さんたちは食べ納めしておくことね
3、別に気にしてないわ。事実、避けていたし
4、今はこうでも、貴女達も、向こうでの私の評判を聞いたら怖くなるわよ。
↓2
- 757 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2021/05/17(月) 23:51:25.96 ID:TtfSK4n00
- 踏み台
- 758 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/17(月) 23:53:10.85 ID:HDS9blGeO
- 4
- 759 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/18(火) 00:12:09.68 ID:OBe6ft3Go
-
陽乃「今はこうでも、貴女達も、向こうでの私の評判を聞いたら怖くなるわよ」
水都「久遠さん自身から、話を聞いてるのにですか?」
陽乃「私が本当のことを語ってるって?」
水都「うん、信じてる」
客観性がないと陽乃は言いたくなったが、
その部分はもう、杏達が埋め合わせしてしまっている。
それはきっと、じゃっかん陽乃寄りの話だろうけれど
でも、それでも水都の返事は変わらないだろう。
「みんな、おまたせ〜」
空気を割くように、お蕎麦が運ばれてくる。
歌野達行きつけのお蕎麦屋さんで
夏場には決まってこれ。となる、ざる蕎麦
天ぷらだったり、とろろだったり
付け合わせは様々だが、基本は一緒だ。
水都「わたし達は、向こうでのうわさがどうであれ……ここで見てきた久遠さんを信じる」
歌野「そうね。自分で見聞きしたものを信じる。それだけよ」
- 760 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/18(火) 00:18:08.83 ID:OBe6ft3Go
-
では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
- 761 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/18(火) 00:23:18.74 ID:PRs0j5HnO
- 乙
仲良しパートが続いててほっこりする
- 762 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/18(火) 00:26:35.19 ID:I1X/wmbNO
- 乙
陽乃さん編になってからこういう日常シーンがすごく貴重に感じる
四国に戻っても平和な場面ができるようになるといいな
- 763 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/18(火) 22:07:30.74 ID:OBe6ft3Go
- では少しだけ
- 764 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/18(火) 22:08:04.50 ID:OBe6ft3Go
-
陽乃「言っておくけれど、私の味方をしたところで、いいことなんて何一つないわよ」
諏訪でなら、何にもないが
向こうで陽乃の味方なんて姿勢を見せていたら、石を投げられるだけで済めばいい方だ
杏達が、実際に被害にあいそうだったし
絶対に無理だったが、陽乃を殺そうとしているような状態だった。
陽乃「今のうちに、あらためておいた方が良いわ」
歌野「……そうねぇ。じゃぁ、ナスの天ぷら上げる」
陽乃「は?」
水都「山芋の天ぷらもどうぞっ」
陽乃「ちょっと……」
陽乃の天ぷらの小皿に、歌野と水都から一つずつ加えられて。
歌野「山芋は違うけど、ナスは私が育てたの。食べて食べて」
考えを改めるべきだといったのに、
そんなこと気にも留めていないかのようだ。
歌野「少なくとも、今の私たちには無理よ。今だって、十分に考えての上なんだから」
そんなことより。と、歌野と水都は「いただきます」と手を合わせる
歌野「食べましょ。伸び……ないけど、新鮮なうちにね」
- 765 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/18(火) 22:51:12.15 ID:OBe6ft3Go
-
球子「それにしても、陽乃って捻くれてるくせに、ちゃんとしてるよなー」
陽乃「貴女とは育ちが違うのよ」
水都「土居さんにも、当たり強いですよね……」
なぜだか、ちょっぴり羨ましそうな物言いの水都
一瞬迷って、手を止める。
水都「でも、確かに久遠さんって色々……なんていうか、丁寧ですよね」
言葉遣いや人付き合いは粗いが
布団を畳んだり、衣類を畳んだり、球子が見ていた食べ方とかだって、そう。
しっかりとしている
水都「やっぱり、巫女として勤めていたからですか?」
陽乃「……そうね」
球子「なのに、野宿だって平気でするんだからすごいよな」
陽乃「野宿くらい、貴女だってするでしょ」
球子「タマがするのはキャンプだ! いや、野宿も……まぁ、悪くはないけど」
杏「……」
