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【安価でのわゆ】久遠陽乃は勇者である【4頁目】
- 408 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/07/02(金) 23:10:11.69 ID:Ovniwisvo
- 遅くなりましたが、少しだけ
- 409 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/07/02(金) 23:12:47.37 ID:Ovniwisvo
-
これ以上ここにいても、
今日はもう、何か出てくることはないだろうと陽乃は突っ伏していた顔を上げる。
諏訪への襲撃は陽乃の力の影響もあって、起こることはないはず。
とすれば、
直近で重要なことは、引き受けてしまった説得の件くらい。
それも明日ではなく、明後日。
明日の通信で四国に二人が到達していればよし
していないまま、襲撃があったとしたら悪い知らせ。
陽乃「……私できることなんて」
説得の言葉を考えてあげるだけ。
それだって別に、陽乃は話をするだけで、
どうしてもついてきて欲しいだなんて懇願する気はなく、
いつものように、自分の考えを言うだけだ
これといって、考える必要はない
だから、と、まだ早いが、陽乃は部屋に戻ることにした
- 410 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/07/02(金) 23:45:39.28 ID:Ovniwisvo
-
歌野「久遠さん、もう布団は敷いておいたわ」
陽乃「……早いわね」
歌野「そろそろ戻ってくるんじゃないかと思って」
いつもなら、寝るのはもう少し遅い時間。
布団を敷くためのスペースは確保してあるものの、
布団の準備はまだいいか。と、ちょっぴりずぼらなこともあったが
今日は早かった。
陽乃「私の居場所、精確に掴めるようになったの?」
歌野「ううん。でも、近づいてる、離れてるっていうのは分かる……というか、なんて言ったら良いかしら」
歌野は悩まし気な顔をして、
ん〜……と、あからさまに唸ると、陽乃から少しだけ目を逸らす。
歌野「火に手を近づけたり、離したりしているような感じね。久遠さんが近づいてくると、そんな風に力を感じるわ」
陽乃「そう……特に、力を漏らしている気はないのだけど」
歌野「だって、常に送ってくれているでしょ? そのおかげだと思うわ」
- 411 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/07/03(土) 00:06:47.59 ID:NpTDh1uDo
-
歌野「ただ、屋内だと誤差の範囲ね。集中していないと、まったく違いが感じられない」
陽乃「そういうものなのね」
歌野「そこはきっと、久遠さん自身の力の強さのせいだと思うけど……」
陽乃の力が強いため、
屋内では、常に火に手をかざしているような状態らしい。
それでも陽乃が来ていることに気づいたのは、
陽乃のことを考えていたから……と、歌野はアピールしたいのかもしれないが、
陽乃は気づいていないかのように、流す。
陽乃「それは仕方がないわ。これはどうにもならないし。精確な居場所まで特定されても困るし」
歌野「確かに、お手洗いとか――」
陽乃「単純に、プライバシーの問題よ」
1、もう休むわ
2、藤森さんはどうなの?
3、こっちに襲撃が来る心配はないから、明日は自由で良いわよ
4、明日、力の件で少し時間貰えるかしら
↓2
- 412 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/07/03(土) 00:10:41.31 ID:Jwp3Ou+2O
- 4
- 413 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/07/03(土) 00:11:52.14 ID:yq89q+n7O
- 4
- 414 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/07/03(土) 00:12:05.26 ID:/2QRnx+qO
- 4
- 415 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/07/03(土) 00:18:06.92 ID:NpTDh1uDo
-
では短いですが本日はここまでとさせていただきます
明日は可能であればお昼ごろから
- 416 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/07/03(土) 00:26:59.36 ID:yq89q+n7O
- 乙
うたのんとはある意味一心同体な感じなのだろうか
尚更仲良くなっておかないとだな
- 417 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/07/03(土) 01:09:53.06 ID:pU4jrgjQO
- 乙
お互いリンクし始めるのかな?
陽乃はあんまり何も感じてないみたいだけど
- 418 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/07/03(土) 21:34:11.40 ID:NpTDh1uDo
- 遅くなりましたが、少しだけ
- 419 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/07/03(土) 21:36:18.62 ID:NpTDh1uDo
-
陽乃「明日、力の件で少し時間を貰えるかしら」
歌野「ええ! 大丈夫!」
陽乃からの誘いだからか、歌野の声は妙に張り切っている。
歌野「ちゃんと話しておかなくちゃいけないことだものね」
陽乃「それもあるけど、いろいろ気になることもあるから」
陽乃が感じた痛みを、感じてしまったり
陽乃もそうだが、互いの居場所を精密さには欠けるものの把握できていたり、
力の繋がりは、その是非はともかくとして、恩恵がある。
今分かっていること以外にも、何かある可能性だってないとは言えなかった。
水都「なら、私はここで待機しておくね」
陽乃「貴女もよ。勇者ではないにしても、巫女なんだから」
水都とだって、繋がりはある。
戦いに加わる歌野と違って
水都とは大して強いつながりを持ってはいないけれど、
諏訪の神々の神託を受ける巫女だったのだから、
いて貰う必要はあるのだ
- 420 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/07/03(土) 22:04:25.32 ID:NpTDh1uDo
-
陽乃「明後日の結果がいずれにしても、いつかはここを出て行くことになるから、時間のあるうちに試しておきたいことがあるわ」
歌野「そうね。今のところ、久遠さんの力を借りた状態でってのは未経験って言ってもいいし」
陽乃「この前、私が気を失ったときは?」
歌野「あの時は、普通に力を使えたわ」
陽乃が失神していても命を落としてさえいなければ、
歌野に力の供給は出来るということなのか、
それとも、歌野に力が蓄積されていたのか
それとも、力の供給にはラグがあって、その分を使っていたのか。
最後のは、おそらく違うだろう。
陽乃「その理由も含めて、確認しておきたいわね」
水都「神託も試すんですか?」
陽乃「できるかどうか知らないけど」
