毎回屈辱ヒーロー ガンバマン The 3rd Humiliation

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2 : ◆9ccBFQYMG2 [sage saga]:2025/10/03(金) 19:24:48.53 ID:yRSJThnu0
「はッ!?」
 ガンバマンはにわかに目を醒ました。
 下半身こそ自由なものの、ベッドの端に手を繋げられ身動きを制限されている。
「相変わらず報われないヒーローね……哀れだわ……」
 「組織」の幹部「おやびん」の視線が、だらしなくベッドに臥すガンバマンに冷たく向けられている。
「離せ……ッ!なぜこんなことをするんだ!」
 拘束された手を必死に動かしながら、気丈に振る舞うガンバマン。
「――あなたに、その正義とやらの本当の正体を教えてあげるためよ」
 おやびんがガンバマンの耳元で囁く。
3 : ◆9ccBFQYMG2 [sage saga]:2025/10/03(金) 19:25:27.44 ID:yRSJThnu0
「正義の、本当の正体……?」
「あなた本当は、少し、気づき始めてるんじゃないの?」
 ――一体、何に――?
 そう問いかける前に、おやびんから残酷な号令が発せられる。
「やっておしまい」
 その科白を聞いた「組織」の子分がギラついた眼でガンバマンに襲いかかる。
「やめろ――ッ!!」
「ヒーローもこうなるとエロっ!」
「イイ股間ダナ!」
 こうして、悪の組織の狂乱の宴が始まった――。
4 : ◆9ccBFQYMG2 [sage saga]:2025/10/03(金) 19:26:31.32 ID:yRSJThnu0
〜2時間後〜


「畜生……あっ、はぁっ……畜生……ッ! でも……気持ちよかった……」
 ゆっくりと肩を上下させるガンバマン。その顔は興奮で上気している。
 その傍らには、おやびんが泰然と立っていた。
「あなたが思い描く正義なんて――」
 ガンバマンに顔を近づけたおやびん。
 そのサングラスがゆっくりと外される。
「――どこにも存在しないのよ」
「……私の正義が、どこにも存在しない……?」
 そんな筈は無い。ガンバマンは自答した。
 台東区を守るため、信念を抱えて正義を執行してきた。
 たしかに、オレンジ色のパンツを履いた男やゲンキマンに裏切られ、電撃を浴びせられたが、それはあくまで結果だ。
 自らの正義は誤っていなかった筈――。
5 : ◆9ccBFQYMG2 [sage saga]:2025/10/03(金) 19:27:29.58 ID:yRSJThnu0
「そんなことがある訳無い!」
 凌辱中に外された手枷から、鋭いパンチがおやびんに向かって放たれる。
 その拳が、おやびんの顔面に直撃した――かに見えた。
「うふふ、ガンバマン、まだこんなに元気なのね、嬉しいわ」
 おやびんの片手がガンバマンの拳をがっしと受け止めている。
「次に凌辱されるまでに考えておくことね、己が幻想した正義の、真の姿を……」
 おやびんは掴んでいたガンバマンの拳をぱっと放すと、身を翻しそのまま暗闇に消えていった。
6 : ◆9ccBFQYMG2 [sage saga]:2025/10/03(金) 19:28:38.74 ID:yRSJThnu0
  * * * * *


 ガンバマンは変身を解いて、どこにでもいる普通のホモになっていた。
 「組織」のアジトである「ちくわ寮」から解放された瞬――それが彼の日常での名前だ――は蒸し暑い台東区の路地をふらふらと歩く。
 「本当の正義」……?