賑やかな隣の球子をよそに、杏は悩まし気に手元に視線を落とす。
初めから野宿が平気だったわけではないはずだ。
だから、それをできなければならないくらいの変化があったということだろう。
それが、勇者に選ばれたから。というものであればいいが、きっと、そうではないと杏は考えて。
杏「そういえば、諏訪から四国に戻るときは……どうしますか?」
- 766 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/18(火) 23:04:19.73 ID:OBe6ft3Go
-
歌野「ん〜……車は無理なのよね?」
陽乃「無理ね。徒歩で行くしかないわ」
勇者が一人一台、持ち上げて歩くことはできるかもしれないし、
九尾の手を借りれば、バスくらいどうにかなるかもしれない。
だが、勇者の手をふさぐわけにはいかないし
九尾はさすがに、そんなことに手を貸してはくれないだろう。
水都「まず、何日くらいかかるかを計算して、食料がどのくらい必要かとかも考えて……」
陽乃「自分の食糧は自分で持ってもらうべきね」
球子「でもさ、もてない人もいるんじゃないか?」
陽乃「……足手まといね」
杏「久遠さんっ」
陽乃「事実でしょ」
自力で荷物が持てないとなると、誰かが肩代わりしなければならない。
なにより、自分で荷物を持てない人が一緒だと、それだけ余計に時間がかかる。
自分で荷物を持てないだけならまだいい、まともに歩けない人もいるとしたら……
歌野「……」
1、前から四国行きを決めてた人たちはどうするつもりだったの?
2、そこは、貴女達がどうにかしなさい
3、それも救いたいなら、頑張って
4、自分で代理を探してもらえばいいんじゃない?
↓2
- 767 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/18(火) 23:05:24.09 ID:PRs0j5HnO
- 1
- 768 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/18(火) 23:05:55.22 ID:q4eH1uQKO
- 1
- 769 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/18(火) 23:54:16.82 ID:OBe6ft3Go
-
陽乃「前から四国行きを決めてた人たちはどうするつもりだったの?」
歌野「自力でどうにかできない人は躊躇ってたわ……それもあって、
家財を失いたくないからって言い訳にしてた人も中にはいると思う」
いつ起こるかわからない総攻撃
それの後に移動する予定のため、答えは変わるかもしれないが、
完全に撤退すると言っても、ここに残るつもりの人は少なくないかもしれない。
陽乃「……」
出かけた時に、声をかけてきた人
ただ見かけただけの人
普通に歩けてはいるが、重い荷物を背負って四国までの道のり……と考えると、
難しい人が多かったように思う
水都「何か気になりますか?」
陽乃「別に……自分でどうにもならないって諦めてるならそれでいい
私は助けるつもりなんてないし、予定になったら気にせずここを離れるわ」
歌野「久遠さん……」
陽乃「冗談では言ってないわよ? 私には他人にかまけてる余裕なんてないんだから」
- 770 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/18(火) 23:57:06.89 ID:OBe6ft3Go
-
↓1コンマ判定 一桁
0,3 杏「もし、助けてくださいって言われてもですか?」
5,8 水都「本当に、見捨てますか?」
- 771 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/18(火) 23:58:09.34 ID:q4eH1uQKO
- あ
- 772 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/19(水) 00:28:32.54 ID:HyTR2RJOo
- では途中ですが、ここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
- 773 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/19(水) 00:33:14.71 ID:z0xjt9M3O
- 乙
不穏な空気に
- 774 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/19(水) 00:48:07.48 ID:HafthrRnO
- 乙
住人の全員避難はかなり厳しいか…
諏訪の神様の力でどうにかならないかな
- 775 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/19(水) 23:52:04.11 ID:HyTR2RJOo
- すみませんが本日はお休みとさせていただきます
再開は明日、可能であれば通常時間から
