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怪異探偵ソリィバレッタ「赤いドレスは血の先触れ」
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42 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 09:36:02.99 ID:z8WhOIbA0
溶岩地帯。
灼熱のマグマが散らばり噴き上がり、黒煙が渦を巻き、地面が焼け焦げヒビ割れる空間。
過酷な環境に漂う霊気は攻撃性も強く、燃えるような霊気が充満するこの場所は霊的にも危険なエリアといえる。
しかし、そのようなデンジャー・ゾーンでも怪異実体同士が争いを繰り広げることは稀であった。
スグレンラ「グワッ!」ブゥン!
バチィイン!
グランドランゴロ「ピョッ!」ピャオッ!
ドズゥウッ!
スグレンラ「ガァ…ッ」
ジュルジュル、ジュルジュル…
グランドランゴロ「シュアッ」ヒャポッ
ノシ…ノシ…
スグレンラ「」ズズゥ…ン!
恐るべきグランドランゴロ!驚異のブラッドレイン・ロングタン!
特にこれといった能力を持たないスグレンラあっけなく臨終ッ!
43 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 09:37:45.54 ID:z8WhOIbA0
ドドォオ…!ドドォオ…!
グランドランゴロ「」ノシノシ…ノシノシ…
ゴボボ!ゴゴボッ
ゴーラシネカス「ガァッ!」ザバァアアアアン!
キュドッ
グランドランゴロ「ヒョォーッ!」ボガァアアン!
ズズゥ…ン!
ゴーラシネカス「ガァアッ!バギャアアッ」
ゴーラシネカスのヘルズゴー・ビーム!標準的な怪進化体なら一撃絶命の威力を誇るッ!
グランドランゴロも漏れなく絶命!だがしかし、
ピャォオオオ────ッ
ガギィッ!ブチブチッバギィッ!
ゴーラシネカス「」ブシューッ!グラリ
ボシャアン!バシャアアン!
ドンボンガ「ブヨォオ────ッ」シュリィイイイ…
油断はできないッ!これが自然界の掟なのかッ!
突然飛来したドンボンガのバイティング・メガスジョーにより首を噛み千切られたゴーラシネカス!一時の勝利もむなしく残メシとなった!
44 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 09:38:28.38 ID:z8WhOIbA0
ガァッシィイイ!
ドンボンガ「ブヨォオオ──オッ!?」ジタバタ
ギガスマイト「バロォオオーッ」
ボ ゴ ァッ
ドンボンガ「ブヨォオオオ…」ジュ バラッ
シュバァアアアア…ッ
食物連鎖はまだ続いたッ!ギガスマイトの
バイトスクリュー熱線!囚われのプリンセスならぬ捕らえられたドンボンガ逃れられず素粒子レベルで分解ッ!
ギガスマイト「バロォッ!ブァロォオオオ…」
フワフワ…フワフワ…
もはや付近には何もいないっ!漂う霊気ばかりが彼の勝利を言祝いでおりますッ!
勝者ッ!チャンピオンはギガスマイトッ!今週の暴れ血祭りはこれでお終いッ!
それでは皆さん!さよーならーっ!
45 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 09:39:27.25 ID:z8WhOIbA0
ギガスマイト「………」
グルゥッ
ギガスマイト「バォッ!」ジュバッ!
バギョォオオオ…ッ
ギガスマイト「ばハァ───」
ズズゥー…ン
あーっと!号外っ!速報!ここで臨時ニュースです!
今週の暴れ血祭り優勝者のギガスマイト選手!まさかの熱戦自害──ッ!
ウサギは寂しいと何とやらと言いますが、我われには計り知れない勝利者の孤独な憂鬱が彼を襲ったとでもいうのでしょうか──っ!?
ギガスマイト「」
テトテト…テトテト…
ルナーク「クスクス…クスクス…」
あら可愛いね〜。どこから来たの?
お耳のサイズの割には体ちっちゃいね〜。
ルナーク「クスクス!クススス…」
テトテト…テトテト…
さぁ今週も始まりました怪異探偵ソリィバレッタ。
今回は趣向を変えて溶岩地帯からスタートしてみましたが、皆様いかがだったでしょうか?
さて今週はバレッタさまのご友人からの依頼の様子。ぽわぽわとした穏やかな雰囲気のご友人の来訪にバレちゃんマンも思わずお顔を綻ばせます。
ともすれば荒事の起こらない平和な日常回やもしれません。皆様どうか安心して縁側でティーでもブレイクする心持ちでいてください。
決して惨劇は起こりません。ええ、このレッドライ生涯ウソだけはついたことがありませんとも。
それでは楽しんでいきましょうっ!今週の血と暴力と殺戮の舞台ッ!
チャンピオンンゥーッ暴れ血祭りィイーっ!
レディイーッ、ゴーッ!
46 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 09:42:29.16 ID:z8WhOIbA0
怪異探偵ガーベラ・バレッタの朝は遅い。
昼頃まで起きてこないなんてザラにある。
「おーそーい…この私を待たせるなんて、いい度胸してんじゃねえかバレちゃんマン」
ガウス「待たされたくないならアポをおとりください、お客様。…何も言わずに勝手に遊びに来るのが悪いと思うよ、おじさん」
「うるせーな秘書かテメーは。アポとるとか死ぬほどキライなんだよ金輪際私にそのクソみてえな提案するな、クソが」
バレッタ探偵事務所。応対室のソファーに寝転び、開いたファッション誌を顔に被りながら、ドレスを着た女が早口に呻く。
このドレス姿の娘さんとは先日、怪異事件の解決に協力してもらった縁がある。一応。
あの日からそう時間もかからずに偶然の再会を果たし、今やこうして探偵事務所に遊びに来る仲になった…と言いたいところだが。
実際は再会を果たしたのも、この場所だ。「面白そうだからしばらく張り付いてみるわ。バレちゃんマン」会うなりそう言い放ち、猛烈に抗議する─主に呼び名について─バレッタをよそに、ここに入り浸るようになった…というのがことの真相だ。
47 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 09:43:20.67 ID:z8WhOIbA0
「別にいいだろオトモダチができたって思えば。ま、私は友情とかトモダチとか、だいっキライだけど」
ガウス「キライの多い娘だね…友達だって言うならいい加減、名前ぐらい名乗ってくれてもいいんじゃない?」
ガウス「ほら、呼び名がないのも不便だしさ」
「こーとーわーるー。テメーらが口にしていいような安っぽい名前は持ってねえ。王女殿下とでも呼んでろザコ」
ガウス「殿下ねえ…」
彼女は再会してからというもの、こういうふうに自分は王女あるいは女王の後継者と、そう主張してくることがたまにある。
最初はナイショにしておきたかったからな。ファースト・インパクトはオドロキが肝心、でしょ?
初めは冗談だと思ったが、どうも彼女は本気で言っているようだ。
もちろん私は最初から本気だ。次ジョーダンって思いやがったらマジぶっ殺す。
確かに身なりは立派だ。毛先が巻くように整えられた長い赤髪に、綺麗で豪華な赤いドレス。工夫を凝らした繊細な装飾のヒール靴。王冠のような髪飾りもあって、見た目だけなら本当にどこかの国の王女や女王にも見える。真実はどうだか知らないが。
真実見た目だけじゃねえっての。ケンカ売ってんのかテメー。
48 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 09:44:19.90 ID:z8WhOIbA0
しかしこうしてだらしなくソファーに身を投げ出した姿を見ていると、やんごとなき身分の者だなんて話は到底信じられない。態度も口も悪すぎるしね。
そんなようなことを考えてると、彼女はソファーから身を起こし、
「だからうるせえっての。ケンカなら買うぞコラ」
ガウス「おじさんケンカは苦手だから遠慮したいな…キミほんとに怪異じゃないんだよね?」
「テメーなら霊気見ればわかんだろ。いちいちくだらねえ質問してくんなザコ」
…いや、ちょっと悪すぎるな。バレッタと会話している時は、口も態度もここまで酷いものじゃなかった。これはもしかすると…
ガウス「…おじさんのことキライ?」
「今頃かよ。けど一つ訂正な、オトコがキライなんだよ。オンナもそうだけど、オトコはもっと信用できない。これは性分みたいなもんだ」
「オマエが特別どうこうってワケじゃねえから。妙な気起こすなよ。もっとも──」
49 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 09:45:27.36 ID:z8WhOIbA0
「大切にしてるハズの女にウソや隠し事をする、テメェみてえなロクデナシは特にだいっキライだけどな?」
ガウス「……!」
「フッ、わかりやすい反応してんじゃねえよ。心当たりがありますって言ってるようなもんだぜ!」
「なあフェルディナンド?答えろよ。ソリィちゃんがそんなに大切か?」
うーんナイス悪逆!陛下は今日もとっても可愛い!悪魔的魅力!魅力的悪魔!好き。
ガウス「…キサマ」
「ワオ!いいね、いいね、いいね、いいね!」
「何アナタ!叩いてもつついても、のらりくらりとかわしやがるクソつまらない野郎だと思ったら!」
「あの女が絡めばそんな目もできるんだ!やっぱりテメーみてえなイケメンはこーやって遊ぶに限るな?」
ガウス「何を…どこまで知って…」
「どこまで?全部だよ。調べたのさ、何もかもだ!私は興味を持ったら、すぐ調べるからな!」
「ネタバレ上等、早バレ歓迎。予習復習をきっちりこなし、本の続きが気になって後ろから読む女だからな私ってば!」
50 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 09:46:14.82 ID:z8WhOIbA0
「しばらくテメェらをオモチャにするって決めたんだ。壊さずじっくり遊ぶためにも、オモチャの取扱説明書はしっかり読まないとな?」
ガウス「……!」
きゃらきゃらと笑う魔女を前にしてガウスは気が遠くなる。
この女はなぜそこまで知っている?調べたって、どうやってだ?
どうやってソリィのことを───
「スト〜ップ。喋りすぎだぜ。情報を引き出すための匂わせはしても、答え合わせは今日じゃないっての」
「つーか興味もねえしな。私はテメェをイジメて、イイ顔が見れて、それで満足だし」
ガウス「…バレッタには」
「プッ。何ケイカイしてんだよ!心配しなくてもバレちゃんにも誰にも喋らねェよ」
「名探偵の推理中に、横から犯人の名前を口に出すヤボはしねえよ。それに…」
「お楽しみは、なるべく後にとっておかなきゃ。だろ?フェルディナンド」
ガウス「………」
決まったぁ───っ!悪逆!残忍!冷酷!最悪ぅ!
ルックス最高!性格サイコ〜ッ!悪魔!吸血妖精!悪の華〜ッ!
あ〜もう好き!好き!好き!しゅきぃ〜!たまらん〜!
ハッ。そんなに褒めんなよ。聞き飽きてるぜ。
飽きないで〜!もっといっぱい私に褒められて〜!浮気しないって10回言って〜!
浮気しませんー♡かける10〜☆
なんか軽いー!