 おやびんが放った言葉がぐわんぐわんと瞬の脳裏で響く。
 もし自分に本当の正義があったなのなら、あんなに無様に敗北することは無かったのではないか。
 一瞬よぎるそんな思考を、かぶりを振って否定する。
 自分は正義のヒーローだ。それ以上でも以下でもない。
 強きをくじき、弱きを助ける。それがこの手のひらにある「正義」。
 瞬はぐっと拳を作り、曲がっていた背筋を伸ばした。
7 : ◆9ccBFQYMG2 [sage saga]:2025/10/03(金) 19:30:39.14 ID:yRSJThnu0
「あの……」
 その時、不意に後ろから話しかけられた。
 瞬が振り向くと、どんな偶然か、以前「組織」の戦闘員から助けたオネエが、心配そうに立っていた。
「あ……」
 瞬は自分の正体がバレたのかと思い、焦った。
 正義のヒーローは、ヒーローたることを隠さなければならないからだ。
 善行を成したことで称賛を受けても、それは一般の個人に帰属すべきではないと瞬は考えていた。
 それでは、報酬のために正義を執行することになってしまう――。
8 : ◆9ccBFQYMG2 [sage saga]:2025/10/03(金) 19:32:44.24 ID:yRSJThnu0
「大丈夫ですか?」
 髪を金髪に染めたオネエは、いたわるように言った。
「は?」
「あら、ごめんなさい、フラフラしてたから、熱中症かなと思って……」
「あ、いえ、わ、私はその……」
 たった今凌辱された身だとは言えない。
 瞬が言い淀んでいると、やはり具合が悪いと勘違いされたらしい、オネエは瞬に肩を貸した。
 オネエだけあって体格がゴツい。
 だが、その頑強な骨格と筋肉には触れているだけで瞬は不思議な安心感を覚えた。
9 : ◆9ccBFQYMG2 [sage saga]:2025/10/03(金) 19:33:45.08 ID:yRSJThnu0
「す、すみません」
 オネエとは言え簡単に体を預けている事実に、瞬は申し訳無さそうな声色になる。
「ふふふ、いいのよ。あたしの家まで行きましょう。水分補給をしないとね」
 オネエの名は「あゆ」と言った。
 聞いてもいないのに、ここ台東区の場末のオカマバーでキャストとして働いていると自ら語ったあゆは、
 元男らしからぬいい匂いがした。
 イカニモ系を好む瞬の好みではなかったが、気さくで如才ないあゆに、瞬は自分にはない魅力を感じた。
10 : ◆9ccBFQYMG2 [sage saga]:2025/10/03(金) 19:35:15.15 ID:yRSJThnu0
「こんなことを言うと変なオンナだと思われるかもしれないけど、あたし、あなたに会ったことがあるような気がするの。
 ヘタなナンパの常套句を言ってる訳じゃないわよ。本当に、どこかで……」
 あゆは人差し指で顎を触り、怪訝な表情になった。
 ――マズい。
 このままではあゆは、「組織」の戦闘員に襲われた時の詳細を思い出してしまう。
 ガンバマンに変身している間、瞬は顔をバイザーでしか覆っていない。
 身体こそ犬の臭いのする全身タイツを着ているが、最大の特徴である顔面は、見る人が見れば一目瞭然だった。
 それだけは避けなければ。自分がガンバマンであることは誰にも知られてはならない。
11 : ◆9ccBFQYMG2 [sage saga]:2025/10/03(金) 19:36:24.10 ID:yRSJThnu0
「そ、そうですか。でも、あなたとはこれが初対面だと思います。こう見えて、人の顔を覚えるのは得意なんですよ、私」
 口からでまかせを言って、何とかお茶を濁そうとする瞬。
「あたしも記憶力は良い方なんだけどねぇ……。まあいいわ、うちはこっちよ、こっち」
 そうして、いつの間にかあゆに引きずられる格好になって十数分酷暑の中を歩くと、厳かな日本家屋の前に辿り着いた。