- 776 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/20(木) 00:28:18.19 ID:hO3EqLW3O
- 乙
- 777 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/20(木) 21:20:54.10 ID:x54E8tI2o
- では少しだけ
- 778 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/20(木) 21:21:42.07 ID:x54E8tI2o
-
球子「それでも、本当に見捨てることなんて出来ないだろ」
陽乃「母親以外を置いてきた私が、赤の他人を見捨てることに抵抗がないとでも?」
陽乃は球子を見ずに答える。
本当は置いてきたわけじゃない。
母親を救えた時点で、そこにはもう、母親しか残っていなかっただけ。
置いていったんじゃない、置いていかれたのだ。
陽乃「平気よ。自分の手で殺すよりは楽だわ」
杏「……っ」
実際に陽乃は、人を殺したことがある。
球子と杏そして、杏の両親
その他多くの人たちの前で、一人の命を奪った。
あれは、明らかに過剰だった。やりすぎだった。
……けれど。
武器をもって立ち向かってきた人への、抵抗
その結果だった。
殺したくて、殺したわけではないはずだ
杏「でも、久遠さんの意見は一理あります。正直な話、他人に他人の分を背負って欲しいというのは状況的に難しいですから」
- 779 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/20(木) 21:44:38.76 ID:x54E8tI2o
-
球子「杏まで」
杏「でも、現実的に考えるとそうなると思う。もちろん、私だってみんなが助かるようにしたい。けど……」
杏は、竹ざるの隅に残る細かい蕎麦を見つめる。
多くを救っても、どうしても救いきれないものはある。
それが絶対に救えないというわけではないが、
このひとかけらのためにもう一度手を動かさないといけないように
もう一度、諏訪と四国を行き来しなければならないのではないだろうか。
だとしたら、それはあまりにも非現実的だ。
理想を語れなくなったら、勇者としては終わっている。杏は、少しだけそう考えているけれど、
小説の物語ではないのだ
勝利が約束された主人公ではないのだ。
現実で、非現実的な理想を語り続けるのは容易なことではない。
杏「どうしても、見切りをつける必要があると思う」
水都「……」
歌野「現実を見れば、確かにそうなるわ」
出来る限り諦めたくないけど、と、歌野は小さく付け加える。
- 780 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/20(木) 22:11:27.75 ID:x54E8tI2o
-
球子「歌野もあきらめるのか?」
歌野「私一人残って守れるならいいけど、でも、そうもいかないじゃない?」
歌野一人残っても、
陽乃が離れれば、諏訪は終わりだ
だからと言って、諏訪に残ってくれ。なんて強要も歌野はできない。
いや、しようとはしたが、
向こうに大切な人がいる以上、やはり、できない。
杏「久遠さんが離れると、結界も、白鳥さんの力も……」
球子「いや、歌野が残る以外にも何か……ほら、どうにかして、動けない人連れていくとか」
陽乃「貴女がバスでも背負って行けばいいのよ」
球子「無理言うな!」
杏「どうだろう? バーテックスを投げ飛ばしたりできるなら、バスも……無理かな?」
水都「体力的に無理……じゃないかな」
1、私を説得するって言う手もあるわよ
2、諦めなさい。諦めてる人なんて
3、恨んでもいいのよ? 私のせいだもの
4、何も言わない
↓2
- 781 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/20(木) 22:13:00.88 ID:hfhZGk01O
- 1
- 782 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/20(木) 22:13:41.69 ID:q4wF335x0
- 1
- 783 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/20(木) 22:34:01.95 ID:x54E8tI2o
-
陽乃「私を説得するっていう手もあるわよ」
水都「説得、されてくれるんですか?」
陽乃「話は聞いてもいいわ。応えるかは別だけど」
球子「うわっ」
聞く気ないな。と、あからさまに嫌そうな顔をする球子から顔を背ける
向こうには母がいる。
簡単にそれを覆す気はないし、
何を言われようがされようが、ここを出て行くつもりだ。
陽乃「説得しないの?」
杏「久遠さんのお母さんが向こうにいるんですよね? なのに、ここにいてくださいなんて言えません」
向こうに、その母の支えとなってくれる人物がいるなら、少しは話も変わってくる。
杏の母親などは、それがいる。あるいは、ある。
