【安価】クロエ「リリウム魔法学校へ! これで最後!」【百合】

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103 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/18(日) 01:08:05.29 ID:zB+guq2r0
そういや魔法の訓練中に希少鉱石が落ちてきて大金手に入れてたな
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/18(日) 09:02:56.34 ID:IvIrCcA3O
アフターのリクエストしたいけどSSのモチベが落ちてるなら無理はしないで欲しい
105 : ◆ZOSRNJGVq. [saga]:2021/04/18(日) 10:03:14.77 ID:zhUKqJNSo
>>104
このスレはしっかり書ききるつもりです!
モチベもまだまだありますし、まだ900レス近く残ってますので、どんどんリクエストいただければ嬉しいです

今はソフィアとリーリアのアフターを書いているところです
106 : ◆ZOSRNJGVq. [saga]:2021/04/18(日) 22:16:16.41 ID:zhUKqJNSo
エピソードアフター
  ソフィアとリーリア


魔王との戦いが終わって数日。
私は検査の結果異常なしということで病院から退院を言い渡された。
この後は魔法庁の人から魔法を受けた際の状況について聞き取りがあるらしく、しばらくは休まらない日々が続くそうだ。

「仕方ないこととは言え憂鬱ですね……」

小人に淹れてもらった温かいコーヒーを飲みつつ、少し愚痴をこぼす。
そうして束の間の休息を取っていると、玄関から無機質なノックの音が響いてきた。

「……来ましたか」

立ち上がり、迎え入れるために玄関へ向かう。
ぎいと扉を開けたそこにはスーツを着た役人が……。

「やっほ♡」

「……」

いなかった。
代わりに、私を悪魔へと墜とした一番の原因がそこにいた。

「リーリア……さん」

なぜここに、と言おうとした私の言葉を遮ってリーリアさんが言う。

「魔界に送り返された後、闇が魔界の空気に霧散したおかげで脱出できてね。あなたがどう過ごしてるか興味あったから向こうからゲート開いて来ちゃったの」

「……とりあえず上がってください」

正直非常に困惑はしていた。だが突っぱねるのも違う気がして、私は屋敷へと彼女を上げることにした。

「ふーん、ここがあなたのお家なのねえ」

きょろきょろと遠慮なく見回すリーリアさん。
応接間にたどり着いても、興味深そうな視線は留まらない。

「どうやってここを知ったのですか?」

「あの病院から出てくのが見えたから尾けてきたの」

「ああ……」

たしかにあの病院には一緒に入院していた。
といってもほんの数時間、悪魔の軍団が撤退するまでだが。
とにもかくにも、そこに当たりをつけて張っていた上で尾行してきたというわけだ。

「せっかく来たのですし、コーヒーでも飲みますか?」

小人を呼び出し、コーヒーの用意を告げる。
たたたっと走り去った小人を見届けて、リーリアさんに向き直る。
107 : ◆ZOSRNJGVq. [saga]:2021/04/18(日) 22:16:48.53 ID:zhUKqJNSo
「コーヒーはいいわ」

いつ立ち上がったのか、眼前にリーリアさんが私を見下ろすように立っている。

「では紅茶を……」

言い終える前に唇を塞がれる。
暖かくて、ぷるりとした唇。

「ん……」

それだけでなく、ぬるりとしたものが入り込んでくる。
それが舌だと気づくのに時間はかからなかったが、反撃の力はその時にはもうなくなっていた。
少し力を込められただけで、力の抜けた腰では体を支えられずにソファーに倒れ込んでしまう。

「れろぉ、ちゅぷ……」

「ん、く、はぁ……っ。……な、何をするんですか……!」

私には珍しく声が震える。
ソファーに押し倒され、サキュバスに馬乗りになられる。
まさかまた悪魔化をされてしまうのか。

「何って、また気持ちよくしてあげようと思って」

その言葉と同時に腰を撫でられる。
それだけで下腹部に熱がこもるのが分かった。

「な、なんで……」

「え? 感じてるあなた可愛かったし、あれだけではいサヨナラは寂しいじゃない」

……恐らく彼女は本心から言っているのだろう。
利害も損益も関係なく性に忠実。それがサキュバスという種族だ。

「だから……ね?♡」

するりと服の下から手が潜り込んでくる。
すでに小さな胸の突起は期待に膨らみ、痛いほど固くなっていた。

「んうぅっ!!」

下着の下まで潜り込んだ手が先端を摘みあげる。
びくびくと反応してしまい、きゅんとお腹がうずく感触があった。

「ほんといい反応。たくさん触ったもんね」

彼女の言うとおり、体が指の動きを覚えているのだろう。
悪魔化される前、そして悪魔化されてからの「ご褒美」……。心当たりは大いにある。
108 : ◆ZOSRNJGVq. [saga]:2021/04/18(日) 22:17:36.68 ID:zhUKqJNSo
ころんとうつ伏せに寝かされ、背中をまくりあげられる。

「れろぉお……っ」

「〜〜〜っ!!?」

舌で背骨の上をなぞられ、得も言われぬ感覚に背筋を反らす。

「あはっ♡ かーわいい♡」

次は腰を指でなぞられ、腰が震えてしまう。

「お、凄いことになってるよ」

持ち上がったお尻を押さえつけ、後ろからリーリアさんが喋る。

「もうとろっとろ。パンツまでぐっしょり♡」

「ひっ、ぁあっ!♡」

指が秘裂をショーツの上からなぞりあげ、ぐじゅりとした感触とともに大きな快感が弾ける。
太ももに液体が流れる感覚。
ショーツは布の役目をなさず、溢れる液体を送り出すだけになっている。

「はいご開帳ー。んー、ピンクできれいねえ。ちゅっ」

「ひゃあっ!」

つんのめるようにうつぶせで寝そべっているため、リーリアさんの姿が見えず触られるタイミングが分からない。

「ぐちゅっ、れろぉ、れろ、ちゅぱっ、れろれろれろ……」

「ひゃっ、あっ、んうっ! あっあっあっ……!」

快感が溜まっていく。
爆ぜようと体が必死に訴えている。
ソファーに置いてあるクッションを掴む手まで震えている。

「いっひゃえ♡」

ずぷんと舌がねじ込まれてーー。

「あっ……! ああぁぁあああああああああっっっ!!!♡♡♡」

視界が真っ白に染まった。

ーーーーー

ーーー

109 : ◆ZOSRNJGVq. [saga]:2021/04/18(日) 22:18:04.56 ID:zhUKqJNSo
「ぁっ、んぅ……♡」

「あはっ、いいよ、もっと動いて……♡」

私達はあれからも交わっていた。
互いの足を交差させ、秘核同士を擦り合わせる。
くちゅ、にちゅと粘ついた水音が響く。

「あっ、ああっ……!」

きゅううとお腹が震える。
小さな絶頂が何度も何度も体を襲い、もはやほんの少しの快感でさえ全身が震えるほどになってしまった。

「ん、あたしも……もう……っ♡」

リーリアさんもぶるりと体を震わせる。
互いに絶頂に達しても行為は終わらない。

まだ動く元気があるらしいリーリアさんが、私の頭をまたいで四つん這いになる。
互いの秘所を眺める格好だ。

「ソフィアのここ、もう開きっぱなしね」

秘裂を割り開き、白い本気汁を指で掬って見せつけるように舐めとる。
それだけでぞくりとした快感が走り抜けてしまう。

「あは、今ひくってしたわよ。興奮しちゃった?」

「……はい」

「ほんと正直者ねえ。そういうところ大好きよ」

赤い舌が伸びて、秘裂にたどり着く。
負けじと私も顔を寄せ、リーリアさんのそこに吸い付いた。

「んっ、そう、じゅる……もっと舐めて……っ」

「れろ、んんぅ……! れろ、ちゅぷ、れろぉ……!」

私は下から顔を持ち上げているが、少しでも顔を近づけたくリーリアさんの腰を掴んで引き下ろそうとする。
しかし掴んだそこはむちりとしたお尻で、やわやわと手が勝手に動いてしまう。

「ひゃっ! もう、お尻好きなの?」

丸い大きな桃尻が顔面に押し付けられる。
ゼロ距離で雌臭を浴び、トロンと脳がとろけてしまいそうだ。

「りーりあさん、れろ、れろぉ……!」

「あっ、すごい、奥まで……! ちゅむっ、れろれろっ、ぢゅううっ!♡」

ぎゅぷぎゅぷと舌がねじ切られそうなほどの膣圧と、むちりとした尻肉の感触。
そして際限なく積もっていく秘部への快感が混ざり合い、まるで稲妻魔法が背骨を貫通したかのような衝撃となって私を襲った。

「んぶぅ、ん、ひううぅぅゔゔううううっっっ!!!♡♡♡」

「あっ、ん……っ! ぁ、ひぁぁぁあああああああっっ!!!♡♡♡」

びぐんびぐんと体が痙攣する。
浮いているのか、沈んでいるのかも分からない浮遊感。
そんな快感の奔流に飲まれて、そのまま私は意識を失った。

ーーーーー

ーーー

110 : ◆ZOSRNJGVq. [saga]:2021/04/18(日) 22:18:31.65 ID:zhUKqJNSo
起きると、どこから持ってきたのか私の上に毛布がかけられていた。
リーリアさんは部屋の隅で闇の小人にちょっかいを出して遊んでいる。

「……リーリアさん」

「あ、起きた?」

声をかけるとパッとこちらを振り返り、すぐに寄ってきてくれた。

「悪魔化もしてないのに無理させちゃったかな。人間相手はほんと久しぶりでね」

「今度はもう少し手加減してくれると助かります」

私がそう言うと、にーっと広角をあげるリーリアさん。

「『今度』……ねえ?」

「……!!」

ニマニマと顔を寄せるリーリアさん。
それに私は顔を赤くして背けることしかできない。

「そっかそっかー。ソフィアから今度のお話をされちゃったからにはまた来ないとねー?」

「……うるさいです」

「あ、照れてる。かわいー♡」

ぷいと背中を向け、すっかり冷めたコーヒーをすする。
こんなにからかわれても、次に会いに来てくれるのはいつだろうかと気になってしまうのはなぜなのか。
それを知るにはまだまだ私達はお互いのことを知らなさすぎる。

「……リーリアさん」

「ん?」

「人間に手を出さないなら……私と友達になりませんか」

少し間があって。
背中に柔らかい膨らみを二つ感じる。

「もちろんだよ! よろしくね、ソフィア!」

悪魔化をした側とされた側というあまりにも奇妙な出会い。
それは新しい友人という形を取ることになった。
この関係が今後どうなるかは全く分からないが、少しでもいい関係を築けたら良いなと思わずにいられなかった。
111 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/18(日) 22:41:10.21 ID:6Jl7V6xmO
スキアのその後とか?ゼーレみたいにリリウムに1年通うのかな
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/19(月) 20:20:34.20 ID:Ex3cLvjW0
助かったソフィアが悪魔(リーリア)と仲良くなっていた、ということに対するメルトル親子の反応が気になります
113 : ◆ZOSRNJGVq. [saga]:2021/04/20(火) 20:43:19.08 ID:SRy4N5Peo
ソフィアが住む城ーー


ミリア「やっほー!」


エルク「お久しぶりです、ソフィアさん」


ソフィア「お久しぶりです、ミリア・メルトル、エルク・メルトル」


ミリア「このやりとりも久しぶりだなー。ミリア、エルクって呼び捨てでお願いするよ」


ソフィア「了解です、ミリア、エルク」


リーリア「おーいソフィアー。この子コーヒー淹れてくれないんだけどー」ヒョコッ


ミリアエルク「  」


ソフィア「その子はコーヒーを淹れる子ではありません。その子は本を取ってきてくれる子です」


リーリア「見分けつかないよー……。お、お客さん?」


ミリア「お前……! ソフィアを連れてった奴じゃないか!」バッ!


エルク「ソフィアさん、こちらに。……魔界に送還します」ゴオッ


リーリア「ちょ、ちょっと待ってよー!」


ソフィア「お待ちください。この方は敵ではありません」


ミリア「敵だよ! 樹を植えて、ソフィアを悪魔化させて……!」


ソフィア「私はゼーレさんの魔法に貫かれ、こうして人間に戻ることができました。病院や魔法庁での検査もすべて問題なし。完璧に元通りです」

ソフィア「そして、この方は私が魔界にいる時にお世話(意味深)をしてくださった方です。敵意もありませんし、数日前からここにいますが何か危険な行動を取ることもありませんでした。よって友人として接しています」
114 : ◆ZOSRNJGVq. [saga]:2021/04/20(火) 20:43:46.42 ID:SRy4N5Peo
ミリア「……本当なの?」ズオ…


ミリアの闇『確かに悪意の闇は感じないよ。少なくとも今すぐ何かしようとはしてないみたい』


ミリア「……分かった」


エルク「ママ……お母さん……」


リーリア「さ、さすがソフィア……冷静に解決したわね」


ソフィア「私はリーリアさんとも、ミリアやエルクとも今後とも仲良くしたいです。……ダメですか?」


ミリア「……分かったってば、もう」

ミリア「ただし! 今後は私達が率先して監視するから! もし何かしたら私の闇の中に放り込むからね!」ズオッ!


リーリア「ひっ……! や、闇の中はもういや! それだけはやめて!」


エルク「……すごくうろたえてますね」


ソフィア「闇の中に閉じ込められたことがあって、その時はもう出られないかと思ってたそうです。悪魔ではありますが、闇が若干トラウマみたいですね」


エルク「トラウマ……ですか。私の魔法も相性がいいですね?」ニコリ


リーリア「あ、あなたの魔法って……?」


ソフィア「人のトラウマを強制的に呼び起こす闇魔法です」


リーリア「!!」ガタガタブルブル


ミリア「ソフィアに何かしたら……」


エルク「分かってますね……?」ニッコリ


リーリア「は、はいっ!!」ビシッ!