- 421 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/07/03(土) 22:16:44.43 ID:NpTDh1uDo
-
最初は出来るかもしれないと考えたが、
今のところ、陽乃自身に神託のような何かが起こったことがない。
それが、直接水都に流れていくかもしれないし
陽乃が、自分の意思で水都に神託を与えるのかもしれない。
そこもやはり、確認しておくべきだろうか。
陽乃の意思ならば、
知らなければ、水都には何一つ伝わらないままになってしまう。
それこそ、巫女がいる意味がなくなる。
陽乃「ただ、私の痛覚が白鳥さんに伝わっているなら、神託も無意識で共有されそうな気はするけれど」
歌野「私も、みーちゃんみたいな巫女になるのかしら」
水都「そしたら、私いらなくなっちゃうよね」
歌野「そんなことないわ。みーちゃんは必要不可欠よ!」
巫女と勇者兼任
それと、巫女専門
勇者が巫女も兼任できれば、確かに巫女は不要になるかもしれない。
神託をいちいち、連携される必要もなくなるから、
便利でもある。
けれど、もしそれが可能だとしても
あくまで、神々とつながりのある陽乃と繋がっている歌野の特権だ
他の人には無理な話で、やはり、巫女は必要だろう
- 422 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/07/03(土) 22:57:06.30 ID:NpTDh1uDo
-
歌野「明日は朝から時間作るわ」
陽乃「あら、畑は?」
歌野「ん〜……久遠さんが手伝ってくれたり」
陽乃「しないわよ」
すぐさま答えを返され、歌野は笑って冗談よ。と首を振る。
別に本気ではなかったようで、ショックを受けている様子はなかった。
歌野「畑はほかの人も手伝ってくれるから、すぐに終わるわ」
陽乃「そう」
水都「お昼は通信もあるし、その内容次第ではほかにやらないといけないこともあるから……やっぱり、朝が良いよね」
歌野「明日は早起きしなきゃ」
いつも早いが、いつも以上に。
そんな歌野達はいつもよりも早く、布団に入る。
陽乃はそれから少し遅れて、電気を消すと
水都と歌野の間、自分の分の布団に入った。
明日は、少しだけ忙しい一日になるだろう。
- 423 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/07/03(土) 23:27:20.39 ID:NpTDh1uDo
-
1日のまとめ(諏訪組)
・ 白鳥歌野 : 交流有(通信設備、乃木若葉について、襲撃について、死にはしない、早期出立、命を諦めている人、一度だけ、明日の予定)
・ 藤森水都 : 交流有(気遣い、1人で、通信設備、乃木若葉について、襲撃について、死にはしない、早期出立、命を諦めている人、一度だけ、明日の予定)
・ 九尾 : 交流無()
√ 2018/09/05 まとめ
白鳥歌野との絆 70→73(良好) ※特殊交流3
藤森水都との絆 83→85(良好) ※特殊交流8
九尾との絆 73→73(良好)
- 424 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/07/03(土) 23:32:52.51 ID:NpTDh1uDo
-
√ 2018年 9月6日目 朝@:諏訪
34〜43 歌野
78〜87 水都
89〜98 九尾
↓1のコンマ
※それ以外は@終了
- 425 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/07/03(土) 23:34:04.58 ID:1JTAviiyO
- あ
- 426 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/07/04(日) 00:34:43.60 ID:GJfNRgS+o
-
√ 2018年 9月6日目 朝:諏訪
陽乃「ここなら、平気そうね」
歌野「なにも、わざわざこんな場所じゃなくてもよかったんじゃない?」
陽乃「前とはわけが違うのよ」
以前なら、参集殿の裏だとか、
人気のない場所を適当に選べば、模擬戦の一度や二度くらい問題はなかったが、
今は、参拝に来る人が多すぎるのだ。
出かける時だって、行先に付き添いたがる人もいる。
その為、近づかないようにお触れを出し、
力の調査については、万が一何かが起きてもいいように、諏訪湖の畔で行うことになった。
陽乃「私の力は有毒なの。外に私を助けに来た時に見たはずよ」
歌野「そうね」
陽乃「一般の人は、最悪即死する。私だって別に、無駄に人殺しになる気はないんだから」
体力的に衰えている高齢者なんかは、
陽乃の力の余波で死んでもおかしくはない。
陽乃「それに、屋内だと、貴女がどれくらい私を感知できるか調べようもないじゃない」
歌野「それもそうだわ」
陽乃「まずは、私が対岸に行くから。貴女はここで待っていて」
- 427 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/07/04(日) 00:35:18.04 ID:GJfNRgS+o
-
↓1コンマ判定 一桁
0,3,8 水都「私もついて行っていいですか?」
- 428 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/07/04(日) 00:47:15.37 ID:qbhPCS/tO
- うい
- 429 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/07/04(日) 00:52:15.13 ID:GJfNRgS+o
-
遅くなりましたが、本日はここまでとさせていただきます
明日は可能であればお昼ごろから
- 430 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/07/04(日) 00:55:58.01 ID:usStMBUDO
- 乙
説得もしないといけないし忙しくなるな
- 431 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/07/04(日) 07:06:23.13 ID:ytasYa5uO
- 乙
陽乃さんのトラウマを克服するためにもここできちんと能力を検証するのは大事だな
- 432 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/07/04(日) 15:28:01.47 ID:GJfNRgS+o
- では少しずつ
- 433 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/07/04(日) 15:33:33.65 ID:GJfNRgS+o
-
水都「陽乃さんっ」
陽乃「なに?」
水都「あ、その……気を付けてください」
何か、別のことを言いたかったような表情。
少し前の……陽乃の心根を聞かされる前の水都であれば、
一緒に行っても良いですか。とでも言っていたに違いないと、陽乃は目を細める。
だからと言って、一緒に来る? なんて声をかけることはない。
水都が言わないのなら、何も言う必要はないだろう。
もしかしたら、水都はもっと別のことを考えているかもしれないし、
そもそも、陽乃はそこまでの意欲が喪失している。
陽乃「別に、戦いに行くわけでもないし、気を付けることなんてないと思うけど」
それともない? と、陽乃は諏訪湖の緑がかった水面を見つめる