「うわぁ……、大きいな……」
 瞬は思わずため息を漏らした。
 まるで、江戸時代からタイムスリップしてきったような重々しい門構えの大邸(おおやしき)が粛然と鎮座している。
 あゆは大きな数寄屋門をがらりと開けると、玄関に瞬の身体を寄せ、式台に彼を座らせた。そして、大声で人を呼ぶ。
「誰かぁ、誰かいる〜!?」
 すると、どたどたと奥から人が小走りで駆けてくる音がした。
12 : ◆9ccBFQYMG2 [sage saga]:2025/10/03(金) 19:37:56.20 ID:yRSJThnu0
「どうしたどうした」
 やがて現れた声の主は、50代後半くらいの年配の男で、古風な胴着に袴(はかま)を履いていた。
 そして、瞬にこそ刺さらなかったが、界隈ではウケるだろうかなりのイケオジだ。
「お客さんを上げてもいい? そこで会ったんだけど、ちょっと熱中症みたいなの」
「うん……? これはまたオイシそうな……いや、力感の溢れた男の人じゃないか」
 父親のその言葉にわずかな違和感を覚えた瞬だったが、そのまま彼はどたどたと慌ただしく客間に通された。
 その様子を、父親がねっとりと観察していたとは知らずに。
13 : ◆9ccBFQYMG2 [sage saga]:2025/10/03(金) 19:39:24.63 ID:yRSJThnu0
「ほら、ここに座って」
 あゆに促され、瞬は革張りのソファに巨体を沈めると、ちらと周囲を見渡した。
 外装こそ和風だったが、内装は和モダンといった風で、和洋が折衷している。
 部屋の隅に置かれた大きな観葉植物くんが瞬をじっと見つめていた。
 やけに豪奢な内装に瞬がやや気後れしていると、すぐにあゆの父親が氷嚢と飲み物を持ってきた。
「今年は例年よりももっと暑いと聞いていたから、準備していてよかったよ」
 あゆの父親はそう言って、
「じゃあ、上着とズボンを脱いでくれるかな?」
 と瞬に促した。
14 : ◆9ccBFQYMG2 [sage saga]:2025/10/03(金) 19:41:19.07 ID:yRSJThnu0
「えぇっ?」
「脇と鼠径部に氷袋を挟むんだ。大動脈を冷やして体温を下げるのが効率がいいからね」
 瞬は一瞬戸惑った自分を恥じた。卑猥な屈辱を受けすぎて、思考まで色欲に染まってしまっている……。
「ほら、よいしょっと」
 あゆが上着を脱がせると、瞬のでっぷりとした腹が露(あら)わになった。続いてズボンもひん剥かれて、
 瞬く間に瞬はパンツ一枚だけの、ほぼ全裸になってしまった。
 しかし、親切にされている手前、自分は熱中症ではないと切り出すのも気が引ける。
 瞬は氷嚢を脇の下と鼠径部に当てられるがままにして、あてがわれたアイスティーを口にした。
15 : ◆9ccBFQYMG2 [sage saga]:2025/10/03(金) 19:43:14.98 ID:yRSJThnu0
「これで少し休めば大丈夫だろう。見た所、重症ではないようだから」
「あ、ありがとうございます」
 このもてなしが勘違いから来たものだったにせよ、これ程の人情に出会うのは稀だった。
 瞬は自分が受けた歓待に驚きの念と感動とを同時に抱いた。
「そういえば、まだお名前を伺ってなかったわね」
 あゆが瞬に尋ねる。
「あ、はい、私の名は、願生(がんば)。願生瞬と言います」
「わたしは星崎あゆ。よろしくね、瞬さん」
「あゆの父の雅羅(がら)だ」
16 : ◆9ccBFQYMG2 [sage saga]:2025/10/03(金) 19:45:18.32 ID:yRSJThnu0
「こんな手厚くもてなされて嬉しいですが、少し恥ずかしいです」
 瞬は申し訳なさそうに言った。
「なあに、少し頼りないくらいが丁度いいんだよ。
 言ってしまえば、人間、完璧でなくていい。
