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HTML化した人:ヤニ▲星半分と
らき☆すた SS 〜皆さん、ここはみゆき様に任せて逃げるのです!〜
1 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/02(月) 22:48:29.35 ID:9JPTRPY0
ここは「らき☆すた」のSSスレです。

・どんなジャンルでもどんどん投下したまへ〜 by こなた
・でも、他所からの作品の無断転載は絶対ダメよ! by かがみ
・あとね、あんまりえっちなのはちょっと恥ずかしいから遠慮してほしいな by つかさ
・メール欄に「saga」と入力するとこの板特有のフィルターを回避できます。「sage」ではありませんよ。
 代表的な例が「高翌良」です……よろしくお願いしますね by みゆき
・長編作品はタイトルをつけてもらえるとまとめるときとかに助かります! by ゆたか
・それと、できればジャンルを明記するようにしてほしいの。
 特定のジャンルが苦手な人もいると思うから…… by あやの
・パロディとかクロスオーバーとかもおっけーだけど、
 あんまり度が過ぎると他の人に引かれっから気をつけろよなー by みさお
・シラない人へのハイリョがアればgoodネー byパティ
・初めてでもよっしゃーいっちょ書いたろかって人大歓迎するでー by ななこ
・まとめてくれる人募集中です……そして、現在のまとめ人には感謝してます…… by みなみ
・お題を出せば書いてくれる職人さんもいるっス。ネタのため……
 いや、いろんなお話を読んでみたいんで、いいお題があったら書いてみてください! by ひより
・そしてそして、SSだけじゃなくて自作の絵もOK!
 投下された絵は美術室に展示されるからジャンジャン描くべしっ! by こう
・注意! 荒らしへの反応は絶対ダメ。反応する悪い子は逮捕だ! by ゆい


(避難所)
 PCから->http://jbbs.livedoor.jp/auto/5330/
 携帯から->http://jbbs.livedoor.jp/bbs/i.cgi/auto/5330/

(まとめサイト)
 http://www34.atwiki.jp/luckystar-ss/

(SSスレ用画像掲示板)
 http://www.sweetnote.com/site/luckystar/
2 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/02(月) 23:30:22.11 ID:4xjc//c0
2get
3 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/02(月) 23:36:07.59 ID:4TwG9ik0
>>1
こなた「実に見事な仕事だと感心はするがとくにおかしいところはない」
スパーン!
こなた「…かがみ…ハリセンは痛いよ…」
かがみ「ごめんなさいは?」
こなた「なんだよーちょっと言ってみただけじゃんかよー」
スパパパパパパーン!!
かがみ「…ごめんなさいは?」
こなた「…ご、ごめんなさいでした…」
4 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/03(火) 00:14:33.20 ID:qRgaNEg0
>>1
スレ立て乙!いいスレタイだw


こなた「くっ!追っ手の数が多すぎる!さすがに100人相手じゃ逃げ切れそうに無いね……」
かがみ「どうすんのよ、八方ふさがりじゃない!」
つかさ「このままじゃ、みんな捕まっちゃうよ〜><」

みゆき「皆さん、ここは私に任せて逃げてください!早く!」

こなた「みんな、行くよ!みゆきさんの行動を無駄にしちゃいけない!みゆきさん、ありがとう……!」
かがみ「みゆき、あんたのことは絶対に忘れないわ……!」
つかさ「ゆきちゃん、私、ゆきちゃんの分まで生き抜いてみせるから……!」

 ☆

こなた「ハア、ハア、ここまで逃げれば大丈夫かな……」
みゆき「みなさん、お疲れ様です。お疲れでしょうし、お茶でもどうですか?」
かがみ「み、みゆき!?どうしてここに!?」
つかさ「ゆきちゃん捕まらなかったの!?」
みゆき「はい、もちろん大丈夫でした。任せてください、と言いましたよね?」
こなた「ま、まあ、みんな無事で何よりだよネ」

つかさ「ねぇ、ゆきちゃん。追っ手は……?」
みゆき「お恥ずかしながら、この手で滅しました☆」
こなた「それなんてチート?」
かがみ「死亡フラグの意味ねぇ〜……」
5 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/03(火) 00:47:01.54 ID:9sBk6ISO
ちょwwwwスレタイww
6 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/03(火) 02:06:33.02 ID:o9eM3ESO
−陵桜戦隊らき☆れんじゃー2−

みなみ「…ふふ…購買のパンを全部食パンに変えてしまおう…」
???「ま、待って!」
みなみ「…誰?」
ゆたか「ゆた☆れっど!」
こなた「こな☆ぶるー!」
かがみ「かが☆ぱーぷる!」
つかさ「つか☆いえろー!」
みゆき「みゆ☆ぴんく!」
『五人揃って、らき☆れんじゃー!!』
みなみ「…この前と微妙に名前が…」
こなた「そこは触れちゃダメだよ、怪人みなみん」
ゆたか「と、とにかく、欲しいパンが買えなくなっちゃうから、そんな事しちゃダメだよ!」
みなみ「…ふ、小賢しい…」
ゆたか「みんな!行くよ!」
こなた「あ、アニメの録画忘れてた…れっど、後お願い」
ゆたか「え?」
かがみ「時間限定スィーツに間に合わないわね…れっど、後お願いね」
ゆたか「ええ?」
つかさ「スーパーのタイムセール始まっちゃう…れっどちゃん、後お願いするよ」
ゆたか「えええ!?」
みゆき「本の返却期限、今日まででしたね…れっどさん、後お願いしますね」
ゆたか「ええええっ!?」
ヒュ〜…
みなみ「…え、えっと」
ゆたか「いーもん…わたし一人でも戦えるもん…ぐすっ」
みなみ「あああああああ、ごめん。なんだかごめん…今日はもう帰るから、泣かないで。ね?ね?」


こなた「いかな敵とて帰らざるを得ない。これぞらき☆れんじゃー必殺『ろんりーれっど』」
かがみ「乗っといてなんだけど…いいのか?この技…」


ななこ「ほー。れっどが一人で追い払ったんか。特別ボーナスやな。で、他の四人は敵前逃亡か…減給やな」
こなた「しまったー!そんな副作用が!?」
つかさ「…っていうより、自業自得だよね…」
みゆき「ですよね…」
7 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/03(火) 07:13:20.40 ID:dsGUIkSO
スレタイ

こなた「じゃあ後は任せたよっ」
かがみ「みゆき、あんたの死は無駄にしない」
つかさ「ありがとうゆきちゃんっ」

みゆき「えぇ!? 少しは引き止めるとかそういう……」

スタコラサッサ

みゆき「……なんて薄情な人達でしょうか」
敵「あの〜……攻撃して良いんスか?」
みゆき「お黙りっ!」
敵「ひぇっ」
8 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/03(火) 18:55:31.42 ID:u3OLHADO
こなた「♪お内裏様とお雛様〜」
ゆたか「♪♪二人並んですまし顔〜」
こなゆた「お嫁にいらした姉様に〜よくにた官女の白い顔〜」

そうじろう「お、そうか今日はひな祭りか、にしてもその雛人形どうしたんだ?」
こなた「これ?さっき物置整理してたらあったんだ〜」
そうじろう「へーこんなのがウチにねぇ…ん?」

雛人形の入っていた段ボール箱の下に紙切れを見つけたそうじろう

そうじろう「手紙?」

【3歳を迎えたこなたへ かなた】

そうじろう「……。」

こなた「ほらほら、お父さんも手伝って手伝って!」
そうじろう「お、おぅ、こいつはここかな?」
ゆたか「あ、おじさんそれは五人ばやしだからこっちの…」

そんなひな祭りネタかきこ
9 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/04(水) 00:09:46.82 ID:vxPS9uwo
>>4>>7
お前らみゆきが死ぬの前提のように言うなww

>>6
給料制かよwwww

>>8
かなた用意してたのか……


コンクール、ネタは大体決まってるのにまとまらねぇぇぇ! こういう時っていっそ新しいネタ考えたほうがいいんだろうか
10 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/04(水) 04:58:18.67 ID:qN.sdgs0
パンピー党代表公設第一秘書逮捕


【一般太郎氏秘書逮捕】一般氏「きちんと処理した」パンピー党幹部会で説明

 野党パンピー党の一般太郎代表は3日、準大手ゼネコン○○建設からの違法献金の疑いで東京地検特捜部が同氏の政治団体を強制捜査する方針を固めたことに関連し、党本部での幹部会で「何か騒いでいるようだが、すべてきちんと処理している。まったく心配はない」と述べ、法令上の問題はないとの認識を示した。
 幹部会は一般氏の説明を了承した。
 名無権兵衛幹事長は幹部会の終了後、記者団に「一般氏は、すべてのお金の出し入れを明らかにしている。問題はない。陰謀だ」と強調。一般氏の説明責任については「必要なら、一般氏が自分で話をする」と述べた。



小早川首相「検察が適切に処理していると思います」

 小早川ゆたか首相は3日夜、一般太郎パンピー党代表の公設第一秘書が逮捕されたことについて、官邸での記者団の質問に対して、「検察が適切に処理していると思います」とした上で「個別案件にコメントすることはないです」と繰り返し述べた。
 また衆院解散時期の判断に与える影響については、「私たちは今、経済対策を一生懸命やってます。解散の時期には関係ありません」と強調した。



 首相官邸、官房長官室。
「今のところは成果は上々といったところでしょうか?」
 高良みゆき官房長官(幸星党幹事長)がそう述べた。
「そうですね。テストケースとしては上出来といったところでしょう」
 永森やまと外務大臣(幸星党工作部門統括責任者)がそう答えた。
「一部では、陰謀論も出ているようですが」
「問題ありません。陰謀論は声高に叫ばれるほど、誰もそれを信じなくなるものです。それに、裁判所から逮捕状がとれるほどに充分に嫌疑があること自体は事実ですから」
「それでも、国策捜査という疑惑は出てくるものですよ」
「疑惑はしょせん疑惑にすぎません。証拠がない限り、一蹴できます。マスコミも含めてその辺のコントロールはうまくいっております。検察当局もマスコミも、我々の情報コントロール下にあるという事実に気づいている者は皆無です。尻尾をつかまれることはありえません」
「あなたが失敗するとは思ってはいませんが、万全を期してください」
「かしこまりました。それで、今後はどういたしますか? ネタのストックはありますから、このまま一気に畳み掛けることも可能ですが」
「あまり派手にやりすぎると疑惑の目で見られますよ。今回はテストケースですから、少し様子を見ましょう。どうするかは、今後の流れを見てから決めた方がいいでしょう」
「かしこまりました」

 首相すら預かり知らぬところで進められている陰謀は、すべて闇の中にあり、表に出ることはない。
11 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/04(水) 07:52:21.44 ID:SiIyPgSO
>>10
このニュース見たとき吹いたわw
「政権の陰謀だ」とか言ってて恥ずかしくないのかよw
12 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/03/04(水) 08:40:46.51 ID:KNcmqa.o
>>10
いつもタイムリーなネタで笑わせてもらってます。
GJ!

>>11
同じくw
でも、そういう発想が出てくるってことは、政権政党になったらやりかねないってことだよね……
そう考えたらちょっと背筋にゾクッときた。
13 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/03/04(水) 09:00:27.92 ID:pybGEDIo
民主ですから。
14 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/04(水) 11:14:50.49 ID:0mqxmiA0
国策捜査って言葉は佐○優あたりの本の受け売りだろうな
民主もみっともないわ
15 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/04(水) 21:00:27.52 ID:/q5SXmA0
>>9
とりあえず、今のネタで書けるとこまで書いた方がいいんじゃね?
新しいネタに手を出したら戻って来れなくなるんじゃなかろうか

>>10
しかし、みゆきはヨゴレ役の似合ういい子だよなぁww


さて、コンクール参加作品を投下させていただきます。
賑やかし程度にでもなればいいんだけどなぁ。
16 :コンクール参加作品『死亡フラグを回避せよ!』[saga]:2009/03/04(水) 21:02:31.02 ID:/q5SXmA0
 こなたです。
 最近、かがみが死んじゃうんじゃないかと、気が気じゃないとです。

〜死亡フラグを回避せよ!〜

 自慢ではないが、私は幼少の頃から本当に数多くのギャルゲ・エロゲに親しんできた。
 それと同時に、勉強する間も惜しんで無数のアニメや漫画の世界を堪能してきた。
 うん。本当に自慢にならないね、これは。
 ともかくそんな訳で、私はこの歳にしてはかなり多くのフラグと接してきたと言える。
 なので、登場人物の言動や周囲の状況、話の展開からたいていのフラグは予想が付く。
 ゲームで選択肢を見れば、どれが死亡フラグで、どれが生存フラグかなど瞬時に看破することができる。
 その正答率もほぼ100%と言って過言ではないだろう。
 この域に達した私には、フラグをたてるのも降ろすのも、たったフラグを壊すのも自由自在なのだ。

 で、冒頭の私の心情吐露は、かがみの死亡を回避させるフラグのひとつになっている訳で。
 あんな物語の始め方の後で、『あ、ダメだ。やっぱり死んじゃった』的な展開は非常に稀であろう。
 なんで私がこんなことをしているのかって?。
 まあ、理由は簡単で、何故か最近のかがみは死亡フラグがばんばんたっちゃいそうになるからである。
 私はそれらのフラグをたたないようにしたり、壊したりすることでかがみを守っているのだ。

 今日は幸いにして、朝会ったときからかがみの死亡フラグがたつ兆候は全く見られなかった。
 そんな訳で、私は久々に平和でゆとりある学園生活を満喫することができたのだった。
 放課後はいつもより長くみんなとおしゃべりを楽しみ、黒井先生に早く帰れと追い出されることとなった。
 そして、そんな充実した1日の帰り道、かがみがなんだか落ち着かない様子を見せ始めた。
 なんだかとても嫌な予感がする。
17 :コンクール参加作品『死亡フラグを回避せよ!』[saga]:2009/03/04(水) 21:03:08.57 ID:/q5SXmA0

「かがみさん、さっきから鞄をゴソゴソしてますけど、何か探しものですか?」
「ちょっとね。教室に忘れ物しちゃったかもしれないのよ」
「お姉ちゃんが忘れ物なんて、珍しいね。鞄のどこかに入ってるんじゃないの?」
「そう思って探してみてるんだけど……見当たらないのよね……」

 ちなみに、本日の教室でのおしゃべりは学校の7不思議についてのものだった。
 つかさが誰かからそれ系の怖い話を聞き、みゆきさんにその真偽をただしたのが話題のきっかけになったのだ。
 つかさとしてはみゆきさんに全否定してほしくて出した話題だったらしいのだが、希望通りにはいかなかった。
 結局、みゆきさんはやんわりとしか否定しなかったばかりか、オマケとして陵桜の7不思議を丁寧に説明してくれたのだった。
 つかさはずっと涙目だった。
 そんなつかさの為を思ってか、かがみはずっと7不思議完全否定派にまわっていた。

『迷信よ。もし本当だったら毎年のように行方不明者やら死者やらがでてるはずじゃない?』
『かがみは夢がないねぇ』
『うっさい。あんたはもう少し現実を生きろ』

 うあ。しまった。
 うっかり回想などしてしまった。
 なんらかのフラグがたちかねない。
 まあ、この程度ならまだまだ大丈夫だろう。
 いつもの事を考えれば些細なことだ。

「まいったな〜、やっぱり忘れてきたみたい……仕方ない、取りに行ってくるわ」
「今日はもう遅いですから、諦められた方がいいんじゃないでしょうか?」
「そうだよ、お姉ちゃん。夜の学校なんてあまり行くところじゃないよ」
「それが、そうもいかないのよ。忘れてきたのは明日提出のプリントなのよね」
「そうですか。では私が一緒に――」
「ああ、いいって、いいって。もうこうんな時間だし、先に帰っててちょうだい」
「ねぇ、やっぱり帰ろうよ。夜の学校なんて危険だよ……」
「今日はやけにからむじゃない。どうしたのよ、つかさ?」
「だって……さっきあんな怖い話したばっかりなのに……」

 つかさの馬鹿。
 それを口に出しちゃったら、かがみの7不思議遭遇フラグがたっちゃうかもしれないじゃん。
 まあ、まだその程度ならよしとするか。
 ちなみに私が今のところ会話に参加せずずっと黙っているのは、余計なフラグをたたせないようにしているためだ。
 プラス、肝心な時に備えて体力を温存しておくという目的もある。

「まったくあんたはしょうがないわねー。心配しなくてもすぐ戻ってくるわよ」
「……うぅ……だって……」
「ホントにしょうがないわね……ホラ、これでも持ってなさい」
「……ペンダント?」
「戻ってくるまでの間、それをあんたに預けとくわ。ま、私がつかさの元に帰ってくる証というか、約束みたいなものよ」
「……これ、お姉ちゃんの大事な……うん!ありがとう、お姉ちゃん!」
「うおおおおおぉーい!何やってんだよ!かがみぃー!!ほら、つかさもさっさとかがみにソレ返して!!」

 私は叫びながら2人の間にわって入る。
 すぐにつかさからペンダントをひったくり、かがみの手に強引に握らせる。
18 :コンクール参加作品『死亡フラグを回避せよ!』[saga]:2009/03/04(水) 21:03:52.83 ID:/q5SXmA0

「うわっ!?なに突然叫んでんのよ!びっくりするじゃない!」
「こなちゃん、ひどいよ〜」
「びっくりするのはコッチだヨ!そのペンダントのくだりおかしいよ!かがみのペンダントにまつわる話なんて今までに一回も聞いたことがないし!」
「えっとね、こなちゃん、このペンダントは私とお姉ちゃんが一対で持ってる大事なお守りでね……」
「別に説明は求めてないヨ!ていうか、この状況ならお守りはむしろかがみが持ってるべきだよ!戦争映画の死亡フラグみたいなことしないでよね!」
「落ち着いてよ〜、こなちゃ〜ん」

「……まったく、こなたったら今日も元気ね。あんたのそういうところ、好きよ。ああ、それにしても今日はやけに月が綺麗ね」
「いつもと違うタイミングで妙なデレ方しないでヨ!しかも好きとかさらりというなぁー!何気ない日常の風景に突然見惚れるのも禁止ッ!」
「あっ!お姉ちゃんに買って貰った靴の紐が……!」
「あら?かがみさんから頂いたストラップの紐が……?」
「不自然に切れるなぁー!フラグたてようとすんなぁー!ていうか、本人が間近にいる場所でそういうフラグとかあんまり意味ないからッ!」
「そうだ、つかさ。あのさ……私が学校から戻ったら、大事な話があるんだけど」
「なんでこのタイミングでそんなこと言うんだヨ!その台詞をここで言う必然性ないでしょ!?もう訳わかんないよッ!」
「若者達よ、夜の学校に近付いてはならん!」
「誰だおまえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええッッ!!」

「少し落ち着きなさいよ。息があがってるわよ?そんな大声出したら周りの人達までびっくりするじゃない」
「だ、誰のせいだと……思って……ハア、ハア……」
「まあ、いいわ。とりあえず忘れ物取りに行ってくるから。それじゃ……みんな、さよなら……って、何で腕をつかんでんのよ、こなた」
「ゼエ、ゼエ……溜めをつくって『さよなら』だなんて、反則だよ……私も、一緒に行くからさ……ちょっと待って……ハア、ハア……」
「ねぇ、ゆきちゃん。私、やっぱりお姉ちゃんの事が心配だよ〜」
「そうですね、では、かがみさんから1時間以上連絡がなかったらご両親に相談する、と決めておきましょう」
「うん、そうするよ。お姉ちゃん、ちゃんと電話してよ?」
「わかったわよ。ちゃんと携帯から……あれ?おかしいな、圏外って表示されてる。この間修理に出したばっかりなのに」
「おかしいですね。おそらく、一時的に電波を受信し損ねているだけだとは思いますが……」
「あ、3本たったわ。みゆきの言うとおりみたいね。とりあえず、忘れ物を回収したらすぐにでもこの携帯で連絡するわ」
「うん。お姉ちゃん、私、いつまでも連絡待ってるからね……戻ってきたら、また一緒に勉強とかしようね」
「……もうさ、みんな少しでいいから黙っててくれないかな……私を休ませてよ……」

 連絡につかうのは私の携帯、ということにしてかがみと2人で学校へ戻る。
 無駄にフラグをたてたりおろしたり、なんやかんやでずいぶん時間を浪費したせいか正門はもう閉まっていた。
 職員通用口にまわって事務員に事情を話し、職員室にまだ残っていた黒井先生から鍵と懐中電灯を借りる。
 正門から職員通用口にまわるまでにもいろいろとあった。

『わざわざ裏口に行かなくても、こんな正門くらい楽勝で乗り越えられるわ。隣の柵にでも落ちなきゃ怪我なんてしないわよ』
『こなたにだってできるんだから、私に出来ないなんてことはないわよ』
『そんなに私の事心配してくれるなんて……ありがとう、私、この先何があってもこなたのこと絶対に忘れない』
『そうだ、落としちゃうと大変だから、このペンダント預かっといてくれないかしら?』
『なんだか雨でも降ってきそうね……ちょっと用水路の様子でも見てこようかしら……』

 これでもかとばかりにフラグをたててくるかがみ。
 何を死に急いでいるのだ、と言いたくなる。
 それと、ペンダントのくだりはいらないよ。もういいよ。もうお腹いっぱいだよ。
 あと、最後のやつは何をどう考えても必然性の無い台詞だと思うんだけど。

 あれこれ考えているうちに、かがみの教室へとたどりつく。
 かがみが机の中を覗き込み、それを私が懐中電灯で照らす。
19 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/04(水) 21:04:01.59 ID:smg5/fA0
>>10の続き


【一般氏秘書逮捕】高良官房長官「検察は適正に捜査しているものと思います」

 高良みゆき官房長官は4日午前の記者会見で、パンピー党の一般太郎代表が記者会見で公設秘書の逮捕を「国家権力の乱用」などと非難したことについて「いささか理解に苦しみますね。検察は適正な法と証拠に基づいて捜査を行っているものと理解しております。日本国は成熟した法治国家です」と批判した。
 高良氏は、一般氏がパンピー党代表職を辞任しない意向を公言したことについては「パンピー党の意志ですので、コメントは差し控えます」と語った。
 また衆院解散時期の判断に与える影響については「小早川総理がおっしゃられたとおり、現在、政府与党は景気対策に全力をあげております。今はそのようなことを考慮する段階にはありません」と否定的な見解を示した。



 みゆきは官邸に戻ると、幸星党本部に電話をかけて、岩崎みなみを呼び出した。
 彼女は財務大臣兼金融担当大臣を辞して以降は、事実上休養中だ。とはいえ、遊んでいるわけでもなく、党本部での事務を手伝っていた。
「みなみさん。党内の雰囲気はどうですか?」
「少々浮ついていますね。早々に選挙の準備を進めるべきだという声もあります」
「この程度で浮つくようではいけませんね。地方組織も含めて、引き締めにかかる必要がありますね。早急に検討してみます」
 みゆきは、そういうと電話を切った。
 閣僚の中にも浮ついた発言をする者がいる。内閣としても引き締めにかかるべきだろう。
 非公式の閣僚懇談会でも開いて、ゆたか首相から浮ついた発言は慎むように指示してもらうことにしよう。
 みゆきは、その旨を提案すべく首相執務室に向かった。
20 :コンクール参加作品『死亡フラグを回避せよ!』[saga]:2009/03/04(水) 21:04:49.74 ID:/q5SXmA0

「かがみんや、忘れ物は見つかったかい?」
「うーん……それが、机の中に入れたはずなんだけど、見当たらないのよね……」
「えー。そんなはずないでしょ」
「そうなんだけど……どこかに落としちゃったのかしら?ちょっと懐中電灯貸してくれない?」
「えー」
「何よ、その反応。ほら、さっさと貸して」
「むー。しょうがない、わかったよ。でも、むやみに変なところとか照らしたりしないでよ?」
「なに言ってんのよ。あんたじゃあるまいし」

 私が懐中電灯を渡すと、予想通りかがみはいろんな場所を照らし始める。
 お願いだから人の話を聞いてください。

「あれ?今あっちで何か動かなかった?」
「何も動いてないよ」
「ちょっと!そこに誰かいるんでしょ!?」
「誰もいないよ」
「そこかっ!……なんだ猫か。脅かさないでよ」
「プリント探そうよ」
「あれ?懐中電灯の電池が切れちゃったみたい」
「大丈夫。予備の電池を貰ってきてるから」

 こんなこともあろうかと、っていうやつだ。
 かがみの身に起こるであろうだいたいの事の予想はつく。
 明かりが無くなる→何かの気配を感じる→確認しに行ってアウト、なんてのは王道だ。
 これを回避するには明かりを絶やさねばよいだけのこと。
 懐中電灯を受け取り、電池の入れ替えをする。

「なんか寒いわね。風が吹いてる?……ああ、窓が開けっ放しなのね」
「ちょ、かがみっ!まだ電池の交換中だから待ってよ!あんまり動かないで!」
「ああ、大丈夫よ。ちょっと窓を閉めてくるだけだから」
「窓なら私が閉めるから!かがみはプリント探しててよ!ここを離れないで!」
「あー、はいはい。わかったわよ……コホッ、コホッ」
「か、かがみ?」
「あー、やばい。寒いから風邪引いちゃったかしゴフッ!」
「うわぁあ!」

 その場に崩れ落ちるかがみ。

「ちょ、かがみ!血?血がっ!」
「大丈夫、大丈夫。みんなには内緒にしてたけど、最近よくあるのよ」
「しっかりして、かがみっ!」
「大丈夫よ、ちょっと休めば……すぐ…元気に……なる…か…ら……」
「ああああああ、フラグが、フラグがぁ!」
「ふふ……今日は北斗七星に寄り添う星があんなに綺麗に見えるわ」
「うわああああ!フラグが!死兆星がぁ!」

 なんだか今日のフラグは半端ない。
 もうこれ以上、かがみの死亡フラグを壊し続けるのは不可能なのか……ッ!?
21 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/04(水) 21:05:18.46 ID:smg5/fA0
あっ、ごめん、割り込んじゃった。
22 :コンクール参加作品『死亡フラグを回避せよ!』[saga]:2009/03/04(水) 21:06:17.50 ID:/q5SXmA0

 ☆


「あ、お姉ちゃんおかえり〜」
「ただいま、つかさ。ふぅ、今日もいろいろと疲れたわ」
「お疲れ様。それで、こなちゃんの様子はどうだった?」
「今日も最後まで元気だったわ。呆れちゃうくらいにね」
「良かった。今頃はゆきちゃんが電話してる頃かなぁ?」
「ああ、そう言えばみゆきが私の病状をそれとなく明かすイベントも今日だっけか」
「そうそう。でも、そろそろお姉ちゃんのネタで引っ張るのも限界だよ」
「そうね。じゃあ、来月あたりからつかさが不治の病かもってパターンに移行しようか」
「うまくできるかな〜」

 かがみの携帯電話が着信を告げる。

「もしもし、みゆき?」
『かがみさん、お疲れ様でした。泉さんはだいぶ元気そうでしたよ』
「よかった。ところでさ、そろそろつかさにバトンタッチしようかと思うんだけど」
『そうですね。これ以上かがみさんで引っ張るのも無理がありそうですから』
「それじゃ、今週末にでも私の生存フラグとつかさの死亡フラグのイベントについて打ち合わせをしましょうか」
『はい。わかりました。いくつかパターンを考えておきますね』
「ありがと。じゃあ、また明日ね」
『はい。また明日もよろしくお願いします。それでは、おやすみなさい』

 通話終了のボタンを押し、かがみは呟く。

「こなたの死亡フラグが発生する暇なんて、私達が絶対に与えてやらないんだから」

 その視線は1冊の本に向けられていた。
 泉そうじろうの手によって製作された「泉こなた死亡フラグ回避計画」。
 昨年の秋から冬にかけて、謎の体調不良でたびたび倒れることのあったこなたを救う、起死回生の計画だ。
 こなたに死亡フラグがたたないように周囲の人間がイベントを発生させまくる、それがこの計画の概要である。
『こなたが生死の境を彷徨ったあの日、かなたが夢で俺を導いてくれた。その時できたのが、この計画なんだ!』
 そうじろうが土下座までして必死で懇願してきた為、かがみ達はダメもとで協力することを約束したのだ。
 そしてこの計画の発動後、医者も驚くほどあっという間に、こなたの体調はすこぶる良くなったのだった。


 ☆


「こなちゃん、あの最後の1枚の葉っぱが落ちたら、私……」
「うわああああああ、つかさっ!?気をしっかり持ってよっ!?」

 今日もこなたはみんなの隠された愛情に支えられ、人一倍元気です。

「かがみの次はつかさが……ぐっ……そろそろ胃に穴があきそうだよ……」

 たぶん元気です。
23 :コンクール参加作品『死亡フラグを回避せよ!』[saga]:2009/03/04(水) 21:10:53.23 ID:/q5SXmA0
以上です。今回のお題は難しかったー。
シリアスなのを書こうかと思ったが、持病のシリアス書けない病が発症した結果がコレだよ。
いきあたりばったりで書くもんじゃないなw

>>19>>21
気にしなくてもよくあることさ。
謝罪まで割り込みになっててふいたんだぜw


さて、あとは他の投稿作品を楽しみに待つだけだぜ。わくわく。
24 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/04(水) 21:21:11.24 ID:smg5/fA0
>>23
 改めまして、すみませんでした。

 死亡フラグをもって死亡フラグを制する作戦ですか。
 毒をもって毒を制するのはいいですが、他人の死亡フラグにこなたまで巻き込まれる事故が発生しそうで、危うい作戦ですなぁ。
25 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/04(水) 21:44:36.56 ID:fpSVQ.SO
>>23
いろいろ不自然過ぎると思ったらそーゆーオチかいww
GJ
26 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/04(水) 21:48:53.41 ID:vxPS9uwo
>>15
たしかにそうかもなー、時間まだあるし粘ってみるわthx

>>23
乙! フラグ立ちすぎでワロタ。しかも故意でそうじろうの仕業とはww
……本当にこなた大丈夫か?ww
27 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/05(木) 01:13:48.85 ID:M8Byn2SO
>>23
そうじろうが黒幕なのは吹いたwwww
28 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/05(木) 12:43:35.69 ID:V3VQ5Ng0
>>23
やべえwwずっと笑ってた気がするwwww
落ちも予想外で不意をつかれた!
GJなんだぜwwww
29 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/05(木) 22:08:06.89 ID:IsibHoSO
前スレで『石橋を叩き割る』というお題を貰った者です
出来上がったので投下します。
30 :慎重な乙女[saga]:2009/03/05(木) 22:09:51.61 ID:IsibHoSO
 先日、泉さんとかがみさんがお泊り会をしたそうです。ですから次の日の学校で、私は冗談混じりでこう言ってしまいました。
「昨夜はお楽しみでしたね」
 そしたらどうやらその言葉が図星だったらしく、場の空気がとても悪くなってしまったのです。

 ですから私は決めました。言葉選びはもっと慎重にしなければ、と……。


 ― 慎重な乙女 ―


 石橋を叩いて渡る、という言葉をご存知でしょうか?
 堅固に見える石橋でも、なお、安全を確かめてから渡る。用心の上にも用心深く物事を行うという意味です。
 これからはこの言葉を元に、慎重に行動しないと行けません。私の発言で空気が悪くなってしまった日にはもう……。
 とにかく、頑張ります。
「みゆきさーん、おはよーぅ」
「あ、泉さん」
 先日の事なんてまるで無かったかのように、私に笑顔で挨拶をしてくれる泉さん。立派です。
 ではそれに甘んじて私も……。
31 :慎重な乙女[saga]:2009/03/05(木) 22:10:44.67 ID:IsibHoSO
「おは――」
 いいえ、よく考えるのです。先程、決意したばかりじゃないですか。
 もしここで普通に挨拶を返したら、泉さんはどう思うでしょうか……。
『昨日の詫びもないの?』
『何かフォローはないの?』
 泉さんがこんな事を思うとは思えませんが、仮に、もし、こんな事を思われてしまったら友達として失格です。
 やはりここは慎重に……そうですね、泉さんとかがみさんは昨日の件もあって堂々と付き合っているわけですから、あれでいきましょう。

 そして私は石橋を叩いた。

「――ようございます。あら? 今日は可愛らしい下着ですね。やはり恋人が居ると毎日が、」
「きゃあぁっ」

 叩かれました。



 一体、何がいけなかったのでしょうか? スカートをめくるまでは良かった筈……あ。
 『可愛らしい』ではなく、『素敵ですね』の方が良かったんでしょうか? 泉さんも高校生ですし、可愛らしいなんて失礼でしたよね。
 私ってばうっかりさん。
「あら?」
「わぷ」
 私としたことが、石橋を叩くのを忘れてしまいました。曲がり角こそ慎重を要する場所でしたのに。しかし、私のクッションで相手の方にはさほどダメージは無さそうで良かったです。
32 :慎重な乙女[saga]:2009/03/05(木) 22:11:32.94 ID:IsibHoSO
「み、みゆきさん……」
「あ、泉さん」
 少し警戒されてますね。顔を見れば分かります。? どうして警戒なのでしょうか?
「みゆきさん、さっきはごめんね」
 さっきというのは叩いてしまった事でしょうか。そんな、あれは私が悪いのに……なんてお優しい方なんでしょう泉さんは。
 ここは私も素直に謝罪しておきましょう。でも焦ってはダメです。
 やはり先程の事は言い直した方が良いですよね。何も無しでただ謝罪するよりも全然マシな筈です。きっと泉さんも笑顔で笑いかけてくれる筈です。

 そして私は石橋を叩いた。

「いえ、私の方こそ可愛いだなんて言ってすみません」
「え?」
「素敵な、でしたね。色もピンクで素晴らし」
「……」

 何でそんな顔をするんですか?



 色まで言ったのは失敗でしたか。またしても泉さんと気まずくなってしまいました……。
 おかしいですねぇ、今日は調子が悪いかも知れません。もう少し裏を読むべきでしたか……慎重、慎重です。
33 :慎重な乙女[saga]:2009/03/05(木) 22:12:37.83 ID:IsibHoSO
「ちょっと、みゆきっ」
「あ、かがみさん」
 いつの間にか私の目の前にはかがみさんが居ました。ジト目で私を見つめています。少し照れますね。
「あんたこなたに何したのよ? お陰でこなたが私の背中に隠れて凄く可愛くなってるじゃない! GJよ」
 そう言うとかがみさんは泉さんを抱きしめくるくると回り始めました。
 かがみさんはこれを見せ付けるために私の所へ?
「――っ!」
 違う。かがみさんは私にチャンスを下さったのですね。泉さんと気まずくなってしまった私に謝りやすい場を設けてくれている……。
 なんて、なんてお優しい方なのでしょうか。私、感動で涙が止まりません。
「みゆき?」
「みゆきさん?」
「あ、いえ……」
 せっかくのご好意の前に泣いていてはいけませんよね。
 私は溢れ出る涙を制服の袖で拭き取る。制服が汚れるとかそんなものはどうでも良いです。
「泉さん」
「は、はい」
 と、ここで忘れちゃいけないのが慎重さです。危うく情に流されて、また余計な事を言ってしまうところでした。
34 :慎重な乙女[saga]:2009/03/05(木) 22:13:35.58 ID:IsibHoSO
 先ずはお詫び。そして私の真意を泉さんに伝えれば、きっと上手く行くと思うのです。もし無事に仲直り出来たのなら、その時は泉さんとキャッキャッ、ウフフ。

  そして私は石橋を叩い――。
「!?」
 石橋が、崩れ……!
「きゃっ」
 落ちていく……石橋も、私も……。
 そうでしたか、慎重になりすぎてもダメと言うことですね……。
 私は慎重になりすぎて、言わなくても良いことを言って……気付くのが遅すぎましたね。
 もう良いです。私なんて居ない方が良いんですから。このまま落ちて――。
「ダメだよみゆきさんっ!」
 薄れ行く意識の中で、誰かが私の名前を叫んだ。この声は、泉……さん?
「うおぉぉぉっ!」
 泉さんが私の腕を掴み、そのまま勢いよく、自分よりも重たい私を引っ張り上げた。

「はぁ、はぁ……大丈夫?」
「……何故、何故助けたのですか?」
「え?」
「私は必要とされてない、居なくなるべき存在なのです。だって私が居たって何も――ッ!?」
35 :慎重な乙女[saga]:2009/03/05(木) 22:14:12.58 ID:IsibHoSO
 渇いた音が響く。頬がひりひりする……?
 泉、さん?
「みゆきさんの、バカ! この世に必要とされてない人なんて居ないんだよっ! みゆきさんはいつも私を助けてくれるじゃん! いつも面白い知識を教えてくれるじゃん!」
 ……。
「私知ってるよ。みゆきさんは笑うとき凄い可愛い顔して笑うんだ」
 私は……。
「いつも優しいみゆきさん。私はそんなみゆきさんが好きなんだ。だから……」
「だから居なくなるなんて……言わないでよぉ……ぅっ……ぅ」
 私はバカだ。
 こんなにも想ってくれる人が居るのに、なんて勝手なんでしょう。
 必要とされてない? 居なくなるべき存在? バカな事を言うなみゆき! お前の自分勝手な思い込みがこんな事態を招いたんだ!
 本当に愚かな人間です。私は。
「えぐっ……っく……」
「泉さん」
 私はその小さな身体を抱き寄せる。
「えへへ、ごめんね。叩いたりして。痛かった?」
「いえ、私の方こそごめんなさい。そしてありがとうございます」
「……?」
「目が醒めました。どうやら私は慎重になりすぎたようですね」
 私がそう言うと泉さんはクスッと笑ってくれました。私も釣られて笑ってしまいました。
「そうだよー、みゆきさんは慎重になりすぎっ。てゆーか慎重どころの問題じゃないでしょあれは〜」
「えぇ、まったくその通りですね。うふふ」
「私は、素のみゆきさんが好きだよ」
「泉さん……」
 私たちは次第に顔を近付け、目を閉じ、そして――。





「なぁ、みゆきはさっきからボーッとしてるけど大丈夫なのか?」
「さぁ〜、みゆきさん朝から何かおかしかったし。保健室連れてった方が良いかもね」
「そうね。じゃあこなたは足を持って」
「う〜い」


 おしまい
36 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/05(木) 22:16:04.86 ID:IsibHoSO
以上です。
死亡フラグより難しいお題だったかも
お題に沿ってるか分からんけどw
37 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/05(木) 23:15:37.90 ID:M8Byn2SO
>>36
みゆきさん慎重になりすぎwwwwww
38 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/05(木) 23:52:07.51 ID:NR134/o0
>>36
みゆきさんがとてもナチュラルに変態だww
石橋叩こうが叩かなかろうがダメだろ、このみゆきw
39 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/06(金) 12:29:47.54 ID:wkbbd6SO
−壊し屋−

かがみ「こなたって、キーボード叩き壊したりしないの?」
こなた「…わたしを何だと思っとるのか…」
かがみ「い、いや、なんかネトゲとかでキレて、そういう事しそうかなって…」
こなた「んーまあ、ゲームやっててイラってくることはあるけど、わたしクラスのオタクともなると、そういう八つ当たりもゲームの中で済ませちゃうものなのさ」
かがみ「ふーん」
こなた「どっちかってーと、かがみの方がやりそう…」
かがみ「やらないわよ。そんな大人げないこと」
つかさ「あれ?お姉ちゃん、中学の時にコントローラーのコード引きちぎって、一ヶ月ゲーム禁止になってなかったっけ?」
かがみ「余計な事いうなーっ!」
こなた「…ぷぷぷ」
かがみ「笑うなっ!!」
みゆき「わたしもマインスイーパーが上手くいかなくて、マウスを握り潰した事がありますよ」
こなかがつか「「「!?」」」
40 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/06(金) 13:02:31.57 ID:v97hfsE0
>>36
IDが石www
41 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/03/06(金) 13:46:36.64 ID:oAI4rT20
>>36
叩きすぎww

>>39
なんて奴らだwwwwww
42 :362009/03/06(金) 22:06:23.27 ID:1LuNaESO
感想ありがとうございます(^v^)
今日もお題を貰いに来ました。良かったら何かください

>>40
本当だ。なんという偶然ww
43 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/03/06(金) 22:19:48.81 ID:WbNMNIAO
疑心暗鬼
44 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/06(金) 22:22:27.03 ID:1LuNaESO
把握
45 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/06(金) 22:58:10.08 ID:mBMWtyU0
こなた「つかさー」
つかさ「ん?」
こなた「疑心暗鬼って略して言って」
つかさ「んー……ぎしあ……」

ガスッ!

かがみ「何言わせようとしてる」
こなた「痛ぁ〜」
つかさ「??」
46 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/07(土) 00:06:37.44 ID:qpjzdASO
>>39
こいつらキーボードクラッシャーより危険だwwwwww
てかみゆきさんの握力が異常すぎるww
47 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/07(土) 17:15:46.36 ID:8pRwgDE0
パンピー党、○○副長官追及へ 「幸星党に波及せず」発言で

 パンピー党は7日、○○建設の巨額献金事件に関し「幸星党議員に波及する可能性はないと思う」と述べた政府高官は○○官房副長官(事務)だとみて、9日に行われる参院予算委員会に政府参考人として出席を求め、事実関係をただす方針を固めた。
 一方、政府高官は6日夜に「一般論として(献金などの)違法性を認識していたことを立証するのは難しいと説明した。幸星党に捜査が及ばないとは言っていない」と記者団に釈明した。
 政府高官は、5日に報道各社の記者団とオフレコを条件に懇談した際に問題の発言をした。オフレコ懇談は政策決定などの背景説明のため行われ、発言者名は伏せて「政府高官」などとした上で発言の事実関係のみを報道することが多い。



 首相官邸。
「たとえオフレコであっても報道されるとの認識をもって、今後は誤解を招くような軽率な発言は厳に慎むように」
 高良みゆき官房長官は、厳しい口調で叱責した。
「はい。肝に銘じます」
 ○○官房副長官(事務)は、険しい表情でそう応じると、深々と一礼して下がっていった。

「ふう」
 みゆきは、溜息をついた。
 幸星党員や閣僚に対しては引き締めを図ったつもりだったのだが、○○官房副長官(事務)は純粋な官僚出身であり盲点となった形だ。
 官僚は、原稿をもとに答弁するにあたっては充分に推敲したうえで文章にしているので軽率な発言などまずないが、今回は記者とのオフレコでのやりとりということでつい口をすべらせてしまったのだろう。
 そして、官房副長官の直属の上司は、官房長官である自分であり、もろに監督責任がある。

「失礼いたします」
 永森やまとが入室してきた。
「どうでしたか?」
 みゆきは、主語を省いて簡潔にそう問うた。
「官房副長官の件の発言には、なんらの政治的背景もありません。文字通り、誤解を招くような軽率な発言でしかなかったというのが真相ですね」
 やまとは、自ら指揮する党の工作機関を通じて調査した結果をそう報告した。
「だとしても、問題の根本的解決にはなりませんけどね。マスコミのみなさんは、真相よりももっともらしい誤解の方を広めたがりますから」
「ご命令とあらば、情報操作をいたします。少々乱暴な手段を用いることになりますが」
「今段階ではそこまでする必要はありません。乱暴な手段は目立ちますしね。それよりも、検察の動きはどうですか? 幸星党議員まで立件される可能性は?」
 幸星党も中核メンバーを除けば、パンピー党に負けず劣らずの寄り合い世帯だ。叩けば埃が出るような人間も、残念ながらいるだろう。
「可能性はあるとはいえるでしょう。パンピー党代表ほど露骨で明白な事案というわけではないので検察がどう判断するかは微妙ですが。捜査を阻止いたしますか? 関係議員の秘書や会計責任者を『自殺』させることぐらいはできます」
「そんなことをしたら、かえってやましいことがあると思われますよ。こちら側は、嫌疑が固まってしまった段階で、素直に謝罪会見をすることにしましょう。悪いことをしたら謝ればいいのです。開き直って露骨に検察批判をする某党代表よりは、国民も好意的に見てくれるでしょう」
「なるほど、確かにその方がいいかもしれませんね」
「あなたの役割は、むしろ関係議員の秘書や会計責任者が自殺したりしないように監視することです。やってくれますね?」
「かしこまりました」
48 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/07(土) 17:41:21.09 ID:BQfYL.SO
>>45
('A`)ギシアン、ワロタww
49 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/07(土) 20:35:54.03 ID:qCcpKqk0
>>47
みゆき怖っ!さらりと自殺うんぬんのやりとりをするなんて……
しかし、内閣シリーズはしばらくネタに尽きることがなさそうだな。
国民としてはあまり喜んでらんないんだけどねーw


コンクール中だけど「怪傑かがみん」第4話を投下させてもらいます。
タイトルは『ついに出た!?偽怪傑かがみん!?』です。5レス前後。
ちなみに、第1〜2話投下後の感想レスから閃いた作品だったりする。
50 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/07(土) 20:36:35.38 ID:qCcpKqk0
こなた「この間は楽しかったね〜、かがみ。時間があっという間に過ぎて夢のようだったヨ」
かがみ「私にとっては悪夢だったわよ……思い出すだけで頭が痛いわ」
こなた「それでさ、その時の写真を焼き増ししてきたんだけど……あれ?」
かがみ「どうしたのよ?」
こなた「いや、カバンの中に入れたはずなんだけど……あれー?あれー?」
かがみ「ちょ、おまっ!まさかどっかに落としたんじゃないでしょーね!?」
こなた「いやいや、まさか私に限ってそんな事は。家に置いてきちゃったんだよ…………たぶん」
かがみ「何故目を逸らすんですか、こなたさん」


〜ついに出た!?偽怪傑かがみん!?〜


放課後、みゆきは風邪で休んだつかさのお見舞いに1人で行こうとしていた。
こなたとかがみは寄るところがある――ナントカの限定版の確保が急務――とかで、とりあえず別行動なのだ。
靴を履き替え、2・3歩進んだところでみゆきは何かノートのような物が落ちているのに気付く。

みゆき「あら?落し物でしょうか?……写真帳のようですね」

それは小奇麗な写真帳。表紙の汚れ加減からして昨日か今日に誰かが落としたものだろうと思われた。
よくよく見てみると『バイト先でかがみと』などと、非常に特徴的な筆跡で書かれている。
筆跡とタイトルからしてこれは間違いなくこなたのものだろうと判断し、みゆきはそれを拾い上げる。

みゆき「少しくらい中身を見てもバチはあたりませんよね。確認も必要ですし」

誰が見ている訳でもないが、そう言い訳をして写真帳を開く。
中には様々な衣装に身を包むこなたとかがみの姿があった。
みゆきはそれを適当にパラパラとめくっていたが、あるページの写真を見て指を止める。

みゆき「こ、これは、怪傑かがみんが2人!?」

見出し部分に『友情のダブル怪傑かがみん☆』と記された写真をもう一度よく見る。

みゆき(いえ、違いますね……こちらのポーズをとっている方は泉さんです)

ツインテールにしてはいるが、頭頂部や身長、胸の大きさ、仮面に隠されていない顔のパーツなどからそれは明らかだった。

みゆき(しかし、こちらはどう見ても本物……ですが、これらの写真の流れからいうと……)

みゆきはあるひとつの仮説に辿りつかざるをえなかった。
写真帳をカバンにしまい、みゆきは再び上履きに履き替え教室へと向かった。


51 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/07(土) 20:37:40.74 ID:qCcpKqk0
かがみはこなたの席に座ってボーっとしながら、その椅子の主が戻ってくるのを待っていた。
こなたは授業中の居眠りの件で黒井先生から職員室への呼び出しをくらってしまったのだ。
宿題でもしようかと考えて丁度カバンを手にした瞬間、かがみは帰ったはずの人物に声をかけられた。

みゆき「かがみさん、ちょっとよろしいですか?」
かがみ「あれ、みゆき?まだ帰ってなかったんだ?」
みゆき「はい、急な用事が出来まして。それで、ちょっと手伝っていただきたいのですが」
かがみ「んー……たぶんこなたももうしばらく戻って来ないだろうし、私もやることが無いから、別にいいわよ」
みゆき「助かります。それでは、生徒指導室までついて来ていただけますか?」

その言葉に対するかがみの返事を待たずにみゆきはさっさと移動し始める。
その姿にほんの少し違和感を感じたが、かがみはとりあえず黙ってついて行った。
人気の無い生徒指導室に入ると、みゆきはかがみの方を向いて軽く微笑んだ。

かがみ「で、何を手伝えばいいのかしら?プリントでも運ぶの?」
みゆき「……申し訳ありません。先程お願いした手伝いの件は、嘘なんです」
かがみ「へ?」
みゆき「実は、かがみさんに見ていただきたいものがありまして」
かがみ「な、何かしら?」
みゆき「はい。こちらの写真帳なんですが」

かがみ「それって、まさか!?」
みゆき「その、まさかです。泉さんが下駄箱で落とされたのだと思いますが、それを私が偶然に拾いまして」
かがみ「こなたのヤツ……やっぱり落としてたんじゃない!何が『家に置いて来た』よ!徹底的にシメテヤル!!」
みゆき「あの、話を続けてもよろしいでしょうか?」
かがみ「え?ああ、ごめんなさい。ちょっと取り乱しちゃったわね」
みゆき「いえ、十分かがみさんらしかった……コ、コホン。ええっと、それでこの写真を見てください」
かがみ「あー……黒歴史だわ……」
みゆき「そのような顔をなさらないでください。お2人とも、とても似合っていると思いますよ?」
かがみ「そんな格好が似合ってるわけが――」

みゆき「とても似合っています。特に、かがみさんなんて誰がどう見ても本物にしか見えないくらい。そうは思いませんか?」
かがみ「……みゆき、何が言いたいのかしら?」
みゆき「いえ、何も。ただ、私にはこれが本物の怪傑かがみんにしか見えない、という事実を言ったまでです」
かがみ「つまり、怪傑かがみんの正体は私なんじゃないか、とでも言いたい訳?」
みゆき「まさか。さすがにそれは論理が飛躍し過ぎだと思っています……今のところは、ですが」
かがみ「今のところは?」
みゆき「はい。かがみさんのこの格好が本物に見える、というだけではその結論に達することができない理由があります」
52 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/07(土) 20:39:46.74 ID:qCcpKqk0
みゆき「まず第一に、どんな理由があれ、かがみさんが人前であんな奇抜で少し残念な格好のできる方だと私には思えません」
かがみ「うっ」
みゆき「それに、実際にかがみさんが正体だとして、あんなふざけた仮面とマント程度の変装なら今までに見破っていた自信があります」
かがみ「くっ」
みゆき「かがみさん、どうかされましたか?突然、胸をおさえられて……心臓に持病でも?」
かがみ「な、なんでもないわ。気にしないで話を続けて」

みゆき「ええっと、そういう訳でして、私としてはそこのところをはっきりさせたいと思いまして」
かがみ「それで、真偽をただしてみようと思って私を呼んだってとこかしら?」
みゆき「いえ、そうではありません。かがみさんがYes・Noどちらを答えようとも、それを裏付ける証拠がありませんから」
かがみ「Yesと答えても信じないの?」
みゆき「はい。先程も言いましたが、どう考えてもあのようなチープな変装で私達の目をごまかせるはずがありませんから」
かがみ「ぐっ……でもそれじゃあ、私を呼ぶ意味がないじゃない。何で呼んだのよ?」

みゆき「この写真をよく見ればわかりますが、泉さんとかがみさんの衣装にはクオリティに歴然とした差があります」
かがみ「ああ、そう言えばこなたも同じような事を言ってたわね」
みゆき「かがみさん、この衣装は泉さんのバイト先のものではありませんね?」
かがみ「隠したって意味も無いから正直に言うわ。自前よ」
みゆき「やはりそうでしたか……かがみさん、その衣装を貸していただく訳にはいきませんでしょうか?」

かがみ「は?何言ってんのよ、みゆき……ま、まさか、そういう趣味なの!?」
みゆき「ちちち、違いますっ!断じてそんなことはありませんっ!」
かがみ「じゃあ、なんでよ?」
みゆき「コホン……考えた結果、私はある仮説に辿りついたんです。あの仮面とマントに認識阻害の効果があるのではないか、という仮説に」
かがみ「ああ、そういうことね。びっくりしたわ」
みゆき「分かっていただけたようですね……さあ、かがみさん。あの衣装、貸していただけますか?」



こなた「やふー。かがみん、お待たせ〜」
かがみ「やふー、じゃないわよ。何も知らないでのん気なものね、まったく」
こなた「何か疲れた顔してるね。どったの?」
かがみ「別に何でもないわ。強いて言えば、あんたの事を待ちくたびれたのよ」
こなた「ごめん、ごめん。黒井先生が説教の後にネトゲの話を始めちゃってサ」
かがみ「どうりで長いはずだわ……」

こなた「あー、でもホントに遅くなっちゃったねー。今日はつかさのお見舞いもあるっていうのに」
かがみ「あれ?あんたお見舞いに来るもりだったの?」
こなた「モチロンだよ。つかさのイベントCGを回収する義務が私にはあるからネ!」
かがみ「でも今から秋葉原まで行くのよね?戻ってくる頃には、つかさ寝ちゃってると思うわよ?」
こなた「そうなの?」
かがみ「たぶんね。病気の時はやけに早く寝るのよ。お見舞いしたいんだったら、限定グッズとやらは明日にしなきゃダメね」
こなた「むむむ。限定グッズをとるか、はたまた友情をとるか、悩むなぁ。生きるべきか、死ぬべきか……」
かがみ「いや、そこまで本気で悩むなよ」
53 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/07(土) 20:40:50.04 ID:qCcpKqk0
※※※「その悩み、私に聞かせていただけませんでしょうか?」
こなた「えっ?誰っ!?」

スラリと開く教室の扉。そして開けたらちゃんと閉める。

※※※「天空が、大地が、皆さんが呼んでいます!ええっと、八百万の神々が呼んでいます!」
こなた「そ、その姿は!」
※※※「豊富な知識でずばり解決!人呼んで『怪傑かがみん』、お恥ずかしながら参上です!」

悩めるこなたの前に優雅に現れたのは、僕らの『怪傑かがみん』……ではなかった!
タキ○ード仮面を思わせる純白の仮面に、純白のマント。
つまり、サブタイトルで既に名乗りを上げている『偽怪傑かがみん』……という訳でもなかった。
少し癖のあるピンクのロングヘアーに、陵桜学園指定の制服。
まあ、ぶっちゃけ高良みゆき。
何処で道を間違えたのか、そしてその目的はこういう方法でなくては達せられなかったのか、謎に包まれた行動だ。
可哀想だけどもう1度言おう。
高良みゆき、謎に包まれた行動だ。

みゆき「さあ、あなたの悩みをお聞かせ願えますでしょうか!」
こなた「かがみ……こんな時、どんな顔をすればいいのかなぁ……?」
かがみ「そうね……笑えばいいんじゃないかしら……」
みゆき「どんな些細なお悩みであったとしても、遠慮なさらずおっしゃってください!」
こなた「かがみ……さすがの私も、これほどまでに相手との温度差を感じたことってないよ……?」
かがみ「そうね……笑うしかないんじゃないかしら……」

そのとき再び教室の扉が開いた。

黒 井「誰や、こんな時間まで教室で騒いどんのはー?泉かー?」
こなた「あ、黒井先生」
黒 井「おー、なんややっぱり泉か。それに柊と……高…良…………!?」
みゆき「えっ?」
黒 井「うわあああ!見てへん!センセはなーんも見てへんからな!」

教室の扉が勢いよく閉められる。
数秒の静寂の後、扉の向こうから黒井はみゆきに声をかける。
心の底から残念そうな声で。

黒 井「なぁ、高良、悩みがあるんやったら、その、センセはいつでも相談にのるからな?」
みゆき「そ、そんな……私だとバレて……?」
黒 井「今日のことは、アレや、ここにおるモンだけの秘密っちゅう事にしとくから、な?」

それだけ言うと黒井は職員室へと戻っていった。
そして、みゆきはその場に崩れ落ちたのだった。


54 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/07(土) 20:42:26.51 ID:qCcpKqk0
こなた「泣いてちゃわかんないよ、みゆきさん。何であんなことしたのさ?」
みゆき「わ、私はっ、ぐすっ、あの仮面にっ、認識阻害の効果がっ、ひっく、思って、実験をっ……!」
かがみ「はいはい、私はちゃんとわかってるから。もう帰りましょ、ね、みゆき?」
こなた「ねー、かがみ。みゆきさんどうしちゃったの?」
かがみ「そうね……みゆきは私達の写真を見て、少し羨ましくなっちゃったんじゃないかしら?」
こなた「写真?」
かがみ「ほら、あの時2人で最後に撮ったアレよ」
こなた「あー、アレね……あれ?でも、私みゆきさんにはあの写真まだ見せてないハズだけど?」

かがみ「ああ、そうだった。それを忘れるところだったわ」
こなた「忘れるって、何を?」
かがみ「あんたよくも今朝はいいかげんな嘘でごまかしてくれたわね……写真は家に置いてきたんでしたっけねぇ、こなたさん?」
こなた「ま、まさか、みゆきさんが拾っ……あわわわわわ」
かがみ「もちろん、覚悟はできてるのよね?」
こなた「う、うわあーーっ!ごめんよ、かがみーーーっ!」

こなたはかがみのオーラに本気で怯え、頭を抱えて教室から飛び出していった。
その姿が凄い速さで廊下の端を曲がって階段の方へ消えていくのを確認すると、かがみはみゆきの隣にしゃがみこむ。
そして、未だ立ち上がれないでいるみゆきの体を優しく抱きしめた。

みゆき「か、かがみさん?」
かがみ「ね、みゆき。ここだけの話なんだけどさ、みゆきの考えたとおり、怪傑かがみんの正体はこの私よ」
みゆき「し、しかし、私の仮説は間違っていました。この衣装には、何の効果もありませんでした」
かがみ「私が身につけなきゃ効果が発動しないのよ、きっと」

そう言うとかがみは、みゆきから仮面とマントを外し、それを己が身に着けた。

かがみ「怪傑かがみん参上!……なんてね。どうかしら、みゆき?」
みゆき「……かがみさん、あなたは優しすぎます……何故、私のためにそこまで?」
かがみ「今の私は、怪傑かがみんよ?」
みゆき「……そう……そうでしたね……はい、どこからどう見ても、正義の味方です」
かがみ「これで、怪傑かがみんの正体が私だって納得したかしら?」
みゆき「……ありがとうございます、かがみさん」
かがみ「お礼なんていいわよ。悩みを解決するのが怪傑かがみんの役割なんだから」
みゆき「……いえ。私がお礼を言ったのは、怪傑かがみんにではなく、かがみさんにです」

みゆきのその言葉に、かがみは仮面をはずす。

かがみ「どういうこと?」
みゆき「私は怪傑かがみんにではなく、かがみさんの優しさに救われたんです。他の誰でもありません。かがみさんにです」
かがみ「私自身……に?」


55 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/07(土) 20:44:37.57 ID:qCcpKqk0
どうやらこなたは本気で逃げてしまったらしく、結局かがみはみゆきと2人きりで帰ることとなった。
駅へと向かいながら、みゆきはいつもと変わらない笑顔でかがみに話しかける。

みゆき「かがみさん、怪傑かがみんの正体って本当は誰なんでしょうね」
かがみ「へ?何言ってんのよ、みゆき?さっき正体は私だって……」
みゆき「うふふ。かがみさんの芝居も上手でしたが、さすがに正真正銘の本物とまでは思えませんでしたよ?」
かがみ「で、でも確か、どこからどう見ても正義の味方だって……」
みゆき「はい。言いました。あの時のかがみさんは、私のことを救ってくれる正義の味方に見えましたから」
かがみ「何よ、それ」
みゆき「衣装をお借りする際にも言いましたが、あの程度の変装では私の目はごまかされません。絶対に見破る自信があります」

みゆきは頬を赤く染め、今までかがみが見たことの無い少し悪戯っぽい表情で笑いながら言った。

みゆき「だって、私とかがみさんは、親友なのですから」





こなた「かがみは私の嫁っ!これはゆるぎない事実なのだヨ!みさきちなどにはゆずれないねぇ」
みさお「いーや、ひいらぎはウチんだっ!こればっかりは、ゆずれねぇかんな!」
かがみ「またそれか……あんたらときたら、まったく」

そんないつものやり取りを、いつものように笑顔で眺めるみゆき。
そして、そっと定期入れの中の写真を見て、ひとり呟く。

みゆき「……お2人には申し訳ありませんが、かがみさんは私のものです。私だってゆずれません」

その写真には、みゆきの言うところの『奇抜で少し残念な格好』をした2人の少女が写っている。
あの一件の数日後、みゆきがかがみに是非にとお願いして撮ったものだ。
写真のタイトルは『真・友情のダブル怪傑かがみん』……みゆきの最高の宝物だ。
56 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/07(土) 20:45:58.32 ID:qCcpKqk0
以上です。
「怪傑かがみん」がまとめwikiのシリーズ物に分類されてとても幸せなんだぜ。
まとめ人と読んでくれてる人達に感謝。
とう訳で、あと数話でシリーズとしてとりあえず完結させたいと思っとります。
そうそう引っ張れるネタの仕組みじゃないもんww

でも、結末までの流れはまだ何も考えてなかったりw
書きながら考える人なので全く期待しないでね。挫折するかもしれない。
或いは、このシリーズそっちのけで他の話を書くかもしれないしw
57 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/08(日) 20:37:09.86 ID:lqPad7E0
投下行きます。
58 :柊かがみ法律事務所──離婚調停[saga]:2009/03/08(日) 20:38:27.34 ID:lqPad7E0
 かがみがパソコンに向かって仕事をしていると、電話がかかってきた。
 事務員が電話をとる。少しばかりの受け答えがあってから、
「所長。お電話です。お父様からですよ」
 かがみは、転送されてきた電話をとった。
「はい。かがみです。お父さん、何かあったの?」
「ちょっと相談したいことがあるんだけど、そっちに行ってもいいかな?」
「何?」
「まつりのことでな……。詳しいことはそっちで話すから」
「分かったわ。時間空けとくから」

 そして、数時間後、ただおとみきとまつりが事務所にやってきた。
 かがみは、個室に案内した。
 三人は、かがみとテーブルに向かい合って座ったっきり、しばし沈黙していたが、みきが話を切り出した。
 まつりが離婚することになったという話だった。
 原因は、夫の方の浮気で、身内の話という点を差し引いても相手方に非がありそうな話ではあった。
 まあ、日本では離婚なんて離婚届ひとつ出せば成立するようなものではあるが、今回の場合は、ただひとつの点で対立しているために協議離婚が成立せずにこじれているということだった。
「相手のご実家が面子を重んじる家庭でしてね。子供の親権だけは絶対に譲ろうとしないのよ」
 みきが事実を述べた。
「あんな男にうちの娘は渡せないわ」
 まつりが憤懣やるかたないといった口調でそう言った。
 肝心の娘はというと、とりあえず柊家で預かっているということだった。今ごろはいのりの娘と一緒に遊んでるだろう。
「まつりになついてるし、いのりやつかさの娘たちとも仲がいいから、引き離すのも不憫でね」
 ただおが、穏やかにそう述べ、さらに続ける。
「こちらとしては話し合いで何とかしたかったんだけど、相手方が弁護士をつけてきてね」
「で、対抗上、こちらも弁護士をつけたいって話ね?」
「かがみ、お願い」
 まつりがテーブルにこすりつけんばかりに頭を下げた。普段のおちゃらけた姉からは想像もつかない姿だった。
 母親というのはそういうものなのだろう。
「仕事としてなら引き受けるわよ。必要経費と報酬、きちんと払える?」
 かがみはそう問う。
59 :柊かがみ法律事務所──離婚調停[saga]:2009/03/08(日) 20:39:35.37 ID:lqPad7E0
 冷たい言い方になるが、弁護士業はボランティアではない。
「それは私が払うよ」
「ごめん、お父さん」
「かわいい孫のためだ。これぐらいはどうってことはないよ」
「依頼は成立ね。話を聞く限りでは、相手方は話し合いに応じる気はなさそうだから、さっさと離婚調停を申し立てる方が手っ取り早いと思うわ」
「いきなり裁判とかにはならないのね?」
 母のその疑問に、かがみは簡潔に答えた。
「離婚裁判は、原則として調停不調の場合にしか起こせない決まりになってるから。姉さん」
 かがみの呼びかけに、まつりが顔をあげた。
「調停の場は非公開だけど、裁判になったら公開の場で相手と罵りあいをすることになるわよ。その覚悟はあるの?」
「娘のためならなんだってやるわよ」
「それともう一つ。養育費をすべて自分で出せる? いいたくはないけど、何をするにも先立つものは金よ。これを相手方に頼るようだと、付け入る隙を与えることになるわ」
「うっ、それは……」
 言葉に詰まるまつりを、ただおがフォローした。
「それもうちが出すよ。娘四人を大学や専門学校に行かせることができただけの収入はまだあるんだ。いのりの娘だけじゃなく、まつりの娘の面倒も見れるよ」
「本当にごめん、お父さん」
「相手方の弁護士の名前は分かるかしら?」
 ただおが、名刺を取り出して手渡した。
 連絡先もきちんと書かれている。
「姉さん。財産分与と慰謝料については、私に一任してくれる?」
「うん。かがみに任せる」

 かがみは、個室を出て自分の机に戻ると、電話をとって相方の番号をプッシュした。
「こちら、柊かがみ法律事務所の柊と申します。○○弁護士はいらっしゃいますか?」
 相手方が出ると、かがみは淡々と話を進めていった。
「……ええ、私がまつりさんの弁護につくことになりました。よろしくお願いいたします。……はい、こちらとしましては、離婚調停を申し立てるつもりですが、争点は子供の親権だけのようですので、調停手続に入る前に、財産分与と慰謝料についてはあらかた合意しておいた方が、調停もスムーズに進むかと思いまして。……ええ、では、日時の調整がつきましたら、ご連絡ください」
 電話を切る。

 そして、パソコンのメモソフトで箇条書きで打ち込んで、プリントアウトした紙をもって個室に戻ってきた。
 紙をまつりに手渡す。
60 :柊かがみ法律事務所──離婚調停[saga]:2009/03/08(日) 20:40:53.00 ID:lqPad7E0
「財産の状況を確認したいから、そこに書いてあるのコピーでもいいから全部用意して」
「うん」
「あとは姉さんだけ残って。お父さんとお母さんは帰っていいわよ」
「どうしてかしら?」
 みきの疑問には、こう答えた。
「姉さんから詳しい話を聞かなきゃならないから」
「確かに私たちに何度も聞かせるような話ではないわね。分かったわ」
 みきとただおが、ぐれぐれもよろしくと言い残して、事務所をあとにした。

「さぁ、姉さん。旦那さんの浮気について詳しく聞かせてもらうわよ。それをもとに慰謝料を算定するから」
 それは傷に塩を塗ったうえにナイフでえぐり返すような所業だったが、弁護士としてその作業を避けるわけにはいかない。
「あれは、一年前のことよ……」
 まつりは、ぽつりぽつりと語り始めた。
 そして、すべてが語り終えたあと、かがみはただひとつだけ問うた。
「姉さん。旦那さんのこと、まだ愛してる?」
「……」
 まつりは、力なくうなずくと、ぽろぽろと涙を流し始めた。
「この部屋は一応防音仕様だから、好きなだけ泣いていいわよ。今日はこれで終わりだから、気が済んだら、帰っていいから」
 かがみは、そういい残すと個室を出て扉をしっかりと閉めた。
 中でまつりが号泣してようとも、聞こえることはない。

 まつりは、それから30分後に個室から出てきた。
 かがみに、ありがとうと言い残して、事務所をあとにした。



 それから、弁護士同士の交渉で財産分与と慰謝料について案が作成され、双方の当事者に提示されて承諾を得る。
 それは合意書の形で文章化され、双方の記名押印がなされた。
 そして、かがみがまつりの代理人として、離婚調停の申立てを家庭裁判所に行なった。申立書には合意書を添付しておいた。
 調停の期日が決定され、双方が呼び出される。
61 :柊かがみ法律事務所──離婚調停[saga]:2009/03/08(日) 20:41:53.23 ID:lqPad7E0

 離婚調停は、家庭裁判所裁判官1名と調停委員2名が主催するが、裁判官も忙しいので基本的に調停委員2名が中心になる。
 裁判所によってもやり方が異なるが、ほとんどの場合は、当事者同士が直接対面することはない。両当事者が単独あるいは弁護士などと一緒に交互に個室に呼び出されて、調停委員が事情や要求などを聞き出す形になる。
 まず、双方ともに、さきの合意書の内容に本当に同意しているのかの確認が行なわれた。
 そして、争点である子供の親権の話へと移っていく。

 調停手続が一日で終わることはほとんどなく、この場合も日にちをおいて3回呼び出しがあった。
 2回目ともなると、調停委員の方から、どの程度なら妥協できるのかを探るような質問が頻繁に投げかけられる。
 そして、3回目の呼び出し。そこで、裁判官も同席のうえで、調停案の提示があった。
 内容は、まつり側の要求をほぼ受け入れたようなものだった。離婚原因で相手に非があること、娘がまつりになついてることや柊家側の親戚とかかわりあいが深いこと、そして、何といっても養育費を柊家側で全部もつという切り札が効いたようだ。
 細かい点では相手側の要望も取り入れられていたが、まつり側としてはのめないことはない条件だった。
 まつり側は受け入れを表明。
 あとは、相手側がどう判断するかだ。調停案をのむか、それとも調停案を蹴って裁判で争うか。
 かがみは、相手側ものまざるをえまいと予測していた。相手の家庭は面子を重んじている。裁判になれば、公開の法廷の場ですべてが赤裸々になってしまうわけで、それこそ面子丸つぶれだ。
 はたして、予測どおり、相手側も調停案を受け入れた。
 親権をめぐる紛争は、ここに終結を見た。



 お正月の三が日をすぎたある日、かがみは久々に実家に帰省した。
 神社の境内は、正月の喧騒が嘘のように静まりかえり、いつもの光景に戻っている。
「あっ、お姉さん、いらっしゃい」
 一足先に娘たちとともに帰省していたつかさが、まず出迎えてくれた。
「「おばさん、こんにちは」」
 つかさの双子の娘も挨拶してきた。
「こんにちは」
 ちなみに、つかさの旦那さんは、年末年始はいろいろと忙しい仕事なので、ここにはいない。
「あっ、かがみ。帰ってきたんだ。今回も一人だけ? 彼氏でも連れてくればいいのに」
 まつりが、ちゃかすようにそういって出迎えた。
「まつり姉さんに言われたくはないわよ」
62 :柊かがみ法律事務所──離婚調停[saga]:2009/03/08(日) 20:42:53.63 ID:lqPad7E0
 そこに、まつりの娘が顔を出す。
「あっ、かがみおばさん、こんにちは。今回も彼氏いないんだ?」
「こらっ」
「おお、こわっ」
 かがみがにらみつけると、まつりの娘はそういってまつりの背後に隠れた。
「まったく誰に似たんだか」
「私に決まってるじゃん」
 そのあと、いのりとその婿さんとその娘、みきにただおも出てきて、かがみを出迎えてくれた。

 子供たちが一緒に遊んでいる光景を、縁側から眺める。
「かがみには感謝してるよ。あの子がああしてられるのも、かがみのおかげだしね」
 まつりがぽつりとそう言った。
「私は仕事をしただけよ」
 かがみはぶっきらぼうにそう答えた。
63 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/08(日) 20:45:58.52 ID:lqPad7E0
以上です。

 まつり姉さん、勝手にバツイチにしてしまってすみません。
 あの四姉妹の中では、まつり姉さんが一番やらかしそうなイメージだったもので。悪い男につかまったりとか……。

64 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/08(日) 21:43:19.61 ID:SPN2A0A0
>>63
乙〜
かがみのさっぱりした感じが毎回素晴らしい。
65 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/08(日) 21:58:23.30 ID:g6otr/Yo
>>56
みゆきの連続攻撃がひどすぎる……全部事実ではあるがwww
悪いが続きを期待させていただくぜ。乙!

>>63
乙! ラストのささやかなツンデレがいいな
そして、残念なことに一番やらかしそうなというのに納得してしまった
66 :コンクール参加作品 信じる心と優しさを[saga]:2009/03/09(月) 00:59:06.61 ID:Pfj6XGw0
コンクール作品の投下いきます。

一応シリアスです。
そして、毎度のことながらお題度が微妙です。
67 :コンクール参加作品 信じる心と優しさを[saga]:2009/03/09(月) 00:59:50.76 ID:Pfj6XGw0
「お父さんがね、死んじゃうかもしれないんだ」
「はあ?」
 唐突なこなたの言葉に、かがみは間抜けな言葉を発した。
「な、なによそれ…何の冗談?」
「冗談じゃないよ…死亡フラグって知ってるよね?」
「知ってるわよ。おかげさまで、その手の知識は随分豊富になったわ」
「お父さんの行動とか言動とかがね、死亡フラグっぽいんだ…」
 かがみは大きくため息をついた。
「三言で済ませてあげるわ」
「え?」
「ゲームのやりすぎ。漫画の読みすぎ。アニメの観賞しすぎ」
「…う」
「まったく…くだらないこと言ってるんじゃないわよ」
「う、うん」
 頷いたものの、こなたはまだ納得のいかない表情をいていた。
「…で、具体的にはどういう事なの?」
「え?」
「話くらいは聞くわよ」
「あ、うん…ありがとう」
「…で、話聞いてあげるんだから、接待プレイとかしない?」
 二人が格ゲーの対戦をしているモニターの中では、かがみの使用しているキャラがパーフェクト負けで地面に這いつくばっていた。
「勝負の世界は非情なのだよ、かがみん」


- 信じる心と優しさを -


68 :コンクール参加作品 信じる心と優しさを[saga]:2009/03/09(月) 01:00:38.23 ID:Pfj6XGw0
 こなたが最初に気がついた父そうじろうの異変は、家の三階にあるコレクションルームに行く回数が増えていることだった。そして、そうじろうがコレクションルームに入るたびに、中のコレクションの数が微妙に減っているような気がした。
「ねえ、お父さん。最近、三階に行くこと多いけど、どうかしたの?」
 気になったこなたは、そうじろうに直接聞いてみることにした。
「ん?ああ、ちょっとあの部屋も整理しようと思ってな…大分、物も増えてきたしな」
「…ふーん」
 とりあえず、こなたは納得することにした。物が減っているように見えたのは、上手く整理してあるからだろう。自分のちょっとした疑念だけで、これ以上追求することもないと、こなたは判断した。
「………」
 そうじろうの方を見ると、なにやら黙って下を向いている。
「…ねえ、お父さん。なんか顔色悪くない?」
 こなたには、そうじろうが少し苦しそうにしているように見えた。
「そうか?」
「うん。どうかしたの?」
「いや…まあ、少し疲れてるのかもな。今日は早めに休ませてもらうよ」
「う、うん…」
 自室に向かうそうじろうの背中を見送るこなたの胸に、少しばかりの不安が過ぎっていた。


 ある時こなたが居間に入ると、そうじろうがアルバムを広げて見ていた。
「どしたの?アルバムなんか見て」
「いや、ちょっとな…こなたも見るか?」
「…うん」
 こなたはそうじろうの隣に座り、アルバムを覗き込んだ。小学生時代の自分の写真がみっちりと貼られている。
「ものの見事にわたしの写真ばっかだねえ…」
「そりゃ、撮る対象がお前しかいないからな」
 おかしい。こなたはそう思った。たしか父の写真もいくつかあった筈だ。カメラを貸してもらってこなたが撮ったり、他の人に撮ってもらった二人の写真とかあった筈だ。アルバムに納められていたのを見た記憶もある。
「この時の運動会だったかな。お前が徒競走で転んで泣いたのは」
 写真のことを聞こうかどうかこなたが迷っていると、そうじろうが懐かしそうにそう言った。
「そうだっけ?…うわ、写真あるんだ」
 こなたは思い出していた。このとき泣いたのは、転んで痛かったからじゃなく、そのせいで負けて悔しかったからだと。
「…このときから見てないな」
「え?」
「こなたが本気で泣いてるのを」
「…まあ、泣くようなこと無いしね」
「友達は好きか?」
 急にそう聞いて来たそうじろうの真意を測りかねて、こなたが怪訝な顔をした。
「なに?急に…」
「ん、まあなんとなくな」
「…好きだよ。こんなにウマが合う友達って、初めてだと思うよ」
「そうか」
 そうじろうはこなたの答えに満足そうに頷いた。

 その夜、こなたはトイレに行った帰りに、居間から明かりが漏れているのを見つけた。こっそりとこなたが覗いてみると、そうじろうがかなたの写真を前に酒を呑んでいた。
「…かなた、こなたはもう大丈夫だろう…信頼できる友達も出来たし、こなた自身もしっかりしてきている…」
 呟く言葉が不吉なものに思え、こなたの頬に一筋の汗が垂れた。
「俺は…少し疲れたな」
 それ以上聞くことが出来ず、こなたは逃げるように自分の部屋に戻った。

69 :コンクール参加作品 信じる心と優しさを[saga]:2009/03/09(月) 01:01:39.04 ID:Pfj6XGw0

「…大体、そんな感じかな」
 話し終えたこなたは、かがみの顔を見た。
「うーん…」
 かがみは顔をモニターの方に向けたまま、難しい顔で唸っている。
「難しいわね。確かにそう取れる気もするし、こなたにそういう知識があるからそう取ってしまってるとも言えるし…」
「そっか…」
 こなたは未だゲームのコントローラーを握ったままの、自分の手元に視線を落とした。
「不安だったら、直接本人に聞いてみたほうがいいかもね。正直に答えてくれなくても、なにかしら分かるかもしれないし」
「うん…ありがとう。かがみ」
 こなたもう一度かがみの方を見た。かがみはまだモニターの方を見ている。それを見て、こなたは首を傾げた。なにかおかしい、と。
「とかなんとか言ってる間に、わたしの勝ち」
「んなーっ!?」
 いきなりのかがみの勝利宣言に、こなたは慌ててモニターを見た。モニターの中では、こなたの使用しているキャラがパーフェクト負けで地面にのびていた。
「え、えええ?ちょっ!なっ!ええええっ!?」
「やったわ!初めて格ゲーでこなたに勝ったわよ!」
「いやいやいや!なんか違うでしょ!?おかしいでしょ!?人が相談してる時にこんなのナシでしょ!?」
「勝負の世界は非情なのよ、こなたん」
「非情じゃなくて卑怯だよこれ!納得いかないよ!もう一回!もう一回やるよ!」
「残念ながら、時間遅いしそろそろ帰らなきゃ」
「勝ち逃げーっ!?」
「それじゃ、また明日ねー」
「かがみんのあほーっ!!」

70 :コンクール参加作品 信じる心と優しさを[saga]:2009/03/09(月) 01:02:16.06 ID:Pfj6XGw0

 その日の夜。
「…ごめん、こなた。少し残すよ」
「あ、うん…まだ調子悪いの?」
 晩御飯を半分くらい残して席を立ったそうじろうにこなたがそう聞くと、そうじろうは曖昧な笑顔で頷いた。
「まあ、たいしたことじゃないとは思うんだけどな」
「ちゃんと休んでよ?」
「分かってるよ」
 そう言ってそうじろうは、自室へと戻っていった。
「ホントに大丈夫なのかな…」
 そうじろうの食べ残しを片付けながら、こなたはそう呟いた。

「お父さん、入るよ」
 こなたはそう言いながら、そうじろうの自室のドアをノックした。かがみに言われた通り、直接聞いてみようと思ったのだ。
「…あれ?」
 しかし、返事はなかった。寝てしまったのかと思い、こなたはドアを開け中に入った。部屋の中は明かりがつきっぱなしで、そうじろうは仕事に使うテーブルに突っ伏していた。愛用のノートパソコンも、電源が付きっぱなしだ。
「お父さん、仕事してたのか…調子が悪いって言ってたのに」
 こなたはベッドから毛布を引っ張ってきて、そうじろうにかけてあげようとその後ろに回りこんだ。そして、その動きが止まる。ふと、目に入ったパソコンのモニター。そこに書かれてあった文の一行。

『やはり、こなたを残していくのは心配だ』


 こなたは自分の部屋に戻ると、後ろ手にドアを閉めた。その手が震えているのが分かる。
「…あ…あ」
 怖い。こなたはそう感じていた。震えはどんどん大きくなっていく。
「あ、ああ…」
 さっき見たモニターの中の言葉が頭から離れず、恐怖から来る震えは全身へと広がっていった。こなたは震えを収めようと自分の身体を抱きかかえたが、収まるどころか大きくなるばかりだった。
「ああああああああああ」
 こなたは耐え切れずに、その場に座り込んでしまった。

71 :コンクール参加作品 信じる心と優しさを[saga]:2009/03/09(月) 01:02:50.60 ID:Pfj6XGw0

「え、こなた結局来なかったの?」
 翌日のお昼休みの教室。かがみは何時ものように、こなた達のクラスにお弁当を食べにきたのだが、そこにこなたの姿は無かった。
「うん…朝に会えなかったから、遅刻かなって思ったんだけど、まだ来なくて…」
 つかさが項垂れたままそう答えた。
「な、なんかあったの?」
 様子のおかしい妹に、かがみがそう聞いた。
「それが、無断欠席らしいのです」
 つかさの隣に座っていたみゆきが、つかさの代わりにそう答えた。
「無断?」
「はい、それで黒井先生が、泉さんのご自宅に電話をされたそうなのですが…」

『もしもし、担任の黒井いいますけど…』
『お父さん!?お父さんなんでしょ!何処!?何処にいるの!?』
『は?ちょ、泉か?なんや急に…』
『…違う』
『はあ?違うてなんや?おい、泉!泉ー!…切りよった』

「その後、いくらかけ直しても泉さんは出られなかったそうで…」
「わたしとゆきちゃんも電話したり、メール送ったりしたけど、全然反応が無いんだよ」
「…お父さん…ね…」
 かがみは昨日のこなたの相談事を思い出していた。
「かがみさんは何か心当たりが?」
「うん、昨日ね…」
 かがみはこなたに持ちかけられた相談を、みゆきとつかさに話した。
「死亡フラグ…ですか」
「うん。わたし、こなたが大袈裟に言ってるだけだと思って、あまり真剣に聞いてあげなかったんだけど…事は思ったより深刻なのかも…」
「学校が終わったら、様子を見に行ってほしいって黒井先生に言われてるんだけど、お姉ちゃんも…」
「行くわよ。もちろん」

72 :コンクール参加作品 信じる心と優しさを[saga]:2009/03/09(月) 01:03:24.50 ID:Pfj6XGw0

「…でないわね」
「…ですね」
 泉家の門前に来た三人は、とりあえずインターホンを鳴らしてみたが、何の反応も無かった。
「玄関の鍵、開いてるみたいだよ」
 いつの間にか門を抜けていたつかさが、玄関のドアを開けながらそう言った。
「ちょ、ちょっとつかさ。そんな勝手に…」
「いえ、行きましょう。かがみさん」
「みゆきまでなに言ってるのよ」
「緊急事態…かも知れませんから」
 かがみに頭に『死亡フラグ』という言葉が過ぎる。
「…そうね」
 三人は異様な静けさの泉家へと入っていった。


「とりあえず、こなたの部屋を覗いてみましょう」
 かがみの提案に、つかさとみゆきが頷く。
「こなた…いる?」
 一応、ノックしてからかがみはこなたの部屋のドアを開けた。覗き込んでみると、こなたが床に座り込み、ベッドに顔を伏せているのが見えた。
「こなた。大丈夫?」
 かがみが声をかけると、こなたはゆっくりと顔を上げ、かがみ達の方を向いた。
「かがみ…つかさとみゆきさんも…」
 こなたが立ち上がり、よろよろと頼りない足取りでかがみ達の方へと歩いてきた。そして、倒れ込むようにかがみに身体を預けた。
「ちょっとこなた、大丈夫?」
「…お父さんが」
「おじさん?どうかしたの?」
「いなくなったの…」
「い、いなくなったって…いつ?」
「朝起きたら、もういなかった…家中探したんだけど、何処にもいなくて…」
 かがみは助けを求めるように、みゆきの方を見た。
「泉さん、おじさまが何処か良く出かける場所などはありますか?」
 顎に指を当てて、少し考えたみゆきはこなたにそう聞いた。
「…そういうの、わからない」
 こなたはみゆきに首を振って見せた。
「朝からいないのなら、コンビニとかにちょっと出かけてるって訳でもないわよね…」
 そう呟くかがみの服を、こなたが軽く引っ張った。
「なに、こなた?」
「…来て」
 かがみから離れ、頼りない足取りで部屋を出て行くこなた。三人はその後についていった。

73 :コンクール参加作品 信じる心と優しさを[saga]:2009/03/09(月) 01:04:14.51 ID:Pfj6XGw0

 こなたが入ったのはそうじろうの私室だった。そして、テーブルの上で起動したままのノートパソコンを指差した。
「…見て」
 言われるままに、かがみ達はパソコンのモニターを覗き込んだ。

 皮肉なものだ。かなたと同じ病とはな。
 だいぶ無理が効かなくなってきている。こなたも薄々感づいているみたいだ。
 こなたに弱っている姿を見られたくはない。体が動くうちに、家を出よう。
 コレクションをいくつか売り払って、備蓄を増やしておいた。身辺の整理も済ませておいた。
 何かあっても、ゆいちゃんやゆきがよくしてくれだろうし、なによりこなたには信頼のおける友達がいる。
 もう、俺がいなくてもこなたは大丈夫だろう。
 そう思うのだが、それでもやはり、こなたを残していくのは心配だ。

「かなたって…こなたのお母さんの名前よね…だったらこれ、死亡フラグなんか通り越して…」
「かがみさん!」
 思わず洩れたかがみの呟きを、みゆきが制止する。かがみは自分の言い出しかけたことに気付き、慌てて口を塞いだ。そして、恐る恐るこなたの方を見る。こなたは俯いたままかがみの方へと歩き、その胸に身体を預けた。
「そうだよ…お母さんと同じ病気だったら、お父さん長くないかもしれないんだよ…でも、なんで?」
 こなたがかがみの服を掴む。
「なんで…それでお父さんがいなくなるの?わたしに見せたくないってどういうこと?わたしは…わたしは…」
 こなたの手に力がこもる。
「わたしはお父さんに信用されてないの?お父さんはわたしを信じてくれないの?…最後に一緒にいるのが、わたしじゃ駄目だって…そうなの?…かがみ、答えてよ…かがみ…」
 かがみは何も答えることが出来ずに、ただ唇を噛み締め、拳を強く握り締めた。
「し、親戚の人とかに連絡をしたほうがいいんじゃないかな…すごく大事なんだし…」
 泣きそうな顔でそう言うつかさに、みゆきが頷いて見せた。
「そうですね。それに、本当に行方が分からないのなら、警察に捜索願も…」
「いや、その必要はないよ」
 部屋の入り口から聞こえたその声に、四人が一斉に振り向いた。
「お、お父さん…」
 そこに立っていたのは、いなくなっていたはずのそうじろうだった。
74 :コンクール参加作品 信じる心と優しさを[saga]:2009/03/09(月) 01:05:49.63 ID:Pfj6XGw0
「おじさん、なんで…」
 かがみはモニターとそうじろうの顔を交互に見た。
「あの、おじさま…これは一体…」
 みゆきが、パソコンのモニターを指差してそう聞いた。
「それは、もういいんだ…もう十分だ」
「もういい…十分って…まさか!?」
 かがみはこなたを自分から引き剥がすと、そうじろうの方に詰め寄った。
「おじさん!こなたが言ってた死亡フラグだの、この文章だの、まさか全部…!」
「ああ、そのまさか…」
「お父さん!」
 そうじろうの言葉を遮って、こなたが二人の間に割って入った。
「こなた、俺は…」
「病院に…すぐ病院に行かなきゃ!」
 こなたはそうじろうの腕を掴んで、部屋から連れ出そうとした。
「ちょ、ちょっと待って、こなた!」
 かがみがそのこなたの前に、両手を広げて立ちはだかった。
「どいてよ、かがみ!お父さん病気なんだよ!?」
「こなた、それは…」
「お母さんと同じ病気だからって、どうにもならないことなんて無い!もしかしたら、治るかもしれないんだよ!」
 空いたほうの手で、かがみを押し退けようとするこなた。かがみはその手を押さえつけた。
「だから、それは…少し落ち着いてよ…」
「落ち着いてなんかいられないよ!お父さんが死んじゃうかもしれないのに!」
「こなた、少し話を…」
「落ち着きなさいっ!!」
 その一喝に、部屋の中が静まり返る。その声の主…みゆきに、全員の視線が集まる。
「落ち着いてください、泉さん…」
 みゆきはこなたに、今度は静かにそう言った。こなたは、親に怒られた子供のように項垂れた。
「おじさまの事はすべて嘘…そうですよね?」
 みゆきはそうじろうの方を向いてそう言った。今度はそうじろうが項垂れる。
「そうだ、全部嘘なんだよ…ここに書いてる事全部な」
「お父さん…」
「おじさん、どうしてそんな事を?」
 今度は、かがみがそうじろうにそう聞いた。
「不安になったんだよ。こなたが俺のことをどう思ってるか…こんな父親だ。本当はこなたは俺の事を嫌ってるんじゃないかって…そう思い始めたら、どうにも止まらなくなってな…」
「…それで、こんな方法で試したっていうの?」
「ああ…」
 かがみは、おもむろにそうじろうの胸倉を掴んだ。
「バカかあんたは!あんたがこなたを信じられなくてどうするのよ!?」
「…すまない」
「すむないで済むか!こなたがどれだけ心配したと思ってるの!?それが嘘だなんて…これで本気で嫌われると思わなかったの!?」
「…すまない」
「…こなた!あんたもなんか言ってやりなさいよ!」
 かがみはそうじろうから手を離して、こなたの方を向いてそう言った。このままだと殴りつけてしまいそうだったからだ。
「…お父さん」
 こなたはゆっくりと顔を上げた。その顔は、笑顔だった。
75 :コンクール参加作品 信じる心と優しさを[saga]:2009/03/09(月) 01:06:45.09 ID:Pfj6XGw0
「よかった…よかったよ…」
「ちょ、よかったってなによ?こんな性質の悪い嘘つかれたのよ?ちっともよくないじゃない」
 こなたはかがみに向かって、微笑んで見せた。その目から涙が零れ落ちる。
「嘘だからよかったんだよ…だって、嘘だったらお父さん死なないじゃない…どこにも、行かないじゃない…」
「こなた…」
「よかった…本当に…本当によかった…お父さん…」
 こなたはそのまま泣きじゃくり始めた。そうじろうがその身体を強く抱きしめた。
「こなた…こなたっ!…すまない!本当にすまなかった!」
「お父さん…お父さん…」
 抱き合いながら泣き続ける二人を残して、かがみ達は黙って部屋を出て行った。


 泉家から駅までの道で、かがみは何度目かのため息をついた。
「どうしたの、お姉ちゃん?ため息ばっかり…」
 つかさが、かがみの顔を覗き込みながらそう聞いた。
「ん、いや、ちょっとね…あのおじさんでも子どもに嫌われてるとか、不安になることあるんだなって…」
「そうだね…」
「わたしも、ちょっとは親孝行とかしてみようかな」
「でも、急にそんな事思ってもできないよね」
「そうね…」
「でしたら、まずは元気でいることですね」
 かがみを挟んで、つかさの反対側にいるみゆきが、右手の人差し指を立ててそう言った。
「長生きにまさる親孝行は無し…と言いますから」
「そんなものかしら」
「ええ、だからかがみさんはまず、寿命を縮めかねない無理なダイエットを慎むことから始めましょう」
「…待て。なんでそっちに話が行くんだ?」
「それはわたしも賛成。この前もお姉ちゃん、無理して倒れかけてたし」
 かがみは黙って、左右にいるつかさとみゆきの頬を同時に掴んだ。
「いひゃい!かがみひゃん、なひふるんでふか!?」
「おねえひゃん、はなひてー」
「うるさい。なんかむかついたから、このまま駅まで行くわよ」
「ひょんなー」
「ふえーん、ごめんなひゃいー」

76 :コンクール参加作品 信じる心と優しさを[saga]:2009/03/09(月) 01:07:19.87 ID:Pfj6XGw0

 次の日の朝、かがみ達三人はいつも通りに登校していた。
「こなちゃん、来るかな…」
 つかさがそう呟く。
「うーん…やっぱり少しは引き摺る…」
「おっはよー!かがみ、つかさ、あーんどみゆきさん!」
 後ろから聞こえたこなたの元気な声に、三人は唖然とした表情のまま振り返った。
「あれ?どったの?三人とも変な顔して」
「い、いや…昨日今日でなんでそんな元気になってんだ…?」
 そう聞くかがみに、こなたは頬をぽりぽりとかきながら答えた。
「いやー、まああんまり引き摺るのもアレだから…昨日あれからしっかりと親子の絆というものを、再確認したわけですよ」
「いや…なんで、そこを頬を赤らめるんだ…」
 何故か頬を赤らめつつ、くねくねと身をよじるこなたを、かがみは呆れながら見ていた。
「あ、そうだ。今日からしばらく寄り道とか出来ないから」
 急にくねくねを止めて、こなたがそう言った。
「それは、またなんで?」
「お父さん、体調悪いのだけは本当だったんだよ」
「…え?」
「なんか、少しスランプ気味だったみたい…それでちょっと不安定になって、わたしを疑ったりとかしたみたいなんだ」
「そう…」
「だからね、しばらくは家事全部わたしがやって、お父さんをしっかり休ませてあげようと思ってね」
 かがみは、少し違和感を覚えた。言ってる事は真面目なのだが、こなたの顔が何故か緩んでいたのだ。
「まずは食事だよね。栄養のあるもの食べて、しっかり精をつけてもらわないとねー」
「こなちゃん…なんか嬉しそうだね…」
「そうですね…」
 つかさとみゆきも、こなたの様子がおかしいことに気がつき始めていた。
「えへへ…お父さん、喜んでくれるかなー?」
 またしても、くねくねと身をよじるこなた。かがみ達三人は、複雑な顔でそれを眺めていた。
「ねえ、これってなんだか…」
「ええ、泉さんの様子から見ると…」
「うん、なんていうか…」
「おーい、急がないとそろそろ予鈴なるよー」
 いつの間にかくねくねを止めていたこなたが、遠くから三人を呼んでいた。慌ててつかさとみゆきが走り出し、かがみはその後に続いた。
「…なんか、別のやばいフラグが立ってないか?」
 かがみのその呟きは、予鈴の音に掻き消された。


- 終 -
77 :コンクール参加作品 信じる心と優しさを[saga]:2009/03/09(月) 01:08:37.72 ID:Pfj6XGw0
以上です。

なんだか死亡フラグになっていないような…。
78 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/09(月) 01:11:29.12 ID:.lrK0.SO
>>63
仕事とプライベートの切り替えがいいね!
まつりさんに関して同意
ケンカ別れとか多そう
79 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/09(月) 01:37:35.13 ID:zV6E/pYo
>>77
十分お題に沿ってると思う
最初、フラグ通りに死ぬのかな? とか思ってて、こなたを残して〜の一文で「勘違いオチかww」と安心したのに
その後の全文で「え? ちょ」って感じになったりで、かなり踊らされました
シリアス物に言うのも変かもしれないけど、楽しませてもらいました。GJ!
80 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/03/09(月) 06:19:59.42 ID:QIVqisQo
>>55GJでした!
みゆきさんの悪戯っぽい表情っていいかも…
と妄想して描いたもの
本当は上目使いが良かったんだが
かがみ視点だと下からなので無理ですた…
http://file.boooon.blog.shinobi.jp/467d7d8c.png

>>66
泣いた…けどおもしろかった!
乙です
81 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/03/09(月) 06:22:37.54 ID:QIVqisQo
>>80
ちなみに前スレにいた奴です。
連投スマソ
82 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/09(月) 18:16:43.41 ID:hzClcPU0
>>80
ウマー
意地悪っぽい顔がよく出てるなー
83 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/09(月) 19:24:15.81 ID:9GQRMyco
>>80
GJ! これはいいなぁ。色使いもきれいだ
84 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/09(月) 21:15:05.46 ID:tA055qk0
柊かがみ法律事務所の設定って高校卒業から何年後位だっけ?
85 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/09(月) 21:51:48.79 ID:De0A8f60
15年後じゃねえ
86 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/09(月) 23:05:31.93 ID:CR6Ss/.0
>>84

 このシリーズは、時系列はばらばらなので、それぞれの話の中での記述で判断していただくしかないですが。
 かがみの年齢について記載してる場合(「40代前半」とか)は、その年齢。
 「独立してから○○年」といった場合は、すべて現役合格で「大学4年→法科大学院2年または3年→司法修習1年→独立開業までのイソ弁期間2年ちょい(*独立開業編参照)」と考えていただければ。
 今回の場合は、どちらの記載もないのですが、まつり姉さんの娘が小学校高学年とイメージしてます。となると、結婚年齢が24才と仮定して、まつり姉さんが36才以下。あとは、まつりとかがみの年齢差を差し引けば、かがみの年齢も出てくるはず。

by作者
87 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/09(月) 23:18:32.69 ID:VLcpSzk0
>>77
GJ!おいおい、別のやばいフラグってww

>>80
うわー、素敵だ。前スレ同様GJなんだぜ!
こんな表情されたらかがみもコロリといっちまうんじゃなかろうかw
88 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/09(月) 23:31:29.94 ID:Pfj6XGw0
>>77です。
レスありがとうございました。
最初は勘違いオチで終らせるつもりだったんですが、それだとかなり短くなりそうだったので、ちょっと伸ばしてみたら何故か別フラグに…。

シリアスにしろギャグにしろ、こちらとしては楽しんで貰うために書いているので、「楽しめた」というのは最高の褒め言葉です。

…それにしてもやっぱり誤植があるな。
89 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/11(水) 04:00:13.89 ID:.B8nvwSO
柊かがみ法律事務所の話の中でゆたかって死んでるの
柊かがみ法律事務所の中にゆたかのお葬式の話があるのに擬似裁判の話では生きてるけど
90 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/11(水) 07:04:41.60 ID:pEpewoSO
屍が動いてるwww
91 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/11(水) 07:09:49.35 ID:FM8tq.AO
数レス前も読めないとかこれが(ry
92 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/11(水) 08:11:31.97 ID:pEpewoSO
乙です
93 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/11(水) 16:59:46.51 ID:qXpkGsSO
−フラグクラッシャーかがみん−

こなた「好きな人に揉まれると、胸が大きくなるって聞くけど、自分で揉むのとどう違うんだろうね」
かがみ「気分の問題かしらね。なんかそっちの方が効きそうとか…ってかなんでまたそんなことを…」
こなた「いやー、わたしもやっぱりもうちょっと胸が欲しいなーって」チラチラ
かがみ「…ねえ、こなた」
こなた「な、なに?」ドキドキ
かがみ「その胸、どうやって揉むの?無理よね?」
こなた「………」


つかさ「こ、こなちゃん、その辺にしといた方が…」
みゆき「いくら牛乳でも、飲み過ぎは体に悪いですよ…」
こなた「うるさーい!…ちきしょう…ちくしょうー」グビグビ
94 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/11(水) 17:29:39.73 ID:8onGBUI0
>>93
やけになるこなたww
95 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/11(水) 18:03:26.64 ID:F9869F.0
>>89

 これも時系列の前後の問題。
 通夜の話はゆたか結婚後の話で、模擬裁判はゆたか結婚前の話。
 ゆたかの独身時代とかがみの弁護士時代がかさなるということは、ゆたかの結婚はわりあい遅めということに。

 まあ、厳密にタイムテーブル作ってるわけじゃないので、いろいろ書いてるうちに、あちこち矛盾だらけになる可能性は高いですが。
96 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/11(水) 18:58:44.67 ID:36lVhDo0
>>93
不覚にもwwwwww
97 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/11(水) 23:11:23.40 ID:.B8nvwSO
>>93
こなたん涙目wwwwww

>>95
サンクス!
よくわかったぜ!
98 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/12(木) 03:18:09.42 ID:dk3zqLo0
♪一年生になったーら 一年生になったーら
 友達百人できるかなー

こなた「って歌あるじゃん」
かがみ「うん」
こなた「常識的に考えてさ、百人も無理だよね」
かがみ「っ、まあそうだけどそれがどーしたのよ」
こなた「もしかしたらさーって思って」
かがみ「何が?」
こなた「この歌明るいけどさ、実は作者が小学生の時友達できなくて、
     せめて君たちは友達たくさん作ってくれよーなんて
     悲痛な思いを届ける歌だったりして、なんて」
かがみ「ネガティブ思考されてそんな暗い顔されても困るんだけどな」
99 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/12(木) 12:32:36.82 ID:Flr.Z2SO
−フラグクラッシャーゆきちゃん−


つかさ「ねえ、ゆきちゃん。今度の実力テストでね、教えて欲しい所がたくさんあってね、勉強会でもって…」
みゆき「ええ。わたしでよければ、お付き合いしますよ」
つかさ「そ、それじゃ、今度の日曜日にでも二人で…」
みゆき「では、かがみさんや泉さんにも、声をかけておきますね」
つかさ「………」

日曜日
つかさ「………」カリカリ
かがみ(な、なんなの…つかさのこの不機嫌オーラは…)カリカリ
こなた(口を開けば殺られる…よくわかんないけど、きっとそう)カリカリ
みゆき(今日は皆さん随分と集中してますね)カリカリ
100 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/12(木) 14:56:14.72 ID:knu1EUSO
もってい〜け、最後に♪

こなた「ん? かがみからか……よし」

かがみ「あ、こなた、」
こなた「はい、警察ですか? 消防ですか?」
かがみ「あ、すみません間違えましたっ!」

ガチャ

こなた「……」ニヤニヤ

もってい〜け、最後に♪

こなた「はい、もしもし」
かがみ「こなた、あんたねぇ〜」
こなた「かがみが何を怒っているのか分からないよん」
かがみ「惚けるなぁっ!」
101 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/12(木) 17:17:10.03 ID:dk3zqLo0
>>99
みゆきww

>>100
こなたしらばっくれとるww
102 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/12(木) 20:55:25.48 ID:dk3zqLo0
それではコンクール作品投下行きます。

※注意※
1.少々グロい描写があります。あまり強烈な物ではありませんが、苦手な人は注意です。
2.とーーーっても長いです。時間のある時にお読みください。

投下する前に五分くらい待ちます。
103 :コンクール作品『マークト・フォー・デス』[saga]:2009/03/12(木) 21:00:41.60 ID:dk3zqLo0
「死亡フラグ」を口にすると死ぬ。
それがこの世界の掟である。





「マークト・フォー・デス」。
「死亡フラグ」の英語、"Marked For Death"をそのままとった、
仮想現実シミュレーションゲーム。
とある大学の研究チームによって開発されたこのゲームは、
大きな研究施設の一室に置かれたスーパーコンピュータを基盤にして動く。

このチームの研究題目は、
「リアリティ性の高い仮想現実の実現に関する研究」と銘打ってある。
具体的には、3D技術によるリアルなグラフィックスの実現と、
人間の意思をコンピュータによって正しく解釈するインタフェースの実現、というところだ。

この研究で特に心を砕いたのは、後者だという。
コンピュータ科学における数ある難題の中でも、
人間の意思を解析するのは特に難しいこととして知られていた。
必要な基礎知識の範囲も非常に広く、
脳科学、認知科学、言語学、さらには量子力学にまで及んだそうだ。
当然というべきか、研究が最低限形になるまでには気の遠くなるほどの年月と労力がかかった。
細かい調整を重ねた末、数十年を経てようやく使い物になるレベルまで到達したという。

チームは、この技術を何かに応用することを考えていた。
その第一段階として、まずはゲームを作成してみようということになった。
会議においてチームのメンバーから色々な意見が出される中、
ある若きメンバーの考えた「死亡フラグ」というアイディアを中心に案がまとまっていった。
二、三段階の試作を経た後、なんとかゲームは形になり、
仮完成という名目でこの「マークト・フォー・デス」が日の目を見ることになったというわけだ。

このゲームのテストとして、研究チームは被験者を十人程度募った。
実際に集まったのはきっかり八人。
このニュースをたまたまインターネットで見かけた作家・泉こなたが興味を持ち、
友人や知り合いに声をかけた結果、こうなったというところである。

ちなみに、被験者には、一人につき十万円の謝金が支払われることになっている。
このゲームの実行中に、万が一バグやエラーなどが起きた場合、
被験者に重度の障害が残ったり、最悪死に至る可能性があるため、かなり高く設定されているのだ。
104 :コンクール作品『マークト・フォー・デス』[saga]:2009/03/12(木) 21:01:22.67 ID:dk3zqLo0
「にしてもリアルだな」

みさおが呟く。みさお、といっても現実世界にいるみさおではない。

スーパーコンピュータの置かれた部屋には、透明で大きいカプセル状のブースが十数個設けられている。
現実のプレイヤーたちは、各自個別のブースの中に入って座った格好になり、
ブース内の装置によって睡眠状態になっている。
さらにプレイヤーの頭には機械が取り付けられており、
それがプレイヤーの意思を解析し、中央のスーパーコンピュータに情報を送る。
このようにしてプレイヤーの意思がゲームに反映されるのである。

また、各プレイヤーの身体は、予めコンピュータによって3Dモデルを生成してあり、
ゲーム中ではその3Dモデルを自分の身体として行動することになる。


「なあ」
「……」
「ったくよー。そんな黙り込まなくてもいいじゃねえか」

みさおが座る隣にはかがみが座っている。
二人は家の中。木造でわりかし広く、屋根が高い。
高めについた窓からは、キラキラとした太陽の光が注ぎ込み、部屋全体を照らしている。
CGとはいえ、現実世界のそれとは区別が付かないほどのリアルさだ。

「……下手なこと言わない方がいいでしょ」
「だからビビりすぎだってヴぁ柊は。死んだってホントに死ぬわけじゃねえんだし」


みさおの言うとおり、この世界での死は現実世界での死ではない。

プレイヤーがゲーム内で死亡すると、頭部の機械とコンピュータとの接続が切れる。
この接続状態は、別室、もといモニター室で監視されており、
接続がOFFになったプレイヤーが確認されたら、スタッフが起こしに行くことになっている。
つまり、ゲーム内で死亡しても、現実世界で目を覚ますだけだ。
105 :コンクール作品『マークト・フォー・デス』[saga]:2009/03/12(木) 21:01:58.80 ID:dk3zqLo0
「……ビビってるわけじゃないわよ」
「そーかー?」
「……」
「はあ〜。そんなに勝ちてえか?ったくー」


ここでゲームのルールを確認しておく。
ゲームはサバイバル方式である。
ゲーム内で死亡フラグとなる行動を起こしたプレイヤーは、
何らかの形で死亡し、ゲームオーバーとなる。
ちなみに行動とは、意思と発言というふうに定義されているらしい。
死亡フラグをうまく回避し、最後まで生き残ったプレイヤーが勝利するというわけだ。


「……」

かがみは沈黙しながら考える。

なぜ自分は今黙っているのだろうか。
勝とうとしている、というわけではない。
元はと言えばこなたの気まぐれに巻き込まれて参加することになっただけのゲームだ。
そんなゲームに本気で挑戦している気はない。

だとすると、自分は……死を恐れているのか?
そうなのだろうか。
そうだとしたら……情けない。日下部にもそれを見透かされていることになる。

まあ、理由などどうでもいいのかもしれない。
とにかく余計な会話はしないことだ。


「しりとりしようぜ、しりとりの『り』」
「……リボン」
「おいふざけんなよバカヤロー」

みさおはなおもかがみに話をさせようとする。
しかし何度諭してもかがみは自分の意見を曲げようとない。
みさおは内心腹が立ってきていた。
106 :コンクール作品『マークト・フォー・デス』[saga]:2009/03/12(木) 21:02:40.43 ID:dk3zqLo0
「ちっとは話そうとしよーぜ、せっかく私がガンヴぁってんのに」
「……あんた死んでもいいの?」
「……いいよ、別に」
「こんなどうでもいい場所で?」
「……はいはい、無駄だな、そーだな」

みさおは思い切り口を尖らせる。

どうすりゃいいんだよ……
と、その時。

ドスン!
「!」

何かが大きな音を立てて家の外壁にぶつかった。音の発生源は家の外のようだった。

「何だ?見てくっか」

みさおはヒョイと立ち上がり家を出ていく。
いつもの癖で、かがみははいはい、と見送る。

が、その刹那、かがみは気付いた。
このまま行くとみさおの身に何が起きるか。

「あ、ちょっ……」

しかしそれだけ言うのが関の山だった。

家を出てすぐの所で、みさおの体が突き飛ばされた。
獣だ。馬のような姿をした獣は、何事も無かったかのようにそのまま走り去っていった。

……ここはRPGの世界か何かか。

そう思って家の中を見てみると、確かに向かいの壁には剣が立て掛けられている。
隅には宝箱も二、三個置かれている。
RPGのそれらしくはあるが、自分がその主人公などと考えると妙な気持ちだ。

「……安直に行動したらああなるのよね」

かがみはそう言うと軽くため息をついた。
暫くじっと座っていたが、やがて何かを思い出したように立ち上がり、
向かいの壁に立て掛けられていた剣を持ち出して外へと繰り出した。
107 :コンクール作品『マークト・フォー・デス』[saga]:2009/03/12(木) 21:06:41.83 ID:dk3zqLo0
「日下部さん」
「んあ……?」

静かに目を開くみさお。
顔を横に向けると、そこには白衣に身を纏った人物がいた。
スタッフが自分を起こしに来たらしい。

「残念でしたね」

困ったような笑顔でスタッフは話しかけてきた。

「マジかよって感じだな。今の気持ちを一言で言ったら」
「そうですね」

スタッフが同調を返したところで、みさおは部屋を見回す。
周囲の状況を確認すると、みさおはがっかりしたような口調で言った。

「……まだ皆寝てんな」
「はい」
「……ぶっちゃけ私ビリ?」
「……残念ながら」

自分が一人目の脱落者か。
はぁあ、とみさおはあくびのようなため息をついた。

「ちぇ……結局柊の言うとおりじゃねーか」
「かがみさんですか?」
「うん」

スタッフ、もといみゆきの返答に頷くと、みさおはもう一度大きなため息をついた。
108 :コンクール作品『マークト・フォー・デス』[saga]:2009/03/12(木) 21:07:10.79 ID:dk3zqLo0
「みなみちゃん、後ろはもういいから……前を洗って……」
「ゆたか……」

ウヒヒ、という笑顔を浮かべ、妄想をノートへと絵にしている少女は、田村ひより。
ここはごく普通の民家の一室。
ひよりが(如何わしい)漫画を描いているこの部屋には、
机・椅子、本棚、ベッドに、樹木をかたどったコート掛けがある。

「やっぱ岩崎さん×小早川さんは至高だー……
 TSもいけるしーもちろん岩崎さんが……でそんで……ぐふぅ〜」

自らの妄想に酔いしれマニアックな言葉を発するひより。
やがて疲れてきたのか、立ち上がるとふらふら廊下を歩いていった。



「あ、ここ寝室だー」

小早川ゆたか。とある民家の一室を見回している。

「…仮想現実とは思えないほどの生活感」

隣に立つ岩崎みなみが呟く。

ゆたかとみなみは偶然にも、同じ道路の交差点からスタートした。
現実世界での仲の良さが影響したのかもしれない。
スタート地点から数十メートルの地点にこの家があり、
二人は多少躊躇しながらも玄関の扉を開け、上がってきたわけである。

「入っちゃおうか?」
「…ゆたかが入りたいなら」

ゆたかはうん、と頷くと軽い足取りで部屋に入り込んだ。
みなみがそれに続く。
ゆたかはそれとなく部屋の中央に立ち、みなみはベッドに腰を下ろした。
109 :コンクール作品『マークト・フォー・デス』[saga]:2009/03/12(木) 21:07:34.29 ID:dk3zqLo0
「まるでここに引っ越してきたみたいだね」
「…うん」

ゆたかは笑顔でみなみに話しかける。
みなみは照れているような様子で言葉を返した。
それを見てさらに微笑むゆたか。

ふと、机の方に視線をやる。
するとある物が目に留まった。

「何だろう?」

そこには一冊のノート。
側にはシャープペンシルや消しゴムが転がっており、
誰かが何か筆記活動をしていたことが窺える。

「ちょっとトイレに」
「うん」

みなみはそう言って部屋を出た。丁度いいというタイミングだ。

「……見ちゃおっかな」

ノートを手に取ってみる。

パラッ

興味本位で開いたノート。その1ページ目には……
110 :コンクール作品『マークト・フォー・デス』[saga]:2009/03/12(木) 21:08:04.28 ID:dk3zqLo0
「うう……」

頼りない声を漏らす少女。

ここは洞穴の中。
放物線状に切り取られたその入り口からは、カラッと乾いた日差しが入り込む。
その光が当たらぬ、入り口脇の陰になるところに、
その少女は心細く佇んでいた。

「誰も来ないよね……?来ないでね……」

少女の目は入り口を力なく凝視する。

油断してはならない。
油断などすれば、外でうろついている猛獣共が入り込み、自分はたちまち襲われて死んでしまう。

ここにたどり着く前、平野の方で一匹の猛獣が暴れ狂っているのを見た。
その平野からここはそう遠くない。あの猛獣の脚なら三分もあれば着いてしまうだろう。

「ふぅ……」

ため息を一つ。手に持った盾に視線を下ろす。
洞穴の前の草むらに落ちていた物だ。

……もし自分にもう少しだけ勇気があれば、こんな所で縮こまってなどいないのに。
双子の姉のように──もっと勇敢ならば。

「お姉ちゃん……」

ポツリと出た呼び名は洞穴の冷気へと溶けていく。
その言葉には、いくつもの願いが込められていた。
111 :コンクール作品『マークト・フォー・デス』[saga]:2009/03/12(木) 21:08:33.15 ID:dk3zqLo0
ガサッ。

その時、洞穴の入り口から何かの物音が聞こえた。

「……!」

反射的に盾で身を隠すつかさ。

何かが入ってきてる!猛獣かもしれない!

恐怖で震え始めるつかさ。
不運にも、その予想は的中していた。

「グォウウウウ!」

獰猛な顔つきに、おどろおどろしい咆哮。
猛獣と呼ぶにふさわしいその生物は、岩陰で何者かが盾に隠れているのを確認する。
その皮を剥ぎ取ってやろうと、爪を尖らせ、勢いよく前脚を上げた。


来る!次の瞬間にはこの盾は外され、そして……

「ギァアアア!」

猛獣はなおも叫び声を上げる。もはや絶体絶命だ。
盾の奥で目をつむり、つかさは最期を覚悟した。


が、少し経ってもその爪がやってこない。

何だろう?
何が起きたか確認したい。でも怖い……いや、見たい!

勇気を出して盾から顔を出す。
すぐさま、つかさは目を見開いた。


自分が一番来てほしいと望んでいた人物がそこにいたからだ。
112 :コンクール作品『マークト・フォー・デス』[saga]:2009/03/12(木) 21:09:01.65 ID:dk3zqLo0
カツカツ……

誰かの足音がする。この部屋に向かってきているようだ。

いけない!