陽乃「ワニかサメでもいるのかしら。それとも、水棲バーテックス?」
水都「いえ、そういうわけじゃないですけど……」
陽乃「冗談よ」
歌野「大なり小なり力を使うから、また倒れないでってこと」
陽乃「そこまで虚弱じゃないわよ」
- 434 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/07/04(日) 16:00:49.21 ID:GJfNRgS+o
-
水都の代わりに答えた歌野に手で払う素振りを見せて、つま先で地面をつつく。
ここから対岸までの距離は、どの程度だろうか。
目測で測れるほどの知識は陽乃にはないけれど、
向こう岸は見えているから、かなり遠いというほどでもないと陽乃は判断して。
陽乃「九尾」
『よかろう』
普段の女性の姿ではなく、
九尾本来の、九つの尾を持っている狐の姿。
足を折って伏せていても、陽乃よりも高さのある体
陽乃は九尾の体を優しく撫でて、一つ跳びで乗る
陽乃「少し待ってて」
歌野「なら、これ。無線機」
陽乃「玩具じゃないの?」
歌野「玩具だけど、使えたらいいなって思って」
陽乃「使えたら使うわ」
歌野から渡された、小型の無線機。
玩具だとわかりやすい、簡素なつくり。
それをポケットに突っ込んで、九尾と一緒に空へと駆けた
- 435 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/07/04(日) 16:26:02.92 ID:GJfNRgS+o
-
陽乃「……そこまで、遠くなさそうね」
一番距離がありそうなところでも、、五キロあるかどうかという程度
数十キロあるとは思っていなかったが、
聊か物足りないのではと、目を凝らす
陽乃「九尾、向こうの一番遠い方選んで頂戴」
九尾「妾に羽があるとでも思うておるのかや?」
陽乃「できるでしょ。貴女なら」
九尾「……主様が望むならば」
九尾は、ゆっくりと落下していく流れに逆らうことなく、
諏訪湖の水面に足をつけ、そうして、また跳びあがる。
まるで、そこに氷があったかのような動きにも、陽乃は驚かない。
九尾「良いのか? 妾を信じても」
陽乃「貴女はともかく、貴女の力は信じられるわ」
人柄というか、なんというか
九尾のそれは信じられないが、能力だけは本物だ
九尾「そうか」
- 436 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/07/04(日) 16:48:03.56 ID:GJfNRgS+o
-
出発から数分かけて、ようやく対岸へ
歌野達の姿は当然見えず、
けれど、いるであろう方角はしっかりと感じられる。
九尾「主様、その、無線機とやらは繋がっておるのかや?」
陽乃「ん……繋がってる感じしないけど」
電源は入れているが、
歌野からの通信は来ていないし、
陽乃から通信をしてみようとしても、反応がない。
無線機と一緒に貰った、歌野か水都の手書きの説明書
それが間違っていなければ、無線機は使えないようだ。
陽乃「……これにも、力を通せば繋がるのかしら」
九尾「さて、どうかのう」
四国との通信には、
向こう側からも神々の助力がある
だが、これにはそれがない。
陽乃「………」
1、無線機を試す
2、歌野への供給を強める
3、水都への神託を試す
4、九尾にお使いを頼む
↓2
- 437 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/07/04(日) 17:02:36.91 ID:Xs/FRa4MO
- 2
- 438 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/07/04(日) 17:04:43.54 ID:LENtA5EAO
- 1
- 439 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/07/04(日) 17:49:54.00 ID:GJfNRgS+o
-
陽乃「……昨日みたいに、したらいいのかしら」
無線機を右手に持って、左手をかざす
昨日のように、無線機に力を送っていく。
いつだったか、何だったか。
どこかで見た超能力者のようなものみたいだと、陽乃は内心、自分のことを嘲笑する。
ほんとかうそか。
学校でも話題になったことがある。
あれの一部も、実は本物だったのではないか。なんて、
今更思いながら、力を籠める。
陽乃「……聞こえる?」
ボタンを押しながら、声をかける。
歌野からの返事はない。
陽乃はもう一度、無線機に手をかざす。
ほんの数キロの距離
歌野に力が伝わっているのは今も感じている。
だから、力が届かないなんてことはないはずなのだ。
足りないとしたらそれは、陽乃の技量だろう。
- 440 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/07/04(日) 17:59:15.46 ID:GJfNRgS+o
-
↓1コンマ判定 一桁
1,4,7,9 通信
ぞろ目 通信
※そのほか、失敗
- 441 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/07/04(日) 18:01:19.96 ID:LENtA5EAO
- あ
- 442 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/07/04(日) 18:27:56.85 ID:GJfNRgS+o
-
陽乃「駄目ね。繋がらないわ」
九尾「その機械がダメなのかや?」
陽乃「どう思う?」
陽乃は、答えが分かっているとでも言うかのようにほくそえんで、
傍らに伏せる九尾へと問いかける。
諏訪湖の水面が、風に揺られているのを目で追う九尾
興味なさげな様子ではあったが、
鼻を鳴らすと、陽乃に目を向ける。
九尾「妾は機械など知らぬ。問題があるとすれば、主様じゃろう」
陽乃「……やっぱり?」
九尾「気を落とすことはあるまい。扱い方を知ったばかりの娘が、それを容易に使えてはおかしかろう」
陽乃「それはそうなんだけど」
九尾はくつくつと笑って、
その大きな体を、女性――いいや、少女の姿に変える。
久しく見ていない少女、上里ひなただ
ひなた「少し、それを貸していただけますか?」
- 443 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/07/04(日) 18:48:11.75 ID:GJfNRgS+o
-
陽乃「なんでまた、上里さんなのよ」
ひなた「まぁまぁ、いいじゃないですか」
ひなたらしい……と言えるほどの付き合いはないが、
それでも、普段の九尾とはまるで違う、品を感じる笑い方
ひなた「そんなことよりも、その機械を使えるようにしましょう」
陽乃「できるの?」
ひなた「ええ、おそらくは」
言い切らない。
できるかもしれないしできないかもしれない。
そんな言い方だが、九尾ならできる可能性の方が高い。
断言しないのは、九尾ではなくひなただからだろうか。
ひなた「私がいつも、久遠さんに力を与えているのは存じているかと」
陽乃「もちろん」
ひなた「それができるのは、私がいつも久遠さんの存在を知覚しているからです。そして、四国にいる私と繋がるために、私が通信に出てくれないと困るのは、それが理由でもあります」
陽乃「上里さんで私って言わないでよ」
ひなた「ふふっ。つまりですね、正確に相手を掴む必要があるということですよ」
ひなたはそういって、陽乃に手を出す