 強すぎる人は、かえって人を遠ざけてしまう。
 そういう意味で、人間むしろ欠点があるべきとも言える」
 雅羅と名乗ったあゆの父は、朗らかに微笑した。
「そ、そういうものでしょうか」
「そういうものだよ」
 いぶし銀の雰囲気にあてられて、瞬は気圧された。
 それをかき消そうと、瞬はひと目見たときから覚えていた疑問を投げかけた。
17 : ◆9ccBFQYMG2 [sage saga]:2025/10/03(金) 19:47:14.10 ID:yRSJThnu0
「その道着は、柔道か何かを教えてらっしゃるんですか?」」
「ああ、道場で古武道を教えている。雅羅という名も本当は武号なんだ」
 ――やはり。
 瞬のヒーローとしての本能が告げている。このイケオジは只者ではない、と。
「師範には見えないわよねぇ」
 あゆが茶化すように微笑んだ。
「はっはっは、よくそう言われるよ、参ったな」
 嘘だ、と瞬は思った。
 雅羅の佇まい、平時にも関わらず見透かせない隙の無さは、一般人にはとても到達できない域にある。
 もしもこれが戦闘となったら、自分でも勝てるかどうか……。瞬はパンツ一枚のまま、ぶる、と身震いした。
18 : ◆9ccBFQYMG2 [sage saga]:2025/10/03(金) 19:49:20.17 ID:yRSJThnu0
 30分後、自己紹介から始まった3人の歓談は、自然と雅羅の修める古武道へとを移っていた。
「あの、よければ少し教えて頂けませんか?」
「武術をかね?」
「はい! 興味があって……」
 ヒーローとして強くあるために、瞬は日々様々な戦闘術を学んでいる。
 雅羅の修める古武術も己のものとして吸収すれば「組織」との戦いに際してより優位になるだろう。
「関心を持ってくれるのは嬉しいが、体調を崩している人間に教えるのは気が引けるなぁ……」
「そうよそうよ、本当は1時間程度安静にしてないと」と、あゆ。
「熱中症はもう大丈夫です! お父さんの武技を是非見せて下さい!」
 瞬は熱っぽく懇願した。
 すると、雅羅は瞬の額と頸動脈に指を添えて、体温の上昇具合と脈拍を確認した。
19 : ◆9ccBFQYMG2 [sage saga]:2025/10/03(金) 19:52:10.32 ID:yRSJThnu0
「ふむ、熱は下がったみたいだな。じゃあ――付いてきなさい」
 そう言って、雅羅は瞬に先行して歩き出した。
 瞬は慌てて上着とズボンを身につけ、後を追う。
 改めて家の内装を見ると、古式ゆかしい伝統の跡がそこかしこに散見された。
「ここだよ」
 道場は屋敷に隣接していたため、すぐに辿り着くことができた。
 板張り床のぴかぴかに磨かれた清潔さと、壁に掛けられている武器・暗器の物々しさとのコントラストが独特の雰囲気を醸し出している。
(んんっ? こっ、これは……!?)
 瞬のホモヒーローセンサーが、かすかな血の臭いをキャッチした。
20 : ◆9ccBFQYMG2 [sage saga]:2025/10/03(金) 19:53:55.18 ID:yRSJThnu0
 気のせい……? いや違う。確かに……。
「どうかしたかね」
「い、いえ……」
 不意に感じ取った禍々しい空気に気を取られている瞬。その彼の方向に雅羅が顔を遣る。
「ところで――」
 雅羅の口角がにやりと上がる。
「やるんだろう? 君も」
「――え?」
21 : ◆9ccBFQYMG2 [sage saga]:2025/10/03(金) 19:56:36.35 ID:yRSJThnu0
「君はただ太っているだけに見えて、本当は筋肉の塊だ。ちょうど相撲取りのように」
 刹那、雅羅から右上段突きが放たれる。
「!?」
 それを間一髪で避ける瞬。だが、打撃が掠った頬に赤い傷痕が線を描く。
「ほう、やはり避けるか」
「なっ、何を――」