なぜかはわからないが、本能的に危機感を覚えたゆたかは慌ててベッドへ駆け寄り、
布団に潜り込んだ。

「よーしまたやるかー……あれ、何でノート開いてんだろ」

部屋に入るなり、ひよりは真っ先に机を見て言う。

しまった!ノートを閉じ忘れていた!
ゆたかは布団の中で小刻みに震え出した。

「ん?あっれー、誰かいる?」

視線を移したひよりは布団が盛り上がっていることに気付く。
中に誰か人間が入っていることがありありと伝わってくる形状だ。

「誰だろ……あ゙っ!」

さらにひよりは気付いた。
この中に隠れている人間は自分のノート……もとい、自分の生き恥を見てしまったのだ。
113 :コンクール作品『マークト・フォー・デス』[saga]:2009/03/12(木) 21:09:27.40 ID:dk3zqLo0
「……」

しばらく固まるひより。

どうする。この中にいる人間は自分の見られたくないものを見てしまった。
このまま放っておけば……

やがて、ひよりはそろりと動き出すと、部屋の隅のコート掛けへ手を伸ばした。
何も物がかかってなければ重量は1kgもない。持ち上げるのは容易だ。
その棒状の物体の矛先を布団のふくらみへと向ける。
そして静かに振りかぶり……そのふくらみに向けて力いっぱい叩きつけた。

ガスッという鈍い音がした。
中からの声はない。
反応を確認しようと、もう一度叩く。
また何も聞こえない。
幾度か反復するうち、ひよりは完全に理性を失っていた。

見られた見られた見られた!!

何度も、執拗に殴打する。
その物体がふくらみに当たるたび、鈍い音とともに自分の両手首に鈍痛が走る。
布団もシーツも、赤色の血が滲んでシミになっている。
しかしそんなものに構っている余裕は無かった。
生き恥の目撃者を消し去るだけで精一杯だった。
114 :コンクール作品『マークト・フォー・デス』[saga]:2009/03/12(木) 21:09:54.28 ID:dk3zqLo0
「ロン、タンピン三色!」

威勢のよい声を上げ、横に並んだ13枚の牌を倒す女。
真っ直ぐ正面の敵を見据えた彼女の顔には、自信満々の笑みが浮かんでいる。

「チッチかよ……オラ」

女の真向かい、対面の椅子に座る男は、投げ上げるようにして十本の点棒を女に渡す。


外は雨。
日もとうに沈み、室内の電灯のみが光る中、
その雀荘では組の生存を懸けた博打──麻雀が行われていた。

場は既に南三局が終了したところ。次でオーラス、すなわち最終局。
現在のトップは青髪の女、泉こなたである。

この博打の取り決めは……
勝負は半荘1回。つまりは一発勝負。
レートは……千点につき十億円。
麻雀では一万点の規模で点数が争われるから、
少なくとも百億円単位の金銭がやり取りされることになる。

泉こなたとともに卓を囲う三人……宮河組の下っ端二人に組長の宮河。
宮河組の資産は約250億円。千点につき十億円というレートは危険な域である。
泉こなたの単独トップでゲームが終了するようなことがあれば、
宮河組は全財産を失い、滅亡することは必至だ。
115 :コンクール作品『マークト・フォー・デス』[saga]:2009/03/12(木) 21:10:14.32 ID:dk3zqLo0
対して泉こなた自身はどこの組にも所属していない。
彼女は同じく滅亡の危機に瀕する成実組の代打ちとして呼ばれたのだ。
泉こなたの席の後ろには、成実組の控えが立ち、賭けの行方を見守っている。

そもそもこの勝負は成実組組長──成実の策略を発端としていた。
このままでは滅亡の刻がただ迫り来るのみ、どうにかして大量の金を得なくては……
そう考えた成実が、文字通りギャンブルとして、
この組の生死を懸けた麻雀の挑戦状を宮河組へ突きつけた次第だ。


──という設定である。


南四局。オーラス。
持ち点4万3000点、二着を離して単独トップの地位にいるこなたにとっては、
ここさえ凌げば全てが安心に終わるという局だ。

絶対に振り込んではならない。
振り込む、とは敵のアガリ牌を切ってしまうこと。すなわち点数を奪われること。
点数さえ守りきれば勝ちが決まるのだ。

自動卓によって山が積まれ、各プレイヤーは牌を取り手元に並べていく。
最終局スタート。
卓には、これまで以上に重苦しく緊張の波が漂っていた。
116 :コンクール作品『マークト・フォー・デス』[saga]:2009/03/12(木) 21:10:39.89 ID:dk3zqLo0
トン、トン……

足音。

まずい!

自分の手には鈍器。シーツには染みついた血液!
これを見られては……!

ひよりはパニックに陥る。
不幸にも、パニックが収まらぬうちにその人物が部屋の前まで到着してしまった。

「…?」

部屋を一瞥したみなみは、一瞬自分の目を疑う。

田村さんが何か手に持ってこちらを見ている。
表情が不自然だ。引きつった、笑顔のような、困惑のような……
そしてゆたかは……?
布団の一部が膨らんでいる。あれがゆたか……?

まさか!

「あっ……」

みなみが悲鳴に近い声を上げかけたその瞬間、ひよりは反射的に絶叫した。

「ああああああ!!」
117 :コンクール作品『マークト・フォー・デス』[saga]:2009/03/12(木) 21:11:09.24 ID:dk3zqLo0
気付かれた!
自分が中の人間を殺したことに!!

狂獣のように目をむき、鈍器を持ったままみなみへ突進するひより。

「んぃっ…!」

間一髪交わすみなみ。そのまま部屋から逃げ出す。

「待ってえええええぇぇぇぇぇぇ!!!」

すかさずその後を追うひより。
部屋を出ようとすると、棒が出入り口の壁に引っかかった。

「おあぁっ!!」

咄嗟に棒を後方へ投げ捨て、みなみを追いかける。
投げられた棒はゆたかの死体に最後の一撃を見舞った。
118 :コンクール作品『マークト・フォー・デス』[saga]:2009/03/12(木) 21:11:36.16 ID:dk3zqLo0
民家から出て数十メートル離れた地点。
みなみは必死になって走る。

その後方約50m、ひよりが死に物狂いでみなみを追っている。

みなみからひよりは見えない。
むしろ見てはいけない。後ろを振り返る余裕はない!

がむしゃらに走り続けるみなみ。息も絶え絶えである。
すると間もなく交差点に差し掛かった。

左だ!

そう直感し左折するみなみ。
体を左に向ける。そのとき一瞬、考えが頭をよぎった。

今この体勢なら追っ手の姿を確認できる!

左の道に入りきる直前、みなみは素早く首を左へ回した。
自分の走る速度ゆえ視界は常にぶれている。
が、はっきり見えた!
自分を殺そうと凄まじい形相で追いかけてくる女の姿が!
119 :コンクール作品『マークト・フォー・デス』[saga]:2009/03/12(木) 21:12:10.04 ID:dk3zqLo0
その殺気と迫力にみなみは一瞬たじろぐ。
と、その拍子に足の力が抜け、豪快に転倒した。

まずい!追いつかれる!

左腕に必死の力を込め立ち上がろうとするみなみ。
しかし脚に力が入らず上手く立ち上がれない。
何とか膝をつき、再び走り出そうとしたその時。

すぐ耳元に誰かの息遣いが聞こえる。

これは……
後ろを向けず震え上がるみなみ。

首に鋭い刃物が刺さった。
みなみはその場に倒れこみ動けなくなってしまった。
120 :コンクール作品『マークト・フォー・デス』[saga]:2009/03/12(木) 21:12:31.78 ID:dk3zqLo0
十三巡目。局は既に終盤へと差し掛かっている。
今のところ他の三人に動きはなし。
このままいけば、自分のトップで終了という最も理想的な形で勝負が決まる。

外面には平静を装いながらも、こなたは心が躍っていた。
大丈夫だ。この局は他の誰もアガらない。
誰も点数を増やせない。

それに、今の自分の手牌。
ピンフの一向聴だ。あと五巡もすればアガれるかもしれない。
アガれれば自分のトップが確定するうえ、さらに敵と点差を広げることができ、
その分成実組の収入も増えて一石二鳥というわけだ。
冷静を装う顔に、僅かな笑みが浮かぶ。

次巡。有効牌を引いてくる。

来た!これで聴牌!
あと一枚でアガれる。あと一枚有効牌を引いてくればアガれる!

こなたは自分の勝利を確信した。
この局、自分がアガる!他の誰にもアガらせはしない!
121 :コンクール作品『マークト・フォー・デス』[saga]:2009/03/12(木) 21:13:24.68 ID:dk3zqLo0
手牌の中から「北」を指にかかえる。
場には既に二枚切れている。局の始めから手牌の中でずっと温めていた安全牌だ。
そして踊る手つきでそれを河に捨てる……

その時。真向かい、対面に座る宮河がニヤついて言った。

「ロン……」

ビクッ、とするこなた。
宮河が静かに牌を倒す。
その牌姿を見て、こなたの顔色は急激に青ざめた。

「スッタンツーイーソー……親のトリプルだ。わかるな、14万4000点」
「…………」

トリプル役満……!?
あり得ない!
三本の矢を縦に連ねるほどの難易度だ!

……まさか。すり替えたのでは?
自分の見ていない隙に、仲間同士で手牌を……

「……何やってんだ。払えよ」
「……払えるわけないじゃん」
「点数のことなんざ言ってねーよ。金出せっつってんだコラ」

勝利を確信した途端に没落。
なんてことだ。こんな不幸があってたまるか……

そうか。これが死亡フラグってものか。
油断は禁物だった。
そういえば、自分は勝てる!と豪語していたキャラクターほど、後でやられることが多かったっけ。
自分は絶対大丈夫って思ってたのに。随分甘く見てたんだなー……
122 :コンクール作品『マークト・フォー・デス』[saga]:2009/03/12(木) 21:13:51.23 ID:dk3zqLo0
「……いくら?」
「1310億」
「……1310億はありませんね」

控えが残念そうに言葉を濁す。

「じゃあ何を差し出す」

宮河が脅しをかける。

負けた。敗者は勝者の言うことを聞かなくてはなるまい。
しかし……こんなヤツの言いなりになるのは癪だ。
それなら……

こなたはチラッと後ろを向き、控えに合図を送る。
控えが了解したという風に頷くのを確認すると、こなたは静かに口を開いた。

「……私は女だから」
「だから何だ」

宮河がドスを利かせて返す。
それに構わずこなたは言葉を続ける。

「潔くなくてもいいよね」

そう言い終えると同時に、控えは懐から銃を素早く取り出し発射した。
銃弾はこなたの頭を貫き、その卓に流血した青髪の死体を残していった。
123 :コンクール作品『マークト・フォー・デス』[saga]:2009/03/12(木) 21:14:15.06 ID:dk3zqLo0
「……もしかしなくてもこれやばくないか、私」

事を終えてから数分後、冷静さを取り戻し始めたひよりは、
自分の引き起こした一連の事柄を思い起こしていた。

「うわー……やっちゃったよ……どうすればいいんだろこれ」

理性が戻るにつれ、段々と今までやったことの意味がはっきり見えてくる。

そうだ。自分は二人の人間を殺してしまった。
しかも……あんなくだらない理由で。

「そういや……このゲーム参加してんの八人だっけ……
 私あの中の誰かを殺しちゃったんだよなー……」

あの中の誰か、そうはぐらかしてみたが、その候補は一人しか思い浮かばない。
あの布団の中にいた人物──

小早川ゆたかだ。

自分は小早川ゆたかを殺した。
そしてそれを目撃した岩崎みなみも殺した。

「……死亡フラグかー……」

誰にともなく呟きながら、ひよりはその場に座り込んだ。
124 :コンクール作品『マークト・フォー・デス』[saga]:2009/03/12(木) 21:14:42.18 ID:dk3zqLo0
まさか、こんな形で二人が死ぬなんて。

ゆたかの死因は自分が鈍器で殴り続けたこと──
結果的にはそうなったが、そもそもゆたかの死が確定したのは、もっと前。
あのノートを見たときだ。

「見てはいけないもの」を見てしまった人間は死ぬ。

某死のマンガに出てきた規則のような文言であるが、
これは死亡フラグという観点からすれば立派な法則だろう。

ゆたかがあのノートを見た時点で、既に死亡フラグが立っていたのだ。
あとはどうやって死ぬか。
そしてそれがあの時自分のやったこと──
自分がゆたかを死なせる役目を担うこととなった、ということ。

なんて残酷なんだ。
小早川さんの運命はあの時決まったんだ。
そして岩崎さんが死ぬのも決まったんだ……

そこまで考え終えると、ひよりは左手に持った物をじっと見た。
漫画用のペン。その細いペン先には、インクの代わりに赤い液体が染み付いている。

「……こんなん考えても意味ないね。自分の罪は自分で償わないと」

ひよりはそのペン先を自分の側へ向ける。
そして首の付け根に当てると、横へ勢いよく動かし、自らの首を引き裂いた。
125 :コンクール作品『マークト・フォー・デス』[saga]:2009/03/12(木) 21:15:03.32 ID:dk3zqLo0
「寒い……」

カチューシャをつけた女は身震いしつつ足をとられながら、歩いていた。
極寒の雪山。小屋は見当たらず、吹雪を凌げる洞穴もない。

「どうしてこんな所に……」

靴の中にはもうかなりの量の雪が入り込んでいる。
それが足を冷やし、自分の動きを鈍重にさせる……

不運だ。この世界に飛ばされてきて早速これでは。
死亡フラグを立てる立てないも無いものだ。

と、歩いているうち、遠方に町並みを見つけた。
桜の木が咲いているのが見える。雪も積もってはいないようだ。

希望が見えた。あの町に行けば助かるかもしれない。

「どのぐらいで着くかな……」

あやのは急ぐように、町へ向かって一歩踏み出した。
その時。

ガラガラ

「ひやぁっ!?」

足元が崩れ落ちた。一面の白化粧で判らなかった。
今足をついた所は断崖絶壁ではないか。

「あああああっ!!」

手を伸ばして崖に掴まろうとするが虚しく、叫び声とともにあやのは奈落の底へと落ちていった。
126 :コンクール作品『マークト・フォー・デス』[saga]:2009/03/12(木) 21:15:34.59 ID:dk3zqLo0
「ひよひよー」

自分のニックネームを呼ばれ、田村ひよりは徐に目を開いた。
すぐに横を振り向くと、想定していた通りの人物と、その隣にみゆきもいた。

「泉先輩も脱落ッスか」
「うん。麻雀で負けた」
「脱マーッスか?」
「いやいやいや!ないから!」

「お二人とも、非業の死という感じでしたね」

みゆきが話しかけてきた。

「まーねー、ってかひよひよもなんだ」
「いんやー私のは色々ひどいんスけどね……」
「どんなだったの?」
「うーん……言わないでいいッスか?」
「えー」

答えをはぐらかされがっかりするこなた。今度はみゆきに問いかけた。

「みゆきさん知ってるんじゃないの?」
「え、ええと、一応……」
「なんだぁ知ってるんじゃん!ってゆーかなんで知ってるの?」
「この施設にはモニター室というのがありまして、そこで……」

「えぇー!?見てたんスか!?」

ひよりが驚きと同時にまずいというような顔つきになる。
すかさずこなたが食らいついた。

「えー何何!?どんな感じだったのみゆきさん?」
「いいい言わないでくださいッス高良先輩ー!」
「え、ええ……」

二人の間で板ばさみになり、みゆきの困惑はしばらくの間続いた。
127 :コンクール作品『マークト・フォー・デス』[saga]:2009/03/12(木) 21:16:28.34 ID:dk3zqLo0
かがみは猛獣の動きが一瞬鈍ったのを看取すると、
その脚に切り込んだ剣を引き戻し、今度は飛び上がって首に斬りかかった。
猛獣は再び悲鳴を上げる。

横で見ているつかさは驚きっぱなしで、何も言えずに口をぽかんと開いていた。

猛獣は首を切り裂かれ、その場に倒れこむ。
かがみはその挙動をじっと観察し、よしと判断するとつかさの方を向いた。
つかさがあっという顔をする。いきなり顔を向けられて驚いたようだ。
それを見て無意識にかがみは顔をそらす。

二人の間で沈黙が続く。やがて、かがみの方から口を開いた。

「あんたも大変な所に来たわね」

つかさはほっと一息つき、安心した様子で返答する。

「お姉ちゃんは?」
「同じよ。私は家の中からのスタートだったけど」
「家?」
「うん。日下部と一緒に」
「日下部さんは?」
「初っ端からヘマして死んだわ」
「そうなんだ……」

先ほどまでの沈黙が手の平を返したように、今度は会話が弾み始めた。
128 :コンクール作品『マークト・フォー・デス』[saga]:2009/03/12(木) 21:16:56.10 ID:dk3zqLo0
「あんた誰かに会わなかった?私以外で」
「誰も……」
「孤独だなー……まあ私も日下部しか会わなかったけどさ。あとつかさ」
「そうなんだー……こなちゃんとかどうしてんのかな」
「いつも漫画やらアニメやら見てるし大丈夫じゃない?」
「そうかもねー」

二人は会話に夢中になる。と、ここでつかさが何か思い出したように言った。

「あ、そういえば。お姉ちゃんさ、どうしてここに来たの?」
「んーそれは……」

その時だった。

「!」

かがみの身体が宙を舞った。
猛獣はまだ死んではいなかった。最期の力を振り絞り復讐したのだ。

2メートルほどの高さまで浮いた身体が、再び地面に着く。
咄嗟のことで受身も取れず、かがみは頭から落下し、その場に倒れこんだ。
同時に猛獣も力尽きたようにぐったりとなった。

「あ……」

再び元のような頼りない声を上げるつかさ。
129 :コンクール作品『マークト・フォー・デス』[saga]:2009/03/12(木) 21:17:28.61 ID:dk3zqLo0
姉は無事か? 確かめたい。しかし体が動かない。
足をすくませていると、まだ辛うじて意識を保っているかがみが口を開いた。

「……死亡フラグね」

姉の口から意外な単語が出たからか、つかさはきょとんとした。

「死亡フラグ?」
「あんたを助けようとしたのがいけなかったみたい……まあいいんだけど」
「そんなの……」
「いいの。別に勝ちにこだわってやってるわけじゃないし。これが正解だったと思う」
「……」
「あんた、勝つかもよ」
「勝ったって……」
「こだわらないか。ああもう無理。ごめん、落ちるわ」

そう言うとかがみは完全に力を失い、動かなくなった。

何もかもが突然起こり事態も呑み込めず、つかさはおろおろするしかなかった。


それと同時だ。
どこからか、聞き慣れたような声が響いてきた。

「えーつかささん。たった今あなた以外の全ての参加者がゲームオーバーになりました。
 優勝おめでとうございます。これから接続をお切りし、現実に戻させていただきます。
 お疲れ様でした。」

声の主を探そうと必死に辺りを見回しているうちに、つかさは突然意識を失い、倒れこんだ。
130 :コンクール作品『マークト・フォー・デス』[saga]:2009/03/12(木) 21:17:49.66 ID:dk3zqLo0
「じゃあ別に優勝記念とかいうわけじゃないけど、かんぱーい!」
「「かんぱーい!!」」

大学から少し離れた町にある、ごく普通の居酒屋。
こなたの掛け声に続き、九人の女たちが手元のジョッキを鳴らし合わせた。

「優勝記念じゃないっつったけど、つかさは優勝だねぇ」
「え、えーっと……喜んでいいのかなあ?」

つかさは照れたような困ったような顔をする。

「いいんじゃない、優勝なんだし」
「そ、それじゃあ……ありがとう」
「よっ、日本一ぃ!」
「そ、そんな持ち上げ……」
「つーか日本一って何だよ」


こなた、かがみ、つかさも三名が和気藹々としている隣のテーブルでは、
別の三名がこれまた異様な雰囲気に包まれていた。

「ほんと!!ごめん!!マジで!!」
「いいよいいよ大丈夫だから……」
「……」

勢いよく頭を下げて謝罪しているのはひより。
向かいに座るはゆたかとみなみ。
ゆたかは謝るひよりをなだめるのに手一杯、みなみは呆然とそれを眺めている様子だ。

「いやー許してくれてるのはわかってるんだけどもーなんか……自首してきたい気分だわ」
「自首って……」
「……田村さん、落ち着いた方が」
「だめだーもう全然落ち着けないやー、誰か私を止めてー!!」
「わかったよー止めるから落ち着いてー!」

酔っ払い、突然暴れだすひより。
ゆたかとみなみはそれを見て慌てふためく。
131 :コンクール作品『マークト・フォー・デス』[saga]:2009/03/12(木) 21:18:12.16 ID:dk3zqLo0
さらにその隣のあまり目立たないテーブルでは、
二名の女による会話が細々と続いていた。

「なんてーかさ、ここでもこんな扱いなんて無いよな」
「そういうこと言っちゃ……」
「でもさー開始即行でゲームオーヴぁーだぜ?酷いにもほどがあんだろー」
「そうねえ……」

確かに二人とも、ゲームが始まってほんの一分も経たぬ内に脱落となった。
ただし、みさおは慎重さを欠いたのが原因で、
あやのはそもそもスタート位置が過酷だったのが原因である。

「ちぇーひそかにトップ狙ってたのに」
「まあまあ……」
「もーヤケ飲みだっ!あやののカシスオレンジいただきぃー!!」
「ええええっ!?」


「せっかくトップとったんだしさー、何か命令していいよ?つかさ」
「命令ー!?できないよー」
「何でもいいからさー」
「何でもいいが一番困るだろ」

初めのテーブル。
三人による会話の勢いがまだ途絶えぬ傍らで、じっと黙って座り込んでいるもう一人の女。
彼女は両手の指を絡ませながら、漠然と思考を巡らせていた。
132 :コンクール作品『マークト・フォー・デス』[saga]:2009/03/12(木) 21:18:31.82 ID:dk3zqLo0
今回のゲームを全てモニターで見ていたが、その結果は予想以上に残酷だった。
助かろうとして死んだ者、見てはいけないものを見た結果死んだ者、
仲間を助けようとして死んだ者……
皆がゲーム中どれほど気付いたかは知らないが、これらの行動は全て死亡フラグ。

プレイヤーが死亡フラグとなりそうな行動を起こした時、
プログラムは「フラグ」をONにする。
そう、そもそもフラグというのはコンピュータ用語。
プログラム中、何か条件分岐が必要になったとき、
その分岐する方向を決めるためのスイッチのことだ。

フラグがONになったプレイヤーは、その後の行動に対して逐一「評価値」を計算される。
評価値とは言い換えれば死亡フラグらしさの数値だ。
プレイヤーが死亡フラグを思わせる行動を起こすたびに評価値は加算されていく。
そしてその値がある一定の数字を超えた時……プレイヤーの死が確定する。

このプログラムのコードを見たときから、ゲームでいくつもの悲劇が起きることを予測していた。
恐らく、何気ない発言が命取りになり、突然死するか、事故死するだろう、と。
そして実際はその想像を遥かに超えていた。

ある程度覚悟していたとはいえ、実際に目にしてみるとショックだった。
皆、まるで初めからそう決められていたかのように、
不意を打たれ、あるいは恐怖に脅かされ、悲惨な死を遂げていった。
運命の掌に踊らされたかのように。

運命。
その言葉を浮かべた時、全てを悟ったような気がした。
そういうものなのかもしれない。
あの仮想現実の中で生きるか死ぬかは、きっと本人の意志には関係がなかったのだ。
全て運命によって決まっていたのだ。

そしてもしかしたら、それはあの仮想現実の中に限らないのではないだろうか。
この現実世界においても、そのような見えざるルールが……

運命は神の手によってもたらされる──というようなことをよく耳にするが、少し違う気がする。
本当は、周囲の環境によって、あるいは他人の気まぐれによって。
そういうものによって、運命は決まるということだ。
この地球上に生まれた全ての人間、いや全ての生命が、
互いに接近し遠ざかりながら、運命を紡ぎ合っているのかもしれない……
133 :コンクール作品『マークト・フォー・デス』[saga]:2009/03/12(木) 21:18:49.81 ID:dk3zqLo0
「みゆきさーん?」

こなたが怪訝そうな顔で話しかける。

「あ、えっと」
「何考えてたのかなー?」
「いえ、何でも」
「そーぉ?まいーや、というわけで誰がみさきちのおトイレを覗きに行くか皆でジャンケーン!」
「ええっ!?」

たちまち我に返ったみゆきは、今まで考えていたことを忘れ去り、
そのまま会話の中へと混ざっていった。


居酒屋の上空は既に茜色に染まり、上弦の月がうっすら顔を出している。
町のから騒ぎは、そのなされるがままに、雲ひとつない空の彼方へと溶けていった。
134 :コンクール作品『マークト・フォー・デス』[saga]:2009/03/12(木) 21:21:38.47 ID:dk3zqLo0
以上です。
推敲は何回かしたけど、まだ足りない部分があるような気がする。

読んでくれた方お疲れ様ですw

八人なんて人数を登場させたせいでこんなに長くなったんですが、
別に人数はこだわっていませんでした。
つまり気まぐれで書いてたらこんな分量にw
まあ、最後の打ち上げのシーンを盛り上げるためにはなったかな、と。

それでは、ありがとうございました。
135 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/12(木) 21:28:28.72 ID:4AT1TT60
>>134
乙です。設定が面白かった。現実でもなんか出来そうな感じでww
人数多くてもそれぞれのフラグがあって楽しめたよGJ!
数えてみたが30レスとか多いなww


俺もコンクール作品出来たけど、時間開けたほうが良いし明日投下すますね。
136 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/12(木) 22:17:20.52 ID:GKZtFrAo
>>134

残酷な結末とか迎えても、リアルではいつも通りで安心した。フラグ世界でも、らしさを持ちつつで良かった
フラグシステムのせいか、ひより暴走してたけどww
長くてもだれることなく読めて、すごく面白かったです。GJ!
137 :コンクール作品「あなたならどうしますか?」2009/03/13(金) 03:18:34.57 ID:V1DeEo20
コンクール作品を投下します。
ちなみに今回が初作品・初投下です。
拙い文章力かもしれませんが最後まで読んでいただけたらと思います。
138 :コンクール作品「あなたならどうしますか?」2009/03/13(金) 03:22:58.17 ID:V1DeEo20
「どうして…どうして…」
式場にある棺の前で岩崎みなみは泣き崩れていた。
今のみなみからはいつもの冷静さは微塵も感じられない。
「ごめんなさい…ごめんなさい…ゆたか…」
棺の中のゆたかはとても安らかな顔をしていた。
対称に遺影の中にいる親友は可愛らしい笑顔を振り撒いていた。
みなみは目の前の棺に入っているゆたかに何度も謝っている。周りにいる友達は今のみなみには声をかけることができない。
泣き続けるみなみは、ふと肩に手が置かれたのを感じた。
「みなみのせいではないわよ…」
みなみは声のする後ろの方へ振り返った。
後ろにいたのは自分の母と、隣に住んでいる高翌良みゆきであった。
「あまり気に病まないで下さい。小早川さんが亡くなってしまったのは不慮の事故が原因です。みなみさんのせいではありませんよ。」
二人ともみなみのことを考えて声をかけているが、その声はみなみには届かない。
声どころか姿すら認識していないようである。
今、みなみの網膜に写っているのは、母とみゆきの後ろにいる他の参列者だった。
雨の中、皆ゆたかのために大勢の人が来ている。
その中にはゆたかの従姉妹の泉こなたやその父、そうじろう。また一緒に文化祭でチアをやったメンバーがいた。
こなたとそうじろうはわんわん泣いていて、それをなだめるかがみやつかさも、目に涙を溜めている。
ひよりやパティも涙を流して悲しんでいる。特にパティからはいつもの元気が微塵も感じられず、ただむせび泣いている。
それらを目にしたみなみは、ここにいるのが辛くなってきた。
(ごめんなさい…みんな…ごめんなさい)
自分のせいでゆたかは死んだ、そう思い。もうこの式場にいるのが辛くて、胸が張り裂けそうだった。
「みなみっ!」
「みなみさん!」
みなみは走って式場から、皆から逃げ出した。



みなみは自分の部屋のベットの上でうずくまって泣いていた。
「どうして…こんなことに…」
昨日のことを考えると涙が止まらない。
「ゆたか…」
みなみは昨日のことを思い出した。
139 :コンクール作品「あなたならどうしますか?」2009/03/13(金) 03:24:15.35 ID:V1DeEo20



「それでね、みなみちゃん」
ここは岩崎みなみの家、二人はみなみの部屋でおしゃべりをしていた。
おしゃべりと言っても、ゆたかが話す方がみなみのそれよりもかなり多い。
「あ、そろそろ帰らなくちゃ。私今日お姉ちゃん達と晩御飯食べに行くから。」
「…そう、駅まで一緒に行こうか?」
「別にいいよ、みなみちゃん。それに急がないと遅れちゃいそうだし。」
「でも…」
「大丈夫だよ、みなみちゃん。それにせっかく今日はプレゼントまで貰ったのになんか申し訳ないよ。」
みなみは今日、ゆたかに先日買ったばかりのかわいらしいリボンをプレゼントしていた。
みなみが買い物中に見つけた物で、ゆたかに似合うと思い買ったのだった。

そして、ゆたかは一人で帰った。
その約一時間後、みなみの家の電話が鳴り響いた。
「はい、岩崎です。」
いつも通りに電話に出たみなみには、この電話が自分を奈落の底に突き落とすような事を告げるとは思ってもいなかった。
「…そんな…」
「とにかく早く病院に来て!」
「わ、わかりました。」
電話の相手はこなただった。話によると、ゆたかはみなみの家から駅に向かう途中にトラックにはねられてしまったらしい。
現在病院に運ばれて緊急手術をうけているようだが、かなり危険な状態らしい。
みなみは急いで病院へと向かった。

病院についたみなみを待っていたのはみゆきだった。みなみはみゆきの後についてゆたかのところに向かった。
その間の二人に会話は無かった。
みなみが着く前にすでにゆたかの手術は終わっていた。
病室に入ったみなみを待っていたのは、こなたと柊姉妹、そしてこなたの父そうじろうだった。
しかしみなみの目にまず入ったのはベットの上で横たわり、顔に布をかけられている少女だった。
みなみは震える手で布を取った。
「そんな…ゆたか…」
「みなみちゃんが来る少し前に…ゆーちゃんは…うっうううう」
こなたは泣き出してしまった。そうじろうやかがみ、つかさ、みゆき達がこなたをなだめているがほとんど効果はない。
「わたしの…せいだ…わたしが…あの時一緒に帰っていれば…ゆたか…ごめん…ゆたか…」
みなみはついに我慢できずに泣き出した。


140 :コンクール作品「あなたならどうしますか?」2009/03/13(金) 03:27:06.93 ID:V1DeEo20
「ゆたか…」
みなみは少しだけ落ち着きを取り戻してきた。みなみが式場から飛び出してきてから数時間が経過していた。
「…どうすれば…」
ふとみなみはベット置いていた手に何かが触れているのに気がついた。
「リボン…これは…私があげた…どうして……!」
みなみがリボンを持ち上げた時…世界が歪んだ。みなみは目を開けていられなくなった。




「それでね、みなみちゃん」
耳に懐かしい声が聞こえた気がした
「どうしたの?みなみちゃん?」
目を開けたみなみが見たのは、死んだはずのゆたかだった。
「みなみちゃん?」
みなみは驚きで声が出なかった。しかし目からは大粒の涙がこぼれていた。
「みなみちゃん、泣いてるの?どうしたの、何かあったの?私変なこと言っちゃった?」
「…ゆたか」
「ど、どうしたのみなみちゃ…ひゃあ!」
突然抱きついてきたみなみにゆたかは小さな悲鳴とともに驚いた。
「み、みなみちゃん…」
ゆたかはどうすればいいのかわからなかったが、みなみの尋常じゃない様子を見て、みなみを抱き返した。
「ゆたか…よかった…」
「…何があったの、みなみちゃん?わたし、相談に乗るよ。」
ゆたかはみなみが何か大変なことを抱え込んでいると思った。
「ううん、違うよ…ちょっと怖い夢を見ただけだから」
「…大丈夫だよ、みなみちゃん」
それから数分の間この状態が続いた。その間に、みゆきの母であるゆかりに密かに写真を取られていたのを二人は知らない。
141 :コンクール作品「あなたならどうしますか?」2009/03/13(金) 03:28:20.13 ID:V1DeEo20
ゆたかに慰められ、みなみ冷静さを少しづつ取り戻してきた。
「みなみちゃん、もう大丈夫?」
「うん…ごめんゆたか、迷惑かけちゃって。」
「いいよ、いつもみなみちゃんに助けてもらってるし。」
ゆたかは明るい笑顔でみなみに言った。
「…ありがとう、ゆたか。」
もう二度と見ることができないと思った親友の笑顔を見れて、みなみは心が透き通っていくのを感じた。
しかし、その心は次の瞬間から少しづつ陰りを見せ始めることになる。
「あ、そろそろ帰らなくちゃ。私今日お姉ちゃん達と晩御飯食べに行くから。」
「え?今なんて…」
「ごめんね、みなみちゃん。」
このときみなみは思った。
(一緒だ…あのときと)
「どうしたの?」
「ゆたか!」
「は、はい!」
いつもとは違う声の大きさと気迫にゆたかは驚いた。
「あ、ごめん、ゆたか、大きい声出して。」
「い、いいけど…どうしたの?」
「な、なんでもない。」
みなみはこのままゆたかを一人で帰してはいけないと思った。
「駅まで一緒に行くよ」
「別にいいよ、みなみちゃん。」
(この受け答えも同じ…、もしかしたら、このままじゃゆたかは…)
「一緒に行かせて!」
「え、は、はいぃ」
ゆたかは少し驚いた様子で、みなみの願いを承諾した。


142 :コンクール作品「あなたならどうしますか?」2009/03/13(金) 03:29:37.42 ID:V1DeEo20
(どういうことだろう、私、タイムスリップしたってこと?……とにかくゆたかを守らないと)
(みなみちゃん、今日どうしたんだろう…)
駅までの道のりに二人の会話はいつもとは段違いに少なかった。
(確か泉先輩の話ではトラックにひかれて…。じゃあとにかく周りに気をつけないと)
みなみは自分にそう言い聞かせ、周りを見渡している。
(みなみちゃん、さっきからきょろきょろしてどうしたんだろう。落ち着かないのかな…)
いつものみなみが見せない挙動不審な姿にゆたかは少しだけ不安を感じていた。
二人とも会話の無い分、歩く早さも少し遅くなっていた。
目の前の曲がり角を曲がった瞬間、ゆたかが何かに気づいた。
「みなみちゃん、あれ!」
ゆたかが指をさした方を見ると、遠くの大通りで大型のトラックが電信柱に衝突し、大破していた。
「まさか…これがゆたかを。」
みなみは、これがゆたかをひいたトラックだと直感した。
「これが…私?どういうこと?」
みなみの独り言がゆたかの耳に届いていたらしい。ゆたかが聞いてきた。
「…なんでもない」
「そう、でもすごい状態だね…」
「そうだね。」
「誰も怪我してないといいけど…」
「!」
今の言葉でみなみは事故の起こった方へ走り出した。
「みなみちゃん!」
「怪我をしてる人を助けないと。」
「待ってよ、みなみちゃん。」
ゆたかはみなみを追いかけて行った。



「誰も怪我してなくてよかったね、みなみちゃん。」
「そうだね…本当によかった。」
事故現場についたみなみとゆたかはまずトラックの運転席を見たが誰ものっておらず、
みなみが運転席をよく見ようとトラックに乗ろうとしたとき、下から声をかけられた。
声の主はそのトラックの運転手だった。運転手は擦り傷ひとつ無く元気そうだった。
事故の原因は運転手によると、過労がたたったのが原因らしい。
極度の睡眠不足でウトウトしていてハンドル操作を間違えてしまったようだ。
「警察も来たし、一安心だね。」
ゆたかの純粋な笑顔を見て、みなみの不安は消え去っていた。何よりゆたかの死を未然に回避出来たことがなによりも嬉しかった。
「もしかしたら、私が事故に巻き込まれてたかもね。」
(確かに、ゆたかを一人で行かせていれば、歩く早さも違ったかもしれない。確かゆたかはあのとき晩御飯に間に合ために急いでいた。
やっぱりあのトラックがゆたかを…)
今度は冷静になったぶん、声に出すような真似はせず、心の中で分析した。
「本当によかった…」
「そうだね、みなみちゃん。あ、ここまででいいよ。」
みなみが前を見ると少し先に駅が見えてきた。
「じゃあね、みなみちゃん。」
「ゆたか、気をつけて。」



143 :コンクール作品「あなたならどうしますか?」2009/03/13(金) 03:33:29.61 ID:V1DeEo20
家の門をくぐったみなみを出迎えたのは愛犬チェリーだった。
チェリーはみなみにじゃれついてきた。
「今日は暗いし散歩はまた明日ね、チェリー。」
そう言って家の中に入ったみなみの耳に入ったのは電話の呼び出し音だった。
おそるおそる電話を取ったみなみは、奈落の底に再び落とされた。



「…泉先輩、どうしてゆたかは…」
「駅前でバイクにはねられて…打ち所が悪かったみたい。」
ゆたかの病室でみなみは物言わぬ状態となったゆたかの横にいた。あの電話は再びこなたからだった。
内容もほとんど同じ。違ったのはゆたかが死んだ原因だった。
「そんな…そんな…うあああああああああああああああああああ!」



次の日、みなみは以前と同じく式場を抜け出し再び自分の家に帰った。
今、みなみはベットの上で座り、うつむいている。
(もしかしたら、昨日のように…)
そう思い、みなみは家に帰ると、早速ベットの周りをくまなく調べたが、あのリボンは見つからなかったのだ。
家に帰ってから数時間が経過した。
「!」
手に布の感触があった。ふと自分の手を見るとそれは前回に自分が掴んだゆたかのリボンだった。
(お願い…もう一度だけ…)
みなみがリボンを持ち上げた時…世界が歪んだ。みなみは目を開けていられなくなった。


144 :コンクール作品「あなたならどうしますか?」2009/03/13(金) 03:34:04.49 ID:V1DeEo20
「それでね、みなみちゃん」
(また戻ってきた…)
「みなみちゃん?」
「あ、ごめん、なんだっけ?」
目を開けたみなみが見たのはやはり死んだはずのゆたかだった。場所も時間も全てが同じ、みなみは少し気が遠くなった。
(どういうこと…また私は戻ったの…この時に…)
「どうしたの、みなみちゃん?」
(会話も全て同じ…、やっぱり昨日に再び戻ったとしか思えない。だったら…)
「ゆたか…、時間は大丈夫?」
ここでもしゆたかが帰ろうとすれば確実に昨日に戻ったということになる。
それを確かめる為にみなみはゆたかに聞いた。
「あ…そういえばもう帰らないといけない時間だ。」
みなみは自分の仮説が当たっていると確信した。
(やっぱり…じゃあこれからゆたかはまた…、今度こそ私はゆたかを守る)
みなみは心に中で強く誓った。



「あ、みなみちゃん、ここまででいいよ。」
今二人は駅の少し手前のところまで来ていた。途中のトラックの事故は同じように起こっていたが、
今回は何もせずに通り過ぎるだけにしておいた。
「…もう少しだけ…」
今回はトラックにかけた時間がないため、ゆたかは前回と同じようにバイクにひかれることはないとは思ったが、
みなみは念のためもう少しついて行くことにした。
改札の前まで二人は並んで歩いていた。周りの人が見れば仲の良い姉妹に見えたかもしれない。
「じゃあね、みなみちゃん。また明日」
「……」
みなみは黙ってゆたかを見送った、否、見送るつもりだった。
「え?みなみちゃん?」
改札を通り抜けたゆたかの横にはみなみが立っていた。
「少し暗くなってきたし、家まで送るよ。」
「い、いいよ、みなみちゃん、遠いし一人でも大丈夫だよ。」
「もし何かあったら大変。」
ゆたかはこの言葉は自分を子ども扱いしていると思ったが、親友が心配してくれているのだから文句は言わないで二人で帰ることにした。


145 :コンクール作品「あなたならどうしますか?」2009/03/13(金) 03:35:02.66 ID:V1DeEo20
「遅いよー、ゆーちゃん。」
「ごめんね、お姉ちゃん。ちょっとみなみちゃんの家を出るのが遅くなっちゃって。」
「ま、ゆたかも帰ってきたんだし、そろそろ出発しようか!」
「そうだね、ゆい姉さん。」
家に着いた二人を待っていたのは、こなたとゆいだった。二人ともゆたかが遅いので心配して家の外で待っていたようだ。
「お〜、みなみちゃん久しぶり〜。」
こなたが能天気な声で言った。
「ありがとね、みなみちゃん、ゆたかを送ってくれて。遠かったのに悪いね、大変だったでしょ?」
「いえ、そんなことは…」
「そだね、ありがとみなみちゃん。」
ゆいとこなたに礼を言われて、みなみの顔が赤くなった。
「じゃ、みんな車に乗ってー。」
ゆいの号令にゆたかとこなたは車に乗り込んだ。
「みなみちゃんも一緒に行く?」
ゆいは軽くみなみに聞いてきたがみなみはこの質問に少し悩んだ。
(もしかしたらまたゆたかに何かあるかもしれない。…でも今回は泉先輩と成美さんが着いているし…)
悩んで末にみなみは遠慮することにした。
「またね、みなみちゃん。」
「うん、またね。」
みなみはゆたかを乗せた車が見えなくなるまで見送った。


146 :コンクール作品「あなたならどうしますか?」2009/03/13(金) 03:35:28.88 ID:V1DeEo20
家に帰ったみなみはまず電話の前に行った。
(今度こそ大丈夫…大丈夫。)
みなみは祈るような気持ちだった。しかし今回はゆたかの周りのは二人の姉がいる、それがみなみの心の支えになっていた。
みなみは気を紛らわそうとテレビをつけた。画面に出ていた時間を見ると零時十分前を示していた。
丁度テレビではニュースを放送していた。今全国のニュースが終わり地方のニュースが始まった。
普段ならこんな時間にテレビなど見ないで眠っているのだが、今の精神状態では眠ることなどおそらく不可能だろう。
(ゆたか…、大丈夫、きっと大丈夫)
みなみは自分に言い聞かせるようにして、どうにか安心しようとしている。
『次のニュースです。』
ふとみなみはテレビのニュースに耳を澄ました。
『今日、夜八時ごろ、普通乗用車同士の正面衝突事故があり、車に乗っていた三人の女性が死亡、一人が軽い怪我をしました……』
「え…」
みなみはこのニュースに言い知れぬ不安感を抱いた。
『……死亡したのは○○○さんとその娘の○○ちゃんと○○ちゃんです……』
「よかった…」
みなみはようやくほっとすることができた。少しだけ心の中で喜んだ。
(……こうやって喜んでいる人もいれば、さっきの事故で悲しんでいる人もいるかもしれない)
そう思い、みなみは心の中の喜びをかき消した。少しだけ自己嫌悪に陥った。
『次のニュースです。』
テレビに目をやると、次のニュースが始まっていた。
『今日、夜九時半ごろ、停止していた普通乗車の側面にハンドル操作を誤った車が追突。
追突された車に乗っていた女性三人が負傷、病院に運ばれましたが三人ともまもなく死亡しました。』
「…まさか…」
みなみの心をまたしても不安が襲う。
『……死亡したのは』
みなみは息を呑んだ。
『運転席にいた警察官、成美ゆいさんと後部座席に乗っていた小早川ゆたかさんと泉こなたさんです。
警察の調べによると今日午後九時半ごろ○○交差点付近で信号待ちをしていた成美さんの車に、
飲酒運転の車がハンドルを誤り側面から衝突しました。衝突された車は大破しましが、
衝突した車に乗っていた、無職○○○容疑者で、警察はこの男を危険運転過失致死傷罪で現行犯逮捕しました。調べによると……』
「そんな…」
みなみは茫然自失に陥った。




次の日、ゆたか達の通夜が今までと同じように執り行われた。
今までと違うのは、遺影と棺が三つになっていることと、式に来た人数だった。
もうここにはゆたかの死を悲しんでいたこなたやゆいはいない。今こなたの棺の前では柊姉妹とみゆきが泣き叫んでいた。
いつもは冷静なみゆきも、親友が死んだとあってはいつもの落ち着いている面影は無い。
一回目の通夜の時より確実にここで流れている涙の量は増えていた。
みなみはまた通夜から抜け出した。


147 :コンクール作品「あなたならどうしますか?」2009/03/13(金) 03:35:53.58 ID:V1DeEo20
(どうすればいい…どうすれば…)
みなみは自分の部屋で悩んだ、一体どうすれば自分はゆたかを救えるのかを。
(もうこうなったら一日中ゆたかの傍にいるしかない!)
みなみの手にリボンの感触があった。
(今度こそ!)
みなみがリボンを持ち上げた時…世界が歪んだ。みなみは目を開けていられなくなった。



「それでね、みなみちゃん」
目を開けたみなみの前にいたのはやはり死んだはずのゆたかだった。
今回もゆたかの言うことは全て同じだった
(…ゆたかは私が守る!)
みなみは再び自分に言い聞かせ、行動に出た。



「遅いよー、ゆーちゃん。」
「ごめんね、お姉ちゃん。ちょっとみなみちゃんの家を出るのが遅くなっちゃって。」
「ま、ゆたかも帰ってきたんだし、そろそろ出発しようか!」
「そうだね、ゆい姉さん。」
帰ってきた二人を迎えたゆいとこなた、そしてゆたかの行っている事は前回と全て同じだった。
「ありがとね、みなみちゃん、ゆたかを送ってくれて。遠かったのに悪いね、大変だったでしょ?」
「そだね、ありがとみなみちゃん。」
前回と同じくお礼の言葉を言う二人に、みなみは適当に答えた。
「じゃ、みんな車に乗ってー。」
ゆいの号令にゆたかとこなたは前回と車の席に乗り込んだ。
「みなみちゃんも一緒に行く?」
ゆいは軽くみなみに聞いてきた。
(ここだ、ここが分岐点、運命の別れ道…、ゆたかを救うには…)
「迷惑でなければ一緒に行かせてください。」
普段ならここでは遠慮するみなみだったが今回は違った。
事故が起こらないようにするには自分が同行し、行き先をできるだけ近くに変更してもらえばいいとみなみは考えたからだ。
「いいよいいよ、んじゃ乗って〜。」
「…すみません、ご迷惑をおかけして。」
「みなみちゃん一緒に来てくれるんだ。ありがとうね、みなみちゃん。」
ゆたかの明るい笑顔が薄暗くなってきた辺りを照らした、みなみはそんな気がした。
みなみは少しだけ希望を取り戻した。


148 :コンクール作品「あなたならどうしますか?」2009/03/13(金) 03:36:19.61 ID:V1DeEo20
「何を食べに行くのですか?」
みなみはゆいに尋ねた。
「今日はお寿司だよ〜。」
「…そうですか。」
「みなみちゃんお寿司嫌いだったっけ?」
「いえ、そんなことわ。」
「それはよかった。」
車は今、ゆいオススメのお寿司屋に向かっている。
ちなみに運転席にはゆい、その後ろにみなみ、その横にゆたか、そして助手席にこなたがそれぞれ座っている。
こなたが車に乗る際にみなみにゆたかの横の席を譲ってくれたのだった。
「あとどのくらい?」
助手席のこなたがゆいに尋ねている。その会話はみなみの耳には届いていない。
(この今が前と同じならば、前のニュースが言っていた通りの時間に事故が起こる…。確かニュースでは九時半だったはず。
今の時間から考えてもお寿司を食べた帰りに恐らく事故は起こった。…それを回避するには…。
店を出る時間を調整すれば事故は避けられるはず。…でも確実に避ける為には…)
「あの、すみません成美さん。」
「ん〜、何かなみなみちゃん。」
「…実は私お寿司苦手なんです。」
「えっ!そうなんだ!お姉さんびっくりだ!」
ゆいが驚いている。するとこなたとゆたかが尋ねた。
「でもさっきはお寿司は大丈夫って言ってなかったっけ?」
「…確かにそう言ってたよね。みなみちゃん、急にどうしたの?」
「まあまあ、それじゃお姉さんオススメのお好み焼き屋に変更だあ。…お好み焼きは好きだよね?」
「…はい、大丈夫です。」
(…あんまり好きじゃないんだけど……仕方が無い。)
みなみは少ししょんぼりした。助手席ではこなたがゆいに何やら文句を言っているようだ。
「あの、すいません泉先輩。私の勝手で。」
「いやいや違うよみなみちゃん。お寿司はしょうがないけどお好み焼きはちょっと…。」
「泉先輩、お好み焼き苦手なんですか?」
「いや、そうじゃなくて昨日お好み焼き食べたばかりでさ、さすがにまた食べるのはちょっとね…。」
「…すいません。」
「謝ることないよ。というわけでゆい姉さん、お好み焼き屋はパス。」
結局この後車を止めて話し合った末に、焼肉食べ放題で決定した。



「ふ〜、食った食った。」
「お姉ちゃん…なんかオヤジくさいよ…」
「うおっ!妹に言われるとさすがにきくね…」
食べ終えて店から出たこなたとゆたかは二人でおしゃべりしている。みなみは時計を気にしていた。ちなみにゆいは会計中である。
「それにしてもみなみちゃん、今日はどうしたの?さっきから時計ばかり気にしてるみたいだけど。」
ゆたかがみなみに尋ねた。確かにゆたかの言う通り、食事の中みなみは時計をずっと気にしていてろくに食べていなかったのであった。
「ゆーちゃん、みなみちゃんは見たいアニメに間に合うか心配なんだよ。」
「それはお姉ちゃんじゃ…」
「ま、ともかくみなみちゃんは何でそんなに時間を気にしてるのかな?」
「……」
この質問にみなみは答えることが出来なかった。


149 :コンクール作品「あなたならどうしますか?」2009/03/13(金) 03:36:42.50 ID:V1DeEo20
「またね、みなみちゃん。」
「じゃね〜。」
「また遊びにおいでね、みなみちゃん。」
泉家についたみなみは三人に別れを告げて、そのまま帰宅の戸についた。
と見せかけた。みなみは一旦泉家から離れた後に、再び泉家に戻って来たのだった。
ゆたかを守る為にはゆたかの近くにいる、それがみなみがゆたかを守る為に自分に下した決断だった。
みなみは家を見張れるところにずっと立っていることにした。時間は現在午後十時半。
普段のみなみならもう寝ていてもおかしくわない時間だ。
ちなみに今日、みなみの両親は共に用事で明日まで帰ってこない予定なので両親がみなみを心配して探し回ることもない。
よってみなみは落ち着いて家を見張ることが出来るのだった。
「…寒い」
今の時期の深夜になると気温は五度ぐらいとなる。
しかも今日はいつもより風が強く体感温度は氷点下に達していてもおかしくはなかった。
ふとみなみは携帯を取り出し画面をのぞいた。
(十時三十五分…せめて今日が終わるまではここにいよう。)
その時だった。

ドォーン

「きゃあ!」
突如ものすごい音と風がみなみを襲った。
それらが来た方角を見て、みなみは全身から力が抜けるような感触を味わった。
「…そんな、家が…」
みなみは泉家が紅蓮の業火に焼かれていくのをただひたすらに見ていることしか出来なかった。



翌日、みなみは泉家の爆発及び火災はガス管のひびから漏れたガスに火が引火しておこったものだと聞いた。
(…そんなの、避けようがない…どうすれば…いい…)
しかし考えてもさっぱりいい案が思いつかない。それどころか考えはどんどんマイナスに向かってしまう。
(それに犠牲者が…最初はゆたかだけだったのに今回は四人も…)
今回亡くなったのは、ゆたか、こなた、ゆいにそうじろうだった。
ゆいはその日の内に家に帰らずに、泉家に一泊していくと車の中でこなたと話しているのをみなみは聞いていた。
確かにゆたかを助けようとすればするほど犠牲者は増えていた。
(…もうどうすればいいか…わからない。)
みなみはベットの上でじっと考えている。すると手にあの感触があった。
みなみは目線を下に落とした。
(…リボン…また…。これを取ればゆたかを救えるかもしれない。でも…どうすれば…。また犠牲者が増えるかもしれない…。
それに今度こそリボンが現れないかもしれない…。…こんな時、ゆたかならどうするかな…。)
みなみは考えた後、再びリボンを手に取った。
みなみがリボンを持ち上げた時…世界が歪んだ。みなみは目を開けていられなくなった。


150 :コンクール作品「あなたならどうしますか?」2009/03/13(金) 03:37:45.10 ID:V1DeEo20
「それでね、みなみちゃん」
(…よかった。戻ってこれた…。)
「…ねえ、ゆたか。」
「何?みなみちゃん。」
「もしゆたかの大事な人死んじゃったけど、その人を助けるチャンスがあったらどうする?」
「もちろん助けに行くよ。」
「でも助けるたびに自分の大事な人たちが次々と死んじゃうことになったら?」
「…う〜ん、難しいな〜。でも助けるチャンスがあるのにそれを見過ごしたくないな。」
「…そう。」
「そういえばもう帰らないと。今日お姉ちゃん達と一緒に外に食べに行くんだ。ちょっと急がなきゃ。それじゃあね、みなみちゃ!」
みなみはゆたかに抱きついた。
「どうしたのみなみちゃん、苦しいよ…」
最初は少し抵抗したが、みなみが泣いているのに気がつき、みなみを抱き返した。
「ごめんね、ごめんねゆたか。助けられなくてごめんなさい。」
ゆたかにはその言葉が意味することはわからない。

みなみはその後、ゆたかを開放し、玄関まで見送った。

(…もうどうしようもない。ゆたかを助けようとすれば他の人たちまで巻き込んでしまう。)
ゆたかを見送った後、みなみは部屋の中でうずくまって泣いた。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ゆたか…、ごめん…」
泣いているみなみの脳裏にゆたかの言葉が響きだした。

(「助けるチャンスがあるのにそれを見過ごしたくないな」)

みなみはゆたかの言葉を思い出し、家をとび出した。



(私はなんてばかなんだ。ゆたかを見殺しにしようなんて!)
みなみは走っていた。息は絶え絶えだがスピードはまったく落ちていない。
(ゆたかに追いつかないと。)
みなみの足は限界に達していたが、今のみなみにはそれを感じている余裕も時間もなかった。
みなみはただ走った、親友の為に。
(見えた!ゆたか!)
曲がり角を曲がった時、遠くにゆたかの姿が映った。どうやら信号待ちのようだ。
しかし声を張り上げても届く範囲ではない。その時みなみは気づいた。
(あの交差点、確かトラックの…、ゆたかの横にある電柱は…確かトラックがぶつかった場所…このままゆたかがあの場所にいたら…)
恐らくゆたかはトラックに轢かれて帰らぬ人となるだろう、みなみは瞬時にそう悟った。
「ゆたか!」
みなみはゆたか越えをにそこから離れるように伝えようとしたが、ゆたかには声がとどいていないようである。
「ゆたか!」
みなみは走りながらもう一度声を出した。ゆたかまでの距離は十メートル前後だった。
あっちもみなみに気づいたようでこちらを振り向いた。
しかし安心しようとしたみなみの視界にゆたかに向かってくるトラックに気が付いた。
「ゆたか、危ない!」
みなみの声が夕方の町に響き渡った。



緋色の空に、一人の少女の体が、宙を舞った。
151 :コンクール作品「あなたならどうしますか?」2009/03/13(金) 03:38:31.96 ID:V1DeEo20



「ごめんなさい、ごめんなさい。」
一人の少女が眠る棺の前で、その少女の親友が涙を流して謝り続けている。その少女の肩に手が置かれた。
「仕方がなかったのよ、あなたのせいじゃないわ。」
声をかけたのはその少女の母だった。
「でも……でも。」
「これは不運な事故だったのよ。」
「でも……みなみちゃんは私をかばって!」
「だからこそゆたかがそんな顔してちゃ、天国にいるみなみさんも悲しむことになるのよ。」
「…みなみちゃん」
今日は岩崎みなみの通夜がいとなわれていた。参列者にはみなみの家族やチアをやったメンバー、
みなみの中学のころの友達など多くに人々がみなみのために足を運んでくれていた。
「ゆーちゃん、泣いてちゃだめだよ。みなみちゃんが心配しちゃうよ。」
「お姉ちゃん…ヒック…ヒック…うええええええええええええええん…」
「…ゆーちゃん。」

予定時刻通りにみなみの通夜がいとなわれた。



「みなみちゃん!みなみちゃん!目を開けてよ!みなみちゃんてば!」
ゆたかは自分をかばって宙を舞い、地面に叩きつけられた親友に向かって必死に声をかけていた。
(…何か声が聞こえる。…私を…呼んでる…)
「……」
みなみは目を開けた。まず見えたのはゆたかの泣き叫ぶ顔、そしてゆたかが握っていた自分の血まみれの手だった。
「みなみちゃん!よかった、よかったよう。」
「…ゆ…た…か…。」
薄れ行く意識の中、みなみは親友の名を呼んだ。
「みなみちゃん、しゃべっちゃだめだよう!」
「け…がは…な…い?」
かろうじて聞き取れた声に、ゆたかは答えた。
「わ、私は大丈夫だからしゃべっちゃだめだよ。」
みなみはその言葉に安心し、そして皆にはっきりと分かるような笑顔を浮かべた。
「…よ…かっ…た。」
「みなみちゃん…?」
ゆたかは自分が握っている手から力が抜けたのを感じた。
「みなみちゃん……そんな…、みなみちゃん!」
その声がみなみに聞こえることはなかった。


152 :コンクール作品「あなたならどうしますか?」2009/03/13(金) 03:39:07.70 ID:V1DeEo20
昨日の事を思い出してゆたかは再び親友の名前を声に出していた。
「…みなみちゃん…みなみちゃん…。」
ゆたかはベットの上で泣き続けていた。ゆたかは通夜終了後、みなみの部屋に入れてもらった。
ゆたかにとってはこの部屋がゆたかがみなみを最後に見た場所だった。
みなみの両親もゆたかを責めずに優しく接してくれたが、ゆたかにはそれすらもつらく感じていた。
ふいにドアの開く音がした。
「ゆたかちゃん…大丈夫?」
入ってきたのはみなみの母だった。ゆたかの事が心配なようだ。
「ごめんなさい…おばさん…。」
「謝ることないわよ。みなみだってゆたかちゃんにそんな事してほしいなんて望んでないわよ。」
ゆたかはみなみの母に抱きつき、泣き続けた。

ゆたかが目を開けると、そこにあったのは天井、辺りは暗い。
(私眠っちゃったんだ…。)
自分の体には布団がかけられていた。みなみの母がかけてくれたのだろうとゆたかは思った。
ゆたかはおもむろに体を起こした。
「…みなみちゃん。」
もう今日で何度この名前を口に出しただろうか。今のゆたかには後悔しかない。
(あの時、みなみちゃんは私に伝えようとしてた。危ないって…。どうして私は気づかなかったんだろう…。親友なのに…。)
ふと手をベットに下ろすと何かの感触があった。
「あれ?これって、確かみなみちゃんが私にくれたリボン…、私あの時もって帰ったはずなのに…どうして……!」
ゆたかがリボンを持ち上げた時…世界が歪んだ。ゆたかは目を開けていられなくなった。
153 :コンクール作品「あなたならどうしますか?」2009/03/13(金) 03:47:39.13 ID:V1DeEo20
以上です。
初めての投稿なので誤字・脱字等あるかと思います。
他の作品と比べても自分の作品はすごく惨めでレベルが低いと感じさせられました。

初めて書いてみて、やっぱり小説書くのって難しいなと思いました。
つくづく自分は理系だと思いました。……高校最後のテストで数学27点でしたけど。

それではこのような粗雑な文章を読んでいただきありがとうございました。
154 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/13(金) 05:17:06.09 ID:wfosowg0
>>153
これはすごいなー初めてとは思えない出来だ
確かに論理的っていうか頭使う話だねえ
とても面白かったです。
155 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/13(金) 06:03:20.03 ID:e4pjHvAo
>>153
乙!
自分を犠牲にすることが、唯一の回避方法か……
ゆたかを助けたい気持ちと、それによって招いた結果。
その間で葛藤するみなみの心情がしっかり表現されていて、良かったです。GJ
156 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/13(金) 11:38:46.32 ID:/fU4nISO
>>153
最終的にゆたか→みなみで繰り返すエンドレスか
そこら辺に捻りを加えて欲しかったな
心情表現とか話の構成はしっかりしてたぜ!
157 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/13(金) 12:39:15.91 ID:DwSntQSO
−フラグクラッシャーそう君−


こなた「お父さんとお母さんってギャルゲみたいな設定だけど、なんかそれっぽい話とかあるの?」
そうじろう「そうだなあ…中学の時に…」

かなた「そう君、風邪大丈夫?」
そうじろう「…なんとかね…悪いな、折角の日曜日に…」
かなた「いいのよ。家族の人誰もいなくて、大変そうだったし。なにかして欲しい事ある?今なら聞いてあげるわよ」
そうじろう「…なんでも?」
かなた「うん、なんでも」
そうじろう「そうか…」
かなた(しまった…つい、なんでもって言っちゃったけど、そう君の事だから何かとんでもない事言われるかも…も、もしかして、エ、エッチな事とか…)
そうじろう「かなた」
かなた「は、はい!?」
そうじろう「実は家のビデオデッキが壊れちゃって…直るまでお前んちでアニメの録画しといてくれないか?」
かなた「………」

ジリリリン…ジリリリン…ガチャ
かなた「あ、そう君?ごめんね。なぜか家のビデオデッキが真っ二つになっちゃって録画出来ないの…」


そうじろう「…ってな事が」
こなた「…売れなさそうなギャルゲだ…」
158 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/13(金) 19:08:54.81 ID:AqV2Oq20
>>153
乙。運命は変えられないのか・・・
自分が生きて友を[ピーーー]か、友を生かして自分が死ぬか・・・
究極の選択、まさに等価交換だな。

>>157
かなたさん実は期待してるじゃんw


それでは昨日の宣言どおり10分後にコンクール作品を投下します。
見やすいよう40文字で改行していますが、携帯の方には見えにくいかも。
159 :純粋な子に色々教えると後が怖い[saga]:2009/03/13(金) 19:18:54.47 ID:AqV2Oq20

『俺、この戦いが終わったら故郷に帰って結婚するんだ……へへっ』
 いきなりとんでもない事を言い出しているが、これはテレビ番組の音声だ。
 休日の三時ちょっと過ぎ。こなたとゆたかは居間でテレビを見ている。ゆたかがケーキ
を作ってみたという事で普段はあまりしない少しリッチなティータイム。そこでこなたが
テレビをつけ、チャンネルを回していたら調度こんなシーンだったのである。
「あー、こりゃ死亡フラグだねぇ」
「お姉ちゃん、死亡フラグってなぁに?」
 聞き慣れない単語に苺を口に含もうとしていた手が止まり、質問するゆたか。
「え? うーん、死亡フラグって言うのは〜、「死への伏線」って言う意味で、今みたい
 な台詞を吐いた人物がこの後死にやすいっていう時に使う〜言葉なんだよ」
 こなた自身も上手く説明できず、少し曖昧な答えをしてしまう。
「え? じゃあこの人死んじゃうの?」
「そうだねぇ。死ぬ確立は増えたよ。まぁ見ててご覧」
 再びテレビに視線を戻す二人。そこでは先程、結婚すると言っていた男が「うおぉっ」
等と叫びながら敵に向かって走っていくシーンが映し出されていた。そして男はあっさり
と敵に返り討ちにされ、仲間の腕の中で息を引き取っていた。
「ね?」
「本当だ。お姉ちゃん凄いね」
「まぁ、色々やってて自然と知識が頭に入っただけだけどね」
 テレビからは仲間の叫びが聞こえてくる。
160 :純粋な子に色々教えると後が怖い[saga]:2009/03/13(金) 19:19:53.08 ID:AqV2Oq20
「ねぇ、他にも死亡フラグって言うのはあるの?」
「あるよ。数えれば結構ね」
 こなたはジュースを飲もうとするが、コップの中身は空だった。
「どんな物があるか知りたいって顔してるね」
「えへへ。ちょっと気になるかなぁって」
 ゆたかがこなたのコップにジュースを注ぐ。
「ありがと。そうだねぇ……一番有名なのはさっきの結婚話として、その次といったらあ
 れかな」
 こなたはジュースを一口飲み、ふぅ、と満足的な顔をする。
「ミステリー物によくあるんだけど、『犯人なんかと一緒に居られるか! 俺は自分の部
 屋に行く!』っていうの」
「あ、それ分かる! その後、悲鳴を上げて死んじゃってるんだよね」
「そそ。あ、ゆーちゃん鼻にクリーム付いてるよ」
 指摘され、慌ててクリームを拭き取るゆたか。こなたはそれを見ながらにんまりとジュ
ースを飲む。酒の肴のつもりらしい。そして飲み干した。よっぽど喉が渇いていたのだろ
うか。
「そ、そーいうのが死亡フラグって言うんだぁ〜」
「そうだよ。他にも『先に行って待ってるぞ』とか、ホラーなんかで『一人でお風呂・ト
 イレに入る』とかね」
「物音に気付いて、見てみたら何もなくて、振り向いたら……とか」
「ふふ。なぁんだ、ゆーちゃん分かってるじゃん」
「えへへ。言われてみればそういうの、映画とかでよく見てたから」

 その後、しばらく死亡フラグ談義は続いた。テレビ番組も既に終わっており、今ではC
Mが流れている。
 おやつも食べ終わり、やや満足気味な二人。こなたは、んん、と背伸びをすると席を立
った。
161 :純粋な子に色々教えると後が怖い[saga]:2009/03/13(金) 19:21:27.29 ID:AqV2Oq20
「と、ちょっとトイレ行ってくるね」
「うん。じゃあ私はお皿片付け……」
 言いかけてゆたかはある事に気付いた。それは今こなたが言った台詞。
「待ってお姉ちゃん!」
 リビングを出ようとしたこなたはゆたかに腕を掴まれてしまう。
「な、何ゆーちゃん?」
 こなたは先程ジュースを大量に飲んでいて、一刻も早くトイレに行きたかった。しかし
ゆたかはそれを許さなかった。
「一人でトイレに行っちゃダメ! 死んじゃうよ!」
「はい? あー、大丈夫だよ。現実で、」
「その甘さが命取りだよっ!」
 こなたはマジで早くトイレに行きたかった。なのでゆたかを説得するよりもそれに納得
する形をとった。
「分かった。じゃあ一緒に行こう? それなら良いでしょ?」
「うん……」
 どうやらゆたかは死亡フラグが現実でも通用すると思い込んでいるらしい。ゆたかは知
らない事が多い子なので、自分よりも先輩な人の意見は大体鵜呑みにしてしまう事がある
のだ。こなたの説明不足も原因だが。


 リビングを出て、トイレ前に着いた二人。こなたは早くトイレに入りたいのだが、ゆた
かがそれを許さなかった。
「一人で入ったら死んじゃうんだよ? お姉ちゃんは分かってない」
「いや、まだ昼間、だし、それに、」
「その甘さが命取りなんだよ。お姉ちゃんには死んで欲しくないんだもん……」
 ゆたかは半泣き状態。こなたは下が半泣き状態。こなたは限界だった。
「分かった……分かったから」
 そして仕方なく二人でトイレに入ることにした。

162 :純粋な子に色々教えると後が怖い[saga]:2009/03/13(金) 19:22:28.69 ID:AqV2Oq20


 トイレに入り、便器を見つめるこなた。早く済ませたい。楽になりたいと頭の中でそん
な葛藤が繰り広げられているが、ゆたかがそれを許さなかった。
「ゆーちゃん……向こう向いてて欲しいんだけど……」
「そんな、私が向こう向いてる間にお姉ちゃんが殺されちゃったら嫌だよっ」
 この場で誰に殺されるというのか。
「ないない……あのさ、恥ずかし、」
「命と比べればなんてことないよっ」
 この従妹の行動が理解できない。もう全てが終わったらちゃんと説明しよう。今はやる
ことをやらねば。漏らしてしまったそれこそ恥だ。と思考回路を巡らせ、便器のフタを開
け、ズボンとショーツを下ろし便座に座り、いつでもOKな体制をとった。が。
「どうしたのお姉ちゃん? 早く済ませてこんな所出ようよ」
「うん……」
 やはり出来ない。見られながらでは出来るはずも無い。ましてや見てる相手は自分より
年下の従妹なのだ。ここで用を済ます事など姉としてのプライドが許さなかった。でも身
体は限界なのだ。これは変えようが無い事実。どうしようもない。
「ゆーちゃん、せめて私の顔を見、」
「お姉ちゃん出ないの? じゃあ手伝ってあげるよ」
「え、ちょ、あ――」

 そして二人は無事にトイレから出ることが出来た。


 その後、死亡フラグの現実と非現実について説明しようとしていたこなたであったが、
ゆたかはのらりくらりとそれを回避してしまう。
 買い物の時には、
「ゆーちゃん、さっきの死亡フラグの、」
『只今からタイムサービスです』
「お姉ちゃん早く!」
「あ、待ってよ!」
 夕食の時には、
「ゆーちゃん、さっきの死、」
「お、これ旨いな。今日はゆーちゃんが当番だっけ?」
「えへへ、そう言ってもらえると嬉しいです」
 と、こんな感じである。タイミングが悪いのか、はたまた全てはゆたかの思い通りなの
か真相は誰にも分からない。
「ま、いっか。明日になれば忘れてるよ」
 と、こなたは諦め。気楽に今夜を過ごすことにした。あれから特に何も無いし大丈夫だろ
うと確信も持ち始めた。
 だが、その甘さが命取りになろうとはこの時、思いもしなかっただろう。
163 :純粋な子に色々教えると後が怖い[saga]:2009/03/13(金) 19:23:38.35 ID:AqV2Oq20


 それはこなたが就寝しようとしていた時だった。
「ほらね、あれからゆーちゃん何もしてこないし。もう忘れちゃってるんだよ」
 お風呂にも、寝る前のお手洗いにも現れなかったゆたかに安心して部屋に入ろうとする
こなた。ドアノブに手を掛け、扉を開けた。
 その時。
 ゴッ、という音と共にこなたは宙に舞った。
「ふぇ?」
 戸惑うこなたなどに容赦はしない。どこからか現れた触手の様な物はこなたの両手両足
を縛り、自由を奪う。そしてベッドに無理やり仰向けに寝かされると今度はベッドの両端
から透明のプラスチックがこなたを囲うようにドームを作る。まるでSF小説のカプセル
ベッドだ。
「何?」
 自由になった両腕でプラスチックケースをバンバンと叩く。訳が分からない。一体何が
どうなっているのか。こなたは混乱するばかりだった。
 そんなこなたの前に、てててと可愛らしい足音が聞こえてきた様な気がした。
「ゆー、ちゃん」
 そこに居たのは従妹のゆたか。天使の様な笑みでこなたに近づいてくる。
「防弾防音ガラス」
「え?」
 こなたには聞こえない。ゆたかの口が少し動いたが、防音ガラスの為、何を言ってるの
か分からなかった。
「眠っているときは一番危険だからね。頑張って作ったの」
 何をどうしたらこんな物が作れるのか。勿論こなたも突っ込む余裕も無く。
「ゆーちゃん出して! ここから出して!」
「そんなに喜んでくれるなんて嬉しいな」
 防音なので話が全く噛み合っていない。
「これでお姉ちゃんはぐっすり眠れる。敵が来ても大丈夫」
 いや、当社には襲ってくるような輩は居ません。とは正にこの事。
「今日は私もここで寝るよ。お姉ちゃん一人でなんか寝させない」
「お願い、ゆーちゃん……」
「お姉ちゃんは私が守る!」
 なんて姉想いな妹でしょう。こんな子が欲しいです。などと思ったら大間違いである。
下手すればこなたは既に死んでいたのだから。
「ゆー……」
 もはやこなたは呼びかけを諦めかけてた。そしてあることに気付いた。
「……?」
 何か息苦しい。こなたは焦り、周囲を見渡す。しかし無いのだ。何処を探しても。

 空気穴が。
164 :純粋な子に色々教えると後が怖い[saga]:2009/03/13(金) 19:24:22.72 ID:AqV2Oq20

「ちょっ!」
 叫ぼうとしてやめた。防音で聞こえない上に空気も少なくなる。こなたは咄嗟に起き上
が――ろうとしたがケースに頭をぶつけて撥ね返されてしまう。
「っつぅ」
 痛がっている暇など無い。今度はケースをバシバシと叩いて、ゆたかを呼ぶ。言葉が通
じないならジェスチャーでやるしかないと思ったのだろう。しかし!
「むにゃむにゃ、もう食べられないよ……」
 ゆたかは床に布団を敷いて既に寝ていたのだった。
「――っ!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?」
 こなたは絶望した。そして……。

 夜が明けた。




 こうして、世界にまた新たな死亡フラグが生まれた。

 ペンネーム。故なたさんからの死亡フラグ。


 純粋な子には物事をしっかり最後まで教えないと、死ねる。


                               お わ り
165 :純粋な子に色々教えると後が怖い[saga]:2009/03/13(金) 19:24:50.59 ID:AqV2Oq20

以上。
なんかスマンでした。
166 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/13(金) 19:44:47.68 ID:wfosowg0
>>165
乙 教訓を得たねこなたww
167 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/03/13(金) 22:24:46.31 ID:VjaOqhAo
故なたww
168 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/13(金) 22:47:04.27 ID:wfosowg0
--------------------------------------------------------------------------------------------

「こなた様が出るまでも無え!
 ここは俺が!食らえーーー!」

まったく、その度胸だけは褒めてやりたい所ね。
でもね、そういうこと言ったら、大体死ぬのよ。あんたみたいな奴は。

「まぼろし!?くそー、どこ行きやがったヤツは!!
 と、うわあああ!?」

めが曇ったの?はあ、全然手ごたえのないヤツだった。
たすけに行くわ。つかさ。

--------------------------------------------------------------------------------------------
169 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/13(金) 23:02:43.81 ID:.I5qc.SO
>>168
なかなかやるな
まとめ乙
170 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/13(金) 23:11:12.40 ID:e4pjHvAo
>>165
得意げになって説明なんてするから……
純粋さは時に刃となって人を襲うんだな。ワロタ乙w

>>168
171 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/14(土) 00:35:26.41 ID:ilzMFHY0
>>153
これはゆたかが真相を知ることで悲劇を回避できるという解釈でOK?
172 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/14(土) 01:00:40.07 ID:bCGTdcSO
>>165
補足説明をすれば助かったのになww
てか故なたってwwwwww

>>168
変わってるなww乙

>>171
俺は作者じゃないが事実上回避不可だと思う
人を殺せる物なんて自然にも大量にあるし全てから護るなんて無理だと思うし
よくて片方死亡最悪二人とも死亡かな?
173 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/14(土) 10:08:45.24 ID:uuI/uMSO
こなた「残り二日の時点で六作品。シリアスが二、ギャグが二、オムニバスっぽいのが二」
かがみ「難しい難しい言ってたわりに数がでてるし、ジャンルが見事にバラけてるわね」
こなた「言ったでしょ?なんだかんだ言っても、みんな良いの書いてくるって」
かがみ「そうね…後は、ラストスパート組に期待ってところかしら」
こなた「そゆこと。間に合うか間に合わないかな人、ふぁいとー」
かがみ「ふぁいとー」
こなた「………」
かがみ「な、なによ」
こなた「いや、ちょっと可愛かった」
かがみ「…うるさい」
174 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/14(土) 14:33:56.18 ID:0wj.N2g0
>>171
ゆたかを助けるには自分を犠牲にして助けるしか方法はない。
つまり何かを助けたり、何かを得ようとすれば、それと同じくらいの犠牲を払わなければならない…という感じの話なんですが…。
やっぱりわかりずらいですよね…。
自分の解釈の方がすっきりするとかいうのがあれば、もうそれでいいです。
今度書くあれば機会があれば、もっと簡単なのにします。
175 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/14(土) 16:25:29.71 ID:e74ff6SO
白い日

みなみ「ゆたか……バレンタインのお返し……」ファサ
ゆたか「え? ちょ、みなみちゃん!?」

みなみ「頑張って……白いの出るようになったから……」
ゆたか「わゎ……」

みなみ「吸っ……て?」
ゆたか「じゃ、じゃあ……吸うよ?」





みなみ・ひより「「ハッ、ドリームか!」」
みなみ・ひより「「……え?」」
176 :命の輪、満ち足りて[saga]:2009/03/14(土) 18:15:33.01 ID:17BEUwA0
「遅い」
 腕を組んだかがみが、イラついたようにそう言った。
「なにやってんのよ、こなたは…式に間に合わないじゃない」
「あはは…こんな時まで、こなちゃんらしいね…あ、あれじゃないかな」
 つかさが指差したほうを見ると、道の向こうから蒼い軽自動車がこちらに向かってきていた。そして、二人の前で停車し、その助手席からこなたが顔を出した。
「ごーめん、ちょっと遅れちゃった…さ、乗ってよ」
 こなたに促されて、二人は後部座席に乗り込んだ。
「まったく、こんな時まで遅刻してるんじゃないわよ」
「いや、だからごめんってば…」
「あんた、普通に就職してたらとっくに首に…って、こなたが運転じゃないんだ?」
 かがみは首を伸ばして、自分の前の運転席を覗き込んだ。
「やあ、おはよう」
 一人の男性が軽く手を上げて、かがみに挨拶をする。
「…平日になにやってんのよ」
「車の運転はダーリンの方が上手だからねえ」
「いや、そうじゃなくて…」
「ま、とりあえず時間無いし、出発するよ」
 運転席の男性…こなたの旦那はそう言ってアクセルを踏み込んだ。


- 命の輪、満ち足りて -


「かがみ、忙しいって言ってたのに、よく来れたね」
 こなたが後部座席を覗き込みながら、かがみにそう言った。
「んー…実はちょっと無理言ったのよね…しばらくは小言が続きそうよ」
「かがみの旦那さん、真面目だからねえ」
「たまに自由業のあんたや、主婦のつかさが羨ましくなるわ…」
「でも、こなちゃんの旦那さんもお仕事じゃないの?」
 それまで黙っていたつかさが、不意にそう聞いた。
「俺はちゃんと休み取ったよ。嫁の具合が悪いから、一日看病しとくって今朝会社に連絡を入れといた」
「…は?」
 かがみが思わず間の抜けた声を出す。
「出産の時にあんなだったからな、割とすんなり信用してくれたよ」
「い、いいのかなそれ…」
「学生のズル休みかよ…」
「嫁の友達の結婚式に行くって理由じゃ、休み取れそうに無かったからなあ」
 そう言って笑う旦那を見ながら、かがみは大きくため息をついた。
「でも、どうしてそうまでしてゆきちゃんの結婚式に行きたかったの?」
「あ、それわたしも聞きたかったよ」
 つかさの質問にこなたが同意する。旦那はしばらく間を置いて、真剣な表情をして言い放った。
「みゆきさんのウエディングドレス姿が見たかった。以上」
 窓を閉め切っているのにも関わらず、車内に風が吹きぬけたような気がした。
「こなた、こいつ殴っていいか?」
「運転中は危ないから、信号待ちのときにしてね」

177 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/03/14(土) 18:16:15.69 ID:IPgUAEDO
>>175
みなみ「……」
ひより「……」
みなひよ「あ、あはははは〜」

ゆたか「じー クピクピ…(哺乳ビン)」

みなひよ「!!!!1」
178 :命の輪、満ち足りて[saga]:2009/03/14(土) 18:17:24.36 ID:17BEUwA0
前文忘れてました… orz

投下行きます。

以前書いた命の輪の外伝っぽい話です。
179 :命の輪、満ち足りて[saga]:2009/03/14(土) 18:18:29.70 ID:17BEUwA0

「まさか、ホントに殴るとは…しかも三発も」
 片手でハンドルを握り、空いた手で旦那は頭を擦っていた。
「こなたとつかさの分も追加しといたのよ」
「うん、ありがとうかがみ」
「わ、わたしの分は別にいいのに…」
「それにしても、みゆきはやっとって感じよね…」
 殴った拳を擦りながら、かがみは感慨深げにそう呟いた。その言葉に、こなたが頷く。
「そうだね。付き合い始めたのはわたしの次ぐらいだったのに、結婚は一番遅かったねえ」
「ゆきちゃんち、お金持ちだから色々難しいことがあったんじゃないかなあ」
「副委員長、頑張ったってところだね」
「なんだ、副委員長って?」
 こなたの言葉に、旦那がそう質問した。
「あ、みゆきさんのお相手のこと。高校三年の時のクラスの副委員長してた人なんだよ。ちなみみゆきさんが委員長」
「ふーん。それはまたロマンチックな」
「高校の時は、そんな素振り全然なかったのにね…やっぱり密かにゆきちゃんのこと想ってたのかな」
「単に意気地がなくて、言い出せなかっただけでしょ」
「かがみん、ひどいなー…って、ダーリンどうしたの?」
 こなたは旦那が少し寂しげな表情をしてるのに気がついた。
「ん、いや…高校の時の話をしてるこなたって、ホントに楽しそうだなって思ってね」
「…うん、それで?」
「そこに俺が居れなかったのが、ちょっと寂しいなって、ね」
 自分の言葉が恥ずかしかったのか、旦那は照れくさそうに鼻の頭をかいた。
「俺は高校の時はホントにつまらなかったからな…男子校だったし」
 車内に少しだけ、しんみりした空気が流れた。
180 :命の輪、満ち足りて[saga]:2009/03/14(土) 18:19:08.90 ID:17BEUwA0
「…そ、そういや、こなた達は結局式挙げなかったわね」
 その空気を変えようと、かがみは別の話題を持ち出した。
「うん。そういうのガラじゃないしね。ドレスも特に着たいと思ってなかったし」
「旦那さんはそれでよかったの?」
 つかさはこなたの一存で決まったことだと思い、旦那にそう聞いた。
「俺は、こなたがそうしたいって思ったのなら、それでよかったと思ってるよ」
「そうなんだ…でも、おじさんは残念がったんじゃないかな」
「あー、確かにあの人はこなたのドレス姿見たかったでしょうね」
 つかさの言葉に、かがみが頷く。
「お父さんの事なら大丈夫。貸衣装屋で、写真だけは撮らせてあげたから」
「…抜かりない…って言っていいのかな、それは」
「新婚旅行は行ったんだっけ?」
「…一応」
 旦那の方が、何故か眉間に皴を寄せて答えた。
「へー、何処に?」
「有明」
 何故か、横からこなたが割り込んでそう答えた。
「有明って…おい、まさかコミケとか言わないだろうな」
 そのこなたに、かがみがジト目でそう聞いた。
「…かがみちゃん」
「な、なに?」
 今度はこなたでなく、旦那がかがみに向かって答えた。
「恒例行事になってるイベントに、珍しく泊りがけで出かけて、無事全日程を終えてフラフラなところに笑顔で、『あ、これ新婚旅行だから』って言われたときの衝撃が君には分かるだろうか?」
「いや、わかんないし、分かりたくも無いわ…ってか、流石のあんたもショックだったんだ…」
「いやーあの時はめっちゃ怒られたよー…三日間口聞いてくれなかった…」
「めっちゃ怒られてそれだけか」
「えー、わたしにとっては拷問だったよー」
 そんな会話をしている三人を見ていたつかさは、ふと気になることがあってポケットに入れていた携帯を取り出し、時間を確かめた。
「ね、ねえ…時間やばくないかな…」
 そのつかさの言葉を受けて、旦那が車内に取り付けられている時計を見た。
「…こりゃやばいな」
「ど、どうするの?」
「しょうがないなあ」
 こなたはポリポリと頭をかくと、かがみ達の方を向いた。
「二人とも、ちょーっと我慢しててね。すぐ済むから」
「は?」
「え?」
「ダーリン!V−MAX発動!」
「レディ」
 車がとてつもない急加速をし、かがみとつかさは背もたれに叩きつけられた。
「ちょ、ちょっと!危ないじゃないの!…ってーかこなた!コレやりたくて蒼い車買ったんじゃないだろうな!?」
「お、かがみ知ってるんだ」
「ま、前、旦那さん!前の信号赤だよ!?」
「蹴散らす!」
「蹴散らすなぁ!」
「そ〜ら〜に〜♪あおいりゅう〜せ〜い〜♪」
「こなた!のんきに歌うなー!!」

181 :命の輪、満ち足りて[saga]:2009/03/14(土) 18:19:57.58 ID:17BEUwA0

「間に合ったどころか、時間に余裕が出来たねー」
「ああ、自分でも少し驚いてるよ」
 のんきに話をしながら、会場を歩くこなたと旦那。その後ろを、かがみとつかさがヨロヨロと付いてきていた。
「…つかさ…帰りは電車にしましょう…」
「…うん…それがいいと思うよ…」
「お、ゆーちゃーん!みなみちゃーん!」
 前を歩いていたこなたが知り合いを見つけ、手を振りながらそちらに向かっていった。
「あ、こなたお姉ちゃん。それに皆さんも。おはようございます」
「…おはようございます」
 ゆたかとみなみが、同時にお辞儀をする。
「ゆーちゃんも来てたんだ」
「うん、みなみちゃんの付き添いで…あ、そうだ。お姉ちゃん知ってた?今日の式のBGM、全部みなみちゃんがピアノで生演奏するんだよ」
 全員の注目が、一斉にみなみに集まる。
「…マジで?」
「は、はい…」
 急に自分に注目が集まり、みなみは体を小さくした。
「…み、みゆきさんには、色々お世話になってきましたから…何かしようと思って…そ、それくらいしか思いつかなくて…」
 しどろもどろに話すみなみに、こなたの旦那がゆっくりと近づき、その手を取った。
「え?…あの…」
「そのピアノ…次は俺のために弾いてくれないか?」
「…は?…えっと…」
 みなみが何か答えるより早く、こなたのムチのようにしなるローキックが、旦那の太腿の裏に炸裂していた。

182 :命の輪、満ち足りて[saga]:2009/03/14(土) 18:20:52.61 ID:17BEUwA0

 四人が新婦の控え室に入ると、中ではみゆきが一人目を瞑って椅子に座っていた。
「…うわー…ゆきちゃん綺麗…」
 ウェディングドレス姿のみゆきに、思わずつかさが感嘆の声を上げる。
「こなた…なんなのかしらね。この敗北感は」
「なんというか…神々しさすら感じるね」
 みゆきが四人に気がつき、目を開けて椅子から立ち上がった。
「皆さん、来ていただけたんですね…ありがとうございます…えっと…大丈夫ですか?」
 みゆきは、こなた達の後ろの方で足を引き摺っている旦那を見て、心配そうに声をかけた。
「ああ、それは自業自得だからほっといて」
「そ、そうですか…」
「みゆき、ちょっと緊張してる?」
 みゆきの手が少し震えているのを見て、かがみがそう言った。
「はい…でも、嫌な感じではないんです…変かもしれませんが、心地よさすら感じるんです」
 震える手を、みゆきは胸元に抱え込んだ。
「かがみさん達も、こんな気持ちだったのでしょうか?」
「え、いや…どうだったかしら…」
「お姉ちゃんは結構ふつうにしてたよね…わたしはガチガチだったけど…」
「つかさの緊張っぷりは凄かったからねー」
 こなたがつかさの顔を見ながらニヤニヤと笑う。
「入場の時の新郎巻き込んで転んだ写真、まだ残ってるよ」
「こなちゃーん!それ消してって言ったじゃない!ってかもう忘れてよー!」
「はっはっは。あんな愉快なの忘れるわけ無いじゃない」
 二人のやり取りを見ていたみゆきがクスリと笑った。
「本当に…皆さんと会えて、良かったと思っています」
 そう言い出したみゆきに、四人の注目が集まる。
「あの時に皆さんと出会い、今まで繋がり続けてきたことが、この幸せに繋がっているのだと…」
 みゆきは目を瞑り、こなた達に深々と頭を下げた。
「今まで、ありがとうございました」
 そして顔を上げ、今度はニコリと笑った。
「そして、これからもよろしくお願いしますね」
 そのみゆきに、こなた達三人はだまって頷いた。そして、その様子を少し後ろの方で見ていたこなたの旦那が、みゆきに近づいて、その手を取った。
「みゆきさん」
「は、はい?」
「今から、俺と一緒に逃げませんか?」
 旦那が言い終わると同時に、こなたの雷のように鋭い裡門頂肘が、旦那の腰の辺りに炸裂していた。

183 :命の輪、満ち足りて[saga]:2009/03/14(土) 18:21:57.57 ID:17BEUwA0

「…軽いジョークのつもりだったんだけど…」
 四人にあてがわれた、式場のテーブル。その上に旦那が腰を押さえて突っ伏していた。
「いや…流石にあの場面でアレは無いわ」
 その旦那を、かがみがジト目で眺めていた。隣ではこなたが、腕を組んで頬を膨らませている。
「なにおっぱいに目が眩んでるんだよ。わたしのおっぱいじゃそんなに不満なの?まったく、嫁としてプンプンですよ」
「怒ってるのはわかるから、おっぱい連呼すな…」
 そんな三人の様子を見て、つかさがクスクスと笑っている。それを見たこなたが不満げな顔をした。
「なんだよつかさー。何がおかしいんだよー」
「ご、ごめんこなちゃん。なんて言うか…変わってないなって」
 つかさは少し俯き、もじもじと両手を合わせながら言葉を続けた。
「みんな全然違う道に行ってても、こうして会うとあの頃と変わってないなって…変わったところも、もちろんたくさんあるんだけど、大切なところは変わってないんだって…だから、わたし達の輪は繋がっていられるんだって…あ、そうだ」
 急につかさが、旦那の方に顔を向けた。
「だから、旦那さんも居てるんだよ、わたし達のあの頃の中に」
「…え?」
 旦那はつかさの言っていることがいまいち分からずに、首を傾げた。
「繋がり続けてたわたし達の輪に、旦那さんも繋がっているんだから、わたし達の大切なところはきっと旦那さんの中にも満ちてるよ」
「…でも、それで昔が変わるって訳じゃないよ」
「うん。昔は変えられないし、戻る事も出来ないよ…でも、引き摺る事はできるから」
 つかさはニコリと旦那に向かって微笑んで見せた。
「今も引き摺ってる昔に、旦那さんもそのまま繋がっているんだよ、きっと」
「昔を引き摺るのを、そこまで誇らしげにしてる人をはじめて見たよ…」
「そ、そっかな…えへへ」
 照れて頭をかくつかさを、旦那は優しげな微笑みで見つめた。
「なにいい雰囲気になってんだよーっ!!」
 そして、叫びと共に放たれた、こなたの閃光のような右ストレートが旦那の横っ面に炸裂した。
「なんだよ、つかさ!狙ってるの!?ダーリン狙ってるの!?浮気!?不倫!?そっちの旦那が泣くよ!?」
「ええ!?そ、それは困るよ…って言うか、最初からそんな気なんかないよー」
「…今の…俺が殴られる要素が何処に…」
 再びテーブルに突っ伏した旦那と、ギャアギャアと言い争っているこなたとつかさを呆れ顔で眺めながら、かがみはため息をついた。
「あんた達、いい加減にしないと…」
『あの、そろそろ式を始めてもよろしいでしょうか?』
 司会者が困った顔で、マイクに向かいそう言っていた。
「ほら、言われた」
 周りのテーブルから失笑が聞こえてくる。こなたとつかさは、真っ赤になって縮こまった。


 みなみのピアノに迎えられ、みゆき達がゆっくりと歩いてくる。その姿に、会場の誰もが惜しみない祝福の拍手を送った。
 新しく繋がるその輪が、幸せに満ち足りる事を願って。


- 終 -
184 :命の輪、満ち足りて[saga]:2009/03/14(土) 18:23:50.65 ID:17BEUwA0
以上です。

ホントは車中の会話だけで軽く済ませるつもりだったんですが、指がすべりました。
あと、みゆきさん。スレタイにもなっているのに、出番が少なくてすいません。
185 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/14(土) 19:01:02.75 ID:sQonj9Uo
>>184
指すべらすとか……GJ過ぎるぜ!
旦那自重wwwネタは面白いし、つかさの言葉に感動した
タイトルがまたいいな。乙!
186 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/14(土) 19:30:26.82 ID:9JXHphk0
ドレス姿のみゆきさんか……ゴクリ
187 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/14(土) 20:20:55.22 ID:9/yTgkAO
みゆき「今日は何の日かご存じですか?」
つかさ「ホワイトデーでしょ?」
みゆき「そうでもあるんですが・・・」
かがみ「あ、今日の夕刊に書いてた。円周率の日及び数学の日らしいわね」
みゆき「円周率の3.14からきてるそうです」
つかさ「ゆきちゃんって円周率何桁まで言えるの〜?」
みゆき「そんな大して覚えてないですよ」
かがみ「まあ聞いてあげるから、言ってみてよ」
みゆき「ではお言葉に甘えて・・・3.141592653589793238462643383ペラペラペラペラ・・・・・


――十時間後――


みゆき「ペラペラペラペラペラペラペラペラ」
かがみ「シ・・・・・死ぬッ!」
つかさ「お姉ちゃんおやすみー」

――数日後――


みゆき「ペラペラペラペラペラペラペラペラ」

つかさ「今日も続いてるんだー」
かがみ「私もう数えてないわよ」


――1週間後――


つかさ「高良の周り、人が集まってきたね」


――1ヶ月後――


つかさ「あれ?あの機械どこ行ったんだろ?」
かがみ「なんか博物館の展示品になるから持って行かれたみたいよ」
つかさ「へぇ凄いロボットだね」
188 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/14(土) 20:29:07.11 ID:UqQCnZc0
>>184
GJ!これからも、もっと指をすべらせてほしいものです
みゆきさんは登場頻度こそ少ないがインパクト大きかったからいいんじゃね?

>>187
だんだんドライになっていくつかさがこわいw


そういえば今日はホワイトデーか
あと数時間で何か書いてみようかな。たぶん無理だろうな
189 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/14(土) 22:46:52.35 ID:KY2EcaM0
コンクール作品書きあがりました!
鬱な作品なので、苦手な人は注意です。
といっても、そんなにキツイ描写はないと思いますが。

10レスほどいただきます。

190 :かぜのゆめがたり[saga]:2009/03/14(土) 22:49:49.34 ID:KY2EcaM0
〜こなたが遠くで手を振っている。
よく晴れていて、時折雲が日差しを隠す。気持ちいい。
ふと、何か重要な事を忘れている気がした。
気持ちがいい風。目を閉じて、ゆっくりと思い出してみようか。〜

私はバイクに跨りながら、こなたの家にやって来た。
今日は土曜日で時間が空いていた。
かと言って勉強をする気にはなれず、ごろごろと部屋を転がっていたときに、都合よくこなたから遊びに来ないかと誘われたのだ。
明日は私とつかさの22回目の誕生日。喜ぶべきなのか悲しむべきなのか、どうにもむんむんとした気分になっていた。
重低音を轟かせ続ける私の大型バイク。ハヤブサと言う名の、かつて世界最速の称号を欲しいがままにしたレーサータイプのバイクだ。
エンジンを切り、バイクを路肩に寄せて停め、窮屈なヘルメットを脱いだ。
高校を卒業してからもこなたの家には週一度程度で遊びに来ていたため、ここまで来る道順を体が覚えてしまった。
私の妹のつかさは今日、料理教室のため来なかったが、つかさも一緒にここへ来る事は多い。

「よ、こなた」

私が泉家の電話にワン切りすると、こなたがひょっこりと玄関から顔を出した。

「やあやあ、いらっしゃい」

相変わらず身長が伸びないままのこなたを見ると、何故か安心感のようなものを感じるものだ。
私はこなたの部屋に案内され、いつもと変わらない散らかった部屋を見て、また安堵を感じた。

「かがみ、このゲームしない?」

こなたが取り出したのは、いわゆる「ホラーゲーム」だった。こなたは人差し指を立てながら説明する。

「ほら、夏と言ったらホラーじゃん?死者のさ迷う島から、無事に脱出する事は出来るのか!?」
「ほう、面白そうじゃない。ちょっくらやらせてもらうわよ」

ゲームを起動するとおどろおどろしいBGMと共に、ホラー風味な書体で書かれた作品のタイトルがテレビ画面いっぱいに映し出された。
こなたも今日初めてプレイするらしく、新規でセーブデータを作成することになった。
191 :かぜのゆめがたり[saga]:2009/03/14(土) 22:50:41.10 ID:KY2EcaM0
>>190


「やっぱり変わらないわね」
「んー?」

画面内ではオープニングムービーがこのゲームのストーリーを演出していた。
私は目線をそこに向けたまま、こなたに言った。

「だって、多少ラノベをかじったくらいの人だったら、ほとんどがこなたの名前を知ってるくらいに有名になったのよ?」
「そだねー」
「お金だって沢山入ってくるんじゃないの?なのにこなたの生活って、昔と今で何にも変わってないじゃない」
「んー。いや、ほら。フィギアが増えたよ?」
「それだけ?」

こなたが小説界に名を現したのが、高校を卒業してすぐの事だった。
なんとなく書いてみた、と言って私とつかさに見せてくれた小説を出版社に持って行ったそうだ。
そのデビュー作がファンタジー小説で、なんともこなたらしい摩訶不思議な内容だったが、人をひきつけ放さない独特の力も宿していたらしい。
アイデア満載の変化球的なストーリー展開。続きが気になってしまう、ハラハラする戦闘シーン。
これらの才能を出版社が認めたらしく、これまたこなたらしい文法間違いや誤字脱字を修正して、全国の本屋にライトノベルとして出版された。
こなたの小説を読んだ人からの口コミや、ネットでの書き込みなどから評判が広がり、あれよあれよと言う間にこなたはラノベ界の頂点に達した。

「確かにあんまり変わってないかもね。昔も今もやりたい事は同じだからじゃない?」
「まあ、そんなもんかね」

〜私は野原に寝そべっている。
こなたがこちらに向かおうとしているが、私とこなたの間には川が流れていて渡れない。
仕方がない。私が向こうに行ってみようか。
しかし、いまいち気合が入らない。どうしたものだろう?まあいいか、特に何かあるわけでもなし。
こなたならマイペースに、私のところへやってくるだろうし。
プレッシャーをストレスとは感じず、褒められても受け流してしまう程、まるで目の前の川のように自由に流れていく体質。
こなたがマイペースだからこそ、周りの環境が変わろうとも、今までどおりでいられるんだろうと思った。
そう言えば、高校の卒業式の日がその逆パターンだったのかも知れない〜
192 :かぜのゆめがたり[saga]:2009/03/14(土) 22:51:53.92 ID:KY2EcaM0

春。まだ寒さを残していて、体育館の中ではストーブが活躍していた。
卒業式を終え、皆が塵々に下校していく中で、私たち四人は集まっていた。
この学校を卒業したからと言って、私たちは会えなくなる訳ではない訳だが、今までのような当たり前の生活が出来なくなるのも事実。
教室で四人弁当囲んで、毎日しょーもない雑談にいそしむ事も、もうないだろう。
そういったなか、こなたが泣いていた。
つかさもみゆきも泣いていないのに、この中で、言っちゃ悪いが一番泣きそうにもないこなただけが泣いていた。

「こなちゃん泣かないで、会おうと思えば明日でも会えるよ」
「んっ、うん……。ぐす……」
「そうですよ泉さん。寂しい事は無いですよ」
「う、うん……」

たまにはこなたも泣く事があるのかと思い、その時は納得していた。
しかし数ヵ月後、こなたとつかさと私でレストランへ行く機会があったため、ここぞとばかりにこなたにその時の事を聞いてみた。

「いや、大したことじゃないって……」
「あの時はまさかあんたが泣くとは思わなかったわ」
「んー、そうだね。高校生活がさ、なんだかんだで楽しかったのかな〜?と」
「ほう、あんたにしちゃ、まともな事を考えてたのね」
「お父さんの受け売りなんだけどさ、『人生は夢』って言ってね、つまり夢の中なんだから覚めるまでに楽しんだもの勝ちってわけさ」
「だからこなちゃんは、高校のときに目いっぱい楽しんでたの?」
「そだよ、卒業式に流した涙は、その反動ってことさ」
「はは〜ん、だからあんたは楽しようと、平気で宿題を見せてもらおうとしてたわけね」
「か、かがみ様?ちょっと顔が怖いっすヨ?そ、そ、そうだ、ちょっとさ、実は私、小説書いてみたんだけどさ、読んでみない?」

〜こなたが船を用意している。
さすがこなた。どこかの橋を渡ってくるのかと思っていたら、まさか船でこっちへやって来るとは〜
193 :かぜのゆめがたり[saga]:2009/03/14(土) 22:53:16.19 ID:KY2EcaM0
>>192

ホラーゲームは徐々に盛り上がりを見せていた。
雰囲気は和風と言った感じか。マップの中には椿の生垣があったり、瓦屋根の小屋が並んでいたり。
ついさっきはおまわりさんの幽霊と戦い、なんとか成仏させる事ができた。
どちらかと言うと、謎を解く事に重点が置かれているようで、なかなかヒントを見つける事が出来ない。
そのため主人公はさっきからマップの中をうろちょろ動き回っているばかりだ。

「明日はかがみんの誕生日だよね、しかも七夕で。短冊は今年は飾るの?」
「多分つかさが準備するんじゃないかな?と、言っても、つかさ一人にやらせる訳にはいかないけどね」
「つかさだから、竹を一本切るのに苦労してそうだね。ところで今日はつかさはどうして来なかったの?」
「あの子は料理教室を開いてるのよ。第一土曜と第三土曜はね」
「ああ、そう言えばそうだったね」

つかさは家に近所の人を集めて、アイデア料理を教えていた。
腕前はまだ学生とは言え、やはりプロを目指しているだけありそこら辺の主婦よりも断然料理が上手だった。
アルバイトの代わりとして開き始めた料理教室だが、こなたが小説家になった時と同じように、つかさが料理教室をやると言い出したときは驚いたものだ。
あのつかさが人に物を教えるようになったのだから、その時はつかさが別人になってしまったのではないかと思えたほどだ。

「そうだ、待ってて。今アイス持ってくるから」
「お、サンキュ」

そう言って隣に座っていたこなたが立ち上がった。こなたの長い髪の毛からやさしい香りがした。
誰もいなくなった部屋を見渡すと、棚の上に置かれた写真の中のこなたの母親と目が合った気がした。
こなたもつかさも変わった。いや、本質的には変わっていない。しかし、確実に成長している。
みゆきも、アメリカへ留学していて、今頃私よりずっとレベルの高い勉強をしてるんだろう。
その中で、私だけが取り残されてしまっているようだった。

「ほい、バニラとチョコどっちがいい?」
「あ、ありがと、こなた。ねえ、みんな変わったわよね、なんかさみしいな、なんて」
「……」ニヤリ
「お、おまっ」
「さみしんぼかがみん、萌え〜。やっぱりウサギみたいでかわいいの〜!」
194 :かぜのゆめがたり[saga]:2009/03/14(土) 22:54:39.57 ID:KY2EcaM0
>>193

昔と全く変わらず、今もこなたと同じようにはしゃいでいた。
もう帰らなくてはならない。そんな時間になるのはあっという間の事だった。
日が沈んだばかりでまだ若干明るかったが、やはりつかさの事を考えると少し早めに帰ったほうが良いだろうと思った。

「じゃあ、またねこなた」
「ほい、またねー」

私のハヤブサのアクセルを少しだけ回すと、スムーズに加速していき徐々にこなたの家が遠ざかっていく。
少し暗いが、まだ少しは時間があった。せっかくの休みなのだから、山に走りに行ってみようかと思い、少し遠回りをして帰る事にした。
山の一角に、夜景のきれいなスポットがあった。気晴らしにはちょうどいいと思ったのだ。
前々から風を切って走るこの乗り物は楽しそうだとは思っていた。
しかしバイクの免許を取ろうと決断する事が、一番ハードルが高いものだ。
そこに、こなたの『人生は夢』と言う言葉が頭をよぎったのだ。我慢するより、楽しまなくては。
バイクの免許を取ってしまえば、あとはするすると魅力にはまって行くばかりだった。
そしてとうとう、バイクの一つの到達点とも言える、ハヤブサを購入するに至った。

後ろからスポーツカーが私の後ろにピッタリと付いて走っている。のんびりと走っていた私を、いつ追い抜こうか見計らっているらしい。
車体が小さいためか、バイクは自動車から甘く見られやすいため、こんなことは良くあることだった。
赤信号で止まると、先ほどのうなりを上げるスポーツカーが私の隣に並んだ。信号が青になり、スポーツカーが発進する。
私も強くアクセルを回すと脳味噌がずれそうになるほどの強烈な加速Gと共に、あっという間にミラーに写るスポーツカーを小さな点にしていってしまう。
どんな自動車でも、加速力でこのバイクに勝てるわけが無いのだ。
まったくこんな事にむきになるなんて。その時は自分が何かに置いていかれる事に敏感になっていたのかもしれない。
高校の時にはこなたやつかさに勉強を教えていたし、面倒を見ていたのは私だった。なのにいつからだろう。
みんなかが変わっていく中で、私だけはさなぎになったまま春を過ごそうとしてるのだ。
195 :かぜのゆめがたり[saga]:2009/03/14(土) 22:56:05.90 ID:KY2EcaM0
>>194

3秒もしないうちにメーターの針は100kmを超えていた。そのスピードのまま私は山道に突っ込んだ。
見通しが悪く、くねくねと曲がる山道を高速で私とハヤブサが登っていく。
明らかに危険なのは分かっていたが、何かに追われているような気がして、スピードを緩めようとはしなかった。
日はすっかり沈み、あたりは暗くヘッドライトで照らされた部分しか視界はない。
竹がぶんぶんと通り過ぎていく。明日は七夕。短冊にはなにを書こうか。
皆は私と違って、短冊に書くべき事はすでに叶っていると言える。そして更に高みを目指すのだ。
私が願いを書けば、皆に追いつく事が出来るだろうか?
天を望めば、生い茂る木々の隙間から、ベガとアルタイルが時折姿を現す。
流石にここでは天の川は見えないが、織姫と彦星が川を隔てて離れ離れになっているのだ。

〜こなたが船を漕いでやって来る。
織姫と彦星みたいに、橋を渡って来れたら良かったのに。
そうか、七夕は明日だったっけ。まだ橋は架からない。仕方が無いのかもしれない〜

もう少し行けば、夜景のきれいな場所に到着する。
あたり一面を見下ろしてみたい。ベガとアルタイルを見てみたい。
そうだ、短冊には「自信が欲しい」と書いてみよう。
22歳にもなって、短冊に願いを書くなんて、やっぱり私たちは根本的には変わっていないのだろう。
きついコーナーを曲がり終わると、直ぐ先で光る点が動いているのが見えた。。
その時はなんなのか分からなかったが、少し近づくとウサギの目が光っていたのだと気が付いた。
ウサギが私のバイクの進行方向で立ち止まる。危ない、このままでは轢いてしまう!
私は何かを叫んだ。こなたが私の事をウサギに似ているといっていた事を一瞬だけ思い出した。
ハヤブサがウサギに襲い掛かる。私はパニック状態のままブレーキをかけた。
しかし強くかけすぎたらしく、バイクはバランスを失い、私を放り出した。
宙に浮いている私は、ウサギが山に隠れていくが分かった。
大きな音を立てて地面を道路を滑っていくバイクと私。
その先には、切り立った崖がある。
人生は夢。いつかは覚めるものだ。
196 :かぜのゆめがたり[saga]:2009/03/14(土) 22:56:59.36 ID:KY2EcaM0
>>195

〜船が近づいてくる。
驚いた。
船に乗っているのはずっとこなただと思っていたが、こなたのチャームポイントのアホ毛、泣きボクロ、猫口がない。
こなたの部屋に置かれた写真の中で、いつも微笑んでいたこなたの母親が、今私の目の前にいるのだ。
名前はかなたと言うのだとこなたから聞いているが、確かこなたが幼い時に亡くなっているはずだ。
気持ちのいい風が、私の髪の毛を悪戯に乱し、かなたさんのワンピースをひらひらと揺らし、太陽の光が私とかなたさんを照らしている。

「かがみちゃん、今までこなたと仲良くしてくれて、ありがとう」
「お迎えに、来てくれたんですか?」
「そうです。この川は三途の川といって、この向こう岸があの世ですよ」
「そんな、やっぱり私、死んじゃったんですか?」
「残念だけれど、そうなんです。私が抱いてあげますよ。その体じゃあ立てません」

そう言われて気が付いた。私の下半身がない。きっと事故のせいだろう。こんな体じゃあ、生きていられるはずが無い。

「さあ私に掴まってください」

私はかなたさんに抱かれたまま、三途の川を渡っていく。
かなたさんの髪の香りは、こなたと同じやさしい香りだった。

それから三年後、こなたは一つの小説を書き上げたらしい。
それは、バイクに乗った女の子を主人公にした、日常と非日常を組み合わせた、わくわくするような物語だという。
タイトルは「かぜのゆめがたり」
197 :かぜのゆめがたり[saga]:2009/03/14(土) 23:05:52.35 ID:KY2EcaM0
以上です。意外に短く収まりました。

これを書くきっかけになったのが、いつだったかの、ゆたかがオープンカーに乗ってる小説からと、いつだったかの、かがみがバイクに乗りサイドカーにゆいねえさん乗せ後ろにつかさ乗せる一レス物あたりですが。
実は、昨日大型自動二輪の免許を取りました!
なんと昨日は13日の金曜日だったのです!
そして今回のお題を立候補したのは私です!

これは、私のリアルな死亡フラグとして受け取った方が良いでしょか?
もし私が死んだら、私のノートパソコンのDドライブは破壊してください。お願いします……。
198 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/14(土) 23:34:28.38 ID:UqQCnZc0
>>197
投下乙&免許取得おめ
かがみの夢が覚めちまったのは悲しいが、こなたの描く夢の世界でまだ生きていると考えれば少しは救われるのかな
それにしても淡々とした描写がなんともいえないんだぜ

>私のリアルな死亡フラグ
これでハヤブサとやらを購入したら死亡フラグ確定かもなw
199 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/15(日) 00:12:21.88 ID:vS3lKQs0
>>198

感想ありがとうございます!
とりあえず、ハヤブサは私の性格上買わない気がします(そもそのお金が……)。
これで死亡フラグ回避!?

