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【シャニマスSS】浅倉透「プロデューサーの家のルール」【R-18】
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115 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 02:37:10.33 ID:U0TFmbps0
透「…………」
プロデューサーは黙って、ハンドルを握り直した。
車は、家に着くまでずっと飼い殺されていた。
116 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 02:37:52.98 ID:U0TFmbps0
いっそ、ハンドルから手を離してくれたら良かった。タイヤのおもむくままに、どこまでも。
だって車も本当は、別の場所に行きたいのかも知れないのに。
国道は、嫌でもまっすぐに伸びている。
117 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 02:38:54.04 ID:U0TFmbps0
******
――1週間前、テレビ局。
『ノクチルのみなさん、ありがとうございましたー!!』
118 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 02:39:40.41 ID:U0TFmbps0
雛菜「は〜〜〜〜……やっと終わった〜〜〜〜!!!」
小糸「き、緊張したね……久々の、生放送だったし」
円香「まあ、一曲歌うだけだったけど」
小糸「そ、それでもだよ! 後半、緊張でちょっとフラフラしちゃって……」
雛菜「あ〜、やっぱり〜? 見えてた〜!」
小糸「ぴえっ……」
119 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 02:40:20.48 ID:U0TFmbps0
円香「……それ、緊張とは違うんじゃない」
雛菜「へ〜〜?」
円香「今日はまあ、それなりに大きな仕事だけど」
円香「先々週はショップのイベントの手伝いと、半分ボランティアみたいなキャンペーン係」
円香「先週は私たちじゃなくても良さそうなファッション誌の撮影と、夜七時からの二時間ぶっ通しのラジオ」
120 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 02:40:48.89 ID:U0TFmbps0
円香「ついでに来週は、期末テスト」
雛菜「あは〜、そうだっけ〜?」
円香「……」
円香「……どう考えてもおかしいでしょ、仕事のペース」
円香「ちゃんと高校と両立出来るようにって話だったのに、今は」
円香「……正直、しんどい」
121 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 02:41:29.35 ID:U0TFmbps0
小糸「う、うん……」
小糸「でも! プロデューサーさん、何か考えがあるかもだし……!」
円香「ちゃんと筋の通った考えがあるなら、説明するでしょ」
円香「でも最近のあの人は……送迎の時以外、顔も合わせようとしないみたいに見える。明らかに、何かがおかしい」
円香「……何か知ってる?」
122 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 02:42:12.01 ID:U0TFmbps0
透「ん」
透「あー……」
透「……わかんないや」
雛菜「雛菜もわかんな〜い」
円香「そっちには聞いてない」
雛菜「へ〜?」
123 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 02:42:50.81 ID:U0TFmbps0
円香「……とにかく、いい加減一度くらい問い詰めるべきだと思う」
円香「今日はタクシーで帰れって言われてるから、また明日にでも。それでいい?」
小糸「う、うん……」
透「――んーん」
透「今日。聞きに行く」
124 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 02:43:37.70 ID:U0TFmbps0
円香「……」
円香「今日は流石に会えないと思うけど」
透「わかんないじゃん。やってみなきゃ」
円香「誰がやるの?」
透「わたしがやる」
125 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 02:44:23.67 ID:U0TFmbps0
透「事務所行って、待ってみる。ダメなら、電話する」
透「やるから。わたし」
円香「……何かあったの? あの人と」
透「んー……まあ、ちょっとだけ」
透「どっちにしろ、会う必要あったから。任せて」
円香「……わかった。任せる」
126 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 02:44:54.96 ID:U0TFmbps0
円香「何か言い訳されたら、こっちにも教えて」
透「いえっさー」
円香「……それは男」
透「あれ。じゃあなんて言うんだっけ」
小糸「えっと……イエス、マム……じゃない、かな?」
透「おー。じゃ、イエスマム」
円香「ん。頼んだ」
127 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 02:45:53.52 ID:U0TFmbps0
******
コンコン ガチャッ
透「……お疲れ様でーす」
はづき「お疲れ様です〜」
はづき「……あら〜。今日は直帰ではなかったですか?」
透「あ、はい。そうなんですけど」
透「プロデューサー、いますか」
128 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 02:46:21.02 ID:U0TFmbps0
はづき「今はいないですね〜」
はづき「営業に行ってるみたいですが……何か大事な用事ですか?」