「君は知りたくないかね。君自身が掲げる、正義とやらの本当の姿を」
 雅羅が今度は後ろ回し蹴りで瞬の胴体を狙う。が、またもギリギリでこれをガードする瞬。
 酷く重い一撃が、瞬の腕(かいな)にずんと響く。
22 : ◆9ccBFQYMG2 [sage saga]:2025/10/03(金) 19:58:31.73 ID:yRSJThnu0
「あら、お父さんったら。いつもの悪いクセね。まったく、戦闘狂なんだから」
 あゆが悪意を孕んだ笑顔で言う。
「ど、どうして……」
「『組織』からは、君に屈辱を与えるために昏睡レイプをするだけにしろと言われているんだが」
 雅羅は構えを崩さない。むしろ、その纏う邪気は一層色濃くなっている。
「このままでは、五体満足で帰すことも難しい。なにせ君は私のタイプだからね。特に、その強さが好きだ。
 だから、さあ、変身したまえ、ガンバマンに。是非、私と手合わせ願いたい」
 ぞわっ……。
 やらなければやられる、と瞬は戦慄した。
23 : ◆9ccBFQYMG2 [sage saga]:2025/10/03(金) 20:01:07.87 ID:yRSJThnu0
 なぜこの人が……と疑問を反芻する暇は無い。瞬は素早く変身ポーズを取った。
「この世に悪がはびこる限り、私が正義の鉄拳で打ちのめす! 変身ッ! ガンバマン!」
 その身体がまばゆく輝くと、次の瞬間、犬の臭いのする全身タイツを蒸着した瞬の真の姿――ガンバマンが現出した。
「ようやく正体を表したな、ガンバマン」
 言うが早いか、雅羅は鉤突き――確実に急所を狙う一撃――を繰り出す。
 しかし、ガンバマンはこれをすんでで防御、すぐさま反撃に転じる。
24 : ◆9ccBFQYMG2 [sage saga]:2025/10/03(金) 20:03:40.08 ID:yRSJThnu0
「ガンバ、パーンチ!」
「うぐぁっ!」
 ガンバマンの必殺技が雅羅の正中線にクリーンヒットした。
 雅羅はその衝撃で後ろに数メートル吹き飛び、壁に激突する。
 しかし、すぐに体勢を立て直し、ガンバマンに向かって猛襲した。
 だが、対するガンバマンはすぐにカウンターを狙う。
 そうして、二匹の野獣は互いの喉笛を噛みちぎらんと強撃の応酬を繰り返した。
25 : ◆9ccBFQYMG2 [sage saga]:2025/10/03(金) 20:05:15.24 ID:yRSJThnu0
 しかし、数分が経過した時、ガンバマンに異常が表れる。
 ぐらっ……。
 足元がふらついた所に、雅羅の上段蹴りがもろにガンバマンの頭にヒットする。
 一瞬意識が飛び、その体幹がぐらつく。
 な、なんだ……?
 上段蹴りを喰らったせいだけではない、何か身体がおかしい。
「おやおや、もう効いてきたのか。意外と早かったな」
「私の身体に何をした!?」
「知らなかったのか? 他人の家で出されるアイスティーを軽々に飲んではいけない。
 何かが混入されているかもしれないからね」
26 : ◆9ccBFQYMG2 [sage saga]:2025/10/03(金) 20:06:56.08 ID:yRSJThnu0
「ぐぅっ!!」
 意識が徐々に朦朧とするのを耐える。
 ガンバマンは狼狽した。このままではまた、屈辱を味わうことになってしまう――。
「これで終わりだッ!!」
 雅羅が必殺の拳を繰り出す――が、ガンバマンはそれをすんでの所で躱(かわ)し、
 致命の一撃、ガンバキックをカウンターで雅羅の顔面に叩き込んだ。
 無言でがっくりと膝から崩れ落ちる雅羅。その眼に生気の輝きは無い。
「危なかった……」
 しかし、勝ったと思った瞬間――
27 : ◆9ccBFQYMG2 [sage saga]:2025/10/03(金) 20:08:45.78 ID:yRSJThnu0
「えいっ」
 ビリビリビリビリビリッ!