だから、顔を合わせられないことは少し不安にもなるけれど、大丈夫だと思っている。
けれど陽乃の母には、それがない。
そして、陽乃は自分以外の人々を信用していない。
それなのに、目も声も何も届かない距離の場所に残したままなんて、無理だ。
- 784 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/20(木) 23:02:53.77 ID:x54E8tI2o
-
歌野「じゃぁ、久遠さんにここにいる間に恋人でも出来たらどうなる?」
陽乃「はぁ? 出来るわけないじゃない」
向こうに比べれば、諏訪の人々からの印象はいいものだ。
それが異性的な好意であるのかは別の話だが、
もし、中にそんな好意を持ってくれている人がいたとしても、
陽乃は、その人を信用できないし愛せない。
陽乃「無理よ。私には」
球子「わかんないだろ、好きになってくれる人いるかもしれないぞ?」
陽乃「そもそも、恋愛なんかにうつつを抜かしている場合じゃないでしょ
どこぞの男の子が、ピンチに現れてあとは任せろ。なんて言ってくれたって私は恋もできないわ」
杏「現実ですからね」
以前は、自衛隊の人たちがバーテックスに対抗しようとしてくれていたが、
そういったものではほんの少しの足止めになるかどうかという程度。
格好良く守ってくれるような何かなんて存在しない。
なにより、勇者は今のところ数人で、それもみんな女の子だ
陽乃「いずれにせよ、私には……無理よ」
- 785 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/20(木) 23:19:53.92 ID:x54E8tI2o
-
水都「でも、いつかまた、そういう余裕がある世界を取り戻したい……かな」
歌野「あら。だれか気になる人でもいるの?」
水都「そういう意味で気になってる人はいないけど、でも、そう思わない?」
一般の人々もそうだが、
何より、勇者に選ばれた少女たちが普通に恋をできるような世界
それはきっと、間違いなく、平穏な世界だ
水都「うたのん……は、そっか。野菜か……」
歌野「ワッツ……こほんっ。解らないでしょ?」
球子「いいや、何か想像つかない」
杏「たまっち先輩だって、想像つかないけど」
球子「なんだとぉっ!」
さっきまでの、真剣な話がそっちのけで始まるどうでもいい話。
陽乃はそれに耳を傾けることなく、増えたせいで残っていた天ぷらをつまむ。
陽乃「……ばかみたい」
陽乃は、たとえ平穏な日常が戻ってきたとしても、無理だと思う
- 786 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/20(木) 23:23:22.98 ID:x54E8tI2o
-
↓1コンマ判定 一桁
0,3,8 水都「久遠さんは、どんな男の子が好みなんですか?」
ぞろ目 特殊
※そのほか交流終了
- 787 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/20(木) 23:25:21.11 ID:hfhZGk01O
- あ
- 788 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/20(木) 23:40:30.62 ID:x54E8tI2o
-
では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
- 789 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/20(木) 23:45:35.81 ID:hO3EqLW3O
- 乙
相変わらずみーちゃんコンマ強いな
- 790 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/20(木) 23:46:45.87 ID:hfhZGk01O
- 乙
そういえばここまでシリアス続きで恋バナのこの字もしてなかったな
そしてゾロ目補正でどんな話題になるのだろうか
- 791 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/21(金) 22:10:31.80 ID:eLxkLxlio
-
では少しだけ
- 792 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/21(金) 22:11:13.06 ID:eLxkLxlio
-
水都「もしも勇者が、うたのん達みたいな女の子じゃなくて、物語によくあるような男の子だったら
そうしたら、何か、もっといい方に変わってたのかな」
陽乃「私みたいな面倒くさいのはいないかもって?」
水都「そ、そうじゃなくて……」
困り顔の水都は、ちいさくため息をつく。
面倒くさいのは、否定できない。
陽乃からしてみれば水都達も面倒な人たちに思えて仕方がないのだろうから
おあいこ……だなんて、心に思って。
水都「もっと、救いがあったのかなって」
歌野「女の子から男の子に変わったとして何かあるかしら?」