淡々とというのが私の特徴なのかなんなのか、そのつもりも無いのにいつの間にか淡々とした文章になってますww
200 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/15(日) 00:36:09.35 ID:EmHHPxA0
>>197
作風が好み。描写も丁寧で感心します。
ただ一つ、ちょっとお題が見えにくいかな、という気がしました。
それ以外は読みやすくて文句もなく、惹きこまれました。

何はともあれ、素晴らしい作品をご苦労様でした!
201 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/15(日) 01:09:33.68 ID:ktEd.3I0
>>184です。レスありがとうございました。
旦那が自重しなかったのは、こなたが無事出産を終えた反動からだと思われます。
そして、指がすべらなければ、みゆきさんは出番すらなかったことに後から気がつきました。

>>197
綺麗で読みやすく良い作品だと思います。
ただ>>200でも書かれている通りお題が見え難いというのは、俺も感じました。
…というか、どこが死亡フラグなのか俺にはわかりませんでした…読解力無くてすいません。
202 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/15(日) 01:31:14.01 ID:KiCgDYw0
日付変わっちゃったけど、ホワイトデーの書けたんで投下します
いろいろと言い訳したい事はあるが、とりあえずこれだけ言わせてくれ

本当に申し訳ない
203 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/15(日) 01:31:56.88 ID:KiCgDYw0
 コンビニやスーパーの店頭に少し高級なクッキー等が姿を現している。
 そう、世間はホワイトデーというイベントを迎えていた。
 そんな中、なんだかソワソワして落ち着かない様子の少女がひとり。
 柊家の三女、かがみである。

 〜衝撃のホワイトデー〜

 ホワイトデーなんて、私にとってはたいして意味の無いイベントに過ぎなかった。
 バレンタインにつかさがチョコをくれるので、そのお返しとして何かあげる。
 その程度の、ちょっとした事務的なやり取りをするだけの日に過ぎなかったのだ。
 けれど、今年は違う。
 去年までのホワイトデーと何が違うのかというと、それは私の立場だ。

 話の発端は約1月前、つまり今年のバレンタインまでさかのぼる。

 今年のバレンタイン、私はほんの気まぐれでチョコをつくってみることにした。
 まあ、受験戦争でやさぐれた心に、少しばかりゆとりを持たせてみようと考えたのだ。
 つかさに手伝ってもらうことにしていたが、それでも美味しく作れる自信はなかった。
 私は料理があまり得意ではないし、それにチョコを手作りするのは初めてだったから。
 なので、私は自分の家族の分だけ作ることにした。
 お父さん、お母さん、いのり姉さん、まつり姉さん、つかさとついでに自分の分。
 この6人分しか作らないつもりでいたのだ。

 ところが、計画通りにはいかなかった。
 私がオリジナリティを爆発させたチョコレートは、味見段階において非常に残念な味で。
 味の調整やら何やらを繰り返してるうち、チョコはその量をどんどん増していったのだ。
 6人分が12人分に、12人分が20人分に。
 最終的になんとかそれなりの味に落ち着きはしたが、とんでもない量になってしまった。

 このチョコの量はちょっとした大問題だった。
 捨てるのはあまりにもったいない。
 かといって、6人で処理するとなると地獄を見ることになる。主に私の体重的に。
 であれば、親しい人に配らせていただくのが良策というものだ。
 例え味と見た目に全く自信の無い代物だとしても、背に腹は代えられない。

 という訳で、やむにやまれぬ事情に基づき、私はチョコをみんなに配ることにした。
 しかし、ここで新たな問題が生じることとなる。
 配るのであればラッピングする必要があるのだが、私はそれをきっかり5人分しか用意していなかったのだ。
 仕方がないので、慌てて家中をひっかきまわして包装紙やリボンなんかを集める。
 お母さんとつかさの協力もあり、なんとか人数分の素材を集めることには成功した。
 とはいえ、家族用以外のものは色も材質も全部バラバラで統一感の無いラッピングになってしまったのだが。

 まあ、手作り感まるだしで多少不恰好だろうと、友チョコならば別にかまわないだろう。
 私はそう勝手に納得して、バレンタイン当日にそれを配り歩いた。
 こなた、みゆき、日下部、峰岸、ゆたかちゃん、みなみちゃん、田村さん、パトリシアさん。
 さらに、その日はこなたの家に遊びに行く予定があったので、こなたのお父さんにもあげた。
 あと、たまたま遊びに来ていた成実さんにもあげた。
 それでもまだ数袋分余ったので、既に1回あげているつかさと姉さん達にもう1回ずつあげたりもした。
204 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/15(日) 01:32:40.56 ID:KiCgDYw0
 そんなこんなでチョコも全部無くなり、バレンタインはなんとか無事に終了。
 いろんな人にそれなりに感謝され、私はとても満足した気分になったのだった。
 で、この時、私はすべてのイベントが完全に終了した気でいた。
 ところが、だ。
 世間にはバレンタインと対になるホワイトデーというイベントが存在したのだ。
 バレンタインに受け取った想いを、これまた想いで返すというイベントが。

 そう、私は初めて想いを返される立場になったのだ。
 それがこんなに落ち着かないものだとは思わなかった。
 別に見返りを求めてチョコを渡したわけではないが、正直言ってお返しを貰えないのも何か寂しい。
 かといって、あの程度の物を渡したくらいでお返しを期待するのも何か間違っている気がするし……
 まあ、貰えなくて当然と思ってれば良いわけなんだけど……でも、何も貰えないのは寂しいなぁ……
 いやいや、こういう思考はいかん。貰えなくて当然と思っていなければ……でもなぁ……

 ああ、もう!
 本当に落ち着かない。こんな気分になるのはいつ以来のことだろうか。
 とりあえず、いつものようにコーヒーでも飲みながら新聞を読もう。
 いつもと変わらない日常生活をトレースすることで、この浮ついた気分を払拭するのだ。
 ほんの少しでも態度にだしてしまえば、アイツにからかわれるのが目に見えている。

「おはよー、かがみ」
「おはよう、まつり姉さん。今日は早いのね」
「かがみこそ、いつもより早いんじゃない?」
「そ、そうかな?」
「そうよ。あ、ついでだからコーヒーあんたの分も淹れてあげるわね。飲むでしょ?」
「うん。ありがと」

 そうなのだ。いつもより2時間ほど早く目が覚めてしまったのだ。
 この時点でいつも通りではない訳だが、目が覚めたものは仕方ない。
 無理して二度寝する方が、いつもの私らしくない気がするし。
 そんな風に自分を納得させながらコーヒーをすする。
 ほどよい温度だが心なしかいつもより苦い気がするのは、私の心情の現れだろうか。
 平常心、平常心。
 ここで挙動不審になっては、まつり姉さんにもからかわれかねない。

「あ、そうだ。かがみ、これバレンタインのお返し」
「え?あ、あー……ありがとう、姉さん」
「なによ、その顔?嬉しくないの?」
「いや、そうじゃなくて。姉さんからお返しを貰えるなんて思ってなかったから、ちょっとびっくりしちゃって」
「ひどいなー、かがみは。私のこと、そんな薄情なヤツだと思ってたんだ?」
「あ、いや、そうじゃなくて。姉さんだけじゃなく、誰からも何も貰えないだろうなーって思ってたのよ」
205 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/15(日) 01:33:51.59 ID:UxzcT1o0
>>197
乙&おめ
読みながら、かがみんの行動が死亡フラグだ、、、と思ってしまった
だから俺はお題に沿ってはいると思うぜ
あとバイクに乗るかがみんかっこいいww
206 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/15(日) 01:33:53.64 ID:KiCgDYw0
 まつり姉さんから、少し洒落た感じの小さな紙袋を受け取る。
 ヤバイ。相手は身内だというのに、相当嬉しい。
 一気に気持ちが高揚して、身振り手振りも大きくなってしまう。
 たぶんかなり挙動不審。
 この調子だと、身内以外から貰った時は大変な事になってしまいそうだ。
 落ち着け。落ち着くんだ、私。
 手にしているコーヒーを一気に飲み干す。

「これ、開けてもいい?」
「もちろん。むしろ、目の前で開けてほしいかな。かがみの反応が見たいから」
「私の?……何か変な仕掛けとかしてるんじゃないでしょうね……?」
「それは開けてのお楽しみ」

 紙袋の中には20cm×5cm程度の長方形の箱が入っていた。
 さほど重くはないのでお菓子の類かな。
 変な仕掛けも入ってなさそうに思えるけど、どうだろう。
 幼い頃、プレゼントの箱を開けるとムカデのおもちゃが飛び出す、といった悪戯をされた記憶が蘇る。
 あの時は横にいたつかさが大泣きしてくれなければ、私も泣いていたかもしれない。

 私はかなりおっかなびっくりな手つきで、慎重に少しずつゆっくりと蓋を開ける。
 中に入っていたのは、窓から差し込む陽の光をうけてキラキラと輝く――
207 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/15(日) 01:34:41.47 ID:KiCgDYw0
「ええっ!?……ね、姉さん、これって……ネックレス、よね?」
「どう?予想よりちょっとは良い物だったから、びっくりしたでしょ?」
「ちょっとは、って……ちょっとどころじゃないわよ、これ。石まで入ってるし、どう見ても安物には見えないわよ?高かったんじゃない?」
「まあ、結構高いかな。でも、別に気にしなくていいわよ」
「き、気にするわよ!だって、私があげたのって、いびつで、正直言って味もイマイチな、あの程度のチョコだったのよ!?」
「だから、別に気にしなくていいって」

 あまりにも予想外。これは私には過ぎた代物だ。簡単に受け取るわけにはいかない。
 かといって、せっかくの贈り物をつき返すのは姉さんに悪いし……困った。
 どうしよう。どうしたらいいんだろうか。
 初めてホワイトデーのプレゼントを貰い気分が高揚しているせいなのか、考えがまとまらない。
 どうしていいかわからず、私は手にした箱の中に納まるネックレスをじっと見つめることしかできないでいた。

「かがみ、嬉しくないの?」
「そりゃあ、嬉しいわよ。でも、これじゃあ私があげたものと釣り合いがとれないっていうか」
「そう?それじゃあ、釣り合いがとれるようにしよっか」
「へ?それって、どういう――」

 顔をあげると、まつり姉さんは私のものすごく近くに立っていた。
 日常会話すら成立しないんじゃないかと思える程に、ありえないくらい近い間合いだ。
 突然の事に驚いて身動きの取れない私の顔――左の頬――に、まつり姉さんは優しく手を添える。

「かがみ、あんたって可愛いわね……」
「ま、まつり姉さん……」

 まつり姉さんは、貰っちゃうからね、と小さく言ってから、その顔をさらに近づけてくる。
 ああ、そうか。この間合いで成立することといったら、もうアレしかないじゃない。
 でも、不思議と嫌なカンジはしなかった。
 むしろ、ほんのりいい気分というか、嬉しい時と似たような気持で、なんだか体も熱い。
 何も考えられなくなって、私はそっと目を閉じた。




208 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/15(日) 01:35:35.28 ID:KiCgDYw0
「ちょっと!何やってんのよ、まつり!かがみ!」
「ちっ。いいところで邪魔が入ったか」
「い、いのり姉さん!?……ち、違うの!コレは、その、ホワイトデーがまつり姉さんで!高価な私のチョコにお返しが代償で!」
「かがみ、説明しなくても大丈夫よ。まつりの企みくらい、だいたいのことは想像がつくから」
「え?まつり姉さんの……たくらみ?」
「何言ってるのよ、姉さん。私はかがみにホワイトデーのプレゼントをあげてただけよ?」
「本当にそれだけなのかしらね」

 いのり姉さんは、まるで映画に出てくる探偵のような鋭い目で周囲の状況を観察する。
 ひとしきり状況を確認した後、姉さんは私の方に視線をむけた。
 いのり姉さんにじっと見られて、私は自分の顔がまだ熱を帯びているのに気がついた。
 冷静に考えてみれば、さっきの私はまつり姉さん相手にいったい何をしていたんだろう。
 ああ、恥ずかしい。そして熱い。顔から火がでそうだ。

「まつり。あんた、かがみの飲み物に何を入れたの?正直に言いなさい」
「やだなぁ、別に何も――」
「あんたの秘密を全部お母さんに暴露してもいいのよ?死ぬつもり?」
「お酒を入れさせていただきました」
「やっぱりね。そんなとこだろうと思ったわ。それで?他に言うことは?」
「ごめんなさい。もう2度といたしません」
「ま、プレゼントをあげてたのは本当みたいだし、まるっきり悪意でやった訳じゃないんでしょうから、もういいわ」

 最後に、この事はお母さんとつかさにはくれぐれも内緒でお願い、とだけ言ってまつり姉さんは自分の部屋へと戻って行った。

「まったく、まつりったら油断も隙も無いんだから……かがみ、大丈夫だった?」
「う、うん。ありがとう、いのり姉さん」
「どういたしまして。どう?気分も落ち着いたかしら?」
「うーん……まだちょっとふわふわしてるかも」
「じゃあ今がチャンスかしらね」
「え?なに?」
「な、なんでもないわ。それより、はいこれ。私からもバレンタインのお返しよ」
「ありがとう、いのり姉さん」

 いのり姉さんがくれたのは、きれいにラッピングされた小さな箱。
 開けてみて、と姉さんに促され、貰ったその場で箱を開ける。
 中に入っていたのは、窓から差し込む陽の光をうけてキラキラと輝く――
209 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/15(日) 01:36:20.01 ID:KiCgDYw0
「ええっ!?……ね、姉さん、これって」
「気に入ってもらえると嬉しいんだけど、どうかしら?とりあえず着けてみてよ」
「う、うん」
「ああ、違うわよ。それはそこに着けるんじゃないわ」
「え?そうなの?」
「ほら、そっちじゃなくて、こっちに着けるの。薬指」
「え?」
「大きさもぴったりみたいね。よかったわ」

 気がつくと、いのり姉さんは私のものすごく近くに立っていた。
 指輪を着けかえるために私の手をとっているので、通常ではありえないくらい近い間合いだ。
 状況をよく理解できないでいる私の顔――左の頬――に、いのり姉さんは優しく手を添える。

「まつりに譲るわけにはいかないのよね……」
「い、いのり姉さん……」

 いのり姉さんは、かがみは私が貰うの、と優しく言ってから、その顔をさらに近づけてきた。
 あまりの展開についていけず、今度は目を閉じることすらできなかった。

 ホワイトデー、おそるべし。いや、本当に恐ろしいのはこの姉達の方か。
 あ、こなたやみゆき達からは普通にお菓子やハンカチなんかを貰いました。
210 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/15(日) 01:37:40.77 ID:KiCgDYw0
以上です
当初はこなつかみゆ+1年生を相手にテンパるかがみでも書こうと思ってたけど
何でこんな事になっちゃったんだろうww
あと、割り込みは気にしなくておkです。こんな作品だしw

コンクールも今日で終了か。みんながんばれー
211 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/15(日) 02:07:27.49 ID:EmHHPxA0
>>210
うーん、これは全員分のお返しまで読みたかったなあ
面白い話だっただけにちょい残念
乙!
212 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/03/15(日) 02:47:21.06 ID:hIBN.n60
>>197
拝見させていただきました。
作者の登場人物に対する愛が反映された清涼感のある好篇に仕上がっていると思います。
三途の川での邂逅は母性愛?に溢れていて読んでいてとても温かい気持ちになれました。
ただスポーツカーは事故の伏線かと思ったらあんまり関係ありませんでしたね。
お疲れさまでした。

>>210
まさかの百合展開にお姉さんびっくりだー(ゆい)
かがみんのデレデレ具合が読んでいてなんとも微笑ましかったです。
普段ほとんど出番のない姉二人にスポットを当てたのも良かったですね。
これほど完成度の高い作品を短時間で仕上げることができるなんてスゴイです。

人の作品を批評しといてナンですが、私も投稿させていただきます。
初投稿です。1レスのみの短編ですが一応コンクール応募作品でございます。
皆さんのレベルが高すぎてどうしようかと思いましたがせっかく書いたので投下させていただきます。
最初から最後まで延々と喋ってるのは日下部です。
例の舌足らずな声で脳内再生してもらえるとありがたいです。
話があっちこっちに飛んで読み辛いと思われますが、それも彼女の魅力とみてご容赦くださいな。
213 :柊ってばさぁ[saga]:2009/03/15(日) 02:52:01.70 ID:hIBN.n60
「・・・んでさ、いっつもちびっ子にべったりじゃん。
柊の妹もそだけどあの4人ってヴぁ私たち眼中にないっちゅーか、薄情ちゅーかさぁ・・・分かるだろー?
いつまでも背景コンビじゃないんよ。私たちは!
・・・最近よ〜やく話す機会が増えたってのにさぁ・・・修学旅行でも結局あの二人くっついちゃって・・・
私たちの居場所はどこよ?ないじゃん!もう5年も同じクラスなんだよ?せ〜っかく一緒に色んなとこまわろと思ったのに・・・
いや!そんな別に柊に構ってもらえないから寂しいってわけじゃナイんだけど〜・・・///
最後なんだからたまにはいいじゃんって・・・なによー?そのかおー。
・・・あやのぉ〜アンタもたまにはガツンと言ってやんなさいよガツンと。アンタ私よりさらに存在感ないじゃん。
もうすぐ卒業式なんだし思い出つくろよ。お・も・い・で。
たとえば遊園地とか買い物とか・・・って、アイツの趣味なんだっけ?ゲーム?マンガ?
そいやたまにちびとラノベがどうとかっつー話してるの見かけるナ・・・
こりゃー私も読むっきゃないね。そうすりゃ少しは話題についてけるだろ?でもそうゆーのってどこで売ってんだ?セブン?ローソン?
・・・へ?コンビニには置いてない・・・?ってわかっとるわー!ボケたの!
あーあ。あやのじゃ物足りないねえなぁ。もっとこうスパーンとくるツッコミが欲しいのよ。スパーンと。
ツッコミにかけちゃあ柊に勝るやつはいないんだよね〜。
なんせあの鬼のような形相で『んなことあるかい!』って言われた日にゃそりゃあもう・・・いや鬼なのはいつものことかぁ・・・
ん?こんなこと聞かれたらマズイ?だいじょぶだって。どうせちびのクラスでだべってンだからさ。
ま、怒ったら怒ったでそれがまたカ〜ワイイんだけどなアイツー。どしたの?青い顔して・・・なに?うしろ???・・・・!!」
214 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/15(日) 03:41:05.07 ID:EmHHPxA0
>>213
かがみ「作品投下宣言と1レス目を見つけて「おっ、リアルタイムか!」って思って何度もリロードしたのになかなか続きが来ないから「どうしたのかなー」って思ってもう一度投下宣言を見てみたら、そしたらそこに「1レス物」って書いてあって何だーって思った時の残念さって言ったらないのよねー!」

文章は上手いと思うんですけど、さすがに1レスじゃ短すぎました。
ですがよく斬新なことにチャレンジしたなーと思います。
215 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/15(日) 07:12:56.45 ID:sjeoPwSO
>>210

こーいう話好きだわ(´∀`)
姉妹百合とか大好物なんだぜww
216 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/15(日) 10:30:43.95 ID:KJt42x.0
婿寄せの儀


 深夜。
 神社の奥の間。秘密の儀式を行なう際に用いる個室に、いのりはいた。
 普段の巫女の装束ではなく、正式な神職の装束をまとっている。
 いのりも、母のみきも、正式な神職の資格をもっているが、普段は父のただおを立てて、神職として振舞うことはない。
 しかし、今回は、柊家の後継者として必要な儀式を執り行なうために、いのりはその装束をまとっていた。


 柊家は、現存する家系図から最大限さかのぼれる過去からたどっていっても、生まれてくる子供はことごとく女性だった。
 よって、代々、婿取りは一家の一大事である。
 そのため、柊家の女性には代々、ひとつの秘儀が伝承されていた。
 通称、婿寄せの儀。正式名称は、誰も知らない。それは、男には知られてはならないものとして、文書には一切残されなかったから。


 いのりが短く何かを唱えると、二本の蝋燭に唐突に火がついた。
 その明かりが、桶にはった水面(みなも)を照らす。
 いのりがさらに何かを唱えると、水面に何者かの顔が映し出された。
 いのりは、それをじっと凝視した。
 顔かたちは、少なくてもいのりの好みではあった。どこかしら、父のただおに似ている部分もある。
「自分では、ファザコンのつもりはなかったんだけど……」
 そんなつぶやきも、誰にも聞かれることはない。
 いのりは何かを唱えながら、右手を水面につけた。
 相手の経歴から人格までありとあらゆる情報が、脳に直接送り込まれてくる。
 彼は、神社を背負っていくのにふさわしい人徳があり、そして、いのりにとっても好ましい性格を有している人物だった。
 この人なら、生涯愛していくことができるだろう。
 いのりは、そう結論付けると、儀式の最終段階に入った。
 朗々と祝詞を唱える。
 それは、ロマンチックにいえば、自分と相手とを見えない運命の赤い糸で結びつける行為であり、悪くいえば、相手を自分に縛り付ける呪縛であった。
 その儀式を静かに終えると、いのりはまた短く何かを唱えた。
 蝋燭の火が唐突に消え、桶の中の水が一瞬にして蒸発して虚空へと消えていった。
 いのりは、何事もなかったかのように、その場をあとにした。



 いのりが彼と「運命的」な出会いをしたのは、その二ヵ月後のことである。
 そして、一年後には、柊家は無事に婿を迎えることとなった。
217 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/15(日) 10:55:23.78 ID:ZT2Mmiw0
>>216

GJでした。
なるほど、みきさんもこうやってただおさんを手に入れたわけだ。

誰も投稿しませんようでしたら、10分後にコンクール参加作品を投稿させていただきます。
218 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/15(日) 11:05:28.38 ID:ZT2Mmiw0
誰もレスしませんようなので、コンクール参加作品を投稿させていただきます。
タイトルは「青い髪の天使が見守る父娘」
使用レスは7レス、微シリアス系(?)となっております。
それでは最後までご鑑賞願います。
219 :コンクール参加作品@2009/03/15(日) 11:06:44.74 ID:ZT2Mmiw0
 あるところに一組の父娘(おやこ)がおりました。

 父は妻を早くに亡くしていました。

 父はとても悲しみました。それこそ死んでしまおうかと考えてしまうほどに。

 しかし、そうはしませんでした。

 なぜなら、妻が残した宝を守るため、妻が残した命を育てるため、死ぬわけにはいかなかったのです。

 これはそんな父娘の物語。





                                      青い髪の天使が見守る父娘





「お父さ〜ん、早く早く。」
「こら、走っちゃだめだぞ。」

 妻が亡くなってから5年後、父娘は石川県の寺にある妻の墓に墓参りに来ていた。娘は少々はしゃいでいるようだった。娘からすれば、墓参りというより遠出のお出かけといった感じのようだ。埼玉県から来たのだから当然といえば当然かもしれない。その娘は死んだ妻によく似ていた。違う所といえば、髪型と左目下の泣き黒子の有無くらいだろうか。きっと妻のように可愛く育つだろう。…容姿が。父は妻の墓の前に立つと花を添え、目を瞑り、手を合わせた。すると、横ではしゃいでいた娘も慌て父と同じように手を合わせた。

(久しぶりだな。俺も娘も元気にやってるよ。心配いらないぜ。でも・・・)

 父は目を開けて目の前の妻の墓を見た。そして、思い出していた。妻が死んだ日のことを。最後に妻はなんと言っただろうか。

“幸せだったよ”

 そうだ。妻はそう言って笑って死んだっけ。それを思い出す度に考えてしまう。あの言葉は本当だったのだろうか、と。今となってはその真偽を確かめるすべはないのだが。

「お父さん、どうしたの?」

 いつの間にやら目を開けていた娘が父の顔を覗き込んでいた。

「なんでもないよ。」

 そう言うと父は娘の頭に手を置き、撫でていた。
220 :コンクール参加作品A2009/03/15(日) 11:07:27.77 ID:ZT2Mmiw0

「ふ〜ん。」

 娘はまだ少し納得ができなかったのか、首を少し傾けた。そこへ、

「あ、おじいちゃん!」

 花と水の入った入れ物を持った男性が現れた。娘はおじいちゃんと呼ぶその男性の元に駆け寄った。男性は花を持ち替えて娘の頭を撫でていた。そして、墓の前まで歩いて来た。

「お義父さん、どちらに行かれてたんですか?」
「ん?ああ、ちょっとここの住職さんと話しにな。」

 そう言うと男性は墓に水を掻けて花を墓に添えた。しかし、花を添えた墓はすでに花が置いてある墓ではなく、その隣の墓だった。男性は墓の前で目を瞑り、手を合わせた。

「久しぶりだな、かなた、それにこなた。元気にやってるか?って、死んでるのに元気もないか。俺たちは元気にやってるよ。今日はその報告に来たんだ。」

 そう言うと男性、泉そうじろうは目を開けるのだった。





「カエルさ〜ん。」

 娘は近くの水場で遊んでいた。その様子を父と祖父は石椅子に座って見ていた。二人の間には少々重い空気が流れていた。

「あれから10年か・・・。」
「5年ですよ、お義父さん。」
「5年も10年もそう変わらんさ。」
「いや、5年も違ったら小学生も高校生になっちゃいますよ。」
「・・・うまいこと言うね。」
「元ネタありますけどね。」
「・・・」
「・・・」
「まさか墓石でドミノ倒ししよう、なんてこと考えてないですよね?」
「い、いくら俺でもそんな罰当たりなことせんよ。」
「そうですよね。」
「・・・」
「・・・」
((まずい、話題が見つかんない・・・))

 二人はその場の空気を変えようとしているようだが、なかなかうまくいかなかった。
221 :コンクール参加作品B2009/03/15(日) 11:08:05.26 ID:ZT2Mmiw0

「こなたは」
「?」

 そうじろうは不意に出た娘の名前にピクッと反応した。

「こなたはあの時、幸せだったよって言ってくれました。でも、時々考えるんです。あの言葉は本当だったのだろうか、と。」

 そう言うと男はその時のことを思い出していた。妻が、こなたが死んでいった日のことを。





「こなた!しっかりしろ、こなた!!」

 こなたは入院していた。理由はこなたの母、かなたと同じであった。医者曰く、遺伝性のものだったらしい。その時、同時に聞かされていた。もうそんなに長くないことを。そして、その日が・・・。

「こなた!!」
「もぉ、そんなに大声だしちゃだめだよ。ここ病院だよ?」

 こなたはベッドの上で弱々しくそう答えた。こなたの周りにはその男の他に父・そうじろう、そして医者がいた。こなたには心電図が取り付けられていた。その心電図は脈が弱いことを示していた。

「頼むこなた、死なないでくれ!」
「大丈夫だよ、後のことはゆい姉さんやかがみたちに頼んであるから心配いらないよ・・・」

 こなたは笑いながら答えた。しかし、口元は笑っていたが目は笑っていなかった。

「違う!そうじゃない!俺はこなたに、」
「お父さん。」
「な、なんだ?」
「私、先にお母さんのところに行ってくるね。お母さん、一人じゃ寂しいだろうから、話し相手になってあげないと・・・」
「な、なに言ってんだ、こなた。約束しただろ、俺より先に死なないって。お、俺はお前を約束を破るような娘に育てた覚えはない、ぞ・・・」

 そうじろうの涙腺はもう、崩壊寸前になっていた。

「ごめんねお父さん、親不幸な娘で・・・。あ、そうだ。」

 そう言うとこなたはそばにあった自分のバックを取り、その中からなにかを探していた。取り出したのは小さな箱だった。そうじろうはその箱に見覚えがあった。

「こなた、それは・・・」

 少し驚いたような声を出したそうじろうをよそに、こなたはその箱を男に差し出した。その箱は指輪が入っているような箱であった。男は箱を受け取り、開けてみた。その中にはやはり指輪が入っていた。それも安物の指輪ではなく、そこそこ高そうな指輪であった。

「それ、お父さんがお母さんにあげた結婚指輪なんだ。」
「え!?」

 男は驚いてそうじろうの方を見た。そうじろうは頷くように首を縦に振った。
222 :コンクール参加作品C2009/03/15(日) 11:08:48.80 ID:ZT2Mmiw0

「私の18歳の誕生日に貰ったんだよ。あ、正確には誕生日の次の日か、バイト先でお祝いしてもらって帰った時には日付変わってたから。」
「そ、そうか・・・」
「それでさ、その指輪、お父さんがお母さんにプロポーズした時にあげたらしいんだけど、サイズ間違えてお母さんの薬指に入んなかったんだって。笑っちゃうよね。」

 こなたはもう笑っていなかった。口元ですら笑っていなかった。

「元々はお父さんがずっと持っておくつもりだったらしいけど、お母さんとの思い出が全然ない私のために譲ってくれたんだ。お母さんが大切にしていたその指輪を。」

 男はその指輪を見た。そんなに大切な指輪をなぜ自分に手渡したのだろうか、と考えてながら。

「それでね、私も同じことしようかな、と思ったんだ。」
「え?」
「娘も私と同じで母親との思い出がないから、せめて母親が大切にしていた物を挙げたいな、と思ったの。それが私の娘への精一杯の愛情・・・」
「こなた・・・」
「あ、自分の大切な物を渡すのって、死亡フラグ立っちゃったかな?それを言ったら“後のことを頼んである”とか“お母さんの所に行く”とかって言うのも死亡フラグかな?なんか私、死亡フラグ立てまくっちゃて」
「やめてくれ!」

 男はこなたの言葉を遮るように大声を出した。指輪の箱を持っていない手はこなたのシーツを力一杯に握っていた。

「俺は、俺は・・・」
「・・・」

 こなたはその握られている拳にそっと手を置いた。それによって、握られていた拳の力が緩まった。

「こな、た・・・」
「私は、お父さんに育ててもらって、かがみやつかさやみゆきさん、みさきちに峰岸さん、ゆい姉さんにゆーちゃん、みなみちゃん、ひよりん、パティ、他にもいろんな人に出会えた。すごく楽しかった。そして、君に出会って恋をした。」
「・・・」
「私は何も後悔してないよ。好きな人と一緒に居られたんだから。だから、そんな悲しそうな顔しないで。」
「こな・・・」
「私は・・・幸せだったよ。」

 そう言うとこなたはニコリッと笑った。その笑顔は今まで見てきた中で一番かわいく見えた。そしてこなたはそのまま目を閉じた。

“ピーーーーーーーーーーーーーー”

 そんな無情な音が病室に響いた。

「!! こなた!?」
「こなた!!」

 男とそうじろうはこなたの名を呼んだ。男が動いた拍子に男に置かれていたこなたの手がベッドの下に落ちた。医師はすぐに心肺蘇生を開始した。しかし、

「ご臨終です。」

 こなたはすでに息を引き取った後だった。
223 :コンクール参加作品D2009/03/15(日) 11:09:31.43 ID:ZT2Mmiw0

「こな・・・わぁぁぁぁぁあああああぁぁあああああ」

 男はその場に倒れこみ、こなたに泣き付いた。

“ガタン!!”

 そうじろうもまた倒れ込むように椅子に座った。手で隠した顔からは涙があふれ、病室の床を濡らしていた。





「こなたは幸せだったよって言ってくれました。でも、ときどき考えるんです。こなたは僕と出会わなければ死ぬことはなかったんじゃないかって。」
「・・・」
「僕は本当にこなたを幸せにできたのだろうか、こなたは幸せになってくれたのだろうかと・・・」

 そう言うと男はうつむいたのであった。

「君はこなたと出会って、こなたと過ごして不幸だったかね?」
「そんなことはありません!!」

 男は顔を上げ、かみつくように言った。

「こなたと過ごした時間も思い出もすべて僕の宝です!少なくとも、僕はこなたと出会って不幸だったなんて思いません!!」

 そう、真剣に言う男に対して、そうじろうはフッと笑った。

「だったら、こなたも一緒なんじゃないかね?」
「え?」
「君がこなたと共に過ごした時間が幸せだったと言うのであれば、こなたが君と過ごした時間もまた、幸せだったはずだ。夫婦というものは楽しいことも悲しいことも一緒に得ていくものだからね。」
「・・・」
「君は幸せだった。そしてこなたも幸せだと言っていた。あいつは口は悪いが嘘を言うようなやつじゃない。まぁ、約束は破ったがな。」
「こなたは、本当に、幸せに、」

 男は震えていた。

「ああ、きっとなれたさ。」

 男は再び下を向いた。しかし、うつむいているわけではなかった。その目には大粒の涙があふれていた。そうじろうはそんな男の肩をポンッと叩いていた。

「あり゛がどう・・・ござ・・・いま・・・ず・・・」

 男は今までの悩みを洗い流すように涙を流していた。
 そうじろうは空を見上げた。その目は遠くを見つめていた。まるで何かを思い出しているように見えた。
224 :コンクール参加作品E2009/03/15(日) 11:10:07.11 ID:ZT2Mmiw0





「おじいちゃ〜ん。」

 娘が祖父に向かって跳び付いてきた。

「おぉおぉ、元気だな。」
「えへへ。」

 その娘、こなたと同じあほ毛の付いたショートカットの娘は祖父に頭をなでられて笑っていた。ちなみに、泣き黒子は受け継がれなかったようだ。その首にはペンダントにしたかなたの、かなたとこなたの指輪が付けられていた。ペンダントといっても、チェーンを指輪に通しただけであるが。

「あれ?お父さん、泣いてるの?」

 娘は父が泣いていることに気が付いた。

「いや、なんでもないよ。ちょっと目にゴミが入っただけだ。」

 父はそう言いながら、涙を指で拭き取った。

「ふ〜ん・・・。あ、そうだ!ねぇねぇ、おじいちゃん、今日はおじいちゃんの家に行くんだよね!!」
「ああ、おじいちゃんが昔住んでいた家にな。」
「わぁ、楽しみ!ねぇねぇ、早く行こうよ!!」
「おいおい、そんなに引っ張らないでくれ。」

 娘は祖父を引っ張って歩きだした。父も立ち上がり、その後に着いていった。しかし、数歩歩いたところで立ち止まり、墓の方に振り向いた。

「こなた、俺たちは元気にやってるよ。心配いらないぜ。でも、もし俺たちを思ってくれているのなら、おまえに愛を注いでくれた父を、おまえが命を賭けて産んでくれた娘を、そして、おまえが愛してくれた男を見守っていてくれ。」

 そうつぶやくと、男は墓に背を向け、歩きだした。
225 :コンクール参加作品F2009/03/15(日) 11:10:44.18 ID:ZT2Mmiw0





(わかってる。ちゃんと見守ってるよ。)





 男はそんな声が聞こえたような気がして立ち止まった。そんな男の横を白い羽が後ろからフワリッと落ちてくるのが見えた。振り返り見上げてみると、そこには、青く長い髪をした小さな天使が一人、いや、二人が笑ってこちらを見ていた。男が驚いて目を擦り、再び見上げてみると、そこには誰もおらず、青い空が広がっているだけだった。

「・・・」

 男は呆然としていたが、不意にクスリッと笑った。

「お父さ〜ん、早く早く!!」

 そんな娘の声が聞こえ、男は振り向いた。

「ああ、今行くよ。」

 そう言うと再び歩きだすのであった。





(ありがとな、こなた。)



 〜おわり〜
226 :コンクール参加作品あとがき2009/03/15(日) 11:11:25.41 ID:ZT2Mmiw0
以上です。今回のお題はかなり難しかったです。推敲がほとんどできていないので、誤字脱字が多いかと思いますがその辺はご了承ください。
みなさん面白い作品が多かったですが、私はコメディー要素を入れることができませんでしたorz・・・
コマント、感想等していただければうれしく思います。
最後に一言。こなたさん、勝手に死なせてごめんなさい・・・
227 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/15(日) 14:35:27.54 ID:gSnEK6AO
>>226
乙&GJ
命が受け継がれてますね〜。最初の辺り何気に叙述トリックですよね?
ん、んん?となりましたwwww

しかしこのままだと、こなたの娘もこなたやかなたと同じ結末になりそうな、死亡フラグの香りが……。

>>200
>>201
>>205
>>212

感想ありがとうございます!
こんな作風な小説は私も好みなので、うまく目的を達せたようで良かったです。
死亡フラグは……。私以外の作品読んでみて、あ、自分のだけ違う……。と書いてて思ってました。
まあ、かがみが家に帰るシーンで、なんだか途中で事故りそうだなと、想像出来たなら、その前のストーリーは全部死亡フラグとして成立していると言うことで(^_^;)
228 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/15(日) 17:46:42.58 ID:KiCgDYw0
>>213
まさか1レスでコンクールに挑む猛者がいるとはw
そういうのキライじゃないぜ。これからも精進してくんなまし

>>216
神秘的というか、おそろしいというか。間違いなく呪いだろ、コレw
いのり姉さんも儀式を行うまでにはいろんな葛藤があったんだろうねぇ

>>226
早世の母親と瓜二つってのはデフォで死亡フラグ背負ってるようなもんだよな
俺も227と一緒で、この娘もいずれ……なんて思ったのはここだけの話w


>>211
>>212
>>215
感想ありがとー。あのペースで全員分書いたら間違いなく死ねるから勘弁

なんだけど、調子に乗って続き書いちゃったから投下します。5レスほど
コンクールで頑張ってる&頑張った人達の清涼剤にでもなればいいけど
229 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/15(日) 17:47:36.69 ID:KiCgDYw0
 前回までのあらすじ

 とある事情により、初めてバレンタインに親しい多くの人にチョコを贈ったかがみ。
 チョコを配ったのが初めての事なら、ホワイトデーのお返しを受けるのも初めて。
 そしてホワイトデー当日。
 お返しを貰えるかもしれない立場にあり、浮き足立つ彼女の前に思わぬところから魔の手がのびる。
 罠を仕掛けたのは彼女の姉、まつりである。
 まつりは飲み物にお酒を仕込み、かがみの判断能力を鈍らせ、おいしくいただこうとしたのであった。
 もう1人の姉、いのりの助けにより辛くも難を逃れたかがみであったが、いのりもまたかがみの事を狙っていたのであった。
 かがみの運命や如何に……

 〜続・衝撃のホワイトデー〜

 私の顔――左の頬――に、いのり姉さんは優しく手を添える。

「まつりに譲るわけにはいかないのよね……」
「い、いのり姉さん……」

 いのり姉さんは、かがみは私が貰うの、と優しく言ってから、その顔をさらに近づけてきた。
 あまりの展開についていけず、今度は目を閉じることすらできなかった





「かがみに何をしようとしているのかしら、いのり?」
「ひあっ!?」
「お、お母さん!?……ち、違うの!コレは、その、ホワイトデーがいのり姉さんで!コーヒーなまつり姉さんにお酒で!」
「落ち着きなさい、かがみ……そう。まつりも関係してるのね。かがみ、悪いけどまつりを今すぐ呼んできてちょうだい」
「え?……う、うん。わかった」

 顔面蒼白でガタガタと体を震わせているいのり姉さんをその場に残し、まつり姉さんを呼びにいく。
 お母さんが呼んでるんだけど、と声をかけると、まつり姉さんはこの世の終わりのような顔をした。
 まつり姉さんを伴って戻ると、いのり姉さんはこれ以上ないくらい正しい姿勢で床に正座をしていた。
 お母さんはいつもと変わらない穏やかな表情で椅子に腰掛けていた。

「まつり、ここへ来て。いのりの横に座りなさい」
「は、はいぃっ!」
「かがみは自分の部屋に戻って、学校に行く準備をしなさい。あと、つかさを起こすのもお願いするわね」
「う、うん。わかった」
「それと、かがみ。これから2時間ほどここには戻ってこないで頂戴ね。もちろん、絶対にのぞいちゃダメよ?」
「え?……それって、ま、まさか……」
「久しぶりに本気で御仕置きをしなくちゃいけないみたいだから」
 
 いつもと変わらぬ表情だが、内に秘めたるオーラは凄まじいのだろう。
 お母さんを中心に、部屋の空気がぴんと張り詰めたものに変わっていく。
 眼前に座るいのり姉さんとまつり姉さんは、何か一線を通り越したのだろう、澄み切った静かな表情になっていた。
 私は2人の無事を願いながら、逃げるようにつかさの部屋へと向かった。
230 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/15(日) 17:49:01.02 ID:KiCgDYw0

「つかさー、そろそろ起きないと遅刻しちゃうわよー……って、あれ?」

 ドアを開けてつかさの部屋に入るが、ベッドの上につかさの姿はなかった。
 つかさの姿どころか、通学用のカバンもいつもの場所から消えていた。
 まさか、私より早い時間に起きて学校に向かったというのだろうか。
 どこかに隠れているのではないか、なんて思ったりしてキョロキョロと辺りを見回すと、机の上に何か書置きがあるのに気がついた。

 かがみお姉ちゃんへ
 今日は ほわいとでー だね。
 顔を合わせるのが なんかはずかしいから 先に学校に行くね。

 ごめん、妹よ。意味がわからない。
 ホワイトデーだから顔を合わせるのが恥ずかしいってのはどんな理論なんだ。
 何も恥ずかしいことなんて――

 脳裏に先程までの姉さん達の行為が鮮明に蘇る。
 その相手役がつかさに入れ替わり、私とつかさはその唇を……
 ちょ、ちょっと!何を考えてるのよ!私は!

 確かに、あれは恥ずかしかった。
 恥ずかしかったけど、まさかね。
 まさか、つかさまでもがあんな破廉恥なことをしでかすとは思えない。
 考えているとさえ思えない。
 だいたい、つかさとはバレンタイン当日にお互いチョコを贈りあったではないか。
 そしてその時に言ったではないか、お互いお返しは無しってことにしよう、と。

 頭の中が変な思考に偏りがちなのはお酒のせいか、空腹のせいか。
 朝ごはんを食べたいところだが、今はお母さんが姉さん達に御仕置きしている頃だから台所へは近づけない。
 コンビニでパンでも買って食べよう。
 私はそそくさと学校に行く準備を整え、姉達の悲鳴が大音量の2重奏となっている我が家を早々に後にした。
 あの時みたいに警察でも呼ばれなきゃいいけど、なんて思いながら。

 ☆

「おはよー、かがみ。今日は遅かったねぇ。それになんか覇気が無いよ?」
「ああ、おはよ。朝ごはん食べ損ねちゃったのよ」
「お姉ちゃんが朝ごはんを抜いてくるなんて珍しいね。もしかして寝坊しちゃった?」
「寝坊なんてしてないわよ。家でお母さんが本気を出しちゃってさ」
「本気?本気ッテマサカ……ううう、鬼が来るよー。鬼が来るよー」
「つ、つかささん?」
「大丈夫よ、みゆき。ちょっと変なスイッチが入っただけだと思うから」

「よくわかんないけどさ、家で食べられなかったんならどっかでパンでも買えばよかったのに」
「それが近くのコンビニが改装中で、駅のコンビニは社会人が列をつくっててさ……遅刻するわけにもいかないしね」
「なるほど。それで食いっぱぐれたと」
「そうよ。こんなことならお菓子でも持ってくればよかったわ」
「ふっふっふ。何か忘れていやしませんか、かがみ様?」
231 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/15(日) 17:50:05.80 ID:KiCgDYw0
 ニヤリと笑って、こなたは机に掛けてある自分のカバンから紙袋をとりだす。
 話の流れから察するに、何か食べるものでも入っているんだろうけど……
 その紙袋が、今朝まつり姉さんが持っていた紙袋と妙に似ていて、私は思わず後ずさる。

「バレンタインのお返しだヨ……って、何やってんの、かがみ?」
「な、なんでもないわ」
「そう?さっきから何か変なんだよね。、顔も赤いままだしさ。走ってきたからだと思ってたけど、そうでもないみたいだし」
「もしかして、風邪でもひかれたのですか?」
「だ、大丈夫よ。顔が赤いのは……そ、そう、たぶん外が寒かったからよ。それに今日は風も強かったでしょ?」
「ふーん。まあ、いいや。とりあえずコレを受け取りたまへ、かがみんや。中身は焼菓子だよー」
「ああ、ありがと」

 こなたに促され、素直に受け取ろうと伸ばした手が空を切る。
 私が紙袋を掴む寸前で、こなたがそれを素早く引っ込めてしまったのだ。
 軽く睨んでやると、さらにニヤニヤした顔つきでこちらを見てくる。

「残念だけど、ただではあげられないねぇ」
「なんでだよ。あんた、さっきそれはバレンタインのお返しだって言ってたじゃない」
「いやぁ、人の弱味につけこまない手はないからネ。ここはひとつ、私のお願いをきいてもらおうじゃありませんか」
「何よ?宿題でも見せろっての?」
「ほほう。そんな簡単な事で、私がこの貴重な食料を渡すとでも?甘いねぇ、かがみ様」
「なら、早くそのお願いってのが何なのか言いなさいよ。食べる時間がなくなっちゃうじゃない」

 こなたは腕を組み、いかにも何か考えています的な態度をとる。
 始業まであまり時間が無いというのに、コイツはあえてゆっくりとした動作をすることで私を焦らしているのだ。
 十分な間をとった後、こなたは邪悪な笑みを浮かべ、こう言い放った。

「私にファーストキスを献上したまへ。そうすればこのお菓子を――」




232 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/15(日) 17:51:04.71 ID:KiCgDYw0
 次の瞬間、私の視界には声を上げることもなく椅子ごと吹っ飛んでいくこなたが映っていた。

 私が利き腕を思い切り振りぬいた結果だろう。
 それにしても、私って意外と力持ちさんなのね。自分でもびっくりだわ。
 白石とかいうクラスメイトがクッションになり、こなたと椅子はかろうじて軟着陸に成功する。
 紙袋はその手にしっかり握ったままだ。
 落としてくれれば話は早かったのにな。
 こなたはプルプルと震える手で、その紙袋をこれ見よがしに掲げる。

「冗談が過ぎるわよ、こなた!」
「ぐはあっ……か、かがみ、言うことをきかないとコレはあげないよ……ダイエットでもする気なのかい?」
「くっ!腹ペコの私に対して、お菓子を人質に交渉するだなんて卑怯よ!おのれ!謀ったわね、こなたぁ!」
「あっはっはぁ!かがみんよ、我が身の不幸を呪うがいい!」
「オニガクルヨー。オニガクルヨー」

 そうか、すっかり油断をしていたがここは戦場だったのか。
 戦わざるもの食うべからず。
 こなたはそう言っているに違いない。
 ならば、応えよう。この命をもって。
 悲しいけど、これ、戦争なのよね。

「あの、かがみさん。お取り込み中、申し訳ありません」
「何?みゆき?銃弾なら足りてるわよ」
「あ、いえ。そうではなくて、お菓子なら私も持っていますので、よろしければこちらをどうぞ」
「え?本当に?」
「はい。ですから、いたずらに争いを起こされなくても大丈夫かと」
「あ、ありがとう、みゆき!」
「み、みゆきさん!私を裏切るつもりなの!?」
「裏切る?何のことでしょう?私は最初からかがみさんの味方ですよ?」
「なっ!?かがみの好感度を得るために……私を踏み台にしたぁ!?」
「うふふ。私は泉さんとは違うんですよ、泉さんとは!」

 みゆきから綺麗に包装された箱を受け取る。
 嗚呼、このお腹の空きよう、もうなりふりかまってなどいられない。
 すぐに包装を破り捨て、箱を開け、金色に輝くマドレーヌを取り出す。
 そして個別包装の袋を破り、おもむろにかぶりつく。

「どうですか?かがみさん?」
「んん〜!おいし〜!最高よ、みゆき!」
「喜んでいただけて光栄です」
「こんなに良い物をもらえるだなんて、何かお礼しなきゃいけないかしら?」
「いえ、いいんですよ、かがみさん。そもそもこれがお礼なのですから」
「でも、それじゃあ私の気がおさまらないわよ」
「そうですか。では――」
233 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/15(日) 17:51:40.40 ID:KiCgDYw0
 みゆきは優雅な動きでふわりと私の懐に飛び込んできた。
 私の体を支えるように右手を腰にまわし、余った左手で私の顎を軽く持ち上げる。
 その手から、みゆきの体がわずかに震えているのが伝わってきた。

「み、みゆき……?」
「いざとなると怖いものですね。手の震えがとまりません……」

 みゆきは優しい目をして微笑み、その顔を近づけてくる。
 目をギュッと瞑った私は、みゆきの髪のいい匂いだけを感じていた。





「私にファーストキスを献上したまへ。そうすればこのお菓子を――って、かがみぃ!?」
「かがみさん!」
「うわぁぁぁ!どうしよう、みゆきさん!かがみが真っ赤になって倒れちゃったよ!軽い冗談のつもりだったのに!」
「お、落ち着いてください、泉さん!とりあえず保健室まで運びましょう!急いでかがみさんを私の背中に乗せてください!」
「オニガクルヨー。オニガクルヨー」
「ちょ、つかさ!違う世界に飛んでる場合じゃないから!戻ってきて手伝って!」
「ああっ、泉さん!紙袋が落ちて、中身の焼き菓子が床に!」
「うわっ!?で、でも今はそんなの気にしてる場合じゃな……かがみが拾って、しかも袋を開けて食べたぁ!?」
「そ、そんな!?まだ意識は戻っていないはずですが……かがみさん!しっかりしてください!かがみさん!?」
「う〜ん……最高よ、みゆきぃ……」
「ああっ!?なんか笑いながらうわ言を言い始めた!?」
「これはマズイですね……泉さん!早くかがみさんを運びましょう!」
「うん、わかった!みゆきさん、かがみを乗せるよ、いい?」

 こうしてかがみはみゆきに背負われ、保健室へと運ばれていった。
 みゆきの髪に包まれるようにして背中で眠るかがみは、本当に幸せそうな顔をしていたという。
234 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/15(日) 17:54:08.35 ID:KiCgDYw0
以上です。
また当初の考えと違う展開になっちゃったw


コンクール終了まであとちょっと。投下予定の人達はがんばれ〜

あと、この程度の書きようで良ければ、誰か俺にお題をくだちい
お題もらっても書けるかわかんないけどねーww
235 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/15(日) 18:17:35.31 ID:EmHHPxA0
>>234
徹底した百合展開乙wwww

お題ねえ……「ノート」とか
236 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/15(日) 18:49:09.86 ID:sjeoPwSO
>>234
これまたガ○○ム好きな俺にはクリティカルヒット!
スレッガーかがみーん!!

おだいなら「新商品」
237 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/03/15(日) 19:07:16.34 ID:hIBN.n60
>>234
乙です。
面白いように頭の中で再生されますね。
文章能力も高く羨ましいです。
238 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/15(日) 20:24:37.62 ID:hwWaIl.0
書く時間がないのでネタを晒すよ。だれか使ってくれ。
みさお兄とあやのが結婚。あやの出産するも死亡フラグ立てまくって死ぬ。
語りは第三者視点で、最後にそれがかなたさんだと明かす。
239 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/15(日) 21:20:46.90 ID:KiCgDYw0
>>235-237
感想&お題サンクス。
どちらのお題も貰い受けるけど、あまり期待しないでね

>>238
ネタのハードル高ぇww
俺は扱いきれそうもないw
240 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/03/15(日) 22:38:19.59 ID:qGBHc1.o
>>238
なんだか、そのネタで書いてみますってこと自体が死亡フラグのような気がw
241 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/15(日) 22:40:59.87 ID:KiCgDYw0
>>235-236のお題で書いたので投下。3レスほど
コンクール中にたびたび投下してすまねぇ
242 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/15(日) 22:41:49.85 ID:KiCgDYw0
「わっ!?うひゃあああ!」
「熱っ!?ちょっと、何やってんのよ、つかさ!」
「ご、ごめんね、お姉ちゃん!」
「謝るのは後でいいから!ほら、さっさと雑巾をとってくる!」
「う、うん!」
「まったくもう……あ〜あ、私のノートが水浸しだわ」

 つかさです。
 勉強を教えてくれていたお姉ちゃんのノートにココアを浴びせてしまいました。


 〜新商品のノート〜


 時刻は夜の10時。わたしは今、お姉ちゃんの部屋に向かっています。
 お詫びのしるしとして、夜食代わりにチョコチップクッキーと紅茶を届けるつもりです。
 どちらもお姉ちゃんが、おいしいと絶賛してくれたものです。

「お姉ちゃ〜ん、さっきはゴメンね〜」 
「ん?ああ、つかさか。昼間のことならもういいわよ。あんたが失敗するのは今日に始まったことじゃないし」
「むー……」
「あははっ、冗談よ。そんな顔しなくてもいいじゃない。それで、何か用?」
「う、うん。あのね、ちょっと休憩しようと思ってクッキーと紅茶を用意したんだけど、お姉ちゃんもどうかなー、って」

「うーん。この時間に甘いものはちょっとなぁ……どんなクッキー?」
「この間つくったチョコチップのやつだよ」
「あー、あれか……それじゃあ、ちょっとだけもらおうかしら」
「そう言うと思って、もうお姉ちゃんの分も用意してきちゃったんだ」
「そうなんだ……何か釈然としないわね……ま、いいか」

 お姉ちゃんは笑顔で私を部屋に招き入れます。
 食べ物で釣って正解――じゃなくって、ちゃんとお詫びができて良かった〜。
 なんて安心したのが間違いでした。

「あっ」
「えっ?」

 何も無いはずの部屋の入り口で私はつまづいて、すってんころりん。
 紅茶とクッキーを載せたお盆は空を飛び、かがみお姉ちゃんの方へと――

「熱っ!?ちょ、何やっ!つかっ!熱っ!」
「だ、大丈夫、お姉ちゃん!?」
「熱っ!ああっ!?よ、予備のノートがっ!」
「あわわわわわ、ごめんね、お姉ちゃん!」
「で」
「で?」
「でてけーーーーーーーーーーーーっ!!」


243 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/15(日) 22:42:40.36 ID:KiCgDYw0



「おはよ〜、こなちゃん」
「おはよー、つかさ。今日はかがみと一緒じゃなかったんだねぇ。喧嘩でもしたの?」
「そういうわけじゃないんだけど……」
「つかささん。私達でよろしければ相談にのりますよ?」
「そうだよ、つかさ。悩み事はみんなで解決すればいいんだから。泥舟に乗ったつもりで、ドーンと私達に任せてよ!」
「ありがとう、ゆきちゃん、こなちゃん」 
「泉さん、泥舟というのはちょっと……」
「あれ?何かマズかった?」

 ………

「なるほどねぇ。確かに1日に2度も同じ目にあったら、かがみも怒って当然だよねぇ」
「それで、今朝もかがみさんは口をきいてくれないんですか?」
「うん。私より早く家を出ちゃってて、顔もあわせてないんだ」
「そういえば、今朝はいつもより早くにかがみさんの姿を学校で見かけましたね」
「うーん。こりゃちょっと重症だねぇ」
「わたし、どうしたらいいのかな……ずっと許してもらえなかったら、どうしよう」

「みゆきさんはどう思う?」
「そうですね。やはり、正面から謝るのが良いのではないでしょうか」
「だよね。後はノートを弁償するくらいかなぁ」
「つかささん、鉄は熱いうちに打て、とも申します。事がこじれる前に謝られてはいかがでしょうか?」
「でも……」
「みゆきさんの言うとおりだよ、つかさ。私も今すぐ謝ってきた方がいいと思うよ?」
「でも……」

 謝りに行って、許してくれなかったらどうしよう。
 そもそも、口さえきいてもらえないかもしれない。
 そんな考えばかりが頭の中を巡って、わたしは俯くことしかできません。
 せっかく2人が真剣に相談にのってくれているのに。
244 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/15(日) 22:43:23.46 ID:KiCgDYw0
「仕方がないですね……つかささん、これをあげますから、謝りに行ってみませんか?」

 そう言って、ゆきちゃんは黙って俯いている私に1冊のノートを差し出しました。

「ゆきちゃん、これ、ノート?」
「はい。ノートです。でも、ただのノートではありません」
「どういうこと?」
「このノートは少し特別でして、米国のRed otter社で先頃開発された新商品なのです。縁があって入手することが出来ましたが、市場にはまだ流れていないものです」
「そうなんだ」
「はい。そして、このノートが従来の物と何が違うかといいますと、呪術的なパワーを秘めている、という大きな特徴があります」
「じゅじゅつてきぱわー?」

「簡単に言いますと、おまじないを叶える力、といったところでしょうか。このノートには、込められた想いを何らかの力に換える効果があります」
「……よくわかんないや」
「つまり、このノートにつかささんの思いを込めてかがみさんに渡せば、その想いが伝わる、ということです」
「ええっ!?そ、そうなの!?」
「はい。ただし、このノートは試作段階のものですので、よほど強く想いを込めなければ効果はありませんので、注意してください」

「……ゆきちゃん、こんなにスゴいもの、本当にもらっちゃっていいの?」
「もちろんです。たまたま手に入れただけの物ですから、どうかお気になさらず」
「ありがとう、ゆきちゃん!私、今からこのノートを持って謝りに行ってくるよ!」
「はい。頑張ってください」

 私はそのノートの最後の1ページに自分の想いを書き込み、それを持ってお姉ちゃんのクラスへと向かいました。


245 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/15(日) 22:44:12.61 ID:KiCgDYw0



「……みゆきさん。つかさが持っていったあのノートだけどさ」
「はい。あれは昨日、ここの購買で買ったものです」
「やっぱりね。つかさに足りなかったのはただひとつ、素直に謝りに行く勇気だった、ってとこかな?」
「さすが泉さんです。お見通しでしたか」

「ひとつ聞きたいんだけどさ」
「はい?」
「さっきの話に出てきた米国の会社、レッドなんたらってやつ」
「Red otter社、ですか?」
「そう、ソレ。その会社って実在するの?」
「どうでしょうか……泉さん、Redは赤、otterはカワウソを意味するってご存知でしたか?」
「あー、なるほどね」
「はい。真っ赤なウソ、ということです。少し悪戯が過ぎましたでしょうか?」

「みゆきさんも案外策士なんだねぇ」
「それも萌え要素のひとつ、ということでどうでしょうか」
「むむっ!?さらにできるようになったね、みゆきさん!」
「はい。おかげさまで」
「でも、萌え要素の意味、本当はわからないんでしょ?」
「うふふ。泉さんにはかないませんね」

「おっ。みゆきさん、つかさが戻ってきたよ」
「あの様子ですと、どうやら上手くいったみたいですね」
「で、どうするの?」
「はい?」
「ドッキリってのは、ばらす時が最高に楽しいと思うんだけど?」
「騙したまま、というのも楽しいと思いますが?」
「あはっ。みゆきさんにはかなわないよ」





 暦の上での春。受験勉強も終りにさしかかる頃、かがみはこのノートを使い切ろうとしていた。
 問題集とにらめっこしながら、何気なく開いたノートの最後の1ページに、かがみは見慣れた筆跡を見つける。
 小さく、だがはっきりと書かれたその文字を見て、かがみの頬は自然とほころんだ。

 お姉ちゃんごめんね。大好きだよ。 つかさ

 つかさが顔を真っ赤にしてファミレスの机に突っ伏し、みゆきがつかさに平謝りし、それを見てこなたとかがみが笑うのはもう少し先の日の出来事。
246 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/15(日) 22:47:01.33 ID:KiCgDYw0
以上です。
3レスじゃなくて4レスだったか。スマン。
タイトルはまんまお題にしてみました。
いや、別に考えるのが面倒だったわけじゃなくてですねw


再びお題を募集します。今日はもう書かないけど。
247 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/15(日) 23:00:23.20 ID:x6DW2C2o
>>246
お題出されて速攻でここまで書けるとかwwGJだぜ


と、コンクール作品なんとか間に合ったおああああああああああ! ってことで、投下イキマース
248 :呪いのカケラ2009/03/15(日) 23:01:06.07 ID:x6DW2C2o

「こなた、これあげるわ」
「何? お守り?」
「そ、受験近いし、ね」
「かがみ心配してくれてるんだー?」
 ニヤニヤとしんがら、かがみを見る。
「うん……私、こなたが心配で……」
「え!?」
 予想外の反応にこなたは動揺する。が、
「だって……私たちの中であんたが一番危なそうだからね〜」
「なんて失礼な」
「人生に絶望して一人寂しく……とかなられると、寝覚めが悪くなっちゃうわよ」
「なるかー!」
 果たしていつも通りのかがみなのであった。

「ったくもー! なんで私なのさ。どっちかって言うとつかさじゃん!」
「そんな言い難いことをはっきり……」
 成績の面では同類なこなたに言われ、つかさは肩を落とす。
「あんたよりましよ、あんたより」
「何ー!」
「あはは……でも、つかささんは最近成績も上がっておられますし」
「みゆきさんまで!?」
「あ、いえ、その、泉さんはサボりがちな癖があるので」
「う……まぁ、それを言われると、ねぇ?」
「ねぇ? じゃない。もっとちゃんと勉強しろ」
「アーアーキコエナーイ」
「そういえばお姉ちゃん、このお守りどうしたの? うちの神社のと違うみたいだけど」
「ああ、こないだ納屋掃除してたらそれが出てきたのよ」
「そうなんだ〜。勝手に持ってきちゃって良かったの?」
「いいんじゃない? ほこり被ってたし。中に勾玉が入ってて、磨いたら綺麗になったからお守りにいいかなーって」
「あれ……なんか急にありがたみが……」
「何よ、いいでしょ? 私が手間隙かけて磨いたんだから」
「う、うんー……。これがあのやけくそ守りか……」
「返せ」
「あ、ウソウソ。チョー嬉しいよーありがとー」
「納得いかねぇ」

249 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/15(日) 23:01:54.47 ID:x6DW2C2o
「ゆーちゃーん、ご飯できたよ〜」
「はーい。お姉ちゃん機嫌いいね? 何かいいことでもあったの?」
「んー? かがみにやけくそ守り貰ったんだー」
「や、やけくそ?」
「うん、やけくそ。事故も病気も受験もまかせとけーみたいな」
「そうなんだ……。よかったね!」
「まぁ、効かないだろうけどね〜」
 そう言って笑うこなたはまんざらでもないようで、とても嬉しそうな顔をしていた。

『本日未明、歩行者が乗用車に……』
「事故とか事件とか多いよね」
 日ごと流れる事故のニュース。
 いつ誰が事故に遭うかわからないものだ。
「んだね〜」
「二人も気をつけてくれよ?」
 そうじろうの心配をよそに、こなたは笑いながら答える。
「大丈夫大丈夫。私運動神経いいから」
「それはあんまり関係ないんじゃ……」
 そんなことを言い合いながら、いつも通り変わらない日が過ぎていった。



「最近寒いよね〜」
「そうですね。地球温暖化といわれていますが、やはり冬は寒いです」
「って、かがみ?」
「……」
 話に入ってこないのを不思議に思い振り返ると、かがみは洋菓子店を眺め、固まっていた。
「食べたいの?」
「! え、いや何をおっしゃるこなたさん」
「お姉ちゃん話し方変だよ」
「う、うっさいわね」
「寄って行きましょうか?」
「え?」
 みゆきに言われ、かがみは嬉しそうな顔をする。と、その時。
 バリン! と大きな音がした。
「何!?」
 音がしたほうを見ると、鉢植えが粉々になっていた。
「あれ、下手したら私たちに当たってたんじゃないの」
 まさしく、もう少し早くその場所まで行っていたら、誰かに直撃していただろう。
 本当に運が良かった。

 しかし、この日から数日間、彼女たちの周りで様々な事件、事故が起こるようになった。
 交通事故はもちろん、向かっていたコンビニに強盗が入ったり、工事現場の鉄筋が数十メートルの高さから落下すると言うこともあった。
250 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/15(日) 23:02:16.78 ID:x6DW2C2o
「最近、本当によく危険な目に遭いますよね。私たち」
「……」
「そうだね〜。今までなかったのにね」
「その事なんだけど……」
「なぁに? お姉ちゃん」
「昨日ね、いのり姉さんがあの勾玉探しててさ」
「あれ、やっぱり大事なものだったんだ?」
「いや、大事って言うか、私も気になって聞いてみたらね……」
 かがみは目をそらしながら、と言うより体ごと顔を背けて言った。
「呪いの……勾玉なんだって……」
「ええ! 呪われてるの!?」
「えっと……それはどういう」
「なんか、特定の行動を取ったら死ぬ確率が上がる呪いらしいのよ」
 目が点、というのだろうか。それを聞いていたみゆきはきょとんとしていた。つかさはというと若干おびえた様子でかがみのことを見ている。
「しかも、今年が十年に一度のお払いの年だって……」
「あの、かがみさん」
「わかってるわよ! 呪いなんてあるわけないけど……」
「たしかに、言われてみると私たちの周りで危険な事が起こるようになったのは、かがみさんがお守りを渡した頃からですね」
「そうでしょ? だから気になって」
「こなちゃんにお守り返してもらってお払いしようよ! 呪いなんてダメだよ〜!」
「そうですね、私もそれがいいと思います」
「……わかったわ。帰りに返してもらってくる」


「こなたー」
「ん? どったのかがみ」
「あのさ、こないだあげたお守り返してくれない?」
「なんで?」
「いや、ちょっとね」
「えー、やだよー」
「いいじゃない、今度代わりの持ってくるからさ」
「えー……」
「ね」
 顔は笑っているものの、語気を強めるかがみに気圧されたこなたは、素直にお守りを返すことにした。
「悪いわね。じゃあ、私は委員会あるから」
「あ、うん。また明日ー」
「またねー」
(どうしたんだろ……)
 疑問に思いながらも、こなたは机を片付け、帰宅の途についた。

 それから、勾玉は柊神社に返され、かがみの両親によるお払いの後、再び納屋へと戻された。
 勝手に持ち出したことを怒られはしたが、以降事件も事故も起きず、平和な日々が戻りつつあった。

251 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/15(日) 23:02:30.87 ID:x6DW2C2o
「おはよー!」
 一週間ほど経った日の朝、髪をボサボサにしたままのこなたが登校してきた。
「おはよ、今日は遅かったわね」
「いやぁ、寝坊しちゃって……。ところで、かがみいつお守り返してくれたの? 鞄に入ってるの気付かなかったよ〜」
「は?」
 かがみたちは顔を見合わせる。
「鞄に入れてくれたのかがみでしょ?」
「……ちょっと、電話してくる!」
「え? かがみー?」
 どうしたんだろうね? と聞くこなたに、つかさとみゆきは何も答えられなかった。
 数分後、帰って来たかがみは、信じられないといった顔をしていた。
「なくなってるって」
「じゃあ、お姉ちゃん……」
「何? どゆこと?」
「話しましょう」
「ええ……。こなた、そのお守りね、呪いがかかってるの」
「はい?」
「荒唐無稽な話であるのは理解しています。しかし、これまでにあったことや、かがみさんから聞いたことを踏まえると、ありえないとも言えないんです」
「いや、え? みんな一体何を」
「それがね……」
 かがみたちは話した。実はお守りが呪いの品であったこと、お守りを鞄に戻したのは自分たちではないことを。

「話は分かったけど、漫画じゃないんだし……そんな死亡フラグの呪いみたいな」
「私だってそう思うわよ。でも、私たちの周りで、危険な事が起きるようになったの私がお守りあげてからでしょ?」
「まぁ、そうだねぇ……」
 こなたは少し考え、問いかける。
「でも、これ手放そうにも戻ってきちゃうなら、どうしようもなくない?」
「解決方法については、はっきりと言えません。ですが、一応の対策といいますか、回避方法はわかっています」
「うーん、死亡フラグになりそうなこと全部言わないようにしろ、とかだったら無理だよ?」
「ええ、わかっています。方法は別のものです。覚えていますか? 以前に鉢植えが落ちてきたときのことを」
 こなたの頭の中にあの時の光景がよみがえる。 
「あの時、かがみさんが洋菓子店のケーキに気を取られて止まりましたよね?」
「いや、あのね? 違うのよ?」
「それを見て、泉さんも立ち止まりました」
「私は別にケーキに気をとられたわけじゃないのよ?」
「これがどういうことがわかりますか?」
「お願い話を聞いて……」
「かがみの行動で、私の死亡フラグが回避された?」
「ぐすん……」
「その通りです。コンビニ強盗があったときもそうです。あの時はつかささんが転んでバッグの中身をばら撒いてしまい、それを片付けていた分コンビニに行くのが少し遅れました。
結果、コンビニで起きた事件に出くわさずに済んだ。つまり、泉さん以外の誰かが介入することで呪いを回避できる。と、言うのが私の考えです」
「なるほどね。でも、それだと私の死亡フラグに巻き込まれるってことだから、みんなも危なくなるんじゃないの?」
「いえ、それは大丈夫です。呪いの媒体を持っているのは泉さんだけですから、こちらには影響ありません」
「……そっか。んじゃ安心だね」
(実際はそうではありませんが……)
 そう、確かに呪い自体は、こなた以外には影響しないかも知れない。しかし、それによって引き起こされた事象は別物だ。
 鉢植えの件で言えば、落ちたのは呪いの影響であっても、誰に当たるかは呪いの影響下にない。
 だからこそ、かがみの行動によりこなたに鉢植えが当たることを回避できた。
 と言う事は、こなたの言った通り、フラグに介入したものに危険が迫る可能性は十分にあるのだ。かがみもつかさも、このことはみゆきから聞いていた。
 その上で、こなたを助けるための協力を承知したのだ。
252 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/15(日) 23:03:42.54 ID:x6DW2C2o



 ところがそれから二週間近く経っても、これといって危険なことは起きなかった。強いて言うならこなたが階段を踏み外したことだが、それはごく一般的によくあること。
 お払いをしたから呪いが消えたのか? という話さえ出ていた。
 そんな中、四人は待ち合わせをして買い物に行くことになった。むやみにフラグを引き寄せない様に外出を控えていたため、全員がこの日を楽しみにしていた。

 今日は目的地の関係で、こなたとみゆきが合流した後、かがみたちのところへ行く予定だ。
「泉さんですか? 今どこでしょう」
『こっちからはもう見えてるよ〜』
 そう言われ、辺りを見回すと少し離れた横断歩道の向こう側で手を振っているこなたが見えた。
「見えました。電話切りますね」
『はいよ〜』
 会話を終え、携帯電話をバッグにしまおうとしたみゆきは不意に顔を上げる。
 辺りを見回したとき視界に入った車、スピードこそ速くないものの運転手の様子がおかしかった様な気がする。
 あれは……。
 刹那の速さでそれを理解したみゆきはバッグを投げ出し、走り出す。25メートルに満たない距離を全速力で駆ける。
 その様子を見て、こなたは不思議そうな顔で立ち止まる。後ろに気付いて! そう願うが、声は出ない。
 こなたの後ろでは、予想したとおり居眠り運転をする車が迫っている。ご丁寧にこなたの居る方向へハンドルを切って。
 もうみゆきは何も考えず、こなたへダイブした。
 金属のひしゃげる音と、激しい衝突音が辺りに響き渡った。
 車に轢かれたものは誰も居ない。だが、
「みゆきさん! しっかりして! みゆきさん!」
 こなたを抱きかかえる形で地面を転がったのだろう。みゆきの全身には擦り傷ができ、縁石に頭をぶつけたのか血が流れていた。
「誰か! 誰か救急車呼んで!」
 野次馬の一人が救急車を呼び、到着したのは数分後のことだった。



 幸い、みゆきの怪我はそこまで酷いものではなかった。
 全身の擦り傷、打撲、頭部の怪我も骨にまでは達して居なかったため、命に別状はない。
 ただ、肋骨にヒビが入っており、数日間の入院としばらくの通院を余儀なくされた。
 事故の翌日には目を覚まし、面会も可能になっていた。
「それでは、お大事に」
「はい、ありがとうございます」
 診察を終えた医者が、みゆきの病室を出る。
「泉さん、りんご食べますか?」
「ううん。それより、ごめんね。私のせいで」
「いえいえ、泉さんが悪いわけではないですから」
 みゆきは、笑顔でそう言った。
「……私、ちょっとジュース買って来るね」
「泉さん?」
 病室を出ていくこなたを見たとき、あの光景がフラッシュバックした。
 かがみがこなたへお守りを渡したあの光景が。
『人生に絶望して一人寂しく……とかなられると寝覚めが悪くなっちゃうわよ』
『なるかー!』
「まさか……」
 みゆきは確信する。最初に立てられたフラグ、これまでの全てがそれを成立させるために動いていたのかもしれない。
 だとすれば、なんと皮肉なことか。こなたを助けるための行動が、こなたを追い詰めるための布石になっていたのだから。
253 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/15(日) 23:04:28.01 ID:x6DW2C2o

 こなたを追うため、怪我であまり自由の利かない体を押して、病室から飛び出す。
 近くに居た患者に、青い髪の少女を見なかったか聞いたところ、階段を上がっていったという答えが返ってきた。
 つまり、こなたの向かった先は――。


 こなたにはわかっていた。みゆきの言ったフラグを回避する方法。それが彼女たちを巻き込んでしまうことを。
 それでも、自分を助けようとしてくれることが嬉しかった。みんなでならきっと何とかできる。そんな風に考えていた。
 しかし、それが甘かった。その甘さがみゆきに怪我を負わせた。
(次は、怪我じゃすまないかもしれない……)
 自分のせいで誰かが死ぬかもしれない。それだけは、絶対に、避けなければいけない。
(誰も死なせない。もうこれ以上、誰も傷付けさせない。そのためにも、早く……)
 屋上へ通じる扉を、こなたは開けた。

 頭上に広がる空は、憎たらしいほどに晴れ渡っていた。
 こんなことさえなければ、みんなで買い物にでも行ってたかもしれないのに。
 こなたは空に向かって悪態をつく。
「神様も役に立たないなぁ」
 屋上から、眼下を見渡す。
「これが、私の最後の風景かぁ」
 目に映るのは、美しい緑と、人々の営み。
 悪くないかもね。そう言って、大きく深呼吸する。
「でも、ちょっと怖いかな……」
 どれほど経ったのか、もしかしたら一分も経っていないかもしれない。
 こなたは、足を上げ、一歩前へ踏み出そうとする。踏みしめる場所のない、その場所へ。
 バン! と扉が開いたのはそれと同時だった。
「泉さん!」
 そこにいたのは、肩を上下させ苦しそうにしているみゆきだった。
「みゆきさん」
 上げた足を下ろし、みゆきに向き直る。
「何を……してるん、ですか」
「んー景色見てた?」
「ふざけないで下さい」
「……」
「こっちに、来て下さい」
 お互いの目を見つめたまま話す。
「嫌だって言ったら?」
「来て下さい!」
 そう言うと同時に、みゆきは胸を押さえる。声を張り上げたのが傷に響いたのだろう。
「ダメだよみゆきさん、無理しちゃ」
「私のことはいいですから、こっちに」
「ごめん」
「どうして謝るんですか」
「その怪我、私のせいだから」
「これは泉さんのせいじゃありません」
「私のせいだよ。私がみんなに甘えたから」
 顔をしかめてそう言うこなたは、まるで、自嘲しているかのようだった。
254 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/15(日) 23:04:54.59 ID:x6DW2C2o
「それの何がいけないんですか!」
「え?」
「困ったことがあって、友達に頼るのはいけないことですか?」
 こなたは視線を落とし、うつむく。
「それは……でも、そんな怪我まで……」
「この怪我は私がしたいことをした結果です。泉さんは関係ありません!」 
「で、でも……」
 こなたが顔を上げようとしたその時、風が吹いた。風を遮るもののない場所では、必然的に風は強くなる。
 身体の小さな者を押す程度の力は十分にあった。
 堪らず、こなたは後ずさる。後ろに下げた足は屋上の縁にぶつかり、こなたの身体がゆっくりと傾いた。
「泉さん!」


 身体に痛みはない。死ぬというのはこんなものなんだろうか?
 そっと開けた目に映ったのは、自分の手を掴み、耐えているみゆきの姿だった。
「み、みゆきさん」
「泉さん、早く……私の手を、掴んで下さい!」
「もういいから、みゆきさん、離して」
「いやっ、です……」
「離してったら!」
「嫌です!」
 みゆきは、必死叫ぶ。
「絶対に、嫌です……」
 こなたの顔に、一粒の液体が落ちた。みゆきの顔から、赤い液体が。
「っみゆきさん、頭から血が」
「傷が、開いてしまったかもしれませんね」
「ダメだよ……みゆきさん……」
 また、こなたの顔に液体が落ちる。今度は透明な、そう……涙が。
「これぐらい、全然平気です。私は泉さんが居なくなることのほうが、ずっと苦しいですから」
「……」
 全身に激痛が走っているだろうみゆきは、笑顔そう言った。

 分かっていたはずなのに。
 大切な人が傷つく苦しみを、知っていたはずなのに。
 逃げていただけだ。
 自分が傷つかないように、逃げていた。

 こなたは、手を伸ばす。
 だが、それを支えていたみゆきの体が、重みに引き摺られ上半身が空中に投げ出される。
「っ! このままじゃ、みゆきさんまで落ちちゃうよ!」
「大丈夫です。なんとか、なります」
「なんとかって!」
「大丈夫……です……」
 みゆきは何かを待つように、ただひたすらこなたの腕を掴んでいた。
 少しずつ、みゆきの身体は引き摺られていく。
 もうダメだと、こなたが目を瞑った瞬間――。
255 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/15(日) 23:05:16.29 ID:x6DW2C2o

「しっかりしなさい!」
「こなちゃん、掴まって!」
「かがみ? つかさ?」
 かがみが、みゆきの体を支えながらこなたの腕を掴み、もう片方の腕をつかさが両手で掴む。
「一気に行くわよ!」
 そして、三人は息を合わせ、こなたを引き上げる。
「せーのっ!」
 なんとかこなたを引き上げた四人は屋上に座り込む。
「あんたたち何してんの!」
「すみません……」
「ごめんなさい……」
「あんまり心配かけないでよ……」
「みゆきさんも……ごめんね。私のせいでまた」
「……はぁ」
 みゆきは大きくため息をつき、
「えい」
「あう」
 こなたの頭を小突いた。
「何度言わせるんですか? この怪我も、今のことも、私がしたいことをした結果です。泉さんのせいではありません」
「みゆきさん……。うん、ありがとう」
「でも、二人とも無事でホントによかったぁ」
「はい、お二人のおかげで……。なんとかなりましたね? 泉さん」
「そうだね」
 不思議と、二人から笑みがこぼれる。
「そうだ、勾玉は?」
「えっと……」
 こなたが、ポケットから勾玉の入ったお守り袋を取り出す。
 紐を緩め中を見てみると、そこには四つに砕けた勾玉が入っていた。
「これって、呪いに勝ったってことなのかなぁ?」
「かもね」
「友情パワーとか?」
 茶化すように言うこなたに、みゆきは真剣な顔で答える。
「だとしたら、素敵ですね」
 四人は、少し照れた顔で笑いあう。
 そして、誰からともなく、一人一つずつそのカケラを取った。彼女たちがいつまでも友達であり続ける、呪い(まじない)の証として。


256 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/15(日) 23:05:37.37 ID:x6DW2C2o
 その後、私たちは病室に戻って看護婦さんを呼んだ。
 すごく驚いてたなぁ……。って患者がなぜか血まみれになってるんだから当たり前だよね。そして、慌ててやってきた医者の先生にこっぴどく叱られた。
 再検査の結果、肋骨のヒビが広がっちゃって、みゆきさんの入院が一週間伸びた。当の本人は笑っていたけど、さすがにこれは土下座で謝るしかなかった。



「そういえば、かがみもつかさもどうして私たちが屋上に居るって分かったの?」

「みゆきの病室言ったら誰も居ないし、変だなって思ってたら他の患者さんから伝言を聞いたのよ」

「何があるか分かりませんので、もうすぐお二人がいらっしゃる時間でしたし」 

「さすがゆきちゃん! あ……でも私たちが遅れてたらどうするつもりだったの?」

「……それは、考えていませんでしたね。急いでましたし、きっと間に合ってくれると信じてましたから」

「なんか、恥ずかしいわね」

「照れるかがみ萌え」

「うっさい!」

「あはは」


 みんなでならなんとかなる。か……本当だったなぁ。なんかこの先、何があっても大丈夫な気がしてくる。
 って、これも死亡フラグかな。でも、もう絶対に負けない。どんな死亡フラグも打ち破ってやるからね。

「こなた」
「こなちゃん」
「泉さん」
「はーい、今いく〜」


〜fin〜
257 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/15(日) 23:09:12.37 ID:x6DW2C2o
以上です。9レスかな。
当初こなかが方面で書くはずだったのが、いつの間にかこなあああああああああああああああゆきいいいいいいいいいいいいいいいいいっぽくなっていたという罠。
今回は本当にお題に悩まされました。

読んでくださったかた、ありがとうございます。
258 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/15(日) 23:25:44.62 ID:EmHHPxA0
>>257
話の筋がしっかりしていて良かったです。乙。
259 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/15(日) 23:57:40.83 ID:KiCgDYw0
>>257
GJ!好きなテイストの話だったんで、楽しませてもらいました
みゆきがかっこよすぎてたまんねーぜ
260 :主催後任2009/03/16(月) 00:05:52.94 ID:AfObo5Mo
3月16日になりました。
では、以上を持ちまして第13回らき☆すたSSコンクールの投稿期間を終了とさせていただきます。
作者の皆さま、お疲れ様でした。

投票の開始は翌17日から23日までとなっております。これは、と思う作品に皆様の清き一票をお願いします。
投票所のURLは、追ってご連絡いたします。
261 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/16(月) 00:12:03.33 ID:UNmS4Eo0
- 戦いすんで、なんとやら -

こなた「コンクールお疲れさまー」
かがみ「ほい、お疲れさま」
こなた「いやー予想以上にみんながんばったねえ。十作品かな?」
かがみ「そうね。難しい難しいってあんまり言われるから、チャレンジ精神が刺激されたのかしらね」
こなた「それにしても、よく死んだねー。わたしの残機が心配だ」
かがみ「残機言うな。ループ物があったからね。死亡数なら、あんたとゆたかちゃんが双璧じゃない?」
こなた「だよねー。まさに美人薄命」
かがみ「…あんたとゆたかちゃんの何処を突っついたら、美人と言う言葉が出てくるのか」
こなた「ぬー言ったな。わたしだってこうやって髪整えて、ちょっと憂いを秘めた表情で…フフッ、どうかしら?」
かがみ「あーびじんびじん」ポリポリ
こなた「棒読みな上に寝そべって煎餅かじって見てないでしょばかがみーん!!」
かがみ「…なによ、普段そんなこと気にもかけないくせに」
こなた「わたしだってねー、たまには可愛いじゃなく美人とか綺麗とか言われたいんですよーだ」
かがみ「拗ねるなよ…ま、わたしから言わせれば、見当違いも甚だしいわね」
こなた「むーなんでさ?」
かがみ「綺麗より、可愛い方が強いのよ」
こなた「…は?」
かがみ「丁度ここに都合よく、ゴスロリな服があったりするんだけど」
こなた「うん、それ都合よすぎ。ってーか嫌な予感がするから帰るね」
かがみ「まあ、待ちなさい。それでね、これ着てね…」ガシッ
こなた「はなしてー!」
かがみ「…そこにお嬢様座りして、上目遣いにわたしを見て、ニッコリ笑って『かがみ…大好き』って…」ハア…ハア…
こなた「そんなことしたら襲われるー!お家に帰してー!」


つかさ「…てことは、死んでないゆきちゃんは美人じゃないんだ」
みゆき「…ほっぺうにょーん」
つかさ「ほへー!?いふぁいはなひへー!」
みゆき「では、色々とコンクールに関わった皆さん、お疲れ様でした」
つかさ「のひるー!ほっへのひるよー!」
262 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/16(月) 00:42:30.83 ID:Fohm3xc0
>>260
終了宣言乙です!

>>261
さっぱりしてるかがみと思いきや……何してやがるwwww
263 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/16(月) 01:04:34.92 ID:Fohm3xc0
誰も不快と思わないなら今回もミックスネタ作っちゃうぞー
264 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/16(月) 06:06:44.81 ID:K/X3YQDO
不快です
265 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/16(月) 07:27:21.78 ID:C6wMpkSO
>>246

上手くお題をくっつけたなww
つかさの必死さが萌えたぜ

お題なら「大災害」

>>257
なんでこなゆきってこんなに強いんだろうww
良い話でした!
266 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/16(月) 07:58:57.44 ID:9tkipcSO
−ねらってる?−

こなた「アメリカの食の安全担当に、ハンバーグ氏指名だって」
かがみ「ふーん」
こなた「今日の晩御飯はハンバーグにしようかな」
みゆき「明日はホームランですね」
こなた「………」
かがみ「………」
みゆき「…すいませんでした」

つかさ(どうしよう…ちっともわかんないよ…)
267 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/16(月) 12:21:36.64 ID:Fohm3xc0
>>264
ゴメン
268 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/16(月) 15:07:53.92 ID:9tkipcSO
今更だけど、ミックスネタってなに?
269 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/16(月) 15:12:50.09 ID:Fohm3xc0
>>268
第十一回コンクールの後にやった。
コンクール作品の文章を支離滅裂にごちゃ混ぜにして作ったネタ。
「青鈍みゆきの優しさがダメな少年Bの人生の向こうにDesireを選んだ理由」でググればわかると思う。
270 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/16(月) 16:03:59.13 ID:9tkipcSO
ああ、これか。
結構面白かった気が。



ってか、レス付けてるの俺だ。
271 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/16(月) 17:31:28.36 ID:9NgnuoAO
>>267
良いぞもっと書けwwww
272 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/16(月) 17:39:29.31 ID:Fohm3xc0
うーん、そしたら投稿者の中にミックスを不快に思う人が居なければ書くことにしようかな。
かく言う俺が投稿者の一人だから残り九人に差し支えなければってことにしとこう。

前回やった「青鈍みゆきの……」を出来れば見ていただいてこんな感じになる、と理解の上
不快だと思う投稿者がいらっしゃいましたら声をお願いします。
273 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/16(月) 22:17:13.03 ID:WeNbgxk0
>>265
お題さんきゅ。でもかなり難しいな、それw

>>272
投稿者だけど、どんな風にスクラップしてもらえるか楽しみなくらいなんだがw
迷ってるんなら、書いて欲しいに1票を投じる
274 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/16(月) 22:38:27.63 ID:Fohm3xc0
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

他のまとめ人さんが出るまでも無え!ここまでまとめた!

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
275 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/16(月) 23:01:38.38 ID:5ntc6GQ0
>>274
超乙!
276 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/16(月) 23:30:44.68 ID:9tkipcSO
−まとめ人への感謝の気持ちEX−


みなみ「…何時もまとめご苦労様です…岩崎みなみです」
かがみ「あれ?こなたじゃないの?」
みなみ「…泉先輩はお忙しいそうなので」
かがみ「…じゃ、これは使わないのか」
みなみ(…なんでタンバリンとトライアングル…)
かがみ「ってか、今回は何するの?」
みなみ「…ここにピアノを用意してあります」
かがみ「うん」
みなみ「…では、かがみ先輩、後はお願いします」
かがみ「…は?」
みなみ「………」スタスタ…
かがみ「ちょ、ちょっと!わたしピアノなんて!…行っちゃった…どうしよう…とりあえず、弾いてみようかな」ポロン♪
かがみ「………」ポロン♪
かがみ「………」ポロン♪
かがみ「…ちょっと楽しいかも」ポロン♪
かがみ「………」ポロン♪ポロン♪
かがみ「〜♪」ポロン♪ポロン♪


こなた「…ふぅおぉぉぉぉ」
つかさ「お、お姉ちゃん…可愛い…」
みゆき「な、なんでしょう…この感情は…」
277 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/16(月) 23:56:24.66 ID:Fohm3xc0
>>276
dクス!姉に萌えるつかさは一体wwww

ああ、ミックスが書きあがってしまった。
どうしようか。
278 :主催後任2009/03/17(火) 00:02:39.62 ID:XPO/E2so
それでは、これより第13回らき☆すたSSコンクールの投票を開始いたします。
投票所はこちらです。→http://vote3.ziyu.net/html/lkstx3.html

3月23日が投票締め切りとなっております。ご注意ください。
279 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/17(火) 00:05:28.20 ID:XPO/E2so
>>274


>>276
想像したらフイタ。じゃなくて萌えた

>>277
どうしようかじゃねぇよ。やっちまえ
280 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/17(火) 00:18:15.32 ID:/DPAwg20
よし、お言葉に甘えてミックスやっちゃまうぞ!
>>272であんなこと言っといてなんだけど、割と支援してくれる人が多いみたいなので行きます!
気分を害された作者さん、いらっしゃったら申し訳ありません!

じゃ、10分くらい待ってから行きます!
281 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/17(火) 00:30:23.07 ID:/DPAwg20

 こなたです。
 最近、かがみが普段はあまりしない少しリッチなティータイムじゃないかと、気が気じゃないとです。

〜どうしますか?天使が信じる呪いの死亡フラグでゆめがたりを回避ってばさぁ☆後が怖いデス〜


01 優しさのカケラデス

「ロン、タンピン三色!」
「何? お守り?」

 唐突なこなたの言葉に、かがみは間抜けな言葉を発した。

「三言で済ませてあげるわ」
「え?」
「脳科学、認知科学、言語学」
「……」

そう言うとかがみは完全に力を失い、動かなくなった。


02 青い髪の天使でショートショートショート☆どうしますか?

「どうして…どうして…」

式場にある棺の前で岩崎みなみは泣き崩れていた。

「あれ?お父さん、泣いてるの?」

目を開けたみなみの前にいたのはやはり死んだはずのゆたかだった。
男は呆然としていたが、不意にクスリッと笑った。

「いや、なんでもないよ。ちょっと目にゴミが入っただけだ。」

ラノベ作家と担当編集者のそんな日常。

282 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/17(火) 00:30:56.56 ID:/DPAwg20
03 純粋な柊ってばかぜデス

「・・・んでさ、いっつもちびっ子にべったりじゃん。
柊の妹もそだけどあの4人ってヴぁウサギに襲い掛かる。私はパニック状態のままブレーキをかけた。
その時。 ゴッ、という音と共にこなたは増えたってのにさぁ・・・
もう5年も同じクラスなんだよ?せ〜っかく一緒にウサギに襲い掛かる。私はパニック状態のままブレーキをかけた。
・・・あやのぉ〜アンタもたまにはガツンと言ってやんなさいよガツンと。
アンタ私よりさらにレベルの高い勉強をしてるんだろう。
・・・って、アイツの趣味なんだっけ?リアリティ性の高い仮想現実の実現に関する研究?
そうゆーのってどこで売ってんだ?セブン?ローソン?
ツッコミにかけちゃあ柊に勝るやつはいないんだよね〜。
なんせあの鬼のような形相でウサギに襲い掛かる。私はパニック状態のままブレーキをかけた。
ん?こんなこと聞かれたらマズイ?だいじょぶだって。どうせちびのクラスで只今からタイムサービスだからさ。
ま、怒ったら怒ったでそれがまたカ〜ワイイんだけどなアイツー。
どしたの?青い顔して・・・なに?タイトルは「かぜのゆめがたり」???・・・・!!」


04〜41 死亡


42 あなたさぁ、42のゆめのカケラが怖い?父心フォー!

 アニ研部室。

こう「全部ボツ、やり直し」
ひより「ああああああ!!」

見られた見られた見られた!!

何度も、執拗に殴打する。

「落ち着いてよ〜、こなちゃ〜ん」

 私は叫びながら2人の間にわって入る。
283 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/17(火) 00:31:19.51 ID:/DPAwg20
それと同時だ。
どこからか、聞き慣れたような声が響いてきた。

「えーつかささん。たった今あなた以外の全ての参加者がゲームオーバーになりました。
 優勝おめでとうございます。お疲れ様でした。」





「これって、呪いに勝ったってことなのかなぁ?」

振り返り見上げてみると、そこには、青く長いバイクに乗った小さな天使が一人、いや、二人が笑ってこちらを見ていた。

(ゆーちゃん出して! ここから出して!)
(みなみちゃん、しゃべっちゃだめだよう!)

「…なんか、別のやばいフラグが立ってないか?」

お・も・い・では、そのなされるがままに、雲ひとつない空の彼方へと溶けていった。


〜fin〜
284 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/17(火) 00:32:23.02 ID:/DPAwg20
なんと3レスも使ってしまった。

ではもう一度、気を悪くされた作者さん本当にごめんなさい!
285 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/17(火) 00:47:43.68 ID:jdHHovw0
>>284

かがみ「突っ込みきれるかぁぁぁぁぁぁぁ!!」
こなた「うおっ!?かがみがキレた!」
つかさ「お、お姉ちゃん、落ち着いて!」
みゆき「…というか、そもそも突っ込む必要があるのでしょうか?」
こなた「あ、みゆきさんそれダメ。死亡フラグ」
みゆき「へ?」
かがみ「…じゃあ、代わりにみゆきがボケなさい」
みゆき「はい?」
かがみ「みゆきがボケてわたしに突っ込ませなさい!出来るだけ分かりやすいヤツで!」
みゆき「そ、そんな無茶な…」
かがみ「やかましい!さっさとせんかぁぁぁぁっ!!」
みゆき「ふぇぇぇぇん!」

つかさ「えーっと…助けなくていいのかな…?」
こなた「下手にさわるとフラグが移りそうだからねー…ま、後で甘いものでも奢れば収まるでしょ」
286 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/17(火) 01:00:23.30 ID:XPO/E2so
>>284
相変わらずカオスだな……ぶっちゃけどう突っ込んだらいいわかんねwwww
乙!
287 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/17(火) 01:07:51.89 ID:nkjNdEQ0
>>274
本当に乙です。今回は特に心の底から感謝しています

>>284
なんというカオス。「04〜41 死亡」で不覚にも吹いたw
ぞんざいだけどセンス溢れる省略の仕方だw

>>285
みゆきのボケが気になるw

>>265のお題「大災害」の作品を投下します。4レス
前作(>>242-246)の関連作品っぽくしてみた。
288 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/17(火) 01:08:28.05 ID:nkjNdEQ0
 早朝。自分のクラスに着いたあやのは、浮かない顔でひとり席に座っているかがみを見つけた。
 いつもなら、始業ギリギリまで隣のクラスにいるはずの彼女が、何故こんな早い時間からここにいるのか。
 あの仲良しメンバーの誰かと顔をあわせ辛い出来事でもあったのだろうか。
 中学校以来の友人であるかがみの異常が心配になり、あやのは鞄も置かずにかがみの席へと向かう。

「おはよう、柊ちゃん。今日はいつもより早いんだね」
「ん?……ああ、峰岸か。おはよ」
「どうしたの?元気がなさそうに見えるけど……悩み事?」
「いや、悩みってほどの事じゃ無いんだけど、ちょっとね」
「妹ちゃんとケンカでもしちゃったとか?」
「相変わらず鋭いな。まあ、ケンカっていうか、私が一方的に怒ってるだけなんだけどね」
「私でよかったらだけど、話、聞いてあげるよ?気持ちに整理がつくかもしれないし」
「そうね……それじゃあ、たまには峰岸の好意に甘えさせてもらおうかしら」

 〜大災害〜

「――って訳でさ、ノートを水浸しにされたのよ。1日に2回もよ、信じられる?」
「うふふ。妹ちゃんらしい失敗よね」
「笑い事じゃないわよ。おかげで私は同じ宿題を3回もやる事になったんだから!」
「ごめん、ごめん。でも、柊ちゃんはもう怒ってないんでしょ?」
「はあ?何でそうなるのよ?」

「話してる時の表情や雰囲気でわかるよ。妹ちゃんの事、もう許してるって」
「わ、私はまだ、つかさの事を許してなんか」
「許してないんだ?」
「そ、そうよ。許してなんか……ない……と思う……たぶん……」
「相変わらず素直じゃないよね、柊ちゃんって」

 笑顔でそう言うあやのを見て、かがみは思わずため息をつく。
 峰岸に隠し事は出来ないなぁ、なんて思いながら。

「わかったわよ。正直に言うわ……とっくに許してる。ただ、昨日の晩あれだけ怒ったからすぐには許しにくいのよ」
「だと思った」
「本当に鋭いわね、あんたは。私の心が読めるんじゃないかと疑いたくなるわ」
「中学からの友達を甘く見ちゃダメよ?」
「これは、これは。おみそれいたしました」
「もう、柊ちゃんったら」

 気のしれた相手との軽妙なやり取りに、あやのもかがみも笑顔になる。
 しかし、かがみの表情にはまだいつもの元気が無かった。
289 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/17(火) 01:09:04.25 ID:nkjNdEQ0
「柊ちゃん?」
「ん?んー……つかさが気に病んでなきゃいいけどな、なんて思っちゃって」
「大丈夫よ。妹ちゃんって、けっこう芯がしっかりしてそうだから」
「そうかしら」
「それに、同じクラスに泉ちゃんも高良ちゃんもいるんだし」
「そうね。こなたはともかくとして、みゆきがいるなら心配ないわよね」

 と、会話が収束に向かおうとしていたこの瞬間、新たな人物が疾風の如く現れた。

「おっはよー!ひいらぎー!あやのー!」

 2人の共通の友人、日下部みさおだ。
 大会前で朝練をこなしているためか、朝からやけにテンションが高い。

「おー、なんだなんだー?なんか元気のねぇ顔してんなー、ひぃらぎー?」
「おはよう、みさちゃん。今朝も元気ね」
「いやー、またタイムが縮まってさー。何か今、絶好調ってカンジなんだよな!」

「ところで、ひいらぎ。何か悩んでんだったらあたしが相談にのるぜ?何があったんだ?」
「大丈夫よ。別に何も悩んでなんか――」
「なんだよ、つれねぇなー。別に遠慮なんかしなくていいんだぜ?あたしとひいらぎの仲だろー?」
「いや、別に遠慮してるわけじゃ――」
「わかった。あれだろ?またダイエットに失敗しちまったとか、そんな話だろ?」
「違うわよ!あんた、少しは人の話を――」
「なんだよ、違うのか?他にひいらぎが悩みそうな事といったら……ま、まさか、恋の悩みかぁ!?」
「だから!少しは人の話を――」
「そうか、恋の悩みかぁー。何だかんだ言って、ひいらぎも女の子なんだよな。良かったじゃんか!」
「あのな、いい加減にしないと――」
「そんで、相手は誰だ?ほれほれ、恥ずかしがらずに言ってみなー。どんな男なんだー?」
「……」
「お、おい!まさかとは思うけど、相手はちびっ子とか言わねーだろーな!?どうなんだよ、ひぃらぎぃ!」
「……」
「黙ってちゃわかんないんだってヴぁ!はっきり答えろよ、ひぃら――!?」
290 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/17(火) 01:09:49.12 ID:nkjNdEQ0
 かがみは突然、みさおの顔をガッシと鷲掴みにした。
 やや俯き加減のため、その表情は読み取れないが、よく訓練された兵士でも逃げるんじゃないかと思われる程のオーラが出ている。

「ひ、ひいらぎ?」
「ふ、うふ、うふふふふ、日下部、あんたは私を本気で怒らせたみたいね」
「ちょっと、柊ちゃん!」
「峰岸、今回ばかりは手を出さないでいてくれるかしら?あんたまで巻き込みたくはないの」
「わわ、わかったわ。柊ちゃん」
「や、ひいらぎ、とりあえず落ち着けよ。ほら、落ち着いて話せば、わかるからさ」
「日下部、あんたには地獄すら生ぬるいわ……」
「あ、あや、あやの、はやく、たす、たすけて」
「ごめんね、みさちゃん。私に出来るのは祈る事だけみたい」

 柊かがみ、大・噴・火!!!!(被災者1名:日下部みさお)





「いててて。ひいらぎもあんなに怒ることねーのになー。なぁ、あやの?」
「う〜ん……今回はみさちゃんの自業自得だと思うけどな」
「でもさ、あそこまで怒るのは反則だろ。冗談抜きで死ぬかと思ったぜ?」
「タイミングが悪かったとはいえ、災難だったね」
「だいたいさー、ひいらぎが飲みもんをこぼされたくらいで怒るからいけねえんだよ」
「……『飲み物をこぼされたぐらい』?」
「そうそう。そんなしょうもねー事で怒る方がどうかしてんだよ。くだらねぇよなー」
291 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/17(火) 01:10:25.99 ID:nkjNdEQ0
「ねえ、みさちゃん」
「ん?どーした、あやの?」
「この前、家に遊びに来たときだったかな。私のりらっタヌにコーヒーこぼしたわよね」
「お、おう」
「みさちゃんにとっては、あれも『しょうもない事』だったのかしら」
「え?い、いや、そんなことは」
「あの時、みさちゃんは心の底から謝ってくれたんだと信じてたんだけどな……そんな風に考えてただなんて、とっても残念だわ……」
「いや、さっきのは、ほら、言葉のあやというか、なあ、わかるだろ?」
「本当に残念だわ、みさちゃん……」
「やや、やめ、だ、だれか、たす、たすけ」

 峰岸あやの、大・寒・波!!(被災者1名:日下部みさお)





「日下部ー。おい、日下部ー……む?珍しいな。日下部は休みなのか?」
「災害がどうとかで、保健室に行きました」
292 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/17(火) 01:12:44.04 ID:nkjNdEQ0
以上です。
今回はあんまりお題を生かすことが出来なかったけど、まあいいやw
タイトルは前回同様、まんまお題です。
いや、考えるのが面倒だったわけじゃ(ry

お題くれた人ありがとでした
293 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/17(火) 07:26:40.81 ID:xg2PT6SO
>>292
乙!
みさおは余計な事べらべら喋りすぎww
294 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/17(火) 09:32:48.68 ID:PxKcZIAO
>>292

大寒波、怖え〜((( ゜д ゜)))
295 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/17(火) 12:35:44.17 ID:.4Wng6SO
−みゆき式−

こなた「あーもう!テスト勉強なんてやってられないよー!」
つかさ「こ、こなちゃん…頑張ろうよ…」
こなた「わたし、もう赤点でいい…」
かがみ「もう…こっちのやる気まで削がれるじゃないの…みゆき、なんか言ってやってよ」
みゆき「知識を脳ではなく、胸に貯えると大きくなりますよ。わたしみたいに」
つかさ「…いくらなんでも」
かがみ「…それはないでしょ」
こなた「よっしゃ!やるよ!ほら、かがみもつかさもなにぼーっとしてるの!続き続き!」
かがつか「「信じちゃった!?」」

こうして泉さんは、実力テストでかつてないほどの上位に入りました。
しかし、その後嘘だという事がばれまして、泉さんから折檻を受けている真っ最中です。byみゆき

こなた「うわーん!みゆきさんの嘘つきー!」バシバシバシッ!
みゆき「ごめんなさいごめんなさい泉さん!痛い、痛いですー!」
296 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/17(火) 18:12:45.44 ID:xg2PT6SO
こなた「暇だな……そうだ」

ピポパ、トゥルルルル

かがみ「もしもし?」
こなた「ほっほーい、オラしんのすけ」
かがみ「ごめん、急ぎの用事じゃないなら後にしてくれる?ちょっと今忙しいのよ」

こなた「あ、うん……ごめん。じゃあ」ピ


こなた「はぁ……」

それ以来、こなたが物真似をすることは無かった。
297 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/03/17(火) 18:48:50.36 ID:d8jXi.DO
>>295
2学期中間テスト成績上位者

1・山田太郎 99点
2・岩崎みなみ 97点
3・小早川ゆたか 90点

ひより「……」
298 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/17(火) 19:12:38.58 ID:.4Wng6SO
>>297
みなみ「嘘つきー」バシバシバシッ
ゆたか「嘘つきー」ポカポカポカッ
みゆき「や、やめて下さい!い、痛いです!い、泉さんですね!?広めたのはー!」
299 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/17(火) 20:33:20.22 ID:HzbHZj20
投下します
300 :混沌[saga]:2009/03/17(火) 20:34:17.02 ID:HzbHZj20
プルルルルルル

こなた「もしもし、こなただよ」
???『娘さんは預かりました。返してほしければ今から言う住所にお肉を沢山送ってく
    ださい』
こなた「!? 娘さんって?」
???『代わりましょう』

ゆたか『お姉ちゃん・・・』
こなた「ゆーちゃん!」
ゆたか『ごめん、お姉ちゃん・・・私・・・』
こなた「ゆーちゃんは悪くないよ。大丈夫、絶対助けるから」

ゆたか『こんな時だから言うけど、お姉ちゃんのおやつのチョココロネ食べちゃったの、
    私なんだ・・・ごめん』
こなた「あー、それとコレとは話が別だね。帰ってきたらミッチリお仕置きするから」
ゆたか『しょんなぁー><』

???『これで分かりましたね? ではお肉の方、よろしくお願いしますよ?』
こなた「くっ、卑劣な奴めぇ」
???『そうそう、分かっていると思いますが、警察なんかに連絡したら・・・分かって
    ますね?』

ブツッ ツー、ツー

こなた「大変だぁ!」
301 :混沌[saga]:2009/03/17(火) 20:35:19.68 ID:HzbHZj20

ピポパピポペ

かがみ『かがみでい』
こなた「たたたいへんふぁよかkがみん!! ゆゆゆちゃ^んがががが!!」
かがみ『日本語でおk』
こなた「ゆーちゃんが誘拐されちゃったったた!!」

かがみ『落ち着いて、大きく深呼吸しなさい』
こなた「すぅぅぅぅ、はぁぁぁぁ」
かがみ『ヒィ、ヒィ、フゥー』
こなた「ヒィ、ヒィ、フゥー」

かがみ『ヒィ、ヒィ、フゥー』
こなた「ヒィ、ヒィ、フゥー」

こなた「産まれる・・・んあぁぁぁっ」
かがみ『もうすぐよ、頑張って!!』

こなた「あぁぁぁぁあぁぁぁっ」
赤ん坊「おぎゃあぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!」

こなた「産まれたよ、私とかがみの子・・・」
かがみ「おめでとう。電話越しじゃ分からないわ。連れて来てよ!」
こなた「うん、今行くよ!」
赤ん坊「ばぶー」

こなた「ところで何か忘れてない?」
かがみ『あ、名前決めなきゃね!』
こなた「あ、そっか。うーん、私とかがみの子だからぁー」
かがみ『“こなみ”ね』
こなた「うん、よろしくね。こなみ」
こなみ「野球したいぉー」
302 :混沌[saga]:2009/03/17(火) 20:36:00.26 ID:HzbHZj20

一方その頃

つかさ「ねぇ、ゆきちゃん」
みゆき「なんでしょうか?」
つかさ「私ってツッコミキャラじゃないんだけど、今ものすっっっごい! ツッコミたい
    んだけど・・・」

みゆき「それは許しません。例えお天道様が許しても、私は絶対、貴方を許さないっ!」
つかさ「そんにゃー><」
みゆき「お覚悟を・・・」

グサァ

つかさ「え・・・? ゆき、ちゃ・・・ん」
みゆき「ふふ・・・」

つかさ(やっぱり私は間違ってなかった・・・が・・・ま・・・)

バタッ


一方その頃2

覆面姉「遅いわねぇ」
覆面妹「お姉ちゃん、やっぱりこんなの無理があるよ」

覆面姉「もしかしたら忘れらてたりして」
ゆたか「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!」
覆面妹「わ」

ゆたか「うぅ、うぅ、うわぁぁぁぁぁぁん!」
覆面妹「お、お姉ちゃんどうしよう」
覆面姉「私に聞かないでよぉ」

ゆたか「わぁぁぁぁん」
覆面妹「ねぇ、返してあげようよ。やっぱりこんなのダメだよ」
覆面姉「そうねぇ・・・」
303 :混沌[saga]:2009/03/17(火) 20:37:13.51 ID:HzbHZj20

かがみんち

かがみ「いらっしゃい、待ってたわよ。こなみは?」
こなみ「うー」
こなた「ほら、お母さん2号にあいさつなさい」

かがみ「2号かよ。ってかさっき産まれたばっかでもう歩けるのか」
こなた「成長期なんだよ」
こなみ「あぅー」
かがみ「目つきは私に似てるわね」

こなた「唐突だけど帰ります」
かがみ「分かったわ。こなみは任せて」


そして・・・

ゆたか「ただいま・・・」
こなた「おかえり。ゆーちゃん、ちょっと来てね」

ゆたか「・・・」
こなた「なんで私のチョココロネ食べたのかな?」

ゆたか「お姉ちゃんのバカ!! なんでそれだけ覚えてるのっ!!」

パシィン!!

こなた「いった・・・ちょっとゆーちゃん!?」
ゆたか「スタコラサッサ!」

こなた「私何かしたかなぁ・・・?」
304 :混沌[saga]:2009/03/17(火) 20:38:05.82 ID:HzbHZj20

ピポパピポペ

こなた「かがみどうしようゆーちゃんとなんかケンカしちゃったみたいゆーちゃんは私の
    妹みたいな存在なんだよこのまま別けも分からず気まずい関係になるのだけは避
    けたいんだそのためにはどうしたらいいのか教えてくれかがみん私は後何回あの
    子とあの子犬を殺せばいいんだ!!」
かがみ『だから落ち着けっつーのに! 大きく深呼吸してリラックスしなさい』

こなた「ふぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ」
かがみ『落ち着いた? 何があったのかゆっくり話しなさい』
こなた「うん・・・あ」
かがみ『どうした?』
こなた「また、産まれそう・・・」

かがみ『ほんとっ!? 落ち着いて。ヒィ、ヒィ、フゥ』
こなた「ヒィ、ヒィ、フゥ。あぁぁぁー」


二人目の子供。名を『かなた』と名づけたそうな。

                       めでたし めでたし


☆☆☆☆☆


こなた「ひよりん。3分間時間をあげる。懺悔しな」
ひより「おおおおおおちついてくださいッス! たかが同人誌ッスよ! それもまだメモ
    書き程度のぉっ」
こなた「時間だ」
ひより「早っ! まだ3分、」

こなた「銃をこの手に。弾丸は魔弾。用途は射出。数は1つで十二分! 人間の動体視力
    を超える速度にて、射出を開始せよ!」
ひより「アッー!」


                             おわり
305 :混沌[saga]:2009/03/17(火) 20:39:01.84 ID:HzbHZj20
以上です。さいならっきょ
306 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/17(火) 20:40:11.26 ID:/DPAwg20
>>292
ダブル災害wwww乙ww

>>295
ワロタwwww

>>296
学習したんだなwwww
307 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/17(火) 20:42:54.64 ID:/DPAwg20
>>305
タイトル通りのカオスっぷりだwwww
あと母親の名前を子供につけるなwwwwww
乙wwww
308 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/03/17(火) 21:27:45.43 ID:hucEzPAo
魔弾と聞いて
「お前にふさわしいソイルは決まった!!」
を思い出した。
309 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/17(火) 22:25:16.62 ID:Z0612QAO
つかとこなぎりす

つかさ「こなちゃん、勉強しようよ」
こなた「私は一夜漬けが得意」
かがみ「私もぬか漬けが得意」
みゆき「私は自分自身は客観的に見ることが出来るんです。あなたとは違うんです」
つかさ「こ、こなちゃん・・・」
かがみ「ほらつかさ。ぬか漬け食べな?」
つかさ「じゃあ私だけでも頑張る!」
みゆき「ぬか漬け美味しいです」ボリボリ
こなた「フッ・・・ぬか、一夜漬けのパワー、見せてあげる!」
かがみ「ぬか漬け食べないの?美味しいのに・・・」ボリボリ
つかさ「望むところだよ」

テスト当日

ななこ「じゃあ始めてや」

つかさ(スイスイ解ける!)
かがみ「つかさ、勉強の成果がででるみたいね」ボリボリ

こなた「今こそ、一夜漬けの力を!」

みゆき「泉さんさっきから叫んでるだけですね。それにしてもぬか漬け美味しいです」ボリボリ
かがみ「先生も食べます?」ボリボリ
ななこ「こら、テスト中やで」ボリボリ

終了

ななこ「テスト返すでー、柊は今回よう頑張ったな」ボリボリ
つかさ「!」
ななこ「あれ?泉は?」
みゆき「家でぬか漬け食べてるそうです」ボリボリ

後日腹を下しました
310 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/17(火) 23:12:23.75 ID:XPO/E2so
>>305
色々、つか全部おかしいだろww暴走しまくりでフイタ。乙!

こなたとある錬金術師かww

>>309
シュール……だな? しかしつかさよ、こなたよりも他の部分に疑問を持て
311 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/17(火) 23:38:13.39 ID:jdHHovw0
何を思ったのか、レビューもどきを書いているのですが。
投下タイミングってどの辺が良さそうなんでしょうか?
312 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/17(火) 23:45:46.04 ID:/DPAwg20
開票後が望ましいという意見が2,3スレ前にあった。
俺も前回レビュー書いたんだけど開票後に投下した。
313 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/17(火) 23:50:34.74 ID:jdHHovw0
なるほど、そうしてみます。
314 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/18(水) 00:01:56.45 ID:PYd34wAO
どっちかと言うと締め切り日だな
315 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/18(水) 00:52:01.19 ID:dgkAHSE0
 〜死闘〜

「かがみさん。残念ですが、今回は運が無かったようですね」
「くっ……悔しいけど、どうやら私の力じゃ、ここまでが限界ね」
「すごい戦いだったけど……まさか、あんなに強い私のお姉ちゃんが負けるなんて」
「上には上がいるのよ、つかさ。みゆきの方が強かった、ただそれだけよ」
「では、もうよろしいでしょうか、かがみさん?」
「ええ……私にはもう何の力も残ってないわ。さあ、みゆきの好きにしてちょうだい」

「待って!諦めるのはまだ早いよ、かがみ!」

「こなた……あんた、まさか」
「さすがにこれは、放っておけない事態だからね。私がなんとかさせてもらうよ」
「泉さん、いったいどういうことでしょうか?」
「ふっふっふ。奥の手というのは最後の最後までとっておくものなんだよ、みゆきさん」
「やはり、アレをする気ですか……しかし、泉さん。いくらあなたでも今の状態からそれをすれば――」
「うん。私もただじゃすまないだろうね。でも、私よりみゆきさんの方がダメージはでかいはずだよ?」

「つまり、どうあってもそれをする、と?」
「諸刃の剣であることは百も承知だよ。でも、みゆきさんを阻止するにはもうコレしかないからネ」
「こなちゃん……」
「ごめんね、つかさも巻き込んじゃうことになるけど」
「ううん。気にしなくていいよ。どうせ今の私じゃ、ゆきちゃんにかないっこないし」

「こなた、あんた本当にやるつもりなの?」
「みゆきさんに勝てるかもしれない、千載一遇のチャンスだからね」
「でも、ソレをやったとしても、あんたがみゆきに勝てる保障は――」
「大丈夫。私がダメだったとしても、かがみもいるわけだし」
「……感謝はしないわよ?別に私はあんたと組んでるわけじゃないんだから」
「もちろん。これは私が好きでやることだからね」

「覚悟はいい?みゆきさん?」
「ええ……もしかしたら、こうなってしまうのではないかとも思っていましたから」
「コレで勝たせてもらうからね、みゆきさん?」
「私もただで負けるつもりはありませんよ、泉さん?」
「じゃあ、いくよ――!」





「――という訳で、どーん!8が4枚!革命返しだヨ!」
「うかつでした……この終盤まで8が1枚もでていない事に気付くべきでした」
「すご〜い、こなちゃん!」
「ふっふっふ。もっと誉めてくれたまへ……とはいえ、当初の計画には無いカードの使い方だから私もキツイんだよねー」
「これで私にも勝算がでてきたわね。さて、頑張りますか!」

 トランプゲーム(大富豪)で盛り上がる4人。
316 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/18(水) 01:11:29.33 ID:WV9cT4go
過去スレさらってたら目が痛くなったぜ

一応書き込み内容としては、投票はじまって早々にレビュー投下はいかがなものか。という物でした
なんで、投票終了日でも終了後でも、どちらでもいいと思います。個々の判断ということで

>>315
まさに死闘……何が彼女たちをそこまで(ry
遊びに真剣とはこのことかww
317 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/18(水) 07:15:38.56 ID:acYtEcSO
>>3l5
この大富豪8流しルールし無いのか

318 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/18(水) 08:14:20.87 ID:1z.T2sSO
つかさの家から学校までって何分ぐらいなの?
319 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/18(水) 09:55:44.32 ID:RkgfGcAO
>>318

県外だしね。バスと電車の乗り換えもあるし、1時間弱くらいかと予想
320 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/18(水) 10:02:29.01 ID:1z.T2sSO
>>319
ありがとう。参考になった
321 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/18(水) 12:33:48.77 ID:RkgfGcAO
>>320

今更ながら思い出した!県外じゃない!
と言うことで、30分〜40分程度と予想
322 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/18(水) 14:54:22.17 ID:1z.T2sSO
>>321
なんてこなたい/(=ω=.)\伝説
しかしまだ修正は可能だ。学校が朝7時に開いてるなら……

学校って7時に開いてると思いますか?
323 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/18(水) 15:05:23.72 ID:EOqI.OI0
もう無理矢理そういう設定にしちまおうぜ
例えばどっかの部活は早くから朝練があるから開いてるとか
324 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/18(水) 17:01:37.11 ID:m52RUwSO
柊家から学校までは、入学案内書の簡易マップと、柊家と泉家が電車で十〜十五分って設定から考えると、大体三十分くらいが妥当な線かと。
それにしても、凄いのがみゆきさん。下手すると二時間弱かかりそう…そりゃあ滅多にこなた達と寄り道なんか出来ないよね。


…と、思ったら、神奈川在住の黒井先生はみゆきさんよりさらに遠かった。
325 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/18(水) 18:02:56.50 ID:1z.T2sSO
>>323
その手があったか!
ありがとう助かった!

>>324
黒井先生そんなに遠かったんだ
326 :3052009/03/18(水) 19:07:33.42 ID:2oDh7GU0
感想ありがとうございます

>>307
偶然にも、こなたとかがみの名前の組み合わせに、かなたがあるんだぜw

>>308
完全勝利への誓い、ウルトラショッキングピンク!

>>310
ネタを分かってくれて嬉しいんだぜww
327 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/18(水) 23:19:22.07 ID:3VpOkC20
とりあえずいただいた意見を参考に、レビューもどきは投票最終日にひっそりと投下してみることにしました。

というか、本気でもどきな内容なので、別の人がまともなレビューを別に投下してくれないかなーとか思ったり。
328 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/18(水) 23:27:18.57 ID:tC0j8/A0
うむ、期待しとこう
レビュー前回書いたけど今回は自分も参加したから書けないやー
329 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/18(水) 23:32:56.53 ID:3VpOkC20
え、参加してたらダメ?
俺も参加してましたが…。
330 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/18(水) 23:45:30.96 ID:dgkAHSE0
参加しててもいいと思う。よくないことなどあるものかー!

という訳で>>329の投下を心待ちにしつつ、>>328にも書いて欲しいなー、なんて思うのであった
331 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/18(水) 23:56:51.54 ID:fPGosFoo
別に問題ないよw
以前書いてた人も「これ自分のだし……」みたいな感じで書いてたから
332 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/19(木) 00:11:57.65 ID:HhG2.Rc0
そうなのか!よっしゃ書くか
333 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/19(木) 01:33:50.10 ID:ziKIri20
>>330
僕もコンクール参加者だけど、レビューとかはたくさんあった方が色々と自分の作品の意見や感想が聞けて、とてもよいと思います。
334 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/03/19(木) 08:07:25.98 ID:wVp/WgAO
>>333 に同じく。
以前、レビューでここはこうしたらいい、ということを言われて参考になったことがありました。
335 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/19(木) 08:53:19.69 ID:HQ8Q.MSO
−懐かしいモノ−

みゆき「泉さん、それ消しゴムですか?良い匂いがしますね」
こなた「あれ、みゆきさんは匂い消しゴム知らないんだ?懐かしくて、つい買っちゃったんだ」
つかさ「これバニラだよね。わたし、小学生の時に色んな匂いの集めてたよ」
かがみ「………」グゥ〜
みゆき「………」
つかさ「………」
こなた「…かがみ…またダイエット?」
かがみ「そうよ…なんか悪い?」
こなた「悪くはないんだけど…消しゴム食べないでね?お腹壊すよ?」
かがみ「食うかっ!」グゥ〜
336 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/19(木) 12:26:42.19 ID:/D29QYSO
らき☆すた幼稚園

お昼

みさお「あ」
かがみ「あーあ、よそ見して食べりゅから」
みさお「だいじょぶだぜ」ヒョイパク
かがみ「ちょ、きちゃないわよ!」
みさお「5秒いないなら菌がつかないんだぜ」
かがみ「しょーなの?」
みさお「兄ちゃんが言ってたもん」

かがみ「ふーん」


その夜の柊家

かがみ「おっと」ヒョイパク
みき 「こら。落ちたものを食べるんじゃありません」
かがみ「え? だって……」
みき 「お行儀が悪いでしょ」

次の日

かがみ「くちゃかべのせいで怒られちゃったじゃないのー」ビシビシ
みさお「ちらねーよぉー」イタイイタイ

337 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/19(木) 16:17:07.81 ID:HhG2.Rc0
>>335
流石のかがみでもそれはないなww

>>336
この頃から教育方針の差が……
338 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/19(木) 18:57:10.11 ID:AzB7UVo0
こなた「チョココロネェェェッ!!」
かがみ「な、なに? どうしたの?」

こなた「聞いてよかがみん! いつも駅前で買ってるチョココロネが売ってなかったんだよぉぉぉっ!!」
かがみ「そ、そうなんd」
こなた「うわぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
かがみ「大げさな・・・」
こなた「私、チョココロネを食べないと・・・うっ!」

   ド     ク     ン    !!