ソフィア(……一件落着、でしょうか)ホッ
115 : ◆ZOSRNJGVq. [saga]:2021/04/20(火) 20:44:30.14 ID:SRy4N5Peo
すごく短いですが、リーリアとメルトル親子の再会編でした
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/20(火) 20:53:18.86 ID:wlAWI+XaO
ゼーレのところはヴィーネに脳内変換かな
117 : ◆ZOSRNJGVq. [saga]:2021/04/20(火) 20:59:31.24 ID:SRy4N5Peo
>>116
その通りです
ミスしてすみません!
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/20(火) 21:17:17.15 ID:HhbAmwxm0
ますますチート化したヴィーネや茜の洗礼を受けるプロ入り組お願いします
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2021/04/20(火) 21:51:02.63 ID:pLoP9uC2o
私は御桜が見たいですね
シチュエーションが思い付かないですが
どうか彼女主役のエピソードを……!
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/20(火) 22:15:54.70 ID:uDTNXcnHO
ローラの魔獣四匹がベースのエピソードとか見たいなぁ
シチュは魔獣と会社経営の勉強の毎日で疲れているご主人(ローラ)を思いっきり癒すためにエアロ・きゅーちゃん・ユーニ・ミトラの四匹が協力するとかで、四匹間の会話だけ翻訳が入るみたいな
121 : ◆ZOSRNJGVq. [saga]:2021/04/21(水) 23:05:57.85 ID:Bx4ex96Eo
今日は更新なしです、すみません!
122 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/21(水) 23:17:00.57 ID:XQ4N4lCwo
(´・ω・`)
123 : ◆ZOSRNJGVq. [saga]:2021/04/22(木) 19:42:23.15 ID:iMDmV1W2o
エピソードゼロ
  デン・ハザードは繰り返す

私は生まれたときから魔力量がずば抜けていた。
ママは昔から「お母さんの強さが遺伝したのかも」と言って笑っていた。
幼稚園児の頃から周りの大人たちにチヤホヤされ、けれど天狗になることはなく。
中学三年生にしてマホリオの中学生大会を制覇した私は、リリウムでも良い仲間と出会い、良い成績を残せるだろうという予想に疑問を持つことはなかった。

「はじめまして、デン・ハザードです!」

「あなたがあの天才デン・ハザードね。私がここの校長、樹・ユグドラシル・リリウムよ」

マホリオの期待株として入学を祝われた以上、半端な成績は残せない。
私は率先して同級生の情報を集め、一緒に戦ってくれる人を探した。
そして組むことになったのは雨宮楓さんと七峯嵐さんの二人だ。
幼い頃からの幼馴染とのことでコンビネーションは抜群。
しかも実技の成績もトップクラスで、この二人とならマホリオの大会もかなり上を目指せるという自信があった。

事実、私達は勝ち上がり続けた。
一年生だけで全国大会に行き、その名前を轟かせたのだ。

そして3月31日。
私にとっての運命の日がやってきたことを、その時の私は知らなかった。

夜、眠れずに本を読んでいると不意に寒気を感じたのだ。
恐る恐る窓から外を見て驚いた。
巨大な鬼がそこにはいた。
慌てて杖とホウキを持ち外に飛び出す。
何が起こっているか分からないが、とにかく他の生徒を守らないといけないと思った。

「魔弾【シュート】!」

鬼の肩口で魔法が爆ぜる。
こちらを見た鬼が口を開き、叫ぼうとする。

「魔弾【シュート】!」

そこにシュートをねじ込み、強烈な攻撃を加えることに成功した。
口から煙を吐き出した鬼は全身を震わせ、体中に力を込める。
筋肉が固まり、見るからに凶暴性が上がっているようだ。

「魔弾【シュート】」

鬼が駆け出そうとしたところに、地面をえぐるようにシュートを放つ。
綺麗に体制を崩した鬼を眺めて、さらに追撃。

「神弾【ネオ】!」

「ゴオオオオオオオオォォォォォ!!!!」

鬼が黒い影となって消えていく。
よく分からないままに戦ったが、無事に倒せたようだ。
校長先生に報告できるよう今の状態を写真に残そうとス魔ホを取り出す。
その画面がやけに暗く感じ、私は空を見上げた。

「な……!!」

そこにあったのは、星一つない暗黒。
気づいたときには遅く、空から降ってきた黒い触手に私はお腹を貫かれていた。

「ごぼ……っ」

口から血が溢れる。
お腹が熱い。指先から急激に熱が消えていく。体に力が入らない。
視界が黒く染まってーー。
124 : ◆ZOSRNJGVq. [saga]:2021/04/22(木) 19:42:54.70 ID:iMDmV1W2o
目が覚めるとそこは寮の自室だった。
お腹に手を当てると、そこには穴どころか傷一つない。

「……夢?」

それにしては意識はハッキリしていたし、何より夢にしては長過ぎる。
そして壁のカレンダーを見て、違和感はさらに大きくなる。

「これ……去年のだ」

新年を迎えて買い替えたはずのカレンダーが元通りになっている。
恐る恐るス魔ホをチェックすると、そこに書かれていた日付も当然のように去年だった。

「なに……これ……」

震える体をなんとか動かし、様々な方法で日付やこの一年の情報を集める。
しかし判明したのは、時が巻き戻ったという事実だけだった。

「皆さんはこれからリリウムの一員として互いに切磋琢磨し、良い学校生活を送れるよう頑張ってください」

去年も聞いた校長先生の話を聞き流す。
クラスメイトの顔ぶれも記憶と合致している。

「……」

もう受け入れるしかなかった。
理由は分からないが、私は過去に戻っているらしい。
恐らくきっかけはあの暗闇からの一撃だ。
頭を切り替える。

「あの魔物を倒したあと、空からの攻撃がくる……」

あの時何があったか忘れない内にメモに残す。
大丈夫、私は強い。
何が来るか分かっていれば対処もできる。

そして3月31日。

魔物を倒し、暗闇と相対する。

今度は油断しない。
暗闇からの攻撃を凌ぐ。

「神弾【ネオ】!」

空の一部にぽっかりと穴が空く。
攻撃は無駄ではないようだ。

「神弾【ネオ】、神弾【ネオ】! 神弾【ネオ】ォ!!」

穴が大きくなっていくにつれ、私の魔力は減っていく。

「くっ!」

防御には魔法は使わず、避けに徹する。
攻撃だけに魔力を集中しなければ、この暗闇を晴らすことはできなさそうだった。

「神弾【ネオ】!」

しかし、およそ7割の暗闇が晴れたところで力が抜けてしまう。
魔力切れによる肉体疲労だ。

「しまっ……!」

暗闇はそれを見逃さなかった。
勢い良く伸びてきた触手が腹を貫く。

「ぢぐしょお……っ」

腹が痛い。
だが痛みはすぐに消え、次に冷たさがやってくる。
視界が黒く染まってーー。
125 : ◆ZOSRNJGVq. [saga]:2021/04/22(木) 19:43:59.09 ID:iMDmV1W2o
目が覚めるとそこは寮の自室だった。
お腹に手を当てると、そこには穴どころか傷一つない。

「…………」

見覚えのある現象だった。
まずはカレンダーを、次にス魔ホを確認する。

「……また戻ってる……」

そう、また一年前に戻っているのだ。
いろいろと考えてみるが、やはり原因や理由が分からない。

「……あの暗闇を完全に晴らさないとダメ、なのかな……」

前回は自分の力不足で死んでしまった。
ならばこの一年は修行を重ねよう。
きっと今度は勝てるはずだ。

しかしその前にとある問題が発生した。
11月の末日、あの寒気を感じ外に出てみると、そこには真っ黒な骸骨がいたのだ。

「こ、こいつも暗闇の仲間か……!?」

「そ、そこの人……逃げて……!」

遠くから綺麗な金髪を両サイドで結んだ女の子が駆けてくる。

「いや、あなたこそ逃げて。フラフラじゃない」

女の子に背を向け、骸骨と向き合う。
大きいがあの鬼ほどの気迫じゃない。大丈夫、私なら倒せる。

「迥ャ豢セ縲∫賢豢セ?」

「神弾【ネオ】!」

骸骨の頭部で魔力が弾ける。
大きく揺らいだ骸骨は体制を立て直すと、迷わずこちらに向かってきた。

「身体硬化魔法【ヘビィボディ】」

女の子を守るため、体を硬くして骸骨の前に立ちふさがる。
容赦なく突進してきた骸骨の骨は逆に欠け、怯んだ隙にパンチを見舞った。

「鬪ィ謚倥j謳阪?縺上◆縺ウ繧悟┫縺……!!」

骸骨は震える体を持ち上げ、ずるずるとこちらに迫ってくる。
だが恐怖は感じなかった。

「神弾【ネオ】」

とどめの一撃を食らわせると、骸骨はさらさらと空気中に消えていってしまった。
空一面が暗闇に覆われることもなく、無事に解決したようだ。

「あ、ありがとう……あなた強いのね」

「まあ、頑張って修行してるからね。というよりこんな時間に起きてちゃ危ないよ。今日は私がいたからなんとかなったけど、ああいう魔物がときどき来るみたいだから気をつけてね」

女の子と別れ、その後は何事もなく過ごしていた。
だが3月31日。やはりあの寒気を感じ外に出てみると、そこには当然のように鬼のような魔物がいた。

「あの骸骨を倒したら終わりな訳はないと思ってたけど……」

だが今年はいつもよりかなり修行した。
前回以上の強さで以って暗闇を制し、今度こそ生き残ってみせる。

「神弾【ネオ】!」

「ガアア!」

バチンと魔法が弾かれる。

「……え?」

今までの鬼はこんなに強くなかったはず。
修行をした私のネオが弾かれた?
あんなに簡単に?
何か今までと違う?
疑問が次々と頭に浮かび、理解が追いつかない。

「ゴオオオオオオッ!!!」

鬼の振りかぶった拳が私を襲う。
痛みを感じる前に景色が反転し、超高速で後方へと流れていく。
殴られ吹き飛ばされたと気づいた瞬間背中に強い衝撃を感じ、私は意識を手放した。
126 : ◆ZOSRNJGVq. [saga]:2021/04/22(木) 19:44:27.07 ID:iMDmV1W2o
目が覚めるとそこは寮の自室だった。
体に手を当てると、そこには骨が折れた形跡どころか傷一つない。

「また……」

また死んでしまった。
体が震える。腹を貫かれた感覚と、思い切り殴られ体が潰れた感覚。
実際に感じたあの感覚が不意に蘇り、ベッドの上に戻してしまう。

「ゔ……ゔえ゛ぇ……っ」

寒気が止まらない。
修行をしてもダメだった。
むしろ修行をしたことで、より死のタイミングが早まってしまった。

「どうしよう……どうしよう……っ」

悩んだ末、校長先生に相談することにした。
もちろん信じてもらえるとは思っていなかったが、せめて共闘してほしかった。

「……そう、分かったわ。確かに信じがたいけど、3月31日の夜中に一緒に戦ってあげる」

「あ、ありがとうございます……っ」

すごく必死な顔をしていたらしく、校長先生は共闘を受け入れてくれた。
きっと今度こそーー。

だがさらに問題が発生した。
今度は9月の末日。ヘビが現れたのだ。
攻撃する度に小さくなり、やがては消えていったが……。

「あなた強いのね……」

「……うん」

またあの女の子がいた。
まさか彼女が召喚した魔物なのか?
いや、そんな危険な生徒が入学できるはずはない。
浮かんだ疑問を打ち消し、気にせずに日常生活を送ることにした。
そして3月31日。

「あれが鬼……。久しぶりに見たわね……」

校長先生と共に鬼に立ち向かう。
先生は強く、鬼をあっという間に倒してしまった。

「……ラミー、あなたの仇は討ったわよ」

「先生! まだです!」

「!」

空一面を覆う暗闇に、先生と共に魔法を撃ち続けていく。
しかしあまりにも闇が多すぎる。今まではこんな量ではなかった。

「デンさん! 後ろ!」

また疲労が溜まったところを狙いすまされたかのように貫かれる。
為す術もなく体が崩折れる。
……もはや抵抗する気力もなく、私はあっさりと意識を手放した。
127 : ◆ZOSRNJGVq. [saga]:2021/04/22(木) 19:45:00.32 ID:iMDmV1W2o
目が覚めるとそこは寮の自室だった。
お腹に手を当てると、そこには穴どころか傷一つない。

「……なんで」

修行をしても、強い人と戦ってもダメだった。

「……私、弱いのかなあ」

心が擦り切れていく。

「……そうだよ、私なんかダメダメなんだ……だから何をしても死んじゃうんだ」

感情がマイナスに振り切れていく。

「あ、あはは……もう、それなら……」

声が、震える。

「……もう、死にたいよ……」

ーーーーー

それから何をしてもやはり解決することはなかった。
学校の外に逃げてみたり、とにかく防御してみたり。
だけれど、全ては徒労に終わった。

「デンさん、その……掲示板で友達を募集してみない? きっと気の合う人に出会えると思うわ」

「は、はい……」

もう何度目かも分からないループ。
ついに閉じこもってばかりの私に先生から声がかけられた。
ループするから何をしてもいいわけではないし、迷惑をかけるのは違うなと思い、先生の言うとおり掲示板に友達募集のためマホリオの練習試合申し込みの張り紙をしてみる。
数日も経たずに受諾された報せが届き、私は相手が待つ場所へと向かった。

(せめて見た目はスポーツマンっぽく……)

最近は鬼の攻撃を防ごうと最後まで肉体変化の魔法をかけていたせいで、ループした直後も魔法を解こうとしたりした関係で顔が暗くなっているようだ。
鏡で久しぶりに自分の顔を見たときに前の顔も思い出せなかったのでそのままにしているが、せっかく私なんかに会いに来てくれた人にガッカリしてほしくはない。
先生が声をかけてくれた生徒二人と待ち合わせ場所に向かう。
こんな奴と一時的にでもチームを組むこの二人にもとても申し訳ない気持ちで死にたくなってしまう。

「あ、デンさん。多分あの三人が依頼を受けてくれた人だよ」

チームの一人が声をかけてくれる。

「あ、来たみたいだよ」

向こうのチームの一人、すごい巨乳の子がこちらを見てチームメイトに声をかける。

「君たちが練習相手? よろしくね!」

精一杯の明るさで、スポーツマンを装う。
こんな演技をしても結局無駄になるのに、私は未だに人からどう見られるのかを気にしてしまう。

「あたしはデン・ハザード。マホリオランキングが最下位で……」

そこまで言って気がつく。
真ん中に立っている金髪の女の子。
真っ黒な魔物と戦っているとなぜか現れる女の子。
その子が目の前にいる。
とりあえず、言葉を止めずに会話する。

「……先生に言われるまま依頼を出したんだ」

「そうなの。ま、遠慮はしないわよ」

にこりと笑うその表情からは、私の知ってる悲壮感や絶望感は僅かにも感じ取れなかった。
この子が魔物を召喚しているのか、呼び寄せているのか、それは分からない。
ただ何事もなく終わればそれでいい。
そして、できるだけ痛くないように死んで、またループできれば……。
そう考えながら、私は杖を手に取る。
向こうの作戦会議が終わったのを見計らい、声をかけた。

「準備はいい? じゃあ、スタート!」

ゴールのない一年間を繰り返す私から、もっとも似合わない「スタート」の合図。
自嘲気味に笑って、私は戦いに繰り出した。
128 : ◆ZOSRNJGVq. [saga]:2021/04/22(木) 19:47:43.44 ID:iMDmV1W2o
ループに飲まれ摩耗していくデンのお話でした
ここから1スレ目、796レス目に続きます
129 : ◆ZOSRNJGVq. [saga]:2021/04/27(火) 21:57:38.22 ID:vh/CuTuWo
エピソードアフター
  プロ入り組、プロの洗礼を浴びる


楓「まさか同じチームになれるなんてなー」


嵐「たまにあるみたいだな。個の力よりも和の力を重視して、3人まとめてチームに引き入れるってのは」


晶「それって個の力はまだまだってことだよな。精進しないと」


???「いえ、そうではありません」


晶「あ、マネージャーさん。おはようございます」


マネージャー「はい、おはようございます。それで個の力がまだまだと仰っていましたが、それは違います」


嵐「?」


マネージャー「学生大会時より個の力が抜群なのは、各チームのスカウトが見れば一目瞭然でした」


楓「え、じゃあなんで3人とも同じところに?」


マネージャー「個の力もさることながら、お三方のすごいところはチームワークにもあります」

マネージャー「フレイムスロワー、風神雷神、そしてトリムールティ……。これをバラバラにするにはあまりに惜しいと考えたのです」


晶「へえ……」


マネージャー「ですから、現役のプロにも総合的な力量で劣っているわけではない。私はそう考えてます」


嵐「そう言われると嬉しいな。さすがマネージャー、メンタル管理もバッチリだ」


マネージャー「……これから行われるデビュー戦に、少しでも前向きに挑んでほしいので」


晶「そうだよなあ……。まさか初戦がトップ中のトップだなんて……」


楓「はいはい、悩んでも仕方ない! 個の力も和の力も見せつけてやろうよ!」


嵐「だな! よし、行こう!」


ーーーーー

ーーー

130 : ◆ZOSRNJGVq. [saga]:2021/04/27(火) 21:58:14.61 ID:vh/CuTuWo
スタジアムーー


ヴィーネ「お、来たねー」


サリア「今年の新人でもトップクラスの期待株です。油断しないように」


茜「そうですよー、油断しないようにー」


ヴィーネ「茜まで言わなくてよくない!?」


楓「うおぉ……緊張するなあ……」


審判「では……試合開始!」


晶「炎弾【ファイアボール】!」ゴオッ!