透「えっと、はい」
透「プロデューサー。待ってたら、事務所に帰ってきますか」
129 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 02:46:46.88 ID:U0TFmbps0
はづき「う〜ん、たぶん一度は立ち寄るとは思いますが……」
はづき「夜の何時になるか、わかりませんよ〜。それに、私ももうすぐ帰りますから……」
透「…………」
透「じゃあ、いっこお願いしても、いいですか」
はづき「……?」
130 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 02:47:30.70 ID:U0TFmbps0
透「――鍵、借りたいです。事務所の」
透「明日の朝まででいいから」
131 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 02:48:20.48 ID:U0TFmbps0
はづき「……どうして、ですか?」
透「……」
透「……話したいこと、と……渡したいものがあるから。です」
はづき「…………う〜ん」
はづき「それは、どうしても必要なことですか?」
132 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 02:48:47.03 ID:U0TFmbps0
透「はい」
はづき「う〜ん……」
透「お願いします。なにとぞ」
はづき「……」
133 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 02:49:21.35 ID:U0TFmbps0
はづき「ダメですね〜」
透「……そっか」
はづき「はい。なので〜」
チャリン
透「…………」
透「え」
134 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 02:50:04.87 ID:U0TFmbps0
はづき「明日の朝九時までに、ここに持ってきてください〜。それなら、なんとか誤魔化せます」
透「……おぉ」
はづき「本当は、ダメなので」
はづき「……社長には絶対、内緒にしてくださいね〜」
透「――ふふっ」
透「イエス、マム」
135 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 02:50:51.33 ID:U0TFmbps0
******
「ふーふふん、ふんふふん、ふんふんふふふん……」
真っ暗で、ちょっと寒い。
手元のノートを握りしめて、鼻で歌う。
空気は湿っていて冷たい。透明な雪景色みたいに。
136 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 02:51:30.40 ID:U0TFmbps0
「ふふんふふふーふんふふん……」
あの映画の結末は、たしか。
たくさん仕掛けられた爆弾を、結局一つも解除できなくて。
自分で自分を撃った後、ビルが崩れていくのを、好きな人と一緒に眺めていた。
137 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 02:52:06.57 ID:U0TFmbps0
「ふんふふふん、ふふふんふふふふーふん、ふんふんふふん」
私も、自分を撃っちゃう。
そしたら、爆発する。全部崩れる。
アイドルとか、想いとか、そういうのが。
だから、そうなる前に。
138 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 02:52:50.00 ID:U0TFmbps0
「あいわなびー、ふりー」
私を空まで殴り飛ばしてほしい。
そしたらきっと、爆発なんて見えなくなるから。
前までみたいに笑って、話して、私を天国に連れて行ってよ。
ねえ。
139 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 02:53:25.89 ID:U0TFmbps0
「ねえ――」
“ねえ彼女 その銃を手放すなよ
多忙でも退屈じゃ仕方ないしさ
フェンスの向こう また誰かのイマジネーションが床を汚してる
アイワナビーフリー”
140 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 02:54:07.69 ID:U0TFmbps0
「――ばーーーーーん!!!!」
141 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 02:54:47.21 ID:U0TFmbps0
P「うわああああああっっっ!?!?」
P「はっ、はっ、はっ……透!?」
透「おかえり。プロデューサー」
142 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 02:55:29.61 ID:U0TFmbps0
P「な……なんで、事務所に……」
P「いや……そもそも、こんな時間までいたらダメだろ! 何時だと思ってるんだ!?」
透「えっと……22時46分、だって」
P「わかってるなら尚更だ! なんで残ってるんだ!?」
143 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 02:56:24.37 ID:U0TFmbps0
透「日誌」
P「え?」
透「書いたから。読んで」
P「…………」
透「読んでよ、私の」
透「言葉にしたから。全部」
144 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 02:56:59.80 ID:U0TFmbps0
P「……とりあえず、電気つけるよ」
透「あ、うん」
カチッ
P「ふぅ……」
P「……で」
透「はい」
145 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 02:57:37.04 ID:U0TFmbps0
P「色々、言いたい事はあるんだが」