杏「意志とか、力そのものとかは違うかもしれません」
熱血な人とか、正義感の強い人とか、
逆に血気盛んだったり……と、杏は候補を引き出す。
杏「久遠さんみたいに事情がなくても、アウトローな人はいたかも」
球子「逆に悪用するやつとか?」
陽乃「そんなの、男女関係ないじゃない」
九尾「そもそも、主様は神樹とは関係がないからのう。むしろ、討伐対象として付け狙われておったかもしれぬぞ」
陽乃「は?」
水都「えっ!?」
- 793 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/21(金) 23:00:31.57 ID:eLxkLxlio
-
5人で座っているため、
蕎麦屋の中でも広い座敷を利用していた陽乃達。
その、余っていたはずの場所に座っている金色の長い髪の女性
真横にいた水都でさえ、それがいつ来たのかもわからずに、
思わず声を上げて、歌野の方にぐっと身を寄せてしまう。
歌野「……だれ?」
九尾「ふむ……妾にも蕎麦を頼む」
陽乃「私はお金ないからね」
九尾「窮乏じゃな……まったく」
ため息をついた女性――九尾は、歌野の質問に答えもせずに、
陽乃の小皿の上に残っていた、山芋の天ぷらを指でつまんでかじる。
球子「……陽乃の知り合いか?」
杏「もしかして、九尾さん?」
九尾「うむ。さっきの話じゃが、主様はまた別の存在じゃからな。
たとえ、勇者に男が選ばれようと主様が妾らの力を与えられることに変わりはなかろう」
それは、陽乃が拒絶でもしない限り変わらなかっただろう。と、九尾は言う。
九尾「なにより――あの場に、たどり着ける勇者はおらぬ」
- 794 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/21(金) 23:36:43.42 ID:eLxkLxlio
-
九尾の言葉に、水都がびくっと体を揺らす。
九尾「それに、変えられぬものを仮定する意味などなかろう」
水都「そう、ですけど……」
球子「そんないい方しなくたっていいじゃないか」
むっとして、反論する球子を九尾は横目に見て、
口元だけで、ふっと笑う
球子「何で笑うんだっ」
九尾「得られぬものを望んで何の意味がある? まだ、小娘が勇者として戦えるようになりたいと望む方がよかろうに
変えられぬ過去より、いかようにでもできる未来をどうにかしようと話すのが普通じゃろう?」
陽乃「そうね」
杏「なら、藤森さんが勇者として戦うことも可能だと?」
九尾「ふむ……」
陽乃「食べたければどうぞ」
陽乃から手渡された皿を受け取って、
九尾はまた一つ、天ぷらをつまんでかじる。
九尾「巫女になれたならば、勇者になることも不可能とは言えまい。無論、容易ではないが
主様が諏訪の神の代行者ならば、少しくらい、その遊びもできるじゃろうな」
- 795 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/21(金) 23:55:49.71 ID:eLxkLxlio
-
水都「遊び……でも、可能なんですか?」
陽乃「どうせ、死ぬやつでしょう?」
九尾「くふふっ」
ひなたがそうであるように、
許容量を超えた力の譲渡は、最悪死に至る。
九尾の力ほどではないにしても、
普通の力だって、普通の巫女である水都二はきっと、耐えられない
耐えられる可能性もないとは言えないが、試すわけにはいかないだろう。
九尾「そうじゃな。間違いなく死ぬな」
歌野「だったら、それも無駄な話じゃないかしら」
九尾「一度きりで死ぬとしても、その瞬間に役立つならばそれでよかろう? 出来もしない過去の変化を望むよりはのう?」
球子「二人そろって……」
意地の悪い奴だなとでもいうかのような球子に
それでも、九尾は笑って。
九尾「それと同じように、主様の説得も無意味じゃぞ」
水都「……」
九尾「無駄な時を過ごさぬようにと、心優しい妾からの助言じゃ」
- 796 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/22(土) 00:16:24.36 ID:6rcIRENLo
-
心優しくない九尾の笑み
だが、実際に無意味なことには変わりがなく、
それが、もし仮に可能であっても途方もないことだとわかっているみんなは、
九尾の意地の悪い話に、強く言い返したりはしなかった。
向こうに、大切な人がいる。
それを、捨てろというなんて、誰にもできることではないからだ。
歌野「それは、わかってるわ。大丈夫よ」
水都のこともあってか、歌野の声はやや冷たい。
九尾「ならば、なすべきことをなすのが先決じゃろうて」
陽乃「……貴女、何のために出てきたのよ」
前触れもなく、
意地悪いことを言って。
ただ、陽乃が余していた天ぷらを食べに来たわけではないはずだ
九尾「主様、覚悟はしておく方がよいぞ。時間は、なさそうじゃ」
陽乃「総攻撃が、起きるの?」
九尾「いいや、起きぬやもしれぬ……起こるとしたら、向こうじゃな」
そう答えた九尾は、指をぺろりと舐める
九尾「あやがあるか……。総攻撃ほどではなかろうが、間違いなく向こうに何か起こる」
1、冗談や嘘じゃないのよね?