51 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 09:47:32.62 ID:z8WhOIbA0
頬に手を当て意地悪く笑う魔女の顔が滲んでぼやける。熱を持った頭がガンガンと騒がしい。こめかみが軋む。吐き気がする。手の甲と指が突っ張って痛む。
倒れそうな怒りと恐怖の中、ガウスは奥歯を噛み締め、
ガチャ…
バレッタ「ん、ん〜…おはようございま〜…す。…誰か、バレちゃんって言いました?」
心臓が口から飛び出そうになった。怪異は内臓を持たないのだが。
ガウス「や、やあ…おそようバレちゃん」
バレッタ「おーはーよーうー…ございますー。さっきからしきりに…ガウス?ガウスですか?」フラ…フラ…
バレッタ「バレちゃん言うなって…言っへんれょおぉ…」フラフラッ
ガウス「おっと…寝惚けてるのか。昨夜はかなり遅かったもんね…」ガシッ
「大事な大事なバレちゃんに秘密、聞かれなくって良かったなぁ。なあ?」ニヤニヤ
ガウス「」ギロッ
「お〜怖。熱々カップルにうっかり巻き込まれてケガする前に、早めに退散しておくとするか」
粒が散らばるように魔女の姿が消えていく。霊気の類いは感じないというのに不気味な女だ。
バレッタ「んんー……あれっ?今、殿下来てました?」
ガウス「遊べる様子じゃないから、もう帰ったみたいだね…カオ洗ってきなよ。酷い寝癖だ」
バレッタ「はぁーい…」のそのそ…
52 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 09:48:23.36 ID:z8WhOIbA0
バレッタの悲痛な悲鳴が響き渡ったのは、顔を洗って寝癖を直し、自室に戻っていってすぐのことだった。
ガッチャン!
バレッタ「はぁっ…はぁー…はぁ!ヤバイ。やばい、やばい、やばい…」ぐるぐる目
ガウス「…どうしたの。バレちゃん」
バレッタ「ガウス!…私は急な用事ができました。しばらく事務所をあけるので、そのつもりで!」ドタバタバタ…
…カシャ
ガウス「慌ただしいなぁ。スマホ落としたよ…どれ」
スマホは起動状態で、メールを開いている。
内容を確認したガウスは納得して、
ガウス「約束の時間は…丁度だね。諦めた方がいいんじゃない?」
バレッタ「まだです!希望を捨ててはなりません。大抵の偉業は出来るわけがないと言われながらも…」
ズワッ
バレッタ「キャァアアアアアアア!?」
53 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 09:49:10.43 ID:z8WhOIbA0
部屋の隅に展開された円形の転送アード。淡い色をしたそれは緩やかにくるくると回り、中心部から起動状態のショッカー※のリングに触れた人間の手が突き出ている。
イヤ…イヤぁ…!と静かに慟哭するバレッタの願いむなしく手とショッカーの持ち主が転送アードから抜け出てくる。
現れた女はバレッタを確認すると、のほほんとした笑みをさらに弾ませて、
ロニュー「バレちゃ〜ん。こんロニュ〜!私だよ〜。待ちきれなくて早めに来ちゃった〜!」エヘヘ〜!
バレッタ「ロニュ〜!やめて来ないで!帰って!バレちゃん言うなぁ〜!」
※
対怪異実体用携帯霊的衝撃発生装置。通称怪異ショッカー。
怪異特有の霊気に反応して接触部位から霊的なショックを浸透させる。出力にもよるが強力なものだと一般的な家屋サイズまでの怪異ならば制圧可能。
怪異以外には発動しないことと怪異以外を対象とした武器として使うには不向きな形状から所持するだけならば罪には問われない。しかし訓練を積んでいない者が怪異に対して攻撃するのは逆に危険なので購入には免許が必要。
昨今一部のメーカー品が解析されたことによる違法なリミッターカットが問題視されている。
これわざわざ全部読んでるキミはえらい。
54 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 09:50:11.35 ID:z8WhOIbA0
バレッタ「あの…これ、粗茶です。ご一緒にぶぶ漬けもいかがでしょうか?」そっ…
ロニュー「うむうむ〜。苦しゅうな〜い」
直接的にも遠回しにも帰ってくれの言葉は通じず、お茶をすするロニューを見ながらバレッタはため息をつく。
アァーロロニュー・レプラコーンは怪異研究家の一般マッドサイエンティストだ。いつかの怪異事件に巻き込んできて、それを解決してからというもの、何かトラブルがあれば探偵事務所に持ち込んでくるようになった。
報酬はかなり弾んでくれるが、本人の人格も人格なので正直あまり関わりたくない。
ロニュー「で、ブブヅケ?だっけー。おいしそうだけど、今はやめとくよ〜」
ロニュー「これでも焦ってるからね〜。けっこう緊急事態なんだよ〜」
バレッタ「…とてもそうは見えませんが、仕事の話なら一応聞きましょう。今度は何をやらかしたのです?」
ロニュー「エヘヘ〜。今日はねぇ、失くし物!うちのモ…ペットが逃げ出しちゃって〜」
55 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 09:50:53.87 ID:z8WhOIbA0
バレッタ「今さら何を一般ピーポーぶってんですか…モルモットはどこで見失ったんです?最後に見た場所は?」
ロニュー「ペット。最後に見たって言うかー…今いるであろう場所っていうかー…えっとね、あのね、あのぉー…」もじもじ…
バレッタ「……?」
ロニューが赤面しながらしきりに自分の指を揉む。
イヤな予感がする。はっきり要領を得ない時のロニューは、特にとびきり激しいトラブルを持ち込んできているのだ。
ロニュー「モッ…あの子、今…溶岩地帯にいるんだー…」
バレッタ「はっ?……。…はぁ」
ロニュー「お願い!とっても暑くて、蒸し暑くって、視界最悪、灼熱と噴煙の霊気渦巻く、危険な溶岩地帯で私と一緒にデートしてっ?」パンッ
バレッタ「…………はぁあああああ…」
あまり驚きはない。怒りすら沸いてこない。
手を合わせ、頭を下げ、必死に拝んでくる友人マッドサイエンティストを虚ろな目で眺めながらバレッタはこれからの人類の行く末について考えることにした。
結論は出なかったが有意義な時間にはなった。
56 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 09:51:52.67 ID:z8WhOIbA0
───研究室。
ルナーク「ルナ、ルナ…」ジタバタ…
ロニュー「こらこら、暴れないのー…」
ルナーク「ルナ!」ベシッ、スタッスタタタ…
ロニュー「痛っ!あっ、こら!」
ルナーク「ルナ!」カチッ!ブインッ
ロニュー「そ、それに触っちゃダメー!」
ルナーク「ルナ!」ズワッパシュン!
ロニュー「あぁ───!?」
ホワンホワンホワ〜ン…
バレッタ「で、プリズン・ブレイクに用いられたのが溶岩地帯用の転送ショッカーだったと」
バレッタ「ワンタッチで動くショッカーの改造品なんかその辺に転がしておくからです。研究者なら整理整頓片付け、きっちりしておきなさい」
ロニュー「はぁ〜い…って、誰の研究室がアルカトラズのシャトーディフやねん。さすがに言い過ぎやろー」
バレッタ「そこまでは言ってませんが…」
転送アードはロニューが独自に開発した、怪法術の一種だ。
霊気によって怪異の定める法を世界に通し、既存の物理法則に縛られない特殊な現象を引き起こす怪法術。ロニューの専門は怪法術の研究である。
転送ショッカーとは怪異ショッカーの霊気を帯びる性質だけを利用して、ショッカーの霊的攻撃性を取り除き、転送アード法を上書きしたものだ。
用途の性質上、人間にも通じるようにしてあるので違法スレスレというか、ぶっちゃけかなり黒よりの黒だ。
見た目よりヤバい代物なんだから管理ぐらいちゃんとしておけ───とは何度言った言葉か、もうわからない。
57 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 09:53:06.23 ID:z8WhOIbA0
ブイ────…ン
『ハブルブネシュカ─溶岩─』と書かれた赤いラベルの貼られた転送ショッカーが起動状態の音を立てる。
赤く灯ったリングに触れると現れるアード、このアードを通り抜けると転送完了となるのだ。
ロニュー「あ、忘れてた。はい、これ」スッ
バレッタ「?何です、これは…ネックレス?」
ロニュー「うん。私が作った対ルナークネックレス」
バレッタ「…ルナーク………」
ルナークといえば狂気誘発法術ルナークス怪霊気を用いることで有名だ。
ルナークの発する特殊な霊気に触れると、怪異であろうと周囲の誰かを殺したくなり、死にたくなる。
人里まで降りてくることは滅多にないが、迷い込んだ一つの町を潰した事例もあり、その道のプロならあまり触りたがらない。
なんてもんモルモットにしてんだ、このアマ。
ロニュー「エヘヘ〜。危険でしょ?だからそのネックレス、しっかり着けて外さないでね」
よく見ればロニューも同じものを首に着けている。
バレッタ「…そういえば、ガウスは着けなくても大丈夫ですか?」こそっ
ガウス「契約の繋がりがあるから大丈夫…と言いたいところだけど」
ガウス「おじさんは自分で防御できるよ…事前に知らされてるなら大丈夫」
霊体化したままガウスが答える。ガウスはバレッタにとっての切り札なので、なるべく秘密にしておきたいのだ。
バレッタ「そっか。それなら大丈夫ですね…じゃあ行きましょうかモルモット探しの旅へ」カチリ
ロニュー「ペ・ェ・ッ・ト・ー!」ズワッ
58 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 09:54:07.61 ID:z8WhOIbA0
溶岩地帯は酷い有り様だった。
怪異実体の亡骸が多数転がっている。激しい損傷からして明らかに戦闘行為の結果だ。
バレッタ「…ルナークでしょうか」
ガウス「多分ね…ルナークス怪霊気の残り香がある。ネックレスも反応してるみたいだ」
ビイ────…ッ
恐ろしさに身震いする。死後残る怪異実体が多数あるだけでも倒れそうになるのに、今探しているペットはそれらを皆殺しにできるのだ。
ルナーク「ルナ!?」ビクッ
ロニュー「あっ…」
ロニュー「あ───っ!見つけたぁ──っ!」
ルナーク「ルナ!」ササササッ
ロニュー「待てコラ!」ザッ
待てぇ───…
バレッタ「…彼女は恐れを知らないんでしょうか」
ガウス「…まあ、あれぐらいじゃないと研究者なんて務まらないんじゃない?特に怪異なんか相手にするには、さ」
59 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 09:54:51.11 ID:z8WhOIbA0
ルナーク「ルナ!クス!」スタタタッスタタタタッ
ロニュー「待てコラーっ!あっ、そっちは──」
ルナーク「ルナ!」ツルッ!バシャァアン!ボワッ!
ロニュー「危な…うわ────っ!」
バレッタ「あっ…死にましたか。そんなにロニューがイヤでしたか…気持ちはわかりますけど」
ロニュー「私のモルモットがぁ───っ!」
やっぱモルモットじゃねぇか。
ロニュー「うっ、うぅう…」ズシャ
バレッタ「…ロニュー?」
ロニュー「うっう…ひっく、うぅ〜っ…」
バレッタ「ロニュー…」
思わぬ投身自殺にロニューの目にも涙。彼女にも人間の心が残っていたのだろうか。
ロニュー「あれ高かったのにぃいいいいい…」
バレッタ「まあ…そうですよね。あなたはそういう女です…」
60 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 09:55:51.04 ID:z8WhOIbA0
ゴゴボ!ゴボボゴ…
バレッタ「ほら、いつまで泣いてんですか…自分で歩きなさい。男の子でしょ」
ロニュー「うぇええ〜…女の子だもーん…ひっく、ひっく…」
ゴボボボ!ゴボボボボッ!
ギラン!
ドワッバァアアアアアアアアン!!!
背後。哀れなルナークの亡骸が眠る場所から、
バレッタ「なっ…」
ロニュー「えっえっえっ?何何何!?」
マグオーン「マグォッ…ォ、オオ、ォオオオオオオオオオンンンンン!!!!!」
ブゥン!ブン ブン!ズバシッ
燃え盛る炎の耳にルナークの面影のある、しかし遥かに巨大な、マグマの怪異が現れた。
マグオーン「」ギラン!