茜「フッ!」ボッ!


晶(マジで拳で魔法かき消すのかよ……!)


嵐「雷弾【サンダーボール】!」バチイッ!


サリア「……ここか」スッ


嵐(未来視相手に直接攻撃はやっぱ無理か……避けられる……!)


ヴィーネ「実力差を見せつけられても諦めないんだね。みんないい目をしてるよ」


楓「諦めの悪い友達が世界まで救っちゃったもんでね! 風神魔法【ルドラ】!!」ブワッ!


ヴィーネ「神聖・匣【ザ・キューブ】!」ガチンッ!


ゴオオオオオオオォォォォッッ!!


楓「時間稼ぎ完了……!」ニヤッ


ヴィーネ「な……何!?」


晶「盾魔法は外からの攻撃を防ぐと同時に、内側からも攻撃ができなくなる!」


嵐「身を守ることであなたはそこに留められた!」


サリア「あ、茜さん!」


楓晶嵐「三神一体【トリムールティ】!!!」


茜「真化魔法【ヒーロー】」


カッ!!!!
131 : ◆ZOSRNJGVq. [saga]:2021/04/27(火) 21:58:50.97 ID:vh/CuTuWo
ゴオオオオオオオオッッッ!!!


茜「つっ……!」フラ…


楓「茜さん魔力切れで落ちた! いけるよ!」


ヴィーネ「……大人気なくてごめんなさい。今から最強の魔法を撃つわ」


晶「!!」ゾクッ


サリア「ヴィーネさん、間に合いましたか」


嵐「茜さんが捨て身でサリアさんを守ってる間、キューブを解いて魔力を練り直すのに集中してた……」


楓「冷静すぎて怖いなあ……!」


晶「でももうアタシ達のトップギアをぶつけるしかない!」


楓晶嵐「三神一体【トリムールティ】!!!」


ヴィーネ「神々聖霊魔法【セレスティアルサークレット】!!!」


ゴオオオオオオオオオアアアアッッッッ!!!!!


晶「そんな……」


嵐「俺ら3人の神魔法と相殺……!?」


サリア「……さすがにもう動けませんか?」


楓「ですねえ……降参です」


審判「そこまで! 勝者ヴィーネチーム!」


ヴィーネ「あ……」

ヴィーネ「危なかったああぁぁ……」ヘナヘナ


晶「よく言いますよ。まだ元気に動けるくせに」クスッ


ヴィーネ「いやいや! 茜を仕留めた上に私の最強魔法まで引きずり出されるなんてそうそうないよ!」


楓「でもほんと、茜さんもヴィーネさんも強すぎます。もっと強くならないと」


嵐「なんにせよ、いい経験ができました」


審判「両チーム、礼!」


ありがとうございました!


ーーーーー

ーーー

132 : ◆ZOSRNJGVq. [saga]:2021/04/27(火) 21:59:39.51 ID:vh/CuTuWo
別の日、スタジアムーー


デン「茜さんだけなら私が……! 身体神化魔法【ネオボディ】!!」


茜「真化魔法【ヒーロー】」ブワッ!


ゴッ ガッ ドオォッ!!


ヴィーネ「ちょ、マホリオなんだから魔法で戦いなさいよー!」


サリア「肉体言語で語らってますね……」


デンチームアタッカー「ね、狙いが……」


デンチーム大将「それよりヴィーネさんの動きに注視して! 私もサポートするから二人で何とかするよ!」


デン(く……! 体内組織を造り変えて筋組織も伝達神経も超強化してるのに……!)


茜「遅い」ゴッ!!


デン(追いつけない!!)


メキイッ!!


デン「ぐああっ!!」


デンチームアタッカー「デン!!」


デンチーム大将「こ、降参! 降参します!」


審判「そこまで! 勝者、ヴィーネチーム!」


デン(あの固さの魔法で防いだのに、腕が折れてる……)ズキンッ

デン「……肉体変化【ボディメイク】」フオンッ


審判「両チーム、礼!」


ありがとうございました!


デンチーム大将「マネージャー、メディカルチームに連絡お願いします!」


マネージャー「は、はい!」


ーーーーー

ーーー

133 : ◆ZOSRNJGVq. [saga]:2021/04/27(火) 22:00:58.92 ID:vh/CuTuWo
また別の日、スタジアムーー


アルシェチームブロッカー「岩壁【ロックウォール】!」ゴオッ!


茜「!」


アルシェチーム大将「アルシェ!」


アルシェ「ん! 破壊魔砲【キャノン】!!」


ボゴオオオオオッ!!


サリア「岩ごと砕く、それも見えてましたよ」


ヴィーネ「神聖・匣【ザ・キューブ】!」ガチンッ!


アルシェ「その箱も砕く……! 神槍魔法・貫【ブリューナク】!」ゴオオッ!


ヴィーネ「うっそ……!」ギリィ…!


ズオオオオオオオッ!!


アルシェチームブロッカー「や、やった! 貫通した!」


審判「そこまで! 試合終了!」


アルシェ「え……」


サリア「かっこいい魔法だな。だが敵を倒すことに夢中になりすぎて視界が狭まっては意味がない」


アルシェチーム大将「う……」カクンッ


審判「勝者、ヴィーネチーム!」


アルシェ「んー……!」

アルシェ(後ろから大将だけ狙われた……!)


審判「両チーム、礼!」


ありがとうございました!


ーーーーー

ーーー

134 : ◆ZOSRNJGVq. [saga]:2021/04/27(火) 22:01:47.41 ID:vh/CuTuWo
街中ーー


楓「お」バッタリ


デン「あ」バッタリ


アルシェ「ん」バッタリ


カフェーー


デン「みんなヴィーネさんチームに負けちゃったんだね」


晶「やっぱ強いよ、あのチームは」


アルシェ「ん、近距離も遠距離も強いし、半端な作戦は未来視される」


嵐「茜さんは強いけど、まだ予測がつくよな。肉体系の魔法だから、動き自体は単純だ」


デン「私の肉体変化でも及ばなかったから、肉弾戦では難しいかも」


アルシェ「アルシェのチームの岩壁には突っ込んで来なかった。シールドじゃなくて、物質の壁なら防げると思う」


楓「ふむふむ。しかしヴィーネさんが問題だよ」


晶「トップ中のトップ。現役最強……。正々堂々ぶつかって勝ちたいよな」


デン「勝ちたいねえ……」


ーーーーー

ーーー

135 : ◆ZOSRNJGVq. [saga]:2021/04/27(火) 22:02:21.50 ID:vh/CuTuWo
チーム控室ーー


サリア「最近お二人共楽しそうですね」


茜「え、そうかなー」


ヴィーネ「あーでも、新人達の熱がすごいからかも」


茜「あー」


ヴィーネ「あの子達さ、負けてももう次の戦いを考えてるんだよ」


茜「そうそう。終わった後の目が「次はやるぞー」って感じなんだー」


サリア「それで、ですか?」


ヴィーネ「うんうん。やっぱそういう子とやるのは楽しいからね」


茜「諦めて向かってくる人より、頑張って向かってくる人の方がこっちもやる気になるからねー」


サリア「……そうですね」


「試合の準備をお願いします!」


茜「さ、いきますかー」


ヴィーネ「おし、今日も頑張ろー!」


サリア「はい!」
136 : ◆ZOSRNJGVq. [saga]:2021/04/27(火) 22:04:26.46 ID:vh/CuTuWo
以上、プロ入り組のその後でした
137 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/27(火) 23:53:58.86 ID:G6Megam70
おつつ
蛇足にならない範囲でリクエストしたくなるね
138 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/28(水) 10:17:05.39 ID:2Yo/ULS+O
リーケがゼーレ・アイリスと出会うまでのお話読みたい
139 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/28(水) 18:17:54.98 ID:tKFv2sFXO
楓の吸血鬼関連が気になるからエピソードゼロみたいな感じで楓のご先祖様の吸血鬼とその嫁とか見てみたい
140 : ◆ZOSRNJGVq. [saga]:2021/04/28(水) 21:24:01.38 ID:sp9TbWdGo
ある夜ーー


ローラ「うぅん……」ノビー


ミトラ「くぅん……」スリスリ


ローラ「ミトラ、まだ起きてたの?」ナデナデ


ミトラ「わぅんっ」


ローラ「え、あ、ほんとだこんな時間! 早く寝ないと……!」バタバタ


ーーーーー


きゅーちゃん「こんっ!」


ユーニ「ブルル……」


ミトラ「わんわんっ!」


エアロ「かうーっ!」


きゅーちゃん『由々しき事態です』


ユーニ『ですね……』


ミトラ『ローラ、最近夜遅くまで起きてる……』


エアロ『ローラが元気ないと悲しいよー!』


きゅーちゃん『恋人の二人は別の学校。ご主人は勉学のため魔獣大学の近くに一人暮らし……痛ましいことです』


ユーニ『我々で癒やしてあげましょう』


ミトラ『賛成!』


きゅーちゃん『といっても、やたらに突っ込んでは私達がナデナデで気持ちよくされて終わりです。作戦が必要ですね』


エアロ『あ、じゃあこういうのはどうかな……?』


ーーーーー

ーーー

141 : ◆ZOSRNJGVq. [saga]:2021/04/28(水) 21:24:33.11 ID:sp9TbWdGo
ローラ「ただいまー」


ミトラ「わんっ!」


作戦その1、ミトラがお部屋まで導く!


ミトラ「わうっ!」スリスリ


ローラ「よしよし、今日も元気だねえ」ナデナデ


エアロ「かうっ、かうーっ!」グイグイ


作戦その2、エアロがお部屋に押し込む!


ローラ「ちょ、ちょっと、どうしたの?」


ユーニ「ぶるる……」


作戦その3、待ち構えたユーニ枕にゴー!


エアロ「かうーっ!」ドーン!


ローラ「ひゃっ! ご、ごめんねユーニ!」ナデナデ


ユーニ「ぶるぉ……」スリスリ


作戦その4、きゅーちゃんの尻尾抱き枕!


きゅーちゃん「こんっ!」モフンッ


ローラ「わっ……」ギュッ


作戦その5、みんなでお昼寝!


ミトラ「わぅ……」スリスリ


エアロ「かうー」コテン


ユーニ「ぶるる……」スリスリ


きゅーちゃん「こーん……」モフモフ


ローラ「みんな……」


ユーニ『ご主人は少し頑張りすぎです。せめて今日くらいはゆっくりお休みください』


ローラ「……うん、ありがとう」ウト…


ーーーーー

ーーー

142 : ◆ZOSRNJGVq. [saga]:2021/04/28(水) 21:25:14.06 ID:sp9TbWdGo
クロエ「ローラー?」ピンポーン


ヒカリ「反応ないね……」


クロエ「帰ってきてるはずだけど……。合鍵を使わせてもらいましょうか」ガチャリ


ヒカリ「あ、奥のお部屋電気がついてる。インターホン気づかなかったのかな」


クロエ「全く。今日行くわねって連絡したのに」ガチャッ

クロエ「……っと」


ヒカリ「わっ。……ふふっ」


ローラ「くぅ……くぅ……」


きゅーちゃん「こぅん……」スヤスヤ


ユーニ「ぶるる……」コックリコックリ


ミトラ「わぅ……」ピトッ


エアロ「かうー……」グウ…


ヒカリ「最近テレビ電話しても疲れてる風だったもんね。だいぶ疲れが溜まってたのかな」


クロエ「くうぅ……かわいい……。ス魔ホで写真撮りましょ」パシャッ


ヒカリ「今日は晩ごはんこっちで食べるつもりだったし、台所借りて栄養のあるご飯作っちゃおうか」


クロエ「そうね。ローラが起きてびっくりするようなのつくりましょう」

クロエ「それじゃあ……」スッ


ちゅっ


クロエ「もう少しだけおやすみなさい、ローラ」ナデナデ


ローラ「んぅ……」フニャ
143 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2021/04/28(水) 22:01:52.49 ID:1V75X43d0
>>138含めてゼーレの時代にどのように魔法が広まっていったのかが気になる
144 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/04/28(水) 22:34:04.98 ID:x+O/b4B30
お前だけ気になってそのまま寝ろゴミ
145 : ◆ZOSRNJGVq. [saga]:2021/04/29(木) 21:37:25.20 ID:B/oq4h0ao
今日は更新なしです、すみません!
146 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/30(金) 01:28:41.10 ID:qxPbrFS+0
りょかい
147 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/30(金) 11:18:19.50 ID:zmQcKB9YO
リクエストではないけど、>>1的に書いてて好きなキャラや好きなCPがなんとなく知りたい
148 : ◆ZOSRNJGVq. [saga]:2021/05/01(土) 17:28:41.06 ID:qH0zkNs3o
昨日は疲れてて寝落ちしてました…
これから投下します!