透「うん。……私もあるよ。たくさん」
透「仕事、無理やりたくさん入れて。レッスンも見に来てくれないようになって」
透「――避けてたでしょ。私のこと」
146 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 02:58:17.55 ID:U0TFmbps0
P「…………」
P「……ああ。そうだよ」
透「やっぱり」
透「……そっか」
P「うん」
P「わかるだろ。理由は」
147 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 02:59:01.41 ID:U0TFmbps0
透「わかるよ」
透「でも、わかって、終わりじゃない」
透「そうならない」
P「……何で、そうならないんだ」
透「人の気持ちって、ちょっとくらいはわかる時もあるけど。全部は絶対、わからないから」
透「だから。それ、読んで」
148 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 02:59:43.06 ID:U0TFmbps0
透「それでも、全部じゃないけど」
透「読んで……その後で、教えて。プロデューサーの考えてることも、出来るだけ。たくさん」
透「そうじゃないと」
透「……苦しい」
透「気持ちが通じないのって。息が、出来なくなるくらい……苦しい」
149 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 03:00:19.94 ID:U0TFmbps0
P「…………」
P「……読めば、いいんだな?」
透「うん」
P「…………」
ペラッ
150 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 03:00:51.66 ID:U0TFmbps0
P(最初の文章は、2ヵ月前)
P(ショールームを見に行った時の事だ)
P(……『一緒にお風呂に入ろうって言った。断られた』)
P(『悲しかった。すごく』)
151 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 03:01:39.78 ID:U0TFmbps0
P(次は……およそ1ヵ月前)
P(雨の中、迎えに行った日)
P(……『迎えに来てくれた。嬉しかった』)
P(『でも、私の思ってること全部、だめって言われて』)
P(『遠ざかっていくみたいだった。悲しかった。すごく』)
152 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 03:02:22.64 ID:U0TFmbps0
P(最後は、直近の日付だ)
P(『ずっと、プロデューサーは話してくれない。たぶん、避けられてる』)
P(『悲しい。すごく』)
P(『わたしは』)
153 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 03:03:04.85 ID:U0TFmbps0
P(『憧れてる、と思う。____に』)
P(『気持ちを言葉にするのは、難しくて』)
P(『頑張って言葉にしても、伝わらない時も、嘘を吐かれる時もある』)
P(『だけど____の中には、きっと気持ちだけがある』)
154 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 03:03:49.90 ID:U0TFmbps0
P(『何も見間違えない距離で、二人でくっついて』)
P(『難しいことはぜんぶ忘れて、息を切らして、手を繋ぎながら』)
P(『プロデューサーと、キスをしたい』)
P(『朝に目を覚まして、隣で寝ているプロデューサーを見たい』)
155 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 03:04:37.12 ID:U0TFmbps0
P(『そればっかりをずっと、考えてる』)
P(『ちゃんと、伝わってほしい。知ってほしい』)
P(『それで、もし、嫌じゃないなら』)
P(……日誌は、そこで終わった)
156 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 03:05:16.39 ID:U0TFmbps0
P「…………」
透「プロデューサーってさ」
透「嫌い? 私の事」
P「そんなわけないよ」
157 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 03:05:57.42 ID:U0TFmbps0
透「じゃあ、何とも思ってない?」
P「……そんなことも、ない」
透「じゃあ」
透「しよう。____」
158 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 03:06:30.89 ID:U0TFmbps0
P「透」
透「うん」
P「好きとか、嫌いとか、そういう問題じゃないんだ」
P「……認めるよ。透の事、少し、意識してる。他の子よりも」
透「……!」
P「だから……断り切れなくて、家に上げちゃったんだよな」
159 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 03:07:14.79 ID:U0TFmbps0
P「――でも。それでも」
P「セックスは、しない」
P「ルールとか、法律とかじゃない」
P「俺たちを信じてる周りの人や、将来の透自身のためだ」
P「……分かってくれよ」
透「……」
160 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 03:07:57.33 ID:U0TFmbps0
透「やっぱり、全然分かってない」
透「……いいよ。じゃあ」
透「見せるから。心の中」
161 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 03:08:35.12 ID:U0TFmbps0
バタン カンカンカンカン......