61 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 09:56:47.68 ID:z8WhOIbA0
バレッタ「なっ…なっなっなっ…」
ロニュー「うそうそうそうそうそ!?でかすぎっ…」
マグオーン「ガギャギャァアッ!」バ ルウッ
ロニュー「ふ、ふわぁああああっ!?」
バレッタ「ガウスッ!」
ガウス「うん…」ズワッ
ロニュー「ふぇえええっ!?誰!」
62 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 09:57:38.19 ID:z8WhOIbA0
グッバッバッグッ
ガウス「『タイム=ロック・カプセル』」ピシィイイイ────
バガシャアッ バジュゥウウウ────!!!
ガウスの怪法タイム・ロック・カプセル。冷凍時間法による時間凍結霊気であらゆる攻撃から身を守る。
ガウス『(マグマなんかじゃ、破れないよ─)』ピシィパキパキ、
パキィイイイ────…ン
マグオーン「バジュ…!?」
バレッタ「逃げますよ!」パシッ
ロニュー「えっ…でも、あのヒトは…」
バレッタ「怪異だって、わかるでしょ!おバカ!いいから逃げる!」
タッタッタッタッタ…
マグオーン「」ギラッ
マグオーン「マグォ!…ォオ───ンッ」バ ワッ
ガウス『(…何っ!)』
マグマの怪異が口から熱線を吐く。その狙いは目の前の自分…ではなく。
63 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 09:58:20.01 ID:z8WhOIbA0
ガウス(くっ…間に合えっ!)バッ
ガウス『』ジュバァアッ!バジュゥウウウッ!!!
ロニュー「キャァアアアアアッ!?」
バレッタ「私たちの方を、狙ってきた…?あなた、今まで彼にどんな扱いしてきたんです?」
ガウス『(ぐっ…)』ドシャァアッ
マグオーン「」ズン、ズン…
ガウス『(まいったね、これは…)』
あの怪異はどう見ても家屋サイズってレベルじゃない。バレッタの怪異ショッカーには頼れない。
マグオーン「マ…アグ、アグォオ───…ン」ズン!ズゥン…
ガウス「おじさん、ほんとにケンカは苦手なんだけどな…」
マグオーン「」グ バ ァオッ
ガウス「」サッ
64 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 09:59:02.09 ID:z8WhOIbA0
カカカカカカカッ、カッカッ!
「ヒュルルルルルルルルルルルル」
カツ、カッ!
「ヒャオ!」
バ ァ オッ!
跳躍っ!そして空中飛び膝っ!
ガウス氏を襲うマグオーンの、文字通りの魔の手に激突ゥ────っ!
いや飛び膝蹴りは普通宙に浮くものだけども。
ブァギィイイイ────ッ
ガウス「うっ!?」
65 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 09:59:55.81 ID:z8WhOIbA0
マグオーン「ガギ、ギャァアアアッ!?」バチィイン、ズン!ズン…
カシィン、カシャァア──────…ッ
「」シュリィン!
決まった!滑るように踊るように弧を描いて綺麗に着地。
確実に靴をダメにする着地。しかし陛下は、そんなやわなヒールは許さないッ!
好きなものに妥協は許されないッ!そこに濡れるゥ!憧れる!
「ふ〜ん。こいつが今回のオモチャってワケぇ?自由にいじって壊すんでしょ?」
もちろん!もちろんもちろん!もろちんです、陛下ぁ〜っ!
「だよなぁ!…いま何かヘンなこと言わなかった?」
何も喋ってません。黙秘権を行使します。
「…まあいいや。おいザコイケメン。私の助けは必要か?」
ガウス「いらないよ。特にオマエなんかの助けは…って言いたいところだけど」
ガウス「正直、かなり助かった…情けなくて、泣けてくるけどね」
「プッ。ほんとに情けねぇな!女逃がすのに他の女の手、借りるとか!」
「ま、私は優しいからな?そんなに情けねぇザコ野郎も─」カツ!
66 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 10:00:47.02 ID:z8WhOIbA0
バギャンッ!
マグオーン「ガ!ギャオッ」グワ バッ
「」クルリッ
バギャァオオオオッ!!!
空中で身を捻り、背中からマグパンチと激突ゥ!
自分より体格が遥かに勝る相手には、身体丸ごとでェ!ぶつかるゥ!俗に体パンチというやつですねー!
特に背中は殴れる一面としては非常に広いので、皆さんも怪進化体と戦うときは是非お試しくださ〜い!
ちょっとだけタッパで負けてるだけだったり、同格相手にするなら低い位置から突き上げる肩もオススメですよ。
裏拳、腕、肩と肘をコンパクトに立て続けにぶつけるのが隙も少なくて私のジャスティスですねー。
67 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 10:01:26.49 ID:z8WhOIbA0
マグオーン「ガアッ」ズゥン!
カッ、カッ!クルリッ
マグオーン「ギャワッ!」バオッ
ボワォ!ギャッ、ギャッ!
「」バギャァアアアアアッ!!!!!
マグオーンの黄金の左に合わせた、魔力をまとった右ストレート!ジャンプ漫画の主人公みたいでお手軽に必殺技感だせるけど隙だらけだし、外すとめっちゃ恥ずかしいからあんま好きじゃないのよねーアタイ。
マグオーン「ギ、バギッ」ドズン、ズン!ズン…
「」サッ!ギュ─────…ン
ガァ──ーン!
マグオーン「ォオオァ─────ッ!?」
チュドォオオオオン!!!
相手を指さし、魔力の弾丸ッ!その威力は1ターンのスタン状態を受けた相手に付与するぐらい。
弱体無効持ちに撃たないよう気をつけてネ!
私はいつもアトラスだからよくわからんがね。
68 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 10:02:01.42 ID:z8WhOIbA0
「──ついでに逃がしてやるよ。優しいだろ?私」
ガウス「ありがたいけど…そこまで甘える気はないな。バレッタたちが逃げ切るまで戦ってくれる保証もないしね」
「ハッ…好きにしろ」
マグオーン「ガギッ!ワギィッ」ブゥン!ブンブゥン!ブウウウン!
マグオーン「バギギャアッ…ォオン、オオ、ォオオオオンンン!!!!!」
決まったァ────っ!陛下っ!素敵っ!好きっ!
抱いてっ♡私の体を好きにしてっ♡滅茶苦茶にしてぇ───っ♡
任せなぁ!尻の穴までガバガバにしてやるよ!
ふわぁあ〜っ♡♡♡きゃぁあああ〜っ♡♡♡♡♡
69 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 10:02:48.79 ID:z8WhOIbA0
ドドォ…!ドドォ…!
タッタッ…
バレッタ「ハッ…ハッ…」
ロニュー「はぁはぁっ…はぁ──っはぁはぁ…はあはあ、はあはあ…」
バレッタ「…くっ」チラッ
ずいぶん遠くまで来た。あのマグマの怪異の姿はおろか、声まで聞こえない。
バレッタ「…帰りましょう。ロニュー…ああなってはモルモットも何もないでしょう」
ロニュー「はあはあ…はぁ…!はぁ…」
ロニュー「………」ハァ…ハァ…
ロニュー「だ…ダメ…なの…」
バレッタ「ロニュー!あなた…」
ロニュー「違う!…違うの。あのね、対ルナークネックレス…作動してる…」
ビイ────…
ロニュー「ルナークス怪霊気!…まだ生きてるのぉ!」
バレッタ「……!」
恐怖で血の気が引き、呼吸が一瞬止まり青ざめる。
脳裏によぎったのは、あちらこちらに散らばる怪異実体の死骸。あれがルナークのサイズで作り上げられた景色だというのであれば。
あれがもし人間の町に現れれば、ああも膨れ上がったマグマ怪異のサイズであれば、一体どれほどの。
70 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 10:03:20.55 ID:z8WhOIbA0
ロニュー「ルナークをこのままにしてはおけない…でもだからって、どうすればいいのぉ…!」
バレッタ(…………)
バレッタは考える。
マグマの体。マグマは溶岩。溶けた岩。溶けて、どろりとした体。固まってないから動ける…
バレッタ「冷やす…冷やしてみるのは、どうでしょう。マグマの体なら冷やして固めれば動けなくなるはず…海に沈めるんです」
ロニュー「えっ…」
バレッタ「転送アードですよ。転送ショッカーでルナークを海に飛ばすんです!」
ロニュー「で、でも…あんなおっきなサイズが通るアードは…」
ロニュー「待てよ…?変換せずに、アードの代理をショッカーの霊的衝撃に…ショック霊気をそのままアードに…」
ロニュー「足りないパワーは…リミッターカットで補えば…」
ロニュー「…うん!バレちゃん、怪異ショッカー貸して!壊してもいいかな?つーか壊す」
バレッタ「!…弁償してくださいね。市販品とはいえショッカーは高いんですから!」スッ
ロニュー「うん!ありがとバレちゃん!」
バレッタ「礼には及びません。それと…バレちゃんは、やめてください」
71 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 10:03:59.26 ID:z8WhOIbA0
ロニュー「バレちゃんマン!」
バレッタ「それもやめてください!はやってるんですかソレ!?」
72 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 10:04:53.28 ID:z8WhOIbA0
マグオーン「ギャワッ!」バオッ
ズズゥウウ───…ン!!!
「…くっ!」ギリッ…
凶悪!マグマチック・ビッグボディでのストンピング・ヘルズスタンプ!
ブリリアントクロスガードでとっさに防御した陛下、身動きがとれなァ────い!
「勝手にダセェ名前、付けんなっての…!」ボワ…
ギャッ!
バギヤァアアアアアアアッ!!!
マグオーン「アンギャア!?」
陛下!腕を引き抜き渾身の魔力アッパーカット!
マグオーンこれにはたまらずたたらを踏むゥ──!
マグオーン「ガッ…」ズン、ズズゥウン…
マグオーン「……」チラッ
ガウス「…ン」
ガパッ
マグオーン「ギャワッ」ドギャッドギャ!ドギャーッドギャッ!
芸達者!口から吐き出すマグマ球火炎弾!
灼熱溶岩弾の雨はガウスの方へと───!
ズバラァア─────ッ!
ガウス「──フッ!」
タッタン!タァッタッ!タンダァ───ン!
ドギャアッ!ボガッドガドガッボガ!グワシャアア────
73 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 10:05:47.74 ID:z8WhOIbA0
意外や意外!ガウス選手ッ体格に似合わぬ軽やかな身のこなしで溶岩弾を避けまくるっ!
しかしっ!だがしかしっ!
ギャバァ───────ー
それは油断か限界かッ!?一つ避け損ねているぞォ──ッ!
迫る隕石溶岩弾!
グ ワ ッ
ガウス「」グッババッグッ
グワシィヤァアアアアア…ッ!!!
ガウス「タイムロックカプセル…!」バラ…
よし、このやり方だ。避けられる攻撃は自力でかわして、当たりそうならばタイムロックガード。
これで消耗は最小限に抑えられる。
マグオーン「バオッ…!」
「ほら、よそ見してんじゃねェよブタ!」ガァ──ーンガァ──ン
マグオーン「」クルッ!ズシン、ズシン…
スカァスカ!
「あァ!?」
ズシィン!ズシィ!ズシッズシッズシア!