ひなた「貸してください」
1、貸す
2、貸さない
↓2
- 444 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/07/04(日) 18:55:37.05 ID:ql0X0KU70
- 1
- 445 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/07/04(日) 18:56:10.61 ID:7xO5M0zEO
- 1
- 446 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/07/04(日) 19:11:57.62 ID:GJfNRgS+o
-
陽乃「壊さないでよ?」
ひなた「任せてください」
ひなたに扮した九尾の手に、無線機を手渡す。
無線機を受け取って、少し悩まし気な顔をしたひなただったが、
すぐに、対岸へと目を向ける。
ひなた「私は久遠さんと繋がっていますが、白鳥さんとは繋がっていません」
陽乃「それでどうにかできるの?」
ひなた「久遠さんを中継します」
九尾から陽乃、陽乃から歌野。
力の流れは、そのような形になっている。
九尾から直接歌野につながりはないが、
陽乃を中継器としてつながることは可能なのだという。
ひなた「私が無理矢理、久遠さんと白鳥さんの繋がりを強くします。少し、違和感があるかと思いますが、我慢してください」
陽乃「違和感って、どんな?」
ひなた「それは自分で感じ取ってください。大事なことなので」
- 447 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/07/04(日) 19:33:43.48 ID:GJfNRgS+o
-
ひなた「いいですか?」
陽乃「良いわよ。好きにして」
ひなた「では」
ひなたは、無線機をそのままに
陽乃が感じる歌野の方角をじっと見つめる。
そして――急激に、力が抜けていくのを感じて、よろめく
陽乃「っ」
ひなた「少し我慢してください」
抜けて行った力が、
全て、歌野の方に向かっていくのを感じる。
際限なく
それこそ、ストッパーの壊れてしまった機械のように、垂れ流しになっていて
歌野とのつながりを強くする分、不快感が強い。
陽乃「なに、これ……」
ひなた「無理矢理ですから。久遠さんがいけないんですよ。気を許す気がなさすぎます」
つながりが深くなるにつれて、不快感は強い倦怠感に切り替わり、
立っていられなくなった陽乃はその場に崩れるように膝をつく。
頭痛がして、耳鳴りがして、目を開けば視界が歪むような状況に陥って……
自分ではない誰かが、悲鳴のような声を上げたのを感じた。
- 448 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/07/04(日) 19:52:55.84 ID:GJfNRgS+o
-
陽乃「ぅ……ぉぇ……」
ひなた「大丈夫ですか?」
答える前に、ひなたを睨む。
こみあげてきたものを吐き出した不快感と、痛み
どうにか唾を飲み込んで、手の甲で口元を拭う。
自分が自分ではないような感覚、
俯いているのに、空を見上げている。
ひなたは自分に触れていないのに、誰かに体を支えられている感覚
陽乃「うっ……」
瞬きした瞬間
景色は変わって、水都の姿が見えたかと思えば
またすぐに、視界が陽乃のものになる。
陽乃「きゅ……」
ひなた「大丈夫です。混乱しているだけですから、すぐに落ち着きますよ」
だんだんと、痛みが治まり始めて視界が揺らがなくなる
陽乃「なんて、こと……」
ひなた「無理矢理した反動で、繋がりすぎてしまったんです。白鳥さんは痛覚のみでしたが、今回は五感が一時的に繋がったかと」
やろうと思えば操ることだってできるかもしれません。と
ひなたは九尾のように笑って、そこまではさすがにできませんけど。と首を振る
ひなた「どうぞ。無線機は繋がってるはずですよ」
- 449 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/07/04(日) 19:53:36.50 ID:GJfNRgS+o
-
少し中断
再開は21時ころを予定しています
- 450 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/07/04(日) 20:02:58.57 ID:7xO5M0zEO
- 一旦乙
- 451 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/07/04(日) 21:28:45.89 ID:GJfNRgS+o
-
陽乃「……繋がってる?」
無線機を持つのも億劫で、地面に置いたままボタンを指先で押し込む。
喉が辛い。
けれど、話すには申し分なさそうだ。
陽乃「白鳥さん、聞こえてるかしら」
言うだけ言って、ボタンから指を放す。
1分ほどの沈黙を経て、無線機から乱れた音が聞こえ
水都『聞こえてます』
音が途切れる。
数秒待って、返答していいのかと、ボタンを押す。
陽乃「白鳥さんは? 何かあった?」
白々しいとは思いつつ、問いかける。
陽乃と無理矢理つながったことによる反動で、歌野も陽乃と似たようなことになったのだろう。
であれば、出られないのも無理はない。
水都『うたのんは、今ちょっと……えっと。出られそうにないので』
- 452 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/07/04(日) 21:58:52.91 ID:GJfNRgS+o
-
陽乃「気持ちは分かるわ」
今は、酷く不快な気分だ
痛みが引いたとはいえ
頭痛と眩暈の余韻はまだ残っている
言葉だって、できれば控えたい状態だ。
陽乃「休憩しましょ」
一言伝えてボタンを放すと、
手慣れてきたのか、すぐに水都からの返事が返ってきた
水都『こちらに戻ってきますか?』
休憩するなら、離れている必要はない
だが、向こうに戻る理由もない。
陽乃「そうねぇ……」
1、合流する
2、合流しない
↓2
- 453 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/07/04(日) 22:03:08.35 ID:ql0X0KU70
- 1
- 454 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/07/04(日) 22:04:31.38 ID:qMucKXDbO
- 1
- 455 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/07/04(日) 22:28:18.87 ID:GJfNRgS+o
-
陽乃「いいわ。合流しましょ」
無線機を使って伝えて、電源を切る。
この無線機は、太陽光発電なんてご立派なことはしていないので、
有限である電池を消費しきってしまったら、無線機が使えなくなってしまう。
陽乃「九尾」
ひなた「はい」
陽乃「……九尾?」
ひなた「どうぞ?」
九尾は、呼びかけてもひなたの姿のまま。
理由なんてわかっているだろうに、そんな少女の姿のまま、陽乃の前でかがんでいる。
おんぶしてあげる。とでも言っているかのようだ。
陽乃「冗談やめて」
ひなた「良いじゃないですか。この姿だって、久遠さんを背負うくらい造作もありませんよ」
陽乃「怖い話ね……いいから、戻って」