「うわああああぁぁぁッッ!!!」
 スタンガンの電流がガンバマンを貫いた。
「うわあああああああああぁぁぁッッ!!!」
 執拗な電撃がガンバマンを襲う。
「バタリ」
 最後にそう呟いて、ガンバマンは昏倒した。
「うふ。伏兵がいることを忘れちゃ困るわね」
 邪悪な笑みを浮かべたあゆがじっとガンバマンを見下ろす。
28 : ◆9ccBFQYMG2 [sage saga]:2025/10/03(金) 20:11:02.15 ID:yRSJThnu0
  * * * * *


「はっ!?」
 ガンバマンはにわかに目を醒ました。
 下半身こそ自由なものの、再びベッドの端に手を繋げられ身動きを制限されている。
「ここは!?」
「ここは、ちくわ寮よ……ガンバマン」
「おっ、お前は……ッ!」
 そこには、1時間程前、自分に辱めを加えた、「組織」の「おやびん」の姿があった。
「相変わらずね、ガンバマン」
「おいやめろ! なぜこんなことをするんだ……ッ!」
「あら、まだ気がついていないのね、自分がなぜこんなことになったのか」
29 : ◆9ccBFQYMG2 [sage saga]:2025/10/03(金) 20:12:49.95 ID:yRSJThnu0
「……ッ! どういうことだ! 早く離せ!」
「あなたが見ているものが、いかに悪に満ちているのか理解しなさい」
「なんだと!?」
「あなたの正義は、所詮あなただけのもの。見てご覧なさい、あなたは、あなたの思い込みが原因で、そこにいるのよ」
 おやびんがガンバマンの耳元に近づき、そして囁く。
「以前あなたが助けようとした人たちはね、みなヤバ種雄交尾――エイズの管理をせずにホモセックスをしていたホモだったのよ」
「……なッ!?」
30 : ◆9ccBFQYMG2 [sage saga]:2025/10/03(金) 20:14:55.85 ID:yRSJThnu0
「この世界は悪に満ちている……。私のように、自分勝手で、愚かな人間に……」
 ガンバマンの脳裏に、今まで助けてきた一般市民の姿がフラッシュバックする。
 彼らが……?
「無論、みながみなヤバ種雄交尾を好むわけではないわ。
 でも、あなたが助けた人たちのせいでエイズ罹患者が増えたのは事実」
 なおもおやびんは続ける。
「エイズ陰性――ネガをポジらせるのは悪よ。
 しかし、もっともっと酷い最大の悪はね、ガンバマン。
 その事実に気づかず、手前勝手な思い込みの正義を振るいつづけることなのよ」
 ガンバマンを糾弾するおやびんの目はギラついていた。
31 : ◆9ccBFQYMG2 [sage saga]:2025/10/03(金) 20:16:53.65 ID:yRSJThnu0
「私はね、ガンバマン。
 辱めをとおして、あなたに気づいてほしかったの。
 あなたの正義が、その実、悪に糊塗されたものに過ぎないことに」
「そんな――」
 そんな馬鹿な。
 しかし、ガンバマンは屈辱を受けることで、そしておやびんに責められることで、
 己が報われないヒーローであると自ら認め始めていた。
「さあ、認めて堕ちなさい、ガンバマン。
 屈辱によって、あなたはヒーローからヴィランになるの。
 我々の組織は貴方を歓迎するわ」
「そ、それは……」
32 : ◆9ccBFQYMG2 [sage saga]:2025/10/03(金) 20:18:40.27 ID:yRSJThnu0
 ガンバマンは激しく動揺した。
 しかし同時に、体の芯が冷えていくのを感じる。
 自分は……正義とは……。
「違う……」
「そうよ、あなたは間違っているの、いい加減認めなさい」
 ガンバマンは拳を握りしめる。
「違う!」
 そして、拘束されていた両腕を引き剥がし、おやびんに渾身のガンバパンチを放った。
「なにッ!?」
 咄嗟に腕でガードするおやびん。
 その威力は凄まじく、おやびんを数メートル後退らせた。
33 : ◆9ccBFQYMG2 [sage saga]:2025/10/03(金) 20:20:56.92 ID:yRSJThnu0
「報われなくていい、間違っていてもいい! ヒーローは完璧じゃなくていいんだ!」
 ガンバマンはきっとおやびんを見遣った。
「なっ、なんですって……ッ!?」
「お前のお仲間が教えてくれたよ。
 ヒーローも人間。そして、その人間は完璧でなくていい。
 少し頼りないくらいが丁度いい、と」
 犬の匂いのする全身タイツをパッツパツにしながら、ガンバマンはおやびんを指さした。
「私は間違っているかもしれない、しかし、それは私がヒーローでないことの証明にはならない!」
「き、詭弁よ!」
「そして、私は……私は辱めを受けて興奮した!
