【シャニマスSS】浅倉透「プロデューサーの家のルール」【R-18】

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65 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 01:58:42.72 ID:U0TFmbps0


透「はっ、はっ、はっ」

タッタッタッ

透「はっ……はっ、はっ……」

タッタッ

透「はぁっ、はぁっ――あっ」

ズルッ ドサッ

透「いっ……つぅ……」
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 01:59:27.62 ID:U0TFmbps0


P「透……!!」タッタッタッ

P「透、大丈夫か……」

P(転んで、またびしょ濡れになった透に近づく)

P(さっきみたいに傘を差しだそうとして……車に置き忘れていた事に気づいた)

P「――透」
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:00:03.69 ID:U0TFmbps0


透「……はっ、はは。びしょびしょだ」

P「…………」

透「ね」

透「やっと、一緒に濡れてくれた」
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:01:19.73 ID:U0TFmbps0


P「……透」

P(透はアスファルトの上で仰向けになって、両手を差し出した)

P(抱き起こして欲しいみたいに。あるいは)

P(……抱きしめて欲しいみたいに)

透「もう、ぜんぶ……びしょ濡れ」
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:01:51.02 ID:U0TFmbps0


透「……置いて帰る? 私のこと」

P「……そんな事、出来ない」

透「じゃあ」
70 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:02:43.86 ID:U0TFmbps0



透「……シャワー、貸してよ」


71 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:03:18.73 ID:U0TFmbps0


******


透「……ここ?」

P「ああ」

透「……車で1時間って言ってたの、嘘じゃん」

P「……悪かったよ」

P「見つからないうちに入ろう。タオルは被ったままだぞ」

透「容疑者みたい。ウケる」

72 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:04:05.39 ID:U0TFmbps0


ガチャ パタン

P「……」

透「おー……家だ。すごい」

P「普通のマンションだよ」

P「シャワーはあっちだ。着替えは適当に用意しとくから、早く入っておいで」
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:04:57.85 ID:U0TFmbps0


透「プロデューサーは? 濡れたでしょ」

P「後で入るよ」

透「一緒じゃなくて?」

P「放り出すぞ」

透「おっと。はーい」
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:05:36.16 ID:U0TFmbps0


シュルッ パサッ

透「ふぅ」

洗面台。髭剃り1本。歯ブラシ1本。
知らない鏡。に、映ってる、私の裸。

透「……えっちー」

身体を隠した。なんとなく。
75 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:06:20.24 ID:U0TFmbps0


******


透「シャワー、いただきました」

P「おう。とりあえず、ソファで寛いでてくれ」

透「ん。ありがと」

透「……ここ、リビング?」

P「うん」

透「ふうん」
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:07:37.66 ID:U0TFmbps0


私の家のリビングと同じか、ちょっと広いくらい。
本棚、DVDがいっぱい。テレビ、おっきめ。
窓際に私の制服。サーキュレーターの上でゆらゆらしてる。
ソファーは二人がけ。でも片方はクッション置き場。居心地、良さそう。

P「……じゃあ、俺も軽く浴びてくるよ」

透「はーい」
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:08:15.44 ID:U0TFmbps0


透「……」キョロキョロ

透「……」ゴソゴソ

透「んー……」ペラペラ

P「……何探してるんだ?」
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:08:51.53 ID:U0TFmbps0


透「ね。どこ? エロ本」

P「ないよ」

透「えー、なんで?」

P「…………」

P「動画派だから」

透「……なんだってー」
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:09:26.16 ID:U0TFmbps0


******


P「上がったよ」

透「うい」

透「……あ。借りてます、充電器」

P「ああ……ご自由に」

P(……だいぶ、落ち着いたみたいだ)

P(飲み物入れてくるか)
80 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:10:07.37 ID:U0TFmbps0


P「……コーヒーで良かったか?」

透「あ、うん。ありがと」

P「シュガースティック、よければ使ってくれ」

透「ん。……いただきます」
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:10:38.63 ID:U0TFmbps0


サラサラ ズズッ

透「ふー……あったまる」

P「ああ」

ズズッ コトン

P「……」

P「……で、さ」
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:11:08.89 ID:U0TFmbps0