マグオーン「マグォオオ────アッ!」キュドッ
ガウス「くっ!…こっちへ来たか」
倒しやすく見えた方から片付けるつもりかな…ナメられたものだね。
74 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 10:06:46.67 ID:z8WhOIbA0
マグオーン「ギャバ!」グワバァッ
ガウス「『タイム・ロックカプセル』」ピキィイー
バギャギィイイイン!ジュワォ…ッ
バジュゥウウウウウウ…ッ
ガウス『(掴まれたか…けど)』ピキィイイイ───…
マグオーン「ガァッ」ググググ!グ…
バジュゥウウ…!ジュワドロッ
ガウス『(………何ィ!?)』ピキピキドロドロ
バジュウ!ドロ!ドロジュワ!ジュワドロッ
パキパキパキ…!
バキィイイイイ────…ン!
ガウス「…なっ」
マグオーン「ガアッ!」グッググ!
ガウス「ぐわァ!」ボジュゥウウウウウ…!
タイムロックガードが破られた…!?コイツ…何て熱量をしているんだ…
こんなものマグマの温度のそれじゃないぞ…!
ガウス(だ、だめだ…意識が…)バァアジュゥ────…!
75 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 10:07:50.96 ID:z8WhOIbA0
カッ、カッ!
「私を無視してお楽しみとか、いい度胸してんなテメェ!」サッ!ギュ────…ン
モンハンとかでも戦ってる私を無視して長距離突進でどっか行かれると泣きたくなりますよね。
ガァ───────ーン!
マグオーン「グギャガァアアアッ!」バギィイイン!
76 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 10:08:53.10 ID:z8WhOIbA0
ガウス「ガはっ!」ズシャァアアアッ
ズゥン、ズンズン…
ガウス「がはっ!あ…あ、アア…!」ゼェ…ゼェ…
カツン!
「よぉー生きてるかよ?ザコイケメン」カツン、カツン…
ガウス「はは…まいったね。おじさん、役立たずになっちゃった…」シュー…シュー
「見ればわかる…別にいいんじゃない?元々いてもいなくても変わんなかったんだしぃ☆」
「ザコ野郎のケガ人はみっともなく泣きながら、女のトコに逃げ帰ればぁ?ほら逃げろ逃げろ♡シッポ巻いて情けなく、負け犬みたいにキャンキャン吠えて逃げろ♡」
77 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 10:10:17.01 ID:z8WhOIbA0
ガウス「ここはオレに任せて先へ行け!…かい?」ゼェ…ゼェ…
「キャハッ!…別にアレを倒してしまっても構わないんでしょ?」
ガウス「フッ…今はその口ぶりも頼もしいよ」グッ
ガバッ
ガウス「…任せていいんだな?」
「しつけぇよブタ。ザコ野郎はザコ野郎らしく泣いて感謝しながら、黙って潔く逃げ去って死ね」
ガウス「…フッ」ザッ!
タッタッタッタ…
マグオーン「ァアッ…マグォ!ォオオ───オオン!」ブン!ブンブンワギャァアアアアッ
「来いよ!ブタぁ!」
78 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 10:11:42.39 ID:z8WhOIbA0
マグオーン「バオッ」メギャン
マグオーン「」バギョァワ─────ッ
マグオーンのキバ付きクチバシ!猛攻ラッシュ!
陛下これを飛び跳ね避けるっ!
ギャン!ギャンギャンッ!ギャワッ
ピョンピョンピョン、ピョォオ〜〜ン
「オイいいのか?そんなカンタンに──」フワオッ
ガシィイイイイッ
「急所(クビ)なんか、差し出してぇ!」ガシィガシッ
マグオーン「ガッ…!?」メシッ
陛下、上品に両足を揃えて、マグオーンの首に腰かけたッ!
そのままマグマの耳を抱え、上半身を後ろに倒して体重をかけるッ!
79 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 10:13:07.15 ID:z8WhOIbA0
「」グオンッ
マグオーン「グオッ…」メシ…メキッ
溶岩が軋み、悲鳴をあげるッ!巨人の首を折った技だァ─────ッ!
メギバギバギバギブギブギィイイイイッ
マグオーン「───」ドロッ…ドロッ…
「はい、いっちょあがり───」
マグオーン「………ッ」ブルブルブル…
「──あっ?」
マグオーン「ォオオッ!」グリャ!ッン
「きゃあッ!?」バヂィイッ
80 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 10:14:19.07 ID:z8WhOIbA0
きゃあ。
「ウソだろテメェ!何で死なねえ!?」カッ、カッカカッ!
マグオーン「オォン!ォオン!ォオオオン!」ブン!ブンブンブン!ブン
ドロドロ!ドロッドロ…
「あ、あぁ〜…ナルホドね。マグマだもんな。首の骨とか、あるわけないか…」
「ヤバいな…私の攻撃力じゃコイツを殺せねえ」
きゃあ。ねえ今きゃあって。
「クソが。ドロドロ液体野郎なんか、もう二度と相手にしねぇ」
ねえねえ、いま陛下きゃあって。ねえ。
81 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 10:14:55.55 ID:z8WhOIbA0
マグオーン「マグォッ!マグオ!オォ…ォオオオオオオン!!!」
ビリビリビリッ!ビリバヂバヂ…ッ
「…ハッ。上等じゃねえの!時間稼ぎのシャッター防壁。無意味で不毛な殴り合い!」
カッ、カッ!カツ
胸に手を当て、片手を広げ、目を閉じ足を交差させる。
回るように。眠るように。躍りの相手を誘うように。
「ふざけ倒し、踊り狂い、戀焦がれる。道化は私の本分よ」
「沈み砕け散り溶け込んで、膨れ上がって壊れた自由の願いと夢の最果て。私と死ぬまで戦りましょう?」
マグオーン「ォオオ!オオォン!オオオオオォ───ン!!!」グ ワ ォアッ
82 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 10:15:51.55 ID:z8WhOIbA0
ガウス「ハァ!ハァ…ハァ…!」
膝に手を当て、息をつく。戦闘の音はもう遥か遠い。そして、まだ聞こえているのだから多分あの女も死んではいない。
バレッタ「ガウス!」
遠く頭上から声がする。見上げるとバレッタが崖上で怪異ショッカーを掲げている。
バレッタ「ショッカーを寄越します!起動して、あのマグマ怪異にブチ当ててください!」
ロニュー「ショックを受けるかわりに海にブッ飛ぶようにしたから、起動したらリングには触らないでねぇ〜!」
ガウス「何っ…」
────ォオオオン
ガウス「…!?」
83 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 10:16:41.22 ID:z8WhOIbA0
霊的雄叫び。近づいてくる。
バカな、早すぎる。戦闘の音が聞こえてからそう時間は経ってないぞ。
それにヤツがここに来るなら、あの女はどうしたのだ?
悪魔のような女とはいえ自分たちを守って死んだのでは、さすがに寝覚めが悪い。
マグオーン「ギャワ────ッ」バ ウ オ ッ
マグオーン「ガァアッ!ガァアアアッ」ズボァアア────アアッ!!!
バルォ…バロロロロ…!
ガウス「炎の翼…?あんなマネまでできるのか…!」
マグオーン「」ズ ドォアアアア…ッ
グラ!グラッグラグラ…
ロニュー「ふうぇえええっ!?」グラグラッ
バレッタ「キャア!?」ポロッ
ガウス「くっ…!」ヨロロッ…
グラォ!…ゴゴゴゴゴ…!
マグオーン「ギャワァ───アアッ!」グッパオン
…カシャン
ガウス「怪異ショッカー…確か、これを使って─」スッ
カチッ…ブインッ
バヂン!バギッガラララララ…
ガウス「うっ!?…リミッターカットか」
そのぐらいは必要か。あのマグマ怪異は明らかに家屋サイズでは収まらない。
バヂイン、バヂヂ…!
ガウス(……)スッ
マグオーン「マグォ、マグォ…」ズシィン、ズシィン…
ガウス「くら───」
マグオーン「ギャワァッ!」ドギャッドギャ!
ボガァッ!ボゴォ!グラグラグラッ!
ガウス「うおっ!?」スポッ
ワォオオオオン…!
ガウス「しまった!コントロールが…!」
マグオーン「バギャァアアアア────」ガはァ
暴投。
溶岩弾の炸裂。振動に足を取られ、射線は僅かにマグマ怪異から逸れて、起動状態のショッカーが宙に舞う。
84 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 10:17:14.97 ID:z8WhOIbA0
バヂ、ババヂヂ…!
マグマ怪異の肩を飛び越し、空しく霊気の炸裂音を響かせるショッカーの先には。
まるで、空中に突然現れたような───
「キャッハ…やっぱり私の勝ち」
底意地の悪い笑みを浮かべた、悪魔のような、あの女。
「──おらっ!」バァシィイイイイン
空中で叩き落とされたショッカーは軌道を変え、マグマの怪異へと吸い込まれるように向かい、そして──
マグオーン「──」ピヤォオオオオ───…ッ
…パシュンッ
85 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 10:17:58.30 ID:z8WhOIbA0
グレムール・デッドエリア。
グレムール島、リングレー島、リーングレム諸島に囲まれるような形のこの海域は、昔から原因不明の沈没事故や墜落事故により、多くの船や飛行機を飲み込んできたことから『悪戯妖精の遊び場』と地元では呼ばれ恐れられている。
ズワッ
マグオーン「」ザボァアアッ!!!
バジュ─────…ッ
マグオーン(…………)ゴボゴボ…ゴボゴボ…
マグオーン「ガバ!ガボァッ!ギャバ…オ、オォオン」ザバッ!ザバザバ…ガバァアッガバ
バジュゥウウウ!!! ボォジュゥウウウウ…
マグオーン「バジュウ!ガバッ…オ、オオン!オオォン、オォオオン!」ズバズバッズバ!ズバッ
マグオーン「ォオオオォオオオオ───ッンンンンン!!!!!」
バギィイイイ─────…ン…!!!
岩『』ゴ ボ アッ…
86 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 10:18:42.27 ID:z8WhOIbA0
マグオーンは岩になった。
意思も自我も霊気をも失い、怨念のみが突き動かしたマグマの体も動かなくなり、恐ろしき狂気誘発ルナークの脅威は完全に消え去った。
だが忘れてはならない。
彼もまた、一人の無責任な人間の、身勝手な欲望に振り回された、哀れな犠牲者であった事を…
ゴボボボ… ゴボボボボ…
87 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 10:19:21.10 ID:z8WhOIbA0
怪異ルナーク
永眠。
88 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 10:19:58.16 ID:z8WhOIbA0
バレッタ「──た、助かっ…た…?」
ガバッ!