P「っ、透――」
P(声をかけるより前に、透は踵を返して)
P(階段を降り……いや、登ってる……?)
P「――――!?」
162 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 03:09:14.62 ID:U0TFmbps0
P(俺は急いで後を追った)
P(ものすごく、嫌な予感がしたから)
163 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 03:09:53.19 ID:U0TFmbps0
******
――屋上。
P「はっ、はっ、はぁっ――透!?」
P(透は、屋上にいた)
P(……落下防止の柵を乗り越えた、その向こうに)
P「透!! ……っ、何やってるんだ!!」
164 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 03:10:28.29 ID:U0TFmbps0
透「え。……ちょっとー」
透「プロデューサーが上がってきたら、意味ないじゃーん!」
P「何が……っ!?」
透「飛び降りながらー、窓に向かって言うつもりだったんだからー!」
透「――『愛してる』、って!」
165 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 03:11:06.26 ID:U0TFmbps0
P「そんなことしなくても――分かってる! 伝わってるよ!!」
P「……でも、応えられないんだ!! 透も本当は分かってるだろ!?」
P(叫びながら、ゆっくり近づく。透が驚かないように)
P(あと数歩で、手を掴める。そんな距離まで来た時)
透「……分かってるよ」
P(――透の何かが、爆発したように見えた)
166 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 03:11:36.07 ID:U0TFmbps0
透「――知ってるよ! プロデューサーはプロデューサーで、私はアイドルだから! いけないことだって!!」
P(――気圧されてしまう。足が止まりそうになる)
P「わかってるなら、なんでっ……!」
透「――人を殴るのは、悪いことで」
167 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 03:12:16.31 ID:U0TFmbps0
透「でも……殴る人はいるじゃん! 捕まる事より、我慢する事の方がつらいから!」
透「捕まるって分かってても、殴らないと納得できない時があるから!!」
透「私は……納得してない!! できない!!」
透「落ちて死ぬよりも……納得できないままの方が、嫌!!」
168 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 03:13:01.73 ID:U0TFmbps0
P(透はそういうと、身体を後ろに傾けて)
P(柵を掴んでいた指を、離そうとする――)
P「透っ!!!」
169 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 03:13:39.87 ID:U0TFmbps0
P(夢中で伸ばした腕は――届いた)
P(だけどそのまま引きずられて、柵にぶつかる)
P(透は俺に手を掴まれたまま、空中に背中を預けている)
P(――透の命は今、俺の腕一本に支えられていた)
P「透……っ! 危ないから、本当にやめてくれ……!」
透「じゃあ、選んでよ」
170 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 03:14:27.90 ID:U0TFmbps0
P(俺の手が滑ったら、本当に死んでしまうというのに)
P(そんな事をまるで気にせずに、透は俺の目だけを見ていた)
透「私を突き落として捕まるか、それとも」
透「私と____して、捕まるか」
透「……選んで。ここで」
171 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 03:15:05.25 ID:U0TFmbps0
******
……今になって思えば。
普通に、脅迫だ。
でも脅迫って、大事なものじゃないと成り立たないから。
つまり、そういうことでしょ。
透「ね」
172 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 03:15:34.26 ID:U0TFmbps0
P「ん……?」
透「毎日行っていい? プロデューサーの家」
P「それは普通に困るからやめてくれ」
透「えー。死んじゃおっかな」
P「……心臓に悪いから、本当に勘弁してくれ。運転中だぞ」
173 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 03:16:01.07 ID:U0TFmbps0
透「んー……じゃあ、週一?」
P「多くてもそれくらいで頼むよ」
P「……こうなった以上、もう……透の事を拒否したりはしないけど」
P「ちゃんと、ルールを決めておこう」
174 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 03:16:39.91 ID:U0TFmbps0
透「ルール?」
P「うん。例えば、そうだな」
P「ルールその1。俺の家について口にしてはならない」
透「ふむ」
175 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 03:17:07.09 ID:U0TFmbps0
P「ルールその2は――」