- 456 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/07/04(日) 22:47:39.74 ID:GJfNRgS+o
-
ひなたらしくなく、ぶつくさと何か零した九尾は、
肩をすくめて笑うと、瞬く間に妖狐の姿へと変わる
九尾「乗れ」
陽乃「……悪いけど、ちょっと待って」
九尾の大きな体に、体を預ける。
痛みは引いたし、不快感も薄まった
けれど、まだ、九尾の背中に跨るのは気怠い
九尾「情けないのう」
陽乃「ほんと……こんなに消耗するだなんて思わなかった」
九尾「主様が扱わなかったことを強制的に行った影響じゃ。本来ならば、こうはならぬ」
陽乃「説明してよ。こんなの……最悪失神してたわ」
九尾「してないならばよいではないか」
よくないが、そう言い返すのも面倒だと陽乃は目を瞑る。
すぐに戻るとは言っていないからいいだろう
陽乃「5分だけ。そしたら起こして」
九尾「随分と、扱いが悪くなったものじゃ」
九尾は喉を鳴らして笑ったものの拒否はせず、
しっかりと、5分後には陽乃の支えをなくして、叩き起こした
- 457 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/07/04(日) 23:11:00.99 ID:GJfNRgS+o
-
√ 2018年 9月6日目 昼:諏訪
歌野「酷い目に遭ったわ」
水都「うたのん、しっかり」
水都に寄り添われ、背中を摩られる歌野
陽乃は直接見ていなかったが、
分かれる前と比べると、やつれて見えることから察するに、
やはり、陽乃の想像通りだったのかもしれない。
歌野「久遠さんは大丈夫だったの?」
陽乃「貴女とは出来が違うもの」
歌野「そう……ならいいけど、あれは何をしようとしたの?」
陽乃「無線が使えなかったから、使えるようにしたのよ」
歌野と水都は、驚いた様子で無線機を見る。
使えなかったのは想定内だが、
それを使えるようにした結果の反動が、衝撃的だったのだろう。
歌野「そんな、ことで?」
- 458 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/07/04(日) 23:41:08.42 ID:GJfNRgS+o
-
陽乃「そんなことってわけでもないわ。無線機を使えるようにするのに別の要素が必要だったのよ」
その結果だ。
陽乃が力を扱ううえで技量不足だったこと
歌野に対して気を許すつもりがなかったこと
色々と原因はあるが、それを強引に素通りした結果である。
陽乃「どう? 私のことを感じるかしら?」
歌野「そうね。感じてるわ。すっごく強く」
胸を押さえて、少し苦しげな表情をする。
歌野「正直、吐きそうなくらい」
陽乃「そこまで?」
歌野「栄養過多な野菜の気分だわ」
栄養を与えられすぎた野菜は、枯れてしまうことがある
人のそれは、死だ。
陽乃「……」
1、やっぱり、毒ね
2、九尾を呼ぶ
3、戦いましょ
4、大げさよ
↓2
- 459 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/07/04(日) 23:42:27.91 ID:qMucKXDbO
- 1
- 460 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/07/04(日) 23:42:56.47 ID:ql0X0KU70
- 1
- 461 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/07/04(日) 23:48:24.54 ID:GJfNRgS+o
-
では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
- 462 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/07/04(日) 23:55:45.20 ID:qMucKXDbO
- 乙
シンクロし過ぎるとうたのんに来るダメージが大きくなりそうで心配だな…
あんまり無理させない方がいいかも
- 463 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/07/05(月) 01:09:16.59 ID:AWPGBLF4O
- 乙
結びつき強くなったけど色々リンクするのかなこれから
- 464 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/07/05(月) 22:54:20.14 ID:lywd9hFSo
- では少しだけ
- 465 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/07/05(月) 22:54:45.67 ID:lywd9hFSo
-
陽乃「やっぱり、毒ね」
歌野「毒ってわけじゃ、ないと思うわ」
過ぎれば毒と言うだけでそれ自体が毒なわけじゃない
今回は、歌野の許容量を超えるほどの力が流れこんでしまったせいで、
歌野が酷く苦しむことになった。
陽乃「そんな顔で言われてもね」
歌野「ふふっ……いつもと逆ね」
青ざめた顔、力ない笑み
気を抜けばまた、嘔吐しそうだとでも言うかのような唇の動き
明らかに弱っている
歌野「でも、久遠さんだって使い方を間違えなければ大丈夫よ」
陽乃「今まさに間違えたばっかりなんだけど」
間違えたというか、
九尾に任せたらこうなってしまったのだ。
陽乃「九尾に任せない方が良かったわ」
元々は無線機のための行為
結果的に、歌野とのつながりも試すことが出来たが……散々である
- 466 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/07/05(月) 23:20:21.77 ID:lywd9hFSo
-
陽乃「眠ったら死ぬと思ってなさい」
歌野「それは、怖いわね」
水都「死んじゃうんですか……?」
陽乃「運が悪ければね。それでも運が良い方だわ」
一言で矛盾させた陽乃は、困ったように苦笑する。
九尾が言うことが間違いないなら
いや、陽乃の地下を受けた結界の外の状態が人にも適用されるなら
間違いなく死ぬ。
だから陽乃の力を過剰に受けて即死していないのは本当に運がいいのだが、
それでも運が悪ければ死んでしまう。
陽乃「どうにかして力を発散させないといけないんだけど……動けるの?」
歌野「ん……勇者としての力を使えば動けるかもしれないわ」
寄りかかっていた体を起こそうとした歌野を、水都が止める
水都「だ、駄目だようたのん!」
- 467 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/07/05(月) 23:52:42.54 ID:lywd9hFSo
-
歌野「みーちゃん……」
水都「さっきまで何回も吐いたりしてたのに、今、体動かしたら失神しちゃうっ」
歌野「けど」
けどじゃないよ。と、水都に怒られる歌野は苦悶の表情を浮かべながら、
また、水都の肩に頭を乗せる。
歌野の額には汗が浮かび、呼吸も荒い
歌野「はっ……ふぅ……」
陽乃「今なら、私のことも全部分かるんじゃない?」
歌野「残念だけど、そんな余裕がないのよね……」
繋がりは深い
歌野も一応、通常状態でも陽乃の痛覚を感じ取れたりするくらいには力がある
死にかねないほど太いつながりがあるなら、
陽乃のこと分かってしまう。かもしれないが。
歌野は残念そうに、弱弱しく首を振る
1、さっきはどんな状態だった? 私のことは分かった?