>>147
個人的に楓と晶は誰と喋らせても場面が思いつきやすいので書きやすかったですね
好きなカップリングはティアルシェでしょうか
最初にくっついたからというのもありますが、徹頭徹尾仲良しで、書いててほっこりしてました
149 : ◆ZOSRNJGVq. [saga]:2021/05/01(土) 17:29:39.01 ID:qH0zkNs3o
エピソードゼロ
  アートルム物語

魔法の無い世に始めて生まれ落ちた魔力を扱える存在。
人はその子を神と呼び崇めた。

「アートルム様!」

アートルム様と呼ばれた子は祭壇の上にずっと座っていた。
そのまぶたがゆっくりと開き、怪訝な眼差しを客人に向ける。

「……なに」

大人が話しかけてくるのは、何かしてほしいことがある時だけだ。
それ以外の時はただひたすらに祭壇に座らされ、すること全てを監視されていた。
そんな生活を年端もいかない内から強制されているのだ。
人が嫌いになるのも無理はないのかもしれない。

「あ、いえね、ちょっとばかし最近晴れが続いてまして……。神様の力で雨を降らせてもらえませんかね?」

「……分かった、やるよ」

彼女は断ることをしない。
かつては嫌がっていたが、結局はやるまで説得されるだけだ。もはやゴネることが時間の無駄だと考えているのかもしれない。

外に出てみると強い日差しが差していた。
久しぶりの外出で、眩しさに目がくらむ。

「ささっ、神様。お願いします」

「……降雨魔法【レイン】」

少女が呟くと、途端に空に陰りが増していく。
そして。

「おっ、おおー!」

ぽつ、ぽつと雨が降り始め、数分もしない内に本格的な降りになる。

「ありがとうございます!! お疲れでしょう。祭壇でお休みください!」

さあさあと背中を押される。
結局こうだ。用が済めばまた監視のために祭壇へと送り返す。
もうこんな生活は嫌だ。だけど、どうしようもない。

「わー雨だー!」

不意に、遠くから女の子の声が聞こえてきた。
声の方を見てみると、雨から逃げるようにこちらに向かって走ってきている。

「あ、そこの人! 雨宿りさせてー!」

その女の子はそばに駆け寄ってくるなり、そう言い放った。
見れば荷物を持っており、この近くに住む人間ではないようだった。

「貴様何者だ! 無礼な!」

「えー、ただの通りすがりだよー。雨宿りさせてー」

緑の瞳にハートマークを浮かべた、桃色のショートヘアーの女の子。
このままだとどうせいつもと変わらない生活が待っているだけだ。なら……。

「……私の祭壇でいいなら雨宿りしていきなよ」

「いいの!?」

「か、神様! なりません! こんなどこのものとも分からぬ不審者と過ごすなど……!」

きっと鋭い視線をぶつける。

「うるさいなあ! 私がいいって言ったんだからいいの!」

「ですがあまりに危険では……」

「何かあっても魔法で退治するもん! いいからどっか行って!」

女の子の手を引き祭壇へと戻る。
中は魔法で暖められており、女の子はほっとした顔を浮かべた。
150 : ◆ZOSRNJGVq. [saga]:2021/05/01(土) 17:30:13.05 ID:qH0zkNs3o
「ありがとー。かっこいいね、あなた」

「さ、さっきのはその……」

もじもじと恥ずかしがっていると、女の子はくすくすと笑いはじめた。

「さっきあんなに強気だったのに、すごく大人しくなっちゃった。こっちがあなたの素?」

「う、うん……」

馴れ馴れしいが、嫌な距離の詰め方ではない。
どんな人でも受け入れてくれそうな、そんな柔らかさだ。

「あたしの名前はアイリス・スノードロップ。あなたのお名前は?」

「……ゼーレ・レジェンダリア・アートルム」

「素敵な名前!」

心の底から嬉しそうにそう言うアイリス。きっと本気で素敵な名前だと思ってくれて、そして素直に褒めてくれているのだろう。
それが伝わってきたから、アートルムも笑顔になってしまった。
それからたくさんのお話をした。
アイリスはたくさんお友達を作りたくて、いろいろな土地を旅していること。
アートルムは魔法が使えること。アイリスは興味深そうだったけど、無理して見たいとは言わないでくれた。

気づけば夜になって、その日は一緒に眠ることにした。
誰かと寝るのは初めてだったけど、存外気持ちよく眠ることができた。

「おはよー、ゼーレ」

「おはよう、アイリス」

あるいは、その気持ちよさはある決心から来たものだったのかもしれない。
寝起きのアイリスに、寝る寸前に思いついたことを打ち明ける。

「ねえアイリス。私もあなたの旅に連れて行ってくれない?」

「え……」

大きな目をパチクリとさせて驚くアイリス。
だがその表情はすぐに笑顔へと変わった。

「いいよ、行こう!」

そこに、朝食を運びに来た侍女が現れる。
その横を駆け抜けて、朝の清掃をしていた付き人からホウキを奪って外に駆け出した。

「か、神様! お待ちください!!」

「べーっだ!」

ホウキに魔力を込める。
棒状で魔力が込めやすく、後方にはブースターとして機能する膨らみ。
意識せずに掴んだが、ホウキは思った以上に空を飛ぶのに適しているようだった。

「飛んでる! 飛んでるよゼーレ!」

腰に掴まったアイリスがはしゃぐ。
ぐんぐんと高度が高まり、気づけば今までいた村ははるか遠くに見えるまでになっていた。

「……あんな小さな場所に囚われてたんだ」

「すごいね、ゼーレ! これなら世界中のみんなと出会って友達になれるよ!」

その日から二人の友達作りの旅が始まった。
魔法が使えることは隠して、いろいろな土地の風習を楽しんだ。
151 : ◆ZOSRNJGVq. [saga]:2021/05/01(土) 17:31:32.66 ID:qH0zkNs3o
しばらく旅をしていると、神樹と呼ばれるものの存在をよく聞くようになっていた。
曰くとても大きな木で、その周りにいる魔獣はイキイキとしているのだそうだ。

「見に行こう、ゼーレ!」

「言うと思った」

一緒に行動していて、アイリスのやりたいことが分かってきた。
とにかく世界中いろいろなところを巡り、毎日を鮮やかに彩りたいのだ。
そんな彼女のことが素敵だと思っているし、それについていける自分が誇らしかった。

「おおー……!」

さておき、神樹のあるとされる場所に向かって飛んでいると、遠くから見てそれと分かる木があった。
近くに降り立ってみると、ゼーレにはハッキリと感じられる感覚があった。

「これ……私の中にあるのと同じ……」

魔法を使う時に感じるのと同じものがここには満ち溢れている。

「魔法の元なのかも……」

アイリスにも説明してみると、キラキラとした瞳で周りを見渡した。

「すごいねえ! もしかしたらここならゼーレと同じ、魔法が使える人がいるかも!」

その声に呼び寄せられたか、ガサッと草が踏みしめる音が後ろからした。
魔獣かと思いはっと振り返れば、そこにいたのは可愛らしい少女だった。

「だ、だれ……だ……!」

赤みがかった銀髪を揺らし、ジリジリと迫ってくる。

「あ、この近くに住んでる子かな? 驚かせてごめんね」

こういう時アイリスはすごく頼もしい。
初対面の人が相手でも、さらりと話しかけてしまうのだ。

「あんまり素敵な木だったから近くで見てみたくて……。ここ、空気も美味しくていい場所だね」

「う、うん……」

気づけばアイリスは女の子の近くまで寄って、目線を合わせるようにしゃがんでいた。

「あなたもここが好きなの?」

「うん、好き……。ここに住んでるし……」

「へー!」

キラキラとした瞳で女の子を見つめると、照れくさそうに笑ってくれた。
その笑顔がまた愛らしくて、ゼーレも近寄っていく。

「私ゼーレ・レジェンダリア・アートルムっていうの。あなたのお名前は?」

「……リーケ・エターニア」

「あたしはアイリス・スノードロップ! よろしくね!」

空気感に飲まれたのか、いつの間にかリーケは普通に話してくれるようになっていた。
住処という洞穴に連れて行ってもらい、そこで何日か過ごすことになったのだった。
152 : ◆ZOSRNJGVq. [saga]:2021/05/01(土) 17:32:52.87 ID:qH0zkNs3o
そんなある日。

「見つけましたよ、神様……」

ゼーレの侍女であった女性が神樹のもとにやってきた。
事情を知っているアイリスだけでなく、ただごとではない様子を察したリーケもゼーレの前に出る。

「さあ、こんなところにいないで帰りましょう。私達の村に」

「い、嫌だ!」

思わず声を張り上げる。
もうあんな生活に戻るのは嫌だった。
閉塞的で何の変化もなく、ただひたすらにいいように使われる毎日。
あの灰色の世界には戻りたくない。

「創造【クリエイション】ッ!!」

胸の奥底から湧き上がる力をそのまま言葉にする。
辺りに閃光が走り、ややあってから元の明るさに戻る。

「あ……」

「え……?」

変化に気づいたのは、当然二人だった。

「これ、もしかして魔力?」

「神樹と同じ感じがする……」

不穏な空気を感じ取った侍女がたじろぎ、その場から逃げようとする。

「魅了魔法【チャーム】」

アイリスが頭に浮かんだ言葉をそのまま発言する。
すると、確かに体から何かが出た感触が。

「あ、あれ……私、なんで友達から逃げようと……」

侍女は足を止め、不思議そうにアイリスを見ている。
ゼーレの力を近くで見ていたアイリスは、おそらく彼女の使う「魔法」に類する力と見切りを付け、さらに推理を続ける。

「ね、侍女さん。アイリスと侍女さんは友達だよね?」

「ええ……そのはず。逃げようとしたのが不思議だわ」

深く考えていないように見えて、実はアイリスは頭が切れる。
彼女はここまでのやり取りで何が起こったのかを推察した。

「私も魔法が使えるようになったみたい。人と仲良くなれる魔法!」

「ええっ!」

驚いたのはゼーレだ。
自分以外に魔法が使える人が出てくるなど思ってもいなかったし、しかもそれが大好きな友達ならなおさらだ。

「ゼーレは生まれつきみたいだけど、今のゼーレの魔法のおかげで私達も魔法を使えるようになったみたい!」

「私達って、リーケも?」

「う、うん……できる気がする。……魔獣領域【ビーストガーデン】!」

周囲に暖かな風が吹き、それに呼び寄せられるように魔獣が集まってくる。

「うわわ、騒ぎすぎた?」

アイリスが少したじろぐが、リーケは笑顔だ。

「ううん。みんな私の友達……。私の魔法は魔獣を集める魔法みたい」

近くに寄ってきた魔獣の頭を撫でると、魔獣は気持ちよさそうに喉を鳴らす。
153 : ◆ZOSRNJGVq. [saga]:2021/05/01(土) 17:34:06.40 ID:qH0zkNs3o
それからは三人と、「友達」である侍女を交えていろいろな推理をしていった。
おそらくゼーレの叫んだ「クリエイション」という魔法が、他者にも魔法を使えるようにする魔法なのだろう。
改めてゼーレが観察してみれば、二人には魔力が感じられ、そして侍女にはそれが感じられなかった。
そしてアイリスは特殊な魔法が一つ使えるようになったことに加え、魔力を操ることも可能だということに気がついた。
勢いよく放てば投石機のように地面に穴を空けるほどの強さになるし、前面で固めればそれを防ぐ壁を作ることができるようだ。

「……アイリス、リーケ。思いついたことがあるの」

「?」

首をかしげる二人にゼーレは告げる。

「世界中に魔法を広めたい。私の存在が不思議じゃなくなるくらい、みんなが魔法を使えるようにしたい!」

「おー!」

アイリスがいつものようにキラキラとした瞳で感嘆の声を上げる。

「でもさ、それって危険だよ。もし魔法を悪用しようとする人が出てきたら……」

「神樹のそばに来て分かった。魔力っていうのは悪意を持ってる人には貯まりにくいみたい」

ちらりと侍女を見る。

「だから多分、悪用しようとしても難しいよ」

「そっか。じゃあこれからは友達作りと魔法を広める旅だね!」

「あ、あの……!」

リーケが震える声で待ったをかけた。
なんとなく言いたいことは分かったが、リーケの言葉を待つ。

「わ、私も……いきたい……!」

それに二人で顔を見合わせ、とびっきりの笑顔で答える。

「うん、行こう!」

ーーーーー

ーーー

154 : ◆ZOSRNJGVq. [saga]:2021/05/01(土) 17:36:36.50 ID:qH0zkNs3o
「こんにちは、ゼーレ・レジェンダリア・アートルムです。隣村から伝書鳩が飛んできませんでしたか?」

「ああ、あなたが! ぜひこちらに!」

それから数年。三人はどんな時も一緒にいた。
ゼーレが二人に対して愛しささえ感じ告白してしまえば、当然のように二人も同じ気持ちだと分かった。

「ついてそうそうすみません! この子がずっと腹痛を訴えてて……! お腹に謎の模様も……!」

「失礼。服、捲りますね」

旅の中で礼節も学んだ。
時々、もっとも非常識な存在でありながら、もっとも常識をわきまえてる、なんて軽口も飛び出すくらいには礼儀正しくなったつもりだ。

「……君、村の外に出たかな?」

「……うん」

「そっか。……皆さん、安心してください。この子は村の外に出て、魔獣に思い切り腹を蹴られただけです。回復魔法【ライフ】」

そうなると噂は爆発的に広まり、やれあっちで人助けをしてほしいだの、うちの町でも魔法を教えてほしいだの、様々な依頼が舞い込むことになった。
なんとなく覚悟はしていたことだし、魔法が確かに広まっていっているのは嬉しかった。

「い、痛くない……!」

「おおお……!」

「今のは外傷を治す魔法です。君ももう無闇に村の外に出ないようにね?」

人助けをして、友達を作って、魔法を教えて。
魔獣にも優しくして、できる限りのことを。

そんな生活を続けていると、神様だと祭り上げられるようになってしまった。
幼い頃の思い出が蘇ったりもしたが、昔ほど嫌じゃない。

今は誰かに言われるまま魔法を使っているわけじゃない。
自分の意志で、自分が助けたいと思ったことに使っている。だからこそ、お礼の言葉も素直に受け止めることができる。

「さ、アイリス、リーケ。今日から一週間はここにいる予定だからね」

「じゃああたし友達作ってくるー!」

「わ、私はここの魔獣に会ってくるね……」

それから不死鳥に会ったり、魔王と戦うことになったり……。
まあ、すごくいろいろな事があって長く眠ることになったのだった。
155 : ◆ZOSRNJGVq. [saga]:2021/05/01(土) 17:37:19.99 ID:qH0zkNs3o
「ゼーレさん」

「あら、クロエさん。お久しぶりですね」

現代。私はとある学校で教師として過ごしている。
今話しているのは、世界を救った女の子。クロエ・アートルムさん。
私に憧れて同じ名字にしたと聞いたときはむず痒かったが、今では彼女と同じ名字なのが誇らしい。

「課題のために前に書いた台本が読みたくてね。演劇部に顔出そうと思ったらゼーレさんがいたから話しかけちゃったわ。教師生活はどう?」

「大変ですが、とても楽しいですよ」

魔法を広めるのとは違う、魔法の扱い方を教えるという仕事。
昔よりかなり高度に魔法体系が進化し、私が心配するような魔法によるいさかいは起こっていない。
だからこそ正しい知識を与えることで、より魔法を進化させ、悪いことに使わないようにしなければならない。
とても責任ある仕事だと今は思っている。

「本当に楽しそうね。……アイリスさんとリーケさんと……スキアさんは?」

「アイリスは世界中を旅してます。即席の魔法陣用の魔法石もあるので、私に会いたくなったらすぐ戻ってくるそうです。今はお互いにス魔ホもありますし、連絡は毎日取ってますよ」

アイリスは毎日楽しそうだ。
行く先々で友達になった人との写真を送ってくれる。

「リーケはリーケ財閥に特別指導員として迎えられました。魔獣と毎日触れ合ってるだけで幸せな子ですから、色々な魔獣に出会える今の環境がすごく嬉しいみたいです」

どんな魔獣とも仲良くなってしまうリーケを見ていると、ちょっとヤキモチを妬いてしまうこともあるのは秘密だ。

「スキアは……」

「わかんないよー!」

ちょうど隣の教室から声が聞こえる。

「スキアさん、うるさいですよ」

扉を開ければそこには一人補修を受けるスキアが。

「あうぅ……お姉ちゃん……」

「お姉ちゃんじゃなくてゼーレ先生です。ほら、どこが分からないんですか?」

「スキアさんは生徒として在学してるのね」

クロエさんが後ろから声をかけてきます。
そう、スキアは一年生として学校に入り直したのだ。
私がすぐそばで監視できること。暴走した時に抑え込む能力があることを、私だけではなく校長先生にも期待できること。等々を加味し、リリウム魔法学校の一員となったのである。
もちろん最早魔界の欠片さえも彼女には残っていないので、暴走の可能性はゼロ。
だが、大混乱を引き起こした元凶に対し何もしないのでは魔法庁も面目がない。
よってこのような状況に落ち着いたのだけど……。