かがみ「ど、どうしたの!?」
みゆき「説明しましょう。泉さんは一日一つチョココロネを食べないと心臓麻痺で死んでしまうのです!」
かがみ「ちょっと、みゆきにしては面白い冗談言うじゃないのww」
みゆき「・・・」
かがみ「ま、マジなわけ?」

こなた「はぁ・・・はぁ・・・はぁ、はぁ・・・かがみ」
かがみ「大丈夫? こなたっ!」
こなた「購買に・・・チョココロネ・・・」
みゆき「かがみさんっ! 早く購買でチョココロネを買ってきてください!」
かがみ「え?」
みゆき「早くっ!」
こなた「牛乳も」
かがみ「分かったわ! 待っててねこなた!!」スタタタタ
みゆき「私はメロンパンで!」

 
こなた「・・・ちょろいね」
みゆき「お昼代が浮きました」
339 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/19(木) 19:13:57.42 ID:/gGo1QQ0
>>338
つかさ「ねえねえ、こなちゃん、ゆきちゃん。私、帰りにクレープが食べたいな♪……言ってる意味、わかるよねぇ?」
340 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/19(木) 19:51:06.91 ID:AzB7UVo0
>>339

みゆき「え、と・・・もちろんですよ」
こなた「あはは・・・」

みゆき(逆らえない・・・このつかささんに逆らってはいけない・・・)
こなた(後ろにつかさが居るの忘れてたよ・・・)
341 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/19(木) 20:22:48.53 ID:orRaktA0
>>340
つかさ「二人とも昨日はありがとう!お姉ちゃんにはチクっておいたから!」
こなた「え!?約束が違うよ!」
つかさ「あはは、誰もクレープ買ってくれたらチクらないなんていってないよー!」
342 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/03/19(木) 20:44:11.18 ID:UCPgMoDO
>>341
こなた「…どうしよ、みきさん…つかさ、物凄ーく怒ってるよ…」
みゆき「…すこし、悪乗りしすぎましたね…」
343 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/03/19(木) 20:56:30.28 ID:UCPgMoDO
>>342だが
みきさんじゃねぇみゆきさんだ
これだから携帯は…
344 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/19(木) 20:58:55.55 ID:HhG2.Rc0
何このリレーSSwwww
345 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/19(木) 23:03:34.63 ID:/gGo1QQ0
かがみ「ああ、困ったわ、どうしよう」
つかさ「どうしたの?」
かがみ「昨日の一件で、こなたの体の事が心配で心配でたまらなくなって、私の体の調子がおかしくなっちゃった」
つかさ「わあ、大変だ。大丈夫なの、お姉ちゃん?」
かがみ「医者が言うにはね、双子の妹と一緒に気が済むまでケーキを食べることによって治るらしいんだけど……」
つかさ「私もお姉ちゃんも、そんなお金は持ってないよね。さあ、困った、困った」


こなた「ねえ、みゆきさん……あの2人さっきからすっごい棒読みなんだけど……ずっとこっち見てるし……」
みゆき「耐えるのです、泉さん!目をあわせたら私達の負けです!」
346 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/19(木) 23:14:22.94 ID:px5pO.SO
かがつか「「と言うわけで」」

かがみ「こなた〜」
つかさ「ゆきちゃ〜ん」

こなゆき「「ヒィィすみませんでした((゚Д゚ll))」」
347 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/19(木) 23:31:41.49 ID:AzB7UVo0
完結したかw
スーパーにチョココロネが無くてちくしょうと思って書いた1レスネタがここまで育つとわw
348 :命の輪の終わりに[saga]:2009/03/20(金) 01:24:40.46 ID:/8OTd7s0
投下行きます。

命の輪の関連作品です。
ギャグ色無しのどシリアスで、暗い話なのでご注意を。
349 :命の輪の終わりに[saga]:2009/03/20(金) 01:25:50.44 ID:/8OTd7s0
 私は彼の背中を見た事がない。
 もちろん、比喩的な意味でだけど。
 彼はいつも、私と顔を突き合わせて話をしてくれた。
 黙って付いて来いとか、背中で語るなんてことは一切しなかった…似合いもしなかったし。
 どんな些細なことでも、どんなくだらない話でも、私の嫌な部分も、いい部分も、いつも面と向かって受け止めてくれていた。
 だから私は彼を好きになった。
 最後のこの瞬間まで、好きでいられた。
 だから私は彼に託そうと思う。
 私の命の輪が終わるその時に、その繋がりと満ちる幸せの全てを。


「ん…目が覚めたかい?」
 彼がそう言いながら、私の顔を覗き込んだ。どうやら私は少し眠っていたみたいだった。
「もう、起きないかと思ったよ」
「…うん、ごめんね。心配かけて」
 誰かのすすり泣く声が聞こえる。
 私はもう長くない。この部屋にいる誰もが、それを理解している…いや、たった一人だけ理解していないかも知れない。
「あなたの夢を見ていた気がするわ…」
「…そうか」
 最後に見た夢が最愛の人のものならば、私は最後の瞬間まで幸せなのだろう。
 伝えたい。そう強く思った。
「…こなたはいる?」
「ああ、ここに」
 少しだけ首をめぐらすと、愛しい娘の姿が見えた。私を見て微笑んでいる。
 多分、この子だけが私のことを理解していない。
「ごめんね、こなた…あなたのお母さんでいられなくて」
 きっと、それは悲しいこと。逝ってしまう私には分からない悲しさ。
「あなたは、私みたいにならないでね?ちゃんと生きて、いつかあなたがお母さんになって欲しい…私の出来なかったことを、あなたにして欲しい…」
 自分でも酷い我儘だとは思う。この言葉が、この子の重荷になるかもしれないというのに。
「…そう君」
「…なんだ?」
「私、幸せだったよ…」
 そう、いつの日も。あなたと出会ってから、今のこの瞬間までずっと。
「私があなたと繋いだ輪は、幸せに満ち溢れてる…それをちゃんと次へと託せるってことは、凄く幸せなことだと思うの」
「…ああ、なら俺はそれを繋ぎ続けて見せるよ…ちゃんと次に託せるまで」
「うん…お願いね」
 瞼が重くなる。自分の終りが、すぐそこまで来ている。
 微笑んでるつもりなんだけど、ちゃんと笑えてるかな?
「…かなた?」
 彼の声が遠い。最後まで、私と向かい合ってくれている、彼の声が。
「…おやすみ…かなた」
 うん…おやすみなさい…そう君…。


- 命の輪の終わりに -


350 :命の輪の終わりに[saga]:2009/03/20(金) 01:26:36.32 ID:/8OTd7s0
 お父さんが酒を飲んで荒れているところを、一度だけ見たことがある。
 お母さんの名前を何度も呼んでいた。
 小学生だったわたしには、何故そんなことをするのか少しも理解できなかった。
 でも、今は分かる気がする。
 お父さんがそうしたかった気持ちが、今のわたしには分かる気がするんだ。
 やりきれないんだ。誰も悪くないのに。何も悪くないのに。
 誰かの泣く声だけが、ずっと聞こえるんだ。
 命の輪の終わりは、きっとそういうものなんだ。


「…目が覚めた?」
 わたしは、お父さんの顔を覗く込みながらそう言った。
「俺は…寝てたのか?」
「うん…もう起きないかと思ったよ」
「そうか…すまないな」
 誰かのすすり泣く声が聞こえる。
 もう、お父さんは長くない。この部屋にいる誰もが、それを理解している。
「かなたの夢を見ていたよ」
「…うん」
 最後に見た夢が、最愛の人の夢なんだから、きっと今のお父さんは幸せなんだろう。
 なにか伝えなきゃいけないことがあったのに、どうしてか思い出せない。
「俺は…幸せだったのかな」
 そんな事、言わないで欲しい。あなたは、間違いなく幸せだったはず。ずっと傍にいたわたしが、そう思うのだから。
「そんなの、自分で決めるものだよ」
 そう言ったわたしの言葉に、お父さんは深く頷く。
 伝える言葉は、まだ思い出せない。
「そうだな…こうしていられるのは、幸せだよな」
 わたしは伝える言葉を思い出そうとしながら、お父さんの言葉を待った。
 お母さんの夢を見たときに、思い出したことがあったのだろうと思って。
「俺が繋いだ輪が、まだ幸せに満ちているのなら、それを次に託せるのは、凄く幸せなんだろうな」
 託されるのは、わたしだ。
「ということを、確かかなたが言ってたな」
 余計なことを付け足す。どうしてこの人は、最後までかっこつけていられないのだろうか。
 でも、おかげで伝えることを思い出した。
「お父さん」
「ん、なんだ?」
「…大好きだよ」
「初めて、聞いたな。それ」
「うん、初めて言ったからね」
 お父さんは満足そうに頷いた。そして、目を閉じた。
「…ありがとう、こなた」
 お父さんは幸せそうに微笑み、深く息をついた。
「そろそろ、休ませてもらうよ…」
「…うん」
「おやすみ…こなた」
「おやすみなさい…お父さん」
 誰かの泣き声が、大きくなった。

 
351 :命の輪の終わりに[saga]:2009/03/20(金) 01:27:33.89 ID:/8OTd7s0
 通夜の晩。わたしはお父さんの棺に付き添っていた。
 夫は娘の傍についている。
 娘も、人の死が分からない歳じゃない。だからこそ、傍にいてあげる人が必要なんだ。
 棺の中のお父さんは、綺麗な顔をしている。いつも生えてた無精髭も、綺麗に剃られていた。
 抱きつかれた時のチクチクとした感触を、わたしは思い出していた。
 ふと、人の気配を感じてそちらを向くと、ゆーちゃんが立っていた。
「こなたお姉ちゃん、大丈夫?少しなら代わってあげれるけど…」
「大丈夫だよ。徹夜なんて慣れっこだから。ゆーちゃんこそ、ちゃんと寝とかないと葬儀の時に居眠りしちゃうよ?」
「…うん、そうだね」
 答えながらゆーちゃんは、わたしの隣に来た。座布団の上に座り、お父さんの棺に手を合わせた。
 さっきまで泣いていたのだろうか。ゆーちゃんの目が少し赤い。
「お姉ちゃんは、泣かないんだね」
 わたしの方を見て、ゆーちゃんがそう言った。
 お父さんが事切れた時も、通夜の時も、わたしはずっと泣いていない。
「わたしはね、ゆーちゃん。泣く時と泣く場所を、ちゃんと決めたんだ…だから、いまはまだ泣かないんだよ」
「…そうなんだ」
「うん…ねえ、ゆーちゃん。ほんとにちゃんと休んだほうがいいよ?」
 ゆーちゃんの顔色が、少し悪い気がする。多分、精神的に参っているのだろう。
 ゆーちゃんが高校時代にこの家で過ごした三年間は、わたしが思っている以上に幸せな思い出だったのかもしれない。
「…うん、ごめんねお姉ちゃん。わたし、泣いてばかりで、なんにも出来なくて」
「そんな事、気にしなくていいよ…今泣くのは、きっと悪いことじゃないから」
 ゆーちゃんはもう一度「ごめんね」と呟くと、立ち上がり部屋を出て行こうとした。
「…お姉ちゃんは、やっぱり凄いね」
 ドアをくぐる時に、こちらを振り向いてそう言った。
 それは違うよゆーちゃん。わたしは逃げてるだけなんだ。
 嫌なことは後回しにする、いつものわたしの悪い癖なんだよ。
 今泣くことは、きっと悪いことじゃないはずなのに。


352 :命の輪の終わりに[saga]:2009/03/20(金) 01:28:30.33 ID:/8OTd7s0
「…全部、終わったな」
 座り込んだわたしの肩を抱きながら、夫がそう言った。
「…うん」
 わたしはそれに頷いて答える。
 お父さんを送る儀式は全部終わって、明日からまたいつもの日々が始まる。
 家にお父さんがいないだけの、いつもの日々が。
「もう、いいだろ?」
 そう言う夫に、わたしは黙って頷くと、その胸に顔を埋めた。
 泣くべき時は今。泣くべき場所はここなんだ。
 でも、どうしてかわたしは泣けなかった。
「…泣かないな」
 夫がそう言う。
「…泣けないね」
 わたしが答える。
 まるで泣き方を忘れてしまったかのように、一滴も涙がこぼれない。
「思い出してみたらどうだ?お養父さんのこと、なんでもいいから」
「…うん」
 わたしは目を瞑り、お父さんのことを思い出そうとした。
 色々なことを思い出した。
 そして何か一つ思い出すたびに、涙が溢れてきた。
「…大きな声、出してもいいかな?」
 わたしがそう言うと、夫は黙って頷いてくれた。
「…う…あ…うあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
 わたしは泣いた。大きな声で、小さな子供のように。
 お父さんと、何度も呼びながら。


 わたしはお父さんの背中を見た事がない。
 もちろん、比喩的な意味でだけど。
 お父さんはいつも、わたしと顔を突き合わせて話をしてくれた。
 黙って付いて来いとか、背中で語るなんてことは一切しなかった…似合いもしなかったし。
 どんな些細なことでも、どんなくだらない話でも、わたしの良いところも、悪いところも、いつも面と向かって受け止めてくれていた。
 だから、わたしはお父さんが好きだった。
 最後にそれを伝えられたことは凄く嬉しかった。
 だからわたしは、お父さんから繋がり託された輪を、しっかりと守っていこうと思う。
 わたしの命の輪が終わり、次へと託すその時まで。


- 終 -
353 :命の輪の終わりに[saga]:2009/03/20(金) 01:29:37.93 ID:/8OTd7s0
以上です。

どうも俺はシリアスのみだと、話が短くなるようです。
354 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/20(金) 01:32:30.93 ID:tKXbtAo0
>>353
しんみりする話だった。
冒頭の文を最後に繰り返すのがまたいいな。
355 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/20(金) 02:09:55.17 ID:HC9w.hUo
>>353
ちょっと涙目。泣いてないぞ? こうやって命の輪が繋がれていくんだな
素直に感動した。かなたが私、こなたがわたしになってるのがまた良かった。GJ!
356 :うろ覚えでヘ○シングネタをひとつ[sage]:2009/03/20(金) 04:44:44.37 ID:SGQEgsDO
こなた「さーてやってきました!ピザ、パスタ食べ放題の店!」
みゆき「こういうお店は初めてですが…なんか楽しみですねぇ♪」
かがみ「…。」
つかさ「でもすごく混んでるねー。順番来るまでだいぶかかりそうだよー。」
かがみ「…。」
こなた「そりゃ学生のあたし達でも大丈夫なくらいリーズナブルなお値段だし…って、かがみ?なんか静かだけど、どったの?」
みゆき「かがみさん?おかげん悪いのですか?」
こなた「お腹空きすぎて元気なくなっちゃた?(プププ)」
かがみ「…拘束制御術式三号、二号、一号、零号解除…『クロムウェル』発動…(ブツブツ)」
こなた「へ?」
みゆき「はい?」
つかさ「お、お姉ちゃん?」
かがみ「さぁ夜はこれからだ!!お楽しみはこれからだ!!ハリー!ハリー!ハリー!ハリー!!」
こなた「わわわ、かがみんが壊れたー!!」
357 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/03/20(金) 12:58:10.68 ID:/T/.6jEo
で、そのうち
かがみ「小便は済ませましたか? 神様にお祈りは? 部屋の隅でガタガタ震えて命乞いをする準備はOK?」
とか言っちゃうんですねわかります
358 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/20(金) 13:03:39.88 ID:5Psj7tc0
こなた「  な   い  !! 」

こなた「ここにも!!」

こなた「ここも!!」

こなた「今月号のコンプティークが何処にもぬわぁぁぁぁぁいっ!!!!!」


こなた「何故・・・だ・・・」ガクッ
ソウジロウ「こなた! しっかりしろ! 傷は浅いぞ!」


コンコン
つかさ「お姉ちゃん入るよっこいしょういちっと」ガチャ

つかさ「な、なんじゃこりゃあ」

そこには大量のこなたヴィネットが!!

かがみ「見たわね」
つかさ「ひぃっ! 見てないよ見てないよごめんなさい助けて」
359 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/20(金) 22:32:35.43 ID:tKXbtAo0
投下行きません
360 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/20(金) 22:33:54.87 ID:RkkLmwAO
>>359

ならせめて、こなたんを俺にくれ!
361 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/20(金) 23:05:50.70 ID:tKXbtAo0
>>360
かがみがダメだって言ってました
362 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/03/20(金) 23:54:17.82 ID:/T/.6jEo
>>361
ならかがみを貰うぞ。
363 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/20(金) 23:55:49.87 ID:k6QuhhM0
>>362
つかさがダメって言ってました。
364 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/21(土) 00:12:48.74 ID:bI6wWws0
>>363
ならつかさを(ry
365 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/21(土) 01:01:27.93 ID:lRcw/ASO
>>364
みゆきさんが(ry
366 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/21(土) 01:08:58.52 ID:bI6wWws0
かがみ「だーかーら!さっきからこなたは私の物って言ってるでしょ!」
つかさ「でもお姉ちゃんは私の……」
みゆき「いえ!つかささんは私が……」

こなた「ねーねー、まだ?まだ議論が足りない?」
367 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/21(土) 02:55:30.72 ID:BKIaIkAO
>>366
まとめ乙wwwwww
368 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/21(土) 12:02:43.44 ID:4hEb4cSO
投下いきますより、投下いきませんの方が盛り上がるっつー事か。
369 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/21(土) 13:18:21.67 ID:RsoviISO
>>368
それはもうSSスレじゃないな
370 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/21(土) 14:36:38.78 ID:Oj/fY060
投下行きます。
371 :柊かがみ法律事務所──著作権の相続問題[saga]:2009/03/21(土) 14:37:27.31 ID:Oj/fY060
 秋葉原に居を構える柊かがみ法律事務所。
 その日は日曜日であり、かがみは住居スペースでくつろいでいた。
 ピンポーン。
 住居側のインターホンが鳴り響いた。
「はーい」
 かがみが、ドアを開けると、
「やふー、かがみん。ちょっと休ませてぇ〜」
 五十代になっても相変わらずの親友泉こなたの姿があった。
 買い込んだグッズや本が詰まった紙袋を両手いっぱいに握っている。
「はいはい」
 こなたは、づかづかと部屋に入るとソファーの上に寝転がった。
 まるで、自分の家であるかのようなくつろぎぶりだ。
「かがみは今日は彼氏とデートじゃないんだ?」
「彼氏いうな」
 かがみとしては、五十代にもなって結婚を前提としない交際をだらだらと続けていること自体が恥ずかしいので、あまり言われたくないのだが、それを承知でわざと突っ込んでくるのがこなたである。
「いいじゃん。気持ちを若く持つのはいいことだよ」
「あんたみたいに、五十代にもなって子供っぽいとかは言われたくないわね」

 かがみが、飲み物と菓子を出してきた。
 だらだらと雑談が続く。
 そして、
「ところで、かがみにちょっと相談があるんだけど。私、法律のこととかよく分かんないから」
「相談料いただくわよ」
「かがみんのケチ。彼氏の悪いとこがうつったんじゃないの?」
「あの男ほどがめつくはないわよ。ただ、ボランティアで仕事はしないことにしてるの」
 生活の糧を得るための仕事でボランティアしまくってたら、そのうち破産者として官報に名を連ねることになりかねない。
 もともと情に流されやすい性格であるから、その点は若いころから自分に言い聞かせてきたところでもある。
 それに、必要以上に金にがっつくつもりはないが、仕事に対する正当な評価と対価ということには拘りがある。なんだかんだいっても、かがみは弁護士という仕事にプライドをもっているのだ。
「む〜」
「そんな顔しても、駄目よ」
372 :柊かがみ法律事務所──著作権の相続問題[saga]:2009/03/21(土) 14:38:45.29 ID:Oj/fY060
「ちっ。分かったよ。あとで払うから」
「よろしい」
「死んだお父さんの小説なんだけどさ」
 こなたの父そうじろうは、天寿をまっとうして数ヶ月前に亡くなっていた。
「出版社からの印税が私のところに来るんだよね。自分でも稼いでるから正直いっていらないし、お父さんから相続するのは、家と土地とグッズとかだけで充分なんだよ。お父さんの銀行の貯金も相続税払った残りを全部寄付しちゃおうかなぁと思っているし」
 趣味には執着しても、金そのものには執着しないこなたらしい言い分だった。
「だから、お父さんの小説も、ネットに載せるのもコピーするのも改変するのも金儲けするのもなんでも勝手にやってくれぇ〜ってやつ……ええっとなんだっけ……?」
「クリエイティブコモンズ」
 専門家のかがみが、そう即答した。
「そうそう。それにしたいんだよね」
「やってやれないことはないけど、いろいろと手順は必要よ。まず、基本的なことから説明するけど……」


以下、かがみの解説
*****************

 一般に(広義の)「著作権」といわれるものを、日本の著作権法では、二つに分けている(著作権法17条)。
 著作者人格権→公表権、氏名表示権、同一性保持権(著作権法18条〜20条)。
 (狭義の)著作権→複製権その他の財産的権利(著作権法21条以下)。


 著作者人格権は、一身専属権なので、譲渡も相続もできない(著作権法59条、民法896条)。
 よって、著作者人格「権」は、著作者死亡時点で消滅する。
 しかし、著作物を提供・提示する者は、死亡著作者の人格的「利益」を保護する義務を負う(著作権法60条)。
 著作者の遺族は、著作権法60条の義務を守らせるための差止請求権等を有する(著作権法116条)。
 つまり、「遺族は、死亡著作者の著作者人格権は相続しないけれども、その人格的利益を守るための差止請求権等はもっている」という何だか無駄に複雑な状況になっている。

 で、クリエイティブコモンズのライセンスの種類の中には、著作者人格権に関わるライセンス(氏名表示権や同一性保持権にかかわる条件を設定するもの)もあるため、遺族がその部分を勝手に設定していいものかどうかという点が問題になる。
 著作権法の文言からすれば、死亡著作者の人格的「利益」を保護するための遺族の権利には、その人格的利益を勝手に放棄する権利は含まれない。
 よって、遺族が死亡著作者の著作物につき、「著作者名表示を要しない」とか「改変は自由」とかいった条件を定めるクリエイティブコモンズのライセンスを勝手に設定することはできない(遺言状にその旨記載されていれば、また話は別だが)。
373 :柊かがみ法律事務所──著作権の相続問題[saga]:2009/03/21(土) 14:39:38.81 ID:Oj/fY060
 無理やり設定したとしても、それは著作権法116条による差止請求権等の不行使を宣言するものにすぎず、もはや存在しない著作者人格「権」や勝手に放棄できない死亡著作者の人格的「利益」に関する条件の設定ではないということになる。
 逆に、遺族が「著作者名表示を要する」とか「改変は不可」といった条件を定めるライセンスを勝手に設定した場合は、それは著作権法116条による差止請求権等を行使するぞという宣言として受け取るべきだろう。あくまで、もはや存在しない著作者人格「権」に基づく条件設定ではない。


 財産的権利としての(狭義の)著作権の一つとして、複製権がある(著作権法21条)。
 複製権者は、他者に出版権を設定する権利を有する(著作権法79条)。
 出版権者は、出版権の目的である著作物を複製する権利を専有する(著作権法80条)。
 よって、出版権を設定した場合は、複製権者自身の複製権行使は制限される(著作権法80条)。
 財産的権利としての(狭義の)著作権は、譲渡も相続も可能(著作権法61条、民法896条)。
 よって、複製権は、譲渡・相続可能。
 したがって、複製権に付随する「出版権を設定する権利」も、譲渡・相続可能。
 また、死亡著作者が出版社と締結していた出版権設定契約に基づく債権債務は、相続人に相続される(民法896条)。

 で、出版権設定契約の内容としては、著作権使用料(いわゆる印税)の支払いに関する規定、有効期間の規定(これが著作権法83条にいう出版権の存続期間になる)、期間満了の一定期間前までに通知がない限り同一期間(または別に定める期間)の有効期間が設定されたものとして契約が自動更新される旨の規定をおくのが、一般的である。
 よって、相続を受けた遺族は、この契約に基づく印税を支払いを受ける権利を承継するとともに、出版社に出版権を独占させる義務及び複製権者自身の複製権行使制限の義務(著作権法80条)も承継する。
 つまり、この契約の有効期間中は、「複製は自由」という条件のクリエイティブコモンズのライセンス設定は、契約違反となるため、できないということになる。
 したがって、更新しませんという通知を予めしておいて出版権設定契約の有効期間が切れるまで待つか、出版社と交渉して出版権設定契約を合意解除するか、いずれかの処置が必要になる。

*****************
以上、解説終わり。


「……というわけよ。分かった?」
「分かりません」
「即答かよ」
「その辺の難しいことは、かがみが何とかしてよ」
「報酬もらうわよ」
「分かったよ」
「じゃあ、まず、出版社とおじさんの間で結ばれた契約書を全部探してきて。有効期間を確認しなきゃならないから」
「うーん、どこにあったかな……? お父さんってその辺適当だったし」
374 :柊かがみ法律事務所──著作権の相続問題[saga]:2009/03/21(土) 14:40:44.93 ID:Oj/fY060
「おまえもだろ?」
「まあね」
 ラノベ作家であるこなたも、出版社とはその手の契約書をかわしているのだが、どこに仕舞ったか忘れてるものも多かった。
「トラブルがあったときにまず大事なのは、契約書よ。ちゃんとしときなさいよね」
「かがみ様のお言葉は、肝に銘じておきます」

 その発祥から何十年もたった今では、クリエイティブコモンズのライセンスの種類も増えている。日本の著作権法にあわせた、相続した著作権にも設定できるクリエイティブコモンズのライセンスも存在していた。そのせいで、発祥当初の意図に反して、複雑になっている部分もあるが。
 かがみとこなたで詳細を詰めた結果、ライセンスは以下のとおりにすることになった。
 「複製・頒布・公衆送信自由、商用利用可(著作権使用料はとらない)、著作者名表示義務付け、改変可(ただし、差止請求権等を留保)、以上の条件は複製物・改変物・二次著作物にも継承。ただし、著作者名表示義務付けと改変にかかる条件は、著作者本人による設定ではなく、遺族による著作権法第百十六条に基づく諸権利行使を留保する宣言である」



 後日、二人で出版社をまわって、交渉を行なった。
 出版社にとっては、印税を払わなくてよくなる分だけ儲けは増えるが、出版権を独占できなくなるため他社も同じ小説の本を勝手に販売できるようになり競争が生じる可能性もあるという点で、判断に迷う部分があった。また、ネット上での配信も自由になるため、本が売れなくなる可能性もある。
 出版権設定契約の合意解除に応じてくれた出版社と、最後まで応じてくれなかった出版社とに分かれたのは、当然だろう。
 合意解除に応じなかった出版社に対しては、出版権設定契約の更新はしない旨の通知書を内容証明郵便で送付する。あとは、契約の有効期間が経過するまで待つだけだ。
 出版権については公的な登録制度(著作権法88条)があるので、契約を解除した件については、消滅の登録手続も忘れずにしておく。
 ここまで強気な交渉・行動が可能だったのは、こなた自身がラノベ作家として売れっ子であり出版社に対して立場が強いことと、かがみが著作権分野では日本でも五本の指には入る敏腕弁護士であることがあった。二人がかりで来られたら、出版社としては抵抗しようがない。
375 :柊かがみ法律事務所──著作権の相続問題[saga]:2009/03/21(土) 14:42:13.56 ID:Oj/fY060
 その後。
 出版社側の対応は、豪華装丁版といった形で付加価値をつけて売るパターンと、費用が安価ですむ文庫にして大量に売りさばく薄利多売パターンに分かれた。
 他社で出版している小説を自分のとこでも出版するという事例はなかった。他社の縄張りは侵害しないという暗黙の了解が、業界にはあるのかもしれない。ただ、これも今後絶版本とかが出てくれば、他社が絶版した小説を自分のところで改めて出してみるということは起こりうるだろう。
 ネット上でいち早く対応したのは、やはりというべきか、青空文庫だった。
 著作権法上の著作権保護期間満了前の文芸作品のネット無料掲載はまだまだ珍しいため、ネット上での反応もかなりあった。
 こなたのブログにコメントが寄せられたり、2ちゃんねるの文芸版で話題になったりと、その反応の意外な大きさにこなた自身も驚いたぐらいだった。


終わり


*注意事項
 「その発祥から何十年もたった今では、クリエイティブコモンズのライセンスの種類も増えている」という設定はフィクションです。よって、設定したライセンスの内容も架空のものですのでご了承ください。
 解説部分は、私の解釈ですので細かい部分で間違っている可能性があります。基本的な法理論と条文の文言に基づく解釈をしてるつもりなので、大きく外れてはないと思いますが。
 出版権設定契約の内容については、社団法人日本書籍出版協会が配布している「出版契約書雛型」によってます。
 著作者死亡後の著作者人格権の無駄に複雑な状況は、以下のaとbの整合を無理やりとった結果と思われます。
 a日本も加盟している「文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約」第六条の二(2)
  →著作者人格権は「著作者の死後においても、少なくとも財産的権利が消滅するまで存続し、保護が要求される国の法令により資格を与えられる人又は団体によつて行使される」としている。
 b法理論上の問題
  ・死んだ人間は権利主体たりえない。
  ・一身専属権は相続できない。
  ・よって、一身専属権は、原権利者が死亡すれば、権利主体が不在になる。
  ・権利主体不在の権利は観念不能。
  ・よって、一身専属権は、原権利者が死亡すれば、消滅するしかない。
  ・著作者人格権は一身専属権である。
  ・よって、著作者人格権は、原権利者が死亡すれば、消滅するしかない。
376 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/21(土) 14:45:20.43 ID:Oj/fY060
以上です。

 かがみの解説部分を読み飛ばした君、ちゃんと読んでね。
 というのは冗談ですが。
 久しぶりに条文解釈をまともにやった。公僕なんてやってると、通達しか読まなくなってくるからなぁ。
377 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/21(土) 14:52:05.40 ID:4hEb4cSO
>>376
乙です。
いやもう、ここまでくるとなにがなんだか…。

法律事務所シリーズは、「こういう法律があります」っていうのを説明するSSとして読んでます。
いや、半分以上理解できてないけど。
378 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/03/21(土) 17:42:26.25 ID:mLBH/qg0
>>376
こうなると『らき☆すたで学ぶ著作権』という本が出ても可笑しくないですね。
乙でした。
379 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/21(土) 18:32:21.62 ID:21.6Log0
帰り道

つかさ「あ、見て見て皆〜」
こなた「なになに? あ」

みゆき「まぁ、カルガモの親子ですね」
つかさ「可愛いねぇ〜」
かがみ「珍しいわね、こんなところに」

こなた「あれだけ居たら一匹貰ってもバレないよね」
かがみ「何をするつもりですかこなたさん」


※カルガモはスタッフでおいしく頂きました。
380 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/21(土) 18:38:12.67 ID:4hEb4cSO
−八犬士−


仁=ゆたか
義=かがみ
礼=あやの
智=みゆき
忠=みなみ
信=みさお
孝=こなた
悌=つかさ


いやまあ、なんとなくだけど…。
381 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/21(土) 18:49:14.46 ID:XFj/9zs0
>>376です。

>>377
 ここまでくると、完全に自己満足の世界という気もします。
 読んでくださる方には感謝。

>>378
>『らき☆すたで学ぶ著作権』という本
 これは実際にやれそうですね。
 美水先生は、メタなネタを平気でやる人ですから、らき☆すた自体をネタにした著作権解説マンガもできそう(オタク界隈に理解のあるノリのいい著作権専門家を監修につける必要があるとは思いますが)。
 アニメを初めとした公式の二次的著作物がいろいろとあるし、ニコ動とかでのMADをめぐる問題とか、ひよりの同人誌ネタで非公式の二次創作の問題とか、ネタには事欠かない。
 そうじろうが書いた小説からどんな諸権利が生じるのかといった形での解説も可能だし。
 「ひよりん、同人誌で補導!?」、「らき☆すたのアニソンやキャラソンは、原作マンガの二次的著作物といえるのか?」、「そうじろうの作家としての稼ぎはどれくらい?」、「MADのやりすぎは自重しろ by かがみ」といったセンセーショナルな小見出しを目次に並べれば、みんな買ってくんじゃないかな。
382 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/21(土) 19:23:39.53 ID:X/76ne2o
★★★らき☆すた★★★

「現在、第13回コンクールの投票中!」
「お題は『死亡フラグ』、ギャグからシリアスから色々揃ってるわ」
「君の一票が世界を変える!」
「世界は変わんねーよ」
「かがみはノリ悪いなぁ〜」
「はいはい。期限は今月23日までだから気をつけてね」
「コンクール作品はこちら!」
 http://www34.atwiki.jp/luckystar-ss/pages/1333.html
「投票所はこっちね」
 http://vote3.ziyu.net/html/lkstx3.html
「それじゃ、投票待ってるよ〜ばいに〜」
「バイニ〜」


「ねぇ、かがみ。このコンクールを無事終えることができたら……私とけ」
「葬式はいつがいいかしらね」
「ひどっ! 無事終えたら、みんなでケーキバイキング行こうと思ってたのに……」
「……。あんたは私が守るわ」
(お姉ちゃん……)
(かがみさん……)

★★★らき☆すた★★★
383 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/03/21(土) 22:42:51.56 ID:mLBH/qg0
>>381
これは面白そうですね。
題材が題材なだけにすんなり受け取られそうです。
コミケで出せば話題になるかも。
384 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/22(日) 01:11:01.02 ID:.kN2wo60
著者側は見て見ぬふりが肝要。
同人側は地下出版であることを忘れないことが礼儀。
と言う事を、京極○彦が言ってた気がする。

同人に関しては法で突っ込んだり、メジャー気取ったりするのは野暮ってことなんかな?
385 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/03/22(日) 02:06:55.40 ID:5occWwDO
>>376
かがみんが法律に特化したみゆきさんみたいな気もしないでもないけどGJです!
公僕って現役の司法関係の方ですか?
そんな方が、らき☆すたファンってなんか不思議ってかすごい
結構、かがみん弁護士シリーズ好きなんでまたお願いします
386 :とあるお見舞い[saga]:2009/03/22(日) 03:29:40.02 ID:.kN2wo60
投下行きます。

少し珍しい組み合わせに挑戦してみようと思ったのですが…。
387 :とあるお見舞い[saga]:2009/03/22(日) 03:30:57.64 ID:.kN2wo60
「…なんでわたしが」
 そんな文句をこぼしながら、かがみはとぼとぼと道を歩いていた。
「わたしはクラス違うってのに…」
 色々と連絡事項の書かれたプリントが入った鞄を、恨めしそうに眺める。風邪で休んだみゆきに届けなければならないものだ。
 本当ならこなたが届けるはずだったのだが、『ごめんかがみ!予約してたDVDの発売日が今日だったんだよ!だから代わりに届けて!おねがい!』と拝み倒されて、しぶしぶ引き受けたのだ。
 いや、最初はそれでもかがみは折れなかったのだが…最後にこなたが出した、『今度ケーキバイキング奢るから』という言葉で、わりとあっさり引き受けてしまったのだ。
「…弱いわね…わたしも…」
 自分の軽率さを呪いながらかがみが歩いていると、前の方に一匹の犬が歩いているのが見えた。首輪をつけ、リードを引き摺っているところを見ると、飼い犬のようだった。
「あれ、あの犬って…」
 かがみはその犬に見覚えがあった。
「もしかして、みなみちゃんとこのチェリーちゃん?」
 かがみがそう呼ぶと、犬は振り返って一声吠えた。
「…反応したよ」
 チェリーはテクテクとかがみの方に歩いてくると、お座りの姿勢でパタパタと尻尾を振り始めた。
「どうしたの?みなみちゃんとはぐれちゃったの?」
 かがみがそう聞いても、チェリーは変わらず尻尾を振り続けている。
「ふう…どうしようかな…」
 かがみは目の前にあったリードを手に取った。すると、チェリーは一声吠えると、立ち上がってかがみを引き摺るように走り出した。
「ちょ、ちょっと!?どこいくのよ!?ま、待って、待てってばー!」
 静止するかがみを意にも返さず、チェリーはひたすらに走り続けた。


‐ とあるお見舞い ‐


388 :とあるお見舞い[saga]:2009/03/22(日) 03:31:35.82 ID:.kN2wo60
「ねえ、ちょっと…どこまで行くのよ?ってかここどこなのよ?」
 しばらく引きずり回されたかがみは、自分がいつの間にか見たこともない場所を歩いていること二気がついた。
 いつもなら初めて歩く場所では、目印になる建物などを覚えて、最低限もと来た道を引き返せるようにしているのだが、チェリーを止めるのに必死になっていて、そんな余裕jは無かったのだ。
「あんた、帰り道知ってるんでしょうね?こんな歳になって迷子なんて嫌よ?」
 不機嫌そうにそういうかがみに、チェリーはまかせろと言わんばかりに一声吠えた。
「…本当かよ…どうでもいいけど、大きいのとかしないでよ?ビニール袋とか持ってないから、処理できないわよ?」
 電柱だの草むらだのを嗅ぎまわりながら歩くチェリーに、かがみは不安を覚えていた。


「いや、本気で道分からないんだけど…」
 またしばらくチェリーに連れまわされたかがみは、少し泣きたい心境になっていた。
「…もうこいつ置いてって、どこかで道聞いて帰ろうかしら」
 かがみが溜め息混じりにそう呟いた。すると、それに反応したわけではないだろうが、地面の匂いをかいでいたチェリーが不意に顔を上げて前の方を見た。
「なに?何か見つけたの?」
 かがみもチェリーと同じ方を見た。そこには、見覚えのある女の子が、道の真ん中で何かを探すようにウロウロしていた。
「チェリー!どこいったの、チェリー!」
 必死に名前を呼ぶその姿から、本当に愛犬のことが心配だと言う事が、かがみにも分かった。
「あんた、みなみちゃんを探してたのね…ほら、呼んでるわよ」
 かがみは傍らでお座りをしているチェリーにそう言った。すると、チェリーはかがみの方を見上げて、首を傾げた。
「…なんでそこでクエスチョンな態度を取るんだお前は…」
 ジト目で見るかがみを意に介さず、チェリーはその場で寝そべってしまった。
「おいこら、ちょっとまて。あんたみなみちゃんを探してたんじゃないのかよ…ってか、それならわたし引き連れる必要って無かったわよね?あんたは一体何がしたかったんだ…」
「チェ、チェリー…」
 かがみがチェリーを問い詰めていると、すぐ傍から声が聞こえた。かがみが顔を上げると、目に涙を溜めたみなみが、いつの間にか傍まで来ていた。
「…いままでどこに…チェリー!」
 感極まってチェリーに抱きつこうとするみなみ。しかし、チェリーはそれをヒラッとかわしてしまい、鈍い音を出してみなみが背後にあった電信柱に激突した。
「…なにをしでかすんだ、この馬鹿犬は」
 かがみは思わずチェリーの頭を殴りつけていた。


389 :とあるお見舞い[saga]:2009/03/22(日) 03:33:03.44 ID:.kN2wo60
「…大丈夫?」
 赤くなった鼻を擦りながら近づいてくるみなみに、かがみが心配そうに声をかけた。
「はい、なんとか…」
 かがみは近づいてきたみなみに、リードを差し出した。
「はい、これ」
「…ありがとうございます」
 それをみなみが受け取ろうとすると、チェリーが急に立ち上がり、唸り声でみなみを威嚇した。
「え、ええ!?」
 みなみが手を引っ込めて少し後ろに下がると、チェリーは威嚇をやめて、かがみの足に擦り寄った。
「チェ、チェリー…どうして…」
「えーっと…なにこれ?」
 かがみはどうしていいか分からず、その場にしゃがみ込んだみなみを眺めていた。
 その後、何度かかがみはリードをみなみに渡そうと試みたが、その度にチェリーに阻まれ、結局かがみがリードを持ったままみなみの家まで行くこととなった。


 さて、どうしようか。かがみは困り果てていた。隣を歩くみなみ。二人の間の空気がじっとりと重い。話をしようにも、何を話せばいいのか全く分からない。二人の接点が少なすぎるのだ。犬を話題にしようにも、飼い主を拒む謎行動によって、なんとも言い出しづらい雰囲気になっていた。
「………」
 みなみは先ほどから、チェリーとかがみを交互に見ている。いや、むしろ睨んでいると言った方がいいだろう。
 わたしに恨みでもあるのか、この馬鹿犬。かがみは、そう心の中で悪態をつかずにはいられなかった。
「…柊先輩は、犬は好きですか?」
 唐突にみなみにそう聞かれ、かがみはビクッと身体を震わせた。
「き、嫌いじゃないわね…い、一度犬を飼おうかって思ったことあったし…その、世話しきれる自信がなくて止めたけど…」
 かがみがどもり気味に答えた。
「…そうですか」
 みなみがかがみから視線を逸らした。
 どうにもやりづらい。かがみはみなみに気づかれないように、こっそりとため息をついた。

 しばらく歩いたところで、かがみは二人の間の共通の話題を思いついた。
「ゆたかちゃんって良い子よね」
 こなたの家に遊びに行ったときに、何度か会ったこなたの従姉妹。
 みなみと親しいと言う事も聞いていたし、これなら気まずくなることもないだろう。そう、かがみは思った。
「………」
 ところが、みなみはゆたかの名前を出したと同時に、今度はあからさまにかがみの方を睨みつけた。
「え、えっと…」
 なんとも言えないみなみの迫力に気圧されながらも、かがみは何とか言葉を続けた。
「あ、ああいう子が妹ってのも、ちょっといいかなって…」
「…柊先輩には、妹さんがいたはずですが」
 かがみを射殺さんばかりの刺々しい口調で、みなみがそう言った。
「え、あ、うん。い、いるんだけどね。いや、つかさが不満だとかそんなんじゃなくてね。ゆたかちゃんみたいな子ってわたしの周りにいなかったから、話してみると結構楽しいっていうか…なんていうか…」
 ますますきつくなっていくみなみの視線に、かがみの言葉が尻すぼみになっていく。
 なんであまり話したことのない後輩に、ここまで憎まれなければならないのか。かがみは泣きたくなってきた。
「…ゆたかはわたしの友達です」
 唐突にみなみがそう言った。
「う、うん。それは知ってるけど…」
「…友達なんです」
 答えるかがみに、念を押すようにみなみはもう一回言った。そして、プイッと視線を逸らすと、歩く速度を速めた。
「あ、ちょっと…」
 かがみはみなみを追いながら、本気で泣いてやろうかと考えていた。


390 :とあるお見舞い[saga]:2009/03/22(日) 03:35:27.84 ID:.kN2wo60
「…着きました」
 みなみが足を止めた。門柱にある表札に『岩崎』の文字を確認したかがみは、心底ほっとした。
「じゃ、じゃあわたしはみゆきんちに用があるから…えーっと…」
 かがみが手に持ったチェリーのリードをどうしようか迷っていると、チェリーが急に走り出そうとした。
「え?あっ…ちょっと…」
 かがみが思わず手を離すと、チェリーはそのままみなみの家の門をくぐって中に駈け込んでいった。
「えーっと…うん、まあいいか…」
 呆気にとられ、チェリーのくぐっていった門をしばらく見ていたかがみは、何度か頷くとみなみの家の向かい側にある、みゆきの家の方を向いた。
「み、みなみちゃん、それじゃまた…」
「…柊先輩」
 みなみに別れの挨拶をして、さっさとみゆきの家に向かおうとしたかがみを、みなみが引き留めた。
「な、なにかしら…?」
 かがみは、恐る恐るみなみの方を向いた。
 予想通り、敵意を持った視線でみなみがこちらを見ている。気のせいか、背後にはオーラのようなものまで見えた。
「…ゆたかは…ゆたかは絶対に渡しません!」
 はっきりと力を込めて、みなみがそう言い切った。
「………はい?」
 心底間抜けな声がかがみの口から洩れる。
「え、えっと、ちょっと待って。一体何のこと?」
 混乱する頭で、かがみはみなみにそう聞いた。
「…とぼけないで下さい…チェリーに続いてゆたかまでもなんて…絶対に、許しません…」
「いや、えっと、何のことなの…」
 かがみはなんとか考えをまとめようとし、一つの結論に至った。
「…みなみちゃん。もしかして、わたしがゆたかちゃんを…その…手篭めにするとか、考えてない?」
「…え?」
 恐る恐る聞くかがみに、こんどはみなみが間抜けな声を出した。
「…ち、違うのですか?」
「…ぷ…くくく…あはははははっ!」
 かがみは思い切り笑い出した。
「ないない!そんな事ないに決まってるでしょ!っていうかどうやったらそんな勘違いするのよ!」
 文字通り腹を抱えて笑いながら、かがみがそう言った。
「…えっと…その………すいません…」
 真っ赤になって縮こまり、消え入りそうな声でみなみが謝った。
「安心してよ。そんな気、全然ないから…あー可笑し、二人してなに馬鹿みたいなことしてんのかしらね」
 笑いすぎで出た涙を拭いながらそう言うかがみに、みなみはひたすら頭を下げていた。

391 :とあるお見舞い[saga]:2009/03/22(日) 03:36:44.74 ID:.kN2wo60
「…ってな事が、来る時にあってねー」
 かがみは当初の目的であるプリントを渡しながら、さっきの出来事をみゆきに話していた。
「それは、大変でしたね…すいません。わたしの為に」
「いや、みゆきは悪くないでしょ」
 謝るみゆきに、かがみがひらひらと手を振ってそう答えた。
「それにしても、なんでみなみちゃんはあんな勘違いしたのかしらね?」
「そうですね。いくらかがみさんが小さな女の子が好きだといっても、そんな事するはずがありませんよね」
「…ちょっとまて」
 なにか引っかかる。
「今、なんて?わたしが何だって?」
 かがみはみゆきの言葉に、とんでもないものが混じっているような気がした。
「え?かがみさんが小さい女子が好き…ですか?」
 まるで常識であるかのように、みゆきがすんなりと答えた。
「まてまてまて…なんでそんなことになってるのよ」
「かがみさんは泉さんと凄く仲がいいですし。以前、泉さんが『かがみはわたしの嫁だ』って仰ってましたから…」
 かがみは頭を抱えた。
「いや、あのな…こなたと仲がいいのは友達だから当たり前だし、こなたのその台詞はただの冗談だぞ…」
「ええ!?」
 みゆきは心の底から驚いていた。冗談だとか勘違いだとかは微塵も思ってないように。
 かがみはその様子を見て、酷く嫌な予感がした。
「ねえ、みゆき。もしかして、そのことみなみちゃんに話したとか言わないわよね…」
「………話しました」
 かがみは再度頭を抱えた。
「…あんたが原因か」
「…す、すいません」
 かがみは、申し訳なさそうに頭を下げるこの天然女王をどうすべきか少し考え、更に嫌な考えに行き着いた。
「ねえ、みゆき。その事、みなみちゃん以外の誰かに話したとか言わないわよね?」
 少しドスの効いた声でかがみがそう聞くと、みゆきは怯えたように身を縮こませた。
「…えっと…その…つ、つかささんにも…」
 かがみは無言で、自分が履いている客人用のスリッパを脱いで手に取ると、底面をペシペシと手の平に打ち付けて、感触を確かめた。
「あ、あの、かがみさん。スリッパはそのように使うものでは…えと…わたし、一応病人ですし…その…ま、待ってくだ」
 かがみがみゆきの頭に振り下ろしたスリッパは、録音したくなるほどの良い音を部屋に響き渡らせた。


- おしまい -
392 :とあるお見舞い[saga]:2009/03/22(日) 03:40:09.73 ID:.kN2wo60
以上です。

少し前にも、ケーキバイキングに釣られたかがみがいたような気がしますが、対かがみ用の釣り餌としてはメジャーなのでしょうか?

ホントはみゆきさんは出す気なかったのですが、勝手に出てきました。
スレタイ効果恐るべし。
それにしても、なんで俺が書くとみゆきさんがこんな風になるのか…。
393 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/22(日) 06:29:52.03 ID:oRBN8Y60
>>385
 司法関係ではなく、普通の国の地方支部局の下っ端です。
 地方分権改革でどうなることやら。下手すれば、伝家の宝刀、分限免職で失業ってことも。
 まあ、なるようにしかならんというのが現実ですが。


>>384
 それもまた「好意的黙認の慣習は、慣習法なのか、それとも事実たる慣習にすぎないのか」という立派な法的議論の対象になるわけでして。
 違法状態が放置・黙認されているという事象については、「法社会学」という学問分野での考察も可能ですし(ちなみに、一般人が「法学」としてイメージするのは、「法解釈学」だけの場合が多い)。
 法律家は野暮な突っ込みをするのがお仕事ですからね。因果な商売です。
 でも、そういう意味では、突っ込み役のかがみには向いてるのかも。
394 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/22(日) 08:00:11.93 ID:9UmhYYSO
>>393
うん、まあその辺にしとこうか…。
395 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/22(日) 08:11:32.86 ID:oKAIxUSO
>>392
かがみん容赦ねぇwwwwww
原作のほのぼのさとこのスレのカオスさをミックスした感じだな
カオス分少なめで
396 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/22(日) 08:28:13.20 ID:8p8lE6SO
>>392
勝手にロリコンww
これは打たれても仕方ないなww

>>393
>>394も言ってるように、あなたは少し自重すべき。
397 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/22(日) 10:00:44.99 ID:RDw.Pxs0
>>392
GJ!スリッパってこうやって使ってこそだよな。
それにしても、チェリーの空気の読めないバカ犬っぷりが良いなぁw

「そんな甘い物ごときに私が釣られクマー」は、かがみの基本だと思う
398 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/22(日) 10:49:33.82 ID:yaqW7YAO
らき☆すた殺人事件〜1レスミステリー〜

その日、柊姉妹はみゆきやみさお、あやのとある場所で勉強会をしていた
かがみはその途中、こなたに電話をかけた

こなた「もしもし」
かがみ「臭くってさー!」
こなた「わかるわかる!」
ドスッ
こなた「え・・・そんな・・・どう・・・し・・・て・・・」ガクッ
かがみ「こなた?どうしたの!?ねぇこなた!?」

その後泉こなたは自宅の自室で心臓をさされ倒れていたのを発見された

つかさ「グス・・・何でこなちゃんがこんな目に・・・」
みゆき「絶対に、犯人を見つけましょう・・・」

みさお「イヤ・・・犯人ならもうわかってるぜ」
あやの「え?」
かがみ「だ、誰なの日下部!こなたを殺したのは誰なの!?」
みさお「まぁ落ち着け柊、今回の謎解きで重要なのはな・・・」
みゆき「重要なのは・・・?」
みさお「ちびっ子が殺された時間帯に私ら全員ちびっ子の部屋に居たってことだ!」

かがみ「・・・・・やっぱり?」
みさお「柊は別の場所からちびっ子に電話してると見せかけて、実はちびっ子の目の前でちびっ子に電話をかけてたんだ!」
あやの「な、なんて巧妙なトリックなのかしら・・・」
ゆい「巧妙もなにも自分らみんな見てたよね?」
つかさ「あ、ゆいさんこんにちは。そういえば見てたっていうか、手伝ったような記憶もあるような・・・」
みゆき「みんなで泉さんを殺害する計画なんて・・・その・・・えっと・・・立ててませんよ?」
ゆい「なにそのダメな計画」
かがみ「フ・・・、完璧なアリバイトリックだと思ったんだけどね・・・・・」
ゆい「いやアリバイトリックじゃないよねそれ」
みさお「バレちゃあしょうがねぇな」
みゆき「ですね」
ゆい「よーしみんな両手を前に出してね?」
ガシャコン
つかさ「どんだけー」

その後

こなた「いやー、ポリゴンショックって怖いねー。死ぬかと思ったよ」
ゆたか「まさか痙攣と刺殺を間違える人なんていないよね〜」
こなた「ゆーちゃんに左胸指差されたのと同時に痙攣起きたのはビックリしたよ」
399 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/22(日) 11:06:28.37 ID:Cge0Dsk0
なんて巧妙なコントなのかしら
400 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/22(日) 12:29:14.45 ID:9UmhYYSO
>>398
なんて巧妙なトリックなんだー(棒読み)


ポリゴンショックってなんの事かと思ったけど
もしかして、ポケモンショック?
401 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/22(日) 12:50:25.33 ID:yaqW7YAO
>>400
そうです
あれにはいろいろ俗称があるみたいです
402 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/22(日) 13:47:44.55 ID:2e0HzxM0
田村ひよりの進路


「うぉりゃぁー!」
 ひよりは、気合の雄たけびを上げながら、机に向かっていた。
 握っているペンは、Gペンではなくシャープペン、目の前のにある紙も原稿用紙ではなく、問題集だった。
 高校生活最後のコミケは先月に終わっている。
 彼女は、大学受験に向けて、最後の追い込みとばかりに必死に勉強しているのだった。

「ひよりは、高校受験のときもこんなだったよなぁ」
 とは、兄の弁。
 追い込まれてから実力を発揮するというのは、同人誌を仕上げるときでも、受験勉強するときでも、変わりはしない。ひよりは、本質的にそういうタイプなのだ。

 なにせ、ひよりの目指す大学は、進路指導の先生に言わせれば「少し厳しいんちゃうか?」というレベルであり、寸暇を惜しんで学力向上に励まなければならなかった。
 なぜそんなレベルの高い大学を目指しているかといえば、それが親が出した条件だったから。その大学に合格できなれけば、ひよりの趣味は永久に封印される運命にあったのだ。高校受験のときと事情は同じである。
 当然、ひよりの気合の入り方は尋常ではなかった。



 学校でもその態度は変わらない。さすがに雄たけびを上げることはなかったが、受験に向けて授業の全日程が自習と化している中、ひよりは一心不乱に勉強していた。
 それは、友人のみなみやゆたかも変わらなかった。
 みなみの目指す大学は、同じ学年の生徒たちの中でも十数人しか志望してないトップクラスの大学だ。ちなみに、みなみの滑り止めのうちの最低レベルが、ひよりの志望大学である(学部は違うが)。
 みなみも余裕というほどではなかったが、第二志望に落ちることはないだろうとはいわれている。
 厳しいのは、ゆたかの方だった。志望大学はみなみとすべて同じ(学部は違う)だったが、学力的にみればみなみと同じ大学にいける可能性は低かった。
 みなみが合格した大学の中からゆたかが合格したのを選んで入学するというなら話は別だが、真面目なゆたかがそれを許すわけもない。
 それゆえ、ゆたかは一生懸命努力していた。
 誇大妄想を抱くには充分な話だったが、ひよりはそれすらも封印して、勉強に励んでいた。

 放課後、みなみやゆたかが帰ったあとも、ひよりは遅くまで教室に残っていた。自宅は何かと誘惑要素が多いので、学校で勉強してた方が効率的だからだ。
「おーす、ひよりん。気合入ってんなぁ」
403 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/22(日) 13:48:22.24 ID:2e0HzxM0
 懐かしい声に振り向くとそこには、
「こうちゃん先輩」
 今は大学一年生であるかつての部活の先輩がいた。
 母校に遊びに来て、アニ研によったあと、ひよりを探してここにたどりついたといったところだろうか。
「気合入れるのはいいけど、適度に休まないと倒れちゃうぞ」
 こうはそういって、ひよりの肩を揉み始めた。
「恐縮っス」
「ひよりの受ける大学ってどこだっけ?」
「○○大学っスよ」
「うげっ。滅茶苦茶レベル高くねぇか? なんでまた、そんなところを? うちの大学ならもっと余裕あるのに」
「そうっスけど、親の出した条件がそれっスから」
「同人続けるにはそこに受かるしかないってわけか。なんだか本末転倒な話だな」
「私もそう思うっスけど、親に養われてる身じゃどうしようもないっスからね」
「分からないわけじゃないけど、もしかして、就職までそんな感じで決めるつもりじゃないよね?」
「……」
 こうの言葉に、ひよりは沈黙せざるをえなかった。
 目の前のことに夢中で、そこまでは全然考えてなかったのだ。
「まっ、それは大学受かってから考えればいいことだけどさ。あまり邪魔しちゃ悪いから私はこれで帰るよ」
 こうはそういうと教室を出ていった。

 ひよりは、その後の勉強がはかどらず、すぐに帰ることにした。
 帰る途中、ずっとこうの言葉が頭をめぐっていたけれども、結局は、今は目の前の受験を頑張るのみと結論づけるしかなかった。



 それから数ヵ月後。
 それぞれにそれぞれの春がやってきた。
 みなみとひよりは、第一志望に合格。ゆたかは、残念ながら、第一志望は落第し、第二志望の大学に通うことになった。
 こうして、みんなの進路はバラバラになってしまった。
404 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/22(日) 13:48:58.16 ID:2e0HzxM0
 そういうわけで、卒業式の日は、三人とも泣きに泣いた。あのクールなみなみの泣き顔という貴重な光景がそこにあったが、そんなことに気をかける余裕がないほどひよりも泣きじゃくっていた。
 もちろん、三人の友情がこの日を境に消えてなくなるわけではない。しかし、毎日顔を合わせることがなくなるというのは、やはり寂しかった。



 そして、大学の入学式。
 大講堂での式を終え、ひよりは、これから四年間は通うことになる大学構内を歩いていた。うららかな日差しが心地よい。

「ハーイ、ひよりん、お久しぶりデース」

 唐突に背後から降りかかってきた聞き覚えのある声に振り向くとそこには、
「えっ? パッ、パティ!? な、なんでここに!?」
「私もここに受かりマシタ」
 パティはVサインをしながら、そう宣言した。
 ショック状態から立ち直ったひよりは、とりあえず、パティをつれて学食に入った。
 買った飲み物のストローに口をつけながら、パティから事情を聞きだす。というか、聞き出すまでもなくパティがペラペラとしゃべってくれた。

 日本の文化をもっと学びたいと思ったパティは、ハイスクールを卒業したら日本の大学に留学することを決意した。
 さすがの両親も、四年間も娘を日本にいかせることには反対で、大喧嘩になったそうだ。
 でも、パティの決意は揺るがず、昔からパティにいろいろとよくしてくれていた母方のおじさんの資金援助をとりつけて、日本に乗り込んできた。身元引受人もおじさんのつてで何とかなったという。
 そして、いくつかの大学を受けて見事に合格。晴れて留学ビザをもぎとってきたというわけだ。
 ちなみに、学部の中での受験成績はトップ5であり、授業料免除の特待生になったという。

 なんというか、パワフルなパティらしい話であった。
「なんで、そこまでして……」
「私のやりたいことは、日本にあるからデス」
 パティは何の迷いもなくそう断言した。

 ひよりは、ここで唐突にあのときのこうの言葉を思い出した。
 パティは両親の反対を押し切ってまで、自分の意思で進路を選んだ。
405 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/22(日) 13:49:32.92 ID:2e0HzxM0
 それに対して、ひよりは親の決めたことに流されているばかりだ。
 目の前のパティのことが、羨ましくてたまらなくなった。

「ひよりん、どうかシマシタカ?」
 ひよりは、今思ったことを正直に話した。
「フーム。でも、ひよりんにもまだまだ将来がアリマス。今までできなかったことも、これから頑張ればいいのデス」
 パティにそういわれると、元気づけられる思いだった。
 そうだ。今までがどうであれ、これから変えていけばいい。
 四年後、就職するときには、親がなんと言おうとも、自分の意思で、自分の納得できる選択を。
 まず、自分がやれること、やりたいことを見つけ出さなきゃならないけど、そのために必要な時間は充分にある。
「ありがとう、パティ」
「礼には及びマセン。ところで、ゆたかとみなみんの連絡先は知ってマスカ?」
「知ってるけど」
 ひよりが携帯電話を取り出すと、パティがそれをひょいと取り上げた。
「では、四人で同窓会をやりマショウ」
 パティは、練達の指裁きで携帯の電話帳を検索して、通話ボタンを押した。
 ひよりが何かをいう間もなく、電話が通じて、
「ハーイ、ゆたか。パトリシア・マーティン デス」
 電話口からの叫び声がひよりのところまで聞こえてきた。
 ゆたかの驚く表情がありありと想像できる。
 パティは、あっという間に待ち合わせ場所と時間の段取りをつけて、電話を切った。
「みなみんへの連絡はゆたかがつけてくれるそうデス。さっそく行きマショウ」

 こうして、ひよりは、パティに引きずられるように、オタクの聖地アキバへと行くことになった。
 そこでは、ゆたかとみなみも待ってるはずだ。
 四人で集まるのは久しぶり。きっと、積もりに積もりまくった話でおおいに盛り上がることだろう。


終わり
406 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/03/22(日) 16:47:02.10 ID:ZCwJOfs0
>>405
乙です。
この四人が主役のシリーズを読みたくなる完成度でした。
特に悩みつつ成長していくひよりの姿には微笑ましくも感慨を受けました。
書きたいことがきちんとまとまっていてとっても好感を持ちました。
407 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/22(日) 17:17:42.24 ID:8p8lE6SO
>>405
乙ー
親の言いなりにならず自分なりの進路を決められるとかパティ立派だ。
ひよりんも頑張れ!良い話でした
408 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/22(日) 17:28:07.26 ID:oEDPrdYo
>>405
乙。各々の性格がしっかり出ててよかった
なんか、世代交代を感じさせられたぜ。GJ!
409 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/22(日) 19:50:15.39 ID:RDw.Pxs0
>>405
乙。いい話だ
しかし、妄想&暴走しないひよりとパティの話って貴重な気がするんだがw


誰かお題をプリーズ
410 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/22(日) 20:11:34.51 ID:Qrf5JUDO
>>409
・色んな人に憑依するかなた
・小神あきらとデュエットデビュー企画に応募して当たる
・みゆきのイメチェン
・家族構成シャッフル(こなたの母親がななこだとか)
・あやの、みさおマジ喧嘩
・これだけは誰にも負けない
・かがみ、いざ回転寿司へ

よかったらどれかお好きなのを
411 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/22(日) 20:26:22.70 ID:9UmhYYSO
>>410
サザエさんみてぇだ
412 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/03/22(日) 20:52:12.23 ID:H5QUaDMo
>>409
みゆきが邪気眼
413 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/03/22(日) 21:18:11.85 ID:5occWwDO
>>409
みなみとゆたかとチェリーで散歩
414 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/22(日) 21:27:42.11 ID:RDw.Pxs0
>>410-413
さんくす。ってか、今回はハードルが高めな気がすんぞw
俺ひとりで捌ききれるはずもないので他の人も書いてくれると楽しいんだぜ

たしかに>>410の最後の3つはサザエさんの次回予告風に見えるなww
415 :コンクールレビュー[saga]:2009/03/23(月) 00:07:15.67 ID:PomMHDU0
コンクールの投票最終日になりましたので、レビューもどきをひっそりと投下します。

とりあえず初レビューなので、使いやすいキャラをつかいました。
過度な期待はしないでください。
416 :コンクールレビュー[saga]:2009/03/23(月) 00:08:41.32 ID:PomMHDU0
こなた「泉こなたです」
かなた「泉かなたです」
そうじろう「泉そうじろうです」
こなた「と、言うわけで、コンクールレビュー参ります。はい、タイトルどん!」


第十三回らき☆すたSSコンクールレビュー
- 見よ、泉家は紅く燃えている! -


かなた「ええ!?大変!消防車、消防車!」
こなた「いや、ネタだから落ち着いてお母さん…」
そうじろう「…大丈夫か、この企画」


エントリーNo.01『死亡フラグでショートショートショート☆42連発』

こなた「いきなりごっついのがきたね」
そうじろう「ショートショートって形態も珍しいが、なにしろ量が凄いな」
こなた「んだねー」
そうじろう「まあ、これは一作目に相応しい作品ではあるな」
こなた「その心は?」
そうじろう「これを見れば、死亡フラグってのが大体どんなものか分かるだろ?」
こなた「なるほろ…てか、お母さんもなんか言おうよ」
かなた「私の出番が多い…」
こなた「う、うん…まあ、現役の死人だからね…」


エントリーNo.02『死亡フラグを回避せよ!』

こなた「連発するボケに突っ込みまくる話だね」
そうじろう「そ、そうだっけか?…まあ、死亡フラグを死亡フラグで上書きする、毒を持って毒を制すって話だな」
こなた「なんとなくゲームチックだね。上書きの仕方間違えたらゲームオーバーみたいな」
そうじろう「いや、人の命…つーかお前の命がかかってるんだが…」
かなた「…こなた…いいお友達を持って…ぐすっ」
こなた「…え、これそんな風に泣く話?」

417 :コンクールレビュー[saga]:2009/03/23(月) 00:10:04.26 ID:PomMHDU0

エントリーNo.03『信じる心と優しさを』

こなた「正直、滑ったね」
そうじろう「まあな」
こなた「わたしやお父さんの心境を、もう少し掘り下げても良かったんじゃないかな」
そうじろう「だなあ…投下を焦りすぎたんだろうな」
かなた「あ、あの…どうしてそんな、急に辛辣に…」
そうじろう「かなた…世の中にはどうにも褒め難い作品というものがある」
かなた「う、うん」
そうじろう「たとえば、自分の作品とか自分の作品とか、もしくは自分の作品とか」
かなた「…納得」


エントリーNo.04『マークト・フォー・デス』

こなた「これまた長いね」
そうじろう「ふむ。一作目とは違った感覚の死亡フラグの詰め合わせだな」
こなた「…ひよりんだけ酷く浮いてるような気が」
そうじろう「…うん、まあなんというか、俺以上に自分に正直な娘だね…話の最後にはチラッと考えさせられる言葉もあるな」
かなた「…ねえ、そう君」
そうじろう「ん?なんだ?」
かなた「もし、現実でもこんなルールが誰かに決められてるんだったら、私はどこでフラグを立てちゃったんだろうね?…その行動を取らなかったら、私は今でも…」
そうじろう「ストップ、かなた。そんな仮定は無しだ」
かなた「う、うん…」
こなた「…次、行くね」


エントリーNo.05『あなたならどうしますか?』

こなた「何かを得るためには、何かを失わなければならない。その失う代価が、もし…っていうお話」
そうじろう「…俺は、このみなみちゃんの苦悩も行動も理解できるだけに、やるせないな」
かなた「…もし、そんな機会を与えられたとしても、私はそう君に生きてて欲しいけど…」
そうじろう「…そうか」
こなた「あーもう!暗い!お父さんもお母さんも暗すぎるよ!次行っちゃうからね!?」
そうじろう「こ、こなた…」
かなた(…もし、そう君の代わりに私が生きていてら、こなたをこんな元気に育てることは出来なかったかも知れない…どんな可能性を与えられたとしても、私はきっと間違わないよ…そう君…)

418 :コンクールレビュー[saga]:2009/03/23(月) 00:11:01.00 ID:PomMHDU0

エントリーNo.06『純粋な子に色々教えると後が怖い』

こなた「タイトル通りのお話だね」
そうじろう「ギャグっぽい話になってるが、教訓としては真面目だな。知らないってのはホントに恐ろしいからな」
かなた「そうねー。知らないのをいいことに『ちょっとこのゲームやってみないか?』ってあんなの渡された日にはねー…ねえ、そう君?」
そうじろう「…さて、なんのことやら」
こなた「…大体想像はつくけど、なにやらせたのさ…」


エントリーNo.07『かぜのゆめものがたり』

こなた「なんとも綺麗な文章だね」
そうじろう「なんというか、文学作品のような感じがするな」
こなた「お題が見え難いって意見があったみたいだね」
そうじろう「ふむ。だがお題が見え難いことが、お題に添ってるともいえるな」
こなた「へ?」
そうじろう「かがみちゃんのどの行動が、もしくはどの心境が死亡フラグだったのか、読む手が考えさせられる話だと捉えられるからな」
こなた「なるへそ」
そうじろう「文に限らず作品と言うものはな、作り手と受け手が共に作り上げていく物なのだよ」
かなた「そう君…拾った物は食べないでってあれほど…」
こなた「お父さん…歳だし徹ゲーは控えようってあれほど…」
そうじろう「…母娘揃ってきっついな」


エントリーNo.08『柊ってばさぁ』

こなた「まさかの1レスもの。しかもみさきちの台詞一つのみ」
そうじろう「まさにインパクト重視の一発ネタだな」
こなた「二度は使えないと?」
そうじろう「流石に初見のインパクトを超えるのは難しそうだからな」
かなた「コンクールって長さの規定が無いみたいなんだけど…一文字ずつで100レスとかできるのかしら?」
そうじろう「…読んでくれる人の全てを敵に回しかねないな、それ」

419 :コンクールレビュー[saga]:2009/03/23(月) 00:12:36.13 ID:PomMHDU0

エントリーNo.09『青い髪の天使が見守る父娘』

そうじろう「俺を残して逝くなこなたぁぁぁぁぁっ!!」
こなた「いやいや、死んだのは作品内だから。わたしはちゃんと生きてるから。ここにいてるから」
そうじろう「…すまん、取り乱した」
かなた「…でも、私に似ているってのが死亡フラグだったのなら…」
こなた「それは心配ないでしょ。中身はお父さん似なんだし」
かなた「そ、そうかな…だといいんだけど」
そうじろう「…関係ないが『父娘』って『ちちこ』だと変換できないから、『ちちむすめ』で変換してるんだが…うっかりすると『乳娘』になるグハァッ!?…な、なぜ殴る…」
こなた「今チラッとこっち見て言ったでしょう!どーせありませんよーだ!」
かなた「…殺っちゃえ、娘」
こなた「イエス、マイマザー」
そうじろう「ちょ、ちょっと待…」


エントリーNo.10『呪いのカケラ』

こなた「最後の作品だね。タイトルからホラーっぽい話だと思ってたけど、爽やかさが残る友情物だったね…怪我人でてるけど」
そうじろう「…ああ、今まさにお父さんが重傷だ…グフッ」
こなた「大袈裟な…よく見たら、わたしに立った死亡フラグをみんながどうにかするって所はNo.02の作品と同じなんだよね」
そうじろう「そうだな、しかし書き手によってここまで変わるというのは、面白いところだな」
こなた「復活早いなー…ってか、お母さんが発言してないけど」
かなた「ごなだ〜…グスッ…良いおどもだぢをもっで〜…ヒック」
こなた「うわーお、またか…友情物に弱いのかな…」


こなた「と、言うわけで笑いあり涙ありの計十作品」
そうじろう「正直、レビューになっていない気もするが、軽く楽しんでいただければ幸いだ」
かなた「…えーっと。ごめんなさいね。折角呼んでもらったのに、あんまり喋って無くて…」
そうじろう「なにを言うんだかなた…お前は傍にいてくれるだけで…」
かなた「帰りづらくなるから、そう言う事は言わないで…お願い…」
そうじろう「かなた…」
かなた「そう君…」
こなた「…ていっ」
そうじろう「あいっだー!?…べ、弁慶をもろに…な、なにするんだこなた…」
こなた「…フンだ」
かなた「こなた…もしかして、妬いてる?」
こなた「違うよ!もう締めだってにいちゃつくなっての!終わらなくなるんだから!」
かなた「えーっと、あれねあれ…ツンデレ?だったかしら?」
こなた「違うっつーに!怒るよ!」
かなた「ふふ、怖い怖い。それじゃ、私はそろそろ戻らないといけないから…コンクールお疲れ様でした」
こなた「うー…」
そうじろう「不貞腐れてないで締めるぞ。それでは皆様、お疲れ様でした」
こなた「お疲れ様………あー!なんだか納得いかないー!」


- おしまい -
420 :コンクールレビュー[saga]:2009/03/23(月) 00:14:07.52 ID:PomMHDU0
以上です。

この三人(+かがみ)は勝手に喋ってくれるのでやりやすかったり。

では、俺は逃げますんで後は良しなに。
421 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/23(月) 00:20:35.87 ID:O1t6ymI0
レビュー乙
現役の死人wwwww
422 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/03/23(月) 01:00:08.89 ID:t6c1yv20
>>420
レビューお疲れさまです。
面白おかしく読ませていただきました。
批評というか感想を書いてくれる人がいると助かります。
423 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/23(月) 01:08:12.76 ID:qxRIql20
>>420
もどきと謙遜する必要は無いんじゃないかな。
面白かったです。
にしてもNo.03の作者だったのか。泉親子好きなのか?ww

ちょっと空けてから俺もレビューを投下することにしよう。
424 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/23(月) 07:32:48.34 ID:4Qma0IAO
>>420
レビュー乙
冥界より蘇ったかなたさん、俺がいただく!

>>423
よろ
425 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/23(月) 07:59:15.28 ID:PomMHDU0
>>423
書いたSSの半分以上にそうじろうが出ているくらいに大好物です。
>>424
あげません。
426 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/23(月) 18:02:17.40 ID:kP1HYf2o
>>420
面白かったぜーレビュー乙&thx
そして、俺も突っ込まざるを得ない。なんだよ現役の死人ってwww
427 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/23(月) 19:43:06.11 ID:qxRIql20
------------------------------------------

こ、ここここまで、ままままとめたたた

------------------------------------------
428 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/23(月) 21:09:49.55 ID:0oYJJ.A0
>>427
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお乙DEATH
429 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/23(月) 21:57:54.24 ID:qxRIql20
それじゃいきますよ。
430 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/23(月) 21:58:49.56 ID:qxRIql20
背景 

冬の寒さが去り、桜のつぼみとともに春めいてきたこの頃ですが、
お二人とも元気でお過ごしでしょうか。
私どもは健康に過ごしておりますので、他事ながらご休心ください。

さて、私どもは普段コンクール作品のレビューという物を担当しておりますが、
実は今月末にとても重要なイベントを控えておりまして、
その準備のため他のことには全く手の着けられない状況でございます。
そこで、今度のレビューのお引き受け願いますでしょうか。
ご迷惑は承知の上ですが、お二人を適任と判断いたしまして、
この依頼のお手紙を書かせていただいた次第です。

よくご検討されるよう、どうかよろしくお願いします。
まずはお願いまで。

                               敬具

        陵桜学園高等部 アニメーション研究部部長 八坂こう



みさお「……で引き受けることになったんだけどさ」
あやの「うん」
みさお「今になってすっげえ押し付けじゃね?って思ってきてんだよな」
あやの「うーん」
みさお「重要なイベントって何だよっていうか」
あやの「そうねえ……それと、本当に私達が適任って思ったのかしら」
みさお「うーん……まあやるからにゃやんねーとだけどな」
あやの「このために全部の作品を読んできたもんね」
みさお「そーそ。よし本番が始まるな。行くぞぉ!」
あやの「はーい」



ひより(いよいよ始まるぞー!
    こーちゃん先輩にも内緒でスタジオに潜入……
    今まであんまり注目してなかったけどこの二人を観察してみるッス!!)


     らき☆すた SS 第十三回コンクールレビュー

431 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/23(月) 21:59:43.23 ID:qxRIql20
みさお「やっほー!日下部みさおでーっす!」
あやの「峰岸あやのです」
みさお「えーいつもの二人はなんか忙しーみたいで来れないらしいんだけど」
あやの「何か大切なイベントがあるんだってね」
ひより(大切ッスねー今部室は修羅場ですよ!)
みさお「そーなんだよなー」
あやの「まあ、任せられた仕事はきちんとやりましょう。
    今回のコンクール、お題は『死亡フラグ』」
みさお「初めのうちはお題ムズい!って皆言ってたんだよな」
あやの「そうそう。実際は十作品も投稿されました」
みさお「結構書けるもんだよなー」
あやの「そうね。それじゃ、早速レビューしていきましょう」
みさお「オッケー!」
ひより(私もメモ帳の準備オッケー!)


◎No.01:ID:Lfwad760氏:死亡フラグでショートショートショート☆42連発

あやの「いきなり風変わりなのが来たのよね」
みさお「42個とか多いよなー。作者もよく書けたなーって思うぜ」
あやの「42個の死亡フラグを思いつくだけでも大変だけど、
    作者さんの場合過去に自分の作った物が役立ったみたいね」
みさお「ラッキー!ってか」
あやの「お題が『死亡フラグ』に決まってからピーンと来たんでしょうね。
    『あ、昔作ったのが使える!』って」
みさお「おー」
あやの「さて肝心の内容だけど、42個もショートショートを書くのは大変な挑戦だったみたいね。
    ギャグもあればしんみりするのもあるし、
    一色に染まってないのは飽きさせないために重要かもねー」
みさお「けど正直全部読むのダルかった」
あやの「そんなこと……まあ確かに、多いもんね。
    もうちょっと話をつなげる、みたいな工夫が必要だったかも?」
みさお「ま、けど読みやすかったしオッケーってことで!」
あやの「そうね。一つ一つの物語は良かったんじゃないかなー」

ひより(うーん……絡みがないなあ。もっと思い切って!)

432 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/23(月) 22:01:18.01 ID:qxRIql20
◎No.02:ID:/q5SXmA0氏:死亡フラグを回避せよ!

みさお「これはウケた」
あやの「そうねー。勢いのあるギャグSS、っていう感じかな。
    発想的には『死亡フラグ』→『柊ちゃんが死亡フラグを立てまくる』
    ……っていうところかしら?」
みさお「さー?」
あやの「う、うん、ただの憶測だけどね?
    泉ちゃんにはかわいそうだけど、必死になっている姿が笑えました」
みさお「おー残酷だあやの」
あやの「も、物語だから……
    作品の雰囲気も終始一貫して良かったと思います」
みさお「一つ言うとー」
あやの「うん?」
みさお「ちびっ子のお父さんが作った計画っつー設定はどうかなって思ったぜ」
あやの「うーん……柊ちゃんが死亡フラグを立てまくることに意味を持たせようとしたのかしら?
    これがいいかどうかはちょっと……私には判断できないかなー。
    まあこの部分がタイトルの本当の意味でもあるみたいだし?」
みさお「んー……まいっか。あーあやの?」
あやの「何?」
みさお「私ね、えーと、このレビュー終わったら結婚するんだぜ」
あやの「んーそう?」
みさお「いやいやナチュラルに流してんじゃねーよ!そこツッコミ!」

ひより(うーんホントに結婚してくれりゃいいのに……
    日下部先輩のキャラちょっとわかったかな。メモメモ)


◎No.03:ID:Pfj6XGw0氏:信じる心と優しさを

あやの「ちょっと深刻な話ねー」
みさお「んー」
あやの「途中ちょっと劇的な展開があるけど、みさちゃんはどう?」
みさお「あーあの辺か。ちびっ子のお父さんが家に帰って来てからんとこ?
    いいんでねーの?」
あやの「ぶっきらぼうね……」
みさお「だってさー」
あやの「さて、内容だけど、話の基本構成はシンプルな感じよね」
みさお「そーだな」
あやの「話はきちんとつながってるし、立派に物語になってると思うのね」
みさお「うん」
433 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/23(月) 22:02:18.62 ID:qxRIql20
あやの「細かい所では、最初のゲームのシーンで泉ちゃんがパーフェクト勝ちしてるのと、
    回想が終わった後に逆に柊ちゃんがパーフェクト勝ちしてるっていう対比が面白いわね」
みさお「確かにクスッと来たな」
あやの「ただ、クライマックスの辺りが人を選ぶかしら。
    ドラマチックな展開とか好きじゃない人にとってはちょっと読むのが辛いかもって思いました」
みさお「ほー」
あやの「こんな風にお父さんの様子がおかしかったら心配にはなるけどね。
    みさちゃんだったらどうする?」
みさお「んー私だったら放置すっかなー」
あやの「そ、そう……」

ひより(近親相姦フラグか……小早川さんとかも巻き込まれたりして……ぐふぅ)


◎No.04:ID:dk3zqLo0氏:マークト・フォー・デス

みさお「死にまくりだな」
あやの「作者の作品ね……えー、そうね、何言えばいいのかしら」
みさお「一ついい?」
あやの「うん?」
みさお「扱いがひでえよ!」
あやの「んー……」
みさお「全員がどんな風に死んだか読んだけど私あっさり過ぎねえ?あやのもだけど」
あやの「うーん……」
みさお「それにひきかえ何だよ柊はーあそこまでかっこ良く死ねたら文句ないっつーに」
あやの「柊ちゃんは格好良かったわね、確かに」
みさお「ちぇー。うちの兄貴に参加させたらどんな風に死ぬんだろ」
あやの「うーん」
みさお「とりあえず即死は確定で」
あやの「ええっ!?」
みさお「たとえばパソコンが爆発して」
あやの「それはあり得るのかな……」
みさお「それか家を出た途端地雷踏んで」
あやの「みさちゃんと同じように?」
みさお「あるいは体が爆発して」
あやの「……爆発好きなの?」

ひより(悪いけどね、私より酷い死に方した人いないと思うんスよ!
    作者は私が嫌いなんスかね?)

434 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/23(月) 22:03:08.84 ID:qxRIql20
◎No.05:ID:V1DeEo20氏:あなたならどうしますか?

あやの「タイムスリップなお話ね」
みさお「ID」
あやの「え?」
みさお「IDがもうちょっとでビデオだった」
あやの「そ、そうね。
    えー、この作品は処女作、みたいね。でも初めてとは思えないほどの出来でした」
みさお「読んでてすげえって思った」
あやの「うん。第三者の視点で淡々と語る地の文が作品の雰囲気によく合ってたなー。
    そして何度も時間を戻るうち岩崎ちゃんの心情が変化していくのもよく書けてると思う。
    あと、最後の終わり方がいいのよね。想像させる感じ」
みさお「初めてでこれってどんだけだよホント」
あやの「ま、まあ。いい所ばかりでもないしね。
    文章は洗練されてていい感じだけど、ちょっと説明不足でわかりにくい所もあったかな。
    泉ちゃんの家の前で岩崎ちゃんが待機してる所とか。
    あと、展開が急な感じがしたからエピソードを加えた方がいいかな、とかもね」
みさお「そー?気になんなかったけど?」
あやの「うーん……。それにしても、ジレンマよね」
みさお「へ?ジンマシン?」
あやの「ジレンマ。岩崎ちゃんは小早川ちゃんを死から守りたくて、
    でも守ろうとすればするほど多くの人が巻き添えになっていって」
みさお「はあ」
あやの「みさちゃんだったらどうする?死ぬのが私だとして」
みさお「そりゃ守りにいくぜ」
あやの「ふーん。じゃあ守ろうとしたらお兄さんまで巻き添えになる、とかだったら?」
みさお「それは全然問題ねえな」
あやの「ええちょっと!いいのそれで!?」

ひより(ふーむ、日下部先輩は峰岸先輩に熱く兄弟に冷たい、と。メモメモ)


◎No.06:ID:AqV2Oq20氏:純粋な子に色々教えると後が怖い

みさお「これもなかなか面白かったような」
あやの「この作品もギャグ物ね」
みさお「ちびっ子がとんでもねえ目にあってたな」
あやの「新たな死亡フラグが生まれる、っていうのが面白くない?」
みさお「そーだな」
あやの「それからインパクトのある始め方もいいと思ったかなー」
みさお「うん」
あやの「ただ、ちょっと個人的な感想かもしれないけど、
    最後のシーンね、小早川ちゃん?の行動が、ちょっと流石にどうかなーって思ったのね」
みさお「まーやり過ぎだよな。
    しかもいつの間に作ったのかわかんねえ機械まで出てくるし」
435 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/23(月) 22:03:35.62 ID:qxRIql20
あやの「多分オチに持っていくためのいい展開が思いつかなかったと思うんだけどね。
    話の長さ的にはあれで丁度いいと思うんだけど、もう少し別の方法はなかったのかなって」
みさお「でもムズくね?」
あやの「もちろん、うん。そもそも矛盾してるのよね。
    小早川ちゃんは泉ちゃんを守りたいのに、結果泉ちゃんが死んじゃうっていうの。
    小早川ちゃんの意志と結果とがね」
みさお「はあ」
あやの「まあそう思うと仕方なかったのかも。あと、これもタイトルは変えてもよかったと思うかな」
みさお「ふーん。あ、新しい死亡フラグって言ったらさ」
あやの「ん?」
みさお「あやののリラッタヌに水こぼしたらダメだな」
あやの「そうね……新しいのかなそれ」
みさお「さあ」

ひより(なるほど峰岸先輩×リラッタヌか……ありっちゃーありスかね。メモメモ)


◎No.07:ID:KY2EcaM0氏:かぜのゆめがたり

あやの「悲しいような、そうでもないようなお話ね」
みさお「淡々としてる、って言うのか?とにかく良いよな」
あやの「何度か読んだんだけど、構成がすごいと思うのね。
    現在を主軸に過去を織り交ぜる形だけど、うまーく働いてるのよねー。
    徐々に全貌が見えてくる感じ?」
みさお「うん」
あやの「それから、フレーズの反復。ウサギとか『人生は夢』とかね。
    これが効果を出してるかな」
みさお「あーあるかもな」
あやの「そして表現もいいの。
    特に『プレッシャーをストレスとは感じず、……』の所、グッと来たー」
みさお「いいとこ多いな。悪い所はねえの?」
あやの「うーん。無いはずはないと思うけど……
    例えば最後から二番目の現在の描写のところ?
    『こなたが舟を漕いで……』ってところね。ちょっとタイミングが悪いような」
みさお「んーそうか?」
あやの「ここの前後だけシーンが連続してるでしょ?
    それがちょっとね、あの、流れが途切れてるっていうか……」
みさお「まあ悪い所もあるんだな」
あやの「た、多分ね?」
みさお「多分かよ」
あやの「うん。あとは誤字脱字がちょっと残念だったけど、私これすごく好き〜」
みさお「まあいい作品なんだな、とにかく」
あやの「うん、それだけじゃなくてね、あの、柊ちゃんの内面描写なんかも良くて、あと、……」
みさお「うんわかったわかった!すげーんだな、うん!」

ひより(彦星と織姫って、泉先輩×柊先輩の暗喩だったり……だめだ、汚れまくる)

436 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/23(月) 22:04:11.88 ID:qxRIql20
◎No.08:ID:hIBN.n60氏:柊ってばさぁ

みさお「短けぇ」
あやの「1レスでの参加は多分初めてね?」
みさお「初めてだろうな。あやのはさっきのやつが好きらしいけど、私的にはこれ好き」
あやの「うーん、何となく何でかわかるかな」
みさお「うん、だって私しか出てこないんだぜこれ。後にも先にもこの作品だけだよそんなの」
あやの「やっぱりそうだった」
みさお「バレバレか」
あやの「そうね。うーん、これ、みさちゃんの語り口はよく表現できてると思うな」
みさお「うん、いっつも私こんな感じだわ。しゃべりかた」
あやの「それはいいんだけどね……正直、それ以上の感想は無いっていうか」
みさお「えー?何かあるだろー?」
あやの「んー……みさちゃんは何かある?」
みさお「えーと……『お・も・い・で』とか?」
あやの「……ま、まあ印象には残ったけど」
みさお「あと……あ、わざとボケたとこ!」
あやの「んー……、まあ確かに面白いわね」
みさお「なんだよー全然興味無さそうじゃん」
あやの「いやあの、うーん……まあ、とにかくも斬新な作品でした」
みさお「あ!締めやがった」

ひより(これであと二作品か。むー、もうちょっと絡んでほしいんだけどなー……
    峰岸先輩のキャラもつかめてきたかな。メモメモ)


◎No.09:ID:ZT2Mmiw0氏:青い髪の天使が見守る父娘

あやの「感動系のお話ね」
みさお「つーか騙された!途中でなんかおかしいと思ったらあの二人じゃねーじゃん」
あやの「叙述トリックね。作者さんも狙ってたと思うな。
    この作品だけど、起承転結がしっかりしてて読みやすかったです」
みさお「基本ができてるってことか」
あやの「そうね。なんか、ドラマを見てる気分だったなー」
みさお「つーかドラマそのものじゃねーか?」
あやの「そ、そっかな。ただこれも、No.03の方でも言ったけど、苦手な人は苦手な作品」
みさお「んー、そっちでも思ったけど、ホントにこーゆーの苦手な奴っていんの?」
あやの「いると思うけど……」
みさお「へー。よくわかんねえ」
あやの「うーん。それとね、これも個人的に気になったことかしら。
    最後の(ありがとう、こなた。)は要るのかなーって」
みさお「えー?いーじゃん」
あやの「んー……まあ作者さんも捨てがたかったとは思うんだけどね。
    私どうしてもこれが冗長な気がして」
みさお「じょーちょー?」
437 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/23(月) 22:04:32.48 ID:qxRIql20
あやの「まあこれも何とも言えないかなー」
みさお「はあ」
あやの「それにしても、こんな風に、自分の好きな人が自分のせいで死んだんじゃ、
    っていう罪悪感?どうなのかなー」
みさお「まあ幸せならいーじゃん」
あやの「そんな簡単に納得できるものかしら……」

ひより(日下部先輩が峰岸先輩を孕ませたらわかるんじゃないかなー……ムフ)


◎No.10:ID:x6DW2C2o氏:呪いのカケラ

みさお「さあ最後の作品」
あやの「これはタイトルが上手いわね」
みさお「上手えの?」
あやの「読み方が二つあるのよ。『のろい』と『まじない』と。
    あの勾玉最初は『のろい』だったけど、最後には『まじない』に」
みさお「そっか!初めて気付いたわ。んな秘密があったのか」
あやの「うん、すごいよね。ストーリーもよく考えられてる。
    実は最初から既に伏線だったっていうね」
みさお「あー、あったな。すげー」
あやの「で、……えっとね、これも途中の展開が、あの」
みさお「ん、苦手な人も居ますって?」
あやの「うん……」
みさお「居るのかよホントに。まあいいけど」
あやの「うーん。まあこういうの好きな人もいるだろうし、好みの問題なんだけどね」
みさお「まーな」
あやの「あと、ちょっと面白いのは、この作品の主題がNo.04の対比になってるところね」
みさお「そうだっけ?」
あやの「ほら、No.04では運命は変えられないもの、っていうのだったでしょ。
    でもこっちは運命を自らの手で破ってるじゃない?」
みさお「はあ」
あやの「似たような設定で主張が真逆の作品が出るって面白いわね」
みさお「そーだな」

ひより(どっちかって言うとあなたたち二人の考え方が真逆のような……
    うん、この二人のキャラは大体つかめたッスね。メモメモ)

438 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/23(月) 22:05:00.62 ID:qxRIql20
あやの「以上、十作品でした」
みさお「今更だけどホント色んな作品があったな」
あやの「うん、ホントにね」
みさお「つーか、こんなもんでよかったのか?レビューは」
あやの「うーん……」
みさお「まあいっか。じゃ、こんなとこで、えっと締めの言葉」
あやの「ばいにー?」
みさお「それ、ばいにー」


ガタン


あやの「……さて。それ見せてもらえるかしら?」
ひより「!?」
みさお「は?……あ」
あやの「ずーっと気になってたんだけどね、そんな所に隠れて、
    こそこそ何をメモしてたのかなーって」
ひより「いや、これは……」サッ
あやの「悪い物なの?ねえ」
ひより「わ、悪くは……」
あやの「じゃあ見せて?」
ひより「え、っと……」
みさお「ついでに私も見ていーか?」
あやの「うん」

あやの・みさお「……」

ひより「……」
あやの「みさちゃん、ちょっと先に出ておいてくれるかしら。
    多分二、三分くらい?待たせることになると思うけど」
みさお「二、三分?わかった、テキトーに暇つぶしとく」
ひより(うわーどうすんのこれ……こうなったら!)

ひより「うわああああああああ!」ダッ
あやの「あ、逃げ」

ガシッ

みさお「ダメダメ。逃げたら後で余計酷いことになんぞ」
ひより「えー……」
あやの「あ、ありがとみさちゃん。じゃあ後でね」
みさお「ほーい」
ひより(わああこれからどうなんの?どうなんのぉぉぉ!?)
439 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/23(月) 22:05:22.40 ID:qxRIql20


……


こう「ねえまだー?」
ひより「そろそろ休憩ダメっすかー……?」
こう「ダーメだよ。一人サボってどっか行ってたバツでしょ」
ひより「くー……」(峰岸先輩……チクった上に雑用の約束を勝手に承諾するとは)
やまと「あの、私は居なきゃダメ?」
こう「あー大丈夫。ひよりんが一晩で全部やってくれる」
ひより「ジェバ○ニじゃないんッスから!」
やまと「じゃあ先に上がらせてもらうわね。宿題あるの」
こう「はーいお疲れー」
ひより「宿題私もあんのにー……」
こう「はいはい、ひよりんの宿題はこの全員分のセリフ貼っつけるのでしょーガンバレー」
ひより「これ以上頑張れないッスよおお!!」


終わり
440 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/23(月) 22:06:53.40 ID:qxRIql20
今回はちょっと辛口にやってみました。
あとかなり長くなってしまいました。なんでだろ。

投票時間終了まであと少し、結果が楽しみです。
それではお粗末さまでした。
441 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/23(月) 22:30:10.21 ID:PomMHDU0
>>440
乙です。

いや、俺のにくらべるとホントしっかりしたレビューですわ。

それにしてもみさおのやる気のなさが半端ない。いきなりIDとか。
あと、あやのの好みが透けて見えるのも面白いですな。
442 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/23(月) 22:56:38.65 ID:PomMHDU0
ってか、見直して気がついたけど「背景」って…。
443 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/23(月) 22:56:51.50 ID:kP1HYf2o
>>440
文字通りレビューな感じでよかった。乙thx!
なんかで出てくる度に思うけど、ひよりのざまぁw率が半端ないww
444 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/03/23(月) 23:13:03.20 ID:t6c1yv20
>>440
乙です。
今後の作品作りに参考になるレビューでした。
評していただける方がいられるとこちらの創作欲も増すのでありがたいです。
445 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/23(月) 23:41:01.41 ID:fNIraCU0
>>420
レビュー乙!泉家は仲が良くていいなぁ
その3人を自由に動かせるのは羨ましい

>>440
レビューだけでなくまとめまで……乙です!
背景コンビの軽快なしゃべりがGJなんだぜ
ほどよい辛口テイストでした

>>444
だよなー。レビューしてもらえると『読んでもらえた感』がすげぇよなー
446 :主催後任2009/03/24(火) 00:05:01.66 ID:yJiWd.6o
では、3月24日になりましたので、投票結果を発表いたします。

たくさんの票を獲得し見事、大賞に輝いたのは、ID:V1DeEo20氏作『あなたならどうしますか?』です。
おめでとうございます!
今回は、ID:Lfwad760氏作『死亡フラグでショートショートショート☆42連発』と、
ID:/q5SXmA0氏作『死亡フラグを回避せよ!』が、同列二位のため共に副賞となります。
お二方とも、おめでとうございます!


ご参加いただいた作者の皆さま、作品を読み投票していただいた読者の皆さま、作品をまとめていただいた皆さま、誠にありがとうございました。
以上を持ちまして、第13回らき☆すたSSコンクールを終了とさせていただきます。
ではまた、次回のコンクールをお楽しみに。お疲れ様でした!

※投票結果の詳細はこちらhttp://vote3.ziyu.net/html/lkstx3.html
447 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/24(火) 00:15:35.38 ID:zMQLjxA0
こなた「ど真ん中だね」
そうじろう「ど真ん中だな」
こなた「まあ、自信がなかった作品の割には票が取れて良かったような」
かなた「それはそれとして、大賞・副賞の方々。おめでとうございます」
こなた&そうじろう「おめでとうございます」
こなた「では、大賞の方には景品としてお父さん秘蔵の『なんか凄いかなたさんの写真』を。副賞の方にはこれまたお父さん秘蔵の『ちょっと凄いかなたお母さんの写真』を…」
かなた&そうじろう「ちょっと待てぇぇぇぇっ!!」


すいません、取り上げられました byこなた
448 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/24(火) 00:20:33.21 ID:wTun86AO
おめでとうです!
特に優勝の人は初参加で初優勝とは、末恐ろしいやつよの……。

それに対して、はぁ、また俺の作品が……
449 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/24(火) 00:46:01.28 ID:YsfomnE0
<<420
<<440
レビュー乙です!
コンクール参加者として楽しく読ませていただきました。
<<446
…なんか俺の作品が優勝してるんですけど…。
とりあえずかなり驚いています…。
1,2票入ってていいところかなと思ってたんですけど、まさかの結末です。
まあレビューに書いてあったとおり、自分でも説明不足だと思うところがありましたが、
作者の腕ではこれが限界でした。…誤字もやっぱりあったし…。
てか明日妹の高校受験の合格発表なので親から「明日の運は全部妹にあげや」って言われてたのに使い果たしてしまいましたね。

今回はお題が死亡フラグでしたのでシリアスで鬱な作品でしたが今度はらき☆すたらしいほのぼのとした作品を書こうと思っています。
…まあお題投票で「事件」に投票しましたけど…。今度のコンクールもがんばりたいです。
<<448
ありがとうございます。
上にも書きましたが俺も本当に驚いています。
450 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/24(火) 00:48:40.90 ID:YsfomnE0
>>449
すいません早速間違いました…。一応訂正しておきます。
>>420
>>440
>>446
>>448
451 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/24(火) 00:53:20.23 ID:YsfomnE0
>>447
いくらでなら譲ってくれますか?
452 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/24(火) 00:58:43.66 ID:iTV0cUSO
>>451
そうじろう「国一つ買える額でも釣り合わんわぁぁぁぁっ!」
かなた「…いい加減処分して…」
453 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/03/24(火) 01:00:31.09 ID:YnPiCP2o
           イマジンブレイカー
こなた「私の右手の幻想殺しが雄叫びを上げてるぜ……」
かがみ「だれも超能力者じゃないから意味無いだろ」
こなた「不幸を呼ぶだけだよ、とほほ……」
454 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/24(火) 02:42:41.79 ID:hTY79AA0
>>449
おめでとう。
票数では圧倒的に負けちゃったな。
レビューでは結構言い放題だったが自分も精進する必要があるようだ。
455 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/24(火) 06:11:47.60 ID:0OdNy1I0
柊家の呪い

 夜、柊家の居間。

「柊家の呪い」
 いのりは、目の前にいる夫にそう言った。
「代々そう言われてるわ。お母さんもそう言ってたし、私も同感ってところ」

 柊家の始まりは、神社を起こすよりも前のこと。
 創始者は女性で、大変な呪術の力をもっていたという。
 そして、その呪術の力が女の子孫にしか伝わっていかないことを、彼女は知っていた。

「もしかして、いのりも?」
「まあね。今となっては、たいした力は残ってないけど。私ができるのはせいぜいこれぐらいよ」
 いのりが何かをつぶやくと、神棚の蝋燭に灯がともった。そして、また何かをつぶやくと、すっと消えていった。
 夫は目を見張る。
「あとは、お守りぐらいかしら?」
 ここの神社のお守りは御利益が高いと密かに評判だ。
「そういえば、あのお守りはいのりのお母さんが作ってるんだったな」
「いずれは私が作ることになるんでしょうけど。妹たちには、この力はほとんどないし」

 呪術の力は女の子孫にしか伝わっていかない。
 そのことを悟った創始者は、自分自身に強力な呪術をかけた。
 自分、そして自分の血を受け継ぐすべて子孫からは女しか生まれないという呪術だった。
 それが、柊家を呪縛し続けている。現存する家系図をたどっていっても、生まれてくる子供はみんな女の子ばかり。
 直系のみならず、傍系までそうなのだ。
 よって、傍系の男子を養子にとるという手段もとれず、代々、長女が婿をとって家を継いでいくのが基本であった。

 その呪術の威力を心底思い知らされたのは、間違いなく、いのりの父ただおだ。
 三人目に挑戦した結果が、女の二卵性双生児。
 まことに恐るべき呪術の威力だった。

「それをなぜ私に?」
「あなたは、この神社を背負っていくことになるんですもの。やっぱり知っておかなきゃならないことだと思うから。それに、何よりも愛する夫に隠し事はしたくなかったし」
「そうか……」
「あなたの子供ならあなたが望むだけいくらでも生んであげるわ。でも、女の子しか生まれてこない。それだけは覚悟しておいてね」



 その夜から、十月十日後、いのりに子供が生まれた。
 やはりというべきか、女の子だった。

終わり
456 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/24(火) 13:42:05.94 ID:wTun86AO
>>455

ただおも旦那も頑張ったんだな(>_<)
いろんな意味で……
457 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/24(火) 16:50:11.84 ID:iTV0cUSO
−密室男女−

ウイーン…ガクンッ
かなた「あ、あれ?エレベーターが…」
そうじろう「止まっちまったな…そこにインターホンがあるから、聞いてみてくれないか?」
かなた「うん、わかった」

かなた「…動くようになるまで、二時間くらいかかるかもって」
そうじろう「そうか…まあ、待つしかないか」
かなた「そうね…」
そうじろう「………」
かなた(よ、よく考えたら、こ、これって密室に二人っきりてことよね…そう君の持ってる本にこんなシチュエーションのがあって、この後の展開がたしか…い、いや、いくらそう君でもこんな所でそんな…で、でも、吊橋効果だっけ?変な状況になったら変な気分になるとか…もし、ここでそう君に我慢できないような事言われたら…だ、駄目よかなた!そんな流されるような事しちゃ!そう君のためにもならないわ!………で、でも、ちょっとくらいなら…)
そうじろう「かなた」
かなた「ひゃ、ひゃい!?」
そうじろう「すまん…ちょっと我慢出来ないんだ」
かなた「えええっ!?…い、いや…私…その…でも…」
そうじろう「さっき買った漫画、読んでていいか?」
かなた「………」



「あー、はい。無事動きました。配線のトラブルだったみたいです。閉じ込められてたのは、二十歳くらいの男性と、小学生の女の子の二人です。怪我人は…男性の方がでかいタンコブ作ってたくらいですね。えーっと、それから…」
458 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/03/24(火) 17:30:43.76 ID:QeKsGNc0
>>457
かなたさんが むくれるトコ想像して萌えましたww GJ!
459 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/03/24(火) 18:23:23.56 ID:g.xZkYDO
かなたさんがむくれる+今の自分の寝不足度=


かなた「じゃーんっ!できた!あとはそう君を待つのみ」

PiPiPiPi...

かなた「あ、電話、そう君だ! もしもし? そう君!もう晩ご飯準備できたよ、早く帰ってき…え?…うん、そう…なんだ、ううんいいよ気にしないで、うんそれじゃね」

ガチャ

かなた「…そっかそっか遅くなるか、じゃお先にいただきまー…す…。」




そうじろう「ただいまー…ん?」
かなた「Zzz…(スースー」
そうじろう「なんだ先に寝ていいって言ったのに、晩ご飯待っててくれたんだ…」
かなた「Zzz…そうくん…(スースー」
そうじろう「え?」
かなた「Zzz…遅いー…(ムッ」
そうじろう「なんだ、寝言か…」

そうじろうは寝ながらむくれた彼女にタオルケットをそっとかぶせ、向かいの席に座り、冷めた晩ご飯を口にした

そうじろう「…うまい」
460 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/24(火) 18:50:05.38 ID:kPuUGgSO
「こなた、ちょっと良いか」
 ドア越しにお父さんが声を掛けてきた。いつもの気楽な声でなく真剣な声だったので、私はテレビを消して「どうぞ」と返事をする。
 やがて部屋に入って来たお父さんは、私が椅子に座ってるのを見ると
「ここに座りなさい」
 と、床に座るように正した。そしてお父さんは私の正面に座った。
 何か大事な話っぽいね。なんだろう……?
「こなた」
 お父さんは私の名前を呼ぶと、一呼吸置いてから次のように述べた。
「今まで黙っていたけど、こなたにはお姉ちゃんが居るんだ」
「え?」
 耳を疑いたくなる。今お父さんは何て言った? 私にお姉ちゃんが居る? そんな馬鹿な。
「入ってきなさい」
 え、ちょ、そこに居るの? まだ心の準備が……それにいきなりお姉ちゃんなんて言われても。

 キィっとゆっくり開けられたドアから現れたのは……。
「……」
 私より一回りも二回りも大きくて私と瓜二つな人がそこに居た。
 ……何故か片手に林檎を持って。
「お姉ちゃん……?」
「こなたEXだ」
「は?」
 こなたEXと呼ばれた私の姉らしいその人は、持っていた林檎を片手で握り潰した。
「すご……」


 こんな感じでエレキバンの凄いお姉さん登場。
 ピップエレキバン♪


「叔父さん、このハリボテそろそろ重いよぅ」
「おぉ、ありがとなゆーちゃん。もう良いよ」
「そんなこったろうと思ったよ……」
461 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/24(火) 20:05:23.89 ID:hTY79AA0
>>459
眠いのによく書くなwwいい夫婦だ

>>460
こなたEXwwww
462 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/24(火) 20:34:16.70 ID:wTun86AO
絵師さま。
コンクールに参加して、1レスの作品にすら負けた者ですが、お願いがあります!

バイクに乗っているかがみんを、描いてもらえませんでしょうか……っ!
463 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/24(火) 21:32:12.97 ID:30ynNw20
>>460
ちょwwCMすんなwwww
しかしこなたに姉とは面白いかもしれん
パラレル的なSSなら出来そうだな

>>462
そりゃ悔しいよね
464 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/03/24(火) 22:01:49.65 ID:6Ny6d9Y0
他の作品を貶める言い方はどうかと思う
465 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/24(火) 22:21:31.60 ID:hTY79AA0
>>462
同志……っていうのかわかんないけど同率ビリの俺です。
俺も正直結果には不満があるけどね。お言葉に気をつけて。
第十四回で挽回するつもりだけどどうなるか。

俺も絵師様へお願いしていいかな……ビリへの慰めとして。
マークト・フォー・デスからワンシーン選んで描いてもらえますかな?
無理は言わないけど。
466 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/24(火) 22:21:49.57 ID:wTun86AO
>>464
う〜ん、そんなつもりは無かったけど……。
すいません
467 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/24(火) 22:31:51.17 ID:USObuDU0
遅くなったが、コンクール優勝者さんおめでとう!
主催&運営&作品参加したみんな&レビュー、乙でした!
あと、投票してくれた方々、本当にありがとう!

>>410-413でもらったお題で書いてみたから投下します
没にしてお蔵入りさせようかとも思ったけど、それももったいないからねw
先に断っておくが、今回も勢いだけで書いたから期待は無しで頼むんだぜ?

タイトルは『必死になった結果がコレだよ』くらいにしとこうかな
468 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/24(火) 22:32:23.97 ID:USObuDU0
「チェリー、行くよ……チェリー?」

 みなみがリードを強めに引っ張るが、チェリーは全く動こうとしない。
 わふぅ、と眠たげにひと鳴きしたかと思うと、その眼を閉じてしまう。

「チェリーちゃん、眠たいのかなぁ?」
「ごめんね、ゆたか。チェリーが私の言うことをきかないせいで」
「ううん。気にしなくていいよ、みなみちゃん」
「でも、この調子だと帰るのが遅くなって……」
「今日はお泊りだから大丈夫だよ。それに、私が原因かもしれないし」

 いつもなら散歩の途中で休憩はしないのだが、今日はゆたかも一緒なので休み休み歩いていた。
 散歩コースの折り返し地点でも長い休憩をとったところ、そこからチェリーは動こうとしなくなった。
 私の歩調に合わせるのが疲れたんじゃないだろうか、なんてゆたかは考える。

「チェリーちゃんが起きるまで、もうちょっと休憩していこうよ」
「……うん。ありがとう、ゆたか」

 チェリーも30分ほど休憩すればまた歩き始めるだろう。
 そう考えた2人は、もう少し休憩をとることにした。
 近くの自動販売機で飲み物を買ってきて、おしゃべりを始める。

 1時間経ち、2時間経ち……チェリーは一向に起きようとしない。
 2人とも別にこれといった用事は控えてないので、その点に関しては何の問題も無い。
 ただ、これほど長い時間同じ場所で話し続けていると、さすがに話題も尽きてくる。
 徐々に口数が減っていき、それに併せてみなみの表情も沈んでいく。

「……本当にごめん、ゆたか。こんな事になるなんて」
「謝らなくていいよ、みなみちゃん!」

 ゆたかは何とか場を明るくしようと、できるだけ時間が稼げそうな話題を必死で探した。
 そして、つい先日こなたが話してくれた、とある話を思い出した。

「あっ、そうだ!ねえ、みなみちゃん。これは、こなたお姉ちゃんがしてくれた話なんだけどさ――」


 ☆

469 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/24(火) 22:33:04.07 ID:USObuDU0
「かがみ、ちょっと相談があるんだけど」
「あんたがそんな浮かない顔するなんて珍しいわね。それで、相談って?」
「まずは、この記事を見てくれたまへ」
「また学校にそんな本を持ってきて……ま、いいけどね」

 かがみはこなたが示した記事に目をとおす。
 どうやら何かのアニメ番組についての連動企画に関する記事のようだ。

「なになに……『君もアイドルに!あの小神あきらとユニットを組む大チャンス!』か。これがどうかしたの?」
「景品のところを見てよ」
「『当選者は1名。尚、残念賞として応募者の中から抽選で1,000名に番組特製Quoカードをプレゼント』……?」

 かがみは何となく話が見え始めた。
 このカード、絵柄はこなたの好きな絵師の書き下ろしのようだ。
 これを見てこなたがする事といったら、ひとつしかないだろう。

「その残念賞がどうしても欲しくてさ、いつものように必死で応募しちゃったんだよね」
「ま、あんたならそうするでしょうね。それでまさか、当選しちゃった、とか言わないでしょうね」
「それが、そのまさかなんだよ」
「あんた、それ……マジで言ってんの?何かのネタとかじゃなくて?」

 かがみの問いかけに、こなたは黙って頷く。

「えーっと……おめでとう、って言うべきかしら?」
「言わないべきだろうね。だって、望んでないもん」
「嫌なら辞退したらいいじゃない?」
「その記事は前号でさ、昨日発売の最新号には当選者の名前と応募写真がもう載ってるんだよ。辞退できると思う?」
「できなくはないでしょ?」
「あのねぇ、かがみ。本気の人達を敵に回すと怖いんだよ?今どきはネットの力もなかなか侮れないしさ」
「そうかもしれないけどさ……そもそも自業自得でしょうが。悪い話でもないんだし、いっそのことデビューしちゃえば?」
「そうはいかないんだよ」
「悲壮な顔しちゃって。あんたらしくないわよ?もしかしたら、貴重ないい体験になるかもしれないじゃないの」

 とにかく元気出しなさいよ、などと言いながらかがみはこなたの背中をバシンと叩く。
 こなたはケホッと軽くむせ、依然として全く元気の無い表情で話を続ける。

「それがさ、みんな――しちゃって――のは――なんだよ」
「は?何をぼそぼそ言ってんのよ」
「だからさ、みんな――しちゃって――のは――なんだよ」
「聞き取りづらいわね。もっとはっきり言ったらどうなの?」

 いつものこなたらしくない、イジイジした態度にいらだちを見せるかがみ。
 そんなかがみの様子にこなたは大きく溜息をつき、投げやりなカンジで言った。

「みんなの名前も勝手に使って応募しちゃって、当選したのはみゆきさんなんだよ」


 ☆

470 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/24(火) 22:34:18.71 ID:USObuDU0
「――と、ざっとこういう訳なのよ。どうする、みゆき?ボッコボコにするなら手伝ってもいいけど?」
「い、いえ、暴力に訴える気はありませんので」
「ああ、そうなんだ。まあ、どっちにしろ私の名前を使った件で鉄拳制裁はするつもりだからいいけどね」
「でもさ、本当にどうするの、ゆきちゃん?」

 柊家。現在、泉こなたの犯した罪についての裁判が開かれている。
 とは言え柊かがみ裁判官によって既に極刑は確定済みなので、単なる説明と謝罪の場に過ぎないのだが。

「みゆきさん、本当にごめん!私がレアアイテムに目が眩んだばっかりに!」
「泉さん、もう謝罪は結構です。それより、泉さんの方から詳細をお聞かせ願いたいのですが」

 事ここに至っても、みゆきは柔和な表情のままだ。
 まさに聖人君子。
 こなたにしてみれば、逆にそれが嵐の前の静けさのようで妙に怖かったりもするが。

「うん。だいたいはかがみの説明どおりで、小神あきらとデュエットデビューって企画にみゆきさんが当選しちゃったんだ」
「泉さんが私の名前も使って応募したため、でしたよね?」
「うん。今回の応募規約に1人1通ってのがあってさ、複数応募がバレたら即失格だったんだよね」
「だからって、勝手に人の名前を使っていい理由にはならんぞ?」
「でも、私もまさか当選するとは思ってなかったんだよ。ちゃんと落選するようにいろいろと細工も施したし」
「細工って、何をやったの、こなちゃん?」
「えっと、応募者プロフィールの特技の欄に『邪気眼』って書いたりとか、芸能界に入ってしたい事の欄に『寿司食い放題』って書いたりとか」
「なあ、まさかとは思うけど、そのプロフィールってのは公表されたりしないよな?」

 じろりと睨むかがみの視線を避けるように、こなたはあらぬ方を向く。

「……マジかよ。最低だな、あんた」
「いや、まさか当選するとは思ってなかったし、審査員の目を引いたほうが残念賞もらえる確率あがるかなー、なんて思って……その、ごめんね?」
「かがみさん」
「ん?」
「お恥ずかしながら、時には拳で教育が必要、という結論に私も至ったのですが……泉さんの命、是非とも私に譲っていただけませんでしょうか?」
「え、ええ。いいわよ」
「わぁ、ゆきちゃんのオーラすご〜い。まるで闇のようだね」

「みみみみ、みゆきさん、本当にごめんっ!今回の事は全部私が悪いと思ってるし、すごく反省してるからっ!だからッ!!」
「泉さん、世の中には謝って済むことと、済まない事があります」
「う、うん」
「そしてこれは、謝って済まない方。ただ、それだけの事なんです」
「ご、ごめん……ごめんなさいぃ!みゆきさぁん!ゆる、許して!許してよ!!何でもするから!何度でも謝るから!本当にごめ――」

 床も突き抜けんばかりに土下座するこなたの肩に、ぽん、とみゆきが手を置く。
 こなたが顔をあげると、みゆきはやはりいつもと変わらない表情で笑っていた。 

「もうお忘れですか、泉さん?私は、もう謝罪は結構です、と最初に言いましたよね?もはや謝る事になんの意味もありません」
「う、うああ、ああああ。ゆ、ゆる、ゆゆゆ、許して、みゆきさん」
「残念です……本当に、残念です」
「たす、助けっ!かがみっ!つかさぁ!」
「自業自得よ」
「こなちゃん、私も怒ってるんだよ〜?」

 断末魔の叫びをあげる隙さえ無かったとかなんとか。
471 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/24(火) 22:34:39.63 ID:iTV0cUSO
どんな良い作品でも、ニーズが合わないと意外と票が伸びなかったり。
コンクールで票を取ろうとするなら、自分の書きたいもの書いてるだけじゃ駄目なような気がしてきた。
472 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/24(火) 22:34:57.73 ID:USObuDU0


 ☆


「へぇ。じゃあ、企画自体無かったことにして欲しいって言われたの?」
「はい。ユニットを組むのは事務所の意向だったらしいんですが、小神あきらさん本人が突然にそれを固辞したそうなんです」
「よかったね、ゆきちゃん」
「はい。いろいろと心配していただきありがとうございました、かがみさん、つかささん」
「これでこの騒動も一件落着ってとこね」

 こなたが新しいトラウマを胸に刻んだ日から3日後。
 かがみとつかさは喫茶店でみゆきの話を聞いていた。
 
「それじゃあ、こなたとも早いうちに仲直りをしなきゃね」
「そうですね。ところで、話は変わるのですが……お2人はお寿司は好きでしょうか?」
「ええ、好きな方よ。貝はダメだけどね」
「わたしも好きだよ。でも、何で?」

「それがですね、事務所の方から迷惑料としてこのようなお食事券が贈られてきたのですが……」
「回転寿司の食事券か。ずいぶん中途半端な謝礼ね」
「こなちゃんが『お寿司食べ放題』って書いたからかな?」
「残念ながら私は生魚が苦手ですので、もしよろしければお2人に使っていただこうかと。お譲りいたしますので」
「ええっ!?いいの?」
「はい。お2人にはいろいろと相談にものっていただきましたし、特にかがみさんには借りがあります。そのお礼といっては何ですが」
「みゆきに貸しなんてあったっけ?」
「はい。とるに足らない些細な事ですので説明は省きますけど」
(たぶん、こなちゃんをボロボロにする権利を譲った事だろうな……)

 今回のことで、ゆきちゃんのイメージがだいぶかわっちゃったなぁ……つかさはそう思ったが口には出さない。
 藪をつついて蛇を出したくはないから。
 つかさがみゆきのオーラに怯える傍らで、かがみは嬉々として食事券を受け取る。

「ありがと。本当に嬉しいわ、みゆき」
「そこまで感謝していただけると、私も嬉しいです。やはり、友人というのはこうでなくてはいけませんよね」
「大げさねえ、みゆきは」

 ゆきちゃんを裏切るような真似は絶対にしないでおこう、そう誓いながらつかさは紅茶をすするのであった。


 ☆

473 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/24(火) 22:35:43.66 ID:USObuDU0
 それからさらに3日後。
 こなたがみゆきと無事に仲直りをし、こなたの包帯も8割方とれてきた頃のこと。
 かがみとつかさは泉家に遊びに来ていた。

「かがみ、なんか血色悪いよ?」
「別にいつもと変わらないわよ」
「そーかなー?今日はつっこみの回数が少ないし、キレも悪い気がするんだけどな」
「芸人じゃあるまいし、つっこんでばかりいる方がおかしいっての」

 いまいち覇気の無いかがみを見つめ、こなたは首をかしげる。
 芸人以上に突っ込んでこそのかがみなのに……とか呟きながら。
 
「あっ!……お姉ちゃん、もしかしてお昼ごはん食べて来なかったの?」
「えぇ?つかさ、それってどういうこと?」
「あ、うん。今日の晩なんだけど、家族でお寿司を食べに行く予定なんだよ」
「ああー、なるほど。わかりやすいねぇ、かがみ様は」
「くっ……つかさ、余計なことを……」

 こなたはニヨニヨ顔でかがみに擦り寄り、かがみは拳を握り締める。

「晩ご飯のために絶食するとか、今どき漫画でもそんなシチュないよ?」
「言っとくけど、完治してないからって手加減するとは思うなよ?」
「むふふー。お腹が空いたかがみなんて、顔が濡れたアンパンマンみたいなもんだよ?」
「ほーう。それは本気でヤっていいという事ですか、こなたさん?」
「甘い甘い。チョコのように甘いねぇ、かがみん。みゆきさんという強敵【とも】と闘った私は、かがみ程度に恐怖など感じないよー?」

 こなたの挑発。効果はばつぐんだ。
 かがみはこなたを掴もうとするが、それを予想していたこなたはひらりと身をかわして逃げる。
 かがみはそれを追うために立ち上がろうとして――

「お姉ちゃんっ!?」
「かがみっ!?」

 倒れた。空腹のあまり。
 かがみは薄れゆく意識の中で、神に、仏に、あらゆるものに祈りを捧げた。

 どうか、どうか今日の晩は無事にお寿司を食べさせて下さいと。


 ☆

474 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/24(火) 22:36:16.70 ID:USObuDU0
「いやぁ、一時はどうなることかと思ったよー……って、人の聞いてる?かがみ?」
「え?も、もちろんちゃんと聞いてるわよ?」
「お姉ちゃん、さっきからボーっとしてるけど、やっぱり具合が悪いの?」
「だ、大丈夫よ。ちょっと、その、突然の事だったから、ね?」

 かがみは倒れたと思ったら、すぐに復活した……のだが、何というか挙動不審になった。
 それもそのはず、今のかがみはかがみであってかがみで無い。
 倒れゆくかがみの祈りによって召喚された、泉かなたによって体を動かされている。
 かなたが家族を想う気持ちと、かがみがお寿司を想う気持ちが、よくわからないけど、こう、なんかいいカンジに同調したっぽいのだ!
 