P「今日、カギ忘れたんだよな」

透「あ。うん」

P「だから暇つぶしで、普段と別の路線に乗った」

透「そう」

P「傘を忘れたから、雨宿りしようとして迷っちゃって、どうしようもないから俺に電話した」

透「うん」

P「そこまでは……まあ、いいよ」
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:11:51.47 ID:U0TFmbps0


P「でも、その後だ」

P「家に連れてって欲しいとか、凍死してやるとか。そんな事を言い出したのは、看過できない」

P「……結局家に上げといて、こんな事言うのもなんだけど」

P「何で今日は、こんな事したんだ」
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:12:22.50 ID:U0TFmbps0


透「……あー」

透「んー……」

透「……えっと。……ごめん。なんて言ったらいいか、わかんなくて」

P「ゆっくりで良い」

P「順番に、思った事を口にしてくれたら」
85 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:12:56.80 ID:U0TFmbps0


透「……この前、ショールーム行って」

P「ああ、うん」

透「スマホ、切ってくれて」

P「うん」

透「……でも、入ってはくれなくて。お風呂」

P「……うん」
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:13:28.03 ID:U0TFmbps0


透「分かってるんだ。プロデューサーの、出来ない事。……したくない事、かもだけど」

透「……でも、プロデューサーは、優しくて」

透「優しいから……お願いしたくなって」

透「だめだよって言われるのは、分かってて」
87 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:13:57.83 ID:U0TFmbps0


透「でも……」

透「分かってても、胸がきゅってなって」

透「それで……なんかさ。ワガママ、言いたくなったのかも。たぶん、そう」

P「…………」

透「怒ってる?」
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:14:41.99 ID:U0TFmbps0


P「……まあまあ、な」

透「怒鳴ったりしないんだ」

P「そういうのは……あんまり好きじゃない。それに」

P「透にだって、どうしようもない気持ちというか……譲れない部分があったんだろ。それは理解してる」

P「やった事には怒るけど、気持ちを蔑ろには……したくないから」
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:15:18.13 ID:U0TFmbps0


透「……いつも、許してくれるよね。プロデューサーって」

P「んん……そうかな」

透「うん。でも」

透「それじゃ、変わらない。なんにも」

コトン
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:16:02.25 ID:U0TFmbps0


P「透――……」

P(ぶかぶかな寝巻きを着た透が、身を寄せる)

P(薄い布ごしの、繊細な柔らかさ)

P(湿った細い髪が頬をくすぐる)

P(ガラス細工みたいな無垢の右手が、俺の脚に乗せられる)
91 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:16:44.73 ID:U0TFmbps0


透「ねえ――」

P(左腕が、俺の腰を回り込もうとして――)

P「……透。だめだ」

透「違う。……ねえ。聞いて」
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:17:19.54 ID:U0TFmbps0


透「……怒らないってさ、何も引っかかってないってことじゃん」

透「なんか、それもやだ。だから、ちゃんと見て。で、ちゃんと……怒ってよ」

P「このままこんな事続けるなら、本当に怒るぞ」

透「そうして。私もそうするから」
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:17:57.02 ID:U0TFmbps0


透「今日は私の事、許さないで。乱暴になって」

透「今日だけでいいから、優しいの……やめてよ」

94 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:18:26.29 ID:U0TFmbps0


P「……俺に、何を求めてるんだ」

透「……」

透「プロデューサーと」

透「____、したい」

P「透」
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:19:10.74 ID:U0TFmbps0


P「今のは、聞かなかったことにする」

P「だから、二度と、同じことを言うな」

96 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:20:12.50 ID:U0TFmbps0


透「……っ」

透「……なんで」

透「なんで、だめなの」

P「俺がプロデューサーで、透がアイドルだから」
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:21:00.35 ID:U0TFmbps0


透「じゃあ、プロデューサーやめてよ」

P「やめない」

透「じゃあアイドルやめる」

P「やめさせない」

透「やめる。辞表出すから」
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:21:37.09 ID:U0TFmbps0


P「――いいか、透」

P「もしそんな理由でアイドルを辞めたとしても、俺は透とセックスなんてしないし」

P「もしそんな理由でアイドルを辞めたとしたら、俺は」

P(………………)

P「……透の事を、嫌いになる」
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:23:02.56 ID:U0TFmbps0


透「――」

透「――……っ」ギュッ

P(服が、強く掴まれている)

P(……一人の女の子が、俺の胸元で震えてる)

P(でも)