2、どうして?
3、なんでそう思ったの?
4、今すぐ、帰るわ
↓1
- 797 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/22(土) 00:17:34.98 ID:jTB7PFH8O
- 2
- 798 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/22(土) 00:18:36.72 ID:TdYngnZAO
- 3
- 799 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/22(土) 00:23:09.15 ID:6rcIRENLo
-
では短いですがここまでとさせていただきます
明日は、可能であればお昼ごろから
- 800 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/22(土) 00:25:05.30 ID:TdYngnZAO
- 乙
若葉と千景がピンチだなこれ、勇者二人しかいないし
考えようによっては向こうに意識が向いてる今こそみんな連れて移動する好機なのかも
- 801 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/22(土) 00:28:25.79 ID:jTB7PFH8O
- 乙
珍しく人間体の九尾がみんなの前に出てきたと思ったら不穏な情報が…
そろそろ四国に戻らないとマズいか?
- 802 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/22(土) 20:33:46.95 ID:6rcIRENLo
- では少しだけ
- 803 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/22(土) 20:34:23.61 ID:6rcIRENLo
-
陽乃「どうして?」
九尾「それは無論、主様がここにいるからじゃろうな。告げたろう?」
陽乃が来たせいかおかげか、
諏訪の結界はいぜんよりも強固なものになったという話だった。
それがきっかけとなり、
諏訪には手を出さない……出せなくなった。という可能性があるというのは九尾も言っていたことだ。
あくまで可能性だったが、現実味を帯びてきたからこそ九尾は姿を見せたのだろう。
杏「じゃぁ、今も……」
歌野「少なくとも今は無事なはずよ。いくら、久遠さんに不信感を抱いているとはいえ、そういう情報を伝えてこないとは思えないから」
水都「うん。通信の状況はあんまりよくないけど、間違いないと思う」
だが、今は。と、歌野と水都は神妙な面持ちで目を細める。
水都「通信はともかく、内容は"異常なし"だったんです」
歌野「乃木さんほど多くは語らないというか、乃木さん以上に淡白で義務的、まるでコールセンターにつなぐ機械音声を相手にしているみたいで」
うたのん。と、水都に突かれて歌野の愚痴が止まる
九尾「特に、外に警戒に出ているわけでもなかろうからのう」
- 804 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/22(土) 21:12:25.08 ID:6rcIRENLo
-
杏「四国が襲撃されるまでの猶予は解りませんか?」
九尾「向こうにつながっているならばともかく、今の状況では不可能じゃな」
素っ気ない返しをする九尾は、そもそもまだ絶対ではないと続ける。
九尾「じゃが、襲撃が行われる可能性は低くはなかろうて」
球子「なら、戻るしかないんじゃないか?」
九尾「ふむ……人間を連れてかや? それではつく前に襲撃されるぞ?