「ふふっ、思ったより勉強が難しい感じかしら?」

「クロエー、教えてよー」

「どれどれ……。ってこんなの基礎の基礎じゃない! 魔力の属性5つ書きなさいって……え、小学生用のドリル!?」

表紙を見たクロエさんが驚きの声をあげる。
そう、スキアはここまで何も学んで来なかったからか、魔法に関する知識が全く無いのだ。
あの混乱を引き起こした魔王が今は小学生用の問題に手こずっている様子がミスマッチで、なんだかおかしくなってしまう。

「スキア、大丈夫。ゆっくり考えれば解けるからね?」

「おおー、先生っぽいわ」

こんな感じで、今の私は毎日を過ごしている。
平和で愛しい毎日を。
素敵で優しい友達と。
156 : ◆ZOSRNJGVq. [saga]:2021/05/01(土) 17:37:59.58 ID:qH0zkNs3o
以上、アートルムの時代の話とスキアのその後でした
157 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/01(土) 23:01:48.14 ID:yAjK3xnRO
前日譚っていいよね
158 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/01(土) 23:04:00.64 ID:yAjK3xnRO
一年生の仲良し6人組が見たい
159 : ◆ZOSRNJGVq. [saga]:2021/05/02(日) 20:31:47.12 ID:6T9EbUHso
エピソードゼロ
  ヴァンパイア・ミーツ・ガール
    ーーあるいは、その劇を演じた二人の話

魔法もまだ存在しない時代。
人は魔獣との共存の仕方も今とは違ったそうな。

「うう……今日もやな天気だなあ……」

ここに、日光が苦手な体質の人間が一人。
彼女はその特異な体質から村から八分にされ、コウモリの棲む洞窟に身を潜めていた。

「ヴァンプさん、ご飯を持ってきましたよ」

そんな彼女は太陽が顔を出す日が長く続くと体調が悪くなり、外に食べ物を取りにも行けなかった。
しかし、そんな時は決まって村に住むとある少女が顔を出しては食べ物を届けに来ていた。

「ああ、ありがとう。イアは優しいね」

「優しいだなんて、そんな」

ヴァンプは日光に弱い代わりに、力が強かった。
体調が良い日は優しいイアに代わって夜な夜な魔獣を倒し、村の入口に届けてイアに感謝の気持ちを伝えるのだ。
その日もイアからの果物の差し入れを食べると、何もする気が起きず、夜まで眠ることにした。

「ヴァンプさん、お休みですか?」

「うん……夜まで寝るよ」

イアは持ってきたカゴの底からクッションを取り出すと、その上に正座する。
そしてポンポンと膝を叩けば、吸い込まれるようにヴァンプがその上に横になった。

「おやすみ、イア……」

「おやすみなさい、ヴァンプさん」

さらさらと気持ちのいい風が洞窟内に吹き抜ける。
出会う人は限られていたが、ヴァンプにとっては幸せな生活だった。

「いっ……!」

そんなある日、魔獣狩りを終えて洞窟に戻ると、コウモリがヴァンプに噛み付いてきた。
普段なら仲良くしていたはずが、攻撃されるとは。
疑心を感じてよくよく見れば、そのコウモリは普段洞窟にいるコウモリとは違う種族のようだった。

「巣を侵略しに来たのか。私が帰ってきたのが運の尽きだな」

難なくその侵略コウモリを仕留めると、巣に元々いたコウモリが奥からわっと飛び出してくる。
我先にとそのコウモリに食って掛かり、ものの見事に骨だけになるまでに食らい尽くしてしまった。

翌日。またもヴァンプにとっては最悪の晴天。

「ヴァンプさーん」

「んー、イアかー」

「ど、どうしたんですか! は、吐いたんですか!?」

ヴァンプを抱き起こすイア。
吐瀉物特有の酸っぱい匂い。それがヴァンプの口元から一瞬香りイアも顔をしかめる。

「なんかねえ、今日は体調が悪くて……」

日光に当たらない白い肌が青ざめて見える。
ひと目で体調不良だと分かる様子だった。

「医者に見てもらいましょう! 緊急事態なら村の医者もきっと……!」

ヴァンプに自身の上着を頭から被せ、なんとか村に連れて行くイア。
しかし無情にも医者の答えは「そんな得体のしれないものは私が診ても意味がない」というあまりにも無情なものだった。
160 : ◆ZOSRNJGVq. [saga]:2021/05/02(日) 20:32:14.63 ID:6T9EbUHso
「うっうっ……!」

ぐすぐすと涙を流し、目元をこするイア。

「そんなにこすると腫れちゃうよ」

ヴァンプがそれをそっと咎める。

「だって、ヴァンプさんは何もしてないのに……!」

「何もしてないけど、何をするか分からないのが怖いんだよ。急に暴れて村人全員食われるかもって思ってるんじゃないかな」

あははと笑うヴァンプ。
そこに、洞窟の外から足音が三つ響いてくる。

「こんなところにいたんですか」

「あ、あなたは……」

「はじめまして。ゼーレ・レジェンダリア・アートルムといいます。こちらは妻のアイリス・スノードロップとリーケ・エターニア」

生ける伝説として名高いゼーレ・レジェンダリア・アートルムがなぜここに。
そんなイアの疑問に答えるかのようにゼーレが口を開く。

「村の方から言われて、ヴァンプさんの様子を診るよう言われてきました。なんでも特異な体質だとか」

「ゼーレに任せてくれれば大丈夫! 魔法でちょちょいのちょいだからね!」

「魔法……」

ヴァンプとイアは口を揃えて呟く。

「失礼します」

ゼーレがヴァンプのそばにしゃがみ込み、ぺたぺたと体を触っていく。

「これは……」

「何かあったんですか……?」

イアが不安気に聞く。
ゼーレは意を決し、ゆっくりと話し始めた。

「彼女は……人の血を吸わないといけないようです」

「あー……やっぱり?」

ヴァンプはそう言われると分かっていたようだった。

「なんかね、今日ずっとイアの血を吸いたくて……喉に噛みつきたいって気持ちが抑えきれなくて……」

「吸血を好む魔獣はたくさんいる……。その魔獣の血が混ざったのかも」

髪の毛の長い子ーーリーケがそう呟く。
ヴァンプはそれについても心当たりがあった。

「昨日の夜さ、普段ならここのコウモリに噛まれないのに、急にガブッと噛まれたんだよ。それで今日イアが来たら……って感じ」

「この辺の吸血コウモリ……ヴァンピール……かも」

「あたしと似た名前してるなあ……ははっ、運命を感じるよ……」

「恐らく死ぬことはないと思います。体が慣れてしまえば、そのまま生きていけるかと……。ただ血抜きをするには時間が経ちすぎていますから……」

ようするに、昨日噛まれてすぐに血抜きをしていればまだ人間でいられたのだ。
だが、それはもう遅い。
ヴァンプには吸血鬼として生きていくしか道はなくなった。
161 : ◆ZOSRNJGVq. [saga]:2021/05/02(日) 20:32:41.96 ID:6T9EbUHso
「イア」

「なあに?」

無垢な瞳を向けるイアに告げる。

「ここにはもう来ないで」

「な……!」

「あたしはこれからここを去る。人がいないところで、なんとか生きていくよ」

これ以上イアには心労をかけたくない。
それに、今でさえイアに襲いかかりたくて仕方ないのだ。

「このままこの村の近くにいると、イアの匂いを嗅ぎつけて襲っちゃいそうなんだ。だから……」

「……分かりました」

そう言い、イアはその場に座り込む。

「……私、ここに住みます」

「イア!?」

「私、ヴァンプさんのことが好きです! あなたと離れるくらいなら……私は、あなたに食べられてしまいたい!」

落ちている尖ったコウモリの骨を拾い、それを首の右側にあてがう。
そして、一息に引いた。

「イア……っ」

ヴァンプがイアに襲いかかる。
馬乗りになり、イアの首に顔を近づける。

「ぐ……ダメだ……! イア、あたしを突き飛ばして……!!」

葛藤するヴァンプに対し、イアは無言で上体を起こした。
そのまま正面から抱きしめて、血の流れる首筋をヴァンプの唇にくっつける。

「いいですよ、ヴァンプさん。飲んでください」

血を啜る音。
もうヴァンプは止まれなかった。

「じゅう、じゅるる……!」

「あッ……くう……!」

こくんこくんと嚥下されるイアの血。
イアは痛みより、自身の血を吸って泣いているヴァンプが可哀想で仕方がなかった。

「泣かないでください。私は幸せです……大好きなあなたのために命を分け与えることができるのですから」

「あたしは……あたしも……イアが好き……! なのに、イアの血を吸うのが止められないんだ……っ!」

その様子を見ていたゼーレ達三人は静かに踵を返す。

「……私達にできるのは診察だけです。これからのことはどうかお二人で決めてください」

ヴァンプは震える声で抗議する。

「これからなんて……イアはあたしが殺しちゃうのに! これからの話なんてできないよ!」

「……あなたが耐えて、血を抜ききらなければあるいは……」

その言葉で、ヴァンプの目の色が変わる。

「イア……」

「ヴァンプさん……」

再び首筋にかぶりつく。
今度は優しく。できる限り血を抜かないように。
二人はその日、ずっとくっついたままで夜を過ごした。

ーーーーー
162 : ◆ZOSRNJGVq. [saga]:2021/05/02(日) 20:33:10.39 ID:6T9EbUHso
翌朝。
清々しい朝日にヴァンプは顔をしかめる。
そしてその苦々しい表情に、イアはくすりと笑った。

「本当に太陽が苦手なんですね」

「……うん」

二人は乗り越えた。
ヴァンプの意思と、イアの愛で。

「ヴァンプさん、好きです」

「あたしも、イアのこと好きだよ」

優しく唇を触れ合わせる二人。
ファーストキスは血の味がしたそうな。

ーーーーー

ーーー



パチパチパチパチ。

場内に拍手が響く。
大学演劇部の発表会にて演じられた、吸血鬼の始まりの物語。
主役ヴァンプは私、水津凜華が。イアは音無舞が務めた。
私達二人の愛溢れる演技は好評で、発表会にて特別賞を賜る程だった。

「これ、クロエさんの台本なんですよね?」

「うん。なんでもゼーレさんに実際に取材したとか。同じチームを組んでそばで見てたけど、本当にすごい行動力だよ」

高校から付き合い始めた私達は、大学でも息ぴったりの演技を見せている。
一年次から主役に抜擢され、それでいて成績も残している。

「というか、あれなんですか! く、首に……!」

顔を赤くした舞が私に詰め寄る。

「ああ。あそこは急に噛みつかれるってシーンだったからさ。練習でしないことやったら急に噛みつかれた演技にリアリティが出るかなって」

「だ、だからって本当に噛み付くなんて……! もう! もうっ!」

ぽこぽこと叩かれるが、私は笑顔で受け流す。

「可愛かったよ、舞」

「うぅ〜〜〜っ……!」

きゅーんと大人しくなる舞。
赤い顔でくううと悔しがるのもとても愛らしい。
163 : ◆ZOSRNJGVq. [saga]:2021/05/02(日) 20:33:38.10 ID:6T9EbUHso
今日は遠い会場での発表会のため、ホテルへの遠征だ。
私達は二人で一部屋をあてがわれている。

「せっかくだし大浴場に行こうか?」

荷物を整理しつつ舞さんに声をかけると、舞さんが後ろから抱きついてきた。

「あんな……あんなことされたら……」

さらに強く押し込まれ、ベッドの上に倒れ込んでしまう。

「ドキドキしちゃうじゃないですかぁ……!」

潤んだ瞳で熱い息を吐く舞。
首筋を撫でると、びくりと背筋を反らす。

「……しよっか」

ここまで求められて無視をするようでは女がすたる。
愛しい彼女のために一肌脱ごうではないか。

「ちゅっ……ん……」

唇を寄せれば、素直に応じてくれる。
待ちわびて感度が高まっているのか、ぴく、ぴくと小さく震えるのも可愛らしい。

「ひゃ、凜華さ……っ」

正直、私には経験がない。
昨年の七月に付き合い始め、かれこれ一年近い。
それでもここまでの深い繋がりを求めたことは一度もなかった。
自分で言うのもなんだが、すこし清すぎる付き合いかもしれない。

「私、初めてだから……。不手際があったらごめんね」

せめて断りは入れておこう。
そして、できる限り優しく触れよう。

「脱がすね」

一枚ずつ舞の洋服を脱がせていく。
汗の匂いがこもった洋服から解き放たれた素肌はしっとりと湿っており、興奮からか体温も高まっているようだ。

「は、恥ずかしいです……」

自分の肩を抱くように体を隠す舞。
それによって下着に包まれた胸が形を変え、不意にドキリとしてしまう。

「舞、綺麗だよ」

そっとホックを外せば、小さな胸が震えて零れ出る。
頂点は期待からか、すでにぷっくりと膨れていた。
痛くないよう、柔らかな乳肉から触れていく。

「んっ、ふっ……!」

手のひらの中でぷにゅぷにゅと形を変える舞さんの胸。
大きいとは言えないけれど、女の子らしい柔らかさでいつまでも触っていられる。
周囲ばかりを触られて焦らされ張り詰めた頂点は、触られるのを今か今かと待ちわびているかのようだ。
そっと親指と人差し指で挟み、ぐっと持ち上げてみる。

「ひぅうっ!?」

悩ましげな息を吐いていた状態から一転、背筋をピンと伸ばして目を白黒とさせている。

「あっ、うぅ……!?」

突然の刺激に驚いたままの舞と目が合う。
ちょうど視線が合ったので、そのままキスをしてみる。
さらに混乱した舞は鼻から荒い息を吐くばかりで、口からは声にならない声が漏れている。

「んふぅっ、ん、んんぅっ!!」

背中に回された腕に力がこもっていくのを感じる。
震えが大きくなり、やがてーー。
164 : ◆ZOSRNJGVq. [saga]:2021/05/02(日) 20:34:12.42 ID:6T9EbUHso
「んぎゆっ、んっ! んんんんんんんんんっっ!!!♡♡♡」

ぎゅうううっと腕に強く力が込められる。
ゆっくりと力が抜けていき、唇を離したそこにはトロンとした表情で汗と涙とよだれにまみれた舞の顔があった。

「イ……イっちゃいました……♡」

未だに震えている腰をさすってあげ、逆転するようにゆっくりとベッドに押し倒す。

「もうちょっと動ける?」

「はい……♡」

舞台の上でイキイキとした演技を見せる舞が、私の下で素の表情を見せてくれている。
そのギャップが、私を燃え上がらせる。

「かわいいよ、舞」

するりと下着を抜き去ろうとすれば、透明な糸が引く。
すでに秘所は潤みきっており、てらてらと透明な汁でいやらしく光っていた。

「そ、そんなに見ないでください……っ」

ぐーっと腕を伸ばして私の頭を遠ざけようとする。
だがそれを無視して、さらに顔をそこに近づけていく。

「……ちゅっ」

「ひあっ!」

口づけると、腰を跳ね上げて反応してくれる。
逃げようとするのが可愛くて、あえていじわるしたくなる。
腰を押さえて、舌でぺろり。

「ひぐっ!」

足がぴくんと伸びる。
伸びた足を持ち上げ私の肩に乗せるようにして、再びそこを割り開く。

「やっ、み、見ないでくださいっ!」

くぱっと開いたそこは綺麗な桜色で、ひくひくと震えている。
もう一度唇をくっつけると、重力に逆らうように愛液が奥から溢れてきて唇の周りを汚す。

「あっ、ふわあっ!」

また腰が跳ねようとするが、それをさらに押さえつける。
おへその近く、子宮の存在する辺りに指を這わせてくにくにと刺激してみる。

「ひやぁっ!? はっ、それっ、ダメですぅ……っ!!」

息が断続的になり、苦しげに首を左右に振っている。
シーツを掴む手には思い切り力が入り、シワが深まっていく。

「じゅる……っ。イキそう?」

「は、ぃ……っ。もう……っ」

膣内に入り込んでいる舌が、彼女の収縮を感じる。
ぎゅううと深く締め付けてきたかと思えば、ふわりと優しく包み込んでくる。
だんだんとその締め付けが強くなってきて、限界の近さを悟った。