P(慰めちゃいけないし、謝ってもいけない。……そんな資格はないから)
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:23:49.36 ID:U0TFmbps0


P「……そろそろ服、乾いただろ」

透「乾いてない……」

P「そんなわけない」

透「でも」
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:24:30.33 ID:U0TFmbps0


P「透」

P「……透の気持ちの強さまでは、俺にはわからない」

P「でも、透の気持ちがどっちを向いているのかは、分かってる」

P「その上で言うぞ。――今日はもう、帰ってくれ」
102 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:27:57.49 ID:U0TFmbps0


透「――――――」

透「なに、それ」

透「だって、さっき……言ったじゃん」

透「なに、それ……」

透「…………」

P「…………」
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:28:33.42 ID:U0TFmbps0


透「…………」

透「…………わかった」

透「着替える。で、送ってもらって、帰る」

透「……それで、いいんでしょ」
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:29:26.73 ID:U0TFmbps0


P「……ん。そうだ」

P(酷な事、言ってるよな。……ごめんな)

P「一旦、出ていくよ」

透「――待って。まだ」
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:30:05.77 ID:U0TFmbps0


透「ここに居て。……見てて」

P「……着替えを?」

透「うん」

P「見ないよ」

透「目、離したら」

透「またどっか行っちゃうかも。ううん、行く。絶対。窓から」
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:30:43.62 ID:U0TFmbps0


P「ここ、三階だぞ」

透「うん。分かってる」

P「…………」

P「はぁー……」

P「……見てるだけだからな」

透「ん」
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:31:19.57 ID:U0TFmbps0


透「今だけでいいから」

透「一途、オンで」
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:31:45.71 ID:U0TFmbps0


P(――そして透は、本当に服を脱ぎ始めた)

P(ガラスのように割れそうな、シミ一つない柔肉)

P(中にある骨を幻視してしまうほどの、細い腕。直角に近い肩)

P(ゴム紐に指をかけて屈みこむと、手のひら一つ分の乳房が小躍りするように揺れる)

P(スウェットの下から現れたのは、径の小さい臀部。まっすぐな大腿部。華奢な下腿)

P(……一糸まとわぬ姿を晒すと、透は俺の方へ身体を向けた)
109 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:32:17.24 ID:U0TFmbps0


透「焼きつけといてね。目」

透「オカズにしてもいいよ」

P「しない」

透「えー。動画より、本物の方がいいって」

透「あ。ムービー撮る?」

P「絶対撮らない」
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:32:58.60 ID:U0TFmbps0


透「むー……じゃあ、触ってみる?」

P「あと三分で制服着ないと、裸のまま追い出すからな」

透「おっと」

透「……そういうアレも、ありか」

P「やっぱり動画撮って親御さんに送ろうか?」

透「それはやばい。すぐ着ます」
111 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:33:45.41 ID:U0TFmbps0


******


ザァァァァ

P「…………」

透「…………」

P「……思ったより、混雑してるな。ちょうど帰宅ラッシュの時間だし」

透「あー……うん」

P「親御さん、なんて言ってる?」
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:35:01.78 ID:U0TFmbps0


透「『ご飯作ってのんびり待ってる』って」

P「そうか」

透「……お腹空いた」

P「だろうな」

P「夕食、なんなんだ?」

透「おでん、だって」

P「お、いいな。俺も買って帰ろうかな」

透「いいね」

P「だろ」
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:35:47.56 ID:U0TFmbps0


P「…………」

透「…………」

P「……なあ、透」

透「ん。なに?」

P「……今日は、俺も焦ってたし、透の心の中をちゃんと分かってなかった」

P「だから、最終的には家に上げてしまったけど」
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:36:23.83 ID:U0TFmbps0


P「次は迎えに来ないし、もう家には招かない」

P「……今日あったことは全部忘れてくれ。ちょっと良い白昼夢を見れたくらいに思っててくれ」

P「そうじゃないと、俺は透をこれ以上プロデュース出来ない」

P「……返事は聞かないよ」
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:37:10.33 ID:U0TFmbps0


透「…………」

プロデューサーは黙って、ハンドルを握り直した。
車は、家に着くまでずっと飼い殺されていた。
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:37:52.98 ID:U0TFmbps0