なにより、連れ出した人間の幾人かは命を落とすことになる。それでも戻るかや?」
九尾は、にやりと嫌な笑みを浮かべる
悪だくみをしているかのような、ほほ笑み。
間違いなく面白がっている。
その目は、陽乃に向いていた。
陽乃「……私を見ないでよ」
九尾「主様じゃろう。鍵は」
陽乃は四国に戻りたいと考えていた。
一般の人々を連れ帰るのはあくまでついでという考えで
今回、一般人を連れ帰る場合、四国が襲撃されるまでには間に合わない可能性が高い。
だが、陽乃が一人で出て行けば諏訪の結界が消えてしまう。
つまり、
四国を諦めるか、諏訪を諦めるか。陽乃次第ということになる。
しかし、諏訪を諦める場合は、そこに住む人々を諦めるということでもある
- 805 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/22(土) 21:40:41.62 ID:6rcIRENLo
-
球子「タマ達だけで戻るっていうのはどうなんだ?」
杏「戻れる、かな……」
歌野「久遠さんが離れられないなら、私も離れられないわ」
水都「人数的には2人ずつでちょうどいいけど……でも」
外は今、バーテックスが溢れている。
総攻撃を行うために準備されてきた、かなりの数が。
その一部が四国の方に向かったとしても、たった二人でどうにかできる数ではないだろう。
陽乃「……」
四国が落とされたら、疎ましい人々を一掃できる。
だが、あそこには母がいる。
放っておくことなんて出来るわけがない。
99が不快でも、1がそうではないから救わないわけにはいかない。
球子「陽乃、タマ達に任せてくれないか?」
杏「たまっち先輩、戻るの?」
球子「戻るしかないだろ……どう考えても」
向こうには友奈、若葉、千景の三人がいる。
しかし、いきなりの大規模な襲撃に耐えられる保証はない。
球子「こう、前と後ろから……バンッって感じでバーテックスを叩く」
球子は強く両手を叩き合わせる。
1、任せられるわけないじゃない
2、諏訪を諦めるわ
3、少し、時間を頂戴
4、2人でどうにかなるとは思えないわ
5、諏訪周辺なら、私が潰してあげてもいいわ
↓2
- 806 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/22(土) 21:44:23.67 ID:tO6yh9Ip0
- 5
- 807 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/22(土) 21:44:24.36 ID:TdYngnZAO
- 3
- 808 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/22(土) 22:33:07.52 ID:6rcIRENLo
-
陽乃「少し、時間を頂戴」
九尾「時間はないと思うが」
陽乃「……分かってるわよ」
悩む時間を作れば作るだけ、
向こうに戻るのが遅れ、そして、その分だけ被害が拡大する可能性がある
九尾の意地悪な忠告なんて必要ない。
解っている。
自分の都合のみを考えるなら、
迷わず諏訪を捨てていくべきだと。
九尾がいやらしいことを言ってくるのは、
陽乃が普段はそんな姿勢であるくせに、ここで躊躇っているからであることも。
陽乃「すぐに答えは出すわ。私が決めるしかないんだから」
歌野「……そうね。でも一人で悩まなくてもいいのよ? 私たちだって無関係じゃないんだから」
陽乃「貴女達の答えなんて、聞くまでもないわ」
杏と球子を信じろとか
あるいは、向こうに残した勇者たちを信じろだとか
そんな "信じて" だろうと陽乃は首を振る
陽乃「聞くだけ無駄だわ」
- 809 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/22(土) 22:49:30.27 ID:6rcIRENLo
-
球子は念押ししなくてもみたいな表情をしてはいるが、何も言わない。
杏も、歌野も、水都も
みんな、口を閉ざしている。
説得を聞かないのとは話が違う。
でも、確かに、無駄だろうとみんなわかっていた。
みんな、信じて欲しいからだ
陽乃以外の勇者を、人々を。
それが難しいことをわかっていながら、それでも。
歌野「じゃぁ、そろそろお開きにしましょうか」
歌野はテーブルの上のお皿がきれいになっているのを見て、笑顔で言う。
食べている途中でも、今のこの話は中断すべきだ
歌野「久遠さん、答えはちゃんとみんなに教えて欲しいわ」
一人で行くなんて言えば、確実に反対されるし止められる
だから、陽乃的には何も言わない方が楽といえば楽なのだが。
陽乃「……それも、考えておくわ」
陽乃はそう答えて、まだ手に持っていた箸をおく。
陽乃「ご馳走様」
- 810 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/22(土) 22:54:18.45 ID:6rcIRENLo
- ↓1コンマ判定 一桁
5,8 水都「久遠さん、食後のお散歩はどうですか?」
2,9 杏「久遠さん、少し時間を貰えませんか?」
※その他、交流終了
- 811 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/22(土) 22:55:44.97 ID:wQiJwJ5B0
- あー
- 812 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/22(土) 22:55:59.78 ID:TdYngnZAO
- あ
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