バレッタ「うわっ」
ロニュー「うぇ〜ん!ほんと助かったよぉ〜!ありがとぉおお…」グシグシグショグショ
バレッタ「ああ、もうわかっ…わかったから。わかったから離れなさ…い…」グイグイ
ロニュー「うぇえぇええ…ありがとぉおお…ありがとありがとありがと…」ギュー…
バレッタ「離れなさいってば…力強いなコイツ。これに懲りたらショッカーの管理はちゃんとしなさいな…」グイー…
バレッタ「ああもう鼻水が…」
ぎゃあ、ぎゃあ…
ガウス(………)
ガウス「──あ、そうそう。今回はキミも…」クルッ
ガウス「助…かっ…」キョロ…
あの女は忽然と姿を消していた。
悪魔のような女かと思えば、突然現れヒトを助け、礼も聞かずに風のように跡形もなく消えるとは。
ガウス「おかしなヤツだね。ほんと…」
騒ぎ立てる探偵とマッドサイエンティストの攻防を見上げながら、ガウスは腕を組んで静かに呟いた。
89 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 10:20:30.12 ID:z8WhOIbA0
───研究室。
ズワッ
ロニュー「ただいま〜!あ〜!やっと帰ってきた〜!」
ロニュー「もう脱走騒ぎはこりごりだよ〜!…ん?モルモットの数が合わな…」
バヂッ…ババヂヂ…
ロニュー「…はっ!」サー…ッ
ブイ────…ン…
青ざめるロニューの視線の先。
研究室の床には起動状態の転送ショッカーが複数、転がっていた。
90 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 10:21:04.22 ID:z8WhOIbA0
ロニュー「バレちゃん、ごっめ─────ん!今度は世界旅行に付き合って!」パンッ
バレッタ「………!」
バレッタ探偵事務所。再び拝んで祈るロニュー。血の気の引いた顔でわなわなと震えるバレッタ。霊体化したまま静かに頭を抱えるガウス。
バレッタ「あ・ん・た!って!人は────!!!!!」
バレッタの叫びが探偵事務所の屋根を貫いた。
91 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 10:21:42.61 ID:z8WhOIbA0
ロニュー「皆も戸締まりに気をつけて、遊び終わったオモチャはちゃんと片付けようね!」
バレッタ「バレちゃん言うなー!」
92 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 10:22:18.36 ID:z8WhOIbA0
皆さ〜ん、こんロニュ〜!私だよ〜!
私ねー、今ねー、研究友達にオススメされた、あるゲームにハマってるんだぁ〜!
勇者が王様に命じられて、悪いやつを倒しに出かける王道冒険ものなんだけど〜!
何と冒険の途中である隠しアイテムを集めてー!終盤の選択肢でラスボスにトドメを刺さないを選ぶとね〜!
何と王様の真意と真の裏ボスを倒すルートがぁ…
あ〜っ!ネタバレしちゃった!ごめんなさ〜い!
あっ!うっかりしてた!次回はね、ロボットものだよ!えっ?違う?
とにかく楽しみにしててね〜!おつロニュ〜!
次回、怪異探偵ソリィバレッタ
「夢を叶えてドリームラン」
ところでキミ、怪異研究に興味ない?大切に扱うからウチ来ない?
93 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 10:26:16.42 ID:z8WhOIbA0
「夢を叶えてドリームラン」
ドリームフラッシュホーン ギャンドーズ
電脳機デストロイヤー バサカロン:キルソーン(バーサステッドバーサーク)
登場
バギャガァアアアッ!ピロロロロ…
どんどんいきましょう
「赤いドレスは血の先触れ」
>>1
から
「ルナチック・マッドメイク」
>>41
から
94 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 10:27:34.97 ID:z8WhOIbA0
ピロピロピロリッ、ピロピロピロリッ
ピロピロピロリッ、ピロロロロロロ…
バサカロン「(電子音)」カコカコカコ…
ガシャン、ズバシッ…
ガシャン!ズバシッ
バンゲート「止まれ、きさ─ぐわっ!」ズバッ
ソルージャA 「待っ─ぎゃあ!」ドズン!
ソルージャB「ひっ…!」メキメキメキ…メシッ
ロイヤルガ「うお〜っ!」チュドォオオン
ガシャン!ズバシッガシャン…
バサカロン「………」カコカコカコ…
堅物な防御扉「」ズォオオオン
バサカロンの右腕武装はデッドエンド・アビスクラッシャー。
7000万シャワもの馬力を誇るクローハンドは球体状のマガラグナ隕鉄を容易く掴み、粉砕する。
人間の武器に対する防御扉など紙も同然。
ガシィッメリメリメリ…バキッ
堅物な防御扉「ギャァアアアア〜!」メリメリメリ…
ズドォオオンン!
バサカロン「」ガシャン!
ヒョォオオオオ…
キングロー「」ヌワッ
95 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 10:28:15.26 ID:z8WhOIbA0
キングロー「おぉ〜…この王の間に、何用じゃ?来訪者よ…いや、」
キングロー「勇 者 あ あ あ あ よ!!!」
バサカロン「……」プシー…
キングロー「よもや、よもやだ。勇者たる貴公がこのような暴挙、気でも違ったというか」
キングロー「であれば致し方なし。秩序の王、キングローの剣をもって狂いし勇者殿に許しと暇を与えよう」
バサカロン「……」(電子音)
キングロー「…フッ、怒りと驚きで声も出ぬか。返事ぐらいせぬか勇─」クルッ
キングロー「えっ誰?」
バサカロン「」ズワッ
バシュ─…ン
キングロー「誰?」
バサカロン「」ゴオ──ッ
キングロー「いや誰?」ガギィイイイン!
フレーメア・バーニアによる長距離跳躍。エンシェントチェイルブレードの振り下ろしをキングローの大剣が受け止める。
レフトハンド・パワー・グロステップに取り付けられたエンシェラスタ鋼の巨大なブレードは一振りでダイナマイト1万発分の威力を誇る。
いかにゲーム中トップクラスのステータスを持つキングローといえども自分の身を守るのが精一杯だった。
96 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 10:29:05.10 ID:z8WhOIbA0
バサカロン「」(電子音)グググググググ…
キングロー「いや誰?こいつ怖っ。力強っ」メリメリメリ…
バサカロン「」カコカコカコ…
キングロー「なんで何も喋らないの?」
キングロー「もしかしてワシの政敵クライムオー討伐に騙して出発させた勇者ああああか?だとしたら人間やめすぎじゃろ」グ…グ…
バサカロン「」ガシィッシュバッ
キングロー「おっ…」
王の油断。力の拮抗、一瞬の隙をついて破砕クローが剣の切っ先を掴む。
ブレードを除けたバサカロンの胸部に妖しき紫の粒が集まる。
バサカロン「」ギュ─…ン
シュパァ……ッ
キングロー「──かっ」ゴボッ
胸部三連主砲ギガロンボレー。
胸部中央のインビジブル・ディメンジョンコアから、粒子化した劣化ギガントプロトンを秒間7万2000発、撃ち出す。その威力はボレー級の隕石18発分に匹敵する。
ごくありふれた中世ファンタジーを舞台とするこのゲームのキャラクターでは当然、防げるハズもない。
97 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 10:29:45.57 ID:z8WhOIbA0
キングロー「お、王のレガリア…キング・ロゥ・ズォードごとワシの体に風穴をあけるとは…ブハッ!」ゴバッ
キングロー(いやていうかコイツ誰?出る作品間違えてるよ絶対)
キングロー「」ベシャァアアア
バサカロン「………」キョロ
ヴィイイ─…ン
バサカロンは周囲を超高性能センサー、グラッピング・ネイルブラアシッドを用いて部屋中を探索する。どうやらもうこの世界には何のイベントも起こらないようだ。
ヴィイイイ─…ヴ─…ン
バサカロン「……」(電子音)
バサカロンは爆裂レイザーの発射準備を始める。通常発射までにゼロコンマ1秒もかからないが、世界丸ごと焼き払う規模のものには17秒ほどのラグがある。
バサカロン「」ピィ──ッ
チュドドドドォオオン!
右胸部装甲の隙間から放つ電脳爆裂レイザー。
発射口から360度あらゆる方向へ折れ曲がるレーザービームは無差別な大量破壊に適している。
バサカロン「」ピィ──ッ
ズドドドドォン!
バサカロン「」ピィ─ッピィイッピイ──ッ
ズドォ─オン!ボゴォオン!
バグォオオオン!ボゴォアア──…ッ
98 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 10:30:21.81 ID:z8WhOIbA0
バサカロン「………」カコカコカコ…
闇に燃え盛る炎、虚しく乾くスクロール点滅の音。
電子媒体に記録するのは何度目かわからない景色といえど、機械の悪魔に喜びも怒りも嘆きもない。
当たり前に壊し、ただ当然に燃やす。
昔からの行いに、疑問も抵抗もない。
破壊と殺戮だけが彼の本質であり、彼にそれ以外は何もなかった。
─パルォオオオ…
バサカロン「……?」
ふと眩しさを感じ、見上げる。
幾度も星の数ほど世界を破壊してきたが、こんなことは初めてだ。
眩しさの先には、どこにでもあるような、ありふれた平和な風景が、ただぽっかりと浮かんでいた。
バサカロン「………」ズイ
シャボン玉のように浮かぶ町並み。バサカロンは景色に向かって何となくクローハンドを伸ばす。
すると、
ギュワッ
バサカロン「……!」
バサカロンの質量1700万トンの機体が浮き上がった。
違う、引っ張られている。風呂やプールの栓を抜くとお湯や水が抜けるように、シャボン玉の町へと向かってバサカロンの機体が吸い込まれる。
バサカロン「……」ゴォ──ッ
バスケットボールほどに小さく見えた景色は近付くにつれ現実的な実感を帯び、飛び込むように侵入を果たすと、そこは一つの世界だった。
バサカロン(………)
町並みを見下ろしふわりと降り立つバサカロン。
静かで平和で穏やかな、このぼんやりと眩しい景色のなかで、彼は──
99 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 10:31:00.38 ID:z8WhOIbA0
バサカロン「」ピィ──ッ
ズドドドドォン!
バサカロン「」ピィ──イッピイ─ッピィイイ───
ズドォン!ボゴォオン!バゴォオン!
ボゴォアア──…
とりあえず破壊を開始した。
見つけたので壊す。壊せるから燃やす。
完成した当初からの行いに、躊躇も選択もない。
破壊と殺戮こそが彼の本質であり、それ以外はやはり何もなかった。
100 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 11:13:11.48 ID:z8WhOIbA0
ガウス「う─ん」
バレッタ「うぐ…ぐぅ…うぐ…ぐ!」
ガウス「……心配だ」
バレッタ探偵事務所。ここのところ依頼はないので、ゆっくり休めると喜んでいたバレッタだが、どうも連日連夜うなされている。
目を覚ませば何事もなくけろっとしているので、まあ大丈夫だろうと思い今まで見過ごしてきたのだが…
バレッタ「ぐ!うぅ…あ、ああぁ…」
ガウス「…今日はちょっと尋常じゃないね」ギシッ
ベッドに膝を乗せ、契約者の汗まみれの額に自分の額を合わせる。契約の縁を辿り、夢の世界に意識のチャンネルを合わせる。
一般的な怪異には難しいことだが、悪魔であるガウスには造作もないことだ。
己の霊的質量を分解し、バレッタの意識に書き込んでいく。脳がバターみたいにするりと溶けて他人の頭の中に滑るような感覚。
ほんの数瞬後、ガウスはバレッタの寝室から忽然と姿を消していた。
101 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 11:13:52.48 ID:z8WhOIbA0
助けて!助けて!助けて…
ソリィバレッタ「ハア…ハア…ハア…」
助けて!お願い…誰か助けて…
ソリィバレッタ「ハア!ハア…ハア…うぅーっ!」
いい子になります。ワガママ言いません。
ちゃんと、みんなの言うこと聞きます。
もう、みんなを困らせたりしないから。
お願いだから、だれか助けてよ!