 もちろん、かなたは人の身体を無断借用する気にはなれなかったので、いちおうかがみに断りをいれた。
 お寿司を食べる元気を取り戻すまでの間、少しだけ身体を貸してください、と。
 今度こなたの枕元にたって、かがみちゃんにケーキバイキングを奢るように言いつけますから、と。

 かがみはふたつ返事でおっけーした。
 もちろん、無二の親友であるこなたのために。
 まあ、本当は6:4でケーキのためだけど。

「こ、こなた、ちょっといいかしら?」
「なに?」
「こっちに来て、ここへ座ってほしいの」
「別にいいけど……?」

 かがみに憑依したかなたは考えた、自分は死んでしまった人間であるから正体は明かさないようにしよう。
 正体を明かしても混乱を招くだけだし、いつまでも憑依できる訳ではないから結局また辛いお別れをしなければならなくなる。
 同時にこう考えた。これは千載一遇の大チャンスだ、と。
 今なら愛する娘の体をぎゅーっと抱きしめたり、ナデナデしたり、すりすりしたり、やりたい放題なんでもできる。

 で、結果としてこうなる。

「こなたぁ!」
「うわあっ!?ちょ、かがみ!何やって!ちょっと待っ、あっ!そこは触っちゃダメっ!んっ、んあっ、かがみっ!?」
「こなたこなたこなたこなたこなたこなたーっ!!」
「うにゃああああああああ!!つかさ、見てないで助けてよ!」
「だ、大丈夫だよ、こなちゃん!私、何も見てないからっ!」

 かがみの体を借りて親子のスキンシップ大爆発。もちろん、性的な含みはございませんとも。


 ☆

475 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/24(火) 22:36:43.42 ID:USObuDU0
「ほ、本当にお母さんなの?変な冗談とかじゃなくて?」
「そうよ、こなた。本当に久しぶりね……といっても、あなたは覚えてないでしょうけど」
「かがみはどこへ行ったの?」
「どこにも行ってないわ。ちょっと眠ってるだけ。その間、私が身体を借してもらっているの」

 結局、わりとあっさりバレた。
 まあ、バレたものは仕方がないよね。

「でも、よく中身がかがみちゃんじゃないってわかったわね」
「んー……なんかいつものかがみと触り方が――じゃなくって、全体的な雰囲気が違うなーって思ってさ」
「すごいね、こなちゃん。私でもわからなかったのに」
「まあ、かがみは私の嫁だからね」
「ええっ!?……こ、こなたが……かがみちゃんと結婚してただなんて……そんな……まだ高校も卒業してないのに……」
「ち、違っ!今のはちょっとしたネタだよ!ジョークみたいなもんだよ、お母さん!」

「あ、あら、そうなの?」
「そうだよ。お父さんも同じ様なこと言ってたりするでしょ?主に2次元の女の子を相手にさ」
「ああ、そう言えばそうね」
「でしょ?まあ、嫁にしたいくらいその人のことが大好きだ、っていう比喩的な表現のひとつだよ」
「つまり、かがみちゃんはこなたにとってとても大事なお友達、って意味だったのかしら?」
「そうそう」
「じゃあ、つかさちゃんやみゆきちゃんもこなたのお嫁さんなの?」
「え?……ま、まあ、そうなっちゃうのかなぁ……その2人も、その、親友みたいなもんだし」

 こなたは少し照れながらそう答える。
 かなたinかがみは優しく微笑んで、こなたをぎゅっと抱きしめる。

「ちょ、お母さん?」
「嬉しいわ。そこまで大事に思える友達がこなたにもちゃんとできたのね」
「は、恥ずかしいよ。つかさだって見てるのに」
「大丈夫だよ、こなちゃん。私、何も見てないから」


 ☆

476 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/24(火) 22:37:21.34 ID:USObuDU0
 その抱擁はただひたすらに優しくて、こなたは母のぬくもりというものをその身で実感していた。
 何故だかわからないけど、とても懐かしい感じがして、優しい気持ちに満たされていく。
 しかし、その気持ちはすぐに哀しさや切なさに押し流されていく。
 このぬくもりが、奇跡でも無ければもう2度と得られないものであることだとわかっているから。

 相反する2つの気持ちの洪水に、こなたの心はぐしゃぐしゃになってしまう。
 たまらず、こなたは顔を押し付けるようにかがみの体にぎゅっとしがみつく。
 今だけは母に甘えたいから。
 つかさが気をきかせて部屋から出て行ってくれたため、こなたは遠慮なくかなたに甘える。
 かなたはそんなこなたの頭を優しく撫でた。

「かがみちゃんといい、つかさちゃんといい、本当にいいお友達を持ったわね、こなた」
「……うん」
「お母さん、とっても安心したわ。これならこなたも寂しい想いをしなくて済むもの」
「……うん」
「泣かないで、こなた」
「……無理、だよ」
「こなたが泣くと、お母さんまで泣きたくなっちゃう。泣いたまま別れるのは嫌なの」
「そんなの……そんなの勝手だよ!わがままだよ!」

 こなたはよりいっそう力を込めてその体にしがみつく。 

「私はまだ、お母さんの前で泣き足りてないんだ!それだけじゃない!悪いことして叱られたり、良いことして誉められたり……まだいろいろ足りてないんだよ!」
「こなた……」
「もっと一緒にいてよ!もっといろんな私を見てよ!もっといろんなお母さんを見せてよ!なんで!なんで死んじゃったんだよぉ!!私は、私はお母さんと一緒にッ!!」
「ごめんね、こなた。本当に……ごめんなさい……」

 かなたは最後まで泣かなかった。泣くわけにはいかなかった。
 こなたに甘えるようなことはしたくなかったから。
 本当に辛いのは遺された方だと、こなたの方だとわかっていたから。
 
 こなたに言わせれば、これもわがままなのだろう。
 むしろ一緒に泣いてほしかったのかもしれない。
 しかし、このわがままだけは何があっても貫きとおさなければならない。
 こなたの母親であるために。こなたを守る存在であり続けるために。


 ☆

477 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/24(火) 22:37:58.93 ID:USObuDU0
「落ち着いたかしら、こなた?」
「うん。ありがとう、お母さん」
「そう、良かった。名残惜しいけど、そろそろお別れの時間よ。かがみちゃんに身体を返してあげなくちゃ」
「ねえ、お母さん。さっき私が泣きながら言ったことなんだけどさ、その、全部忘れてくれると嬉しいんだけどな」
「うふふ。それはできない相談だわ。こなたと過ごした貴重な時間だもの、1秒だって忘れたくないもの」
「で、でも……私、お母さんにあんな酷い言い方しちゃって……」
「気にしなくていいのよ。私達は家族なんだから」

 どちらからともなく最後の抱擁を交わす。

「お母さん。私、お母さんのことが大好きかも」
「ありがとう、こなた。私もこなたのことが大好きよ。その想いだけは、誰にも負けない自信があるわ」
「私だってそうだよ」
「それじゃあね、こなた……私はいつも傍で見守っているから」
「うん。わかってるヨ」

 かなたとこなたはお互いに笑顔を見せ、さよなら、と挨拶した。
 そして、かなたは天を仰いで目を閉じ、その身体を持ち主であるかがみに――

「あ、忘れてた」
「ふぇ?」
「ごめんね、こなた。そう君にどうしても言っておきたい事というか、やりたい事があるの」
「あ、うん」
「かがみちゃんには悪いけど、身体を返すのはもうちょっと待ってもらわなきゃいけないわ」

 そう言ってかなたは急ぎ足で部屋を出て行った。

 愛の言葉でもかわしにいったんだろうか、なんてこなたが邪推してた頃かなぁ……そうじろうが死にそうになってたのは。
 結局、そうじろうが『俺の嫁』と豪語していたキャラクターに関するグッズは数分のうちに全て粉微塵になったそうな。
 恐るべきは、かなたの嫉妬か、かがみの腕力か。
 その日からしばらく、そうじろうはかがみを見ると小さく悲鳴をあげてしまうようになったという。


 ☆


「――っていう事があったんだって。えっと……なんかおもしろいよね、こういうのって。ええっと……みなみちゃんはどう思う?」
(ごめん、ゆたか……話しが変に長くて、ゆたかが私に何を伝えたいのかわからない……)

 何とか話をふくらませようと必死に感想を求めるゆたか。それに応えられないみなみ。
 答えがもらえなくてさらに必死になるゆたか。そしてやっぱり応えられないみなみ。
 負のスパイラル、ここに完成。

 そんな飼い主達の苦悩をよそに、チェリーは気持ちよさそうに寝ていた。
478 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/24(火) 22:38:52.45 ID:USObuDU0
以上です。我ながら無駄に長ぇw
お題をできるだけフォローしようと欲張った結果がコレだよ

もうね、泣くしかないよ。・゚・(ノД`)
479 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/03/24(火) 22:39:59.66 ID:YnPiCP2o
乙だ

そんな話をふられたら、どう返せばいいかわかんねえよ!
480 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/24(火) 22:47:39.73 ID:iTV0cUSO
ごめんなさい。
めっさ割り込んだ。

よく全部詰め込んだ…ってか、ツッコミどころ満載のカオスで終わるかと思ってたのに。
481 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/24(火) 22:56:15.60 ID:kPuUGgSO
>>478
GJ!相変わらず早いなww
最初ギャグで笑わせて切なく終わらせると思いきやまたしても笑いが来るとわww
かなたさんのシーン、調度iPodから悲しい曲が流れて来てやばかったぜ(;∀;)


俺はお題貰ってもう2週間経っちまったよ……
疑心暗鬼、中々の強敵だ
482 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/24(火) 23:06:38.80 ID:yJiWd.6o
>>478
めちゃくちゃワロタwwwwってかお題それだけ使ってまとも? な内容ってどういうことだよ……
GJだぜ!
483 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/24(火) 23:51:48.10 ID:USObuDU0
感想さんくす。たまには感想にレスさせてもらおうかな

>>479
レス早っ!!びっくりするわw
どう返せばいいかは俺もわかんない。だからこういうオチになったんだろうなw

>>480
気にしなくておk
構想はあったけど全部は詰め込めてないんだ。さらに倍くらいの長さになるからw

>>481
相変わらずって言われたーw最近の連投がばれてて嬉しいやら恥ずかしいやら
しかし疑心暗鬼は難しいなー。俺なら敬遠するだろうけど、頑張ってくれw

>>482
お題に完全には沿ってないから、かろうじてまとも? な内容になったのかも
お題に忠実に書いてたら破綻してたと思う。ってか、お題に邪気眼がある時点で破綻確定ww
484 :命の輪は廻る[saga]:2009/03/25(水) 00:56:37.74 ID:6zLp6l60
投下行きます。

命の輪の外伝な話です。
なんか、変わった視点で書いてみようかと思いついて書きました。
485 :命の輪は廻る[saga]:2009/03/25(水) 00:58:25.57 ID:6zLp6l60
「大根がね、上手く切れないの」
 とある喫茶店でアイスティーを飲んでいた時に、その子は唐突にそんなことを言い出した。
「大根って結構硬いんだね、知らなかったよ」
 知らなかったって、良いとこのお嬢さんかアンタは。
「力込めないと刃が通らないし、力込めすぎちゃうとなんか折れちゃうし…難しいよね」
 おいおいおい…流石にこれは口挟まないと駄目そうだ。
「アンタねえ、まさか真上から真下に包丁下ろしてるんじゃないでしょうね?」
「え?ダメなの?」
 私は頭を抱えたくなった。
「それじゃ、切れるわけないでしょ。刃物ってのは引かないと切れないのよ。カッターナイフとかもそうでしょ?」
 私は物を切るジェスチャーを混ぜながら、その子に説明をした。
「あ、そっか…そうだよね」
 素直に納得してくれる。ってかよく今まで怪我しなかったものだ。
「それ、本気で危ないんだからね。気をつけなさいよ…ってかアンタの彼氏って料理できるんじゃなかったっけ?教えてくれなかったの?」
「…そう君に聞いたら負けかなって思うの」
「…いや、なんでそこで勝ち負けなんだ…ってか、怪我してからじゃ遅いんだから、ちゃんと教えて貰いなさい」
 その子は、そう言う私に不満気な視線を向けながら、ストローでアイスティーをすすった。
 歳不相応の小さすぎる体つきや、可愛らしい顔立ちと重なって、その姿は子どもそのものだ。
 こんなのにしっかり彼氏がいたりするんだから、世の中間違っているとしか思えない。

 彼女の名はかなた。私の大学の友人だ。


- 命の輪は廻る -


486 :命の輪は廻る[saga]:2009/03/25(水) 00:59:22.01 ID:6zLp6l60
 かなたは目立つ子ではあったが、とっつき難い子でもあった。
 大学の中で、その小学生並みの体格は酷く目を引いたが、仲良くなろうとする人は少なかった。
 話しかけ難いわけじゃない。むしろ、話しかけた後が問題だった。
 生来の性格なのか、かなたは歯に衣着せない物言いが多い。きっつい事も遠慮無しに言ってくる。
 オマケに勘がやたら鋭く、痛いところもズバッと刺してくる。これがまた外見が可愛らしいだけに、結構痛かったりする。
 さらに彼氏持ちのせいか、男も寄り付かない。
 つまり、彼女は大学の中で孤立していたのだ。いや、やたらベッタリしている彼氏がいるから、孤立しているとは言い難いのだけど。
 その彼氏は今日はいない。何か大事な用があるとかで、都内に出かけてるらしい。
「そう言えば、この前アンタの誕生日だったわよね」
 私がそう話を振ると、かなたはコクリと頷いた。
「やっぱ彼氏とラブラブに?いーわねー、彼氏持ちは」
 私が嫌味たっぷりにそういうと、かなたは真っ赤になって身を縮ませた。
「そ、そんな…ラブラブとか…」
 照れまくる姿がかなり可愛い。こういうところを気に入って、私は彼女と友達付き合いをしているのだ。
「プレゼントはなに貰ったの?あんだけ彼氏がベタ惚れなんだから、さぞ良いものもらったんでしょうね?」
 私の言葉に、かなたが照れるのを止めてため息をつく。やばい、地雷だったらしい。
487 :命の輪は廻る[saga]:2009/03/25(水) 00:59:56.99 ID:6zLp6l60
「…ガンプラ」
「は?ガン…なんて?」
 かなたの言葉の意味が分からず、私は聞き返していた。
「アニメに出てくるロボットのプラモデル」
 かなたが棒読みでそう説明してくれる。
「えーっと…それって男の子が買うようなのじゃないかな…」
「うん」
「冗談でなくて?」
「かなり真剣に。なんか稼動部分が今までのより凄いんだーとか、熱く語られた」
 返す言葉が見つからず、私は天を仰いだ。
「多分、そう君は自分の欲しいの買っちゃったんだろうね」
 なんつー彼氏だ。
「…もういっそ、別れ話でもしちゃえば?」
 私が投げやりにそう言うと、かなたはブンブンと首を振った。
「そんなの言えないよ」
「まーそうでしょうね…」
 以前に聞いたことがある。
 かなたと彼氏は埼玉の出身じゃない。なんか彼氏がやりたい事があるって言って、田舎から都に近い埼玉に出てきたらしい。
 その彼氏にこの子はノコノコ付いてきたそうだ。そりゃ、迂闊に別れる大変だ。なんでまた、こんな自分を追い詰めるような真似をしたんだか。
 ってかここで彼氏逃すと、絶対男見つけられないだろうな。性格的にも、体格的にも。
「…今、なんかすごく失礼なこと思ってるでしょ?」
 かなたに睨まれた。相変わらず鋭いな。
「私は、現状を後悔なんかしてないから」
 そっちか…ってかどんだけラブラブなんだこいつら。
「…話題、変えよっか」
「…うん」
 と、言ったものの、新しい話題なんか思いつかず、私達は黙ってアイスティーを啜っていた。


 大学を卒業した後は、忙しいこともあって私とかなたはどんどん疎遠になっていった。
 連絡も取り合わなくなって、大学の思い出は薄れていった。
 そして、かなたの事を忘れかけていた頃に、彼女の訃報が私の元に届いた。
 例の彼氏との間に子どもが生まれ、幸せなのはこれからだというところだったらしい。
 だけど、私にはなんの悲しみも沸かなかった。それほどまでに、あの日々は遠いものになっていたのだ。
 ただ、私に彼氏のことをからかわれて、照れる彼女の顔を思い出し、神様は結構残酷なんだと思った。


488 :命の輪は廻る[saga]:2009/03/25(水) 01:01:15.36 ID:6zLp6l60
 それから、かなりの月日が経ったある日。私は仕事の合間に一息つこうと、とある喫茶店に入ってアイスティーを飲んでいた。
「やーもう、あっついねー」
「ちょっと休んだらすぐ行くぞ…ホントあんたはサボりたがりだな…」
「わーかってるよ。かがみ」
 入ってきた二人の女の子を、私は何の気も無しに見た。
 そして、息が止まるような気がした。
 かがみと呼ばれた方は、髪を両側で束ねた大学生くらいの女の子。
 もう一人は、一見すると小学生にも間違いそうな小さな女の子。
 だけど私はその子がもう一人と同い年じゃないかと、感じていた。
 心の奥底から、思い出が引き摺り出されてくる。
 モノクロのそれに、鮮やかに色が蘇っていく。
「…かなた」
 私は思わず彼女の名前を呟いていた。
 細部こそ違う部分があるものの、その子はかなたにそっくりだった。
「で、最近どうなの、彼氏とは」
 私の後ろのテーブルに座りながら、かがみって子がそう聞いていた。
 かなた似の子には彼氏がいるらしい。
「ちょっと、料理覚えて貰おうと思ってるんだけどねー…大根がね、上手く切れないんだよ」
 かなた似の子がそう答える。なんだかどこかで聞いたような気がする。
「なんか力任せに切ろうとするから、ボロボロになるんだよね」
「いや、それ危ないだろ…ってか教えてやれよ」
「…教えたら負けかなと思ってる」
「…なんでそこで勝ち負けになるんだ…ってか怪我する前にちゃんと教えとけ」
 聞けば聞くほど、どこかで聞いたような…いや、私がしたような会話だ。彼女達は、私とかなたと同じような関係だったのだろうか。
「そういや、この前彼氏の誕生日だったんでしょ?」
「うん、そうだよ」
「やっぱラブラブに?いーわねー」
 かがみって子の口調がからかい気味になる。なんだか私と似ているような気がした。
「もちろんさっ!うらやましーだろー」
 かなた似の子は、親指を立てているのが想像できるくらいに爽やかに答えた。
「…ちくしょーからかいがいのない…」
 かがみって子が悔しそうに呟く。実に同感だ。そこは照れてくれないと。
489 :命の輪は廻る[saga]:2009/03/25(水) 01:01:47.90 ID:6zLp6l60
「…で、プレゼントはなにあげたの?アンタはそういうの凝りそうだからなー」
「フィギュア。かなりエロいの」
 ブッっという音と、ゴンッという音がほぼ同時にした。前者は私がアイスティーを吹いた音で、後者は見えないので想像だが、かがみって子がテーブルに額でもぶつけたのだろう。
「…あんたな…何処の世界に彼氏の誕生日にエロフィギュア贈る女の子がいるんだ…」
「かがみんのすぐ目の前に」
 なんだか、かなた似の子はいろんな意味で凄い子のようだ。例えるならかなたとその彼氏を混ぜたような…いや、まさかね。
「…で、彼氏の反応は?」
「…なんかちょっと引いてた」
 それは…そうだろう。
「アンタ、そのうち別れ話切り出されるわよ」
「そ、それは困るよ。あの人無しじゃわたし生きて行けない…」
「…わざとらしく泣き崩れるな…アンタ、意地でも別れないだろうに」
 なんか、その彼氏さんに同情したくなった。
「かがみ…なんだかわたしの墓穴が広くなりそうだから、話題変えない?」
「そ、そうね。わたしも疲れるわ、コレ…あ、そうだこなた。この前つかさがさ…」
 私はそこでレシートをもって立ち上がった。
 会計を済ませ、未だに話題の尽きない二人をチラッと見て店を出る。

 かなた似の女の子の名前がこなた。なんとも因果な名前だ。
 訃報を聞いた時には、まったくでなかった涙が、今ごろになって出てきた。
 もし、あの子がかなたの子どもだとしたら、私は祈ろう。

 今度こそ、末永くお幸せに、と。


- 終 -
490 :命の輪は廻る[saga]:2009/03/25(水) 01:03:46.69 ID:6zLp6l60
以上です。

大根とかガンプラの元ネタはアニメ版の回想シーンから。
言うまでもないでしょうが、こういったかなたさん像は俺の独断と偏見に満ちています。
けっして信用しないでください。
491 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/03/25(水) 01:44:15.24 ID:g0maAIDO
>>490
貴様は俺の涙腺クラッシャーか?
ちくしょうGJだ
492 :こなたリフレイン[saga]:2009/03/25(水) 18:23:30.48 ID:i8fDgAM0
大昔に某所で発表したものを大幅に加筆したものを投下します。
ジャンルは…原作やアニメのエピソードを少々変わった切り口から再構成したもので、ほのぼのありネタありお笑いありちょっと感動(?)ありです。
493 :こなたリフレイン[saga]:2009/03/25(水) 18:25:02.03 ID:i8fDgAM0
 父親であるおっさんに他愛のない話を振る。
「お父さんは生まれ変わったらなりたいものとかある?」
 彼の返答は……。
「んー、可愛い女の子とかかなっ」
「お、おん……っ!? ネットでもたまに見かけるけど……なんで?」
「食事にしろレジャーにしろレディースデーっていって割引されるだろう。なんか女の子ばっかズルくない?」
「お父さん基本的に大らかなのに妙なトコで女々しいね……」
 おっと、女の子ならこう付け加えとくのが無難かな。
「まあそう言われると確かにありがたくはあるかも。普通に利用できるから特に何とも思ってなかったなぁ」
「はーあ、こなたはずるいよな―。中身はオレと同じオヤジなのに女の子の恩恵受けられて」
「うおーいっ」
 少なくともオヤジではないぞ、と内心で突っ込む私は、こなたという名の女の子らしい。


 女友達と連れ立って登校。とある事件の話題が出た。
「……って感じで教師犯罪が増えてるみたいよー」
 と、女友達のひとり、かがみが言う。
「それってさ、モラル云々より単にギャルゲーエロゲーのやり過ぎって感じしない? よくあるシチュだし」
 との私の返答に、
「そりゃまんまアンタのことでしょーが」
 と突っ込みが入る。そして更なる突っ込み。
「……ちょっと待て、なんでアダルトゲームの内容知ってんだ高校1年生」
「ふっ」
「『ふ』じゃねぇ」
494 :こなたリフレイン[saga]:2009/03/25(水) 18:26:01.84 ID:i8fDgAM0
「あんた私らと知り合う前って友達いたの?」
 学校で昼メシ食ってたら、かがみからこんな質問をされた。
 こなたに友達は普通にいたようだが、彼女の日記は流し読みした程度なのでこの場でスラスラ話せるほど内容を覚えてはいない。
 さて、本来の私がこの子達と知り合う前だったらどうだったかな。
「中学の時一人仲のいい友達がいたかな。しばらく連絡とってないけど、今、何してんのかな。中学の授業参観の時、将来の夢は魔法使いって言ってたけど」
『今』……この時代にヤツが健在なら30代をとっくに越えている。
 童貞のまま30歳になると魔法使いになるなんて都市伝説があり、お互いそうなる可能性が高い。
 それを少々誤解した結果があの作文だった。
 試しにヤツと連絡試みたが、引っ越したのか電話は通じないし手紙も届かなかった。
 こなたという赤の他人になってしまった今の私が無理に調べようとしたら怪しまれるだろう。
 などと考えていたら、かがみの双子の妹、つかさと、こなたがどのようにして仲良くなったのかと聞かれた。
 日記によると、つかさが怪しい大男に絡まれていたのを助けたのがきっかけだった。
 こなたは格闘技の経験者らしいんだが、ずいぶんと無茶をするものである。
 おまけに道聞かれてただけだったみたいだし。
「おまっ……駄目じゃん!! 何勝ち誇ってんだ」
 いやぁ、やっぱ女の子助けるってシチュエーションは男のロマンだし。

 PCに保存されているメールを読み返してみる。
 かがみからのメールは付き合いが始まったばかりの頃は丁寧な文体だったのだが、徐々にくだけた書き方になり、ついには遅刻しないようにと釘を刺される始末。
「ってカンジでメール見てると友達としての歴史がだねー」
 皆との付き合いの歴史、勉強しないとな。
「私があんたの正体に気付いてきた経過の記録だな」
 などと呆れられたわけだが、気づいたのはこなたがオタクだったり時間にルーズであるという程度で、私の本当の正体に気付いたわけではないだろうかがみんや。

 そんなかがみは今、体重の話で落ち込んでいる。
「1〜2キロ上下したって見た目的にあんま差なんてないのに、なんでそんな数キロで一喜一憂するかねぇ。これだから女ってヤツは」
「あんたもたしか女だったハズだけどね」
 残念だったな、私は男だったハズなんだ。


―― こなたリフレイン ――
495 :こなたリフレイン[saga]:2009/03/25(水) 18:27:07.04 ID:i8fDgAM0
 コテコテのオタクであるオレが、朝起きたら女の子になっていました。
 しかも、20年くらい経った近未来の世界。あの大予言はあっさりと外れたらしい。
 目が覚めて部屋を見回した時、あまり違和感がなかったため、しばらくは自分自身の変化にも気づかなかった。
 部屋中に張られたポスター、PC、漫画etc……。
 そりゃあ、未来の技術で作られただけあってPCのデザインは洗練されたものだったし、よく見るとポスターや本の印刷は精密なものになっていた。
 だがオレがはまっていた作品のいくつかは世代を超えて愛されるものだったらしく、ちょっと見ただけではオレの部屋と雰囲気が変わらなかったのだ。

 あくびと共に背伸びしたときの長い髪の感触をきっかけに、自分が背も胸もちっこい女の子になってることに気づいた。
 ネタなのかと言いたくなる200X年のカレンダーや、雑誌とか単行本の奥付の日付見て面食らった。
 そして恐る恐る部屋を出ると、廊下には無精ヒゲ伸ばしたおっさんがいた。彼はゲームの攻略法を教えてくれと言って部屋に侵入してPCを起動し、せり出してきたトレイにCDを入れる。
 なるほど、カセットテープでプログラムの保存が出来るんだから、同じく音を記録する媒体であるCDでも保存できるんだな。
 などと感心していたら、フロッピー、ましてカセットテープとは比べ物にならないスピードでデータが読み出され、ゲームが起動した。
 ドットなんて意識させない生のイラスト原稿でも見てるかのような画像と、音源なんて意識させない生の楽器で演奏しているかのような音楽に圧倒される。
 オレが呆然としていたら、しばらく怪訝な顔をしていたおっさんは不意に顔を赤らめ「ゆっくり体を休めるんだぞ」とか言って慌てて部屋を出て行った。
 どうやら、あのおっさんがこの女の子の父親らしい。
 父親の不可解な反応をあれこれ考え、ある可能性に気づく。
 娘の様子がおかしいのは月の物ではないか? と、父親は仮説を立てたのではないだろうか。
 中身が男のオレになってしまったことでボロが出たわけではない。というわけで安堵するべきか、アレになったと誤解されたことを恥らうべきなのか大いに悩むところであるが、とりあえず一人っきりになったのでこの女の子について色々調べてみる。
 日記帳やアルバムを発見。この子には悪いが、円滑に生活を送るためと言い訳し拝見させてもらった。
 更に、金持ちの友人にいじらせてもらったマックの要領でPCを調べているうちに、ゲームを動作させたまま他の作業もできることに気づき、様々なデータを覗いてみる。
 そういえば、ヤツの家でやってたロードスのテーブルトーク、いいところで中断してるんだよな。
 などと考えながら様々なファイル見ていると、手紙のような文章を発見した。パソコン通信の世界(この時代ではネットと言うらしい)で送受信されたもののようだ。
 それらを見た結果、オレがなってしまったこなたという女の子は、オレ同様に筋金入りのオタクであることが判明した。
 オレをそのまま女にしたような子。どうも、オレが素で行動してもあまりボロが出そうにない。
 改めて電源入れっぱなしのPCに目を向ける。
 そこでは、相変わらずの奇麗な画像と音楽が流れ、更に画面が切り替わってビデオでも見てるかのように滑らかな動画の再生が始まった。技術の進歩はすごい。
 ……が、その内容はエロ。
 オタクって生物の本質がさほど変わっていないのが少々切なかった。

 とりあえずボロが出ないように一人称は思考も言動もこなたが使用していた『私』に切り替え、女の子としての生活を始めた。
 女言葉ということになるが、少々丁寧語に切り替えたと考えると言葉遣いは割とすんなり順応できた。
496 :こなたリフレイン[saga]:2009/03/25(水) 18:28:13.13 ID:i8fDgAM0
 新聞等を見て知識を身につけ、どうにかこの時代に順応してきた頃に新型ビデオデッキの記事が目に入った。
 タイトルやキーワードを設定すると、それに関する番組をサーチして撮っておいてくれるスグレモノらしい。
 さすがは近未来。コレで野球延長も怖くない!
 と思っていたら、ネットTV欄みたいので照合してるだけで延長みたいなイレギュラーまでは対応してないとの事。
 未来技術も大したことない。オタクの最大の敵は相変わらず野球をはじめとするスポーツ中継である。こういう点でもオタクの世界は変わっていない。
 その上に、これらのスポーツ中継が中止になって普通にアニメが見れるということで好きだった雨は、海外から上陸し増殖していたドーム球場のせいで嫌いになってしまった。

 買い物で訪れたオタクの聖地である秋葉原は、ずいぶんと軟派というか二次元寄りに変化してしまい、しばらくは見えない壁を感じたものだ。

 2画面の折り畳み式ゲームウォッチがこの時代でも現役なのかと驚いたが、これがファミコンのようにカートリッジ替えて別のゲームができる上に性能は比べようのない高性能であることに更に驚かされた。
 このDSというゲーム機向けに、本来の私の時代に発売されていたゲームがリメイクされていたりして、ゲームといえど名作は世代を超えるのだなと感心した。

 こうしてみると、人間社会の本質はそうそう変わるものではないようだ。
 景品にばかり目がいって本体であるはずのお菓子はついついないがしろにしてしまうし、ロッテはこの時代に至るも優勝してないし。

 かと思えばこんなこともあった。
 ガンダムはZでは飽き足らずVとかWとかXとか色々出ているようだが、その一方で1年戦争の時代を描いた外伝もいくつか作られており、こなたの趣味はその時代の作品に偏っていた。
 そういうこともあって彼女のコレクション見てもすぐには違和感に気づかなかった。
 父親が「お隣さんから良いもの頂いたぞー」とか言うから、「何? ツボ?」などとボケたら感極まって抱きしめてくる始末。
 こんなことで父娘のコミュニケーションが取れてしまう辺り、オタク文化もかなり一般化しているようだ。
497 :こなたリフレイン[saga]:2009/03/25(水) 18:29:14.59 ID:i8fDgAM0
 あれからも女子高生としての日常が続く。

 つかさ達が歯医者の話してるな。ドリルか。これは怖がっておいたほうがいいか。
 ああ、でもいきすぎたか、フォロー入れねば。女の子だったらどう言うかな?
 ……そうだ。
「でも男子は歯医者とか好きそうだよね」
「何で?」
「だってドリルは男のロマンって言うし」
「いや……見るのはともかく削られるのは嫌だと思うけど……」
 それもそうか。

 ちょっと早起きしたのでゲームやってたらついつい長引いてしまい、学校出るの遅れた。というわけで学校の廊下を全力疾走している。
 担任である黒井先生が出欠取る声が聞こえた。
「泉、泉ー、なんや遅刻かー?」
「ストップっ、遅刻じゃないですーっ」
 さて、なんて言い訳しよう?
『ウィッキーさんと英会話してきました』
 なんて、この時代で通じるわけないよな。
『ブラウンのモーニングリポートに引っかかった』
 オレはこの年なのに結構ヒゲ濃いから信じてもらえるか……って、オレ、いやいや、今の私は女の子なんだから駄目じゃん!
 正直に言おう。
「人助けをしてたら遅くなりましたっ。そのあと話とか聞いてたら長引いてっ」
「なるほどな、そりゃええコトしたわ」
 嘘は言ってない、嘘は……って、おお、信じてもらえた。
 笑みをたたえた先生は更に続ける。
「で、それは何のゲームの話や?」
 ううっ、読まれてる……。
498 :こなたリフレイン[saga]:2009/03/25(水) 18:30:09.34 ID:i8fDgAM0
 アニメキャラの仮装もずいぶんと一般化しているようだ。せっかく女の子になったことだし、色々な格好を試してみるか。こなたならやってもおかしくないだろうし。
 というわけで……。
「仮装喫茶でバイト始めたって言ってたけど、そういうとこってスタイルとか良くないと駄目なんじゃないの?」
 と、かがみが突っ込んできた。
「いやぁ……私もずっと胸がないのを嘆いてきたんだけどね?」
 こなたには悪いのだが、自分が女の子になったとすぐ気づくことができなかった原因のひとつがそれだったのだ。
 女の子になったんだもの、揺れる胸への戸惑いとか体験してみたいんだが。
「とあるゲームで『貧乳はステータスだ希少価値だ』って言ってたんだよね。言われると確かにそういうニーズもあるわけじゃん?」
 と、自信たっぷりに続ける。
 実際、本来の私が膨大な量のフロッピーをとっかえひっかえしてプレイしてたゲームでも巨乳キャラではなく貧乳キャラに興奮していたものである。
 ……自分が貧乳キャラになっても仕方ないんだが。

「そう言えばこなたって漫画やゲームの趣味変わってるわよね。少年誌ばかりだしギャルゲーメインでしょ」
 かがみにこう指摘された。
 日記などの資料や自分が見聞きしたことから考えると、
「ウチ、お父さんがよく漫画見たりゲームするからそれに影響されてるんだよね」
 ということらしい。自分で言うのもなんだが、娘の前でギャルゲーやエロゲーやるってどんな父親だろう。
 かがみも同じこと考えているのか唖然としつつ突っ込んできた。
「父子揃ってそんな感じでお母さん何とも言わないの?」
「あー、ウチ、お母さんいないから」
「え?」
 実際に居ないし父親もあまり話題にしないが、アルバムなどの写真や位牌から推察するに、
「私がすごく小さい頃に死んじゃったんだよね」
 ということらしい。
 居間に飾られてる写真には、今より若い父親と、こなたと見間違えそうなくらいにそっくりな女性、その二人に挟まれる赤ちゃんが写っていた。
 あれが両親であり、赤ちゃんだった頃のこなたらしい。
 本来は他人であるはずの私から見ても、暖かく、切ないものがひしひしと伝わってきた。
 両親の顔は本来の私から見ても見覚えがあった。
 まあ、こなたの両親なのだから見覚えがあってもおかしくないか。
 毎朝髪の手入れで鏡を凝視してることだしな。
「そ、そうなんだ……悪い……」
 あ、かがみとつかさがバツが悪そうにしているな。フォロー入れねば。
「だから家事とかいつもやってるからかがみより全然できるよ」
「突っ込みづらい雰囲気の時に余計な事言うなっ」
 そうそう、かがみはこうでなくちゃ。

 バイト先の喫茶店で行う夏の新メニューについて考えていると、かがみが話しかけてきた。
「へぇ、そんなのあるんだ?」
「暑い時こそ辛い物ってことで激辛ラーメンとかどうかナ?」
 実際、本来の私の時代では激辛がブームになってて、激辛ラーメンは暑いときには最高だった。
「もう少し喫茶店っぽいメニューにしなさいよ」
 それもそうか。
「じゃあ激辛パフェとか!」
 カレーやラーメンに飽き足らず、お菓子や清涼飲料にも激辛があったんだ。パフェもアリだろう。
「いい加減、脊髄反射的な発想はやめないか?」
 ううっ、呆れられた。でもブームが再来すれば、あるいは……。
499 :こなたリフレイン[saga]:2009/03/25(水) 18:31:23.08 ID:i8fDgAM0
 親戚のゆい姉さんと担任である黒井先生の引率で私達は海に行くことになった。
 で、紆余曲折の末に辿り着いた海の家。
「おお、期待通りだ!」
「何がそんなに嬉しいのよ?」
「だって海の家を絵に描いたようなのが出てきたんだよ? 見よ! この具のないカレー! さすが海の家!」
 他にも定番のメニューが並んでいる。こういうのは世代を超えて受け継がれていくのだなあ。
 で、民宿で風呂に入る。こなたは女の子であるからして当然ながら女湯に入ることになり、他の皆とご一緒することになってしまう。
 しかし、全然いやらしい気持ちにならないし興奮もしない。体が女だからかな。
 考えてみると、私がこなたという女の子になってから誰かと風呂に入るのはこれが初めてだな。
 せっかく髪が長い女の子になったんだ、アレをやってみよう。
「見て見て! ティモテ、ティモテ、ティモテ〜♪」

       /⌒彡
     / 冫、 ))   ティモテ
    / ~ヽ ` , ((((  ティモテ
    | \ y  ))))   ティモテ〜
    |   ニつ))つ
    |、ー‐ < ((
    /   ヾ \、
  // しヽ__)〜
 ~〜〜〜`

 ウケるぞ〜これは。
「何それ」
 との冷め切ったかがみの反応。
 そうか、この時代であのシャンプーは見かけなかったから、もしやと思っていたが、もう消え去った商品だったんだな。君らも生まれてなかったんだな。
 ジェネレーションギャップを痛感し、寂しくなる。
 いや、まだだ、このネタで笑いを取らねば気がすまない。
 振り向くと、そこには大人である黒井先生とゆい姉さんがいた。彼女らなら!
「姉さん姉さん! ティモテ、ティモテ、ティモテ〜♪」
「おー懐かしい〜! やったやった♪」
「これだー! 私の欲しかった反応はこれだった!」
 通じた、私がリアルタイムで接していたネタが通じた!
「お前いくつやねん」
 などと先生に呆れられた。
 さてはて、本来の私はこの時代ならいくつなんだろうな?
500 :こなたリフレイン[saga]:2009/03/25(水) 18:32:39.50 ID:i8fDgAM0
 みゆきさんが眼鏡なしで登校してきた。割れてしまったとのこと。
 そんなわけで今日取ったノート貸したりしていた。
 そうこうしてるうちにトイレ行くことになったのだが、よく見えないせいか彼女はふらふらと男子トイレに入りそうになり慌てて静止した。
 こなたになったばかりの頃は私も習慣で入りそうになったっけ。

 そんなみゆきさんは体育祭でリレーに抜擢された。
 最初は障害物競走になるはずだったんだが、私が、
「みゆきさんは体の凹凸激しいから障害物はダメだよ〜、いろいろくぐるし」
 と言ったためである。
「お前それ中年オヤジのセクハラかよ……」
 と、かがみに呆れられた。まあ、オヤジではないが中身は男だしな。
 そんな私は100メートル走に抜擢。
「どうしたらこなちゃんみたいに早く走れるの?」
 とのつかさの問いにこう答える。
「こういうのはイメージが大事なのだよイメージが」
 号砲で駆け出すとき、頭にとあるゲームの画面を思い浮かべる。
 まずは手を痙攣させるように力技でボタンを連打、それからコインでこすり、終盤は定規ではじくようにしてその振動で……。
「ごーるっ♪ こんな感じ?」
「マジか」
 ふっふっふ、連射している信号を出す回路があらかじめコントローラーについてても珍しくない世代の君らにはわかるまい……って、わかるのかよかがみ。
501 :こなたリフレイン[saga]:2009/03/25(水) 18:33:23.10 ID:i8fDgAM0
 バレンタインがやってきた。
 本来の私としては無縁だったし、女の子になった今では貰えるわけがないし、中身が男ということであげる相手を作る気にもなれないということで現実世界ではやっぱり無縁のはずだった。
 だが。
「おはよーこなちゃん、はいこれ」
 つかさから義理チョコを貰った。
 欧米では男女問わず好きな人や友達にお菓子やカードを渡すということで、女の私に義理チョコらしい。
 しかしこの凝りよう……。
「つかさ〜、義理でも男子にはあげない方がいいよ〜、絶対勘違いされるから〜」
 体が女子でも中身が男子である私が言うんだから間違いない。
 不覚にもときめいてしまったじゃないか。

 で、かがみもチョコくれた。ぶっきらぼうな態度で顔赤くしながら渡すのが堪らん。
 本来の私がこんな態度で渡されたら絶対勘違いしてしまう。

 そんな私だが、ネットの世界ではチョコをあげる予定がある。
 ゲーム内でキャラとして、である。
 女の子として生活する反動なのか、ネット上のゲームでキャラを作成するとき性別は迷わず男を選択していた。おまけに結婚もしていたりする。
「はぁ……男が女にチョコあげるのか……? というか女が女にあげてるようなもんでしょ? それ」
 と、かがみに突っ込まれる。
「大丈夫、相手、中身は男だから……あれ?」
 相手は男が女キャラ操作してて、私が操作する男キャラからチョコ貰うわけで、それ操作する私は女の子なんだけどその中身は男で……???
「あー……まぁ、こういうのは各個人が楽しめればそれでいいのよネ!!」
「そうだネ!!」
 二重に性別を偽った上にチョコの受け渡しは逆転してるわけで、混乱避けるためにも今後は自重しよう。
502 :こなたリフレイン[saga]:2009/03/25(水) 18:34:33.72 ID:i8fDgAM0
 従兄弟のゆたかという女の子が私達と同じ高校に合格し、実家からだと遠いということで我が家から通うことになった。
 そんなわけで一緒に暮らすのだが……。
 父親がトイレのドア開けたままで用たしていため彼女は引越し早々にショック受けていた。
 私は中身が男ということもあってお構いなしでいたため、感覚が麻痺していた模様。これからは気をつけねば。

 それにしても女ってのは脅威の生物だ。
 今もかがみは、携帯電話(こんな小さな物体にPC並みの性能があり無線で電話できるなんて信じられんが、この分野ではいちいち驚いてたらキリないので深く考えず受け入れることにした)に出たとたんに……。
「あ、はいもしもし○○ですけど、あっいやいや、つい、家電のクセで……うん、うん――」
 つい、たった今まであんなに激しく私に怒りをぶつけてたのに、どうして女ってこう素早く切り替えられるんだろう?

 誕生日を祝われた。
「このくらいになると年とっても別に嬉しくないわよね」
 と、かがみは言うが……。
「いやー、私はすごーく嬉しいけどね〜」
「へ〜何で?」
「だってこれで美少女ゲーとか堂々とできるじゃん」
 コレまではさ、ちょっと後ろめたさがあったわけよ。私がこなたになったばかりの頃、彼女は年齢満たしてなかったわけだし。

「狐……えーと……犬……リス……」
「急になに言ってるんだ?」
「いや、皆を動物に例えたらどうなるかなーって」
 友達同士で集まったとき、ふと思いつきで出した例え話。
 そしてかがみはウサちゃんだと言ったら激しく照れていた。うーむ、可愛い。
 で、みゆきさんは羊かなと言われたが、あえて反論させていただく。
「いやー、みゆきさんは……なんと言っても牛でしょっ! このへんが」
「あんたの発想はどうしてそう中年のおじさんみたいなんだ」
 かがみの突っ込みが入る。
 おじさんではないが、まあ、中身は男だしな。
503 :こなたリフレイン[saga]:2009/03/25(水) 18:35:25.83 ID:i8fDgAM0
 あ、雨か。傘用意してねーな。
「もう男子みたいに濡れるの気にしないでそのまま帰ろうかなー」
 私のぼやきにかがみの妹、つかさが答える。
「あはは、男の子って何で濡れるの気にならないんだろうね」
「ブラとか透ける心配ないからじゃん?」
「一理あるだろうけどあまり大声で堂々というな恥らいもてよ」
 私の返答にかがみが気まずそうに突っ込む。
 ふーむ、こういうのは女同士でも気を遣わねばならんのか。

「あんたの家族はホント仲良いよね」
 かがみにそう言われたので、ふと思いつきで父親に聞いてみた。
「私が男子でも今と同じように接してた?」
 しばしの間を置いてから「当たり前じゃないか」と返してきた。
「……はいはい、よーくわかったヨ」
 よかったね、私が体だけでも女で。

「修正してやるっ!!」
 頭への衝撃で覚醒する。
「泉ー、居眠りすなー」
「体罰が禁止のご時勢で、先生、けっこう普通になぐりますよね。別にいいですけど」
 自分で言うのもなんだけど、殴られなきゃわからん奴っているし。
 本来の私の時代ならこれは妥当なケース、別におかしなことではない。この時代の人間が過剰反応してるとしか思えない。
「せやな。けど誰も彼もやなくて殴る相手はえらんどるよ、いろんな意味で」
 どんな意味ですか……。

 ゆたかがポテトチップの袋開けられず四苦八苦してるな。
 というわけで私が開けようとしたわけだが……。
「ギザギザのトコロから破って開けちゃおっか?」
「ちょっ、まっ、ちゃんとあけるから、ちょっとまって!!」
 しかし、どんなに力入れても、ひっくり返してもダメ。
 男として力技で負けるわけには……あれ? 今は女なんだっけ。でも年長者としてはやはり負けるわけにはいかない〜〜〜!!

 ゆたかのクラスメイトで重度のオタクである女の子、ひよりと意気投合する。
 実際に妹がいる人は妹萌えしにくい、アニメの予告編における次回タイトルで即バレ、PCの調子の悪さをどう表現するか、連載続いてる漫画における絵柄の変化、コスプレは素材がよくないと楽しめない、朝起きたら最初に何をするか? 袴もいい、といった具合に。
 だが最後の袴で決定的な溝があった。
「眼鏡と袴は女の子に限る」
 というのが私の主張、それに対しひよりは、
「私的には男の子もありなんですが」
 私の中身が男であることが、この違いを生んだのだろうか?

 さて、かがみんとこは世界史の宿題出ただろうな。しかし、何も言ってないのに見せないと宣言された。
 毎回たかられちゃかなわんとの事。行動パターン読まれてるなー。
「いやいや考えてご覧よかがみ。毎回宿題を理由にしてかがみに会いたいがために隣のクラスまで足げく女の子が通ってくる。って想像すると、ほらっ、すっごい萌えシチュエーションじゃない?」
「オタクのその発想力には時々色んな意味で関心するわ。それ男子の発想じゃないのか?」
 見抜かれたか!? とも思ったが、呆れられるだけで気持ち悪がられたり怪しまれたりはしないな。
 中身が男子なんじゃなく、そういうキャラとして認知されてるようだ。
504 :こなたリフレイン[saga]:2009/03/25(水) 18:36:19.57 ID:i8fDgAM0
 部屋を片付けていると、こなたが子供の頃に使っていたと思われるクレヨンが出土した。
 本来の私としてもさまざまな意味で懐かしくて、童心に返り絵を描いてみた。
 しかし、絵心がなく散々な出来。そのことに呆れていたらかがみが来訪。
 笑われるだろうから隠し、話を逸らす。
「そういえばさー、子供の頃からずっと気になってるんだけど」
「ん?」
 男の子と女の子が向かい合って絵を描いているイラストが入ったクレヨンのパッケージを指差す。
「この女の子はどーして怒ってんのかな?」
 目つきが怖かったのだ、この子。
「あんたはほんと、どーでもいいコトだけはよく考えるな……」
 どうでもよくなんかない! 本来の私が子供の頃からこの会社のクレヨンのパッケージはこの絵だったんだ、これって地味にすごい事だ。
 と、言いそうになったのを堪える。本来の自分を隠すってのも結構大変だ。

 たまには、ということで夕食をカップ麺で済ますことになった。
 ゆたかは焼きそばを選択。流しに湯を捨てに行き、ベコンという定番の音が鳴り響いた。
 デザイン同様、あの音の発生も変わらないんだな。
 などと感心していたら……。
 ぼとぉっ
「は、半分くらいになっちゃった……」
 定番の悲劇も変わらないか。この時代になっても克服できてなかったとは。
 などと考えながら私のカップを開けると、なんかスープの具合が変。でろーんとしている。
 ふとスープの袋を見ると『お召し上がりの直前にお入れください』との注意書き。
 そりゃあ普通の料理でも調味料とか入れるタイミングってものがあるけどさ、さしすせそってヤツ。でもそういう面倒から開放するのがインスタントってやつじゃないのかね?
 実際、本来の私の時代なら既にスープはカップの中にぶちまけられてて、無造作に湯を注ぐだけで済んでたのにさ。
「まあ、そういう時もあるよな」
 などと慰めてくれた父親のカップの中では、具、またはスパイスか何かが入った子袋が浮いていた。
 最近のカップ麺ってヤツァ――

 弁当を忘れた。
 今日は寒いから購買で肉まん買ってきたわけだが。
「ほら、かがみ、おっぱいおっぱい」
「ぶっ、そういうコトでかい声でゆーなっ」
 貧乳の女の子にしかできないギャグであり、二つ買ったことでついやってしまった。今では反省している。
 なんなんだ、このやるせなさ、自己嫌悪、敗北感。
 他人の体であり本来の私は男のはずなのに。
 もう精神は乙女のソレに侵食されてしまったのか、それとも男だからこそ抱く感情なのか。
505 :こなたリフレイン[saga]:2009/03/25(水) 18:37:00.48 ID:i8fDgAM0
 格闘ゲームが再ブームになったという。
 本来の私がはまっていたコナミの『イー・アル・カンフー』。
 アレを凄くしたようなストリートファイターというゲームをゲーセンで見た記憶があるのだが、アレは更に進化を続け格闘ゲームという1ジャンルを築いて今に至るらしい。
 これまたアニメビデオでも見てるかのように綺麗な画像が動く。これがリアルタイムに作られている画像なのだから恐れ入る。
 ふと、ある可能性に気づき押入れを発掘してみた。こなたならアレを持っていたのではないか、と。
 その予想は的中した。押入れの中で、本来の私にとっては未来に発売されることになるオーパーツ、スーパーファミコンが数々のカセットと共に埃を被っていた。
 引っ張り出し、埃を掃除してコレに移植されたストリートファイターUをやってみる。
 さきほどゲーセンで見た最新作と比べれば見劣りするものの、『イー・アル・カンフー』に馴染んだ私にとってはやはり脅威の画像である。
 そのとき、父親が画面を覗き込んできた。
「お、バイソンか。当時M・タイソン格好よかったんだよなー」
 との発言に、激しく同意を返そうとしてある事を思い出し静止。
「M・タイソンって誰?」
 と、すっとぼける。
 こなたの年代なら知らない筈だからな。
 海行ったときのティモテやキャンプで遭難したときの死兆星のようなネタは今後自重しよう。
 カラオケ行ったときも、あまりにもラインナップが充実してるんで嬉しくて特撮とか歌いまくったが、アレもまずかろう。
 さすがに何度もやると怪しまれる。

 それにしてもこのゲームは国際色豊かで、アマゾンは電気うなぎという連想で野生児が自家発電したり、インドの僧侶がヨガという連想で手足を伸ばして攻撃していた。
 ベラボーマンみたいで笑ったのだが、この時代だと偏見だの差別だのと言われそうだ。
 実際、新聞の投書欄なんかで時折そういうふうにヒステリックな主張を見ることがある。
 昔の漫画の復刻版でも差別表現があるとかで台詞を改変されたりその話だけカットされたりしていた。
 子供の頃読んで胸躍らせたちびくろサンボに至っては絶版になる始末。
 この時代は、ネットで発言の機会が増えている反面けっこう窮屈なところもあるようだ。
506 :こなたリフレイン[saga]:2009/03/25(水) 18:39:08.65 ID:i8fDgAM0
 父親やゆたかとクイズ番組を見ていると、この時代から見て昔の小学生の体育授業の映像が流れた。
 女子はブルマを履いている。
 私がこなたになってしまった当初、体育の授業であのブルマを履く羽目になるのかと戦々恐々としていたが、男子同様に短パンだったことに安堵すると共に拍子抜けしたものだ。
 などと感慨にふけっていたらこんな問題が出た。
『最近、日本の小学校で見なくなった物に「ブルマ」がありますが、意外なところでニーズがあり売れているそうです。そのニーズとは何でしょーか!!』
「えー、いや、何となくわかるけどさぁ〜」
 わかってしまっていた。この時代について知るべくネットをさまよって情報をかき集めるうちに、知らなくてもいいことを色々と。
 本来の自分の時代でも世も末だと感じることが多々あったが、アレについて知ったときはもう、そういうのを通り越したものを感じた次第である。
「それをゴールデンのお茶の間に流してもいいのかなぁ」
 と、父親が言う。
 ですよねー。
 というか、父と娘とでこういうことで分かり合うってのもどうかと思うが。
『正解は、より小さな幼稚園児くらいの子供がアンダースコートやオーバーパンツとして運動の時に使う、でした〜っ』
 ゆたかが首をかしげるのを尻目に、父と娘とでうなだれあう。
「うーん、私達って……めちゃくちゃ汚れてますネ」
「結構取り返しつかないトコまで来てるかもな」
 といった具合に、父と娘とで深いとこまで分かりあった。
 中身である本来の私から見ればこのおっさんは他人のはずなのだが、とてもそうは思えない。
 一体これはどういうことなのだろう?
507 :こなたリフレイン[saga]:2009/03/25(水) 18:39:48.26 ID:i8fDgAM0
 PCにてゲームやってるときにゆい姉さんがやってきた。
「いやーしかし、か弱い年下キャラもいいけど、やっぱりお姉さんキャラもたまりませんなーっ」
 色々とね、憧れとか幼少期の体験とか思い出しちゃうわけですよ。
「や〜、……お姉さんお姉さん言うけど……そういうゲームやる人にとっちゃそのキャラの方が年下なことが多いんじゃないの?」
「私達、心はいつも少年少女なんですよ姉さん!!」
 まして、本来の私はかろうじて少年と言えなくもないわけだしな。
 などと感慨にふけりながら続ける。
「まー、姉さんが言うようなこともたまに思ったりしますけどねー」
「ふむふむ?」
「いやー、例えば、気付いたら遊んでた頃は年上だったゲーキャラと同い年になって不思議な感じしたり、前から憧れていたキャラより年上になって複雑な気分になったり」
 おまけに、本来の私の時代に接していた作品が今でも連載続いていたり、リメイクされたりで、時代を超えて接した私が抱く感情の複雑さといったら――
 などと言い出しそうになって慌てて別の話に変える。
「キャラは漫画の中でいろいろ成長とか活躍してるのにリアルの私は何やってんだろうなーとか思ったり……」
 言ってて自分で傷付いた。アムロより年上だし、ブライトさんに追いつきそうだし。
「まあ飲もうか」
 などと姉さんに慰められる。
 本来の私は、この時代だったら実際にこうやって飲みに行くような、こなたのような年齢の子供がいてもおかしくないおっさんになってるはずなんだよな。
 なのにどうして私は女子高生やってるんだろう。

 体育の授業でバレーボールをやる。
 かがみのチームと対戦することになり大いに盛り上がった。
 そのとき、かがみが打ったスパイクをつかさが受け損ね、顔を強く打って泣き出した。
 そんなに痛かったか? とも思ったが、つかさはどうやら成績や運動神経で負けてるってことで姉のかがみにコンプレックスを抱いていて、それがついに爆発したらしい。
 いたたまれない雰囲気、どうにかせねば。
「だって、涙が出ちゃう。女の子だもん」
 封印していた世代超越ネタだが、止むを得まい。
 くねくねと身をよじる。男だったら気持ち悪いが、この姿なら問題なかろう。
「何よそれ」
「え゛〜!? 知らないの? これって日本人の常識じゃん?」
「そう思うのはお前だけだ」
 そうか、世代を超えた名作だと思ったが通じないか。
 でもまあ、紆余曲折あったがつかさも立ち直ったからいいさ。はっはっは。
508 :こなたリフレイン[saga]:2009/03/25(水) 18:40:45.81 ID:i8fDgAM0
 とまあ、こんな調子でゆる〜い日々を謳歌していたある朝。

「朝起きたら男の子になっていました」
 というか戻っていました。
 いつだったか皆の前でつかさが犬のしつけや芸の話を出し、ある単語を口走ってその場を凍りつかせたわけだが、その単語の対象がここで元気に……って。
「……夢オチかよっ!?」


 あれから、受験やらなにやらで忙しくなりあの夢のことも忘れてきた頃、疎遠になっていた幼馴染の女の子と大学で再会した。
 見違えるくらいに綺麗になっていて、しばらくはあいつだと気付かなかったくらいだ。
 作家としてデビューしようと四苦八苦してる頃、資料として多数保有していたあるものについてあいつから苦言を呈され、なかば冗談のつもりで言ったプロポーズまがいの台詞がすんなりと受理され結婚、娘も生まれた。
 あいつは娘の成長を待たずして逝ってしまったが、そこそこ幸せな人生だったと思う。

 娘の性格は、オレの趣味の影響で相当にオレに似ている。正確には、年齢や性別ゆえの違いが加わった結果、あの時のオレ、筋金入りのオタクだったオレに似ている。
 それでもまあ、あいつが望んだ『普通』とはちょっと違うが、とてもいい子に育っている。
 抱っこした感じもどんどんあいつに似てきて――
509 :こなたリフレイン[saga]:2009/03/25(水) 18:41:40.78 ID:i8fDgAM0
 そこである事実に気づき、愕然とした。
 なんとなく思い浮かんだ名であり、妻となったあいつの名と韻を踏むからと即決した名前、こなた。
 改めて見てみると、今オレの腕の中でうっとおしそうにもがき蹴りを繰り出した娘は、外見といい性格といい歩んでいる人生といい、あの夢の中でオレがなっていた女の子、『こなた』にそっくりになっていた。

 改めてあの夢の記憶と娘との記憶を照らし合わせると、まったく同じ内容だった。
 たとえばクリスマスイブ。
 娘からのプレゼントは、夢の中でオレがバイトして父親に贈ったものとまったく同じだった。
 それ以前の問題として、今のオレは夢の中の『こなたの父親』そのものだった。
 それに、娘が友人のかがみちゃんとつかさちゃんを連れてきた時、ふたりが初対面とは思えなかった。
 そもそも、彼女らの家が神社で巫女さんであるということをなぜ知っていたのか? 娘からいろいろ話を聞いていたが、その点は聞いた記憶がなかった。

「お父さんは生まれ変わったらなりたいものとかある?」
 との娘の問い。やはり夢の中でこう質問した記憶がある。
 あの記憶の中で父親はこう答えていたな。
「んー、可愛い女の子とかかなっ」
「お、おん……っ!? ネットでもたまに見かけるけど……なんで?」
 娘はやはり、あのときのオレと同じ返答をしてきた。
「食事にしろレジャーにしろレディースデーっていって割引されるだろう。なんか女の子ばっかズルくない?」
「お父さん基本的に大らかなのに妙なトコで女々しいね……」
 そうだな、オレは女の子になってた時期があることだしな。
 少しの沈黙の後、娘は続けた。
「まあそう言われると確かにありがたくはあるかも。普通に利用できるから特に何とも思ってなかったなぁ」
 そうそう、女の子らしく振舞おうとしてこう付け加えてたっけ。
「はーあ、こなたはずるいよな―。中身はオレと同じオヤジなのに女の子の恩恵受けられて」
 というか、中身はオヤジと同じオレなんだよな、今。
 さてはて、これは一体どういうことなんだろう? 娘は性格が似てきた結果、時と空間と性別を超えてあの頃のオレとシンクロした、なんて事があるんだろうか。
510 :こなたリフレイン[saga]:2009/03/25(水) 18:42:21.61 ID:i8fDgAM0
 あれからも改めて娘を観察してみると、まるっきりあの夢の通りだった。
 ならばそろそろ、あの質問をした……いや、する頃になるのか。
「お母さんって背小さいし幼馴染だし、なんかギャルゲーキャラみたいじゃん? お父さんがベタ惚れなのはわかるんだけど、お母さんは何で結婚したんだろ?」
 やはり来たか。
 この問いにどう答えるかをオレは考え続けていた。そして……。
「『お前が振り向いてくれないからオレはギャルゲ好きになったんだ』と言ったら割とすんなり……」
 と、夢の中の父親と同じ答えをした。
 今、そしてこれからもしばらくの間、娘の中身はあの頃のオレになっていることだろう。
 元の時代、元の体に戻ったオレは『こなた』としての経験を夢として受け止め、その後の人生にそれなりに影響を与え、今に至っている。
 今オレの目の前にいる娘と、もし、あの夢と異なる接し方をして、娘……あの時のオレに異なる体験をさせたとしたら、過去、そして今は変わってしまうかもしれない。
 変えることが出来るかもしれない。

 その可能性を考えた上で、オレはあの夢を辿ることを決断した。
「でも何で急にかなたの事を?」
 こなた、貴様は『んー、私、お母さんの事よく知らないし……』という。
「んー、私、お母さんの事よく知らないし……」
 やっぱりだ。あの時のオレ……今のお前は、母親に限らず誰のことも知らなかったんだ。
 友達のことも、自分自身のことも、日記やメールやアルバムなどの資料を通して断片的に覚えただけ。
 父親の名が本来の自分と同じであることにすら気づかない有様だったもんな。
 これから、ちょくちょくかなたとの思い出を話しておこう。
 今のこなた……かなたと結婚する前の時代に戻るオレにどんな知識を与えたとしても、あいつを救うことは無理だ。
 かなたを蝕んでいた病魔の対処法は、今に至るも見つかっていないのだから。
 だからせめて――
「かなたは若くして逝っちまったけど、幸せだったよって最期は笑ってたよ」
 あいつにこのルートを辿らせてやるのが、せめてもの救いになると思う。そのためにも、な。

「こなたはこなたのやりたいようにやればいいさっ。オレもむりやりかなたを連れまわして思い出たくさん作ったものさー」
「じゃあ私も彼氏とか作って思い出作りしようかなー」
「それは絶対ダメっっ!」
 夢の記憶において、色恋沙汰はなかったからな。
 逆にこういうやり取りの記憶があり、その記憶の通りになっている。タイムパラドックスは回避せねば。
 ……いや、娘をもつ父親としては、当たり前の反応であろう。

 そうだよな? かなた。


 完
511 :こなたリフレイン[saga]:2009/03/25(水) 18:43:05.40 ID:i8fDgAM0
以上です。
1巻P067がきっかけで執筆。2巻P122、4巻P036で暴走しました。
6巻やアニメ版見て加筆した次第です。
512 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/25(水) 19:59:09.22 ID:HQCguyI0
>>511
おー、新鮮な感じだ。
乙。面白かった。
513 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/25(水) 20:13:07.30 ID:bOZEavMo
>>490
GJ! 命の「輪」のなの通り、過去と今が繋がってるのがいいなぁ
このシリーズ好きだぜ、乙。

>>511
確かにこの発想は面白いな
ストーリーとしても成り立ってるし。GJ!
514 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/03/25(水) 21:30:52.70 ID:vT8vAgDO
ちょい脱線するけど

メモソフト(DoCoMo用)
http://www.nob13.com/game/iappli/Memo/

携帯でSS書くのに使ってるんだけどこれより使えそうなアプリ知らない?
できれば本スレのURL登録できるのがあったらいいんだけど…
てか皆は作成中のSSって保存メールとかにしてるの?
515 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/25(水) 22:04:51.65 ID:BPtaxt20
>>511
面白かった。この発想はなかったわw
それにしても、ウィッキーさんとかブラウンモーニングリポートとか懐かしすぎw

>>514
私PCメインだけど、携帯の時は保存メール使ってた
516 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/25(水) 23:04:58.08 ID:y744BwAO
>>511
すげー、おもしろい!最高に読みやすいし、最後の1レスは感動したよ。
読んでて飽きが来ないっていいね。
しかし、こなたとほぼ同世代な俺には、さっぱりわからんネタばかりだwwww
なんか、このスレの平均年齢って、思っていたより高め?


>>514
auじゃダメか。そんなアプリがあるなんて……。
俺もやっぱりメールにSS書いてるな。
517 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/25(水) 23:31:32.62 ID:6zLp6l60
レスありがとうございます。>>490です。

いや、書いてる側は涙腺狙ったつもりはなかったんですけどね…。
シリーズごと好きだといってもらえるのは嬉しいですね、ありがとうございます。

…いや、シリーズにはなってなかった気が。
518 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/26(木) 03:54:09.14 ID:XTkA1F20
ネタ投下。
519 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/26(木) 03:54:47.51 ID:XTkA1F20
何をやってもついてないワタシ達だったけど
やっとCDデビューにこぎつけたぜ

今日はファーストシングル「もってけ!聖なる三十路のセーラーふく」のジャケット撮影だぜ


アンラッキースター
(題字・○水かがみ)


ひより「じゃあ撮りますよ」
KAGAMI「はいお願いします」

ひより(プロカメラマンになって初の仕事が
     ビジュアル系バンドのジャケット撮影なんてついてるけど…

     アンラッキースターか…
     なんだか売れなさそうな名前だわ…

     今までついてない人生だったことがバンド名の由来らしいけど…)

TSUKASA「うわっ」ガラッ


TSUKASA「ウワアアアーーー!」


TSUKASAーーーーーーー!
家業を継いで巫女になったが神社が爆発し
やむなくバルサミコ酢くばりに転職したが1コもくばれず
家はドロボウに入られた
そんなついてない人生にも負けずここまでがんばってきたTSUKASA!
TSUKASAーーーーーーー!
520 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/26(木) 03:55:12.21 ID:XTkA1F20
MIYUKI「な…泣くなみんな!
     涙というジュエルは心の牢獄(ジェイル)にしまえ!」
KAGAMI「TSUKASAのためにも残ったワタシ達ががんばるしかないじゃないか」
KONATA「そうだ!MIYUKIの言うとおりだぜ!」

MIYUKI「うわっ」

2人「み MIYUKIーーーーー!」
MIYUKI「ウワアアーーーーー!」


MIYUKIーーーーーー!
医者を夢見て必死でバイトして電気メスを買ったが麻酔ができず
家はドロボウに入られ電気メスは爆発した
そんな不運にも負けずバンドに人生をかけたMIYUKI!
MIYUKIーーーーーーーーー!


KONATA「も もうダメだ…
     ワタシ達の夢という名の翼はもがれちまった…!」
KAGAMI「バカヤロウ
     ここであきらめたら今までのがんばりがムダになるぞ」
KONATA「でももうボーカルとドラムだけになってしまったじゃないか!」

KAGAMI「だから何だってんだ!
     音楽ってのはたとえ…うわっ」

KAGAMI「ウワアアアーーーーーーーー!!」
KONATA「KAGAMIーーーーーーー!!」


KAGAMIーーーーーーー!
国際弁護士を目指したが六法全書が爆発して弁護士生命を絶たれた上に
家はドロボウに入られ
男相談者には「わりとキライでした」と告白され
それでも人生をあきらめずバンドに全てをかけたKAGAMI!
KAGAMIーーーーーーーーー!

521 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/26(木) 03:55:43.24 ID:XTkA1F20

KONATA「なんてことだ…どうすればいいんだ…
     とうとうドラムのワタシ1人になってしまった…」
ひより(ドラムが残っちゃったの!?)

KONATA「ドラムのみのロックなんて
     ロックじゃなくてドラムと言う名の堕天使だよ…うわっ」

KONATA「ウワアアアーーーーーーー!」
ひより「ドラムの人ーーーー!!」


ワタシ KONATAは作家を目指して
昼はネトゲ夜もネトゲと必死に働いたが
ネトゲが爆発し
家はドロボウに入られ
所属していた文芸サークルはよく見たら何かの宗教だった

そんなついてない人生にもめげずにがんばって
やっとバンドという新しい夢をつかんだのに………
ここまでかよチクショーーーーーー!



・・・・・・

ひより(全滅した…)
522 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/26(木) 03:56:55.38 ID:XTkA1F20
以上。知ってる人は知ってる通り元ネタはギャ○マンガ日和。
実は半年くらい前に書いて放置してた作品。
523 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/26(木) 20:01:45.30 ID:lwd44TY0
進路面談


 放課後。

 進路指導室第四面談室。
「柊の志望は弁護士か。まあ、順当なとこだな」
 ひかるは、ぶっきらぼうにそう言った。
「志望大学も妥当なとこだし、柊の成績なら落ちることはあるまい。むしろ、問題はその後だな」
「そうですね。司法試験は最難関ですから」
「いや、ペーパー試験なんざ、勉強すれば誰でも受かる。こんな私でも教職試験は通ったんだからな。受かる奴と落ちる奴の違いは、勉強量と要領のよさの差でしかない」
「はぁ……」
 ひかるのあまりにもぶっちゃけた物言いに、かがみはどうにも返答に窮した。
「柊は、弁護士の職業倫理とかいう面でも問題はなかろう。でも、仕事はあくまで生活の糧を得るための手段だ。それを忘れるな」
「それはどういう意味ですか?」
「柊は、情に流されやすいからな」
「……」
 あまりにも図星をつかれて、かがみは沈黙するしかなかった。
「私が心配なのはそこのとこだけだ。常にそれだけは意識しとけ」


 進路指導室第二面談室。
「調理師学校か。柊にはぴったりやな。将来は、どっかのホテルの一流シェフか?」
 ななこの質問に、つかさは、
「いえ……あの…将来どうするかはまだ全然考えてなかったり……」
「そうか。まあ、ゆっくり考えればええやろな。柊なら、その辺の男つかまえて、養ってもらうこともできるやろし」
「ええっと……」
「いつまでも姉ちゃんにべったりしとらんで、その辺のことも考えた方がええで。でないと、うちみたいに行き遅れてまうで」
「……」
 ななこの自虐ネタにどう返答してよいものやら分からず、つかさは沈黙するしかなかった。
「話がそれてもうたな。まあ、調理師学校でも一応ペーパー試験はあるんやから、ちゃんと勉強はせぇよ」

524 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/26(木) 20:02:44.00 ID:lwd44TY0
 進路指導室第四面談室。
「進路希望は進学か。素直に嫁とでも書けばよかったんじゃないか?」
「まだ早いかと思いまして。彼もまだ学生ですし」
 ひかるの直球に臆することもなく、あやのはそう答えた。
「その辺はちゃんと考えてるんだな。まあ、峰岸の成績ならたいがいの大学は問題ないだろうが、大卒後の進路はどうするつもりだ? 最近は世の中いろいろと厳しいからな。夫婦共働きってのも考慮には入れてといた方がいいぞ」
「分かりました。考えてみます」


 進路指導室第二面談室。
「高良は何の心配もあらへん。以上、終わりや」
「ええっ!?」


 進路指導室第四面談室。
「日下部は、一応進学希望か。どんなとこに行きたいんだ?」
「いやぁ、それがよく分かんなくて……。陸上は続けたいから、陸上部があるとこがいいかなぁとか」
「陸上部があるとこでおまえの頭でも受かりそうなとこをいくつか選んで資料渡すから、親と相談して選んどけ」
「分かったぜ」
「で、将来はどうするんだ?」
「どうすんべ」
「考えてないなら、教職の資格ぐらいはとっといた方がいいぞ。現に私もそのくちだしな」
「でも、試験あんだよな?」
「体育教師なら馬鹿でもなれる。うちの連中見ても分かるとおりな」
「そっかぁ」

525 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/26(木) 20:03:23.61 ID:lwd44TY0
 進路指導室第二面談室。
「おまえなぁ。進路希望調書にネタ書くのはやめぇや」
「いやぁ、先生ならウケてくれるかと」
「いくらうちでも笑えんわ!」
 仮にもななこは高校教師であり、進路希望調書に「団長」とか書かれてるのを笑ってすますわけにはいかない。
「正直、進路といわれても思い浮かばなくて。とりあえず、大学だけは行っときますか?」
「グータラ大学生のおまえの姿がありありと想像できるわ」
 ななこはあきれ果てた表情だ。
「正直、おまえについてはもうサジ投げたいところやけどな」
「うっ……」
「でも、友達見捨てるのも目覚め悪いから、一緒に考えちゃる。ほかの先生だったら、とっくに見捨ててるで」
「ありがとうございます」
「おまえに向いてる仕事っちゅうたら、どんなのやろな? 趣味を生かして、ゲームクリエーターとかそんな感じやろか?」
「趣味を仕事にはしたくないですね。趣味を趣味として楽しめなくなっちゃいますし」
「まあ、それは同感やな。でも、泉がOLとかしてるのは想像もでけへんしなぁ」
「それは、私も想像できません」
「となれば、自由業やろな。泉の親父さんは作家さんやったよな?」
「そうですけど、私に文才があるかどうかは分かりませんよ」
「ああ、なんや、柊姉の方が好きなやつがあったやろ?」
「ライトノベルですか?」
「それや。それやったら、泉でも書けるんちゃうか?」
「どうでしょうね。まあ、選択肢の一つとしては考えてみます。っていうか、考える時間がたくさんほしいところですよね」
「おまえに時間やっても、全部遊びに使うやろ?」
「反論の言葉もございません」
「でも、まあ、高校出ていきなり就職っちゅうのもきついのは確かやな」
「そういう意味では、やっぱり大学には行っといた方がいいんでしょうね」
「おまえの頭でも受かりそうなとこいくつか選んで資料渡しちゃる。親父さんとも相談して決めぇや」
「ありがとうございます」
「今の成績で受かるとこはないやろけどな」
「ううっ……」
「そういうわけだから、これからは厳しくいくで。覚悟せぇや」


終わり
526 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/26(木) 21:32:06.37 ID:kraVlbo0
>>522
元ネタ知らないから感想しづらいぜ……

>>525
先まで見据えた進路指導だな。生徒達も幸せだ
みゆきさんの扱いはかわいそうだけどなw
527 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/26(木) 21:57:45.13 ID:STzaTYSO
先生、作家舐めすぎ…。
528 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/26(木) 22:11:47.90 ID:XTkA1F20
>>525
放置してるようで実はしっかり生徒を観察してるひかる先生すごいと思った。
乙。読みやすくてよかった。
529 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/03/26(木) 22:45:09.39 ID:mugTGaQ0
>>522
ttp://www3.uploda.org/uporg2118271.jpg
>>525
これは面白かった。地味に会心作かも。
それぞれのキャラがちゃんと立っていて巧いと思った。
本編にあっても可笑しくないレベル。
530 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/26(木) 23:10:11.59 ID:PXxIygSO
>>525
乙!中々面白いなww
ひかる先生がしっかり書けてて上手いと思った。

>>529
まさかここでLが見られるとわww
531 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/27(金) 00:31:23.89 ID:4pCPp6SO
>>522
ギャグ漫画日和知らないと全くわからんな
そこのネタはわからなかったから全然わからなかった
そこら辺の理由でクロスオーバー嫌われたからしっかりしてほしい

>>525
ひかる先生凄いなww
ただスルーされたみゆきさんは個人的に不安なんだがな
救い切れなかった患者が出たときの遺族の負の感情に耐え切れるかが不安だな
優し過ぎるから

>>529
うまいwwwwww
532 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/03/27(金) 00:39:06.42 ID:2TeEjTQo
>>522
アンラッキーエンジェルよりはアンラッキーフレンズの方がいいんじゃないか
とミサカは提言します
533 :命の輪のゆらぎ[saga]:2009/03/27(金) 01:45:04.91 ID:MRmGUr.0
投下行きます。

懲りずに命の輪関連で。
今回はシリアス要素は無しです。
534 :命の輪のゆらぎ[saga]:2009/03/27(金) 01:45:55.07 ID:MRmGUr.0
「そう君の馬鹿っ!もう出てってよっ!!」
 近所迷惑じゃないかと思うほどの大声と共に、一人の男性がドアから文字通り叩き出されてきた。
「ちょっ、オイかなた…」
 ドアを閉められ、ご丁寧に鍵までかけられる。
 男性はしばらくドアの前で頭をかいて、ため息を一つついて振り返った。
「…やあ」
 そして、呼び鈴を押そうとしたポーズのまま固まっている私に気がつき、間の抜けた挨拶をしてきた。
「なに?喧嘩?珍しいわね」
 私は呼び鈴から指を離してその男性…泉そうじろうに近づいた。
「んー、まあ…ちょっとな…」
 歯切れの悪い返事が返ってくる。さっきのかなたの剣幕からすると、そうとう酷く怒らせたみたいだ。
「しばらくは、入れなさそうだな…どうすっかな…」
 泉君が腕を組んで考え込み始めた。
 それを見ていた私の頭に、電球が閃いた気がした。
 多分、ドアの向こうで聞き耳を立ててるであろうかなたに聞こえるように、少し大きめの声で言う。
「私はかなたに用があったんだけど、これじゃ会えそうにないわね…ほとぼりがさめるまで、二人でどこかでお茶でもしない?」
 私の提案に、泉君が目を丸くした。
「え…いや、手ぶらで放り出されたから、お金ないよ?」
 心配するのはそこなのか。
「いいわよ、それくらい。私が奢るわよ」
「いや、しかし…」
「ま、いいから、いいから。行くわよ」
 それでも渋い顔をする泉君の手を強引に取って、私は歩き出した。
 後ろのドアでなにやらゴンッとかいう音が聞こえたが、私は聞こえないことにした。


- 命の輪のゆらぎ -


535 :命の輪のゆらぎ[saga]:2009/03/27(金) 01:46:38.22 ID:MRmGUr.0
 アパートを離れ、近くにある喫茶店まで歩く私たち。
 泉君はさっきから後ろをチラチラと気にしている。私もチラッと後ろを見た。
「…付いてきてるわね」
「…付いてきてるな」
 電柱の影に、多分隠れてるつもりのかなたが見えた。
「…変装してるつもりなのかな、アレ」
「…多分」
 かなたは全然似合ってないサングラスをかけていた。
 服はいつも愛用している白のワンピースだから、違和感ありまくりだ。
「あのサングラスって泉君の?」
「うん、まあ」
「アンタがつけても似合いそうにないわね」
「そ、そうかな…うわっ!?」
 これ見よがしに、泉君の腕に腕を絡ませてみる。後ろの方でビキッという音が聞こえた気がした。
 確認してみると、生まれてこの方一度も切ったことが無いと思うくらい長いかなたの髪の毛が、ウネウネと動いているのが見えた気がした。
 うお、すごい。本気で怒ってるよ。
「な、なあ…これは…いったいなんのつもりなんだ?」
 後ろが怖いのか、冷や汗を垂らしている泉君。
「ま、いいから、いいから」
 私は笑いをこらえるのに必死だった。


 喫茶店に入って、私達は適当に注文を済ませる。
 かなたは少し離れたテーブルに座って、身体を伏せ気味にこっちを睨んでいる。いや、サングラスで見えないけど、迫力からしてきっとそうなのだろう。異様な風体と雰囲気のせいか、店員が注文を取りづらそうにしていた。
「で、なんで俺を誘ったんだ?」
 泉君がそう聞いて来た。落ち着かないのは、かなたが気になってしょうがないのだろう。
「そうね…泉君と話がしてみたかったからかな?いつも、かなたとセットだったから、こんな機会って全然無かったし」
 そう答えながら、泉君の顔をじっと見つめる。照れくさいのか、顔を背けられた。
「泉君って、結構いい顔なのよね」
 わざと艶っぽい声色でそう言ってみた。泉君の顔が少し赤くなる。どうやら褒められなれていないようだ。
 実際、泉君の顔立ちは悪くはない。大学の成績もいいほうだし、家事も一通り出来るそうだし。
「かなたから聞いたけど、作家目指してるんだって?いいわね、そういうの。夢を追いかけてるって感じで」
「そ、そうかな…」
 上手く売れ筋になれば、お金も入ってくるだろうし。
 …あれ?冷静に考えたら結構いい男だったり?
「泉君って、アニメとか漫画だっけ?あの変な趣味やめたら、意外ともてるんじゃない?」
「…あれはやめられないな。俺の存在意義そのものだからな」
 言い切られた。しかも、表現大袈裟すぎ。
「じゃ、それさえ我慢できれば全然オーケーって訳ね」
「…え?」
「ふふふ…」
 かなたのいる方から、なにやら生暖かい空気が流れてきた。見てみると、かなたの周辺の空気がなんとなく歪んでいる。
 おお、凄い。オーラだオーラ。初めて見た。
「ねえ、ちょっと場所変えよっか?」
 私は立ち上がり、再び泉君の手を取って歩き出した。


536 :命の輪のゆらぎ[saga]:2009/03/27(金) 01:47:40.03 ID:MRmGUr.0
 喫茶店から近い公園。ちょっと奥まった、昼間でも人の少ない場所まで泉君を引っ張ってくると、私は立ち止まり泉君と向かい合った。
 少し離れた木陰に、かなたが隠れているのが見えた。
「な、なあ…結局君は一体…」
「あら、まだ分からない?」
 泉君の言葉を遮り、私は悪戯っぽく微笑んだ。
「かなたと喧嘩してるみたいだし、これはチャンスかなって…」
 そう言いながら、泉君の首に手を廻す。
「え…いや、俺は…その…」
「私じゃダメかしら?損はさせない自信はあるけど…」
 ゆっくりと、泉君の顔に自分の顔を近づける。
「ちょ、ちょっと待って…」
「待たないわよ。チャンスは逃したくないから…」
 唇を、彼の唇に…。
「わああああああああっ!!」
 大きな声と共に、私の身体が突き飛ばされた。といっても、ぶつかってきたのが軽いから、二、三歩たたらを踏んだだけだけど。
「なななななにやってられゆるのよーっ!!」
 私にぶつかってきたかなたは、そうまくし立てた。怒りのあまりに舌が回ってない。
「そう君もなんで抵抗しないのよーっ!!」
 腕を何か振り回しながら、バタバタと足を踏み鳴らすかなた。傍から見てると駄々こねる小学生そのものだ。
「い、いや、それは、その…なんか色々と急だったから…」
 そのかなたに、必死で言い訳めいたこと言ってる泉君。
 愉快すぎる。私は限界だった。
「…くくく…あはははははははっ!」
 急に腹を抱えて笑い出した私に、かなたと泉君が呆気に取られる。
「冗談よ、冗談!私が、友達の彼氏を本気で口説くはずないじゃない…あーおっかし。かなたの行動は見てて飽きないわー」
 そう言ってまた笑い出した私を見るかなたの顔が、見る見る真っ赤になっていく。
「うううううう…ばかぁぁぁぁっ!!」
 かなたが私をポカポカと叩き始めた。
「あははははっ。ごめん、ごめんってばかなた」
 それを適当にあしらいながら泉君の方を見ると、心底ほっとした表情を浮かべていた。
「そっか、冗談だったのか…良かった」
「そう君もそう君!もっと毅然としてたら私だって余計な事しなくてすんだのに!」
 かたなは今度は泉君を叩き始めた。
「そう君なんてそう君なんて…う、う、うううううう〜」
 叩く手を止めて、私の方を見てなにやら唸り始めるかなた。
「ど、どうしたんだ、かなた?」
「あれじゃない?『そう君なんて知らない』って言い切っちゃったら、また私がアプローチ始めるとか思ってるんじゃないかな」
「うううううう〜」
 私が泉君の疑問に答えると、かなたの唸り声が一際大きくなった。図星だったらしい。
 つーか、かなたのこれって威嚇なんだろうか。
「まあ、でも。さっきのはいいとこまで行ったしねー…そうだ、これからは私も『そう君』って呼んで良いかな?」
「ううー!うー!」
「…おいおい」
 なんかもう、かなたが噛み付いてきそうだ。
「冗談だって。落ち着いてよ、かなた。お詫びに今度奢るから」
 そうなだめてみるが、かなたの威嚇はなかなか収まらなかった。
 ホント、からかいがいのある子だ。



537 :命の輪のゆらぎ[saga]:2009/03/27(金) 01:48:23.30 ID:MRmGUr.0



「馬鹿ー!!もう、でてけー!!」
 近所迷惑かと思うほどの大声と共に、一人の男性がドアから文字通り蹴り出されてきた。
「ちょ、オイこなた…」
 ドアを閉められ、ご丁寧に鍵までかけられる。
 男性はドアの前でしばらく頭をかいて、ため息を一つついて振り返った。
「…や、やあ。かがみさん」
 そして、インターホンを押そうとしている格好のまま固まっているわたしに気がつき、ばつが悪そうに挨拶してきた。
「なに?喧嘩?珍しいわね」
 わたしはインターホンから指を話してその男性…こなたの旦那に近づいた。
「うん、まあ…ちょっとね…」
 歯切れの悪い答えが返ってくる。さっきのこなたの剣幕からすると、相当酷く怒らせたらしい。
「しばらくは、入れないだろうなあ…どうしようか…」
 旦那が腕を組んで考え込み始めた。
 それを見ていたわたしの頭に、電球が閃いた気がした。
 多分、ドアの向こうで聞き耳を立てているであろうこなたに聞こえるように、わざと大きめの声で言う。
「わたしはこなたに用事があってきたんだけど…これじゃ無理っぽいわね。ほとぼりがさめるまで、二人でどっかでお茶でもしない?」


- おしまい -
538 :命の輪のゆらぎ[saga]:2009/03/27(金) 01:49:29.63 ID:MRmGUr.0
以上です。

話思いついてから、勢いだけで書きました。
539 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/27(金) 02:38:46.36 ID:I1xNRHI0
>>538
乙。ワンピースにグラサン姿のかなたさん想像したら噴いたwwww
540 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/27(金) 06:28:14.98 ID:QHH55LY0
>>538
いいな、コレ。かなたさんがとてもかわいいなぁwww
てか、えらいペースで投下されてんのな、このシリーズw
541 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/27(金) 12:54:48.36 ID:ZgjKYRw0
>>538 乙。というかこのAAを思い浮かべてしまった↓
                             |
                            | 
       {    !      _,, -ェェュ、   | 
ィ彡三ミヽ  `ヽ     ,ィハミミミミミミミミミヽ、|
彡'⌒ヾミヽ   `ー  /ililハilミilミliliミliliミ|  
     ヾ、        /iiiiイ!ヾヾミ、ミニ=ー-ミ| 
  _    `ー―' i!ハ:.:.\\_::::::::::::::/:.| このスレは
彡三ミミヽ        i! ヽ:.:.:.:冫': : :::/,,∠| 
彡'   ヾ、    _ノ i!::: ̄二ー:: : ::::ソ ・ ,| 鬼女に
      `ー '    {ヘラ' ・_>シ;テツ"''''"| 
 ,ィ彡三ニミヽ  __ノ ヽヘ`" 彡' 〈     | 監視されて
彡'      ` ̄       `\   ー-=ェっ |
      _  __ ノ  {ミ;ヽ、   ⌒   | います
   ,ィ彡'   ̄        ヾミミミミト-- '  |
ミ三彡'        /⌒ / ̄ ̄ | : ::::::::::|
       ィニニ=- '     / i   `ー-(二つ
     ,ィ彡'         { ミi      (二⊃
   //        /  l ミii       ト、二)
 彡'       __,ノ   | ミソ     :..`ト-'
        /          | ミ{     :.:.:..:|
            ノ / ヾ\i、   :.:.:.:.:|
      ィニ=-- '"  /  ヾヾiiヽ、 :.:.:.:.::::|
    /     /  `/ ̄ ̄7ハヾヾ : .:.:.|
   ノ     _/   /   /  |:. :.:.:.:.:.:.:|

542 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/27(金) 21:13:36.03 ID:I1xNRHI0
◎みゆきさんに聞いてみよう!

こなた「ねえねえみゆきさん。空はどうして青いの?」
みゆき「はい。それはですね……

     太陽光の波長4700オングストローム付近の可視光線、つまり青系統の色が
     大気中を熱運動するH2OやO2などの微小な気体分子によってレイリー散乱を起こし、
     またそれ以外の光線も光波長程度以上のサイズの微粒子などによるミー散乱によって
     あの色が出来るんですよ」

こなた「とってもわかりにくい説明をありがとう!みゆきさん!」


◎みゆきさんに聞いてみよう!2

つかさ「ねえねえゆきちゃん。どうしてリンゴは落ちるの?」
みゆき「はい。それはですね……

     キャベンディッシュの万有引力の法則によって逆二乗で
     万有引力定数を比例定数として二物体の双方の質量に比例した力が
     速さ無限大で働くからなんですよ」

つかさ「w○kipedia丸パクリの説明をありがとう!ゆきちゃん!」
543 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/03/27(金) 22:12:20.36 ID:yseuOLs0
登録タグ:ガウルンが宗助を
544 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/28(土) 00:48:40.64 ID:Z9N34F.0
>>542
みゆき「私がw○kipediaを丸パクリ?違います。w○kipediaが私を丸パクリなんです」
つかさ「うわぁ……」


◆日下部みさおに聞いてみよう!

こなた「ねえねえみさきち。空はどうして青いと思う?」
みさお「あー?そーだなー……

    赤かったら夕方と間違えるし、黒かったら夜と間違えるからじゃねーの?
    緑や黄色だったらあれだよ、てんぺんちー、ってヤツになっちまうしな。
    あ、でも、ピンクとかオレンジ色だったらちょっと楽しいとか思わねぇ?」

こなた「そ、そだね〜……え〜っと……ありがとう、みさきち」


◆日下部みさおに聞いてみよう!2

つかさ「ねえねえ日下部さん。どうしてリンゴは落ちると思う?」
みゆき「あー?そーだなー……

    台風がくるからなんじゃねーの?
    知ってっか?台風で落ちたやつって安くなるんだぜ?あれって得だよなー。
    あ、でも、りんご農家にとってみたらやっぱり大変なんだろーな。なぁ?」

つかさ「そ、そうだね……えっと……ありがとう、日下部さん」
545 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/28(土) 01:48:02.80 ID:WBp6xVQ0
>>544
みさお説明になってないwwww

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ここまでまとめた
なんか最近頻繁にまとめてるけどどうしたの?って思ってるそこのあなた!
こまめにやっとかないと一回の作業量が多すぎて地獄を見るのだ!

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546 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/28(土) 01:59:37.16 ID:BhwD/sSO
まとめ人への感謝の気持ちFX

こなた「と、いう訳で今回は…って、かがみどしたの?キョロキョロして」
かがみ「いや、なんでも…(ピアノ無いんだ)」
こなた「ま、いいか。えーっと、楽器ネタが続くのもアレなんで、ここは原点に帰ってパフォーマンスでまとめ人さんに楽しんでいただこうと」
かがみ「ふーん。で、何するの?」
こなた「熱湯風呂」
かがみ「拷問かよ!?」
こなた「あー、だいじょぶだいじょぶ。お年頃が好むような、めちゃ熱い風呂って程度だから」
かがみ「…それでも大変だろうに…ってか誰が入るのよ?」
こなた「ここに、スク水のみゆきさんを用意しておきました」
みゆき「い、泉さん!この格好は!?というか、なんでわたし縛られて!?あ、あの、説明をしてください!」
かがみ「…てっきりわたしが入れられるかと思ったわ」
こなた「エロス担当はみゆきさんだから」
かがみ「ってか、やっぱヤバイだろコレ」
こなた「かがみ…ここに駅前の某人気スィーツ専門店の、割引券があるんだけど」
かがみ「…ほどほどにしときなさいよ?」
みゆき「かがみさーん!?」
こなた「では、一気に行くのは流石にかわいそうなので、ゆっくりと…」
みゆき「ひゃっ!…あ、あつっ…んっ…だ、だめ…です…もう…やめ…ふぅ…ん…はぁ…はぁ…」
こなた「ほほう、これはなかなか…」
かがみ「………」ゴクリッ
こなた「ちょっとお湯をかけてみたり」パシャパシャ
みゆき「ひぅっ!…や、やめっ!泉さん!…ひゃんっ!…お願い…もう…あぅっ!」

つかさ「………」ツー
かがみ「つかさ、いたんだ…てか鼻血」ツー
つかさ「う、うん…てかお姉ちゃんも」フキフキ
かがみ「おっと」フキフキ

547 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/28(土) 07:28:53.29 ID:gQniLYSO
ルパン VS こなた
548 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/03/28(土) 08:42:17.17 ID:eDk1r2DO
>>547
さぁて今夜はあのらき☆すたとルパン三世が初共演!なぞの美少女泉こなたと伝説の秘宝をめぐりルパンが対決!いったいどんな展開が待っているのか!ルパンVSこなた〜萌えよ斬鉄剣?〜どうぞごゆっくりご観賞ください!

原作・ルパン三世(モンキーパンチ)、らき☆すた(美水かがみ)

耳障りな警告音と赤い光が一定のリズムを刻み彼女を急かしていた

「早く早く早く〜あと2%」

トントンと机の上を指で叩きPCの画面を睨む

企画・あいつ 演出・だれか

「いたぞー!」
「やばい見つかった!データは?よしっ!完了!」
「見つけたわよブルースカイ」
「やっ、かがみん元気?」
ブルースカイと呼ばれた彼女はまるで親しい友人に会ったのごとく話した
「えぇ元気よ?あんたを躊躇なく捕らえられるほどね(カチャ」
「わぁお、物騒なものこっちに向けないでよ」
「さっさとデータを返しなさい、さもなくば撃つわよ」
「無傷で捕らえてほしいもんだよ、でも残念、私はこれにてドロンするから」
「逃げる?無駄よ、ここからの出口は一つ、私の後ろの扉しかないのだから」

制作・ルパン&らき☆すた制作委員会

刹那、赤い光りに包まれていた部屋が真っ白に塗り替えられた
「なけりゃ作ればいいんだよ?かがみん?」
「くっ、眩しくて何も見えない…」
「じゃ、これありがたぁくもらってくねバーイバイとっつぁ〜んってね」
「待っ、待て!」
かがみの眼が視界を再び得た時、そこにブルースカイはいなかった。あるのはただ人一人が通れるほどの穴が天井に空いていた…

監督・白石みのる

―――――
煉瓦づくりの町並みの中、カフェで新聞を読み、真っ赤な服を纏った男がいた
「柊カンパニー謎の爆発事件…」
「なにかあるのか?その事件が」
深く帽子をかぶった男が赤い男の向かい側の席から呟いた
「あぁ、この前ふじこにこの会社のことについて聞かれてな」
「なるほど、だがあの女が関わるとろくな話がない」
「悪かったわね疫病神で!」

2人の間に割って入ったウェイトレス

「ふじこ!」

みたいな展開が頭で妄想されました
549 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/28(土) 08:47:36.65 ID:gQniLYSO
>>548
萌えよ斬鉄剣ww見てえww
しかし監督が白石の時点で駄作臭が
550 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/28(土) 09:53:10.21 ID:Z9N34F.0
>>545
まとめ乙!いつもご苦労様です

>>546
スク水で縛られてて悶絶してるみゆきさん……フキフキ

>>548
監督が白石かよww
一番オイシイ役は小神あきらになるのかもな。何らかの圧力で
551 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/28(土) 12:14:02.97 ID:R6Joiqo0
>>547
俺はこういうのが浮かびました。

「…で、ルパン、あの学校か?」
「情報だとそうなるねえ」
「その、情報はどこから来たんだ?」
「ふじこちゃん」
「…その名前が出た時点で、俺の中で信頼度が80%は下がったぞ」
「ま、この不況でどこもいい話ないしな。暇つぶしくらいにはなんじゃねーかな」
「暇つぶしはいいが、無駄足は嫌いなんだがな」
「文句言いながらも、付き合いのいい次元ちゃんが好きよ」
「気持ち悪い事言うな」
「んじゃま、ちょっと行ってくるわ」
「…どう見ても、普通の学校なんだけどな」


「遅いぞ、こなた」
「ごめん、かがみ。用務員のおじさんと話しててさー」
「用務員?…あー、なんか風邪こじらせて、代わりの人が来てたんだっけ?」
「そうそう。その人が面白い人でねー。かがみも今度話してみるといいよ」

稜桜学園の地下に多分眠ってる秘宝。それを狙うルパンと首を突っ込むこなた

「ねえ、ホントにこっちであってるの?…っていうか、わたし帰りたいんだけど…」
「まーかせなさいってかがみちゃん…あら?」
「行き止まりじゃないの!あんたホントに世紀の大泥棒か!?」

「こなたって言ったか?下手にその辺のものさわるなよ」
「…あれ?ドア閉まった…おお、開かない」
「だから、下手にさわるなって言っただろ!」

フリーダムな二人の突っ込みに奔走するかがみと次元

「ご協力感謝します。ICPOの銭形です」
「さ、埼玉県警の成美です…っていうか、なんでわたしが…」

そして、追跡者達

秘宝は存在するのか?最後に笑うのは誰だ?


ルパンVSこなた −稜桜学園の秘宝−



まあ、フィクションですがなにか?
552 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/28(土) 15:04:40.95 ID:gQniLYSO
>>551
これも面白そうだ……
VIP辺りで投下したら伸びる気がするww
553 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/03/28(土) 17:09:24.53 ID:6jmEwwAO
らき☆すたはルパンよりもひだまりスケッチとコラボすべきだと思います。
554 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/28(土) 17:41:38.98 ID:85bKlmM0

かがみ「あ、見てみて〜こなちゃん」
こなた「え? こなちゃ……」

つかさ「どう? 入れ替えてみたの」


http://www2.uploda.org/uporg2122516.jpg


こなた「おぉー、って、え? 髪、は……?」
つかさ「だからぁ、入れ替えたって言ったでしょ。遺伝子を」
かがみ「えへへ。私もビックリしちゃった」

こなた「え? え? かがみがつかさで、つかさがかがみで、
    かがみ=つかさ? つかさ=かがみ? つかつかかがかが……」

 ボ       ン  !!

かがみ「うわぁ、こなちゃんショートしちゃったよ〜」
つかさ「う〜む、こいつの二次元脳なら対応できると思ったんだけどな」
555 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/28(土) 20:52:22.19 ID:BhwD/sSO
−奥の手−

こなた「うー文化祭の準備が終わんない…もういっそ投げ出して逃げちゃわない?」
つかさ「そ、それはちょっと…」
かがみ「他クラスのわたしまで手伝わせといて逃げるな」
みゆき「しかたありませんね…これだけはやりたくはありませんでしたが…」
こなた「お、流石みゆきさん。何か奥の手が?」
みゆき「はい。こうやって、眼鏡を外して…フェイスオープン!…なんちゃって…」
こなた「………」
かがみ「………」
つかさ「………」
みゆき「…え、えーっと」
こなた「じゃ、じゃーわたしは上着脱いでアーマーパージ!…とか…」
かがみ「え、えっとそれじゃ、鞄開いて卍開!…とか…」
つかさ「あ、あっと、その…」
みゆき「…わ、わたしが悪かったです…もう許して下さい…」
556 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/28(土) 21:53:41.37 ID:WBp6xVQ0
>>554
上手いww
それは混乱もするなww

>>555
空気を読まれて逆に困惑するみゆきさんww
557 :やまとなでしこ[saga]:2009/03/28(土) 23:51:42.40 ID:WBp6xVQ0
やまと・こう「どうもー、やまとなでしこでーす」

こう「最近暖かくなってきましたねー」
やまと「そうですね……」
こう「なんすかーエラい元気ないやないですかー」
やまと「実は寝不足で……」
こう「ねぶそくー?夜何やってたんすかー?」
やまと「一人タイタニック」
こう「え?」
やまと「一人タイタニック。これ」バッ
こう「いややんなくていいですから。てかそれで一夜明かしたんすか!?」
やまと「意外と興奮するよ」
こう「せんでええから!」

こう「んやーそれにしても春ですわー。そういや春ってったらこんなんありますやん」
やまと「ん?」
こう「『ひさかたの 光のどけき 春の日に しづ心なく 花の散るらむ』」
やまと「ああカップヌードルのCMね」
こう「いやいや!CMこんなのないから!百人一首ですよ百人一首!」
やまと「あー百人一首か」
こう「そうそう百人でね、こう……」
やまと「一人の首をはねてく」
こう「恐ろしいな!ちゃいますって、一人ずつ歌を詠むんですって!」
やまと「ああそっか」
こう「そうですよー」
やまと「実は私詳しいんですよ」
こう「え、ホンマっすか?おーわかるやないですか」
やまと「百首全部言えますもん」
こう「えーそれ普通にすごいわー!何々、例えば一首言ってみてくださいよ」
やまと「『秋の田の かりほの庵の とまをあらみ 我が衣手は 露にぬれつつ』」
こう「おー最初のやつですなー。じゃ次のは?」
やまと「『春過ぎて 夏来にけらし 白妙の 衣干すてふ 天の香具山』」
こう「おーすごいやないですかー。他には?」
やまと「『あっふらぽんぽんちょん」
こう「ちょい待て。何それ?」
やまと「確か六十番目くらい」
こう「いやいやありまへんがなそんな歌!」
やまと「えーもしかしたら冥王星に置き去られたかなー」
こう「何言ってますねん。他に何か知っとんすか?」
やまと「うん。『生麦生米」
こう「ちゃうやろそれ!早口言葉ですやん」
やまと「えーでも確か七十番目くらいに」
こう「ありまへんて!」
やまと「もしかしたら天王星に置き去られ……」
こう「だから何言ってんすか!」
558 :やまとなでしこ[saga]:2009/03/28(土) 23:52:13.68 ID:WBp6xVQ0
こう「あーそうそう、百人一首ゆーたら」
やまと「うん」
こう「枕詞ってありますやん」
やまと「あー、ありますね。『頭に気持ちよくフィット!』とか」
こう「それは枕のキャッチフレーズ!ちゃいます、ほら『あしびきの』とか」
やまと「あーそういうのか」
こう「しっかりしてくださいよー。これ他にもありますよね」
やまと「『あかねさす』」
こう「おお」
やまと「『からころも』」
こう「そうそう。知ってますなー」
やまと「実は私オリジナルの枕詞考えてきたんですよ」
こう「えーそうなんすか。どんなん?」
やまと「『ぶよぶよの』」
こう「……はあ。で、何が続くんすか?」
やまと「桜」
こう「ぶよぶよの桜!?どんなんすかそれ!」
やまと「まだあるよ」
こう「はあ。どんなんすか?」
やまと「『チョメチョメの』」
こう「……何かヤバそうやな。で、何が続く?」
やまと「桜」
こう「またかい!てかチョメチョメの桜て何やねん!」
やまと「まだある」
こう「……はあ。何?」
やまと「『激ヤバの』」
こう「もうその時点でおかしいやろ!んまあ一応聞いとくけど、何が続くん?」
やまと「桜の幹」
こう「幹かい!激ヤバの桜の幹てどんなや!」
やまと「こんな感じ」バッ
こう「タイタニックかい!分かれへんわ!」

やまと「最後にもう一個ある」
こう「はあ。何すか?」
やまと「『ダメだこりゃ』」
こう「今のまんまやんけ!辞めさせてもらうわ」

やまと・こう「どうも、ありがとうございましたー」
559 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/28(土) 23:53:30.09 ID:WBp6xVQ0
第十二回コンクールで投下された『THE MANZAI』の設定を勝手にお借りしました。
申し訳ない。
560 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/03/29(日) 00:31:07.37 ID:mfBpyHM0
>>559
オチは

やまと「『同期の』」
こう「『桜』?」
やまと「桜」

やまと&こう「〜貴様と俺と〜は同期の桜〜♪」

かと思ったら全然違った
561 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/03/29(日) 01:03:05.84 ID:g2IzpUDO
>>559
笑えた!GJ!
楽屋でこうとやまとの反省会とかもおもしろそうかも〜
562 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/29(日) 02:48:42.25 ID:bsw5dLg0
>>559
GJ&乙!笑わせていただきましたww
563 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/29(日) 06:47:29.73 ID:ZzH2vUSO
>>559
この話を映像化すればもっと面白いなww
564 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/29(日) 08:02:37.79 ID:5gWcOK20
>>559
 やまとさん、ノリノリっすね。


 投下行きます。
565 :柊かがみ法律事務所──労使紛争[saga]:2009/03/29(日) 08:03:44.18 ID:5gWcOK20
 やる気がしないというか気乗りしない嫌な仕事というのはある。
 しかし、仕事を選り好みしていては事務所の経営が成り立たないのも事実。
 これは、そんな仕事の話。



 かがみがパソコンに向かって、とある訴訟案件の弁護主張の草稿を練ってたところに、来客があった。
「ハーイ、かがみ。お久しぶりデス」
「パトリシアさん」
 パティは既に帰化しているので、ちゃんとした日本名もあるのだが、本人自身それを名乗ることがほとんどないため、旧名で呼ばれるのが常であった。
「今日は、弁護の依頼に来マシタ」

 とりあえず、個室に案内した。
 話を聞く。
 案件は、パティが勤めているアニメ製作会社における労使紛争だった。
 どこにでもありがちな話。サービス残業、つまりは残業代未払いだ。それに加えて、名ばかり管理職問題もあるようだった。
 パティは、率先して職場の仲間を取りまとめて経営者側を訴えるべく準備中だという。
「ちょっと待って、パトリシアさん」
 かがみは、パティの話をさえぎった。
 かがみは、問題のアニメ製作会社の顧問弁護士である。
 よって、パティの依頼を受けることには問題があった。


民法
(自己契約及び双方代理)
第百八条  同一の法律行為については、相手方の代理人となり、又は当事者双方の代理人となることはできない。ただし、債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。

弁護士法
(職務を行い得ない事件)
第二十五条 弁護士は、次に掲げる事件については、その職務を行つてはならない。ただし、第三号及び第九号に掲げる事件については、受任している事件の依頼者が同意した場合は、この限りでない。
(中略)
 三 受任している事件の相手方からの依頼による他の事件
(以下略)
566 :柊かがみ法律事務所──労使紛争[saga]:2009/03/29(日) 08:04:33.81 ID:5gWcOK20


 民法108条は、厳密な法律行為だけでなく広く類推適用されるのが判例であるし、弁護士法25条についても、厳密には抵触しないとしてもその趣旨に反するような行為は弁護士の職業倫理上問題がある。
 よって、顧問弁護士をしている企業の労使紛争の労働者側から、当該労使紛争に関する依頼を受けることは、問題ありまくりだ。顧問弁護士は、経営者側の顧問という立場になるから。
 また、顧問弁護士をしている以上、当該労使紛争につき、経営者側から依頼が来るのは時間の問題である。
 パティの依頼を受諾したあとで、会社の経営者からの依頼も受諾すれば、これはもうどこからどう見ても言い訳しようのない弁護士法25条違反。バレれば、弁護士会から懲戒処分を受けるのは確実である。


「というわけで、パトリシアさんの依頼は受けられないわ。ごめんね」
「残念デスネ。分かりマシタ。別の弁護士さんにあたってミマス」
 パティはあっさり納得して去っていった。
 この割り切りのよさは、やはりアメリカ人なんだろうと思う。

 それからほどなくして、問題のアニメ製作会社の社長さんから電話がかかってきた。
「……分かりました。今日の午後でしたら時間は空いておりますのでいつでもお越しください」

 午後に社長さんがやってきた。
 個室に案内して、依頼内容を聞く。
 案件は、予想通り、パティたちとの間の労使紛争についてだった。
「いやはや、こんなことになるとは思ってもいませんでして」
 残念ながら、業界によっては、労務管理の認識が甘い経営者は多いのは事実だった。
「で、実際にはどうなのですか? 一般従業員のサービス残業の実態はあるのでしょうか? 弁護士には守秘義務がありますので外部にもらすようなことはいたしません。正直にお話しください」
「まあ、あるというのが正直なところですが、でも、こんなのはどこの会社だって……」
「赤信号はみんなで渡っても違法です」
 かがみがそういうと、社長は黙り込むしかなかった。
「もちろん、私も社長さんの弁護はいたしますが、この点については、労務管理の不徹底で把握しきれなかっただけで悪意があったわけではないというのが、せいぜいのところです」
「……」
「こんな私が顧問弁護士にふさわしくないというのであれば、解任していただいてもかまいませんが」
「いえいえ、とんでもありません」
 社長はあわてて、かがみの言葉を否定した。
 アニメ業界の人間にとって、アニメの原作小説・原作マンガについて実質的な力を握っている出版社を相手に堂々と論陣を張れる柊弁護士の存在は、宝石のごとく貴重なものである。彼女が顧問弁護士についているという事実自体が、重要な意味を持つのだ。
「一般従業員の未払い残業代については、時効にかかってない過去二年間分は払うしかないでしょう」
567 :柊かがみ法律事務所──労使紛争[saga]:2009/03/29(日) 08:05:48.88 ID:5gWcOK20
労働基準法
(時効)
第百十五条  この法律の規定による賃金(退職手当を除く。)、災害補償その他の請求権は二年間、この法律の規定による退職手当の請求権は五年間行わない場合においては、時効によつて消滅する。

「名ばかり管理職問題については、交渉はしてみます。相手側が労働法専門の弁護士をつけてきたら、正直きつい交渉にはなるでしょうけど」
「よろしくお願いします」

労働基準法
(労働時間等に関する規定の適用除外)
第四十一条  この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
(中略)
二 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
(以下略)


 いわゆる名ばかり管理職問題とは、この「監督若しくは管理の地位にある者」の解釈に関わる問題である。
 そして、「監督若しくは管理の地位にある者」に該当するか否かは、結局のところ個別の具体的な事案に応じて判断するしかない。
 昨今は、裁判所も、このあたりの解釈は厳しくなっており、安易に「監督若しくは管理の地位にある者」とは認めない傾向がある。
 正直にいえば、交渉がまとまらずに裁判になった場合に勝てる自信はかがみにはなかった。
 とりあえず、社長から、会社が管理職として扱っている者の勤務実態などの詳細を聞き取った。

 かがみは、最後に、パティからの依頼を断ったことについても正直に告げた。
「そうでしたか。ありがとうございます。柊先生には何といってお礼を申し上げたらよいのか」
「いえいえ、顧問弁護士として当然のことをしたまでです」

 社長が帰っていったあと、かがみは、名ばかり管理職問題の判例や論文を徹底的に調べて勉強した。


568 :柊かがみ法律事務所──労使紛争[saga]:2009/03/29(日) 08:06:39.22 ID:5gWcOK20
 数日後、会社の会議室で、双方の代表と弁護士をまじえての交渉となった。
 労働者側は、パティと弁護士。経営者側は、社長とかがみだった。
 相手の弁護士は、労働法を専門としている。当然、手ごわい相手だった。
 そして、パティたちは労働組合を結成したそうだ。この件が無事に収まったあとも、経営者側と対等の立場を堅持するという意思表示なのだろう。

「まず、過去の未払い賃金全額の支払いを請求します」
 相手の弁護士はそう口火を切った。
 予想通りの先制パンチだったので、かがみも即答する。
「過去二年分についてはお支払いいたしましょう。それより前のものについては、時効により請求権は消滅してます」
「随分と誠意のない回答ですね。時効にかかってようとかかってまいと、未払い賃金であることはなんら変わりはありません。すべて払うのが筋というものでしょう」
 消滅時効は、自動的に適用になるものではなく、当事者が適用の意思を示す(援用という)ことによって初めて適用になる。よって、消滅時効の要件に当てはまるものでも、払うことには問題はない。
 かがみも個人的には同感であったし、タダ働きさせられた人がかわいそうだという気持ちもあったが、今の立場は社長の弁護士だ。私情は捨てて、法に反しない範囲内で、社長の意思の実現に努めなければならない。
 だから、こう反論する。
「過去にさかのぼればさかのぼるほど、資料も少なくなりますし関係者の記憶もあいまいになって立証が難しくなります。そうなれば、立証できた人とできなかった人との間で差が生じてしまいます。そのような不公平は望ましくはないでしょう。過去二年分ならば、資料もそろってますし、関係者の記憶も鮮明です」
 はっきりいって屁理屈だが、弁護士は理屈をこねるのが仕事だ。
「労働者の労働状況の把握は経営者の責任です。残業の事実がなかったというのであれば、それを立証する責任は経営者側にあります。それが立証できないのであれば、労働者が主張する残業の事実を認めて賃金を支払うべきです」
 相手はあくまで正論で押してきた。
 かがみは、ちらっと社長を見てから、
「その点については、検討させてください」
 どのみち一回だけの交渉でまとまるわけもないのだから、再検討は必要である。
「いいでしょう。前向きな検討をお願いします。それはともかくとして、とりあえず、過去二年分の関係資料はすべて提出していただけると理解してよろしいですか?」
「はい。それについては了承いたします」

 次に、名ばかり管理職問題に関する交渉に入った。
 ここでは、かがみは終始押され気味であった。相手はさすがに労働法専門の弁護士だけあって、生半可な論理では対抗できない。

 一回目の交渉は、数時間費やして、とりあえず終了。
 その後で、社長と今後の交渉方針について詰める。
 名ばかり管理職問題については、相手の主張をほぼ飲むしかないだろうということになった。過去の判例に照らしても、裁判になったらまず勝ち目はなさそうだったから。
 従来、製作部門の部長と各アニメの総監督、事務部門の部長と各課長を管理職として扱っていたが、総監督については管理職から外すことになる。
 総監督とはいっても、この会社における勤務実態は製作現場をかけずりまわる実務担当であり、「監督若しくは管理の地位にある者」はそのうえの部長とみるべきだった。
 未払い残業代については、過去二年分のみ支払い、それより前の分は時効で消滅という主張で押し切ることになった。
 過去の未払い残業代をすべて支払うと経営に響くという現実的な問題があるからだ。過去二年分だけなら、会社の内部留保を取り崩すことで何とかなる。
569 :柊かがみ法律事務所──労使紛争[saga]:2009/03/29(日) 08:08:51.44 ID:5gWcOK20
 その後、日をおいて、数回の交渉があり、最終的には、次のような条件で和解することになった。

1.会社は、総監督を管理職とは扱わない。
2.会社は、労働者(当然、総監督を含む)の過去二年分の未払い残業代を支払うものとする。
3.労働者は、上記の支払いを受けたあとは、過去二年分より前の未払い残業代については一切請求しないものとする。
4.会社は、今後、労働者の労働状況を正確に把握する体制を確立し、労働時間管理を確実に行い、不払い残業をなくするものとする。



 和解契約の調印を終えて、
「ありがとうございました」
「いえいえ、こちらこそたいしたこともできずにすみませんでした」
 社長に頭を下げられたかがみは、そう応じた。
 実際、たいしたことができたわけではない。
 過去二年分よりも前の未払い残業代については消滅時効で切ることができたが、相手側もそれぐらいは織り込み済みだっただろう。和解の内容は、相手側の主張をほぼ丸呑みしたに等しい。

 社長と報酬について打ち合わせたあと、かがみは会社を去ろうとした。
 そのとき、
「かがみ。挨拶もなしとはつれないデスネ」
 振り向くとそこには、パティがいた。
「今回は、私はパトリシアさんたちの敵方だったわけだし……」
「もう仕事は終わったんデスから、プライベートモードにスイッチを切り替えマショウ」
「いや、人間にそんなスイッチな……」
 言い終わる前にパティは、ずるずるとかがみを引きずっていった。
「ちょ、ちょっと、パトリシアさん」
 引きずられてきた先は、パティたちの仕事場だった。
「柊先輩、お久しぶりっス」
 ひよりが、持っていたタブレットのタッチペンを置いて、挨拶してきた。
「いや、その……久しぶりね……」
「そうやって後までずるずる引きずるのはよくないっスよ、先輩。先輩も仕事だったんスから、割り切っていきましょうっス」
「ひよりんのいうとおりデス」
「なんていうか、その……ありがとう」
「礼には及びませんっス。私たちも別に社長を憎んでるわけでもないっスからね。社長も悪い人じゃないけど、いろいろと抜けてるところがあるから、柊先輩みたいな人がついてると会社も助かるっスよ」

 気乗りしない嫌な仕事だったが、そう言われると少しは気持ちも楽になっていった。
 その後、パティやひよりと数十分ほど雑談をしてから、かがみは帰路についた。

終わり
570 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/29(日) 08:10:27.50 ID:5gWcOK20
以上です。

 前回調子に乗りすぎてしまいましたので、以後自重していきます。
571 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/29(日) 09:33:18.34 ID:YSsKnSo0
>>559
すげえ。ちゃんと漫才になってるし面白いw

>>570
乙!今回のはかなりわかりやすかった
>「赤信号はみんなで渡っても違法です」
かがみん先生、ご立派でございます!
572 :こなたリフレイン[saga]:2009/03/29(日) 11:44:01.71 ID:RrZz9pw0
――追加エピソード――

 あれからも女子高生としての日常が続く。

 昼食で好物のチョココロネを齧る。
 菓子パンで昼食を済ますってのもどうかと思うが好きなものはしょうがない。
 しかし……食べづらい。
 つかさが言うところの頭を齧り続けある一点を超えると、チョコがはみ出した。
 時代と共に消費者の嗜好が変わり流動性の高いものに替わったのだろうか?
 はたまた、地球温暖化って奴で、気温が高くて溶けてる? 体がこの時代になじんでるため体感温度は普通に感じるんだろうか?
 いやいや、そんなことあるはずがない、何かの間違いだ。
そう思いながらはみ出たチョコを舐め取り改めて頭に齧りつくとまたはみ出した。
 こりゃ本当に温暖化か!? と焦ったとき、みゆきさんからアドバイスを受けた。
 細いほうをちぎってチョコつけて食べるとか。非常にまだるっこしい。
 そのまだるっこしさを考えたとき衝撃を受けた。
 考えてみると、男だった頃に比べ口を大きく開けることができないため、それがチョコのはみ出しに繋がった可能性がある。
 ふと思いつきでシュークリームの食べかたを聞いてみると、分割してクリームすくって食べるというこれまたまだるっこしい食べ方。
 男だった頃は一口で全てほおばっていたからそんな小細工は不要だったのだが。
 女として暮らしていく以上は、このやり方に合わせないと駄目なんだろうか?
 などと考えていたら、つかさは白いご飯にでもなんにでもマヨネーズかけて食べるという恐ろしい食生活を語り始めた。
 美味しんぼにおけるカツオじゃあるまいし。
 この子だけなのか? この時代ならこれが普通なのか?
573 :こなたリフレイン[saga]:2009/03/29(日) 11:45:46.46 ID:RrZz9pw0
こなたリフレイン
 テスト明けで気晴らしに行った映画の後で、勇気を出してケーキバイキングに行こうと提案。男だった頃から甘党なのだが、こういう店は行くの難しかったのだ。
(ケーキ)バイキング。それは女の欲望番外地。
 男だった頃の感覚でつい取り過ぎてしまったかと思ったが、かがみはより多く取っていた。
 実際食べ始めると際限なく甘みを味わうことができ、こうして甘いものは別腹というのを身をもって体験していた。
 しかし、まだまだこの体に慣れていないため加減がわからず、お代わりで大量に取ってしまった後で満腹感が急に襲ってきた。
 それから先は拷問だった。やはり今後は自重しよう。


 かがみとつかさがお泊りに来たとき、ふたりはアルバムを見始めて、写真の母親を娘であり私であるこなたと勘違いしていた。
 無理もないか。私自身、こなたとして生活するためアルバム見たとき混乱したくらいだ。
 それにしても綺麗な人だ。父親を見ているといつも思うのだが、この人はあの父親のどこがよかったのだろう?
 といった話から、私の好みのタイプについて聞かれた。
 困る。私の中身は男で、ホモではないんだし。
 こなたの日記やメールでもそれらしい記述はなかった。
 特に無いとごまかすもかがみに食い下がられ、誰でもよかったのかも、と更にごまかした。
「見るに見かねてお父さんと、とか」
 って、それは本来の私に予想されうる展開だろ。
 同情婚ならあるかな、と、自虐的なことを考えていたものである。
 こなたのお母様、重ね重ね、貶めるようなこと言ってすみません。


 自分を偽る生活ってのは、接する相手に不誠実だな。でも、どうしたものか。
 正直に話して信じてもらえるとは思えない。また何かの漫画に影響されたのかと片付けられるのがオチだろう。
 第一、私……オレが侵入した結果、追い出されてしまったこなたはどうなったのだろう?