透「『プロデューサーの家について口にしてはならない』」
P「……そうだな。あとは――」
176 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 03:17:47.21 ID:U0TFmbps0
1.プロデューサーの家について口にしてはならない
2.プロデューサーの家について口にしてはならない
3.行っていいのは私一人だけ
4.家に行くのは週に一回まで
5.どちらかが音を上げるか、『やめて』と言ったら終わり
6.制服とスーツは脱いで____する
7.時間制限は無し
8.プロデューサーの家に来たら、必ず____をしなければならない
P「……後半はもう、セックスのルールだろ」
透「いいじゃん。それっぽいし」
P「…………」
P「服を着たままするのは、無しなんだな」
透「…………」
透「えっ」
177 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 03:18:30.64 ID:U0TFmbps0
P「…………」
透「…………」
キキィ
P「……着いたぞ」
透「うす」
178 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 03:19:18.05 ID:U0TFmbps0
ガチャ バタン
P「……」
P「……なあ、透」
透「ん」
P「もし、このルールを守れなかったら」
P「……次は、透を突き落とすよ」
179 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 03:20:34.16 ID:U0TFmbps0
透「……」
透「……いいよ。それでも」
P「……」
P「……入ろうか」
180 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 03:21:02.65 ID:U0TFmbps0
******
シャワーは、一緒に入った。お風呂も。
透「え、ムキムキだ。鍛えてる?」
P「それなりに。何もしないと弛むからな」
透「かっこいいじゃん。細マッチョだ」
P「そこまで行かないと思うけどなぁ」
181 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 03:21:28.37 ID:U0TFmbps0
ザブン
透「ね、後ろからぎゅってしてよ」
P「あぁ」
透「……ふふ」
透「のぼせそう」
P「上がるか?」
透「やだ」
182 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 03:22:05.95 ID:U0TFmbps0
透「ちゃんと、天国まで連れてって」
183 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 03:23:03.05 ID:U0TFmbps0
バスタオルで身体を拭いたら、服を着ないままキスをした。
心臓を抱き締めるみたいに、胸の中に柔らかい波が広がっていった。
ちょっと強めに肩を抱かれて、それだけで動けなくなる。動きたくなくなる。
首とか鎖骨とかも、無音のキスをされて、ハンコを押されたみたいに達成感が残っていった。
184 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 03:23:30.28 ID:U0TFmbps0
透「んっ。……慣れてるんだ。やっぱり」
P「慣れてるってほどではないよ」
透「何人目? わたし」
P「……ほら、ソファ行くぞ」
透「あ。はぐらかした」
185 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 03:24:03.18 ID:U0TFmbps0
リビングに行って、横並びで座る。全裸のまま。
脚と脚を、ぴたってくっつける。
長さも太さも、全然違う。大人と子供だ。
透「……ん」
じっとしてると、頭を撫でられた。
身体同士もくっつけて、触れてる場所がどんどん増えていく。
身体が、熱くなってく。
186 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 03:24:53.53 ID:U0TFmbps0
P「透こそ、どうなんだ」
透「んっ……なにが……?」
P「経験。こういう事の」
透「ない。……他に好きになった人、居ないから」
P「……そっか」
また、おでこにキスが降った。
187 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 03:25:35.94 ID:U0TFmbps0
プロデューサーが腰を下ろした拍子に、そいつが目に入る。
画面には映らないやつ。わたしには無いやつ。バナナみたいな形をして、張り詰めたみたいに真っ直ぐで、目を惹かれる、そいつ。
透「ね、これ……触ったら痛い?」
P「ん、ああ……。痛くはないけど……あんまり触られると、アレかな」
透「じゃ、ちょっとだけ」
188 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 03:26:35.85 ID:U0TFmbps0
重力より強い力で上を向いてるそいつに、指で触れる。
熱い。血と同じくらいの熱さ。
それと、思ってたより硬い。骨が入ってるみたいだ。あれ、本当は筋肉なんだっけ。
透「ムキムキだ」
かっこいいじゃん。
目をつぶって、先っぽにキスをした。
189 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 03:27:16.04 ID:U0TFmbps0