 だが、そんなヒーローがいてもいい!」
「そ、そんな……ッ!」
「私は堕ちない! お前たちの思い通りになってたまるか!」
34 : ◆9ccBFQYMG2 [sage saga]:2025/10/03(金) 20:22:41.54 ID:yRSJThnu0
「くそう! こうなったら実力行使よ! やっておしまい!」
 「組織」の戦闘員がガンバマンに襲いかかる。
 しかし、覚醒したガンバマンの敵にはならない。
 必殺のガンバパンチとガンバキックを浴びせられ、戦闘員は床を舐める。
「さあ、後はお前だけだ、おやびんッ!」
「ふふふ……まだよ、ガンバマン」
「なにぃッ!?」
「『組織』は巨大よ。この世にホモがいる限り、無くなることはない。私がここで殺られても、瓦解することなんて――」
 言い終わるのが早いか、おやびんの胸部にガンバマンの強打が打ち込まれ、おやびんはそのまま膝から崩れ落ちた。
35 : ◆9ccBFQYMG2 [sage saga]:2025/10/03(金) 20:25:15.18 ID:yRSJThnu0
「『組織』は……終わらない……、バタリ」
 おやびんは今際の際の台詞を放つと、ピクピクと痙攣したまま動かなくなった。
「これで、今度は私がお前に屈辱を与える番だ」
 ガンバマンはそう言うと、おやびんと戦闘員ふたりの手を縛った。
 そして、まず手始めに、おやびんのズボンとパンツを脱がす。
「おやびん、さあ起きろ」
 ぺちぺちと頬を叩き、おやびんに覚醒を促すが、強打に倒れたおやびんはそう簡単には目を醒まさない。
「しかたない、このまま掘るか」
 こうして、今度はガンバマンによる狂乱の宴が始まっった――
36 : ◆9ccBFQYMG2 [sage saga]:2025/10/03(金) 20:26:35.11 ID:yRSJThnu0
〜2時間後〜


「くっ……こんな屈辱……ッ! でも……気持ちよかった……」
 ゆっくりと肩を上下させるおやびん。その顔は興奮で上気している。
 その傍らには、ガンバマンが泰然と立っていた。
「あえて、あえて『組織』は終わらせない。屈辱を与える敵がいなくなってしまうからな」
 今や、ガンバマンは毎回屈辱を受ける側から、与える側両方へと変貌していた。
37 : ◆9ccBFQYMG2 [sage saga]:2025/10/03(金) 20:28:35.85 ID:yRSJThnu0
 快楽を感じる側から感じさせる側へ――そんな自分の変化に驚きながら、己がリバであることをゆっくりと自覚するガンバマン。
 もう彼の眼(まなこ)に迷いはない。
 間違えても、気持ちよくても、屈辱を受けても、それが自分というヒーローだ。
「この世に悪がはびこる限り、俺が正義の鉄拳で打ちのめす! ガンバマン!」
 キュイィ――――ン、ガッ!!
 精神的勝利を確証した彼は、SEを伴ってかっこいいポーズを決めた。
 頑張れ! ガンバマン! この世から悪が消え去るその日まで!
 負けるな! ガンバマン! 台東区からヤバ種雄交尾が無くなるその日まで!


 〜了〜
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2025/10/03(金) 21:02:52.20 ID:2lKYKPzH0
中学生がR板なんて見ちゃ駄目だよ
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