「いいよ、イって……! じゅるるるるっ!」

「ひっ! あっ! ふわああああああああああああっっ!!!♡♡♡」

背中を反らし、肩で抑えられた足もピンと伸ばされている。
白い喉がさらけ出され、びくびくと全身が痙攣する。
165 : ◆ZOSRNJGVq. [saga]:2021/05/02(日) 20:35:23.57 ID:6T9EbUHso
「あ、は、あ……っ♡」

落ち着いた彼女はぐったりと力が抜け、ベッドから動けそうにない。

「可愛かったよ。無理させちゃったけど、体は大丈夫……?」

「えへ、へぇ……♡」

額にちゅっと一つキスを落とすと、こくりと小さく頷きを返してくれた。
部屋に備え付けのシャワーからタオルを濡らして持っていき、舞の体を拭いていく。

すべすべで、体幹のしっかりした引き締まった肉体。
絶え間なく努力し、燃え上がる情熱を演劇に捧げ続ける彼女。
その肉体が、精神が、私に向けられる。私は幸せ者だ。
こんなにも素敵な女の子と引き合わせてくれた演劇という世界には、感謝してもし足りない。

「おやすみ、舞」

気づけば舞は気を失うように寝ており、穏やかな寝息を立てている。
風邪を引かないようシーツをしっかりとかけ、私もその横へと潜り込んだ。

これからも、彼女とより良い舞台を創っていこう。
見るもの全てを虜にしてしまうような、最高の舞台を。

万雷の拍手を夢見て、私も眠りへと落ちていった。
166 : ◆ZOSRNJGVq. [saga]:2021/05/02(日) 20:35:59.88 ID:6T9EbUHso
ヴァンパイアの始祖の話と、凜華と舞のアフターでした
167 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/03(月) 13:03:26.26 ID:VgfKJqg60
アートルム時代の掘り下げ良いな
ここまで来たら間空けつつ全部見たい
168 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/03(月) 14:45:42.52 ID:vPR5K1TiO
イリノワのその後とか気になるな
悪魔がどうなったかとか
169 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/03(月) 17:39:47.02 ID:5/J9WhSwO
確かに魔界がどうなったのかは気になる所、無理に描写する必要はないとも思うけど
170 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/03(月) 17:43:33.25 ID:d4ffNOtDO
作中で描写がなかったキャラの誕生日イベントとかどうだろう?
171 : ◆ZOSRNJGVq. [saga]:2021/05/03(月) 20:15:22.03 ID:Ume28GvFo
皆さんたくさんの小ネタ案ありがとうございます
おかげで楽しく想像しながら書かせていただいてます!
172 : ◆ZOSRNJGVq. [saga]:2021/05/03(月) 20:15:54.56 ID:Ume28GvFo
エピソードゼロ
  楓と嵐のある夜

「はい、はい……ありがとうございます」

楓のママさんがペコペコと電話口で頭を下げる。
その視線は心配そうに私の……横、ベッドで眠る楓に向けられている。

「嵐ちゃん、楓の病気はね……吸血鬼だけがかかる病気なの。あたしのかかりつけのお医者さんに聞いても……」

その先は言わなかったが、なんとなく分かってしまった。
きっと、治らない病気なのだ。

「ママ、とりあえずおばあちゃんのところに行こう。私がホウキで飛ばすから、乗って」

「うん、お母さんお願い。嵐ちゃん、少しの間楓のことお願いしてもいい?」

「う、うん!」

私は楓のことが大好きだ。
楓が死んじゃうなんて耐えられない。

バタンと扉がしまって家の中に静寂が広がる。
楓の様子を見てみると、苦しそうに呼吸を繰り返していた。

「かえで……大丈夫か……?」

そっと話しかける。
まぶたがぴくりと開き、ボーッとした瞳が私を見つめた。

「だいじょーぶだよ、らん……」

どう見ても大丈夫じゃない様子で、でもなんとか心配をかけまいとそう言う楓。

「何かしてほしいこととか……そ、そうだ、何か食べるか?」

「……あのねえ、あたし、分かるんだあ」

ぽわぽわとした口調で、何でもないことのように楓が語り始める。

「もう死んじゃうんだ、あたし」

にこりと力なく笑う楓。
かあっと頭に血が上るのを感じる。

「そんなこと言うな! 絶対に死なないからっ! 今楓のママもお母さんも一生懸命頑張ってるから、楓も諦めるな!」

必死にまくし立てても楓の表情は変わらない。
力なく、弱々しく笑うだけだ。
173 : ◆ZOSRNJGVq. [saga]:2021/05/03(月) 20:16:24.39 ID:Ume28GvFo
掛け布団を捲り、私もそこに入り込む。

「ら、らん……?」

「わたしも一緒に寝る。添い寝は病気に効くんだよ」

もしかしたらそんなことはないかもしれないが、風邪を引いたとき、ママが添い寝してくれてすぐに治った記憶がある。

「らんなんかに治せるかなあ」

くすくすと小さく笑う楓。
ムッとしてさらに体を近づけてやる。

「お……俺なら大丈夫! 絶対に治してやるから!」

「俺?」

「そ、そうだ! 俺は嵐だ! つ、強くてかっこいい嵐だ! だから楓の病気くらい、俺が……!」

自分でも何を言っているか分からない。
でも楓を元気づけるために、強い俺が守るから楓は大丈夫だと思ってほしかった。

「じゃあ、このまま……一緒に寝よう……」

「お、おうっ」

ぎゅうっと楓を抱きしめる。
少しでも不安がなくなってくれと願いながら。

「大丈夫、だいじょうぶだからな、楓」

ぽんぽんと背中を叩く。
ゆっくり、ゆっくりと。

「ん……あり、がと……」

やがて、すうすうと寝息が聞こえ始める。
着込んで寝ているはずの楓の足は冷え切っており、そこに自分の足を絡ませる。
まるで一人だけが布団を被っているかのように見えるほどくっつき、やがて俺も眠りに落ちていった。
174 : ◆ZOSRNJGVq. [saga]:2021/05/03(月) 20:17:01.92 ID:Ume28GvFo
ゆさゆさと揺すられて、眠っていたことに気がつく。
目を開けると、目の前には楓はいない。

「か、楓……!?」

ばっと体を起こせば、楓はそこにいた。

「お、起きた」

しっかりと両の足で立っており、顔色も良く見える。

「楓ぇ……!」

「嵐ちゃん、ありがとう。あなたが一生懸命看病してくれたから間に合ったわ」

楓のママさんが机の上にある薬を指し示す。
おばあちゃんに急いで調合してもらったという吸血鬼用の薬らしい。
一時的に吸血鬼の力を上昇させるもので、それを使ったようだ。

「楓はまだ小さいから、おばあちゃんの調合でも上手くいくか分からなくて……でも嵐ちゃんが看病してくれたから、楓の生きる気力がすごくて」

なんでも、楓のかかっていた病気は弱い吸血鬼には乗り越えられないものだという。
それを薬の力で乗り越え

「嵐のおかげだよ! ありがとね!」

楓ががばっと抱きついてくる。
抱きとめてその体温を感じると、なぜだか涙がポロポロと溢れてきた。

「よかった……よかったよぉ……!」

「おー、泣くな泣くな」

寝る前とは違い、楓が俺の背中をぽんぽんと叩いてくれる。

「俺……本当に楓が死んじゃうかと思って、怖くて……!」

「嵐の体温を感じてたら気持ちよくってさあ。死んでられないなーって思って」

楓の手が止まらない。さすさすと優しくさすってくれる。

「俺……?」

楓のママさんが不思議そうに俺を見る。

「そうそう、嵐は強くてかっこいいからね! 自分のこと俺って言うんだって!」

俺が何か言う前に、楓がぺらぺらと話してしまう。
ママさんはそうだったのと笑い、微笑ましそうだ。

「ま、まあな。俺がこれからも楓のこと守ってやるから、かっこ悪いところは見せられないよな」

顔が熱くなるのを感じる。
だがもう後には引けなくなってしまった。
これからは自分のことを俺と言わなければならないのだろう。

「へへっ。かっこよかったぞ、嵐」

それでも、楓の笑顔を見られるのならまあいいかと思ってしまう俺がいるのだった。

ーーーーー

ーーー

175 : ◆ZOSRNJGVq. [saga]:2021/05/03(月) 20:17:35.70 ID:Ume28GvFo
「おーい、嵐ー?」

スタジアムの控室。
少しうとうとしていたらしく夢を見ていたようだ。

「悪い、ちょっと寝てたみたいだ」

「昨日遅くまで敵チームの情報調べてたもんな。眠気は大丈夫か?」

晶が心配そうに声をかけてくれる。
頬をぺちぺちと叩いて気合を入れれば、目はしゃっきりと覚めてくれた。

「おう! 俺に任せとけ!」

「頼もしいねえ。よし、行こう!」

楓にポンと背中を叩かれ控室を出る。

さあ、今日も楓のために頑張ろうじゃないか!
176 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/04(火) 19:20:14.31 ID:LJHMxFaHO
何らかのきっかけがあって口調とかが変化したシチュほんとすき
ついでに言うと口調が一時的に前のに戻るとかもすき
177 : ◆ZOSRNJGVq. [saga]:2021/05/04(火) 21:12:42.66 ID:Vzc6LrPso
エピソードアフター
  紅林御桜の日常


「ごきげんよう、ラクリマさん」

「おはよ〜」

紅林御桜の一日は、同室のラクリマに挨拶をするところから始まる。
今まで使用人に任せていた着付けも今では慣れたもので、すいすいと難なく制服を着込んでいく。
さて、制服に着替えたあとは朝食だ。
リリウムには大きな食堂があり、大抵の生徒はそこで朝昼晩の食事を摂る。

「和風朝食セットとサラダをお願いします」

「はい、和風とサラダね」

御桜が頼んだのは、生まれの故郷の朝食にほど近い和風朝食セットだ。
よく焼けた魚に、大根おろし。卵焼きと味噌汁も付いてくる。そして……。

「うっ、またそれ食べるの?」

近くに座ったラクリマが顔をしかめる。

「はい。納豆は美味しいですからね」

粘ついた豆と多数の生徒に認識されている納豆と呼ばれるソレは、ごく一部の生徒には大人気のようだ。
匂いや食感、見た目や匂い、あと匂いなど様々な理由によって敬遠されがちだが、これが中々癖になるらしい。

「ごちそうさまでした」

追加のサラダまでもぺろりと平らげ、優雅に頭を下げる。

「御桜さんは食事の挨拶もしっかりしてて偉いわねえ」

お皿を下げに窓口まで向かうと、向こうから料理人のお姉さんが話しかけてくれた。
やはり挨拶してくれる子はなんとなく顔も覚えてしまうようで、厨房ではもっぱら紅林さんいい子よねえと話されているとか。
それにも笑顔でありがとうございますと返事をし、一度寮へと戻る。

さあ、これからは学生の時間である。
寮で時間割を確認し、必要になる教科書や授業道具を用意。そしてそれから校舎へと向かっていく。
さて、教室へ入れば授業の時間だ。教科書を広げ、先生の話を聞く。
小学校の頃は家庭教師と学校の先生を混同してしまい、授業中にも関わらず先生をずっと侍らせていたこともあるが、今はそんなことはしない。

「先生、質問があります」

分からない時には手を上げ、短い質問にまとめる。
それに対しての返答をノートに書き込み、それでも分からなければ授業後に改めて聞く。
それが他者への配慮が行き届いた授業の受け方だと学んだのだ。
178 : ◆ZOSRNJGVq. [saga]:2021/05/04(火) 21:13:11.07 ID:Vzc6LrPso
さて、一通りの授業を終えると放課後だ。
他クラスに顔を出すと、シェリル・オルゼラリアと目があった。
今日はマホリオの連携確認のため、他チームと模擬戦をする予定があるのだ。

「御桜、エルクは?」

「まだ見かけてません。先にグラウンドへ行ったのでしょうか」

シェリルが荷物をまとめ立ち上がる。
合わせて歩きだし、雑談をしながらグラウンドへ向かう。

「あ、あの、紅林先輩……っ」

その途中、見知らぬ下級生から声をかけられる。
この子は新一年生だろうか。
ういういしさと緊張をないまぜにした表情で見つめられ、できる限り優しい声で答える。

「どうしました?」

「そ、その……私、茜ちゃ……あっ、久遠選手のファンで……っ!」

そこまで言われれば、なんとなく望むものも分かる。
というより、御桜が久遠茜の妹であると知って接触してくる人のほとんどの要求は同じだった。

「それで、紅林先輩が久遠選手の妹って聞いて……その……!」

「サイン、ですか?」

「は、はいっ! その、ダメでしょうか……?」

捨てられた子犬のように悲しげな瞳をする一年生。

「大丈夫ですよ。私から姉に掛け合いますね」

ぱあっとその表情が明るくなる。
名前とクラスを控え、数日後にサインを渡す約束をしてその場は別れた。
ありがとうございますと元気にお辞儀をし、一年生の子は廊下を走っていく。

「……お前、そんなに安請け合いしていいのか? 妹からのお願いとはいえ、相手はトッププロだろ。サインを書いてもらえるとは限らないんじゃないか」

シェリルが怪訝な顔で御桜に聞く。

「いえ。茜お姉ちゃんに関しては大丈夫です。私がお願いしたら絶対書いてくれますから」

「……すごい信頼関係だなあ」

ぽつりとそんな感想を呟くシェリル。
そんなこんなでグラウンドにたどり着くと、すでにエルク・メルトルは一人アップを始めていた。
179 : ◆ZOSRNJGVq. [saga]:2021/05/04(火) 21:15:15.13 ID:Vzc6LrPso
「お、エルク。早いな」

「ホームルームが早く終わったので。先に来てアップだけしてました」

体を軽く動かし、魔力の放出が問題なくできるか確認する。
試合が始まってから違和感を感じては、相手にも失礼だというエルクなりの配慮だった。

「お相手さんも来たみたいだな」

御桜と同室のラクリマに続き、学内一の実力者との呼び声も高いぜレス・ケルキオン。そしてその恋人であるステラ・ステラがやってきた。
学内ワンツートップの模擬戦ということで観客もいる。
恥ずかしくない戦いにしようと誓い、空に舞い上がる。
ゼレスさんの光と、エルクさんの闇がぶつかって弾けた。

ーーーーー

ーーー



試合はゼレスさんチームの勝利で幕を閉じた。
互いのチームの健闘に、観客からも拍手が送られる。
汗が冷えない内に解散した彼女達は、思い思いの方向へと別れていった。

御桜はと言うと、寮へと一足先に戻ってきていた。
ラクリマがまだ戻ってきていないことを確認すると、先にシャワーを浴びるというメッセージを送ってから、寮の各部屋に備え付けられたシャワールームへと入っていく。