 そんなことを考えながらも、ゆる〜い日常は続くのだった。
574 :こなたリフレイン[saga]:2009/03/29(日) 11:46:39.85 ID:RrZz9pw0
>511です。皆様レスありがとうございます。
まとめの人もありがとうございます。
本来一発ネタだったのですが、こなたの中の人がこれであるという前提で脳内補完してたらこんなに長くなりました。

>515
これだー! 私の欲しかった反応はこれだったw

>516
最後の一レス(1行?)にも元ネタあります。
ギャルゲー、「加奈〜いもうと〜」の結びの台詞を参考にしています。

しっかし…。
え゛〜!? 知らないの? これって日本人の常識じゃん?w
アニメ版ではこなたと同年代ならわからないネタがたくさん盛り込まれてるが、世代超えて知られて当然と思うネタも多いんだが。
そういうこともあってファンには大きなお友達も多いようなので、このスレにも30代どころか40代の人がいてもおかしくないかも。
一応時代考証を考えるためネタはWikiなんかで検証してるので、調べてみては?
あまり役には立たないかもしれない教養は深まりますw
575 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/29(日) 13:25:44.61 ID:i6CeBEDO
それなんてエロゲ?まで読んだ
576 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/29(日) 14:23:40.67 ID:BMHcBqM0
え〜と・・・^^;
577 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/29(日) 14:40:35.83 ID:9kKCFISO
>>574
自分が知っている事が、常識にあてはまるとは限らない。
「知らないなら調べろ」は、知らない人への配慮にはならない。
娯楽を提供する側の態度としては、どうかと思う。

折角アイデアの良い作品書いてるんだから、自分で台なしにするような事はやめようよ…。
578 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/29(日) 18:37:42.93 ID:BPLp/Gw0
らき☆すたビル


 らき☆すたビル1階。
 ランチタイム。レストランラッキースターは、大盛況であった。
 アキバの一等地で、和洋中の様々な料理が手ごろな値段で楽しめるとあれば、人気が出ないわけもない。
 厨房は戦場である。その戦場の主役は、つかさとあやの。普段のおっとりとした印象とは打って変わって、二人ともテキパキと料理を作っていた。
「あやちゃん、そっちお願い」
「了解、ひーちゃん」


 らき☆すたビル2階。
 高良医院は、今日も平常営業だった。
「では、お薬をだしておきますね。お大事に」
 診察を終えたみゆきは、看護師兼助手のみなみにカルテを渡す。
 みなみは、カルテに従って薬を選び出し患者に手渡して、診察料と薬代をもらう。
「お大事に」
 そういって、患者を見送る。
 高良医院は、美人医師と美人看護師がいるということで、アキバでは結構な評判であった。


 らき☆すたビル3階。
 そこは、法律事務所だった。
 弁護士かがみは、訴訟に向けた資料を作成中であった。
 そこにかかってくる電話。
 所轄の警察署からだ。痴漢事件の容疑者が接見を望んでいるとのこと。今日は当番弁護士。要請があれば行かねばならない。
 人ごみでごった返すアキバであるから、この手の事件は珍しくもない。しかし、たまに痴漢冤罪もあるので、油断ならない。
「ちょっと、署まで行ってくるわ」
 雇っている事務員にそういい残して、かがみは事務所を後にした。
579 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/29(日) 18:38:37.05 ID:BPLp/Gw0

 らき☆すたビル4階。
 スポーツジムみさお。
 ジムとはいっても、ゲーム感覚のアトラクションが主であるあたりが、アキバ風といえた。ゲーセンみたいに、コインを入れればゲーム開始である。月額制会員になればカードが発行され、そのカードを差し込めば、どのゲームも遊び放題だ。
 ルームランナー、リフティングなどのジムの定番から、エアホッケーなどのゲームまで、なんでもそろっている。
 このアイデアはこなたの発想であった。でも、なぜかジムのオーナーは、みさお。
 そのみさおは、オーナー特権のゴールドカードを差し込んで、ルームランナーで走りこみをしていた。今度の国際マラソン大会に向けて、最終調整中なのだ。
 そして、ジムは、今日も大賑わいだった。アキバに集う人間は運動不足な人種が多いだけに、ゲーム感覚で体を動かせるこのジムは開設とともに人気のスポットとなっていた。


 らき☆すたビル5階。
 アニメショップらき☆すたは、人ごみでごった返していた。
 とあるアニメのDVDボックスの初回限定特典を求めるマニアたちが詰めかけていたのだった。
 その様子を眺めながら、満足そうにうなずいているのは、店長のパティ。
「今日の売り上げはばっちりデスネ」


 らき☆すたビル4階。
 そこには、二人の作家の仕事場があった。
 漫画家のひよりと、絵本作家のゆたかである。

 仕事場1。
「ほら、ひよりん、さっさと仕上げる! 〆切は今日だよ」
「うう。よりによって、なんでこうちゃん先輩が担当なんスかね?」
「私が担当じゃ不満か、ひよりん?」
「そういうわけじゃないっスけど、なんつーか、世間狭すぎませんか?」
「まあ、世の中そんなもんだって。ほら、余計な口動かしてないで、手を動かす!」
「イェッサー」
580 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/29(日) 18:39:17.24 ID:BPLp/Gw0
 仕事場2。
「永森先輩。できました」
 ゆたかが、やまとに絵本の原稿を手渡した。
「ありがとう」
「永森先輩。今日も1階で夕食とりませんか?」
「そうね。ご一緒させていただくわ。こうも来るだろうし」


 らき☆すたビル5階。
「よしっ。今日の取引終了」
 こなたは、五台のパソコンに立ち上げていたそれぞれのプログラムをいっせいに終了した。
 今日の稼ぎは、1000万円ちょい。カリスマデイトレーダーこなたとしては、まあまあといったところだった。
 株価が上下する兆候を見極めるのは、ギャルゲでフラグを見極めるのと似たようなものだ。コツさえつかめば、こなたにとって、株取引など簡単なゲームでしかなかった。
 それで稼いだ金で、アキバの一等地を買い上げ、ビルを建てた。それがこのらき☆すたビルである。
 そして、高校卒業後それぞれの進路を歩んでいた友人・後輩を誘って、このビルに入居させたのであった。
 こなたは、友人たちといつまで一緒にいたいという高校時代の夢を、こういう形でかなえたのだ。
「さてと、みさきちのところで体動かしてから、つかさとあやのんの美味しい料理をいただきに参りますかね」


 らき☆すたビル1階。
 レストランラッキースターの夜の営業時間が始まる前の時間帯。みんなが集まって夕食である。
「おお、あやのの料理はうまいなぁ」
 みさおは、そういいながらバクバクと口に料理を放り込む。
「みさちゃん。そんなにあわてなくても大丈夫よ」
「いやぁ、ちょっと走りこんだから腹減ってさ」
「つかさの料理は、いつも美味しいねぇ」
「ありがとう、こなちゃん」
「ゆたか。今日は大丈夫だった?」
「うん。今日も体調はよかったし、大丈夫だよ。みなみちゃん」
「体調が崩れたらいつでも来てくださいね。医院にはベッドもありますので」
581 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/29(日) 18:40:10.66 ID:BPLp/Gw0
「いつもありがとうございます、高良先輩」
「美人医師と美人助手がいる医院を訪れる病弱な萌え患者。ああ、妄想が、妄想がぁ」
「ひよりん、自重しろ」
 こうがひよりの妄想を制止する。
「ハーイ、こなた。今日発売のDVDデス」
「いつもすまないね。パティ」
「いえいえ、私のお店が繁盛してるのも、ここを格安で貸してくれてるこなたのおかげデスから」
「ところで、かがみん。あそこのショップはどうなってるのかね?」
「なんとか民事再生手続にはのったけど、あとは再生計画どおりに行くかどうか次第ね」
「あそこは、五歳のころから通ってる思い入れのあるところなのだよ。つぶれたら嫌だよ」
「あんたのその情熱だけは感心するわ」
「いつもにぎやかよね、この人たちは」
 そんなやまとのつぶやきに、こうが答える。
「それだけみんな仲いいってことじゃね?」

   ・
   ・
   ・
   ・
   ・

「……という夢を今朝見たんですよ、先生」
「アホ。進路面談で将来の夢を訊かれて、寝たときに見る夢を語る奴がどこにおるねん」
「ここにおります」
「あのなぁ、泉。少しは真面目に考えろや」
「でも、実現したらいいなぁって思いません?」
「確かに本当になったら楽しそうやけどな。ビル建てるとこまではいっても、みんながそう都合よく集まるとは限らんで。みんなそれぞれの人生があるんやからな」
「うっ。そうですよね」

終わり
582 :なんだかおかしな日[saga]:2009/03/29(日) 19:00:32.61 ID:TQpa6FU0
>>581
なんか、いろんな意味でドリームですな。


投下行きます。

ちょっと前にお題が多数出た中の「みゆきイメチェン」が気になって少し書いてみました。
583 :なんだかおかしな日[saga]:2009/03/29(日) 19:01:52.25 ID:TQpa6FU0
 その日の朝は、いつになく爽やかな目覚めだった。
 お日様の陽気も心地よく、今日は何か特別なことが起こるかもしれない。こなたはそんな予感を感じていた。
 スキップでもしそうな上機嫌で校門に辿り着いたこなたは、前方にみゆきの後姿を見つけた。
「おっはよー、みゆきさん」
 上機嫌なまま、みゆきに挨拶をするこなた。みゆきがその声に振り返り、こなたに挨拶を返す。
「ういっす、泉」
 一瞬、こなたは人違いだと思った。しかし、再度見直しても、目の前にいるのはみゆきに他ならなかった。
 でも、泉って呼び捨てされてるぞ。そもそも「ういっす」ってなんだ。いつからみゆきさんはこんな砕けたキャラになったんだ。
 こなたは混乱する頭で、みゆきに問いかけた。
「えっと…みゆきさん…だよね?」
「そうよ。他の誰に見えるって言うのよ…大丈夫、泉?また徹ゲーとかしてたんじゃないの?」
「…えーっと…なに?かがみの物真似?」
 特別なこと起こっちゃった。
 とりあえずこなたは、今日一日爽やかには過ごせない予感をひしひしと感じていた。


- なんだかおかしな日 -

584 :なんだかおかしな日[saga]:2009/03/29(日) 19:03:23.34 ID:TQpa6FU0

「ホントに大丈夫なの?熱とかない?」
 冷や汗をだらだらと流しながら立ち尽くすこなたの額に手を当てながら、みゆきがそう言った。
「…いや、熱がありそうなのはむしろ貴女の方なんですが」
 こなたは、かがみが来て突っ込んで欲しいと心底思っていた。
「…おはよう、こなちゃん、ゆきちゃん」
 そこにつかさがやってきて二人に挨拶をした。
「お、おはよう。つかさ」
 まさに天の助け。つかさがいると言う事は、かがみも来ているはずだ。
 こなたは期待を込めてつかさの方を見た。つかさの声になんとなく元気がないのが気になったが。
「つかさ。おはよっ」
 みゆきが軽快に挨拶する。それを見たつかさが、盛大にため息をついた。
「…そっか…ゆきちゃんがこうなってたんだ…」
「…え?」
 つかさの言葉に、こなたは嫌な予感がした。
 そして、つかさの後ろにいたかがみの姿を見て、嫌な予感は的中したことを悟った。
 柔らかく微笑んでいるのだ。かがみが。なんというか、みゆきっぽく。
「おはようございます。こなたさん。みゆきさん」
「おはよう。かがみ」
「…お、おはよう…かがみ」
 これまたみゆきっぽく挨拶するかがみに、軽快に挨拶を返すみゆきと怯えたように挨拶を返すこなた。
「…あの、こなたさん、どうかなされましたか?なんだか顔色が悪いようですけど…」
 かがみがこなたの顔を覗き込んでそう言った。
「そうなのよ。ちょっと様子が変なのよね…ま、日頃の不摂生が原因だとは思うけどね」
 みゆきがそう答えた。
「そうですか…つかささんも今朝から様子がおかしいですし…」
 と、かがみ。
「…うーん…だらしないのに移る新手の病でも流行ってるのかしらね…」
 と、みゆき。
「…や」
 と、こなた。
『や?』
 かがみとみゆきがこなたの方を向いて、同時に首を傾げた。
「ややこしいわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
 多数の生徒の集まる校門前で、こなたは盛大にぶちキレた。


585 :なんだかおかしな日[saga]:2009/03/29(日) 19:11:55.40 ID:TQpa6FU0
「…なにやってんのよ、あんたは?注目集めまくって、ホント恥ずかしかったんだからね」
 教室の自分の机に突っ伏しているこなたに、みゆきが呆れ顔でそう言った。
「…ほっといてくだちぃ…」
 校門前での出来事が話題になっているのか、クラス内でもこなたの方を見てヒソヒソと話す生徒が何人か見受けられた。
「ホントにもう…しっかりしてよ?」
 そう言いながらみゆきは自分の席へと戻って行った。そして、入れ替わりにつかさがこなたの傍へとやってきた。
「…こなちゃん」
「…つかさ、かがみは朝からあんなだった?」
 突っ伏したまま、首だけをつかさの方に向けて、こなたがそう聞いた。
「う、うん…朝起きたらああだったの…まつりお姉ちゃんなんか、頭が痛いって大学休んじゃったし…」
「どーなるんだろねコレ…」


 一方その頃の隣のクラス。
「…あやの、アレはホントに柊か?」
「…だと、思うんだけど」
 変わり果てた友人の姿に、みさおとあやのは動揺を隠し切れないでいた。
「あの…わたしの顔に何か付いてますか?」
 少し控えめにそう聞いて来たかがみに、みさおとあやのはブンブンと首を振って否定した。
「だと、いいのですが…どうしてでしょう?なんだか今朝は随分注目を集めてる気がするんです」
 それはそうだろうなーと、みさおは心の中で突っ込んだ。


「泉、つかさ。お昼にしましょう」
 昼休み、みゆきがそう言いながら、こなた達のところにやってきた。
「あ、みゆきさん。わたしちょっとトイレ先行ってくるよ…行こう、つかさ」
 みゆきにそう断り、こなたはつかさの腕を掴んだ。
「ふえ?わたしも?」
「さっき漏れそうだって言ってたじゃん。いいから行くよ」
「い、言ってないー」
「いちいち言わなくていいから…早く行きなさい」
 つかさを引き摺って教室を出て行くこなたを見ながら、みゆきはため息をついた。
586 :なんだかおかしな日[saga]:2009/03/29(日) 19:12:34.35 ID:TQpa6FU0

「さてと、つかさ。なんだかややこしくなってるわけなんだが…」
「う、うん」
 こなたとつかさは廊下を歩きながら、今朝からの異常について話し合っていた。
「最初はね、漫画とかに良くあるような人格入れ替えだと思ってたんだけどね…微妙に違うみたい」
「どういうこと?」
「かがみもみゆきさんも、自分は自分だって認識してるみたいなんだよね」
「え、えーっと…どうしてわかるの?」
「わたしの呼び方。みゆきさんは名字で、かがみは名前でちゃんと呼んでる」
「あ、そっか」
「だから、みゆきさんはみゆきさんのまま、かがみはかがみのままで、性格だけが入れ替わってるみたいなんだよ」
 つかさは、うーんと唸りながら考え込んでしまった。
「や、ややこしいよ、こなちゃん」
「だよねー…」
「…でも、なんでこんなことになったんだろ?」
 腕を組んで考え込みながら、つかさがそう呟いた。
「それはさっぱりわかんないよ…昨日二人が衝突したって事もなかったし」
 こなたもまた、腕を組んで考え込み始めた。
 結論らしい結論が出ないまま、トイレの前まで来たこなたはそのまま中に入っていこうとした。
「あ、おトイレはホントに行くんだ」
「そだよ、つかさは行かないの?」
「わ、わたしはいいよ…」
「じゃ、ちょっと待ってて」
「う、うん」
 ひらひらと手を振ってこなたはトイレに入って行き、ふと何かを思いついたように立ち止まって、つかさの方を振り向いた。
「つかさ…なんだったら、してるとこ見る?」
「見ないよ!」


587 :なんだかおかしな日[saga]:2009/03/29(日) 19:13:34.13 ID:TQpa6FU0
「おまたへー」
 教室に戻ってきたこなたとつかさは、席を準備して待っていたみゆきと、隣のクラスから移動してきたかがみに手を振りながら、自分達の定位置に座った。
「思ったより早かったわね」
「そ、そう?」
 かがみ口調のみゆきに未だ慣れないのか、こなたの返事がどもりがちになる。
「…あ、あの、つかささん…その、おトイレで何かありましたか?」
 その横では、かがみがつかさに非常に言い難そうにそう聞いていた。
「え、特になかったと思うけど…どうして?」
「その…先ほどクラスのお友達に、『柊の妹ってのぞき趣味でもあんのか?』って聞かれまして…」
 その言葉に、つかさは先ほどのことを思い出した。
「こーなーちゃーんー」
 つかさが前にいるこなたを睨みつけた。こなたが思わず「うひゃっ」と声をあげ、後ずさった。
「つ、つかさ…なんだか萌えキャラがしちゃいけない顔になっているザマスわよ…よ、よかったじゃん、なんか話題になれて」
「よーくーなーいー」
「…ご、ごめんなさい」
 とうとう迫力負けして謝るこなた。それを見ていたみゆきが、ため息をついてこなたに言った。
「あんたも『覗かれる趣味でもあるんじゃない?』って噂になってたわよ」
「うそぉっ!?」
「あ、あの…そろそろ食べ始めませんか?」
 遠慮がちにそう提案するかがみに、三人が頷いた。

「…あの…こなたさん…あんまり見ないでください…」
 自分の弁当を凝視するこなたに、かがみが照れくさそうにそう言った。
「今日のお弁当。作ったのかがみ?」
「はい、そうですが…」
 弁当箱の中の質素なおかずを見たこなたは、ふむと頷いた。
「…性格がみゆきさんになっても、家事下手はかわらないのか」
「はい?」
「いや、なんでもないよかがみ」
 弁当を見るのをやめて、チョココロネにかぶりつくこなた。そのこなたの横顔を見て、かがみが何かを思い出したように「あっ」
と声をあげた。
「そう言えばこなたさん。昨日お貸した本は、もう読まれましたか?」
「…う」
 こなたの食べる動作が止まった。
 確かに昨日かがみにオススメのラノベを借りた…というか押し付けられていたが、読んでいないどころか鞄から出してすらいない。
「ちょ、ちょっと昨日は忙しかったから…」
「そうですか…残念です。今日はその事についてお話しようと思ってたのですが…」
「も、申し訳ない…」
 普段のかがみへの反応とは違い、本気で罪悪感めいたものがこなたの中に湧き上がってきていた。
「とても読みやすい文章ですから、小説に慣れていないこなたさんでもすんなり入り込めると思いますよ。わたしなどはうっかり徹夜で読みふけってしまいまして…次の日が大変だったことがありましたから」
「そ、そうなんだ…」
 とりあえず、家に帰ったら読んでおこう。こなたはそう心に誓わざるを得なかった。
588 :なんだかおかしな日[saga]:2009/03/29(日) 19:14:18.85 ID:TQpa6FU0
「ゆきちゃん、鮭の皮まで食べるんだね…」
「うん、そうだけど…なにか変?」
「う…ううん、全然」
 思わず頷きかけて、つかさはブンブンと首を振って否定した。そして、少し横を向いてボソリと呟く。
「…でも、ゆきちゃんのイメージじゃないよね」 
「ん?なんか言った?」
「ううん、なんでも」
 再びブンブンと首を振るつかさ。
 みゆきはなんとなく納得のいかない表情をしたが、すぐに元の表情に戻った。
「あ、そういえばつかさはこれ知ってるかな?水戸光圀っているじゃない…えーっと俗に言う水戸黄門ね」
「うん」
「その人の大好物が、鮭の皮だったそうよ。なんでも周囲の人たちに、1pくらい皮の厚さがある鮭がいればいいのにって漏らしてたらしいわ」
「へー、それは知らなかったよ」
「さすがはみゆきさんですね」
 素直に感心するつかさとかがみ。しかし、こなたは何故か渋い顔をしていた。
「こなちゃん、どうしたの?」
「ん、いや…この口調で雑学披露されると『なに、この知ったかは』って気分にならない?」
「…なんか、文句あるのか?」
「い、いえ、何も…」
 みゆきに睨まれ、こなたは首をすくめた。


589 :なんだかおかしな日[saga]:2009/03/29(日) 19:15:08.02 ID:TQpa6FU0
 帰り道。こなたとつかさは、ちょっと二人で寄りたい所があるからとかがみとみゆきに断り、連れ立って歩いていた。
「…どうしよっかー」
「…どうなっちゃうんだろー」
 今日の異変について話し合うつもりだったが、口を突いて出る言葉はそんな程度のものばかりで、なんの進展も見出せなかった。
「もしかしたらさ。願いが叶っちゃったのかな?」
 そんな中、つかさがポツリとそう呟いた。
「願い?」
「うん、昨日お姉ちゃんが言ってたじゃない『ちょっとは、みゆきみたいなお淑やかさも欲しいわね』って」
「あー、そう言えばそんなことも言ってたような…」
 ちょっとした雑談の中で出た言葉だったので、こなたはすっかり忘れていた。
「それでその後ね、ゆきちゃんが『わたしは、かがみさんのような活発さが欲しいですね』って呟いてたの聞こえたんだ」
「ふむー…それでお互いが入れ替わった?」
「かも」
 こなたは考え込んだ。そんなこと思った程度でこんなことが起こりうるのか?起こりうるなら、何故みゆきさんの胸やら尻やら背丈やらをちょっと欲しいと思ったときに、大きくならなかったのか?
「…こなちゃん、なんか別のこと考えてない?」
「いえ、考えてございませんよ?…ってーか、なんとなくな理由が分かっても、なんの解決にもならないね」
「…そだね」
 二人して、大きなため息をつく。
「まあ、明日になってまだこのままだったら、改めてなんか考えよっか?」
「うん、そだね」
 結局、こなたがそうまとめ、つかさがそれに頷いた。
「…で、つかさ。どこまで付いてくるつもりなの?」
「…へ?」
 こなたはつかさに向かい、自分の目の前にある『泉』と書かれた表札を指差して見せた。
「もう、わたしんちなんだけど」
「ほぇーっ!?早く言ってよこなちゃん!」
「いや、普通に気がつこうよ…」


590 :なんだかおかしな日[saga]:2009/03/29(日) 19:15:39.66 ID:TQpa6FU0
 家に入ったこなたは、折角だしちょっと寄っていくと家に上がってきたつかさに飲み物でも出そうと、とりあえず台所に向かった。
 その途中にある居間を覗いてみると、父のそうじろうがテーブルに突っ伏しているのが見えた。
「なんだ、お父さん寝てるのか…後で起こしてあげないと」
 そう呟いて、こなたは台所に入った。
「おかえり、こなた」
「うん、ただいま」
 台所で声をかけられ、答えながらこなたは冷蔵庫を開けた。
「つまみ食い?晩御飯まで我慢できない?」
「ううん、違うよ。つかさが来てるからなんか飲み物出そうと思って…」
 と、そこでこなたは違和感を感じた。確か父親は居間で寝てたはずだ。だったら、今わたしと話してるのは誰だ?こなたは声の方向を向いた。
「そう。でも、あんまり遅くまで引き留めちゃだめよ?」
「え…あ、あれ?…」
 自分と同じような体型と容姿を持った女性が、晩御飯の準備をしていた。
 写真でしか見たことのない、いや見ることが出来ないはずの人。
「…お、お母さん?…え、ちょ…えぇぇぇぇぇぇぇっ!?」
「ちょ、ちょっとこなた、声が大きいわ。そう君が起きたらどうするのよ…」
「あ、お、お父さん…お父さーん!」
 こなたは慌てて台所を飛び出し、居間で寝ている父の元に走った。
「あ、待ってこなた!」
 その後を、こなたの母親…すでに他界しているはずのかなたが、追いかけた。

「お父さん!のんきに寝てる場合じゃモガッ…」
 こなたがそうじろうを起こそうとしたところで、かなたが後ろからこなたの口を塞いだ。
「ダメだってばこなた…ふう、自然に溶け込もう作戦は失敗だったわね」
 そう言ってため息をつくかなたを、こなたはジト目で見つめていた。
「な、なにかしら?」
 慌ててこなたの口から手を離し、かなたは苦笑いをした。
「いや、もうなんか色々アレなんだけど…とりあえず、なんでお父さん起こしちゃダメなのさ?」
「うん、そう君がいるとなんだかややこしいことになりそうだったから、とりあえず寝ててもらったの」
 こなたは父の方を見た。
「…お母様、お父様の後頭部にやたらデカイたんこぶらしきものが見えるのは、ワタクシの気のせいでありましょうか?」
「そ、それは…若い人にだけ見える幻影ってヤツなのかも…」
 胡散臭そうなものを見る目で見つめるこなたから、かなたは冷や汗を垂らして目を背けた。
「こなちゃん。何かあったの?」
 騒がしい物音を聞きつけたのか、こなたの部屋にいたつかさが、居間に入ってきた。
「え?あ…な、なんでもないよ…」
「ふーん…ねえ、こなちゃん」
「な、なに?」
 つかさは、テーブルに突っ伏して寝ているそうじろう覗き込んでいた。
「おじさん。呼吸して無いっぽいんだけど、大丈夫?」
『うそぉっ!?』
 つかさの言葉に、こなたとかなたは同時に声をあげた。


591 :なんだかおかしな日[saga]:2009/03/29(日) 19:16:59.91 ID:TQpa6FU0
 なんとかそうじろうを蘇生させ、自室のベッドに寝かせた三人は、こなたの部屋に移動していた。
「…ふう、危うくそう君を連れて逝っちゃうところだったわ」
「いや、まあなんか色々とアレなんだけど…まあ、いいや…」
 爽やかに汗を拭う動作をするかなたを、こなたは諦めの境地の表情で眺めていた。
「ねえ、こなちゃん。さっきから気になってたんだけど」
「なに、つかさ?」
「この人、誰?なんだかこなちゃんに似てるんだけど…」
 つかさが、かなたの方をチラッと見ながらそう言った。
「誰って、わたしのお母さん…ってーかつかさも写真見たことあるじゃん」
「あ、そっか」
「初めまして。こなたの母でかなたと言います。こなたがいつもお世話になっているみたいで…」
 つかさにかなたが深々と頭を下げる。それを見たつかさが、それに負けずに頭を下げた。
「あ、こちらこそ初めまして。柊つかさです…って…あれ?」
 感じる違和感。つかさは自分の記憶の糸を手繰り、ある会話に辿り着いた。
「…えっとさ、こなちゃん…こなちゃんのお母さんって確か…」
「うん、死んでる」
「…えーっと…その…ほ…ほぇぇぇぇぇぇぇっ!?なんで死んでる人がここにいるのぉっ!?」
「驚くのおそっ」
「あら、今度は気付かれないかと思ったのに」
「あーまあ、落ち着いてつかさ」
 とりあえずこなたは、なんだか得体の知れない驚きの動作を繰り返すつかさを、なだめにかかった。
「とりあえず、害は無いからね?…はい、深呼吸」
「…害なんてあるわけないじゃないの」
 素直に深呼吸して、落ち着きを取り戻しつつあるつかさを見ながら、かなたはそう呟いた。

592 :なんだかおかしな日[saga]:2009/03/29(日) 19:18:26.30 ID:TQpa6FU0
「そう言えば、こなた。今日は何か変わったことが無かったかしら?」
 つかさが落ち着いた頃を見計らって、かんたがこなたにそう尋ねた。
「え?変わったことって?」
 こなたの頭に、今朝からのみゆきとかがみの事が浮かんだ。
「そうね、例えばお友達の感じがちょっと変わったとか」
「…うん、そう言えば性格がいつもと違ってたのがいたけど…」
 なんとなく、こなたは嫌な予感がした。
「あら。じゃあ上手くいったのね」
「…なに?上手くいったって?」
「うん、こっち来る時にね、なんだかお互いの性格に憧れてるみたいだから、ちょっといじってみたんだけど…どうだった?」
 なんだか軽い口調でそう言うかなたを、こなたとつかさはなんともいえない表情で眺めた。
「…害…あったよこなちゃん」
「…うん…わが母ながら何処から突っ込もうか」
 自分を見つめるこなたとつかさの視線が妙に痛く、かなたは冷や汗を垂らした。
「…えーっと…ダメだった?」
「ちょっと感じが変わったどころか、丸々性格が入れ替わってて非常に厄介なので、早急に元に戻すことを所望しますよ、お母様」
「…ごめんなさい」
 少々の怒気をはらんだこなたの言葉に、かなたは小さくなって謝った。
「…何処を間違えたのかしら…」
「最初から全部」
 かなたの呟きにも、容赦なくこなたの突っ込みが突き刺さる。
 と、こなたの部屋のドアがノックされた。
「こなた。帰ってるのか?」
 そうじろうの声がする。それを聞いたかなたが慌てて立ち上がった。
「やっばい、そう君だ」
 そのまま窓の方に向かい。
「じゃあ、こなた。私はこれで。そう君には内緒よ?」
 窓を開けて出て行った。
「…窓からって」
「…間男ですか。アンタは」
 それを、つかさとこなたが呆れ顔で見送った。
593 :なんだかおかしな日[saga]:2009/03/29(日) 19:19:09.84 ID:TQpa6FU0
「こなたー?」
「あ、うん。どうぞ」
 再びノックとそうじろうの声が聞こえ、こなたは返事をした。ドアを開けてそうじろうが部屋に入ってくる。
「すまんな。今日は俺の当番だったのに、晩飯作らせて」
「え?…あ、いや、うん」
「しっかし、なんでベッドに寝てたんだろうな…なんだか後頭部が痛いし」
「えっと…帰ってきたらお父さん居間で気絶してたんだよ。それで、たまたま一緒にいたつかさとベッドに運んどいたんだ。晩御飯の仕度もまだっぽかったから、ついでにやっといたんだよ」
 こなたの説明に、そうじろうが頷いた。
「そうか…それはすまなかった。しかし、気絶時の記憶が全くないな…記憶が飛んだんだろうか?」
「うん、そう。きっとそう…頭打ったんだし、ご飯食べたらゆっくり休んだほうがいいよ」
「ああ、そうさせてもらうよ」
 そう言いながら、そうじろうは部屋を出て行った。
 こなたがほっとしたようにため息をつく。
「なんでフォローまでわたしがしなきゃいけないんだ…」
「う、うん…」
 ブツブツと文句を言うこなたに、つかさが苦笑いを返す。
「ついでだし、つかさも晩御飯食べてく?」
「え?いや、わたしはいいよ。なんだか解決したみたいだし、そろそろ帰るよ」
「じゃ、駅まで送るよ。つかさ一人はなんだか物騒だし」
「えー、そんなことないよー」
 文句を言いながらも、結局つかさはこなたに送ってもらっていた。


 次の日の朝。こなたはつかさと一緒に登校していた。
「かがみは元に戻ってた?」
「うん…だけど、なんか頭が痛いって言って、今日はお休みするみたい」
「…後遺症かなんかかな…いい迷惑だ」
「ゆきちゃんもお休みしてそうだね…」
「うーむ…」
 二人して大きくため息をつく。
 ふと、こなたは自分たちが視線を集めているような気がした。見渡してみると、何人かの生徒が自分たちの方を見てヒソヒソと話をしている。
「…こなちゃん…なにか、おかしくない?」
「う、うん…なんだろう?」
 こなたとつかさは良く耳を済ませて、みんなが何を言ってるのか聞き取ろうとした。
「…ほら、泉さんと柊さん。やっぱりそうなのよ…」
「…今日は同伴出勤ってところなのかしら…」
「…昨日、泉さんが柊さんに…おトイレしてるところ見せようとしてたって噂が…」
「…泉さんの家に二人で入っていくの見た人が…」
「…え、じゃあもしかして、そのまま一晩過ごして?…」
 聞こえてくる、間違いはないんだけど勘違いされまくってそうな会話に、こなたとつかさはダラダラと脂汗が流れてきた。
「…こなちゃん、これって…」
「…わたし達にも後遺症出てたか…とことん迷惑な…」
 その日一日、こなたとつかさは噂の火消しに奔走する羽目となった。


- おしまい -
594 :なんだかおかしな日[saga]:2009/03/29(日) 19:20:55.60 ID:TQpa6FU0
以上です。

すいません。
ちょっとじゃなかった上に、お題から外れた上に、後半指がすべりました。
595 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/29(日) 19:24:55.88 ID:pROOLxE0
乙。みゆきの変化が酷くてワラタww
596 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/29(日) 19:26:13.75 ID:pROOLxE0
>>581
何この夢物語……って思ったらマジで夢かよww
597 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/29(日) 19:39:13.88 ID:I.fAz5M0
>>594
乙です。こういう二人も新鮮な可愛さがあって良いですね。
他の組み合わせも見てみたい。
598 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/29(日) 20:11:56.94 ID:YSsKnSo0
>>594
乙。面白かった。こういう話は好きなんだぜ
しかし、かなたさんは何しにやってきたんだw
599 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/03/29(日) 20:51:49.09 ID:mfBpyHM0
>>570
難しい法律の話も、らき☆すたキャラが活躍することで途端に読みたくなるのは不思議。
文章も分かり易く面白かったです。
なにより情に流されず、弁護士としての役割を真っ当するかがみがステキでした。
>>581
ファンにとって夢の様な話ですね(夢ですが)。
和気藹々とした楽しい雰囲気が伝わってきます。
屋上のイベントスペースで管を巻くあきら様が目に浮かびます。
>>594
自然な会話で物語りに引き込まれます。
ラノベのくだりは、グッとくるものがあって良かったです。
所々に伏線を敷いてラストできっちりオチをつけるあたり見事でした。

それぞれ違った味ですばらしいです。
文章能力の高い作品ばかりで脱帽しました。
皆さん乙でした。
600 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/29(日) 21:27:55.87 ID:YSsKnSo0
もうすぐ4月なので書いてみた
やたら視点変換してて読みにくいかもだけど、おつきあいいただけたら幸い

タイトルは『こなたが来たりて嘘をつく』
それでは、はじまり、はじまり〜
601 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/29(日) 21:29:13.73 ID:YSsKnSo0
「ふわぁ〜、朝早く目が覚めたのはいいけど……な〜んか暇だなぁ」

 欠伸をしながらPCの電源を落とす。
 春休みに入って数日が経った。
 この数日間は、漫画・DVD・積ゲーの処理を寝る間も惜しんでやった。
 もちろん、合間合間にネトゲもやった。
 集中的に遊びすぎて、さすがにどれも飽きてきた感がある。

「今日はかがみ達と会って遊ぶかねぇ」

 現在時刻は朝の8時30分。
 今から誘いをかければ午後からたっぷり遊べるだろう。 
 もちろん、ただ遊ぶだけが目的ではないのだけれども。
 今年はこの短い休みにも宿題がきっちりと出されていた。
 できることなら、最終日までに余裕をもって写しておきたい。 
 宿題を写して憂いを絶つ、それもかがみを誘う目的のひとつだ。

 それはそうとして、だ。
 いったい今日は何月何日で、休みはあと何日残っているのだろうか。
 確認するためにカレンダーを見る。
 まあ、カレンダーは好きな絵師のところで止めてあり、ここ何ヶ月も捲っていないので見たところで無駄なのだが。

「あ。そういえば」

 ベッドを置いてある方の壁を見る。
 そこには日めくりカレンダーが掛かっていた。
『今日が何月何日かぐらい常に把握しろ』
 とか言って、お節介にもかがみが勝手に掛けていったものだ。
 まあ、自分が持て余してたのを持って来ただけなのかもしれない。

 ちなみにこのカレンダー、私はまだ一度も捲ったことがない。
 捲っているのはかがみだ。
 この部屋に遊びに来るたび、文句を言いながら4〜5枚捲っている。
『私がせっかくプレゼントした意味がないじゃないの!』
 とかなんとか言いながら。
 今は、かがみが最後に家に遊びにきた日――3月25日――で止まったままだ。
602 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/29(日) 21:29:46.62 ID:YSsKnSo0
「たまには、自分でめくってみようかネ」

 記憶をたどり、深夜アニメを見た回数分だけびりびりと捲る。
 今期は割と良作が揃っていて、毎日アニメを見ているから捲る枚数を間違えることは絶対にない。
 極めて私流ではあるが、このカウント方法に頼るのが1番確実だったりする。 
 捲ったカレンダーはくしゃくしゃにまるめて、ゴミ箱にポイだ。

「……ほほう」

 カレンダーが示している日付を見て、ニヤリと笑う。
 体のダルさが吹き飛び、頭の中が冴え渡ってくる。
 その日付表示は、私のエンジンに火をつけたのだ。

 4月1日。

 そう、今日はエイプリルフール。
 つまり、嘘をついていい日。
 なんだか、よくわからない使命感で み な ぎ っ て き た 。

 よし!毎日の勉強で疲れているだろう友人達に、最高のユーモアをプレゼントしてさしあげようじゃないか!
 かの有名な“ド○えもん”という作品において、源し○か氏はこのような事を言っていた。
『人を喜ばせておいて、がっかりさせるような嘘はよくない』
『だから、嘘とわかった時に喜べるような“親切な嘘”をつくべきだ』

 ここに高らかに宣言する!私はつこう、親切な嘘を!!

 ☆
603 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/29(日) 21:30:42.16 ID:YSsKnSo0
 まずは、かがみからだ。
 携帯に電話をかける。
 休みだというのに既に起きて活動していたのであろう、数回のコールですぐに出た。

「もしもし、こなた?あんたにしては珍しく早起きね」
「……かがみ……」
「どうしたのよ、なんか元気ないわねー。休みボケかぁ?」
「はは……そんなとこ、かな」
「ちょ、ちょっと、ホントに大丈夫なの?」

 かがみの声色が心配を含んだものに変わる。
 ここまでは順調。

「う、うん。まあ、だいじょぶ」
「そう?ならいいけど。それで、用件は?」
「えっとね、実は、私……や、やっぱいいや!」
「はぁ?」
「うん、悪いけど今のナシ。忘れて!じゃあね!」
「あっ、待ちなさいよ!」

 ここで一方的に電話を切る。
 かがみの性格からしてすぐにでも電話が……よし、かかってきた!
 少し間を置いてから電話にでる。

「も、もしもし?」
「ちょっと、こなた!さっきの電話は何なのよ!?一方的に切ったりして!」
「なんでもないよ」
「とりあえず用件を最後までちゃんと言いなさいよ!気になるじゃない!」
「だから、なんでもないって」
「だから、なんでもないなら最後まで言えばいいって言ってんでしょ!?」
「しつこいよ!!なんでもないんだってば!!!!」

「……」

「……ごめん。怒鳴ったりして」
「……ううん。私もちょっと、大人気なかったわ。えっと、もう切るわね」
「あ、待って!……ねえ、かがみはさ……私の友達、だよね?」
「何?急にどうしたのよ?」
「いいから答えて!言っとくけど、私、真剣だよ?ネタとかじゃないよ?」
「……もちろん友達よ。親友って言ってもいいわ」
604 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/29(日) 21:31:14.25 ID:YSsKnSo0
 さあ、盛り上がってまいりました。
 かがみの声は真剣そのもの。
 微塵も私が演技をしていると疑っていないことうけあい。
 いやあ、私もなかなかの演技派だネ。

「ありがと、本当に嬉しいよ……実はね、私、虐められてるんだ」
「イジメ?そんな……ウソ、でしょ?」
「かがみには隠してたけど、同じクラスのみんなから、私……私ッ!」
「何よソレ!!許せない!!いつから!?いったい誰が!?」
「去年の11月くらいから、カナ。始めたのは……その……つかさ、だよ」
「なっ……!!」

 さて、仕上げに移りますか。

「ね、かがみ。いろいろ相談したいからさ、できればウチに来てほしいんだ」
「……いいわ。いつ行けばいいの?」
「じゃあ、1時頃に来てくれる?もちろん、つかさとみゆきさんには内緒で」
「ええ。わかったわ」
「ねえ、かがみに電話したこと、2人には内緒にしといてもらえるよね?」
「大丈夫よ、安心して。何があっても、私はあんたの味方だから」
「ありがと。かがみ」
「お礼なんていらないわよ」
「ついでに、春休みの宿題を見せてくれると嬉しいんだけどなぁ」
「ふふっ、いつもの調子が戻ってきたじゃない。ま、考えとくわ。じゃあ1時にね」

 これでよし。
 ウチに来たら全てをばらして、その後は一緒に遊べばいい。
 完璧な計画だ。

 ☆

 さて、ターゲットは残り2人。
 次の狙いは当然つかさだ。
 早めに攻略しておかないと、かがみへの嘘がバレるかもしれないしね。

 携帯に電話をかける。
 3回も留守番電話センターに接続され、諦めようかなんて思い始めた頃にやっと出てくれた。

「もしもし、つかさ?」
「もしもし〜、こなちゃん?……ふわぁ〜、おはよ〜」
「おはよ。ごめんね、朝早くに電話しちゃって」
「ううん、いいよ〜。今日は早く起きるつもりだったし」
「そうなんだ」
「うん。今日から宿題をがんばろうかな〜って。えへへ」

 つかさの声はまだ眠そうだ。
 この様子だと、少しばかり荒唐無稽な嘘でも信じてくれるだろう。
605 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/29(日) 21:31:57.91 ID:YSsKnSo0
「ねえ、つかさに相談したい事があるんだけど」
「え?相談?」
「うん。いいかな?」
「うん。いいよ〜。でも、私よりお姉ちゃんやゆきちゃんの方が――」
「つかさじゃなきゃダメなんだよ」
「えっ?」
「あの2人には、相談できないんだ」
「えっ?ど、どういうこと?」

 急に真剣みを帯びた私の声に、つかさが戸惑いをみせる。
 我、機を得たり。
 ここからは一気にたたみかけよう。

「実はね、私、みゆきさんのモルモットにされてるんだ」
「も、もるもっと?」
「うん。いわゆる実験動物。いろんな薬を飲まされたり、注射されたり……」
「へ、変な冗談はやめてよ、こなちゃん。ゆきちゃんは、そんなことするような――」
「かがみも被害者なんだよ?かがみは私よりずっと前からみゆきさんに遊ばれてたんだ」
「お、お姉ちゃんが?」
「私もかがみから同じように相談されてさ、その時は何かのネタだと思って信じなかった。でも、それが間違いだった」
「う、嘘!嘘だよね、こなちゃん!?ねえ――」
「私はかがみを救えなかったんだ……今のかがみはみゆきさんの命令に逆らえなくなってて、私を監視しているみたい」
「そんなの嘘だよ!こなちゃん、いくら私でもいいかげん怒るよ!?」
「お願いだから信じてよ、つかさ……ねえ、最近さ、かがみの様子に何か、その、違和感とか感じなかった?」
「あ……」

 つかさが黙り込む。
 なんたる幸運。
 何かしら思い当たる事でもあったのだろう。
 だとしたら、これ以上の演技は蛇足だ。
 そろそろ仕上げに移ってもいいだろう。

「ね、つかさ。いろいろ相談したいからさ、できればウチに来てほしいんだ」
「……うん。いつ行けばいいの?」
「じゃあ、1時半頃に来てくれるかな?わかってるとは思うけど、かがみとみゆきさんには内緒だよ」
「うん」
「もちろん、私がこんな電話をしたことも内緒だよ?つかさだって無事じゃいられないかもしれないし」
「う、うん。わかった。気をつけるよ」
「ありがと。つかさ」
「お礼なんていいよ。私もひとりじゃ心細いし」
「それと、出かける時だけどさ、かがみには図書館で宿題してくるとか言ってごまかせばいいと思うよ」
「うん。そうするよ。えっと、1時半だよね」
606 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/29(日) 21:32:29.37 ID:YSsKnSo0
 これでよし。
 これで、つかさがかがみに接近する可能性はぐっと低くなった。
 かがみへの嘘もバレにくくなったという訳だ。
 それに、つかさは宿題の道具を持って移動することになるから、ばらした後に一緒に宿題をすることもできる。
 我ながら完璧な配慮だ。
 先に着いているかがみと一緒になってネタばらしをして楽しめば、かがみの怒りもいくらか収まることだろう。
 さてさて、ターゲットは残り1人。

 ☆

「それで、みゆきさんに相談したいことがあってさ。いいかな?」
「はい。私でよろしければ、遠慮なくどうぞ」

 ラストバッターは陵桜の誇る秀才、みゆきさんだ。
 かなり手ごわい相手といえるだろう。
 嘘を信じさせるためには、相手のバランスを崩しスキをつくらなければならない。
 かがみは、親友が虐められているという情報にカッとなりスキが生まれた。
 つかさは、まあ、いつものとおりスキだらけだった。寝起きだったしね。

「つかさにはまだ内緒にしててほしいんだけどさ、私ね、去年の冬休み初日にかがみに告白されたんだ」
「はあ。告白、ですか?」
「うん。愛の告白ってやつ」
「ええっ!?し、しかし、泉さんとかがみさんは、その……」
「うん。女の子同士、なんだよね。もちろん私はそういった趣味ないからさ、きっぱり断ったんだ」
「は、はあ」
「翌日からはいつもどおりの関係に戻ろうねって話で決着がついたから、みんなは気が付かなかったと思うけど」
「そうですね。少なくとも私は、まったく気がつきませんでした」
「だよね。だから私は、かがみもちゃんと諦めてくれたんだ、と思って安心してたんだけどね……でも、そうじゃなかったんだ」
「ということは、かがみさんと何かあったのですか?」

「……襲われちゃったんだ」
「え?襲われ?え?……ええっ!?」
「春休みの前日、いつものようにかがみが家に遊びに来たんだ。その日は家に私しかいなかったんだけど――」
「い、泉さん!悪質な冗談はやめてください!私には、かがみさんがそのような事をするお方に思えません!」
「私だって!!!!私だって、かがみがそんなことするなんて思ってなかった!!!!」
「あ……」
「私はその日、写真まで撮られた。その日からかがみはその写真をネタに、私のことを毎日のように――」
「そんな……嘘……嘘です。そんな、ひどいこと……」
607 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/29(日) 21:33:28.37 ID:YSsKnSo0
 そこからは私の妄想を織り交ぜつつ、かがみが私を襲った状況を簡単に説明。
 みゆきさんを崩すには、みゆきさんの知識・経験が乏しい世界を舞台にする必要がある。
 つまり、18歳未満禁止かつアブノーマルな、とっても危ない世界。
 バーチャルとは言え、私の方は経験豊富なのだ。
 この土俵で闘えば、私が負ける要素はほとんどない。

「ね、みゆきさん。できれば会って相談したいんだ。ウチに来てくれないかな」
「……わかりました。いつ、お伺いすればよろしいのでしょうか?」
「急で悪いんだけど、今日の2時とかじゃダメかな?その時間、家は私ひとりになっちゃうし」
「わかりました。2時、ですね」
「それから、この話なんだけどさ」
「はい。誰にも話しませんので、安心してください」
「ありがと。みゆきさん」
「いえ。私でお力になれるかどうか」
「それと、かがみが感づいた時のために、表向きは今日は勉強会ってことにしてほしいんだ」
「わかりました。勉強会、ですね」

 みゆきさんは『恐れ入りますが、まだ泉さんの言い分を全て信じた訳ではありませんので』と言ってから電話を切った。
 ううむ。この辺りはさすがに手ごわい。
 まあ、とりあえずミッションコンプリートだ。
 これで、上手くいけば2時には4人が勉強道具持参で我が家に集うわけだ。
 それまで何をして待っていようかなぁ。
 
 あ、そうだ。
 一応、嘘をついたおわびとして手作りお菓子でも用意して待っていよう。
 そうと決まれば台所へ行きますかネ。
 よっこいしょういち、っと。


 ☆

608 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/29(日) 21:33:59.89 ID:YSsKnSo0

 まさか、こなたがイジメをうけていただなんて。
 しかもつかさが、私の妹が、その犯人だなんて……

 一刻も早く事の詳細を知りたい。
 いてもたってもいられない。
 約束は1時だが、30分程度なら早めに行っても問題ないだろう。
 お昼はパンでも買って食べて、さっさとこなたの家に向かおう。

 手早くまとめた荷物をもって自分の部屋から出ると、つかさとばったり出会ってしまう。
 つかさも出かけるところなのか、私と同じように荷物を持っている。
 思わず睨みつけそうになるが、ぐっと我慢する。
 私がイジメの事を知っていると悟られたら、情報源のこなたに迷惑がかかるかもしれない。

「おはよう、つかさ。今日は早起きね」
「おおお、おはよう。お、お姉ちゃん。え、え〜っと、何だか目が覚めちゃって」
「何をそんなに慌ててるのかしら?」
「えっ!?あ、慌ててなんかないよ?お、お姉ちゃんこそ、恐い顔してどうしたの?」

 いけない。怒りが顔に出てしまっていたようだ。

「な、なんでもないわ。宿題でわからない問題があって、少しイライラしてただけ」
「そ、そうなんだ」
「そういえば、つかさも出かけるところなの?」
「あ、うん。お姉ちゃんも?」
「そうだけど……ねえ、もしかして……つかさは、こなたの家に行くつもりだったりする?」
「え!?ううん、ち、違うよ!!……図書館!そう、私は図書館に宿題をしに行くんだよ!」

 ☆ 

 最近、お姉ちゃんの様子がおかしい。
 食事の量も減ったみたいだし、お菓子もあまり食べようとしない。
 些細な事ですぐイライラするようになったみたいで、私も何度か怒鳴られたりした。
 もちろん、その度に後から謝ってはくれるのだけど。
 机にふせっていることが増えたし、夜こっそりと出かける回数も増えていた。

 ――こなちゃんの言ってたことは、やっぱり本当なんだろうか。

 こなちゃんは1時半って言ってたけど、もう行ってしまおうかな。
 こんな状態でお姉ちゃんと同じ屋根の下にいたら、私の気持ちがまいっちゃうよ。
 とりあえず、早く相談して、早く解決しなきゃ。

 カモフラージュ用の勉強道具をバッグに詰めて部屋を出る。
 しかしそこで、タイミング悪くお姉ちゃんと会ってしまった。 
609 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/29(日) 21:34:37.02 ID:YSsKnSo0
「――つかさは、こなたの家に行くつもりだったりする?」
「え!?ううん、ち、違うよ!!……図書館!そう、私は図書館に宿題をしに行くんだよ!」
「ふーん……珍しいわね」
「そ、そろそろ頑張ろうかな〜って思って」
「それが本当なら、いいことなんだけどね」

 こなちゃんの言った事は、やっぱり本当だ。
 お姉ちゃんの様子はやっぱりおかしい。
 私のことをじっと睨みつけてきたかと思えば、品定めするようにジロジロと見てくる。
 それに何故か、私の行き先がこなちゃんの家かどうか、なんて質問を突然にしてきた。
 こなちゃんの家に私が行くと都合が悪いのだろうか?
 もしかして、こなちゃんの身に何かが……
 
 そうか!もしかしたら、まさに今、ゆきちゃんがこなちゃんのことを狙っているのかもしれない!
 だから、他の誰かがこなちゃん家に行ったら不都合なんだ。
 お姉ちゃんは、私がこなちゃん家に行かないよう監視しているんだ。
 そうだ!そうに違いない!
 私がこなちゃんを救わなきゃ!

「お姉ちゃん、私いそいでるから!もう行くから!」
「え?あ、うん。気をつけていってらっしゃい」

 私は家を飛び出し、全力で自転車をこぐ。

「待っててね、こなちゃん!」

 ☆

 窓から外を見ると、つかさの自転車が猛スピードで遠ざかっていくのが見えた。
 つかさってあんなに早く自転車をこげたんだ。
 それにしても、さっきからのつかさの慌てっぷりは異常だ。
 こなたの名前を出した瞬間、わずかに顔色が変わったのを私は見逃さなかった。
 つかさが犯人だなんて思いたくなかったけど、まさか本当に……

 そこまで考えてハッとする。
 何故、つかさはあんなに慌てていたのか。急いで出かけたのか。
 もしかして、つかさは私とこなたの電話でのやりとりを聞いてしまったのではないだろうか。
 あの時は私も興奮して大きな声を出していたから、その可能性は十分にある。
 だとしたら、今つかさが向かっている先は……
 マズイ。
 最悪の事態だ。
 私も急いでこなたの家に向かわなくては!

 私はすぐに家を飛び出し、妹を追いかけるように必死に自転車をこぐ。

「待ってなさいよ、こなた!」

 ☆
610 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/29(日) 21:35:24.26 ID:YSsKnSo0
 4月1日。
 今日、私は友達に嘘をついた。
 後は至福のネタばらしが残るのみ、ときたもんだ。
 私はその瞬間を楽しみにしながら、お菓子作りに精を出していた。

「よっし。こんなもんかな」

 程なく手作りクッキーが完成する。
 つかさ程ではないにしろ、我ながらなかなかにいい出来だ。
 やはり、気分がノッている時は何をやっても上手くいくものだ。
 時計を確認。
 おっと、もう12時を過ぎている。
 かがみが来るまであと1時間もない。

 あまり時間が無いので、今日のお昼はカップ麺ですませることにする。
 お湯を注いで居間へと移動。
 あと3分♪
 特にやる事もないので、とりあえずTVをつける。
 お昼の時間ということで、どこも面白い番組はやっていない。
 適当にチャンネルを変え、リモコンを放置する。
 あと2分♪
 お気に入りのマグカップにお茶を淹れ、ささやかな昼食の準備が整う。
 いやぁ、日本茶は心が落ち着きますなぁ。
 
 その時、つけっぱなしのTVから信じられない言葉が聞こえた。

『――こんにちは。3月31日、お昼のニュースです。本日、○○内閣の――』

 なん……だと……!?
 重力に惹かれ、鈍い音と共に不時着を敢行するマグカップ。
 そして、景気よく床にぶちまけられる適温の緑茶。

 馬鹿なッ!!
 今日はエイプリルフールではなかったというのかッッ!!

 頭が真っ白になる。
 いままでかいたことのない類の嫌な汗が、体中からドッと噴き出す。
 天国から地獄。
 私の気分は真っ逆さまに光の世界から暗闇のどん底へと叩き落される。

 麺がのびのびになってカップから溢れ出た頃、私はようやく我に返った。

 ☆
611 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/29(日) 21:35:53.38 ID:YSsKnSo0
「待っていてください、泉さん」

 泉さんのお宅まであと少し。
 泉さんは2時と言っていましたが、1時間以上も早めに来てしまいました。
 事の真偽を早く確かめたくて、どうしてもじっとしていられなかったのです。
 それに、もし泉さんの話が全て本当だった場合、かがみさんの行動を警戒する必要があります。
 かがみさんが休みに乗じて泉家に来る可能性は高いですから、ゆっくりしている暇はありません。
 泉さんとの約束の時間を違えてしまうのは失礼かとは思いますが、事態は急を要します。
 一応ですが、携帯の方には早めに伺う旨をメールで送っておきましたし――

「ゆ、ゆきちゃん!?」
「え?……あ、つかささん?」

 何やら慌てている様子のつかささんと出会いました。
 何故でしょうか、大変驚かれているようです。 
 それにしても、ここで会ったという事は……

「つかささんも、泉さんに会いに来たのですか?」
「え。えっとね、わたしは、その……」
「?」
「ぐ、偶然通りかかっただけだよ〜」
「そうなのですか?」
「う、うん。そうそう、偶然なんだ」

 つかささんが嘘をつく理由は無いでしょうから、本当に偶然なのでしょう。
 何かとても不自然な気はしますが。

「ゆきちゃんは、こなちゃんの家に行くんだ?」
「はい。その、泉さんに勉強会をしようと誘われたものですから」
「そ、そっか」
「つかささんは、何をしていたのですか?」
「え。え〜っとね……」

「2人とも、何の相談をしているのかしら?」

 つかささんと話していると、突然、背後から声を掛けられました。
 振り返ると、今は一番会いたくなかった人が腕を組んで立っていました。

 ☆
612 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/29(日) 21:36:30.79 ID:YSsKnSo0
「お、お姉ちゃん!?」
「つかさ、あんた図書館に行ったんじゃなかったの?」

 まさか、つかさとみゆきが合流するとは。
 みゆきまでもがこなたイジメに参加していたとは思わなかった。
 いや、思いたくなかった。
 冷静に考えてみれば、みゆきが自分の身近で起きているイジメの兆候を見逃すはずなど無いのだ……自分がイジメる側でない限りは。
 私という邪魔者が現れたことに機嫌を悪くしたのか、みゆきがこちらを軽く睨んだように見えた。

「こんにちは、かがみさん。こちらへは何をしに来られたのですか?」
「こんにちは、みゆき。私はこなたの家に遊びに来たの。一緒に勉強もする予定よ」
「あら、奇遇ですね。私も泉さんと勉強会をする予定なんですよ?」
「へえ。そうなんだ」
「ええ。そうなんです」
「私は、こなたに誘われてきたんだけど?」
「もちろん私も、泉さんに誘われたから来たんです」

 心なしかみゆきの言動が余所余所しい、というか冷たい。
 それにしても、よくもまあ堂々と嘘をつくものだ。
 私には分かる。みゆきが言っている事は嘘だ。
 今のこなたが、加害者サイドのこの2人を自宅へ誘うはずが無い。
 
 そういえば、こなたが私に相談したことをみゆきは知っているのだろうか?
 つかさから既に情報を得ている可能性はあるが、まだ知らない可能性もある。
 それに仮に情報を得ていたとしても、みゆきならばつかさからの情報を100%信じることはないだろう。
 我が妹ながらつかさは少しばかりぬけているところがあるからだ。
 とりあえず、みゆきを油断させるためにも、今は事情を知らないフリをした方が良さそうだ。

「そう。じゃあ、こなたは4人で勉強会を開くつもりだったのかしらね」
「それなんですが、つかささんは誘われて無いみたいですよ?」

 そう言って、みゆきはつかさの方をチラリと見た。
 これは……つかさに別行動をとるように促しているのか?
 よくわからないが、みゆきの作戦か何かなのだろうか?
 だとしたら、阻止しておいた方がいいのかもしれない。

 最初の実行犯を逃がすわけには行かないし、できれば4人が揃った状態でケリをつけたい。
 私の目的はこなたを救うことだけでは無いのだから。
 難しいかもしれないが、私はこの4人の間にあった友情を取り戻したいのだ。

「……それなんだけど、こなたから電話があったのって、つかさが出かけた後だったのよ」

 ☆
613 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/29(日) 21:37:01.15 ID:YSsKnSo0
「それでつかさも誘おうかと思ったんだけど、図書館に行くって言ってたから携帯にかけるのは遠慮したの」
「そ、そうだったんだ」
「あんたマナーモードにしないでしょ?だから、頃合を見計らってメールでもするつもりだったんだけどね」
「メール?」
「そ、メール。つかさもこなたの家で一緒に勉強しないか、ってね。」

 これは、どういう状況なんだろう。
 ゆきちゃんとお姉ちゃんの間に、なにかトゲトゲしい空気が流れている。
 お姉ちゃんはゆきちゃんに従わされているハズなのに。
 もしかして、今のお姉ちゃんは薬がきれたりとかで正気に戻っているのだろうか?

 お姉ちゃんはなんでここに来たのかな?
 なんで私を誘ってるのかな?
 えっと……今、お姉ちゃんはこなちゃんと合流してゆきちゃんを何とかしようとしているところか何かで――
 それで、私にも協力をしてほしがっている――
 そうか。そういう事だったのか。
 つまり、これは、千載一遇のチャンスなのだ。

「じゃ、じゃあさ、私も一緒に行っていいんだよね、お姉ちゃん?ほら、ちゃんと勉強道具も持ってるし」
「そうね。いいんじゃない?……ね、みゆき?」
「……そうですね。人数が多い方が、勉強会らしくていいのではないでしょうか?」
「じゃあ、決まりだね!」

 ほんの僅かだけど、ゆきちゃんの表情が陰るのがわかった。
 ゆきちゃんは、少し悲しそうな顔で私の方を見た。
 ……ごめんね、ゆきちゃん。
 でも、ゆきちゃんがやっていることは、良くない事なんだよ?
 大丈夫。きっと明日からは、また前までのように4人で仲良くできるよ。
 そうなれるように私が頑張るよ!

 私は決意を胸に秘め、こなちゃん家への一歩を踏み出した。

 ☆
614 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/29(日) 21:37:28.96 ID:YSsKnSo0
 かがみさんは頭の良い方です。
 もしかしたら、私の態度から何か察するところがあったのかもしれません。
 つかささんを勉強会に誘ったのは、私に対する牽制でしょうか。
 つかささんがいれば、私はかがみさんのことを問い詰めにくくなります。

 しかし、かがみさんの行為が泉さんの話すとおりであるならば、それは許される事ではありません。
 こんな悲しい出来事は、一刻も早く、できれば今日の内にでも断ち切ってしまわなければなりません。
 例えつかささんがいようと、私はそれをやらなければならないのです。
 できれば、つかささんにはすべてが解決してからお話をしたかったのですが。

 ……いえ、実の姉と友人との話ですから、つかささんも立ち会うべきなのでしょう。
 つかささんには大変辛いお話になるかとは思いますが、これも運命なのでしょう。

 ふと、つかささんの方を見ると、その顔は心なしか頼もしく見えました。
 そして、つかささんは一歩一歩、泉さんのお宅へと歩んでいきます。
 まるで迷える私を導くかのように。

 ふふっ。いけませんね。私が弱気になっては。
 泉さんにつかささん、そしてかがみさんを救うという役割が私にはあるのですから。
 再びいつもの4人組として楽しく笑いあえるよう、私は頑張ります!

「では、参りましょうか。かがみさん」


 ☆


 私は今日、わりと洒落にならない嘘をついた。
 もし今日が4月1日なら、私にはまだ救いの道がある。
 もし今日が3月31日なら、私に残された道はひとつしかない。
 それは、間違いなく地獄に続く道。

 慌てて家中のあらゆるモノで日付を確認する。
 TV、ラジオ、携帯、パソコン……思いつく限りのモノで。
 何を見ても3月31日。そう、まぎれもなく3月31日。
 あの日めくりカレンダー以外の全てが、今日が最悪な1日になると告げていた。
 どうしよう。
 どうしたらいいんだろう。
 といっても、もう、なるようにしかならないのだけど。
615 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/29(日) 21:38:11.62 ID:YSsKnSo0
 なんで、どうして、こんなことになったんだろう。
 日めくりを捨てたゴミ箱を漁ってみる。
 2枚重ねて捲る、などといった漫画のようなミスはしていない。
 捲るべき枚数も絶対に間違っていない。
 今朝の私の行動自体にミスは無かった筈だ。
 それならば、何故?

 ……??

 ……!?

 ……!!

 思い出した!!そういうことだったのか!!
 そう、今朝の時点で私のカレンダーには1日分の誤差が生じていたのだ。
 かがみが最後に遊びにきた日、こんなことがあった。

『ちょっと、こなた。またカレンダー捲ってないじゃないの』
『ん〜、そだね〜』
『そだねー、じゃないっての。もう、いい加減にしなさいよね』
『かがみの楽しみをとっておいてあげたのだよ』
『こんなのが楽しみなわけが無いっつーの!まったく!』

 びり、びりびり……びりりっ!

『あれ、かがみ。今日は確か24日だよ?捲りすぎじゃない?』
『あ、あんたが横からいろいろ言うから変に力がはいっちゃったのよ!』
『あ〜あ、これじゃあせっかくのカレンダーが台無しだよ〜』
『ど、どうせ捲らないんだから1日くらいいいじゃない!そう、これは明日の分よ、明日の分!』

 このことを忘れてきっちり捲ったせいで、日付を間違えてしまったということだ。

 日付を間違えた原因はわかったが、だからといって何の解決になるわけじゃない。
 覚悟を決めよう。
 ここは潔く、1人1人、来た順に謝るしかない。

 ☆

「こなちゃん、少し早いけど来ちゃったよ〜」
「こんにちは、泉さん。すみません、早く来てしまいました。メールは送ったのですが……」
「おーす、こなた。ちょっと早いけど、いいわよね?」

 何 故 全 員 揃 っ て い る。
616 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/29(日) 21:38:54.95 ID:YSsKnSo0
「いいいいいいい、いらっしゃいいいい、みみみみ、みんななな。ずずず、ずいぶん早かったたたネ」
「なに慌ててんのよ?……まあ、心配しなくても、大丈夫よ」
「そうですね。私がいますから何も心配しなくて大丈夫ですよ、泉さん」
「こ、こなちゃん、私がいるからね!」

 あれ?何この雰囲気?

 そうか、お互いがお互いを牽制しあっているんだ。
 主に私の嘘のせいで。
 これは、本当の事を言い辛いってレベルじゃないよ。
 何とかして1人ずつ相手をするようにしなきゃ。
 とりあえずは、みんなに私の部屋まであがってもらって……

「ええっと、ジュースでも持ってくるね。それで、誰か運ぶの手伝ってほしいんだけど」
「私が行くわ!」
「いえ。かがみさんはゆっくりしていてください。ここは私が」
「ゆきちゃんもお姉ちゃんとゆっくりしてなよ。私が行くから」
「2人とも、そんなに気を遣わなくていいわよ。ここは私が――」
「そうですね。かがみさんもつかささんも気を遣わないでください。やはり私が――」
「わ、私は気を遣ってないよ。ただ、こなちゃんを手伝いたいだけ。だから私が――」

「ちょ、みんな。落ち着いてよ。か、かがみ。かがみでいいよ」
「ほらね。こなたもこう言ってるし、私が行くわ」
「泉さん、遠慮なさらずにおっしゃっていただいてもいいんですよ?」
「こなちゃん、私じゃ頼りにならないかなぁ?」
「い、いや、そんな大したことじゃないし。それにすぐに戻ってくるから」
「じゃあ、早く行きましょ。こなた」

 台所で人数分のジュースとクッキーを用意する。
 とりあえず、この時間を利用してかがみに謝っておこう。

「あ、あのさ、かがみ」
「わかってる。ごめんね、こなた。びっくりしたでしょ?つかさとみゆきが一緒じゃやっぱり辛いよね」
「い、いや。そうじゃなくって――」
「でもね、こうなったら仕方ないわ。少し早いのかもしれないけど……私ね、今日決着をつけちゃおうと思ってるの」
「ちょ、かがみ、私の話を――」
「わかるわ、不安よね。でも大丈夫。私がついてるから。何があっても守ってあげるから。さあ、行きましょ!」
「あっ、待ってよ、かがみ――」
「いいから、ここは私に任せなさいって。とりあえず、2人に謝ってもらうところから始めなきゃね!」

 あんまり遅くなると怪しまれるわよ、と言ってかがみはクッキーの皿を手に部屋へと戻っていった。
 優しい笑顔を残して去るかがみを呆然と見送ることしかできない私。

 かがみに謝るどころか、謝られちゃったよ。てへ☆
617 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/29(日) 21:39:23.39 ID:YSsKnSo0
 ……いや、そうでなくて。
 今のかがみの様子からすると、1人ずつ相手をしていくという私の計画は難しそうだ。
 何があったかのかは知らないが、かがみはテンションが上がりきっていた。
 さっきの部屋でのやり取りから察するに、おそらく他の2人も似たような感じだろう。
 私の話を聞いてくれる心の余裕がなさそうだ。
 それに、3人とも私が他の誰かと2人きりになるような状況はなかなか許してくれなさそうだ。
 ……こうなったらもう、みんながもめ始める前に土下座でも決めるしかない。

 どこか遠いところへ逃げたくなる気持ちを抑え、私は地獄へと続く廊下をゆっくりと進む。
 いつもの倍以上の時間をかけて自分の部屋の前までくると、既にヒートアップした3人の声が聞こえてきた。

「まだわかんないの!?まず、こなたに謝れって言ってんのよ!!あんた達、こなたが苦しんでるのがわからないの!?」
「ですから!何度も言うようですが、人のせいにしないでください!!かがみさんが泉さんを苦しめているのでしょう!?」
「やめなよ、ゆきちゃん!隠さなくても、もうみんなわかってるんだよ!?」
「そうよ!つかさの言うとおり、私はみんなわかってるのよ!?みゆき、あんた少しは反省したらどうなの!?」
「あくまで人のせいにすると言うのですか!?つかささんだって、苦しんでいるのですよ!?」
「はぁ!?だからなんだってのよ!つかさは自業自得じゃない!!元はと言えば、つかさのせいなんだから!」
「ひどい!相談もしてくれずにそんな言い方ってないよ!ねえ、なんで最初がこなちゃんだったの!?なんで、私じゃなかったの!?」
「何よ!?私があんたのことを一番にかまわなかったのが原因だとでも言いたいの!?甘ったれんじゃないわよっ!!」
「つかささんにまで当たらないで下さい!!かがみさん、見損ないました!……あなたは間違っていますッ!!」
「っ!?……みゆきぃっ!よくもっ!よくも、ぶったわねっ!!このっ!!」
「きゃあっ!?」
「や、やめなよ、お姉ちゃん!ゆきちゃんも!暴力はよくないよ!!……ひゃあっ!?」

 うん。わかっているとも。
 今すぐ部屋に飛び込んで土下座、それ以外に選択肢はないよね。

 ☆

「ごめんなさい」
「おまっ……謝って許されるとでも……!!」
「泉さん。いくらなんでも、これは……!!」
「ひどいよ。私、本気で信じたのに……!!」

 事情はひととおり説明したが、当然笑って許してくれる筈もなく。
 三者三様の絶句の後は、ただただ、重苦しい沈黙が場を支配する。

 私は土下座したままの姿勢で固まることしかできない。
 穴が開くのではないかと思えるほどに、じっと床の一点を見つめ続ける。
 申し訳なさ過ぎて、みんなにあわせる顔なんてない。
 あんなに仲の良いみんなが、勘違いとは言え私のせいで喧嘩までしたのだ。
 みゆきさんはかがみの頬を平手で打ち、かがみはみゆきさんに掴みかかった。
 あと一歩間違えれば、私達の友情は消えてなくなっていたかもしれない。

 床にシミがひとつ、ふたつ……あれ?私、泣いてる?
 床のシミはみるみるうちに数を増やしていく。
618 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/29(日) 21:40:06.82 ID:YSsKnSo0
「……泉さんに悪意が無かったという事は、わかりました」
「……そうだね。もともと、こなちゃんは私達と遊びたかっただけなんだよね」
「……こなたらしいいたずら、ってとこね。あまりにも度が過ぎてたけど」

 優しい言葉。
 勇気を振り絞って顔をあげると、みんな少し呆れたように笑っていた。
 私は胸がいっぱいになる。

「ごめん、本当にごめんなさい、ごめんね、みんな。うあ、うわああああああん」
「ほら、泣かないの」
「ぐすっ。だって、こんな私を笑って許してくれるなんて、なんだか嬉しくって」
「あら、誰が許すって言ったかしら?」

「ふぇ?」

「もちろん、それなりのお礼はさせてもらうわよ?」
「そうですね。1回は1回ですよ、泉さん」
「あはは、こなちゃん。これで終わりだと思ってるだなんて、どんだけ〜」
「ちょっ、みんな、目がこわいデスヨ?……いったい何を……」
「そうね、私達もこれからひとつずつ嘘をつかせてもらうわ」
「う、嘘を?……あれ?それだけ?」
「はい。それだけです」
「なぁんだ。びっくりさせないでよ。そんな簡単なことなら――」

「ねえ、こなた。あんた今日は、とっ〜ても平和に過ごすわ。嫌と言うほどね」
「泉さん。泉さんは今日という日を、驚くほど簡単に忘れてしまえるでしょう」
「こなちゃん。こなちゃんにとって、今日がいっちばん幸せな日になるんだよ」

「え?……も、もしかして、それが嘘?……ってことは……あ……やめっ――!!!!」


 ☆


 今日は正真正銘の4月1日、エイプリルフールだ。
 せっかくだから、嘘をついてみようと思う。

『昨日はとても楽しかった。
 突然遊びに来たかがみとつかさとみゆきさんが、私に素敵なプレゼントをくれたのだ。
 昨日という日は、私にとって今までで一番幸せな日だったんじゃないかと思う。
 でも、きっとそれもすぐに忘れてしまうことになるんだろう。
 とても平和だったという点においては、いつもとなんら変わらないただの1日だったから。

 そしてまた、素敵な1日が始まろうとしている。
 私はかがみから呼び出しなんかされていないし、つかさも一緒に待ち構えていないし、集合場所はみゆきさんの家ではない。
 まあ、偶然にもみんなと会うことがあれば、たぶん昨日の事について幸せな気分で笑いながら語り合うことになるだろうね。
 ああ、できることなら、誰も私の事を助けないでほしい。神様が本当にいるのなら、どうか私の事を救わないでほしい』

 うん。我ながら上出来だ。
619 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/29(日) 21:41:10.81 ID:YSsKnSo0
以上です。長過ぎたかなw?
まあ、飽きたら途中で読むの止めればいいだけだよな
予想のつきやすいオチだったとは思うけど、まあ許せw

教訓、嘘はもっと計画的につきましょう。え?違う?
620 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/29(日) 22:00:06.59 ID:pROOLxE0
>>619
絶交されるよりははるかにマシだったとして諦めるんだなww
乙。ドタバタしてて面白かった。
621 :こなたリフレイン[saga]:2009/03/29(日) 22:30:32.23 ID:Pk5c1YY0
>>577
内容が内容なので、世代が違うとわかりづらいと思われるネタに脚注の説明とか説明口調の文を入れてたらキリがないしテンポ悪くなるんでこうしています。
検索すればすぐわかるよう使ってる単語は吟味してるんで、これで勘弁してほしいところです。

>これって日本人の常識じゃん
は、OVAの台詞を本編に引用し、更にレスに流用しただけなんだが……悪ふざけが過ぎたか。
不愉快な思いをさせてすみません。

改めて、>>516
突き放した返答ですみません。
アニメ版の元ネタについて考察してるサイトもあるんで、こちらが参考になると思います。
ttp://gngnir.nobody.jp/luckystar/
622 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/29(日) 22:40:37.62 ID:/Oyrnwwo
>>619
バラして怒られるってオチは予想付いたけど、一日ずれててって言うのは全く予想外だった
読んでる最中ずっとニヤニヤしてた。めちゃ面白かったぜ! GJ!

こなた自業自得過ぎるww 各自の行動を読めなかったのが失敗に繋がったな……じゃなくても地獄か
623 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/29(日) 23:04:39.96 ID:tOecw6SO
今日投下数多いなww
まとまったら読むか。みんな乙!
624 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/03/29(日) 23:09:38.37 ID:mfBpyHM0
>>619
一瞬「こなたを自殺させる方法」を考えるスレかとオモタ。
長さを忘れさせる展開の面白さには驚きです。
心理描写も秀逸で、個人的にこのスレ始まって以来の傑作かと(嘘ですが)。
>>621
ttp://up2.viploader.net/pic/src/viploader963064.jpg
625 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/29(日) 23:53:25.23 ID:TQpa6FU0
>>619
こなたはどういう目にあったのやら…。
ラストで何故か嘘がホントになる薬で、ドラえもんが帰ってくるシーンを思い出しました。

レスありがとうございます>>594です。
>>595
書くきっかけが「みゆきのイメチェン」だったので、こうなりました。
逆にかがみが薄かったかな、と…みさおやあやのとの会話をもうチョイやればよかったかな?
>>597
軽い気持ちで書き始めて、途中で何度もかがみとみゆきを間違えかけて「コレ難しぇ〜」とか思ってたので、多分もうやらないかと…すいません。
>>598
かなたさんは多分、向こうが暇なので遊びにきたのでしょう。
>>599
すいません。俺のは伏線じゃなく行き当たりばったりと言います。トイレのシーン書いてて「あ、これオチに持っていけそ」とか思って、適当に繋げました。ホントはかなたさんが帰る辺りで終わってたんです。
俺の書くのは大体そんな感じです。
626 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/30(月) 00:13:00.60 ID:oH6wpqQ0
こなた「頭がパーン」
かがみ「いきなり何を言い出す」
こなた「なんかねー頭が重たくって」
かがみ「頭痛か何か?」
こなた「んー何て言うんだろ。何かその、頭がうまく働かないっていうか」
かがみ「それいつものことじゃない?」
こなた「いやいや流石にヒドいよ」
かがみ「ああごめん。まあ確かにそういう時私もあるかも」
こなた「あるよねー寝過ぎたときとか」
かがみ「私の場合お風呂上りにたまになるわね」
こなた「そーなんだ?」
かがみ「うん。その後片付けなきゃいけない宿題があったりすると大変で」
こなた「なるー」
かがみ「で、もしかしたら糖分不足かなーって思ってちょっとお菓子をつまみ食いしたり」
こなた「……あー、なるほど、かがみはそうやって太ってったのか」
かがみ「うるさい」
627 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/03/30(月) 06:41:02.97 ID:nGvBYcEo
>>176
みゆきさんのドレス…だと…?
で、描いてみた。フリルは大変なんだぜ…
http://file.boooon.blog.shinobi.jp/d40dd014.png

他の人の作品もGJ!!
楽しく読ませていただいてます。
628 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/30(月) 06:46:48.24 ID:fdU6ppUo
>>627
やべぇ……完全に撃ち抜かれたぜ……ぐっ……じょぶ……
629 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/30(月) 07:55:46.96 ID:Nq5uJ0E0
>>627
こなた「で、この写真は何かな、ダーリン?」
旦那「…見ての通りのものだけど」
こなた「わたしのより、大きいサイズってのはどういうことなのかな?」
旦那「…そりゃまあ…胸のサイズに比例…」
ブチッ

- 命の輪のゆらぎ -のオチ部に続く?


すいません。素晴らしかったので、ついネタにしました。
630 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/30(月) 19:51:28.12 ID:oH6wpqQ0
三人でお泊り

こなた「ムカデが一匹、ムカデが二匹、ムカデが三匹……」
つかさ「う〜ん……」
こなた「ムカデが四匹、ムカデが五匹、ムカデが六匹……」
つかさ「う〜〜ん……」
こなた「ムカデが七匹、ムカデが八匹……」
つかさ「うううう〜〜……」
かがみ「こなた」
こなた「ん?」
かがみ「ムカデ数えるのやめない?」
こなた「えー」
631 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/03/30(月) 20:31:48.02 ID:9z6fKsEo
ワロタ
632 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/30(月) 20:44:47.22 ID:VJDFcYAO
みさお「ふっふ〜ん♪」
かがみ「どうしたの?嬉しそうね」
みさお「だって柊、今日は3月30日だぜ?」
かがみ「それがどうしたのよ」
みさお「3月30日!今日は『みさお』の日!」





かがみ「へー」
633 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/30(月) 21:44:50.47 ID:oH6wpqQ0
>>632
そういやそうだww
634 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/30(月) 22:11:29.81 ID:.ghGMAI0
「ね、こなた。あんたこの前、私が嫁とかなんとか言ってたじゃない?」
「かがみは私の嫁、ってやつのこと?」
「そう、それ。悪いけど、そのフレーズはもう2度と使わないでくれる?」
「え〜、いいじゃ〜ん。一種の愛情表現だよ?」
「愛情表現なら他の方法だってたくさんあるでしょ?とにかくアレだけはもうやめてほしいの」
「むー……別にいいけどさ、なんで急にそんなコト言うの?」
「みゆきを嫁にしたくなったからよ。だから、私はこなたの嫁になれないわ。みゆきは私の嫁っ!」

個人的には>>627の絵はかがみがこんな事を口走ってもおかしくないくらいの破壊力があると思う。


>>630
嫌過ぎるwつかさじゃなくてもうなされるわww

>>632
「ということは……3月73日は私の日……?」
「み、みなみちゃん、そんな日付は無いよっ?」
「あと43日後か……」
「みなみちゃん、戻ってきてっ!みなみちゃん!」
635 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/30(月) 22:47:45.00 ID:oH6wpqQ0
>>634
ないないww

投下行きます。

※注意:この作品では便宜上、みなみの母親の名前を「みなこ」としています。
     公式設定ではないので、ご了承ください。
636 :カモメの飛んだ空[saga]:2009/03/30(月) 22:49:46.94 ID:oH6wpqQ0
一羽のカモメが空に向かって昇っている。
背中には一人の少女が乗っている。
空には暗い灰色の絨毯がある。
嵐が吹いている。
雨が降りしきっている。

雨が少女の髪を濡らす。
薄緑の髪が重みに垂れる。
少女の目は雲を見据え、そこに隠る国の母を偲ぶ。

雨がカモメの翼を濡らす。
純白の翼が重みに垂れる。
カモメの目は雲を見据え、そこに隠る日の光を望む。



……



三月三十日。昼下がり。
岩崎みなこは、三歳の娘みなみを連れて向かいの邸宅へやってきた。
その庭にはたくさんの大きな桜の木。今が咲き盛りの時期だ。

そのうち一本の木の下に、高良ゆかりと五歳の娘みゆきが隣り合って座っている。
地面には綺麗な模様の描かれたシートが敷いてある。
岩崎家の母娘(おやこ)に気付くと、二人そろって立ち上がり、その母娘に向かって手を振る。
みなこが手を振り返し、その木の下に向かってゆっくりと歩き出す。
この日は高良家で花見が企画されていたのだ。
637 :カモメの飛んだ空[saga]:2009/03/30(月) 22:50:13.06 ID:oH6wpqQ0
天気は快晴。
だが天気予報によると、夜には嵐になるという。

母娘二組が桜の木の下に座り込む。
ゆかりとみなこが隣。
みゆきとみなみが隣。
娘らは都合三度目の対面だ。

弁当を済ませると、みなみはよたよたした足取りで庭を歩き回り始めた。
みゆきも続いて立ち上がろうとする。その時、ある物が目に留まった。

みなみが持ってきていた手提げ鞄。
弁当なら母から渡された物を食べていたから、食べ物が入っているわけはない。
それなら何が入っているというのだろう。

みなみは遠くを走り回っている。
母たちは会話に夢中。誰も見ていない。

みゆきはこっそり鞄に手を伸ばす。
鞄にはチャックもボタン留めもなく、いたって無防備だ。中の物を取り出すのは容易だった。
手に触れると、ふわりと柔らかい感触がした。

小さなカモメのぬいぐるみ。
丸っこくて純白の胴体と、その両脇に付いた平たい羽。
額にはチャームポイントと言うべき、円くてやや大きめの、黒い斑点がある。

多分、みなみちゃんが見せびらかすために持ってきたんだろう。
みゆきは掌に載せたその愛くるしいぬいぐるみを見て、漠然とそう思った。

不意に悪戯を思いついた。

みゆきはそろりと立ち上がり、シートから少し離れた桜の木へと向かい、その陰に隠れた。
木の根に目を下ろす。太く張った根と根の間に、丁度いい大きさの窪みがある。
手にはカモメ。
みゆきはうっすら微笑むと、ゆっくり屈み、その窪みに手を預けた。


638 :カモメの飛んだ空[saga]:2009/03/30(月) 22:50:56.61 ID:oH6wpqQ0
その夜。高良家の電話が鳴り響く。
ゆかりが左手で受話器を持つ。

「もしもしー」
『もしもし、ゆかりさん……』

受話器の向こうは岩崎みなこ。声は不安な調子である。
みなこの用件を注意深く聞き入れると、ゆかりは受話器を下ろした。
ゆかりはすぐさまみゆきの部屋へと向かう。

「みゆき、ちょっといいかしら」

ゆかりがみゆきに問いかける。
みゆきは閉じた窓から外を眺めていた。

「なんですか?」
「みなみちゃんがね、みぃこちゃんがいなくなったって。
 カモメのぬいぐるみさんね。
 今日の花見に持ってきたんだって。
 何か知らない?」

みゆきはうーん、と考える仕草をする。一時の間を置き、

「わかりません」

そう答えた。

「そっかあ、ごめんね」
「いえ」

ゆかりは優しく笑顔を撒きつつ部屋を出て行く。
その姿が見えなくなったところで、みゆきは俯くように床に目を落とした。

本当は知っている。あのぬいぐるみがどこにあるか。
そしてその犯人は誰か。

「はあ……」

思わずため息が出る。

再び外を眺めてみた。

予報どおりの大嵐。
木の枝をへし折らんほどの強風。
雨が家の壁を叩きつける、耳を貫くほどの音。
639 :カモメの飛んだ空[saga]:2009/03/30(月) 22:51:34.59 ID:oH6wpqQ0
胸が不安と罪悪感に重くなる。
あのぬいぐるみは無事か。
みなみは今どうしているだろうか。

「……あしたかえしにいかなきゃ」

庭を眺めつつ、みゆきは一人ポツリと呟いた。



……



カモメは既に上空に達し、地面と平行な角度で空を滑る。
嵐は未だ勢いを保つ。
荒れ狂う猛風雨に、カモメの羽ばたく力が削がれていく。
少女は身を強張らせて耐える。

身震いするほどの寒気。
雨に混じって霰が飛び、カモメの疲弊した身体を襲う。
額の黒い斑点が鋭く切り裂かれた。



……



嵐の収まった翌日、みゆきは一人庭に出た。
まだ五歳のみゆきには一人での外出が許されていない。
母に見つからぬよう、仕事は速やかに済ませる必要がある。

庭を見渡すと、一面の花びらの上に悲しげに聳え立つ、幹を露にした桜の木々。
不安に顔を歪めつつ、件の木の陰に回り、根元の窪みを覗き込んだ。

無い。

「とんでったのかな……」

今度は木の周辺を歩き回り、周囲を見回す。やはり無い。
640 :カモメの飛んだ空[saga]:2009/03/30(月) 22:52:04.73 ID:oH6wpqQ0
「……どうしよう」

庭中を探し回ってみようか。といっても庭は広い。
きっと探索している途中で母に自分の不在を気付かれてしまうだろう。
そんな時間はないのだ……

何か暗暗とした物が胸を締め付ける感覚がする。
みゆきは目に湧き出す涙の圧力に耐えられず、ついに大声で泣き出した。
わが子の泣き声を聞きつけたゆかりは、階段を急ぎ降り家を飛び出す。

「みゆきー!」

木の下で泣き喚くみゆきの元へ駆けつける。

「どうしたの?」
「うっううっうっ……」

みゆきは息が胸に閊え言葉が出ない。
どうした、の言葉に突き出た失望感と後悔とが、涙をさらに強くした。



……



遥か向こう、視界の天辺に雲の絨毯の縁(へり)が見える。
縮れ毛のように目の粗い、フラクタルな境界線から、一列の日射が零れる。

カモメの身体は既に泥水に汚れ褐色を纏っている。
羽はぼろぼろに爛れている。

少女は光を拝み、鳥の命の尽きぬようにと、旅の終着を祈った。



……



641 :カモメの飛んだ空[saga]:2009/03/30(月) 22:52:34.89 ID:oH6wpqQ0
三月三十日。昼下がり。
高良みゆきは、五歳の娘ちはやを連れて向かいの邸宅へやってきた。
その庭にはたくさんの大きな桜の木。今が咲き盛りの時期だ。

そのうち一本の木の下に、岩崎みなみと三歳の娘みなほが隣り合って座っている。
地面には綺麗な模様の描かれたシートが敷いてある。
高良家の母娘に気付くと、二人そろって立ち上がり、その母娘に向かって手を振る。
みゆきが手を振り返し、その木の下に向かってゆっくりと歩き出す。
この日は岩崎家で花見が企画されていたのだ。

天気は快晴。
天気予報によると、今日は一日中快晴になるという。

母娘二組が桜の木の下に座り込む。
みゆきとみなみが隣。
ちはやとみなほが隣。
娘らは都合三度目の対面だ。

弁当を済ませると、みなほはよたよたした足取りで庭を歩き回り始めた。

みなほは邸宅の陰に回り、そこに伸びる草むらを奥へと分け入っていく。
十歩か二十歩進んだその時、ある物が目に留まった。
みなほはそろりとそれに手を伸ばす。
手に触れると、ふわりと柔らかい感触がした。

小さなカモメのぬいぐるみ。
純白だったと思われるその丸っこい胴体は、泥水に汚れて褐色を帯びている。
その両脇に付いた平たい羽は、あわれにもぼろぼろに破けている。
額の黒い斑点には、鋭く切り込んだような裂け目が付いている。

みなほは物珍しげな表情を浮かべながら母の元へとことこ戻ってくると、
その古びたぬいぐるみを差し出した。

「これなあに?」

娘の声に振り返り、差し出された物を見る。
その途端、みなみは思わず目を見開いた。
642 :カモメの飛んだ空[saga]:2009/03/30(月) 22:53:09.62 ID:oH6wpqQ0
そのカモメの名前はみぃこ。
三十年前の今日を境目に忽然と姿を消した初めての友達。
みぃこという名前を付けたのは、今は亡き母みなこ。

「?」

みなほが怪訝そうな顔つきでこちらを窺ってくる。
みなみはふと我に返り、綻んだ笑顔をすると、

「よく見つけたね」

いつもと同じように褒めて頭を撫でる。

「へへっ」

みなほはお決まりのようにニッと笑った。



その夜。岩崎家の電話が鳴り響く。
みなみが左手で受話器を持つ。

「もしもし……」
『夜分遅くに申し訳ありません。私ですが……』

受話器の向こうは高良みゆき。声は不安な調子である。
みなみはその声を聞いて何となくその用件を推測できた。
返答を受けて少しの間を置き、みゆきは静かに口を開いた。

『三十年前ですか、うちの庭でお花見をしたことがありましたよね』

みゆきは自らの罪をその起こりから語り始める。
それはほんの悪戯心だったこと、後になって強い後悔を感じたこと、
そしてそれが今の今まで罪悪の記憶として残っていたこと。
643 :カモメの飛んだ空[saga]:2009/03/30(月) 22:53:58.48 ID:oH6wpqQ0
みなみは穏やかに微笑みながら、しかし真剣にその話を耳に残していた。

『今更ながら、本当にごめんなさい』
「いえ、大丈夫ですから」

こくりと頭を下げるみなみ。恐らく、電話の向こうの相手も同じ仕草をしていることだろうと思った。

ふと右手を見下ろす。

相変わらず朽ち果てた、かつての友達。
つい先ほど風呂場に連れて石鹸で洗い流してやったが、
三十年の間蓄積した汚れには焼け石に水という感じだった。

この三十年間、草の茂みの中に寝転がり、雨水に打たれていたのを想像すると、少し胸が締め付けられる。
それにしても、なぜ自分の家の庭から見つかったのだろうか。
高良家の庭に取り残されたのなら、そのままその庭で見つかりそうなものなのに。

『そういえば、空、見られましたか?』

みゆきが話を振ってきた。

「いえ、何故?」
『天気予報で快晴と言ってましたから』
「……そうでしたね」
『六等星がよく見えますね』
「なるほど……」

空。
そういえば、カモメは空を飛ぶ。
今のみぃこの弱弱しい翼でも、その空を飛べるだろうか。

「みぃこって、空を飛ぶと思いますか」

それとなく浮かんだ疑問をそのまま口にしてみる。
それが何を意図した物かは、自分でもわからない。
暫くの時間を置いて、みゆきの声が返ってきた。

『……そうですね。飛べると思います』
「やっぱりそう思いますか。そしたら……三十年間でも、飛べたでしょうか」
『飛べたのでしょうね。それでずっと地上には見つからなかった、と』
「そうだといいな、と思って」
『夢のような話ですね』
「夢ですね」

二人はお互いにクスリと笑った。
644 :カモメの飛んだ空[saga]:2009/03/30(月) 22:54:29.45 ID:oH6wpqQ0
やがて電話を終えると、みなみは寝室に向かった。
みなほは既にベッドの上、目を瞑って寝ている。そのベッドから視線を右に移せば、
立て掛けられた母の遺影がある。

みなみはその穏やかな笑顔を一瞥すると、愛娘と友達を抱きかかえて眠り込んだ。



……



漸く日の光が当たり始めた。
カモメは徐々に高度を下げていく。
その降り行く先には一軒の邸宅がある。

門をくぐり、庭の真ん中に着地する。
庭中に咲いた満開の桜が、二人の帰還を祝う。

少女はカモメの背中を降り、玄関へと向かった。
すると、その扉の前に一人の女性が立っている。
その女性は綻んだ笑顔で少女を迎えた。

「おかえりなさい」
「ただいま」

いつものように挨拶を交わす二人。
流石に何十年と慣れ親しんだ仲だ。

「随分長かったわね」
「うん」
「何年になるのかしら」
「三十年くらい」
「そんなにかあ。みぃこちゃんも疲れてるんじゃない?」
「そうだね。汚れも酷いし羽もぼろぼろ」
「ふふ」
「お母さんは大丈夫だった?」
「うん。チェリーちゃんも居たしね」

女性は穏やかな笑顔を見せる。

「それにしても、漸く晴れたわね」
「そうだね」
「今の今までずうっと嵐だったもの。こんなに気持ちよく晴れちゃって」

少女は空を見上げる。
その空は、地上の全てを純白に染め上げるほどの、鮮やかな快晴だった。



fin
645 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/30(月) 22:55:36.43 ID:oH6wpqQ0
以上。

芸術的志向を強めてみた結果、ちょっと堅くてわかり辛い文章に。
やっぱり文章って難しい。
646 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/30(月) 23:28:57.15 ID:u60zrl.0
>>619
つまりこなたの言った嘘が現実になるんですね。わかります

>>627
音速で保存した

>>632
みゆき「…………。」

>>
647 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/03/31(火) 00:14:12.07 ID:hWmKvBo0
>>645
これぞSSスレの醍醐味といった作品ですね。
度々登場するカモメと少女の描写も作品をより一層印象的なものにしています。
粗探しをすると若干背伸びしすぎた感があるかな。
ただ、この純文学的な作風嫌いじゃない。むしろ好きです。
648 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/03/31(火) 20:16:16.82 ID:CLN7VHIo
1時間阻止されなかったらゆたかは貰っていきます
649 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/03/31(火) 20:23:16.60 ID:sFnic9Q0
では自分はみなみをいただきます
650 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/31(火) 20:28:01.50 ID:XH1QyA20
>>648
ミタヨー
651 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/31(火) 22:11:29.90 ID:SrdtwASO
>>649
何を言っているみなみは俺がもらう
652 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/31(火) 22:25:26.07 ID:XH1QyA20
そうだ感想にレスしとこう。

>>647
どうもサンクスです。
カモメと少女の描写は夢みたいに幻想的な感じを出したつもりです。
上手く行ったみたいですかね。
ちなみにホントはみなみの見た夢っていう設定なんですけど、それを説明するの忘れてた。
まあそれはそれでいいや。

純文学っぽいのいいですよね。あまり多くの人の好みには合わないみたいなのが残念。

少々質問させてもらうと、背伸びっていうのが具体的にどういうことなのか教えていただけると嬉しいです。
653 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/31(火) 23:15:40.28 ID:QEgi0sSO
>>652
個人的には
つかさとかゆたかが大人のファッションしてるのが浮かんだ
654 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/03/31(火) 23:27:42.73 ID:jANh92SO

 まじぇ☆すた

655 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/31(火) 23:33:32.17 ID:TPnFATs0
ゆいねえさん仕様なら峠も安心。
656 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/01(水) 00:50:26.60 ID:wb/VXEY0
>>652
常連さんでしたら申し訳ありませんが、
あまり手馴れた感じがしなかったもので・・・(そこがまた良いのですが)。
悪い言い方になりますが、読み手に何を伝えたかったのか少々分かりにくかった気がします。
書きたい描写優先で主題がぶれてしまったかな?といったところです・・・
それとあえて反省点をあげてるだけで私は凄く良い作品だと思いますよ。
心に残る作品でした。乙。
657 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/01(水) 01:08:52.80 ID:bgFuaqs0
>>656
おっしゃる通り。まだ手馴れてはいませんね。
書いたSSの数もまだ十に満ちてませんし。
書きたい描写優先というのもその通りです。というかそもそも主題を設定していませんでした。
随分とぴったり来る指摘で恐れ入ります。
相当な書き手ですね。

さて季節外れなのを投下。こっちはお気楽。
658 :てぶくろ[saga]:2009/04/01(水) 01:10:27.49 ID:bgFuaqs0
「はあ……」

手元の物体を見て、私は深くため息をついた。

両手にはそれぞれ一本ずつの編み物針。
そしてそこに絡まっている物は、乱雑に編まれた毛糸の塊。
一応、完成図は小物入れだったのだが……

まあ、一言で言うなら、私は編み物に失敗したところである。


十月半ば、季節はそろそろ秋風に鳥肌が立つ頃。
明日には、私にとって無視できない一大イベントがある。

あくまで私にとって、だ。他の人は気にも留めていないだろう──
というより、気に留めていてほしくない。

私の所属する3年C組。
その中にイベントの主要人物が居るのだが……

あなたの学生時代、クラスに一人は居なかっただろうか?
地味で目立たなくて、メガネかけてて。
しかし妙に絵の上手い、繊細そうな男子が。

私のクラスにも居る。ちなみにC組の副委員長だ。
私は委員長。委員会などで彼と話す機会が何度かあった。
彼はとてもシャイで、俗に言う草食系男子。
偶然にもラノベなどのことでよく話が合った。

そして話すうちに──私も男に免疫がないというのか──
うん。そういうことだ。
659 :てぶくろ[saga]:2009/04/01(水) 01:11:08.99 ID:bgFuaqs0
さて、それで明日何があるのかと言うと……彼の誕生日なわけだ。
多分、私と彼の友人の数人しか、その事を知らない。
女子に限定すれば、知っているのは私だけ、のはず。
何となく優越感?みたいな物を感じる。

それで、そのプレゼントとして──あわよくば、お付き合いの口実として?
手作りの編み物をあげよう、と思い立ったわけだ。


で、話は冒頭に戻るのだが。
針に絡む形容不可能な編み物の欠片。
本当に何これ。カーボン何とかって言う分子の模型?
何と呼べばいいのか分からないので、とりあえずこれを「物体A」と命名することにしよう。
多分、まつり姉さんあたりが見たら「うわーこれ何?ボロ布?」とでも……

「うわー何これ?雑巾?」
「うわっ!」

びっくりして物体Aが手からすっぽ抜けた。
突然目の前に顔を現すな!
というか、予想以上に酷い評価を下された。

「珍しいねー裁縫とか」
「まつり姉さん……まあ、ね」
「ふーん何で突然そんなの始めたのよ」

うーん何でしょうかそのビミョーな笑顔は。

「そんなこと聞かれても……」
「まずいんだ?」
「まずいって言うか……」
「……ふーん。ああね、うん、よく分かるよその気持ち」

おいぃ、ちょっと!そういう同情みたいな顔はやめろっつーの!

「いやー私も実はあるんだよねーそういうこと」
「え?嘘ぉー」
「いや嘘じゃないよ!ホントだって、ホント」

そう言うとまつり姉さんは何やら語りを始めた。
660 :てぶくろ[saga]:2009/04/01(水) 01:11:42.79 ID:bgFuaqs0



中学生のときね。中学二年だったんだけど、クラスにさあ、
すっごい運動も出来て勉強も出来て?とにかくすごい人が居てさー。
あ、もちろん男子ね。彼委員長もしてたんだけどね。
でまたいい人なのよねー。

で私もうそれはベタ惚れでさー。
で、秋ごろ、うん、丁度今の季節ぐらい。彼の誕生日が来るんだけどねー。
やっぱプレゼントとかして?告ったりもしたいじゃん。
そんで手編みの手袋を作ろうって思ってねー。
今のかがみみたいにさ。

でも私裁縫は苦手で。
かがみもそうっぽいけどねー。あ、ごめん。
まあ頑張って作って、一応それっぽい形にはなったんだけどね。
あ、手の形作るのメンドかったから指入れる部分まっ平らにしたんだけどね。
ミトンみたいに。

で、当日?いよいよだけどね。
私チョー早く来てね。学校。
んでその手袋をさ……彼の引き出しにこーっそり入れてさー。
もうそんだけでドキドキ。

でもさ、よく考えたら私手袋に名前も書いてなかったの。
これじゃ誰が差し出したかわかんないよね!?
それはもう彼にしてみたら、朝学校来て、引き出し開けたら
「うわっ何これ!?」だよねー。ウケる。ウケてる場合じゃないか。

で、朝礼の十分前になって彼登場。もう心臓バクバクよ。
彼がどんなリアクションするかね。それはもう。

そして彼が引き出し開けるじゃん。何て言ったと思う?

「あのー、これ誰の?」

だって!クラス中に向かって。手袋持って。皆に聞こえるような声でさ。

すんごいビックリしたわ。そんな、皆の前で告白とかできないじゃーん!って。
でもね、後で知ったんだけど、その時彼さ、あの手袋を落し物か何かと勘違いしてたみたいでー。
そんで「誰の落し物?」って意味で聞いただけだったんだってさー。

けど私にしてはもうドキドキ物じゃん。
「誰の?」っておい!って。そんなの言えるわけないじゃん!って。
いやーもう顔真っ赤っ赤で、あの時の私絶対挙動不審だったわ。
幸い誰も声掛けたりしてこなかったんだけどさー。

で、その日はそれで終わって。
661 :てぶくろ[saga]:2009/04/01(水) 01:12:22.92 ID:bgFuaqs0
次の日、あ、もしかしたらその次の日だったかも。
忘れたけどさ。
偶然ね、学校に行く道で彼を見かけてさー。
見かけただけで話したりはできなかったんだけどー。

そしたらね、彼のカバンに何か付いてるの。
何だろうなーて思ってさ、彼に気付かれないようにね、そーっとカバンに近づいてさ。
それ見てみたの。そしたらー……

それが私があげた手袋なのよー。

カンペキただの物入れに使われてた。
手袋に見えなかったんだろうね。よく考えたらサイズめっちゃ小さかったし。

使ってくれてたのはともかくとしても?
気持ちは伝わんないしただの袋に使われてるしもうガックリだったなー。



「っていうオチでね」

へえ。さっきのはただの同情じゃなかったのか。
既に同じようなことをして失敗を犯した偉大なる人生の先輩なわけね。

「まあ、かがみはちゃんと自分の名前とか入れといた方がいいよー?」
「ふーん。意外ね。まつり姉さんの場合遠慮なく渡しちゃうと思ったけど」
「そんなー。私だってちゃんと乙女だって。ねっ?」
「そういうポーズは私にやっても意味なくない?」
「もー。ちょっとはノってよ」

そう言うとまつり姉さんはどっか行った。

手袋ねえ。これからの季節寒くなるし、それもありかな。
雑でもきっと喜んでもらえるだろう。
午後六時。微妙な時間だが、まあ出来なくはないだろう。多分。

私は先ほどの物体Aを拾い上げ、続きを編んでいった。



翌日。いよいよ本番。
私は手に黒い手袋を持って席についている。
今更ながら、黒はちょっと渋すぎたような。

……さて、どうやって渡すべきか。
今日は委員会はないし。
特に二人きりになれそうなタイミングもない。
662 :てぶくろ[saga]:2009/04/01(水) 01:13:00.97 ID:bgFuaqs0
……まつり姉さんみたいに机の中に入れておこうか。
でも、教室の中には既に数人の生徒。全員が静かに椅子に座っている。
彼の机まで立って歩いたりしたら目立ってしまってダメだ。

……
ああ、無為に時間だけが過ぎていく。

はあ、どうしようか。
日下部あたりが見たら、「意気地なし」って笑うんだろうなー……

ヒョイ

「!?」
「んーこれ手袋かぁ?」

日下部!勝手に人の手の中にある物を取るな!
つーか、何でこんな日に限って早く来る。

「ちょ、ちょっと何よ」
「今日そんな寒くなくねぇ?」
「ま、まあ……」
「ふーん?」

カポッ

「あ」
「おー結構ピッタリはまんな。いいじゃん」

あんたの手にジャストフィットしても意味ないっつーの!

「ちょ、……」
「あれ、柊の名前が入ってんじゃん」
「ん?う、うん」
「何だこれ、昔使ってたのか?」
「まあーーそんなとこね」
「へえー。でも使ってた割に汚れてなくねぇ?」
「ま、うーん。ほとんど使わなかったし」
「ふーん」

そう言うと日下部は手袋を外し、私の机に載せる。
まったく。これから彼にこれを渡すっていうのに……

……いつ渡そう。
臆病になってちゃダメよね……けどなあ。
いや大丈夫!のはず……
そもそも問題は……えーと、んっと!何かしら?
ああダメだこりゃ。えーっと……
663 :てぶくろ[saga]:2009/04/01(水) 01:14:32.66 ID:bgFuaqs0
心臓がバクバク鼓動を鳴らしている。私の体内がステレオ状態だ。
刻むぜ血液のビート!……じゃなくて!
ちょっともうどうするのこれ。ああもう……

「……ああああのさ、日下部」
「んん?」
「これ要る?」

わああ何を血迷ってるんだ私は。

「んー。まあ貰えるなら貰っとくか」

うわー貰われちゃった!あー……

「サンキュー柊。へへープレゼントいただき」

チクチョーいい笑顔してますなあ。本当に見たかったのはあんたの笑顔じゃないけどな。

「顔赤っけえなー柊。何そんな緊張してんだよ」

うるさい。

こうしてその後日下部家では「柊カガミ」の刺繍の入った手袋が使われるようになったという……
はあ。何やってんだ私。



「……っていうね、事がついこの前ね」

裁縫台で編み物針を持つ我が妹に、私は若干赤面しながらマル秘話を暴露した。
つかさは哀れむような顔。やめてほしい。

「あんたも明日はさ、ちゃんと渡してきなよ」
「うん、多分大丈夫……」
「まつり姉さんもダメ、私もダメで、まあ三度目の正直を祈るのみね」

それと同時に『二度あることは三度ある』という諺も頭をよぎったのだが。
前々から思っていたが、この二つって矛盾してないか?