ソリィバレッタ「助けて、助けて…!」
ソリィバレッタ「誰か、たすけて──」
102 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 11:14:23.27 ID:z8WhOIbA0
パシッ
バレッタ「あ…」
ガウス「─やぁ、バレちゃん」
バレッタ「フェルディナンド…」
ガウス「うなされていたから様子見に来ちゃった。どんな夢見てたの?」
バレッタ「お、覚えてません」
ガウス「…おじさんとのエッチな夢かい?」
バレッタ「そっ、そんなワケないでしょ!馬鹿ガウス!」
ガウス「そう?そいつは残念だね。おじさんは毎晩バレちゃんとの情事を夢に見てるのに」
バレッタ「馬鹿怪異!変態!セクハラ悪魔!」
ガウス「フフフ…それでこそバレちゃんだ」
バレッタ「…馬鹿ガウス。バレちゃん言うな」
103 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 11:15:06.38 ID:z8WhOIbA0
ガウス「それで、ここはどこなのかな。随分と暗いとこだけど」
バレッタ「さあ…子供の頃にうっかり閉じ込められた納屋とかですかね」キョロ
ガウス「…ずいぶん広いね?」
バレッタ「夢の中ですから。子供視点の思い出の再現なら、そういうこともあるでしょう」
ガウス「ふうん…いつ出られるのかな。夢なら気合いで覚めない?こう、えいやって」
バレッタ「難しいですね…まあでも考えようによっては夢が叶うチャンスじゃないですか、ガウス?」
ガウス「あ、いいの?それじゃあ遠慮なく─」
バレッタ「ちょっと待って冗談…冗談ですってば!やっ、どこ触って…」
ガウス「─ん」
─ホワァアアアア…
104 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 11:15:47.03 ID:z8WhOIbA0
バレッタ「はなれ、て…カオ…ちかい…っ」
ガウス「今、何か聞こえなかった?」
バレッタ「えっ?いえ、私には何も…」
ホワァアアアア──…ッ
バレッタ「きゃあ!?」ガバッ
ビリビリビリビリ…
バレッタ「い、いきなり何するんです!?」
ガウス「霊的雄叫びだね…疵になるといけないから、しばらく耳を塞がせてもらうよ」
バレッタ「えっ…」
ホワァアアア──…ッ
ァアアア──…
ガウス「遠ざかっていくね…もう大丈夫かな」パッ
バレッタ「ど…どういうことです?夢の中なのに怪異が現れるんですか?」
ガウス「ほら、現にキミの目の前に一匹」
バレッタ「ガウスは特別ですっ。私と契約パスを通しているんですから…そうじゃなくて」
ガウス「何の縁もゆかりもない怪異が現れるかって?もちろん現れるよ」
105 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 11:16:36.31 ID:z8WhOIbA0
ガウス「精神的なことが強く作用するのが怪異だからね…剥き出しの精神活動である夢なんか、接触するだけなら現実より遥かに頻度も高くなるさ」
バレッタ「そんな…」
ガウス「まあ普通は遭遇まではしないし、たまたま近付いても、せいぜい霊気の痕跡とぶつかるぐらいなんだけど…」
ガウス「さっきの雄叫びは近かったな…あれじゃ夢のすぐ外側だったぞ」
バレッタ「外側?夢に内と外があるんですか?」
ガウス「ああ─……っ!?」ガバッ
バレッタ「きゃ─」
ホォオワァアアアアア────ッ!!!!!
バガァアッ!バガッガラガラ!
ピシャァン!ドガラドガラ…ドバァアッ!
霊気ショック。
目に見えるほどはっきりとした霊的ショックが、壁や床や天井を突き破り、奔る。
暗闇に穴があき、穴の向こうにいくつものシャボン玉が浮かんでいるのが見える。
夢を破られた。ガウスはバレッタを抱き締めたまま大声で呼びかける。
ガウス「ガーベラ!大丈夫かガーベラ!返事を─」
バレッタ「あ、ああ、あああ…!」ポロポロ…ポロ…
ガウス「く…!」
106 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 11:17:13.64 ID:z8WhOIbA0
バレッタ「ああう…うあ…わぁああぁあ!」
ガウス「落ち着け、落ち着くんだ!オレだ!フェルディナンドだ!」
バレッタ「ゆるして…ゆるして…!」
ガウス「大丈夫だ、ここにキミを責める者はいない!オレが傍についてる!」ギュッ…
バレッタ「ごめんなさい!ごめんなさい…!」
ガウス「ずっとだ、ずっと傍にいる!キミを一人には─」
ホォワァアアアア──!!!
ドォッゴァアアアア!!!!!
ガウス「!?」
ギャンドーズ『フワァ…ァフワ…』ヒュー…ヒュー…
ガウス「ギャンドーズ…!」
ガウス「精神世界を渡る夢の神がなんてザマだ…!何があったというのだ、ギャンドーズ!」
ギャンドーズ『フ…ワァアア──』
ズゴゴゴゴ…!
ガウス「ギャン─」
ゴォッシャァアアアア!!!!!
107 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 11:17:45.58 ID:z8WhOIbA0
夢の外。
いくつものシャボン玉─夢が漂う、ふわふわとした眩しさの充満する世界。
そこはいくつもの世界の層が重なっており、迷い込めば二人として同じ位相に辿り着くこと叶わず、見る者によってそれぞれ別の世界が見える。
そして、それ故にあらゆる夢に繋がるとされる。
ドリームランである。
ギャンドーズ『』ゴォオアアア──
ガウス『(…………)』ピシィイイイイ──
ピィイイイイイ…
ギャンドーズ『!?』
遠くからの耳障りな高音。物凄いスピードで何かが迫ってくる。
シュパァアン…ッ
宙を裂きながら進む、一条の紫。
危機を察知したギャンドーズはきりもみ宙返り。タイムロック状態にあるガウスたちを振り落としてしまう。
直後にギャンドーズを襲う、幾筋ものレーザービーム。
ギャンドーズ『ホォワァアアアア──ッ』
ズドォン!ズドォズドッドォ─ン!
ガウス『』ヒュゥウウウ…
108 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 11:18:18.22 ID:z8WhOIbA0
草のにおいを感じながら、バレッタは目を覚ました。
いつの間に寝ていたのだろうか。夢の中で眠るというのも妙な話だが。
ガウスがぐったりとしながらも、しっかりとしがみついている。彼が守ってくれたのだろうか。
バレッタ「ガウス、ガウス。起きてくださいガウス…」
ガウス「ん、うぅ…ん。…やぁ、おはようバレちゃん」
バレッタ「バレちゃん言うな。ここは…どこなんです?ガウスは何か知ってますか?」
ガウス「ん。知らないな…こんな場所はさっぱりだ」
バレッタ「そうですか…弱りましたね。まだ夢の中なのかな…」
ガウス(……)
ガウス(ドリームラン…まさかまた、この町に帰ってくることになるとはね…)
ガウス「あんまり離れないようにね…未知の場所は危険も多い。霊的に繋がっている今はどっちかが死んだら共倒れなんだからさ」
バレッタ「わ、わかってますっ。ここは原っぱのようですが向こうにビルが見えます。町があるならそちらへ行ってみるのもいいかもしれません」
ガウス「うーん…そうだね。じゃあ、とりあえず行ってみようか。反対する理由もないしね」
ガウス(別に行ったって誰もいないと思うけどね…)
109 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 11:19:06.15 ID:z8WhOIbA0
「は?何でここにいるワケ?アンタたちどうやってここに来たのよ」
ガウス「…こっちの台詞だよ。何してるのかな?こんな場所で」
「何って…ここは私の遊び場の一つだけど」
町に着いて数分後。よく見知った顔の女がアパレルショップの自動ドアから出てきたところに出くわした。
ドリームランの町を遊び場にしてるらしい。相変わらずデタラメな女だ。
「気に入ってるのよここ。ちょっと眩しいけど静かだし…うるさい人間共もいないし…」
「あんまり暴れたくならない時はこの辺で、靴とか見てるのよ」
バレッタ「そんな時があるんですか?」
「あるに決まってんだろ。テメェ私を何だと思ってんだ?」
バレッタ「殺戮戦闘マシーン」
「そう思われてんのかよ。ショック─」
「─いやそうでもないわ。そう言われて悪い気はしないし」
バレッタ「ところで、あの─」チラッ
「…何?さっきからヒトのカラダをちらちらと…私、相手がいるからね?」
バレッタ「いえ、そうではなく…今日はまた、凄い格好ですね?殿下」
「あ?あ─…プライベートだからな。オフの時ぐらい─ほら私のことなんかいいだろ、そっちの話を聞かせろよ」
バレッタは女に興味深そうにあれこれと質問する。
数少ない友人の見せた隙だ。慣れぬ土地の不安も手伝って浮き足だっているのだろう。
きゃあきゃあと言葉を交わす二人を追いながら、ガウスはギャンドーズについて思考を巡らせることにした。
110 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 11:19:46.19 ID:z8WhOIbA0
「ギャンドーズ?何だそりゃ。私もここで遊ぶようになって長いけど見たことも聞いたこともない」
話ついでに立ち寄ったコンビニ。手を後ろで組みながら女は顔をしかめる。
さすがにギャンドーズのことは知らなかったみたいだ。ドリームランは広い。たまの遊び場にしてるだけなら遭遇してなくても不思議はない。
バレッタ「知ってるんですか?」
ガウス「ウワサぐらいはね…ひょっとしたらここがギャンドーズのナワバリ、ドリームランってトコなのかも…」
「ギャンドーズ…ギャ、ン…ああホントにいるんだ…全長7から無限大メートル、霊的質量1100万トン…」
「知ってたのなら教えろよな。使えねえドレイだぜ」
だ、だって遊ぶ分にはいらない情報で─ごめんなさい捨てないで!
あっでもその冷たいジト目はいいッ!軽くイクッ!
「軽くかよ。どうせならみっともなく本イキしろよな…で、その夢の守り神サマがどうしたっての?」
ガウス「明らかに戦闘体勢に入ってる…キミがイタズラしたわけじゃないんなら、ひょっとすると─」
─ホォオオオオ──ッ!!!
111 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 11:20:28.61 ID:z8WhOIbA0
「うるせえよ。本イキしろとは言ったけど。普段そんな声出してなかったろオマエ」
…?私まだイッてませんよ。
「ハァ?テメェ以外誰が─」
グワシャァアアア─…ン!!!!!
バレッタ「キャッ!」
ガウス「…!」
コンビニのすぐ外に、ギャンドーズの巨体が降ってきた。
あともうちょっとだったのにイベント進めるのやめてくれません?
「うるせえオナ猿。帰ってからにしろクソチンパン」
えー…陛下が言い出したことなのにぃ…
112 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 11:21:17.32 ID:z8WhOIbA0
はいはい解説しますよ。すればいいんでしょすれば。
えーそれでは続けて甲高い音の伴う爆裂レイザーも降ってきまーす。折れ曲がって窓ガラスを貫通、向かってくるのでご注意くださーい。
「ヘソ曲げてんじゃねえよ感情を出すなナレーターが。おい防御しろザコイケメン。契約者を守れ」
グイッ
バレッタ「きゃっ!?何を─」
ガウス「タイムロックカプセル!」ピキィイイイ
ピキュンキュンキュン!ピキュンキュン!
ギョワァ────アン
バスッバス!ババス!バスッ!
ガウス『』バドッバド!バドーッ!バド
バレッタ「…!」
「キャッハハハハハ!かゆいかゆい!」バギィバヂヂ!バヂッバヂン!
続きまして武装ロボが降りてきまーす。ガラスをブチ破ってのご来店はご遠慮願いまーす。
113 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 11:22:20.36 ID:z8WhOIbA0
バロォ────ッ!
バサカロン「」ブワッシャァアア!!
