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【正義は曖昧なの】能力者スレ【未来さえも見えないもの】 - パー速VIP 過去ログ倉庫

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1 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/06/17(金) 00:20:55.91 ID:HOFeJx1K0
ようこそ、能力者たちの世界へ。
この世界は、数多の能力者たちが住まう世界。

無限大の大きさのこの世界。
多くのことが語られたこの世界だが、まだまだ多くの空白がある。
先人たちの戦い、絆、そして因縁。これらが絡み合い、この世界は混沌としている。
もしかすると、初めて見た貴方はとっつきづらいと思うかも知れない。
――だが、この世界の住人は新しい来訪者にことのほか優しい。
恐れず、以下に示す雑談所や、場合によってはこのスレでも質問をしてみてくれ。
すぐにスレへの溶け込み方を教えてくれるだろう。

【雑談所。質問や現状、雑談などはこちらでどうぞ】
PC【http://jbbs.livedoor.jp/internet/14029/】 

【はじめに】
このスレの元ネタはVIPで行われていた邪気眼スレです。
長く続けるに際して、いくつかのルールを設けています。以下にそれを記します。

この世界は「多様性のある世界」です。
完全無敵の能力は戦闘の楽しみがなくなり、またスレの雰囲気も壊れますので『禁止』です。 
弱点などがあると戦闘の駆け引きが楽しめます。
戦闘では自分の行動結果に対する確定的な描写を避けること。【例:○○に刀で斬り付ける。○○の首が斬れる】など。
基本の心構えですが、「自分が楽しむのと同じくらい相手が楽しむことも考える」ことが大事です。
書きこむ前にリロードを。場の状況をしっかり把握するのは生き残る秘訣です。
描写はできるだけ丁寧に。読ませる楽しみと、しっかりと状況を共有することになります。
他のキャラクターにも絡んでみると新たな世界が広がるかも。自分の世界を滔々と語ってもついてきてもらえません。
コテハン「推奨」です!
基本的に次スレは>>950が責任を持って立ててください。無理なら他の能力者に代行してもらってください。また、950を超えても次スレが立たない場合は減速を。
スレチなネタは程々に。
スレの性質上『煽り文句』や『暴言』が数多く使用されますが過剰な表現は抑えてください。
基本的に演じるキャラクターはオリキャラで。マンガ・アニメ・ゲームなどのキャラの使用は禁じます。(設定はその限りでない)

【インフレについて】
過去、特に能力に制限を設けていなかったのでインフレが起きました。
下記の事について自重してください。

国など、大規模を一瞬で破壊できるような能力を使用。
他の人に断り無しに勝手に絶対神などを名乗る。
時空を自由に操る能力、道具などを使用する。時空を消し飛ばして敵の攻撃を回避、などが該当します。
特定の物しか効かないなどの、相手にとって絶対に倒せないような防御を使う。
あくまで能力者であり、サイヤ人ではありません。【一瞬で相手の後ろに回り込む】などは、それが可能な能力かどうか自分でもう一度確認を。
全世界に影響を及ぼしたり、一国まるごとに影響が及ぶような大きなイベントは一度雑談所でみんなの意見を聞いてみてください。

 勝手に世界を氷河期などにはしないように。

能力上回避手段が思いついても、たまには空気を読んで攻撃を受けたりするのも大事。
エロ描写について

 確かに愛を確かめ合う描写は、キャラの関係のあるひとつの結末ではあります。
 なので、全面的な禁止はしていません。
 ですが、ここは不特定多数の人が閲覧する『掲示板』です。そういった行為に対して不快感も持つ人も確実に存在します
 やる前には、本当にキャラにとって必要なことなのか。自分の欲望だけで望んでいないか考えましょう。
 カップル、夫婦など生活の一部として日常的に行う場合には、一緒のベッドに入り、【禁則事項です】だけでも十分事足ります。
 あまり細部まで描写するのはお勧めしません。脳内補完という選択も存在しますよ。

前スレ【http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1450624134/
wiki  【http://www53.atwiki.jp/nrks/
【 このスレッドはHTML化(過去ログ化)されています 】

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満身創痍 @ 2024/03/28(木) 18:15:37.00 ID:YDfjckg/o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aaorz/1711617334/

【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part8 @ 2024/03/28(木) 10:54:28.17 ID:l/9ZW4Ws0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1711590867/

旅にでんちう @ 2024/03/27(水) 09:07:07.22 ID:y4bABGEzO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1711498027/

にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:26:18.81 ID:AZ8P+2+I0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/gomi/1711459578/

にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:26:02.91 ID:AZ8P+2+I0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/gomi/1711459562/

にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:25:33.60 ID:AZ8P+2+I0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/gomi/1711459533/

にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:23:40.62 ID:AZ8P+2+I0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/gomi/1711459420/

にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:22:39.08 ID:AZ8P+2+I0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/gomi/1711459358/

2 : ◆8R7odKA9zA [sage]:2016/06/18(土) 16:55:28.33 ID:fderL5o+o
前スレ>>975

【男はスマートフォンをいじる。不慣れなのがありありと見える不器用な動作】

どれ?これ?…お、直った。……あっ、これあれだ。動画になってるな…これは…

【といった次第で、彼がまともに写真をスマホに収めるには少々の時間を要した】

…オッケー、オーラィ。…サンクス。ありがとね

【ポケットにスマホを仕舞って、面倒事が済んだことに胸をなでおろす。大きなため息】

……そうだね。少なくとも、小川沿いの散歩道には見えない。そうだけど……それが?

【彼女の問にはなんともつかみどころのないファジィなイエス。彼なりにいろいろと考える】
【路地裏かどうか聞くことが真意じゃないことは何となく分かる。じゃあ、それで…?】

………迷子?


/スレ立て乙です

3 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/06/18(土) 18:49:34.58 ID:isKj5vrg0
>>2

散策路なのかな……
てっきり櫻の国の歴史保存地区みたいな所かと思ってた、この地図の形に近いのよく見てたから

【自問するような語調、相手に聞こえることを全く意識していないらしい。お陰で少女の地の部分が垣間見えている】
【自分の端末の画面を相手に見えるようにそっと向ける。先の呟きが拾えたのなら、櫻の国に関係があると推定できなくもない】

【端末画面の中心やや右上に赤い印が警告音の2小節に合わせて明滅しているのが見えるかもしれない】
【変な画面には違いないが、所詮他人事である。何しろ相手からすれば、突然端末画面を見せられたのだから……】
【その異常が余程気にならない限りは、変な子だと一蹴するに留まるのだろう】

……迷子って言われたら、確かにそうかも

【少女は顔面蒼白と言えるレベルまで顔色を悪くしてしまう。やってしまった、と今にも言いそうな憔悴が浮かぶ】
【端末に振動が伝わり、画面の地図が見え辛くなる。辛うじて文字が読める程度、少女の声も心なしか震えている】
【路地裏について嫌な思い出でもあったのだろうか。震えているうちに何か思いついたらしい。『あっ』という一声を皮切りに言葉が雪崩を打ち始める】

だ、だ……大丈夫!
いざと、なったらビルを飛び越える手段があるからそれでなんとかっ

【思考と口を動かす指令が噛み合ったのだろう。徐々に早口になっていき、唐突に途切れてしまう】
【言い切って頭の中を使い尽くしたのかぼーっと惚けてしまう。猫騙しでもしてやれば良い反応が見られそうな状態でもある】
【さて、何からツッコミを入れて良いのか、或いは何を無視してやれば良いのか。ともあれ仕切り直しを図りたいなら今が絶好の機会である】

【多分、どれに反応したとしても先程のような有様で正直に答えてくれるだろう。更に頼み事を重ねても特に問題はない】

/それでは返しておきます
/どのタイミングでも大丈夫です
/改めてよろしくお願いします

/>>1 スレ立て乙です
4 : ◆8R7odKA9zA [sage]:2016/06/19(日) 19:36:22.92 ID:q9/1L/Lro
>>3

【男は無言、路地裏は静かで、遠くに僅かに大通りの喧騒が聞こえるかもしれない】
【しかしここにあるのは。その端末から発せられる機械音だけだ。やけに、それが緊張感を醸す】

…………。

【何を言うわけでもない。頭のなかは迂回しまくって、横道にそれながら考える】
【正直、どれもコレだというものは思いつかない。タバコをもう1本吸う前に、聞いてしまうほうが楽だ】

オーケィ、オーケィ。正直に言って、俺には今、アンタのことも今の状況もさっぱり検討ついていない
だから、整理しよう。シンプルに、正確に、端的に、童話のストーリーぐらいわかりやすく、話してくれ

【全てをリセット。物語を始めよう。路地裏はいつだって、そうだ】

道案内ぐらいならできるかもしれない
5 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/06/19(日) 21:34:19.91 ID:A9O/L56S0
>>4

【男の反応は投げやり気味であるが、冷たいものではなかった。少なくとも少女が恐慌から立ち直る程度には親切な口調】
【たっぷりと発生した空白時間に男の言葉と、少女の思案が順々に流れる。顎に手を当てて考え始めると目の焦点が合い始める】

えと、それじゃあ
頑張って分かりやすくしてみます……

【ぽつぽつと返される。目を瞑って小呼吸、瞼と共に口が開く。同じ調子のまま長話を始めた】

この携帯端末は私に関係するものに反応して場所を表示させる機能があるんです。でも、関係するものは既に全て処理したのに何故か反応しちゃってるんです

【抽象的な説明である事には変わりないが、前提から話し始める。その後で自分の目的を述べるストーリーとなっているらしい】
【ここで遮った場合、最悪話が完全に止まってしまう。余裕があまり無い少女にとっては少しの変化も致命傷となる】

それが気になって、反応を追ってここに来たのですが、路地裏とは気づかなくて……路地裏にはあまり良い思い出がないから長居はしたくないです

【言われるまでもなく、分かりきった事柄であろう。普通の人ならば路地裏に近づきさえもしない筈である】
【垢や煤、破れに塗れていない少女の服装を鑑みればどこにでもいる小市民。そういう印象を持っても不思議ではない】

それで、どっちかの付き添いをお願いします

一つは路地裏の出口

もう一つは、この携帯端末が拾った得体の知れない『何か』の場所。安全が保障出来ないから無理にはしなくて良いです

【情報を総合すれば『何か』が気になって来てみれば路地裏だった。怖いので長居したくない。早く確認するか、早く逃げたい】
【ついでに『何か』は少女に関わりがあるものなのに、少女すら全容が分かっていない。厄介事なのかもしれない】
【態々『道案内をお願いします』言わない所から、少女一人で辿り着ける可能性も考えられなくもない】

【とすれば、まだ名前の知らない少女のどちらの感情に答えてやるか。或いは推理をぶつけてみるか】
【話疲れたのか一息ついて胸を撫で下ろす。後は男の答えを待つのみ。期待の眼差しが男に浴びせ掛けられている】
6 : ◆8R7odKA9zA [sage]:2016/06/19(日) 23:14:09.03 ID:q9/1L/Lro
>>5

【少女の話は煙草を吸いながら聞かなきゃいけないと思った。タールの力を借りてこびりつけなきゃ雲散霧消してしまいそうだ】
【男は何の断りもなく新しいタバコに火をつける。それぐらいは今は許して欲しい】

【それぐらい彼からすれば何の取っ掛かりもない突拍子もない話で、連続ドラマの途中から見させられている気分だ】
【けれども、少女の余裕もない所作、口調…今どういう状況で、どういう心情かはある程度、この無愛想な男にもわかる】
【必要な情報だけを抜きだそう。聞き分ける力はこの探偵という仕事には必須事項じゃないか。クライアントと喋っていると思うんだ】

…わかった。いや、正直…全部はわかっちゃいないけど、必要なことはわかった…はず

【煙草の吸殻は几帳面に携帯灰皿に入れる。その辺に捨ててアウトローを気取るより、これ以上値上げされなために程度はわきまえたい】
【彼の中ではもうこの答えは決まっている。迷ってもいなかった】

君の行きたい方に行こう。…何かが、花束だといいね。…花束が君に関係あるかどうかわからないけど

【彼なりのジョークは気の抜けたコーラのようなもの。さあ、どっちに行けばいいと問いかけた】

7 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/06/19(日) 23:47:40.12 ID:A9O/L56S0
>>6

あ、ありがとうございます
え……えと、こっちだと思います

【男の方へ指差す。その先の小径、突き当たりはT字路。印の位置はここから非常に近く、右に曲がればもう現場である】
【少女は絶えず細かく震え、周りをよく見る。逃げ道が気になるのか上を確認し、分かれ道も反対側の様子を見てから曲がる】

遅れましたが、片桐木花(このか)と言います
水の国のヴァディス郷で暮らし……

【敬語で男と距離を作ろうとする。不審からくるものではなく只の少女の限界。自分よりも大きい人を警戒する気質】
【そんな人見知りの少女の声が唐突に止まる。どうやら、先で待ち構えていたのは百花繚乱の花束ではなく、頭上華萎の禿男であったらしい。それが無造作に倒れている】
【小さい悲鳴と一緒に後退る。何も起きないと分かれば構えを解いて、一歩近づく。心配そうな声で行倒れ(仮)に呼びかける】

だ、大丈夫ですか?

【少女の呼びかけに答えない。意識が無いか起きるのも億劫なぐらいに消耗しているのか、少女の呼びかけが小さすぎるのか】
【男は伸ばしている手の方に何かを握り込んでいるらしい。握りこぶしが反対の手に比べて大きく、指の隙間から黄橙の光が漏れる】
【もし、近寄って調べてみたら、男は禿げている以外に顔に古傷があり、服装が経年劣化の限りを尽くしている。白目を剥いて泡を吹いているが呼吸はある】

【一般人の反応としては『無視する』か『救急車を呼ぶ』で二分される状況である。少女の方はもたついて役に立たなそうだ】
【その男について少女に聞いても何も有益な情報は齎されないだろう。初対面であるらしい、少なくとも少女が知らない誰かである】
8 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/06/19(日) 23:52:16.65 ID:A9O/L56S0
/すみません、追加事項があります
/行倒れに外傷はありません
9 : ◆8R7odKA9zA [sage]:2016/06/20(月) 00:10:04.31 ID:bNlqAd8Ro
>>7

俺は…あー、えっと………ロッソでいい。昔からそう呼ばれていたアダ名みたいなものでさ

【男はその長い脚を大股にゆっくりと、背中を丸めてという少しくせのある歩き方だったが、遅いといわけでもなく】
【世の中の建造物は彼にとっては少し小さすぎる故にそういうふうに癖づいてしまった。その歩き方と同じく】
【我が物顔で路地裏を、恐れることなく飄々と進んでいく。その一方で出口や、物陰に視線を移し、確認する】
【何かあった時はあっちに、何かあるならばあそこから。知っているがゆえに、男は少女よりも警戒している】

近づかな方がいい…けれど、俺からは離れないように

【彼女の様子を見れば行き倒れの男にわざわざ近づいていく様子は無さそうだが、声にしてはっきりさせるとこは重要だ】
【彼は前に出て、倒れている男に近づく。腰にさした拳銃をぬいて、右手に握っておく。必要になる可能性も、断言できないなら】
【気をつけておくべきだろう。右手は拳銃、左手を倒れている男に這わせ、生死の状態、周りの様子、そして握っているものを確認する】

探しているものは…これか?

【彼も知っているものかどうかは分からないが、少なくとも真意自体はわからない。少女にそう問いかける】
【余り長居したくない状況だ。どれぐらい、ヘヴィなのかは“はかりかねる”が】
10 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/06/20(月) 00:36:52.97 ID:hFNeo9XF0
>>9

【少女は男の言われた事に声もなくこくりと頷く。少女は行倒れを『麻薬漬け』みたいだと勝手に結論付けて近寄ろうともしない】

【行倒れの握っていたものを少女に見せようとして中のものを取り出すと、黄橙の光がフッと消えて只のコンクリの破片に戻る】
【その瞬間、少女の持っていた端末からひっきりなしに鳴っていた警告音が消える。慌てて液晶画面を見ると赤い印まで消えていた】

あれ?
反応が消えちゃった

【路地裏に元の静寂が戻る。少女の不思議そうな声が心なしか先ほどよりも響く。液晶を男に見せて赤い印が消えている事を確認させる】
【唐突であるが、探し物は終わったらしい。後は男をどうするかの話となる】

どうしよう
白目剥いちゃうぐらいに酷い目にあってそうだけど、何か知ってそう

【少女は行倒れをどうするか迷っている。このままでは結論が出ないらしい。とすれば、男の方が行倒れについて決める必要があるらしい】
【救急車を呼ぶか、叩き起こすか、元に戻すに留まるか。どちらを選んだとしても少女は男の行動を止める事は無いだろう】
【少女の真意は未だ不明である。理由は分かっているが行動基準が少々分からない。例えば、どうしてそこまでして端末情報を信じているのか】
11 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/06/24(金) 20:16:31.83 ID:XNgx4eV10
【風の国、街中――少し静かな通り】
【表通りからは少し離れた道、それでも人通りはそこそこ見受けられ、よほどしんとするわけではない、が、遠くに微か聞こえる大通りのにぎやかさが、どこかものがなしい場所】
【――そこに、やけによたよたと危うげに歩いているひとかげがひとつあった。時間はまだ早く、泥酔ものにしては少し違和感がある、が、――と】
【そのひとかげが何かを"ぼとっ"と落として、わ、わ、なんて、慌てたような声が続く。――その数秒後に、きゃああと悲鳴に変わったのは、或いは予想がついただろう】

……――も、う! こんなにたくさん、持てないの、手なんて、二つしかないのに……!

【――少し怒ったような声で腰に手を当てるのは少女が一人、その手にはそこそこのボリュームがある薔薇の花束が握られて、その少女の周りを見れば】
【周囲にはかわいらしい熊のぬいぐるみがいくつか転がっていて――その近くには袋も転がっているのだけど、中身入り。となれば、そうとう詰め込んでいたらしい】
【それをついにぶちまけてしまったらしいのだった。薔薇の花束とたくさんの熊のぬいぐるみ、囲まれて少しだけ途方に暮れて――】

【腰までの黒髪にはかわいらしい編み込みが施されていて、真っ白な肌と、左右で色の違う瞳がよく目立つ。黒色と赤色のオッドアイ、かたちは丸くて、少し釣っていて】
【赤を基調にしたヘッドドレスには黒いレースがたくさん使われている、首元にはデザインを合わせたようなチョーカーと、服装も、おんなじような色とデザインでまとめられ】
【腰元をきゅうと編み上げた赤いワンピース、袖はふわっと広がる姫袖で、ふっくらと丸く膨らむスカートの裾、たくさんのフリルとレースがあしらわれるデザインと】
【足元は踵の分厚くて高い編み上げのサンダル、――まだあどけなさをたっぷりと残す年頃の少女、だ。声は鈴の音によく似て高く澄んで、辺りによく通り】

音々ちゃんも音々ちゃんなの、お誕生日だからって、こんなにたくさん…………、…………――かわいい。

【わざとらしい大きなため息一つ、しゃがみ込んでぬいぐるみを回収、一緒に落とした袋に戻し始めた少女は、ぷりぷりと怒ったような、嬉しいような、態度で独り言を繰り返し】
【ちょっと責めるように呟いて拾い上げた手がぴたっと止まる、――数秒後にまたぼそりと呟いて。今度は、やけに嬉しいように、上機嫌な顔になって】

でも、やっぱり、一度お家に寄ってからのほうが、よかったかな……。
こんなにたくさんの子、やっぱり手が足りないみたい、――天音ちゃんにもらったお花もあるし、どうしよかな――。……う、うう、届かない……。

【ぶちまけたぬいぐるみを拾ってはぎゅっと、それでいて優しげな手で袋に詰め込む。しゃがんだ膝と身体の間に薔薇の花束を挟みこんで、あらかた拾い上げた少女は】
【けれど少し遠くに転がってしまったぬいぐるみに手を伸ばした、指先をぱたぱたとさせて。――ちょっとした横着】
【言い訳をするなら花束もあるし、左手には熊を詰め込みなおした袋が。できるだけ動きたくなかった――だなんて、】

【――歩道の、ど真ん中だった。その真ん中でたくさんの荷物を抱え込んで、ぷるぷると指先を力ませて、ぬいぐるみを確保しようとする、少女】
【少し奇妙な光景で――まして、ここからそう遠くもないUTの関係者であることを知っているひとは、きっと、少なくはないと思われるから】
12 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage]:2016/06/26(日) 18:30:59.00 ID:Iu7HFntpo
>>11
//日をまたいでいますけれどもまだ大丈夫ですか…?
13 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/06/26(日) 21:25:36.52 ID:4wcnzo5W0
>>12
/お返事遅れました、今からでよろしければ大丈夫ですよ!
14 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage]:2016/06/26(日) 22:01:28.29 ID:Iu7HFntpo
>>11
【表路地を少し離れた、人通りの少ない通り】
【通りを吹き抜けるそよそよとした風に、身に纏う黒いドレスを靡かせながら歩く一人の少女】
【そしてもう一匹、人型で黒い装甲に覆われた蟷螂も少女とともに歩いていた】

「表通りの方は賑やかね、あんな喧騒は嫌いだけど。」

【微かに聞こえる、表通りの喧騒】
【まだまだ夜深く、というには遅い時間帯、酒を飲み、飯を食う人間も多く居た】
【とそこに、まだ酔いが回る時でもないのに、よたよたと危なげに歩く少女が一人】

「あっ」

【突如少女の悲鳴が響く、その両手には大量の荷物があり】
【そんなんだからバランスも崩すはずだ、少女の両手からはぬいぐるみやら花束やらが転げ落ち】
【ぶちまけられたそれらは少女の周りを囲むように、そして一体のくまのぬいぐるみが此方へ転がって】

「…、拾ってあげて。」

【あの少女からは届かぬ位置に転げたぬいぐるみを拾うよう蟷螂に命令する】
【蟷螂は主人の命令に忠実に、そばに転げたぬいぐるみを、その鎌で斬らぬよう丁寧に持ち上げて】
【少女とともに、向こうで横着している少女の元へ向かう】

「ほら、落ちてたわよ…?」

【少女からは直接渡すこともなく、蟷螂が少女へと其れをわたす】
【此処で疑問が一つ、彼女、どこかで見覚えのあるような、ほら、ポスターとか…】
【なんて思考している少女も組織に属していた。――彼女の組織とは真逆であろう、機関に】

>>13
//ありがとうございます、よろしくお願いします
15 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/06/26(日) 22:14:36.23 ID:4wcnzo5W0
>>14

【指先がぷるぷるぷるぷると生まれたばっかりの小鹿のよう、それかまだ小さなチワワのよう、震えて、無駄な力みで顔が無駄に赤らんでいく】
【不安定なものを抱えてこれ以上動きたくない気持ちはわからないではないけれどやっぱりそれは横着、かえってひっくり返る可能性も、なくはない姿勢】
【――やっぱり届かないと力んで赤くなった頬で吐息を一つ、やっぱりだめか、と、ようやく立ち上がろうとしたところ】

――わ、ぁ、ありがとう、

【びっくりしたように眼がまん丸くなる、視線は自分にぬいぐるみを差し出す人型の蟷螂へ、――驚いたようなのは、相手が異形であったからだろう】
【それでも悲鳴をあげたりするでもなく、かろうじて空っぽである、さっきまでぷるっぷるさせてた手――右手を伸ばして、相手の差し出すそれを受け取る】

えっと、……あなたのお友達? ……ありがとう、その、たくさんもらっちゃって――。

【蟷螂に向けた顔はあどけなくひとなつこい、それに比べ、少女に向けるものは、もう少し落ち着いた――或いは少し大人びた、顔】
【けれどすぐに言い訳をすれば恥ずかしいような照れくさいような、そんな顔になる。そうしたらまた子供っぽくなって、ふにゃらと破顔して】

【――相手が機関員であることには、ある意味当然とも言えるのだけど、気付いていないようだった。それとも、多くの機関員のように、彼女が数字を身につけていれば】
【この後気付くことも十分にあるのだろうけれど――ひとまず今は、少女は、相手を、普通の変わらぬ少女かのように見ていて】

もう、こんなにたくさん、どうしようって思うの、だけど、…………えへへ。

【照れ隠しのよう両手にぬいぐるみと花束を抱きしめて示す、――なんだかとっても嬉しそうであるのは、見て分かりすぎるくらいに、見てわかる】
【「本当、どうしよ……」なんて呟く、けれどちっとも嫌がってなんてない、――少しうわっついたような声、簡単に言えば、たぶん、浮かれているというか――】
16 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage]:2016/06/26(日) 22:28:14.72 ID:Iu7HFntpo
>>15

【ぬいぐるみを渡してやると、花でも咲いたかのような満開の笑顔を見せる】
【少女も横着できて良かったのであろう…か?】

「どういたしまして。」

【蟷螂を後ろに下げる】
【やはり自分の眷属といえども、異型なのであるから偏見の目で見られることもあろう】
【まあそれは大抵杞憂に過ぎない話なのだが】

「友達、というよりは眷属、ってところね。」

【少女が召喚し、使役している存在、それが此の蟷螂】
【人並みの知能を持ち、それなりに戦え、主人たる少女を守るにはうってつけで】

「それだけの人形やら花束、もらってどうするのよ。」

【多分コケた言い訳でもしているのであろう、相手は破顔していて】
【少女にとっては気になっていたのだ、彼女が大量の人形やらをどうするのかを】

【此方も同じく、なんとなくうろ覚えでは有ったが、UTの面子とは断定できなかった】
【機関員としての証、“ナンバー”は右袖に、逆五芒星はドレスの裾に確かに刺繍されていて】
【疑問を感じつつ、今は彼女を普通の少女として扱うことにした】

「一人で持つには多すぎるでしょ、持ってあげるわ、ほら。」

【再び蟷螂に荷物を持たせる、ぬいぐるみやら花束やら】
【荷物持ちとしても都合いいらしく、まるで小間使いのようだ】
【少女もぬいぐるみを両の手に一つづつもち、取り敢えずは彼女が楽をできるか】
【多くの人形やら花束で囲まれた少女はとても嬉しそうで、気分としては浮ついていそうで――】

「ところで、行くところでもあるの?」

【少し前方に歩いてから、右向きに彼女へと振り返る】
【行くところでも、目的でもあるのだろうか。荷物を運べと言われたら運ぶけども】
【裾の逆五芒星、右袖のナンバーは見えてしまっただろうか、一般人に見られたところでどうということはない、筈だが】
【此方も油断しきっていた、彼女がUTのメンバーと知らずに】
17 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/06/26(日) 22:52:52.01 ID:4wcnzo5W0
>>16

眷属? へー、そうなんだ……なんだか格好いいね、よく分からないけど……えっと……、メイドさん、みたいな?

【眷属と言う言葉にはあまり触れたことがないのだろう、かろうじて意味は分かるようなのだが、よくは知らない素振り】
【執事とかメイドとかそんな感じなのかなと自分の中で納得している、――蟷螂さんに向ける目は至って好意的だ。或いは、友好的】
【嫌いじゃないらしい。全然大丈夫。ふふと少し楽しそうに笑って見せて】

え、えっと、あの、……どうしよう? でもね、このお花、きっと枯れないんだって、言ってたの。それに、ぬいぐるみも、家にたくさんいて……。
だからね、きっと、大丈夫なんだけど――家に一度置いて来ればよかったなぁって思ってるの、……でも、ここまで来ちゃったしって――。

【だけれど彼女はうかつだった、或いは、気を張っていなければ、こんなものなのかもしれない。五芒星もナンバーさえも見逃して、変わらずに笑っている】
【だから今この瞬間では気付かない、気付くとすればもう少し後になる――だろう、それとも、もしかしたら、相手が自ら言うほうが、先になる可能性さえあって】
【どうしようといいながらも顔は嬉しそうだ、多分どうにかなる算段はあるのだろう。こうして持ち歩く今は、めっちゃくちゃ、大変だけど】

…………わあ、ありがとう、なんだかごめんね? お手伝いさせちゃうみたいで……、――えっとね、UTに行くの、今から。
わたし、あそこでお仕事してるから……、誕生日なの、それでね、ちょっと顔出しに行くんだ。
ほんとなら、これくれたお友達とね、行けたらいいなあって思ったんだけど――ちょっとね、二人とも、都合が悪かったみたいで……。

【いくらか荷物を持ってもらえば、確かに彼女も楽になるのだろう、少し申し訳なさげだったが、困ったように笑いながらも、手伝ってもらい】
【これから向かう先を告げる、――さて、相手はどのような反応をするのだろう。モロ正義組織に向かうどころか、どうやらそこで働いてまでいるらしい】
【見た目で言えば十六かそこらにしか見えない少女ではある。まして人懐こく警戒心が薄く、相手が機関員であることにも、まだ気付いて居ないように見える】
【鈴の音によく似た声が上機嫌そうに弾んでいた、――UTにはまだ遠い。ただ、もしも彼女が連絡でも入れようなら――そう時間はかからないような、場所だった】

/申し訳ないです、一瞬よそ見してまして遅れました……!
18 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage]:2016/06/26(日) 23:11:27.48 ID:Iu7HFntpo
>>17

「メイド、というよりは雑用、だな。」

【メイドなら食事洗濯などの家事もできるのだろうが】
【蟷螂はその鎌のような腕により行動は人間に比べかなり制限される】
【だから雑用、と伝えた。蟷螂は多少拗ねているようだが、戦闘の為と初対面の奴に伝えてもあれだろう】

「枯れない花か、珍しいね。というかぬいぐるみも大量にあるのね…」

【彼女は花とかぬいぐるみだとか、自然とか可愛らしいものが好きなのだろうか】
【今まで蟲と戯れ、過ごしてきた少女からすると理解できないこともないが、分からなかった】
【ただ、少女が嬉しそうな様子を見せると、彼女にとっては楽しいんだろうと思考を断って】

「いえ、いいのよ、これくらい。そう、今からUTに…!?」

【手伝いをすることはなんということはなかった、荷物は持てる】
【ただ、彼女の発言した、UTという言葉。そして、其処に今から行くという】
【其処から後はあんまり言葉が頭に入ってこなかった、少女は悩んでいて】

「ん!?ああ、誕生日ね。顔出しでも良いんじゃないの?」

【UTに行く、ということは敵本拠地に単騎で殴りこむようなものだ】
【彼女の振る舞いを止めることも出来ず、自らを機関員だと言い張ることも出来ない】
【嗚呼、仕方がない。此処で気を失ってでもしてもらって、後でUTに運ぶとするか…】

「…フライ。来なさい」

【突如、蟷螂が姿を消す。少女の背後に居たため、彼女には分からないはず】
【代わりに現れたのは、巨大な蚊。血を吸うためだけの器官をもつそれ】
【少女に其れを差し向ける。羽音は小さく、ゆっくりと、確実に迫っていく】
【針を刺すことができれば、死なない程度に血を抜いて、気絶させる手筈だが…】

//すいません、眠気が限界でして…
//明日まで凍結していただいてよろしいでしょうか?
19 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/06/26(日) 23:13:06.50 ID:4wcnzo5W0
>>18
/大丈夫ですよ! お返ししておきますので、明日大丈夫になったらお返事いただけましたら再開できるかと思います
/ひとまずお疲れさまでした!
20 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/06/26(日) 23:26:41.10 ID:4wcnzo5W0
>>18

雑用さん? ……そっかあ、でもね、うらやましいなぁ――、わたし、今日はお休みの日だけど、お仕事の時はとっても忙しいもの。
だからね、ちょっとうらやましくなっちゃう。――お仕事頑張ってるんだね、ふふ、えらいね。

【雑用係。そんな言葉に、少女は、少しだけうらやましそうにする。それでいて本人(?)にもそんなことを言ってみたり、ノリはなんだか緩くって】
【すねている様子の蟷螂にすごいすごいと褒めるような声で話しかけている、のだった。ただ少女がそうしたいみたいに】

うん、これをくれた子の能力なの。お花がとっても好きな子でね、いろんな植物のことを、知ってるの――。
音々ちゃんは……わたしがぬいぐるみとか好きなの知ってるから。だけどちょっぴり多いみたい、……あ、ううん、とっても嬉しいの。嬉しいんだけど――、
やっぱりお家に一度寄ってからの方が、よかったかな…………。

――あなたは虫が好きなの? あ、ううん、蟷螂さん連れてるから、そうなのかなって思って……、……えーと、それだけ、なんだけど……。
……わたしもね、結構好きなの。蜂とか毛虫はちょっぴり嫌だけど……、わたしもね、お花好きだから、たくさん見るんだ。芋虫とか――。

【お花とぬいぐるみが好き。というか可愛いものは全般的に大歓迎というスタイルだ。これくらいの年頃にありがちな、一見可愛くないものもかわいい、なんて言っちゃうような】
【そんなところもちゃっかりあったりする、そう言う意味では普通の女の子とも言って間違いはないはず。けれど続く言葉は、ちょっぴり、その見た目や態度からずれるもの】
【「この前ね、お庭の草におっきな芋虫がいて」とか言ってきゃらきゃら笑う、――そんな話題を出したのは彼女が蟷螂を眷属しているから、それだけの理由】

【――蟷螂が、消える。確かにそれは少女の後ろでの出来事、まず気付かないことが多いであろうこと、けれど】
【相手は蟷螂にぬいぐるみなどの荷物を持たせていたはずで、その持ち主が消えれば、それらはどうなるのだろう】
【もしも地面に落ちる――なんてことがあれば、少女はすぐに気付くはずだ。気付き、後ろに振り返ることになる。なんせ、贈り物なのだから】
【持つのは確かに大変だから一時相手に預けたが、――怒るというよりは、その手で持つのが大変なら、やはり自分が持つよ、と、そんな目が向けられるはず】

【それでもきっといくらかは自分の荷物を持っているだろう。だから、咄嗟に取れる行動は限られる】
【もし気付かれたとしても強行するようなことがあれば、或いは――? それは、まだ、分からないけれど】
21 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage]:2016/06/27(月) 19:25:47.96 ID:dFL5brkKo
>>20

「貴女、仕事してるのね。てっきり子供かと思ってたわ。
この子も、何時も頑張ってくれてるから…」

【蟷螂の頭を軽くなでてやる】
【人には感情面で劣る思考回路を持つが、蟷螂は少女の言もあって嬉し恥ずかし、らしく】
【人間でいう赤面、というやつだろうか、蟷螂はそっぽを向いて動かない】

「へえ、能力って本当に万能ね。枯れない花を作れるのか。
…それだけの量のぬいぐるみを用意するのにも骨が折れると思うんだけど。」

「ええ。私は蟲が好き。…いや、好きっていう言葉で言い表せるものじゃないかしら。
貴女も好きなのね。虫は可愛いわよね、生態だとか、動きだとか…」

【本当に彼女の友人は優しいのだろう、というかぬいぐるみに関してはやり過ぎというほど】
【少女が蟷螂を眷属にしているからこんな話題が出たのだろう、ただ出たのなら乗らない理由がない】
【彼女の其れに対して、「ふふ、私の家の天井には結構大きな蜘蛛が居たわよ?」と返してみせる】

【ただ、少女の蟲に対する偏愛、寵愛は異常なほどだ】
【この間、アリを虐めている少年を殺した。多分新聞の記事にもなっていただろうか】
【曰く、体液を吸い尽くされ、干からびた状態で発見された、と…】

【少女はUTに行く、ということだけに目がいってしまい、蟷螂が荷物を持っていたことを忘れていた】
【故に荷物は重力に抗えぬままに地面へ落ちる。ぬいぐるみと花束が。】
【地面にそれらが落ちると、勿論ドサリと音を立てる。少女が其れを聞いて振り返って】

「…いいわ、やりなさい?」

【フライがその様子を見て戸惑いを見せる、それでも少女は命令を下して】
【振り向いた少女の右腕へ向け、口先の長い針を突き刺そうとする】
【刺された時に痛みはない、違和感があるだけ。――問題があるとすれば、血を急速に抜き取られるということか】

//お返ししておきます…
22 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/06/27(月) 21:43:29.57 ID:rqItKx5u0
>>21

ほんとはね、お花じゃないの、魔力なんだよ。だけど、わたしのはこんなにいろんな色にならないの。
全部おんなじ色……、少しつまんないなって思ったりもするの。だけど、わたしの一番好きなお花の色だから、いいなってね、思うときもたくさんあるの。

【花束の中にはたくさんの薔薇の花。赤、黄、白、桃、紫、複色、絞り、フリルに高芯咲、カップにロゼッタ――とにかく、たくさん、たくさんの薔薇の花】
【これが全部枯れないというならかなりのものだろう、「欲しいなら、少しあげるよ」とも笑ってみせる。もらったものなのだけど――彼女はそれに頓着する性質じゃないだろう】
【まして全部あげちゃうわけでなし、少しくらいあげちゃったと言っても、きっと、"彼女"は「あらそう」なんて言って、それで終わり】
【分かっているからこそそんなこともいいだして。ぬいぐるみの量に関しては――「音々ちゃんっていっつもそうなの、ちょっと、多いかな」なんて、苦笑を混ぜる】

この前ね、つのぜみって虫の写真を見せてもらったの。虫って凄いなって思うの、一所懸命かくれんぼしてて、それがとっても上手で……。
……だけど、わたしね、一番好きなのは蛇だよ。ううん、虫も好き、だけど、一番なのは、きっと蛇なの――、あなたは、蛇、好き?

【大きい蜘蛛が居たと聞けば、「家の廊下にもね、おっきな巣があるの。かわいそうだからね、放っておいてるの」だなんて、笑って返す】
【きっと本当に虫が好きなのだろう。さすがに有毒なものはちょっと苦手――なのかと思えば、続く言葉は"蛇が好き"だとか。もろ有毒生物であって】
【虫も好きだけど蛇も好きだと笑う、かわいらしい格好の割には趣味がちょっと変わっているとも言われて仕方ないだろう、彼女にしてみれば、普通なのだけど――】

【――ばさり、と、花束のラッピング紙が音を立てた。熊は布と綿だからいいとして、花のそれは、特によく目立ち】
【当然振り向いた彼女は地面に散乱する熊や花束を見る、見て、――あれ、と、少し不思議そうな顔】
【あの鎌の手では持ちづらかったのかと思ったのに居なくなっている。それで、何か――違う虫みたいなひとがいて、】
【その長い口先の針、蚊のそれはぎざぎざとした鋸状になっているらしいけれど、……たとえそうでなくたって、多分、すごいビジュアルなのは確かで】

…………え、えっと、さっきの子の――お友達、さん?

【それでもなお悲鳴をあげたりはしなかった。驚いた顔をしながらも、それでも人懐こく笑ってみせて、そう尋ねる】
【けれどその後ろから飛ぶ少女の命令、びくと華奢な肩を跳ねさせた彼女は、きっと状況をほとんど理解できないまま】
【どういうことなのかをきっと尋ねようとして振り向く、振り向いて――そこで、見付けてしまう。その袖の数字、裾の、五芒星】
【気付いてしまえばどうしてさっきまで分からなかったのかと思うほどに明らかな"証拠"。少女は一転悲しそうに眉をさげた表情に、なって、】

――わたしに、何かするの?

【それでも鈴の音の声はさっきよりもずっと冷たい。身体能力がいいのか、とん、とん、と、その場から大きく後ろに跳んで。蚊の口先からの距離をとる】
【咄嗟に吸血されることは避けたものの、きっと少女はここから逃げ出せないだろう。だって、地面に散らばったままのぬいぐるみや花は、そのままなのだから】
【だから逃げ出すこともできなければ、両手に荷物を持っているから、応戦することもできない。――困ったような、困惑したような、表情ばっかりが、そこにある】

/お返事遅れまして申し訳ないです……! やっと手すきになりましたので、再開お願いします
23 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/06/27(月) 23:53:40.34 ID:rqItKx5u0
/来るのが遅くなってしまって申し訳ないです……眠気とそろそろ時間がまずいので、今日は落ちさせていただきます
/また明日よろしくおねがいします。おつかれさまでしたー
24 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage]:2016/06/28(火) 03:32:01.88 ID:YybSDWz1o
>>22

「魔翌力、ね。確かに万能だろうけど、自然の花の一輪一輪の違いを見つけるのも良いんじゃない?」

【花束の中には色とりどりの様々な種類の薔薇の花】
【それらは魔翌力で作られたという、魔翌力は万能だし美しく枯れぬ花だ】
【だが、植物の生死、そして一輪一輪の違いを見つけるのも面白い、という意味を含めて】

「虫は弱いって言われて虐められる時もあるけど、人間より優れたところは沢山あるのよ?
蛇か、私は蛇は得意じゃないな、体表が滑ってるし、虫を食べたりもするしね。」

【蜘蛛もツノゼミも、人間より弱い種と言われるが人間より遥かに優れたところは存在する】
【彼女は有毒虫は無理なのだろうか、と思っていたら蛇が好きだと意外な返答】
【ただ、少女は蛇があまり好きではない。滑りもそうだが、大きいのは食虫だろう】

【此処で花束だ落ち、ラッピング紙がバサリと音を立てた】
【此れに気づいた彼女は振り向き、少女と、その眷属である蚊を見た】
【あまり面倒なことを好まぬ少女は、彼女が悲しそうな表情になるのを見て】

「いや、何もしないわ。…貴女、今見たわよね?
私はカノッサの人間。貴女達とは相容れない存在、って知ってると思うけど。」

【フライを一旦下げさせる。無益な戦闘は少女が嫌いとしているものだ】
【逃げ出せないし、応戦できない状況の彼女の困惑した表情を見ると】
【少女はフライを引っ込めさせて、少女の眷属は今此処には居ない状況となった】

「いきなりUTに行く、って言われて焦ってたのよ。ごめんなさい。
まあ見られたんなら文句ないわ、<<No.26>>エリヴィラよ。」

【いくら相手がUTであろうとも、撃退命令は出ていない】
【まあ組織を侵略しうる存在としては撃退する必要もあるのかもしれないが】
【兎に角、この状況をどうにかしなければいけないと、少女は地面に落ちた花束を取り上げていた】

//すみません、所用で返信出来ませんでした…
//また明日お願いします
25 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/06/28(火) 19:43:48.76 ID:lUUJd9LF0
>>24

【きっとそういうのだいすきだよ。そうやって呟く、続けて、「お花屋さんで働いてるんだもの」と】

んん……虫を食べる蛇ってね、ほんとはね、すっごく珍しいんだよ。
この辺りだといないと思うの、それっくらいにね、少ないの……、それにね、すべすべしてない蛇もね、たくさんいるよ。
キールっていってね、鱗がね、ちょっと……うーんと、あのね、なんだろ……ざりざりしててね、それで木を登ったりする蛇もね、いるんだから。

【多分彼女はちょっと幼い、自分が好きないきものを苦手と言われて、そんな、布教というよりかは、言い訳めいた――言葉を連ねだす】
【「山楝蛇って蛇とか、ざりざりなんだよ」って目をきらっきらさせて言ってくる、それはもうきらきらと輝く眼が、じっと相手を見つめて】

【――だけど、そんな平穏は、この直後に終わることになる。なった。終わってしまった】

……そうだけど、……べつに、何もしないなら、わたしだって――何もしないの。きっと、だけど……、

【ずさと跳んだ先でじっと相手を見据える、警戒が滲んでいる。けれど、敵意や殺意というものはまだ薄い――というよりは、ほとんどうかがえないほど】
【見た――けど、相手の態度次第では、何もしない。先にそう宣言してしまう。そういう性質だったし、何より――誕生日の夜に、そんなことを、したくない】
【なにより荷物が多すぎたし。このぬいぐるみや花のどれにも血しぶき一滴さえつけたくなかった。だから腕の中の一匹をぎゅうと抱きしめて、眉を顰めて】

…………白神鈴音。UTの、……酒場のほうで、お仕事してるの。

【そのまま、相手が名乗ったことに合わせるように、自らの名前も告げるだろう】
【同時に、自分はあの組織の戦闘員ではないとも言う。所属こそしているが――戦うための要員ではない】
【もし相手がUTのことをよく調べているのなら、確かに彼女は酒場でほぼ毎日お料理しているくらいしか、していなくって】
【最近と言っても一年以上になるが、最近は孤児などのために無料で食事を提供したりしている、それを提案して実行しているのが、まさにこの少女で】

【(ただ――昔昔までも機関のデータベースを漁られたら、彼女のことと思われるような情報が、いくつかあったりも、するのだけど)】

【――ひとまず敵意はない。まして戦闘員でもない。できれば戦闘を回避したがっているらしいことは、見て分かる】
【ぬいぐるみと花束と。散らばるこの夜の暗がりの中、今はまだ、静かだった】

/所要が終わりましたので再開できます、昨日は遅れてしまいすいませんでした! よろしくおねがいします
26 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/06/28(火) 23:14:11.06 ID:lUUJd9LF0
/申し訳ないです、眠気がひどいので今日もお先に落ちさせていただきます……
/この時間での再開が難しいようでしたら置きへも移行できますので、
/その場合でしたら次レスは置きのほうに返していただけたらと思います。お疲れさまでしたっ
27 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage]:2016/06/30(木) 06:37:01.58 ID:Usl3eoxFo
>>25

//すみません、お返しする時間がなかなか取れそうにないです…
//申し訳ないですが、置きへ移行していただいてよろしいでしょうか?
28 : ◆8R7odKA9zA :2016/06/30(木) 10:09:47.38 ID:f6f25goL0
>>10

【鳴り続けていた警告音になれていたせいでそれがなくなると変に静かすぎる気がした】
【何もすることなく何事かが過ぎ去ったことを喜ぶべきだろうか、それよりもそこで】
【それが終わったことに対する心残り…ないし、違和感が残る】

そもそも、それは信頼できるのか?

【男は機械にその不信感をぶつける。とはいえ…まあいいと彼はいい、話を区切る】
【端末がどういう仕組がわからない(少女も知らないだろう)以上あれこれ言うのも無意味だ】

お嬢さんから聞けることは後で聞く。とりあえずは、この場をさっさと済ませたほうがいい。
聞けることは聞いておこう……さて…と。 おい、オッサン…起きろ

【彼は拳銃の先で、男の顔を軽く叩く。自分もオッサンだろと言われかねないが】
【年寄りも若く見えるという点だけはここに記しておくとする】

俺は刑事だ。クスリだか酒だか知らないが、自分のことも説明できなきゃ、引っ張るぞ

【サッと一瞬だけ手帳らしき物を見せる。勿論これはハッタリで、全部出任せだ】
【手帳は単なる手帳だし、暗がりだから本物でもわかりはしない。服装は何にでもなれる】
【スーツだから弁護士でも医者でも俳優でも、それっぽい振る舞いでなんとかなることがある】
【今の場合、場を円滑にするためには警察の権威を借りておくのが一番という寸法だ】

/本当に遅くなってすみません。またしばらくは時間が取れると思います。
29 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/06/30(木) 17:47:01.75 ID:SQwdba5A0
>>29

「ああ……何だ……
 …………ッ!?」

【男の気付けに目を覚ました禿男。眠そうな瞳が男の姿を捉えた瞬間、縮瞳し振動を始める。目ヤニが流れず眼球が乾燥している】
【その反応は感動ではなく、錯乱。禿男は覚醒と同時に狂気に陥った】

「ああアあああァァぁぁあェアああ!
 く、くく、くくるるる、くるる、るくくく
 くりくくるなぁぁぁぁああああぎぎぁぁあ
 あああああぎ!」

【叫びながら、男と少女から一気に距離を取る。悲鳴の末尾に苦痛が混じった濁音を響かせる】
【それは錯乱した人の為せる業なのか、しかし次の瞬間それは否定される】

「ギギァァエぁぐゥウ……エ゛
 ェ゛ェェオ゛ア゛ェオ゛ェ゛ェェ゛ェ゛ェ゛
 ェ゛エ゛」

【突然えづき始めたら禿男。暫く汚らしい音を響かせた後、口から脈動する赤黒い物体を吐き、そして静かになる】
【禿男は赤黒い物体を握りしめた右手でコンクリート壁を叩く。両足が6cm程度地面に沈み足型の小礫の環状山地を築く】
【叩かれた建物に罅が入る。稲妻のように上辺と底辺まで罅が入り、拳の落着点にクレーターができている】

「ざけ゛ん゛な゛ぁ゛!
 経験値に、さ゛れ゛て゛たま゛る゛か゛
 ア゛ァ゛ァ゛ァあ゛ァァ!
 潰れ゛ろや゛アアァァ゛ああ゛アァァァァ
 ァ゛ァァ!」

【意味不明な表現が混ざった禿男の咆哮。続いて地面に罅が入る。恐らく、一番近くにいる男に向かって突進攻撃を仕掛ける算段なのだろう】
【男が周囲の様子を確認できる余裕があるならば、後方の少女が構えを取っていない事が分かる。戦闘態勢ではないらしい】
【また、男の足元には少々頑丈な縄の輪がある。どこかの誰かが自殺でもしたのだろうか……】

【そして禿男の様子。唇が紫色に変色しており、しゃくりを上げるような呼吸を絶えず繰り返している事が判明する】
【医学的知識がある人ならば、禿男がチェーンストーク呼吸をしていると判断できる。だがそれは生者がしてはいけない呼吸である】
【また、男が握っているモノが何らかの臓器である事が分かるだろう】

【男を収める方法は、現段階では沈黙させる事が得策かもしれない。方法、生死は問わない】
【手持ちの銃で仕留める、足を狙ってすっ転ばせる。或いは男が壁を殴った段階で上記の行動や、少女に協力を求める等選択肢は多い】
【このままでは建物を半壊させる威力を持った禿男の攻撃が男に襲って来るだろう……】

/いえいえ、こちらこそ反応に遅れてすみませんでした
/また宜しくお願い致します
30 : ◆mZU.GztUV. [sage]:2016/06/30(木) 18:01:59.30 ID:SQwdba5A0
/すみません、訂正です
/>>29ではなく>>28です
31 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/06/30(木) 22:11:55.53 ID:hff9T+Et0
>>27
了解しました、それで大丈夫ですよ!
32 : ◆8R7odKA9zA :2016/07/02(土) 12:49:22.03 ID:9jwkmV76o
>>29

クソ…!“駄目”だ、こいつは

【錯乱した男が離れてくれたおかげで、距離は取ることが出来た】
【この探偵に詳しい医学的知識は持ち合わせていないが、まともな相手ではないことはわかった】
【話の通じる相手ではない。とっさに銃の撃鉄を起こし、相手に銃口を向ける】
【リボルバーのシリンダが一回転して、ガチリととまる。銃身は美しいようで恐ろしい、模様が彫られている】
【撃鉄を起こすと、まるで銃に血が通うようにグリップから銃口へとその模様が赤く染まっていく】
【男の血を吸い上げて、命を宿しているようであった】

動いたら、撃つからな!クソ…一歩も近寄るんじゃねえぞ

【半身に立って、片手を目一杯伸ばすという癖の強いスタイルで銃を構え、相手を睨む】
【男は躊躇していた。なぜならば路地裏を歩く仕事だとしても殺し屋ではなかったから。撃ちたくはなかった】
【普段ならこの入り組んだ場所なら逃げきれるだろう。しかし、背中には少女がいて、それはリスクの高い行動だ】
【最もベターな効率のよい行動は、引き金を引くことだ。コレが一番、確実で手っ取り早い……】

【相手がこっちに突進してくるまでそう考えていたが、動き出した時はもう、ほとんど反射で彼は引き金を引く】
【頭を撃ち抜くことも出来たが、また彼が躊躇したために相手の腹に一発。普通の人間ならそれでも十分なはずだ】
33 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/07/02(土) 22:02:28.76 ID:gsZt9oAj0
>>32

【禿男は足に力を入れて、不安定な眼球の動きから男の姿を見据える。濁声の止んだ一拍間に全ての算段が終わる】
【男の警告は聞き届けられなかった。禿男の足裏が地面から離れるのを合図に岩の破砕音。踏み抜き毎の爆轟音が路地裏を全体を強かに叩き響かせる】
【文字通りの爆進が為される。右手に握りしめた物体から赤い液体が溢れ、地面にジュワッと悲鳴を引き起こさせる】

ア゛あ゛ア゛ア゛ぁ゛ぁ゛ァ゛ァァア゛!

【再び狂気が満ちる。禿男は男の銃に目もくれず愚直な突進を仕掛ける。リーチ範囲内での急減速し、そこから得た余剰エネルギーを『拳の殴打』に乗せるつもりらしい】
【速いが動きが終始直線的である。これでは素人が撃っても望み通りの場所(マト)に弾を押し込める事ができるだろう】
【注意すべきものの一つはタイミング。男が禿男に攻撃を当てたり避けたりすることは可能であるが、猶予時間が少な過ぎる】
【躊躇すれば『強打の機会(Fate)』を免れられなくなるだろう】

【迫る爆轟のマーチは、開始直後に終演する。血を啜って昂ぶる男の銃が高らかに吠えたのが先であった】
【弾丸は禿男の正中へと吸い込まれていった。禿男は潰れた悲鳴すら上げることなく地面にどうっと倒れ込む】
【右手の戒めから解放された物体が転がる。特徴的な管状の器官が見受けられるそれは解剖書にある『心臓』そのまんまであった】

あ、あれ?

【今更のように少女が声を漏らす。その両手には140cm程度の黒杖が握られている。反応には致命的に遅れていたが準備が出来ていたらしい】
【少女は男と禿男を往復するように見る。路地裏の人間であれば『らしい反応』をしている少女である】
【禿男の心臓は未だに拍動し、大動脈の開口部から鮮血を吐き出し続けている。その周囲に血溜まりが広がっている】

【仰向けに倒れている禿男の状況は、意識不明かつ右手周囲に血溜まりが広がっている『のみ』であった】
34 : ◆8R7odKA9zA [sage]:2016/07/05(火) 14:54:53.85 ID:jNO21c+6o
>>33

【銃口を向けたまま、探偵は一瞬だけ固まっていた。向かってきた男の殺気にやられていたのもあり】
【その一瞬の出来事を理解するには銃声の耳鳴りが治まる程度の時間が必要だった】
【拳銃は降ろさずに、一歩、一歩と倒れた男に近づいてみる。死んだかどうか確かめるためだ】
【銃口を向けたまま、靴の先で軽く横腹を蹴って、反応があるかどうかを見る。…どうやら“無力化”したようだ】

死んでる。…いや、元々生きていたのかどうかもわからない。…なんにせよ、さっさとここを立ち去るべきだ
いくらこんな場所だと言っても、銃をぶっ放したら誰がきいていてもおかしくない

【無力化した男には背を向けて、少女に話しかける。先に男は歩き出して行きそうな様子だった。それぐらい】
【ここには長居したくなく、取り繕っているが焦っているようにも見える】

一体どうなっている?もっと、詳しく話してもらわなきゃ…気持ちが悪い
ひと一人撃ち[ピーーー]だけの理由があるといいけどね。いや、アイツにしちゃ二度目かもしれないけど

【冷静さを取り戻すために彼はまた煙草に火をつける。深く溜息のように煙を吐き出した。拳銃は握ったままだ】
35 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/07/05(火) 17:01:23.14 ID:0OYxfZQr0
>>34

【禿男は蹴っ飛ばしても起きない。どころか銃創部が悪化して血のシミが広がる筈なのだが、赤い染みひとつも無い】
【少しずつ大きくなる騒めきが男の焦燥を駆り立ててしまうなら、その足元のささやかな異変に気付けなくなるかもしれない】

あれ?
靴がちょっと溶けてる……

【男の話と話の間に挿入された少女のささやか過ぎる呟き。誰の靴の事を言っているかはよく分からない】
【気付くかどうか、気づいたとしてもどうでも良い事なのだろうか】
【少女は両手の黒杖を霧に戻して、手持ち無沙汰となる】

詳しくって、何を?
それにアイツって?

【微妙にはぐらかされたであろう男の言葉にいちいち突っかかる。疑問に思ったそのまんまが声となったのだろう】
【質問した筈なのに少女の視線が煙草の煙に注がれている。路地裏を怖がる割には注意散漫に過ぎる】
【現実逃避による偽りの心の平和を破って、少女を正気に戻すには何か話掛けるのが効果的ではあるらしい】

【禿男は動かない。男も煙草を嗜む。少女は空想に耽る。先に動くのは一体誰なのであろうか?】
36 : ◆8R7odKA9zA [sage]:2016/07/06(水) 22:08:06.83 ID:fIlka5RNo
>>35

…ああっ、クソ

【靴先をビルの壁にこすり付けて、靴音を鳴らし、煙草の持っていない手で髪の毛を掻いた】
【ニコチンが冷静さを運んできてくれて、男はだいぶマシになった気分だ。状況は何も変わっちゃいないが】
【目線がこの疑問と焦燥感で溢れかえりそうなヘヴィな場所から煙とともに浮き上がってある種の俯瞰的な気分】
【それでなんとかクールな探偵を気取る気にもなれた】

オーラィ…オーラィじゃあ、1つずつ、一緒に整理していこう。ごちゃ混ぜの本棚をアルファベット順に並べ替えるように
一つづつ巻き戻そう…

【男は指を動かして、何か考えているような落ち着きのない動作をしてから、口を開く】

まず、俺は今、訳の分からない禿げた親父を撃った。そいつは話しかけたら襲ってきた、その前は多分…気絶していた
ただ奴は手に…心臓を握っていた。俺の予想じゃ、それは奴のモノだ。つまり…ハナから死んでいたかしれない…オーケィ?

【それは少女に向けていったというより、自分に確認するための言葉のようで。少女の返事が何であれ話を続ける】

もっと戻ろう。奴はお嬢さんの携帯が反応していた。奴なのか、奴の心臓なのか、奴の心臓のなんなのか…それはわからない
ただ、それが反応していたから、俺達はここに来た。君に何か関係のあるものだからだ。
しかし、君は奴を知らないし、やつの心臓に興味は……ないだろう。だが、携帯は反応した
…ここで思うのはそれは信頼できる代物なのか?今まで、君は何を見つけてきた?…そして、何故それを追う?

【不可解な、不合理な、そして非常識的なことだ。勿論、この世界が自分を含め能力や魔法が存在しどんなイレギュラも起きることは】
【身を持って知っている。しかし、どんなイレギュラにもある種の道理がある。それを辿るにはパズルのピースを揃えるしか無い】
37 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/07/07(木) 09:05:12.95 ID:W0BKA9Eg0
>>36

う、うん
心臓吐いて、死んでいますよね……アレ

【禿男が死んだかどうかの確認。男の話が続く気配を感じて少女は努めて簡素に答えようとする】
【ちらりと禿男を見ると、転がっている心臓が未だに脈動している。少女はそんな奇妙な状態に歯牙にも掛けず禿男を視界から外す】
【気になるなら聞いても良い。少女がどういう能力者かの話が聞けるかもしれないが、間違いなく脱線する話題である】

…………。

まずは、詳しい説明を省きますが
いいでしょうか?

【男の問いかけに逡巡する。顎に手を当てて、目を瞑る。言いにくそうにしている表情というよりかは、何かを考え込むような仕草】
【続けた言葉で説明をしてくれるようだ。接続詞で質問攻めも覚悟しているようなので、真摯には答えてくれるらしい】
【そして、ぽつぽつとさわりの部分から話し始める】

私は別の世界に突然飛ばされました
目的はただ一つ、元の世界に帰りたいだけです

その方法は1つ
この携帯を使って8回別の世界に飛ぶ事
実はこの世界に来るまで7回飛んでいるので、携帯の正確さについては問題ないです

そして世界を飛ぶには
世界中を旅して携帯に龍脈の形を転写する事
この携帯が反応する7つのモノを集める事
そうすれば携帯が世界を飛ぶ術を発動します

でも、今回は7つのモノを全て集め終わった筈なのに術が発動しませんでした
そして、今回8つ目の反応が現れてしまった
しかも8つ目はランダムに現れては消えるを繰り返しています

【それが少女の略歴であった。世界を飛ぶという眉唾物の認識をさも当然のように振るっている】
【そして眉唾物の方法に問題が起きたのだと言っているらしい。例え真実だとしても厄介事である事には変わり無い】

8つ目を含めた7つのモノは、本来は私の世界にある物で、ここには存在しない筈の物です。それを持ち運ぶには常人よりも世界に対して知覚過敏になった人

即ち、能力者ぐらいなのです
さっき私に渡してくれたコンクリート片が少し光って見えたのがその証拠です
そして、それは私以外が持てば精神を狂わせる物です

それで今は新しく発生した携帯の反応と、能力者の暴走事件を追って今に至ります

【詳しい説明を省いた割には長話であった。取り敢えず彼女の説明はここら辺で一区切りできるらしい】
【ふぅと一息ついて、手の甲で額を一拭いする。集中し過ぎたのか話の間は相手に反応できな様子である】
【質問を投げたり、もう一度質問したりするのはこのタイミングぐらいが妥当かもしれない。反応出来るとすればここぐらいである】
38 : ◆8R7odKA9zA [sage saga]:2016/07/08(金) 15:29:57.07 ID:P1RkwbTj0
>>37

【話は黙って聞いていた。途中、理解できないところもあるがそれは重要ではなかった】
【大事なのはその話から肝心な部分を探しだすところ。必要な部分以外は削ぎ落とすことだ】

オーラィ、君が異世界の迷子だろうと、タイムトラベラーだろうと、服屋の店員でも今は置いておこう
つまり…8つ目の…なんだ…8つ目のアーティファクトをあのハゲオヤジは持っていた。
能力者で偶然か何かで手に入れて、”のまれた”。だが…あの親父がアーティファクトなわけじゃない
何かしらの痕跡が反応したに過ぎない…そんなところか。

【タバコを携帯灰皿に滑らせて、また新しいタバコに火をつける】

まるで指輪物語だ。…それで、ザ・ワンならぬ、ザ・ラストワンは検討もつかないの?
お伽話宜しく悪の王様が、巨大な力を悪用する…なんてことはなけりゃいいんだけど

【半分冗談めかしく言うのだが、それは彼なりの冷静さをたもつ術で、実際は手に終えそうもない】
【クソ厄介事にシニカルに、斜に構えてまだマシにしようとする大人のテクニックだ】

さっきも言ったが、さっさとここを離れよう。パストトゥナウ、その次は歩きながら話そう
39 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/07/08(金) 19:37:06.46 ID:lo64HpGF0
>>38

【男に促されるまま路地裏から歩き出す少女。少女の中で禿男は「通りがかりの人が助けてくれる」と楽観視の上で放置を決め込む】
【歩き始めて少女が「あの」と前置きをしてから口を開ける。先程の男の疑問である「8つ目の正体」に答えるつもりらしい】

検討は一応ついています
携帯越しからアドバイスをくれる人たちにとって「8つ目」は非常事態扱いだから特別に解析結果を教えてくれました

8つ目は霊体で、何かを宿主にする
反応がランダムに現れるのを「宿主替え」をしていると考えることもできなくはないです

そして携帯の術式に対して逆の働きをするから元の世界に帰るには8つ目を破壊しないといけない

携帯越しの人達はモデルになった人に準えて8つ目を「アークトゥルス」と呼んでいます

【路地裏を歩き続ける。周りに注意を向けたとしても壁に蛞蝓が張り付いているのが分かる程度である】
【今のところ平和に通行できるらしい。尤もこの認識は少女に依るものであるから、男がそう思うかどうかはわからない】

ごめんね
さっきから分からない事ばっかり言っちゃって

【少女にも自覚はあったらしい。眉を下げて申し訳無さそうな表情を向ける。軽く謝った割には表情が微妙に暗い】
【湿った埃の臭いのする風が吹き込む。周囲の不快度指数を底上げする。汗を拭って男の案内に従っていく】
40 : ◆8R7odKA9zA [sage]:2016/07/18(月) 16:42:38.76 ID:kbGg7nF8o
>>39

そうか……そうだ、俺にはわからないことだらけだ。

【そう言って頭をぐしゃくしゃに掻いた。だが、それでいいとも思っている。わからなくていいのだ】
【自分の世界と相手の世界は違う。映画でいうなら配役やジャンルが同じとは限らない】
【同じ部分もあるがそれが多いほど、違いが色濃く見えてくる。…とまあ、そんな男の解釈は置いといて】
【つまり、相手のことが自分の世界にどれぐらい干渉してしまうことなのか、それだけは気になる】
【クールと言うには冷酷すぎるが、わりきって考えないと身を滅ぼしてしまうことにもなりかねない】

俺は今、悩んでいるんだ。理解に及ばない事象は無視して、大通りに出た君とは逆に歩いていけばいい
正義感は強いほうじゃないし、他人に干渉したがりでもない。その謎を明かす確証もない…
けれど、奇しくも俺は探偵で、いま目の前に謎が転がっている。

【路地裏からの出口で、目の前には街灯と窓明り、ヘッドライトは通り過ぎ、灯りを時折、遮る人々の影】
【喧騒が細い路地に吹き込んできていていた。しかし、今、男は謎の路地裏への入り口に立っている気がしてる】
41 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/07/19(火) 21:32:28.32 ID:veFCh+vm0
【街中――大通り】
【普段ならば車の走り回る道路、けれど今宵はその場所はひとでみちみちていて、どこかからは笛の音が微かにする】
【簡単に言ってしまえばお祭りのような光景、ここは櫻ではないけれど櫻の祭りを模した、大規模なイベント会場】
【どこかの広場だと本当に太鼓とか笛を演奏しているらしい、ここまで聞こえて来るのは、さすがに音をマイクで拾ってスピーカーで流したものだけど】

…………わあ、ひとがいっぱい――。

【ころんと下駄を転がす小さな足音、ぱぁとあどけない顔に喜色を浮かべて、子供みたいにきょときょとと視線を動かすのは、少女が一人】
【長い黒髪を結い上げてまとめた髪型、小さく折った折り紙の鶴を樹脂で固めたものが連なるかんざしを挿して、鶴と一緒に吊るされた鈴が小さくしゃんと鳴き】
【生成りに赤で牡丹のがらを飾った浴衣、緑みがかった落ち着いた青の帯と、足元では慣れたように下駄を履いていて、つま先にはちまと、ペディキュアが塗られて】

【左右で色の違う眼、黒色と赤色がきらきら輝いていた、じゅうと香ってくるいろいろな食べ物の匂いと、いろんなひとたちの声と】
【どこから見ようかと悩んで決めかねるように、きょろきょろと視線は右往左往、その手首にぶらさげたきんちゃく袋の紐を、ぎゅっと握りしめて】

【あちら側から見よう――と歩き出す瞬間、きっと辺りのひとの動きよりもいやにカラフルに並ぶ出店のことばっかり考えていた彼女は、】
【なんとなくできていたひとの流れ――こちらからあちらへ向かうひとたちの側から、あちらからこちらに向かってくるひとたちの側へ、ふらりと足を踏み出してしまう】
【ふらふらと歩く素振りだから、もしもぶつかっても大参事。なんてことにはならないのだろうけれど――注意散漫であるのは、何より確かで】

42 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/07/19(火) 22:23:35.08 ID:ol28tLbL0
>>40

【少女がむーっと唸って考え込む。顎に感じる指の感触を頼りに男の言葉を何度も反芻する】
【男が言った『謎』という言葉の主語は何なのか。男(じぶん)の事なのか少女(あいて)の事なのか、或いは別の何か】
【くしゃくしゃと頭を掻いて悩む男を見て、取り敢えず今は少女(あいて)の謎について情報を加えていく事に決める】
【例えば、真偽不明でも立ち塞がる謎に対するゴルディアスの結び目になりそうなモノ……ラスボスが只の雑魚に成り下がる弱点辺りか】

そう言えば携帯端末端末の人がこんな事も言ってたんです

『『もしも、アークトゥルスに打ち勝ちたいのならば事前にインドメタシン辺りを塗って挑むと良い。
奴の正体を暴いた上で完封できる、強者喰いとは実に良い夢だ。
だがステロイド系は駄目だ、史上最悪のバッドトリップを味わう事になる』』

【少女由来の声とは違う、電子的なノイズが混ざった艶のある女の声が微かに混じった。一瞬だけ『あれ?』と疑問を漏らす】

んー……多分、大丈夫です
わたしの世界由来のモノは、その人が言うには強いモノ程脆いんだそうです

【少女から笑顔が戻り始める。街の気配が近い事もあるのか、これから言う事に関係する事なのか】
【年相応の少女の気配に戻って街の領域に一歩足を踏み入れる。路地裏の陰惨さをさっさと忘れてしまおうと、軽やかな足音を響かせる】

また、機会があれば路地裏のお礼をしますね
いまは列車に遅れちゃうから、いつかまた

【手を振って男に別れの挨拶をする。引き止める事も可能であるが、別に何か起きる事はない】
【少なくとも、今回に限る範囲で少女由来のトラブルはもう解決されている。何かあるとすれば男由来かそれ以外しかないだろう】
43 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/07/23(土) 18:06:14.06 ID:OKDR6RFb0
>>41
/大分日を跨いでいますが、まだ大丈夫でしょうか?
44 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/07/23(土) 18:34:44.52 ID:DlXcIxZw0
>>43
/はい、大丈夫ですよー!ぜひお願いします!
45 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/07/23(土) 18:57:03.29 ID:DlXcIxZw0
>>43>>44
/申し訳ないです、食事がちょっと外になってしまったので、夜までお待ちいただけますでしょうか?
/その間にレスいただければ帰宅次第レスお返しできるかと思うのですが……!
46 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/07/23(土) 19:45:42.65 ID:OKDR6RFb0
>>41

【屋台から立ち昇る食欲をそそる芳香。その中をほんの微かの獣臭が流れていく】

【紺の作業着と厚底の靴。とっくりのセーターを着るその人物の、肌の露出は首から上ばかり】
【髪は肩に掛かる程度に揃えられているが、喉から顎の緩いラインやゆっくり瞬く睫毛の長さからは、仄かに女らしさを醸し出して】
【男性も含め常人の背丈を多少超えるであろう頭を、決して群衆から覗かぬよう。ポケットに手を入れ背を僅かに屈曲させ歩く】
【視線は爪先の数p前へ、足取りは寄る辺なくと云う風であったが、祭りにも季節にもそぐわぬ出で立ちはともかく一瞬の目を引く】

【とはいえ其れは目立つという程の物ではない】
【周囲の浮かべる感想の『あの子ぶつかりそうで危ないな』が『あの人夏場に暑そうだな』に変わるだけ】
【その程度の波紋でしかないのだ】

っ、

【女は、腹の辺りにとんと衝撃を感じる】
【その少し前、1秒にも満たない瞬間のうちに足は止まっており。ポケットから出した両手は、向こうから来た相手の前進を柔らかく吸収する姿勢になっていた】
【2、3退がってほぅと息を吐こうとした背を掠める様に、浴衣集団の、和服で歩き慣れしていない一団が悪態混じりに追い越していく】
【それに無言で頭を下げかけるも、顔の左半分は小さな遭遇者へ困惑の視線を投げ下している】
【右手でぽりぽりと埃臭い頬を掻く。祭りを楽しむ少女と云うのは、この女にとっては別の生物のように思えるようだった】


>>44-45
/よろしくお願いします、お食事いってらっしゃいませ
47 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/07/23(土) 21:08:05.54 ID:DlXcIxZw0
>>46

【いろんな匂いがする。甘い水あめの匂い、溶けた砂糖の色が絡まりあう匂い、あっちでは醤油が焦げていて、こちらではソースが煮立っている】
【常人よりも"少し"鼻の利く性質である彼女の意識はそれはもう右へ左へ、さっきまでは林檎に飴を絡めた食べ物まで向いていた意識が、次の瞬間には胡瓜を眺めている】
【まだ何の食べ物にも手をつけていないのにすでに十分以上楽しそうな少女は、人並みに交じる獣の匂いにも気付かなかった。ただ――目先の空腹に囚われて】

――わっ、!

【現に、他人とぶつかるルートへと踏み込んでいたことさえ、気付いていなかったようだ。ぶつかって初めて――相手の存在を認識した彼女は】
【ひどく驚いた声を出して、からんっと下駄の音を少し鳴らして、相手が下がったよりも小さく下がる、半ば反射的に、驚いた顔を数秒ばかり相手に向けて――】
【だけれどすぐに気付いたのだろう。自分がぶつかったことと、相手が衝撃を殺してくれたことと。――「わ、わ、」なんて、小さな意味のない音を連ね】

ごっ、……ご、ごめんなさい、あの、わたし、あんまり前見てなくって……、あの、怪我、とか――?

【手首に通してぶら下げたきんちゃく袋をそのままに、その指先は自らの唇に触れたり頬へ触れたり、慌てた気持ちを移すかのよう、ふらふらと動きまわり】
【最終的には胸の当たりの布地をぎゅっと握りしめて、相手を見上げ、尋ねるのだろう。自分は大丈夫だけれど相手に怪我やその類の問題はないか】
【それでも心のどこかでは微かに安心している。――何か食べる前でよかった。食べていたら、もしかしたらソースでもべったりくっつけていたかもしれない】
【――だとしてもぶつかったのはこちらで変わりない。相手が答えるまでは、不安そうな、緊張したような、そんな目で、じっと相手の答えを待っている、のだろう】

/お待たせしました、戻りましたのでロールよろしくおねがいします!
48 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/07/23(土) 21:36:42.45 ID:OKDR6RFb0
>>47

【一頻り目をやるまでもない。実際は触れたか触れないかの接触】
【向けるべき目線の高さへ曲げた膝に体重を預け、ふるふると右手で無事を表す】
【青白い肌の中でぱくぱくと動く赤いのは開いた口。しかし始めそこから流れる音は無く】

だ、だいじょうぶ。
け、けがしてない、よ?

【漸くして発した軋り声はあまり耳触りの良いものではない。まるで一日中叫んで枯らしたような喉からおっかなびっくり言葉を零す】
【姿形はまごう事なき大人ではあるのだが、口を開くと少し幼く思わせぶりなのは偏にその吃りからだろう】
【乾いて強張った唇をそっと撫でる。喋るつもりはなかったのに、相手があまりにも不安そうな眼差しを向けるものだから、つい】

【『お父さん、お母さんは?』 そんな疑問から少女の左右を指差す】
【一人で来ているなら当然そこには雑踏の中の空白しかないのだし、無言でそれが伝わるのかは甚だ怪しいが】
【光彩の褪せていた瞳が予期せぬ遭遇でやや色を帯びる。縮こまるように少し、身じろぎをした】
49 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/07/23(土) 21:53:02.19 ID:DlXcIxZw0
>>48

【相手の答えに、張り詰めていた少女の緊張が、それこそ水のかかった綿あめみたいに、じゅわっと溶けていく。端から安堵へ染まる顔をあどけなく笑ませて、】

――よかった。

【だなんて笑うのだ。鈴が意思を持って喋ったらきっとこんな声で喋るだろう、そう思わせるみたいな――鈴の音によくにた、金属質な声】
【声の奇特さでは相手とどっこいどっこいだ。それどこかこちらのほうがよほど雑踏の中でよく目立つ、高くて澄んで冴えわたる、だのに有機質な、不思議な声質】
【あどけないわりに百六十ある身長、そこに下駄の高さを足して、百六十五は届くだろうか。けれど顔のあどけなさのせいか、身体つきのあどけなさのせいか】
【それともなんだか走り出したら戻ってこないような子供っぽい気配――みたいな――のせいか、あんまり身長が高いようには見えなくて、なら、なおさら一層相手を見上げるよう】
【相手の声の涸れた様にも吃音のような喋り方にもどうとも思ってない素振りの彼女は、相手の指さす左右の意味を分かりかねたのか、笑ったままの表情で、首をかしげる】

【指さされた通りに左右と見やるがそこには誰も居ない。余談を言えば誘ったのだ、一緒に行こうと誘ったのだ。十五回くらい。十六回だったかも、しれないけど、】
【人ごみを理由に断られて、しょうがないから誘った彼が座ってたソファのひじ掛けに座っていたひとにも聞いたらボク忙しいしと断られたのだ。だから、一人で来た。半ば当てつけみたいに】

えっと……、……あ。ねえね、お姉さん、よかったらね、一緒にお店見ようよ――、ぶつかっちゃったお詫びもね、したいの、金銀財宝とかは無理だけど……。
りんご飴とか、あんず飴とか、いちご飴とか、そういうのだったら、わたし、お詫びするの――。

【結局、左右の意味は理解しなかった。曖昧に少し空っぽな笑みを浮かべたまま首をかしげていたのだけど、ついぞその意味を分かりかねた彼女は、】
【半ば話題を逸らすようながらも本心でそう提案する。一緒にお祭りを回りませんか、と、そう尋ねるのだ。だいたいの理由はお詫びをしたい、とのことだったが】
【どうやらひとなつこい性質らしい彼女の仕草を見ていれば、誰かと一緒に回りたいだなんて気持ちもきっとありそうで。というより、確実にある】

【だめ?とうかがうように相手を見上げる。――ちなみに甘味ばっかり挙げたのは彼女の嗜好のはなし、もちろん甘くないのも対象だ。――多分、いま、甘いものが食べたいだけ】
50 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/07/23(土) 22:46:05.36 ID:OKDR6RFb0
>>49

【小さいと思えた少女は顧みれば、それほど己と歳の差が無いようだった】
【背筋の伸びた立姿はむしろ上背のある女より大きく見えるほど。向日葵のような笑顔は、陰気な女と対照的】
【それを呆けて見るすがら、今度はぶつかられた方が首を捻る番だった】


【吾知れず両手を前に構えて困惑してしまう。それは拒絶というより、拒否する理由が見当たらない事の当惑だった】
【人見知りのする女にとってこういう話題の結果を決めるのは、同じ時間を共有して不快でないか】
【知り合いでも仕事仲間でもない少女へは、第一印象で決めるしかない。少女の声は聴いていて――――少しくすぐったい】

…………

【はっと思い出す】
【目的地は此処ではないが、何か理由があって歩いていた気がする】
【左手首を見る。時計が無い。時間が分からない。ううむと天を仰ぐ。場所は――――失念した】

お、おっけー、だよ

【ん、と親指と人差し指で小さく○を作る】
【引き攣った口元の片側がくにゃりと吊り上がる。笑みのようで人当たりの良さとは程遠い】
【真っ直ぐな眼差しに、照れたように爪先だけがてんてんと道を叩いていた】
51 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/07/23(土) 22:57:28.16 ID:DlXcIxZw0
>>50

【――彼女だって、最初は、誰かと来るつもりだったのだ。だのにいろいろあって結局この場には自分しかいない】
【だから半ば強引ながらこの妙な縁で知り合った相手を巻き込んでやろうという少しのいたずらごころ、じっと見つめ、そのうちに】
【このちっちゃなわがままが通ったと見れば、彼女はぱーっと嬉しそうに笑う、笑い声は手のひらでころころと鈴を転がして遊ばせたように、なって】

わたしね、鈴音って言うの、鈴の音って書いて、りんね――、お姉さん、お名前は?
……っとね、知らなかったら喋りづらいかなって思って…………えっと、嫌だったなら、いいんだけど……。

【にこにこと機嫌のよくて楽しいように笑いながら少女はそう名乗る、それから相手の名前を尋ねて――だけど、そこで少し落ち着いて】
【むりぐり聞きだしたいわけではないと付け足すのだ。けれどどちらにせよ少女の名前は判明する、櫻風の名前――そこらを歩くいきがった未成年集団とは違って、】
【浴衣や下駄も慣れているように見えるから、ほんとうに櫻の人間かもしれないと思わせるほど。――だなんて余談、少女はちょっとだけ間をあけて、相手の返事を待ち】
【相手の返事を待ってから――名乗ってくれるなら一度相手の名前を呼び返してから――、ふわりと長い髪を揺らすように、身体を返すのなら】

…………ね、行こ? お腹空いちゃったの、見たいものがあれば、それでもいいけど――。

【待ちきれないように、そう急かすのだ。それとも相手に見たいものがあれば、そちらからでいいとも言うのだから、ほんとうは】
【空腹がこらえられないというよりは、この楽しそうな空気をこらえられないのだろう。早く遊びたいと目がきらきらの光をいっぱいに湛えて、叫んでいるようで】
【もっと簡単に言えば、非日常に浮かれてきゃあきゃあはしゃいで走り回っている子供みたいなテンションなのだった。――さすがに、走りださない程度には、大人だけれど】
52 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/07/23(土) 23:27:18.10 ID:OKDR6RFb0
>>51

【にへ、と無音で笑う。笑い声は一つ、笑い合うのは二人】
【り・ん・ね、と口だけで名を呟いてみる。】
【ゆっくりもう二回繰り返してから、自分も名を訊ねられている事に気付いて、はっと我に返った】

わ、わたし、ざざ。
よろしくねり、りんね

【躊躇いがちに発したのは、海のものとも山のものともつかぬ短い単語】
【それを名と云うのか、聞き逃せば金属の軋れのような稚拙な響きである】
【声は今までより小さかったが、恐らく聞えたのだろう、女の名を呼び返し待ちきれないとばかりに踵を返すその背に】


【待って、と肩に手を伸ばし掛けて。弾かれたように意志の力で手を宙で止める】
【不躾だったかと、そろりと二の腕辺りの浴衣の袖を指二本で触れようとするだろう】
【放っておいたらそのまま、飛んでいってしまいそうでしかし、それが精一杯】
【伸ばさなかった方の手でそろそろと向こうを指差す――――匂いで分かる、甘くて軽そうな、雲みたいなのがふわふわ回っている屋台だ】

【『あれ食べたい』】
53 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/07/23(土) 23:44:21.62 ID:DlXcIxZw0
>>52

【どこに行こう、何を食べよう、それとも金魚でも掬おうか、だけどそうしたら家のペットたちに食べられてしまうかな……なんて思考回路が、めぐる】
【そういえばお腹が空いていたんだっけ、寸前の言葉も曖昧に忘れて、それよりザザは何がしたいんだろう、いくらも遅れてやっとそのことに思い当たった】
【どうしようかと尋ねようと振り向きかけた腕に微かな触感がある、ふわと振り返って、先走ったことの自覚に、少し自嘲めいて笑ってから】

……わたあめ、たべる?

【数秒ほど間をあける、その間に相手の意図をくみ取ったらしい。指さす先のわたあめの屋台からはうんと甘い香りがあふれ出していて、吸い寄せられてしまいそう】
【実際屋台には子供たちが群がっていて、はやりのキャラクターの絵が描かれた袋をひとつふたつと買って、親と一緒に人込みに紛れていく。嬉しそうに――】

…………。

【――色違いの少女の目が、少しの間、その一組みの親子を見ていた。母親と、父親と、八つほどの女の子。全員が不慣れそうに浴衣を着て、だけど、とても楽しそうな】
【少しあっけにとられたような少女の表情は親子が人ごみの向こうに見えなくなるまで、続いた。その場にぼうと立ってしまって、まるで、電池を落としたみたい】
【けれど彼らが見えなくなってしまえば、ゆるやかに彼女は仕草を取り戻す。少しだけ目を伏せるようにしてから、すぐに相手へと視線を戻して】

何の絵がいい? 

【今の一瞬なんてなかったかのように、そう尋ねるのだろう。尋ねてからぱたぱたとわたあめの屋台に小走りで向かう、それから、手招きをして】
【相手が近くまでくれば、黄色い丸っこいキャラクタの絵の袋や、女児に人気なアニメのキャラクタの袋や、いろいろと指さしてみる――どうせ、中身は変わらない】
【絵も対して意味はないのだけど。なんだか無駄に画質が悪くって、ちょっと著作権的なものを気にしてしまいそうになるけれど、――それも別段この場に意味はないもの】

わたしも買おっかな――、

【きらきらとした目が、もはや半透明になりつつあるビニールの向こう側でごうんごうんいいながら糸みたいに砂糖を吐き出す機械を見つめて】
【ザザが袋のがらさえ決めれば、ふたぁつ買うつもりなのだろう。あくまで詫びの品なのだから、ひとくちちょうだい――だなんて、お行儀が悪い】
54 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/07/24(日) 00:28:06.65 ID:h6QQMo+q0
>>53

【いざ往かん。歩き出し掛けて、根が生えたように動かないのに気付く】
【自身ではなく鈴音の方】
【曲げていた背を伸ばして、少女の肩越しに向こう側の光景は、何気ない祭りの一ページのようであり】

【だが、しかし少女も、女も、今でこそ二人ともだが此処に一人で居た】
【遠くと傍ら、家族と少女を交互に見やる眼差しは純な好奇の色である】
【『あれがいいの?』】【――――暫しの沈黙】

あ、う

【覗き込むような形だったがための間近での目線の交錯。不意をつかれて瞼をぱちぱちと瞬かせる】
【置いてけぼりにされてしょぼしょぼと、ポケットに手を戻し猫背でついて行く】
【柄こそ異なるがいずれも甘味がぱんぱんに詰まった夢袋。首を捻って、ベルトを巻いたヒーローたちのを手に取った】

【内容は知らないがこれが一番「理解りやすい」。女の性質に最も近く適している】
【そうだどうせ――中身は変わらない。指先で袋を突っついて首を傾げる】


/すみません、そろそろ落ちねばなりません
/良ければ凍結か、ご都合悪ければ〆をお願いします
/凍結であれば明日の晩には戻りますので
55 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/07/24(日) 00:30:59.11 ID:sGZ4+0Wa0
>>54
/凍結大丈夫です!この後返しておきますので、ひとまずお疲れさまでした!
/また明日の夜お願いします!
56 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/07/24(日) 20:14:11.60 ID:sGZ4+0Wa0
>>54

【両親のことを思いだしていた、――そのほとんどがもはや思いだせない穴あきの思い出だけど、それでも、微かに残ったかけらを、かろうじて思いだす】
【――ほんの少しの間のこと。だけど、第三者から見れば、その数秒か、十数秒か、数十秒か――その沈黙と凍り付いたかのような停止は、あからさまにもほどがある】
【あれがいいの?なんて言われたとしても分からない、ただ漠然と胸が締め上げられ捩じ切られるような羨望があるのに、なんにも、具体的なものなど見えないから】
【だからもう分からない、わからないから――、ひとまず分かるものを考えようとするのは、もしかしたら逃避だといわれるかもしれないけど】
【楽しい場で、砂糖の溶ける匂いが満ちるこの場所で、そんなに昔のことを思いだしたって、いいことがないことくらいなら、かろうじて学習しているものだし】

ザザはそれでいいの?
じゃあわたしね、えーっと……、えぇと……。

【ヒーローもののわたあめを手に取ったのを見て、屋台の主たるおじさんに彼女は「あれと」と言って、それから、自分のものを悩みだす】
【悩む時間はちょっとだけ長くておじさんが軽くいらついてきたのが分かるようなタイミングまで彼女は悩んで――やがて、昔からずっと続くアニメの絵柄を選び取る】
【「子供の頃見てたの」とぱーっとした笑顔でザザに言いながら、二つ分のお金を払う。――これで、名実ともに二人のもの】

いただきます――、

【そうしたら彼女は屋台から少し離れた、屋台と屋台の隙間のくぼみのような……些細なスペース、そこに収まろうとして】
【わたあめの袋を開けようとしているから、たぶん、食べようとしているのだろう。輪ゴムでぎゅっと止まった口を、爪を多分に駆使して、ようやくこじ開けて】
【何かザザからとめられるようなことがなければ、まんまるくふわふわの割りばしが突き刺さったわたあめをひとつ取り出して、もふ、と、口をつけるのだ】
【その一部をわっしと引きはがす、わずかにわたあめについた唾液がわたあめをじくじく溶かしていくのを見るでもなく見ながら、もふもふとわたあめの甘さを味わって】

【たくさんたくさんの匂いが辺りに溢れていた、その中で、甘ったるい匂いが顔のあたりにたくさんして、ちょっと、むねやけしそうで】
【だからか、――それともお腹がやっぱり空いているのか、「次は何がいい?」だなんてすでに聞いて居るのだ。――きらっきらとした、子供の眼で】

/パソコンが使えるようになりましたので、お返しします……! よろしくおねがいします!
57 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/07/24(日) 21:44:31.81 ID:h6QQMo+q0
>>56


【何気ない買い物のの遣り取り。無口な女は終始、じっと見ていた】
【店の人を置いてけぼりにするような、マイペースな少女】【だからこそ、先程の沈黙は偽りない心境の発露だったろう】
【だが出会ったばかりの女には、それら感情の正負までは分からない】
【今舌先でわたあめを溶かしている彼女はあどけなさの権化に見えるが、その内にどんな色を隠しているか】
【いまいち納得いかぬ、うわの空でゴムを引っ張る。が、なかなか取れない。不器用な手つきで引っ張る、引っ張る――――】

っぁ、ぅ。

【ごぃん、肘と鉄骨の激突により揺れる屋台】
【音の方に目を向ければ、涙目で肘を抱きすくめる女が見えるだろう】
【なにも理由なくして行動に至ったとは思えない、だが励ます誤魔化すとか高尚な考えがあってとか、そんな訳があろうか】
【破れた包みを振って、同じよう、しかし少し躊躇いがちに齧り付く……甘い】
【一口、もう一口。もたついている内にもう一人は、早々に次の獲物を探し始めるようであって】

【自分は大丈夫。そう手振りで告げるのは簡単だ。だが鈴音の眼を見てしまえばそんな事は口がもとい指が裂けても出来ない】
【ぽんぽんと肩を叩いて二つ向こうから漂う、ソースとマヨネーズの香の出元を案内するだろう】


/お待たせしました、よろしくお願いします
58 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/07/24(日) 22:06:37.90 ID:sGZ4+0Wa0
>>57

【どうやら、少女は少し浮かれていたみたいで、――というのは見ればわかるのだけど、どうにも本人は今の瞬間まで、自覚していなかったらしい】
【ならばそのきっかけが何になったのかと言えば、わたあめを開けようとして開けられなかったザザが、強かに肘を屋台の骨組みにたたきつけて、しまったからで】

――わ、わっ、えっと、だいじょうぶ? ……ご、めんね、あの、えっと……。

【頑張って開けようとしているところに気付かなかったこと、慌てたような顔をして、しきりに相手を心配する言葉をかけるのだろう】
【それでもその手にはたべさしのわたあめが握られていたりしてどうにも締まらないところはあるのだけど――しょんぼりと眉を下げる表情は、本物の色】
【わたあめを食べる相手をまだ心配そうに見ていて、だいじょうぶ……?と声をかける。大丈夫なら、いいんだけど、――と、申し訳ないような顔は少し続いて】

あれ? うん、分かったの、……だけどね、あの、――ゆっくりにしよっか。
だってまだ時間だってそんなに遅くないし……えっと、ザザが時間が大丈夫なら、だけど――、

【どうやら、うわっついていたテンションがようやく地面に降りてきたらしい。指さされた先の出店を確認しつつも、まだ、この狭間でわたあめを食べてもいいんじゃないと】
【実際に走りださないだけで心中はすでに走り回っていたことをようやく認識する、ふにと少し気の抜けたような、少し気弱そうな、そんな風に笑って見せ】

なんだかごめんね、お祭りって久しぶりだから、はしゃいじゃって――。

【今までよりもいくらも落ち着いた声音、だった。多分――もう振り回すような勢いにはならないだろう、と、なんとなく思えるくらいには、落ち着いて見え】
59 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/07/25(月) 00:11:41.36 ID:vrtDhDqL0
>>57>>58
/申し訳ないです、そろそろ時間がまずいので、お先に落ちさせていただきます……
/明日も今日くらいの時間には再開できるかと思われます。不都合あるようでしたら、置きも大丈夫ですのでっ
/ひとまずお疲れさまでした、置きのほうがよろしいようなら、置きスレのほうに返していただけたらと思いますー
60 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/07/25(月) 00:39:49.96 ID:NKNl/nbW0
>>58
/すみません、回線の調子が思わしくなく、お返しが明日になりそうです
/本当に申し訳ないです……
61 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/07/28(木) 00:06:48.76 ID:hqveEynl0
>>60
/申し訳ないです、了解しましたと書いたつもりですっかりと書き忘れていました……!
/回線の都合がいいときにお返ししていただけたらと思います。お返事遅れてしまいすいませんでした……!
62 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/08/16(火) 00:59:35.10 ID:mNuNLkF60
【街はずれ――浜辺】
【まだらに雲のかかったうす曇りで蒸した夜、波打ち際にはそろそろ海月が打ち上がりはじめて】
【誰かがつけた大型犬と靴の足跡が向こうの向こうまで続いていた、それから――】

…………。

【誰かが落としたように、ぽたり、ぽたりと、アトランダムに転がっているのは首から先だけが千切られた――というより首から下の存在しないような、薔薇の花】
【赤黄色緑くらいまではいいのに時々自然にはありえない色のものが落ちていたり、またそのすべてがぼんやりと発光していたり――普通の花、ではなくって】
【べろべろに絡まりあった海月の死体に触れないように指先で拾い上げる、そのままぼうと眺めるのは、あんまり背の高くない、子供のような背丈の人影】

【くしゃりと癖のあるくすんだ金髪、絡まるように丸まった毛先だけがわずかに濃いピンク色の色素を持っていて、瞳は勿忘草の花と同じ色味をして】
【あどけなさが少し残る顔の中でいやに鋭くてきつい印象の眼、一人でに拗ねたように口角の下がった口元と、いやに青白い不健康そうな肌色が目立って】
【紅茶で染めた色合いのロングワンピース、夏だというのに袖も裾も長いもの、布地が多いものの中身が華奢であるのはよく分かる程度に、シルエットは細く】
【背こそ低いものの年頃はよっぽど子供ではないと見れば分かる、摘みあげた奇妙な青と赤と緑の複色の薔薇をそのうち飽きたように海の中に投げ捨てれば】

久しぶりに来たのだけれど――、夏ってこんなにも涼しいのだったかしら。

【なんとなしに呟く声は低くって掠れた声、それからついと目を細めて見る先には、てんてんと誰かの落としていった花が向こう側まで続いているのが見えて】

――あっちまで行こうかしらん。することもないのだし……。

【落ちる薔薇の近くにある足跡を一つ一つと追いかけてみる、それ以外は特別なこともない静かな夜、――そこそこ治安のいい街だからか、うるさい車の音も聞こえなくて】
63 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/08/19(金) 20:37:32.42 ID:4Tq7pt8u0
>>62
/再掲しときますっ、よろしかったらー
64 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2016/09/04(日) 21:14:55.25 ID:cdxQ26+yO
>>62
【ザッ】
【そちらへいけば、膨大な魔翌力を感じるだろう】
ドクン、、、ドクン、、、
【まるで世界の終わりを震撼させるような、膨大な魔翌力だ】
なんだ娘
【タキシード姿に、帽子の男】
【おそらく娘が見ている死体も、気づいていたようだ。しかし何を思ってるいるのか
その深い瞳は、どこか悲しさを湛えている】
用がないなら、あまり出歩かない方がいい。特に夜はな
【そう言った】
ドクンドクン
【膨大な魔翌力は、おそらく男からのようだ】
65 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/09/05(月) 22:54:00.25 ID:dqW63EjA0
>>64
/すみません、昨日今日と出かけていて気づくのが遅れてしまいました!
/今日はもう遅いので開始できないのですが、明日以降でも大丈夫でしょうか?
66 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2016/09/08(木) 23:38:32.94 ID:mdkDSIPjO
>>65
/はい
67 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/09/11(日) 02:17:15.82 ID:rCcfKlho0
>>66
/大変レスが遅れてしまって申し訳ないです……。
/ちょっとリアルの方が立て込んでしまって、ロールをするのが少し難しくなってしまいました。
/何度もお待たせしてしまってこれで本当に申し訳ないのですが、またの機会にということにしていただけましたら幸いです。
/また別の機会にぜひお願いします。すみませんでした。
68 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/09/18(日) 22:16:56.10 ID:oRpn139/0
【街はずれ――郊外へと続いていく道】
【ぼろぼろに崩れたブロック塀や割れ砕けたコンクリの舗装、何年も前に能力者同士が喧嘩しただとかで、それきり直されていないエリア】
【すっかりと放置されているなら、もう街のひともほとんど近寄らないような場所。誰かがいればそこそこ目立つような、その場所】

――よい、しょっ、

【一応誰かが積んで片づけたらしいコンクリートの破片の山、溜まった土から生えた草が夜風に揺れる上、少しバランスの危うい上に、慎重に登る人影が、ひとつあって】
【そう大して高くもないてっぺんまで登りつめれば、数秒ばかしじっと地面を見下ろして、それから少し得意げに笑う。にまーっと笑って、あたりを見渡せば】

もうちょっと高いかなって思ってたけど、あんまり、そうじゃなかったかな――……。
けど、ふふ、独り占めみたいだから、いいや。

【独り言で呟く声は高く澄んでいて、どこか鈴の音に似る声質。上機嫌そうな声はいつもよりさらに気持ちワントーン高いよう、それなら夜によく目立って】
【少し得意げにしていた顔がゆっくりと落ち着いてくる、それからごく小さくため息みたいに息をつけば、】

…………もっと高いところだと、もうちょっと風があったのかな――、けど、冷たそうだし……。

【だなんて呟いて、小山の上にちょんとしゃがみ込む。ぱちくり瞬く瞳はなんとなくあたりを見渡しながら、ぼうと人影を探すようにも見え――】

【――腰まで届く黒髪と、右が赤くて左が黒い色違いの瞳。どこか爬虫類みたいにつやとした瞳は、右の赤だけが少し異質な気配を持ち】
【薄手のチュールを重ねたデザインの深い赤色のワンピース、チュールの淵にはリボンが縫い込まれて、足元はリボン飾りの付いたストラップシューズで】
【時々不安定な足場にぐらぐらしながらも慣れているみたいに瓦礫の上に居座って――、ふわと、退屈げな吐息をついた】
69 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/09/18(日) 22:41:19.89 ID:CH6sSTzo0
>>68

この道教えてくれた人、ちょっと意地悪かな
こんなのわたしみたいなのしか通れないよ……

【誰にも宛てられない独り言がひとつ。夜闇に溶けていく。発した主は遠目から青い鬼火がゆらゆらと揺れているように見える】
【杖の先の燐光が瓦礫を照らし、それよりも近い彼女の姿を照らす。背丈は低く長い金のツーサイドアップ。外套、インナー、キュロットスカート、ブーツ】
【両手で燐光の珠を載せている杖を握り、おろおろと周囲を見渡している。周囲を警戒しているようだ】

この道で合っているのかなぁ
待ち伏せの気配は無いみたいだけど

【少女は自分の足音以外の物音を聞き分けようと気を張り詰める。目を凝らしても見えない暗さが更なる緊張を呼ぶ】
【恐らく、先の独り言に登場した『親切な人』はそんな彼女の気のアンバランスさに目をつけたのらしい】
【確かに、今の状態であるならば奇襲、ドッキリ、尻子玉抜き等のどれも仕掛け人の首尾良く事を運べるに違いない】

早く街に出なくちゃ

【警戒しているにも関わらず本音が漏れて、それきり独り言が途絶える。周囲の気配も気づいてないようだ】

/まだいらっしゃれば……
70 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/09/18(日) 22:57:59.43 ID:oRpn139/0
>>69

【独り言はあんまり長続きしない、そう一人でいつまでも喋っているタイプじゃなかったらしい少女は、とある地点でふつりと黙り込み】
【それから携帯電話の液晶を眺めつつ、時折ぽつと「電話……」とか「うーん」とか呟くばかりなら、特徴的な鈴の音も静まり返って、今度はよく聞こえない】
【つまり友達でも呼びつけたら来るかなと悩んで止めてを繰り返している図なのだけど。お散歩がてら来たけど――思ったより何もなかったな、と、かすかに考えて】

……ううん、ちょっと寒いかも――、……わ、ぁ、――きゃ!」

【それより時々吹く風が予想以上に冷たかった。昼間は蒸し暑かったのにと少し怨めしげに眉をひそめて、しょうがないから場所を移動しようかなぁ、なんて、思考は一瞬】
【よいしょと立ち上がった足場は前述のとおりに積み上がった瓦礫なものだから何とも不安定で。だからある意味必然だったのかもしれないけれど――足元の一つが、ごろりと】
【転がり落ちてしまって、途端に少女の足元は不安定を通り越したものに変わる、――瞬間的に漏れた声は高い高いを通り越してなんだかもう音の割れた笛のよう】
【その直後にはぎゃらぎゃらと積んだ瓦礫の崩れるような音が続いて。――結構な音、それなら、相手の耳にもきっと入るだろう。だって、こんなに静かな夜】

――……もう、もうっ……、

【「びっくりした……」と両手で顔を覆って崩れた瓦礫の上に足を投げ出して座る少女を見れば、そのまま崩れ落ちるままに任せただけで怪我はないようなのだけど――】
【少し恥ずかしかったのか驚いたせいか赤くなった顔であたりを見渡すのは、今度はだれか通らないかなぁと緩く思う期待じゃなくって、】
【誰も来てませんようにだなんて少し切実な祈りなのだけど。むなしく遠くに青い鬼火のような揺らめきを見つけ出せば――、ただ、表情が少し険しくなる】

なんだろ、あれ――。

【一般的にひとが使いそうな明りの色じゃなかったものだから。何か変なものでも寄ってきたか、と、少女は色違いをぐっと細めて、その鬼火の正体を探ろうと――】

/30分くらいなら全然いますよ、よろしくおねがいしますー
71 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/09/18(日) 23:24:15.17 ID:CH6sSTzo0
>>70

【いつの間にかコンクリをカツカツと叩く音から土をにじり踏む音に変わる。破壊の限りを尽くされた道は連続性を失っている】
【僅かな段差、音声変化にさえ少女は背筋を凍らせて杖の先を向ける。只の道路と分かればほっと撫で下ろす】
【それらが幾度か繰り返す。続いて彼女の肝を冷やした異常は、鈴のような鋭い悲鳴と幾つかの瓦礫が転がる物音であった】

!?
な……何か……いる!

【それまでの驚き方と打って変わる。幽霊のような曖昧なものへの警戒から、現実の脅威にたいする身構えへと切り替える】
【杖は下段に構えられ、燐光は呼吸のリズムに近い感覚で変光を始める。首を動かし周囲を確認して、異常の方へ向き直る】

えと……閃光(スタン)は準備OK
まずは、確認してから

【利き脚を半歩後退らせ、舗装を踏みしめる。いわゆる突撃を行う態勢にきびきびと移行させる】
【光の先にある物音の主に目を凝らすが、逆光の所為で寧ろ不明瞭になっている。杖の先端がさらに少女の側に引き絞られ、臨戦態勢が完了する】
【ふと、どこかで聞いた事がある声だな、という疑問が降って湧き、数瞬動きを止める。交戦を避ける方法は沢山存在しているようだ】
72 : ◆mZU.GztUV. :2016/09/18(日) 23:26:30.64 ID:CH6sSTzo0
/分かりました、改めてよろしくお願いします
/今日の所はロールお疲れ様でした
/今後どうするかは、そちらの都合に合わせます
73 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/09/18(日) 23:42:38.72 ID:oRpn139/0
>>71

【ただ見ただけではかわいらしいふわふわとした洋服をまとった少女が瓦礫の山に座っている、そんな、少し変ながらも普通に見える光景は、】
【けれど分かる人間が見れば分かるほどに少女の目つきはいつもを知っていれば別人のように冷たく冴えて、じっと、暗闇の向こう側を覗き見ようとしている】
【それでもまだ相手の正体に気づかないのは、少女の眼の性質でもあって、つまり、右と左で暗闇に対する視力がちぐはぐになっているのが、原因なのだけれど――】
【暗闇の中に浮かぶ明かりだなんて苦手も苦手だった。よく見えなくって、分からない。だからと余計に張り詰める気は、とりようによっては攻撃性のようでもあり、】
【それならもしかしたら殺意ともとられかねないもの。ぺたりと座り込むようだった身体を動かして、すぐにでも足の発条を使えるような姿勢になって、】

……だあれ? ここから先なんて、人間ばっかりなの。行かない方がいいよ――、人間以外だったら、だけど。

【まだ相手の正体が何であるのかさえよく分かっていないのだろう、掛ける声はたしかにいつもの金属質だけれど、それよりもずっと冷えて、冷たい】
【そう声をかける少女の輪郭を縁取るようにわずかに魔力がにじむ、淡い桜の花の色――けれど、強い青色越しでは、ろくに見えないだろうほど、かすかな色】
【それでも魔力に付随する水の属性くらいは感じ取れるかもしれなかった、迷い込んだ山の中でふと見つける清水のような、水の気配と、ほんの少し、水の匂い】

人間だったら――えっと、わたし、何もしないの、……そっちが何もしないなら、だけど――。

【じりりと張り巡らせる緊張の中で、ただ、自分は人間だと宣言することのない声は、数秒の間の後にそう付け加える。人間であれば何もしない、あるいは、そうでなくても】
【そっちが何かしない限りは何もしないと先に宣言する、だからそうでなければ、その青色を収めてほしい、と、遠回しにお願いするよう。もしも少女の顔が見えたなら】
【冷たさはそのまま、ただ、少しだけ困ったように眉を下げた表情があったのだろうけど――きっと見えていないだろうから、なんら、意味もないもの】

【相手に届かせるように投げる声、相手の声はよく聞こえていないのだろう。だからこちらからは認識不足、ただ青い光――と、術者がいるだろうという推測しか、なくて】
74 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/09/18(日) 23:44:42.23 ID:oRpn139/0
>>72
/えっと、今日は続行が難しい感じでしょうか?
/こちらはおそらくは問題ないかと思うので、こちらで続行お願いできたらと思います
/ひとまずお疲れさまでしたー
75 : ◆mZU.GztUV. :2016/09/19(月) 00:13:09.15 ID:oUbyUCaG0
>>74
/『再開のタイミングはそちらにお任せします』という意味合いで取って頂けたらと思います
/紛らわしい書き方をしてしまってすみませんでした
/こちらも30分ぐらいが睡魔の限界でしたので、今日はお先に失礼します
/お疲れ様でしたー

/明日の18:00ぐらいに73のお返しをします
/その後の再開のタイミングはそちらにお任せします
76 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/09/19(月) 13:47:53.31 ID:UDRPKezP0
>>75
/お返事が遅れました、投下後30分くらいなら聞かなくてもということでしたが、変な書き方をしてしまいすみませんでした
/お時間把握しましたので、その頃に待機しているようにしますねー
77 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/09/19(月) 17:57:10.18 ID:oUbyUCaG0
>>73

あっ!そうなんだ
それじゃあ……

【向こうの少女の声は無事に届いたらしい。心なしか警戒色の強い呼び掛けであったが、額面通りに受け取る】
【がさがさと外套をまさぐって携帯端末を取り出し、電源をつける。杖の光と比べて柔らかいディスプレイの光が漏れ出る】
【それから杖を霧にして収めると鬼火のような青光が闇に消える。手を挙げて端末を振って挨拶を試みる】

こんばんはー
多分お久しぶりだね

【声のトーンは尻すぼみに。オーバーなアクションに釣り合わない控えめな挨拶が添えられる】
【恐らくこの少女の人見知りな本質に起因するものなのだろう。にしては前よりもほんの少し明るくなっている】
【またはお久しぶりと呼びかけた相手が、本当に知り合いなのかどうか自信が無いのだろう。故に次の言葉で証明を図る】

桜の木の時はありがとうねー

【あの魔力は少女も感じていた。桜と水を湛えた豊潤な気配、記憶通りだとすれば相手は『鈴音』なのだろうと予想する】
【ただ、自分の方については失念してしまっている。これで少女の身なりがあまりよく分からないままであった】
【そうとも知らず、一頻り手を振った後歩いて近づいていくのであった】
78 : ◆mZU.GztUV. [sage]:2016/09/19(月) 17:59:10.11 ID:oUbyUCaG0
/修正すみません
/これで少女の身なり→これでは少女の身なり

/遅れましたがよろしくお願いします
79 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/09/19(月) 18:40:44.13 ID:UDRPKezP0
>>77

【やがて目に痛いくらいの青色が霧散して消えて、代わりに現れるのは、もう少しぼやーっとした、人工的な明り】
【それなら少しだけ安堵したのかぴんと張ったようだった気配が少し緩む、文明の利器を使うなら奇妙な名状しがたい化け物とかでは、なさそうだし――】
【けれど最低限の警戒はそのまま、というか相手の姿はまだよく見えない、強い強い光よりはましとは言え、暗い中の光を苦手とする彼女にとって】
【なんかまだよく見えないけど、闇の中からあった返答は聞き覚えがある声だとは分かるのだけど――、ひとなんて毎日いやというほど話すから、すこし、思い出す時間が欲しい】

…………ああ、

【だからって店先で何十秒も悩むわけに行かない立場なら、声と顔とを何とかつなげてみるのに大した時間はかからない、せいぜいが怪しまれない程度の間でしかなく】
【それから相手が続けた言葉できちんと誰だかを区別する。ちらりと沸き上がった魔力が端からにじんで壊れていく間に、それでやっと崩れた小山から降りると、】
【一応は相手を目でも確かめておこうとするように目を細めて……、ほんの数秒】

――ごめんね、わたし、暗いところってよく見えなくって……、

【厳密には少し違うのだけど、まあいいかななんて軽いのり。よく見えないのは明りのせいだけど、この暗がりなら明りを使うのは普通だろうし、文句も言えない】
【遠くに街明りがあるし空には月があるから十分だなんて思っていたけど――なんて考えるでもなく考えて、相手の近づくしぐさをただ待って】

うん、わたし、お仕事ずうと忙しかったから……、久しぶりなの、――えっと、元気?

【相手が今度こそ視認できるあたりまで近づいてくれれば、そんな風に尋ねるのだろう。春以来だからずいぶんになる、けれど、待つ少女は何も変わらなくて】
【きっと髪や睫毛の本数さえ変わらないと思ってしまうほどに、あの日と変わらずに、そこに立っていて】

/遅くなってしまいました、よろしくお願いします
80 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/09/19(月) 19:18:13.19 ID:UDRPKezP0
>>77>>79
/すみません、食事がまだでしたので少し離席します……
81 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/09/19(月) 19:18:47.39 ID:oUbyUCaG0
>>79

うん。
今日も畑を荒らしてた魔物退治してきたよ。はぐれ巨大蜂だったよ。夏なのかな、蜂退治が多いね

【歩きながら近況報告。ごく自然に魔物退治の話をして、お互いの姿が分かる距離まで近づくと立ち止まる】
【邪気もなくにこにことした雰囲気を向ける。心なしか汗が浮いている。恐らく今回も列車代を節約してきたのだろう】
【確かに街道を用いても帰ることはできるが、現在の鉄道網なら汗水たらして態々徒歩を選ぶ理由は無い】

ようやく見えたかな
鈴音ちゃんも元気そうで良かった

【外套の袖で額の汗を拭う。恐らく記憶通りの姿、しかし頭に葉っぱが付いてしまっている。やはり気にしていない様子である】
【相手を労うように一言声をかける。迷いなく言い切った様子で、どことなく元気そうな印象まで付いてくる】
【何があったか伺い知ることができないが、いつもと比べて調子がやや異なる。明るい方への変化なら気にするようなものではなさそうである】

鈴音ちゃんは何してたの?

【相手について訊いてみる。ここが家の近くかどうか少女には分からないが、少なくとも好き好んで居るような場所ではなさそうだ】
【少女は興味半分、心配半分は心の中に抑えて相手の答えを待つことにしたようだ】
82 : ◆mZU.GztUV. [sage]:2016/09/19(月) 19:19:28.72 ID:oUbyUCaG0
>>80

/了解しました
83 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/09/19(月) 20:13:48.22 ID:UDRPKezP0
>>81

そっか――わたし、……わたしは、その、……お散歩、なの。
今日はお休みだから、あんまり行ったことのないところ、行ってみようと思って。

【相手の姿を今度こそ聴覚と視覚とで認識して記憶の中の相手と照合する、ようやくそれが確実なものになれば、声音は常と全く変わらないものになり】
【どうやら今日は休日だからとこんな場所まで来たらしい、そんなにも楽しいものがあるとは思えない場所だし、むしろ、普通であれば近寄らない場所なのだけど】

ん、ん……元気だよ、ちょっと疲れてるけど……。

【元気だとは断言できなかった。この時期は特に忙しい時期であんまり眠れなかったりするし、なんだか、慢性的にぼんやりと疲れている感じ】
【それでも大丈夫だというように笑ってみせるなら、まだ、そんなにも取り返しのつかないほどではないのだろうけど。――今日も、実は、かなり遅くまで寝ていたとか、余談】
【まだ眠たい気がするけどそうしたら今度こそ何もできない、起きたら夜でしたなんて、どうしようもないのだし】

いつも街の方に居るから、あんまりひとのいない方に来てみたの、特に何かしてたわけじゃないけど――、
こういうところ、好きなの。ひとが居ることって、あんまりないから。

【ちらりと視線があたりを撫でる。能力者がいつかに喧嘩がてらに破壊していった道も建物も、すっかりと放置されたきりの、この場所】
【困ったひとはいたはずなのにどうしてか忘れ去られてしまった。だから誰も来なくなってしまった。崩れた瓦礫には土が積もって草が生える、コンクリ片は砂のようになり】
【むき出しになった地面からは草がわさわさと生えて夜風が気持ちいいみたいに揺れている、――つまり、彼女は間違いなく、好き好んでこの場に居たのだと言って】

……それに、わたしの家のところだと、十五夜のお月様がよく見えなかったの。だから、ちょっと見えるかなって。

【ついと視線が見上げて示す、その先にはまだ丸みの目立つ月がぽっかりと浮かんでいて。「お団子はないけど……」と付け足して、小さく苦笑して】

/おまたせしましたー
84 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/09/19(月) 20:42:34.28 ID:oUbyUCaG0
>>83

確かに、偶には一人になりたくなる時もあるよね

【どうやら納得できたらしい、ついでに共感もしたらしくしんみりと同意を示して返す】
【目を閉じて風を感じてみようとする。浴びるような気持ちで夜風を待つ、遠くで梢を揺らす風を聞く】
【風が到達するよりも早く相手から『お月見』という言葉が投げかけられる。片手ではためく髪を抑えながら口を開く】

そう言えば、そんな季節になったんだね
ここだといつもよりも綺麗な月が見えそうだね

【風が通り過ぎて静けさが戻る。月見を意識して空を見上げると、歓声が出そうな程の星月夜であった】
【少々残っている欠片のような雲が月光に照らされて乳白色と暗い小豆色のコントラストを表す】
【団子が無いと聞いて、鞄を弄り始める。俗な甲高い物音を立てて取り出したのは何かのラベルが張り付いた未開封の瓶と二本のスプーンであった】

えと、蜂蜜ならあるけど、どうかな?

【恐らくは蜂退治の報酬の一環らしいが、団子ですらなかった。本気にしているようでも無いらしく、断っても問題は無い】
【何か聞こうとしたらしいけど、蜂蜜に気を取られているうちに忘れてしまったようであった】
85 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/09/19(月) 20:48:16.66 ID:oUbyUCaG0
/訂正です、すみません
/星月夜→月夜
86 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/09/19(月) 20:58:45.12 ID:UDRPKezP0
>>84

ひとりになりたいのかなぁ、

【なんだか納得していないような言葉が返る。理由もよく分かっていないらしいならば悪癖としての放浪癖みたいなものにも近い、ただ、なんだか落ち着くから】
【街中はひとばっかりが溢れていて、居心地は悪くないけど、どこか自分と世界の間にうすぺらな見えない膜があるみたい、それを破ってしまったら、殺されてしまうような】
【あるいは死んでしまうような不可視の膜、違う世界と世界を分けるもの、――「よくわからないけど」と小さく呟く。ひとりは、あんまり好きじゃないと思っているけど】

うん、お仕事だったから、あんまりよく見られなかったの。お家に帰った時もお月様はあったけど、時間だけなら、もう朝だったから。

【家の場所が場所なものだから、朝でも昼でも夜でも、見た目としては夜と何も変わりがない。おひさまが昇らない場所、だから、月は見たには見たのだけど】
【少し違う気がして結局数日も過ぎた月を見上げている。それもそれで求めていたお月見とは違うはずだけど、多分、それで問題ないと思っているのだろう】
【実際数日違うだけでお月様はきれいに輝いていたし、邪魔な雲もほとんどなかった。星もたくさん見えていて、月見をするには絶好の天気、といった感じだったし】
【しいて文句を言えば少し風が冷たくて寒いくらい。もうすっかり秋になって、たぶん、そろそろ冬にもなる。確かめるように吐いた息はまだ透明で】

――ん? ん、ん、大丈夫だよ、お月見だけど、今日はもう違うもん。ただね、お月様を見てるだけなの。
だから、だいじょうぶ――、それに、何かお礼になるようなものなんて、何も持ってないから。

【はちみつの瓶を示されて、一瞬何かと思ったらしい彼女はじっと注視してから、相手の言葉で理解と納得をしたらしい】
【少し考えるようにするも結局は大丈夫だと断ったのには、スプーンでただ舐めても、垂らしてしまいそうだし――という心配事もあったけれど、】
【なんとなく悪いような気がするというのがほとんどで。何にも持っていないと困ったように眉を下げて、それから、足元に転がる瓦礫のひとかけら】
【案外大きい枕くらいの大きさのものにひょいと乗っかって、しばらく月を見上げてから――】

街の方まで行くなら、送っていこうか? もう遅いから、ひとりだと危ないかも、なの。

【それで今日は満足した、あるいは満足するようにしたように、瓦礫でいくらも大きくなった身長から、相手を見下ろして、そう尋ねて】
87 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/09/19(月) 21:21:59.58 ID:oUbyUCaG0
>>86

あ、そうなんだ

【と一言で瓶とスプーンを長鞄に戻す。蜂蜜では代わりにならないね、という返しが来るのだと思っていた】
【どうやら今日は中秋の名月ではないらしい。文化圏は同じなのにイベントに無頓着な様子で、都会育ちのようにも思える】
【それでも夜空の価値が下がることはないらしい。もう一度珍しそうに宝石箱のような天の川に目を見張る】

それじゃあよろしくお願いします

【相手の提案に一言是と答える。確かにその方が信用のならない『親切な人』よりも心強いものであった】
【肩を揺さり長鞄を肩掛けを整える。端末の電源を落として胸ポケットにしまうともう一度黒杖を呼び出して杖先に青鬼火を呼び出す。塗装が剥がすような音を立てている】

あ、これ私の呼吸が続く限り光り続けるから色々と便利なんだよ

そう言えばこの道を教えた人が『この道の先に良い出会いがあるからマジオススメ』なんて言ってたけど、どうなんだろうね

【眉を顰めて不穏な伝聞を言って聞かせる。少女も今までの道程で信用にならないと思ったらしく、相談を持ちかけようとしている】
88 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/09/19(月) 21:35:07.98 ID:UDRPKezP0
>>87

うん、……じゃあ、どのあたりまで行くの?
わたしあんまり道は詳しくないから、変わったところには行けないけど――。

【少しだけ高い視界は少し気分がいいけれど、ふらふらとする足場はよろしくない。両手でふらふらとバランスを取りながらしゃべるさまは、ふざけた子供のようでもあって】
【けれど声ばっかりは真面目なものだからちょっとだけおかしい。どこまで行くのなんて聞くけれど、実際は、ほっとんど道など分かっていなくって】
【街までは出られるし中心部くらいまでは行けるけど、たぶん、細かいところまでは分からない。それでも、まあ、賑やかな場所まで行ければいいだろう、という思考】
【何が潜むかも分からない暗闇が終わるまでの案内だ、終えたら自分も帰ろう――とのんびり考えながら】

……そう? だけど、ちょっぴり目立ちすぎるみたい。あんまりね――なんだろうって思っちゃうよ。

【まばゆい青はやっぱり少し見づらい、月明かりの暗がりくらいなら普段は何も持たずに歩きまわるものだから、よけいにそう思ってしまう】
【基本的に思考回路が野生なのかもしれない、ただの地面で寝転がって眠ることも、なんにも思わない性質だし――とは、余談だけど】

そうなの、……けど、わたしが来た時には、へんなものなかったよ――誰も居なかったし、……、なんだろ、
それともお月様からお姫様が遊びに来てるのかな、……ふふ、こんなにきれいなお月様でも、きっとお家で眠ってるね。

【それから相手の言葉にぱちくり瞬く、なんだかそんな素敵そうなものを来る途中に見たかなと思い返すも、なんら心当たりはなかったようで】
【首をかしげながら、少しふざけたようなことを言っている。ちなみにこの間ずうと彼女は不安定な瓦礫の上でふらりふらり、揺れていて――言い終えて、やっと降りれば】

ん、じゃあ、行こっか。あんまりのんびりしてたら、それこそ変なものが来ちゃうかも。

【じゃりじゃりとした地面に似合わない靴、足音をがじゃりがじゃりと立てて数歩歩いて、それから相手へ振り向いて、誘う】
【そう遠くもない近くもない遠くには街明りが見えているから、あんまりに遠い道のりにはならないだろう。そもそも、少女が散歩で歩くくらいの、片道なのだし】
89 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/09/19(月) 22:12:37.15 ID:oUbyUCaG0
>>88

それじゃあ町の入り口までお願い

【相手の招きにつられて、うんと答えてから歩き始める。特に取り留めのない会話などをしていたのだろう】
【町の光は意外と近い。数分程度で都市光の暈(ハロー)が見え始める。杞憂でしかなかった事を内心喜ぶ】
【……はずだった。大量の瓦礫が擦れ打つ大合唱が一度、続いて都市の光暈が蝕を受けたように沈黙する。目の前に6メートルの何かが立ち塞がる】

え……絶対違うよね、コレ

【相手にも巨大物体にも訊いてみる。これが素敵な出会いかどうか、むしろそうでないよう懇願する】
【光に照らされたソレは体は白色、六本の足と三つの体節、二対の翅に、少女の願いに答えるように顎から湿った咆哮を迸らせる】
【翅でホバリングを開始し尾部にある針状の器官を向けて臨戦態勢を整え終わる。数珠状の触覚が月を反射して連星のように照り返す】

『だぁぁああああああ! おぉぉばあぁけぇええだぞぉぉ……ってアレ? 段取りが違ぇぞコラ』

【非常にハイテンションな男が乱入してきた。特殊メイクがバッチリなゾンビの出で立ちであるが首を傾げて立ち止まる】
【気配隠蔽の能力があったかどうかは知らないが、隠れる所までは成功したらしい。男は謎の五月蝿すぎる羽音を掻き分けるように耳を立てる】
【『ひぃぃいいい』『おたすけぇ!』『こんなの聞いてないじゃん!』『死んじまえ短小野郎!』『へ、へらねぇよぅ』】

『は? 何アレ、巨大ハチ? バケモンシロアリ?』

/少々遅れてしまってすみませんでした
90 : ◆mZU.GztUV. [sage]:2016/09/19(月) 22:22:40.82 ID:oUbyUCaG0
/補足ですが、街は破壊されていません
/モブをどうするかは自由です
91 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/09/19(月) 22:24:39.40 ID:UDRPKezP0
>>89

【「うん、じゃあ、入り口のほうまで」】
【それくらいなら道がよく分からなくても問題はないだろう、あくまで、この暗くてよく分からない場所での護衛だから、道案内までは専門外だし、と、】
【微妙にいいわけする。もちろん全部宿の方までとか案内できたら満点だけど、それは出来ないし――、だなんて薄らと考えて。放置して帰るよりは、いいはず】

【なんでもない、意味もあんまりないのかもしれない話を続ける、シルバーウィークだなんて言うみたいだけどあんまり関係ないとか、そういうこと】
【そうしてそのうちに街は随分と近くなる、何もないし、いないし、素敵な出会いもなかった。少し残念なような安心するような、「もうすぐかな」とつぶやいたところで】

【明らかな異音が意識の中に割り込んでくる。それも、趣味の散歩(放浪)でもこんな音がしたらその場から立ち去ると決める類の音、……視線を向けて、「嘘だ」と呟く】
【視界に入るのはなんだか埒外なもの、もはやこれ嘘じゃないかと思うくらい、ああでもすごく大きな蛇なら知っている、つまり、これ、神様か何かかな――現実逃避の思考回路】
【あどけなくて子供ぽさをたくさん残す顔が難しいような、なんとも言い難いように歪む。だから結果的にゾンビの恰好で飛び出してきた男へ、彼女からの反応は薄い、というか、】

……術者?

【ひどい勘違いで、多分からかうつもりだったんだろう彼を犯人扱い、それならば新手の強盗か何かかと疑いそうになるのは、こんな世界だから仕方のないことなのか】
【ついとひどく冷たいというか敵意をたっぷり湛えた視線で相手を睥睨した後、視線は動かさないまま木花へと知りあいかと尋ねるのだろう、知りあいじゃなかったら……】
【なかったら……まあ、仕方ないかな――なんて考えているので、もう嘘だとしても知りあいだと答えてあげるのがもしかしたら優しさなのかも、しれないけれど】

えっと……、蜂が怒ってる時は、……走って逃げ――、

【こんなに大きな蜂を見るのが初めてなものだから、なんだか、静かに混乱しているようでもあった。なんか変な男も居るし――】
【どこまでが関係者でどこからが排除すべき異物なのか。とりあえずそれを判明させない限り、動けないみたいに、まだ動きださなくて】
92 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/09/19(月) 22:46:18.11 ID:oUbyUCaG0
>>91

【ふと、知り合いのゾンビがいるかどうかみたいな事を尋ねられる。相手の視線が怜悧になっているが、構わずうーんと唸る】

『え……? 君に道を教えた人だよ! 面影あるでしょ覚えているよね!?』

あ、あー

『そうそうそうそうその調子、その調子であのゲテモノから俺っちの仲間助けてくれよう、頼む?』

……じゃあ知らない人かな

【無碍もなく断言されてしまう。その行動が相手にどういう影響を与えるかはまだ知らない】
【それよりも早く少女は巨大ハチアリに目を向ける。鬼火を消して杖を両手でしっかり構え、杖先を巨大ハチアリに向ける】
【"- metal howl"と低音の声で宣言する。一瞬の青閃光と鉄の悲鳴が杖先で劈き、無数の小針が狭方向に拡散する。だがハチアリの外骨格に傷一つ付けられない】

やっぱり駄目だね、生き残りにしてもサイズが規格外だけど、セオリー通り翅からかな

30軒瓦礫にしてもまだ恨み足りないの?

【どうやら少女はこのハチアリを退治するつもりらしい。少なくとも職務でもない魔物退治に向き合う理由は分からない】
【少女は相手に目配せをするが、二つの意味が込められる。『できる?』『逃げるなら今から時間作るよ』と】
93 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/09/19(月) 23:04:00.39 ID:UDRPKezP0
>>92

【蜂の巣に近づいてしまった時のルール、刺される前ならゆっくり逃げて、刺された後なら、走って逃げる】
【まだどっちでもないけれど、多分、こいつは自分たちを見ていて、それなら、逃げたら、刺激するだけなのかなぁと、思考して】
【来た道を戻れば街から遠くなるし街に逃げたらひとがたくさんいて、それなら――】

……逃げちゃあ駄目みたい……。

【戦うための要員ではないけれど正義組織の端っこのように名前を連ねているなら、やっぱり、ここで逃げてはいけないらしい、と、結論が出る】
【これはこれで結構以外とゆっくり考えていたものだから、気づいたころにはゾンビ(?)と木花の会話は終わっている、どうなったのかと目で尋ねるのだけど】
【なんとなく分かった。知らないひとらしい。映画で観る限りゾンビって感染するみたいだし、それなら、世の中のためにもここで殺処分しておくべき――――】

あれ、喋ってる……、ゾンビって、喋らないって思ってたのに。

【友達がゲームをやるのを見ていた、そうしたら走るゾンビとかいう言葉が聞こえてきたりしたから、走るところまでは想定してあったのだけど】
【最新のやつはしゃべるのかもしれない、……だなんて、そんな話じゃないのだけど。不思議そうな目を少しするも、それより、大きな蜂の方が、危ないようで】
【「後でいいかな……」なんてごく小さな呟き声、ひとまず思考の中からゾンビ(?)を追いやって】

うう、ん、……木花ちゃんって、いっつも何かに追いかけられてるみたいだね――、

【大した意味もないような呟き、改めて蜂を見上げればうんと大きくて、少し気が引ける。恰好いいのは分かるけど……一口で美味しくいただかれてしまいそうだから】
【きらと黒髪の先から魔力の欠片が剥がれ落ちるように舞いだす、少し冷たい夜の風をもっと冷たくするように水の気配が溢れだして、渦巻いて】

…………だけど、放っておいて誰かが刺されちゃったら、困るから。

【それでもできれば殺してしまいたくないような色が声の端っこにある、けれど、ぢりと確かに量を増やす魔力片は、攻撃性を宿していて】
94 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/09/19(月) 23:29:55.95 ID:oUbyUCaG0
>>93

確かに……色々な恨み買っちゃってるのかな?
『影の化物』は別として、魔物は人の恨みとかを核にするからね

1か月前の蜂も、村人さんは一回だけ魔物から恨み節を聞いた事が出来たんだって

【『影の化物』とは桜の木の出来事よりも前にあった自分の首を投げつけて攻撃した黒い人型の事である】
【そいつらに意思は無く、代わりに今まで狩ってきた魔物達から恨みを買ったのだろうと自嘲気味に言ってみる】

曰く『お前らだけ安全』『恨めしい』と二言吐き捨てただけだったんだって……あれ? 安全、家に恨み、月夜……

【突如考えこみ始める。おねえちゃんが等と言うと、何かに納得したかのように思いつく】
【少女は相手に『ある作戦』を伝えた後、鞄から鍵束を取り出してそれらを一つずつ輪から外し、相手に手渡す】
【拒否しようが押し付けられる。そして二人に半分(6コ)ずつ鍵が行き渡る。それを使うと良いらしい】

時間は3分だよ、それまでは迎撃一辺倒で。大きい方に攻撃するのは駄目だから気をつけてね

【杖を構え直し、いつの間にか雲霞の如き小シロアリを侍らせたハチアリの視線に向き合う。そして小シロアリが殺到を始めた】

/作戦内容についてはクイズになります。鍵をどう使うかはお任せします
95 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/09/19(月) 23:56:29.47 ID:UDRPKezP0
>>94

……え、え? え。

【――まず、基本的に。この少女は考えるよりさきに動くのを得意とするケがあった。考えるのは苦手で、それなら、やったあとに考える方が、まだいい気がするくらい】
【そもそもすっかりと意識は蜂に向いていて、しかもできればあのゾンビっぽいひとを助けて置いた方がいいっぽくて、なんていろいろ考えていたものだから】
【いきなり手渡されるいくつかの鍵や作戦に対する理解が遅れる、というより、多分、ほとんど分かっていない。というよりも、もう、少しも分かってない気配さえするほどで】

【これ何、だなんて、聞き返そうと振り向いた眼前を小さな蜂が通り過ぎていく。しぐさはそこで中断させられて、よく分からない鍵をひとまずポケットに無理やり押し込めば、】
【一つが地面に零れ落ちるけれど気づく暇もなくて、ポケットから腕を戻す軌跡に桜色が線を引いて、次の瞬きの間には、そこには一振りの刀が呼び出されて、握られている】

……――もう、!

【だなんて、たぶん、目の前に飛び向かってきた蜂は、認識する間もない。次の瞬間には針を向けて飛んできた個体は縦に真っ二つになって、まだ動く心臓を晒し】
【その心臓ごと身体をかわいらしいデザインの靴に踏みつぶされて、また別の小さな個体が叩き切られている。とりあえず考えるのをやめる、思考の裏で思い出すのは、】
【秋ごろのスズメバチとかでなければ、蜂は刺激しなければ大丈夫だなんて友達の言葉、……嘘つきとまでは言わないけれど、八つ当たりめいた声を出して】

【ただ――無数にいる生き物相手に、刀の一振りがどれくらい持つものなのかは、分からないけれど】
【そして多分数え間違いでも起こさない限りは、三分間、無傷が保っておけるとも、思えなくって】
96 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/09/20(火) 00:15:28.84 ID:n5mjSdiQ0
>>95

【飛翔するシロアリの群れは正しく霧と化す。二人の視界からハチアリの姿を靄の海に沈めながら包囲戦を始める】
【鈴音の一刀はシロアリの正中を捉え、シロアリを屍の絨毯に加えた。その後も襲い来る全方位のシロアリ達を迎撃できるだろう】
【木花も能力を使って切り裂いていく。縦振りから上下に分断され、袈裟斬りより鋭く突出した斬撃がシロアリの身体を貫く】

【シロアリ達は鈴音の落とした鍵周辺にはあまり近づきたくないらしく、そこだけ台風の目のように上方の空が見えている】
【それを確認できる時間は限られる。いずれシロアリの霧が晴らされる。勢いは上々であった】
【霧が晴れると木花の方に大きな影が垂れ込める。巨大ハチアリが縦回転して尾部を木花に叩きつける体勢に入る】

しまっ……!?

【木花は杖を握りしめて相手の攻撃に対応する事が出来ない。バックステップは可能であるが回避に至らず衝撃波で後方に吹っ飛ばされるだけになる】
【しかし、数瞬ぐらいは何とかなりそうである。攻撃すれば相手は何をするかは分からない。でもシングルアクションの『抵抗』は可能である】
【月は煌々と光り続ける。都市の光暈を反射した小豆色の雲も星空を侵食し続けていた】
97 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/09/20(火) 00:45:19.01 ID:V9q9vBE40
>>96

【虫を嫌いなひとが見たら悲鳴をあげそうな光景、虫は平気な方だけど、それでも、一瞬うわぁと思ってしまうのは、多分仕方のないことで】
【小さくうめき声をあげてほんのわずかだけれど後ずさる、腕の動きで横薙ぎに斬り捨てる――その踵が、何かを踏みつけるのと同じタイミング、】
【自分の周り、ほんのわずかなエリアにシロアリがまったくいないことに気づいて、反射的に踏みつけた何かを確かめれば、いつの間にか落としていた鍵があって】

――――!

【だから、きっと、これも反射的な行動だったのだろう。地面の鍵を器用に蹴り上げるしぐさ、顔よりも頭よりも上まで上手に蹴り上げて――手にした刀、を振り被り】
【まるで野球の選手みたい、かん! と甲高い音一つで、打ち出すのだ。狙う先はすっかりと見えなくなってしまった大きな蜂、その動向を探りたいように】
【けれどあてずっぽうだからか近くを突き抜けたとしても、当たることはないだろう。そうだとしても挑発行為ではあるのだが、それよりも相手の姿が見えない方が恐ろしい】
【こいつらはこの鍵が嫌いなのかもしれない、ただその一瞬の推測だけの行為だから、もしかしたらまるきり意味がないかもしれない。そうだとしても、】

【次の瞬間にはまた数えてない虫たちを斬り捨てる、それとも攻撃してこないのなら放置した方がいいのかも、だなんて、少し思うくらい】
【全部が殺す気でいるならばこうも無傷であるのはおかしい、――と、思い始めたころだった。ざあと急にいなくなるしろありたちへ、対処は遅れてしまう】

――、わ!?

【それなら続く動作も遅くなる。振り抜いた腕を自由にする前に、蜂の挙動から気づいて振り向けば木花は吹き飛ばされていて、視線さえも追いつかなくって】

【蜂に背中を向けるのは悪手、それなら向けないまま、じっと見たまま、今は木花に声をかけることも、きっとない】
【相手の様子をうかがおうとするのだろう、三分を数えられていないなら、ひとまず、大きいやつに手を出すなといわれたことだけ、律儀に守っている】
98 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/09/20(火) 01:05:48.46 ID:n5mjSdiQ0
>>97

がっ……!?

【瓦礫の壁に背中を強かに打って、肺から全ての空気が吐き出される。木花が蹌踉めく間に展開は次に移ってしまう】
【鍵周辺で体力温存、加えてハチアリに背を向けない。それは道理に適った方法であった。ハチアリに通じるかはさておいて】
【ハチアリは尾部叩きつけから一回転+四半回転を成功させる。地面に一文字の溝を形成し、鈴音に突進する体制が整う】

【チャージ、後にじゅうじゅわと酸の弾ける音を蓄えた顎で両断。ハチアリは一瞬で事を為そうとした】
【……が、途中で止まる。鈴音には身体を引き裂かれる苦痛では無く、迫害を受けた子供のように石のぶつけられる衝撃に遭う。当たる位置は調整されているらしく意識は奪われずに済む】
【ハチアリはアホ面のように口を開けながら触覚を忙しなく動かす。まるで鈴音の気配をロストしたかのように】

『クソが……何でこんな事を!』

【男が何かを毒づいている。今まで気配の薄かった男がはっきりと存在感を表す。鈴音にぶつけられたトルコ石は男の『気配抹消能力』であったらしい】
【そして、そのツケが回る。触覚で男の姿を探知した蜂が飛び上がり急降下を仕掛けようとしている】
【黒い針がぎらりと光る。6mサイズに拡大された体でそれは針とは呼ばれず、さながらパイルバンカーのようであった】

『マジかよ……ツキが回りやがったか』

【男は一度だけため息をつく。ゾンビメイクで表情が分からず、誰からも男が何を考えているか分からずにいた】
【ただ、ポケットをまさぐるだけ。たった一瞬でタバコでも吸うつもりなどという神業を披露してくれるのだろうか】
99 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/09/20(火) 01:26:11.14 ID:V9q9vBE40
>>98

【やはり大きな蜂めいた化け物がこちらに向いているというのは気分が悪い、あんまりこういった手合いと相対したことがないから、よけいにそう思う】
【ヒトであるかは置いておいて人間のかたちをしている相手であれば、いくらも慣れているのだけど……、思考は一瞬、こちらへ向かう大きさを、どう捌くべきか、分からなくても】
【それでも何もしなければ確実に死ぬと分かっているのなら、何かをするのがきっとよくて、だから、ぎゅっと刀を握りしめる。――その刀身から、つう、と、水が滴りだす】
【滴った水滴で地面に落ちたしろありの残骸が泡立つ、大きな蜂が湛えた酸によく似たもの、けれど、もっと美しいもの】

――、っ!?

【突進してくる体躯に動こうとした瞬間、ごつり、と、何か硬いものが当たる感覚がある。はちありの攻撃ではないもの、ほかに何かいるのかと、さあとわずかに血の気が引く】
【けれど直後に目の前に迫る大きな身体はまるで自分を見失ったように慌てだして、遅れて、どうやら目の前の自分を見失ったようだ、と、気づけば、】
【急に増えた気配、――違っていて、本当は知っていたはずだのに、とうに逃げたものと思っていた気配の出現に、わずかに狼狽える仕草で、得た時間で視線を巡らせ】

――、――構えて! ぎゅって!

【とかく襲われそうになっている男へ声を投げる、高い声は音割れのようで聞き取りづらいが、とにかく――不完全であいまいな言葉で、何かを伝えようとして】
【返事は要らないしその時間も多分ない。じゃぎゃりと耳障りな音は、叫んで伝えた言葉の終わり、手の刀を思い切り地面に突き立てたのが理由で、原因で】
【まるで石ごと切り裂くようにした刀が、地面に桜色の波紋のようなものを描いて、ふっと消えた。――と、ここから先は彼が魔力を察知できたら、なのだけど――】
【少女の動作に合わせて地面に大量に撃ち込まれた魔力があった。それは波紋を描いて次の刹那には、彼の足元にぐっと、そのすべてがかき集められて】

【――どん、と、彼の足元から、桜色が沸き上がる。それが蛇の頭だと気づけるのはある程度離れた位置から見る人間くらい、特に彼からしたら、白い何かでしかない】
【みっちりと規則的に生えた鱗とかも、きっと多分、彼からしたらどうでもいい。とにかく彼にとって大事であろうことは】
【足元から魔力で作られた大きな蛇が飛び出してきて――その身体を強制的に弾き飛ばすことで、彼を蜂の攻撃範囲から逃がそうとしている、ということだろうか】

【瞬間的に多くの魔力を使ったせいで術者である少女は一瞬めまいか貧血に襲われたようにふらついて動けない、音さえも遠のいて、耳鳴りと暗転した視界が、世界のすべてになる】
【ほんの数秒のことだ。けれど数秒確実に無防備になる少女は、ゾンビ氏がどうなったのかも、木花がどうしているのかも分からなくて】
【もしかしたら自分がどうなるのかも分からないまま、突っ立っている――そんな状況に、なるのだろう】
100 : ◆mZU.GztUV. :2016/09/20(火) 01:45:38.62 ID:n5mjSdiQ0
>>99

『う……うぉぉおおお!? 俺の見せ場がぁああああああ!』

【何とも情けない悲鳴を上げながら魔翌力の洪水に飲まれていく男であった。手をバタバタを振っていく内に何か光るものがいくつか飛んでいく】
【男については当面問題は無くなっただろう。ハチアリも魔翌力に警戒して上昇にて回避を図る】
【ようやく意識がはっきりしてきた木花の目の前に一つそれが落ちてくる。内心で男を見下げ果てながらそれを拾い上げ空を見、ハチアリに向かって宣言する】

これでチェックメイト……です!

【白い雷のような亀裂の入る杖で地面を付き、数分の終焉を宣言すると共に杖を使って立ち上がる】
【そして周囲が識字不能なレベルの夜闇に覆われる。遠雷が遠くで歓喜の雄叫びを上げ、むっとする雨の匂いに覆われる】
【曰く、雲が都市光を反射するには相当程度厚みが無ければならない。でなければ雲は濃紺に染まるはずである】
【月に侍る雲の正体は遠く西の地平線から湧き上がった積乱雲群……ゲリラ豪雨であった。数分とはそういう博打であった】

【では効果の程は……ハチアリの飛翔を奪い消耗を齎す。雲が月光を完全に覆った事でハチアリの力の源を完全に絶った】
【今ならば普通の能力者の全力攻撃でハチアリの『衣』を剥がすことができるだろう。このハチアリの正体は狼男であったらしい】

コレの時間稼ぎは必要なのかな?

【木花は掌の鍵を見せて、無邪気に鈴音に聞いてみる。答えは恐らく決している】
101 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/09/20(火) 01:51:11.02 ID:V9q9vBE40
>>100
/申し訳ないです、時間も時間ですので、引継ぎお願いできますでしょうか?
/明日はちょっと時間が不明瞭ですので、手が空き次第レスしておきます、詳しい時間は状況判明次第お伝えできたらと思うのですがっ
102 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/09/20(火) 02:00:39.79 ID:n5mjSdiQ0
>>101
/引継ぎ了解しました、事情も把握しました
/そちらのペースで返礼が頂けると幸いです
/遅くまでロールありがとうございました

/お疲れ様でしたー
103 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/09/20(火) 02:05:20.78 ID:V9q9vBE40
>>102
/一応九時ごろを回れば安定してお返事していけるかと思います
/ひとまずお疲れさまでした、また明日よろしくお願いしますー
104 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/09/20(火) 17:40:14.51 ID:V9q9vBE40
>>100

【地面から飛び出した桜色の蛇は、やがて高く頭を持ち上げると、けれど、まるでそれが限界だったみたいに、全身がばらりと崩れだし】
【ほんの十数秒でなくなってしまうほどにたくさんの桜の花びらのような欠片になって、ちりぢりと舞って――淡く光る欠片たちが、あたりをほんのわずか桜に染め出し】
【その花びらさえも、ほんの数秒で消えていく。すぐにでも厚く垂れ込む雲の闇があたりを隠して、ただでさえ暗い夜を、一層の黒に変えてしまって】

――っ、

【その状況になって、やっと彼女は視界と聴覚とを取り戻す。その意識もなかったけれど気づけばしゃがみこんでいて、ひたすらにとっさの魔力繰りの失敗を悔いていたのだけど】
【ちかちかとノイズがかったような視界でも取り戻せば失敗のことからは無理やり意識をそらす。それでも一発で起こした軽い魔力欠乏に、わずかにふらつきながら】

え、あれ……暗――、

【そうだとしても立ち上がる足取りはそんなにも危うくはない、はああと長い息を吐いてあたりを見渡せば暗がりと動きを止めた大きなはちあり、】
【多分自分が弾き飛ばしたゾンビ男はすぐには見つけられず、振り返った先の木花にはいきなり無邪気に訊かれ。数秒ほど口をつぐんだのだけど――、】

……任せる、の。

【無邪気さには悪戯っぽさで返す。顔の前に出した右の手のひら、ちらりと魔力をまとわせれば、まだ大丈夫だと自分に認識させて】
【指の隙間からちらりとおとなしくなったはちありを覗き見る、ただ立場だけで殺すことに加担する、その相手。わずかに目を細め、唇をぎゅっと咬む仕草は、よく見えないけど】

【翳していた右手をせなに近くなるまで引き戻す。やはり指先の軌跡に湧く桜色の魔力線は、やがて空中から抜刀してみせる手品のように、その手に刀を握らせ】
【しとりしとりと水の沸き立つ刀身こそが本来の姿――それとも雨でも降るのだろうか。それならば、その特性はなんら意味もなく、雨粒に流れていくのかもしれないもの】
105 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/09/20(火) 20:13:45.60 ID:pKZHXOQBO
>>104

えっ……!? え?

【木花の提案がやんわり却下され、意外そうに狼狽える。てっきり鈴音が止めを刺すものだと思って準備を全くしていなかった】
【それもそのはずである。木花は魔力欠乏で疲弊している鈴音の表情を確認せずに止めを譲ろうとしていたのだ】
【暴風雨が近い。それまでに『構築』が完了するか賭けに近い。慌てるように弱ったハチアリに鍵を投げつける】

【ハチアリは疲弊しているのにも関わらず、急激に後跳躍して鍵を避ける。ひび割れた翅を無理に動かした所為で翅が根元から脱落する】
【そして稼がれた刹那の間に杖先に閃光を呼ぶ。急場凌ぎにストックをリソース化して全力攻撃に注ぐ】
【構築の完了と共に、ハチアリの突進が始まる。掲げられた閃光がハチアリの正面を捉える】

 - Port Buster

【閃光が徹甲弾型に収束し、甲高い鬨を上げて打ち出される。一本螺旋の尾を曳いて咄嗟の防御姿勢の表れたる右前肢と激しくかち合う】
【接触と同時に爆発。衝撃波は進行方向に絞られ外骨格に阻まれて風となる。だが砕かれた破片が流星の尾を引いてハチアリの身体を蜂の巣にしていく】
【狼狽した時間と溜め時間と合わせて攻撃態勢を整える事が可能である。この攻撃との合わせ方如何で『結末』が変わるだろう】

狼男を生むには村から追い出せば良い
でも君は村から出ない追い出され方をしたんだね
暗く寒い部屋に、毎日恨み言が降り注ぎ甲虫が湧き上がる
寒さを凌ぐ毛皮(けもの)は得られず、虫の殻しか被れなかった

あの蜂の正体は……

【木花はいつの間にか体に纏わり付いた黒い魔力斑を避けようとして横っ飛びを始める。左手薬指にそれが残り、魔力斑が意味を成す】
【短い苦悶の声とひび割れる物音が重なる。杖に二条目の亀裂が走る】
【同時に激しく叩きつけるような雨が降り始め、それらの音を掻き消した】

【ハチアリの衣が剥がれていく。その中に人の形が見えたような気がする】
【流星はそれを回避するように駆け抜け、衣の果てで今度こそ紙屑のように砕けて消える】
106 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/09/20(火) 22:03:42.45 ID:V9q9vBE40
>>105

【鍵の意味。彼女はまだ分かりきっていなかった、ただ、彼らが苦手にするらしいことを薄らと分かるのみで、もしかしたらとどめを譲られたことさえ、よく分かっていない】
【だから狼狽えた木花にはかえって不思議そうに瞬いて、けれどどちらにせよ身体にまとわりつくようなだるさはある、喉が渇いたような、不快感】
【動けなくなるほどではないが精密さには欠ける、それでも呼び出した刀は水を湛えてきらきらと輝くほど、まだ何かを毀すだけの力がある証左】

【けれど――どちらかといえば近距離を得意とする自分からすれば、木花が今から作りだそうとしている間合いは、なんともかみ合わないもの】
【何か手伝うなら手伝うのだと思っていたけど、背中を撃ち抜かれるのも困ってしまうなら、そのかわりに、じ、と、視線を向け、見遣る】
【ちぎれ落ちた翅も、おもちゃみたいに穴があいていく身体も、じっと。その間にも空気が湿気を孕んでじっとりと重たくなっていく、遠くもない空に雷鳴が聞こえる】

【瞬きするたびに穴だらけになる身体、虫に痛覚があるのかなんて知らないけれど、とんぼの両翅をぐっと掴んでひきちぎろうとしたときにもがくなら、恐怖くらいは感じるはず】
【だからかあんまりに素敵な気分ではなかった、この大きな化け物が何をしたのかも大して知らないし、まして、自分がひどい目に遭わされたわけでもないなら】

――あ、っ、

【どざ、と、それこそバケツのそこが抜けてしまったみたいな雨が降りだして、一瞬であたりを濡らして重たくする、眉も睫毛も意味なく目に入る雨水を左手で拭い去れば】
【細めるように見た雨の向こう、ちりぢりになりゆくシルエットに、瞬間、まるでひとのかたちのようなものが見えた気がして――】
【反射的にぎゅっと刀を握りしめてしまうけれど、何か意味もない。止めてと懇願するでもない、咄嗟に助けようと動くわけでもない、それなら、さっきの欠乏をいいわけにするよう】

【――だから、たぶん、彼女のしたことを簡単に表せば、何もしなかった。臆病でずるいやり方、何もしないままで、ずっと、見ていた】
【刀から滴った水だっていつの間にか雨水に溶けてしまって、あたりの水をわずかに薄桜色に染めているばかり、――ただ、それこそ、水の支配でもあって】
【誰のものでもない水を支配下に置く、意図的か偶然かは分からないけれど、彼女のごく周囲に降った雨、その水はほとんど彼女のものになっている】

【だから、多分。目の前でぼろぼろになってしまった存在を殺すのも、きっと、できるはずだのに】

/申し訳ないです、食事込みで離席していました……! お待たせしてしまい、すみませんっ
107 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/09/20(火) 22:34:26.69 ID:n5mjSdiQ0
>>106

【『誰かの恨みを買ったのかもしれない』その言葉は正鵠を射たものであった。厳密にはその言葉が弱点そのものである】
【誰かを殺そうとすれば、自分も同じ死因を辿る。そういう呪いが黒い斑として顕現する。避ける事はできるが、消す事はできない】
【斑は木花の殺意の具現を正しく映し出して本人に跳ね返し、結果として左薬指を吹き飛ばす呪いを与え給う。そのダメージを杖が代替わりして事無きを得る】

【それでも消えない痛み(うらみ)に視界を滲ませながら結果を見守る。ヒトガタへの命中弾は0、成功である】
【雨音だけになった廃墟でヒトガタだった人間が地面に横たわる。この場の誰よりも小さな着物の女の子、両手に抱える鞠とシロアリを数珠繋ぎにしたネックレスをしている】
【状況から考えると即死にしか見えないが、近づいてみた場合胸が微かに上下しており、すやすやと寝息を立てている】

あ……あれ? 女の子だったんだ……
うーん、早く浄霊ができる教会に運んであげたいけど、どうしよう

【雨音は暴力的に高まり、最早普通の視界すら許さない。腕で庇を作っても滂沱の如き雨雫が目へと進入する】
【木花も能力及び体力に限界を示しており、人一人運ぶ余裕すらない。鈴音も疲弊しているのか先程から動いてないらしい】

『お……終わった、のか?』

【のこのことゾンビ男が舞い戻る。降り頻る雨が特殊メイクを溶かしマーブリングを掛け、現代アート男と化している】
108 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/09/20(火) 23:00:57.07 ID:V9q9vBE40
>>107

【雨が強くていろんなものが見えないし聞こえないし、もっと言えば匂いも分からなかった。濡れた犬みたいに身体を震わせても、後から後から濡れるのだから意味はなく】
【よく見えない状態でやっと少女が動く、ばちゃばちゃと立てる足音はもう雨音で聞こえないけど、いろいろと分かり足りない状況への理解を補おうと、木花へと近づいて】
【その直後にきっと死んだろうと思っていたもの……さっきまでどこにも存在しなかった女の子を見つけ出して、「ぴゃ」なんて、奇妙な驚きの声を漏らす】

わ、わ。……え、えっと、この子、なかのひと……?

【オカルト的な話の中で、人形とかぬいぐるみとかに宿った魂みたいなものを中の人だなんて呼んだりする、余談だけれど彼女の家には人形やぬいぐるみが溢れかえっていて、】
【だから咄嗟に漏らした単語が少し変なチョイスだったのだろう。すなわち、あのはちありの中に見えた人影がこの子なのかと尋ねながら、】
【やめたほうがいいだなんて言われることさえなければ、女の子のそばへと寄るのだろう。なんだか終わったらしいことを理解した段階で刀は捨ててあるから、叶いさえするのなら】
【抱き起してやろうともするだろうか。あんまりに放っておけば雨に沈んでおぼれてしまいそうにも見えた、きっと大事らしいまりを転がさないようにと気を付けて、】

どうしよう、

【困ったように眉を下げて呟く声はきっと誰にも聞こえない。もしも今までの行為に何も問題がなくって行われているなら、このあたりで木花を呼ぶのだろうか】
【それとも近くまで来てくれているなら、今度は聞こえるような声で同じことを問う。――初手でめまいを起こしていた彼女なら、それ以上の消耗はどうやら少なく】
【木花はもちろん、多分自分が弾き飛ばしたゾンビ氏よりも元気な可能性さえある。……それに小さな女の子なら、なおさら運べそうだ。そういう話になれば、そうするだろう】

あ――えっと、ごめんね、木花ちゃん、よく見えなかったから、あの時、助けられたらよかったんだけど……。

【それから急につぎ足すのは、吹き飛ばされる木花を認識していたのに何もできなかったことへの謝罪。なるべく早くという意識があったのだろう、だから、中途半端なタイミング】
【長い髪がびちゃびちゃに顔に張り付いて気持ち悪くて。表情はなんとも浮かない微妙なものだが、申し訳なさそうな目の色ばっかりは、雨に邪魔されずによく見えるだろうか】
109 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/09/20(火) 23:26:51.57 ID:n5mjSdiQ0
>>108

うん、そうだよ。中の人。
正確には変形型の狼男……じゃなくて狼女かな

被る毛皮が無かったからネックレスにある虫の殻を被ってあの姿になったと思う。その力で座敷牢の木の檻を食い破って逃げてきたんだと思う

私がこのまえ退治した蜂の親玉かも

【鈴音の質問に推測混じりの見解を答える。弱点が一致していたから本人的には核心をついたものと思っているらしい】
【鈴音が女の子に駆け寄っていく。特に危険は見当たらないので止める理由も無い。更に呼ばれたので木花がノロノロと近寄る】
【思いの外体力が有り余っているのが気になっている様子である。だが次に掛けられた言葉で疑問が忘却の彼方に消える】

あー……大丈夫だよ、気にしないで
この杖が肉体的なダメージを吸ってくれているから、こういう荒事とかも出来るんだよ

でも、ちょっと損傷が酷いかな。これ以上ダメージを受けたら私窒息死しちゃうから……

【そう言って杖を霧散させる。安堵の溜息をついてお互いの無事を確認する。続いてハチアリだった女の子をどうするか指示する】
【いつの間にか雨音が弱まり、雷の音が遠ざかっていく。雲間から夜空が覗き始めている、雨が止みそうだ】

呪いを核にする力だから、早めに浄化した方が良いかな。教会に連れて行ったらいいかも

【女の子の能力は本人の制御を外れて発動するものであるから、能力自体を弱体化させるのはセオリーにかなう】
【あとは鈴音の決断のみであった】
110 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/09/20(火) 23:41:11.80 ID:V9q9vBE40
>>109

……満月のやつ? 

【狼男。といえば、満月の夜に月を見て遠吠え。そんなイメージがあるのだろう、とはいえこうして目を閉じる女の子は毛深い様子もなく、少しイメージと違う】
【けれど皮がないから殻を被ったというなら多分そうなのだろう、詳しくはないからよく考えないようにして、そういうものなのだと納得することにする】
【詳しくはよく分からない、そういった事柄には詳しくない。だなんて、聞くひとが聞けば笑うのかもしれないけれど、本当に詳しくないのだから、しょうがないとして――】

【――体力が有り余っている、というよりか、あの数十秒でいくらかを回復したというのが、多分大きいのだろう】
【そもそも使った量もそうでもなかった、ただ、いきなりに使ったものだから、貧血を起こしたようになってしまった。それも――動けなかった間に、だいぶんはよくなっている】
【基本的には魔力さえどうにかなればどうにでもなる体質だ。もっといいのはよく眠って休むことだけど、今はそう贅沢も言っていられないだろうし】

それなら、いいんだけど――、えっと、ゾンビのひとも大丈夫かな……、急だったから、手加減できなかったの。

【なんだか迷惑ばっかりかけたみたいだ、しゅんと眉を下げて、それからようやく意識をゾンビ氏に巡らせ……、……現代アートっぷりに、一瞬、動きが止まるけれど】
【このひとなんでこんな恰好なんだろう? とわずかに不思議がりながら呟いている。なんせ自分が動けなくなるくらい、思い切りやってしまったのだから】
【それでもそう硬くしたつもりはないし実際ゾンビ氏もなんだか平気そうなので、多分、平気だったんだろうなあ……と思いはするものの】

教会? 教会……、……ううん、……えっと、わたし、教会の知りあいはいないの、場所も、よく知らないし――。
どうしよう、――木花ちゃんが知ってるなら、そこでいいのかな……。家は、えっと、教会じゃなくって神社だから……。

【神様に関わる家系ではあるが教会系ではない、数秒ほどじっくり考えてみるけれど、教会に関係する知人は浮かばないし、よくよく思いつく場所もない】
【ポケットに入れっぱなしの携帯電話のことはすっかりと忘れているし、もしかしたら、とうに水没マークが赤くなっているかもしれないし、それなら頼りは木花の知識になる】
【それとも街まで走って行って自警団の詰め所にでも駆け込んで聞くという方法もあるだろうし、それともゾンビ氏が知っていたりするのだろうか。ゾンビだけど――】
111 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/09/21(水) 00:03:49.15 ID:QHOOqVwB0
>>110

【鈴音の方も教会のツテは無いらしく、途方に暮れる。一方男は鈴音の心配に対し素っ気なく全然平気だと答える】
【木花は何か手は無いかと男に穴が開くぐらいの熱視線を向ける】

『んだよ。何だテメェ』

この道、教会の辺りで教えてくれたよね。教会が塒なんじゃないの

『あ? そうだとしても手伝わねーぞ……と言いたい所だが、先に助けろと言ったのは俺だったな』

【男はまるで獲物の猪を持ち帰るような格好て女の子を担ぎ上げる。どうやら男の方にはツテがあり、手伝ってくれるらしい】
【大義名分では命の恩人、思惑では鍵をスッり道を教えた事を金輪際黙らせるつもりで木花の願いに答える】

『但し、条件がある。今度会った時は酒二杯ぐらいサービスしろ。でなけりゃコイツは置き去りだ』

【男は背を向けて更に条件を重ねる。飲まない場合は女の子を放置する気マンマンである。恐ろしいぐらいまで面の皮が厚いらしい】
【木花は何の事かはさっぱり分からず、一言肯定で返す。もしかすると男は鈴音の店を知っているのかもしれない、酒が出るかはさておいて】
【鈴音も頷けば、そのまま男の居所の町の教会まで女の子を運んで行ってくれるだろう。拒否すればその債務を木花が引き継いでくれるらしい】
112 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/09/21(水) 00:22:50.70 ID:b62C/aSg0
>>111

【教会……教会。口の中で繰り返してみてもやはり心当たりが出てこない、数年も前ならときたま名前を聞くこともあったが、最近はめっきり聞かなくなってしまったし、】
【思い出したのさえ久しぶりの存在かもしれない。だからといって全く違う神を信仰しているのだから教会の神には祈ったこともないし、どこか仕方なさに似た諦めを感じつつ】
【木花と現代アート氏が軽く口喧嘩のようにしゃべりだせば、気弱そうに眉を下げてしまう、なんだか喧嘩のような雰囲気が苦手なように、少しおびえたように、身体を縮め】

ああっ――、もう、だめなの、今まで蜂だったんだよ、きっと疲れてるの、乱暴にしたらかわいそう……、

【きっとこちらの方が年上だというのに、小さな女の子にすがるように勝手にその服の一部を握りしめてしまっていた。だから、男がいきなりに女の子を抱き上げれば、】
【一瞬ぐいと腕も引っ張られて、それから慌てたように丁寧にしてあげてだとか、その運び方にけちをつけて。――とはいえ、非力な方だから、内心では少し助かった気持ちもある】

…………もう、だったら、もっと大事にしてあげて! そうしたら特別に奢ってあげる、……わたしが居る時だけだよ、セリーナにそんなの言っても無駄だよ、きっと――。

【腕の中から女の子を取り上げられるような形になれば彼女も立ち上がる、ぐっしゃりと濡れねずみの様相なら、ふんわりとしたスカートも、長い黒髪も、すっかりと台無しで】
【ちゃっかりと酒まで要求されれば少し押し黙ってから、仕方なしという風にうなずくのだった。びしゃびしゃの髪を気分程度に絞って、それから、歩きだす男へついていく】
【歩くたびに靴の中からぐっちゃぐっちゃと水の音がしてきもちわるい、別に気にするかしないかで言えば気にしない程度の不快さだけど……だなんて思うのは、】
【役立たずだったことへの負い目めいた現実逃避にも似る、まして今も女の子を背負う役割をとられてしまったのでなおさら、手持無沙汰な様子で、ぴちゃぴちゃついていくのだろう】
113 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/09/21(水) 01:08:00.95 ID:QHOOqVwB0
>>112

『ああ……そうかい。取引成立だな、オラお前ら担架!』

【振り向いて凶悪に笑うと、部下を呼びつける。シロアリの眷属に襲われていたにも関わらずダウナーな返事で返してくる】
【六人ぐらいのクリーチャーメイクをした男女が現れ、その一人が背負っている折り畳み式のハンモックのような担架をこさえる】
【どうやらスリ失敗時に重傷を負った仲間を運ぶ為に予め準備したものらしい。担架に女の子を乗せて運んでいく】

『そっちがその気なら約束は守るさ。安心しろ……雑魚のスリ野郎(スパロウ)は金さえ手に入れば嘘はつかん

それとお前、オレの事を短小と言ったの知ってんぞ。覚えておけ……』

『ひ、ヒィィィ! お助けを!』

【ハチアリが現れたドタバタ紛れて言った部下の悪態を論えて、脅迫をかける有様に何の威厳があろうか。所詮チンピラである】
【女の子の先行きが不安ではあるが、実は彼らは街で孤児たちの世話をしている気のいいオヤジ達で通っているらしい】
【スリをやる理由は単純に孤児に金をかけ過ぎて金欠になっているという本末転倒なものであった】

『覚えてろよ、団子虫(ピルバグ)野郎』

魔獣退治の仕事を始めたいなら手伝ってあげてもいいよー

【木花の方に向き合って捨台詞を吐いていく。何しろカモが特大のトラブルこさえて自分達の計画を滅茶苦茶にしたのだ、逆ギレされる隙を作ったと言える】
【言われた木花の方はムッとした表情をする。女の子に対して虫呼ばわりした意趣返しで無職(スリ野郎)に危険職を勧める】
【形容しがたい顔で拒否した彼らは木花達とは反対方向の道を進んでいった】

『まーたボス身寄りの無い子供の面倒見て……金欠に懲りたんじゃないんですかぁ?』
『うるせーぞ! コイツはいい戦力になる。今の内から育てて恩を売って俺らの仲間にしてやれば金持ちも夢じゃねぇ』
『あーはいはい……ソウデスネー』
『あ、そういえば最年長のディラックが○○大学受かったらしいじゃない。ボスの学生時代の教科書のお陰……』
『はぁ!? んなもんしてねーよ! アレはアレだよ、そう! アイツの才能、それ見抜いた俺マジ大物。大体お前らはなぁ……』

【喧騒が森の奥へと消えていく。再び廃墟の夜らしい静寂が戻っていく。月明かりで再び微かな明かりが戻っていく】
【因みに後で聞いた話では無事教会に届けられた女の子は浄化してもらってその町の孤児院で元気に暮らしているのだという】

えと、大変だったけどお疲れ様だね
今度お礼とかしても良いかな?

【と、鈴音に尋ねてみる。実際に今回の出来事は木花の仕事の不始末が一因でもあったのだ。それでもどう答えても良いぐらいの柔軟性はあるみたいだ】
114 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/09/21(水) 01:21:02.35 ID:b62C/aSg0
>>113

【大丈夫かなぁと心配になる、というより、ものすごく心配だった。口の悪い男のひとには慣れてきたけれど、まだ得意ではない】
【なにより全員ゾンビを通り越したアートな感じでやっているので現実味がなくて余計に心配になる。担架で向かう先、本当に現世だろうかと】
【それならなんだか……わがままを言ってリーダーを困らせてでもUTで預かった方がいいのかもとも思うくらい、けれど、……心底悪いひとたちにも見えなくて】

【賑やかさが離れていく、大丈夫かとやはり心配そうに彼女はしばらく振り返って見つめていたのだけど――話しかけられれば、】

え、――ううん、わたし、何にもしてないの、えっと……本当に何もしてないし――、
あ! えっと、これ返すね、お礼……? お礼は――ううん、駄目じゃあないけど……、――。

【少しびっくりしたように肩を跳ねさせてから振り返る。それで慌ててそういうのだけど、急に思い出して差し出すのは、ポケットにぎゅっと詰め込んだ鍵の残り】
【何もできなかった引け目をごまかすように、あるいは相手の言葉を終わらせて話をそらすみたいに鍵を半ば強引に返そうとしたところに、お礼だなんていわれてしまえば】
【一瞬言い返せなくてきゅっと口をつぐんでしまう、それからばつが悪いように、不明瞭な言葉を返すのだろう。駄目じゃないけど――あまり乗り気ではない、顔だけど】
115 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/09/21(水) 01:40:43.27 ID:QHOOqVwB0
>>114

それじゃあ中途半端だった蜂退治も終わってようやく懸賞金貰えた気分になったから食事とか奢ってあげるね。あ、鍵もありがと

【鈴音から渡された鍵束を受け取り長鞄にしまう。何かが吹っ切れたかのように豪遊を宣言しようとしている】
【しかしこの時間は開いている店が酒場以外僅少で選択肢が狭い。何よりも木花の目的も達成されていない】
【少々考え込むような仕草で予定を修正し、また鈴音に対して声をかける】

本当は明日の列車でヴァディス郷に帰るつもりだったけど、明日はお昼に中央広場に待ち合わせて、お店巡りとかしてみる?

【鈴音の躊躇を肯定と受け取ってさらに予定で畳み掛ける。一切相手の都合とかを考えていない辺り危険職ならではの時間感覚であった】
【街の気配は目前に迫る。案内も終わりに近づいている。どう答えても嫌な顔をする事は無いだろう】

/次あたりで最後になりますが、よろしいでしょうか?
116 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/09/21(水) 01:50:41.58 ID:b62C/aSg0
>>115

【ぐしょ濡れでテンションが低い……というよりは、どんどんテンションが下がって行くようだった。何より身体が冷えるのは得意じゃなくて、濡れているのもきもちわるい】
【その点相手はなんだかかえって元気なようで、それなら元気を吸い取られているような気持ちになる。当然そんなことなくっても、イメージとしてのお話】

え……おひる? お昼は、その……お仕事あるの、……えっと、夜なら、あんまり長くならなければ、大丈夫だけど――、

【地理のことはあんまり詳しくない。かつていろんなところを放浪していたとはいえ、街と街のはざまなんて考えなかったし、地名なんて関係なかったものだから】
【だから畳みかけられれば、なんとも困ったようにあいまいな声を漏らしていたのだけど、昼はどうだといわれれば、それは出来ないと返すのだ】
【いわく仕事があるからという、……それならさっきのアートな方々はある意味同業者のようでもあって、彼女も、孤児の子らのために食事を作っている】
【いつもやっているわけじゃないのだけど、それをやっているのがたまたま今の時期で被っているのだ。だから昼は出来ない。夜は……夜の方が、仕事を抜けやすい】

【それでも畳みかけられるのは弱い性質らしい。昼間に約束を取り付けようとしても絶対に頷くことはないけれど、夜ならば、押し切られればうなずいてしまう】
【なんだろう、いいことあったのかな――なんて押し切られながら考えていたことは余談だし、多分、いうことはないけれど――】

【――とにかく、昼でさえなければ、木花の言う通りの日程で予定を取り付けることができるだろう。いっそ数日あとの彼女の休みを待つのでもいいのだけど】


【……だとか喋っていて、気づけば、足元の地面はすっかりときれいに舗装されたものへと変わっている。すなわちひとの世界に踏み込んだというのを示していて】
【気づけばなんだか気持ちよさそうに酔っぱらったおじさんたちが歩いていたりして、さらにこちらにはあの雨雲も来なかったらしい】
【ずぶぬれの二人を見て笑ったりしていて――まあ、果てしなく平和な光景なのだった】
117 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/09/21(水) 02:32:19.30 ID:QHOOqVwB0
>>116

そっかー。夜は久々に塒の宿屋の手伝いの約束があるからちょっと難しいかな。また、会った時にお礼するね

【打って変わって木花の方から断りが入る。長音から続いた言葉はそれまでのハイテンションを継承していない】
【ギリギリ自然ではあるが、感情の断絶らしき部分が入る。塒でしかない宿屋に何らかの思い入れがあるのだろうか】
【そうこうしている内に舗装を叩く音に様変わりする。前を見ると市街地の入り口を表す看板が見えている】
【もう一度鈴音に向き合い、道案内のお礼と別れの挨拶をする】

今日は道教えてくれてありがとうね
それじゃあまた……

【謎の魔力の気配が一瞬漏れる。あるメッセージ情報を持った魔力であった。発生源が分かる場合それは……】

【ザッー……(それじゃ……戦決こ……は満月の夜だ)(うん!でも今から研究所のお兄さんから頼まれた蜂退治があるの!)(行ってらっしゃい、約束は忘れないでね……か)(うん!)】
【(な……これは!)(廃棄縁世界の……が安定しませ……)(中……希絵研究員!応……せよ)ザッーー……(ザイデ……シュトラーセ……験を中断……クモ計画を破棄す……)】

【(蜂退治……全部出来なかったなぁ。あっ!もうすぐ約束の時間……あれ? 何だろ、焦げ臭い?)】

……?
えと、また会おうねー

【気のせい。そんな違和感に狐をつつまれるが、所詮気のせいであった。続けて別れの挨拶をする】
【鈴音の方から何か聞きたいことがない限りはそのまま別れ、木花は明日の電車に備えて宿屋に向かっていくだろう】
【欠けたる月は名月よりも長く夜空に居座る。朝方まで横着をしてみんなの目覚めを天球の彼方から見つめ続ける】

/私の方からは以上になります
/3日間もロールお付き合いして下さりありがとうございました

/それでは、お疲れ様でした
118 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/09/21(水) 02:36:55.61 ID:b62C/aSg0
>>117
/申し訳ないです、いけるかと思ったのですが時間も時間なので、返事は後程させていただきますっ……
/夕方ごろまでにはお返しできるかと思います。ひとまずですが、ロールありがとうございました、お疲れさまでした!
119 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/09/21(水) 18:35:05.07 ID:b62C/aSg0
>>117

【そっかと呟いて返す声、予定が合わないのなら仕方ないだろう、そういうことになるのなら、こちらも大した異存はないし、特別な問題もない】
【顔に張り付く黒髪をつまみ上げようとする指先は多分意識にも登っていないのか意味もなく頬に触れている、礼を言われれば大したことはしてない、なんて、言った】
【――その表情が急に変わる。ぴくりと動物が聞きなれない音を聞きつけた時のように、しんと耳を澄ませて急にきょろきょろと頭ごと視線を動かし】

…………――う、ん、また……。

【奇妙な魔力をかぎつけた気がした。明らかに浮かない妙な顔で別れを告げるのはなんだかおかしいけれど、相手が気にしていないなら、仕様がない】
【結局最後の最後まで妙な顔で見送った後、また一人できょろきょろと探ってみるのだけど――そうしたときには、すでに、何も聞こえなくって】
【詳しいことまで聞き取れもしなかったものだからなおさら意味が分からなくて困惑する、けれどやがて、足元にびちゃりと水たまりみたいに作っていることに気づいたなら、】

……!!

【驚いた猫みたいにびゃっと跳んで、そのままぱたぱたと慌てた足音でその場を離れていく、そうでもないと――なんだかあらぬ疑いをかけられる、みたいになりそうで】
【あまりにも当たり前に路地裏に逃げ込んだ姿はそのうち暗がりに紛れて見えなくなる、――足跡は結構先まで追いかけられたとは余談だけれど】
【その足跡もある地点でぷつりと途絶えて。残された足跡も、そのうちに渇いて、消えていくのだった】

/改めましてお疲れさまでした、ありがとうございました!
120 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/09/21(水) 19:53:39.33 ID:QHOOqVwB0
>>119
/こちらこそ、最後までありがとうございました!
121 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/09/29(木) 19:39:22.08 ID:BxjFnnbM0
【街中――大通りに面した路地裏】
【がやがやとした賑わいの会話の内容までも聞こえそうな距離、ただ明りの全くなくなる道に曲がる人はほとんどいない、そんな場所】

……はあ、そんなに強請ったって、何も持ってませんのよ。

【耳を澄ませば大通りからでも聞き取れる声、にゃあにゃあとしゃがれただみ声の猫の鳴き声、――それと、それに返すような、甘たるい女の声】
【もし誰かが覗き見れば、音通りに猫と女の姿を見るのだろう、猫は白猫だったけれど薄汚れた色合い、室外機に腰掛ける女の足に絡まりついては、鬱陶しがられているよう】
【足にすりすりと体を寄せるたびにつま先であしらわれているのだけれど気にするそぶりもない、痩せた猫の腹を軽く小突いてため息を吐く女は、少し苛立った顔をしていた】

【黒猫とよく似た毛色の髪は肩に届かないくらいのボブヘア、気の強そうだけれど嫌に白い顔には化粧が施されていて、薄暗い中でも顔だちをはっきりと見せ】
【濃灰色の薄手のニットワンピース、短い丈だのに気にした素振りもないまま、黒いストッキングの足をたっぷり見せて。足元は高いヒールのパンプスなのだけど、】
【今となっては靴やストッキングにはびっしりと白猫の毛がまとわりついていて。ふんごろふんごろ喉を鳴らしてはしゃがれ声で甘えて鳴く猫と、少し不機嫌そうな女と】

さあさ、石ころでしてよ、お好きですわね? 地平線の果てまで追いかけたらいかがでしょう。――ほら。

【ぶなーと鳴く猫がついに鬱陶しくなったのか女は地面の石ころを一つつまみ上げると地面を転がすように、路地裏の奥へと放り投げて――】
【それからほらと指先で示すのだけれど。一瞬見やっただけで白猫はまた喉を聞こえるくらいに鳴らして足に体を擦り付ける、女はいっそういやな目で、足元の猫を見ている】
【そんな光景が明るさと暗さの真ん中にあった――まあ、路地裏に近いにしては、平和な様子では、あったのだけれど】
122 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/09/29(木) 23:54:55.77 ID:j6+ofxxA0
>>121

【ころころと惰性で転がる石が固い物に乗り上げてその足を止める。路地裏の仄暗い径の先から人影がぬるりと表れる】
【人影はブーツに当たった石に気づいてその場でしゃがみ、石を拾い上げる。その高さから考えて背格好は小学生並みか】
【人影は石が転がってきた先に目を向ける。黄色く濁った光を仄かに放ち、人影の出で立ちを露わにしていく】

これ、落としましたよ?

【ボロボロのフード付きマントに迷彩服にミリタリージャケットを着込んでいる。まるで軍隊ごっこに勤しむ少年のようであった】
【無主物である事をじっくり確認したにも関わらず持ち主を問う言葉を投げかける。声変わりの済んでいない高音が路地裏から響いてくる】
【かつかつと女に近づいてくる少年。顔はあどけなくにこやかに、にこやかに。近づいて来る前からそのままで】

モノは大切にね
そっちの猫さんにも優しくね

【フードを取って栗色の短髪を露わにして注意するような声音で話しかける。そのまま猫に手を伸ばしてあやそうとする】
【だが猫の反応は激烈であった。少年に爪を立てて猫パンチを一度仕掛けると一気に距離を取って威嚇を始める】

あれ?
おかしいなー撫でようとしただけなのに

【悔しそうに頬を膨らませる。猫は女を盾にような位置で少年をじっくり睨みつけ続けている】

/まだいらっしゃれば、よろしくお願いします
/ただ、今日は眠気が酷いので返せないです。いきなり遅れてすみません
/続けるか破棄するか其方に一任致します
123 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/09/30(金) 17:52:20.00 ID:XRiB84790
>>122

あら、放り投げたんですのよ。ですからわたくしのものではありませんわ。要りませんもの。

【あんまりに猫が絡まってくるものだからと足を持ち上げてみたところだった。掛けられる声への返事は随分と甘ったるい、猫なで声のような色合いで】
【そんなどうでもいい石ころを後生大事にする人間はめったにいないだろうが実際この女もそうではないようだった、要らないとあっさり言う足元で、猫が鳴いている】
【それでも足を持ち上げて避けていたものだから猫もしびれを切らしたのだろう、軽くジャンプするように足に飛びついて――、薄いストッキングを破いてしまう】
【見れば中の白い肌にも赤くて細い傷をつけていて、悲鳴をあげるでもなかったのだけど、にっこり笑って猫を見遣る目が一切笑っていなかった、とは、余談か】

野良猫だなんてうんざりするほど歩いてますもの、わたくし、すっかりうんざりしてますの。

【足を下ろしてやったせいか、また猫がぐんぐん喉を鳴らしながら纏わりついている、にこにこと少年に向けてやる笑顔はなんだか言葉との不一致があり】
【彼が猫に手を出すのを見れば、それで猫の気が逸れればいいとばかりに足をどかしてやる、けれど猫は見事に彼を拒絶して、自分の足に隠れるようになってしまって】

……まあ。バナナでもお持ちですの? それか、柑橘類を食べたとか――。

【すんと手首の匂いを確かめる、甘い香水の匂いはするけれど、猫に特別好かれるような匂いはしていないはず、と、それを確かめて】
【人懐こい猫だと判断していたのだけれど実際はそうでもなかったのだろうかとか裏で考えている、だからといって猫に別段の興味があるわけでもなく】

残念ですわね、お気に召さないのですって。

【残念はむしろこちらですけれど、と、呟きが続く。これじゃあ仕事もできやしないし、今日は終いにしようと、心中で小さくため息を吐いて】
124 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/09/30(金) 18:40:44.03 ID:XRiB84790
>>122>>123
/申し訳ないです、食事が外になってしまいまして、帰宅がいつになるのか分からなくなってしまったので、続行かはお任せします……
125 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/09/30(金) 19:35:58.86 ID:yr3JAiLa0
>>123 >>124

そうだね……
僕としても同胞(けもの)に嫌われるのは残念だよ

【少年は女に向き直り、その姿を注意深く観察する。それは値踏みするような視線であり、不快感を催す類のものであった】
【少年にしてはマセた部類なのだろうか。将来が心配される態度であった。尤も邪な欲望から発されたものではないのだが】
【ふと、猫が傷つけた傷に目が止まる。舌舐めずりこそはしなかったが、さらに熱心に傷跡を凝視する】

おっと、ごめんよ
その猫が鬱陶しいんだよね、だったら……

【受け取り拒否されて少年の手に収まっている石がオレンジ色に輝き始める。真上に投げ飛ばされた石コロが路地裏中に潜む靄さえも炙り出す】
【それらが少年の周りに結集し、半透明な獣の形を成して少年に着込まれる。全高3mぐらいで色は黄と黒】
【その獣は二足直立をしており、少なくとも虎ではなかった。獣は顎の辺りから蒸気を発する液体を垂らし始める】

うーん……確かにコレ、バナナっぽいよね
黄色い体にバカでかい砂糖斑!

でも、食べられるのは僕じゃない

【猫は女の足を盾にする事を諦めて、そろりそろりと距離を取ろうとする。その目は異形の靄を纏った少年を捉え続ける】
【獣の靄が歓喜に喉を震わせて、爪に力を込める。だが路地裏の道に爪痕が一切ついていない】
【少年の視線はすっかり猫の方に向き、女については既に眼中にはない。だが何かロクでもない事をしでかすつもりなのだろう】

/こちらも気づくのに遅れてすみませんでした
/できる限り続行でお願いします
/返事は其方の準備が出来次第何時でも構いません

/改めてよろしくお願いします
126 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/09/30(金) 21:24:38.87 ID:XRiB84790
>>125

あら、そう、……わたくしは別に構いませんわ、猫よりも犬の方が好きですし――。

【つやのある眼、青りんごをそのまま宝石にして眼窩に嵌めたような瞳は、見ようによっては、猫によく似ていた】
【暗闇をどこまでも見通しそうな鮮やかな緑色。ついと細めた視線は、けれど、そうも不快感を表したようにも見えない、ただ、こちらもまた値踏みするような色を載せ】
【だって日常的に金で買われているのだから今更どうして嫌だなんて思うのか。――だけれど、問題があるとすれば、】

今日はもう閉店したのですけれど……。

【こんな破れた服じゃあ何もできやしない、甘たるい声が少しだけ低く呟いて】

ええ、そうですわね。行儀のなっていない猫ですから。

【視線を向けているわけではない、けれど、相手の動きの一つ一つまでもを見ないままで悟ろうとしている。くすくすとにこやかに笑うけれど、心底楽しそうなはずもない】
【やがて明確に異常が場に満ちればようやく視線を向けて、――分かっていたはずだのに、驚いた顔を作ってみせてから、にこりと笑い】

……では、わたくしはそろそろ帰りましょうかしら? ご用事がありそうですものね、そちらの猫(かた)に。

【ふふと上品げに笑って見せてから立ち上がる、猫はそのしぐさにさえびっくりとして跳ね上がるが、まだ駆け出して逃げよう、というほどでもないのだろう】
【すっかりとしっぽを太くしているが、その尾も薄汚い。よくよく見れば目には目やにがべっとりとついていたし、瞬膜も出ていて、ひどくやせている】
【だから必死に纏わりついていたのだろう――とは思わせるのだが、いかんせん頼る相手を間違えたらしい。猫の落ち度を挙げるなら、もっと動物好きを選べばよかった】

【――あっさりと猫を見捨てることを選んだ女は、ただ、悲鳴をあげて逃げ出すでも何でもなく、平和的に猫を差し出し、それから、立ち去ろうとしていた】
【こちらに意識が向いてないことを分かり切ってやっている。本当にこのまま相手が見逃してくれさえするのなら――】
【そのまま数十秒も歩けばつくくらいに近い大通りの人込みの中に紛れてしまうのだろう。というくらい、当たり前に、それでも彼へ意識を向けたまま、歩こうとするのだろう】

【もちろん――そのまま逃がしてくれないのなら、話は変わって行くのだろうけれど】

/戻りましたのでお返ししますっ
127 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/09/30(金) 21:54:38.80 ID:yr3JAiLa0
>>126

【女も少年と同じく娑婆に似つかわしくない精神をしていたらしい。尤も女には雑踏に紛れ込むぐらいの強かさを持っていた】
【それを持たない少年は、相変わらず女に目もくれず猫に殺意を放射する。いや、寧ろそれはご馳走を目の前にした猛獣の如く】
【瞳孔が開き、口角を上げる。左腕が怪音を上げて千切れ、右手で握りこむ。そのままバックステップで猫と距離を取る】

食い潰ス(タンジン)ッ!

【彼なりの食物への敬意と風切り音が重なる。槍投げのように投げられた左腕が猫を通過しても尚疾走する】
【バックステップの合間に少年に背を向けて走り出したまでは良いが、左腕の投擲に捉えられ、血も怪我もなく引き裂かれる】
【五体無事で気を失った猫の先に先の女。このまま気づかず左腕に通過された場合、全身を皮膚裂かれる熱感に全身の骨を砕かれる衝撃に襲われるだろう】
【距離は遠く、常人でも勘づいて回避・迎撃する事は可能である。また、通過されたとしても苦痛のみで怪我は一切無い】

あー……当たったらごめんねー
でも安心して、ちゃんと全部おいしく食べ尽くしてあげるからさー

【あっけらかんと女のいる方に向かって呼び掛ける。さあ、それは本当に女に対して呼び掛けたのであろうか】
【女のいる方には無能力者と能力者が雑多に歩く日常の風景が広がる。黄土の如き眼光は半月のように歪み鋭さを増していくだけであった】

【避けた場合でのみ、引き裂かれた十数人が苦痛でのたうち回り、ゾンビのように周囲の人々を襲い始めるだろう】
【うち一人、火系の能力を持っており、その力が暴走して1ブロック程度の範囲を火の海に変えてしまう】
【後に電子の海の片隅でしか呼ばれなかった能力者の暴走事件が一般大衆に知れ渡る惨劇となるのだろう】
128 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/09/30(金) 22:13:02.57 ID:XRiB84790
>>127

【ただだか野良猫一匹、これが名高いツチノコでもあったなら、少しくらい、助けてやろうと動いてみるのは、悪くはないだろうとは思うのだけれど】
【薄汚れた白猫。その一匹を危ない思いをして助ける意味は……だなんて計算するだけの時間も無駄。存在しないのだ、そんなものは】
【脳裏にちらりと浮かべた知人であればきっと必死に助けただろうなと思う反面、そんなのは無意味だとも思う。胃の中にわずかに渦巻く不快感を飲み干し、】

【――ぎらりっ、と、それでも大通りに比べたら薄暗いこの道に、強い魔力光が溢れだす。それはまず日常的に生きて居れば見ることも思い浮かべることもない攻撃に対して】
【器用に察知してみせて、次の瞬間には、道に女の姿はない。その代わりに、ぎゃり、がり、と、いやに鋭い爪が硬いものに立てられる時のような音がして――】
【見上げるまでもない。その十数秒後、すっかりと左腕の通り過ぎた後の地面に、また、ひらりと舞い降りる。――大きな大きな黒猫だ。ライオンほどもあろうかという、サイズ感】
【女の髪と同じ色に同じ瞳の色。さも当然のように背中に女を乗せた猫が、おそらくは――壁を蹴って大きく跳んで、また降りてきた】

あら、ひどい――。

【きっと本心では特別そうとも思っていないような声、――狭い道だったせいか火は入り込んで来なかったが、その代わりに、目の前を火だるまになった人間が駆け抜けて】
【この道は使えなくなった。にじりとわずかに後退する黒猫の上、頭の中では別の道筋を考えている、最悪屋根の上でもいいかしらと考えながらも】

すぐに自警団が駆け付けるでしょうけれど? それともそれがお望みですかしら。

【路地裏と大通り、どちらの動向も見えるようにと、猫が壁に背中を向けて寄る、それはついでにすぐに屋根へ飛び移れるようにしているようにも見え、実際にそうでもあり】
【こんな騒ぎを起こしてしまったのだから、もうすぐにでも自警団が駆け付けるだろう。それならなおさら長居したくない、というのは、いたってこちらの都合なのだけど】

では、ごきげんよう。

【――本当にそのまま何もなければ。相手の意識が白猫ばっかりに向かっているのなら、女――というよりも女を乗せた黒猫は、そのまま音もなく屋根の上に跳びあがるのだろう】
【そうすればそのまま――そのまま、騒ぎの広がって居ないほうへと離脱する。だからといって彼が犯人だと通報したりはしない、まるで無関係な顔をするのだけど――】
129 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/09/30(金) 22:43:06.52 ID:yr3JAiLa0
>>128

【左腕が文字通り千切れ飛んだ獣の靄は黒色の粘液を傷口から滴らせ、地面を黒く濁している】
【遠くで日常を破壊された人々の悲鳴がこだまする。それより前に現れた黒色の肉食獣に少年の興味が移り始める】

自警団(エサ)が勝手に来るなんて願ったりだよ
ありがとう、おねえさん

それはそうとさぁ

【黒猫は女を乗せてしなやかに去っていく。獣の目はその姿を捉えて離すまいと眦を引き裂くように見開いていく】
【小声で『只の猫なんてたかが知れてるし、でも自警団は脂が乗ってておいしそうで、でもあの猫は更に魅力的で』】

いいなぁ、食いたいなあ、おいしそうだなぁ、経験値たっぷりありそう、チャンスだよね、そうだよね、そうしかないよね、よね、ねぇ、ねェ

エエェェヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘ……

【黒猫を追い続けた左目が眼窩から脱落して地面に墜落する。今度は背中を逆向きに曲げて視線を追い続ける】
【ふと、パキンという音が鳴る。獣の背骨が本を閉じるかのように真っ二つに折れ、上半身が後ろ向きにだらんと垂れる】
【やっちゃったなぁ、と少年が照れて数瞬もしないうちに鉄砲水の如き突進を始める。狙いは女、ではなく黒猫】

あはははは、まってよォ!

【背骨が折れた事により上半身が風と慣性に煽られてバタバタとたなびく。猫が速度を変化するか軌道を変えない限り、攻撃は次のようになる】
【追いついた獣の靄と少年が減速に転じ、体を正しい方向へと閉じる。お辞儀をしながら伸ばされた右手の爪の斬撃に見舞われる】
【受けた場合、やはり体を引き裂かれる苦痛のみやってくる事になる。体も傷が付かずぶつかるはずの壁を傷一つ付ける事なくすり抜ける】

【それはまるで怨霊に切り裂かれるが如きの異常事態と言わざるを得ないだろう。無論回避は十分に可能である】
130 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/09/30(金) 23:03:20.93 ID:XRiB84790
>>129

【ぐぐっと体をかがめた黒猫が、そのまま当たり前のしぐさの続きのように、次の瞬間には屋根の上に、跳んでいる】
【音もなく風を切る、そもそも多少の音くらいであれば、通りの悲鳴や何かが燃える音にかき消されてしまうのだろうけれど――】

うわ、

【黒猫は思ったよりも早く走り抜けていく、どこかの建物の屋根を踏み抜くが、それでも変わらず走ってゆくのだから、随分と足は速いはずだ】
【それでも追いついてくる声に振り返った瞬間女が漏らした声はさっきまでの猫なで声とは違う――おそらくはこちらが地声なのだろう、幾分かは低いもの】
【何より珍妙な姿で追いかけて来るものだから、なおさら素の声が出るのも仕方がない。――ちらりと覗き見た後ろで、どうにも攻撃の前兆のような動きを見出せば、】

――っ、!

【女は咄嗟に、横に跳ぶ。――黒猫ごとではない、自分だけが跳んで、そこそこの速度ではあったが――通りへとその姿を、落とす】
【けれどそんなの人間の身では最悪死ぬようなもの、それなら今までの態度から少しだけ推測できる女の性格とは違うよう、――実際、見れば答えは分かる】
【また別の黒猫の背中に体を預けて別の方向に駆け抜けていく影がある。置き去りにされた猫は彼の思惑通りに攻撃を受け、ぐねりと魔力の残滓に姿をかえる】

何あれ、気持ち悪――、

【まだ騒ぎの伝播していない通りを黒猫に乗って駆け抜けていく、轢きそうになった男が浴びせてくる罵声に返すのは、ひどくおびえた顔――しきりに後ろを確認しては、】
【いかにも何かに追われています顔をしているのだから、ある意味余裕があるというか。実際に追われているのはいるのだけれど――、】

【本人のみの離脱と、その直後に別の黒猫を使っての方向転換。細い道や裏道をよく知っているのだろう。人込みの中というのもあってか、】
【その姿は注視していなければすぐに見失ってしまいそうで――ただ、そんな風に人通りの多い場所を駆け抜けていくものだから、多少の騒然さは、残していくのだけれど】
131 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/09/30(金) 23:31:04.23 ID:yr3JAiLa0
>>130

【女の咄嗟の判断は少年の凶牙より逃れる道理を得る。空を切った異常なお辞儀からそのままビルの屋上に着地する】
【その後振り向かず走り去ったのは正解といえる。何故なら上半身が折れた如きで不快感を表すなら少年の姿を見ない方が良い】
【左目は視神経が紐のように繋がっているが眼球が外に脱落し、反対側に曲がった肘から血が流れ、首が360°曲がっている】

【今度こそ少年(ゾンビ)は女を見失う。前後不覚のまま、おぉおーいという虚しい呼び掛けが響き渡る。それが少年の命取りとなった】

『目標捕捉 大撃発(ファイア)!』

【少年の降り立ったビルの屋上が凄まじい爆発を起こす。周囲に振動とねっとりとした熱風を齎し、その根源は溶け落ちたかのように廃墟の様を表す】
【そのまま走り去るか、爆発で一安心して何れかのタイミングで足を止めるかによって未来が変わる】
【前者ならば、後述する恐怖体験に遭わず翌日の新聞で『能力者暴走事件』という1面見出しが出るまでさして少年の事を思い出さないだろう】

【だが足を止めた場合……
その瞬間女の目の前にスイカ大の何かがゴトンと落ちてくる】
【スイカ大の少年の首が右目で女を捉え、口から無数に溢れかえる眼球で見つめながら遺言を紡ぐ】

見 ィ ツ ケ タ

【耳から無数の指が生え、頭蓋骨の穴から脳が尺取虫のように這い出す混沌を零しながら黒ずんでいく】
【やがてタールと化して縮小しながら小さなキラキラ光る砂礫へと変じる。どうやら高純度の水のマギタイトであるらしい】
【売れば小金稼ぎになるが、それと割に合わない醜悪な何かを目撃する事になるだろう】
132 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/09/30(金) 23:49:53.47 ID:XRiB84790
>>131

【そもそも、日常であれば能力か魔術か、それはどうでもいいとして――それを利用して大通りを、それも人込みの中で駆け抜けて居たら、それだけで捕まりかねない】
【その中でなるべく自分の無実を現すには追われている演技……というよりは、追われているのだけど、いかにもそれをアピールする、し続ける】
【遠くでどぐりと爆発のような音。さっきの炎系能力者のせいか、それとも本当に自警団が駆け付けたのか。それは分からなかったけれど】
【――とにかく、立ち止まりはしなかった。黒猫は変わらずの速度で街中を駆け抜け――時々曲がり角で出会い頭の人をなぎ倒すが、死にはしないだろうと思うしかないほど】

【それは多分今までの経験以上に、本人の気質のせいもあるのだろう。いろいろなものを信用しないし、自分の視界で確かめようにも、ちょうど建物がさえぎって、現場が見えない】
【だから安心しなかった。安心なんて欠片もしないままで、走り抜ける――だから、結果として、その光景を見ることは、ないのだろう】

【黒猫はしばらく足を止めない。さらなる異常があればなおさら、何にも異常がなければ、ずっとずっと離れた場所でようやく立ち止まるだろうけれど――】
【それだとしても見通しのいい場所で立ち止まる。街から離れた高台の丘。すでに現場からは遠く、直接目視することはできないのだろうけど――それでも、もしかしたら、】
【件の炎能力者の燃やした炎の一部や爆発による煙、くらいなら見えることもある、だろうか。どちらにせよ女は傍らに黒猫を控えさせたまま、ようやく黒猫から降りて、】

……、天音さんは――、出歩いちゃないと思いますけれど……。

【なんとなく気持ち悪さが体にまとわりついているような気がする。冷たい夜風を浴びて、少し熱のこもった髪をかき上げて】
【あたりに意識は向けたままで、スマートフォンを取り出して、操作を始める。数秒の後電話を起動させて耳にあてて、――しん、と、あたりに静寂が満ちるから】

【何か音でもすればすぐに気づくだろう。すっかりと人の居ないエリアまで来ているから、何か気配がしても、すぐに気づけるはずだ】
133 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/10/01(土) 00:11:08.77 ID:jF3rlsrM0
>>132

ふぅ……蜂退治の次は巨大蜥蜴
それに今日もアークトゥルスの手掛かり0かあ

【女が向いている方とはあさっての方向から少女の独り言が響く。声質から女が知っている天音という人でないことが分かる】
【長い金髪のツーサイドアップに外套、インナー、キュロットスカートを着込み、長鞄を背負っている小柄な少女が歩いている】
【女の姿にびっくりしてすくみ上がるといきなり『こんばんは』と挨拶してぺこりとお辞儀をする】

あれ?
街から煙が……

【少女は女がやって来た方とは逆の先の景色に注意を向ける。やがて『何かあったんですか』と言わんばかりの顔を向ける】
【話しかけ方次第では少女のその後の行動が変わってくるだろう。尤も翌日の朝刊の記事が一行変わる程度の変化であるが】
【女の方から質問しない限り、話が終わると少女は別れの挨拶をしてそのまま街の方へ歩いていくだろう】

【ちなみにこの時点で女の預かりしれない地点に落着した首は別働隊の自警団のSAN値を削る惨事を齎していた】
【少年の起こした暴動の現場に居合わせた自警団の一人が少年を追跡し、ビルで立ち止まったタイミングを見計らって殲滅した。という顛末となる】
【尤もこれを知るのは現時点では翌朝を待つしかない。戻って状況を聞き出すなんてバカな真似をしない限りでは】
134 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/10/01(土) 00:20:27.25 ID:qcYWaY/X0
>>133

【鳴らしている電話がすぐに繋がる、となれば生きている。電話の向こうから、「何よ」なんて声が聞こえて来るが、それよりも――】
【聞こえてきた音にぴくりと体を反応させて、振り返る。そうして相手が知りあいでもなんでもないことを確認して、こんばんはといわれれば、「あら、どうも」と】
【人当たりのいいような声で答えるのだが――それ以上でもそれ以下でもない。すぐに電話に意識を戻して、】

なんでもありませんのよ、お迎えにでも来ます?

【「ふざけろ」の一言で電話が切られて、終わった。小さく吐いた息が安心なのか呆れなのかは知らないけれど――、】

あんまりそちらのほうには行かない方がよろしくてよ、頭のおかしな能力者がたくさん居るみたいですから。

【スマートフォンをしまい込みながら、そう答える。手では黒猫をよしよしと撫でてやっているが、別に愛情深いような手つきでも、ないように見え】
【よく知らないけれど薄らと知っている程度のような言葉で忠告する、多分まだ騒ぎそのものは収まっていないだろうし、それなら、これはほんの気まぐれのような親切心】

【それでも相手がそのまま街の方へ向かうなら止めもしない。どうせ自分も帰らなければならないのだから、そのうちあっちへ向かうのだし――】
135 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/10/01(土) 00:42:35.22 ID:jF3rlsrM0
>>134

【びっくりして、二の句を継ごうとしたが相手の口の動きが伴わない微かな罵声が聞こえて電話中なんだと気づく】
【律儀に通話が終わるまで待っていると、相手から街に入らない方が良いと忠告される】
【少女は頭を捻り考え込む。確かに騒ぎの起きている街に入らない方が良いのではあるが、このままでは野宿が確定する】

心配してくれてありがとうございます
でも、大丈夫。その頭のおかしい能力者の一人を破壊する為に旅しているから、ちょっとやそっとじゃ死なないよ

【という感じで言い訳をこさえると、相手の了解を得るよりも早く感謝の言葉と別れの挨拶を済ませて街へと歩き始める】
【おそらく、これが今回の事件の幕引きとなる。少女は頭のおかしい能力者に遭わず、自警団から話を聞くだけ】
【そのまま予約した宿屋で一夜を明かした後、列車で塒の宿屋へと帰り休みを取る事になるだろう】

【女の方も夜闇に紛れ、いつも通りに雑踏に紛れるならば日常を取り戻せるはずだろう。新聞記事はもれなく焼き芋の燃料にするのが得策であろう】
【化物の徘徊した街は爆炎と共に禊がれて平穏を取り戻す。湿った風もやがてその水を失って涼やかな夜風となる】
【今日も明日も太陽が登っては沈み、少年の事も数日のうちに人々の記憶から溢れて消えていくだろう】


【女のいた街とは遠く離れた街の路地裏。男は絶望で足を挫き、男を見下ろす少年を濁った双眸で睨みつける】
【少年に纏わりつく獣の靄が喉を鳴らし、犬歯をぎらつかせて口角を上げる。少年も愉快そうにけたケタケタこポけタけたケタポポ】
【『君、美味しそうだよね。じゃあ、いただきまーす』】

/私からは以上となります
/お疲れ様でした
/最後までロールおつきあい下さりありがとうございました

/それでは、おやすみなさいませ
136 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/10/01(土) 00:51:06.06 ID:qcYWaY/X0
>>135

【行くというなら止める理由もないだろう。ただオブジェクトのように座っていた猫が、初めて女の手を意識したようなしぐさをする】
【指先を右へ左へ、そのとおりに視線を動かす黒猫を見て、問題はないと判断する。少し疲れたが、まだ能力を維持するのは大丈夫そうだと、ようやく少し安堵する】

そう、ではお気をつけて?

【にこりと笑って相手を見送る。そのまま――さらに数十分後。そろそろ火も消えた頃合いで、やっと女は高台から降りていく】
【街中に出る頃には黒猫もすっかりと消して、自分一人……耳を澄ませれば、あちらで爆発が、とか、なんだとか、人々の話す声が聞こえて来るけれど】
【少し不安そうな顔でもして、何事もなく歩いていれば、何の問題も起こらない。そのまま家まで、歩こうと思ったけれど――思ったよりも遠くまで来ていたものだから】
【同じように不安から歩き帰ることをあきらめた人たちと同じように、待ちわびるタクシーで帰ることに決めた、らしい】

/おつかれさまでした!
137 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/10/02(日) 13:32:35.74 ID:itNB7AgM0
【街中――大通りから少し離れた場所のカフェ……のテラス席】

……あら、まだ連絡一つよこさないのね。そろそろ起きたらどうかしら――。

【通りに面した席、他の人がちょっと嫌がるような直射日光が当たる場所。一応パラソルはあるにはあるが、ちょっと守備範囲が狭いのが見て取れる】
【気にせず座っているのは女だが実際に背中のあたりを日光に焦がされて、ただ、しばらくアプリゲームでもしていたらしい視線を上げれば】
【なんとなしに時間と通知を確認してひとりごちる、ため息一つ、机の上に半ば放置されていたコーヒーの飲みかけをさらに飲みかけたような飲みほして、】

【「冷たいコーヒーお願いします、」――と通りすがったてんてこまいの店員に告げれば、机の上に携帯電話を置いて、退屈げに頬杖をついた】

【後ろで一つまとめにされた濃い藍色の髪は下ろしてあれば腰に届かない程度の長さ、瞳も同じ色味だが、影の中で見れば、ほぼ黒のように見えるほどで】
【かざりっけのないカットソーにジーンズ、動きやすそうなスニーカーで、……ときどきちらりと携帯を確認するあたり、どうやら待ち合わせのようなのだけれど】
【かっこつけたイスとテーブル、平均的な女性の身長だと少し足がつかないことになるくらいの高さなのだけど、女は背が高いらしく、ごく普通に腰掛けていて】

【携帯を置いたせいで暇になったのかぼんやりと通りに視線を落とせば――数日前の爆発事件の話やらが聞こえてきて】
【もっと街の中心の方で数日前に騒ぎがあったようだとは聞いているが見たわけでもない。――なんだか野次馬根性が溢れて、いつもより街中混んでいるような気はする】
【そんなことを考えながら店内を見渡せば、野次馬根性でごった返した店内で店員たちが慌てて相席のお願いに回っている、――と、アイスコーヒーが運ばれて】

珍しいわね、それとも死んでるのかしら。

【時計をもう一度確かめて、細いフレームのしゃれた椅子に体重をかけると、あんまりよくない類の音がして。体を起こしながら横目で見た隣の席に、相席の客が入り込む】
【念のために空いている席に置いていた荷物をどかすのだけれど――そもそも四人掛けを一人で使っているのだなんて、彼女だけなのだった】
138 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/10/02(日) 17:18:27.47 ID:itNB7AgM0
>>137
/一瞬離席しますが、戻ってきた後でしたらロールできますー
139 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/10/02(日) 17:59:40.10 ID:ZBkOuR+j0
>>137 >>138

【街はまだ爆発騒ぎの熱に浮かされ、多くの人々の足を外へと向けさせる。いつも以上の賑わいもまた非日常の一種である】
【人々は心配という名目を付けて情報収集に勤しむ。その中でも自警団の**が久々の本気を出したという話題は魅力的であるらしい。あちらこちらから憶測が沸き立つ】
【だが、その一方で名目も立てず嬉々として話し込む姿も目に付く。数人ぐらいの若者がテーブルを囲んで談話する】

『んでさー、昨日の化物が朽ち果てた泥から出たマギタイト……99.99%(フォーナイン)だったらしいぞ!』
『マジか! ビビって小便漏らしながら逃げた自警団の某さんは勿体無い事をしてんじゃん!』
『ウケる、マジでチキン乙』

『おーい! 熊がサフランで出たらしいぞ』

『アイツ生きてんのかよ!』
『砂の国かよ、チッ……遠いな。まーたこっちに来んねぇかな』

【後に『熊狩り』と呼ばれるムーブメントの先駆けとなる会話であった。この時点では最後の捨て台詞の所為で不謹慎な駄弁りの印象を拭う事は出来ない】
【彼らの一団が白けて席を立った後も喧騒が止む事は無い。しきりに足を動かしては、心配と情報収集に託けた出会いを求めて懇々と話し込む】
【そんな中に出会い目的にしては熱心に情報収集をする人影があった。小柄でメモ帳とペンを持ち、まるで新聞記者のような有様であった】

お話、ありがとうございました

【取材らしきものが終わったらしく、人影がしょんぼりと溜息をつく。心なしかツーサイドアップも萎れてしまっている】
【小柄で金の長髪に外套とインナーとキュロットスカートの姿をしている。恐らく少女であろう記者らしき人影が長鞄を背負い直す】
【少女が歩いてくる方角にはコーヒータイムを始めようとする女がいる】
【席に近づくと『相席いいでしょうか』と話しかけてくるだろう。少女の方は女と数日前に会った事があるなんてうっかり忘れている故の挨拶であった】

/また、お相手宜しいでしょうか?
140 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/10/02(日) 20:14:27.70 ID:itNB7AgM0
>>139

【聞こえて来る会話はあったが聞き耳を立てているというほどでもない、むしろ、ついさっきまでゲームをしていたせいで、半分くらいは聞いてもいなかったほど】
【コーヒータイムといっても待ち合わせた人間が来ないわりにここで待っていると伝えてしまったので動けないからでもあって、特に飲みたくもないコーヒーに口をつけ】
【紅茶にでもすればよかったかと軽く悔いている始末だ。これも背中が熱いのも、おそらくは寝ているのだろう同居人のせいだとしか言えず――真顔でヘイトが積もる】

……ええどうぞ。

【そもそも常なら家を出る時点で無駄に丁寧に家を出た報告をしてくる人間が音沙汰なしということは家さえ出ていない、ということに違いなく】
【自分が起きる頃に帰ってきて仮眠をするだとか言っていたのだから、まあ、素直に考えれば寝ているのだろう。……となれば、ここで無理に起こすのは面白くない】
【面倒くさいがここに居座ってやって後からケチをつけてやろうと、少し嫌味たらしいことを考えていたら、そう声をかけられ――ちらりと向ける目はつまならさげな青い瞳】
【一応相手の姿を認めれば、顔見知りであることはすぐに分かったのだろう。……ただ、特別な反応をするでもなく、空いている席を目線で示す程度で終わらせ】

いい天気ね、九月だなんて嘘みたい。

【相手が座れば、挨拶程度にそうとだけ声をかけるのだろう。低くて、少しノイジーな声は電話口だとよく聞こえなくて大不評だというのは限りなく余談でしかないけれど】
【言い終えてからコーヒーを啜りつつ携帯電話で時刻と通知を確認する。何もない。もうしばらくは来ないだろうと勝手に決めつけて】

【小さくため息一つ。来やしないどころか多分起きても居ない相手を待つだなんて面倒くさい、そんな風に緩く考えて、ただ、相手に執拗に話しかけるわけでもないらしい】
【それでも一応話しかけるなオーラみたいなものは出て居るわけでもなくて、実際話しかければ応じてくれるだろう。天気の話以外にも、今日のこの場所であれば】
【ほかの人がそうしているみたいに件の事件の話をしてもいいのかもしれないし、それとも全く別に、クマンバチが飛んでいるのは思い込みらしいとかいう話でも、あるいは】

/構わないのですが、最後にお会いしたのは今年の三月かと……別のキャラとお間違えではないでしょうか、大丈夫でしょうか?
141 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/10/02(日) 20:48:11.08 ID:ZBkOuR+j0
>>140

ありがとうございます

【相手の承諾を受けて礼を言った後席に着く。カップは持参していたらしく湯気が立たないぐらいに冷めている】
【先の取材か何かですっかり冷めてしまったらしい。ぬるま湯のココアを嬉しそうに飲んで一息をつく】
【最初からココアが冷めてくれる事を予定に入れていたのだろう。もしかするとこの少女は猫舌であったのかもしれない】

そうですね、久々に涼しいですね

【自分の額に指を当ててみると、予想していた汗の湿り気がなく、そのままついっと指がなぞられていく】
【あおぐまでも無く店内は涼やかであった。コースターにカップを置くと、背もたれを利用して伸びをする】
【取材、ではなく情報収集に失敗した気分を禊ぎ終わると、ふと閃いて相手の目をじっと見る。両手には先のペンとメモ帳が握られる】

ちょっと数日前の事件についてお訊きしてもいいでしょうか?

【交渉に関しては素人であるらしい。自然な流れを作らず話を切り出してきたのだから先の様に失敗したのだろう】
【更に雰囲気までがらりと変えてしまい、鋭い空気を漂わせたままでは相手が敬遠してしまうかもしれない。致命的であった】
【どう答えても問題は無いだろう。背伸びだけで気分転換が出来たのだから、収穫なしでもまた直ぐに機嫌が直るだろう】

/すみません! 人違いでした!
/特定のPCを待っていた訳ではありませんので、こちらは問題なくロールを続けられます!
/つきましては、139の【】内の最後の文を無視してくれると助かります!