いっそ、ハンドルから手を離してくれたら良かった。タイヤのおもむくままに、どこまでも。
だって車も本当は、別の場所に行きたいのかも知れないのに。

国道は、嫌でもまっすぐに伸びている。
117 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:38:54.04 ID:U0TFmbps0


******


――1週間前、テレビ局。

『ノクチルのみなさん、ありがとうございましたー!!』
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:39:40.41 ID:U0TFmbps0


雛菜「は〜〜〜〜……やっと終わった〜〜〜〜!!!」

小糸「き、緊張したね……久々の、生放送だったし」

円香「まあ、一曲歌うだけだったけど」

小糸「そ、それでもだよ! 後半、緊張でちょっとフラフラしちゃって……」

雛菜「あ〜、やっぱり〜? 見えてた〜!」

小糸「ぴえっ……」
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:40:20.48 ID:U0TFmbps0


円香「……それ、緊張とは違うんじゃない」

雛菜「へ〜〜?」

円香「今日はまあ、それなりに大きな仕事だけど」

円香「先々週はショップのイベントの手伝いと、半分ボランティアみたいなキャンペーン係」

円香「先週は私たちじゃなくても良さそうなファッション誌の撮影と、夜七時からの二時間ぶっ通しのラジオ」
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:40:48.89 ID:U0TFmbps0


円香「ついでに来週は、期末テスト」

雛菜「あは〜、そうだっけ〜?」

円香「……」

円香「……どう考えてもおかしいでしょ、仕事のペース」

円香「ちゃんと高校と両立出来るようにって話だったのに、今は」

円香「……正直、しんどい」
121 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:41:29.35 ID:U0TFmbps0


小糸「う、うん……」

小糸「でも! プロデューサーさん、何か考えがあるかもだし……!」

円香「ちゃんと筋の通った考えがあるなら、説明するでしょ」

円香「でも最近のあの人は……送迎の時以外、顔も合わせようとしないみたいに見える。明らかに、何かがおかしい」

円香「……何か知ってる?」
122 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:42:12.01 ID:U0TFmbps0


透「ん」

透「あー……」

透「……わかんないや」

雛菜「雛菜もわかんな〜い」

円香「そっちには聞いてない」

雛菜「へ〜?」
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:42:50.81 ID:U0TFmbps0


円香「……とにかく、いい加減一度くらい問い詰めるべきだと思う」

円香「今日はタクシーで帰れって言われてるから、また明日にでも。それでいい?」

小糸「う、うん……」

透「――んーん」

透「今日。聞きに行く」
124 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:43:37.70 ID:U0TFmbps0


円香「……」

円香「今日は流石に会えないと思うけど」

透「わかんないじゃん。やってみなきゃ」

円香「誰がやるの?」

透「わたしがやる」
125 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:44:23.67 ID:U0TFmbps0


透「事務所行って、待ってみる。ダメなら、電話する」

透「やるから。わたし」

円香「……何かあったの? あの人と」

透「んー……まあ、ちょっとだけ」

透「どっちにしろ、会う必要あったから。任せて」

円香「……わかった。任せる」
126 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:44:54.96 ID:U0TFmbps0


円香「何か言い訳されたら、こっちにも教えて」

透「いえっさー」

円香「……それは男」

透「あれ。じゃあなんて言うんだっけ」

小糸「えっと……イエス、マム……じゃない、かな?」

透「おー。じゃ、イエスマム」

円香「ん。頼んだ」
127 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:45:53.52 ID:U0TFmbps0


******


コンコン ガチャッ

透「……お疲れ様でーす」

はづき「お疲れ様です〜」

はづき「……あら〜。今日は直帰ではなかったですか?」

透「あ、はい。そうなんですけど」

透「プロデューサー、いますか」
128 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:46:21.02 ID:U0TFmbps0


はづき「今はいないですね〜」

はづき「営業に行ってるみたいですが……何か大事な用事ですか?」

透「えっと、はい」

透「プロデューサー。待ってたら、事務所に帰ってきますか」
129 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:46:46.88 ID:U0TFmbps0


はづき「う〜ん、たぶん一度は立ち寄るとは思いますが……」

はづき「夜の何時になるか、わかりませんよ〜。それに、私ももうすぐ帰りますから……」

透「…………」

透「じゃあ、いっこお願いしても、いいですか」

はづき「……?」
130 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:47:30.70 ID:U0TFmbps0