2、なら、今度は藤森さんに神託を試す番ね
3、良いから、今すぐ力を使いなさい
↓2
- 468 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/07/05(月) 23:54:31.49 ID:qNSUGcTQO
- 1
- 469 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/07/05(月) 23:54:59.04 ID:r2rmgTWM0
- 2
- 470 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/07/05(月) 23:58:48.37 ID:lywd9hFSo
-
では短いですがここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
- 471 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/07/06(火) 00:12:01.24 ID:44gsgucWO
- 乙
うたのん思ってた以上に辛そうだな
こうなってくるとみーちゃんの神託も大丈夫だろうか
- 472 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/07/06(火) 06:40:14.29 ID:JFThyWxLO
- 乙
- 473 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/07/06(火) 23:08:36.90 ID:U9Fnp3two
- 遅くなりましたが少しだけ
- 474 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/07/06(火) 23:14:37.10 ID:U9Fnp3two
-
陽乃「なら、今度は藤森さんに神託を試す番ね」
水都「私、ですか? でも、うたのんが回復してからじゃ駄目ですか?」
陽乃「明日は別のことやる予定があるでしょ」
歌野に対して追加で力を使うわけにはいかないし、
安静にしておかないと今にも死にそうな感じだ。
水都は歌野よりも適性がない。
もっとも、それが高ければ勇者になれるとも限らないが、
高いに越したことはなく、しかし、残念ながら水都は歌野ほどではないのだ。
陽乃「……明日はうまくやれる保証なんてないわよ」
歌野とのつながりは、九尾の助力によるものだ。
それがなければここまでの被害はなかったし
それがなければ力を与えるという感覚をつかむことは出来なかった。
それを忘れないうちに、試しておきたい。
特に、歌野と違って即死しかねない水都に対しては。
陽乃「貴女が死にたければ明日でも構わないけど」
- 475 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/07/06(火) 23:44:37.61 ID:U9Fnp3two
-
水都「そ、そんなこと言われたら……断れないじゃないですか」
陽乃「あら、死なないかもしれないでしょ?」
水都「久遠さんの力は冗談になりません」
むっとした水都は自分に寄りかかる歌野の笑い声を聞いて、照れくさそうに気迫を失う。
水都「うたのんでもこれだけ苦しむことなら、私はたぶん……本当に死ぬこともあると思います」
陽乃「だから、そうならないように早い段階で確かめましょうって言ってるのよ」
やりたくないならやりたくないでもいいが、
やるなら早くやりましょう。と、陽乃は肩をすくめる。
水都は思案顔で歌野を一瞥する
水都「分かりました。やってみます」
歌野「大丈夫?」
水都「うたのんには言われたくないよ」
水都は笑みを浮かべて、歌野の体に手を添えると、
近くの段差を枕代わりに横に寝かせる。
水都「寝心地悪いだろうけど、我慢して。同じことになったら、うたのん倒れちゃうから」
- 476 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/07/07(水) 00:03:23.55 ID:t2NR23Zso
-
死ぬかもしれないのに、水都は落ち着いている。
歌野の惨状を目の当たりにしたはずなのに。
陽乃の力に怯えている様子がない。
陽乃「なら、やるわよ」
陽乃はその水都の覚悟には何も言わず、ただ促す。
目の前にいるのだから、水都の体に触れてしまう方が確実だろう
けれど、それでは離れているときでも伝わるとは限らない
陽乃「目は……別に閉じなくてもいいわ」
水都「神託の時は、こうして祈るようにしていた方が感度が良いんです」
陽乃「そう。ならそのままで」
目の前で膝をつき、手を合わせ、頭を垂れて祈る水都。
それが自分に向いているのは、少し、嫌な気分になる。と、陽乃は顔を顰める
陽乃「死ぬときは死ぬって言いなさい」
水都「無理です」
- 477 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/07/07(水) 00:04:34.61 ID:t2NR23Zso
-
↓1コンマ判定 一桁
0,2,3,5,7,8,9 神託
ぞろ目 特殊
※そのほか、失敗
- 478 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/07/07(水) 00:04:48.07 ID:0Ux5kQUXO
- あ
- 479 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/07/07(水) 00:14:50.52 ID:t2NR23Zso
-
では短いですがここまでとさせていただきます
明日は可能であれば通常時間から
- 480 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/07/07(水) 00:28:32.69 ID:0Ux5kQUXO
- 乙
とりあえず成功でよかった
- 481 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/07/07(水) 06:05:40.24 ID:0poPuQtPO
- 乙
確率高めだけどみーちゃんのコンマは基本安定してるな
- 482 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/07/07(水) 22:51:24.92 ID:t2NR23Zso
-
すみませんが本日はお休みとさせていただきます
明日は可能であれば通常時間から
- 483 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/07/07(水) 22:55:20.26 ID:Ik6+ftR3O
- いつも乙です