/改めて、よろしくお願いします
142 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/10/02(日) 21:08:53.59 ID:itNB7AgM0
>>141

あら、そう? 暑いわ、日が当たってるからかしら。

【もう一時間近くも背中をあぶられているせいか暑いと認識していた、確かに吹き抜けていく風は少し涼しかったが、すぐ横を人々が通っていけば、なんだか暑苦しい】
【テラス席のいいところは風が吹くことだけれど悪いところは外気温に影響されるところ、あと、日光を浴びている限り真冬でもなければ暑いところ】
【店内をちらと見遣れば混みあってぎゅうぎゅうになっていて、それを見れば外はなんと涼し気だろうと思うのは、少し失礼な話かもしれないが】

あそこのモンステラ、ホコリが積もってたわよ、かわいそうね。置いたはいいけど、きっと興味がないのね。

【眺めたついでに視界をかすめた観葉植物について呟くが、別段大した意味もない。相手がこちらを見ているのに気づいても、自分のペースで、そのまま視線をそらしてしまって】

何にも知らないわよ、ニュースで知ったくらい。家だって別に近くないの。

【「遠くもないわ」とは付け足すが、尋ねられたことに対して答えは簡単、知らない。それも、興味があるけど知らない……とかいうレベルでもない】
【知らないし、興味もない。知らないからこそ、些細なことも別に知らない。すっかり汗をかいたコーヒーのコップを紙ナプキンで手遊び程度に撫で、滴を落とし】

知りたいなら自警団にでも行ったらどう? そこらへんの一般市民捕まえるよりも効率的だと思うわ。それに、ただの花屋が全部知ってたら面目丸つぶれよね。

【情報は持ってないから、答えようもない。そんなに知りたければ自警団に行ったらどうかなんてある種至極まっとうなことまで言うから、性質が悪い】

ただ買い物に来ただけなの。合流するからどこかで待ち合わせしたいっていうから待ってるけど来る気配もないだけの一般市民よ。

【面倒ごとに関わりたくない……そんな気配を感じ取ることさえもできただろう。その気配に気づけば、もし何かを知っていたとしても、多分、めったに口にはしない】
【まして本当に知らないのだから口にしようもない。――となれば相手の行動は完全に空振ったと等しく】

143 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/10/02(日) 21:47:49.42 ID:ZBkOuR+j0
>>142

そうですか……すみませんでした

自警団の人も遠距離から潰したから良く覚えてないとか、間近で見た自警団の人は今カウンセリングを受けているみたいでちょっと……

【またもしょげ返る。そのままメモ帳に何かをさらさらと書き記す】
【覗き見る事が出来るならばそこには『アークトゥルス目撃:未確定情報と断定』と書かれている事が分かる】
【謝罪の時は慎ましくしても、書いている時は何かが吹っ切れた様に気分を直してしまう。手詰まりと分かったのらしい】

そう言えばそうでしたね
前に頂いた薔薇、お客さんに好評ですよ

【少女は相手の立場をようやく理解して、話まで別の何かにすり替える。お客さんと言う言葉からこの少女が何か職に就いていることが分かる】
【そしてどうやらその薔薇は今も咲いているらしい。店の名前を聞き出せば、もう一度薔薇が見れるかもしれない】
【頬杖ついてにこにこと表情を放射する。少女の方にも話題のストックがある事を暗に示している】

私は、飛行機待ち
夕方の飛行機で櫻の国に行くところ。朝には着くかな

【自分から嬉々として状況報告をする。少女にとって櫻の国に何か良いものでもあるのだろうか】
【或いは相槌を打つ為に雰囲気を合わせただけなのだろうか。取り敢えず陰惨な空気が纏わりつく心配はしなくても良い】
【これ以上は相手の出方を待っているらしく、相手から話さない限り自分から話さないらしい。何を訊いても問題はない】
144 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/10/02(日) 22:08:32.55 ID:itNB7AgM0
>>143

別にいいわ、知らないのに食い下がられるよりはよっぽど面倒じゃないもの。

【口にする言葉はあるいは冷たいとかいわれてしまいそうなほど、知らないのだといって信用してくれるなら別に気にしないと、返す意味合いは、あんまり親切ではない】
【カウンセリングを受けているのだと聞けば「それは大変ね」というもののあんまり表情が変わらない、実際をよく知らないから、それがどういう状況であるのかとか、それさえも】
【よく知らないのだろう。だから、街中で爆発が起こったとか、ひどい火事も起こったとか、そういうことしか知らなくて――カウンセリングの意味合いまで、つながってこない】

そう、よかった。長持ちしてるのね、家に置いておくとかえって枯れるの。きっと私が無意識で枯らしてるのね。

【渡したバラ――何色だったかと思い返すが、よく覚えていなかった。長持ちならいいわねと相槌を打ってみせる】
【そして続ける言葉からは、つまり同じように作ったバラを飾ることもあるらしいが、それは枯れてしまうらしい、というのも伝わって】
【「忘れた方がいいなんてよくあることよね」と呟く。――そういえば幼馴染の少女に渡すバラも、家に置いておくより長持ちしているような気がした】

……あら、櫻に行くの。いいわね、季節外れの花見かしら? けど、遠くまで行かなくたって秋に咲く品種もあるのよ。……でもあれは地味かしらね。
母が櫻なの、行ったことはないわ。遠いものね。それに仕事だって休めないし……そうね、夏は暇だけど、終わったものね。

【いいわねだなんて言いつつあまり喜んだようにも見えない、それでも無関心ではなく、いつか行ってみたい……程度に興味があるようには見える】
【どうでもよさそうに続けた後に自分の言葉で地味だと言いきって終わりにする、さらに続けるのは世間話な声音で自分の大雑把なルーツと、それから、もっとどうでもいい話】

一昨年の終わりくらいに知りあいが櫻に行くって言ってはしゃいでたの。土産はもらったけど、それだけね――。

【櫻に関するエピソードはこれくらいでネタ切れらしい。さっき拭いた滴もすっかり元通りに滴っているコップを手に、コーヒーを一口、二口、飲んで】
145 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/10/02(日) 22:35:19.20 ID:ZBkOuR+j0
>>144

うーん……花見目的じゃないけど、そういうのも良いかも
秋なら紅葉、銀杏、サツマイモかな

【しれっと食楽の類が混ざったラインナップであった。品種によっては胃にもたれる程の甘味づくしであった】
【少女の考えとしては紅葉銀杏は並木を見て楽しみ、サツマイモは焼いて楽しむ。大凡櫻の国の文化圏の知識であった】
【恐らくは少女も櫻の国に縁のある人間なのかもしれないが、次の相槌を打った後の言葉がそれを否定する】

櫻の国は私の故郷に似ているって良く聞くから楽しみ……あ、櫻の国は私も初めてだから、お土産は変なのになるかも

【未知への旅に心を弾ませる。或いは冷めたココアが喉に心地良いのだろうか。三回に分けて飲み干す】
【その後にまた伸びをする。この少女も気づかぬうちに疲れが溜まっているらしい。心が体の不調を上回る、故に上機嫌なのかもしれない】
【口を開くと本当の目的をさらっと口にする。例え相手も自分も分からない言葉を使おうが、鈍感という病が流れ留める事を許してくれない】

九絵研究所に行くの
何となくだけど、この言葉が頭に引っかかって、気になってね

【九絵研究所。口頭であれば地元の住民でない限り中々聞かないものであるが、携帯端末にかかればそうはいかない】
【少女が差し出した画面には九絵研究所の概要が書かれている。Lost Magic Resource(世界創造不足分魔力資源)の行方を究明をする公的研究機関】
【7年前の襲撃事件で研究員が全滅し、機関自体が消滅。周囲の九絵村も含んで現在政府が立ち入り禁止区域に指定している】
146 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/10/02(日) 22:48:16.30 ID:itNB7AgM0
>>145

あら、櫻だなんて言うから、花見に行くのかと思ったわ。年がら年中満開だなんて学者泣かせよね、いい子ね。

【学者をいじめて泣かせてやろうという意図でもないけれど、なんら意味もなく口に出す。いっそ櫻に銀杏や紅葉がある印象が薄かったのかもしれない、とか】
【だけどないはずなんてないのだからこちらの思い込みみたいなもの、少し時間を置いて考えれば、常識的に考えれば紅葉や銀杏の時期だったし】

サツマイモは収穫した後しばらく置いておかないとまずいわよ、さっき掘ったようなのは期待すると裏切られるって、覚えておいたほうがいいわ。
それとも最近のは収穫した瞬間に美味しいのかしらね、野菜は専門外なの。あんまり――、

【お芋を掘りました、ふかして食べます、あれマズイ……よくある話である。とはいえ店で食べるのであればさすがに問題ないだろうけど】
【というより食べる専であれば気にすることもないだろう――、芋掘りでもするつもりなら気を付けてねと余談めいた、本当にどうでもいい忠告】

……さあ、知らないわね。観光地まではよく知らないの。観光地でなければなおさら知らないわ。

【言われた場所の名前については知らないとすぐに差し込む、知っているかと聞かれないようにの予防線にも似て、見せられた端末は一瞬見るのだけれど、】
【さっきから定期的に行っている仕草がすぐ後に続く。……すなわち自分の携帯電話の時間と通知を確かめる。まだ待ち人は来ないし、何か反応があるわけでもない】

立ち入り禁止だって言うなら、行かない方がいいんじゃないかしら。

【何もないのを確認すれば、視線を戻しつつ、そんな風に呟く――またコーヒーを飲んで、滴で濡れた指先を、紙ナプキンで拭った】
147 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/10/02(日) 23:12:42.16 ID:ZBkOuR+j0
>>146

うん
だから最初は周囲の地域で聞き込みになるかな

セキュリティーが老朽化して入れそうだったらそれなりの準備もしてきたし

【床に置いてある長鞄を揺らすと様々な種類の物音が聞こえてくる。それこそ容積を鑑みれば野宿できそうなレベルである】
【飛行機の検問に引っかかりそうな気がするが、果たしてこの少女はそこまで頭がいっているのだろうか】
【携帯端末のインターネットブラウザを閉じると、電源を消してポケットにしまい込む。メモ帳やペンまで片付け始めている】

もうそろそろ飛行機の時間かな
相席、ありがとうございます。前の薔薇のお礼に良ければどうぞ

【それは一本の古鍵であった。少女曰く、前の魔物退治で大活躍した代物らしい。今までは唯の鍵であったが、退治以降ある性質を帯びるようになったらしい】
【宿屋の柱に住み着いていた筈のシロアリがぱったりと姿を消し、宿屋の主人が管理する菜園にイナゴが寄り付かなくなり、野宿中に藪蚊・蝿に集られなくなった。という】
【どうやら家を害する虫の進入を防ぐ護符の力を得た鍵であるらしい。受け取るかどうかは相手に委ねられている】

それじゃあ、またね

お土産も出来るだけ考えて選んでみます。少なくとも採れたてのサツマイモは避けておきますね

【カップを持ってカウンターに行こうとする。呼び止めることは可能であるが、少女からすればどちらにせよ特に問題はないらしい】
148 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/10/02(日) 23:30:59.29 ID:itNB7AgM0
>>147

【モロに犯罪めいたことまで考慮に入れている少女のさまを見て、わずかに目を細める。……けれど、すぐに、深入りしないというか、気にしないというふうな様子になって】
【他人のなすことに口を出すのも面倒くさい……と思う。分かっていてやるのならいっそう。なんせ畑に除草剤を撒くと言い張る人間が居たとして、もう畑など仕舞うのだと思う】

そ、気を付けて行くのよ。出先で怪我でもしたら面倒くさいわ、気分も台無しよね。

【飛行機の時間であれば引き留める理由もないだろう、それからそう続けて、またコーヒーを飲んで――もうだいぶ減らしてしまったけど、音沙汰はないまま】
【それだからなんとなく間を埋める程度のつぶやきとして、「私も休みでも取ろうかしら」なんて漏らす、そういえば旅らしい旅というのを、したことがないし――なんて思考】
【それなら適当に近所でだらだら過ごした方が楽だし面倒くさくないとすぐに脳内で結論付けて。……礼だなんて相手が差し出せば、ちらと見て、一瞬黙るようにしてから】

……まあいいわ。ありがとう、置いておいてくれるかしら。今手が濡れているの。

【机に置いて行って、と、返すのだろう。紙ナプキンで手をぬぐうがすでに紙ナプキンが濡れている。すぐに手に取らなかったのは、それがどういったものか分からないから、か】
【どうして鍵なのか、その鍵が何であるのか、知らないものだから。――意味でも知れば少しは態度も変わったのかもしれないけれど、現状、よく分からないもの、という印象】
【知りあいだから受け取ったという様子だった、一応受け取った以上棄てはしないだろうけど――、かわいらしい態度、とは程遠く】

ええ、気を付けて。

【それならそんな言葉で相手を見送る――自分はまだこの場にとどまるつもりであるらしい。待ち人が来ないから仕方ないには仕方ないのだけど】
149 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/10/03(月) 01:57:50.29 ID:L/KCfshb0
>>147>>148
/いらっしゃらないようですし、時間も時間なのでひとまず落ちさせていただきます。お疲れさまでした。
150 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/10/03(月) 07:06:59.46 ID:T7y0lNsV0
>>148 >>149

【相手の別れの挨拶に会釈をして、長鞄を背負い直す。コーヒーカップも持ってカウンターへと向かう】
【少女は給仕でもないのに食器をカウンターに返していく。対応した店員の目が丸くなるのを見てようやく自分が何をしているか気づくのだろう】
【店を出るのにもう一度相手の視界を横切る事になる。少女は先の席に一番近いた処で小さく手を振って更に別れの挨拶を重ねる】

【急いでいるのか、恥ずかしかったのか赤面しながらそそくさと店から出ていく。後はその席に静寂が戻る】
【依然店内は賑やかで、その席だけが静かになろうが店内全体が静かになるわけではなく心なしか喧騒が大きくなるだけとなる】
【相変わらずの噂話に花を咲かす人々。先の若者達の姿はもうなく、嫌に不謹慎な会話を聞かずに済むのだけは救いかもしれない】

『そこ、いいかしら?』

【少女の座った席に壮年の女性が座ってくる。相手の了解を得る前に席を確保してくる辺り比較的太々しい】
【数十秒してから給仕が来るとコーヒーが置かれ、それに手をつけ始める。その前も後も女性から話しかけてくる事は無い】
【コーヒーの香りを楽しむと、美味であったらしく漸く柔らかい笑みを浮かべる。どうやら此方が本性であったのだろう】

【この女性は少々タイミングが良すぎであった。何故なら周囲の席にも空きが一定数あり、中には若者達が丸々開けたテーブルといった座りやすい席なんてものも存在する】
【更に少女が店内から去って一つ間隔を開けて相席を頼んで来たのだ。この女性には何かがあるのだろう】
【女性は座ってきた当初から少女が置いていった古鍵にチラチラと視線を向ける。物珍しさという顔ではなく心配そうな顔でそれを覗き見る】

【この鍵をきっかけに女性に話しかけた場合、この女性と先の少女との話が聞けるだろう。女性はこれに関して後ろめたい事は無いらしい】
【或いは無視してそのまま席を立ったとしても呼び止められる事は無い。女性はある目的と同時にコーヒーを楽しみに来たのだからもう十分に満足しているらしい】
【ゆるりとした時間が流れ続ける。忙しく話の花を咲かせる背景と比べて情報量の少ない席では脳の処理にアイドリングが挟まっていく。ぼんやりと過ごせる雰囲気であった】

/予期せぬ寝落ちで待たせてしまい、本当に申し訳ありませんでした……
/続行でも終了でも取れる内容ですのでどちらを選ぶかは其方に委ねます
/返事もいつでも構いません、お手数おかけしてすみません
151 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/10/03(月) 16:37:16.75 ID:L/KCfshb0
>>150

【少女に手を振られても彼女は手を振り返さなかった。ただ目で見遣りそれを返答として、そのままいなくなるのを見届ければ、また携帯に目線を落とす】
【さすがにそろそろ起きやしないかとアプリを起動させ何か打ち込もうとした矢先、その目の前でちょうど既読のマークがポップして、】
【その数秒後に着信、そのまま通話ボタンを押してやれば、珍しく焦ったような声で「寝過ごしました」とか、だいぶ前から知っているような言葉が聞こえて来る】
【以降もその人物にしては珍しい失敗に自分でも焦っているのか言い訳を聞かされている中で、さらに知らない女性に座っていいかと聞かれれば、空いている手でどうぞ、とだけ示して】

どうでもいいわ、早く来てくれない? コーヒーの飲みすぎでカフェイン中毒になりそう。

【デザインばっかりを重視してうかつに体重をかけたら壊れてしまいそうなイスの背もたれに体重を預ける、また少しいやな音できしむが、それは無視して】

もうずっと居るのよ。追い出される前に来てちょうだい。

【だなんて喋っている。女性もまさか電話中の人間に話しかけてきやしないだろうし、そうでもなければ、電話中に新たに女性に話しかけることもないまま】
【やがて電話を終えればため息交じりに携帯電話を机に置いて。濡れた紙ナプキンで画面をぬぐうが、三秒で後悔したかのように、濡れた画面を服の袖で拭って】

【コーヒーを一口。もうだいぶん量も少なくなっているし薄まっている、最速で家を出た場合何分くらいかを考えたけれど、それなら新しいのを頼むのも、無駄になりそうで】
【仕方がないとまた薄まった液体を一口。さすがにコップの汗かきも収まってきたけれど、濡れた指先を数秒気に食わなげに眺めて】

…………。

【話しかけてこないならば、こちらからの話題も特にないのだろう。最初一人の頃にそうしていたように携帯電話をいじりながら、ただ、】
【ときどき相手が古鍵に視線を向けているのをなんとなしに眺めている瞬間もある。それは彼女からすれば、全く何かも分からないものを渡された直後、】
【食事時も少し過ぎたか空いている席もあるのに知らない女性がわざわざ訪れ、ずっと見ている、だなんて、変な状況】

欲しいんだったら持っていっていいわよ、どんな物か知りやしないけど、呪われてはいないんじゃないかしら。

【ちらちらと見ているからといって知らない女性が来歴を知っているともとくには思わない。ならば欲しいのかと簡単な思考回路、あるいは雑なそれ】
【全く知らない女性と見た目から判断できるジャンル以外を全く知らない物について語るほど会話に困窮しているわけでもないなら、あっさりとその所有権さえ譲ろうとし】
【それだけ言えば要件は終わりであるかの様子。――まだ空いている席に置いていた鞄を膝の上に移動させる、向ける紺色の視線は、不自然な女性をわずかに警戒しているようにも見えた】
152 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/10/03(月) 17:57:45.02 ID:T7y0lNsV0
>>151

『それなら私もあの子から貰ったよ
これ持ち歩いて以来、宿に害虫が寄り付かなくなって吃驚だよ全く』

【ふっと笑って、壮年特有のやや嗄れた声で受け答えする。左手でひらひらと鍵を見せるがそれのせいで逆に見え辛くなっている】
【話し疲れたのか何か心配事があるのか、話し終えた後溜息をついている。コーヒーを一口飲んで話しの続きをする】

『ああ、すまないね
私は水の国でしがない宿屋をやっているおばちゃんさ。ついでにあの子の雇い主で、保護者さ』

【そう名乗った女性はコーヒーを呷って飲み干すと椅子に深く座り込む。長年の激務の表れかよく見ると猫背になっている】
【再び鋭い視線を向けると、何かを感じ取ったのかまたもふっと微笑して緩和した空気のまま言葉を継ぐ】

『あの子は正真正銘私の娘だよ
7年前に九絵村から命からがら逃げて来たあの子を拾って以来、ずっと育ててきた

今日ここまで付けてきたのはあの子が心配だったからよ』

【そう言って、ジッポを取り出すと火をつけてそのまま持っている。タバコを取り出す気配は無い】
【彼女が経営する宿屋の常連客は、彼女の事を火をつけるだけの癖から『煙草の未亡人(ランプライター)』と呼んでいるという】
【不敵な笑みを浮かべて『煙草吸うかい?』なんて事を口走っているが、どう見ても冗談であった】

【ジッポはテーブルに置かれ、長話をする体制を整えた。手を組み鋭い視線を向けているが、別に相手からの質問を咎める気は無いようだ】
【老人の長話は本人が満足するまでひたすら続くとは世の常識である。それこそジッポがオイルを吸い尽くすまで続きそうな予感がするだろう】
153 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/10/03(月) 21:26:44.23 ID:L/KCfshb0
>>152

……あらそう、それはそれは不自然ね。

【相手の話は信じているのか、いないのか。変な女性を警戒しきりの彼女は、さっき少女と喋っていたときとは違って、手元の携帯電話の画面を点灯させたまま】
【だからといって特別何かを見ているわけでもないらしいが――ちらりと横目で時計を確認して】

あら、いい話ね、泣いちゃいそうにいい話だわ。

【到底そんなことを思っているような顔でもない、が、仕事がら老人の長話の性質は、よく知っていた】
【悪いと思って聞く姿勢を見せたら終わり、仕事中だろうと数十分とかは放してくれなかったりする――ある意味、害虫よりもうんざりするもの】
【仕事中だからといっても聞いちゃくれない人も多い。まして今は仕事中ではなく、待ち合わせ中だといっても、目当ての人間はまだ来ない……となれば】
【最悪待ち人が来れば無理やり切り上げられるだろうとは推察しつつも、なるべく興味のない顔をしてみせている】

煙草はもうやめたの。お金もかかるし、いいことは何にもないわね。
もう持ってもないわ、――残念ね。

【ちらりと何かを探す視線は壁に張られていると思わしきものを求める、そもそも吸わなくなって以来、そういうものに対する意識はずいぶんと低くなっていたけれど】
【室内の席との境目ガラスに張られた張り紙には煙草に関する記述が書かれている。……すなわち、屋外席では吸ってもいいが、時間によっては禁止だよ、と】
【そして今は大丈夫な時間であるらしい。となればルールを盾にもできず、代わりに薄まったコーヒーを飲むにとどめて】

/申し訳ないです、ちょっとパソコンが使えない状態になってまして……
154 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/10/03(月) 22:07:19.24 ID:T7y0lNsV0
>>153

『ふん。この火は亭主の顔を立てるためだけの火さ。煙草好きにはクソ野郎だろうが火をくべてやれ……あんたがそうじゃないなら、どうでも良い話さ』

【手をひらひらさせて困惑している。まさかこんな冗談に引っ掛かる奴がいるとは、と言わんばかりの顔である】
【常連客にしか相手をしなかった女性の狭量な部分が滲み出る。自覚しているのだろう、それ以上はつつかない】

『あの子の荷物を見たかい? あんなに物を詰め込みまくってさ、しかも今朝にはあの子の部屋が妙に片付いて吃驚したよ

まるで、今日にでも死にに行きそうで居ても立っても居られなくなっちまって……それも気が変わったよ

あんたとの話を覗いて悪かったと思う。お陰でまだまだ余裕があるのが分かって安心したよ』

【鋭い視線はなりを潜めてすっかり毒気を抜かれた表情を浮かべる。ジッポの火を閉めてポケットにしまい込む】
【この女性は言うだけ言って去るつもりのようだ。周囲に気を遣う少女とは対照的にカップを置き去りにして席を立つ】

『柄にも無い尾行(マネ)はもうお終いさ
おばさんは大人しくあの子の帰る場所を整える事に専念するよ

あんたもヴァディス郷に来た時には薔薇を見においでな。今日の詫びにいくつかサービスしてやるよ』

【いつの間にかテーブルに置かれた名刺には住所と『宿屋 ナオス』『シズカ=フナト』という記載があった】
【暗にうちの店をご贔屓にと告げている。押し売りを終えた女性はそのまま歩いて行こうとする】
【一声程度なら返してくれるだろうが立ち止まる事は無い。もう背中しかみえない位置関係でひらひらと手を振り別れの挨拶をしていた】

/了解しました
/続行が難しそうなら置きスレに移行や凍結しても構いません
/こちらも後1レス程度で終了になりますが、無理せずにどうぞ
155 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/10/03(月) 22:32:18.21 ID:L/KCfshb0
>>154

あら、嫌いじゃあないのよ。別に好きでもないけど。知りあいが嫌がるからやめたの。ただのそれだけ――、……。

【本来切りだそうとした話じゃない方に触れて話題を逸らす、どうでもいい話を拾って本題をさせないやり方、褒められたものじゃあないが、よほど悪くもないはず】
【画面にポップした新規メッセージの通知をちらりと横目でだけ流し見る、――知りあいというのも別に嘘ではないし嘘は言ってないものの、ただ本当にも見えづらい】

そうね、尾行だなんてしない方がいいわよ、覗き見た結果にお互い不幸になったら意味ないわよね。
用事があったら自分から言うんじゃないかしら。知らないわ、面倒くさいもの。

【盗み聞きについてはどうでもいいような態度、それ自体を不快に思った様子もないが、かといってこの邂逅を歓迎しているようにもあまり見えない】
【となると感情が薄いようにしか見えやしない、もっというと、感情を動かされることを面倒くさいと思っているような節さえあって】

休みと気分が合致したら考えておくわ、でも宿屋に用事はないのよ。これからは忙しくなるの、十月だしおもちゃかぼちゃを売り捌かなくっちゃいけないのよね。
もう少ししたらクリスマスとお歳暮ね、休んでる暇だなんてないの、行ってる暇があるかしら。

【行かないではない……が、宿屋に泊まる用事も、あんまりない。だから返事を断言しない、というより、どんな用事だろうと断言しないタイプのように思える】
【気が向いたら行くという言葉通り本当に気が向けば顔を出すかもしれないし、向かなければ年単位で向かないかもしれない、そんなあいまいな答えを投げ】
【宿屋の書き入れ時がいつだかは知らないけれど、自分の書き入れ時は年末である、と、少しうんざりしたような声で続けて、】

そ、お気をつけて。

【立ち去るというならこちらも止めはしない。待ち人もそろそろ来るらしいし、ちょうどはけてくれて助かったという様子でもある――そのまま相手を見送って、さらに少し後】

「……あの、天音さん。アラームをかけたのですけれど、……」

【ようやくやってきた待ち人のいいわけを聞かされることになって、今日初めて露骨なまでにうんざりとした顔をしてみせた、とは、余談】

/おつかれさまでした!
/長くお待たせしてしまってすみませんでした
156 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/10/03(月) 22:59:54.14 ID:T7y0lNsV0
>>155

『ふっ……知っているわよ

それぐらいは』

【ありとあらゆる意味にも取れる返事をして今度こそ姿が雑踏に紛れ消えようとする。そこに数人の自警団が駆け寄ってくる】

『失礼ですが、この街に密入国者が出ていると通報を受けまして、その特徴があなたに合致しているのでお話が聞けないでしょうか?』

『あら、やだわ……あたし、この国の人間よ。ほら、これをよく見なすって』

【女性の赤銅色の双眸が真紅に輝いたような気がする。ほんの微量の魔力の変動を感じ取った人はいるのだろうか】
【女性が渡した紙切れを見て自警団が情報を照合する。ホシを目の前に張り詰めた空気をしていた自警団達がその緊張を解く】

『失礼しました。それではお気をつけて、ご婦人』

『ふふ、あんさん口が上手いねぇ』

【女性は何事もなかったかのように包囲網を突破していく。後はそのまま列車に乗って宿への帰路についていく】
【後で分かった事であるが、この女性は戸籍情報に限り偽造公文書を認可させる認識阻害系の能力者であったらしい】
【この力で九絵村出身の『片桐木花』を養子にして政府の目から逸らさせ、水の国に亡命したのだという】

【遠く、相席の人は待ち人に無事会うことができた。対して女性と少女の再会についてはその未来を約束する事は出来ない】
【それでも女性は亡き夫と大切な一人娘の為にジッポの蓋を開く。あの人達が道に迷わない為に火を灯し続ける】

/こちらこそ、寝落ちしてしまったにも関わらず2日間のロール続けて下さりありがとうございました!
/それでは、お疲れさまでした!
157 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/10/09(日) 21:53:43.99 ID:8X541kEM0
【街中――児童公園】
【ジャングルジムに滑り台、鉄棒に発条のパンダ、公園らしいものが一揃いと、小さいながらも丸太で組んだ東屋】
【子供はとうに帰った後の場所、――そもそも雨がずうと降って寒かった今日は、きっと子供はここには訪れなかったのだけど……】

――――、……、――、はっ、!

【結構前に雨の止んだ時刻、少しぼろっちくなりつつある東屋の机に突っ伏して動かない影は、もしも誰かが見ていたなら、雨の降りだした頃から、そこに居る】
【急に雨が降ってきたから慌てて逃げ込んで、雨宿りをしていて――、どうやら、そのまま、すっかりと寝入ってしまっていたらしいのだけど】
【きっと誰もそこまで見て居なかったなら、東屋で本気で寝ているばっかりの少し変な人影、ある段階でがば!と跳ね起きる時間は、とうに暗くなった頃】

わ、わ、? ね、寝てた? 寝て……えっ、

【狼狽えながらあたりを見渡す、そのおでこにはぴったり腕で圧迫された後が赤く残って、慌てて机に放置していた携帯電話で時刻を確認、して】
【あどけない顔を失敗したというか、やらかしたというか、そういう感じに変えていく。……うわーとか呟いて、机にまた、べたーと身体を預ける】

【腰ほどまで届く長い黒髪に色白の肌、瞳は左右で色が違って、黒色と赤色。おでこには腕の痕がくっきりついていたけれど、徐々に消えつつあって】
【リボン飾りのたくさんついた赤いワンピースに生成りのケープ。ふんわり膨らんだスカートの端っこにはこちらも少しぼろい椅子の屑が引っかかって揺れ】
【リボン飾りのついたつま先の丸いパンプス――まだ歳で言えば十六ほどに見える少女。すぐそばには鞄が置きっぱなしなのを、今更思いだしたように中を確かめてから――】

……冬まで眠っちゃったみたい……。

【寒い、と、小さく呟く。ちょっと後悔しているみたいにうな垂れて、はーとため息を吐いている彼女は、ただ、まだそこに居座るつもりであるらしい】
【多分彼女は知らないのだけど変な子がずーっと公園で寝ているだなんて近所の主婦が話していた、それでも一応鞄の中はそろっていて、よっぽど治安が悪いわけでは、ないよう】
【それでも――時刻は遅くなりつつあって、特に用事がない人間は出歩かない時刻になりつつある。それなら、もしかしたらということも、きっと、十分にあって】
158 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/10/09(日) 23:20:18.10 ID:7AOGfYy60
>>157

【乱打する雨が止んだ後、ぬかるんだ地面の上に6拍の足音が刻まれる。澄んだ空の下ではどこまでも響きそうである】
【日の光はとうに落ちて公園にはもう賑やかさの一欠片もない。高く幼い鼻歌でも夜の公園を明るくする事はできない】
【長鞄を背負った金髪の少女と、上機嫌にふんふんと歌う入院患者のような簡素な服装の幼女が並んで歩いている】

月の光が浴びたい時は何時でも言ってね

『おねえちゃん、ありがと』

【幼女は時折目を擦りながら少女に眠気を訴えかけてくる。少女もその視線を感じて休める場所を探す】
【公園の中の東屋を見つけると、そこに向かって幼女の手を引いていく】
【東屋に着き幼女を先に椅子に座らせると、雨水の滴る傘を壁に立て掛けて長鞄を地面に置いて椅子に向かう】

ちょっと失礼します

【先客に向かって一応の挨拶を済ませてから椅子に座る。同時に幼女の方の体力が尽きて少女の膝を枕にして眠り始める】
【少女は幼女の頭を撫でて一息つく。眉はハの字に下がっているが、幼女の気持ちよさそうな寝顔に優しい視線で返す】
【少女はふと虚空に向いてこくりと一回頷く。何の意図か分からない返事を恙無く終わらせると、漸く先客の視線と合う】

と、冬眠……ですか?

【飲み込めない言葉を鸚鵡返しして意味の消化に努めようとする。それは同時に端から見て声をかけているようにも見える】
【幼女の方はすやすやと寝息を立てて、本格的に睡眠を始める。多少煩くても起きる心配はどうやら無いようだ】

/まだいらっしゃいましたら、よろしくお願いします
159 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/10/09(日) 23:46:34.86 ID:8X541kEM0
>>158
/申し訳ないです、せっかく絡んでいただいたのですが、さすがに4連続めは続きすぎかな、と思いまして……
/人が少ないので仕方がないとは思うのですが、本当にすみません、またの機会にお願いできないでしょうか……
160 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/10/09(日) 23:55:59.93 ID:7AOGfYy60
>>159
/了解しました、それでは158は破棄という形でお願いします
/こちらこそ何度もすみませんでした
161 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/10/21(金) 21:00:32.53 ID:wXnQgEPY0
【街はずれ――廃ビルの屋上】
【冷たい風が吹くたびにどこかがぎいぎいと軋む音がする、赤く錆びた柵は虚空に向けてだらんと垂れ下がって、今にもちぎれて落ちそうで】
【遠くからならば見つけられる人影も近くからではどうとも見えない、けれど、ちらりちらりと風に乗って舞い散る花びらのような魔力片は別】

…………。

【もし誰かが登ってこようとすれば古びた階段がぎりぎりと軋む音がしそうなのだけど、たぶん、そうなったとしても、彼女は気づかないまま、そうしているのだろう】
【小さなビルだからそう広くはない屋上の真ん中、スカートの裾が地面につかないようにちゃんと気を付けた姿勢で、座り込んでいる人影。――その手元では何かが煌めいて】
【櫻の得物である刀。刀身をそのままさらした刀を古びたコンクリと両手でしっかりと支えて、じぃと、ひたすら、じっと見つめている、らしいのだけれど】

【腰まで届くような黒髪と頭にはリボンに結んだレースをあしらったヘッドドレス、丸い瞳は黒と赤、左右で色が違っていて】
【袖の広がった深い赤色のワンピースの裾はたくさんの布を詰め込まれたように丸く膨らんでいて、腰元には大きなリボン飾りが、尾っぽのように垂れ】
【丈の長い靴下と編み上げのロングブーツ、しゃがんだ足元は太くて分厚いかかとになっていて、そのブーツの後ろ足首のあたりにも、小さなリボン飾りが一つ】

やっぱり、……気にしてないと、出ちゃうのかな――、

【長い間そうしていたらしい少女はあるタイミングでくわと見開くくらいに刀を見つめていた目を閉じて、そのまま少し疲れたみたいに、首を後ろに倒して】
【ため息のように長く息を吐いてから視線を刀へ戻して、小さく呟く。――さっきまではただ銀に艶めいていた刀身から、気づけばしとしととあふれ出すような水が滴り】
【あっという間に少女の足元までもを濡らして、それでも足りないように薄く水面を広げていく。少女は小さくうなるようにしながら首を傾げて、】

……まあ、いっか。

【――そのうち疲れたように、雑なことに刀を支えにしてよいしょと立ち上がり。不用心にも刀を持ったままでぐうと身体を伸ばせば、――きら、きら、と、月明かりが反射し】
【姿勢を戻すのと同時に飽いた子供がおもちゃを投げるような自然さで刀を手放して倒してしまう、――本当に倒れこむ前に刀は無数の花びらのようになって、ぱ、と消えるのだけど】
【刀の水が垂れて濡れた手を揺らして水を払っている少女はひどく不用心ではあった。きっと無意識で散らしていた魔力片にも、まだ気づいていないようで――】
162 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/10/28(金) 17:57:20.80 ID:qicFeSJS0
>>161
/再掲しておきますー
163 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/11/09(水) 08:13:30.09 ID:LPlMBCB1o
>>161

【幽かな程の遠くからそれでも確かにこの場所へと、重たいヒールの靴音がいやに響いては古びた階段を軋ませてゆく】
【単調に機械的に登って来る何かを本能から拒むかのように建物全体が少しだけ震えた。ぞろりと背筋を凍らせるように】
【やがて相手の許へ辿り着く姿はその記憶に残っていたなら類似していて、けれど明らかに『彼』ではなくなっていた】

“ふ、ふふ、ふふっ、こんばんは、ねえ。もうすっかり忘れちゃったかしらね、それなら都合が良いの、邪魔も入らなければ尚更ね”

【何処かから伝わるような女の声で滔々と喋る、背高の男。塗り潰されたような黒の長髪、同様の瞳は左右で瞳孔の開き幅が異なる】
【男、いや、その意識は彼自身ではないだろうその何かは、黒い結晶の剣を夜の闇から黒い燐光と共に具現化させた】

【ゆらりと振るう先は相手へ、真上へ振り上げて真下に斬り落とすだけの何の殺意もない、じゃれ合いでもない一筋】
164 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/09(水) 11:16:35.97 ID:dFP+e6vY0
>>163

【立ち上がる、立ち上がって、感慨もなく手放した刀が散った残滓が、半分よりも少しだけ丸い月影に翻るとき】
【今宵で一番なくらいに強く吹いた風が長い黒髪を怒り狂う無数の黒蛇のように散らす、反射的にぎゅっと閉ざした瞳を緩やかに開く数秒後には】
【そこに人影がきっと増えているのだろう。――前述のとおり、きっと、彼女はその人物が近づいてくることに、気づいていなかった】
【初めてそこで見つけた存在に驚いたように目を丸くして数秒ばかし見つめている、けれど、今この瞬間にそれ以上はなく】

…………え、と、

【その代わりに相手の言葉にわずかに視線をそらして、眉を顰める。無意識に胸元で遊ばせる手は癖に近いが、この場合は警戒のしぐさと取るべきに見え】
【不明瞭に漏らす声はそのまま返事としてもいいくらい、誰と断定するだけのものを少女が持ち合わせていないという意味合いになる】
【背が高いなと思う思考はすぐにこんなひとを忘れるだろうかという自分への疑念へ変わってから、それなら、嘘ではないかと、相手をわずかに疑る思考へ変わり】
【お父さんに似ている気がする。そうは思っても死んだはずの人間、それに見れば別人でしかない。まして父親なら、こんな風に現れる必要など、きっとない】

えっと、

【欠落している自覚のある記憶の中を探す、けれど両親でさえもおぼろげな記憶は当てにならず、それなら、相手の正体は未だ分からない】
【けど相手が忘れたというならそうなんだろうと諦めにも近い感情が確かにあって、思いだそうとすればするほど、無駄なものが積もるみたいに、思考が鈍くなる気がする】
【小さな溜め息で気づけば伏せていた――相手からすっかりと外れていた視線を戻す。気づいたのは意識というよりも無意識に近くて、それなら、続くのも無意識に近い】

――、え、?

【最初は鳥でも落ちてきたのかと思った。ただ上からの落下にだけわずかに無意識を割いて、そっと身を引く仕草、でも、すぐにそうではないと気づく】
【さっきまで自分がいた場所の空気が縦に裂かれて、きょとんとした目が相手を見つめ返して――ざわと背中に走ったものは戦慄に似て、でも少し、違う気もした】
165 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) [sage saga]:2016/11/09(水) 12:02:38.99 ID:qkk2DhJEo
>>164

【虚空を割いた黒結晶の剣はそのまま地に触れる寸前で静止し、僅かに黒い燐光が薄ら汚れた床に舞い上がった】
【その後の男に動きはない。剣を振り下ろした体勢のまま押し黙る表情は、長い黒髪に乱されて視認が難しい】

“ふふ、ふふふ、嫌な風、私の邪魔をしたつもりかしらね? あの白蛇と同じ、その娘を護る、目障りな――”

……、ね。何故、

【女の声に重ねて、微かな低い声がした。上手く聞き取れない誰かの名前を呼び掛けて、静止していた男が相手へと視線だけを向ける】
【黒く塗り潰された瞳が一瞬だけ、くすんだオリーブの色合いへと変った。それも束の間、すぐに黒へと塗り直された視線は酷く昏い】

“……私の、私の彼にはね、あなたが邪魔なのよ。だから、死んで頂戴ね、お嬢ちゃん。私の物に絡み付く忌々しい小娘、”

【相手を穿つ為に構え直した剣は、脇腹を狙って鋭く繰り出される。近距離からの攻撃、視認してからの回避は苦しいだろうが】
【動作までには幾らかの余裕がある。その間に距離を置くなりしていれば、刺し貫かんとする威力のそれも躱しようがあった】
166 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/09(水) 16:56:08.74 ID:dFP+e6vY0
>>165

【奇妙な混乱が頭の中に残っている。常ならとうに切り替えられているはずの頭が、まだ、何かを迷っているように、思考を鈍らせているみたいで】
【胸の中で何かがちりちりとくすぶっているみたいな感覚があるけれどそれが何であるのかは知らなくて。考えれば考えるほど、覚えていない、では、ない気がする】
【けれどその気持ちにさえ確証はもてなくて。白蛇――その単語にぎくりと表情を強張らせる。誰彼に言っているものでもない、なら、自分が言ったのか】

どうして……?

【身体中に見えなくて痛くない針がうずめられているような錯覚、息をするだけでもごしょごしょと身体の内側をひっかきまわされるような】
【それとも全身の骨を一度取りだした後に荒くやすりをかけられて、雑に戻されたような。とにかく、ひどい違和感――、なぜと聞きたいのはこっちなのに】
【眼前の相手……あるいは二人いるのかもしれない、そのどちらもに誰であるかの検討さえつけられなくて】

あなたは、誰――、

【不安そうな顔は、相手に殺されるかもしれない恐怖ではない、知らない相手を、思いださなければいけないと思うことへの、不安】
【女の言葉が本当ならば思いださなければいけないのは男の方なのだろうか。黒い髪と黒い瞳は父親に似ている。長い髪と高い背は、父親にも、あの白い蛇神にも似ている】
【けれどそのどちらでもない。そうであれば思いだす必要もない。父親は死んだし、あの蛇ならきっと家に居ることだろう】

――ッ、! っ、あ、ぁ……。

【動作の前兆は見ていたはずだった。けれど、多分、それがそうだと認識はしなかったのだろう。動いてはじめて動作に付随する攻撃を理解して、反射的に身体だけを動かす】
【結果としては重要な内臓だけは外させて、それでも、いくらかの肉をえぐり取られる。相手の利き腕次第だけれど、右か、左か、服はすぐにでも赤くなる】
【それでも反射的に距離を取ろうとする動きだけがただあって、できるはずのこと――同じく相手を殺そうとするという手段を、なぜだか、まだ選ばない――あるいは選べない】
【傷口を押さえて少しずつ相手から距離を取ろうとする足が、自分が作りだした小さな水たまりで小さく音を立てる。心中の違和感と痛みとが、わずかにその目を潤ませて】

どうして……、どうして、わたしのことも、へびさまのことも、知ってるの? なんで……、

【相手の言葉をなぞるよう、音としてはごくわずか、なぜ、と、唇が動く。少女が普段使う言葉ではない、それなら、実際に言ったように、どうしてとか、言えばいい】
【それでもなぜだか相手と同じ言葉を繰り返して――叶っていたならば刃がすぐに届かない程度、それだけの距離で、相手の返答を待つようにするのだろう】
167 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/11/09(水) 17:44:23.84 ID:LPlMBCB1o
>>166

【男の利き手は左腕、相対して受けたならば、右脇腹を抉る事になる。貫いた感触に一瞬だけ男は酷く悲しげな顔をした】
【それも誤差の範囲で掻き消され、無言のまま剣を引き抜いた男は相手の言葉にただ茫洋と黒い瞳を返すだけだった、のだが】

……ね、鈴音。私は、■■■――

【くすんだオリーブの瞳が、真摯に相手を見詰めてそう低く顰めて呟いた。髪が深みのある紅茶色の赤毛へと変わっていた】
【自ら傷付けた相手の姿に、痛ましげに目を伏せるのが奇妙だった。気が付けばあの女の声は失せていて、ただ微かに気配を残す】

【――わざと、時を与えているのだ。彼がしたことを彼自身に見せつける時間を、その上で彼が話せるだけの時間を】

……もう、キミを苦しめたくなかった。けれど私の中で、キミは誰より大切な存在になっていた。それは赦されないことだのに、

【黒い燐光が男を包もうとするも、黄緑の燐光が拒否するようにそれらを弾き飛ばす。だが、抵抗は徐々に弱まっていった】

抗えないものに囚われているのが、キミも、私も……同じであるのなら。その運命からは、きっと逃れられはしない。だから、

【剣を握る力が強くなる、髪と瞳の色が徐々に黒へと染まっていって、抵抗していた黄緑の燐光の最後の一欠片が弾けて、】

……互いに忘れ去るしか、ないのだろう。今までの私達の全ても、この想いも。これ以上鈴音を縛るものは、要らない

【「だから、私を、殺して欲しい」】

【それが彼としての最後の言葉だった。再びどす黒い闇に塗り潰された彼はもう彼ではなくて、鋭く相手を見据えれば】
【再度剣を構え直して、空いた距離を一気に詰めようと駆け出す――足許の水溜りには、何ら気を払ってはいなかった】
168 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/09(水) 18:43:58.61 ID:dFP+e6vY0
>>167

【短く息が詰まる、痛みのせいか寒いのに汗がじっとりと浮かんで、一生懸命に気を張っていないと、痛くてうずくまってしまいそうになる】
【けれどきっとそれだけの時間はないし、もらえない。殺される前に思いださないといけない。知らないままでいたら、きっと、また、忘れてしまう】
【思いださないといけないことさえ忘れてしまう。知らなくても嘘でも少しでも欠片を集めないといけない。何か一つきっとこれという答えを見つけないと】

【いつだかわからない瞬間の記憶。何も考えられないままでぼうとしている自分と、その足元で、へびさまがなぜだかうずくまるほどに小さくなって、泣いている】
【どうして泣いているのかが分からなくて、訪ねたいのに尋ねられなくて、――その時も、いまと同じような、考えを邪魔するような違和感が、あった気がする】

……、どうして……。

【なぜそんな顔をするのかも、分からなかった。傷を押さえた左手が真っ赤になって少しだけ震えている、少しでも何かを知りたくて向ける視線は、すがるような色さえあって】
【いっそ知っているすべてを教えてほしいと思ってしまうほどに、頭の中には何もなかった。何重にもひかれた暗幕が頭の中にあるみたい、どこまで行っても、光が見えない】
【その先に窓があるように思うのも気のせいかもしれないと思うほど。きっと窓はあるはずという確証さえも矛盾して不確かで、でも、目の前の相手の言葉が、証拠のよう】

【誰も見てないものはその瞬間世界に存在していないと誰かが言ったみたいに、本当はあるものに幕をかけて隠されてしまったような気持ちになって】
【それを自覚して、ようやくそれだけを理解する。血の抜けていく感覚は何度やっても不愉快に思えて、わずかな吐き気を無理やりに飲み込んで】

違う、違うの、思いだせないの――、もう忘れられない、くらい!
――っ、どうして教えてくれないの、知ってるなら! わたしとどんなお話をしたの、どんな……、

【痛みと、違和感と、不安と、たぶん、少しだけ怒っていた。知らないままで忘れろとか、知らないままで殺せとか、思いだそうとしているのに】
【それなのに無視されているみたいに思えて、腹部の痛みが、よけいにその気持ちを強くする。元から高い声は荒げたらすぐにひっくり返ってもっと高くなって】
【どうしようもなく記憶が妨害されている。手探りでも見えなくて、それなら、なぜだか思いだされるのは四年か、五年か、ずっと前――世界中が真っ暗の迷路みたいだった頃】
【"へびさま"が助けてくれた。けど、少しだけ違う気も、今はするように思えて】

【詰められる距離に、ぎくりと身体を強張らせる。わずかにふらつくように後ずさるけれど、殺す気であれば、ほんの誤差にもならないほど】
【それとも近づけば気づくだろうか。服の内側に何かを仕舞いこんで持っている。少女のものではない魔力は風が空で渦巻くように自由な紫色をしていて】
【飾りとしての意味合いが強いスカートのポケットの中――それが何ということもないのかもしれないけれど、】

【きっと、腹部の痛みでとっさに動けない。らんと獣めいた鋭さにわずかな怯えを混ぜ込んだような視線の色合いはじっと相手を見据えて、初めて、少女本人の魔力がきらめいて】
169 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/11/09(水) 19:27:27.04 ID:LPlMBCB1o
>>168

“本当に馬鹿で哀れな小娘ね、わざわざそんな事を教えてあげるほど私ね、優しくないの。何も知らないままでいいのよ?
思い出すことは辛いでしょう? 思い出せないまま生きるのはもっと辛いでしょう? だからね、死んでしまえばいいのよ。お前がね!”

【怨嗟に塗れた女の怒声が夜闇に震撼して、何か大きなものの鳴くような地鳴りが聞こえる。男を介して喋る女の、本体か】
【間合いを詰め、踏み込んで剣を振り上げた瞬間に、相手の隠し持つ何かを男は察知した。が、踏み止まる事はなく】

【――しゃん、と。篳篥に鼓、それは唐突に、神楽の音が張り詰めた空間に響き渡った。振り下ろされた剣は相手の数ミリ上で静止して】
【剣と相手の間に、薄い紙っぺらが一枚挟まっている。それは人の形を模し、小さい和紙の身で黒結晶の剣をぎりぎり受け止めていた】

「酷いなあ、こんな事までする必要もないだろうに。全部忘れた小さな蛇に、巨大なドラゴンが喰って掛かるのかい?」

【二輪の車が天上から虚空の道を渡って来る、何に引かれているかも分からない櫻様式のそれは二人の側で停車し、御簾が上がる】
【中には扇を手にゆるりと笑む青年――黒ずくめの神主。いつか何処かの街中で会ったこと、相手は憶えているだろうか】

「……さて。この場は龍神の名を以て、この私が収めよう。西洋では、悪いドラゴンは勇者に退治されるのが通例だそうだがね?」

【「君は勇者になれそうかな」、そんなことを、傷付いた相手に微笑みながら青年は問い掛ける。割って入った割にひどく余裕げだが、】
【そんな青年の乗る車を覆い隠すような巨大な影が、月の光を遮って最早建物全体を翳らせていた。黒い燐光を纏った、一匹のドラゴンが】
170 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/09(水) 20:07:21.40 ID:dFP+e6vY0
>>169

――お前じゃない。

【まだ、思いだせない。目の前の男性が誰なのか、その声が誰なのか。暗幕をどれだけ搔き分けても向こう側が見えないのに、すぐ後ろで誰かがもうやめたらと言っている気がする】
【それでも低く歯列から漏らす声は、この場に置いて彼女が女の声ではなく、どこか父親や祖先に似る男性を信じると決めた証拠のよう。傷口をわざとぎゅうと握りしめて】
【その痛みも声のせいにする。集めた魔力で無理やりに傷口をふさいでしまって、血まみれの左腕を相手に指し示せば――ぞろりと、真っ赤に長く浮き上がり、まるで蛇のよう】
【もとは魔力で作られた血を魔力へ戻す。平時使役するものよりも多すぎるほどに多く魔力をつぎ込まれたそれはただ荒く怒っているように見え】
【ただ邪魔なものだけを溶かしつくしてみせろと、誰でもない、もしかしたら存在すらしない神に祈る。――たぶん、あの白い蛇は、もっと優しい神さまだから】

【――真っ白い髪をくちゃくちゃにして、へびさまが何度も何度も謝っていた。どうして謝られるのかもわからないけど、ずっとそれを聞いていた】
【きっと何か悲しいことがあったんだと思いながら、その悲しいことは自分のせいなんだろうな、と、その時は理解していた気がする】
【それもまたいつの記憶か分からないけど――いつ忘れてしまったのかもわからないけど】

【視界に割り込んだ白に、どこかテレビで聞いたことしかないような音がして。血染めの水蛇は変わらず相手をにらんでいたが、少女だけが視線を動かして、見やる】
【その顔は不機嫌や不満、あるいは怒りを煮詰めて固めたような表情になって、現れた人間もまた何か邪魔をするならというような攻撃性すら、孕んでいたけれど】
【相手を確認して、一応はそのだれかれ構わないようなものは収める。――というよりも、かっとしていた部分が、少し落ち着いたように見え】

…………、

【ひとまずそれが抑えられているようだと見たか、ほんの少しだけ――その切っ先がもしも動いたとして、すぐに届かない場所まで、そっと身体を引くのだろう】
【態度からすれば乱入者のことは覚えている。けど、かわいらしく笑って見せるような愛想がこの場にあるはずもなく、――左腕に尾を絡ませた血染めの殺意は、かわらず鋭く】
【けれど――現れたものを見れば、それが小さなものでしかないと、多分、ほとんどのひとは理解させられる。まして滅びたも同然の蛇の血で、叶うわけがないとも】
【それでも。さっきとは違う気持ちで、小さく祈る。――わずかな星明りを返したか、それとも自らで光ったか、右耳だけのピアス――宝玉の欠片が、きらと、きらめいて】

あれは、……、――あれは、誰なの、……どうしてわたしを知ってるの。
わたしは、……知らないままであのひとたちを、思いださなきゃ、いけないのに……。

【血の蛇が赤黒く巻き付いた左腕だけが、間違い探しの間違いのよう。ましてそこに宿すのが祟りに似ることに気づけるのなら、少女らしい見た目とは、明らかに違和感があるもの】
【それでも従えて、そう尋ねる声は、さっきよりもずっと落ち着いている。――というよりも、訪ねられそうな存在が現れたことで、安堵とは違うけれど、少し緩んだのだろう】
【結局子供みたいなところが目立って、まだ大人になりきれない。もしかしたらどうしたらいいのかも分かっていない。語尾はほんの少し震えすらして、それでも、爪が食い込むくらい、右手はぎゅっと握りこまれていて】
171 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/11/09(水) 20:36:37.12 ID:LPlMBCB1o
>>170

「彼は、君の大切だった人。そして彼女は、さしずめ彼を溺愛する毒母、ってところかな? あっはは、これでいいかなカヨ、ッ――」

【にへら、とあっけらかんにごく簡潔な、それで酷く真実な回答をした青年の車ごと焼き払ってやろうかというほどの彗星のような、】
【そんな漆黒の炎が、思い切り夜空から放たれた。黒いドラゴンの悍ましい咆哮が星ごと震わすように響き渡った】

【――その炎が、相手に触れることはない。ドラゴンに相対する者達をギリギリで護れる範囲内で舞うのは、蛍火にも似た黄緑の燐光だった】
【激しい気炎を更に激しく跳ね返しては散っていく魔力光の発信源、色を取り戻した男の左耳で、何かが小さく淡く光った】
【ウロボロスが囲む宝玉の欠片。かつて蛇神から預かった、彼女を護る誓いと共に。その力を解き放って、我が身の黒い呪縛を清めてゆく】

……ドラゴンを倒す勇者は、やはり私が、適役だと思うのだけど。何故ならそう――勇者は、囚われの姫を救う役割がある

「さっきまで囚われてたお姫様は誰かな? 何ァんてね、あはは、怒らないでおくれよ。それじゃあ宜しく、いい年こいた勇者くん」

【この場に何ら動じることのない青年の乗った車を一発蹴り飛ばしてから、男が乱れた髪を振り払う。紅茶色が舞って、ゆっくりと向き直る先】
【祟りを携えた点だけは少し記憶と異なっていたけれど、紛うことなどなく、その不安そうな立ち姿だけで判別がつくほど、知っている】

……鈴音。私は、キミを愛した男。誓いを分かち合った相手。この宝玉と、永久の契りを。今は、それだけで、大丈夫さ

【手にしていた剣は黄緑の燐光を放つ刀へと化していた。何処か櫻の気配を纏わせて、それでいて魔法使いの杖のような、奇妙な持ち手】
【黒炎が消え去った先、月光を覆い隠す黒いドラゴンに相対した彼は、瞳孔の開き幅が異なるオリーブの瞳を猛禽のように獰猛に輝かせた】
172 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/09(水) 21:19:06.48 ID:dFP+e6vY0
>>171

【なんてことないように告げられたことに、少女はひどく驚いたような……というより、理解がとうてい先のほうで揺れているのを見ているような、顔をするのだろう】
【けれど理解するより先に、なんだか重たい液体を飲んだみたいに、ぐるりと身体の中に嫌な気持ちが渦巻くように思えて――、気づけば、】
【左手にぐるぐる巻いていた蛇さえもさっきまでの攻撃性をなくしてしまったようになっている。欲しかったはずの答えは、それなのに、思ったよりも手ごたえがなくって】
【いまだに信じられないでいる、まだ、記憶のなかにある目隠しの手は、そのまま残っている。――、だけど、それが誰の手であるのかは、わかり始めた気がする】

――っ、!

【何もかも喰らってしまうみたいに黒い炎が渦巻いて、でも届かなくて、眼前できらめく黄緑色も――似たような色合いで思いだせるのは、青りんごの色、幼馴染の色】
【けれど全然違っていて、見覚えはないはずなのに、護ってくれたことにひどく安堵してしまう気持ちと、その気持ちに困惑する気持ちが、ないまぜになる】
【怖い、と、思った。漆黒の炎ではなく、知るひとが、本人までもが言う人間のことを思いだせないこと、いまだに知りもしないと思ってしまいそうなこと、】
【いろいろなことが重なっていって、理解が及ばなくなっていく。ざわざわとした不可視の針めいた不安はいよいよ強くなって、めまいさえもしそうなほどなのに】

【唇が小さく誰かの名前を呼んでいた。けれどそれはこの場に居る誰でもなくて、知る限りの誰よりも白い色を持った、きっと……今も家で自分を待っている、ひと】
【へびさまと唇の動きだけで呼んで、すがる。さっきまでは大丈夫だったのに、お腹の傷がひどく痛む気がした。――傷を固めた魔力がほころんでしまっている、とは、まだ気づいていなくて】

【なんだか急に弱気になってしまったようだった。けれどそれはさっきまでが一人で、だけど今は一人じゃないと、どこかで思い始めている証拠にも似て】
【それでもどれを信じていたらいいのかも、きっとまだ分かっていないはずだ。見覚えのある存在はいるけれど、それ以外は何もかもよく分からない、この状況】
【だけれど払われて舞った髪の隙間から見慣れたきらめき――どこに行ってしまったのかも思いだせないから諦めていた片割れ――が見えたのなら】

…………、ああ、

【あのひとの言っていることも、このひとが言っていたことも、多分、本当なんだな――と、まだ見えないけれど、そこに何かがあることを、ようやく信じられた、ような】

でも、

【今は――そう言われても、安堵はできなかった。名前さえも分からない、ひと。だけど、なぜか、その立ち振る舞いや仕草が、あの白蛇と、いやに似通う】
【まったく別の存在であると見て分かるのに、そのひとつひとつが嫌に似ていて――だけど、そう、今の彼ではない。少しまえの……数年前の、彼の振る舞いに、似ている】
【そもそもその一時だけ白蛇の振る舞いは別人のようだった。それに気づいてしまって、さっと血が落ちていく感覚があって、――震える手を、袖に、無理やり隠す】

【何かを言わなくてはいけない気がして、だけど、何も出ない。もう何年も水を飲んでいないようにからからになった口から、言葉とも取れない吐息が、数度漏れて――】
173 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/11/09(水) 21:54:20.02 ID:LPlMBCB1o
>>172

「ははっ、まあそうだよね、色々混乱してるよね。僕も龍神の名に於いて、なんて言っておいてアレだけどさ。正直言うと打つ手が無くて」

【二言三言何かを口にしている相手に、気遣うというよりかは傍観者として楽しげに青年は本当の所をさらりと打ち明けた】
【今は何とか黄緑の燐光に護られている、それは蛇神が託した宝玉の力で男の呪縛が解けたからで、青年は切欠にはなったかも知れないが】
【肝心要の、いま目の前に君臨する怒り狂った女の怨嗟の顕現――黒きドラゴンを打ち倒す手立ては、特に持ち合わせてはいないと言う】

「後のことは自称勇者さんに任せて、取り敢えず安全圏で見ていようか。君も怪我してるし、何よりほら。お姫様、だそうだから?」

【くすくす笑って青年が扇をついと振れば、ぺらぺらと人型が少し疲れたように舞って来て、相手の傷口にぴたと張り付こうとする】
【それを許したなら、清流を汲み分けたような魔力が傷口を修復しながら流れ込んでいく。龍神の力、というのは強ち嘘でもないようで】

【一方、黒きドラゴンと相対した男の表情は、二人に背を向けていて窺い知ることは出来ない】
【或いは見せたくない、が正しいだろう――歪んだ瞳孔が魔力光に爛々と煌めいて、それは完全な捕食者の目をしていた】
【魔物では飽き足らず幻獣を狩り、最後には仲間を狩って、只管戦いの中に身を置いた時間が人生の大半を占めている彼の、正しい姿】
【立ちはだかるもの全てを呪い殺して来た。唯一の例外、今再び目の前にいるのは、初めて彼が敗北を知った相手だった】

……嗚呼、やっと。やっと貴女と、殺し逢える

【あの時は若く、その正体にも気付けず、多くの仲間を失い己が身にも解けない呪いを背負って逃げ帰るのが、やっとのことだった】
【全ては家出息子に業を煮やした母親の仕置だなんて、誰が信じるだろうか。ここまでのモンスターでは、誰も勝てる筈もなかっただろう】

お師匠サマ。貴女に、ずっと……ずっと、言いたかった事が、あります

【ついと構える刀の切っ先は、ドラゴンの喉元を真っ直ぐに指し示す。黒き炎を収束させ始めたその口許へ、男はローブを翻し、跳躍した】

――いい加減にッ、子離れしてくれませんかねッ!!

【黒き炎と黄緑の燐光がまともにぶつかり合って、オーロラにも似た空中爆発が、空気の震撼で古びた建物を怖いくらいに揺らしていく】
【夜空から降り注ぐような悲鳴が聞こえた。それは劈くようなドラゴンの声であって、絹を裂くように悲痛な、一人の女の叫び声だった】
174 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/09(水) 22:26:20.08 ID:dFP+e6vY0
>>173

【がたがた震える手を袖に隠す、けれど、やがてその震えは布地を通じて、服のすそにあしらわれたレースをわなわなと震わせ】
【抑え込もうとした手もまた震えていることに気づくのに時間は必要なかった。そのうちに身体まで震えて、――最終的には地面に座り込んでしまうのだろう】
【それでもまだ震えている。見るひとが見ればわかるだろう、相当強い術式をかけられていて、彼女自身それに反発しているのだけど、だからこそ余計に、調子を崩している】
【ひらりと寄ってきた子には何もしない。振り払う気力もないと見るか、相手のことをそのまま信じているのか――どちらでもあるように見えるけど】

龍の、神さまなの……?
……ねえ、へびさまも、いつか龍に、なっちゃうのかな……。 

【大きく肩で息をしながら、そう尋ね返す。あるいは苦しいのから逃れようとするみたいに、そちらに意識を向けていようとするように】
【相手の返事がどうあれ彼女は座り込んだ上に地面に手をついて、繰り返すように、龍の……と呟いている。きっと大きな意味はなくて、ただ、思うところはないでもない】
【蛇の神さまはいつか龍になるのだと、本か何かで読んだ気がする。じゃあ。じゃあ、あの真っ白な神さまは、いつか、龍になってしまうのだろうか、と】
【悲しいようにも寂しいようにも思えて、ぎゅうと手を握りしめる――、今は何をしているんだろう、と、思う】

【あるいは唐突な話。それでもあきらめてしまえば楽になるはずの中、それでも頑張るのは、思いだせないひと、だけど、助けてくれたひとに、報いようとするように】
【ほんの少しでもきっかけを逃したら、きっと、それさえも忘れてしまう。つるつるの壁のほんのとっかかりに手をかけてぶら下がっているような――そんな気持ち】

きゃ、あっ……!

【からからの口の中で無理やりにつばを飲み込んで、ドラゴンへと振り返る。怖いと思って、だけど、なんだかそう思いきれなくて――そこに、悲鳴が重なる】
【古びたビルはぎしぎしと骨組みという骨がきしんで、コンクリートというコンクリートがひび割れて、それなら、その上に居る少女も大きく揺さぶられる】
【それならばバランスを崩してしまったのもあるいは仕方のないことか。床にくずれ込むようになって、ざあと――爆発の余韻を流すように吹く風に、黒髪が揺らされる】
【多分なにかがもう一つだけ、そばに居た。まだ姿を見せなくて、おんなじくらい――何もしていないやつが、きっと、おそらくは】
175 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/11/09(水) 22:42:14.95 ID:LPlMBCB1o
>>174

「や、僕はね、その力を継いだというのが正しいんだけど……純の血筋じゃないからね。入婿ってのは肩身が狭くてさぁ、参っちゃうよね」

【青年はそう呑気に話しつつ、相手の体調を慮ってか少し御簾から身を乗り出して「大丈夫?」なんて気楽な言葉を投げ掛ける】
【へびさま、と言われれば少し悩むようにして、扇を口許へ運んでから、うーんなんて態とらしく考え込んだようにして見せ、口を開く】

「失礼な言い方だけどさ、きっともうさしたる信仰もない、古びた蛇神なんだろう? 僕も同じようなものだから、名前は上でも格は多分、そのへびさまと負けてない位でしかないと思うよ」

【蛇が龍になるには鯉が滝を登って竜になるような苦行が要って、果たしてそのへびさまにそれだけの修練ができる余力があるのか、と】
【「まあ、コネとかって手も無くはないかもね?」なんて、この青年は何処までも適当で、この状況を楽しんでいて】
【それでも流石に車ごと揺さぶられる状況下では多少慌てたようにして、相手を庇うように御簾の中へと手を引こうとするだろうが】

「……で、さ。“そっちの人”は、君の友達かい?」

【吹き渡る風に、青年の目が少しだけ剣呑を帯びる。敵対心ではなかった。早く出てきてこの面倒事を何とかして欲しい、そんな程度の】
【青年も少女のことをほぼ知らないに等しいのだし、何より良く知っている男はもう戦いに夢中で仕方無い、というかそろそろ迷惑だしで】
【早く終わるといいんだけどね、なんて他人事みたいに空を見上げるも、煙やらなにやらでよく見えないので諦めて“だれか”の方を見遣った】
176 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/09(水) 23:12:02.68 ID:dFP+e6vY0
>>175

――……よかった。

【床に転がってしまった現状、けれど、この状態が少しは楽であるらしい。もともと家がない時代も長かったし、むしろこれくらいならきれいな地面とまで思う】
【変わらずに荒い息を繰り返しながらもあまりにも不釣り合いに笑う顔は、本当に安心したようで、気の抜けたような吐息までもつく】
【もしもそうなってしまったら悲しいし、寂しい。だけど、それもあるけれど――これ以上、あのひとに、何か負担のようなものがかかるのは、恐ろしいように思えて】

あんまり頑張らないでほしいなって、思うの……、

【多分それはそのひとを前にして言いたいこと、なのだろう。それをこの場に乗じて、ほとんど関係のないひとに、言っている】
【言えもしないことを全く関係のない場で漏らして、苦しい中で、自嘲めいて笑っている。言ってあげられたらいいのに、と、心中で呟いて――】
【続いた彼の言葉に頭を持ち上げようとした、その頭に、小さな手が置かれて。次の刹那には電源の落ちたように、その頭は床を打っている】

「だってボク、部外者だもの。あんまり出しゃばっても邪魔じゃないかなぁと思って」

【鳥のさえずるような笑い声。空間からにじみだしたかのように気づけばあたりまえにそこに居るのは、――誰がどう見ても子供だ、と、認識するだろう】
【なんせ身体つきは地面に伏したまま静かになった少女よりも華奢で、年頃でいえば十二ほどにしか、見えず】
【鮮やかな紫色の髪は嘘みたいに長く、薄い風の中、かすかにふわふわと揺れている。――すっとしゃがみこんで、膝に肘をついて、ただ、態度は子供のそれでは、なく】
【怯えた様子も動じた様子もない。ただ世間話をしにきたようでしかなく、「君もじゃないかな」だなんて、笑っている】

「困ったなあ」

【困ったようにも見えないし、声音も普段と変わらない。彼がそうしたように視線を向けてみるのだけど、やはり目で見る限りは、見えもしなくて――】
177 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/11/10(木) 07:28:36.44 ID:xfMnQTyPo
>>176

「あっは、そう、僕だって部外者さ。カヨ……あの女とはただの腐れ縁だし、彼のことは余り知らないし、ましてこの子の事なんてもっと知らないんだから」

【胸を張って言うことでも無いのだが、愉しげに笑っているのだからどうしようもない。西洋のドラゴンを櫻調の名で呼ぶのだけが妙だった】
【「まあ、そろそろ決着も付いたよね」なんて、花火見物でもするように御簾から身を乗り出して、月明かりの戻り出す夜空を仰いだ】

“……行平さん、いい加減にカヨって呼ぶの、止めてくれないかしら? それは前世の名前でしょう、今はねえ、ヴェロニカ・レイシーなの”

【仰いだ夜空には何もなかった。否、月と星達はあったけれど、黒いドラゴンとそれに抗う男の姿だけが消え失せていた】
【代わりに彼らの側へ歩み寄ってきたのは、モーニング・ドレスに身を包み深く帽子を被った、喪服姿の四十代ほどの女だった】
【ワンレングスボブの黒髪、帽子で目許は覗えないが、黒いルージュが嫌に目立つ彼女は、少し疲れたように黒ずくめのドレスの裾を払った】

【――床に伏している少女の隣、黒い燐光と共に現れたのは、同じく気を失った男。見た限りの外傷は無かったが、かなり消耗していた】

「おやおや。やっぱり負けちゃったか、いい年こいた勇者さんは。それで、わざわざ彼らを引き合わせたからには、君にも考えがあるんだろう」

“……無いわよ、そんなもの。ただそこの小娘が憎たらしくって仕方なくって、この世界から消し去ってやりたかっただけなんだから”

【「彼はどうしてもその子を忘れられなかったの」、そう呟いた黒ずくめの女の声色はほんの少しだけ震えているようだった】
【自分の息子が気に食わない彼女を連れて来た。別れると思っていたら結婚すると言い出した。止めても何も聞きやしない。そんな、ありふれた話】
178 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/10(木) 16:52:23.55 ID:P+juOB+J0
>>177

【紫色――だいたいのときに姿を見せてこなかったやつ。そもそもそれにあまり興味を持っているようにも見えなかった少女は、彼らが話すのを聞いているのか、いないのか】
【というわけもなく、聞いているのだろう。証拠になんだか楽しげで、面白がっているように見えた。だからといって、現れた時から愉快げではあったが】
【いっとき黙らせた黒髪少女の髪をまだ小さくてあどけない手の指先で梳いてやっている、となれば、善良な存在のように見え】
【"彼"にはあまり信用されていないようだけど、きっと悪いやつではない。かといって、百のうちに百善いかといえば、悩んでしまうもの】

「ボクは帰っていいのかな、呼ばれたから出てきただけだし――ねえ? 面白そうだけど……、ほら、彼がボクに用事があるって言うなら、あとでまた来るからさ」

【彼らの話をなんでもないように聞いていて、終わった頃合いにはそんなことを言っている。顔は変わらずあどけないままで面白そうに笑っていたけど、口出しはしない】
【小鳥が朝焼けの中さえずるように高くて子供ぽい笑い声、それからふわりと立ち上がっても背丈はやはり小さく子供のもの、百五十も、おそらくはないだろう】
【龍神と自称したものにも、実際ドラゴンに変化したものにも、態度は変わらないままだった。魔術師めいた格好をしていたけど、そうであるのかも明確ではなくて】

「だってボクはその前にお話を付けてこなくっちゃあ、いきなりじゃ泡吹いてひっくり返りそうなやつが居るからね、とうてい龍にはなれないだろうなあ」

【眼前の二人ではない彼。その彼が自分に用事があればまた来るけどなんて言いおいた彼女は、それでも、二人に自らの行動を制御させる気はないらしい】
【用事があるからもう帰る。そればっかりは固定された未来のようにして――最後にふと思いついた面白いことのように、「すごいね、人間がいない」と、ころころ笑う】

「じゃね」

【本当に何もなければ、気まぐれのように現れた彼女は、おんなじように、姿を消すのだろう。それとも何か言いつけたい用事でもあれば、あるいは、居残るのかもしれないけど】
【どちらにせよ"用事"があるのは確かだから、あまり――どちらかといえば、なるべく早く立ち去りたい様子でも、あった】
179 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/11/10(木) 18:31:20.06 ID:xfMnQTyPo
>>178

「わお、もしかして、この子置いて行っちゃうのかい?
 流石の僕も吃驚だけれど……ま、用があるなら仕方ないか。今度お茶でも、ッッ」

“ねえ行平さん、ヨシノさんに言い付けてくるわよ? きっと私より怖いでしょうね。
――どうぞ、好きに帰りなさいな。私、今からこの娘を煮るか焼くか考えなきゃいけないの”

「いやいや、いやぁ……はは、参ったなぁ。それは勘弁してもらいたいね……
 ――じゃあ、ね。あとで僕を責めないでおくれよ、」

【青年一人でこの女を止められはしない。故に、女が何をするにしても、止められる人間はこの場にはいなかった】
【紫色がいなくなって、風が静かに止んで、残っているのは不穏な青年淑女と――呑気に横たわる二人だけ、だ】

“……私ね、彼の為ならあと百年、この責務を負い続けても構わない。
綴り手――不幸な死を遂げた魂を、新たな物語の中で救済する役目。
それくらいね、真剣なのよ? 編纂には、百年の追加科料が掛かるけれど”

「……そんなに、その不幸な魂にご執心なのかい。結局犠牲になるのはカヨじゃ、」

“黙って頂戴、行平さん……この子だって、彼と居てはいけないわ。
きっと不幸になる――この子も、彼も。一番は、私だけどね?”

【意識を失った男の側に膝をついて、黒ずくめの女はその髪をゆるゆると優しく撫で空いていく。一つ二つ、何かが溢れたように見えた】
【分かっていた。無理矢理引き裂いてしまったその糸をどれだけ手繰り寄せようと彼が苦しんだか、どれだけ縋り付こうとしていたか】
【だからこそ、全て忘れさせるしかなかった。もうこんな辛い思いをさせるくらいなら、そうしてあげた方がきっとずっといいと思った】

【黒い燐光が女の左手に収束し、カラスの羽ペンを顕現させる。何かを始めようとしていたが、まだ幾許の猶予はある】
180 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/10(木) 19:11:25.08 ID:P+juOB+J0
>>179

【あくまで紫色を動かさせた存在が居た。異常があったら報告しておかなければ、それがおおごとになったときに、それこそ泡を吹いてひっくり返るしかなくなるほど、小心者】
【となれば優先しておくのはそちらであるという認識だった。そもそもあったはずの記憶をないと認識している少女がいる以上、多少であれば些事なのだろう】
【ただ――あまり好ましくないことを聞かれるのであればといっとき眠らせただけの少女のその後は、本人に任せてしまえと、そういう認識でもあったのだけれど】

【――だって、少女の性質はよく分かっていたのだから。これで下手に手を出したのがバレて警戒されても手間が増えて消耗させるだけだと――】

【最後に一つだけ冷たい風を吹かせて、その姿は消える。――それと同時に、あたりを撫ぜた風は、少女の身体にかけられたごく薄い沈静の魔術をそっと剥がしていって――】

――――、……。

【夜の中をするり、と、伸びる手は。いっそ色など持たない個体のように白く、けれど連想して想像しがちな儚さとは程遠く】
【もしもその手を伸ばしただけの範囲で届くならば、触れられるならば、黒い女の身体をどこであろうとも爪まで立てるほどに強くつかもうとするだろうし、】
【届かない、触れられない、そういった性質であれば――ぼろぼろにひび割れている床面のコンクリートを、持ちうる限りの強さでたたいて、気づかせようとする】
【"それ"が自分のものであるという認識は、まだなかった。けれど、みながそういうのなら、何もわからないままで手放してしまえる、性質でもない】

【それなら伏したままでも向ける瞳は人間よりも乱暴にぎらついて、特に赤い瞳は人間らしくないほどに爛と、にらみつけ】
【気づけば更けた夜が吐息を白く染め上げて、きっとまだ苦しみの中で低く低くうめいて怒りによく似たものを、あらわにしている】
【身体を起こしきれずに這い寄るよりも乱暴に動くさまは人間とは程遠く、だからといって蛇というにも、少しだけ違うような気がする】

【――昔から、自分のものにひどく固執する性質だった。冷蔵庫のプリン程度なら平和でも、その気持ちは、ひとにも向けられて】
【覚えていない、けど、渡さない。それならなんて我儘なのかと分かる前に、動いている。きっと、そうだと認識するだけの余裕も、持ち合わせていない】
【けれど――そのさまはどこか大事なぬいぐるみを取り上げられる瞬間の子供のような、泣きすがる時のようでもあって、それが、少しだ家、異質にも見えた】
181 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/11/10(木) 19:26:37.01 ID:xfMnQTyPo
>>180

“……、貴女ッ、何で、”

【羽ペンを持つ腕を、喰い込む程強く強く握り締められた女は、痛みより先に酷く狼狽した表情を見せた――とは言っても、口許だけだが】
【「おお、」なんて暢気な感嘆の声が青年から上がった。車の中で上がったままの御簾の下から愉しげに彼女達のやり取りを見ているだけ】
【ぎりぎり、と音がした。少女が握り締めている音ではなくて、黒ずくめの女が歯軋りする音。恐ろしい程の憎悪と、一片の迷い】

【(こんな回りくどいことをしなくたって。女が少女を殺してしまうことは、もしかしたら簡単なのかもしれない)】
【(でも女はそれを選べなかった。最初こそその気で掛かってきた癖に、致命傷の一つも与えられないままだ)】
【(挙句に選んだのは、結局自分自身にツケが回る選択肢。本当に少女が憎くて仕方無いなら、そんな事、するだろうか)】

“どうして……、そんなに。貴女も、彼が大切なの? なんで、どうして、だって、忘れてるんでしょう、なのになんで、ッ、”

【――そこに居るのは、悪いドラゴンでもあり、彼の師であり母であり、そして、一人の女だった】
【七十余年前に見た記憶が、今ここで嫌というほど鮮明に蘇る。女の大切な行平をひたすらに愛した、ヨシノという魂を】
【何時だってそうだ。大切なものはみんなこの手を離れていって、自分以外の別の誰かと一緒にいるその笑顔が一番素敵で、諦める】
182 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/10(木) 20:00:36.12 ID:P+juOB+J0
>>181

【ぎりと噛みしめた口元から漏れる息の白さだけが彼女が生きているように見せてくれる、けれど、それから目をそらせば、これが人間とは思えない様相】
【爪は短く切りそろえられているものの、薄ぺらい。やわな皮膚であればえぐり取ってやるというほどの力は、それでもわなわな震えていて、それ以上の意味はないけれど】
【だって今からこの女を殺してしまえるのかといえば、たぶん、無理だし、だれもそれを叶えられるとは思わないだろう】
【たとえ神の子孫だろうと何百年も封じられていたもの、信仰も力も地まで落ち切ったもの。まして子孫が、大きな奇跡を扱うことなんて、きっとできない】
【だからもっと醜くても自分にできる方法が、これだった。ぎりとその手を握りしめて――、低く唸るのは、もしかしたら、威嚇のつもりなのかもしれなくって】

だってっ……、知らないから、思いだしてない、から……っ、思いだしたあとにどこにもない、なら、――、

【思いだしていないのに/から渡さない。死んだ後に両親の大切さに気づいても遅くて、死んだ後に普通の人間に憧れても遅くて、ずっと、だめになってから気づいて】
【だから触れられる前に、だめになってしまうまえに、だめにしないために動く。ただのそれだけ、今までの記憶からくる、根拠のない執念だけがそこにあって】
【きっと、もう、その頭の中に思いださないでいるという選択肢もない。ただうっかりと忘れてしまう奇跡さえない限り、たとえこのまま苦しんでも、そうしてやるというような】
【それも執念に近いほど、自分がやると決めたらやる性質は生まれつきでも、ここまでくれば、ありようとさえ呼んでしまえそうなほど】

【――だけど、それだけだった。これが大事だという確証はどこにもなくて、ただ、ひとに言われたから、そう思っている、と、言われてしまったら】
【きっと言い訳もできなくて、理由はなくて、この手を放すことしか、できなくなってしまう。そんな確証があって、すこしだけ不安になる、間違いなのかもわかれなくて】

――――、わたしと、へびさまだけが知ってるはずのものを、ずっとどこにあるか知らなかったものを、そのひとは、持ってる、

【ぎりぎりと締め上げていた力が、少しだけ緩む。にらみつけていた目が少しだけ弱気になって、それから、そっと、見知らぬままの彼へ視線を動かして――すぐ、だった】
【力は同じくらいでも、方向性が少しだけ違う。爪を立てて痛めつけるより、指で、ぎゅうと、つかもうとする。――弱いうちに振り払ってしまうことも、できるのかもしれないけど】
【そのままであればもう一度ぎゅうと握りしめて――ようやく見つけた理由は、ただの一つだけ。片方ずつのピアス、きっと彼女のつけているものが、乱れた髪の隙間から、見える】
183 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/11/10(木) 20:24:44.37 ID:xfMnQTyPo
>>182

”……、――“

【握り締められていた腕の力が緩んでも、女は黒い羽ペンで全て書き換えてしまうことを選べなかった】
【男の長い紅茶色の髪が夜風に少し乱れて、相手と揃いのウロボロスが月明かりに瞬く。内に納めるのは二人の思い出、宝玉の欠片】
【長い、長い沈黙があってから――漆黒の羽ペンは宵闇にさらさらと消えていく。黒い燐光を残しながら、その形も失せていった】

“……何時だって、何時だってそう。私の大切なものはみんな、私以外に微笑むの。とっても幸せそうに。それで結局、私はその姿を愛してしまうの”

【女は眠ったままの男を切なげに見つめて、それから相手へと視線を戻した。帽子の下、やはり黒いその瞳は、見間違いではなく涙を湛えて】
【ゆっくりと相手の手を外すように腕を上げて立ち上がる、少しドレスの裾を払って、帽子を深く被り直して――足許から、その姿は消えていく】

“私には、貴女の記憶を戻すことは出来ないけれど……へびさま、とか、あの紫の女とか、貴女にもきっと、頼れる人がいるんでしょう。
……嗚呼、これで良かったのかも知らないわね。まだあと、三百五十年も綴り手をしなくちゃいけないんだから。もう百年なんて、嫌”

「おや、じゃあ彼の記憶はそのままって事で良いのかな? なら彼はまた彼女を想い続ける訳だけど、君はそれで良いんだね、カヨ?」

【青年の問い掛けに、女が反応する事はなかった。そのまま胴から頭へ、その姿は夜の闇に掻き消えていく。黒い、黒い燐光を散りばめて】

“――私の可愛い子、幸せになれるのなら、私はそれでいいの。もうこれで二回目よ、誰かさんのせいで……でもね、何故かしらね、”

【“少しだけ、嬉しいの”――そう言い残して、女の姿は消え去った。最後に撫でるように散った黒い燐光に、男の瞼がゆるゆると上がる】
【最初に探したのは相手の姿だった。かつてその不揃いな瞳孔に掛けられた呪いはどういう訳だか、すっかり消え去っていて】

……鈴音、

【忘れられなかった記憶。忘れたくなかった思い出。忘れることなどできない誓いは、自分があの女に縛られている事をひた隠しにしたせいで】
【一気に歯車を狂わせて、壊して、そうして相手を傷付けた。何より護らなければいけなかった存在よりも、我が身を選んでしまった故に】
【どんな言葉を掛けていいのか、何も分からなかった。昔、よく相手は黙り込んでしまっていたけれど、今はその気持ちが痛い程分かった】
184 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/10(木) 20:44:50.20 ID:P+juOB+J0
>>183

【自分が言ったことだった。渡さないと。間違いではなくて、それでいいと信じていた。だけれど、相手のその様子は】
【熱を出した冬の日、額に触れた冷たい手のような――熱い、熱い中に、すっと割って入ってくるような、冷たさが確かにあって】
【ほんの一瞬、どうしたらいいのかわからなくなってしまう。これでよかったのかと答えてくれるひとはいなくて、それでよかったと認めてくれる、自分もいない】
【記憶が受け止めてくれるでもない、こうして奪い取ってしまう女が受け止めてくれるでもない、――外された腕がぱたりとコンクリートに落ちてて、小さくふるえるなら】
【さっきまでの強さは寒い中に溶けて消えてしまったようになる。それでも――ならば返すといえてしまえるほど、ばかにやさしい性質ではない】

わたし……、わかってる、きっと、わかってるの、

【きっと、このひとは、今この瞬間の自分よりも、そこで眠る男性のことを愛している。だからって、それは、覚えていない自分の記憶がそうでない、とは、言いきれなくて】
【誰がしたかは、きっと分かっている。思い出に目隠しする手はきっと、大きくなくて、なんなら、自分より小さいと思う。そういうことだと、もう、分かっている】

【思いださなければいけない。焦がれるよりも燃え尽きそうなくらいの思いは、すこしだけ、和らいでいた。あきらめたのではなくて、大丈夫と、思えて】
【それでも名前を呼ばれればびくりと投げだしたままだった手が跳ね上がって、それから、ぎゅうと自分の身体に寄せて、身体を気持ち程度に、ちぢこまらせる】
【結局はまだ何の記憶も思いだしていない。たくさんのクリスマスプレゼントも、きらきらの水族館も、首の切り落とされたぬいぐるみも、銀杏の並木も、なにひとつも】
【相手が黙ってしまえばこちらも黙ってしまう。彼とは違う方向性で、何と言えばいいのかが分からなかった。初めましてでは違う、けど、久しぶりも、違う気がして】

えっと、……、あなたの、名前は、

【まだ地面に転がったまま。長い髪がくしゃりと乱れていたのをかきあげて、結局迷いに迷った視線はさらに迷うように右へ左へと不安そうに動いて】
【それでも最後、知らないからこそ、まっすぐに相手の目へと視線を向けるのだろう。ひどく緊張した顔は、たぶん、あんまり見せたことのない表情のはずだ】
185 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/11/10(木) 21:05:14.03 ID:xfMnQTyPo
>>184

……セシル。セシル・シュトラウス

【真っ直ぐに見つめられた男はきっと相手以上に視線を俯かせて迷わせて、それでも最後は、真っ直ぐに見つめ返す】
【あまり見たことのない相手の表情が見れたのが少しだけ嬉しかったのが奇妙で、馬鹿らしくて、自分らしいなと言う結論に至り】
【そうと伸ばした紫色の爪先は、指の腹で相手の頬の形を確かめるようになぞろうとする。彼自身も、自らの記憶を再確認するように】

「……うん、そろそろ僕はお邪魔かな? じゃあ後は若い二人に任せて、社に帰ろうっと。縁に熱いお茶を淹れてもらわないとね、」

【沈黙を守っていた青年が囁くように一人ごちて、車の御簾がするりと下げられる。ことりことりと僅かに車輪の音を残して、天上へと】
【ぴらんと夜空で一回転してみせた人型のそれは、もしかしたら別れの挨拶であったのかも知れない。すぐに車を追って、飛んでいった】

【二人きり、その空気に、開こうとした口も結局は閉じたまま、続く言葉が何も出て来ない。私はキミの何々で、なんて言える身でもない】
【しかも思い返せば格好つけた癖に結局負けてこうして転がって、どうも何もされていない辺り決着は相手がつけてくれたようだしで、】
【なんと言うか――男として、非常に恥ずかしい状態だった。最後に青年が茶化していった言葉にさえ割と本気で殺意を覚えた位には】
【勝手に来て勝手に帰っていったがそもそもあの青年が何者なのか男は知らなかった。ただお師匠サマの知り合いらしい、つまり最悪だ】

ええ、と……その。鈴音、

【「すまなかったね」と続けようとして、やはり言うことができない。その資格がない、それだけで済むような事じゃない、一連の事は】
【伸ばした指先も相手に触れられたか否かは別にして、弱々しく引き戻そうとする。触れる資格さえ、無いと気が付いた】
186 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/10(木) 21:30:12.91 ID:P+juOB+J0
>>185

【頬に触れられて、少しだけくすぐったいような、照れくさいように、笑うとも吐息とも取れない声を、小さく漏らすのだろう】
【もともとひとに触れられるのが好きな性質だ。嫌がりはしないが、やはり覚えてない以上、恥ずかしい……とそういうことなのだろう。それでも、なぜだか瞳を細めて】
【そのうちに小さく、本当に小さく、蚊の鳴くように小さな、長い声をかすかに漏らして。それから、目の前の彼にではなくて、誰かのために、いつくしむような目をする】

【そうしているうちに一度だけ会ったことのある彼はいなくなってしまって、つまり、気持ち的には初対面。だけど、たったいま、何かが分かった気がする】
【自分が黙っているのと、彼が黙っているの、見た目は同じでも、きっと意味が違う気がした。本当なら自分も、彼と同じような気持ちを共有すべきなのかもしれない】
【けどできないから、分かることを考えていた。さっき女の腕をぎりぎりとひっつかんでみせた手は、今度はそんな握力も存在しないように、】
【自分の頬に触れる手に触れて、そのまま、手のひらをぴったりと頬に触れさせるようにしようとする、だろう。――もちろん嫌がればそんなことはないし、そうだとしても】
【多分、わかった。知らないままだけど、多分だけど、分かった気がする。そこに、相手の言い淀むような、どうしたらいいかわからないような、声を聞けば】

セシル、さん、……わたし、ね、今ね、思ったことがあるの。えっと……、わたしは、あなたのこと、まだ、名前と、この手しか知らないけど……。
こうやって触るひとをね、知ってるの、……だけどね、そのひとはね、ほんとはそんなひとじゃないなって、ずっと、思ってたの。不思議だなって。

へびさまはね、わたしのこと、だいすきなの。けどね、へびさまのだいすきと、わたしが覚えてる、そのときのだいすきは、少し違うなって、思ってたの。
なんでだろうって、どうして前みたいにしてくれないんだろうって、嫌われちゃったかなってね、いっぱい、思ってたけど……――、

……きっとへびさまが嘘吐きだったんだね、それで、へびさまの嘘吐きを、あの子がいっしょに手伝ってたんだ。……。

【同じだと思った。おんなじように触れられた記憶が、頭の中にあった。でもそれは、目の前の彼ではなくて、自分の中では、へびさまだと思う】
【けど、たぶん、違うんだと思った。ぜんぜん別のひとが同じように触れるなんて変な話だと思うから、それに、ずっと不思議に思っていたから。いま、別人だったと理解する】
【なら記憶が戻るわけでもないけど、たぶん、その――静かなへびさまが、別人のようなふるまいをして、また静かに戻った、その間に居たのが、目の前のひと、なのだろう】

…………ごめんね、でも、それだけなの。
わたしが覚えてるへびさまの中の、いくらかがあなただったって分かって、思っても、わたしのなかだと、それは、へびさまなの。

……、*ちゃんがね、きっとね、やったんだよ。へびさまは、おしゃべりが得意じゃないから……、お願いできるひとなんて、きっと、ほかにいないの。

【申し訳ないように眉を下げる、コンクリートの床が冷たくて、割れ砕けたところがとげとげと肌に刺さって、痛い】
【多分そうなんだとわかっても、記憶はついてこない。どうしても、自分のなかでは"そう"でしかない。結局は、かけられたままの暗幕をあげてやらないといけない】
【用事があったら呼べだとか言っていた気がするけど、二人ともがそれを知らなかった。だから、あるいは告げ口めいて犯人を言うけど、困ったように眉を下げるばかりで】
【――それから、少し黙って。少し勇気を出したように、ぎゅと唇を噛んでから、】

あ、あの、……へびさまのこと、怒らないであげて、ほしいの、……。

【そう、小さな不安そうな声で、付け足して】
187 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/11/10(木) 22:13:19.59 ID:xfMnQTyPo
>>186

【指先に触れる手が、頬を触れる感触が、何年振りかのそれらは懐かしさより感慨より、ただただ汚して傷つけてしまわないか不安になる】
【知らないから、忘れているからそうしていられるだけだ、全て思い出したら、相手がこの手を振り払って去っていく幻視に襲われる】
【只管に信じ抜いてきたくせに土壇場の弱さに乱されるのは、どんな幻獣を相手にしても一度も無かった感覚で、ただただ、不安だった】

――へび、さま。それは……、私が手に掛けた、あの白い蛇神、か。生きていたのか……、そうか、私の代わりを、演じてくれたのか、彼は

【手に掛けた、そう口にしてしまったことを少ししてからはっとする、今の相手が信望している存在を一度殺したなんて、迂闊にも】
【相手の続けた名前がいつか嫌な悪戯を仕掛けてきた紫の女を指すのかは曖昧だったが、こんな事が出来るのはあれ以外にいないだろう】
【そう理解しながらも口を滑らせた事への動揺がひどく、思考の整理が上手くつかない。確かな事は、相手の思う不安に対しての】

怒る……? 私、が? 私のいない、キミの記憶を埋めてくれた、彼に。……無い、な。そうか――義父様の手を、煩わせてしまった訳か、

【おとうさま。何処か間の抜けた呼び名は、かつての贖罪とか今までへの感謝とか、とにかく相手がこうしていられた何よりの恩人として】
【そんな人に一体何を怒れというのだろう。誤差の範囲で緩んだ口許、引き戻そうとした手は結局止めて、弛く数度相手の頬を撫ぜた】
188 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/10(木) 22:25:05.38 ID:P+juOB+J0
>>187

…………、…………ううん、わたしがね、お迎えに行ったの。櫻の国にね、行ったんだよ。

【警戒心なく彼に触れていた指先が、ぴく、と、ほんのわずかにのみ強張る。それは記憶のなかになかった】
【彼は……へびさまは、誤って、宝玉に食われてしまった。そういう認識でいたけど、本当はそうだったのかと、思う――思うしかない】
【だって自分はどうしてかその宝玉の欠片をずっとなくしていた。どうしたのかも思いだせなかった。絶対にへんで、彼がその欠片を持つのなら、そうなのだろう】

でもね、きっと、不安だったの、へびさま……、ずうとね、教えてくれないけど、ずっと、なにか、怖いって顔をしてたの、

【やっと理由が分かったのだろう。だから、少しだけ、嬉しそうな、あるいは晴れやかな、そんな顔。でも、それを言ったら、また怖がらせてしまいそうで、寂しくなる】
【ずっと……もうしばらく、ほとんど喋ってもいなかった。触れたり、話したり、もう、途絶えていた。今思えば、きっと、目の前の彼に悪いような気がしていたのだろう】
【でもきっと。それが終わることに、あのひとは喜べない。知られたことをおびえてしまうと思う。だから、それがひどく申し訳ないように思えてしまって】

えっと、

【少しためらうようにしてから、「ありがとう」と彼女は破顔するのだろう。それから、頬を撫ぜられて、まだ少し照れくさいような顔で、はにかんで】
【すっかりと身体が冷えている。冷え性というわけではないのだけど、華奢なせいかすぐに冷えてしまう体質、――やっと気持ちも体調も落ち着いて、身体をゆっくりと起こし】

*ちゃんのことも、怒らない?

【少し遅れて思いいたったように、そうとも尋ねる。……急に家に居たりするからびっくりすることも多いけれど、そこそこ仲良しなつもりではいるものだから】
【多分怒られても平気そうな顔をしそうだって思うけれど、きっと、誰も悪くないんだと思う。多分、だから、誰にも怒らないままでいたいように思えて】
189 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/11/10(木) 22:44:35.80 ID:xfMnQTyPo
>>188

……そう、か。そうだ、ね。綺麗な場所だった

【思い出すのは澄んだ水と社の空間、見えない泥と血に塗れた自分が踏み入ることが怖ろしくて、呪いをしたことが何処か懐かしい】
【相手を支えるようにしつつ、自分も身体を起こす。魔力がすっかり枯渇していて、母の愛憎が割と殺す気で本気だったのを思い出した】

ええと、それはあの……紫の子、で良いのかな。……怒ることなど特にないけれど。何も。鈴音は相変わらず、他人想いの良い子だね

【そこだけ短く終えたり話をすり替えた辺りは、前に窓越しにされた強烈な悪戯を思い返しての――結局、冗談だったと彼女は笑ったが】
【実際、怒りという感情は持ち合わせていなかった。それよりもずっと気になるのは、相手が関係した者を許して欲しいと願うこと】
【全ての元凶であるお師匠様に何か言いたいことはないのか、あと割り込んで来たあの青年については個人的にもう一発蹴ってやりたい】

……本当に。鈴音は、優しい子だ

【本心からそう思う。ずっと知ってはいたけれど、改めてこうしているのを見ると、心底思い知らされる。自分はこんな優しさを知らない】
【向かい合って、頬を撫でた手をゆっくり相手の頭へと伸ばして、二三度撫でようとする。良い子だ、と何度も溢しては、微笑んでいた】
190 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/10(木) 22:59:50.13 ID:P+juOB+J0
>>189

……うん、あの子ね、えっと、……いろいろね、助けてくれるの。
お勉強を教えてくれたりするの、お勉強するの、初めてだったから、いっぱい、分からなかったけど――。

【――その言葉で、彼はもう一つ分かるだろうか。記憶のすり替えの犯人でありながら、あの紫色も、そこにかかわってきている】
【彼女が初めて勉強らしい勉強をしたのは、彼に教わったのが初めてだった。ノートにお勉強のことを書くのも初めてで、しばらくはずっとはしゃいでいた】
【その記憶もすり替わっている。よく考えたらあの白蛇が勉強を教えられるような気もしないから、仕方ないのかもしれないけれど――】

【誰も悪くない。きっと、そう信じたかったのかもしれない。そうじゃないと、自分がこのひとのことを忘れてしまっていることを、許せなくなってしまいそうで】
【そうじゃなければ、この先、ずっと、その存在を憎んでしまいそうで。だから、だれも悪くない。もしかしたら自分が悪いのかも、と、相手をすり替えることで、終わらせる】
【誰も悪くない。悪いとしたら自分。そうやってするのが、一番、いいように思えた。だから、優しいのだと言われれば、少し困惑したように視線をさまよわせ】

【怪我で抜けた血のせいか、身体が重たく思えた。けれどあんまり痛くなくて、それなら、さっき施された治療が効いているらしい】
【それでも服はじっとりと赤くなって重たくなって、血なまぐさい。布だって切れてしまったし、もう、着られないかなと思考の奥でわずかに思って】
【だけど頭を撫でられていればどうでもよく思えた。記憶の中と同じ、思い出の中で撫でてくれた手と同じ。……あれはこのひとだったのだと、もう一度、理解する】
【少しだけ寂しいような気がしたけど、誰も悪くないと自分で決めたのだから、誰も悪くない。もう一度自分の中で繰り返して、しばらく、そうされている】

――きっとね、みんな、家に居るの。……えと、

【もし帰るとなればどこに帰ればいいのだろう。このひとについていけばいいのか、それとも、自分が家だと思っている場所に、……それとも、それも、嘘だったのか】
【へびさまは多分家から出ないだろう。それなら、多分、紫色もいるんじゃないかと思って、そう告げる。ただ、彼からすれば、それがどこかはわからないのだろうけど】
【どうしたらいいのかよく分かっていないよう、それなら、相手はどうしたいのだろうとうかがうようにして、返事を待って】
191 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/11/10(木) 23:08:32.02 ID:xfMnQTyPo
>>190

……家。鈴音の、かい。私は……、其処に云っても、良いのかな

【ここまでどうして辿り着いたかも覚えていないし、数年間真っ暗な中にいた。今更あの館に帰るのも怖ろしかった。確実にあの人がいる】
【帰る場所がなかった。そんな経験も初めてで、どうしたものかと鈍い頭で考えるも、相手の家にも関係者が待っている気がした】
【――それでもいい、寧ろ都合が良かった。募る話よりもまず、かつて文献で見た櫻式の謝罪法を思い返す。間違っては、居ないはずだ】

良いのなら……、其処に行きたい。鈴音の、家に

【いま相手はどんな暮らしをしているのだろう。そこでは幸せなのだろうか、誰か家族はいるのだろうか、気になる事は山積していて】
【やや気怠げに乱れた髪をかき上げて、そう告げた。何だかとても新鮮な気がした、相手の領域に近づくという事が】
192 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/10(木) 23:23:48.96 ID:P+juOB+J0
>>191

【白色と紫色が取り繕ってきた。それなら、多分、あの頃とあまり変わりのない生活をしているのだろう、と、なんとなく予想できる気がする】
【服だってきれいなものを着ていたから、きっと買ってもらうなり、自分で買うなり、しているのだろう。それなら、よっぽどひどい場所ではなさそうだ】

……うん、おそうじしてあるの、大丈夫だよ、……。……――、うん、大丈夫、……。

【一度笑ってみせて、だけど、すぐに不安そうになる。絶対にあの二人は家にいる。優しくて白いあのひとに本当のことを聞かなきゃならないし、ほかにも確かめないといけない】
【また緊張した顔をする。目の前の相手にはすっかり慣れたようだが、これから先は慣れないばかりで、もしかしたら怒らせてしまうだろうか、とか、いろいろと思う】
【大丈夫と繰り返したのだって自分のためのようだった。自分が怖くないようにと繰り返したみたいで、そのわりに、まだ不安そうにしていて】

えっとね、……指輪にね、あるの、……えっと、……知ってるの、かも、しれないけど……。

【――指輪。左手に指輪をしていた――だけど、彼に贈られたものではない、違うものになっている】
【違和感がないように与えながら、もともとのものでは思い返してしまうかもしれない、と、蛇神が考えた結果なのだけど――それにしても、あんまり高いものではなさそう】
【それでも桜の花を彫り込んだデザイン。選んだ様子が思い浮かぶ気もしたが、これから先にあることを少しでも想像すれば、きっと、それどころではない】

【言葉の意味はわかるだろう。前からそうだったみたいに、指輪に帰還のための術式が仕込んである、らしい――それもそういうことなのか、と、声を弱めながらも】
【それでよければ、その家へ向かうことになる。――そのころにはすっかりと緊張したように唇を噛んでしまっていて、言葉も少なくなってくる】

【そのまま向かったなら。そこは夜の国で、あの黒い屋敷よりは小さいが、それでも、二人やそこらで住むには十分に広い家の前に、たどり着くのだろう】
【庭には前の家でもそうしていたようにいろんな植物が植えられていて――やはり、あまり昔と違いのある生活は、していないようなのだった】

【――たてつけの悪い重たいドアを身体ごとで押し込むようにして家の中に入る、――本当にいいのかと尋ねるように、振り返る、のだろう】
193 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/11/10(木) 23:39:16.10 ID:xfMnQTyPo
>>192

……嗚呼、帰還式かな。頼むよ、どうも魔力と一緒に体力が、かなり不味い

【起き上がったはいいが、何とか立ち上がれるかといった所だった。相手の転移に相乗りして、辿り着いた先の懐かしさに少し驚く】
【櫻の国で暮らしているものだと勝手に思っていた。あの頃をなぞるような護るような、そんな佇まいに胸を刺すような感覚が襲う】
【完全に忘れてしまわないように、そうしてくれていたのか。或いはただ単に、記憶の整合性のためなのか。何方にしろ、苦しいような】

……、――

【振り返った相手に伸し掛かるのは背高な男の全体重、避けるなりしないとドアの命も危ないかも知れない】
【どうも苦しいことばかり覚えると思ったら本当に身体が苦しんでいただけの話なのだが――「一発目はデカくかませ」とは長兄の言】
【これから本戦と言うくらいの気持ちでいたのだが、どうも先の戦いで思ったより消耗していたらしい。あの女の最後の意地悪にも思えた】

【伸びた身体は引きずるなりして運ばなければしばらくはそのままになる。動けるようになるまでは、少し掛かるようだった】
194 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/11(金) 00:02:41.64 ID:onr763yc0
>>193

【相手の様子に少しうろたえたようにするのだけど、あんまりに力を入れると傷がひどく痛んで、だから、あまり大した助けはできないだろう】
【肩くらいなら貸すが、あまり頼れるような肩ではない――というのは余談で、大丈夫そうとみれば術を起動してしまって、さらにそこから、少し後】

……わ、え、……、え、えっ、ぇ、

【家の中は水を打ったようにしんと静か……では、なかった。すこし荒れたような声がして、それもまた、不安と緊張を強くする】
【そうして振り返ったら、ぐらとそのおっきな身体が揺れて、気づいたときにはすでにのしかかられ。驚きと困惑の声と、その体重に後ろから倒れそうになる、身体】
【とっさに倒れてしまわぬように後ろに数歩下がりながら、何か、たとえば、友達の家にある大きな丸いビーズクッションとかがないかと……あれはちょうどいいんじゃないかと】
【思えど買った記憶がなければ、実物もない。それどころか玄関先では椅子らしい椅子もなく、さらに手負いの身体では、成人男性を支えるのは難しい】
【しばらくそうしてじりじり後ずさりしていたのだけど、最終的にこらえられなくなって――少女だけなら座り込むような形だが、多分、その直後に押しつぶされるのだろう】

だれかぁ……、

【ほんの少しだけ、なきべそあげるような声だった。泣いてこそいないがひどく混乱している、それでも相手の身体を床に落とさないように必死に支えながら】
【誰かといっても多分二人しかいないし、後は、そう、猫とかしかいないのだけど、それでも助けを求めた声は、でも、家の中に吸い込まれていくようで】
【死んでしまうのではないかと若干の不安が膨らみだせば声はいっそう泣きそうになってもう一度二度と繰り返して、どこかの部屋に居る誰かを望む】
【――甘いりんごの香りがした。よく熟れた甘くて新鮮なりんごの香り。多分香水だろう、ほんとうにそれは余談なのだけれど――と、そこから少し経った頃、だろうか】

「あれ、邪魔したかな」

【かちゃんと別の扉が開いて、紫色がさもあたりまえであるかのように顔を出す。――けれどさっきよりも服装が乱れているのは、きっと誰も指摘できないけど】
【いろんなところを掴まれるなりをしたのか浮き上がった服装をなんとなしに直しながら出て来る、けど、それは、きっと、わざとだった】
【ここまで歩く間にすればいいことをしないで出て来る。まだ見えない誰がどんな状態でいるのかを、言葉にしないで教えるみたいに――それとも考えすぎか】

「さっきぶりだね、あれ、眠っていたっけ」

【姿勢から茶化すだけ茶化してもそれ以上の興味はないように話を進めだす、話しかけているのはきっと二人ともへ】
【そのまま何もなければふらりと近づいて、彼の状況を確認しようとするのだろう、それでもって、必要なら、……この体躯で、彼を背負おうとまでする】
【百四十七センチ。現実的に考えればあり得ないが、そうなって身体を預ければ、意外としっかり運んでくれるだろうとは言うけれど、半ば引きずるようなものなので、心地はどうだか】

【どちらにせよなんともない顔の紫色は数言少女と言葉を交わす、とは言っても、けがはどうだとか、些細なことばっかりなのだけど】
【思いだしたのか――とは、聞かない。だって、聞くまでもない。その術式を握ったままの紫色はここに居て、それなら、もしかしたら、ここですべてが終わる可能性もある】
【きっと奥の部屋でひどい有様になっている白蛇なんて放ってしまっても……それを彼女はきっと許さないけれど、浮かぶばかりは咎められないような、案の一つではあった】
195 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/11/11(金) 00:17:31.88 ID:ipXI6VOIo
>>194

……君も、来て、いたんだね。あの場所に

【意識は何とかあるらしかった。ただ情けなくも相手にのしかかるような色々と酷い状態で、立ち上がれる余裕はないようだったが】
【背負われるとなっては流石に驚いた顔をした。けれど動きようもないので、結局は紫の相手に身を委ねる形となるのだった】
【「ヒールは……、そのまま、」なんて呻きのような懇願のような声がするが別に無視しても構わない。脱がすと復調しても真っ直ぐ歩けなくはなる】

……、――

【引きずられながら聞く会話が情けなさで既に潰され切った心をしっかりと突き刺してくる。相手の怪我は、操られていたとは言え自分がやったものだ】
【このままどこに運ばれるのだろうか、どこかに寝かされるとしても、せめて話だけはしたかった。あの、感謝と謝罪をすべき蛇神に】

義父様、は……居るのかい、此処に

【弱々しい声で、紫色にそう尋ねる。会いたいというニュアンスを含ませながら、互いにまともに会える状態かは疑問だったが】
196 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/11(金) 00:32:54.19 ID:onr763yc0
>>195

「だって、呼ぶから」

【呼ばれて出られるならば居たということである、と、そんな初歩的なことは、どうでもいいことらしい】
【大変そうに息を弾ませる様子もない、なら、やっぱり人間ではない――と、とんでもなく今更だろうが、それでも、正体までもはわからない】
【どれだけ近くてもまったく匂いの一つもしないというのもきみが悪いといえば悪かった。長い髪が少しくらいくすぐるかもしれないけれど、気にしないくらいでちょうどいい】

【――少し歩いたころになる。とはいえ家の中だから大したほどではない、ひとまず、三人がなんとなしに立ち止まるのは、一つの扉の前で】
【猫用の小さいドアが下の方についている。……がりがり誰かがひっかいたのか木がけば立って、心なしか焦げてもいるような気がする。けど、それ以外は普通の扉】
【「へびさま怒ってるかな」と小さな鈴の音の声と、「怒っちゃないと思うけど」と鳥のさえずり声。怒りをやけに気にするのは、やはり、怖いのだろうか】
【ひとが怒っている様子が怖い。テレビの中の光景であっても顔を曇らせるなんていうのは、きっとよく見た光景だろう――思いだせるのなら】

……えと、……あの、わたしね、えっと……、先に、へびさまと、お話……、してくる、の。
多分その方がいいかなって思って、だから、……え、えと、わたしのお部屋だから、……ここで、少し休んでて、……そしたら、終わると思うの。
きっとへびさま、びっくりしてるだけなの、大丈夫なの、――、じゃあ、

【先に話を付けて来る。つまりはそういうことだろう、具合の悪そうなひとといきなり会わせてしまっても、お互い、よくはないだろう】
【だからワンクッション。あるいはそうじゃなくても先に話がしたかったのかもしれない。こればっかりはかたくなな彼女は、止めても聞きやしなくて――】
【それでそのまま何もなければ彼女のものらしい部屋に連行されることになる。廊下の向こう側に消えていく背中は緊張したように強張っていた、ような気がする】

【――部屋の中は、まあ、多分、数年前の記憶の中にあるようなものと、あんまり変わらない。ぬいぐるみと、人形と、なぜか大きな蛇の頭の骨がある】
【ベッドも一人にしてはうんと大きくて、大量にぬいぐるみが詰まれていて、――柔らかそうなお布団の真ん中で、丸くなって寝ている生き物が、さんびき】
【竜、だろうか。竜の、まだまだ小さな個体。あと、白と黒の猫が、仲良く団子のようになって眠って――部屋に入ってきた見慣れない人間に、ちら、と、流した視線】

「ボクがね、先に言っちゃった。だってきっと来ると思ったから、いきなりじゃあひどいことになるかと思って」

【相手がそれでよければ、ベッドのへりにでも座らせるだろうか。それとも寝そべっても誰も咎めない、きっとシャンプーの匂いも、前と変わらずに甘い趣味】
【ほとんどのものがあの頃とあまり変わらない。そうされているのか、自然とそうなったのか、あるいはどちらもか。とりあえず――紫色は、まだ部屋に残るようだった】
197 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/11/11(金) 00:41:50.18 ID:ipXI6VOIo
>>196

……分かった。宜しく、頼むよ

【すぐにでも会いたくともこの状態だ、それに蛇神もどうやら荒れているようなら、触らぬ神に何とやらだ。それを相手に任せるのは辛かったが】
【今の自分が何かを言える状況下ではない。ベッドのへりに座らされれば案の定背中は後ろにぼふりと倒れ込んで、先客を驚かすだろうか】

そう、かい……気を遣って、くれたようだね。……一悶着、あったのだろう。色々と、迷惑を掛けてしまった

【「それと、……感謝、している」そこまで話して、疲れ切った様子で男は天井を仰いで目許に腕を乗せる。どこか表情を隠すように】
【鈴音の話から、自分の不在を紫色と蛇神が取り繕ってくれた事は分かった。問題はこれから先、けれど、どう触れるべきか、悩んでいて】
198 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/11(金) 00:58:20.32 ID:onr763yc0
>>197

【倒れこんだ背中に先客どもは驚いた……というよりも邪魔されたというような顔で、最初に黒猫が、次に白猫が、ベッドから降りていく】
【唯一ドラゴンだけはまだ眠いのかどうでもいいのか丸くなって、それでも一度ふんすーと長めの溜め息を吐いてから、また、すやすやと眠りだす】
【炎の属性の子なのだろう。近くによるだけでぽかぽかと気持ち暖かく感じられ、寒い部屋では、ちょうどいいのかもしれない】

「面白いからいいよ。それに、ほら、あれはボクには勝てないからね。怒っているというよりは、怖いのじゃないかな」

【小さい背丈。それなら、もしかしたら、ベッドに腰かけてやっと、目線が合うくらいなのかもしれない――今は、きっと、視界の中にもないだろうけど】
【あんまり大きくない一人用の机、そこの椅子に勝手に腰かけて机の上にも鎮座していたぬいぐるみを一つ抱き上げる。それから違う場所に無理やり戻して】

「君が居ないって知った時にすごく焦っていてね、あの子がまた昔みたいに戻ってしまうのではないかと」

【昔――彼と初めて会った時、あの少女は、もはや人間でもないものだった。目は濁り切って淀んでいたし、食事はおろか、瞬きや呼吸さえ忘れていそうなほど】
【もちろん体温もない、たまに動く人形のようだった頃。あの白蛇が危惧したのはそれで、いろんなことは、それを回避しようと動き回ったがためだったのだろう】

「ここはボクが用意してあげたんだけどね、なるべく同じにしろってうるさいものだから」

【今度は、さっき無理やりぬいぐるみを詰め込んだ場所から、別のものを一つ取って、今度は机の上に座らせる。手遊びだろう。そのくせ、顔は愉快げで】
199 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/11/11(金) 01:14:54.08 ID:ipXI6VOIo
>>198

……そうなのかい。確かに、キミに勝てない事は、私にも分かる。多分、存在している次元が違う、ような。それにきっと、ヒトじゃない

【でなければあんな高層ビルの窓に張り付いていたりしないだろう、力量については、紫色>>>自分=蛇神、位に考えているようだった】
【彼もまた復調までの間、ドラゴンの喉元をそうと擽るように撫でようと、表情を隠していた腕を伸ばしたりしていたが】
【何処かから着信音がして、その腕もすぐに引っ込められる事となる。ローブの内側から引っ張り出すのは薄っぺらい黄緑色の通信端末】

……悦那? 嗚呼……あまり、がやがやと喚き立てないでくれないか。後で仔細は話すから

【短く通話を終えてそのまま放る端末の画面は、三兄弟と題されたグループトークが表示されていた】
【悦那という名の着信履歴が数日置きにあり、月彗という名の発言が月に一度程。文面はほぼ罵倒に近く、最後は必ず、連絡しろで結ぶ】
【どちらも今しがた全て既読になったが、それまでは長らく見ていなかったのだろう。見れる状況下では無かったのだから】

失礼、……何だかとても、懐かしいよ。あの頃に戻れたような、そんな気がする……あの館で、二人で生きていた頃に、

【何とはなしに掴んでみるのは手近な縫いぐるみ、それともう一つ何かが足りないという表情――鋏、だ】
【つい癖が出そうになって、結局縫いぐるみは元の場所へと戻す。どうも、こういう柔らかい張りぼては刻みたくなるのだった】
200 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/11(金) 01:29:28.12 ID:onr763yc0
>>199

「どうだろう。あれには負けないというだけで」

【どうとも言わなかった。ただ自分の力を信じている感じばかり漂わせて、――というより、それを疑ったこともないような態度だった】
【きっと適当にぬいぐるみを並び替えながら、ただ無言でいるよりはいいだろうという風だから、いちおう彼に気を使ったのかもしれない】
【竜はよく眠っていて微動だにしない。触っても大丈夫だろうが、触らないなら、よりいっそうよく眠るだけだろう】

【その画面の中をのぞき込める場所にはいなかった。だから見ていない。手にしているぬいぐるみをまた適当な場所に詰め込んで】
【「こうすると怒るんだよ」と付け加えている。さもどうでもいいことだけれど、数度こうして遊んだことがあるのだろう、と、なんだか推測させて】

「今はやめたほうがいいんじゃないかな、思いだしてからでないと、その前に嫌われるかもしれない」

【からかうような声。冗談めかして、――ああそうだ、と、本当にどうでもいいことを思いだしたみたいに。あるいは、頓着しないという証拠のようでもあるが、】

「ボクはどっちでもいいよ、あれだって引っ込みがつかないだけで、話がつけば、怒ってないんだから」

【机の上に、ペン立てがおいてある。シャープペンシルにボールペン、はさみや定規もあるのを、指先でかちゃりかちゃりと鳴らして、そう言葉を投げ】
【やっぱりこいつが実行犯だった。それでもやらせたやつの様子をうかがうのは、義理か人情か、面白がっているだけという方が、納得できる理由】
【どこかの部屋からは最初に聞こえたような声も、なにも、聞こえない。ずっと静かに、紫色の少女が遊んでいる指先の、小さな音ばっかりが繰り返されて】
201 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/11/11(金) 01:43:30.60 ID:ipXI6VOIo
>>200

……それは嫌だ。止めておくよ

【嫌われるかも、その一言で何か他の手遊びを求めていた手は静かに下ろした。これらはあの子の大切なものだ。そう思う度、壊したくなるのだけど】
【続く言葉に、疲れ切った表情だったのが急に真面目くさってにわかに上体を起こす。まだふらついてはいたが、それでもしっかり相手を見据えた】

それは……鈴音の記憶の事、かな。義父様の、判断が優先だけれど……私個人としては、あの子が苦しむのは、もう嫌だ

【だから記憶を戻して欲しい、とも、戻さないで欲しいとも言わなかった。どちらにしろ、あの子は結局、苦しむような気がしてしまう】
【理由がなんであれ、自分は一度あの子を捨てたのだ。その上久々に会えたというのに斬りつけて、操られていたとしても、嫌な記憶に違いない】

【「あの子が苦しまない方法を、」と再度呟いて視線を落とす。大切にしている縫いぐるみを切り刻む程度の苦しませ方ならする癖に、】
【変なところで踏ん切りがつかないのは、そのまま男の弱さを映し出していた。今のままでも幸せなら、自分がまた介入するのはリスクだ】
【けれど――今のあの子は、必死に自分との記憶を取り戻そうとしている。それを阻みたくはない、だけど、そんな迷いがありありと見えた】
202 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/11(金) 01:58:46.26 ID:onr763yc0
>>201

【小さな笑い声がする。からかいだったのだろう、たとえ覚えていなくたって、一番最初にしたのと同じような顔をして、怒りはしないはずなのだ】
【さっき言った「怒る」でさえ、ぷんぷんとテンプレートな怒り方をするばかりで、それだって、すごい下手なのに。だって、誰にだってぬいぐるみの順などどうでもいい】

「君の言う苦しみってなんだろう、それによるんじゃないかな。ボクは死ぬのが一番苦しいと思うけど、全部やらせた後に本人に聞かなくっちゃあ、分からないし」

【転生を禁じられている魂がもしもあの身体さえ喪ったら。たとえすべての世界が滅んだ後にも、あの魂はどこかに残り続けてしまう。だけど】
【それが真実だとは誰もいえない。それこそ全部を体験した本人に聞かない限り、わかるはずのないことで、それなら、外野で騒ぎ立てても無駄だろうと】

「それとも試してみようか」

【笑って、問う。それも多分冗談、だろうけれど、そうだという保証はどこにもない。本人が本気だといえば本気で、冗談といえば、冗談なのだし】
【背もたれに身体を預けても、木製の椅子はきしりとも言わない。少し首を後ろに傾ければ、長い長い髪が、そろりと床を撫で】

「じゃあ少し言い換えておこうか、ボクはね、君らがよければ、どっちでもいいよ。あれも、本当は嬉しいんじゃないかな」

【知らないけど、と、付け加えて、】

「ボクもそれなら来るのを減らすだけだし。別に、誰も困らないんじゃないかな、迷っているのは君だけだろうね」
203 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/11/11(金) 02:12:26.03 ID:ipXI6VOIo
>>202

苦しみ……、私にとっては、死は救いだった。あの女の支配を逃れるただ一つの術だったけれど、結局はそれも奪われた

【徐々にはっきりとしてきた意識で語るのは彼の思う死についてだった。ただ、それを鈴音に求めることは勿論無いし、今は考えも変わった】
【試してみようかと言われれば遠くへ茫洋と投げていた視線を相手に戻して、続く言葉を黙って聞いていた。判断をするべきは、どうやら自分らしい】

私は……、思い出して欲しい。共に過ごした時間を。代役ではなく、私との思い出を……叶うなら、私を愛してくれていた事も

【彼にとっては夢のまた夢に近い話だった。都合が良すぎるなんて通り越した、子供が求めるクリスマスプレゼントより無茶な程の】
【不揃いな瞳孔で真っ直ぐ見据える先は、気紛れな風。鈴音もそれが良いのなら、嬉しいと言ってくれるなら、何を払ってでも頼みたい程】
204 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/11(金) 02:26:28.79 ID:onr763yc0
>>203

「じゃあ、そうしようね」

【簡単な返事だった。それ以上に必要はないかのように、この場合は、彼こそが本人であるかのように――それなら、本人に了承を取ったのだから】
【それでいいだろうというのがどうやら紫色の意見のようだった。そのころには指先もペン立てに興味を失って、何か遊ぶものはないかと視線をめぐらす、さなか】
【その目は彼で留まって。しばらく猫が毛づくろいしているのを眺めているような温度感の視線が向けられることだろう、――悪気はないが、少し趣味が悪い】

【それから思い立ったようにふらりと椅子を立って、ほつ、ほつ、小さな足音で、扉の方まで歩く。それから、ドアノブに手を触れて――振り返ったなら】

「そうだ、一つ訪ねてもいいかな。今あの子がしあわせかどうかだけど……、……君って、あの白いのが演技がうまいと思うタイプ?」

【面白いように笑って、それから扉を開く。――向こうから「わ、!」とか驚いたような声が聞こえて、扉が開き切れば――多分、今扉を開けようとしたのだろう】
【中途半端な姿勢で静止してしまった少女がそこに立っている。ぽかんとした顔で、部屋の中とドアのそばに立つ紫色を交互に見る、ところへ」
【「早く入りなよ」とか言っているのだから、まあ、いろいろと確信犯だ。――やがて、少女が部屋に入るのと、紫色が出ていって、入れ違いのようになって】

……え、えと、一応ね、お話したの、……えっと、でも、へびさま、えっと……、来ていいって、いうけど、

【しばらくきょろきょろして、多分まだいきなりドアを開けられたのに驚いているのだろう。それから、そう言って、もう大丈夫なはずだと続ける】
【行くのなら案内するだろう。その時にすでに紫色の小さな姿は見えなくなっていて、気まぐれに消えてしまったのか、それとも、どこかで聞いているのか】
【それも分からないけど――案内するのなら、向かう先は普段過ごしているのだろう部屋だ。テレビとかこたつとかおいてあるような……それとも】
【そのまえに何かあれば、その足を止めるのは十分に簡単なはずで】
205 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/11/11(金) 08:27:57.56 ID:ipXI6VOIo
>>204

はあ、……ええ、と。多分、大根じゃ、ないのかな。勝手な想像、だけれど。それでも、あの子を信じさせるには、充分じゃないかな……、

【簡潔な回答に戸惑う間に投げられた質問、不意をつかれて思わず本音が零れ出た。一度だけ対峙した相手、そう深くは知らないけれど】
【今まで聞いてきた内容と、こうして待たされている現実を思うとどうしてもそういう答えになってしまう。それにしても大根は酷い】

【それが聞こえていなかったのなら幸い――鈴音が部屋に戻れば、少しだけ彼の背がしゃんとする。不安げな回答に矢張り確信は強まって】
【だからどうこう、という訳でも無かった。来ていい、その回答だけ頭に入れて、ゆっくりと立ち上がり、鈴音の許へゆらりと歩を進めた】

分かった、行こう……嗚呼、少しだけ、肩を貸しておくれ

【まだ足許が覚束ない。元々魔力量の低い性質、だから回復も遅いものだと、彼はまだ思い込んでいる】
【きっと魔力の察知に敏感な相手になら、触れた肩越しにも分かるだろう。静寂で、波一つ立たない、底が見えない貯水槽に湛えた魔力は】
【瞳孔はそのままだったが目の呪いは解けていたのだ、それを掛けたのはあの女で、その呪いは勿論目を狂わせただけじゃない】
【――結論を言うと、全盛期の魔力が戻っていた。ふらつく身体は、唐突なそれにまだ順応し切れていないだけの】
206 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/11(金) 10:53:05.77 ID:onr763yc0
>>205

【紫色は答えなかった。多分、答えるまでもないだろう。あるいは急に才能を開花させて円満にことが進んでいるなら、多分、もう少しだけ状況は違う】
【ばいばいと手を振って見せるさまは本当に子供のようで、すれ違いざま、少しだけ背伸びしてから、少女の頭に触れていく】
【少女は一瞬目をぱちくりさせてから、それでもあんまり気にしていないように、ベッドの方まで歩いて、】

えっと……、どうぞ、

【少し困ったような、そんな、顔をしていたけれど。相手に、ではなく、なんだか、いろんなことについて、ちょっとずつ困ったような、仕方ないなぁと笑うような】
【どこか吹っ切れたような顔。きっと自分のことは終わらせてきたのだろう、それなら後はもうちょっとだけ、不器用な真っ白い蛇を、納得させるだけ】
【といっても紫色は心配した素振りも見せなかったし、戻ってきた少女も、大丈夫そうな顔をしている。そもそも論外であれば、来ていいとも言わないだろう】
【手を貸すように差し伸べて、それから、見た目にしては気持ち力強い、それでも彼を背負うなんて不可能な力で、その身体を支えようとし】

……あのね、へびさまにね、聞いたの。……えっと、疑ってたわけじゃなくって、――、でもね、へびさまは本当だって。

【少しゆっくりめに歩く。かかる体重でわずかに傷が痛むけど、今更辛くて仕方ないということもない。がびがびになった服はそろそろ着替えたくもあったけど――】
【帰ってすぐに着替えちゃえばよかったかなとか思わないでもないけど、そのタイミングもなかったと思いなおす。部屋までは遠くなくて、きっと、すぐについてしまうだろう】
【一つ扉の前で立ち止まって、それから、少し長い吐息を一つ。ノックしようと軽く握った手を扉にかざして、でもすぐに、ドアに触れるようにして】
【へびさまと呼びかけてやって、それで、自分もちゃんと居ると中に伝える。返事はないけれど――「大丈夫だって」と、少女が言うなら、大丈夫に違いなく】

――……ごめんね、わたしね、ちょっとお着替えしてくるの。それに、たぶん、

【わたしがいない方がいいかなって、――言おうとした言葉は続かないけれど、なんとなく意味くらいは通じるだろうか。お着替えは本当でも、どこか、言い訳のような気もする】
【言い終えれば扉を開けるところまでは、彼女がやる。――それから先にはついてきてくれない、開け放たれた室内も、視認する限りはどうにも無人のように見えるけど】
【「おこたかな」と小さく呟いて。事実魔力をたどれば、部屋に置かれたこたつの布団の中から、じりじりと警戒しているようにも思える魔力が、感じられ】

【――それで、きっと、その先は二人きり。洋式の部屋なのに櫻風の家具とかおいてあるから少し頓珍漢な感じのする部屋だけど、根本的なところは、変わってない】
【いろんなところになんとなくぬいぐるみとかかわいらしいものがおいてあって、全体的にはかわいらしい感じ。だから、余計に、部屋の真ん中で存在感を放つこたつが、違和感めく】

【(隠れられそうな場所がそこしかなかった。今更になって隠れるというのも変な話だけど――もしそのこたつ布団をめくれば、中には大きくて真っ白な、文字通りの蛇がいる)】
207 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) [sage saga]:2016/11/11(金) 12:13:09.48 ID:wPQN2k33o
>>206

有難う、……そう、かい。分かった、

【二人きりで話すと言うこと。開け放たれた室内でまず彼がしたのは、おこた、と言うのを探すことだった】
【月彗に間貸ししていた時と似たような景色だった。そこに寒がりなあの男がよく籠もっていた低いテーブルがあって、嗚呼これかと】

……ええ、と。へびさま、と呼べば、いい……の、ですか?

【昔はよく使っていた敬語が意図せず口から溢れた。仮面を被っていたあの頃は、その方が何かとやりやすかった】
【つまりは何とかこの場をやりやすくしようとしている、そんな内心が透けた。布団はまだ、捲らない。布団越しに相手と対面すれば、】
【男はかつて末弟に叩き込まれた座り方を試みる。正座、北欧系統の顔が少し歪んだ。正直キツい、が、これが文献で見た櫻様式の謝罪法】

……此の度は、何かと、その。嗚呼その前に、先日の……殺し、いや、ええと――斬り掛かってしまった件で、……纏めて、謝罪を。
申し訳なかった、それと……、有難う、素晴らしい代役だった。鈴音をずっと護ってくれて、大切にしてくれて、……有難う

【思いっ切り自分のやった事をかなり婉曲な表現で誤魔化した男は、結局やがては仮面も被りきれずに衷心から一つ二つ言葉を溢していく】
【脚が震えているのは感謝の念からというより限界が近付きつつあったからなのだが、下手に姿勢を崩してはいけないと】
【天岩戸に篭もる彼の返答を、待ち続けた。脚のことを忘れようと考えるのは次の段階、櫻様式の謝罪法――】
208 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/11(金) 15:48:57.27 ID:onr763yc0
>>207

【返事は、なかった。なんせ布団の中に居るのは蛇であるから、そもそも声帯らしい声帯も持たない……というのは、なんら、言い訳でしかない】
【まがりなりにもいつか神であったなら、こういった場合でも言葉を交わす方法を持っていた。けれど何もしない、まだ少し生ぬるい、くらい中に潜んでいるばかり】

【結局、それは拗ねた子供の行動のよう。顔も見せない、本当にそこに居るのかも、わずかに漏れて来る魔力でしか、判断がつかない】
【それ以外はまったく息遣いもあるはずない家具に謝らせているようなものだ、それなら、こちらのほうがよっぽど行儀が悪い。口下手も理由にはならないだろう】
【大丈夫だと思うと少女は言ったけど、これで大丈夫なら、大丈夫じゃないとどうなるのか。むしろこれで本当に大丈夫なのか、――不安になりかねない態度は】
【けれどある時にふと視線でも感じることができれば、もふりとしたこたつ布団、床との間に、あるとき、小さな隙間がごくこっそりと作られ】
【真っ赤な目が、そこからこっそりと、ばれてしまわないように、覗き見ている。瞬きもしない蛇の目、温度はなく、何を考えているのかも、分からない】

【言葉を告げることは、まだない。ただ、相手の様子を探っている、こっそりと隠れて、うかがって――ただ怖がりな野生の動物のように】

【きっと彼にしてみれば、謝罪は、あんまり興味がない。紫色はいろいろ勝手に言っていたけれど、つまりは、――これはこれで、あの少女のことしか、考えていない】
【ならきっと欲しいものもそれだった。生きているのかもわからない人形だったころ、白蛇はどうにもできなかった。それどころか、自分の側へと引きこんですらしまった】
【役割としては祟り神であった自分に似てしまったのを止められなかった。……けど、それを人間のようにしてくれた存在がいたなら、】
【多分、それこそ、怒りはしないのである。ただ、恐れてしまった、人がいつかいなくなることを、思い返してしまって】

【ぞろりとくらい中で長い身体をわずかに動かす、――机の脚にでもぶつけてしまったか、天板がかたんとないて、小さく、相槌をしたようにも思えた】
209 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/11/11(金) 16:10:53.71 ID:ipXI6VOIo
>>208

……、――

【いつまでも返事がないので本当にこの中に蛇神が居るのだろうかと、と言うかそろそろ本気で脚が限界になってきた頃】
【赤い蛇の目がこちらを見ている事についぞ気付かない男は、あろうことかそっと懐から薄っぺらい端末を探り出していた】

【グループトークにうざったいくらいの兄からの着信履歴があるのに辟易した顔で画面をなぞるも、緊張のせいか操作を誤り】
【特に友人も居ないタイムラインに『冷蔵庫から出て眠れる季節になったぜ!』と馬鹿みたいな兄の投稿を見つけて光速で視界から消す】
【選んだ相手は弟、肩口で切り揃えた白髪を荒げた葡萄色の目はカメラを睨み付け、舌を出して中指を立てたアイコンが見るたび痛々しい】

(連絡出来ず済まなかった
 取り急ぎ教えて欲しい事がある)

【返事は驚くほど早かった、端末が振動するのをぎゅっと押さえ込んで通知を見れば、どうやらもう文面を確認する必要もなかった】

(『死ね』)

【反抗期なのだろうか。兄としてはひたすらに悲しいような寂しいような、だがめげていては状況を打開できないのですぐに返信を打つ】

(後でいいかな
 櫻で人に詫びる時の作法が知りたい)

【今度は少ししてから返信が来た。待ち侘びたように男は画面へ目をやり、真剣に読んで、面白い程に真顔になっていく】

(『小指を切って相手に渡しや」)

【もう何も返すことはなく、男は無言のまま静かに端末を仕舞う。記憶にあったのはハラキリとかカイシャクとか、ハイクだった筈だが】
【聞いた相手がかつて男娼だった事に男は思い至っていなかった。自らの左小指をじっと眺めて、脚だけでなく背筋も少し震えたような】

……言葉では、足りないと言うのなら。私の覚悟を、貴方に見せるより、他にない。この、利き手の小指を――

【悲愴な決意を固めた男は、取り敢えず手近な刃物をと懐を探り出した。兄に見せられたヤクザの映画のように噛みちぎるのは、流石に怖い】
210 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/11(金) 16:29:47.60 ID:onr763yc0
>>209

【ずっと昔のことだ。白蛇とあの少女が初めて会った時――、蛇は、あの少女に、幸せになっていいと、言っていた】
【だから、幸せにしなければならない。どんな手を使ってでも、どんな理由が誰にあっても、不幸であってはいけない、嘘を吐くことになる】
【七百年の約束は反故になっても、怯えて泣いていた子供にかけた言葉が嘘であってはいけない。――思いにあるのはただのそれだけ、それを守ることだけ】

【(きっとあの人物だって、小さな子供のためであれば、許してくれると思うのだ。まして自分たちの子孫である幼子のためなら、きっと、)】

【――携帯端末をいじる姿も、多分見ていた。でも蛇はそれを何かはよく分かっていなくて、つまり、なにがなんだかわからない】
【すごい離れたところの人間としゃべったり、文のようなものができるらしいが、……まったく分かっていないので、つまり、分かっていないのだが】
【相手がしゃべらないのであればいっそうこちらはしゃべらない。じっと隙間から相手をうかがっていたのだけど――、最終的、彼の導きだした結論を聞けば】
【がた、と、さっきよりも大きな音がする。人間じゃあない蛇が人間らしく驚いた音、もっと饒舌な性質であれば、何をするのかと止めに入るところだが】

【蛇からしたら脅迫みたいにも思えた。それともそれが人間の決まり事なのかと、自分にはない指を幻視して、怯えている】
【少女は自分がいない方がとも言ったが嘘だった気もするくらいにずれている。いつかは信仰に乗じて人間を喰らったこともあったが、さすがに今、指は要らない】

【布が動く小さな音がした。空気穴のようなのぞき穴のような隙間から、蛇の口先がほんのわずかにのぞいて、何かを、床に置く】
【口先はすぐに引っ込みながらも代わりに尾の先がその何かを押しやって、ひたすら、指は要らないとアピールするように、それを差し出すのだろう】

【銀色の、きっと多分それこそ人の指とかにつけたらちょうどよさそうな装飾品。そして多分、彼にとっては見覚えのあるものだ、――多分、ずっと預かっていたのだろう】
【あの少女が昔つけていた指輪。それを相手に返す意味は、きっと、考えるまでもないようなもののはず。だから指は勘弁してくれと、こちらが謝っているようですらある】
【――それでもすべてが脅迫のせいではなく。怒っていないというのは本当だったのだろう、ただ、二度目はないのだと、ぎゅっと堪えて、観察していただけ】
【思ったよりおおごとになりかけてやっと動くのは怯えもあったが、その分、きっと覚悟しているだろうと思ってのことでもある。――だから、本物を、返す、と】
211 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/11/11(金) 16:53:14.27 ID:ipXI6VOIo
>>210

【がたりと大きな音がして漸くちゃんと中に何かがいる事に気付いた男も、これまた驚いて懐の中で弄っていたものをぼろぼろ落とす】
【小瓶に入った何かの血、きらきら光る美しい羽、何処かで拾った純銀のスプーン、昔使っていた眼鏡、カエルの燻製――そんな中で】
【布団からそっと覗いた銀の輝き、散らばったガラクタとは絶対に違う、ずっと無くしたままだった見覚えのあるその品は、】

……、指輪。私と鈴音の、それは、

【受け取っていいものか迷った。だが蛇の尾が更にこちらへそれを押しやるので、恐る恐る壊れ物を扱うように両手でそれを拾い上げた】
【手の上の指輪と、蛇が開けていった穴とを交互に見て、本当に良いのだろうかと確認するようにしてから――そっと、左手の薬指へ】

……有難う。今度こそ、必ず。私はあの子を護り続ける

【切る決意をしたはずの小指も、落としたガラクタの事も、今はすっかり意識の外。再び嵌めたその指輪の輝きと、布越しの相手へ誓う】
【自分は赦されたのだろうか、それともこれが、贖いになるのなら。そんな考えが掠めて、けれどそれ以上の大前提に圧し潰される】

愛している、鈴音。永久に……私は二度と、その手を、離さない

【これまでも、これからも。あの子を護り続ける事は使命で、愛し続ける事は自分の意思。祈るように組んだ指、そしてにわかに揺らぐ背】
【脚の方が限界だった。ぐたりとだらしなく伸ばした長い足はヒールを履いたまま、片方が炬燵にそのまま突っ込んでしまった】
212 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/11(金) 17:10:39.82 ID:onr763yc0
>>211

【少し予想外はあったが、これでよかったのだと思う。あの少女は結局いつだって人間を好く、ありふれたものに憧れて、それを持つ人間たちを好きになる】
【だから自分や、紫色は、本当はいないほうがいいくらいなのだろう、それを分かって、だけど、いなくなれないのなら、神として以上に、存在として落ちぶれているとも】
【今度はのぞき穴からのぞいていることもない。少しばつの悪いような様子で、暗闇の中で、身体をちいさくまとめて、だまりこくっている】

【多分それで部屋から出るだろうと思っていたこともある。白蛇や少女にとっては普通だったから、それが、ほかの文化の人間にとって辛いものだとは、知らなかった】
【本当はしゃべれる声が声にならないくらいの驚きに跳ね上がって、結局声は出ないまま、それでも、奇妙な生き物の声のような音がする、……威嚇でさえない】
【足から距離を取って狭いこたつの中でもっと小さくなっている、さすがに噛みつきはしないけれど――、と、そこに、扉の外から】
【こつん、こつん、と、少しためらいがちなノックの音がして。数秒後に扉を開けたのは黒髪の少女、……ドアから半分だけのぞき込み、】

え、えと、大丈夫……? わ、えと、ごめんなさい、出て来るまでって思ったんだけど、だいじょうぶかなって……、

【今更すごい不安そうな顔でそう尋ねる、のだった。――言葉通り服は変わっていて、ゆったりとした部屋着のワンピースになっている。それなら、】
【一人で着替えながら悶々と少しずつ不安になって行く彼女の顔が想像できるような気もして、――と、その扉の隙間から、さっき逃げていった黒猫が、わが物顔で部屋に入りこむ】
【動物がちょっと多いようだった。それでもまだ別の部屋に居たりするのだから、……というより、こたつ布団の中のそれを、動物と定義していいのか、少し分からないけれど】
213 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/11/11(金) 17:26:52.68 ID:ipXI6VOIo
>>212

【ガラクタと横たわる男と、少しずれた炬燵ーー組んだ手は胸の上、左手薬指に銀の指輪を嵌めた男は、そのまま棺に入れるのが似合う程】
【片足を見事に炬燵に突っ込んで、目が、色々と死んでいる。やってしまった、というか中の人は無事だろうか、蹴飛ばしでもしたらもう】
【そのまま鈴音を見上げて、男は何か今際の際のようないい笑顔を見せた。下から見上げている。もしかしたら、景観が幸せかも知れない】

鈴音……怪我は、もう良いのかい。嗚呼、部屋着も可愛らしい……こっちにおいで、私の鈴音、愛しているよ、

【折角の視界を黒猫が横切っていった。乱れた髪も遠慮なく踏んでいって構わないだろう、既にもう何というか、駄目だった。手遅れだ】
【炬燵の中が怖くて見れない。代わりに縋るように見るのは鈴音、けれど視線が部屋着に移って、ワンピースで、つまり、そういう事で】
【完全防備でも何でももう良かった。最期なのだから、と思えば例え黒猫が腹の上に登って寝始めようが構わなかった】

見て、

【ついと伸ばすのは左腕。小指が何故か握り締めたように少し赤かったが、それより目を引くのは薬指の銀の指輪だった】
214 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/11(金) 17:43:12.76 ID:onr763yc0
>>213

【部屋に入った一瞬目に思ったこと……思ってしまったこと。修羅場。浮かぶ単語はそれ一つだったけど、それ一つで、この現状をすべて賄ってなお余るほど】
【ご飯のおかずでいえばすごい味の濃い佃煮みたいな感じだった。なんだこれ。大丈夫かを聞いたのすら間違いだったくらい、大丈夫じゃない】

ええと……。

【指先を口に触れさせて考える。どうしたものだろう。というかこの状況は何であるのか、わからないまま、ようやく部屋の全体からなぜか寝そべる彼に視線を落とし】

へ、へびさまは? えっと……、

【大丈夫と軽く返しながらも気にするのはそちら、であるのは、まだ仕方のない部分もあるのかもしれない。まだ思いだしていないのだろう、前のような甘さが足りない】
【多分覗かれたワンピースの中はさすがに夜の国、あまり薄着だと暖房があっても寒いせいか、きちんと短いズボンをはいているが、後はご想像にお任せするとして、】
【すたすたあるいていった黒猫がやがて彼のお腹の上で場所を定めるようにくるくるあるいてすとんと座り込めば、さすがに慌てたような顔をして――】

わ、わ、だめだよ、あんこ駄目なの、ほら、おだいどこにカリカリあるよ、食べておいで……、

【だなんて言って駆け寄って引っぺがす――少し爪を立てたようだが、切腹に値する傷にするにはしょせん家猫でしかなく、些細な傷と痛みでしかないのだろう】
【そのまま猫はどかしてしまって、――それでやることを見失ったのだろう。カオスの空間の中でうろたえている。どかされた黒猫は興味深いように彼のにおいを確かめている】

……、? 指輪、

【少し混乱しているのだろう。言われて示されたものを見てそのままそれが何であるかを復唱した彼女は、とりあえず、どうにかしようと思ったのだろう】
【ひとまず起きてもらおうとして――その手を取ろうとするのだ。取らせてくれるならそのまま引っ張る、ひとまず起きあがってもらう、それから、こたつの中を確認する、つもりで】
215 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/11/11(金) 17:52:37.41 ID:ipXI6VOIo
>>214

――中、

【へびさまは、と聞かれて言えたのはそれだけだった。今まさに自分が片足を突っ込んでいる、炬燵の中。確認なんてとても出来ない】
【北欧系統のストレートな伝え方も素っ気無くされると言う側にも堪えるもので、これが櫻のしとやかさなのかと、もう思考も駄目だった】

あんこ……?

【自分を嗅ぐ黒猫を見遣る、何でよりによって甘いものの名前なのだろうか。今度は頭が痛くなってきて、もうこの世の終わりな気がした】
【伸ばされた手を取られれば覚悟を決めたようにゆっくりと立ち上がる、出来る限りそっと素早く炬燵から脚を抜き取って、今更の隠滅】
【立ち上がれば後の確認は相手に任せる、と言う様に鈴音の後ろに回って、ゆっくり背を押して、炬燵の前に出そうと。下衆の極みだった】
216 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/11(金) 18:15:11.97 ID:onr763yc0
>>215

なか……。

【なんとなく分かっていた。けれど、いざ言われると、どうしてそうなった、あるいはどうしてこうなるまで放っておいた、そんな気持ちになるのは仕方がないはず】
【それから彼の手を引いて助け起こしながら、猫の名前について言われれば、「黒いからなの」と返ってくる。それから白猫のほうは「おもち」だとも付け足され】
【あんことおもち。白黒の猫が来たらおはぎだろうか――どうでもいい思考遊戯。やがて助け起こせば、一つ課題はクリアしたような気持ち】
【相手の態度を見るに喧嘩をしてしまったのかと思っている、ゆるく背中を押されて、わずかに振り向いて見てから、――よいしょとこたつのほうへ向き直る】

【時間はほんの一分くらいだろうか、もう少し長くても、三分は必要ない】
【中の存在といくらか会話したらしい彼女が言うには、びっくりしちゃったんだってとのことで、まあ――怒ってはいないらしいと、判明する】
【びっくりしたから少し放っておいてほしいらしい、との伝言もある。それなら、もう、あの蛇はここでおしまいらしい。放っておけば、まあ、落ち着くのではなかろうか】

……ねこ、嫌い? えっと、……猫だけじゃないの、いっぱい居るから、……。

【こたつに普通に顔を突っ込んでしゃべっているのもどうかと思ったけど、少しくしゃっとした黒髪をそのままに、床に座ったままで見上げる、尋ねるのは、全く別のこと】
【猫だけじゃなくて竜とかいろいろいるものだからどうしようとでも考えているのだろう。黒猫は飽きたように自分だけソファでくつろぎだしている、自由なことで】
【こたつの中の蛇についてはもう彼女としては放っておいてやるつもりのようだった。すらと立ち上がって部屋を出ようとまでする――、手招きで、彼も誘って】

えっと。……お部屋いっぱい余ってるから、使いたいところ、使ってもらっていいの、わたし、さっきのお部屋に居るね、……、
……明日の朝くらいだって*ちゃんが言うの、……あの、さっきお着替えしてるときに、来て――、だから、ちゃんとお話するのは、きっと、明日のあとがいいかなって……。

【そのまま部屋を出られるなら部屋を出てから。まだ何かあるというなら、部屋を出るまで、その言葉は言わない】
【暖かそうな布地のワンピース、その胸元の布をいじくる癖も、前と一緒だ。少し不安なときの癖。――ひとまず今日は泊まっていけばいい、と、そういうことらしい】
217 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/11(金) 19:17:28.17 ID:onr763yc0
/食事が外になりましたのでしばしお待ちいただけたらと思います
218 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [sage saga]:2016/11/11(金) 20:37:57.62 ID:Fc6KwMazo
>>216

いや……生き物は、大抵。好きだよ

【取り敢えず蛇神が無事なのと怒ってないことに安堵して、男も早いところ退散したかったのだろう、そのまま相手についていく】
【ガラクタを拾い忘れていたけれど、思い出すこともしばらく無いだろうし、思い出そうが男に取りに戻る勇気はなかった】
【――実際、生き物は好きだった。自分も随分と飼っていたし、強い魔物や珍しい幻獣なら、狩りたいくらいには大好きだ】

明日の、朝……分かった、それなら、そうさせてもらうよ。お休み、鈴音。また明日、

【一応、部屋の前まで送ると申し出て。断るならその背を見送ってから、建物内を数度見渡して、空いている部屋を見繕いに行く】
【なんだか酷く疲れた気がした。それは精神的な方であって、実際には身体の方はあれだけの戦いのあとだというのに、何ともなかった】
【魔力が戻っている、男がそう気付くのも明日の朝になるだろう。女の解いた何かの影響は兄と弟にも及んでいたのか、端末が数度鳴り】
【歩きすがらに気怠げに通知が来ているのは見たが、内容まで確認する気も起きずに男は適当な部屋のベッドへと倒れ込んだ】

どうしようか、これから、先……、

【水の国の別荘があったのを思い出す。二人で過ごしたこともあった場所、かつて所属していたギルドの管理している高層ビル・最上階】
【あの館に帰る気はない。思い出は捨てがたかったけれど、またあの女の気紛れが起きた時、真っ先に影響を受けることになるのだから】
【長兄はまだ泥の街に潜伏しているのだろうか。どうせろくな稼ぎもないまま、活動家気取りの地下道暮らしなら厄介になるのは御免だ】
【末弟は櫻の国の廃村に一人蟄居していた気がするが、交通の弁も悪い田舎だ。というか、交通どころか電気水道も通っているのか怪しい】

【そんなことを夢現に考えながら、いつしか男は眠りについていた。深い、深い眠りだった】
219 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/11(金) 22:10:00.80 ID:onr763yc0
>>218

【空いている部屋――といっても半ば物置みたいな、あるいは衣装室のような、そんな部屋も、いくつかあるし】
【なんなら動物のケージがおかれた部屋も見つけるかもしれない、角のある兎とか、蛇の尾を揺らす鶏だとか――変なものが多い】
【そうでもなければ立ち入ったこともあんまりなさそうな部屋がいくつか余っている。好き勝手に家じゅうを歩くのは猫の二匹と、ベッドで寝ていた子供の竜】
【そいつらは好き勝手にしているからもしかしたらどこかで出会うかもしれない、ベッドに連れ込んでも、特に文句なく湯たんぽみたいにできるだろうから】

【――枕もとにかけておいたアラームがいつもの時間で鳴る、昔はそんなもの使わずに好きなだけ眠っていたわけだから、そこは、少し、小さいような大きいような、変化】
【それでも一人で誰もいないのに愚図ったような声を小さくあげる、その時には手が半ば無意識で見もしないでアラームを黙らせている、その指先に小さく術式の残滓が絡まっていた】
【枕の感触が快くて顔を埋めた仕草で頭の上にわずかに残っていた残滓もはらりはらりと落ちて、目を開ける前に消えていくから、気づかないまま――】
【こすりながら開けた目が見える範囲の部屋をみとめて、びくり、小さく跳ねて――記憶の違和感。自分の部屋に対してここはどこだと疑る感覚は、どこか、少し、きもちがわるい】

――、

【ここん、と、小さな音で、扉をノックする。何なら部屋に入りたがる猫のほうが大きな音を立てるだろう、――多分、どこの部屋を使っているのか、探している】
【時間は起きた時より少し遅くて、けど、いつも遅くまで眠っていた彼女からすれば、彼がどんな時間に起きていたかが分からなくて、だから、妙に小さな音で呼ぶのだろう】
【それからこれも小さな声で呼びかけるような声がするのだけど、扉越しでは何といっているのかも不明瞭。少し待って――何も反応がなければ、きっと、別の部屋へ行ってしまう】
【声が何を言っているのかは不明瞭でも、少しだけ急くような、クリスマスの朝に枕元を探すような、そんなような声をしていて、】
220 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [sage saga]:2016/11/11(金) 22:23:36.54 ID:Fc6KwMazo
>>219

【目が覚めたら知らない部屋で髪は散らかし放題、起き上がれば二日酔いのような頭痛と嫌な感覚が喉奥からせり上がってくる】
【ばち、と何かが跳ねた音がした。それで完全に目を覚ました男が辿った発信源は、己の掌。黄緑の燐光が、行き場を求める奔流のようで】
【懐かしい感覚だと思った。かつて思いのままに敵を蹂躙していた頃の、あの力だ。反発と対消滅、地味だと侮るたび、死体が積み上がる】

……、?

【不意に扉をノックされて、首を傾げた彼は寝癖もそのままにベッドから立って、ドアを半分だけ開けて首を廊下につき出そうとする】
【動作までに少し時間が掛かった、もう何処かに行ってしまったか。そんな不安を抱いたのは微かに鈴を転がすような呼び声がしたから】

鈴音、りーんーねー、

【起きがけの低く掠れた声は、それでも幾らか屋敷の中に通るだろう。あの子が自分より早く起きるなんて珍しいな、とふと思った】
221 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/11(金) 22:43:44.73 ID:onr763yc0
>>220

【いろいろを昔に似せた暮らしは、ただ、少しだけ――生活する時間が変わっていた。それでも起きたなんて簡単な言葉、本当は、アラームは三つも四つも五つもある】
【けれど今日の眠りはいつもと少し違って、何とは言えないけれど、視界がいつもより広いように思う。昨日まではなかったものが、頭の中にあふれていた】
【違う。昨日まで、どこにしまったか分からなくなっていた、積み上げた引っ越しの段ボールの中身みたいだった記憶が、すべて、元に戻ったような】
【覚えている自分の部屋と今いる自分の部屋の似通った、でも確かに違う異変にふらついて、家の間取りも混乱して、しばらくふらふらしていたのは余談だけど――迷子みたいに】

――、……。

【ここでもない、と、ノックのために差し出した手の、指で扉をなぞる。彫り込まれた模様を爪でかたかたと小さく小さく鳴らして、短い吐息で、ふいと振り返る】
【空いた部屋も数少なくなるたびに不安が少しずつ増えている。まだわずかに過去と現在が混濁する記憶の中では、なんだかぼうと夢の中の霧みたいになって】

【それともまだ眠っているのかもしれない、それなら先にへびさまと話した方がいいのかもしれない。昨日は放ってしまったから、不安にしているかもしれない、と、】
【起こしに行くのはもう少し……時間の数字が次になったらにしようか、と、廊下を曲がる。――その時に、聞きなれた声に、名前を呼ばれて】

【投げられたボールを上手に捕まえられた犬みたいな顔だった。ぱたぱたぱたと軽い足音はきちんと聞きつけて、長い髪をふわふわに揺らしながら、戻ってくる】
【昨日の夜よりも暖かそうな格好をしている。昨日のワンピースに、ふわふわしたフリース素材の部屋着を羽織っていて、足元は暖かそうなスリッパで】
【それとも迷子がようやく親を見つけたような顔。――そのままなら、抱きしめてもらうより先、抱きしめたいみたいに、駆け寄るはずで】
222 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [sage saga]:2016/11/11(金) 23:00:13.75 ID:Fc6KwMazo
>>221

【駆け寄ってくる姿が愛おしかった、女子の服というものはよく分からないけれど、何でも似合う子には何でも可愛く思えるものだ】
【気合を入れて来たのに気付いてくれないなんて怒られても困ってしまう事がよくある――だっていつも愛らしいのだから、分からない】
【自分だけ昨日のまま少し薄汚れた姿であるのが嫌だったが、そんなことは瑣末なものだ。今はただ、全てを思い出したあの子の反応が】
【恐ろしいような不安なような、けれど間違いないと思えるのはその屈託のなさか。腕を伸ばして絡め取ろうとするより先、抱き締められ】

……おはよう、鈴音。今日のキミは、とっても早起きだね

【胸元に収まってしまう相手の頭に顔を寄せる、黒髪の艷やかさと香りが、抱き締めてくれる事が、何もかもがうつくしい朝だった】
【――思い出してくれた。そして、私を選んでくれた。その事実がまだ夢の様で、けれど決して夢ではないのなら、奇跡と呼ぶべきか】

体調は、大丈夫かい。記憶は……整理できて、いるかな。あまり無理はしない方がいい、何ならもう少し休んだって、

【顔を埋めたまま、心配げにそう問い掛ける。あの紫の女は約束を守ってくれたらしい、けれど、きっと混乱しているのではないかと】
【向かい合うなら真っ直ぐ相手を見るオリーブの瞳にもう呪いはない。瞳孔が歪なのは同じまま、背高なのも心配性も、変わっていない】
223 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/11(金) 23:17:47.83 ID:onr763yc0
>>222

【昨日はお風呂に入れなかったのだろう。多分腹に穴ぼこがあってまでお風呂に入ひとはあんまりいない、だから彼女も、服ばかりはきれいでも、少し薄汚れているよう】
【それでも長い髪はよく身づくろいしたのかきれいにつやつやとしていて嬉しいのをいっぱい表すかのように、動きに合わせて、跳ねたり靡いたり、揺れたりしていて】

もう、ずっとだよ、お昼からのときはね、うんと早く起きるの――けど、今日はね、お休みする……。

【ぎゅっと抱きしめて夢とか幻ではないと確かめる、それだけじゃあ物足りないようにぐうと背伸びして、背中に回した手は、ぎゅっと服の布をつかんでしまう】
【ここ最近はこんな生活だった。仕事をしているから、あんまり、前みたいにずっと家にいることはない。だからもう慣れっこなの、と、少しだけ、自慢げなような、声】
【それもひどく嬉しげにはしゃいだもので、そうしてしばらく埋めていたのだけど、そのうち、横を向くようにして、頬を寄せ】

……大丈夫なの、ちょっとだけ、変な感じだけど――、ここどこだろうって思ったの、でもね、すぐにわかったよ。

【きらきらとした目で見上げる、けれど思いだしたからだろう。その視線は相手の目をうまく外していて、前と同じように、鼻や口のあたりを、じっと見ている】
【昨日大丈夫だったということは、まだ、分かっていないらしい。だから目線が上手にあわなくて――意識してというよりは、もう、癖みたいになっている】

…………――ずっとね、ずっと、いい子にしてたの、ちゃんとね、いい子だったよ――。

【改めて本当だと認識したのだろう。数秒ほどじっと見つめて、それから、力の抜けたように、破顔して、笑う】
【記憶こそすり替えられたけれど、ずっと、ずっと、そうでいようと思っていた。理由はわからないけど、ずっと、そうしてきたつもり】
【親に甘える子供みたいに見上げた、視線が、少しだけためらうように揺れる。それから、こわごわと、悪いことをするときの子供みたいに、そっと、視線を合わせようと動く】
【気づかないままで、我慢ができなくなった。大丈夫なのだと分かれば、いっそう嬉しいよう崩れさせて――】
224 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [sage saga]:2016/11/12(土) 07:49:30.24 ID:oEGeQ/Lno
>>223

お昼から? ……ああ、確か、セリーナの所で働いているのか。月彗も何やら世話になったらしい、谷山君とやらに、救われたそうだ

【遠い記憶を手繰る。そんな連絡を見て、安心して――悦那は結局、脱退したという。その時には一発ぶん殴られたらしいが、当然だ】

そうか……彼女に、感謝しないといけないね。勿論、あの蛇神にも――
……偉いな、鈴音は。本当に、いい子だ

【自分はあれから、殆ど女の支配下にあった。そのおかげか悦那と月彗には何の影響も及んではいなかったようだと】
【それから、目の呪いが解けたことも話し出す。過去に綾津妃に女への対抗策を貰った代償、視線を合わせたものを呪うそれは】
【女の呪いが説かれたことで、同時に消え去ったらしく――勿論、実際に目を合わせようとしながら、彼女に滔々と語るのだった】

【それから、思い出したように話すのは昨晩の蛇神との一件。なかなか話してくれなくて、月彗に相談した結果、小指を切って渡すはずが】
【ずいぶん慌てたようにして、この指輪を返してくれたのだと。つまりは赦してもらえたのかな、と少し自嘲めいた笑みを乗せながら】
【「世話を掛けたね、彼によろしく伝えておくれ」そう言った表情は素直なもので、柔らかい微笑みは相手以外に向けるにしては珍しく】

さて……どうしようか、これから。私と、鈴音――

【相談するのはこれからのこと。ここに留まるのか、それは彼としては不安要素だが、もしかしたらあの女の気紛れがまた襲って来たとき】
【頼りになる存在がいる、あの風と蛇神なら――そんな他人頼みの策だが、現状あの女に敵うとしたら、きっと紫の存在だけだ】
225 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/12(土) 10:44:56.03 ID:7G3Fj3nh0
>>224

【何が嬉しいでもなく、すべてが嬉しいのだろう。そんな話をしてくれることにもひどく嬉しそうに笑う彼女は、ときどき、確かめるように、ぎゅうと手に力を籠める】
【きちんとここに居るということしか多分あんまり考えてない、話の内容も――真摯に聞いているという態度ではない。嬉しそうに相槌を打って、ずっと笑っている】
【まだ嬉しいが強いのだろう、――それでも昨日の白色とのやり取りを聞けば、少し困惑したように、「きっとね、びっくりしたんだと思う」と言って】
【言っておくね、と、囁いて、その胸元にずーっと顔を埋めている。それで――これから先、と、言われれば。少しだけ、驚いたような目をして】

――ここに居ればいいの、……だめ……?

【何を考えているのかがわかりやすい。口角がへにゃと下がって、今度は、不安であるのだろう。どちらにせよぎゅっと抱き着いた腕の力を強めて】
【ここで何年かは暮らしている。建物だってちゃんと普通だし、暮らすに困らないだけのものはあるし、問題もないし、猫もいるし、猫以外だって、……と、そんな理屈】
【だからここに居ればいいと、そう告げる。それに――多分彼が思っている通り、あの紫色も、たまには様子を見にくるだろう。へびさまは、……あまり頼りないかもだけれど】
226 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [sage saga]:2016/11/12(土) 10:55:47.40 ID:oEGeQ/Lno
>>225

ここ、に……? 居ていいのかい、私が、

【思えば今までは鈴音を連れ回しては自分の場所に留めていてばかりだった。だから自分が厄介になる、というのが酷く新鮮というか】
【考えすらしたことがなくて、どれだけ自分勝手だったのかと何だか笑えてきさえした。護るという大義名分で監禁していたようなもの】

……鈴音と、蛇神がいいなら。是非、そうさせて欲しい

【相談すればすぐだった。昨晩一人悶々と考え込んでいた事が結局全て解決して、何でも勝手に抱え込む悪癖がひどく馬鹿馬鹿しい】
【――男の端末が振動した、長めのそれは電話だろう。相手をちらと見やってから、失礼、と端末を手に取り画面を見て、即切ろうとして】

ええ、と。兄からだ。状況報告だけ、してもいいかな

【一応話しておいたほうがいいかと思った。兄弟としてよりは、もう面倒くさい連絡が来ないよう兄の不安を晴らしておきたかった】
227 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/12(土) 11:13:15.54 ID:7G3Fj3nh0
>>226

【うん、と、頷く。今まではわからなかったこと、すり替えられた記憶の中にも存在しなかった部分――あの紫色が、いろいろと、話してくれていたことも、思いだしていた】
【どちらでもいいというのは本当で、どちらに転んでもいいように。あらかじめ聞かされていた部分が点在していた、だから、多分、分かっていたんだと思う】
【へびさまが何度も謝っていた思い出も、忘れてしまっていたけど――思い出のことについての謝罪を忘れていたなんて少しへんだけど、今では、全部分かって】

へびさまも、大丈夫って言うと思う。……へびさまね、ひとみしりだから、あんまり、おしゃべりはしないかもしれないけど――、

【あの蛇の場合、しゃべらないとか愛想が悪いというのは嫌いの意思表示ではない。もとは野生動物でしかないし、そもそも、数百年単位の引きこもり】
【いまさら急に和気あいあいと過ごせというほうが無理やりでいじめているみたいなものなのだろう、――ひとに慣れていない野生動物、くらいの感覚がいいのかも】
【この場所の冬はどうしたって爬虫類には厳しいのか暖房が効いてこたつのある部屋からはあんまり動かないのだけど――とは、余談】

うん、だいじょうぶ。
……わたしね、昨日のお部屋に行ってるね。

【震えだすものに気づいて、少し名残惜しいようにしてから、身体を離す、電話なのかなとこちらも同じような判断をして、抱き着く腕もほどいてしまえば】
【あんまりにそれを聞いてしまっても悪いのではないかと思って、そう提案する。それで大丈夫なようならそうするのだろう、彼だって、また起き抜けのようだし】
【寝癖とか直したりしたいだろう。だから、全部終わってからくればいいから、と。そう言って――】
228 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [sage saga]:2016/11/12(土) 11:37:02.08 ID:oEGeQ/Lno
>>227

分かった。済まないね、

【離れていくのが名残惜しいだけに、相手の姿が見えなくなってから電話に出た男は起きがけだったのも合わせてひどい仏頂面をしていた】
【画面一杯に表示されるアイコンが割りたくなる程憎たらしい。どこで手に入れたか知らないバイクと、夕日に照らされた格好つけの背中】

……何だ馬鹿。死ね

「何だよお前まで!? 昨日月彗にも同じこと言われて切られて泣いてたんだぞ俺はッ、」

嗚呼、奇遇だね。私も奴に連絡したが同じ返事を貰ったよ

【それで――、と話し出すのは一連のこと。あの女に取り憑かれて長らく彷徨っていた、けれど色々とあって、やっと鈴音に再会できた】
【取り敢えずこれからは鈴音の所で世話になるけれど絶対に住所は教えないし来たら殺す、まで一息に言ってから、思い出したように】

お師匠様の気紛れ、だろうが……私達の今まで抑制されていた力が、解放されている。月彗はもう何やら改心したようだけど――お前は、

【電話先にいる血の繋がらない兄は極左活動家を名乗り、今も争いの絶えない泥の街に潜伏している。そんな身に突如力が降って湧いたら】
【男が心配していたのはそれだった。先程まで五月蝿いくらいに声が響いていた電話口は不意に無言となって、嫌な沈黙が続いた】

「……俺は、作るんだ。全て取っ払った世界をな」

まだそんな事を……、兎に角、馬鹿な事はしないでくれ。私や弟を思うのなら、尚更だ

「そうだな……馬鹿な事は、しないさ」

【そこで勝手に通話は途切れてしまった。最後の含みのある言い方を反芻して眉間が険しくなる。兄は、絶対に動き出す】
【UNITED TRIGGERを脱退した理由もそれだろう。悦那の正義は、セリーナのそれとは絶対に噛み合う事はない】
【セシルと月彗、泥の街で拾い育てた弟達への思いは確かにあるのだろうが、それ以上の使命をあの馬鹿も一人抱え込んで離そうとしない】

……或いはこれも、お師匠様の悪戯なのか

【そう低く呟いて、端末を懐に仕舞い込む。向かう先は鈴音の待つ部屋。「待たせたね」と微笑む顔は、誤差の範囲で険しさが残っていた】
229 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/12(土) 11:58:57.48 ID:7G3Fj3nh0
>>228

【一人で部屋に入った時、その背中が小さく跳ねた。驚かなくてもいいのにと声をかけたらようやく振り返った顔は、無表情でも、いつもよりは、表情がうかがえる】
【知らなければ十分大人に見える姿でも、知っていればひとみしりでひとなれしていないひとでしかない、その顔の中で怯えた子供のような顔をされれば、仕方ない以外はない】
【そばに寄って、ほら、と、腕を広げてみせて、待つ。ぎくりと強張った顔をしても、無視する。どんな引け目も罪悪感も無意味で誰も反応しないと分からせるまで、ずっと】

【――よしよしと子供にするみたいに指で髪を梳いてやる、それが蛇にとって心地よいのかはわからないけど、しばらくそうしていて】


【やがて彼が部屋に来れば。部屋の中はふんわりとあっためられていて、空気自体もどこかやわらかい。ソファの片隅には毛布のかけられた謎の塊が――いや、端から白い尾が覗いていて】
【購入した当日のハムスターの籠に布をかけて暗い部屋に置いておくようなものだろう、慣らし期間。ひとまず放っておけばいい――のだろう、おそらくは】
【それから机の上には注ぎ口から細く湯気を漏らすティーポットがおいてある。中身はきっと紅茶だろう、……コーヒーとかはないから、紅茶か、緑茶なら、多分こっちのほうが】

あ……、えっと、お茶入れたの、よかったら、飲んで、……、

【扉の開く音に振り返った顔が一瞬だけほんのわずかに強張った。相手の顔に残るわずかの険しさに驚いたのだろう、そんなに嫌な電話だったの、と、一瞬思いかけて】
【けれど気にしないことにしたらしい。意識的な無関心。――暖かいのを勧めて、それから、相手がそばまで来てくれれば。少し悩むように目線を下げて、】

……――、お話したいことがあるの、セシルがいない間、セリーナのところでしてたこと。それだけね、聞いてほしいな。

【言わないでおくのはやっぱり無理だという結論に一人で至る。そもそも言わないでいるということ自体、自分自身無理だろうとも、思いながら】
【必要なようなら用意したマグカップに紅茶を注ぎながらそんな風に言う、少なくとも自分の分は注いで、マグカップのふちに唇を触れさせて、少し、返事を待つ】
230 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [sage saga]:2016/11/12(土) 12:21:22.13 ID:oEGeQ/Lno
>>229

嗚呼、有難う……、――

【何気なく部屋を見渡した視界の隅に何かある、しかも見覚えのある尻尾が見えている、これは確実に、アレだ】
【テーブルを勧められればなるべくそれから離れた席にそっと座るだろう。此方も慣らし期間が必要そうだった】

話……分かった。聞かせておくれ、

【少し深刻げに見えたので気になったが、まさかあのセリーナが鈴音に水商売をさせた訳では無いだろうと思い至る】
【色々と厄介を掛けただけに、彼女の事は信頼していた。それなら何の話だろうかと、マグカップに紫色の爪先を伸ばして続きを待った】
231 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/12(土) 12:38:01.09 ID:7G3Fj3nh0
>>230

【続きを促されて、でも、少しの間、黙り込む。机の上で組んだ腕に顔を半分だけ埋めるようにして、少し、何といったらいっぱい伝わるか、考えるようにする】
【それでも悪い話ではないのだろうということは多分分かるだろう。もっとなんというか――そう、隠した口もとが笑ってしまいそうなのをこらえるような、気配がある】
【ちらと色違いの目が相手を覗き見て、それで、やっとある程度言葉がまとまった、ようだった】

……わたしね、セリーナのところでね、みんなにご飯、作ってるの。みんなってね、お客さんもそうだけど……、――。
お家とか、お金とか、なんにもなくって。普通にね、あたりまえにご飯が食べられないような、ひとたちにも、作ってるの。
あのお店を借りて、お金も出してもらって、やってるの。……それがね、お昼からのお仕事。いまは、一か月の半分くらい、してる。

セリーナに戦い方も教わってるの、それをやるときにね、約束したの。それにね、*ちゃんにもいろいろ魔術とか教わったんだよ、……頑張ってたの、ふふ、

【もう二年くらいになるだろうか、彼がいなくなった後くらい――それくらいから、ずっと、続けていること】
【あの酒場での仕事自体は夜からだから、朝が早いときはほとんどそれが理由。――それが、言いたかったことなのだろう、いっぱいいっぱいに得意げな顔をして、】
【つまり彼の知らない間にどんなふうに頑張っていたのか、聞いてもらいたかったのだろう。一人きりで宿題をしたと持ってくる、子供のような】
【――でも、それだけじゃなくって、】

しようと思ったのはね、セシルがあのとき、助けてくれたから、だよ、……、昨日ね、見た時ね、お父さんみたいだなって思ったの。似てるなって……、
……もうずーっと前におんなじことしたのにね、――ううん、……えっと、わたしね、ずっと普通にしたかったの。お家もあって、ご飯も食べられて、そういうのが、……それで、

今はそうできるから。わたしがしてもらった全部はみんなにできないけど、盗んだり拾ったりするんじゃなくって、あたりまえに食べていい、ご飯だけ、用意できないかなって。

【急に声が恥ずかしいように上ずる。口元はへにゃと笑っているようになっているのを頑張ってしゃべろうとするから、不思議な表情になっていて】
【元から自分の意見に自信のある性質ではない、何か聞かれても少し不安そうにしていることの方が多い、だから、これも、あんまり慣れないことで、慣れない表情で、】
【それでも最後はきっと気持ちを強くして、きちんと言い終える。……それで今度は変なことを言ってやいないかと不安になったのだろう。少し、口をつぐんでしまって――】
232 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [sage saga]:2016/11/12(土) 13:28:37.58 ID:oEGeQ/Lno
>>231

慈善活動、か。凄いな、鈴音は……私の知らないうちに、そんな事をしていたのだね。それを許したセリーナも彼女らしいというか、
……成程、そういう事か。貢献して、尚且つ努力も怠らずに……本当に、凄い事だよ。それに、いい師がいてくれたようで安心した

【「ただ、無理はいけない」と最後に付け加えるのが、何だか娘を心配する父親めいていた。それから、続く言葉に耳を傾ける】
【聞いている此方が気恥ずかしくなるような。自分はそんな出来た人間じゃない、鈴音にそうしたのは醜い独占欲と、彼女へだけの愛情】
【相手も口をつぐんでしまえば、男も肘をつき口許に手を当てて、視線は斜め下へ。北欧系統の肌は僅かな血色の高まりもすぐ露見する】
【こんなに素晴らしい子である事への改めての感動や感謝されている事への照れ臭さや尊敬してくれている事への素直な嬉しさや、諸々】
【やがてその手はまだ直りきっていない寝癖をがしがしと抑えて、俯いた顔は柄にもなく頬が赤い。本当に、こういう経験は不慣れだった】

【魔法学校ではいつも最優等だった、それは満足出来ない授業のレベルで当然の如く抜きん出た為の結果であって嬉しさなど無かったし】
【ギルドでは討伐数や稼ぎ頭の功績やら何やらで置き場に困るトロフィーや勲章をいくつも受けたが、それも同上の理由でただ貰っただけ】
【人に褒められるような何かは経験していたけれど、それが正当な理由でそうされていると思った事は一度もなかった。――いや、一度だけ】

……昔、幼い私は泥の街に捨てられて、悦那に拾われた。それから暫くして……、私は月彗をゴミの中から拾って、兄の許へ帰ってきた

【唐突な話だった。赤らんだ頬を見られたくないよう俯いたまま、記憶の糸を辿るように男はぽつりぽつりと語り出す】

叱られる、と思った。私もろくに食料一つ盗んで来れなくて、足手まといになっているのに、手足のない赤ん坊を連れて来たのだから

【月彗の今の姿は全てが魔力による造り物、中に入った核となる生体はあばただらけで手足のない、ひどく醜い赤子のようなものだ】
【相手がそれを知らなければ適宜説明するだろう。それから、再び続ける】

悦那は……、褒めてくれた。よく見つけて連れて来てくれた、急いで町外れの医者に診てもらおう、金なら俺が何とかするから、と
……、嬉しかった。こんな私でも、出来る事があったのだと。其の時に漠然と、教師を志したような気がする
結局は……己の力に慢心して、他人の為に何かをする事を何時しか忘れて、そうした挙句に呪いをこの身に浴びて、やっと思い出した

【漸く上げた顔は、上気していたのが少し落ち着いていて、左右不揃いの瞳孔は相手を見据えて優しく細められた】

私も、キミに救われたんだ。鈴音。勿論、応援するよ。やりたいように、頑張っておくれ……嗚呼でも、無理はせずにね
そうだな……資金面だけじゃなく、私自身でも、何か手伝いがしたい。出来ることで、だけど。あるだろうか、

【ずっと暗がりを歩いていた。認めて貰える事も感謝される事も、今までは全てあって当然の瑣末なものにしか見えなかった】
【出したのは前向きな提案、というよりは疑問に近かった。知っているかも知れないが彼の料理の腕はお師匠様譲りで、錬成に近いのだし】
【なら自分に出来るのは何だろうか、そう考えながら手許の紅茶へ口を付ける。ついさっき、彼は自分の志したものを言った筈だのに】
233 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/12(土) 13:59:21.17 ID:7G3Fj3nh0
>>232

【こちらもこちらで、ひどい色白だ。色素異常のあの蛇が人間を模したときの、肌の色。それとほとんど変わらない、それなら、すぐに真っ赤になってしまう】
【泣いても怒っても恥ずかしくても寒くても真っ赤になるとは余談だけど、……ちらと少しうかがった先で彼の顔が赤いのに気づけば、は、と、いっそう顔を赤くしてしまう】
【二人して顔を赤くしている光景はなんだか変でも誰も横やりなんていれやしない、白蛇は向こうのソファで沈黙していて、紫色も、視界のはしをよぎることもない】

無理はね、してないの、少し眠たいなってときもあるけど、喜んでくれるから……みんな――、
……やっとできること、見つけたと思ったの、やりたいこと、見つけたって……、……わたしは、ずっと、普通に生きたい、だけだったから。

【ただ普通にしたかったころは必死で自分のことしか見てなかった。それが、ほかのひとのことにまで目を向けられるほどになった。一人では無理だったはずの、変化】
【だけどあの時、彼がいなくなってしまって……受け取ったものへの気持ちの向け先を失った時に、そうしよう、と思った。自分がされたことを、誰かに、あげる】
【全部は無理でも、ほんの一部でも、自分と同じように寂しがっている子に。――だからそれを始めたきっかけは、一から十まで、彼にあるようなもので】
【自分のしたことはほとんどない、と、きっと思っている。その理由を用意してもらって、場所も、お金も、用意してもらって。自分は、やっているだけだ、と】

…………わたしね、月彗さんとあんまり喋ったことないの、ないから、あんまり、どういうひとなのかって、きっと、知らないけど……。
わたしにしてくれたのとおんなじなの、そのひとの世界をね、全部助けちゃうくらいね、すごいことなんだよ、それって、――きっと。

お話の中で世界を救うような、すごい勇者と、おんなじこと、してるんだよ。……ね、だって、わたしの世界も、全部、ちがっちゃったもの。

【昔の話をしてもらったことはあんまりない気がした。自分のことばっかり言っていた気がする、それなら、やっぱり、子供みたいだったと自分のことを思う】
【いまだって大人にはなれなくてへどもどするのに。だから一生懸命にきいて、言葉の意味を受け取って、必死にかみ砕いて、飲み込んで、――そうしてから、返す】
【あの彼がどう思っていたのかはわからないし赤子だったのなら覚えてもいないかもしれないけど、でも、それはひとつの世界を救ってみせたのと同じだと思うし】
【それならお話の中にありがちな――そのひとの世界を終わらそうとするもの、魔王みたいなものを倒しちゃう勇者と、まったく、おんなじだと思う】
【考えながらのせいか自分の指を触ったり視線を動かしたりしながらだけど、とにかく――あなたはすごいひとなんだと、言いたい、言いたくて、いろいろ考えている】

――わたしもね、そうだよ。学校にね、行ったことない。ずーっと、いいなぁって思って、でも行けなくて、見てた、の。
まだね、わたし一人じゃ決められないよ、場所を貸してくれてるのはセリーナだし、お金を出してくれてるのはセリーナと、マリアなの、だから、……えっと。
わたしだけじゃ決められないけど、もし、もしね? おんなじようにどこかに場所があって、お金もきっとあって、それなら、できるなら――、
簡単なことできっといいんだと思うの、お金をちゃんと数えられるくらいでも、すごく違うと思うの、どういうものを食べたら危ないかとか、そういうのでも……、

教えてあげられたら、きっと、いいよね。

【応援すると言われれば安堵したように笑う、まさか駄目と言われるとは思ってもいなかったが、それでも、改めて受け入れられると、嬉しいものだ】
【まして自分でやり始めたこと、自分の意見のそのままみたいな行為を、受け入れてもらえたら、すごく安心したのだろう。急に表情が緩んで、紅茶を一口飲んで】
【それから手伝いがしたいのだ、と、言われたら――驚いたように、それとも嬉しいように目を少し大きく、丸くして。――机の下で足を揺らしているのか、少し、椅子がきしむ】
【それでいうのは、できたらいいねという希望でしか、まだない。場所もお金も用意してもらっている身分ではあんまり急にいろんなことは、できないだろうし】
【だけどそうはいってもできたら絶対にいいはずだという全面的な肯定も、態度や声色からはうかがえる――彼女本人としては、すごく、いいと思っているのだろう】
234 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [sage saga]:2016/11/12(土) 14:23:37.56 ID:oEGeQ/Lno
>>233

……月彗は。感謝しているのかどうか、私には分からない。けれどきっと、死にたかった訳じゃない。私達兄を、嫌っても居ないのだと思う
だから、そんな大層な事が出来たのかは、正直今でも分からないけれど……自己満足、だと思っていた、けれど
――鈴音にそう言ってもらえて、安心した

【勇者だなんて言われると少しはにかんで、照れ臭そうにしながらも満更ではないようだった。安心したのも本音、ずっと不安だった】
【久々に会ったら機関のNo.2になっていたり、やたら人に死ねだのくたばれだのと言ったり、趣味は首吊り死体作成と飾り付けと鑑賞】
【兄としては、まして拾い上げた当人としては正直責任を取るべきかさえ考えたこともあった。それが今では、すっかり隠居で大人しく】
【――人とは、変われるのだなと思った。月彗、自分、鈴音。ならきっと、悦那も目を覚ましてくれる筈だと、思考の端で願った】

教える……嗚呼、そうか。それなら、出来るかも知れない。一応、資格もあったか……呪術と魔法と語学と、いや呪術は流石に不味い――、

【鈴音の言葉でやっと思い当たったらしい。教えることなら得意だった。上手いかどうかは別としても、知識なら様々な方面で持っている】
【子供が身を守れる程度の魔法や、生きていく為に必要な知識、読み書きや計算――語学の内の大半は古のものだったりしたのだが】
【これまでに見たことが無いだろう程の、それでも知っている人間にしか分からない程度だが、男の表情は明るいものだった】
235 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/12(土) 14:42:46.34 ID:7G3Fj3nh0
>>234

……自己満足でも、ほんとうに、そのひとが助かるなら、それでもいいと思うの。
自己満足で渡されたって、パンはおいしいし、お金なら買い物できるの。冬に、あったかい缶のスープを買えるかも。

【動機は多分どうでもいい、そういう風に、思っていた。ましてその彼の話であれば、自己満足だろうと拾い上げられなければ、その後に死んでいたのかもしれないし】
【生きていれば絶対にいいことがあるなんてとてもじゃないけどいえないけど、それでも、もしかしたらいいことはあるかもしれないし、……悪いこともあるかもしれないけど】
【悪いことを我慢したら絶対にいいことがあるなんてことも思えないけど。それでも、いろんな可能性も、死んでしまったら、なくなってしまうんだから――きっと】

だから、ね、すごいことをしたんだよ、そうかもしれないって思っても、すごいんだよ――。

【相手がそう思っている気持ちが、いっそう、もっと、そう思ったこそそのものが印象的になるようにしたいみたいに、何度も、言葉を重ねていく】
【きっとそうやって記憶に残せれば、もしもあとで見失いそうになってしまったとしても、きっと、目印になってくれると思うから。暗い中では、きっと、目立つから】
【一生懸命に言う様子は慣れない感じではあったけれど、本心からであるとはきっと通じるだろう。気づけば机の上でぎゅっと自分の手と手を繋いでいて】

それにね、教えるの、とっても上手だと思う――、お勉強なんてしたことなかったけど、うんとね、分かったもん。
すごく、すごく、楽しいなって思ったの。お勉強って、だって、みんな、嫌いみたいな顔をするから……すごく本当は嫌なのかなって、思ったけど。

【はじめ、勉強らしいことをしたことがなかった彼女は、それこそ小さな子供が学ぶことさえもよく分かってなくて、そこからやるしか、なかった】
【分からないことには顔を曇らせることもあったが、よく教えてやれば理解して、ぱーっと顔を明るくして、自分からいろいろやってみたがることも、多くて】
【あれを思い返せば、きっと、大丈夫だと思う。むしろ自分なんかがそういうのは失礼なんじゃないかと思うくらい、絶対に大丈夫だと、思える】

【その表情を見て、なんだか、とても嬉しかった。あどけない顔はひどく嬉しそうで、ただ、今までのような――ただ与えられるのが嬉しい、とは、少し違う】
【もう少し先に進んだところにある、嬉しさ。自分の持っているものを他のひとにも分けて与えるときの、やさしい顔でも、きっとあって】
236 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [sage saga]:2016/11/12(土) 14:48:58.86 ID:oEGeQ/Lno
>>235
/いい感じなのでこの辺りで如何でしょうか、というか正直続きが浮かんで来ず……
/その他もし何か彼から聞きたいことなどありましたら、続ける形で聞いて頂ければとー
237 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/12(土) 15:13:05.49 ID:7G3Fj3nh0
>>236
/それで大丈夫ですよ、お疲れ様でしたー
238 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [sage saga]:2016/11/12(土) 15:21:24.71 ID:oEGeQ/Lno
>>237
/お疲れ様でしたー
239 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2016/11/14(月) 08:05:46.18 ID:Rwn23t7Xo
/新規参加くださる方をお待ちしています。様々な特殊設定可能、キャラ鑑定無しのなりきりです(チート等は禁止)
/どんな感じで遊ぶのかはログを参照しながら、>>1の事項やしたらば、wikiをご覧下さい。過去いらした方もどうぞ気兼ねなく。
240 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) :2016/11/14(月) 13:10:35.17 ID:JqYCq95IO
これは、なりきりなのですか...??
241 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/14(月) 23:07:19.01 ID:7Ku7K0IE0
>>240
そうなります、>>1に雑談スレとかあるので、よかったらどうぞ!
分からないこととかあれば聞いていただけたらお答えできるかと思いますのでっ
242 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方) :2016/11/15(火) 02:10:43.85 ID:m4k/S32x0
今更再起不能だろ
243 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [sage saga]:2016/11/16(水) 16:50:21.71 ID:J1OjMEMto
【泥の街――地下壕】

【過激派活動家が隠れ棲んでいる、そんな噂が立っていたその場所は入り口の粗末な南京錠と張り巡らされた鉄条網さえ錆び、朽ちていた】
【それでも今宵は灯りが灯されていた。忍び込んだなら入口付近からとある一方向へと、僅かな武装を残し白骨化した亡骸が点在していた】
【辿り着く先はかなりの広さがある弾薬庫。長年溜め込まれてきたのだろう銃火器や手榴弾、更には何処から持ち込んだのか戦車も見える】
【それらを前に一人佇むのは、死体めいて血色の悪いスーツ姿の男。三十代後半、癖のある黒髪に、東洋系の顔立ちながら灰色の目を持つ】

……今しか無い、か。この街を腐らせた国々を、世界を、全部取っ払う為の取っ掛かり。それを……俺が、“俺達”が、始めるのさ

【男の懐で何か端末が振動していたが、彼がそれに反応する事はなかった。ただ郷愁めいて、目の前の武器弾薬の山を見据えていた】
244 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/16(水) 18:59:53.61 ID:7bWv3YdCo
/>>243の描写に【右頬に「牛の首が載った皿」の刺青がある】を追加して、明日22時まで募集します
245 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) :2016/11/16(水) 21:54:12.11 ID:zGG3icTlo
/現在、パート速報からおーぷん2ちゃんねるのなりきりネタ板へのスレ移転を議論しています。
/参加者の方々のご意見をお待ちしております。
/議論専用スレ http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14029/1321447264/
246 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2016/11/17(木) 16:16:51.86 ID:04JjxHsxo
おーぷんも下火だし、どうせ移転するならもっと活気ある場所の方が良くない?

別になりきり専門板じゃなくていいし
247 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(神奈川県) [sage]:2016/11/17(木) 20:04:32.61 ID:nBIEr6hE0
なりきり自体が快く思われないところも最近多いし、そもそももっと活気ある場所自体殆ど無いよ
10chとか昔あったなりきり系掲示板は軒並み誰もいないし板公認でなりきりが出来る場所ならパー速かおーぷんかに絞られてくる
248 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) :2016/11/19(土) 19:56:03.91 ID:hYRp6O7so
/>>243-244 再度募集します
249 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/20(日) 18:01:12.54 ID:TilEkhzN0
【街中――大きな池のある公園】
【ごく遠くでわずかに緑がかった色をしていた夕焼けも消えて、少し後の時間。吹きあがっていた池の噴水も静かになって、もう少し後の頃】
【池のふちには池全体が見渡せるように板張りの足場が組まれていて――池との境目に張り巡らされた柵に、そうと身体を預ける人影が、一つある】

もう冬なんだよ、もう少ししたらね、年だって変わっちゃうの……、そしたら、もうちょっと、お姉さんっぽくしなくっちゃね。

【一人のはずの人影、けれど声は誰かと会話をしているような調子で、高く澄んだ鈴の音めいた不思議な声質は、夜の中でよく目立ち】
【遠くでからすが鳴いているけれどまさかそれを会話しているはずもないだろう、組んだような腕を枕に柵に身体を寄せる華奢な人影……多分少女の視線は】
【すぐそこにある水面に向いているように思える、――あるいはのぞき込む必要もないかもしれない】
【水面よりぞろぞろあふれだすもの、高いやつでは少女の頭よりも高い位置に頭を突き出して身体を揺らしている。――水でできた、蛇のようなもの】

【腰まであるような長い黒髪はまっすぐにおろしたまま、色白の肌と、左右で色の違う黒と赤の瞳。右の耳には片方だけのピアスをつけて、】
【黒を基調にしたワンピースは全体的に布の柔らかそうなふわふわとしたデザインで、スカートは特にふわりと膨らんで、裾のリボン飾りが夜風にそよぎ】
【分厚い布地のケープを少し寒いような手つきで身体に寄せる、楽しげな笑い声が小さく漏れて、それから、ころりとブーツの足を動かした、小さな足音がする】

……もう、お話聞いてくれるのはいいけど、声でお返事がないと、なんだか変だね。

【水面から生え出た無数の水蛇。頭の中には一匹に一つ、銀色の鈴が浮いていて、それが、ときどき、水の中なのにちりんと鳴る。それが、りん、りん、いくつも夜に重なって】
【ぽつぽつとしゃべりかける少女へ返事するように蛇たちは頷いたり踊るようにしたりするから、そのたびにあたりへ鈴の音が響いていく、だから、少し不思議なようになって】

【――あたりには、清い湧き水のようなにおいの魔力が満ち満ちていた。敏感なものであれば公園の外から気づけるかもしれないくらいの、濃いもの】
【きっと理由である少女はそれでも気にした素振りのないように、奇妙な水面の蛇たちと楽しいように会話していて、それが、少し、おかしくて――】
250 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2016/11/20(日) 20:37:17.31 ID:KS3HsKj0O
メンヘラ女はなりきりやめろ
251 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2016/11/22(火) 20:11:48.46 ID:FWRRFv4Vo
// >>243さんか>>249さん、まだいらっしゃいますでしょうか……
252 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/22(火) 21:25:23.79 ID:ry5ljo6Y0
>>251
/>>249ですがいますよー
253 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2016/11/22(火) 21:40:57.04 ID:qfAqoNeXo
/おりましたが先約いらっしゃるので>>243-244再募集します〜
254 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2016/11/22(火) 21:41:03.06 ID:FWRRFv4Vo
>>249

……、……、……

【こそり。その光景を、木陰か或いは草むらか。とにかく、見つかり難い場所から眺める影があった】
【幻想的と呼べばいいのか、恐ろしいと呼べばいいのか判断に困る水のたわむれ。それを見て】
【はあ、と震える息を吐きだせば、秋の夜の空気に冷やされて、白く色付いた】

……なにあれ、なにあれなにあれなにあれえ……
マジ怖いんですけどお、ホラーやるにはちょっとばかし、季節外れじゃないですかネ……

【着込むのは古びた黒いコート、フードをしっかりと被って頭を隠し】
【ぼろぼろの裾から伸びる、赤黒ボーダーのニーハイに覆われた足の先】
【機能性なんてまるきり無視したような、底のぶ厚い、真っ赤な靴を履いている、人影】

【とにかくそんな人物が、口に手を当てながらぶるぶる震えて少女とみずちの群れを見ていたのだけど】
【ふとした瞬間、ありがちなミスを犯す。足を動かした瞬間、ばきりと】
【乾いた枝を踏んで、やけに響く音を鳴らしてしまったのだった】


……………………にゃーお。

【――無茶苦茶な誤魔化し方だった。へたくそな猫の鳴き真似が、虚しく夜闇に響いて】
【水辺の少女がそれにどんな反応を見せるのか、息を止めて。叶うならば聞かなかったことにしてくれと】
【そう願いながら、茂みの中で震え続けていた――】


>>252
//わーい! すっっっっごい久しぶりでいろいろ忘れているのですが絡んでしまいますね……!
//さっそくで申し訳ないのですが、ちょちょっとご飯を食べてまいります……
255 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2016/11/22(火) 21:41:33.07 ID:FWRRFv4Vo
>>253
//oh……! すみませんまたの機会があればよろしくお願いします……
256 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/22(火) 21:57:58.25 ID:ry5ljo6Y0
>>254

【そうしてそのうちに少女と蛇らは本当にどうでもいいような、明日の晩御飯は何にしようとか、何がいいとか、どうしようとか、そういうものになっていって】
【最近からあげ作ってないね、そうしよう、少女がそう言えば蛇たちは一斉に首を頷かせて、りんりんりん、少し早いサンタさんのソリの音のよう】
【「けどね、あげないよ――」少女の声に一斉にしょげかえった蛇たちが拗ねるように水の中に身体を沈めていく、あたりが静かになる、その瞬間だった】

【ぱきりっ……とかすかな音は、たとえば昼の街中であれば誰もが気にせずに通り過ぎるほどの音。けれどここは夜の公園で、あたりに、ひとかげはあまり見受けられず】
【それなら案外静かな夜の中、ちょうど少女と蛇の会話の途絶えた瞬間であったから、ことさら目立ってしまったのだろう。ぴくりとわずかに顔を上げた少女が、振り返る】

【左目はいわゆる櫻的な黒い瞳だが、右目ばっかりはたった今白い肌をスプーンでまあるくえぐりとったような、鮮烈な血の赤色。それどこか、夜に欄と光っているような……色】
【ぱちくりと瞬いてから少女がゆるりと足を音のほうへ向ける。水の蛇たちは引っ込んだ個体もいるが、いくらかは残って、気になるようについと水面から身をのりだし――】

……えっと、こんばんは? 誰か居るの? 

【別に、その顔に敵意や殺意に似たものはなかった。ただ不思議そうに誰かがいるのかと思いいたって、それから、へたっぴな猫の鳴き声に、不思議な様子を色濃くする】
【ひとまず投げる声は柔らかく優しいが、金属質で高く澄んだ声はいやに夜になじんで、聞きようによっては、いくらか冷たく聞こえてしまうような声質でもあり】

あ……、っと、怖くないよ、この子たちね、悪い子じゃあないの――、ほら、もう、後で飴玉、あげるから。

【それでもまだ具体的な相手の位置は見出していないのだろう。一歩二歩と、それでも相手のいるほうへ歩みながら――そんな言葉を続けて投げかける】
【その途中で一度池のほうへ振り返った少女がきっと水蛇たちにそう声を投げると、やがて、水の蛇たちは顔を見合わせ見合わせ、水の中へ姿を消していき――】

わたしだけなの、最初から、ずっと、ひとりだけだよ――?

【少しだけ困ったような、どうしようかと悩んでいるような顔が、最後にもう一つ、そう、付け足す。――かえって微妙な感じになりそうな言葉でも、あったのだけど】

/了解しました!
257 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2016/11/22(火) 22:16:49.28 ID:FWRRFv4Vo
>>256

【願いは実らなかった。諦めたようにひょこりと顔を出す、黒いフードに包まれた頭】
【さして大きくもない、むしろ小さ目の卵型。まだ年若い女性のモノであると判るだろう】
【暗がりから出て、改めて水辺の少女の姿を見れば、肌の白さと右目の鮮やかさのコントラストに息を呑む】

いやあの、怖くない悪くないってのはひとまず置いといてさ……
そのなに、ひとりだけっての、なに……

【まさかとは思いますけど、まさかとは思いますけどネエ。そう口走りながらそろそろと近づいて】
【おそるおそると言った調子で、少女と池の方を交互に見比べる】
【なんにもいなくなった、風に揺れるだけの黒い水面。そこから少女に視線を戻して、はははと空笑い】

……こ、こんな夜にひとりでいるの、危ない、と思いますヨ……?

【そういうフードの娘も一人なわけだが。片手にコンビニ袋をぶら下げて、おそらくは帰り道なのだろう】
【危ないのはもしやあたしのほうなのでは、などと考えながらも、少女の様子を窺うように喋り始めた】

//おもどりました。よろしくおねがいしまーす
258 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/22(火) 22:27:43.31 ID:ry5ljo6Y0
>>257

【飴玉をもらえるというのが蛇たちにとっては相当のご褒美であったらしい。するすると無音で水中に引っ込んでいったやつらは、もう、顔をのぞかせることもなく】
【すなわち鈴の音も鳴りやんで残すは少女の声の鈴の音だけ。ときたま夜の風が吹いて紅葉かそれとも生理現象かで黄色くなった木々の葉が揺れて――ざわめき】

……えっと、みんな、能力なの、

【ほんの数秒、あまり言いたくないというように言いよどんだ少女は、けれど、目の前の相手の誤解(?)を解くのが先と判断したらしい】
【あの水蛇たちはすべてが自分の能力によるものだったと白状して、それから、ひらりと華奢な両腕を広げてみせる。――武器、のようなものはない】
【かといって先の光景を見れば彼女が武器で戦う類ではないと思われたっておかしくはないのだけど。……とにかく敵意がないと、そういいたいように、眉がわずか下がっている】

だいじょうぶだよ、少しくらいは強いって思うの――、カノッサのひととかだったら、どうかなって、思うけど……。

【空っぽの両手を見せれば少し下がった眉はそのまま、相手の言葉には少しずつ声音を探るようにしながら、ぽつ、ぽつ、少し時間をかけるように返すのだろう】
【なるべく怖くないような言葉を選んでいる……つもりらしい。それがどうあれ、とにかく警戒されている様子では、なんだか、不安になってしまいそう】

え、っと、……、……あ、飴玉あるよ、――キャラメルの味のやつ、

【どうしたら警戒がほどけるだろうかと考えた少女はそのうちにそんなことを言いだす。……知らないひとからものをもらうなとは子供のお約束、だけど、】
【だからって大人に当てはまらないというわけはないに違いない。とにかく飴玉で懐柔しようとするさまは困ってしまったせいでもあるのだけど、なんだか、彼女も子供のよう】
【みればまだ十六ほどにしか見えぬ少女だ。それにしても顔つきはあどけなくてしゃべる言葉の端々もそう強くない。――怖くない、つもり、】

【――それでも、まださっきこぼしたのだろう魔力の残骸はまだ空気中に溶けていて、気温以上に、どこか冷たい気がした】
259 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2016/11/22(火) 22:41:06.32 ID:FWRRFv4Vo
>>258

な、なーんだ能力……。
んー、それなら強いって言うのも納得ネ、なんだービビったり心配したりして損したあ!

【怖くないとわかったならすぐに警戒を解いて、はーっと大きく息を吐く】
【かしかしとフードの上から頭を掻いて、ふんと鼻息ひとつ】
【飴玉をいかがと訊ねられれば、りんご色の目を丸くして……ちょっとだけ笑った】

ごめんごめんって、もう怖くないから、そんなあやしてくれなくていーよ。
でもさっきのみたいな……ひとりでずーっと喋ってるのは、正直怖いかなーって。
夜だし。水辺だしぃ? あたしみたいにカンチガイする人も、少なくはないと思うネー

【でもあるならもらおうかな、なんて言いながら掌を差し出すフードの娘】
【存外図々しい性格らしい。フードで隠れていない口元が、猫じみてにぱっと開く】

……で、なんの話してたの? あのへびさんたちと。
260 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/22(火) 22:53:13.64 ID:ry5ljo6Y0
>>259

【警戒が溶けていく様子に、こちらもまた、安心したように吐息を漏らすのだろう。ずーっとびびられていても不安になる、もう、いっそ、一回襲ってみようかとか】
【そういう思考回路になりかけそうになる。……もちろん今の話ではなく、もっと先まで改善しなかくて、追い詰められたとき、とかに――】
【相手がやっと警戒を解いてくれたのを見て、いくらか表情も緩んだようだった。そうすればいっそうあどけなさが目立って】

うん、そうなの、……悪い子たちじゃないんだよ、いい子なの。ただちょっと、ううんと、遊んだりするのがね、好きなの――。

【自分の能力であるはずなのにまるで生きているもの相手であるかのような口ぶりだった。少し苦笑気味に笑って池を振り返る、が、もうそこには一匹もいなくて】
【いい子で帰ったみたいだと、こちらにも安心して小さな息が一つ。相手へ改めて振り返る顔はこれが素なのだろう、幾分もひとなつこいようになって】

こういうお水のところだとね、遊びたいなーって言われてる気がするの。だから、たまに、こうやっておしゃべりしたり、遊んだりするんだよ――。
ちょっぴり子供みたいなの、ううん、子供なのかな……、……でも、そんなに怖いのかな? ――ジョギングのひとがいなくなっちゃったな、って、思ったんだけど、……。

【――どうやらホラー案件であるという自覚はあまりなかったようだ。ジョギングのひとがいなくなったというのは、たぶん、帰ってしまったのだろう】
【そっかと今頃気づいたように小さく納得声を漏らして、それから少し言い訳するみたいに……少しだけいたずらぽく、「だけど、たのしいよ」と付け加えるものの】
【「今度から気をつけるね」というあたり、反省はしているのだろう。ころころと笑い声は、鈴を転がすように高く澄んで】
【飴玉を求められれば「どうぞ」と差し出すのだろう。「コンビニの新商品なんだって」「先行販売って書いてあったの」と、余談も添え】

えっと……、なんだろ。明日の晩御飯のお話とか、あとは、寒いねって。
……あなたは何をしていたの? こんな時間に女の子が歩いてたらね、危ないよ。

【なんてことない世間話だった、らしい。かといって、"自分の能力"と"世間話"することが"なんてことない"かは、相手の判断に寄るのだろうけれど】
【さぞ普通のことであるかのように言って、それから、はたと声音と、表情の色合いが変わる。急に大人ぶったような声と顔になって、いうのは、そんなこと】
261 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2016/11/22(火) 23:08:41.78 ID:FWRRFv4Vo
>>260

ふーん……。喋れるんだあ。それってほんとに能力なの?
なんかに取り憑かれてるとかそういうんじゃなくて? へえーふしぎ……

【いい子たち、と呼べるほどに自立している存在なら、自分で操っているわけでもないのかと考えて】
【またちょっとだけ眉根を寄せてみたけれど、先程までよりは怖がってもいない】
【少女のあどけない様子に安心しきったのか。受け取った飴玉の包み紙を剥がして、ぽいと口に放り込んだ】

そーいう世間話できるんだったら確かにたのしーかもネ。
暇になったときに話し相手になってもらえるし……あ、あたし?
あたしはただちょっと夜食買いに出てただけで……。公園、近道……。

【がさがさと音を立てて持ち上げるコンビニの袋、仄かに熱気が立っている辺り、ホットスナックのたぐいか】
【夜に平気で出歩いて、コンビニ飯をおやつ感覚に摘まむ程度には、遊び慣れているのだろう】

危ないって言ってもお互い様じゃん。あたしだって少しは強いよ?
それにこの道なら、アブない路地裏でもあるまいしそうそうヤバイ人なんかいないかなーって。
262 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/22(火) 23:19:40.86 ID:ry5ljo6Y0
>>261

うん、そう、みたい……、そうだと思うの、多分、そうかな。

【――ものすごくあいまいな肯定だった。多分そうだと思う、いや、きっとそうかも、そんなような言葉が続いて、ただ、確実に断言するかたちの肯定はいつまでも、ない】
【つまり何かよく分からないある程度自立したもの(多分能力)ということになるのだろうか。それはそれで別の意味で怖いような……ただ少女は気にしてなくて】

楽しいよ、とっても――あんまりに難しい話はやだ! ってされちゃうの、でもね、わたしも、あんまり難しいことは得意じゃないから……。
明日の晩御飯はからあげにしようって決まったの、それくらいがね、わたしにはちょうどいいかな――、ね、もう夜だもん。

【夜であることにはあんまり関係はない、から、多分、本当にそういった難しいことが得意ではないのと、――あと、今、それが必要な場ではないのだろう】
【明らかにのんびりとした様子の彼女が何か難しいことを常に考えていなければならないほどに急いているようには見えないし、思考回路が難解な性質にも、みえない】
【なんだか楽しげに、それでも緩く笑いながらしゃべっている、夜食と聞けば、わぁと顔をほころばせて、「いいなぁ」とつぶやきまでして】

そっか、じゃあ、いいかな――ふふ、なんだかね、ずっとお仕事とかばっかりだったから、おんなじくらいのひととしゃべるのね、最近あんまりないの。
もっと大人のひとか、もっと子供の子ばっかりだから。……ね、ね、何歳って聞いても大丈夫? わたしね、二十三歳なの――、あんまり、見えないと思うけど。

【もしかしたら少しはしゃいでいるように見えるかもしれないくらいで、そして多分、それは間違えていない。白い吐息をあふれさせながら笑って、】
【少女はそんな風に言葉を続けていくのだろう。――それにしたってこの顔と態度で二十三なんて年齢詐称もすぎるくらい、お酒なんて売ってもらえないくらいに思えるけど】
【多分いまこの瞬間にそんな嘘を吐く意味はあんまりないように思えるなら、――もしかしたら本当なのだろうか、だなんて】

……あ、わたし気にしないから、あったかいの、食べちゃっても大丈夫だよ。……ね、冷めちゃったら悲しいもの。

【そろそろ少女があふれさせて満たしていた水の魔力も薄れて、ほとんどが消えている。いたって自然な夜の冷たさの中、きっと、その暖かさは、ひどくおいしいはずだから】
263 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2016/11/22(火) 23:36:41.35 ID:FWRRFv4Vo
>>262

え゛、やっぱそうなの?
でもまあ怖くないなら……そうそう悪いものに取り憑かれてるってわけではないのかな?

【ふしぎだねえ、と呟きながら首を傾げて。ひとつも動くものの無くなった水面を、再度見つめる】
【虚しいくらい静寂が満ちていた。たしかにここで、ひとりぼっちは寂しいなと思い】
【こりこり歯噛みする飴玉に、すこしずつすこしずつ罅を入れていく】

明日の晩御飯ネー、からあげかあ。
あのへびさんたちにも分けてあげるの? だとしたらすっごい量……。

……んあ、あたし? あたし……たぶん18とかそこらへん。正確なトシわかんないんだよネー、
…………うっそ。年下だと思ってたやだあ、どういう美容法やってんの……

【年齢の話になれば、こちらも曖昧な回答を返しながら】
【相手の年齢を聞くだに、ぎょっと眉を顰めて。もう一度、少女だと思っていた目の前の彼女をしげしげ眺める】
【――身長は変わらないくらいか。それでも所作だとか、表情の作りが子供っぽい。気がする】
【見た目と年齢が乖離している種族も多々いることは知っている。彼女もその一人なんだろうかと、勝手に考えて】

ああ、……そいえば忘れてたや。おうちであっためなおせばいいかと思ってたけど、
……食べる? 飴のおかえしと言っちゃなんだけど。
それとも、美容法に基づくんならこの時間の間食は厳禁、ってやつ?

【袋の中から取り出したるはフライドポテトの紙袋だった。立ち上る湯気も、さいごの一筋くらいになるのか】
【その袋を少女の方に向けて、にやりと悪戯っぽく笑った。一本でも、何本でも好きにとって食べていいよとばかりに】
264 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/22(火) 23:48:28.25 ID:ry5ljo6Y0
>>263

うん、悪いものじゃあ、ないよ。

【よく分からないものたち。いつまでもあいまいだった言葉は、ただ、ここだけはきちんと断言してみせた。よく分からない。だけど。悪いものではない】
【何も分からないなら、情報はこれだけで十分すぎるくらいだろう。あれが何とか、どういうものかとか、そういうのは――多分、だいたいの場合はどうでもいい】

んーん、あんまりあげないよ。一つくらいならあげるかもだけど、みんなにあげてたら、いっぱいいっぱいになっちゃうから。
……あんまり下手にあげると喧嘩になっちゃうの、だからね、ないしょであげちゃうか、どの子にもあげないの……飴玉くらいなら、いいんだけどね。

そう、なの? そっか、じゃあ、きっと同じくらいだね。数年くらいならね、きっと誤差だよ、わたし、計算問題って得意じゃないけど――。

【晩御飯のからあげ。一緒に考えた割に、あの蛇たちへの分けまえはないらしい。あるいはこっそり内緒の一つか二つ】
【大変な騒ぎになってしまうからというのがその理由、相手の言葉通り、全部にあげようとしたら、山盛りてんこ盛り、鶏がどれだけいたって足りないだろう】
【そして相手の年齢を聞けば目を一瞬だけぱちくりとさせるが、あまり気にするほうではないのだろう。そっかあと声を漏らして、誤差だと結論付ける】
【聞いておきながらちょっぴり雑なやりくち、計算はあんまり得意じゃないらしいなら――いっそ、自分の年齢さえ間違えているのではないかと、疑いそうになる】

美容法なんかじゃないよ、なんだろう、――――……わ、ポテトだ。くれるの?
ふふ、普段ならこれっくらいの時間はお仕事してるの、酒場のお仕事だよ。だからね、お酒とかこういうの、食べることもいっぱいあるの。
お客さんに晩御飯を食べさせてもらうこともあるよ、――作ってるの、わたしだけど。

【それは美容法ではない。言いながらも明確に言い表す言葉を彼女は持たない……あるいはあんまり言いたくないように言葉をよどませて、視線はわずかに虚空に逸れる】
【数秒後に悩むようにちらと相手に視線を戻せば、そこにはわずかの湯気をあげるポテト。わ、と、目と顔を輝かせたのは、きっと、話題をそらせた喜びもあるのだろうか】
【いいの?と尋ねるように目をきらきらさせて。よいと言われればいくらかもらうのだろう。こんな時間の飲食については、まったく、まったく、気にしていないらしい】
【というのも仕事的にこんな時間に食べることも結構あるのだという。――飲食だろうか、その、調理を仕事にしているらしい】

【――もらったポテトを頬張っている様子。やっぱりとうてい二十三には見えないのだけど】
265 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2016/11/23(水) 00:03:01.53 ID:X14edogyo
>>264

ん。悪いモノじゃないならいいんだよ、怖くないしぃ。
悪霊とかそういうやつだったらあたし今すぐポテト放って逃げてたからネ?

【けらけら軽い口調で笑いながら言う娘は、深いことなど特に考えもしていないのだろう】
【怖くないんだったら今度はちゃんと会ってみたいかなあ、昼に。なんて付け加えて】
【満遍なく日々を入れた飴玉をがりっと砕いて、破片を溶かしながら呑み込んだ】

さすがにみんなにはあげないかあ。そりゃそうだよネ、だってあんなに――何匹くらいいたんだろ。
同じくらい……かなあ。まああたしも実はそれくらいの歳でしたってオチかもしんないしー、

【細かいコトを気にしないのはこの娘も同じか。そうじゃないと言い淀む少女の様子も、ちらっと見ては知らんぷり】
【やがて自分も、飴のなくなった口の中にポテトを突っ込んでいく。少女の話を、もそもそ咀嚼しながら聞いて】

へー、酒場の厨房……。看板娘とかやっちゃってる感じ?
ねーそこってさ、ランチとかもやってんの?
やってるんだったら今度行ってみたいなあ。さすがに未成年で夜には行きづらいしー。

【折角だし料理食べてみたいな、なんて呟きながら、小動物の咀嚼でも見守るような気持ちで横顔を見る】
【……サクラの国の、妖怪ってやつかも! きいたことある! そんな、失礼にも成り得るようなことを考えながら】
【袋が空っぽになるまで二人でもそもそ分け合えば、思い出したかのように夜の冷気が戻ってくるだろう】
266 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/23(水) 00:14:57.42 ID:OQGo17Q80
>>265

【ならよかった、と、少女は笑うのだろう。よく分からないけど、いつもしゃべっているし、悪い子たちではない。友達……よりも、仲のいい姉妹のようなきもちですらある】
【それならやはり拒絶されるより、受け入れてもらえるほうがずっと嬉しい。少し力の抜けたように笑ってみせたら、】

わたしたちの分がなくなっちゃうもんね。

【冗談めかして、さらに笑みを強くする。ふふふふと笑って、なんとなしに空を見上げれば、以外と星が見えたのだろう。「ね、ね、」と短くかければ】
【そのまま「ほら」と上を指して。――冬の空気の澄んだ夜空の、ぱきっとした星空。流星群の日でないのが少し残念なくらい、今宵、空はきれいにさえわたっていて】

そう、なのかな、ぁ……。……えっとね、UNITED TRIGGERでお仕事してるの。……分かる? 正義組織みたいなとこ、だよ。……ううん、そうなの。
わたしはね、戦うためのひとじゃないから、あんまり……そういうことはしないんだけど。一緒にお店をやってるから、そこを任せてもらってるんだ。
お昼は……うんと、月のはじめか、月の終わりならきっと大丈夫。あんまりやってないの、でも、夜に来たって、きっと大丈夫だよ――?

【「だってわたしが給仕さんだもん」】
【告げた名前は数年か前に立ちあげられた正義組織。そこでお仕事しているの、と、少し得意げなような、それでも少し照れるような、顔で伝えて】 
【戦闘員ではなくてと告げるのがなんだかわずかにひけめがあるようにも、それとも、誇らしげなようにも見えて、なんだかいろいろな感情を持っている、様子】
【でも言えるのはどちらにせよ最後に見せるのはプラスの感情、えへん、と、少し得意げに笑ってみせて――それから、すこし、くしゃと笑みがほころぶ】

お酒飲まなければ大丈夫だよ、それにね、そんな心配するより、お酒飲まされないようにって頑張るのが一生懸命になっちゃうかも。

【くすくすと彼女は愉快げなのだけど、それって結構とんでもないことのような気がして――でも、ちょっとしたおふざけ、あるいはからかいのように言ってから、】

お客のおじさんたちにいやなこと言われたらいつでもいってくれたら、わたし、ちゃんと助けるからだいじょうぶだよ。安心してね。

【そこだけとんでもなくおねえさんみたいに言うのだ。――だから、なんだか、面白いのかも】
267 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2016/11/23(水) 00:30:55.25 ID:X14edogyo
>>266

ん? んー、わ……きれい。あーあれ、あの3つ連なってるヤツが、オリオン?

【釣られて星を見上げれば、素直に感嘆の声が上がる】
【乏しい知識を総動員しながら、指差して星座の形をなぞるように】
【首が痛くなれば顔の向きを戻して。未だ空を見上げる少女の、やっぱり幼く見える横顔を眺めていた】

ああうん、聞いたことはある。へーそうなの、酒場とかやってんだあそこ。
ふーん? じゃあ夜に来ちゃおっかなあ、あたしカワイイからナンパとかされたら助けてネ。

【頼みましたよおねーさん。冗談っぽくくつくつと笑いながら、空になった袋をくしゃくしゃ丸めて】
【ゴミ箱にぽいしてしまえば、娘はきれいに手ぶらになった。もうこれ以上ここにいる理由も、あんまりなかろう】

……さ、あたしは本格的に寒くなる前に帰っちゃうけど。
名前も知らないまんまじゃお店でご指名できないしぃ、
お名前教えてよおねーさん。あたしは夕月、ユヅキってーの。
268 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/23(水) 00:40:36.56 ID:OQGo17Q80
>>267

【しばし二人で空を見上げることになるのだろうか、三つ並ぶ星が件の有名なやつなのかは、「多分……」とあいまいな言葉で返すから、釈然としないけれど】
【それでも少しの間見ていれば、ふと、少女が「ひゃっ」なんて小さく鋭く息を吸い込む音を立てて、】

ね、ね、今、ほら、あの辺で……、流れ星かも、! ――あれ、違うかな……。

【ぱたぱたと謎の動きを織り交ぜそう説明する、指さす先にはもはや何もないけれど、もしもその瞬間に同じ場所を見ていたなんてことがあれば――もしかしたら、】
【その少女のはしゃぎようを共有できるのかもしれない。確かに一瞬だけ、きらりと、夜空で小さくきらめいて、落ちたような。そんな、気がする】

そうだよ、月の真ん中のお昼はね、子供がいっぱい来るから、みんなわやわやしちゃうと思うけど――、それ以外ならね、お昼もきっと大丈夫。
うん。後ね、気をつけた方がいいのは、もしかしたらお客さんより、店長さんかも、ね。……うん、ちょっとね、すごいときがあるの。でも、いいひとだよ。

【最近は忙しいのか会うこともあまりないけれど。面白いように笑う少女の頭の中には誰かが浮かべられているのだろう、「気をつけてね」と、むしろ、そっちが本命のよう】
【けどどちらにせよ助けてくれるつもりなのだろう。というより、そうと思いたいというか――きっと助けてくれるはずだ。きっと。きっと】

……りんねだよ。鈴の音って書いて、鈴音っていうの。
ご氏名も何もね、わたし一人だけのことも結構あるから、すぐにわかると思うよ。……ふふ、いつでも遊びに来てね。

【ポテトのせいで少ししょっぱいような油っぽいようになった指先で空中に字をなぞる、けど、相手から見たら鏡になってしまうと気づいたのだろう】
【それなら口頭でどんな字なのかを教える――櫻風の名前。もしかしたら本当に櫻の妖怪かもしれない……なんて、証明する方法もないけど】
【にこりと笑う顔を見ている限りでは無害そうだった。なんせ、伝承の中の妖怪みたいに頓珍漢な姿も、していないし――】
269 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2016/11/23(水) 00:50:18.20 ID:X14edogyo
>>268

えー? あ、さっきのちかっとしたやつ?
あれ流れ星かーちゃんと見てなかったや、惜しいコトしたぁ!

【わあわあはしゃぐ少女を見て、何が可笑しいのかふふっと笑みを零して】
【指差された先をじいっと見つめながら、ちょっとだけフードをずらした。視界を広げる為だろうか】
【ずらされた向こう、垣間見えた髪と瞳は、りんごの色をして鮮やかにきらめいていた】

店長さんネ、わかったわかった覚えとく。
リンネ、キレイな響きの名前だネ。そのうち遊びに行くから、そんときゃよろしくーって。

【やっぱり23歳とは思えないな、なんて思いながら、それでも怖くないんなら別にいいやと】
【軽く手を振って、その場から歩き去っていくことだろう】
【そのうち、言った通りにふらりと酒場に現れては、あたしも唐翌揚げ食べたいなあ。なんて注文する娘の姿があったとか、なかったとか】

//ねむけに抗えぬ……ここいらでひとつ。絡みありがとうございました!
270 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/11/23(水) 00:54:11.90 ID:ieH8QJIzo
>>253

【杖の先の青燐光が明滅して周囲を照らす。人から忘れ去られたおどろおどろしい通路を小柄な金髪少女が歩いている】
【黒杖をついて足元を確認し、下段に構え直しては通路の奥に眼を凝らす。光源の先と目線の向きを一致させて注意を張り巡らす】
【右肩から袈裟懸けに背負った長鞄から一枚の紙を取り出して文字列を目で追う。やがて溜息をついて独りごちる】

今思うとリッチの巣を叩けって結構無茶な依頼だなぁ

【討伐依頼書の類であったらしい。近頃ここを根城にした魔物による直接被害が多発し、こうして掲示板に刺し留められたのだという】
【こんな少女が手にしているものだ。危険過ぎて残っていたものを、身の程を弁えずに無造作に取り受けた様子が想像できよう】
【溜息をついて認可印まで読み直すと、外套、スカートの裾先へと目線が移り、ふと足元の様子が目に入る】

煤けた……木……!?