透「――鍵、借りたいです。事務所の」

透「明日の朝まででいいから」

131 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:48:20.48 ID:U0TFmbps0


はづき「……どうして、ですか?」

透「……」

透「……話したいこと、と……渡したいものがあるから。です」

はづき「…………う〜ん」

はづき「それは、どうしても必要なことですか?」
132 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:48:47.03 ID:U0TFmbps0


透「はい」

はづき「う〜ん……」

透「お願いします。なにとぞ」

はづき「……」
133 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:49:21.35 ID:U0TFmbps0


はづき「ダメですね〜」

透「……そっか」

はづき「はい。なので〜」

チャリン

透「…………」

透「え」
134 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:50:04.87 ID:U0TFmbps0


はづき「明日の朝九時までに、ここに持ってきてください〜。それなら、なんとか誤魔化せます」

透「……おぉ」

はづき「本当は、ダメなので」

はづき「……社長には絶対、内緒にしてくださいね〜」

透「――ふふっ」

透「イエス、マム」
135 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:50:51.33 ID:U0TFmbps0


******


「ふーふふん、ふんふふん、ふんふんふふふん……」

真っ暗で、ちょっと寒い。
手元のノートを握りしめて、鼻で歌う。
空気は湿っていて冷たい。透明な雪景色みたいに。
136 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:51:30.40 ID:U0TFmbps0


「ふふんふふふーふんふふん……」

あの映画の結末は、たしか。
たくさん仕掛けられた爆弾を、結局一つも解除できなくて。
自分で自分を撃った後、ビルが崩れていくのを、好きな人と一緒に眺めていた。
137 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:52:06.57 ID:U0TFmbps0


「ふんふふふん、ふふふんふふふふーふん、ふんふんふふん」

私も、自分を撃っちゃう。
そしたら、爆発する。全部崩れる。
アイドルとか、想いとか、そういうのが。
だから、そうなる前に。
138 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:52:50.00 ID:U0TFmbps0


「あいわなびー、ふりー」

私を空まで殴り飛ばしてほしい。
そしたらきっと、爆発なんて見えなくなるから。
前までみたいに笑って、話して、私を天国に連れて行ってよ。
ねえ。
139 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:53:25.89 ID:U0TFmbps0


「ねえ――」

“ねえ彼女 その銃を手放すなよ
多忙でも退屈じゃ仕方ないしさ
フェンスの向こう また誰かのイマジネーションが床を汚してる
アイワナビーフリー”
140 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:54:07.69 ID:U0TFmbps0


「――ばーーーーーん!!!!」

141 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:54:47.21 ID:U0TFmbps0


P「うわああああああっっっ!?!?」

P「はっ、はっ、はっ……透!?」

透「おかえり。プロデューサー」
142 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:55:29.61 ID:U0TFmbps0


P「な……なんで、事務所に……」

P「いや……そもそも、こんな時間までいたらダメだろ! 何時だと思ってるんだ!?」

透「えっと……22時46分、だって」

P「わかってるなら尚更だ! なんで残ってるんだ!?」
143 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:56:24.37 ID:U0TFmbps0


透「日誌」

P「え?」

透「書いたから。読んで」

P「…………」

透「読んでよ、私の」

透「言葉にしたから。全部」
144 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:56:59.80 ID:U0TFmbps0


P「……とりあえず、電気つけるよ」

透「あ、うん」

カチッ

P「ふぅ……」

P「……で」

透「はい」
145 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:57:37.04 ID:U0TFmbps0


P「色々、言いたい事はあるんだが」

透「うん。……私もあるよ。たくさん」

透「仕事、無理やりたくさん入れて。レッスンも見に来てくれないようになって」

透「――避けてたでしょ。私のこと」
146 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:58:17.55 ID:U0TFmbps0


P「…………」

P「……ああ。そうだよ」

透「やっぱり」

透「……そっか」

P「うん」

P「わかるだろ。理由は」
147 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:59:01.41 ID:U0TFmbps0


透「わかるよ」

透「でも、わかって、終わりじゃない」

透「そうならない」

P「……何で、そうならないんだ」

透「人の気持ちって、ちょっとくらいはわかる時もあるけど。全部は絶対、わからないから」

透「だから。それ、読んで」
148 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 02:59:43.06 ID:U0TFmbps0