- 484 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/07/08(木) 21:25:07.14 ID:7buqnYrwo
-
では少しだけ
- 485 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/07/08(木) 21:30:55.04 ID:7buqnYrwo
-
どこかも分からない世界の中で、2人きり。
諏訪湖の畔にいたはずなのに、すぐ傍らにいた歌野の姿さえ見えない。
感じるのは、火よりも熱い身を溶かすような熱
見えるのは、太陽の輝きにも似た瞳を奪うほどの光
それは襲来の神託ではない
新たな敵の誕生を意味する、神託
凶悪な輝きには細々とした星のような光が次々に取り込まれていき、
次第にその輝きはさらに強大なものとなっていく
不意に、水都が自分の体を抱きしめながら、膝から崩れ落ちる
水都「う……」
段々と呼吸が荒くなって、喘いで、体中から汗を噴き出して
そして、倒れこむ。
陽乃「ちょっと!」
力の流入は大したことではなかったはずだ。
歌野に行っていた最小限
九尾が行った最大限
その力の流入の幅から、適切であろう程度に、陽乃は調節したはずだったし、
そもそも、陽乃自身はまだ神託を受けていなかったため、
正式な神託が行われるはずはなかったのだ。
なのに。
これはきっと、陽乃の意思が介入していない神託だ
- 486 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/07/08(木) 21:39:46.88 ID:7buqnYrwo
-
陽乃「っ!」
力の流入を弱め、切り離す。
その瞬間に光は瞬き、
やがて爆発を起こしたようにすべてが白色に飲まれ、そして、暗闇に包まれる
風を肌に感じ、やや不慣れな水のにおいを感じ
歌野の声が聞こえて、はっとする。
陽乃「ぅ……」
歌野「みーちゃ……みーちゃんっ」
横になっていた歌野は体を起こし、座っていたはずの水都が倒れている。
弱弱しい力で揺さぶられる水都は苦し気に呻いて、頬には汗が浮かんでいた。
陽乃「……ちょっと、待って」
歌野と違って、これは力が過剰に流れたせいではない。
神託を受けたことによる、精神的な部分に強い負荷がかかったからだろう。
歌野「久遠さん、みーちゃんがっ」
陽乃「神託を受けたのよ……それが、ちょっと、重かっただけだわ」
頭痛を感じて額に手を添えると、じっとりとした汗が手のひらに吸い付く。
- 487 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/07/08(木) 21:56:18.70 ID:7buqnYrwo
-
白い球体に似たものが一つ
それが集結し、別の形をとったものが一つ
バーテックスは、複数種類の形態を持っているとされている。
実際、陽乃も白い球体ではない形状のバーテックスと対峙したことはあるし、
物理的な攻撃から、杏のように遠距離から攻めてくるようなバーテックスとも戦った経験がある。
だが、今回の神託は、またそれらとは別のもが来るだろうことを予見させた。
陽乃「……」
恐らく、陽乃の力が影響している。
バーテックスの側が、陽乃の力は手出しが難しい脅威だと判断し、
今までのものでは力不足であると判断した可能性がある。
歌野「……久遠さんは平気なの?」
陽乃「私は、そんなやわじゃないから」
ようやく呼吸の落ち着いてきた水都のそばで、歌野が心配そうに陽乃を見る。
水都は今眠ってしまっているし、歌野はまだ少し不調を感じさせる。
それと比べれば、軽い偏頭痛くらいで済んでいる陽乃は大したことはない。
歌野「神託、そんなに大変なものなの?」
陽乃「内容? それとも神託の負荷? 負荷なら、比較出来るほどの経験はないわ」
歌野「なら、内容は?」
1、新しい敵よ
2、今はまだ確証がないから言えないわ
3、そういう話は藤森さんが起きてからの方が良いわ
↓2
- 488 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/07/08(木) 22:00:55.56 ID:IRVND0quO
- 1
- 489 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/07/08(木) 22:17:32.98 ID:o54UMIPoO
- 1
- 490 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/07/08(木) 22:50:36.24 ID:7buqnYrwo
-
陽乃「新しい敵よ」
歌野「新しい、敵?」
いつもなら声が上がる場面でも、
疲弊した二人と一人では、何でもないように静かだ。
陽乃「ええ。残念だけど、どんな姿なのかまでは解らなかったけど」
歌野「それが、攻めてくるの?」
陽乃「攻めては来ない。と、思う」
断言できない。
あれがもし、本当に陽乃を討つべく生み出されたものなのであれば
陽乃の力の余波でしかない諏訪の結界の外側を乗り越えてくる可能性がある。
それが出来なくても、
できる可能性はある。と、攻めてくるかもしれない
陽乃「……」
歌野「来たら来たで、今まで通りに追い返すだけよ」
- 491 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/07/08(木) 23:00:36.31 ID:7buqnYrwo
-
断言しない、断言できない
そんな様子の陽乃に、歌野は囁くような声で言う。
できるなら元気よくしたいが、そうできないもどかしさがあるのだろう。
わずかに顔を顰めて、喉を摩った。
歌野「こんな状態で言っても、信じられないと思うけど」
陽乃「元から信じる気はないわ」
歌野「……もう」
呆れた様子でため息をつく歌野
隣にいる水都はまだ、目を覚まさない
歌野「そろそろ信じて欲しいわ」
陽乃「嫌よ」
考えもせずに拒絶する陽乃だが、
それにも歌野は怒ったりせずに、小さく笑って
歌野「残念……」
落ち込んだように、呟く
- 492 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/07/08(木) 23:11:16.29 ID:7buqnYrwo
-
陽乃「ただ、信頼は抜きにしても簡単に追い返せるとは思えないわ」
歌野「久遠さんでも?」
陽乃「未知の敵を見下すほど、自分を信じてないもの」
力が強いのは分かっているし、
それが勇者やバーテックスに特化していて、より有効的なのは事実だ
だとしても若葉達が弱いと過小評価はしないし、
初期個体の白く丸い形状のものや、
今思えば未完成にも思える形状のバーテックスなら勝ち目は優にあると思える。
けれど、新たな敵にはそう思えない。
歌野「慎重ね」
陽乃「臆病なだけよ」
歌野「……それを、慎重だって言うのよ」
歌野の言葉に陽乃は目を背ける。
そういうならそうでもいい。相手がそう思うだけなら、関係のないことだ。
そんなことよりも、
その新型が多くの個体が合わさって生み出される存在であることが問題である。