【抗争の名残が視界に転がり込む。冷や汗が首筋を撫でで思わず身震いする】
【革靴が鳴らす単拍子が止まり、杖を構え直して先の暗闇に意識を注ぎ始める】

/まだいらっしゃれば……
271 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/23(水) 01:02:37.56 ID:OQGo17Q80
>>269

【「違うかなぁ?」白い吐息をほわほわさせる少女の顔は冷えたせいか、それとも興奮したせいか、頬がぽやっと赤くなっていて、それが余計に子供らしいよう】
【でもきっとそうだよと笑う、お願い事間に合わなかったなと少し残念そうに笑う、ころりころりと鈴の音で笑って――ちらと見えた相手の瞳を、一瞬だけ、ちらと見やる】
【林檎に似た色だと思った。でも、幼馴染の"青"りんご色とは違うなとなんとなく思って、それもまた少しだけ面白くて、嫌味や嘲りでなく、まだ笑う】

お星さまきれいだね、あんまり明かりないから、よく見えるのかな。

【ふふ、ふ、言葉の端に少しだけ笑みを引きずったままでしゃべる、何がそんなに――と思われたって仕方ないくらい、もしかしたら、楽しそうにしていて】
【だけど多分理由もない。楽しいから楽しい、多分それだけで、それで多分、少なくともこの場では、きっとそれでもよくって】

うん、待ってるね。

【しばらくひとしきり楽しそうにして、それから、やっと落ち着く。待ってる――いろんなお客さんを待つ中に、眼前の彼女、夕月のことも、きっと待つ】
【それがいつかはわからないけれど、いつかの日をぼんやりと待つ、それで、ある日来てくれたら、きっと、きっと、嬉しそうに迎えてくれるはずで】
【その時はからあげでもポテトでも用意して、お仕事を細切れに軽くさぼるようにしながらしゃべりに来たり、きっと、するのだろう】

――気をつけて帰ってね、夜の道、きっと真っ暗で、危ないから。

【手を振りながら最後にそうとだけ言って、夕月を見送る。それから誰もいない公園、また、しんと――静けさと、葉っぱのざわめきが、戻ってきて】

えっと……、あれが――――、

【池の柵に背中を預けて、空を見上げる。だいぶ前に、星空のことを知りあいに教わったことがある。けど、もう、記憶の端っこはほつれてしまったと、遅れて気づいて】
【少女はしばらくその場にとどまって、あれが、あれが、と、星を指さしては、一人で星や星座の名前を思いだしていた、という】

/おつかれさまでした!
272 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2016/11/23(水) 07:49:42.20 ID:DwyhC0lRo
>>270

【此処を極左勢力が根城としていた、そんな噂は十年程前からとんと聞かなくなって、いつしか魔獣の棲家へと移ろいで行ったのだろう】
【だが今宵、生けるものの気配は、相手以外に存在しない。煤けた木、古びた薬莢、埃を被ったヘルメット――奥へ進む程、深刻さは増す】

【やがて見つけるだろう、白骨化した亡骸は、分かれ道の右の方を張って追うようにして、そのまま力尽きた事が何とはなしに想像できた】
【そちらへ進めば、道中に幾つもそんな亡骸がある。皆一様にある道の方へと、目印の如く、古びた銃や錆びたナイフを手に倒れている】
【左の道は進んで行けば寝所であったらしい場所に辿り着く。そこには魔獣が最近まで棲んでいた痕跡が残っていたが、肝心要の姿はない】

【左の道は行き止まり、それで引き返し元の分岐点に戻ったなら――あるいは右の道を進む最中、奥から一発の銃声が微かに響いて来る】
【右の道を進んでいるなら、妙な匂いが鼻につき出す頃だろう。古びた埃や白骨化した死骸とは違う、腐臭。死後少し経った、人間のもの】

/よろしくお願いします
273 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/11/23(水) 10:22:51.10 ID:ieH8QJIzo
>>272


【程々に状況確認を済ませた後、再び奥へと進み始める。程なくして丁字路にぶつかった】
【外より持ち込んだ小枝を掴み、道の上にポトリと落として行き先を決める。左を向いた枝を拾い上げて、抜き足差し足で探索を再開する】
【やがて寝処らしき空間に辿り着く。錆びた音を立ててゆっくりドアを開ける。特にめぼしい様子はない】

【興味を無くして元来た道を戻る。丁字路を真っ直ぐ進んで選ばなかった方の道を探る心算であった】
【分岐点が見え始めた所で銃声が響き渡る。やはり杖を構えて周囲確認を始める】

これはちょっと、危ない橋かも

【思考を切り替えざるを得ない。対死者であるなら初撃の奇襲が成功すれば力押しでもある程度の成果は挙げられる筈である】
【銃声の主は死者である筈がない。例えそうだとすればソイツは高位魔導師の使い魔である】
【右への道を進み始めた頃には生者の気配を証明する有様が照らし出される。白亜の珊瑚と化した屍の絨毯に靴底の跡がはっきりと刻まれている】

これは、討伐じゃなくて焼却の方が良いかも
この先を調べてから酒場に報告しないと

【高位魔導師の線も此処で消え失せた。残るはこの骨砂の山を築いた鬼神との相対である。青燐光を抑えて骨を避けて、主人無き道具達を見下ろして、幽霊の如く暗黒へと歩み寄る】
【やがて物陰の先より立ち尽くす人影を見つけてしまうのであった】
274 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2016/11/23(水) 13:06:17.11 ID:DwyhC0lRo
>>273

【――死者の匂い。甘く鼻をつく腐敗臭を全身に纏い、黒のスーツは一部が黴に侵食され襤褸の有様、刺青を入れた頬肌は死者の血色】
【立ち尽くす死者の男は赤い燐光を纏っていた。どす暗い唇が、相手に気付かぬまま、目の前の兵器でも誰へともなく滔々と語り掛ける】

俺は、俺達は……始めるのさ。革命を――全部、全部取っ払った世界を、そう……誰一人、生き残ることの無い未来を。
先生は……癌細胞のように、音も無くこの理念を広めていけ、と言っていたが。結局皆このザマじゃあな、内ゲバなんか良く有る事だが。
……リベラルもコンサバティブも、もうこの世界を救えやしないのさ。なあ先生、あんたも最初から分かってたんだろう、だから、

【言葉が途切れると同時、男の全身から、赤い燐光の奔流――そして、眠っていた兵器達が起動音を鳴らし、目を覚まし始める】
【黒塗りに赤いライトの目を開いたステルス機、高翌揚の如き赤い空吹かしを上げる銃火型爆撃機、赤い煙を巻き上げる大口径陸上戦車】
【格納庫の壁に見えた部分が、赤い燐光を警告灯めいて灯し降下していく。奥には更に大量の、男の言葉が嘘じゃない程の兵器があった】

――やってやろうぜ、お前ら。夜が明けたから目覚めるんじゃない、目覚めたからこそ、夜が明けるんだ!

【地下壕の中に大量の駆動音、重低音が返礼の如く響き渡る。死者の男は真っ直ぐな灰色の瞳をしていた。世界を塗り替える、意思の色】
275 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/11/23(水) 14:32:06.64 ID:ieH8QJIzo
>>274

【男の呟きを聞いた。側から聞いて暴力的革命主義にも聞こえかねない問い掛けが、暗闇に減衰しながら虚しく反響する】
【少女はその言葉を何一つ理解することはできない。だが、この手の人間に出会った事はある】
【身を隠し、視認のみで人影の武装を探ろうとする。のだが直様不可能となった】

……ッ!? な、何が!?

【闇の帳に鬼灯の如き昴星が姿を現す。少女の隣で武器庫の扉が意識を無くしたように倒れこむ】
【間一髪でこれを回避し、人影に姿を晒してしまった少女は今度こそ人影の全容を目の当たりにする】
【夥しい数と種類の火器を生やした男。僚機が蜂の如く彼を旋回し、その向こうに巨象を思わせる兵器軍】
【地獄より蘇ったアタナトイが示現する。左手で吐き気を催す程の死臭に耐えながら辛うじて体勢を立て直す】

リッチ捜索も、焼却も必要なさそうだけど
これはもう……逃げるしかない!

【青燐光を曳いて杖を下段に構え直す。この時に放たれた男の言葉は鬨の如く、目を覚ました無数の駆動音が少女を殺さんばかりに降り頻る】
【相手はダレイオスの軍勢とは違い、ハイテク兵器で身を固めたイージスの有様を呈している】
【少女の戦術は以下の通りとなる。逃亡戦、チャフによるレーダーの無効化、射程外距離の維持。駆け出す足音に鋼鉄の破砕音が重なる】

 - Barbed Fog

【部屋の奥に向けて銀蠅の如き煙が湧き立つ。逃げ出そうとする少女の左手を掠めると、手の甲に粗鑢を擦り付けたような生傷をさらさせる】
276 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2016/11/23(水) 16:19:04.17 ID:DwyhC0lRo
>>275
/大変申し訳ないのですが、先程からこちらの行動を確定する描写やそちらの推定で書き進めた展開が多く、多く少々やり辛い状態です……
/始めに『この場所に魔物が隠れ棲んでいる』との描写がありましたが、こちらではそのような設定は投下文に記載しておりません。
/その点は何とか機転で合わせましたが、今回は流石に見逃している、或いは勘違いなさっている点が多いようですので説明しますと、
/こちらはまだ攻撃動作は取っておらず、従ってそちらを傷付ける事もしておりません。そも、まだそちらに気付いていない状況下です
277 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/11/23(水) 16:29:56.50 ID:ieH8QJIzo
>>276

/色々とすみませんでした
/相手の状態の確定描写は避けていたつもりですが、もう少し判定を厳しくして書き方を変えていこうと思います
/最初から書き直すか、275をの二つ目の台詞以降の描写を無かった事として扱うか、それ以外か
/いずれかを選んで頂けますと幸いです
278 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2016/11/23(水) 16:43:07.28 ID:DwyhC0lRo
>>277
/二つ目からでも構いませんが、武器庫の扉は倒れていない(格納庫の壁だけが降下している状態です)のと、
/僚機が飛び回っていたり、男から火器の類は生えていないので、その点だけ修正願いますー
279 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/11/23(水) 16:55:45.41 ID:ieH8QJIzo
>>274 >>278

【男の呟きを聞いた。側から聞いて暴力的革命主義にも聞こえかねない問い掛けが、暗闇に減衰しながら虚しく反響する】
【少女はその言葉を何一つ理解することはできない。だが、この手の人間に出会った事はある】
【身を隠し、視認のみで人影の武装を探ろうとする。のだが直様不可能となった】

……ッ!? な、何が!?

【闇の帳に鬼灯の如き昴星が姿を現す。緊張状態の少女に警告灯の赤光が降り注ぎ、吃驚して地面に転げおちる】
【人影に姿を晒してしまった少女は今度こそ人影の全容を目の当たりにする】
【向こうに巨象を思わせる兵器群、それらに光を灯した男は正に死の象徴と思わせる威容であった】
【その有様は地下壕にアタナトイが示現したか如く。左手で吐き気を催す程の死臭と、心臓を縛られるような緊張に耐えながら辛うじて体勢を立て直す】

リッチ捜索も、焼却も必要なさそうだけど
これはもう……逃げるしかない!

/この感じでよろしいでしょうか?
280 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2016/11/24(木) 21:52:28.93 ID:rEF6kwWro
>>279
/大変遅れて申し訳ありません、書き直して頂いてありがとうございました……!
/これからすぐ返信書かせて頂きます、本当に遅くなって申し訳ないです……
281 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2016/11/24(木) 22:16:10.69 ID:rEF6kwWro
>>279

ッ、何だ……!? お前、いつからそこに、

【動転したのは死人の方も同じ。もう正義組織も警察もこんな朽ち果てた場所を、誰かが未だにマークしているなど考えもしていなかった】
【そも相手は偶然入って来た冒険者かも知れないのだが、今の彼にはそこまで思案する余裕も無かった。全てが完璧に進む、筈だったのに】

何故だ……どこからッ、一体どこの犬だ!? 答えろ、どこまで知ってるんだ、俺を、俺達の計画を――!!

【(邪魔など入る筈は無かった、誰かに漏らす口が聞けるような生きた仲間はもう居ない、自分と此処に並び聳える無言の仲間達だけが共有する理想と革命、それを、この少女が、)】

……逃げるのか、そうか、俺も逃げるのは得意でな、ガキの頃は弟達の為の飯を人から掻っ払って逃げた、
物心ついてからは青い理想に身を染めてただの妄想でしかないそもこっちも見ていやしない仮想敵から逃げた、
その仲間同士が青臭い理想の少しのズレで自己批判だ統括だと戦争ごっこめいた内ゲバを始めても一人知らぬ顔で逃げた、
本当に知らない内に進んでいた裏切りに遭って死んで裏切った方も死んだのに俺だけが目を覚まして、逃げた、

【相手を見る灰色の目は、この抗争の絶えない街を見降ろし憐憫する曇天を切り取った色彩で、写した筈の相手を一切見てはいなかった】
【左の懐から出した手には、まだ微かに硝煙を上げる拳銃が握られている。銃口はまだ下に向けたままだが、警告としてその存在を見せ】

逃げるなら……何も、見なかったことにしてくれ。アンタを殺したくない。馬鹿げた話だよな、人類全て[ピーーー]革命をしようって奴が、な

【勘違いなのだが、少女が此処の存在を聞いた可能性がある相手を、男は思い出していた。この街で見つけた、血の繋がらない大切な弟達】
282 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/11/24(木) 22:33:26.32 ID:pKu9ukiTo
>>280

/こちらも所用で最大23:45まで遅れます
/私もなるべく早く返信致します
283 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2016/11/24(木) 22:41:34.94 ID:rEF6kwWro
>>282
/どうぞお構いなく、ご用事の方を優先して頂ければ幸いです!
/こちらは明日の晩と明後日も空いてますので、返信気付き次第なるべく早くお返しします……!
284 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/11/24(木) 23:23:24.09 ID:pKu9ukiTo
>>281

【少女はすかさずバックステップで距離を外し、背中と壁がぶつかるまで逃げる】
【その途中、追撃避け目的のサイドステップが混ざっており凄まじい警戒感を物語る】
【だが、何も起きない。寧ろ男は条件付きの不殺宣言をしており、少女の思考に大きな空白が生じる】

……?

えと、私はこの近辺で魔物被害があったから討伐依頼書通りに魔物をサーチ&デストロイをしに来ただけです

それと、別におかしくはないです
だって誰かを殺そうとすれば、その怨嗟が自分に跳ね返ってきて必ず怪我をするから

【杖は下段に構え近づきながら、男の呼び掛けに答えていく。明滅する青燐光が少女を照らす】
【転んで怪我している筈の脛に傷一つ無く、杖には遠目でも視認できるぐらいの白いヒビ割れが走っている。左手には依頼書らしき紙が丸め握られている】
【五歩の距離まで近づき、考える素振りで首を傾げ頭を掲げる。やがて確認するように問い掛ける】

やっぱり、ここの事は秘密にした方が良いかな?

/それでは、時間が許す限りよろしくお願いします
285 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/25(金) 01:05:55.52 ID:0aCJ1nk7o
>>284

……魔物討伐? ちょっと待って、じゃあお前は……そうか、そうだったのか……あーっと、何か悪いな……俺が盛大に勘違いしたというか、

【全く予期していなかった言葉に、死人の男はしばらく呆然としていたが、やがてバツが悪そうに癖のある髪を掻く】
【その際に数本抜けた髪に若干愕然としたのは夜団だったが――まあ、体が死体なのだから、抜けるだろうし生えても来ないだろう】

怨嗟が跳ね返って来る、か……俺はもう死んでいるから構いやしないんだがな、怪我はちょっと場合によっては再生しないかも……だが。
しかし、まあ……なんだ、悪かったな。変なこと口走った上にこんなものまで見せて……おいお前ら、悪いが一時休眠だ。

【男が拳銃を懐に仕舞うと、兵器達に灯っていた赤い燐光がふっと消え失せる。照明はそのままだったが、格納庫の扉も閉まっていった】
【それから、近い距離で首を傾げた相手に少しばかり戸惑うようにしつ、頭を掻こうとして慌てて止めて、僅かばかりの気不味い沈黙】

……そうしてくれると助かる。俺がしようとしていたことも、ここだけの話にしてくれ。……何だか、アンタと話して気が抜けちまった。
ずっと……理想の世界を作りたくて、ここでその為の準備をしていたんだ。俺の力がどういう訳か強まったのもあって、今が機だと思った。
だが……そう、だよな。当然だけどよ、アンタみたいな良いヤツも、俺が理想を突き進むなら死んじまう事になる訳だよな。本当に今更だ、

【赤い照明だけが照らす地下壕で、男は今度は懐から取り出したしわくちゃの煙草をくわえ、古びたジッポで火を灯す】
【すうと深く吸い、長く煙を吐く。いろんな事を考えているようだった。ただその目は、地下の壁の外に懐かしい誰かを幻視していた】

/遅れた上に申し訳ないのですが、明日も仕事があるので、今晩はこの辺りで失礼します…!
286 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/11/25(金) 07:48:49.07 ID:gD3PCEmno
>>285

死んじま……う……?

【その言葉を口にして毒を盛られたのか、少女の瞳から光が濁って無くなる】
【朦朧とし始める意識が彼女の視界(げんじつ)を塗り替え始める】
【魔力反応を伴う虚妄は超常の力を持つ周囲の人にその一部始終を垣間見せる。無い人には少女が突然立ったまま気絶したかのように見える】

【二人いた。まずは幻視主が好意的に見ている女生徒の姿。難しい顔で腕を組みながら語りかける】
【『そっか……。木花がどうして金属生成能力なのかようやく分かった気がする。その杖は木花の死んだ肺の代わりなんだね』】

【もう一人は生き意地汚い臭気を発する青年。健康体にも関わらず点滴に繋がれ、右手に黒い手甲らしきものをはめている】
【手甲からは鞭が伸び、破れた服を貫いて縦一文字の切れ込みが入る腹に繋がっていた。ならばそれは小腸なのであろうか】
【手甲もよく見れば理科の教科書によくある人体模型の肝臓の形と瓜二つである】

【《これは良い、実に良い! 人を殺さず病で縊り苦しめ続ける理想の鞭(のうりょく)だ! 臓器を生贄にするだけだったとは……こんな発想をくれてありがとうよ、セ・ン・パ・イィィ!》】
【《貴様に掛けた病は被讐! 自覚無き正義の刃を振るうセンパイにお似合いの病だ。敵を斬り倒しながらその身体、紙クズの如く千切れていくがいい!》】

【少女はこの青年を『随分昔』に斬り裂いたような覚えがある。そのせいで斬撃(のうりょく)が自分にも跳ね返るようになり……】

!?
あ……ごめんなさい。
えと、はい。魔物に関係が無さそうなので秘密にしておきます

【果たして何に対する謝罪であろうか。瞳に光を取り戻し、少女の意識が現実へと帰還を果たす】
【男の言葉に半分朦朧としながら受け答えをする。杖の燐光は、一秒弱の呼吸のリズムに合わせて明滅を繰り返し続ける】

/了解しました。昨日はありがとうございました
/こちらも返信遅れましたが、返しておきます
/いつでもどうぞ
287 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/25(金) 12:44:13.14 ID:0aCJ1nk7o
>>286

……? おい、どうした――、

【男の操っていた赤い燐光は魔力、即ち彼にも適性があり、相手の幻視した光景を垣間見ることとなってしまった】
【相手に友好的な女生徒と、敵対しているように見える奇妙な青年。彼らの言葉も、無論男の耳には入っていた】
【相手が現実に意識を取り戻し、言葉を発したことで男も我に返ったように、半開きだった口から溢れかけた煙草を慌ててくわえ直す】

あーっと……いや、こっちも何か悪かった……その、見えちまった。つまり何だな……俺も、秘密にしておいた方がいいか?

【少しばかり罰の悪そうにして、そう男は問う。ちらりと相手の杖の光を見遣ったのは、先程の会話に関係していると推察してだろう】
【深く煙を吸い込んで、ゆっくりと吐く。……が、『肺』と言う単語を思い出したのか、慌てて踏み消し、相手に向き直る】

お互いに秘密で、ってんならここでお別れだな。何も見なかった、聞かなかった。それだけだが……まあなんだ、それも寂しいだろ?
俺は悦那(えつな)、悦那・スティングレイ。たいていこの塒にいる、力が必要な時はいつでも言ってくれ。

【真っ直ぐに向ける灰色の目は、先程までの狂気的な信念に溺れたものでは無くなっていた。相手に絆された、と言うより、救われたのか】

/こちらこそ大変ありがとうございました、時間が出来たのでお返ししておきます
288 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/25(金) 18:50:49.79 ID:+eRTMW1U0
【街中――大通りに近い広場】
【まだ季節には少し早いはずの雪がぼたりぼたりと降っていた、通りすがる人々も足早に通り過ぎていくばかりで、足元もすっかり濡れている】
【シャーベットのようになって踏むとはじけるような雪の塊を一つ踏みつぶして、人の流れから少し離れた位置に陣取る人影が一つあって】

……さ、む、い、

【ただでさえ顔を埋めるように巻いていたマフラーの端をさらに持ちあげてつぶやく声はわずかに怨嗟めいて漏れる、マフラー越しに漏れる息が、編まれた毛糸の目に水滴をつけて】
【差している傘は大きめのものだけれど吹き込む雪を前にしてはあまり意味もなく足や靴に雪がこびりついているさまは、短くはない時間、この場所にいるようにも見える】
【実際誰かこの場所にしばらくいる人間がいれば、彼女が二、三十分はこの辺りで待ちぼうけしているのが分かるはずで――とは余談だけれど、】

どうしてこんなに時間が……、……嫌がらせですかしら……。

【ああと小さく後悔めいた声で身じろぎする、傘を握る手はすっかりと寒さに赤らんで、ちらりとのぞく耳も、だいぶん赤い。かといって頬は化粧のせいなのだろうけど――】
【「すぐに着くと聞いていましたのに」――、わずかにいらだったような声、は、けれど、すぐに寒そうに震えるから、――つまり、待ち合わせのはずだのに、相手が来ないと】
【そういうことらしい女性、だった。真っ白い息を漏らして、恨みがましいように視線をあたりにうろつかせる、けど、こんな天気だ、みな足早に歩いていくばかりで】
【待ち合わせの人間、まして相手の来ないような長時間の人間はあんまり――】

【――ほんの少しだけ癖のある黒髪は肩に届かない程度のボブヘア、寒くてうつむきがちな前髪からちらりと覗くのは、宝石のように鮮やかな青りんご色の眼】
【ぐるぐるに巻いた暖かそうなマフラーには吐息の水滴と雪の解けたのがまとわりついて濡れた風合い、分厚い布地のワンピースコートにも、吹き込んだ雪がこびりついて】
【足元は厚手のストッキングなものだから余計に寒そうに見える、足元はファーのついたブーツで、それが時々寒いようにわずかに動かされて、ころろ、と、小さな音がする】

もう三十分も――、は、

【時計を確認しようと起動した薄型の携帯電話、そこにちょうど通話アプリの通知がポップして、ぴしり、と、寒さにつられて、その様子まで、刹那に凍り付いたよう】
【その内容が「電車が止まって行けないわ」の一言だったから――なのだけど。気が抜けてわなと震えた手が持っていた携帯端末を落としてしまうのは、ほんの数秒後】
【短い悲鳴みたいな声とシャーベットの雪が水たまりになったような地面、ぱんと地面に落ちたそれはつーっと、向こうの方まで、滑っていってしまって――】
289 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/11/25(金) 19:34:34.84 ID:gD3PCEmno
>>287
あ、えと、そうなんですか?
秘密にしなくても良いですよ。杖を壊されたら窒息して動けなくなるのは近くの人や酒場の人も知っていますし

でもさっきの、確かに知っている人だけどあんな事言われた覚えがなくて……

【どうやら彼女にも身に覚えの無い情景であったらしい。うんうんと唸ろうがリンクする気配はない】
【無駄な努力に時間を費やしている内に男の方からの自己紹介を受けて、反射的に対応する】

あ、私は片桐木花っていいます
今はヴァディス郷の宿屋に住んでいて、魔物退治とかしています。最近はちょっとした目的で九絵村の近くにもよく行っています

えと、その目的の手掛かりになるので、能力者暴走事件があったら出来るだけ教えて欲しい……かな

【少女の方も簡易的に自己紹介をする。一部言葉が濁されているが幾つか物騒な単語が混じっている】
【特に九絵村、櫻の国の辺境にある廃村は7年前の研究所襲撃事件の余波によりジェノサイドが起き、現在も立ち入り禁止となっている曰くつきの場所である】
【風化により一般人の認知から外れてしまっているが、知る人ぞ知るミステリーの一つである】

【このまま何も無ければ少女は挨拶と手を振って男と別れ、出口の方へと歩いていくだろう】
【この少女、話せば話す程謎が山積していくタチである。引き留めても対応はしてくれるだろう】
290 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/25(金) 20:01:52.96 ID:0aCJ1nk7o
>>289

あ、そうなのか? まあ……別に言い触らす気もないが、えっと、なんだ。身体には気をつけろよ。
……そうか、何か記憶を部分的に消されてる、とか、或いはあの光景自体が何者かの仕組んだ罠――なんて、適当な推察だ。気にすんな。

【秘密にしなくてもいいとのことでやや拍子抜けした顔の男だったが、カタギに見える顔ではないのでそも言い触らそうが信じる者もない】
【相手の悩む姿に、自分なりに思い付くことをあげては見たが大体が物騒なのはやはり男の考え方もカタギでは無いことを示すようだった】

片桐木花、な……魔物退治屋か、実は俺の弟も同業者なんだ。もしかしたら何かの機会に合うかも知れないな、Elysionって組織らしいが。
ほら、たまにCM出してるお高い魔術装飾だののファッションブランド……あれが表の顔、裏では退治屋を雇って素材を集めてる訳だ
能力者暴走事件――、分かった。出来るだけ情報を集めてみるさ。っても、この顔だもんで、裏の酒場辺りでしか探れないけどな。

【「あんまり期待しないでくれよ、」なんて笑う右頬には牛の生首が載った皿の刺青。まして死人めいた、というよりも死人の身体では】
【お天道様の下を歩ける身分では到底ない。その前に日光が当たったら腐敗が進んでしまう危険性の方が遥かに高かった】

……じゃあな、木花。気を付けて帰れよ、

【特に引き留めることもなく、一応出口までは相手を見送るだろう。少女と言う事もあって、下心ではなく親心のような心配からだった】
【別れ際、姿が見えなくなった頃。低く呟く「ありがとう、な」の声は、格納庫の奥で静かに眠る兵器達の代弁であったのかも知れない】

/それではこの辺りで失礼します、お疲れ様でした……!
/注文をした上に長らくお待たせして、大変申し訳ありませんでした……
291 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/11/25(金) 20:22:52.12 ID:gD3PCEmno
>>290
/こちらこそ、最後までお付き合いありがとうございました
/今回の件は自分のロールの振り返りになり、寧ろ勉強させて頂くことができて、こちらから感謝を申し上げます

/お疲れ様でした! それではご自愛くださいませ
292 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/25(金) 21:00:15.06 ID:0aCJ1nk7o
>>288

【和装の男は、街中では少し目立つ容貌だったかも知れない。肩口で切り揃えた白髪に黒い彼岸花を差し、微かに青藍の燐光を足跡に落す】
【足早に過ぎ行く人々を何処か煩わしげに、葡萄色の目で睨み据えてはふいと興味を無くしたように歩を進めてゆく】

……ほんに、たまに降りてくれば雑踏は汚らしゅうて。雪が降って、有る意味助かったゆうか――あッちも、有象無象の群集も。

【舞い散る雪の中、黒の長着でなければ溶け込んで消え失せてしまいそうな白い髪、そして指先で濃紺の和傘がくるりと手遊びに回される】
【廃村で一人蟄居を愉しんでいる中どうしても必要な買い出しで嫌々来たのだが、早々とやって来た雪に少しばかり機嫌のいい様子だった】

【――そんな折。降雪の無音をぱんと掻き消す音に気付けば、目の前に通信端末が滑り出して来た。男は無意識に拾おうと屈んだのだが、】
【履いている草履が雪用の物でないことを全く失念していた。屈んだ姿勢で後ろへ脚が滑り、そのまま地面に強かに顔を打ち付けた】
【放り出された和傘が、代わりに相手の足許へ転がるだろう。何とか端末を握りながらもそれを割りそうな程握り締めたまま動かない男は】
【恐ろしい程の殺気を酷い格好のままの全身から醸し出していた。やがてゆらりと上げた顔は、薄い化粧も惨めなざまの、雪まみれ】
293 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/25(金) 21:18:28.18 ID:+eRTMW1U0
>>292

【マフラーで隠れた口元をわずかに歪ませる、生活防水のある機種だが、雪の水たまりに落とした場合はどうだろう。それよりも、】
【画面に罅が入ってやいないかと思うが、それを確認する前に、つーっと滑っていってしまった携帯端末を即座に確認することはできず】
【誰かに踏みつけられる前に回収せねばを足を踏み出しかけた視線の向こうで、誰かが拾い上げようとした手が見えて、その直後には、つんのめっている】

…………あら、まあ。

【どうしようもできなかった。せめてもう少し近ければ手を差し伸べることもできただろう、それとも、乾いた地面であれば、駆け寄ることもできたのかもしれない】
【けれど今は雪で距離は少し遠く、それならとっさに足を踏み出した女の手は届かないし届くこともない――見事に滑り転んだ男を未然に救う腕は、存在せず】

ええと……お怪我はありませんこと? よろしければお使いになってくださいな、……わたくし、手を滑らせてしまいましたの、本当に――、

【「すみません」と言葉を続けた女は、彼が転んで数秒後、歩き方としてはゆったりしたものだが、自分自身も急いて転ぶのは避けたかったのだろう。やがてそばまで寄れば、】
【コートの裾を正しながらそっと隣にしゃがみ込む、鞄から取りだして差し出すのは趣味のいいこぎれいで使った形跡さえもないような、刺繍入りの白のハンカチ】
【正直なことを言えば雪の中で全力で転んだ相手にとってはとうてい足りないだろうことは誰もが見て分かるくらいに"おしとやか"なものなのだけど】

【自分のものを拾おうとして滑ったのであれば、ある意味では自分のせいだろう。見れば黒くふわふわした毛に雪の絡まった女は、申し訳ないように笑っている】
【けれどその笑顔はあんまりにきれいなものだから、生々しい必死さはうかがえなくて。それでも――いかにも申し訳ないような顔をしてみせて、相手の出方を、待つはずだ】
【相手の殺気も気にしないで笑っている、それなら、ただの全うな女ではない――ようにも、思えるような】
294 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) [saga]:2016/11/25(金) 21:45:08.19 ID:JsjABlPOo
>>293

……みぃんな死んでまえばええんや、何や、あッちじゃ穢れ過ぎて蜘蛛すら助けを嫌がる訳やな、嗚呼そうか、もうええわ、もう――

【地べたに這うまま、雪塗れの顔で怨嗟を宣っていた男の隣に相手が屈み込む。顔を上げれば、差し出されたハンカチの白さともう一つ】
【屈んだ相手を地べたから見上げる格好だ。上手く隠してくれているなら良いのだが、見えかねないものが見えてしまったかも知れない】

――要らん。そんなちっぽけな布で何せえ云うんや、もう化粧も長着も襦袢も足袋も……ああもう、ほら。そッちのやろ。受け取りや、

【一瞬で降雪の無音が戻ったように殺気は消えていた。元々相手に向けたものではなく、この光景を見た全ての人間へ向けたものだった】
【膝をついて何とか四つん這いまで起き上がれた男は、不機嫌そうに手にしていた端末を相手へと突き出す。雪と水とに濡れてはいたが】

拭くなら先に急いでそっち拭きや、防水かどうか知らんけど。はー困ったわぁ、羽織も防水やったら良かったのに、こんなザマで……

【着物の着替えとなると大変な面倒だ。近くの大通りの店でも換えの物を調達できるかは難しいだろう、やっと立ち上がれた男は】
【自分の状態を確認して、心底嫌そうに溜息をついた。それからついと視線を滑らせる先は相手、の、綺麗なきれいな顔だった】
【睨んでいるつもりはないのだが、どうしてもそう見えかねない目付きの悪さに薄赤い化粧の跡が見える。――男にしては、妙だった】
295 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/25(金) 21:59:27.87 ID:+eRTMW1U0
>>294

まあ、そんなに物騒なことはいけませんわ、落ち着いてくださいませ――。

【相手が知る由はないこと。けれど、職業柄だろうか。生足でこそないものの惜しげなく露出された足、けれど、かといって、やみくもに緩いわけでは、ない】
【ワンピースコートの裾を指先であしらった仕草、それだけで、何が見えてしまうとかそういうことはない。よってきれいに差し出したハンカチの白だけが、相手に向けられ】
【相手がひどい有様であるのに静かに微笑んでみせるその温度差が変だった。あおっているわけでもないのだが、誠実さには少し欠けるような――それとも】
【笑いながらも申し訳なげに垂れる眉から誠実さを探すのか。どちらにせよ、"そういう"表情は、ずっと、きれいに保たれていて】

ええ、わたくしのですの、……ありがとうございます、助かりましたわ。どなたかに踏み割られてしまっては大変ですもの。
ですけれど、そのせいであなたさまが大変なことになってしまいましたわ。……せめてこのくらいは受け取ってくださいませんと、困ってしまいますの。
どういたしましょう――わたくしにできることがあればいいのですけれど、

【差し出された端末を受け取って、女は笑うのだろう。嬉しそうな顔をして見せて、ただ、それ以上の意味はないように、コートのポケットに、無造作にしまってしまう】
【必要であれば助け起こすように手を差し伸べもするだろうか。ハンカチは受け取ってくれとは言うが、この言葉でも拒絶されるようなら、おとなしく引っ込める】

わたくしでよければ、お礼をさせてくださいませ。あなたさまもそのままでは風邪をひいてしまいますわ。

【意図せずにらむような視線を向けられても、彼女は動じなかった。変わらずにこにこと/申し訳なさそうに笑いながら、さも善人であるかのよう、そう提案する】
【落とした携帯端末を拾われただけ、ではあるが。そのせいで見知らぬ人が転んでしまったとなれば、申し訳なくなったのだろうか――】
296 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/25(金) 22:24:54.47 ID:0aCJ1nk7o
>>295

今はそないなもんより、着替えが欲しいねんけど……どうせこの辺りじゃ洋服しか無いんやろ、あッちはああいうん、着とうないわ。
旅館とか、何かそんな場所知らんか。そこまで案内してくれるんやったら有難いし、そッちの気も晴れるやろ? 本気かは知らんけど、

【洋服は着たくないと言う。この状態でもそうならかなりの拘りというのか、我が儘というのか。もう駄目になった長着の袖で顔を拭い】
【提案するのはそんなこと。ホテルならともかく、この街中に旅館となると、郊外の方辺りまで出る必要があるのかも知れないが】

【――最後の言葉は、挑発めいて微かに笑みを浮かべたものだった。知っている、この手の人間は、中でも相手は完璧と言っていいけれど】
【きれいな仮面の被り方。男娼の頃に嫌と言うほど仕込まれたそれに似たものを、こんな雪の街で見ることになるとは思わなかった】

……いや、やっぱりええわ。勘違いされても嫌やし、それに――あッちと歩くのは、そッちにはあんまりええ事やないと思う

【「機関に関わってたんよ、」そう告げる顔は数年前の一時期、無差別殺人犯としてよく街角に張り出されていた特徴に酷似していた】
【『墨廼江 月彗 元カノッサ機関No.2』――顔写真こそ無かった、故に張り紙を見ていなければ、知る由もない事ではあったが】
297 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/25(金) 22:43:13.68 ID:+eRTMW1U0
>>296

まあ、お着替えですの? それでしたら――、そう、お嫌いですのね。
旅館……のようなところですと、郊外になってしまいますわ。タクシーがうまいこと捕まればいいのですけれど……。

【着替えが欲しいなら。そう言いかけた口先を、相手の言葉が封じてしまう。まあと少し面食らったような顔をするが、そもそも元から着物で出歩く彼のこと】
【かえって着慣れないものなのかもしれないとなんとなく考えている、――あくまで頭の中でのこと。外から見た限りでは相変わらず愛想のいいような顔が、動かない】

本気ですのよ、ええ、本気ですわ――、わたくしのせいですもの、わたくしが責任をとるのはおかしなことではありませんの……、ね?

【挑発の笑み。それにもぴくりと変わらない笑みの色合いは、ひどく手なれていることを示すのだろうか。いっそ本当の表情など忘れてしまいそうなほど、慣れている】
【ちいとも嫌味のないわらいかた。心底相手を心配しているような顔と声、本当は知らないけれど――それでも、利用しようとすればされてくれそうな、温度がある】

あら、そんなのちっとも構いませんの、それに、雪の中でぬれねずみになった方を置いてなどいけませんわ。

【機関――その単語。普通の人間ならばそれだけで悲鳴をあげて逃げかねないものを聞いても、彼女は何とも言わなかった。ちっとも構わない、たったのその言葉だけで】
【優しい――といってしまえばわかりやすいし、簡単だろう。けれどただ優しいなんて言葉だけじゃあいけないような予感もする。むしろ、そう思っていた方がいいかもしれない】

……困りましたわ。男物の――着物を持っている知り合いだなんて、

【そういえば、彼のほうりだしてしまった傘を拾ってきていなかった。今更ながら自分の傘を相手のほうへ傾けて、わずかに小首をかしげてつぶやいた女は、】
【一瞬何か思い当たらないでもないような態度をよぎらせて――けれど、やっぱりそんなものは知らないというような顔をする】

【(幼馴染のところに和服の男性が居た。だから多分その"幼馴染"に連絡を取れば、"あの子"なら、すぐにでも迎えに来るだろう――と、思いながらも)】
【彼がそういった態度の機微に気づく性質であれば、思いつきながらも何かを黙って過ごすさまに気づくことも、容易だろう】
298 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/25(金) 22:57:31.37 ID:0aCJ1nk7o
>>297

……ほんに、嫌な女。何も知らない無垢な女の方がよっぽど可愛いわぁ、兄貴の嫁みたいな――まあ、ああまでのは、犯罪やな。

【羽織を直しつそうぼやくのは誰のことか、相手が気付く由はないのだろう。犯罪というのが愛らしさについてなのかも曖昧だった】
【機関の名に動じもしない。ちっとも、とさえ言い切った。そんな相手を尚のこと胡散臭げに見遣っていたが、次の言葉に顔色が変わった】

着物持っとる奴が、おるんか? しかも男物……、ちいとそいつの貸してな、あッちはそッちの所為で寒うて死にそうやねん、なあ?

【ここぞとばかり恩着せがましく言うのが酷く嫌味な男だった。ただ実際寒いのは事実なのだろう、化粧もない唇は少し青いように見える】
【続けてくしッ、と抑えたくしゃみを一つした。それは別段演技臭くもなく、話している間に本当に冷え込んでいたようだった】
299 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/25(金) 23:10:42.94 ID:+eRTMW1U0
>>298

【嫌な女――そうとまで言われても、女の表情は変わらなかった。変わらずに笑ったままで、むしろ、その悪口にきょとんとしてみせまでする】
【まるでそんなことは思いあたりもしませんというような顔、ここまでくればそれも嘘なのだろうと思わせて――それどころか、そもそも、本当なんて存在しないような】

……あら、わたくしはそんなこと言ってませんのよ。どうですかしら? 連絡が付くかもわかりませんもの――。
きっとお仕事の最中ですもの、それに機関の方となっては、不都合があるかもわかりませんし――、……。

【まだ明言していない。そのくせに悟られたとあれば、女はそこで初めてわずかに表情を変える――といっても、わずかに目を細める程度なのだけど】
【ぎらぎらするほどに鮮やかな黄緑色の眼がじっと相手を見つめている。さっきまでも、今も、変わらない。どれだけ笑っていても、目ばっかりは、ずっと、静かだった】
【それでも相手がくしゃみをしたのを見れば、今度はもう少しだけ違った色味の顔をする。少しだけ目をじとりと伏せさせて――、少し間をあけて、小さく息を吐く】

…………仕方ありませんわね、尋ねるのは尋ねて差し上げますわ。
駄目でしたらタクシーを呼びつけますの、それでかまいませんわね――、

【それでも結局最初からタクシーを呼びつけなかったあたりは、もしかしたら彼女の性格だったのかもしれない。不満があるなら、郊外にあった気のする宿でいいのだから】
【それをしなかった。いささか不本意そうではあったが、それでもなんとかさっきしまった携帯端末を取りだした彼女は慣れた手つきでロックを解除、それから、アプリを起動させ】
【「少々お待ちください」とだけ言って、傾けた傘をそちらにそっくり全部差し出してから、数歩ほど離れた場所へあるいて、端末を耳に当て】

【――数十秒ほどしてから、やがて相手が電話に出たのか、話し出す。距離が少しあるせいか内容までもすべて聞き取ることはできないけれど――】
【「鈴音さん?」――そう呼びかけた、それだけは、きっと確かだった。……今大丈夫ですか、とか、そういう話は、きっと――二、三分にはなるのだろう】
300 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/25(金) 23:25:28.38 ID:0aCJ1nk7o
>>299

……分かった、それでええわ。アテがあるだけ有難いし、――

【傘を受け取れば通話をする相手に一応背を向けて、今更ながら寒さに凍えている『本体』に気付く。指の先が僅かにぶれて、燐光が散る】
【この身体は紛い物だ。手も足もきれいな顔もあるこの身体は、『本体』――醜い不具が夢見た、そのままの姿を魔力で具現化したもの】
【だが核として本体が内部にいる以上、紛い物の身体に受けるダメージも自身へと幾らかは伝わる。転倒はともかく、冷えは致命的だった】

(あかんな……本気でこれは、ちいと油断し過ぎとったか、)

【最初は好感を抱いた雪も、今となっては恨めしかった。まさかこの時期に降るなどとは思っていなかった、とは言い訳でしかない】
【機関、リリア、セリーナ。全ての片をつけて、廃村に一人蟄居してから、戦いから離れてから、どうやら感覚が鈍っていたようだ】
【――こんなザマをカニバディールが見たら、笑うのだろうか。そんなことをぼんやり考え始めるほど、思考はまとまらなくなっていたが】

……、鈴音?

【微かに聞こえた名。まさか、と考えかけて、嫌な頭痛がしてきた。雪の街は足の芯から冷えて行く。傘を抱いたまま、男は壁に背を預け】
【ずりずりとその背が下がっていく。相手が振り返る頃には、すっかりしゃがみ込んだ姿を見ることとなるだろう】
301 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/25(金) 23:46:06.07 ID:+eRTMW1U0
>>300

【少し遅れてから電話に出た"少女"が最初何を言っているのか、よく分からなかった。それくらいに電話の向こう側はうるさくて、彼女自身、何かわあわあ言って】
【客相手だろうに静かにしてと少し怒ってからやっと静かになった――という流れは至極余談だろう。どうでもいいこと、ただ、その後のことは】

【雪の中で転んで男物の着物を必要としている人がいる。確か家に和服の男性が居たと思うから、それを借りることはできないか、そういう風に並べた質問は】
【「わたしは別にいいけど――」「"へびさま"もだいじょうぶだと思うよ」「えっと」「お迎えに行くね」】
【そんなふうな返事で、簡単に許諾されてしまう。……一応最後に思いだしたように「機関の方なのですけど」と言ったら、少女は一瞬だけ、黙り込んでしまったけど】
【「音々ちゃんが大丈夫だって思うなら、いいよ」――それだけ言って、そのまま、流れで電話は切れてしまった】

……ええ、迎えに来るそうですわ。やさしい子ですから、……、仕事中でしたら、こんなこと、しないのですけれど。……まあ、大丈夫ですの?

【携帯電話をもとのようにコートのポケットにしまって振り返り、戻ってくる。そのころには彼女の頭の上にはぼたぼた降る雪が積もり始めていたが、あまり気にしていないよう】
【見ればさっきよりも顔の完璧なくらいの笑みは、薄れている。機嫌を損ねたのではない、この男相手にはあまり意味がないらしいと判断したらしいのだけど】
【相手にとってはそれどころではないだろうか。まあと上げた声は少しだけ大げさな様子、もとのように相手のそばに戻れば、少し困ったようになる】
【こうも濡れた服では今更自分の上着を貸してかけたとしても意味はないだろう。すぐに迎えに行くとは言っていたが、仕事中のようだった、すぐには来ないかもしれない】

【――けれど、杞憂だった。電話を終えてから一分ほどだろうか、何もない虚空に魔力が渦巻いて――ぱん、と、それこそ魔法みたいに現れる姿は、知らねば腰を抜かすほどの光景】
【一つに結わえた長い黒髪をふわりと舞わせて、裾の長い和装じみた、けれど給仕服の特徴も持ち合わせる、服。一応コートを羽織ってきているのが、なんだか違和感めいて】
【ふわとわずかに浮いた足が地面についてぱちゃんと地面のシャーベット雪を踏み潰して――「わああ、寒い」と漏らす声は、――嫌な予感はあからさまに的中するだろう】
【鈴の音によく似た声。高くて澄んで金属質の声。あたりを見渡した少女はすぐに顔見知りを見つけて、二人の方へ駆け寄って、――それで、多分、すぐ気づく】

「音々ちゃんがお仕事中に電話してくるなんて珍しいね、どうしたのって思っちゃった、えっと……ひとだすけ? うん、お着物貸すのは大丈夫なの、だけど、……わ!」

【傘を持ってこなかったらしい。もしかしたら忘れたのかもしれないけど。ただ羽織っただけだったコートを頭の上にやって雪をよけながら、あるいてきた彼女は】
【立ち上がって少女を迎えた女へ軽く声をかけてから「だいじょうぶですか」と月彗に声をかけて、しゃがみこんだ顔をのぞき込む――それで気づいて、素っ頓狂の声を出す】

「びっくりした、……え、えっと。音々ちゃん、このひとね、わたし知ってるから、うん、大丈夫だよ――、えっと駄目なのはね、わたし、お仕事だから、家に行けないから」

【驚いたように胸に手を当ててどきどきを表現している、それでなんでそんな顔をするのかと怪訝にしていた女――音々という名前なのだろうか。それより、あだ名っぽいけれど】
【とにかくもう誰だかわかったから大丈夫とは言っている。問題はうずくまる彼自身の気持ちだろう、――だって、この少女の家ということは、つまり、】

「音々ちゃんもいっしょに行って、へびさまかセシルに言ってお着物出してもらうなら、それでいいよ。……月彗さん、それともひとりで行く?」

【知り合いだったとなれば、初対面の自分が割り込むより話が早いと判断したのだろう。すっかり黙って借り物の猫みたいに静かになった女は、】
【「わたくしはどちらでも」と言いながらも、まだ目を少し丸くしている。この女も少女の家は行ったこともあるから、たとえ家に誰もいなくても、いれば案内はできるはず】
【そう、もしかしたら誰もいないかもしれない。ひとまず住人である少女は行けない。なら彼が一人で行くか、この女を連れていくか、それとも、そもそもやめるか】
302 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/26(土) 00:08:41.61 ID:GroH6woto
>>301

……大丈夫、に見えるか? ならええなぁ、……嗚呼悔しい、馬鹿ちゃうんか、あッちは……

【誰かの端末を拾おうと無意識にそうした、その結果がこうだった。意識的に悪事をしていた頃の方がずっと賢かった、とは当然のこと】
【青藍の燐光が男の手や足の先から散って行く。白い髪に差した黒の彼岸花が、男の状態を表すように数枚花弁を散らしては光に消える】
【――その時に、見知った姿が目の前に現れた。聞き覚えのある金属質の済んだ高い声に頭痛が増した気がして、こめかみを抑える】

何で、兄貴の嫁がそッちの知り合いやねん……、世の中狭過ぎとちゃうか、もっとこう、……ッ、

【ひゅう、と独特の呼吸音がして、男は酷く咳き込み始めた。『本体』は、喘息を患っている――無論、仮の身体にもその影響は出る訳だ】
【どうしようか。いや、どうしようもなかった。今更逃げ出せない、隠れる場所もない、青藍の燐光がどんどん散って行く、もう、】

――連れて、行って。何でもええから、……

【それが最後のきれいな姿での言葉だった。青藍色が消え去った後に残されたのは、黒布に包まれた赤ん坊のような何か】
【近付けば分かる、醜く歪んだ顔、手足の無い成長しきらなかった胴体、重さにすれば5キロはあるかないかの、余りにか弱い人間だった】

【連れて行くなら、セシルは確実にいるだろう。他に行き場所もないのだし、しばらく世話になると言っていた】
【運ぶには少し難儀するかもしれないが、デブ猫よりは軽い程度。それ程までに、『本体』はか弱く、何より直視に耐え兼ねる醜さだ】
【寧ろ、相手が男を運んでくれるかが怪しい所だった。有る意味、相手にとっては機関の名よりも、気味の悪いものであるだろうから】
303 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/26(土) 00:27:04.91 ID:B8ThBZ6v0
>>302

見えませんわね、……それとも救急車でも呼びつけますかしら? 大通りがすぐそばですもの、きっとすぐに駆けつけましてよ――。

【即答だった。相手は確かに細いけれどそれほどまでにすぐ衰弱するものだろうか、薄く考えながらも、現実目の前で衰弱しつつあるのだから、どうしようもない】
【それなら呼びつけるべきは服を借りられそうな幼馴染ではなく救急車かと思いかけた、その時に。ちょうど空間から少女が現れるものだから、それは呼びそこなう】
【一応ロック解除だけはした端末を片手で弄んで少女を出迎える、それから話は前述のようになって――、】

【今まで自分の気持ちを見せなかった女が、初めて、露骨な態度を見せた。顔は、表情こそはあまり変わらなかったが、足ばかりは素直で、一つ、二つ、と距離をとる】
【けれど多分知らない人間であれば、これはまともな方であるのかもしれない、さすがにここまでは見たことなくとも、路地裏に根付くタイプの人間ではある】
【奇形や欠損のある人間は見たことが何度もあるし客にとったこともある。ただ――急に変わる姿にまでは対応しきれなかった、と見え。まして、今宵は、仕事中でもない】

「わ、え、」

【とっさに動いたのは少女の方だった。なんせ昔に一時期彼を家に置いていた時期もあるくらいだから、見慣れている……というより、知っていたし、よく覚えていたのだろう】
【ひどく慌てたような声を出しながらも駆け寄った彼女は、こうしたら怒られやしないかと一瞬だけためらった後に、すぐに、彼を抱き上げようとする】
【抵抗なんてしようもないのかもしれないけど――そのまま抱かれているのなら、少女の服が洗剤の匂いがすることや、少女自身、香水でもしているのか、りんごの匂いがすること】
【そんなことに気づくのかもしれないが、おそらく、この場に居る誰もがそんなことはどうでもいいのだろう】

【それからのことは簡単にかいつまんでしまうと、】
【ひとまず彼をそれこそ赤子にするように胸に抱いた彼女は驚きからか硬直したままの女から携帯電話を奪い取ると、】
【まず家にいるのだろう"彼"の端末を鳴らして出てくれないなら家のものまで鳴らして、出たら一瞬で告げるのは、とにかく、部屋を暖めてとか、毛布を用意してとか】
【何か聞かれても答える前に電話は切ってしまうし相手からしたら何があったのかもわからないだろうけど、電話を終えれば、そのまま女の手ごとひっつかんで、】
【半ば無理やりに転移の魔術を起動して、そのまま二人を拉致ってしまうようになる。それで、夜の国まで秒で跳んで――そのあとは、】

【知識として持っていたのだろう。低体温の人間に対する処置、ひとまず暖める程度のものだけど、とりあえず毛布でくるんでみたり、暖房の部屋に寝かせてみたりするような】
【それとも兄である彼がもっと自分より詳しかったりすれば任せるだろうし(残念ながら黒猫の女はあんまり役に立たないらしい)、とかく、いろいろあって――】
【本当に何もなければもう少し後のこと。少女が本当に申し訳ないようにお店が今日は一人で本当に無理だからと仕事場に帰った後くらいのこと、に、なる――のだろうか?】

【もちろんそれまでに何かあれば――特に兄である彼から何かあれば、女も少女も、そちらの言うことを、聞くのだろうし】
304 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/26(土) 00:51:30.23 ID:GroH6woto
>>303

【目はまともに見えない、耳もあまり聞こえてはいない、言葉は発せない、だが、誰かに抱き上げられている感触だけは分かった】
【微睡むような意識の中で、何となく抱いているのは鈴音だと思った。近くでそんな声が微かにするし、失礼ながら、胸元で判別がついた】
【――大層驚いただろう。そんなことだけははっきり考えられた。完璧に整った表情のあの女は、多分、自分の心にだけは素直だと思った】
【守りたいもの、助けたいもの、――受け入れられないもの。それに関しては、この姿で泥の街にいた幼い時期に何度も経験していた】

【一方、夜の国の館・とある一室】

「もしもし、鈴音――、わ、分かった。えっと、落ち着いて……、切れた、か」

【どうも取り急ぎ暖めなければいけない人間が来る、それだけは把握できた。一番手っ取り早いのはあの白蛇がいるかも知れない、おこた】
【勿論、至急の事とは言えまだ彼との距離感はうまく掴めていない。取り急ぎ自分の部屋に割り当てられた場所の暖房を効かせ、】
【魔術も幾らか用いはしたが、早くに降り出した雪は窓から壁から冷え込んで、思うように気温は上がってくれない】
【毛布だけを抱えてどうしたものかと考えていた、そこに要救護者を抱えた鈴音が現れて、彼女の抱くものを見て、後はとかく迅速だった】

【おこた。鈴音が駄目だと言うならそれこそ必死に頼み込む、ここで一番手っ取り早く弟を救えるのは、白蛇の住処である其処だけだった】
【許されたのなら後の処置は自分が全て引き継ぐ、だから鈴音も落ち着いて仕事に戻るようにと、それから、心からの、感謝の言葉を伝え】

……済まなかったね、音々子。そして、心から有難う。事情はよく分からないが、驚いただろう? これが私の弟なんだ。
泥の街の、瓦礫の中から拾い上げた、カラスに啄まれて息も絶え絶えだった、血の繋がらない弟――私達の、大切な兄弟なんだ

【ようやく静かになった部屋で、セシルは音々子にそう語り掛ける。もしかしたら立ち尽くしているのかも知れない彼女に、炬燵を勧めて】
【自分はトラウマで本来なら近づく事も出来なかったのだが、今はそんな場合ではなかった。毛布にくるみ炬燵で暖め、魔力を送る】
【もし白蛇が寝ていたなら、少しだけ邪魔にはなるかもしれないが――小さい身体だ。或いは取って食ってしまえそうな位、弱っている】
305 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/26(土) 01:10:08.52 ID:B8ThBZ6v0
>>304

【そうやって彼を抱きしめた胸元は、少しくらいなら暖かいだろうか。動き回っていれば汗さえにじむくらいの酒場で、ずっと仕事をしていた体温は、常よりはいくらも高い】
【それでも濡れた服の中で、冷たい空気の中で、きっと何の意味もない。だからなるべく暖めてあげないといけないと、それだけ、きっと考えて――】
【思いついて雪除けにしていたコートをかぶせてやる。それから小さい子供にやるかのように、大丈夫だというみたいに、一度だけ、やさしく頭をなぜて】

【――駄目だとは少女も言わないだろう。それに、中を巣のようにしてしまっている蛇も、そうと言われれば、受け入れる。とはいっても、彼自身寒いのを苦手とするものだから】
【片隅に小さく身体をまとめるようにして居るには居るのだが、その面積の大多数は冷たく冷え切っている人間に、与えられることになる。――人見知りなだけで、優しい性質ではある】
【そうして中に見知らぬ人間が入ってくればにおいを確かめるようにわずかに蛇の顔を寄せたのだが――それとも、もしかしたら、自分のようく暖まった身体を使って】
【冷え切った彼を暖めてやろうとするのかもしれなかった。それができるくらいに、ずっとその中に居た身体は、それこそゆたんぽか何かのよう、暖まっていて】

――いいえ、構いやしませんわ。携帯電話を落としましたの、そうしたら拾っていただいて――滑ったのだと思うのですけれど、頭をぶつけた……ような。
それで、服が濡れてしまったものですから。

【滑って転んだ。確かに事実だけれど、それをそのままに伝えるのは……伝えられるのは、多分嫌なタイプだろうと思った。配慮するでもないのだけれど、そう伝え】
【実際に彼女は立ち尽くしていた。とはいっても出入り口や動線になりうる場所から離れた、部屋の角に腕を組むような姿勢で立っている。心なしか、落ち着いていないように見える】
【警戒とまではいかないけれど、この現状に心を許していない。声をかけられれば組むようにした腕をゆるくほどき、告げるのは彼の言葉に対する感想ではない、あったことだけ】

…………。

【この家に遊びに来るとき、いつも少女と……あと白い男性。それだけだった。もちろんそれはその通りで、だって、ついこの間に彼が戻ってくるまで、そうだったのだから】
【紫色はこの猫にもそっと手をまわしていた。だから、一緒になって忘れていた。けれど今は眼前で語る彼のことを覚えている。路地裏で自分がどうしたのかも、覚えているもの】
【だからか気まずい――のではない。そういう性質ではないだろう。それなら、何か。――自分のものを取られた子供のような憎しみが、わずかに瞳の奥にくすぶっている】

それにしても、戻られましたのね? もう二度と帰らないものかと思っていましたの。

【普段うそばっかり吐いている彼女だから、きっと、言わずにもいられるはずだった。けれど今この瞬間に嘘を貫き通せなかったのは、彼女が、生きているからにほかならず】
【結局ただの人間でしかないことの証明に似て、それが、いやに、なまなましい。薄らと笑ってしゃべる声はいつもと同じ猫なで声だけれど、少しだけ、鋭い】
306 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/26(土) 01:34:06.16 ID:GroH6woto
>>305

【誰かが自分を撫でている。懐かしい感覚だった。物心ついた時から、少し泥の付いた温かい手と、細い震えるような手が、】
【いつも自分を間にして、撫でながら眠りについていた。その寝息を聞きながら、何時しか自分も暗闇の中から夢の中へと落ちていた】

【何処かとても温かい場所に入れられる。低く響く少し焦ったような声を丹念に聞き取ると、それが予想通り次兄のものであると分かった】
【難聴の耳であるのが残念なくらい、焦った様子が伝わって来た。額に当てた手から魔力が注がれ、その流れの乱れ方すら面白い程】
【温かい中に入っている身体には、何かが巻き付いて温めてくれた。布団越しの感触はよく分からないが、動きから蛇だろうかと類推し】

【そこで彼の意識は落ちていった。沢山の人に救われてここにいる自分が、贖い切れない罪を追った穢れた身だと、心中で復唱しながら】


成る程……普段は電気も通らない廃村に住んでいるからね、大方街の天気予報を見ていなかったのだろう。……にしても、油断し過ぎだが。

【弟の容態が落ち着いてようやく、音々子とのこれまでの邂逅について思い至った。どちらも、自分は最低な事しかしていなかった】
【相手の言葉で、ああ彼女も記憶を取り戻したのだな、とは思ったが、最低な所がもう一つ――最後に会った時、自分が何を言ったか】
【あの時点で既に意識の殆どを亡霊に握られていたとは言え、鈴音が元気でいることを知って安心し、もう二度と彼女に近付かない、と】
【そんな事を言った気がする。言ったのか言わされたのかは定かではないにせよ、彼女の前で、自分が言ったことに違いはない】

……忘れられなかったんだ。初めて私を頼って来てくれたあの子を、好きだと言ってくれた人を、初めて愛したいと思えた相手を。

【ようやく言葉に出来たのはそれだけで、あとは月彗の額をゆるく撫でながら、黙り込んでしまう。何を言われても仕方がないと、思った】
307 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/26(土) 01:55:21.97 ID:B8ThBZ6v0
>>306

【子供の頃から、いつも、そうだった。何かと"忘れられていない"ことはわかるけれど、だからといって、いつもあの子が頼るのは、自分ではない人間だ】
【児童虐待の孤児院職員に殴られた時も、あの子は自分に頼らなかった。いつでも、そんなことがあったことさえ知らないような顔した、一つ年上の幼馴染を頼っていた】
【今日だって――話しかけてきたのは最初だけで、それから後は、自分なんて居ても居なくても変わらないよう。ただ最後に手を取ってくれたから、忘れられていないと分かる】
【ずるくて、妬ましい――そうだ。急に場所を変えたことを謝らねばならない。思って、でも、今この瞬間に、それはひどくどうでもいいことにしか思えなくって】

…………。

【――珍しい、顔だった。あるいは初めて浮かべるのかもしれないほど珍しくて、不慣れで、その表情を、扱いきれていない】
【ひどく拙いもの。そしてそれを言葉や表情や態度で表す方法を知りえないほどのもの。噛んだ歯はぎちりと音を立てそうなほど力が込められて】
【わずかに吐息の漏れる音がする。怒っているようにも見えるけれど、きっとわかるだろう。怒っている、確かに怒っているけれど、それ以上に、強い嫉妬がある】
【思い通りにならないものが辺りに振りまいているものが妬ましい。目の前の男に向いて自分に向かない理由が分からない。みにくく歪んだ口元を、雪に濡れたマフラーが隠している】
【そういえば相手の落とした傘を忘れてきてしまった。こんな気持ちでそんなことを考えている自分が気持ち悪かった。というよりも――】

【(いつか、あの少女が、この女について喋ったことがあった。多分ほんの会話の流れで、本当に、話題の中心ではなく、ふと、必要になって話した、その程度のこと)」
【(「音々ちゃんね、昔のことを絶対に教えてくれないの」「……自分のことを言うのが、すごくね、苦手なのかなって」「だけど、きっとわたしより、怖がりさんだよ」)】

【(「多分、どうしたいのかわからなくって、怒っちゃうの」)】

【自分の中で渦巻いているこの気持ちが何なのかも、ちっとも分からなかった。ひたすらに気持ち悪いものがあふれていて、ひどく、不愉快なことだけ、分かるのだけど】

それが……、それが、自分だけの、あなただけの、ものだと、思わないで――ください、世界で一人だけだと思ってるのなら、とんだ思い上がりですし、
わたくしのほうが、先なの、ですから……。

【びっくりするほどに意味の分からないものが考えの中にあった、それも、無限かと思うくらいに、いくらでも、いくらでも、湧き上がってくる】
【青りんご色の瞳がおかしなぐらいにぎらぎらと彼のことをにらみつけている、あるいは泣きだしそうなくらい、それとも許されるなら、殴ってしまいそうなくらい】
【わなわな震えて握りしめる手のつま先には透明なマニキュアだけが塗り付けられていて、だから、余計に、震えるほどの感情を隠してくれる色が、ない】
308 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/26(土) 02:21:39.74 ID:GroH6woto
>>307

……、――

【相手のこんな表情を見るのは初めてだった。いつも余裕に満ちていて、誰よりも強く動じない人間で、そんな先入観だけがあった】
【だから、鈴音から聞いていたこともその時は心配性な鈴音の思いやりだろう、なんて軽く考えてしまっていたのだったが】
【今目の当たりにして、当然ながら相手も心のある人間であるとを知った。それ位に、今までの相手は只管に、強い振りをしていたのだと】

そう、だね……そうだ。当然、キミの方が、あの子といた時間は長い。だからあの子もキミを信頼していて、私の弟のことを頼んだんだ。
前に……私がキミと鈴音を引き合わせた時。正直、敵わないと思った。あの子は、キミに会えたことに心の底から喜んで、泣いていたから。
……頼り縋ることだけが、あの子の愛し方じゃない。大切な音々子に、これ以上負担を掛けたく無くて、あの子は強くなろうとしている。

【言葉が纏まらない、向けられた視線にどんな視線を返せばいいのかも分からない。ただ、縋るように月彗に触れながら、思いを紡ぐ】
【ふと、何かに気付いたような顔をして、くすりと男は笑った。それから慌てて真面目くさった顔に戻って、きちんと相手を見据えた】

私も……いつも、月彗が心配で堪らなかった。この手で拾い上げた弟が、兄にも散々迷惑を掛けて育てて、それがいつしか機関にいて、
そこから離れたと思えば無差別に人を殺していって、結局彼が最後に頼ったのは、初めて会った知らない人間……谷山、と言ったかな。
そして彼の心を救ってくれたのも、セリーナ……そう、結局私は、月彗に何も出来なかった。頼っても、貰えなかった。

【「だから、分かる気がする」とまでは、言えなかった。自分に向けられているのは、こんな言葉で宥められるような感情じゃない】
【だからただ、今は受け止めるしかないと思った。どこまでも悪役になってもいい、鈴音の大切な相手が嫉妬の念から開放されるなら、と】
309 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/26(土) 02:45:46.40 ID:B8ThBZ6v0
>>308

【最初は気まぐれだった。どうしても思い通りにならないやつが二人いるから、せめて何とかなりそうな方をからかってみようと思って】
【自分だけが特別にもらった菓子を渡してみたら、いつも泣いていた表情をころっと変えて、嬉しそうになって、ありがとうと、言ったのだ】
【そんなことは人生で初めてだった。あの時に初めて自分が生きていることを認められたと思った。だから、それが、一生忘れられないものになって、こびりついた】
【いつも自分には関係ないみたいな顔をするやつじゃない。きっとあの子ならいつでも必要としてくれる、そう思っていた、信じていたのに、だのに、】

【数年ぶりに再会したとき、嬉しかった。また必要としてくれると思っていた。だけど、口を開けば開くほど、その口から語られる人間に、向けていた気持ちは】
【なるほど今こうして理解できないくらいあふれだすものに似ている気がして、それから少し遅れて、あの子の言っていたやつが目の前に居るのだと、ようやく理解する】
【結局ずっとこの男が憎くて仕方なかった、でも、まだそこまで理解できない。ぎらぎらとにらみつける視線は殺意にも似通うほどに強く見えて、ただ、同じだけ、弱くも見え】

選ばれたくせに、

【彼の言葉を聞いて、ただ、理解するよりも先に、まだ、頭の中が怒っている。違う、あの子は不安ならいつでも泣く。だから慰める。反論だって、不明瞭だし、言葉にもならない】
【不安ならどんな時だって泣く。だから慰める人間が要る。泣かないならそれはおかしいから、つまり、近頃のあの子はおかしい……としか思えないし、思っていない】
【だからたったのそれだけで重大な差異がある、結局こうして妬んでいるばっかの黒猫は目の前の彼には絶対的に敵わないもの、ぐしゃと右手で髪を乱して、無理やりに大きく息をする】

【鮮烈なくらいの嫉妬は同じくらいに自分勝手だった。ただ前も後ろも分からなくなって泣いている子供としてだけを求めている、だから、敵うはずがないし、叶ってはいけない】
【そもそも他人を自分のものだと思っていたというそれだけでおかしいのはこの女だということになる、それこそ赤子の形をした抱き人形みたいに、思ってきたのだから】

勝手に居なくなって、それなら私のところに来ればいいのに、あんなことを始めて……、しばらくしたら、あなたまで帰ってきて、

【それでも。楽しそうに、幸せそうにしているなら、それでいいとも思った。ぎりぎりと嫉妬しながら、同じくらい祝福していた。それが、ずっとかぶってきた嘘の部分の気持ち】
【だからその気持ちはもしかしたらあの白蛇にも似る。自分にはできないことをできる人間が現れたから、委ねたら、裏切られた――と、勝手に、思っている】
【"あんなこと"というのは、つまり、あれのことだろう。この前彼女が彼に自分の言葉で告げたこと、他者に振りまかれるものを、ほんの小さな欠片分も理解していない証明】
【だから多分この女の異常にきっかけがあるとすればそこなのだろう。あの子が知りもしない子供のために用意する食事に添付されている、見えないもの】
【あるいは彼に向けられるもの、彼があの子に向けるもの、けっして見えなくて、もしかしたらどんな金属や存在より確固で確かで、強いもの】
310 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/26(土) 08:22:58.21 ID:GroH6woto
>>309

【女性が時折剥き出しにする感情は男のそれよりずっと冷たく切り裂くもの、それが幼少期からあの亡霊の女に育てられた彼の持論だった】
【けれど――いざこうして向けられると、怖ろしい。頭で理解はしていても、附随するいわば謂れのない言い掛かりに、理論は勝てない】

【――愛について。何となく、目の前の相手がまだ見えていないもの、それによる誤解、そんな相関図が見えてきたような気がした】
【何故あの子が『あんなこと』を始めたのか、あの子が彼に向ける感情、彼があの子に向ける感情。それが何であるかを相手は、知らない】

……音々子。キミは、『愛』が三種類あること、知っているかい。一つは『性愛』、肉体に限らず、互いのエゴを理解し合う為のもの。
二つ目は『兄弟愛』。私が弟を思うように、キミも、共に育ったあの子を愛しているだろう。そのような、純粋な心で接すること。

最後の一つは、『無償の愛』――多分、キミが知らないのは、こっちだ。
アガペー、それは謂わば、神の愛。罪人である人間に対して、神が注ぐ自己を犠牲にした愛。
簡単に言うなら、愛の中で唯一『犠牲』を伴うもの――それは己の感情や相手への想い、或いは、嫉妬であるのかも知れない。

【――彼には、教える事しか出来ない。人の感情面については理解はしても寄り添うという事が苦手で、どうしたら良いか分からないから】
【結局は、こうして得意分野で少しでも相手に寄り添おうと努力するしか出来ない。それが結局は、説教臭いと言われる事ばかりだった】
【理論は話した。まだ目の前の相手には、理解が追い付いていないかも知れない。ならば簡単な喩えから、思い付かせる、思い出させる】

キミは、どうしてそこまであの子を護りたいと、護らせて欲しいと、思う? 選ばれたいと、来て欲しいと、何もせずに側にいて、と。

【男から相手へ言えるのはそれだけだった。悪者になりきれない弱さとか、結局やっぱり説教臭いとか、長々と話して分かりにくいとか、】
【そんな自己嫌悪がただただ渦巻く。撫でる額の温かさが戻って来て、ああ月彗なら、相手似一体何と言うのだろう、と微かに思案した】
311 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/26(土) 11:53:06.24 ID:B8ThBZ6v0
>>310

【答えは簡単だった。相手の言葉に黙り込んだ彼女には、そのどれもがきっと欠如している。理解しあうための愛も、純粋に向けて向けられる愛も、犠牲を伴うものも、知らない】
【斜めになったつるつるの板の上で積み木のお城を作ろうとするみたいなものだ、何にも土台のない、それを受け入れるようにできていない人間の心に、それを積み上げるのは】
【きっとやる側も苦痛に思うなら、きっとやられる側にとっても苦痛になりうる、だって他人がどれだけそれを受け取って生きるものなのかを認識してはいけないから】
【――何年も意識的に抑えていた癖が気づけば出ていた、短く切りそろえられた爪を噛もうとして指までもを噛んで、気づいて、また腕を組むように封じ込んで】

【多分彼は少し勘違いしている。そんなにきれいなものではない。げんに相手の言葉を聞きながら聞いていない彼女はどうして彼が自分よりも優れているのかを考えていたし】
【どこを上回ればいいのかとも考えている、けど、愛は逆らえない人間に強いられるもの、あるいは金でやりとりするものだと思ったままなら、どうしようもなく】

……男だから、"いい"んでしょうか。

【少しだけ、頭が落ち着いてきた気がする、知りもしないことを言われ問われて、全く方向性の違う言葉を返して、それで、どうにかした気になる】
【勉強は苦手ではないが好きではない。テーブルマナーに礼儀作法、必要なものはある程度覚えたが、愛情の種類などに興味はなかったし、全く必要であったこともない】
【金さえもらえば女にも抱かれるし抱いてもいい、男相手ならことさら道具のように使われて、けど一般的にはそうではないことも、知識としては頭のなかにある】
【寝取ってやればいいのかと思う。そうでなければ、泣いて従うまで殴ることになる、……それでもいいのかもしれないけど】

【いちたすいちの問いに三十六と答えるようなもの、返しはしたが意味はなく、おそらく座っているのだろう相手に向ける目は冷ややかで睥睨するようで、】
【答えは簡単だった。初めてだったから、だ。他者に自分のものを与えて喜ばれるのも、必要とされるのも、あの時が初めてだったから。でも、執着の理由を言葉にはできない】
【知らないものを欲しいといえないみたいに、理解していないものを説明なんてできやしないのだから。――それも、また、いつかあの子が言っていた】

【(「音々ちゃんね、とっても気が利くんだよ、すごいなって思うくらい」――けど、多分、嘘だ。嘘ではないけど、きっと、そうであるために、ずっと気を回している、ような)】

――あら、失礼。

【ずっと相手に向けていた意識が、ふと、逸れた。その直後にコートのポケットから携帯電話を取りだしているから、着信だろう。音のないバイブレーション、画面は伺えないが】
【そのまま電話に出た彼女の声が瞬間きっと彼も聞きなれているだろう柔らかいばかりの猫なで声に戻る、――「大丈夫です」と告げた彼女の視線は一度彼らを撫でたから】
【相手もきっとわかるようだ。仕事にひと段落つけたらしい少女がかけてきたのだろう、「――心配ですから、もう少し残って行きます」あたりまえに笑ったままで、言う意味】
【この場に居る誰の力も借りたくないという意思表示に見えた。移動手段を持たない彼女はこのままでは帰れない、それなら眼前の彼に頼めばいい、だけど、(嫌だと)】

失礼しました。仕事がひと段落付いたからこちらはどうかと、ええ、できるようならなるべく早く帰ると――……ええと、何のお話でしたかしら? 

【その電話でころりと切り替えたさまはどのように見られるのだろう、瞳は相変わらず冷たかったが、それでも、口元ばかりは愛想よく笑ってみせて】
312 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/26(土) 12:29:10.43 ID:GroH6woto
>>311

……そうじゃないかな。生まれついて男だったから、私には、分からないけれど――何なら、私から、奪って見せてご覧よ。あの子を。

【ありふれた善意の言葉など届かない、という事がようやく分かった。だから、こちらもいい加減に思っていた事を嫌な笑みで吐き返す】
【ねちねちと嫉まれるのは正直に鬱陶しかった。鈴音の身内だからと思い遣ったつもりも結局意味を成さないのなら、ただの押し付け】

【――そこで振動した端末は、或る意味救いだったのかも知れない。亡霊譲りの酷い言葉を、心を抉る為のそれを、口走らずに済んだ】
【残って行く、と相手が言ったのに少しばかり目を丸めたが、良く考えれば相手には移動手段がないのかも知れない、なら、頼る先は】
【有り難い返事と言っては酷い事だが、自分からも吹っ掛けてしまった手前、頼られるのは辛い。このまま、憎まれ役でいたかったからだ】

……そう、鈴音が、帰って来る。だから話は簡単だろう、あの子に選ばせて見ればいい。私か、キミか、あの子の求める存在は――、

【先までの嫌な笑みを崩さぬように畳み掛けるように、そう吹っ掛けたところで急に男の言葉は止まった。微かに唸る声がしたからだ】
【ばっと返り見るのは炬燵で眠っていた月彗の方。黒布に包まれた赤子のような彼は無い手足を捩らせて、何とか布団の端から顔を出した】
【目は微かに開いていたが、白濁し酷い様だ。耳は捻じれて、反対側に至っては穴しか開いていない。鼻など無論無いし、酷い歯並びの口】

【――音々子がそれを直視するのを防ぐかのよう、月彗を上から自らの背で隠すよう屈んで側に寄った男は、何やら唸り声と会話を交わす】
【「違う、少し鈴音の話をしていただけで、」「大丈夫、お前の気にする事じゃない」「分かった、無理はするな」――そんな、低く抑えた声】
【この不具にも何やら不穏な気配は伝わっていたらしい。それで目を覚ました、十分暖められ復調したらしい身体に、青藍の燐光が集束し】
【やがて――音々子が初めに見た、月彗の姿がそこにあった。もっとも、羽織と長着は白蛇から別のものを借りることとなる訳で、】
【つまり、今、具現化した彼は何も纏ってはいない。下半身が炬燵にあるのが幸いだったが、炬燵の中ではたまったものでは無いだろう】

「……はよ着物貸しいや、呆け。あんまし人の身体ジロジロ見とったら、全員この場で縊死やから。分かったらさっさと持って来ぃな、」

【ーーどれだけ迷惑を掛けたか、そんな事など一言も触れずに、月彗は自分の要求のみをジト目で睨み据えながら二人に向け吐き飛ばした】
【或いは、セシルと音々子の間の妙な空気を感じ取ったからこその言動、だろうか。事実、言われたセシルの方はすっかり唖然としていた】
313 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/26(土) 13:03:10.60 ID:B8ThBZ6v0
>>312

【男のどこがいいのかなんてわからなかったし、わかりたくもなかった。金さえもらえば何でもするが気持ち悪い以外の感想を抱いたことはないし、】
【こうしてしゃべっていても他人でしかなく、これ以上近寄られれば今までの誰にでもそう思ったように、気持ち悪いと思うのだろう。だから、それ以上はない】
【お互いにあの少女が間に居るからいい顔をしてみせるだけの関係、推薦される距離感はときどきあの子が思いだしたように相手のことをしゃべる、それくらいがきっと一番いい】

【現実的にこの場所から帰れないという事実と彼には頼りたくないという気持ちをフィルターに通せば倒れた彼が心配だからという耳に善い言葉になるのだから、不思議なもの】
【けれど選ばせればいいという相手の言葉には取り戻したひとなつこい穏やかな表情をもう一度だけ不快に歪ませるのだろう】
【負けると分かっている戦いを迫られたらこんな顔をするだろうというような顔、――つまり、そうするまえに負けたと認めるような、表情】
【それは異性同士なのだから好きあって当然だと思うような思考ですらなく、もっと単純に、ただでさえ弱い猫が強い猫に首根っこを噛まれるのに似て、どうしようもない】

【どうとも答えない、あるいは答えられないで閉口したところにわずかな声が聞こえる、彼の意識がそちらに向けば、また彼女は置物の猫のように、つんと黙り込む】
【かといって福を呼ぶようにも見えないもの、黒猫が縁起がいいなんて嘘じゃないかと疑るくらい……演技はいいのかもしれないけれど、だなんて、余談】

知りませんわ、お兄様に聞いてくださいませ。"旦那様"なのですもの。

【家の中のことはある程度は知っている、けど、では具体的にあの蛇の私物、というか服がどこの部屋にあるのかは、よくは知らない】
【任されておいてだとか思われるかもしれないけれど、たびたび遊びに行く友人の家だからって、友人の家族……あるいは同居人の服が引き出しの何段目かなんて、知らないだろう】
【そういい捨てるように示した相手なら「ここがへびさまのお部屋ね」と言われた部屋を知っているだろうが――実際に見ればそこに彼の和服はしまわれている】
【本人に聞けばもっといいのだろうけどこたつの中で出るに出られなくなった白蛇はうんともすんとも言わないまま、……多分許諾の前に勝手に拝借して問題ないだろう】

【――男の裸に今更どうというほど初心でもない。というより紅茶色の彼と初めて出会ったのは仕事がご破算になった帰りだもの、何を言い訳しても遅い】
【だからというわけでもないけれど、それそのものに彼女は別段特筆するような反応をしなかった。代わりに「早く取ってきて差し上げたら」というような目をするばかりで】
314 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/26(土) 13:20:41.40 ID:GroH6woto
>>313

「ほんに、可愛げの欠片もない女やな……そんならお兄様、はよ可愛い可愛い弟の着る物持って来てぇな、ッ――」

【ばし、と一発平手が飛んだ。頬を張られた月彗は張られたまま向こうを見て無言、張った方のセシルも山程の言いたい事で喉が詰まった】
【嫌な沈黙が少しあってから、セシルは黙ったまま部屋を出た。恐らくは聞いていた「へびさま」の部屋から着物を拝借に行ったのだろう】
【それから音々子の方を見る月彗の片頬は僅かに赤くなっていたが、何事もなかったようにただ相手をついと見据えて、にやりと笑った】

「……痴話喧嘩、ゆう訳やなさそうやけど。鈴音に告げ口したろか、旦那が不倫しよってたでって。面白い事になるんとちゃうか」

【礼も何もなかった。それ以前の話というか、二人の会話の仔細は聞こえてなかったにせよ、何かあったのは明らかに分かっている顔で】
【その上で、音々子に肩を貸すような口振りをしていた。頬を張られた腹いせだろうか、にやにやと笑みを浮かべる顔は悪党そのもの】
【もっともそれが音々子にとって良いことになるかは分からないし、例え月彗に口止めしたとして、信用できるかは怪しいものだった】

【セシルがこわごわ人の部屋を漁って目当ての物を見つけてくるまで少し時間が掛かるだろう。ここに残るのなら、嫌でも月彗がいる】
【裸を見られていることにはこちらも何も抵抗は無いらしかった。男にしては線の細い白い身体はきちんと具現化されていて、復調を伺わせる】
315 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/26(土) 13:40:32.80 ID:B8ThBZ6v0
>>314

【部屋中の空気が重くって仕方のないようだった、いっそ窓をがらりと開けて外気を入れたくなるくらい――人当たりのいい顔のまま不機嫌というのも、器用なものだが】
【そういう性質だしそれでしょうがないのだろう。無言で出ていった彼の背中を黄緑色がわずかに睨んでから、自分はどうしようかとうっすら思案する】
【いっそこのタイミングで例えばあの子の部屋にでも引きこもって帰ってくるまで待てばいいかとも思う反面、それでは"いかにも"すぎて、気に食わないとも思う】
【そうしていればやがて彼の方から話しかけられて――そういえば名前を名乗っていないし相手の名前も直接聞いてはいないが、今更どうでもいいか、というような目がちらり見て】

いいえ、必要ありませんわ。

【――それでも一定の範疇でその気持ちは揺れていた。幸せであればいいと過去に思った気持ちだって、絶対に他人の気持ちかと言われれば、きっと違って】
【祝福しながら破滅を願う気持ちは矛盾しているようでも彼女の中では何も矛盾はない、自分の元で泣きじゃくればいいと思いながら、笑っているのを誰がとがめられるのか】
【結局どこかで甘いから決着もつかない、ひとまず相手の提案をあっさり切り捨てたなら、】

もうお加減はよろしくて?

【さもずうっと心配していましたよ――というような顔で笑んで、そう尋ねるのだろう。ただ崩れ落ちた彼を真っ先に抱き上げたのは、あの少女であったし】
【この家に連れてきてからの処置はほとんど彼の兄、この黒猫の女が何をしたかといえば、ずっと、借り物の猫であるかのようにしていたばかりで――】
【あまりに吐きすぎた嘘はもはや本当みたいになじむけれど見る人間が見れば分かってしまうのは、結局彼女だって生きているからに違いがないのだけど】
【きっとそこまで嘘つきになってしまえば人間ではないものになってしまいそう、それならまだ、彼女がその程度には人間らしい証明みたいにも思えて――、でも、】

でも、すぐに気づいてよかったですわ。

【やっぱり誰にでも愛想よく見える顔で笑ったままなのは、どうにも、きもちわるいもので――】
316 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/26(土) 13:53:18.25 ID:GroH6woto
>>315

「……あかん、可愛げなさ過ぎて気分悪うなって来たわ。そりゃあ、お加減はよろしおすけど? 何が良かったねん阿呆女、こッちは……」

【何事か言いかけて黙ったのは、ひどい醜態を晒した事を今更ながら思い出してか。ついとそっぽを向く顔、しばらく黙り込んでから】
【「……ま、世話になったわ」とだけか細く呟くのは、兄の前では言う気のしなかった言葉。実際、あのままだったら死んでいたのだ】
【再び戻した葡萄色の視線は胡乱げに相手を見ている。可愛げがない、と言った割にじいと見るのは何の理由か、それからにいと嗤った】

「可愛げないけど、おもろいわぁ。そッちも茨の道やな、綺麗なふりして腹ん中は真っ黒です、ってゆうとる顔やわ。おんなじ匂いやわ」

【くつくつと笑う男に一体相手の何が分かるのかと言えば、頑なに強情にいい人を演じている偏屈な女、という認識程度でしかない】
【だがそれが面白い、と言って男は笑った。丁度その時にドアを控えめにノックする音がする。どうやら、セシルが戻ったらしい】
317 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/26(土) 14:06:49.65 ID:B8ThBZ6v0
>>316

【失敗した。そもそも自分だって身体が冷えて調子が悪かったのかもしれない、言うべきではないことを言ったし、やるべきでないことをやった】
【笑ったままの表情、でも裏ではそんなことを考えている。言い方によっては後悔しているといってもいいだろう、――でも】
【前に紅茶色の彼に会った時の態度を見れば、あるいは仕方ないのかもしれなかった。あの時も、この黒猫はひどく怒っていた。おかしいといわれて仕方のないほどに】

でもよかったですわ、お知り合いだったら話が早いですもの、これで全くの他人でしたら、もっと大ごとでしたわ?

【男物の着物を持っていそうな知り合いというのがまさかこんなことになるとは思っていなかったけど。それでも一応よかった……の範疇だろう。大筋では、】
【細かい場所に目を向ければ無駄なことが多かったとしても何せ彼は助かったし濡れた服も着替えられる。よかっただろう、いっそ一番気が気でないのは白い蛇ではなかろうか】

……まあ、ひどい。

【口ではそう言っても顔は笑ったままだ、目だけが表情もないのに笑いを模したように細められて、表情がきれいに笑みのようになる、のに、何もかもがちぐはぐな温度差】
【たとえば有名なとある絵画の顔が右半分と左半分で表情が違うみたいに目元と口元で全く温度感が違う表情。どちらが彼女の本心に近いのかも、ここまでくれば分からないほど】

【自分が言うでもない気がしたのだが。誰も言わないのならノックには返事を返すのだろう。駄目だという必要もないから、どうぞ、と、簡単なもの】
【甘い猫なで声は目立つという意味合いではあの鈴の少女の声みたい、たぶん、全員が全員好き勝手に話すにぎやかな場で分かるほどの――まあ、余談だろうか】
318 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/26(土) 14:46:44.21 ID:GroH6woto
>>317

……種類が、よく分からないから。あるだけのものは持ってきたのだけど……なんと言うか、その。そいつの背だと、引き摺るかも、

【返事があってようやくドアから顔を出したセシルは、ぼそぼそとそこまで言えば部屋の中へ幾つかの風呂敷包みを投げ込んだ】
【それから、音々子に軽く手招きをする。……まあ、そうしなくても分かるだろう、これからここで着替えると言うのだから】
【見たいと言うなら二人共に固まってどうしたものかと視線を交わすだろうが、先程の仲違いはまだ続いているのか何にせよ会話はなく】

【部屋の外に出たなら、取り敢えず自分の部屋を暖めてある、とだけ言うだろう。必要なら場所も案内するが、彼は入らなかった】
【断るなら、何も言えないまま月彗の着替える部屋の前の扉に背を預けて、不機嫌そうに黙り込むだろう。言うべき事が、あるはずなのに】
319 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/26(土) 15:02:06.99 ID:B8ThBZ6v0
>>318

【着物のこと……まして男物となれば彼女は余計に専門外であるのだろう、彼の言葉に言葉を返すでもなく、そもそも、それは兄弟での会話だと思っている】
【やっぱり目の前で着替えるのだとしても初心に顔を赤くしてみせることもないだろう黒猫は、それでも手招きされればその必要もないことも思いいたって、案外素直に従うだろう】
【見ても見なくても意味がないなら見る必要はあんまりない、それともついさっきまで倒れていた人間を一人で着替えさせるのか、と、思わないではなかったものの】

いいえ、お構いなく、あの子の部屋をお借りしますから。男の方の部屋に入るのも気が引けますもの。

【愛想のよさは顔ばっかり、あっさりと断る言葉は考える素振りも挟まないくらいで、けど、多分、今日のことがなくても、こう答えただろうとどこかで思える】
【娼婦のくせしてというのは少し変だけど、男のことは好きではない。目の前の彼だとかそういうのは関係なく、人類の半分を、無条件で嫌いというだけの話】
【それでも露骨ではないからいろんなことは困りはしない、ただ心中で何を思っているのかは、まったく保障できない、たったそれだけの話】

要りようでしたら呼んでくださいな。

【さっき向けた顔とは別人であるかのように違う、けど、どこか同じままではある。笑ってみせた顔のまま、放っておけば、そのまま、あの少女の部屋へこもってしまう】
【かといって必要だったら呼んでと言い残すあたり完璧な拒絶ではないのだけど、業務的なのが、かえって拒絶のようにも見える――その背が見えなくなったころ、】

【まるでタイミングを見計らったように……というのは全く偶然で、彼の携帯端末に着信があるだろう、相手は遠く風の国に居るはずの少女で、内容は、】
【お仕事を切り上げても大丈夫になったから必要なら戻る、けど、そっちはそれで大丈夫かと――伺うもの。駄目といえば来ないだろうし、いいと言えば、じきに来る】
【けれどそうなれば黒猫がそそくさと帰るだろうことは推察できて、あの少女なしで顔を合わせるというのもめったにないことだろうから、何かがあるなら、時間制限はその時まで】
【それとも本当に月彗が笑ったみたいなことでもしてしまえば――なんていうのはどうしようもなくなった人が口走るようなこと、何を考えても、誰も横やりなんて居れないけど】
320 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/26(土) 15:22:35.65 ID:GroH6woto
>>319

【鈴音の部屋に行く、と聞けばただ頷いて、その背を見送っていたのだが。不意にその背中へ、セシルは言葉を掛けた】

……音々子。私は、絶対、キミに負けたくない

【セシルは対等な、或いは居た時間の長いだけ相手が上だと内心思っていたが、鈴音についてはライバルとして音々子を見ていた】
【音々子が別れろと言ったら、鈴音は必ず考えると思ったのだ。頭ごなしに絶対いや、と言ってもらえる程の自信は、まだ無かった】

【告げるのはそれだけ、あとは何もなければ、端末に連絡が入るのだろう。こっちは落ち着いた、もう大丈夫だと伝えて、通話を終えれば】
【背を預けていた扉を軽くノックする。遅れて「ええよ」という月彗の声が聞こえれば、少し視線を俯かせつ、セシルは中へ入っていった】

「ほんに、なっがい長着やなぁ……誰やねん、こんなん着てるでっかい奴は? まさかそっちが着れる訳ないやろうし、」

……月彗。言葉には、気を付けてくれないか。そこの『へびさま』からの、借り物だ

【指差す先は炬燵の中。じっと丸くなっていたのだろう彼には、今回も色々と迷惑を掛けてしまった。と言うより、話も全て聞かれている】
【月彗はいまいち理解し難い顔だったが、言われるまま炬燵を覗いてその姿を確認出来たなら、僅かに笑み、相手にだけ聞こえる声で】

「有難うなぁ、『へびさま』。どこの神様の御使いやろか、立派な身体に、綺麗な鱗してはって……ほんに世話になったなぁ、有難う、」

【生き物相手には素直であるらしかった。そんな呟きが聞こえていないセシルとしては、よもやガンくれていやしないかと不安だったが】
321 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/26(土) 15:37:56.14 ID:B8ThBZ6v0
>>320

【負けたくない――その言葉に煽りかと思ってしまうのは、やはり、生々しい人間らしさにも似通う。だってこちらは勝てないと思っているのだ】
【どれだけやっても自分は真っ先に餌付けしていたらしい年上の幼馴染には叶わないし、知らぬところであの子を拾い上げていた彼には、敵わない】
【多分どこかで分かっている、分かっているからこそ妬ましくて憎らしい、全部が全部"だめになって"しまえばいいと思ったとしても、とてもじゃないけれど口には出せない】
【口にもだせないことをじっと考えているのならクラスメイトの女子を妄想の中で何度も使う男子中学生のようでもあるし、多分、その気持ちと彼女の気持ちは、少し似ている】

【――声を掛けられた白蛇は、元でもある山楝蛇にしてはいくらも大きい身体をわずかに身じろがせて、頭をゆるり持ちあげる。それが返事のようだった、やはり、】
【しゃべってはくれないけど――その仕草には確かに意識のようなものが感じられる、だろうか。ただの野生動物にしては複雑そうな、もの】
【たとえば鮮明な意識の中で不和の声を聞かされて止めに入るべきなのかとか少し悩んだ後の気疲れのようなものとか……そんなものがわずかにうかがえて】

【さらに十数分ばかししてからのこと。やっと区切りをつけてきたらしい彼女の帰る気配がして】
【着替えこそしたがポニーテールを解くのは忘れてきたらしい。ゆらゆらと毛先を揺らして――真っ先に、ひとの集まっていそうな部屋に、顔を出す】

えっと――、大丈夫? お仕事ね、片づけてきたの、常連のお客さんが最後のお片付けしてくれるっていうから――、

【こたつのある部屋。あの女はまだ部屋から出てこないけど、それでも、多分ほかのひとは居るのだろう、扉の向こうをうかがうように顔をのぞかせた彼女は、】
【月彗がちゃんとした格好でいるのならぱぁと顔をほころばせて嬉しいように笑って体調を尋ねるだろうし、そうしたら急に電話でいろいろ言いつけてしまった彼のとこまで歩いて】
【急にいろいろ言ってしまったことを謝るだろうし、それから最後にこたつを覗きこんで、だいたいそこに居る先祖に向かっても、びっくりしたかと確認の声をかける】
【そこまで一通りやったなら、ひとまず大丈夫そうなのだと判断したのだろう、すこしぴりぴりしていた顔は気づけばいつも通りに戻っていて、】

……あれ、音々ちゃんは? 帰っちゃった? 

【まだ残るとは言っていたけど、時間も時間だから帰ってしまっただろうか。こたつの傍らで立って、きょとんとした風に笑っている、裏表のない、あどけない笑顔で】
【だから多分この少女はあの黒猫のああいう態度を知らない、――いや、まるで知らないでもないのだろうけれど、ああまでとは知らないように見えて――】
322 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/26(土) 15:56:58.83 ID:GroH6woto
>>321

お帰り、鈴音。お疲れ様、それとありがとう……月彗の事、

「……別に、あッちは頼んでなんか――、頼んだわ。あかん、嫌なことぎょうさん思い出してしもうた……傘も置いて来たんよ、どないしよ」

分かった、分かったから――傘は帰りがけに拾ってやるから、取り敢えず真っ先に、お前は『こう』だよ

【鈴音が帰って来れば迎えるのは二人と一匹。少しバツの悪そうにしていた月彗が、相手を見て色々と思い出しては落ちる姿が滑稽だった】
【セシルも電話の件より、心からの感謝を相手に伝える。ついでに『こう』と言いながら、鈴音に向けて月彗の頭をぐしゃりと押し下げた】
【止めんか馬鹿、死ね、とか、そんな大の大人二人の馬鹿騒ぎで少し騒々しい中だったが、尋ねられればそれも不自然にぴたりと止まった】

……いや。鈴音の部屋にいるそうだが、

【あどけない顔を見せられると先程までのやり取りが蘇って、ただ、それだけ慕っているのに下世話な事を言いたくない、そんな葛藤】
【月彗の方も色々と見られたり知ってしまったりで、触れるのは気が引けていた。故に無言のまま二人の会話を聞き流すだけ】

【――二人共、嘘が下手だった。けれど自分達の知る音々子の姿を教えるような勇気もなく、そも必要もないのでは、と言い聞かせ】
323 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/26(土) 16:20:37.89 ID:B8ThBZ6v0
>>322

【月彗が元気そうなら、彼女もひどく嬉しそうだ。まだ本調子ではないのかもしれないけど――さっきまでよりは、きっと、いいのだろう】
【よかったと鈴を転がすような声で笑っているけれど、思い切り月彗のことを抱っこしたりしたことは、あんまり覚えてないか――それか、気にしていないのだろう】
【でも多分胸で誰だかわかったとかそういうことは言わない方がいい、ものすごく気にする性質だから――そんな藪蛇はしないかと思うのだけど】

そう? そっか、泊まってくのかな――、月彗さんも泊まっていく? そしたらにぎやかだね、修学旅行ってこんななのかな。

【思ったよりも大丈夫そうな現場で気が抜けたのだろう、なんとなしにそんなことを提案しながら、行ったこともない学校の行事を口に出してみる、けど、】
【これが本当に修学旅行だったら事故も事故で大事故だろう、一人だけなんだかのんきな彼女は、「音々ちゃんに帰るのか聞いて来るね」と言い残して、部屋から出る――】

あ、っと……、そうだ、あのね――、えっと、なんだろ……、……なんで別のお部屋にいるのか、わたし、分からないけど……。
えーっと、ね……、――ううん、やっぱり、なんでもないや。ごめんね、――。

【――その前に、扉の前で、ぴたりと足を止めて、振り返る。ひどく言いよどむさまは何といったらいいのかわからない時の彼女の癖、困惑とも少し違う、もの】
【もしかしたら彼らが部屋から出したのかもしれないから推測でしかない、でも、彼らの様子と、彼女がこの部屋にいないのを思えば】
【少し不安になったのだろう、――全部ではないけど、ある意味では全部を知っているから。だから何かを言おうとして、でも、言いきれなくて、諦める】
【適切な言葉を持っていなかったし、ひとのことを、勝手に自分の言葉で他人に説明してしまうのは、違うだろう。いくら幼馴染だったとしても、それはしてはいけない気がして】

【そのまま扉を開けて、廊下に出ていく。だから戻ってくるのはその少し後、――ひとりで、戻ってきて】

……天音ちゃんが怒ってるからもう帰るんだって、だからね、送ってきたよ、急いでたみたいだったから――えっと、何かお話あった?
そしたら後で言っておくの、ないなら、いいけど――、あ、月彗さんにね、雪には気をつけてって。あと携帯ありがとうって。

【結局黒猫は最後に顔を出さずに帰ってしまったらしい、少し心配そうな顔をしているが、何かあったのか、とは聞かなくて。ただ、伝えることはあるかと】
【何かあれば後でメールなりしておいてくれるらしいけど。ないならないでいいのだろう、あの女のことだから平然とした顔で出てきそうにも思えたけど、案外応えたのかもしれない】
【そうでなければ本当にどうとも思っていないかのどちらかだ。両極端すぎて疲れそうなくらい――それとも本人も疲れているのかもしれない、とは、分からないことだけど】
324 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/26(土) 16:34:14.00 ID:GroH6woto
>>323

「……えッ、嗚呼いや、泊まらへんから、ちゅうかそれどないな修学旅行やねんな、纏まりないとこの話ちゃうやろ、」

【不意に名前を呼ばれて焦ったのだろう、特にツッコミ担当になった覚えはないのだが――相手の言葉にそんな事を慌てて返す】
【じゃあ私は先生かな、と言ったセシルについては無視して、月彗は部屋から出る鈴音の背を見送っていたのだが】

……嗚呼、ほら、こちらは男三人だから。鈴音の部屋を勧めたんだ

【ドアの前で何かに勘付いてしまった相手に、なるべく何でもないようにしてセシルはそう答える】
【それから鈴音が部屋を出て――案外早く戻って来たのに驚いた。それだけ、音々子は早々と帰りたがったのだろうとも思った】
【それも自分達に会う必要のない方法で。よほど傷付けてしまったかと、いい歳の男二人が互いに互いの所業を知らぬまま、顔を合わせ】
325 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/26(土) 16:51:17.03 ID:B8ThBZ6v0
>>324

【「けど、また具合悪くなっちゃったら、大変だよ」】
【おふざけは半分、もう半分は体調を崩したばかりの彼を放っておくのが心配なのだろう、だから一晩くらいは泊まっていけばいいのに、と、そんな色合い】
【お部屋ならたくさんあるよと笑うけどその辺りではもうお泊りしていくよねというような態度になっている、いくらかはふざけて、でも、やっぱり、いくらかは心配して――】

ほんとは天音ちゃんと待ち合わせだったんだって。それで、勝手に来ちゃったから、怒ってるんだって――言ってたの。

【――それから、戻ってきた後。黒猫はあくまで年上の幼馴染が怒っているからというのを理由にしたらしい、それなら、ほかの誰もが悪くないと彼女に思わせたかったようでもあり】
【セシルの言ったこともある、それならその二つの理由で十分に納得したのだろう、杞憂だったかと思って――でも部屋を出る間際の、なんとなく重たい雰囲気】
【にこにこと笑って言うが、言い終わってから数秒後には勝手に自分の思考のせいでしゅんと眉を下げている。それから、ええと、と、言葉を探すようにして】

……そうだ、月彗さんのお部屋決めなくっちゃ。
セシルだってその方が安心――でしょ?

【少しわざとらしいくらいの声、だった。なんだか少し重たい空気があるから、"そういうこと"にして、ごまかそうとしているような】
【もちろん帰るのだと言えば無理やり引き留めることもないけど、居ない間の事情を全く分かっていないから、余計に、どうにかしようとしている様子があって】
【話すか話さないかなら後者の方が圧倒的に楽で、平和だろう。なんせ彼らが言わない限り、うまくやるだろうから。理由はそれだけ、でも、十分でもある】

【ね、ね、と、見上げるようにして二人を見る、身長百六十センチは平均よりも高いけど、彼らに比べたらずっと小さくて】
326 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/26(土) 18:18:15.92 ID:GroH6woto
>>325

「……ああ、そういうことやったんか。そう言えば随分寒そうにして待っとったしなぁ」

【そういうこと、にしておいて貰った感じだった。セシルの方も同じだったのだろう、何か場を取り繕いたかったがやはり言葉が出ない】
【そこに鈴音の方からもたらされた提案。月彗は思わず「はァ?」と声を上げたのだが、セシルが更に押さえ込むように、同調して頷いた】

そうだね……、何時までも電気も通らない廃村に篭もられていては。また同じようなことがあった時、対応の仕様もなくなるから、

【だからここにいろ、とは続けないが、それ位の圧力があった。鈴音が提案してくれた、それも嫌そうでないのだし、ならばと乗ったのだ】
【月彗はしばらく苦虫を噛み潰したような顔をしていたが――やがてはぁ、と今度は諦めのような溜息を零して、炬燵に両肘を乗せた】

「……そない言うんやったら、まあ。居座ってやらんことも無いけど、」

【不承知ながらと言うような顔を両手に乗せてそっぽを向く月彗だったが、体調の事も引き合いに出されては言い返す言葉もなく】
【何となく、そうした方がいいのだと言うことは月彗にも分かっていた。自分は特に支障もないのだし、相手も乗り気なら、と】
327 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/26(土) 18:37:36.55 ID:B8ThBZ6v0
>>326

【よかった、と、少し安堵したようになるのだろう。この前話に聞いたこともあるし、それなら、だいぶん気にかけているのも、あるんじゃないかと】
【ちらりと横目で伺うようにしてセシルを見やる、そうして笑う表情は人懐っこいものだけど、根本的なところがあの黒猫と違っていた】
【ひなどりが真っ赤な口で親に餌をねだるみたいに、不器用だとしてもまだ自分から甘えることができるし、他人に甘えられるだけの土台は、作れている】

元気になるまででもいいし、居たかったらずっとでもいいよね、――ね、
お部屋余ってるし、わたしだって、夜はいない日の方が多いし――、ふたりっきりだもんね。

【ひとに甘えるにも才能が必要らしいとは余談、とにかくきゃらきゃら笑ってしゃべる彼女はやっぱりどこまでもひとなつこいし甘えたちゃんの様子で】
【それでも一応は相手に滞在の期間は任せて無理強いはしない、別に今日泊まって明日帰るのでもいいと言いながら、それでも、多分、基本的には彼らに任せるのだろう】
【どちらにせよあんまりやることは変わらない、食事の量が変わるのだって今更な話、どうせ――月の半分は何十人とか、もっと多いくらいの食事を作っている】
【気に掛けるのはへびさまと彼が基本的に二人きりだということ、一応気にしてはいたらしくて。――時間が一番とは思いつつ、なんだか、遠い距離間は気になるもの】

【それにしてもどんどん男だらけになっていくのだけど、あんまり気にしていないらしい。そもそもへびさまは先祖だし、一人は結婚相手で、もう一人はその弟、となれば】
【彼女にしてみれば別に何が――という感じ、なのだろう。ペットもたくさんいるし、なんだか賑やかだなぁとか、そういうことしか考えてない顔を、している】
328 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/26(土) 19:14:01.55 ID:GroH6woto
>>327

「全く……、あッちを泊めたがるような奴、初めて見たわぁ。ほんなら世話掛けます、義姉さん? 料理やったらまあ、少しはやるし――」

【冗談めかして言っては見たが、良く考えれば本当に鈴音は自分の義姉にあたる。なら、何となく逆らえないと思うのは、櫻の古い考え方】
【ただし厨房に立つと言うのが少しは新しい考え方だろうか。流石に掃除洗濯までやってくれるかは難しいが、出来ない事はまあ、ない】

【――不意に、セシルの端末が振動する。「兄からだ。失礼、」と、二人から数歩離れた距離で、彼は通話を受ける】
【部屋から出なかったのは、会話を聞いて欲しかったのもあった。兄――悦那は、最近意味深な事を口走るようになって、不安要素だった】

悦那、お前今どこに――、……そう、か。……なら、良かった。本当に。――月彗? ああ、今丁度うちに泊まる事に……、

【不安要素の方は、どうやら上手く収まったらしい。問題は、問われて思わずセシルが口走ってしまったことだった】
【途端に通話相手の声が喧しくなる。「俺も行きてえよォ!!」とか、そんな虚しい叫びが聞こえてくるかも知れない】
【うざったそうに端末を耳元から離し、セシルはそのまま通話を切った。これ以上情報を与えたくない、アレに来られてはいけない】

……済まない。月彗も、絶対に奴にここの場所は教えるな。間違いなく、転がり込んで来るから。あの調子で、衣金住を要求して来る

「食は要らへんからな……ところで、聞いとった感じやと、悦那は落ち着いたんやな。理想の革命で世界を潰すとか何とか、――」

【今度は月彗が口走ってしまった。鈴音は聞いていなかっただろう、悦那が長年計画し、最近実行に移そうとしていた『革命』について】
【セシルは恨めしげに睨むも、自分も先程前科を作ったばかりで何も言えない。鈴音には(二重の意味で)安心するように、と告げる】

【――それから、月彗との奇妙な生活が始まる。彼は基本的に引き篭もっていて、部屋には勝手に畳と炬燵を持ち込んでくるだろう】
【借りる一室はそんな形で勝手に使われてしまうが、長居させる気はないと言うならすぐに纏めて出て行けなくもない、そんな程度で】
【そして体調についても、油断さえしなければ、悦那やセシルのように以前よりも力が増したためか滅多に崩すことは無くなるはずだ】
329 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/26(土) 19:30:12.04 ID:B8ThBZ6v0
>>328

だって、電気のないところに居るの? これからの時期、すっごく寒いよ。

【基本は相手の好きなようにしたらという態度だけど、彼女個人の意見を強いて述べるなら、とりあえず、暖かくなるまでいたらどうかと、そんなものだ】
【最近は違うけれど昔は帰る場所や夜をしのげる場所も全くないような、つまり、ホームレス……みたいな状態でもあったから、冬の寒いのは、今でもたまに思いだす】
【それとも彼なら平気な手段があるのかもしれないけど……一瞬雪の中でたき火に当たる姿とかを思いだしてしまって、わぁ、と、自分の考えにおびえている】
【そんなの絶対死ぬやつだと思って、改めて、「ね、ここなら暖かいよ」と付け足して――相手を拾ってきた子猫みたいに思っている部分がある、気がする】

…………、?

【そういうのは、多分、よく分からないのだろう。時間のあるときに前のようにお勉強を教えてほしいと言いだすこともあったが、それでも、まだまだ子供の頃のことをやるレベル】
【まして生きてくるのに要らなかった知識なら、よく分かっていない顔をしている。安心するようにと言われれば、少し戸惑いながらも、素直にその言葉を信じて】
【そういえばしばらく会っていないと思いながらも、電話してくるなら元気なんだろう……とは考えて、その先は】

【例えば彼の使う部屋を決めたり(空き部屋は結構あるから別にどこでもいいけど)、なんだり、最後には】
【いろいろ居るペットの名前を紹介したりする時間が設けられたり、するのだろうか。食事はだいたい自分で作ってしまうのだけど、】
【眠すぎて起きあがれない朝とかは消極的に流れで任せることもあったりするのかもしれない、それとも、居ない夜に任せてしまうこともそちらの方がきちんと暖かいし】
【あるタイミングで「月彗さんお料理できるの?」と聞いてしまってから慌てたように「変な意味じゃなくて」と訂正する場面とかも、もしかしたらあって】
【基本的には好き勝手にしていいよという感じ、――ごくたまに見覚えない紫色の少女を見かける瞬間があるかもしれないけど、座敷童みたいなものだと思えばいい】
【――彼女から口うるさく何かをいうこともきっとないだろう。相手は大人だし、まして、自分より年上なのだから】
330 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/26(土) 19:59:30.32 ID:GroH6woto
>>329

「木戸閉めて囲炉裏の火に当たってれば、まあそれなりに凌げはするんやけどな……廃村ゆう位やから、うちも襤褸やし。隙間風が――、」

【一応は一軒家に住んでいるらしいが、かなり古い時代の生活様式を強いられていたのは間違いないようだった】
【それから、珍しく月彗は色々と話し出した。朝は薪で竈の火を起こし米を炊き、昼は山菜を取ったり清流で釣りをして、暗くなれば寝る】
【蟄居というか、この次代ではもう世捨て人の生活に近かった。それでも、鈴音の知らない事や興味がある事なら、聞けば話してくれる】

【それから部屋の場所を決めて、鈴音からの一通りの説明も聞き、その日はもう鈴音も疲れているだろうからと、月彗が料理をしたがった】
【やらせて見るなら分かるが、結構な腕前だった。それも嫌々ではなく楽しげで、どうやら彼の趣味らしい。――勿論、和食のみだが】
【必要そうならこれからも夜の当番は月彗が受け持つだろう。セシルはと言えば鈴音の料理が食べたい訳だが、仕事なので仕方が無いこと】

【――それと、もう一つ。数日経った頃、タイミングこそ違えど二人から鈴音に、似たような頼み事が来る事になる】
【「音々子に、」「あの時の女に、」会うことがあれば渡して欲しいと託されるのは、二者二様の贈り物だった】

【セシルからは、魔術装飾を取り扱う大手ブランド『Elysion』のブラックカード。企業PRの為に商品を普段使いするのを条件として、】
【無償で多種多様かつ最新の魔術服飾や装飾品が使える、というシステムのものだった。もし欲しいのなら、鈴音にも同じ物を渡すはず】

【月彗からは、黒地に鮮やかな黄緑の紋様をあしらった女性用の着物一式。猫の目のような黄緑の玉を揺らす簪や帯飾り、下駄も揃う】
【――何となく、音々子の仕事が何であるのかを、同業の勘で知ったのだろう。着方によっては花魁にも見えそうな、やや扇情的な形式】

【受け取るも捨てるも音々子の自由、結局は、素直じゃない男共からのさり気なく装った詫びと礼の品だった】
【セシルは一回りは離れているだろう音々子に喧嘩を吹っ掛けた訳だし、月彗も助けてもらっておいて可愛げが無いだのと散々に言った】
【連中も一応気にはしているらしい、それだけが伝われば、という身勝手だ。それをどう受け取るかは、本当に音々子次第と言えるのだった】

/この辺りで如何でしょうか、お疲れ様でした……!
331 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2016/11/26(土) 20:08:56.01 ID:8cd/inLDO
俺の青春の能力者スレがメンヘラ二匹だけの砂場になってるなんて胸が締め付けられるなあ……
332 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/26(土) 20:49:59.19 ID:B8ThBZ6v0
>>330

【半信半疑の様子だった。家がないころの自分だってもう少し……と思ったけれど、よく考えれば、いっそ自分の方が動物じみた暮らしだったのではないか、と】
【というよりよっぽどその方が文化的に思えてきて、最後はどうとも言えなくなった、ただ、面白いものとして、その話を聞いている】
【ごみ箱から生ごみを拾って食べていた生活からすれば自炊をしている様子なのはすごいと思うし、釣りだとか、すごく子供のころにざりがにを釣ったくらいで、】
【それだって食べるわけじゃあないし――と面白そうに聞いているのだろう。それから、食事については――できる限り、本当できる限りではあるものの】
【自分で作りたがるのだろう。お願いするのは本当に切羽詰まった時が多い、今までだってできていたくらいには、これからも食事を用意しようとするはずで】

【それでも彼の作った食事を食べた彼女は美味しそうにしていたし、ときたま頼ること自体に異論はないようだった。それから、その夜、もっとずっと更けたころの時間】
【携帯電話に入れた通話のアプリからあの黒猫に数度チャットを飛ばしておく、今日はありがとうということと、ほかにもいくつか、雑談みたいなことを、話して】
【それから思いだして別の人間にもチャットを送り付けておく、――「音々ちゃんのこと、あんまり怒らないであげてね」すぐに既読のマークがポップして、】
【「怒ってないわよ」だなんてすぐに帰ってくるから、「また今度遊びに行くね」と送り返したら、今度は既読のマークだけがついて】

【その後日。頼まれごとをすれば、すぐにでも送り届けてくれるのだろう。返品の類はなく、けれど二人の連絡先をあの女は知らないのなら、】
【少女の方から言付けで礼を伝えられるはずだった。――ただその時に、「二人とも音々ちゃんと何かあったの?」とさすがに訝しむような言葉も、付属したのだけど】

/おつかれさまでした!
333 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage]:2016/11/27(日) 00:48:39.37 ID:SwK/XaN8o
【夜間・廃工場】

……あちゃー、また外れだ。
今度こそ当たりだと思ったんだけど……まぁ、いっか

【2つの人影があった。一つは外套に身を包み、鞭を手に携えていて】
【もう一つの影は、その人物の足下で身を横たえている】
【動きがない。即ち後者については気絶か、或いは死んでおり】

【当然ながらガランとした工場内に独り言を響かせているのは外套の人物】
【白銀の髪を後頭部で束ねており、背はおおよそ170cm程度か】
【少し低めだが女性的な声。それが徐ろに、寝転がった人物から脚を退けると】

【「ドスっ」と音を立ててその身を蹴って、転がして】
【かがみ込むと、弄って。胸元に手にと、相手の身体を漁り出し――】
334 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2016/11/27(日) 14:41:59.64 ID:KgO26/K8o
【水の国首都・高層ビル】

【下層10Fを占めるのは、最高級品質の魔術装飾に先進のデザイン性を兼ね備えた、高級魔術ファッションブランド『Elysion』本店】
【富裕層で賑わうそこから上の中階には事務所や開発室、デザイナー室が数階を占め、その上に裏の顔『Elysion』の本部ロッジがある】
【優秀な魔獣討伐者を雇い、魔術装飾に用いる素材を回収させる――時には幻獣を狩ったり、ビジネスとして雇った物を派兵する場所】
【上階は雇われた彼らの住処となっており、特に最上階からは、かつてのElysionきっての実力者が持つ部屋が3フロアを占めていた】

【中階、本部ロッジ応接室には四人の人間がいた。一人はブラウンと黒のストライプ模様が特徴のスーツ姿の老人。白髪に柔らかな笑顔、】
【あとの三人は悠然と佇むセシル、忙しなく周囲を見渡し緊張気味の悦那、不貞腐れた月彗だった。二人はどうも、呼び出されたらしく】

ようこそ、私はElysionグランドロッジのマスター、ジェイムス・W・ツェフゲニー。皆からは『ジイさん』と言う愛称で呼ばれているよ

「ちょっ、いやそのままじゃねーか! アンタ一番偉い人だろ、良いのかそれ……?」

『そないなことより本題やわジイさん、あッちらも此処で働けゆうんは本気かいな。悪いがどっちも前科者どころやないで、』

……ええ、構いませんとも。お二方の事は既に、セシルから伺っています。我々は実力者『のみ』を、求めております故に

「い、いや実力者ったってな……俺は魔物なんて良く知らないぞ、能力だって増強はされたが、まだそんな器用に使えるって訳じゃ――」

『御託はええから、そッちは黙って働いてくれんと困るねん。何時までも弟二人に衣金住たかって、ええ加減恥ずかしゅうないんか?』

「うッ……あーもう、分かったっつの。部屋も貰えて給料も出る、最高じゃねーの、分かった分かった! 世話になるからな、ジイさん!」

これは有り難い、此方こそ何卒宜しくお願い致しますよ、悦那さん。まずはその増強された能力の計測と、貴方の腐った身体を弄ります

「弄る!? いやちょ、腐ったって、最近寒くなって来たし大丈夫だっつの! ほら臭わないだろ、な、なッ?」

『寄るなや、腐敗臭が着物に付くねん』

「ああああっもう! 分かった! 好きにしろよもう! すっげー気を使ってたんだぞこれでも! 傷付きすぎて俺の心が腐ったっつの!」

それで月彗さん、まだ貴方の返答を聞いておりませんが……?

『……丁度暇しとったところやし。蟄居ももうええやろ、何時までも兄貴の嫁の家に間借りしとうないし……、力貸したるわ。感謝しぃな』

有り難い御返事です、ではセシルの持つ3フロアのうち2つをお二人に貸す形で宜しいでしょうか? セシル、

【二人の返事を聞くまで、茫洋と街の景色を眺めていたセシルが振り返る。老人に緩く微笑んで、彼は一つ頷いた】

[それでいい、ツェフゲニー。ただ、兄の方は私と月彗の下のフロアで頼むよ]

「臭くないっての! 何だよそんなにお兄ちゃんが嫌いなのかよお前らッ、俺もう泣いちまうからな、俺が泣いたら腐敗臭が……出るわ」

『はよ防腐処置でも改造人間でもして貰いや馬鹿、そんじゃ話はこれで終わりやな。連絡せなあかん連中がおんねん、』

ええ、本日は誠に有難う御座いました。部屋の方は今日からお使い頂けます、仕事についてはお二人の適正を測らせて頂いた上で――ね、

【その柔らかい老人の笑みに、何かを感じ取れるのは長年付き合いのあるセシルだけだった。そう、此処は、各人の実力で全てが決まる】
【その為の適性検査――二人を推す代わりに、その結果をツェフゲニーからセシルへと流してもらう手筈になっていた】
【レイシーが気紛れに与えた、自分達三兄弟への能力増強。それが一体どれ程のものか測ること――今回の件の真の目的は、それだった】

/設定用ソロルとなります
335 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/11/30(水) 18:04:03.18 ID:RAVrVjnq0
【街中――大きな店屋の前】
【冷え切った空気と灰色の空、なんだか雪の降りだしそうなくらいに思えて、それなら、すれ違うヒトたちの足も早い気がする】
【それでも食べ物から服からだいたいのものを扱っている複合商業施設のあたりにはたくさんのヒトたちが歩いていて――そんな、店前の片隅】

わー、すごいの、すごいね! あのね、きっとね、私よりもね、背が高いなって思うの、……えーっと、犬さん!
名前を教えてくれたらいいのにって思うけどね、仕方ないわ! だっておしゃべりできないんだもの、だからね、犬さんって呼ぶの!
それともね、あだ名をね、つけてあげる! ……うーんとね、ポチ! ポチだわ、だって犬ってね、みんなね、ポチって名前つけるでしょっ。

【きっと飼い主が中に居るのだろう、ポールにつながれている一匹の犬と、まだ十分に子供で小さな女の子】
【ふさふさの大型犬に怖気づいた様子もない子供が犬相手に一人ではしゃいで話しかけたり、撫でたり、していて――犬も、おとなしくされるがままになっていて】

【淡いクリーム色の髪は細くくしゃりとした猫毛、長い長さを低いところで二つの三つ編みに結わいて、頭のてっぺんにはヘッドドレスをきちん、とかぶって】
【丸くて大きな垂れ目は真夏の青空のような青色、右目の下には毒々しい紫色で蝶のタトゥーが施されているのがなんだか奇妙で、よく目立ち】
【黒を基調にしたワンピースと同じく黒色でフードのついたケープ、ちょっと大きめのフードの中に結わえられた三つ編みの先端が潜り込んでしまったまま】
【犬と視線を合わせるようにしゃがみこんだ足元はつま先のまるいおでこ靴、スカートの後ろの裾が地面にべったりついてしまっているけど、気にした素振りもない】

【そうして女の子はしばらく犬をしゃべったり遊んだりしていたのだけど――そのうちに飼い主が迎えに来て、そのまま、犬を見送って】
【満足気な顔をして立ち上がる――立ち上がれば、一瞬の間を置いて、ふと、】

……あれ? 何しに来たのかね、忘れちゃったみたい!

【だなんて気づいて笑う――それでも少し困ったようにうんうん唸って、ひとまずは目的地もなく歩きだす、様子は】
【見ようによっては親とはぐれて泣きこそしないが不安がっている子供にも見えかねず、実際、辺りに保護者らしい人物はいなくって――】
336 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/01(木) 19:48:10.77 ID:8tk0XBoPo
【とある街の喫茶店・大通り沿いのテラス席】

【古ぼけたシェードの下でオレンジ色のライトが灯り、柔らかい木目のテーブルを照らす。賑わいに混じってなだらかなジャズが聴こえる】
【角の席に少し目立つ二人組がいた。一人は鍛え上げられた身体を薄い白鎧一つで覆う褐色の女。隣には身の丈程の大剣を立て掛けており】
【対面に座るのはふわふわの金髪に黄緑の瞳がきらめく幼い女児、140cmに満たない背で嬉しそうに目の前の女と話しては笑っていて】
【――そんな折、ウェイターが丁寧な礼の後に可愛らしいお子様ランチを女児へ、シャンパンと湯気の立つアヒージョを女の前へ置いた】

「わあ、ビィーズのご飯が来ました! みてみてママさん、かっこいいお旗が立ってます!」

ああ、そうだな。だがそんな量で足りるのか? 遠慮せず好きなだけ食べていけ、どうせ全部あいつ持ちだ

「そう言えばパパさん、来れないんですか? 最近やっと連絡がついたから、会いたかったんです」

……さあな、今の妻に気兼ねでもしているんじゃないか。やっと再会できたのに今度は前の嫁と会っていたなんて厄介事、私も御免だ

【シャンパンを揺らす褐色肌の女の深い緑の瞳は、話題に上がる前の夫のことよりも、目の前の女児の少し寂しげな顔が気に掛かっていた】
【「どうせまた仕事で会えるさ」と声を掛けてやれば沈んだ表情もぱあと綻んで、何度も頷いて、それから意気揚々とスプーンを手にする】

【傍から見れば至って普通の女児は、透き通るように白い肌と長く尖った耳の形がエルフの特徴を示していた。隣には杖が立て掛けてある】
【女はウェーブの黒髪を片耳に掛け、アヒージョへ手を伸ばした。年の差は母と娘程、会話も上記の通り。ただ、種族に違和感があった】
337 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/02(金) 17:14:44.09 ID:i9w6woXi0
【街中――桜並木の通り】
【空が淡い水色とオレンジのグラデーションになる夕暮れ時、暖かかった空気もうんと冷えだして、烏が何羽も巣へと帰っていく】
【ゆるく坂のようになった通りは下から見れば真っ黒のシルエットになった桜の木や電信柱が林立して、少しだけ不思議な光景になって――】

……わあ、もう暗くなっちゃった、あっという間だね、夕焼け空――、さっきまですごいまぶしかったのに。

【葉っぱがとうに落ちた骨組みばっかりの木の群れの中、ぽつんと混ざるシルエットは木に比べたらうんと小さくて、なんだかふわふわして、ついでにしゃべって動いているなら】
【それは人間だとすぐにわかるのだけど、遠目に見る黒さでは、それこそ人間じゃない、別の何かが世界に紛れ込んだようにも見えて――つぶやく声は、鈴の音に似て高く澄む】
【多分夕焼け空の写真でも撮っていたのだろう、手に持つ薄ぺらの携帯端末の画面だけがぴかぴか明るくて。――ポケットにでもしまったのか、すぐに見えなくなって】

【腰まで届く真っ黒な髪は一つに緩くまとめられていて、両の瞳は左右で色の違う、黒色と赤色。特に赤いほうは光によく目立って、つやめき】
【首元には寒いのかふわふわのマフラーと布地の分厚いショート丈のダッフルコート、裾からふわふわとこぼれるみたいに揺れるのは柔らかい布をふんだんに使ったスカート】
【足元は厚手のタイツとかかとの分厚く高いショートブーツで、吐く息の白いのが夕暮れの中で少しだけ不思議な影を作って、丸い瞳が辺りを見渡し】

どうしようかな、少し持ってきてるし、路地裏の方言って、ちょっとだけ、貼ってこようかな……、それから、お買い物して……。

【肩から斜めに下げた鞄を開けて中を確認しながらつぶやく、それから鞄の中に入れていたホット用ペットボトルの飲み物を取りだして――ひとくち、】

わあ、すっごいぬるい――っ、わ!

【だなんて呟いた――そのタイミング。びゅうと強い風が吹いて、ばさりと紙の翻る音が一つ、二つ、もうさらにいくつかが重なって】
【どうやら鞄の中に入れていた紙を持って行かれてしまったらしい、とっさにペットボトルにふたをして慌てた様子で回収しようと歩きだして――なんとか一枚拾い上げるけど】
【急に吹きだした風にあおられた紙切れはべらりべらりと好きな方向にちりぢりに飛んでいく。もしかしたら誰かの場所まで、飛んでいってしまうのかもしれなくて】
【もし誰かが拾い上げれば、UNITED TRIGGERが数年前に始めた、お金や身寄りのない子らのために食事を提供するサービスを宣伝するものであると、すぐ分かる――はずだった】
338 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2016/12/02(金) 20:03:35.18 ID:UQAFOK/Eo
【街中、商店街】
【もはやクリスマス一色に染まりきったその場所は、きらきらとあらゆる飾りで埋め尽くされて】
【どの店もがプレゼントのためにと商品を売り出せば、それを買いに来る人々も大勢】
【そんな中で、人の波に押されて揉まれ、よろよろと歩く――彩度の乏しい、人影があった】

わ、わ、わ……わたた、すいません、すいませんっ……と。
もう、ふつうに歩くのにも一苦労……。

【いささかサイズの合っていない、薄汚れた白いコートを着込んで】
【長く伸ばした前髪で、右の眼をかたくなに隠している】
【肩甲骨の辺りまで伸びた真白い髪を持つ、線の細い小柄な少女】

【よろよろと辿り着いた先、服屋のウィンドウに張り付くようにして体勢を立て直しながら】
【視線を上げてガラスの向こうのマネキンたちを眺めては、むむむと唸る】

……、……うーん、正直どれもこれも、おんなじように……。

【そんな失礼なことを言いながら、視線は店頭に飾られるマネキンたちを見続けて】
【何軒か見て回って、やっぱり頭の痛そうな調子で首を傾げた】
【どこの服屋のマネキンも、暖かそうな外套を着せられて、気取ったポーズをさせられている――】


//金・土・日で待機しております……
339 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/02(金) 20:53:25.51 ID:i9w6woXi0
>>338

【わ、わ、なんて、小さな声がした。高く澄んだ鈴の音によく似た声、それは少し人込みの中に目だって――だけど、よっぽど目立つ奇妙な声ではない】
【路地裏の暗がりからひょこりと顔を出した"少女"は人並みにまぎれようと歩きだして、けれど、予想以上のひとの多さに押し負けてしまったのだろう、歩行の主導権を取れぬまま】
【あちらへふらふら、こちらへふらふら、犯罪的な意味ではなく鞄をどこかに持って行かれそうになって抑え込み、困ったようにして――やがて、何とかたどり着くのは】

【ちょうど彩度の低い人影――小柄な少女の眺めている店のウィンドウに、べたりと、貼り付けられるようにしてなんとかひとの波から抜け出すのも、また、少女だ】

【一つお団子にした黒髪と左右で色の違う瞳、左が黒くて右が赤い瞳をひどく疲れさせたようにぱちくりさせて】
【くるくる巻きのマフラーから口元を出してふわふわと白い息を繰り返す、ショート丈のダッフルコートから、ふわふわのスカートの布地をあふれさせて】
【厚手のタイツとヒールの高くて分厚いショートブーツ、肩に斜めにかけた鞄が背中のほうまで行ってしまっているのを、ぜいぜいと疲れたようにする息の中で整えて】

――わ、わっ! ご、ごめんなさい、見てた? 

【さらに数秒してから、自分がお店のショウウィンドウに張り付いていることに気づいたらしい。はーっと長い吐息をしてから身体を緩く起きあがらせる、】
【その仕草の中で相手の存在に気づいたらしい。中を見ている、すなわち、張り付いている自分は邪魔をしているに違いない、と判断したのだろう。少し慌てたように、身体を離し】

いっぱいひとがいたから、追いやられちゃったの……えと、邪魔しちゃってごめんなさい。……あ、ったかそう、だよね、これ――、ふふ、

【寒さと恥ずかしさだろうか。少し頬を赤くさせた少女は聞かれてもいない理由を述べて――それから一瞬の間。付け足すのは、ウィンドウの中の商品が暖かそうだと】
【そういう、ものすごく個人的な――、鞄の斜めのひもを無意識っぽくいじくりながら、数秒ガラスの中を見て――「ほら、あれとか、すごく暖かそう」と、さらに言って】

/よろしければ!
340 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2016/12/02(金) 21:31:58.95 ID:UQAFOK/Eo
>>339

……えと、見てましたけど、はい……。
あのう私が言うのもなんなんですけど、お怪我とか、ないですか……?

【同じようにして人混みから吐き出された少女を見て、ぱちと目を丸め】
【邪魔だなんてそんな、なんて言いながら、おそるおそるそちらへ近づいていく】
【そして、目の前の少女の言葉。何度か自分の中で反芻して、それから困ったような顔をする】

えっとそうですね、あったか……そう、ですよね。
あったかそうで、その……

【失礼とはわかっていながらも、少女の格好を上から下までじっと。一度だけ見て】
【……浮浪者です、と自己紹介しても何ら問題なさそうな自分とは大違いの、可愛らしいお洋服】
【それをすっぽり被るだけではなく、自身の一部として着こなす――おしゃれ。】

……その、あの、いきなりこんなこと訊いて申し訳ないのですが……
この中でですね、どれが「かわいい」か、なんてのは……わかりますか?

【「私こういうの疎くって、どれがどうかわいいのかが全然、わからなくて……」】
【しどろもどろに、紅くなった指先を蠢かせながら。歯切れ悪く訊ねるのだった】


//わーごめんなさい、ご飯でちょっと離席してました!
//自分こないだの夕月と同じ中身なのですが、それでもよろしければ……!
341 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/02(金) 21:50:57.34 ID:i9w6woXi0
>>340

【櫻の国では師走ともいう時期、そのせいだろうか、みんながみんな忙しそうに歩いているように見えて、実際、人込みはいつもより分け入る隙間もないくらい】
【ぺっ、と、人込みから吐き出された少女はやがてガラスにへばりついて白い息を吐きだして――それから、さっきの状況へ】

そう、だね、あったかそう、とても――、えっと。

【赤くなった頬で少し気の抜けたように笑う、それで、相手にじっと見られたことに気づけば一瞬理解の追いついていない顔をして、すぐに、気づく】
【相手の格好。汚れたような服装を見て、は、と、少しだけ表情の端っこに力がこもったように見え。――けれど、店屋を見ていたのだ、もしかしたら――そう、】
【物持ちがすごくよくって、久しぶりに買いに来たのかもしれない、とか、考えてみる。勝手な想像をして……それとも、もしかしたら、】
【相手の少女が本当に"そう"なのであれば、もしかしたらこの少女のことを知っているかもしれなかった。風の国にある正義組織、UTで】
【そうやったまだ年の若い浮浪者や身寄りのない子供たちのために無料で食事をふるまっている――、そういった活動をしている、少女であること】

【――もちろん知らなくてもおかしくないし、そもそも、違うのかもしれない。チラシを配り歩くこともあるけど、それは完全だとはとても言わないし――】
【違うなら、興味がなくたっておかしくないだろうから】

かわいい、もの? えっと……、――あれはね、ちょっと、大人っぽいかな……、それで、あっちは、お姉さんみたい、……ええと、……。
あれとか……あれはかわいいって思うの、…………買いに来たの? 

【一瞬考え事をしてしまっていた彼女はそう尋ねられれば、刹那、返事をするのが遅れるのだろう。それでもすぐに聞き返して、慌てたようにガラスの中に視線を巡らせ】
【一つを指さして大人っぽいという。違うものを指さしては、お姉さんぽいとも。……同じようにも思えるけれど、彼女としては少し違うのだろう】
【そうやっていくつかを評価して、それからさらにいくつかを、彼女が求めたようにかわいらしい、と、評価する】
【ひとつはリボン結びが多く飾られた暖かそうなコートで、ひとつはフェイクファーをたくさんあしらった、全体的にふわふわとしたデザインの、もの】

/そちらがよろしければこちらは大丈夫です! ……といいたいのですが、ちょっと、急に体調がすぐれない感じになってしまって……
/続けていただけるのでしたら多分明日は大丈夫なので明日にまたお願いしたいのですが、難しいようでしたら開始直後ですし、なかったことにしていただけたら……と思います
/本当にすみませんっ
342 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2016/12/02(金) 22:05:12.72 ID:UQAFOK/Eo
>>341

そう、なんです……知り合いに、みすぼらしいにも程があるからって言われて。
どうせならかわいいの買ってきたら、なんて言われたんですけども……
……お恥ずかしながら、ほんとうにこういうの疎くって。すみませんね、いきなり。

【買いに来たのかと言われれば、恥ずかしげに下に向かう視線】
【薄汚れたコートの裾を摘まんで、ちょっとだけ頬を赤くした】
【頭から尻までなだらかに下がりきった眉を寄せながら、視線をあげ直し】

……いろいろついてる。ひらひら。えと、そっちのは……ふわふわ……

【少女が指差した先を慌てて追いかけるように見て、出した感想はそんな】
【小学生でももっとマシなことを言うだろう、というようなものばかりだった】
【こんな感想しか出せない自分が恥ずかしいのか、顔をさらに赤くして】

ううーん、本当ごめんなさい……やっぱり私、よくわかってなくて……。
もし、もしあなたにお暇があって、もしよろしければなんですけど……
ちょっとだけ、適当なモノを見繕って貰ったり、なんて……
あ、あ、もちろん御礼はいたしますよ、ただちょっとだけアドバイスとかもらえないかなって。

【ばっと勢いよく視線を剥がして、しゅうしゅうと湯気の立ち上りそうな顔を其方に向ける】
【ぐちゃぐちゃ、纏まらない言葉をなんとか吐き出しながら……窺うように、少女を見た】


//おああ、それはよくないです、明日もキツそうであれば遠慮なく言ってください!
//とりあえずは返レスしておきますので、大丈夫そうであれば是非続きをお願いします。。。
343 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/03(土) 11:57:43.73 ID:yOv2vnW+o
/>>336再募(明日18時迄)
344 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/03(土) 14:43:38.88 ID:bU0LJzGL0
>>342

【どこか不安そうにしていた瞳が、相手が買いに来たのだといえば、少し和らいだように見えた。鈴の音によく似た声が、それでも柔らかいように、「そっか」とつぶやき】

ううん、恥ずかしくだなんてないの、わたしだってわからないことだらけだもん。

【だから大丈夫だよと言葉にはしないけれど気づけば顔も声音もすっかりと柔らかくした少女を見ていれば、そういっているようにも見え】
【すみませんと謝罪にも何とも思っていなさそうに笑っている。「いっぱいあるもんね」と、分からなくなってしまっても仕方ないと、小さく呟いて――】

ふふ、大丈夫だよ、お礼だなんてとんでもないの、大丈夫――、わたしでよければ。
それに寒いから。どうせ選ぶなら、いつまでもお外で話てたら凍えちゃうよ。選ばせてもらおう、中にはもっとあると思うし――、

【ひらひら、ふわふわ、そう表現する相手に彼女は、「動いたらリボンの端っこがひらひらって揺れると思うの」とか、「ふわふわは……うん、暖かそう」とか】
【相手の言った通りの言葉で着た時の様子をイメージしてみる、それから、どうせここで見ているなら中でものを見ようと誘うのだろう。お礼だとか、そういうのは関係なく】
【寒さで赤くなった頬にあどけなさの残る笑みを乗せて――湯気を立ち登らせてしまいそうな顔に、】

――ね、大丈夫だよ、不安なことだなんてないの。
わたしもこのコートが可愛いから中が見たくなっちゃった、ね、一緒に見よう?

【だなんて言って――ちょっといたずら気に笑う。自分も見たいから大丈夫だよと、そう、付け足して】

/なんとか大丈夫そうですのでお返事しておきます、ご迷惑おかけしました!
/これからぽつぽつ返していけるかと思いますが、夜に返せるのがメインになるかと思います
/お待たせしてしまって……改めてよろしくお願いしますっ
345 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2016/12/03(土) 18:46:45.39 ID:FwkekY6qo
>>344

な、中に……。入っても、大丈夫ですかね?

【ゆでだこみたいな顔を冷まそうとぱたぱた手で仰ぎながら、また困ったような顔】
【この少女、いわゆる「服を買いに行く服がない」状態だったようで】
【この格好のまま、きれいな服ばかりが並ぶ店内に入ってもよいものかと考えたようだった】

……そ、そですよね、寒いし……。
入りましょう、……きっとあなたと同伴なら、大丈夫です……。

【それでもまあ、中に入らなければ買えないのだから仕方ないと。腹をくくったようだ】
【自分一人で入るよりは、この少女についていてもらったほうが心強いだろうと】
【安心したのか、ちょっとだけ笑った】

【おそるおそる入り口のドアに手を掛けて中に入れば、ベルがころんころんと鳴る】
【それを合図に、店員たちが一斉にいらっしゃいませの大合唱。少しだけ身を竦めて】
【初めて来たのだろう店内、見慣れないモノばかりが並ぶ光景を、きょろきょろと眺めて回る】

【並んでいるのはティーン向けの、いかにも夢見がちな少女が好きそうな】
【甘いテイストのアイテムばかり。季節に合わせて、ニットやファーのついたものが多かった】
346 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2016/12/03(土) 18:47:36.89 ID:FwkekY6qo
>>344

//ギャア書き忘れた。遅くなりましたがお返しいたします……!
//体調また悪くなられたら、すぐ言ってくださいね!
347 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/03(土) 19:59:04.59 ID:bU0LJzGL0
>>345

【少女自身はこういった店に慣れている……というより、怖いとはあまり思っていないのだろう。大丈夫だよともう一度笑って】
【それでやっと決意を固めてくれれば、必要なら自分が先に入るし、そうでなければ、相手が先になることもあるだろうけど――とりあえず、店内に入って】

わあ、かわいいのいっぱいある――、……どんなのが欲しい? 好きな色とか……。

【店内に入れば、思ったより甘いデザインのものが多いのに気づいたのだろう、ぱぁと顔を輝かせた少女は、今にも見に行きたいように辺りを見渡し――それでも、】
【相手がメインであるなら、まず相手にそう尋ねるのだろう。それとも一人でしばらく見てみたいということであれば、少女も無理強いはしないだろうし】
【基本的にこの少女は相手のしたいように合わせるはずだ、二人でとっかえひっかえというのも店側の都合はどうあれ、客としてはきっと楽しいとも思えて】

白い髪だから……白い色もいいけど、赤い色もきれいかなぁ――。

【実際少女はすでに相手に似合いそうな色合いを(勝手に)空想し始めている、もちろん相手に希望があればそうするのだけど、自分の意見としては】
【そのきれいな白い髪には赤色が映える気もしたし、それとも、ゆきうさぎの真っ白い毛みたいに、白い服を合わせてもかわいいかもしれない、とか、】
【それともいろんな色が合いそうだとか、いろいろと考えているのだった。……自分の髪はきれいに真っ黒だから、真逆の色合い、いろいろやってみたいのかもしれない……なんて】
【きらきらした目がじっと相手を見ていた、それから何か言葉をかけようとして――は、と、何か気づいたような顔になって】

……忘れてたの、わたしね、りんねだよ。鈴の音って書いて……鈴音。

【――そう、自分の名前を名乗るのだろう。りんりんとなる鈴の音によく似た声で、くすくす笑ってから】

どうしよっか?

【そう一つ尋ねて――ひとまず、どういう感じでこの店を攻めるのか、確かめる】

/お気遣いありがとうございます、多分大丈夫かと思われます……!
/これから食事とかがちょっとあるので次のお返事少し遅くなってしまうかと思います。たびたびすみませんが……!
348 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2016/12/03(土) 20:22:59.87 ID:FwkekY6qo
>>347

いろ、色……考えたこともありませんでした、そういうの。
いっつも気が付いたら黒いのばっかり着てて、実は今もそうなんですけど、えへへ……

【ちょっとだけ苦笑しながら、コートの前を開けて中の衣服を示す】
【黒のタートルネックのセーターに白のホットパンツ、黒のトレンカに同色のブーツ】
【恐ろしいほど彩度に掛けている服装の中で、一色だけきらりと、臙脂色】
【首から提げている水晶のペンダントだけが、やたらと鮮やかに輝いて、主張していた】

赤、いいですね。この子も赤だし……
なんだか冬っぽい色でいいですよね。ヒイラギの実の色。

【ペンダントを手に取ってはにかむように笑う表情は、少しだけ特別製】
【ファッションに疎いこの少女が手に取るには珍しい色だろうし、もらいものなのかもしれない】
【それも、表情を見るにちょっとだけ特別なヒトからの。……そんな顔をしていたが、ふと】

りん、ね、さん。きれいな音ですね。やっぱり、櫻の方ですか?
私は白坂佳月、しらさかのカゲツと申します。私も櫻の人間なんです。

【つややかな黒髪を見て、そうなのだろうと思っていたことを口にしながら。こちらも名乗り返した】
【対する佳月は、櫻の人間というには珍しい髪色をしているけれど……まあ、この世界ではよくあることだろう】

……さて、どうすればいいでしょう。とりあえずコートを、と思って来たのですけれど……
この調子だと、中に着る服も一式見たほうが、いいでしょうかね。

【んー、と首を傾げながら。この店の甘いふわふわの衣服には、佳月の手持ちの服は合わないだろう】
【そんなことを考えて、ぼんやりマネキンを見ていた。甘いけれど、どこか少年っぽさも残るフォルムのコーディネイトだった】

//了解ですー、私もご飯食べたりするのでお気になさらず……!
349 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(田舎おでん) :2016/12/03(土) 22:21:17.62 ID:bU0LJzGL0
>>348
/ID同じかと思いますが、鈴音中身です。すみませんが、食事後にやはり少し体調が優れず……
/本調子でないままですとご迷惑おかけするかもしれないので、明日の夜に引き継いでいただくことはお願いできますでしょうか?
/たびたび、それも連絡が遅れてしまって申し訳ないのですが……
350 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2016/12/03(土) 22:27:52.30 ID:FwkekY6qo
>>349
//了解です……! 此方は大丈夫ですよー、お大事になさいませっ
351 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(田舎おでん) :2016/12/03(土) 22:52:58.05 ID:bU0LJzGL0
>>350
/ありがとうございます……!明日時間がとれ次第お返事します。本当にすみません……!
352 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/04(日) 17:24:27.50 ID:Pmhl0ncOo
【水の国・オフィス街】

【まだ当分明かりの消えることはないだろうビル群の不夜城は、それでも一応の定時を迎えてサラリーマンやOLが帰途に着き始める時間】
【そんな中、街灯下で何やらチラシを配るスーツ姿の青年がいた。淡い茶髪についた寝癖を黒い星のヘアピンで留め、ネクタイも同じ柄】
【後ろのベンチには紙袋が幾つも並んでいて、彼の仕事がたいして捗っていない事を伺わせた。事実、青年の声自体にやる気がなかった】

すいませ〜ん、一人十枚ノルマで受け取って下さいッス〜。僕こんな寒い中残業嫌だし上司にも叱られるんで〜、後で捨てていいッスよ〜

【適当に撒いているチラシはどうやら魔術装飾品の高級ブランド『Elysion』のもので、働く男女に向けたカフスやイヤリングなどが並ぶ】
【が、お値段がやはりそれなりであって、たまに同情心からかチラシを受け取る若いサラリーマンも目を皿にして、暫しのあとに丸める】
【確かに品物は魔術強化や防護、更には無能力の人にも自衛として簡単な炎魔術が用いれる効果があったりと、悪くはなかったのだが】

はー……絶対僕の営業スキル低いって分かってて振られてるッスよねこれ……自称デキる先輩がやればいいのに、ウェスカ先輩とか……、

【最後には疲れ果ててベンチの紙袋を潰しながらどかりと腰掛け、街灯と夜空を仰ぎながら青年は何やらボヤいて、それから星を睨んだ】
【「……社畜が何なんスか、俺ら再就職組にどうせ未来なんか無いのに、」とか、そんなボヤきが過ぎ行く人の耳に入ることだろう】
353 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/04(日) 19:05:54.23 ID:6vzANmKP0
>>348

……わたしもね、黒いの好きなの、あんまり汚れが目立たないし、なんだろ、冬はね、ちょっとあったかい気がするし――。

【――最近はあんまりそうでもないけれど。少し前の少女はもっと黒かった、とりあえず黒いものを好んで着ていたし、それなら、どうという資格もない】
【黒いのいいよねなんて声でそうやって返して、くすくすと小さく笑う。暖かい気がするとは言いすぎなようにも思えるけど、汚れは確かに……ものにもよるが、目立たないのか】

うん、きれいな赤い色……だけどね、苦いんだって。お腹空いた鳥もあんまり食べないってね、友達が言ってたよ、本当かはわからないけど……。
真っ赤できれいなのに、少しだけもったいないねって思うの――、昔ね、子供の頃、お家のそばにも赤い実のなる木があるの、……たしか、えっと、ピラカンサスって言って……。
あれも毒あるよって言うの。ちょっとね、がっかりじゃないけど……そうなんだーってね、思っちゃうよね。

【クリスマスリースによく飾られる赤い実、あれはいわゆる櫻の柊とは別の植物でどうこうとかも言われたけれど、あんまりよく覚えていない】
【ただへぇと思ったからそれが有毒のものであると覚えていた程度で、なんとなく、そう口にして――「赤いとおいしそうに見えるよね」と、なんとなしにつぶやくなら】
【なんとなくものを食べるのが好きな性質にも見えてくる、実際の少女はひどく華奢でむしろ食べていないくらいに思えるのだけど――とは、余談か】

【なんだか特別な笑顔を浮かべる相手を見て、少女も理由はないけれどほのかに嬉しくなる、宝物なんだと思って】

ううん、わたしはね、水の国で生まれたの……ずっと前のご先祖様がね、櫻のひとだったんだよ。
佳月……えっと、カゲツは、櫻から来たの? わたしね、一回だけ行ったことがあるんだ、その……えっと、ご先祖様の、住んでたところに?

【名前は櫻の響きのもの、けれど、ふるさとで言えば、水の国のあたりになるらしい。だからあまり縁があるわけではないのかもしれないけれど、身体の特徴はよく似通う】
【少し長めの前髪、その毛先を指で軽く捕まえて少し笑っていうのは、「お父さんもお母さんも髪は真っ黒だったから」と――「そのせいかな」と、続いていって】

やっぱりね、自分がいいなーって思うものに決めるのが一番いいと思うの、やっぱり、好きなお洋服だと嬉しいから――、えと、そういうの好き?

【最後に決めるのはカゲツなのだし好きなのを選べばいいなんて楽観視、こういう服に着方のルールなんてものもまずないし、なんでもいいなんて、ちょっとだけ丸投げみたい】
【それでも眺めるマネキンのようなものが好きなら似たようなのを一緒に探してみたりするだろう、基本的には――どうやら便利に使ってしまっていいみたいだったから】

/大変お待たせしました、時間が取れましたのでお返しします……! おとといと昨日は本当にすみませんでした! 改めてよろしくおねがいしますっ
354 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2016/12/04(日) 19:28:20.81 ID:1jmu8ioMo
>>353

黒いの楽ですもんね。
だからといってそればっかり着てると、喪服みたいになっちゃうんですけど……。

……苦いんだ。赤い実って条件なしにおいしそうに見えちゃいますよね、
林檎とか、いちごのイメージが強すぎるせいでしょうかね。へえ、毒の実……。

【いろいろ雑談を膨らませながら、ちょうど話に出てきたものと同じ色の水晶をぱっと手放して、戻す】
【「おいしそうに見せかけて毒を喰らわす、植物なりの巧妙な罠なんでしょうかねえ」なんて】
【わかりもしないことを適当に口にしながら、マネキンのコーディネイト……値札を手に取ったり】

水の国かあ、あそこも綺麗なところですよね。
そうですそうです、櫻から流れていろんなところを転々と……。
ご先祖様……というと、なにか由緒ある大きなおうちのお嬢様だったり、されるんですか?

【見知ったばかりの鈴音について、何にも知らないから悪気も何もなしにそんなことを言ってみる】
【「櫻の血ってけっこう強いですからねえ」。そんなことを言いながら、ん、と考えはじめ】

……そうですね、ひらひらふわふわのスカートもいいんですけど、
動きやすい方が個人的には好みかなあって。意外と、はしゃいじゃうタイプなんですよ私。

【何をどうしてはしゃぐのかはよくわからないが。見ているのは、ドレスシャツと丈の短いパンツの組み合わせ】
【シンプルになりすぎないようフリルやレースで飾られて、シャツの襟はリボンタイで締められているものだ】

//お返しいたしますー、無理はされないでくださいね!
//途中お風呂やご飯で離席があるかとは思いますが、よろしくお願いしますー
355 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/04(日) 19:46:02.30 ID:6vzANmKP0
>>354

【わ、と、小さな声が漏れる。見ていたはずなのに結びついていなかったのだろう、相手の宝物(だと彼女は思った)水晶――いけない、と、思ったのかもしれない】
【相手の仕草を見て一瞬ひどくぎくーっとした顔をして、それから慌てたように、】

そうなの、りんごとか、いちごとか、さくらんぼでしょ、ざくろもそうだし……ね、とってもおいしそう、ざくろなんて宝石みたいで、きれいだし……。

【なんて今度は食べられるものを並べていく。フォローのつもりなのかもしれないけれどなんだか少し弱いようにも思える、わあ……と少しまだ慌てているような吐息を漏らし】
【もしかしたら気を悪くしたのではないかと気づかれないような程度に相手の様子をうかがう、もちろん勘が鋭ければ気づかれてしまうくらいのささやかなものだけど】
【そう怒っていないように見えた。大丈夫だろうか。……考えて、少し安心したような吐息をつくのだから、なんだか、やっぱり、わかりやすい】

とってもきれいだなって思うの、わたしが子供の頃に暮らしてたところはね? ……えっと、普通の街だったんだけど、……その、
もっと都会の方に出たらとってもきれいだなって思うの――、今暮らしてるのはね、夜の国なの。そこもね、夜景がとってもきれいだよ。

――え、わ、ううん、そんなにすごいんじゃないの、えっと、わたしはすごいって思うけど、ほかのひとには、あんまり……だと、思う――。

【昔暮らしていたあたりは水の国は水の国でももっと田舎の方で特別な景色は、あんまりなかったけれど。それでも都会の方は、うそみたいにきれいな場所もたくさんあって】
【そんな場所にも何度か行ったことがあるのだろう。思いだすようにしてくすくす笑って話していたけれど、それにしても、夜の国――ここからずいぶん遠くて、遠い場所】
【それでもあたりまえに言った彼女は相手の続く言葉に、慌てたように否定する、とりあえず「お嬢様じゃ、ないよ――」だとは何度かいうから、大事なことらしい】
【自分的にはすごいと思っているらしいけど他人からそうでないだろうことも分かっている。白い頬を少し赤くして、数度首を横に振って見せ】

…………じゃ、じゃあ、えっと、そのほうがいいのかな……。

【――まだ少し赤い頬を手で冷やすというか隠すというか、そんな仕草をしながら。そう相手の言葉にうなずいた彼女は、相手の見ている服を、後から見るようにして】
【余談だけど――この少女、普段の生活をほとんどスカートで過ごすものだから、かえってそちらの方が動きやすいと思っている節がある。だから、真新しい意見のように、言葉を聞いて】
356 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2016/12/04(日) 20:00:39.03 ID:1jmu8ioMo
>>355

【慌てた様子の鈴音を見て、ぱちぱちと瞬きを数回。それから、ふっと笑って】
【別に怒ってなんかいませんよ、のジェスチャー。手をひらひら振ってみた】

ああ柘榴、柘榴もいいですね……柘榴石なんてのもあるんでしたっけ?
そういやそういう、赤い果物って冬においしくなるのが多い気がします。

【真白いケーキに乗ったいちごを連想しながら、値札を見たり、フリルをなぞってみたり】
【慣れない店内をそれなりに満喫しているような動作で、鈴音の話を聞いていた】
【いろんな国の話。旅行が趣味の少女にとって、他人から見た国の話というのは、興味深いものばかりだ】

夜の国、行ったことありますそういえば。
夜景きれいですよね、摩天楼もそうだけど、空の方もきらきらで。

……すごいのではない。どんなのだろう、気になります、えへへ。

【あんまり慌てて否定するものだから、どんなものなのだろうと。ふと思いながら】
【鈴音がくれたあいまいな意見を受けて、首を傾げる】

……もしかしたら、スカートでも動きやすいんでしょうかね。
丈が長すぎたらあれでしょうけど、膝上くらいだったらそんなに……?

【対照的に、ほとんどスカートを履いたことのない少女。これを機に試してみようかな、なんて】
【一着、ココア色の温かそうな生地のモノを手に取って、腰に合わせてみた】
357 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/04(日) 20:18:10.37 ID:6vzANmKP0
>>356

【相手の仕草で安心したような様子はいっそう大きくなる、少し気の抜けたように笑ってから、】

うん、柘榴石ってあったと思う……、あんまりね、詳しくはないの、……えーっと、テレビ石? ってやつね、子供の頃に持ってたよ、お母さんが買ってくれたの……。

【少し自嘲めいて笑う、もっと詳しければいろんな話ができたかもしれないのに、と、――けれど続いた言葉で少し寂しそうになる顔は、少し色合いが違う】
【お母さん――という言葉で。少しさびしげに眉がへにゃりとなったから、もしかしたらもう会えない……のかもしれないだなんて、まだ、予想でしかないけれど】

今の時期はね、雪がいっぱい降るの。でもね、雪の日には遠くの空まで夜景の光でぼんやり明るくなって、きれいなんだよ――。
すっごい寒いけど、ね、……うん、そんなに特別じゃないよ、えっと、……家がね、神社をしてたの、ずーっと昔の、もっと昔だけど……えっと、
いまはね、誰も信じてくれてる神さまじゃないし、ほとんどみんな知らないの。だからね、みんなからしたら、すごくないと思う――わたしはね、すごいって思ってる、よ。

【夜の国――いつでも夜なのは最初は不便だったが、さすがにもう慣れた。夜景すごいよねなんて簡単に言うけれど、四六時中夜景なものだからか、気持ち反応は薄く】
【それでも雪の日はとてもきれいなんだよと笑って――それから、自分の家のことを少しだけ話す。ずっと昔の昔のはなし、だから、誰も知らないことの話】

うん、わたしはそう思うけど……、でもあんまり動くんだったら、中に何か履くとか、したほうがいいよ。じゃないと……ね、見えちゃうもん。

【少し得意げな顔をしていたのだけど、スカートかズボンかという話になればそちらも推薦しておく、それでも、よく動くのなら考慮すべき点はあるだろうし、】

それとも、キュロットとかなら、見えなくっていいかも。

【間を取ってしまうのもありかもしれないね、と、そんな風に提案して――】
358 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2016/12/04(日) 20:29:26.87 ID:1jmu8ioMo
>>357

テレビ石って、あの……紙の上に置いたら、字が浮き上がって見えるやつですか?
どういう原理なんだか知らないですけど、ふしぎですよね……。
……お母さんに。へえ、優しい方だったんですね。

【ちょっとだけ寂しそうになった鈴音の声色、何かを察したのか、声のトーンを少しだけ落として】
【そこら中で抗争の起きるこの世界なら、何があってもおかしくないし。そんな考え方】
【かくいう少女も、「お母さん」のワードにあんまりいい思い出は持っていなくて――振り切るように話題変換】

雪の夜景かぁ……それはきれいかも。
へえ、神社! すごいじゃないですか、神様にお仕えしていたお家なんですね。

【たとえ朽ちてしまったとしても、神社というワードが持ち出されれば、目を丸くする】
【櫻の人間だからだろう。神様とか、そういった類の存在は、大事にしているらしい】

あ、そういやそうですね……そういうところが難しいのか。
きゅろっと……。へー、スカートみたいだけどスカートじゃないんだ……便利ですねえ。

【腰に当てたスカートの裾をひら、と動かしてから、うーんと唸って元に戻し】
【馴染みの浅い横文字をたどたどしく口にしてから、現物を持ってきてじっくり鑑賞する――「これ、いいかもですね」なんて言いながら】
359 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/04(日) 20:36:53.18 ID:Pmhl0ncOo
/>>352で22時まで待機します。
360 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/04(日) 20:52:06.27 ID:6vzANmKP0
>>358

そう、そうなの! 初めて見た時すごいびっくりしてね、買ってもらったの……、今はもう、持ってないけど――。
でもすごいんだよ、ほんとに……、仕組みはちっともわからないけど、――ふふ、なんでだろ、? なんでなんだろうね……。

【それそのものはいい記憶であるらしい。数少ない思い出……というのは相手には関係ないことでも、自分にとっては、大事なもの。ゆっくりと、かみしめて】
【仕組みはわからないものだけど考える顔はなんだか楽しそうというよりも思い返すよう、しっとりとした色合いで、嬉し気に笑って】
【「うん」とうなずく。それくらいでいいだろう、これ以上しゃべるのは、この場には少し、似合わないように思うし】

え、えっと、すごい……かなっ? でも、誰も信じてくれてないし、もうね、廃墟なの、ぼろぼろになって、もう、なんにもないし……山の中だし……。

【目を丸くしたカゲツの様子、それからその言葉には嬉しいような照れくさいような様子、ぎゅっと結んだ唇が端っこの方からにまにまとほころんで】
【最終的にはなんだか奇妙な顔をしてしまう、また頬を少しだけぽーっと赤くして――やっぱり自分のルーツのようなものだ、嬉しいと照れくさいと恥ずかしいが同居して】

……蛇の神さまなんだよ、真っ白のね、蛇なの……。

【最後にそうとだけ小さな声で付け足す。真っ白い蛇の神さま、それが彼女の血筋が守ってきたものらしい――とはいえ、もう、神社らしい神社もない、些細な神】
【それでも彼女にとっては大切な神、相手もきっとそういった神々を大事にしているらしい、そんなことが声音から伝わって。浮かべる笑みはなんとも気の抜けた、もの】

これならね、ズボンだけどスカートみたいにひらひらするし、あんまり……動いても中は見えないし、大丈夫かも、ね――。
スカートの下に見えないように穿くのでもいいと思うけど、それだとちょっともこもこしちゃったりするし、……好き好きだとは、思うけど――。

【どうかなと相手の様子をうかがうように眺めている、どちらのよいところも持ち合わせる服装だとは思う、あんまり着用したことは、ないけど……】
【相手が好感触めの言葉を漏らせば、ぱっと顔がすぐに明るくなる。気持ちが顔に出るタイプなのだろう、いろいろと、わかりやすい】
361 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2016/12/04(日) 21:08:17.65 ID:1jmu8ioMo
>>360

【まるで今、それを買ってもらったばかりの子供のようにはしゃぐ鈴音を見て、釣られるように笑みを零す】
【不思議ですよねえ、ともう一度言ってから。これ以上発展させても寂しいだろう、と考えたのか】
【或いは自分の母親のことでも思い出したのか――佳月も、それ以上を語ることはしなかった】

でも、昔はそれなりに信仰されていたのでしょう? すごいじゃないですか。
白い蛇の神様かあ……きれいなんでしょうねえ。
ふふ、今信者さんがいなくても、鈴音さんがそれだけ大事にしていてくれるなら、
――その神様だって嬉しいでしょうね。きっと。

【ぽうと惚けたように笑む鈴音の顔は、まるで恋する乙女のようだな、と。そんなことを思った】
【口にした言葉に嘘偽りはない。自分がその、白蛇の神様だったとしたら、嬉しいと思うだろう】
【忘れないでいてくれる、それだけのことが、どれだけ嬉しいか。少女は良く分かっているようだった】

うん、もこもこしすぎるよりは、これ単品の方が……。
いいですねこれ、こういうのが「かわいい」ってやつなんでしょうか……結構、すきです。
ひらひらした服には縁がなかったもので、ちょっとだけ憧れてたりしたんですよね……

【えへへ、と漏らしながら、裾をひらひらさせてみる】
【そんなこんなで、ボトムスはキュロットに決めたようだった。あとは合わせるトップスと、当初の目当てのコートくらいか】
362 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/04(日) 21:18:19.18 ID:6vzANmKP0
>>361

そんなにたくさんではなかったみたい、えっと、川があるの、そのそばに住んでたひとたち……くらいだって。
とってもね、きれいなんだよ。うろこがね――宝石みたいにきらきらするの! ……えっと、オパールって分かる? ああいう風に、きらきらするの。
目だけが真っ赤なの。怪我したときの出たばっかりの血の色みたい、……あ。か、カゲツって、蛇って、平気かな……? 嫌いなひと、多いから……。

【なんだか誰かにきいたような言い方、それこそ母親だとかにきいたのだろうか。その割にはまるで見たことがあるかのように言う様子があって】
【オパールのように青や緑や赤のつやめきを持つうろこを纏うという瞳の真っ赤な白蛇……それが彼女の家に祀られる神の姿であるらしい、と分かる】
【そうしてしばらくはしゃぐみたいに言っては無意味に手近な服を取ったり戻したりしていたのだけど。そのうちに、やっと、思い当たったようで、今更尋ね】
【今までの様子から苦手そうには見えないけれど念のためもあるのだろう。蛇蝎のように嫌う……とか言うけれど。まさにそうではないかと、不安になったのだろう】

……う、ん、へびさまはね、わたしのこと、好きって、思ってくれてるよ。……その、きっと、だけど――。

【それでも――「嬉しいでしょうね」、その言葉には、それだけには、返しておきたかったのだろう。理由はよく分からなくて、だけど】
【きっと世界中のほとんどから忘れ去られてしまった神さまを安心させたいみたいに、きちんと、それだけ、言いたかったみたいに】

じゃあ、じゃあ、それなら――、

【こんなのとか、どう?】
【相手がついにキュロットを本採用させれば、それから彼女は、さっき話しながら無意味に出し入れした服のあたりから、似合いそうなものを選んでみて】
【どうだろうとかそんな風に尋ねだす。気に食わなければ少し違うジャンルのものを持ってきたりするし、カゲツ自身が選びたいなら、後ろをついていったりもする】
【その間にちゃっかり自分の分も選んで腕にかけたりしているのだけど――それはやっぱりというべきか甘いかわいらしいもので、好みがよく分かる】
363 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2016/12/04(日) 21:44:58.59 ID:1jmu8ioMo
>>362

オパール……虹色みたいになるんですか? すっごく綺麗だろうなあ。
へえ、アルビノってやつなんですかね……白くて赤眼。見てみたかったなあ……
いえ全然。私けっこう、いろんなところ冒険するタイプなんですよ。いまさら蛇くらいでは!

【あはは、と笑う。ぱあっと花が咲いたように輝いて、語る鈴音は本当に、その神様が好きなのだなあと】
【それだけははっきり感じ取れた。そのさまを見ていることは不快ではなく、むしろ反対】
【その日あった出来事を楽しそうに話す子の姿を見守る母親の心境って、こんな感じなんだろうか。なんて】
【……おそらく年上の女性に思うようなことではないだろう、そんな思考に至るまで】

うふふ、相思相愛? って言うんでしょうか、この場合でも。
いいことですね、……きっと。多分。

【ふたりの関係性をよく知っているわけではないけれど、これだけ嬉しそうに話すなら】
【きっと悪いことではないのだろうと。そう考えて、でも語尾はあやふやにさせながら、言った】

……なるほど、こういうのを合わせるんですね。ふむふむ……

【示された衣服を見て、うんうん頷きながら。ちょっとずつ、いまどきの衣服について理解していく】
【何点か品定めしたなら、肩口に当てて鏡に映してみたりして――おお、と声を上げてみたり】

……試着、してみようかな。ちょっとだけなら、いいですよね?

//すみません、ちょっと遅くなりました……!
364 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/04(日) 21:56:37.83 ID:6vzANmKP0
>>363

【いわく、そのうろこは光の強さや角度によっていろんな色に艶めいて光るのだという。そしてその蛇が動けば、それこそきらきらと、宝石を纏う貴婦人のようにきれいになって】
【……というのを、なんだか、もっと、あどけないような言葉遣いで言っている。特に後半なんて「いろんな宝石をつけてるみたいで」とかそういう感じになってしまっていたりする】
【けど――本当にその白蛇が好きであるらしいことは知れる。ときどき「へびさま」と口に出すことから、彼女はその神のことを、へびさまと呼んでいるらしいとも知れ――】

……うん。へびさまね、もうね、消えちゃいそうなくらいの神さまなの。――ふふ、わたしも好きだよ。

【本当にかすかな神。世界の記憶の端っこにかろうじて引っかかっているような……ほんのわずかな思い出にやっと捕まっているような、そんな些細な存在は】
【多分もはや神さまなんて呼べない、下等の妖怪よりもよわっちいかもしれない、だけど、いつか神様だったもの。「いつか会うことがあったら、優しくしてあげてね」】
【どこか親が子供に向けるような、それとも大事なひとを気遣うような、そういったいろいろな気持ちをないまぜにしたような顔と声が、お願いして】

きっと大丈夫だよ、駄目だなんて言われないの。……わたしあのあたりのお洋服見てるから、何かあったら、呼んでね。

【一つ頷いてから視線をきょろきょろと動かして、試着室を見つければ、「あっちみたい」と指さして、示してみせ】
【それからそのままの指の動きで示すのは、試着室にほど近い棚だ。なんだかふわっふわを通り越してふわっふわっふわくらいのスカートの並ぶ棚のあたりで】
【手に持っていた服を入れようと歩きながらかごを手に取って――そのまま、試着室まではいっしょにあるいていくのだろう。店員も、にこにこと笑ってそれを見ている、のだろうか】
365 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/04(日) 21:57:00.14 ID:6vzANmKP0
/書き忘れました、お気になさらずです!
366 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2016/12/04(日) 22:23:59.24 ID:1jmu8ioMo
>>364

へびさま。……消えてしまうのは、悲しいですね。
でもきっと、鈴音さんがそうして信じていてくれるなら……きっと居てくれるんじゃないかなあって。
なんとなくですけど、そう思いますよ。……えへへ、逢えるといいなあ。

【想像で描く、輝く鱗の白蛇――本当に会えるんなら会ってみたいものだと】
【優しくしてあげて、と言われれば、勿論ですよと返す】
【鈴音がこれだけ慕うなら、きっと優しい神様なのだろうと。想像ばかりを廻らせて】

あ、あそこですね……わかりました。では失礼して……

【ブーツを脱いで、試着室のカーテンをしゃっと締める。しばらくすればその向こうから、衣擦れの音】
【おそらくは、慣れない服を着るのに手間取っているんだろう。「あれ」だとか「ええと」だとかの声が聞こえて】
【少しの時間を置いて、完全に音が止めば、ゆっくりとカーテンが開かれる】

【白のフリルで飾られた丸襟のドレスシャツに、焦げ茶色のリボンタイ】
【先程選んだ紺のキュロットはハイウエストで、細身の胴をきゅっと強調させる】
【キュロットと同じ色のニットカーディガンはゆるくなり過ぎないよう、白の脚付きボタンでちょっとフォーマルに】
【……ともすれば、学校の制服のようにも見える恰好。けれどそこまで、かっちりもしていないか】

……えーっと、えーっと……これで、着方はあってますかね……
367 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/04(日) 22:39:19.21 ID:6vzANmKP0
>>366

【試着室の近くで気に掛けるようにときどき見ながらも、自分の服を選ぶ、――どちらかといえば試着室を気に掛けているのが七くらいで、自分の服は三くらいだろうか】
【それでもちょっとした時間でぱっとかわいらしいスカートを籠に入れていたりするから抜け目ない、やがて相手がゆっくりと蛇腹折りのカーテンを開けて、姿を現せば――】
【近くからことことと小さな足音で近づいてきて、のぞき込む。そうすれば、ぱっ、と、顔が明るいものになる――彼女のことだから、つまり、"そういう"ことだ】

わあ、すごい可愛いよ、ええと……制服みたい、とっても可愛い、可愛いけど、落ち着いてるし、すごい似合ってるの、!
ふわふわなのも似合うと思うけど、それもとっても似合ってる。――着方もね、大丈夫だよ。

【にっこりと笑った顔、あどけなさを残す笑顔はそれなのになぜか少し大人びて見えて。着方は問題なしだと頷いて見せるのだろう】
【カゲツの着替えた姿をしばらく見つめて、しばらくかわいいかわいいといっていたのだけど――】

それじゃあ、後は……コートかな? やっぱり暖かいのがいいのかな。

【結局まだ買いに来たものを選んでない、と思い当たって。その服ならどんなのが似合うだろう……と、一人、先走って考えて、笑っている】
【「暖かくて可愛いやつがいいよね」と一人で言っている、きょろりと巡らせた視線がふと止まって――】

それとも、こういう、ケープみたいなものもかわいいと思うの、コートの方が……普通にあったかいかもしれないけど、わたしはね、なんとなく好き――。
だけどちょっと腕のところでもたもたーってするから。あんまり動きやすくはないかも――、やっぱりコートの方がいいかな……。

【上半身だけのマネキンが着せられているダッフルコートみたいな布地のケープをぴらぴらと揺らしてみて。あんまり似合わないわけではないと思うけど、】
【少し動きづらいか……と思いなおして、改めてコートを見ている。試着したままであんまり動けないというなら、言えばなんでも持ってくるだろう――とは余談】
368 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2016/12/04(日) 22:56:56.55 ID:1jmu8ioMo
>>367

え、えへへ……。よかったです、似合わなかったらどうしようかと。

【少し照れたように、白い頬に朱を差して。後頭部をポリポリ掻いた】
【じゃあこれにしましょう、とばかり、嬉しそうな顔で一回転】
【コートを見る鈴音のもとへ視線を遣る。本題のコートのことを、思い出したか】

ケープ……こうやって、羽織るものなんですね。
うーんと、そうですね……一度着てみてもいいですか、せっかくなので。

【選んでくれたのなら着てみたい、とばかりに。しっかりした生地のそれを、受け取って】
【頭を通して、ぱたぱた腕を動かしてみる。おお、と声に出す】

んん、たしかにもたつきはしますけど……これくらいなら大丈夫かも、です。
それにこれ、何て言うんでしょう……これが、かわいい? かな。結構、気に入ってます。私も。

【前で止めるくるみボタンを指で弄りながら、はにかんだように笑う】
【「せっかく鈴音さんが選んでくれたんだし、これでもいいかなって」。そんなことを言いながら】

//おっと、すみませんお風呂タイムに行ってきます……!
//時間も遅めですが大丈夫でしょうか、一応私は0時すぎくらいまでならおれますが……
369 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/04(日) 23:16:30.84 ID:6vzANmKP0
>>368

もう、そんなことないよ、とっても可愛いの――、ふわふわなのもきっと似合うし、いいなぁ……。

【にこにこと笑いながら言う声はなんだかうらやましそう、彼女の服装は見える範囲の話だけど、ふわっふわとしたスカートの布地の多さは、結構なもので】
【これは彼女の話だけど。あんまり身体つきに自信のない彼女からすれば、そういった、シンプルな服装は少し――苦手なのだろう。もちろん嫌いではないし】
【カゲツはとても似合うと思っている。それでも少女個人としては、つい、ふわふわとした身体つきの隠れる服を選んでしまいがちで、少し、うらやましそうにしている】

そうなの、こうやってね、マントみたいにして、ボタンで留めたり、ひもで結んだりするのもあるよ。
これはボタンだけど――わあ、なんだろう、ちょっとだけ恥ずかしいな……責任重大みたい。……でも、本当にいいなーって思うもの、買っていいんだよ、えっと……。
着るのはカゲツなんだから。ね、

【くるみボタンをいじるのを見て、かわいいボタン、だなんて、小さく呟く。きっとケープのデザインそのものによく似合うものがつけられているのだろうし、】
【ボタンってなんだか可愛いと思う、丸くって……とか言いだしはしないけど、ころころと、少し、転がすように笑って。――それから相手の言葉に、】
【いまさら責任の重大さを感じだしたようで少し緊張したような顔をする。それで慌てたように付け足すのは、つまり、これはカゲツのお洋服なのだから――と続いて】
【だから自分に気を使ってあんまり好きでないお洋服を買うことはないよ、と、そういうことを言いたいのだろう。あんまり自分の意見に自信がないタイプ――なのかもしれない】

【それでもそんなことを言われれば嬉しくもあるのだろう。顔は少し照れたようになっていて、悪い気がしているわけではないとも、すぐにわかるはずで】
【本当にそうやって無理させてしまうのが心配で言っている様子なのだった。――だから、きっと、それが本当の気持ちだと教えてもらえれば、安心するに違いなく】

/了解しました! こちらは時間大丈夫ですので、お気になさらず……です!
370 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2016/12/04(日) 23:58:44.79 ID:1jmu8ioMo
>>369

ふわふわ……。機会があればちょっとだけ、着てみたいですね。

【ちょっとだけ落ち着かなさそうな仕草で、キュロットの裾を伸ばしたり、ケープを被り直したり】
【そわそわしながらも、顔つきは嬉しそう。まるで初めての買い物を済ませたばかりの子供のように】
【続く鈴音の言葉を聞いて、ぱちと瞬きを一つ。確かめるようにケープの裾を引っ張って】

……そうですね、せっかく選んでいただいた服をすぐ汚したり、破いたりしちゃうのは……。
んー、でもやっぱり……これにします。だってこれ、「かわいい」ですから。

【心配したのはちょっとだけ、ズレたような点に関して】
【それでも目を細めて、今度こそは曖昧に表現を濁さずに、「かわいい」と言い切った】
【もちろん鈴音が見立ててくれたから可愛いに違いない、というのもあるし】
【何より自分自身でも――このケープを気に入ったようだった】

//わーー大変お待たせしましたすみません……!
//ロールももうそんなに長引かないでしょうし、このまま続けさせていただきます……!
371 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/05(月) 00:19:08.80 ID:YyferC5B0
>>370

【自分の意見に自信のないさまはなんだか年上だろうに、そんなようには見えないほど。そもそも見た目は十六かそこらで成長が止まっていて、それなら、ある意味では普通だけど】
【本当の年齢は二十三――だからちょっとあどけないがすぎる。――そんな風に少し不安にしていたから、だろう。相手が「かわいい」のだといってくれれば】
【一瞬だけ目を丸くきょとんとさせてから――ふわぁっと表情がほどけていく、よかったと安堵している、ずっと笑っていたようにも見えるけど、その中で】
【"へびさま"という存在に向けたものとは少し違う意味合いで、けれど同じくらいに深く、笑ってみせて】

よ、かった――、無理に言ってくれてるんだったら、どうしようって、少しだけ不安だったの……ううん、変じゃないよ、とっても可愛いと思う――。

【素直に思っていたことを言う、自分の頬にぺたっと触れさせる手はそのうちに頬をかくようになって、それから、自嘲めいて、表情をへなっとした笑みに変えて】

じゃあ……それでいい、の、? わたしもね、お買い物は、もう大丈夫だから……、えっと、

【――もう買うものがなくて大丈夫だというなら会計をしに向かうことになるのだろうか。気づけば少女の持つ籠の中にもいくらかの服があって、はみだした裾がふわふわ揺れている】
【「わたしもちょっとだけ買っちゃう」と少しだけいたずらっぽいような顔をして。見ている間に欲しくなっただけなのだけど、なんだか、共犯みたいにしようとしている】
【何の共犯かって何の共犯でもないのだけど……お洋服の共犯なのだろう。あんまり意味はないけれど、これくらいの年頃には、ちょうどいいのかもしれない】

【レジに向かうなら、あっちだよ、と、また指で示す。そのまま向かうなら――、いつのまにか少女の籠にそう大きくはない、小さくもない、熊のテディベアが増えていて、】
【なんでも有名なテディベアブランドとこの店がコラボレーションしたもので期間限定なのだという。それを見て少女が一瞬で、けれど一つ一つの表情の加減を確かめ】
【手作り特有のぬいぐるみの個体差まで見極めて籠に放り込んだというそういうこと、――ぬいぐるみ好きなんだと笑って、終わる、そんな余談】
372 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2016/12/05(月) 00:34:27.49 ID:51grKHL/o
>>371

私、嘘つくのへたくそなんです。だから安心してくださいね、ふふふ。

【手をひらひらさせながら笑って。かわいいと言われたならば、頬を赤くしてありがとうございます、を言う】
【さっと試着室に戻って、元の格好に戻ってから。今回選んだ服を籠に入れて、いっしょにレジに並ぶだろう】
【同じような年頃(実際にはだいぶ違うのだけど)の同性と、一緒にこんなことをするのは初めてで】
【なんだか落ち着かない様子で、それでいて口元をもごもご、笑みの形に緩めたり引き締めたり】

あ、くまさん。もこもこでかわいいなあ……
……ぬいぐるみ、お好きなんですね。一緒に寝てたらあったかそう。

【着眼点がやっぱりどうもズレている、ような。そんなコメント】
【それでも、「かわいい」を口にすることに躊躇が無くなったようだった。ちょっとだけ触らせてください、なんて言ったりして】

【会計が終われば、同じ紙袋を抱えて外に出ることになるだろう】
【先程よりも強まった外気の冷たさに、少しだけ身を震わせて】

鈴音さん、今日はありがとうございました。ほんとうに。
それで、なんですけれども……はじめに言ってた、お礼なんですけどね。
もしお時間があるなら、ご飯でも。お暇がないなら……美味しいケーキ屋さんがここらにあるんですけど、

【「奢らせてはいただけないでしょうか」なんて言ったなら、その後は結構強情だったりする】
【断られたら断られたで、じゃあ半分だけでも、たくさんお世話になりましたので。とかなんとか、食い下がるだろう】
373 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/05(月) 00:48:35.62 ID:YyferC5B0
>>372

ほんとう? ……ふふ、あんまり喜ぶことじゃないね、ごめんね――、でもよかった、かわいいって思ってもらえたなら。
わたしはこういうの好きなの、すごく好きだけど、ほかのひとがどうかってね、よく分からないから……、あんまり、同じくらいのお友達、居ないの。

【よかったと気の抜けた声で口にしてから、すぐに、あんまり喜ぶことではないか、と、気づいてはっと表情をもとに戻す――けど、なんだか、もう負けた気持ち】
【もう、だなんていいながら、こちらもちょっとなんだか照れたような、あんまり慣れていないようにしていたのだけど……前述の通り、レジへ向かう途中のこと、】
【ぬいぐるみを見つければすごい勢いで籠に入れたりするのだから、ちょっとだけ変だ。いきなりぬいぐるみを買うか、というか、なんだか……うん、好きなのだろうけど】

うん、とってもかわいいの、だいすきだからね、家にもいっぱいいるんだよ――、いっしょに寝る子はね、寝るときに考えて決めるの。今日はこの子にしようかな――、

……あ、でも、ううん、今日は……違う子にしようかな……、……鋏で切られちゃうかもしれない、から、……。

【ひどくあどけない声で笑ってそうやって説明する、どうやら家にもたくさんいるらしくて、たびたびいっしょに眠っているらしい】
【籠の中のぬいぐるみをちら、ちら、嬉しいように確認しながら「こんなのやってるって知らなかった」と笑みが奥から奥からあふれてくるよう、止まらない】
【今日は――とつぶやいて、けれど、彼女自身はすぐに考え込んでしまうから、多分これは独り言なのだ。けれど確かに聞こえて来るのは、いかにも物騒、というか】
【まず普通にはありえないだろう現象、自分の口元に指を触れさせながら考えていたけど――やがてレジの順番になれば、そのまま、会計を済ませ】

――そんな、気にしないで。わたし楽しかったの、だから、……え、でも、悪いよ、えっと――、じゃ、あ、ケーキ屋さんの方が、いいな、

【二人で同じ袋を抱えて店を出る、ただ、コラボレーションのテディベアは特別の箱があるとかで、彼女の荷物はカゲツよりも少し大がかり、いくらか大きくなっていて】
【それを抱えるようにしながら「寒いね」と小さく呟く――それで、すっかり忘れていたお礼の話になれば、右手にぬいぐるみ入りの箱入りの袋を抱きしめたままだのに、】
【右手をぱたぱた揺らしてそんなの、と、言っているのだけど。……あんまりに断り続けるのも失礼と思ったか、案外すぐに折れて、それならケーキがいいという】

【「いいのかな――」なんてつぶやきは、多分年下であろうカゲツにお金を出させてしまうことに対する罪悪感でもあって、ただ、相手にはまだ伝わらない気持ちだろうか】
374 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2016/12/05(月) 01:07:42.17 ID:51grKHL/o
>>373

そうなんですか? お友達、よければなりましょうよ。
私もあんまり、同年代の人とは……いや、いるにはいるけど、腐れ縁みたいな……

【あはは、と苦笑い。あとで連絡先でも交換しましょう、なんて言いながら】
【籠に勢いよく放り込まれるぬいぐるみを見て、ちょっとだけびっくりしながらも】
【もっと違和感を覚えるのは、その後のことば】

……は、はさみで? そんなことする人が、いるんですか……?

【それはちょっと、と思うけれど、それが普通であるかのように言うものだから】
【先程交わした、母親についての会話。それを思い出して、ちょっと複雑な環境にいるのかな、とか】
【勝手な想像を巡らせたりする。なにかいやなことあったら、言ってくださいねなんて付け加えて】

いいんですよ。私ひとりじゃどうにもならなかったですし、何より楽しかったですし。
お金のことなら気にしないでください、私こう見えてお金けっこう、持ってるんですよ?

【案の定、鈴音の本当の年齢まで気付いてはいないだろう。完全に同じくらいの歳の娘だと思い込んでいる】
【だけど、仮に相手が年上だと分かっていても、ヘンに義理堅いというか、強情なところは変わっていなかったはずだ】

【二人並んで、同じ袋を提げて歩いて。ケーキ屋に着いたなら、季節限定のケーキを一ピース、鈴音に贈るだろう】
【赤い赤い、けれども毒はない。真っ赤な苺のたくさん乗った、しろいクリームの王道なケーキだった】

//このあたりで……! 長いことお疲れさまでした、ありがとうございました!
375 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/05(月) 01:14:53.62 ID:YyferC5B0
>>374

んー、? うん、起きたら、ばらばらに……、あ、ううん、変なことじゃないの、うん、なんでもない――、

【あっさりとした肯定はきっとまだ考え事をしていたからだろう、相手の反応した言葉の意味に気づけば、少し遅れてから、違う違うと否定しだして】
【何も変なことはないのだという。嫌なこともないといって、「全然大丈夫だよ」とは言うけれど。あんまり大丈夫そうには思えない……のかもしれないけれど、】
【大丈夫としか言わないから、多分、大丈夫なのだ。心配しないでと念押しして、――購入されたばかりのテディベアに感情がなくて、よかった】

……う、うーん、でも、うん、どうしてもっていうなら……、……えっと、ごちそうになります――。

【やっぱりまだなんだか気が引ける。多分この子は自分より年下だよなぁ、と、思いながら。でも、その好意を無碍にして帰るわけにもいかないから】
【ひとまずケーキはありがたくいただこうということになって、おとなしくケーキ屋までついていく――その道中にちょっとした会話でもするのだろうか】
【大したことではないようなこと、ほんの雑談、きっと重ねて――ケーキ屋で一ピース、かわいらしくておいしそうなケーキを買ってもらえば、子供みたいに喜んだ顔をして】

【「ありがとう――」と告げるそのあどけない嬉しさは、やっぱり、とうてい大人には見えないくらいのものだった】

/おつかれさまでした! 途中ひどくお待たせしてしまいすみませんでした……!
376 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方) [sage]:2016/12/05(月) 20:13:23.80 ID:g//lb6gIo
【廃ビル 屋上】

【都市の喧騒を遠くに臨む、寒風吹きすさぶ空間に一人佇む人影が一つ】
【身長2メートルを超えているだろうその大男は、薄汚れた灰色の作業着の上に黒いラバー地のエプロンを着用し】
【短く切り揃えられた黒髪に角ばった顔を冷たい風に晒しながら、黒いゴム長靴で屋上の地面を踏みしめていた】

【黒い瞳の両目、さらに額にも巨大な眼球が一つ。常人ではあり得ぬ異形の面相】
【かつては悪意と狂気にぎらついていたその三つの目玉は、今や死人のように生気のない濁ったものとなっていた】


【しばらく街を見下ろして微動だにしなかったその男は、おもむろに太い右腕を虚空に向けて振るう】
【すると袖口から、鎖に繋がった肉吊るし用の大型フックが飛び出し、大男の眼前の空間を薙いだ】

【ビルの谷間を飛んでいた大きな鳥が振るわれたフックに頭を貫かれて即死し、大男の手元へと引き寄せられる】

……静かになったものだ。この世界も

【重苦しい声で呟くと、狩り殺した鳥に大男は鋭い牙でかぶりつき、その肉を貪った】
【そうしている間も、大男の表情は石のように固く、何の感慨もそこには浮かんでいなかった】
377 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/05(月) 21:45:44.24 ID:YyferC5B0
>>376

【たったの今まで自由に飛んでいた鳥があっけなく命を落とす、あまりにも唐突に、だけど、あまりにも突然に。頭を貫かれて生きる鳥なんて、きっと居ないはずなら】
【何もおかしくはないのに、その光景が一瞬だけ理解できなくて――、だからその"人影"が真っ暗の夜に姿を現して存在を示すのは、もう少し遅れた――数十秒後の話】

誰か居るのっ? ――わ、っ、きゃ……、

【むっと怒ったような眼をした彼女はビルの屋上からの視覚――おそらくはもう少し低い空中からあたりまえのように現れるのだろう、きっと、鳥の死の理由を探すため】
【投げかける声はひどくあどけないけど、答えは簡単だった。その見た目は誰が見ても大人と見間違えることはありえないくらいに幼くて、おそらくは、四つか、五つほど】
【となれば"彼"は彼女を知っている可能性があった。会うことこそ初めてだったが――その存在や容姿を聞き及んでいる可能性は、十分にあって】

【ふわふわとした淡いクリーム色の細い猫毛を頭の高いところでツインテールに結わえた女の子。丸く垂れた眼は今ではきっと怒ったようになっていて、】
【真夏の青空と同じ色をした瞳が見出した人影へじっと。よく見るほどに洗練されたものではないが、にらみつけるような色合いのある視線を向けて――その光景に、眉を顰める】
【その右目の下には紫色をした蝶のタトゥーがあるのが違和感といえば違和感だったけれど。それでも、ありふれた悪意や殺意には遠くて拙い怒りを顔にのせ】
【黒を基調にしたワンピースは裾がきゅっとすぼまったデザインのもので靴はつま先の丸いおでこ靴。そして何より、その背中にはまばゆく輝く、光の魔力で作られた翼があり】

どうして……そんな風に鳥さんを食べているの? ――わ、私ね! 下から見ていたんだから! 飛んでたら、鳥さんが急に、……お兄ちゃんがしたんでしょっ、
だってここにはお兄ちゃんと私だけだわ、それに……、

【あたたかな光の粒子をはらりはらりと落とす光の翼。おそらくはそれを用いてここまで飛び上がってきた彼女は、けれど、目の前の光景に驚いたように空中で固まってしまって】
【何があったのかとやってきたところまではよかったものの、まさかそれをそのままかじりつき食べている彼の存在までは、思いいたれなかったのだろう――と見え、】

【ぱく、ぱく、と、言葉を見失った口元が意味もなく動いて、彼女の視線は彼に――本当は彼の口元に縫い付けられて、どうしたいのかを、見失ってしまったようだった】

/時間がたってしまったのですが、よろしければ……
378 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方) [sage]:2016/12/05(月) 22:08:29.52 ID:g//lb6gIo
>>377
【その幼い声を聴いてようやく、大男は今まで身じろぎすらさせていなかった自身の巨躯をかすかに傾けた】
【三つの視線が空中を舞う彼女を捉えた。わずかに目が三つとも細まる】

(――――光の魔翌力の幼い娘……どこかで……)
(……スカーベッジはいつぞや遭遇したと言う生物兵器……こいつか?)

【死人のような三つの瞳が、わずかに粘着質な観察眼を取り戻し、彼女をねめ回す】
【いかにも愛らしい服装に、ツインテールの髪に、蝶のタトゥーに、光の羽に、そして垂れた眼とその瞳に】
【蛇が這うようにその視線を順番に移していった後、大男は口を開いた】


ああそうだ。私がやった
驚かせたようですまないね、まさかこんなところを鳥以外に飛んでいる者がいるとは思わなかった
どうして、と言われると小腹が空いたから、と答えるしかないな。空腹はどんな生き物も抗えない衝動だろう?

【鳥の死肉に食らいつく動作を止め、空中で硬直したまま自分へと視線と疑問を投げかける彼女に答えを返す】
【己の口元に注がれる視線を感じ取ると、作業服の袖でぐいと口についた新鮮な鳥の血を拭う】
【そうして、相変わらず暗く重たい沈んだ声で、彼女に再び語り掛けていく】

さて、間違いだったのならすまないが……お前は、ファラエナというのではないか?
そうなのだとしたら、私の手下が……スカーベッジが世話になったな

【その容姿と能力から、以前に配下から聞き及んでいた名前を記憶の中から探り出し】
【まだわずかに血の跡が残る口元をわずかに釣り上げて、醜悪な微笑を浮かべながら大男は少女にそう言った】

/大丈夫です、こちらこそよろしくお願いいたします
379 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/05(月) 22:24:25.44 ID:lsVoMBljo
【繁華街・ビルの隙間】

【晴れない空の代わりに眩い光の洪水を無造作に垂れ流す街は夜の星さえ霞ませ、痩せ細った月が下卑たネオンの遠くで微かに泣いている】
【両手を広げれば両壁に触れられるような隙間に隠れるのはネズミかバイヤーか、或いはこんな雑踏の中さえ顔を出して歩けない人種の者】

……くっさ、誰だよゲロったの。場所変えるかぁ……馬鹿そうな集団が居ないとこ、ってある訳ないか。せめてスプレー缶のないとこ…

【どっこらしょ、と腰を上げたのは、オレンジの長髪に艶やかな毒花を差した、上下グレーのスウェット姿の女。足許は派手なサンダルで】
【先程まで化粧を直していたらしく、周囲に無造作に転がしていたリップやチークと、装飾まみれの鏡を適当にポケットへと突っ込んだ】

【そのままふらふらと奥へ歩いていく女に、音も立てずついていく妙な物体が六つ――宙に浮いた、手首達。それらも小物を持たされて】
【女が「タバコ」と呟けば、手首達の協力プレーでヒョウ柄のポーチから赤い箱が引っ張り出され、中身の一本が女の口許に差し出され】
【別の手達が二つ組になって丁重に火を灯し、女は深く煙を吸ってガスの掛かる夜空へとゆっくり吐いた。あとから灰皿を持った手が追う】

【女性にしては高い背、それも妙なものを従えていれば、目立つというか。まず表通りは歩けないのだろう、どうしたって視線が痛いし】
【あとは別の顔――とあるファッションブランドのモデル、それもお高い品を纏う身となれば、こんなオフの姿は人前に晒せなかった】
380 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/05(月) 22:27:49.74 ID:YyferC5B0
>>378

【じっと対峙する相手は自分と比べたらうんと大きい、今でこそ宙にある自分は彼の胸元ほどの高さにいるけれど、地面に降りたら、踏みつぶされてしまいそうに思えるほど】
【子供として小さいほうでも大きい方でもないけれど。だからって大人と比べて……まして普通よりも背の大きな男性と比べれば――うんと、うんと、小さいもの】

う……。

【だからか、余計に恐ろしい気がするのだろう。普段はあまり人見知りはしないし、むしろ人懐こい彼女だけれど――目の前で野生の鳥を食べるヒトなど、初めてで】
【どうしてそんなにひどいことをするのかと問いかけたい気持ちが、彼の口元の鮮血の赤に勝てなくて、喉の奥に少しずつ、ゆっくりと、詰まっていくような感覚がある】

……もうね、12月なのよ! それならね、もう少ししたらサンタさんだって飛んでくしね、天使さんだって来るかもしれないのよっ!
だからね、そんなのね、誰に見られちゃうかなんてわからないのっ……、ご飯なら、お店に行けば、美味しいのが食べられるの!
そんなの食べたら病気になっちゃうわっ、それにね、きっとね、おいしくないって思うな!

【――それでも、根に人懐こいものがあるせいだろうか。恐ろしいと思いながら、どこかで理解できないと思いながらも、話してみたいと思う気持ちが、少しずつ顔を出してくる】
【しばらく警戒めいていた彼女だけれど――ああそれともまだ幼くて感情が長続きしないのかもしれない。今すぐが安全だと判断したらしい彼女は、やがて】
【彼と少し離れた屋上にふわりと着地しようとするのだろう。翼はまだその背中にある、それこそ物語の天使の背中にあるような、大きくてまばゆいもの】
【病気になる。美味しくないと思う。そういいながらも悲しそうな瞳は鳥への憐憫が確かにあって、彼を責めるような色合いも、また、わずかに含まれるのだろうけど】

え――、わ、どうして私の名前を知っているの? お兄ちゃんは――、

【だけど、ヒトと話すのは好きだった。いろんなことを教えてもらえたり、面白いことを教えてもらえたり、自分じゃ思いつかないようなことを、聞かせてもらったりするから】
【彼と話そうとした彼女は離れた場所にわざわざ降り立ったのに少し、少し、と彼へ距離を詰めようとしていたのだけど――急に名前を呼ばれれば、驚いたように飛びずさり】
【――こわい記憶というのはなかなか忘れないものだ。すぐに告げられた名前に、ぎゅ、と、その小さな身体に力が込められた、ように見え】

じゃあ……お兄ちゃんは、スカーベッジお兄ちゃんの、……お友達、なの?

【丸くて垂れた目がじっと相手のことを見上げる、――背中の翼からこぼれる粒子が一瞬強くきらめいて、けれど、まだそこにあるのは、警戒だけで】
381 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方) [sage]:2016/12/05(月) 22:49:31.93 ID:g//lb6gIo
>>380
【こちらを見て恐れる様子を見せる少女。あまりにも当然の反応だ】
【むしろ、この異形よりも巨躯の方に怯んでいるらしいことを見て取ると】
【これも、長い間「廃の国」に籠っているうちに、すっかり静寂に包まれたこの世界に毒されて】
【悪意も何もすっかり衰えたせいかと、内心で苦笑すらした】

ああ、そうだな。もう12月だ。早いものだよ

なるほど、確かにそういった光景に生き物を殺して食らうというのは、いかにもそぐわないだろうな
だが、私は見ての通りの怪物だ。おまけに、表の世界ではずいぶんと悪事を重ねた犯罪者と来ている
そこいらの店に堂々と入れる身分ではないのでね

なんだ、出会ったばかりの異形を心配でもしてくれているのか? ふ、ふ……冗談だ
こう見えて、身体は頑丈なんだ。生で肉を食った程度なら、私の肉や臓器はびくともしないさ

鳥が哀れだということなら……悪いが、私のような者に説いても時間の無駄だな

【屋上に着地する彼女を目で追い、わずかに彼女の方に身体を向けるが近づこうとはしない】
【少なくとも、彼女の幼いが純粋な感情が、恐怖で上塗りされることはないだろう】
【代わりに大男の方が、翼から放たれる光にわずかに目を眩しそうに細める】

【その様は、あの日に少女が路地裏で出会った、あのピアスの男とよく似ていた】


――――ああ、そうだ。やつとは長い付き合いの仲間だよ
まだ名乗っていなかったな。カニバディールという。以後、お見知り置きを

警戒するのはもっともだが、私はお前をどうこうするつもりはない
今となっては、そんなことをする意味などほぼないからな……

……スカーベッジから、話は聞いているが。やつの忠告に従わず、まだパトロールなどを続けているのかね?

【彼女の幼い目を見下ろしながら。大男は静かに言葉を送り出した】
382 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/05(月) 23:10:10.40 ID:YyferC5B0
>>381

【それはあるいは大人の危惧するような子供のフィクションへの適応なのだろうか。この幼子の場合それは絵本から来るものだけど――不思議な光景には、なぜだか慣れている】
【それともこの子供が人間ではないことも影響しているのかもしれない。母親(マスター)の刷り込んだ価値観と、そういった実際の事情からくるもの。だから、】
【異形めいた姿よりも、その大きな体躯の方が、よっぽど珍しく、あるいは恐ろしく思えるのだろう。――1m近くも身長が違う経験は、あんまりない】

見ただけじゃね、何にも分からないわ! ……なの。それにね? 悪いコトをしたヒトだって、全部ダメなんてないってね、思うな!
わ、私はね、そんなに悪いヒトってお友達に居ないけど、スカーベッジお兄ちゃんとだってね、友達になれるならね、なりたいなってね、思うなの、お兄ちゃんともよ!
だからね――、え、えーっと、あのね! ごめんなさいってすればね、みんな許してくれるってね、思うよ!

……でもでも、お腹が痛かったらね、とってもね、悲しいしね、寂しいよ! 鳥さんは……かわいそうだけど……。……。

【見たままの姿は関係ない、一般的な悪いヒトであっても気にはしない。ごめんなさいをすればみんなも許してくれるだなんて、並べる言葉は、そんなものたち】
【嘘ではなく心からのものだとは分かるのだろう、けれどそれにしたってそんなに深いものではない、いろんな経験があってのその意見にはまだ少し遠い、拙さがあって】
【絶対に許されない悪事の存在なんてきっと知らないか理解していない、まして彼がどんなことをしてきたのかも、知らない。だから、ただ、簡単なものだと思っているような】
【そんな未熟さ。お腹が痛かったら悲しい、寂しい、そんな言葉だって――人間ではない彼女にはあまりなじみのない気持ちだ。怪我ではない、体調不良としての腹痛だなんて、知らない】

カニバディール、お兄ちゃん……? ……、じゃね、私もお名前、教えてあげる!
知ってるからってね、言わないのはね、変って思うわ! だからね、私ね、ファラエナなの!

……あのね、私ね、みんなとね、お友達になりたいの。それでね、みんなとお友達になったらね、いいなって思うの!
パトロールって違うわ、私ね、みんなとお友達になりに行ってるの!

【やがて告げられた名前を小さな声で繰り返すと、少しは警戒も薄れてきたのだろうか。少し悩むようにしてから、改めて、自分の名前を、自分の口で、相手に告げる】
【何もしないという言葉をひとまず信じた様子であるのはやはり拙さにも似て、それでも、お互い手と足の届かない距離感が、少し、まだ、おっかなびっくりの感情が透けて】
【――パトロールと言われると、すぐにでも「違うわ!」というのだろう。ぶんぶん、と首を振って告げるのは。ついさっきの言葉にも通じるもの、とも言え】
【世界中のみんなと友達になる。そしてそれは目の前の彼やあのスカーベッジももちろん含まれる。――きらきらとした目はきれいな理想で染め上げたみたいに、鮮やかで】
383 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方) [sage]:2016/12/05(月) 23:37:33.57 ID:g//lb6gIo
>>382
【そんな少女の裏事情までは流石に思い至らず。スカーベッジからの狭い範囲の情報だけでは】
【彼女のマスターの施す教育や、彼女の歩んできた道のりまでは知ることはかなわなかった】

――――ずいぶんとお優しいことだな?
その年齢を鑑みても、あまりに理想的な考えだ……

お前のいう通りになれば、それが一番だろうがな。現実はそうはいかない。残念なことにな
だが、今のすっかり静かになった世界なら、あるいはその理想も近いかもしれないな

……ふ、ふふふ!! 私やスカーベッジと友達になりたいなどと。そんなことを言われたのは、私も初めての経験だよ
言葉を返すようですまないが、謝って済まないことも世の中にはあるものだぞ? 私がしてきたことは、大半がそれだ

そうだな、腹が痛むのは私もつらい
鳥にはむごいことをしたが、鳥もまた生きるために他の命を啄むだろう。仕方のないことだ
生きるということは、一種の呪いのようなものだと思わないか?

【大男の目は、彼女が本心からそう言っているのだと看破する。まるで無菌室で培養されたかのような】
【危ういまでの純粋さ。大男はひそかに身震いすらした。もとよりどちらかと言えば臆病な部類の大男だが】
【それを差し引いても、なお。この少女から感じ取れる一種の異様】

【だが、あくまでそんな感情は表には出さない。子供に語り掛けるように静かに放し続ける】
【異形がそれをやっても、気味の悪い光景にしかなりはしないだろうが】


礼儀はきちんと教えられているようだな。名乗ってくれてありがとう、ファラエナ
もう、お兄ちゃんなどと言われる歳ではないがね……

友達……友達か。そのために、危険な路地裏やこんな場所にまで足を運んでいると

【彼女の疑念が薄れても、そこに付け入るような真似はしない。もはやそうするだけの悪意も狂気も大男にはほぼ残っていなかった】
【あまりに澄んだ、綺麗すぎるその瞳。鮮やかな理想。やはり、大男にとってそれは】
【あるいは、自分の面相と比べてもそん色ないほどの、異形に見えた】

スカーベッジの話では、お前は生物兵器で……マスターがいる、ということだったか
スカーベッジの悲壮な身の上話は多少は聞いたのだろう? そのうえでなお、そのような理想を
誰もかれもと友達になろうという意思を持ち続けられるとは……私にはどうにも信じがたいな

そのマスターは、いったいどんな人物なんだ? お前をそんな存在に育て上げた者……
多少だが、興味がわくな
384 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/06(火) 00:03:52.12 ID:H8T8GEUL0
>>383

どうして? どうしてなの、私ね、最初はね、ちょっぴり怖かったけど、お友達になりたいな! ってね、思ったよ、なの。
みんなは思わないの? えっとね、でもね……あのね、そうやって思うヒトもね、私以外にね、絶対居るって思うの!
1回があったらもう1回だってあるかもしれないでしょ? ううん、あるって思う! それにね、スカーベッジお兄ちゃんと、カニバディールお兄ちゃん、お友達でしょ?

私ならね、ごめんなさいってしてもらったらね、いいよって言うよ! だってね、それがね、お友達だもん。

……うぇ、呪い? 呪いってね、あれでしょ、私ね、知ってるわ! お姫さまがね、100年とかね、寝ちゃうの。
王子さまのキスでね、目覚めるのよっ。

【友達になりたい。そういうのが自分が初めてだといわれれば幼子は本当にわからないというような顔をした。最初は怖かったとはずいぶん素直なことだが、】
【今までに攻撃されたりしなかったことでだいぶんもう相手のことを信頼しつつあるのだろう……少なくとも、危ないヒトではないようだと。ひとまず、信じる】
【そして自分がそうなのだからきっと自分以外もそう思って、友達になりたいと思うはずだと、思う――あるいは信じているのだ。あんまりに素直に、あたりまえのことみたいに】
【――だからごめんなさいと言われたら許すのだと。相手が何をしてきたのかは知らないけど、自分は許すと。あまりにも簡単に、何も知らないまま、言ってしまう】

【呪いについては――よく分からなかったのだろう。知っている"呪い"を思い浮かべはしても、どうやら何かが違うらしいことだけはわかるけど】
【その言葉の"呪い"に込められた意味をすぐには理解できない。不思議そうな、少し難しいことを考えた時のような、表情を浮かべてみせて】

ううん、あのね、みんなね、お兄ちゃんとかお姉ちゃんみたいにね、優しいって、思うの! だからお兄ちゃん!
……あのねスカーベッジお兄ちゃんもね、きっとね、ちょっとね、怒ってた時だったの! えっと……。

そう、友達なの! ……あのね、友達ならね、みんながね、みんなとね、友達になったらね!
友達にひどいことしようって思うヒトなんてね、きっとどこにも居ないのなの、だからね、あのね、みーんな友達になったらね!
あのね、悲しいこととか、怖いこととかも友達になるの! みんなで友達になっちゃうの! そしたらね、

【「世界からそんなの全部なくなっちゃって、すごい楽しい世界になるよ」】
【――相手のことを兄や姉と呼ぶのは彼女がいろんなヒトに優しくしてもらった経験からなのだという。それこそ兄や姉のように遊んでもらったり、しゃべってもらったりして】
【お友達でありながらきょうだいのようなヒトたち。スカーベッジも、ああはなったが――あるいは勝手な考えで、"そういうこと"に、この小さな頭の中ではなっているらしくて】
【言葉を探しながらの宣言はひどく拙いけれど結局願うのは世界平和だ。それも、悲しいも怖いとかいう概念みたいなものまで全部友達になれば平和になるんだという、少し変わった世界平和】

【友達にひどいことなんてしない。もしも喧嘩とかがあってもごめんなさいって言えば、友達なら許してあげられる。そんな、不可能としか思えないような、理想】

/すみません、ちょっと長くなってしまって削れなかったので分割で……
385 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/06(火) 00:04:22.22 ID:H8T8GEUL0
>>383>>384


うぐ……あのね! 私ね、そうだよ、だけどね、もうね、やめちゃう! って思うの。やーめたってね、思ってるの! 
そんな風に誰かにひどいことするのね、嫌だよ! だから、しないの! おひさまみたいでしょ? おひさまってね、だってね、全部明るくするんだよ!

……お母さん? お母さんはね、あのね……えっとね、ご本が好きよ! それでね、私がね、いい子にしてたらね、絵本を読んでくれるの。
でもね、お外に出ないの! 一緒に遊びに行こっていってもね、ダメなの! あのね、"ひきこもり"なのよ。

【生物兵器という単語が出れば、彼女の表情は隠し事のばれた子供のようだ、うぐうと珍妙な声で鳴いて、顔はにがーいピーマンを食べるしかなくなった時みたい】
【身振り手振りで告げるのはそれはもうやめたのだということ。生物兵器はやめた――そう造られた以上逃れえないはずのものだけれど。彼女の中では、すでに、やめているもの】
【背中の翼はまだそこに残っている。放つ光は暖かで優しいもの――春の午後に降り注ぐ眠たくなりそうな日差しと、同じ明るさで】
【その明るさを信じている様子、だった。それがあれば例えばどんな"暗さ"も照らしてしまえるというような盲信、あるいは妄信、それが、意識の根幹にあるように見え】
【そのおひさまの力を持って、どんなヒトとでも友達になって、世界を平和にする。そんな夢――自分のマスターについて問われれば、少し驚いたようにしてから、】

【簡単に言えば引きこもりなのだというのだろう。「もうね、すごいの!」とちょっと怒って言うあたり、どちらが主人だか――みたいな、ところもある】
386 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方) [sage]:2016/12/06(火) 01:00:47.60 ID:4PhM4JKNo
>>384
……なるほど、お前の言うことにも一理あるな。他にも、お前と同じように
誰とでも友達になれるような者も、いるかもしれない

だが、それと同じように、友達になりたいと思わない者もいるものだ
私は見て来たし、私自身もその類だろう

……ふ、ふ、ふ!! そうだな、私と奴は友達だろうな
お前の言うような、悪いことをしたら謝って許してもらえる、そんな友達とはまた違うがね


……そうだな、呪いといえば子供はそういったものを思い浮かべるか
キスで解けるような呪いなら、よかったのだがね……忘れてくれ。呪い云々については、私の個人的な愚痴だ

【やはり、危うい。危険なまでの純粋さ。自分のような怪人を前に、すぐに襲ってこないからと言って信用を示し始める点もさることながら】
【許し。自分は許す。相手が何をしていようと。彼女は知らないのだろう。そんなことが出来るのは、もはや神の領域だと】
【人の世界の複雑、醜悪を知らないがゆえの。いや、知っていてそのうえで、そう言ってのけられるのか】

お前のその「友達計画」を聞いて、そいつらが否定しなかったのなら、周りにはずいぶん恵まれてきたようだな
……ふ、ふふ!! 確かに、スカーベッジはあれでなかなか怒りっぽいところはあるな……

【世界のすべてと友達に。ある意味では、悪の組織の野望よりもさらに大それた】
【実際に荒事に発展したスカーベッジとの出会いですら、含めたうえで語るのだ。スカーベッジ以外にも、襲われた経験はあるはずだ】
【世界平和。人を踏みにじってきた大男にそれを笑い飛ばす資格もなければ、もうそうするだけの気力もありはせず】


>>385
ぶしつけにすまなかったね。無遠慮なのは、性分なんだ
生物兵器が人を傷つけるのをやめる。まあ、それも一つの選択だろう
そも、兵器として生み出したのなら、意思など持たせるべきではないと思うが……まあ、それはいい

――――ああ、本当に。まるで太陽だ。お前の背中の翼のように、お前の言葉はいちいち眩しい

お母さん……マスターは母親か。ひきこもりで本の虫……それが生物兵器のマスター……
多少だが、どんな人物かの想像はつくな

本は読んでやるが、遊びに連れていくことはない。おとぎ話を語り聞かせて、外を歩くのは許している、と

【彼女のばつの悪そうな反応に、気持ちのこもっていない空虚な謝罪を吐き】
【三つの視線は背中の翼に。元は、命を奪うために与えられた力が、あれか】
【やはり、眩しすぎる。生物兵器としての力も保っているというのなら、ある意味余計に質が悪い】
【そんな風に考えながら、思考は彼女の母親へ】

ふ……どちらが親かわからないな
だが、お前はそんな母親を嫌ってはいないようだな? その人を愛しているのかね?

【彼女にこのような思想を植え付けたのはその母か。何が目的なのかは知らないが】
【今、目の前にいない者のことを考えてもわかるはずもなく。眼前にいるのは、少女一人】
【だから、少女に語り掛けた。特段意味もなく、興味の赴くまま】
【マスターを、母を、愛しているのか、と】

/すみません、途中で一度文章が消えて遅れました……
387 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/06(火) 01:06:16.45 ID:H8T8GEUL0
>>386
/時間も時間ですが、そちらはお時間大丈夫でしょうか?
/お返事書いている最中ですが難しいようでしたら気にせず言っていただけたらと思いますっ
388 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/06(火) 01:20:33.79 ID:H8T8GEUL0
>>386

だけどね、そのヒトはね、きっとこのあと私と友達になるの! そしたらね、きっとね、お兄ちゃんたちとだって友達になれるわ!

【――生物兵器。もとは、誰も彼もを殺すための道具だったはずだ。それも幼い子供に偽装されたモノ、特にずるがしこい形で生み出された、兵器】
【だからもともとは暴力的なもので、けれどその暴力を否定したなら――あるいはこれだって方向性が違うだけで、暴力の一つなのかもしれない、だなんて】
【何も壊すだけが暴力ではない、世界平和なんてただの方向性の話、少し見る向きを変えたら世界征服と何が違うのかなんて、きっと、彼女には説明のできないこと】

【あたりまえに言ってのけた彼女はその違った意味での危うさも気づいていないのだろう。愚痴なのだと言われれば、「私でよければね、聞くわ!」とまで言い】
【かといって言って聞かせたところでどこまで理解するのかはよく分からないものだ。だから絶対にそうでなければいけないということもなく――、】

あのね、そうよ! みんなね、優しいの! でもね、カニバディールお兄ちゃんだってね、"ばか"にしないの、私ね、優しいって思うな!

【ふふーと得意げに笑う、寒さに少し赤くなった頬をほころばせて笑うなら、やはり年頃の幼子だ。存在の年数で言えばもう六年や五年になるのだろうか。そうだとしても】
【全く成長することのない身体はやはりおかしくて、成長の鈍い心もまた、おかしなもの。殺すためだけのものになぜか心があって、だけど、その心は幼すぎて】
【いろんなことを言い表すには少し早すぎる、それ以上に何もかもをプラスにとらえがちなところは、そもそも難しいことを省略してきたような様子も】

……私ね、"姉妹"にきいたの! あのね、私たちを作ったヒト……そのヒトはね、居なくなっちゃったんだってね、言うの。
だからね、きっとね、もうね、やめていいってね、思うの。でもね、そうしたら駄目なのかなって……カエデを見ていると、思うの。
けどね! 私ね、誰かと喧嘩したり、ひどいことするのね、嫌よ! 

【姉妹。少し難しい言葉を得意げに使った彼女は、それからうっかりとおそらく姉妹の名前を口にして、けどそのまま気づかない。姉妹となれば、同じ生物兵器であるとも思え】
【だとしたら複数個体がいることになる、けれど、その生物兵器たちが悪事を働いたという話もあまり聞くものではない――あるいは、使命を失ったものたち、とも言えて】

おひさまはね、誰にだってね、あったかくて、明るいのよ!

【――たとえばその日差しがひどい干ばつをもたらすことなんて、知らないのだろう。雨のない世界で育てる植物なんてありえないし、あまりの強光は植物を殺してしまう】
【おひさまだけできれいな花が咲くはずのないことを知りもしないし、多分、考えもしない。そういう風に教え込まれて、そのまま、信じている。得意に胸を張って】
【気持ちのない謝罪にも気を悪くした様子はない、「気にしてないわ!」と元気に笑って、終わりにして】

あのね、いい子にしてたらね、遊んでくれるの! 
それにね、お母さんね、だーいすき! たくさんお友達を作っておいでってね言ってね、見送ってくれるの!

【こんな時間――そう、幼子が一人で出歩くには遅すぎる、この時間。引きこもりというのなら、どこかで見守っているということも、ないのだろう】
【今まで紡いだ言葉の色合い、夜更けに幼子の姿をした子を外に出す主人、透けて見えるものはなんだかよくない色合いに見えて、けど、本人だけは底抜けに明るく笑っていた】
389 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方) [sage]:2016/12/06(火) 01:21:12.33 ID:4PhM4JKNo
>>387
/お気遣いありがとうございます。まだもう少し大丈夫です
390 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方) [sage]:2016/12/06(火) 01:52:16.86 ID:4PhM4JKNo
>>388
たとえお前と誰かが友達に慣れたとしても、友達の友達同士が仲良くできるとは限らないと思うが……
お前に言わせれば、いずれはみんなが友達同士になれる、ということだろうな

【子供の姿をした兵器、その悪辣さは同じく悪漢である大男にはよく分かる】
【ならば、これは。この純粋さはある意味、違った視点から世界を壊す兵器なのかもしれない】
【そういった考えに行きつくと、大男はやはり心胆寒からしめるものを感じる。この静寂の世界においてなお】
【このような存在が残っている。かつて飛び交った、数多の悪意の交錯。目の前の幼子が、その残滓のようにすら見えて】

【それでも、愚痴の聞き手になるとまで言い放った幼子を前に、もともと薄れかかっていた毒気が抜かれていく】

……ただ生きていくにも食事をして呼吸をして、そのたびに小さな命を奪っていかねばならない
当たり前のことだが、私はその当たり前から目をそらせない。そういう風に生まれて来たんだ
そのことが、今更のように忌々しく感じられた。他の連中のように、そんなことを気にせずに生きてみたかった
そう思っただけの話だ

【ごく個人的な。自身が持って生まれた能力の制約、それについての吐露】
【彼女でなくともわかるはずはない愚痴。しかし、吐くこと自体にも意義はあるのかもしれない】
【少なくともこの場では、言葉と共に大男の毒気は消えていった】

……それは光栄だな
(嘲笑われ、バカにされたのは一度や二度ではないか……当然だな)

【言葉足らずで、かつ彼女自身の性質もあいまって、彼女の話から伝わる情報は少ない】
【あるいはこれすらも、彼女のマスターが敵を混乱させるために仕込んだ罠かとも思えたが】
【幼子にそのような意図がないことは確かだ。今はそれで十分だった】


姉妹……同じケツァル・コアトルか。同型機といったところかね
元の製作者はもういない……それは残念だ。一度、話してみたかった

カエデ――――……・
いや、そうか。元の製作者を失って、その後はそれぞれ自分の主を見つけるか、自分の意志で生きているか
そういったところかね……そうまでしているなら、確かにもう生物兵器とは呼べないな

【彼女が知らず知らずに口にした名前。その名に、大男は覚えがあった】
【以前、配下たちと共に襲撃し、返り討ちにされた三人の女性。その一人】
【戦いの中で配下に、皮肉というべきかスカーベッジに女性の一人が名乗った名前の中に、確かに「カエデ」の三文字があった】

【ファラエナ自身、当のカエデに大男の率いる異形の盗賊団との闘いの話は聞いていたはずだが】
【今、そのことをわざわざ思い出させても不利益になるだけ。そう判断し、それ以上彼女の姉妹には触れず】


…………。そうだな。日の光は暖かいし、明るい。私の故郷は昼の国だが
あそこでは、いつも陽光が降り注いでいたよ。日光は変わらず明るかった
なら、そう感じられないのは受け手である我々の問題だろうな

【己の故郷。悪徳の街。思い起こすはその光景】
【確かに、どれほどの悪徳がなされようと、日輪の輝きは誰にも平等だった】
【それから目を背け、悪意に自ら溺れていったのは自分たちなのだ。ファラエナの言葉は理想ではあったが、一側面では真実でもある】
【植物が枯れ果てようと、人の邪悪が白日に晒されようと。光そのものはただ暖かく、ただ明るい。それだけだ】

そうか……お前の母は、我々の親よりはマシであるようだ
友達を作れと。そう言ったのか……そうか

(ベティーの会った時のあの女……リーベ・エスパスもこんな思いを抱いたのかもしれないな)

【背後に感じる影の暗さに反し、眼前の存在の眩さ。似たような場面を、自分自身が間接的に作り出した過去を想起する】

そうだ……その母親の名前は? お前のマスターはなんと言うんだ?