ガシィン!ズン
バサカロン「バハァ──」プシー…
ピロロロロピロッ、ピロピロピロロッ
ピロロロロピロッ、ピロロロロロロ…
バレッタ「…?え…!?」
ガウス『(何だ…!?)』
「」カッ、カッ!
バサカロン「」シュリィン
ガシィイイイイン!
開幕不意討ち飛びかかりキック!いつもより凶悪なヒールで威力抜群!
あーっとしかしバサカロン選手、左手のブレードでこれを受け止めたーっ!
バサカロン「ピロロロロロ…」カコカコ
「ヒュゥ!やるじゃん。……!?」
バサカロン「」キュピキュピキュピン!
「っ!ブリリアントクロスガード!」サッ
ドゴォボゴッ!ズドドッドォン!
バサカロン選手の反撃っ!肩部五連装フレッシュミサイラー!
豊かなお胸がほぼ無防備状態の私の女王陛下っ!たまらず全弾フルヒット──ッ!
ところでカオに命中した分は顔射ですかねコレ?
許せねえんだけどマジ。
114 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 11:22:53.03 ID:z8WhOIbA0
「全部ガードしてるっつーの!目ン玉も頭も腐ってんのアンタ!?」ギュ─…ン
ガァ─ーンガァン!ガァンガオッ!ガオッ!ガオン
バサカロン「」バヂィン!ヂュギィイ─ッバヂ!ギィン
連撃連射っ!魔力の弾丸!バサカロン選手ノーガード直立不動でこれを受けるッ!
金属製のメタルボディゆえの余裕か!はたまた爆裂レイザーの意趣返しか──っ!?
バサカロン「」ボワァ──…ッ
チカチカッ…チカチカッ…
「はっ?おいこれ─」
チュドチュドチュドッボォオオオン!!!
装甲の隙間から噴霧される電脳爆裂パウダー!非常に避けにくい、パウダー状の爆弾ですねー!
115 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 11:23:40.16 ID:z8WhOIbA0
煙と爆風で視界が遮られるため外に出た陛下が密かに心配している、向こうの二人はまだ密着し合って堅くなってるのでご安心をー!
「んんっ、んん!けむ──オイコラ誰が心配してるって?」
ギラン!
「テキトー言ってんじゃねえこのタ─」
バサカロン「」ズワッ
ガシィイアアアアッ
「いっだ!」
デッドエンド・アビスクラッシャー!
その握力、7000万シャワもの馬力ッ!恐るべきクローハンドに掴まれたが最後!大抵の人間の頭部は潰れたトマトならぬ、砕けたスイカと化すッ!
「どう違うんだよソレ!痛たたたた、音だけで痛え!」ギリギリギリギリッ
バサカロン「ガバァ──…」カコカコ
116 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 11:24:09.08 ID:z8WhOIbA0
ギャンドーズ『ホォワァアアア──ッ!!!』
ズギャァアアッ!ガララララ!!!
バサカロン「ピロロロロ…(電子音)」ガキィガギッ、メキッ
バッキャァアアア───ッ
「いたっ」ドシャッ
乱入っ!復活したギャンドーズの一角ホーンからの霊撃ショック!
バサカロンこれにはたまらず吹っ飛ぶ──っ!
さっそく地獄の万力クローから解放された私の女王陛下にインタビューしてみましょう。
いかがですか?今の気分は。
「サイアク!お尻打ったんだけど!」
なるほど可愛いですねー。
117 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 11:24:45.45 ID:z8WhOIbA0
爆裂したコンビニ。棚が倒れ、品物が散らばり、まだ煙が少し残る。
ガウスはタイムロックガードの無理がたたり、その場で膝からくずおれる。
ガウス「が、は…っ!」ズシャ
バレッタ「ガウス!」
ガウス「まいったね…おじさん、これ以上役には立てないみたいだ」シュー…シュー…
バレッタ「ガウス!実体が…」
ガウス「まだ大丈夫。けど─」
窓枠の向こうに目をやると、あのロボットのような怪異(?)が暴れているのが見える。
紫が弾け、のけぞる女。ギャンドーズのホーンを受けて後ずさるロボ怪異。
戦況は芳しくないようだ。今すぐ負ける、ということはないが決め手に欠ける。
ガウス(……)
ガウスは考える。どうするのが最善か。
今この場で自分はどう判断すべきなのか?
ガウス(迷ってる…場合じゃないか)
118 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 11:25:24.35 ID:z8WhOIbA0
ガウス「バレッタ」
バレッタ「は、はい」
ガウス「あの化け物を倒すには霊的ショック…怪異ショッカーだ。それしかない」
バレッタ「で、でも…!ここは夢の中で、私はショッカーを持ってません。第一、霊的ショックは─」
ガウス「聞くんだ、バレッタ。今オレたちは霊的に繋がっている。キミも殆ど怪異のオレと同じになっているんだ」
ガウス「怪異には霊気を用いた攻撃手段…霊気ショックがある。それでショッカーの攻撃力を再現する」
バレッタ「でも、霊気ショックはギャンドーズがさっきから何度も…」
ガウス「…ギャンドーズのショックは荒削りだ。見た目は派手だが威力が逃げている」
ガウス「再現とはいえ市販品のショッカーの方が威力は何倍も上なのさ」
バレッタ「わ、私は…霊気なんか操れません…あなたと繋がってる今でさえ、感じ取れもしないのに…」
ガウス「いいや、キミならできる。…感じないのは霊気が当たり前の環境に身を置いていたからだ」
ガウス「キミは霊気に慣れ過ぎてるんだよ…ショッカーを使う時の感覚を思い出して」
ガウス「大丈夫。オレが教える…さあ、手を出して。指の先に全身の力が集まるイメージで…」
バレッタ「は、はい…」
119 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 11:26:02.69 ID:z8WhOIbA0
ガウス(……)
ガウス(…すまない、ソリィ)
ガウス(──キミのようにはいかないな…)
120 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 11:26:48.22 ID:z8WhOIbA0
バサカロン「ギャワッ!」ギュイ─…ン
シュパァン!シュパァンシュパァン!
ギガロンボレー!三連射!
魔力をまとったナックルで迎撃する陛下!
「」ボワ─ン…
「オラ!オラ!」バギィン!バヂィン!
ゴォアッ!
「オーラァ!」ボワォ
バシャァアアン!
バサカロン「」ズワッ
バシィイイイイイン!
「くっ」ギシッ
バーニアで飛び込んでからのブレード一閃!
そして陛下の真剣白羽取り!私そろそろ解説に疲れてきました!
121 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 11:27:25.67 ID:z8WhOIbA0
バサカロン「ピロロロロ…」ギョ──…ン
「やっば…!」
ギャンドーズ『ホォ───ッ』バオンッ
バサカロン「」ギャオッ
ガシィイ──イン
ギャンドーズ『ホ…』ギリッ
さあギャンドーズの振り下ろしたホーンもメタルクロー白羽取り!このまま腕を捻られたら首の骨が折れてしまうか─っ!?
いや首あんのかなコイツ。その前に自慢のホーンが折られるかも。
バサカロン「(電子音)」ギュィイ──…
「くっ!そ…」
ギャンドーズ『…!』ギリ…ギリメキッ
カッカッ、カッカッ!
バレッタ「ちぇいやぁ───っ!」
バシィイイイッ!
122 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 11:28:08.50 ID:z8WhOIbA0
バサカロン「」ギシッ
「バレッタ!?」
おおっ!思いがけない乱入者ッ!
儚げな薄幸の美女は雰囲気だけかぁっ!?バレちゃんマンの参戦だぁ──っ!
だが気をつけろっ、
バサカロン「」ボフワァ──…ッ
爆裂パウダーが、もう既にっ!
バレッタ「くっ!」バッ
チュドチュドチュドドドォオオン!
バレッタ「あうっ!」ズザァアアアッ
123 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 11:28:54.05 ID:z8WhOIbA0
「この!」バギィン!シャガッ
バサカロン「ピロロロ…(電子音)」ズン、ズゥン
バレッタ「あ…すみません。大丈…」
「何やって…!戦えないザコは大人しくすっ込んでろよ!」
バレッタ「だ、大丈夫です。霊的防御はガウスがやってくれてます」
バレッタ「私は攻撃に専念するだけで…これで少しは戦えます」
「何言って──」
「…!ふ、ふうん。そっか。そうしたんだ…ふう──ん…」
(あのイケメン…見かけによらず結構悪魔らしいトコあるじゃねーの)
(バレッタは気づいて…ないなこれは。騙して丸め込んだか…)
(バカだぜ二人とも。見捨てて逃げたってよかったでしょうに…というのは私の価値観か…)
バレッタ「聞いてください。作戦があるんです」
「…何ですって?」
バレッタ「でかいやつを一発当てます。殿下は時間稼ぎと拘束、よろしく頼みます」
124 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 11:29:30.25 ID:z8WhOIbA0
ギャンドーズ『ホワァアアア──ッ』
バサカロン「────」
ギャンッギャリンッガギ!バギィン!
ガリッ!シュバゴ!(メタルクローの掴む音)
バサカロン「」ワギィイイイ───ッ
ギャンドーズ『ホォ──ッ』メシメシ…メキッ
ピシィッ(ホーンにヒビが入る音)
ギャンドーズ『…!ホォオ…』
バサカロン「ピロォオオオオ──ッ(勝利の雄叫び音)」ピロロロロ…
ズギャォ──…ン
バサカロン「」ピシュンッ
ドワァアアン
不意討ちの魔力の弾丸!しかしこれは爆裂レイザーによって阻まれるっ!
しかしっ!だがしかしィ!
125 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 11:30:09.83 ID:z8WhOIbA0
ボワォ──…ッ
爆発の煙に紛れてェ!魔力パンチを、
ゾバッ
「くらぇええ──っ!」
バサカロン「」ピシュンッピシュンピシュンッ
ドォン!ドォオン!グワォン!
ガシィイッ
バサカロン「ピロロロ…」
「…っ。クソロボがよ」
…レイザー連射によって勢いは殺され、魔力は霧散し肝心の装甲を傷つけることはできなかった。
今回ちょっとヤバくね?確かにロボは強豪になりやすいけども。
「ハッ…舐めんじゃねえ。魔力パンチは通らなくても…」ギュ─…ン
バサカロン「…?」ピロロロ…
「接射なら少しは効くだろうがよ…!」ギュイ─…ン
ドワァァアアアン!!!
126 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 11:30:40.59 ID:z8WhOIbA0
バサカロン「ギ…バギ…ッ」バヂッ!バヂバヂ…
魔力の弾丸ッ!ゼロ距離!
バサカロンたまらずスタン状態!これで1ターンの行動不能にっ!
「」カッ!
グワシィイイイッ!
掴みかかるようにバサカロンを拘束。レイザーの噴出口を片手で塞ぐ。熱を持った発射口が冷え始める。
バサカロン「ピロォオオオ──ッ」カコカコカコン
バファッ!チカチカッ…
「くっ…!」ギリ…ギシッ
チュドドドボガァアアアン!!!
「けっむ!こんっ、クソロボ!」ギシ、ギシィ…
至近距離の爆裂パウダー!陛下にとっては目眩ましと怯みにしかならないこれは今はあまり役に立つものじゃないぞ!
「暴れ…っん、じゃねェ!」ギリギリギシィッ
バサカロン「ピロロロ…(電子音)」ガバガバガバッガバ
キュピィイ──…
「クッ…!お構いなしかよ!?」
バサカロン「ガハァ──」ギャワン
127 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 11:31:15.52 ID:z8WhOIbA0
バレッタ「いいえ、させません!」
バレッタ「」バオッ
バサカロン「」バギィイ──ッ
「」サッ
バガラァアアアア……ッ!