「ふう……さっぱりしました」

その後は食堂に出向き、夕ご飯を食べる。
時刻が19時を回った辺りで寮へと再び戻り、今日のプロのマホリオの試合結果を確認していく。
もちろんまだ試合をしているチームもあるが、お目当てのチームは終わっているようだった。
電話帳から姉の名前を探してタップし、電話に出るのを待つ。

「もしもし〜?」

「もしもし、お姉ちゃん? 学校の後輩にサインを頼まれたんだけど……」

「分かった〜。名前ちゃんと書きたいから、メッセージで送って〜」

「うん。お願いね」

それだけの会話で電話を切る。
次いでメッセージアプリを起動し、先程控えた一年生の名前を送信する。

茜は御桜が紅林家を継ぐことになったことに対して、未だに罪悪感を持っているらしい。
それこそ嫁いだ当初は「何かできることがあったら言ってね」と念を押されてばかりだった。
今でこそそのようなことは言わないが、このように何か頼めば二つ返事でOKしてくれる。

御桜は母もママも大好きだし、姉である茜のことも大好きだ。そして歴史ある紅林家の一員であることに誇りを持っている。
だから茜が嫁ぎたいと言ったときも応援したし、自分が後継者になることに引け目も感じなかった。
だが、そのせいで茜は妹に重荷を背負わせることになってしまったと感じているようで、未だに妹に対して甘々なのだ。
180 : ◆ZOSRNJGVq. [saga]:2021/05/04(火) 21:17:57.88 ID:Vzc6LrPso
御桜自身は姉に何かしてほしいと思ったことはほとんどない。
たまにスタジアムに観戦に行ったときに顔を合わせて、ジュースを買ってもらうくらいのものだ。
だがそれだけでは茜の気が収まらないらしいので、こうして頼み事をする口実ができると御桜の方も助かるようだ。

「お姉ちゃんは自由に生きているのが似合うんですけどね……」

メッセージアプリの画面を見ながらポツリと零す。
昔から自由気ままで、魔法の才能にも溢れ、挙げ句運動も大好き。
そんな姉を昔からそばで見ていた御桜は、今の『久遠茜』が大好きだった。
悔しいが、紅林から離れたことでさらに自由になったように見える。
だからこそ茜が御桜に負い目を感じている今の状況を、御桜自身は少し好ましく思っていないのだ。

「さてと」

改めて本を開く。
学校の授業で使ったのとは全く違う、実社会で戦い抜くための教養を育むもの。
紅林家は古くから、華道の名家として知られている。
その家元の娘として、無知なままではいられない。

「ただいまー」

ガチャリと寮の扉が開き、ラクリマが入ってくる。
机の上に広げられた本を見て、お勉強してる! と感嘆の声を上げた。

「御桜さんってさ、入学当初は世間知らずって感じで危なっかしかったけど、最近すっごくかっこいいよね!」

「そ、そうでしょうか。ハッキリ言われると照れますね」

少し頬を赤く染める。
その後一言二言会話を交わし、ラクリマはシャワールームへと向かっていった。
さあああという水音をBGMに、本の内容を頭に入れていく。

やがてシャワーから上がったラクリマも、今日の復習を始めた。
カリカリと部屋の中にペンの音が響く。
そして一段落が付いたところで互いを労ってベッドへと入るのだ。

これが彼女、紅林御桜の日常。

紅林家、次女。紅林御桜。
その名に恥じない桜の魔法を持つ少女。
大輪の花を咲かせるその日まで、彼女は成長することをやめないのだろう。
181 : ◆ZOSRNJGVq. [saga]:2021/05/04(火) 21:18:24.68 ID:Vzc6LrPso
紅林御桜の何でもない一日の様子でした
182 : ◆ZOSRNJGVq. [saga]:2021/05/05(水) 23:57:38.17 ID:c6AsUwSAo
エピソードアフター
  進級した一年生達のお話


やよい「ふわぁ……」ノビー

やよい「ポメちゃん、朝だよ」ユサユサ


ポメ「!」パチッ!

ポメ「おはよ、やよい!」


やよい「寝覚めがいいねえ」ナデナデ


ポメ「えへへ〜」ニコニコ


やよい(ちなみに毎日のように同じベッドに入られてます)ナデナデ


ポメ「やよいあったか〜い」ギュー


やよい「着替えて朝ごはん食べに行こっか」


ポメ「うん!」


ーーーーー

ーーー




食堂ーー


ロロナ「……あむっ」パクパク


「きれー……」 「かっこいいよねー……」


ロロナ「……むぐ……」


シエラ「ロロナ、隣いい?」


ロロナ「う、うん。どうぞ……」


シエラ「浮かない顔してるわね。何かあった?」


ロロナ「な、なんか最近人に見られてる気がして……」


シエラ「ああ。あなた一年生から人気だもの。それじゃない?」カチャカチャ


ロロナ「な、なんでっ? わ、私なんかそんな……」


シエラ「遠くから見ても分かる長身。肌も白いし、目もキレイ。憧れるなっていうのも無理な話よね」モグモグ


ロロナ「ううぅ……」モグモグ


ーーーーー

ーーー

183 : ◆ZOSRNJGVq. [saga]:2021/05/05(水) 23:58:05.37 ID:c6AsUwSAo
音楽室ーー


カーム「ラァー♪」


レティス「ラー♪」


カーム「朝から一人で発声するの寂しかったので、レティスさんが誘ってくれて嬉しいです」


レティス【私もすぐ声を出せるようにしないといけないから。のどのチューニングは大事】グッ


カーム「ですね。今日はポメさんは……」


ポメ「おはよー!」ガチャッ!


カーム「あ、来ましたね」


やよい「魔法の調整を兼ねて練習するんだって昨日から楽しそうだったよ」


ポメ「カームの歌声とレティスの声が聞けるんだもん! 嬉しいよ!」


カーム「ふふっ。では早速魔法の調整に入りましょうか」


ガチャッ


ロロナ「あ、み、みんないた……!」


シエラ「ロロナが下級生から見られて恥ずかしいんだって。ここで授業まで時間つぶしてもいい?」


レティス【もちろん】


カーム「それでは……こほん」

カーム「……ラァー♪」


レティス「ララー♪」


ポメ「うー、うちも歌いたくなってきたー! ララー♪」


やよい「それじゃあ私も一緒に♪ ラー♪」


ロロナ「わ、私もいいかなぁ……。ララー……♪」


シエラ「……なら私も。ラー♪」


一年生組……現二年生組の6人は、いつも楽しそうに笑顔が耐えない集団として、学校でちょっとした話題になっているそうな。
184 : ◆ZOSRNJGVq. [saga]:2021/05/05(水) 23:58:37.77 ID:c6AsUwSAo
エピソードアフター
  時雨と黒騎士、邂逅する


神社仏閣の密集地ーー


???「暑いな……」

???「……ああ、そこの人」


「はい?」


???「このような人を見たことはないだろうか」ピラッ


「似顔絵……ですか? すみません、ちょっと分かりません」


???「そうか……ありがとう」


「いえ、お役に立てなくてすみません……」


???「ううむ……ここで立ち合ったような気がするのだが……」


ーーーーー


???「失礼する」


「!」


ざわっ!


???(空気が重い……。あまり歓迎されていないようだな)

???「すまない、尋ね人の行方を知りたいのだが。このような人相だ」ピラッ


「……少々お待ちください」


???「ああ」


「時雨さん、客人です」


時雨「客? 私に……?」


???「ああ! ここにいたのか!」


時雨「お、お前は……。あの時の騎士……か……?」


???→黒騎士「ああ! 貴殿との一騎打ちの後、体内の悪意が全て抜けたようでな。闇として空中分解し魔界に消え去るはずが、どういう訳か現世に転生してしまったらしい」


時雨「り、理屈は分からないが……。巫女さん、彼女に病院を案内してくれ」


「で、ですがその人はこの地に攻めて来た敵で……!」


時雨「現状あの続きをしようという気概は感じられない。それより本当に悪魔化が解けているのか検査してもらおう」


「……分かりました」


ーーーーー

ーーー

185 : ◆ZOSRNJGVq. [saga]:2021/05/05(水) 23:59:22.93 ID:c6AsUwSAo
病院ーー


黒騎士「しかし、時雨はなぜここに? 聞けば故郷という訳でもないようだし……」


時雨「検査結果待ちなのに元気だな……」


黒騎士「どう時間を過ごそうが検査結果は変わらないからな。だったら時雨との会話を楽しむ方がいい」


時雨「それもそうか。……私がここにいたのは修行のためだよ。この地にはたくさんの神社や寺社がある。精神力を鍛え、魔法に頼らない部分を強くするにはうってつけの土地なんだ」


黒騎士「ほう……」


看護師「早川さん、結果が出ました。こちらへ」


時雨「ああ」


ーーーーー


医者「結論から伝えると、彼女の中には危険なものは何もありませんでした。言ったとおり、全ての悪意が抜け落ちたようです」


黒騎士「だろう」フフン


時雨「そうですか。よかった……」


医者「……申し訳ありませんが、受診したことを報告させていただいてもよろしいでしょうか?」


黒騎士「報告?」


時雨「魔法庁に、ですよね。お願いします」


黒騎士「ん、ああ。元悪魔がいたことは共有しないとなのか……。手間をかけるが、頼む」ペコリ


医者「そう言っていただけると助かります。では後のことはこちらで処理します。連絡がいくかと思いますが、その点だけ忘れずにお願いします」


時雨「はい」


ーーーーー

ーーー

186 : ◆ZOSRNJGVq. [saga]:2021/05/05(水) 23:59:58.34 ID:c6AsUwSAo
時雨「連絡は私にくるようになっているから……しばらく私と同行してもらうぞ」


黒騎士「ああ、他に頼るアテもない。こちらから同行を頼みたいくらいだ」


時雨「……まあ、魔王でさえ監視付きとはいえ罰も無かったわけだし、多分問題にはならないだろう」


黒騎士「そうか、それは助かるな」


時雨「さて、黒騎士。これから私はまた修行に行くが……」


黒騎士「時雨」


時雨「?」


黒騎士「先程から言おうと思っていたが、私の名前は黒騎士ではない」


時雨「……そうだな。なんとなく流れで呼んでしまっていた」


黒騎士「私の名は……」


ぐいっ


黒騎士「……だよ」ボソッ


時雨「……そうか。素敵な名だな」ニコッ


黒騎士「ふふっ。今この世で私の名前を知っているのは時雨だけだ」


時雨「光栄なことだ。……さ、とりあえず私の修行の続きに向かうぞ」

時雨「あなたの騎士道精神や刀剣の捌き方、見習いたいことがたくさんある」


黒騎士「ならば私も共に修行しよう」ニッ


時雨「ああ、共に」ニコッ
187 : ◆ZOSRNJGVq. [saga]:2021/05/06(木) 00:01:21.62 ID:n5UpK9a5o
短くなってしまったので二本投下しました
仲良し二年生組と、転生した黒騎士のアフターでした
188 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/06(木) 00:58:39.18 ID:eV1bjDMlO
御桜みたいにそのキャラの1日に迫るやついいね、ノワールも本編で似たような安価があったか

各学年から一人ずつポメ、ゼレス、ティアでリクエストしてみたい
189 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/06(木) 08:54:38.87 ID:uMcTFwX1O
時雨って黒騎士に対して『綺麗な顔だ』『素敵な名だな』ってナチュラルに口説くような発言してるけど性知識は皆無なんだよな……
これ仮に黒騎士とそこまでの関係に進んだ場合、黒騎士の知識にもよるけどほぼ確実に受けに回りそう
190 : ◆ZOSRNJGVq. [saga]:2021/05/08(土) 00:05:15.99 ID:FKwsiSxAo
エピソードアフター
  イリスとノワール、悪魔を世話する


リリウム魔法学校を卒業した私達はそれぞれの道を歩むため、各々の通学に適した場所に住むことになりました。
私はママの研究室に戻り、イリスさんは学生に格安で案内されているアパートへ。
そして私達共通の知人(?)でもある悪魔が一体……。

「おはよう、悪魔ちゃん」

「お、おはよウ」

私のママに笑顔で見つめられ萎縮していました。
ママは今現在、魔力が少ない魔法使いのための研究をしています。魔力を増幅させるとか、魔力を循環させるとか、いろいろなことを試しているそうですが、それとこの悪魔を引き取ったことは実は全く関係ありません。

「んー、かわいいわあ」

嫌がる悪魔の頭を撫でるママ。
なんとママは、この悪魔さんを愛玩するものとして引き取ってしまったのです。

「あうウ……イリス、助けてくレ……!」

むにむにと頬を揉まれている悪魔さんが私に助けを求めてきます。
そこで初めて私がママを止めます。

「はい、ママストップ。今日はここまでね」

「えー」

やんややんやと盛り上がってる間にも時間は過ぎていきます。
朝ごはんを食べ、ママは研究室へ。
私は今日の講義が2限目からなので、まだ少し出発まで時間があります。

「悪魔さん、毎朝大変ですねえ」

「今からでもノワールのところにいきたイ……」

「ダメですよ。ノワールさんのところはペット・魔獣禁止ですから」

「だかラ! 俺はペットでも魔獣でもなイ!」

ぷんぷすと怒る悪魔さん。
このやり取りも恒例になりつつあります。
その時。

ぷるるるる。ぷるるるる。

電子音が鳴り響きました。発信源は私のス魔ホのようです。

「もしもし」

『もしもし、イリス?』

電話をかけてきたのは、ノワールさんでした。
聞けば向こうも毎週この曜日は2限目からで、朝は時間があるそうです。
そこで私達は、毎週決まった時間にテレビ電話をすることを約束しました。

うまく悪魔さんが画面に入るように位置を調整して話します。

「悪魔さん、またママにほっぺたを揉まれてたんですよ」

『あはは。災難だったね』

「全くダ!」

「ふふっ。私もけっこう可愛いと思いますよ」

そばにいる悪魔さんの頭をなでなで。
可愛がられるのが嫌なのか、悪魔さんはうがーっと怒りました。

『なんだかんだ仲良くやってるみたいでよかったよ。……でもちょっと羨ましいな』

「?」

『毎日イリスに会えて、しかも今なんて頭も撫でてもらってさ。悪魔にヤキモチ妬いちゃいそう』

「ノワールさん……」

突然の愛らしい発言に胸がキュンと高鳴ります。
191 : ◆ZOSRNJGVq. [saga]:2021/05/08(土) 00:06:04.25 ID:FKwsiSxAo
「ん、んンっ」

こほんとわざとらしい咳払いを悪魔さんが一つ。
ノワールさんに愛の言葉の一つでも囁きたかったのですが、阻止されてしまいました。

「お前ラ、いちゃつくのはいいけど時間は大丈夫なのカ?」

はっとして時計を見ると、家を出る時間が差し迫っていました。
ノワールさんとの電話は時間を忘れてしまいます。

「それじゃあノワールさん、また」

『うん。あ、後でメールするね』

「はい♪」

ぷつっと電話を切り、慌てて準備に取り掛かります。
昨日の内に片付けた課題をカバンにしっかりと入れ、私は大学へと向かいました。

ーーーーー

ーーー



夕方。私は上機嫌で帰路についていました。
というのも、今日届いたノワールさんからのメールに理由があります。

『今度の連休、会えない?』

もちろん会えますと返事をして、仔細なスケジュールまで決めました。
その日のことを考えるだけで今から気分が良くなってしまうのです。

「ふんふ、ふ〜ん♪」

ついつい鼻歌も飛び出してしまいます。
入学前に比べて発声方法もしっかりしてきたおかげか、すーっと高い音まで出てくれます。
るんるん気分で帰宅すると、ママが出迎えてくれました。