【やはり己の欲望に忠実に。野次馬根性でそう聞いた。この幼子を闇の中に送り出すその存在は】
【果たして、己も知る闇の住人なのであろうかと】
391 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/06(火) 02:16:13.83 ID:H8T8GEUL0
>>390

【「うん!」と幼子は相手の言葉に大きく頷く、それだけでもう十分すぎるくらいに十分なのだといいかねないくらいに、自信に満ちた、その態度で】

……えーっとね、お兄ちゃんはね、みんながあたりまえーって思ってることね、あたりまえじゃないよってね、思ってるの?
あのね、私ね、それが何かって分からないけど……、だったらね、教えてくれたらね、一緒に考えられるかもってね、思うな! なの!
だってだって、知らなかったらね、知らないってね、分からないよ! 私ね、あのお星さまの名前って知らないけどね、お星さまの博士ならね、きっとあたりまえなの!

【けれど続く言葉にはううんと難しい顔になる。相手の言葉をなるべく受け止めようとして息すら忘れたような顔で聞いて――それで、小さく唸る】
【少し時間が経ったころだろうか。やっと彼女なりに相手の言葉を噛み砕くことができたらしい、ゆっくりとそう言葉を紡いでいきながら、途中で指先が空を指す】
【一つ大きくてまばゆい、つまり目立っていて指さしやすかったやつなのだが。指の先がどの星かはよく分からないけど……とにかく、星の名前を、彼女は知らないけど】
【「そしたらね、次から分かるかもしれないわ」と言うのだ。――もちろん彼がそうしてこなかったとただ決めつけるのではなく、自分は知りたいな、と、そんな色合いのもの】

【――スカーベッジと会った場所も、明るい場所ではなかった。今宵だってそうだ、何が潜んでいるかもわからない廃ビルにおとずれた彼女は、変な場所を好むのか】
【それともそれさえ主人たる誰かの差し金なのか。それはわからないけれど……この警戒心の薄れていくさまからすると、何度か危ないことはあったのではないか、とは、思えて】

そう! いっぱいね、姉妹がいるのよ! ――けどね、きっとね、みんな、忙しいのね。ちいともね、会えないの……なの。

【くしゃと顔が寂しそうになる、昔はよくお話をしたものだ、一緒にお菓子を食べたりして、お互いのマスターのことを話したり、したものだのに】
【主人を喪った個体もいる。どうやって話したらいいのかは、今でもまだわからない。だから寂しくて、もっと上手におしゃべりできたら良かったのに、と、かすかに思う】

あのね、おひさまの中でね、お昼寝するとね、すっごく気持ちいいんだよ! 私ね、いっぱいおひさまを浴びないとね、ダメ……なの。
充電みたいにね、おひさまの光をいっぱい浴びるのよ! 昼の国ってね、行ったことないけどね、知ってるよ! ずっとおひさまがあるんでしょっ、いいなあ。

【どうやら彼女の力は日差しそのものを取り込む必要もあるらしい。だからこそ太陽の光とよく似る……むしろ同じとも言っていいくらいに、その光は暖かく明るく】
【それに全幅の信頼を置いているらしいことも本当だし誇りにも思っているのだろう。だからこそおひさまは暖かくてみんなに明るくて暖かい、――けれど何か】
【相手の言葉に一瞬顔を浮かないものにするけれど、言葉を見つけられない――むずがゆいようなもどかしいような、しばらく奇妙な顔をしていたのだけど】

そうなの、あのね、路地裏とかね、こういうところにはね、暗い場所のヒトたちがいるからね、いっぱい明るく、暖かくしてあげておいでって!
応援してくれるのなの、私がね、みんなと友達になりたいって言うこと! ……でもね、あのね、お母さんの名前は内緒――なの。お家もね! 内緒だよっ!
お母さんがね、ヤダっていうの。私はね、友達とかね、もっと遊びに来たらいいなって思うけど……お母さんが言うから。

【――さぞいい知恵を授けてもらったとでも言うようだった。だから、わざとなのだろう。こうして一般的に危ないとされる場所や路地裏に近づくことは、全部】
【名前も、住まう家の場所も秘密。この幼子が何かしても自分だけは何の被害を受けないように……だなんて深読みみたいだけれど】
392 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方) [sage]:2016/12/06(火) 03:13:41.99 ID:4PhM4JKNo
>>391
ああ、当たり前というのは残念ながら人それぞれで違うということもあり得るものだ

一緒に考える……知らなければ、知っている者に聞く、か。ふ、ふっふふ!!
いやすまない、確かにその通りだ……

何、単純な話だ。私の能力、その性質だよ。簡単に言えば、死んだ生き物の声が聞こえるんだ
虫を踏み潰した時、先ほどのように鳥を殺した時、あるいは人の命を奪った時……
死んでいったものの声が聞こえるようになる。私にはそういう性質があるんだ

そんな私が、他の連中と友達になるには……さて、どうしたらいいと思う?

(星……か)

【あまりにも単純で、しかしそれゆえに的を得た答えだった。彼女なりに必死に、自分の言葉をかみ砕いた結果】
【そうまでしてくれた彼女に対し、自然と自分の抱える闇の一端が口をついて出て来た】
【幼子がそれを聞いて共に悩むには、あまりに重苦しすぎることだとわかった上で】

【一方で脳裏をかすめるは、あの夜。こうしてビルの屋上というシチュエーションも同じ】
【鈴の音の少女との、ひと時の会話。思い出すと柄にもなく、感傷的な気分に陥る自分がいた】



そうか……たくさんいるのか
だが、会うことは出来ないと。それは気の毒なことだな……向こうも、きっと会いたがっているだろうに

(あのラベンダァイスを思えば、他の個体がすべてこうではないようだが……このような場所をわざわざ訪れる辺りが、もし)
(そのマスターの差し金であったならば……その姉妹たちが、今も生きているかどうかすらわからんな)


日光浴とは良い趣味を持っているな
充電……なるほど、その光の翼にも代償は必要なのだな

ああ、昼の国は太陽が沈まない。お前にとっては、暮らしやすいところかもしれんな

【彼女の顔によぎった陰りを、敏感に感じ取る。自身の並べた言葉の何かがその琴線に触れたか。あるいは】
【生物兵器としての彼女に、何か隠された要素でもあるのか。浮かぶ疑問には関係なく、陽光は降り注ぐことだろうが】

内緒、か……残念だがそれなら仕方ないな。一度、お会いしてみたかったものだが
ふむ、路地裏やこんな廃ビルを回っているのは、母親の言いつけか。スカーベッジに出会ったのも、その過程ということだな?

どんな人なのかも、聞いてはまずいかね? どんな服を着ているかとか、どんな本を読んでいるのかとか……

【言いながら、やはりそこに親心とは程遠い何かを感じ取る】
【我が子をこの世界の路地裏に送り込む親が、まともであるはずがない。さらに、この秘密主義】
【やはり、裏にうごめく影を感じずにはいられない。大男は諦めず、少しでも情報をくみ取ってみようと】
【もう少し、幼子に質問をぶつけてみることにした】

/すみません、そろそろ時間が危うくなってきました……
/いったん凍結して、明日以降にまたお願いできますでしょうか
393 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/06(火) 03:17:17.73 ID:H8T8GEUL0
>>392
/こちらもちょうどお願いしようと思っていたところです、持ち越し大丈夫です!
/返せるようになり次第お返事しておきます、ひとまずお疲れさまでしたっ
394 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方) [sage]:2016/12/06(火) 03:17:48.23 ID:4PhM4JKNo
>>393
/ありがとうございます! ひとまずお疲れさまでした!!
395 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/06(火) 19:52:32.29 ID:H8T8GEUL0
>>392

え、ええ? お兄ちゃん、お化けさんの声がね、聞こえるの? ……なの?
私ね、お化けの友達ってね、居ないわ! 会ったことだってね、ないの、――だからね、うーんと、どんなヒトたちかって、分からないけど、……。

【虫を殺したとき、鳥を殺したとき、――人間を殺したとき。その言葉にやはり一瞬表情をこわばらせた彼女は、それでも、少しだけある怖いような気持ちをぐっと飲みこんで、】
【ひとまず彼の話したことを受け入れようとして、ひどく簡単にしてしまったのかもしれないけど、お化けの声が聞こえる――と、そう理解するのだろう】
【いろんなヒトと友達になりたいしなってきたつもりだけど死んだものと友達になったことはないから、だから、眉をふにゃっと下げてしまって、もう少し、考え込む】

えっとね! あのね、えっと……あのね、そのお化けさんたちとはね、お友達になれないのかなーってね、思うの。
だってね、ずっと一緒なんだってね、思ったの! だったらね、まずね、そのヒトたちとお友達になれたら、お友達いっぱいでしょ、それで……。うー、んと、
私だったらね、まずね、そのヒトたちとお友達になる! それでね、それからね、他のヒトとも仲良くなりたいな。だってね、一番近いのに友達じゃないってね、寂しいし!

【きっと彼はたくさんの生き物を殺した人なんだろうという理解がようやくゆっくりと追いついてくる、けど、それを咎めるだけの言葉は、まだ持ち合わせない】
【なんとなく冷たいような重たいような気持ちがあって、だけど同じくらいにそれでも仲良くなりたいと思う気持ちがあって、難しいことを考えるのも、まだ苦手で】
【だから自分だったらどうするか。自分だったらその声と友達になりたいと思う。それができるとか、できないとか、それより先に、やってみるだろうと、自分の意見】

それにね、こうやっておしゃべりしたらね、みんなと友達になるのなんてすぐだよ!

【お化けとの友達になりかたは試したことがない、けど、多分、やりかたはそれでいいんじゃないかとも、思って】

【――あの夜。ビルの屋上で星を見上げた、あの日。あの少女が浮かべていた顔は、どこか、この幼子が浮かべている表情と似ているようにも見えた】
【敵ではないけれど、味方でもない。そのあいまいな中で彼の傷をわずかでも癒そうとしたこと、暗い中で警戒もなく星を教わり見上げたことと】
【きっともう彼のことを友達だと認識してしまっているような幼子が浮かべる信頼の表情は、あちらの方が確かに大人びてはいたけど、根っこは、確かによく似ていて】

そう! おひさまをいっぱい浴びたらね、元気になってね、いっぱいまぶしくなるの!
だからね、夜でもね、ぴかーってできるんだよ! あのね、怖いヒトに追いかけられたりしたらね、まぶしくしてね、バイバイってするの!

【暗い中での光による目つぶし。それが幼子がよく用いる手段なのだろう、あたりまえに口に出してから、背中にある魔力の翼を、音もなく羽ばたかせてみせ】
【そういった場所に赴く割に元気そうであるのはそうしてすぐに逃げてしまうから……というのも、どうやらあるらしかった】

んー……ホントはね、ダメなんだよ、でもね、おしゃべりしてくれたお礼にね、教えてあげる!
あのね、全部は怒られちゃうからね、お母さんね、先っぽだけ紫色のね、真っ黒い髪してるの! あのね、これとね、おんなじ色だよ!
それでね、櫻の国のお洋服ね、よく着てるの。私はね、きづらいなってね、思うけどっ。

【さらにぶつけられる質問に困ったような声を漏らした彼女は、けど、その前に。彼が先に秘密を教えてくれたことがあったから、だろうか。悩みぬいてから、少しだけ】
【秘密の内緒話であるかのように声を潜めて、そう、教えるのだろう。特徴的な髪色と服装だけだが――そしてそれは、誰か有名な悪人の特徴、ということもないはずだ】

/再開できるようになりましたのでお返ししておきます! よろしくお願いしますー
396 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/06(火) 20:06:28.91 ID:lakR3ms1o
【水の国・中心街】

【大通りの真ん中で豪奢に飾られ輝く大きなモミの木と軽快な季節の歌が、帰宅の途に着く社会人達の足を少し緩めていく――そんな時期】
【街中に張り巡らされるイルミネーションと商業施設のショーウィンドウに飾られた品々が、寒空の下で仮初の暖かさを作り出していた】

あっ、いっけない! ……ってやだ、えっと、何でもないでーす。あはは……はぁ。あたし疲れてるなぁ、こんな街中で大声で……、

【不意に大通りに響いた声、周囲の行き交う人達の胡乱気な視線を浴びて俯くのは、声さえ上げなければただのOLの一人だっただろう人】
【少し内巻きにしたボブの黒髪にぱっつん前髪が女性らしさと快活さを伺わせるような、20代前半の女性。茶の瞳には少々、隈が目立つ】

【彼女はその場から逃げるようにそっと近くのベンチへ腰掛け、トレンチコートの下からロングブーツの間、タイツに覆われた太腿を擦る】
【その手に時折はぁ、と白い吐息を吹き掛けているのは、寒さのせいだろう。まだそこまで本格的に冬が来ている訳でもないが、どうにも】
【表情からして、疲れ切っているのだろう身体には堪える辛さであるらしく。「手袋買っていっちゃおうかな、」なんてぽつりと呟き】

手袋と言えば企画……まだ上に話してないなぁ、どうしよう……後輩くんも多分何も手付けてないだろうし、あたしが頑張らなきゃ、

【そんな事を元気そうに言って、ぎゅっと両拳を握ってはみるものの。一連の流れを見ていれば分かる程、無理に無理を上塗りしていて】
【握った程度で温まらない両手を思い出したように擦り合わせて、華やかな街中を茫洋と俯瞰する瞳は、どうにも本当の元気なんて無く】
397 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方) [sage]:2016/12/06(火) 23:49:24.40 ID:4PhM4JKNo
>>395
ああ、そうだ。オバケの声が聞こえるのさ。四六時中、ずっとな
ふ、ふ。そうだろうな。流石に死人と友達になる機会はそうそうないだろう

【幼子の表情が強張るのを見て、大男は薄く笑う。幼子を前に、なんと邪悪なことか】
【必死に目の前の怪物を理解しようと、彼女なりに嚙み砕いていく様を見て、愛らしい眉が下がるのを見て】

【目の前の男が数多くの命を踏みにじったのだと知って、それをまだきちんとわかっていないのだとしても】
【友達になりたい、という純粋な彼女の想いは、果たして生気を減じた異形の三つ目にはどう映っていることか】

【そうして、彼女が必死に提案してくれた意見に対し。大男の表情は複雑な色を帯びた】

――――その通りだな。常に一緒だ。奴らとは、ずっと一緒にいる
一番近い存在と言うのは確かだ。どれ、ならば聞いてみるか……

おい。私と「友達」になる気はあるか?
彼女はああ言ってくれているが……我々も「お話」をすれば、仲良くなれると思うかね?

【その言葉は、幼子に向けられたものではなかった。自らの肉体のうちにのたうつ、いくつもの魂に向けたものであった】
【大男の言葉が発せられた少し後、大男の両腕や首がびくびくとうごめき】
【ボコボコと気味の悪い音を立てて膨れ上がり始めた。幼子が目にするにはあまりにもあまりな光景】

【巨大な肉塊と化した大男の腕や首の肉の表面に、無数の人間や動物の顔が浮かび上がり】
【一斉に呻き、叫び始める。耳をふさぎたくなるような声で】

あああああ……ふざけるなあああああ……!!!
殺しておいて……あんな真似をしておいて、よくもよくもおおおお……
憎い憎い憎い憎い憎い憎い=@どうして……どうして……どうして……

逃げろ……逃げろ……君も殺される……逃げろ……

【その顔のうちいくつかは、確かに幼子へと語り掛けていた。逃げろ。危ない。君もこうなる】
【口々に訴えるその顔たちは、苦し気に歪み肉塊でありながら目に当たる部分から涙すら流している】

【やがて、大男がわずかに身を引くような動きを見せると、肉塊たちはいっせいに大男の体の一部へと戻った】

……どうだろう、ファラエナ。彼らはみな、私が殺した者たちだ
私は彼らと……友達になれると思うか?

【陰鬱な声音で言いながら、大男はあの夜へと思いをはせる。あの少女とどこか似通った表情】
【目の前の相手をどう認識していいのかわからず、戸惑うような。それでも、少しでも歩み寄ろうとするような】
【生きているうちに、二度もそんな相手と出会うことになるとは。何の因果であろうか】
【もっとも、今の凄惨な光景を目にした後で、彼女の顔にまだわずかな信頼の色が残っているかはわからないが】


……なるほど。護身にも大いに役立つということか
その光の眩さなら、路地裏を這いずる我々のような地虫どもには確かに効果てきめんだろうな

【己の手の内を曝すかのごとき言動。わかっていたとしても、その光はまず防ぎきれるものではないだろうが】
【目の前の幼子が、そんなことにまで考えを至らせているとは思えない。ただただ、純粋であるがゆえに】

【羽ばたかせて見せる魔翌力の羽を横目に、それが自分に攻撃として向けられたなら、という想像が脳裏をよぎった】


それはうれしいね。ありがとう
ああ、話せるだけで構わない

――――ふむ。櫻の服に、先だけ紫の黒髪……なるほど
無理を言ってすまなかったね。どうやら、私の知り合いではないようだな

(少なくとも、名の知れた悪党というわけではないようだ……)

【彼女と同じように声を潜めて、大男は幼子の言葉を咀嚼する】
【その特徴を記憶の中に投じてみるも、少なくとも自分の知る限りではそのような人物が】
【闇の世界で幅を利かせているということはないはず。秘密主義なのは間違いないようだ】

【そんな結論に達すれば、幼子にもう一度話してくれた礼を述べて。それ以上の追求はしないだろう】
398 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/07(水) 00:16:41.57 ID:Apdgxx/x0
>>397

【きゃあ、と、鋭い悲鳴が漏れた。子供特有の高い声、昼間の公園などで聞くこともあるような、高い――けれど、あの平和さとは明らかに性質の違うもの】
【そう、自分ならきっとその"お化けさん"たちとも友達になりたい、そうすれば独りぼっちだなんてこともきっとないし、いつでも友達と居られるなんて、きっと楽しい】
【考えていたことなんてその程度だった、だから、その彼の変化もそうだけれど――発せられる言葉の悲壮さ、あるいは悲痛なさまを、予想だにしていなかった、という、顔で】

わ……、きゃ……、

【まあるい瞳はもっとずっと丸くなって、怖いはずだのに、ぼこぼこになったその身体に浮かぶ顔から眼をそらせない。口元にあてた手の向こうで、口はぱくぱく、と動き】
【この光景に対する理解を必死に追いつかせようとする、そこに――きっと親切なヒトなのだろう。逃げろと警告をする声、わなわなと震える指先と、ふらり、と、振る首と】

ち、ちがうわっ、だって、私になんにもひどいことだなんてしないのよっ、だから、ちがうわっ……、

【――ひどくおびえた声、だった。さっきまでの快活とした様子ではない、震えて泣きだしそうな声は、それでも、殺されはしないと、警告をした顔へ、返す】
【友達になりたいと思った気持ちをせめて貫こうと怖がる自分を無理やりに奮い立たせる、なんだこれ、怖い、と、思う気持ちをぎゅっと飲み込んで――それでも、足が震える】
【路地裏で死んだヒトを見てしまったことはある。だけれどこんなに奇妙なものではなかった。ぼこぼこに浮き上がった顔、一つ一つの声が、耳の奥にねばりつくような】

だって――だって、私ね、みんなとお友達になるの、だから……。

【やがてその顔が消えてしまっても、小さな身体の震えは止まることがない、今の光景と声で、初めて、彼のしてきただろうことの形が、やっと、見えて】
【ヒトを殺したヒトというものを知らなかった。あの鈴の音の少女は一度だってこの幼子にそのことを話さなかった。というより――この幼子に話して聞かせるほうが、まれだろう】
【幼子に姉と慕われる鈴の音ですら言わなかったことを彼が初めて幼子に言って、見せて、やっと分からせた。スカーベッジもそうだ、彼らはいつも初めてのことばかり教えてくれる】

【みんなと友達になる。そうして世界を平和にする。その願いは、自分以外の場所でも、決して友達になれない間柄だなんてものがあると、きっと、困ってしまう】
【けれどたった今見せられた怨嗟はどうしてどうやれば、どう頑張ればその間を埋められるのかが分からなかった。逃げはしない、けれど、これ以上近づくのが、怖くなってしまいそうで】
【逃げださないようにとぎゅっと足に力を入れて立つのが精いっぱいなくらい、光景も、声も、すべてがショッキングで】

……でも、ね、友達はね……喧嘩しちゃうこともあるのよ、ご本でだってね、あるの……、でもね、最後は、絶対仲良くなれるの――なの、
だってご本にそうやって書いてあったわ! 書いてあったもん……。

【きっと頭の中に浮かべられているのはお話にありがちな仲たがいと仲直りの様子。母に与えられた本に、それが叶わない喧嘩なんてなかった、みな、最後に必ず理解しあう】
【世界を滅ぼそうとした魔王とさえ勇者はわかりあって幸せに暮らすのだ――という思考回路が深く根付いている、あるいは、根付かされている。だから、だから、と繰り返すさま】

【子供を愛さない親の存在。けして理解しあえない間柄の存在。彼らの示したものはそのどちらもが彼女を大きく揺さぶって――気づけば、その眼には大きな涙が浮かんでさえいた】
399 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方) [sage]:2016/12/07(水) 00:43:41.74 ID:y8F/fC1Bo
>>398
【幼子の悲鳴を聞いた時、醜悪な微笑はもう大男の顔からは消えていた】
【子供の怯えた声など、幾度も聞いていたはずなのに。それどころか、この手にかけたことすらあるというのに】
【何故だか、悪意の満ちた笑みは今の大男には浮かべられなかった】

【それは彼女のあまりの純粋さに触れたからか、彼女が鈴の音の少女と似ていたからか】
【いずれにせよ、あまりにむごたらしい肉の怪異の姿を、幼子に突き付けることは止めはしないのだが】


【幼子が首を振って否定するのを見ると、警告を発した顔はひどく悲しそうな顔をして】
【自分の声が届かなかったことを嘆いているのか、彼女の行く末を想像して嘆いているのか】
【それ以上には何も言えないまま、その顔も他の顔とおなじように肉の中に引き込まれて消えていく】

【かつて、不殺の信念を貫き続けたマーシャル・T・ロウをすら「殺してやってくれ」と叫ぶに至らせた】
【かつて、正義を胸に戦い続けたセリーナの心をすらへし折りかけた】
【そんな異形の罪の重さそのものを端的に表す、地獄を封じ込めた肉体】
【世界のやさしさを信じ続けた、幼子にとってはあまりにショッキングだったことだろう。逃げださずにその場に立っているだけでも大したものだ】


【その裏に隠れた鈴の音の少女の優しさを、知らぬ間に踏みにじる。いや、知っていたとしてもそうしただろうか】
【生気を失おうと、あの日々が色あせようと。この男が、救いようのない悪党であることに変わりはないのだから】

否定するつもりはないとも。その本の語るところとて、真実の一側面だ
喧嘩をすることも、涙を流すこともあるだろう。それをもう一度、やり直すことも出来るだろう
お前の読んだ本は正しいさ。少なくとも、私よりはずっとな

――――しかし。取り返しのつかないことというものも、残念ながらあるんだ。ファラエナ
私やスカーベッジが、そしてスカーベッジの親がしてきたことは、それだ

理解の果てに幸せに暮らしていける……素晴らしいことじゃないか
だが、その中に入っていくことが出来ない者がいる――――少なくとも、お前の目の前に一人

お前のその純粋さは、その光は、私やスカーベッジのような人種以外を照らすために使うべきだと
私はそう思うがね……選択だよ、ファラエナ。おひさまに出来なくて、お前に出来ることだ

照らす相手は、選んだ方がいい。とてもとても残念なことだがな
本には「外側」がある。本の中の幸福の、枠の外がある。それだけの話だ。そんな外側にまで気を配る必要はないだろう

【柄にもなく、諭すような言葉を並べたてた後で。先ほど彼女がしたように】
【この場だけの内緒話だと言わんばかりに声を潜めながら、大男は幼子にそう語った】
【澄んだ涙をいっぱいに溜めた彼女の瞳を、漆黒の三つ目でしっかりと見つめながら】
400 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/07(水) 01:27:52.49 ID:Apdgxx/x0
>>399

【誰にも分かってもらえないと自分で認識している状況は苦しいものだと思っていた。けど、この、幼い子供にどう伝えたらいいかを、"彼女"は悩んでしまった】
【それが友達――かどうかは置いておいて、もし誰かがそんな気持ちを忘れてしまうくらいに分かってもらえたと思えば、誰かのことを信じることができれば】
【そうすれば、きっと、少しだけ、少なくともそのひとの世界は救われるのではないかと思って――だけど、少し口下手な少女には、結局、上手な言葉を見つけだせなくて】
【「いろんなひとの気持ちを分かって、分かってもらえたって思ってもらえたら、きっと、みんなと友達になれるよ」】
【小さな頭をくしゃくしゃと撫でて伝えた言葉――頭の中で撫でられた感覚と鈴の音の声が思い返されて、けれど、もう、そうなんだと思った、その気持ちを約束できない】

だから……だからぁ、お兄ちゃんたちだって、仲良くなれるの、仲直りするの……ご本みたいに……。
それでね、みんなね、お友達になるの……、だって、みんな、できるよって……、

【目にたまった大粒の涙がぼたぼたと落ちていく、柔らかそうなほっぺたを伝って洋服に水玉模様を描いていく、右頬の蝶もまた、ぺったりと濡れて】
【きっとみんなで仲良く手をつなぐ未来ばかりを想像してきたのだろう――あるいは、そうではない、いわゆる悪人と呼ばれるヒトたちを見たとしても、考えないような】
【それはさておいて仲良くなれると思いこむ現実逃避、あるいは思考停止。初めてまっすぐに突きつけられて動揺する、"これ"は知らないと、思ってしまう】

【悪人こそ救われるべきだと誰かが言った、あたりまえに救いを与えてもらえる善人ではない、誰も救おうともしないような悪人たちこそ、救うべきだと、誰かが】
【だけれど幼子はそんな言葉を知らない、ただ何かを言いたい気持ちがあって、だけれど心はすっかりと怖気づいて、震えている。震えて、泣いてしまっている】

でも……お兄ちゃんたちがいなかったら、みんなじゃないなの、私は、みんなとお友達になりたいわっ……!

【ひどい混乱だった、あの怖い顔たちの声がまだ耳の奥で渦巻いている。逃げろという言葉が反響して、今からだって、逃げ出したくなる】
【彼はあんな声をずうっと聞いているのか――それはひどく恐ろしく思えて、同時に、逃れることのできない彼が、かわいそうにも思える。あんなのを聞いて、普通でいるなんて】
【きっとできやしない、自分だったら眠ることだってできないだろう。きっとそのまま死んでしまうと思うくらいのこと、で】

……私っ、私、お兄ちゃんと! 友達になったわ! 決めたの! 今よ!

【ぼろぼろ落ちる生ぬるさがすぐに夜風で冷えていく――仕草は、急だった。だん、!と地面を足が踏みつけて、大きな音を鳴らし】
【いまだ泣きじゃくりながら乱暴な声で宣言する内容も、また、ひどく乱暴なもの。勝手に決めてしまう、勝手に友達だと思うことにする。……怖いけど、怖いままだけど、】

ぶつぶつのお顔は怖いけどっ……お兄ちゃんの言ってること、私ね、よく分からないけどっ、
もっとお姉さんになったらきっと分かるわ! だから、先にお友達になるの!

【今度はもう一方の足を踏み鳴らすなら、それは地団太だろう、どうしようもなくて、どんどんと地面を叩いて鳴らす。あるいはムキになったみたいにも見えて】
【意固地になった子供のわがままだといわれてしまえばそれまでなくらい、無意味に声を張り上げて自分が強いというような様子は、子供が自分を誇示するのと何も違わなくて】

/申し訳ないです、後あまり長くないとは思うのですが、少し眠気が出てきてしまって……
/もう一度凍結をお願いできますでしょうか? 難しいようでしたら置きでの続行も可能ですので……!
401 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方) [sage]:2016/12/07(水) 01:33:52.85 ID:y8F/fC1Bo
>>400
/了解です、こちらこそ何度もお待たせしてしまってすみません……
/返しておきますので、また可能な時にレスいただければと思います
/いったんお疲れさまでした!
402 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/07(水) 01:39:57.18 ID:Apdgxx/x0
>>401
/本当に申し訳ありません、それでしたら明日お返しできる時間にレス付けておきますので……!
/お疲れさまでした。また明日よろしくお願いします!
403 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方) [sage]:2016/12/07(水) 13:41:53.97 ID:y8F/fC1Bo
>>400
【鈴の音の少女は悩んだ。当然のことだろう。幼子に何かを伝えるということは、生半可なことではない】
【まして、生物兵器として生まれ、危険なまでの純粋さを有するファラエナに】
【それでも、絞り出した鈴の音は、幼子にとってはきっと大切なものだったはずだ】
【だが、醜悪な異形はそれを穢れ切った肉の塊で押しつぶす】

出来るとも。我々以外であるならばな。「みんな」の範疇に、我々のような人種は入らない

【陰鬱な声だった。窒息しかかっているような重苦しさを孕んだ声音だった】
【幼子が流す大粒の涙を、その滴の中にほんの一瞬映り込む自分自身のあまりに醜い顔を、じっと凝視しながら】
【悪人こそ救われるべきだ。尊い言葉ではある。しかし、それが今この場の救いに、なるかどうか】

言ったはずだ。「みんな」の範囲に入らない者がいるんだと。見誤るな、ファラエナ

【物心ついた時から、聞き続けて来た怨嗟。異形の大男はこれを子守歌に育ち、これを引きずりながら罪を重ねた】
【己の意志で罪をなしてきた悪漢、カニバディールのただ一つの悲劇。持って生まれた呪われた肉体】
【幼子がそれを憐れむというのなら、それはこの男のただ一つの悲劇を射抜いた、実に的確な憐憫であったのかもしれない】


何……?

【彼女が廃ビル屋上の汚れた地面を踏みつける音と、その叫びを聞いて大男が初めて面食らった様子を見せる】
【恐怖に彩られた彼女の顔はそのまま。今すぐにでも彼女が踵を返して飛び去るか、場合によっては戦闘になることくらいしか想像していなかった】
【再び、鳴り響く地団駄の音に、大男の巨躯がわずかに揺らぐ】

――――あれを見たうえで、そこまで言えるなら大したものだ。ファラエナ
……なら、友情の証に、握手でもしてみるかね?

【ここで初めて、大男は動いた。叫び、喚く彼女の方へと、一歩踏み出したのだ】
【彼女の反応を確かめるように、ゆっくりと。もし、彼女が抵抗の兆しを見せなければ】

【大男は彼女のそばまで歩み寄り、右手を差し出す。握られていた鳥の死体は左の手に移されていたが】
【差し出された右手には、わずかではあるが新鮮な鳥の血が付着していた】
【血塗れのこの手を、握ることが出来るか。幼子にはあまりに酷な問いをぶつけているかのように】

【殺意も敵意も悪意もそこにはなかった。拒絶を受ければすぐにでも動きを止めるだろう】
【大男はただ、己の醜悪な姿をそこにさらけ出して、幼子に相対した】

/返しておきます!
404 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/07(水) 18:55:59.73 ID:Apdgxx/x0
>>403

【彼の大きな身体の仕草に、ぴくり、と、小さな身体がわずかに跳ね上がる。あのたくさんの顔が再び現れるのではないかとおびえて、けれど、そうでない様子だとすぐにわかれば】
【唇をぎゅっと噛んで自分を奮い立たせる、怖いことなんて何にもないわと心中で唱えて、最初に会った時の姿と何が違うのと、冷静に考えて見ようとする。違うのは自分だけだから】
【だから自分がきちんとお姉さんでいられれば大丈夫。何度も心の中で繰り返しても、喉の奥で呼吸が震える。へたくそになった呼吸が乱れて口から洩れて、それでも】
【じっと彼のことを見上げて――頬っぺたをぐちゃぐちゃに濡らしたまま、それでも背中に咲く光の翼の暖かいのが、後ろから、そっと、背中を押してくれるような気がして】

だ、だって……そうよ、おひさまはね、誰にだってあったかい、のよ……なの、悪いヒトだったらおひさまが冷たいなんて、そんなこと、ないのよっ。
だからね! 私だって、私だって――!

【背中のおひさまが幼子を後ろから照らし出す、細くてくしゃっとした毛までも淡く輝かせて、その向こう側に立つカニバディールまで、かすかにでも届くのだろうか】
【おひさまは誰にでも暖かいもの。げんにいま暖かく感じる背中の熱を、ただそれだけで終わらせちゃいけないと思う、そしたら自分はただの日陰を作るだけのものだし】
【透けちゃうのはできないけれど、多分この光を彼の場所まで暖かく届かせる方法がきっとあるはずだからといっぱい頭の中で考える、でも、まだよく分からなくて、ぐるぐるする】

おひさまは、ち、……血だって怖くないんだからっ、ほ、ホントよっ……。

【差し伸べられる右手はきっとうんと大きいのだろう、赤く付着した血のまだ湿ったところが月明かりに艶めいているのに目が釘付けになって、へにゃと眉が下がっていく、けど】
【それでもまだ小さくてふにふにと柔らかいもみじの手を精一杯に伸ばす、何もなければそのまま触れるだろうし――そうすれば、子供によく似た、高めの体温がそこにある】
【人懐こくはあるが、父親代わりの人間はいない。あまりに大きな彼の姿は、そのまま、慣れない成人男性への気持ちも含まれて、それが余計に指先までぎくしゃくさせているよう】

……ほ、ほらっ、これで友達なのっ、それでね、私がもっとお姉さんになったらね、もう一回、お兄ちゃんたちがお化けさんと友達になれる方法……考えるの!

【それでも触れることが叶えば案外なんでもないじゃないとそんな短絡的な余裕も少し出てきて強がって笑う。その顔で、気づけば涙は止まっていて】

それにリーベお姉ちゃんが言ってたわ、1人じゃムリでも、2人とか、3人とかで考えれば、きっと、たくさんのことが分かるって。
だからね、きっとわかるわ、こわかったけど――わ、私だってね、ちゃんと考えるのよ……なの!

【まだ少しの怯えは見えるだろう、もう一度あのぼこぼこが出て来やしないかと心のどこかで恐れている、けれど同じくらいにそれを奮い立たせるような色も、確かにあって】
【つないだ手にぎゅうっと力と魔力を籠めてみる。子供らしい握力のなさに、やがて、太陽で暖められたものに振れた時のような、じんわりとした暖かさが、混ざりだす】
【攻撃ではないもの――自分の持つ暖かさを示そうとするような、少しの、意地っ張りにも似て】

/お返ししておきます……が、次は食事後になるかと思うので、少し遅くなります……!
405 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2016/12/07(水) 21:12:15.11 ID:9aAw2GRRO
>>404
【幼子の小さな身体がぴくりと跳ねる動作にも構わず、大男は二歩目を踏み出した】
【唇を噛みしめ、呼吸を震わす彼女の何と健気なことか。対する大男の何と禍々しいことか】

【見下ろす大男は一見すると無表情であったが、涙に濡れた頬と光の翼を見つめる三つの眼球には、言い尽くせぬ複雑な感情が渦巻いていた】

ああ、そうだな……おひさまは誰にでも平等だ
だが、おひさまのように在り続けることは、恐らくお前が思う以上に難しいぞ

【文字通り、後光が差すというべきか。いや、それを背負うには彼女はあまりに幼すぎるのではないのか】
【その光量がかすかだった故に、大男は先のように眩しげに目を細めることはなかった】
【それは、ファラエナの純粋さが起こした、小さな小さな奇跡であったのかもしれない】

【彼女の心中が僅かに大男の心に触れた、と言えるかどうかはわからないが】
【精一杯、彼女が考え抜いたそれは、全くの無駄とはならなかったことは事実だ】

本当か? 恐ろしいなら、無理をすることはないぞ?
そうしたとしても、誰もお前を責めはしないだろうさ

【彼女の小さな手に比べて、大男のそれは無骨で醜い】
【月明かりを怪しく跳ね返す血痕は、幼子の八の字の眉の前に突き出される】

【ぎこちない動きを見せる小さな手を、包み込むように大きな手が静かに握った】
【彼女の方に伝わるのは、彼女のそれより低い体温。しかし意外にも感触は普通の人間のそれだろう】


……そうだな。お前は恐れずに私の手を握った。ならば私とお前は、友達だ

ふ、ふ……ああ、期待して待っているよ
その時まで、私が生きていられるかはわからないがね

【涙の止んだ幼気な顔を眺めながら、大男が浮かべた笑顔は、やはり醜悪であった】

リーベ……リーベ・エスパスか? 彼女とも知り合いなのかね?
私も、彼女とは一度会ったことがある……どこか、お前に近いことを言っていたな
なるほど、彼女ならばお前と気が合いそうだ

ふむ、それは一理あるな。三人寄れば文殊の知恵という言葉もある。リーベのやつもなかなか良いことを言うじゃないか

考えるというのは大事なことだ。案外と気付きにくいことだがな

【もう、その怯えの元である呪わしい肉は現れなかった。それは変わらず、カニバディールの中であの声を上げ続けているのだろうが】
【幼子にそれがさらされることは、もうない。僅かな、しかし確かな力で握りしめる手に、肉の蠢く気配が伝わることはない】

【込められた魔翌力、流れ込んでくる暖かさ。異形にはあまりに似つかわしくない代物】
【子供らしい意地を張る幼子を前にして、あまりの釣り合わなさに自嘲すら内心に湧いた】
【正義を掲げる者たちからすれば、彼女と同じ空間にこのような異形が立っていることすら、耐え難いだろうに】
【その手を振り払うこともなく、異形は彼女の友達となったのだ。何と罪深く、されど温かい時間だろうか】

【彼女の方から手を離すまで、異形はそののままそうしているだろう。このひとときの暖かさを、未だ持て余しているかのように】
406 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/07(水) 22:13:58.86 ID:Apdgxx/x0
>>405

【ぎゅっと握った手はやはり思っていたよりもずっと大きい、"お父さん"というものが自分にいたら、こんな風な手をしているのだろうか、と、ほんのかすかに思う】
【兵器として生み出された彼女にはそもそも血縁者なんてものはいないけれど。大事に思う母の手のひらや体温とは違うもの、……もちろん、自分のそれらとも違うもの】
【生きていないはずの彼女にあたりまえに体温と柔らかさがあることもまた以外であるのかもしれないけれど――あるいは彼がそうであることよりも、おかしいのは彼女なのかも】

こ、怖かったのよ! だけどね、あのね、怖い声がずっと聞こえててね? それでね、誰も友達になってくれないだなんてね、私だったら嫌だったから……なの。

【空っぽの左手でまだ濡れている左の頬をぬぐって、それから、タトゥーのある右の頬もぬぐう。紫の蝶がぐにゃりとゆがめられて、雨上がりの夏空が、数度まばたいて】
【相手の浮かべたものに返すように笑う、いろんなものをまだ知らないような笑顔――だからこれからいろんなことを知っていきたいというような、もの】

そうなの! もうね、しばらくね、会ってないけど……あのね! みんなと友達になる方法をね、一緒に考えてくれたのよっ。
だからね、私もね、誰かの困ってることをね、一緒に考えたいなぁってね、思ったの――私ね、分からないこといっぱいあるけどね!

【しばらく会ってない人物のことを頭の中で考える、少し寂しそうな顔をしてから、「カニバディールお兄ちゃん、お友達なの?」と、そう尋ねて】
【それからいうのはみんなと友達になる夢――の次にできた、ちっちゃな目標。困っているヒトの話を聞いて、一緒にどうしたらいいのか、考えたいと】
【分からないことはいっぱいあるからいろいろと知っていきたい、そうやって"おねえさん"にならないと、きっと、みんなと友達になることだってできないと、思うから】

【はらりと背中にあった翼がほどけていく、ひらりはらりと光でできた羽根が舞い散りだすのは、あるいはそれが武器でもあるものだから、なのかもしれない】
【友達になった人間に武器なんて必要ないから、消してしまう。やがて羽根はひらりひらりとほつれていって、風に流されるまま――夜の闇に食われるように、消えていく】
【――けれど、例外があった。時間としてはほんの少しの間、しばらく手をつないでいた彼女は、そのうち、ゆっくりと手を離すのだけれど――かすかに、違和感を覚えるだろうか】

【彼の手の中には何かが取り残されている。見れば――それはさっき彼女が解いて壊してしまった翼の欠片がぱっと移動して現れたみたいに、光の魔力で作られた羽根があり】
【その羽根には小さくて丸い魔力の結晶が抱き留められている。彼がそれに気づけば――彼女はにんまりと得意げな顔をして、】

それね、あげるわ! なの! あのね、あのね、お友達のね、証なの!

【そう笑って――手にこびりついた鳥の血を一瞬見つめてから、ぎゅっと握りこんで、なかったことにしてしまう】

/返せるようになりました、よろしくお願いします……!
407 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方) [sage]:2016/12/07(水) 23:32:59.27 ID:y8F/fC1Bo
>>406
【"お父さん"。この悪党に、これほど似合わぬ言葉もない。いや、生物兵器として生み出された彼女であるがゆえに】
【この怪物に対し、そのような感想をわずかでも抱くことが出来たのだろうか】

怖くないはずはないな……私も昔は恐ろしかったさ。今は流石に慣れたが
ふ、ふ。ほとんどの人間は嫌がるだろうさ

【自嘲するように、含み笑いを漏らす。彼女の表情に合わせて歪む蝶のタトゥーが、ひどく綺麗に見える】
【まだ何も知らない、未来のある笑顔。自分のそれとは、あまりに対局な】
【多くの未来を奪い去ってきた自分が、今更。長い間の盗掘生活が、ここまで己の悪意を鈍らせたか】

そうか……思い出すよ。彼女も、己の道をまるで疑っていない目をしていた……
いいや、友達と呼べるほど親しい間柄ではないな。一度出会って、しかもケンカを吹っ掛けたんだ
結局、戦いになる前に解散の流れとなったがね

それが、お前の目標か……この停滞した世界で。まだそんな想いを抱き続けられる
実際大したやつだよ、お前は

【やはり、どうしても。眩しすぎると感じてしまう。当然だ、血と汚泥に首まで浸かり切って生きて来た自分が】
【そう簡単に、この光に包み込まれることを良しと出来るはずもない】
【寂しそうにした彼女に、リーベとのあまり好ましくない出会いを語りながら、彼女の未来に思いをはせる】
【そこに、自分はいない、いてはならないと、はっきりと理解していながら】


【やがて、闇に溶けるように消えていく光の翼。細められていた三つ目が、闇に紛れて元の大きさに戻る】
【戦闘手段を手放したのは、己への信頼の証か。信頼。残忍で悪辣なこの「人食い肉屋」に】
【あまつさえ――――この手に、このようなものを残していくとは】

【離れていく小さな感触と引き換えに、無数の命で血塗れのこの手に残ったもの】
【光の羽根。魔翌力の結晶。怨嗟を詰め込んだ肉の暗闇に、一筋の光明が侵入したかのように】

――――ありがとう、ファラエナ。いただいておこう

【太い指でそれをわずかに弄んだ後、エプロンの内側にそっとそれをしまい込む】
【あるいは、自分がいずれ誰かに討ち果たされる時、これを胸に果てることになるのだろうか】

【彼女の手の中に握りこまれて消えた、鳥の血を見て】
【ファラエナに見えないところで、左手の肉が瞬時に膨れ上がり、握ったままだった鳥の死体をその中に飲み込んで消した】

【もう、十分だ。らしくないことは、十分にし過ぎた】

ずいぶんと話し込んでしまったが……お前の母がそろそろ心配を始める頃か?

/お待たせしました……
408 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/07(水) 23:50:29.94 ID:Apdgxx/x0
>>407

リーベお姉ちゃんとはね、一回お話しただけだけど……また会えたらいいなぁってね、思ってるの!
ううん、みんなよっ、今までお話したヒト、みーんなと、また会いたいなってね、私ね、思うの! 姉妹以外のみんなとも……。

【みんなどこへ行ってしまったのだろうかと思う、運が悪いだけなのか、それとも、どこか遠くへ行ってしまったのか。それはわからないけれど】
【ずっと会えていないという本当のことだけが寂しく積もっていく、自分は同じ場所で何も変わらないのに……本当の意味でお姉さんになることも、できないのに】
【少しだけ寂しくなって小さく鼻を鳴らす、泣くわけじゃないけれど】

あのね! お姉ちゃんのね、まねっこなの!
お姉ちゃんね、あのね、一緒に頑張ろうねってね、言ってくれたの、なのー。

【頭をくしゃくしゃと撫ぜた少女が少し気弱そうに笑んでから、言ったことを覚えている、「わたしも頑張るから」「エナちゃんも頑張ってね」】
【さっきのぐちゃぐちゃした気持ちは少し晴れていた。きれいに思いだせる――けれど、カニバディールと出会う前とは、少し、意味合いが違ってしまった気もする】
【"お姉ちゃん"が誰かは口にしなかった。それでも彼女が彼やスカーベッジをお兄ちゃんと呼ぶ、それよりも、いくらも親しい様子があって】

【こうも頑張ろうと思えたのは、どこかであの少女の影響もあったのかもしれない――とは分からないけれど】

お友達の証なんだからね、なくしたらね、ダメよ! 絶対なの!

【きりっと眉を吊り上げていう、まだちょっと赤い目元はそれでもずっと元気を取り戻している、忘れたわけではないのだろうけど――友達、になれたのなら】
【もう一度あの怖いものを見せられることもないだろうという信頼がある。友達は友達にひどいことをしないという無条件の信頼、それは、やはり、彼にも向けられて】
【――それでも。この幼子がこうまで友達になるということ、なったということを強く言ったことは今までになく。それは、やはり、彼がそう言う意味では特別だったのだろう】

うーんとね……あのね、あんまり遅くするとね、うるさいって怒られちゃうわ!

【時間そのものに制限がかけられてはいない、だから、彼の言葉には少し間延びした声が返る、けれど、門限ではないものの、遅く帰ることに不都合はあるらしい】
【ただそれも帰宅した音とかがうるさいと怒られるというものらしく。それならやはりおかしさはあるが、ひとまず――そろそろ帰ろうかという気持ちには、なったらしい】

カニバディールお兄ちゃんはね、まだね、ここに居るの? あのね、ここね、すごく寒いからね、お風邪ひいちゃうよ! なの。

【それで彼にそう問いかける――まだここにいるといえば1人でビルを降りていくことになるだろうか。それとも最初のよう、もう一度飛んでみせるのか】
【どちらであるかはあいまいなまま――】
409 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方) [sage]:2016/12/08(木) 00:11:32.21 ID:3A4+kRdHo
>>408
一期一会という言葉もある。なかなか再会が叶わないことも多いものだが
お前の祈りが届くことを、願っておくとしようか

(静寂の底に落ちたこの世界で、それがどこまで叶うかわからないが……)
(いや、そもそも彼女の友人と私は、基本的に敵対すると思っておいた方がいい)
(そんな私が、再会を願うなどと……冗談にもならんな)

【まるで、この世界に取り残されてしまったかのようにすら思える。彼女も、自分も】
【彼ら彼女らの道が、再び交わることはあるのだろうか。それは、きっと誰にもわからない】
【彼女が漏らしたかすかな寂しさの音が、やけにこの屋上に反響したように聞こえた】

何事も、他人の真似から始まるものだからな
そう言ってもらえる相手がいたことは、お前にとっては大いなる幸運だな

【その相手が、鈴の音の声をしていたことは、異形は知らない】
【彼女とは自らの手で決別したのだから、きっとその方が良かったのだろう】
【あるいは、異形が幼子にもたらした何かしらの変化が、彼女とお姉ちゃん≠ニのこの先に】
【何らかの影響を与えることもあるかもしれない。いや、彼女の与えた影響に比べれば、微々たるものか】


ああ、気を付けるよ。命ある限りは、無くさないさ

【また彼女の純粋さが顔をのぞかせる。異形が幼い友達が出来ても悪漢であり、重ねた罪もそのままであるように】
【幼子もまた、そのあまりの純粋さをすぐに変えることはない、ということだろう】

【自分が彼女にとって、何かしら特別だという事実は知らぬまま。ただ、その幼い信頼を自分の中でどう落とし込むべきか】
【生じる迷いを、異形は自らの脳裏に封じ込めて、それ以上考えることをやめた】

それは一大事だな。騒音にならないうちに、家路を急ぐべきだろう
(娘の帰宅が、騒音か……。いや、人をどうこう言える立場ではないが)

【黒い思いは、もう幼子には見せない。肉と共に、腹の底に沈める】

風邪をひくのは避けたいな。私もそろそろ、立ち去るとしよう
途中まで、共に行くかね?

【歩いていくなら、彼女と共に。飛んでいくなら、肉の触手をビルに這わせて】
【少しの間だけ、彼女と共に空中の住人になるだろう】
【いずれにせよ、異形もまた幼子と共にこの場を後にする。目指す先は、己の生み出した暗闇と悪夢が支配するねぐら】

【己の胸の内に隠したこの一筋の光、この羽根も。その中ではきっと、身を縮こまらせてしまうだろうと】
【またも沸きあがった自嘲は、やはり肉の内側に抑え込んだ】
410 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/08(木) 00:27:46.61 ID:yV67he5I0
>>409

それならね、私ね、お兄ちゃんと途中まで一緒に帰るわ! あのね、私ね、あっちのほうにね、住んでるの!
お兄ちゃんと一緒の時はね、ちゃんとね、歩くから大丈夫よ、なの。安心してねっ。

【一期一会もまねごとも聞きながら、やはり幼子だ、恐ろしいものを見た後ということもあって、少し疲れてきたのか――ちいさなあくびを漏らしまでして】
【命ある限りという言葉には「約束なのよ」と言って返す。けれど――それがもしかしたら途中で死んでしまうかもしれないという意味合いには、きっと、思っていなくて】
【ただ普通にヒトらしくあたりまえに迎える最期のことだけを想定しているように見えて、少し、違う】

【相手が空を行けるとは思っていないのだろう。だいたいの人間は空を飛べやしないと幼子もさすがにそれくらいは分かっているから】
【それなら途中まで歩くから一緒に行こうと誘う、こくこくと嬉しそうに頷いて、やがて、歩きだすのだろうか】
【階段を下りていく最中の彼女は至って子供らしい仕草であったのは余談になるけれど。ふらりふらりと気まぐれな風船みたいに歩き回るさまは、やはり、幼子のそれ】
【きっとふと目を離せばその場から居なくなるタイプの子供だ。だけれど今は1人と1人、ましてここはヒトなんて居ないから、見失うことはないはずで】

【それで少しくらいはお話をするのだろうか。だけれどたいした話はしないのだろう、世間話というにもずっと幼い、最近はありんこもいないから寂しいとか、そんな程度だし】
【本当に特筆する点もないくらいの雑談――付き合ってくれたら嬉しそうにするけど、その実、あんまり付き合ってもらえなくても、いつまでもにこにこしゃべっている】
【そういうタイプの子なのだった。それこそ1人だけ昼間みたいな空気感で、生きていて】

えっとね、あのね! 私はね、おうちね、あっちなの、お兄ちゃんはね、違う方?

【そうしてビルを降りて少し歩いたあたりだろうか。自分の家はあちらにあると指さす先は、街中の方で――遠くもないけれど近くもない距離には、夜景がきらきらと光っている】
【違う方向へ行くというのなら――ここで別れとなるのだろうか。それとももう少し同じ向きであるのなら、もうすこし、また、くだらないお話をすることができるのかも】
【それでも多分どこかで、きっと彼は違う方に行くんじゃないかとも思っていた。なんだか彼の暮らす場所は、もっと静かな方のような、気がして――】
411 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方) [sage]:2016/12/08(木) 00:53:22.11 ID:3A4+kRdHo
>>410
ならば、そうしようか。方角もちょうど一緒のようだからな
助かるよ。この鈍重な身では空を飛ぶお前を追いかけるのは難儀だ

【むしろ、あれほどのものを見た後で、あくびまで漏らせる辺りは】
【この幼子もなんというべきか、やはり尋常とは違うのだろう】

【己の予感する末路、死の形が幼子の思うそれとは違うことは読み取れていても】
【わざわざそれを訂正する必要も、その気もなかった】
【どのみち、自分にふさわしいだろう惨たらしい最期の瞬間になど、彼女は立ち会うべきではないのだから】


【彼女が地面の上を行くと知れば、その後に続く。極端に小さな身体と大きな身体が並んで歩く】
【やはり年相応の子供にしか見えないその行動に、アジトで待っているだろう配下の一人、目を縫われた少女を思い出しながら】
【そこに見出せる危うさには、もはや口出しすることもなかった】

【他愛もない世間話には、それなりに付き合うだろう。以前、殺人ショーで狂った金持ちたちを相手に】
【多少なりとも磨いた社交術が、こんな形で発揮されることになろうとは、皮肉というべきなのか】
【屈託のない笑顔に向けられる大男の醜怪な笑みには、悪意は滲んでいなかったが、どうしても彼女とはかけ離れていた】

――――いや、同じ方角だ。もう少しの間はな

【そう言うと、またもう少しだけ彼女とともに歩こうとするだろう。交わされる言葉の他愛のなさもまた同じ】
【だが、夜景の光が徐々に近くなった頃。大男は足を止める】

あそこだ、ファラエナ。あれが、私の帰る場所の入り口なんだよ

【そういってカニバディールが指さした先にあるのは、ビルの谷間の地面に見えるマンホールだった】
【歩み寄り、手を近づける。指先が細い肉塊となってマンホールの蓋の穴に滑り込み、蓋を跳ね上げた】

【口を開けるのは暗闇。その先が、彼の世界。地下深くに根を張る、邪悪なる盗賊たちの住処であった】

では、名残惜しいが……今夜は、これでお別れだな。ファラエナ

【掛ける言葉は最後まで、やはり重苦しい声だった】
412 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/08(木) 01:06:38.56 ID:yV67he5I0
>>411

【階段をわざとらしく気取ったようにして降りる、あるいは4つ5つと一気に飛び降りてみたり、もう相手のこと、そのものは信用しているのだろう】
【だけれどそのさまもやはりおかしいものではある。ただの子供のようにしか見えないふるまいと、ただの子供には見えないふるまいとがいっしょにそこにあって】

じゃあ、もう少しおしゃべりできるのね! それでね、お母さんたらね、おままごとしてくれるって言ったのにね、してくれなかったの!
だからね、私ね、もうって怒ったの――。

【そろそろお別れを予感していたところに、もう少し同じだという言葉が投げかけられる。ぱぁと輝いた瞳は、すぐにまた、直前の話へと戻っていって】
【大人から聞けば、しつこい子供のお願いに空返事をしたのをいつまでも根に持たれているという形にも似る話で――ただ、まあ、怒っているわけでもなくて】
【お母さんってそうやってすることがあるのだとぶちぶち文句を言ったり、かと思えば、大好きなのだという話もしたり、そういうことをする――ただ、直接人物像にはつながらない】
【名前も住所も分からないが容姿のおそらくは特徴的な部分と、少しの人格が知れただけ。ファラエナのことはいつも軽くあしらっているらしいことと……それでも、たまに、】
【"いいこ"にしているとうんと優しくしてくれる、こと。そしてその"いいこ"というのも――路地裏などの治安の悪い場所で誰かと友達になると、褒められるのだという】

わあ、あのね、ご本で見た秘密基地みたい! うん、あのね、私もね、帰るわ!
……えっと、それでね、私ね、考えておく! お兄ちゃんがね、お化けさんたちと仲良くなれる方法……、だからね、それまでね、ちゃんと友達の証、持っててね!

【やがて二人はビルの谷間へとたどり着く、そうして彼がマンホールのふたを持ちあげれば】
【幼子はすごいとか面白いとか言ってはしゃぐのだろう、秘密基地みたいだと言って、きっと、頭の中では秘密のでっかいロボットとかが思い浮かんでいるくらい】
【お別れ――と言われれば、少し名残惜しいようではあるが、自分も帰るのだといって、うなずく。それから――ぱたぱたと手招きするような仕草をして】
【まるで彼にしゃがんでほしいとお願いしているみたいで、もしも実際にしてもらえれば――してもらえなくても最終的には――そう言うのだろう】

【身体をかがめてもらえれば耳打ちするような仕草。どちらにせよ最後に笑ってみせれば、ぱっと身体を翻して、ぱた、ぱた、と、数歩の距離を取って――それから、手を振って】

じゃあね!

【元気がまだまだ有り余っているみたいに、駆け出すのだろう――街の明かりの方へ。たびたび後ろを振り返るせいでなんども転びそうになりながら、だけど――】
413 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方) [sage]:2016/12/08(木) 01:39:35.12 ID:3A4+kRdHo
>>412
【複雑に混在する彼女の要素が垣間見えるその動き、異形の観察眼はいつもの習慣通りに動き】
【そこに、やはり常人の範疇に収まらない、彼女の何かを見るが――――それ以上のことは考えてもわかるまい】

ああ、もう少しだけな……
ほう、それは残念だったな。約束はたとえ親でも破るべきじゃあない

【輝く彼女の顔を見て、もはや際限のない自嘲は無視することにした】
【子供らしい親との日常や感情、それでも抱くマスターへの愛といった話題に、適度に相槌を打ちつつ】
【やはり、そこからちらちらと見えるお母さん≠フ人物像にはどうにも怪しいものを感じた】

【自分のような人種と友誼を結んだ時に、褒める。明らかな歪み。何が目的なのか】
【生物兵器としての彼女の育成か、それともさらにおぞましい何かのためか】
【流石にそのマスターも、自分のごとき異形にこのような勘ぐりをされたくはあるまいが】


ふ、ふふ、嬉しいことを言ってくれるな。そうだ、私やスカーベッジの使っている秘密基地の入り口だよ、これは

――――そうだな。次に会えた時にか、その次かわからないが、その答えが出る時を期待しておくとも

【幼子らしくはしゃぐ彼女に、少し愉快そうに声を漏らして見せる】
【実際には、血塗られた歴史を持つ悪党どもの巣窟であったのだけれど、それはこの場には関係のないことだ】
【同時に、次が来るのかどうかも。きっと、その可能性はあまり高くないのだろう】
【ファラエナはきっと否定する。また会うと、そう言い切るだろう。だから、口には出さない】

【ファラエナが手招きすれば、それに応じて巨躯を折り曲げて、彼女の言葉を聞けば】
【きっとそれが、不可能なことだと知っていても。ファラエナに友達としての言葉を告げるだろう。待っている、と】

ああ、それじゃあな

【軽く手を振り返し、時折振り向きながらつまづきかける彼女の姿が見えなくなるまで見送った】
【最後の笑顔に、やはり醜く笑って返しながら。夜景の中へ、光の中へ消えていく彼女が見えなくなると】
【カニバディールは巨体を翻してすぐにマンホールの中に飛び込んだ。耳障りな音を立てて、蓋が閉まる】

【暗闇。一瞬の静寂。そして――――】


……ふ、ふふ、ふふふ……ハハ、ハハハハハ、ハッハハハハハハ!!! まったく、我ながら笑えるな……
そう騒ぐな、くすぐったいじゃないか。心配せずとも、今夜は久々にお前たちに付き合ってやるさ

【一人笑うと、エプロンから携帯端末を取り出し、ボタンをプッシュする】
【二度のコール音の後、通話口に出た己の右腕に命令を発する】

――――スカーベッジ。ポイントD-62だ。回収を頼む
少しばかり、動けないことになりそうなのでな……詳細は追って話す。ああ、ではな

【通話が切られた途端、地下の壁に反響する音。幼子の前にさらした、呪われた肉の顕現する音】

ああ、ああ、怒りはもっともだ。今夜は付き合うと言っただろう?
さあ、好きなだけ憎悪をぶつけろ。もう一度、食らってやる……ふっふふふふふふ!!!

【無数の顔が、カニバディールの膨れ上がった全身の肉の上に現れる。すべてがすべて、憎悪に満ちた顔】
【ファラエナとの暖かい時間を、彼らは決して許さない。異形に理不尽に踏みにじられた者たちは、あの時間を認めない】

【自らの制御を離れて、自らに向かってくる肉にカニバディールの鋭い歯が応戦する】
【マンホールの真下で始まる、見るも無残な自分の肉との共食い】
【カニバディールの配下たちが、親玉を回収しアジトに運び込んだ後も、それは一日以上にわたって続いた】

【――――その間、ずっと胸の中に光の羽根を抱いていたことは、カニバディールだけが知る小さな事実だった】

/この辺りで締めでよろしいでしょうか? 長期間のお付き合い、ありがとうございました!!
414 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/08(木) 01:54:13.06 ID:yV67he5I0
>>413

【「そうなの、ひどいの」「でもね、お姉ちゃんはね、お仕事が大丈夫な日はね、遊びに来てくれてね」「おままごとしたり、お散歩したりするのよ!」】
【引きこもりで、少し嘘つきな母親と、前みたいには遊んでくれないけれどたまに遊んでくれる姉と。それがどうやら彼女の身内であるらしい、血縁こそないけれど】
【だからたびたびその2人のことが話に出て来る。後は家の近くに居る野良ネコの話とか……そんな話もやがて終わって、そして、秘密基地と、別れの言葉と】

またね!


【しばらく振り返り振り返り手を振っていた。その背中にまるで花咲くように光がほころんで、気づけば、するりと大きな翼が、魔力によって、編み上げられる】
【1回2回と羽ばたけば、その小さな身体はあっさりと浮かび上がって――そのまま、高くまで、あっという間に、その姿は小さくなるのだろう】
【どうやら最初にそうだったように、よくそうして移動をしているらしかった。小さくなった姿はそれでもしばらくはまばゆい光として認識できたのだけど】
【やがてそのうち光さえも見えなくなって――羽ばたいた際に落としていったあまたの光の羽根もやがて夜に溶けていって、何もない】

【――半ば廃墟のようでもある古い家のドアをなるべく静かに開ける、お母さんと呼びかけて返事を待っても、今までに声が返ったことはないけれど、習慣のようなものだ】
【やがて普段使いしている部屋にその姿を見出せばただいまと声を掛けても返事はない、その手元には古びた本があって、右の手にはペンと、その下にはメモ書きのされた紙と】
【幼子が「今日はね、壊れたビルの屋上でヒトと会ったわ」というまで、まるでそこに誰もいないようにしていた人物も――その言葉を聞けば、笑って幼子へと、振り返るのだった】

/おつかれさまでした!
415 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/09(金) 00:17:28.44 ID:eR7FgQhMo
【水の国首都・魔術装飾ブランド『Elysion』本店ビル中層階】

【広いエントランスホールは白壁と金飾が僅かに光る無機質な空間だった。透明なテーブルを挟んだソファには、対面する二人の姿がある】
【一人は茶と黒のストライプスーツが特徴的な白髪の老人。その胸元にはブランドを代表する金のグリフォンが象られた紋章を付けている】
【もう一人は黒いローブを纏った、紅茶色の長髪が目立つ男。肩に掛けた細身の金鎖の輪には細々とした呪具が装飾めいて吊るされていた】

「……君達三人の能力状況について、調査結果が出ました。どれも素晴らしい、そしてとても危うい――力と言うよりは己自身が、脆い」

前々から分かっていた事だね。元々無能力者だった、まして別の世界、バラバラの時間軸で生きていた人間に、あの女が気紛れで与えた力だ

「ええ……でも今回の件で、課題と希望が見えて来ました。まずセシル、君の魂に掛けられた呪いは、術者――彼女によって解かれた。
 よって過去に綾津妃という方に重ね掛けされた目の呪いも、今はもうない。とは言っても、元々君は他人と目を合わせない人間だったね」

【老人の目が懐かしげに細められる。まだ目の前の怜悧な男が荒く尖った若人だった頃から、呪いと今に至るまでの全てを老人は見ていた】
【呪術の才能はまるで悪い魔女の弟子であったかのように凄まじく、魔獣を狩る程度では煮え滾る血は収まらずに幻獣さえ狩って来た程】
【故に戒められた、と言うよりはきっと、悪い魔女のお仕置きであったのだろうその呪いは、今までの長きに渡って彼を苦しめて来た】
【それが解かれ、更に能力が増強されている――ただの一時的な悪い魔女の気紛れだったとしても、これからの為に、検証は必要だった】

それで……各個人の具体的なデータは、私にだけ教える約束だったと思うのだけど。これから私が聞く事を、彼等には当然伏せるべきだね?

「ええ……伏せた上でどう導くかは、セシルの判断に委ねましょう。まず君の兄ですが、死した肉体は彼自身の能力『匣の中の失楽』――
 これによって保たれている。怪我等の損傷も通常死者であれば再生することは有り得ないが、進化した能力が担保し、新たに強化された
 『エネルギーの変換・放出・吸収』……火力電力魔力、それらを自在に変化させて放出でき、更にはそれらのどれをも吸収が可能です」

……そこまでの進化とは、想像が及ばなかった。だからこそ、奴の計画を未然に止められて良かった。どこの誰が助けてくれたのか――、

「続いて、君の弟について。かつてカノッサ機関No.2であった頃より更に、能力――『虚無への供物』は力を増している。とても、強く
 『魔力による具現化』、それ自体に変化は無いにせよ、元々の魔力量も更に増加していた。要は、単純に力が増した形です」

……それも厄介だ。今でこそ大人しいが、その気になれば当時以上の力を操れる訳だ。特殊な効果が付与されなかった事は幸いか、

「最後にセシル、君自身の能力『ドグラ・マグラ』は……『魔力の反射・対消滅』。今まで通り扱うには癖が強いが、対消滅は強い」

そう、か……難儀なものだね。兄と弟のようにシンプルなら良かったのだけれど、また使いどころの限られる能力が付随した訳だ

「君は強力な呪術を扱える、ただ呪術自体が補助的であって直接的な力とするには難しい。今後も、すまないがサポートに徹して貰いたい」

承知した。……それで、『脆さ』とやらの話も、勿論聞かせてもらえるだろうね。――何となく、理解はしているけれど。耐久性能かい

【どうにも図星のようだった。老人は蓄えた髭を少し弄った後、穏やかな表情で、目の前の男へ言い聞かせるように、ゆっくりと語り出す】

「……三人とも、本体への直接攻撃は致命的なダメージとなるでしょう。特に近接格闘では、僅かな経験を持つ悦那様も腐りかけた死体、
 月彗様はほぼ近接格闘の経験は無いとお見受けしました、それでいて身体は、形ばかり覆っただけの非常にか弱い本体を内包している」

そして私も、結局はただの人間だ。近接格闘も兄よりは出来るとして。攻撃を跳ね返し損ねれば、対消滅が及ばなければ、ただの人間だ

「……セシル、君には圧倒的なセンスと経験があります。それは恐らくご兄弟もそうでしょう。欠点を補う為の修練を、積んで下さい
 私からお伝えできるのはそれまでです、では――くれぐれも、あの悪い魔女の気紛れには気を付けて。触らぬ神に何とやら、ですよ」

【そこまで言い終えれば老人は立ち上がり、軽く会釈をして上階へと向かう。その背をぼんやり見つめてから、不意に男は声を掛けた】
416 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/09(金) 00:19:49.92 ID:eR7FgQhMo

ツェフゲニー。近いうちに、またここで暮らしたい。ただ……妻を、連れては来れないかも、知れない

「おや。単身赴任、ですかな? セシルらしくもない、愛着した相手から、君は絶対に離れられない人間だと思っていましたがねぇ、」

……妻にも、大切な場所があってね。ただそこに私が居続けるのも、きっと彼女の為にならない。……一生会えない訳じゃない、平気さ、

「平気というのは如何なものかと。君はまず平気じゃないし、相手も平気かどうかが先で、そも君はまだ、相手に話していないのでしょう」

……、――流石だね、ツェフゲニー

「一度ゆっくり話し合ってからお決めなさい。最上階の君の部屋ならいつでも整っているし、二人分の余裕もあるのだから。では失敬、」

【広いエントランスに紅茶色だけが残される。精神の支柱めいて握り締める男の左の拳に、対の銀の指輪が、光を受けて輝いていた】

/ソロルです
417 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2016/12/09(金) 20:21:51.95 ID:TAwINM1Xo
【路地裏】
【季節や時間帯問わず、いつだって薄暗くて血腥いその場所に】
【今夜もまた、真新しい血肉の香が。濃厚に漂っていた】

【その香りに誘われるか、或いは異変を察知して誰かがやってきたなら】
【鋭い爪で深く体を抉られたような傷を残した、ヒトの死骸がいくつか転がっているのが見えるだろう】

――――狼さんたら狼さん、たち。
どうしてみんな、そんなに脆いのぉ?

【その中心にいたのは、艶のない黒髪をおさげにして垂らし、その上から赤い頭巾を被った少女の姿】
【服装は薄汚れた黒のワンピース、一枚だけ。寒かろうに、靴すら履かない傷だらけの素足を晒して】
【貼り付けられたような笑顔に爛々と輝く黄金の瞳、口元から覗くギザついた歯列が特徴的だ】

【ぴちゃ、と水音。少女の裸足が、血だまりを踏みつけた音だった】
【少女は、転がっている死体のうちひとつを、にまにま笑いながら眺めていたが】
【やがてそれにも飽きたようで。上機嫌そうに、周囲に視線を廻らせ始める】

【新しいエモノを探しているのだろう。恍惚として息を吐けば、白く色付く冬の夜】
【ヒトの命を食い荒らして悦ぶ、ケダモノが一匹そこに居た】


//金土日で待機しております・リターンズ。
418 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/09(金) 22:53:41.76 ID:z17zqqZv0
【街中――公園】
【先月ほどからイルミネーションの始まった公園はこんな時間だというのに人通りも多く、あちらこちらから、にぎやかな話し声がする】
【そのせいか休憩できるようなベンチなどもだいぶん埋まっていて、それもほとんどカップルが占領しているせいか、そのベンチは、少しだけ目立つ】

いただきまー、す。

【まだふわふわと湯気を上げているのは手のひらほどもあるワッフル、イルミネーションの客目当てに出てきた屋台から購入したものを、はくりと齧りとって】
【もぐもぐ咀嚼しながらどこでもないあたりをなんとなく見渡している顔はまだ少しあどけなさが残る、十六くらいに見えて――もうひとくち、ふたくち、ワッフルを齧り】

一緒に、くれば、よかったかな……、一度UTに行かなきゃだからと、思ったけど……、――。

【そう規模の大きなものではないけれどきれいなイルミネーション、あたりにはワッフルの屋台からバターと砂糖の甘い香りが漂っていて、あたりにはカップルと】
【どうやら一人でやってきたらしい彼女はそんな中だから少しだけ浮いている、ベンチの真ん中に腰かけて――少し冷たい足先をもじもじと動かすのは、どこか、気まずさもあって】
【それでもワッフルを齧る仕草ばっかりは繰り返しながら合間合間にそんなことを呟いて……だから余計に少し異質で、気のせいか、前をあるいていたカップルが避けていった気がする】

【――腰まで届く長さの黒髪、顔は寒さのせいか頬が赤くなっていて、左右で色の違う瞳はあたりのカップルを少しじとりと伏せた目で眺めたりして】
【中の服のせいで裾の膨らんだ黒のワンピースコートはきちんとボタンが締められたまま、足元は分厚い黒色のタイツと――かかとの高くて分厚いショートブーツ】

…………電話――わっ、わ、

【やがてぺろりとワッフルを食べ終えてしまえば、包んでいたワックスペーパーをきれいに畳んだ少女は、ベンチにぎしりっと身体を預け】
【コートのポケットから薄型の携帯電話を取りだすのだけど――手もとが狂ったか、つるりと落としかけたそれを、少女は数度お手玉のようにしてしまって】
【けれど最終的には取り損ねてだいぶ前の方へとふっとばしてしまう、さらに慌てて拾おうと立ち上がった瞬間に膝に乗せていた鞄の中身までぶちまけて】
【大したものは何にもないけれど、携帯電話や財布、ハンカチ、リップクリーム――立ったままで一瞬硬直してしまった少女は、なんだか、とてもとても目立っていた】
419 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/10(土) 21:00:39.70 ID:PbcpZ+KMo
【廃村】

【街頭もない、そも電気水道の通らない、森に囲まれた限界集落の成れの果て。壊れかけた黒木造りの古民家が点在する荒れ果てた場所】
【提灯の火が一つだけ、鬼火めいて道であったらしい通りを彷徨っていた。灯火と淡い月光に照らされる姿は、どうやら着物姿の男らしく】

こことももう、さいならか。随分長いこと住んどった気もするけれど。都会に移るいうたって、便利よりも空気が汚うて嫌やわぁ……

【黒い紋付羽織を纏った白髪の若い男。肩口で切り揃えた髪に黒い彼岸花を差し、葡萄色の切れ長の瞳は村との離別に些か憂鬱げであった】
【片手に持つ風呂敷包みを見るに、最低限の持ち物でも支障のない場所で暮らすようだった。それでも、この場所との別れは惜しいのか】

仕事ゆうんもどうなるやら……、人殺しは得意でも、化け物退治は慣れとらんのに。ま、やってやれないことも無いんやけど……

【一人の旅路を呟きで埋めるように、心中をそのまま口に出そうと隣近所も死に絶えた場所では全てが自由だった。白い吐息が夜に吸われ】
420 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/11(日) 18:45:25.22 ID:WeZ6cprUo
/>>419で22時までお待ちしてます
421 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/13(火) 02:39:18.50 ID:ZzRE6psno
【夜の海辺】

【潮風も波もただ静寂に余韻を落とす程の、或いは満天の星空と浮かぶ三日月を彩る為に揺れるようで、荒涼とした砂辺との対比を兼ねる】
【そんな堤防側に一台、大型のバイクが停まっていた。堤防上には黒地に黄緑のラインが走るライダースーツ姿の若い男が腰掛けていた】
【同じデザインのヘルメットを外せば紅茶色の長い髪がざらりと腰まで落ち、男は腕に嵌めていた黄緑のゴムで後ろ手にそれを高く括る】

……久々に走ったけれど。兄にくれてやってもいいかも知れないな、これは

【呟きつつ黄緑のゴーグルを外し、茫洋と海を眺めるオリーブ色の目は左右の瞳孔が非対称に開いている。片側は、暗闇でも視界が利いて】
【不意に返り見るのは停めたままのバイク。黒地に黄緑のエンブレムが付いたそれは、背高な男でなければ駆れない程の大型のもの】

くれるにしても。一式、差し色は変えないといけないか。気に食わないとか言い出しそうだ……面倒だな、

【一通りぼやけば、男は再び海へと視線を向ける。双眸の片側では星の光が鮮やかに映り、もう一方では深く暗い海の遠くに船が見えた】
422 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/13(火) 17:21:32.83 ID:ZzRE6psno
/>>421再募(22時終了or持ち越し)
423 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/14(水) 19:18:53.87 ID:7ODOZBPd0
【街中――広場】
【建物の向こうに見える満ちた月と星空、デザイン性の高い街灯の明かり、足元には広場の中心の噴水から続くライトアップされた水路で文様が描かれていて】
【特に噴水の方は派手に飾り立てられ、少し早いクリスマスツリーも飾られていて――とにかく、少し見渡しただけでも様々な色の光が、あちらこちらで光り輝き】

――はぁ、

【噴水の近くにはたくさんのひとが集まっているけれど、少し離れたエリアには人影も少なくなってくる。冷え切ったベンチに座りこむのは、華奢な人影が一つ】
【鞄を投げだすように置いて背もたれにぐっと身体を預けるさまは疲れているようにも見えて――長い髪がざらりと垂れていけば、服装も合わせて、それが少女だと知れる】
【そうしてしばらくあるいは死体とも疑われそうなくらいに脱力していたけれど、やがて身体を起きあがらせれば。鞄からペットボトルを取りだして一口二口と飲んで】

【オレンジ色のふたを閉めれば指先を暖めるように挟んだ手のひらの中でころころと転がす、その途中に彼女は一つ大きなあくびを漏らし、】

…………眠たくなっちゃった、なぁ……。

【だなんてひとりごちて。眠気をごまかすように足のつま先を交互にぱたぱたと小さな動きでやっているのだけれど、それもやがてどんどん鈍く、ばらばらになって】
【ゆらゆら揺れる頭が重たそうに垂れて――がくんとつんのめった仕草で頭を起こす、なんてことを、繰り返し始める】

【腰まで届く長さの黒髪は一部分だけが丁寧に編みこまれているもの、真っ白な肌は寒さのせいで頬や鼻がわずかに赤くなっていて】
【黒と赤で色違いの眼は開いてはいるがどこかぼうっと虚空を見ているよう、それどころかときどき閉じてしまうほど】
【きっちりとボタンの閉められた深い赤色のコートに黒のスカート、厚手のタイツに編み上げのロングブーツの足の片足だけが、ずりっと滑ったまま、投げ出され】

【そのうちに吐息はどんどんと長くなって――ぺしょりとペットボトルを落とした音にも感覚にも気づかないなら、どうやら、本当に寝入ってしまったよう】
【ペットボトルも気づかれないまま好き勝手にころころと転がっていって、少女の眠ってしまったベンチから少し離れたところに、じっと、落ちていた】
424 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/14(水) 19:45:36.72 ID:Hr6olRUeo
>>423

――相変わらず無防備っつーか、何だかな。アイツもしっかり見ててやれっての……

【転がり落ちたペットボトルを拾い上げ、起こさない程度に低い声が小さくそう呟いた。よれたスーツ姿に癖のある黒髪、灰色の目の男】
【相手も見知った特徴的な頬の刺青は、この時期よく見かけるようなマスクで覆い隠していた。衆目に晒せない事情、と言えば当然だが】
【男はそっと相手の近くまで来れば、拾ったペットボトルを爪先で軽く弾いて音を響かせる。目立つ程うるさくはないが、近距離なら、】

……おーい、起きたか?

【相手の反応を伺うようにそう言う、直接肩を叩くなりしないのは遠慮というか、不審者のような構図になりかねなかったためであって】
【それでも起きなければ困ったように周囲を見回すのだろう。「あいつに掛けてみるかな、」なんて呟きが低く溢されて】
425 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/14(水) 20:07:56.67 ID:7ODOZBPd0
>>424

【拾い上げられるミルクティーのペットボトルはまだほのかに暖かくて中身も多い。近くで音を鳴らされても空よりもいくらより低い音――どうやら、聞こえていないらしい】
【だなんてことは本当はないはずなのだけど、睡眠に割り込んでたたき起こすほどではないらしいのだ。ここが公衆の面前、まして寒空の下でなければ放っておくべき寝顔も、】
【けれど思い切り人通りのある広場の一角で寒空の下で、遠くのビルのおっきなモニターでは夜は厳しい冷え込みが……とか書かれている日には、至って不適切でしかないもの】

――――、

【それでも一瞬ぴくりと長い睫毛が――瞼が震えたようには見えるだろう。だからといって起きてくれないのは彼にとっては余計に困ったことを増やすようで】
【彼は知らないことかもしれないけれど。この少女、ものすごく寝つきがいい反面でものすごく寝起きが悪い。一瞬だけ起きるかと期待させる仕草も、ただ何の意味もなく通りすぎ】
【いっそ肩でも叩けば簡単に起こせたのかもしれないけど――とは余談。頭が重たいようにうつむいてしまった寝姿、彼には多分くるくる巻いたつむじばっかりを見せつけて】

【ひとまず――いまこの瞬間にとたんに起きあがる、ということは、ないようなのだった。もっと大きな音を出すか、それとも普通に揺さぶってでも起こしてみるか】
【それともそれともこのまま風邪を引くまで放ってみるか――いろいろできることはきっとあるし、なんなら、顔に落書きをしてみるのも、面白いのかもしれない】
426 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/14(水) 20:24:21.67 ID:Hr6olRUeo
>>425

……起きねーのかよ! って、突っ込んでる場合じゃねーな、これは。あれか、俺に喧嘩売ってんのか? いいつむじしやがって……

【「こっちは若干危ないってのに、」だのとぼやくのは余談だったが、放置する訳にも行かないだろうと判断し。死体の自分には平気でも】
【相手は恐らく、違うのだろう。と言うより、平気だったとして相手を見なかったことにして通り過ぎられる程には、この男は強くない】

えーっと、連絡は一応こっち通さなきゃなんねーのか。……傍受されてるとか、位置情報だとか、どうしたって悪い想像しちまうがなぁ、

【薄汚れたスーツの懐から取り出したのは、真新しい白の端末だった。金地に赤目の鴉が刻印されたそれをなぞって、目的の人物を探せば】
【相手に背を向け、片手は端末を耳に、もう一方を腰に当てた、どうにも壮年な感じが目立つ立ち姿で、電話先のコール音に爪先を揺らし】

出ねえ。はー、どうすっかなぁ……つーかどうも近頃拒否られてる気がするんだが……確かもうElysionに越してんじゃねーのか、アイツ、

【ぼやきばかり多いのがどうにも四十代手前である証左のよう、困ったように頭を掻きつつもう一度相手へ振り返る。どうしたものか、と】
427 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/14(水) 20:35:50.84 ID:7ODOZBPd0
>>426

【すやすやと寝息をたて続ける少女はよっぽどいい夢を見ているのか、それとも、睡眠時間が足りていないのか、――元からの体質を考慮しても、】
【"そこらへん"で熟睡してしまうのもどうかとは思うのだけど。……ひとまず彼の方での策が尽きたというのなら、少女は相変わらず眠ったまま……かと、思った瞬間】

わっ、きゃん! ……わ?

【ぴこん、と、よく目立つ電子音。出所はどうやら彼女のコートのポケットで、それなら少女の携帯電話か何かの音なのだろう――だからか、知らない音よりも反応を見せ】
【一瞬で眠りから覚めた少女はびくんと身体を跳ねあげた動作のまま、ばっ、と顔を上げて――いきなり目の前に知り合いがいたせいか、驚いたような声を……というよりも】
【もはや声なんだか音なんだかもよく分からない、とにかく甲高い声をあげて――それから、どうしてそこに居るのかという理解が追いつかないように、首をかしげ】

……どうしたの?

【頭上のあたりに見えやしないはてなマークをたくさん浮かべているような表情と、声だった。なんでそこに居るんだろうというのを不思議そう、尋ね】

えっと……、……寝てた?

【思いきり寝ていたことも自覚は薄い。相手がそこに来た覚えがないならもしかして寝ていたの――と相手に質問を投げかけても、まだ、はてなマークを浮かべていて】
【それにしてもだいぶん久しぶりに会った気のする相手へ、ようやく少し落ち着いてきた目を向けるのだろう。それから、「こんばんは」と言うのだけれど】
【全く相手の苦労なんて気づいてもいないような気の抜けた顔で――まったく、ひどい話なのだった】
428 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/14(水) 20:49:04.53 ID:Hr6olRUeo
>>427

うお、……ってそりゃこっちの台詞だろ、こんなとこで熟睡してると風邪引くぞ? 俺がたまたま通り掛かったから気付けたが、本当に……

【あまりにも相手の起き方が良かったもので、男の方も目を丸めたが、すぐに続く言葉が説教じみているのがいかにも長男らしいもので】
【長くなりそうだったそれも、相手の問い掛けを聞けば思わず止まってしまう。怪訝げな視線を向けて、何やら考えて、頭を掻いて、】

……あれか、何か知らないが、疲れてんのか? 確かセリーナの所でバイトしてんだろ、シフトがどうなってんのか知らないが……大丈夫か?

【ここで寝ていたことにも気付いていない様子から、そう推察しただけの事ではあったが。酒場で働いている事も聞き及んでいれば、】
【深夜まで騒ぐ場所での仕事、まして酔っ払いの相手やら何やらをいつもしているとしたら、ここでそうなるのも何となく納得がいった】
【一先ず端末を仕舞い、無精髭の残る顎を擦って何やら考えていた男は、不意に思い付いた様子で、ただ何となく遠慮がちに声を掛けた】

まあ……アレだ、飯でも食って行くか? これから仕事だとか、家に帰るってんなら、鈴音が良けりゃ送っていくし……、どうだ?

【気弱な提案は、久し振りに会った相手と話したい様子も伺わせていた。と言うよりはお節介、老婆心のようなものが強いのだったが】
429 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/14(水) 21:03:01.86 ID:7ODOZBPd0
>>428

えぇと……、疲れては、ないの、多分だけど――、でも、すごい眠たくて……。

【長男めいた言葉は、これまでの記憶の中で、あまり触れたことがない類のもの。自分にきょうだいはいないし、長男……あるいは長女という知り合いも、】
【もしかしたら居るのかもしれないけれど、きいたことはほとんどない。だからか、少し不思議なように、あるいは少し珍しいように、わずかに目を丸くして】
【少しのあいだ相手のことを見ていたのだけど……そのうちに別に隠すことでもないと判断したのか、そんな風に返す。言葉の間にあくびが交じるあたり、結構ひどいらしい】
【知っているかもしれないけど――ここ数年は夜の仕事だけでなく、朝の時間からUTの店舗を借りて家やお金や行く場所のない子供たちのために食事をふるまっていたりもするなら】
【少し時間が経ってまた眠たげに頭をわずかに揺らすさまもあるいは仕方がない、のかもしれなかった。時間で言えば、ほとんど眠れていないようなもので――】

……んー、セリーナが忙しい時はね、わたしだけの時もあるよ……。

【もう一度あくび。涙のにじんだ目元を数度こすって、はぁ、と、白い吐息が一つ。それからミルクティーを飲もうとしたのか、指先が探すような仕草をするのだけど】
【見当たらなくて「あれ?」だなんて声が漏れる、彼がまだ持っているのならそのうち気づいて受け取ろうとするのだろう――まあ、どうでもいい余談】

でも、お家でご飯作らなくっちゃ……さっきまでお店に居たの……明日の準備があるから。だからね、ちょっと休憩して――、

【「帰ろうかなって思ってて」と言葉が続く。少し眠たげに垂れた目とにこにこ笑っている口元が少しだけ脱力しているみたいで、少し不思議な温度感があって】
【眠たい時の子供みたいな様子なのだった。それこそ小さな子供なら頭からぽわぽわ湯気を出してしまいそうなくらいの様子、――いちばん上な彼は見覚えあるのかもしれないけど】

いつも帰るのは朝になっちゃうから、お休みの日はなるべく家にいたいけど……、

【ちょっぴりだけ寂しそうに笑ってみせる、――朝方にわざわざ起こしてしまうのも気が引けるなら、"彼"と会う時間は、きっと、ほんのわずかの分しかなくって】
【この時間にこんな場所で寝ているなら仕事自体は休みなのだろうけど――それでも家には居なかったのだろうから、少しだけ、愚痴よりも軽く、不満を漏らすけれど】
【だからって仕事の話はどうしようもないような少しの諦めも声音には含まれていて――】
430 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/14(水) 21:18:47.04 ID:Hr6olRUeo
>>429

多分、ってなぁ……まあ、何だ、たまにはサボって裏で寝たり――って、ワンオペもあんのかよ。そりゃキツいな……、ああ、これな

【心配性な男から見ればどう見ても大丈夫ではないように思えたのだが、そう言われれば閉口せざるを得ない。続く言葉には流石に驚くが】
【相手が物を探している様子に気付けば、「落ちてたぞ、」と手渡す。一応その前に砂などは軽く払っていて、その程度の気は利くらしい】

……帰るなら、良いんだが。何と言うか、俺みたいな奴が言えた事じゃ無いんだが……休んで体調整えとくのも、一応は仕事のうちだぞ

【疲れた相手に何を言っても余計疲弊させる気はしつつ、つい口からそんな言葉が出てしまう。付け加えるように「無理すんな、」と】
【それから相手へ手を伸ばす、頭の方へ向かったそれは少し迷うように彷徨って、結局は肩へ、ぽん、と軽く励ますように叩こうと】

ああ、あいつも戻って来て、組織の方が本格的に動きはじめたからな……俺と月彗も誘われてな、今じゃ一等地暮らしさ。すげーだろ、

【何となく話題を変えるようにそう言って笑えば、まあそれだけなのであって、「で、送っていくか?」とすぐに相手を返す方向になった】
431 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/14(水) 21:31:12.27 ID:7ODOZBPd0
>>430

だけどしょうがないの、お客さんたちもね、分かってるから、自分たちでやっててくれることもあるし――、

【「わたしよりお酒のこと、詳しいもの」】
【へにゃと下がった眉で笑う、お勉強しないといけないのは分かっているのだけど、とも続けられる言葉は、だけど、その暇もどうやらないらしいことの裏返しで】
【落ちてたと言ってペットボトルを差し出されればありがとうと笑うのだろう――とうてい年齢の通りには見えない、あどけないもの】

……でもね、自分でやるって決めたことだから、できるだけ自分でやりたいの。それにみんな忙しいのに、できてることで言うのも、悪いし――。

【休んで体調を整えるのも仕事。言われればまるで分かっていないわけではないのだろう、苦笑めいて笑うけれど、すぐに受け入れるようなことも、ない】
【自分で決めたからやりたいのだというのもどこか子供ぽい我満にも聞こえてしまう、今はまだ大丈夫なだけといわれればそれまでだし、そうなるまで、きっと彼女は動かない】
【変なところで意地っ張りな性質であるらしい――受け取ったミルクティーを喉が乾いているようにいくらか飲んで、】

そうなの? ……わたしね、お家に帰るの朝だし、最近はもうすぐにご飯作りに行くから、ほとんど家に居なくって……あんまりね、お話してないの、
ちょっぴり寂しいなって思うけど、寝てるのに起こしちゃうの、悪いから……、そっか、だから月彗さん行っちゃったんだ――、

【まるで知らないようだった、あるいはほとんど聞かされていない、笑っているけれど少しだけ寂しいような目をしていて、受け取ったペットボトルへ、視線を落とし】
【「前みたいにできたらいいなって思うけど、」――小さな声で呟いて、それでも、その先まで続いていかない。そうして数秒ばかし、黙ってしまって】
【送っていくかと尋ねられれば、もう少しの間、だまりこくって】

……ご飯食べに来る? わたしね、作るよ――、

【――それから、そう誘うのだろう。ただ少し忘れてしまっている、"彼"は月彗に家の場所を教えるなと言っていたような――おもいきり、誘ってしまったのだけど】
432 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/14(水) 21:47:57.74 ID:Hr6olRUeo
>>431

……自分でそう決めてんなら、俺がどうこう言える話でも無いな。……おっさんから最後に一言だけ、あんまり一人で抱え込むなよ。な、

【結局は心配性がぽろぽろと出てしまって、これで終わりと区切りを付けておきながらも、そんな言葉が最後に出て、今度こそ終わり】
【続いた相手の言葉には少しだけ驚いた様子だった。てっきり全て聞いているものだと思っていた、水の国に移る話も、承諾済なのだと】

話してない、か……そうか、時間が合わないなら、仕方ないかも知れないが……困ったもんだな、アイツも

【やっと戻って来て逢えたというのに、現状がそんなものだとはまるで知らなかった。と言うよりは、ほぼ教えてもらっていないのだが】
【それでも今日は討伐に出ている事だけは本部からの連絡で知っていた。彼も書き置きなりでそう相手に伝えただろうが、少しだけ淡白で】

……良いのか? あ、いや、行く。鈴音が料理してる所なんて、見たことあったか……? 酔ってて覚えてなかったのか、俺が

【――本当は、食べる事は出来なかった。死人の体は酒や煙草は受け付けても、食物は消化できない。つまりは、酷いことになる】
【相手がそれを知らないのをいい事に、一瞬動揺した気配をすぐに消して、冗談めかして話しては緩く笑う。当然行く、という流れへと】
【そのまま相手についていくなりするのだろう、転移が使えるならそれに乗り合わせて、歩くのならどうも機嫌の良さそうに話しながら】
433 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/14(水) 22:01:23.30 ID:7ODOZBPd0
>>432

だいじょうぶだよ、一人じゃないから――。

【昼間のことならお金を出してくれているひとがいる。夜もお客さんが手伝ってくれたりして、結局、本当にどこまでも一人きりの一人ではないから】
【だから大丈夫だなんて大人から見たら間違えたことなのかもしれないけど。とにかく大丈夫だと言いきったなら、それで、その話は終わって――それから、】

時間があればお話したいなって思うの、そんなちゃんとしたことじゃなくっても、普通のことでも、なんでも……、

【小さいけれど長い溜息が漏れる、時間を作りたいけれど仕事は動かせなくて、家に帰るのもほとんど朝。それなら作れる分なんてほとんどなくて、それなら、ないと一緒なくらい】
【起きて朝の食事を作りながら夜の分まで簡単に作ってしまって着替えて出ていく。家に居るのなんてひどいときはほんの数時間くらいで、昔より、うんと忙しい】
【おしゃべりしたくて仕方ないみたいに少しの間ぐずぐずと子供みたいな顔をしていたのだけど。そのうちにやっぱり仕方ないとため息を吐いて、その気持ちを終わらせて】

うん、わたしは大丈夫だよ。セシルがよければ……だいじょうぶかな? 

【――書置き。彼が家を出た時間によるけれど、もしかしたら、見ていない可能性があった。うんと朝早くに出たのであれば見ただろうが、そうでもなくて――】
【普通の朝の時間に家を出た、くらいだと、多分、見ていない。その前に彼女のほうが家を出てしまっている、――どちらにせよ大丈夫かしらと首をかしげてみせて】
【だけど眠たい頭では正直よく考えてもいなかった。大丈夫だと思う――とそれだけでふらりと立ち上がって、「じゃあ」と笑んでみせ】

もう毎日お料理ばっかしてるの、UTに来てくれればいつだって見られるよ。…………。

【見られたことがあったかはよく覚えてない。毎日お料理ばっかりしているものだから少し前のことでも記憶は不明瞭、どれがいつ作った食事だっけ……とか、分からない】
【だからなんとなく緩くごまかして、それから、思いだす。転移の術式――用意してもらったものは、触れないと、効果が相手まで及ばないのだけれど】
【――それでもまあいいかとなんとなく思考の中で流して、それから彼の身体に触れようとするのだろう。触れてもあんまり問題のなさそうなところ……肩か、どこかになるのか】

【術式を発動してしまえば後は早い。洋風の館と、やけに立て付けの悪い重たい扉と、――そんな光景になる】
434 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/14(水) 22:05:20.90 ID:Hr6olRUeo
/>>433
/急遽長くなりそうな電話が来ることになったので、絡みに行っておいて大変申し訳ないのですが持ち越しお願いできますでしょうか……
435 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/14(水) 22:13:39.16 ID:7ODOZBPd0
>>434
/了解しました、大丈夫ですよー
436 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/15(木) 18:53:54.81 ID:Zhxkw+q5o
>>433

大丈夫だろ、ってかアイツ確か今日は戻らないぞ。前の嫁さんと組んで討伐に――、いや、ええっと。……すまん、

【不意に黙ったのはあからさまで、それなら彼が対面で伝えられなかったのも納得がいくような、そんな話。それにしても、だが】
【最後に小さい声で情けなく謝ったのがこの男らしいというか。自分が謝ることではなくとも、言ってしまった事への、誰かへの詫びも】

あのよ、俺も昔な、でっかい船で厨房持ってたた事があるのさ。っても軍隊の船で、食わせる相手も量さえあれば良いような野郎連中で――

【話題を変えるように捲し立てる言葉は、相手が肩に触れて転移すれば途切れる。幾らか聞くなら、中華料理が得意とだけ分かるだろう】
【――それから相手の暮らす家へと辿り着けば、ほうと溜息をついて館を見上げ、夜のままの空を見て、重厚な扉を見て、一つ頷くのだ】

ここ、アイツの家か? 何か雰囲気変わった気もするが……、って、んな訳無いよな。アイツの家じゃ、先生の影響があって危ないし、

【先生、が誰を指すのか分からなくとも、家に憑き彼に影響を及ぼす者と言えば、あの黒ずくめの女しかいない。気紛れで、我儘で、母で】
【そこから先は相手の案内に従うだろう。先に口走ってしまった事で未だにそわそわしてはいたが、入る前に周囲を見回したのが、一つ】

/昨晩は大変失礼しました、ご都合の付く時間に返信頂ければ大丈夫ですので、どうぞよろしくお願いします
437 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/15(木) 19:43:18.93 ID:m+IPA+JT0
>>436

【相手の言葉に一瞬だけ丸い目がもう少しだけ丸くなって数度瞬く、知らなかったことを初めて聞かされた時の顔――それから、そうなんだ、と、つぶやいて】
【謝られたことにはあんまり気持ちが向いていない様子だった、今日は帰らないらしい……ということに意識を取られて、少しだけ残念そうな顔をしているばかりで】
【別に誰と居ようと気にしてないのは無関心じゃなくて信頼に似ているもの。だから彼女の反応はちょっとした落胆が大きい】

そうなの? じゃあお料理上手なんだ、……わたしね、UTでお仕事するようになって初めてたくさんのお料理ってしたの、いつも、家のばかりだったから……、
そんなにたくさん作らないでしょ? だからね、最初の頃は大変だったの。お塩の量とか、そんなにいっぱいの分は使わなかったし、でもね、もう慣れたよ――。

【でっかい船……厨房、あんまりなじみのない光景を、それでも頭の中に浮かべてみる。イメージはなんというかごつい男のひとたちが……タンクトップで……?】
【考えているうちによく分からなくなって、やめた。とりあえずすごい大きな台所なのかなとなんとなしに考えて、すごいと、素直にそう呟く】
【それから物理的に場面も切り替わって、変わらぬ夜だけれど気温がうんと低くて、さっきまでとは全く別の場所なのだ、と、なんとなく知れるよう】

【見渡せば――そうこまめに手入れできていないのだろう庭が目に入るだろうか。いろんな植物が植えられたりしているが、どれも、これも、手が行き届いているとは言い難い】
【なんとなく広範囲に薄くおおざっぱに手を入れた痕跡はあるのだけど、それでも赤くなった葉っぱなどは放置されたままで、花も――冬だからか咲いていないせいで、寂しく見える】

ううん、わたしの……、わたしの? えとね、知り合いに用意してもらったお家なの、だから、わたしのじゃないけど……、うーん、と、

【あいまいな言葉。何しろ知り合いが用意してくれた場所にしばらく住んでいて、そこに彼が来て……だから、なんだか、よく分からない。でも、今の家であるのは確かで】
【ドアが重たいの……なんてどうでもいいようなことを漏らしながらぐっと扉を開けて、彼を中に招く。――中は、女の子が住んでいるんだろうな、と、分かる小物が多くて】
【そこに彼の私物も混ざっていたりするのだろうか、ものはちまちまとあるけれど片付いていないわけでもなくて、それどころか、広いせいか物がなさ過ぎる印象さえ抱きかねない】

お客さんだから、ちゃんと作らないとね――、あんまり食べ物なかったらごめんね、出る前に見るの忘れてて……。多分あるけど――。
ね、セシル、ご飯食べて来るのかな……。用意しておいたら食べてくれるかな、

【通したのはなんだかんだ生活スペースになっている部屋、テレビとか机とか本棚とか炬燵とか一そろいあって、炬燵については、「中に居るから」……何が、とは言い忘れ】
【彼がものを食べられないのは知らないままで作る……ことで話が進んでいっている。それより先にソファで寝ていた白猫が彼女の足に餌をくれとまとわりついているのだけど】
【タイツの足に爪を立ててよじ登ろうとするまで気にも留めないまま、帰らないと聞いたひとのこと、気に掛けて――そう、尋ねるでもなく、尋ねていた】

/気づくの遅れました、それから食事がまだなので、次が遅れるかと思います
438 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) [saga]:2016/12/15(木) 20:51:12.44 ID:s4/Ts2dqo
>>437

はぁ……随分リッチーな知り合いだなぁ。俺の弟も金持ってる癖に、兄貴には何もしてくれなかったからなぁ。困っちまうぜ、本当に

【弟に集るのが当たり前のような口調がどうも長兄としては駄目な感じで、それならきっと彼も苦労ずくめであっただろう事が窺えた】
【ドアが重いと聞けば手伝おうとして、でも人の家だしでと躊躇して、そういや遠慮することも無いのかと思い至るうちに開いてしまう】
【年頃の女の子が暮らしている家に招かれる、よくよく考えたら今までの人生で経験したことなどなかった。だから中を見て少し固まる】
【弟の妻の家とは言え、良いのだろうか。そんな変な緊張感の中で、ドアが閉まる直前にもう一度場所を覚えるかのように外を見ていた】

あ、……ええと、悪い。実はよ、俺、食えないんだ。体が死んじまってるから、消化できないっつーか……汚ない話になるんだが。
だから飯食わしてくれ、ってのは建前で――俺が作るからよ、鈴音は少しゆっくりした方がいいんじゃないか、って話だ。何なら、
アイツの分もまとめて作るし……多分、食っては来ないだろ。鈴音に悪いから、って飯に誘っても全然乗らないんだぜ、アイツ

【「鈴音だって忙しいのによ、とんだ我儘だよな」なんて笑って付け足して、そう告げる。彼はいつも、そうしていたらしい】
【忙しい中、相手がそれでも頑張りたい、やってあげたいということに、何かを言うのは嫌だったのだろう。口数少ない故のこと】
【そんな補注もつけながら、とりあえず通された先の猫が寝ていたソファと炬燵とで悩んで、何かいると聞けば少しの後にソファを選んだ】
【猫が出ていったのを見てからどかりと腰掛けて、黒いネクタイを緩める。背もたれに背を預けてぼんやり部屋を見回して、それから】

で、食うか? 俺の飯。美味いぞ、

【なんてマスクを外して笑い掛ける、その頬にはやはり特徴的な牛の生首が乗った皿の刺青、そして死人である証のようなくすんだ肌色】
【それで察しがつくかも知れないが、死人が調理をするというのも危ないだろう。本人は至ってニコニコしながら言うが、どうしたものか】

/こちらも遅れました、了解です
439 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/15(木) 22:02:50.27 ID:m+IPA+JT0
>>438

【それから少しの間――とはいっても相手を部屋に通すくらいまで。わずかの間に聞けるのは、その知り合いのことが、少しだけ】
【何を考えているのかはよく分からないらしい。ただなぜだかよくしてくれて、こうして、家を用意してもらったりもしたとかで――】
【それでときどきこの家に様子を見にくるのだといって。それで、部屋に通せば――】

…………そう、なの? 

【ぱちくりと瞬き一つ、食事に誘った相手が食事できない身体だったとなれば、やはり、少し驚くというか――不思議に思ったのだろう。けれど理由まで聞けば、】
【「もう、大丈夫なのに……」だなんて少し困ったように笑っている。けれど悪い気持ちがないことは見れば分かるだろう。もとより、思っていることが顔に出やすい性質】
【自分は作るばっかであんまりひとの作ったものを食べることはないから――少し悪い気がする反面で他人が作る普通の食事というものに、心惹かれてもいて】
【だけどとまだ呟いているのは相手との間柄のせいもあるのだろう、ほんとうなら御兄さんと呼んで慕うべきではなかろうか、……けど、少し眠たいのも、ほんとうで】

え、あ……そんなこと、言うの? ほんとう? 最近なんて、ずっと、作り置きの方が多いのに――。

【――その言葉にびっくりと目が丸くなる、一瞬だけきょとんとしたような顔が――けれど、すぐに、柔らかく破顔する。まだ少し寒さに赤い頬に、指先で触れて】
【嬉しいような恥ずかしいような、ぎゅっとつぐんだ口元を指先で隠すようにして数秒黙り込む。それから――「わたしの分だけ、お願いしていいかな、」と、囁く声で返す】
【知らなかった。知らないことばっかりで眠たい頭が少しだけぐらぐらする、けど、そう言っていつも帰ってきてくれているのなら――それに、応えたくて】
【甘えてしまおうかなと思っていた自分がすっと隠れてしまう、自分の分は――お言葉に甘えるかたちで任せたいなと言いながらも、彼の分だけは、受け持ちたいと】

――うん、お願いします、誰かが作ってくれるご飯って、あんまり食べること、ないから。

【寒さとは別の意味でわずかに赤らんだ顔をごまかすように、足元でご飯が欲しいと鳴いている猫を抱き上げて、ふわふわのうなじに顔を半分くらい、うずめるようにして】
【相手が死んでいる人間である――というのには、あんまり気を向けていないようだった。しゃべって動いているなら大丈夫――自分の身体のせいもあってか、警戒は薄くて】

/お待たせしました、この後は安定して返していけるかと思いますー
440 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/15(木) 22:31:01.92 ID:Zhxkw+q5o
>>439

ああ、俺が誘っても月彗が集ってもちっとも乗りやしなくてなぁ……少しだけ悔しいわ、正直

【苦笑めいていう言葉は嫌味っ気など微塵もなく、素直に嬉しそうだった。弟がそれだけ大切に思う、思われる関係性に恵まれた喜び】
【手元を離れていってしまう寂しさはあったが、それよりずっと嬉しさの方が勝っていた。今までそんなことなど、なかったのだから】

おう、了解。台所借りるぜ、食材もあるもので適当にやらせてもらうから、暖かくして待ってな。……炬燵、何かいるらしいが

【「辛いのは苦手、だったか?」などと聞きながら、緩めていた服装を少し整えて男は仕度に入る。苦手だと言うなら頷いて、任せろ、と】
【とりあえずは台所の場所だけ尋ねて、あとは大丈夫だからと念押しするように、とにかく男は少しでも相手を休ませたい様子だった】

【それからは暫し相手が一人になる時間、そんな折に端末へ連絡が入るだろう。相手は彼で、内容は簡単な、急いで打ったような】
【『早めに片を付けたから、今日中には戻れそうだ』――何か不穏な気配を感じた訳でなく、彼も出来るだけ傍にいたいと分かるような】
【夜も出来る限りで起きて待っていた、そもそも長く寝る方でもないので夜更かしは慣れていたが、仕事柄、夜間から早朝に掛かる討伐も】
【そんなすれ違いがあることを、彼自身焦っていたのだろう。一緒に過ごせる時間はいつも、うざったい位に相手の隣に居たがっていた】

【――時間にして15分程だろうか、「出来たぞ」なんて声と一緒にドアを軽くノックする音が響く。手が塞がっているらしく、開ければ】
【片手に天津飯、油淋鶏、回鍋肉の乗った盆と、もう片手に素湯――ある野菜で出汁を取った簡単なスープを持った男が、困ったように】

作り過ぎちまったかな……、野郎に振る舞ってばかりだったから、女の子がどれ位食うか分からなくってな。余っちまったら悪い、

【品数はあるがそれぞれ一人分、材料も切らす程使ってはいないだろう。ただ、見た目のボリュームが結構あるような、そんな料理】
【それでいて割と綺麗に、というよりは凝った盛り付けがされていて、皿などもあるものから彼なりに選んだらしい様子が窺えるだろう】
【余談だが、調理器具なども最低限、後の洗い物が少なくなるように済ませている。勿論自分で片付けるのだが、普段からそうなのだろう】
441 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/15(木) 22:59:49.70 ID:m+IPA+JT0
>>440

【きっと兄としての色合いをたくさん持つ言葉。きょうだいのいない自分にはよく分からないけれど、なんだか、それも――あるいはうらやましいと思ってしまう、関係性】
【苦笑する彼は自分のようになれないけれど、自分だって彼のようにはなれない。そこには大きな違いがあって……それでも素直にいいなぁ、と、思う】
【自分にもきょうだいがいたらこうなのかなと空想してかすかに笑う、自分だってあなたたちには敵わないと言おうとした言葉が上手に見つからなくって、やめてしまったけど】
【少し寂しいようなうらやむようなあいまいな笑みは独特なものだから。きっと思っていることも、ばれてしまいそうで】

【からいのは苦手だと素直に言うのだろう。それでもからい食べ物がまったくからくないのも嫌だというわがまま、ちょっぴりだけだと言うのは、少しの強がりにも似て】
【おとなぶりたい子供みたいな様子があるのがどうしようもない、とにかく"ちょっとだけ"、ちょっとだけ苦手なのだとそう言うのだろう】

【そうして相手が部屋から出てしまえば――しんとした室内。さっきまで彼が座っていたソファに座って、そっと、膝を抱える】
【横どころか斜めになっただけでも眠ってしまいそうな自分がいる気がして、いやに背中をしゃんとさせたまま、ソファに……猫は横に置いたけれど、すぐによじ登られる】
【そんなときに携帯電話からまたぺこんというかなんとも気の抜けるような、それでもぱきっとした電子音が響いて。そうだ、さっきのを無視してしまった、と、やっと画面を点灯させ】
【目に入った文章に――ふわぁと気の緩んだように脱力してしまう。今日はもうあまりおしゃべりができないものだと思っていたから、それに、さっき聞いた話があるから、】
【なんだか文字だけでも少し照れくさいような、すごくうれしいような気持ちになって。すぐに返事をしようとした指先がふらふらと文字を迷う、一文字めさえ、決め難いよう】
【――急いでいたなら見ていないかもしれないけれど。だから。既読の文字がポップしてからも、しばらく、返事はなかった。時間にして数分くらいあと……ようやく、返るのは】

【「ちゃんと待ってるから、気をつけて帰ってきてね」】
【それから。たまたま一番近くでうなうな鳴いて喚いていた白猫――おもちの鼻がいやにドアップになった写真を添付して】

【――だから、食事ができたと彼が戻ってくるとき。なんだか彼女の様子が少し柔らかいような気がする、かもしれない。少しふわふわと嬉しそうにはにかんで】

今日ね、少し早めに戻れるかもって――。

【だなんて教えてくれる。さらに彼の作ってくれた料理にぱぁと顔をきらめかせれば、ちょっと多く見える料理にも怖気づいた様子はなくて】
【「ううん、大丈夫、きっと食べちゃう」と笑って返す。見た目なんて相当細い彼女だけれど、量は結構食べるほう。これくらいならきっと平気と言って】

いただきます――、すごいね、こんなにたくさん、すぐ作れちゃうの……UTのお仕事、手伝ってもらいたいくらいなの。
大変なんだよ、おじさんたちがね、あっちでこっちで、いろいろ言うの。お酒のことは自分たちでやるんだけどね。

【食べていいということになれば、案外お腹が空いていたのかもしれない。目をきらきらにしながら食べ始めるのだろう、本当においしそうに頬張る以上に】
【おいしいと何度も口に出すから本当にうれしくて食べているのがよく分かる――だなんて余談。彼が話しかけるならその都度きちんと飲みこんでからになるけれど、話すだろうし】
【ただ見ているというなら……ちょっと健康には悪いのかもしれないけれど、意外と早く食べ終えてしまうだろう。たとえ話しかけたって、見ていたって、怒らないはずだ】
442 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/15(木) 23:36:39.43 ID:Zhxkw+q5o
>>441

【――暗い荒野・隕石衝突跡地】

【ボロボロの翼をうんと伸ばして、照らす月にぐいと背伸びしていた黒竜が不意に甲高い叫び声を上げて、背に飛び乗ってきた相手を睨む】
【生傷に包帯を巻き付けたその背にヒールを履いた足で飛び乗られては当然そうなる反応――当の加害者側は、手許に夢中で見もしない】
【紅茶色の長い髪、黒のローブに戦闘跡の残るその彼は、やがて何やら送り終えたらしく。そこに巨石を担ぎ上げた黒髪の女が声を掛ける】

「本部への連絡か? 私がすると言っただろう、お前は早くボロゴーヴと一緒に帰ってやれ。私まで勘違いされては面倒だ、」

……いや。鈴音に、早く帰れそうだと、ね

【低く抑揚の薄い声はそれでも聞き慣れた人物にだけ分かる程度には浮足立っていた。そんな様子に溜息をつく女の傍らに、少女が寄った】
【戦いの跡が目立つこの場所には似合わないほどの幼さ、透き通った肌、そして尖った耳。エルフの少女は、少しだけ不満げな声を上げる】

『パパさん、もう帰っちゃうんですか? 最近いつも戦ってる時しかお話できてません、まだ水カエルの観察日記のお話も途中です、』

「言ってやるなビィーズ、戦いながら散々お喋りしただろう? 前線で黙って聞いていたが、お前達は一体いつ詠唱しているんだ?」

――じゃあ、済まないが、いいかい。あとは頼むよ、

【一刻も惜しいというような男の低い声に、呆れたように肩を上げて女は頷く。厚い白の鎧に身を包み、大剣を背負い、巨石を担いで、だ】
【エルフの少女も名残惜しげではあったが、『サンタさんに、私のお願い、ちゃんと伝えてください!』と去り掛ける背に声を掛けた】
【それを聞き届けたかどうかの所で腹を蹴られた黒竜が一鳴きして飛び立つ、後には女と少女と、無数の輝く巨石と、地に伏せた魔物】
【――黒竜を駆り、夜闇の空を疾駆する最中、懐で端末が震えた。その返信と添付された写真に、男は一人、柔らかく頬を緩めるのだった】

【夜の国――】

マジか、それなら邪魔になる前に退散しないとだな……って食えるのか。凄いな、最近の女子は……俺は食えなくなってもう暫く経つなぁ、

【きっと食べれるとの宣言、そして実際なかなかに食べ進めるのも早ければ、少し驚いたようにしつつ。美味しいと言われれば嬉しげに、】
【笑みながらも早めに帰ってくるというのが少しばかり誤算だった。片付けて、口止めを頼んで、まさかそれまでには戻って来ないだろう】

はは、おっさんの相手はそりゃあ疲れるだろうさ。そのうちUTにも顔出していきたいが、仕事の手伝いは難しいだろうな……
ま、俺も一応、一流っつか何つーか、まあ、就職したし? 部屋も貰ったし、今度こそ寝煙草でボヤしねえようにするし、忙しいし?

【コネで入れたことは一切口にしていないが、目標として述べた事柄から分かる通り、今までまともな職につけなかった理由が分かるよう】
【「このおんぼろスーツともお別れだな、」なんて照れ臭げに笑っているのが、何だか浮浪者が社会復帰出来たような――実際そうだが、】
【丁度相手が食べ終えた折に、彼からの返信が届く。『了解、』と短い文面と、夜の星空を飛ぶ黒竜から、遠くの街の光を写した画像】
443 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/15(木) 23:54:24.82 ID:m+IPA+JT0
>>442

【遠くの景色のことは知りはしない、きっと行ったこともない場所だし、想像したこともない場所だろう。それでもきっと空は同じで、それなら、なんだか心強い】
【寒いからしっかり閉じてしまった外の世界はうんとどこまでも広がって、きっとその向こう側に居てくれている。それがすごくうれしくて、幸せに思って、とりあえず】
【足を無意味にばたばたしたりソファにわざと乱暴に寝転がったりしそうになる――お料理を作ってくれている彼が戻る前、こっそり、ばたばたしてたのは内緒のこと】

うん、なんだろ、お仕事でね、余ったものとか食べたりすることもあるから……そしたらね、いっぱい食べられるようになっちゃった。
けど昔からご飯食べるの好きだよ、美味しいもの食べると嬉しくなるの。あたりまえに暖かかったり、冷たかったりするご飯……、普通のご飯、ね。
……あ、でも、菓子パンとかもあったら食べるよ。忙しいときとかはお料理しながら食べたりするから……。

【食べられなくなってしばらく経つ。その言葉に一瞬手を止めてもぐもぐと咀嚼する間、それから――「とってもおいしい」と、改めて、口にするのだろう】
【彼が食べられない代わりに、その分まで、美味しいと言おうとしているようにも見えた。もちろんお世辞とかではなくて、心の底から――おいしそうな様子で】

愚痴とかいっぱい聞くんだよ――けどみんなお料理美味しいって言ってくれるから、がんばっちゃうの。きっと褒めるのが上手なんだね、みんな――。
…………そっか。じゃあ、仕方ないね――、けどね、よかったら、今度遊びに来て? ご飯食べられなくっても、えっと……、……楽しいもの、用意するから。

【それこそお世辞だろうと思っても褒められたらうれしくなってしまうもの、ちょっとしたオマケとか、なんだか、それ目当てな気がしないでもない、けど】
【いろんなひとに構ってもらってときたまお酒をおごってもらったりして、お仕事それ自体はとても楽しくやっていた。ただ――生活が変わっている間に始めたこと】
【数年をジャンプして元の生活に戻った後では、少し、不満ではない。不満ではないけれど、すこしだけ、どちらかがずれてしまう。それが仕方なくて、少しさびしくて】

……やっぱりわたしお片付け手伝うの、帰って来たら、お茶くらいするでしょ? お客さんにお片付けなんてさせてたら、悪いし――。

【――それから、彼女は、ぺろりと出されたものを全部きれいに食べてしまって。かちゃかちゃとお皿を重ねれば、もう、片付けを手伝う気にすっかりなっている】
【彼が口止めだなんて考えているのは知りもしないでお茶くらいするよね、と、悪気もなく口にして――半分くらい立ち上がったところで、携帯電話に通知が飛んで】
【「ね、あんまり時間かからないかもしれないから」――内容を確認して、「よそ見しちゃだめだよ」とだけ返す。それで携帯を机に戻せば、今度こそ立ち上がって――】
444 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/16(金) 00:36:18.94 ID:EjA5lXz6o
>>443

ああ、気にすんなよ。お客さんってか兄貴だし、好きに使って構わないんだぜ? な、って早いなオイ、待てって、

【帰って来たら、まず蹴られる。それもヒールで、だ。おまけにもしかしたら少なからず鈴音との口論にでもなってしまいそうで、】
【……いやそれはないか、と思い直していたらもう相手は席を立っていた。思ったより早く帰って来そうだと察すれば、いやに慌てる】
【いそいそと相手についていく形で台所へ向かうのだろう、道中「ほんと気にすんなって、」とか煩いのだが、押し切れる程ではなく】
【台所に着いて分担を決めている頃だろうか、また相手の端末に返信が届く。「分かった」と、いつもながら短い文面なのだが】
【一緒に送られて来た画像は少しブレていて、おまけに海面スレスレを滑るように飛んでいるらしいもので。相変わらずというか、馬鹿で】

えーっとだな、じゃあ俺が皿洗うから、鈴音が泡濯いでくれるか? 油モノが多いから、湯で濯いだ方が……それじゃ手が荒れちまう、か?

【手伝ってもらう事は、その方が早いだろうと承知したのだが。片付けは一人ですることが多かったため、どう分けたものか不慣れだった】
【大抵の仕事は一人で済ませようとする人間だった。実際出来てしまうし、だから問題も何もかも一人で解決しようとする、とは余談だが】
【分担に当たって悩んだのはそんな事。調理での仕事なら洗い物も多いだろう、男なら気にはしないが、相手はどうだろうかと気になった】

【――結局、どう分けるかは、相手に従うことになる。「この後ちょっと用事があってな、多分出迎えは出来ないっつーか、」とか、】
【片付けの合間にやたら言い訳めいたことを並べて――最終的には、「俺が来てたこと、黙っててくれるか?」と正直に話すことになる】
【理由を聞いたなら、アイツは確実にキレるから、とだけ返って来るだろう。確かに彼も、普段から兄のお節介にうざったそうにしていて】
【自分がここに来たことを話せば、帰って来てからの時間に恐らく水を差す事になる。そんな理由を添えて、口止めを頼むのだろう】

【――全て済めば、そんな理由でいそいそと男は帰途に着く。それから半刻も経たないかで、庭先に竜の着地する羽ばたきが聞こえて】
【『……ただいま、鈴音』――軋んだ扉の音が消えないかのうちに、そんな声がする。少しだけ慣れない様子なのは、同居人に遠慮してか】
【ローブの裾が少し濡れているのは余談、と言うよりあの画像で大体の検討がつくし、庭先の黒竜も身震いして海水を払っていたのだった】

/すみませんが今晩はこの辺りで失礼します、続ける形でも明日の夜に返信出来ますので、そちらのやりたい方でお任せします……!
445 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/16(金) 01:01:02.76 ID:x48h1H0I0
>>444

もう、そんなの、もっと駄目だよ――。

【――駄目、らしい。たとえ兄だとしてもお客様はお客様、むしろお客様にお料理を作らせた時点でよろしくない……わけではないが、手伝いまでしないのは】
【さすがに少し気になるのだろう。「それにお片付けの場所、わかりづらいかもしれないから」とお皿を自分で運びながら、部屋を出る――その背中を、】
【炬燵からわずかに頭を出した白蛇が眺めるでもなく眺めて、また、暖かい中へ戻っていく――なんて余談】

【二人とも料理や片付けに慣れていたって、互いに互いに配慮していては案外やりづらいかもしれない、なんせ普段一人でやるものだから、ああじゃない、こうじゃない、と】
【少し慌てるような形になるのだろうか。手があれるとかはどうでもいいらしい彼女がひとまず泡を流すかかりになって、せっせと泡を流していくのだけど――】
【その途中に言い訳めいた彼の言葉には不思議そうにしてやはり理由を尋ねる、結果、ちょっとだけ予想と違うものが返ってきて】
【さっきうらやましいと思ったけれどそんなものなのだろうか、と、少し複雑なものになる。自分としては、しゃべっていくくらいなら、と、思うのに】
【――それでも彼がそうだというのなら、しぶしぶらしい顔はしながらも納得するだろう。ひとまずは黙っておいてくれるはずだ、……ゆびきりはしないけど】

【やがて片付けも済めば、帰ることになるのだろうけど――必要ならここに連れてきたときのように送って帰るのだろう。どちらにせよ帰る彼には】
【ごちそうさまとありがとうをきちんと伝えて、またと最後に言って終わりになる。――その顔が気のせいにしてはいくらかわかりやすく嬉しそうに見えるのは】
【もちろん変な意味ではなくって、帰ってくるひとのことをじっと待ってのこと。ソファで足を無意味にぱたぱたさせたり猫に何度もねこじゃらしを放って飽きられたり】
【寝床から起きてきた仔竜を捕まえて全身悪徳マッサージ師みたいに揉んだり――それで、ようやく、帰った音を聞きつければ】

【ぱたぱたとスリッパを鳴らして玄関まで走って――彼からすれば、扉を開けた瞬間に抱き着かれそうになる形になるだろうか。室内に居た彼女はひどくあたたかな体温で、】
【きっと外から……それも海べりから帰ってくる彼は寒いだろうからと暖房を強めに入れていたらしい。さすがに廊下はそうでもないが、部屋まではいれば、十分すぎるほどに暖かで】
【黒竜にもおかえりなさいと声をかける、濡れているのに気づけば彼の方にタオルは要るかとか尋ねもするのだろう。必要ならおっきなバスタオルを二枚持ってくる――はずだ】

おかえりなさい、おかえりなさい――、寒くない? ほっぺた、冷たくない――? 暖かいお茶淹れるね、ご飯は食べる? まだできてないから、これからだけど――。

【精一杯に嬉しそうにしながら話しかけて来る様子はなんだかお腹を空かせたときの猫みたい、色違いの瞳をめいっぱいきらきらにして、いつもより、少しだけ、声が幼く聞こえる】
【もしかしたら、まともに時間の取れそうな夜は、数年ぶりのあの日以来、初めてかもしれなかった。溶けたように柔らかい表情は仕事帰りのくたびれたものとは、全然違っていて】

/了解しました、明日もメインに返せるのは9時くらい以降になるかなと思います。ひとまずお疲れさまでしたー
446 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/16(金) 09:46:55.44 ID:EjA5lXz6o
>>445

っ、……ふふ、ただいま、鈴音。冷えたかも知れない――ボロゴーヴが、ね。何かくわえて離さないものだから、頬の中まで冷えてるだろう
お茶……、私と、彼にも貰えるかい。ウイスキーを飲ませて暖めても良いのだけど、悪酔いして火の玉をやたらと吐くのでね、

【抱き付かれて少しだけ驚いた様子、けれどすぐに緩められる頬と、相手の頭を撫でる指先は確かに指摘する通りに冷え切っていたけれど】
【彼は自分のことより、ここまで飛ばして来てくれた相棒を労いたがった。普段ならぞんざいな扱いをしていたが、今回ばかりは、と】
【もし与えてやるならお茶は普通に何でも、それこそ紅茶でも、スープ皿で与えてやれば喜んで飲むのだろう。その前に、相手に渡すのは】
【少し涎にまみれてはいるが、とても綺麗な鉱石の欠片だった。つるつるとしたその断面は銀河系を閉じ込めたような文様で輝いていて】
【宇宙の欠片のような、そんな石だった。戦いの後にでも拾って来たのだろう、鈴音へと鼻先で押しやる様子は、どうも渡したいらしく】
【受け取らないにせよ、黒竜は労われたことが何よりも嬉しいかのようにたまに落ち着きなく首を振っては相手に擦り寄るのだった】

【(このおんぼろの竜は、どんな扱いを受けても結局、彼に懐くのだ。理由は一つ、たまにとても美味しいものを食べさせてくれるから)】
【(そしてもう一つ、自分を可愛がってくれたりする人間もとても大好きだった。普段ぞんざいに扱われるだけ、余計に好きになって)】

ご飯……、ああ、そうだね。食べたい。鈴音もまだ、食べてないのだろう……、?

【先程まで兄がここにいて、相手に料理を振る舞っていたことはまるで知らない。故に、普段ならきっとそうなのだろうことを尋ねて、】
【それから、玄関先で少し何か嗅ぐようにして、首を傾げるのだ。作ってないと聞いたが食べ物の匂いがして、それから、何か――】
【嗅いだことのあるような。彼が何やら考え出す前に、それに思い至ってしまう前に、何か手を引くなり、した方がいいのかも知れない】
447 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/16(金) 17:50:35.79 ID:x48h1H0I0
>>446

【ぎゅっと抱き着けば真っ先に感じるのは冷たさ、夜の温度ですっかり冷やされているだろう服に抱き着いたまま顔をうずめて、彼には頭のてっぺんだけが見えるようになって】
【そうしてほんの少しの間ぴったりと身体を寄せていたのだけど、それでは帰ってきたばかりだのに動けもしないだろう。だから身体を離して、じっと見上げて――】

――わかった、お茶でいいの? ミルクもあるよ、甘いミルクにする?

【それだけでひどく嬉しそうにしていたのだけど。お茶を用意してもらいたいのだと言われれば、頷いて。竜ってお茶を飲むのかしら、と、そう尋ねもするけど】
【本竜にミルクにしよっかと尋ねてはみれど言葉での返事もないだろう――あったらひどくきょとんとはするだろうが。とにかく主たる彼の言うことをすっかりきれいに聞くはずで】
【お茶だと言われればお茶。ミルクでいいならミルクで、ウィスキーはやめた方がいいならやめておく。――それで、一度奥に引っ込み。彼の分は部屋で用意しながら、】
【ボロゴーヴの分も用意していっとう大きな深さのあるお皿に温めたものを注いで、それから持って行ってやる】

【彼に向けるのとは少し違う表情。ひたすらかわいがるだけの顔で、何度か「美味しい?」と尋ねたりするのだろう、きれいな石を渡された時も、子供相手であるかのように】
【わかりやすいように本当に嬉しそうに喜んでみせて、「お部屋に飾るね」と言って、大丈夫なら頭や首筋をいっぱいいっぱいに撫でてやろうともして】

んーん、帰ってくるのが遅いんだと思ってね、わたしは食べちゃったの――。あれ、

【――少し残念そうに下がった眉の表情。彼の兄が来ていたことは言わないけれど食事をしてしまったことだけ言って、ごめんね、と、謝る。嘘を吐くことにも謝罪を籠めて】
【思ったより早かったということになるのだろう、けどその分思ったよりも早く会えて嬉しそうにしているまま、「こんなところに居たら寒いよ」と、部屋へ誘う】
【そうして普段使いの部屋にたどり着く前――視界の端を白色がよぎって。見れば、白蛇が廊下の角を曲がっていくところで――用意されている自分の部屋にでも、向かうらしい】
【セシルが帰ってきてから変わったことは「へびさまの部屋」にも炬燵が一つ置かれたこと。けれどだいたい何もかも部屋にだいたい居るのは、寂しい……ことは、ないのかもしれないけど】

ご飯、すぐ食べる? 

【ひとまずは用意した暖かいお茶を出しながら。食事が後でも前でもおしゃべりしたい少しせっかちな様子は、子供ぽくはしゃいでいるような色が確かにあって、そわそわして】
【ご飯を食べるのだといえば(急いで)作るのだろう。それともまだ食べないのだといえばそばに座ったりするのかもしれないし、――白蛇は空気でも呼んだらしい、と、いまさら】
【彼女はあんまり気にしないけれど彼は少し気になるのかもしれないから、――あの蛇も、なんというか、不器用なりに、気まずさのようなものは感じているのかもしれない】
448 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/16(金) 21:29:20.54 ID:EjA5lXz6o
>>447

【言葉は解しないながらも、何か自分に用意してくれるらしいと分かれば尻尾を犬のように振るので、庭先に少し被害が及びそうな程】
【それから温かい飲み物を出してもらえば嬉しそうに飲む、猫舌ではないらしいのは普段から火球を吐く故だろうが、たまに喉を上げて】
【鼻を鳴らすような、不思議な鳴き声。美味しいかと聞かれるたびにそれを鳴らす、美味しいと返事をするかのようだった】
【頭、特に首筋は撫でられると酷く喜んで、重たい頭を擦り付けるようにして懐くだろう。飼い主は、気紛れにしか撫でてくれないから】

ああ、そうだったのか……気にしないで、私は構わないよ。……そうだね、行こうか

【何処かで嗅いだような匂いを思い出せないままそれでも思考の端でぐるぐると探していた折に、その姿を見れば頭も真っ白になるような】
【気を遣わせただろうか、と思いはすれどどう声を掛けたものか分からないまま白色は過ぎ行く。ここは甘えるのが最適解か、と】
【暖かな部屋に辿り着いてようやく、落ち着いたようにソファに腰掛ける。少しだけもたれ掛かって天井を仰いだのが、誰かに似ていた】
【それから長い髪をざらりと引き連れて起き上がれば「ありがとう、」とお茶に手を伸ばす。緑色の茶は、ここでよく飲むようになった】
【自分の髪色と同じ紅茶はたまに飲んだが、あの屋敷にいた頃はどす黒い珈琲ばかり飲んでいた。そう、いつかそれを、誰かに出して、】
【――記憶の中の顔にノイズが掛かる。名前を、声を、思い出そうとして、何も思い出せない。記憶の中でこちらを見るのっぺらぼう、】

……、――ああ、まだ、大丈夫。それより、少しゆっくりしていよう、鈴音

【何かに引きずり込まれそうになった意識が、相手の一言で一気に引き戻された。少しだけ間を開けてから、そう答える表情は落ち着いて】
【というより、落ち着かせていた。誰かの事を何も思い出せないのに、どうしてか、交わした唇の薄さと冷たさだけが、鮮明に蘇っていた】
【温かい茶を含んでそれを忘れるようにして、紫色の指先を暖める。あの誰かは、彼は、――愛していた、愛そうとした、そして――、?】

……そう。やっと、二人きりで、ゆっくり出来る時間なんだ、だから、

【だから、その姿を掻き消すように。「キミの話が聞きたい、」と鈴音に微笑み掛ける表情は普段の通りの彼で、何の変化もない】
【唐突に言われても困るようなこと、まして先刻までの件は口止めされていたなら尚更だろう。逆に彼の話を聞くのも、いいかも知れない】
449 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/16(金) 21:52:23.21 ID:x48h1H0I0
>>448

【なつかれれば彼女もひどく嬉しそうだ。生き物は好きな性質……というより、どちらかといえば、だいすきと言っていいくらい】
【それでなんとなく話が通じているような返事をくれればきゃらきゃらと笑って、また頭を撫でてやる――なんて、光景があって、】

……そう? じゃあ、

【お腹が空いているならと思っていた。それで大丈夫だと言われれば、ほんの一瞬だけ悩むようなそぶりを見せたのだけど、すぐに、ぱっと笑って】
【彼の隣に座ろうとするだろう――そのまま許してもらえるのならソファを少しだけ体重で揺らして、隣にちょんと、少しだけかしこまった様子で、座るのは】
【やっぱりこんなに時間が取れるのが久しぶりだからというのが大きいのだろう、あの日だっていろいろあったし……あるいは数年ぶりなくらいにも思え】

【彼が何を考えているのかは、分からなかった。というよりは分かれなくて――ひとり、頭の中では、どきどきとはしゃいでしまっている彼女がいて】
【少し照れくさいような気持ちがあって。多めに入れたお茶を自分の分もマグカップ――指先が熱いといって――に注いで、ちまりとなめるほどに飲む】

わたしのこと……? ……最近はね、ずっと、お仕事してるよ。お仕事ばっかりなの、それで……、……えっと、ね。
あ――それでね、わたしがお家に居ない時。なにしてるのかなって思うの……それでぼうっとして、ね、このまえお料理すこしこがしちゃった。

【静かな室内ではすぐ隣に居る自分の呼吸までも聞かれてしまいそう、少し膝をもじもじさせて――自分のことを聞きたいと言われれば、少し、困ってしまったように笑う】
【昔より明らかに家に居ることの少なくなった彼女は、やっぱり当然のように仕事ばかりであるらしい。お仕事のこと……だけど、それは、聞かれているのとは少し違う気がして】
【だからこっそりとした秘密みたいに囁くのは、自分がいない間の相手のこと。何をしているのかとか、どんなことを考えているのかとか、……気になっているのを、白状する】

前はね、少し分かった……でしょ? だから……、今は、わからないから、じっと考えてるの。
あんまりお話もできないから――いろいろ考えちゃう、の……、どうしてるのかなって、いっぱい。

【前。まだ彼に魔力をもらっていたあの頃は、すべてではないけれど少しなら分かる気がした。言葉でも身体でもないところで触れられている感覚が、ずっとあった】
【けれど今はもうないから。――いま代わりに魔力をくれている存在はそういったものが一切なくて、まるでもらっていることさえも忘れてしまうほどに、きれいすぎる】
【紫色――頭の中でちらりと思い浮かべて、けど、すぐに彼の持つ色のことを考えている。色合いから連想した黒猫の女のこともちらりと浮かべて、けど、】
【相手のこと以外はすぐに考えがどこかに行ってしまう。――叶うなら少し甘えるような仕草で体重をほんの少しだけ彼に預けようとも、して】
450 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/16(金) 22:18:49.44 ID:EjA5lXz6o
>>449

仕事……、私もそうさ。前にいた組織に拾って貰ったは良いが、人使いが荒くてね……なるべく、鈴音がいない時間に仕事を受けている
それで、戻る頃には自分も戻れるように――それでも、どうしてもすれ違ってばかりだったけれど。キミも私も、抱えている物があるから

【仕事。その殆どは魔獣討伐で、水の国を拠点として動くことが多い。だから水の国の本部ビル――かつて二人で住んでいた、あの場所に】
【戻って来てくれないかと打診されていることを告げて。ただ、相手の仕事や同居人達との都合もある、だから悩んでいたのだと】
【ようやく打ち明けたのはそんな話だった。兄や弟を組織に連れ込んで何とか回してはいるが、まだ噛み合っていないために忙しいと】
【けれど――少し考えた後に、「私は、ここにいたいと思う、」とだけ呟いた。相手のためだけでなく、自分自身、そうしたいのだと】
【それから相手の反応を伺うように視線を向ける、預けられる身体も受け入れて、その肩に手を回そうとする。触れるのさえ久方ぶりな、】
【僅かな距離感――それを埋めたい様子だった。離れていた時間すべてを埋められる訳ではないにせよ、少しでも、そうしていたかった】

悦那と月彗が使い物になれば、私も楽が出来そうなのだけど。何せ探索のイロハも知らないし、単独行動は当たり前だしで、どうにも……
月彗に至っては、壊せば終わりだと思っている節があってね。どうにも少し、時間が掛かりそうだ……三人共、能力が少し変容したからね

【三人共。それなら自分も含めているのだろう、カップを置いた手の先に収束してみせる黄緑の燐光は以前よりずっと強く、明るく輝く】
【底無しの貯水槽を覗き込むような魔力は、或いは大量の水が苦手な相手にはよくない程に深い。以前はその半分もなかったようなもので】
【「私が一番弱いことに変わりは無いのだけど」と薄ら笑って言うのが自虐めいていた。経験はあっても、能力のアドバンテージが違う】
【彼からは、一先ずそんな話が出る。他に聞きたいことがあれば答えるだろうし、「焦がしたものはボロゴーヴが食べるから」なんて言う】
451 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/16(金) 22:43:50.46 ID:x48h1H0I0
>>450

【そっか、と、小さなつぶやきがあった。いつだってお仕事が終わるころにはくたくたで眠たい自分は、帰って来たらすぐに眠ってしまうことが多かったし】
【もし寝ているのなら起こしてはいけないとわざと何も言わないままで眠ってしまうことも多かった。ただ仔竜や猫を抱いて眠るのは今までと同じはずだのに】
【思うことをわがままだと思って。わがままを言ってはいけないとぎゅうっと我慢して、――だけど、彼も、合わせてくれようとしていたことを、きっと、初めて知って】
【すっかりと信頼しているさま。力はほとんど抜けてしまった状態で身体を預ける、肩に手が触れれば、わずかに身じろぎするが。気配はうんと嬉しそうで、嫌がっているわけではない】
【久しぶりだからどうしたらいいのかがよく分からないみたいにしていることだろう、身体を預けたこともちょっと少し精いっぱい、少し震えた吐息を漏らして】

わたしは、ね、一緒なら、どこでもいいよ――、帰るときにきっと居てくれて。そうじゃなくっても、きっと帰ってきてくれるって、思えるなら、

【「どこでもいいの」】
【ここでなければいけないという理由はない。けど彼がここがいいというならここがいいと思う。黒かったあの屋敷に少しだけ似ている、この場所で】
【彼のいなくなった日のこと――思いだしてしまって、わずかに身体をこわばらせてしまう。それでも視線と身体の感覚で隣に居ることを、頭にきちんと理解させる】
【伸ばした手がこっそりと彼の太もものあたりに触れて、ぎゅっと服の布地をつかむのだろう、距離間を埋めたいのはこちらも同じ、一緒に居られなかった時間のあいだで】
【変わってしまったものを精一杯に並びかえながら、元のように近づけていこうとする。それがきっと今必要なことで、だけど、つい、甘えたくなるから】

……大丈夫だよ、きっと、教えるの上手だから――。

【なんだか面白いものを空想したように小さく笑う、きっとすぐにどうにかなるよと囁くのは、二人だって大丈夫だろうし、彼の教え方なら、きっと、平気だと】
【いろいろなことを教えてもらったからこそ大丈夫だと本当に思っているのだろう、少し顔を彼の方へ向けて、笑って】
【それから彼があふれさせた魔力へ視線を移ろわせる、懐かしい色、あの黒猫の持つ黄緑色とは少しだけ違うもの――怖い水を思わせるさまも、彼のものなら平気に感じられ】
【「そんなことないよ」「それはだめだよ――」柔らかい声が返事を重ねていく。ボロゴーヴについては「おいしいものもあげなくちゃ」と、さっきの喜びようを思いだしながら】

――――ねえ、ね。前みたいにしてほしいって言ったら、……してくれる?

【少しの間、その黄緑色のきらめきを見つめていた。けれどそのうちにそれが欲しく、なって――預けていた身体をわずかに動かして、じ、と、相手の顔を覗きこむようにすれば】
【ほんのわずかに不安に似た揺らぎとどうしようもない期待とを浮かべた眼がじっと相手の眼を見つめようとするのだろう。あるいは甘いシャンプーの香りさえ分かるほどに、近く】
452 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/16(金) 22:56:51.59 ID:EjA5lXz6o
/>>451
/眠気が酷く……申し訳ないですが明日にまたお返事させて頂きます、
453 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/16(金) 23:15:27.61 ID:x48h1H0I0
>>452
/了解しました、明日は今日より時間に融通効くと思うので返せる時間に返していただけたらと思いますー
/ひとまずお疲れさまでした
454 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/17(土) 10:44:52.55 ID:rP7i6o15o
>>451

……そう、か。私も、鈴音と居られるのなら。どこに居たってやっていける。鈴音が待っていてくれるのなら、……待っていて、くれるから

【猫達も仔竜も、何なら他の同居人達も――共に暮らせなくは、なかった。けれど、こちらの勝手で彼らの住処を変えさせるのは嫌だった】
【そも水の国に居ろというのが本部の勝手なのだから、従う理由などなくて。それだけの我儘を言える程度には、立場も高いのだから】

【――もう、あの組織に関わって二十年近くになる。立ち上げたのは自分だった。ただ、当時は幻獣を狩り殺して、酷い時には同業者さえ】
【水の国の数ある討伐ギルドの中でも、悪名の方がずっと高かった。そうして来たのは、ギルドマスターだった自分の決めた方針だった】
【それが今では――表の顔など作って、寧ろそちらの為に狩りが忙しくなったようなもの。勿論合法的な、ただそれ故に難度が高い依頼】
【自分も代表を降りて、旧知の仲の案内人に組織は任せている。ついでに浮浪者の兄と風来坊の弟も任せてしまったのだが――と、語って】

前みたいに、……勿論。鈴音が欲しい分だけ、あげるよ。反射と対消滅――少しだけ扱いは難しくなるけれど、鈴音なら。大丈夫さ

【もう呪いの解かれた視線は迷う事なく相手を見詰めて頷いた。紫色の指先に魔力を集中させれば、少しだけ悩むようにしてから】
【「どうやって繋げようか、」と問うのは幾つか種類があるためだった。対の指環を通すか、或いは昔乱暴にしたように直接魔術式を描く】
【前者なら或いはお互いの力を指輪を通して用いる事も出来るだろう。ただ、単純な伝導率なら後者の方がかなり強い。そう、説明して】
455 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/17(土) 11:48:03.00 ID:7YlsPmjM0
>>454

【初めて聞かされることを聞き逃さないように、理解しそこなわないようにと気をつけているのが、多分、見た目からでも分かるほど】
【じっと目を向けたままでいた。幻獣を殺すこと、少しかわいそうと思ってしまいそうになる反面で、それが仕事であるなら仕方ないと思いもして】
【同業者……というのには一瞬視線を落としはするが、それを強く批判はしなかった。というより、自分が強く言えるほどきれいな手をしているわけでもない】
【むしろ彼から指摘されたとしても黙ってうつむくことしかできないくらいには、汚い手をしているのだから】

わたしね、なんでもいいよ――遠くに居ても気にならないくらい、そばに居るって、分かるなら。

【じっと見つめていた顔が相手の言葉にぱぁと綻ぶ。嬉しそうに笑って――じっと覗きこんでいたのを、それから元のように前に向く方向に座りなおし】
【もっと昔のように指輪を使うことも、昔のように無理やり一番奥を繋いでしまうのも、どちらでもよかった。欲しいのはその魔力と、――互いに存在している証明と】
【見えていないものは存在しないのかもしれないなんて理屈が通用しないくらいに分かれば、方法そのものは、きっと、あまりこだわらない】

【それでも――昔はよくそれを甘える手段の一つにして必要ないほどの魔力をもらっていたような子だ。効率がいいのは純粋に便利だろうし、】
【さすがに今の様子ではそうやみくもに欲しがりはしないだろうと彼が思うのなら指輪を用いる方法でも構わないだろう。――なんせ、そういったことはまだよく分からない】
【彼やあの紫色に魔術を教わったこともあるとは言え。そういった高度なことはまだまだできないし――最近では忙しいのを理由に、まったくやってすらいないほど】
【だから。きっと自分より分かる彼に任せたいというのを言って、スリッパの足をぱたぱたと揺らして】

……けど、ね、わがまま言っていいなら。一番――いっぱい、近いのが、いいな。

【ちら、と、横目で彼を見て、ねだる。少し頬を赤くして、それでもどこか悪戯っぽく】
456 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/17(土) 12:15:26.84 ID:7YlsPmjM0
>>454>>455
/すみません、外出しないといけない用事があったのを忘れていて……次のレス遅れます
457 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2016/12/17(土) 13:40:03.43 ID:jbtanL9vo
>>455

【本来なら幸せなどこの先一生赦されないだけの咎を背負っている。絶滅危惧種も神様のような存在もかつての仲間さえも彼は手に掛けた】
【そう出来るだけの力があって、合理的に進めるためならそうするのが一番だったから、殺めた。数など数えていないし、覚えてもいない】
【兄は思想のためなら抗争も内ゲバも総括もした、弟はただ愉しみとして縊死体を廃墟に吊り下げては嗤っていた、どちらもただの人殺し】
【共通するのは誰かを殺めることで喜ぶ人がいたこと。先生、お師匠様、師範代、そう呼ばれた一人の女が、全てを微笑みで赦してくれた】
【「仕方がなかったのよ、貴方は悪くないの、だから大丈夫――」どれだけ取り繕っても常に苛まれる罪悪感を、そんな甘い言葉で消して】
【そうして結局また誰かを殺めざるを得ない状況に引きずり込む。彼らはそれに気付きもせず、ただ確かに彼等自身の意志で人を殺めた】

……分かった。なら、互いの血を交えて契約し、身体にその証を刻む――古の呪術だけれど、きっと、一番近い距離になる

【要は、互いに相手の血を舐めて、身体の何処かに契約の魔術式が浮かび上がるというもの。既に相手にそれが刻まれているなら、】
【上書きする事もできる。ただ、上書きする以上は、かつての契約者からの魔力は得られなくなる――そう説明して、相手が承諾するなら】
【彼はその仕度を始める。とは言っても、襟を開いて首元から肩までを露出して、「私は首筋か、鎖骨からがいい」と。暴露大会のような】

/了解ですー
458 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/17(土) 17:00:31.76 ID:7YlsPmjM0
>>457

【ぱたり、ぱたり、つま先の仕草だけではいているスリッパを動かしている仕草は。落ち着いているように見えるけれど、すぐ隣なら分かるだろう――少し、そわそわとしていて】
【また前みたいに魔力をもらえることにすっかりと浮かれているのだろう、こっそり伸ばした指先で彼の服の端っこよりも端っこを捕まえて、指先に挟んでしまったなら】
【その布地の感覚を味わうみたいにちりちりと指先を合わせるようにして遊んでいる。こっそり――のつもりだけれど、ときどき布が引っ張られる感覚はかすかにあるはず】

……――血、? うん、いいよ――、血があれば、いいの? 

【やがて告げられたことは、今の彼女にはまだよく分からないもの。とりあえず血が必要であるというのだけは分かったのだろう、血を交える、というのはよく分からなかったから】
【物理的に混ぜでもするのかと不思議そうな顔をしていたのだけど――簡単でももう少し詳しい説明をもらえれば、それで理解するはずだ】
【本来ならあまり印象を抱くようなものでもないのかもしれないけれど、忌避する……あるいは嫌だと思ってすらいない様子の彼女は、すっかりとその言葉を受け入れ】
【血……と呟いてなぜだか自分の手のひらを見たり、ぴんと指を伸ばした手の甲を見たり。ただ簡単に見られる場所だったから、というだけで何の意味もないものだけど】

【開かれた襟と見えた身体。きっと前に見た時のように傷だらけなのだろう、刹那にぱちくりと目を丸くした彼女は続く言葉にようやく意味を理解して、】
【あんなにもその首筋に何度も何度も歯を立てていたのがもう何年も前なのだと気づく、だってひどく久しぶりな気がして、実際に、そうすることは久しぶりだった】
【それでもきっと求められていることを分かったつもりなら、だからって自分はどうしようと少し慌てたような顔をして――】
【――胸元にいくつかだけボタンのついた服。そのボタンをひとつふたつと外せば胸元……というよりは彼と同じ鎖骨のあたりを露出させておいて】

わたし、……わたし、どこでもいい、よ、手でも、首でも、お腹でも、足でも……どこでも。――いちばん、好きなところに、して?

【だからといってそこに乞うわけでもない。どこでもいいと甘え声で囁いて、それからやり方の分からない自分の身体を、捧げられるより先、彼に捧げて】
459 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2016/12/17(土) 17:30:37.79 ID:jbtanL9vo
>>458

……、ふふっ、何処でもいいって、手では暫く苦労するだろう? 足でも、騎士の忠誠のようで良いけれど。血を採るなら、危ないから――

【同じように露出される鎖骨の辺りを見て少しだけ目を丸くして、それから続く言葉を聞いて珍しく彼は笑った。低い声で、くつくつと】
【それが一通り落ち着けば「なら、」と呟いて、相手の肩口に頭を埋める。場所を定めるように舌先でなぞるのは右肩、首筋近く――】
【そこへ尖った犬歯を立てる。皮膚を薄く齧られる痛みがあるだろう、それから僅かに流れる血を啜る様は、お伽噺の吸血鬼のようだった】

【――これで彼は相手の血を得る事となる。次は相手が彼の血を得て、それで契約が成り立ち、任意の場所に魔術式が浮かび上がる】
【それは互いの魔力の源を繋ぐ証、血を採った場所に浮かぶとは限らないが、ある程度の選択肢はあって。それを改めて話せば、】
【もう少し襟元を広げて胸板までを晒す。「私も鈴音の好きな場所でいいよ、何なら――」と更に脱ぎ出すので、どこかで止めた方がいい】
460 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/17(土) 17:50:23.05 ID:7YlsPmjM0
>>459

【手――苦労すると彼は言うけれど。その苦労も嫌なものではないのかもしれないと、薄く、どこかで思ってしまう】
【少しの不便くらいならかえって……と思いかけて、けれど、明日も、明後日も、全く他人のために食事を作ることを考えれば】
【やはりそれはよくないだろう。――彼女の中でそういう納得があれば、足が危ないというのも、おとなしく聞き入れる。それにそれはそれでひどいのでは困ってしまうし】
【だったらやっぱり相手にゆだねるのがいいと身体をすべて預けてしまうだろう、露出しがちな顔や腕よりさらにワントーン白いような気のする肩に顔を寄せられれば】

――っ、っ、

【痛いと分かっている上での痛みはなんとなく不安になる。少し強張らせてしまった身体にちくりとした痛みがあって、だけど、同時に、どこか、】
【そうやって血を啜られる稀有な感覚に意識を落とすと、なぜだかひどく優越感にも似た気持ちを抱いて。言葉にはしがたいものだけれど――勝手に、口元が笑んでしまうほど】
【だから彼が顔を上げれば真っ先に見るのは。頬をわずかに上気させて笑む顔。造形ばかりはあどけない癖に湛えるものは子供の持ちえないもので、だから、違和感のあるもの】

――ううん、大丈夫。同じところがいいの――いつもしてたでしょ? だから、

【やがて彼の順番が終われば。さっきまでどこか緊張した様子だったのとは違う色合いがそこにあるのだろう、あるいは少し妖艶なくらいの顔をして、】
【「いちばん上手にできると思うの」】
【潜めた鈴の音が耳元で囁いて。それから見えない目印をたどるように顔を彼の首筋へ伏せる、それから――どれくらいの力を入れるべきなのかを確かめるように、一度、やわく噛み】
【二度めはもう少し力を籠めるけれど皮膚を破るには及ばない。三度目――ぶつりとついに薄い歯が皮膚を破るほどの力が込められて、"そう"なるのだろう】

【ところで――もっと脱ごうとするのは手でなんとなしに止めているのだった。それなら気づけば彼の膝の上に半ば座るような姿勢】
【その腕を止めた側の手は繋ぐように触れさせて、もう片方では背中側に余っている服を、ぎゅっと、握っていて。甘いシャンプーの匂いと、少し、香水の香りがする】
【――だけど台無しなのは。数秒後に、「ね、どれくらい?」と少し困ったような声がしてくること。どれくらいの血が必要なのかと――いまさら、尋ねて】
461 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2016/12/17(土) 18:10:34.52 ID:jbtanL9vo
>>460

……分かった、

【同じところと聞けば納得……しないような、残念そうな顔だったのは、何か脱ぎ足りなかったのか。けれど臍下で手が押さえられて、】
【膝の上に座った相手に指先から絡め取られれば諦めたように、ただし、しっかりと繋ぎ返す。囁かれる言葉が嘘のように妖艶で、】
【少しばかり見開かれる目はやがてゆるりと細められる、相手の悩ましげな試行が愛おしいかのように、空いた手を沈む頭に添える――が】

ふふっ……そうだね、鈴音がいいと思う位でいいよ。全部抜かれてはちょっと、死ぬけれど

【――量としてはどうやら、契約者の納得する程度であるらしい。ちなみに彼は一啜りして、残した傷跡をもう一度だけ舐めていたけれど】
【全部、というか一般的には二リットルを越せば致死量だ。流石にそこまで相手が欲しがるのかは分からないけれど、まあ満足したのなら】
【最終段階、契約の証――魔術式が身体に浮かび上がることとなる。彼の場合は、背中だった。相手の色の魔力に輝く、繋がりの痕】
462 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/17(土) 18:27:45.34 ID:7YlsPmjM0
>>461

【実際は上手も何もないようなこと。まだ一つや二つの子供であっても歯さえ生えていればできるようなこと、だけど、ここにあるのは、大人にしかできないこと】
【そうして少しの間。まるでよく育った大人のようにふるまっていた彼女だけど――どれくらいがいいのかと困った声を上げるころには、すっかりと、いつも通りになって】
【いいと思うくらいと言われればまた少しためらったような様子があって、それから、とりあえず無意味にもう一度、歯を立てずに食んでみて、それで、ようやく顔を上げる】

……もう、そんなにしたら、お腹いっぱいになっちゃうよ――。

【例えば死ぬまで血を飲んだとしたらどれくらいの量になるのだろう。よくは分からないけど、分からないなりに、きっとそんなの飲み切れないと思う】
【けど現実の光景として目の前にその血があふれていたらたとえお腹が蜜を吸いすぎたありんこみたいに触れてしまってもやめないだろうと、どこか、思う気持ちは確かにあって】
【くすくすと笑いながら身体を離す――その仕草の時に、きっと、彼にはすでに見えるのだろう。差し出す際にわずかにはだけさせた服の中、胸より高く、首より低い位置】
【一般的にはデコルテとか呼ばれる場所に、きらりと黄緑色がきらめくさま。まるで美しい宝石のネックレスをプレゼントされたみたいに、そこに証が浮いていて】
【けれど彼女自身にはまだよく実感がないのだろう、少し不安そうな顔をして「これでいいのか」を尋ねるような目で彼を見つめるのだろう、距離はまだうんと近いまま】

…………――ね、痛くない? 強くしすぎちゃったかもしれないの、久しぶりだから――。

【伸ばされた指先が傷口に優しく触れようとする、叶うのならつけてしまった唾液を指先でぬぐうようにして――傷を乾かそうとするように、軽くはたはたと仰いでみたりもする】
【昔はよくこうして噛んだ時に唾液の酸で傷を焼いたものだったけど。すっかりとそういうこともなくなったなら、そういった扱いも、上手になったように思えて】
463 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2016/12/17(土) 18:57:56.06 ID:jbtanL9vo
>>462

【自分の色に染まる彼女を見るのは、二度目になる。そして、彼女の色に染まった自分も。「大丈夫だよ、」と笑み掛けてから、彼は】
【長い髪をざらりと捲り上げて、首の後ろを見せるだろう。そこには相手と同じように、ただ澄んだ水の色で、同じ魔術式が刻まれていた】

――……私は、大丈夫。鈴音は痛まないかい、

【傷口をされるままに任せながらそう問い掛ける、噛まれる事ならそれこそ腕一本千切られかけるような事もあった、だからか慣れたもの】
【ただ噛む側には慣れていない。甘く噛み付く事はあっても、血が出るまでと言うのは、なかなかに程度が分からないものだった】
【何度もし損ねるのも悪いのでどうせなら、と一気に行ってはしまったが。一通り事が済んだ後で思い返す事が沢山あった、気遣いとか、】
【なので流れる相手の魔力を感じ取るのは少しばかり後になってからだった。ちなみに彼の力は黄緑の燐光、効果は反発と、対消滅だ】
464 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/17(土) 19:18:39.51 ID:7YlsPmjM0
>>463

【目に見えない場所で、何かが、するりと離れていく感覚があった。それと同時に自分の中で何かが少しだけ変わる、意識を向ければ――懐かしい感覚だとやっと気づく】
【数年も前にいくらもらっても飽き足らずもらい続けた魔力の匂いが自分の中にあって、嬉しそうに破顔するのだろう。まだ慣れない身体の中がわずかにくすぶるようにむずがゆいけど】
【それもすぐに慣れるものだろうから気にしない、それどころか、ちりちりと予想もつかない場所が熱く痛むのも嬉しいとさえ思え――大丈夫、と、問われれば】

こんなのへいちゃらだよ、ちっとも痛くない……、

【くすり、と、笑って答える。なんせ何度も死んだことのある身だ、これくらいの傷は記憶に残る痛みからすれば、ちっちゃすぎて、見えなくなってしまうくらい】
【けれどそれを見失わないように意識で繋ぎとめている。背中を骨まで切り裂かれたときより、頭を銃で撃ちぬかれたときより、首を鋏で切り落とされかけたときより――】
【この痛みを覚えていようとするように、はにかんで】

【――桜色は、いろいろなものに変わることができた。例えば水はどんな形の入れ物にもするりと潜りこめるみたいに、その形を、いろいろに変えることができた】
【あくまで力をふるう側がきちんと仕組みと意味を理解していないと贋作めいて変なものしか作れないけど……よく知っていれば、奇跡のようなものまで作ることができるだろうほど】
【あるいはなんでもできる力。けれどものを知らなければなんにもできない力。ただ酸性を持つ水であれば無条件に呼び出せただろうが――水に宿る魂までは、付属しない】
【"彼女"に言わせれば知らない人だからということになるのだろう。今目の前で心も身体も許して委ねている少女ではない、別の"彼女"】

……そのままだと身体が冷えちゃうよ、外ね、とっても寒いの。ここは暖かいけど、お部屋の外はきっと寒いから……。

【――それから、少しの間。今更ながら少し気恥しくなった様子の彼女はそう言って彼の服へ手を伸ばすのだろう。何もなければ元のように着せようとする、手の仕草】
【自分の服を整えるよりも先に彼の服へ手を掛けるものだから、黄緑色の魔術式も含めて――胸元にある大きな傷までが、彼の視線からすればすっかりと見えてしまうほどで】
【とはいっても服を直すことにあまり時間はかからないはず。すぐにでも彼の服を戻してしまえば気づいて自分の服も直して――さて、話題が途切れる】

【……というより、恥ずかしくなってしまったようだった。身体が冷えちゃうなんて言葉も、本当は、言い訳で】
465 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2016/12/17(土) 19:25:24.46 ID:rxffZrv/O
えっ
なんで能力者スレが俺がいない間に汚いメンヘラの砂場になってんの
466 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/17(土) 20:10:28.98 ID:rP7i6o15o
/>>464
/ちょっとトラブルが起きてしまって、確実にこの日だと言える返信できる日の目処がつかないので、この辺りで切り上げでもよろしいでしょうか。大変申し訳ないです
467 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/17(土) 20:14:40.89 ID:7YlsPmjM0
>>466
/了解しました、大丈夫ですよー おつかされまでしたっ
468 :??? ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/12/18(日) 11:07:33.29 ID:j2NSc6JL0
【ここは国鉄の都アブサス。国産の鉄鋼やそれを原料とした鋼材の生産・輸出により一大発展を遂げた国「鉄の国」、その首都である】
【改札の外、広大な鉄道駅の構内は今日も大勢の人で賑わっている。待ち合わせのシンボルとして便利であろう鉄製の像から少し離れたところには3人の少女がいた】

「疲れた〜〜〜、し、お腹空いた〜〜〜。かぐ姉、ちょっとお昼ご飯買って行こうよ」
「まだ朝の11時だ。ねぐら、お前は食い気が張りすぎている。朝に飯は食べたんだ、普通の人間でも我慢できることを私たちが我慢できなくてどうする」

【共に歳の頃は16,7ほどであろうか。ねぐらと呼ばれた銀の混じった白髪を肩まで伸ばした少女を、もう一方の鋭い目つきをした少女が諫(いさ)める】
【黒の長髪をポニーテールにまとめ凛とした雰囲気を纏う、かぐ姉と呼ばれた少女は構内の大時計と鉄道の時刻表を交互に見やっている】

「まだいくらか時間はあるか・・・。やぐら、ねぐら、時間を無駄にしている暇は無い。この構内で構わない、件(くだん)の任務に関する情報をここで集めるぞ」
「こんなとこで?今日休日なんだから遊びにきてる一般人くらいしか今いないでしょ。それにわざわざ列車なんて待たなくても、私達なら走った方が速いじゃん。さっさと北部へ向かおうよ」

【はぁ、と黒髪の少女が息を吐く。そんな2人の様子を、先程から会話に参加できていないやぐらと呼ばれた短髪の少女が心配そうに眺めていた】

「ねぐら、私達にとって最も大切なことは何だ?確かに走った方が速いというのは事実、しかし効率を優先するあまり目立った行動を取るようではいけない。まず目立たないことこそが私達の基本であり根幹なんだ」
「陰に生き、陰に死す。それこそが私達『忍び』の本文であるということを――忘れるな」
「・・・そう思うならまずその忍び装束脱いだら?めちゃくちゃ目立ってるよ、どっからどうみても忍びだよ。初見でバレるよ?」
「っ!これは忍びの誇りだ!主に忠誠を誓った証なんだ!この忍び装束無くして私達は忍びたりえない、そうだろう!だというのになんだお前たち二人とも、普通の恰好をして!」
「いや目立たないようにするためでしょ」
「私も・・・かぐら姉さんは着替えた方が良いと思う・・・」

【足元から口元までを覆う紺色の布、手には手甲、足には足袋。胸部からはクナイや手裏剣までも露出した明らかに不審な恰好の少女を、残りの2人が囲んで着替えるよう説得している】
【その様子を眺める人々の間ではニンジャ、ニンジャとの声が飛び交い、好機の視線が忍び装束の少女に向けられる。人の行きかう広大な構内において、謎の少女3人組はとても人目を引いていた】
469 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/19(月) 19:03:16.31 ID:haxxrS8Jo
【繁華街――ショーパブ】

【豪奢なネオンを輝かせるビルの間、薄暗い路地に一際目立つ派手な看板と地下への階段があって、その奥からは下卑た歓声が響く】
【それを疎むように、看板の影にフードを被って座り込んだ少年と思しき人影があった。俯いた顔は伺えないが、灰色の髪が垂れ下がり】
【肌は東洋系、サイズの大きな男物の服と厚底のスニーカーを履いて、全体的に不良少年のような姿に目を付けたのか、大柄な男が三人】
【端末を弄る彼に何やら品性のない暴言を投げ掛けては三人して大声で笑ってみたりするも、少年は音楽を聴いているのかガン無視で】
【段々と男達の声は荒らげられていく。通りにまで響くそれに、行き交う人達も浮かれた様子から一転して不安げな視線を路地へ向けた】

……誰だよ、お前ら。そんなバカ面ぶら下げた知り合い、俺にはいねーんだけど。喧嘩売りたいなら他の奴にしろよ、バーカ

【一人に蹴り飛ばされて漸く顔を上げたその瞳は紺碧色、相貌は外装に反して中性的――と言うよりも、どちらか迷うような整い方で】
【一瞬、男達も躊躇った様子で顔を見合わせたが。続いた相手の言葉に、一気に逆上した様子だった。二度三度と蹴られれば、少年も少し】
【厄介そうな表情を浮かべて周囲を見回した。助けを求める、と言うよりは誰かに見られていないかを確認するような、そんな仕草だった】
470 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/20(火) 20:05:12.07 ID:uMhZn+Ix0
【街中――海辺へ向かう道】
【高台から下っていった先にぽかりと大地が口を開けたように黒い海がある、さらにひどく冷たい海風がごうごうと鳴いて、こちらへ来るなとがなるよう】
【夏の観光客用の看板の華やかさがかえって寂しさを満ち満ちさせていた。そこに、ふきだまった枯れ葉を踏みつぶす音が一つ、二つ、三つと重なっていく】
【海風の喚きなど気にしない人影はどうやら背高の女のようだった。一つに結わえた髪が特に強く吹いた風になびいて、その毛先を絡ませ】

……疲れたわ、何なのかしら、繁忙期って。去年もやったわ、今年はもういいんじゃないかしらね――。

【いっとう強く吹いた風に体をあおられて一瞬立ち止まる、それから呟く声は女にしては多少低く掠れたもので、夜風の中ではいくらも聞きとりづらいもの】
【はぁとため息を吐いてまた海の方へと歩きだそうとする――それだのになぜか足を止めた彼女は、着信を知らせる画面を点灯させる携帯電話をコートのポケットから取りだせば】

あらごきげんよう、今日は一人で何か食べてくれる? 疲れたから一人になりたいの。好きにしてちょうだい。

【いかにも聞く気のないさま――そもそも耳から大きく離した端末にそうとだけ言葉を投げて、そのまま切ってしまえば、今度こそ海辺へと足を向ける】

【黒にも近いほど濃い紺色の髪はざっくりと切りそろえられたもの、後ろに一つで結わえられているが、海風にあおられその毛先はわずかに絡まっているように見え】
【わずかに日焼けした肌の色、どこか疲れたようなけだるげな瞳は髪とよく似た、濃い紺色をしていて――背は高くて、下手な男ほどはある】
【見た目よりも防寒を重視したようなしっかりとした上着、見える足元は地味な色合いのジーンズで、足元はどうやらスニーカーとひどくラフな格好に見え】

あの猫が来ないのがこんな場所だけってひどい話よね、一人にもなれないじゃない。

【うすぺらい携帯端末を上着のポケットに押し込んでひとりごちる、海――そう特にきれいではないけれど広々と砂浜が続く海べりは、もう目の前にあって】
【もしも誰か砂浜にいれば真っ先に気づくことができるだろうし――あるいはこちらから、気づくこともあるだろう】
471 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/20(火) 21:31:52.60 ID:GhuJJ48Po
/>>469
/始動したてほキャラですがお付き合い頂ける方いらっしゃいましたらよろしくお願いします、大体いるので気付き次第お返事します
472 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/21(水) 00:27:36.85 ID:Su8P/k12o
/>>471
/すみませんやはり微調整出たので後ほど再投下します……
473 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/21(水) 17:30:57.52 ID:m7QewuzF0
>>470
/週末にかけて再掲しておきますー
474 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/21(水) 22:47:49.45 ID:Su8P/k12o
>>470

【海辺には二つの影があった。一つは黒い竜で、ばさばさと広げた蝙蝠のような翼は包帯だらけの酷い様で、穴の開いている箇所もある】
【もう一つは、背高な男の姿だった。相手の知り合いである“彼女”から容姿についての情報を得ているなら、きっと紛う事なく一致する】
【紅茶色の長髪は前髪近くの両脇を細く編んで、痩身に纏う黒いローブの肩から掛けた細い金鎖には小さな呪具達が吊り下げられている】
【潮風に吹かれ乱れた髪を直す左手の薬指には桜色を灯す指輪が嵌められて、覗いた耳には宝玉を嵌め込んだウロボロスのピアスがある】

……おや。こんな時間に誰かと、まして一人歩きの女性と出逢うなんて。ね、

【暗がりから現れるのだろう相手の生別を見分けたのは左右で瞳孔の開き幅が異なる瞳の、開き切った方だった。ただ、細部まではまだ、】
【(容姿が判別出来るまでに近付いたなら気付けるのだろうか。相手についての事を、“彼女”が男に語ったことがあるなら。或いは)】
475 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/21(水) 23:06:41.81 ID:m7QewuzF0
>>474

【今度こそ浜辺を見渡す場所へ立った女はすぐに二つの影を見出す、一つは人間だろうことと、もう一つは、人間じゃない何かであるのをすぐに理解して】
【かといってありふれた動物園に居るような動物ではなさそうなことも――すぐにゲームやらでも時折見かけるような生き物か、と、一人で無言のままに納得して】

あら、こんばんは。珍しいわね、こんな場所に人だなんてあまり来ないから、幽霊でも打ちあげられたのかと思ったわ。
だけど……そうね、幽霊じゃあないわね、きっと。

【高く瑞々しい女らしい声ならともかく。低く掠れた女の声は夜の中ではあまり目立たない。そのためか、互いに細かな容姿がざっくりと見えるほどの距離】
【そこまで砂浜に足跡を残して近づこうとした彼女は――敵意も殺意も何も持たない、ただ、散歩の一般人によく似るもの。また、警戒の様子も見えず】
【それよりも相手の姿恰好を改めて確かめて何か納得したように目を細めるさまは少し不思議なものだろう、確かに初対面のはずだけれど】

ずいぶんと珍しいものを連れているのね? 遠くからじゃ着ぐるみかと思ったわ。あなたのペットかしら。
そんな生き物は見たことがあるの、けれどもっと小さいわ。"幼馴染"が飼っているのよ。黒い竜をね。まだ子供みたい。火を噴くのですって。

【もしもそのままある程度の距離まで近づければ――といっても互いに何もなくしゃべることに支障のない程度の話。腕も足も届かない距離で立ち止まるなら】
【誰もいないこの場。ひとまず互いに互いを認識してしまった以上ある程度の世間話は仕方がないと判断したらしく、こちらからも、そんな言葉を投げ――るのだけど】
【"分かってない"のをからかうように、それともあるいはそれこそが最も敵意のなさを表明する手段であるかのように。ほのめかし、薄く笑い】

【(――そう何度も聞いたわけではなかったが。それだとしてもその容姿はよく目立つ、それ比べて、彼女は幾分地味だけれど)】

仕事上がりなの、そんなに珍しいかしら? さっきまでクリスマスを彩るお手伝いをしていたの、お歳暮もあるけれど。

【話としてはきいたことがあるだろう。けれど、髪の色や瞳の色というのは、きっと、あまり話題にしないこと。それでも少ない回数ではあるが、触れたこともあるはずだ】
【それでもたった今この瞬間相手が誰であるのかを"分かって"いそうなのは彼女一人で、――けれど言葉を見るに、よっぽど隠していたいわけでもないらしい】
【相手が気づくならばそれはそれで。気づかないならばどうでもいい。そういった様子でしゃべる彼女は――未だ寒いのか両の手をポケットに隠したままで】
476 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/21(水) 23:21:24.11 ID:Su8P/k12o
>>475

……幽霊ではないね。ご覧、影がある。――ええと、何処かで会っていたかな。久方振りに此方に戻れたものでね、少し記憶が心許なくて、

【紫色の爪先で指し示したのは足元。月明かりで僅かに出来た影が生者の証明だと、彼は言った。それから相手の様子に僅かに首を傾げる】
【続く相手の話に、真っ先に浮かんだのは“彼女”だった。あの子も竜を飼っていた、そんな“幼馴染”、けれど――確信には、至らない】

それはご苦労様。聖夜を彩ると言うと、ポインセチアが浮かんだのだけど……もしかしたら、の話だがね。丸焼きのチキンかも知れないし、

【花屋。そんな話を、何処かで聞いていた記憶があった。ただそれは勘違いであるかも知れないが、“彼女”の“幼馴染”で、“花屋”なら――】
【三つが一致しては他人だと言い切れない。それでも確証がないのは同じ事だが、何処か相手を窺うように、男はそう答えたのだった】
477 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/21(水) 23:34:58.20 ID:m7QewuzF0
>>476

あら、ほんとね。じゃあ人間よね、よかったわ。幽霊にエンカウントしたことって一度もないの。

【指し示される足元、長く伸びる影を見れば、なるほど確かに相手は人間らしいと合点する。かといって、人間じゃなかったらどうということもあんまりないように見えるけど】
【普通の人間ならあんまりないようなことを例に挙げて、――続く相手の言葉には「いいえ、初めてよ」と簡単に返す。それなら余計にその言動が不思議に思え】

ええ、そうよ、ポインセチアね。それからお歳暮のシクラメンにコチョウラン。この時期が一番忙しいだなんて案外予想外よね。
春だとかのほうが忙しそうに思ってたわ、そんなに花ばっか郵送してる界隈が存在するってあんまり思わなかったの。

【くすりと笑った様子が言葉の初めにかすかに乗る。自分が誰であるかを探ろうとする相手の様子に、あまりにもあっさりとうなずいた彼女は】
【「チキンだなんて焼かないわ」とうすらと笑って返す、「女二人だもの」というけれど――本当のところは面倒くさいだけだ、なんて、余談にもならない】

あなたは……そうね、勉強を教えるのが上手そう。

【――"彼女"がどんな風に言っていたのかが分かるようだった。というか、そういうところは何度も聞かされたものだ】
【勉強を教えてもらったのだってすごくうれしそうにしていたから――彼も、もしもこの女が相手の想定通りの人物でさえあるのなら、】
【廃棄のお花を分けてくれたからお庭に植えたとか、お願いしていた花を持ってきてくれた、とか、そういうのを何度か聞いたのかもしれなくて――】
478 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/21(水) 23:44:40.42 ID:Su8P/k12o
>>477

……凄いね。そうだよ、教師をしていた事もあった。ただ、私に掛かった呪いのせいで。親友が死んでしまって、辞めたのだけど

【ここまで来ては流石の男も確信を持った。飄々とした相手の態度には歳上ながら驚かされるも、そんな所が音々子に似ているような】
【世間話に付き合うよう簡単に話す内容は真っ黒な海に似てどろどろに煮詰められた重たい過去の事、いきなり聞かされても困るものだが】

キミは……天音、かな。私の妻の、鈴音の幼馴染――私はセシル、セシル・シュトラウス。これは、ライドドラゴンのボロゴーヴ

【改めて相手に向き直りそう告げるのは、それでもまだ何処かに確信の無さが窺えた。それだけ、歳下の相手に男が翻弄されている様子で】
【ついでのように紹介された黒竜はもう傍には居なかった。浜辺を横歩きする蟹を見つけぎゃあぎゃあと嬉しそうな声を上げて走っていて】
479 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/21(水) 23:56:19.77 ID:m7QewuzF0
>>478

あら、やっぱりそうなの。こんなところに居るから別人かと思ったわ。

【これでやっとお互いに核心を持ったということになるのだろうか。相手の言葉に――特別に驚いた様子はないなりに、とりあえず、やっぱりか、と言葉を述べ】
【別の人かと思っていた割には態度が態度だったようにも思えるのだけど――こういうタイプであるらしい。真顔でこそないが、表情もあまり華やかとは言えなくて】
【唐突に告げられた過去には「それは大変ね」とは言うが、あまりそこを掘り下げようとはしなかった――あるいは、面倒であるかのように】

帰らなくっていいのかしら。……ああ、仕事なのね。ならいいわ。疑われやしないでしょうし。

【ひとまず幼馴染の夫であるならと心配したようにかける言葉は。よく考えたらあの少女は仕事ではないかと思いいたってすぐに取り消される】
【それに仕事中に会っていたとしてもあの少女ならそういった不安は抱かないだろうと考えて、さっさと帰れと促すことは、それ以上なく】

ええそう、私の方が一つ年上よ。相上天音。

【あっさりと頷く、幼馴染かというと一つ年齢が違うのだけど、まあ似たようなものだろう……と、それから、改めて自分の名前を告げ】

すごいわね、竜だなんてあんまり街中で見ないもの。画面の中でなら飽きるほど殺してるわ、だいたい強いのよね。

【紹介された竜――改めて見ようとして、もういないことに気づく。蟹を追いかけている姿をすぐに見つけてなんとなしに視線を向けてから、そのうち相手へ戻せば】
【そうは言うけれど――思っていたのと少し違う程度の雑談みたいなものなのだろう。失望したでもなければあの少女のように一緒にはしゃぐということもない】
【しばらくボロゴーヴに向けていた目線が彼に戻されれば、】

こんなところで何をしているのかしら? ここってそんなに大したものがあるわけでもないと思うのよね。

【「寒いわよ」と付け加えた彼女は確かに少し寒そうにしている。それでも防寒を重視したような格好だから、寒くて震えているということも、ないのだけど】
480 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/22(木) 00:16:42.22 ID:oQUcJ9dHo
>>479

相上天音……、やっぱり。余りに言葉遊びするものだから、違うんじゃないかとひやひやした。歳上をからかうのが得意なようだね、

【視線を斜め下にして言うのがどうにも、何というか、拗ねた様子だった。口許がへの字なのは、大抵が余裕気な男には珍しいなんて余談】
【それから紹介してやった黒竜がすっかり遠くまで走り去っている事に気付く、どうせ捕まえたら嬉々として戻ってくるので放っておくが】
【未だに蟹を捕まえられない様子だった。飛べば恐ろしく速いのだが、陸上を走るのは苦手で、それについて多分、本竜も忘れている】

まあ、ドラゴンは希少だからね……兄もたまに、画面の中で苦戦しているよ。実戦では、ミディアムレアに焼かれていたけれど

【男の兄もゲームを嗜むのだという。もしどんな人間か聞いていれば、六畳一間に寝転がって尻を掻きつつゲームする姿が浮かぶだろうが】
【実戦をしたという辺りが、どうも男がそうさせたニュアンスだった。結果が焼かれたと言う割に軽い感じなのが、どうも雑な扱いだが】

……考え事、かな。音々子の事でね。初めて会った時からそうだったけれど、あの子はどうも、苦手かも知れない……すまないね、
私も歳は積んでいるし、ある程度は理解しているつもりなんだ。ただ……嫉妬というか、憎悪の方が近いような、そんな目をされると、ね

【一言謝ったのは相手の幼馴染を悪く言ってしまうこと、たいして彼女を知りもしない身で、愚痴を言うような大人気ない構図】
【けれど実際的に本当に男がそれで悩んでいるのは、ある程度は伝わるだろうか。当然鈴音にも言えないようなこと、ならば相手に、と】
481 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/22(木) 00:28:40.68 ID:UnGQkDEf0
>>408

そうかしら? 店に来るのは年上ばかりだけど。

【あまりそういった自覚はなかったのだろう。緩く納得したような様子の彼女は、ひとまず、普段年上に囲まれてばっかりだと薄らと思い返す】
【若い人というのはもっと華やかな方の花屋に行ってばかりだ。たまに来るけれど――ベビーカーを押した、何か夢を見ているような家族連れだとかが】

その割には以外とあどけないのね。猫みたいだわ、猫って飼ったことないけれど。それともまだ子供かしらね、竜の年齢だなんて見て分からないの。
……あら、人間にとってはミディアムレアでも重症だと思うの。どうなのかしら? 少なくとも私は嫌だわ、私ってば火で炙られたことは一度もないから……。

【彼よりも兄となると結構な年齢なのだろうと思う。あの子に聞いた限り、目の前の彼でさえあの子からは結構年上だと聞いていたし……かといって、何か偏見ということもない】
【ただ彼の兄はゲームをする人間なのだと受け取って、それから竜の話には、意外と……思っていたよりあどけないのだという感想を述べ】
【個体差なのか年齢によるものなのか。ひとまず今まで見たことのある竜はああいうあどけない個体ばかりだ。――ミディアムレアというのには、わずかに目を細めたが】

そう、奇遇ね、私もあの猫のことを考えてたの。こんなところ以外はだいたいついて来るのよ、だからここに来たの。
さっきもどこに居るのかって聞かれたわ、年下なのに子供扱いかしら? ……あら、あれと何か話をしたの? 

この間かしら。雪が降っていた日。

【相手の言葉に動じた様子はなかった。謝られてもどうでもいいというような顔で、それどころか、相手の話に便乗するような様子まである】
【いわくこんな場所でもなければついてくるのを振り払うためにここに来た、と、――面倒くさいような口ぶりで言ってみせて、ただ、ひどい嫌悪ではない】
【だから相手がどうやらそんな目をされるほどに話したというのを知れば、ほんの一瞬ほど口をつぐんでから、「ああ」と漏らす声で、思い当たる日を思いだす】
【「きっとそうよね」というのなら、"何か"聞いたわけではないのだろうけど……なんとなく分かるようなことは、どうやらあったらしい】
482 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/22(木) 00:45:15.14 ID:oQUcJ9dHo
>>481

あれはまだ人間で言うなら13歳位かな……、好奇心旺盛で困るんだ。何でも拾って帰って来るし、何にでも挑戦して生傷に耐えないし。
ああ……兄は死人だからね。身体は魔力で再生するから、どれだけ傷付こうが構わないんだ。本人は痛むらしいし嫌がるけれどね、

【さらりと言う事でもない話、幽霊ではないが死人が兄だと言って。それも男の妄想でも何でもなく、事実死体が意思を持って動くと言う】
【それから音々子の話を聞けばやや真面目な顔付きで相手の言葉を咀嚼していたが、どうにも相手への依存を感じてしまって、少し俯いた】

……そうだね。あの日だ。とても傷付けてしまった。酷くぎらぎらした目をしていて……「男だからいいのか」なんて、言わせてしまった

【言わせてしまったのだ。彼女がひた隠しにしてくれていた面を引っ張り出した挙句に、そんな言葉まで、引き摺り出してしまった】
【男の口調はその時思い出したことをそのまま言い、そして継ぎ足すようなそれで、細部を聞くには些か面倒な部分もあった】
483 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/22(木) 00:59:29.80 ID:UnGQkDEf0
>>482

死体ならなおさらじゃないかしら、それって火葬よね。

【十三くらい……となればやはり子供なのだろう。それなら幼いのも仕方ないかと思える。猫だって犬だって、幼いころは好奇心がひどいと聞くから】
【ひどいといえば彼女の言葉もなかなかひどい、死体とミディアムレアすなわち火葬ではないかだなんて、それが兄だという彼には不適切にも思える言葉】
【それこそステーキが出来上がりそうとまでは思うがさすがに言いはしなかった。――さすがに】

あら、あの子は男ならなんだって嫌いなの、あなたが特別なんじゃないのよ――それにしたって、何の話なの?
私知らないのよ、あの日は雪の中で待ちぼうけを喰らったから帰ったの。帰ってくるなり部屋にこもったから、何かあったのかと思っただけだわ。

何かあったなら……そうね、次は忘れたような顔をしてればいいわ。私の時もそうだったもの。

【まず。口にするのは、それだった。何がなんでも真っ先にその条件が付くだけで、まず、あの黒猫はそれを嫌に思うタイプであることを、前提にして】
【しながらも、そもそもそれが何の話であるのかが分からないともいう。真っ先に待ちぼうけにしたのは私だけど、とも、付け加えるが。それは今特別ではない】
【それから口にするのは対処法らしきものではあるが、投げっぱなしの色合いがどうしたって強く思える。彼女のやり方では"そう"なのだろうけど】

子供の頃から知っているけど、ずっとああいう子よ。気にしているなら謝るよりも忘れた方がいいの、気にしてなくたってそれがいいわ。きっとね。
それじゃ不満なのかしら?

【――どうやら、これが彼女のおすすめするやりようだった。何かあったことを忘れたようにふるまう。だって、そうすれば、】
【あちらのほうは――何もなかったように、ふるまうのだから。たとえどれだけ覚えていようと、忘れたようにふるまう。それが、あの黒猫のやりようなのだから、と、】

484 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/22(木) 01:13:22.41 ID:oQUcJ9dHo
>>483

だいぶ死んでから時間の経った身体だったからね、酷い臭いだった。いっそ骨になった方がマシだったと思う、骨壷でも喋れないものかな

【死後数年で半端に焼いたとなれば色々とひどかったのだろう。そんな簡単にフォルムチェンジ出来るのか怪しい返答は本当に適当だった】
【それからじっと相手の話を聞く、何があったかは聞いていないらしいことと、何があっても忘れたふりで対処してきたと言うこと】

……鈴音を、私に奪われたと。その私が居なくなっても、鈴音は音々子に頼ることなく自分で生きていて、頼られない事が辛かったのだろう
何もなかったように話せば、音々子はそれに合わせてくれるのだろう。ただ、あの子の中で燻っている苦しみは、忘れてはいけない筈なんだ

【自分の兄弟については蔑ろにしておきながら、相手の幼馴染――或いは姉妹のような存在を酷く気遣うのが、どうにも矛盾していた】
【それだけ、傷付けたことを後悔しているし、音々子の苦しみを何とかしてあげられたら、と思っている。何せ、初めて会った切っ掛けだ】

【(音々子に出逢ってから鈴音に逢えた。二人の繋がりを知って、何年か振りに再会の場を作れた時は、素直に嬉しかった)】
【(ずっと感謝していた。だのに、そのはずなのに、初めて会った時も最後に会った時も、音々子を苦しめるばかりだった)】
485 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/22(木) 01:33:29.43 ID:UnGQkDEf0
>>484

【まず――真っ先の感想は、この人は、どうしてこうもあの黒猫のことを気にしているのか、ということだった】
【長く暮らして来た自分でさえこうも自覚あるほどに適当にあしらっているほどなのに。……それともよく知らないからこうも気に掛けるのだろうか】
【少し考えて結論は個人差というので落ち着いた。自分はそのことについてどうでもいいと思っている――簡単に言えば、面倒くさいと】

あら、そんなことを言ったの。そう、そんな風に思っていたのね。今知ったわ。何も言わないものね。

【ふらりと動いた視線がきっと遠くまで走っていってしまったのだろうボロゴーヴを探すように動いた。不定期に聞こえる波音は夜の静けさをいくらも強調して】
【風が吹くとひどく冷たいがそうでもなければすごしやすい夜のような気もした。見上げれば満点の星がきらめいて、だのに、話題は、よろしくない】

【つまり何も言わないから聞かされていなくて、そんな言葉も今知ったのだという。それからあの日帰った黒猫はいやに機嫌が悪かったというのを簡単に伝えるが、】
【この女からすればただそれだけだったのだろう。ただ機嫌が悪かった――珍しくもないことだ。家でのあの黒猫のすごし方は、外面だけを知る人間が見たら驚くだろうほど】
【だから、きっと、よくあることだと言ってしまいたいのだ。何か気に掛けて解決しようとすべき問題ではない、と――それで、終わりにしてしまいたい】

【けれど、】

私は十の頃からあの子のことを知っているの、それからずっと一緒に居るわね。家も同じよ? 一緒に暮らしているの。

あの子の両親を知っている? 死んでいるの。私だってそれしか知らないわ。
子供の頃の話を聞いたことがあって? 一度だってないの。ただの一言もよ。

そうね……一つだけ教えてあげるわ。あの子、文字も書けなかったのよ。普通なら中学にでも行く年齢の頃にね。

【どれだけいろいろなことを黙って生きてきたのか。あの子が二十三で一つ年上だというのだから、この女は二十四になるのか。とすれば、十四年にもなる間】
【ずっと一緒に居て――会うより前のことをただの一度もきいたことがないのだという。そしてもう一つ。ためらうように一瞬考えてから、口に出すのは】
【つまりそれだけ"変"な環境で"彼女"が過ごしたということなのだろう。両親は死んでいて。子供の頃は話したくない。文字さえ書けないような暮らし――となれば】
【それをどう取るのかは彼次第だろうけど。そもそも根幹からして全うでない可能性の方が大きい――そんな、話で】

あれには言わないでくれる、私が言っただなんて知れたら面倒くさそうだもの。

【「あなたは今何も聞いてないわね?」】
【そう付け加えて――濃い紺色の瞳が、じと相手を見るのだろう。少女の黒い眼とも違う、黒猫の鮮やかな眼とも違う、夜の海みたいにじっと静かな、色をしていた】
486 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/22(木) 01:46:12.10 ID:oQUcJ9dHo
>>485

……、――

【相手の言葉に、男は何も言えない様子だった。理解したのは自分の考えていた事は酷いお節介で、相手の方がずっと彼女を知っている】
【何が出来る筈もなかった。まして男という時点で接したくもない存在、その上鈴音を奪っていった人間にこんな心配をされて、彼女は、】

……分かった。私は、何も聞いていない。それに、何も知らない。次会うときは、全て忘れた事にする。……とりあえず、話せて良かった

【「有難う」と、低い声が波音に重ねられる。それから溜息をついて星空を見上げた気怠げな男が、何か妙な行動に出ることはないだろう】
【――とてとてと間の抜けた足音がした。見れば蟹をくわえたボロゴーヴが嬉しそうに翼をばたつかせながら一直線に走って来ていて】
【まず男に飛び付いて思いっ切り転倒させ、伸し掛かって擦り寄って、涎まみれの蟹を顔面に落とす。高い鼻を見つけた蟹は、それを挟む】
【声にならない男の声とぎゃあぎゃあ嬉しそうな竜の鳴き声が静かな海辺を騒がせて、それから竜は男の鼻を挟んだままの蟹を取り上げて】
【砂場で顔を押さえて悶絶する男をそのままに、次は相手の近くに寄って、くわえた蟹を自慢げに見せびらかした。褒めて欲しいらしく】
487 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/22(木) 02:08:46.12 ID:UnGQkDEf0
>>486

そうね、それがいいわ。けど一つだけ言っておくわね、

【まっとうな家庭で育った子であればありえないことだった。十三や十四になったころに、ひらがなが書けないと言われたときは、何の冗談だと思ったほど】
【だけど彼女自身もそれが恥だと思ったのか誰にも言えずに、読めなかった紙を持って、自分のところにやってきた。そしてそれを読んでやって、文字の書き方を教えてやった】
【年下とはいえたった一つしか違わない相手に文字を教えていた時は何をしているんだかと思ったものだが――教え足りないのはきっと文字だけではなかったらしい】

だからって渡したら駄目よ、それとも貸し借りできる物だと思っているのなら、何も言わないけれど――、
様子を見ておいてあげる、何かあったら連絡してもいいわよ、気づくかどうかは保証しないけど。

【だからってそれを反省するでも詫びるでもない彼女が言えるのはそれくらいだった。ずっと一緒に居るからといって何から何まで知るわけでもない、あるいは限界とも言え】
【ひとまず言えるのは付け足されたそれが多分精いっぱい。何かあれば連絡できるように連絡先を渡すかどうかを尋ねるのだろう。必要あれば渡すし、受け取りもするはずだ】
【まさか物でもない少女を物であるようにやりとりはしないだろうと冗談めかして――そこにボロゴーヴが戻ってきて、なんだか面白い光景が目の前で繰り広げられる】

……あら、捕まえたのね。いい子だわ、上手ね――、けど可哀想だわ、食べないのなら放してやらないと。

【わかりやすく笑いはしなかった。それでも視線をそらしたのを見るに、ちょっと面白かったらしい――とは余談。その後蟹を持った竜が近づいて来れば】
【ボールをくわえて持ってきた犬にやるみたいに頭を撫でてやろうとしながら、同時に、少し諭すようなことを言って。……といっても、もう、弄ばれた蟹だって、死ぬのだろうけど】
【ちらりと見やった男はまだ悶絶していて竜は嬉しそうにしている、なら、薄く笑う――きっと動物が好きなのだろうと見えた。それから、わずかに魔力の気配を漏らす】

【ざわりと一瞬震えた足元の砂浜に生え広がるのは様々な色のバラだった。すべてが魔力で作られたもの――そのせいで淡く光を放ち、辺りをぼうと染め上げ】
【範囲で言えば両腕を限界まで伸ばしたくらいの彼女を中心にした円。やがてそこからざわりと――砂で作られたよく分からない形のものが生え出て】
【まるでボロゴーヴを誘うようにうごめくのだ。きっとそれは能力だろうから、彼女なりに無邪気なボロゴーヴと遊んでやろうとしている、らしく――】

きっと急に居なくなったものだから拗ねているのよ。鈴音(あのこ)、そのころはしばらく家に泊まっていたの。昼間に暇なのは音々子だけだから。

【「何度も聞かされたのね」】
【だから気にすることはあまりないんじゃないかというような声で、そう、付け足されて――】
488 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/22(木) 02:29:01.01 ID:oQUcJ9dHo
>>487

【頭を撫でられれば目を細め喉の辺りをぐるぐる鳴らして喜ぶ、ただ諭された言葉は何となく理解したらしく、少し寂しそうに蟹を放る】
【一応やわく傷付けないようくわえられていた蟹は、砂浜に着地すればさぞかし迷惑そうにせっせと横走りで波間へと消えていった】
【――それから、相手の足許に咲き誇る薔薇には少しだけ驚いたようにぴょんと後退したが、砂がうごめいて誘えば、やはり興味を持って】
【砂辺にごろんと横になって腹を出して、鋭い爪の生えた手で一生懸命にそれを捕まえようとしている。構ってもらえたのが嬉しい様子で】

……渡すことなど、出来ないよ。鈴音は物じゃない……すまないね、有難う。これに、連絡をくれれば分かるから、

【ようやっと起き上がれた男は涎のせいで顔を砂まみれにして、挟まれて赤らんだ鼻をまとめてぐしぐしとローブの袖で乱暴に拭えば】
【懐から出すのは名刺――白地に黄緑でグリフォンの刻印がされたそれには『Elysion』という社名と彼の名と、連絡先があった】
【相手の言葉には、俯いて何かを考えていた。突然居なくなってから白蛇が何とかしてくれたまでの間、鈴音は彼女へ何を話したのだろう】
【彼女は何を思っただろう。一度だけ、ふらりと再会したあの時の様子をおぼろげに辿る。あの時も、彼女はひどく辛そうな顔をしていた】

……じゃあ、よろしく。逢えてよかった、天音。そろそろ、あの子も帰ってくるだろうから。何か暖かいものでも作っておかないと、

【腹を出した竜をヒールを履いた足で蹴るのは、行くぞという指示と先程の恨みが少し篭った様子だった。何もなければ、帰るのだろう】
【遊んでもらって嬉しそうだった竜も、しぶしぶといった様子で背を屈めて翼を広げる。そうしないと、その足で飛び乗られるからだった】
489 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/22(木) 02:52:37.78 ID:UnGQkDEf0
>>488

【ざざざと砂粒の擦れ合う音を鳴らしてうごめくそいつは緩急をつけてボロゴーヴに襲い掛かるようにしたり、ときおり、逃げ出すようにしたりする】
【そうやって遊んでいるのを横目に、それからだった。彼の方へと意識を向け、「大丈夫かしら?」と尋ねるのだろう――いささか遅い気もしたものの、】
【その直後に彼が自力で立ち上がれば。ため息にも似た小さな吐息、……聞かされていた通りだが、もう少し明るい人間だと勝手に思っていた。……けど彼のせいではない】
【つまりあの少女が優しくてよくなでなでしてくれてとかそういうのを言っていたから、もっとフレンドリーな感じだと勝手に思っていたのだ。自分がいえることではないから】

そうね、そうしてちょうだい。あの猫にはそれが分からないの、人のことを物だと思ってるのよ。きっと本気だわ、冗談でもなんでもないの。

【それはよくないと分かりながらそう信じているように見えた。きっとそうでなければならない理由があるのだろうと思う、だからって、それは理由にならないのなら】
【もちろんあの少女が"そう"するのなら文句は言えないけど、そうではなく、自分の考えで彼のところに居るのなら、それが一番いい。そのままで行けば、悪いのはあの女だ】
【思ったよりもきちんとしたやり方で名刺を受け取った彼女はそのまま携帯端末を出して、今この場で互いの連絡先を明らかにするつもりなのだろう、放っておけば】
【一分もしないうちに空メールなり着信なりがあるだろう。阻止されればさすがにやめるが、そうでもなければ「これでいいわね」と言って――】

【(――わたしが、わたしが、と、何度も、何度も、繰り返していた。仕事へ行く前と帰ってきた後とで話があまり変わってないくらい、きっと、無限に繰り返したのだろう)】
【(どんな話も結局自分が悪かったに違いない、わたしのせいだ、といい続けるさまがそうそうに面倒臭くなったからほとんど音々子に任せていたものだから)】
【(よくは知らないけど、いやな先入観があるのも、あるいは――となれば共倒れみたいなものだけど。もっといえば、泣いていた本人はもうすっかり元気にしているし)】
【(帰ってきてくれたとひどく嬉しそうに報告する電話を受けた時――ああ、思い返せば、あの猫はすごい目をしていた気がする)】
【(それなら――黒猫の性質もあっただろう。そうだとしても、あるいは、悪いのは、)】

それならよかったわ。ほかにも花が必要な時は連絡してちょうだい、根っこのついてる花ならだいたい用意できるわよ、切り花も専門店には負けるけど、用意できるわね。
気をつけて帰ってちょうだい、私と会った後に何かあっただなんてことになったら面倒だもの。あの子によろしく言っておいて。

【それ以上のことはなかった。強いて言えば自分の店で花を買えと遠回しに要求してくるあたり、ちゃっかりしている……とは言えたかもしれないけれど】
【――ざ、ざ、と、波音とは違う音がする。砂がきしんで擦れ合うときの、奇妙な音。見れば足元のバラの花はさっきよりも増え、奇怪な花畑のようになっている】
【相手への攻撃のため、ではない。もしかしたら――こんな時間にこんな場所へ来た理由。それが、これなのかもしれない。さっきの光景を見るに、】
【この砂だらけの場所は、彼女の能力にとって、ずいぶんと好都合なようだったし。――だなんて、どうでもいい話なのだけど】
490 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/22(木) 02:55:39.47 ID:oQUcJ9dHo
/>>489
/追記忘れました、この辺りで失礼しますっ
491 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/22(木) 03:08:33.15 ID:UnGQkDEf0
>>490
/了解しました、おつかれさまでしたー
492 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/22(木) 06:19:52.64 ID:oQUcJ9dHo
【水の国・Elysion本社中層――グランドロッジ】

【下層にはデザイン性の高い魔術装飾品店、魔力回復素材を用いた菓子が売りのカフェ、薬草や魔獣を食材としたレストランが軒を連ねる】
【それは高級ブランド『Elysion』の表の顔で――中層のグランドロッジには、魔獣討伐や人材派遣、情報収集を受注するフロントがある】
【今宵、広々としたフロントには十八名の人々が集まっていた。何れも並々ならぬ実力者と見え、互いに何処か緊張感が漂う空気の中】
【ホールに、一人の老人が現れた。茶色と黒のストライプスーツが特徴的な白髪の老人は、揃ったメンバーに軽く一礼をして、声を上げる】

「お集まり頂き誠に有難う御座います、私はジェイムス・W・ツェフゲニー、此処の代表を務めている者です。それでは、本題に入ります」

【白で統一されたフロントの、四つの大きなテーブルに、それぞれ四色の紋章が浮かび上がる。赤、緑、青、黒――四翼のエンブレムだ】
【赤はレイヴン、緑はグリフォン、青はオウル、黒はジャバウォック。それらは物語『不思議の国のアリス』に現れる鳥達であった】

「かつてのElysionギルドマスター・セシルの呼び掛けで、有力者たる皆様にお集まり頂きました。本日は、皆様のチーム分けを行います」

【十八名のうち、まず三人の男がテーブルについた。赤のレイヴンには悦那、緑のグリフォンにはセシル、青のオウルには月彗が座り】
【残る十五名に、ツェフゲニーがそれぞれ白地にチームの紋章が刻まれた端末を渡し所属チームを決めていく。結果は以下の通りとなった】
493 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/22(木) 06:20:26.69 ID:oQUcJ9dHo
【赤のテーブル――チーム・レイヴン(情報収集)】
【悦那・スティングレイ、篝 香弥奈、スターダスト・シューティングス、黒妙 縁(ウェスカ・クルーガー)、吉祥 行成、薬師 篝、千手 雪路、敷島 普賢】

あーっと……一応チームリーダーだ。情報収集と、Elysionとしての企業戦略もうちで行っていく。よろしく頼むぜ、お前ら。

了解です! それにしてもまさか悦那さんと一緒になるなんて……もう寝タバコでボヤとか、本部でやらないで下さいね?

ぶっ、そんなことあったんスか? 僕初耳なんスけど! それよりウェ……黒妙先輩と一緒って、マジっスか。

文句があるならジイさんに言えよ、俺だって何でまた出来ないボンボンのお守りなのか聞きたい位だぜ?

んーと、俺ら四人は元々事務所構えてヤクザやってたから、情報収集とアブない仕事もオッケーだよ♡ ヨロシクなぁ♡

えーっとねー、俺はパソコンとか得意ー。今夜のおかずからハッキングまでー、何でもよろしくねー。

……俺っぴの番か! そーだなぁ、趣味は海外旅行! お土産楽しみにしててな! 皆よろしくー、楽しくやろうぜ!

で、最後に俺だね。事務所では経理をしていたけど、それなりに裏社会との繋がりもあるから……役には立てると思うよ、宜しく。

【緑のテーブル――チーム・グリフォン(魔獣討伐)】
【セシル・シュトラウス、フラズクス・スヴァンプフィード、ビィーズ】

……人員が、見覚えのある面子で、しかも少ないのだけど。つまり、私達のやることは変わらないから、それだけ。今まで通りというか、

ふざけるな、それだけ私達に仕事が集中するということだろう? 今まで通りになどやっていられるか? 決まりだな、存分に暴れるぞ。

パパさんと、ママさんと、ビィーズ! いつもの三人組ですねっ、他のチームの人達より寂しいですけど、いっぱい頑張りましょうね!

【青のテーブル――チーム・オウル(対人戦闘)】
【墨廼江 月彗、烏丸 享、永倉 紫苑(優蛾)、熊襲、レヴィ、百慎 理人、土岐 咲庵】

あッちが頭や。以上。あとは司令通りに動くだけ、生死は問わず手段は好きに、や

俺様が頭じゃねえのがお気に召さねえが……テメー様には敵わねえってのは承知致しやがる、だから寝首かかれねーように精々お気を付けな。

……で、あたし確か、モデルもやれって言われてたんだけど。そっち優先だから、戦い大好きな人達の手に余った時は、行くよ。

ウワーッハッハッハァ!! 物騒なやり口は好かんから、戦いは儂の好きなようにやらせてもらうぞッ!!

俺も同じだよい、殺すまでは好きじゃねぇんでなぁ。やり合いなら、酒と同じくらい好きなんだがねぇ。

……僕は、兄さんと一緒なら何でもいいから。それだけ。ね、兄さん? ふふっ、

ええ、私も理人さんと動けるのならそれに越した事はありません。皆々様、何卒宜しくお願い致しますね。

【黒のテーブル――チーム・ジャバウォック(総括)】
【ヴェロニカ・レイシー、黒妙 行平ーー欠席】

【――以上が、Elysionの四つのチームとなった。欠席の黒いテーブルだけが不自然に浮く中で、ツェフゲニーがそこにゆっくり腰掛けて】
【活動方針や企業としての展開、また場合によってはチーム間で流動的に仕事を組む事などを説明して、今日の会合は幕を閉じたのだった】

/ソロルです。また、上記PCは全て同一PLとなります。後日Wiki等で改めて纏めます。
494 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/25(日) 19:14:36.90 ID:pfZ0tGnno
【夜の国――墓地】

【星空と暗い森を背景に、逆十字が葬列めいて並ぶ荒れ果てた墓場。その最奥に、五百余年前の今日を刻み、名も掠れた黒い墓標があった】
【墓前には三人の男がいた。癖のある黒髪に灰色の目、東洋系の肌に無精髭を残し、右頬に牛の首が載った皿の刺青がある喪服姿の男と、】
【紅茶色の長髪に瞳孔が不揃いなオリーブの双眸を持つ、北欧系の白皙長軀の男。黒の祭服には細身の金鎖に吊るされた呪具が揺れている】
【最後は、黒い紋付羽織を纏った男。肩口で切り揃えた白髪に黒い彼岸花を差し、葡萄色の切れ長な目は何処か不機嫌な色を浮かべていた】

いやあ、教会でのクリスマスってのは神聖だよなあ。危うく身体が砂になる所だったぜ……、大丈夫か? セシル

……大丈夫、な、はず。教会で祈りは捧げたし十字も切った、から、

はぁ……ほんに情けない奴やなぁ。ま、三年もこの人に取り憑かれてたんじゃ、仕方無いんやろか。それやったら、はよ始めな

【白髪の男の少し苛立った様子に、黒髪の男は思い出したように抱えていた白い薔薇の花束を二人に差し出した。其々一輪づつを手にして】
【真っ白な薔薇に魔力を灯す。すると彼らの掌上で、薔薇はそれぞれの魔力の色に染まった。深紅、黄緑、青藍――三輪が、墓前に置かれ】

先生。誕生日、おめでとう。こんな俺でも、見捨てないでいてくれよな。先生が居なきゃ、今の俺も思想もこいつらも、居なかったんだ

……メリークリスマス、お師匠様。私の事は赦さなくていい、この先の一生全てで貴女に贖い続けるから。だから今だけは、見逃して欲しい

贅沢な命日やなぁ、師範代? あッちら三人揃ってなんて、初めてやろ。せやから満足して黙って見とり、もう化けて出んようにしいな

【――各々に祈る言葉は違えど、敬愛の念がそこにはある。黒い墓碑の下にいる“彼女”は、彼らの師であり、救世主であり、母親だった】
495 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/26(月) 10:29:22.76 ID:Yy1noxv2o
【オフィス街】

【師走も末の週始め――行き交う人々も草臥れた顔ながらに足早なのは生真面目な性質故にか、手早く片付けられていくオーナメントやイルミネーション達と類似していた】
【葉も枯れ落ちた木の下のベンチで缶コーヒーを片手に一息ついている営業マンらしい青年も、疲れ切った表情で頭上の枯れ枝を仰いでいた。木の葉がまた一枚、彼の側に舞い落ちる】
【柔らかく整えた清潔感のある黒髪、濃紺の双眸には銀フレームの眼鏡を掛け、黒のスーツに締めるネクタイが深緑に薄らと龍虎を浮かばせる――そんな、至って真面目そうな、青年だ】

年の瀬、か……年末年始も何も、俺達には無いに等しいんだけど

【あからさまに溜息を吐いた所で雑踏の中にまともに正月を祝う余裕のある人間がどれだけ居るのかは疑問だったが、青年としてはその事実が酷く憂鬱であるらしかった】
【ベンチに投げ出した鞄の中で鳴動する端末に目もくれず青年は缶コーヒーの中身を呷り、空になったそれを近くのゴミ箱へ投げ捨てる。綺麗な放物線を描いたそれは木枯らしに吹かれ、見当違いの方向へと飛んでいった】
496 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/27(火) 19:53:08.41 ID:bPKqIT/fo
【廃聖堂】

【欠けたステンドグラスから三日月が見える。思い思いに倒れ苔生し朽ちていく長椅子の、ただ一脚だけじっと正しく立ち続けた一つに腰掛けた女は、或る一点を凝視しては薄らと嗤っていた】
【煤けた聖母――かつては白く滑らかだったのであろうその姿は黒に侵食されて清らかさを失くしており、それが女にとっては酷く滑稽なことであるのだった。女は、その全てが黒ずくめだった】
【黒い帽子を被ったワンレングスボブの黒髪、にたにたと嗤う唇には黒いルージュを塗り、纏うのは黒のモーニング・ドレス、膝上で揃えた両手の爪は黒色に塗られ、白い肌が酷く目立つ程】

ふふ、ふふふっ、ねえ、貴女、まるでマグダラのマリアね? さぞ怖ろしかったでしょう、あるべき主の亡骸が無かったのだから、だから再来したなんて……ふ、ふふっ。そんな訳無いじゃない

【ぞくりと建物全体が震撼する、ぎりと握り締められた女の黒い爪先が白皙の肌に食い込んでいく。酷い怨嗟の念をこの空間全体に漂わせる彼女は、帽子で隠れた目許だけが一つも嗤ってはいなかった】
497 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(空) [sage]:2016/12/28(水) 00:26:36.68 ID:oT9GGkmSo
【深夜・街道沿いのお堂】

【そこは街道沿い――とはいえ、やや人里からは離れた場所であり】
【夜ともなれば明かりは月という程度の寂しい場所】
【かつては何某かの神霊を祀っていたのだろうお堂も、廃れて寂しい様子である】

【――が、ここに人影があった。衣服は、拳法家が着るような道士服】
【そして髪はくすんだ黄金。比較的小柄であり、胡座を掻いて瞑想している様子だった】


【彼の側には、不思議と明かりがある。というのも、薄紫に発光する蝶々がその周囲を舞っているからで】
【或いは街道を歩く奇特な人物が居たならば、竹林からふらりと現れたこの蝶の一匹に導かれ】
【お堂の中へ脚を踏み入れ、そしてかの瞑想家と出会うかも知れなかった】
498 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/28(水) 16:24:01.79 ID:P80Kt/AWo
>>497

【竹林は苦手だった。それでも散策にこの道を選んだのは、過去との決別をしたいがため】
【かつてこんな竹林で、愛した民草から槍を向けられた時、あの自分はもう死んでいたのだ】

おや……? 奇妙な蝶、ですね。導いて下さるのですか、

【慇懃な口調の青年。着流し姿に長い黒髪、その毛先が背から下は白いのが特徴的だった】
【辿り着く先、伽藍の下に灯籠に代わる蝶達が照らすのは、見知らぬ道士服の瞑想者】

……邪魔を致します。かの蝶に、ここへと誘われた者です

【ふらりと堂の中へ踏み入るも、相手を見つければ青年は静かに膝をついて無礼を詫びる】
【――侍、のようだった。腰には古びた刀があり、長着の上には桔梗紋の羽織を纏っていた】
499 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(空) [sage]:2016/12/28(水) 21:32:17.40 ID:oT9GGkmSo
>>498

【青年がお堂に足を踏み入れたなら、まず感じるのは錯覚であろう】
【例えるならば無数の腕を持つ蛸。その吸盤には血を吸うための凶悪な棘がある】
【その吸盤を内向きにして、蛸の腕がお堂を形作り、檻のようになっている】

【――要は嫌な雰囲気がしたというだけの話、なのだが】
【みしりと床板を踏む音がすれば、瞑想者はゆっくりと頭を上げる】

【その肌の色は蒼白、或いは泥のような血色の悪いものであり】
【顔を斜めに横断する形で雑な縫い跡が見て取れる】
【瞳の色は髪と同じ、くすんだ黄金。膝をついた相手と、刀を見て】

いえ……、……侍…ですか。 こんな所に居るくらいですから
お遊びで着飾っているのでもないでしょうが。……一つ、尋ねても?

【相手の返答を待って、Noであれば若干肩を落として黙るであろうし】
【YESと言われたなら――『なぜ刀を持っているのか』と尋ねるだろう】
【禅問答のような物だ。なにせ、質問が端的でなのだから。ちなみに――】

【この、傷顔の人物。年は訪問者と同じく青年らしかったが、顔立ちは中性的であった】

/反応が遅くなってしまってすみません
/今夜、今からでしたら安定してお返事できますので
/もしまだ見ていらっしゃれば、よろしくお願いします
500 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/28(水) 22:34:58.48 ID:P80Kt/AWo
>>499

落ち武者、ですよ。四百年も昔の話になりますが、――丁度、こんな竹林で。

【檻の中に踏み入れた感触はあった。ただ、蝶も一緒ならきっと大丈夫な気がした】
【かつて蝶の名を持った幼馴染は手の届かぬ檻の中へと行ってしまったけれど、その檻ごと燃やしたのは自分だった】

次は、此方が尋ねても? 貴方は何者でらっしゃるのか、この蝶は、何故私を導いたのか。

【相手の性別を捉えかねているようであった。それ以前に、肌の色からして生きた人なのか】
【腰の刀に手を触れる様子はない。ただ、それだけを正直に知りたがっていた】

/遅くなりましたがこちらもこれから対応できます!
501 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(空) [sage]:2016/12/28(水) 22:54:37.24 ID:oT9GGkmSo
>>500

【「400年前―?」と、瞑想者は不思議そうに言葉を繰り返した】
【だが、喚き立てて咎めることもなく、続けて「そうか」と呟くと】
【ゆっくりと立ち上がって、160cm少々の背丈で侍に向かい合う】

【薄紫に発光する蝶々はその動きに驚いたように、お堂を飛び回り】

私は終わりを求める者。既に死に、息は絶え、なおも動く者。
私を真に殺せる相手を探している……消極的に、だが
蝶はその手助けを。言うなれば、冥府から借りた猫の手のようなもの。

ですから……問題は、あなたが私を殺せる人物かどうかだ
武者は、人を[ピーーー]者。ならば、その可能性はあると思うのですが。

【「いかがですか」――問いかけながら、瞑想者の右手に槍が握られる】
【何もない空間から、薄ぼんやりと鎖が見えた気がした】
【そしてその鎖が連接し、槍となった。つまり、尋常の武器ではないらしい】

【――性別については、温和で少々低めの声と身長と判断するに、男性か】
【だがやはりどちらとも言い難い、ふわふわとした雰囲気がまだ残っていた】

/いえ、元々こちらが遅れてしまった話ですので
/ではここから、よろしくお願いしますね
502 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/28(水) 23:11:00.27 ID:P80Kt/AWo
>>500

はあ……まるで、悦那さんのようなお人だ。ああ、いやですね、
丁度貴方のように、死したまま彷徨っている人間を知っているのです
そのお人は、今では死したことも忘れたかのように仲間と夢を追っていますが――

【すらと立ち上がる背丈は170代後半か、四百年前の侍にしては背丈も顔立ちも今様で】
【ただ、その魂だけは何処までも侍だった。左足を前に、腰を落とし左手を右腰の刀に添え】
【美丈夫は、ゆるりと首を傾げて呟いた】

……おなごの首を挙げるは武士の恥。それ故、もし「そう」であるならば、願いは聞き届けられませんが
おのこであるのならば。介錯を望む相手を捨て置くもまた、武門の恥となりましょう
踊りたがる死者もあれば、眠りたがる死者もある――ですがどちらも、人なのです

【相手が槍を掴めば、こちらも刀の柄を握る】
【親指で撫ぜる鍔は細かな金の彫刻が施され、ただの武士では無いことを伺わせた】
503 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(空) [sage saga]:2016/12/28(水) 23:19:58.43 ID:oT9GGkmSo
>>502

【しっかりと体勢を取った侍に対して、瞑想者は棒立ち】
【否、膝を微かに曲げているものの明確な型というのを取っておらず】
【装飾の少ない細身の槍を片手に持ったまま、くすんで荒れた瞳を相手に向け】

私は"どちら"でもない。だがこの心は、恐らく男だ。
男であれば、武士は介錯してくれると……そう聞いた気がしましたが。

……果たして人かどうか。百の言葉より、試してみては?