P「……っ、ふ」
透「ん……ごめん、痛かった?」
P「いや、大丈夫……ビックリしただけだよ」
笑いながら、抱きしめられた。
ちょっと汗をかいた胸板が、わたしの胸を潰した。
背中に回された腕が、脊髄の周りを溶かして、骨の中まで掴もうとしているみたいだった。
190 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 03:27:56.21 ID:U0TFmbps0
と、思ったら、そのまま体重が乗ってくる。ゆっくりゆっくり仰向けにされる。
プロデューサーの目を見上げた。
透「ねえ」
P「ん」
透「……もう、入れるの?」
P「いや。もう少し」
P「初めてだから、時間かけないと」
191 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 03:28:29.10 ID:U0TFmbps0
それから。
それからは、三十分くらい記憶がない。
あんまり覚えてないくらい――指と舌で、ぐちゃぐちゃにされた。
プロデューサーの触ったところが全部導火線みたいにヒリヒリした。
身体が溶けてるみたいに水がびしゃびしゃに溢れてた。
頭の奥が震えて壊れそうなくらいにビリビリしてた。
足を閉じようとしてもぐいって開かれて両手をまとめて掴まれて体重かけられて逃げられなくて何も逆らえないままでぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃってされた。
192 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 03:29:36.51 ID:U0TFmbps0
『やめて』って言うと終わりになっちゃうから、それだけは言わないようにして。
自分じゃないみたいな高い声を聞きながら、天井が白と黒にチカチカするのを見ていた。
透「はあっ、はあっ、はあっ……あっ、っ、ぁあ――はあっ、はあっ――」
P「……大丈夫か。息、出来るか」
透「はぁっ、はぁっ――ん――」
頭真っ白のまま、頷いた。
今、最高に、息してたから。
193 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 03:30:27.44 ID:U0TFmbps0
酸素が足りなくて、そこまでの記憶は飛びそうだったけど。
そこからの事は、覚えてる。
透「はぁっ、はぁっ、はぁっ――は、んっ――」
扉を閉じるみたいに、キスで口が塞がれて。
透「――あ――」
最後の出口も、プロデューサーが閉じようとしていた。
大きくて硬い、乱暴なそいつを使って、優しく。
194 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 03:31:18.08 ID:U0TFmbps0
透「――ねえ」
P「ん……?」
透「好きって、言って」
背中に指が食い込んだ。
ぐいっと押し広げられた身体の一番奥まで、一気にそいつに塞がれて。
P「透」
195 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 03:32:15.91 ID:U0TFmbps0
P「好きだよ」
わたしの気持ちは、プロデューサーに閉じ込められた。
今夜が終わっても、きっと、ずっと。
たぶんそこに、永遠があった。
196 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 03:33:12.33 ID:U0TFmbps0
******
「ん……んっ、ぁ、あっ、んっ……」
「はっ、はっ、んっ、んっんっんぅ……」
「んっ――んむっ、あむ……んふふっ。……やば、ちょっと照れる、かも」
「……っ、え――ちょ、待っ……んんっ、はっ、や、待って、そんなっ、急に――」
197 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 03:33:52.56 ID:U0TFmbps0
「んっ、んっんっんっ……うっ、く、はぁーっ、はぁーっ……あっ!!」
「――あっ、あっあっあっ……! や、やめ……だっ、やめ、ない、でっ……!!」
「あっあっやっ、だめっ、気持ちいっ……だめだめだめっ……いっ……!!!」
「〜〜〜〜〜〜ッッ!!!」ビクッ
198 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 03:34:38.49 ID:U0TFmbps0
「――はっ、はっ、はっ、はぁ、はぁ、はぁぁ……っ」
「ふぅー……」
「あー……。……ふふっ」
「死ぬかと思った」
199 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 03:35:25.41 ID:U0TFmbps0
******
透「……来週、また、来るから」
透「居てね。ここに、ずっと」
P「……」
P「そういえば、もう日付変わってるけど」
P「家族には、なんて言ってるんだ」
200 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 03:36:08.85 ID:U0TFmbps0
透「雛菜の家で朝まで映画観てる、って言った」
P「すぐバレるだろ……」
透「大丈夫だって。雛菜、口硬いし」
P「まあ……上手くやってくれそうではあるけどさ」
201 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 03:36:38.31 ID:U0TFmbps0
P「じゃあ、朝まで居るのか」