「じゃ、お休み。明日ガンバレー」
「ありがと。お休みー」
664 :てぶくろ[saga]:2009/04/01(水) 01:15:03.36 ID:bgFuaqs0



翌朝、いつもより早く学校に到着した私達。
3年B組の教室の手前にて妹の肩を叩く。

「昨日も言ったけど、ちゃんとやるのよー」
「んーもう大丈夫だから。昨日も結構練習したし」
「何をよ?」
「何でもー」

そう言うとつかさは教室の後方にある自分の机へと早歩きしていった。

行ってらっしゃい。
つかさの成功を願うような、願わないような。


終わり
665 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/01(水) 01:17:53.70 ID:bgFuaqs0
以上。

何か第十回コンクールに出せそうな気がする。
あの時はコンクールに初めて出て、見事最下位でレベルの違いを思い知らされたもんだったなー。
あのダイエットの話書いたときからちょっとは成長してるよな。
666 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/04/01(水) 01:39:06.42 ID:Ev2H52M0
>>665
乙です。
自分に免疫がないのか、こういう話は読んでて気恥ずかしくなったり…。

こっちも投下行きます。
久しぶりに書いたキャラ崩壊物。
3レスと短いですが。
667 :うだうだ[saga]:2009/04/01(水) 01:40:14.15 ID:Ev2H52M0
 その日、かがみは珍しく自分のクラスで昼ご飯を食べていた。
「なー、柊。お前レズってホントか?」
 唐突にそう聞いて来たみさおを、かがみが胡散臭そうに見つめた。
「…なんだ急に」
「いや、そういう噂聞いたからさ、ホントかなって」
「それを本人にストレートに聞くなよ…わたしがレズなわけないじゃない」
「そっかー、そうだよな」
「わたしは、女の子が好きなんじゃなくて、こなたが好きなだけよ」
「うわー、言い切ったぞ。それをレズって言うんじゃねえか?」
 今度は、みさおがかがみを胡散臭そうに見つめる。
「言わないわよ…あー、でもつかさやみゆきもいいわよね。ゆたかちゃんもなかなか…」
「それでレズじゃないって言い切るか。どういう神経してんだ」
 なにかうっとりしているかがみを見ながら、みさおはため息をついた。
「…つーかもう、あたしはどうでもいいのか」
「ん?なに、日下部。わたしに気でもあるの?…悪いけど、ソッチの趣味はないわよ」
「あたしもねえよ。つか、説得力ねえよ」
「みさちゃん」
 二人の会話を聞きながら弁当をつついていたあやのが、なにかを思いついてみさおに声をかけた。
「そう言う事なら、わたしでよければいつでも…」
「あやの、うっさい」
 そして、みさおに一蹴されていた。


- うだうだ -


668 :うだうだ[saga]:2009/04/01(水) 07:12:36.15 ID:Ev2H52M0
 一方、こなたのクラス。
「今日はかがみ、向こうなんだね」
 こなたがつまらなさそうに、そう呟いた。
「こなちゃん、やっぱりお姉ちゃんがいないと寂しいの?」
 つかさにそう言われ、こなたは頷いた。
「なんていうか、こう…オカズに乏しいんだよね」
「オカズ!?」
「チョココロネが主食で、かがみがオカズ」
「そ、そうだったんだ…よ、よく意味が分からないけど…」
「泉さん」
 二人の会話を聞きながら弁当をつついていたみゆきが、なにかを思いついてこなたに声をかけた。
「わたしやつかささんでは、オカズになりませんか?」
「ゆきちゃん!わたしの名前もさらっと混ぜないでっ!」
「うーん、つかさやみゆきさんはねー」
「わたしは違うからね!こなちゃん!」
 必死に訴えるつかさを無視して、腕を組んで悩むこなた。
「二人はなんか甘ったるいから、オカズと言うよりデザートかな?」
「…あーもー、何処から突っ込めばいいんだよー」
 疲れきった表情で、そう呟くつかさ。
「何処からって…いやん、つかさのエッチ」
「変な意味に受け取らないで!」
「つかささん、わたしなら何処からでも…」
「ゆきちゃん、シャラップ」
「…はい」


669 :うだうだ[saga]:2009/04/01(水) 07:14:07.36 ID:Ev2H52M0
 再びかがみのクラス。
「…ってーか、峰岸って彼氏いなかったっけ。たしかコイツの兄貴だとかどうとか」
「箸で指すなよ柊」
 かがみの言葉に、あやのは少し頬を赤らめた。
「うん、そうだけど…」
「じゃ、別にコイツにモーションかける必要ないんじゃない?」
「だから、箸で指すなっつーに」
「うん、だけど…」
 あやのは益々顔を赤らめる。
「やっぱり、兄妹丼って憧れない?」
「うわー、よくわかんねえけど、その言葉すげーやばい気がすっぞあやの」
「そうかなあ…姉妹丼とか母娘丼とかなら分かるけど」
「分かるなよ柊。お前、どう考えてもレズだろ」
「だからね、みさちゃん。今度お兄さんと…」
「それ以上は、ものすげーやばそうだからもう黙れ」
 みさおにきつめに言われ、しょぼくれるあやの。
「…日下部って意外とSなのね」
「…意地でもソッチ方面に結びつけるか」
 しみじみ言うかがみに、みさおはあきれ果てたようにそう言った。
「つーか、柊もちびっ子のことしょっちゅうぶってるし、人のこと言えねーじゃん」
「心外ね。あれは、そういう流れで仕方なくなのよ。好き好んでぶってるわけじゃないわ」
「そうなのか?」
「ぶつよりぶたれるほうが良いに決まってるじゃない。欲を言えば踏まれ…」
「それ以上は、果てしなくやばそうだからやめれ」
 みさおは暴走しそうなかがみの言動を遮ると、机の上突っ伏した。
「さて、お弁当も食べ終わったし。デザートにこなたを食べに行ってくるわ」
「結局向こう行くのかよ…もう、好きにすれー」
 諦めたように呟くみさおを残して、かがみは教室を出て行った。
「ねえ、みさちゃん」
 そのみさおの袖を、あやのが遠慮がちに引っ張った。
「ん、なに、あやの?」
「二人っきりになっちゃったね…」
「なってねーよ。ここ教室だっつーの。ほかの生徒めちゃ残ってるだろ」
 みさおはあやののおでこをピシャリと叩いた。


- おしまい -
670 :うだうだ[saga]:2009/04/01(水) 07:15:56.76 ID:Ev2H52M0
以上です。

なんかトラブルがあって、えらく投下間隔が開きました。
すいません。
そして、後書きになに書くか忘れました。
671 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/01(水) 18:40:02.81 ID:ieFP5YDO
>>670



Sみさお良いな
672 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/04/01(水) 19:45:14.54 ID:ROXTKsSO
つかさ「どうしよう、お姉ちゃん……」
かがみ「……」
つかさ「私、取り返しの付かないことを……」

 床に横たわるのは数分前まではこなただった物。

つかさ「どうしよう、こなちゃん……」
かがみ「……隠すわよ」
つかさ「え? だって……」
かがみ「泣かないの! やってしまったことは仕方ないでしょ!? それとも何? あんたは警察のお世話にでもなりたいの?」
つかさ「それは……やだ……」

かがみ「私もつかさが捕まるとこなんて見たくないわよ……」
つかさ「……でも」
かがみ「でもじゃない! ……神社の方の林に埋めるわよ。あそこなら見つからないだろうし」
つかさ「……うん」

 二人で遺体を林まで運んだ。

つかさ「ごめんね。こなちゃんごめんね……ごめんね……」

☆☆☆

みゆき「それが、今日泉さんが学校に居ない理由ですか……」
かがみ「えぇ」
みゆき「何故、私に話したのですか?」
かがみ「みゆきは知っててもいい気がして、ね」

みゆき「……自首してください」
かがみ「……自首?」
みゆき「どんな理由があれ、あなた達は人を殺しました。それも、泉さんを」
かがみ「……こなたには悪いと思ってるわ」

みゆき「そう思う気持ちがあるなら尚更ですっ! 何をしたか分かっているのですか!?」
かがみ「熱くならないでよ。みゆき、今日が何月何日か分かる?」
みゆき「四月一日ですが、それが何か?」
かがみ「つまりそういうことよ」

みゆき「……へ?」
かがみ「言っとくけど、提案したのはこなただからね」
こなた「やふ〜、みゆきさん引っ掛かった〜」トコトコ
つかさ「ごめんね、ゆきちゃん。こなちゃんがどうしてもって言うから……」

みゆき「……」ワナワナ
こなた「おっと、みゆきさん怒っちゃダメだよ? 今日はエイプリルフー、」
そうじろう「実を言うと俺もみゆきちゃんじゃないんだけどな」バリバリ

ΩΩΩ<な、なんだってー!?

673 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/01(水) 21:16:35.54 ID:bgFuaqs0
>>670
見事に百合にぶっ壊れてるww

>>672
予想の斜め上だったww
674 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/01(水) 21:33:07.03 ID:uctYmLEo
>>673
な、なんだってー!?
675 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/01(水) 22:55:01.73 ID:wb/VXEY0
>>665
書き溜めてたものなのか前作とはだいぶ雰囲気が違いますね。
こなたに冷やかされそうなお話にこちらも赤面してしまいます。
自然な会話文(と心の叫び)も読みやすくてグーです。
アンソロとかに載ってても違和感がありませんね(SSスレ初心者向けっぽいお手軽さも◎)。
>>670
それ何処の二次元ドリームマガジン?
終わり方の国語の教科書っぽいぶつ切り感が好きです。
>>672
漫画版ルパンの第1話思い出した。
676 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/01(水) 23:18:09.87 ID:gGIG.4Y0
みさお「うーん困った」
あやの「どうしたの?」
みさお「柊に盛大な嘘ついてきたんだけどさー、ネタばらしする前に今日が過ぎ去っちゃいそうなんだよなー。エイプリルフールについた嘘を次の日にネタばらししたらそれって許されんのかな」
あやの「きっと柊ちゃんなら許してくれるわよ」
みさお「おぉ、そうだよな!」




あやの「ごめん今の嘘」
677 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/01(水) 23:43:29.07 ID:bgFuaqs0
>>666
ども。赤面するかがみの気持ちもわかりますよね。

>>675
おお、お褒めの言葉ありがとうございます。
初心者向けと言われれば確かにそうかも。
いきなりカタいの来たら困るでしょうしね。


>>676
あやのひでえww
678 :kimkim[saga]:2009/04/02(木) 00:25:43.93 ID:bz0WGlY0
初投稿します。
なにもかもが初めてなので期待しないように。
タイトルは 道草
かがみ目線のかがみ語りになっています。
679 :kimkim@道草[saga]:2009/04/02(木) 00:33:38.58 ID:bz0WGlY0
 道草


 衣替えも終わり、そろそろ梅雨になりそうな季節、
 そんなある日のこと、
つかさと一緒に帰宅途中、
自宅の近くにさしかかった時
つかさが急に立ち止まる。
 つかさ「お姉ちゃん」
 かがみ「ん、どうした」
つかさが指差す方を見るとツバメの雛が道の隅に
横たわっていた。
 かがみ「ツバメの雛ね きっと巣から落ちたんだわ。」
私が落ちたツバメの雛の上をみるとツバメの巣があった。
 かがみ「きっとあの巣から落ちたんだわ。」
 つかさ「かわいそう 巣に戻せないかな。」
そう言うとつかさは横たわっているツバメの雛を両手で
やさしくすくい上げた。
 つかさ「動かない 冷たくなってる。」
 かがみ「残念ね もう死んでるわよ。」
 つかさ「このままじゃ かわいそう。」
    「そうだ うちの神社の公園に埋めてくる。」
    「お姉ちゃん 一緒に行かない。」
かがみ「なんで」
 つかさ「一人より二人の方が喜ぶかなって。」
 かがみ「子供じゃあるまいし 二人で行くことないじゃない。」
   「私は帰るわ。」
 つかさ「そう、そう言えばそうね、私、行ってくるね」
そう言うと、つかさは公園に向かっていった。
私は家にそのまま帰った。
しかし帰宅後、何かが引っかかった感じが湧いてきた。
680 :kimkim@道草[saga]:2009/04/02(木) 00:37:25.77 ID:bz0WGlY0
 数日後、よく晴れた日だったが風が強かった。
午前中、つかさ達のクラスと合同で体育の授業が
終わり片付けをしている時だった。
 校庭で私は道具の整理をしていた。
ふと周りを見渡すと
こなたとつかさが立ち話をしているのが見えた。
片付けをサボっているようである。
こなたのやつ、つかさとサボっているな、
 かがみ「おーい こなた つかさ サボってないでこっち来て手伝え」
私は叫んでこなた達を呼びつけた。
つかさはすぐ反応して私に手を振って答えた。
こなたは無反応だった。
つかさは私を指差しこなたと何か話している。こなたを誘っているようだ。
しばらくして、つかさは諦めたのか一人で私の所へ向かってきた。
すると今度はこなたがつかさを呼んでるように見えた。
つかさがこなたの方に振り向くと同時に一段と強い風が吹き付けてきた。
つかさの目の前にあったサッカーゴールが倒れてきた。
間一髪であった、こなたが呼び止めなければつかさはゴールの下敷きになっていたところだ。
ゴールの倒れる音で他の生徒達やや先生が倒れたゴールに集まる。
 授業終了のチャイムが鳴った。
つかさが心配だったが、校庭が慌しかったのと委員会の件で先生に呼ばれていたので私は
片付けを終わらせるとそのまま教室に帰った。
 委員会の用事を済ませるともうお昼休み。
私はお弁当を持ってつかさのクラスへと足を運ぶ。
681 :kimkim@道草[saga]:2009/04/02(木) 00:44:48.04 ID:bz0WGlY0
かがみ「オース お弁当食べましょ」
 こなた「食べよう 食べよう」
 かがみ「みゆきは どうしたの」
 こなた「委員会の用事で先生の所へ行った」
 かがみ「そうか、まだ終わってないみたいね つかさもまだ戻ってないみたいだけど」
 こなた「ああ つかさなら校庭で倒れたゴールの後始末をしてるよ」
    「先生が近くに居る人みんな呼んでいたから巻き込まれたみたいだね」
 かがみ「で あんたも近くに居たのに なぜここにいるんだ」
 こなた「先生に呼ばれなかったからだよ」
 かがみ「嘘つけ 私が呼んだときも無視したくせに ほんとに調子いいわね」
 こなた「まあね」
 かがみ「そこは 認めるのか。」
    「しかし、こなた よく分かったわね。」
 こなた「え 何のこと」
 かがみ「あの時 ゴールの倒れる前につかさを呼び止めたじゃない」
 こなた「そんな予言者じゃあるまいし 分かるわけないよ」
 かがみ「じゃなんで つかさを呼び止めたのよ」
 こなた「ああ あれは呼び止めたんじゃないよ」
    「あまりにも面白かったから つかさに指差して笑っただけだよ」
 かがみ「私もつかさ見てたけど 笑えるようなことあったかしら」
 こなた「かがみは遠くに居たからね 見えなかったんだよ」
    「ツバメの糞がつかさの襟の中にすっぽと入っちゃね」
    「それでつかさが のけぞっちゃってね」
 かがみ「あんたそこまで見てたの」
 こなた「ゲームで鍛えた動体視力をもってすれば」
 かがみ「はいはい 最後はその話かい」
 かがみ「まったく 助けたように見えただけか」
    「危うくお礼を言うところだった」
682 :kimkim@道草[saga]:2009/04/02(木) 00:46:23.46 ID:bz0WGlY0

 こなた「お礼なら 糞をかけたツバメに言うんだね」
 かがみ「ツバメにお礼って 糞をかけただけじゃない。」
 こなた「相変わらずかがみは夢がないというか。少しはつかさを見習わないと。」
 かがみ「そのつかさを見て笑った人に言われたくないわね」
丁度、そこにつかさとみゆきが教室に入ってきた。
かがみ「ごめんね、二人とも、先にお昼食べてたわよ」
 みゆき「おかまいなく、委員会の資料をまとめるに手間取りました。」
 つかさ「やっと片付けおわった。お腹空いた」
    「あれ、こなちゃん、いつの間に教室に戻ってきたの。」
 かがみ「こいつは、つかさを盾にして置き去りにしたわよ。」
 こなた「相変わらず容赦ないね」
 かがみ「さっき、認めてなかったか。」
 つかさ「お姉ちゃん、私、別に気にしてないから。」
 かがみ「まったく、つかさは人が良すぎなんだから。」 
 みゆき「あの事故、つかささん、間一髪の差で泉さんに助けられましたね。」
 かがみ「みゆきまでそう見えるのか」
    「つかさは鳥に糞をかけられて立ち止まっただけよ。」
    「こなたはそれを笑ったのをそう見えただけ。」
みゆき「それにしても タイミングが素晴らしくいいですね。」
 つかさ「これってきっと、あの雛鳥の親のお礼だよ。」
 こなた「雛鳥って何かあったの。」
つかさは、数日前の出来事を話した。
 こなた「そんなことがあったんだ。」
 みゆき「確かにつかささんの言われたとおりお礼かもしれませんね。」
 こなた「うんうん まさに奇跡だね。」
683 :kimkim@道草[saga]:2009/04/02(木) 00:47:38.29 ID:bz0WGlY0
三人はそのまま話が盛り上がっていった。
私はしばらく三人の会話をただ聞いていた。
 つかさが雛の話をしたときから雰囲気が変わったのは分かった
特にこなたの変わり様には驚いた。
おそらくつかさと同じ心境になっているだろう。
子供じみたたわいもない出来事、
そんな話に華を咲かせている。
私は退屈になり、ふと窓の外を見る。
校庭に植えられている木々が静かに立っている。
体育の授業であれだけ吹いていた風はもうすっかり無くなっているみたいだ。
そしてその木々の間をツバメが頻繁に飛び交っている。
どうやらこの校舎にいくつか巣があるようだ。
これだけツバメがいれば糞の一つや二つは人に落ちても不思議じゃない。
三人の会話が理解できなかった。
突然、数日前と同じ感じがよみがえる。
つかさが雛を埋めに行くと言って別れた時、感じた何か引っかかったような感じ。
 昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。
もやもやした感じが残ったまま、私は三人と別れ自分の教室へ戻った。
684 :kimkim@道草[saga]:2009/04/02(木) 00:49:17.67 ID:bz0WGlY0
 その日の下校時。
駅を降りつかさと二人でいつものように家路を通っていた。
私は昼からどうも気分が優れない。
さっさと帰りたい気持ちのせいか、
家路への足取りが自然と速くなっていく。
そんな私につさが話しかけてくる。
 つかさ「お姉ちゃんどうしたの」
 かがみ「どうたって、何が」
 つかさ「お昼の途中から急に黙っちゃって、今もだけど」
    「こなちゃんも突っ込まないからおかしいって言ってたし」
 かがみ「あいつは私を何だと思ってるのか、」
    「別に、何の変わりもないわよ。気のせい」
 つかさ「それならいいんだけど」
しばらくつかさは何かを考えているように沈黙した。
そして、何か決心するかのように私に話しかけてきた。
 つかさ「これから 体育の時のお礼をしに雛の所に行こうと思うんだけど。」
 かがみ「お礼って、なんで。」   
 つかさ「あのままだったら下敷きになってたし 奇跡だよ」   
 かがみ「奇跡って つかさ あの雛が居た巣から学校までどれだけ離れてるのよ」
    「ほとんど家からと同じ距離じゃない、いくら渡り鳥だからって」
    「そこまで遠くに行かないでしょ」
    「それにつかさが陸桜に居るのをどうやって知ったの」
    「それに、いつまでもそんな事いって」
    「もうすぐ受験でしょ。もうそんなこと考えている余裕なくなるわよ」
もうこのこの事について話すのはもうたくさんだ。
私は少し怒り口調でつかさをたしなめた。
つかさは黙り込んでしまった。
しばらく沈黙が続いたが、口を最初に開いたのはつかさの方だった。
 つかさ「お姉ちゃんも一緒きてほしいな。」
 かがみ「あの雛を埋めてあげたのはつかさじゃない、それに助けられれたのはつかさでしょ」
    「私なんて関係ないじゃない」
    「行くだけ無駄よ。」
雛を見つけた時と同じように私は断った。
こうなることはつかさなら分かるはず、
それなのに誘うつかさが理解できなかった。
ここまでくると当て付けがましくも受け取られる。
 程なく公園への分かれ道にさしかかり、私たちは別れた。
後姿がどことなく淋しくみえたが、気にもとめず家路を急ぐ。
なぜか急にイライラしてきた。
685 :kimkim@道草[saga]:2009/04/02(木) 00:51:30.02 ID:bz0WGlY0
つかさと別れて家路を歩いていると突然、私の首筋に生暖かい感覚が走った。
立ち止まり、すぐさま手を首筋に触れて確認した。
手には白い塊と黒い粘りのある液体が混ざっている。
空を見上げるとツバメが飛んでいた。
鳥の糞。
身の危険を感じとっさに中腰になり構えた。
・・・何も起きない、時間だけが空しく過ぎていく。
私はあの事故のことを無意識に思い出していたようだ。
私は手を見た。
汚い、やられた、手がベトベトだ。
私はハンカチで手を拭う、首筋は見れないがおそらく汚れているだろう。
お気に入りのハンカチは汚れてしまった。
そして無駄な行動までさせたツバメに怒りがこみ上げてきた。
    「なんて事するのさ」
思わず空に向かって叫んだ。
しかしツバメはどこにも見当たらない、飛び去っていた。
私は恥ずかしくなり辺りを見渡した。
誰も居なかったことを確認するとほっと胸をなでおろした。
 私は何をしたのだろうか。
体育の授業につかさに起きたような事が起きるのではないかと
期待していたのだろうか。
ばかばかしい、
今日はついてない。
早く帰って汚れたハンカチを洗わなくては。
私は家帰ろうとしたが、数日前のことを思い出す。
ここは、つかさが雛を見つけた所だ。
そして近くに巣があることを思い出した。
するとツバメが飛んできた。
さっきのツバメだろうか、
私はツバメの後を目で追うとツバメはその巣に入っていった。
雛に餌をあげると、またどこかに飛び去っていく。
するとまた餌をくわえたツバメが交代するように巣に入る
雛たちはしきりに餌をねだって首を伸ばして
親に餌をねだっている。
いつの間にか、私はその様子をしばらく見入っていた。
686 :kimkim@道草[saga]:2009/04/02(木) 00:54:21.49 ID:bz0WGlY0
 どこにでもあるようなツバメの子育て風景。
ほんの数日前、自分の子供が巣から落ちて
息絶えた事など忘れてしまっているようにない忙しさだ。
落ちた雛は即死だったのか、それとも苦しみながらだったのか、
親は助けようとしたのだろうか。
今、巣を見ても何もその時の状況をうかがい知ることはできない。
こんなに巣の近くに居たのに、身内にすら忘れられた雛鳥の死、
私はいつの間にか目から涙が出ていた。
 あの時、雛を見つけたとき真っ先に手にとってやりたかった。
死んでいると分かった時、雛を埋めてやりたいと思っていた。
そして、冥福を祈ってやりたかった。
今になって強く感情が湧き出してくる。
 
 あの時のつかさはこんな気持ちだったのか。
つかさの気持ちになってはじめて気が付いた。
こんな気持ちになっているのに、それをたしなまれたり、
否定されたら、どれほど辛いか。
私は、散々なことをつかさに言っていた。
そんな私につかさは一度も反攻する態度をとっていない。
それどころか、つかさは雛を埋めに行き、
そしてさっきも、お礼をすると言って別れた。
今まで黙って耐えていたのだろうか。
 親鳥は交互に餌を巣に持ち帰えり、
雛鳥たちは餌をねだっている。
雛鳥達の鳴き声が切なくこだまする。
まるで私を非難しているように思える。
 確かに悪いのは私、
ここで立っているだけじゃ何も変わらない。
公園の分かれ道まで戻り、つかさを待とう、
そして謝ろう。
687 :kimkim@道草[saga]:2009/04/02(木) 00:55:55.35 ID:bz0WGlY0
  「なにしてるの」
 
 突然、後ろから声がした。
驚き、後ろを振り返る。
つかさだった。
 用が済んで戻ってきたようだ、別れてからかなり時間が経過していたようだ。
私がまだここに居ることが不思議に見えたようだ。
 つかさ「首筋によごれが付いているよ」
心配そうな顔で私をみている。
あまりに急で声が出ない。
まごついてると、つかさは笑顔で言った。
 つかさ「お姉ちゃんもツバメに助けられたんだね」
 かがみ「え、なんで」
 つかさ「だって、お姉ちゃんの首筋に付いてる物、それにここは、雛が倒れてた所だし、」
    「これだけで奇跡だよ」
まるで自分のことのように喜ぶつかさ。
 かがみ「何もないわよ、糞をかけられただけよ」
    「そのせいで、足止めされて・・巣を見て・・・」
話すのが止まり、頭の中で続いた。
そのせいで、私の本当の気持ちに気が付いた。
そのせいで、つかさの気持ちが分かった。
そのせいで、謝るべきつかさが今、そこに立っている。
そう、そのせいで私は助けられた。
つかさの言う奇跡の意味が分かった。
あまりにも簡単だった。
今までの出来事が全て奇跡にのように思えてきた。
私は、すでに奇跡の中にいることに、気が付いた。
突然、止まっていた涙がまた湧くように出てきてしまった。
抑えようとしても涙が止まらない。
私は耐えられなくなり、つかさにもたれかかって泣き崩れた。
つかさは、そんな私をやさしく受止めてくれた。
そして私の首筋の汚れをふき取ってくれた。
そのまま私の手にハンカチを渡してくれた。
まるで私がなぜ泣いているのか分かっているようだった。
ただ、黙って私を泣かせてくれた。
私はつかさのやさしさに甘えているしかできなかった。
688 :kimkim@道草[saga]:2009/04/02(木) 00:57:18.87 ID:bz0WGlY0
 どのくらい時間が経ったか、
私は我にかえった。 
つかさは私に対して何も怨んでも、怒ってもいない。
それどころか喜んでくれている。
そんなつかさに謝ったって意味は無い。
でも、私なりに今までの清算がしたい。
 私はつかさから離れた。
つかさに渡されたハンカチを返す。
そして、自然と口が開く。
「私も雛の為に祈りたい。」
    「つかさも一緒に来てれないかしら、場所も分からないし、」
    「それに、一人より二人の方が喜ぶかなって」
つかさはそれを待っていたかのようにうなずく。
  雛の為に祈る。
たったこれだけの事をするのに私は長い道草をしてしまったようだ。
 つかさはツバメの巣の方を向き手を振りながら、
    「ありがとう」
そう言うと公園の方の道へ体を反転させて、進みはじめた。
振り向きざま、つかさの目に光るものをみた。
そんなつかさを見て、私も巣の方を見て心でツバメたちに語りかけた。
    分かってるわよ、今日の事は全てつかさのためにしたことくらい、
    お礼は亡くなった雛とつかさにって言いたいんでしょ。
でも、救われたのは何もしていない私の方だったかもね。
    だから、せめてお礼を言わせて、
   「ありがとう」
まとわり付いていたわだかまりは、涙と共に消えていた。
そして、淡い悲しさだけが残った。
そんな私に風がやさしく通り過ぎていく。
私は大きく深呼吸を一回してつかさの後を追った。

   終
689 :kimkim[saga]:2009/04/02(木) 00:59:15.83 ID:bz0WGlY0
 お粗末でした。
今の自分ではこれが精一杯です。

 雛の死については自分の体験が少し入ってます。
子供の頃、雀の雛を拾ったけどすぐに死んでしまいました。
子供心に切なくなったことを覚えています。
大人になり、ふと思い出すとあの時よりも深い悲しみが
こみ上げてきた。
そんな心境を表現したかったです。
 あの時、何も出来ずに死んだ雀の雛へ
今更ながらですがこのSSをそんな雀の鎮魂に
なればと思いこのSSを作りました。 

 最後まで読んでいただきありがとうございました。
690 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/02(木) 01:30:54.82 ID:Ldl4uOM0
>>689
いい話だね。
SSを書くのも初めてって言うのならこれはすごい。
691 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/02(木) 19:39:58.17 ID:ELuzeAAO
風呂上がりのそうじろう。
「ふんふふーん、お風呂開いた……、ん?」
居間にいるこなたとゆたかにそう伝えようと、扉のノブを捻ろうとしたところで

「んっ……、お姉ちゃん、き、気持ちいいよ……」
「痛くない?ゆーちゃん」
「大丈夫だよ……。気持ちいい……」
「ハァ……ハァ……、なら、もっと気持ちよくさせてあげるね……」
「アッ、アッー、……気持ちいいの」
「ふふ……。ゆーちゃんここがいいの?」
「うん……、そこっ、そこが気持ちいい……。もっと、もっともんでよ……」
「ふふ……。ハァ……ハァ。仕方ないなあ……」
「んっーーー」
「ゆーちゃん、次は、指二本でいくよー……」
「ふ、ふわあぁ……」

これを聞いていたそうじろうは、顔を赤くした。
「まっまさか、こなた……、ゆーちゃん?」
692 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/02(木) 19:47:16.20 ID:ELuzeAAO












「あれ?ハァ……フゥ……。お父さんの声がした?」
「……え?おねえちゃんは聞こえたの?」

「し、しまった……」

「ちょうどいいや、お父さんも呼ぼうよ」
「うん……、そうだね。読んで来るよ」

「マズい!?……。く、俺も男だ!いやそれ以前に父親だ!ダメだろ俺!」











693 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/02(木) 20:00:40.87 ID:ELuzeAAO
ガチャ、と扉の開く音。
そして石となったそうじろうの目の前に現れたのは、あられのない姿のゆたか……。









ではなく、ちゃきんと普段着を着たゆたかだった。

「はっ?はっ?ひいーっ?あ、あれ、ゆーちゃん!?」
「やっぱりおじさんだ!お姉ちゃんがマッサージをしてくれるんですよ」
「ま、マッサージ!?俺は結構、弱いんだよ……」
「弱い……?」
「お父さん!ゆーちゃんの何を考えてるのさ!肩や背中をもんであげるだけだよ」
「あ、アハハハハ……。そうだよな」
扉の前で崩れるそうじろう。
「はあまったく……。ちょっとゆーちゃんどいて?ほらお父さん、ここを指一本でグイッと!」
「アッー!痛い、痛いぞこなた」
「おっ、おじさん大丈夫ですか!?」


こうして、泉家の夜は過ぎていった。
694 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/02(木) 20:12:04.76 ID:ELuzeAAO
お風呂上がりのひよりが、机の上に開かれたノートとにらめっこしていた。

「うーん、やっぱり自重しきれないッスよ!私の腐女子魂がおさまらない!
ダメ、先輩や小早川さんには悪いけど、こんなオチじゃ私の気がすまない!腐腐腐腐……
。さあ、そうじろうさん、あなたの目の前に現れたのは、あられない姿の……。
イーッヒッヒッヒッヒ!」

こうして田村家の夜が過ぎていった。
695 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/02(木) 20:17:58.65 ID:ELuzeAAO
>>691-692でいかがわしい事考えた人挙手!
お前らはそうじろうと同類か、俺と同じ変態だ!


関係ないけど俺の携帯で「ふじょし」を変換したら
「婦女子」ではなく「腐女子」が一発で出てきた。

俺のWOOO携帯、どうなってんねん
696 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/02(木) 20:45:04.06 ID:HkQYHKM0
>>689
繊細な文章だとは思いましたが実体験でしたとは。
優しい読後感に加え、柊姉妹の特徴を捉えた表現も巧いです。
終盤の交錯するかがみの想いは見事の一言。
挿し絵付で読みたい作品です。
>>694
〜翌日〜
こう「・・・おまえなんだコレ・・・?」
ひより「せせせ先輩!こっこれは・・・」
こう「まだまだエグさが足り〜ん!」
ひより「ギャフン!」
697 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/02(木) 20:46:24.51 ID:vVKo.sSO
>>695
そうじろうならこれくらいはヤル。多分。


−お約束−

こなた「暑いんだから、あんまりひっつかないでよ〜」
そうじろう「いいじゃないか。スキンシップだよ、スキンシップ」
こなた「…お父さん…なんかさ、背中のあたりにさ…」
そうじろう「当ててるのよ」
こなた「………」



ゆたか「こなたお姉ちゃん、どうしておじさん天井から逆さまにぶら下がってるの?」
こなた「あー、気にしないで。ただの毒抜きだから」
698 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/02(木) 20:49:28.49 ID:Ldl4uOM0
>>695
考えちまったよ……
ひよりの妄想オチ久しぶりに見たww乙
699 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/04/02(木) 20:49:53.00 ID:tLEhJsI0
>>689
乙。しかし、とても特徴的な書き方ですなぁ
変にこなれてない文体が逆になんともいえない不思議な雰囲気を醸しだしてて面白い
こういうのキライじゃないぜ

>>695
展開に予想はついたが、あえていかがわしい事を考えさせてもらいましたw

>>697
こなた手加減無しだなw
700 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/04/02(木) 21:36:43.82 ID:tLEhJsI0
スレの流れに触発されてちょっと書いたので投下。2レスほど汚しますよっと
タイトルは『ろりぃたこわい』
701 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/04/02(木) 21:37:32.51 ID:tLEhJsI0
「ねえねえ、みゆきさん。最近かがみの行動が目に余ると思わない?」
「かがみさんの行動、ですか?」
「そう。昨日の勉強会の時なんかみゆきさんの胸を揉みしだいてたじゃん?変態まるだしってカンジで」
「あれはかがみさん流の挨拶というか、軽い冗談ではないのですか?」
「いや、絶対違うヨ。あの時のかがみの目はケダモノの目だったからネ」
「そうだったのですか。だとしたら、少々困りものですね」
「つかさはどう思う?」
「う〜ん……たしかに家では私にべったりだけど、小さい頃からそうだったから……よくわかんないや」
「そうなんだ」

「こなちゃんはどう思ってるの?」
「むー……仲良くしてくれるのは嬉しいんだけどサ、スキンシップがちょっと過剰だよね」
「カジョー?どういうこと?」
「ほら、いつもキスさせろとかなんとか言いながらいろんなところ触ってきたりするじゃん?ね、みゆきさん」
「はい。とてもかがみさんらしい行動だと思いますが」
「そうなんだけどさ、やっぱり人前でってのはやめてほしいんだよね」
「そういえば、最近はところかまわずってカンジだよね」
「でしょ?だからさ、これ以上調子に乗る前に懲らしめておいた方がいいと思うんだ」

「懲らしめる?お姉ちゃんを?」
「うん。ちょっとここらで反省してもらわなきゃダメだと思うんだ」
「しかし、どうやって懲らしめるつもりなんですか?」
「う〜ん……問題はそれなんだけど……つかさ、かがみが怖がるような何かって知らない?」
「急にそんなこと言われても、思いつかないよ〜」
「そっか。困ったなぁ……どうしたらいいと思う、みゆきさん?」
「悩んでも仕方ありませんし、いっそのこと本人に聞いてみてはどうですか?」

 ☆

「かがみ、ちょっといいかな?」
「んー?どうしたの、こなた?情熱的なキスでもしにきてくれたの?」
「いや、そうじゃなくって、聞きたいことがあるんだけど」
「今日の晩なら空いてるわよ?遠慮せずにいつでも私のベッドにくるといいわ」
「いや、そうでもなくて……かがみってさ、なんか怖いものってある?」
「私の怖いもの?それを聞いてどうするつもりなのよ」
「べ、別になにもしないよ」

「ふーん……ま、いいわ。そうねぇ、私の怖いものっていったら、小さい女の子かしらね。小さい上に可愛いかったりしたら、なお怖いわ」
「へ?そうなの?」
「ええ。そんな子が隣にいるって想像するだけで気分が悪くなって倒れてしまいそうになるわね」
「でも、私だってちっちゃいじゃん」
「それはつまり、怖くないギリギリのラインがあんたなのよ。あんたより小さい子だなんて……ああ、怖い怖い。ちょっと保健室にでも行こうかしら」
「へぇー。ふーん。そーなんだー」
「教えてあげたんだから舌ぐらい入れさせなさいよね」
「嫌だよ。なんでキスすることが前提になってるのさ」

 ☆
702 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/04/02(木) 21:38:05.36 ID:tLEhJsI0
「おーっす、こなた。遊びに来たわよー」
「こなちゃん、おはよー」
「泉さん、おはようございます」
「やふー。みんなよく来たね、さ、あがってあがって」
「おじゃましまーす」
「さあさあ、私の部屋へどうぞ。ほら、かがみ、早く早く」
「わかったからそう急かすなって」

「あ、そうだ。飲み物とお菓子を持ってこなきゃ。悪いけど、つかさにみゆきさん、手伝ってくれるかな?」
「うん。いいよー」
「はい。わかりました」
「私も手伝おうか?」
「あー、大丈夫。かがみは座ってくつろいでてくれてたらいいから」
「そう?じゃあ、お言葉に甘えようかしら」

「これで泉さんの計画どおり、かがみさんを部屋に独りにすることができましたね」
「こなちゃん、これからどうするの?」
「ふっふっふ。かがみが怖がるあるモノを投入するのだよ」

 ☆

「ひ、柊先輩、おはようございますっ!失礼しますっ!」
「うわっ!?……ゆ、ゆたかちゃん?急に抱きついてきたりしてどうしたの?」
「す、すみません。でも、こうしろってこなたお姉ちゃんに言われたものですから」
「ふーん……なるほどね」
「ほ、本当にすみません」

「……ああ、困ったわね、どうしようかしら。小さくて可愛い女の子がこんなに近くにいるわ。こんな怖いことがあっていいのかしら」
「ひ、柊先輩?」
「ああ、怖い怖い。もしゆたかちゃんを自由にしてしまったらどうなるかわかったもんじゃないわ。だから強く抱きしめておかないと」
「く、苦しいです、先輩」
「ああ、怖い怖い。そんな可愛い声、聞いているだけで気が狂ってしまいそうだわ。だから唇を封じておかないと」
「せ、せんぱ……んむっ……ぷはっ……」
「ああ、怖い怖い。この胸の膨らみの無さが私の不安を加速させ、怖くてたまらなくなるわ。だから目に映らないように手で隠さないと」
「あっ……先輩、そこはっ……んっ……」
「ああ、怖い怖い。――(さすがに自主規制)――だわ。――(やっぱり自主規制)――しないといけないわね」

「ちょおっと待ったぁー!!そこまでっ!さすがにそこまででストップだよ、かがみっ!」
「ちっ、いいところで……何しにきたのよ、こなた?」
「ゆーちゃんを助けに来たんだよ。あの時、小さくて可愛らしい女の子が怖いだなんて言ってたけど……私を騙したんだね、かがみ」
「あ、バレちゃった」
「そりゃ、バレるよ。すごく嬉しそうだったもん……ねえ、かがみ、せめて最後に本当に怖い物がなんなのか教えてほしいんだけど?」

「そうね……やっぱり私はこなたが怖いわ」
「ふぇ?……アッー!!」
703 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/04/02(木) 21:39:40.01 ID:tLEhJsI0
以上です。落語の「まんじゅうこわい」が元ネタ
地の文を書いたら時間かかるしえっちくなるだろうから、敢えて会話のみ
久々に変態を書いてみたら楽しくってしょうがないwもうダメだ、俺はw


遅くなったけど>>619に感想くれた人、ありがとうでした
あと、誰かこんな俺にお題をくれたら嬉しいかも
704 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/02(木) 22:00:06.11 ID:Ldl4uOM0
>>703
これぞへんたいかがみの真骨頂wwww
最初の四分の一くらい読んでから元ネタに気付いたがオチwwww
705 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/02(木) 22:01:54.11 ID:bJEnxGg0
>>703

『かなたとみきの母親会談』
706 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/02(木) 22:25:34.98 ID:vVKo.sSO
>>705
それ『怪談』にならね?
707 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/02(木) 22:35:11.97 ID:ELuzeAAO
>>706
え、『階段』ですか


>>703
「困難書きましたが、どうっスか?こうちゃん先輩」
「えー、アダルトな感じが足りないすぎでしょ?」
「あ、アダルトって」
「確かに萌えはあるけどさ、なんかさ、それだけじゃん。まず、自主規制いらないね」
「えっ、とっちゃっていいんスか」
「いいのいいの!んでもって、更にリアリティを!」
「自主規制なし、リアリティ……。き、来た来た来た!先輩!私になんか降りてきたッスよ!」
「よし!書けっ、我が道を行けェェー!!!!」
「うす!!!」
708 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/02(木) 23:13:05.98 ID:je3gKIY0
>>707
その後、その原稿を偶然ゆたかとみなみに見られ、絶交されるひよりであった……
709 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/02(木) 23:25:56.25 ID:4W4PxEDO
>>708
ひより「ふぁ〜あ眠いっす…なんとか締切に間に合ったけれどもう無理っす」

ゆたか「おはよーみなみちゃん!」

みなみ「おはよう、ゆたか」

ひより「あ、小早川さん、岩崎さんおはようっす」

ゆたか「ねぇみなみちゃん昨日のアレなんだけど」
みなみ「うん」

ひより「あ、あれ?無視っすか?…あのおはようっす岩崎さ」

みなみ「私に触るな!潰すぞ」

ひより「ひっ!こっ小早川さ」

ゆたか「なぁに?人間様に何か用?蟲ケラ^^」

ひより「っ!?」

ゆたか「行こっみなみちゃん」
みなみ「うん」
710 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/02(木) 23:32:34.25 ID:je3gKIY0
>>709
つかさ「↑……というネタをねー」
ひより「……笑えないっス」
つかさ「使わないならいいよ〜ゆたかちゃんとみなみちゃんを勝手にモデルにしていること二人に言っちゃうから」
ひより「っ!?」

711 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/02(木) 23:33:38.71 ID:30WQuISO
>>703
分かっていたwwwwww
分かっていたのに吹いたwwwwww

お題まだ募集中なら「越えられない壁」
712 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/03(金) 01:59:05.20 ID:BTx.HrQ0
---------------------------------------------------------

まとめた
ああ、疲れた

一部画像を含むレスはまとめ方わからないので誰かプリーズ

---------------------------------------------------------
713 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/04/03(金) 02:08:38.00 ID:bvMjCQSO
−まとめ人への感謝の気持ちMX−

かがみ「前から思ってたんだけど、タイトルのアルファベットは何?」
こなた「考えたら負け」
かがみ「…さいですか」
こなた「というわけで、今回は感謝の気持ちを込めて、十字架につかさを張り付けておきました」
つかさ「ふぇ〜ん!」
かがみ「人の妹に何をしているんだお前は」
こなた「かがみ…棒読みな上に、その差し出した手はなに?」
かがみ「…さて、何かしら?」
こなた「いいのか?弁護士志望…まあ、いいけど…ほい、これ」
かがみ「OK…じゃ、わたしは寝るから」
つかさ「お姉ちゃーん!?…うぅ、勝手にポッキー食べたの怒ってるのかな…」
かがみ「…今、なんつった?」
つかさ「え?あれ?…ば、ばれてたんじゃないの?」
かがみ「…こなた、これは返すわ…」
こなた「え、どうして?」
かがみ「わたしがやらなきゃいけない理由ができたわ」
つかさ「あ、あう…ごめんなさい…」
こなた「ほ、ほどほどにね…」


(お見せ出来ません)


かがみ「ふう…ま、これくらいでいいわ」
つかさ「………」ビクッビクッ
こなた「…あ、あう…あう…」ブルブルブルブル
714 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/03(金) 06:06:06.55 ID:42yBWEDO
>>703
鱈ちり
河豚ちり
豚しゃぶ
715 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/03(金) 10:20:20.78 ID:JyMvuzA0
>>703
『自業自得』
716 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/03(金) 16:46:38.34 ID:mcYKM/E0
>>703
修羅場
717 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/03(金) 18:44:15.37 ID:BT36LzY0
>>703
早く帰ってこないとどんどん増えるぞwww
718 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/03(金) 21:55:05.14 ID:2YimV660
>>703
かがみ甘えモード(相手は誰でもいいや)
719 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/04/03(金) 22:13:38.40 ID:.JsN5nY0
>>712
まとめ乙です!手伝いたいが、画像のまとめ方は俺もわからないんだ……スマン

>>717
どう見ても手遅れですw本当にありが(ry


>>703です。みんなお題ありがとー
っていうか、逃げたくなるくらいお題が多くてびっくりしたわw
しばらくお題に困ることはなさそうだな、コレは
720 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/03(金) 22:29:45.49 ID:BTx.HrQ0
>>713
サンクス。毎度ひそかに楽しみにしてます

はりつけられたつかさは貰っていいのかな?ww
721 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/03(金) 23:19:16.74 ID:faCJOUSO
>>720
何を言っている?
つかさは俺の横で寝てるぜ
722 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/03(金) 23:26:36.29 ID:9kZZuUDO
「私の名前は泉こなた、人呼んで笑ゥこなちゃん、ただのこなちゃんじゃないよ、私が取り扱う品物は心、人間の心だよ(両手は3本指でキメっ)」

「この世はさ、老いも若きも男も女も心のさみしい人ばかりじゃない?そんな皆の心のスキマを埋めるのが私の仕事」

「いえいえ、お金は一銭もいらないよ?お客さまが満足されたらそれが何よりの報酬だかんね、さてと今日のお客さまは…」

かがみ「ん?なに?」

「おーほっほっほっほっ…(手の甲を口元へあてるお嬢様風に)」



で?っていう…orz
723 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/03(金) 23:35:31.00 ID:bvMjCQSO
>>720
>>721
踊り子には手を触れないようにお願いします。
724 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/03(金) 23:55:06.65 ID:JyMvuzA0
>>720
つかさはへんたい化したみwikiさんがおいしくいただきました
725 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/03(金) 23:59:41.58 ID:DbEEl6SO
>>722
ドーンm9(^∀^)
726 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/04(土) 00:01:02.85 ID:DaCZIQSO
OPのこなたのダダダダダーって笑うセールスマンだよな
727 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/04/04(土) 01:05:22.43 ID:puXAXsAO
「わーい!こーなたー!」
「ちょっとかがみ!急に飛び出して来ちゃ危ないって!トラック来てるよ!あ・・・・・ダメ!かがみいぃぃぃぃ!!」

ズシャー

かがみが交通事故で亡くなってから半年が経った
私はあの日から、ずっと謎の視線に悩まされている
私しかいないはずの部屋に、何処かから、何者かに見られてる気がするのだ
自室に限ったことじゃない、学校で授業中の教室、廊下、グラウンド、トイレ・・・

そして、つかさ、みゆきさんといっしょに柊家で勉強会をしている今日もそれは例外ではなかった
「ねぇ、つかさ・・・。この部屋には・・・本当に私達以外の誰もいないよね・・・」
「何言ってるのこなちゃん。誰がどこに隠れてるっていうの?」
「そうだよね・・・ハハハ・・・」

いや、そんなことはない

誰かが・・・誰かが後ろで、私を睨んでる・・・
振り向・・・けない

怖い

振り向きたいけど・・・振り向いたら・・・二度と戻ってこれない・・・
そんな気がして―――


「――なちゃん?こなちゃん?携帯、鳴ってるよ?」

つかさの呼び掛けで、私はフッと我にかえった

「あ、ありがとうつかさ」

私は携帯を開いた
メールだ

送信元は・・・

「ヒィッ!」
「どうかしましたか?泉さん」

そんな馬鹿な!

なんで・・・

なんで・・・かがみからメールが!?
728 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/04/04(土) 01:08:30.12 ID:puXAXsAO

『なんでこっち向いてくれないの?』

メールには、そう書かれていた

ということは、やっぱり、後ろにいるのは・・・

!!!

かがみから、電話!

「嫌だよ!もうやめてよおおおぉぉぉ!」


携帯の電源を切った

だが、ハッキリ見てしまった

電源が切れ、暗くなった携帯の画面に写り込んだ私の後ろに立つ死んだはずの柊かがみを!!!

「キャアアアアアアアアア!」

私は部屋を飛び出ようとした

ガシッ

「ダメだよこなちゃん・・・ちゃんと、勉強おわらせないと・・・」
「そうですよ泉さん・・・逃げないでください・・・」

つかさ!みゆきさん!

「お願い離してえぇぇぇぇ!」

だが、全く離すつもりはないらしい


そして気がつけば、かがみは私の背中に覆い被さっていた


「イヤアアアアアアアアアア!!!」


ゆたか「うわあ・・・恐いねこのお話」
ひより「まだ未完成で続きがあるんだけどね・・・」
パティ「Oh!どんなお話なんデスか?」
みなみ「私も知りたい」
ひより「仕方ないなー。特別だよ?」
ゆたか「うん」
ひより「あのあとこなたに覆い被さっていた幽霊かがみは、こなたの×××を×××してさらに×××を×××してつかさが後ろから×××××―――」

よかったよかった
729 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/04/04(土) 02:36:59.04 ID:nvHMvESO
ひより「最近、わたし輝いてるッスねー










生命保険、入っといた方が良いかな…」
730 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/04(土) 09:44:46.07 ID:FIKJ2YSO
>>729
そして事故死ですねわかります
731 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/04(土) 10:02:33.47 ID:qoauUYEo
>>729
わーい!こーなたー!
の時点で吹いたわwww怖いけど怖くねぇww
732 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/04(土) 11:37:41.08 ID:5AqH/Mw0
>>728
その後のひよりの運命は
かがみからフルボッコ→>>709

ひよりん\(^o^)/オワタ
733 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/04(土) 21:11:33.03 ID:MPrc08s0
やっつけ
ttp://up2.viploader.net/pic/src/viploader968354.jpg
734 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/04(土) 23:32:57.43 ID:rFSBuUg0
>>733
柊姉妹かww
いいこと言ってくれてるような気もするけど馬鹿にされてるよう見えるww
735 :こなたん達が3次元に来てしまったようです2009/04/05(日) 04:14:35.45 ID:V4qp1ac0
第7話 罠


夜の秋葉原。
明るい電気街から少し外れた場所。
暗がりの中に佇む廃ビルの前に私は立っていた。
一見したところ、周りに人はいないようだ。

それを確認してから私は持ったままだった携帯に再び耳を当てる。

「もしm『あら、泉ちゃん。あなたの方から来てくれたの?』

私が発言しようとするや否や、峰岸さんが優しく問いかけてきた。
優しく、言っても私にとってはものすごく不気味に聞こえるのだけれど。

私は再び辺りを見渡した。
先ほどの言動から察するに、向こうから私の姿は見えているということになる。
しかし、人影みたいなものは見当たらない。
暗がりの中、シーンとした風景がより一層不気味さを醸し出す。

「・・・みんなはどこ?」

『大丈夫よ、そんな心配しなくても。今はまだ、何もしてないわ』

「どこって言ってんの」

『あ〜ら、怖いwwそんな怖い顔しないでよ』

「っ・・・!!ふ、ふざけないでよ!」

会話をしている時も私はしきりに辺りを見渡し、峰岸さんの影を探っていた。
向こうにだけ自分の居場所が知れているのはなかなかよろしいこととは言えない。

『泉ちゃん、どこ見てるの?』

「っ!?」

『上よ』

言われて私は素直に上へと視線をめぐらした。
廃ビルの窓から顔を少し覗かせているのは、紛れもなく峰岸さんだった。
もちろん耳に当てているのはかがみの携帯だ。

『ふふっ、いい度胸ね泉ちゃん。感心したわ』

「・・・峰岸さん」

『歓迎するわ。さあ、入ってきていいわよ?』

「・・・」
736 :こなたん達が3次元に来てしまったようです2009/04/05(日) 04:15:23.40 ID:V4qp1ac0
ここは素直に峰岸さんの言うことを聞くべきだろうか?
いや、けど普通に考えて何か罠があるかもしれない。
迂闊に行動するべきではない。

私はしばらく立ち往生していた。

『柊ちゃんたちも、私も3階にいるわよ』

・・・みんな。

私は意を決した。
携帯の電源ボタンを押して通話を切った。
それから廃ビルに1歩1歩近づく。

みんなを取り返さなきゃ・・・!
そのために、来たんだから。

廃ビルに入った。
しかし私の心配とは裏腹に何もなく、あっさりと3階にたどり着いた。
狭いフロアにでっかいランプが煌々と光っており、私は一瞬目を細めた。

「ふふふ、来たわねww」

峰岸さんの声が前方から聞こえたかと思うと、目の前に現れた。
思わず私は身構えて、微笑している峰岸さんを睨んだ。

「こなた!!」

突如かがみの声が聞こえた。
峰岸さんの後方、かがみ、つかさ、みゆきさんが壁に寄りかかって座っている。

「みんなっ!」

私は視界に3人の姿を認め、一瞬安堵する。
鎖で手の動きを封じられているが、意識はちゃんとあり、外傷もなさそうだ。

私はフロア内を軽く見渡した。
私、峰岸さん、そしてかがみたち3人以外人はいない。
驚いたことに峰岸さん陣営の人たちは見受けられない。
てっきり私を誘いだして捕まえようとすると思ってたんだけど・・・。
それとこのフロア内を照らすランプが置かれていて、その近くに3人のフィギュアとらきすたの単行本が置いてある。

それからまた私は峰岸さんに視線を合わせて睨む。
今、敵は峰岸さんただ1人だけだ。勝算はある。
まずは話合おう。みんなを解放してもらって、原作者についての情報ももらう。
それがダメならば、止むを得ないが、実力行使も考えられる。
737 :こなたん達が3次元に来てしまったようです2009/04/05(日) 04:15:59.67 ID:V4qp1ac0
「こなた、だめ!逃げて!!」

そう思案していると、かがみの声が耳に飛び込んでくる。

「・・・えっ」

予想外の言葉に、私は声を漏らす。
逃げる?・・・どうして?今がチャンスなんじゃ・・・

峰岸さんはポカーンとする私に背を向け舌うちしながら、軽くかがみを睨みつけた。
かがみはそれを睨み返す。つかさは横で目に涙を溜めた。

「罠です!!」

今度はみゆきさんが叫んだ。

「・・・罠?」

私は一瞬思考停止。
え、だってこのビルには今私たちしか・・・アレ?

「しょうがないわ・・少し予定が早まったけど、作戦決行!!」

峰岸さんが機嫌悪そうに叫んだ。
あれ、なんか・・・やば、そう。

「こなちゃん、逃げてーっ!!」

つかさの発言を聞いた瞬間、私は反射的に動いていた。
猛スピードで元来た階段を駆け降りる。
しかし2階まで下りた時、私は思わず急停止した。
1階から峰岸さん陣営3人は上って来ているところだった。

「逃がしはせんぞwwwwこなたん^^」

私は冷や汗がどっと出てくるのを感じた。
そして元来た階段を駆けのぼる。
再び3階に戻って来た。
しかし、3階にも既に峰岸さん陣営が数人いたのである。

「・・・っ!」

「逃げ場はないわよ、泉ちゃん。諦めなさい」

先ほど遭遇した僕たちも3階に到着し、私は出入り口を塞がれた。
狭いフロア内を後ずさり、壁際、つまりはかがみたちのところで止まる。

「う・・・」
738 :こなたん達が3次元に来てしまったようです2009/04/05(日) 04:17:12.91 ID:V4qp1ac0
どうする?どうする・・・!?
実力行使でもいいが、数が数だ。さすがに無理がある。
考えろ考えろ考えろ・・・何か策があるはずだ。

「・・くっ、あんたたち・・!」
「私たちどうなっちゃうの〜〜!?」

部屋を見渡してもあるのは、ランプとみんなのフィギュアとらきすたの単行本。
武器になりそうなものは、ない。けど、ここで捕まってしまうのはゲームオーバーだ。
だったらイチかバチかで、当たってみるのが・・・ん?
フィギュアと・・・単行本?
そうか!
私は右手でスカートのポケットを探りながら左手で単行本を手繰り寄せる。

「・・・?こなちゃん、何を・・・?」

つかさが訝しげに私を見上げる。

「あんた・・まさか・・・!」

かがみが悟ったように呟く。

「ん・・・?何する気?いっとくけど、抵抗しても無駄よ」

峰岸さんが私の動作を不思議そうに見つつ、また笑った。

フィギュアと単行本があれば、2次元に戻ることが可能だ。
そうすればこの危機も回避できる。
2次元は今オカシくなっているとはいえ、一旦戻るだけだ。
そんなに影響はでない筈・・・。
このまま3次元で全員捕まってゲームオーバーになるよりは有効な策と言える。
私は3人にもフィギュアを転がす。
手が拘束されているとはいえ、握ることはできる。

つかさはようやく理解したのか、ナルホドと表情を明るくさせた。
かがみも複雑そうにフィギュアを握って私に視線を送った。
みゆきさんはずっと黙りこんで、何かを考えているように見える。
こうしている間にも峰岸さん陣営は私ににじり寄って来ている。
峰岸さんたちは私の動作が何を意味するのか分かっていないらしく、表情はみな、不審そうだ。
でも会話で悟られるワケにもいかない。
私は3人を見渡して、空いている方の手でつかさの手を握った。
手をつないでいれば、1つの単行本で数人での次元移動が可能なことは知っている。
つかさはそれに気付いて、隣のかがみと手を繋ごうと手を伸ばしているのを見てから、再び私は正面を見た。
峰岸さんに向けて、私は笑う。
そう簡単に捕まらないぞ!
峰岸さんは私の笑みに不安を覚えたのか、

「何もたもたしてるの!!すぐ捕まえなさい!!」

叫んだ。
その声で峰岸さん陣営はいっきに私に向かって走って来る。
739 :こなたん達が3次元に来てしまったようです2009/04/05(日) 04:17:40.58 ID:V4qp1ac0
でも、もう遅いよ。私たちの方が早い!

私はらきすたの単行本のページをバッと開いた。

そのとき、後方からみゆきさんが何か叫ぶ声が聞こえたような気がした。
気にはなったが、振り向く暇もなく、私は3次元から消えた。


気付けば私は誰も居ない暗い廃ビルに居た。
峰岸さんもいなければ、明るいランプもなく、ただ、手の中にフィギュアがあるのみだ。

2次元に、私たちの世界に、戻って来た。

「ふぇ〜・・・危なかったね・・・」

私はそう言って後ろを振り向いた。
成功していればみんなが、いるはずだった。

「え・・・、あれ?」

私は驚愕した。人数が足りない。ていうか、つかさしか、いない。
つかさは今目を覚ましたところなのか、ぼんやりと目を細めながら上体を起こした。

「つ、つかさ!!みんなは!?かがみとみゆきさんは!?」

私は半ばパニック状態だった。
2人がいない、ということは2人はまだ3次元にいるということだ。
嘘だ。何でいない?あの作戦は完璧だったはずなのに。

「ふぇ?・・・こなちゃん!!」

つかさはこなたを見上げると、申し訳なさそうな表情に変わった。

「ごめん・・・私、手繋いで、なかった・・・」
「なっ・・・!!」

再びごめんと呟くつかさ。
どうして?
私はつかさがかがみと手を繋ごうとしてるとこ見たし、あれだけ時間があれば全員が手を繋ぐには十分だった。

「何やってんだよ、もう・・・!」
「・・・ごめんね・・、繋いだと思ったのになぁ・・・」

つかさは申し訳なさそうに頭を垂れた。

「謝ってすむ問題じゃないよ!現に繋いでなかったからみんなここにいないんでしょ!?」
740 :こなたん達が3次元に来てしまったようです2009/04/05(日) 04:18:05.19 ID:V4qp1ac0
知らずのうちに私はつかさを怒鳴っていた。
しかし原因は紛れもなくつかさにあるのだ。
不安が怒りへと変換されてしまう。

「峰岸さん、存在を消すとか言ってたんだよ!?聞いてたでしょ!?」
「・・・・ぅん」

つかさは更にしゅんとうつむいてしまった。
責任を感じているらしい。

「とにかく、早く3次元に戻るよ。2人が心配」
「・・・は、はぃ・・」

それに2次元に長く駐留していては危険が生じる。
峰岸さんの影響で、2次元はオカシくなってしまっているのだから。

私はつかさと一緒に廃ビルを出て電気街へと向かった。
アキバならばパソコンに困ることは無い。
741 :こなたん達が3次元に来てしまったようです2009/04/05(日) 04:20:30.11 ID:V4qp1ac0
お久しぶりです
だいぶ間があいた気がする・・・

ペースは遅くとも完成はさせたい・・・です
742 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/05(日) 08:54:06.31 ID:AI.P9QSO
あちゃ〜やっちゃいけないことやっちゃったなこなたんww
これでイザって時につかさが役に立たなくなってしまった
ここからどう逆転するか見物だなGJ!
743 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/04/05(日) 17:50:19.67 ID:FLqRq1M0
北朝鮮ミサイル問題


北朝鮮の飛翔体発射、極めて遺憾で厳重に抗議=官房長官

 高良みゆき官房長官は5日正午に緊急会見し、北朝鮮が5日午前に飛翔体を発射し、太平洋へと通過したと発表した。日本領土内に落下物はなく、被害の情報も確認されていないと述べた。
 その上で高良官房長官は、極めて遺憾であり、北朝鮮に対して厳重に抗議すると述べた。
 また、日本の領土・領海内に弾体が落下する危険性が認められなかったため、迎撃システムは作動させず、破壊措置は実施しなかったと述べた。
 高良官房長官は、ミサイルではなく、衛星を搭載したロケットの発射でも国連決議に違反しているとの日本の立場をあらためて主張し、北朝鮮の発射を強く批判した。
 ただ、ミサイルか衛星搭載のロケットの発射だったのかは、今のところ確認できていないとした。

 飛翔体の1段目とみられるものは、午前11時37分ごろ、秋田県の西約280キロの日本海落下したと推定される。
 防衛省は5日午後0時半、飛翔体の2段目が「日本の東方1270キロの太平洋上で落下したとみられる」との発表を訂正し、日本の東方2100キロの太平洋上で、自衛隊が追尾を終了した段階では、飛翔体の2段目の切り離しが確認されていなかったと発表した。
 その後、2段目が切り離されたかどうかや、落下推定地点は不明という。



 首相官邸。
 小早川ゆたか首相、高良みゆき官房長官、永森やまと外務大臣、日下部みさお防衛大臣が集まって、情報集約会議が行なわれていた。
「うちで確認できた情報は以上だぜ」
 みさお防衛大臣が、防衛省で確認できた情報を報告した。
「永森さん。追加情報はありますか?」
 みゆきが、やまとにそう質問した。
 それは、外務大臣としてのやまとではなく、幸星党工作機関のボスとしてのやまとに対する質問だった。
「アメリカから盗った情報では、飛翔体はテポドン2号の改良型で人工衛星を搭載していたのは間違いありません。アメリカの軍事衛星がレーザー兵器による迎撃を実施した結果、電子部品が故障し、人工衛星の軌道進入には失敗した模様です」
 レーザーとは、集束した電磁波でもある。磁石で電子製品が故障するのと原理は同じだ。
「アメリカは、迎撃の事実を発表してませんね?」
「発表するつもりはないものと思われます。北朝鮮側は迎撃の事実に気づいてないでしょうから、人工衛星に関しては失敗だと認識するでしょう。まあ、例によって、人工衛星の打ち上げは成功したと嘘の発表をするでしょうが」
「そこをとらえて、アメリカは、人工衛星の軌道進入は確認されてなく、北朝鮮の発表は全くのでたらめであり、ミサイルの発射実験だったと主張するというシナリオですね?」
744 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/04/05(日) 17:51:05.09 ID:FLqRq1M0
 形だけでも人工衛星を軌道にのせることができたなら、あくまで平和利用だという屁理屈も押し通すことができる。
 アメリカは、相手に全く気づかれない形で、そこのところを封じたわけだ。
「はい。外務大臣としては、アメリカのシナリオにのるのが得策かと思います」
「小早川さん。そういうことでよろしいでしょうか?」
「みんなを騙すみたいで嫌ですけど、仕方ないですね」
 アメリカのシナリオを暴露したところで、日本にとって得なことは何もないどころか、損なことばかりだ。
 ならば、シナリオにのって国益の確保を図るのが得策というものだった。
「あと、もう一つ追加情報ですが、昨日の誤報は、アメリカによる工作活動が原因と判明しました。レーダーシステムにハッキングして偽の探知情報を表示させ、情報伝達系統に介入してアメリカの偵察衛星でも確認済みという偽情報を付加してます。そして、誤探知に基づいて迎撃行動を開始する前に、レーダーシステムは正常状態に復帰してます」
 やまとが、そんな衝撃の事実をさらりと述べた。
「アメリカは、なんでそんなことしたんだよぉ?」
 みさおが率直な疑問を口にした。
「制服組の一部が少々加熱気味でしたからね。冷や水を浴びせたかったのではありませんか?」
「確かにちょっと力入りすぎの奴もいたけどさぁ……」
「そういう意味では、今回はアメリカに感謝すべきかもしれませんね。二度とこんなことが起きないように、システムの穴を埋める必要がありますけど」
 みゆきがそう述べる。

 情報が出尽くした時点で、ゆたかが最終確認をとった。
「では、事前の閣議了解のとおりに対応することでいいですか?」
 対応方針では、国連安保理の開催を要請し、北朝鮮に抗議を伝達し、北朝鮮への制裁の延長を検討するということになっていた。
 事前に閣議決定していたものであり、異議はなかった。
「では、発表は高良長官にお願いします」
「かしこまりました」
745 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/05(日) 18:43:13.97 ID:V/c8/2A0
>>744
仕事速いっすねww
とりあえず日本本土に降って来なくてよかった
746 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/05(日) 18:45:48.88 ID:Qf1zIWY0
>>744
http://up2.viploader.net/pic/src/viploader969362.jpg
747 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/04/05(日) 20:23:17.62 ID:8q0oBBQ0
>>741
続きが実に気になる展開だな。楽しみに次を待たしてもらうよ
あせらず、自分のペースでゆっくり書いてくれ
ってか、俺も続き物をしばらく放置してたりするんだよなぁ……w

>>744
もうネタにしたのかw
北朝鮮とじゃなくてアメリカと駆け引きしてる感じがいろんな意味で面白い
748 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/04/05(日) 22:29:54.28 ID:VTKePcAO
つかさ「演劇で使う吐血用の血糊作ってきたよー」
こなた「おお、早速練習してみよう」
つかさ「ゆきちゃんもやってみてよ」
みゆき「いえ、私は・・・」
つかさ「いいから」
みゆき「はい」
こなた「まず血糊を口に含んで・・・」グイッ
みゆき「あ、甘いですね」
つかさ「飲んでも大丈夫なように作るの、大変だったんだよ?」
こなた「頑張ったんだねー・・・ゴフッ!!?」
みゆき「泉さん、血糊吐くのお上手でグハッ!!?」

つかさ「ありがとう二人とも、とても参考になったよ!」
ななこ「二人ともうまいなぁ。こりゃ本番も期待できそうやな。・・・ん?泉ー、高良ー。なんや寝とんかいな」






ひより「どうッスか!?先輩!?」
こなた「あの、ひよりん・・・・私達になんか恨みでもある?」


ひより「・・・まさか」
749 :悪い子[saga]:2009/04/05(日) 23:33:15.88 ID:waNJF9g0
投下行きます。

書きなれてない組み合わせで書いてみようと思って書きました。
750 :悪い子[saga]:2009/04/05(日) 23:34:20.58 ID:waNJF9g0
 とある日の放課後。
「あ、ゆたかちゃん」
 ゆたかが下校しようと靴を履き替えていると、後ろから声をかけられた。
 振り向いてみると、そこにいたのは先輩のつかさだった。
「今、帰り?みなみちゃんは一緒じゃないの?」
「あ、はい。みなみちゃんはまだ用事があるから先に帰ってって…」
「えーっと…わたしも今日一人なんだ。良かったら、一緒に帰らない?」
「はい、よろしくお願いします」
 遠慮がちに提案するつかさに頷いて、ゆたかは急いで靴を履き替えた。
「じゃ、いこうか」
「はい」
 玄関に向かう、つかさの後ろについていくゆたか。
 前をいくつかさに、ゆたかはなんとなくだが違和感を覚え、つかさの足元を見た。
「…つかさ先輩。それ、上履きじゃ…」
「え?…あれ…は、履き替えてなかったー!」
 顔を真っ赤にして自分の靴箱へと向かうつかさに、ゆたかは思わずクスリと笑ってしまった。


- 悪い子 -


「それでね、こなちゃんったら暑いからって、服とかスカートとかまくってノートでパタパタ風送ってたんだよ。電車の中で。あれは見てて恥ずかしかったなー」
「そうですよね。こなたお姉ちゃん、そういうの無頓着なんですよねー。この前、下着のまま家の中うろついてたんですよ」
「え、ホントに?…うわー、お父さんとかに見られたら、いくらこなちゃんでも恥ずかしいんじゃないかな…」
「いえ、伯父さんの前でも堂々としてました…」
 ゆたかもつかさも、最初はお互い話しづらいと思っていたが、ネタの尽きない共通の知り合いのおかげで、思ったより話は弾んでいた。
「あ、この事言ったの、こなたお姉ちゃんには内緒にしといてくださいね。なんだか怒られそうで…」
「うん…でも、こなちゃんって怒っても怖くなさそう…っていうか、本気で怒ってるところ見たことないかな」
「そうですよね…かがみ先輩はやっぱり怖いですか?」
「うん、怖いよー。怒ったらこんなだもん」
 つかさは両手の人差し指を頭につけて、鬼の角に見立てた。
 それを見たゆたかがプッと噴出す。
「あはは、やっぱりそうなんだ…でも、ちょっと羨ましいです」
「え、どうして?」
「わたし、本気で怒られたこと無いんです」
 ゆたかが少し寂しそうな表情になった。
「お父さんやお母さん、ゆいお姉ちゃんからも…少したしなめられることはあっても、本気で怒られるって今まで一度も…」
「それって、良いことじゃないのかな?」
「そうだといいんですけど…なんか気遣われてるんじゃないかって思って…わたしの身体が弱いから…」
「うーん…」
 つかさは少し俯き、右手を顎に当てて考え込んだ。
 しばらく考えて何かを思いついたのか、顔を上げてゆたかにこう言った。
「じゃ、試してみたらいいんじゃないかな。ちょっと悪い子になって、怒られるかどうかって」
「え?」


751 :悪い子[saga]:2009/04/05(日) 23:35:19.57 ID:waNJF9g0
 ゆたかはつかさと別れた後、泉家からだいぶ離れた公園に入り、ベンチに腰掛けた。
『わたしが一番怒られたのは、門限破った時だったよ。連絡無しで。だからさ、ゆたかちゃんもちょっと遅めに帰ってみたらどうかな』
 そう、つかさに言われ、ゆたかはここで時間を潰していこうと考えていた。
「…ん…なんだか眠い…」
 不意にゆたかは眠気を覚えた。少しならいいかと、ゆたかはベンチに座ったままウトウトとし始めた。


「…ふぁ…あ…あれ?」
 ゆたかは目を覚まし、辺りをキョロキョロと見渡した。
 少しウトウトするだけのつもりだったはずなのだが、いつの間にか寝入ってしまったようだ。
 辺りはもう真っ暗になっている。ゆたかは慌てて携帯電話で時間を確認した。
「え…うそ…」
 ディスプレイに表示されたのは、既に日付が変わろうかという時間。
 それを見たゆたかの顔から、血の気が音を立てて引いていく。
「そ、そんな…ど、どうしよう…」
 今から家に帰れば、確実に日付は変わるだろう。いくらなんでも、これは怒られるどころではすまないのではないか?
 しかし、いつまでもここにいてるわけにはいかず、ゆたかは震える足で帰路についた。


「…もう遅いんだ。俺が行くから、こなたは家で連絡を待ってなさい」
「ゆーちゃんが何処でどうなってるかわかんないってのに、家で待ってなんかいられないよ!まだ見てないところいっぱいあるんだ!わたしも行くよ!」
 ゆたかが泉家の傍まで来たところで、こなたとそうじろうが話しているのが聞こえた。二人とも相当焦っているのがわかる。ゆたかはしばらく進むのを躊躇ったが、意を決して二人の元に向かった。
「…あ、あの…」
「ゆーちゃん!良かった無事なんだね!?」
 ゆたかが何か言うよりも早く、ゆたかに気がついたこなたが駆け寄ろうとしたが、後ろからそうじろうに服を掴まれ止められた。
「ちょ、お父さん何するの…」
「ゆーちゃん、とりあえず中に入ろうか」
「…はい」
 そうじろうに促されて、ゆたかは家の中に入った。その後に、そうじろうと憮然とした表情のこなたが続いた。


752 :悪い子[saga]:2009/04/05(日) 23:37:02.27 ID:waNJF9g0
 居間に入ると、そうじろうはゆたかをテーブルに座らせ、自分がその向かい側に座った。
「こなた。少し外してくれ」
 自分もこの場にいて、ゆたかに話を聞きたかったこなたは、そうじろうの言葉に驚いた。
「ええ、なんで!?わたしだって…」
「いいから…それと、ゆいちゃん達に連絡も頼む」
「う…分かったよ…」
 渋々と言った感じで、こなたが居間を出て行った。こなたが階段を下りていく音を確認して、そうじろうはゆたかに向き直った。
「さて、ゆーちゃん。何があったんだい?」
「………」
 ゆたかは何も言わず、俯いていた。正直、どう説明していいか分からなかったのだ。
「…なにか理由があったんだろ?こなたもゆいちゃんも随分と心配してたんだ。ちゃんと話してくれないか?」
 まだ、何も言わないゆたかに、そうじろうはため息をついた。
「…それじゃ、話す気になったら言ってくれ。今日はもう寝なさい」
「…それ…だけですか?」
 立ち上がるそうじろうに、ゆたかは思わずそう呟いていた。
「理由を言ってくれないことには、これ以上何も言えないよ…」
「…怒らないんですか?…わたし、悪いことしましたよ?」
 そうじろうは眉をしかめた。
「怒るだけの理由かあれば、そうするよ…」
「理由なんてない!」
 ゆたかは顔を上げ、大きな声を出していた。
「…ゆーちゃん?」
「理由なんかない…ただ、悪い事やろうとしてやっただけだんだよ!?なのにどうしてこれだけで終わったちゃうの!?」
 心の奥底から、嫌な感情が湧き上がってくるのが分かる。ゆたか自身も気付かないうちに溜まりこんでいたモノが、一気に噴出していた。
「みんなそうだ…いつもそうだ…わたしが弱いから怒れないんだ!可哀相な子だからって怒ったりしないんだ!わたしが…わたし」
 ゆたかの声を遮って、パンッと乾いた音が居間に響き渡った。
 ゆたかは最初何をされたのか分からなかったが、数秒してそうじろうに頬を張られたことを理解した。
「…いい加減にしなさい。誰もそんなこと思ってなんかない」
 ゆたかは張られた頬を押さえ、放心していた。
 そうじろうはゆたかの傍を離れ、居間の扉を開けた。
「…こなた、後頼む」
「え?…あ、うん…」
 扉の向こうで聞き耳を立てていたこなたにそう言うと、そうじろうは居間を出て行った。
753 :悪い子[saga]:2009/04/05(日) 23:38:29.41 ID:waNJF9g0
「なんだ、バレてたのか…」
 ポリポリと頭をかきながら、こなたが居間に入ってきた。
 ゆたかは、未だに頬を押さえて放心していた。
「ゆーちゃん、大丈夫?」
 こなたがゆたかに近づきながら声をかけると、ゆたかはゆっくりとこなたの方を向いた。
「…伯父さん、怒ってた…怒られた…」
 そう呟いて、ゆたかは頬を押さえている手を離した。こなたが張られた箇所を覗き込むように見た。
「結構強く叩かれたね…こりゃ明日ちょっと腫れるかも」
「お姉ちゃん…わたし…」
「どういって言いかわかんないけど、ゆーちゃんはちょっと考えすぎかな」
 こなたがゆたかの頬を軽く撫でた。
「お父さんが手を上げるところ、久しぶりに見たよ…結構痛いでしょ?」
 そうこなたに言われて、ゆたかは今頃になって頬の痛みを感じた。
「…うん、痛い…すごく痛い…」
 涙が溢れてくる。ゆたかはこなたに抱きついて、泣きじゃくり始めた。
 こなたはゆたかの頭を撫でながら、ゆたかが落ち着くのを待った。
「…今日は遅いから、もう寝よっか?」
 ゆたかの泣き声が小さくなってきた頃に、こなたがそう言った。
「…うん…ごめんなさい…こなたお姉ちゃん…」
 呟くゆたかに、こなたは頷いて見せた。


「うあー…やっちゃったよ、俺…」
「そんなに激しく後悔するんだったら、もちっと冷静になりゃ良かったのに…締まらない人だなあ…」
 ゆたかが寝たことを報告しに、そうじろうの自室に来たこなたは、机に突っ伏して頭を抱えているそうじろうを発見した。
「そうは言ってもだな、こなた…なんつーか流れっつーか…」
「はいはいっと…でもなんか、わたしがお父さんに叩かれた時にちょっと似てるかな」
「ん、そうだっけか?…つーか叩いたことあったっけか?」
 顔を上げてそう言ったそうじろうの言葉に、こなたが思い切り呆れ顔になる。
「うわ、忘れてるよ…小学生の時に今日と似たような事あったじゃん」
「そう言われてみれば、そうだったかな…」
「あの時のわたしと今日のゆーちゃんは、多分同じだったんだよ…自分は人より可哀相な子だから、誰もまともに自分を見てくれないんだって」
「…そうか…そうだったな」
 そうじろうは、ため息をついた。
「分かってるつもりでも、分からないもんだな」
「だねー…特にゆーちゃんは良い子過ぎるから、怒るところなんて見つからないしね」
 困り顔でそう言うこなたに、そうじろうが頷く。
「流石に遅いな…そろそろ寝るか」
「うん、おやすみお父さん」
「ああ、おやすみ、こなた」


754 :悪い子[saga]:2009/04/05(日) 23:39:41.80 ID:waNJF9g0
 翌日、いつもの待ち合わせ場所に来たゆたかは、先に来ていたみなみに手を振って挨拶をした。
「おはよー、みなみちゃん」
「…おはよう、ゆた…っ!!??」
 ゆたかの方を見たみなみは、ゆたかの頬に貼られてる大き目のシップを見て、大きく目を見開いた。
「な、な、何!?どうして!?き、昨日何かあった!?」
 普段のからは考えられないほどの慌てぶりで、みなみがゆたかにまくし立ててくる。
「お、落ち着いて…」
 そのみなみを、ゆたかが両手で制した。
「帰り!?帰り道!?先に帰したから!?用事すっぽかして一緒に帰ったらよかった!?」
 しかしみなみはゆたかの声が聞こえていないのか、手をわたわたと動かして更にヒートアップしていた。
「…うわー、みなみちゃん千手観音みたい」
 あまりに速いために、何本もあるように見えるみなみの手を見て、ゆたかが感心していた。
「あのね、みなみちゃん。何にもないから。ただ、悪いことして怒られただけだから、ね?」
 ゆたかが大きめの声でそう言うと、ようやくみなみの動きが止まった。
「…え、怒られた?ゆたかが?」
「うん」
「…悪いことして?ゆたかが?」
「…うん」
「………」
 ポカンと口をあけて呆気に取られているみなみに、ゆたかは不安を覚えた。
「えっと…変、かな?」
「…ううん、なんていうか…珍しいっていうか…うーん…」
 真剣に考え込み始めたみなみを見て、ゆたかはなんだか可笑しくなってきた。
「うん、やっぱり悪い事はダメだよね…痛かっただけだもん。行こ、みなみちゃん。遅刻しちゃうよ」
 そう言いながらゆたかは、みなみの背中をポンッと叩いて歩き出した。
「…え?…あ、うん…」
 みなみは首を捻りながら、ゆたかの後に続いた。


「ういーっす。お昼食べに…って、おお!?」
 昼休み。こなた達のクラスにお昼ご飯を食べに来たかがみは、机に座って弁当を広げているつかさを見て三歩ほど後ずさった。
「…な、なに、それ?」
 少し引き気味になりながら、かがみが指差したのはつかさの頭。そこには、いつも愛用している黄色いリボンの変わりに、派手にキラキラ輝いている虹色のリボンが乗っかっていた。
「昨日、小早川さんに何かあったらしくて、その原因がつかささんだとか…」
 みゆきがかがみにそう説明した。
「ま、そう言う事。つかさには今日一日それで過ごして貰うよ」
 こなたがチョココロネの袋を破りながら、得意気にそう言った。
「ふえーん。こなちゃん、もう許してよー。みんなにはなんか噂されてるし、先生は白い目で見るし、恥ずかしいんだよー」
 こなたの身体を揺すりながら泣き言を訴えるつかさを、かがみは呆れた顔で見ていた。
「…ま、つかさが悪いって言うなら、特にわたしからは何にも言えないけどね」
 かがみは、ため息をつきながら席に座って、弁当を広げ始めた。


- おしまい -
755 :悪い子[saga]:2009/04/05(日) 23:41:46.19 ID:waNJF9g0
以上です。

慣れない組み合わせは、やっぱり長く続きませんでした。
756 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/06(月) 00:01:30.24 ID:6MZG7jQo
乙だな

やはりゆたかはいい子だ
757 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/06(月) 00:19:24.88 ID:K2NOIq20
>>755
ゆたかの可愛らしさが滲み出ていて(こう書くとまたゆたかにムッとされそうですが)、ステキでした。
読みやすい文章に加え、人物の表現も卓越したものがあります。
良作をありがとう。
758 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/06(月) 00:26:55.68 ID:4qzx2eQo
>>733
それいつぞやの俺のサークルカットww
759 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/06(月) 20:26:24.05 ID:5c6QmBw0
こう「棒が一本あったとさ」
ひより「はい!?」ガタッ



こう「……何急に」
ひより「あ、いやすんませんッス……」
   (ダメだ汚れてる……)
760 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/06(月) 23:36:36.12 ID:Et845p.o
>>741
乙! うーん、まずい展開になってきたなー。つかさがちゃんと掴んでなかったのか、それとも……
楽しみに待ってるぜ!

>>755
ゆたからしい悩みというかなんというか、良い子。だな
よかった、乙!

つかさざまぁww
761 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/06(月) 23:52:25.16 ID:WXShhuU0
>>741
つかさ裏切りフラグか?

>>755
いい子が無理するから
ゆーちゃんはかわいいなあ(ニヤニヤ
つかさは、まあ諦めろwwww

電話してやれよという突っ込みはなしですかそうですか

>>759
ネタがわからない
これって…正常?
762 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/07(火) 00:35:35.32 ID:iF5m8QI0
つかさ「私ね、勉強も運動もダメだからこなちゃん以上のオタクを目指そうと思うの」
763 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/04/07(火) 00:47:48.96 ID:9NjnKkSO
レスありがとうございます>>755です。

電話に関しては、かけたもののゆーちゃんが寝てたために気がつかなかったんです。
ゆーちゃんが電話に出ないしメールも帰って来ないから、こなたもそうじろうもかなり焦っていたんでしょう。
…後付けじゃありませんよ?ただの説明不足です。


それにしても、ゆーちゃんは可愛いなあ…。
764 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/07(火) 08:26:37.88 ID:ki5NkYDO
ネコ殺し死体画像インターネットに晒した日本男
拷問しながら次々に画像を世間に発信しました。
泣き声が周囲に聞こえないように喉をかき切り、尻尾や耳を切り落とし、
熱湯をかけ、最後は窒息死させました。
その一部始終の画像を一日1600万アクセスある掲示板(2ちゃんねる)で公開したのです。
どれだけの青少年があの処刑画像を見たことでしょう。


松原 潤 画像
http://www.fukuoka-tanteifile.com/file/img_file01/mj.jpg

殺される前のぬこ
http://kiki.ms/sonota/kogenta/neko001.gif

殺された後のぬこ
http://kiki.ms/sonota/kogenta/neko002.gif


福岡の猫殺し、ディルレヴァンガーの正体
http://kiki.ms/
765 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/04/07(火) 08:53:14.23 ID:9NjnKkSO
−煩悩−

こなた「お父さんって、再婚しないの?…出来るかどうかは置いといて」
そうじろう「さらっと酷いな…まあ、俺はとっくに再婚済みだけどな」
こなた「え…うそ…」
そうじろう「俺の嫁は百八人いる!!(注・二次元限定)」
こなた「………」



ゆたか「あれ、伯父さんは?」
こなた「なんかとり憑いたみたいで、部屋で苦しんでる」
766 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/07(火) 12:54:48.80 ID:7YW3dYSO
こなた「一応聞くけど、その嫁って誰さ?」

そうじろ「ん、そうだな。まず学美ちゃんだろ、ちよちゃんだろ」

こなた「……」

そうじろ「ファインちゃんにレインちゃん。あむちゃん、小萌先生、
      汐ちゃん、澤村遥たん、音無芽留ちゃん、燕ちゃん、サラちゃん、
      詩織ちゃんに沙織ちゃん。このみちゃんにななみちゃん、
      もえたん、よつばちゃん、ゆのちゃん、ゆーちゃん、
      メイちゃん、剛力番長ちゃん、ナギちゃん、すずちゃん、
      うたちゃん、インデックスちゃん、苺ましまろの皆、たまちゃん、
      りんりんちゃん、九重りんちゃん、黒ちゃん、うさみみちゃん、
      小学生の神楽ちゃん、高町なのはちゃんにフェイトちゃん、……ふぅ。
      プチ子ちゃん、リンちゃん、ちょこちゃん、ななちゃん、
      ちびうさちゃん、ネネちゃん、5-2の女の子たち、
      プリムラちゃん、ロールちゃん、キョンの妹ちゃん、
      あられちゃん、唯ちゃん、蜜柑ちゃん、ひかげちゃん、
      ルッキーニちゃん、コメットさんちゃん、サリーちゃん、ピノコちゃん、
      ナージャちゃん、さくらちゃん、蘭ちゃん、佳奈ちゃん、
      千秋ちゃん、春原芽依ちゃん、雛苺ちゃん、はてな妖精ちゃん、
      ありあちゃん、雛ちゃん、繭ちゃん、ハッチン、御坂妹ちゃん、
      ちぃちゃん、李ちゃん、風子ちゃん、歩美ちゃん、雪ちゃん、
      霞ちゃん、ハイジちゃん、牡丹ちゃん、香織ちゃん、呂布子ちゃん、
      クラン・クランちゃん、九鳳院紫ちゃん、茉莉ちゃん、
      ヒカリちゃん、桂心ちゃん、古手梨花ちゃんに羽生、
      イリヤ・アインツゥベルちゃん、坂下ゆずゆちゃん、ベキ子ちゃん、
      アルルゥちゃん、野原ひまわりちゃん、砂沙美ちゃんに美紗緒ちゃん、
      コロコロポロンちゃん、木之本桜ちゃん、ヴィータちゃん、
      りんごちゃん、お邪魔女の皆、」

こなた「もうやだこの父」
767 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/07(火) 14:35:16.96 ID:OXJjSX.o
ひとりだけ「たん」なのは何故
768 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/07(火) 14:42:31.43 ID:nTRzCmE0
さりげなく姪っ子と貧乏妹をいれないよーにww
769 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/07(火) 15:52:03.14 ID:MCMyrQSO
羽生が呼び捨てなのはいかに
770 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/07(火) 18:43:49.79 ID:9NjnKkSO
何故、クドが入っていないのか。





入ってても、やらないが。
771 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/07(火) 20:59:57.01 ID:17K45Tg0
ここまでまとめた
`〜〜〜〜〜〜(_)〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜'
            ○ O 。
                     -―――― ―-
                , '" : : : : : : : : : : : : : : : : : : :`丶
              / : : /:/ : : : /: : : : :j : l : : : : : : :\
             / : : : /: :_:{ : : :/: : : ,: :-/| 、|: : : j : : : : : :
                / : : : : ,': :'´ハ : / : : : : : / :|:.∧: :/: : : : : : :
           /: : : : : :|: : /_ ∨ / : : / _j/ ∨: : : : : : : :
             / : : :|: : :ャテ=ァミ∧/: :/ィ代孑アア : : : : : : : :
          / : :/:│: / V込j  |/   ヒ込ン′/: : : : : : : : :
            / : :/: :│: l  ´   ,           /: : :/: : : : : ,′
        ///: : : :\|.::::::.        .::::::./: :/: : : : : ∧:
          /'  ,′ : : : l      (ヽ      //|: : : : : : /_ノ
         │: : : l : 人               /´ /: : : : : /: : :
772 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/07(火) 21:05:30.65 ID:bPfCkcEo
>>771
                  /^ヽ./^⌒\
            , -/´ ̄: : : : : :\: : : : : \___
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        ,イこY: : :/ : : : : : : : ヽ: : : : : : ',: : : : : : : \\
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    〈 }:│  ∨ : : : : :.' |: l   \: : : |\| : : :ヽ: :}\ヽ
     ∨: :|   | : : : : :/  |: |     ヽ、}  ヽ: : : :}: {  ヽ}
     }: :│   } : : : : :l   Y-       ィzx、 }: : :∧:ヽ
     /: : :|  ,/',: : : : :{   ,ィ气       `ヾヽ/: :ヘ: :',
.    /;イ: : l.イ: : ∧: : : ∧〃          { : j: : : }\}   <お疲れ様!
   / ' |: : : :∧ :ハ:ヘ: : :{: :ヽ.     rー、  fY^}j : |ヘ : l
  ,/   { : : / {:{ ヽヽ :|: : : :\   、__ノ,ヘ}  ト、:| W
      | : /   ヾ   ^Y>、;_;_;≧ー‐ ヘヽ  ,/ :}ノ
     Y          / . : /´ ̄ヽ ,ィ} ,/: /:j
               /. :/       } fこ´_:/:∧
.           /. : :/         | ヘ:_:_:_://}
          /. : : :/       | jー― '  .′
            /. : : :/ {        |ー}     ,/
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            /   /       /      /
773 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/07(火) 21:07:33.35 ID:H7JpdO.0
        _, --‐‐ー────‐‐-、_
      ,ィ´::iィ ニニ 二 二 二ニニヽ: :`ヽ、
     /: : : :.:|: : :ヽ::,,:i: :〉: 从: : ツ,,::|: : :: ::\
    ./: : ∧:. :.:|シ´ "゛|"`´"~゛~| `ヾ:|: : :.|\:`ゝ、
   /: : :(__;): ::| ,ノ"  |     |`\.|: : :.| `、:ヽ\
   | : : : : : : : :.:|  __、 !     ,!.__  |: : ::|  }::〉  `
   |: : : :|: : : ::,ィfテ:行゛      'テラz、|:: : :|.  |::|
.   |: : : :|: : : : k::ンz;;|      k:ソz;;| |: :: :|  |::|   みさちゃん。いつもありがとう
    |: ::(_|: : : :.:i`-‐´      `‐-´ i|: : :.| ,リ:|   
    |: : :.:|::: : : :| ""        "" {:|: : .:|,メ::リ
     |: : ::|: : : : :|      ___    ,!:|: :: :|:.::ノ
     }: : :|: : : : :|ゝ ,ヘ  __   -‐<´:.:!: : ::|'′
.     |: : ::|: : : : :| / ノ_  t、 ャ~}、_: : :!:.: : :|
      |: : :.:|: : r‐、´ ´ .,〉   |  `ヽ: :: : .:|
.      |: : : !: /  ヽ、´y〉___|     \: ::|
      |: : :f´`\.   `ヽ,   |    ///`、:|
774 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/04/07(火) 21:08:09.63 ID:9NjnKkSO
−まとめ人への感謝の気持ちDX−

こなた「さて、今回はまとめ人さんへの感謝の気持ちと、前回と前々回のやりたい放題の反省を込めて、わたし達が自ら某有名な縛られ方で縛られてみました」
かがみ「台詞、長っ…にしてもこの縛り方、圧迫感と程よい痛みが絶妙ね…相当縛り慣れてるわ」
こなた「流石、わたしのお父さんは格が違うね」
かがみ「…一体 誰を相手に…」
こなた「いや、それ以上はなんか色々怒られそうだからやめとこ…」
かがみ「そうね…にしても、つかさとみゆきは遅いわね」
こなた「…かがみ…重大な事を思い出したんだけど」
かがみ「ん、なに?」
こなた「二人に連絡するの忘れてた」
かがみ「ちょっとー!どうすんのよ!?」
こなた「んー、こういう時こそ双子パワーで助けを呼ぶとか」
かがみ「…具体的には?」
こなた「かがみがピンチになると、つかさがテレパシーを受信するとか」
かがみ「つまり、わたしがこなたに襲われて、××を□□されたり、△△を〇〇されたりすれば良いってことね!よっしゃカモン!!」
こなた「…いやカモンって。それ、全然ピンチじゃないよ…ってか、わたしも縛られてて動けないって事、忘れてない?」
かがみ「えー…この持て余した欲情をどうすればいいのよー」
こなた「しらないよー…って、どうしたの?なんかモゾモゾして」
かがみ「…なんか、おトイレ行きたくなってきた…」
こなた「うええっ!?…あ、でもこれってピンチだよね…さあ、かがみ!頑張ってつかさにテレパシーを!」
かがみ「そ、そんな余裕…無いって…ふぇーん、こんなプレイはいやー!」



つかさ「あ、ゆきちゃん見て見て、茶柱ー♪」
みゆき「まあ、良い事が起こるといいですね♪」
775 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/07(火) 22:40:22.06 ID:m7NVp3w0
>>771
まとめ乙カレ様です!
776 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/07(火) 23:02:35.83 ID:17K45Tg0
>>774
前回、前々回の仕返しで放置プレーですね。わかりま(省略されました…ここを押しても無駄です)
777 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/07(火) 23:12:34.25 ID:17K45Tg0
>>774
みなみ(まさか…次からは私達の番なんだろうか…私がゆたかをロープで縛りあげて○○○○や○○○○なことを……抵抗しようにもできないゆたか…そして…ハァハァ)
ゆたか「……!?何か急に寒気が……」
みなみ「大丈夫?風邪?」
ゆたか「みなみちゃんこそどうしたの?鼻血出てるよ?」
みなみ「私は大丈夫だから…保健室でも…行こうか……」
ひより「なんか…さっき岩崎さんからどす黒いオーラが出てたのは…気のせいッスよね……ははは…」
パティ「ひよりんの腐オーラには敵イマセンヨ>ワ<」

778 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/04/08(水) 06:36:46.37 ID:ei3nyXY0
柊かがみ法律事務所──遺贈

 彼が死んだ。死因は心臓発作。
 現代において、60代での死亡は早いといえる。
 かがみは、その報を聞いたとき、特に何かを感じたわけではなかった。というより、何かを思うことさえ拒否していたのかもしれない。
 葬式があれば当然行っただろうが、遺言により葬式はしないこととされていた。彼らしいといえば彼らしいといえる。
 彼が死のうと死ぬまいと、日常の日々は過ぎ去っていく。
 平日は仕事で忙しい。さすがに60代にもなると体力的にきつくなっていたが、それでも彼女はばりばり仕事をこなしていた。
 問題は週末だった。彼とのデートがなくなって、かがみはぼうっとしながら過ごすことが多くなっていた。


 彼の死亡から数ヶ月がたったころのそんな土曜日。
 かがみのもとに来客があった。
 彼の遺言により遺言執行者に指定されている弁護士だった。
「手っ取り早く申し上げますと、遺言により柊かがみさんへの遺贈が指示されてます」
 弁護士がかがみに書類を提示した。
 それは公正証書遺言だった。内容を確認すると、確かにかがみに全財産を遺贈すると書かれてある。
「あと、これを渡すように指示されてます」
 一通の封書だった。開封すると、便箋が収まっていた。
 折りたたまれている便箋を開き、読み進める。



親愛なる柊かがみ様へ

 君がこれを読んでいるときには、僕は死んでいる。どんな死に方をするやら分からないが、どうせろくなもんではあるまい。
 君は寂しがり屋さんだから、僕がいなくなったあとが心配だ。なんてことをいうと、君は怒るのだろうね。怒る顔が目に浮かぶようだ。
 それはともかく、僕には親類と呼べるものがいない。少なくても法定相続人になりうる範囲内にはね。
 このままだと、僕が稼いだ財産は、相続人なしということで国に全部持っていかれることになる。
 それは癪だから、君に遺贈することにした。迷惑でしかないだろうけど、許してもらいたい。
 釈迦に説法だろうが、もちろん、君はこの遺贈を放棄することもできる。好きにしてくれて構わない。結局のところ、これは僕の自己満足でしかないのだから。


779 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/04/08(水) 06:38:07.65 ID:ei3nyXY0
「本当に法定相続人はいないのですか?」
「調べた限りではいませんね。最終的には家裁で公告を出すことになりますが、たぶん出てこないでしょう。多くの女性と浮世を流した人ですから、隠し子の一人や二人は出てくるかと思ってたんですが、その辺はきちんとしていたようです」
 避妊には完璧を期す男であったことは、かがみも自身の経験上よく知っていた。
 それにしても、この弁護士は彼のことをよく知っているようだ。その辺を聞きただしてみると、
「私が弁護士に成り立てのころに、お世話になりましてね。弁護士として稼ぐ方法を叩き込まれましたよ。悪くいう人が多いですが、その点に関しては私は感謝してます」
 その後、彼の財産の金額を確認して、かがみは驚いた。
 彼の財産は、億の単位に達していた。彼が負っていた債務を差し引いたあとの金額でこれなのだ。
 どれだけあこぎなことをしていたのか。
「これだけは私も理解しがたかったですけどね。金なんて使ってなんぼのもんでしょうに」
 それは、かがみも同感だった。
 ただ金をためこむばかりだった彼の心情は、もはや誰にも分からない。



 結局、かがみは、遺贈を受けることにした。
 でも、自分で使うつもりも抱え込んでおくつもりもない。
 遺贈にも降りかかってくる相続税を払い終わったあと、かがみはありとあらゆる慈善事業に寄付しまくった。1円も残さずに。

 彼への未練は、彼の財産とともに綺麗に消えていった。



民法
(子及びその代襲者等の相続権)
第八百八十七条  被相続人の子は、相続人となる。
2  被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。
3  前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。

(直系尊属及び兄弟姉妹の相続権)
第八百八十九条  次に掲げる者は、第八百八十七条の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。
一  被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。
二  被相続人の兄弟姉妹
2  第八百八十七条第二項の規定は、前項第二号の場合について準用する。
780 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/04/08(水) 06:38:41.99 ID:ei3nyXY0
(配偶者の相続権)
第八百九十条  被相続人の配偶者は、常に相続人となる。この場合において、第八百八十七条又は前条の規定により相続人となるべき者があるときは、その者と同順位とする。

(相続債権者及び受遺者に対する弁済)
第九百五十七条  第九百五十二条第二項の公告があった後二箇月以内に相続人のあることが明らかにならなかったときは、相続財産の管理人は、遅滞なく、すべての相続債権者及び受遺者に対し、一定の期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、二箇月を下ることができない。
2  第九百二十七条第二項から第四項まで及び第九百二十八条から第九百三十五条まで(第九百三十二条ただし書を除く。)の規定は、前項の場合について準用する。

(相続人の捜索の公告)
第九百五十八条  前条第一項の期間の満了後、なお相続人のあることが明らかでないときは、家庭裁判所は、相続財産の管理人又は検察官の請求によって、相続人があるならば一定の期間内にその権利を主張すべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、六箇月を下ることができない。

(権利を主張する者がない場合)
第九百五十八条の二  前条の期間内に相続人としての権利を主張する者がないときは、相続人並びに相続財産の管理人に知れなかった相続債権者及び受遺者は、その権利を行使することができない。

(特別縁故者に対する相続財産の分与)
第九百五十八条の三  前条の場合において、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。
2  前項の請求は、第九百五十八条の期間の満了後三箇月以内にしなければならない。

(残余財産の国庫への帰属)
第九百五十九条  前条の規定により処分されなかった相続財産は、国庫に帰属する。この場合においては、第九百五十六条第二項の規定を準用する。

(公正証書遺言)
第九百六十九条  公正証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。
一  証人二人以上の立会いがあること。
二  遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。
三  公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること。
四  遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと。ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。
五  公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと。

(遺贈の放棄)
第九百八十六条  受遺者は、遺言者の死亡後、いつでも、遺贈の放棄をすることができる。
2  遺贈の放棄は、遺言者の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。

(遺言執行者の指定)
第千六条  遺言者は、遺言で、一人又は数人の遺言執行者を指定し、又はその指定を第三者に委託することができる。
2  遺言執行者の指定の委託を受けた者は、遅滞なく、その指定をして、これを相続人に通知しなければならない。
3  遺言執行者の指定の委託を受けた者がその委託を辞そうとするときは、遅滞なくその旨を相続人に通知しなければならない。


相続税法
(相続税の納税義務者)
第一条の三  次の各号のいずれかに掲げる者は、この法律により、相続税を納める義務がある。
一  相続又は遺贈(贈与をした者の死亡により効力を生ずる贈与を含む。以下同じ。)により財産を取得した個人で当該財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有するもの
781 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/04/08(水) 06:40:14.11 ID:ei3nyXY0
以上です。
782 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/04/08(水) 19:26:52.03 ID:O5yVz6SO
−理由−

こなた「と、言う訳でみゆきさん。ブルーハワイって何?」
みゆき「えっ、ブルーハワイですか?…ブ、ブルー…歌かな?…ブルー……すみません、よく分かりませんね…」
つかさ「あ、あのね。ブルーハワイってのはね、カクテルの名前なんだって。そのカクテルも映画の…」
みゆき「………」



みゆき「あの時でした…この人に、私のすべてを捧げようと思ったのは」
こなた(…あれフラグだったんだ…)
783 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/08(水) 20:27:47.58 ID:vDhO4YU0
>>781
乙です。いつもながら高い完成度敬服いたします。
老境に達しても盛んな仕事ぶりもかがみなら実際ありえそうなのがなんとも・・・
最後はかがみらしいといえばかがみらしいですが、ちょっと美談すぎるきらいがあるかな。
784 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/08(水) 22:01:36.48 ID:ayPLMOk0
『猫』

 柊つかさは最近家の中に幽霊がいるのではないかと悩んでいた。
 廊下から気配がしたので、振り返ると誰もおらず、ほっとしているとぺたぺたと足音がきこえた。ふとしたときに視界の端に白いものが映った。
 堪らず姉であるかがみに相談すると、「気のせいでしょう」とにべもない答えが返ってきた。
「気のせいなことないよ。実際に見たんだよ」
「何を見たの?」
「白い影を」
「白いのか黒いのかどっちかにしろよ」
 思わず姉の頭を叩きかけた。
「そんなこと言わないで、今日一緒に寝ようよ」
「んー」
 姉は難色を示した。不安で指を揉んでいると、台所から母が言った。
「駄目よつかさ。お姉ちゃんは年頃なんだから、夜は一人にさせてあげなきゃ」
「そういうことじゃないわよ!」
 かがみの怒声をきっかけに、つかさは堰を切ったようにこれまでの恐怖を涙と共に漏らした。
「お願いだよ、お姉ちゃん。怖いんだよぅ」
 かがみは「高校生にもなって……」と呆れ顔でつかさを見た。呆れ顔ではあったが、妹を心配するような声色も垣間見えて、この姉は基本的には優しいのだということをつかさは思い出した。同時に嘘泣きして正解だと思った。
 しかしかがみは首を横に振った。
「ごめんね」
「そんなぁ」
 かがみは罰が悪くなったのかそそくさと居間を出て、ぱたぱたと階段を上がっていった。
 助けを求めるようにつかさは母を見たが、母は顔を赤らめ、姉と同じ調子で「ごめんね」といった。深く意味は考えないようにした。
 同様に他の姉妹からも断られ、だからつかさは自分で何とかすることにした。
785 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/08(水) 22:03:40.29 ID:ayPLMOk0
 その夜、つかさはフライパンやおたまで武装し、ベッドにもぐりこんだ。本当に幽霊が出たらこれで撃退するつもりだ。
 眠れずに震えて、正午を過ぎた頃トイレに行きたくなった。我慢しようとすればするほど膀胱は膨れ上がった。
 さすがに高校生の女がシーツに世界地図を描くのは洒落にならない。つかさはフライパンとおたまを握り締めて、部屋を出た。
 廊下は薄暗い。電気をつけるスイッチはトイレと反対方向にある。もう限界なので、さっさとトイレを済ませてしまおうと、そのまま進むことにした。生理現象は恐怖に打ち勝つのだとぼんやり考えた。
 トイレに入りひと段落するが、奇妙な光景が視界に移りこんだので、つかさは悲鳴を上げかけた。
 トイレットペーパーが無残にも引きちぎられ、散乱していた。ボルターガイスト現象という言葉が頭を過ぎった。
 とりあえず落ち着いて用を足し、それからさめざめ泣いた。怖くてもう二度とトイレから出られない気がした。かといってずっとここにいるのも無理だ。
 便座に座って下からも上からも体液を放出しているとき、扉がかりかりと音をたてた。まるで何者かが外から扉を爪で引っかくような音だった。
 扉の外にいるおぞましい姿の化け物を想像したとき、全身に鳥肌がたち、もうじっとしているのは無理だった。
「きゃああああ!」
 ズボンも上げないまま悲鳴を上げながら飛び出すと、影がつかさを迎えたので、さらに悲鳴を上げた。
 泣きながら取り乱すつかさを抱きかかえたのはかがみであった。
 つかさは全ては姉の悪戯なのだと考えた。
「お姉ちゃん! [ピーーー]!」
「え、何で?」
 白を切るかがみの頬を殴りかけたとき、足がさわりと撫でられた。かがみではない。
 ヒキガエルが潰れた時のような悲鳴を上げてつかさは姉に抱きついた。だが姉は至って冷静で、「あ、こんなところにいた」ととんちんかんなことを言った。
「よく見なさい」
 いまだ混乱状態のつかさに、かがみは笑いを堪えた様子で足元を指した。
 恐る恐る見たところ、そこには白い猫がいた。
 状況が把握できないでいると、さらにかがみはトイレの中の散乱したトイレットペーパーを見て、「うげ、またやってる」と唇を曲げた。
「どういうことなの?」
 かがみは未だ笑いを堪えた様子で言った。
「その前に、パンツ上げたら?」
「あ」
786 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/08(水) 22:04:37.62 ID:ayPLMOk0
「猫を拾ってきたのよ」
 とかがみは説明した。件の猫は彼女の膝の上でくつろぎ、喉を鳴らしている。
「こいつ、トイレットペーパーで遊ぶのが好きみたいで、困ったものよね」
 つかさは文句を言う気も失せて、だらりと肩を落とし脱力した。
 部屋につかさを入れるのを拒んだのも、猫を隠すためだったのだ。たまに見る白い影は、猫がかがみの部屋から抜け出したためだという。
 でも、と思う。
「どうして隠してたの?」
 かがみは頬を染めて俯いた。
「だって、キャラじゃないでしょ」
 そんな姉を見たら、何だかおかしくなった。
 笑いながらつかさは言った。
「じゃあ、毎晩部屋をこんこんとノックしてきたのも、猫だったんだね」
「え?」とかがみは首を捻った。「何それ?」
「え」
 その時、こんこん、と扉が鳴った。
787 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/08(水) 22:06:43.06 ID:ayPLMOk0
以上です。
最近作風を模索しています……
黒井先生妄想ネタのときみたいにハイテンションでごり押しするのか、上記のSSのように
淡々と描写していくのか……
何が面白いのかわからなくなっています
読んでくれたら嬉しいんだからねっ///
788 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/08(水) 22:37:23.57 ID:vDhO4YU0
           ,,. -─一ー──-  ,,
         , イ´: : : : : : : : : : : : : : : : : `ヽ、
       /: : : : : : : : : : : : : : : : : : i: ,、: : ,:ヘ:.丶
     /. : : : : : : i : : : : : |i: : : : : l|::|ー-一i: : :ヽ
    /. : : : : : : : : ::|: : : : : ::|ヘ: : : : ハ |     ||. . . ヘ
.    i : : : : : : : : : : |: : : : : ::|::i!;. : : l ,!:!     |i: : :l: ::l
    i      . ,. :|: |: : : :::|:::|',: : :l .!l    iハ::::|: : l
    | . . . : : : : ::|: :!:::|: : : :::|‐t-k.,i__i!_,.   |/l: :!::i: :|
    |.: : : : : : : : :|: : !: |: : : :::|:::|  ,zx=ミ! ´   =k:|:ハ;|: :|
    |: : : : : : : : :|;; : :l: |: : : : ト;:|≠'{ }:.:i.     {,,!::i!::::!、::|
.    |: : : : : : : ::|;;;r‐ヾ|: : : :::|. i{! iri:::i.:| .ヘ ,_|:j }::::|. '!|
     l: : ::j: : : : !;;:{  'i!: : : : | ヾ. 込_ソ  .}~.辻ノ::::l. i!
.    |: : :j: : : : !;;;;;ゝ,,__ !:: : : :|  、 ̄   ノ  'ノ::;': :l        ,ィZ >>787
.    |: :/: : : : !;;;;;;;;;;;;/ノl: : : ::|   ゙'ー ´ -' i::: 州!  ノ~`''ヽ、/// 先輩!そのネタいただきっス!
    |::/: : : : /;;;;;;;;;/人. ヘ:i: : :|゙x=-z--‐''´ .|::/ |;! / ̄`゙ ヾ、ヾ;.{|      定石なオチを持って来るあたり
    !/: : : : /;;;;;;/  \ヾi: ::|'t   |}it、  .|/ |! /      \,xリ       余裕綽々ですね!
   /: : : : :/;:/彡三ミ、 ヘiヘ;:| .l  ll.}}_| / ̄`≠-、     //        しかし・・・タイトルでネタバレっスか!?
  /: : : : : /Z彡-一ーxヾ、 ヘハ |.  }!イ ヘ    -一,'   /,イ           なにはともあれ乙でした!    
  /: : : : : //      ヾヽ ゙y-l ,.イ;:: ::::::ヘ   - ''ノ  //ノ'
. /: : : : : /'           ヘヘ, >''ヘ::::.. ::: :::::ヘ.  -ッ´x、.Z/r'゙
.;゙: : : : : /             ∨   ∨.. :::: ::::::ヾ^!::. ::ヘィ'~リ
,:::: : : ::/           /     ∨::. ::.. ::::::ン:::::.::::::/
789 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/08(水) 23:33:14.00 ID:ayPLMOk0
模索ついでに今日はもう一つ投下

『肉』
 柊かがみは最近自身の腹に余った肉について悩んでいた。
 原因は明確である。趣味である読書の合間にばりばりと摘んでいた菓子のせいであろう。
 読書量と比例して摘む菓子の量は増える。無心で読んでいると、大量の菓子を食べてしまっていた。
 かがみは浴槽で下着姿になり、かがみの前で腹を摘んだ。見事に伸びる。
「ちょっとやばいわよね……」
 ちょっと、とは言うが、体重計の数値はちょっとどころではなく、思わず悲鳴を上げた。
「ど、どうしたの?」
 妹のつかさが浴槽に駆けつけてきたので慌てた。「な、何でもないわよ」
「ひょっとして、太った? わかるー」
「わかるって何よ!」
 思わず怒鳴った。つかさはびくついて、手を振った。
「い、いや、体重計乗ったら悲鳴上げちゃうよね、っていう意味で……」
「あ、ああ、そっか」
「別に最近お姉ちゃんが目に見えて太ってきたって意味じゃないんだよ?」
「うるさいわね!」
 つかさが去った後、かがみはため息を吐いた。ぶよぶよと伸びる腹の肉を弄んでいるうち、盛大に悲しくなる。
 しかし悲しんでもいられない。決意を胸に秘めた。
「ダイエットしなきゃっ」

「とりあえずはジョギングよね」
 かがみはそう独り言を呟きながら、クローゼットを漁った。
 やがて目的の運動用ジャージを見つける。「これこれ」
 まずは形から入るものだろう、とかがみは思う。しかし彼女の場合、それだけで満足する節があり、気づくと三十分後には本を読みながらまた菓子を摘んでいた。
 本を読み終わったところではたと気がついた。「ち、違う違う。ダイエットするんだった」
 しかし菓子の袋はすっかり空になっていた。我ながら情けなくなる。
「よし、今からでも外に走りに行こう!」
 言いながらカーテンを開けると雨がざんざんと降っていた。
「……明日からにしよう」
 その夜の夕飯はしっかりおかわりした。「だって明日からだもん」
790 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/08(水) 23:33:54.96 ID:ayPLMOk0
 学校でのお弁当も、もりもり食べていたところ、友人の泉こなたがぽつりと言った。
「かがみん最近さぁ……」
 その瞬間かがみは泉の口をから揚げで塞いだ。
「言わないで、自分でわかってるから……」
 妹に言われるならまだしも、友人に断言されては、心が折れてストレスでさらに太ってしまう可能性があった。
 泉はにやにやとうろたえるかがみを見た。
「へぇ、やっぱり。だって最近目に見えてだもんねぇ」
「だから言うなっちゅーに!」
 するとみゆきまでもが口を挟んだ。
「女性らしくなっていいじゃないですか」
 そのフォローが寧ろ心に痛かった。
「みゆき、ありがたいけどもうこの話題はスルーして欲しい……」
 決定的な事件はその昼休みの終わりに起こった。
 教室に戻ったところ、かがみの足元にゴムボールが転がってきた。顔をあげると男子生徒が手を振っている。
「柊、わりいとってくれ」
「もう、また子供っぽいことして」
 そんなことを言いながら腰を屈めてボールを取ろうとしたとき、びり、という音が響いた。
「ん?」
 男子生徒と同時にかがみは声を上げた。その音は自分の腰からした。
「まさか……」
 恐る恐るシャツをめくると、思ったとおり、見事スカートのチャックが裂けていた。
 かしゃっ、と音がした。驚いて顔を上げると、何故か赤面している男子生徒が、携帯でかがみの姿を撮っていた。
「あ、悪い、思わず」
 顔面に火がついたみたいに恥ずかしくなって、その日は早退した。

 それからかがみは猛烈にダイエットに勤しんだ。雨の日も風の日もジョギングした。
 もともと運動不足だったので、体重はみるみる落ちた。目標の数値を切ったとき、思わず涙した。
「あれ? かがみん」
 上機嫌に弁当をぱくついていると、泉が声を上げた。自分から言い出すのも何かと思って、言われるのを待っていたのだ。
 そうなのよ! とかがみは声をあげた。
「最近、痩せたのよ!」
 何度も頭の中で練習した言葉を元気よく吐き出す。
 しかし予想に反して泉は淡々としていた。それどころか衝撃的なことを口走った。
「どうりで。だって、せっかく最近おっぱい大きくなったのに、すっかり元の大きさに戻ってるもんね」
「へ?」
 フォローなのか、困り顔でみゆきは言った。
「スレンダーな魅力があって素敵だと思いますよ」
「え、え?」
 状況が理解できず。無意味に疑問符を続けた。泉はあーあ、と背伸びした。
「ダイエットでもしたの? もったいないね。そんなに気にするほど太ってなかったのに」
「ええええええええ!?」
 はたとかがみは、写真を撮られたことを思い出した。
 ひょっとして彼は、スカートのチャックを引き裂いた決定的瞬間を撮ったのではなく、屈んだことによりあらわになったかがみの谷間を撮ったのだろうか。
「あの変態!」
 いきり立って勢いよく立ち上がり、自分のクラスに戻った。
 そして件の男子生徒に歩み寄る。じっとりと睨んだ。
「あんた、あの時の写真消しなさいよ!」
 すると彼は涼しい顔をして、かがみの胸をじっと見つめた。そしてぽつりと言うのだ。
「何だ、あれパットだったのか。じゃあ消すわ」
「てめぇええええええええ!!」
791 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/08(水) 23:37:21.12 ID:ayPLMOk0
以上です。面白かったらコメントくれてもいいんだからっ///

>>788
タイトルのネタバレについては今気づきましたwwしまったっ
792 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/09(木) 18:11:53.63 ID:LgxOGgDO
>>791
かがみんのおっぱいみたい
793 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/04/09(木) 20:07:24.65 ID:XDze6oSO
−写真−

こなた「みんなー。体育祭の時の写真持って来たよー」
かがみ「は?そんなのいつ撮ったのよ」
こなた「お父さんが撮ってた。折角だから、焼き増ししてきたんだ」
みゆき「わざわざありがとうございます、泉さん」
つかさ「…っていうか、おじさん来てたんだ…」


かがみ(…パン食いと幅跳びの失敗の時のだけ…)
つかさ(…ハードルの時の転んだのだ…忘れたいのに…)
みゆき(…胸しか写ってません…)
かがみ「こなた…おじさんに直接お礼がしたいから、今日家に行くわよ」
みゆき「そうですね。これは是非ともお礼を致しませんと」
つかさ「じゃ、家で準備してからこなちゃんちに集合だね」
こなた(…お父さん、ごめんなさい…わたし余計な事しちゃったみたい…)
794 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/04/09(木) 21:06:32.02 ID:FwMKbj.0
つかさ「・・・失敗だってドンマイ♪朝のまぶし〜さに消えてしま〜え〜ばい〜いな・・・♪」
かがみ「・・・アンタその歌なに?」
つかさ「えっ?え〜と・・・なんだろう・・・?」
かがみ「なんだそりゃ」
795 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/09(木) 23:15:47.13 ID:VJr.a2AO
>>791

かがみの胸はほどほどでスレンダーな方がいいとおもた…


ところで、たまに話題に出てくるらき☆すたのエロパロのまとめと言うのをようやく見つけることが出来た。
なんか、こっちより大規模じゃないか!?
なんだよ!あと一年半早く見つかっていたら、リアルタイムで読めてもう少しおもしろかったのに……。
796 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/09(木) 23:41:26.20 ID:GzbNQpU0
>>792
みなみ「………!!」
ゆたか「どうしたの?みなみちゃん?」
みなみ「いや…なんかむn……なんでもない……」
ゆたか「………?」


797 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/09(木) 23:45:25.53 ID:GzbNQpU0
安価間違えたOrz
798 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/04/10(金) 00:12:52.50 ID:Ymu.Y.E0
ひかる「……じゃあ二人一組」
かがみ「…………」
あやの「ひ、柊ちゃん……私たちは三人で組みましょ?………ね!?みさちゃん!」
みさお「お、おう!もちろん!」
かがみ「…………」
799 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[便乗]:2009/04/10(金) 00:22:10.11 ID:y/E/Xc.0
>>798
ななこ「ほな二人一組なー」
こなた「…………」
みゆき「い、泉さん…私達は三人一組にしましょう!?……つかささん、いいですよね」
つかさ「う、うん、もちろんだよ!!」
ななこ「まったくーしゃーないなー」
こなた「……………………かがみんと一緒のクラスだったらなー……」
800 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/10(金) 19:16:30.85 ID:yY8mP6DO
こなた「はぁ…ヤバい…」

かがみ「どした?しょげた顔して」

こなた「いやさぁ今は春風感じまくりの春真っ只中じゃない?」

かがみ「それが?」

こなた「なのにさぁ私たち春らしいこと一つもしてないじゃん?」

かがみ「春らしいこと?」

こなた「そう、例えば花見とか?あ、かがみんチの神社で花見なんかどうかな?」

かがみ「却下」

こなた「えぇ〜」

かがみ「大体ね、なんで春だから春らしいことしなきゃなんないのよ別にいいじゃないの」

こなた「いや、でもさこう日本人として季節感を大切に」

かがみ「あんたから季節感なんて微塵も感じないんだが…」

無理矢理すぎるかorz
あ、プチ祭りについて避難所でやろうかどうか話てます、皆さん意見下さいな
801 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/10(金) 21:15:12.02 ID:qqVWWB20
>>800
小ネタにするとはww
802 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/04/10(金) 21:45:35.98 ID:ufjQ46U0
>>800乙。ナイス宣伝だw



こなた「それでね、その日は暇だったから軽い気持ちでSSに参加してみたんだけど――」

かがみ(SS?……ショートストーリだかサイドストリーだかの略だったっけ?つまりは二次創作のことよね、たしか)
みゆき(SS?……サービスステーションのことですね。泉さんはアルバイトを増やさなければならないほどお金に困っているのでしょうか?)
つかさ(SS?……しょっぱ酸っぱいの略、じゃないよね。何のことだろ……あっ!シークレットサービスの略かな?)