【相手がただの侍、或いは幽霊。それに属するものではない】
【それはこの剣呑な槍使いにも分かっているはずだったが】

【ひゅん、と風を切って槍を相手に向けると、小さく笑んで宣戦を布告した】
【お堂の内部は狭いながらも、梁に槍や刀が刺さるほど天井が低いわけでもなく】
【概ね剣道の試合場程度な広さはあった。軋む板も、まだ踏み込みに耐えそうであった】
504 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/28(水) 23:32:01.35 ID:P80Kt/AWo
>>503

そう、ですか。この世には、心は別性という人もおりましたね。
貴方がそうであるかは、今は問わないとして――

【槍がこちらに向けられれば、整った顔の口許をぐっと噛み締めるようにした】
【戸惑いや嫌悪ではない。ただ、武士としての、戦に赴くに当たっての、真摯な表情で】

……なれば。介錯に、値します

【とん、と床を蹴った青年の動きは早い。両手で抜刀しながらも左に構えるのは、利き手がそちらなのか】
【そのまま距離を詰められれば狙う先は首。右腰にはもう一つ、短刀があり】
【接近すれば分かるだろう。羽織の下、長着の懐にも何かがあった】
505 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(空) [sage saga]:2016/12/28(水) 23:39:34.59 ID:oT9GGkmSo
>>504

【首に迫る刀の動きを、くすんだ瞳はしっかりと捉えていた。故に】
【右手の槍を傾け、その柄で刀の刃を流すように受け止める――その動作も何処か余裕があり】
【刃先は辛うじて首の皮膚を切っていたが、流血には至らない】
【――或いは通う血があるのかも怪しかったが】

……侍というのは重武装ですね。
流石に職業軍人と言うだけある……が、これは…――?

【刃を受け止めてから間を置かず、相手が詰めてくれた距離を活かす】

【繰り出すのは左足による、相手の胴を狙った蹴りである】
【しかしその速度、威力が尋常ではない。ともすればその一撃は】
【外に群生する竹すらもへし折ってしまいそうな、見かけの数倍はある強烈さであり】

【また、槍を持たない左手は自由。反撃されても対応できる】
【そう言いたげに、左腕の肘は軽く曲がっていた】
506 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/28(水) 23:48:52.09 ID:P80Kt/AWo
>>505

(受けられた……中々の身のこなし、ッ!?)

【青年は長い槍先にばかり注意を払っていたため、胴への蹴りには対応しきれなかった】
【もろに直撃した蹴りで弾き飛ばされる身体は背中から壁に激突し、かは、と小さく息の漏れる音がした】
【胴を蹴り飛ばした際に、長着の中に隠す何かを薄らと読み取れたかもしれない。金属製の長筒――銃、だ】

はッ、……これは、これは。少々見くびっていたようですね――、随分と活きのいい死人だ、

【何とか体勢を立て直せば、青年は再び刀を強く両手で握り締め――真っ直線に、突きの構えで駆け出した】
【防御を捨て、ただ相手の胴を貫かんとするように。当然、無策ではなかった】
507 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(空) [sage saga]:2016/12/28(水) 23:57:51.99 ID:oT9GGkmSo
>>506

【相手を蹴り飛ばした後も、それに満足せず】
【蹴りで浮いた脚を地につけてから相手をじっと見据える】
【その集中。周囲を舞う胡蝶などは全く視界に入っていないのだろう】
【長刀、短刀、そして銃。対してこちらは槍と――】

己が肉体もまた武器。目に見えるものだけが全てではない……
……それだけのことです。だがこれで、あなたにも見えるようになった

問題は次…――冷えた血が、滾るようですよ。

【突っ込んでくる。だが、相手は猪武者ではないというのは】
【これまでの知的な会話で既に分かっていたこと】

【つまり、なにかある。そう踏んだ槍使いは、両手で槍を持ち直すと】
【振るった穂先の刃を刀に当てて、その剣閃を弾こうとする】
【だがそれ以上はしない。何をしようというのか見定めるように、相手を強く見据えていた】
508 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) [saga]:2016/12/29(木) 00:05:59.74 ID:Jw1GOc5Ao
>>507

……ふふっ、その通りですね。己が肉体もまた、武器――或いは、『兵器』

【かの力で弾かれれば虚空へと飛んだ刀は承知の上、掴む物を無くした手は即座に右が懐へ突っ込まれ】
【もう一歩、たんと踏み出す。未だ宙に浮いた中で構えるのは長筒の銃、狙う先は――相手の、眉間】

私、実は鉄砲の名手でしてね……かつての主にも、よく褒められたものです

【ぱぁん、と乾いた音が響く。動作の途中で銃なりを弾かれていれば別だが、そうでないのなら】
【着地した青年は長筒の先から昇る硝煙をふっと吹いて、しゃがんだ体勢から相手を見上げる】
【――距離は、近い。もし相手が躱していれば、何をされても防ぎようのない距離だ】
509 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(空) [sage saga]:2016/12/29(木) 00:15:16.22 ID:4JCxCh4So
>>508

【『兵器』という言葉に、一瞬だが表情が険しくなった、ような】
【だが展開は早い。刀を弾くまではまだ、良かった】

【その手が速やかに懐へ――銃に伸びたのが、若干の判断ミス】
【近距離ならば短刀を使う、或いは背後を取ろうとする】
【そう読んでいた。驚いたように見開いた目の合間、やや上――狙いは、的中する】

【――だが倒れない。数歩ふらふらと下がって壁に背を預け、ようやく止まり】
【片手で額を抑え、呻くと、やがてぽろりと足下に潰れた弾丸が転がり落ちて】

侍、というのは……てっきり、刀ばかり使う者と思っていましたが……。
……なるほど。名手というのは、武器の射程に囚われないらしい

【手を退ける。弾丸が打ち込まれた眉間には抉れたような傷があり】
【ほんの一瞬だが、傷口に鎖のような鈍い光が見えるだろう】
【それが弾丸を防いだのか――ともあれ、若干ながら距離が空く】

【――しかし次手は無い。ふぅ、と一息吐いて地面を見る姿は】
【落胆とも違うようだが、既に戦意が失われているように見えた】
510 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/29(木) 00:27:20.23 ID:AkkMxSkOo
>>509

……戦いに、意外も何もありませんよ。持ち得るものは全て使う、飛んで跳ねて逃げて機を狙う、全てが戦です
ですが……正直に申し上げるなら、貴方の戦い方には、矜持が無いように思えました

【相手の戦意が失われていることをちらと見遣れば、背を向け歩く先は、飛ばされ壁に刺さった刀】
【それを引き抜き、鞘に納める。金打の澄んだ音がすっかり静かになった伽藍に響く】
【少し離れた距離で相手に向き直る金の目は、どこか怒っているような色をしていた】

貴方――ええと。失礼、名乗りも上げておりませんでした。私は土岐 咲庵(しょうあん)と申します
それで……貴方は。介錯を望んでいるようでしたが、今はどうですか。考えは、変わりましたか

【本気で殺そうとしていた。だが、一戦終えれば、その時の思いは全て綺麗さっぱり無くなる】
【今更ながらに名を名乗った青年は、白の入った長い黒髪に金色の瞳と】
【長着も羽織もどこか烏の羽や黒塗りの肩当てで飾られていて、どこかヴィジュアル系な様相を呈していた】
【左手の薬指には黒い金属製の指輪があった。上半分を分かった様な細身のそれは、ペアリングらしく】
511 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(空) [sage saga]:2016/12/29(木) 00:41:33.26 ID:4JCxCh4So
>>510

矜持…――あぁ、ええ。……そう、でしょうね。

【私には矜持というものがない――そう、明言こそしなかったが】
【しゃら、と鎖の音を立てて槍が虚空へ消え去ると】
【済まなさそうな、落ち込んだような瞳で、怒色を示す彼に向かい合い】

考えは……いいえ。新たになったかといわれれば、そう答えましょう
ですが改めて理解は出来ました。私は中々死ねない、と。
……私を縛る鎖がね、その死を拒むものだから。

【侍――それも400年前のと考えると、実に現代的な趣の彼に対し】
【現代を彷徨う亡霊のような槍使いの衣服は、よく見ればボロボロで】
【血や土の汚れこそ少ないが、今まで何人もの相手と同じやり取りをしたのか】
【斬り跡、突き跡、銃痕。焦げたような跡も見かけられ】

……私のことは"黎(れい)"とでも読んで下さい。
それで、咲庵。あなたにもう一つ聞いておきたいのですが――

【『400年前とはどういうことです』と、自分のことは棚に上げたまま尋ねかける】
【若干、自分勝手なきらいがあるらしかった】
512 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/29(木) 00:52:56.50 ID:AkkMxSkOo
>>511

……死ねない、ですか。私も少しばかりはそのお気持ち、察せられる身です
先だって『兵器』と申しましたが――この身は三つの生物兵器の集合体、なのです。
それらはとても頑丈で、しぶとくて……私もまた、死ねなかった

【黎、と相手の名を復唱して、少しばかり悲しげな視線をその衣服に向ける】
【憐れみなど要らない感情であることは理解していた。自分もそうであるのだから、余計に】
【ただ、死ねないことに思い悩む相手の姿には、どこか深い郷愁の念を抱かずにはいられなかった】

ああ、その事ですか。私も、四百年前に敗戦落ちの竹藪で野伏に出会した所までしか覚えてはいないのですが……
気付けばこの世界に立っていました。何も分からずひたすらに戦い落ち延びた末に、身体は三つの生物兵器に別れてしまいましたが――

……出逢えたのです。この三つの身を集め、再び私の存在を取り戻してくれた、若き人に
この指輪は彼との義兄弟の証――彼が言うところの「まりっじりんぐ」と言うのですが、

【一気に話は薔薇色を匂わせてきた。ただ、咲庵としては正しくそれを理解していないようで】
【左手薬指に嵌める意味も、いまいち知識が四百年前のままの彼には分かっていないのだろう】
【ただ相手のことは忘れていない、少しばかり心配を浮かばせた表情で、『この先も死を望むのですか』、と問い掛ける】
513 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(空) [sage saga]:2016/12/29(木) 01:12:29.16 ID:4JCxCh4So
>>512

【生物兵器――それも3つの集合体、と言われれば】
【黎の瞳はやや大きく開かれて、改めて相手の身を眺め】

……残党狩りに出会って死を覚悟した、と思っていたものが
気付けばこの世界に居た……それも生物兵器として、ですか。

それは……私は、信じますが……。
あまり余人に話して、正気とは思って貰えない話ですね
結果としては、あなたにとって悪い結末とも思えませんが。

【一般的な人間という尺度からすれば、突拍子もない話】
【だが死ねない身である自分であれば、信じないという理由はなく】
【まだ消化不良の体だったが、飲み込むように頷いて。それから問に、再度頷き】

この肉体に纏わり付く能力……呪い、と言い換えてもいいですが。
それを排斥しない限り、私の不毛な時間は終わりませんから
あなたのような方に迷惑は掛けますが……望みは、捨てたくないので。

……不眠症のようなものです。死者は、静かに眠るのが一番良い。

【自嘲するように小さく笑うと、ぎし、と音を立ててお堂の出口へ歩いて行く】
【見れば薄紫の胡蝶たちがその道を示すように床に留まっていて】
【どうやらまた別な場所を探すつもりらしい。外は暗夜だが、月が明るかった】
514 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/29(木) 01:20:13.48 ID:AkkMxSkOo
>>513

呪い……それは、難儀な物ですね。解く方法があれば――、いや。もしかしたら、あの人になら解けるかも知れない……?

【相手の話に深く考え込んだ咲庵だったが、何かに思い当たったのか不意に顔を上げ】
【だが、相手は既に背を向けている。会ったばかりの自分が深入りするのも、相手には好ましくない事だろう】
【まして確信のある話ではない。名うての呪術士を知っている、と言うだけのことだった】

……どうか、良き眠りを

【その言葉が胸に刺さる、そう、あの時自分はあの場所で、死んでいたのだ】
【竹槍で貫かれた感触も、部下に介錯をさせた記憶も、秘めてこそいたがしっかりと覚えている】
【そして終わるはずだった運命を『書き換えた』――そんな誰かが、きっといる】

【相手が去るならそのまま背を見送り、咲庵は一人堂の中で考え込む。もっとも、この怪しげな堂でそう出来るのもおかしな話だったが】
515 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(空) [sage saga]:2016/12/29(木) 01:33:24.37 ID:4JCxCh4So
>>514

……あなたから『あの人』が誰なのかは、聞きません
私の運命が明るい方向へと向くのなら……いずれ出会える筈ですから。
今宵の出会いが、その布石であるといいのですが。

【この世界には、異能を身に着けたがるものも】
【それに応じて身につける方法も多種多様に存在している】
【だが、解く――失うための術は、それこそ死するより他にない以上】
【死が不可能というのは手詰まりの感があったが――最後には、笑顔で振り向き】

ええ、では……また私を殺して下さいね、咲庵。

【『それまでお元気で』――声を掛けると、胡蝶と共に伽藍から歩み出し】
【ふらりと街道を歩いてゆく。やがてその姿は峠を堺に消えてしまうが】

【咲庵がお堂に脚を踏み入れた当初感じた、あの嫌な予感】
【気付けばそれは綺麗サッパリ消えていた。さながら、あの檻のような感覚は】
【黎という人物自体が動くソレだったのではないかと、思わせるほどに】

/お疲れ様でしたー!遅い時間までお付き合い頂いてありがとうございました!
516 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/29(木) 01:34:51.96 ID:AkkMxSkOo
>>515
/こちらこそありがとうございましたっ、お疲れ様でした!
517 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/30(金) 19:16:11.70 ID:gJNkkO7ko
【廃街】

【西洋風の街道と立ち並ぶ建物は人の気配が欠片もなく、点かない街灯を月が照らす】
【捨てられてまだ十数年といった体の家々。窓際で埃を被ったテディベアが寂しげにこちらを見ていた】
【その視線の先には、人の失せた街を歩く青年がいた。白皙に癖っ毛の淡い金髪、紺碧の瞳がどこか昏く】

……一人で歩くのは嫌いじゃないけど。隣に兄さんが居ないのは、寂しいなぁ。ね、

【話しかけた先は民家の庭。何も無かったはずの地面に夜色の魔力が収束し、這い出るように複数体の骸骨が現れた】
【それらは骨の体で立ち上がればふらふらと青年のあとを着いて歩く。伏せがちだった青年の視線が、やや険しくなる】

あと何体埋まってるのかな。早く見つけて、こんなお仕事、終わりにしたいな――

【骸を従えて歩く彼は憂鬱げにそう呟けば、左手薬指の黒い指輪を見つめる】
【黒い金属で出来たそれは、月の光を受けて頭痛を呼び起こすような嫌な輝きを放っていた】
518 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2016/12/31(土) 22:19:32.16 ID:emz+dmlt0
【街はずれ――街を見降ろす高台の公園にある、ベンチ】
【年明けにはしゃぐ街中のうるささも届かないこの場所には冬のわりにあたたかに吹く風の音だけが繰り返される】
【遠く街の中心にある広場に目を向ければたくさんの人が集まっていることは分かったが、それ以上のことは――風向きによっては流行りの曲が聞こえて来る程度】
【雨ざらしで半分腐ったようなベンチに身体を預けて空を仰ぐ人影はばかみたいにちいさく華奢であるものだから遠目には子供と見まごうほどで】

ああ、もうそんな時期だとは……知らなかったのだけど。

【頭を後ろに落としてしまいそうなほどに空を見上げて呟く声は少し濁った無理のあるもの。ただでさえ掠れた声質が余計に聞き取りにくく、不明瞭になり】
【ひとりごちれば頭でさえ重たいような仕草で前へ向き直るのは――少女というには少し育ってしまった程度の、少女】
【ベンチの傍らにはビニールの袋がいくつか置かれているから買い物帰りだろうか。はあとため息を吐くのと同時に吹いた風が、その袋を揺らして鳴らし】

まだ買いたいものがあったのだけれど……あれじゃもう無理かしらん。

【こちらに向いた風がイベント会場のステージで歌うアイドルのへたくそな生歌を届かせる、少女は舌打ちを一つして、じろりと地面をにらみつけ】

【くしゃりと癖のあるくすんだ金色の髪。ぐるぐるうねる毛先に向かうに従ってどんどんピンクになっていく不思議な髪色が、夜の風にわずかに揺れ】
【病気でもしているのかと思うほどに肌は白く不健康な色合い、その中で勿忘草色の瞳だけがぎらぎらと何もかもが気に食わないような目をしていて――】
【分厚い布地のポンチョと裾のうんと長い――足のつま先がぎりぎり見えるだけという長さのワンピ―ス、どうやら靴はブーツのようだったけど】
【ひどく背の小さな少女だった。数字にすれば百四十前後、百五十には絶対に届かないだろうというほどで――ただ子供でないのも、明らか】

……ち、

【音は聞こえなくとも盛り上がっていることはなんとなく見える。ひどく遠い楽しそうな気配から目も意識もそらして――ひとりでいる彼女は、どうにも、ちっぽけだった】
519 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/01/01(日) 01:56:44.61 ID:VXWeY8oJo
>>518

――よっ。明けましておめでとう、か?

【ふらりと現れる長身の青年は、片手にだいぶ買い込んだらしいコンビニの袋を携えて、ベンチに座る相手へ片手を上げて軽い挨拶をした】
【長い銀髪を高い位置で括り、真紅の瞳はベンチの傍らのビニール袋をちらと見遣る。服装は相変わらず黒のジャージにサンダルで】
【中に着るグレーのハイネックともこもこした靴下が、如何にもついさっき家から出たような姿だった。軽く伸びをしつつ『隣、いいか?』と声を掛ける】

年越しライブとかテンション上がるよな、野郎のアイドルは知らねえけどさ。……って、そんな性質じゃないか、アンネは

【気安くそう話し掛けて笑う男は何時ぞやの大家兼鬼、コンビニとバスケを愛する世話焼き――名は黒妙 縁、と名乗っていた筈だ】
【隣を許されても拒否されてもとりあえず重たげな袋を地面に置けば、彼は本格的に背伸びと欠伸をしつつ空を見上げた】

年賀状送ってくれてたなら悪いが、宛先と名前変わったんだよ。一応言っとくと水の国の首都にあるElysionっつービルで、
名前はウェスカ・クルーガーな。大家はもう仕舞う事にしたから、借りた本もそのうち早めに返しとくわ

【生活費だった大家の仕事は引き払うらしい。ならばあの自縛霊ともお別れなのだろう、青年は至って軽い様子で言うが】
【あの建物には幾らか人が住んでいた。彼らはどうなるのか――そんな事も気に掛けない様子で、二の句を紡ぐ】

で、買い物も終わったなら、あの埃っぽい家にでも帰って暖まったらどうだ。今夜は冷えるぜ、格好は寒そうでもないが――、

【相手の服装を見て、良くは分からないがそう判断して青年は一応の心配の言葉を投げたのだった】

/時間が時間なので、難しい場合はお手好きな時間にでもお返し頂けたら幸いです。
/こちらは朝方まで空いてますが、お付き合い頂ける場合はご無理なさらない程度にお願いします
520 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/01(日) 02:32:09.81 ID:PtarehE+0
>>519

【冬にしては暖かい風と遠くから聞こえて来るはちゃめちゃな音声。音量を無理やり上げたかぎざぎざに割れた音楽は遠くからでは耳障り以外の何でもないし】
【それに合わせて歌うアイドルもCDならともかく生の声がどこまでも下手なものだから不協和音にしか思えない。あの場所に居る人達は盛り上がってるようだけど、】
【だからってひどすぎると思うのは半分くらい自分のせいだろうとなんとなく考えながら――とりあえず、あれが終わるころまでは時間をつぶしていようと思う】

【でないとあの人ごみの中を帰ることになる。それは嫌だし……どうせ数時間程度だろうと考えて、ひとまずここを要塞にしようと決めたあたり】
【聞こえて来る足音と聞き覚えのある声。勿忘草色があるいは睨むような鋭さで相手を確かめるが――元から目つきが悪いだけで、多分、六割くらいは睨んだりはしていない】
【それでも残りは睨んでいたりするものだから見分け方は特にないけれど……とりあえず地面に置かれた袋を、邪魔でないように動かしてやる程度はするらしい】
【といっても空間からにじむように現れた勿忘草色の魔力もやが袋をがさりと動かしただけだから本人は微動だにしていないまま――】

あんなうるさい場所に行ったらせっかくの新年中耳が悪くなりそうだもの、音楽というのも、特に興味はないのだし……。

【変わらずに掠れた声。少女らしいみずみずしさのない喉では、たしかに、流行りの歌を歌って楽しむことはできないだろう。それでも】
【まったく興味がないような顔をしているのは無関心すぎるよう。遠くの曲は有名なものだが、それさえも分からないようだった――聞いたこともない、と、つぶやき】

誰にも書いていないし送ってもいないから安心するといいよ――面倒なのだもの。本を読まなければならなかった。

【年賀状についてはノータッチらしい。だから慌てることもなく、相手の転居にも、これも、あまり興味のないような態度をしている】
【名前――というのについてはさすがに、どうしてそうなるのかとか思わないでもないのか、緩やかに視線を向けたが。そのまま、尋ねることもなく逸らし】

あんな街中を歩きたくないのだもの。

【「それに寒さも変わりないのだし」】
【火の類をあんまり使いたくない彼女の家には暖房器具らしい暖房器具がない、防寒方法はもっぱら室内でまで外行きの格好をするという乱暴なものだし】
【だからあの人込みが全部はけるまでここで待つのだという。息はすっかりと白いが今宵は少し暖かい。だからできる――そういう意見のようなのだった】

/気づくのが遅れました、が、ちょっと眠いので次は昼になります……申し訳なく
521 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/01/01(日) 02:49:21.49 ID:VXWeY8oJo
>>520

ッハハ、だよなぁ。アンネが聴きそうなのはクラシックとか、か……?
勝手なイメージだけどよ。少なくとも、ヒップホップの話は通じなそうだ

【近所の公園で一人シュート練習をしながらシャカシャカ流しているのは大抵が酷い世間disのヒップホップな青年と】
【清楚な相手の聴きそうな音楽が合致するはずもないと判断して。そも、音楽自体に興味が無さそうだとも思う】

マジか、俺もだけどな。一人だけダチから来てたのが、今年は転居のおかげでサヨナラだ――ま、最近は来てなかったんだが

【ベンチに腰掛ければ、はあと息を手に掛け擦り合わせる。指先が冷えるんだよなぁ、などとごちているが構う必要は無いだろう】
【それから何やら思い出したように袋を漁りつつ聞くのは、相手の率直な言葉だった。それはそうだろうと心中で納得して】

ミルクティー、飲むか? 少し冷えちまったが……あと、ドーナツが幾つかあるぜ。すげーの、新年デコレーションってやつ?
赤いチョコは流石に見慣れたけど、緑はなんか躊躇うよな。白はまあそのままだろうし分かるんだが……

【取り出したのは二本の暖かいミルクティー。一本は自分の手を温める物にして、もう一本を相手へと差し出し】
【受け取らなかったにせよそれから取り出すのは少しだけ温かさの残るドーナツ達。緑と白のチョコレートで彩られたそれは】
【少しだけアメリカの菓子を思い描かせるような目出度い色合いだった。それでも国産だと言うので、舌が緑になったりはしないだろうが】

/了解しました、おやすみなさいませ!
522 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/01(日) 03:07:05.76 ID:PtarehE+0
>>521

【「いや」と擦れた小さな声が相手の言葉に差し込まれる。それから続くのは「何も」――聞こうとして音楽を聞いたことなんて、あったかと思うほど】
【家には本ばかりしかない。CDを買った記憶もないし、再生するための機械があった記憶もない。テレビもないしいわゆる携帯端末もない……音楽だなんてほど遠い】
【いつも耳が痛くなるくらい静かな中で本を読んでいた。あるいは本を借りに来た際に見たかもしれないけれど――頁を開けば数時間はしゃべらなくなる、どこまでも没頭する】
【だからかえって邪魔なのかもしれなかった。せっかく描かれた他人の感情に浸っているのに、さらに別の他人の感情を混ぜ込む必要だなんて】

そもそも誰かから来ることもないのだし……。

【それなら余計に出したい人も居ないし、そういうやりとりをする知り合いも、居ない。だから……何ら関係ない行事の一つだと思っているのだろう】
【そもそも今日が年末だというのも初めて知ったと言う様子だったから、考えてもしていなかったはずで。だからこそイベントに巻き込まれて、避難しているのだけど】

【動かしたビニールの袋がぐしゃりとかすかな音でわずかに雪崩れる。中は生活用品ばかりだ、生きていくのに必要なもの……最低限のもの】
【ただ気になるのは食べ物がパンくらいしかなくて、後はパンに味をつけるものが少しあるぐらい。野菜とか肉とか、そういうものは、まったくなくって】
【あるとしてもほんの数個かんづめが袋の底に沈みこんでいるくらい。どんな生活をしているのだろうと思われるほど、生が希薄な、買い物袋で】

……それくらいならもらおうかしら。

【一瞬要らないように黙った彼女は、けれど、断るのを面倒に思ったように、数秒遅れで差し出された分を受け取り】
【だからといって積極的でなかったものだから両手で緩く持って膝の上、スカートの布地にうずめている。その指先はうんと白くて、それから少しだけ、爪が伸びていて】

…………――、引っ越したのなら、もううちには来ないのかしら。

【ドーナツは要らないと断った。それで数秒、しんと黙った彼女は――それからようやくミルクティーのふたを開けて、ちまりと、口の中をしめらすためだけのように飲めば】
【彼を見るでもなく悲しげなわけでもなく怒っている様子のわけでもなく、そうとだけ。呟くように尋ねるのだろう。――遠くのイベント会場では今度はまた別のアイドルが歌いだす】
【さっきは目をそらしたイベント会場を興味のない目をして見つめている横顔は、前より少しやせたようにも見えた。きっと変わらず、めったに外に出ていないのだろう】
523 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/01/01(日) 03:20:38.93 ID:VXWeY8oJo
>>522

おう、飲め飲め。今夜くらいパーッと行こうぜ? ……って、こっちは食わないのか。一人で食うの、少し怖いんだが――

【味が不安だからと巻き込ませたがっていた。だがそんな理由なので当然断られれば強要もできず、恐る恐る一口齧って】
【無言の咀嚼が続いた後、一言『普通にうまい』とだけ言った。色合いはアレにせよ、食べる分には普通な味らしい】

そうだな……また昔みたいな、社畜生活になりそうでな。当分はアンネみたいな食生活で、読書の代わりに仕事してる感じだろうな……
昔世話したボンボンと同じチームになるわ、リーダーがおっかねー顔してるわで波乱万丈っつーか? あれ絶対、元ヤクザだと思うわ

【うちには来ないのか、との問いにははぐらかすように、ただ頑なに答えなかった。無理に面白げに話すような、そんな】
【ただ横目で見る相手は以前より痩せて見えて、相変わらず色白で、少しばかり青年の顔色が曇る】

……な。誰か、頼れる人とか、いないのか? 変な事聞いて、悪いんだが――

【そう言ったのが決定的だった。もう、相手の家を訪ねることは出来ないのだろう――したくとも出来なくなる、が正しいが】
【ずっと心配だった。自分が見つけなければ餓死していたんじゃないかとすら思った。ただ、頻繁に訪れていたのが最近はぱったり減ったのは、】
【そういう後ろめたさからだったのだろう。尋ねてから相手を見据える目は、笑えるくらいに不安げだった】
524 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/01(日) 14:25:08.86 ID:PtarehE+0
>>532

【はぐらかす彼の言葉に、彼女はただの一言も返さなかった。もう来ないのか――そう尋ねた返事がまだであるというように、口元をかたくなにして】
【そもそもそんなことをする時点でわかりきっているようなものだけど。それでも、その答えを待つようにしている。けれど、だからといって、】
【そこには不安とか、恐怖とか、怒りとか、そういうことは全くなくって。きっとどんな言葉でもいいんだろうと思っている、あきらめに似たものが埃のように積もったまま】

それがいたら苦労はしないのだけれど……、……そう、じゃあ鍵を厳重にしなければならないね、キミが来るかと思って、

【頼れる人――尋ねられて、やっとそれを答えだと受け取る。もうこの鬼は本を借りに来ないのだと思えば、ほんのわずかに目を細めて、ため息にも遠い吐息を漏らす】
【そんな人間なんて居なかった。親戚の類は存在しないし、両親の友人だとかも最初は連絡を取ってきた人も居たが、ずうと無視していたら、そのうち消えた】
【とうの両親は手紙もよこさずにどこかで何かをしているし、頼れる人間なんてもう存在していないようなのと、一緒で】

【昔――前に会った時、彼女は彼のことを名前で呼んでいた。ずいぶんと珍しいこと、だけど、今夜は意図的にそうしている、だって、】
【しばらく来ない間に、そう呼ぶようにと言ったはずの呼び方を彼が忘れているのだから。拗ねたようでもあったし、それとも、仕返しのようでもあって】

キミが来ないなら、もう誰かが来ることもないだろうね、私としては気楽で良いのだけれど。

【頼れる人間は居なくて、ある程度日常的にあの家へ訪れる存在も、たった今、居なくなった。そもそも最近はあんまり来ていなかったようだけど――】
【それでも来るかもしれないからとせめて自分がいる間は鍵を開けていたりしたものだ。でもそれも、誰も来ないのが普通になれば、鍵をかけていたほうがいいに決まっている】
【本と二人きりなのは特別嬉しくない。読まれるための存在たちを読み切れないことが申し訳なくて、気が重い。だから、誰かが来てくれると彼女はよく喜んだけど】
【いろいろな都合があるのなら仕方ないと彼女自身思っているから、別段文句の類も出なかった。ただそれなら鍵をきちんとしないと、と、どうでもよさそうに呟いただけで】
525 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/01/02(月) 02:39:30.52 ID:5sqi+M4vo
>>524

……全く、女の一人暮らしだろ? 鍵くらいちゃんと掛けとけ、バーカ。馬鹿ついでに言っとくが、まだ面倒見られなきゃ生きられない歳か?

【頼れる人などいない、と言う事。理解すればもう出来る事など何も無かった。そも、していたのが間違いだった。甘やかし過ぎた】
【平安と称した餓鬼の彷徨う都で、飢えて死ぬ子供など飽きる程見てきた。今はそんな世じゃない、まして本に囲まれて、金に苦しんでいる筈もない】

気楽なら良かったじゃねえの。俺のお節介もさぞ面倒だったろうさ、変に鍵開けて待ってくれるような慈悲なんぞ、欲しくもなかった

【吐き捨てるのは本心だった。お節介には間違いないし相手もそれを疎んでいたなら完全に非はこちらにあったが】
【明確に拒まれていないどころか許されていたなら、何の言い訳にもならない。訴えて当然負ける事項、言いづらかろうが、意思表示が全てだ】
【言葉にしなければ人は理解し合えない。見つめ合おうが触れ合おうが、口で物を言わなければ、理解できるように伝えなければ、何も】

――シズリとも、ミレアとも違う女だよな。お前、心底可愛くねーわ。そんで俺も、そういう趣味じゃねーから。頼るなら、違う男でも囲えよ

【すらすらと言葉が出るのが不思議だった。ただ、自分という存在にはちょうど良く合う、馬鹿みたいに勝手で優しくもない台詞だ】
【ベンチを立てば、置いていた袋を手にして青年は相手に背を向ける。そのまま無言で立ち去ろうとするのは、そんな男のままでいたかった故か】
526 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/02(月) 12:58:40.39 ID:uXrZZPyy0
>>525
/すみませんが、出かける予定があるのでお返事が夜以降になります……
527 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/01/02(月) 12:59:25.82 ID:5sqi+M4vo
>>526
/了解です
528 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/02(月) 22:07:22.64 ID:uXrZZPyy0
>>525

【冷たくて生ぬるい風が絡んだ癖毛を束ごと揺らす、遠い遠いイベント会場の歌は音割れするぎりぎりのものが聞こえてきて、それから、もっと遠くから電車の音がする】
【視線を動かせば夜景はきれいだし、なんとなく暮れの忙しさも乗り越えてじゃあやっと楽しもうとテレビの前に座った時のような雰囲気が街中にあって】
【ちらりと動いた視線は、だけど、それだけだった。面倒を見られる――誰の話だ、と、思う。もう六つの頃から両親はほとんど家に居ない、ずっと一人でやってきたのに】
【それとも彼がときどきやってきたときに台所を貸していたのが面倒を見られるということなら。確かに面倒になったのかもしれないけれど、毎日でもない】
【その都度でできる限り礼はしていたつもりだったし、となれば、ほとんど引きこもってきたばかりの彼女にはそこが限界だった。ため息でもない吐息を一つして、】

【言葉にしたら理解しあえるのかといえばそれも違うだろう。げんに相手が言いだした言葉ですっかりと口をつぐんだ彼女を見れば、方法が間違いだったとしか言えないし、】
【それともわざとらしくうろたえるだとか、反省してみせるだとか、そんな芸当ができればもう少し違ったのかもしれないけれど、そんな方法も知りもしないのなら】
【急な言葉を理解しようとも、きっとしていなかった。だってその土台も出来上がっていない場だと思っていたから。そんな気持ちになる前に求められても、困るから】

……そのどちらも知らないのだけど、知りもしないできの悪い女を空想して自らを改めればいいのかしら。
本を返すなら雨じゃない日に玄関先に置いて行ってもらえれば、構わないから。

【知りもしない人間の名前を挙げられても分からなかった。だからどういう態度を取るのもしないまま、表情も声音もいつもとたいした違いがない】
【ただ本だけは返してほしいようにその方法を指定して――それだけだった。ひきとめもしないし、もう来ないのならきっと会うこともないだろうから、その言葉もない】
【ゲームの初心者に最高難易度のステージをやらせても何にも理解さえできないみたいに、ただ静かなばっかりだった】
529 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/02(月) 22:54:09.52 ID:wTe68gCFo
>>528

改めて何か変わるなら良いんじゃねーの。少なくとも、俺はそんな人間なんぞ見たことないが。無理なんだよ、そんなもんは
……ああ、そうしとくわ。じゃあな、せいぜい達者でやれよ

【生まれ持ってこうと決まった人間は死ぬまで変わらない、それが鬼から見た人だった。少なくとも千年程は、彼の知る範囲では、そうだ】
【借りていた本があったのを思い出す。相手の言葉通りに返すのだろう、当然声を掛ける事など無いのだが。出来るはずもなかったし】
【捨て台詞を吐いて背を向ければもう振り返ることもなかった。意味の無くなった二人分の買い込みの重さに辟易して、溜息】

【――街中】
【騒がしいのはどこも変わらない、帰途につくにも逃げ場のないほど、三が日から広場も飲み屋も歩き慣れた路地裏さえもが騒がしい】
【若い女と肩がぶつかった。いったぁい、なんて不機嫌な声の後に、少し値踏みするような視線があって、声は吐きそうな程に甘く変わる】
【これから暇なの、良かったら飲みに行こうよ、彼女居るの、いないならあたしと遊ぼ――最後の言葉で、やっと青年は足を止めた】

……腹、減ったな。もう七十年も喰ってねえのか。そりゃあ減るよな。な、遊ぶか。飯食いに。ここで。今、

【がしゃりと落ちた袋の中身、酒の瓶が割れて汚れた地面に流れていく。絹を割くような悲鳴の後に、それに混じって鮮血が流れていき】
【骨ごと肉を咀嚼する耳障りな音が誰もいない路地裏に暫く響いて、それから――啜るように金髪を飲み込んだ青年は、真っ赤な口で呟く】

――まっず。

【重い上に中味も溢れた袋を持ち帰る気力はなかった。それに血塗れの派手な女物の服やら持ち物を詰め込んで、摘まれたゴミの側に投げ】
【何事もなかったように、青年はとある高層ビルの裏口へ姿を消した。真っ赤な靴跡もその元の血溜まりも、明日には洗い流されるのだった】

/遅くなりました、そして〆ます。お疲れ様でした
530 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/02(月) 23:14:20.87 ID:uXrZZPyy0
>>529

【誰もいなくなって、少し後のこと。気づけば月の位置はすっかりと変わっていて、風はさっきまでが嘘のように冷えて、遠くのイベントも終わっている】
【それでやっと立ち上がった少女はすこし重たく感じる荷物を自らの異能に持たせて、それで、ようやく、寒く冷えたベンチから姿を消す】
【まだまだ人の多い街中、酒の入った集団になるべく気づかれないようにと息を殺して――それでも、家のそばでもある川べりまでくれば、】
【さすがに誰もいないから、わざとらしく道の真ん中を歩いてみる。それに何か意味はないけれど、どこかに向かう誰かの車が通りがかるまで、ずっとそうしていて】

【真っ暗な部屋は凍えるほどに冷え切って。それでも明かりをつければ少しくらいは明るくなったような錯覚があって、気がまぎれる】
【キッチンの長い机に買い物袋の中身をぶちまけて整理していた手がふと気づいて止まる、――食べる気のあんまりなかった菓子のアソート】
【わずかに目を細めてから異能の腕でそのまま棚にしまいこんでしまう、多分――気が向いたら食べるだろうと決めつけて、それでおしまいだった】

/おつかれさまでしたー
531 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/06(金) 17:41:17.17 ID:ebfJ674Mo
/>>517で再募集します
532 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方) [sage]:2017/01/06(金) 19:01:30.79 ID:5UiC7h8io
>>517
……仕事と言ったか? これが仕事、と?

【青年に唐突に語り掛ける声。かすかな震えが伝えるのは、骸骨が歩く光景への恐怖か】
【しかし、声の主の瞳はその恐怖を押しのけるだけの、切羽詰まった気配があった】

【建物の影に隠れるようにして立つ中年の男性だった。黒く丈の長いダッフルコートに身を包み、ハンチング棒を目深にかぶっている】
【地味な色のズボンと靴は薄汚れており、廃墟と化した街にいることからも】
【この男が、人目を避けて動いているらしいことが見て取れるだろうか】

この手の……怪異や魔物らしき物に対処するのが、仕事か?
その道のプロということか?

そうだとしたら、依頼を……依頼をしたい。どうか、聞いてもらえないか

【あまりにも不躾な男はしかし、己の無礼に気を回す余裕すらないかのようだった】
【血走った目は、そうしている間にもちらちらと周囲へと走る。見えない脅威にさらされ続けているかのように】

【青年の指輪が放つ月光の反射を避けてか、伏し目がちではあるが。中年男は、青年にどうにか話を聞かせようとしていた】


/>>531もしまだおられましたら
533 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/06(金) 23:52:37.66 ID:ebfJ674Mo
>>532

……、だあれ? そうだよ、仕事だよ。この街が静かにされた理由、民家の庭先に埋まってる人達の掘り起こし……喚び起こし、かな?

【青年は男性を見て首を傾げる。相手の容姿に対し青年は茶のハイネックに黒のレザーパンツ、深緑のオペラシューズとラフな出で立ちで】
【ただ首から下げた宝石は一際夜闇の中でも輝く大粒のそれだった。下手をすれば国宝級の価値が付くような――そんな、歴史の深いダイヤ】

んん……そう、なるのかな? Elysionって言う、魔獣討伐ギルドの所属なんだけど。僕達はまたチームが違うんだ……、対人戦闘とか
――依頼? どうしようかな、ツェフゲニーを通した方がいいのかな? ……でも面倒臭いや。良いよ、何がしたいの?

【一連の何処かふわふわとした口調が妙ではあったが、とりあえずは相手の依頼を聞く気があるらしい。青年がぱちりと指を鳴らすと、】
【骸骨たちががしゃりと崩れ、再構成して何かを形取る――二脚の椅子、だ。人間の骨で組み上げられた椅子。まあ、悍ましい品だが】

座りなよ、聞くから。話

【――青年は何にも気にすることなくどかりとそれに腰掛ける。背もたれと肘当てまで形度られているのが、使役される骨達の苦労を伺わせた】

/大変遅れました……! そして安定して返せるのは明日になりそうです……
534 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方) [sage]:2017/01/07(土) 00:54:58.64 ID:D0ytzTxMo
>>533
街が静かにされた理由……? 誰かが住民たちを抹殺して埋めた、と……?

い、いや、そちらの仕事のことに首を突っ込むつもりはないんだ
とにかく、この骸骨は貴方が呼び起こしたものだということだな? これほどのことを可能とする腕前なら
「奴ら」にも対抗できるだろう……唐突に済まないとは思うが、ひっ迫しているんだ

【彼のラフな服装や、それ自体の値段に歴史的価値も足せばどれほどの値段になるのかという宝石といった】
【青年の目を引く特徴にも、中年男は意識が向いていない様子だ。ただ、彼の口から洩れたこの街の状況と】
【彼が今、自分の目の前で確かな異能を見せているということ。中年男にとってそれこそが重大事であった】

Elysion……高級な魔術装飾を主力に扱う、ファッションブランドだったか……?
魔獣討伐ギルド……そのような顔も有していたとは。さらに、対人戦闘もこなせるチームがあるというのか
僥倖だ。相手は魔獣とまではいかずとも異形の怪物や、狂った悪党ども――――そういった連中の混成部隊、いや群れ≠ニいうべきか

「奴ら」に対し、可能な限りの痛烈な打撃を与えること……正確には「奴ら」が有する施設の壊滅
依頼したいのは、そういったことだ

【青年が話を聞く姿勢を見せると、中年男は堰を切ったように言葉を送り出す】
【流石に、骸骨が崩れて椅子になる様を見せられた時には、一度はぎょっとした様子を見せるが】
【促されればすぐに表情を引き締め直し、青年に続いて骸骨の椅子に腰かけるだろう】


――――まだ名乗っていなかったな。私はスペンサー・キーン。昼の国警察のものだ
仮にも治安維持機構の者が、このような依頼を持って来ていること自体、恥ずべきことだが……
我々では、とても手に負える相手ではないのだ

【中年男、スペンサーはコートから取り出した携帯端末を操作し、青年へと見せようとする】
【表示されているのは、指名手配犯の写真。ある集団に属する犯罪者たちの手配写真だ】

相手は、この……カノッサ機関傘下の盗賊団。『スクラップズ』だ
こいつらが現在使用している、クリーチャー製造プラントの破壊。それを、Elysionに依頼したい

【スペンサーは震える声音で、しかしはっきりとそう告げた】

/こちらも遅くなりまして申し訳ありません
/明日は帰宅が夜になってしまいますが、また可能となり次第、返させていただきたく思います
535 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/07(土) 08:45:36.94 ID:P7I5T30Zo
>>534

わぁ、詳しいんだね――ふふ、刑事さんなら当然かぁ。じゃあ、ちゃんと本名で名乗らなきゃダメだよね?
僕はリヒト・ボーデン・シュタイン。前の世界ではアレクセイ・ニコラエヴィチ。いつもは百槇 理人だよ。よろしくね、キーンさん

【逼迫した様子の相手と相反してにこりにこりと話していく様が酷くズレていた。恐らく急くように話す相手と、のんびり話す青年】
【端末の画面を見せられれば長い背を丸めて少し椅子から乗り出し、じいとそれを見ていた。表情には、何の変化も無かった】

スクラップズ、スクラップズ、――……カノッサ傘下。凄いね、盗賊団がクリーチャー製造プラントを持ってるんだ。しかも、稼働中

【相手の言葉を繰り返すようでどこかピンポイントに何かを推し量っているようにも聞こえた。ただ、表情には何の変化も、無かった】
【それから身を引いて少し考えるようにしてから――スクラップズ、その名を少し繰り返してから、どこか幼い笑顔で大きく頷いた】

いいよ。Elysion・チーム『オウル』百槇 理人が――その仕事、承ります。えっと、昼の国の刑事さん……だったよね。連絡先、欲しいな

【こちらも懐から取り出した端末には、銀地に青藍で刻まれた梟の紋章があった。Elysionが有するチームの一つ、か】
【そしてその中で対人戦闘を主としているのがチーム『オウル』――青藍色の梟、ということ。そこまでの情報は伝わるだろう】

僕だけの秘密にしようかなって思ったんだけど、リーダーにも相談してみるね。きっとツェフゲニー……ボスは、面倒臭いから言わないや
リーダーはカノッサと戦った事があるし、多分、スクラップズの事も独自に調べていると思う。前に、話を聞いたことがあるから――

【震える相手の声色を落ち着かせるように、青年は安心できる要素を並べて強調する。滔々と語る間、その表情には、何の変化も無かった】

/了解しましたー!
536 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方) [sage]:2017/01/07(土) 21:55:51.21 ID:D0ytzTxMo
>>535
ファッションブランドとしては有名どころだからな。名前くらいは知っている
前の世界……なるほど、別の世界の出身か。多く名前を持っているんだな
ならば、百槇さんと呼ばせてもらおう。こちらこそ、よろしく

【彼のゆったりとした調子に引きずられたか、スペンサーも次第に落ち着いてきたようだ】
【端末の写真を見て、その異形どもの面相にもいささかも動じない彼の様子に、畏れと頼もしさを見出しもしたが】


ああ……連中自身は単なる盗賊どもではあるが、カノッサ機関の後ろ盾を存分に利用して勢力を伸ばした連中だ
豊富な資金と人材を惜しみなく投入し、悪意に満ちた計画の数々を遂行して、それほどの施設を作るに至ったらしい

【あまりにも変化のない彼の表情に、内心で不気味さすら覚えつつ、彼が頷けばその思いを強いて安堵で塗りつぶし】

ありがとう……ありがとう
それは……専用の端末か。ああ、この場で連絡先を送信させてもらおう

(役割によって複数のチームに分かれているわけか……。人材の層も厚いようだ)
(つくづく、幸運だった。この青年ほどの使い手を他にも抱えているならば、あの化け物どもにも対抗できるはずだ)

ああ、頼む。そちらの編成や手段に口を挟む気はないが、『スクラップズ』は物量戦を得意とする奴らだ
どれほどの手練れでも、単独では困難だろうからな……

なんと、機関員との交戦経験が……ありがたい
ならば一度、君たちのリーダーも交えて具体的なところを話させてくれないか

【どこまでも動かない彼の表情のことはもはや意識から外し。スペンサーは依頼の話を先に進めようとする】
【一度間をおいてか、このまま共に行くか、いずれにせよリヒトが指定した場所へとスペンサーは赴き】
【今回の依頼について、詳細を話すことになるだろうか】

/お待たせしました……
537 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/07(土) 22:21:33.49 ID:P7I5T30Zo
>>536

リーダーは、あまり人と会わないんだ。特に、知らない人には……だから、僕に聞かせて。僕から伝えるから

【やんわりとした拒絶だった。それまでと同じ笑顔には何処か影がある。青年は少し節目がちにして、小さく呟いた】

それとも、僕に話すのは信用ならない?

【笑ってはいても酷く寂しげだった。生来変わった気質だ、何度も蔑まれて生きてきたのだろう】
【相手もそうなのか、と糾弾する切なげな表情の裏、頑なに『リーダー』を表に出そうとしなかった】
538 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方) [sage]:2017/01/07(土) 23:03:19.39 ID:D0ytzTxMo
>>537
――――これは、済まなかった。失礼を許してくれ
そんなことはない。依頼をする以上、その相手を疑っていては仕方がない
この場で話そう。というよりは、あれを見てもらった方が早いか。ある映像だ

【その寂しげな気配を感じ取り、スペンサーはすぐに非礼を詫びた】
【このような職業についている人種だ。過去に何かあるのも当然。配慮が足りなかったことを恥じ】

【やがて、ゆっくりと語り始める。彼が追い込まれている状況について】


ここ最近、各地の紛争地帯や治安の悪い地域で、謎の怪物による破壊活動と
それに伴う窃盗や誘拐、盗掘事件が頻発しているんだ

昼の国でも数件そうした事案が起き、我々警察が捜査を進めた結果
その怪物たちが地下のトンネルから湧き出すように出現していたとの情報を得た

元々、密輸トンネルとして多くの犯罪者が使っていた地下通路の一つだ
難航を極めたが我々はそれをたどり……結論に行きついた
廃の国に本拠を置く盗賊団『スクラップズ』が、自分たちで作り出したクリーチャーを尖兵として各地で犯罪を繰り返していた、という結論に

我々は、奴らのクリーチャー製造プラントの場所が『泥の街』であることを突き止め……精鋭部隊を派遣して
その施設の爆破・破壊を試みた。見せたい映像というのは、その精鋭部隊が撮影したものだ


【スペンサーが携帯端末を操作する。その映像は、すぐに再生された】
【映し出されるのは、宵闇に溶け込む装備に身を包んだ男たち】
【彼らがいる場所は、薄暗い建物の中。窓の外は暗く、夜であることがわかる】
【かすかな明かりに照らし出される景色、薄汚れた家屋が立ち並ぶその街並み。恐るべき無法地帯、『泥の街』だ】

――――撮影開始。映像はリアルタイムで本部へと送信される
これより、任務を開始する。すでに周辺の障害は排除し、目的地への進路は確保している
敵に対し、あらゆる行動が許可されている。任務達成のみを絶対の目的とせよ

【司令官らしき眼光鋭い男の指示に、周囲を取り巻く者たちが頷く】
【その中でも恐らく一番若年と思われる男が、軽口をたたく】

しかし、相手は機関の傘下といってもたかが盗賊でしょう? 過去に奴らが関わった戦いの記録を見ても
そのほとんどにおいて、敗走しているって話じゃないですか。確かに数でかかってこられるのは怖いですけど
何も、こんな映像撮影までしなくても……

口を慎め。相手が誰だろうと、決して侮るな

【すぐさま司令官の短い叱責が飛び、その隊員は謝罪と共に表情を引き締める】
【しかし、やはり彼らにも、そしてスペンサーを含む本部にも、『スクラップズ』を侮っていた面はあったのだろう】

【もっともなことではある。結局のところ、『スクラップズ』は寄せ集めの盗賊団に過ぎない】
【戦闘は能力と物量に頼り切り、機関の後ろ盾がなければとっくに瓦解していたであろう組織だ】
【昼の国警察の精鋭部隊たる彼らが出れば、施設の爆破程度はたやすい――――そのはずだった】

/続きます
539 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方) [sage]:2017/01/07(土) 23:06:45.59 ID:D0ytzTxMo
>>537
【彼らが行動を開始してからしばらくは、彼らが確かに精鋭であるということがわかる手際が見て取れるだろう】
【入り組んだ『泥の街』を恐ろしく素早く抜けていき、目的のクリーチャー製造プラントまでたどり着くのはあっという間だった】
【プラントへの潜入も、見事なものだ。敵に気取られることなく、施設へと侵入。静かに、だが確実に進行していく】

【途中で、警備についていたと思しき者たちを奇襲し、殺害していく様が幾度も映し出される。『スクラップズ』の下位構成員たちだろう】
【死体を物陰に隠し、さらに深部へと進行していく隊員たち。だが、突如として映像が反転した】

なん――――≪グガルルルルルル!!!≫

【彼らの驚愕の声が、唸り声にかき消された。カメラを頭部に装着していた隊員が振り向いた先】
【獣のパーツをめちゃくちゃに組み合わされたような異形の怪物。一人でに歩く死体】
【再び反転すれば眼前には、機銃を突き出した自走式の殺人機械の群れ。一瞬のうちに、彼らは取り囲まれていた】

【司令官の叫びに、襲い掛かる異形の吠え声と機械の駆動音が重なった】
【歴戦の隊員たちが、次々に敵を打ち倒す。しかし、切りがない。次から次へと押し寄せる敵】

【やがて、断末魔の悲鳴が響き始めた。カメラを装備した隊員が倒れ、横倒しになったカメラが凄惨な虐殺を鮮明に捉える】
【そして静寂が訪れた。昼の国警察の精鋭たちは、無残な死体となって転がっていた】

【しばしの間を置き、足音。そして、声】

[――――ボス、こいつ頭にカメラ着けてますぜ。どうやら、まだライブ撮影中のようですなあぁ……]

【カメラが持ち上げられ、声と足音の主を映し出した】
【鉛色の髪と瞳を持つ、顔のあちこちにピアスを付けた彫りの深い顔立ちの男がカメラを持ち上げている】

【その背後に立つのは、左右で白黒に色分けされたスーツを着込んだ、二つの頭に四本の腕を持つ異形の男たち】
【両胸のポケットにはそれぞれ『No.50』と刺繍されていた】

【そして、最後の一人。司令官の生首を掲げ持ち、断面から流れ落ちる鮮血を口の中に流し込む大男】
【灰色の作業着と黒いラバー地エプロン。2メートルを軽く超える巨躯。額に巨大な眼球が埋まった三つ目の異形】

【盗賊団『スクラップズ』首領、カニバディールは生首を下ろすとカメラをじっとりと睨みつけた】

……予想以上に被害を受けてしまったな。流石は、昼の国が誇る部隊だ
彼らの遺体は、クリーチャーたちの飼料として活用させていただこう。肉の提供に感謝を

しかし、しばらくはこうしたことは遠慮願いたいな。そちらも、休暇を取られてはどうかね?
ずいぶんと家に帰っていないだろう? スペンサー警部殿

「以前、我々を追い回してくれた刑事が出世したものだ。三人の子供たちは、元気にしておられるようで何より」
『たまには顔を見せに帰ってやったらどうだ? 家族を大事にしろよ』

【口々に告げられる言葉……これこそが、スペンサーの焦燥の理由だ】
【入り込んでいるのだ。『スクラップズ』の、あるいは機関の手は、警察の内部にも】
【そして、スペンサーの親族までもが、すでにその脅威のうちにある――――盗賊どもはその事実を突きつけているのだ】

[ひひっ、ひっひっひっひっひっひ……ひぃっひっひっひっひっひ!!!]

【ピアス男の笑い声が響き、カメラが床に落とされる。ピアス男のものと思しき軍用ブーツが、カメラを踏みつぶし】
【映像はそこで途切れた】


――――御覧の通りだ。我々ではもはや手に負えない
だが、奴らのプラントの存在は、決して看過出来るものではないのだ……!!

『廃の国』に引きこもっていた奴らが、今こうして『泥の街』に進出してきている!!
さらに活動範囲を拡大するつもりであることは、疑いようがない……このままでは被害は拡大する一方だ!!

頼む、百槇さん。奴らのプラントを破壊し、『スクラップズ』を『廃の国』まで押し戻して欲しいのだ……!!

【再び震え始めた声と、流れる汗を晒しながら。スペンサーはそう告げた】
540 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/07(土) 23:25:36.54 ID:P7I5T30Zo
>>538-539

【映像を見ている間、終始青年の笑顔――薄ら笑いは絶えないままだった。特に異形の怪物と殺人兵器の現れるシーンでは身を乗り出す程】
【そして映像が終わり、相手の真摯な訴えを聞けば。それこそ仏のような、柔らかな笑顔で――青年は、ゆっくりと頷いた】

……キーンさんのご家族にまで、危険が及んでいるなんて。これは、早急な対応が必要だね――すぐにリーダーに伝えるよ。対策を練る
昼の国の精鋭部隊でさえこの有様なんだから……僕達のチームで、どれだけの事が出来るかは分からないけれど。やってみるよ、

【然として言う青年の表情は微笑んでこそいるが、言葉は確かにしっかりと相手を見据えていた。相手の身を案じ、対策を練りたいと】
【焦燥した説明と悍ましい映像で、彼等もついに本腰を入れる気になった、ようだった。うん、と一言何かに頷いて、青年は立ち上がる】

キーンさん、後は僕達に任せて、ご家族と一緒に身を隠してね……プラントの破壊、ならびに連中を廃の国まで押し戻すこと。引き受けたよ

【それだけ言えば、青年は椅子から立ち上がる。同時に瓦解したそれらは再び人の形を成した骸骨へと戻っていく】
【相手も席を立つなら同じように、やっと椅子の役目を終えた骸骨達が首をポキポキならしたり、肩を回す。まるで魂の入っているような】

【相手がまだ何か伝えたいのであれば聞き入れるし、そうでないのなら。立ち去る前に、青年は相手の手を両手で握って握手をするだろう】
【焦燥する相手を安堵させる、しっかりとしたそれは、左手薬指に嵌めたルナトリウムの指輪から放たれる嫌な光を少しだけ含んでいた】
541 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方) [sage]:2017/01/07(土) 23:52:43.16 ID:D0ytzTxMo
>>540
ああ……頼む。どうか、頼むよ。報酬の詳細は、貴方たちの希望に沿う
もし必要なものがあれば、何でも用意させてもらう。この映像も、希望するなら持ち帰ってくれて構わない

だからどうか――――

【声を詰まらせて、スペンサーはリヒトに頭を下げた。動かない表情も、頼もしくすら思えた】
【藁にも縋る思いで協力者を探していた彼にとって、降ってわいたこの遭遇】
【果たして、それが幸運であったかどうかは、今後の結果次第であろうか】

【リヒトが立ち上がれば、スペンサーも一拍遅れて立ち上がる。背後で骸骨が戻っていく音を聞きながら】
【まるで生きているかのような骸骨たちの動きに、どうしても寒気を覚えるのは抑え切れていなかったが】


【その後は、彼の携帯端末から『泥の街』におけるプラントの詳細な位置、把握できた限りの施設の構造】
【そして、希望するなら先ほどの映像も、リヒトへと送信されるはずだ】

【両手での握手には、スペンサーもしっかりと両手で握って返す】
【ルナトリウムの指輪が放つ嫌悪的な光も、安堵の前には気にはならなかった】

【握手が終わればスペンサーは踵を返し、迫っているかもしれない盗賊どもの影におびえながら】
【廃街を立ち去っていく。その後は、家族を連れて身を隠すことになるだろう】


【『泥の街』にうごめく異形どもとの闘いは、こうして彼らElysionの手に託された】
542 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/08(日) 00:13:07.91 ID:9Zk3ajw6o
>>541

【――それから、二人が別れた後のこと】
【民家の庭や広場の生垣、時には下水道から骸骨達を呼び醒ましながら、青年は廃街の夜道を歩いていく】
【その最中、握り締めたままだった端末をなぞり、誰かへと電話を掛ける。数コールの後に怒鳴るような声がして、理人は愉しげに笑った】

ねえシスイ、ちゃんとお仕事してるから怒らないでよ? ね、それより、面白い話聞いちゃったんだ――

【――暫しの後】
【とある相手へ、意外な相手から着信が入ることだろう。あの映像に映っていた黒いラバーエプロンの大男――カニバディールへと】
【掛けた相手は、墨廼江 月彗――もし相手が出られないのであれば、少し待つようなコールの後に電話は切られる事となるし、】
【もし応じたならいやな嗤い声がくつくつと電話先から響いてくる。嫌がらせにも似たそれは、ただし聞き覚えのあるだろう声だった】
543 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方) [sage]:2017/01/08(日) 00:23:59.08 ID:YtEhJH4mo
>>542
【そう、彼らもまた闇に身を置く者たち。それが、ただで済むはずはない】
【家族を質に取られた男の焦燥がもたらしたこの一件が、果たしてどこに実を結ぶのか】

【果たして、その結果を示す最初の要素。一本の電話が、今繋がる】


――――さて、いつぶりであったことか。ご無沙汰しているね、月彗さん
ずいぶんと噂を聞かなかったから、どうしているかと思っていたが

わざわざ、直接のお電話をいただけるとは……ご用件は何かね?

【電話は、繋がった。応じる声は、おそらくは彼にとっても聞き覚えのある暗く重苦しい声音】
【まさか、己が追い詰めた相手が、月彗の身を置く組織へと依頼を持って行ったとはさすがに知る由もなく】

【『泥の街』の郊外に佇むクリーチャー製造プラント、その最奥の居室の中から】
【かすかな驚きと純粋な疑問をもって、異形の盗賊団の首領は電話の向こうの相手に語り掛けた】
544 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/08(日) 00:52:58.63 ID:9Zk3ajw6o
>>543

クク……ほんに久しいなぁ、カニバディール。ちいと色々有ってな、廃村で蟄居しとったんやけど――まあそんな事はどうでもええわ、
何や、面白い事やっとるんなぁ? あッちらの故郷――泥の街で、でかいこと始めたらしいやんな?

【水の国を見渡す高層ビル――Elysion本店上層階。そこからの景色を望洋と眺めながら、電話先の相手へと月彗は愉しげに語り掛ける】
【かつてリリアに追われ機関を脱した際に、初めに接触した相手――それは機関会議の中で、一番信用が置けると判断した故だった】
【案の定、相手は協力してくれた。更に月彗の上に当たる機関No.1のソーンも手を貸してくれ、機関を乗っ取らんとする半魔を撃退した】
【――そんな回想を経て、月彗は薄く微笑んだ。友など自分には居ない。ただ、仲間というものなら、居たのかも知れない】

部下が、たまたま拾って来た情報やけど。えらく立派な化物に、兵器と……警察すら粉微塵で、一盗賊団から随分強うなったなぁ?
頼もしいわぁ――、誇らしい、云うんかなぁ。そッち、機関なら六罪王にもなれる器ちゃうか。それとも、もう見限ったって――ククッ、

【相変わらず慇懃な相手に付け上がるよう、上から目線での態度は変わらぬままだったが。No.2だった自分や上席のソーンよりも、】
【今のカニバディールなら――。そう言って、男は嗤う。或いはもう、機関に巣食う必要すら無いのでは、と】
【話の限りだと、昼の国警察部隊襲撃時の映像を確認しているようだった。つまりは、部下とやらがそのデータを誰かから受け取った】
【そこまでは読み取れるだろう。ただ、その部下が依頼されたある事については、月彗は口にしなかった】
545 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方) [sage]:2017/01/08(日) 01:27:12.74 ID:YtEhJH4mo
>>544
ふむ、何があったかは知らないが、ご健在のようで何よりだ
――――耳が早いな。流石だ

【愉快そうな彼の声音に返すカニバディールの言葉は、相変わらずのものではあったが】
【同時に、わずかながら懐かし気な色も含んでいた】

【あの忌まわしき半魔に纏わる一連の出来事。己にトラウマすら刻み付けた事件】
【自分にとって、その一件の始まりはあの日の機関の会議であり】
【今、電話の向こうにいる相手からの接触であった。それを皮切りに、この悪党は凄絶な戦いの渦中に飛び込んだのだ】

【今となっては、その半魔もこの世界から姿を消した。すべては追憶の中に】
【あの時、確かに共に戦った戦友であり、志を共にした仲間であった】
【初めて見た時から抱き続けていた畏怖と敬意は、今なおカニバディールの中に生きている】

【同時に――――そんな相手が、自分たちの現状を掴んでいる。この事実を、カニバディールは持て余していた】


月彗さんの部下だけあって、相当に優秀らしい
警察の部隊を相手にしたのはそう前の話ではないのだが、もうそこまでご存知だとはな……

今でも一盗賊団さ。規模は少しばかり大きくしたがね
お褒めにあずかり、光栄だ。六罪王の椅子は今となっては空位の方が多くなってしまったから
今なら、確かに狙い目かもしれないな……ふ、ふふ

見限った、とまではいかないさ。機関の後ろ盾はまだ有用だ
仮に機関と縁が切れたとしても、さして問題ではないが

【月彗の尊大とも取れる態度が変わらないのと同じように、カニバディールもまた本質的なところは変わっていない】
【表面上は横柄に、しかし確かな敬意は込めて。それでいて、彼の言葉を否定もしない。機関の力なくしても、やっていける力は蓄えている、と】

だが先ほどの件、たまたま拾ったにしては詳細な情報だ
あの部隊の中には、撮影係がいたようだが。あの映像をご覧になったというところかね?
あの時は、似合わぬ脅し文句などを得意げに並べてしまったもので、少々恥ずかしいな

【世間話でもするかのように。しかし、同時に探りを入れるように】
【重い声を送り出す。カニバディールは知らない。月彗が現在身を置く組織のことも。そこに持ち込まれた依頼のことも】

【そも、Elysionが魔獣討伐ギルドの顔を持つことも、カニバディールは掴んではいなかった】
【考えたところで、すべてが想像の外。懐かしさの中に、ただ疑念が膨らんでいく】

【かつてNo.2の座をわが物とし、数多くの恐るべき戦績を残した男。『心臓』の二つ名で恐れられた男】
【その底知れなさは、まだ損なわれていない。その事実を感じ取ったカニバディールの首筋は】
【彼自身が自覚しないうちに、粟立っていた】
546 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/08(日) 01:55:08.20 ID:9Zk3ajw6o
>>545

優秀っちゃ優秀やろなぁ……ホンマのイカれやし。情報集めるには、ああいうのが一番やけど。いいお家の生まれやったんになぁ――

【アレクセイ・ニコラエヴィチ――理人の名乗った名前の一つ。前の世でと言っていたが、確かに、歴史的価値のある宝石も持っていた】
【その名前がどこの世界の誰を意味するかは余談として――本題は、電話先の相手とのやり取りにある。振られた世間話に軽く頬を緩ませ】

ああ、震えるように素敵な台詞やったなぁ? あんまり鮮明には見れへんかったんやけど――ちゃあんと、聞こえたで? ククッ、
可哀想になぁ、サスペンダー警部だか何だか知らんけど、女房子供も狙われとる言われたら、必死になってそッちらから逃げようとするし

【『鮮明には見れなかった』――情報を得る際に、何か一悶着あったことを匂わせるような台詞だった。勿論、実際はそんな事などない】
【言葉だけから推察すれば「スペンサーが逃げている際に、月彗の部下が情報を奪い取った」――そんな見立てが簡単につくだろうか】
【余談だがこの男は電話が苦手だった。単に機械に不慣れな他、電話越しの声を聞き違えやすい。つまり、警部の名前は本気で言っている】

まあ、安心せえな。あッちが邪魔立てする気はないし――何や久々に、声が聴きたくなっただけやから。……変な意味とちゃうからな?
何や、そやな……泥の街で動いとるんやろ。あすこ、一応あッちら兄弟の故郷やねん。せやからあんまし、壊さんでくれな、って話や
じゃ、話は終わり――兄貴共がホンマにクソやねん、今度あッちと一緒に殺しに行こうや。ほな、またな、カニバディール

【最後に拍子抜けするような理由を告げて、あと不穏な約束を付け足し、電話は切られようとしている。まだ、話があれば繋がるはずだ】
547 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方) [sage]:2017/01/08(日) 02:36:55.32 ID:YtEhJH4mo
>>546
一度会ってみたいものだ。貴方にそこまで言わせるほどの人物ならばな

【いくつもの名前と、こことは違う世界にある故郷と、張り付いた笑顔と、宝石を持つ青年】
【リヒト。彼の人物が抱えるものがなんなのか、それは別の機会に語られるべきものなのだろう】

そう言ってもらえてうれしいよ。連中がカメラを持ち込んでいたとは知らず、即興の脅迫になってしまったがね

ああ、警部とは機関に入る以前に追跡を受けたことがあったものでね、刑事としては出来る男なんだ
これ以上の捜査を受けることは避けたかった故、あのような手段に出たのだが
怖がらせ過ぎてしまったかな……ふ、ふ

【表面上は、穏やかにすら思える。しかし、その裏ではすでに『心臓』の術中にとらわれつつある】
【あの警部から、月彗の部下が映像を強奪した? だとすれば、月彗が今いる組織は?】
【脳裏を疑問符が跳ね回る。自分はこれに対し、どう相対するべきなのか】

【機械類を苦手とする月彗の意外な弱点もまた、この認識を混迷させるのに一役買っていたかもしれない】

……それを聞いて安心した。貴方を敵に回しては命がいくつあっても足りない
そうだな、私も声が聞けて嬉しいよ。変な意味ではなく、な?

そうか、あの街は貴方たちの故郷でもあったか……貴方の頼みとあらば、是非もない
元より、『泥の街』での破壊活動をするつもりはなかったが、今後も控えるようにしておくよ

兄……セシルさんとは一度会ったことがあるな。そちらもご健在か
お誘いとあらば、いつでもお供するよ。――――ああ、それでは

【月彗が別れを告げれば、それ以上の話は続かない。電話は、切られることになるだろう】
【ほんの一瞬の、声だけの再会。ひとまず、それだけに留まることになろうか】

【耳から電話を離し、カニバディールはしばし沈思黙考する。やがて、目を開くと】
【自身の居室へと、側近たちを呼び寄せる。明日の悪事の為。次の邪悪の為の話をするために】

【――――同時に、経った今かかってきた一本の電話について語るために】
【自分でも説明のつかぬ思い、疑念とも言い難い何かを、言葉にして少しでも吐き出すために】
548 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/08(日) 03:03:11.68 ID:9Zk3ajw6o
>>547

【――通話が終わる。画面に映る名前と話した時間を暫し見詰めて何かを考え込んで、端末を懐へ仕舞い込んだ】
【1フロア全てが自宅となった高層ビル上層階の一つ上のフロア、兄・悦那の部屋へと、月彗は足を運んでいた】

「うお、……誰かと思えば珍しいな、お前から来てくれるなんてよ。ほら座れ、今グリーンティーも淹れてやるから――、」

……なあ。そッち、友達っておるんか

「あ? 何だ急に……俺だってそりゃあ、友達の一人や二人位いるさ。仲間だったらもっといるし、何より一番大事なのは――兄弟、だが」

そんなんどうでもええわ、阿呆らし……なあ、それよか諜報の仕事は上手く行っとるんか

「いや、最近紛争地帯で暴れてる奴らが居るって話が入ってきただけでな……大金積んだ依頼でも来れば仕事になるんだが、」

……――そうか。ほな、お休み

「あっ、ちょっ、グリーンティー淹れてるぞ! それにほら、久々に兄弟仲良く語らい合おうぜ、なっ」

チッ……はよ緑茶出しいな、冷める前に飲んで帰るわ

「よっしゃ熱々にしてやるぜ……ところでよ、その紛争地帯で暴れてる奴ら、スクラップズって言うんだが、前に一人戦った奴がいてよ」

……、――

「ジィさんにも掛け合ったんだが、『報酬のある依頼が正式に来ない限りは手を出すな』ってさ……野郎には一矢報いたいんだがなぁ、」

……殺されるで。もう死んどるから構わへんか、

「ん、何か言ったか? ほら、熱々のグリーンティーを一丁お待ちだ」

――熱っ、

【罵声と、宙を舞う茶碗と、ゾンビの悲鳴。そんな喧嘩模様がしばらく繰り広げられて――上の階から、面倒そうにセシルが降りてきた】

『……静かにしてくれないかな。早く済ませて、鈴音の家に帰るのだから』

「おっ、いいところに来たな! この蔦解いてくれ窒息しそうだ、死ぬ!!」

――そういや。そッちによろしくって、アイツが。言うてた

『……、アイツ?』

【首を傾げるセシルと、首を吊られる悦那と、首を振って自室へ戻っていく月彗――依頼された件については、結局口に出せなかった】
【ただ、事態を面白がっている理人が、結局はボス・ツェフゲニーに、報酬のある依頼として影で話を通していたのは、知らないまま――】

/この辺りで失礼します、お疲れ様でした!
549 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方) [sage]:2017/01/08(日) 03:05:04.12 ID:YtEhJH4mo
>>548
/きりがよさそうなので、こちらもここで区切らせていただきたく思います
/ありがとうございました、お疲れさまでした!!
550 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/08(日) 14:02:27.18 ID:9Zk3ajw6o
【酒場】

【路地裏の最奥に位置するその場所は、当然カタギの来れる様な場所ではない】
【ヤクザ、訳有り、手配者、その他諸々――そんな彼らが唯一立場を忘れ、酒を酌み交わせる】
【『深酒と深入りは御法度』――荒れた店内でもよく目立つそんな張り紙が、店のモットーを示していた】

【奥のカウンター席に、目立つ容姿の青年がどかりと腰掛ける。奥から顔を出した老齢のママが青年を確認し】
【「いつものだね?」と言うが早いか、アブサンの支度を始める。頷く隙も無かった青年はまあ間違いでもないので黙って座っていた】

【黒の長髪に黄色のメッシュを入れ、服装は黒い油汚れの目立つ灰色のツナギ。何処か、ガソリンの香が周囲に漂う】
【青年は灰色の目でねばつけるように周囲を見回すも、昼間とあって他の客は薬物を吸って惚けている老人位】
【はあ、と溜息を零したところにグラスと器具が出される。アブサン入りのグラス上、アブサンスプーンに乗せた角砂糖に水が滴下され】
【それを茫洋と見詰めながら、青年は誰へでもなく独りごちた】

……あームカつく、あのモデル気取りのクソアマ様は何だって仕事なさらねえんだ? よっぽど顔出せない事でもやらかしなさったのか?

【汚い口調に混ざる妙な謙譲語。それ以降は、一番旨い頃合いを見計らうように、アブサンのグラスを眺めていた】
551 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/08(日) 14:45:45.95 ID:xum9miV30
【街中――川沿いの住宅街】
【遠く見渡してもしばらくは煉瓦造りの家が連なる通り、下に目をやれば地面までも煉瓦敷きなら、よっぽど煉瓦が好きなのかと勘繰る住区】
【聞こえて来るものといえばどこかで烏が鳴いているくらい、それくらいに静かな場所に――ことん、と、女物の靴がたてるような音が、紛れ込んで】

……もう、なあに? あの地図、全然違ったの……。見間違えたのかなぁ、でも――。

【かつん!と少しだけ強く地面を蹴っ飛ばすような音で足音は一度停止する、川べり――なんとかウォーキングコースとか書かれた看板の前に立ち止まるのは、少女が一人】
【もこもこと着ぶくれしたコートのポケットから――言葉からすれば誰かの描いた地図か何からしい――紙ぺらを取りだして、目の前の簡略化された看板と睨むよに見比べる】

こんな建物描いてないし、ほんとにないし、なんで描いてあるの……?

【――のだけど、ほんの数秒後には大きなため息でうなだれて。取りだした紙をまた丁寧に畳んでポケットへ戻す、うだうだと少し気に食わない素振りの彼女は】
【そのまま近くに設置されていたどこかの廃材で作られたとかいうベンチに座りこんで――、ため息交じりの吐息を漏らしながら、ゆったりと辺りを見渡す、さんざ迷わされた恨みも籠めて】
【だからって何の意味もない視線はそのうち川でのんびり浮かんでいる鴨たちを見つけて止まる、だからまた、あたりは少し静かになって】

【細かく編まれた髪は腰まで届く長さの黒髪、色白の肌は寒さにすっかりと赤くなって、黒と赤で色違いの瞳は、まだぼうっと数羽の鴨を眺めている】
【あたたかそうだけど布地の分厚いワンピースコートは中の服のせいか丸く膨らんでしまっていて、その裾からは思った通りに丸く膨らんだスカートの裾があふれだし】
【厚手のタイツと編み上げのブーツ。肩から下げた鞄はお尻のあたりに追いやられて、ベンチでむぎゅとゆがめられていて】

だけど……ちゃんと着いたし、おひさま暖かいし、もうちょっと日向ぼっこしたら――帰ろう、ね……。

【歩き回っているとよく分からないけれど、じっとしているとよく分かる。冬の柔らかい日差しは、こうしてぼーっとしていると、暖かさがゆっくりと蓄積していくようで】
【実際全体的に黒っぽい色合いの彼女にとってはもっと暖かく感じられるのだろう。独り言の声音もだんだんと柔らかくなっていって、すっかりと冬の暖かさに負けた様子は】
【休日の午後の光景としては花丸がもらえるくらいに平和で――少女が一時期UT関係でテレビに出たりとかしていなければ、もっとずっと平和な図だったのだけど】
552 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/09(月) 03:40:44.67 ID:azMyffAAo
>>550

――俺がいるからなァ? いろんな所で散々に暴れて来たし……、モデルなんぞ紫苑には無理なんだよ。他の女見つけて来い、サボり野郎

【酒場にふらりと現れたのは、派手な格好の若い女性――ただし、口調が、雰囲気が、明らかに女性ではなかった】
【オレンジの長髪に艶やかな毒花を差し、黒地に細かな花柄のワンピースを纏いベージュのケープを羽織った、やや背高な女性の体】
【茶色の瞳はただ目の前の相手――烏丸 享を見据えて薄ら笑っていた。周囲に浮かぶ六つの手が、全て相手を指差していて】

……あ、テメーには初めまして、かァ? 俺は優蛾――永倉 優蛾。テメーのよく知ってるクソアマの別人格、とでも言えば分かるか?

【くつくつと嫌みったらしく嗤う女は、その中身が――人格が、男性であることをはっきりと示していた】
【黒のタイツに白のヒールを履いた足でかつかつと歩み寄れば、相手の隣の席にどかりと座り】
【薄いピンクのバックを乱暴に開けて、煙草を取り出せば浮遊する手が持つジッポで火をつける。深く吸って、長く吐く息は紫煙に溜息を混じらせていた】

/少々ソロル失礼します
553 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/09(月) 03:47:01.12 ID:azMyffAAo
>>552

あァ? 何だテメェ様は、――……紫苑?

【相手の容姿を見て、男の鋭かった目が大きく見開かれる。見知った紫苑の姿はただ髪に差した花と、その人格が全くの別人であった】
【動揺のままに隣に座られれば少し身を引いたのは、未だに幾つかの浮遊する手がこちらを指差していたからだった】
【――もっともそれは、紫苑……優蛾の合図で降ろされ。あとは好き勝手に店内を浮遊して遊び始めた】

別人格……? 頭がおイカれなすったんだかは知らねえが、唐突に言われて信じる訳がお有りになるか? 証拠見せやがれ、バーカ

【戸惑いのまま言う罵声も最後の辺りは全く意味を成していない。姿は確実に紫苑だ、だが明らかに目の前の相手は紫苑じゃない】
【そんな事は分かりきっていた。それでも、まだ俄には信じられない――そんな顔色を隠せないままだった】
554 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/09(月) 03:57:42.88 ID:azMyffAAo
>>553

アッハハ!! 証拠って何だよ、身体は紫苑のままだぜ? 胸でも下でも幾ら眺めようが証拠になんぞならねーよ、バーカ

【罵声を嘲笑うように返してみせる。確かに人格だけの相違であるなら身体が変わっているはずはない】
【ただ、髪に差した艶やかな毒花は――普段、紫苑の差している清楚なユリとは明らかに違っていた】
【そして何より、その態度――少しでも強い言葉を言われようなら黙ってしまうような紫苑とは、確実に異なっていた】

証拠は見せられねえが――こうなった理由なら、教えてやれるぜ? 酒も不味くなる下らねえ話だよ、聞きたいか? まあ勝手に言うけどな
紫苑と俺は元々双子だったのさ。ただ、五歳のときに面倒な事が起こった……事故だがな。紫苑は勝手に自分のせいだと思い込んだ訳だ
永倉 優蛾はその時に死んだ――が、同時に紫苑の中に別人格が産まれた訳だ。そう、俺がな
罪の意識に苛まれた末なんだろうが――そんなモン、俺には関係ねえのさ。当然、紫苑にもな。アレは事故だった

【そこまで語れば、優蛾はふうと一息紫煙を吐く。慣れない女物の服に苛立つように肩を回して】
【それから、唖然とした相手を眺めてニヤニヤと嗤う。紫苑がひた隠しにしてきた、彼女自身の闇】
【それを洗いざらいぶちまけた彼は、煙草を捩じ消して伸びをすれば、「じゃあな」と一言吐き捨てて店を出ていった】
555 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/09(月) 04:03:30.30 ID:azMyffAAo
>>554

――事故、……? ッてオイ、待ちやがれクソア……優蛾ッ!

【唐突な話に呆けていた間に、もう相手は店から姿を消していた。だん、と拳で叩かれたテーブルからアブサンスプーンが転げ落ちる】
【蒸留水がグラスにそのまま滴下されていくのも意識の外、ただ突然に知らされた事実を咀嚼するのに青年は少しばかり時間を要した】

――何だってんだ、クソが……他の奴らは、リーダーは知っておいでやがるのか? クソッ、――

【アブサンはとっくに飲み頃を過ぎていた。残された青年が俯く後ろで、薬物をたんまりと吸った老人が、ふらふら店を出ていった】

/以上になります、失礼しました
556 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2017/01/13(金) 20:29:00.40 ID:O4aXl4Q7o
【路地裏】
【神の子が死んだ不吉な日だろうが、そうでなかろうが。いつだって仄かな血腥さが漂うその場所に】
【微かな音、それでも力強い音が満ちて、冷えたコンクリートに反射されては響き渡っていた】

【かたいもの同士がぶつかり合う音。地面を擦り、強く蹴りつける音。濁音交じりの重たい風切り音】
【解る者が聞けば一瞬で解るだろう、戦闘音だ。どうやら誰かと誰かがやり合っているようで】

――――――あッは! 素敵ねえ、狼さんたら元気な時はこんなに動けるモノだったのね!

【一方。艶のない黒髪をおさげにして垂らし、その上から赤い頭巾を被った少女の姿】
【服装は薄汚れた黒のワンピース、一枚だけ。寒かろうに、靴すら履かない傷だらけの素足を晒し】
【貼り付けられたような笑顔に爛々と輝く黄金の瞳、口元から覗くギザついた歯列が特徴的だ】

「煩いですね。昔のアレは……病み上がりだったんだから仕方ないでしょう、
 どうでもいいですから、そろそろくたばってはもらえませんか、ねっ」

【もう一方。白と紺、清潔で落ち着いた色合いの服装の上から、真黒いケープを纏い】
【長く伸ばした前髪で、右の眼をかたくなに隠している】
【肩甲骨の辺りまで伸びた真白い髪を持つ、線の細い小柄な少女。――一本の刀を、握っている】

【おそらく、黒髪白髪どちらの少女も能力者。この場所にいる以上、当たり前のことなのだろうが】
【戦局はというと、黒の少女のほうが押されているようで、切り傷がいくつか青白い肌の上に散っている】
【対する白の少女は、もう一押しでやれる、そう思ったのか。一歩大きく踏み出して、刀を振りかぶったが――】

……っハハハ! ごめんねえ狼さん、わたしまだ、あなたに食べられるつもりはないの!

【――じゃららららら、りっ。黒の少女のワンピースの袖から伸びた鎖が、建物の壁へ向けて射出され】
【先端にある鋭利な鉤がコンクリートに刺さる。一拍遅れて降ってくる白の斬撃をその身に掠らせながら】
【急速に、鎖を縮める。鎖の先端が突き刺さった先へ飛んでいく、そこから壁を蹴りつけてどんどん上へ】
【それを繰り返して屋上まで辿り着くと、白の少女を一度だけ見下ろしてから、一目散に逃げ出した】

「あっこら、ちょっ……、……逃がしちゃった。夕月さん連れてくればよかったな」

【地上に残された白の少女。舌打ちひとつ、刀を手放せばそれは白く光る粒子となって、消え失せる】
【口惜しそうな表情を残して、その場から立ち去ろうとするだろう。向かう先は表通り、明るい方へ】

【――――建物の群れ、屋上から屋上へ、ひょいひょい飛び移って逃げる黒の少女を追うか】
【はたまた、この場から立ち去ろうとする白の少女を引き留めるか。ふたつの選択肢が、この場所に在った】

//金土日で待機しております
557 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/14(土) 08:53:09.93 ID:QehyTRgfo
【古めかしい喫茶店】

【モーニングの時間帯――ただ、時間が早いせいか客はまだ一人しかいない。新聞を広げた、些かパンキッシュな装いの侍と思しき青年】
【そんな彼には少し似合わないレトロさのある店は、親子三代で続いている由緒正しき純喫茶。カウンターには煙草を吸うマスターと】
【厨房にはその息子。店内は過去の戦争当時の軍刀や戦艦の模型、一昔前に流行った歌とロボットの玩具、最近のトレンドの漫画があった】

――全く、何処にも理人さんの手柄だと書かれていない。全てえる……Elysionの代表が、慈善事業の一環で行った事になっているとは……

【カウンター席の一番奥で苦虫を噛み潰した顔をした青年は、新聞を溜息と共に畳んだ。五十代と思しき店のマスターが肩を竦めて見せる】
【『人の消えた街、過去の惨殺によるものと判明――魔術装飾ブランドElysion代表ジェイムス・W・ツェフゲニー氏により』――そんな表題】

/気付き次第のお返事となりますが、一週間程お待ちしておりますー
558 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方) [sage]:2017/01/14(土) 21:45:43.96 ID:BbVNbW0Ao
>>556
【恐らく、その音は黒の少女と白の少女、両方の耳に届くことだろう】

【すなわち、黒の少女が飛び渡る建物から少し離れた位置にあったビルの一つから】
【凄まじい轟音が響き渡ったのだ。それは、そのビルの屋上の一つ下の階が】
【丸ごと、爆発物で吹き飛ばされたことによるものだった】

【砕け散った窓ガラスが路地裏に降り注ぐ。中にいた者たちの断末魔は、爆音に飲み込まれた】


【直後、そのビルの屋上に現れた人影。身長2メートルを軽く超えているだろう大男だった】
【薄汚れた灰色の作業着の上に黒いラバー地のエプロンを着用し、黒いゴム長靴を履いている】

【短めに切りそろえられた黒髪に角ばった顔つき、黒い瞳の両眼】
【その額には、面積いっぱいを埋める第三の眼球が埋まっていた。人ではありえぬ異形の面相】

【大男は、ぎょろりと三つの視線を建物を飛び渡る黒の少女へと向けた】
【その口がわずかに開き、獣のように鋭く尖った歯と異様に長い舌が覗く】

……今夜はついているな。獲物がもう一つだ

【にたりと醜悪な笑いを浮かべると、大男はエプロンの内側に右手を突っ込み】
【大型の拳銃を引きずり出す。そのまま、黒の少女へ向けて発砲しようとするだろう】

【狙いは正確だが、動作は緩慢。黒の少女に対処の時間はあるはずだ】
【また、もし白の少女が轟音に振り返り、大男の姿を認めていたとするならば】
【大男が白の少女にはまるで気付いていないことがわかるはずだ。彼女が行動を起こすなら、確実に先手を取れるだろう】

/もし可能でしたら、よろしければお願いします
559 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2017/01/14(土) 22:13:09.67 ID:txC4vbwGo
>>558

――――――ッ!?

【先に気付いたのは上にいる、黒の少女だった】
【轟音の、いちばん大きく響き渡るときより少し手前。膨らんでいく予兆の音を、鋭敏に感じ取って】
【頭巾の上からぎゅうっと――頭全体を抱え込んで、立ち止まった。直後、おおきな爆発】

【反射的に瞑った目をすぐに開くと、ばちっと強く一回瞬き】
【ぎらつく金の瞳をいっぱいに開きながら、異常事態の発生源を探るように視線を走らせる】
【もうもうと立ち上る煙やら何やらの中から、大男の姿を見つけると――】

――……あァはっ♪ 今度の狼さんは、とっても大きいの、ね!

【ぎちり。ギザついた歯列を噛みしめるようにして笑う。どうやら此方も、大男を「獲物」として認識したらしい】
【そこから行動に移るまでは、早かった。姿勢を低く、まるで四つ足の獣がそうするように】
【クラウチングスタートにも似た準備動作。地に着けた掌、そのうち一方を大きく振るった】

【振るわれればひらりと舞う、戦場に似つかわしくない形状の、愛らしく広がった姫袖。その内側から】
【そう太くはない、赤黒い「鎖」が射出される。その先端には、獣の爪や牙に似た、鋭利な鉤】
【大男の、銃を握る手に喰らい付かんばかりに。唸り声にも似た風切り音を立てながら、一直線に走っていく】


「な、――――ッ、何っ!? きゃああっ……」

【一方、地上を歩いていた白の少女。気が付いたのは轟音が起こってから。足を竦ませ、頭を抱えて蹲る】
【ガラスの破片の雨嵐が落ち着くまでそうしてから――黒の少女と同じように、原因を探して周囲を見渡す】
【屋上にいる男の姿には気づかない。けれど爆発が起こったビルの位置は分かったようで――そちらへ、駆け出した】

//わーお願いします、夕食とか入浴を挟んでしまいますが……!
560 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/14(土) 22:14:06.41 ID:9edtkaCk0
【街はずれ――人気のない川べり】
【遠くに宝石箱をひっくり返したような夜景が見えても届かないこの場所、照らすのは満月からわずかに欠けた月明かりだけで】
【もう何十年とあるような古くて小さな橋の上、よくよく目立つ白色はぼんやりと人の形を成して――遠目には櫻にありがちな幽霊のように見えた】

…………、――。

【けれど寄れば気づくだろう。ひどく背高の男――性別のわりに長く伸ばした髪は尻まで届くほどで。ごくわずかに青みのある白髪、ひどく地味な櫻の和服と】
【姿かたちが分かったところで髪はもちろん透き通るような肌もやっぱり幽霊かと見紛う白さの、男だった。唯一瞳だけが血のように鮮やかに赤くて、よく目立ち】
【それでも多分それが幽霊でないという証拠が一つだけあって。――その手にぎゅっと握られているもの、それが、最寄りのコンビニエンスストアの買い物袋だったから】
【まさか幽霊がそんな場所で何かを買うとは思えないなら、いちおう……彼がどうやら生きているらしいと、そう、分かる】

【ぼそりぼそりとした声が漏れていた。だけど聞き取るのはできないくらいに声は低くて、囁くようなしゃべりをする。夜色に澄んだ川を見降ろして話すのも、不気味だったけど】
【もしかしたら現実はそれよりもうちょっと不気味で、なぜなら、欄干の上には大きな――鷲のように大きな鳥がちょんと澄まして留まって、彼はどうやらそれに話しているらしく】
【夜の中でも鮮やかすぎるくらいに鮮やかな紫色はあるいは真っ白な彼と同じくらいよく目立つ色彩で】

……はあ、

【そのうちピィとも鳴かない鳥に飽いたような素振りの男は欄干――まだ留まったままの鳥の隣――に体重を預けるように寄り掛かれば】
【長い髪を夜風に任せたまま、なんとも神妙な顔で地面を見つめる――少し強い風が吹き抜けて散らばった彼の真っ白な髪は、また、新手の妖怪のように遠くからは見えて】
561 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方) [sage]:2017/01/14(土) 22:48:59.46 ID:BbVNbW0A0
>>559
【大男が見ることはなかったが、黒の少女のあまりに鋭敏な感覚】
【路地裏を戦場にするような人種なら当然か。その黄金の瞳に滲むのは悪意か狂気か】

【お互いにぎらつく瞳から送られる視線の応酬】
【路地裏の汚れた空気の中に火花が散る。二匹の獣の狂った邂逅】

ふ、ふ。私が狼さんときたか。その格好といい、童話の主人公が迷い出て来たか?
どうやら、物語で見たよりも凶暴なようだがな

【語る間も、3つの視線を逸らさなかったことが功を奏した。鈍重な大男の身では、その容赦ない一撃を】
【即座に繰り出された鉤の一撃を、到底躱しきれない。もし、舐めてかかっていれば】
【最初の時点で、勝敗は決していただろう】

うぐっ……!!!
ふ、ふ……どちらが狼だと言うのだ、イカれた赤ずきんめ……!!

【そう、大男はその一撃を凌いだ。銃を握っていた腕が、気味の悪い音を立てて膨れ上がり】
【巨大な肉塊となって、鉤を受けたのだ。肉に鋭利な先端が刺さり、鮮血が散るが】
【その量は思いの外少ない。膨れた肉が盾となって、骨や血管へのダメージを軽減したのだ】

【しかし、その衝撃で銃は取り落とす。初手は黒の少女の優勢だ】


この距離ではやり辛いな。こちらに移って来ないかね?

【言いながら大男は、己の膨らんだ腕に刺さった鎖鉤を掴み、力任せに引こうとするだろう】
【少女を自分のいるビルの屋上にまで引き摺り込もうというつもりらしい】

【白の少女には、やはり気づかない。その巨躯は目立つ。白の少女が音源に駆けつければ、恐らくはその存在に気がつくはずだ】

/すみません、いきなりスマホに移行しました……
/大丈夫です、お時間の許す限りお願いします!
562 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2017/01/14(土) 23:09:40.88 ID:txC4vbwGo
>>561

狼さんは狼さんよ――わたしのこと、食べようとするなら誰だって!

【鉤が引っかかった感覚。もらった、と内心笑んだのも一瞬のこと】
【喰らい付いた先の肉が盛り上がり、人間のものにはありえない形状へと変化していく様】
【目を見開いて、ぶるりと肌を粟立たせる。率直に言ってしまえば、気味が悪い、と】

…………る、ぅううう、ア゛ああッ!!

【次の瞬間、男が鎖を引っ張ろうとするのが見えた。ならば話が早いと言わんばかりに】
【低い姿勢から、一気に地を蹴りつけて。此方からも男の方へ飛び込もうと、前進した】

【男が鎖を引く勢いと、自ら前へ飛び出す勢い。双方が重なれば、それなりの勢いになるか】
【それを使って、男に肉薄することが叶ったなら――中空で大きく背を反らしてから】
【勢いよく、男の頭に頭突きをかまそうとするだろう。ただしそれは、あんまりにも雑な体の動かし方で】
【地に足もついていないから、安定もしていない。男が鎖を下に引っ張ろうものなら、容易に地面に打ち付けられるだろう】


「……ここは、あの子が逃げていった先、のはず……っ!?」

【爆発でぼろぼろになった建物内に入り、階段を一気に駆け上っていく白の少女】
【やがて屋上へと繋がる扉が開いていることに気付いたなら、荒々しくもその向こうへ足を踏み入れる】
【立ち止まれば息が切れる。荒い深呼吸を繰り返しながら――異形の男の背を見、灰青の瞳を見開いた】

「なっ、なに――――あなた、誰!? っ、あの子も……!」

【見知らぬ男と黒の少女が、戦っている。その事実を呑み込んで、驚愕に眉根を寄せる】

//oh、了解しました。。。さっそくご飯食べてきましたー
563 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方) [sage]:2017/01/14(土) 23:31:45.31 ID:BbVNbW0A0
>>562
ハハ、ハハハ!! なるほど、お前に取っては敵は全て狼さんか
だが、私のように文字通りの意味でお前を食い殺そうとする狼は今までにいたか?

【醜悪な笑いを顔いっぱいに浮かべる大男、食人鬼の食欲が表情に滲み出る】
【黒の少女ですら悍ましさに鳥肌を立てる異形は、その精神にまで及んでいるようだ】


真正面から来るか!! 上等だ!!!

【黒の少女が、こちらの言葉通りに飛び込んでくる姿勢を見せれば、大男もその巨体で身構える】
【その跳躍の有様はまさに獣。赤ずきんの姿に狼の獣性を秘めた存在というべきか】

【牽引と跳躍、二重の力が黒の少女を弾丸と化す。肉薄は難なく成るだろう】
【確かに黒の少女の身体制御は粗雑だが、それは大男も同じこと。この男はただの犯罪者であり、戦士ではない】

【鎖を引くより早く、少女はこちらに到達する。そう状況判断を下した大男は】
【不安定ながら確実にこちらの頭部を捉えるだろう頭突きに応える形で、自身も頭部を反らし勢いをつけて】
【黒の少女に頭突きを返そうとする。パチキとパチキの正面衝突】

【当然、より勢いのついた黒の少女の頭突きの方が威力は高い。「ぐお……!!」という苦鳴と共に】
【大男は頭突きのダメージを受けてわずかに後ずさる。額の眼球は閉じられ、その上を破れた額からの血が流れていく】


む……?

【そこへ、更なる来客。大男はようやく、白の少女の存在に気付くことになる】

【振り向いた大男の両眼が、灰青の瞳とかち合うこととなるだろうか】
【白の少女が指名手配書に目を通していたなら、その男の顔と名前に見覚えがあるこもしれない】

……そちらこそ、誰だね? あの爆発を聞いて、逃げるどころか単身で乗り込んで来るとは
私は大したものじゃあない、カニバディールというゴロツキだ。カノッサ機関にも籍はあるがね

今夜はあの赤ずきんを獲物に決めた、今すぐ失せればお前には危害は加えないぞ?

【饒舌に言葉を並べると、大男は再び黒の少女に向き直る。しかし、内心では下手をすれば二対一というこの状況に焦りを抱き】
【意識はしっかりと白の少女と黒の少女、両方に割いていた】

/どうもすみません、改めてお願いします!
564 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2017/01/14(土) 23:54:12.88 ID:txC4vbwGo
>>563

ふふ、そうねえ、本当の意味でお肉を食べようとする人は確かに初めてかも。
……でもわたし、もっともっと色んなもの――色んなところを色んな人に齧られてきたの、痛かったんだもの!

【だから此方から狩ったっていいでしょう。そんな子供じみた、幼稚なやり返し】
【鈍くて重たい音が、頭蓋の向こう側へ響き渡った。頭突き同士がきれいに噛み合って】
【ようやく地に着いた素足がふらふらと、何歩かたたらを踏んだ】

【打ち付けた額から、鮮血が流れ落ちる。いくらダメージを与えられたところで、使った武器は子供の頭】
【耐久性においてはきっと、大男の何倍でも劣るのだ。ぐらぐらと頭ごと、脳を揺らして】
【安定しないまま澱んでいく視界、それでも瞳はぎらぎら光らせる。流れ落ちる血を、ぺろりと舐めて】


「っ、カノッサ……だろうが何だろうが、あなたが悪者であることに変わりはなさそうですね。
私は、――私は白坂佳月。<Justice>が末席、そんな身分です……!」

【白の少女は、男の所属を聞くなり眉間の皺を濃ゆくして――そう名乗った、嘗てこの世界に在った正義組織の名を】
【そう語った時点で、失せろと告げる男の言にはきっと従わない。けれど焦っている様子は、この少女にもある】
【何せ、男が対峙している黒の少女とは、先程まで遣り合っていた仲だ。共闘などできる気は、さらさらない】

【「あら、あなたも来たの、白い狼さん」。張り詰めた空気に似合わない黒の少女の明るい声が、響き渡った】

//すみません、お風呂入ってきます! 眠気など来られましたら遠慮なく落ちられててくださいねっ
565 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方) [sage]:2017/01/15(日) 00:16:58.12 ID:KKW+P9j/o
>>564
ほう、その歳でずいぶんと修羅場を潜ってきたらしいな
それとも見た目と実年齢が一致しないタイプかね? この世界には、そんな輩はいくらえも溢れているからな

ならば、その数多くの苦痛の中に、私の牙も加えてもらうとしようか……

【子供じみた、されど歴戦を思わせる返答に、大男の笑みはまずます深まる】
【黒の少女がたたらを踏む間、大男もまた衝撃にふらつく頭を軽く振りつつ、体勢を立て直さんとする】

【額の血を無造作に拭うと、第三の眼球をかっと見開く】
【黒の少女と同じく、その目は未だいささかも光を失ってはいなかった】


――――<Justice>。そうか……お前は<Justice>の者か
ならば、一人でこの場に来たのも納得がいく

谷山 基樹。貴宝院 織守。シオン・エルミオール・オルテンシア
この三人……特に谷山と貴宝院には、死ぬ寸前まで追い詰められたことがある

識槻 朔夜は、私の仲間の双子を叩き斬ってくれた……
我々に幾度も煮え湯を飲ませたあのジンジャー・ユースロットも、お前たちの関係者だったか?

<Justice>。今なお、忌々しい名だ……。気が変わった。お前も獲物とさせてもらおう

【白の少女がその所属を告げれば、大男の口から次々に漏れだす人名。かつての彼女の同志たちの名】
【大男にとっては、そのどれもが忌み名。自分に、配下に、機関に対し続けて来た者たちの名】
【彼女がそれを明かした時点で、大男は前言を翻す。悪意に滾る三つ目は、同時に冷徹な理性も宿す】


白い狼……なるほど、お前たちも敵同士というわけか。面白くなってきたな……!!
ならば、赤ずきんと悪党と正義の味方とで、三つ巴の殺し合いと洒落込もうじゃあないかね……!!!

【言うが早いか、大男は作業服の袖をまくり上げ、太い両腕を露出させる】
【すると、両腕がまたも異音と共に膨張し、巨大な肉の塊となって白と黒の少女へと真正面から突っ込んでいく】

【膨張によって伸ばした腕による、単純極まる打撃攻撃。速度は早くはない。だが、その質量は圧倒的だ】
【まともに喰らえば、かなりの衝撃を少女たちの身に浴びせるだろう】

/パソコンに戻りました
/了解しました! もう少し大丈夫です!!
566 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/15(日) 00:38:21.96 ID:/49CHvsUo
>>560

……珍しい、ですね。いつもは、家に篭っていた貴方が、

【古めかしい橋を歩き、相手と少し距離を置いた場所で立ち止まる男は、きっと会いたくなかったであろう人物】
【紅茶色の長髪、左右で瞳孔の開き幅が大きく異なる瞳、相手ほどではないにせよ背高な白皙――セシル・シュトラウス】
【掛ける声は僅かに戸惑いを含んでいた。姿を見つけたのは偶然だが、近寄って行ったのは、自分の意思だった】

それで――そちらは、見覚えのある色だけれど。私の知っている何か、かな

【視線の先は紫色の大きな鳥へ。まだ、白い相手とは上手く話を切り出せずにいた。もっとも、何の話かと言っても】
【特に内容は決まっていなくて――ただ、家の中でも会話一つ出来ずにいた、それだけが気掛かりだったこと】
567 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2017/01/15(日) 00:48:29.95 ID:M00MIY+H0
>>565

【並べ立てられていく同士の名前。あまり交流の幅が広いとは言えない白の少女にとって、聞いたことがある程度の人々】
【けれども、彼らと対峙してもこの男は死なずにここに生きているという事実には、苦い顔をするしかなかった】
【きっと、なんて言葉を付けなくても。十分すぎるほどに、この男は脅威なのだということ。それだけが、はっきりよく分かる】

【理解したならその後の行動はひとつだけ。武器を手に取ること、それだけだ】
【白の少女は自分の下腹部に手を置いて――ずるり。まるで手品のように、そこから一本の刀を引き出した】
【剥き身の刃に追従するように、十枚の剃刀のような薄い刃がちらほらと。花弁のように舞って、少女の前に構えられる】

きゃは、――――――ァ!! すごぉい、おっきい!

「………………ッ!!」

【伸ばされる、圧倒的な質量の肉の攻撃。黒の少女は、それを見て目を輝かせ――地を蹴って、大きく跳躍した】
【およそ人間の脚力では成し遂げ得ない運動。おそらく亜人の類であるのだろう、そんなヒントを与えてから】
【跳んだ先、中空からまた、先程男へ鎖を放った腕とは逆の腕から鎖を伸ばす。男と白の少女、どちらも巻き込むように、大きく横薙ぎに振るう】

【一方の白の少女は、細い体躯に似合った力しか持ってはいないのだろう。男の攻撃に対して横に跳び、必死に逃げたが】
【続いて飛来する黒の少女の鎖には、対応が遅れる。苦し紛れに刀で受けるが、その刀身に鎖が巻きついてしまうという結果に終わり】
【我武者羅に刀を振って、それを解こうとするだけだ。明確な隙を晒して、それだけだった】

//お待たせしましたー……!
568 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/15(日) 01:03:17.59 ID:l534Ab7R0
>>566

【家にこもっていた――というのは、間違えていないけれど、間違いでもあった。もっと言えば彼は家の中でもごく狭い範囲でしか活動しない】
【かと思えば早朝、"あの少女"が帰ってくる頃になると気づけば廊下をうろついていたりして、何というか――どうやら、ものすごく、人見知りらしいもの】
【会いたくないということもないのだけど。声を掛けられればまるでのっぺらぼうの化け物からスプーンでえぐって目をこさえたように赤い、あの娘と同じ色の瞳が】
【ゆったりと流すようにそちらを向いて、あいまいな首の角度が、長い前髪をぞろりと揺らして】

…………買いだしに、来た。菓子があると喜ぶ。

【ゆらりとした仕草で立ちあがる白さはおとずれた彼よりいくらも大きい。人の身体など不慣れなような……和装に合わせた足元、足音をかたんっと立てて、一つ、二つ、距離を詰め】
【コンビニの袋を持ちあげながら言う声はひどく低くて囁くようだから静かな夜の中でも聞き取りづらい。あの少女とは全く逆の、でも、どこか似るのは】
【たぶん筋肉なんてないんだろうと思うほどの無表情だのに、どこか嬉しそうにも見えて――それで、その様子が、あの少女の"嬉しそう"をうんと希釈した色をしていたから】

サプライズだ。

【昼間、こたつに潜りながら聞いていた昼間のテレビ番組で言っていた言葉を思いだす。女はそういう、なんか、急に何かを渡されるのが嬉しいらしい……という程度の思考回路】
【差し出して見せた袋の中には確かにいろんな菓子が詰まっている、――とりあえず彼はそういうわけで、お菓子を買いに外に出たらしい。それで、紫色の鳥は――】

【初めてそこでちいちいと囀りだす、それがまるで笑うみたいで――と思う間もない。ざああと術式のばらける燐光が散って、瞬きするだけの時間も必要ない】
【次の刹那に鳥と全く同じ場所に腰かけているのは"あの"紫色の少女で、くすくす、くす、小さく笑えば】

「ボクはお守りだよ、ほら、変温動物だから、彼」

【だなんて言っている、言われている真っ白な本人(あるいは本蛇)は、まっさらな表情で紫色の少女を眺めて――、それから眼前の彼へ視線を移ろわせる】
【何かを訴えているように見えなくはないけれど、かといって、何かの意味をくみ取れるほど豊かな感情が込められているわけでもない。だから、ただの、視線だった】
569 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方) [sage]:2017/01/15(日) 01:08:22.99 ID:KKW+P9j/o
>>567
ほう、お前自身が鞘と言ったところか? 愉快な芸を持っているな……
私の敵の一人にも似たような能力を持った者がいるが、その男を思い出すよ

【戦いの最中も口が閉じることはない。大男にとっては、言葉も戦術の一つなのだ】
【花弁のような薄い刃、美しい刀身。最大限の警戒は、己のうちに沈めて】


大した身体能力だ。亜人か? 魔海辺りの出身かね?

【続いて黒の少女に語り掛けつつ、その鎖の動きを目で追う。攻撃範囲。速度。これも避けきれない】
【大男はその全身で鎖を受ける。衝撃に巨躯が軋む。呻きは嚙み殺した】
【しかしダメージは殺しきれず。痛みに表情を歪めながら、大男は黒の少女を睨んだ】

【精密な制御を必要とする大男の肉体操作は、多大な集中力をその身に強いる。ゆえに、移動は行われない】
【まずは、黒の少女へ放っていた腕を引き戻す。続いて、空中の黒の少女へと向かって】
【己の首を『伸ばす』。三つ目の男のろくろ首。肉体操作が可能とする、さらなる異形への変化】

【そのまま大男の頭部は黒の少女へと一直線に向かい、鎖を放った腕へと鋭い歯で噛み付きを試みる】
【速度は先ほどの腕より格段に速い。が、首だけの分、質量は落ちる。迎撃や噛まれてからの振り払いは問題なく行えるはずだ】


【一方で白の少女の隙も同時に突こうとするのは、盗賊たるこの大男の強欲ゆえか】
【白の少女へ伸ばしていた方の腕を引きずるようにして動かし、白の少女の足元を薙ぎ払おうとする】

【肉塊の下段攻撃はしかし、黒の少女への攻撃と先ほどの鎖のダメージによって、かなり雑なものだ】
【白の少女が対処できるかは、黒の少女の鎖を振り払えるかどうかで決まるだろうか】
570 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/15(日) 01:19:09.65 ID:/49CHvsUo
>>568

買い出し……、サプライズ。成る程……?

【確かにあの子は喜ぶだろう。ただ、相当のサプライズなのではないかとも思い至る。彼が、買い出しに出たことをまず心配しそうな】
【それから鳥の囀りに視線を向けたが先か――そこに居たのは何となくは予想していた相手だった。仲がいいのだろうか、とも思ったが】
【先日のあの雰囲気と、乱れた服を直していた様子を回想する。あまり踏み込むのも得策ではないか、と愛想のように薄く笑って見せた】

……今日は、冷えるからね。変温動物なら堪えるだろうけれど――大切なんですね、あの子が

【語尾が少しばかり低くなる、別に眼前の相手とあの子がどういう仲であれ、詮索するつもりはなかった筈だのに】
【ただの視線を向けられれば、機嫌を取るような作った笑みを返した。あの子がご先祖様と慕うのは知っていたが】
【相手があの子をどう見ているのか――自分の代わりをしていたと聴いたときから、心の何処かに引っ掛かっていた】
571 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2017/01/15(日) 01:24:39.68 ID:M00MIY+Ho
>>569

マカイ、……さあ、どうだったかしら。
森の奥の小さなおうちに住んでたのよ、うふふっ!

【冗談なんだか本当なんだか判断に困る、黒の少女の軽い口調】
【中空に留まっているのなら、どこかに動いて逃げるなんて、当然ながら出来やしない】
【男の顎は、きれいに少女の肌へ突き立てられるだろう。肉付きの悪い皮と骨だけの粗末な肉体】
【ん、と痛みに顔を顰めたが――すぐに笑みの形に、作りなおして】

ふふふふ! 狼さんたら狼さん――どうしてそんな、不思議な体をしているの?

【じくじく血を滲ませる傷口もそのままに、食い千切られることを恐れてもいないのか】
【振り払いも、迎撃もしなかった。それでも不敵に、にやりと口の端を吊り上げて】

「愉快な芸っていうなら、あなたには負けますよ……っえ、わ、うわわわわ!?」

【一方、白の少女。意外と負けず嫌いなようで、売り言葉に買い言葉で返しながら】
【鎖を解こうと、ついには手まで使って鎖に悪戦苦闘していたが―― 「ぐいっ」】
【――黒の少女が思いっきり鎖を縮めて、白の少女を引っ張り上げた】

【死んでも刀は離さないようにと堅く柄を握っていた手が、軽い身体全体が引っ張られて】
【白い少女の身体を屋上に残った男の身体にぶつけるように、鎖ごと振り回された】
【足を払う腕の範囲から逃れられはしたが、このまま男の身体にぶつけられれば、ダメージは免れないだろう】
572 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/15(日) 01:36:04.76 ID:l534Ab7R0
>>570

――、――。

【ぼそぼそ、とした声が聞こえた。けれどそれは声であるというのがかろうじて分かる程度の不明瞭なつぶやきで、だから、何を言っているのかまでは、分からない】
【もしも彼の耳がとってもよくってそれを拾えたとしても――「少しでも」と、それくらいしか、聞き取れない。しゃべるのがそもそも下手という様子だった、内容云々ではなく】
【声を出すこと自体あんまりというような様子。だけれど紫色が「そうだねえ」だなんて軽口で相槌を打つのだ。気づけばふらりと欄干の上に器用に立ち上がった彼女は】

「君が居るなら、ボク、もういいかな。あとは任せても?」

【あるいは彼のよく身に着ける魔術師めいた服にも似た服装、それの裾をふわりと揺らして、にこり、と、愛想のいいように笑うのだろう】
【嫌だと言うのなら居残ってくれるような余地が言葉の端にはあって――欄干の上に立っているのにそう高いように思えないくらいの小柄さは、白い彼とは大きく身長差があるのに】
【立場は全く逆にように思えた、というよりも、きっとそうなのだろう。……前回の言葉だってあって、それが思いだせるのなら】

当たり前だ。

【向けたのはただの視線のはずだった。けれど彼の作った笑みに、下がる語尾、そして、その言葉の内容。聞けば、その目はわずかに鋭さを持ったように見え】
【だからといって長続きはしない。だから彼に怒ったわけではなくて、彼の言葉で、自分の中にある気持ちが、少し動いたのだろう。思うところがあった、ような――感じ】

…………子供たちの子供だ、……何人目かは……知らないが……、人間はすぐ死ぬ。

【ふらり、ふらりと、また距離を詰める。やがて眼前の彼が視線をしっかりと上に向けなければ彼の瞳の赤が見えなくなるくらいの距離になれば、】
【ようやくぶつからないように最低限だけ移動方向をずらして、また歩く――すれ違いざまに、「帰るぞ」とだけ言うから、つまり、そういう意図だったのだろう】
【橋の欄干で変わらず笑っている少女はころころ笑いながらその様子を眺めている、「やっぱり居ようかなぁ」だなんて言葉は、面白がっていないと出てこないもの】
【とにかく――彼が言えば無理に居残るでもない紫色は、さておいて。真っ白い彼はすっかりと帰るつもりのようで、ふらふらと歩いている――止まれといえば、きっと、止まるけど】

【――家に、あの少女は居ない。いつもの通りだ、仕事に出ている。だから……何かを話すにしても、こんな寒いところでわざわざやる理由なんて、きっと、ないのだった】
573 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方) [sage]:2017/01/15(日) 01:39:30.52 ID:KKW+P9j/o
>>571
洒落た家に住んでいたのだな! それがこんなところに出て来ているとは、狼に家を追われでもしたか!?

【黒の少女の掴みどころのない言葉に、食らいつくように会話の応酬をしつつ】
【その肉へと牙を立てれば、感じ取れる味に隠し切れない喜悦を浮かべる】

味は悪くない……むしろ美味の部類だ。が、あまり健康な肉の歯ごたえではないな
きちんと食事をとっているのか?

【意趣返しとばかりにふざけた言葉を投げかける大男の表情は、次の瞬間にはまたも苦痛と衝撃に歪むこととなる】

ハハハ!! この身体は生まれつきだ、自分でも不思議だよ何故だろうな!?

く、ふふ、確かにそうだ!! 私に愉快と言われるのは面白くないだろう――――ぐがぁ!!?

【白の少女にも言葉を吐きつけた直後、黒の少女の不敵な笑みの意味を知る】
【華奢な身体をそのまま鎖の一部とされてしまった白の少女の身体は、見事に大男の巨体を捉えた】

【さらには、白の少女が頑なに握りしめていた刀、その抜き身の刃が衝突と共に】
【大男の背を深く切り裂いた。悪党の汚らわしい鮮血が屋上に滴り落ちる】

【鎖の衝撃と刀傷の痛みで完全にバランスを崩した大男は無様に転倒することになるだろう】


う、ぐおお……貴様も、落ちてこい!!!

【だがそれと同時に、ただでは転ばぬとばかりに黒の少女の鎖をまたも掴もうとする】
【成功すれば、店頭の勢いのままに鎖を引き、今度こそ黒の少女を屋上にたたきつけようとするだろう】

【成否にかかわらず、大男は倒れ伏す。白の少女へのアクションは、当然取れない】
【二人の少女の前に、異形は大きな隙を晒すことになるはずだ】
574 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方) [sage]:2017/01/15(日) 01:42:55.57 ID:KKW+P9j/o
>>573
/すみません、カゲツさんがせっかく刀をお持ちなので、ダメージ追加してみたのですが
/もしまずいようでしたら、おっしゃっていただければありがたいです……
575 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/15(日) 01:51:12.13 ID:/49CHvsUo
>>572

……、? あ、いや、出来れば……ちょっと。少しだけ、

【今にも帰りそうな紫色の彼女を酷く慌てたように呼び止める様が滑稽だった。今、二人きりにされるのは辛い】
【――誰かを見上げるのは、滅多にないことだ。それが今目の前にあって、慣れない感覚から唾を飲んだ】

御先祖……でしたね、貴方は。人間はすぐ死ぬ、それなら――あの子の両親も、もう居ないのですか

【初めて会った時――お父さん、と呼び掛けられた声が今でも耳に残っている。有り得ないと分かって賭けたような、その声が】
【あの子から両親の話を聞いたことがなかった。自分もつい最近まで両親と会えないまま三十年も経っていたのだが、】
【それとは少し違うような――本当に話にも聞かないなら、存在していたのかさえ疑問に思っていたが】

……分かりました、帰ってからでも。聞かせて下さいね

【帰途につく相手を追って、ふと欄干の少女を振り返る。相手もついてくるだろうか――何となく、いて欲しい気持ちが透けていた】
576 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/15(日) 02:00:57.69 ID:/49CHvsUo
/>>572
/申し訳ないです、眠気が……一旦落ちます
/明日なら朝からお返し出来るかな、と
577 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/15(日) 02:04:24.09 ID:l534Ab7R0
>>575

【うんと長い髪、前髪もぞろぞろと長いのを無造作に流しているさまは、多分、そう見てくれのいいものではない。けれど彼になら、生きていないような彼であるなら】
【それはどこかそういうものとして似合っているようにも見えた。爛と赤い瞳はあの少女の片目と同じ色、それ以上に、どこかが似通う色。瞳の奥底までが、似ているようで】

……もう居ない、八つの時に死んだんだ、

【ぴたり、と、その足取りが、止まった。彼の言葉に反応してだろうか、少し先へと歩いていた足がすっかりと止まって、数秒ほども遅れて、彼へ振り返る】
【温度のない赤い瞳がじっと彼を見つめた、あるいはぼうっとしているようにも、何か、強い感情が内にあるようにも、見えて。けれど何も言わないままで、また、振り向き】
【ゆっくりと歩きだす。それにしたってこんな歩みの速度でどこか買い物に行ったのだろうかと思うほどにゆっくりだった。景色を楽しむ……にも、遅いくらい】

「仕方がないなぁ」

【何を聞かせるだとかは、約束しなかった。言葉が少ないだけなのか、それとも、言いたくないことがあるのか、黙ったままの彼は、ふらりふらりと歩いて】
【振り返られた少女がひどく愉快そうな声で言ってその後ろをまたついてくる、――真っ白の彼とは五十三も違う、紅茶色の彼とも、四十一も違う】
【彼らよりうんと低い位置に頭があるものだから見ないと居るかどうかわからないんじゃないかってくらい、――それに彼女には、おおよそ、気配のようなものが薄かった】
【一度意識してしまえば二度と意識を逸らせないほどだのに、気づくまではまるで存在しないかのよう。それでも、】

「君は歩くのが遅いね、地面を這ったらどう」

【だなんて軽口を言っているからあんまり忘れはしないだろう、――家まではそう遠くない。遠くないけど、こんなに遅いやつが先頭だと、うんと時間がかかりそうで】
【何か彼の方から話すことがあれば、白も紫も、その言葉を遮りはしないだろう。しいんとした夜の道はそれだけで幽霊が出そうだったけど、何なら幽霊よりも、たちが悪かった】
578 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2017/01/15(日) 02:05:14.63 ID:M00MIY+Ho
>>573

そうねえ、狼さん……ひどいもの、わたしのこと一飲みにしてくらあいお腹の中に閉じ込めて……。
でももう大丈夫よ、猟師さまが居なくてもわたし、ひとりでお外に行けるもの!

【けたけた。噛み付かれた痛みに、脂汗を流しながらも笑って】
【「ごはんなら、適当にやっているから大丈夫よ」。世間話でもするような気軽さで、言葉を紡ぐ】
【振り回した白の少女が狙い通り、否それ以上の収穫を得て男にダメージを与えたのだと理解すれば、また嬉しそうに笑うのだった】

「いっ、た……っ! くっそ、好き放題やってくれます、ねっ……」

【男の巨体に力いっぱい打ち付けられた白の少女は、けほと咳き込みながら】
【それでも、肌にかかる男の血によって、刃が上手いこと当たってくれたことを知る】

【「言い忘れてましたけど、もうひとつ愉快なこと。その刃、触らないほうがいいですよ、って」】
【――そんな、遅すぎる忠告が付け加えられた。直後、男の身体に異変が起こる、かもしれない】

【少女の操る刀、剃刀大の小さな刃。それらには微量の、毒が仕込まれていて】
【耐性を持たない限り、切りつけられるたびに眩暈や吐き気などの不快感を蓄積させていく。そんな特性を持っていた】
【今はまだ、些細な違和感。けれどこのまま戦闘を続けていくのなら、無視するにはすこし厄介だろう】

……ッ、ぎゃうッ!!

【その直後、黒の少女は男の目論見通り、コンクリートの地面に叩き付けられることとなる】
【ばん、だかどん、だか判別の付かない鈍い音。少女の薄い腹が打ち付けられて、血色の悪い唇から血が溢れ出る】

【黒の少女も男も、等しくダメージを受けたのを見届けた少女。好機とばかりになんとか立ち上がり、今度こそ鎖を解いて】
【まずは、倒れ伏した男の元へ。駆け寄って、叶うのならば刃を首筋に、添えようとする】
【まだとどめを刺す気はない。毒の刃の一撃を喰らったならば、動きも聊か鈍るだろうと考えてのことだった】

//刀大丈夫ですよー拾ってくれてありがとうございます……!
579 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/15(日) 02:05:58.78 ID:l534Ab7R0
>>576
/了解しました、明日は遅くても昼前後くらいには手が空くと思うので、それまでにレスいただければすぐに返せるかと思います
/ひとまずお疲れさまでしたー
580 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方) [sage]:2017/01/15(日) 02:26:11.39 ID:KKW+P9j/o
>>578
ハ、ハ……お前なら自分で狼の腹を中から切り裂いて這い出すくらいのことはやってのけそうだがな!!
猟師の助けがない赤ずきんが、これほど恐ろしいものだとは知らなかったよ

【ダメージは確実に通っている。だが、彼女はまだ笑うのだ】
【「適当は良くないぞ、食は全ての命の根幹だ」などとこの状況で真面目ぶって言ってみたが】
【ある意味では、黒と白の二人の少女の連携とも取れる一撃に沈む大男に、それ以上黒の少女の笑みを見ることは叶わず】

何……!? これは……毒、か――――!!
ああ全く、愉快なことこの上ないな……!!

(まずい……あの刀に斬られるたびに、加速度的に不利になっていくことになる……!!!)

【違和感。わずかな、だが殺し合いにおいては致命的な違和感】
【大男は異形ではあるが、基本的な構造は人の延長線上にある。当然、毒への耐性などほぼないに等しい】
【ただでさえ、多大な集中を必要とする大男の能力にとって、あまりに相性の悪い攻撃であった】


……く、はは……!! やっと悲鳴を上げてくれたな、赤ずきん……!!

【それでもなお、口は減らない。黒の少女が落ちた手ごたえを、鎖越しに感じ取ればそう叫び】
【しかし、それ以上の快哉は続かない。白の少女が、こちらに標的を定めている】

【毒と苦痛を押して、どうにか半身を起こすものの、刀身は己の首筋に今まさに突き付けられようとしている】
【ただでさえ動きの鈍いところに、この毒。刃を首に添えられるのは、防ぎようがない。ならば】

――――その右目。戦闘の最中も隠し続けるとは、余裕だな……?

【目。頑ななまでに、少女の髪の中に隠されている右目。そこに、大男の下衆な勘ぐりが辿り着く】
【そこに何が隠されているのか、何もないのか。大男には当然、知る由もないが】
【ああまで隠し続けている以上、何か触れられたくないもののはず。そう推測し、賭けに出た】

【冷たい刀身と刃の花弁が首筋に当てられるのは避けられない。少女の目論見は成功するだろう】
【だが、それと同時に大男は肉薄しているだろう少女の前髪、その中の右目めがけて】

【太い腕で掴み掛かり、前髪をめくり上げようとするだろう。動きは、毒の為に鈍い。簡単に振り払うなり後ずさるなり出来るはず】
【ゆえに、同時に言葉を飛ばした。少女の動揺や怒りを誘発せんと】

【果たして、一転して優位に立った白の少女は、これにどう反応を返すか――――】

/了解です、こちらこそありがとうございます!!
581 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2017/01/15(日) 02:39:44.56 ID:M00MIY+Ho
>>580

「減らないですね、そのお口……そろそろ静かになってはいただけ、ませ、ん……!?」

【右目のことに触れられれば、あからさまに機嫌を悪くする、白の少女】
【伸ばされる男の腕、晒された左目だけを見開いて――思わずざっと後ずさりする。刃が離れる】
【前髪は、完全に捲り上げられることはなかったが、けれども僅かな時間だけ、その下を晒すこととなった】

 【花だった。白い花。男に知識があるならば、それは仏に捧げられる毒花であることがわかるだろう】
 【仏前草、あるいは樒。そんな名前の花が――――少女の眼窩に寄生するように、咲いている】

【――ばっ、と前髪を押さえる。白い細眉の尻が、ぎりっと吊り上げられて】
【これ以上はもうないと。そう言いたげに、容赦なく刀を、もう一度首筋に向かって振り下ろした】
【けれど、その前に少女は後ずさりをしていた。その隙に男が逃げていたなら、空振りに終わるだろう】


【地に伏したままの黒の少女は、ゆっくりと寝返りを打つように動いて、横向きに】
【腹を抱えて、体を丸めるような、胎児のような姿勢】
【相当なダメージを受けたのだろう、しばらく動けないでいるようだった】
582 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方) [sage]:2017/01/15(日) 02:54:24.12 ID:KKW+P9j/o
>>581
ふ、ふ……すまないね、口数の多いのは性分なんだ

【目論見は成功した。確かにそこには、少女にとっての禁忌があった】
【明らかな拒絶反応。それが何を意味するのかは、大男にはわからないが】
【ほんの一瞬、月明かりの下に晒されたその下の秘密は、大男の三つ目に焼き付いた】

樒……そんなものを目の中に咲かせているとは驚きだ
まるで死人だな……それとも、お前自身が誰かを祭る祭壇かね? ふ、ふふ……!!

【大男はかつて、上流階級の異常者たちを相手に商売をする、邪悪な会員制クラブで働いていた】
【そこで吸収した知識の中に、その花のことも含まれていた】

【形のいい眉が吊り上がれば、己が少女の地雷を踏んだらしいことを知り】
【同時に、己が被害軽減のためのわずかな時間を得たことも知った】


【またも悪辣な言葉を発しながら、大男が毒によろめく巨体を後ろへと引きずる】
【それでも、白の少女の怒りを乗せた一閃は速かった。首筋を刃が掠め、また血が飛び散る】

【大男の表情がはっきりと歪む。毒の追加。さらなる身体制御への影響】

【横目で黒の少女を見る。先ほどまでが嘘のように、弱弱しく丸まったその姿に】
【対処すべき脅威は、眼前の白の少女だと判断を下した大男は、顎が外れるのではないかというほど、大きく口を開いた】

【口中から伸びてくる、赤黒く太い何か。舌だ。先端が槍のように尖った舌】
【普段なら素早く伸縮出来る舌はしかし、毒のために痺れ震えている】

【苦し紛れの大男の反撃は、白の少女の右足を狙った。刀を近づけぬため、少しでも機動力を削ごうというつもりか】
【まともに当たれば突き刺さり、掠めても命中箇所を裂くだろう舌槍が、白の少女の下へと伸びていく――――】
583 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2017/01/15(日) 03:04:58.03 ID:M00MIY+Ho
>>582

「……煩い」

【返す言葉はたった四文字。もうこれ以上語りたくはないとばかりに】
【震える手で刀を握り直す。しくじったなら、もう一度】
【怒りに任せて歩みを進め、刀を振りかぶって――】

「――――っあ、い゛ッ……!!」

【――そうしたところで、男の舌が伸びてくるのが見えた】
【感情が揺らいでいたせいで、判断が遅れたか。慌てて回避しようとステップを踏んだが】
【少しばかり遅かった。細い脚を掠めて――黒いタイツ、その下の皮膚を幾許か持っていかれる】

「ぐ、ぅ……この、っ、……あ゛うっ!?」

【それでももう少し、進もうとしたところで。男の舌とは違った何かに、足を取られて転倒する】
【……鎖だ。倒れ伏したままの黒の少女が、白い少女の、たった今負ったばかりの傷のある足に、絡みついていた】

【黒の少女はまだ、起き上がっていない。おそらく早々に、立ち上がることすらできないのだろう】
【けれども、地面に転がったままの頭――視線は、ハッキリと。「狼たち」に向けられていて】
【「ひとりじめはよくないわ」。そう微かに呟いてから、血濡れの唇を笑みの形に、歪めた】
584 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方) [sage]:2017/01/15(日) 03:21:40.73 ID:KKW+P9j/o
>>583
【ただ一言。その一言と怒りを引き出せたのなら、己の弄ぶ言葉も役に立ったとほくそ笑む】
【相手を怒らせることはリスクも高いが、リターンもある立派な戦術だ】

【果たして、己の舌は白の少女の血を味わう】

美味い……赤ずきんもなかなかだったが、お前の味は極上だ……!!

【大男の喜悦はしかし、やはり長くは続かない。首筋を刃が掠めたことで、さらに毒が回り】
【体勢を維持することすら、困難になっていたからだ。もはや重りとなった巨体が揺らぎ】
【大男は片膝をつくように崩れる。万事休すか。と、見れば白の少女もまたその場に倒れ伏している】


――――ハ、ハハ……!!! 済まないね赤ずきん、そうだな独り占めはよくない……!!!
……だが。私は独り占めが大好きだ

【三つ巴の混戦であるからこその、僥倖。大男は毒に痺れる表情筋で無理な笑いを形作って】
【両手を屋上につき、四つん這いに近い姿勢をとると。大男の両手の指が、肉の触手となって伸び始めた】

【醜悪な肉の触手は、屋上を這い進みながらゆっくりと、だが確実に黒と白の少女、双方へとのびていく】
【接近がなれば、彼女らの細い首や手足に触手を巻き付け、締め上げようとするだろう】

【毒に侵されて接近が出来ない以上、緩慢だが確実にダメージを与えられる締め付けを選んだようだ】
【三者三様に倒れ伏す屋上で、なおその奇怪な戦いを継続せんとする大男の異常な執念】

【白の少女が刀を振るえば、黒の少女が鎖を操れば、たやすく切断され、潰されるだろう肉触手たちは】
【果たして、持ち主の悪意を遂げることが出来るか、否か】
585 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2017/01/15(日) 03:42:14.97 ID:M00MIY+Ho
>>584

「っ、…………まだ、まだ動くの……!?」

あハ、なあにこれ気持ち悪うい……ハハッ……!

【地をのたくって進む蛇のような触手に、少女たちは捕らえられた】
【白の少女は苦々しげに、黒の少女は愉快そうに。正反対の反応を返しながら】
【自身の体を這っていく触手を見。けれど、二人ともされるがままにはならなかった】

あははっ……あんまり、美味しそうじゃないけれど。

【黒の少女。鎖を操る腕が封じられたなら、何もできないように思われたが】
【なんとか動く頭を振りかぶって――触手に、噛み付こうとする】
【ギザつく歯列、強靭な顎の力。獣じみた行動を取ることが多かった少女は、ここまで獣のよう】
【叶ったならば、喰いついて引き千切る心算だ】

「……もうっ、きもち、悪い……っ!!」

【対する白の少女は、刀を持つ腕ごと絡めとられた。何もできないように思われるのは、黒の少女と同様】
【けれど、彼女にも――伏兵があった。刀に追従して舞う花弁のような薄刃】
【それらはある程度、自律して動かせるらしく。十それぞれが違う軌道を描いて、触手に突き刺さらんと迫る】
【――毒があるのは刀と同じ。これ以上蓄積されれば、相当に苦しいものとなるだろう】
586 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2017/01/15(日) 03:51:04.46 ID:M00MIY+Ho
>>584
//ウワアすみません、あと少しっぽい感じがありそうな気がするんですけど眠気がきておりまして
//明日に持ち越しとか大丈夫でしょうか。私は明日はいつでもおっけーです……
587 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方) [sage]:2017/01/15(日) 03:54:11.14 ID:KKW+P9j/o
>>585
く、ふ、ハハ……!! ハハハハハハ……!!!

【持ち前ののタフネスでどうにか肉を動かしているものの、大男には限界が近づいていた】
【二人の少女の真逆の反応に、双方への笑いで大して見せるものの】
【彼女らの力を振り絞った抵抗の前に、それも雲散霧消する】

げぁ、が――――!! ……人食いの肉を、噛みちぎるとは、やってくれる……!!

【まずは黒の少女の牙が、先の意趣返しとばかりに触手に噛みついた】
【ギザギザの歯が顎の力に押され、赤ずきんをかぶった獣の攻撃に、触手はなすすべなく食いちぎられる】
【切断面から血が噴き出す。黒の少女の口中には、固い触感と何とも言えぬ苦みという、黒の少女の想像通りの不味さが伝わるだろうか】


ぐ、ぎぃ……!!! お、の……れ……!!

【そこへ、白の少女の花弁が舞い散った。術者の意志を反映して動くそれらは、十のすべてが触手に突き刺さり】
【その身を伝って、本体たる大男へと毒を送り込む通り道となった】

【二人の少女に巻き付いていた触手たちから、力が抜ける。その巨躯を震わせ、大男は血と吐しゃ物を口から吐き出し】
【ぐらりと傾いて巨体を屋上の地面に投げ出すこととなる】

【白の少女の毒が、その身に回り切ったのだ。耐えきれぬ目まいと吐き気。軽い痙攣まで起きている】
【かくして、異形の大男は完全にその動きを停止した。後は、彼女らの思うがままか――――】
588 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方) [sage]:2017/01/15(日) 03:55:22.35 ID:KKW+P9j/o
>>586
/了解です、遅くなってしまいすみません……
/こちらは、明日は帰宅が夜、だいたい今日と同じくらいの時間になってしまうのですが
/それでもよろしければ、また明日続きをお願いしたく思います
589 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2017/01/15(日) 03:56:39.73 ID:M00MIY+Ho
>>588
//いえいえ遅いのは私の方もですし……わかりました!それではまた明日おねがいしますー
590 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方) [sage]:2017/01/15(日) 03:57:44.42 ID:KKW+P9j/o
>>589
/ありがとうございます。可能となり次第、返させていただきたく思います
/それでは、今夜は失礼しますー
591 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/15(日) 11:44:27.88 ID:/49CHvsUo
>>577

【相手の後について歩む間、何とはなしにその容姿を眺めていた。あの子の言う「お父さん」が自分と似ているなら、この白蛇もそうだ】
【腰に届く自分の髪と細く編んだ一束を眺めて、相手のそれと比較して、少し何かを思えば――止まった足取りに、遅れて足を止めた】

……そうですか。だからあの子は、父親の面影を探していたのか

【背高で髪が長い呪術士、きっとそれくらいしか共通点は無いのだろうが、あの子にとってはそれで十分だったのかも知れない】
【親子として過ごした日々を思い出す。自分は子を持った事はない。故に酷い張りぼての父親だったろうと思い至れば考えたくもない程で】
【そんな最中に紫色の軽口を聞く。確かに先程から歩みの速度に悩む位には先をゆく相手が少しばかり遅くて、危うく隣に並びそうだった】

――確かに、珍しいですね。貴方が、人のカタチを成しているのは。買い物なら仕方が無いでしょうが……それもあの子の為、ですね

【何処か突っ掛かるような言い方を、務めて押さえ込んでいるようだった。あの子の慕う相手と険悪な仲にはなりたくない、とはいえ】
【あの子にとってはきっと、自分より相手の比重が高い――そう、推し量っていた。それ故に隠しきれない感情は恨みがましい言葉に出る】

【勝てない。この白蛇にも、紫色にも――あの黒い女にも。自分は弱くて、兄が救ってくれたから生き延びて、黒い女の気紛れで今も生きていた】

/昨晩は失礼しました、本日もどうぞよろしくお願いします。お手すきな時間に返信頂ければ幸いです
592 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/15(日) 12:29:54.15 ID:l534Ab7R0
>>591

【一番はじめは、そうだった。よく似ているように見えたからそう思ったし、違うと気づいたけど、それでもいいかと思っていた】
【けれどクリスマスの夜、彼のことを父親と呼ぶようになって、別のひとなんだと認識しながら、別のおとうさんだと認識しながら、うんとなついていって】
【最初の間違いは関係なしに、好きだった。見た目が少し似ていたって全く別のだいすきなひとたち、――だけど、要素だけなら、たしかに、似ている部分も多い】

【ただでさえ饒舌ではなかった言葉がそこで一度途切れる。背中を見ていれば顔は見えないだろうけど、顔を見ていたとしても、多分、表情はくみ取れないだろうほど】
【それくらいに微細なものがそこにある。わずかに漏らす吐息は透明なままでどこかに消えて】

……おれが出歩くのは嫌か。なら――いい、

【彼が悩むほどに遅い足取りは、さらに、言葉を返すたびに立ち止まって振り向くものだから、たまったものじゃない。律儀なのだろうけど、やりようが下手としか言えなくて】
【そんなにも珍しいかとごくわずかに丸くなった瞳がゆるゆると戻っていく、見た目だけなら二十後半ほどだろうが――中身は明らかに違うもの、無口な子供のように不器用で】
【十数秒してまた歩きだす時にはまたすっかりと表情は消えている、それでも時折視線を後ろの様子を気にするように動かすあたり、気まずいのはこちらもそうなのだろう】

【――だから。拗ねたわけでもなく、彼は言葉をそこで切ってしまう。何か口を出すかと思われた(あるいは期待された、)紫色の少女も、だんまりで】
【ただ振りかえりでもすれば一人だけ楽しそうにしているのだから温度差がある。本当の子供の背丈で見上げてくれることだろう、声を出さずに笑いながら】
【話しかければどちらも応じるだろうが、白蛇はこんなに寒い場所で、紫色はこんなに中途半端な場所で、することでもないと思っているらしい。だから、もし話すのなら】
【数十分もあとのことになるだろうか。普通の人が一人で歩けば半分の時間でつける距離にあった家まで、ようやく、たどり着いて】

【本当に何もなければ重たい立て付けの悪い扉を開けるとかそういうちょっとしたいろいろなことがあって、――そのまま、きっと、普段使いの、あの部屋】
【あの部屋の、あの炬燵の、天板の上に白蛇が買ってきたお菓子だらけの袋をがさりと置いて――何するでもなく一瞬ぼうっとたたずむ、そんな瞬間だった】

/よろしくおねがいしますー
593 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/15(日) 13:05:19.75 ID:/49CHvsUo
>>592

【相手の言葉と誤差の範囲で丸められた瞳に何故だか肩を跳ねさせて、こちらもまた立ち止まる。後ろをついて歩く紫色は苦労するだろう】

べ、別に……嫌だとか、そのような、ことは。ただ……人の脚で歩くのは、不慣れでしょう。何かあれば……その。私で良ければ、代わりに、

【見た目だけならこちらが歳上だった。ただ中身は圧倒的に違う、前世の分を足したとして追いつけない程、歳も身長も、何もかもが上だ】
【一瞬――相手も知り得ないだろう人物の姿を重ねていた。白銀のふわふわとした髪に、無言のまま此方を苛む真綿のような薄青色の視線】
【敵わない相手ばかりだった。目の前の相手にしろ、追憶の彼にしろ――それまで経験した事など無い、ただ消費される弱者側の自分】

【(けれどそこに、不快という感情は一つも有りはしないのだ。何せ物心ついてより絶対に敵わない母親代わりの師に翻弄されて来た)】
【(幻獣と相対した時だけが、自分の存在意義を許される瞬間だった。それ以外なら本当に、居なくても構わないただのヒトであって)】
【(だから――敵わないことを認めるのは、もうとっくに慣れたものだった。相手に掛けた言葉にしろ、本心からのものであった)】

【――それからは無言のまま、やっと目的地についた頃には男は少し俯いていた。感情の整理がつかない。憎いのか、疎ましいのか、】
【ただ絶対的な事であるのは、感謝しなければならない相手であること。それだけが箍となってこの原色を混ぜ合った酷い心を留めていた】

【――余談でしかないのだが。玄関先、靴を脱いで上がる度、恐る恐る一歩を踏み出す姿は白蛇に文句を言う権利がない程、時間が掛かる】
【全ての調和を乱す呪い――今となっては両の瞳孔が揃わないだけの過去の物だが、それまではヒールを脱いで真っ直ぐ歩けた事がない】

【それから、あの部屋の炬燵の前。相手が座らないのであれば当然座れなくて、お菓子の袋を眺めて暫し立ち尽くすこととなるのだけど】

ええと……貴方にいたく世話になった弟は、私の居る組織の方に移ったので。だから――邪魔なら、私にも。移る先は、有りますから

【やっと出たのがそんな言葉だった。末弟が世話になった事、心からの感謝をして――同時に、遠慮というのか。ここに居ていいのか、】
【今更のような話題、それ以外に結局何を話せばいいのか混乱していた。遠くの水の国のビルで、白髪の男がくしゃみをして、そんな余談】
594 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/15(日) 13:35:42.47 ID:l534Ab7R0
>>593

【白蛇は自分がいろいろなことに不慣れなことを分かっていた。特に宝玉に喰われて、戻って――それ以降。世界に対して自分がおぼろげなように思えて、たまらない】
【ただ一つずっと想い続けてきたことだけで存在を保っている、かすかな存在。さっき川へ突き落としていたら、そのまま水に溶けて消えてしまったかもしれないくらいかすかな、残滓】
【ばかみたいに素直に白蛇は彼の言葉を自分がお菓子を買いに行きたいのだと思った。それで、きっと、多分似たような気持ちがそこにあるのだとも思って、だから】
【言葉の外でその役割を譲る。次からは控えようと思いながら、思考の海のなかのどこかでひっそりと思いながら、――思い浮かべられ重ねられた人物は、やはり、知らない】

【チョコレート菓子、砂糖菓子、クッキーにビスケット、机に倒れこんだビニール袋からあふれたお菓子は、そんな、ありふれた。ごく当たり前のものばかり】
【強いて共通点を探すならば甘いことと、それと、ひとつひとつが分かれた個包装の菓子であること。数秒ほどぼんやりと佇んだ彼は、そのあと、ついとしゃがみこむと】
【こぼれてしまった菓子を袋に戻して、今度は倒れこんでしまわないように袋ごと横倒しにして置いて】

邪魔――?

【もう袋は倒れないだろうかと確認する数秒、じっと袋を見つめた彼は、立ち上がると同時にそう、尋ね返すように繰り返して、またぶらりと歩きだす】

茶を淹れてやる。

【どうやらそういうことらしいのだが。それよりふらついている彼を見る目は不思議そうでもあって、それなら、やっぱり、普段はあまり周りのことを見ていないのかもしれない】
【靴は履いてても大丈夫だよ――とは少女の言葉だが。ちゃんとお掃除するし、スリッパを履くから大丈夫だよと。……それでも、彼がそうすることに、彼女は文句を言わないものだけど】

【――部屋の片隅に置かれた保温のできる電気ポット。かちゃりかちゃりと茶器を出すだけで不器用に音を立て続けるまま、数分もすれば(遅い)、用意ができたらしい】
【相手の立つ場所に一番近い机にカップを置いて、その近くに自分の分もおいて、それから、座る。第一希望は暖かな炬燵がいいのだけど、そうでなければ、別に、机でも――】
【とにかく何か相手は自分と話したいようだから。まだ人の形のままでいるつもり。とりあえず出した茶は彼の髪色とよく似た色の紅茶で、】

「悪いね」

【ついでにここまでついてきた紫色にも真っ白の彼は紅茶を淹れてやったらしい。多分一番部外者であるはずなのに誰よりもあたりまえにソファに腰かけた彼女は】
【そのカップを受け取って、これまたきっと誰よりも当然というよな顔で紅茶を飲んでいるのだろう。まだ、居るつもりのようだった。もうちょっとの範囲は知らないから】
【帰れといえばいつだって帰るのだろうけど――だなんて考えるより先に、】

……おれは邪魔だと思ったことは、……ない、思おうとしたことも……ない。
菓子は……次からおれは行かない。外は寒い――、なにかあるのか。

【全員に茶を出せばあっさりと座ってしまった彼が、そう、しゃべりだすのだった。外では聞きづらかった低い囁き声も、室内ならば、多少はましに聞こえ】
【それでもゆっくりとしゃべるものだから言葉の一つ一つがどうにも不鮮明で聞き取りづらくはある。――けど、それはどこか、丁寧にしゃべろうとしている様子にも見え】
【聞かれたこと、言われたこと、それらに返事をしているばっかりだ。なにかあるのか――というのも、家に帰ったらいろいろ聞くと彼が言ったから、先に、尋ねただけ】
【それでも――だんまりを決め込んだ相手に尋ねるよりか、やりやすいだろう。そういう気遣いのつもり、少し離れた位置に座る紫色は、やっぱり、居るだけだった】
595 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/15(日) 14:06:11.02 ID:/49CHvsUo
>>594

……えっ。あ、――はい、

【相手の意外な(自分の中での)言葉に応じる度に、自分の中の語彙が死んでいくのが分かった。何というか、何も言えなくなってしまう】
【立って待つのも失礼だろうとおずおずと炬燵に座る――緊張感からつい正座を選んだが、先日の大失態を思い出せば直ぐ様脚を横へ倒し】

ありがとう、ございます、――……

【茶を淹れて貰えばそのまま置かれたカップの紅茶の波紋をぼんやりと眺めていたのだが、飲まないのも失礼だろうと両手でそれを持って】
【冷えていた身体に沁みる温かさと、やっと一息つけた安堵と、何だか普通に紫色の彼女も応対しているのとで、肩の力が少し抜けた】
【聞かせて欲しいと言っておきながら何も浮かばなくなってしまった。どうしようかと俯きかけた所に、思い掛けない相手からの言葉が】

……、――嘘なんて。別に、私に気兼ねする事など無いのに……いや、――申し訳ない、感謝します。今のは、忘れてください
鈴音に買ってあげたかったのでしょう。なら――邪魔でなければ、お供しますよ。途中で倒れられたら大変ですから、それに、

【「私もあの子に喜んで欲しい」――そう添えて、一口紅茶を啜る。相手のしてあげたいことを邪魔したくなかった。故の、提案だった】
【男二人で菓子を買いに行く絵面は確実に可笑しな事になるのだが、まだ緊張からか、そこまでは思い至らなかったらしい】

なにか……と、言っても。実の所、何を話すべきだったか、すっかり思い出せなくなっていて。
ただ――私と貴方の仲を、心配しているだろうと。鈴音が……ですので、安心させたい、と

【要は相談だった。ただ、だからどうしようと言えることでもないような――男二人で仲の良い様子を見せたら逆に混乱されそうだしで、】
【そも、相手に自分と仲良くする気などない――というより、今以上の距離感を超えられないと思っていた。自分からそうすることも】
【険悪ではない、それだけ鈴音に示せれば安心できるだろうかと。そんな話に終着して、両手で握り締めていたカップをようやく下ろした】
596 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/15(日) 14:35:04.27 ID:l534Ab7R0
>>595

【そうして差し出した紅茶は意外とちゃんとしていた。というよりも、ティーポットにティーバッグを入れた結果の紅茶で失敗しようものなら、ある種の才能だけど】
【やがて自分も座れば電源を落としていった冷たい炬燵の電源を入れて、もぞりと足を潜らせる。――けれど姿勢としては正座だ、しゃんと背中を伸ばして】
【炬燵で和装の男が正座してあんまり高そうではないマグカップで紅茶を飲んでいる光景。すごく変だろう、――相手や紫色のカップはちゃんとしたものなだけ、余計に】

…………一人ではなくていいのか。

【紅茶を一口すする、あんまり優し気には見えない、温度のあまりない目。それを暖かさにか少し細めて、カップから口を離せば、そう呟くように返す】
【彼が一人で行けば手柄を独り占め……というわけではないが、自分のものにできるだろう。もしかしたら彼の方が、あの少女の好みは把握しているのかもしれない】
【別になんだって喜んで食べる性質だから、これは杞憂でもあったのだけど。一緒に行くのだと言われれば、少し戸惑うように目線を動かし――嫌がる素振りというよりかは】
【ためらうようなもの。なんせ彼女が選んだのは自分ではなく彼だから、自分は――いろいろと事情があって許可されているだけだと、思っているし】

【自分がいない時にどうしているのかと、あの少女が聞いた。だから、いつも通りにしているといったら、そうじゃなくて……と困った顔を、されてしまった】
【後の言葉で少女がいない時に自分と、相手が、どうしているのかを聞きたかったらしいと知って、けど、それ以上の答えを持たなかった。だって、話したことはないのだから】
【その様子で察したらしい彼女がため息を吐いて、「へびさま笑顔がたりないよ」と拗ねたように言っていたのは、そう、そんなに遠い過去の話じゃない。ついこの間の早朝のことで】

……あれは人間と居た方が、いい。おれと居ると、影響する。だから――、区別だ。

【天板の上に放置された菓子入りの袋。伸ばした手が中からチョコレートとクッキーを取りだして並べる、それから、骨ばった指をそろえて、片方を彼の方へ押しやって】

二つは食べられない。おれを選ばない方がいい。

【例えば好きなお菓子が二つあったとして。どちらか片方しか食べちゃ駄目だというのなら、きっと、より好きな方を選んで食べるだろう】
【けれど、好きなお菓子が二つあったとして。どちらも食べてよかったら、どちらも食べたいと思ってしまうだろうし、きっと、食べてしまうだろう】
【だから。……だから、どちらか片方を選べるようにしていないと、いけない。――そういう風に言いたいのだろう、けど、言葉は足りないというより、ほぼ不足していて】
【一応補足するようにぼそぼそとそんなことを言っているのだが――さて、通じるのかどうか】

おれは人間じゃないから、人間のやり方は分からない。

【自分のところに例えで置いた菓子を袋に戻す、これで菓子は彼のところに一つだけ、――むしろそれが白蛇の目指す先だと言外に言って、また、紅茶を啜り】
597 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/15(日) 15:08:24.55 ID:/49CHvsUo
>>596

私となら、大丈夫だと思うのですか

【吐き捨てた言葉は自分への疑い以外に他ならなかった。白蛇に言った所でどうしようもないこと、だけど、約束した、けれど、でも、】
【唐突に目の色が変わっていた。ただの比喩だけれど、明らかにそうなっていた。先までの弱々しかった言葉が、変貌していて】

……人間がどんなものかを教えることなら、曲がりなりにも人間である私に不可能なことではないでしょう。でも――

【これを言ったら戻れない気がした。今までの幸せ全てに鋏を入れるようバッサリと切り捨てる言葉の刃、まるでそう、あの女によく似た】

あの子は、人間に憧れている、別の何かだ

【目の前にある菓子を摘んで、開く。包装紙を外して、中身を天板に落とす。化けの皮を剥がして、中身を白日の元に晒す】

人間の私に、一生幸せにできる保証なんて何もない。まして私の心臓は、あの女の手の内にある。いたく簡単にこの世界から消せる身だ
またいつ居なくなるとも分からない。私の勝手であの子を愛して、誓って、裏切って、帰って来た――人間の方が、余程汚いのに。何故、

【人間の自分より、きっと似た存在の相手の方が、ずっとあの子に近いと思っている。確実な幸せを望むなら、白蛇の手許にいた方がいい】
【自分は黒竜の舌の上にいる。いつ飲まれるとも分からない、それ以前に、既に別の世界で不幸に死した魂だ。女の気紛れで摘み上げられ】
【この世界に落とされてから、同じ境遇の仲間が死した場面を一度だけ見た。断末魔を上げて無の中に吸われ消えて、血すら残らない最期】

……あの子の、本当の幸せを望むなら。私を、殺して欲しい――いつか、貴方がそうさせたように。もう、あの子を苦しめたくない、から、

【語尾は震えていた。かつて相手が、鈴音の幸せを願い自分の手で死することを選んだ時のように――今度は自分が、そうして欲しいと】
【あの時は戸惑いながらも応じたのだから。俯いた顔を上げそんな要求の視線を向けた、のだが、流れる涙が酷く情けなくて、笑えてくる】

貴方となら、きっとあの子も報われる

【再び俯く視線はカップに零れ落ちた涙を他人事のように見ていた。涙を流したのは何時振りだろうか、と冷静な思考が回って、それだけ】
598 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2017/01/15(日) 15:24:16.50 ID:M00MIY+Ho
>>587

……ぺ。やっぱり、美味しくないわ……野良猫でもかじってた方が、よっぽど。

【おそらく初めて見せるだろう、苦々しい表情をする黒の少女。口の中に溜まった、肉と血を吐き捨てて】
【男が動かなくなったのを悟ると、次はお前。そう言わんばかりに白の少女を見据えて、口の端を吊り上げる――が】
【――ぴくり。ふと視線を、少女でもなく男でもなく……どこか別の方角、遠いところへ持っていく】

 【黒の少女と同じように、男が聴覚に優れているならばそれはかすかに聞こえてくるだろう。ドップラー効果】
 【悪党である男ならば、きっと馴染みのある響き。高音と低音、無機質な行ったり来たりの繰り返し】
 【サイレンだ。おそらく、先程の大きな爆発に誰かが気付いて、通報でもしたのだろう】

【白の少女がそれに気づいたのは、だいぶ後のことだった。倒れた男を見て安堵し、次いで黒の少女に警戒を裂いてから】
【ふと何処か遠くを見つめる黒の少女の姿に違和感を覚え――あ、と声を上げる】
【誰かが気付いてくれたんだ。そう気が付いたころには、少しばかり遅かった】

「…………ちょ、ちょっと待っ……ああもうっ、また逃げたっ!」

【別れの挨拶も残さずに、黒の少女は地を蹴って。ひょいと屋上から、逃げ出していた】
【強靭な脚力と、長い鎖を存分に使って一目散に逃げだす黒い背中に慌てて掌を向けて、それでも届かない】
【取り逃がした、二回目。白の少女は嘆息して――それでも刀は離さない。黒の少女を諦めて、男の方へ】

「……あの子には逃げられちゃいましたけど、あなただけでも。
逃がしませんからね、動いちゃ駄目ですよ」

【とすん。男の顔のすぐ横に、刀の切っ先を突き立てようとするだろう】
【本来ならばこの少女、敵の殺害も厭わない性質の、苛烈なタイプの正義の味方だが】
【他に裁いてくれる人がいるならば、自分が手にかける必要もないだろうと。そう考えて、今はそうすることしかしなかった】

//遅くなりました(白目) お返ししておきますー!
599 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/15(日) 15:34:23.44 ID:l534Ab7R0
>>597

……おれは、人間だったことがない。

【もう、ずっと、ずっと、ずっと……ずっと、昔のことになる。ある日、卵から孵った瞬間のことを、ほんのわずかに、朧げに、覚えている】
【ただ色素のない身体だったからと神にされたときのことも、覚えている。よく分からなかった。そうして信仰されるうちにものを考える力を手に入れても、ずっと】
【いつか人間をまねて人間の姿になることができた時も、ずっと、ただの一秒たりとも、人間だったことはない。だから、自分に、人間らしさは欠片もない】

【相手の雰囲気が変わる。けど、白蛇は、ずっと変わらないままだった。ただ指先が冷たいと思っているかのようにカップを手で包むように持って、時折飲んでいる】
【だけど――その繰り返しが、終わる。相手の言葉を聞いてだった。人間にあこがれている別の何か――、押し黙ってカップを机に戻す、その音が、少し、大きく聞こえる】
【部屋が静かなせいではない。実際に、本当にわずかだけ、力が込められていた。そっとカップから剥がした指先が置かれる場所を迷ったように、やがて天板の上で落ち着いて】

そうだ、……あれは、人でも、蛇でもない、他の……どんな生き物とも……何とも、違う。
祟りも……そうだ、おれに、影響された。……全部、おれのせいだ。……まだ子供だった、――おれが、したんだ。

【まばたきをほとんどしない瞳がじっと相手を見つめた、悲しいようにも怒っているようにも見える目。何より、自分を責めるような目】
【生まれたことさえも自分のせいだった。生まれたことも、人と違えたことも、すべてがおのれのせいだと、何度も自分に言い聞かせていたことを、思い返す】
【だからこそ誰よりも幸せになってほしかった。人と居たいと願うならそうすればいいと思った。幸せになれないなら殺してやろうとも思った。それが、救いにならなくても】

……異国の者も、長く居ればその国の文化を覚える、……人間と居れば、人間に、なれる、

【何度も苦しませてしまった子孫への、それが最後の希望だった。たとえ何でもないナニカだとしても、ずっと、ずっと、長い時間を過ごせば、きっと似通うはずだと】
【ただの蛇でしかなかった自分でさえ人の姿と言葉をまねすることができるのだから。人間として生まれてきた少女が、それをできないはずはないという、希望で、願望】

…………――、……。

【それが全部だった。人間のように過ごしてほしい――蛇でしかない自分にはできないこと。だから身勝手にも相手に期待すること、人間である彼に、託したいこと】
【涙を流す相手へかける言葉は思い浮かべられなかった。神としてふるまった頃にはもちろん、長く閉じ込められた頃にも、必要のなかったこと。けれど――】
【今こうして人間と接するようになって、はじめて必要になったこと。あの少女が泣いていても、一度だって慰められたことはなかった。だから、彼のことも、慰められない】

……それは、できない。

【慰められないし、彼の言葉を受け入れることもできない。けれどそれを上手に断ってみせるほど器用でもない白蛇は、言ったきり、ただ、難しい顔で、押し黙ってしまって】
600 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/15(日) 15:51:11.94 ID:/49CHvsUo
>>599

……、――それだけの事をして。何も気付かないほど、あの子も馬鹿じゃない。それでいて、貴方を慕っているのでしょう。あんなに、

【己を責める相手の言葉に、口をついて出たのは励ましと言うより敗北宣言に近いものだった。本当に、あの子は相手を信頼している】
【常からの姿で痛い程に切ない程にそれが良く理解出来た。どんなに大変な時だって、まず最初にするのが相手の心配なのだから】
【黒い女が自分を溺愛するように、白蛇も鈴音を芯から愛していて、きっとそれは誰にも敵わない。鈴音も、白蛇を心から愛していると】

貴方も……もう、人間だ。人の心を知っている。十分過ぎるくらい、貴方と、鈴音は、ヒトだ

【自分のような人間でも託したいと願う気持ちが伝わって来て、少しだけ頬が緩んで、それから――相手の答えに、くすりと笑った】

……申し訳ない。何となく、予想はしていたんだ。貴方は優しいから、きっとそう言うと思った

【袖口で涙を拭えば、相手を見据えてセシルは未だ残る笑みを向けた。もう、これ以上、相手を悩ませる事はしたくなかった】
【振り返る先は――紫色の、少女】

……頼めるかい。キミになら、あの女の呪いだろうと、必ず断ち切れる

【この場にいる最後の希望。それが、彼女だった】
601 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/15(日) 16:16:29.98 ID:l534Ab7R0
>>600

それは、……――、

【相手の言葉に、心が痛むようだった。それは違う、と、言いたいはずだのに、どこかで自分が大事で、言いだせない】
【ただあの少女がやさしいだけ、それ以上のことは何もなくて、何よりあの少女に赦されるだなんてありえないくらい、自分は、何もかも酷いのに】
【世界中に存在するすべての生き物から赦しを得たとしても、ただあの少女を騙しているというだけで、何もかもなかったと同じになるくらい、ひどいことをしてきたのに】

……おれは、違う。

【――人間だ、なんて、言われたのは初めてだった。だから面食らったような顔、あるいは相手が何を言ったのか分かっていないんじゃないかと、わずかに疑るような顔】
【一秒だって人間だったことのない自分が人間にはなれないと思う、そう思っているから、無意味なような訂正をして、向けられる笑みに、また少し困惑するような顔をする】
【そんな風に笑まれることをしただろうかとじっと考えてしまう、自分は――そう、言い方を少し変えれば、彼のことを、利用しようとしているみたいなものなのに】
【少し困ったようにうろつかせた視線、最終的に目を伏せれば、まだ炬燵の上に置いたままの指が目に入る。少し寒くて、それを、炬燵の中にぐっと押し込んで】

「やっと呼ばれた、もう勝手に帰っちゃおうと思ってたんだけど――帰らなくってよかったね」

【ソファの前にもちっちゃな机がある、あくまでちょっとした物を置く程度の――そこにかたん、と、ティーカップを置いた音は、彼が呼びかけた、そのすぐ後のことで】
【ちょうど空っぽになったものを机に戻したような素振りだったが、もしかしたらその前から空っぽになっていて、待っていたのかもしれない、と、思えるくらい、あたりまえに】
【それでふわりと立ち上がって、歩く――この少女は室内でも履物を脱いでいなかった、だけど、それでも低い身長は、座っている彼らとあまり違いがなくって】
【すぐにでも彼らの座るそばまで歩けば、くすりと笑みをいくらも大きくして】

「とりあえず、話は聞こうね。朱音、ボクのお茶がないから淹れてほしいな。ところでそれは誰が食べるの? 要らないならボクがもらってもいいかな」

【近くまで来た彼女はそのまま炬燵に入る――ではなく、そのまま立っていた。それで白蛇を召使みたいに使ってしまって、言われた白蛇がぼんやりと立ち上がって歩いていけば】
【さっき相手が天板に落とした菓子を指で示して、笑いながらそう尋ねるのだろう、話は聞いてくれるというし、彼だって甘いものをあんまり好かないなら、駄賃代わりにはなるのかも】
【どちらにせよ――彼が何か言いだすのを彼女は待つのだろう。白蛇はというと、ポットのお湯がもうなくなっていたらしくて、少しよたよたしながら、水を汲みに行ってしまって】
602 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/15(日) 16:41:47.35 ID:/49CHvsUo
>>601

……長らく待たせてしまったね。ああ、キミにあげるよ。――私は苦手なんだ、甘い物は

【白蛇が部屋を出てから本当のところを告げれば、天板に細かい欠片ごと散らしてしまった菓子に少しばかり悩むも、相手へと差し出し】
【話を聞く、と言ってもらえた事に酷く嬉しそうに口許を綻ばせるのが何処か幼ささえあった。叶えてあげる、と言われていなくとも】

姿を消していた間、何度か正気に戻ることがあった。あの女の支配が弱まる満月の夜――けれど、幾度死のうとしても、死ねなかった
別の仲間は死んだのに、私達兄弟だけはそれが適用されない――恐らくは、私達を主人公として、あの女はこの世界に物語を書いている

その物語に突然現れたイレギュラー……それが鈴音で、私が彼女を愛したことも、あの女の全く予想していなかった事だった
書き手としては当然頭を悩ます事だったのだろう。だからあの女は、徹底的に私と鈴音を引き裂こうと、長い時間を掛けてまで執着した

そしてそれは、遂に叶わなかった。だとすれば、書き手が最後に行おうとするのは二つ。一つは、イレギュラーを物語から排除すること
もう一つは――主人公の記憶を消し去る。私があの子を愛していた、その全てを消し去って、何も無かったことにする

【ここまで一息に言えば、セシルは冷めかけた紅茶を一口啜る。それから少し考えるようにして、最終的な、彼の想う『結論』を告げる】

私は後者を望む。だからキミにもまた協力して欲しい――戻してもらったばかりで済まないのだけれど。鈴音から、私の記憶を消して欲しい
このままではあの女は鈴音を殺しに掛かる。例えそれで死ぬことがなかったとして、鈴音が何度泣こうとも、あの女は殺し続けるだろう

キミと、あの女の合意の上で、私達の記憶を消すと言う事だ。本当は死にたい所だが、白蛇はあの様子だと、私の死を己のせいにしそうでね

【――全て、身勝手な男の、ただの我儘だった。簡単に言うがそれまでにあった沢山の事を、この男は敢えて考えない様にしていた】
【少し前まで紫色と白蛇が、自分に関する鈴音の記憶を修正してくれていたのだから、今回は自分の記憶を消した上でそうしたい、と】
【人間とは――少なくとも彼個人は、自己犠牲の美談めかせて、結局は周囲を奔走させて、ただ己の幸せを望む、欲界の生き物に過ぎない】
603 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/15(日) 17:19:59.32 ID:l534Ab7R0
>>602

【いろいろなたとえ話に持ちだされた菓子は、そういうわけで最終的には紫色の少女が頬張ってしまう。やがてすっかりと飲みこんでしまえば】
【「叶えてあげるとは言いきれないけど……」と一応付け足しはする。できるかできないか聞かないと分からないというのもそうだけど】
【何より自分の立ち位置としてできるかできないかというのもある、だから、確約はしない。紅茶はまだしばらく用意されそうもないし、――もちろん、白蛇も戻りそうにない】
【ただ立っているだけのはずなのに何もかもに対して自信があるような素振りだった。あの少女の、何かをすぐに不安に思ってしまう性質とは真逆の】

「例えばボクがそれを了承したとして――」

【話を一通り聞いて、小鳥の声が呟く、まだ子供のまま、小さな手を軽く握って口元に当てる、――その向こう側で唇は薄く笑んでいて、瞳はどこか愉快気だった】
【だけれど、そういう性質だ。人間たちの生きるさまを眺めて楽しむのは趣味が悪いけど、面白いから仕方ない――尋ねても、きっと、悪びれもせずに、言う】

「面倒くさいから今度は容赦しないからね、あの子は君と出会って以降手に入れたものをすべて失うし、もちろん、仕事も――、"たんぽぽ"も」

【「出会った頃のことを覚えている?」と尋ねるのなら、この少女のもたらす結果は"それ"なのだろう。何よりも人間にあこがれながら、呼吸さえもし忘れていたころ】
【眠るのが怖いと泣いて、いざ眠れば恐ろしい夢を見たと跳ね起きて、朝になるまで泣きじゃくっていた。何もかもの記憶を消すなら、当然、今のような】
【たまに楽しい夢を見るのか小さな声でくすくす笑うような平和な眠りも二度とない、まして家もないのだから、眠る場所なんてものもないのかもしれないけど……なんて】

「君が居たから見つけたような答えだものね、途中式が必要な問題でそれを省いたらバツになるのは仕方がないし……」

【それも。彼が居たからこそ見つけたものだった、だから、それも、取り上げてしまう。なにもかも、そう、本当に。出会った頃のように、すべてを、消してしまう】
【自分だけは立っているのに視線の高さがあんまり変わらない。だからこそじっと相手の目を、目だけを、紫色の瞳が見つめていた。じっと、わずかもぶれないままで】

「それで、あの子は何の得をするのかな」

【彼が消えた時。いろいろなことが一度に狂ってしまった。白蛇はあの少女が一人になったことを自分のせいだと思い詰めて、少女から記憶を、すり替えた……すり替えさせた】
【それを戻してやったのがついこの間で、また今度は、今度こそ消してくれと言われている。すり替えるでもない、消してしまえと――それなら、すべて、取り上げてしまうしかない】
【大事に抱きしめてる袋一杯の宝物を奪い取って焼却炉に放り込むようなもの、何か一つだなんて、袋ごと捨ててしまうのだから残せない】
【できるかできないかで言えばできる、の範疇。だけどまだするかしないかで言えば、きっと、しない――してくれない。それよりも、あの少女に対してやさしい方へ、まだ立っていた】
604 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/15(日) 17:50:28.70 ID:/49CHvsUo
>>603

あの子の、全て……――、

【自分に価値など無いと教えられてきた。だからあの子の一部を、或いは生きる方向を、そんな自分が変えていったのだとは到底思えない】
【出会った時、あの子は確かに苦しんでいた。今は、――変わっていた。確実に、きっといい方向に、自分がいた時より、――けれど、】

――私に、……存在価値がある、と?

【『たんぽぽ』――あの子がそれを思い至ったのが、理由の一つが、自分だったと聞いて驚いたのは、自分にそんな慈善の心など無い故の】
【全てあの子の本質から生まれたものだと信じ切っていた。けれど、その本質さえ見失ったあの闇の中で泣いていた姿を、再現する――】
【それなら確実に、あの場所は作り得なかったと思った。欺瞞でも何でもなく、毎晩怯えて泣いていたあの子が、そうなるためのパーツ】

私が……、――

【思考がぐるぐると回る、あの子を守らなければならない、けれど取り得る手段は全て無意味で――否、『全て』の手段では、ない】
【一つだけ。不確実で危険極まりない、最後の手段はあった。ただそれは確実に兄弟とあの子を巻き込んで、結末は想像もつかないけれど】
【紫色の視線が突き刺さるよう、蛇に睨まれた蛙のような、逸らすどころか瞬きさえ忘れたような、そんな刹那――だらん、と首が下がる】

“――ふふ、ふふふっ、ねえ、すっごく楽しそうな話じゃない? 私も混ぜて欲しいわ、うふふ、ふふふふっ、
憎たらしいあの子が今度こそ私の愛しい息子から離れて、しかも元の孤児みたいな泣き喚く人生に戻るの――ふ、ふふふっ、あはははっ、
だぁれも幸せにならないわね、凄く素敵、まるで水底に沈んでいくオフィーリアみたい……嗚呼、でも違うわね、だって私は楽しいもの”

【開いた口から女の声がする。紅茶色の髪が真っ黒に染まっていく。再び上げた顔、紫色に向けるのは喜色に歪む黒一色の、瞳】
605 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/15(日) 18:15:13.89 ID:l534Ab7R0
>>604

【夜も眠ることもすべてが怖いと毎晩泣いていた少女が、クリスマスの夜――はじめて許可をもらっていっしょに眠った夜、ただの一瞬だって、泣かずに眠ることができた】
【ときどき泣きじゃくりながらもそうやって一緒に眠るうちに夜に火のついたように泣くことはなくなったし、笑うことも増えていって、気づけば、こうなっていた】
【彼が居なくなった時に白蛇がおびえたのは、それだった。あの頃のようにあの少女が戻ってしまうこと、それを恐れて、大事にしていると分かっている記憶さえ踏みつけて、】
【助けたつもりでいた。救ったつもりでいた。そんなことはなかった。そのうちに彼が戻ってきて、――だから、あの子の好く人間である彼に、全部、託そうと、】

【――あの白蛇が部屋から出ていて、よかった。きっとこんな話を聞かせたら、もっと話はこじれていただろうから】

「やあ、こんばんは。といってもここはいつだって夜だけど……お招きした記憶はなかったけど、いつの間にかしていたかな。鍵を丈夫にしないといけないかもしれない」

【別にこの家の主でもないけど、と、面白がって呟いた少女は。その後に「ようこそ」と続けて、今度こそ愉快そうに声を上げて笑う、小鳥のさえずるような声音で】
【笑って、ふわりふわりと服の裾を揺らして数歩かを歩く、離れるでも近づくでもなく、そもそも室内だから、距離を取ろうにもまず難しいのだけど――炬燵を挟むように立って】

「朱音は遅いなぁ。守り神失格だね。家の中に変なやつが居るのに、飛んで戻っても来やしない……まあ、祟り神なのだけど。不得手なのかな」

【白蛇が机の上に置いて行ったマグカップ。かわいらしい熊さんの絵が描かれたものを勝手に取りあげて、一口二口と飲んでみる、それから自分の前に置いて、】

「で、お呼ばれしていないお客様は何かご用事かな。平均年齢が高くて申し訳ないのだけど……後は若人に任せるというわけには?」

【面白そうな態度は、多分、最初から変わらない。本当に何の構えもなく立ったままで笑っている、それだって、面白いテレビ相手にころころ笑う少女みたいな、あどけなさだった】
606 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) [saga]:2017/01/15(日) 18:22:24.18 ID:5kviFh5ao
/>>605
/夕食で少し遅れます…!
607 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/15(日) 18:38:21.99 ID:l534Ab7R0
>>606
/了解しましたー
608 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/15(日) 19:14:55.94 ID:/49CHvsUo
>>605

“あら、それなら私も若人の内に入っちゃうじゃない? ふふ、ふふふっ、四十六歳で死んでから百五十年『書き手』をして来たけど、
貴女達には遙か遠く及ばないでしょう? 小さなおばさま。だからそう怒らないでくださる、ただの小娘の戯れ言なんだから……ふふふっ、”

【真っ黒な男が婦人の声で喋りだす、それも悍ましい笑みを顔一面に貼り付けているなら、とてもあの子には見せられないような姿】

“この子だって、あの子より私の方が歳が近いのよ? 七十年前の戦争当時に三十六歳、大戦中の民族浄化――ガス室で処刑される運命
……だったのを、私の好みだったから拾って持って来たの。素敵でしょう? そりゃああの子も惚れちゃうわよねぇ、ふふ、ふふふっ”

【本当にただ茶を飲みに来たような楽しげな声は、溺愛するその男の出自を簡単に告げてくすくす笑う。本当に何の用で現れたのか】
【或いは――白蛇と紫色が、セシルの願いを聞き届けてしまう事を恐れたのか。『主人公』の一人に手を加えられる訳には行かない、と】

“嗚呼、話が戻るけれどね……私、今別のものに興味があるの。『せんそう』って言うんだけど、貴女ご存じ?
とっても楽しいのよ、皆で駒を持ち寄って遊ぶのだけど、それぞれ個性があってとっても楽しくって――つい時間を忘れて遊んでしまうの”

【ちらつかせたのはそんな話――セシルが奪われる事よりも今は、そちらに興味があるのだと女は嗤う】
【ただ、女の持ち駒の中には、当然この男が入っている。それと兄弟二人もそうだし、まだこの世界には女の手引きで現れた者達がいる】

【今すぐ二人をどうこうしようとは思っていない様子だった。別のものに夢中なだけだと――二人を脅かす要素になり得る、戦争に】
【そこまで話した時だった。黄緑の光が僅かに煌めいて、“時間切れね、”と惜しむような女の声とで、男の体から黒色が抜け去っていく】

【――やがて、平生の紅茶色の姿がそこにあった。ただし、身体を乗っ取られてか意識を失っていた】
【炬燵に突っ伏すように眠る男は、先までの事など何も知らないような、ただ、少しばかり苦しげな表情で眉間に皺を寄せる】
【鈴音が悪夢を見なくなったのと反比例するように――男は、真っ黒な夢に脅かされていた】

/お待たせしました……!
609 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/15(日) 19:50:05.27 ID:l534Ab7R0
>>608

「どうかな、人間から見たらそれはとてもじゃないけど、化け物って言うんだと思うけどなあ――」

【さえずるように笑う、それは到底若いだなんて言えない、なんて、今更人間らしい物差しでものを言って――人間と人間以外とで、この場の存在を区切るよう】
【きっとこの場では彼だけが人間だった。自分たちはそうじゃないもの、だから、「諦めたらどう――」なんて、からかうように言っている】

「悪いね、ボク、数十年じゃあ頓着しないから――、ほら、鈍い鈍い白い蛇は八百は違うのだし、時間の差だけならね」

【もっともあれは正史ではないけど、と、呟いて。だから数十年くらいならば誤差みたいなものだと言ってしまうのは、見ようによっては暴力のようでもあって】
【おそらくは彼女にとってもそうなのだろう。だからあんまり頓着しない、「ごめんね?」と笑って子供のように首をかしげてみせるけれど、反省なんて欠片もない】

「本で読んだことがあるよ。面白いのじゃないかな、ボクはやったことがないけど――みんながやるからねえ」

【――けど、そのいつだって愉快気な顔が。続く相手の言葉に、ほんのわずかにだけ、表情を動かしたように見えた。かといって、ずっと、注視していても見逃しかねないほどの】
【あるいはそこを突けば何か別の反応があったのかもしれない。だけれど、幸か不幸か、相手の持つ時間はそこで終わってしまう――よう。やがて彼が元のようになれば】
【ちょうどそのときだった。ぎきいと部屋の扉が開けられて、それから床に置いていたらしいポットを大変そうに両手に抱えて、あの白色が部屋に戻って】
【普段置いている場所にきちんと向きまで整えて置いて電源コードをつないで振り返ったところで、ぎょっとした。なんでこの人間は寝ているのかというような目――それから】

「遅いなぁ。君は、電話だとかを持ってないんだっけ」

【炬燵のそばまで歩いてきた白蛇と紫色の会話、たくらむように笑っている紫色の愉快気な声に目を覚ますことがなければ――あるいは、そのまま、しばらく目を覚まさないのなら】
【「ある」と馬鹿正直に頷いて自分用の携帯端末を持ってきた白蛇のそれで、紫色がどこへ電話をつなぐのか。多分そこはここよりずっとにぎやかで、お酒臭くて、たばこ臭くて】
【店員みたいな恰好をした人物が電話を取る、――だなんて分かるようなのだった。少しからかうような、それこそサプライズのような、もしかしたら、何かを証明させるためのような】
【悪夢を払うおまじないは知っているけれど、自分がするそれよりも、多分、そちらのほうが喜ぶんじゃないかと思った。ただそれだけの、気まぐれだった】

【――もちろんそれより先に目を覚ましたりするのなら、その計画は中断せざるを得なかったりもするだろう】
【その時は――自分が普段かぶせてもらっている毛布を手にしてかけてやろうとする白蛇の顔でも、真っ先に見るのかもしれない】

/すみません、今度はこっちが食事なので少し遅れます
610 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/15(日) 20:08:49.28 ID:/49CHvsUo
>>609

【突然に世界を暗幕に包まれたような状況からやたらめったらに魔力を撃ち込んでやっと取り戻した自我、ただ意識は当分戻りそうもない】
【――夢を、見ていた。それはやけにリアルで、悍ましくて、まるで現実の出来事のように何の突拍子もなく、いつか訪れるような夢】

【末弟がいつか会った男と共にこちらを嘲笑っている。背後にはカノッサの旗、そして大量のクリーチャーと、青藍色の巨大な仏像】
【長兄が見たこともない冷たい表情でこちらを見据えている。大量の自走する兵器達が、赤い魔力を灯らせて唸り声を挙げる】
【自分は襤褸のドラゴンの上から荒れ果てた地上を呆然と見ていた。世界が全て泥の街になったような――みんな死んでいて、誰もいない】

【――目覚めるまでには、時間が掛かりそうだった。ただそれは気絶ではなく眠りであって、そのうちには目覚めるだろうもの】
【酷く苦しそうにしていた。夢では丁度、ドラゴンの火球を兄弟達に向けて放って――ぎり、と、奥歯を食いしばる音がした】

/了解ですー
611 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/15(日) 20:46:27.62 ID:l534Ab7R0
>>610

【何かあったら大変だからと仕事中でも携帯電話は持ちあるいていた。それでも仕事中だと分かっている人はまず鳴らさないし、そもそも、そう鳴ることもない】
【深夜に差し掛かりつつある時間帯、店内もだいぶ落ち着いてきていたところに――着信が入って、ましてそれが、今まで鳴らしてきたことのない番号で、もっと言えば】
【「"彼"が寝ているのだけど、目の前で倒れて、」――全部言いきる前に電話が切れたとは紫色の言う余談、とにかく、それからのことは】

【眠っているならなおさら――それは突然だったろう、突っ伏して眠る背中を少し不安そうでぎこちない仕草で何かが叩いている、ぱたぱたと、それで、名前を呼ぶ声が】
【あの紫色でも白色でもない、もっと、高くて澄んだ、少女らしい声が。鈴の音によく似た金属質の声が、何度も、何度も、繰り返して、彼の名前を呼んで】
【それでも起きてくれないならどんどんその身体を揺らす動きだとか声だとかが泣きそうに必死になっていくようでもあって、――、】

――ねえ、ねえね、セシル……、……起きなかったらどうしようぅ、

【泣きそうなのをこらえると吐息が変な音できゅうきゅう漏れた、誰かにしゃべりかけるような声もあるから、きっと、まだ誰かがいるのだろう】
【それでも、きっと一番近くに居るのはあの少女だった。不安そうに何度も揺り起こそうとして、本当に体調不良で、ということだったら、余計に悪くしそうなほど】
【起きて起きてとまだ繰り返している。それで、たぶん、本当に目を覚ましてくれるまで――自分に気づいてくれるまで、声を掛け続けるようとするはずで】

【――いつか自分が怖い怖い夢を見てしまった夜に、起こしてもらったみたいに。彼ならもっとずっと上手に起こしたかもしれないけど、彼女には、どうやらこれが限界のよう】
【身体に触れることと名前を呼ぶ以外。いつしかもっときちんとそこに居ることを教えるみたいに、ついこの間繋いだ回路――魔力をもらうための回路、それに】
【気づいてほしいと呼びかけるみたいに、そっと魔力を流し込む。とかく目を開けてほしいと、気づいてほしいと、そう、言って、また、魔力をこぼして】

/お待たせしました!
612 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/15(日) 21:02:41.56 ID:/49CHvsUo
>>611

【嘲笑う弟と、笑いもしない兄と。荒廃した世界で対面して、気付けば自分には何もない――力も術も、魔力すらも。そこに、二人の攻撃】
【最早これまでだった。目を閉じることしか出来ない中に、一瞬、澄んだ綺麗な水が弾けて、目を開けば世界がどんどん修復されていく】

【――現実世界。目を開いた先に、女神の姿を幻視する。それは流し込まれる魔力の引き起こした錯覚か、それとも、】

――、鈴音……?

【身体に触れる感触と、自分の名を呼び続ける声。ゆるゆると上げた瞼を二三度瞬かせて、それから彼はおもむろに両の腕を伸ばせば、】
【相手の胸元に抱きつく様な――まるで幼い子供のような、そんな行動をしようと。受け入れられたのなら頭を擦り寄せるようにして、】
【自分以外の誰か――紫色や白蛇が見ていたとして、まるで気が付かない様子だった。白皙の頬を、一筋の涙が伝っていく】
613 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/15(日) 21:18:32.67 ID:l534Ab7R0
>>612

【自分が作って置いて行った食事が悪かったのかと思う、それともすごく悪くて治らない病気だったらどうしようとか、そしたら、両親のように死んでしまうのかとか】
【ものすごく嫌なことまで考えてしまって、泣きそうになる。目にいっぱい溜まった涙はぼたぼた落ちていたけど、必死に瞬きをしないようにして、泣いていないつもりでいた】
【ぎりと奥歯を噛むような仕草も苦しんでいるように見えた。だからどうしようどうしようと慌てて、また必死になって身体を揺さぶる。その繰り返しは、ただ、唐突に終わる】

――――、

【目が合って一瞬、見るのは顔を涙でくちゃくちゃにした少女本人だろう、泣かないように泣かないようにとぎゅっと唇を噛んでいたから、そう、可愛い顔ではないけれど】
【一瞬ひどく驚いたように目を丸くして、だけど、すぐに破顔する。起きてくれた、よかった、と、言って、ついに泣きだしてしまって――、まるで子供みたいに】
【幼い子供が怖い時に親にするように、甘えるように抱きつこうとして――だけれど伸ばされる腕に、抱きつかれる仕草に、一瞬、驚いたように、伸ばした腕が、止まる】
【――けれど、すぐに。一瞬だけ停止した腕は、ほんの数秒前まで自分がしてほしかったみたいに彼を抱きとめて、それから、優しく、頭を撫でようとして】

……どうしたの? だいじょうぶだよ、どこかが痛いの? 苦しいところはある? ね、大丈夫だよ、ほら――、

【もしもその顔を見る余裕が少しでも彼にあったなら。きっと、今まで見たことのない顔を彼女はしていたのかもしれない。ただ、ただ、優しいばかりの】
【それこそ怖い夢を見たと泣いてしまった子供に向けるような表情と、声だった。痛みや苦しみで動転しているんじゃないかとわずかに怯えながら、でも、これがいいと思った】
【伸ばした片手で彼を抱きとめながら背中を撫でる。頭を抱きしめるようにした手はその頭の後ろを優しく撫でて――そうしながら、きっとまだ居る誰かに、】
【「お湯を入れてあげて」と声を掛けている様子もあった。――実際数秒後にはひっくり返さない程度に遠い場所、天板の上に、まだちょっとぬるいお湯のカップが置かれて】
614 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/15(日) 21:46:01.55 ID:/49CHvsUo
>>613

【ぐす、と鼻を啜る音があって、それから強く相手を抱き締めてまるで離す様子がないのは、それこそ本当に恐ろしい夢を見ていたよう】
【頭を撫でられて、ずっと聞きたかった声を聞けば何度も胸の中で頷く、それから酷い顔をそっと上げて、温かな表情に更に目を潤ませて】
【――初めて、相手にこんな顔を見せてしまった。後頭を撫でられれば再び顔を隠すように相手の胸に埋めて、背を擦る手の暖かさに】
【溢れる物を抑えられない。こんなに泣いたのはきっと嵐の夜、ごうごうと音を立てる外が恐ろしくて、あの黒い女の寝室で眠った日以来】
【あの時も、優しく抱きしめてくれる腕があった。大丈夫よ、直に止むわ、もう少しの辛抱だからね――そんな柔らかい言葉を、思い出す】

【(あの女の全てが悪かと言えば、違う。ただ少しだけ道を踏み外した、愛を憎しみに変えてしまった、そんなただの母親でしかない)】

……大丈夫、だから。鈴音が、助けてくれたから、――ありがとう、

【ようやく顔を上げてそう小さな声で呟けば、お湯のカップを視界に入れてふらふらと手を彷徨わせる――何とか掴めば、両手で握りしめ】
【波紋を揺らす水面に映る情けない顔をまるで誰のものだろうと愕然としたように見て、それから忘れたいかのようにぐっと飲み干した】
【それで、幾らかは落ち着いたらしかった。カップを置けば目の前の相手をじっと見つめて、それから今度は、相手を抱擁しようと】

驚かせたね……すまない、仕事中だったのだろう? ありがとう、本当に、鈴音――

【遠い昔に、優しかったあの女にそうしてもらったように――そして今、相手にしてもらったように、その背と頭を撫でようとする】
【何を違えてしまったのだろう。自分に固執するようになったのはいつからだったのか。きっと、全ての責任があの女にある訳じゃない】
【そんな追憶を止めて、今はただ目の前の相手に感謝を伝えたかった。悪夢――心の何処かで恐れていた事を夢で見た。あれは、予言だ】
615 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方) [sage]:2017/01/15(日) 22:06:17.20 ID:KKW+P9j/o
>>598
野良猫以下、とは言ってくれるな……野生の獣のごときお前が……

【自身の肉の一部を吐き捨てる黒の少女に、憎々し気にそう言い返す大男】
【しかし、彼女の反応を見れば、大男もまた黒の少女が意識を向けた先、その存在に気が付く】

【聴覚に関しては、常人とそう変わらない大男ではあったが、まさにこの男にとっては】
【悪党であるがゆえになじみ深く、これだけは聞き逃すことのないという音】
【己の敵の羽音。警察かあるいは自警団か。かすかに、大男が忌々し気に歯を食いしばる】


――――か、はは……逃げ足の速い女だな……

【この状況でも大男の口は閉じられない。まるで他人事のようにそう漏らす】
【軽やかに去っていく黒の少女の背中に、三つの視線が注がれて。しかし、それもやがて白の少女に移る】


く、ふふ……動きたくとも、動けないさ……お前の、おかげでな……
全く、ちょっとした雑務のはずが……とんだ大損害、だ……

【眼前に突き立てられる刃を見ながら、途切れ途切れの言葉を漏らす】
【事実、全身に回った毒が大男の肉体操作をほぼ不可能にしていた。これ以上の抵抗はまず不可能だ】

――――私は動かない。「私は」、な
私のかわいい手下どもは、別だ

【突如。サイレンと共に近づいてくる騒音。空中からだ】
【見上げれば、それは屋上へと接近してくる黒塗りのヘリコプターが発する飛行音だった】

【大男の言葉からして、大男の配下が首領を回収に来たということらしい】
【まだ、ヘリが屋上の上空に到達するまでには、時間がかかるだろう。白の少女は、この状況にどう判断を下すだろうか】

/少し前に帰宅しました!
/大変お待たせしました、申し訳ありません……
616 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/15(日) 22:07:17.21 ID:l534Ab7R0
>>614

【よっぽど怖い夢を見たのだろうと思った。その頃にはあまりにも自然にそう思っていた、痛いとか、苦しいとか、そういうものじゃなくって】
【だからなるだけその恐怖を薄められるように、いっぱいいっぱい背中を撫でて、頭を撫でる。それはいつか――ずっと昔に彼女が両親にしてもらったことだし】
【あの日拾われてから、何度だって彼がしてくれたのと、同じだった。怖い夢を見なくなった。だけど、本当は――怖い夢を見ても、平気になった部分も、少しだけ】
【どれだけ怖くて目が覚めても、すぐ隣にだいすきなひとが眠っている。あれは悪い夢だったとすぐに分かって、また、眠れる。だから、泣きじゃくることがなくなった】

……もう、だいじょうぶ? わたしとへびさまだけだよ、だあれも笑ったりだなんてしないの、ほんとに大丈夫――?

【顔を上げれば目線を合わせるように覗きこむ。見れば彼女も泣いてしまったのをそのままにしているせいか頬が濡れてしまっていて、だけど、気にしてもいなくて】
【どうやら居残ったのは白蛇だったらしい。あの紫色は――正しくは彼女に部屋から追い出されたのだが。まあそれは余談として置いておくとして、】
【もっと泣いても大丈夫なんだよと囁く声、鈴の音色の声はそうやって囁くと何とも例え難い不思議な声音になって、それが、ひどく柔らかい綿雲のよう】
【――それでも彼がカップに手を伸ばせばおとなしくそれを見守って。それから、ふわりと、今度は自分が。抱きしめられれば、嬉しそうにあげる甘え声があって】

んんん、大丈夫だよ、急にね、セシルが変だって電話があったの……、だからね、すぐに来たの、たばこ臭いかな――。

【見れば、どうやら仕事着。櫻の要素をふんだんにちりばめた給仕服、髪も長いのを高く一つで結わえていて、――抱きしめれば、たしかに、少し、煙草の匂いがする】

――あのね、お仕事の途中だって、いつだって、きっと、わたし、すぐに来たよ。お友達と居たって、すぐなの、絶対だよ。
だから。そんな風に言わなくっていいの、ね、だって、わたしの、とっても大事なひと……、無視するとか、来ないとかね、ありえないの。本当だよ。

【抱きしめられた腕の中でしばらく嬉しそうにしていた。だけど、そのうちにぎゅっと、こちらからも抱き着いて――首筋に顔を寄せながら、視線だけで見上げて】
【そうしてぽつ、ぽつと、呟いていく。何があっても、どんな場面でも、駆けつける。きっとそうだから、と、言葉をどんどん重ねていくように、そう言えば】
【ぐっと体重を彼にかけるようにして、背中に回していた手を首筋に回す、それから身体を起こして――そのまま、こつ、と、額同士が触れ合うようにしようとすれば】

セリーナに百回怒られたって、百一回目も、セシルのために、お仕事だなんて放って帰ってきちゃうの。

【ちょっといたずらっぽく、笑うのだった】
617 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/15(日) 22:21:23.02 ID:/49CHvsUo
>>616

――そうか、ありがとう。大丈夫……よく悦那に抱き着かれるから、慣れてるよ。煙草、

【問題のある発言はただ単に喫煙者が再会の度にハグをしてくるから慣れている、と言いたかったのだけれど、上手く言葉が出せない】
【白蛇の前で、と一瞬過ぎった思考はすぐに切り替えられる。これで彼が安堵してくれるなら、と思った。これが彼の願いなら、と】

……私も、世界の裏にいたって駆け付ける。キミの為なら……、何を敵に回しても、絶対に守り抜いてみせる。キミを、――

【兄弟。育ての母。それらを手に掛けることになったとしても――守り抜かなければいけない、大切な人がここにいる】
【額同士が触れ合う距離に少しばかり驚いたような不揃いの瞳は、間もなく緩められ。相手の言葉に、くすりと笑う声がした】

百一回目も、一緒に謝りに行くよ。私だけは殴られるかも知れないけれど、それ位なら、幾らでも

【――余談だったが、鈴音がCMに出た、そんな経緯を彼は知らない。その時期はテレビを見る事などできるはずも無かったし、】
【今もテレビを見ることはあまりなくて、大体暇潰しには古書を紐解いている。だから世間の情報には、きっと白蛇よりも疎かった】
618 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2017/01/15(日) 22:25:30.26 ID:M00MIY+Ho
>>615

……まだ喋る余裕がありますか。
動かないならべつに、いいですけど……、……?

【地上から近づいてくるサイレンとは逆方向から。響き渡る新たな音に、反応して】
【ばっと視線を上げて――な、の形に小さな唇を開いた】
【すぐさま刀を地面から引き抜いて、構えようとしても――ぎり、と歯を食いしばることしか出来ない】

【少女の能力は毒の刃の顕現、それだけだ。多人数を相手取って戦うには、向かない】
【ここで新手が増えるなら、厄介が過ぎる。こんなに寒いのに、額から汗が一筋垂れてくる】

――……く、まだ、来ない……!?

【屋上から見下ろす地上、サイレンを鳴らす車両の到着は未だないことを知り、舌打ち】
【警察が来るよりもヘリコプターが到着するよりも先に、この男にとどめを刺すべきか】
【……一瞬だけ考えたが、無駄だろう。殺したところで奴らが此処に来ることには変わりないと、考え直して】

【はあ、と息を吐けば、白く色付く。視線は上、ヘリの方に向け直して】
【警察が此処に到着するまで粘ろうと。そう決めて、刀を握り直した】

//いえいえー! お返しいたしますっ
619 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/15(日) 22:43:12.21 ID:l534Ab7R0
>>617

【よかったと小さな声で安堵する。よく抱き着かれるというのもちょっと分からないけど、不快な思いをさせるより、ずっといいと思う】
【煙草の匂い、お酒の匂い、それに、いろいろな食べ物の匂い。もうすっかり慣れてしまったからよく分からないけど、多分、彼女からはいろいろな匂いがする】
【その奥には彼女の使っているシャンプーの匂い、使っている石鹸の匂い、洋服を洗う時の洗剤の匂い、そんな、いろいろが、たくさんあって】
【人でも、蛇でも、何でもないもの。だけど、たしかに、現実に存在しているもの。ごちゃごちゃに絡まりあった匂いは、それだけ、現実の重みがある】

それなら、きっと、大丈夫。セリーナだって許してくれるよ、だけど、一番は――そんなの一度だってなくって、毎日、きっとこのお家で、待っていて。

【前髪と前髪が擦れ合ってじゃり、と、かすかな音がする。それでも、それだから、いっそう額同士を合わせて、嬉しそうにする】
【左右が違う目を、すぐそばの左右が違う目にしっかり合わせる、ちょっと逸らしたくらいじゃ許さないぐらい、じーっと、覗きこんで】

もちろんね、わたしも、待ってる。帰ってきてくれるのを、毎日、待ってるの。そのときお家には居ないかもしれないけど……ここがね、待ち合わせ場所なの。
わたしが帰るとき、あなたはお家に居るかもしれないけど――そのとき一緒にね、わたしも、セシルがちゃんと帰ってきてくれてる、って、いつだって思うんだよ。

【だけど――ふと、その目が。少し寂しげに振れて、自分から逸らしてしまう。眠るときにいつもするみたいにくっつけた額もすっかりと離してしまって】
【そのままさっきそうしていたみたいに、また、その胸に顔をうずめようとする。それが許されれば――】

……だから、ね、もう、どこにも行かないで。こわいの、とっても……そんなことないって信じてても、信じてるのに、泣いちゃいそうなくらいにね、怖いの、
見えない身体のどこかをちぎられるみたいに、いたいの、いたくて、こわくて、かなしいの――、

あのときね、たくさん、探したの。全部のお部屋を探して。だけど、いなくて。どうしようって思ったの、どうしようって、おもって、…………、――。

【少しためらうような間。けれど結局我慢できずに漏らしてしまう声は途中からどんどん震えて泣きだしそうになっていく、しゃべるのは、彼の消えた、あの日のことか】
【泣くのをこらえればこらえるだけ喉に力が入って声が震える、最後の方では本当に泣いてしまって、今度は、止められなくなってしまう。腕の中、身体をわずかに硬くして】
【彼がこの家に来たその日から、一度も話題にしたことがなかった。あるいは避けていたのかもしれないけれど――】
620 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方) [sage]:2017/01/15(日) 22:54:04.97 ID:KKW+P9j/o
>>618
く、ふ、ふふ……さて、今度はお前に、喋る余裕がなくなって、きたんじゃあないか……?

【白の少女が攻め手を選ぶに苦心している様子を見て取れば、大男はにたりと笑う】
【彼女の腕前は相当なものだが、その性質はやはり剣士。能力をもって戦う一人の戦士なのだ】

【ならば、自分たちの最大の強みである『手数』が通じる】


残念だな……連中も、存外足は遅いようだ
さて、どうするつもりかね……?

【白の少女が決断を下す。大男が殺されていれば、その配下たちは徹底的に白の少女を攻撃しただろうことを思えば】
【それは、的確な判断だったと言えるだろうか。ともあれ、ヘリは屋上に到達する】


【降り立ったのは、大男に輪をかけた異形であった。身体はひとつ。だが、そこに二人の人間が同居しているのだ】
【二つの頭と四本の腕が、一人分の身体についているのだ。その身は中央で向かって右が白、左が黒に色分けされ】
【両胸のポケットにはそれぞれ「No.50」と刺繍されている】

【向かって右側の長い白髪を一つに束ねた頭の落ちくぼんだ白い瞳と】
【向かって左側の黒い短髪をぐしゃぐしゃに乱した頭のぎらつく黒い瞳が】
【同時に白の少女を睨んだ。そして、交互に喋り出す】

「……こちらとしてはその男を回収できればそれでいい」
『そいつを渡せば、大人しく引き下がる。だが、まだやるってんならとことんやるぞ』

【先の大男が口にした双子。それがこの二人であるらしい】
【近づくサイレンの音に、内心では焦燥しながら。新手の悪党は白の少女にそう告げた】
621 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2017/01/15(日) 23:05:10.55 ID:M00MIY+Ho
>>620

【余裕がなくなってきたかと言われれば、その通りであって。「煩い」の四文字だけを、男に吐き捨てる】
【警察の車両が到着して、それからこの屋上に上ってくるまで。それまで耐えれば、こちらの勝ちだと】
【それだけを、考えていた。そう考えて気を強く保つしかなかったのだ】

……大人しくするのは其方ですよ、少しでも動いてみなさい。
あなた方の上司、すぐ手にかけられますから。いいですか、大人しく……

【刀の切っ先は、降り立った異形の方へ。眼光は鋭く、刃のように煌きを放って】
【刀とは別、十の薄刃は倒れた男の上方。中空に留まらせて、いつでも直ぐに切っ先を落とせるように】
【結果として、男を人質に取ることを選んだ。双子の異形が、この大男にどれほど忠誠を誓っているのかは知らないが】

【やがてサイレンの音は大きくなって、音程が一定になる。ようやく建物の付近に到着したのだろう】
【ドアの開く音、複数の足音。確実に、この建物へと乗り込んで来たらしい】
【彼らが屋上に辿り着くまで。少女はこの姿勢を保ったまま――攻撃は、しない】
622 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/15(日) 23:09:32.97 ID:/49CHvsUo
>>619

【あの日――夜色の館の書斎で一人、本を捲っていた時だった。ふと窓の外を見れば、いつものように暗い森が広がっていて】
【その奥に、育ての母――黒い女の墓があった。窓からは木々で見えないけれど、静かに胸に手を当てて、祈りを捧げていた最中】

“――ねえ。貴方まさか、本気であの娘と生きていくの?”

【振り返ればそこには黒い亡霊の姿があった。いつものように帽子で見えない目元、ただ口元だけが沈んだ様子を描いていた】

……今更、何を仰るのです。お師匠様――貴女だって、許して下さったはずです

【そう言われれば確かにそうだった――鈴音を抱き締めて、大切な息子を貴女に預けると宣言した日を思い返した亡霊は、返す言葉もなく】
【対してやや苛立った様子のセシルは読んでいた古書を乱暴に机に置けば、目の前の相手をきっと睨み据えた】

あの娘、とは。鈴音が人でないからと、そう言いたいのですか? 貴女だって亡霊だ。その身で散々私と生きてきたでしょう?

【――当時は、全てが上手く行っていた時期だった。三兄弟のしがらみが解けて、兄や弟がセリーナと和解して、これからと言う所だった】
【沢山の未来が待っていた。そこに、過去の亡霊がしがみつくように現れた事で、セシルは恩を忘れてしまっていた。煩わしい、と一言】
【切り捨てるようにそう言って、半ば反抗する息子のような――そんな頑なな面持ちで古書に再び目を通す。当然、内容など入って来ない】

【その拒否を示す背を見た時、自分との今までの事全てを無かったことにして、自分を置いて、幸せになる彼が、堪らなく憎くなった】

“あの時みたいに――痛い目を見ないと、まだ、貴方は分からないのね。その目の呪いを掛けたのが私だと、気付いてもいない癖に、”

【ただならない気配にセシルが振り返った瞬間――悍ましい女の叫喚が書斎に木霊した。厚い扉は、それを廊下に伝えることはなかった】


【全ては、追憶の中に。その瞬間を、相手の言葉で想い返した時――やっと、心当たりが見つかった。なんと恩知らずだったのだろう、と】
【亡霊は確かに、自分達兄弟を悪戯に唆しては困らせていたけれど。あの泥の街で、食べるものにも困っていた幼い折に、手を差し伸べてくれた人】
【その彼女を――愛する人が出来たから、と。もう用済みだとでも言うかのように、自分は足蹴にしたのだった】

……済まなかった、全ては、私の責任だった。きっとその時の鈴音のような思いを、ある人にさせてしまったから、ああなったんだ
私が……驕っていたから。自らの幸せにだけ目を向けて、そこまで支えてくれた大切な人を、蔑ろにしたんだ

――謝って来るよ。その人に……お師匠様に、

【身体を僅かに硬くして泣くのを何とか堪えようとする相手に、好きなだけ泣いていいんだよ、と背を擦る。彼もまた、決めた】
【ずっと避けていた事――師に謝罪すること。どれだけの事をされたとしても、その始まりは、自分が作ってしまったのだから】
623 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方) [sage]:2017/01/15(日) 23:18:40.85 ID:KKW+P9j/o
>>621
【彼女の吐き捨てるような言葉に、大男は笑おうとするが】
【もはや、苦し気にせき込むことしか出来はしなかった】

『ほーう、言ってくれるじゃねえかよ。てめぇ自身も傷は軽くはねえだろうに』
「だが困ったものだ。我々としてはその男を失ってはこれまで積み重ねた全てがおしまいだ。さて、どうしたものか……」

【いかにも困った、と言わんばかりに本来の腕の位置から生える細腕を顔に当てる白い頭と】
【威嚇するように、脇の下辺りから生える筋肉質な腕を組んで見せる黒い頭】


【と、その四本の腕が、そうした仕草の中に交えるように唐突に、その掌を】
【自分たちの背後にあった屋上の出入り口のドアに向けた】
【すると、白い腕からは泥が、黒い腕からは砂が、突如として湧き出す】

【もし、白の少女が何らかの妨害に出なければ、それらは球体と化してドアに向かって飛ぶだろう】

【双子の能力であるらしい、その泥砂の球体がもしドアに衝突してしまえば】
【泥がドアを覆いつくし、砂がドアの隙間に入り込み、べったりと張り付いて】
【屋上を一時的に閉鎖空間としてしまうだろう。応援の到着を察知して、この場に彼らが乗り込むことを】
【少しでも遅らせようという魂胆らしい】
624 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2017/01/15(日) 23:29:33.88 ID:M00MIY+Ho
>>623

なっ、……にをっ、

【目を見開いて、動き始める双子の方へ駆け寄ろうとした、が】
【けれどもそれは間に合わない。堰き止められたドアを見て、あっと叫ぶ】
【しばらくすれば、ドアノブをがちゃがちゃと、がむしゃらに回し続ける音が聞こえるだろう】
【警察が辿り着いたのだ。押しても引いてもあかないドアを、どんどん叩く音ばかりが響くようになる】

こっの、……大人しくしてなさいって、警告しましたからね!
警告したのに動いた、あなた方が悪いっ!

【吊り上がる眉。交渉は決裂だ、とばかりに双子をぎりっと睨み付け】
【背後を振り返り、倒れたままの大男に鋭く尖った視線を投げる】
【容赦なく、中空に留まっていた薄刃に命令を下す。一直線に、倒れた男に降り注いでゆけ、と】

【ただしそれは、怒りに任せた愚直な命令。男が転がるように動けば、刃たちは虚しく地面に突き立つだろうし】
【そもそも、双子に対して完全に背中を晒している。少女本体に攻撃を仕掛けようとするなら、容易なことだろう】
625 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/15(日) 23:31:36.30 ID:l534Ab7R0
>>622

【たとえば大きな血管が破裂したひとは、どーん、と、大きな音を聞くという。それと、きっと似ていた。自分の一部が引きちぎられるときの、あの、文字にならない音】
【あるいは自分の悲鳴だったかもしれない。それの区別も分からないくらいの衝撃と痛みと困惑で記憶はごちゃごちゃになっていて、ただ、怖かったと思う】

【ついさっきまで怖い夢に泣いていたひとにすがるなんて、と、思った。いけないと思った。だけど言ってしまった言葉は口の中に戻らなくて、いまさら後悔する】
【それでも思い返してしまった恐怖がぐるぐる渦巻いて。悪い悪いと思いながら止められない、だから、少しの間――こわばらせた身体をそのままにして、抱きとめられている】
【こんなふうにしちゃいけないとどこかで自分が自分を叱っている、こんなふうに泣いてしまわないって、彼が居なくなった少し後に、"たんぽぽ"を始めるときに、決めたのに】
【なんて駄目なんだろうと自分に思いながら、抱きしめられる腕の中が心地よくてしかたなかった。このまま居たら溶けてしまいそうで、だから、頑張って、身体を起こして】

……ううん、わたしも、ね、ずっとね、子供だったの。今も、きっと、そうだけど……、だけど、少しは、お姉さんになれたかな、……。

【甘えてばっかりだった。きっと今でもそれは心地いいけど、それだけじゃいけないと今は分かっているつもり。だから、もう大丈夫だと言って、目元をぬぐい】
【じっと見上げる目はまだ少しだけ潤んでいた、それでも彼の言葉を一生懸命に聞いて、それから――】

わたしもね、謝りたいことがあるの、ううん、謝る……謝るの、かな、……ちゃんとお話がしたい、と、思う……の。
怒られちゃうかもしれないけど……、そうしたら一緒に、謝ってくれる?

【――考えてみれば、自分は、あのひとのお墓へ花を供えたことも、なかった。だから、それを、謝らないといけない。謝って、怒られてしまうかも、しれないし】
【それはとっても怖いと思うけれど。住まわせてもらって、そのひとにとって大切なひとの気持ちをもらって、それだのに、一度だって、礼をしたことも、ない】
【それにこの前に至っては怪我をさせてしまったかもしれない、お化けじゃあ、あんまり、怪我とかしないのかもしれないけど――不安なように眉を下げて】
626 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/15(日) 23:43:22.42 ID:/49CHvsUo
>>625

……キミはとっくに、素敵なレディだよ。鈴音、だから、自信を持っていいんだ。キミは凄い、とても優しくて、何より、強くなった

【甘えることと弱さは違う。今の相手は、本当に強くなった。心の底からそう思った、きっと自分なんかよりもずっとずっと、強い】
【大丈夫だと言われればそっと腕を離す。潤んだ瞳に見上げられて、視線を今交わせている理由も、あの人が呪いを解いてくれたからだ】

勿論さ、何か起きても必ず私がキミを守る。――今から、でも。大丈夫かい?

【事は早い方がいいと思った。ついさっきまで取り憑かれていたとは言え――少しでも、あの人に寂しい思いをさせたくなくて】
【ただ、相手の事情もある。悩むようにしながらそっと尋ねてみるのは、そんな躊躇いのような感情が、まだ彼の中にあったから】
627 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方) [sage]:2017/01/15(日) 23:53:33.07 ID:KKW+P9j/o
>>624
【背後から響くドアを叩く音を聞けば、双子が同時に口角を吊り上げる】
【泥と砂の即席溶接はしかし、警察がドアを叩くたびにわずかずつだが剥がれ落ちている】
【所詮は急場しのぎ、そう長くは持たないのだろう。もちろん、それを表には出さないが】

「ああ、そうだな。親切な警告に背いたのは謝罪しよう」
『だがな、そいつにはこのわずかな余裕だけで十分なんだよ』

【双子が交渉に応じなかったのには、自分たちの首領たる大男が】
【常人離れの生命力、しぶとさの持ち主であると知っていたからだ】
【こちらを睨む白い少女の目に、四つの邪悪な視線が真正面から返される】


【そして、白い少女の刃のような剣呑な視線が大男に向けられれば】
【大男もまた、彼女を三つの目玉で見返している】

……怒りは、力の源にもなるが、こういう時には損をするぞ。カゲツ

【次の瞬間、術者の指令を受けて飛んだ薄刃は、屋上に突き立つはずだ】
【毒に侵された身体を、無理やりに転がす。大男の生命力の成せる業か】
【馴れ馴れしく少女の名を呼んで見せる大男の表情には、まだ苦痛の色が滲んでいたが】


【さらには、白い少女の視線から外れた双子は、行動に出る。ただし、それは攻撃ではなく】
【あくまで、『回収』を目的としたものだ。すなわち、四本の腕を屋上につけて】
【そこから泥砂を溢れさせ、泥砂で出来た手のようなものを大男へと伸ばしたのだ】

【白い少女の妨害がなければ、その泥砂の腕は大男の身体を掴み】
【自分たちの下へと引き寄せようとする。白い少女から、ドアの向こうの警察から逃れるために】
628 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2017/01/16(月) 00:04:44.77 ID:WNG4/FKBo
>>627

っ、このっ……まだ、動くかっ!

【かつんかつんと、刃たちが屋上のアスファルトに刺さっていく音がする】
【すぐに引き抜いてもう一度男を貫かんと命ずるか、それとも背後の双子を止めるか】
【二者択一。それらのどちらかを選ぶまでに、僅かな時間を要してしまった】
【佳月という少女は、大人しげな外見に反して存外強情で、怒りっぽい。冷静な判断を下すのが、苦手だった】

【あっと声を上げる。泥砂の腕に引き寄せられていく異形の姿。追いかけるようにして振り向いて】
【どん、どんとドアを叩く音はずっと繰り返されていた。あと少しで打ち破れるというところまで、来ていたけれど】
【きっともう、何もかもが一歩だけ、遅い。それでも振り向いた勢いのまま、異形たちの方へ駆け出した】

まだっ、逃がさなっ、…………ッ!!
629 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/16(月) 00:05:41.26 ID:5M/n3jYZ0
>>626

【レディだなんて、言われるのは初めてだった。だから照れくさいような、恥ずかしいような、それでいて嬉しくて、誇らしいような。気持ちになって】

ちゃんと、お嫁さんみたい?

【ちゃんと釣り合うひとになれただろうかと問いかける、ずっと。こんな子供みたいな自分でいいのかと、――思っていなかったといえば、きっと、嘘つきになる】
【優しくて、いろんなことを知っていて、きっとお仕事でだってすごくて。追いつけないひとだと思っていた、一生懸命頑張るけど、いつまでも、先に立っているひとだと】
【だけど褒められて大きくなった気持ちのついでに尋ねてしまう、いつか後ろからじゃない隣に立って、きっとうんと恐ろしく広い世界を、一緒に見るのだと、思っていたから】
【少しでも近づけただろうかと。そう尋ねて、笑っている。少しでも近づけたかもしれない、そう思うだけで、嬉しかった。だけど、それも――】
【――今から、すぐに、という話になれば。少し緊張したような顔になって、】

……えっと。お洋服だけね、着替えたいな、……そんなにきれいな服じゃないから、ううん、汚れてないの、汚れてないけど、
ちゃんとお洗濯してあるお洋服がいいな、きちんとした格好がいいの、ほんとはお風呂も入りたいけど――、それは、時間がかかるから、

【ひとまず。今すぐにというよりは、着替える程度の時間が欲しいらしかった。けれど着替えというのもそう時間がかかるものではないはずだし】
【実質今からというようなもの。お風呂に入ってしまうと――彼女の髪の長さだと、乾かすのにちょっと時間がかかるから。それは早々にあきらめてしまって】
【服を着替えられたらそれで……といったところで、ふと、何かに思い当たったようだった。ある意味恐ろしいものに相対したような顔で、】

…………セリーナに電話してから、お着替えしてから、でも、いい?

【あんまり事情も言わずに飛びだしてきてしまった。だから、とりあえず、言い訳をして……あと今日はもう仕事に戻れないことを伝えて】
【きちんとした服に着替えて、会いに行く。あるいは来てもらう……? さっきまで居ただなんて思いもしないから、よく分からない。お花があったほうがいいのか、とか、】
【思いながら。とりあえずはいつまでも腕の中で甘えてるわけにはいかないらしいと気づいて、身体をそっと離す――それで、立ち上がって、ソファへ向かうのは】
【部屋に入った瞬間、携帯電話をソファに思いきり振りかぶって投げた記憶があるからだった。ひとまず何があっても連絡だけはしたがるだろう。それが終わって許されるなら】
【着替えるために彼女は一回自室に戻っていくことになる。それで時間は少し先、連絡だけ終えてそのままの格好でいるのか、着替えて部屋に戻ってくるのかは、彼次第だった】
630 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方) [sage]:2017/01/16(月) 00:16:27.49 ID:Ormr+7ubo
>>628
く……く、はは、ははは……!!

【転がりながら笑う。泥砂に引きずられてなお笑う】
【白い少女の意外に感情的な一面を見て、苦しみながら大男は笑う】

【内心では、後わずかで捕縛されるというところまで追い詰められたという事実に】
【この一人の少女が確かに、かの伝説の正義組織に所属した歴戦の戦士だと思い知らされて】
【大男も双子も、大いに冷や汗をかいていたのだが】


残念だが、時間切れだ……!! 縁があれば、また会おうじゃあないか!!!

『あばよ!!』「達者でな」

【三者三様に捨て台詞を吐くと、ホバリングしていたヘリから投げ落とされた縄梯子に】
【異形どもは、しっかりと掴まる。すると、縄梯子がぐいと引き上げられる】

【引き上げているのは、顔を溶接作業用のマスクで隠し、『安全第一』と表記されたヘルメットを被り】
【両腕が巨大な義手になった不気味な男だった。大男の手下は、このような異形ぞろいであるらしい】

【警察がドアを破るのと、異形どもがヘリの中に消えるのとは、ほぼ同時になるだろうか】
【だが、異形どもに勝ち誇る様子などない。当然だ、これは敗走なのだから】

【最後まで、忌々し気な表情を浮かべて。異形どもは白い少女を睨み続けながら】
【異形どもは尻尾を巻いて逃げ出そうとする。今から、上空に飛び去ろうとするヘリをどうにかするのは難しいか】
631 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/16(月) 00:16:33.10 ID:REeaquw4o
>>629

勿論。

【即答するのはそれだけ相手を認めている、と言うよりそんな高い視点からでなく、隣にいてくれる存在だと信じているからだった】
【自分を頼って甘えてくれた頃も可愛かったし、今、少しでも隣に並べるようにと努力する姿も心底愛らしくて――当然、言えないけれど】

ああ……済まない、少し気が急いていたかな。私も、白い薔薇を調達して来るから……ゆっくり着替えて、あとセリーナへの連絡も、
「セシルが」とだけ付け足せば、多分キミは大丈夫だから――転移の術も使える、だからしっかり準備ができてからで、構わないから

【そう言えば、身体を離して彼もまた懐の端末を確認する。隣町の花屋――先日ある都合で訪れた場所。そこなら、花は確保できる】
【問題は相手の連絡だろう、一緒に話してやらなくて大丈夫かと不安にもなったが、平気だと言うならそのまま花の調達に向かうはずだ】
632 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/16(月) 00:28:29.76 ID:5M/n3jYZ0
>>631

【その言葉で、彼女はひどく嬉し気だった。こんなにはしゃいでいる彼女も珍しいだろうというくらいに、ぱーっと明るい気配になって、にこにこ笑っている】
【けれどやっぱり場面は場面で、ずっと浮かれてはいられない。それでもひどく嬉しそうに唇のはしっこでひそかに笑んでいたのだけど――】

ううん。じゃあ、UTに電話するね、それから、お着替えしてくるの。……へびさま、お留守番できるよね? あとね……あのお菓子何?