透「うん」
P「そっか。来週も来るのか?」
透「たぶん」
P「そっか。……ははっ」
透「?」
202 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 03:37:38.54 ID:U0TFmbps0
P「じゃあ……パジャマくらい買っとくか」
透「あ。……うん」
透「……ふふっ」
透「なんか……上手く言えないけど」
P「ん?」
203 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 03:38:30.79 ID:U0TFmbps0
透「いいな、って。思った」
なんか、いい。
説明出来ないけど、ただ幸せってだけじゃなくて、もっと、ずっといい気分。
ずっと前から、こうなりたかった。これが続けば、もっといいなって思った。
204 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 03:39:16.80 ID:U0TFmbps0
だけど。
来月で、これは、終わった。
205 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 03:40:32.52 ID:U0TFmbps0
******
P(当然のことだ)
『――アイドル浅倉透、関係者と逢引か』
P(最初に身体を重ねた日から)
『未成年淫行』『真夜中のスクープ』『事務所や仕事場から家まで直行』『毎週足繁く通う姿』『透明な少女の濁った関係――』
P(こうなる事は覚悟していたし――どうするかも決めていた)
206 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 03:41:39.83 ID:U0TFmbps0
P(週刊誌にスキャンダルが載った、その次の日)
P(俺は、自分から社長室に向かった)
207 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 03:42:50.80 ID:U0TFmbps0
天井「――記事を書いた週刊誌には、誤報として謝罪と訂正の記事を書かせる」
天井「飛び火した関係者は全員黙らせる」
天井「幸い、浅倉も口を噤んでいる。真相は彼女の家族すら把握していない」
天井「多くの手間がかかるが……口裏を合わせれば、まだ揉み消せる段階だ」
天井「掛かる経費は……貴様のこれまでの働きに免じて、大目に見るとしよう」
208 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 03:43:35.03 ID:U0TFmbps0
天井「ゆえに」
天井「――この辞表は、受け取らんぞ」
天井「貴様は必要とされている。このプロダクションにも、彼女自身にもだ」
天井「貴様が辞める理由など……辞めてもいいと判断され得る理由など、一つもない」
209 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 03:44:34.59 ID:U0TFmbps0
P「――いいえ」
P「受け取ってもらいます。社長」
天井「何故だ。理由を言え。納得するに足る理由を、だ」
P「自分の担当アイドルに手を出したから。……それ以外の理由が必要ですか」
天井「二度も言わせるな。そんな事は幾らでも揉み消せる」
210 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 03:45:42.76 ID:U0TFmbps0
P「事実を揉み消して、無かったことにしたら」
P「踏みにじられた人の気持ちも、無くなるとお思いですか」
天井「…………」
P「たとえ口裏を合わせても、家族の中に疑いは残るでしょう。そんな噂の立つプロダクションに娘を預けていたのかと」
211 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 03:46:16.18 ID:U0TFmbps0
P「ノクチルのメンバーだって不安になるでしょう。幼なじみが、自分たちの知らないところで汚されていたかもしれないと知ったら」
P「……私が283プロに残り続けるなら。透も含めて、彼女たちはアイドルを辞めるかもしれない」
P「そんな事はさせないと……して欲しくないと、言ったんです。透に」
P「……もう、今更遅いですが。それでも、少しでも彼女たちの道行を邪魔したくないんです」
212 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 03:47:31.01 ID:U0TFmbps0
P「だから私は、283プロを去ります」
P「……今まで、本当にお世話になりました」
天井「…………ッ」
天井「なら尚更、お前は……!!」
天井「…………」
天井「…………いや」
213 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 03:48:29.18 ID:U0TFmbps0
天井「……貴様の言い分は理解した」
天井「ならば、出て行け。今すぐに」
天井「二度と私に、その不愉快な顔を見せるな」
P「……はい」
P「失礼します」
214 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2023/02/08(水) 03:49:29.72 ID:U0TFmbps0
ガチャ パタン
天井「…………」
天井「………………」
天井「………………愚かな男だ」
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