霊気ショック───!?
これはどうしたことだ?バレッタ嬢がバサカロンに掌を押し当てたかと思えば、ギャンドーズ以上の規模とその威力!
もちろん怪異ショッカーは使っていないッ!
今までその体のどこにそんな武器を隠し持っていたのか──ッ!
まあ女性の体には隠し場所が複数あるしね。上の隙間とか下の隙間とか。
ちなみに陛下の隙間は専用の責任を持って私が塞いでいる。
128 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 11:31:50.67 ID:z8WhOIbA0
バサカロン「プシィ──イイ…」ガグン
ボワ─ォオ!ボワッ
「後でゲンコツなテメェ」サッ
ドギャァッ!ガギィイイ──ン!
連撃っ!フルチャージした魔力をまとったワンツーパンチ!
砕け散る胸部インビジブル・ディメンジョンコア!これにはバサカロンの内部メカも露出しスパーク!
ああッ!羨ましい私も殴って欲しい!頭を守るガードの上から殴られたいっ!お腹とか蹴られたいッ!
バララッ!バラッバラバラッ
ドズゥン!ズン!…
バサカロン「ガハ…」バヂチバヂ!バヂン!…
129 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 11:32:27.65 ID:z8WhOIbA0
ギュゥウウウ───…ン
ギャンドーズ『ホォワァアアアア──ッ!!!』ギャオッ!!!
バサカロン「」ドズゥウッ!ズブッメギバチ!
ギャォオオ──…ンゥウンッ
ギャンドーズの突進ホーン!貫かれたバサカロンッ、1700万トンが宙に浮くゥ──!
針串刺し死出のフリーフォール空の旅だぁっ!これは勝負あったかぁ───っ!?
130 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 11:33:02.51 ID:z8WhOIbA0
バサカロン「」バギギギ…バチッ!カッ
チュドォオオオオオン!!!!!
ギャンドーズ『フワァアア──ッ!!!』ブワォ
決まったぁ───っ!必殺ギャンドーズの貫通ニードル・フィロソフィー«アポカーリプス»によってバサカロン選手しめやかに爆発四散ン!
試合、終了ォ────っ!(ゴングの音)。
バサァッ!バサッ!
ギャンドーズ『フワァッ!フワァアアアア──…』バロォオオオ…
バレッタ「……ふぅっ」
131 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 11:33:40.75 ID:z8WhOIbA0
「はぁ──っ!何だったのよアイツ!?マジ硬すぎ!ロボ相手とか、もう一生やりたくねえ──っ!」
のどがいたいです。
「そりゃあ気のせいだろ。喉なんて持ってないじゃんかオマエ」
僕の場合、気のせいはマズくない?
「…それにしても今日は疲れたわ。帰ったら死んだみたいに爆睡コースね」
えっ帰った後に滅茶苦茶イクの楽しみにしてたのに
「あ─…そういえばしたっけ、そんな話」
「ま、私が言い出したことだしね。見ててやるから、みっともなくイキ狂えよ?」
えー見てるだけ?一緒にイキましょうよ
「疲れてるって言ってんだろ。ちょっと遊びに行く感覚で誘うんじゃねえよ」
???????
「何でわかんねえんだよ。…わからないといえばバレちゃんマンは自分の帰り道わかるわけ?」
バレッタ「そのアダ名で呼ばないでください…連れてってくれないんですか?殿下よくここで遊んでるんですよね?」
「そうだけど…私の移動手段、私専用だしなぁ…車や馬みたいに乗せてってはやれねえよ」
バレッタ「そういうものですか…困ったな…ガウスは─」
バレッタ「あれっ?ガウス?」キョロキョロ
132 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 11:34:09.06 ID:z8WhOIbA0
フワァアア──…
ギャンドーズ『フワ──…』フヨォオオオ
バレッタ「ギャンドーズ…ま、まだ何か?」
「乗れって言ってるんじゃないの?色々あったし、帰り道ぐらい都合するとか」
バレッタ「えっ…いいんですか?よかったぁ…ありがとうございます!」
バレッタ「あっ…でもガウスは…」
「大丈夫じゃない?アンタら霊的な繋がりを得てるでしょ」
「アイツは怪異なんだから。アンタだけ先に帰っても、ドリームランからでも引っ張られて勝手についていくわよ」
バレッタ「そういうものですか…じゃあ、よろしくお願いしますね。ギャンドーズ」
ギャンドーズ『ホロロロロ…』ニヤ〜…
133 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 11:34:40.91 ID:z8WhOIbA0
ブワォオ───オアアア…
ギャンドーズの背中に掴まって、ドリームランの空を飛ぶ。
町は泡のように溶け、いくつもの世界が線となって見える。いくつものシャボンが前から後ろへと。
ギャンドーズ『』フワァアアアアア
バレッタ(……)
バレッタ(これ、全部誰かの夢なんでしょうか…ドリームランから繋がる…)
バレッタ(一つ一つが誰かの景色に繋がっていて…いいこと悪いこと…誰かの願いと想いがあって…そしてその中間に私がいる…)
バレッタ(何だか不思議な気分です…)
ギャンドーズ『』ショワァアアア…
─ギャッ
バレッタ「えっ…」
134 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 11:35:21.70 ID:z8WhOIbA0
意識はしていなかった。
意識したところで高速のシャボンの一つを人間の目ではっきりとわかるほど追えるわけもない。だというのに、くっきりと見えた、その景色。
見えてしまった、その景色は、
バレッタ「ガウス…!?」
血だまりの中に倒れている女。どことなくバレッタに似ていて、微笑んだまま死んでいる女。
ガウスが、その血だまりの死体を冷たく見下ろしていた。
135 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 11:35:54.28 ID:z8WhOIbA0
ギャアァア───ーアア
バレッタ(な、何だったんでしょう。今のは…?)
気になっても、今すぐ答えが出ることはない。起きてガウスに確かめるにしても、ドリームランは夢の世界。目を覚ませば全て忘れる泡沫世界、うたかたの空夢。
今は疑問さえ忘却の彼方。それでもバレッタが真実を知る時は、もうすぐそこまで迫っている。
136 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 11:36:34.76 ID:z8WhOIbA0
よろ、よろ…
ドザァッ!ドガシャアッ
ガウス「うぐ…はあ、はあ、はあ…っ」
ガウス「ぐっ…アグ…はあはあはあっ…ハア…はあ」グイッ…ドサァ
探偵事務所。応対室のソファーにガウスは身を投げ出す。
今回は色々と無理をした。実体も透けて薄らいでいる。
まだ空は暗いままだ。このまま明るくなるまで休んでいれば、元通りに活動できるぐらいにはなる。
だが、もはや自分に残された時間はもう長くはないだろう。
怪異ゆえに、それはイヤでもわかるものだ。
ガウス「はあはあ…ハアッ…はあ…」
ガウス(……)
薄れる意識でぼんやりと考える。彼女のために何ができただろうか。自分は最善の行動をとれたのだろうか。
本当は、もっと他に何かあったんじゃないのだろうか。
ガウス(……)
137 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 11:37:06.25 ID:z8WhOIbA0
もしもの仮定は堂々巡り、何があるわけもないと知りながらガウスは考える。
今でも時々、夢に見る。あの血だまりに倒れる、彼女の姿。
ガウスの静かな絶望と後悔を飲み込み、夜は更けていった。
138 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 11:42:07.27 ID:z8WhOIbA0
書いた分では本編はこれで終わりです
残りは私の中の決着とおまけです
怪異探偵ソリィバレッタ外伝
「呪い、情熱、戀の華=ノンネーム怪物(モンストレ)」
妄執戀歌 ■■■■■■■
登場
刮げ!燃えろ!呪え!
怪異探偵ソリィバレッタのセルフアンチヘイト二次創作(三次創作?)です
「赤いドレスは血の先触れ」
>>1
から
「ルナチック・マッドメイク」
>>41
から
「夢を叶えてドリームラン」
>>93
から
139 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 11:42:54.12 ID:z8WhOIbA0
遠い。
遠い遠い遠い。
手を伸ばして触れそうなほど近づいても、髪を撫でることすら叶わないぐらい遥かに。
違う。
違う違う違う違う。
重ねる度にわかるほどに、目を背けたくてもはっきりと。
都合のいい偽物で誤魔化すな。気持ち悪い。
期待した姿を物真似るな。吐き気がする。
私の恋した悪の華。
彼女は、あの方は、私の陛下はどこへいった?
猿真似と虚像を結びつけ。醜い一人芝居を繰り返し。思いの外すぐに無理がたたり、気がつけば──
彼女が痛がるからと目を逸らした、その実私の惹かれた姿をとって。
虚ろに描いた夢の形。捨てられなかった絵空事。利己と冒涜の皮算用。
空しく紡ぎあげたのは、妄執戀の呪い歌。
140 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 11:43:39.53 ID:z8WhOIbA0
バレッタ「大丈夫ですか?」
バレッタの言葉にびくっ、とする。いつの間にかうたた寝していたようだ。
バレッタ探偵事務所。依頼もなく、暇な時間に─遊びに来る時は、いつもそのタイミングを見計らっている─二人っきりでお茶をしていたのだ。
バレッタ「近頃ぼーっとしてますね。具合でも悪いのですか?」ズイ
「ヘ、ヘーキよ。カオ近づけるな。つーか、私が病気するワケないって知ってんだろ」
そう。バレッタの言う通り、私はここ最近どうもぼんやりしている。短い間とはいえ記憶がなくなるのもしょっちゅうだ。
しばらくカラダもぐったりと重く、熱っぽい。そのくせ芯から力の抜けるような嫌な寒気もする。
これを人間でいう具合が悪いというのなら、なるほど私は具合が悪いのかもしれない。
バレッタ「それを具合が悪いというんです。あまり無理しないように。人間でないとしても、あなたは怪異でもないのですから」
「う、うるさいっての。テメェ私の母じゃねえだろ…」
悪態をついても迫力がない。思考もふわふわと、まとまらなくなってきた。
いよいよ本格的に休んだ方がいい気がする。
休まなくても済むように、こうなったのに。
141 :
おれを
◆MVS19SfNUQ
[sage saga]:2022/03/05(土) 11:44:19.86 ID:z8WhOIbA0
「でもそうね、今日はもう帰ることにするわ。邪魔、したわね…」
バレッタ「ええ。お休みなさい」
「べ、別にアナタの忠告に従った…ワケじゃないんだから…ねっ」
バレッタ「はいはい…」
たくさんの粒がほどけるように、嬢ちゃんは姿を消した。
何度も見てるけど変わった移動方法だよね…霊体化とも違うようだし。
バレッタ「気づきましたか?」
…何が?
バレッタ「彼女、怪異になりかけてます」
デジマ?全然わからなかったなぁ…
寄る年波には勝てないね。
バレッタ「特有の霊的揺らぎを感知しました。あのままでは時間の問題でしょう。もしかしたら、今夜にでも…」
あらら…とはいえ怪異になったからって、すぐ危険なヤツになるわけでもないでしょ。
バレッタ「それはそうですが…」
すっかり冷めた紅茶に口をつける。テーブル向かいには空になったティーカップ。
思い返せば前までの彼女なら食べ物飲み物に手をつけることはなかった。何かを飲食している姿はついぞ見かけず、用意された物は決して口に運ばれることがなかったのだ。
バレッタ「…長く、付き合いすぎたのかもしれませんね」
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