【ひとまずそういうことに話が決まれば。自分の携帯電話を見つけだして、履歴からその番号を探しだす。そうしながら声を掛けるのは――部屋の隅っこで、黙りこくっていた、白】
【やっと声を掛けられて少し驚いたようだったが大丈夫だとうなずき返すのに彼女も頷いて、……ついでに尋ねるのが、あの、ゆっくりと買いに行った、お菓子群だった】
【多分もっと穏やかな場面で手渡したかったのだろうけど、手遅れ。説明しようとしかけたところに「あとで聞くね」と言った彼女は、それでも、「ありがとう」とも付け加えて】

【そのまま着替えるついでに電話をしに部屋を出てしまうから。後は……少しの間別行動になるのだろう。何か間に面白いことがあるかといえば、きっとないし】
【強いて言えば部屋に取り残された白蛇が恐る恐るという様子で炬燵に潜っていったのだけど。誰も見ていないものだから、何の意味もない】

【――時間すれば三十分もないような頃合いだろうか。おそらく彼より先に準備を済ませた彼女は、どこで待つべきか悩んだように、さっきまでの部屋に居て】
【服装といえばあまり飾り気のない黒のワンピース。あるいは喪服のように落ち着いたもので――彼女の服飾趣味を思えば、わざとそれを選んだのだろう。あんまり派手でも、】
【それはそれで怒られそうな気がして――、とりあえず。そんな格好に着替えて、少し緊張した様子で、じっと待っていた】
633 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2017/01/16(月) 00:33:28.28 ID:WNG4/FKBo
>>630

【ばがん、と音がして、ドアが破られる。堰き止められていた警官たちが、わっと屋上に降り立って】
【ヘリの存在を認めると、わあわあ騒ぎ始める。そんな喧騒の中、白い少女はぽつんとひとり】
【指先が真白になるほど力強く、刀を握り締めながら――立ち尽くしていた】

【やがてその存在を警官に見つけられ、事情を訊くために囲まれることになるのだけど】
【それでもずうっと、ヘリが飛んでいく方向へ視線を固定したまま、しばらくの間動くことも喋ることも、ない】


……覚えましたよカニバディール。次は絶対、殺して差し上げますから


【ぽつりと吐き捨てる言葉は、悔しさと不甲斐なさの濁った色でぐちゃぐちゃしていて】
【ずいぶん経ってから、諦めたようにようやく刀を手から放す。それは光の粒子となって消え失せて】
【少女の異能が消え去ると同時、男を苛んでいた毒の効能も、徐々に消えていくことだろう】

【ようやく視線を空から外す。「すみません、今から話します」と、自身を取り囲む警官たちに告げてから】
【彼らと共に、屋上から姿を消すだろう。そうすればようやく、この路地裏に静寂が戻ってくる――】

//このあたりで〆ます、長いことお疲れさまでした……!
634 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/16(月) 00:50:44.93 ID:REeaquw4o
>>632

【夜の国――町外れの花屋】

【そこは店舗というよりは、住宅街の隅の古いマナーハウスをそのまま利用した花屋だった】
【古めかしい建物を、夜に咲く花々が彩っている。そんな庭先を抜けて、玄関を叩けば】
【きしむ階段をゆっくり降りてくる音と、老年の男性の声が誰の来訪かを尋ねた】

すまない、こんな時間に――私だよ、父さん。セシルだ

【その声を聞くやいなやでドアが大きく開かれて、背高な彼に劣らない背を少し曲げた男性が息子にハグをした】
【何事かと奥から現れた老年の女性もまた、室内履きもそのままに玄関先で彼等の環に交じる】
【浮かれた様子の父と母に、矢継ぎ早に用事を言えばすぐに品物は調達出来た。白い薔薇が二輪、それと、もう二輪】
【首を傾げたセシルに、夫妻はある事を申し出た。瞳孔の不揃いな目を見開いた彼は、暫しの黙考の後に、小さく頷いたのだった】


【――少し相手を待たせた頃合い、帰宅する足音がした。ただ、どういう訳か三人分のそれは】
【出迎えたなら分かるだろう、セシルが重い立て付けのドアを開けて通した二人の老人夫妻――どちらも、面影が彼に重なっていて】
【夫は赤毛の髪に白い物を混じらせてはいたが、息子に遺伝したのだろう高い背を加齢に曲げながらも、ハットを上げて挨拶をした】
【夫人は暗い髪色に同じく白い物を混じらせていたが、オリーブの瞳を瞬かせて、鈴音を見て感涙に思わず口元にハンカチを当てた】

……すまない、人数が増えてしまって。紹介するよ、私の、本当の両親だ

【以前まで、自分の両親は名も知らない浮浪者と売春婦だと聞かされていた。それが、悦那の情報収集と月彗の強行で、ついに探し当てた】
【本当の両親――かつては地元の名家だったその家は、6歳の息子がある日突然姿をくらましてから衰退の一途を辿った】
【原因は彼の姉――両親の愛情が息子に注がれるのを恨んで、下男に指示して泥の街へとセシルを捨てさせたのだった】

驚かせてしまったね、鈴音……詳しい話は後でする。だから二人共、落ち着いて……準備が出来たら、あの人の眠る墓標に向かう

【――両親の申し出。それは息子の妻に会いたいということと、育ての親である亡霊に感謝の気持ちを伝えたいとのことだった】
【唐突だったので連絡もできないまま連れてきてしまった。申し訳なさそうに、セシルは鈴音を見遣るのだった】
635 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方) [sage]:2017/01/16(月) 00:52:15.96 ID:Ormr+7ubo
>>633
【喧騒に包まれる屋上を尻目に、ヘリは彼方へと飛び去って行く】

【しかし、大男は未だ苦し気にヘリの中で呻いていた。毒によるものではあったが】
【それはまるで、ギリギリと刀を握りしめる少女の怒りに当てられているかのようでもあった】
【また、ずっとヘリの方へ向けられる視線に、突き刺されているようでもあった】

が、ふ……獲物だ、などと我ながらよく言ったものだ……
黒と白、どちらの女も顔は覚えたぞ……

『相変わらず世話焼かせやがるぜ。そこいらで見つけた相手をつまみ食いしようとすんのも控えたらどうだよ?』
「無駄だ弟よ、この男に食欲に抗えなどと言うことほど無駄なことはない」

【口々にぼやきながら、異形の盗賊団はアジトへと逃げ去っていく。少女の能力が解除されても】
【その毒から回復するのは、アジトに帰り着いてしばらく経ってからのこととなるだろう】

【新たに生まれた因縁を胸に、悪漢どもは再び闇へと潜っていった】


【その後。警察の調べで吹き飛ばされたビルの階では、カノッサのシノギに手を出した小規模な犯罪組織が】
【爆発で無残にも皆殺しにされていたことが発覚するのだが、そこには異形どもに繋がる証拠は残されていなかった】

【路地裏は再び闇の静寂に沈む。今宵のことなど、ありふれた事象だとそう言わんばかりに】

/長期間のお付き合い感謝します、ありがとうございました!!
636 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/16(月) 01:07:40.26 ID:5M/n3jYZ0
>>634

【そわそわとする、気持ちが落ち着かない。もしかしてこれはよくそういうドラマで見るような、娘さんを僕にくださいみたいな、そういうのの、逆なのかとか】
【かっこよくいったほうがいいのか。それとも……とまで考えて、お墓参りということになるならルールを知らないと今更になって、一人で慌てまくっている】
【とりあえず落ち着こうと電気ポットからお湯を入れて右手は携帯電話でお墓参りのルールを検索しながら待っている、それで、やがて、彼が帰ってきた気配がすれば】

おかえりなさ、――、ぃ、?

【そわそわとしていたから、余計なのだろう。ぱたぱたと小走りで玄関まで行って、扉が開くのを出迎える、それで、……知らないひとに、ひどく驚いた顔をする】
【目をまん丸にしてはてなをいっぱい浮かべて彼と、見知らぬ二人を何度も見比べるなか――彼らがどこかで似通っている気がして、驚きに漏らす吐息が、外の冷たさのせいで白くなる】
【やがて紹介を受ければ、それでもまだ少しぽかんとしていたのだけど。数秒して急に慌てたようになって、ばっ、と、きれいな角度で頭を下げれば】
【長い髪の毛が動きをまねしてふわっと浮かんで流れる、それで、発した声は。急だったからかひどくひっくり返って、何といったかよく分からなくって――】

わ、わ、えと、初めまして……、鈴音、です、あの、――セシル、さん、には、すごくお世話になって……、えっと、

【その慌てぶりに自分でも驚いたようにわたわたしながら頭を上げて、そんな自己紹介をする。ちょっとだけくちゃりと乱れた髪が変なところから飛び出して、格好はつかないけど】
【それでももしかしたら二人は彼女のことを知っているのかもしれない、テレビを見たりするなら――だけどそれはひとまず置いておいて、】

わた、わたしは、その、大丈夫……、……大丈夫っ、……ね、ほら、お着替えしたの。黒いのにね、したよ、ほら――。

【――それは置いとくとしても、慌てた様子は置ききれていなかった。何度もこくこく頷いてそれから服装が間違えていないかを確認してもらうように彼に尋ねる、】
【黒くてシンプルなやつであるのを見せるために裾をわずかに広げるようにして。布地が多くて少しゆったりした服だが、確かにおとなしいものではある。それと、黒のケープと】
【そうして彼に向ける視線が、ときどき彼の両親であるという二人へちらちら逸れていた。挨拶はあれでよかっただろうかとか考えながら、でも、これから、もっと大事なことになる】
【頭を切り替えようとしてわざと大きな深呼吸をする、完璧にとは言えないけれど、それでいくらか落ち着いたようだった。改めて彼に向ける目は、きちんと、凛としていて】
637 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/16(月) 01:30:41.86 ID:REeaquw4o
>>636

【老夫妻は確かに、テレビを通して彼女を見たことがあった。ただその時は、まさかこの子が息子の妻だとは思いもせずにいて】
【当の息子も、鈴音がテレビに出演していたことなどまるで知らなかった。そこでまた一悶着起きそうだったが、何とか落ち着けば】
【そう焦燥してもいけないと、夫妻ともに半分泣いているような表情で鈴音に握手を求めるのだけは、許してやって欲しいと言った】
【応じるかどうかは別にしても――長年息子の安否を心配し続けた、祈り続けた手の皺は深く、それでいて温かさが、彼とよく似ていた】

ああ、大丈夫だよ。ね、母さん――ほら、お墨付きだ。二人も喪服で、私も黒の祭服。問題は無いだろう、そも、気にするかも分からないが

【兄に至っては一時期革靴を取られて便所サンダルでお参りした事を告げれば、老夫妻はくすくすと笑っていた。兄弟の事も知っていて】
【さながらおじいちゃんとおばあちゃんを連れた彼岸の墓参りのようなヘンテコな集団は、玄関先にセシルが印した魔法陣の中に集う事となる】
【皆が円の中に乗ったことを確認して――セシルが指を鳴らすと、黄緑の燐光が四人を包み――たった一瞬で、暗い森の墓地に彼等は着く】

【逆十字が連なる墓地の中でも最奥、黒い墓標の前には命日の聖夜に置いた薔薇が三輪、枯れていて――錆びた銀の逆十字の影に、】
【新月の夜空を見上げた寂しそうな黒ずくめの女の姿があったように思えた、が――突如現れた一団を見れば、慌てたように姿を消した】

……皆、薔薇を持って。鈴音は、その薔薇に魔力を籠めて――そうすれば、薔薇は魔力の色に染まる。
父さんと母さんには、私の魔力を込めた薔薇を渡すから……墓標に供えたら、伝えたい事を。心の中でも構わないから――伝えて欲しい

【地の底で僅かに蠢くような気配があった。突然謎の一行に来られて困惑していた亡霊の女も、何処か状況を把握し始めたのだろうか】
【鈴音に一輪の白い薔薇を渡し、セシルは三本の薔薇を黄緑色に変えた。それから二本を両親に渡せば、まず先に墓標へと歩み出て】
【刻まれた名前の側に薔薇を置き、跪くまま右手を左胸に当てて、しんと何かを祈っていた――少し長めのそれを終えれば、次は鈴音へ】
638 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/16(月) 01:57:14.19 ID:5M/n3jYZ0
>>637

【出演。出演だろうかあれは。いや、出演だけど、当日数十分前まで知らなくて、半ば連行みたいに連れていかれて、いや、もう、忘れよう。という結論になる】
【それでも一応その流れでまともな格好でまともな感じで数度どこかのテレビでしゃべったこともあるかもしれないけど、あれは、もう、半ばトラウマみたいになっていて】
【とりあえず――握手を求められれば少し驚いたようだったが、慌てて応じるのだろう。少女らしいあんまり大きくない手のひら――荒れもしていなければ硬くもない】
【いいようによってはそう苦労してきていないような手のひら。それでも一生懸命失礼のないように握り返すさまは、一応そういう性質だと、少しは知れるようで】

うん、うん――よかった、真珠はね、もってないの、だから、えっと、……ね、真珠みたい、……。

【大丈夫だと言ってもらえれば安心する。それでもまだちょっと冷静じゃない……というよりはひどく緊張しているのかもしれない、いろんなことが急におこるものだから】
【櫻のやりかただとこういうときは真珠なのだけど。それは彼女の誕生月の石だけれど、持っていなかった。あるいは昔に買ってもらったかもしれないけど、この家にはない】
【だけどと取り繕うように笑った彼女が指で触れるのは右耳にだけつけた片っ方だけのピアス、その石――確かに白くてつやつやしているけど、だからといって、真珠では、】

【そんなやり取りも終えれば、少し彼の術式で送ってもらうのは、少し懐かしい気がする。それがどこか嬉しくて……だけど、素直に喜んでいる暇もない】
【すぐに場面が変わる、一応玄関先でも少し明るかった室内から、真っ暗な夜の中に――真っ赤な右目はいいけれど、真っ黒の左目が少し追いつかない】
【それでも渡される薔薇の白さにやっと目がはっきりしたようで。しっかりと受け取りながら言われたように真っ白の花を見様見真似で染め上げ】

……わ、わたし、

【やり方が分からなかった。西洋風の墓参りの仕方が分からない、だけど、今更言えなかった。少しおびえたように彼を見上げるけれど、頼りきりには、しない】
【おっかなびっくりと墓の前に立って、それから慌てたように頭を下げる。それで桜色に淡く光る薔薇の花を墓石に置いて、あるいは開き直り。櫻でするように、両手を合わせ】

【――真っ先にしたのが、この前、腕をひどく掴んでしまったことへの謝罪だった。怪我をしていたらごめんなさいと、していなくても、ごめんなさいと、心の中で、言って】
【彼女にとって大切なひとをきちんとした手順もなしに横取りしてしまったことも、謝る。挨拶だなんて、しなかった。あの頃は、ただ二人でいられればそれでいいと思っていた】
【だけど彼が居なくなってしまって。その時にはへびさまもいなくて、初めて一人になって、――それでどれだけ彼のことが当たり前になるくらい好きだったかが分かったこと】
【とにかく、とても大事に思っていること。できればずっと一緒に居たいこと。彼にひどいことをあんまりしないであげてほしいこと。――それから、最後に、】
【彼にとてもひどいことをするのなら、どんな手を使ってでも、どんなひとに頼ってでも、きっと、あなたを許さないこと】

【心の中での宣言。だけどそのひとになら分かるだろうか、あまりにもはっきりとそう心の中で言いきった割に、ひいいとやりすぎたような顔でもう一度頭を下げる彼女は、】
【たしかにあの夜腕を掴んだのと同じ乱暴さがあるくせに、ひどく臆病だった。終わった後も不備はなかったかとしきりに気にしている様子で】
【条件付きの宣戦布告をしたようなものだから不備どころじゃない気もするのだけど。それは、きっと、彼女の中で大切だった。だって、】

【自分のとっても大切なひとをひどく苦しめたり、悲しませたりするひとを、たとえ育ての親だとして、笑って許せてしまえそうなほど、お姉さんではないと、分かっていたから】
639 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/16(月) 02:24:38.41 ID:REeaquw4o
>>638

【相手の祈りを聞き届けたのか――黒い墓標は何ら反応を示さない。鈴音が想いを伝え終えれば、今度は老夫婦が二人で墓標の前に跪く】
【黄緑色と桜色を飾るようにそれらより淡い薄黄色となった薔薇を二輪添えて、二人共に左胸に手を当て――長く、長く祈っていた】

【――本当に、長い。何をそんなに伝えたい事があるのか、二人して跪く足を僅かに震わせながらも長らく長らく、鈴音の何倍だろうか】
【もっと言えばセシルの数倍に値するような祈りだった。――彼が祈ったのはただ、心からの謝罪と、今までの感謝の気持ち、それだけだ】

……ええと、二人共――

【マナーとしては行けないとは分かっていても、寒い中にいつまでも突っ立って待たされる鈴音の事も心配だった。恐る恐る両親へと】
【いい加減その辺りにしておいて欲しい、とセシルは告げるのだが――母親が、ただ静かに首を振った】

【やっと産まれた男の子。その事にばかり執着して姉を蔑ろにして、結果的に息子を失う事となって――ずっと、後悔の日々を送ってきた】
【もう死んでしまったものと諦めかけていたその息子に会えたのはつい先日の事、知らぬ間に出来た兄弟を歓迎して、結婚した事も知って】
【最後に一体どうやって生き延びたのかと尋ねた時にようやく彼女の名前が出て来た。一番感謝したかった相手、息子を育ててくれた恩人】

【そんな事を語っているうち震えた声に、父親が肩に手をおいて止める。それから二人してよろよろと立ち上がれば、墓標の前から離れて】
【四人して見つめる墓標には何の変化もない。まあ思いが伝わったのならいいのか、とセシルが素っ気なく呟いた瞬間、黒い霞が舞った】

“――あの子にでも、唆されたの? 一体何なの、揃いも揃って……私、貴方達の言葉なんて何も聞いてないわよ。あとね、鈴音ちゃん
誰に頼ろうが、私をどうする事も、誰にも出来やしないんだから。分かったら早く帰って、恥ずかしいったらないでしょう、こんな――”

【逆十字の影から響く声。黒いモーニングドレスの裾が覗いて、それから姿を表すのは――黒ずくめの、女の亡霊】
【暗に指していたのは紫色のことらしい。どうやら、紫色が彼女に恥をかかせるために仕組んだのだと勘違いをしていて】
【それだけ、この状況に酷く混乱しているようにも見えて――いつもの悍ましい気迫もどこへやら、両隣に笑われてないかを気にしていた】
640 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/16(月) 02:39:35.58 ID:5M/n3jYZ0
>>639

【本当にこれでよかったのかとまだ不安らしい彼女はしきりにスカートの裾を気にしていた。けれどそれも癖だ、不安な時、だいたい彼女は服のどこかを掴んでいる】
【だいたいはスカートの裾だとか、服の胸のところとか、そういった場所。けれど今宵はさすがに気を張っているのか、スカートの裾を手のひらで弄んでばかりで】
【だけどこの場で彼に聞いてしまうこともできなくて。お墓参りだなんてしたことがない、両親の墓がどこにあるのかを、彼女は知らない――だから、行くこともできない】

じゃあ、……じゃあ、ひどいこと、しないであげてほしいの、じゃないと、わたし……ないものをずっと探すことに、なるの、

【やがて彼らの順番が終わるまでおとなしく待っていた彼女は、彼が二人へ声を掛けた意味もきちんと分かっていなかったらしい。ただ、寒いよりも、緊張していた】
【黒い霧が舞えばびくっと肩を跳ねさせるくらいで、思いきりすぎたことを言った気もしたなら余計におびえて……というより、びびっているのが、なんとも小心者の様子】
【だけどかけられる声には。――そうだとしても、彼にひどいことをするのなら。どこで落としたのかも定かではない星の砂を砂漠で探すような、そんなことでも、する】
【そう宣言する、みんなの前で。"しないであげて"というからには自分のことではない、ひどいこと、しないであげて、――どうやら彼のことを言っているのだ、と、察せるような】

【蛇は執念深いだなんて、誰が言ったのか知らないけれど。少なくとも、彼女は、ちょっと――そうであるらしくって、】

……それに言ったのはセシルなの。

【――あの紫色の気配は、どこにもなかった。風はしんと凪いでいて、鳥のさえずり声もしない。だから、あれは、きっと、どこにも居ない】
【"あの子"が誰なのかよく分からないままでここに来たきっかけを言い返すのは。もしかしたら勘違いしている相手へ、きちんと、提案したひとを伝えておきたいみたいに】
【それでもとりあえず……怒ったりしていない様子なのを見れば、少し安堵したようだった。もともとお化けとかそういう類を怖がる性質ではない。気にしていたのは】
【怒っているか怒っていないか、あと、許してくれるのか――ただそれだけ。何も聞いていないだなんて言うわりに返事をくれることについては、なんとなく、黙っておくことにして、口を噤んだ】
641 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/16(月) 03:02:56.75 ID:REeaquw4o
>>640

“……セシル、早くその子とご両親を連れて、帰って頂戴。何なの、酷い事なんて知らないわ、私はもっと辛い思いをしたのに、だのに――”

お師匠様。お望み通り手早く済ませるから、答えを聞かせて欲しい――貴女にした仕打ち、その仕返しは余りにも大人気ないと思ったけれど
それでも――恩義を忘れたのは、私だ。私の事は許さなくていい、いいから、だから……鈴音にだけは。何もしないと、言って欲しい

【こちらも自分にではなく想う人を守るようにそう請い願うのが、何処かの童話のようだった。男は懐中時計を売って髪飾りを買い、】
【女は長い髪を売って懐中時計の鎖を買った――そんな悲しい話ではないけれど、どこか似通っているのは、悲痛なまでの互いの思い】

【黒い女は長らく押し黙っていた。ちらりと視線をやる先は老夫婦――この場で一番長く語り掛けてきた、二人へと】
【誰の思いも聞いていないなんて嘘だった。老夫婦が祈ったこと、鈴音が祈ったこと、セシルが祈ったこと――全てが、自分を苛むよう】

“……分かったわ、何もしなければいいんでしょう。だからもう、本当に帰って頂戴、一生のお願い”

【自分ががらがらと音を立てて崩れ去るような感覚――別の世界から連れてきた魂の生みの親でしかない老人二人に尽く感謝をされて】
【丸で違う世界に落っこちたような混乱だった。頼むから一人にしてくれ、と乞う様が、女の頬を明らめ剳せていた】

/申し訳ないです、眠気が限界です……
642 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/16(月) 03:06:55.39 ID:5M/n3jYZ0
>>641
/了解しました、明日は時間がよく分からないので、大丈夫になり次第お返事しておきますー
/確実なのは夕方以降なのでそのころになるかもですが……ひとまずお疲れさまでしたっ
643 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2017/01/16(月) 09:54:49.49 ID:MbN9Brx50
【明るく照らされた夜の街。その街と少しちぐはぐな印象を与える少女は、大きなキャリーケースを引きずりながらてくてくと歩いていた。】
【キャリーケースの上にはちょこんと市松人形が座っていた。進行方向とは逆を向くその人形に、道行く人は不気味がって近づかない。】

…今日は、ここにするの。赫、見張りご苦労さまなの。

【路地裏で足を止めた少女は、人形を労ってから、キャリーケースの中に閉まった。少女が歩いていた理由は今晩寝る場所を探していたからであり、足を止めた理由はその場所を見つけたからであった。】

いつもおうちの中にいたら、旅行気分が味わえないの。…それに、今日は外に出ておいた方が良いかも、なの。

【ぶつぶつと独り言を呟きながら、少女はいきなりキャリーケースの中へ入った。キャリーケースの中には、見た目に反して非常に広い空間が広がっている。少女が降り立った日本風の大きな屋敷の玄関には、先ほどの人形が座っていた。】
【少女はその人形を大切そうに抱えると、台所に向かった。そこにはいくつか携帯食料が置いてあり、少女はそれを晩御飯にするつもりらしい。】

赫、あなたも一緒に食べるの。夜は危ないから、蘭とメイメイも一緒なの。

【キャリーケースから出てきた少女は、市松人形に加えて西洋人形とパンダのぬいぐるみも抱えていた。少女は少し疲れたようにキャリーケースの上に座った。携帯食料を食べながら、少女は何か考えているようだった。】

…やっぱり、今夜は寝ずの番になるの…。

【はあ、とため息をついて少女は決心する。少女の胸に渦巻く嫌な予感は、少女に夜の野宿を選択させ、寝ずの番を選択させた。少女にとって、眠らないというのは非常に不本意な行動だったが、身の安全には変えられなかった。】

赫、蘭、メイメイ。今日は眠れると思うな、なの。私も、少し準備をしておくの。

【三つの人形に話しかけながら、少女はキャリーケースの中に手を突っ込んだ。少女の手には、またも人形があった。少女はその人形を自分の傍に置いて、座り込んだ。準備はそれで全てだった。】

/お返事お待ちしております…!
644 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/16(月) 19:07:40.75 ID:5M/n3jYZ0
>>641

【あの日に何があったのか、彼女は全く知らなかった。だから、そこで何があったのかは知らなくて、多分、口を出すこともしちゃいけないことで】
【それでも二人のやりとりが少しだけ不安で。スカートの裾を揺らしていた腕をそっと伸ばして彼の服の背中を指でちょっとだけ摘み取る、少しだけ下がった眉で、彼を見上げて】
【ふと気づいたようにして、それから老夫婦の様子も視線だけで伺って、不安そうに触れていた手を、こっそりと、おろす。それで、一人、しゃんと立って】
【レディの基準はよく分からないけど、そう言ってくれたこと。お嫁さんみたいだと言ってくれたこと。言葉のおまじないはまだ残っていて、だから、少し大人ぶってみる】
【何より彼の本当の両親である二人にひどい甘えん坊で臆病な子だと思われてしまうのは、なんだか嫌だった。それじゃあ、ただ、困らせているだけみたいだから】

……ね、帰る――?

【――今度はきちんと気づいてもらえるように背中に触れる指先がある。さっきのも、もしかしたら、気づかれていたのかもしれないけど……それで、ゆるく服を引いて】
【視線はまだ亡霊に向けられていたが、やがて彼へ移ろって。――自分はあのひとのやり方をよく知らない、だから、そう言われたときにどうするのが正解なのか】
【分からなくて、一番知っているだろう彼に、尋ねるのだった。声は潜められていたけれど金属質の声じゃああんまり意味がない、尋ねた声は、きっと、彼女にも届くようで】
【気遣うようなものだった。だから早く帰りたくて帰りたくて仕方ないあまりに尋ねた、ということではきっとなくて――ひとりにしてあげるべきなのかどうか、遠回しに、尋ねていた】

/遅くなりましたが、これから先大丈夫になりましたのでお返しします!
645 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/16(月) 19:55:08.97 ID:REeaquw4o
>>644

本当に――、

“いい加減にして!!”

【亡霊の絶叫に近い声が墓地に木霊する。老夫婦が心配げに身を寄せ合って、それでも確信を欲しがる男の背を、そっと引く手があった】
【我に返れば鈴音は心配げな表情で、両親はそういう訳で、何より目の前の亡霊はもう顔に両手を当てていて――やり過ぎた、それ位に】

……そう、しようか。帰ろう、――私達は

【ゆるく引かれた背にあの亡霊への気遣いがあると分かれば、もうこの場で彼女に確実に誓わせるなんて横暴な手には、出られなかった】
【私達は――そう言って遣った視線は墓地の入口。重い靴音が響いて来て、現れたのは、前が見えるか怪しい程長い赤髪の神父らしき者】
【次兄と同じ黒の祭服こそ着ていたが、首からは逆十字を下げ片手にはブランデーの瓶、何より大柄な身体が、酷く職に似つかわしくない】

「素面じゃ冷えるだろうよい、何よりじーさんとばーさんも居るんじゃあ、とっとと帰るのが一番さぁ。ひいばあさんもそう言ってるぜ、」

【年の頃は亡霊と同じ位、五十代手前といった所。片手のブランデーを舐めるように飲み、はぁと吐く息は白く、今宵の寒さを分からせる】

「この場は俺に、預からせてくれよい。なぁに、貸しって訳じゃあねえのさ。当然の義務、ってやつだぁ」

【大男がそう言って豪快に笑った一方で、亡霊の女は唖然としていた。次から次へと唐突に起きる事に意識が追い付いていないような、】
【ただそれは、確かな機でもあった。片手で鈴音の手を、もう片方の手を老夫婦に伸ばしたセシルは、そのまま転移の陣を地に浮かばせる】
【皆問題なく彼に触れられれば、ほんの一瞬の後にはもうあの玄関先に着いている。当然のような詠唱破棄の乱暴なそれには、ほんの一瞬】
【何かを亡霊へ伝えたいなら――伝えてしまえるだけの、隙があった。その一瞬だけ、亡霊の潤んだ黒い眼差しが、彼等を見ていたのだから】

/お待たせしました、よろしくお願いします!
646 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/16(月) 20:24:27.41 ID:5M/n3jYZ0
>>645

【亡霊の上げた声で、服を気弱げに引いていた手がびくりと跳ねる、それでもう一度その服をさっきよりも強く引いた手は、やりすぎている、とどこかいうようでもあって】

ね、そうしよう? ね――、もうきっと大丈夫なの、きっとね、ちゃんと聞いてくれたから、……、
みんな身体が冷えちゃう、わたしもね、コートを着て来ればよかった、ちょっとだけ、寒いから――。

【彼の視線がこっちに向けば心配そうに下がった眉はそのままで笑う、あんまりに雰囲気が悪くなりすぎないように気にしたのだろう、でも、すこし、空回っている】
【聞き入れてくれたではなくて聞いてくれた、聞いていないだなんて多分うそっぱちだから、あとは、きっと考える時間が彼女にも必要だろうと、なんせ、驚かせてしまった】
【少し明るく作られた声がだんだんと下がっていく、急に訪れて、このままでは本当の喧嘩になってしまいそうで。そう思う気持ちをたっぷり顔に出してしまったところで、】
【はっと気づいてまた明るくつくろった声が、今度は、自分や、彼の両親ことになって。もちろん彼も寒いだろうからと言って、でも、最後はやっぱり自分も寒いな、と、求める】

わっ、

【そうやって必死に彼をなだめていたら。急に聞こえた足音、振り返れば知らないひとがいて、なんだか、知り合いっぽくて……よく分からなくて彼を見上げようとしたところを、】
【手を捕まえられて――それであんまり離れてしまわないように身体を寄せながらも、視線はじっと神父めいた男のひとと亡霊を見ている、視界の一番下にちらりと黄緑色が覗けば】
【ぱく、と、小さく口が動いて。何か言葉を探すような一瞬、――もしかしたら相手は気づかないかもしれない、とっさに出そうとした声は、喉の奥のほうが詰まってしまったようで】
【うまく音に出せなくて、でも、口の動きだけで――ありがとう、と。聞いてくれたことになのか、それとも別のことになのか、自分でも、少し、分からなかったけど――】

【――それから、また、近頃ではすっかりと見慣れた場所に景色がすり替わる。一瞬場所をきちんと確認するように視線を動かした彼女は、】

あっと……えっと、お部屋の中、暖まってます、だから、よかったら――身体が冷えちゃったら、大変です、から、お茶でも。

【彼に取られた手、許されるならそのままぎゅっと握っていようとしたままで、そう、老夫婦へ――提案するのだった、それから、振り返って、】
【「ね、いいよね、」――そう彼にも尋ねて。少し口を出しすぎているかもしれないと不安そうな顔をずっとしているのが、まだすこし未熟で、子供っぽくて】
647 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/16(月) 20:55:48.82 ID:REeaquw4o
>>646

【ほんの一瞬――亡霊は、相手の口元を見逃さなかった。姿が見えなくなる直前、しおらしいただの女の頬を、一筋の雫が伝っていった】
【そして無事に全員が元の場所へと辿り着き。まだ先程までの緊迫した空気感から抜け出せないまま茫然としていれば、相手からの提案】
【当然有り難いそれに礼も言えずただセシルは頷いて、それでやっと先程から止めていた呼吸に気が付いたよう、大きく肩を撫で下ろした】
【老夫婦はといえば若い二人の住処に邪魔する事を少し目を見合わせて悩んでいた様子だった。けれど息子の奥さんからの申し出なら、と】
【「ありがとう」と言葉少なながら二人して小さい笑顔で頷くのが、やはり親子のようだった。――それからは、団欒になるのだろう】


【――その一方、二人きりになった墓地。冷たい風が吹き抜けて、大男が手も当てずに盛大なくしゃみをした。照れ隠しのように頬をかき】
【そんな相手を亡霊はただただ戸惑うように見ていた。知らない相手ではない、否、知り過ぎてしまっている、この間の抜けた大男は、】

“先代……なんで、どうして、”

「――先代? 悪いが俺ぁ知らないねぇ、本部から要監視対象に動きがあった、ってハナシで、わざわざここまで出張って来たんだよい」

【しらを切っているのか、或いは煙に巻こうとしているのか。亡霊ですら判断のつかない大男は、再びブランデーを含めば夜空を仰いだ】
【要監視対象――セシルの事だった。当然、つい先日までこの女に操られて行方を晦ましていたのだから、組織から渡された端末には】
【位置情報を代表が確認出来る仕組みが埋め込まれていた。居場所が唐突にこの亡霊の墓地になったとあれば、当然警戒するだろうこと】

「まぁ……俺が選ばれたのは、ただの偶然だよい。だからヴェロニカ、みっともねえ顔すんな。折角の可愛こが台無しだろう、なぁ?」

【亡霊の目が見開かれる――もう、百五十年前も経っていた。目の前の相手によく似た男から、同じ言葉を、夜色の書斎で掛けられた】
【突然に、彼女はそこに辿り着いたのだ。幾多の惨殺の罪で処刑される瞬間、首斬り人の顔が好みだった事だけははっきりと覚えていて】
【気が付けばこんな場所で、好みでも無い年上の男に何やら宥められている。ただその時に見えた相手の目は、素直に綺麗だと思った】

【五百年の責務の、代変わりの記憶。目の前の大男は確かに、亡霊の先代の「綴り手」だった。風に吹かれた青い目が、何よりの証左】
【気付けばまるで娘子のように泣きじゃくってしまって、透けた腕を伸ばしてその胸に縋る。感触のない亡霊の体を、大男は抱き締めた】

【――全ては、余談に過ぎない。セシルと鈴音の与り知らない所で。ただ、確実に言えるのは――もうこの女が何かを企める事は、ない】

/次遅れます
648 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/16(月) 21:36:54.81 ID:5M/n3jYZ0
>>647

【家の中はよく暖められていた、というよりも――あの白蛇が普段居る部屋だからか、だいたいいつも、この部屋ばっかりは暖かくされているのだけど】
【老夫婦を招き入れた彼女はそのまま二人をテーブルに誘って、――同じ部屋にこたつとかもあるからなんだかすごいちぐはぐだけど、とりあえず】
【部屋に置いてあるティーバッグの紅茶じゃない、もっときちんとした紅茶を淹れに部屋を出るのだろう――それで、戻って来れば】

【ちょっと上質な紅茶と、簡単につまめるちょっとしたお菓子。それを二人に出して、それからは――】
【今更二人が彼の両親であるのを認識したらしくて、一人ですごく緊張してしまっていたりする。なんせ、こういう、両親……というものを、久しぶりに見た】
【自分の両親はとうに死んでいるし、幼馴染――あの紺色の髪の女の病弱な母親の見舞いに何度かついていったこともあるけど、あれは、なんだか一人の女性のようで】
【二人がそろった夫婦、まして、それが、自分にとって大切なひとの両親だというのは、なんだかすごく照れくさいし、恥ずかしいし、気づけばすっかりと身体を硬くしている】

【自分の両親も、もし生きていたらいつかこうなったのだろうか、とか、思ってしまえば少し寂しくもなる。親孝行ができなかったこととか、墓の場所さえ知りもしないこととか】
【緊張しながら寂しがりながら、だけど彼のそんなひとたちに会えたことが嬉しかったり、なんだか、今日はいろいろと気持ちがぐるぐる動いて、鍋の中でかき混ぜられているよう】
【それならそのうちに出来上がっちゃうものは、だけど、多分悪いものじゃないはずで、というより、そうだったらいいなと、思って】

【何か二人の方から尋ねたいことでもあれば彼女はきっとほとんどのことは答えるだろう、かといって、こちらから何かを聞くのかといえば】
【すっかりと委縮してしまって、まだそういう状況ではないらしい。だからしばらくは聞かれるばっかり、そんな様子だった】

【――どこかで行われている会話は知りもしなかった。もしかしたら彼女はもう少しだけ、あの、彼の育ての親である彼女のことを気にするべきかもしれなかったけど】
【それよりも――目の前のことに精いっぱいになってしまっていて、それが、まだちょっとだけ未熟な部分でもあった。レディ気取りにはまだ少し、早い――のかも、しれない】

/送信しそこないと手違いで文章消してしまったので遅くなりました……申し訳ないです
649 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/16(月) 23:24:11.21 ID:REeaquw4o
>>648

【――この老夫婦も、実の息子について語れるのは六歳の時までと、つい先日再会からの、僅かな期間だけ】
【だからきっと。相手が尋ねる間も無いくらいに質問責めにしてしまうのだろう、その間の“彼と相手”について】
【どうして二人は出会ったのか。何故彼を選んでくれたのか。どんなことがあって、どんな思いをして、今があるのか】

【「あなたは、幸せですか」――それが、母親から。「私の息子は、幸せです」――それが、父親から】
【遠い目をして会話にあまり加わらないセシルは、何を話せばいいのか何も分からなかった――育ての親は、別に居るのだから】
【ただ。鈴音がどう答えるのか、それだけはきになったように、肘をついて外を見ていた視線を、相手に向けるのだった】

/大変遅くなりました……そしてこの辺りで〆るか、そちらに〆て頂くか、お願いしたいです
650 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/16(月) 23:48:42.59 ID:5M/n3jYZ0
>>649

【彼は子供の頃にどんな子だったのか。ちょっと気になるけれど本人を前にしては尋ねづらかった、それに、それどころじゃなくて――質問攻め、それも、すごい勢いで】
【ど緊張の中でさらに質問攻めにあうのは洗濯機に入れられた洋服みたい、一つ一つ質問が増えていくたびにぐるんぐるんと回されているみたいで困った顔をしてしまうのだけど】
【それでもできるだけ返事をしていくのだろう、――もしかしたら全部に答えることはできないかもしれないけれど、それは、こうで、】

【どうして出会ったのかと言われれば、自分が一番苦しいときに、ふらふら歩いていたら……嘘は言ってない】
【どうして彼を選んだのかと言われれば、とても優しくて、自分の知らないことをいろいろ知っていて、一緒に居るだけで、世界がきらきらするみたいだったから、……それも、本心】
【だけど何より自分こそ彼に選んでもらったみたい、と、ちょっと自嘲ぽく笑う、それくらいにすごいひとだから、と、そう付け加えて】
【どんなことがあって――そう聞かれれば少し困ったような顔になる、いろいろなことがあったからと小さく呟いて、自分の分の紅茶を一口飲んで、それから、】
【出会ったばかりの頃に山ほどにクリスマスプレゼントをくれたこと、いつだって喜ばせようとしてくれること、銀杏並木のプロポーズに、空飛ぶ船で、結婚式をして】
【そんな、今までの嬉しかったことを一つ一つしゃべっていく、あるいは以外だったかもしれないのは。誕生日にくれた、小さな果実――それが採れる森に、一緒に行く約束をしたこと】

【そして、それが、いつか一緒に連れていってもらえるくらい、強くなること……背中に守ってもらうだけじゃない、横並びで同じ景色を見ること、それが、夢であること】

もちろん、わたしは、とっても……、初めて会った頃は、悲しいことばっかりで、もう、ぜんぶ、嫌になってて……でも、いまは、
とてもしあわせで、だから、――えと、かなしいわたしも、しあわせなわたしも、知ってくれてるひとだから、

そんなひとが、わたしと居て、もしそう思ってくれるなら……、……それは、きっと、……今まで生きてきた、その中で、一番、嬉しい――。

【彼らに言えるはずもないけれど。人間でもない、何でもない、そんな自分を拾ってくれて、見捨てないで、ずっと、一緒に居てくれた、ひと】
【恩人だし、尊敬するし、憧れる。何よりだいすきで……愛しているし、これから先も、ずっと一緒に居たいと思う。しゃんと伸ばしていた背中が少しだけ、丸くなって】
【ぎゅっと膝の上でスカートの布地を握りしめている、自分の気持ちを言うのは得意ではないけれど、それでも、この気持ちを、彼のことを大事に想っているひとに】
【自分も大事に想うから、精一杯に伝えたくて、頑張っているうちに――最後のほうなんて、目にいっぱいの涙をためてしまって、ぼろぼろと泣きだしまで、してしまう】
【どうして泣いちゃうのかもわからなかったけど、多分、嬉しすぎてだと思った。そんな風にちょっとだけ冷静な自分がいて、でも、止められなくって】

【そんな風にして、多分、夜が更けていく。もっと質問攻めされたとしても、多分、そんな感じで返していくだろう、なにより、もう夜も遅いから】
【多分そんなにいつまでもというわけでもないだろうし――それなら、きっと、彼女の頭の中だって、ショートとかフリーズとかしないで、やり通せる、はずだった】

/おつかれさまでした!
651 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) [saga]:2017/01/17(火) 11:56:40.37 ID:B2WyX6OOo
>>650

【本当に矢継ぎ早のように質問をしていくのが、奥さんに会えた喜び八割と言えない事が二割――仲が良さそうなら話せるかと思いきや】
【最後には泣き出してしまったのだから。老夫婦はそれを見るや曲がった背で慌てて右往左往して、次兄は何かもうどうしようもなくて】

【――相手が落ち着いた頃。罰の悪そうに、ようやく老夫婦の方から彼についてを話しはじめる。当然、六歳までの記憶という前提で】
【それはそれは酷い物だった。姉の五つ下、初めて生まれた跡継ぎだからと散々に甘やかして褒めそやして、所謂馬鹿親だったと自白する】

【だからと言って――下男の背中を飛び蹴りして思いっ切り転ばせて遊んだり、家中の壁という壁にドラゴンの絵を描いて遊んだり、】
【誕生日のプレゼントが一つでも昨年より少なかったり小さかったりすれば近隣中に響く大声で泣いて暴れてどうしようもなかったとか、】
【姉の服を着て母の化粧をして家を飛び出してはパントマイムをして近所中の笑い者だったとか、月に一度は癇癪で家の何処かが破損したとか、】

……もう、もう良いだろう、謝るから。だからもう、止めてくれないか――ほら、夜も更けてしまった。送っていくから、帰っておくれ

【終わりの方には、随分な暴れん坊だったらしい三十六歳の男は、もう両手で顔を抑えて俯くことしか出来なくなっていた】
【それ以上の酷い話が出てくる前に必死に両親を止めれば、もう終わりと勝手に場を締め切って。半ば手を引くように自宅へ帰らせようと】
【もしかしたら泊まっていけば、と言われるのかも知れないけれど。老夫婦は流石にそればかりは固辞して、最後に相手へ握手を求めて】
【セシルの術式に送られ、やっと帰途につく。やっと静まり返った家で――「もう寝ようか、」と掛けた声は、酷く小さいものだった】

/ありがとうございました、お疲れ様でした!
652 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/20(金) 21:52:31.46 ID:SxgI+3b7o
【高速道路――サービスエリア】

【水の国中心部からやや山間に入る場所。綺麗だが、然程大きくもないSAは人気もなく】
【しんと静まり返った中で、自動販売機の音がやけに大きく響く。飲物を選びつつ、片耳に当てた端末で誰かと話す女性の姿があった】
【オレンジの長髪に白百合を挿した、黒のライダースーツ姿の女。側には大型のバイクが停まっていて】

……ううん、同じチームの人と一緒に異動出来てホッとした。『器』の件も、あたしの意思で承諾したから――うん、多分。大丈夫

【銀地の端末には黒で彫られた四枚の翼の紋章があり、そのうちの一枚――ジャバウォックの羽が特に目立つ】
【通話をしながら選んでいた飲物の金額がもう少し足りない事に気付いた女は、ピッタリとしたラインの服のポケットから小銭を漁るも】
【硬貨が一枚、転げ落ちて行ってしまった。慌てて拾おうとした所に込み入った話が入ったのか、視線が耳に当てた端末の方へと向いて】

――正直、このタイミングでのジャバウォックへの異動は嬉しかった。月彗と理人の動きが妙で、関わりたくなかったから
Elysionも動き出したばかりだし、当然一枚岩じゃないよね。何かあったらよろしく、リーダー……あれ、

【気付けば、転がった硬貨をすっかり見失っていた。電話口から低く響く「どうしたよい、」という声に「こっちの話」と女は返すも】
【大した額では無いのだがどこに落ちたものか気になるらしく、端末からの声にも空返事のまま右往左往していて――】
653 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/21(土) 21:06:10.43 ID:KCvCnmeto
/>>652ゆる募
654 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/24(火) 00:11:00.20 ID:AbtjV5w1o
/>>652引き続き募集しております。
655 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2017/01/24(火) 01:51:53.31 ID:Hah4+Vg30
>>652
【ガラガラとキャリーケースの音が響き、カツカツと編み上げブーツを鳴らす、着物姿の少女がいた】
【おかっぱに切りそろえられた黒い髪の毛が、サラサラと揺れる。その黒い目は闇のように深く、整った容貌もあり人形のようだった】
【野宿の日々に飽きて、話し相手はキャリーケースの上に乗った人形のみ、という状況にも少し飽きて。だからだろうか、普段なら気にならない音が気になった】
【チャリン、という少し高めの硬い音に見るとはなしにそちらを見ると、長い橙色の髪をした女が、キョロキョロと辺りを見回していた】
【足元に転がってきた小銭を拾い、女性に幼い少し高めの声をかけた。一言でも良いから他人と話したい、という退屈しのぎでもあったし、単純な親切心からでもあった】

__お姉さん、これ、私の所に来たの。お姉さんのものであってますか?なの。

【おずおずと差し出されたその手には、いくつかの硬貨が乗せられている。その顔には珍しく、人の顔色を窺うような表情が浮かべられていた】
【彼女の手をとるか、取らないかは自由である。彼女が引きずっているキャリーケースの上の人形も不気味だし、彼女自身もまた得体の知れない雰囲気である。】
【また、彼女自身は待てと言われればいくらでも待つだろう。珍しい気まぐれゆえか、彼女は今、無茶な要望でもない限り、聞こうとする。手を差し出された女性がどうするかは、彼女には分からない。】

もしよろしければ、お願いします
656 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/24(火) 03:23:17.74 ID:AbtjV5w1o
>655

あ……、じゃあ、また。後で連絡する

【声を掛けられ、探していたものを差し出されれば女は一瞬深い茶色の瞳を瞬かせて、通話中だった端末を早々に切った】
【それから相手に向き直れば、キャリーケースの上の人形を少しばかり不思議そうに見て――恐らく自分より背の低いだろう相手へ頷き】

あたしの。ありがとう、拾ってくれたんだ? 嬉しい。本当に助かった、

【笑えばそれなりに女らしい女だった。背高でこそあれ揺れる白百合の花と綻んだ笑顔は、何の疑いもなく相手へと向けられている】
【小銭を受け取れば再び自販機へ、拾って貰った分とあと幾らかを投入すれば温かいカフェオレを選んでから、やや迷った後に温かいおしるこを追加した】

これ、お礼。苦手だったらごめん、何かあなたに合いそうだったから。えっと……あたし、紫苑。永倉 紫苑。よろしくね。人形、好き?

【「座らない?」と視線で指す先は街灯下のベンチだった。立ち話も何だし、お礼だけして別れるのも何か、つまりは少し話したいらしい】
【自然に話題に挙げたのは相手のキャリーケースの上に座る人形。嫌悪感などはないらしい――飲物を受け取った時、手が触れたなら】
【相手は気付けるかもしれない。女の手は、蝋人形のそれだった】

/気付くの遅れました……! お返事はいつでも大丈夫ですので!
657 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2017/01/24(火) 12:28:48.61 ID:Hah4+Vg30
【にこりと笑ってお礼を言われた少女は、それが少し意外だったらしい。嬉しそうにはにかみ、その後差し出されたおしるこにはパァっと目を輝かせた】
【女性の手が蝋人形のものだ、という事にも気付いたらしい。しかし少女はチラッと女性の顔を見ると、表情を変えずその事には触れなかった】

__おしるこ…!おしるこ、大好きなの。紫苑、さん!こちらこそ、ありがとうございます、なの!私の名前は、冬道 風花、なの。
___お人形は好きなの。お人形達は、私のお友達なの。危ない人がきたら、お人形さんが戦ってくれるの。
お姉さんは、お人形、好き?

【渡されたおしるこを両手で大切そうに受け取り、少女は嬉しそうに微笑んだ。人形のようなその顔は、笑えばとても無邪気な可愛らしさを生み出した】
【人形の頭を撫でながら、少女は誇らしげに嘯く。はたから見れば、良くある人形遊びどあるように見えるだろう】
【女性が人形を不気味がらずに、話題にあげたのが嬉しかったのか、少女は女性の誘いに乗って話しながらベンチへと歩き出す】
【もしも女性が少女の人形を見ていれば分かるだろう。人形がキャリーケースの動きに合わせて、落ちないようにちょこちょこと動いている事を】
【少女は歩いている為、女性が少女の人形を見つめていても気付かないだろう。時折人形をチラリと見るが、女性の様子にはあまり気を回していない。】

/こちらこそ気付くのに遅れてしまい申し訳ございません…!私もいつでも大丈夫です、宜しくお願いします!
658 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/24(火) 13:34:56.83 ID:AbtjV5w1o
>>657

あっは、良かった。そんなに喜んでもらえるとは思わなかったから……冬道 風花。風花ちゃん、でいいかな
お人形、好きだよ。私自身、お人形みたいなものだし……遊ぶ人に振り回されるのは、御免だけどね

【――何となく、妹がいたらこんな感じなのだろうかと思った。自分は、この手に掛けてしまった弟の、ほんの幼い時しか知らない】
【相手の人形が動くのと同じように――近くに停めたままのバイクの周りで、六つの手首が浮遊して何かを探していた】
【時々手首同士でぶつかったり、バイク以外の場所にふらふら行こうとする手首を止めようとする手首があったりと、妙な事になっていたが】
【目的は一つだったらしい。バイクの後部ポケットに積んであったひざ掛け――それを手達が投げて、女が受け取る】

風邪引いたら大変だから。これ、一緒に掛けとこう

【先にベンチに腰掛ければ、女はひざ掛けを広げる。相手も座れば、足元を温めるように掛けようとするだろう】
【浮遊していた手首達はというと、相手を警戒させない為か、バイクの傍から離れずにいた。時折、退屈そうにお互いをデコピンしていて】
659 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2017/01/24(火) 14:02:43.66 ID:Hah4+Vg30
>>658
【動く手首と、女性が掛けてくれたひざ掛けを交互に見ながら、少女は礼と、少し遠慮がちな質問を女性に投げた】

__かさねがさねありがとうございます、なの。
…あそこにいるのは、紫苑さんのお友達?…それとも、紫苑さんの身体?

【聞いていけない事だろうか、と思いつつも口にしてしまった疑問は消えない。彼女自身に気持ち悪いという感情は無いものの、聞くこと自体がタブーであれば、それは申し訳ない】
【しかし、もしそれが少女にとっての人形と同じものなのであれば…そんな期待をしつつ、少女は上目遣いに女性を見た】
【見た目は10歳程、身長130cm程度の少女がみせるには少し大人な表情だったが、それは確かに相手を気遣う顔であった】
660 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/24(火) 14:24:42.21 ID:AbtjV5w1o
>>659

気にしないで。――あれは、ただの後悔。私が伸ばさなきゃいけなかった手……掴まなきゃいけなかった人を、ずっと探してる、後悔の念

【二十四の女にはもうとっくに似合わないような、幼い悲しみの表情だった。百七十を越す背は女らしくもなくて、全てがちぐはぐだった】
【自分の腕をなんとはなしに見つめた女は、手の甲を軽く小突く。蝋の軽く鈍い音が響いて、それでも柔らかく動く関節は不思議そのもの】

いつかは……この身体は人形になる。罪が白日の元に晒された時――それが、あたしの死ぬ時だから。残った身体はさしずめ、後悔の塊かな

【罪。その言葉だけがぞっと重たく、ちょうどこんな深夜の底から冷えるような感覚を思わせる。それが太陽に照らされた時、自分は死ぬ】
【死ぬしかないのだった。それが女に出来る贖いであって、唯一の救いのような】

今でもこの身体は人形……と言うか、いろんな人の器にされてるんだけどね。もしあたしを何処かで見掛けても、花が違う時は気を付けて

【今は白百合。それが、器となり誰かに乗っ取られた時は別の花になるのだと言う。人格交代、或いは憑依の器――妙な御伽噺のようだ】
【「つまらない話、聞かせちゃったね」と笑えば、女は温かい缶を両手で持って、カフェオレを口に運ぶのだった】
661 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2017/01/24(火) 17:03:46.57 ID:Hah4+Vg30
>>660


【女性の話を聞いて、少女は少し恐ろしかった。女性が人形ということは、女性は、少女の操る対象に、入り得るのだ。少女の能力は、人形を操る能力だ。】
【自分の能力は、目の前の女性を操るかもしれない。可能性は低いとはいえ0ではなく、その事実が少女に悲しみをもたらした。】
【一瞬、少女の顔に憂いが出る。女性】
662 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2017/01/24(火) 17:05:49.47 ID:Hah4+Vg30
>>660
/ごめんなさい!>>661は誤爆です…!
663 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2017/01/24(火) 17:45:23.40 ID:Hah4+Vg30
>>660

【話を聞き終わり、少女は女性の頭にそっと手を添えた。血が通っているとは思えない冷たさだったが、ぎこちなくその手は女性の頭を撫でた。】

__紫苑さんの罪が何かは分からないの。
でも、罪は償えないの?…どんな罪でも、罪は償える、って私は教わったの。心からの反省があったら、罪は許されても良いと思うの 。時と場合による、けど…

【女性の頭を撫でながら、少女はぽつりぽつりと話した。女性の罪が何なのかは、少女には分からなかった。それでも、少女は話した。】

__紫苑さん、ごめんなさいなの。辛いことを、思い出させちゃったの。

【伸ばさなければいけなかった手を伸ばせなかった後悔。少女にも一つだけ、そんな後悔があった。誰になんと言われようと、自分を許せなくなった。】
【手を伸ばしたくて、伸ばせなかったあの時。伸ばせなかった手を嘲笑うように、人形を操る能力が発覚した時。いずれも酷く苦しかった。】
【女性は今、あの時の自分と同じなのだろうか。そう思いながらも、少女は考えていた。自分が女性を操れてしまう可能性を。もし、女性が死んでしまったら。】
【自分が操る能力と、その可能性が怖くて、少女は考えを振り切るように女性に声をかけた。】

紫苑さん。紫苑さんの後悔が何か、教えて欲しいの。私聞いたことがあるの。罪の意識が原因で、身体が人形になる呪い。もし、紫苑さんの身体がそういうもので、治せるなら、私は紫苑さんの身体を治したいの。
…駄目だったら、言って欲しいな、なの。私は、紫苑さんの力になりたいの。おしるこのお礼なの!

【一生懸命に少女は話す。兄から教わった知識の中に、人形になっていく病や呪いが幾つかあった。もし、それの一つならば、どうにかなるのではないか】
【突拍子もない提案だと言う事は少女も分かっていた。それでも、目の前の人に、先ほど向けられた柔らかな笑顔を取り戻して欲しかった】

/誤爆申し訳ありませんでした…!
664 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/24(火) 18:10:01.58 ID:AbtjV5w1o
>>663

――心からの反省が、なかったら?

【街灯の下、照らされる相貌は人形めいて何の熱も持っていなかった。必死に語り掛けてくれる相手を数秒見つめて、それから】
【すまなそうに笑うのが、どこか狡い女めいていた。撫でられる感触に目を細めて、自分よりも小さな相手の手に浸っていた】

気にしないで、聞かせちゃったのはあたしだから。風花ちゃんは、何も悪くないし、関係ないから

【切り捨てるような言葉はただ、自分に関わる事で相手に危険が及ぶ――その可能性からだった。今居る組織も、一枚岩ではない】

……多分、風花ちゃんの言う呪い。合ってると思う、あたしがこうなり始めたのも、あの手がついてくるのも、全部のきっかけがあの日――

【言葉が急に途切れる。カフェオレの缶を握り締めていた両手が、ぐしゃりとそれを潰した。髪に挿された花が、白百合から毒花へ変わる】
【やがて――隣にいるのは、先程まで話していた紫苑ではなくなっていた。同じ顔で、同じ声で、同じ姿で、ただ髪の花と表情が、違う】

「……っハハ、すっげーお節介。お前、そんなモンの礼に命賭けられんのか? 何が『紫苑の力になりたい』だ、会ったばっかの相手によ」

【まるで男のような言葉使いだった。自分に掛かっていた膝掛けを相手側にぶっきらぼうに投げれば、潰した缶を投げ捨てて服で手を拭く】
【それからだらしなく脚を広げ、ベンチに背を預ければ彼女――否、彼は星空を仰いだ。欠けた月の光を浴び、毒花が艶やかに輝いていた】

/お気になさらずー!
665 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2017/01/24(火) 21:08:45.87 ID:Hah4+Vg30
【女性の懺悔のような言葉には、後悔と反省の言葉が込められているように感じた。そして、呪いに対する肯定の言葉。少しだけ触れられた後悔の内容】
【突然女性の雰囲気が変わったのに反応が遅れたのは、少し感傷に浸っていたせいでもあった。】

__あなたは、誰なの?

(二重人格…ううん、手が六つだから、三重人格かもなの)

【紫苑と名乗った女性の身体に宿る別の人格に名を問いながら、少女はキャリーケースを開ける】
【中から2体の人形と、1体のぬいぐるみが出てくる。少女は戦闘態勢に入りつつ、相手を観察した】
【少女の周りには3体の市松人形と、1体の熊のぬいぐるみが目の前の男性を見つめる】
666 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/24(火) 22:25:42.49 ID:dTmxvK+50
【街はずれ――ひと区画だけが取り残された林】
【ごく薄い三日月だけが光源になるその場所はひどく薄暗くて、だけれど木々のせいか暖かくて、それが不思議に快い場所】
【どこかの学者たちの中ではこの林にのみ生きる不思議な生き物がいるだとかで、結構、研究的には重要な場所とも、されるのだけれど――】

……よい、しょ。――たまには自主練習もしなくっちゃ、こんなところなら、きっと、だあれも来ないし……、野犬とかもいなさそう、だし。

【――そんな林の中で呟く声。どうやら少女らしい高くて澄んだ声がいくつか続いて聞こえて、それから、がさがさと枯れ葉を蹴って遊ぶような音がする】
【ほんの数十秒の間そうしていた誰かはそのうちに吐息と一緒に「よし」とつぶやいて――ざぁとわずかに緑みを帯びる桜色の魔力片が無数に舞い上がったのは、その直後だった】

【淡く光を放つ魔力片がその姿を映しだすのも、全く同じタイミングだった。腰まで届く真っ黒な髪は邪魔にならない程度にまとめられた一つ結びで】
【右が赤、左が黒の色違いの瞳には桜色が鮮やかに反射してきらめく、透けるように真っ白な肌も照らされて、それどころか、辺りまでもが桜色に染まる中】
【ふわふわとした深い赤色のケープに墨染のような色味のワンピース、無意味に編み上げの紐が張り巡らされて、靴も、リボンを編み上げにしたデザインの、ロングブーツ】

――――、わ?

【始めるのはそう難しくもない魔術式の組み立て、おそらくはその練習におとずれたのだろう。桜色がちりぢりと踊って、それから――少女の気の抜けた声で、散った】

なんだろ、蝶々……? ここに住んでたのかな、びっくりさせちゃったかな――えと、ごめんね、?

【薄れた桜色の中で、いろんな色の光が舞っていた。見れば各々好き勝手な色の魔力を纏う蝶の群れ――この林に住み着く固有種の蝶、蜜ではなく魔力を啜る種類のもの】
【どうやら少女の魔力に集まってきたらしいそれらに、何より、少女の振りまいた桜色。冬の林の中にはおかしなほどの鮮やかさは、きっと、遠目からでも気づけるほどで】
【――それに。蝶々が自分にたくさん集まってくるだなんてあんまりない経験に高い声をきゃあきゃあ言わせてはしゃいでいる少女の嬌声も、それはそれで、きっとよく目立って】
667 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/25(水) 09:44:01.14 ID:Dka9Y9P2o
>>665

「優蛾。永倉 優蛾――弟さ。お前と話してたヤツの、なァ」

【戦闘態勢である相手に何ら反応を示すこともなく、星空を仰いだままぶっきらぼうに彼はそう告げた。手達も未だバイクの周囲にいるだけで】
【男の方からけしかける様子は無かった。紫苑の弟だと言うその人格は、それでいて彼女のような温かさも不安さも脆さも、何一つない】

「俺が起きてる時は、紫苑は眠ってる。っつーよりは目を開けられないんだろうさァ、自分が殺した弟が、自分の中にいるって事実によ」

【くあ、と欠伸をして男は誰も使わなくなった膝掛けを自分の方へと手繰り寄せた。そのまま一人だけくるまって、視線を人形へ向ける】

「市松人形……は、何かお前に似てるから良いとしてだ。何だ、その熊のぬいぐるみ」

【一体だけが系統の違うものであったことだけ気になったらしい。可愛らしいそれに可愛くもないガンを飛ばして、男はそう尋ねた】

/気付くの大変遅れました……!
668 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2017/01/25(水) 11:25:56.54 ID:4KiqwnFd0
【毒花をつけた見た目とは裏腹に、相手はきっちりと自己紹介をする。それに少し気を緩めた少女は、男性の問いに答える】

__この子達は、私のお友達なの。タオ君は戦いやすいの。

【男性が分かるか分からないかの所に情報を落とす。勘のいい男であれば、なにか勘づくだろう、人形使いの能力で熊のぬいぐるみにポーズをとらせる】

__さっきは答え損ねてしまってごめんなさい、なの。私は、あなたと紫苑さんの為に命をかけてる訳じゃないの。ただ、私の目的地に、紫苑さんの呪いを詳しく知る人がいるって、知ってるだけなの。
私にとっては、これは等価交換ってやつなの

【そう言いながら、少女はもう1度キャリーケースを開け、市松人形を1体その中に入れ、また引き出した。その市松人形の手には、暖かそうな湯気の立っている紙コップがあった】

__あなたが、紫苑さんを乗っ取っているのか、それとも紫苑さんが罪の意識から生み出したものなのか、別のものなのかは知らない。だから、取り敢えずお茶をどうぞ、なの

【少女が慈愛の表情で差し出したお茶と言葉は、男性が面食らうには充分なものだ。しかし少女は、男性からは敵意や殺意を感じなかった。故に、少女は信念に基づき行動する事にした】

(お人形には、愛を注ぐべしなの)

/気にしないで下さい、私も遅れっぱなしですので…
669 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/25(水) 12:00:17.81 ID:Dka9Y9P2o
>>669

「戦う? そいつがねェ……ま、俺も言えたもんじゃねェが」

【ポーズを取る熊のぬいぐるみは愛くるしいことこの上ない――紫苑だったらきっとまた微笑んでいただろう。彼はただ、興味深げに見るだけだった】
【それから、膝掛けにくるまった状態で相手の話をじっと聞く。口元まで布の中に埋めるのが、どこか幼さを感じさせる仕草だった】

「……身体が人形になる呪い。そいつが解ければ、きっと俺も居なくなる。何せあいつの後悔の元は俺だ――、こいつも等価交換、って奴かァ?」

【にたりと笑ってそう事も無げに告げる口振りに、呪いを解くことへの抵抗感は感じられなかった。例え自分が消えるとしても、】
【相手の言う『目的地』に、姉の呪いを解いてくれる誰かがいるなら――自分が消えるくらい、然程のことでは無かった】

「茶……?」

【ただ、流石に相手の行動には面食らったらしく。暫し布に口元を埋めたままじっと相手を見ていたが、ついと指揮するように指を動かせば】
【差し出された紙コップを、バイクの周囲に浮遊していた手の内のひとつが代わりに受け取った。それから手は優蛾の元へと茶を持って来て】
【少し検分するようにそれを眺めてから、相手を見て、その表情に何処か調子を狂わせたように視線を斜め下へと遣り。手から奪い取るように茶を受け取った】

「……、――旨い」

【膝掛けで覆った両手でカップを持って、そっと一口啜るように飲む。猫舌なのか、ふうと水面に息を吹きかける姿が酷く子供っぽかった】
670 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2017/01/25(水) 12:21:54.02 ID:4KiqwnFd0
>>669
【男性の言った言葉を、少女は静かに反芻する。この呪いは、女性自身の呪縛であるらしいと、少女はやっと確信を持てた】
【男性がお茶を飲んだことに、美味しいと言われたことに少女は気を良くした。熊のぬいぐるみをそっと抱き上げ、ベンチの前まで戻ってきた】

__あなたも、…優蛾さんも、紫苑さんも、優しい人なの。きっと、呪いは解けるの。だから、…私と一緒に、お兄様のいるヴァディス郷に来て欲しいな、なの

【おそらくこの男性は、紫苑という女性の記憶から出来ている。なれば、罪の意識から敬遠する事はあれどこの男性自身を本当に邪険にする事はないのだろう】
【目の前の男性の仕草は少し幼く、幼い悲しみを見せていた姉を思わせる。仲の良い姉弟だったのだろう、と少女は微笑んだ】
【男性が少女の誘いに乗るかどうか、正直に言って少女には分からなかった。女性は遠慮していたように見えたし、男性からもスパッと切られるかもしれない、と少し懸念していた。】
【少女は男性の顔を窺う。無表情に見える顔だが、瞳には少しだけ案ずるような、不安そうな色が乗っている】
671 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/25(水) 14:14:03.40 ID:Dka9Y9P2o
>>670

【来て欲しい。そう言われれば僅かに目を細めて、優蛾は立ち上がろうとした――が、懐の端末が鳴動して、動き掛けた身体が止まった】
【画面を確認し、一つ溜息を付けば茶を飲み干し、膝掛けを片手に立ち上がる。そのまま向かう先は、手達の待つバイクへと】

「少し、考える時間をくれよ。そのヴァディス郷っての……次に会う時までに、答えは決めておくさ。俺も、紫苑も――」

【鳴動する端末の音を背景にそう呟いた彼は、膝掛けを後部ポケットに投げ込み、代わりにそこからヘルメットを取り出して被る】
【それと鳴動し続ける端末を連動させ、浮かび上がったオレンジのラインがバイクにも走り――重たいエンジンの音が響き出す】
【それに跨がれば彼はヘルメット越しにちいさく笑って、手に持ったままの紙コップを軽く振ってみせた】

「……俺達にはまだ、片付けてない仕事があるからなァ。コレごっそさん、じゃあな、風花――」

【彼の周囲に浮遊する六つの手が、相手へと無邪気に振られる。直後に発進したバイクに、手達は慌てて付いていくのだった】
672 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2017/01/25(水) 17:34:49.03 ID:4KiqwnFd0
>>671
【考える時間をくれ、という言葉は当然で、むしろ考えてくれるというのが嬉しいと少女は思った。】
【姿かたちも声も変わっていないはずなのに、少女にはバイクに跨った男性がかっこよく見えた。男性の言葉に頷き、手を動かせる限り動かしながら少女は返事を返した】

__っ、色良い返事をお待ちしております、なの!!あなたたちにまた会える日を、楽しみにしてるの!!!

【滅多に出さない大声を出したせいか咳き込みながら、少女は遠ざかっていくバイクを見送った。手を振ったせいで少し乱れた着物を直しながら、少女はキャリーケースを開けた】

(しばらくはこの近くで観光でも、しておこうかな、なの。お兄様へのお土産を買っておくのも悪くは無いな、なの)

【ぱかりとひらいた大きなキャリーケースに、2体の人形とぬいぐるみが入っていく。カチリ、と閉じたキャリーケースの上に人形を置き、少女は街の中心部の方へと歩き出した】
673 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/25(水) 17:46:47.96 ID:Dka9Y9P2o
>>672

【夜のアウトバーンを駆け抜けるバイク。オレンジのラインと髪を靡かせたヘルメットの通信機能をオンにすれば、第一声は待ちかねたような】

『遅えよい。で、オシゴトの話だが――』

「あの黒いババアだろ? 今から本部に向かうぜ」

『……チッ、待たせた上に野郎が出やがった』

「うるせぇ。……色々、有ったんだよ」

『そりゃあ結構、ただテメェの仕事は忘れんなよ』

「……分かってるッつの」

【通信が切られ、バイクは速度を上げていく。少ない車をそれでも抜き去っていきながら、目指す先は水の国首都――夜は、更けていく】

/ありがとうございました、お疲れ様でした!
674 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2017/01/25(水) 17:56:00.35 ID:4KiqwnFd0
>>673
/お疲れ様でした。出来ればまたお願いします、ありがとうございました!
675 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/25(水) 19:16:53.28 ID:RpdbF3++0
>>666
/週末くらいまでのんびりお待ちしてますので、よかったらー
676 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/26(木) 21:26:16.43 ID:ERUnp1Rmo
【水の国首都――Elysion本部】

【オレンジの髪に毒花を差した女がそこへついた時には、既に自分以外のほぼ全員がロビーに集合していた】
【先の電話で説明が無かったのを不審に思いながらも、ジャバウォックのテーブルに優蛾はどかりと腰掛けた。それから目の前のレヴィに問う】

どう言う訳だ? 俺は何ンにも聞かされてないんだがなァ、

ま、気にすんなよい……俺だって知らねえのさ。電話のあとに突然、さぁ

【他のテーブルからもざわめきの声が聞こえる。唯一グリフォンのテーブルだけが、窓の外を見るセシルと、腕を組んで黙考するフラーと】
【一番はしゃぎそうなエルフの少女も足元を気にしたりスカートの裾を直したりと、人数のせいもあるが一切の会話もなく静まり返っていた】
【――そこに、慌ただしくドアの開かれる音が響いて皆がしんと静まり返った。よたよたと中央へ歩み進んだツェフゲニーが、力無く口を開く】

……当社の株が、何者かに買い占められました。こんな事は、有り得ない……あってはならないのです。折角皆様を集めたのに、――

【皆の視線がツェフゲニーに集まっていた。だが、言葉の途中で彼は唐突に黙り込んで――そして、倒れ込んだ】
【慌てて駆け寄った悦那が、彼の脈を採って――焦燥の顔色と共に、周囲を見渡した】

ジイさん、死んでるぞ! おい誰だ、誰がやった!? 心臓麻痺なんてガラじゃねえぞこのジイさんは、――

【――次は、悦那だった。またも言葉の途中で唐突に黙り込んで、倒れる。レイブンのテーブルから香弥奈の悲鳴が上がって、】
【オウルのテーブルから月彗が悦那へと駆け寄った。脈はとっても無駄、ならばとあお向けにしてその姿を確認し、彼は僅かに目を見開く】
【ボロボロのスーツ姿、直立した姿勢のままの悦那の片手には、中国語と思しき文字が猛々しく書かれた旗――天安門、の文字が特に目立つ】

何や、これ……この世界の悦那やない、これは、――

【そして――やはり、月彗も同様だった。音もなく崩れ落ちた身体は瓦解することなく、ただ着物だけが古めかしく絢爛な物へと変わっていて】
【完全な身体のまま、片手にワインの入っていたと思しきグラスを持っていた。駆け寄った烏丸が一口舐め取って「毒でやがる、」と呟き】
【そこでパニックが起きない程度には、皆相応の能力を持つ者の集まりだった。互いにじっと互いを見据え――また一人、二人と倒れていく】
【それは困惑する二人の亡霊でさえ例外ではなかった。黒い女と黒い男の前に妙な数字が現れ、何かを弾き出す音と共に二人の姿は消え去り】
【グリフォンのテーブルも相変わらず静かなまま――既に、フラーとビィーズは息をしていなかった。最後の一人の呻きが聞こえ、呟いたのは】

成す術もない、終わりだね……鈴音、りん、ね……、――

【皆が倒れ、死に、ただ虫の息のセシルだけを残している状況下に、革靴の足音が響く。姿がゲットーの収容員の服装に変わっていくセシルの肩に、】
【何者かが手を置いて――呼びかけた誰かの名を飲み込んで崩れ落ちたセシルの手には、黄色いダビデの星の紋章が握られていた】

「やっぱりね、僕の見立て通りだったよ。キミら、この世界の人じゃないでしょ? 不法滞在はダーメ、それがルールなんだからさ。ほんと、大損害だなぁ」

「もう死んだ人間に話し掛ける必要などないだろう? 美しく終わらせてあげたのだから、あとは美しく方を付けて、私達の美しい場所に変えよう」

「貴様は何もしないだろうが。言っておくが、あとの力仕事以外は全部貴様がやれ。俺は、俺の仕事を片付ける――死体搬出の邪魔だ、道を開けろ」

【三人の男の声が、言葉を無くした死者達の倒れ伏すホールに反響する。その日以降、何事も無かったかのように、ただ何かが変わる】
【Elysion本社が何かを発表する事は無かったが――例えば、帰るべき人が帰るべき家に帰らなかった。手掛かりになる人も誰もいなくて】
【唐突に連絡を寄越した相手が、以降何も連絡を寄越さなかったり――昼の国警察からの依頼も、無かったかのように話は途絶えてしまう】
【いつか会った時までに答えを出す約束をした相手が、もう目の前に現れることも無くなったり――ほんの些細な、それでいて大きな差異】

【――全ては、闇の中に葬り去られる。まるで実態のないような変化は、誰かを再び苦しめ、あるいは妙に悩ませ、また、悲しませる】
【あの場にいた二十数人の命は、確かにこの世界で生きて、この世界で出逢って、沢山の絆や歴史を繋いで来た――もう戻ることの無い時間に、生きていた】
677 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/26(木) 21:28:11.11 ID:ERUnp1Rmo
/悦那PLの今まで使用した全てのキャラをロストとします。ロール中などで、キャラの消失についての噂を流して頂ければ幸いです
/人数が集まった頃にイベントという形で答え合わせを出来たらな、と思ってます。唐突な話に巻き込んだ御三方に、心よりお詫びします
678 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2017/01/29(日) 19:56:01.50 ID:g7nRGbp50
【ヴァディス郷__川の近く】
【ゴソゴソと川の近くの地面を掘っていた青年は、ある程度の土を採取してため息をついた。】
【一つに結ばれた長い濃紺の髪を風にたなびかせるその姿は様になっているが、華服の裾に入れられた手は土いじりで汚れていた】

__風花ももうすぐくるというし、これくらいにしておこうか。

【ぼそりと一言呟いて、ひどく見目の良い青年は立ち上がった。帰る準備を整え、山を下りていく。1週間前に届いた妹からの手紙には、彼にとって…恐らく妹にとっても重要な内容が書かれていた】
【罪悪感によって人形になりゆく呪い。例として書物で見た事はあれど、彼の目の前に患者が現れるのは初めてであった】
【彼自身は医者でもなんでもない。にも関わらず兄なら治療法が分かるだろう、と頼ってきた妹には嬉しく思う反面、責任は重く感じる】
【6年前から、妹は自分に頼らなくなった。いや、頼れなくなった。誰のせいでもないその事故で、家族の間に軋みが生じ、妹は自身を強く責めるようになってしまった】
【最近こそ明るくなったが、事故の爪跡はまだ妹に残っている。人付き合いが苦手になり、話し方も幼く、年齢と見た目が一致しない。ある種の呪いだ、と彼は思う】
【そんな妹が、助けたいと望む人物が現れたのであれば。不出来な兄でも頼ってもらえるなら、喜んで手を貸したい。】
【考え事をしながら、山の麓にある研究施設へ歩いていく。視界の端にちらりと着物が映って、振り向けば】

__っお兄様!非常事態かもしれません、なの!!助けて欲しいの!!

【6年前の時のように、取り乱し顔を真っ青にした妹がいた】

/イベントに参加させて頂きたいのですが、新キャラ(兄)を一緒に出しても良いでしょうか…?
679 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) [saga]:2017/01/29(日) 22:01:30.82 ID:2Vbto3zoo
>>678
/参加希望ありがとうございます、複数キャラでの参加も大丈夫です!
/ただ、イベント開催の前に使用するキャラを予め動かしたいので、実際のイベント予定日はまだ先になるかなぁと……
680 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2017/01/29(日) 22:18:40.93 ID:g7nRGbp50
【バイクを見送ってから、少女はフレッソで兄へ土産を買ったり、観光したり、フラフラしていた。そしてふと立ち寄ったホテルに、少女は見覚えのあるものを見つけた】

_これ、紫苑さんのバイクと手…なの

【六つの手が、バイクの側でピクリともせずに落ちている。異様な光景に、少女は眉を顰め首を傾げた】

_手が動いてないの…なんでなの?

【少女の記憶では、手はいつもひらひらとバイクの周りで動いていた。地面で動かずに伏している記憶は無かった】
【だからだろうか__少女は嫌な予感がした。1時間話しただけの女性が、永遠に遠くに行ってしまったように感じた】
【うわごとのように大丈夫、大丈夫、とつぶやきながら少女は情報を集めた。結果は著しくなく、…なんらかの意志が邪魔しているかのように、情報は一つも無かった】

__おかしいの…こんなに、何も無かったみたいなるなんて、変なの
【女性になにごとかあったのだと、そう確信をもった少女は、集まらない情報を集める為に、約束よりも先に兄に助けを求めることにした】

/分かりました、ありがとうございます!
/今回、動かなくなった手で異変を知る、という形にさせて頂いたのですがよろしかったでしょうか…?
681 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/29(日) 22:26:00.23 ID:0vTZmmVEo
>>680
/大丈夫ですよー、わざわざありがとうございます!
/ただひとつだけ、場所なんですが、水の国首都のElysion本店裏として頂けると幸いです……!(修正等大丈夫です)
682 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2017/01/29(日) 22:51:53.65 ID:g7nRGbp50
>>680
/場所についてはイベントが始まる前に修正させて頂きます、重ね重ねありがとうございます!!
683 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2017/01/29(日) 22:52:40.86 ID:g7nRGbp50
>>682>>681さんへです、ミスすみません
684 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/29(日) 22:55:25.93 ID:0vTZmmVEo
【水の国首都――魔術装飾ブランド『Elysion』本店】

【閉店後だと言うのに、広い店内には未だに煌々と明かりが灯っていた。行き交う人が不思議そうに首を傾げるも】
【入り口には屈強なガードマンが二人いた。彼らに睨まれれば店を見ていた人達も足早にその場を去っていって】
【店内では何が行われているのかと言えば。一人の体格の良い壮年の男性が、しきりに陳列品と手の上の妙な黒い球体を見比べていた】
【茶に黒のストライプスーツは前会長のツェフゲニーと同じだったが、日焼けした肌や壮健な様子からは確実に別人であった】

んー……損失を埋めるとなると、もっと希少価値を高めて値段を釣り上げるかなぁ。かと言って顧客が離れたら、僕には何の得も無いね。
これまで通りのハントと人材派遣の他に、もう少し旨味のある事業を増やしたいねぇ。君はどう思う?

【振り返る先は更に大柄な男性。男は問われれば口の端を吊り上げて、目の前の年上の彼へと答える】
【黒いスーツにグレーのネクタイを締めており、服の上からでも分かる程、その肉体は鍛え上げられたものだ】

「俺ならやはり、賞金首殺しだな。治安への貢献と銘打てば、社の株も上がるってものだ」

あ。それ。良いんだけど……君が個人的に戦いたいだけじゃないの? 僕はもう、ほら。歳だしさ。駒を貸すくらいしか出来ないよ?

【楽しそうに笑えば、壮年の男性はふと入り口を見遣った。ガードマンが道を開け、店内に入って来たのは、細身の青年】
【濃紺の派手なドレススーツに身を包み、店内の品物を一瞥してどこか不満げに鼻を鳴らせばツカツカと二人の元へ歩み寄る】

『全体的に目新しさのない古臭いデザイン! これでよく首都に店を構えたものだよ。クラシックなど過去の異物に過ぎないと言うのに!』

ハイハイ、ストップストップ。悪いけど、デザインも据え置いておかないとさ。ほら。変だなぁって思う人とか……いるだろうから。ね?

『そ、そんな事は分かっているとも! 私はただ――』

「……お前は一々拘りが強過ぎる。所詮こんな店、ただの金持ちの遊び場のようなものだ。元より貴様が好くような場所じゃない」

【大柄の男に諭されれば、やむなくと言った様子でもう一度店内を見回して青年は溜息をつく。好みでないものに囲まれるのは嫌だとばかりに】
【そんな二人の様子を見て苦笑しながらも、壮年の男性は二人に向けて手の上の黒い球体を見せた】

この中に例の駒が二十数体と、あと残額なんだけど……恐ろしい程目減りしちゃっててさ。当面はコレ、資金稼ぎ。悪いけど協力、よろしくネ

【――そんな会話。もし入り口のガードマンを交わす手段があるのなら、聞く方法もあるかも知れないが】
【強行突破して聞くとなれば、聞かせる前に彼らは口をつぐんでしまう。ただ、今この場所に踏み入るのは――恐ろしく、危険なことだった】
685 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/30(月) 20:37:33.10 ID:rM4JWsmF0
【風の国――UNITED TRIGGERの店舗内】
【ひどい雪の日だった、電車なんてとっくの昔に止まったきり動く兆しもないくらい、どれだけきちんと窓を閉めても、部屋の中まで冷えてきそうなくらい】
【外は一面が真っ白で遠くまで白い光景になっていて。そのせいか街中に人通りはほとんどなくて――】

……退屈、だなぁ、

【よく暖められた室内で呟く声にあくびの吐息が続く、それから少し間を置いて、声からいくらも離れた場所で、ぺそん、なんて、気の抜けた音がする】
【普段なら酒場として事務所が解放されている時間、客もいるはずなのだけど、さすがにこんな雪では誰も――給仕服の少女以外が誰もいない店内はすっかりと広く見え】
【何かを放ったような姿勢のままで数秒停止した彼女はそのうちふらりと立ち上がって投げたものを拾いに行く、どこかのスーパーの安売りチラシで折られた紙飛行機を拾い上げれば】
【誰もいないのをいいことに一つ占領しているテーブルに戻ってまたついと投げたりしているのだから、よっぽど暇なのだろうと見え】

【腰まで届く黒色の髪、低いところで一つに結わえられて。結わえた黒いゴムを隠すように縛ったワイヤー入りの赤いリボンは、きちっとリボン結びの角を保ったまま】
【またあくびを漏らしてわずかに潤む瞳は左が黒で右が赤い色違い。あどけなさの目立つ顔はそれでも退屈そうな、眠たそうな、案外やる気のないものに見え】
【ふわっと膨らんだ裾のロングスカートは胸元や袖に櫻風の着物めいたデザインがちりばめられたもの、白いフリルのエプロンをきゅっと締めれば、スカートの膨らみがよく目立ち】
【足元は動きやすそうなブーツ、それが歩くたびに硬い音を室内に響かせて。紙飛行機を拾いに行くたびにこつんこつんと、音だけならせわしなく仕事をしているようだったけど】
【少女――だった。酒場の給仕としては少しおかしなくらいに、あどけなさを残した、少女】

このまま誰も来なかったら、やだなぁ――、

【雨宿りのひとでも来ないかな。小さなつぶやき声がして、もう何度めだかもわからないくらいに拾ってきた紙飛行機を、また彼女はついと飛ばす】
【何度も何度も投げられて歪んだ紙飛行機は素直に少女の手から離れて行くけれど、すっかり制御を失ってあらぬ方向――入口の扉のほうへと、向かっていく】
【もうずっと誰も来ないものだから少女はすっかりと油断していたけれど。もし誰かおとずれるタイミングと重なれば、正面から衝突――ということも、十分、ありえて】





686 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/31(火) 03:17:21.55 ID:MLEhf8j8o
>>685

UNITED TRIGGER……おっ、やってるねえ。悪いけど車付けといてネ。そんなに時間は掛からないからサ、

【静かに車が停まる音、それから外でそんな声がして、ドアは比較的すぐに開けられた】
【必然的に来訪者の額へと命中した紙飛行機は、その人物の足元にはらりと落ちて】
【自分の額を見上げるような寄り目で暫くぼんやりしていた――体格のいい壮年の男性は、やがて楽しげに手を叩いて笑ったのだった】

やぁ、やあ。なかなか面白いウェルカムサービスだネ。おじさんこう言うのさ、大好き。アハハ、アハハハッ

【茶と黒のストライプスーツにElysionのバッジを付けた、日焼けした肌の男――五十代程に見える容姿で】
【落ちた紙飛行機を拾い上げた男は、そのまま相手の方へと歩み寄る。ニコニコとした顔に害意もなく、ただ返すつもりらしい】

【――その懐。相手なら恐らく、気が付くだろうか】
【黄緑色の魔力の源泉。元は転移の術が施された、対の指輪。その気配が、男の胸ポケットの中にあった】
687 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/31(火) 21:30:45.59 ID:HQ6x8x7N0
>>686

【もう何度も何度も飛ばした紙飛行機遊びには飽きつつあった、けれど、壁だとか床にぶつかるたびに少しずつ歪んで変な方向に飛んでいくものだから】
【最後に飛ばなくなるまで付き合ってあげようだなんて奇妙な情が湧いてしまって。飛ばしては、飛ばしては、意外と壊れていかないさまを、何も考えずに眺めていた】

わ。ごめんなさい、

【だからあっちに投げたはずの紙飛行機がぐるりと旋回して出入り口の扉に向かって飛んだ時、彼女は何も思わなくて――だから扉が開いてしまったとき】
【一瞬何が起こったのかの理解が遅れて、だから、少女が反応らしい反応を示したのは、誰かが店内に踏みいって、その人物に紙飛行機がぶつかったことをお互いに理解した後】
【がたんっと急に立ち上がるものだから机の上に並べていたマグカップやちょっとしたお菓子、明日とか明後日の特売のチラシまでもが大きく跳ねあがって】
【ぐらぐらと揺れるテーブルの板を手のひらで抑え込んで落ち着かせながら、少女はひどく申し訳ない顔を――浮かべて、】

本当にごめんなさい、こんな雪だから、今日はもう誰も来ないんだって思ってて……、えと、いらっしゃいま、せ、

【眉をへなっと下げて入口へと駆け寄る、浮かべているのは給仕としての営業スマイルというよりか、ひとなつこい、ありふれた少女がよく浮かべるような、あどけない笑顔で】
【誰も来ないと思ったからって紙飛行機で遊んでいるのはどうかと思うけど――笑いながら、それでも、申し訳なさそうにしていた彼女の表情が】

…………、

【だけど次の瞬間には表情から雰囲気までも、すべてががらりと変わっている。意味の分からないものを見たような態度だろうか、あるいは】
【あるはずのないものを見たような顔。店員として客人を迎えた数秒前までとは全く違う様子で、最後には距離を置くように、一歩、二歩と、後退までする】
【そのくせ視線は動かせもしないように馴染んだ匂いをたどって――それ以外のどんな感情よりも先、ただただ怒っているように、その胸元を睨みつけていた】
688 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/31(火) 21:56:26.28 ID:MLEhf8j8o
>>687

いやあ、参っちゃうよね。子供の頃は雪だと喜んだけど、ホラ。今さ。こんな歳でしょ。困る以外何も言えないし……、――どうしたのかな?

【人の良い相好で歩み寄っていた足がぴたりと止まる。相手の視線の先が胸ポケットである事を察すれば、表情はすぐに笑顔で上塗りされた】

あ、もしかして分かっちゃった? コレね、凄いのよ。込められてる魔力が。うちの社員の遺品なんだけど、身元が分かってなくてサ……
親族が無理ならせめて知人にでも、渡してあげなくちゃと思ってたんだ。キミ、もしかして知り合いかな? あの。アレ。セシルちゃんの

【――遺品。そう言えば、男は懐から銀の指輪を取り出した。普通の人さえ頭痛のするような重い重い呪いのような黄緑色の魔力を湛えて】
【紙飛行機よりも先に相手へと差し出して見せればもう、間違いようがない程に、“彼”が受け取ったあの指輪だった】

転移式があったんだけどさ。誰かの魔力を鍵にして、ロックが掛かってる状態なんだ。すっごい力だよ。一応、気を付けてネ

【まるで今際の際に命の全てを注ぎ込んだ様なそれは、当然の如くかの桜色の魔力にしか融和しないと頑なに叫んでいるようでもあった】
689 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/31(火) 22:18:45.64 ID:HQ6x8x7N0
>>638

【一歩、二歩、ついさっき取った距離の場所で、彼女はそこから微動だにしなくなった。まるで強い魔力に魅入られたみたいに、そこから動けなくなって】
【だからといって表情は悲しみだなんてかわいらしいものじゃない、ただ、ひたすら怒っている。どれくらいかを簡単に表すのなら、きっと、】
【ばぢりばぢりと音まで立てて、制御から抜け出した魔力が彼女を中心にきらめきだすほど。なんならきらめくだなんて言葉は弱すぎて、目を焼くほどにまばゆく、ぎらつくほど】

――っ、

【ばちん、と、ひときわ大きくぎらついた魔力の流れが少女の耳元で、一冬分集めた静電気を炸裂させたような音ではじける。それでやっと少女は気づいたよう】
【逆を言えばそれまでの言葉は、聞いてはいたけれど理解するほど聞こえてはいなかった。耳から頭に行く途中でどこかに消えてしまったみたいに】
【だから少女が聞き取った場所といえばロックがどうとか、気をつけてね、とか――何の話だと聞きかえすほど、冷静でもない】

【――まだ、魔力があたりの空気をかすかに震わせてぎりぎりと鳴いていた。淡い桜色は青空や夜空の下では美しい桜と見紛う色合いでも、室内で、まして、こうまで乱暴なら】
【相手が何かを知らないのであればただただ情緒不安なさまにしか見えないだろう。ただときどき少女のものだろう桜色から剥落して静かに消えていく、別の色の魔力片は】
【少女の魔力が持つ水の匂いとは違った吹き抜ける風の紫色、全く別の人間の魔力を宿していることの証拠でもあって。――だから、それに気づければ、少し不思議な性質ではある】

……どうして、

【差し出されて、だけど、彼女はすぐに受け取らなかった。躊躇うというよりは拒絶する様子で、わざわざ腕を背中に回してまでして、そう相手へ問う】
【二度も殺されかけている。それに、二度めの傷はまだ癒えてもいない、目に見えないだけで――見えないどこかで、彼女は、ずうと、傷から魔力を漏らし続けている】
【だから怒っていた。ついでに言えば話は聞いていなくて、だから、じろりと鋭い色違いが、そこでようやく相手の顔を確かめて、いろんな意味を籠めたまま、答えを待つのだった】
690 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/31(火) 22:31:38.91 ID:MLEhf8j8o
>>689

ん? どうしてって……ああ。アレかな。死因。ハントの最中に想定外の事が起きたみたいでサ、僕も詳しくは調べられなかったんだ

【相手の漂わせる気配にも、ましてその表情にも、何も感じるものがないかのように男は相好を崩さない。ただ疑問げにこそはしたが】
【簡単に並べていく言葉が酷く軽くて、語っている人物が相手にとってどれだけの存在だったかなど思い当たりもしないようだった】

受け取らないの? それともアレかな、やっぱり。知らない人だった? ゴメンねー驚かせちゃって。オジサンすぐ帰るから、さ
情報を当たるなら酒場かなぁ、なんて辿ってただけ。あ、でも。アレね。飲むのは好きだよ。アハハ、アハハハッ――じゃあ。バイバイ

【ただ相手の言葉だけから判断したことと景気良く捲し立てられた言葉、そして最後に切り捨てるような落差で別れを告げれば】
【指輪を懐に仕舞い込んで、紙飛行機は興味を無くしたように床に放って。男は背を向けて、立ち去ろうと】
691 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/31(火) 23:01:35.84 ID:HQ6x8x7N0
>>690

【ぎりぎり、あるいはぎゃりぎゃり、魔力が空間と擦れて鳴る音が、ある一瞬に、ふっと消え去った。まだかすかに燻っていた欠片までもがざぁとほどけるようにばらけて】
【ひらりひらりと花弁のようになってそのうち床にほつほつとわずかな音を立てて積み重なっていく。気づけばひどく怒っていた少女の顔も、ぐうと眉の下がったものになっていて】

そんなの、そんなわけ、そんな、わけ、ない、強いんだから、わたしなんかより、ずっと――!

【ようやく少し冷静に相手の言葉を聞いたのだろう。それがきっかけで彼女の持っていた感情はあっさりと方向性を変えてしまって】
【ふわふわ膨らんだスカートの布地を手が真っ赤になった後に真っ白になるくらいまで握りしめる、だって今日まで何も知りもしないままで】
【まただと、もう知らないと、一人で怒っていたのを剥がしてしまえば後に残るのは、いつも通りの少女でしかなくて、――もちろん相手は知りもしないけど】

知らないわけない、それ、は。……置いて行って、……セリーナは、居ないの、今日は――、お客さんだって、今日は、でも、

【見ての通り、店内はがらんとしていた。普段ならみんなで集まって何か盛り上がっている客たちも、賞金稼ぎだとかのひとが多い、情報だとかには詳しいのかも、でも、今日は】
【それに、店長でもある人物もいなかった。もっと言えば組織のひとたちならと思ってもすぐに連絡の付けられるほど親しいひとというのも、思いつくほどには居なくて】
【自分で作った距離を自分で詰めて言う、それは普段ならもっと誰かが居て、と、言い訳をするようにも見えたし、彼のしまいこんだものが欲しくて仕方ないというようにも】

返して――指輪、

【少し前の自分が馬鹿だと思った、ちっともお姉さんなんかじゃない、もちろんレディなんかじゃないし、それで、多分、いいお嫁さんでもない】
【ただ子供みたいでいらいらするのをぎゅっと握った手のひらの中で必死に握りつぶしてもう一歩距離を詰める、自分が作っただけの距離を詰めて、追いすがるように】
692 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/31(火) 23:23:38.39 ID:MLEhf8j8o
>>691

――僕は彼を詳しく知らないけれど、サ。戦いっていつも、こんなに怒ってくれる人がいる位、信頼された強い人ほど。先に死んじゃうよネ

【背を向けたままそう言えば、くるりと振り返る表情は相変わらずだった。ただ、少し空気は読んだのだろう――再び指輪を取り出せば】
【また相手へと歩み寄って、掌で煌々と煌めくそれを手渡すだろう。受け取ったなら熱い位に魔力を収束した指輪が、『鍵』を認識した】

【――ただし、それは目に見えた変化ではない。相手にしか分からない程の微細な変化、それでいて、ロックの外れた指輪の力は】
【途端に暴発するような事もなく。相手に誰からかの魔力が供給されているなら、どこかで誰かが安堵したかのように魔力を保持したまま】
【見た目には、何の変化もない。つまり、目の前の男が何かを悟れることもなく――受け取ったなら、男はウンウンと頷いた】

いやホント、良かったよ。Elysionに長年貢献してくれた人だからね。セシルちゃん。せめて知り合いでも良いから渡したかったのよ、ソレ
一緒に亡くなった奥さんも娘さんも、同じ指輪付けてなかったのヨ。だから結婚指輪じゃあないなと思ってサ。んー、渡せてスッキリした

【そこまで捲し立てれば、ニコニコとしたまま「じゃあね」、と今度こそ店を後にしてしまう。もし呼び止めても、振り返らない】
【店を出ればすぐ黒塗りのリムジンが停まっていて、開かれたドアに男は乗り込んでしまう。静かなエンジン音と共に、車は夜の街へ去っていくのだった】
693 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/01/31(火) 23:49:18.43 ID:HQ6x8x7N0
>>692

そんなわけないもの、絶対、違う……、

【ぎりぎりと握りしめた手の痛みが鋭さが増したので初めて爪が肉に食いこむほどの傷になっていることに気づいた。見ないままだったけれど、そうと分かったのは】
【傷を確かめるように指先で触れた先が生ぬるく湿っていたから。血が出るほどの傷にしてしまったとなんとか理解して、幸いにもふわふわした袖の中に隠して】
【だから、指輪を受け取ったのは左手だった。全く同じデザインの指輪が薬指に嵌められている、左手。受け取れば大事そうに手のひらに握って、それで――わずかな変化にも気づいて】
【怒っていたのなんて馬鹿みたいだったともう一度思い知らされる。でも、と、心の中で小さく呟いて、言葉にできない程度のいいわけを、少し、言い返す】

…………、は?

【誰なんだろうと今更思った、このひとが誰なのか。彼の親しいひとなら知っているんじゃないのかと、それともそんなのは自惚れなのかと、低い声が、呟くように漏れる】
【けどそのころには相手はもういないのだろう。追いかけることもない、多分こればっかりは本物で、それだから、もう、それでよかった。考えるのはひどく面倒な気がして】
【彼が出ていった扉にがちゃんと鍵をかける音も、だから、きっと、誰にも聞かれないだろう。指輪を大事に握りしめたまま、右手の血を、どこにもつけないようにしたまま――】

【初めに座っていた椅子に座って、携帯電話の通話をスピーカーモードにしてどこかへ繋ぐ、数度めのコールで繋がった通話をまるで無視して、携帯電話は机に投げたきり】
【けだるそうなため息交じりでそれでも待っていた相手にようやく声を投げるのが、持ってきた救急セットで手のひらの傷を始末した十数分後、それから先のことは】
【ほんとに誰もお客さんは来なくて、店の電気だって一時間もしないうちに落とされて――最後にドアにぶら下げた札をCLOSEDにひっくり返した、それきり、少女も帰ったようだった】

/おつかれさまでしたー
694 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/02/01(水) 00:30:15.31 ID:dPYPKmfTo
>>693

【――おかしな点は、終始一貫した態度と様々な言葉に散りばめられていた】
【例えば長年貢献した社員の死について、悲しみを欠片ほども顔に出さなかった事。まるで彼という人間に一切の興味がないようだった】
【そして相手も気付いた違和感。奥さんと娘――そんな存在、目の前の相手位しかいないはずだった。だのに、それにまるで気付かない】
【勘違いしている。例えば男の目の前に、セシルとあの元嫁と、よく狩り仲間なのだと言っていたエルフの少女が並んで死んでいたなら】
【きっとそんな見当違いをするのも納得が行くような――ただ、そこまで思い当たれるには、冷静になれる時間がないと難しいだろう】

【もし、気が付けたのなら。あるいはElysion本社に居るだろう男を問い詰めたなら――ただ、後者はかなりの危険性を秘めている】
【セシルが死んであの元嫁も死んで、そして月彗と悦那もめっきり見なくなって、黒い女の墓すらもまるで元から何もなかったようになって】
【怪しい点は幾つもある。ただ、それを追うか、彼が死んだ事を納得するかは相手次第。実際にあの魔力契約は消えてしまっている筈だ】
【死は確実。そして指輪以外に何一つ痕跡を残していないのなら――もう何度目になるか分からない失踪。今回だって、裏切りに等しい死】

【愛想が尽きて当然の事。それなら何度も悩まされる関係性を続けるより、いつも側にいるあの彼と居た方が、きっとずっと幸せだろう】
【もし今回の件を追って恐ろしい闇に触れてしまったなら、それこそ彼はそんな危険を相手に求める事など絶対にしない。必ず止めた筈だ】

【――いずれにせよ、全ての選択肢は相手にある。そして、実際に消えた誰かを追っている少女もどこかにいて、会うこともあるかも知れないし】
【スクラップズ首領・カニバディールも、月彗のを追っているかは分からないが、もし接触して話をしたなら違和感に気が付くかも知れない】
【全ては行動次第で開かれ、あるいは永遠に閉ざされる道だった。ただあの時、あの男に気取られないよう外れた指輪の『鍵』は――】
【ある種のダイイングメッセージめいて不可解で、最後に相手に渡したかった物のように黄緑色の魔力を絶やさない。それ自体が魔力の源泉のよう】

【男は名乗らなかった。ただし、Elysionの人間であることは間違いなかった。当たるならそこ、問題は何が待ち構えているか】
【それこそ当たらない方がもっと辛い思いをしなくて済む位、それは危険な選択だ。どうするか、どう動くか、動かないか。全ては、相手次第】

/お疲れ様でしたー
695 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/02/01(水) 19:18:41.64 ID:bQ3Uoek70
【水の国首都__フレッソ】

【人混みの中に、幼く、着物を着たおかっぱの少女と華服という着物に似た形の服を着た青年がいた。少女は編み上げブーツを控えめに鳴らし、キャリーケースをガラガラと引いていた】
【紺色の髪をポニーテールにした美青年の方は一見何も持っていない。最も、どこかに何か隠し持っているかもしれないが_今の青年は、何も考えずに軍靴を進めているようだ】

__お兄様、まずはどうするの?情報を集めるといっても、どこで集めるかは大切なはずなの

【人形のような無表情が青年に向けられる。少女は人混みが苦手らしく、兄の服の裾を軽く握っている。青年はそれに少し困ったような笑顔をむけながら答えた】

「まずこういう時に1番情報が集まりそうな所、かな。酒場とか、路地裏とか。風花はどこで情報を集めていたの?」

【兄からの答えと問いに、少女が少し考え込む。無表情を変えずに、それでも少し目を伏せながら少女も兄の問いに答えた】

__紫苑さんの手が、残っていたの。
お兄様の糸の端に括りつけて、《無限円形》の中で保管して、写真を撮って、聞き回っていたの。

【もし、少女の話を兄以外が聞いていたら、意味が分からず聞き返しただろう。しかし、青年はなるほど、と一言呟き少女の頭を撫でるだけだった】
【青年の能力である《無限円形》は、青年の持つ糸さえあれば発動できるものである。青年はその糸を一本、少女に渡していた。】
【少女のキャリーケースの中には広大な屋敷が広がっている。】
696 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2017/02/01(水) 19:26:04.43 ID:bQ3Uoek70
【水の国首都__フレッソ】

【人混みの中に、幼く、着物を着たおかっぱの少女と華服という着物に似た形の服を着た青年がいた。少女は編み上げブーツを控えめに鳴らし、キャリーケースをガラガラと引いていた】
【紺色の髪をポニーテールにした美青年の方は一見何も持っていない。最も、どこかに何か隠し持っているかもしれないが_今の青年は、何も考えずに軍靴を進めているようだ】

__お兄様、まずはどうするの?情報を集めるといっても、どこで集めるかは大切なはずなの

【人形のような無表情が青年に向けられる。少女は人混みが苦手らしく、兄の服の裾を軽く握っている。青年はそれに少し困ったような笑顔をむけながら答えた】

「まずこういう時に1番情報が集まりそうな所、かな。酒場とか、路地裏とか。風花はどこで情報を集めていたの?」

【兄からの答えと問いに、少女が少し考え込む。無表情を変えずに、それでも少し目を伏せながら少女も兄の問いに答えた】

__紫苑さんの手が、残っていたの。
お兄様の糸の端に括りつけて、《無限円形》の中で保管して、写真を撮って、聞き回っていたの。

【もし、少女の話を兄以外が聞いていたら、意味が分からず聞き返しただろう。しかし、青年はなるほど、と一言呟き少女の頭を撫でるだけだった】
【青年の能力である《無限円形》は、青年の持つ糸さえあれば発動できる、時間の止まっているブラックホールのようなものである。青年はその糸を一本、少女に渡していたのだった。】
【作戦会議のように、青年と少女は話し続けている。ころ、と何かが少女のキャリーケースから落ちた。】
【それは、髪飾りのようだった。少女も青年も、話に夢中でその事に気付かずに進んでいる。】
【もし、誰かがその髪飾りを拾って、少女に届けたなら、少女は泣きそうな笑顔と、溢れんばかりの礼の言葉を相手に届けるだろう__】

/>>695は誤爆です、申し訳ありません
697 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(空) [sage saga]:2017/02/03(金) 22:02:00.18 ID:dR9giGmwo
【排水路】

【豪雨などの際に多量の水を他所へ逃がす、そんな目的で作られた地下水路】
【内部は広く、風も無く、暖かい。無論、季節によっては津波のように水が寄せるが】
【今の時期はホームレスや、行き場を失った薬物中毒者の終着点となる】

【明かりは足元で光る整備用の緑色灯。それに照らされ、遺体が一つ視認できた】
【カラカラに干からび、全身に無数の小さな穴が空いた老人の死骸だ】
【表情は絶望に歪んでいたが、その舌の根すらも乾ききっており】

いやぁ、やっぱ場末の飯はマズいッスね……
例えるならそう……ソース入れ忘れた焼きソバみたいな?
食えなくはないけど無味乾燥……やっぱマズいッス。

……夜んなったら外出てみるのもアリっすかねぇ……?

【遺体の直ぐ側、若い女性らしい声と共に"キチキチ"という耳障りな音を立て】
【若干歪な形をした、円形の物体が其処に在った】

【時刻は、昼。こんな場所に来るのはよほどの物好きか】
【でなければ太陽の下を、胸を張って歩けないような者か】
【どちらにせよ、迷路のような地下水路では件の音はよく響いていた】
698 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(空) [sage saga]:2017/02/04(土) 13:00:50.96 ID:lb5vNB3Co
//>>697は今日一杯募集中です
699 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/02/09(木) 19:17:32.80 ID:LrsQsfrP0
【街中――大きな桜の木がある公園】
【夕焼けもとっくに暗くなってからもう少し経った時間、空気はうんと冷えて、それなら、行き交うひとたちもひどく足早で】
【予報で言うならもう少ししたら雨さえ降るらしい、夜更けすぎには雪になって、明日はもっと寒いらしい――だなんて、余談】

……梅の花が咲いてたから、もうすぐ春だって思って来てみたけど……、ううん、やっぱり、うんとまだかな、

【古ぼけた大きな桜の木。そばの看板には櫻のどこかの街から贈られたものであるとかが書かれていて、覗きこむようにそれを読んでいたのは、どうやら少女が一人】
【やがて読み終えて漏らすため息は寒さに真っ白に変わっていく、そこにひゅるりと吹いた冷たい風に身体をぎゅっと縮こまらせて、ぐるぐる巻きのマフラーを少し持ちあげて】

まだ蕾も小さいもんね、あたりまえだけど――。

【残念そうでもなく仕方ないと呟いた少女は、それでももう一度念のため確認するみたいにまだがちがちの蕾ばっかりの木を見上げて――「うん」と納得一つ】

今日はこのあと何にもないし、少しそこらへんお散歩してみようかな。それで、えーっと……、おしゃれなお店でご飯とか、! ……。

【それでくるっと振り返った少女はそんな風にこれからのことを空想してころころと笑う、足先は公園の出入り口へ向いて――】

【――肩より少しだけ長いセミロングの黒髪、肌は抜けるように白く、そのせいか左右で色の違う瞳の色合いも、よく目立って】
【左が黒くて、右が赤い。丸目のつり目を冷たい風にぱちくりさせて――口元のあたりまでは首に巻いた深い赤色のマフラーで隠してしまって】
【厚手の黒いコートは大きめの飾りボタンと背中にリボン飾りのついたかわいらしいデザインのもの。コートの裾からは押さえつけられたスカートの裾が反抗するようにあふれだし】
【編み上げのロングブーツの底が地面の小石をときどき踏みつけてがりがりとした音を鳴らす。まだあどけない様子を残す、少女で】

…………やっぱり寒いな、首――、もっとマフラーとか買わないと、凍えちゃう……。

【いくらか歩いたタイミングでびゅうと強い風が吹いて、立ち止まった少女はぎゅうとまた身体を縮こまらせて。ひいーなんて気の抜けた声ひとつ】
【マフラーに顔をうずめて、それから、また、ぽつぽつと歩きだす。――それでも風に気を取られた彼女は一瞬注意が散漫になりでもしたか】
【大きく一歩、二歩、足取りが大きく横に逸れるから。もしも誰かが近くを歩いていたりしたら、ぶつかりそうに――あるいは、ぶつかってしまうかもしれなくて】
700 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/02/11(土) 18:34:47.66 ID:sZJ0Dac40
>>699
/一応まだ募集しております……
701 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/03/03(金) 19:27:55.11 ID:YMM73KiK0
【街中――大通りに比較的近い路地裏】
【時刻はうんと遡って昼間の頃合い、誰かがひっくり返したごみ箱からあふれた注射器やらのごみを、淡い期待で烏が漁っていて】
【それが歩いてきた人間の気配にちょんちょんと跳んでから飛び立って逃げていく。歩いてきた人物はといえば烏には気づいていなかったのか、少し驚いたような声を小さく上げて】

……わ、烏? 何かと思っちゃった。ご飯食べてたのかな……、あんまり食べられそうじゃないけど――これ、危ないなぁ。

【数秒してから少しだけおっかなびっくり、確かめるように建物の隙間の狭い狭い空に消えていく烏を見上げて、見送る】
【それから烏たちが漁っていたごみ箱に目を向けるけれど。おいしそうでもなんでもないがちゃがちゃしたごみを狭い道の壁側に、足で蹴っ飛ばすように寄せ】

今日はすごくあったかいね、毎日こうだといいんだけどな――、あとで時間ができたらお散歩するのも楽しいかも。

【真っ黒い髪は肩を少し通りすぎる程度のセミロング。左右の毛束を取って編んだのを後頭部でまとめてリボンで留めて】
【のんびりしたような呟きとは逆にしっかりと辺りをきょろきょろ見渡している目は左右で色違いの黒と赤で。少し慣れたような様子が、少し違和感めく】
【ボタンを開け離したワンピースコートの中は襟のついた赤いニットと黒のスカート。年頃で言えば十六程度だろうか、まだあどけなさを残す少女で】

【あらかた片づける――ではないけど、歩くのに邪魔にならない程度にごみごみしいごみを退かした少女は、少し満足したように吐息を漏らせば】
【ことんことんと踵が少しだけ高い靴の硬い足音で歩きだす。わかりやすい足音と、路地裏に居るにしては比較的にきれいな恰好は、見ればなんだかよく目立ち】

……誰もいなかったなぁ。道が悪かったのかな……、

【肩にかけている鞄からぴらぴらはみだして揺れている紙の端っこ――何かのチラシらしい紙束が詰まっている鞄をしょいなおし、どうやら大通りへと向かっているようだった】
702 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2017/03/03(金) 23:10:46.78 ID:6THNDlqz0
>>701

【誰もいない、烏も逃げた路地裏を、キョロキョロとあたりを見ながら大通りへと歩く少女の真後ろに、微かに音をたてて押し出されるように人影が着地した】
【もしも前を歩く少女が、人影が来る前に振り向いたなら、人影_長い銀の髪と、瞳と同じ色の袴を揺らして地面に足をつけた少女に気づくだろう。そして、その少女が影から出てきたように見えるだろう。】
【腰まで伸びた長い銀髪に、紫色の瞳が特徴的な少女は、赤い矢絣模様の着物の上に濃い紫の袴を着けていて、その下には編み上げブーツが見える。首元の白いマフラーが暖かそうな、茶色い革鞄を斜めがけにした少女は、周りを気にする事なくパンパンと土埃を払って】
【奇しくも、銀髪の少女はワンピースコートを着た少女と同じ年頃に見える。そして、銀髪の少女はあたりを見渡してから、目の前の少女に話しかけた】

_もし、そこのお嬢さん。よろしければ、現在地を教えてくださいな。
とにかく大急ぎで来たもんなので、ここがどこだかさっぱりなんですよ。
_路地裏みたいだけど、…近くに大通りとかありますかね?

【相手を小馬鹿にしたような軽い口調は、間違いなくワンピースコートを着た少女に向けられている。話しかけられた少女は逃げても良いし、驚いても気にしない。そんなからりとした態度はあまり見た目にそぐわない】
【しかし殺意も敵意も無く、むしろ参ったように頬をかく仕草は少女らしく、もし相手が見ていたなら毒気が抜けてしまうかもしれない】

/よろしければお願いします。
703 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/03/03(金) 23:22:19.53 ID:YMM73KiK0
>>702

【背後から聞こえた、かすかな音。こういった場所でそういったものを見逃すのは、もしかしたら道路に飛びだすのと同じくらい、すぐにでも死ねる方法なのかもしれない】
【あたりまえに歩いていた少女の足がふ――と止まるのは、その音のすぐ後だった。肩にかけた鞄の紐を握る力をわずかに強くして、最小限の動きで、くると振り返る】
【黒と赤、振り返りざまに向けられる瞳はまだ警戒止まりのものだけど、それでも――おおよそ初対面の人間に向けるには少し不適切な色があって】

……こんにちは。お嬢さんってわたしかな、……きっとそうなんだって思うけど。
道を聞きたいの? それならね、もうちょっとあっちに行ったら大通りのほうへ出られるよ。――わたしもね、あっちに行くの。

【身長は百六十センチと年齢の平均としては少し高い。低めとはいえ踵のある靴を履いている今なら、さらにもうちょっと大きくて】
【それでも威圧感のようなものはあまりない。相手が少女らしいことと、敵意や殺意がないことにすぐ気づいたのだろう。まだ少し警戒しているようだが、声は比較的柔らかく】
【鈴の音にもどこか似た、金属質な声。あっちだよと指さす方向はちょうど少女が歩んでいた方向だ。一瞬わずかな間をあけ、自分もそちらに向けるのだと付け加え】

どこへ行きたいの? このあたりなら少し分かるから、もしかしたら道案内もできるかも。
もちろん無理にだなんて言わないけど――……。

【大通りに行くのならあっちに行けばじきに出るだろう。相手の問いにそう答えた彼女は、それから、相手へとそう問いを投げ】
【もしよければという言葉に他意はない。このころにはすでに警戒さえだいぶ薄れて、向ける笑みは少し人懐っこい、あどけないものだった】

/もちろん大丈夫です、よろしくお願いします!
704 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2017/03/03(金) 23:59:14.51 ID:6THNDlqz0
>>703

【声に振り向いた少女が向ける警戒の色を気にした様子も無く、相手の話を黙って聞いていた少女は、ふむふむと情報を整理して、頷いた】

_ここから大通りまではわりと近いんだね?なら良かった。いやね、ここがどこの国かさえも調べずに来たから…とりあえずは街の名前が知りたいなと。大通りにさえ出られれば分かるだろうからね。
_もし良ければ、その、大通りまで一緒に来てくれるとすごくありがたいかな。僕、少し方向に疎いんだ。

【人懐っこい笑顔に、こちらも笑いかえしながら同行を願った。申し訳なさそうな笑顔は、子供っぽい現状の説明とは逆に少し大人びていて】
【近くに寄ってきて初めて気付いたのだろう、背の大きさに少し驚いた表情を見せる。少女自身は、声も背もあまり高くないせいかもしれない】
【150センチを少し過ぎた程度の身長では、見上げる形になって、それでもあまり態度は変えずに、申し訳なさそうにした】

_君は大通りに向かっていたんだよね。…君の目的地まで一緒に行けたらな、とか…。
……いや、突然現れた怪しい人なのは僕も承知しているよ?ただ、本当に、方向音痴だからどういう場所なのか知りたいな、と…ああでも、いくら親切な君でも迷惑だろうし危ないし、断った方がいいよ、そうしなよ

【チラリと相手を見ながらのお願いに、言った本人である少女自身が断った方が良いと言い出す始末で、それは少し間抜けな行為だっただろう。先程の発言を取り消そうと、少女は恥ずかしそうに目を伏せた】

/ありがとうございます、よろしくお願いします!
705 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/03/04(土) 00:13:53.65 ID:8o7Te4lH0
>>704

――うん、いいよ。ここからはあんまり変な道、ないけど……変なひとが居たら大変だもん。
まだ明るいし、あんまり居ないとは思うけど。わたしもね、今日はほとんど誰とも会ってないの。

【大通りまで。悩むでもなく頷いた少女は、近くなった距離で相手をじっと見つめる、自分の真っ黒でしかない髪に比べたら、銀色の髪は、とてもきれいだなぁ、とか、思いながら】
【相手の大人びたような様子も。見た目と年齢が少しずれている少女は――やっぱり自分って子供ぽいのだろうかとかちょっと思ったりもして、数秒だけど、いろいろと考える】
【もちろんその傍らではおかしな行動をしていないかとか、そういうのも、気にしている。路地裏で出会うひと――たとえ少女だって、もしかしたら、危ないかもしれない、と、】
【だけど杞憂かなとも同時に思ってもいる。なんだか思考回路はいろいろあるけど、なんだかんだいって、最終的には、】

今日はあったかくていいね、こんなところじゃなかったら、おひさまだってあったかいし――。

【だなんて、少なくとも自分の側に危ない要素がないことを教えたいみたいに、そんな、世間話――だけど相手が話し出せば、すぐにやめて】

わたしの目的地? ううん――それはいいんだけど、わたし、これからご飯食べようかなあって思ってたの。
友達に教えてもらったお店に行ってみようかなって……それでいいなら、……えっと、……あなたは、ご飯は食べた?
まだだったら、よかったらいっしょにどうかな。とってもおいしいパスタのお店なんだって、

……えっとね、路地裏の奥の方に案内してくれとかだったら、わたしも、危ないひとかなって思うけど……、街中のお店屋さんでどんぱちするひとは、あんまり居ないかなって。
わたしね、白神鈴音。UNITED TRIGGERでご飯を作るお仕事、してるの。……どうかな、あなたの名前も、よかったら教えてほしいの。

【自分の目的地――特別なことなんて何にもない、時刻はお昼よりちょっとすぎた頃合いだろうか、時計を最近確認してないから、多少のずれはあるだろうけど】
【どちらにせよちょっとお腹が空いていたっておかしくない時間。だからご飯を食べに行こうとしていたのだ、と、説明して――】
【――大通りに案内させようとしながら、その大通りで騒ぎを起こす人間はあんまり居ないだろう。零ではないとは分かっているが、でも、数は減るはず】
【あっさりと自分の名前と立場を明かした彼女はそのまま相手の名前も尋ねる。この名乗りを受け入れてくれるひとなら、きっと、よっぽど危ない人間ではない、はず、】
706 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2017/03/04(土) 00:53:00.10 ID:yr7rqHD60
>>705

【相手の少女が悩む様子を見せずに即答し、次に気を悪くすること無く、むしろ昼餉を共にしないか、と誘ってきたのに少女は驚き、そして顔を輝かせた】


_いいのかい?いや、目的地までつれていけなんて言った僕が言っちゃいけないけど…。
僕、今すごくお腹すいてたから、とても嬉しい誘いだな。ふふ、こんな可愛い方とお昼を一緒に、なんて、僕は幸運だ。

【あまり疲れは見せなかったが、少女はお腹に手をあて、嬉しそうに笑った。ぱすた、というのが何かは、少女にはよくわからなかったが、目の前の少女が美味しいというのならきっと美味しいのだろう、とあまり深く考えなかった】
【そして、白神鈴音という名前を聞いて少し考えこんだが、一瞬後には笑って自己紹介をした】

_僕の名前は、酒城澪だ。よく、酒木と間違えられる。仕事は…情報屋、かな。フリーだけど、就職先を探してるよ。
よろしくね、鈴音さん。……白神さんの方が良かったかな?

【おどけたように皮肉に笑う自分が少し苦手だと内心ため息をつきながら…このように可愛い性格ならばと考えながら、しかしそれを表には出さず】
【よろしくと言って、馴れ馴れしくしすぎたかと訂正する。相手はこちらを信用してくれたかもしれないが、それとこれとは別だろう。下の名前を呼ぶのは失礼かもしれない】
【美味しいご飯と可愛らしい少女、どちらも澪にとっては安心するものの一つであるが、あまり身近にあるものでも無かったが。】
【とりあえずは目の前の優しい少女についていこう。聞き覚えのない用語はあれど、目の前の少女は今間違いなく、知り合いになったのだから】
707 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/03/04(土) 01:07:09.86 ID:8o7Te4lH0
>>706

もちろん、……わたしも本当はね、お腹空いてるの。だから行こ、早くしないとお店混んじゃうかもしれないし――あ、でもね、ちょっとひっそりしてるお店なんだって。
だから大丈夫かなぁ、大丈夫だといいよね――、ふふ。

【幸運だとまで言われれば少し困ったように笑って、「もう、そんなことないよ」と首を振る。それでも、路地裏らしい危険人物にエンカウントしなかったことを思えば、】
【お互いにそれは幸運なことだったのかもしれないけど――並んでないといいよねところころ笑う様子は本当にただの少女のようで】

酒城澪さん? わあ、なんて字を書くの? わたしね、そんなにきれいな目の色をしてるから、もっと、違うような名前だと思ってたの。
わたしはね、白い神さまの……鈴の音って書くの。よくね、すずねって間違われるけど、りんねだよ。

【相手の名乗りに丸い目が数度ぱちくりと瞬きをする。それで少し身を乗りだすように尋ねるのは、見た目と名前の――勝手に持っていたイメージとの違いに興味を持ったように】
【櫻のほうの漢字を使う名前は口頭だけではどんな字を書くのかがよく分からない。わたしはね、と、言って手のひらに自分の名前を漢字で書いて――といっても、難しい字はないけど】

鈴音でいいよ。ううん、鈴音の方がいいな。わたしも澪って呼んでもいい? 

【お互い名乗り終わったところで。「行こうよ」とさりげない声をかける、それで相手が応じるなら、これから先は歩きながらの会話ということになるだろうか】
【自分のことは名前で呼んでほしいようで、鈴音と呼んで、なんて、指定しながら。相手のことも同じく名前で呼んでいいだろうか、と、尋ねる】
【もちろんそれが不満だと思えば言えば少女はやめるだろう。いきなり呼び捨てなのは彼女の癖でもある、あんまり、敬称をつけることがないなんて、ちょっと失礼な癖――】
708 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/03/04(土) 01:38:13.49 ID:yr7rqHD60
>>707
【行こうか、と歩き出した少女についていきながら、尋ねられた事ついてどう教えようかと考えて、とりあえず、と話し出した】

_漢字は、お酒に城。それで、下の名前はさんずいに雫、で酒城澪。
見た目と名前が一致しないのは…僕の目の色、髪の色は母方のものなんだけど、苗字と下の名前、住んでた場所は父方なんだよね。桜の国の、鴎森っていう森で僕は育ったんだ。だから、こんなちぐはぐになっちゃったんだよね。

【相手がしたように、自分の名前の漢字を手のひらに書いて、そのあと少し込み入ったような、そうでもないような事情を話した】
【名前と容姿がちぐはぐなのは自分でも分かっているし、とさして気にせずに話したが、相手は気にするかと内心で考え、しかしそこまで暗い話でも無いし良いだろう、と結論つけた】
【そして、呼び捨てでよいと言われて、自分も呼び捨てにしても良いか、との問いにも明るく、嬉しく応えた】

_ああ、澪と呼んでくれ。…鈴音、か。良い名前だね。君の声も鈴の音のようだし、とても君に合う名前だね

【初めて声を聞いた時を思い出しながら_といってもついさっきの事だが、似合っていると思った。そして、彼女の左右の目の色が違うのは、自分が触れて良い事だろうかと少し考えた】
【両目が赤い人も、両目が黒い人もよく見るが、左右の目の色が違う人はあまり見かけない。単純に生まれつきなのだろう、とは思えど安易に触れて良いのかまでは分からず】
【結局は触れずに、こちらだと案内する彼女についていった】
709 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/03/04(土) 01:52:51.22 ID:8o7Te4lH0
>>708

……そっか、そうなんだ。わたしはね、お父さんも、お母さんも、髪の毛真っ黒だったの。だからかな。
わたしのお家ね、ずーっと昔……何百年も前にはね櫻の国だったの。だけどね、もうずっと、こっちで暮らしてるから、わたしも変だね――。
もう何年も前になるのかな。その時に初めて櫻の国に行ったの。あそこね、すごいね――また行きたいなぁ。とてもきれいな場所ばっかりだったの。

【相手の名前と見た目の不一致。特別気になっていたわけではないけれど、そうなのだ、と聞けば、そうなんだ、と素直に納得する】
【櫻の国に住んでいたと相手が言えば「えー」とか「いいなぁ」とか本当にうらやましそうな声をあげて。少女もその系譜だけれど、今となってはほとんど関係ないほどに、薄いらしい】
【この間初めて行ったというのを、とっても大事な宝物をこっそり見せるみたいに。少しだけ声を潜めて言う、目をきらきらに輝かせて、そう言って】

わたしはね、水の国で育ったの。でも途中からは……、その、転々としてて。今はね、夜の国に住んでるよ。
だからお仕事がお休みの日は日向ぼっこしに来るの。ずっとまっくらくらじゃ疲れちゃう。

【あんまりずっと暮らしてきたふるさとみたいな場所はない、と、言いながらなんとなく思う。それにしても夜の国となると、ものすごく、遠い場所なのだけど】
【だけど相手も転移魔術を使ってここに来たというならあんまり不思議でもないのかもしれない。そういった手段があるのかもしれないし――】

ふふ、本当? 嬉しいな――とっても大切なひとがつけてくれた名前なんだよ。苗字もね、そのひとのをもらったの。

【名前を褒められた少女はひどく嬉しそうに破顔する。苗字ももらったとなれば結婚相手のように思えるけれど、なんとなく、違うようにも思え】
【高い澄んだ声が嬉しそうにもう少しだけ高くなる。小さな分かれ道を迷うこともなく進むたびに、かすかに街の雑踏が聞こえて来るようになって】
【まだ大通りにはたどり着かないけれど、もうすぐにでも着くだろう――というのが分かる雰囲気に、なりつつある。だから、どうやら、彼女の道案内は正しい様子で】
710 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2017/03/04(土) 02:19:10.64 ID:yr7rqHD60
>>709

【関係は薄いとはいえ、相手も桜の国に縁があるのだと聞けば嬉しく、また水の国で育ち夜の国に住んでいるという言葉には純粋に驚いた】

_ふふ、また桜の国に来ればいいよ。今度は僕が案内しよう。
夜の国、か…確か、日の当たる事の無い国だったかな。よくは知らないが、すごい所に住んでいるものだね。それに、国と国を跨いで日向ぼっこ、とは…随分と大規模なんだね

【移動の為の魔術がある、というのは知っていた為にさして驚きはしないが、自分の移動手段とはかなり違う為に、少し興味を惹かれた。まあ、影や水の中に溶ける自分が異常なのだとは知っているが_】

_そっか、大切な人につけてもらったんだね。きっと、とても君の事を大切にしている人なんだろうね、

【話しながら、少し違和感を覚える。名前とは、本来生まれてすぐにつけられるものでは無いだろうか。苗字をもらった、というのも、相手が親ではないのだろうという疑いを深めて】
【恐らくは何か事情があったのだろう、と曖昧に話す。親でなければ恋人か、はたまた友人か…いずれにせよ、会って少しの自分が詮索し過ぎてはいけない、と歩く速度をほんの少し、気付かれない程度早めた】
【少女の道案内について行けば、街もだんだんと人が多くなり、大通りはもうすぐかと気分が静かに高翌揚して、確かにこれは楽しみだと笑ってしまった】
【他愛ない話をしながら進む道は、いつもよりもずっと遅いけど、いつもよりずっと楽しく、少女の心を和ませた】
711 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/03/04(土) 02:39:36.60 ID:8o7Te4lH0
>>710

うん、行きたい! もう何度だって行きたいの。だってまだ見てない場所ばっかりで、いろんなところに行かなくっちゃ!
案内してくれるのも嬉しいな。わたしね、この前行った時は、UTのひとと行ったんだけど、あんまり観光とかできなくて――、
桜のいっぱい咲いてる場所に行きたいな。それでね、お花見するの。いいなあ、きっと案内してね――。

【ぱっと表情が明るくなる。もし歩いている位置で顔が見えなくても、それが分かるくらい――声が嬉しそうに弾んで、その数秒後には、振り向いてまでいる】
【「いろんな場所に行きたいの」と言って、指折り数えながら観光地の名前を言っていく、いいなあ櫻の国にお家があるなんて、とか、いろいろ言ったりして】
【案内してもらえるとなればもっと嬉しそうに笑って、鼻歌でも歌いだしそうな上機嫌で歩いて】

――そう、だね、きっとね、とっても大事に思ってくれてるんだよ。だけどちょっぴりおとなしすぎかな。
もっとね、かっこよくしてくれたって、いいかなぁーって、思うんだけど――、わ、ごめんね、澪には知らないひとだもんね、分かんないよね。

わたしの……えっと、命の恩人なんだよ。髪が真っ白でね、目は真っ赤で、背がすーごく、高いの。あ、それで……男のひとだよ。
もしかしたらどこかで日向ぼっこしてるかもしれないし、もし見かけたら、おしゃべりしてあげてね。ちょっと――無口だけど、悪いひとじゃないから。

【大切なひと。一瞬だけ寂しげなようにも嬉しげなようにも見える、複雑な目をした彼女は。その言葉をほんの数秒だけ遅れて、肯定する】
【もっと格好よくだとか言う頃にはすっかり年頃の女の子の愚痴みたいな声になっているから、あまり気にすることはないのだろう。それからようやく気づいたように、】
【命の恩人だと、そう説明する。――それから、もし見かけたら仲良くしてあげてほしいとも。多分あんまり似ているようなひとは居ないから、見かけたら、多分そうだと】

【道を一本曲がって、すぐだった。わっ、と、どこからあふれてきたのだろうと思ってしまうくらいのひとが、ひとたちが、そこを歩いている】
【まさに大通りに出たのだった。車の音、ひとのしゃべり声、いろんな音がいっきに溢れてきて――ちょうど見える場所に、街の名前と住所の書かれた札も、ぶら下がっている】
【もし澪の方で何か不都合がなければ、そこに書かれている住所は水の国のもの、だろう】

お店屋さんね、確かあっちだよ。どこか寄りみちしたい場所があったら、そっちが先でもいいけど――。

【歩くひとの邪魔にならない位置で立ち止まった彼女は、あっち、と、また遠くを指さす。それでもどこか行きたい場所、寄りみちしたい場所があれば、とも言って】


/だいぶ遅い時間になってきましたが、お時間のほうは大丈夫でしょうかー?
/こちらは引き継ぎ大丈夫なので、時間がまずいようだったら言っていただけたらと思いますっ
712 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2017/03/04(土) 02:42:02.50 ID:yr7rqHD60
>>711
/申し訳ありません、お言葉に甘えて、また明日引き継ぎさせて頂きます
/明日書き込むので、都合の良い時間にまたお願いします!
713 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/03/04(土) 02:50:18.30 ID:8o7Te4lH0
>>712
/了解しました、それではひとまずお疲れさまでした!
/また明日よろしくおねがいしますっ
714 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/03/04(土) 22:32:12.30 ID:yr7rqHD60
>>711

【歩きつつ教えられた、彼女の恩人だというその人の、特徴は分かっても名前を知らない事には分からない。それは聞いても良いのだろうか、と少し遠慮がちに口を開こうとした時】
【何気なく曲がった角の先、何か祭りでも開催されているのかと思うほどの人だかりがあった。思わず足を止めたのは、自分だけでは無かったらしく】
【一旦立ち止まり、こっちだよと指差した場所にはまだ食事処らしき所は見えず、代わりに国の名前と街の名前が書かれた看板が見えた】

_水の国…まあ、予想的中といった所かな?なかなか、僕にしては上々だね

【予想を巡らせたのは、つい先ほどの会話の中での事だったが、当たった事には変わりない、と自分を褒めてやる。呟きが聞こえたのか、寄り道するかどうかを問われて、少し考え込む】

_ん…いや、今特に寄りたい所は無いね。それよりも、ぱすたというのを早く食べてみたいな。どういうものか聞いた事も無いんだが…美味しいんだろう?

【水の国で寄らなければいけない所など、無かったはずだと記憶の中をさらう。あったとしても今はご飯が優先、と自分の知らない食べ物についての質問をした】

/遅くなってしまい申し訳ありません
/よろしければ、またお願いします
715 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/03/04(土) 23:26:09.99 ID:8o7Te4lH0
>>714

そっか、じゃあ行こ、わたしね、お腹空いちゃった。
――わたしはそのお店は行ったことないけど、きっとおいしいと思うよ。えっと……櫻の国の、おうどんみたいなものかな。
小麦粉をね、こう、麺にして……えーっと、トマトのソースと絡めたりする食べ物なんだよ。

【ふふと笑う顔は、なんだかもうすでにご飯に浮かれているもの、ついさっき路地裏に居た時とすっかり違う顔になっているのは、きっと気のせいではなく】
【場所が変わったというだけであまりにもあっさり緩んでいる。友達に紹介してもらった店だというから味だとかはわからないのだけろうけど、美味しいはずだよ、と、】
【なぜか妙に自信満々で宣言して。それから簡単にパスタがどんな食べ物か説明する、――櫻の国で言うところのうどんみたいなものだと、ちょっとおおざっぱすぎるけれど】

こういうところは初めて? 迷子にならないようにね、そしたらわたし、見つけられないかもしれないし――、
手でも繋ごっか? だなんて――、だいじょうぶだよ、みんないっぱいのひとに慣れてるひとたちばっかりだから。

【思わず足を止めた相手の仕草を見ていたのだろう。こっちだよ、と、再び歩きだしながら、そういって、彼女は自分の手をひらひらと見せて】
【それで必要とされれば、そのまま手を差し出すだろう。そうでもなければ――あんまり早くない程度の足取りで、彼女は目的地へ向かって歩いていく】
【言葉通り、大通りを歩いているひとたちは慣れているのだろう。ひょいひょいと、こんなにもたくさんいるのに、なぜだか誰もがぶつかりもしないで、歩いて】

【「あんまり遠くないはずだから」と、振り向きざまの一言】
【そのまま歩いていれば、案外すぐに――ほんの数分くらいで、「ここみたい」と彼女は笑って振り返るだろう】
【大通りから一つだけ小道に入った、静かな通り。"何か"あったとしたら、まだ、そこにはたどり着けないのかもしれないけれど――】

/こちらこそ気づくのが遅くなりました、よろしくお願いします!
716 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/03/05(日) 00:06:42.31 ID:5d5SrICy0
>>715
【うどんのようなもの、と言われて想像したのはトマトうどんだった。トマトの甘さが印象的だったな、と想像して思わず唾が出る。静かに飲み込んで、ゆっくりとした足取りの彼女に笑みを向ける】

_ふふ、楽しみだな。食は、万国共通の道楽だと言えるよね。知らない食べ物を知るのは楽しく、歓迎すべき事だ

【好みはあれど、本当に美味しいものというのはだれでも美味しいと言うだろう。だから、彼女の友人が紹介したその店も美味しいものを出すのだろう、とまだ見ぬ食べ物について考えながら歩いていた】

(!?…なんで…なぜ、あれがあんな所に)

【静かな通りに入ったな、と思考するかしないかの時に目に入ったものがあった。それは、ここにあるはずの無い物で…触れてはならない物でもあった】
【見た目は、ただの赤い紐だ。頼りなさげに落ちているそのさまは、ひょいと拾って持ち帰るなりしようとする人が居るだろう。だが、それは罠で。触れれば、体に巻きつき、持ち主の意思に応じて捕まった者を殺す。】
【厄介な持ち主に相応しい厄介な紐だったと_そう記憶している。危険性に思わず、ごくりと唾を飲み込んで…はっと共にいる少女を見た】
【正直に言って、あの紐には関わりたくない。だが、このままでは死人が出るだろう。隣の少女が死体になるのは、寝覚めが悪いし回避したい。そして、この街で騒ぎが起きるのも困る】
【少女が紐を見つけるかどうかは、分からない。ただ、澪は運悪く見つけてしまった。目立つかと言われれば、目立たない。そして、もし万が一少女が見つけた時に、触れてしまえば_】
【どうしようかと、彼女らしくない緊張感が身を包む。はたして、隣を歩く少女は紐を見つけるだろうか?】
717 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/03/05(日) 00:20:37.57 ID:rFiJkKPI0
>>716

そうだね、本当にそうだって思うよ、わたしは――、みんながお腹空いたら美味しいもの食べて、そんなのとってもいいことだよね。

【くすくす笑ってしゃべる声が、少しだけ真剣みを帯びたような気がした。もしかしたら気のせいだったかもと思う程度に、少し冷えた声を出した少女は――】
【けれど幸いにも。あるいは不幸にも、その赤い紐に気づいたようすはなく、足を進める。相手がその紐に対して、それ以上の反応を示すのなら、さすがに気づきもするだろうが】
【今この瞬間の話なら、気づいていない。地面よりも自分が来たことがあるわけでもない店を探していた彼女は、もしほかに視線を向けるとしたら、相手の少女に向けるばかり】
【地面に落ちている赤い紐――もし何らかの魔力でも発していればもう少し話は違うのかもしれないけれど。そうでもなければ、多分、言われなければ気づかないほど】

おしゃれっぽいやつとかがたくさんあるんだって、澪が来てくれてよかった、わたしね、おしゃれなお店ってどきどきしちゃって――、
テーブルマナーとかって苦手なの、お箸はいいんだけど、ナイフとか、フォークとか、ちょっとね、苦手かな……どしたの?

【だからまだ気づいていない彼女はそんな風に変わらぬ温度でしゃべっている、はっとした目でこちらを見る澪の目線と目が合って、一瞬だけ不思議そうにわずかに首をかしげたが】
【まさかそんなえげつない代物が落ちているとは思いもせずに軽い声色で尋ねる、やっと足を止めた彼女は、なにか変なことでもあったかな、と、ふらりと視線を巡らし】

……、あれ、誰かの鞄とかの紐が解けちゃったのかな。
駄目だよね、野良猫とかが食べちゃったらお腹に詰まっちゃうし――、

【それで、初めて、赤い紐のことを認識した。よいしょと鞄がずり落ちないように肩にかけなおして、それから、スカートが捲れあがらないように整えてから、そっとしゃがみこむ】
【なんてことないただのごみだと認識しての行動だった。そのまま拾って、どこかに捨てる。ごみ箱とかがなかったら、まあ、鞄にでもいれておけばいいかな、なんて】
【本当に何も考えないままで拾い上げようとする――、猶予は一瞬だけれど、誰より一番近くに居る澪には、その行動を邪魔できるかもしれないだけの余裕が、きっと、あって】
718 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/03/05(日) 00:48:04.22 ID:5d5SrICy0
>>717
【気付いていない、と安心したのは束の間だった。少し冷えた声色にも気付かず、こちらをみる目を流して、歩き出して】
【そして、彼女に気付かれて。しゃがみこんだ彼女の手を咄嗟に掴んだ。らしくなく、動揺して】

_ダメだっ!!!

【紐の持ち主が近くにいるかもしれない、という事すら思考の外だった。見つかれば、死にはしないが少々絡まれるかもしれない、という事も】
【足のみを影に溶かして、彼女のそばまで、滑るように_一瞬で移動して、手を掴んだ。普通の少女よりも力がほんの少し強い彼女の掴む力は痛いくらいかもしれない。】
【そして、少女を近付けまいとするあまり、彼女は自分の警戒を怠った。ほんの少し、それこそ影に溶かした足の先、つまりは影が紐に触れた】

_うあっ、

【シュルシュルと体に紐が巻きつく。恐らくは、すぐに持ち主が来るだろう、と思いつつ…それよりも、と目の前の少女の方に顔を向ける】
【少し苦しいくらいの楽な拘束だが、少女にそれは分からないだろう。紐を拾おうとして止められた意味すら、澪が紐に巻き取られるまで分からなかったかもしれない】
【逃げろ、とは言わない。一応は知り合いの持ち物だ、むしろあの男が相手では自分が側に居る方が安全だろう】
【しかし、声をださない澪を、出せない、と取られるかもしれない。恐ろしくなって逃げ出すかもしれない。少女の反応は、澪にはまだ分からない】
719 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/03/05(日) 01:04:59.44 ID:rFiJkKPI0
>>718

【音にするなら「わ」と「え」の中間のような声。多分誰かが落としたか――それとも要らなくなって捨てたのか。とりあえず、赤い紐は、彼女にとってはごみに見え】
【あんまりごみ拾いはやったことがない性質だけど。別に気づいたものを拾っちゃいけない理由にはならないだろうし――と、まあ、少女の思考はそんなものだった】
【つまりは気まぐれ、気分によってはそのまま見逃して、それよりお腹が空いたねと笑っちゃうくらいだったはずのそれを、この瞬間は拾ってしまおうとしようとして、それで、】

――、

【ぎゅっと腕を掴まれて、驚いた声を出したのは、ほんの一瞬前のことだ。けれど今度は声を出さない、それとも出ないくらいに驚いている――ようにも見える、けれど、】
【どこか蛇に似たまん丸の瞳、その真ん中の瞳孔がぎゅうと狭まって、目の前の光景をじっと見ていた。それが何であるのかを確かめようとするかのよう】
【だから動くのは一瞬だけ遅れるけれど、瞬きするくらいの時間の次には、もう動いている。澪の身体に巻き付く赤い紐を、ぐっと掴もうとして】
【もし首だとか、そういった場所に巻き付かれているのなら、呼吸できる隙間を作ろうとするはずだ。それができないほどに強いのだとしても、せめて、指を滑り込ませるようにしようとして】

これが何か知っているの? これは――刃物みたいなものがあれば壊せるのかな。……ううん、大丈夫、やってみる。

【ひとまず、ただちに澪が死ぬようなことはない、そんな風に彼女は判断しているのだろう。あるいはそう思いたいのか――あどけない顔はいつの間にか、冷たい大人のようになって】
【声音も、どこかはしゃいだ少女みたいだったのに、うんと冷たく冷えた鈴を鳴らしたらこんな音がするのかもしれない、と、そんな風に思えそうに、冷え切って】

動かないでね、これだけ壊せるかやってみるの。

【左手でぐっと身体に巻き付く紐を引き寄せながら――右手には、きらり、と、かすかに魔力がきらめく。その手のひらには周りから見えない程度に切っ先のようなものが覗き】
【その紐を切断しようとするはずだ――その前に澪から制止でもあれば違うかもしれないけれど、少なくとも、澪でない誰かにいわれる限り、きっと彼女はそれをやめないだろう】
720 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/03/05(日) 01:31:20.99 ID:5d5SrICy0
>>719
【一瞬、蛇のようにきらめいた瞳に、冷たい声と顔に驚きつつも、大丈夫だと静止の声をかけようとして、…少女の背後に静かに、音も気配も無く表れた青年に気がついた】

「それはちょっと困るなあ。それで、坂城君?どうして君がかかっているのかな?」

【どこか呆れたような声と、呑気に笑う青年は、今にも紐を切ろうとする少女を無視し、紐の先を掴んだ。たちまち、紐は解けて拘束されていた少女は自由の身となった】

_大丈夫だよ、鈴音。命の危険は無いから。
それで、冬道さん。それは僕の言葉だ。なんでこんな所にあなたが?

【目の前の青年、つまりこの紐の持ち主たる冬道十夜は、確か水の国の辺鄙な所で土いじりをしていたはずだ。にも関わらずこんな所で罠をはっていたのは何故だ。訳が分からずに尋ねた】

「うん、ちょっとこの辺に用事があってね。ついでに、死体でももらっとこうかなって。まあ、坂城君がいるならここでは誰も殺さないでおくよ」

【ちらり、と鈴音の方を見てかすかに笑ってから、シュルリと紐を巻き取る。髪の色と同色の、紺色の華服の袖の中に紐をしまい、居住まいを正した】
【僅かな微笑みに警戒して、鈴音の側に寄る。何かあっても、ここなら守れる。鈴音は、僕が守らねばと心を引き締める。知り合いとは言え、人を罠にかけようとしていたのだ】
【2人のやりとりを見て、鈴音という少女はどう感じるだろうか。いきなり表れた青年に不快感を示すか、知り合いだという事に澪に対して警戒するか、はたまた何が起きているのかわからずに困惑するのか】
【鈴音の反応が分からなくて、澪はそちらに目を向ける事が出来なかった】
721 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/03/05(日) 01:59:19.82 ID:rFiJkKPI0
>>720

【手のひらの内側にわずかに顕現した切っ先。ぎらぎら光るそれは、十分にひとを殺せるだけのものであると示すよう、――それでも、間違えて澪のことを切らないように】
【「だいじょうぶだよ」と声をかけて、手のひらに隠した刃を紐に押し当てようとする――その瞬間に聞こえた声に、彼女はびくっと身体を跳ねさせ、とっさに後ろを】

……誰?

【振り向いた一瞬の目は、さっきまで楽しそうに澪としゃべっていた少女と同じ色合いなのに、何もかもが違うようだった。じろりと睨みつけて――だけど】
【どうやらこの二人は知り合いらしい、というのが、二人が会話するうちで分かってくる。同時に分かるのは、赤い紐……ひとを殺すものらしいそれがここにあることを】
【多分澪は知らずにいて、だから、街中で堂々とひとを殺そうとしていたらしい青年とは知りあいでも共犯ではないらしい、と、そう、認識する】

えっと――二人は、知り合いなの? ……知りあい、なんだよね。

【さっきまでの鋭さが少しだけ失せている。けれど澪が冬道と呼ぶ相手に対しては、親しげな色合いの欠片もないような目を、ずっと向けていて】
【街中で堂々と殺人をしようとした人物――だけれど、恐れているわけではないようだった。それよりも心中にあるのは、お昼ご飯の怨み――みたいな】
【普通のひとから言わせれば"おかしい"ような気持ち。自分を守るように立つ澪の頭を少しだけ見おろしてから、視線が少し逸れて、それから、相手へ戻され】

どういうことなのか、教えてくれる? でないと今すぐ自警団に電話するの、きっとすぐ来るんじゃないかな――、ううん、すぐに来るよ。きっとね。

【そう尋ねる、半ば脅しのようなものだし、聞きだしたからといって見逃すとも、言ってない。ひとまず求めたのは事情の説明】
【路地裏ならいいだなんて言わないけれど、こんな街中でやる理由が、分からなかった】
722 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/03/05(日) 02:18:56.80 ID:5d5SrICy0
>>721
【声をかけられて、困ったように青年は顔をしかめた。本当に困っているにしては、あまりそう見えないが…とにかく、反応を見せた】

「自警団か…そうだね、それはちょっと困るかもな。相手を選んで殺す予定だった、とか言ったら手が後ろに回りそうだ。もう少し危なめの所に仕掛けた方が良かったかな?」

【とぼけたように、どこかズレた返事をして、青年はじっと鈴音を見た。そして、ふう、とため息をついて、続けた】

「そこまで警戒されるのも悲しいなあ。特に、坂城君は一緒に勉強した仲だというのに。そうだね、説明というか、釈明しよう。
ただ、それはなにか食べながらでも良いと思うんだけど、君たちはどこか良い所でも知っらない?」

【困ったように、演じるように、にこやかに尋ねて、よくよく見ればとても整っているその顔もあってとても様になっている。澪程ではないが長い髪が耳の下あたりで結ばれていて、下手をすれば女性と見間違うかもしれない】
【どうするの、とチラリと澪は鈴音の方を見た。少なくとも、鈴音は青年を恐れているようにも見えず、かといって殺意と呼べるほどのものを向けている訳でも、友好的な態度を取っている訳でもない。】
【こちらが外食に向かう最中だった、というのを見透かしたような発言に、しかしそうではないとお腹をさする青年の行為でわかる】
【どうしてこうなったのだろう、と不運に見舞われた少女は、紫の瞳を伏せてため息をついた】
723 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/03/05(日) 02:29:00.23 ID:rFiJkKPI0
>>722
/申し訳ないです、ちょっと眠気がひどくなってしまって……
/またになってしまいますが、凍結お願いできますでしょうか?
724 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2017/03/05(日) 02:34:54.87 ID:5d5SrICy0
>>723
/勿論です、またよろしくお願いします。
/今日はお疲れ様でした
725 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/03/05(日) 02:38:24.05 ID:rFiJkKPI0
>>724
/ありがとうございます、明日はちょっと予定がよく分からないので不確定なのですが、レス返せるようになったらお返ししておきます
/ひとまずお疲れさまでした、また明日よろしくお願いします!
726 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/03/05(日) 18:50:33.49 ID:rFiJkKPI0
>>722>>724
/申し訳ないです、晩の食事が急に外になってしまいまして…
/なるべく早く戻りますので、もうしばらくお待ちいただけますでしょうかっ。本当に申し訳ないのですが……!
727 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2017/03/05(日) 20:12:23.61 ID:5d5SrICy0
>>726
/気付くのが遅れてしまい、申し訳ありません
/こちらはいつでも大丈夫なので、都合の良い時間にゆっくりお願いします。大丈夫ですよ!
728 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/03/05(日) 22:14:12.31 ID:rFiJkKPI0
>>722

【少し困ったようなばつの悪いような顔。さっき知りあったばかりのひとの、さらにその知り合いと思わしきひとが、思いきり街中で殺人の罠を張っていたという状況】
【今更遅いけど一番最初に悲鳴でも上げて置けばよかったのかなとか思うのはちょっとだけ他人任せのずるい思考回路、でも今更そうしようかと一瞬悩むくらいは】
【この現状をどうしよう、と、悩んでいた。彼女だって、べつに、自分がほんとに一般人なら、ひとを咎められるような生き方はしてないし、黙認でもよかったのだけど】

……自警団じゃなくたっていいけど、それはちょっと、遠いし――、呼ぶとしたら自警団だよ。
……――もう、わたしね、お料理作るだけだから、そういうのはあんまり、しないんだけど……。セリーナなら、きっと自警団のひととも知り合いだけどな――。

【「こまったな」と、声に出ないけれど、口が小さく動く。どうするべきなのかは分かっているけどどうしたらいいのかはよく分かっていないような顔、だから、】
【相手がうまいこと言いくるめるなら、そのあたりが弱点だろう。でも――基本的には彼女は彼のことを通報してやろう、と、思っていそうなのは間違いがなくって】
【だけどそうするには彼と知り合いだという澪の話も聞こうというような気がないわけではなくて、――つまり、まだ、分かりかねているのだろう】

ううん、知ってるけど――、あなたのお話を聞くんだから、お兄さんが食べさせてくれるの?
それならね、いいお店を知ってるよ。わたしの友達が言ってたんだから、きっととってもおいしいし――すぐそこだから、もうすぐにでもお話ができちゃうの。

【だから――立ち話も何だしというわけではないのだろうけど、どこかで食事でもしながら、ということになれば。場所は知っているよ、と、にこやかな笑顔】
【だけど言っているのは、つまり、ぜーんぶ奢ってくれるならいいよ、だなんて、またちょっぴり脅しのような、そうしないとどうするのかは言わないけど、言わないのだけど】

ね、わたしたちもお腹空いたなーって、話してたんだよね。

【と澪にまで言って、おもいきり、共犯みたいにしようとして――指で指し示すのは、本当にさっきまで二人でいくつもりでいた、パスタのお店】
【夜はこじゃれた個人経営のレストランだけれど昼はもうちょっと気楽にパスタのランチメニューをやっている、という店で】
【「そこなんてどう?」と提案してみる、相手の女のように整った顔には――個人的な理由もあって、あんまり、特別に、ひとなつこい顔はしてみせないままで】

/大変遅くなりました、よろしくお願いします……!
729 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/03/05(日) 23:40:33.51 ID:5d5SrICy0
>>728

「奢り?ああ、勿論。口止めをお願いする身だからね、それくらいはやるよ。案内してくれるかな?」

【にこにこと、胡散臭い笑みを貼り付けたままの青年が安心したように話す。良いのか、と内心で思いつつ澪も賛同した】

_鈴音が良いなら、僕もそれに従うよ。

【苦虫を噛み潰したような、諦めたような顔で、澪は全権を鈴音に託し、青年への警戒も解いた。元々、この男は自分に対して甘い所もあるし、…ふざけた言動が多いものの普通の感性も持ち合わせている。だから、食後の甘味まできっちり奢るのだろう】
【どうしてこうなった、と何度目かの問いが頭の中で回る。お昼を食べに歩いている所まで巻きもどれば、何も無かった事に出来るだろうか】
【軽い脅しをかける少女も、疲れたように遠くを見ている少女も気にせず、「それじゃあ行こうか」と青年が声をかけてくる。言いつつも足を動かさないのは、2人を待っているのか、反応を待っているのか。青年の笑顔は崩れない】

/こちらこそ遅くなってしまいました
/よろしくお願いします
730 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/03/06(月) 00:19:12.69 ID:J8x7+if90
>>729

【これでいいのかなという思いがわずかにあった。あれこれってもしかしたらあんまりよくないんじゃないか、とか、そういう】
【こういう状況は初めてだしあんまり考えたこともなかったから困る、やっぱり今すぐにでも悲鳴でもあげて、いや、とか、思っているうちに話は進んでいく】
【むしろ自分が進めてしまった部分も多いしどうしようもなくて。言ったはいいけど、これじゃあ懐柔されているみたいじゃないかな、とか、少し――思って、笑うのが強張る】
【多分青年以外は遠い目とかあいまいな笑みとかを浮かべているんだと思う。反応を待たれても、少女も、あるいは様子見するように動かないままで】

……待って、やっぱり、やめよう――、セリーナに怒られちゃう。

【ずいぶん長考だった。やがてちょっと待って、と、ぱーにした手のひらを相手に見せるようにして、何のでもないけれど静止を求め】
【やっぱりまずい、という結論。そういう正式なメンバーではないけど、お料理しかしないけど、それでも、一応、正義組織の隅っこの、隅っこのほうに自分の名前はある】
【とたんにくるっと手のひらを返すのなら、青年にとってはひどく厄介なことだろう――ただ彼女の中でそうした結果、どんな風にまずいのか。やっと想定し終わっただけなのだけど】

こんなところで、……ううん、ええと、ひとを殺そうとするのは、……その、よくない。
よく考えたらわたしは理由とか聞いても、意味ないの――お料理のひとだし、だから、……澪にはごめんね、悪いんだけど、
やっぱり自警団でも、警察でも、呼ばなくっちゃ……、……。

【ひどく不明瞭な言葉にも聞こえるだろう、態度はぱっきりとした正義の味方には程遠く、言葉を探り探りなのが目に見えて分かるよう】
【げんに視線はきょろきょろと動いていて自信がないのは明らかだし、ちらちらと澪をうかがっているところから、目の前で知りあいを通報しようというのも、やりづらいらしい】
【コートのポケットから出した薄型の携帯電話を握りしめて、だけどそこで少女は押し黙ってしまって。――だから、二人が何かしようと思えば十分なくらいの時間が、あった】

/すみませんこちらも気づくのが遅れてしまって……!
731 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/03/06(月) 01:00:11.95 ID:IHEuFHcc0
>>730
【通報しようと、携帯電話を握りしめた鈴音を止めたのは、青年ではなく澪だった。青年_冬道は、むしろ澪の行動を不思議そうに見ている】

_自警団より、そのセリーナさん?に報告した方が良いんじゃないかな。冬道さんにとっても、僕にとっても。
鈴音の為になるかは、正直に言って分からないけど。

【自分がどうしたいのか、自分でもよく分からない。でも、古い知り合いとも呼べる冬道に前科がつくのはダメ、と脳どこかが判断した。それは彼の為というよりも、彼よりも仲の良い彼の妹の為だったのかもしれない】
【澪自身、自分が日の当たる場所でまっとうに、潔白に生きてきたかと問われると詰まる部分があって、_つまりは自己満足だ、と答えが弾き出される】

_悪い人では無いはずなんだ。
…この罠も、多分どうしてはっていたのか、僕には詳細は分からなくても誰の為かは分かるから。

【選んだ言葉があっていたのか、それは分からない。でも、その言葉に、青年は初めて笑みを消した。消したと言っても、訝るような表情がほんの少し出ただけだったが】

「どちらの方が都合が良いか、それは僕には分からないけどね。
ただ、僕は戦おうと思えば戦える、という事だけ覚えておいて欲しいかな。罠は、僕の戦い方のほんの一部だしね」

【そう言って、言うべきことは全て言ったと言わんばかりに口をつぐんだ青年は、何も言わない。少女達がどうするのか、まるで保護者か何かのように生温かい眼差しで見ているだけだ】
【澪の方は、少し暗い目で鈴音を見つめていた。彼女の中で様々な感情が飛び交っているのだろう、どんどん目から光が消えていく。少し哀れなくらいに、どうしたら良いのかと迷っているように見える】
732 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/03/06(月) 01:24:40.47 ID:J8x7+if90
>>731

【通報しようとしている彼女自身、きれいな手をしている、だなんて、とてもじゃないけど言えなかった。というより――言った瞬間、呪い殺されてしまうんじゃないかと思うくらい】
【だけど、と、思う、思うのに、画面は暗いままで、ほんの少しだけうつむいてしまった少女の口元を映しこんで。澪の言葉もそのままで聞いていた。じっと、押し黙って】

……悪いひとじゃなくっても、誰かを殺そうとしたら、ルール違反なんだよ、……ううん、わたしが言えることじゃないの、ちっとも……。

【ぎゅっと携帯電話を握ったまま、一度、二度と、深呼吸をする。これから先のことは多分してはいけないことで、だけど、もしも二人が協力してくれるのなら】
【駄目だけど、できること。――携帯電話のスリープを解除して、そのままよく慣れた電話番号を入力する。そのまま携帯電話を耳に当てて――コールをいくつか、数えたころ】

……へびさま? うん、えっとね、大した用事じゃないの、……うん、わたし今から電話を切るから、そしたら、また掛けてほしいの、それで、
いますぐ帰ってきて、って、言ってね。――ううん、気にしないで、うん、じゃあね。

【二人から身体をそらすようにして話す――けれど距離が距離だから、普通に聞き取ることができるだろう。そのまま二分もたたずに電話を切ったらしい彼女は】
【苦い苦い顔をしながらつまむように持った携帯電話を自分から遠くして少しだけ待つ、それで――そこからさらに数十秒後に、着信があれば】

【「分かった、帰るね――」】

【今度は数十秒もないような会話。あっさりと電話を切って、それから、二人へ向き直り】

――こほん。……えっと、わたし、急用ができたの。だから……、本当なら通報しなきゃなんだけど、その時間も、すっごく惜しいし――、
いますぐ帰らないといけないから。誰も呼んだりしないけど。……その代わりに、あなたたちは、誰とも会ってないの。ううん、会ったかもしれないけど、名前とか知らないし……。
そのひとは落ちてるごみだなんて気づかなかったし、見てないし、急な用事で帰っちゃうの。――次見たらへびさまじゃなくって自警団に電話するんだからね。

【どう考えてもわざとらしかった――というより、全部が演技だった。それもへたくそな、そういうことだから、そういうことにしましょう、と、ただ遠回しに宣言するような】
【つまりは今回ばかりは見逃すけど次にこういうことをしているのを見かけたら今度はしかるべき場所に通報する、ということなのだろう】
【もっと言えば誰にも会ってないことにしてもらえたら嬉しい、嬉しいというより――言外にそうしなさい、と、これも「そういうこと」に含んでいて】

…………今回は引っかかったのが澪で、知り合いみたいだから、"こう"するけど。

【なんだか疲れたような目で最後にそうとだけ呟く、それから――思いだしたように、澪へ、簡単な謝罪を告げて――きらりと彼女の周りにあふれかえって瞬くのは、魔力の薄片】
【転移の魔術。ほんの数秒で彼女の姿はそこから消えてしまう。だから帰るかはともかくとして、一度この場所から姿を消すつもりらしい】
【けれど何か簡単な言葉なら投げられるかもしれないし、彼女も、聞き取ることができるはずで】
733 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/03/06(月) 01:38:47.67 ID:IHEuFHcc0
>>732
【聞こえてきた電話の内容、告げられた内容…それら全てに泣きそうになって。自分なんかの為に、明らかに怪しい目の前の男を見逃してくれたのだ、と思うと、感謝や申し訳ないような気持ちがごっちゃになった】

「分かった。その代わり、僕はどこの誰ともしらない少女に急に何かあげたくなってしまったよ。一度だけ、死の手から遠ざける身代わり人形、とかね。」

【青年は笑って、少女の方へと小さな人形を投げた。精巧に作られたその人形を受け取ったかは投げられた少女次第だが…しかし、もう片方の残された少女の声は届いているだろう】

_ありがとう、…僕は君を知らないかもしれないけど、でも、出来たらまた会いたいよ!

【真摯な声、目は先ほどとは違い澄んでいた。それは何らかの決意をしたような目で、…向けられた少女にとっては、迷惑なものかもしれない】
【でも、また会えるはずだと澪は笑って、青年に対して文句をつける為に息を吸い込んだ】

734 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/03/06(月) 02:02:45.94 ID:J8x7+if90
>>733

【少しだけ気持ちがざわざわしていた。よくないことをしているという気持ちと、だけどここで、きっと正しいことをすればもっと悪いことになっていたと言い訳したい気持ちと】
【苦い虫を噛んだまま飲みこむことを許されなくって口の中に留めているみたいな顔。最後にせめて八つ当たりみたいにちょっと鋭い目を彼に向けたところに】
【投げられるのは小さなお人形――魔術が彼女を消し去るその瞬間、伸びた手が投げられた人形を掴んでいったのを、彼は見るのだろうか。実際、彼女の消えた後には何もなく】
【強いて言えば魔術式の残骸たる魔力の欠片がひらりひらりと、ちょっと早い桜の花びらのように舞い散って――、それで、彼女はその場所からいなくなる】

【その後に自警団が駆けつけてくるということも、ないはずだ。昼間の明るく暖かな気配から、放りだされるのは暗く冷たい、ずっと夜の中の場所】
【なんだか悪いことをした自分を世界が丸ごとで叱っているみたいで――お昼ご飯はどうしよう、なんて、わざとらしく呟いて、その後は】

【電話の意味を分かりかねたままでいた同居人に気にしないでと言ったり、いろいろしたり――そんな風に、過ごした、らしい】

/おつかれさまでした!
735 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2017/03/06(月) 02:07:11.44 ID:IHEuFHcc0
>>734
/お疲れ様でした!
/今回はありがとうございました、またいつかよろしくお願いします!
736 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/03/22(水) 22:32:51.67 ID:AQYBh8sk0
【街はずれ――海べり】
【冬よりいくらか生ぬるくなった風が吹いている夜、光源といえば空の太い三日月くらいなもの、その、薄暗い中を】
【ときどき大きな犬を連れた老人が通りすぎて行ったりする、静かだけど、静かすぎやしない程度の夜】

……久しぶりにこの辺りまで来たのだけど。変わり映えはしないものだね、よっぽど違うものになっていても困るけれど。

【砂浜に一つだけ転がっている――というよりも鎮座しているのは、大きな……うんと大きな、無骨な岩で。だいたいの人間の頭より高さのある、重たそうなもの】
【いつかの嵐の夜に流れ着いたとか、能力者が持ってきて置いて行ったとかいろいろ言われているけれど、なんとなくずっと放置されたままの――その上に、ふらりと人影が揺れて】
【大人は危ないとか言うけれど、地元の子供はよく登って遊んでいるもの。実際登っている人影も身長は子供程度に小さくて、ただ、とうに子供の居ないはずの時間】

【毛先だけが鮮やかなピンク色のくすんだ金の髪、勿忘草色の瞳は目つきが悪くて睨むようだけれど、おそらくそこに悪気はない】
【袖口をぎゅっとしぼった白のロングワンピースは薄い布地を何重にも重ねたもの、裾の方は特にふわふわ膨らんで、夜風に好きに揺れていて】
【毛糸で編んだようなケープと、踵の高くないパンプスと。背丈は子供のようだけれど、どうやら年齢はもう少し上で、成人する少し前くらい、だろうか】

【そのうち登った岩の上にそっと腰を下ろす。少しためらうようにしてから、やがて岩の端から足を垂らすようにすれば、】

よい、しょ――、

【岩に手をついてぐっと身体を乗りだすように覗きこむ――視線の先には、砂浜の上、無造作に投げ置かれたような薄生成り色のトートバッグがあって】
【拾い上げようと伸ばすような手は当然空を掻いて、そのままなら何もない、はずだった。――けれど一瞬だけ遅れてふわりと浮かび上がるバッグを見れば】
【どうやら彼女が能力者らしい、というのは、すぐに分かり。能力の証拠であるかのように鞄にまとわりついてキラキラ光る勿忘草色の靄が鮮やかに、夜の中で目立っていた】
737 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/03/31(金) 21:17:00.36 ID:yR2rCoZM0
>>736
/何となく再掲しておきますー
738 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/04/28(金) 22:37:54.88 ID:EKWU32gB0
【太陽が沈んだばかりの時刻――街はずれ、浜辺】
【ざあざあと穏やかな波音が繰り返される場所。街明かりからは少し遠く、明かりといえば、空のうすっぺらな三日月ぐらいしかなく】
【薄暗い中で、それでもたびたびジョギングに興じる若者や犬を散歩させるために訪れた人々とよくすれ違うから。たとえ一人でいたとしても、"嫌な"感じにいきあうことも、あまりない】

……そろそろ忙しくなる時期なのかしら。嫌ね、ずっと冬がいいわ。ハウスの中は暖かいもの――。

【そんな砂浜。波打ち際からは遠い場所、砂が服にまとわりつくのも気にしないで地べたに座っている人影が一つ。ぼうと見るでもなく海を見つめていて】
【一人愚痴めいて呟きながら、あいまいな高さで束ねて結わえていた髪を解けば、毛先は少し潮っぽい風に揺れながら背中に広がって。人影はそれを乱雑に手で整え】

何か楽しいことでもないかしら? ……そうね、今年の母の日は中止だとか。とっても愉快ね。

【――肩甲骨を覆い隠す長さの濃紺色の髪、瞳もそれと全く同じ色合いで、どちらもが光の差す角度によって、落ち着いた青色のように見え】
【あまりこだわったようには見えないシャツとこれまたただのジーンズにスニーカー、だなんて、ラフな格好と】
【座る傍らで地面に放りだされているような鞄もただ容量を重視したようなもの。背の高さもあって、遠目では男と間違えそうな――実際下手な男よりも背の大きな――女は】
【これはただぽつりと漏らすように連休がないとか呟くと――、疲れたようなため息を一つ吐いて】

ま、仕方ないわね。お仕事だもの。

【それから視線を落として――自分の座る目の前の砂浜に、そっと手をかざす。あたりまえに平坦なはずの砂粒たちは、けれど、女の手が近づけば】
【まるで液体磁石に磁石を近づけた時のようにひとつふたつと隆起して、それがやがてだんだんに大きくなって、そのうちにざわざわと組み上がっていく】
【――ほんの一分もかからないほどの速度で出来上がるのは砂の城、だった。ちょうど座っている女の座高と同じくらいのもの、それもうんと緻密で、細かな城】
【おそらくは能力なのだろう。だからといって、いやにクオリティの高い砂の城と並んで座っている人影、だなんて、少し不思議なようだったけれど――】
739 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2017/04/29(土) 13:42:04.82 ID:iM7do84Y0
>>738
【静かな海の中。水中を高速で移動する影は、唐突に水の限界_波打ち際にぶつかり、少女の形をとって砂浜に放り投げられた】
【勢いよく砂浜を転がった少女は、何が起こったのか分からないといった表情であたりを見回す】
【そして、ふと近くにいた女性に気付いた。それから女性の隣にある砂の城を見て、感嘆したように目を丸くして。それから、ふと自分の格好を見下ろして苦い顔をした】
【銀色の髪に、紫色の瞳。長い髪は緩い三つ編みにされているが、砂の上を転がったせいか砂で汚れている。髪だけでなく簡素な黒のワンピースも、その上に羽織った白いカーディガンも、編み上げブーツの紐でさえも砂まみれになっていた】
【その頃にはもう、女性は少女に気付いているかもしれない。少女が海から吹っ飛んだ距離も、砂塵を巻き上げながら転がった距離もかなりのものだった】

_そこの…お姉さん?申し訳ありませんが、ここは水の国であってますか?

【とりあえず聞くことはこれだ、とあらかじめ決めていたことを目の前の人間に聞く。相手は今現在、なにもしていなかったから、答える余裕もあるといいが、などと考えながら】
【立ち上がって砂を払いつつ、きちんと相手に向き合う。いきなり話しかけたのだから、失礼な態度はあまりとりたくなかった】
740 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/04/29(土) 23:32:19.59 ID:TMh1W+1J0
>>739

【砂の城を作りあげて、少し後。手持無沙汰になったのだろう女はちょうど砂浜に触れるように下ろしていた腕の、そのちょうど手のひらのあたりにあった砂粒たちを】
【一握りつかみあげ――城のバルコニー部分にパラパラと落としてやれば、それはほんの一瞬紺色の魔力光を放ち。そして落とされたままの小山から、するりと伸び上がり】
【まるでゲームに出て来るお姫様のようなひとがたを作りだす。――それで今度こそ飽きたのだろう、視線を元のように海へ戻す――その時、だった】

【ばんっと海中から飛びだし砂浜を転がる影。ここがサメの出て来る系の映画の世界だったら、十中八九人食いザメ。だいたいそんな感じにも見える、光景】
【けれど実際にそんなことはなく現れたのは少女のように見えるもの。砂粒だらけなのは種族の同定にはあんまり役立たないだろう、と、気づけば少女を追っていた目が瞬き】

あら、そうよ。ここを目指して来たのかしら? だったら偶然ね、喜んでいいわ、ぴったりだもの。

【それから、相手の登場の仕方に驚いた風でもなく、平坦な声で返すのだろう。ひとりごとを言っていた時と同じトーンだなんて、全く動じていないように見え】
【だけれど"ここ"だなんて言うのはちょっとしたからかいのようでもある。水の国なんて大きなくくりじゃなくて、まさにこの砂浜のあたりを指して、ここ、と、】

けど残念ね。観光ならもっと都会に出ないと駄目よ。このあたりってば、郊外だもの。
……あら、砂だらけね。人の身体についた砂を払うほど器用じゃないの、タオルでよければ貸せるわ、ロッカーに置いていた予備を持って帰ってきたの。要るかしら。

【あんまり意味のないからかいを飛ばした女はそれからゆるりと立ち上がる。数字にすれば百七十を少し超えるくらいだろうか、座っているときから大柄だったけど】
【それが立ち上がるとよくわかって――ひとまずこのあたりは郊外であるらしい。首都の方が目当てなら、ここからさらに電車に乗ったりが必要なくらいの、距離があると】
【そう言いながら相手に近づけば物理的に上から視線を向けることになる、のだけど。愛想はよくないものの、あんまり怖い――というタイプの人間ではないらしく】
【もちろん相手の受け取り方にもよるのだけど――海中から現れたとなれば相手は濡れてもいるのだろうか。貸すと提案したタオルについては使ってないこと、ただ土臭いことをつけたし】

【そのままタオルを借りるということなら、大容量のリュックから結構きっちり畳まれたフェイスタオルを取りだして、相手に手渡すことになるのだろう】
【けれど無理強いはしない。欲しいといわなければそれ以上はもう気にならないみたいに、誰でもよかったのだろうけど、とりあえず指名された人間として――話を聞こうとは、するはずで】

/ごめんなさい、気づくのがめちゃくちゃ遅くなりました……!
/それでもよろしければロールお願いできたらと思います。本当にすみません!
741 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2017/04/30(日) 14:50:36.89 ID:VhBOckJ30
>>740
【少女はまず、驚いた様子を見せない女性に興味を引かれ、次に立ち上がった大柄な身体に感心した】
【少女自身は150を少し過ぎたくらいの小柄な体型だったため、かなり見上げる形になる。つられて立ち上がりながら、親切な問いかけに答えた】

_ありがとうございます。タオルは大丈夫です、動いてれば取れると思いますし。

【なんらかの能力を持っているのだろうか、水から飛び出したにも関わらずどこも濡れてはおらず、払っているうちに服の砂も取れてきている】
【少し無愛想な女性の態度も気にした様子を見せず、物怖じもせずに_郊外だという言葉すらも気にせず】
【緩慢に、少し考えるような仕草をして、そのあとにこりと女性に笑いかけて紡いだのは】

_ここら辺に適当な酒場とかありますか?出来れば、人が集まるような。観光に来たわけではないんですけど、ぶらつくついでにお酒でも飲みたいな、と

【小柄で、見た目も15かそこらにしか見えないような少女が言うにはあまりそれらしくない、少し皮肉を帯びたような、妖しさを含んだような、それでいて刺々しさのない言葉だった】

/こちらこそ気づくのに遅れてしまい申し訳ありません
/ロールはいつでも良いので、お付き合い頂けると嬉しいです
742 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/04/30(日) 22:00:45.23 ID:wJdwFF660
>>741

あら、そう。私も自分についた砂を取るのなら上手なの。おかげ様で洗いものも楽だわ、どうせ仕事着が泥だらけだけど。砂よりマシかしら。しみついたのは取れないの。

【動いていれば取れる――相手の言葉通り、確かに砂は取れているように見えた。海から飛び出てきた割に濡れた様子もないし、それなら本当にそのうち取れるだろうと】
【ゆるく考えてタオル云々についてはそこで終わりになる。使ってないわりに土臭いらしいタオルを持っていたり、仕事着が泥っぽいらしかったり――】
【何より彼女が座っていた位置からして目の前に鎮座していた砂の城。なんだか地面にゆかりのある人間のようだ、その割に髪も瞳も青くて、少しイメージ違いのけはあるけど】

【驚いていない――とかより、あんまり表情が変わってこない性質であるように見えた。よほど愛想の悪い顔をしているわけじゃないけど、よっぽど愛想のいい顔をしているわけでもなく】
【怒っていない代わりに笑ってもない。かといって不機嫌には見えない。絶妙なライン(?)を攻めていて――ただ、まあ、それをどう思うかは相手次第でもあって】

チェーンのどうでもいい店ならあるんじゃないかしら。大衆酒場みたいなところはよく知らないわ。
……ところで何か期待をしているの? 残念だけど、幼馴染に居るのよ、一つ下だけど、そうね、どちらかと言えばあなたの年代に見えるようなのが。

それでよければ連れていってあげるわ。夜を食べていないの。けど自分で弁解しないなら嫌よ、自分で探してもらえるかしら?

【適当な酒場――相手の言葉に対して女が返したのは、酒場……というよりは、どちらかと言えば居酒屋、飲み屋、そんなもので】
【肩でぎいぎい動く扉を押して入ってミルクとか頼んじゃうようなお店は知らない――という返答。相手にとってはもしかしたら不満かもしれないけど】
【それでよければ適当に案内してくれそうでもあった。ただ条件が一つ。その見た目で酒を飲むというのなら自分で店員なりなんなりを納得させるように、と】
【そういう面倒くさいことは手伝わない――と、あらかじめ言いおいて。それでいいなら、それさえしてくれるなら】
【どうせどこかで夜を食べるつもりだったのだから、その手間を省くことに対して異論はない、と、そんな様子で】

/二日連続でお返事遅くなりまして申し訳ありません……! これからでしたら安定して返せるかと思います。よろしくお願いします……!
743 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2017/04/30(日) 23:44:41.83 ID:IjmtdAeo0
>>742
【少女からしたら色良い返事をもらえたことに、少女は安堵したようだった。顔色の読めない女性に対して、少女は演技なのかと一瞬思わせるほどころころと表情を変えていく】
【女性の変わらない顔と、何か期待をしているのか、という問いかけにきょとんとした顔をしてから_余計に幼く見える顔を晒しながら、】

_お姉さんさえ良ければご一緒したいですね。僕の見た目については、大丈夫です。もうすぐ大きくなるはずだから

【そう告げた少女が転がって来た頃は、日が落ちたばかりで少し薄暗い程度だったが、話しているうちに時は経ち、とうとう相手の顔も見えづらい程になった】
【そのせいだろうか、浅い夜の隙間に見える少女の顔はなんだか大人びて見えた。まるで、妙齢の女性のように、見えるほどに】
【女性はそれを気の所為だと思い無視するだろうか、それとも確認しに少女の顔をよく見るだろうか】
【どちらにせよ、これといった問題は無いらしい少女は、女性にくっついて行きたい、という事を表明した】

/よろしくお願いします。
744 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/05/01(月) 00:33:36.53 ID:XN2/JBPu0
>>743

【そうやってころころ変わっていく表情も、また、ただ一つ下なのにそうは見えない幼馴染を思いだすようだった。そして、そういうタイプは、別に嫌いではない】
【そもそも人間の好き嫌いだなんてあんまりあるタイプでもないのだが。それでも――家に居る限り仏頂面か苛立ったような顔の方をよく見る人間よりは、快いだろう】

あら、そう。それならいいわ、好きにしてちょうだい、……だけど大した場所にはいかないわよ、そこらへんの――、

【とりあえず年齢がどうとかそういうやりとりみたいな面倒くさそうなのは相手が自分でやるということだろう。それなら、別段、こだわるような理由も特にはない】
【家で食べる気のない日はいつもこの海辺で時間を潰して、適当なものを食べて帰っている。――だなんて、もちろん、相手には知りえないようなことだけど】
【たまにそこに誰かが増えても問題はないだろう。そう判断して、ただ、言葉の端は少しだけ不明瞭にぼやける。相手の言葉を聞いて、それから――少しの違和感】

【――だけれど】

あんまり遅くまでは出歩きたくないの。早めに行きましょう、このあたりってば、治安はいいけど、その分店が少ないのよ。
ま、治安が悪いよりはよっぽどマシよね。命の危険がマシてるよりよっぽどマシじゃない? ……ほら、

【紺色の瞳は数秒ほど相手をじっと見つめたけれど。詮索しないことにしたらしい、だって、面倒くさいから――なんて、口にしたら少し失礼な理由】
【地面に転がしていたリュックをひょいと拾い上げてしょい込む、いろいろ入りそうな感じだけど……とりあえず今はあんまり入っていないらしい。気持ち、へたりこんでいて】
【話がつけば移動しようと提案する、いくらか――というよりだいぶ、いろんな面での反応が薄いようだけど。一応、こうして移動しようと提案して、相手を受け入れるあたりは】
【その程度には相手を信用していそうで、また、善良な性質であるようにも見える。強いて言えばちょっと面倒くさがりすぎるきらいがあるけど】

駄弁るばっかりなら歩きながらでもできるわよ。……それ、壊したかったら壊してもいいのよ。楽しいんじゃないかしら、ちょっとは。

【――それでも、砂の城を指して、少しからかうような声で、そんな提案をしたりする程度にはふざけることもある、らしい。……もちろん、本当に壊してもよくって】

/すみません、大丈夫と言ったのですが、眠気がひどくて……お返事も遅くなってしまいました。明日こそ用事などないはずですので、きちんとお返事していけるかと思います……!
/たびたびすみません。ロールそのものはぜひ続行したいと思っているので、難しければ置きに移動なども可能ですので……
745 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2017/05/01(月) 00:37:21.43 ID:dJF6a4Id0
>>744
/いえいえ、こちらも少し眠くなってきた所ですのでちょうど良かったです。
/私も、都合が変わりやすいので置きスレでお願いしたいです。明日、置きスレにお返事を置かせていただきますね。
746 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/05/01(月) 00:47:40.58 ID:XN2/JBPu0
>>745
/本当にすみませんでしたっ、明日からこそ安定すると思います……ご迷惑おかけしました
/承知しました、それではまた明日よろしくお願いします。今日はひとまずお疲れさまですっ
747 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2017/05/01(月) 12:30:18.04 ID:afXY/tR40
本スレ>>774
【今にも歩き出そうとする女性に、少女_暗闇で見えづらいがまだ少女の形を保った女は、急いでそちらに向かう。】
【砂の城を壊しても良い、とは許可がでたものの、彼女に壊す気はさらさらなかった。壊すことは、自然の風に任せれば良いと彼女は思っていた】

_このあたり、治安が良いんですね。良かったー、怖い人がたくさんいる街だったらどうしようかと思ってましたよ!
_あんなに立派な砂のお城、僕には壊せませんよ。あんな綺麗なものを壊すのは、もったいないです。

【女性が濁した言葉については触れず、安堵の言葉のみを返す。相手の事情に触れようとはせず、しかし無視することもしない】
【海の中から突然現れた少女は謎をばらまいていて、見ようによっては目の前の女性を試すかのようなそれは、眉を顰める人もいるかもしれない】
【少女には少女なりの事情と信念があっての事だが、それは誰にも知られない類のことである】
【妙に女性に愛想の良い少女は滅多なことで機嫌が変わらないようだ。意外な所で、二人は似通っているのかもしれない__】
748 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2017/05/01(月) 12:31:42.19 ID:afXY/tR40
/申し訳ありません…!置きスレにと言ったのに誤爆してしまいました。重複した内容になってしまいますが、置きスレの方に同じ内容のものを置かせていただきます
749 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(田舎おでん) :2017/06/06(火) 21:13:49.28 ID:c/uiWu8p0
【街中――入り組んだ道の奥】
【迷路みたいになってる道の割に豪奢な街灯の下、はああとため息を漏らして人影が一つ、ちょうどその根元に座りこむところで】

はー……何これ? 迷っちゃった、こんなとこ知らない知らない、知ってたっけ……覚えてないわ?
そもそもどこに行けばいいんだっけ。なんで地図がないの? 馬鹿にされてるのか――、

【雨でも降りそうにどんよりした空の下でも街灯の下なんて夜の中で一番明るいような場所、気疲れしたみたいに身体をうんと伸ばして、無警戒にあくびまで漏らす】
【どうやら少女のようだった。声音は鈴の音みたいに高くて澄んでいるのにしゃべっている内容は特にきれいなものでもなくて、それどころか、投げやりささえ語尾にはあって】
【肩ほどで揺れる黒髪と左右で色違いの瞳。左は血のように赤いけれど右は夜空みたいに黒い――その目もなんだかけだるいように伏せられたまま、退屈そうにまばたき】

それに何この服。もーっと動きやすいのがいいのに。……まーいっか、嫌いじゃないし……。
でさあ、道どこ? わかんないな……、というか、初めてだと思う。このあたりは。

【しゃがんだせいで地面につきかけているスカートの裾を持ちあげて落とす、退屈そうな少女は数度それを繰り返したあと――、きょろきょろと首だけであたりを見渡し】
【「はーん」とやる気のないため息をもう一度吐きだす――最終的にお尻まで地面につけて、体育座りのようにまでなって】

【――手首のところをきゅっと絞ったふわふわした袖のワンピース、全体的に布地が多くてふわふわしているのを、腰のコルセットがきゅうと絞めて】
【何重にも布地が重ねられたスカートは夜風のたびにふわふわ揺れるほど軽く、腰のところから思いっきりふうわり膨らんで、足元の重たげなショートブーツを少しだけ軽そうに見せて】

お腹空いたなぁ……。

【少女――もっと言えば迷子の少女。そのわりに悲壮感みたいなものはなくて、いっそこのままここで寝ようか……とでもいう風に、体育座りに頭をつけて、目まで閉じる】
【「涼しくっていいなぁ」とか呟いている姿は。人通りの少ない道だから認識する人が少ないだけで――かぎりなく変な人としか言えなくて、だから、目立っていた】
750 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(田舎おでん) :2017/07/14(金) 21:57:57.49 ID:26KTBSbH0
【街中――露店の並ぶ広場】
【時刻は日暮れ時、奇妙な色に染まった夕焼け空はほんの一瞬ごとに暗くなって、そのたびに、ぽつぽつと露店の明かりも増えていく】
【中央に据えられた噴水前には色とりどりの花を並べた花屋、あちらの角にはピカピカ光るランプの店、よく見たことない果物屋に、謎の木彫りの玩具を扱う露店も】
【とにかくいろんなものを適当にぶちまけた結果みたいな広場の片隅――ガサリ、と、薄ぺらい紙が鳴る音と。それから甘ったるい猫撫で声が、ぽつりぽつりと聞こえ】

ですから。わたくしの買い物ではありませんから、手伝いに来てくださる、そもそも量を聞いてませんでしたし――、……切れた。

【――黒髪の女、だった。肩にも届かないような短いボブヘアに、青りんごみたいに鮮やかな緑色の瞳。うんと白い肌に、きちんとした化粧を施して】
【惜しげもなく肩を出したオフショルダーのワンピースにヒールの高い靴。ほんの一瞬前まで耳に当てていた携帯端末をにらんで――それをしまう間に、またガサガサと音がする】
【それもそのはずで女の手元には――抱きかかえるほど豪華な花束があって、というより、抱きかかえるにしてもいくらか無理があるぐらいに大きく見え、実際】
【女本人も持て余しているみたいに右左と持ち直すのだけど、フェンスに座るというか寄りかかるようにしている女の顔の少なくとも下半分を隠す花束はどうにもならなくて】

どうしましょう、来てくださるのかしら。こんなもの、家まで運ぶだなんて、嫌なのですけれど……。

【気の強そうにも見える眉を少しだけ下げて呟く――それから、人と物でごった返す広場の中に視線を巡らせてみるのだけど、たいした収穫もなく】
【遠目からすれば、女本人よりも真っ赤で、豪奢で、一抱えもあるような、そんなバラの花束の方が目立つだろうか。それがときどきふらふらと右に左にと傾いて、揺れて】
【暗がりの中ならうっかり新手の妖怪か何かと勘違いしかねないほどだった。とはいえ、大きすぎる花束と、きょろきょろ辺りを見渡す様子と、聞こえていれば、電話の声と、】

――、もう、

【長い溜息。それから少し不機嫌そうになった目を、もしも誰かが見ていたら――どうやら彼女は困っているらしいと判断するのは、そう難しくもないようだった】
751 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/08/27(日) 16:30:09.13 ID:z5MbN87So
【夜の国ーー黒ずくめの館】

【生きたものの気配のない街外れの丘。灰色の葉を茂らす黒い樹木は、その枝先に月光を受けて青く艶めく果実を実らせる】
【死人のような木々に囲まれたこの館も、長年放置された末の緩やかな腐敗を思わせる痛み方をしていた】
【門扉も庭のオブジェも黒ければ、壁も窓枠も桟もガラスの向こうのカーテンも、何もかもが黒い館は、今や荒廃しきった様相である】

……や、長居したくないネ。これは。僕の趣味じゃなさ過ぎると言うか。カーティに見せたら騒ぎそうだけれど、

【「流石のエッドラも表情変えるかナ」ーーそう一人ごちて口の端を吊り上げたのは、五十代半ばと思しき男性だった】
【白髪混じりの髪を撫で付け、茶と黒のストライプスーツに金で作られた『Elysion』の胸章を付けている】
【門扉の軋み具合を確かめるように何度か鳴らしてから、溜息混じりに男性は懐から黒い球を取り出して掌上に転がす】

アレのせいでかなり資金も減ったし……、資産価値が下がる前に、ここも換金しときたいトコなんだケド。用心し過ぎたかナ

【(ーーこの館のかつての持ち主は、もういない。正確に言えば、この世界から元いた世界に強制送還したのがこの男)】
【(そうして消した人間の資産を、怪しまれない頃合いで処分する。何のためにそんな金が居るかといえば、)】
【(彼の掌上からふわりと浮かんだ奇妙な黒い球体。この球に、何かの関わりがありそうではあったがーー)】
752 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) :2017/08/29(火) 23:45:27.48 ID:iTPBHwEH0
【街中――児童公園】
【にぎやかな通りから一本入った先にある場所、走り回るには十分でも遊具のほとんどない公園は見渡してもどこか寂しい気がして】
【それでも敷地を囲むように植えられた木で鳴き喚く蝉の声と羽虫のたかる自動販売機の明るさとがあれば、かろうじて不気味という評価を貰わないだろう程度に、にぎやかで】

……――美味しい、

【それならぽつりと聞こえる呟き声もそう恐ろし気には聞こえないはず。実際声音はひどく気の抜けたもので、正体もどうやら少女らしく】
【アイス――おそらく公園入口に設置された自動販売機のものを食べながら手元では携帯端末をいじっている人影を見つけ出すのも、なにしろ隠れていないのだから、難しくない】
【ひどく蒸した公園で少し暑そうな恰好をしてアイスを食べている少女と――それからこちらは少女が全く気にしていないのだけれど、その足元には桜色の鱗の小さな蛇が横たわって】
【本当にときどき少女が画面を見ているままで差し出してくれるアイスをかじって嬉しそうに身体を揺らしている、だなんて、少しだけ変な光景】

明日もお休みだから……、お買い物行かないと。お昼寝だって、したいし……。
――朝起きて、ご飯食べて、お昼寝して……えーっと、夕方にもお昼寝して、夜はうんと早く寝る。

それがいいよね、……聞いてる?

【少女が独り言のようなトーンで喋り続けるのはどうやらその蛇に向けてであるらしい。しばらくそうした後に携帯端末をしまいこんだ少女は】
【水族館のアシカみたいに頷く桜色の蛇に「もう、聞いてないね」だなんて笑いかけて――手に持ったまま溶け始めたアイスをくるくるくると三度回せば、】

三回回ってワンってしたら残りのは全部あげるよ。

【だなんて笑って――本当にもだもだ回りだす蛇を眺めているのだろう。肩にかかる程度の黒髪とふわふわした服装、特に左右で色の違う瞳はよく目立っていた】
753 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/08/30(水) 09:18:11.41 ID:Ji0LKGK4o
【川沿いの地下道】

【『この先工事中』の看板が昨夜からあったという。問題は、住宅街から遠いとは言え立て続けに爆破を繰り返しているような轟音だった】
【それが止んだのがつい先程、出て来た工員は一人――とは言っても、汚れ一つない濃紺のストライプスーツが些か疑問ではあったが】
【軍隊出身か、とても大柄な体に銀色の髪を短く刈り込んだ男は、青い瞳を細めて周囲を確認すれば、看板を川へと蹴り落とした】

……レジスタンスというのは、到底理解し難いな。しかし思想も引き継がれるとは面白い、魂というものは、理解の範疇を超えているのか

【朝日を照り返す川の辺りでスーツを軽く払っていた男は、ふと思い出したように懐から薄っぺらい端末を摘み出した】
【『Elysion』の文字が刻まれたそれは数コール目に鷹揚な挨拶を響かせて、眉を顰めた男は酷薄な声色で短い返答をする】

終わったぞ。サイリッド

【「やあ、それは良かった」――そんな返答で通話は終わる。呆れた様に画面を暫し眺めていた男だったが、やがて諦め懐へ仕舞い込む】
【――この地下道は、かつて革命思想を持ったある男が武器弾薬を集めていた倉庫だった。それも、今となっては全て破壊し尽くされた】
【その行動に何の意味があるのか。未だ僅かに煙を燻らせる地下道の入口を一目見てから立ち去ろうとする男だけが、手掛かりだった】
754 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/08/31(木) 00:49:04.43 ID:PleiFOSYo
【水の国首都・『Elysion』本店前】

【高級ブランド店が軒を連ねる大通りに立地するそこは、幻獣や魔法石を素材とした服飾品を扱っていて、品の殆どが特殊な効果を持つ】
【その店の顔たるショーウィンドウは今夜が入れ替えのタイミングらしく、数人のデザイナーを指揮するのは、どうにも目立つ一人の青年】

さあ! 明け方までに仕上げるのだよ!! ショーウィンドウは我らの店の『顔』と言うに相応しいもの……、その椅子はもう少し左に!!

【ピンクの長髪は絶妙に跳ねており、纏うスーツもローズピンク一色。あまりに目立つので深夜帰宅の通行人も二度見していく程】
【檄を飛ばす青年に使われる側も些かくたびれた様子だった。まずここまでのデザイン過程でも何度やり直したか分からないのに、】
【いざ本番の今日、予定通りに配置してみたら「何か違う!!」との事で――もっとも、毎回そうなるのは分かりきった事でもあった】

――そう、私達『Elysion』の覇を示すシンボルになるのだから。例の地下道はエッドラが片を付けたし……私もシスイの足跡を壊さねば、か

【ショーウィンドウの方が大掛かりな施工を始めている影で、青年の足元の影が僅かに揺らいで、そこから何かが暗い街へ飛び去っていく】
【影から影へ走りゆく『人影』――それは青年のものとは異なっていて、しかも時折分裂し、数を増していくのだった】
755 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) :2017/08/31(木) 19:22:00.56 ID:PleiFOSYo
/>>751,753,754同一Lです
756 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/09/02(土) 21:44:22.53 ID:yjF1wPFPo
【廃ビルの屋上】

【見上げれば欠けた月が浮かぶ夜空、見下ろせば人工的な街の明かりが模造品の夜空に似て】
【錆び付いた柵と所々に雨水の溜まった床、一部は黒ずみ苔生して、経過した時を示すよう】

愛音、オズワルド……どこを探せばキミ達に会えるのか。ねぇ、私に教えておくれよ

【一人佇むのは、黒のライダースーツに黄緑のスカーフを巻いた、二十代後半と思しき青年】
【紅茶色の長髪を前髪ごとハーフアップにし、持ち上げたゴーグルの下の瞳はオリーブ色】

【何かに語り掛けていると思えば、相手はいつからそこに居たのかも知れない程古びた、骨】
【骨格は翼手目、つまりはここを塒とするコウモリの一匹であったのか――勿論、答は無く】
757 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) [sage saga]:2017/09/02(土) 23:49:52.96 ID:DmscFXc2O
>>756

【屋上に至る扉が、青年の背後で耳障りな音を立てて開く】
【同時に足音。ただしそれは、革靴のようなコツンというそれではなく】
【ひた、という静かなもので。ともあれ、誰かと振り向けば】

【そこに立っているのは一人の女性。背は高く、170cm以上はあるだろう】
【艶やかさを感じさせる黒髪もまた長く、腰ほどまでに伸ばされていて】
【その毛先は上品そうな紫のリボンで丁寧に止められており】

……すみません、人が居るとは思わなかったもので。
ですが、あの……此処は、勝手に入って良い場所では無いのでは?

【上品な口ぶり、穏やかな物腰。責めるのではなく自省を促すタイプ】
【それも、纏う衣服はビジネススーツ。おっとりとしていながらも凛としたその人物は】
【敢えて問い詰めることはせず、扉から一歩足を踏み出したのみで青年に瞳を向け続けた】

/まだいらっしゃいますでしょうか?
758 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/09/02(土) 23:56:26.64 ID:yjF1wPFPo
>>757
/おりました。少々お待ちください
759 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/09/03(日) 00:09:51.51 ID:xeiVo2G6o
>>757

【胡乱げな視線が真っ先に相手へと向けられる。一瞬は管理会社の人間かとも思ったが】
【その物腰の穏やかさに、警戒も解かれたようだった。壊れそうな柵に背を預ければ、】
【視線は相手から逸れて夜空を仰いだ。その重みでぎぃ、と嫌な音を立てて柵が軋む】

……ここからなら、探せそうな気がしたんだ。結局は、見つからなかったのだけど

【誰かを探していたという。ライダースーツにゴーグルも嵌めていたとなれば、勿論だったが】
【ビルの外には大型のバイクが一台停められていた。既に、方々を走り回っていたのか】
【不意に夜空を見上げることをやめた青年は、柵にもたれたまま相手へと視線を向けた】

でも安心した。勝手に入った人間が、私の他にも居てくれて

【悪戯に笑って見せたのが、やっと剣呑ではない表情と言えた。それまでは余りに空虚で、】
【体を預けた柵ごと今にも墜落しそうな、刹那に消え失せてしまいそうな存在だった】
760 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) [sage saga]:2017/09/03(日) 00:21:23.52 ID:1Zv0XRe0O
>>759

【『人探しですか』――と、血色の良い唇から言葉が漏れる】
【確認のための復唱でもなく、何かの考えを確かめる程の裏がある声でもない】
【どうしてこんな所に居るのかという無言の問への、確かな答えに】
【どこか安心した。そんな様子の独白、と捉えるのが良いかも知れず】

ここは、眺めが良いですから。私も時々、捜し物をする時はここに来ます。
人も、物も。見つからない時や、悩んだ時はここから街を見て……

……――そこは、危ないですよ。

【今にも崩れそうな柵に背を預け、小さく笑う青年に同じような微笑を返しながら】
【淡々と、けれど窘めるように分かりきったことを告げる】

【同時に、数歩扉の位置から彼の方へと歩み寄っていく】
【ひた、ひた、ひた、と。見れば、その足元は白い肌が際立つ素足であり】
【穏やかな雰囲気の中のただ一つの歪みとして――ビジネススーツの女性、という存在を崩していた】
761 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/09/03(日) 00:31:43.88 ID:xeiVo2G6o
>>760

……落ちたら、笑ってくれるかい。例え地方紙でも、名前が乗れば愛音もオズワルドも気付くかも知れない

【歩み寄る相手に対し警戒することはなかった。それだけ余裕がある、という訳でもない】
【軽口を叩いたのはただ――何となく、この人間は悪い者ではないと。言わば、直感だった】

尤も……私の名を、彼らが覚えているかどうか。そも、彼らが生きているのかさえ、私は知らない

【『キミも、』――そう付け加えたのは、相手の足元を見てからの事だった】
【幽霊には足がないという。相手がただ素足なだけという可能性も、何だか奇妙だった故に】
【この女は生きた人間なのか。そんな探りを入れる視線が、近寄ってくる相手に向けられる】
762 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) [sage saga]:2017/09/03(日) 00:43:52.17 ID:1Zv0XRe0O
>>761

お相手が名前を覚えているかも分からないならば
それはやはり、此方側から探すしかない……と、そう思うのですが。
例え死んでいても……人は痕跡を残す物ですから。

【『家族や、墓や、記録を』――と、再び小さな独白めいた声色で漏らす】
【名前を覚えていないかも知れない、死んでいるかもしれない】
【ならば生きていて、"彼ら"を覚えている人物が探すしかない】

【それを伝え切るより先に、やはり言葉を途中で切ってしまうのだが】
【歩み寄る足は、その先に立つ人物の目線が向けられたことでぴたりと止まり】

……――何か?

【微笑を湛えた柔和な表情は、ごく自然な動きでその笑みを消していく】
【言葉と、表情。それに穏やかな雰囲気は、純然たる"疑問"そのもののようで】

【言うなれば――自分が素足である事に気付いていない、か】
【或いは、素足だったとしてその何がおかしいのかを理解していないか】
【その、どちらかであろう。探るような視線にも、警戒の色を見せることは終ぞ無かった】
763 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/09/03(日) 00:56:11.25 ID:xeiVo2G6o
>>762

……いや。真面目そうに見えたけれど、靴を履き忘れているのでね。何だか面白くて
もう私より先に、飛び降りでもしたのかと思ったよ。どこかに揃えた靴があったかも知れない

【ついと相手の足元を指す指は爪が紫色に塗られていた。ただそれだけの事なのだが】
【相手が本気で疑問そうにしているから、そのまま指摘する。そこに軽口が入るのが特徴か】

願わくば、キミが幽霊でなければいいと思っていたんだ。なにせハロウィンにはまだ早い

【少しだけ溢した笑みは、相手にも警戒の色が薄いことと関係してか】
【「ハロウィンはね、誕生日なんだ」――そんな言葉もまた軽口なのだろうか】

【この男は何もかもが薄っぺらくて、そして、酷く希薄だった――それこそ、彼の方が幽霊のよう】
764 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) [sage saga]:2017/09/03(日) 01:20:48.69 ID:1Zv0XRe0O
>>763

【靴を履き忘れている、と言われて、不思議そうに自分の足元を見た】
【片脚を上げて、ぺたんと再び地面に体重のある音を立てて足裏を付け】

ふう……――ふふっ。なんだ、そんな事でしたか
ええ、そうですね。確かに……履き忘れてしまったのは失敗でした。
……ですが、幽霊ではありませんよ?よろしければ、触ってみます?

【『履き忘れたのは失敗だった』――その言い回しをどう取るかは、青年次第だ】
【単純に、ごくごくとぼけた話として捉えるのもいいだろう】
【それが一番平和だ。だが、もしそうではなく、そして幽霊でもないのなら】
【"何についての失敗なのか"という点が、新たな疑問として湧きそうなものだが】

幽霊、ではありませんとも。ふふっ、かぼちゃのお化けでもありませんよ?
あなたが見たまま、感じたままです。……手を取っても?

【酷薄だとしても、そんな言葉への返事は穏やかなもので】
【簡単にいえば真面目に返される。そんな彼女は、近付くという過程を飛ばし】
【幽霊ではないから、と。彼の手を取ってもいいか、尋ねかけた】
765 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2017/09/03(日) 01:24:15.17 ID:Ok8gUQ+ao
【繁華街−夜市】

【この街の雑然とした繁華街は昼も夜も関係なく賑わいを見せる】
【ギュウギュウに建てられたビルの看板はせり出しギラギラとした光で夜の帳を更に覆い隠す】
【道も人が多く行き交い、端には幾つもの夜店が立ち並び、様々なものをコレでもかと売りつけてくる】

『はい、いらっしゃ〜い。何にします?』

【暖簾という布をくぐると屋台の主人が声をかけてくる。昔は有名店のイタチョウだったらしい】

じゃあ今日は…えっと、エビ天丼。で、トンカツ追加で。

【待っている間、携帯を確認する。連絡なし。オフにした画面に自分が映る。ダークブルーの髪色、ピクシーカット】
【ブルーの瞳、寝不足を隠すための濃い目のアイシャドウと濃い目の口紅。またキツそうなイメージになってしまっている】
【赤いジャケットと黒いシャツにスキニーデニムなのは自らしている恰好なので今更何だけれどと自嘲してしまう。】

【携帯をしまう時、隣の椅子に腰のベルトに吊るしたショックガン入りホルスターがぶつかってしまう。大きくて重くて邪魔くさい】
【しかし、これは私がこの街の警察である証拠でもあるから外せない。撃つより、ぶつかって謝ることのほうが多いのだけれど】
766 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [sage saga]:2017/09/03(日) 01:31:11.95 ID:xeiVo2G6o
>>764

そうだね……ワルツを踊るにも、靴がなければ難しいのだし
借りるにしても、相手がシンデレラではそも履くこともできない、ね

【滔々と語る言葉は何か後ろめたい暗喩を残しながらも、直接的ではない】
【とぼけた話にとぼけた返答をしているよう――その通りなら、幸せだろうが】

……手? 構わないけれど。これで通り抜けたら、とても面白いね
尋ね人に、土産話が一つ増える。増えなくても、構わないけれど

【出したのは左手だった。恐らくは利き手なのだろう、殆ど無意識的に差し出して】
【やはり全ての爪が紫色に塗られた手は、至って普通の人間の温度をしていた】
767 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) [sage saga]:2017/09/03(日) 01:40:14.28 ID:1Zv0XRe0O
>>766

……ふふふっ。でしたら、それはとても残念です
土産話はまた別の場所で探して頂かないと、ですね?

【くすりと笑いながら歩み寄り、差し出された手を、両手で握る様に優しく包む】
【それと同時に、女性としては静かながらも力強く】
【青年を危なっかしい柵から遠ざけるように、自らの方へと引き寄せる】

【触れた女性の手は――強いていうならば、異様に暖かかった】
【つい先程まで温かなコーヒーの缶でも触れていたかのようなその温度は】
【しかし青年の手を取っても尚、"普通の人間の温度"になることはなく】

そういえば……探しているのは、お友達ですか?
先程、愛音とオズワルドがどう、と――私も、探しましょうか。

【青年がこちらに引き寄せられて柵から離れていたならば、ここで静かに手は離れる】
【良心から来る手伝いの申し出。――そう、捉えられればやはり"ただの良い話"なのだが】
【返事を待ちながら、ふと、女性は何かに呼びかけられたかのように背後を振り返って】

【――無論、そこには何もない。すぐに、視線は青年へと戻された】
768 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [sage saga]:2017/09/03(日) 01:58:17.40 ID:xeiVo2G6o
>>767

【引き寄せる力に逆らうこともなく、青年の体はすっと柵から相手の方へ移動する】
【この季節にも氷のように冷たい指先だけが、相手の温度に少しだけ驚いたように見えた】

嗚呼……彼らは、そんな仲じゃないんだ。愛し合ったし、憎しみ合った
――探しているのも、この手で終わらせたいからなんだ。もう、疲れてしまった

【愛音と、オズワルド。離れた手を見送る視線に、そこはかとない暗さが映る】
【その途中で相手が不意に背後を見れば、何だろうかと持ち上げた双眸にそんな色はなく】

キミは、キミの靴を探すといい。私も、『大切な彼ら』を探さないといけないから

【そう言うと、青年は相手をすり抜けて階段へ歩を進めていく】
【別段、急ぎ足でもない。何かあるなら、返す間くらいはあるだろう】
769 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) [sage saga]:2017/09/03(日) 02:46:30.22 ID:1Zv0XRe0O
>>768
/この時間帯にお待たせしてしまい申し訳ないです
/ここからさらに、というかたちになってしまうので
/今回についてはそのまま別れた、という形式でお願いします。
/遅い時間帯にご迷惑をかけて申し訳ないですが……
/深夜にお付き合いいただき、ありがとうございました!
770 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [sage saga]:2017/09/03(日) 08:23:02.51 ID:xeiVo2G6o
>>769
/思いっきり落ちてました、申し訳ないです……
/こちらこそありがとうございました!
771 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/09/03(日) 09:48:14.17 ID:xeiVo2G6o
/>>751,753,754で再募集します!
772 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2017/09/03(日) 21:57:54.97 ID:Ok8gUQ+ao
>>765で再投下します
773 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) :2017/09/04(月) 22:09:41.34 ID:tTbZhdU30
>>752
/これもう一度投げておきますー
774 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [sage saga]:2017/09/04(月) 22:44:58.59 ID:B7TQpUeyo
【廃工場】

【遥か高い煙突の先には赤い警告灯が明滅して、星の瞬きの中に人工のアンタレスを混ぜ込む】
【広がる敷地には見上げるようなタンクの一団や、排水を貯蔵していた深く大きな池、そして建物達】
【内部の機材を持ち出す際に酷く荒っぽいやり方をしたようで、壁にはふざけたような風穴が空いて】
【在りし日に増設を繰り返したがために出来た奇妙な扉――五階の高さにありながら、開けて一歩出れば墜落する】
【中から開けた者がいたとしても慌てて締めるだろうそれが、今宵は夜闇に紛れて、外からそっと開かれたのだった】

……時間は合ってる、世界線は超えられた。問題は『彼ら』に見つからなかったかどうか、か

【ぱちん、と閉じられたのは鈍く光る懐中時計。背高な影は、閉められた扉が光を遮り、視認が酷く難しい】
775 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) :2017/09/05(火) 05:31:06.11 ID:vRTMzdRx0
【街はずれ――朽ちた一軒家】
【最近ではないけれど大昔でもないころ放棄されたらしい家はまっとうな形を保っていたけれど、いろんなところが朽ちて、たとえば風の吹くたびにきしんで鳴き声めいた音を出す】
【そんなせいで近くに住む子供たちからはお化けの家とか呼ばれている。そんな建物――ただ、柵はとうに壊れて、あるいは壊されて、誰でも踏みいれるようになっていて】

……わ、あ? なんだろ、……落書き? 誰かがお勉強したのかな。

【粉々に砕かれた硝子がもっと小さな破片になって古びた床の上で砂粒みたいになって踏むたびにきしむ嫌な音がした、床もいたるところが穴ぼこになって、時折虫がぴょんと跳ね】
【そんな部屋の中から鈴の音にも似た金属質の声がする、おそらくは少女のような高さで――それから拙く何かを読み上げるような声が続く】
【とぎれとぎれに読み上げたのはごく初歩的な魔術式、大きくはない声だったけれど、静かな夜の中、割れた窓と歪んで隙間だらけの壁、特に声を遮るものもなく】
【それなら誰かが近くを通れば聞き取るのはきっとそう難しくもないはずで。あらかた読み上げた声の主は、そのうち、ひょっこりと割れた窓から顔を出す】

あーと、えっと、……なんか書くものないかな、……枝っきれじゃだめだし……、硝子も……ぼろぼろだし。

【真っ黒い髪の少女。艶のある髪は肩より少しだけ長くて、真っ白い肌に、左右で色の違う瞳がよく目立つ。黒と赤が、言葉通り何かを探すようにぐるりとうろつき】
【窓枠に硝子の破片が残っていない場所を探して手をついた手元はふわふわした服の袖に隠されて、ぐっと身体を乗りだせば深い赤色のワンピースの裾から太ももまでが覗いて】
【足元は今すぐにでも床を踏み抜いて転びそうに底の厚いもの、窓際に落ちていたよく分からない色の小瓶を身長の足しにしてやっているらしく、ときどき、危なっかしくふらついた】

んん……ない。

【少女はしばらくそうしていたのだけど――目当てのものは見つからなかったのだろう。そのうち窓枠から硝子の破片を一つ折りとると、また、室内に引き返す】
【廃屋――とは言え、そのまわり自体は誰が通りがかってもそうおかしくはないような場所で。ただ壊れた柵をいいことに踏みいる人間は、あんまり居ないのかもしれないけれど】
776 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/09/05(火) 12:34:35.17 ID:ujqcOM5Oo
/>>774再募集します
777 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) :2017/09/06(水) 19:52:11.18 ID:YRcBUfTZ0
>>775
/こちら、週末くらいまで募集かけておりますー
778 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/09/06(水) 20:17:02.76 ID:VyjR/Hglo
【夜の海辺】

【静かに浮かぶ月と星の天蓋を仰いだ水平線、遥か遠くから汽笛の音が鳴った気がした】
【時折あやうく明滅する街灯の下――堤防に腰掛けて、海を見つめる人影がある】

【長い白髪を高い位置で括り、儚い葡萄色の瞳を持つ洋装の青年――どこか中性的な】
【髪をまとめる黒のリボンは輪を幾重にも作る結び方で、彼岸花の形に似ていた】

こんな事して、彼らに利はあるのかな……少なくとも、僕にとっては望んだ世界じゃない。

【手の中には海の砂があった。それを堤防の上へと、砂時計めいて落としていく】
【表情は憮然、というよりも言いようのない悲しみに満ちていた】
779 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/09/06(水) 23:37:32.20 ID:VyjR/Hglo
/>>778取り下げます
780 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [sage saga]:2017/09/07(木) 20:36:23.74 ID:TlIyx3Rwo
【大陸横断鉄道――寝台列車・三等食堂車】

【広い大陸を横断する路線は古い体裁を残していて、客室は一等から三等で料金が異なる】
【この三等は貧民層が多く、主に出稼ぎ労働者や、遠い故郷に帰る者達で賑わっていた】
【貴族が乗る一等や庶民が乗る二等と明らかに違う点と言えば、食堂車の騒がしさだろう】

「――っとまあ、俺はこう言うワケだが……なあ大兄、あんたは何だってこの列車に?」

上の弟に会いに行くのさ。下の弟にも会えるかも知れない。まあ血は繋がってないが、

「なんでぃそりゃあ、もしかしてアレか。『生まれた時は違えども……』ってヤツかい?」

ハハッ、違いないな。もっともそんな立派な誓いなんぞ立ててはいないが、

【酒を酌み交わす二人の男。一人は相手より年下であるらしい、汚れた作業着姿で】
【「大兄」と呼ばれたもう一人は、長く旅をしているのかこちらも薄ら汚れた外套だった】
【癖のある黒髪の少し伸びた襟足を束ねて、灰色の目は談笑する相手に向けられており】

【食堂車の扉の外――懐中時計を手にした人物からの視線には、気付いていないようだった】
781 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [sage saga]:2017/09/08(金) 23:09:16.51 ID:a7HkSem0o
【工業地帯――港・コンテナ集積場】

【隣接するプラントからの明かりで幾らかの視界が確保でき、積まれたコンテナの文字も判読出来る】
【ただそれでも暗くのたうつ海面は真っ黒で、時折遠くの橋の光を反射して煌めく程度だった】

んー……怖い位に順調だネ。セシルくん達片付けてから、色々壊したり消したり忙しかったケド……

【コンテナに背を預け、海を見ている壮年の男性――五十代前半の、茶と黒のストライプスーツ姿】
【胸元には金の胸章があり、刻まれた文字はとある企業のものだが、何かを汲み取れる者は限られ】

ま、しょうがないか。僕が『無敵』だからネ――金が得られる間は、出来ない事も何もない。

【掌上で転がすのは奇妙な黒い球体。浮遊していて、時折虚空に何桁かの数字を浮かばせていた】
782 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/09/09(土) 22:29:05.04 ID:8JQYzphVo
/>>781再募集します
783 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/09/10(日) 23:30:10.05 ID:fRyaDnBzo
【星の見える丘】

【流れ星が一筋、現れては瞬く間に消えて行く。望遠鏡でもあれば絶好の観察機会だったろう夜空】
【その裏で、木々の影がどこか狼の形になっていた。それは空似などではなく、徐々にその姿を現し】
【影から飛び跳ねるように抜け出したのは大柄の黒狼――併せて、背高な一人の男も星空の下に出現した】

バカ犬……、バンダースナッチ。お前はボロゴーヴ並の間抜けだと言いたいが、
銀行家(バンカー)からここまで逃れられた事だけは褒めてあげよう。最後の保険が役に立った

【やれやれと言うように軽く首を振れば、月光に薄ら赤く映える紅茶色の長髪が躍る。それから黒狼を睨む目は】
【左右で瞳孔の開き幅が大きく異なる、オリーブ色の目。そのせいでオッドアイにも見える両眼は一人で転がるバカ犬をジト目で眺めていた】
【黒いローブの裾から何かを引っ張り出す指先は長い紫色の爪が目立ち、そのローブも肩から掛けた金鎖の輪にぶら下がる呪具が目立つ】

【取り出したのは、古びた一冊の本とカラスの羽ペンだった。これもまた怪しげな品で、魔術士とも違う雰囲気の男は数頁それを捲って溜息を溢す】

……幾らか、記憶を犠牲にするか。別の世界にいた魂をここに持ってきて、今度は送り返されて、また戻って来たとなれば。致し方ないのか

【本を持つ手から、少しづつ砂のようなものが漏れ出していた。恐らくは、そうしなければここに留まれないのだろう】
【――少しだけ、男は星空を見上げた。瞳孔の開き切ったほぼ黒い側の瞳に、それはよく映っては流れていった】
784 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/09/11(月) 17:44:55.17 ID:SEH+ukuSo
/>>783取り下げます
785 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) :2017/09/14(木) 21:38:36.97 ID:wNFT6KBm0
【深夜――川沿いの並木通り】
【一日中しとしと降り続いた雨が止んでほんの少し後の頃。電信柱や等間隔で植えられた木からはまだぽたぽたと大きな水滴が垂れてきて、かすかな水音と】
【がさがさ、ちいちい、うるさいのは見える限りずうっと向こうまで並んで植えられた木々の葉っぱに隠れた中、――どうやら、たくさんの鳥がねぐらにしているようで】

…………、すごいね、うんと中に居るみたい、……おしゃべりしてるのかな。

【鳥らが居場所を争ってか羽ばたいて移動するたびに葉っぱが揺れてぼたぼたと水滴が落ちて来る、そのたびに、ぱたん、ばたん、水を弾いて鳴らすのが、うんと大きな黒い傘で】
【男物だろうか。ただ黒いばっかりで面白みもない傘は成人男性でも余らせるほどに大きくて――ときどき水滴の様子をうかがいながら顔を覗かすのが少女なら、少し、不思議だった】

みんなで寝るの? いいなあ、……なんだか喧嘩してるように見えてきたけど――まあ、いっかな、……。

【傘が重たくて疲れたように肩に預けて指先で回す、それからきょろきょろと辺りを見渡す人影を、久しぶりに通った車のライトが一瞬だけ照らして】
【夜より黒い色の髪は肩と同じくらいの長さ、黒と赤で色の違う瞳は透き通るように真っ白な肌の中でよく映えて目立つ、最後にちらりとちいちい賑やかな木を見上げて】
【散歩のように緩く歩きだせば、しっとりと重たい布地の焦げ茶色したワンピースがゆったり揺れて、雨で冷えるせいか薄手の黒いストッキングと踵の高い靴と】

……へびさま、お散歩行けって、なんでだろ? 夜だし、雨だし、止んだけど――お家帰って、冷蔵庫のゼリー、食べたいなぁ……。

【季節限定のやつなのに――呟く声は鳥や葉っぱの音に比べてよく目立つ声質、どこか鈴の音にも似て】
【あてもなければ目的もない、のんびりふらふらと歩く様は、時間を思えば、少しだけ変な光景――というより、変なひとに見えた】
786 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/09/15(金) 17:23:37.84 ID:OhSGSc9fo
【植物園】

【天蓋も全てガラス張りの壁の外は、ピンクと紫の中間にある奇妙な空が広がっていた】
【植物園とは銘打たれているが、咲いている花は一つもない。その全てが、散っていた】
【鮮やかな花弁の群像が、床に有象無象な散らばりを見せ、時折その一つが黒い炎で燃える】

【そんなおかしな園内――中央の丸テーブルに集う三人の男も、めいめいに奇妙だった】

……チェック。次の手は

「はぁ? ちょっと待て、それじゃあだな……こいつでどうだ」

全く……それだと、ステイルメイトになる。お前は物覚えが悪いね

『はよ終わらせたらええ話やろうに……そッちのやり口が厭らしいんとちゃうか』

【チェスをしている二人と、退屈そうに眺めている一人。もっとも、勝負と言えなそうだが】
【優勢なのは祭服の男。長い紅茶色の髪、瞳孔の開き幅が左右で大きく異なるオリーブの瞳】
【劣勢なのはスーツの男で、癖のある黒髪に鋭い灰色の目、右頬に牛の首が乗った皿の刺青】
【けちをつけるのは羽織姿の男。肩口で切り揃えた白髪に黒い彼岸花を挿し、目は葡萄色】

【装いもバラバラな彼らの共通点は、喪服姿であることのみ。その黒一色の装いに、】
【何かが同調するかのように、また一片、花弁が発火しては黒く燃えていくのだった】
787 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/09/15(金) 22:29:39.02 ID:OhSGSc9fo
/>>786取り下げます
788 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/09/16(土) 20:05:56.36 ID:5EHvcdO1o
【夜の国――街外れの花屋】

【陽の当たらないこの国で、僅かに花開いたものや、色の鮮やかで大きな蕾を扱うその店は】
【時間の上では夜にあたる今、店主とその妻がちょうど店仕舞いをしているところだった】
【見るところは慎ましやかな老夫婦、特に誰へ恨みを買うでもないような、だが――】

ンー……姉の方は面倒だから、こっちを先に済ませようと思ったケド。良心が痛むネェ

【離れた場所に停車する黒の高級車、その中からスナイパーの照準を彼らへ向ける男がいた】
【白髪混じりの髪に茶と黒のストライプスーツ姿の男は、夜闇に紛れて狙いを定めていく】

【途中「今日も新聞には何も出ていなかったなぁ」「明日を待ちましょう」との二人の話を】
【かすかに聴いた彼の指先が少しだけ引鉄から外れるが――スコープを覗く目はそのままだ】
789 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/09/16(土) 21:26:48.84 ID:5EHvcdO1o
/>>788 スナイパー→ライフルに読み替えてください……
790 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/09/17(日) 13:26:53.82 ID:HDx3JaPno
/>>788取り下げます
791 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) [sage saga]:2017/09/17(日) 19:13:05.92 ID:P1sgDUVEo
【大聖堂】

【もう長い間使われていない其処はかつて礼拝者が腰掛けていた長椅子も隅へ退かされ、祭壇の十字架と聖母像には蜘蛛の巣が張っていた】
【それでも天蓋に薄暗く覗くイコンや、祭壇の背後に荘厳に立ち並ぶステンドグラスは長年の埃に色褪せながらもその美しさを残している】

【――静寂から突如として絹を裂く悲鳴にも似たヴィオラの音色が響く。葬送曲めいた物悲しい旋律を奏でるのは、奇妙な黒衣の人物だった】
【ニスに血を混ぜ込んだかのような深い色合いのヴィオラは、それに違わず聴く者を惹き付けるような音階で演奏者によって奏でられてゆく】

【外の扉は開け放たれていて、聖堂の扉すら片側が開いたままになっている。音色は荒廃しきった庭を越えて、通りの方へも届くだろう】
792 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) :2017/09/18(月) 18:39:41.52 ID:E3bX3wZjo
//今夜中で>>791お相手募集してます。
793 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) :2017/09/23(土) 21:21:01.50 ID:vQDKz/zJ0
【夜の国――街外れの高台】
【糸のように細い三日月と雲一つない夜空、空を見上げれば満点の星空と、街を見下ろせば、それはそれで一面の星に似る夜景と】
【そのうち目が星や夜景の明かりに慣れれば真っ暗な地面も見えなくなって、上も下も、ぐるっと取り囲まれたようになって】

……ほら、へびさま、どうしたの? 後ろだなんて今来た道しかないよ、ほら、あっち――へびさま?
お家帰りたいの? ……もう、じゃあ、帰ろっか? …………もう、それは嫌なの?