「おかえり、イリス。なんだかご機嫌ね?」

「うん! 実は今度の連休ノワールさんとお会いすることになったの!」

「あらあら。うちにも来るのかしら」

「うん、その予定」

なら腕によりをかけておもてなししないとね、とママまで楽しそう。
……二年前の事件が終わってから、ママはとても楽しそうに笑うようになった。それまで私達はとても家族とは呼べないような関係で、言うなれば科学者と被検体でしかなかった。
だから今のよく笑うママが見れるようになって、私はすごく嬉しい。

「ママ、大好きだよ」

一瞬ぽかんとした顔を浮かべましたが、すぐににっこりと笑いました。
そして私のことを正面からぎゅっと抱きしめます。

「私も大好きよ、イリスちゃん」

今ではとても幸せな家族として、毎日を一緒に過ごしています。
この時ばかりは悪魔さんも黙っていてくれて、空気の読める悪魔さんに感謝してしまいました。

ーーーーー

ーーー

192 : ◆ZOSRNJGVq. [saga]:2021/05/08(土) 00:06:53.58 ID:FKwsiSxAo
祝日。お昼時の少し前。
私は駅にノワールさんを迎えに来ていました。

「あ、いたいた!」

「ノワールさん!」

ノワールさんを見つけると早足で駆け寄り、人目も憚らずにぎゅっと抱き合いました。
久しぶりに感じるノワールさんの体温は心地よく、ずっと抱き合っていたいとさえ思ってしまうほど。

「イリス、まずご飯食べに行こっか」

手のひら同士を絡み合わせ、俗に言う恋人繋ぎで歩き始めます。
洋食屋で軽くランチを済ませた後は、ケーキショップにも寄りました。
そこでノワールさんは低糖質と呼ばれるものを頼んでいて、なんとなくスポーツマンらしさを感じたり。
興味本位で腹筋を触らせてもらったら、以前にも増して固くなっていました。

「体育会系って皆さんこうなんですか?」

「うーん、まあ大体は。私は格闘技を覚えるのと筋トレのためでそれぞれ別のジムにも通ってるし、余計筋肉ついてるかも」

袖をまくって二の腕を露出させれば、ぐっと力を入れるのと同時に力こぶが盛り上がりました。

「わあ……♡」

そのワイルドさに胸が高鳴ります。

「触る?」

「は、はいっ」

恐る恐る手を伸ばせば、カチカチとした感触が返ってきました。
スタイル維持のためにストレッチなどはしていますが、その程度では到底及ばない筋肉量にときめいてしまいます。

「そんなに気に入ってくれたならトレーニングしてるかいがあるな」

にっこりと笑うノワールさん。その笑顔にさえ、以前とは違う力強さを感じられそうです。
ドキドキと高なる胸を抑えながら、私達は我が家へと向かいました。

ーーーーー

「ただいまー」

「おかえりなさい、イリスちゃん。ノワールちゃんもいらっしゃい」

「お邪魔します」

ぺこりと頭を下げて、それから玄関をくぐるノワールさん。
声が聞こえたのか、奥の部屋から悪魔さんがやってきました。

「オ! ノワール!」

ぴょんとノワールさんに飛びつけば、古くからの友人とそうするように、ノワールさんと自然にハイタッチをしていました。

「久しぶりだね。元気してた?」

「おウ! セレニテも美味しいご飯作ってくれるシ、イリスも毎日お話してくれるからナ!」

ニシシと歯を見せて笑う悪魔さん。
迷惑そうな態度を取っていても、本音はそうでなかったと知れて一安心です。
193 : ◆ZOSRNJGVq. [saga]:2021/05/08(土) 00:07:36.05 ID:FKwsiSxAo
「うーん……」

大好きな悪魔さんから褒められたというのに、ママは少し思案顔。
どうかしたのかと問えば。

「なんとなく、なんだけどね。ノワールパパが久しぶりに家族に顔を見せたみたいな雰囲気だったから、中々お似合いだなあって」

「ぱ……パパ……!?」

ノワールさんがかあっと顔を赤くします。
ここは乗っかるところでしょうか。

「ですって、あなた」

すすすとすり寄って腕に抱きついてみます。
腕に胸が当たっていますが、気にせずむにむに。

「あ、う、あ……!」

さらに赤くなった顔で、口をパクパクとさせるノワールさん。
先程まではあんなにかっこよかったのに、今では可愛らしくて仕方ありません。

「ノワールパパ! せっかくだかラ、お部屋でゆっくり話そウ!」

私と悪魔さんに腕を引かれるまま、奥の部屋へ。

セレニテママとノワールさんは、まるで本物の親子のように仲良くなりました。
そしてノワールさんと私は、傍から見れば……ふ、夫婦に見えるようです。
では、悪魔さんも交えて本物の家族にも負けないほど幸せになりましょう!

そんな可笑しなことを考えてしまいます。
それも悪くないなと思えるのは、今が平和で幸せだから。

「大好きですよ、ノワールさん」

立ち止まり、そっと頬に口づけを。
愛おしいあなたと、これからも一緒に生きていきたい。
そんな想いを込めて。

そして日々は続いていく。
明るく色づいた、素敵な日々が。
194 : ◆ZOSRNJGVq. [saga]:2021/05/08(土) 00:08:18.47 ID:FKwsiSxAo
悪魔「いい雰囲気だけド、俺の今後って結局どうなってるんダ?」


イリス「あ、え、えと、そうですね……」


ノワール「た、確か……魔王とか黒騎士とか、敵意が認められない元悪魔が何人かこっちの世界に残ってるんだよね」


イリス「そうですね。その人達は暴走した時に備えて、ある程度の期間見張りがつくみたいです」


悪魔「俺はまだまだ根っからの悪魔だゾ!」エヘン


ノワール「でもだいぶ馴染んでるし……。確か悪魔って、ずっと人間界にいると毒素が薄れてくんだよね?」


イリス「そんな研究成果もありますね。クロエさんのお母さんが悪魔でしたけど、調べたところだいぶ人に近くなっていたとか」


ノワール「多分、悪魔としての力が強いほど、毒素が抜けるまで時間がかかると思う。でも君は……」


悪魔「よ、弱いのは承知ダ」


ノワール「うん、だからもしかしたらすぐ毒素が消えるかも。憶測だからなんとも言えないけど……」


悪魔「俺が感じる限リ、魔界の方は無秩序の混沌とした前の世界に元通りみたいダ。あの状態だと俺はいつ死ぬか分からないシ……もう、こっちの世界で生きていく覚悟を決めたヨ」


ノワール「そっか」


イリス「それじゃあこれからもよろしくですね、悪魔さん」


悪魔「おウ!」ニッ!
195 : ◆ZOSRNJGVq. [saga]:2021/05/08(土) 00:09:00.69 ID:FKwsiSxAo
以上、イリノワと悪魔のアフターでした
196 : ◆ZOSRNJGVq. [saga]:2021/05/09(日) 00:41:15.02 ID:52YqjKjNo
エピソードアフター
  ポメ・ラニアンの一日


「ポメちゃん、起きて」

「ん〜、おはよ〜」

ユサユサとゆすられて目が覚める。そこにはやよいがいて、自然と笑顔になってしまう。
同じベッドで寝ているので、寝起きから暖かくて幸せだ。

「おはよう、ポメちゃん」

やよいもにっこりと笑って、一緒にベッドから出る。
うちは昔から早起きだったし、寝起きも悪くない。でもやよいには敵わない。
一緒のベッドで寝たとき、やよいより早く起きることができたためしがないのだ。

「? 顔に何かついてる?」

ぺたぺたと自分の顔を触るやよい。
それに何でもないよと笑って返して、二人で学校の準備を進めていった。

ーーーーー

放課後、うちは厩舎に来ていた。
なんでも、ローラ先輩がいなくなってから魔獣のストレスが溜まってしまっているらしい。
そこでうちが名乗りを上げて、魔獣のお相手をすることにしたのだ。

「獣化魔法【ビースト】!」

もふんと獣化をして魔獣の前へ。
物珍しそうに、みんながふんふんを鼻を鳴らして嗅いでくる。
やがて慣れてきたのか、何匹かの魔獣が頭を摺り寄せてきた。
怖くないように、そっと背中を撫でていく。

「あら……。その子なんかは特にローラさんが大好きで、最近は怒ってばかりだったんだけど」

うっとりと気持ちよさそうに目を細める魔獣さん。
ブラッシング用のブラシを借りて毛づくろいをすれば、とうとうすやすやとお昼寝を始めてしまった。

なんとなく、うちは最近ローラ先輩の後釜を務めることが多くなってきている。
聞くところによるとこの学校には助っ人同好会なんてものがあるらしく、楽しそうだったので在籍することにしたのだ。
それからは、魔獣についての問題が起こるとうちが出向くことが増えてきていた。

「よしよーし。ゆっくり眠りなー」

ふわふわとした毛並みを撫でていると、こちらまで気持ちよくなってきてしまう。
そうすると体温がポカポカと高まるのを感じたのか、他の魔獣もくっついてきてしまった。
そうなるともふもふふわふわに包まれて、いつの間にかうちは……。

ーーーーー

ーーー

197 : ◆ZOSRNJGVq. [saga]:2021/05/09(日) 00:42:24.38 ID:52YqjKjNo
はっと目が覚めると、窓の外はすでに日が傾きかけていた。
数時間ほどお昼寝をしてしまったらしい。

「す、すみませんでした!」

「いいよいいよ。おかげで厩舎の掃除もはかどったし、何よりみんな気持ちよさそうだったからね」

助っ人同好会の一員として、助けになることはあっても迷惑はかけないようにと先輩には口を酸っぱくして言われていたのに……。
これにはうち、少し反省である。

魔獣との別れを惜しみつつ寮に向かえば、ちょうど大浴場に向かうカームを見つけた。
急いで着替えを持って、自分も大浴場に向かう。
そしてお風呂の中でくつろぐカームを見つけて、その隣に陣取った。

「あら、ポメさん」

「カームのこと見つけたから急いできたんだ〜」

じんわりと体の奥底が温まる感覚に体をゆだねながら、今日あったことをお話しする。
厩舎でのお昼寝は笑われてしまったけど、それも素敵ですねと言ってくれた。カームは優しいし、しっかり者だ。どんなに迷惑なことをしてしまっても、頭ごなしに怒鳴られたことはない。
実はうちもこんな素敵なお姉さんになりたいなあと常日頃から思っていたりする。
湯船から上がって、お互いに背中を洗いあいっこをする。
そしてぽかぽか幸せ気分のまま、自分のお部屋へと戻った。

「ただいま〜」

「おかえり、ポメちゃん」

お部屋を開けると、ふわりといいにおいが漂ってきた。

「今日は食堂じゃなくて、ここで一緒に食べようと思って」

そういうと、机の上に広げられた晩御飯を指し示す。
リリウムでは食堂で食事をとらなければいけないわけではなく、仲の良い生徒と中庭でお昼ご飯を食べたり、同室のこと晩御飯を食べたりすることもよくあることだ。
その際は食堂で持ち運びたいと伝えると専用の容器がもらえ、それを好きなところに持っていくという寸法である。
その制度を利用して、やよいはお部屋にお弁当を用意したのだ。
ぐううぅと、うちのお腹が盛大に鳴る。うちは結構な大食いだが、今日はお昼ご飯を食べてから何も口にしていなかった。
厩舎でのお昼寝が原因だが、とてもお腹が空いていることを自覚してしまう。
198 : ◆ZOSRNJGVq. [saga]:2021/05/09(日) 00:47:38.38 ID:52YqjKjNo
「ふふっ。食べよっか?」

「うん!」

隣合わせで座り、いただきますの挨拶をする。
ぱくりと口にお肉を運べば、できたてを持ってきたのか舌をやけどしてしまった。

「〜っ! あふっ、あふいよぉっ!」

「あわわ、お、お茶あるよ!」

ペットボトルを受け取り、それでなんとかお肉を流し込む。
一息ついてから、それがやよいの飲みさしであることに気が付いた。

「ごめん、やよいのお茶だったんだね」

「う、ううん。いいのいいの!」

ほんのりと顔を赤くしているやよい。

「えへへ、やけどしちゃった」

んべ、と舌を出せば、どれどれとやよいが診てくれる。あまりにもひどければ保健室で回復の魔法をかけてもらうが、この感じだと大丈夫な気がする。

「……ひゃひょひ?(やよい?)」

しかしやよいはうんともすんとも言わず、じっと舌を見ている。
なにか変なところでもあったのだろうか……。

「はっ、ごめんね! だ、大丈夫! これならすぐ治ると思うよ!」

焦って顔を放し、そう教えてくれる。
うん、やっぱりやよいは優しいな。

「診てくれてありがとね、それじゃ食べよっか」

「う、うんっ」
199 : ◆ZOSRNJGVq. [saga]:2021/05/09(日) 00:48:07.07 ID:52YqjKjNo
食事の続きを再開し、もぐもぐと気を付けて食べ進めていく。
食べ終わりゆったりとした空気にまどろんでいると、まぶたが重くなるのを感じる。
お昼寝をしたのに、うちの体はまたも睡眠を求めているらしい。

「ポメちゃん、眠たい?」

「うん……」

そういうと、もはやそれが当然のようにやよい側のベッドに寝かせてくれる。
やよいはまだお勉強をするようで、薄目で机に向かうやよいの姿を捉える。
しかし意識は保てず、次の瞬間には眠りに落ちていた。

ーーーーー

ぎしっとベッドがゆがむ感覚。
どうやらやよいもお勉強が終わって眠るらしい。
やよいの手が髪の毛をふわふわとなでてくれる。
それが気持ちよくて、一瞬の覚醒をしただけでまた眠りに落ちてしまいそうだった。

「ポメちゃん」

意識が落ちかける直前、やよいが口を開く。
だけれど、その次の言葉を聞く前にうちは再び眠りに落ちてしまった。

「……好きだよ、ポメちゃん。おやすみなさい」

額のあたりに、柔らかい感触があったような気がする。
それを確かめる術はもうなかったけれど、悪い感触ではなかった。

ーーーーー

ーーー



「おはよう、やよい!」

次の日、一緒に眠るようになってはじめてうちはやよいより先に目を覚ますことができた。
昨日のお昼寝が効いたのかもしれない。

「おはよう、ポメちゃん」

眠たげにまぶたをこするやよい。こんなに眠そうなやよいは初めて見るので、ドキドキしてしまった。

「それじゃ、今日も準備しよっか」

「うん!」

こうしてうちは毎日を過ごしている。
こんなに楽しい毎日を過ごせて、うちは幸せ者だ!
200 : ◆ZOSRNJGVq. [saga]:2021/05/09(日) 00:52:07.49 ID:52YqjKjNo
以上、ポメのなんでもない一日でした
201 :以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします [sage]:2021/05/09(日) 03:01:40.32 ID:rWVvZqyf0
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
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202 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/09(日) 22:07:40.98 ID:EKbhWYGoO
ポメちゃん可愛い
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名前: E-mail(省略可)

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行
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