- 493 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/07/08(木) 23:20:50.19 ID:7buqnYrwo
-
過去に生まれていた、芯の細い進化体のバーテックス
それもまた初期個体の集合体であるが、
今回のさらに上位の進化体は、より多くの初期個体を利用して生み出されるに違いない
だとしたら――
陽乃「……」
歌野「久遠さん?」
陽乃が無口に、神妙な面持ちになっていることに気づいて、歌野が声をかける。
歌野「何かあるなら、話して」
信頼できない以上、抱える秘密もあるだろう。
しかし、
だとしても話すべきことは話して欲しいというような歌野を、一瞥して。
1、何でもないわ
2、ソレが二人の方に出た可能性もあるわ
3、確証が持てたらね
↓2
- 494 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/07/08(木) 23:24:10.28 ID:FBoyWT/C0
- 2
- 495 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/07/08(木) 23:25:11.03 ID:2T3G9qoHO
- 2
- 496 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/07/08(木) 23:25:55.08 ID:7buqnYrwo
-
では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
- 497 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/07/08(木) 23:33:57.84 ID:2T3G9qoHO
- 乙
陽乃さんの強さが逆に仇になってマズい状況に…
早く説得して出発しないと二人が危ないな
- 498 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/07/09(金) 06:11:37.22 ID:gktjV13eO
- 乙
- 499 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/07/09(金) 23:07:51.48 ID:FrU9Ntg8o
- 遅くなりましたが、少しだけ
- 500 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/07/09(金) 23:11:00.35 ID:FrU9Ntg8o
-
陽乃「ソレが二人の方に出た可能性もあるわ」
歌野「!」
歌野もそれの危険性は分かっているのだろう
驚いて、辛そうに歯噛みする。
歌野「もしその場合、伊予島さん達に勝算はあると思う?」
陽乃「さあ?」
その新たな敵がどのような戦いをするのか
そもそもどのような姿かたちなのかでさえ、まだあやふやな状態だ。
二人が勝てるかどうかなんて、陽乃には判断できない
陽乃「……」
歌野「なら、久遠さんから見て、二人は進化体に苦戦する実力なの?」
陽乃「一人ならともかく、二人でなら苦戦はせずに済むかもしれない……けど」
けれど。
それは進化体のみとの戦いの場合だ。
それ以外に初期個体だったり、他の進化体だったりがいたら苦戦は免れない可能性が高い。
- 501 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/07/09(金) 23:42:35.75 ID:FrU9Ntg8o
-
歌野「だったら、新しい進化体には、勝ち目がない可能性もある?」
陽乃「それ以上は、言ったってどうしようもないことだわ」
問い続けようとする歌野を遮るように陽乃は言う。
二人に勝ち目がない。だとして、ここからは何もできない。
今はお昼ちょっと過ぎだから
今すぐに外に出て行くことも可能ではあるが……なんて、これでは同じ話を繰り返すことになる。
陽乃「二人が、諏訪の人と伊予島さん達を天秤にかけて見捨てられるなら別に構わないけど」
歌野「意地悪なこと言うのね」
陽乃「分かっていることでしょ」
陽乃はそう吐き捨てて、水都を見る。
巫女である水都だけは連れていく必要がある
でも、それ以外の一般人は置いて行っても大きな害にはならない。
むしろ連れて行く方が足手まといになる。
だからといって、置いてはいけない。
陽乃「明日の説得次第ね……連れていきたいなら頑張りなさい。もう、猶予はなさそうだから」
- 502 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/07/10(土) 00:01:06.89 ID:KFT8/L/6o
-
歌野「久遠さん次第でもあるわ」
陽乃「……なら、諦めて」
陽乃は、説得できるとは思っていない。
彼らが聞く耳を持たないとかではなく。
歌野「諦めないわ」
歌野は、あえて笑みを浮かべる。
状況は悪い
時間もない。
だけど、それでも。
歌野「諦める気は、ないわ」
陽乃「そう」
あえて宣言する歌野だったが、
しかし、陽乃は素知らぬ顔で振り払う。
歌野「とりあえず……通信があるから帰らないといけないんだけど」
歌野はまだ回復していないし
水都はまだ目を覚ましてすらいない。
1、藤森さんは見といてあげる
2、いいわ、。今日は私が対応してあげる
3、九尾。手伝って
↓2
- 503 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/07/10(土) 00:04:55.67 ID:+0W4bWLqO
- 2
- 504 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/07/10(土) 00:07:02.91 ID:+GKtnyJvO
- 3
- 505 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/07/10(土) 00:13:41.95 ID:KFT8/L/6o
-
では本日はここまでとさせていただきます
明日は可能であれば少し早い時間から
- 506 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/07/10(土) 00:19:54.97 ID:C/w6LF80O
- 乙
ドキドキしてきた
- 507 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/07/10(土) 00:23:08.33 ID:+GKtnyJvO
- 乙
そんな気はしてたけど10月半ばまでのんびりしてる暇はなさそうだな…
杏たちは今頃どうなってるんだろうか
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