【明かりの一つもない場所だった。それでも開けた空と月明かりが照らし出すのは、あまりやる気のない転落防止の柵と古びたベンチ、それから、人影が二つ】
【一つはうんと背が高くて何もかもが白い、それからもう一つは幽霊みたいに立つ真っ白の人影にしきりと話しかける――少なくともこちらは声から少女のようで】

せっかく来たんだからちょこっとだけ見ていこうよ、……ね、ほら、きれいだよ。

【しきりに呼びかける少女はそのうちしびれを切らしたように、一人柵の方まで走って――それから下を覗きこんでから、もう一度、もう一つの人影へ戻れば】
【最終的にはもう一人の両手をがっちり握って柵の方まで強制的に連れて行く――勢い余って柵にぶつかって、柵の一部をわずかに歪めたようにも見えたけれど――】

【肩ほどの長さの黒髪、前髪の一部を軽く編みこんだのをリボンで止めて。黒色と赤色、左右で違う色の瞳、特に右の赤は血の透けたように鮮やかな色で】
【袖の広がったデザインのワンピース、それからすっぽりかぶるタイプのケープコートを着て。踵の高くて分厚い靴が柔らかい土に沈んで、少しだけ歩きづらそうにする】
【それがさっきからしきりに声を出している少女。もう一人は、といえば――こちらはなんだか星の見える高台よりも川沿いの柳の木の下のほうが似合うような】
【腰ほどまで届く真っ白な髪と真っ白な肌、瞳だけが少女の右目と同じ、血の透けたような赤い赤い色で。服装もほとんどただ白いばっかりの和服】
【――身長は二メートルほどもあって、どうやら男のようだった。たまに口を開くのだけどぼそぼそとした声は少しでも離れれば聞こえないし、なんなら、少女にさえ届かず】

お星さまのきれいに見えそうな場所、探したんだよ。来月に流星群があるんだって、その時、またいっしょに来ようね。

【恋人同士――にしては色気のない二人だった。手は繋いでいるけれど、その様子は足場の悪いところで子供の手を掴む母親のようにも見えたし】
【とにかく今にも壊れそうな柵のぎりぎりまで寄って星を眺め――ときどき会話が成立するのか少女の声はよく聞こえるけれど、もう一人の、男の声は、きっと一度も聞こえなくて】
794 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2017/09/24(日) 18:27:33.78 ID:6zxWuooe0
>>793
/再掲でしばらく募集しますーよろしければ!
795 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/09/25(月) 18:55:37.75 ID:ig/zDPuVo
【街外れの廃墟】

【点々と赤い痕がまだ新しいのか街灯に照らされ、よく見れば乾いたものや古いものを含めるともう何条もそんな筋が指し示す場所には】
【何かを床へ転がしては他のものを持ち上げ、月の光で確認して違うとばかりに放ってまた別のそれを掴み――そんな行為を繰り返す長身の青年がいた】

――違う、……違う。これじゃない、

【錆び付いた血液のような赤毛は座り込んだ床の上にまで広がる長さで、先程から必死に何かを探している瞳は緑系統の淀んだ色をしている】
【纏っている外套は黒いような赤いような視認の難しいものだった。彼が床の上を探し回るたびそれは糊の効いたのとはまた違う反応で重たく形を変える】

これじゃない。あの人の、■■■■のがない、

【月光のせいでなく本当に蒼白な相貌は、白皙であることを差し引いても酷く恐慌している。怒り混じりに投げ捨てた『違う』ものが重い音を木の床に響かせる】
【ごろごろと歪に転がって月明かりの下でようやく止まったそれは、女性の首だった。それからも床からも青年からも、酷い血の香が漂っていた】
796 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) :2017/09/26(火) 17:57:39.42 ID:Nwi8aO2No
/>>795ゆる募(短ロル・持ち越し対応可)
797 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) :2017/09/27(水) 19:49:16.46 ID:b6+u3vT/o
/>>795引き続き募集してます〜
798 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) :2017/09/28(木) 22:13:35.11 ID:BJzMjcx/o
【路地裏】

【ギイギイと金属質の何かを石畳に擦る嫌な音が響いていた。それに掻き消されるより前から静かな足音は、何かを探して歩き回っている】
【その正体は、長柄の斧を引き摺る背高な男――血を吸った赤黒いローブは古めかしく、フードで隠れた顔は長い赤毛の先だけが覗く】

……違う、違う……ない。あの人の、

【異様な光景に竦んでいる浮浪者などには目もくれず、強いて言うなら時折女であるかを確認しては失望したようにして――どこかで囁き声が上がる】
【浮浪者達の噂だった。近頃になって突然、年増の娼婦や身寄りのない女達が首を無くして死んでいるのだ、と。血錆の残る斧が、答えを出していた】
799 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/09/29(金) 20:28:37.87 ID:7ccYG6Y9o
【水の国・首都――『ELYSION』本店】

【週末の繁華街は極めて整然とした賑わい――例えば下卑た街のそれとは異なって、羽振りの良さそうな人間達が踵を弾ませる理知的な夜だった】
【閉店まであと数時間といったこの高級店も例に違わず、幻獣の素材を用いた服や純度の高い宝珠で作られた装飾品を品定めする客で賑わっていた】

【入り口には警備員。そして店内にはショーケースや展示品が立ち並ぶ中で、通りが望める一画――商談のために設けられたテーブルとソファ】
【そこへどかりと座り込んで、誰かへ通話している一人の紳士がいた。五十代と思しき彼は茶と黒のストライプスーツに金の胸章を光らせ】
【時折、知己と思しき客から「社長、」と声を掛けられニコニコと片手を上げて見せてはいたが、それ以外は一片も笑わず声を潜めている】

――何かネ。"還し損ね"た訳じゃないんだけどサ……出たらしいんだ。"死刑執行人"(ディミオス)ってのが
多分、連中の側だとは思うんだけど……見た目はセシルくんみたいな、もう少し若いような。年増の女の首ばかり獲っていくそうだ

【物騒な通話も、店内に流れるなだらかな曲の調べに隠され、客達が足を止めることはなく続けられていく――通りを行き交う車の光が照らした、】
【窓に映る彼の表情は、今まで一貫してきたはずの「余裕深い紳士」のイメージを保てなくなっていた。口角は落ち、目は鋭く細められて】

間違いなく裁きに来ている。僕の"銀行家"(バンカー)狙いか、キミ狙いかは分からないケド。とにかく彼にも、注意するよう伝えてくれ
『法廷』沙汰なんてゴメンだからネ。セシルくん――"鷹獅子"(グリフォン)と、"綴り手"(アリス)が……レイシーが出たら、嫌だから

【そんな会話が行われる店内を臨む、通りの向かいにあるビルの屋上。紳士も気付いていない、夜空の黒に紛れるようなその人影は】
【ごく冷静に、そして狂気的に――頭からつま先まで浴びた血で固まるローブに身を包んだ赤毛の青年は、色素の薄い緑の双眸を彼へ向けていた】
800 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/09/30(土) 00:42:01.75 ID:JLTQSKOf0
【街はずれ――暗い道の、小さな川沿い】
【薄く雲のかかった半月の夜だった。街灯らしい街灯は近くになく、けれど、何も見えないほどに明かりのない夜でもない】
【だから――誰かが見ようとさえすれば、その人影を見つけることはひどく容易いことだろう、何せ――小さな川の大して立派でもない橋に腰かけて】
【きっと万くらいはゆうにかかっているような花束から花を一つずつ引き抜いては千切って、川に投げ捨て続けているのだから】

【――華奢な女だった、そう小柄ではないけれど、なぜだかどこか小さく見えるようなタイプの。揃えて座った膝に花束を寝かせて、一つ、二つ、と繰り返し】
【上から下まで真っ黒な猫のような色と質感の髪はうなじの白さがよく分かるほどに短くて――冗談みたいに白い肌の、顔にだけ化粧を施している】
【丸く釣った大きな瞳は青りんごみたいな色だけれどもっと鮮やかで眩い色をしていた。視線そのものは花を千切る手元をじっと凝視し続け】
【緑みを帯びた黒色のワンピースにごく薄手のコート。足元はよく見れば薄手のストッキングを履いて、それから、踵の高いストラップシューズ】
【そうしてまた花束に伸びた指先にはトップコートだけが塗られて――少し悩んでから白いバラを引きずりだせば、わざと汚くなるように、花びらを引きちぎり】

…………あら、まあ、ひどい。

【それから、肩越しに後ろへ――というよりも自分の後方下にある川へ投げ捨てて。それで――初めて知ったように後ろを振り向く、青りんご色に映る光景は】
【浅くて遅くて緩く流れる川に浮かび上がるいろいろな色彩、よく分からない背の高い草に引っかかって揺れているバラだったもの、不自然な色に染められたカスミソウ】
【もはや何だったかもわからないくらいに千切られた花びらにぐじぐじに折り曲げられた茎、死屍累々、そんな様子の水面に、また、白バラだったものが投げ込まれ】

【ひどく他人事の様子で呟いた声は、いやに甘ったるい色合いだった。それなら夜に鳴く虫や風で揺れる草の音、あるいは川のせせらぐ音、どれとも違って、よく目立ち】
【なによりもう少し下流の方を誰かが歩いていれば――上から無残な花が流れてくるものだから、どうしようもなく、妙だった】
801 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/09/30(土) 20:22:45.15 ID:8VsoxNFT0
>>800
/まだ募集しております、よろしければ!
802 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/09/30(土) 21:20:02.13 ID:kaswG6ZAo
>>800

【――ちょうど、相手がそう呟いた辺りだろうか。いろいろな色彩の中を掻き分けて、じゃぶじゃぶと川を遡ってくる人間がいた】
【きっと洗い流したかったのだろう大量の血液と、川の水を吸った重たいローブのフードからだらりと垂れ下がるのは血錆のような長い赤毛】
【身体の支えにするように柄の長い斧――バルディッシュと呼ばれるそれにしがみつき、一歩一歩をゆっくりと進んで来る姿は悍ましいものだった】

……お前じゃ、ない。

【相手へと投げる低い声は、覚えているなら紅茶色の髪の男と似通っていた。違うのは、フードごとあげた顔が確実に"彼"より若いことと】
【青りんご色の双眸を見据える目が、もっというなら瞳孔の開き幅が狂っていないことだった。ちょうど二十六の頃にあたるその顔は】

お前は……、

【初めて相手に会った時の姿だった。いつかの地下道、マンホールから落ちたなどと嘯いた上に、お説教めいて忠告をぶつけた、自称教師】
【あの時のようにふざけた格好でこそないが、まともな格好でもない。赤黒く染まったローブも手にしたバルディッシュも、比較的最近の】
【まだ洗い流せていない血糊を、頬にすら残したままで相手を見ている。何かを思い出そうとしてか、立ち尽くしている今は、まだ動きはない】

/大丈夫かなーと思いつつ。ダメそうなら蹴って頂ければ。
803 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/09/30(土) 22:44:59.32 ID:8VsoxNFT0
>>802

【あまりに鮮やかな色合いは夜の中では眩く光さえ放つようによく目立った。少し大げさに言えば月明りに照らされ本当に光るかのように、浮かび上がり】
【可哀想に花びらとがくの一部を毟りとられたバラが放るように投げ捨てられる、それはちょうど、幽鬼か何かと見紛うほどの誰かの前に、ばちゃり、と、鈍い音で落ちるだろう】
【跳ね返る水しぶきはたいしたものではなくとも拒絶にも似ていた。花を引きちぎりしていたばかりの彼女が振り向いたのも、あるいは、背後に何かを感じたのか】

【だって彼女が振り返ったのはまさにそういうタイミングだった。よく笑っていたはずの顔はすっと冷えて――腰かけていた欄干から、小さく飛び降りれば】
【か、かん、と、高いヒールの音がした。膝に乗せていた花束が落ちたような音も一緒に聞こえて――相手へと向き直るしぐさは、ただ、友好的なものではなく】
【全く信用していない相手に背中を向けていられるほどかわいらしく無垢な少女ではないという仕草以外の何でもなく。実際眼下へと向ける視線は、高さもあってか、冷たく見え】

……ええ、はい、わたくしも全く同じことを言おうかと。奇遇ですわね、はい。

【口調ばかりはいつも取り繕っていたのと似ていた。ただ――いつもは甘たるく甘えるように伸ばされていた語尾がぴしゃりと下がる音で切られて】

お前だなんて失礼ですわ、"お友達"でもありませんのに、それとも学校ではそういう風に他人様を呼べとお教えでして?
名前で呼んでくださる、不愉快ですから……かといって親しげにはしないでくださる? とても不愉快ですから――。

【もともとそう大きな身長はしていない。身体つきはひどく女らしいが、きゅっと細い首や手首はそれだけ彼女を華奢そうに見せて、それなら、橋ごしに見上げられてはどうだろう】
【簡単に殺されてしまいそうに見えた。とりあえずそんなに大きな得物でどうにかすれば、骨の数本くらいは間違いなく折れるだろう。だのに、態度は変わらず】
【ただ彼が近づいたことでひどく表情を歪める瞬間がある、こびりつくような血のにおいに気づいて――】

【――いちばんに表情を歪めた瞬間に、彼女はすっとしゃがみこむだろう。ばさりとした音は、足元に落ちた花束を拾い上げたに違いなく、実際、】
【少し後に再び立ち上がった彼女の手には花が半分以上抜き取られたみすぼらしい歯抜けの花束が握られている。それを、ふらりと橋から外へ――そのままこぼすように、川へと捨て】

とっても……気持ち悪い男にいただきましたの。差し上げますわ、探している人にでもプレゼントしたらいかが? わたくしじゃ、ないのでしょう?

【にこり、と、笑う。――それで、その言いぶりでは、彼が探しているのが――少なくとも自分の知り合いではない、と、判断しているのも知れるだろう】
【そうでなければこんなに汚らしいものは渡さない。共通の知り合いだって、――そのどちらでもないと判断する、それは許さないと、感情の褪めた目が言っている】
【相手の見た目もどうでもいいようだった。興味を持つためのきっかけもないみたいに――ただ見下ろして、それが、ひどく冷たくて】
804 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/09/30(土) 23:08:43.08 ID:kaswG6ZAo
>>803

学校……、教える――?

【自分のことを言っているのだろうか。そういう疑問符に満ちた表情は、ただ首を傾げる仕草だけがどこまでもあの男と酷似していた】
【「名前、」と呟いたならほぼ確定的――よく似た顔をした、違う人間か。ただあまりにも似過ぎていて、けれどあれは、死んだのだから】

【欄干から落とされた花束が水の流れに従って足許に引っ掛かったのを説明を聞いていたのか、何の迷いもなく片手で掬い上げて】
【随分と花の欠けてしまったそれをよくよく眺めて、白いバラがあったのなら恐る恐るというようにそれを大事に抱え込んで、薄い唇を開く】

お、……なんて呼べばいい。それから、

【バラがなくとも花束は抱えたまま、橋の上の相手を見上げる。怪訝そうに眉根を寄せて、一体何なのか、と言わんばかりにして、】

何がそんなに嫌なんだ。俺か。その男か

【片手に支えとして持っているバルディッシュは、相手を『違う』と判断した時点で最早振るうことはないものとなっていた。もっとも、手にしたままではあるが】
【今ここにいる彼は、相手について何も知らない。様子からして、それだけは確かだった】
805 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/09/30(土) 23:40:52.49 ID:8VsoxNFT0
>>804

【彼女本人とは全く違って澄み切った色の瞳がわずかに細められる、すっとぼけているつもりなら余計に許せないし、そうではないのなら――尚更許せない】
【"今度"はそういうことをするのかと思えば冷たいばかりだった表情に感情の温度が差し込む、だからと言って――それは歓迎すべき色でないのは、確かだったけど】

さあ……とりあえず一つ言うのでしたら、

【「今日ここに居るのがわたくしでよかった」】
【よかった、なんて、声でもなければ表情でもなかったけど。声音は事故で家族の全員を亡くした人に「君だけでも生きていてよかった」という様にも似て】
【つまりなんてことなくいいことなんて一つもないという意味だった。強いて言えば、言葉の通りで――ここに居るのが自分以外の誰かじゃなくてよかった。それだけで】
【もっと強いて言うなら――ただ一人だけの姿を思い浮かべて、その人でなくて良かったと】

分からないのでしたら呼ばれなくとも結構ですので、……。

【落として捨てた花束には、それでも、まだ半分ほどの花が残っていた。とはいえラッピング紙はスカスカの中身に解けて、さらに水を吸って垂れさがり】
【きれいな色のリボンは尾っぽが丁寧にくるくると巻かれていた痕跡があるばかりでほつれ、中の花も――だいたい掴んで引きずりやすい花は、ほとんどないのだけど】
【――白と緑を基調にした花束"だった"。白いバラと、それから明るい色のグリーンと……寂しくなく、バラを引き立てるような、小さな花々と】
【それから足元の川に、黄緑色した花びらのバラの残骸が浮かんでいる。真っ先に緑色したものから抜いていったのだろう、残るのは白ばっかりで】

【(君の瞳の色したバラを見つけたよと言われた気持ちの悪い声がまだ耳に残っていた。だけれどこれで厄介払いは出来たと思えば、薄く唇で笑って)】

あなたと……その男……かしら、

【特に意味もなく自分の頬を撫でる指のつま先が草の汁でわずかに緑色になっていた。短く揃えられた爪の中にも入りこんで、それが、白い肌に透かれてよく目立つ】
【いつかのように怒ってみせなかった。とはいえ相手が覚えていないなら比較もできないだろう、あるいは他人の空似でもあったなら、ひどく失礼なのはこちらの女で】
【とはいえ――血みどろの格好して下流から川そのものを遡ってくる人間であるのを思えば、人違いだったとしても、ある程度仕方のない態度だったのかも、しれないけど】
806 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/10/01(日) 07:22:54.98 ID:NSLdnXDMo
/>>805
/完璧に落ちてました、申し訳ないです……
/落ち着いたらお返事します
807 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/10/01(日) 08:38:03.40 ID:NSLdnXDMo
>>805

……俺を知っているのは、俺に処刑された人間くらいだ。今が✕✕✕✕年なら、だが

【思い返してもこんな女を切った記憶はなかった。正確に言うなら、首を刎ねた記憶――自分が死ぬ直前の年を言ってみせたのは、】
【ここに来てもう何度も路地裏の浮浪者達に訪ねて回って、誰もが同じ回答をしたからだった。「それはもう数百年も前だ」と】
【外套の形も扱う武器も、ちょうどそれ位に古めかしいものだった。だから証拠だとは言いようが無いにしろ、嘯いている顔でもなかった】

嫌なら殺してしまえばいいだろう。

【生きることすべてが辛いという人間に世界はこんなにきれいなんだよと返すくらいに簡素な回答をすれば、抱えていた花束を相手に向けて】
【それから「こんな風に」と自分が遡って来た川を肩越しに花束ごと親指で指し示す。雑に扱われたそれから幾つか花が零れ落ちて、】
【今更気が付いたように白いバラだけを拾い上げる。そうしないと誰かに恐ろしいことを命ぜられるかのように、武器も置いてそうしていたが】

……ああ、そうか。俺も嫌なのだったな

【花束と集めた白バラを水に触れない石の上へそっと置けば、再び長物を手にする。血錆のひどいそれにどれだけの切れ味が有るのかは疑問だが、】
【自分も相手の殺したい対象に入っているのだと結論付けたらしいにしては、特に構えるでもなく相手を見上げて黙考していた】
【髪が長くなくていいとか、あの人が気に入りそうな目だとか、ただ女だからきっと駄目だろうとか――雑多な思考が収束する視線の先は、首だった】
808 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/10/01(日) 21:00:14.01 ID:7iAgWLEy0
>>807

あら、そう……ではわたくしも知りません、そのような頃合いではないですから。どちら様です? あんまりに似た人間がうろついていると困るのですけど。
血みどろというのも無から沸くわけではありませんし……中途半端に伝わっても――面倒ですから、

【不愉快であるかのように細めていた瞳が、そのうち、諦めたように逸らされた。そう言いはるのならそれで仕方がない、そういった様子で――】
【続く言葉はあるいは相手には意味のよく分からない言葉かもしれないけれど、それでも、彼女の中では意味を持つのだろう。その汚れの元である人達のことを想うのではなく】
【ただ自分にとって都合の悪いことだけを考える、――どれだけ殺したのかは知らないけれど。下手したら、そろそろ――正義組織の人間が聞きつけてもおかしくないのでは、と】

……はい? どうして嫌いで仕方のない人間のために……こちらが割に合わないことをしなければ、ならないのでしょう?
嫌われた程度で死にたいほど傷つくのでしたら、自分おひとりで、自分おひとりの責任で、死んでくださる……、それとも、"数百年前"では、違って?

【それでも客だから――だなんてかわいらしい気持ちはもたない、ゴキブリを素手で掴んだら大金をあげると言われたらきっと何割かの人間は挑むだろう、その程度の気持ちしかない】
【だからそのために面倒なことをしでかす気持ちもなかった。面倒くさい、もっと言うなら――こういうよく分からない状況も、楽しくはない】
【だけれど自らの言葉で相手を他人だと定義したなら、それでも、これでも、一番最初に向けた瞬間の瞳よりか、まだましなような目をして――そういう嘘は得意な性質だし】

うぬぼれないでくださる、男だなんてみんな嫌いですし――あなたのような見た目の男は一番嫌いですけれど。

【いつか、男だからいいのか、と、言った。その言葉の裏側には、きっと、なんでこんなものがいいのだろうという意味が含まれて――言い切る言葉の端は甘えた風もなく】
【結局気持ちの悪い客も目の前の彼もすべての世界に存在する男も嫌い、二歳児の子供がするみたいなわがままをして、ただ、その瞳に殺意のようなものはうかがえず】
【ただひたすら褪めきった目をしている、一瞬一瞬の例外を覗けば、今日はずっと、最初から、こんな様子だった】
809 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/10/02(月) 01:54:38.31 ID:D1TygOYHo
>>808

……名前は、忘れた。ここじゃない世界から来た。あの"銀行家"(バンカー)泥棒は、――"ELYSION"の黒幕は、"死刑執行人"(ディミオス)と呼んだが……誰に似ていると? 奴もそんな事を言っていた。最期までな

【こちらもいい加減に懲り懲りだと言いたそうな顔で、ただ話をしていて思い出したように長柄の斧を手放し、懐から黒い球を掌に乗せた】
【その間に相手から向けられる言葉は、殆ど聞き流していた。多分、それらは自分に似た誰かの事の話だと思っているのだろう】
【零した組織名は、"彼"の死をあの子に伝えた人物を暗に指していたが――話が伝わっていないのなら、こちらも分からない話でしかないだろう】
【黒い球は掌の上でふわりと浮遊し、素知らぬ顔と言ったようにくるくると回転していた。やがて痺れを切らしたように、青年は声を掛ける】

起きろ。奴に捻じ曲げられた事象すべてを、元に戻せ。あれは偽の契約者だ。女王の名において、我が同胞に伝える――あらざりし物事を然るべき姿へ、

【――彼の声は、そこで途切れた。黒い珠が一瞬数倍にも膨れ上がって、弾け飛ぶように幾筋もの光がいろんな方角へ飛んでいって】
【ただ一つ、黄緑の光だけがその場に留まっていた。それはやがてよく知る人間の姿を形どって、代わりに青年の姿が燐光となって消えていく】
【完全に消えきる直前、二人は何事かを話し合っていた。だがそれも一瞬のこと、やがてもとあった川に佇んでいたのは、あの男だった】

……お互いに、災難だね。どういう星の巡り合わせかは分からないけれど

【今までいた青年の代わりにバルディッシュを支えとして立つのは、間違いなく"セシル・シュトラウス"そのものであって】
【久しぶりに解放されたと思えば目の前にきっと一番怒っているだろう人間がいる。もっともまだ醒めきった色合いなら、それもそれで怖いのだが】
【手にしたままのバルディッシュには先程までの青年の気配が纏わりついているし、黒い球も吐き出しきって落ち着いたように掌にある】

【――先に彼女が懸念したこと、正義組織の登場。どうやら、もうすぐその時が訪れるようだった。サイレンの音が、遠くの方で響き渡る】
810 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/10/02(月) 02:42:02.45 ID:D2WSD9nO0
>>809

さあ……誰でしょう、ねえ。

【その見た目で誰が何を言うのか、そういう目だった。一応別人だというので区切りをつけてくれたらしい、のだけど、やはり、態度が軟化するということもなく】
【まして今日は初めから機嫌が悪かった。運が悪いのはどちらだったのだろう、なんとなくでよければきっとどちらも運が悪くて、強いて言うなら――】
【――だなんて意味のあまりないお話なのだけど。気づけば夜風はすっかりと冷え切っていた、今年の秋はうんと気が早くて、半分の月は薄くかすんで、ただ薄い雲がいやに早く流れて】

【話など、何も伝わっていなかった。もっと言えば、詳しいことも、今度は――あるいは今度こそ聞かされていない。それはもう一人の幼馴染の方も同じ様子で】
【だから彼女は何も言わなかった、よく分からないことを彼が言いだしたのなら、携帯電話を取りだして、時刻まで確認しだす始末で】
【なんならいっそ同居人に足の要請までしかけたところだった。かけられる声が明確に自分に向けられているのに気づけば――今度こそ、不快感を露わにして】

災難なのは……わたくしでも、あなたでも、ないでしょう。

【結局知らない人間で他人の空似だと脳内で始末したところだった。だから余計にというのもあったのだろう、結局に結局を塗り重ねれば――まあ、こんな顔もしておかしくはない】
【そういう顔をしていた。あるいは何よりも虫が嫌いだと豪語する人間を縛りあげて眼前でカマキリの卵が孵るところを見せたらこんな顔をするかもしれない、というような、表情】
【とにかく見た目ばっかりは整ってきれいでうそを吐くのも上手な女がそうする時点でそれが答えだった、いっそ会うたびに嘘で塗り重ねたところが剥がれおちていって】

【それで、やっと、本当の姿が見えたみたいにも見えて――返した声は、これが彼女の地声なのだろう。桜色の少女のように高くなく、けれど、紺色の女のように低くもない】
【どうしてあたりまえのようにそんなことを言ってのけるのかが理解できなかった。つい今しがた聞き流した"意味の分からないこと"よりも、あるいは、意味が分からない】
【嫌悪感で満ち満ちた瞳はここに来てその言葉に理解できないものを見る色に変わる。遠いサイレンの音も、聞き漏らしたようだった。問題は、そんな"どうでもいいこと"ではなくって】

【もっとどうでもよくないことがあるでしょうと。そう考えているのがきっと見てとれるくらいだった。あるいはあっけに取られている様子、そして、それが】
【今日彼女が見せた表情の中で、一番、"とげとげ"していないもので。ただ間違いないのは、どう好意的に解釈しても、彼女からの好意はなさそうなところ、だったけど】
811 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/10/02(月) 11:53:09.32 ID:D1TygOYHo
>>810

【ひどく疲れた顔をしていた。自分の災難について説明する気力も、説明したところで何になるのかも、考えるだけで頭痛がすると言わんばかりに】
【戻って来れた理由は今聞いたにしても、なぜ川の中に突っ立って居るのか、この手の得物は血塗れなのか、奴は私の顔で何をしていたのか】
【思いつく限りすべてが最悪だった。それは今目の前で、初めて聞くような声で表情でこちらを糾弾する相手もそうだったし、それ以前に】
【どうしてこういう時にだけ相手と会ってしまうのだろうと思った。多分どれだけの言葉を尽くして事態を説明しても意味はないだろうし、】
【話せば話すほど、語らなければ語らないだけ、ここで去ればそれからの時間――ずっと、相手は抱え込んでしまうのだろうとも思えた】

そうだね。あの子が一番、災難だ。

【言語化しなければ何も伝わらない。だから黙ってしまえば、何も知らせずに済むのだ。何となくあの子から学んでしまったような悪癖で】
【けれど誤魔化しきれない決定的な罅――別の世界からこの世界へ移された魂、それを強制送還させられて、そして今、再びここに戻って来た】
【大気圏外から来たものを打ち上げ返して、それがまた大気圏突破して来たようなものだった。もう、魂自体が、限界を迎えていた】
【それに気付かれるより先に、彼は相手へ背を向けた。頬から、手首から、裾から――砂のように零れ落ちていく、毀れかけの躰に】

その次に、キミが災難だった。すまなかったね、

【「あの子をよろしく」――もう自分には、何も出来ない。告げない言葉が伝わらないことだけを願って、川の上流へと歩を進めていく】
【相手のいる橋の下を通って、そのままずっとずっと先、川がなくなれば陸路を、進める限り進んでいくのだろう。最果ての場所まで】
812 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/10/02(月) 13:30:09.45 ID:ssz9g+vr0
>>811

【疲れた顔――そういう顔をつい最近、でもないか。見た記憶があった、それでも、笑ってはみせただけ、あちらの方がまだ良かったか、それとも悪かったか】
【ちょうど眼前の彼が二度めの失踪を果たした後だった。おそらく心当たりの場所を一通りひっくり返して探した後、もう一度同じ場所を巡って、それから、知らない場所も探して】
【最終的に意味の分からない期待を籠めて家の中の小箱の中まで探したのだろう頃に疲れた目をして、「また、居なくなっちゃった」と笑った、少女の顔】

【そう、それから、もし彼に関連付けられるだけの心当たりがあったなら。この女の彼に対する態度が悪くなったのは、彼が"こう"なってからのことで】

【何より。彼の知らないその後の少女のことを知っているなら、多分、こんな目もするしこんな顔もするしこんな声で喋る。呆気に取られた様子も、数秒遅れで消え失せ】
【彼の言葉に、彼から見えないところでぎゅうと手を握りしめる。短く切りそろえられたつま先は皮膚を傷つけやしないけれど、最初に赤く、それから、白くなるほど】
【強い力がぎりぎりと込められている、分かっているのならと口に出しかけた言葉は結局喉の奥で絡まって解けない、その出てこないのを、せめて叩きつけるように、瞳に映し】

いいえ、災難なのはあの子だけです、へんに他人にまで割り振って、軽くした気持ちでいないでくださる、?
一から十まで、あなたのせいで、あの子が、災難だった。……そうでしょう。

【人の感情を分かることは出来た、場面と、それに適切なやりようはある程度までなら頭に入っている。けれど、それを噛み砕いて、自分のものにするのは苦手だった】
【望まれるように演技することは出来たけど――その裏側に実感なんてほとんどない。櫻の人間の何割かが牛乳を消化できないみたいに、あるいは酒を分解できないみたいに】
【告げられない言葉を汲みあげて/拾い上げて理解してやる余裕は、とりあえず、今はなかった。人のせいにするなと、勝手に自分を組みこんで"そういうこと"にするなと】
【そうやって言うのはあくまであの少女の友達で、多少のことを聞かされて、ただいろんなことを聞かされることのなかった、女の勝手な、自分の中でだけ作られた言葉】

……あら、龍にでもなるおつもり?

【もしかしたら本当は違うかもしれないけど――知りようがないなら訂正もしようがないだろう。それからせめて嫌味のように投げかける言葉は、】
【川を上ってどうにかするものは鯉くらいだという程度の話。ただ少し面白かったのは、彼がまだ身につけていればの話だけど――同じく、そのうち龍になりえるもの】
【真っ白な蛇の欠片を彼が持っているかもしれないこと、だろうか。真っ白な蛇の欠片――というよりも、おおよそ半分ほどの"存在"】

【(大切なひとに、大切なひとを護っていてください、と、お願いした。一つ目は蛇で、二つ目は彼で、そうして、ずっと、預けていた)】
【(みためは小さな石でも、それが宝玉の欠片だとしても、あの少女にはあんまり関係がなかった。世界でたった一人、血の繋がりがある大切な存在の、かけら)】
【(神様はいくつにだって分けられる、けど、あの蛇にそれだけの力はもうなかった。だから、二つに分けて、それがぎりぎりラインの精いっぱいだった、とは、余談だけど――)】
813 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/10/02(月) 14:37:19.43 ID:D1TygOYHo
>>812

【聞き流していければきっとこれ以上よけいなことを言わずに済んだ。それが出来なかったのは、それだけ切迫していたからで、】
【出来ればもう背負う後悔になるようなことを増やさないうちに、終わらせておきたかった。こんな顔もしたくなかったし、こんな声色も、】

まるで当事者のように言うのだね。キミは

【瞳孔の開き幅が極端に異なる双眸は、細めて凄むとオッドアイのようだった。深緑とオリーブの取り合わせは、ちょうどあの花束にも似て】
【低めた声はそれでも思っていたのと違って、それでまだこの身体が二十六の青年時代であることに気が付いた。片手で何の気なしに頬を撫でて】
【耳朶に至った時に、忘れ物のように引っ掛かる何かに気が付いた。近くに集めてあった白薔薇の一輪を取り上げて、その花弁へ刺し替えたのは】
【遠い昔に分かち合った宝玉の欠片だった。ウロボロスに囲まれたそのデザインは、愛じゃないと知らずに愛していた稚さの証のよう】

【その一輪だけを橋の上へ投げて、それで全て済んだと言うように彼は歩を進める――姿が隠れる直前に、反響する声が何事かを伝える】

あの子に返してあげて欲しい。あの子と、その大切な人に

【(追い剥ぎのように浅ましく言われた訳でもない、ただ何処とも知らない場所で砂に混ぜておくのも悪いだろうと思っただけの話)】
【(本当に、ここからどれだけ遡れるのかよく分からない程度には疲れ切っていた。何なら生きていることそのものにも、愛などというのにも)】
814 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/10/02(月) 20:25:53.63 ID:vPxn3GKB0
>>813

――――本当の当事者が他人事のようにしている……の間違いではなくて? 

【意図的に低くされた声と、凄むような目つき。けれど彼女の態度は大して変わらなかった、慣れているというのもあったし、あったけど――】
【もともとそういう言動で行動を変えられるタイプの人間でもなかった。かえって暴力的にされればされるほど頑なになる、たとえ殴られようとも、睨みつけるタイプの】
【何もかもが架空でしかないテレビドラマから聞こえる罵声だけでぎくりと身体を固くして唇を血の気が失せた顔色になるようなかわいらしさとは無縁の、乱暴さ】

【だけれど同時に、だから今まで生きてこられたようでもあって。ぎらぎらとした目は暗闇の中で獲物を探す獣と本当に同じ色合いをしていた、爛々と光るように】

【そのうちに投げ上げられるのは白いバラの一輪、生ぬるい水を撒き散らして飛んでくるのを避けるしぐさは、あるいは彼女なら当然とも思えた】
【やがて硬い橋に落ちればびちゃりとあまり愉快ではない音の中に、硬質の音が交じりこんで――訝し気に靴のヒールで花をすりつぶした時の女の顔、きっと彼はもう見ないけど】

【――最悪、だった。多分今までのどんな彼の言動よりも女にとってはよくないもの、この際あまりきれいじゃないだろう水で浸ったものに触ることよりも】
【確実に見覚えのあるそれを持っていたら間違いなくあの少女はこれについて言及するし、そうなれば何かを説明してやらないといけない、となれば】
【どういう風に考えてみたとしても"よくない"。かといって棄ててしまうかと考えれば、変に生白い石の印象が意識にこびりつくようで、それはどこか祟りにも似て、】

――ッ、どこまで馬鹿にしたら気が済むんです、私だなんて構いませんけれど、天音さんだってどうでもいいですけれど、
白神鈴音を馬鹿にすることだけは許さない、

【ふわふわした髪の毛をぐしゃりとかきあげるしぐさも多分見られることはないだろう、けど、どうせ大したことない川のどうでもいいような橋、普通なら数秒で潜り抜ける先】
【目を焼くほどに眩い緑色が橋の上からぼたぼたと滴り落ちて、水面でぞろりと四足で起きあがる――そしてまばたきする間に尾の先から頭の先から四肢の先から黒く整った毛皮に包まれて】
【ほんの数秒で現れるのは青りんごの色の目をした黒猫だった。――ただし、ありがちなイエネコのサイズと比べれば、そいつは、ライオンか、あるいはそれよりも大きく】
【――そして、多分、橋の上の誰かと同じ表情をしていた。耳をびっと後ろに向けて、牙を剥き出しにして、おそらくそこにたどり着くはずのものを睨もうとして】
815 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/10/02(月) 20:56:54.85 ID:D1TygOYHo
>>814

【ざらざらとした砂の感触が気持ち悪い。自分という存在が器も命も全て耐久限度を超えた結果としての崩壊は、他の者達も同じなのだろう】
【頬にびしりと罅が入って、今更ながらに取り返しがつかなくなったと思うのが本当に馬鹿げた感傷だった。これでは見せられない、なんて】
【襟から裾から手首から、さらさらと零れ落ちていく砂はそのまま彼という物語のエンドマークを示していた。美しい終わり方ではないけれど】

バンダースナッチ。あのチェシャ猫の相手を、

【彼の影から伸び上がる黒い狼のような何か――大きさはほぼ黒猫と同じ。背を尾を逆上させて唸る声は、橋の上にも届くだろう】
【相手から見えない橋の真下で、黒猫の隙を見計らおうと凝らした目元から、まるで涙のように砂が零れていって――これでは埒が明かない】
【この場で砂になっては何か、相手に致命的なものを残してしまいそうな気がした。ただの思い上がりでしかないのだけど、そんな気がした】

――出来れば、見せたくなかったのだがね。こうまでされては、

【橋の下から一歩二歩と身を引いて、再び相手の前に姿を晒す。突き進めそうにない以上、開き直るしかなかった。出来れば、嫌だったが】
【水底を踏み締めて着水したその瞬間が、特に大量の砂が舞い落ちていった。身体が軽くなっていくような錯覚さえして、もう笑うしかない】
816 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/10/02(月) 22:02:04.52 ID:vPxn3GKB0
>>815

【頭すら抱えるように、あるいは自分の髪を引きちぎろうとまでするように、ぐしゃりと乱された髪から跳ねた毛先が月明かりできらきら光っていた】
【細い毛はそれだけでふわふわと柔らかいシルエットで、それ以外どうしようもないように俯けば身体つきの以外と細いのがよく目立つ、それだけなら、あるいは美しいのに】
【その足先は蹴りだした片方のピアスじゃない方、濡れた白バラをもはやすりつぶし尽くしてもすりつぶすように踏みつけて、ぎらぎらした目は変わらず獣で、】
【殺してやろうかと思う。さっき言ったことも忘れた。ここで自分が殺せば終わるだろうかと、そうすれば、意外と平和に終わってしまうんじゃないかと】

【傷さえつくほどに唇を噛みしめれば痛みで余計に憎くなる、きっと橋の下ではいつもみたいな顔をしているのだと思った、それが余計に気持ちを逆なでしていって】
【現れた黒い狼にも猫はひるまなかった。それどころか本体が怒れば怒るほど目をぎらぎらと輝かせて、一歩、二歩、と足を進めるほどで】
【聞こえてくる唸り声で余計に逆なでされる、やっぱりここで殺そうと思った、自分たちもきっと許してなんてもらえないけど、それでも、こんな男のことで二度と悲しまないなら】
【もうそれでいいと思った――だから余計に猫は彼を彼女の死角から引きずりだすように動いて――、彼に足元を見る余裕があれば、おそらく見えただろう】
【橋から身を乗り出して覗きこんでいる。そういう人影が水面に落ちていた、それどころか――浅くて遅くて生ぬるいくせに意外と澄んだ水面は、彼女自身の瞳までぎらぎら光るのを映して】

【出てきた瞬間で終わらせるつもりだった。ほんの一瞬のことだのに頭の中はいろいろ動いてたくさんのことを思いだす、だなんていうと、走馬燈みたいだけど】
【それともあるいは本当にそうだったのかもしれない、"そう"すれば絶対に終わる関係性の見る走馬燈、そのせいか本当に思い浮かぶのなんてあの少女のことだけで】
【自分たちでは笑わせることができなかった。それが久しぶりに会ったらよく笑って――どうしようもなく彼に嫉妬した。でもそれでもいいくらいに、嬉しそうだった】
【思い出をうんと遡れば思いだすのは薄汚い部屋、床に足を投げ出してわあわあ泣く声が鬱陶しくて、自分だけ特別にもらったけど別に要らなかった菓子を渡した、それだけだったのに】
【うんと濡れた目をまん丸にして、それから、破顔した。それが初めてだった、誰かに笑いかけられるのも、ありがとうだなんていわれるのも、だから、】

――ッ、死ね!

【あれを護るためにやる。――彼が出てきたのと同時にふわりと投げ出される身体は、けれど、あまり危なそうでもなく着水の後に着地する――しようとする、だろう】
【飛び降りた瞬間にあふれだした魔力はその右手で鋭い五指の爪になってぎらつく、目の前に落ちることさえ拒まれなければ、そのまま身体を引き裂いてやろうとして、ただ、】
【目に飛び込んだ光景のあまりの様――とりあえず人間が砂になるところを見たことがある存在は多分ほとんど居ない――に、動揺する、そうしてその動揺は、】
【いつか自分がしたことを笑って喜んだ人がこれから自分のすることで自分を憎悪する、なんて、あまりにあたりまえの気付き、殺意に一瞬遅れるものが追いつくだけの時間を作ってしまって】

【ほんの一瞬で身体はこわばって動かなくなる、それでもなくなりはしない勢いは、形ばかりは大きな音と水しぶきを立てるけれど、現実には】
【彼を殺すために踏み込む足ではなくて、ためらったせいで絡まった足がどこでもいい地面をただ求めて水面を踏み抜いたようになって――そのまま転んでしまうのだから】
【それはあまりに大きな隙だったし、人を殺すことに慣れていない証明でもあって。とりあえず――彼を追い詰めた黒猫も、今、動かないようだった】
817 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/10/02(月) 22:50:09.15 ID:D1TygOYHo
>>816

【ずっと聞けなかった言葉だった。きっとそう思っているだろうとはどこかで理解していたけれど、いつもすまして隠し切ってしまうから】
【だから相手がそう叫んで降りてくるその一瞬が、皮肉な程にうつくしいと思った。それだけの激情を向けられるに値したのだと、思った】
【恋敵の健闘を称えるような清々しいものではないし、あくまでこちらは何をしたという訳でもない理由で、それでも相手にとっては、】

……やっと本音が聞けた。喜ばしい限りだ

【相手が降りてくるところから転びかける所まで、彼は特にリアクションを見せなかった。ただ、転ばせるのは可哀想だと手を伸ばして】
【拒まれたのならそれでいいと手を引くだろう。なにせもう片手にはバルディッシュを握り締めたままだったのだし、別の理由もある】
【相手が手を止めることを予測していた訳ではない。はなから当たらないと思っていたのでもない。それほど、微動だにしなかったのだ】

けれど残念――私を殺すのは、キミじゃない。"死刑執行人"(ディミオス)!!

【後方へ放り投げたバルディッシュから黒い人影が立ち上る。それは瞬く間に実体化し、長斧を握り締めれば、青年の背後へと肉薄する】
【振り上げた血錆に満ちた刃は、相手の首ではなく、青年目掛けて思いきり振り下ろされ――彼は何処か勝ち誇るように砂を零しながら笑って、】


【――遠くで鳴り響いていたはずのサイレンの音が、いつからか静まり返っていた。代わりに、先程まで相手がいた橋の上に人影があった】
【アッシュグレイのソバージュを真ん中で分け、群青色の瞳をキツめに吊らせた、祭服姿の背の高い男。退屈そうに伸びを一つして、それから】
【橋の下の光景を見物することにしたらしい、もっと言うなら相手が飛び降りる少し前から二人のやり取りを聞いていて、更に言うなら】
【自警団に話をつけて代わりにこちらに来た司教だった。そろそろ眠いというように瞼を擦りながら、祭服の懐で煙草を探していた】
818 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/10/02(月) 23:13:50.05 ID:D1TygOYHo
/そろそろリミット近いので一応こちらでお知らせします
819 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/10/03(火) 00:40:04.05 ID:Mo8aKPik0
>>817

【悲しませたくない、だなんて、かわいらしくてつつましい理由じゃなかった。ただ嫌われたくないと思った、ほんの一瞬で、今まで生きてきた中で、一番強く】
【それでも引っ込みのつかない部分がこわばって動かない身体にぎりと歯を強く噛ませる、ためらったくせに、あるいはためらってしまったから、自分で自分が気に食わない】
【飛び降りた瞬間に意識が二つに分かれてしまったくらいの気分だった、どうしたらいいのかわからなくなってしまったような顔は誰かに似て、だけど、】

――――触るな! ――う、ぁっ、

【体勢を崩しきったなかで、それでもそれだけは頑なに受け入れなかった。不安定な中でもそれだけは絶対に絶対に譲れないことであるかのように振り払えば、当然、】
【その身体は次の瞬間には水のなかにある。大して深い川ではなかった、それでも倒れこめば、頭が完全に水没する程度の深さはあって、事実、その身体は刹那、本当に見えなくなり】
【ようやく身体を起こした時にはよく手入れされた細い髪も顔中に貼りついている、けれどそこに意識の向かないように、何度めか、相手を睨みつければ】

騙されたんだ、子供みたいな子だからッ、あんな菓子一つで喜ぶんだから、簡単だったでしょうね!
そうじゃなければ、こんな、悪びれない、こんなやつ、こんな男! 私の方が、いいのに! 
気持ち悪い……、知らないとでも、首なんか絞めて、父だと? 気持ち悪い、なんでそんなやつ、あんなに、……気持ち悪い、気持ち――、

やっぱりこんな男はやめた方がいいって言うべきだった。

【もしかしたら泣いているのかもしれなかった、だけど、全身の濡れてしまったいまではもはやどれが涙だかもわからなくて、ただ、水でも飲んだか声は咳交じりになって】
【ひどく耳障りになっている、内容だって聞いて間違えても楽しい気分になることはありえないものばかりで、だからいつも笑って甘い声でどうでもいいことを言っている普段が】
【何もかも全部嘘だったと分かるのだろう、ただ、――それでも彼女なりにできる限りのことをしていたのだとも分かる、彼が失踪するその日までは、一度も表に出さなかった】

……お菓子も、人形も、服も、なんでも買ってあげるのに――私でも、よかったはずなのに、そんな、ひどいこと、……気持ち悪いこと……しないのに、

【その先は熱に浮かされた時のうわごとにも似ていた、視線は彼の方を向いてこそいたけれど瞳は何より悲しそうで、それなら、初めから、勝ち目がないとも思い知っていた】
【――多分、知らないのだろう。ある頃から少女が"そういう"風にされるのをやんわりと断るようになったことも、そういう関わりすら必要とするほど少女がくじけていたのも】
【だからずっとそこに固執し続けている。もしかしたら、あの少女がいろんなものをどういう風に見たり感じたり考えたりするのかも知らないようにも見えて】
【ならどこまでも自分勝手だった、ショーウィンドウの中に飾られたキラキラしたもの、毎日眺めては焦がれていたものが、ある日売れてしまったから】
【だからあれはきっとこういうものだったに違いない、こういうものだったはずだ、と、思い浮かべて重ねているばっかりで、いつしか、現実と剥離していることにも気づかずに】

【――――だから、動くものは居なかった。そのはずだった。黒猫はもちろん術者は動かないし、動けない。誰か知らない人が来ていることにすら気づかない】
【だのに水面がざわざわと蠢いて波打つ、そのほんの一瞬後だった、まるでよくない薬を混ぜられたように刹那白濁しきる水面は、まるで意思を持つように揺らめき】
【さらにその一瞬の後。彼へ肉薄する黒い人影にちょうどまっすぐ向かうように水面から飛びだすものがあって。――真っ白な蛇、それも、成人でさえ一抱えもあるほど、大きな】

【「へびさま、わたしたちをずっと護っていて」】
【――宝玉の中で、薄い意識の中で、いつか聞いた。だから、それが自分の役割だと、認識した。だからする、たったそれだけだった、電気を流せば筋肉が動くみたいに】
【ごく反射的なもの、そこにあの白蛇の意識もないもの、ただ風が吹くみたいに誰の心も関係ない、ただの現象――だった、だけど、】
820 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/10/03(火) 09:01:09.43 ID:C9NNfz51o
>>819

【処刑人は大きな白蛇の一撃を受けて、手にしていたバルディッシュを弾き飛ばされ、まるで初めからただの黒布だったかのように掻き消える】
【飛び上がった刃はそのまま橋の上の欄干、ちょうど見物人の真横あたりに突き刺さった。流石に予期していなかったのか男は目を丸めて】
【小さくひとつ舌打ちをした。毛先が少し切り落とされてしまった、ただそれだけの理由だけれど――見物自体はやめる気はないようで】

――私が何をどうしたって、あの子は怯えて泣いて拒否して、ただ一つ父に似ていたからと、それだけが彼女の安らげる理由だった
それ以外に、私でなければならない理由なんて、何もなかったんだと思う。ただ酷く傷ついたまま一人で放られていたから、
親代わりにでもなってやらないと、そのまま一人で死んでしまうだろうと思った。私の事情も忘れて、ずっと傍で守れるものだと思い込んでいた

【読みが甘かったのはそれからの黒い女の悪戯や、今も流出の止まらないこの躰と、もといた世界があって、残酷な真実を見通せなかったこと】
【何度もの奇跡で今まだこの場で命を長らえていても、もう限界だった。迫り来る時間には抗えず、人である身とその魂は、無理をし過ぎた】

……あの子の前では、消えたくない。かと言ってキミにも、酷なものは見せたくない――静かに眠りたいんだ。酷く、疲れてしまった

【もう支えになるものもなく、ばしゃりと川面に座り込んだ身体から煙めいて砂が立ち上る。火葬した灰にも似たそれは川に流されていって】
【ただ最期の意地のようなものでまだ彼の形を留めているのは、言葉通り相手の前で消え失せることを拒否する一心からで、最後の望みでもあって】
821 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/10/04(水) 00:55:29.13 ID:8qDceXs30
>>820

【ただの現象でしかなかった白蛇はただ直近の危険らしいものだけを排除すれば、次の瞬間にはばたばたとねばこい音で崩落して、すぐにでも水面に溶け込むのだろう】
【そうすれば水面はまた元の通りに透明度を取り戻す――多分誰かが舌打ちしたことにも気づかなかったことだろう、そういうものを持っているかないかで言えば、きっと無いし】
【それならただ川の本流から取り残された水たまりのようなものだった、長いこと切り離されてしまったのならば淀むばっかりで、崩落する瞬間に刹那見えた気のする人影も、】
【ぐらぐら揺れる場所に置かれたやじろべえみたいに零れ落ちて、最後には何もなくなって――また、しん、と、静かになり】

じゃあ……一生そうしていればよかったのに、

【そんなのは知らなかった、それは知らない、知らないなら分からないし分からないから多分知ることもない、親に甘える気持ちなんて考えたこともなかった、だけど、】
【それが理由でそれが必要だったというなら。一生ずっとそうしていればよかったのにだなんて思う、きれいだけどどこまでも覗きこめそうな、底のないような目がふらと揺れて】

男だなんて……気持ち悪いのに。あんなこと…………、……、

【ぐうと下がった口角が珍しかった、というよりこの状況そのものが珍しいというより最果てみたいなものなんだろうけれど】
【ずっとそうでいたらよかったのにと恨めしいような声が呟く、親子であればまだ許容出来た、だけど恋人や夫婦では許容ができない、もっと言えば多分理解もできなくて】
【男だからいいのかといつか口走ったことがあった、きっとあれは本当に分からなくて言っていたのだろう、今だって、ちっともわからないように、唇を噛む】

【関係性がどう、というよりも、付随するものが耐えがたかった。許しがたいとも思う、不快だとも汚らわしいとも思えば、吐き気さえこらえるように奥歯を強く噛みしめて】
【そのうち川なのだからあたりまえなはずの水の流れすらも不快に思いだす、あるいはその感覚を今頃認識して、それに気づけば、水底のごろごろした石が身体に触れていることも】
【あっという間に耐えがたいものだと理解される、あるいはこの場こそがひどいストレスだと認識したのかもしれなかった、震える喉で吸いこんだ息の音が、いやに響いて】

【もう何もかもが分からなかった、殺し損ねたこと、それでも勝手に死にそうなこと、嫌いな人間を看取りそうになっていること、濡れた服の感触も、水のやけに緩い流れも】
【頭に血が上り切っているかのように視界がチカチカ揺れていた、いやに鼓動がうるさいのに指先は震えて――――だのに、まだ、あるいは一番憂鬱なことが残っている】
【それでようやく立ち上がる、服の裾からぼたぼた落ちる雫が誰かの代わりにうんと泣いているみたいにも見えて、ぴったりと張りついた服は、乱れた呼吸も目に見せて】
【爛々と光る目も今となってはきょろきょろとろりめくばかりだった、何度も何度も意味のない場所を見つめることを繰り返して――彼のことを忘れたようなしぐさをして】
【だけどそこからまた何度も動かした視線は最後に彼を"発見"する、ほんの一瞬呼吸も忘れたように呆けて、】

…………、気持ち悪い。

【それが、最後だった。ぎゅうと自分を抱きしめて固まってしまったような足を動かす、そのたびにぞるぞると足にまとわりつく水がひたすらに不愉快で、早く離れたくて】
【そう大した川でもないからきっと何もなければすぐに彼女は水から出ていくだろう、あとはこれも大したことのない雑草だらけの緩い斜めを上れば、すぐに橋までは戻れるし】
【そうすれば――多分そこで初めて誰かがいることにも気づくのだけど。何か言葉をかけたとして、人間らしい全うな反応が戻ってくるとも思えないような、様子で】
822 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/10/04(水) 11:29:46.03 ID:CSVRi4l9o
>>821

あの子が望んだんだよ。そうでなければ何度子離れしようと思ったか知れない……、私のコゼット。キミはきっと、あの子の母親だったんだ

【混濁する意識は、古い物語に自分とあの子と、そして相手を当てはめていた。それでもただ一つ、この場にいないもう一人からの言葉】
【本当に、そうだったのだと思い知らされた。聞いていたときはいまいち掴みにくいふわふわとした話としか取れなかったのだけれど、】
【これからそれを話したところで、決定的に手遅れなのだろうとも思った。それでも、遺言代わりに呪いの言葉で憎まれても、もう構わない】

キミの言う「気持ち悪いこと」を望んだのも、親子から夫婦になることに同意したのも、「あんなこと」も受け入れたのも、半分はあの子だ
私の前に男がいたのも分かっている、それなら私だって前に妻がいた、そうでなくたってそれを理由にあの子を貶めるような事は言わないだろう、

――あの子はモノじゃない。お前のきれいな玩具じゃない。勝手に理想化して、しがみつくな

【あの子の尊厳を守りながら悩みながら、それでも初めて会った時のような儚い存在から、他の誰かを守れるまでになってくれたこと】
【やっと「もう自分はいなくていい」と思えた。その長い過程すべてを気持ち悪いの一言で片付けた相手が、一体何をしてくれたのだろう】
【ここで消えても何も構いはしなかったけれど、もし自分のいなくなった後に何かあったなら、起こり得る火種があるのなら、許せない】

【――そこまでが、彼の意識の限界だった。去り行く相手の後ろで、陶器の割れるような音が何度かして、砂が舞って、あとには本当に何もない】
【最初からこの世に存在していなかったかのよう、持ち物もあのピアス以外には特に持ち合わせていなかったのなら、あと残っているのは】
【浮き上がる黒い球と、欄干に突き刺さったバルディッシュだけだったのだが――その二つを手許に引き寄せたのは、先程からいた男だった】
【橋の下にいた黒い狼も同じく、彼の足下へと着地する。それを確認してからぱちりと指を鳴らすと、三つの黒い存在は瞬く間に消え失せた】

「……この先にある教会の、司教です。こちらに向かっていた自警団には話をつけてあります。よろしければ、教会で拭くものをお貸し出来ますが」

【司教と言うには若過ぎるような、そんな青年は、見物していた時とひどく違う物腰の柔らかい態度で――模範的な司教として、声を掛け】
823 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/10/04(水) 18:14:16.38 ID:G+Ri5mnw0
>>822

【いろんな物事、例えばふと見当たらなくなったリモコンを探す時、思いたって立ち上がってみれば、意外と座っていたすぐ横のティッシュの陰に隠れていたりする】
【そういうのに似た気持ちだった。立ち上がってしまえば、きっともうちっぽけになった彼のことなんて、どうしてあんなに、と、思えてしまって、ばかげているとまで感じ】
【古い物語だなんて知らなかった、興味もないし、多分これからも仕事にでも関わってこない限り読まないだろう、だから、彼の言っている意味も、彼女には通じなくて】
【それでもひどい動悸がして止まらない、動物めいた直感でひどいことを言われている自覚はあった、名前を知らない限り区別できないだけでどんな虫でもだいたい気持ち悪いような】
【言われている言葉の種類を区別できないだけでそれが不愉快という感覚だけがあった、なまじきれいな顔をしているからこそ、対応する表情を分かりかねたようなちぐはぐが目立ち】

…………、汚らしい"男が"、

【たしかにそれは彼女にとって呪いたりえた、あるいは何より深くまで心を傷つけることのできるもの、好奇心以外で猫を殺す方法】
【心の中でずっと抱きしめていたもの、もはや現実のどこにも存在しない虚像に祈ること、信仰にも似た、それに、一番汚いと思う存在が、一番気持ち悪いと思うものを、塗りつける】
【それはきっと、どれだけ大事にしているぬいぐるみでも、ある日その上をゴキブリが歩いているのを見てしまったら、どれだけ洗濯したって、前のように思えない、ような、】
【そういう呪い、誰かはモノではないなんて当たり前で分かり切った現実的な理解とは別の、そうじゃない、もっと大事なものを穢される感覚は、そうと呼ぶしかなく】

【もはや殺すまでなく死ぬだろう相手にそうやって背を向けた、というよりもそうしないといけなかった。でないと、これ以上、大事なものを辱められてしまいそうで、恐ろしくて】

【ひどい吐き気がした、濡れた身体はひどく冷え切っているのにどうしようもなく血の温度がおかしくなったようにかっとして、鼓動のたびに視界すら揺れる気がする】
【だから多分橋の上――さっきまで居たはずだのに遠い昔に思える場所に戻るころには、ひどく衰弱したようにも見えるだろうか。身体ではなく精神が、ひどくすりきれて】
【地面に転がる白い石のピアスを拾い上げるためにしゃがみこむしぐさは姿勢の整ったきれいなものでも指先がこわばって震えていた、そのうちに拾い上げて握りこめば】

【(あの少女はこれを欲しがるはずだった。それなら、これさえあれば、これさえ持っているうちは、きっと自分が優位に立てる、なにより、男は死んだのだから)】
【(もう甘えて縋れる存在はないはずだった、そうしたらあの少女はその先を探すに違いない、――うまくやれば、取り戻せるかもしれない、あんなに気持ちの悪いこと)】
【(酒に酔った男たちに囲まれるような仕事はしなくってもよくなるし、よく分からない汚れた子供たちに囲まれなくってもよくなる、ひどい寝不足に悩まされることも、なくなる)】
【――そう思い至るまでに、大した時間はかからなかった。そう思うことそれだけでどれだけひどい侮辱であるのかもきっとわからないまま、分かれないまま】

…………、いえ、それは、悪い、ですから――、ああ、でも、そうですね、……迎えが来るまでの間でしたら、お言葉に……甘えさせていただきましょう、か。

【病的なまでに真剣だった、拾い上げて、仕舞いこむ――たったそれだけのことだのに、失敗すれば世界さえ滅ぶとまで思い詰めたようにそうしていた彼女は】
【掛けられた声に小さく身体を跳ねさせて、それから相手へ応じるだろう、はじめはひどくこわばっていた表情は話す事に組み替えられて、言い終える頃には笑みさえする】
【いまだ全身から水は滴っていたから新手の妖怪みたいだった――とは余談だけど。場所が場所で時代が時代なら、それで通用するくらいに、人間と剥離した気味の悪さがあって】
824 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/10/04(水) 19:05:40.71 ID:CSVRi4l9o
>>823

分かりました、そう遠くはないので……向こうに着いたら、シスターが居ますから。少しだけ我慢してついて来てください、

【この青年は、初め相手がいた場所からずっと二人を眺めていた。それ故に、きっとピアス付きの白バラの落下地点にも近いはずで】
【ピアスを拾い上げた際に、散らばるアッシュグレイの髪に気付くかもしれない。現に彼は左側に不自然に跳ねたソバージュの髪を弄っていて】
【バルディッシュが飛んできた時に切り落とされたもの――気付いたにせよ、彼は通りのなるべく明るい道を進んでいく。不思議なほど人影はなく、】
【その理由も、唯一道すがらに肩を並べて煙草をふかしていた男達の囁き声で分かるかも知れない。「殺人犯が彷徨いてるって話だ」、と】

【本当に数分で辿り着いたそこは小さな礼拝堂で、彼はそこに隣接した建物の小部屋へと相手を案内し、「シスターを呼んできますので」と】
【先に部屋をあとにした。それからややあって、ぱたぱたと走ってくる足音がして、ドアの前で悪戦苦闘するような数秒のあと、】

「お、お待たせしました!! 申し訳ありません、私が遅れたせいでお風邪を召されてはと、……あっ、それよりまずは、こちらをどうぞ!」

【腕いっぱいに抱えて来たのだろう真っ白なタオルを、相手目掛けて思いっきり投げ出すのは――同一人物かと見紛う程に、先程の男に似た】
【慌てて被ったようなベールから溢れてしまった、アッシュグレイの長い髪はソバージュで、吊り気味な群青色の瞳一杯に焦燥の色を浮かべ】
【でも明らかに声色が違うのだから、きっと双子か何かだろうが、男女の双子でここまで似るものかと疑問を懐きそうな、そんなシスターだった】

「あっ、やだ……すみませんっ、私いつも失敗ばかりで……申し訳ありません、替えの服も持ってきてあったんですけど、えっと――」

【命中したかはともかく、相手目掛けて大量のタオルをぶちまけてしまったことに酷く申し訳無さそうにしながら、何をすればいいだろうかと】
【慌ただしさの中で手癖なのか左の髪を指でくるくると巻き出して、その房だけ短いのに気が付くと、慌てながらもやっとベールを被り直し】
825 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/10/04(水) 19:58:21.52 ID:G+Ri5mnw0
>>824

【ピアスを拾い上げたそばに散らばる色、もしも彼女がもっとましな精神状態でいたなら、相手の様子と合わせて、そういうことかと理解したのだろうけど】
【多分その瞬間の彼女はそれ以外の何もかも世界を認識していなくて、だから、結局散らばる毛先にも気づくことはなかった。だから視線を彼へ向けて認識したとき、】
【初めてその髪の長さが左右で異なることに気づくのだけど――にっこり笑ったままで停止した彼女は結局何に触れることもなく】

【道中も意外と素直についてきてくれるだろう。とはいえ――調子が悪いようにときどきふらふらと足取りはおぼつかなくて、打ち上げられた幽鬼のよう、足音ばかりが水っぽい】
【もっと言えば一番前を歩く彼のいくらか後ろを歩く女のずっと後ろに、彼女の能力で作られたあの黒猫がひたひたと音もなく付いてきているのが、どこか不気味で】
【とはいえさっきまで顔中にしわを寄せて牙を剥いていたのを思えばずっと平和だった。暗い夜道に瞳孔をまあるくしてお澄ましした顔でしゃなりしゃなり、ついてくる】

【やがて濡れた足跡も小さくなっていく頃だろうか、どうやらたどり着いたらしい場所に案内されれば、どこか疲れたような――というより本当に疲れた目で室内を軽く撫で】
【いなくなるのだという彼には簡単な礼をする、その割に部屋から出る背中を追いかける視線はいやに睨みつけるようだったけど……とは、余談】

【一人になった部屋を無意味にうろつくのは警戒にも似ていたし手遊びにも似ていた、神経質そうに眉根を寄せて――それから思いだしたように、携帯端末を取りだして】
【送信するメッセージはごくごく短く迎えに来いとだけ伝えて、それでもまだ気分が落ち着かないようにうろうろとしていたのだけど。――そのうち、部屋の真ん中で足を止め】

【(まだ心臓がいやな風にどくどくしていて、それなら、嫌でも昔のことを思いだす。きいきいした声の女が何かをずうと自分に向けて、怒鳴りつけている、だけど、)】
【(それらの言葉は知らない単語ばかりで理解ができない。理解ができないのに、ひどい言葉だというのだけが分かって、心臓がぎゅうっと絞られるような、感覚)】
【きつく目を閉じて記憶を押しとどめる、ようやくそれが落ち着いたころだろうか、ガチャガチャと悪戦苦闘する音、それから、視界いっぱいに飛来する――】

――――っ!

【――おそらくはひどく驚いたのだろう。申し訳ないことにびちゃびちゃの服のままでしりもちをついてしまった彼女は、見れば、ふわふわのタオルにうずもれて】
【その中で頭と顔を庇うような姿勢で身体を固くこわばらせている、もっと言えば投げ出さずに折り曲げた膝は腹を庇うようでもあったし、だけど、相手から見れば、】
【それは真っ白で柔らかいタオルが散乱する光景に取り囲まれた人間の行動にしてはいくらも変なように見えた。驚いたにしても、驚きすぎていたというか――】
826 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/10/04(水) 20:35:33.64 ID:CSVRi4l9o
>>825

【小さな礼拝堂なら修道院とも呼べない小さな建物、司教格がいるにしては宗旨を堅守してか簡素な小部屋は、宿直室のようなものだった】
【ベッドと机と椅子。本当にそれ以外が何もなくて、聖書すらない。そもそも、やたらと綺麗だけれどしばらく誰も使っていないような、】

「えっと――、大丈夫ですよ。ここは安全な場所です。驚かせてしまってごめんなさい、私は、シスター・ジュリエットと言います」

【――場所柄、そして仕事柄、突然のときにこんな体制を取る子供をよく見て来た。しりもちをついた相手と同じ目線になるようしゃがんで、】
【まずは大丈夫だと、ここは安全なのだと、そう伝える。威圧感のないように、それから焦燥させないように――とは、まず自分の事だろうが】
【相手が落ち着くまで、無理に乾かそうとしたりはしないまま(ばら撒いたタオルが吸ってくれそうな気もした)、そうしているだろう】

「――ここまでご案内したのは、ジュリアス司教です。私とは双子で……兄か弟なんですけど、公式な記録が残っていなくて……あっ、」

【間を持たせるような話を探していたのだろう、大抵よく聞かれる話題を引っ張り出して来たのだったが、途中で口をつぐんでしまう】
【言ってはいけないことを言った、ともいうような顔だった。ただそれが自分と相手のどちらにとって悪いことだったのか、曖昧に俯いて】

「ううん……確か、お迎えの方がいらっしゃるのですよね。私、迷わないよう玄関でお待ちしてますから、あっ、お着替えはこちらですので、」

【「お持ちになっても構いませんから」――そうは言ったが、所謂シスターの服だった。暗色か白地かの違いで、装飾も何もない地味なもの】
【どうするかは任せることとして、自分が居ると相手に負担を掛けると思ったらしく、女は早口でそう告げれば部屋を出ようとする】
827 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/10/04(水) 21:14:25.84 ID:G+Ri5mnw0
>>826

【ぎゅっと硬くなった身体は、それでも放っておけば数秒後に柔らかくなる、というのも、本人さえ、自分のしたことが不快であった、というような目をして】
【それでもまだ少しこわばりの残る喉から息を吐けば少し震える、――ほんとうに聞こえないくらいかすかな深呼吸を数度繰り返せば、】

いえ……、……失礼、しました、少し――気が小さくて。あとから思えばなんともないことでも、驚いてしまうことがあって……。

【不自然ではない声だった。取り繕う様子もなくて、ただ、彼女を知る人間がちょうど居合わせたとしたら、別のところを見ていたとして、とりあえず一瞬は振り返りそうな】
【そういう感じの嘘を吐いていた、それでも幸いだったのは、急にタオルが来たので驚いたことで寸前のことから一瞬気が逸れたこと、それをきっかけに、意識からついに追い出し】
【もともと真っ白い肌はそろそろ本当に冷えたかさらに色白になってしまって、ただその顔で人あたりのいいように笑うのだった、半分取れた化粧がかえって生々しくて】

……ええ、はい、似てらっしゃる、羨ましいです、きょうだいって――楽しそう、……私は一人っ子ですから、

【どこかのタイミングで何かを切り替えたようだった。一度話し始めてしまえば間はだいたいもつだろう、自分を埋めるタオルを使ってもいいのか、と、尋ねるように示して】
【それでいいと言われればそれでようやく自分の身体を拭き取るために使うのだろう、――髪と服。といっても髪はともかく、服は下着までも濡れているからあまり意味もなくて】
【だとしてもきちんと乾いたタオルで身体を拭くのは心地よかったのだろう、化粧をつけてしまわないか一瞬ためらったあとに顔をうずめる、かすかに見えた表情は初めて柔らかく】

【とにかく疲れていた、知らないところにいるのは嫌だったけれど、それでも、寒くないだけ気が休まる、知らない人と過ごすのも嫌だったけれど――自分だけよりは気も紛れた】

――――、はい、多分……そのうちに来ると思うのですけど、……いえ、ご存知だったので、つい、……。

【ふつと一瞬だけ言葉が途切れた、そのうちに――という言葉にはだいたいどれくらいというイメージがないのも分かるだろう、あいまいな言葉を返せば、】
【あるいは言葉以上にあいまいな笑みも浮かべる。いきなりついてきていろいろといきなりな割には話が通っている気がしたけど、】
【最終的に相手が部屋から出ていこうとするなら、それでいいかと思うくらいには、疲れ切った様子で――ただ、彼女自身の言葉通り】
【相手が部屋から出たとしても、本当にすぐには迎えらしいものは来ないだろう、とりあえず――なんなら一時間か、それを過ぎるくらいは、世話になるはずで】
【もし次に誰かが部屋を覗けば気づけば一番部屋の隅っこに移動していたりもするのだけど――それ以外は何もなければ、ごく静かで、問題らしい問題も起こさないはずだった】
828 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/10/04(水) 22:02:37.78 ID:CSVRi4l9o
>>827

【出ていこうとした足が止まる。先程の雑談を突然止めた時のような、失敗したというような一瞬の空気を、微かな舌打ちが切り裂いた】
【ベールをかき上げてふわりと舞い上がるアッシュグレイの髪は、やはり相手があの橋の上で見た男と同じく、左に不自然に短い部分があって】
【それでも女性の体つきをしているし、声だって、何なら胸だってそうだった。背高だったあの男より明らかに低い背なら、尚の事】

「先程ジュリアス司教から聞きましたので――では、あの短時間で筋が通るはずもない、ですね。ドジっ子シスターを熱演し過ぎました。
男性がお嫌いなようでしたので、配慮したつもりでしたが……まあ、欲しいものは手に入りましたし、ついでに手をお貸しした、
ただそれだけのことです。と言うよりかは――あのままお帰しするのは、気が引けたので。悪魔のようでしたから、あなた」

【――相手が橋の下にいた時点からでないと、整合性の付かない話をしていた。シスターだと名乗った女は開き掛けた扉を締めて、そこに寄りかかり】
【懐を探って、煙草の箱を取り出した。「こちらでしたか」と呟いたのは、見物していて眠気を払おうとした時に無かったから、という与太】
【聖マリアがステンドグラス調に刻まれたジッポで火を灯し、深く吸い込んでゆっくりと息を吐く。それから相手に煙草の箱を差し伸べて】

「吸いますか? それと寒いのでしたら、ブランデーをご用意しますが。生憎まだ、オイルヒーターのメンテナンス中ですので――」

【背徳的なシスター、それならよくある話の一つだった。有名な修道院でさえ、深夜に抜け出してタクシーを捕まえ酒を買いに行く者があるという】
【それがこんな小さな教会なら尚の事、なのかも知れない。問題は、彼/彼女が、何らかの理由で同一人物であること、だった】
829 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/10/04(水) 22:42:41.40 ID:G+Ri5mnw0
>>828

【相手の足が止まったのは気づいていた、気づいたけれど、視線は重たげに垂れたまま緩く瞬いて、これが、もっとひとなつこい性質だったなら】
【そのままたくさんのタオルにくるまって眠ってしまいそうな様子でもあった――だけれど、さすがに舌打ちまでもが聞こえてきたのなら、それでようやく視線を上げ】

……そう、では、お気遣いありがとうございます、……いつからいらしたのかは知りませんけれど――、お見苦しいところをお見せして、――、
――――、

【意味の通じるように言葉は並べられる。声も普段に比べたらうんと低いけれど、多分あんまり気にしていないことを謝るときの、声の潜め方は、いやに上手く】
【相手が見ていることをこの女は結局最後まで気づかなかった。だからいつから見られていたのかを、探るでもなく、けれど無関心でもなく、気にするように相手に向けた、目が、】
【それから続いた相手の言葉で理解しがたいように瞬く、悪魔のよう、と、思考の中で繰り返してみても。あまり実感もなくて、もう一度、ゆっくりとまばたきをして】

【吸血鬼であること――は、とりあえず、黙っておくことにした。とはいっても中途半端なものだ、陽を浴びればひどい火傷を負うけれど、普段の傷はすぐに綺麗に治る程度の】
【それからときどき人間の血を啜る以外の何でも解消できない上に耐えがたい口渇に苛まれたりするくらいの、――だけどどうしたって人間ではない程度には、違う、けど、黙って】
【ただ相手がそういう話をしているわけじゃないとは思ったけど――思いはしたけれど、結局、あいまいな吐息で終わらせて】

いえ、……甘いもの以外……嫌いですので、それに、酒はあまり、――、強くなくて。

【あの橋の下のこと。見ていたのなら、ずいぶんと取り繕うのが上手だとでも思われるだろうか、ときどきあたりまえに嘘まで吐いて、ただ、】
【態度全部が嘘だと言い切るにはあまりに消耗しているようだった、目を緩く閉じて首を振る――それでもタオルごと身体を抱きしめるしぐさがあれば、】
【やはり身体は冷えてしまっているようだったのだけど。あひる座りの足元と、緩く丸めた背中、濡れて細かくいくつもの束になった髪から、ときどき思いだしたように水が垂れ】
【――まったく別人みたいにも見えた、借りてきた猫をそこからさらに何回か又貸ししていったらこうなっておかしくはないような、そういう、静けさで】
830 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/10/04(水) 23:29:52.34 ID:CSVRi4l9o
>>829

【「遠慮なく使ってください」とひとつ前置きのように言ったのは指し示す先のタオルのことで、多分ここに置いてある全部だろう量だ】
【相手がいらないと言えば頷き、それから、おもむろに懐から聖書を取り出した。開いた中に仕込みのアルミ缶があり、携帯灰皿となっていて】
【どこまで冒涜的なのか分からない彼女は、長くなった灰を落としながら、相手に視線を向けていた。それからふと壁を見て、考えて、ちいさく笑った】

「――、蜂蜜入りのホットミルクはいかがですか。すぐご用意できます。身体が冷え切ってしまっているようですから……」

【必要だと言えば煙草の火を灰皿聖書でねじ消して、部屋を出る。数分もせずに用意してくるし、それも要らないと言うなら、仕方ない】
【いずれにせよ、迎えの人間が来るまで目を離さない方がいいと判断したらしい女は、壁に凭れかかってそのまま床に座り込んだ】
【立って上から見ているのは好かなかった。それと先に一度しゃがんで相手に向かい合ったこととは、ほんの少し程度に理由が重なっていた】
【温かい飲み物を相手が受け入れてもそうでなくても、そうして壁に凭れたまま何とはなしに天井を眺めていたが、ふと思い出したように】

「――この建物を焼いたら暖まるかも知れない、と思ったんです。あなたが寒そうだから、そんな理由だけだと奇妙な人間だと思われるでしょう」

【「待ち時間の暇潰しにでも、あるいは眠るための物語だと思って、聞いていただけますか」】
【そんな前置きから始まった話は、待つ時間をたっぷり埋められる程度には長いものだった。高名な教会を隠れ蓑にした、人体実験の話】
【何人もの孤児や母胎を犠牲として、ついに"人造天使"が作り出された。ものの数分で、任意に自らの性別を変えられる、そんな生体】
【狂信的な信仰心が創り出したその命は、どう生きてどう死ぬかまでもが、金をうず高く積んだシナリオとして既に出来上がっていた】
【『とある小さな教会で、ある日舞い降りた主から御使いとすることを告げられ、それから天使のように現す姿を変えられるようになった司教』】
【その通りにここで実績を作り――「不慮の死」後、奇跡認定と列聖を行う。教会側に齎される金は底知れず、詮索も死人に口無しと】
【そして、出来るならその死は「美しいうち」がいい。遠からぬ先、その司教は殺される事が確定していた】

「――いっそここが燃えてなくなってしまえば、と思ったんです。浅はかでしょう? そんなことなど関係なく、教会は死ぬまで私を追うというのに」

【――長い長い話は、初めに言った言葉の意味を補完して終わる。聞いてくれたにせよ、相手が眠ったなりしていても、独白はそれで終わる】
831 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/10/04(水) 23:30:37.33 ID:CSVRi4l9o
/追記抜けましたが落ちます
832 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/10/05(木) 00:37:25.84 ID:J+7DlLGH0
>>830

【タオルは好きに使っていい。改めて言われる前にいくらかを汚してしまっていたとはいえ、それでも、明言されて、安心したらしい】
【自分より少し離れた場所に落ちていたのを手繰り寄せて、また、顔をうずめる。見られたくないし見たくもない、知らない洗剤の匂いがして、少し、気に障る】
【だけどついさっきまでのように声を荒げて投げ捨てるような不快ではなかった、もっと、消極的に受け入れていたい、不快。少なくとも彼女はそうだと認識して、】
【そのままの姿勢で問いかけを受ける。――いつもはコーヒーばっかり飲んでいた、特に理由はなかったはずだけど、同居人が朝に自分が飲む分を淹れるついでに、用意してくれる】
【――けど、時折それがホットミルクになる日があった。そういう時には決まって、幼馴染のはずなのにうんと幼い少女が泊まりに来ていて】
【誰が何を言うでもないけど。そんなルールなんてなかったけど。その時だけはいつも甘くしたホットミルクを飲む、だから、それが無性にほしくなって】

…………、

【じっと相手に向けられる目はそれが欲しいと言っていた、けれど欲しいと言いだす方法が分からないようにためらって、それから、最後に、小さくうなずいて】
【煙草と酒が言わずとも大人のものならタオルとミルクはきっと子供のもので、それなら、どこか、ぬれびしょになって小さくなっている彼女に、なぜだかよく似合う気がする】
【相手がそれで意味を汲んでくれるのなら、部屋から出ていくのなら――そのほんの少しあと、身体が重たくてしょうがないように、ずるずる、小さく、床に転がって】
【身体を丸めて、それからなるべく濡れていないタオルを顔に押し当てる、硬い床は身体で敷いた側の腕が痛かったけど、路地裏の嘘みたいな安宿よりはましだと思いなおす】
【安い代わりに壁のいろんなところに穴が空いていて、なんなら隠しカメラまで出てきたりする。だけど安いから、ただそれだけの理由で、何度か連れて行かれたことがあった】

【――笑えない子なのだと思っていた。いつも泣いていたし、珍しく泣いていないと思えば寝ているか、それか、それでも涙をこらえて鼻をすんすんやっている】
【泣きじゃくるときの内容はだいたいいっつも「おかあさん」か「おとうさん」、それからたまに「おうちにかえりたい」とか――】
【"お仕置き"の最中ならだいたい「ごめんなさい」か「いいこになります」、――そんな風な子を壁の角に押し込んで自分の身体で物理的に遮る紺色の髪の子もどうかしている】
【それが認識だったはずなのに。あの時にそうしたのは本当に気まぐれだった、そんな風だからめったに食事にありつけないあの少女に、紺色がいつもやっているように】
【自分が持っていて、たまたまそんなに空腹ではなかったから、大人相手に"上手く"して手に入れたお菓子を渡した、べつに何にもないと思ったのに】
【今にも泣きだしそうにぐすぐすしゃくりあげていたのがびっくりしたように止まって、いっぱいいっぱいに涙をためた目が、じっと見て、】
【「くれるの?」「ありがとう」――それが初めてだった、ありがとうなんて言葉も、誰かに笑いかけられるのも】

【――――だから、あの少女にあたりまえに笑顔を向けられるのだろう彼がうらやましかった、そしてそれは下の子が生まれた時の長子のような、そういう気持ちで】
【それでも。それでも、こんな風に笑う子だとは知らなかったから。自分たちにはできなかったことだから。だから受け入れることにした、"そういう"のは得意だったし】
【ふしぎとそんなに嫌な気持ちでもなかったから。聞かれれば化粧の仕方も教えたし、求められたら髪もきれいに結った、嬉しそうなのを見て、嬉しいと思うことすらあった】
【いつかドレスを選ぶのと言って呼ばれた時も、嬉しかった。あの少女に似合うものを一緒に探して、――だけど、ある日、彼が居なくなったと聞いた時に】
【あの薄汚い部屋の隅っこで泣いていたのと同じ顔で声で泣くのを見た時に、それまで見ないでいた嫉妬や違和感を全部認識してしまって、】

【――相手が戻ってきたとき、部屋の中はしんと静まりかえっているだろう、なぜなら、身体を小さく丸めて、眠ってしまっている】
【だからその独白を聞いたとしても返事はなくて――ただ、その返事の代わりのよう。ホットミルクが人肌くらいまで冷めたころ、だろうか】
【外から車の音がして――、それが、この建物のそと、この距離ならだいたいここが目当てだろうという辺りで、停まるのだった】
833 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/10/05(木) 07:42:26.38 ID:cyhJ1/hVo
>>832

【随分と疲れただろうとは思っていた、だから少し離れれば相手が眠りに落ちてしまうのも、何となく分かっていたような気がした】
【キッチンで見つけたタオルケットを相手にそっと掛けて、ホットミルクは近くの机にことりと置いて――それから、空いた時間を埋めるように】
【長い長い話をしたのは、聞かれない前提であったからこそ詳細なものだった。そもそも今まで人に話したことなど、一度もなかったこと】
【この先も、もう二度と同じ話をすることはないだろう。「この先」があとどれだけ残されているのかも分からないし、どうせ揉み消される】

「――来ましたか。お出迎えにあがらないと……、起こしてしまうのも悪いでしょうか。お連れしない訳にもいきませんし……」

【寝入っている相手にどうしたものかと悩んで、それから外に来ている人間に先に話をした方がいいだろうと結論付けて】
【シスターはそっと部屋を出る。カンテラの灯りを片手に、建物の外――目についた車の方へと歩み寄って、迎え入るように一礼する】
【誰かが出て来て尋ねるなりすれば、部屋の中で眠っている相手について、どう連れてきたものかと眉を下げて言うのだろう】
【相手が起きて付いてきたなら、そのまま迎えに来た人へと任せる。――教会は、求める人に必要な助けを与える場所】
【神などいないし信仰など何の救いも齎さないと身に刻まれて知っている彼女が、唯一実行している教義が、それだった】
834 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/10/05(木) 20:38:53.08 ID:IsjrBxrl0
>>633

【顔は真っ白なタオルに埋められているから伺えない、小さく丸めた身体にも、ほぼぶちまけられた時のままタオルが引っかかって、あるいは絡まって】
【それでもタオル越しに眠っているとき特有のゆっくりした呼吸が見て取れた、ふわふわの毛足が生きているみたいに膨らんで、ゆっくりともとに戻って、それが繰り返しで】
【短いからといってすぐに乾くわけでもない髪もまだまだ絞ったら水の出そうな服もそのままだったけれど――それでもひとまずは、穏やかであるように見えた】

【やがて車の音がして、相手が外に出たなら――さっきまで当然なかった車からちょうど降りる人影を見つけることになるだろうか、】
【うすっぺらの携帯端末を半ば睨むように凝視して、それから目の前にある建物を見て、それからそれから、もう一度端末を訝しげに眺め、そして建物を、――そこで相手を見つけ】

「――ああ、夜分遅くに申し訳ありません、知人に迎えに来いと言われたのだけど、抽象的な地図しかもらえなくって、よろしければ見ていただけませんか」

【紺色の髪の女だった、とはいえ、この暗い中ではほとんど黒に見える髪と、瞳の色の女。背は女にしてはだいぶ高くて、長い髪をただとりあえずという風にまとめた、】
【好意的に見れば連絡が入ってすぐに家から出てきた、そうでなければなんかとりあえずそこらへんにある服を着てきた、そういう格好だった。――初期アバター、みたいな】
【低くてかすれた声はそれでも愛想のいいような色合いで相手へ尋ねる、おそらく地図を表示しているのだろう携帯端末、女が差し出すのを、相手が見てくれるなら】
【とりあえずGPSをつけてマップアプリを開いて、表示された画面をスクリーンショットして、送りつけました。そういう感じのものを見ることになる――だろう、】
【なにより倍率の低い、うんと遠い画面である上に、大事な現在位置はそもそも現在位置を示す赤い矢印に隠されて見えない、そういう感じの――】

「このあたりだとは思ったのですけど、道もよく分からなくって、……あまり待たせてもうるさいので、困っていて」

【本当にこれを頼りに来たのならかなり上出来だろうという感じの地図だった。呆れがちにため息を吐いてみせた女は、最後に面倒そうな声でそう付け足して】
【このあたりだとは思っていてもここだとは思っていなさそうな顔をしていた、――とりあえず、こういう場所は嫌いそうだと思った】
【何よりこういう場所を選んだとしてもそれは居場所を分かりやすくするための目印であって、そのものにはいないだろうと思っていたし――ただ、それにしては】
【車が見えた時点で出てこないから、このあたりでもないのか、とも、思っていて。ひゅうと吹いた風が冷たかったのか、雑に解いた髪が、一瞬月明かりに青く透き通った】
835 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/10/05(木) 21:08:10.71 ID:cyhJ1/hVo
>>834

「拝見しますね――、ああ、やっぱり。こちらでお休みいただいている方が、迎えが来るのだと仰っていたので……あなたと歳の頃も近いですし、間違いないとは思うのですが」

【はじめはほぼ確信的に地図を見た、それからううんと首をひねるも、とりあえず誰かを待っている人間を預かっているのだから】
【間違っていたにせよ、ひとまず顔を合わせて見れば分かることだと判断した。あの中です、と小さな礼拝堂の隣にある建物を指して】

「……今は、眠ってしまっているのです。水浸しになってしまっていたので、今は幾らか乾いたかもしれませんが、お風邪を召されては大変ですから――」

【そうなった理由を話すにも長くなりそうだし、もし関係のない人間だったら眠っている相手に申し訳ないことになる、と】
【道すがらに説明する言葉はどうしても断片的になる。カンテラの灯りを高く灯して玄関ドアを開け、入ってすぐにある小部屋のドアを開く】

「無理にお運びするのも忍びないですが、このままでもよろしくないと思うので――お泊り頂いても構いませんが、如何致しましょうか」

【ベールを上げたままなのも、煙草の匂いがするのもそのままなのは問題があったけれど、何となく相手に触れるような行為はしたくなかった】
【嫌悪感と言うよりは、そうされるのを嫌がるだろうという勘でしかないもの――あの橋の下でのやりとりを見ていたから、だろうか】
【それよりまずこの人間で合っていたか、そんな視線を相手に向けるだろう。慇懃な物腰の割に彫像めいて冷えた相貌と下がった口角は、】
【取っ付きにくい、感じが悪い、砕いて言うなら『性格がキツそう』な女であったけれど、正確には『そう誤解されやすい』タイプのものだった】
836 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/10/05(木) 21:31:19.70 ID:IsjrBxrl0
>>835

【ご迷惑をおかけします、だなんて、申し訳なさそうな言葉で、彼女は相手へ画面を見せるのだろう。なんとなく大雑把そうな様子の割に、画面は意外ときれいに磨かれていたけど】
【それ自体を差し出す指先はほんの少しだけ荒れていた、日常的に水と――それから土に触る仕事をしているのだろうか。ちょっとしたささくれと、爪の端に土が入りこんでいる】
【――あれがこういう抽象的な地図を送ってくるときの様子は分かり切っていた、だから、早いところ見つけてしまいたい。そういう思考は、面倒くさそうな気配として、わずかに漏れ】

「…………、あら、そうですか? そう、……髪が黒くて、緑色の目をした女なのですけど、」

【一瞬、不可解がるような間が空いたのは容易に気づけただろう。こういう場所は嫌い、誰かに頼ることはまずない、つまりここには居ない。そういう風に考えていたからこそ】
【相手の言葉に一瞬面食らったような間があいてしまう、こちらもこちらで外していたら機嫌を損ねるだろうとは思ったけれど、面倒が勝れば、簡単な容姿を伝えて】
【だから間違いがないらしいと知れる――それで案内される最中に聞かされること。眠っているとか、水浸しとか、正直何がどうなってそうなったのか、とは思ったけど】
【ひそかにため息を吐くことで諦める、そういうことになったから呼ばれたのだろうと判断して、――やがて目当ての部屋にたどり着けば】

「……ああ、うちのです。ご迷惑をおかけしました、……何かこれ以上のご迷惑をおかけしてはいないですか、――――何かを壊すだとか」

【やはり呆れるような吐息があった、目を細めるようにして眺める、……とりあえず、世話になったという印象ではなかった。こうタオルがぶちまかっている状況だとか】
【どうして床で寝入っているのだとか、そもそもどうして水に濡れているのかとか、――もっと言うと、家の自室でさえ雨音が気になって眠れないような神経質が】
【よりによってずぶぬれになって知らない場所で知らない人間に甘えて眠っているというのがまず理解できないというような顔、呆れ声は最終的に、相手へ、そういう】
【"面倒くさいこと"がなかったかと尋ねる――ひとまず起こしてしまう前に、そういう、面倒くさい話は終わらせてしまいたいようだった】
837 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/10/05(木) 22:12:19.64 ID:cyhJ1/hVo
>>836

【ひとまず目当ての人物であったことに安堵し胸に手を当てた女は、直後に「何かあったのでは」と裏で問われたように解釈して、口籠る】
【何も話さないで、何もなかったのだと、ただ川で一悶着あったのなら通り雨に振られたとも言えない、上手な嘘を考えるのは苦手だった】

「――実は、ここまでお連れしたのは司教なのです。詳しいお話は、そちらに聞いていただけますか。呼んできますので、お待ちください」

【一息にそこまで言って、カンテラの灯りを机に残したまま部屋を出ていってしまう。揺れる光が、残されたままのホットミルクに映る】
【それから早足に建物の奥へ二階へと上がっていって、思い切り閉めた扉の音とばたばたとした足音は、人を呼びに行ったにしては妙なもの】
【数分ほどでそれが止んで、それからようやく小部屋へ現れたのは、先程のシスターと似通い過ぎた顔をした司教。髪型まで同じだし、】
【あのシスターを観察していたのなら、左の髪が部分的に短いことまで同じだった。誤差の範囲で困った顔をした彼は、ひとまず軽い会釈をし】

……確か、何かを壊さなかったか、とお尋ねでしたね。壊れたものはありましたが、自壊したというか……赤毛の男性でした。妙な目をした

【切り出し方が上手い物ではなかったが、まずは相手の気にする事から答えた方がいいと思ったらしく、ぽつぽつと低い声で丁寧に話すのは】
【彼が橋から見ていた一部始終、だった。ここまで親身に身内のような人であるなら、彼女に起きた事は、知り得る限り説明する責任があると】
【もう一方で、きっと話したがらないことだろうからと思ったから、だった。あの出来事を抱え込んでしまうのでは可哀想だった、それだけ】
【ただし勿論、彼女と赤毛の男の関係性は司教の知るところではないし、どんな激情からそうなったのかは分からないから、あった事だけを】

【(ただし、一つだけ伏せた事があった。バルディッシュと、黒い球と、それから黒い狼がどこへ消えたのか――それだけは、懐に仕舞ったまま)】
838 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/10/05(木) 22:48:15.06 ID:IsjrBxrl0
>>837

【そう、少なくとも雨ではないと思った。地面が濡れた様子はなかったし、同じくらいありえないと除外した可能性は、自ら進んで水に入ることもないだろうから、それも】
【ならそうせざるを得なかったか。といっても積極的ではないだろう、なら、河童にでも引きずりこまれたか。そういうどうでもいい思考回路は、結局、】
【後から本人が説明することはまずないから、ひとまず自分の中で何かそれっぽいものを考えておこう、という程度の思考遊戯にも似て】

「……いえ、別に、」

【だからほんの一瞬答えが遅れた、別に必要ないと言いかけたのは、時間も遅いし、相手により一層の迷惑をかけるだろうと気にしてのもので】
【本人が必要だと判断することが原因ならおそらく情報も共有される、だんまりをするならそれは共有しなくていい情報。その程度でいいから、と、遮りかけたのだけど】
【その頃には相手は一息で喋り切っていて、もっというともう部屋から出ていってしまっていた。それなら仕様がないという風にため息を吐いて、少し】

【――相手が戻ってくれば、なぜだかその姿は部屋の外にあるだろう。しっかりとドアを閉めて、その横の壁に軽く身体を預けるようにして立っている、もし、理由を問えば】
【「あれは眠りが浅いから」なんて答えでも帰ってくることだろう。つまり変にしゃべっていると起こす可能性がある――どうやらそれを嫌ったようすで】
【となれば相手にもあんまり大きな声でしゃべってほしくはない、そういう予感があった、あるいは直感めいて、これからものすごく面倒なことを言われる、というような】
【そして実際告げられれば――もとからあんまり愛想のいいタイプの顔ではなかったけど。それでも尚更面倒げに眉根を寄せて、おそらくやり慣れた顔をして】

【(それでも、いつか、これに近いようなことはありうるだろうと思っていた。かといって、ちょっと、思っていたよりもひどいようだったけれど、)」
【(今からもう一人別のを呼びださないといけないかもしれない。というより今からやるのか。首をひねるようにして閉じたドアへ視線を向ける、それからため息を吐いて)】

「……だいたいの事情は分かりました、ありがとうございます、ご迷惑をお掛けして――とてつもないご迷惑をおかけしまして、」

【そのあたりでだいたいいろんなことが一気に面倒になったようだった。声にもいくらか投げやりがにじみだして、ただ、きっと何かを知っているくせに、それを相手には伝えない】
【相手ももしかしたら気になるかもしれないけれど、この女は言ってくれそうにはなかった、それを無駄に広めてしまうのも彼女の中では面倒にカテゴライズされたし】
【それよりも物理的に口を開くのがはばかられる状態になるからだった。相手も追及しづらく、こちらも言いづらい、――ドアが内側からぎいと開けられて】
【その隙間から、あの、猫の目みたいに爛とした青りんご色が覗きこむからだった。といっても、ただ、知っている声が聞こえて目を覚ました……そういう様子だったけど、】

【何度めかの謝罪の言葉を紡ぎきれなかった紺色はさっきしたようなしぐさで扉へ振り返る、――第一声は、「言われてないから着替えはないわよ」だったし】
【覗きこんだ黒猫の目の方も、「はい」と返事をするのだった。親しげにはあまり見えなかったけれど、お互いにお互いがどういう存在かを分かり切っているような、そういう、温度感があって】
839 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/10/05(木) 23:18:50.92 ID:cyhJ1/hVo
>>838

――いえ。私も見ているばかりで何も出来ませんでしたから、……

【常に人から見られていると意識して、俳優のようにとまではいかなくとも、少なくとも無愛想を少し通り越したその面構えさえなかったなら】
【言葉のなめらかさに見合ったものなら、きっと少しは点も上がりそうなものを放棄している表情は、扉を見た一瞬だけ群青色が見開かれた】
【――代わらなければ良かった、そう思ったが、日に何度も出来ることでもないからと諦めるしかない状況下。彼もまた壁から背を離し、】

それではお気を付けて、お帰りください。あなた方に、主の御導きがありますように

【紺色の相手に何かを問おうとしたり、黒髪の相手に必要以上な言葉を掛けることはなかった。ただ生臭であるのを黒髪の相手は知っているだろうけど】
【最後の言葉だけは、双眸を閉じて胸に手を当てて、そう祈っていた。これから先の人生が確約でないにせよちゃんと存在する二人に対して、】
【そうでない身の上は――現実的に言うならもう数ヶ月後にはこの世にいない、だからこそ、誰かの災いや困難へ手を差し伸べたかった】

【(橋の下での出来事に干渉しなかったのも、それでいて迎えに来た相手には全てを伝えておいたのも、相反するようで成り立つもの)】
【(誰かの人生の一ページに混ざり込むような責任は取れない身で、だからこそ、死にゆく前に真実を然るべき相手へ伝える義務がある)】
【(砂になって消えていった男を思い出して、ああやって死ねるのなら主とやらも信じるに値するかも知れないと、二人に背を向けて薄く笑う)】
840 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/10/05(木) 23:45:13.59 ID:IsjrBxrl0
>>839

【それは恋人でも友人でもない他人同士がいっしょに暮らすのに必要なことだった、お互いがお互いにお互いをどういう人間であるかを、理解しておくこと】
【日常でなら家事の分担だとかで役立つし、こういう場面なら、どこまで踏み込んで平気か、どういうことを言うと地雷を踏むのか、そういう判断をする基準になる】
【そしてどこか自分の知らない場所で勝手に機嫌を損ねてきたときにどういう行動を取るまで放って置けばいいのか――そういう、保身のためにも、ずいぶんと役立つなら】
【――とりあえず抽象的な地図を送りつけてきた時点で、かなり面倒だと判断していた。だいたいあったことを聞いて、実際面倒だったと理解して、】
【これからもう一段もっと面倒なことがあると考えの中でめいっぱいため息を吐く、本音を言うならあまり巻きこまないでほしかった、とも、思う程度には】
【自分自身は"彼"とそんなに何かやらかした記憶はなかったから。しいて文句をつけるなら――、一対一ではやらないでほしかった。結果は予想外でも、"こう"なると察していてほしかった】

【(聞いた話の割に、彼について悲しむようなそぶりはあまりなかった。ただ面倒くさそうにしているばっかりで、そして多分それは)】
【("そういう"風に死ぬのが多分彼女の後ろでまだじっと覗きこんでいる黒猫の女だったとしても、そうたいして態度が変わらなかっただろう――とも思わせて、)】

はい、……お世話になりました、とても、……後日お礼に伺いますので、ご迷惑をおかけしましたので、

【――髪の毛はまだ濡れて小さな束になっていた。濡れた服もうんと重たいように垂れ下がって、だけど、それをどうにかしたいという様子はなかった、あるいは、】
【それがどうにかなるものだという認識もないようだった。濡れてしまった服をどうしたらいいかわからないみたいに、――それでも知った人間がそばにいるせいか】
【さっきまでより、雰囲気が柔らかくなったような気もして。自分よりもだいぶ大きな同居人の少しだけ後ろに並び立って、小さく頭を下げ】

「そうね……、……構わなければいいのですけど、いくらかタオルをお借りできませんか、こんな風だとは思わなくて。あとで返しに行かせますから」

【黒猫の謝罪に便乗して願い出ることがあった、言いだす前に視線が濡れた服を見ていたから――この様子じゃあまだかなり濡れているだろう、と、判断したようで】
【どうせ礼に来る気ならついでに――だなんてことだった。暖かいだけなら途中で自販機でも探せばいいけど、こればかりは。……新品で糊のごわつくのを与えるよりか】
841 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/10/06(金) 00:09:57.79 ID:9w9tnHhEo
>>840

お気になさらないでください、必要な方へ必要な手をのべるのが教会の理念です。お礼なんてとんでもない。お気持ちだけ受け取らせてください、

【遠慮に似た婉曲的な拒否をしていた。後日がいつになるか分からないし、分かったとしてもうここにはいないのでは、失望させるのも嫌だった】
【それからタオルのことを言われれば、こちらも返却は不要だという。街からの寄付で有り余ってしまっているから、という理由】
【何なら明らかに私物だったのだろうタオルケットもそのまま渡してしまう。タオルだけで十分だと言うなら、素直に頷くだけだ】

【(一貫して、何の見返りも求めない手助けだった。当然のようにそうするのはここが教会で彼が司教だから、そうとも思えるだろうけれど)】
【(生きるもの全てを慈しみ、あるいは憐れみ、それ故にそうしているようだった。そこに自分のためだとかは一つもなくて、)】
【(あの集めた三つの謎のアイテムだけが、彼が初めて彼のために手にしたようなものだった。どうせ殺されるなら、抗ってみたい)】
【(自分は死んで成人になる、街は聖ジュリアスの殉教を美談として語り、祭りの日には人々が一杯に舞い上がって、そんな確定した未来に)】
【(別の道を無理矢理作り出す――初めて、運命を取り返せる力を手にしたのなら。結末は同じでも、やってみることはきっと、無駄じゃない)】

/そろそろこちらリミットです
842 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/10/06(金) 02:55:16.73 ID:c6f5OOWr0
>>841

【相手の言葉。遠回しな礼の拒否に、紺色はそうまでいうならという様子で、黒猫は、もっと、そうされることが嫌だというような顔を、一瞬した】
【だけれどその不満を口にしなかったのは迎えの同居人がすぐ目の前に居るから……ではおそらくないだろう、その気力もあんまりないという風に、それを消極的に受け入れて】

【その後。借りるタオルは結局最低限の三枚程度だろう、それを見繕うのに一度部屋に戻れば、ついでに、濡らしてしまったままの床だとかをきれいにして】
【繰り返しになるけれど何度めかの礼と軽い挨拶、それで帰っていくことになる。――それと余談だけど。すっかりと冷めてしまったミルクに口をつけた形跡が残っていた】
【ほんの一口だけ。だから量で目減りしたとは誰も気づかないだろうけど。カップのふちに、飲んだ時につく痕が、残されていて――】

【あとは――車の中でのやりとりが少し。といっても紺色が電話をすると言って――わざわざ部屋の外でしゃべっていたせいで、知られたのを察していた黒猫は何も言えず】
【ただ着替えたいと小さな声で言ったら、「そのままの方が分かりやすいわよ」と本気なのだか冗談なのだかわからないNOを付きつけられて――】

【――とはいえ、実際はもう少し優しくて、黒猫は着替えどころかお風呂に入ることまで許されるのだけど。どっちみち濡れた髪の毛を乾かす暇はなく】
【浴室を出た先で、そのまま、待ち受けられる。いきなり向かい合わせでこそなかったけれど、ソファに座っている、膝を抱えて、芸人のしゃべるようなテレビを見ている】
【だけど音はうんと小さくて、それならすぐに気づくためだった。事実すぐに気づいて"しまった"少女が、テレビを消して、振り返って、立ち上がって、】

「――音々ちゃん、えっと、天音ちゃんに聞い鿣芓ꃣ膑ꧢ肦」

【それで、その瞬間に、呪いの意味を思い知ることになる、あどけない顔はどんな風に歪むのか、透き通る声でどんな風に鳴くのか、当然知るはずのないものを】
【あの赤毛の男は知っていたのだと思うと、急に全部が気持ちの悪いものに見えてくる、あれだけ身長に差があれば抱きしめればこの細い体躯はすっぽりと包みこめたはずだし】
【改めて見ればこんなに細い首はほんの片手で足りそうだと思った、うんと細い腰はへたしたら両手で包んで、指先同士触れ合うかもしれないとも、容易に想像できて】
【笑ったり泣いたりしたら意外と大きく開く口の唇は柔らかそうで、覗く歯列は整ってきれい、舌はきれいに赤くて、もちろんそれも当然のように気持ち悪いことを想起させ】
【それが癖なのは知っているのに困ったように服の裾を掴んだり布地をつまんだりスカートを揺らす手の指の細くて白いのまでが嫌だった、きれいに切りそろえられた爪の丸さも】
【ふわふわしたスカートから伸びる足をさかさまにたどればスカートの中に消えていくのは当然でももちろんそれも当然もはや気持ちが悪い、何もかもが】
【そこまできて最後に一つ――あんなに背丈が違ったなら、こんなに痩せた娘、きっとまるで子供を扱うようにできたのだろうな、と、思って。そして、それが、一番、】

「闢肕돣肅ꇣ芃鏯벟胣膩蛣膗鿣膮」

【一瞬訝しげになった顔がすぐにおかしさに気づいて声音を変えた、なにより立っていられないような様子で座りこんだ"友人"を無視する性質ではななかったし】
【簡単な説明しかされてなかったから。ただこんな寒い夜にびしょぬれになってしまったからお風呂に入ってから話があるというのだけ聞かされていたから。具合が悪いのかと思って】
【慌てて駆け寄って、あたりまえに伸ばした手を、とうていその仕草にはふさわしくないほどの力を籠めて振り払われて。あまりに強い力と驚きでしりもちをついて、それで、】

【――後日の少女が件のピアスを一対揃えて持っていた。特記することと言えば多分それくらいだろう、渡すよう頼まれたものを受け取るべき人物が受け取ったのだから】
【宅急便としては上々、それ以外では――ちょっとばかり問題が多すぎてどうしようもない様子だったけど、もうきっと、あんまり関係のないことだから】
843 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/10/06(金) 12:14:46.55 ID:9w9tnHhEo
>>842

【二人を見送ったその足で向かうのは、自警団の詰所だった。周りにはやたらと人だかりが出来ていて、けれど司教が通れば人波は自然に引いていく】
【守衛をしていた団員に通された先の簡素な鑑識室には、寝袋のようなものが三つ、ブルーシートを敷き詰めた床に並べられていた】

「えらい事件ですよ。害者は揃って高級ブランド店のトップ連中、それも尋常なやられ方じゃない。中身は見ない方がいいでしょうねえ、
――そう言えば、ホシはどうなりましたか。川に入られてから全く足取りが掴めなくなって……司教様のいらした方に向かったのでは、」

【返事が返って来ないので説明をしていた一人が顔を上げる。当の司教は、髪の一房だけ短くなってしまったのを指先へくるくる巻きながら】
【穴が空くまで三つの亡骸を見つめていた。身体で言うなら本当にいろんな部分から血が滲み出ていて、寝袋に入れたというよりは詰めたような、】
【無惨な殺され方、と言えば簡単な表現でしかないが、どうしても脳裏に過るのは彼らが絶命するまでの過程と伴った苦痛――きっと、抗ったはず】
【死の運命から逃れようと抗って、それ故にもっと惨たらしく、必要以上に苦しんで悶えて、その結果が三つ程、目の前に転がっている】

……川沿いにいくらか下りましたが、痕跡は流されていました。途中で下水管に潜って行ったのかも知れません。お役に立てず、申し訳ないです

【やっと視線を上げて答える言葉は何かの能書きを読んでいるようにつらつらと出てくるものの、自分が話しているという実感が希薄だった】
【そんな話でも納得したらしい相手が何度も頷くので、あとはここでするべきことをして、早く帰りたい、早鐘を打つような鼓動と息苦しさ】
【血の気が引いて感覚の鈍い指先で胸元のロザリオを手繰り寄せれば、目の前の現実を遮断するように双眸を伏せて、顔も知らない彼らへ祈る】

我らが主の名において、永遠の命に蘇るという確かな希望と共に、我々は我々の兄弟を、全能なる父に委ねます

【様々な資料を突き合わせたり、方々へ連絡を取り合っていた者達も、一時だけその手を止めて司教の言葉の間、祈りを捧げていた】
【それが終われば、伏せたままの瞳ではじめ話していた相手へ会釈をして、静かに詰所を後にする。もう深夜に近い時間帯、しんとした街の中を】
【完全に思考が隔絶されたよう、能面めいて何の表情もなくした司教は、帰途にどうしても通る必要のあるあの橋の上でふと立ち止まって】

【(砂のように綺麗に消えていった彼は、何一つとして抗わなかった。生きることに疲れていたのだろうか。ずっと前から、死にたかったのか)】
【(いつか大量の薬を飲んでいると分かった事も、前に誰かに理由はあれど殺して欲しいと頼んだことも、当然の如く司教は知り得ないことで、)】
【(唯一確定的に分かっていたのは、祈る必要がないということ。天に召される魂にそうするのであって、魂自体が消えたものには、必要がない)】

【――教会へ帰ってすぐ、司教は古びた一冊の本とカラスの羽ペンを手に、裏口の小さな焼却炉へ向かった。古紙をいくつも丸めて放り込みながら】
【火がよく燃え広がるまでの間、装丁に様々なシルエット――処刑人や銀行家、首の長い狼や竜、鷹獅子や梟、大鴉などが金の箔押しで刻まれた】
【とても古ぼけた黒い本を、何とはなしに紐解いていた。内容は見開きで片側にシルエットの絵のどれか、もう片側に人の名前とその人生】
【Cの項目まで辿り着くのはそう遅いことでもなく、ちょうど火が燃え始めた頃だった。司教は少しだけ眉根を寄せ、カンテラの灯りを近付ける】
【それはあまりに書き足されたことが多く、嫌でも目を引くような内容――あらかた目を通して、それから本を閉じて、焼却炉へと放った】
【突如として、様々な燐光が炉から立ち昇る。それに一瞬目を眩ませながらも、次はカラスの羽ペンを投げ入れて――全てが灰になるまで、】
【司教は眠たげながらも、火が消え去るまでをずっと眺めていた。運命に抗うための武器になるはずだったそれらが、この世から無くなるまで】
【最後に見たページでもう十分だった。運命に抗って生き延びた者は決定的に何かを歪めてしまって、存在するだけで悲劇を生んでいく】
【物語がエンドマークで完結するように、死もまた人生を正しく終わらせてくれる装置であり、抗うものではなく、迎え入れるべきもの】

【様々な歴史の一ページを積み上げて新たな物語を描いた本とその羽ペンは、登場人物達や様々の不思議な能力と共に、煙となって消えていったのだった】

/この辺りで〆ます、ありがとうございましたー
844 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/10/07(土) 19:01:02.28 ID:OJ2u7yRUo
【教会・礼拝堂内】

【もう暗くなる時間帯だというのに、礼拝堂の扉は開かれたままになっていた。近くには長椅子が何脚かと、幾つかのパンと葡萄酒入りの袋があって】
【明日のミサの準備であろうが、それにしては近くに動いている人足もなくて、ただ――礼拝堂の中で、組まれた長い脚だけが外から見えていた】

"神は必ずあなたがたを顧みてくださる"、……

【一脚だけ運び入れた長椅子に腰掛けて、聖書の一節を低い声で呟く青年はまともな灯りのないのを覗いても酷薄な貌で、ひどく真剣に虚空を見つめている】
【アッシュグレイの長い髪は整えたばかりであるのか整髪料の香を含んで、瞬きも僅かな群青色の双眸はその気がなくとも警戒心を抱かせそうな吊り目で】
【神父より幾らか階級の高いらしいベルベット地の黒いキャソックに、チェーンを黒檀で装飾したロザリオを下げ、先の十字架を無意識に手で弄んでいた】

必ず、顧みてくださる――、必ず……

【(午前中にあった葬式のことを考え込んでいた。昼過ぎからこの時間までたっぷりずっとで、煮詰めるような思考はただ陰鬱さを齎す深い沼だった)】
【(煙草や酒とか、そんなものでどうにか出来るような可愛らしい感傷ではなく、手許の十字架を見ればいやでも磔による死について考える)】
【(直接的な死因となるなら窒息死。もっと言うなら自重で肩が外れ胸から横隔膜に負荷が掛かり呼吸困難に陥る、それまでの時間は残酷に長く――)】
845 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/10/07(土) 23:56:55.85 ID:OJ2u7yRUo
/眠れないのでしばらく募集してます
846 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/10/08(日) 19:07:30.96 ID:VJFCEk0io
【うす暗い街道】

【通りに点在する花屋やパン屋などの店々もみなカーテンを下ろし、玄関先にCLOSEDの札が掛けられており、もはや歩く人も少ない時間帯】
【――数日前に騒ぎがあったのも一因だろう、首都の方で殺人事件があって、犯人が川を下ってこの辺りまで来たのではないかという、噂】
【捜査のため歩哨に回す人間がいないというので、代わりにこの夜道をカンテラ片手に歩いていたのは、この街きっての小さな教会の司教だった】

【褪せたような灰色の長髪、訳あって仕方なく作ったばかりにしては長めな前髪の下は、よく睨んでいるのかと言われる群青色の吊り目】
【禁欲的な黒いキャソックは上質なベルベット地で、胸元のロザリオは黒檀をあしらったチェーンのもの――色らしい色といえば瞳くらい】
【そんな、背の高い痩せぎすの青年――司教とする最低の年齢よりも明らかに十年は若いだろう彼は、酷く血の気の引いた貌で通りを進んでいく】

【(潜んでいるかもしれない殺人犯を恐れている訳ではなかった。なにせこの目で見たし、消したし、もっと言うなら焼却炉で焼いたのだから)】
【(殺人犯よりもっと恐ろしいものが、それもいつどこから来るか分からないものが彼を追い詰めていた。ずっと受け入れた気でいたのに、)】
【(死ぬことなど怖くないと思っていたのに――つい先日見た亡骸が、瞼の裏に焼き付いて離れなかった。死にたくないと無言で叫んでいた)】
【(そんなことに意識を持っていかれるのだから、見回りの役目もまともに出来ているはずがなく。視界は数メートル先の地面に集中していて)】
847 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/10/09(月) 18:39:43.44 ID:BoE/7Iu8o
/>>846で今夜中だけ募集してます
848 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/10/10(火) 20:48:14.10 ID:YqxnwzQJo
【小さな礼拝堂】

【――ここに至るまでの通りに、散らばったパンや林檎など一抱え分の買い物らしき紙袋が落とされたまま手付かずとなっていた。理由は恐らく、】
【そこに何かが弾けたような血の跡が生々しく石畳の上で広がっていて、点々とどこかを目指して進んでいったように続いていたから、だろう】
【既に誰かが通報したのか、はたまたもう暗い時間で小さな街では出歩く者がなく、誰も気付いていないのか――何にせよ、辿り着いた先では】
【入り口辺りで乱雑に脱ぎ捨てられたシスターの被るベールがあって、それから大理石の床に何度かあの石畳と似た弾け方の血痕があって、】

【祭壇の上に、天使がいた。正確に言えば、黒い貫頭衣を纏う背の六ヶ所を突き破って生えた大きな白翼が生々しく鮮血を垂らしていて、】
【乱れた灰色の長髪とその下でずっと何かを呟く薄い唇、群青色の吊り目は、手の中で握り締め過ぎて千切れたロザリオを穴の開くほど見つめていた】
【そんな女は――やっと顔を上げたかと思えば、おもむろに祭壇の上の銀盆を手にして、今の自分の姿を確認しようとして、一瞬、全てが静止し】

……、

【乾いた舌打ちが、礼拝堂に響いた。女の頭上で、天輪が確かに光を放って存在していた。虫を払うように手でそれを掻き消そうとするも、】
【銀盆に写る天輪は頭上で微動だにせず、腕を振り上げるたび背の翼にばさばさと当たって、その何もかもが忌々しいというように、再び舌打ち】
849 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) [sage]:2017/10/11(水) 11:10:41.62 ID:nziJj2GsO
冷静に考えて欲しいけど、鬱だ何だと騒ぐ人と絡みたいと思うかな
850 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/10/11(水) 21:54:45.24 ID:COMwbCLE0
【風の国――UNITED TRIGGERの店舗内】
【昼間であれば真面目な話の聞こえてくる場所も、けれど、酒場として開放される夜になってしまえば、ひどく雰囲気は緩んでしまって】
【壁一面に飾られる本物の銃の生々しさもどうってことないようなひとばっかりが集まって――普段は集まっている、のだけど】

――――、

【今宵はどうしてか客足の悪い夜であるらしかった、店内は全くの静寂でこそないけれど、飲むより食べるより古い友人と長話するのを目当てにしたような客ばかりで】
【見ればカウンターの中に突っ立っている人影――多分給仕だった、なぜなら、給仕服だから――もすっかりと暇そうにして、自分の分の飲み物をときどき飲みながら】
【もっとよく見れば手元には薄型の携帯端末、そのうちにそっと耳に当てるから、――よっぽど暇そうだと見えた。とりあえず、電話だなんてしようとする、くらいには】

【真っ黒な髪の色の少女だった、いっそ髪の色や長さより目立つふわふわしたフリルの多いヘッドドレスをつけて、華奢な顎の下、首元を隠すように結わえ】
【ひどくあどけなさを残す顔はとうてい酒場の給仕にふさわしくはないもの、真っ黒な左目と、真っ赤な右目と、色違いの瞳はそれでも店内をときどききょろきょろと見渡し】
【袖のふんわり長い給仕服は櫻の伝統衣装を模したもの、深い赤色の布地に華やかな色でたくさんの花を描いて、それを生成りのエプロンで隠しこんで】
【うんと柔らかそうに膨らんだスカートの裾はあまり背の小さくない少女のくるぶしまで隠しこむ丈で、スカートの裾とフリルごしに、意外ときっちりしたブーツを履いているのが伺えた】

……あ、もしもし。天音ちゃん? ……うん、ごめんね、急にお電話しちゃった、だって、今日、うんと退屈だから――うん、今大丈夫?

【そう狭くはない店内に聞こえる程度で流された有線の曲、それごしでもよく聞こえる声だった。どこか鈴の音に似て金属質な声――やはりどこかあどけない声は、】
【やがて目当ての人物につながったらしくて、ぽつぽつと話しながら店内へ。それから誰もいないカウンター席の、背もたれのない椅子に、店の中を見渡せるように座り】

えっとね……音々ちゃん大丈夫? まだお部屋に居るのかな、……うん、それだけ、なんだけど、――お手紙渡してくれた? そっか、
…………ううん、もらってくれてよかった。わたし、まだ行かない方がいいと思うし――、

【とりあえずいろんなところがふわふわした服の布地をいじくりながら電話をする姿はあまり真面目には見えないもの、ただ、客の誰もがそれを咎めたりはしなくって】
【それならそれが変に店内の様子に似合っているようでもあった、――そうやってしゃべる少女の視線は店内を見ていて。それなら何かあっても、きっと、すぐに気づく】
851 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/10/12(木) 14:39:48.39 ID:7aDLgpE6o
【市場に近い路地裏】

【――小さな女の子が泣いていた。見れば襤褸を着ていて、何度も叩かれたような痕があって、それに何より、痩せこけていたのなら】
【賑やかな通りの市場、その出店から聞こえる顰めた声に関係があるらしかった。「気を付けないとね、かっぱらっていくんだから」――】
【それに何度か頷いて「またおいでよ」と声を掛けられた背の高い女は、帰るべき道から少し遠回りをして、結局、泣いている子の前に立っていた】

――"災はあなたに臨まず、悩みはあなたの天幕に近づくことはない"

【突然の声に肩を跳ね上げた女の子に、女は抱えていた紙袋からパンを一つ差し出した。警戒するようにこちらを見るだけで動かない相手に、】
【何の遠慮もない舌打ちを盛大に鳴らしてパンを紙袋に戻すと、女は抱えていたその袋全部を石畳の床に置いた。それと女とを交互に見て、】
【未だ動かない女の子の警戒を緩めない顔色は、女があまりに酷薄な貌で、そして自分の言葉でなく、ただ聖書の言葉をなぞっていたからだった】

"これは主があなたのために天使たちに命じて、あなたの歩むすべての道であなたを守らせられるからである"

【少し遅れて、女の子が怒りで顔を真っ赤にした。置かれた紙袋を蹴り飛ばして、何事かを叫んで、路地の奥へと走っていってしまって】
【それを肩越しに見送った女は、静かに屈んで散らばった青果や瓶などを拾い上げては紙袋に詰め直していく。終わった頃に、溜息を溢して】

「本当に天使さまがいたらこうなってない」、……不幸せな子は、幸せな子よりよほど頭が良いですね

【シスターの格好をしているはずの女は、立ち上がりざま裾を払ってから酷くうんざりしたようにそう呟いた。灰色の眉根をきつく寄せて】
【群青色の吊り目は慈愛だとかそんな類のものから遠く掛け離れた眼差しで、纏う修道服の背には最近繕ったような六つの跡があるのだが、】
【整然と被られたベールからかろうじて出ている長い灰色の毛先が、ほぼそれを覆い隠していた。向かう先は路地の奥、ただ近道だから、だが】
852 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/10/12(木) 22:32:53.98 ID:kEHo6tBH0
【街外れ――真っ暗な道だった、街灯のほとんどない、小さな川沿いの道】
【気づけばすっかり冷たくなった風が幾重にも重なって吹いて、さっきまで降っていた雨の分だけ、余計に寒く感じられ】
【それでもかろうじて白くならない息を長く吐いて、そっと欄干に手を置いて水面へ身を乗り出す人影があったなら】

――……ん、ここだ、へびさまの匂いがする。……もう、石から出ちゃって、戻れなくなったんだね、ちょっと足りないって思ったもん。
……、……へびさま? 居るでしょ、お迎えに来たよ、一緒に帰ろう。暖かいお茶とお茶菓子用意したげる、早く出てこないと置いて帰っちゃうよ。

【漏らす声のあどけなさはどうしたって少女のものにしか聞こえなかった。まだ雨で濡れる冷たい欄干に手と、それから、服のお腹をぐっと押し当てて】
【背中を押したら意外とあっけなく落ちそうなくらいの姿勢で話しかけている、けど、その相手は伺えず。ただ、鈴の音に似た声が、寒い夜の中でうんと目立って】

【真っ黒な髪の少女だった。フリルで飾ったヘッドドレスと、そこに結われたおっきなリボン、ちらりと覗く長さは肩ほどで、きれいに手いれされているのが一目でわかり】
【透き通るように真っ白な肌、その頬や鼻のところは寒いのか赤くなっていた、丸くて少しだけつった形の目は左右で色の違う、黒色と赤色の一対で】
【落ち着いた赤色のワンピースのスカート、うんとふんわり広がった裾を重たいように隠すコートはまだちょっとだけ早いような冬物、それでも袖から出る指先は素手のまま】
【足元は薄手のタイツとロングブーツ、踵の少しだけ高い靴はそこからまたいくらか背伸びして、欄干から身を乗り出して――少し後、「あれ?」と、不安そうに表情が変わる】

ここだと思ったのに……、……、

【――そんなタイミングだった。水面が不自然にざわりとさざめく刹那、ほんの一瞬のみ、まるで腐り淀みきった水のように、白濁し】
【そこからにゅいと音もさせないで真っ白な蛇が姿を現す、やがて、嬉しそうに/優し気に笑う少女の胸元まで頭を伸ばして、抱きとめられれば】
【その頭の先からすうっと、まるで少女の中に"しまわれる"みたいに、その姿を消して。――やがて満足げな顔で振り返る少女は、ただ、】

……――、思ったより、遅くなっちゃった、やっぱり……後でがいいね、今日はへびさまお迎えに来ただけで、いいかな。

【ちらちらと辺りに視線を巡らせて、それから、ため息交じりで欄干へ背中をもたれさせる――直後に、冷たいだなんて言って、ぴょんと逃げて、背中をぱたぱた】
【柔軟体操するみたいにやりだすから、ただの変なひとでもあったのだけど。それからふと思いだしたように胸に手を当てて――「あとでへびさまに戻してあげるね」と、よく分からないことを】
853 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/10/13(金) 11:58:38.30 ID:bfYBqhfZo
>>852

【橋を見渡せる少し離れた木の影、少し前にちょうど相手に似た黒髪の人が川へと飛び込んだのを眺めていた場所――黒い傘を差した青年がいた】
【片手にしたカンテラの灯りを背に回して、気付かれないようにそうしていたのは、最初はまた飛び込む人が出るのかと思った故にだったが】
【逆に見覚えのある白い蛇が川から上がって来て――とりあえず、一連の光景に人並みには驚いていた。自警団からしばらく頼まれていた仕事、】
【歩哨の代役も忘れて――何かと何かのピースが噛み合ったような。ただしそれは彼の中で永久に失われた一手で、理由は一番自分が分かっていて、】

……、

【癖の舌打ちは自分に対してのものであるのだが、それを理解する人間は少ない。それでいいと思っていたから、誰に説明することでもないから】
【背に隠していたカンテラの灯りを前に出して、木の影から橋の上へと歩を進めていく。相手が気付いた頃合いで立ち止まって、】

この辺りは……先日、殺人犯が逃げてきた可能性の高い場所です。お一人での外出は、危険ですよ。何より――冷えて、きましたから

【背の高い、痩せぎすの青年。曇天のような灰色の長髪に、群青色の吊り目は落ちた口角と相まって怜悧に、外気温に似て冷え切ったもので】
【顔だけなら、お前が殺人犯だと言われても仕方のないようなものだった。ただし纏っているのがベルベット地の禁欲的な黒いキャソックで、】
【胸元には黒檀をあしらったチェーンのロザリオを下げているのだから、幾らかの地位にある聖職者であると推察できる、のだろう――若過ぎる、とまでは分からなくとも】

お連れの方はいらっしゃいますか。そうでないのなら、明るい通りまでご案内します。迷惑でしたら、せめてこのカンテラだけでもお持ちください

【凍りつきそうな低音でつらつらと並べる言葉の数々は親切心から来たはずだろうものばかり、ただどうしたって似合わないし、不釣り合いで】
【それでも至極まじめらしい彼は、何故だか初めから同行を許されないと決まりきったようにカンテラを差し出していた。自覚があるのとはまた違うような、何か】
854 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/10/13(金) 12:11:08.19 ID:bfYBqhfZo
/橋→川沿いの道へ読み替えてください、あと傘は閉じてます。申し訳ない……
855 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/10/13(金) 14:28:51.62 ID:VASrn6ne0
>>853

【一瞬で服の布地を突き抜けた冷たい水、肩越しに振り返ってもどうやったって背中は見えず、見えないのなら、そのうち、少し拗ねたような声で、呻くばかり】
【それでもすぐに冷たさも人肌温度に馴染んだのだろう、これならすぐに乾くとでも思ったのか、それともわりに大雑把な性質なのか。最後に服を数度だけ、ばさばさやって直せば】
【足元にいくつか置いていた荷物――少なくともビニールに包まれた紙袋が二つと、ああそれから彼女自身の荷物。肩から下げるポシェットみたいなタイプのを、腰元で揺らしていて】

もう、置いてけぼりされたら言っていいんだよ、……言うひとがいなかったかな? 呼んでくれたらすぐに来たのに、えぇと……、なんかね、念とか。
……ああ、もう、ほんとに、すぐ来たのに、なぁ、電話だってすぐに出たのに。……んん? へびさまのせいじゃないよ、寒かったでしょ、眠っていてもいいよ。

【それから少女は誰もいない虚空に向かってしゃべるから。どうにもある時期からこの川は変な人間を呼びよせることに特化したらしい、ただ、その声音はひどくやさしげで】
【みんながもらえるお菓子を自分だけもらえなかったのだと後から泣きそうに訴える子供に向けるように優しい、けれどそれも、続く言葉で揺らいで、振り返る視線は】
【数秒か数十秒か、じっと川の水面を見つめて――だから、相手の訪れるのには、そこからさらにたっぷり数秒は遅れ。気づけば振り返るのは早かったが】

…………こんばんは。殺人鬼――は分からない、けど、えっと、場所を探してて。お友達がお世話になったから、……あと、わたしのしたいこともあって……。

【――殺人鬼。そうなぞり返す言葉は、けれど、彼女を脅してそのまま帰らせるのには、ひどく足りないらしい。目をきょとんとさせて、さも些事であるかのように話は続き】
【ただ相手の付け足した言葉には本当にそうだという風に「寒いね」と笑って言うのだった、「まだちょっと冬には寒いみたい」と、真っ白の素手をすり合わせて】

【(この少女は誰が殺人鬼と呼ばれているのかを知らなかった。あの日にこの場所に居たひとたち、まして、石ごしに薄れた意識で見ていたやつは、起こったことしか、)】

うんん、いないよ、このあたりの教会みたいなところを探してるの。お兄さんは……そこのひと?

【あまりにあっさりと嘘を吐いた。けれど多分だいたいのひとに理解されないことだろうから、それは、どこか自衛の手段にも似るもの】
【水面から出てきた白い蛇――それを迎え入れて会話していた。おそらくあれはあの白い蛇と話していた。それとは少しだけ違った対外向けの声、それで話せば】
【相手の格好も考慮してそんなことを言う、一人だけど通りに用事はない、だからカンテラも要らない、そういう――もっと言えば殺人鬼も怖くない、変な少女だった】
856 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/10/13(金) 15:15:50.69 ID:bfYBqhfZo
>>855

【――相手が、何かとやり取りをしているのはどうも聞いてはいけないように思えたけれど、耳に入ってしまうものは仕方ない】
【現に相手の胸の中へ消えた白蛇も見ている、ならばそれに話しているのだろうと結論付けるのは、論理の飛躍とは言えないだろう】
【神の声を聞いただとか天使から啓示を受けただのと言ってくる人間より余程信用できた、なぜなら目の前で起きているから。簡単な理屈だ】

ええ、そうです……自警団に頼まれて、見回りをしていました。もっとも、もう必要のないことですが――教会まで、ご案内しますか?

【相手の問いにカンテラを引っ込めて、教会の人間であるのを認めた。それから話したのは自分が今ここにいる理由、必要ないというのが妙だったが】
【自分に話があるのか、教会で何かしたいのか、いずれにせよ暗くて寒い場所で話し込むのもどうだろうかと判断して、そう問い掛け】
【教会に向かいたいと言うなら先を照らしながら歩き出すだろう、別にここでもいいと言うなら合わせる、そんな主体性のなさは】
【何かを判断する基準に"自分"をまるで入れていないから、だった。何故なら入れる必要がないから、ただそれだけなのだが】

お友達――、先日この川に落ちてしまった方のことでしたら、あの後風邪を引いてしまわなかったか、シスターが心配していました

【"お友達"からどこまで聞いたかは分からなくとも、"演じ分け"は一応しておいた。それなら表情もそれらしくすればいいのだが、それはなく】
【ただはっきりと分かるのは、あの日あの時のあの現場に、この男がいたということだった。見ていた、だから知っている、そんな風に】

【(もっとそこで起きていた根源的なこと――殺人犯がどうだという事も、あの場でただ一人消えた人間とその理由について、語るべきかは)】
【(とりあえず、相手が"記述通り"の人間か見定めてから考えようとしていた。話したところでどうなるかも、あまり考えることではないのだけど)】
857 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/10/13(金) 15:44:37.12 ID:VASrn6ne0
>>856

【胎の中の子はなんだかんだで母親の声しか聞かないし聞こえないのだという、ざあざあ血液の流れる音と、伝わってくる、多分、ひどく変質した声と】
【少女の中に納まった蛇は子ではないから本当なら外へ意識を向けることもできたけど、疲れ切っていた。流れから切り離されて、さらに、その淀んだ水たまりからも切り離され】
【それこそ水に流れてしまいそうに揺れていたのを迎えに来てもらって、それで、ようやく。だから、聞いた話以上に知らない少女は、ただ、相手と初対面の顔で向き合い】

そっか、寒いのに大変だね、わたしは……寒いの苦手だから、お店の暖房もうんとうんと入れて、暑いって怒られちゃうの。お客さんにね。
……あーっと、ね、それでね、それなんだけど、すっかり遅くなっちゃったから、また今度にしようかなって、思って……えっと、探しものをするのに、
思ったより時間がかかっちゃって、えーと、

【自警団に頼まれて見回り。教会ってそんなこともするのかなとでも思ったのだろう、ぱちぱちまばたきする目は不思議そうで、そうなんだと納得するようでもあり】
【もう必要ないというのはよく分からなかったけれど必要がないならおめでたい、それならいうのはどうでもいいこと、確かに、まだ秋にしてはずいぶん少女は厚着していて】
【それから案内するかと言われたら、そうとも続け――探しものが何というのは言わなかったけど、多分相手にはもうばれているだろう。それには気づかないまま】
【こんな時間だしいきなり行ってしまうのは迷惑だろうと常識的にものを言うのだった、これならアポを取ればよかったとも思うけど、連絡先は当然知らないし】

【それならこのひとに言伝を頼んで、改めてその日時に来るのが妥当なように思えた――思った、だからそうしようと思って、だけど、】

――音々ちゃんを知ってるの? あ、ええと、……音々子ちゃん、緑色の目した、女の子、

【申し訳ないような力の抜けた笑顔でそう言おうとしたときだった。相手の言葉に明らかに関心を見せた少女は、愛称でない、きちんとした名で彼女を呼び直すけど】
【そもそもあの女は相手へと名乗らなかった。もっと言うなら迎えに来た女も名乗らなかった。ひどい話もあったものだけど、――】

わ、えと、音々ちゃんを助けてくれたひと……ですか、? えっと、わたし、それのお礼と……あの、タオルを、返してきてって、
天音ちゃんが行くって言ってたんだけど、家に居てってわたしが言ったの、お仕事はしょうがないけど、そうでないなら、家に居てあげてって――思って、それで。

……ああ、えっと、風邪は。大丈夫。ただ……その、あんまり、元気じゃ……、えっと。

【まさか相手がまさにそのひとだとは思っていなかったのだろう、少し驚いたようにしたあと、慌てたように足元に置いていたビニールIN紙袋を取りあげれば】
【その端っこからぱたぱたと水が落ちる、それでも少女は気づかないままで、とりあえずどちらかがお礼で、どちらかがタオルと見るのが妥当だろうか、それから】
【風邪そのものは大丈夫だったのだと言う、けれどその先続いた言葉はいかにも失言したという風に打ち切られることになるだろう、しまった、という顔をしてみせて】

…………え、っと、ああ、わたし、……えっと。あなたにお話したいことがあって。

【そのひとに会うのは多分現地でのことだろうと思っていた。だからいくらか動揺した様子の少女は、いくらか遅れてようやく落ち着いた声ぶりでそう続ける、だろうか】
【じっと相手に向けた色違いの目は不思議な色で相手を見ていた、いろんな感情がまだ交じりきらないでいる、そういう目は】
【誰かが悪魔みたいだと言った猫の目とも少しだけ似ているようでもあった、あれはそれが怖くて仕方ないというような色をしていたけれど】
858 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/10/13(金) 16:17:50.20 ID:bfYBqhfZo
>>857

小さな街だと人手が足りなくて、……それにしても、結婚式のあとに少年合唱団の指導をして、それから見回りもというのは、奉仕が過ぎていますけれど

【相手がいろいろと話すので、いつもなら必要ない話は返さないとばかりに鉄壁の薄い唇は珍しく、雑談らしきものをして返したのだった】
【多分そうしないと悩み悩み話しているような間のある相手が不憫だった、そういう理由がつけば、彼にとっては必要だからした話になる】
【――それにしてもいいように使われていた、顔が怖い割に大体の事は二つ返事で引き受けるのを、長くいる者達はもう心得ているらしくて】

……ああ、やはり。そのままお持ちになって構わないとお伝えしたのに――、態々ありがとうございます。お元気でないのは、残念ですが

【当然だと書いてあるような顔だった、あれだけ消耗しきっていてもう元気なら、逆におかしいと言うより取り返しがつかなくなっている】
【そういう意味では、まっとうに推移している――そう言う類の言葉は、冗談でも掛けないほうがいいだろうと感じて、それから】

私に、話……? どのような事でしょうか、お答えできる範囲でなら、お答えいたしますが。礼拝堂がまだ暖まってますので、そこでは?

【ひと呼吸置くように場所の移動を提案したのは、まだあの砂がこの川に残っていそうな、もっと言うなら――あの男に聞かれるような、】
【物理的にもその他の意味でもあり得ないことだったけれど、実際に多分まだ暖かい場所があるからそこで話したい、それが先に来ていて】

【一度だけ合わせた群青色の視線はどこかに、ほんの少しだけの暗い色があった。相手がいうへびさまやその関係性を、彼は知らないにせよ】
【"蛇"は神が土塊から作り上げた人間を唆し知恵を与えた、そして永遠に地を這う定めを負った、そういう生き物として認識していて】
859 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/10/13(金) 16:39:49.46 ID:VASrn6ne0
>>858

【相手の言葉には「そうなんだ」と少し驚いたような声が返る。教会の仕事は詳しくない、なんか、何曜日かに集まるとか、そういう……それくらいの知識しかなく\】
【いろいろ仕事があるらしいというのを面白そうに、子供らしい顔にはよく似合う表情で聞いていたのだけど――ひとまずそれはあまり大事ではないから】

やっぱり悪いからって言ってたよ、ありがとうございますって。伝えてくれって……。
……えっと、でも、ご飯とかは食べられてるって。ちょっとだけみたいだけど――、だから、

【「大丈夫だよ」と笑うのは少しだけ自分に言い聞かせるようにも見えたろうか、タオルについては、そういうのを伝えてくれと頼まれたのだと言って】
【本当のところではそういう人のところから持ってきたものがあると見るたびに思いだして面倒だから……というのが理由だったのだけど、本音を隠す程度に、誰かは大人びて】
【伝えてくれと頼まれた少女はいくらも子供なので素直に信じている、という感じだった。それから言ってしまったのに触れられれば、そう、そうとだけ付け足して】

…………ええと、わたしが、したい、お話……。

【相手へ見せるように紙袋を持ちあげていた手が少しだけ下がる、わずかに下がった眉は困ったような、申し訳ないような表情を作って】
【一瞬ためらってからそういうのだろう、説明にしては要領を得ない、けれどそれが少女にとっては大事らしいことは、多分、見て取れるのだろうけど】
【場所を移動するのを提案されれば嫌な様子もなく、かえって嬉しそうに了承するだろう、さっき寒いのは苦手だと言っていたし】
【最初から立ち話するような内容とも思っていなかった。だからうなずいて見せて】

【――そう、多分、この少女の瞳は少しだけ蛇と似ていた。もちろん真っ白な肌も真っ黒な髪も、その全部が完全に人間のかたちをしていたけれど】
【だからそれが余計にわずかな違和感として目立つ、特に真っ白なのっぺらぼうからスプーンで抉ってこさえたように赤い血の色をした右の目は色素のない分、それが浮き彫りになるようで】

【――場所を移動するために歩くのなら、彼女は何も疑わずについていくだろう。こつこつとした硬い足音は、けれど、それと一緒に少女の体重の軽いのがよく分かる、そういう音で】
860 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/10/13(金) 17:12:41.67 ID:bfYBqhfZo
>>859

【受け取っていいと言うなら紙袋は拒むでもなく両方を受け取るのだろう、善意を拒むことも教会の理念に反するから、ということ】
【その時には、もう群青色に暗いものは見て取れなかった。先程の一瞥が間違いだったような、本当に誰も踏まない雪面のような表情】

【(思考がだんだん"そう"なっていくのが恐ろしかった。例え形を模倣するように作られていても、考え方までを持っていかれるとは思わなかった)】
【(蛇がどうだと気にする以前に自分は神がこねた土塊ではなく、土塊がこねた化物でしかない。それがどうして、あちら側の視線で物を見るようになったのか)】

【――相手の前を行く背は何を語るでもなく、どこかの暗がりに案内するのでもなく、きちんと正しい場所に辿り着くのだった】

ああ……、やはりまだ暖かかった。木の長椅子で悪いのですが、どうぞお掛けください。膝掛けがそちらにありますので、お使いください

【小さな街の、小さな礼拝堂だ。硬い長椅子が何脚かと、祭壇と、質素な中でも一番目を引くのは、その背後にあるステンドグラスだろう】
【天使にしては妙な姿をしたのが二体、どういう訳か、真ん中に一人分くらいの何もないガラスを挟んで刻まれているのだった】
【どちらも後ろに描かれた山などより遥かに大きくて、片方は目や翼がいくつもあったり、もう片方に至っては蟻のような人々が背を登っている】

あれらは天使メタトロンと、サンダルフォンです。あまりこちらの宗派に詳しくなくとも、いくつかの天使の名はご存知でしょうか
ミカエル、ガブリエル、ウリエル――殆どの天使には、名前の最後に「エル」がつきます。「神の人」、つまり、生まれながらに天使だった者達です

【祭壇にカンテラを置いて、消してしばらく立ったヒーターに点火したりと、下準備をしながら、その間を保つように青年は言葉を紡ぐ】
【途中で上げた視線は何もないガラスを見つめていた。少し前までなら睨み付けていたそれを、今はどこか、静かな目で見据えていて】

ここに描かれた二人の天使は、もとは人であったために「エル」が付かないのだとされています――さて、お待たせしました。お伺いしましょう

【適当な長椅子に腰掛けて、青年は相手の言葉を待つ。どう言おうか迷うような先程の姿が一瞬過ぎって、今度はどうしたものかと、小さく首を傾げ】
861 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/10/13(金) 17:40:04.46 ID:VASrn6ne0
>>860

【示しておいたくせ、少女はこんな場所で渡してもいいものか、悩んだようだった。けれど、相手がそうする、してくれるというのなら】
【少しためらいがちに渡すのだろう、片っ方はタオルしか入ってないからうんと軽い、もう一方は、まだもう少し重さがある。どこかの菓子だろう、日持ちするような焼き菓子】
【ただ不安そうであったのは教会のひとたちに何か食べたらいけないものがあるんじゃないかみたいな不安があったから。なんとも疎くて、よく分からなくて】
【だから渡す際に小さな声でお菓子は食べても大丈夫なのかと尋ねるだろう、相手からしたら変なことを言っているのかもしれないけど、と、もっと不安そうな顔をして】

ううん、大丈夫、急に来たのはわたしだから、……ありがとうございます。

【やがて案内された場所。急に押しかけておいてこんな場所だなんて言えるはずもないし、思いもしなかった。外でないだけその時点ですでに暖かい、外の風はそれだけ冷たくて】
【ただあたり前に体温のある生き物として安堵する、示されたひざ掛けもありがたく使わせてもらうことだろう。ふわふわのスカートの上にかぶせて】
【それから不思議そうにあたりに目線を向けるのだろう。こういうところに来るのは初めてだった、うんと昔に見捨てられたこういう場所なら、何度か、あったけれど】
【誰かが世話をしているというだけで全く違うものに見えた、そしてそれはとっくの昔に棄てられた神の社をなぜだか思いださせる、深くて暖かい霧と冷たい水、苔むした社だったもの】
【もしも誰かが守り続けてあげられたなら、あの社はきっと今も建っていた。そしてその神もこんなところで疲れ果てて眠ってなどいなかった。思って、指はそっと胸に触れ】

……――うん、天音ちゃんがやってるゲームで見たよ、…………あ、えと、ごめんなさい、あんまり、詳しくなくって……。

【笑って答えた一発目がいきなり失言だったのには少女もすぐ気づくのだろう。一瞬ぼうっとしていた思考回路は単純にゲームで見たという答えを導きだして】
【ただそれを信じるひとたちの前で言い切ってしまったのが失敗だった。表情はすぐに自分の発言に驚いたようになってから慌てて、そう謝罪を重ね】

でも、あの、よく知らないけど、すっごくきれいだと思うの、えっと……すごい、

【それから取り繕うように続けるのは言い訳にも似るけど、同時に本心であるのも分かるだろうか、自分たちの神にこういうものはないものだから】
【珍しいしきれいだと思うしすごいと思う。昼ならもっときれいだったろうかと思って、それが少しだけ惜しくて】

えっと――、ああ、うん、名前を、言ってなかった。……わたし、の、名前……白神鈴音、です、……UNITED TRIGGERで働いてるっていったら、もしかしたら、分かるかな。
だけどそれは関係ないの、……今日は、関係ない。今日の用事は、……ええと。わたし、あの日、――

【それから促されれば、ためらうように瞳が伏せられる、それからぽつぽつとしばらく意味のない単語を並べていたのだけど】
【そのうちに思いいたれば名前を名乗るのだろう、そしてその名前は、知られていてもおかしくない。件の組織の名前と店舗を借りて、孤児に食事を振るまうひとの名前】
【もう数年にもなるか。――だけれど今宵それは関係ないとも告げて、緩く首を振って】

……ああ、もう、……わたし。音々ちゃんのお友達で、紅茶色の髪のひと……あのひとの、お嫁さん、"だった"。

【何というか悩みすぎて疲れたみたいに髪をくしゃっとかきあげる、すぐにヘッドドレスのふわふわしたリボンに指が絡まって、それをやめるのだけど】
【結局告げた言葉に何か風情みたいなものはなかった、というよりそのまま言ってしまうのが一番簡単だし伝わりやすいと気づいたのだろう、それで、相手の反応を一瞬待つ】
862 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/10/13(金) 18:26:43.90 ID:bfYBqhfZo
>>861

【尋ねられた声に珍しく目を丸めて、誤差の範囲で歪んだ口元は恐らく綻ばせている、けれど、錆付きすぎて全く意味を成していないもの】
【「桜の花だけ、アレルギーですが。他は大丈夫です」と真面目に回答する――あまりに限定的な症例だった、ただそうだと言うのだから、そうなのだろう】

ゲームですか、私は漫画で読みました。全身が装甲で出来た天使で……子供心に、フィギュアが欲しくて堪らなかったです
――うつくしく見えるものですね、異教の神を滅ぼしたり人と交わった同属を殺すものだと知るまでは、私もただ綺麗なものだと思っていました

【慌てる必要はなかった。あの猫の彼女なら知っていただろうが、いわゆる生臭坊主の類である彼もまた、本当は、あれらに興味など持たなかった】
【持たないまま生きていけるはずだった。まずそもそもの生まれがそうじゃなくて、ずっと早くに死なねばならない理由がこれで、だから】
【天使とされるものの行いも、悪の面ばかりが強く記憶に残った。やれ受胎告知だの、そんな綺麗なものばかりを見せて、本当は真っ黒で、】

……ジュリアスです。ご友人を介抱したのは、ジュリエットと言います。双子です――ああ、素晴らしい活動をなさっている。……、

【こちらも、もう大体の検討がついていた。合わせるような断片的な応答も、核心に迫るに連れて言葉少なになって、それから、】
【あの消えていった男と相手の関係性を知って――これがあの場に居合わせた責任、なのだと思った。というより、そう思うしかなかった】
【あの男がそうしたように目の前の彼女があの子のようになる、そんな悪い予感だけがあって。あの日焼き捨てた呪われた頁の内容を、】
【気味の悪いほどびっしりと書き足されたあの内容に再びこれからを書き足していける可能性――そんな奇跡に救いを求めたところで、】

あの方は……魂ごと、消えました。砂になって、散っていきました。そして、そうなることを拒みませんでした

【――思うところはあった、けれど、あの時のあの光景が、そこから先を語らせなかった。彼の残留思念であるかのように言葉が出なくて】
【結局、単調で残酷な告知をするしかなかった。それから静かに立ち上がって、青年はゆっくりと祭壇の方へ歩いていく――顔を突き合わせないように】
863 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/10/13(金) 19:04:50.26 ID:VASrn6ne0
>>862

【桜の花のアレルギーと聞いて少女はふしぎそうに目をぱちぱちやるだろう、それから、友人が――その、緑色じゃない方が――さくらんぼを食べながら】
【私これアレルギーなのよねと言っていたのを思いだした、他にも梨とかいろいろ駄目らしい、でもなんかいつも食べている、大丈夫なのかと何度も思ったのを思いだして】
【「バラ科って駄目だわ」――桜もバラ科だし、花にもあるのかなと思った程度だった。かといって、食べる……?と思考回路が移ろっていって、んんと首をかしげ】
【それから花粉症とかを思いだして一人で納得する。そういう感じだった、それなら、中身はクッキーとかそういうものだと付け足すだろう】

【それから。自分の失言――へたしたら怒られるしもっとしたらお話さえ聞いてもらえないかもしれない。相手の反応を怖いように待っていた彼女は】
【そのうち思ってなかったような返事をもらうと目をまん丸にする、それから、少し安心したように笑って、そうするといっそうあどけない顔は子供みたいで】
【だけれどその後にはまたよく分からないという顔をしている、本当に知らないのだ。天使がどういうものなのかも、イメージとしてはどこかの製菓会社のマークだし】
【だから。丸い瞳をわずかに細めた、それが彼女の返したもののなかで一番返事のようだったろう。本当はもっと気の利いたことを言えたらよかったのに】

……素晴らしい活動だなんて、そんな、わたしは、したいことをしているだけで、……ううん、はじめは、もっと、子供みたいなわがままで。
それがたまたまみんなが喜ぶことだったから褒められてるだけなの。わたしが出来ることの中で、わたしがしたいと思えることが、あったから、……。

ああ、ごめんなさい、"あんまり"関係がなかった。

【名前を聞けば頷きで返す、それから、その双子だという方とも――できたらお話したいと思う、ただ、この少女のいまの認識としては】
【居合わせたのが彼で、そうでないのが彼女……多分彼女だと思う。そういう認識だったから、ひとまず今は言いださないまま】
【言っているのもどこかで現実逃避だと自分で認識すれば、途中で言葉を切って――相手の言葉に、一瞬黙った口角が下がる、うんと視線を伏せてから】

うん、いいの、それでいいよ、それでよかった。
それにあの川は優しかったから、わたしの探しものをきちんと流れてしまわないように抱きしめてくれてた、だから、それでいい。

【あまりに声音は変わらなかった、震えもしなかったし、閊えもしない。ただあどけない顔から表情がなくなればどうしてか急に大人びて見えて、小さく吐息が一つ】

だけど……迷惑をかけられるのも、ひどいことを言われるのも、わたしだけでよかった。あなたや……その双子の方に迷惑をかけたり、音々ちゃんが傷つく意味はなかった。
意味のないことで迷惑をかけてしまってごめんなさい、あと、あんなに傷つけられた音々ちゃんを助けてくれてありがとうございました。
きっと怖かったんだと思うの、だから、そのすぐ後にあなたたちが優しくしてくれてよかった、そうじゃなかったら、天音ちゃんも、わたしも、きっと二度と気づけなかった。

【嬉しいことなんて一つもなかったけど。それでもただ一つだけいいことがあったとすれば、相手があの時のあの黒猫に声をかけてくれたこと、それだけ、それ以上はなくて】
【そうでなければもっとひどいことになっていた。予感でもない確信としてそれがあって、ただ、そうならなかったのは、相手が声をかけて、部屋に一人にしなかったから】
【そういう礼をしにきたのだった、ただ、行儀よく膝に乗せられた手はぎゅうと握られて、言い終えた唇は強くこそないけれど噛まれて、瞳はさっきからずっと床を見ていて】
【ならぶちまけられたいろんなものからかろうじてせめていいことを見つけられただけにも見えた、周りにはまだうんといろんな悲しいことが積みあがって、だけど、】
【そういうのに向き合って構っている暇もない。それで多分それにも意味がない。だから納得してしゃべるから、声はいつもより低くて、嫌味みたいに"お姉さん"で】
864 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/10/13(金) 20:48:54.11 ID:bfYBqhfZo
>>863

【すべてを祭壇で聞いていた青年の視線の先は、空いたステンドグラスの一枚に集中していた。聞き終えれば静かに双眸を閉じて、一つ頷く】
【それでいいと思うならきっとそうだろうし、だけど意味などないことだったのなら、やっぱりそうなのだろう。傍観者に分かるのはそこまでだった】

【――相手の方へ向き直り、青年は少し肩を回すような動作をした。それから深く息を吸い、背を丸めた直後、キャソックを突き破って】
【三対六枚の白く大きな翼が、小さな礼拝堂いっぱいに広がった。たくさん舞い散っていく白い羽毛がふわりと相手の方へも落ちていって、】
【丸めていた背を持ち上げたその頭上には、幾筋もの光が伸びる天輪が輝いていた。その状態で多分微笑んだらしい彼は、ごく何でもないように】

――私のことは構いません、ですからあまり、気負わないでください。自責に囚われないでください。今は、あなたとその友人を、大切にしてください

【そう言って、一度力強く羽ばたいた。暖められた風と羽毛とが小さな礼拝堂に渦巻いて、地を蹴った青年の身体が、本当に浮き上がった】
【体重三十キロの生物が飛ぶには片翼六メートルは必要になるという。だが三メートル弱の翼が六枚あれば、或いは十分なものとも言える】
【思い切り生えてきた以上、翼は確実に魔力などによるものでない――もっとも、頭上の天輪だけは何かの力が作用しているらしかったが】

【――結局は建物内であるので、それでも普通の部屋よりは高い天井にわずかに触れてから、彼は再び祭壇の上に舞い戻ることとなる】
【行動の理由はただ一つ、言葉にいくらか説得力が欲しかったのと、澱んだ空気を撹拌したかったから――涼しい顔の割に、やる事が飛躍していた】
865 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/10/13(金) 21:40:23.20 ID:VASrn6ne0
>>864

……わたしは、見てないから。そこに居なかったから、分からないの。だから、ほんの少しを、聞いただけ。
意味は……なかったと、思うよ、だけど、あの二人にとってはあったのかもしれないけど、わたしにはね、分からないの。

たぶん……わたしが知らないだけで、ずっと前からそうだったのかな、でも、だからって、あんな……。

【まず紺色の友人に聞いた、だけど、それだって辿れば情報源は目の前の相手だ。それでも足りなく思って少女がひっくり返したのは、あの場に居合わせたもう一つ】
【ちっちゃな石の中でまどろむかすかなもの、さっき拾い集めたのもその欠片、だけど、それだって――ひどくおぼろげなものしかわからなくて、だから、結局ほとんど分からない】
【両手を膝の間に納めるようにして天井を仰ぐ、さらりと流れる髪はそのまま背中に垂れて、晒される喉はうんと細くて冗談みたいに白くて】

わたしにとっては意味なんてなかった。二人ともわたしのために怒ってくれてたのに、知らないでいたの、
……知らないあいだに大事なひとたちがひどい言葉で傷つけあってたことに意味があるの? ねえ、それを見ていて、意味があったと思った?

【そのうち頭が重たくて仕方ないようにその位置を戻せば、勢いづいて本当の重さでがくんと落ちて、それから視線だけが伺うように持ちあげられて、】
【それで見上げるようにすると相手の後ろにはうんときれいなステンドグラスが見えて、思考の隅っこでそういうことなのかと思うけれど、そうきちんとした形にはならず】
【意味がないとただ一緒にうなずいてほしかった、そうでないと大事なひとが砂になり果てたというのも、大事なひとがあんなに怯えた顔をしたのも、必要になってしまうから】
【だからあんなの無意味だったと言うしかないしそれしか出来ないししたくない、だからといってそれこそ意味がないのもきっと分かっていて、うんざりした息を吐けば】

――――、

【ぼうとした目で相手の変貌を見ていた、あるいは見とれたようにも見えただろうか、ただぎゅっと押し黙って、その光景を見ていて――】

…………気負うじゃないよ、自責でもないの、セシルはもう居ないし音々ちゃんはまだお部屋から出られないの、誰でもなくてわたしがしないといけないことだよ。

【あまり驚いた風ではなかっただろう、それでも返事をするのに時間を要したのは彼が求めた説得力に押し負けたようなかたちになる、だろうか】
【どちらも少女にとって大事なものだった、だけど互いに傷つけあって、一つは消えてしまって、もう一つは、今にも消えてしまいそうで】
【もしかしたらすごく嫌われてしまったかもしれない、もう二度と前みたいにお話してくれないかもしれない、だけれど、】

わたしのためにうんと怒ってくれるひとが一気に二人もいなくなっちゃうの、無理だよ、わたし、弱虫だから――、

【それでも頭の中で一生懸命に優先順位をつけて選ばないといけない、黒い札と赤い札をつけてしまったならそのために動かないといけない、だけど、】
【白い羽根を一つ拾い上げて眺めてから相手へ羽根ごしの目を向ける、泣いていないけど――かえって泣いてくれたほうがよかった、そういう、疲れた目をして】
866 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/10/13(金) 22:26:42.06 ID:bfYBqhfZo
>>865

【広げた羽は仕舞われることなく、祭壇の上に冒涜的に腰掛けたまま脚を組み替えた彼は、顎に手を当てて相手の言葉を咀嚼するよう首を傾げる】
【自分でも不思議な位には分からなかった、ヒトが正常に抱える感情が織り成した結果としての言葉なら、分からない理由がまず、分からない】
【――いつからか、群青色の瞳に星のような光の粒がたくさん浮かんでいた。ちょうど夜空のようなそれをくっと細めて、薄い唇が吊った】

あなたは自分の成すべきことを理解している。それで、一先ずは良いのではないでしょうか。私に理解しうる範疇での、答えられる限りの言葉です

【それを違うと言われるならそうですかと答える以外に術などなくて、それなら求められている答えを当てるなどもっとあり得ない、と】
【まして何か激情をぶつけられるようなのは、もうあの日あれを見ただけで十分だった。ただの傍観者で終わらせなかった事がまるで間違いのようで】
【それでも最後の言葉だけは適切な回答を思い付いた、ただ基準が少しだけ狂い始めていたが――それは多分、視点の違い】

一人はまだ、救えます。あなたが弱虫でないことを、あなた自身が誰よりも信じなければならないでしょう。消えた彼のためにも

【彼と相手にどんな物語があったかは知らない、それはあの日の橋の下の光景も同じで、どこまでも傍観者でしかないのなら、仕方のないこと】
867 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/10/13(金) 23:18:01.02 ID:VASrn6ne0
>>866

【ぎゅうと歯を噛みしめた、けれどそれは外から見て分かるほどの感情の起伏ではなくて、なら、ただ認めてくれればよかったのにという八つ当たりでしかない】
【他人からの同意のない思いこみは多分妄執だと言い換えられる、だから同意される必要があった、だのに認めてもらえなければ、少女は服の胸元をきつく握りしめ】

よくないよ――ちっともよくない、いいことなんてなんにもなかった、何にも起こらないのが一番よかった。でも起こっちゃった。

【大人で居続けるのは難しかった、話せば話すほど取り繕った隙間から本当が見えてしまうから。怒っているようで悲しそうな声も、全部が金属めいて】
【目の前ですっかり様変わりした相手の姿を見つめる、あたたかい光で出来た翼なら見おぼえがある、真っ白い鱗の蛇なら見おぼえがある、でも、天使は、多分、なかった】
【それなら何か不思議な気持ちだけがある、ずっと昔、本当の本当に子供だったころ。必死に祈った、助けてほしいと願った、その神様は、こんな風な姿だと思っていた気がする】

あの二人はわたしが弱虫だって一番知ってるひとたちだよ。

【吐息交じりの声は自嘲げでもある、なにより弱虫で泣き虫でずるかったころを知っているひとたちだ、だけどそれを相手に説明してやることはなくて、多分、必要でもない】
【もっと言うならこれでまた新しい迷惑をかけるのでは謝りに来た意味も礼に来た意味もなかった。謝った、礼もした、返すものも返した、それなら、】

…………ええと。あんまり遅くまで居ても悪いから……、シスター?のひとにもお礼をしたいの、呼んできてもらえたら――。

【わざわざ話を変えたように見えたろうし、きっとそれで正解だった。ぐっと口角の落ちた口元で黙りこんで、それから、視線を関係のない方へ動かし】
【相手へ戻す時には、そう切りだすのだろう。聞かせるべきではない相手に弱音/愚痴を吐いた認識はあって、それが少し気まずいのもあったけど――】
【それもしなければならないことだと思っているようだった。何より今日は礼と謝罪と返却が目的、まだほかに世話になったひとがいるなら、そのひとと会いたがるのも、当然といえ】

【その様子だと、まあ、何も知らないようだった。本当に素直に言われた通りで信じている、――同時に、こんなにも遅い時間だけど、どうしても、直接話したいという様子もあって】
【だからか表情はひどく申し訳ないような色、すっかり眉を下げて、伺うように尋ねるだろう】
868 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/10/13(金) 23:39:52.99 ID:bfYBqhfZo
>>867

【相手が話を変えてくれたのは有り難かったが、事が事だけに少し考えるようにした彼は、まあここまで見せたのだからと一人納得して】
【キャソックの下がサンダルであったのを確認してから、乱れたままだった灰色の髪を後ろへと流して整えて、それからやっと返事をする】

シスターですか。少々お時間を頂きますが、まあ、着替えなくていいのでしたら。今ここで呼びましょう、少しだけ、お待ちください

【――腰掛けたままでも分かる身長の変化、丸みを帯びていく体付きと、喉仏の消失、顔はあまり、というより最低限以外はもとのままの】
【およそ数分の時間を掛けて変化していった"彼"は、やがて"彼女"へと変貌を遂げていた。きつい顔付きだけは変わらなかったけれど】

「……お待たせしました。シスター・ジュリエットです。先程までのが、ジュリアス司教です――まあ、中身は同じですがね。あの時は、必要がありましたから」

【天使はどちらの性も持たない、あるいは、どちらの姿でも現れるという。現に生えた羽と感じの悪い顔つきだけが変わらないままの彼女は、】
【それでも女の声をしていて、キャソックの下の膨らみもくびれも、もっと言うなら臀部の張りも、男物の服に窮屈そうに押し込められている】

「お礼ならもう素敵な菓子を頂きましたから……あとはただ、あの方の復調をお祈りします。私に出来ることがあればよいのですが、」

【「いつまでここにいられるかも分かりませんから」――そう告げる言葉に、別段残念そうな色はなかった。もう、受け入れた声色だった】
869 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/10/14(土) 00:27:45.13 ID:XANSjFz20
>>868

【相手が考えるしぐさをそのまま少女はこんな時間だし寝ているのかもしれないとか、そういう、あたり前な方へ考える、だけど、】
【たとえ本当に寝ていたとしても起こしてきてほしい、だなんて、わがままもいっしょに考えていた。後日改めて訪れるのが筋なのだろうけど】
【なるべく早くしたい。そういう風に焦っている様子もあって、そして多分それは、今こうして話していられるのが一瞬のことで、次の一瞬には】
【一番受けたくない電話を受けているんじゃないかとそういう嫌な想像をしてしまう悲観癖のせいと、それから】

【自分よりずっと大人びて気丈だと思っていた友人が。本当の子供よりもずっと幼い、うんと子供の表情になって、それでひどく怯えた顔をしたから、】
【"そう"なってもおかしくないんじゃないかという不安がずっとあった、それが自分の中でぐるぐる渦巻いて、ため息を吐けばうっかりそのまま嘔吐してしまいそうに、重たい】

……わたしは、大丈夫。どうせこの後も用事だなんてないの、……?

【時間がかかるというのには問題がなかった、ここを出た後の用事は今のところない、だから問題があるとしたら相手の側だと思っていて】
【着替えるだとかいう話になれば真っ先によく分からない顔をする、寝間着から?だなんて思考回路はものすごく平和だったし、少女はどれだけ相手に寝ていてほしかったのか】
【よく分からないけれどそれでも一応待てと言われれば待つだろう、へたな馬鹿犬よりはよっぽどいい子で待ってくれるはずだ、ただ不思議そうにはてなを浮かべたまま】

【その間は無言だろうか、それなら少女はよりいっそうよく分からない顔で、ただ何か気まずいように視線をそらしがちにしているはずだ】
【ときどきちらと伺って、そのくせに相手をよく見る前に目をそらす。だから――気づくのはその変化が半分もすぎたころくらいで、】

――――っ、!

【鈴の音の声が一瞬跳ねあがって変な声を出す、それで多分さっきまでの言葉の意味も理解する。もとから丸い目をもっと丸くして、ぱちくりまばたき】

わあ……え、……へびさまみたい、

【ぽつとこぼす声にあまり大した意味はない。ただ驚いたついでに出てしまった声、――あの白蛇も、こうでこそないけど、見た目の性別をいじくることができた】
【よく女の格好で居てくれたのは自分が男のひとが怖くなってしまって泣いていた時だった。だから、多分、同じ気遣いがそこにある。なんとなしにそれを思いだして】

……音々ちゃん、うんと頑張り屋さんだから。誰も何もしなくても、きっと、すぐ元気になるよ、でも、それじゃ困るの、

――……ああ、えっと、違うの。そういう意味じゃなくって……、誰も何もしないままで元気になられたら、困るんだ、わたし、……。

【どちらかといえば怖いひとは苦手だった。別に怒鳴りつけるとかされなくても、やっぱり、女のひとのほうが安心する……と思うのは、どういう理屈から来るのだろう】
【それを多分理由づけるのは難しいけど、気のせい程度に少女の声は緩んだような気がしたろうか、たとえ同じ顔だとしても、声が高い、それだけでどこか柔らかく聞こえ】
【相手に向けた言葉と、そのあまりの言いぶりに気づいて訂正する言葉と、それから、ひとりごとみたいに続く言葉。何にもうれしくない。心中でもう一度呟いて】

【いつまで――という言葉の、それぞれ単語の意味は理解しても、そこにある理由を彼女は知らなかった。多分あの猫でさえ知らないだろう、だって、あの時は】
【疲れ果てた子供みたいに眠っていた、それなら紺色も知っているはずがないし、唯一知りえた存在も、今ここに居合わせるのは、ごくごく小さな破片で、少女の中で眠っている】
【役に立たない神様にこっそり嘆息する、それでも自分の薄い胸元に触れる指先はひどく優しくて、うんと大事なものがそこにあると、何も知らないひとにさえ思わせるような】
【ましてあの橋の光景を見ていた相手になら。だけれどそうした彼女はそのまま困ったように「何が出来ることだと思う?」と相手に訪ねて――(あまりに投げやりな様子だったけど)】
870 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/10/14(土) 00:57:25.73 ID:5INxdr5Bo
>>869

【最初からこうしていればよかったようにも思った、どうせ可変式なのだし――ただあの出会い頭は見回り役というのもあったから、仕方なかったのだが】
【ともかく相手と同性になったことで、どこか相手からの反応も柔らかくなったように思えた。話はすっかり女友達同士の相談事のようで】
【目の前の相手があの子に何を出来るか――灰色の眉根を寄せて真剣に考えるなら先程より確かに丸く見える、けど、余計に顔が怖く見えるのは余談】

「確かに時間は物事を解決してくれるように見えますが、根本的な問題が置き去りにされるだけでしょう。だから、それを何とかしたい、と
私も相談に乗れる時間は限られていますから、出来るだけ有効な手段を提案してさしあげたいのですが――結果を確認できる保証もなくて、」

【話の要点を拾い上げるようにして、今度はいくらか分かりやすい話として咀嚼できた彼女は、「出来ること」について考えてみる】
【けれどいくら手を考えても、確実に目の前の相手よりもあの子のことを知らないし、ただの傍観者でしかなかった身としては尚の事で】
【やたらと期限を口にしていた。もっともいつになるかは分からないもの、ただ何故そんな期限があるのか、伝えたものかと少し悩んだが】

「性別の変更、そして翼の顕現と来て……そろそろ、殺される時期が近いのです。私を奇跡の人、聖ジュリアスとして列聖するために
私を人造天使として作り上げた組織から、じきに暗殺者が呼ばれるでしょう。こんな物騒な話さえなければ、ここで相談し合いたかったのですが
音々さんのこと――気掛かりですし、ね。乗り掛かった船と言いますから、出来る限り手助けしたかったのですが。あなた方に危害が加わるのも、嫌ですし」

【予定通りなら近いうちに殺されて、クリスマス辺りには聖ジュリアスの殉教を祝福する祭が開かれる。そういう流れになっているのだと】
【当たり前のように言って、それを理由に力にはなれそうもないのだと話した。死ぬことより、そっちの方を残念がっているのなら】
【きっと理解され難いものだろうけれど――櫻の国で言うなら即身仏、だろうか。もっとも、本人の承諾なくそうされる点で明確に違うのだが】
871 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/10/14(土) 01:47:04.37 ID:XANSjFz20
>>870

【ただ――女友達同士の相談事と言うにはあまりに中身は重たいだろう、失敗すれば最悪一人死ぬ。そして世界は意地悪なので、下手したらもっと死ぬ。そういう、お話】
【何より相手に訪ねた声の投げやりさがあまり真剣に聞こえなかったのは、諦めてそれを受け入れたのではなくて、それっくらいに、あの猫の秘匿癖がひどかったということ】
【多分少女自身どうしたらいいのか分かってないのだろう、そしてそれはそっくりそのまま、"彼"が遺していった呪いの深さも示して、ふわと視線は遠くを見て】

【結局一番困っているのは彼女であるらしかった。本人はそれどころではなくて、もう一人はもっと冷たい方法で優しい。それで頼れるひとは他に居なくて】
【なによりただ迷惑をかけただけの相手に頼るつもりもない。今こうして話すのは迷惑ついでになりつつある、教会だから――大丈夫だろう、そういう謎の理屈で】

ううん……いいよ、わたしたちのことだから、いいの。あなたは何にも……心配してくれなくって、いいの。
ごめんなさい、わがままをしすぎた、ね、……分かってるんだよ、出来ること、するしかないの。

……わたし、ね、音々ちゃんがこのままなのは嫌だよ、だけど、セシルのことがそのままなのも、嫌。
だからその分も謝らないといけない。それで許してもらわないといけない。……音々ちゃんにも謝ってもらうし、許す、……わたしとしてじゃなくて、

【それでもあまりにずるずる愚痴ばかりなのも気が引けた。だから緩く頭を振る、そうまでしてくれなくていい、大丈夫だと、先だなんてひどく真っ暗で何も見えないままだけれど】
【"そう"しなければいけないという形だけは決まっていた。どちらも大事だからどちらも粗末にできないし見捨てられない、見捨てると決めていたはずだのに】
【そういう形での終わりは求めていなかった。こういう風になるだなんて思っていなかった。全部起こった後で狼狽して走り回るだなんてひどい手遅れでも】

【――ぎゅっと唇を噛んで息を吐いた、昔からすると決めたのは譲らない子だった、なんて、相手は知りもしないことだけど。そう決めたらそうする、だから、多分、これもする】
【その結果も分からないままでしないといけない、なんなら予想はできないし、それなら、目の前のステンドグラスに大きな石を投げつけて割ったとして、破片がどう落ちるのかに似る】
【落ちる破片がどれだけ尖って痛くて危ないのかまで多分同じだった。いろんな色できれいなのは世界がそうなんじゃなくてそれそのものに色がついているだけなのも、きっと、同じで】

…………なに?

【向くのは今度こそ怪訝で訝し気な目だった、あるいは相手が翼を現した時より、その性別を変えて見せた時より、うんと疑って、怪しいという風に】
【それから続く相手の言葉には違和感がある、そういえばなんであの黒猫を「音々ちゃん」なんて愛称で呼ぶようになったのか】
【一瞬考えて、それで、思いだす。多分そういうのが好きな子だと思ったのだった。その時の彼女にとってそれが大事なことになると思ったから、そう呼ぶようにしたんだった】

――それなら、自警団でも、SCARLETでも、行けばいい、……あのひとたち、あんまり好きじゃなかったけど、悪いひとたちじゃないよ、
それにUTだって、……セリーナに話通さなくっても、わたしが今ここで「いいよ」って言えば、それで"よく"なる。地下にうんと広いところがあるの、お部屋もたくさんある。
知ってるひとはあんまり居ないし……それがいいなら、それで、いいよ。死にたいのなら……――わたしは、わかんないや、わたしが思うのと、みんなの思うのは、違うから、

【関係ない思考とは裏腹に紡ぐ言葉は思ったより全うであるといえただろう、とりあえず挙げるのはいくつか正義を掲げる組織と、それから最後に】
【多少のわがままなら通したあとで言い訳すればどうにかなるはずの名前も告げる。最初に名乗った時にも添えたものだ、だからそれがいいならそれでいいとまで言える、言い切って】
【――ただその後はひどく不安定だった。何度も死んだ今では、一番最初の怖さが思いだせなかった、ただ、文字通り死ぬほどの苦しさが思いだされて、ぐっと眉根を寄せ】

【あたりまえのこと、それから、あたりまえでないこと。言い終えれば、視線はじっとそちらを向いている。まだ険しい顔をしていたけど、目ばっかりは、そう怖いものではなくて】
【少しだけ蛇に似た目。殺されるのがルールなら、そんなルールを破ってしまったらいいのにと何よりあっさりいいのけて――また一瞬黙り込む】
872 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/10/14(土) 02:04:45.63 ID:5INxdr5Bo
>>871
/リミットなので今日のところはここで落ちます、多分お返事は明日の昼過ぎくらいになります
873 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/10/14(土) 12:13:13.30 ID:5INxdr5Bo
>>871

【かわいそうだとは人並みに思った、けれど手助けするにはあまりにも彼女らを知らなすぎたし、そういうリミットもあったのだしで】
【結局傍観しただけで、そして半端に助けてしまったから、今こうしてあの日焼き捨てたはずの頁の呪いを、自分も受けることになる】

【(彼がもとの世界のどこでどう生きて死んで、そしてこちらに来てどう生きてどう死んだか、書き足しの多いそれを紐解いたに過ぎない天使は)】
【(別段何か彼をどうにかできる手段を知っている訳ではなかった。それこそ本当の天使だったとして不可能なこと、消失した魂の再現――)】

……アカシックレコード、というのをご存知ですか。世界の始まりからの事象、想念、感情の一切全てを記録していると言われる存在です
天使メタトロンは、その管理者であったと言われています。アカシックレコードに触れ、その人が持っていた記憶や感情の全てを知れたなら、
もっと言うならそれらを元に、彼だったものを復元できるとしたら――けれど恐らく、無理なことでしょう。天使などいないのもそうですが、
彼の場合、私達の知らない世界にいたようですので、その世界のアカシックレコードも必要となります。世界線を越えられた天使は、流石に私も知りませんので……

【「彼のことがそのままなのも嫌」、それに対して考えうる解決策として浮かんだままに口にはしたが、不可能に埋め尽くされたようなもので】
【まず、二つのアカシックレコードから復元した彼が本当に彼だと言い切れるのか、その不安もあった。この手の話は大体が、不幸を齎す】
【それなら彼を諦めてあの子を救うほうがずっと大切に思えたし、そもそもあの子が彼に謝られたとして、何が嬉しいのかが全く分からなかった】

【(橋の下での光景を見ていたから、そう思うだけのこと――目の前の相手を汚した男に何と言われて謝られたいのか、あの子はそんなことを言ったのか)】
【(どこか、相手の独善的な行動にも思えた。何も知らないから仕方がないのだろう、けれど、不味い方向に突っ走ってはいないだろうか)】
【(もう一人の子がいたことに思い当たるけれど、ひどく面倒そうにしていたあの日のことを思ったなら、多分、止めることもそうなのだろうと)】

……ありがとうございます、そのお気持ちだけで、今まで生きてきたことにも何か意味があったように思えます。お優しい人、……そうですね、
機関のナンバーズが全員で殺しに来る、そう言ったら、多分受け入れたいと思う組織はどこにもないでしょう。まず、私自身が嫌ですから

【途方もなく大きな敵、それに狙われておいて誰かに匿われるというのは嫌だと、周りを犠牲にしてまで生き長らえる理由はないと告げて】
【性別が変わって羽が生えただけの体でどう戦うと言うのだろう、そうかすかに笑った彼女の頭上で輝くものは、ならば何だと言うのだろう】
【――体の変態とは別の、いわゆる"能力"が発現しているのを、恐らくこの女は気付いていない。もっとも、それがどれだけの戦力になるのか、】

列聖を祝う祭の日には、もう赤い花をたくさん予約してあるのです。小さな街から聖人が出る、こんな大きな出来事は、そう起こりません
街の人達も、きっと喜んでくれるでしょう。「奇跡の起きた街」――向こう数十年、数百年と賑わってくれるのなら、死に甲斐もありますし、だから、――

【クリスマス辺りになるから、ポインセチアを。それが街中に咲き誇る日を、ありありと思い描けるかのように群青色が深く閉じられる】
【「せめて苦しまずに死ねたら良いのに、」――切れた言葉のあとにそう呟いたのは、砂のように消えた誰かを羨むような声で、すぐに押し黙るけれど】
874 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) [saga]:2017/10/14(土) 13:43:47.79 ID:f1jY8jcFO
【都市部の工業地帯】

【ここは某国都市部の工業地帯、まるで迷路のように組まれた鉄骨たちと煌びやかな工業用のライト】
【それらが作り出す、ある種幻想的ともいえる空間の中に存在する一画】
【市街地へと繋がる大きな道路にある工業用の大型トラックに、背をもたれる影が一つあった】

ああ、これから予定通りあの施設へと向かう。
特にイレギュラーの気配はない、現状はな………。

無論だ、回収後にまた連絡する。

【光沢のある素材で作られたワインレッドの服を身に纏った黒髪と赤い瞳の青年】
【腰には機械式の剣が差してあり、長身も合間って威圧感を放っている。

【青年は右耳につけてある通信機でどこかと通信をすると、腕を組んで再びトラックへと背をもたれる】
【工業地帯とはいえ、市街地からはそれなりに近い。 だれかが通りがかってもおかしくはないだろう。】


✳14時半ぐらいまでは待機しています✳
875 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/10/14(土) 14:00:29.26 ID:XANSjFz20
>>873

【少女は一瞬ひどくぼうっとした様子で相手の言葉を聞いていた、ほんの少しだけ遅れてついてきた言葉への理解はまた訝し気になって】
【それから薄くて長い吐息になる、そこからさらに視線を落として、結局、相手がすべて言い終わるまでを待ったのだけど】

……うんと、ね、そうじゃないよ、そうじゃないんだよ。もういいの、そうじゃなくて……わたしがしたいのは、"それ"じゃないんだよ、もう、
ひとが出たり消えたりして面白いの、楽しいの、嬉しいの、テレビでやってるマジックのショーくらいだよ。だいすきなひとが、ずっと一緒に居たかったひとが、
そんなショーみたいに何度もいなくなったりもどってきたりして、楽しくなんかないんだよ、うんざりなの、もういいの、こんな風になりたいんじゃなかった。

居なくなるたびに戻ってくるたびに悲しいも嬉しいも目減りしていくんだよ、だって、どうせまた戻ってくるしどうせまた居なくなるんだよ、もう、そんなの、付き合わされて、
音々ちゃんが怒るのあたり前だよ。わたしたちのことすっごく応援してくれてた、……なんでこんなことになるんだろう、

こうなるってわかってたら、わたし、――。

【そのうちぞろりと這うように向けられるのはいやに冥い目だった、それでも、怒ってしまったり悲しんでしまったりしないように努めた様子だけはあって】
【それもどこかのゲームで聞いた気がする。それとも適当につけていたテレビでやっていたオカルト番組か、だけどそのうちに考えるのもどうでもよくなっていくようで】
【そうじゃないとだけ思った、いつ自分がそんなことをしたいと言ったのかと思って、それとも、そういう風な顔をしていたかと思いいたって、それなら、自分のせいかとも】
【身体の中で重たく淀んだ空気を全部吐きだしたいように息を吐いて、ただ、その先は言えなかった、もっと言うなら、その先に続くべき言葉は、頭の中には浮かんでなくて】
【(黙っていたらどうにかなるだなんて思ったこと、なかった。いつも言葉を喉に詰まらせて、必死になって息をしようとしていたのに)】

【だけれど少なくとも今は何にも思い浮かばないから黙っていた、それでもそれが相手にどう見えるのかなんてわからないけど――】

…………それを聞いて、かえって笑うのがセリーナだよ。たった一人の暗殺者に追われてるって言うより、きっと、もっと、強く笑う。
だけど……、

【半ば確信していた。あのガンマンは、本当に数字持ちが大挙して押し寄せるのだとしても、目の前の相手を助けようとするだろう。それを躊躇わないし、きっと、本当にする】
【そういうひとだから自分は受けいれてもらえたし、今も居る。ただ自分がやりたいと思ったそれだけでどれだけ資金がかかるのか分からないことを二つ返事で許してくれたひとは】
【ゼン=カイマから資金提供を受けるまで、本当に組織のお金を使わせてくれたひとは、そんな程度でひるむようなひとではないとあまりにもあたり前に信じて、いて】

【――だけど。そうだと分かっていて、そのひとならばそうすると分かっていて、踏みこめないのは、たしかにひどい弱虫で】

【死に甲斐もあるという言葉を理解できなかった。なにより彼女はそんな死を経験したことはなかったし、だけど、続く言葉までを聞いたなら、】

…………楽に死ねるだなんて、無いよ。いつもね、うんと苦しいの。苦しくて、痛くて、辛くて、助けてほしくて……だけど誰も助けてくれないから、
いっぱいいっぱい悲しくて、どうしようもないくらいに悲しくて、それで死ぬんだよ。……時間がかかればかかるだけ、悲しくて、全部怨むの、それが死ぬことだよ。

【こんなにひどくても、礼のつもりだった。こんな夜中に押しかけて、嫌な顔もしないで話を聞いてもらって。翼のことは多分秘密だと思った。それを見せてもらって】

わたしが殺したひとたちも、うんとたくさん苦しみながら、死んでいったよ。

【――平坦な声だった。それがあたり前だとよく分からせるかのように、そういう甲斐のある死なんてないと、楽なものもないと。何度も死んだから、何度も殺したから、】
【可哀想だと思った。そんなありもしない幻想を信じて直面するのは。きっと幸せな死なんてたったの一つだけ、世界で一番愛しい人と、大切な子供たちに囲まれて】
【そういうあたり前の人間として死ぬこと、それが最上だと信じていたし憧れていた、それがずっと夢だった、叶ってほしかったけど】
【きっともう絶対に叶わないから。だから"こっち"にそんなものはないと、言うしかできなくて】
876 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/10/14(土) 14:58:59.26 ID:5INxdr5Bo
>>875

【何度も世界線を越えていたのは知っていた、それならよくそこまで魂が持ったものだと思ったし、そんな身で大切な人間を持ったことも】
【すべてが理解の範疇を超えていた。こうなることを初めから分かっていてそうしたのなら、取り戻す必要もないことはなんとなく分かって】

……そうですね。私は誰かを好きになったことはありませんが、祝福して見送った二人が離れていく姿は、何度か目にしてきました
どちらも自分の非を訴えたり、あるいは互いに相手を非難したり――そうなることを予見できるものなど、きっとこの世にいないでしょう
初めから必ず死ぬまで添い遂げられる相手を一発で引き当てるなんて、そしてその生活が必ず幸せなものかなんて、本当に僅かな確率です

【背の翼をなぞって、抜け落ちた一枚の羽をくるくると指先で回す。結婚式なら何度もここで挙げたし、幸せそうな顔を何度も見てきた】
【それが本当にすぐにだめになったり、誰も思わなかった別れになったり、酷いときは片方が殺されたなんてこともあった、それら全てを】
【そうなると分かっていたなら絶対に止めていた。誰も予見できない、他人同士がくっつくのだから、xとyを掛け合わせた数字が何かなんて分からない】

恨んだり、呪ったりするのは、そのままあなたに不幸を引き寄せます。けれどそうするしか今の苦しみに堪えられないなら、止めることはしません
彼という人はもう二度と戻らない、その思い出もあまりいいものでないのなら、時間が忘れさせてくれるのを待つか、別の大切な人を見つけるか、でしょうか

【「好きなだけ打ち明けてくださって構いませんから」――そう言って傾げた貌に優しさとかはあまりなくて、そもそも初めからそんなものは】
【誤差の範囲で口許を吊り上げただけ、群青色の双眸は何の光を映しているのか星空のようにいやにきらきらとしていて、時折羽根が舞い上がって】
【自分が死ぬことにも関心を抱かないのに、人の不幸を悼んで、そこから抜け出す幾つかの提案をして、多分それが、この女という人間だった、はず】

……でしょうね、先日見たばかりですから、死んだあとの姿でしたけれど、死にたくなければ、殺すしかないでしょうね、ああなりたくない、そう思うなら、
そう思って、いいのなら、まだ生きていたいと、自分の望みを通すのなら、誰かの望みを絶たなければならない、そんなことするくらいなら、
このままでいれば皆が喜ぶ未来になって、でもそれを拒んだら私は、何のためにこうなるように創られて、生まれた意味もなくなって、皆が喜ばない、

【――瞬きと一緒に雫が零れ落ちた、声を引きつらせるでもない、あまりに静かに泣くのなら、それが泣いていると言うことなのかも曖昧で】
【知っている人からそう聞いてしまったなら、もうどんな幻想も抱けはしなかった。悶えて苦しんで死んでいくのに、皆が喜ぶのは何故だろう】
【それでも誰かを傷付けるくらいなら、と我慢して、その結果がそんな地獄の苦しみだと確定していて――もう言葉もあまり要領を得ない】
【群青色に映る光が流れ星のように次々と消えていって、いつしか頭上の天輪も消え去って、六枚の翼も背の中へ引きずり込まれていった】
877 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/10/14(土) 17:29:09.89 ID:7R+OKBL00
>>876

ああ――もう、わたしの思い出はわたしのものだよ、どうしてあなたによくなかったって言われなくちゃならないの、次に言ったら怒るよ。

【ふわと立ち上がる。それなら次を待つ前に怒ってしまったようにも見えた、げんに眉はきっと吊って、唇はぎゅっと結ばれて、だけど、】
【意外と丁寧にひざ掛けを畳んで椅子に置いてから、歩く方向は出口ではなくて。それよりも奥へ向かう、もっと言えば相手の方へ、うんと近くまで、】

わたしがやると形も残らない。みんながみんな、それまで生きてきた身体が溶けてなくなっていくのを見ながら死んだよ、――あなたがどうやって死ぬのか、知らないけど。

【百六十センチはあどけない顔の割には大きな背丈、そこに靴を足せば、四捨五入で百七十にはなる、そのくせ手足はうんと細くて、棒きれのような身体を必死に服で隠して】
【お人形みたいと言えば聞こえがよかった。だけど本当の言葉で言えば生きていないのに似ていた、これで触れれば冷たくて呼吸をしていなくても、ある種納得できてしまうような】
【拒まれなければぐっと顔を覗きこむようにまでするだろう、色違いの目はどちらも別の意味で底がない、黒にはいつか植え付けられた狂気の残滓がこびりつくし】
【赤には本来果たすべきだった約束がこびりついて、どちらも取れやしないもの、褪めた声はそのうち本当に人間じゃないものがしゃべっているように錯覚させて、】

【――ああ別に錯覚ではないのだけど】

だいすきなひとにね――会いたいって思った神さまがいたの。そのひとはあたり前に生きて、あたり前に死んじゃった。だから、神さまはもう一度会いたかった。
それでね、もう一回そのひとが生まれてくるようにした。何百年かして、本当にそのひとはもう一度生まれてきた、だけどね、そこには、別の意識があって、

やさしい神さまはその子を消しちゃえなかった。だからね、人生を一回、初めから最後まで出来るだけの時間をあげたんだよ。
大人になって、好きなひとと結婚して、きっと子供も生まれて。その子供たちも大きくなって――そのうちに歳を取って、死ぬ。それが十分できるくらいの時間をね、くれたの。
それで……幸せになっていいって言ってくれた、うんと幸せになって、それから、身体と魂を本当の持ち主に返すはずだった。そうしたら神さまは幸せになれるはずだった。

だけど……、幸せになれなかった、大人にもなれなかったし、結婚はしたけど、こうなって……子供もきっと産めないね。もちろん歳も取らないし、死なない。
……わたしの中にあった本物も、壊しちゃった。ばらばらに千切って、棄てちゃった。もう二度とあの子は目覚めないし、神さまの夢も叶わなくなった。

――――それなのに。それなのに、へびさま、ばかだから、自分のせいだって言うの、わたしのせいなのに、わたしが悪いのに、
幸せになっていいって言ってくれたへびさまが悪いはずがないのに、そうなれなかったのはわたしのせいなのに、幸せにならなきゃいけなかったのに……、

そのためだけに生まれてきたのに。幸せになって、百年後に身体と魂を返すためだけに生まれたのに、それもできなかったのに、わたし、死ねもしないで生きてるよ?

【もし思った通りに距離を近づけられたなら。少女からは甘いりんごの香りがした、いつかあの黒猫がくれた香水の匂い、甘いのにどこか酸っぱい、鮮やかな匂い】
【よく分からないことを言いだすのならこちらも大概だった、いきなり神がどうだの、そういう話――少なくともこんな場所で、きれいな硝子の天使に見守られて言うことでは、】
【それでも関係なくしゃべるのは何より彼女がそういうものに祈らないからだろう、彼女にとっての神はあの真っ白な蛇でしかなかったから、】

こんな風になるってわかってたら、あの時、だれよりへびさまを幸せにしてあげたかった、こんなに、難しいなんて思わなかった、

【何度も何度も悔やんできた後の声をしていた、だけどだからって約束は絶対に守れというわけでもなくて、ただ、自分は守れなかった、そういう話をしているだけ】
【それでもこうやって自分の意思で出歩いて、まあ使いっぱにされたりもするけど別に誰もひどい言葉で自分を罵りはしなかった、一番罵ってほしかったひとでさえ、】
【そういう風に見られれば、別に、意外と約束なんて破ってしまっても生きていけるよ、と、そういう風にも聞こえて、だからと言って少女こそ相手の事情を知りもしなかったけど】
878 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/10/14(土) 18:46:09.94 ID:5INxdr5Bo
>>877

【覗き込まれた瞳はどんどん光っていたものが消えていって、今まで氷のように何の感情も見せなかったのが、突然に歪んで涙で溢れていく】
【――本当は今までがおかしかった、激情をぶつけ合ったあの二人を見ても何も思わなかったくせに助けることだけは綺麗に出来てしまって】
【古の時代に生贄にされた子の体内からは麻薬物質に似たものが大量に検出されたという、ちょうどそれと同じ理論で、彼/彼女もそうだった】
【身体が天使を真似ていくようプログラムされていたのと同じこと、死の運命を告知されても過去の聖人達のようにそれを受け入れられるように】
【脳内物質の作用で無理矢理に死を受け入れるよう、本能を騙して感情を殺させて、綺麗な終末を迎えるように頭ごと矯正されきっていた】
【その重要なキーが、何かの弾みで外れてしまったようだった。固まりきっていたはずの顔が突然に悲しみに歪むなら、瞳の光達がいなくなるなら、】

――私は、ジュリアスと、約束したの。どっちが死んでも、必ず生き残った方のそばにいるからって、一人にしないから、って……
本当に生まれたときは双子だったの、でも、ジュリアスの方は身体がうまくできなくって、私の方は心がうまく安定しなくて、それでも、
二人で一人になれるなら、きっと大丈夫だからって、最後の実験の時に、硝子越しだったけれど、手を合わせて誓ったの、二人で……六つのとき、

【ひどい動悸と極度の不安、焦燥――そんな中で震える手と手を、あの時の再現のように重ね合わせて、そこに幾つも涙が零れていって】
【いつからか食べ物の味がしなくなった、楽しいと思えることが何もなくなった、一人の時間をどう過ごしていたのか思い出せなくなった、】
【すべて辿れば、死ぬことを告知されたあの日に繋がっていた。部屋に男物の服が用意されて、街で「司教様が来るんだろう」と声を掛けられて】
【今まで何も思い出さずにいられた記憶全部を引きずり出されて、けれどひとつだけ嬉しかったのは、ジュリアスにも身体ができたこと】
【ずっと心の中で悩みを打ち明けたり空を見ながら一人で語り掛けていたもう一人の自分、イマジナリーフレンドと言うものだと思っていた彼が】
【六つで死んでしまったきょうだいがきちんと大人の顔になっていて、生地のいいキャソックがよく似合って、ずっと背が高くなっていて、】
【――自分達にとってはそれだけで奇跡だった、教会が起こしたい奇跡なんかよりずっと価値があって、そして、二度と後悔になんてしたくなくって】

……私は、守りたいです。神さまの御手なんて素晴らしいお話ではないけれど、作られた命で前世なんてあったのかも分からないけれど、
誰かの思い通りに法悦を受けたまま、私と私の大切な人が消える話をただ頷いて受け止めたくない、そのためなら、こんな身体だって、"力"だって、

【涙を拭いて目を閉じ、俯いた身体が少しづつその背丈を増していく、膨らんでいた胸がなくなって、喉に高い突起が生まれて、腰元のくびれがなくなって】
【それから上げた頭は相手よりいくらか高い位置になるだろう、祭壇に腰掛けたままであるのと、もう女性の背丈でないのとで】
【それから再び背を突き破るようにして伸ばした六枚の羽と、幾筋もの光の線を伸ばす天輪――開いた群青色の瞳には、幾つもの光の粒が輝いて】

「――全て、利用することにします。抗うことにします。ですからあなたも、今からだって、あなたの神様を幸せにしてください。例えどれほどの困難があっても」

【「残酷な運命に抗ってでも、その幸せが欲しいのなら」――そう告げる低い声は、相変わらず彫像めいた何の感情も残さない相貌は、】
【本当にこれから言葉の通りにしていくことを確約した者の誇りのような、あるいはきつい鎖から解き放たれたような、そんな清々しさがあって】
【ひとつの奇跡としてそこにいる彼は、群青色の双眸を真摯に相手に向けて「ありがとうございました」、と誰かの代わりに礼を述べる】

【(ひどい泣き虫であるのを今までずっと見ていたし実際に泣きつかれた、だからそういうのには一先ず引っ込んでもらうことにして)】
【(相手に目を覚まされたようなものだったけれど、肝心の相手の問題をどうにかしてやることは出来そうになくて、それなら)】
【(本当の天使の告知のように示す道は、きっと理由があってできないと相手が言っているのだろうけれど、それでも進んでほしいもので――)】
879 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/10/14(土) 19:47:36.72 ID:7R+OKBL00
>>878

【自分で自分は見られないから。だから自分もこんな風に泣いたのかと思う、だったら今までそれを見てきてくれたひとたちは、こんな気持ちだったのか、と、】
【結局ひどいことしか言ってないのは分かっているつもりだった、自分の話ばっかりしたくせにどれも楽しくない、多分相手にとっては嫌なことばっかりを】
【だけど言わないでいるのはもっとひどいことのようにも思えた、死ぬ間際の悲しさも、殺す瞬間の何もなさも、それから、約束を守ってあげられなかった時の気持ちと】

【それでも幸せになってくれと泣いて縋った神さまのなんて格好悪かったことか、結局そんなに優しいひとだったから、前の自分も彼が好きだったのだと思う】
【昔の話をあんまりしてくれなかったけど。ずっと遠くに見えた桜の木をもっと近くで見たいと言って庭に植えさせたことがあったらしい。ひどいわがままだなって、思って】
【だからってそれを叶えてくれるようなひとだからあんまりに素直に奇跡を願った、神さまだのに奇跡を願って、だけどそれは叶わなくって、】

わたしは……きょうだい居ないから、わかんないよ、"ここ"で身体と魂の生まれ変わってくるのを合わせないといけなかったから、
……えぇと、他のところに分岐されたら困る、そういうやつだって……*ちゃんが……、でも、いいな、……いいね、血の繋がってるの、へびさまだけだから、
家族っていいなって思うの、――このひとが居るからわたしが居て、わたしが居たから、このひとが居るんだって思えるような、羨ましいな、わたし、

【双子の気持ちは分からないし分かれなかった、ずっと一人っ子だったし周りにきょうだいの居る子もいなかった、――指をばってんにして呟く、だけど、すぐに興味をなくして】
【親も子もすでに閉ざされてしまったものだった、親は何よりもうずっと前に死んだし、子はありえないだろう。この大人にもなれない身体では、いまさら何をしても】

…………うんん、わたしは、だめだよ、叶わないし叶いっこない、……叶ってほしかった、けど、……大人だなんてあたりまえになれるものだって、思ってたけど、
いまさら大人になれたって一番見てほしかったひとは居なくなっちゃった。もう少ししたら音々ちゃんや天音ちゃんにもばれちゃうね。こんなの……もうすぐ二十五にもなるのに。
お嫁さんにはなれたけど……、今のわたしのどこがお嫁さん? 相手のひとが居なくなっちゃったのなら、それって、違うし――、
子供だって、……このひととなら、って、思ったひとも、居なくなっちゃった。もしそうだったら……へびさまも喜んでくれたかな、子供――好きだもの、でも、
そのうちおばあさんになって死ぬのも、無理だね、今まで何回も死んだもの、それに、大人にだってなれないのに――、

困難……じゃないよ、ルールも約束も破ったから。へびさまも仕方ないね、死んだひとともう一度会いたいって、ほんとは、ルール違反なんだって――。

【あまりに他人事めいてよかったねと思う、というより本当に他人のことなのだから、よかったと思うので精いっぱい正解だろう、なにより初対面で、友達でもない】
【それでいいと相手が思ったならよかった。祈る相手と共倒れした少女にとっては多分それはどこまでも眩くて、羨ましくなってしまいそうだけど】
【自分でそれでよかったと言ってしまったから、それ以上は言えなかった。いろんなことを言ったのはほとんどみんな本当だったけど、同じくらい、真逆の気持ちもあって】

――うん、よかった、音々ちゃんを助けてくれたひとだから……、

【何かふっきれたなら本当にうらやましかった。四年前に見たあの一面が黄金色になった銀杏の通りで、あの時に、この夢が全部叶うかもしれないと思った、そのときの】
【あのどうしようもない希望と期待のきらきらがまだ消えてしまってくれなくて。首に巻いてもらったファーのくすぐったい感覚まで、こんなに鮮明に思いだせるのに】
【だけどあれも結局昔のことで、ここまで来たら諦めた方が早くて、それなら約束も果たせるはずがなくって、それより目の前で子供のように怯えるひとを助けてあげないと】
【もっとずっと後悔するというのだけがずーっと耳元でささやいているから、――目の前でまた相手が男に戻れば、もう慣れたように、あいまいに笑ってみせて】
880 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/10/14(土) 21:38:57.58 ID:5INxdr5Bo
>>879

【話を聞きながら少しだけ首を傾げる、一つ浮かんだ実体のない雲のような疑問は段々と確信を帯びていって、それなら、曖昧な笑顔に対して】
【男も曖昧に笑ってみせる――のは難し過ぎたので、結局は変に口角を持ち上げてみた感じになるだけだったのだが、やっぱり妙で】

【(だめな理由がそれだけあるならだめなのだろう、と言うよりもきっと、相手自身がだめにしていっているような、そんな感覚だった)】
【(きっとこの子は一生こうして生きるのだろうな、とほんの一瞬胸の内に過ぎった言葉を、今まで誰かが口にしたことはあったのだろうか)】
【(所詮他人でしかない自分がそれを指摘したところで、せっかく礼に来てくれたのを変に拗らせて別れるのは、どうかと思うのだし)】

「……ご友人を、大事になさってください。下手な血縁よりもずっと頼れる存在を、失わないように――離れていってしまわないように」

【祭壇の上で膝を抱え背を丸めて、翼を身体に寄せた姿は繭のようにも見える。ただ天輪が明るいのと、群青色が光を抱えているのとで】
【人ならざるもののように見える彼は、その実ずっと人の感情について考えながら今まで話していたのだから、どこか疲れたような眠いような】
【そんな風に目元を擦っていた。他人の人生の話をたくさん聞いたからと言うのもあったし、その最中に覚醒したものもあった、だから】

「お見送りを……したいのですが、酷く眠くて……、申し訳ないのですが、お一人で帰れますか。大変失礼ですけれど、……」

【ゆっくり瞬く群青色の内から星のような光が消えていって、頭上の天輪も徐々に薄れて消えていったなら、翼もやはり背の中にずるりと収まっていく】
【そうしている過程にも、もういくらか船を漕いでいるのだから、唐突に襲うような類の強い眠気であるらしく、言葉は段々と途切れていって】
881 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/10/14(土) 21:53:16.19 ID:5INxdr5Bo
/追記抜けましたが背後リミットです
882 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/10/14(土) 22:35:43.67 ID:7R+OKBL00
>>880

【きれいな黄色の葉っぱが地面にたくさん積もって、絨毯みたいだった。それで辺り一帯があの落ち葉の甘い匂いになって、歩くたびに足元でざわざわ鳴って】
【繋いだ手が暖かくて嬉しかった。悲しくなるくらい鮮やかな思い出は、あるいは似ていたのかもしれない、ずっと、ずっと、昔に】
【あれをもっと近くで見たいとねだった子のために庭に木を植えさせた後の初めての春のこと、ただでさえ丸い目をめいっぱいに、丸くして】
【たった数輪しか咲かなかったのにひどく嬉しがって、今までとこれからの存在全部に刻みこまれてしまうくらいの鮮やかさ、いつか真っ白い蛇が感じたのと同じもの】
【あまりに鮮やかだったからその場所から動けなくなる、そういうありようのひとたち、一途だとか言えば聞こえはいいけれど、本当はもっと救いなんてなくって】

【(あるころ、この少女は生きてなかった。多分文字通り、動くけれど生きてない、体温もなければ呼吸もしない、そういうもの――だけど、そこから少し経って)】
【(まるでお人形に命の宿ったようにすべてが変わった、体温を獲得して呼吸を思いだす、そういう奇跡があった、それなら、多分、)】
【(ほんのもう少しだったのだと思う。あの時ふっとそれを手に入れたみたいに、多分、大人になる方法も、思いだすはずだった。ある日ふとあたり前に前髪がうざったくなって)】
【(それで何かに気づくこともありえたのだと思う、だけど――――)】

……どう、かな、音々ちゃんが嫌だって言ったら、もう二度と会えないよ、あんなに怖がらせちゃうなら……。
だからって天音ちゃんとだけ連絡取るのも、無理だよ。音々ちゃんはそういうのきっと嫌いだし、天音ちゃんも、――そういうことは、しないから。きっと。

【くたびれたみたいに視線が伏せられる、相手の言葉にうなずけたらよかったのにと少しだけ思って、それからすぐに、決めるのは自分じゃないから、と、心中で言い訳する】
【何度めかわからない溜息を吐いてからごまかすように首を振る、スカートの裾をぎゅうと握りしめて、柔らかい布地をうんとくちゃくちゃにして、それでも】
【どうしようもないように身体を小さくすくめて硬くする、ひどいストレスがかかっているみたいなしぐさで、眉をずっとひそめていたのだけど】

あ――うん、いいよ、大丈夫。こんな時間に急に来て、ごめんね、――、じゃあ、お邪魔しました。

【眠たいと言われてしまえばそれでその様子も終わるだろう。申し訳ないように笑って、笑うのに目だけはきっと笑ってなくって、】
【一瞬だけもう一度相手をじっと見てから背中を向けることになるだろうか、初めに濡らしてしまった背中はすっかりと乾いた様子で、髪の毛先があいまいに肩を撫ぜて】

…………あ、そう、あとね……次にへびさまを馬鹿にしたら、殺すよ。

【それから出口へ向かっていくらか歩く――その最中、ふと思いだしたように振り返るのは、相手の言葉についてのこと。"下手な血縁"だなんて、】
【彼女に血縁者は一人しかいない。親はとうに死んだしそれ以外の親戚は存在しないしし得ない。もちろん子供を産んだこともない、だから、唯一無二で、ただ一つ】
【相手は多分一般的な話をしたのだけど、それでも受け入れがたいものだったのだろう、まして愛したひとを喪って、友達まで無くしそうで、そういう状況だから】

【多分返事を聞く気はあんまりなかった。さらさらした毛とふわふわしたスカートを揺らしてそのまま出ていくだろう、なんにもなければ――だけど】
883 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/10/14(土) 23:00:58.19 ID:5INxdr5Bo
>>882

【何を言っても否定してしまうのだな、と重たい瞼で思う、嫌われているのでなければ他の人間にもそうして来たのだろうかとかすかに考えて】
【向けられた背中にどれだけのことを背負ってきたのだろうと思えるのは他人だったからで、それ故に、一番肝心だった配慮が出来なかった】

――、

【流石に丸められた目はもう何かの光を宿してはいなかったけれど、やがてゆるゆると閉じられて、相手が扉を締めた頃には膝に顔を埋めている】
【あの橋の下からずぶ濡れの子を連れてきた時よりずっと気力をすり減らしたような気がした、誰かと間違われているのではないかとさえ思って】
【あの赤毛の男の呪いだと言うなら恐ろしく効果覿面だと小さく笑う、あの子は怖がっていると言うし、自分は何かとばっちりを受けたのだし】
【でも――ちょっとだけ頭を持ち上げて、さっきまで相手のいた場所を見る。こちらを見て言い放った言葉の強さと、意志の強さを反芻して】

……お願いすれば良かった。

【いつ来るか分からないというのも怖さの一つだった、それなら今から殺しますと言われるだけまだ親切で、ずっと有り難くて、優しい】
【もう相手の足音も聞こえなくなった頃、ゆっくりと祭壇から降りて伸びをした青年は、置きっぱなしだったカンテラに明かりを灯して】
【礼拝堂内のヒーターや明かりを全て消して、それから隣の建物――普段生活している場所へと戻っていき。夜は静かに、更けていく】

/意識あったので反応(〆)です、ありがとうございましたー
884 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/10/14(土) 23:59:38.63 ID:7R+OKBL00
>>883

【手荷物らしいものなどなかった。鞄はずっと身につけていて、紙袋もとうに渡してしまって――それなら、出ていくのはずいぶんと早い】
【借りていたひざ掛けもわりかしきちんと畳んである。ただし端っこは微妙にずれていたから、あんがい大雑把な方らしいとも知れるのだけど、あんまり意味もないだろう】
【最後に扉に手をかければもう一度振り返るのは礼儀として、このまま無言で出ていくのもお行儀が悪いから――それを気にするなら言うべきでないことを直前に言ったけど、】

さよなら。

【金属質の声音はかえってこういう天井の高い場所の方がよく映えた、どんな顔をしていたのかは多分見る必要はないだろう、見たってたいした顔をしているわけではなかったし】
【それだけ言ってしまえばもう言うことはないという風に扉を開けて出ていく、そうすれば順当に足音は遠くなっていって、やがて聞こえなくなって――静かになって、】


…………ごめんね、へびさま、起こしちゃったね。怖い話じゃないよ、ただの……なんだろう、ね、眠っているほうがずっと楽しいお話だよ。
だいじょうぶだよ、きっとうまくいくよ、いろんなこと――、だけど。……今は、いいや、そういうお話しないで――、早く帰って、へびさま、本当のへびさまに会おう、ね。

昔よりもきっといいよ。櫻の神社からいろいろ持ってきたんだよ、へびさまの**も、それから、*の*も、……そうしたら、へびさま、前よりも……。
前よりも、うんと、丈夫になるよ。……宝玉もあげるね。……プレゼント出来るもの、たくさんあって、よかった、――だから、きっと喜んでね。

【――いろんな虫の声がした、それから、浅くて緩い川の流れるかすかな音と、それから、それから、鈴の音で喋る少女の声】
【だいぶ乾いた欄干に腰かけて一人でしゃべっている、子供みたいに足をぱたぱたやって、すっかり閉じた瞼は眼球の形で丸みを帯びる、口元はひどくあどけなく笑って】
【ふと目を開けてから視線を落とせば何か植物をうんとうんと執拗にすりつぶしたみたいな汚れが地面についている、それをよく分からない顔、不思議そうに見つめたら】

【そういえば――とふと思いだす。相手は多分なにか勘違いしていた、赤い花――ポインセチアのことなら、あれの花は黄色いのに】
【自分も昔は花的なものだと思っていたからいいかなとも思って、それから、ほんの数秒だけ、考えれば】

……一回もしなかった、なぁ、結婚記念日、

【あたり前に連想された日付で胸がぎゅうと絞られたみたいに痛くなる、それどころか――あれから一度も、その日を一緒に過ごしてないのも、すぐに気づいて】
【見上げた夜空はあの日みたいに澄んでなくってごわごわした真っ黒な雲が覆い尽くしていた、またすぐにでも雨が降りそうに、ひゅうひゅう吹く風も、冷たくて】
【それがうんとひどい仕打ちのように思えて数秒、ふらりと後ろへ倒れこむ身体は。あの時の黒猫が自ら飛び降りたなら、今度は、落ちてしまったかのように、頭から】
【水面に叩きつけられる瞬間に術式が包んでどこかに連れ去るほんの一瞬まで、色違いはじっと夜空を見つめて、】

【(――そもそも、信頼関係のない初対面の言葉をすぐに受け入れられるような、かわいらしい子供の時間は、あまりにも昔に終わっていた)】
【(それでも構わないと言い切るには今の暮らしは恵まれていて、だけど、ただ受け入れるには、あまりに何度も裏切られてきて、)】
【(大事なものから壊れてしまうといつか泣いていた。大事に握っていたはずなのに――いつもどこかで落としてしまってから気づくのは、多分、いやがらせだと思う)】
885 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/10/15(日) 00:36:16.82 ID:FDG19jxW0
/書き忘れ! お疲れさまでした
886 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/10/15(日) 17:07:20.01 ID:E6j+6QH2o
【通り沿いのカフェ・テラス席】

【昼過ぎ辺りにやって来てその席に座っていた女は、それからたっぷりこの時間まで、】
【どういう訳だか一つの新聞記事を見つけて以降ずっとそのまま、姿勢まで変わらなかった】

【黒いキャソック姿であるのが女性にしては珍しい、教会の司教クラスであるのだろうもの】
【灰色の長い髪、その前髪から覗く群青色の双眸は同じ記事を何度も何度も読み返していて】
【顔は姿勢以上に固まりきったままだった、はじめからそうなのだろう冷え切った表情】

……、

【それでも一つ舌打ちをしたなら、やっとまともな人間らしい動きだと言えた】
【記事の内容についてなのだろうが、まだ確認し足りないようにもう一度目を通していて】
【注文したまますっかり冷めたコーヒーの水面が、脚を組み替えた動作で久しぶりに揺れた】
887 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/10/15(日) 21:35:03.76 ID:IjYv8b3z0
【街中――児童公園】
【とんがったお月さまとまだら模様の雲の夜、公園の近くだからか、街灯までうんとあるなら、あんまり夜らしくない夜があたりにあって】
【まして現実にすっかり暗くなった公園から子供の声までしていた――ううんとうなってみたり、ときたま嬉しそうにしてみたり、そういう、声が】

――んんー、難しいわ! どうしてだろ? 全然上手にできないのっ! もうっ!