透「それでも、全部じゃないけど」

透「読んで……その後で、教えて。プロデューサーの考えてることも、出来るだけ。たくさん」

透「そうじゃないと」

透「……苦しい」

透「気持ちが通じないのって。息が、出来なくなるくらい……苦しい」
149 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 03:00:19.94 ID:U0TFmbps0


P「…………」

P「……読めば、いいんだな?」

透「うん」

P「…………」

ペラッ
150 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 03:00:51.66 ID:U0TFmbps0


P(最初の文章は、2ヵ月前)

P(ショールームを見に行った時の事だ)

P(……『一緒にお風呂に入ろうって言った。断られた』)

P(『悲しかった。すごく』)
151 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 03:01:39.78 ID:U0TFmbps0


P(次は……およそ1ヵ月前)

P(雨の中、迎えに行った日)

P(……『迎えに来てくれた。嬉しかった』)

P(『でも、私の思ってること全部、だめって言われて』)

P(『遠ざかっていくみたいだった。悲しかった。すごく』)
152 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 03:02:22.64 ID:U0TFmbps0


P(最後は、直近の日付だ)

P(『ずっと、プロデューサーは話してくれない。たぶん、避けられてる』)

P(『悲しい。すごく』)

P(『わたしは』)
153 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 03:03:04.85 ID:U0TFmbps0


P(『憧れてる、と思う。____に』)

P(『気持ちを言葉にするのは、難しくて』)

P(『頑張って言葉にしても、伝わらない時も、嘘を吐かれる時もある』)

P(『だけど____の中には、きっと気持ちだけがある』)
154 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 03:03:49.90 ID:U0TFmbps0


P(『何も見間違えない距離で、二人でくっついて』)

P(『難しいことはぜんぶ忘れて、息を切らして、手を繋ぎながら』)

P(『プロデューサーと、キスをしたい』)

P(『朝に目を覚まして、隣で寝ているプロデューサーを見たい』)
155 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 03:04:37.12 ID:U0TFmbps0


P(『そればっかりをずっと、考えてる』)

P(『ちゃんと、伝わってほしい。知ってほしい』)

P(『それで、もし、嫌じゃないなら』)

P(……日誌は、そこで終わった)
156 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 03:05:16.39 ID:U0TFmbps0


P「…………」

透「プロデューサーってさ」

透「嫌い? 私の事」

P「そんなわけないよ」
157 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 03:05:57.42 ID:U0TFmbps0


透「じゃあ、何とも思ってない?」

P「……そんなことも、ない」

透「じゃあ」

透「しよう。____」
158 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 03:06:30.89 ID:U0TFmbps0


P「透」

透「うん」

P「好きとか、嫌いとか、そういう問題じゃないんだ」

P「……認めるよ。透の事、少し、意識してる。他の子よりも」

透「……!」

P「だから……断り切れなくて、家に上げちゃったんだよな」
159 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 03:07:14.79 ID:U0TFmbps0


P「――でも。それでも」

P「セックスは、しない」

P「ルールとか、法律とかじゃない」

P「俺たちを信じてる周りの人や、将来の透自身のためだ」

P「……分かってくれよ」

透「……」
160 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 03:07:57.33 ID:U0TFmbps0


透「やっぱり、全然分かってない」

透「……いいよ。じゃあ」

透「見せるから。心の中」
161 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 03:08:35.12 ID:U0TFmbps0


バタン カンカンカンカン......

P「っ、透――」

P(声をかけるより前に、透は踵を返して)

P(階段を降り……いや、登ってる……?)

P「――――!?」
162 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 03:09:14.62 ID:U0TFmbps0


P(俺は急いで後を追った)

P(ものすごく、嫌な予感がしたから)
163 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 03:09:53.19 ID:U0TFmbps0


******


――屋上。


P「はっ、はっ、はぁっ――透!?」

P(透は、屋上にいた)

P(……落下防止の柵を乗り越えた、その向こうに)

P「透!! ……っ、何やってるんだ!!」
164 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2023/02/08(水) 03:10:28.29 ID:U0TFmbps0


透「え。……ちょっとー」

透「プロデューサーが上がってきたら、意味ないじゃーん!」

P「何が……っ!?」

透「飛び降りながらー、窓に向かって言うつもりだったんだからー!」

透「――『愛してる』、って!」
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