【だから誰かがそこに居るのに気づくのはひどく簡単だった、台風の来るたびに「次の台風で今度こそ壊れるな」なんて子供たちにからかわれるくらいの、おんぼろ東屋】
【そこのやっぱりおんぼろな椅子にこしかけておんぼろの机を使っている人影があった、――ちいちゃな女の子。それこそ声の通りに子供で、見たままで言うならば、就学前】
【机の上にはくちゃくちゃになった紙くずが散らばっていて、彼女自身はすごくすごく真剣そうに手元で広げた本を覗きこんで何か一生懸命しているのだけど】
【やがてそれもまた失敗したらしい。「もー!」だなんて大きな声、それから手元の本をがばっと取りあげて、じーっと熟読しはじめて】

【色素の薄いクリーム色の髪を高いところでツインテールに縛っていた、真っ黒のリボンでその根っこをきちんと隠して、それでも肩まで届く長さはゆらゆら揺れて】
【丸くって大きな垂れ目はよく晴れた真夏の青空の色、右目の下には毒々しい紫色で、蝶々のタトゥーが刻まれて、それがひどく柔らかそうな頬でよく目立つ】
【黒色と白色の布をたくさん使ったワンピースはどこかゴシック調で、ただもう少し甘いもの。羽織ったケープには兎の長い耳を模した飾りつきのフードが揺れ】
【真っ白の靴下と真っ黒のおでこ靴、まだまだ地面まで足の届かない高さでふらふら揺らされて――】

【「やさしいおりがみ」だなんて題名の本だった。現に机の上にはいくつかきちんと折られた鶴や風船、兎なんかが置いてあったりもしたのだけど】
【それより何倍もすでに失敗されてくちくちになった紙が積み上げられている、――だからきれいに折られているのは、きっと、誰かがくれたものなのだとも分かって】

"かどっこ"をきちんと折ればいいって、お姉ちゃん言ってたわ! でも……うー。

【それからまた本をにらめっこで、今度こそ――そういう様子でまた新しい紙を取りだして、せっせと折りだすのだけど】
【誰かにされたらしい角っこをきれいに折るというアドバイスにとらわれすぎている様子だった。角以外が壊滅しているのに角だけきれいに合わせようとしているように見えて――】

【――というより。こんな時間にこんな場所で折り紙だなんてしていていい年齢ではなかった。本人が至って真面目であればあるだけ、その、変な感じはよく目立っていて】
888 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/10/15(日) 23:29:44.21 ID:E6j+6QH2o
>>886

【――記事の内容は、先日この辺りであった殺人事件から発展して、意外な場所に終着点を描いていた。それがそのまま、彼女にも関係があって】
【ELYSIONといういくらか大手の服飾ブランド店の代表格三人が殺害されたのを機に、組織内部に調査の手が入ったことで明らかにされたのだが】
【今年の一月末に二十人以上の役員が姿を消していた。そしてその亡骸らしきものが、あろうことか本店の地下倉庫から一斉に出てきたのだった】
【そしてその首謀者が、まさに亡くなった三人だった――役員達を殺害した直後に代表格に座っていたのだし、分かりやすい構図ではあって】
【亡骸達の身元は奇妙なことに、想定される容姿以外はまるで役員達と一致しない。それどころか死んだ年代が遥か昔であったりもして、】
【本人だと裏が取れない以上は名前も出せないという、謎が謎を呼ぶような奇怪なもの――もっとも、彼女の興味はそこにはなくって】

【その組織が代表を替えて以降、幾つかの外部団体に莫大な額の送金をしていたことが判明した。違法に幻獣を交配し素材を出荷していた貿易商や、】
【能力者達を捕えてその力全てを無理矢理に魔石へと変えていた研究機構、そして、人為的に奇跡を起こすと称した人体実験を行っていた教会】
【それら全ての組織も芋づる式に検挙されたのだった。最後の組織に関しては、そもそも亡くなった三人がそこの構成員であったらしく】
【研究資金のために大手企業を乗っ取った、そんな図式が簡単にまとめられて、一面トップとまでは言わないにしろ大きな見出しをつけていた】

【特に教会についての記事を固まったまま何度も読み返していた彼女は、教会のトップも捕らえられて逃げ延びた組織の者がいないというのと、】
【名前こそ出ていないが、近々被験者であった誰かを殺す予定だったというのまで書かれているのを見て、教会は完璧に崩壊したと考えた】
【それなら、クリスマスまでに殺されるはずだったこの身は安全が保証されたことになる。昨日あんなに真剣に聞いてもらったのに、】
【少なくともあの時はこうなることを知らなかったから、仕方がなかったとは言え、あの相手には逃げる先も助言も貰ったし目も覚ましてもらった、】

【だから申し訳ないことをしたと思う、の、だけれど――まず一番に、非常に大きな問題が出来てしまって】
889 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/10/15(日) 23:30:16.23 ID:E6j+6QH2o
>>888

――今から、効くのでしょうか。キャンセルは……赤いお花、千五百株の……十二月まであと何月かは……でも、こんなことしたらもう買いに行けない……、ああ、

【思いっきり殺される気でいた、だからその日までに全財産を使い切るように段取りもしていた、それがまさか根本から崩されるなんて】
【本当はあの花は黄色で赤いのは花じゃないとか、多分そういう話を今聞けたら現実逃避として凄く良かったのかもしれない、そんな感じの】
【昨日相手の前で抗うことを決めて見せたとは言え、心のどこかで無理だと信じ込んでいたから花の手配もそのままだった、だからもう、】

――、

【いつも通りの舌打ち、それからやっと冷えたコーヒーを啜って、何か冷えたどころか酸化していたのに眉根を寄せて、すごく嫌な顔をした】
【そんな女に、馴染みの店主が困ったように笑って言う、「本当にうちの司教様は愛想がないねぇ」と――小さな街なら大体が知り合いで】
【もし予定通りに死んでいたならこの店主は聖人の誕生を喜んだだろうか、そんなことを改めて考えてみると、何か違うような気もして、】
【だったらまあ、全て解決ということでいいのかも知れない――そんなことを思って、それで初めて、生きていていいのかも知れない、当たり前のことに気付いた】

【(ジュリアス・カレンソン、あるいはジュリエット・カレンソン――彼/彼女は、今まで名だけだったのを、その日からそう名乗るようになった)】
【(シスターの叙階というのは稀なことであるのだったが、人体実験の被害者であることも考慮されたのだろう、片割れと同じ司教となった)】
【(カレンソンという姓には、あの日あの教会で話した二人の天使が関係していた――ラテン語で「存在しないもの」を意味するcarensに、)】
【(純粋な天使に「el」がつくように、人から天使になった者の名に付く「on」を持ってきた、つまりは「存在しないはずの天使」)】
【(そんな余談は、またいつか出会いがあれば伝えられるのだろう。もっともそこまで深い仲でもないのなら、言われた所でどうしようもないだろうけれど)】

【――彼女の中ではある意味で天啓のような言葉をもらった相手だった、だから、もう死ななくてもいい運命と、この身の天使につけた名を】
【あの菓子のお礼と一緒に、いつか伝えられたらいいな、と――懐にしっかり持っていた花の注文書を視界から外して、コーヒーに再び口を付けた】

/個人的な補完とかいろいろでした、長文すみません……!
890 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/10/17(火) 00:01:56.39 ID:DFNa81bro
【小さな礼拝堂】

【朝から続いていたステンドグラスの張り替え工事が、つい先ほど終わったところだった。天使二体の間が透明ガラスであったのを、】
【男と女の双頭を持ち六枚の翼を生やした奇妙な天使の図に――もっとも他の二枚も、目玉だらけであったり人が蟻ほどに描かれる巨大さだったりしたのだが】

……そう言えば、伝え忘れてしまった。あの処刑人が彼と同じ顔をしていた理由、――

【祭壇の上に腰掛けた司教は、煙草の灰を開いた聖書の中――正確に言うなら仕込み灰皿の中へと落として、どうしたものかと少し悩んで】
【取り出したスキットルの口を開け、幾らかのウイスキーで喉を潤わせてから、逡巡した視線を結局はまたステンドグラスに戻すのだった】

【アッシュグレイの長髪に碧眼、黒いキャソックの三十三のボタン――主の命数と同じ数のそれをきちんと閉めて、二十代後半ながら司教を務める彼は】
【先ほど呟いた事柄について何か考えていたようだったが、一度だけ読んで焼いてしまった本に載っていた事柄では、話すにも心許なく】

【(そもそも、あの時川にいた相手や、ここに来て話をした相手に今更伝えても仕方の無いようなもの。第一、そう大きな話でもないのなら)】
【(もう関わらない方がいいような、けれど死の運命が無くなったことは話した方が良いような、ただ今回思い出したことは――巡る思考は、酒で少し鈍っていて)】
891 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) :2017/10/17(火) 15:10:28.31 ID:znDOx4TVO
ここもしたらばもすっかりメンヘラの巣窟になってしまってまぁ…
辞めた人がまだ居るのが不思議だが
892 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/10/17(火) 19:07:54.26 ID:DFNa81bro
【小さな教会――裏口】

【小型の焼却炉から、ある本を焼いた幾らかの灰が取り出されていた。それを置いた隣には幾らかの砂――先日、川で消えた人間の残したものと】
【ヒトが一人、蹲っていた。紅茶色の赤毛をハーフアップにして、首に黄緑のスカーフを巻いた、黒いライダースーツ姿の背高な青年】

【それら三つを見下ろす司教――灰色の長髪に吊り目の碧眼、黒いキャソック姿の、倒れている彼と同じ年頃の青年は、背から六枚の翼を生やし】
【頭上には幾筋もの光を放つ天輪を頂き、そしてその双眸に幾つもの細やかな光を映したまま、手に光の塊――ラッパのようなものを具現化させた】

――"記憶の三分の一、命の三分の一、身体の三分の一によって、処刑人の血筋から、運命の編纂者が死の国から喚び起こされる"

【忽ち、三つのもの――灰と、砂と、そして蹲る青年とが強烈な光に包まれた。それに目を細めながらも、青年は詠唱を続けていく】

"初代・レヴィが承認し、二代・レイシーが承認し、三代なる彼が既に遣わされた奇跡の証を、カレンソンの名で証明する"

【砂と灰とが青年を覆い、光が全身に収束していく。その光は司教からも引き寄せられていて、苦しいのか少しばかり彼の口許が歪んだ】

"主なるかな、主なるかな、我が運命の岐路を照らしたもうたその御名を、三つのうちの三つによって、唯一なる主が目覚められる"

【そこまで言い切って、司教は地に膝をついた。肩で荒い息を吐いて、それからやっと目の前の光景を見て、薄く笑って――倒れ込む】
893 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/10/18(水) 17:24:44.41 ID:yA6VNuGVo
【櫻の国――宿場町】

【歴史ある古い建物を灯される明かりが美しく見せて、そんな情緒ある街並みの何処かから、琴や三味線の音が通りまでかすかに聞こえていて】
【まだそういう時間――お座敷で芸事のあるような頃合いには随分と早いのなら、その事前練習、そんなものらしく同じ節を何度か繰り返していた】

【――路地裏に面した窓が空いていた、一階の小部屋で行われていた練習は、覗き込むことも出来る――もっとも、あまり良い光景ではなく】
【十三、四と思しき女の子が何度も失敗をしているようだった。琴や鼓の担当の心配げな視線は、少女と壁際に寄り掛った人物とを交互に見ていて】

……止め、止めや――、お三味が下手くそで耳が痛くなるねん、こんなんで踊られへんわ。あの小娘替えといて

【ぱん、と手を打ち鳴らしてからの言葉に、しんと場が静まり返って、少し遅れて路地裏に面した裏口が乱雑に開け放たれた】
【現れたのは、肩までの白髪に黒い彼岸花を差した、葡萄色の瞳の――二十一、ニかそこらで、恐らく男なのだろう、吐いた溜息が低いから】

【派手な着物姿だった、それに白く塗られた肌と、吊りがちな目にさらに赤みのある化粧を上向きに施して、薄い唇に紅を差しているのでは、】
【黙っていたら性別が分からなくなるような、そんな彼は、閉めた戸の奥でしゃくりあげる泣き声に不快そうに眉を顰め、煙草に火を灯すのだった】
894 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/10/18(水) 20:19:30.58 ID:yA6VNuGVo
/>>893取り下げます
895 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/10/19(木) 16:41:30.06 ID:Zk4W4SqCo
【打ち捨てられた神殿】

【大理石の大きな柱が幾重にも並んで、けれどそのどれもが折れあるいは欠けるなりしてもう、いにしえの形をほんの僅かにしか残さないなら】
【そこにいる存在も昔の在りようを趣だけ残しておいたような廃墟となんら変わりはなかった。この砂漠の中に打ち捨てられた神殿の群れのよう】
【群青の空に欠けた月を仰いで、沈みかけたり歪んでいたりする幾つもの神殿だったものの中でひとつだけ、昔のままの場所で昔のままに、】

私はあの時、私自身を呪っていたのだね。五年も前になる……長かった。あの時の私は、何も知らなかった――愚かだった、

【声のこもる地下室はひどく冷え切っていて、積み上げられた石壁を揺らすよう地の底から低く響く声はそれがそのまま呪詛のようで、】
【四方に灯された火が揺らめいて映し出す影は細く長くあの世の者のように何人にも映って、それらが行進するように巡って流れていく】

【長い赤毛、色の抜け切ったような緑の双眸は右が散瞳左が縮瞳、白皙の肌の指先を紫色に塗って、長身痩躯は蹴飛ばせば折れそうな程】
【それを黒い衣に隠して、襟元のファーに顔を埋めるように俯く彼――二十六、七と思しきその相貌が見据える先には、古いまじないの跡があった】
896 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/10/22(日) 00:10:00.64 ID:cLt2r5Vn0
【街外れ――大きな道路に架かる橋の上】
【朝から続く雨がより一層強くなり始めた時刻、見れば足元のもっと下を行き交う車までまばらになって】
【転落防止にしてもやりすぎな気のするフェンスにを掴んだまま微動だにしない人影が余計に目立って見えた】

……見えない、なぁ、やっぱり、

【弱い力でフェンスを押した手がフェンスの弾力のせいでそれ以上の力で押し返される、傘からはみ出た手はほんの数秒で滴るほど塗れて、袖も重たく垂れ】
【人影の華奢なのに比べていやに大きな傘から空を覗いてはため息を吐いているようだった。今もそうして恨めしい目で数秒ほど空を見上げて――ちょうど瞼の上に雨粒が落ちれば】
【ぴゃっと肩を跳ねさせて傘の下に潜りこむ。それでまた一つ長い長い溜息を吐いて、それから、ぼんやりと足元にある道路――多分高速道路、を見下ろして】

光ってるものが動いてたら……流れ星って言える、かなぁ、――。

【無理やりなことを呟いて、また吐息が一つ。そのまま手慰みのように傘をくるくる回せば雫が辺りに飛んで。けれど、大雨の中なら、特別の被害もありえないもの】
【肩までの真っ黒な髪はときどき空を見上げるせいか濡れてしまって重たく揺れる、黒と赤で色の違う瞳は、ぴかぴか光る車のライトを追いかけて、ふらふら揺れ】
【ふわふわ膨らんだスカートのワンピースに分厚い布地のショートコート、ただそれも強い雨のせいか全体的に軽く濡れてしまって、重たげな色合いになって】
【足元もしっかりとしたブーツだけれど。ひどく濡れてしまっているようだった、どうやらある程度の時間、この雨の中で動き回っていたらしいと見える少女は】

…………はあ、戻らなきゃ。心配させちゃう――。

【最終的に諦めたのだろう、低い声で呟いて、それからふらりと歩き出す。ブーツの硬い足音は雨の中でも少しだけ目立って、それでも、雨靄に乱反射する光の中では、】
【その姿そのものはどこか紛れるようで。何か――多分流れ星――を諦めてしまえば、やはり寒いというように身体を縮こめて、走らない程度に、足取りは早かった】
897 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/10/22(日) 22:07:09.44 ID:5oFcbqAZo
【工業地帯――湾岸エリア】

【酷い雨風の中で、四方に積まれたコンテナにまで高波の飛沫が当たるような状況下であってなお、そこには二つの人影があった】

ふふっ、ねーぇ。聞こえるかしらぁ? あたし達ひどいザマよぉ、こんなこと止めましょうよ? ふふ、ふふふっ、

【一つは波打ち際近くに佇む女で、ドレスを水浸しにして、手にした帽子もいつ吹き飛ぶか分からないような、そしてそれを持つ爪先から】
【肩までのワンレングス・ボブの髪もルージュも一切の光のない瞳も何もかもが、黒一色で染められたその貌は、三十代半ばあたりのもの】

「……俺だって、止めにしたいさ。なぁ先生、――あいつじゃなくたっていいだろ。あんたに初めに会ったのは俺で、一番年上も俺なのに、」

【もう一つは、向かい合って十メートルほど先に立つ男。癖のある黒髪はひどいことになっているし、灰色の双眸は鋭く女を見据えて動かない】
【よれた黒のスーツ姿に、頬には牛の生首が乗った皿の刺青が入っていて、まして拳銃を女へ向けて狙いを定めているなら、明らかに堅気じゃない】

「――全部、俺が悪かったんだ。だから先生、あいつだけは勘弁してくれ、末の奴だって可哀想なのに、よりにもよってなんであいつが、」

【男の、拳銃を握り締めた手が震える。その代わりに、女の黒い口許が吊り上がった。雨の中で両手を広げて、浴びる全てを歓迎するように】

そうよ。あなたが悪いの。あなたが勝手に死んだから次の子にしたんじゃない、あの子の人生狂わせたのもぜーんぶあなたのせい、あなたが勝手だったから。
理由だって分からない? 可愛いからに決まってるでしょう? ねえ見た? 今のあの子の顔ね、すっごく悲しそうなの。一人ぼっちなの。二度と幸せになれないの。
あたしあの顔すっごく好きよ、だってきれいなんだもの――、あなたじゃ全然だめ、盛り上がらないの。分かる? "壊し甲斐"が欠片もないの。だって"何にも"ないじゃない

【拳銃が濡れた地面に落ちて、次に男が崩折れて地に膝をつく。打ち付ける雨の音よりひどく強く耳障りな高い女の笑い声が、響き渡って】
【雨降る空を見上げて踊るようにくるくる回る女を前に、男は浴びた水の重みに潰されそうな丸い背から、それでも顔を上げて、懇願する】

「頼む、頼むよ先生、一生のお願いだ……あんたの責務はあいつじゃなくて俺が全部持つ、だから、せめてあいつに時間をやってくれよ、お願いだよ――、」

【涙も雨も混じってしまえば分からない、だから必死に下げた頭から落ちる滴が何であるのかは、大きく震わす背から判別するしかない】
【年下の男がそうまでして頭を下げて縋ってまでするのを、女は心底楽しそうに眺めていた。眺めるだけで、どうとも返しすらせずにいた】
898 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/10/25(水) 12:30:37.58 ID:yasDKAggo
【通り沿いのカフェ・テラス席】

【見える景色といえば数日前までの雨で増水していたのがやっと落ち着いた川と、その先にある向かいの花屋――年老いた夫婦二人でやっているような】
【そんな長閑なものだった。それを眺めてコーヒーを飲む赤毛の男と、もう少し若い男が昼から二人でいる光景は、少しばかり変なものだったが】

「……教えてくださいませんか。どうして、私だったのか」

【そう問い掛けても視線も向けない赤毛の男にひとつ溜息を吐いたのは、灰色の髪を肩までのソバージュにした、きつい碧眼の青年――二十四、五かそこらの】
【黒いキャソック姿で黒檀があしらわれたロザリオを下げている辺り、神父か何かなのだろうが、対峙している赤毛の方はいまいち何者か分かりづらくて】

別に……死にたくないと言うなら、そのまま死なせる道理もないと思っただけだよ。私はそんなこと、思ったこともなかったからね

【腰までの赤毛に狐めいた緑の目は左右で色が違うように見えて、よく見たのなら片目づつ散瞳と縮瞳の奇妙な瞳孔であるのが分かるだろうもの】
【襟元に派手なファーをあしらった黒いローブ姿、組んだ足元からベルトの多いブーツが僅かに覗いて、カップをつまむ爪先は紫に塗られている】

キミと私は根本的に違うんだよ。私は生まれてきたくもなかったし、生きていたくもなかった。子供が欲しいとも思ったことはない
恐ろしいことだと思わないのかい。誰が好き好んでこんな苦行をしにこの世に来たがるのか――、不思議だよ。生きていたいだなんてのが、ね

【そう吐き捨ててじとりと向ける視線の先にいた青年は、またかと言わんばかりに目を伏せて舌打ちをする、こういう目を前にも向けられたから】
【「当て擦りならもう受け付けません」――そう言い残して、先に店を出ていった。店を出て通りを行く青年とテラス席に残ったままの赤毛で一瞬視線が交差して、】
【それがひどく恐ろしく睨み合っていた、というのは余談だったけれど――小皿に積まれた誰も使わない角砂糖がひとつ、前触れなしに転げ落ちた】
899 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/10/27(金) 18:44:25.13 ID:6MXmf4/Zo
/>>898でどなたでも! お待ちしております〜
900 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/10/28(土) 17:16:55.32 ID:5bjbl/r5o
【小さな礼拝堂】

【小さな街の小さな教会、それも明日の日曜日のミサのために整然と長椅子を並べてあるので、いつもよりずっと狭く思えるような内部】
【外からも見える煌々と灯された明かりは中で何かをしていますよと言うようなもの、ただし扉は施錠されておらず、実際何も行われていない】
【目だらけ、双頭、巨大。そんな奇妙な三天使のステンドグラスを見上げる男の座る場所が祭壇の上なのだから、退屈凌ぎにしては冒涜的で】

――神を信じられることがあるとするなら、同じような相手に引っかかるよう作られていることくらい、なのだけれど。どうにかして欲しいものだ

【低く呟く声の主は腰までの長い赤毛で、伏せがちな緑の双眸は片側が散瞳、もう片側が縮瞳の特徴的なもの、左右で色が異なるようにさえ見えて】
【暗褐色のファーを襟元にあしらった黒いローブの袖先から覗く白皙の手指は、長方形のような長めの爪をつやのない紫に塗っている】
【祭壇の上に持ち上げた脚はローブの裾からベルトの多いブーツが覗いて、それを抱えるように背を丸めた男は、静かに両の手を震わせていた】

あの灰髪が銀髪で、群青の目が薄青だったなら、――少しは君に、似ていると思うんだ。嗚呼、会いたい……私の、私だけの、■■■

【響きだけなら可愛らしいような、ただ女性名にするには聞き慣れない――もっと無機質なものの名前らしかった、それを呼ぶ声も震えていて】
【震える手の平から一つづつ指折って何かを数えていく、それがちょうど握り拳になってしまえば、思い切り祭壇の上に叩き付けて――弾みで燭台が転げ落ちた】
【始めから一貫して彼は周囲のことなど意識の外であって、どこから誰に聞かれていても気がつかないのだけれど、流石に重たい銅の落ちる音でふっと我に返り】
901 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/10/30(月) 12:37:54.34 ID:xnLqxrgUo
【薔薇庭園】

【中央に噴水を配した煉瓦の道と白亜の屋根付きベンチが点在する庭園は、様々な種の薔薇が季節を問わず咲き誇る不思議な空間となっていて】
【そんな中に一点の墨を垂らしたような黒ずくめの女がいるのが、なにか不吉の象徴のようで白いベンチにも並び咲く薔薇にも馴染まない】

酷い匂い……吐いちゃいそう。冬になったら全部枯れたりしないのかしら、その方がずっと綺麗だわ。それか真っ黒な薔薇とか、――

【ワンレングス・ボブの黒髪に黒い帽子を被って、目元が隠れた代わりに黒いルージュを引いた口許が分かりやすく微笑むような三十代の女】
【黒いモーニングドレス姿は葬式帰りのようどこまでも黒一色で、女の死神というものがいるならこんな感じかも知れない、そんな出で立ち】

灰色の枝葉で、茨の棘が鋭くて、真っ黒な花を咲かせるような……レイシーって名前がいいわ、私の為の私の薔薇――欲しいわねぇ、

【ざわりと強く風が吹いて、爪も黒く塗られた手で帽子を軽く抑えた女の膝の上に、首ごと外れたらしいクリーム色の薔薇が転がって】
【黒い指先はそれをつまみ上げて、手の中でぐしゃりと潰してしまって――未だ強さの残る風にばらばらと吹かせて、すぐにベンチで手を払い】
902 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/11/01(水) 03:34:49.17 ID:XVeACSC10
【街中――通りに近い公園】
【冷たい風がざあざあと木々の葉を揺らす音が支配する夜の時間、明かりといえば街灯か月明かりだけになって、しばらく後】
【夜らしい鳥の声はしない代わりにいろんな虫の声が重なって聞こえる中、――ときどきがさりと交じるのは、ビニールと紙袋のこすれるような音で】

――――っ、足りな、

【そういう不自然な音が交じるようになってから十数分は経ったろうか。それであるタイミングにぐしゃぐしゃぐしゃとひときわ大きな音をさせて】
【それから夜に紛れた声はどこか金属質の余韻が残る涼しげなもの、櫻の鈴にも似た声が、それでも、どこか切羽詰まったような色合いで発せられ】
【続いて乱暴に地面を踏みつけたような足跡が続く、そのわりに混乱しているようにあちらこちらと定まらず歩く人影は、誰かが見ればひどく華奢なもの】

【肩に触れる長さの黒髪は人影があちらこちらと動くたびに付き合ってやるように揺れる、不安定な目線は黒と赤の色違いであるのがよく目立って】
【しきりに手を添える口元はぐうとへのじに下がってときどき何かを呟くけれど不鮮明で聞き取るのは難しく】
【鮮やかな赤色のワンピースは本来のひざ下丈より短くなるくらいにパニエを詰め込まれて膨らんで、そこから伸びる足の細いのが棒のよう】
【分厚い布地のケープと、それから黒のタイツと。足元のショートブーツは踵が鋭く尖ったもの、それが踏み固められた地面を鋭くえぐって】
【これで吐息が白くなければ幽霊だとも見間違えられそうだった、ましてこの時間に不釣り合いの少女であるなら、いっそうおかしく見え】

お腹空いた……、お腹空いた、お腹、……うううう、もう、もう!!
――お腹空いた、足りない、…………。

【言葉通りであるように薄ぺらの腹を抱くようにして彷徨う姿は、けれど、時間や行動の奇妙さとは別に】
【もし彼女を発見出来るほどの距離に誰かがいるのなら、多分――さっきまで少女が座っていたベンチ、そこに放られたままのもの】
【ここから歩いて数分のところにある二十四時間営業のファーストフード、ハンバーガー屋のごみが、七人分か、八人分か、あるいはもっと積み上げられているのに】
【ふらふら歩きながら所持金を確認して声を荒げるのだから――と、その目はやがて一点に魅入られたようになって、その通り足まで動くなら】
【やがてたたずむのは公園の片隅に植えられた秋咲き椿の元、白に赤い絞りの入った花を毟りとる指先の華奢と白さが花の豪奢さでよく目立って】

【けれど愛でる――ではなかった。ほんの一瞬だけためらったような指先も次の瞬間には毟った花を口に運んでいる。しべは不味いのか眉を顰めるけれど】
【それでもしゃくしゃくとかじる手を止めないのだからどうかしていた。やがて一輪をきれいに食べてしまえば、また、手を伸ばして――】
903 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/11/02(木) 19:47:02.43 ID:nKl70ajIo
【櫻の国――とある街】

【川沿いに季節問わずの桃の花が咲き誇り、中華様式の建造物が所々に建つ観光地としても名高い地域、その客の受け皿になるこの街は】
【夜ともなれば沢山の灯籠を伽藍の軒先に吊るして、立ち並ぶ酒や料理の店先に、川沿いの景色を眺めながら飲み食いできる机が雑多に並べられている】
【喧騒で賑わう内の一つ、空の盃をどんと卓上に叩き付けて、もう幾らか酔いの回ったらしい壮年の大柄な男が、日焼けした顔をニヤつかせ】

「――何がTAだ、ポーションがぶ飲みし過ぎて便所が近いから急いでただけだろ? しかも前衛が前の嫁って、相変わらず噂に漏れないイカれ野郎だなぁ」

【ターバンを巻いた胡散臭い成りながら、この街一帯で幾らか名の通った商人ギルドのマスターであるのだが、その男と差しで飲んでいる人間は】
【そもこの辺りであまりいない白皙の肌、腰までの赤毛の髪、そして緑の双眸は右と左でひどく瞳孔の開き幅が違う――年は二十五、六辺りだろう男】

折角気分が良いのだから、昔の栄光に浸らせてくれないか。あと前から思っていたけれど、その上手いこと言ってやったって顔がね、不快だよ

【二十は離れていそうな相手に、呆れ顔で昔を語る赤毛の男も妙なのだけれど――そう返されればどかりと笑うターバンの男は、ふと髭の伸びかけた顎をなぞって】
【しみじみと目の前の相手を見た。その視線に彼は心底嫌そうな顔をして、長い紫の爪先で盃を摘んで口許へ運び、追って黒いローブの裾で口を拭う】

「――しっかしお前、本当に歳食わないなぁ。こうしてしみじみ見ながら昔を思い出してると、ほんと驚きだぜ。何一つ変わってねえ」

……私には、お前が若い頃に癒術士だったことの方が余程驚きだがね。お前のヒールなんて、受けたら即死だ

【また一際どかりと大きな笑い声が響いて、それに両手であからさまに耳を塞いで見せた赤毛の男は、桃の花弁を流していく川へと低空飛行な視線を遣って】
【先程から何度か振動している端末――小言の煩い司教からの帰宅時間を問うそれを見てやるでもなく、今日のこの会の趣旨が何なのかについて考えていた】
904 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/11/03(金) 19:02:48.68 ID:ulD5lOnqo
【小さな教会――通りに面した門】

【石のアーチをくぐり抜けた先にある敷地内の礼拝堂は煌々と明かりが灯され、中からは少年合唱団の歌声が通りの方までかすかに聞こえ】
【ハロウィンが終わればあっという間にクリスマスの仕度と言わんばかりな曲が続いて、そのうちスレイベルが賑やかに鳴らされ始める】

【――そんな折だった。アーチに背を預け組んだ腕の中で一定のリズムを刻んでいた指先が止まって、長らく俯いていた頭をかすかに持ち上げたのは】
【腰までの長い赤毛に、左右で瞳孔の開き幅が極端に違う緑の目をして、衿元に灰色のファーを蓄えた黒のローブを纏う、背高な若い男だった】

鈴が、鳴る……――?

【掠れた声で小さく囁くように、陰鬱な音域でなぞった歌はその一節で終わって、彷徨うような視線はそのうちに組んだ腕を解いた左手へと】
【それから不意に片方の耳朶に触れて、自分でもそうした理由を判別できないかのように、触れた手をそのまま頭までやって、髪をぐしゃりと掴み】

やめろ、――やめてくれ、

【スレイベルが陽気にしゃんしゃんと鳴って、その音ばかりがいやに大きく聞こえて、朗らかなボーイソプラノはいらないものだと遠退いていく】
【――いつしか彼は両の手で頭を押さえていた、と言うよりもぐしゃぐしゃに髪をかき乱していて、蹌踉めく足がふらりと通りに出ていって】
【完全に錯乱した人間のそれだった、しかも血走った目は奇妙なもので、頭を抑える手に紫色に塗った長い爪がぎりぎりと嫌な音を立てて――】
905 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/11/04(土) 21:05:48.33 ID:kS5FZoj40
【街中――】
【夜のお天気雨、満月が出ながらに降る雨がぱたぱたと冷たい音を鳴らしていた、そのせいか気温までもがぐっと冷え込んで】
【そのせいか通りには歩くひとも少ない、あるいは――このあたりが街の中心から外れているから、というほうが大きいのかもしれないけれど】

…………もう、おいしくないや、この子――、

【昼のみ営業する店の前。よく行列のできるような店舗なのか置かれたベンチに勝手に腰かける人影が、夜によく通る声――鈴によく似た声で呟いて】
【ぎしぎしとひどくきしむ音でベンチに身体を預けて。それから頭が重たいように後ろに垂らす――、それで揺れる毛先は男にしては長く、なら、高い声と合わせれば】
【どうやら女、それも少女であると知れるようだった。事実答え合わせのようにその服装は見間違えようもないほどに女物であって、ふわふわ膨らんだスカートの上】
【そこに置かれた手の中にはかじりさしのりんごが握られていて――そのかすかな匂いが、雨の中にかすかに混ざりこみ】

【艶のある黒髪は肩を撫でる長さ、そのうちに本当に頭が重たかったように戻せば、瞳が左右で色の違う黒と赤の一対であるというのも見てとれて】
【透き通るように白い肌はすでに寒さのせいか頬と鼻がうっすら赤くなっていた、その上から施された化粧は、ただ、顔のあどけないのをごまかしきるには薄く】
【袖の広がった深い赤色のワンピースは見せかけだけのコルセットで締められて、それもあってか広がるスカートは綿菓子でも詰めたように膨らんで丸く】
【そのかわりに羽織っているケープは布地がうんと分厚くて重たそうなもの、ふちにフェイクファーをあしらって、その毛先が雨粒の水玉をときどき捕まえて、きらきら光り】
【お行儀悪く投げだした足元は厚手のタイツと暖かそうなデザインのショートブーツ、――それから、ベンチの横には最寄りの食料品店の袋があって】
【目についたもの――もっと言うと目についた果物を買いしめてきたような中身が、重さにへたれた袋からあふれてしまっていて】

次は甘いのがいいな――……、

【少し前から降りだした雨はあまり強くない、けれど、ひどく冷たく、なにより寒い夜なら】
【かろうじて屋根のしたにある程度のベンチでため息をついて果物をかじる少女の姿はなんとも奇妙に見えて】
【それでもがりがり小気味いい音でりんごをかじっているのはどこか有無を言わせないようなようすもあって、ただ――】

飽きたな……、

【少ししてひとつ食べ終える少女の手には何も残らない、何より見ていれば芯とか種まで食べているようだったから。やっぱり、変なひと――で、】
906 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(青森県) [sage]:2017/11/05(日) 09:33:36.56 ID:bcdxNbo0o
【路地裏】


〜〜〜〜〜♪

【一人の男が道端の木箱に座って調子っぱずれな鼻歌を歌っていた】

【綺麗に刈り上げられた側頭部、ツンと縦に伸びた金髪とその髪型は所謂ソフトモヒカン】
【両手の十指のうちいくつかに填められた眼球や口など趣味の悪い形のシルバーリング】
【そして野山を舞台に巨大な骸骨が描かれた絵が刺繍されたスカジャン】
【男はまるでチンピラのような風貌だ】

【しかしただのチンピラにしては異様な点が、一つ】

【男の右腕からは一本の触手が生えていた】


「ぅ、ぁ………っぁ、…ぁ、ぁ…っ」

【チンピラ男の腕から伸びる触手の先端】
【其所には若い女性が触手に首根っこを絡みつかれて宙に吊り下げられていて】


「…ぁ、ぁ…っ!ぅぁ、……!」

〜♪〜〜〜♪〜、ヒャヒャッ!

【女は触手の拘束から逃れようと必死にもがくが】
【抵抗空しく男の笑い声を皮切りに触手の締め付けは一層強くなっていく】
907 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/11/05(日) 21:10:25.09 ID:Waw4zZW40
>>905
/これ再掲投げておきますー
908 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/11/06(月) 23:30:09.26 ID:xivQzyLF0
【人里離れた場所――遺跡群】
【見渡す限り澄み切った空の夜だった、街明かりはずっと遠く遠く、わずかに明るく染められた空の下に、ビル群が伺える程度で】
【それならこのあたりは暗さと静かさと寒さが満ち満ちていた、何よりこの場所自体、研究されつくした結果に特に重要なものが出なかったからと放置され続けていて】

――、――……、……――。

【だからこそ。もし誰かが訪れればそれに気づくのは容易いだろう、高く澄んだまだあどけない女の声と――それから、巻きあがる魔力の煌めき】
【桜色に鮮やかな紫色が交じりこんだ特徴的な魔力色、それぞれの色が水の属性と風の属性を湛えて、そしてどちらもがこの場に影響すら与えるほどに、色濃く】
【水の属性を持つ魔力はこの場に踏みいればまるで水中に居るかと錯覚させるほど、風の属性を持つ魔力は、それそのものが空気に紛れて動くのが風になって、ごうと鳴り】
【――月と夜空がよく見える場所に舞台のような残骸があった。その舞台の上、見ればどちらもまだ成熟しきらない少女のような人影が手をつないで二つ、なにより魔力の源もここ】

【一つは真っ黒い髪の少女だった、柔らかいチュールをヴェールにこしらえた髪飾りが目もとまでを薄く隠して、けれど向こう側の瞳が色違いであるのまでは覆えず】
【黒色と赤色の瞳をしているのがかすかに伺えた、隠されていない頬や口元には薄く化粧が施されているのも見えて、だのにそれが余計に、あどけない顔つきなのを強調し】
【すっぽり身体を隠す長さのマントは布地が分厚くて重たそうなもの――だけれど、ごうごうと風の吹くこの場所ではあまり意味もなく、風のままに巻きあげられ】
【それがひどく寒いように身体を縮めているのが遠くからでもよく目立った、赤色に生成りのフリルをふんだんにあしらった服、裾の膨らんだワンピースもばたばたと揺れて】
【服装がばたばた揺れてシルエットが大きく不安定になればなるほど足の細いのも浮き立つ、膝まで届く丈のブーツは紐をきつくきつく編み上げたもので】

【もう一つ――もう一つもおそらく少女だった。黒髪の少女よりもさらに小さな背丈をした人影、髪が冗談のように長くて、その鮮やかな紫が、場に散る紫と同じ色合い】
【だけどこちらの人影を注視するのはできないだろう、なぜって、誰かが訪れてその二つを見つけるのと同じ瞬間に、夢か嘘か幻のように、その姿はすっと消えてしまう】
【だから残されるのは黒髪の少女だけ――なのだけど】

わ。え? 

【最初につないでいた手が力のこめ先を見失ってつんのめる、一瞬ぐらっと体勢まで崩しかけた黒髪の少女が、慌てたようにたたらを踏んで、目を丸くする】
【それがきっかけになったように場に満ちていた魔力までが霧散する/してしまうのだった、呼吸ができる以外水中のように重たげだった空気も、ごうごう吹く風も】
【すっかりとなくなって――取り残されるのはいまだに状況を分かりかねているのか丸い目をしている少女と、それから、きっと訪れた誰かと――?】
909 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/11/08(水) 17:39:29.28 ID:3t8oBVmq0
>>908
/こちらで再掲しておきますー
910 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/11/11(土) 14:43:28.62 ID:+D069f1Qo
【小さな街――教会近くの路地】

【煉瓦の敷き詰められた道を歩く男女、そのどちらもがこの街にそぐわない装いであるらしく、通りすがる人々の視線を浴びていた】
【男の姿はいかにも櫻の国の人間と言わんばかりの黒い烏帽子に同色の狩衣と指貫袴に下駄、扇を手にして、癖のある長めな黒髪と同色の瞳】
【女の姿は、背高で背に大剣を負っていて、マントの中はビキニアーマーに包まれた筋肉質な体型。ウェーブの掛かった黒髪と緑の瞳、褐色肌で】

「ハイ、到着。ここにいるよ、君の元・旦那様――痛ったい!! ちょっと、烏帽子が潰れちゃったじゃないか……」

一々言うな貴様は、アレとそう言われる程の付き合いは無いのだからな。それよりお前、何故ここだと判る? この手の場所は、奴とほぼ無縁だが――

【神職らしい男は、アマゾネスめいた女の一撃でほぼ修復不能と化してしまった烏帽子を何とかしようとしながら、女の見る先をちらと見遣る】
【教会。一見ごく普通の、こういう小さな街には必ず一つはあるようなそれ――女も同じく視線を遣って、納得出来ないように首を傾げるのだけど】

「さすが、前の奥様はよくご存知でらっしゃる――嘘だってば、もうグーはやめて……彼がね、カヨの跡を継いでるからさ。嗅ぎ慣れた匂いだからね、」

カヨ? ……ああ、あの黒い亡霊か。レイシーと言ったが。あの女の跡を継いだ? 奴もついに亡霊になった、そういう事か? なぁ?

「いや、何で嬉しそうなのかな……違くて、カヨのしていた仕事を継いだのさ。運命の編纂――とりあえずその一人目が、ここの神父って訳」

【「じゃあ、僕は帰るから」――とりあえず烏帽子を被ればもう用は済んだとばかりに、男の側に引手のいない絢爛な牛車がどろりと現れて】
【御簾を上げていそいそと乗り込んでしまえば、女が言葉を掛ける間もなく車は虚空へがらがらと走っていってしまう。その後を追うように、】
【半紙を人型に切り抜いたものが慌ててぺらぺらと吹っ飛んでいった。一部始終を呆れたように見て、女は大剣を掴み掛けていた手を下ろし】

……英霊とやらも随分、暇らしいな。あれが本当に過去の大戦で散った兵士なのか……? まあいい、あのマザコン男を頭から半分に下ろすのが先だ

【そう言って、教会の敷地に入るアーチを潜ろうとした時だった。背の大剣の柄が引っ掛かって、頭を屈めてみてもあまり意味がなくて、】
【そもそも大剣の長さが斜めにしてもアーチを潜れないようで、背から下ろせば大きな刃が通りに向いて、危ない人になってしまっていた】
911 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/11/12(日) 11:08:27.55 ID:YNFpHoaSo
【櫻の国――廃村】

【庄屋の蔵があったり寄合所が作られていたりと、かつては賑わっていたのだろう小さな村は、田も畑も荒れ野原と化していて】
【そんな中を、街道の跡を辿って明確な目的地へ進んでいく一人の大男。歳の頃は五十かそこら、修験者姿で、山篭りが長いのか髭を蓄えている】

おっかしいのう……、確かこの辺りに住んどるっちゅう話じゃったが。しっかし、まるで誰もおらんではないか……

【一軒の焼け落ちた家の前で溜息をついて立ち止まり、懐から折り紙大のしわくちゃの紙を取り出し。墨で認められた地図と、周りとを見比べて】
【視線がまさかと疑うように焼けた家に向いた、それからまた地図を見て、もう一度焼けた家を見て――盛大な溜息が溢れ、地図を丸めて放り】

もう引っ越しとった、って訳か……どうしたもんかのう、あれの行きそうな場所なんぞ、他にとんと見当が付かんし……

【石垣の跡にどかりと座り込んで、茫洋と広がる田舎の景色を仕方なしに眺める。そもずっと昔に人などいない里では、奇妙な言動だったが】
912 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/11/13(月) 18:10:25.56 ID:4Llu8Wlpo
【小さな公園】

【街灯に照らされたベンチに、一人の青年が腰掛けていた。長い銀髪を高い位置で括って、黒いジャージ姿の傍らにはコンビニ袋が一つ】
【反対側には画面が明るいままの端末を置いたままで、真紅の双眸はただじっと手の中の小さなハート型の銀細工を見詰めていた】
【途切れがちな幼いメロディはそれから発せられているらしく、けれどもう寿命が近いのだろう、歪に音階を外していて、晩節を汚すよう】

【――けれど、彼は頑なにそれを閉じようとはしなかった。穴が飽きそうなほど見つめていたのは、開かれた銀細工に貼られた小さな写真】
【青年と、同じ年頃の女性と、小さな女児が写っているそれ――もっとも、背後に回りでもしないと見えないそれは、既にぼろぼろで】
913 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/11/18(土) 23:42:54.72 ID:iIQvL1eD0
【街中――落ち着いた通りに面したカフェ】
【少しをいくらも通りこして古びた見た目であるのは何かもっと古い建物をそのまま使ったからだという店舗、目立つ位置に硝子の角灯がつるされて】
【いろんな色の硝子を使った角灯の光がきらきらとこれも古い木の扉に映りこんでいた、――その扉がぎいいとひどくきしんだ音で、内から開けられれば】

――わあぁ、さむっ、

【店内からはわずかに流行り曲をジャズアレンジしたものとおそらく店員のだろう「ありがとうございました」の声】
【それよりよっぽど大きな音で聞こえてくるのが――今まさに店外に姿を現したひとの声、思わずと言った風に漏らす声はどこか鈴の音に似る金属質】
【コートのボタンを思わず確認してから全部閉じているのにもっと布地を寄せて身体を縮める、ぎゅうっと自分を抱きしめるようなしぐさは、ただ、その上の中にあるものを抱きしめて】
【近くにある本屋のものであるらしかった。ただありがちな本にしてはいくらも大きくて重たそう、それに分厚くて――それこそ図鑑のようだが、中は見えず】

【艶のある真っ黒な黒髪は肩に届く程度の長さ、頭のてっぺんが寒いのを嫌がったみたいに、フリルと無意味に編み上げたリボンで飾ったヘッドドレス、そのリボンが】
【つーっと顎の下まで降りて首元におっきなリボン結びで結わえられていた、途中で通り過ぎる顔はあどけなく、ただ瞳が左右で色の違う黒と赤であるのがよく目立ち】
【深い赤色のコートは分厚い布地ではあるものの防寒よりもデザインを重視したようなもの、なにより膨らんだスカートに合わせるためのような"余地"が十分に作られて】
【実際よく膨らんだスカートを詰め込めばコートごとふわふわ膨らんで彼女のシルエットの印象を大きく変える、だけれど、伸びる足の細いのを見れば】
【声の高さと服装も併せて、十分にまだあどけなさが残るころの少女であると推察はできて――なによりその通り、店の前でたたずんで】

さっきまでこんなに寒くなかったのに……。あれ……でも――、わあ、そっか、夕方くらいだったかも……。

【だいぶ迷惑な客だったらしい――とはもうどうでもいい話だけれど、そうしてしばらく寒さに視線をきょろきょろ動かしていた彼女は】
【最終的にふ、と、思い立ったように視線を空へ向ければ――、真っ白い吐息を一度二度とふわふわ吐きだして、】

ああ――でもお星さま、きれいそう、だなぁ……。

【存外素直であるのかもしれない、思いついたことを思いついたままに声に漏らして、それで、こつこつと歩きだすから】
【言葉通りなら、星のよく見える場所を探すつもりだろうか、――だけれど、その視線は歩きだしてからも数秒は空のほう――うんと高くにあって】
【もし誰かが進行方向に居たのだろしても、その反応はどれだけ頑張っても一瞬遅れてしまいそうで――少し、危うかった】
914 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/11/20(月) 23:37:58.18 ID:s52N9Skk0
>>913
/こちら明日の夜くらいまで再掲で……
915 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2017/11/21(火) 13:01:45.32 ID:+kiiRU7fo
【紅葉が染める池】

【使われていない古寺から庭園へ掛かる朱の橋と、廊下のすぐ下に広がる透き通った池に映る紅葉がすっかり見頃を迎えた季節】
【池の上に散る椛とよく似た夕暮れ色の長い髪を散らばせて、白に朱、銀鱗や金鱗の鯉達が泳ぐのも厭わないまま】

誰がカルタフィリスだ……、馬鹿

【普段ならあまり言わない明確な罵倒を口にして、ぷかりと身を浮かばせている縦に長い姿はとりあえず水死体ではないらしい】
【日陰の葉に似た色の双眸は右が散瞳左が縮瞳、左右で色が違うようにさえ見える極端な違い方をしていて】
【長めの爪を紫色に塗り、黒一色にベルトの多い装いをした、二十五、六の白皙の青年。以降は何を呟くでもなく、水面に浮かんだままだ】
916 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/11/21(火) 22:51:19.75 ID:XDdCp5oX0
【街はずれ――何年も放置された休耕地】
【時刻は明け方、肌に突き刺さりそうなほどに冷えた空気と、遠くでは、ほんの少しずつ幕をあげるように朝焼けが広がりつつあって】
【足元には一面に群生したホトケノザ、うんと小さな花は、それでも、あまりにたくさんあるからか、地面を淡く紫で敷き詰めて】
【それでもようく目を凝らせば子供や犬の足跡や近道をしようとしたように突っ切る誰かの足跡、そういうのがいっぱいあって、それが余計に"らしく"見せた】

――――……、……。

【さあと冷たい風が吹き抜ければ声になるほどでもない吐息が漏れる、真っ白になった色合いにはきらきら遠い朝日がかすかに反射して、どこかへ消えて】
【寒がったように思わず縮められた身体、その足元がせめて寒さを緩和したがったみたいにぱたぱた無意味な足踏みをして、ただ、柔らかい土にさくさくと靴を突きさすばかり】
【それでもそこに居るのは何かを待っているようだった、あまり高い建物のないエリアなら遠くの朝日までよく見えて、――そして、彼女の視線は、ずっとその方を見ていた】

【――真っ黒い髪はまだうんと新しい太陽の光に照らされて一本一本までがきらきら光るから、よく手入れされているのが見てとれる】
【左右で色の違った黒と赤の瞳、まだあどけなさを残す顔の少女は、そのうちの赤い方――右目だけをなんだかまぶしくて仕方ないように、手で隠しこんで】
【ふわふわ首に巻いたマフラーは相当長めのものであるらしい、彼女の口元まで隠しこんで、ただ、その隙間から白い吐息が漏れて、吐息の水滴がときどききらきら光り】
【濃くて落ち着いた赤のワンピースコートは袖や裾やフードのふちにたくさんのファーをあしらったもので、きちんとボタンを止めた胸元と、】
【それから下の服に押し上げられて翻る裾が真逆の風で少しだけおかしかった、その裾から溢れるのはいやに布地を詰め込んだように丸いスカートで】
【薄手のストッキングに膝までのロングブーツ。その足元にはあんまり汚れを気にしないのか、彼女のものだろう鞄が投げ出され】



【どこか遠いところでかすかに烏の鳴き声がする、だけれどそれ以外はどこまでも静かで、なら、どこか世界が滅んでしまった後のような気さえする】
【気づけば空は何色もが積み重なるグラデーションになっていて、そういう光景だから――余計に紫色の花で埋められた場所に立つ少女の姿がよく目立つよう】
【朝早いけれどそろそろ出歩くひとも出て来る頃合いだろう、――もし誰か通りがかれば、あわてて不審者じゃないように振る舞おうとするのが、かえって悪目立ちしたけれど】
917 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/12/02(土) 19:35:22.77 ID:WmNOnE8d0
【街中――自然公園】
【赤くなった葉、黄色くなった葉、いつもと変わらない色の葉、ぐちゃぐちゃに入り交じらせて、それなら、上から見ればひどく賑やかだろう場所も】
【けれど所詮人間の背丈で見ればいろんな色の葉っぱより地面でガサガサになった落ち葉の方がよく目立つ、かすかな風に、ざわりと――こすれ合う音が響いて】

――――……、

【ほんの少し足を動かすだけでその音は幾重にも重なってにぎやかすぎるくらいになる、――だのに、その場所は、そのうえで、なぜだかとてもしんと静まりかえり】
【実際にどんな音がしようと関係がないらしかった、どうあれその近くに踏みいるひとが居れば、ひどい静かさを覚えるかもしれなくて――もっと、魔術に精通するひとならば】
【広い広い自然公園の中でも特に人気(ひとけ)と人気(にんき)のないエリア、実際ほんとうの昔にただそこに自生していたのを利用しているだけらしい林とよくわからない池の場所】
【そんな泥くさい場所ではまずありえないほどに濃い魔力の匂いと魔術式の気配に気づくのはひどく簡単だっただろう、だって、あまりに隠さない】

……いち、

【――真っ黒い髪の少女だった、長さは肩ほどまでだろうけれど、散らした魔力の揺らぎにつられて、ときどき、風もないのに柔らかく膨らみ】
【ぎゅっと真剣そうに閉じられた目は開いていれば左右で色の違うもの、左が黒で、右が赤の瞳をしているはずで――寒さに頬や鼻が赤くなっていたのが、いやに生きた風で】
【赤色を基調にしたワンピースは袖と裾の大きく広がったもの、特に裾の方は中にたくさんの布を詰め込んだように丸く膨らんで、燕尾スカートの後ろの尾っぽも少し窮屈げに見え】
【素肌をほんの少しだけ透かす黒いストッキングに編み上げのロングブーツ。高い踵には落ち葉が一枚突き刺さっていたけれど、どうやら気づく暇すらないようで】

にー、

【ぎゅっと目を閉じた少女はさっきからずうと何かを探すように虚空に伸ばした手の指先で空間をまさぐっていた、その指先はやがて、何もない虚空を、けれど確かになぞりだし】
【緩く伸ばした語尾の「い」の形の口から白い吐息が一筋漏れて消えていく、それからの時間は長くって、数秒、数十秒、それから一分になりかかった頃合い、だろうか、】

――――あった!

【少女はそこに何か見出したようにぎゅっと両掌を握りこむ、ぱっとあけられた目がきらりと桜色に煌めいて、それからまぶしそうに瞬き――なぜなら、】
【ほんとうにその声とその仕草の瞬間に、あたりにぶわっと桜色の魔力片が、それこそ壊れた水道から水の吹きあがるように現れて、季節を違えたようににぎやかになるから】

できた、ふふ――、ちゃんと出来た。

【――ひどい光景だった、さっきまでの濃い魔力は変わらずそのまま、そのうえ、さっきまでよりずーっと目立つ色、桜色の魔力光が辺りを色濃く眩く照らしていて】
【公園ももっと開けた場所ならば明かりがあるけれど。このあたりでは明かりらしい明かりはきっと少女が元凶のこれと、月明かりくらいで――真ん中で微笑う少女だけが、朗らかで】
918 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(千葉県) :2017/12/04(月) 02:46:48.45 ID:xvOR62iW0
【冬の冷たい風が散り始めた木の葉を揺らしている】
【鬱蒼と立ち並ぶ木々がどこか不気味に重なり合い、その下には種類もわからぬ植物が所狭しと茂っている】
【普段、人は寄り付かないのだろう。自然のもので溢れかえったその場所に風の音の他に静かに響く音が一一】

あれ? 何もない!誰もいない!

【この時期にはまず見ることのない膝丈の白いワンピースを着た小さな少女……年齢は10にならないくらいだろうか】
【肩までの青みがかった白髪は風のせいでなのか激しく乱れている】
【ブルーの瞳には涙が浮かんでいて今にもこぼれ落ちそうで】
【一見、寒そうな格好をした迷子だが歩いて着た道のりに薄っすらと氷が張って、手を繋ぐように握っている熊のぬいぐるみの手が凍っている】
【少女は困ったように辺りを見回していたが、やがて諦めたのか一つの木に寄りかかってその場に腰を下ろし】
【瞬間、その背中で触れた木がパキパキ音を立てて凍っていく】


/絡み相手募集してます。特に期間はもうけてないので気が向いたら絡んでください。
919 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/12/20(水) 19:50:43.06 ID:wF6Q3b8D0
【街はずれ――かろうじて舗装されている道沿い】
【一番にぎわうあたりに背中を向けて、三十分ほども歩けばこの辺りに着くだろう場所、後ろを見れば、まだまだ文明は近く】
【何より足元のアスファルトは意外ときれいに整って、道沿いには電信柱に紛れて、苦労しない程度の街灯が途切れなく、ずっとあちらまで続いて】

この辺り……かな? ……んん、車とか通るのかなぁ、あんまり……、びっくりさせちゃうのも、悪いし……。

【「事故とかになっても……」】
【――あまり、というよりも。ほぼ全く遮蔽物のない場所だった、だからか、呟く声と……それで立ち止まる人影は、ぴったり街灯の下、夜の中でよく目立ち】
【それで吹き抜けた風が冷たかったように首をすくめてしっかり巻いた厚手のマフラーの中に口元までをうずめる、そのまま影は、あたりを数度見渡し】

だけど――……この辺で、いいかな。うんと広いし、何かあったら見つけてもらえそう……だし、

【真っ黒の髪の少女だった、肩を少し過ぎるくらいの髪は、けれど、ぐるぐる巻いたマフラーのせいでくちゃくちゃになって、変なところがぴょんと跳ね】
【瞳は少し遠くからでも目立つような左右で色の違うもの、黒色と赤色をして。真っ白の肌は寒さのせいか頬と鼻先がすっかりと赤い、マフラーを直す指先も、うんと赤くなって】
【重たそうに分厚い布地の黒いコートは大きいぴかぴかの飾りボタンがよく目立つもの、下のボタンはいくつか開けられて、そこからあふれ出すのは赤い布地のスカートで】
【コートに押さえつけられたスカートの赤いのとペチコートの生成り色なのがくしゃくしゃに折り重なって見えていた、足元は厚手のタイツと膝までのロングブーツ】
【とりあえずこんな場所にいるよりか、もっとにぎやかなあたりで遊んでいる方が似合うだろう見た目で、だけど、どうしたって目立つのが】

何かって、なんにもないと思うけど――、ううん、

【舗装された道路の一番端っこを歩くようにして、それで地面になっている場所をずうっと“それで”ひっかいてきたらしかった。子供が傘で遊んだような線が、ずうと地面に続いて】
【だけれどそれが鞘に納められた櫻の刀であるようなら。にぎやかな市街地よりもこんな場所にいる方が似合っても見える、うんと細い、細すぎるくらいの三日月の下】

【ついと持ち上げて揺らした鞘が溶けたようになって現れた抜き身の銀が、一瞬街灯か月明りかを反射して、ひどく強く、ぎらりと光ったようだった】
920 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(福岡県) [sage]:2017/12/28(木) 00:47:22.07 ID:2gH4QZjao
【――そこは、廃墟だろうか】
【がらんどうの、街】
【いつか遠い過去、あらゆる喧騒が通り抜けた、懐かしい街】

――誰もいない、か。

【白銀の街灯を身に纏った青年が、歩んでいる】
【足元に散らばる瓦礫が、わずかに音を立てて、街並みに響く】
【夜空には煌々と、月が輝き】
【青年の影を、長く伸ばしていた】

………、………。

【足元に転がっていた、金属片を拾い上げる】
【それは誰かの武器だったのか、あるいは鎧だったのか。はたまた魔道具だったのか】
【最早魔翌力通わぬその金属は、持ち上げたその衝撃にも耐えられず】
【きらきらと光る粒子となって、風に乗って街並みへと消えていった】

……いや、まだだ。
誰かは、残っているかもしれない。
誰かが残っていれば、あるいは知らぬ誰かがまだ此処に、
この世界に在るのなら―――

【まだ遅くはない、というように。】
【その金髪の青年は、街の中へと歩みを進めていった】
921 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/12/28(木) 18:07:05.13 ID:WLWtSA870
>>920
/まだ見てらっしゃいますか……?
922 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(福岡県) [sage]:2017/12/28(木) 19:44:31.47 ID:2gH4QZjao
>>21
/おりますよー
923 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(福岡県) [sage]:2017/12/28(木) 19:44:57.62 ID:2gH4QZjao
/失礼、>>921
924 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/12/28(木) 21:05:03.70 ID:WLWtSA870
>>920>>922

【――ぱきり、かきり、そういう、乾いた小さな音がした。硝子片を踏み抜くには随分と軽い音は彼の歩む先――その先の、ちょうど、道の真ん中で】
【“人影”はまだ相手に気づいていないようだった。それなら彼は“彼女”よりも先に自分以外の存在に気づくことがきっとできただろう】
【そしてそれは少女に見えた、――どこかの建物から落ちてきたのだろう、おおきなおおきな文字の一文字、ひどく重たい素材で作られた、ありふれた一文字を、眺めて】

【――真っ黒い髪は肩ほどの長さで揺れる、少し長い前髪は少しだけうざったいように華奢な指先が抑えて、その指先や頬は、寒さのせいかすっかりと赤くなるほど白く】
【赤い右目と黒い左目。顔はどこかあどけなさの残るものだからこの場ではよく目立つ、――あるいは異物めいて映るだろうか。それでもまだ視線は足元にあり】
【暖かそうなケープを羽織っていた、前髪を抑えるのに腕を上げたしぐさで一緒に持ち上がった場所からは、深い赤色のワンピースが覗く、幾重にも布を重ねたスカートと】
【たくさんのフリルと――だからその足がひどく細いのがよく映えた、それから靴がいやに重たそうなブーツなのも見て取れて】

――――?

【――だけれど、彼女が彼に気づかない、というのも、そう大して長続きはしなかった。地面に落ちて一部がひしゃげた金属製の一文字は】
【新鮮味があって面白いけれどずうっと面白い娯楽にはなりえない、それなら、靴のつま先で時々こんこんと小突いたのもいつか飽きていくもの、そうなれば】
【その段階で――あるいは彼がそれより先に声をかけたりするのなら、そのタイミングで。少女のまあるい瞳、左右で色の違う眼が、ほかの誰でもない彼へ向けられるはずで】

わ。あ、え……、っと、……こ、こんばんは。

【――ほんの一瞬、驚いたような丸い目になる。それでも敵意がないと表すように空っぽの両手の平を相手に見せた少女は、数秒、相手の反応をうかがうように、口をつぐんだ】

/わーごめんなさい! 食事もろもろで離席していました、まだ大丈夫でしょうか……? 申し訳ないです……
925 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(福岡県) [saga]:2017/12/28(木) 21:26:56.77 ID:2gH4QZjao
>>924
【乾いた音に反応し】
【弾かれたように目線を落とした。何かが居る、ということに、青年の肉体は意識より疾く、染み付いた動きを再演する】
【腰には白木の刀。その鯉口を下げようとして――】

――――、……。

【意識が追いつく】
【前方には、華奢な少女。―――一般人だろうか?】

やあ、こんばんは。
いい夜だね、お嬢さん。

【目を丸くして迎える彼女を、苦く笑いながら見やる】
【一般人だろうか、など。なんて愚問。】
【自分は知っている。こんな夜に、こんなふうに出会う相手が、ただの一般人でなど有り得ないことを】

【良い出会いにしろ、悪い出会いにしろ。きっとこれが、はじまりなのだと】

/いえいえ。とても久しぶりにロールをします、どうぞよろしく。
926 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/12/28(木) 21:43:40.44 ID:WLWtSA870
>>925

【おそらく彼女もこんな場所で誰かと行き合うなどと思ってはいなかったのだろう。だからひどく丸くなった目は――それでも確実に、彼の動きを追いかけていた】
【そして彼がまさに“そう”しようとしたタイミングで彼女はわずかに眉をひそめて目を細めた、――人当りのいいように笑んだ口元、気づけば口角などぐうと落ちていたのだが】

……うん、こんばんは。いい夜かな……いい夜、だね、きっと、たぶんだけど――、……こんな場所で誰かに会うなんて、

【彼がそうしないでいてくれたなら、こちらもまた、そうしない。あるいはこちらも苦笑しながら、話す声は意図的に少しだけ高いものになる、なるだけ恐ろしく見えないよう】
【もう一度空っぽの両手を見せつけるでもなく見せるようにしてから腕をおろせば、丈の長いケープの中に彼女の華奢な身体はすっぽり隠れてしまうのだけど】
【中の腕の動きでわずかに揺れる布地を見ればわかるだろう、不穏なことはしていない。そしておそらくは彼のように得物を身に着けてもいない――らしい】

えっと……、お兄さんは、お散歩? わたしは、お散歩なの、こういうところ――なんとなく、落ち着くから。
だけどここはちょっぴり危ないね、この街だと文字が降る日があるみたい。

【それで続けて声をかけてくるなら、あまり気まずい場面が得意ではないらしいともしれるだろうか。数度視線を話題を探すように動かした彼女は】
【結局相手は何でこんなところにいたのかと尋ねるのだ、それと一緒に、自分がどうしてこんなところにいるのかも伝え――かといって、これはこれで不審ではあったが】
【さっきまで自分が凝視していたもの――すぐそこのビルにくっつけられていた金属製の文字を一度視線で示してから彼に向けて笑う、そういう冗談めかした態度も、あって】

【友好的――ではあった。ひとまず、みさかいのないタイプではないらしい。ただ……彼がどういった方向性であれ“贋物”を見抜く力に長けていたならば】
【あるいは彼女の違和感に気づけるかもしれなかった。どこまでも人間らしい、だけれどどこかが確実に人間と違う――ひどく巧妙だから、まず普通の範疇であれば、気づかない、それ】

/よろしくお願いします!
927 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(福岡県) [saga]:2017/12/28(木) 21:56:51.25 ID:2gH4QZjao
>>926
【追いかける目線、その表情を見て】
【目の前の少女が、いくらかは戦う側の存在であることを悟る】

ああ、きっといい夜だ。
いい夜にしなければね――最悪でもほら、普通の夜にくらいはしたいな。

【敵意、現時点ではなし。武装、大型のものはなし。
 その他能力は不明――戦闘経験は、おそらく有り】
【談笑の中、別の視点では戦力分析。戦う意思はないのだが、それが相手も同じとは限らない】
【そして、少し目を細めた。何かに気づいたような、そうでもないような】

そう、だね。
散歩といえば散歩だ。
ある意味では人探しなんだけど、特定の誰かを探してるわけじゃない……ああこれ怪しいな。
いや、とにかく、怪しいものじゃない。

【少しバツが悪そうに、自分は無害なのだと語ってみせる】
【少女も青年も、互いに敵意はないのだと、がらんどうの街の真ん中で不器用に語るのは滑稽だろうか】

文字が降る、か、そんな雨みたいに……
うーん、「ぬ」か。
いや、「ぬ」ってそんな看板に使う文字か……?
どんな店なんだ……?

【落ちてきたその文字を、腕を組んでしげしげと見やっている】
【白銀の外套。柔和な顔立ちに、艶やかな金髪。どこかで絵でも描いていそうなその外見。唯一、燃えるような赤の瞳が印象を変えていた】
928 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/12/28(木) 22:22:57.79 ID:WLWtSA870
>>927

ん……そう、だね――だって、こんなに寒いんだよ、それにもう少しで年だって変わるのに。

【悪い夜はご勘弁。いい夜がいいけれど、どうしたってしょうがないなら、普通の夜がいい。少女は困ったように眉を下げて笑う、寒いねというときなんて、心底、という風】
【寒さのせいですっかり赤くなった頬、それは寒さに弱い証拠になるはずもないのだけど。――それでも本当に寒いのが苦手らしいというのは、なんだか態度で分かるよう】
【続く言葉も嘘ではないだろう。こんな年末にわざわざ悪い夜を演出したくはない、新年のその瞬間に、まさか重症でベッドに横になっていたくない――それも本心】

ひとさがし……なのに、だれか、は探していないの?
……んん、怪しくはないよ、――だからね、わたしも、その……怪しく、ないよ。

…………あ。そう、そうなの、わたし、わたしね、白神鈴音――、UTでお仕事してるの!
給仕さんだからみんなみたいに戦ったりするわけじゃあ、ないけれど……、お料理作ったりしてるよ。お金のない子たちに、無料でふるまったり……。

【一瞬不思議そうな顔をしたのは彼の言葉がなんだか不思議だったからだろう、それを彼女は不審とは思わなかったようだけど、――便乗するかたちでそうアピール】
【それでようやく何か別のアピール方法に思い当たったらしい、すなわち、自分の名前と所属を明かす。これでどう、と、少し期待するような目をしたのが、わずかに子供ぽく】

あんまり使わないと思うけど……なんだろうね? 中に入ってみたらわかるかもしれないけど――、ちょっぴり危ないかも、わたしは嫌いじゃないけど……。

【「ぬ」。まさか「ぬ」も、こうひとに囲まれてしげしげ見られたり考えられたりするとは思っていなかったことだろう、彼にならうように彼女もしばし見ていたのだが】
【ふと視線を高く高く持ち上げて、残っているはずのほかの文字を見る、「ほかの文字はぼろぼろだね……」――つぶやきの通り、残りの文字はすっかりと朽ちていて】
【この「ぬ」だけがかろうじて読める形で残っているらしいのだった。それからくしゃと笑って提案するのは堂々と不法侵入だ、ただ、こんな場所だから】
【それを見咎めて駆けつけてくる者もいないだろう。彼女自身あまり本気というわけではないから、冗談だったのかもしれないけど――彼がどうこたえるかは、わからなくて】
929 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(福岡県) [saga]:2017/12/28(木) 22:33:45.71 ID:2gH4QZjao
>>928

ああ、そうだね…年が変わる。
だからかな、此処に来たのは。

【びゅう、と風が吹いた。何くれとなく吹き飛ばしていくような、隙間に染み入るような、冷たい風】
【ぶるりと体を震わせて】

うん、誰かは探している。
特定の誰かでないというだけで、もしかすると君のことも探していたのかもしれないよ。

――白神、鈴音。
……ゆー、てぃー?

【名前と所属。いくらかの覚悟を持って明かされたのであろうそれを、しかし青年は】
【名前を確かめるように口にしたあと、組織の名前で首を傾げて】

すまない、知らない。
おそらくこの世界に僕は疎い。時代が違うのか、そもそも世界が違うのか。

【いくらか、核心的なことを口にした】

僕の名前は――――

……トーカー。トーカーと、呼んでくれ。

【それから彼は、名乗ろうとして、口を少しパクパクとさせて、歯切れ悪く、そんな名前を口にした】
【そして、ぬ】

「ぬ」か。果たして何屋さんだったのか。あるいは何屋さんでもなかったのか。
これも何かの縁だ、少し調べてみることにする、かい?

【そう言って、廃墟のビル――その、ぬの主のビルを、指差した。どうやら崩れるような心配はなさそうだ】
930 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/12/28(木) 23:00:13.44 ID:WLWtSA870
>>929

【そうなんだ、と、まだよくわかっていない風だった。それでも彼がそう言うのなら、そうなのだろう。そういう風に納得している様子でもあるのなら】

……ふふ、わたしも? わたしだなんて、探したって面白いことなんてないよ……なんだろ? お礼参りだったらやだなあ……。

【少しだけ驚いたように笑う、まさか自分まで対象の可能性があるとは思っていなかったのだろう、それで――最後はいっとう冗談めかした声で、冗談“のように”ふるまう】
【ただ彼がUTを知らないような様子を見せれば、また目を丸くして瞬いて。「そうなんだ」とつぶやく言葉自体はさっきと一緒でも、声音はかすかに、違っている】

トーカー……、そっか。……えっと、何か困ってることがあったら――言ってね? ……その、世界に疎い、って、よくわからないけど……。
――異世界のひと、なのかな……。UT……、UNITED TRIGGERはね、正義組織なんだよ、だから、何か困ってることがあったら、言ってほしいの。

【変わった声音はどこか心配するような、それだった。言いよどんだ風であった名前をためらわずに呼び返して、自分が所属していると明かした組織の意味を、告げる】
【つまり自分はそういう感じのひとだから怪しくもないし困っていたらなんだって言ってねということらしかった、ケープの布を揺らして真っ白の手で自分の胸に触れ】
【ただひどく華奢であるのはもちろん、あどけない顔から、十六かそこらにしか見えない少女に頼りがいが見て取れるかと言えば、たぶん、――】

【――けれど。相手の言葉に特別に動揺する、ということもなかった。「異世界のひと」とつぶやく様子もどこか落ち着いていて、それなら、初めてのことではないのか】

――うん、いいよ。こんな場所で立ち話なんて、ちょっと、寒すぎるもん。だったら、あの中の方が、まだちょこっとくらいは暖かそうだし……、
変なひととか、いないといいんだけど――、だけど、やっぱり、寒すぎかな。……変なひとも凍っちゃうね、こんなに寒いと――。

…………暖かいココアでも買えたらよかったんだけど。あっちの自販機見た? 穴ぼこだらけだったよ、だれか、鉄砲の的にしたんだね。

【指さすしぐさにつられたように彼女はもう一度ビルを見上げる。なるほどたしかに朽ちてはいるが、今すぐ倒れはしなさそうに見える。……大きな地震でもなければ】
【それなら大丈夫かなと軽く考えた思考のままで首肯する声は考えと同じくらい軽い、どこか鈴の音に似た金属質な声は、倒壊よりも寒さの方ばかり気にするから】
【もしかしなくても常習犯みたいだった。――変なひとというのも多分いないだろうと思っている、直近でこの辺りをひとがうろついた痕跡はあまりうかがえず】

【ただの世間話みたいに話題に挙げたのは、彼も見たかもしれない――見ていないかもしれない、この街のどこかに落ちていた、自動販売機のこと】
【最初は金目当てに壊されたらしいものがそのうちどんどんそういう目にあってずたぼろになった、どちらかと言えば鉄塊と呼ぶべきようなもの】

【探検してみるということになれば、彼女はどうでもいい自販機の話をしながらビルの入り口の方に少しだけ近づいてみる、――幸いにも、入り口のガラスは罅だらけで】
【何かでちょこっと小突いたくらいで、全部ばらばら崩れ落ちて、あとは普通にひとが通っていけそうな穴くらいは、簡単に作れそうだった】
931 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(福岡県) [saga]:2017/12/28(木) 23:23:08.56 ID:2gH4QZjao
>>930

ああ、君もだよ。何、特別個人に用があるわけではなくてね。
いきなりいざ尋常に、ってことにはならないから心配しないでくれ。

【肩をすくめて、そう語る――お礼参り。その言葉を、冗談だとは捉えていないような口振り】

――うん、ありがとう。
いつか誰かを頼るとすれば、UT……UNITED TRIGGERの、白神鈴音を頼るとする。

【そして大真面目に、腕を組んで頷いた】
【正義組織、と聞いたときに、もう一度大きく頷いて】

正義組織、というからには、悪の組織もあるのかい?

そのあたりのことこそ、僕が探していることなんだ。
やはり君に会えてよかった、鈴音。

【少女に正対する。じゃり、と足元の瓦礫が音を立てた】
【見た目や、雰囲気。体の華奢さ、その口調――鈴音が発する、あらゆる印象を飛び越えて】
【しかし彼女を一人の人格として、「存在」として――青年は鈴音を見据えた】

ああ、寒いだろうね。気付かず済まなかった。
この冬は如何にも少し、寒すぎる。
風を凌げるだけでも随分とマシにはなるだろうから、ぬのビル、入ろうか。

しかし自販機はどれもダメだね。
お金もモノも取られているし、それを修繕するのも罰するのも、もう追いついていないのだろう。

【そんな事を話しながら、青年もビルの入り口に寄る――ガラスを、つま先で叩く】
【硬質な音。金属とガラスが触れ合うような、そんな音を立てた、次の瞬間】

――――ふ、ッ!

【少し力を入れるような、そんな息吹とともに、青年の直蹴りが綺麗にガラスを吹き飛ばした】
【粉々に。人が通れるほどの穴が、その入り口に穿たれた】
932 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/12/28(木) 23:44:49.78 ID:WLWtSA870
>>931

【いざ尋常に――そういう場面がない、とは、限らないのだが。いきなり、例えば今いきなり、ということにはならないというのなら】
【少女は少し安堵したような顔をするだろう、よかったとまでは言わないけれど――――】

そうしてくれたなら、うれしいな。わたしでよければ、いくらだって頼ってね、わたしにできることなら、なんでもするし――、
わたしの知っている中に、あなたの困りごとを少しだって減らしてあげられそうなひとがいたら、誰だって紹介するよ。

……んん、あるけど、最近はおとなしいかな。……だからって、うれしいわけでもないんだけど――――その、あれなの、嵐の前の……だったら、いやだなって。
平和になるための手順を踏んだ後だったなら、うれしいんだけど。だけど……なんだろ? 自然消滅……ってわけでも、ないけど。
なんだろ、ね。あんまり大きなことをやるひとがたまたま今カノッサとかにいないのかな。……なんて――わたしも詳しくは知らないの、ごめんね。

【正義があるならば――と思うのも当然だろう、だからか彼女も当たり前に「そう」だと返す。けれど続く言葉から見るに、どうやら、最近はめっきりとおとなしいらしい】
【だからといって喜びきれないと彼女は考えているらしいのだが――結局詳しいことは全く分からないというのが彼女の返事だ。とにかく、悪の組織というものは、確実にある】
【くしゃっと困ったように笑って言う、それから――さむがっていることについて謝られてしまえば、急に慌てたようにぱたぱた手をやって、】

わっ、そんなつもりじゃなかったの。ごめんね、わたし、寒いのってすっごく苦手で……だけど暑いのも苦手で……えっと。
……うん、ちょこっとだけ。避暑じゃないね、避寒かな……避寒、……、ふふ、「ぬ」のビルなんて、へんだね、ほんとに、何作ってたのかな。

うん、だけど、中に何か残ってたとしても飲まない方がいいね。特に缶だと、中身が見えないから――……。

【自分は寒がりだからと――もっというと暑がりでもあると――つまり過ごしやすい温度以外苦手らしいだなんてひどくやる気がないようだったが】
【「ぬ」が落ちてたから「ぬ」のビル……ぬのビルなんて風に彼が呼べば、それがふと面白かったようにころころ鈴を転がすよな声で笑い】

わ。……ありがと、破片は大丈夫だった? ……、んん、ちょこっとだけ待ってね、わたし、暗いとこ、右(こっち)の目ならよく見えるから――。

【彼が硝子を蹴破ってくれたら一瞬その音に驚いたような、そうでもないような――それから彼の開けてくれた穴ぼこ、その礼のつもりか、先に中をうかがおうとするだろう】
【曰く赤い方の目なら夜目が利いてよく見えるのだという。任せてもらえれば彼女は硝子の穴からひょこりと顔を覗かせて、中を――おそらくは受付だとかの残骸を眺め】
【もっと言うといくらかひとより利く嗅覚でも一応内部を確かめるだろう。ひとまず大丈夫そうと見れば、「大丈夫みたい」と笑ってみせた顔なんて、ひどく子供ぽかったのだが】

【――彼女が得意とするのは、件の右目による暗視とひとより鋭い嗅覚による確認。それから、魔力の探知も得意……というより、たぶん、これが彼女の感覚の中で一番鋭い】
【とはいえ。ただの探検ごっこならそんなこともあんまり関係ないだろう、――ない、と、思いたいのだけど。とにかく、彼女自身は、ひどく楽しげだった】
933 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(福岡県) [saga]:2017/12/29(金) 00:03:06.89 ID:t0ob+/7Ao
>>932

ありがとう、鈴音。
この世界のことをもっと教えてくれると、とても嬉しいな。
何分その―――僕はどうやら、異邦人のようだから。
見慣れた存在だったけど、自分がそうなってみると少し勝手がわからない。

【彼女もこんな気分だったのかな、と呟きながら、足元のガラスを払った】
【カノッサ、という言葉に、動きを止めて】

――そうか。機関は、あるのか。ナンバーズや最高議会も、いる――在るのだろうか。
大人しいとすれば――はは、そうだね、後が怖い。

【眉をひそめて、そう話した】
【自分の知っているカノッサ機関と、鈴音の口にしたカノッサ機関が、重なる存在なのか】

寒いのも暑いのも、たいていの人が苦手さ。
十全に活動するには、コンディションを維持するのが大事だからね。
ぬ のビル、ちょっとお力を借りるとしよう。

【そう言って、空けた穴をくぐる。確かに外より、いくらか気温はマシらしい】

――ああ、君は……そうか、じゃあ、ビルの中の様子を探るのは任せてよいかな。
何か危険がありそうなら言ってくれ、踵を返すとするから。

【そんな軽口を叩きながら、二人はビルの中へ。その中にあるものは、鈴音の感知が先に捉えるだろう】
934 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/12/29(金) 00:29:59.86 ID:NyR5V1aj0
>>933

そっか……わたしも、ね、何人か。見たことあるよ。あのひとたちは……お家に帰ること、できたのかな。

【別の世界のひと。彼女自身何度か話をしたことがあった。だけれどもう何年も前のことだから、記憶はかすかに朧気で、ただ、そうなっていたらいいのにと思う】
【“彼女も”という相手を知りはしないけれど。「困ったことがあったら何でも言ってね、UTだって、お部屋はいっぱい余ってるの」と、相手に言うのは】
【かつて出会ったひとたちが家にきちんと帰ることができただろうかと気にしているのと方向性は同じだ、家――帰る場所、というのを、とても大切に思うからこそ】

ナンバーズは……いるよ。だけど、議会はない。“今は”……、……今はね、六罪王だよ。そうやって呼ばれてるひとたちが、えらい。
……トーカーさん、昔から来たの? なんだろ、議会があったのって……何年も前だよ、カノッサの支部って、知っている? それも今はない、ことに……なってる、

【「わからないけれど」と言葉は続く。それより、彼女の声は少し戸惑ったようなものだった、ナンバーズ、それに最高議会――聞かなくなって久しい名前】
【おそらくはもう何年もずっと前に聞いたきりではなかろうか、そしてその頃合いと言えば――ちょうど、この少女の記憶が、少女自身の都合によって混濁していたころ】
【そのせいか言葉はあまり明瞭ではない、けれど、今の現状とも照らし合わせて、ナンバーズは「ある」最高議会は「ない」支部も「ない」というのが、彼女の返事】

…………ナンバーズにね、とても怖いひとがいるの。気を付けた方がいいよ、二十九番……カニバディール。とっても大柄だから、見たらすぐわかると思う。

【そして。機関がおとなしい中でも、恐ろしいとされるナンバーズがいるらしい。苦虫をかみつぶしたような顔と声で、付け足すようにそう忠告すれば】

【二人はするりとビルの中に潜り込む。罅だらけといえども一応は外気から遮断されていた場所だ、なんだかかび臭いし埃っぽいけれど、寒さ自体は和らいで】

うん、わたしでよければ――? あ。だけど、ちょこっとだけ待ってね……、――ね、明かりがあったほうがいいよ。
なにか変なものが落ちてたら大変だもん、踏み抜いて破傷風だなんて大変だよ。お化けなんかより、そっちが怖いよね。

【きょろきょろと視線が落ち着かないのは変なものがないかを探しているのだろう、任された以上、何かを見落としてはならないと……といっても、受付か何かの残骸や】
【そういうものばかりだ。時々落ちているものもあるけど朽ちていてよくわからない。そのあたりでふと思い立ったらしい彼女は、少し、と、彼を呼び止め】
【かすかな声で術式を唱える、するとぽわっと現れるのは、桜色と紫色の混じった不思議な色の魔力で構成された光の球、――簡易式の明かりの魔術、よほど明るくはないけれど】
【足元の危険物に気づける可能性は少しくらい上がるだろう――と。その光に照らされた向こう側、壁に、フロアガイドのようなものが描きこまれた板が張り付けてあり】
【彼女はまだ気づいていないが――どうやらこの建物、いろんな店が寄り集まったものだったらしい、デパートよりもうんと小規模ではあったけれど】
【室内であったこともあって、それ自体はそう劣化していない。それならここで目的地を決めてしまうのもいいのかもしれなかった】
935 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(福岡県) [saga]:2017/12/29(金) 00:48:58.90 ID:t0ob+/7Ao
>>934

そっか、何人も……ね。
ああ―――家に、帰れたん、だろうか。

【どこか遠くを見るように、誰かを思い出すように、そう口にして】
【少し、息を吐いた。湿っぽくなったことに気づいたのか、誤魔化すように咳をして】

――議会は、ないのか。支部も、ない。組織としての形を解いたのか……
……六『罪』王? 聞かない名前だけど……なんというか、随分仰々しい名前だね。
あまり関わりたくないような、一応どうにかしておかないといけないような……

【自らの知る機関との違いを、覚えこむように口にする】

【そして、昔から来たの、という質問に少し息を呑む】
【――沈黙に、かつん、かつん、と。硬質な足音が響く】

……もし、この世界が、僕の知るものと同じで、ただ数年僕が断絶していただけならば、
それくらいの齟齬で済むのなら――色々と話は簡単、なのだけど。

――カニバディール、か。
覚えておくよ。見かけたら――そうだね、覚えておく必要のないように、しておこうかな。

【まるで話をそらすように、恐ろしいナンバーズの話題を口にして】
【変なものを踏み抜いたら、という鈴音の気遣いに、一瞬止めるような素振りをして――】
【彼女の気遣いに、甘えることにした】
【魔術の明かりに照らされたフロアガイドをじっと眺めて、口にしたのは――】

決めた。僕は、ここに住もうと思う。

【そんな素っ頓狂な、一言だった】
936 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/12/29(金) 01:21:23.94 ID:NyR5V1aj0
>>935

帰れていたらいいなって思うの――だって、お家に帰れないのって、とっても、……あ、ううん、えっと、

【「悲しいと思う」――言いかけた言葉。だけれど目の前の彼自身がそうなのかもしれないのなら、いやにそれを強調したり、口に出してはいけないと思ったのだろう】
【かといってごまかすのが上手だったかと言えば限りなく否だろう、えーととか意味のない言葉でごまかそうとしていたけれど意味はあんまりなくて】
【彼もごまかすようなしぐさをすれば二人でごまかしあいになるだろうか、どうにもさっきからそういうことが繰り返されているよう、――気が合う、のか】

……うん、だって、今はもう聞かないの、支部も……、だから、ないと思う……。……ごめんなさい、わたし、昔のこと……あまり、覚えていなくて、
だけどね、これは絶対だよ、……カノッサ機関は今もある。ナンバーズもいる、なぜだかみんなおとなしくしているだけで……。

【聞かないから、ない。それはソースとするにはいくらか不確か、だけれど、一応は正義組織にかかわる彼女が言うのなら、ある程度は正しいこと……なのだろう】
【とはいえ本人自身が記憶がおかしいと口にしているからすべてを信じ込むのも危ういだろう――とは思えて。悪意の有無や嘘を吐くかどうかとは、関係なく】

だん、ぜつ? えっと……、違うのは世界じゃなくって、あなたかもしれない、の、……かな?
わたし――覚えてないこと、たくさんあるけど……えっと。覚えていることもね、いくつかあるの、いやな思い出のほうが多いけど……。
……覚えているナンバーズの名前を言うね、――カリナトゥスと、シェン・ロンド。あとのひとは……んん、わたしは、この二人が、“嫌な思い出”だから……。

……――カニバディールはね、とっても、強いよ。……本当に、

【丸い目が数度瞬いてから考える、断絶――彼が断絶していた、というなら。どちらかと言えばおかしかったのは彼ということになるのか、と、たずね返し】
【口元に手をやって数秒考える、――それでふと思いついたのは、自分の知っている過去と、彼の知っているものが合致すれば、それは、何がおかしかったのかわかるのではないか、と】
【だからといっていろんなことをぺらぺら話すことはできないのだからもどかしい、それでも手繰り寄せてやがて口にするのは――彼も真っ先に問うた、機関のこと】
【挙げた名前は二つ。――その名前を彼は知っているだろうか、ほかのことも尋ねれば彼女が思い出すかもしれない、もしそれが本当に彼の知るころと一致するものなのならば】
【――ケープの布地の影でぎゅうと洋服を握りしめていた。だから本当に“嫌な”記憶なのだろうとも知れて、だけど……彼が求めるなら、応えようとしているのも、見て取れた】

【続けたもう一つの名は、現代に確実に現存するナンバーズの名前。機関そのものが大人しくとも、彼らが大人しくしているとは、到底思えなかった】
【だからまだ確実に活動しているとして要注意を伝えた、――ただ。そうやってつぶやく声は、どこか、複雑なもので。正義側の人間である以上に、何か、あるのだろう】

え。……え? 

【やがて彼女も彼に遅れてフロアガイドの存在に気づく。少し遅れて追いついて、なんだろうと覗き込んだ、彼の言葉はちょうどそのタイミング】
【びっくりした顔は本日何回目だろう。振り返った顔は面白いくらいに素のもので、驚きが純粋に百パーセント、そういう感じの――】

/申し訳ないです、明日朝が早いので、差し支えなければ凍結をお願いできますでしょうか……?
/帰りが遅いので戻るのが10時ごろになってしまいなのですが……!
937 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(福岡県) [saga]:2017/12/29(金) 01:28:48.97 ID:t0ob+/7Ao
>>936
/オーケーです、また都合のあうときに。ロールのお返事しておきますね、ありがとうございました。
 おやすみなさいませ。
938 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/12/29(金) 01:30:34.28 ID:NyR5V1aj0
>>937
/ありがとうございます! ではひとまずお疲れさまでしたっ
939 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(福岡県) [saga]:2017/12/30(土) 11:11:46.12 ID:ECtAGzn1o
>>936
ああ。家に帰れないのは、とても悲しい。
帰るべき家がないのと、どっちがマシかわからないくらいね。

【肩をすくめる。悲しいことだ、という言葉を、臆せず口に出して】
【鈴音の気遣いに、また頬を少し緩めて――】

聞かないっていうのが、よいことがどうかはさておいて――
形を変えたけれど、カノッサ機関はまだ、潜んでいる。
大規模攻勢に備えているのか、
あるいはもっと、始末の悪い「何か」を、すでに始めているのか――

【知らないうちに機関が滅んでいるのかも、などという、希望的観測は口にしない】
【それはポジティブというより、度し難い愚かさなのだと知っている】
【だから、結果として、鈴音の言葉を信じる。彼はそう、態度で告げていた】

――ああ、僕なのかもしれない。
もしかすると、この世界は何も変わっていなくて、
ただ単に何年か僕が外界から断絶し……

【カリナトゥス、シェン・ロンド】
【直接刃を交えていなくとも。肩を並べて戦った、かつての同志たちと伍したであろう、その名を聞く】

――知っている。機関の、強力なナンバーズだな。
君にとって、特に嫌な思い出、だったんだね。思い出させてすまない。

だが、異世界の同位体でもない限り、やはりこの世界は僕の居た世界と同じらしい。少なくとも近しい。
それで―――

【もう少し掘り下げようとして、けれど、鈴音の手のひらが洋服に皺を寄せているのを見て】
【口を噤んだ。心を痛めている少女から根掘り葉掘り何かを聞き出すほど、彼は人の痛みに鈍感ではない】

……ありがとう、鈴音。この世界のことは少しわかったよ。
いくつか、大きな街の名前がわかれば教えてもらえるかな。
大体の方角なんかも、教えてくれると助かる。

【そして、居住宣言への反応を見て】

――どうかした?
ほら、フロアガイドにホームセンターって書いてあるだろ?
つまり寝具も身の回りの品も置いてある……
電力はまあ、いくつか魔石を持っているから魔電変換コンバーターが売ってればなんとか。
何をするにしても拠点は必要だし、ここはちょうどよいかなって。

【――薄々感じていたかもしれないが、この男、ずれている】

/おまたせしましたー
940 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2017/12/30(土) 22:34:48.60 ID:PZ6lGim00
>>939

【彼女が言いよどんだことを彼はあまりにも簡単に言ってのけてしまう、それなら彼女は、また一度目を丸くしてから――ひどく寂しい目をして、小さく笑うのだろう】
【それならば、きっと彼女も、そういう気持ちを知っているのかもしれない】

……あまり、いいことではないと思うの。だけど、ね――わかんないや、あまりに何も聞かないから、……。

【「――それも、分からないの」】
【苦々しく呟いて首を数度揺らす。何をしているのか、まだしていないのか、これからするのか、そういうのも、分からない――それが彼女の答え】
【だけれど信じてくれたというのが伝われば、少しうれしそうにする。誰かの役に立てるのはうれしいのかもしれない、そういう風に笑うと、いっそうあどけなく】

…………――うん、ナンバーズ、だよ。……シェン・ロンドは、……シェンは、そのあと、会ったことがある。あのひとは……機関を抜けた。いまは、知らない。
もうひとりは……カリナトゥスは、わかんないや。ほんとうに、ちっとも……、……トーカーさん、哲学者の卵は知っている?

【伏せた目が一瞬あまり思い出したくないように揺れた、それでもためらうような一瞬があっただけで、少女は相手の言葉を肯定する、確かに機関のナンバーズの名であると】
【それならやはり同じものを共有している。もう何年も前の話だから――いちおう、その後に自分が知っていることも付け加え。一人は機関を抜け、もう一人は知らない】
【またふらふらと首を揺らして、“知らない”を強調する。それから……気遣ってくれたのだろう、相手の言葉の方向性が変わるのを聞けば、ゆっくりと瞬きをして】
【また違った単語を持ち出す、こちらも機関に関係する単語――もう何年も前になるが、それがひどく流行った時期があった。つまり、“そう”いうこと、だと】
【――それで、彼女は言葉を切った。ひどく申し訳ないように笑って「ありがとう」とつぶやいて――それから、このあたりの主要な街の名前を伝えるのだけど】
【具体的な方角までは言えずに、また申し訳なさそうにして】

――――うう、ん、えっとね……たしかに、ホームセンターなら、いろんなもの、売ってると思うの……、その、アウトドアのものとかも、きっとあるし、
ベッドはどうだろ……? お布団とかは確か、あったよね――その、だけど、変な動物とかがいたら、危ないし! あ……う、えーと、その、
硝子だってさっき割っちゃったから、多分ね、隙間風とかすっごいよ――あの……、隙間っていうか、換気……? 「ぬ」だって落ちてくるし――。

それにっ、それに、その、ホームセンターは、家(おうち)じゃない……よ、……その、ホーム、だけど――。

【だけど。ここに住もうかというような話になれば、態度は急に変わる。変わらず強いものの言い方はあんまりしないのだけど、】
【たしかに彼の言う通りのものはあるだろう。あるだろう、けど――変な動物とか!と語尾を強めた少女は、ついさっき自分たちが来るまで硝子は無事だったのを思い出し】
【しまったという顔をしながら今度は隙間風問題を持ち出す。隙間というかもはや本体みたいなものだけど。メイン穴。出入口――それならきっとうんと寒いと訴え】
【最終的には別に駄洒落が言いたかったわけでもないのだろうけどそういうことになる、おもいきり眉を下げて】

……あの、ね、その……UTでよければ、お部屋だって余ってるよ、ご飯だって、その、わたし、作るし……。
リーダー……セリーナだってそんなの駄目なんて言わないの、駄目だなんて言い出したら、わたし、なんで!ってね、言い返すよ、それに――、
お金のこととかだって気にしなくっていいの、どうしてもって言うなら、わたしのお仕事、手伝ってもらいたいなって思うけど……、

それが嫌なら、わたしのお家だって、お部屋うんと余ってるよ――。

【続けて口に出す代案は。つまり自分が給仕として働いている正義組織に来ないかと誘う、別にそれは所属しろとかそういうのじゃなく、部屋が余っているのだから】
【そういう困ったひとにいっときだとしても貸し出して悪いことはなんにもないだろうというもの、ただ続けた言葉はいくらか本音が覗くのだけど――手伝ってくれたら、なんて】
【それももちろん強制力のあるものじゃない。――さらにもう一つ続けた案は、家(うち)なんてどう、なんて、もっと個人的な話になってくるのだけど】
【どうあれ彼女は本当に彼のことを心配しているらしかった。それで、自分の感覚としてはここより絶対過ごしやすそうな場所を提案してみた、という感じで】

/お待たせしてしまって申し訳ないです、帰り着きましたのでこれからならお返事できます……!!
941 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(福岡県) [saga]:2018/01/02(火) 22:45:05.03 ID:GtT5v0b1o
>>940
【目の前の少女の様子を見ながら、考える】
【記憶障害。心的外傷。健忘症。何らかの能力、または因子による精神干渉】
【間違いもなく善人であろうこの少女が、どこか歯切れ悪く語るのは、何が原因か】
【――ただ、まあ】
【語られぬことは、秘さねばならないのだろう。暴き立てる趣味は、彼に無く】

……ありがとう、鈴音。
機関のことは、君にとっては辛い思い出だ。
無理に思い出さなくてもいい、語らなくともいい。

哲学者の卵は、知っているよ。
埋め込まれたものの末路もね。
――結局僕は、どの経路で、誰が創ったものなのか、分からないままだった。
誰かが始末をつけてくれたのか――そうでないのかもわからない。

【そして、自分がホームセンターに住まうのを、どうやら鈴音が止めたがっているようだ、と察して】

いや、僕は、寒さとかには強い質だし――ん、ん?

【何言か反駁しようとして、彼女が迎え入れてくれようとしていることを察する】

……君にはお礼ばかり言うことになってしまうね。
でも、すまない。
今どこかの組織と、明らかな繋がりを作るわけにはいかないんだ。
こういうふうに、個人との繋がりなら大歓迎なんだけど。
勝手なことを言ってるのはわかってる――けれどまずは、
情報統合ネットワークへのアクセスポイントを確保しないと――

【柔らかな拒否。それは遠慮とも少し違うようで】
【後半は、ほとんど独り言のように聞こえるかもしれない】
942 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2018/01/02(火) 23:17:22.37 ID:3KPFcvxh0
>>941

【――嫌なことばかりを覚えているとは彼女自身の言葉だ、不自然に欠落する記憶、それから、哲学者の卵の持つ性質と……並べてみれば、どこか繋がりそうなそれも】
【けれど何より今彼の眼前に立つ少女その人からは哲学者の卵の気配がしないのだから、そういう意味では終わっているのだろう――おそらくは、だけど】
【どれだけ食い荒らされた植物も元凶たる虫さえいなくなればいつかまたきれいな葉を吹く、ここに立つ以上、虫に食いつくされて枯れた一つであるということはないはずだから】

ううん、ごめんなさい。もっといろいろなことを思い出せたらよかったのに、そうしたら、ここがあなたの居た世界なのかって、きっともっと考えられて――。
わたしも。……わたしも、わかんない、けど、だけど、これも――これも、最近は、うんと聞かない。だから……もう、あまり、使われてないと思う。

【虫食いの記憶は思い返せばどうしてもいやなものばかりでたった一つを想起しただけでいくつもが釣りあがる、頭痛をこらえるように眉をひそめた少女は、】
【最後に哲学者の卵についてそう付け加える。これも確実な情報ではないけれど、聞かないから、――ない。あるいは、もうほとんど使われない、古い道具であると】

……でも、ここだとお買い物も不便そう、それに……ええと、ううん、

【あまり口が達者な方ではないのだろう、しきりに言葉を選ぶようにしながらも、とりあえず、自分の思う限りここより環境の良い場所に来たら、と、】
【そんなことを彼女はしばらく言っていたのだけど――やがて彼が紡いだ言葉。それが遠慮とも違うものだと気づけば、あるいは気づいてしまえば】
【丸い目をぱちりと瞬かせて一瞬だまりこむ、それで、】

――……そ、っか、それなら、ね、……えっと。だけどね、もしあなたが頼りたいって思ったら、いつだって来てほしいの、わたし――UTによく居るし、
そうやって頼ってくれるなら、わたし、できる限りのこと、うんとがんばる! わたしじゃ頼りないかもしれないけど、……その、ね、

一緒に困っちゃったら、わたしも、わたしが頼れるひとに頼るから。だからね、困ったことがあったら――、

【「いつでも言ってほしいの」】
【そういって笑ってみせた顔はそれでもどこか自嘲気味でもある、相手の言葉を受け入れるのが精いっぱいな自分に対するもの、もっと冴えた手があったなら、と】
【――だから、あるいは、それでも。続けて口にするのは、今の自分にできること、――何かそういう中で困ったことがあれば、いつでも、と。今度はいくらか強く笑って】
【それでもその笑みがほどける頃には、また少し寂しそうな目をする、――だけれどそれをごまかすみたいに、】

……それなら、えっと。お布団とか……寒いのをどうにかするもの、探さないと、ね、どこだろ……。

【冷たく冷えて少し赤くなった指先でフロアマップに触れる、――こういう店は少し不慣れなのか、どういうものがどこにあるのか、よくわかっていないようだったけれど】
943 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(福岡県) [saga]:2018/01/02(火) 23:28:45.30 ID:GtT5v0b1o
>>942

ああ、たいへんありがとう、鈴音。
何もわからずこの世界に来訪してしまったと思ったけれど――
地続きの世界だとわかったのは君のおかげだ。

君と、君を守ったすべての人々に感謝を。

【ぜひ頼ってほしい、と、どこか申し訳なさそうにそう頑張る彼女をみて】
【ほとんど無意識に、鈴音の頭にぽん、と手を載せようと――特別回避の動きを取らなければ、そのまま労るように何度かとんとん、と】

――うん、大丈夫だよ。
いくつか売り場は見繕えそうだから、、
そうだね、ぬ のビルの主として有名になるのももしかしたら遠からず、かも知れないな?

【冗談めかしてそう笑う】

と、最後にもう一つだけ厄介事をお願いしたいんだけど、鈴音。
なんらか、ネットに繋がるような端末を持っていたりしないかい?
ここにあるものは多分、回線が未契約なんだろうと思う――スマホとか、タブレットとか、ラップトップとか。
あるいはもっとすごいものでも、持っていれば少し借りられないだろうか。

【ごめん、と手刀で空を切りながら、そう聞いた】
944 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2018/01/02(火) 23:58:03.99 ID:3KPFcvxh0
>>943

【彼の言葉に少しむず痒いような顔をする、自分が思うほどいろんなことを伝えることはできなかったのに、そんな風に感謝されて】
【確かにうれしいのだけれどどこか申し訳なくって、だけど、自分がもしも彼の立場だったなら――ぜったいに、ぜったいに、うんと感謝するから、それも分かって】

――――――わ。

【そうやって少しのあいだ照れた子供のように唇を噛んでいたのだけど――続いた彼の言葉。それから、ぽん、と、撫でるとは少し違うけれど、頭に触れられて】
【避けることはないだろう。だけど少し驚いたというような顔、言葉にもならない音を発した口元を少し赤い指先で隠して、それから、わずかの間、大人しくそうされている】
【だけれど少しずつ少しずつ嬉しさのにじむように笑うのだろう、気づけば手は顔の下半分を隠すくらいになって、その向こうの表情もどこか恥ずかしいようにして】

わ、わたし、そんなふうに言われたの、はじめて――、わたしだけ言われるのでも、うんと、照れちゃうのに。

【――だけれど理由はそういった彼の行動がきっかけではなかった、どちらかと言えば言葉のほう、自分だけでなく、自分に優しくしてくれたひとたち、皆に感謝する言葉】
【そんなのは初めてだと言って照れるなら、彼女自身、そういったひとたちをとても大事に思っているのだろう、気づけば顔まで真っ赤にしてしまっていて】
【そんな大層なことをしていないのに――と口にまでは出さないけれど、どこか照れてうろたえている、――まあ。少し放っておけば、彼女の方で取り繕っていくだろう】

そっか。よかった、こんなに寒いから――ふふ、それなら、今のうちにサインをもらっておかないと。

【彼が冗談めかして笑えばこちらも笑うだろう、それから――彼が別の頼み事を持ち出せば、】

……ん、と、普通の携帯でいいなら、持ってるよ――。電波入るかな……あ、入るみたい、……ラップトップ?
これでいいのなら、いいよ――充電もね、うんと入ってるから、大丈夫。

【少しゆっくりした瞬き一つ。普通の……といって取り出すのは、やはり何の変哲もないスマートフォンタイプの端末だ、機種はわりかし新しい方だから】
【もしかしたら彼からすればうんと見慣れないものかもしれない、数年もあればこういった機械類は特に移り変わるものだし――とはいえ、基本的なものは変わらないか】
【ひとまずラップトップという単語さえ理解しなかった彼女の持ち物だから“もっとすごい”ということもない、ごく平凡な……多分ペットらしい猫が待ち受けなくらい、普通な】
【そういう端末を画面を点灯させてから差し出すだろう。入っているアプリもよくありがちな、すっごい普通な、限りなく普通な感じのやつ――言葉通り、電波状況も充電も、申し分ない】
945 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(福岡県) [saga]:2018/01/03(水) 00:14:47.37 ID:p/8xE35Ao
>>944

うん。
初めて、なのかい?
言葉にするのが上手じゃない人も居ただろうけど、
きっとみんな君に感謝することはあったはずだよ。

――もっと自分を、誇っていい。

【ふふ、と笑う。鈴音の年相応――見た目の年齢相応の振る舞いに、頬を緩めて】

ああ、ありがとう。
少し借りるよ……

【特段手間取る様子もなく、スマートフォンを操作する】
【ブラウザアプリを立ち上げ、検索語句を入力し――なんらかログイン画面だろうか】
【何度か操作したが、うまくいかなかったようで】

――インターネットには繋がる、
ただ、統合ネットワークにアクセスできない……Admin権限が書き換わっているか、
一般端末からのアクセスを遮断するようになったのか……

【ふう、とため息を付いて】

……ありがとう、鈴音。
もう、大丈夫だ。

【そう言って、外套の内ポケットから取り出したハンカチで画面を拭い、鈴音に端末を手渡す】
946 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2018/01/03(水) 00:40:02.14 ID:wFDaTOYf0
>>945

ううん、と、ね、あの……わたしが褒めてもらうのは、たまに――。でも、それだって、うんと恥ずかしいのに!
……もう、なんだろ、もう――、

【――なんて。彼女にとって彼の言葉はもはや追い打ちみたいなものだったらしい、真っ白な顔を耳まで赤くして、数度言葉にもなりきらない鳴き声を漏らしていたのだけど】
【途中で意識的に深呼吸をして落ち着こうとする、それで――ふと思い浮かぶのは。いろいろなひとがしてくれた嬉しかったこと、優しくしてもらったときのことも】
【昔のことを思い出せない。もっと言えば、思い出せないのは数年前のある日から以前のこと、なのだけど――もう思い出せない過去の気持ちの残滓まで、ちらりと過り】
【少しだけ泣き出しそうになったのとぎゅっと――ケープの中で服の胸元の布地を、握りしめて。涙だけは抑え込む、それで、「ありがとう」と、告げる声は】
【ふしぎと見た目よりも大人びて聞こえただろうか。とはいえまだまだ顔はうんと赤くてよく熟れた林檎みたい、なのだけど】

【そして彼に携帯端末を貸せば、彼女は不思議そうな――というより何をするのだろうと気になるような顔で彼を見ているのだろう、とはいえ、画面を覗くことはなく】
【それからこれは余談なのだけど。彼が検索をかけようとすればブラウザの仕様だろう、過去の検索語句の履歴が表示される……のだけど】
【ずらっと並ぶのはいろいろな料理の名前。それからレシピやアレンジの方法、そういうもの――当たり前に貸してくれたあたりからも、変なものは見てないらしい】

んん……権限? えっと、……――、そ、か? えと、どういたしまして――、あ、わ、ごめんなさい、全然いいのに……。

【なんとか権限。その単語で「はてな」顔になって首をかしげている少女は、多分、あんまりこういうのに詳しくない。いっそなんならアクセス遮断というのも、あまり】
【とにかく彼のしたかったことはできなかったらしいと分かれば少し申し訳なさそうなのだけど――礼を言われればひとまずそうは返して、受け取ろうとする間際】
【彼が画面を拭いて返すのを見れば、逆に慌てたようになって――自分はそうしなかったのに申し訳なく思ったのだろう、そういうことが顔に書いてある】

えっと……、そのなんとかってとこ、見られたら、何か分かったのかな――特別な機械とかだったら、よかったのに、これ……。

【賞状みたいに両手で受け取ったスマートフォンをまだ両手でぎゅっと持っていた。それでよくわからなくって吐いた息が白くなって、それから透明に溶けて】
【特別な機械――というので思い浮かぶことも、あんまりなかった。今までの少しの間で彼女が機械に疎くてあんまり興味もないのはきっと知れていただろう、だから、】
【そういう彼女だから――自分が仕事をしている組織に所属する人間やほかの正義組織の人間が持っているとある端末を思い浮かべることはない、特別に説明を受けたこともないなら】
【一般ではないもの……特別の定義もよくわかっていなさそうで。どこまでも普通な端末をひっくり返して裏を見ても、ありふれた社名が書いてあるだけだった】
947 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(福岡県) [saga]:2018/01/03(水) 21:00:10.99 ID:p/8xE35Ao
>>946
【くるくると、赤くなったり、うつむいたり、とする鈴音を、微笑ましく眺めながら】
【きっと彼女の周りには、善良な人たちが揃っているのだろう、と思いやる】
【UT。いつか青年が世界の表舞台に立つのなら、彼らと共闘することになるかもしれない】

ああ、そうだね。
世界にある、いる、様々な組織や個人の情報を取得できたかも、ってところだ。
いいんだよ、鈴音。ネット環境があって、いくらか活動している組織や個人が居る、と知れただけでも、
本当に助かった。
とりあえずは、中央都市へ向かうことになるんだろうけど――
ここまで歩き通しで疲れたから、今日はこのあたりで休もうと思ってた。
屋内で、しかもベッドで休めるなんて、望外だよ。

【また、申し訳なさそうな顔をさせてしまった――少し、胸を痛めながら、青年は鈴音に微笑みかけた】
948 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2018/01/03(水) 21:17:19.83 ID:7fuvk+hY0
>>947

【どうやら感情が表に出やすい性質であるらしい……とは今更の話になる。だから、なんてことは、もしかしたらないのかもしれないけれど】
【だから、また、彼女はうそを吐くことも得意としない。特にこういった、何でもない平穏な時間では――だから、今宵彼女の言葉に、それらしいものもなく】
【ただ。彼も問わず、彼女も言わなかったことがあったとすれば――彼女そのものは、そう、きれいに生きてきた人間ではない、いっそ、ヒトですらないということ】
【あるいはすでに見抜かれているだろうか。偽造や偽物を見抜くための力を持つ人間であれば、難しくはない。何かの方面で尖った感知の力があれば――違和感に気づきえる】

【言葉や態度ではない、行動でもない、それでも何かがおかしい。ひどく巧妙に取り繕った人間ではないもの、――ただ、今現在、悪意なく笑う姿だけは、確実に本物で】

そう、なんだ――、そっか、じゃあ、見られたらよかったのに、……。……ううん、わたし、大したこと、してないから――。
そういうのがあるんだね、よく知らないや……、セリーナなら知ってるかな? んん、ロウとかならわかるのかな……、SCARLETのひとって、よく知らないけど、……。

【彼の言葉に、それならやはり見せてあげられたらよかったのに、と、残念がるような言葉でつぶやく、ただこればかりは本当にどうしようもないだろうから】
【残念そうにして――助かったといわれるほどのことではない、と、今度はさっきよりも落ち着いて返す。それからようやく携帯端末をしまいこみ】

トーカーさん、どこから来たの? えっと……、……その、どこで気づいたの、かな?
……その場所が何か、その、特別な場所なら――調べたら何かが分かるかも、あなたが断絶してしまった理由――……とか、そういう、何か。

【都市へ向かう。歩き通し――それらの言葉に、彼女はようやく彼がどこから来たのかを疑問に思ったらしい、ふと、そういう風に尋ねたなら】
【記憶が不確かとは言え、確かに存在し続けた自分ならば、あるいは彼より調べものもたやすいと思ったのかもしれない。それから、】

――――あっ、! そうだ、忘れちゃうとこだった、……さっきいつでも頼ってって言ったのに。連絡先分かんなかったら、駄目だよね、もう、ね――。
えと……電話番号で分かるかな? UTの電話番号と、わたしのと……、あと、お店の住所もあったほうがいいね。

【こちらでも調べるのを手伝えるかも――その流れで思い出したのだろう。そういえば、さっき、いつでもだなんて言ったくせ、連絡先を伝えるのを忘れていた】
【彼が受け取ってくれるようなら、自分の連絡先、それからUTの電話番号、それからそれからUTの住所――そういったのをメモに書いて、渡すのだろう】
【それも要らないというのであれば――すごく気弱そうに「だいじょうぶ?」なんて、受け取ってほしいような目で、確認することになるのだけど――】
949 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(福岡県) [saga]:2018/01/03(水) 21:36:16.41 ID:p/8xE35Ao
>>948

【――青年は、鈴音をしっかりと視ている。もしも彼に何らか、そういった能力があるのなら】
【大方のことは、悟っているのかもしれない】
【けれど、彼にとってそれは、鈴音を偽物と断じる要素ではない】
【少女でなくとも、ヒトでなくとも、生物ですらなくとも――たとえ取り繕いだらけの、歪な形であろうとも。
 彼女の在り方に、嘘はない。それを青年は、視ている】

スカー…?
また、新しい組織の名前かな?
文脈から察すると、正義側の組織のようだけど。

目が覚めたのは、ここから約20kmほど西の荒野だ。
目が覚めたというか、意識を取り戻したというか……
記憶は混濁しているが、自分が何者なのかはわかっている。
ただ、時系列は曖昧で――どれが僕の最後の記憶なのかは、判然としない。

まあ、なにもないところだったし、特別な場所だったとは思えないな…
神殿、祭殿というところでもなかったし、魔力の高まりも感じなかった。

【連絡先を差し出す鈴音から、丁寧な手つきでメモを受取り】

ありがとう、鈴音。
なんというか、ちゃんとした組織なんだねUT。
飛行戦艦が本部だったり、そもそも場所を隠匿してたりしてたいろんな組織に見習ってほしい……

【しっかりと、仕舞い込んだ。ケータイが契約できたら、電話するよ、と告げて】
950 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2018/01/03(水) 21:51:59.70 ID:7fuvk+hY0
>>949

【――もしもそれを彼女に言葉で伝えてやっていたなら、きっと、きっと、彼女は喜んだだろう。たとえ、それが言葉で伝えられなかったとしても】
【そうふるまってくれることを彼女はきっと喜んでいた。当たり前に接してもらうこと、それがどれだけ快く穏やかか――それを、よくわかっているようだったから】

うん、SCARLET……。できたのは、いつ頃、だったかな……ううん。わたしも何人かとは会ったことがあるよ。
みんないいひとだよ、……なんて、当たり前だね、――UTのひとたちも、いいひとだよ? だからね、だいじょうぶ――、

【設立がいつだったかは、残念ながら彼女の思い出の中には残っていない。それについては記憶の欠落のせいというよりか、純粋に興味がなかったというのが大きかったが】
【正義側の組織であるのを頷くことで肯定する、こちらもまた頼って問題はないものであるらしい、むしろ頼られてこそのひとたちだろう、うん、と、彼女も頷いて勧めて】

二十……二十キロっ? わ、すっごい遠いね、――そっか、あんまり特別じゃなさそう……えっと、何か、あなたに関係していそうな場所だった、
――っていうのも、きっと、ないんだよね。なんでだろう? 記憶喪失でも、ないのかな――んん、……、ずうと記憶喪失で、その記憶が戻ったのが、その場所だった、とか、
なんて……きっと違うよね。わたし、記憶喪失とかってよくわからないの、お医者さんとかだったなら、分かったかな……そういうのばっかりだね、もう――。

【二十。思ったより遠いと驚いた顔の彼女は華奢な見た目通りというか、そんな距離を歩いたことはないのだろう。ひどく驚いて、思わず大丈夫……と聞きかけたのだけど】
【あまり特別ではないようだったというのを聞けば、ううんとまた小さく唸る。それから、なんだか思いついたことを言ってみるのだけど……あまり自信のないように取り下げ】

うん、いつだって来て大丈夫だよ、場所もしっかりその場所だし、……あのね、夜はね、酒場もやってるんだ。わたしがそこの給仕さん!
…………まあ、ほかのひとはいないから、わたし、いっつも一人でお仕事だけど……、お客さんもね、セリーナの知り合いのひと多いし、それでなんとか。

でも格好いいと思うよ、空飛ぶの? すごいね――場所が分かんないのは、困ったとき、行きづらそうだけど……。

【書いた住所を見ればその場所が街中にあることも分かるだろうか、そして告げるのは、正義組織でありながら、店やのようなこともしているらしい】
【とはいえその分野ではかなり人手不足らしいのが彼女の死んだ目で知れるのだけど、……さっきの、手伝ってほしいという言葉。強要はしないが、本気ではあった】
【彼の言葉に素直に「格好いい」と笑って――「酔っ払いのひといっぱいだから、うちは……」と、少しだけ冗談めかして、続けて】

【「うん、いつでも待ってる」――ころころした声で笑って】
951 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(福岡県) [saga]:2018/01/03(水) 22:07:16.67 ID:p/8xE35Ao
>>950

【態度で伝える。言葉で伝える。仕草で伝える――幾つかの手段があるけれど、今は態度を伝える糸にして】

しかし、そう聞くと、正義側の組織が随分優勢なのかな。
機関なんかも最近活動してないことを聞くと――なんだかこの世界は、凍ったみたいに穏やかなのかな。
だとするなら、僕が今、目覚めた理由は……?

【思いを巡らせるように、瞠目して】

ああ、20km。そんな長距離を徒歩移動なんか、結構久しぶりな気がするからさ。
いや、記憶が混濁してるのに久しぶりもなにもないんだけど。
そうだね、僕が特別な場所で目覚めるとしたら、聖都になるんだろうと思う。

ありがとう、鈴音。その酒場、こっそりお邪魔するし――あ、なんならほら、少しくらい手伝いはするからさ。

【突然死んだ彼女の目に、さぞ大変なのだろうという推察を載せて、バイトを申し出る】
【どの組織もキャラ濃いやつはいるんだな、酒飲みってホント厄介だよな、なんて、こちらも目のハイライトを失わせて】

――さて、楽しかった。そして助かった。
拠点はここにするから、僕に用があるときは、
ビルの前の ぬ の文字を目印に。

何か会ったら、いつでも頼ってくれると嬉しいよ。

【そうして、す、と手を差し出す。握手、ということだろうか】

952 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2018/01/03(水) 22:09:27.59 ID:7fuvk+hY0
/http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1514984638/
/こちら次スレになりますー
953 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2018/01/03(水) 22:33:02.32 ID:7fuvk+hY0
>>951

そう、なるのかな。自警団とか警察もあるし……、SCARLETもあるし、もちろん、UNITED TRIGGERもね。
最近は誰かの……誰かの、かな? ずうっと昔の……えーっと、≪ネル・ナハト≫みたいなものも、……ない、ね。
ううん、あるかもしれないけど、聞かない。……少なくとも、いま、確実に活動してるって言えるのは、きっと、カノッサ機関だけだね……、

……いや、ううん、カノッサ機関と……、スクラップズ、かな、……二十九番のカニバディールが……やっている? 関係している? わからないけど、
カニバディールは一人ぽっちに見えても一人で行動していないみたい、前も、……一人だと思ったのに、後から仲間のひとが出てきた、それとも……魔術かな?

【大きな出来事なんて、なかった。それは確かに穏やかだけど居心地が悪くて、なんだかざわざわと不安な気もする。昔を――不完全でも――思い出せば、余計に】
【確実に現存していて活動しているだろうといえるのはやはりカノッサ機関だけ。……そう言いかけた彼女は急に口をつぐんで、それから、別の名前も出す】
【そしてそれは少し前に話していた存在の名前に行きつく――やはりそのあたりが要注意だということなのだろう】

わたし、そんなにいっぺんに歩いたことなんてないよ、えっと――足の手入れは気を付けてね、筋肉痛とか……、

【聖都。それが相手にとって特別な場所であるらしい、また一瞬黙った彼女はそれから眉根をぎゅっと寄せ、「聖都……」とつぶやき】
【なにか眼前の彼とあの土地を結びつけようとして一生懸命になっているようなのだけど――やがてわからないとお手上げ、ゆるゆると首を揺らし】

こっそりじゃなくって堂々と来てくれたっていいんだよ――あ、そっか、でも、あんまり組織とは……、えっと、じゃあ、こっそり。
だけどわたしには教えてね、でないとなんにもサービスできないもの、――わあ、ほんとう? だけどね、悪いよ。
それにお客さんとして来てくれてるひとにお手伝いさせてるってバレたらセリーナに怒られちゃう、だから――うん、いつだって来てね、もちろんお客さんでね。

【こちらは酒場だから……そういうのもあって酔っ払いが多い。ただその人たちはそのうち帰るから、まあ、組織の中に酒飲みと言えば】
【まさにリーダーそのひとなのだけど。秘蔵のワインとかがあるらしい、それでたまに客に勝手に飲まれている、……少女にはあまりよくわからない世界】

……うん、わたしのほうこそ楽しかったしありがとうなの、えーっと……その、ね、さっき褒めてくれたの、うれしかった、……わたしじゃなくって、
ほかのひとのこともそういってくれたこと。うん、用事があったら、また来るね。こんなに変わった目印があったらきっと迷わないの、きっと世界でここだけだから。

……――うん。だけど、ね、トーカーさんも困ったことがあったらわたしに言ってね、その、でないと、格好よくないから――わたしが!
もう、たまには格好つけたりしたいんだよ、お料理作って、お料理作って、お料理作って……ばっかだもん。

【差し出された手を一瞬ぱちりと丸くなった目で瞬きして見つめた彼女はあまり慣れていないのかもしれない、わずかに遅れて手を伸ばせば、】
【きゅ、と、少女らしい力具合で握り返すだろう。よく水を触るのだろうにきれいに指先まで手入れされた手は少しだけ冷えた、だけれど確かに体温がある存在として、そこに在って】
954 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(福岡県) [saga]:2018/01/03(水) 23:13:50.87 ID:p/8xE35Ao
>>952
【ネル・ナハト】

――キルベルク・シルバーソードの、≪ネル・ナハト≫か。
吟雪が昔居た組織、だっけ。

【聞き覚えのあるその組織の名前に、知っていることを口に出す】

【カノッサ機関、カニバディール。再び口に上ったその名前を、しっかりと覚える】
【今この世界において、最も危険なのは、その存在だと、認識する】

――ああ、ありがとう。足は筋肉痛というか……まあ、そうだね。
手入れは欠かさないようにしておくよ。

【耳がよければ、目が聡ければ気づくかもしれない。彼の上半身とはやや不釣り合いなほど発達した、その下肢】
【細かなアクチュエーター音と、鈍色のその質感に】

【そして、身振り手振りで、自分への友情を示してくれるのを見て】

あはは、そりゃリーダーは厳しそうだ。
でもそれくらいなら、お店を手伝ってくれたらいいんだけど。

――僕のほうこそ、楽しかった。
君を守ってきた周りの人にも、いつか会ってみたいな。

【自分より、周りを褒められたのが嬉しいと、そう語る少女に、少しの眩しさを感じて】

それに、いつかは君の料理も食べてみたい。
お店があまり混まないときに、お邪魔することにするよ。

【ぐ、と握手。寒い冬の夜、何もない廃墟で出会った二人】
【『トーカー』と名乗る青年と『白神 鈴音』の出会いが、この後世界にどう影響するかはわからない】
【けれど今は、握った互いの手のぬくもりが、唯一の収穫ということで】
【別れを告げるまでの僅かな時間、二人の穏やかな話し声が響くだろう―――】
955 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(福岡県) [saga]:2018/01/03(水) 23:39:25.10 ID:p/8xE35Ao
/あ、>>953でした、すまぬ
956 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2018/01/03(水) 23:46:06.03 ID:7fuvk+hY0
>>954

【「だけど――あんまりよくは知らないや」」
【何度目か。また彼女は困ったように眉を下げる、彼女の中ですぐに思い浮かんだ悪い方の組織……あるいは集団。それがそうだったのだろう】
【彼が口にする人名は彼女にとって心当たりがない。だからかわずかに目を細めたけれど――それ以上に追及することはなく】

だけど、ちょっぴり変な気持ち、わたし、昔、お家とかなかったから――正義の組織とかねだいっきらいだったの、嘘つきってね、思ってたし。
そんなふうにするならどうしてわたしのこと助けてくれないんだろってね、ずっと思ってたんだ――そうやって思ってられるくらいの平和、護ってくれてたね。

いまならそう思うんだけど――むかしのわたしに教えてあげたかったなあ、悪いひとたちのテロとかに巻き込まれて死んじゃうこと、なかったでしょ?って、ね。

【その代わりに、少しだけ愉快だったような笑い声がこぼれる、なぜって、たずねるまでもなく理由も教えてくれるだろう。正義とか、悪とか、そんなの関係なかったはずなのに】
【それどこか正義を名乗るひとたちとか嫌いだった。だけれど今となっては正式なメンバーでこそないけれど、その片隅に名前を置いて。その組織の名前まで借りて】
【自分のやりたいことをやるようにまでなっている、だから、それが面白い。半ば独り言みたいなもの、くすくす笑って――最後にふっと笑みを収める瞬間が、いやに大人びて】

うん、それがいいよ、運動した後にきちんとお手入れとかしないと駄目なんだって、変な風に……なる?

【変な風になるというのもひどいおおざっぱ。そして――その様子だと、彼の下半身の異質さには、おそらく気づいていないのだろう】
【彼女の中で尖った感覚は嗅覚と魔術に対するものが大きい。左右で色の違う眼はそのぶん明るい場所と暗がりをそれぞれ得意とするけれど、二つ合わさればひどく中途半端】

たまには手伝ってくれるよ、だけど、忙しいときは一人が多いの。でもお客さんも慣れっこだからね、お手伝いしてくれるよ。
その……わたしが寝ちゃったときとか、起きたら、全部お片付け終わってて……お皿洗うのとかも……ぜんぶ……。

……わたし、ね、みんながいたから、今のわたしになったの。だからね、ええと――うん、いつか。きっと。みんなと会ってほしいな。

【なんというか、ものすごいアットホームな感じらしい。唯一の給仕が寝落ちするのもかなりどうかと思うのだけど――そういうのをさておいても、】
【そういう場所だからこそ一人でやっていけているのもあるだろう。だからそれも含めて、そういうことも含めて、いろんなひとによくされた結果の自分が、今ここにいて】

もちろん! わたしね、お料理上手だよ――なんて、ふふ、あんまりハードル上げたら、あとで大変だもんね。……うん、待ってる。

【少し冷えた指先は彼の体温ですぐに温まっていく、待っているねと伝える声は、純粋な気持ちと――それから、ほんのちょっぴりだけ、宣伝みたいな気持ち】

【それから。そのあとのこと、彼女の方から、なにか使えるものを見繕ったりするのなら、それを手伝おうかという申し出があるだる、もちろん――それも無理強いではなく】
【彼が必要だというのなら、手伝う。そうでないなら――少し名残惜しそうにしながらも、彼女は帰ると告げるのだろう。寒いからうんと気を付けて眠るように、と念押しはするだろうが】
【どちらにしても。帰る際に彼女が彼に言うのは「またね」と再会を願うもので――うんと子供ぽく笑って言うから、それが彼女が彼をどんな風なひとだと認識したかの、答えになるはずだった】

/このようなかたちでどうでしょうか、まだ何かということだったら申し付けてくださいっ、おつかれさまでした!
957 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(空) [saga]:2018/01/04(木) 00:04:44.95 ID:ZXE3F4Tq0
【――と、そんな廃墟の一角に灯った和やかな空気に、一塊の重低音が割って入る】

【ごう……ん、と】

【腹の臓物に響くような空気の振動によって、】
【廃墟の老朽化した建物は微かに揺れ、積もった砂埃を散らす】

【剣呑な揺れはしかし、すぐに収まる】

【魔力反応はない、何かの襲撃がある訳でもない】
【落ちついて状況を見極めれば、】
【これはどこか離れた場所から伝わってきた地響きのようだと推測できるかもしれない】

【実際、東の空を見上げてみたならば、】
【そこには明確な異変の徴を認めることが出来る】

【ある一点を中心に、星空が渦巻くように歪み】
【その渦の中心から地上へ向けて、光の束が降り注いでいる】

【二人のいた地点からは、近くはないがさほど遠くもない】
【大人の歩幅で歩けば、凡人でも大きな疲れを覚える前に辿り着けそうな距離だ】

【――人為的に起こされた事象なのか、】
【あるいは物珍しい自然災害の一種なのか、】
【一切の詳細は辿り着くまで分かりそうにない】

【それでも足を向けるならば、止めるものは何もない】


/うりゃーぶっ込んでやるぜ!
/壮大っぽいが先の展開はほとんど何も考えてない!
/乗ってくれる人がいればお待ちしてますー
958 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(福岡県) [saga]:2018/01/04(木) 00:14:40.99 ID:+z5BZVZ5o
>>956

【暖かな別れ際。それを圧するような、>>957の重低音を聞き咎めた】

>>956
>>957

【窓から、音のした方角を見やる】
【目を細めれば、明らかな異変】
【個人の能力か、あるいは何らか、古代の遺物が発現したか】

――ともあれ、事情は調査をしないと、か。
新居の近くに、あんなヤバそうな現象が頻繁に発生してもイヤだし。

ちなみに鈴音、ああいうこと、もしかしてこの地方では日常茶飯事だったりする?
いちいち驚いてたらこれだから田舎者は、みたいな顔されるとか、あるかな。

【軽口を叩きながらも、外套の中に備えた武具を点検する】
【いくつかの投擲用短刀、質の良さを感じさせる手甲―――腰に差した、白木の刀】
【どうやら青年の中で、調査に赴くことは確定のようだ】
959 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2018/01/04(木) 00:25:46.78 ID:09aPMtSz0
>>957>>958

【ごう――と鈍い、鈍い、重たい音がする。それは地面まで鳴らして揺らすようで……そのままぴたり、と、その場で動きを止めた少女は】
【あるいは小さなかごの中のハムスターのようでもあった。聞きなれない音にぴったりと動きを止める小動物にも似て――その数秒後、ようやく持ち上げた視線は】
【あたりを見渡すようでも眼前の彼やこの「ぬ」のビルの内部でもない、遠くまでを見通そうとするように見えた。ただ……建物の中では、それも叶わず】

【また。何か魔力的な要因あってのものなら、あるいは何か感じ取ることもできるだろうか。ただ――距離のこともあるのなら】
【あまりに濃い、強い、異質……そういった要因がなければ、彼女も気づくことはないだろう。少し遅れて、トーカーが覗き込んだ窓をから、現象を認めて】

え。ううん、こんなの……あんまりないよ、そんなの聞かないの、だって――こんなのよくあったら、もっと、ニュースみたいになってると思う。

【視線はじっと>>957で起きた事象を見ている。そのせいかさっきまでの、人懐こい声とは少しだけ違った、冴えた――落ち着いた声音になって】
【こういうことはあんまりないと思う――というのが答え。とはいえ彼女の住まう場所はひどく遠い、全国紙に乗らないほどのニュースなら、知らないほうが多いが】

トーカーさん、行くの? え、えっと……じゃあ、その、わたしも。
一応、セリーナから教わってるの、戦い方とか。だから――ちょこっとなら、自分のことも守れるよ、邪魔にはならない……つもり、

【そこでようやく彼女は彼の行動に気づく。武器や装備の確認はつまり、その場に向かうということ――だと理解して】
【彼女としてはまだいろいろなことが分かりきっていない彼を危ないかもしれない場所に見送るのは、気が引けるのだろう。自分も行く……と口にして】
【まったくただの一般人ではないから大丈夫だと言って。――ただよほど強くはないと語尾の感じからも伝わるだろう。けれど、そのくせに】
【自分も行く。それはもう今更だめといっても聞いてくれないような頑なさもあって――何かをアピールするようにぎゅっと作った握りこぶしが、胸の前で少し強そうだった】
960 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(空) [saga]:2018/01/04(木) 00:50:59.66 ID:ZXE3F4Tqo
>>958>>959

【そうして揃って歩みを始めたならば、】
【二人を止めるものは『震源地』まで何も現れない】

【ただ冬の夜の厳しい風が、】
【時に二人を押しとどめるように、】
【時に二人を後ろから急かすように、】
【気まぐれに吹きすさぶだけだ】

【――そうして辿り着いた先】
【そこは二人が出会った場所と似た、廃墟の街】

【ただ、その光景は先の街とは著しく異なっていた】



【空から降り注ぐ光の先――】
【そこには、人間が胡麻粒ほどに感じられそうなほどの、『大穴』が空いていた】

【まるで菓子生地をスプーンでくり抜いたもののように、その淵は不自然に鋭い】
【空から降り注ぐ光は、全てその大穴に飲み込まれ、底の見えない暗黒の中へ消えていく】

【異変は更にあった】

【恐らくこの大穴が出来る際に伴った衝撃で散乱したであろう周囲の瓦礫】
【その瓦礫をよく見てみたならば、随分と歪で生々しい形をしていることに気付くかも知れない】

【その違和感の正体は、】
【恐らく瓦礫に人間の『腕』や『足』などの形状を認めることが出来るからだ】

【よくよく目を凝らして見たならば、】
【それらは何とも形状しがたく、人体と瓦礫が『融け合った』代物である】

【恐らく元は人間として存在していたであろうそれらの異物は、】
【もう今は何も物言わぬ奇怪なオブジェクトと化して声など発しない】

【何がこの凄惨なる現場を生み出したのか、】
【それを語れそうな者はここには居なさそうだが――】

――――……う……

【と、瓦礫の中で、微かにうめき声のようなものが混じる】
【もしも耳聡くそれを聞き取れたならば、】
【そこには、瓦礫と『融け合って』いない人の腕が一つあることに気付くだろう】

【表に出ているのは腕の一本だけで、】
【その他は全て瓦礫の下に埋もれている様子だが……】
961 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(福岡県) [saga]:2018/01/04(木) 00:58:21.07 ID:+z5BZVZ5o
>>959

ああ、僕は行くことにする。
なんか、予感がするんだ。

でも、危険が―――

【あるかもしれないから、君はここに、と言いかけて】
【鈴音がある程度固めたような、そんな決意を感じ取る】

……。

【少し迷ったように、考える――幸いにして、現状の自分は万全に近い】
【危なくなれば、鈴音を連れて脱出に徹することも不可能ではないだろう】
【どのみち、自分が脱出すら適わないような規模の現象だとするのなら、ある程度距離のある、
 この『ぬ』のビルも安全とは言えまい】

――危なくなったら、一目散に逃げよう。
まずは自分の生存を第一に、次にお互いの生存を第二に。
状況を明らかにするのは、そのずっと下の優先度。

いのちをだいじに、ってやつだ、いいかな鈴音。

【そうして、青年は『ぬ』のビルを発つ。重低音の響いた、その根源へ。
 征く意志あらば、鈴音も帯同するだろう】

>>960

――――これ、は。能力、って規模じゃない、な。

【あまりにも深い、その大穴】
【ここに直前まで有ったであろう営みは、黒い空隙にぽっかりと飲み込まれたのか】
【僅かな残滓を汲み取ろうと、瓦礫に目を向けて】

……なんだ、これは。

【瓦礫と、人間のパーツが溶け合った、そのオブジェに気づく】
【正視すら憚られるような狂気に、尋常ではない事態である、と察し】
【トーカーの耳に、呻き声が届く】

―――あの、腕……?

【ざり、と一歩を踏み出す。無事かもしれないその人間を助けようと】
【同行者、あるいは周囲の状況が止めなければ、彼は瓦礫を撤去し、埋もれている何者かを助けようとするだろう】
962 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2018/01/04(木) 01:24:28.60 ID:09aPMtSz0
>>961

【でも。――その言葉の先に続くものはおそらく拒否であったはずだ、そしてそれはまっとうであると言えただろう、むしろ、】
【戦う側の存在には見えない少女を連れて行くことで及ぶ危険は彼女本人だけでなく彼やそれ以外の存在に及ぶことも考えられた。だから、彼は何より正しく】
【わがままを言っているのは、少女の方。――彼自身彼女が丸腰であるとその目で判断していたはずだ、多少の魔術の心得はあるようだったけど】

【――だけど。それを差し置いても、その気持ちばっかりはいやに強い。強くって、どこか悲しいくらいにも見えるだろうか】
【誰か強い人の背中に護られるだけは、もういやだった。何年も前に、そう思って、それから、ずっと、がんばってきたつもりだったから】
【誰かの背中越しに見るのではなく、誰かと並び立って自分の目で世界を見渡したかった。――それが、そのどこか強さにつながって】
【あとは――少女がたんにこういうとき意外と頑固な性格だというのも、多分あったのだけど】

……うん。逃げる。
わたしね、転移の魔術を持っているよ、でも……起動するのにちょこっとだけ時間がいるの、あらかじめ準備しておくことはできないし、集中できないとほどけちゃう。
だけど起動できたら、遠くまで行ける、――こんなの使わないのが一番だけど。教えておくね。

【第一に自分を。第二にお互いを。それで――あの異常の答え合わせをするのは、それよりずうっと下の価値しか持たないものである】
【相手の言葉にうなずいた目はさっきまでと違う真剣なもの、それから、変わらず冴えてわずかに冷たくなったままの声で、自分の所有する魔術式のことも伝える】
【普段の使い道と言えばただ自宅が僻地なのでこういうのがないとやってられないからと書いてもらったものなのだが――それでも、こういう場なら命綱たりえる】

【彼がビルを出れば、彼女もまた後ろをついてくるだろう。目線は時々ちらと光の柱を見やる――そしてそれが近くなれば】

>>960

わ……うわ、

【少女が漏らした声は驚きに染められている、一瞬言葉さえ忘れてしまったようになって、けれどすぐに取り戻す。ぎゅっと唇を噛んで、じっと覗き込み】

トーカーさん、これ、人間みたい……、人間? ひとのかたちしてる、彫刻みたいだけど――。

【それで――すぐにそれらが人間らしい形をしていることにも、気づく。あるいはにおいや魔力的な異常があれば、そちらにも気づくだろうか】
【ひとまずは目についたもの――人間のような形の瓦礫に真っ先に意識を向けた。手で触れることは憚られたのか、代わりに、靴のつま先で小突こうとするだろう】
【硬ければ素直に硬いとトーカーに報告するし柔らかければ同じく柔らかいと報告する、――どちらにせよ、眉をひそめて、明らかな異常事態相手に動揺しないよう努めた様子で】

腕――、えっと、えと、わたしも、手伝う、

【だけれど――彼がまだ人間のままである腕を見つけ出せば。また彼女も、かすかなうめき声を聞き取ったなら】
【すぐに彼の視線の先にその腕を見つけ出して、彼と同じように、助け出そうとする――ただ。この異常な場が不安であるように、周りに向けている意識の割合も高く】
【周りで何かがあれば、気づく――かもしれない。どちらにせよ彼女は、トーカーよりも少し遅れて、腕の方へ向かおうとするはずだ】
963 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(空) [saga]:2018/01/04(木) 01:37:49.37 ID:ZXE3F4Tqo
>>961>>962

【周囲に充満する異様な気は、最早魔力と形容できるものではなかった】
【魔力にも、エーテルにも、物質にも、何にも成れなかった残骸】
【破損したデータにも似たエネルギーのノイズだけが、周囲を漂っていた】

【だがそれらも世界の自己修復能力が働いているのか、】
【徐々にではあるが元の在りように戻ろうとしている流れも、】
【エネルギーの感知等に優れていれば感づけるのかもしれない】

>>962

【鈴音がその『異物』を小突くと、どニュ、と何とも形状しがたい感覚が返る】
【瓦礫の部分は無論硬いなのだが、人体との境目辺りは】
【無機物とも有機物とも、硬いとも柔らかいとも言いがたい物質に成り果てていた】

【しかし小突いた際の僅かな衝撃に反応したのか、】
【小突かれた部分だけが微かに渦状に歪み、その不細工さを増した】

>>961>>962

【瓦礫は決して軽いとは言えなかったが、】
【トーカーと鈴音、二人分の膂力なら十分に除去することが叶った】

……う……ぐ……

【瓦礫の下から現れたその姿は、青年のようである】
【コンクリートの砂礫を被ったせいか地毛なのか、最早判然としないがその髪は灰色】
【黒い帯状布で片眼を覆っている。その表情は悪夢の最中にあるように歪んでいた】

【元は硬質な黒のラバースーツを身に纏っていたようだが、】
【それも衝撃によるもののせいか、激しく損傷して襤褸同然だった】

【彼は二人に助け起こされると、】
【その感触を感じ取ったのか、堅く瞑っていた眼を開く】

【意識が混濁しているようで、】
【焦点の定まらぬ眼を二、三度瞬くと】

……こ、こは……――

【ようやく焦点が定まり、自身を助け起こした相手を認識する】
【が、その途端、彼は「ひッ」と音に鳴らぬ短い悲鳴を上げた】

【それとほとんど同時に二人から飛び退き、】
【接近を拒むように両の掌を前へかざしながら後ずさる】

だっ、だれっ、誰だ……!!

【彼は片方しかない青紫色の瞳を大きく見開いて、】
【鳥のように忙しなく二人の姿を交互に見やる】

【息を不規則に荒げるその様子は、明らかに混乱と恐怖に歪んでいた】
964 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(福岡県) [saga]:2018/01/04(木) 01:46:38.86 ID:+z5BZVZ5o
>>962
……人間……と、瓦礫が、溶け合ってるように見える。
そのように作られたオブジェというより、何かの影響で、

【――ここにいた、あるいはどこかに居た人たちが――という言葉は、飲み込んだ】

鈴音、魔力の痕跡はあるかい?
僕には感じられないんだけど、何らかの魔力災害だと考えるのが、一番な気がする。
個人の能力で、こんな大穴、開けられるとは考えづらい。

【『渦状に歪む』オブジェを見る。ち、と少し舌打ちする。固体がこんな形状に歪むなど、
 十全たる物理法則を影響下にない、と告げているようなものではないか】

>>963

【鈴音と会話しながら、瓦礫を移動させる】
【灰色の髪の青年を助け起こし、その反応を見て――】

あー、オーライ、心配ない。大きな音がしたんで見に来た、ただの通りすがりだよ。
名前はトーカー。すまないが偽名だ。
由来を聞きたい? まずうちの父と祖母の笑える話からしないといけないんだけど、聞く時間はあるかな?

【左手を前に突き出し、ひらひらと振りながら、無害だよー、とアピールする】
【口八丁手八丁、あとひと押しで恐慌状態に陥るであろう、灰色の青年が落ち着けるように】
【パニックには落とさない。また、明らかに様子のおかしい周囲の状況にも目をやらせない】
【自らの手に青年の視線を誘導しながら、軽口を続ける】
965 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2018/01/04(木) 02:06:25.81 ID:09aPMtSz0
>>963>>964

【小さな声で少女は呻く、自分の感覚に引っ掛かりそうで、けれど引っ掛からないもの、それが、この場にはうんと充満している】
【飲み込むタイミングを見失った餅をずうっと噛んでいるような感覚にも似ていた、ぶんぶんと濡れた犬のするみたいにかぶりを振って】
【それであたりの異様な気を取り込まないように……あるいは気にしないように努めようとする。――エネルギー、それを彼女の鋭い部分はとらえないから】
【彼女が認識するのはこの場に満ちる気の異様さだ――見慣れた言語によく似た、バグったような文字を見ている気分】

トーカーさん、これ、硬くって、柔らかいみたい、ほんとにお肉と瓦礫、混ぜたみたいな……――――、っ、わ!

【小突いたつま先が伝えてくる感触は人間でもあって瓦礫でもある。見た目のまま素直に予測したなら、あるいは予測できたのか】
【それでもぐっと眉をひそめた彼女の顔を見れば快いものでないと思ったのはよくわかる。硬くて柔らかい。それをトーカーに伝えたのだが】
【触れた場所がぐねりとうねって渦巻いたのを見れば、ぴゃっと動物のように飛びずさる。それであまりいじらない方がいいと判断したか、大人しくトーカーについていき】

ううん、ない、だけど、少しだけ……似てる。なんだろう……すっごくね、変、違うものになってるみたい……、えと、変なものが、たくさんある。

【文字化け。そういう風な言葉をすぐに言えたなら、あるいは彼女はそう説明しただろう。けれど思い浮かばなければ、そういう――はっきりしないものになる】
【魔力らしいものはあまり感じられない。その代わりに、なにかとても変なものがある――それもたくさん。そうだと答えて】

【――瓦礫を退かす段階になれば、少女はやはり見た目通りの腕力だ。それでも精いっぱいの力を出す、……多分、トーカーの活躍がほとんどだったろう、とは余談でも】

えと――、こんばんは。大きな音が……ううん、わたしは鈴音っていうの、わたしたち、あなたにひどいこと、何にもしない。

【やがて助け起こした彼が目を覚ませば、少女の表情がぱっとほころぶ、よかったと安堵したようになって――だけれど彼がひどくおびえた様子を見せれば】
【ほんの刹那驚いたように目を丸くするのだけど――次見るときには驚いたような顔は見せない、空っぽの両手を見せて――その手は、瓦礫を退けた際にか、わずかに汚れていたが】
【同じことを何度も言うのも変だし、多分、今の彼には言葉をかけない方がいいだろう。誰だと問われたから名前を告げて、それから先は、やはり敵ではないと伝えるに留め】

【その間と、また、これから少しの間。少女はなるべく今の状態を保とうとするだろう、少なくとも彼女は急に動き出すこともないし、急に違ったトーンで話しだすこともない】
【なるべく相手――青年が受け取る情報が少なくて済むように。なにより相手と一緒になって動揺しないためでもあった。同じに保つ、冷静でいる――それに努める】
966 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(空) [saga]:2018/01/04(木) 02:21:16.83 ID:ZXE3F4Tqo
>>964>>965

【酷く混乱した様子を見せた青年であったが、】
【トーカーと鈴音の冷静な様子のおかげか、パニックに陥ることはなかった】

……っ、……

【青年の視線はひとまずトーカーへと定まった】
【眉をひそめ、黙したまま警戒の様は解かないものの、】
【彼の呼吸は徐々に落ち着きを取り戻していった】

【自ら名乗る二人を前にして、】
【荒げていた呼吸を、自発的にであろう、深呼吸に変えていく様子が見て取れる】
【それから自身の額に手を当てたり、掌や身体の各部を見やったり】
【彼なりの認識能力を正常にするためであろう仕草を一通りを終えると】

【生唾をごくりと飲み込んでから、おもむろに口を開く】

……すまない、取り乱したらしい……ごほっ

自分は……、……エヌ
そう、エヌだ

悪いけれどこちらも本名じゃない、コードネームみたいなものだ

【名乗る二人を見て、落ちついた様子でそう名乗る】
【しかしまだ完全に警戒を解いたようではなく、瞳には緊張の面影】

【エヌと名乗った彼は、それから周囲を軽く見やる】
【その悍ましさに歪んだ表情は、この惨劇が彼の想像を遙かに超えたものであることを物語る】

……少し、状況を整理させて欲しい

まず……君らは『機関』の者ではない――?

【質問を投げかける】
【相手が正直に答えることを期待してというより、】
【その反応で判断するような含みを持っていた】
967 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(福岡県) [saga]:2018/01/04(木) 02:28:25.14 ID:+z5BZVZ5o
>>965

【魔力では――ない。それが判明しただけでも、おそらく重要な一歩】
【硬くて柔らかい、そんな感触の固体であり、つまり正体不明】
【おおよそ魔力系統に属さない、そんな異質さを、鈴音は過たずトーカーへ伝えた】

――なるほど。あとは、彼に話を聞いてみるしかなさそうだね。

>>966

【青年が落ち着こうとしているのを、じっと待つ】
【ひらひらと動かしていた左手。では、右手は?】
【外套の中に伸びていた。隠し持つ、投擲用の短刀に、ずっと沿えていた】
【いつ青年が急変しても対応できるように――今自分は、一人ではないのだから】

――エヌ。かまわないよ、コードネームでも偽名でも、お互い様だ。

【青年の表情を見やる。どうやら、この惨劇の主犯ではないようだ、と読み取って】

僕らは機関のものじゃない。
カノッサ機関のことを言っている、という理解で構わないかな、エヌ。
君は、機関に所属しているのかい?

【質問に答え、意図を確認し、こちらからも質問を投げかける】
【円滑に、問題なくコミュニケーションが取れるのだと、示すように】
968 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2018/01/04(木) 02:55:29.42 ID:09aPMtSz0
>>966>>967

【空っぽの両手を見せて――それから名を告げて。敵意のない声音と表情は、けれど、過剰に親し気なものでもない。かといって冷たすぎもせず、ただ、落ち着いた様子を保つ】
【やがて彼が自ら落ち着こうとしてくれれば、ほんのわずかに表情は緩んだように見えたが。おそらくほとんどの人間は目の前でパニックに陥りかけている人間を見て快くはない】
【よかったと、そういう安堵のようだった。こちらもまたかすかに長い吐息をもらす、それでもまだしばらくは、同じ姿勢を保つ、なるべく、驚かせてしまわぬよう】

……機関員じゃ、ないよ。

【エヌと名乗った彼からの問いかけ、それに答える声は、やはり落ち着いている。ほんのわずかに間こそ空いたが、それは、こちらも緊張しているせいに見えた】
【実際違うと答えた表情や所作に嘘を吐くときのようなノイズめいた違和感はなかった。そうでなければあまりに嘘を吐き慣れているか――正解は、全く嘘を吐いていない方だが】

【――そこで初めて、少女の目線がエヌからそれて、トーカーへ向いた。それまでは……ひどく緊張していたのだろう、あるいは、彼女も恐ろしかったのか】
【この場の異常さ、そして、恐慌状態に陥りかけている見知らぬ人間……異能を持つのかさえ分からない相手と向き合って。――そしておそらく、彼女一人ではうまくやれなかった】
【おそらく場数を踏んでいるトーカーが居てくれたからこそ冷静さを保つことに集中していられた――甘く噛んだ歯列の隙間から吐息を漏らすようにして】

【それならば。やるべきは彼の邪魔をすることではないだろう、自分が下手なことを言ってしまって、あるいはしてしまって、エヌを刺激してしまっては、よくない】
【だから少女は吐息をゆっくり吐いて、ゆっくり吸い込む。それを何度か繰り返して、呼吸を深く深く、沈めていって――、今度は、あたりへと、意識を巡らせていくだろう】
【先ほどは、何も分からずに吸い込んでしまった。その異質さを今度は意識的に、少しずつ、取り入れて咀嚼しようとする。そうして、どういったものか、自分の言葉にしようとする】
【あるいは、この辺り……よりも広い周囲からゆるやかに流れこんでくるこの世界のもともとの魔力が、また何か違った様子を見せてくれることもあるかもしれない。そう期待して】

――――、……。

【少女は一時そのために黙り込むだろう。とはいえ、第三者から見れば、変わらず緊張したような表情で変わらず手のひらを見せたままの姿勢で固まっているように見えたから】
【どうしたらいいかわかりかねているようにも見えた――だろうか。それでもわずかな時間とはいえ言葉を交わしたトーカーなら、何か別のことに意識を向けていると判断するのかも】
【とにかく――エヌの対応はトーカーに任せる。そうして自分はこの場のことをもう少し探ろうとする――けれど、彼らの会話を聞き漏らすほど上の空にはなりえない】
969 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(空) [saga]:2018/01/04(木) 03:18:51.92 ID:ZXE3F4Tqo
>>967>>968

【二人とエヌとの間に出来ている距離】
【大の大人が一足跳びでは近づけない程度の間合い】

【およそ親しい者同士の距離感ではなく、】
【互いの警戒感がその空間をいささか張り詰めさせる】

【そこでエヌの視線が、鈴音へと移る】
【彼女の少女然としたその雰囲気から放たれる言葉に、】
【エヌは全く嘘じみた様子を感じ取れなかった】

【ただ、聞かれたから答えた、それだけ】
【トーカーと名乗る彼の回答とも齟齬がない】

【一人だけでは判断が難しかったかもしれないところを、】
【二人いたことによっていささか判断がしやすくなった】

……そうか
僕も『機関』の者ではない
争う意思はない――

【彼は少しだけ身体の力を抜いた】
【だが】

……カノ……?

【『カノッサ』と聞いて微かに眉をひそめた】
【それがどうやら聞き慣れないワードらしいことは隠せない】

……僕はその、カノッサ、という名前は知らない
僕の知っている『機関』は、ただの『機関』でしかない……

その正式な名前を誰も知らない……

【「なのに、貴方たちは知っている……?」】
【エヌは何か思案するように少しだけ視線を落とすと】

『機関』……
貴方たちの言う『カノッサ機関』は、
Age682に『青の国』の首都を陥落させたあの『機関』ではない……?

【恐らく聞き慣れない年号、そして国名……】
【質問のような形式を取っているが、エヌはその回答を待たず】

だとするなら、
……恐らく、いやほとんど間違いなく最悪の事態だ……

【エヌの表情に再び先ほどのような恐怖の色が灯った】
970 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(福岡県) [saga]:2018/01/04(木) 03:38:49.65 ID:+z5BZVZ5o
>>968
>>969

オーケー。
お互い機関の人間じゃない、って分かったわけだ。重畳重畳。

【そう口にしつつ、鈴音の横へと移動する】
【未だ緊張の張り詰める場所。心配ないよ、というように、鈴音の肩にぽん、と手を載せて】

――カノッサ機関じゃ、ない……?

【聞き覚えのない年号と、地名】
【それは、どうやら、この世界のものではないようで――】

エヌ。
どうやら君のほうが事態の真相に近いらしい。
教えてくれ、一体なにが、どうなっている?

【恐怖に沈むエヌの顔。はっきりと彼の名を呼び、事態のあらましを聞こうとする】
971 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2018/01/04(木) 03:51:21.96 ID:09aPMtSz0
>>969

【数秒。十数秒。あるいは十数秒――必要がなければ、少女はもう少し、黙りこくり、あたりのことを探るつもりだっただろう。ただし、それが叶わなくなったのは】
【何か奇妙なものを感覚がとらえたわけではない。というかあたりが全部奇妙な感覚で満ちているから、そういう意味ではこの場にいる時点で奇妙だが、】
【それ以上に――彼の言葉。あまりにたくさんの情報をたくさん与えたくない以上にためらった情報、彼女が正義組織に属している……とは少し違うが、かかわっていること】

あなたも……機関員じゃない、そっ、か。

【あたりへ広げていた意識が緩やかに戻ってくる。最後にゆるく瞬きをして、それでまた相手へ向き直る。エヌが話す意思を見せるなら、だまりこくっているのはかえって不自然】
【そう判断したのだろう、少女は今度こそあたりを索敵――そう、索敵することをやめる。一瞬のどの乾いているように鈍かった言葉は、すぐに元の金属質の響きを取り戻し】 
【肩に置かれた手も――瞬間ひどく驚いたように跳ねたが、そこまでで取り繕ったようだった。それでも少しは和らいで】

Age682……、……青の国? ううん、それは、……。

【――けれど、また、鈍る。聞いたことのない年、それから、聞き覚えのない国の名前。この世界の国名と似通う、しかし、そんな名前を聞いたことはない】
【漏らした声は。おそらく無意識に近かったのだろう、呟くような、囁くような、小さな声は――彼女の鈴の音によく似た声質のせいで、いやに目立ってしまって】
【すぐに失言したと気づいたように口を閉ざす、――続く言葉を想像するのは、難しくないだろう。おそらくは、彼の想定する最悪を裏付ける、ものだったはずだ】

――、わたしも、知りたいな。えっと……三人寄れば文殊の知恵って、言うもの、

【それでもなるべく柔らかい声で相手へ促す、ここが本当に彼のいた世界ではなかったとして――彼が知っていることを教えてくれなければ、こちらからは動けない】
【この異様な光景はもちろん、降り注ぐ光も、大穴も――なにもかも分からないままでは、進むものも進まないだろう、と】

…………ゆっくりで大丈夫だよ。ここに怖いひとはいないの、あなたにひどいことをするひとも、いないよ――。
あなたの困っていることを教えてほしいの、わたしたち、どうにかする方法を知っているかもしれない……。

【けれどやはり怯えた様子を見せる彼に。続けた言葉と声音はちいちゃな子供に向けるように優しくなる、さっきは距離を置いた態度を、今度は、少しだけ近づけてみせ】
【そうしてお互いの距離感を探ろうとするのだろう、この距離感では少し遠い――だけど、状況が理解できず怯えているひとに対しては、すこし、近すぎるのかもしれない】
972 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(空) [saga]:2018/01/04(木) 04:32:43.59 ID:ZXE3F4Tq0
>>970>>971
……僕のせいだ、僕のせいだ、僕のせいだ僕のせいだ
止められなかった、止められなかった、止められなかった――

【「僕のせいだ、僕のせいだ、僕のせいだ、僕の――」】
【「止められなかった、止められなかった、止められ――」】

【エヌの顔に恐怖の相が表れてから、】
【彼は外界と隔絶されたかの様相で譫言を繰り返した】

【だが、エヌ、とはっきり呼ばれるトーカーの声の音で】
【優しげで、距離すら近づけて見せた鈴音の声色で】
【エヌは夢から起こされたかの如く、ハッと二人を見る】

…………

【またぞろ無様を晒した恥よりも】
【今ここより、最善を尽くさなければならないという意志の方が強くなる】

【エヌは鈴音の方を向き】

……ありがとう
……僕は、貴方たちに僕の知り得る限りを伝える義務がある
けれど、一から十までの全てを事細かに話せるいとまはなさそうだ……

【すると、エヌは顔の向きを大穴へ向ける】
【夜空からの光は、依然として虚ろな大穴へ吸い込まれている】

……ただ言えるのは、
『これ』は僕の知る限り最悪の『侵略』だということ

『機関』は、超えてはならない壁を超えようとしている
世界の壁を……次元の壁を……法則の壁を……

止めなきゃならない……
貴方たちの『世界』が侵される前に……

【彼は絞り出すように言葉を紡ぐと】
【ふと、何かに気付いたように掌を見る】


【歪み始めていた】

【彼の掌に、微かだが渦状の歪みが表れ始めている】
【エヌの表情に一瞬、絶望の色が走るが――】

……時間が無い
急に『押しかけてきて』悪いのだけれど……

端的に言う
これから一刻も早くあの『大穴』を埋めなくちゃいけない

だけど……っ
今の僕には、その方法が……思いつきそうにない

あんなに『壊れて』『歪んで』しまったものを、
どうやって正せばいい……ッ?

【エヌは絶望の淵に立たされていた】
【震える声色、迫り来る恐怖、けれど諦める訳にはいかない重圧】

【エヌはそれに耐えるだけで精一杯で、】
【膝から崩れ落ち、憎々しげに大穴を見つめるばかりだった】

【壊れて、歪んでしまったものを、直す――】
【それを、今、ここにある人と物と知恵だけを使って――】
973 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(福岡県) [saga]:2018/01/04(木) 10:11:27.85 ID:+z5BZVZ5o
>>971
>>972

【自分だけでは、こうは行かなかったろう――鈴音と会話して自分も得た、『信頼できる』という印象】
【何事にも真摯な、彼女の誠実さなくば。自分の小手先の会話の技術では、エヌと意思疎通ができたかどうか】
【やはり、最悪何かあれば彼女だけでも離脱させなければ――と、頭の隅で考える】

【そして、エヌの瞳に、意志が宿るのを見る】
【いまだ判然としない事態の詳細だが、何か極めてマズいことが起こっていて――】
【そして、それを解決するために、エヌは今から絶望に挑むのだ、と】
【彼にとっては故郷でないかもしれない、この世界を守るために】
【けれど、人ひとり、で何ができるのだろう】
【重圧に押しつぶされるように、膝を落とすエヌの隣に並ぶ】
【瓦礫の音は、その動きはきっとエヌに気づかせる】

――大穴を埋める。
シンプルだな。
なるほど確かに難しそうだけど――君は、一人ではない。
僕と、ここに居る鈴音がいる。
時間が経てば、別の能力者も此処に来るかもしれない。

エヌ、今まで君が逃げ出していないことに感謝する。
今この瞬間逃げ出してしまったとしても、その感謝は揺るがない。
そして願わくば、これからの時間も僕たちの助けとなってくれないだろうか。

埋めないとまずい穴は、埋めてしまうのが一番だからね。

【うんうん、とよくわからない頷きを見せて――】

まず第一になんだけど、この穴、物理的な穴なのかな?
どうも、魔力を感じない割にあちこち妙な現象が起きている――

『一刻も早く』埋めないといけないこの穴、一体何なのか。
知っていることを教えてもらえると、ありがたい。

【エヌの手のひらに浮かぶ歪みには、どうやら気づかなかったようで】
974 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2018/01/04(木) 13:11:01.58 ID:T/OLdnCl0
>>972>>973

【ぎくりと少女の表情が強張る、エヌが再び怯えたようになってしまって、ひたすらに自分を責めたててしまうから】
【それでも呼びかけた声は優しげであろうとした、絶対的に彼にとって恐ろしいことをしないものであろうと――本当なら、抱きしめてあげたいくらいに】
【けれどそこまではやりすぎだろう。そうしたいと思ったのも、彼女が単にそうされると何より落ち着くからだった、――いつかに悪意と絶望の卵に侵されたときも】
【ただそうされているときは穏やかでいられた、それっぽちの理由――】

……ううん、わたしたちこそ、ありがとう。あなたがお話してくれたら、わたしたちも、とても助かるから。
わたしたちの分からないこと、あなたの分からないこと、あると思うの、だから、それが分かれば、もっと――――?

【エヌが再び話そうとしてくれれば、少女は安堵したようになる、眉を下げて、ありがとうと伝えて。様子を伺いながらも、やはり、知りたいのは彼の持つ情報】
【ただもちろん彼も分からないことがあるだろう。それもこちらで分かるなら、お互いに出し合って――そういう風に。話せたら、と、言いかけたところで】
【時間がないという言葉。少し不思議がって――けれどそこから続く言葉に。こればかりは目を丸くする程度では足りない、ぎゅっと唇を噛む、理解しがたいものを聞いたという風に】
【さっきまで見せていた手の平は、彼が話し始めたころには下げられていた。その手は長いケープの下で服の布地をぎゅうと握りしめていて】

っ……、あの穴を。

【「うめる、」】
【わずかでも渦状に歪む彼の手のひらを見つけてしまって呑んだ息が、わずかに言葉を詰まらせる。この光景が侵略であるという言葉に、正直あまり実感はなかったのだけど】
【目の前で――わずかな時間とはいえ会話したひとの一部が。さっき小突いた瓦礫のかけらのようにわずか歪むのを見れば、これが急に現実味を帯びて、解決しなければならないこと、にすり替わる】
【思わず口にやった手が落ち着かないように頬まで触れて撫でる、数度ひどく不安そうに視線をきょろきょろと動かしたのだけど――】

……――トーカーさん、わたし魔力で物を作れる、いろんなものできるけど……あんまり複雑なものは。その、よくわかってるものじゃないと……。
あとはお水も作れるよ――"お願い"したら、わたしの言う通りに動いてくれる。気持ちがあるの、あとは……、魔術も、できることなら、ああでも、あんまり難しいのは――。

【そういう不安を噛み潰す、あるいは握り潰す。はああと吐いた息は深呼吸にはずっと荒いもの、それでも少しくらいは冷静さを取り戻して】
【トーカーに伝えるのは自分の持つ異能のこと、大まかにいえば物体生成。ただ、仕組みをよく知っている必要がある、呼び出せるという水は言葉も通じるらしい、不思議でも】
【こういう世界だからどうとでもなるだろう、――最後に魔術。それが多分今役に立ちそうなものたちだ、あるいは彼の方から思いついて尋ねることがあれば、答えるだろう】
【必要ならば使ってと提案するようだった。そしてそれはこの場を治めるのに自分ひとりでは到底叶わず、何よりトーカーが自分よりも場慣れしているように見えたから】
【もちろん丸投げしてしまうわけでもない。純粋に彼を信頼して判断を仰いだのだろう、もちろん、エヌが何か彼女に言うなら、それも素直に聞くだろう】

エヌさんは……、ああ、ごめんね。痛いところや苦しいところは、ない? 今更になってしまって、ごめんなさい。
あなたにお話しを聞かせてもらうのに、怪我や悪いところを放っておいたままだなんて。……どこかにあったら、教えてほしいな。
簡単な手当と魔術しかできないけど――。えと。寒くはない? 

【――トーカーがまずあれは何かと尋ね出したのに対して、彼女は少し先走ったのかもしれない。だからそういう様子を見て――丸くなった目で、瞬いて】
【慌ててしまったと自分の中で反省する。そのまま彼にも何かそういった異能があるのか――と尋ねそうになった言葉を区切って、こちらから尋ねるのは、それだ】
【今更になってしまったことをひどく申し訳ないようにしながら、負傷はないか、――"悪いところ"というのは遠回しに手のひらの渦状を指していたのだけれど】
【どこかに苦痛があるままでは考えごとも悪いほうに進む、そういう風な考え方をしてきたから――痛い苦しいはともかく、寒いと彼が答えれば】
【すぐにでも自分の上着――分厚い布地のケープを貸そうとするだろう。それで自分が凍えたとしても、そういう性質なのが少女だった】
975 :1/3 [saga]:2018/01/04(木) 17:33:24.78 ID:ZXE3F4Tq0
>>973>>974
【あるトーカーの一言が、絶望の重圧に耐えるエヌの意識を鋭く貫いた】

【「――君は、一人ではない」】

【ハッとする】
【エヌはトーカーを仰ぎ見る】

【一人ではない。その単純な事実を思い出した】
【元の世界ではあまりに孤独が長すぎた】
【この世界では、まだ人との繋がりは保たれている――能力者達が生きている】

【そこへ、鈴音からケープを手渡される】
【エヌの背へとかけられる形となったそれに】
【彼は信じられないものでも見たかのように、微かに目を見開いた】

(……なんて……なんて、温かい……――)

【それはほとんど忘失していた程久しい感覚】
【エヌは噛み締めるようにケープの裾を握った】
【たった一枚の衣服が、これほど大きな温もりの質量をもたらすとは――】

【――閃きが奔ったのは、その時だった】

……そう、か
意味……質量……情報……

――まだ
まだ、遅くはないはずだ……

【エヌはおもむろに立ち上がり、ケープをそっと鈴音へと掛け返す】

……ありがとう、鈴音さん
きっと、貴方に救われた人が、この世界には沢山いるのだろうね――

【それから二人の方へ振り返ったエヌの表情に、焦りの色はすっかり失せていた】


/申し訳ない、以後長台詞につき分割します
976 :2/3 [saga]:2018/01/04(木) 17:34:53.52 ID:ZXE3F4Tqo
>>973>>974

……分かった
知り得る限りを、僕は貴方たちに伝える

まず、この穴は――

【エヌは据わった声色で語り始める】

こんな規模のものを目にするのは初めてだけれど、
つまりは『あらゆる情報の欠落してしまった空間』なんだ

空気も、魔力も、素粒子も、何もかもが『無い』
ここから何かが生まれることも、ここで何かが終わることもない
そんな『無そのもの』を、僕は『ブランク』と呼んでいる

普通、『ブランク』はそもそも存在できないし、
仮に出来たとしても、ミクロの世界に気の遠くなるような一瞬だけ現れて、
すぐに他の何かと置き換わって消えてしまうものだ

そういう、本来は『存在できないもの』を、
こんな規模で無理矢理造りだした結果が……恐らく、『これ』なんだ

【エヌは一度、周囲の瓦礫を見やる】
【人体と無機物が名状しがたく混ざり合った異物】

『ブランク』が毒針だとするなら、
周りのこれらはアレルギー反応……
世界そのものの免疫が働いた結果……なんだと思う

この『ブランク』がある限り、
世界はその免疫を暴走させ続ける……はずだ

……『機関』の本当の狙いは何なのか、僕には到底分からない
けれど、少なくともこの災害を仕組んだことは、ほぼ間違いない

恐らく、『機関』にとって、この『ブランク』は
『この世界』という城の壁に打ち込まれた『楔』なんだ
これを足がかりに、次の一手を打つ……その布石だ

……だから埋めなくちゃならない

【「二度と……あんな地獄は作らせない」】

【最後に呟かれたそれは、ほとんど消え入るような声】
【しかしそこにこそ、彼の赤熱した感情の全てが込められていた】
977 :3/3 [saga]:2018/01/04(木) 17:35:54.05 ID:ZXE3F4Tqo
>>973>>974

【エヌには焦りこそなかったが、】
【この事態を最大限速やかに収めようとする意志がその言動に表れていた】

……色々と聞きたいこともあるかもしれない
だけど、恐らく世界にも僕にも、残された時間は少ないようなんだ

【その時、エヌの右手が音もなく歪み始めた】
【渦状の歪み――どんな複雑な折れ方をしても、まずこんな形状にはならない】
【エヌはそれを見下ろすが、もう先ほどのような恐怖の色は起こらない】

【ただ、粛々と言葉を継ぐ】

……見ての通り、こんな規模の『ブランク』だ
これを埋めるには、代わりとなる尋常じゃない量の『何か』がなくちゃいけない……

そんなもの、どうやったってここには無い――と
僕はさっきまでそう思っていた

……けど、もしかしたら、あるいは――

【エヌはふと鈴音のケープを見やる】
【言外に、これのお陰で閃きを得たのだと示していて】

【すると不意に彼は、大穴の方へ振り向いて】
【歪んでいない方の片掌をかざし始めた】

【何を始めるのかという説明の代わりに、】
【エヌは急に気楽な声で「そういえば」と発した】

……そういえば
鈴音さん、Mr.トーカー

今日、一番最後に食べたものって……何だい?

【この非常な事態の最中で】
【残された時間も少ないと言っていた当の本人から出たのは、】

【「今日、何食べた――?」 という、】
【最早気まずい会話の繋ぎに使うことすら躊躇われるような】
【間抜けすぎる話題の問いかけであった】

【「出来るだけ鮮明に思い出して」】
【そう付け加えたエヌの背中は、信頼する者に向けるそれであった】
978 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(福岡県) [saga]:2018/01/04(木) 18:41:20.17 ID:+z5BZVZ5o
>>974
>>975-977

【何が始まることもなく、何が終わることもなく――】
【空白であり、間隙である、その無】
【アルファでもなくオメガでもない――Null】

――――。

【寒々しいものを感じて、改めてオブジェを見やる】

…こんな醜悪なものを現出させなければ、世界は『ブランク』から己を守れない。
これは、マズい。容易に、今まで企てられたどの悪辣な企みよりも簡単に―――世界を、なんの意味もないところにしてしまう。

そしてそれを、『機関』は活用しようとしているんだな。
改めて、疑問が浮かぶ――エヌのいう機関は、果たしてカノッサ機関なのか……?

【もっとなにか、空恐ろしい、名伏しがたき、冒涜的な――】
【とりとめもなく走らせたそんな思考は、しかし、エヌの赤熱するような一言で引き戻される】
【もう二度と。一度は、そんな地獄が、どこかで顕されてしまったのだ】
【その声に目を上げれば、エヌの右手に、渦が現れていた】

―――っ、エヌ、その、右手は――。

【しかし、エヌは粛々と、殉教者のように、言葉を紡いでいて――】
【そして、急に直近で食べたものを聞き始めた】

え、エヌ……?
なんだ、おなかすいてるのか……?

【しかし、その声色に、何らか真摯なものを感じ取り】

……僕は、ここから西15kmほどで狩った、動物の肉を焼いて食べた。
おそらく魔獣、ボア種に属している。
肉は少し筋っぽくて獣臭があったけれど、脂の質がよくて、食べごたえがあった。

土の国の銘柄豚を食べたことはある? おそらくアレの原種だったのかもしれない、
少し似た風味を感じたよ。
表出していた岩塩を削ったのだけど、同じ土地のものは相性がいいね、
お互いの味を引き立てていて―――

――――あ、こんなところで大丈夫、かな。

【真摯に食レポ。こいつ何いうとるんだ、という視線を感じたのか、口をつぐむ】

979 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2018/01/04(木) 20:08:58.99 ID:T/OLdnCl0
>>975-977>>978

【暖かいケープを手渡す、なんてことない、ただの分厚い布――だけれど、襤褸のようになってしまった服より、ずうとましなはずのもの】
【受け取ってもらえたらうれしそうにするだろう、まだ彼女の体温が残っていて暖かで、おそらく彼女の使っているシャンプーか何かの甘い匂いがする】
【彼が傷やそういうことに触れなければ、少女はひとまず受け取ってもらえたそれだけで満足ということにして】

え、えっと……、じゃあ、この穴ぼこは、なんにもないところで……、なんにもないのは、変だから、こういうのを出して、守ろうとして?

【「なにもないところ……」――小さく繰り返してなぞる言葉は、やはりまだ慣れない、普段の生活の中で触れてくることのなかった、今目の前にあるものをなるだけ受け取めるために】
【それで改めてあたりをよく見渡す――見渡せば、いやでも気味の悪い光景ばかりが目に入る。どにゅどにゅした感触も、靴越しとはいえ、二回目はあまりやりたくない】
【そしてこの穴がアレルギー物質であって、あの人間瓦礫がアレルギー反応だったとして。これが人間の人体ではどういったアレルギー症状に相当するのかは分からないけれど】
【とりあえずそれを放っておいていいことにはならないのはわかる、何よりアレルギー反応で恐ろしいものといえばアナフィラキシーショックだろう】
【あまり聞きなれないことばかりだから聞き漏らしてしまわないようにじっとエヌを注視するようにして話を聞いていたのだけど――彼の視線が、返されたケープに向けば】
【まだそれが何か気付きを与えたという喜びにはならない。けれど自分の行動に何か意味があったのだ、ということだけは、分かって】

【――音もなく歪んだエヌの腕には。きっとした強い視線を向ける、一瞬どうしようもできないことを悔やむようになって――】

えっ――、わ、えっと。最後に食べたもの? ちょ、っと待ってね、えぇと……。

【だけど――それが急に直近で食べた最後の食事という話になれば、予想もしていなかったのだろう。それが最後の晩餐だぜ!という話ではないだろうから、一瞬うろたえ】
【なによりこういう非常事態だから。急に日常の話を思い出せと言われて――けれど待たせたのもほんの数秒の話で】

えっと……、えっと。水の国のカフェで、サンドイッチ食べたの、ハニーマスタードの……えと、チキンのサンドイッチ。
かりかりになるまでトーストしたパンに、バターの味がしたから、バターが塗ってあって……それで具材が、鶏の……胸かな。胸肉だと思う、
……えっと、多分、ぱさぱさにならないように茹でた胸肉にハニーマスタードソースを絡めたやつ。お野菜が千切りのきゅうりと、トマトと、レタスと……。

――――んん、あ、マヨネーズの味もしたかな。分厚いやつだったから、糊にしたんだと思う、じゃないと崩れちゃうと思うし。それでも食べづらかったけど……。
だけどもうちょっとだけお塩が利いてた方がよかったかも、きゅうりを軽く塩でもむとか……、あ、えっと。わたしならそうするかなって、……。

でもおいしかったよ――、えと。……これでいい?

【少しだけ困惑した声は、言葉通りに"これでいいのか"不安なのだろう。それでも思い出しながら答える様子は真摯で、やはりこちらも彼を信用しているはずだ】
【豪快な食事をしてきたトーカーと比べればあまり面白みのないものを食べている、ぶちぶちと内容を思い返してなるべく詳しく分析してやろうとするのは、】
【もともと料理が趣味なのかもしれない、さんざ味が薄かったとか言ったくせに最後には誰に気を使ったのかおいしかったと締めて、緊張からかしゃんと背中を伸ばして待つ】

【いろいろと考えを漏らすトーカーに比べて。彼女は状況についていくのにようやくと言ったところだった、ぱちぱちとしきりに瞬きして】
【取り残されないように一生懸命聞いて見ている――それが、全身からひしひしと滲みだすみたいだった】
980 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(空) [saga]:2018/01/04(木) 20:48:29.58 ID:ZXE3F4Tqo
>>978>>979

……くくっ

【エヌの口から、今までで最も軽やかな声が漏れた】
【笑っていた。エヌは確かに、その口を綻ばせて笑い声を上げていた】

貴方たち、面白いもの食べてるんだなあ……!

そうか、Mr.トーカーは見た目に似合わず豪快な食事をするんだね……くくっ
肉かあ……僕のいた世界では、動物の肉なんてもう食べられなくてね
いつか本物を食べてみたいよ――

サンドイッチ……
古い古い、図鑑の切れ端で見たことがあるよ
パン、っていうやつだろう? 確か子供の頃に一度だけ――

【掌と視線を前方に据えたまま、エヌはとても楽しそうに話した】
【状況が状況でなければ、平穏な日常の一部を切り取ったかのようで】

ああ……それでいい、最高だ――!

【すると、エヌの前方の空間に変化が起きる】

【「――かちり」と】
【何かを鍵で開けたような音と共に、空間にいくつかの青白い穴が空く】
【穴とは言え、『ブランク』のような歪さはなく】
【純粋にエヌの魔力によって形成されたスクリーンのような代物である】

【すると――そのスクリーン上がぼんやりと波打ち、ある光景が映し出される】
【一つには、今語られたまさにボア種の魔獣が、後ろ足で土煙を上げながら疾駆する姿】
【もう一つには、豊かな町並みの只中にあるカフェと、その卓上にある色鮮やかなサンドイッチ】

【何によってか、二人のイメージが、このスクリーンに投影されているようで――】

そうか、この世界には本当に色んなものがあるんだな――

【もし二人が更にイメージを膨らませたならば、】
【それに呼応して、スクリーン上の光景は如何様にでも変わるだろう】

【それと同時に】
【スクリーンの裏側から徐々に光の粒子が宙空に解き放たれる】
【そしてそれは、『ブランク』の只中へと進んでいき――】

【ゆらり、と】
【粒子が『ブランク』に触れた途端、その暗黒は微かにだが揺らいだ】

――!

【その反応を見て、エヌは瞳の輝きを更に強めた】
【何か新しい発見を目の当たりにした熱狂的な科学者のように】
【あるいはただの遊び好きな少年のように――】

……行ける
『ブランク』は塗り替えられる

何ものでもないのなら、『この世界の何か』にしてしまえばいい
『この世界』の情報で、塗りつぶしてしまえば――

【エヌの魔力の高まりと共に、スクリーンの大きさや数が増え】
【「もっともっと聞かせてくれ――」】
【そう彼が口にしようとした、まさにその時だった】

/後半へ!
981 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(空) [saga]:2018/01/04(木) 20:49:16.15 ID:ZXE3F4Tqo
>>978>>979

【ジリッ……と】
【何やら不吉なノイズが『ブランク』を微かに揺らした】

【次の刹那、周囲の空間にエヌのものとよく似たスクリーン様の形成物が無数に現出する】
【青白く澄んだエヌのものとは違い、それらは淀んだ深紫の気を纏っていた】
【明らかにエヌのものではない】

…………――――!?

【そこに映し出されるのは、この世界とは全く趣の異なった光景】
【世界全体がどんよりと重苦しい気に包まれた世界の様相――】

    【――粛清】

【――管理】    【――嗜虐】

     【――格差】   【――絶望】

【『完成されたディストピア』の姿がそこにはあった】

【ただ突きつけるように示されたその光景を】
【ナレーションする者などいない】

【ただ無言で、これからこの世界が辿る歴史だと、そう物語るかのよう】

……『ブランク』を『そちら側』に塗り替えるつもりか
そんなことはさせない――

【エヌの言葉によると、『ブランク』の塗り替え合いの様相を呈してきたらしい】
【この『ブランク』が『この世界』に染まるか、それとも『向こう側』に染まるか】

【するとエヌは、緊迫した表情をそっと解き】
【先ほどにも増して明るい声色で叫ぶ】

――鈴音さん、Mr.トーカー!

……実はずっと気になっていたんだけどさあ
二人ってその……なんだ……

……どういう、あれなんだい?

その、年の差?
お揃いの指環とかはないみたいだけど……

籍は入れずに、内縁……みたいな感じかな?

【……と】
【わざと言い淀むように言ったのはエヌなりの茶目っ気なのか】
【何とも気の抜けた雑談の話題を振って見せた】

【明るく努めているのは、もっと『この世界』の情報を引き出したいから】
【何でも良い……ただ『向こう側』からの仄暗い情報を押し流せるだけの情報質量】

【エヌは魔力を爆発的に高め、更にスクリーンの数を増やした】
982 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(福岡県) [saga]:2018/01/04(木) 21:23:34.88 ID:+z5BZVZ5o
>>979
>>980

【食レポしてたら、鈴音も負けず劣らず食レポである】

なにそのサンドイッチ、超うまそうだなオイ……!
いや新鮮な野菜とか、この辺じゃ手に入りそうになくて。

【エヌの上げた笑い声。
 『世界を侵食する無』に対して、『今日の夕飯の感想』がどれほどの効果を上げるのか、
 という疑問を抱くも、彼が最高だというのなら――それはきっと、良いことなのだろう】
【そしてまた、思考を巡らせる。動物の肉が食べられない。サンドイッチすら現存しない。
 この世界ではありふれた、パンですら彼にとっては貴重なものなのか】
【エヌの世界は、そこまで至ってしまっているのだ。おそらくは、この『ブランク』によって】

――あれは、あの魔獣。
僕達の記憶から、イメージを、情景を、情報を生成しているのか……?

【そして、スクリーンからあふれる光の粒子が、まるでブランクを埋めるように、押し返していくようで】
【これならいけるか、と希望を抱いたその刹那、深紫のスクリーンが現れた】
【そこに映るのは、深紫のスクリーンと同じように、淀んだ気配を放つ、停滞した世界】
【それがこれからこの世界が辿る道なのか――あるいは、エヌの世界の現状なのか】


ブランクを塗り替える――世界の空白を、なるほど、楔とはそういう意味か――
この世界における、あの世界の橋頭堡を、ここに築こうと。
――させるものか。

【情報の塗りつぶし合い。
 どれだけの情報量をここに流しこめるのか、どれだけの情報をエヌと語り合えるのか】
【それに思い至った刹那、エヌから質問が。――ふ、と頬を緩めて】

いや、済まないなエヌ!
鈴音とはつい2−3時間前に出会ったばかりでね!
色々に世話になってるが、君の想像するような間柄ではない!

【青と紫のスクリーンの間で、せめぎあう情報量――その電荷が立てる音に、負けじと声を張り】
【そして、トーカーは理解する。
 どうして自分が今このタイミングで、そしてここで目覚めたのか。
 ――このためなのだ。エヌと、鈴音と出会い、この『世界を侵食する無』を打破するためなのだ】

だが、君に聞かせたい話ならまだまだあるぞ――
この世界で今まで駆け抜けて来た、数多の能力者たちの生き様が!

長い孤独を癒やす喜びが! 無法に対する、正義の怒りが! 
分かり合えぬ哀しみが! 日々をともに過ごす楽しみが!

挟持のぶつかり合いが! 刃を交えて齎せれた友情が! 時に暗闇に惑う苦しみが!

【エヌへ伝わるだろうか。トーカーの過ごした多くの国々の風景が、日々の団欒が、世界を崩さんと画策したものたちとの激闘が】

――我は伝説を語る者トーカー《Talker》!
我が知る善悪すべての能力者たちの歩みを、苦悩を、喜びを、哀しみを――誇りを伝える者!
この世界へ忍ぶ全ての空虚を、停滞を打破するためにここに居る!

多くのことが語られたこの世界、未だ埋まらぬその多くの空白は―――
これから俺達が埋めるためにあるのだから!

【胸を張る。決して良いことばかりあったこの世界ではないけれど、傷つくことも多いこの世界だったけれど】
【それでも、あんな淀んだ、ディストピアに塗りつぶされはしない】
【歩んできた善悪全ての能力者たちの思いも何もかも――まるで叩きつけるように、トーカーはエヌへと吼えたける】
983 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2018/01/04(木) 21:42:58.12 ID:T/OLdnCl0
>>980-981>>982

【小さな笑い声。それがエヌのものだと気づくのに、少女はほんの少しだけの時間を要する】
【ほんのさっきまで――怯えて恐慌の中にあった人間が。たとえこんな場面でも、おそらくは自分たちの言葉を一因に、笑ってくれた】
【昼間にしては少し遅い。おやつを食べるような時間に食べた、何の変哲もない、ただのサンドイッチ――それが、何かのきっかけになるなんて、思いもしていなかった】

……ね、本当、トーカーさん、思ったより……その……野生? あ、ううん、……そう、豪快、豪快だね、っ。
だけどわたしは別に――、……んん、そうだよ、パンでね、いろいろな食べ物を挟むの。しょっぱいのでも、甘いのでも、なんでもいいんだよ。
おさかなを挟んだりすることもあるし……、だけど、すごいな、野生の……豚? それって猪なのかな?

――うん、サンドイッチはとってもおいしかったよ。だけどやっぱりお塩がもうちょっと――。

【今になって面白そうに言い出すから、食べ物に興味がある性質であるらしい、自分のは大したことがない……そう言いかけて、けれど、彼の言葉を聞けば】
【彼の世界においてそういった食事がすでに喪われたものであると気づく、――それで、サンドイッチがどういったものであるのか、もう少しだけ、付け足し】
【それからふわあと好奇心できらきらした目になる、――そればっかりがやはりひどく平凡で、穏やかで……だけど、周りを見渡せば、そんな場合ではないとはだれでもわかる】

――わ、うん、そうなの、にぎやかでね、あっちからコーヒーの匂いとか……、少しだけ端っこの焦げたようなチーズトーストの匂いがして。

【――目の前に現れたスクリーンに映し出される光景。確かにそういったものだったと驚き半分、感心半分――そこにさらに好奇心を付け足して、】
【彼女が付け加えるイメージは匂いという目に見えないもの。だけれどそれは時として視覚よりも大事な意味を持つ、自分以外の他者によって成り立つ、その場の空気感】
【彼が――彼の声音が少しだけ変わったように思えて、彼女もまた色違いの瞳を輝かせる、そして彼女もまた口を開きかけたところで、現れるのは淀んだ深紫の、】

/ごめんなさい、あと少しがどうしても減らせなかったので分割します!
984 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2018/01/04(木) 21:43:29.82 ID:T/OLdnCl0
>>980-981>>982>>983

――――っ、

【そして見せられる光景は――死にかけていると思った。ひどい病気に苛まれ、ただ死ぬきっかけを待っている世界】
【吸い込んだ息がのどの奥で絡まるような不快感は気づかぬ間に身体を固く硬くこわばらせてしまったから――不安そうになって、思わずトーカーを見上げた、目は】

ぅえ!? え、あの――、わた、わたしたち、さっき会ったばっかりだよ、それで、お話をしていて……その、大きな音がしたから!
違うの、内縁? ……結婚、は、したことがあるけど――その、でも、今は、え、えと。と、トーカーさん、とっても優しいから、きっとモテるって思うけど……。

【すぐにエヌが続けた言葉にひどくびっくりしたようになって、すごくすごく慌てたように否定する、――悪気はないけれどあまりに否定するものだから、やりすぎ感はあったけど】
【というのも――結婚はしたことがあるらしい。だけれど"したことがある"という言い方から、少なくとも、今、幸せな形で継続されているとは思い難く】
【否定しまくったのはトーカーに悪いという自分を下げるような気持ちもあったのだけど。それと同時に、そういった事情もあって――ただ最後には、】
【自分たちはそんな関係ではないけど、と念押ししたうえで、そういう風に褒めて終わる。――ただ、そのあとに、トーカーが語りだす言葉を聞けば、彼女もまた】

――わたしも、ね、いろんなもの。見てきたよ。いろんなひとに会ったの、わたしは、この世界で生まれて、ずっとだけど――……、
別の世界から来たひとだって見たことあるよ! エヌさんもきっとそうだね、それで、別の世界の話も聞いて……、だけど、わたし、この世界に生まれてよかったって、
やなこともたくさんあったけど。思い出せないこともたくさんあるけど。だけど、いろんなひとにやさしくしてもらって、だから、わたしが、今のわたしで――。

わたしは、怖いもの、苦手。だからきっとトーカーさんの知っていること、きっとほとんどわからないけれど――。
わたしがここにいてわたしであること、それだけでうんとすごいことなんだって、さっきね、教えてもらったんだ。

【いろんなことを思い出す、虫食いだらけの記憶でも、たとえ形にならない感情の残滓だとしても、全部、自分が過ごしてきた時間】
【トーカーがいろいろなものを見てきたみたいに、彼女もまた、いろいろなものを見ながら生きてきた。眼窩に突き立てられそうになった鋏の鋭さも、今ならこんなにわかるのに】
【悲しいこともたくさんあった。だけどそれはいろんなひとがいろいろな方法で、これから先の心を傷つけないように、包んでくれた。そしてそれは今も彼女の中にあって】
【だから――最後に残るのは、いろんなひとの優しさ。記憶からは消されてしまっても、ふと過る誰かの手の温もりや優しい声音が、確かに彼女の中で想起される】
985 :1/3 [saga]:2018/01/04(木) 22:27:02.02 ID:ZXE3F4Tq0
>>982>>984

【この異変を前にして、間の抜けた会話を底抜けに明るく繰り広げる能力者達】

【エヌは笑う】
【イメージとその他様々の鮮やかな情報を付け加えられたサンドイッチを見て】
【二人の関係性をはっきり告げるトーカーと、驚き慌てる鈴音の姿を見て】

【エヌにとってこれほど心が豊かになる会話をしたことなどなかった】
【故にその感情や雰囲気、リズムや声の抑揚などの全てを含めて】
【光の気で満ちた情報が、爆発的に膨れあがった】

……行ける、これなら

塗りつぶせる……
あのクソッタレな世界のことも、
ふざけた混沌の意志も――全て!

【スクリーンからあふれ出る粒子が、暗いスクリーンの群れを突き破り】
 『ブランク』へと次々に殺到する――そんな様を見てエヌは不敵に笑む】

【そうして最後のもう一押しを、彼は叩き込まんとした――】

【――が】
【そんな様相が一瞬にして逆転する】
986 :2/3 [saga]:2018/01/04(木) 22:27:53.69 ID:ZXE3F4Tqo
【突き破られたはずの暗いスクリーンが、仄暗い粒子の束へと姿を変えると】
【次の刹那、エヌの青いスクリーンの映像が変質する――『書き換え』られた?】

【それを視認したエヌの表情が、驚愕に歪んだ】


   ミームハザード
  《情報汚染》――!?


【その単語が意味する状況を詳しく二人に語る暇はエヌにはなかった】

そうか……これが本当の狙いだったのか……
まさか『ブランク』を汚染情報のトンネルに使うなんて――

――不味い!

【エヌのスクリーンの光景が益々歪に書き換えられる】
【そしてエヌと『機関』との、不可視の攻防戦が刹那の間に炸裂した】

(間に合え――!)

【トーカー達のイメージから生成された情報が、『機関』の手によって変質する】
【『汚染』された情報が情報の宿主、つまりトーカーと鈴音へと逆流せんと迫るが】
【それをエヌが自らの存在を堰として、逆流を食い止めた】

【その結果が――】

……――ぐ

【エヌの存在情報、とりわけ身体構造を狂わせた】
【腕があった場所にそれは無く、足があった場所は血管の束で出来た触手と化した】

【エヌは、およそ神が設計した生命の有り様から著しく乖離した肉塊へとなりかけていた】

【情報そのものを変質させてしまう力――エヌは《情報汚染》と言った】
【ここではない何処かの平行世界における『機関』は、】
【この最悪の力をこそ用いて、他世界の侵略を目論んでいた――】

【傍目には何が起きたのか、見極めるのは難しい】
【ただエヌの優勢に見えた『塗りつぶし合い』は、】
【たった一手によって盤面を塗り替えられた――オセロのように】

【その結果だけが、エヌの身体の変化という現象に現れた】

【――やがて仄暗い粒子は、束になって鈴音とトーカーに襲いかかる】
【それらは凝縮されたあまり、物質性すら帯びていて】
【あたかも、巨大な双頭の大蛇が口を開け、二人へ迫り来るような光景だった】

【『変質』させられてしまったエヌは】
【それでもしかし、最後の力を振り絞って叫んだ】
987 :3/3 [saga]:2018/01/04(木) 22:30:43.08 ID:ZXE3F4Tqo
>>982-984

――奴らに……
……奴らにだけは『書き換え』させるな!

頼む……もっと……もっと教えてくれ!

貴方たちが愛した人たちのこと
貴方たちが恐れた人たちのこと
貴方たちの感情、知識、意志――!

『過去』で足りなければ『未来』を思え――!
貴方たちが望む世界の姿、自分の有り様――『光のある世界』を!!


【蝋燭の最後の瞬きにも似た輝きの後】
【一際強いスクリーンが爆発的な数と速度で空間に現出した】

【そこに映し出されているのは――】

【伝説の語り部たるトーカーの、果てしない旅路の光景】
【鈴音の出逢った人々の顔、感情の色、情動の輝き――】

【敵、味方、友人、家族――】
【幾多の彼らと出会い過ごす中で生まれた心の結晶】

【それらの光景が、全ては視界に収められない程に広がった】
【そこにある全てが、欠けてはならないピース】
【この全ての時と、出会いが、ここまでの道を作り】

【そしてこれからの未来へも導く】

【そこにただ一つ異物なのは――】
【全てを歪めてしまう、大蛇の怪物――】

【こんな不細工なモノに――】
【彼らの旅路の全てと、これから辿る世界の未来を】
【歪ませてしまっていいものだろうか――?】


【――エヌが叫ぶ】
【ほとんどもう言葉にはならない叫びを】

【――ふざけた可能性など、打ち倒せ、と】
 
988 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(福岡県) [saga]:2018/01/04(木) 22:57:13.74 ID:+z5BZVZ5o
>>984-987

……っ、なッ……!

【確かな手応えを感じていた。だが、《情報汚染》『ミームハザード』】
【そう叫んだエヌの声の焦りから、そしてエヌのスクリーンに奔る悍ましさが】
【――異世界の機関の狡猾さを、そして悪辣さを物語る】
【狙う世界のその尊さをこそ、逆手に取って虚ろへ換える】
【手がなくば、トーカーも、鈴音も汚染された情報へ呑み込まれただろう】

――エヌ――!

【しかし、エヌ】
【本当の名前など知らぬ、つい今出会ったその友が】
【身を挺して、汚染された情報を押さえ込む】
【その余波か、放たれた衝撃波に膝をつきながら、トーカーは大穴に臨むエヌの姿を見やる】
【奇怪なオブジェ、それとどこか共通するような歪みが、エヌの体に顕れていた】
【それを見て、詳しいことは分からねど、トーカーは悟る】
【たった今、僅かな時間を共有した友は――命を掛けて、自分と鈴音と、この世界の誇りを護ろうとしてくれているのだと】

ああ、教えるとも、語るとも!
我らが『過去』、『現在』、そして来るべき『未来』!

まだまだ足りないぞ、俺たちの過ごした時間は、そうさ、こんなものじゃあない――!

【エヌが展開する、魔力。そして、スクリーンの数】
【それらを埋め尽くすように、トーカーの語る伝説が、鈴音の語る優しさが――これまでの、歴史が】
【もしも遥かな空から、展開されるスクリーンを見るものが居たならば】
【きっと言うのだろう、その光景は、蒼く輝く大輪の花のようであったと】

そして、この積み重ねを、我らの誇りを――逆手に取らせはしない。
歪めさせはしない。
我が友エヌの導きによって、我らの歴史はこの世界を護る盾となる。

その邪魔はさせない、大蛇の化物よ。
捻れと歪みを齎し、穢れを撒き散らす亜空の使者よ。

【そして、腰の刀の鯉口を下げる―――溢れるような、魔力の奔流】

それが物質と化して「在る」のなら、なんであれ断ち切って見せよう――――

―――唸れッ、断空!!

【腰から刀を抜き放つ。上段に構えるその刀身は、エヌのスクリーンの光を受けて、蒼く輝いていた】
989 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2018/01/04(木) 23:25:26.53 ID:T/OLdnCl0
>>985-987

【まだ幼かったあの日。両親を喪って、独りになった。ひどく虐げられる恐ろしい場所で見つけた友達は、恐ろしさから自分を護るために、見捨ててしまった】
【寂しさが降り積もって。耐えきれなくなって。ある日初めて自分から話しかけた、十月も終わろうかというころ、――今から八年と少し前の、あの日】
【初めて名前を呼ばれた。初めてひとに触れた温度はひどく暖かで――だけれど。途方もなく大切だったはずの思い出は、気づいたときには、変質していた。真逆の、色へ】

【哲学者の卵――機関の悪意が踏みにじったものはあまりに多かった、一面に積もった柔らかい新雪のようだった心を、あまりに無遠慮に踏みにじっていった】
【真っ白だったはずの少女の心象世界はぬかるんだ泥と誰かの足跡でいっぱいになった、大人であれば凸凹の地面を均す方法を知っていたかもしれない――けれど、知らず】
【妬ましくなった。いつか幸せだった自分が妬ましくて仕方がなくなって――それで、毀した。それが、彼女の記憶が不自然に欠落する理由、何もかも、自分で壊してしまった】
【幸せな記憶。暖かで、満ち足りて、嬉しくて――そういう思い出を自分ですべて毀してしまった彼女の中には、悲しさばかりが残って。そしてそれは、あの卵の餌になり】

【川の流れの中。ぐるぐる渦巻いた中に取り残されて抜け出せなくなった葉っぱみたいだった。ずっと、何年も――だけど、それを見つけ、拾い上げてくれたひとも、確かにいて】

【今になって気づいた、自分が認識していたより世界は優しかった、ずっと、いろんなひとが、いろいろな言葉で、行動で、優しくしてくれていた、こんなばかげた自分に】
【それに気づくこともなかった自分に、そしてそれが今――あるいは世界の危機ともいえるこの場で。傍らには、見知らぬ世界から訪れ、見知らぬ世界を護ろうとするエヌと】
【そして、自らを伝説を語るものと称するトーカーと――そして思うのは、この場にいるのが自分だけだったら、と、もはやありえない仮定の話】
【この場に、エヌがいなかったら? トーカーがいなかったら? そして今まで自分がかかわってきたひとたち、その誰かでも、もしも出会わなかったとしたら】
【それでもきっと世界は回るのかもしれない、だけど、何もかもがそろったこの瞬間に思うのは、――今まで消えてしまわないでよかったと、ありふれた、生への愛で】

――――エヌ!

【何もわからなかった。分かったのはエヌが自分たち――ひいてはこの世界を護ってくれた後になって。とっさに呼びかけた声は張り裂けて、ひどく聞き取りづらいもの】
【だけれど駆け寄ることも叶わない。きっと見知らぬ世界のために自分までも盾にしたひとに、それは、できなかった。――刹那に伸ばしかけた手を、ぐっと握りこみ】

わたしのっ……、――わたしの前で、穢いものがッ! "そのかたち"を選ぶな――!

【――ぴちゃん、と、かすかな水音がした。それはひどくかすかで、だけれど、たとえここが大都会のスクランブル交差点の真ん中だとしても、聞き逃すものはいないだろう】
【ひどく清らかで儚いもの、けれどいつか大岩さえ穿つもの、すべての生き物を生かしながら、すべての文明をひっくり返せるもの。ごう――と湧き上がるのは、桜色の魔力】
【抱くのはどこまでも透き通る水の属性――魔力はまるで糸のように縒り合され、そしてやがて形を織る。奇しくも、双頭の蛇と似通うさまで形づくられるのは――神聖なるもの】
【透き通るほど色のない鱗には美しいオパールのような煌めきがある。丸いが釣った瞳の形は少女とよく似ていた、そして、色素のない赤い眼は、また、彼女とよく似る】

【――――透き通って見えるかと思うほどに白い、白い、蛇。少女の魔力を縁に、まるで呼び水によって導かれる水のように。現れるのは巨大な白蛇、そして、それは、】
【トーカーが双頭の蛇を切り裂く、その瞬間を確実なものにせんと、絡みつこうとする――だろう。一見すれば魔力によって形作られたもの、しかし、それの本質は】
【いつか喪われた神が使役していた奇跡――あるいは神そのものの模倣。蛇神の子孫である彼女が、魔力と能力で以って、作り出したもの――!】

【――編み上げたものの強大さに、少女の視界はほんの刹那、暗転する。世界からすれば、瞬きよりも短い時間。けれど彼女にとっては、】

――――――――思い、出した!

【それはこの戦いの中に直接関係のないもの。けれど湧き出し留められない声は――こんな場であるのにひどく歓喜に満ちて、何より鮮やかだった】
990 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2018/01/04(木) 23:26:14.59 ID:T/OLdnCl0
>>989
/安価抜けましたごめんなさい!>>988もです!
991 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(空) [saga]:2018/01/05(金) 00:07:51.73 ID:NhNiAqAoo
>>988>>989

【そこには目映く力強い光だけが満ちていた】

【ただ神話の如き光景だった】

【全てを歪める穢れの現出たる大蛇が】
【神聖の光を纏った大いなる白蛇に締め上げられる】

【その眼前に立つ騎士に似た男が】
【今正に託宣を告げようとするかの如く光の刃を掲げる】

【そこには最早計り知れない程の情報が爆ぜていた】

【『情報汚染』が有り得るならば『情報浄化』もまた理なのだろう】
【その場に漂っていた穢れの全ては、その刃の一閃により、微塵も残さず絶たれる】

【烈光】

【轟音】

【遙か時の彼方からの全ての想念を秘めた一撃と叫びが】
【歪んでしまった一切を祓い、その場を一瞬だけ真白に染め上げた】


【やがて訪れるのは凪】
【ただ静謐な中に、光の粒だけが降り注いでいる】

【あの凄惨な異物も】
【虚ろなる大穴も】

【悪夢から目覚めたかの如く、跡形もない】
【本当にこれが現だったのか疑いさえ生みかねない程に】





【トーカーが友と呼んだ、彼の姿は】
【初めからそこには居なかったかのように】
【全く忽然と姿を消していた】

【しかし降り注ぐ光の粒が二人に触れたなら】
【ある情報が、染み入るように想起されるかもしれない】

【言語情報ではない】
【そこにある温もりは、ただ彼らとこの世界を後押しする色と香りをしている】





【気付けば東の空は白んでいた】
【黎明の太陽が、廃墟の街を新鮮な光で染め上げる】

【ただ慈しむように、そっと寄り添うように】

【陽は何度でも昇るだろう】


/――End

/ってな具合で私からは以上に致します!
/お疲れさまでした、本当に本当にありがとうございました!
992 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(福岡県) [saga]:2018/01/05(金) 00:25:54.71 ID:qYcddAeQo
>>989
>>991

【光が、在った】
【エヌの献身、鈴音の歓喜、自身の決意】
【それらは全てひとつとなって、ただ、光としてそこに在った】

【『情報浄化』、と。そうエヌならば呼ぶ、その輝き】

――――あ―――。

【全てが光の奔流に押し流されて、まるで何事もなかったかのように】
【ただ、きらきらと降り注ぐ、光の粒たち】
【その向こうに、エヌの姿はなく―――】

【ただ、想いだけが、痛いほどに伝わって】

……なんだよ、助けるばかり、助けてくれて。

【少しだけ悔しい。彼に何も、返してあげられなかったことが】
【ボア種の肉だって、なんだって。有りふれた日常を、あんなに眩しそうに見ていた彼と】
【肩を並べて、その日常を共に味わえなかったことが、少しだけ悔しかった】

――ああ、でも……

ありがとう、エヌ。
君のおかげで、この世界は、誇りは――守られた。

本当に、君に無上の感謝を。

【ちりん、と刀を納める。顔を上げて、空を見れば】
【――夜が明ける。何度でも訪れたその朝日の中に、光の粒の残滓も消えていく】


【夢か現か幻か。幾多語られたその伝説に、また一つの、彩りが】
【異世界からの稀人の、光溢れる思い出が、ほんの少しの哀しみとともに】

/ありがとうございました! 最高でした!
993 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2018/01/05(金) 00:54:04.81 ID:sGoulKUL0
>>991>>992

【異世界から訪いた穢れとこの世界にいつか存在していた神聖が絡み合う。しかしそれだけでは抑えきれない――穢れを祓い清めるだけの信仰は、この神に存在しなかった】
【だからこそそれだけならば無限になりえてしまいそうだった――けれどこの場には彼女以外の存在がいて、だから、終わる。穢れも神聖も、間違いなくその瞬間に断絶し】
【柔らかな静寂が場を満たす、降りしきる光の粒にはいつしか淡い淡い桜の花びらが混ざりこみ。そしてそれは、彼によって穢れと共に切り裂かれた蛇神の残滓そのもの】

――――っ、

【刹那の烈光が眩かったのだろう。特に暗視に優れる右目では、眼球の内側までも焼き尽くされてしまいそうになって、彼女はとっさに腕で顔ごとを覆いつくしていた】
【ほんの一瞬の間に恐る恐るという様子で腕を取り払った彼女は、降りしきる光の粒とそれから淡い桜色を、受け止めようとするように手を伸ばし】
【そのひとひらを手のひらで受け止めた瞬間に――ば、と、身体ごと振り返るようにした彼女は、きっと誰かを探している。そしてそれは、すでにこの場から姿を消した――】

あ――、

【――それに気づけば、彼女は光の粒を受け止めた手のひらをぎゅうと握りこむ、両手で、大事に、大事に、抱き留めるように、握るなら】
【絡み合う指はどこか祈りにも似る、それは、だれに向けてのものなのか、――あるいはだれにでも向けられるものなのかもしれなかった、ただ、この光景と、伝わった想いに】
【おそらく櫻の血を引くのだろう彼女があまりに自然にそうすることに、可笑しさはなかった。ただ一つ、一つだけ、残念だったのは。叶ってほしかったのは、】

サンドイッチくらい、わたし、いくらだって作ったのに、もう少しだけ、居てくれたなら――、わたし……。

【古い古い図鑑の片隅にしか、その名前が書かれていない世界。それはどのような場所なのだろう、さっき見せられたスクリーンの光景、あれがそうなのだとしたら】
【当たり前にくだらないと思った、いつか確実に存在した食べ物、何年も何百年も誰かが誰かのために、あるいは自分のために、生かすために、生きるために、作り続けてきたものを】
【そんな風に記録の片隅に追いやって。なくしてしまって。誰のものでもない、だれの記憶にもないものにしてしまって。そんなのくだらないって、心の底から】

…………トーカーさん、ありがとう、わたし、あなたがいなかったら。きっと、怖くって、逃げてた、不安だったの、すごく……だって、わたし、弱虫で、
ああ、でも、だけど……思い出したよ、いろんなこと、わたしがどれだけいろいろなひとに優しくしてもらって、だのに、それに気づかない――とんだ、馬鹿だったこと。

――――――あなたの言葉をまねするみたいで、ごめんなさい、だけど、
あなたが生きてきたすべての時間でかかわったすべてのひとに。感謝と……わたしも、いつか、あなたを守ってきたひとたちに、会いたいな、

【ほんのわずかの間エヌに貸したカープ。もはや彼の温もりなど消えてしまったはずの布地を、それでもたわめて、大事そうに抱きしめる】
【そういうちょっとだけ奇妙な恰好で彼のもとへ駆け寄った彼女が紡ぐのは、まずはトーカーへの礼だった。そして続けるのは――ほんの数刻前に伝えた事実が】
【事実ではなくなったしまったという訂正。壊してしまったはずの記憶を取り戻したという新しい事実、それから、少し気取ったような、それが気恥ずかしいような顔をして】
【彼が自分にかけてくれた言葉を模倣してみせるのだろう。笑ってみせた顔はひどくあどけないから、少しだけ、不思議な温度差があったけれど――それがひどく彼女らしくもあって】

/わーおつかれさまでした!ありがとうございました!
994 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(空) [saga]:2018/01/05(金) 00:58:01.57 ID:NhNiAqAoo

――う……ん……?

【彼は目を覚ます】
【その視界にぼんやりと映るのはほとんど灰色の一色】

【二、三度瞬きをして、焦点を合わせる】

【もう使われなくなって久しい、崩れかかったビルの群れ】
【乱暴に取り壊された後の建物の基礎、瓦礫の山――】

【廃墟の街だ】

……、……あ――!

【すると突然、彼は正体不明の強い衝動に突き動かされ、跳ね起きた】
【何か大事なことをしている途中だったような――】
【だがそれが何だったのか、彼は思い出せない】

【折角湧いた衝動を持て余し、彼は自分の身体を不思議そうに見やる】
【掌、胴体、脚……今まで通りの、少し痩せっぽちの身体】

【……普通じゃないか】

【何故自分の身体をこんなに珍しそうに見る必要があるのだろう】
【自分で起こした行動に訳が分からなくなり、一人で決まり悪そうに頭を掻く】

【帰ろう】
【そう思い立ち、どこに帰るのかも分からないまま歩き出す】

【なんだか今日はとても良い天気だ】
【彼は空を見上げ、そのままぼんやり立ち尽くす】

【空ってこんなに広かっただろうか?】
【なんだかずっと被さっていた重い蓋を開けられたような心地】

【そこへ誰かの声が響く】
【どこか離れた場所で、自分の名前を呼んでいる】

【ノーヴァ、と】
【なんだかとても久しぶりに呼ばれたような懐かしさを覚える】

【彼は声のする方に振り向いて、駆け出そうとする】

(…………?)

【しかし何故だか……急に胸が締め付けられるような切なさがこみ上げて】
【理由の分からない、しかし後を引かれる思いに、彼は思わず振り向いた】

…………――

【かと言って、後ろに何があった訳でもない】
【ただ建造物の残骸が転がるのみ――】

【しかし彼は息を吸い込んで、言わなければならないように思えた言葉を口にした】

――またね!

【そう言って、彼は今度こそ、呼ばれた方へ力一杯に走り出した】


/エンドロール後のCパート的な
/今度こそお疲れ様でした
995 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2018/01/05(金) 14:27:05.21 ID:427OToWP0
【人里離れたとある寺院から火の手が上がっていた】

【茅葺きの屋根は燃え、木造づくりの祭殿はその半ばが破壊され】
【広い参道には「血」と「凍傷」と「火傷」を負った袈裟姿の僧が何人も倒れている】
【だが山賊などの仕業ではない。そこには下卑た笑い声も聞こえず】
【物を漁る荒々しい音も響いていないからだ。届く音はただ一つ】

ですから最初にお伝えしたではありませんか。
素直に渡して下さい、そうすれば何もしない……と
……拒絶したのですから、何をされても文句は言えないでしょう?
【本殿の前に倒れ伏す老僧と、その手を踏みつける白いロングコートの人物】
【話しているのは無論、後者。未だ息のある相手を白いブーツで蹴りつけると】

【ふと屈み込み、散々に嬲った相手の胸元へと手を伸ばす】
【言葉から察するに、老僧が渡すことを拒んだ何かを取り上げようとしているのか】
【その洋装といい、一人だけ無傷な白装束といい――"山賊"は明らかに、この人物だった】
996 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(福岡県) [saga]:2018/01/05(金) 19:45:10.23 ID:qYcddAeQo
>>995
【ある山道】

―――ん?
焦げ臭い、ような。

【白い外套を纏った青年が、すんすん、と鼻を鳴らす】
【あたりを見渡せば、寺院から上がる――未だ寺院とは、彼は認識していないだろうが――黒煙が、視界へ入る】

【目を細める。中央都市へ急ぐ旅の中ではあるが】

……まあ、仕方ないか。

【目に留まったのであれば、見過ごすわけにも行くまいと】
【背負うズタ袋を持ち直し、黒煙のほうへと向かっていく】
【寺院が燃えているのを確認すれば、到達するための速度を上げるだろう―――】
【青年の腰には刀。仮に姿を視認したのなら、戦いの経験がない相手とは思うまい】
997 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2018/01/05(金) 20:27:12.21 ID:427OToWP0
>>996
【黒煙へ、襲撃された寺院へと足を向けたならば】
【目的地へ辿り着く前に、青年は白い洋装の人物に出会う事だろう】
【スエードブーツから襟元のファーまで、何から何まで真っ白で】
【けれど違和感を覚える点が2つだけ存在している】

――おや。そこの貴方、この先は火事のお寺があるばかりですよ。
街も無ければ住んでいる人も……いえまあ、屋根と壁はありましたが。

雪にでも降られたらコトでしょう。
早々にお借りすることを、勧めますが――。

【一点目。この人物の足元、ブーツには赤い斑点が散っていた】
【初雪に咲いた鮮花のようなその色合いは、間違いなく人の血痕であり】

【そして二点目、これはこの人物の唯一といえる所持品である】
【右手に持った紫の風呂敷。その中身が何か、というのは分からないが】
【もし青年に魔術の素養があるのなら――強烈な魔力を感じ取れることだろう】
998 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(福岡県) [saga]:2018/01/05(金) 20:41:16.97 ID:qYcddAeQo
>>997

―――ああ、ご親切にありがとうございます。

【ちろり、と洋装の人物に目を向ける】
【白い外套と、白いロングコートと。まるで誂えたように、似た外見の二人】
【かつん、かつん、と青年は歩みを止めない。洋装の人物まで、もうあと10歩程度の距離】

【そして、ロングコートの人物は、気づくだろうか――】
【青年の目は、たしかに足元のブーツと、紫の風呂敷とを捉えた】

……『火事の寺院』が、なるほどこの先に。
住んでいる人もいないのならば――

一体どこから、火が出たのでしょう。

【かつん、と足を止める。そこに込められたのは、疑いか、ある種の確信か】
999 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2018/01/05(金) 20:53:19.63 ID:427OToWP0
>>998

【青年の視線がこちらを捉える。この人物は確かにそれに気付いていた】
【だが――足を止めることもなければ、狼狽えて弁明するでもなく】
【平然と、散歩でもするかのように足を進めながら微笑みすら返し】

さあ――。まだ廃寺というわけでもないようです、山賊か何かでは?
この寒さだ、焚き火でもしていて燃え移ったのでしょう。

或いは放火でしょうかねえ……嫌なものです、新年早々。

【10歩――9歩―8歩。その距離は次第に詰まっていくが、一方は止まらない】
【けれど警戒はしているようだった。青年がそうしたように】
【この人物もまた、彼の――特にその腰に下げた刀をしっかりと視界に納めていたし】

……では失礼、私は『まだ』行かねばならない場所がありますので。

【4歩。踏み込めば、それは近接戦闘の距離――それでもなお、止まらず】
【青年の横をすり抜けるように、"熱気を放つ人物"は歩みを続けていた】
1000 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(福岡県) [saga]:2018/01/05(金) 21:13:39.15 ID:qYcddAeQo
>>999

(得物は、見た限り持ち合わせず)
(意思疎通は可能、戦闘は――回避したい、がやや上回る、のか)

【ロングコートの人物の、立ち居振る舞いから、戦力と思惑を計る】
【10歩――9歩―8歩。距離は詰まる。外套の青年は足を止めて、しかしロングコートの人物は、構わず距離を詰める】
【ほぼ確実に、常人ではない。それだけは青年の勘が告げていて】
【足元の血痕。それが再び、目に映り】
【私は『まだ』行かねばならない場所がある――その声が、耳に届く】
【4歩。同時に人物が放つ、"熱気"を青年も感じ取る】
【―――この寒さで、なぜ熱い。炎熱系、あるいは温度を操作する能力者。無刀。おそらくは遠距離・中距離も得手だろう】
【ならばこそ――勝機はここを逃しては他になく】
【『次の場所』でも、この人物は何をするかわからない】

―――――止まれ。血の匂いと、この熱気。
寺院を燃やしたのは、お前だな。

【ちりん、と刀の鍔を押し上げる】
【――看過できぬ、と。白い外套の青年は、目の前の人物との対峙を選んだ】
【その距離、3歩】
1001 :1001 :Over 1000 Thread

 ,.――――-、
 ヽ / ̄ ̄ ̄`ヽ、   【呪いのパーマン Ver2.0】
  | |  (・)。(・);    このスレッドは1000を超えました。|
  | |@_,.--、_,>    このレスを見たら10秒以内に次スレを建てないと死にます。
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1002 :最近建ったスレッドのご案内★ :Powered By VIP Service
海未「新春ことりなまけ過ぎ問題」 @ 2018/01/05(金) 20:59:01.78 ID:gGVpXgM20
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刀剣乱舞/序章 @ 2018/01/05(金) 20:31:05.49 ID:o+XJYdlOO
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【安価】仁美「最近2人が構ってくれませんわ」【まどか☆マギカ】 @ 2018/01/05(金) 19:40:57.39 ID:zhTCiJSe0
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【ミリマス】馬場このみ『私と、彼女。』. @ 2018/01/05(金) 19:03:17.51 ID:dxik6X9do
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【安価】魔王を倒しに @ 2018/01/05(金) 18:17:42.00 ID:QPMS84QM0
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P 「あー、佐々木千枝とキスしたい」 橘ありす「…」ムカ @ 2018/01/05(金) 15:59:00.75 ID:pYwuRqlI0
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憩「私が三箇牧の部長に!?」 恭子「私が姫松の監督に!?」 和「私が虎姫に!?」 @ 2018/01/05(金) 15:34:03.49 ID:J/0zVDoDO
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アニ「王様ゲーム、ねぇ」 @ 2018/01/05(金) 14:44:41.13 ID:jW1qmt5a0
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