こなた「――みたいなカンジでさ、結局最後は徹夜までしちゃって結構大変だったんだよネ……って、聞いてる?」
かがみ「え?ええ、ちゃんと聞いてたわよ」
こなた「ホントかなぁ?じゃあ、私の話を聞いてみんなどう思った?」

かがみ「まあ、なんというか意外よね。あんたはそういうのに関心が無いというか、縁が無いと思ってたんだけど」
みゆき「そうですね。とりあえず、無理はしないで下さいね。私でよろしければ、いつでも相談していただいて大丈夫ですから」
つかさ「でもすごいよね〜、こなちゃん。大変だと思うけど、応援するから体に気をつけて頑張ってね!」
かがみ「いや、SSなんかで頑張ってもしょうがないだろ」
みゆき「そうですね、SSで頑張りすぎて体を壊したりしては元も子もないですからね」
つかさ「あ、そっか。SSで頑張るような状況なんてあんまり無い方がいいもんね」

こなた「むぅ、ちゃんと聞いてたみたいだね。それでさー、リレーSSにも参加しようとしたんだけど私にはハードルが高くってさ――」

かがみ(リレーSS……いろんな書き手がひとつのSSを書いていくやつよね。本を読まないこなたには文章を繋いでいくのが難しいのかしら)
みゆき(リレーSS……リレーをするかのような過密シフトの事でしょうか?学業が本分の私達には、たしかに無理がありそうですよね)
つかさ(リレーSS……シークレットサービスの人たちも運動会するんだ〜。障害物競走かなぁ?ハードルも本当に高いんだろうなぁ〜)

こなた「――という結果になっちゃったんだけど……って、やっぱり聞いてないでしょ?」
つかさ「そ、そんなことないよ。ちゃんと聞いてたよ?」
こなた「疑わしいなぁ。それじゃあ、今度はどう思ったのさ?」

つかさ「私には無理だけど、こなちゃんならセンスがあるから頑張れば大丈夫だと思うよ?」
かがみ「センスがありゃいいってもんでもないでしょ。頑張るってんなら、おじさんに相談してみたら?」
みゆき「そうですね。もし可能ならじっくり相談してみるのがいいのではないでしょうか」

こなた「むむぅ、一応は聞いてたみたいだね。でも、なんかさっきから違和感を感じるなぁ……?」



さぁ、プチ祭りも含めて盛り上がっていこうぜ!これを見てるそこの君も、レッツSS(何の略かはあなた次第)だ!
803 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/10(金) 22:26:10.60 ID:qqVWWB20
>>802
勘違いで会話が進んでいく感じがwwww
804 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/10(金) 23:30:50.95 ID:oMJgu.Io
ディアボロスレに粘着していたころはSSはずっとスクリーンショットの略だと思ってた
だかららきすたのSSスレを見たときはどんな画像張ってんだよって思ったわ
805 :kimkim[saga]:2009/04/10(金) 23:56:15.23 ID:oFR5tAA0
>>690
かなり遅れましたが 感想ありがとうございました
一言でもとっても嬉しかったです。
806 :命の輪の調べ[saga]:2009/04/11(土) 16:14:28.38 ID:vhwVeQ.0
投下行きます。

命の輪の関連作品です。
807 :命の輪の調べ[saga]:2009/04/11(土) 16:15:35.48 ID:vhwVeQ.0
 みなみはその日、学校の音楽室で作曲に取り組んでいた。数ヶ月前から取り組み始め、なんとか形になってきたところだ。
 ふと、みなみは誰かが部屋を覗いているのに気がついた。
「…あ」
 覗いていたのはゆたかだった。みなみは、演奏を止めて慌てて鍵盤の蓋を閉じた。
「え、やめちゃうの?」
 ゆたかが、パタパタと小走りに音楽室に入ってきた。
「…今のは、まだ聞かせるようなのじゃないから」
 少し照れくさそうに、みなみが呟く。
「そうかなあ、上手だったと思うけど…なんて曲なの?」
「…曲名はないの…今、作ってる曲だから」
 みなみの言葉に、ゆたかが目を輝かせる。
「へー、みなみちゃん凄いね。作曲も出来るんだ」
「…い、いや…そんなのじゃ…適当にやってるだけだから…」
 真っ赤になりながら、みなみが俯く。
「ねえ、みなみちゃん。最初から聴かせて欲しいな」
「…え…でも…まだ、出来てないから…」
「うん、出来てるところだけでいいよ。みなみちゃんが作った曲、聴いてみたいんだ」
「…うん…わかった」
 かなり不本意だが、みなみは頷いた。
 この親友の願い事は、出来る限り叶えてあげたい。みなみはそう思っていた。
 鍵盤の蓋を開け、深呼吸してからみなみはさっきと同じように指を滑らせる。
「…なんだか、優しい曲だね」
 ゆたかが、そう感想をもらす。みなみは演奏に集中しながらも、心の中で頷いた。
 
 優しいのは当たり前。これはあなたの曲だから。
 タイトルをつけるなら『豊穣』だろうか。
 もしかしたら、寂しいものになっていたかもしれない学園生活。
 そこに豊かな実りを与えてくれた、あなたのための曲だから。

「いつか完成したら、また聞かせてね」
 そう言って無邪気に微笑むゆたかに、みなみは頷いて見せた。


 目が覚める。みなみはゆっくりと上半身を起こした。時計を確認すると、まだ真夜中。
「…夢」
 高校時代の夢。何故、今更そんなものを見たのだろう。


- 命の輪の調べ -


808 :命の輪の調べ[saga]:2009/04/11(土) 16:16:00.35 ID:vhwVeQ.0
 世間一般では平日のはずの昼間。みなみの家には二人の客人が来ていた。
 ひよりとこなた、自由業に従事している彼女等は、忙しい時はとことん忙しいが、暇な時は平日だろうが暇なのだ。
「平和っスね〜」
 コップの中の氷をストローでかき混ぜながら、ひよりがのんびりと呟いた。
「…〆切は?」
 どことなく呆れたようにみなみがそう言うと、ひよりはみなみに向かって親指を立てて見せた。
「今回はバッチリ。ねえ、先輩」
 ひよりがこなたの方を向く。その視線を受けて、こなたもみなみに向かって親指を立てて見せた。
「うん。今回は、無茶苦茶余裕出来たよ」
 元気よくそう言った後、こなたはそっぽを向いてため息をついた。
「ってーか、新しく担当になった人がね、お父さんの学生時代の友人だとかで容赦ないんだよね…」
「…先輩には、厳しいくらいが丁度良いんじゃないでしょうか」
「…みなみちゃんも言うようになったね」
 こなたは不貞腐れた顔をしながら、くわえたストローをピコピコ動かした。
「そういや、ゆーちゃんと最近話した?」
 ストローをくわえたまま、こなたが二人にそう聞いた。
「…二日前に、電話で少し…でも、忙しそうでしたから、あまり話せませんでした」
 みなみがそう答えた。ひよりの方は黙って首を横に振った。
「そっか…ゆーちゃん、売れちゃったからねー」
 ちょっとしたきっかけから絵本作家を目指していたゆたかは、デビュー作がいきなりヒットし、今はとても忙しい日々を送っていた。
「そッスねー。先輩あっという間に抜かされたッスからね…わぷっ!?」
 ひよりの顔面に液体らしきモノがヒットした。発射元を見ると、こなたがストローを口に構えている。どうやら飲み物をストローに詰め、吹き矢の要領でひよりに向かって発射したようだ。
「悪かったねー売れない作家でー…気にしてるんだから言うなー」
「酷いッスよぉ…よりにもよってコーラ…うう、ベタベタしてきたー」
「先輩…飲み物で遊ばないでください…」
 ひよりにナプキンを手渡しながら、みなみがこなたをたしなめると、こなたはストローをピコピコ動かしながら「ぶー」と唸った。
「高校の時からホント変わんない人ッスね…そういや、ゆーちゃん。身体の方は大丈夫なんスか?忙しいと負担が凄いんじゃ…」
 受け取ったナプキンで眼鏡を拭きながら、ひよりはこなたにそう聞いた。
「ゆい姉さんから聞いたんだけど、全然大丈夫みたい。充実してるんだろうね。気力がみなぎってるとか、そんな感じだってさ」
「へー、そりゃいい事ッスね」
「うん。好きなことで稼げて体調も良くなってるんだから、ゆーちゃんとしては願ったり叶ったりなんだろうね…みなみちゃん?」
 こなたはそこで、みなみが俯いているのに気がついた。
「どうしたの?気分でも悪くなった?」
「え…いや、なんでもありません…なんでも…」
 こなたに話しかけられて、みなみは慌てて顔を上げて手を目の前で振って否定した。
「…無理はしないでよ?」
 ひよりにそう言われ、みなみは体を強張らせた。
「…大丈夫…大丈夫だから…」
 力のない声で呟くみなみを、ひよりは心配そうに見つめた。
「本人が大丈夫って言ってるんだから、大丈夫でしょ」
 未だにストローをピコピコさせながら、軽い口調でそういうこなたを、ひよりはジト目で見た。
「…先輩は、もう少し危機感とか持ったほうが良いんじゃないスか?」
 ひよりの言葉に、こなたのストローがピタリと止まった。
「…ひよりん、今度からイラストレーター変えようかと思うんだけど…」
「うわあ!それだけは勘弁してください!今先輩に干されたらマジで仕事が無くなるんスから!」
 何故かふんぞり返っているこなたと、平謝りしているひより。その二人を見ているみなみは、少しだけ気が楽になるのを感じていた。


809 :命の輪の調べ[saga]:2009/04/11(土) 16:16:42.96 ID:vhwVeQ.0
 二人が帰った後、みなみは自室にあるピアノに座っていた。
「…ゆたか」
 その名を呟く。そして、高校の時にゆたかのために作った曲を弾き始めた。
『いつか完成したら、また聞かせてね』
 その約束は未だ果たされていない。
 曲はとっくに完成している。しかし、ゆたかが忙しくなってから、直接合うことが少なくなり、ゆたかの邪魔にならないように、みなみの方から連絡を取ることをほとんどしなくなった。
 ゆたかが遠くなっていく。そう思うと、今弾いているこの曲が、酷く軽いものに感じられてきた。
 ゆたかのための曲。ゆたかに聞かせる以外に、この曲にはなんの価値もない。
 みなみは演奏を途中で止め、ベッドに寝転んだ。
 高校の時は、自分がゆたかを支えているという自負がみなみにはあった。
 一年生の時に、身体が弱いゆたかの助けになろうと保険委員になった。その後運よく三年間同じクラスになることができ、みなみは保険委員を続けた。
 しかし、今ゆたかは自分が支えなくても立派にやっている。こなたの話だと、体調の方も良いようだ。
 もしかして、ゆたかに自分は必要なかったのではないか?みなみはそう思い始めていた。
 高校の時、自分と出会わなくてもゆたかはちゃんとやれていたのではないだろうか?
 少なくとも、いまのゆたかには自分は必要ない。下手に会うと、自分がゆたかにすがってしまい、邪魔になるだけだ。
 自分の弱さに嫌気がさしたみなみは、布団を頭まで被った。
 今はこれでいいんだ。あの頃とは違うんだ。ゆたかが幸せになれるのなら、何の問題もないんだ。
 みなみはそう自分に言い聞かせて、無理にでも納得しようとしていた。

 高校生活が始まったあの日に繋がった、二人の輪。みなみは、その繋がりが千切れてしまいそうな、そんな気がしていた。



810 :命の輪の調べ[saga]:2009/04/11(土) 16:17:30.98 ID:vhwVeQ.0
 数日後、みなみは小さな音楽堂で行われたコンサートを終えて、控え室で帰り支度をしていた。
『少し音が重かったね。何かあったのかい?』
 聴きに来ていたピアノの師に、そう言われたことを思い出し、みなみはため息をついた。
 自分の感情が音に出てしまう。悪い癖だとは思って治そうとはしているのだけど、なかなか上手くいかなかった。
 気落ちしてしまい、帰り支度の手が止まっている所に、コンコンとドアをノックする音が聞こえた。
「…はい、どうぞ」
「や、お疲れさん」
 ドアをあけて入ってきたのはひよりだった。
「はい、これ」
 そのままみなみの方に歩いてきて、手に持った花束を渡した。
「…あ、ありがとう…来てたんだ」
 花束を受け取りながらみなみがそう言うと、ひよりは盛大にため息をついた。
「…気付かれてなかったんだー…ちょっとショック」
「あ、あの…ご、ごめん…緊張しないように、観客の方はあまり見ないようにしてるから…その…」
 慌てて言い訳を始めるみなみを見て、ひよりは今度はニヤリと笑った。
「ま、みなみちゃんらしいっちゃらしいけど…その分だとこっちも気がつかなかったみたいだね」
 そう言いながらひよりは、花束に付いていたカードを指差した。みなみがそれを手に取り、内容を読んだ。
『みなみちゃんへ 小早川ゆたか』
 みなみは驚いて目を大きく見開いた。ひよりの方を見ると、彼女はニヤニヤしながらドアの方を指差していた。
 みなみがそちらに視線を移すと、ドアの向こうからゆたかが覗き込んでるのが見えた。
「ゆ、ゆたか…」
 みなみが名前を呼ぶと、ゆたかは申し訳なさそうに頭をかきながら部屋に入ってきた。
「えへへ…びっくりした?」
 返事をするのも忘れ、みなみはゆたかを見つめていた。最後に会ったのはいつだったかなど、どうでもいいことばかりが頭の中に浮かんでいた。
「昨日、田村さんがね、今日のコンサートに来ないかって誘ってくれたの」
 ゆたかが、みなみの持っている花束をチラリと見た。
「急だったからなんにも準備できて無くて、これくらいしかできなかったんだ…ごめんね」
 そう言うゆたかに、みなみは首を振って見せた。
「…来てくれただけでも、嬉しいから…」
 それを聞いたゆたかが俯く。
「…ごめんね…わたし、みなみちゃんの事考えてなかった…たまにお話しても、自分のことばかり話してて…今日のことだって、田村さんに聞かなかったら分からなかったし…」
「それは、ゆたかは忙しかったから…」
「それで、みなみちゃんが遠くなっちゃうのは嫌だよ」
 ゆたかの言葉に、みなみは息が詰まる思いがした。
 遠くなるのは嫌だ。離れるのは嫌だ。それは、自分だって思っていたはずだ。なのに、何故自分はそれを容認しようとしてたんだろう。
 みなみはふと。少し前に見た高校時代の夢を思い出した。
 今しかない。
 みなみはそう思い、部屋の出口へと向かった。
「あ、みなみちゃん、何処に?」
「…少し待ってて…約束、ちゃんと果たすから…」
 そう言ってみなみは部屋から出て行った。
 残されたゆたかとひよりは、顔を見合わせて首を傾げた。


811 :命の輪の調べ[saga]:2009/04/11(土) 16:19:25.31 ID:vhwVeQ.0
 数分後、みなみが部屋に戻ってきた。
「…二人とも、こっちに」
 ドアの外から手招きするみなみ。
「う、うん」
 ゆたかはそれに素直に従ったが、ひよりはその場に残って、何か考え込んでいた。
「どうしたの、田村さん?」
 ゆたかそう聞くと、ひよりは何故かニヤリと笑った。
「わたしはこの辺でおいとまさせてもらうッスよ」
「え?どうして?」
「いやー…若い二人の邪魔するのは野暮ってもんスから」
「田村さん…変な風に言わないで…」
 ニヤニヤしながら手を振るひよりを、みなみは少し強い口調でたしなめた。


 ゆたかがみなみに連れてこられたのは、先ほどまでみなみがコンサートを行っていたホールだった。
 舞台の上にはみなみが弾いていたピアノが、シートをかけて置かれていた。
「…ここの人に頼んで、少しだけ使えるようにしてもらったの」
 そう言いながら、みなみはピアノのシートを外し、演奏の準備を始めた。
「何するの?」
 ゆたかがそう聞くと、みなみは少しだけ微笑んだ。
「…高校の時の夢を見たの」
 みなみの言葉が良く分からず、ゆたかは首を傾げた。
「…その時に約束してた…『曲が完成したら、もう一度聞かせる』って」
「…あっ!」
 ゆたかが思わず声をあげた。
 音楽室。未完成の曲。約束。
 ゆたかは全て思い出していた。
「…ごめんなさい…わたし、すっかり忘れてて…」
 申し訳なさそうにそう言うゆたかに、みなみは首を振って見せた。
「…わたしは、ゆたかと離れようとしてた」
 囁くようにそう言いながら、みなみはピアノの前に座り、鍵盤の蓋を開けた。
「ゆたかが忙しいから…その方がゆたかのためになるからって、言い訳して」
 深呼吸して、指を鍵盤に置く。
「でも、それって結局、ゆたかのことを何にも考えてないって事だった…ゆたかは、わたしと離れるのは嫌?」
「え?…えと…嫌だよ…多分、高校の時にみなみちゃんと出会わなかったら、わたしここまで来れなかったよ…」
 みなみに唐突に聞かれたゆたかは、慌ててそう答えた。それを聞いたみなみが微笑む。
「ありがとう、ゆたか…この曲はね、最初ゆたかの為に、ゆたかをイメージして作ってたんだ」
「…わ、わたしを?」
「うん…でも、それじゃダメなんだと思う。ゆたかのこと勝手にイメージして、勝手に決めつけて…それで、自分で勝手に追い詰められて」
「そ、そんな事ないよ…わたしだってそう言うところあるから…」
「…ゆたか。だからこの曲は二人の曲。二人のための曲…これからもずっと離れないための」
「…うん」
 感情が曲に出てしまうのは、自分の悪い癖。ならば、ゆたかのために作ったこの曲も、この瞬間に二人の曲へと変えてしまえるはずだ。
 みなみは演奏を始めた。誰もいない二人だけのホールに、優しい音が響く。

 曲の名は『豊穣』。
 二人の輪を繋ぎ続け、ゆたかな実りを与え合う、二人だけの曲。


- 終 -
812 :命の輪の調べ[saga]:2009/04/11(土) 16:20:51.75 ID:vhwVeQ.0
以上です。

全然その気はないのに、この二人を書くと何故か百合っぽくなったり。
813 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/11(土) 17:26:00.71 ID:S4gt0BU0
和ませてもらえた。確かに、この組み合わせは意識しなくても百合っぽくなりやすい。
814 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/04/11(土) 17:46:04.10 ID:O2HGGAo0
>>812
じゃあいっそのこと百合にしちゃえば…ゲフン、ゲフン
とても優しくて綺麗ないい話ですね
815 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/04/11(土) 18:04:31.90 ID:mS7S39w0
>>812
ひよりの思う百合とは違う。
ほのぼのとしてる感じがいいですね。
816 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/11(土) 22:53:18.87 ID:fxZ/j5c0
>>812
場面場面が頭の中に浮かびます。
特にみなみがゆたかに演奏を聞かせるシーンは水彩画のように鮮明でした。
817 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/04/12(日) 10:08:25.61 ID:q8RZxTc0
かなたとの恋愛談義

 それは、高校一年生のときのとある昼休みのことだった。



 泉とかなちゃんが向かい合って、弁当を食べていた。
 仲睦ましいことよね。
 いつもだったら、食べ終わっても昼休みが終わるまで二人でしゃべってるんだけど、用事があるっていって泉が教室を出ていった。


「相変わらずのラブラブカップルね」
 私は、かなちゃんにそう話しかけた。
「そんなんじゃないって言ってるでしょ。私とそう君は、ただの幼馴染よ」
「登下校も一緒でお昼も一緒でさ。泉だってかなちゃんへの好意を隠そうともしないし、かなちゃんだってずっと面倒みてやってるじゃない。どこからどう見ても、ラブラブカップルじゃないの」
「どうしてみんな分かってくれないのかしら。幼馴染のお友達がたまたま男の子だってだけなのに」
「かなちゃん。それ本気で言ってるの?」
「もちろん」
「あのさ。泉は、かなちゃんのことが好きだってはっきり言ってるんでしょ。なのに、何とも思わないわけ?」
「付き合ってほしいなんていわれたことは一度もないわ。なら、今のままで何が悪いの?」
「かなちゃんって、彼の決定的な一言を待つ夢見る乙女ってやつ?」
「それも違う。私は今のままで何の不満もないもの。変わりたいなら、変わりたい方が言い出すべきだわ」
「そのうち泉も心変わりして、他の女のところに行くかもしれないわよ」
「それならそれでいいじゃない。心変わりなんて誰にでもあることよ」
「彼女との関係に邪魔だからって、かなちゃんとの友人関係もやめにしようって言われるかもよ?」
「そう君がそうしたいっていうなら、仕方ないわ」
「それでいいの?」
「大事なお友達の恋路を応援するのは当然でしょ」
 本当に、かなちゃんは、泉のことを何とも思っていないらしい。
 私は、唖然とするばかりだった。
「じゃあさ。泉から付き合ってほしいって言われたら、どうするの?」
「そう君にそういわれたら、私だってよく考えるわよ。よく考えて結論を出すわ」
 断ったりしたら、泉のやつ、自殺しそうよね。
 かなちゃんが断るなんて、想像もできないけどさ。
「泉じゃなくて、他の男から付き合ってほしいって言われたら?」
818 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/04/12(日) 10:09:58.84 ID:q8RZxTc0
「それでも同じよ。相手は真剣なんだから、こっちだって真剣に考えてあげなきゃ」
 泉以外の男と付き合うかなちゃんなんて、想像もできない。
「他の男と付き合うことになったら、泉のことはどうすんのよ?」
「今のままで何も変わらないわ」
「それって、相手の男から見たら浮気も同然よ。認めてくれるわけないじゃない」
「そんな心の狭い人なんて、好きにならないわ」
 かなちゃんはそう言い切った。
「なるほど……」
 そんな心の広い聖人君子は、この世に多くはない。
 こんなに可愛いかなちゃんに今まで彼氏ができなかった真の理由が分かった気がした。
 泉が遠慮なく周りを牽制してるという以上に、かなちゃん自身のそういう態度が男を怖気付けさせるんだ。
 それが分かってるから、泉もある意味安心してるのだろう。
 でも、それじゃあ、今のままで何も進展がない。ラブラブカップルにしか見えないのに、当人たちにとってはただの友人関係だという、周囲にとってはもどかしいというかはっきりしろやこらっていうかそんな感じのままで……。


 私は、後日、泉を捕まえて、どうしてかなちゃんにちゃんと告白しないのかと訊いてみた。
「いやあ。こういうのは、告白される方が萌えるだろ? こう、上目遣いで、顔を赤らめながらさ」
 そういいながら泉は陶酔していた。
 駄目だ、このオタクは。



 その後、高校を卒業するまで、二人はずっと変わらないままだった。
 聞くところによると、大学に行ってもそんな感じのままだったみたい。
 結局、泉の方が根負けして、かなちゃんにプロポーズしたそうよ。
 付き合ってほしいってのをすっ飛ばしていきなりプロポーズってのもすごいけど、プロポーズのセリフもすごかった。
 かなちゃんから泉のプロポーズのセリフを聞き出したときは、私は数分間声も出なかったわ。
 かなちゃん、それでよくOKしたわよね。
 いや、まあ、かなちゃんが断るなんて想像もできないけどさ。
 泉のやつにプロポーズをやり直させるぐらいは、してもよかったんじゃない?

終わり
819 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/04/12(日) 20:15:13.57 ID:rKTWeUSO
−手間−

こなた「かがみはポテチ系のお菓子は食べるの?」
かがみ「そりゃもちろん」
こなた「もちろん言いますか…あれって結構カロリー」
かがみ「それ以上言ったら、鼻の穴にありったけのポッキー詰めるわよ」
こなた「…しーませんでした…どんなの食べてるの?」
かがみ「そーねー…基本はポテチね。とりあえず、季節限定のは全部押さえてるわ。それとチップスターも結構好きなのよね。あと、ポテロングとかあっちの方も好きよ。じゃがりこも良いわねー。これも季節限定があって、次来るのが楽しみになるのよね。この前奨められたじゃがびーってのも、なかなか味があってよかったわ」
こなた「…おおおおお……確実に太」
かがみ「それ以上言ったらケツの穴に…」
こなた「かがみんがケツとか言っちゃダメ……あれは食べないの?プリングルズだっけ?」
かがみ「あーアレね…アレはめんどくさいの」
こなた「…めんどう?」
かがみ「外蓋はその他プラ、中蓋は燃えるゴミ、本体は紙、底部分は燃えないゴミ…食べる度に分解しないといけないのよ」
こなた「うわー…」
かがみ「…美味しい事は美味しいんだけどね…」
820 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/12(日) 21:25:06.22 ID:q0wIK7w0
>>818
―話を語る第三者が、読者の代わりにかなたの心情を聞き出してくれる―という作品。
かなたはこんなに割り切った人物だったのか?……なんて疑問はさておいて、この読みやすさは筆頭に値します。
読者に語りかける形式の作品としてもうまくいってるかと。
>>819
〜ひっぱったら飛んでっちゃったねポテチップス♪ってか。
4コマの本編にありそうな話ですね。
821 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/04/12(日) 22:34:44.76 ID:DIlhXvM0
>>819
コンコン、コンコン

かがみ「つかさー、居るー?入るわよー?」ガチャリ
つかさ「あ、お姉ちゃん」
かがみ「ねえ、つかさ。今お菓子食べてたんだけどさ、あんたもこれ(プリングルズ)食べない?」
つかさ「えっ?くれるの?」
かがみ「うん。もう残り少ないし、欲しいんならあんたに全部あげようかな〜、って思ってるんだけど」
つかさ「わーい♪もらう、もらう。ありがとう、お姉ちゃん」
かがみ「どういたしまして。それじゃあ、私は部屋に戻るわね」

ガチャ、バタン

かがみ(うふ、うふふふ……これで分別もしなくて済むし、感謝もされるし……まさに計画通りってやつね!)ニヤリ





み き(つかさの部屋から出てきたかがみが、ものすごく悪い顔で笑ってたけど、何があったのかしら……?)ドキドキ
822 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/04/13(月) 05:07:02.46 ID:jZdn2m60
>>820

 そうじろうにあの最低のプロポーズを言わしめたものはなんなのかを考えてみたら、こんな話になりました。
 そうじろうが「おまえが振り向いてくれないから」というぐらいだから、あのプロポーズまでは、かなたにとってはそうじろうはずっと幼馴染でしかなかったんじゃなかろうかと。
823 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/13(月) 06:18:32.26 ID:SlrW/Oso
 もってい〜け♪
 その夜、かがみの部屋で携帯電話が鳴った。
「はーい、もしもし。こなた?」
「かがみ……」
「何よ暗いわね。ゲームのデータでも飛んだのかー?」
「私もう……どうしたらいいか、わかんなくて……」
「ちょ、ホントにどうしたのよ?」
「お願い……助け」
 ブツッ
「? こなた? こなた!?」
 かがみは思い出す、最近こなたの様子がおかしかったことを。
 話しかけても上の空で、ボーとしていることが多かった。
 なにか悩んでいるのではないか、みゆきがそう言った時、どうせ大した事じゃないと、

笑い飛ばした。
 気付けなかった、気付こうとしなかった、友達なのに。
 かがみは何も持たず部屋を飛び出し、こなたの家へと向かう。暗い夜道を、自転車に

乗り全速力で。


「ってなわけで、どうしようか悩んでたんだけどさ、アニメの録画時間被る分かがみに入

れてもらえばいいじゃーんってね」
「ほほう……それで、なんであの電話になるんだ?」
「んーなんとなく?」
 悪びれる様子もなくこなたは言う。いや、こなた側としては何も悪いことをしたつもりは

ないのだ。
 お願いするために電話をしたら、かがみが勝手に飛んできたのだから。
「なんで、途中で切ったのかしら……?」
「あーあれね、あれはね携帯の電池が切れたんだよ〜。家からかけ直しても出ないから

困っちゃってね」
 そこでこなたは、ビデオテープとメモを差し出す。
「てことで、はいこれ。入れるテープと時間書いたメモね。野球とかでずれないの選んど

いたから――ってかがみ?」
「ふ、ふふふふふ。そう……そうなの……それで、ね……ふふふふふ……」
「かっ、かがみ様……?」
 俯いていたかがみは、ゆっくりと顔を上げる。
 地獄の閻魔か、世界を滅ぼす魔王か。
「ちょくぁwせdrftgyふじこlp;@:「」」

 哀れな少女の叫びが、夜の闇へと消えていった――。
824 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/13(月) 06:19:12.15 ID:SlrW/Oso
>>821
かがみ不審すぎるwwww
825 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/13(月) 07:09:33.95 ID:Mq/xD.SO
>>822
あれって、プロポーズじゃなくて告白時の台詞だったんじゃ…。


参考になるかは微妙だけど、PS2のゲームでプロポーズの話があった。
826 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/13(月) 12:48:25.30 ID:3a/A1MDO
>>812
途中でみなみに
「ゆたかが元気になったのはずっと君がついていたから。君のおかげで元気になったんだよ?」
って言いたくなったのは俺だけで良いはずだ
何にしてもGJだ!
827 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/04/13(月) 22:57:28.52 ID:cRoXWXs0
レスありがとうございます>>812です。

ヒヨリウイルスにでも感染してるのか、この二人は書くたびに百合っぽくなっていきそうです…。

以下、後書きに書き忘れてたNG場面(校正段階で発見した誤植)。

「…高校の時の嫁を見たの」
「嫁!?」
「…その時に約束してた…『大きくなったら結婚しよう』って」
「サラッと話進めてるけど、これってNGだよね!?ってか話変わってるよね!?」

夢→嫁 なんでこんなタイプミスしたのか、自分でもよく分かりません。
828 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/13(月) 23:25:27.35 ID:ZZ1dwwDO
「らっき〜ちゃんねる〜」
♪チャ〜ラチャラララ…

あきら「はーいこんばんは、あきらちゃんでーす☆アシスタントはこちら!」

みなみ「え、あ、あのいっ岩崎、岩崎みなみです(ペコリ」

あきら「わぁ〜(パチパチパチ はじめましてですね、みなみさん」

みなみ「うん…はじめましてだね」

あきら「……」

みなみ「……」

あきら「(会話が続かない…)えと、そうそう、今回は皆にお知らせがあるそうですね?みなみさん、教えてPleaseっ☆」

みなみ「……(どうしよう私ってつまらないかな?)」

あきら「ほぇ?みなみさーん?」

みなみ「んぇ?あ、はっはい、えと避難所にてプチ祭りのお題投票所を親切な方が貼ってくれました、皆さん投票よろしくお願いします」

カンペ【15日】

あきら「えーと、投票は15日までだそうでーすっ☆皆どしどし投票してPleaseっ☆、はいみなみさんも」

みなみ「うっ…ぷっPleaseっ☆」

あきら「んじゃ!バイニ〜っ!」



「恥ずかしいならやらなきゃよかったのに…」
「……カァ〜////(恥」


ブツンッ
829 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/04/14(火) 16:47:09.14 ID:X69hoUSO
−もしものかがみん−

こなた「ねえ、かがみ。もしわたしが男だったらどうする?」
かがみ「そうねえ…その場合まず出会いからなんだけどつかさ絡みだから助けてもらったのをきっかけにつかさとこなたが付き合い始めてちょっとしてから『わたしの彼氏なの』とか言って紹介されて『なんかちっこくて可愛いわ…つかさには勿体ないわね』とかわたしが思って暫く様子みてからこなたがオタクだって気がついてつかさにその事を言うんだけどつかさは『うん、知ってるよ。でもこなちゃんはそんな怖い人じゃないよ』とか言ってわたしは男でもちゃん付けかとか思いつつも『それは騙されてるのよ。あいつの本性はこういうのよ』とか言ってネットやら駆使してオタクの駄目なとこばかりつかさに見せてオタクに対する恐怖心を刷り込んでいってから間を空けてこなたに『最近つかさとどう?』ってシレッと聞いたら『…なんだか最近、避けられてる気がするんだ』って言ってくるからわたしは『そう…あの子君がオタクだって事、不安になってたみたいだから…』言うのそうしたらこなたはちょっとムキになって『そんな事ないよ!気にしないって言ってくれたんだ!』って言うからわたしは『そうね、あの子は誰にでも優しいから…』とかちょっと不安になるような事言っといて今度はつかさに…」
こなた「かがみ…つかさが泣きそうだよ…」
つかさ「やーめーてー…」フルフルフル



みゆき「あの…わたしは…」
かがみ「いや、今の話にみゆき関係ないでしょ」
みゆき「…ですよね」
830 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/14(火) 19:41:25.67 ID:PYQgskQ0
>>828
宣伝乙(煽り的な意味でなく)。
共通点のまるで無い二人。案の定な結果でしたね。
しかし、あきらは原作とアニメでキャラが違い過ぎる。
>>829
静かに狂うかがみと相変わらずハブられてるみゆきさん。
定番ネタだけどアリ。
改行が無いのも異常さを引き立てててGOO。
831 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/04/15(水) 10:33:53.52 ID:CZiw4sSO
−もしものかがみん2−

こなた「ねえ、かがみ。もしわたしがみゆきさんみたいに、背が高くてグラマーだったらどうする?」
かがみ「そんなこなたモドキはいらない」
つかさ「短っ」
かがみ「大体、そういうのはみゆきで十分よ…っていうか乳はみゆきじゃないとそそられないわ」モミモミ
みゆき「…それは、褒められているのでしょうか?…っていうかどさくさに紛れて揉まないで下さい」
こなた「…節操はないけど、こだわりはあるんだね…」
832 :お知らせ2009/04/15(水) 16:24:33.44 ID:pkBp7g.o

こなた「プチ祭りのキーワード投票今日までだからよろしくね〜」
http://vote3.ziyu.net/html/puchi.html
833 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/15(水) 21:55:04.37 ID:rAK5z.w0
>>831
こなた「だめだこのかがみ…早くなんとかしないと…」
834 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/15(水) 21:57:14.49 ID:xoEtI3E0
テスト
835 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/15(水) 21:57:31.32 ID:xoEtI3E0
テスト
836 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/15(水) 21:57:46.65 ID:xoEtI3E0
テスト
837 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/15(水) 21:58:00.51 ID:xoEtI3E0
テスト
838 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/15(水) 21:58:15.14 ID:xoEtI3E0
テスト
839 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/15(水) 23:50:46.60 ID:rAK5z.w0
                    ,.、   ,.、_
                   /:.:`;ィ': ;ノ:.:`ヘー::‐:-.、__
             、ヽ  /: : :/: ::/: ; : : :゛;ィ^y':ヽ、::`ヽ、
              丶  ,ィ': : :/: : :.;/::/ : : ;: : : : : : : :ヘ:: : : `ヽ、
              `  //: ::/: : .::;ィ': :/: :: : iヘ、: :: : : : : ∧:: : : : :ヘ、
              //: :/: : ::::/|: ::i: :::: :i:| |: :|: ::i:: : : :ヘ:: : : : : :ハ
             ,〃: :/: : ::::/'´|: ;|: :::: :|:| |: :ト、::|: : : : :∧: : : : : :}':⌒:ヽ、
              '´/: :/ : :;:〃 __,|;ノ|: ::: :|:j |: j  `ト、: : : :ハ: : : : : |:~:`:ヽ:::\
             {: ;/: : /:/,ィチ:弐 {: ::: :リ __レ'   |: : : ::i : :|:: : : : j:: : : : :λ:.:}
             j//: : :!/ィ fんィ| ヽ、::{ オチ:心.、|: : : ;ハ:: :|:: : : /:: : : i: :ノ }::j
              |: : :;ハ `弋z:リ    `  |んィ:::}`|: : :/:::|:.:j:: : :/:i:: : : |:/ j/
              ヽ、{::::j   `"     弋z:::;ソ/|:.:/:::;ハレ'::;ィ´::|:: : :|:|:|   ここまでまとめました〜〜
               ノ:; ::ヽ、   '     ` "/:;:|:/:::/_,ノ}´:;ハ::::|:: : :|:|:j
    _______〈;ハ: : ::リヽ、 `ー‐'     /::/::´;/´  j:;ノ |:::|:: : ;j:|'
   |:|┌───────`ヽ:{   ` ー-ァ─τ"/:/: :/::,>、'´   ヽ}:: ;ハ:{、
   |:| |              `    ,イ´~`ヽ 〈:/'"´-‐'  ,,_}、_   ノ:;ノ ``
   |:| |                /⌒ヽ、   `ヽー‐─" ,,_   \'"´
   |:| |                /     \  ゛ヽ:::::"~       〉
   |:| |                 〈      iヽ、           ∧
   |:| |               ノ゛     |:: ∨         /:i:ハ、
   |:| |              /       i|:::   `ー─-==='"::::{::::::〉
840 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/04/15(水) 23:53:14.83 ID:CZiw4sSO
−まとめ人への感謝の気持ちXX−

ゆたか「………」
みなみ「…ゆたか、カメラ回ってる」
ゆたか「へ?カメラ?…ってみなみちゃん!?ってここ何処!?わたし部屋にいたよね!?あれぇ!?あれぇー!?」
みなみ「…ゆたか、落ち着いて…前回のレスにリクエストっぽいのがあったから…わたし達の出番になっただけ…」
ゆたか「い、色々納得出来ないけど、分かったよ…ってことは、何かしなくちゃいけないんだよね?…えーっと、みなみちゃん?」
みなみ「…何?」
ゆたか「なんでみなみちゃん、縛られてるの?」
みなみ「…それはゆたかに攻めら…」
ゆたか「解いて欲しいんだね!分かった。やってみるよ」
みなみ「…え…あ…ちが…」
ゆたか「うー…固いなー…なんでこんな結び方…」
みなみ「…あ、あの…ゆたか…」
ゆたか「あ、ゴメン。痛かった?もうちょっと我慢してね。何とか解けそうだから」
みなみ「…いや…その…話を…」
ゆたか「それにしても、誰がこんな酷い事したんだろ…」
みなみ「…泉先輩のお父さんに…」
ゆたか「え、伯父さんが!?もう、しょうがないなー…みなみちゃん、安心して。もうこんなことしないように、わたしがきつく言っとくから」
みなみ「…いや…それは困…」
ゆたか「はい、解けたよ!じゃ、わたし帰るね。みなみちゃんも気をつけてね」
みなみ「…あ…行っちゃった…失敗…どうしよう…」



そうじろう「…頼まれて縛ったのに、ゆーちゃんにこっぴどく叱られた…」
こなた「…ご愁傷様」
841 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/16(木) 00:09:42.31 ID:w0.gcq.o
>>839
まとめ乙ッス!


ということでープチ祭りキーワードは上位二つ、『みwiki祭』と『春風』になりました
見るからにカオスなことになりそうですが、奮ってご参加くださいませ〜
なお、キーワード投票がずれ込んだ為、日程の方がややこしくなっております。そちらは追ってご連絡いたします
http://vote3.ziyu.net/html/puchi.html
842 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/04/16(木) 15:55:20.53 ID:SF63EESO
−我々のプチ祭−

 鷹宮神社。その社内。
 息を飲む事さえも躊躇う程の張り詰めた空気の中、巫女であるいのりとその妹であるまつりが、祝詞を捧げている。
 その二人を見守る神主のただおと、その妻みき。双子の姉妹、かがみとつかさ。そして、何故かこなたとみゆき。
 中央に造られた質素な祭壇には、半透明で表面にツブツブのあるビニールシート…俗に言うプチプチが鎮座している。
「…ねえかがみ…コレなに?」
 こなたは自分の隣で儀式を見守るかがみに囁くように聞いた。
「なにってプチ祭」
「…は?」
「プチプチを布知布知様へと祭り上げる、鷹宮に古くからある秘祭よ」
「…さいですか(プチプチってそんな昔からあったっけ?)」
「あの…その秘祭にどうしてわたし達が?」
 今度はみゆきがつかさに対してそう聞いた。
「ゆきちゃんとこなちゃんには、何時もお世話になってるから特別に参加させてあげようって、お父さんに頼んでみたんだ」
「そ、そうですか…ありがとう…ございます…」


 関東屈指の歴史を誇る鷹宮神社。そこには、我々一般人には知る事すら叶わぬ秘密が隠されている。
843 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/16(木) 18:33:36.08 ID:/DIJVdMo
>>842
わけがわからな過ぎてフイたw
844 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/04/16(木) 18:49:37.48 ID:YByX6vI0
>>839
まとめ乙です!

>>840
投票所管理乙です!
『みwiki祭』…だと…!?さては、みんなノリだけで投票しやがったなw

>>842
地味な祭りだなww
845 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/16(木) 19:23:57.88 ID:esKsoOcP
>>842
みゆきさんが引いてるwwwwww
てか、布知布知様てwwwwww
846 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/16(木) 23:05:08.80 ID:e/WmXrU0
今日はパティの誕生日でつね>ワ<おめー
それはさておき、打ち切りフラグが立ちかけていた柊つかさの地獄巡りを・・・

柊つかさの地獄巡り 
第6話 怒りのパティ

つかさ「・・・・・」
私は・・・まだ暗闇の中にいる・・次は・・・どこ・・
次は・・どんな苦しみが・・待っているの・・?

みんなの声が・・うっすらとだけど・・聞こえるーーー
  「・・さ・・きなさ・・」
  「つ・・・は・く・き・よ」
  「・か・さ・お・・・ださ・」
え、何ーーーお姉ちゃん?こなちゃん?ゆきちゃん?
よく・・聞こえないーーー

そう考えた瞬間ーー世界がーー開けました。

そこは荒涼とした場所・・
そこにいるのは・・・パトリシアさん?
パティ「今日はワタシのバースデー・・デス・・
なのに・・ダレモ祝ってはくれませんデシタ・・・
・・オマエノセイダゾKY!」
つかさ「ええっ!?どうして!?」
パティ「モンドームヨー!!パッティパティにシテヤンヨー!!」
パトリシアさんが金棒を持って襲い掛かってきます。
私は・・ひたすら逃げるしかありませんでした。
パティ「ドコヘ逃げるというのデスカ!!コノ世界にオマエノ逃げ場ナド無いゾKY!!」
パトリシアさんは金棒片手で追い掛け回してきます。どことなく楽しそう・・
パティ「ダイタイオマエノKYナ発言ノせいでコウナッテイルノデハナイノデスカ!!ソレサエナ無けレバ、
コナタだって傷付くコト無かったノデス!!サッサト目覚メテコナタヤカガミヲ安心サセロバカ!!>ワ<」
つかさ「え・・・?」
私はふとその声を聞いて、何故か立ち止まりました。
パティ「ヒャッハー!ソノ首モラッターーー!!」
パトリシアさんの金棒が炸裂し、私の体は四散しました。

To be continued
847 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/04/17(金) 19:07:52.32 ID:m.YqCYSO
−嘘予告−

目覚めた少女の眼前に広がってしたのは、砂塵舞う果てなき荒野。
こなた「…え…ここ…どこ?」
その手に握られていたのは、言葉を喋る銀色の銃。
『僕の名はアガートラーム。君の力となるモノ…ARMだ』

集う友人達。

かがみ「…あんたのソレも、喋ったりするの?」
こなた「『も』って…もしかしてかがみのARMも?」

つかさ「うわーん!怖かったー!怖かったよー!」
かがみ「よしよし…よく頑張ったわね…」

つかさ「『みゆき様』って…ゆきちゃん、何したの?」
みゆき「わ、わかりません…気が付いたらこんなことに…」

出会う渡り鳥達。

ロディ「ARMはね、引き金の引きかたで、どんな力にでも変わってしまうんだ…」

アシュレー「よしてくれよ。俺はとっくに渡り鳥は廃業したんだ」

ヴァージニア「よく言うでしょ?女は度胸って…さ、行くわよ!」

ジュード「色々な動物の声が聞こえるでしょ?ここはボクのお気に入りの場所なんだ」

ディーン「渡り鳥ってのは…目の前に道があれば走り!川があれば泳ぎ!山があれば昇る!そういうものだ!」

その名はファルガイア。
理由も知らず迷い込んだこの異世界から戻るため、少女達は手にしたARMで戦い続ける。

こなた「いくよ!ARMフルコンタクト!」

『わいるど☆あーむずLS』

その引き金を引けるのは、キミの指だけだ。







いや、書きませんけどね。
848 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/17(金) 21:05:35.83 ID:sPIMjsDO
元ネタわかんね('A`)
849 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/04/17(金) 21:21:47.08 ID:sBM0vRI0
>>846
おおー、続きがきましたか
今回の地獄は今までと違ってコミカルですなw

>>847
そうか。書かないのか。残念だな
元ネタは知らんが読んでみたいな


そろそろプチ祭りが始まるだろうから、もらったお題を消化しようかなー
850 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/04/17(金) 21:38:41.63 ID:m.YqCYSO
>>847はワイルドアームズっていうRPGシリーズです。
思ってたよりマイナーだったか…。
851 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/17(金) 23:23:44.21 ID:JcrqQIU0
>>850
PSでリメイク含め6作、PSPにも進出した作品なんだからもっと評価されるべき!
個人的にいろいろ考えさせられるゲームでお気に入りです。
852 :おし☆らせ2009/04/18(土) 08:27:35.03 ID:dNHPCQ6o


プチ祭りの開催日が、今月20日から26日までに決まりました
字数制限は600字以内、入れなければならないキーワードは『みwiki祭』と『春風』です
皆さまの作品お待ちしております

853 :命の輪に始まりを[saga]:2009/04/18(土) 17:24:06.93 ID:ejwpfzc0
投下行きます。

命の輪関連で、需要があるか微妙ですがこなたの旦那視点の話です。
一応、全三話予定です。
854 :命の輪に始まりを[saga]:2009/04/18(土) 17:25:04.98 ID:ejwpfzc0
 モノクロの写真は、ノスタルジックで良いという人がいる。それには俺も同感だ。
 けどそれは、普段見ている景色がカラーだからだと思う。
 いつもモノクロに景色ばかり見ているなら、モノクロの写真は普通の写真だ。
 モノクロの景色ばかり見ている人は、逆にカラー写真の方に憧れのようなものを見出すんじゃないだろうか。
 少なくとも、俺はそうだった。


 良く目立つ。それが彼女の第一印象だった。
 小学生かと思うほどの小さな体格。ピョコピョコ動くアンテナみたいな癖毛。色気のカケラも無い泣きホクロ。
 なんとく気になって、入学当初からチラチラと観察をしていて、ある程度はどんな女の子かは分かってきた。
 直接話す機会はなかったが、伝え聞くところによると、どうも彼女はオタクと呼ばれる人種らしい。
 誰かと話しているところに出くわしたこともあったが、正直意味不明な単語ばかりだった。
 人見知りはしないようで、誰とでも良く話していたが、相手が苦笑いしてるのが多いところを見ると、話し上手ではないようだ。
 俺も何度か話してみようとしたが、どうも避けられてるらしく、その機会が訪れることは無かった。

 そんなある日、俺は当の本人から手紙という古風な手段で呼び出しを食らった。
 正直、呼び出される理由が分からない。避けられてるっぽい事もあり、知らないうちに何かやらかしたのかと思っていた。
 そして、呼び出された場所に行くと、彼女が落ち着き無くうろうろしていた。
 俺に気がつくと、なにやらブツブツいった後、大きく深呼吸をして近づいてきて、俺を指差してこう言った。
「アンタが振り向いてくれないから、わたしはこんなギャルゲ好きな女になったんだ!」
 言葉の意味は良く分からないが、とにかく凄い言いがかりだ。
「…は?」
 思わず間抜けな声が、俺の口からこぼれる。

 兎にも角にも、それが俺と彼女…泉こなたとの最初の会話だった。



- 命の輪に始まりを -



855 :命の輪に始まりを[saga]:2009/04/18(土) 17:25:33.75 ID:ejwpfzc0
「…それはなんだ…責任とって付き合えとか言うのか?」
 俺が当てずっぽうでそう言うと、泉は真っ赤になってコクコクと首を縦に振った。
 どうやら正解らしいが、どうにも納得がいかない。
「あ、あのさ、嫌ならいいんだけど…できれば断らないで欲しいけど…ああああ、そうじゃなくて、何言いたいんだっけ…」
 わたわたと全身を動かしながら慌てる泉。その慌てぶりが、少しかわいいと思った。
「…そうだな…まあ、特に断る理由もないし、俺でいいなら付き合うよ」
 何故か左右にうろうろし始めた泉に、俺はそう答えた。泉の動きがピタリと止まる。
「そ、そうだよね…ダメだよね…訳分かんない事言ってるもんね…うん、分かってたんだけどね…」
 話聞いちゃいないし。
「は、話はそれだけだから。じゃ、良いお年を」
 年末どころか、まだ梅雨前だ。
 俺は、肩を落としてトボトボと帰ろうとしている泉を追いかけ、その肩を掴んだ。
「まてまてまて…ちゃんと話聞いてくれ、断ってなんかないだろ」
「…ほえ?」
 こっちを向いた泉が、惚けた顔で目をぱちくりさせる。
「だから、俺でよかったら付き合うって」
 俺は少し大きな声ではっきりと言った。泉がもう一度瞬きをした。
「…え…あれ?…えと…あの…」
 泉が何か言おうとしてるみたいだが、上手く言葉にならないようだ。
 しばらく俺が待っていると、泉は急にその場に座り込んだ。
「おい、大丈夫か?」
 俺がそう聞くと、泉は頭をポリポリとかいた。
「…あ、安心したら…腰抜けちゃったみたい…あはは…」
 マジでか。
 しかたなく、俺は泉を背負って帰ることになった。俺の背中の上で、泉は小さな声で「明日からよろしく」と呟いた。

 こうして、俺と泉こなたは付き合うことになったのだが、一つだけ疑問が残る…なんで、俺なんだ?


856 :命の輪に始まりを[saga]:2009/04/18(土) 17:26:10.31 ID:ejwpfzc0
「ダーリンはさ、今まで彼女とかいたことある?」
 次の日、大学の食堂で二人で昼飯を食べていると、泉が俺にそう聞いてきた。
「いや、ないよ」
 俺がそう答えると、泉は難しい顔をして考え込み始めた。
「うーん、そっかー…となると参考になりそうなのはやはりギャルゲか…お父さんは当てになりそうにないし」
「泉も彼氏とかいなかったのか?」
 俺がそう聞くと、泉は恥ずかしそうに頭をかいた。
「わたしも無いんだよ…っていうかさ、付き合ってるんだから、名字じゃなくて名前で呼んでよ」
「それが良いんだったら、そうするけど………いや、ちょっと待て。じゃあ『ダーリン』ってなんだ?俺も名前で良いじゃないか」
「そこはそれ、基本ってヤツだっちゃ」
 なんの基本だ。どこの方言だ。
「初デートがアキバとかだったらやっぱ嫌だよね…念のため聞くけど、ダーリンはオタクじゃないよね?」
「どの程度からオタクって言うのか分からないけど…アニメとかあまり見ないな。ゲームを少しやる程度かな」
「そっかー…リアルの恋人って難しいなー」
 泉…いや、こなたの言葉に俺は頷いた。こういう話に縁がなかったためか、恋人になったからと言って何をしていいのかさっぱり分からなかった。
 それにしてもこなたの順応性には驚く。昨日はあれほど挙動不審に取り乱していたのに、今日はすっかり落ち着いている。
「こなたが行きたいってところがあるなら、俺はそこでいいよ」
「え、ホントに?」
 俺の言葉にこなたが目を輝かせる。
「じゃあ、今度の日曜にでもアキバでオタ巡りといこうか!」
 オタ巡りと言う言葉に不安を覚えるが、まあいいか。
「それが終わったらその後は…その後は…」
 こなたの動きがピタリと止まる。なんとなく嫌な予感がする。
「やっぱ無理ー!!」
 こなたが椅子から落ちて、床を転げまわり始めた。
 どうやら何かが許容量を超えると、挙動不審に陥るらしい…つーか何を想像したんだ。
 とりあえず、食堂中の注目を集めまくって恥ずかしいので、俺は転がってるこなたを捕まえて、小脇に抱えてその場を去ることにした。
 こなたは俺に抱えられたまま、顔を真っ赤にしてフルフル震えながら呟いた。
「…出来れば、お姫様抱っことか」
 しないよ。

 後日、オタ巡りとやらにつき合わされた俺は『違う世界』というものを思い知ることになった。


857 :命の輪に始まりを[saga]:2009/04/18(土) 17:26:44.33 ID:ejwpfzc0
 初デートから少し経ったある日、俺はこなたの家に大事な話があると言って呼び出された。
 門の前で深呼吸をする。俺の人生で初めて、女の子の家にお呼ばれしたのだ。流石に緊張する。
 ふと、視線を感じてその方向を見ると、一人の女の子が俺の方を不審そうに見ていた。
 目つきが悪いのが気になったが、長い髪を頭の左右で二つくくりにした、なかなか可愛い子だ。
 まあ、こんなところで睨み合っててもしょうがないので、俺はこなたの家のインターフォンを押した。それを見ていた女の子が首を傾げる。まるで、俺がこの家に用事があるのが不思議でしょうがないと言った感じだ。
「ねえ、あんた…」
 女の子が、俺に声をかけようとした。
「いらっしゃい、ダーリン!」
 しかし、その言葉を遮って、こなたが家の中から飛び出してきた。
「…あれ、かがみ?どしたの?」
 こなたは、俺の隣にいる女の子に気が付いてそう言った。どうやら、かがみと言う名前で知り合いらしい。
「どしたの?じゃないわよ。今日、料理教えてくれるって約束じゃない…まさか、忘れてたとか言わないでしょうね?」
「え、えーっと…」
 かがみさんに凄まれて、こなたがポケットから携帯を取り出し画面を眺めた。多分、予定表を確かめているのだろう。その頬に汗が一筋垂れた。どうやら本気で忘れてたらしい。
「いや…その…ごめん、かがみ…」
 バツの悪い顔でぺこぺこ謝るこなたに、溜息を付いて見せるかがみさん。
「まったく、大学生になってもそういうところはちっとも変わらないわねー」
 そう言いながらもう一度ため息をついたかがみさんは、今度は俺の方を向いた。
「で、この人誰?」
 そして、こなたにそう聞いた。
「誰って、わたしの彼氏」
 こなたが答える。
「…は?」
 かがみさんはそう言った後、しばらく停止していた。そして、俺とこなたの顔を交互に見渡す。
「誰が誰の何って?」
「いや、だからこの人がわたしの彼氏だって」
「こなたの彼氏です。よろしく」
 また『…は?』とか言われたら、堂々巡りになりかねないので、ダメ押ししておいた。
「…え?…うそ…でも…あれ?…えと…」
 頭を抱えながらなにやらブツブツ言い始めたかがみさん。長くなりそうなので、俺はこなたにとりあえずの疑問をぶつけてみることにした。
「で、今日はなんで呼んだんだ」
「あ、それなんだけど、お父さんにね、紹介しようと思ってたんだ…でも、お父さん出かけちゃって、しばらく帰ってこないんだよ…」
 なるほど、それは大事な話っぽい。
「だからさ、お父さん帰ってくるまでかがみに料理教えとくから、わたしの部屋ででも待っといて」
 そう言って、こなたは俺を家の中に招き入れた。
「ほら、かがみも行くよ」
 未だ頭を抱えているかがみさんも、こなたに引き摺られて家の中へ連れ込まれた。


858 :命の輪に始まりを[saga]:2009/04/18(土) 17:27:12.33 ID:ejwpfzc0
 女の子の部屋と言うものに、ある程度の想像を俺はしていたのだが、生まれて初めて入った女の子の部屋は、それとは540度ほど違っていた。
 壁に貼られたアニメ調の女の子のポスター。これまたアニメ調なあちこちにおかれてる女の子のフィギュア。本棚には、どう見ても少年や青年向けの漫画本が並んでいる。
 どう見てもコレ、男の部屋だろ。
 間違って案内されたのかとも思ったが、クローゼットの中やタンスの引き出しを覗くと女物の服や下着が並んでたりする。
 想像と現実のギャップに俺が戸惑っていると、部屋のドアが少しだけ開くのが見えた。
 ドアの隙間から誰かが覗いている。顔の半分ほどしか見えてないが、どうやら女の子のようだ。
「…えっと、何か用かい?」
 警戒されないように、少し柔らかい口調で俺はそう言うと、女の子はドアを開けて部屋の中に入ってきた。
「あ、あの…こなたお姉ちゃんの彼氏さんって、ホントですか…?」
 おずおずとそう聞いてくる女の子は、こなたより小さな体格をしていた。こなたの家族構成は聞いたことないが、お姉ちゃんと言ってるところを見ると、妹なんだろうか。
「うん、そうだけど…君は?」
「あ、はい。わたしは小早川ゆたかと言いまして、こなたお姉ちゃんの従姉妹に当たります」
 従姉妹か。妹と言うより妹分ってところだろうか。
「…はあ」
 ゆたかちゃんは何故か感心したような声を出して、俺をじろじろと見ている。
「…俺の顔に何かついてる?」
 俺がそう言うと、ゆたかちゃんはブンブンと顔を横に振った。
「い、いえ、そうじゃなくて…こなたお姉ちゃんに彼氏ってなんか不思議な感じがして…」
 まあ、そうだろうとは思う。彼氏が出来たことないとか言ってたけど、出来たところでこの部屋見たら大半の男は引くだろうな。
 …割と平然としてる俺って、もしかしておかしいのか?
「あの…大丈夫ですか?」
 急に頭を抱えだした俺を心配してか、ゆたかちゃんがそう声をかけてきた。
「ああ、大丈夫。少し自分の人生を迷っただけだから」
 自分で言ってて、あまり大丈夫じゃないような気がする。
 そんな事をしていると、部屋のドアが再び開いて、今度はこなたが顔を出した。
「ねえ、ダーリンちょっと…ってゆーちゃん?何してるの?」
「え、あ、あの、お姉ちゃんの彼氏さんってどんな人かなって…」
「ふーん」
 こなたは俺に不審そうな目をむけた。
「…ゆーちゃんに変な事しなかった?」
「してない、してない…で、何のようなんだ?親父さん、帰ってきたのか?」
「えっと…かがみの料理をちょっと試食して欲しいんだよ」
 そう言ってこなたは、申し訳なさそうに手を合わせた。料理の試食を頼むのに、何故そんな態度なんだろう。
「まあ、いいけど…」
 俺はそう答えて、ドアの方へと向かった。
「ゆーちゃんもおいでよ」
 こなたは部屋を覗きこんで、ゆたかちゃんにも声をかけていた。


859 :命の輪に始まりを[saga]:2009/04/18(土) 17:28:33.12 ID:ejwpfzc0
 テーブルについた俺の目の前に置かれたのは、お椀に盛られた肉じゃがだった。
「さ、食べてみて」
 こなたがそう促してきた。チラッとかがみさんの方を見ると、実に神妙な顔つきをしている。相当自信がないようだ。
「いただきます」
 俺はそう言ってじゃがいもを口に入れた。
 なんと言うか…味が無い。芯まで柔らかく煮込んであるのに、味が無い。ある意味器用だ。
「…微妙」
 そう表現するしかなかった。
「微妙」
「二回も言わんでいいっ!」
 念のためにもう一度言ってみたら、かがみさんに怒られた。
「ゆーちゃんはどう?」
 こなたがゆたかちゃんにそう聞いた。
「え、えっと…あの…」
 ゆたかちゃんはかがみさんの方をチラチラ見ながら、何やら言いづらそうにしている。笑顔は保っているものの、眉が下がり気味でなんとも微妙な顔だ。
「微妙」
 その彼女の心境を慮って、俺が代弁をしておいた。
「…アンタ、もしかして喧嘩売ってる?」
 かがみさんに思い切り睨まれる。目を合わせると石にでもされそうなので、俺は目を逸らしておいた。
「なんてーか…予想以上にかがみは手ごわいね」
 こなたが、にくじゃがをもそもそと食べながら呟いた。
「料理を教えれるって事は、こなたは料理得意なのか?」
 律儀に全部食べようとしているこなたに、俺はそう聞いた。
「得意ってほどじゃないけどね。それなりに出来るつもりだよ」
 誇らしげにそう答えるこなた。なんとなく俺は、こいつの作った料理が食べてみたくなった。
「だったら今度、弁当でも作ってきてくれないか?」
 俺はこなたにそう言ってみた。少なくともオタ巡りとかよりは、恋人らしい提案だと思った。
「…ふ、ふえ?…わたしが?」
「うん」
「え、えと…その…」
 こなたの顔が真っ赤になっていく。もしかして、許容量超えちまったか?
「そんな…ねえ?…手料理とかなんとか…んにゃー…」
 今回は転がったりせずに、なんだかくねくねし始めた。これはこれでまた挙動不審だ。
「…なんだこのこなた」
「…お、お姉ちゃん」
 かがみさんとゆたかちゃんが引き気味だ。正直、俺もちょっと引いてるが。
860 :命の輪に始まりを[saga]:2009/04/18(土) 17:30:28.06 ID:ejwpfzc0
「…そういや、こなたがお父さんにアンタを紹介するとか言ってたけど、大丈夫なのかしら?」
 冷や汗を垂らしながら、くねくねするこなたを見つめているかがみさんがそう呟いた。
「なにか問題が?」
 俺がそう聞くと、かがみさんは頷いた。
「あのおじさん、こなたのこと溺愛してるからさ、彼氏なんか認めないんじゃないかなって」
「なるほどね…まあ、なるようになるんじゃないかな」
「軽いわねぇ」
「いざとなれば、こなた連れて逃げでもすればいいかな」
「…は?」
 俺の言葉にかがみさんが唖然となる。何か変なこと言っただろうか?
「アンタ達って、付き合い始めてからそんな経ってないわよね?」
「そうだけど…」
「なんでそんないきなりラブラブバカッポーな思考になってるのよ…」
 そう言われれば、確かにそうだ。
「なんでだろうな?」
 心底理由が分からずに、かがみさんにそう聞くと、彼女は盛大にため息をついた。
「ただいまー」
 その時、ドアを開ける音と、男性の声が聞こえた。
「あ、お父さんだ」
 いつの間にか、くねくね状態から回復していたこなたがそう言った。
 どうなるかは分からないけど、少しくらいは覚悟を決めておこうと俺は思った。


「ああ、いいんじゃないかな」
 あっさりとした答えに、俺は唖然となった。俺の右隣にいるこなたと、少し離れた場所にいるかがみさんとゆたかちゃんは、座っていた椅子から転げ落ちていた。
「…あ、あの…お父さん、それだけ…?」
 こなたが、よろよろと大成を立て直しながらそう聞いた。
「ああ、そうだな…キミ」
 こなたの親父さんは、俺の肩に手を置いた。
「…万一、こなたを泣かすようなことがあれば…分かってるね?」
 顔は笑ってるが目が笑ってない。ってか、肩に食い込む指が、洒落にならないくらい痛いのだが。


861 :命の輪に始まりを[saga]:2009/04/18(土) 17:31:01.01 ID:ejwpfzc0
 こなたの家からの帰り、駅までの道を俺とこなたは歩いていた。
「…んー…」
 こなたは先程のことがまだ納得いかないのか、しきりに首を傾げては唸っていた。
「まあ、いいんじゃないか?交際認められたんだし」
「…うん、まあそうなんだけどね」
 とりあえず俺は、少し話題を変えて見ることにした。
「こなたって、ホント髪長いよな」
 目に付いたのは、こなたの地面に届きそうなほど長い髪。
「ん?短いほうがいい?」
「いや、俺は長い方がいいよ」
 俺の手が自然にこなたの髪に触れる。
「え、な、何かな?」
 いきなり髪を撫で始めた俺に、こなたが戸惑った表情を見せた。
「何でも…ちょっと撫でてみたくなったんだ」
「…そっか…えへへ」
 こなたが嬉しそうに、俺の方に身体を預けてきた。
「歩き難いぞ」
「気にしない気にしない」
 俺は駅に着くまでの間、ずっとこなたの髪を撫で続けていた。



- つづく -
862 :命の輪に始まりを[saga]:2009/04/18(土) 17:32:30.98 ID:ejwpfzc0
以上です。

他の話と矛盾が出てこないかが心配だったり…。
863 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/18(土) 20:07:29.10 ID:socjfsAO

いいかも
864 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/18(土) 20:46:47.85 ID:9BakuXc0
>>862
乙です。楽しく読ませていただきました。
書き出しの『モノクロの写真〜』のくだりは、読み手に興味を持たせることに成功していて◎です。
出だしは凄くステキです。
豊かな感情描写にも目を瞠りました。
これ続きあるの?みたいな終わり方ですが全3回とのことですので、ここからどう持っていくか期待します。
唯、あえて(あえてです)難点を申しますと、一人称で話が進むのに主人公に感情移入がし辛いかな?と感じました。
それと会話文中心の所為か(悪い意味でなく)ラノベっぽさが強いので読者の層を分けるかと。
しかし幅広い層に受ける必要は当然ないのでこのままの書き方で良いと思います。
文句が多くなってしまいましたが、質(と志)の高い作品には違いないです。
長文失礼。
865 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/18(土) 23:58:59.85 ID:Q6wAoGw0
>>847
今書いてる物が終わったら次はこれを・・・
と言いたいけど4しかやったことないから無理><

>>849
パティ誕生日SSを誰かが投下したらこれはお蔵入りするつもりでした
というかパティの誕生日は華麗にスルーされたような・・・

>>862
こういうのいいなー
自分の質の低さが泣けてくる
はいはい思いつきで書いてますよ
866 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/04/19(日) 23:55:40.91 ID:oPp5zSc0
レスありがとうございます。>>862です。

感情移入しにくいのは、主人公が何考えてるか掴みづらいキャラになってるせいでしょうかね?
台詞が多いのは、ごく個人的にらきすたの魅力がキャラ同士の会話にあると思ってるのと、地の文が極端に苦手なためです。

867 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/20(月) 00:25:52.15 ID:KP1zlbQ0
遅くなって申し訳ありません。

00時を回りました。前回行われなかった事を踏まえ、第3回ぷち祭り、『帰ってきたぷち祭り』の開催を宣言致します。
当祭りのルールは、
※半角全角問わず、1作品600文字以内(空白改行はカウントせず)とする。
※キーワード「春風」「みWiki祭り」の2語を必ず入れる。どちらか片方だけは不可。
というもの。
ジャンルは不問、上記ルールに則ったものならどんな作品でも桶です。
また、コンクールではないので投票は行われません。
期間は26日23時59分迄。お一人様何作品でも投稿できます。
皆様の溢れる想いを、スレに靡かせてはみませんか?





尚、当宣言を読まれた方には必然的に祭り作品を投稿する義務が生じますので、ご理解の程、よろしくお願いいたします。では。。。みWiki
868 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/04/20(月) 00:52:16.24 ID:Z.w0D.SO
だが断る。







いや、みゆきさんをみwikiと呼ぶ事に抵抗を覚える俺にはマジ無理っす。
869 :プチ祭り参加作品[saga]:2009/04/20(月) 02:02:13.39 ID:BxjDOE60
 みwiki祭りとは、春風薫る四月の一ヶ月間にわたって全国で行われる祭りである。
 この世のあらゆる知識と、知識の女神であるみwiki様を愛で尊び敬うことを趣旨とする。
 この祭りでは、満開の桜のもとで花見客に桜や花見に関する薀蓄をたれたり、新入生や新社会人を前に長々と講釈をたれたり、おもちうにょ〜んしたりといった行事が行われる。
 これらの行事は所構わず空気を読まずに行われるため、うざがられることも多い。
 しかしながら、この祭りにもメイン会場は存在する。
 それは東京都の高良邸であり、祭りの時期は、「メガネっ娘☆激Love」などとプリントされた装束をまとったみwiki信者が多く訪れ、みwiki様のありがたき三文知識を賜る光景が見られる。

出典:アンチフリー百科事典「Unたからpedia」(2009/04/01 06:55)
870 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/04/20(月) 02:05:22.90 ID:BxjDOE60
>>868

 お祭りってノリと勢いで楽しむモノでしょーっ by こなた
871 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/20(月) 02:21:08.31 ID:N67Fvsoo
司郎は、今まで後のお楽しみとして見なかった妹の女の部分についに顔を近づ

,あなた方はパン切れでいっぱいになったかごを幾つ集めたか。



射精感が急激に高まり、最後の動きとばかりに激しく腰を動かしていく。

激しく体が跳ね上がる。

逮捕し,ろうやにつないだからであった。それは,彼が彼女と結婚していたからであ

教えてやるっ



た手,つまり洗っていない手でパンを食べているのを目にして,非難した。 73 と

待ち焦がれた妹の裸がそこにあった。
             
872 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/20(月) 03:11:39.68 ID:4VJwGXUo
司郎の問いに、妹はピクッと体を震わせると顔を背けた。

激しく体が跳ね上がる。



もとに来た。 634 イエスは出て来て,大群衆を目にし,彼らが羊飼いのいない羊の

真奈美すまん俺、したいんだどうしても



ふふ止めてって言うけどなお前、ここを舐めて欲しいんだろ?前





覆ってこぶしで殴り,預言しろ!と言い始めた。役人たちも彼を平手で打った。
           
873 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/20(月) 04:21:55.76 ID:Ds2pqwso
した。 633 人々は彼らが去って行くのを目にし,大勢の人がそれと分かったので,



まうだろう。彼らの中には遠くから来ている人もいるからだ。



その石は非常に大きかったからである。彼女たちが目を上げると,石が転がしてある

なぁ、またしようよぉいいだろぉ

もっと感じさせ、絶頂に導きたい。

幸福感を感じながら、射精を終えた司郎は、力を抜くと愛おしい妹の肉体に倒

神と娘は両者不可分の状態へと入った。超々トランス状態。神が踊っている。神

妹はこちらを見ずにキツク言い放った。
                 
874 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/20(月) 05:10:08.10 ID:MMblxXMo
だったらそれで構わないではないか。



妹の体からは力が抜け、ぐったりともたれかかってきた。





ねたヨハネだ。彼は死んだ者たちの中から生き返ったのだ。 617 というのは,ヘ

520 彼は立ち去り,イエスが彼のためにどのように大きな事柄を行なったかをデカポ

快感に力が抜けたのか、妹は抵抗を止めている。

司郎の興奮は最高潮に達した。

彼に飲まそうとして,彼をそのままにしておけ。エリヤが彼を降ろしに来るかどう
             
875 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/04/20(月) 05:32:37.42 ID:BxjDOE60
 複数のスレにランダムに書き込んでるっぽいね。
 なんかのスクリプトだろうか。
876 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/20(月) 06:41:05.17 ID:5l0pWVYo
518 彼が舟に乗り込んでいると,悪霊たちに取りつかれていた人が,共にいさせて欲

まだ小学生であるせいか、キツイ妹の膣はギュッと肉棒を締め上げ射精を促し



った。重そうな乳を。大きな尻を。健康的な太ももを。

なのぉ、やぁんっ



子供たちのパンくずを食べるのです。

腰を動かしながら答える。

そのまま誘われる様に腰を押し進める。

ああっ、あっ、あああんっ
             
877 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/20(月) 07:29:11.76 ID:zs435sIo
629 ヨハネの弟子たちはこのことを聞くと,やって来て彼の死体を引き取り,それを

て彼の舌に触った。 734 天を見上げて嘆息し,彼に向かって,エッファタ!,



いい

する。

は行って,彼と共にいた者たちに告げたが,彼らは泣き悲しんでいるところであった



を施す人ヨハネの首を大皿に載せて,わたしに与えてくださいますように。

ュに精を放つ。

子供の手を取って,タリタ,クムと言った。これは訳せば,少女よ,あなたに
             
878 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/20(月) 08:16:46.10 ID:oKWElQko
77 彼らがわたしを崇拝するのは無駄なことだ,

729 彼は彼女に言った,その言葉のゆえに,帰りなさい。悪霊はあなたの娘から出

うんふっ!!はわあ!あぁんああ〜〜〜〜!!!!

を邸宅,すなわちプラエトリウムの中に引いて行った。そして全部隊を呼び集めた。

思い出すだけで股間の一物がカチンカチンに硬くなり、射精したくてたまらな

1524 彼をはりつけにしてから,だれが何を取るかくじを引いて,互いにその外衣を

すべての町からそこへ徒歩で駆けつけた。人々は彼らより先に着き,いっせいに彼の



ズブっといった感じで亀頭が膣穴にハマり、その瞬間えも言われぬ快感が押し

1535 そばに立っていた者たちの何人かは,それを聞いて,見ろ,エリヤを呼んで
              
879 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/20(月) 09:05:34.21 ID:TVJ6L/Yo
トロンとした目つきと、少し開いた唇から見える小さな舌がたまらない。

実の妹を強姦したのだ。

る。 618 ヨハネはヘロデに,あなたが自分の兄弟の妻を有しているのは,許され

ガクガクと体を前後に揺り動かしながら、いつまでも続く射精の快感に浸る。





ユダヤ人の王という罪状書きが記されていた。 1527 彼と共に二人の強盗をはり

イ人たちが出て来て,彼に質問し始めた。天からのしるしを彼に求め,彼を試そうと

翔する。

隠れたり現れたりする裸体がまるで誘うように見え、司郎は抑えられない自分
                 
880 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/20(月) 09:55:05.99 ID:Qmw4p02o


今の司郎の頭には、妹に仕返しをし、兄としての威厳を取り戻すことしかなか

人は彼らの一人です。 1470 しかし彼は再びそれを否定した。しばらくして,そば

必死な表情で妹が止めてくる。





あっお兄ちゃんもっとぉっあぅっ、あっ、や

って言った,ほかの者たちは救ったが,自分は救えないのだ。 1532 キリスト,イ

うとする。

心はともかく、肉体が司郎を求めているのは確かな様だ。
              
881 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/20(月) 11:44:47.05 ID:vffJrdIo
またしちまった

な事は吹っ飛んでしまった。

る。灰になる。いや、灰になることすらも許されない

いって泣いてたヤツが

気持ち良くなんかないもんっしてもらいたくないもんっ

せられているのだ。

妹が残念そうな声を上げた。

土下座でも何でもして誠意を見せよう。

らに食べ物を与えるのですか。

一匹の淫獣と化し、牝肉はたぎりにたぎった。細胞もDNAも、熱く沸騰し、爆発
          
882 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/20(月) 15:46:54.26 ID:VK5lwUIo
いうのは,ファリサイ人たち,つまりすべてのユダヤ人たちは,年長者たちの伝統を

というよりそういったこと自体を知らなかった。

637 しかし彼は彼らに答えた,あなた方が彼らに食べ物を与えなさい。

真奈美ぃっ真奈美ぃっ

墓の中に横たえた。

持たず, 69 ただサンダルを履くだけで,二枚の上着を身に着けないようにと命じた

にも言わないでくれお願いだ

創造もできるんだろうけど、それにも増して超々破壊的な神娘になっちゃった

あああああっ!

これも勝手に動いているのだろうか。
                   
883 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/20(月) 19:20:20.30 ID:tsYmUfAo
>>835
た。 1459 そのようにしても,彼らの証言は一致しなかった。

ははっ真奈美ってっ可愛いなっこんな可愛い妹を持ってっ俺は幸せだっ
素晴らしいことなのかしら?これが人の夢なのかしら?
にも言わないでくれお願いだ
まるで鬼だ
傾けないなら,そこから出発する時に,彼らに対する証言のため,足の裏のちりを払
7 彼らは小さな魚を幾らか持っていた。彼はそれを祝福してから,それをも配るよう
数年前まではただの縦筋にしかすぎなかった妹のそこは、今や複雑な形態をな
った。二千匹ほどのその群れは,険しい土手を下って海に突進し,海でおぼれ死んだ
多分、何を言っても無視するという意思表示なのだろう。
せた。
            
884 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/20(月) 21:17:16.19 ID:Qmw4p02o
の不信仰のために驚き怪しんだ。
この民は唇でわたしを敬うが,
司郎の心にはそんな気持ちが溢れていた。
こんな気持ちのいいこと止められるもんか
ている。淫らに凄まじく蠢いている。
、やぁんっもうイく、あっもうイくのぉ、あ
取り,天を見上げ,祝福してからパンを裂き,弟子たちに渡して人々の前に置かせた
太ももに唇を押し付けると、チューっと吸い、舐め上げる。
あああああっ!
816 彼らは互いに論じ合って言った,これは,我々がパンを持っていないからだ
きゃあっお兄ちゃん、いやっ止めてぇっ
               
885 :禁忌ブルーハワイ[saga]:2009/04/20(月) 23:29:22.03 ID:LdZVX8Y0
つかさ「ねえゆきちゃん。ブルーハワイの由来って……」
こなた&かがみ「(みWikiさん祭りの予感っ!!)」
みゆき「…ブルーハワイ……ですか……それはですね……」
〜2時間経過〜
みゆき「諸説によると……」
〜12時間経過〜
みゆき「逆説になりますが……」
―そして春風吹き荒ぶ8回目の春がやってきた―
みゆき「お母様がおっしゃられるには……」

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄// ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    ,.-‐':.:.:.:.:.:.:.:.:.'.:.:.:.:.:.:.:.:.:..:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:..:.:.:.:.:`ヽ、           _,/:`Y´: : : : : : : : : : : : : :
     '´ ̄_,.>'´. . ....:.:.:.:|.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.、:.:.:.:.:..:.:.:.:.:`ヽ     __,..-‐イ:/: : : : : : : : : : : : : : : : : : :
     ,ィ' . . . . . . . ./ . . |::: . ...:.:i:.;:.:...... . . |. . ...:ヘ.......:.:.:.:ヘ _,.-‐'´: : :/: :/ : : : : : : : : : : : : : : : : : : :
    /:.:.;/:.:.:::/.:.:.:/.:.:.:.:.;|::::.:.:.:.:.:|::i:.:.:.:.:.:.....|:: . . . ヘ . . .∠,.-‐" ̄/: : :/. . : :、: : : : : : : : : : : : : : : : :
   /:.:.:;ィ'.:.:.:::/.:.:.:.:|:.:.:.:./ |::i:::.:.:.:.:|.:|ヘ:.:.:.:.:.:.:|:::.:.: . . ヘ. . . . . }   /: : : :/. . ..i. .|`ヽ. . . . 、. . . . : : : : : :
   j/ /:.:.:::/:.:.:.:.:.ト、:/  |::|、:.:.:.:.|:.| ヽ;/:.:|::::.:.:.:i::::.∧.:.:.:..|  ./: : : ::j: . . .;|. .|  ∨: : :i: : : : |: : : : :
      |:.:.:::::|:.:.:.:.:.;|:.:/\. |::|∨:.:.:|:;l ,/ ∨::j;::::.:.:..|:::.:.:.:ヘ::::.:| /: : : : ::|: : :;ィ|: :|   _∨-:|: :: : :.|:: : : : :
.     |:.:.:::::|:.:.:.:.:/|/___`|::| ∨::.:|'`____∨ |::::.:.:.:ト、:::.:.:∧.:| / : : : : ::|: : : | |:.:{-‐'´ ∨:|: ::: : :.|:: : : :
    |:.:.:::::|:.:.:.:;ハマテ〒行|j  ∨:| 〒:テチヤ7i:::.:.:.:.|::`ヽ:::.:ヘ/: : ;ィ": :::|: : : | ヽ|____  V|: :::: : :|::: : : : こなた「という夢を見たのだよ」
    |:.:.::::;|:.::/::ハ ik'。ィ::|´  ヽ:| |k'oィ::j.,' |::.:.:.:リ:::.:.:.:.i\|: :;〃: ::::::::|: : : { 〒テヤ7  |: :::: : :|::::: : :
     ヽ:.::|∨::::::λ`--'┘    ` └'--".j|::.:.;/:::::.:.:.:.|:.::j: ://: :::;i:::::∨: ::|  ト-'::i ,'   |: :::: : j:::::: : :
      ヽ| |:.:::::::j      '         /:|;ィ' ):::::::.:.:.|:.:||'´ j: :::::j|::::::::ヽ:.:|  |:j:;リ,    |:::: : /::::::::: :
        |:.:.:.:::ヽ、     ー'ー'    ノ::::./'":::::::::.:.:.:|:リ  |: ::::| |::::::::::::',`  `'"    |::: :/i:\::::::::
           |:.:.:.::::i:::`>‐-ァ-, -‐<´:/::.:.;/-γ'´ ,,フ:::|'   ∨::{ ∨:::::::;ノ       |::::/ j:;r'´\::
         |.:.:.:.::|‐i´{i ,ィ:ノ____,/ /::;ィ´,.f´{  ´ -‐'⌒ヽ.  ヽ:| ∨:::ヽ、        |:/ ´    ノ:
          ,r|.:.::i::| {| :|| /   /  /.:.:{ {:{ | j (´ ̄`,}ーr‐'       ∨::::|:ヽ、  r'_つ  ´  ノ`ー'iヾ: かがみ「嘘つけ」
       < |:.:.:|:リ || :V  /=="j:.:.:/ {:{ | {(_ ̄゛ |:: |         i:ヽ{: :::::`ー--‐ァ‐ 、'"     {ア:
       ノ" ヽ、:{\ヾ、|/ _,.-‐ァ'|::.:{  Vハ (  ̄__,ノ:: j        |: : : :::::::/:::/::ノ  ,イ〉   / j:
      /     ` {"ヽ、 ,ィ'´  / |/リ ヽ. i λ:: ̄:::::: ,人        |: : : ::::/,.-‐'´  / ´    / |:
    /      〈  ハ,/  _,ノ     :::::V   `=ニニィ"::∧      |: : : :::{〈. ||   j-─‐-/ /:
.   〈    ~`ヾ::::..ノ,>   <´      :::::`ーr---‐'´:::::.:.:∧      |: : : :::リ|i ||   |  /  /: :
    \     /´  /  ::: `}         |::::::::::::::::::::.:.:.:.ハ       |: : : : : || ||   | /    /: ::
886 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/21(火) 00:27:46.47 ID:CEUmKNEo
小さな声で返事があった。
もはや恥じらう理性など残されていない。すでに人格は溶け散っていた。総発狂
すぐにキツイ口調で拒絶される。
825 すると,両手を再び彼の両目に当てた。彼は一心に見つめているうちに,回復さ

ふんっそんなんで許してもらえると思わないでよね父さんたちには言わないけど、
した。
               
887 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/21(火) 02:17:50.97 ID:Mb4j3Xco
>>846
あんっ、やっ、はぁんっしたくないよ、やぁっ
ロケットより凄まじく、素晴らしく超的に、ぐんぐん急加速し、大気を引き裂き
こ、これが初めてみる女の秘所。
やんっ、あっ、やぁっ激し、あんっ激しいよぉ、ああっあんっ、
ま、いいわ。お出かけしましょう!この星から少し離れなきゃ
         
888 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/21(火) 03:50:59.17 ID:y60FAK2o
最後まで入れたまま射精したかった。
言った。 616 しかしヘロデはこのことを聞いて言った,これは,わたしが首をは
だったら
            
889 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/21(火) 05:16:49.20 ID:7zXnbTQo
あんっ、あああんっ
妹の裸体はそんなものとは比較にならない美しさを持っていた。
すべての町からそこへ徒歩で駆けつけた。人々は彼らより先に着き,いっせいに彼の
妹が裸でいる姿を想像してしまう。
体を起こして逃げる様にする妹を抱きしめ、乳房をギュッと掴む。

すぐにキツイ口調で拒絶される。
上を歩いて彼らに近づき,そのそばを通り過ぎようとした。 649 しかし彼らは,彼
そんな生活がしたいか?嫌だろ?
              
890 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/21(火) 06:39:19.22 ID:PqAd25wo
1443 すぐに,彼がまだ話しているうちに,十二人の一人のユダがやって来た。そし
何にせよこの程度ならこれからし続けても大丈夫だろう。
辺境に偏在していた惑星レベルの神が、巫女の刺激により、自らの枷かせを
822 彼はベツサイダに着いた。人々が盲人を彼のもとに連れて来て,触ってくれるよ

すげぇ
魂舐めたまなめ、魂揉みたまもみに、もう死んでいるのに、更に追い討

714 群衆を皆,自分のところに呼び寄せて,彼らに言った,あなた方は皆,わたし
触りさえすれば,わたしはよくなるだろうと言っていたからである。 529 すぐに
1450 弟子たちは皆,彼を残して逃げて行った。 1451 ある若者が,裸の体に亜麻布
                
891 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/21(火) 08:14:27.71 ID:EdSlvU.o
。あなた方は覚えていないのか。 819 わたしが五千人の間で五つのパンを裂いた時
膣にしても、まるで数日ぶりにやって来た兄の肉棒を歓迎しているかの様に、
スラリとした脚を持ち上げると、太ももから脚の先まで
神との交合、セックス――微笑み。神愛が炸裂した。
んで息を引き取ったのを見て,本当にこの人は神の子だった!と言った。
やんっ、やっ、はぁんっこ、こんなの、ああんっ全然、やぁんっ
した。 511 ところで,その山腹で豚の大群が飼われていた。 512 悪霊たちは皆,
だ、誰もいないんだよな
て,彼のもとに集まった。 72 さて,彼らは,弟子たちのうちのある者たちが,汚れ
ぎた。視覚だけでなく、精神でも知覚できた。恐るべき霊力の圧倒的な、桁違い
それに、こんな気持ちのいい所から抜いて射精するなど考えられない。
           
892 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/04/21(火) 17:13:36.45 ID:yjRlywSO
−あだ名−

こなた「きょーちゃん、きょーちゃーん」
かがみ「………もしかして、わたしのこと呼んでるのか!?」

かがみ「もう、紛らわしいからやめてよね」
こなた「じゃあ、なんて呼べばいいの?」
かがみ「かがみでいいでしょ」
こなた「あだ名があってもいいじゃん。こなちゃんとかゆきちゃんみたいに」
かがみ「はぁ…じゃあ、『かーさま』で」
こなた「おおう…」

こなた「かーさまー、かーさまー」
かがみ「なあに、こなた?」ニコッ
こなた「う…お…お母さーん!!」ガバッ
かがみ「あらあら、どうしたの急に…」

みさお「あやのー、あいつらが何したいのか、あたしにはさっぱりわかんねーんだけど…」
あやの「安心してみさちゃん。わたしも全然わからないから…」
893 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/21(火) 17:33:39.03 ID:6tuaj4Ao
>>869
どんだけ高尚なんだみwiki様ww

>>885
みwikiの説明が長いことより、あまりにも深いブルーハワイの歴史に驚いたわww

>>892
安心しろ俺もかがみ策士、ということしかわからん
894 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/21(火) 18:38:25.61 ID:g.na5QDO
>>892

婚姻届
夫 泉そうじろう
妻 柊かがみ

そう「じゃ役所に提出しようか」
かが「ええ」

こな「待て待て待て待て待てぇ〜い!!!」
895 :プチ祭参加作品[saga]:2009/04/21(火) 19:01:38.06 ID:yjRlywSO
書けちゃった。

−祭り上げ−

 泉家で開かれた勉強会。みゆきはみんなからの質問に、一つ一つ答えていた。
 勉強ができる事を誇るつもりはない。ただ、答えた時に見せてくれる友人達の笑顔が、彼女にとって他の何にも替え難い喜びなのだ。
「みwikiさん、ここ分からない…」
「春風駘蕩の候、ですね」
「みwiki、ここはこれで大丈夫かしら?」
「はい、問題ありませんよ」
「wikiちゃん、ここはどうするの?」
「ここは、こちらの公式を使えば楽ですよ」
 なんとなく、みゆきは違和感を感じた。
「あの…先程からのみwikiとは…」
「大体なんでも答えてくれるからみwikiさん」
「そうそう、wikiちゃん凄いよね」
「うん、頼りにしてるわよ、みwiki」
「え…あ、あの…」
「よし、勉強も一段落ついたし。今からみんなでみwiki祭よ!」
「おお!かがみ、ナイス提案!」
「わーい!」
「ええー…いや、その……わたしは…みゆきです…クスン」
(やば、涙目のみゆき可愛すぎる)
(ああーもう。これだからみゆきさんいじりはやめられないよー)
(ゆきちゃん、可愛いよゆきちゃん…ハァハァ)
 友人達にとっても、みゆきは他の何にも替え難い喜びである。
896 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/21(火) 19:27:07.73 ID:bd2eM3Q0
>>895
      ヽ、ー----------イヽ---
        _,.>‐: : : : : : : : : {: : : : : : : :.`ヽ
     / ;: : : : : :/: : :./: : /l: : : : 、: : : : ヽ:\
    /:ィ´: : : : :./: : : /: :./ !:.:.ト、: :\: : : :.\}ミヽ、
   ///: : :/: : :/: :.:.;.ィ: :./  l: :.| ヽ: :.ヽ: : :ヽ:\:::::::\  みwikiって呼ばれるか…ハブられるか…どっちがいいか選びなさい
    /: : :/: : : l: : :/ !:./  |: 十‐弋⌒ト: : : :i:.:.:|::\::::}
.   /: :.ィ:.!:. : :.:|:''7⌒|:.l   l:.:.:{   \:|: : : : ト、:{::::::::Y
   l: :./{ :| : : : |:./  l/   \ヽ   \:. :.:.:|:.トゝ:::::::〉
   |:.∧| :!: : :/l/   、       ヽ,. -   ヽ :.:|/:::::::/  
   l/  !:.| : ∧  ==ミ       ≠⌒ミ ∧: |- イ
       |: l: :.lハ          ,         {r }:}: : :|
       ヽハ:.ト、_} :::::::   r―‐┐ ::::::: /_ノ|/!: : |
       |: ヽ!: : ゝ、     `ー-‐'     ,.ィ : : : : !: : |
       |: :l: : : : : :|>- .,_    ,.. <´ |: : : ::.:.!: : |
       |: :l:.!: : : : :l__,ノ:.:r'`¨¨´{.i:.:.└-|: : : ./^i : |
       |:.:.l:!: : : : :.|:.:.:.:.:.|___/:.:.:.:.:.:.:|: : : {  | :.|
       |: : !: : : : : |:.:.:.:.:.|     ! :.:.:.:.:.: |: : : .〉 `ヽ、
       |: : !: : : : : |: :.:.:.:.l   |: :.:.:.:. /lr--' {  {  )-、
       |: : !: : : : : ト、:.:.:. |    l:.:.:.:.:.//|`ーt入_ノノイ》 ヽ
897 :プチ祭参加作品[saga]:2009/04/21(火) 20:49:48.91 ID:1HfGsRI0
俺も何とか書いたー。600字って意外と短いナァ
読書感想文の400字詰原稿用紙はあんなに長く感じたというのに



「最近だんだん暖かくなってきたネ」
「そうね。春って感じがしてきたわ」
「という訳で、一句詠んでみたよ」

『春風よ かがみのパンチラ みせてくれ』

「んなっ!?何言ってんだ、おまえはっ!」
「むふふー。春らしい萌えでいいじゃない」
「まったく。小学生じゃあるまいし、もっとマシな句を詠みなさいよね」
「ほほう。そこまで言うなら、かがみも詠んでみせてよ」
「えっ!?わ、私が?」
「そう。かがみが。なんかこう、春だなーってカンジのを頼むよ」
「わ、わかったわよ……ええっと」

『夜半過ぎ みwiki祭りの 笛の音』

「へ?……なにそれ?」
「何よ。文句でもあるの?季節感溢れる仕上がりじゃない」
「え、えーっと。文句があるというか、なんというか」

「かがみさん。泉さんが首をかしげるのも仕方ありません。みwiki祭りは初夏を表す季語ですよ?」
「そうだよ、お姉ちゃん。去年の祭りも梅雨明けくらいだったじゃない」
「あ、あれ?そうだっけ?」
「はい。さらに言えば、祭りの迫力がいまひとつ伝わってきませんね」
「うーん、言われてみればそうね。みゆきならどう詠む?」
「そうですね。こういうのはどうでしょう」

『丑の刻 地獄や地獄 みwiki祭り』

「わあー。あのお祭りの感じがよくでてるよ。さすが、ゆきちゃん」
「そうね、いい句だわ。私も、早く祭りの日がこないかなー、なんて思っちゃった」
「ありがとうございます」

「えーと……話についてけないのは私だけ、なのかな?」
898 :わいるど☆あーむずLS[saga]:2009/04/21(火) 23:56:43.02 ID:paz2DgI0
投下行きます。

と言っても、1レスですが。
899 :わいるど☆あーむずLS[saga]:2009/04/21(火) 23:57:50.33 ID:paz2DgI0
 眠い。ただひたすらに眠い。
 泉こなたは必死に睡魔と戦っていた。
 今寝てしまえば、確実に黒井先生のゲンコツをもらうだろう。
 何とか気を紛らわそうと周りを見ると、友人のつかさがウトウトと舟をこいでいるのが見えた。
 そして、授業中の居眠りなど今まで見た事がない、もう一人の友人であるみゆきまでもが、眠そうに欠伸をしていた。
 みゆきさんまで眠いなら仕方ないやと妙な言い訳を自分にして、こなたは睡魔に負けることにした。

 僕を手に取って。

 何か、声が聞こえた気がした。

 僕の引き金の引けるのは、多分キミだけなんだ。

 何を言ってるのか分からない。眠いんだから、大人しく寝かせて。
 こなたはしっかりと目を瞑り、深い眠りに落ちていった。


- わいるど☆あーむずLS プロローグ -


 いつか、この砂の大地が緑に染まればいい。
 いつか、誰もが笑顔でいられる世界になればいい。
 それは、そんな無邪気な願いだったはず。
 夢想することでここらが安らぐ、ささやかな幸せだったはず。

 どこで、おかしくなったのだろう?
 誰が、こんなことを願ったのだろう?

 少女の目の前に広がるのは、緑の災禍。
 聖女の目の前に広がるのは、力だけの世界。

 こんなはずじゃない。
 そう思っても、誰にも…自分にすら止めることは出来ない。

 願うことは唯一つ。
 どうか、この悪夢に終焉を…。
900 :わいるど☆あーむずLS[saga]:2009/04/22(水) 00:00:19.90 ID:.lMLgf.0
とりあえず、以上です。

嘘予告だったのですが、話がまとまりそうなので書いてみようと思いました。
書くの遅いんで、気長に構えてください。
901 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/22(水) 13:14:12.93 ID:xjH9c5Y0
ラキ☆ストライクウィッチーズ


宮藤芳佳・・・小早川ゆたか
坂本美緒・・・柊かがみ
ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ・・・黒井ななこ
リネット・ビショップ・・・パトリシア・マーティン
ペリーヌ・クロステルマン・・・田村ひより
ゲルトルート・バルクホルン・・・岩崎みなみ
エーリカ・ハルトマン・・・日下部みさお
シャーロット・E・イェーガー・・・高翌良みゆき
フランチェスカ・ルッキー二・・・泉こなた
サーニャ・V・リトヴャク・・・柊つかさ
エイラ・イルタマル・ユーティライネン・・・峰岸あやの
902 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/22(水) 14:59:40.46 ID:K4hqlcQ0
>>901
コピペ乙
903 :最後に笑っちゃうのはみゆきのはず[saga]:2009/04/22(水) 18:45:02.16 ID:/YQtHH60
「はぁ……憂鬱ですわ……どうして私だけ人気が無いのでしょう……」
「みゆきさーん!!」
「……泉さん……どうかなさいましたか?」
「大変だよ!!次号のコンプ、単独表紙&巻頭特集&本編登場の『みwiki祭り』だよ!!」
「………………」
「みっみゆきさん!嬉しくないの?」
「ブツブツ……これは夢ですわ……きっと夢に違いありません……泉さん!!」
「はっはい!!」
「私を……私のほっぺをつねってください!!」
「了解(即)むきゅ〜」
「痛い……夢ではないのですね!!」
「(=ω=.)言ったでしょ〜遂にみゆきさんの時代が来たんだよ」
「はい!……ですが念のため泉さんのほっぺも……失礼……むきゅ〜」

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄// ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    ,.-‐':.:.:.:.:.:.:.:.:.'.:.:.:.:.:.:.:.:.:..:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:..:.:.:.:.:`ヽ、           _,/:`Y´: : : : : : : : : : : : : :
     '´ ̄_,.>'´. . ....:.:.:.:|.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.、:.:.:.:.:..:.:.:.:.:`ヽ     __,..-‐イ:/: : : : : : : : : : : : : : : : : : :
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   j/ /:.:.:::/:.:.:.:.:.ト、:/  |::|、:.:.:.:.|:.| ヽ;/:.:|::::.:.:.:i::::.∧.:.:.:..|  ./: : : ::j: . . .;|. .|  ∨: : :i: : : : |: : : : :
      |:.:.:::::|:.:.:.:.:.;|:.:/\. |::|∨:.:.:|:;l ,/ ∨::j;::::.:.:..|:::.:.:.:ヘ::::.:| /: : : : ::|: : :;ィ|: :|   _∨-:|: :: : :.|:: : : : :
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    |:.:.:::::|:.:.:.:;ハマテ〒行|j  ∨:| 〒:テチヤ7i:::.:.:.:.|::`ヽ:::.:ヘ/: : ;ィ": :::|: : : | ヽ|____  V|: :::: : :|::: : : : こなた「という夢を見たわけで」
    |:.:.::::;|:.::/::ハ ik'。ィ::|´  ヽ:| |k'oィ::j.,' |::.:.:.:リ:::.:.:.:.i\|: :;〃: ::::::::|: : : { 〒テヤ7  |: :::: : :|::::: : :
     ヽ:.::|∨::::::λ`--'┘    ` └'--".j|::.:.;/:::::.:.:.:.|:.::j: ://: :::;i:::::∨: ::|  ト-'::i ,'   |: :::: : j:::::: : :
      ヽ| |:.:::::::j      '         /:|;ィ' ):::::::.:.:.|:.:||'´ j: :::::j|::::::::ヽ:.:|  |:j:;リ,    |:::: : /::::::::: :
        |:.:.:.:::ヽ、     ー'ー'    ノ::::./'":::::::::.:.:.:|:リ  |: ::::| |::::::::::::',`  `'"    |::: :/i:\::::::::
           |:.:.:.::::i:::`>‐-ァ-, -‐<´:/::.:.;/-γ'´ ,,フ:::|'   ∨::{ ∨:::::::;ノ       |::::/ j:;r'´\::
         |.:.:.:.::|‐i´{i ,ィ:ノ____,/ /::;ィ´,.f´{  ´ -‐'⌒ヽ.  ヽ:| ∨:::ヽ、        |:/ ´    ノ:
          ,r|.:.::i::| {| :|| /   /  /.:.:{ {:{ | j (´ ̄`,}ーr‐'       ∨::::|:ヽ、  r'_つ  ´  ノ`ー'iヾ: かがみ「またかよ(春風はどした)」
       < |:.:.:|:リ || :V  /=="j:.:.:/ {:{ | {(_ ̄゛ |:: |         i:ヽ{: :::::`ー--‐ァ‐ 、'"     {ア:
       ノ" ヽ、:{\ヾ、|/ _,.-‐ァ'|::.:{  Vハ (  ̄__,ノ:: j        |: : : :::::::/:::/::ノ  ,イ〉   / j:
      /     ` {"ヽ、 ,ィ'´  / |/リ ヽ. i λ:: ̄:::::: ,人        |: : : ::::/,.-‐'´  / ´    / |:
    /      〈  ハ,/  _,ノ     :::::V   `=ニニィ"::∧      |: : : :::{〈. ||   j-─‐-/ /:
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904 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/22(水) 20:33:54.65 ID:euU2ikIo
はるかぜとともに
白き翼ダイナブレイド
洞窟大探検
みwikiの逆襲
銀河に願いを
グルメレース
メガトン☆パンチ
刹那の見切り
格闘王への道
905 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/22(水) 22:07:49.50 ID:u1KG1kwo
>>818
らに食べ物を与えるのですか。

そう言いながら秘所に手を伸ばして擦り上げる。
に行きなさい。あなたの病気からいやされなさい。
うおおっ真奈美っ、真奈美っ、真奈美ぃっ!
お兄ちゃんちょっとやだ止めてよね
しなさい。 1616 信じてバプテスマを受ける者は救われるが,信じない者は罪に定め

せられ,すべてのものがはっきりと見えるようになった。 826 彼を家に去らせてこ
ていた。 56 彼は,遠くからイエスを見ると,走って来ておじぎをし, 57 そして
司郎は早くも射精しそうな高まりを覚えていた。
             
906 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/22(水) 22:25:35.56 ID:FxqhiUSO
>>904
さりげない。俺も春風っつったら真っ先にそれが思い浮かんだけどなww
個人的にwikiナイトの逆襲の方がしっくりくる
907 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/22(水) 22:54:09.41 ID:fZ9/fTw0
3月。
泉先輩たちが卒業。センパイは進学できたのだろうか…?
そしてパティの留学が終了、帰国。
コアなオタ友が一気に2人失われるのは正直ヘヴィっス・・・


4月。
クラス替え。見事に離散。
ゆーちゃん、みなみちゃんと離れてしまった…
かろうじて雑談するくらいの仲だった子とも一緒になれず。
まあパンピーとも上手くやるのが私の処世術。ゼロから頑張るしかない。


5月。
んんん〜 なんかちょっと微妙。1年の時のヲタっプリが微妙に知れ
渡ってるせいか、皆さんよそよそしい。あと、私のオタクセンサーに
よると、このクラスには隠れオタすらゼロっぽい。そっち系の趣味は
クラスでは封印っス。

下旬になっても漫研の新人ゼロ。今年の1年生は不作っス… 追い打
ちをかけるように、こうちゃん先輩が現役引退。受験頑張って下さ
いっス。
908 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/22(水) 22:55:29.17 ID:fZ9/fTw0
6月。
相変わらず微妙な空気が続く毎日。これは所謂ハブられ気味ってやつス
か?
…ちょっと中学時代を思い出してしまう、まあこれもネタっス、ネタ。
夏の本は自虐ネタで行こう。





ある日のこと。教室入ったら自分の机の上に何か薄っぺらい本が…
どう見ても私の描いた本、ご丁寧に一番際どいページが開かれて…

!!! 一目散に席へ駆け寄り、それをカバンにしまってその場にうず
くまる。周りのあらゆる声が、音が嘲笑に聞こえる。

胃から熱いものが込み上げる。トイレに駆け込んで何も出なくなるまで
吐いた。授業が始まり辺りが静まったのを確認して、手ぶらのまま家に
帰った。

翌日。ここで休んだら負けと思って登校。げんしけんのオギーも頑張っ
てたっス。…自分の席の周りは昨日のまま。本はご丁寧にまた外に出さ
れてた。

いつか来るかもとは思ってたけど、結構堪える… その日から、クラス
内では完全に空気になった。おとなしい校風のせいか表面的な攻撃は無
いけど、本当にもない。空気。
909 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/22(水) 22:56:37.16 ID:fZ9/fTw0
7月。
週1くらいでクラスに顔を出してくれてたゆーちゃん達に、もういいか
らと告げた。嬉しい分、その後が辛過ぎる… そのまま夏休みに入って
ほっとした。


8月。
一人で居る時間が長かったせいか、いつもの自分を取り戻しつつあった。
そろそろコミケに向けてギリギリ入稿目指して執筆っスよ。



…指が震えて描けない。あの時のシーンが目に浮かぶ、そしてまた吐い
た。その日は一晩中泣いた。

今年のコミケはキャンセル。正確には、カレンダーを見たら日が過ぎて
いた。なにかが終わった気がした。
910 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/22(水) 22:57:38.14 ID:fZ9/fTw0
9月。
始業式に学校へ行けなかった。

翌日もダメだった… その次の日も…


10月。
秋だ。あの文化祭から1年経ったのかと思うと余計に悲しくなる。もう
ずっと昔のことのようだ。

ほんとはあの時に分かっていた。自分みたいなオタク女があの中にいて、
終ったらどうなるのかなんてことは…

日記はこれで終わり。コメントスパムでぐちゃぐちゃになってきたし、
もう誰も見てないからいいっス…

コメント総数(276)
4纎・1纒β02:10
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911 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/22(水) 23:01:01.72 ID:fZ9/fTw0
12月。
今日から冬休みらしい。もう暦なんか関係ないけど… 日記はこれが
本当に最後。

私も今
日でおwwるので。

さkっきのんdあ
すいみnゃくが、そろそr効いてktttttttttttttttttttttttttttttttttttttttttttttttttttttttttttttttttttttttttttttttttttttttttttttttttttt







…朦朧とした意識の中、誰かが泣きじゃくって叫びかけてる… 目が
良く見えない。視界が暗い。耳も良く聞こえない。煩い音がわんわん
と頭に響く…

あ、パティ。

もう[ピーーー]たのかな?夢の中? 神様、最後に会わせてくれたんだ…
912 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/22(水) 23:02:20.98 ID:fZ9/fTw0
4月。
私はまた2年生をやっている。今度は友達が居る。青い目の金髪の女の
子 パトリシア・マーティンが。

あの日、私は用意してた睡眠薬で自殺を図った。パティは冬休み初日に
日本にやって来て、最初に私のところを尋ねてきてくれたらしい(来年
から正式に陸桜学園高校へ編入して2〜3年生を過ごして卒業するのだそ
うだ)

救急車で運ばれた後、2週間くらい昏睡して奇跡的に蘇生。パティが付き
っ切りで看病してくれてたそうだ。そして、始業式までぎりぎりリハビリ
して今に至る。自分はもちろん留年してるので自動的に2年生やり直し。

後遺症なのか精神的なものなのか、前ほどのテンションは出ないけど、
これはこれでアリっス。日記もまた再開っス。




>911
 スマソ、NGワード使ってしまった(>_<)
913 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/22(水) 23:15:44.66 ID:LgV0EQDO
>>904
はるかぜとともに
のーんびり、のーんびりByゆたか&つかさ レベル☆

白き翼ダイナブレイド
白きが白石に見えた… レベルマイナス☆

洞窟大探険
会場の広さを甘く見ると痛い目みるよ?地図は頭にたたき込んだ?水分補給はこまめにね?Byこなた レベル☆☆☆☆☆

みwikiの逆襲
ふん、打ち落としなさい(腕組みしながら眼鏡をクイッ Byみゆき レベル☆☆☆☆☆☆☆

銀河に願いを
あぁぁぁ!ネタ張が!バラバラになってしまったネタを取り戻すっスByひより レベル☆☆☆☆☆☆

グルメレース
なによ?Byかがみ レベル☆☆☆☆☆☆☆☆

メガトンパンチ
殴るわよ?Byかがみ 3秒で倒すZE!Byみさお ほぉ?おもしろいBy闇ゆき レベル☆×12

刹那の見切り
芸能界どれだけ速くヤられる前にヤれるかよ?Byあきら レベル☆×12

格闘王への道
むぅ〜またあのチビに負けた…まだまだー!もう一回!Byこう レベル☆×15
914 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/23(木) 00:03:40.34 ID:0NByKq.0
>912 続き。




って、話を考えて、次の本にしてみよーかと思うスけど、どースか、
みんな? これからは泣き要素も取り入れてみようかと。

2年生になって、またみんな同じクラスになったある日のこと。

え…? 皆さんドン引きっスか??? ゆーちゃんとみなみちゃんは
ともかく、パティも???


「…まったくモー!!! ってくらいダめですヨ!」
「はるヤすみのアイダ、ひよりはソんなことダけ考えてたですカ?
 モウソーにも程があるですよ!」

「だイたい、何でひよりがソんなことにならナイといけないですかー!!!」

え?いや、パティ、そんなに目に涙溜めてまで熱くならなくても・・・
え、涙???

「ホんとに!!  そんナことになったら… ワタシ… ひよりんのそ
 ンなすガた、ソウぞウさせないでクダサイ!! ぜ、ぜあー's no way out!!
 ☆#$”%#☆%’(&☆‘{=&☆!!!!! うわ〜〜ん!!!」

え、チョ…、マジ泣き? パティの言葉が英語交じりで盛り上がってきた
時は本気モードっス。ど、ど、どーすりゃいいの????

残り2人に目を向けると、ゆーちゃんは完全に困惑。みなみちゃんは…
何かサイン。え?抱いてあげて???

ドキドキしながらパティの肩に手を回してみる。なんか良い匂い。そし
て思ったより華奢な体つきにドキリとする。自重、自重っス!ワタシ。



うん、今年も楽しい1年が送れそうっス。


おしまい。
915 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/04/23(木) 17:18:16.25 ID:fkMbG6SO
−暖かくなってきました−

かがみ「…ふぅ」
こなた「ん、何?悩み事?」
かがみ「え、いや、そんなんじゃなくってね…わたしって恵まれてるなって思って…」
こなた「ふーん…例えばどんな風に?」
かがみ「そりゃもう、つかさが妹でこなたが嫁でみゆきが愛人。もうなんてーか、ハーレムよね」
こなた「………春だねえ…」



みさお「別にそっちの気はねえんだけど、名前上がらねってのは悔しいよな」
あやの「あら。みさちゃんは名前出なくて当たり前よ」
みさお「な、なんでだよ…?」
あやの「だってみさちゃんは、わたしの愛人だもの」
みさお「…さ、やる事無いし帰ろっかな」
あやの「…うぅ…そんな冷たいみさちゃんも好きよ…」
916 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/04/23(木) 18:20:48.56 ID:nyzN5Ro0
こなた「パンツじゃないから恥ずかしくないもん!」
かがみ「ちょおまっ! なんて格好してるのよ!」

つよし「お巡りさん、あそこです!」
警察官「コラー! 君っ! わいせつ罪で逮捕だ!」

こなた「うわっ」
かがみ「ち、違うんですお巡りさん! これはあれこれこういうわけでしてぇ──」

つかさ「なんでお酒も飲んでないのに、こなちゃん服脱いじゃったの?」
みゆき「いえ、お酒を飲んだからと言って、服を脱ぐとは限りませんが・・・」
つかさ「そっかー」

かがみ「まったく! 私が居たから良かったものの、ホントだったら捕まってたんだからね!」
こなた「一人じゃこんなことしないよぅー」
かがみ「とにかく、もう二度と人前でこんなことしないことっ! 分かったらさっさとスカート穿きなさいよね」
こなた「うぅ・・・そんなに怒鳴らなくったって良いじゃん・・・」

つかさ「まるで親子」
917 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/23(木) 18:27:01.57 ID:eDPevMMo
>>914
乙! 鬱エンドじゃなくてよかった

>>915
春だな、かがみ。頭が

>>916
そんな親子はおらん
918 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/23(木) 18:31:11.29 ID:pXdBygDO
草剪はどこのスレでもネタにされてるなwwwwww
919 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/23(木) 18:41:39.67 ID:Rz6K1.SO
>>914
ニヤニヤオチで良かった乙!
でも>>912でも綺麗に終われたと思う。

>>916
つよしwwwwww

>>918
だよなww
920 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/23(木) 22:29:46.78 ID:VUzOqZw0
 _           ,イ´ __              __
  `丶、      / i==' ノノ´ ̄`ヽ、__     /´  {  「.「i
      `丶、    ヒrェェv-r;、_>--'7´⌒ヽY´`ヽヽゝ.__i 八___ノ
        `丶、  i´ ̄``ー --<ミヾ⌒ ノrrァェェァrくi' /  
               >-i;::.         \ `Y Y´__     V
_ ____ __    /´ く |;::       .::. >r‐{´    ..: :: :i
::. :. ::. ::. ::.  ̄ てハ _ハ.|;;::      _,.ィ1イ´r'1\    :..:....|
     ::.:..:(___ノノノ´ 八.: _,. .ィ´及〈`Y.i(__) .lへへ   ..:/
::.         /´ ̄/ _j´交亥'´イ.八 i j  .ノ ノノへ.::/j
::..   \    レ'´ (彡'´( // / // il lヽ ヽヽヽゝ.へj i i (( ノ.
:      \ /´-┴──''ノ/ / / l i  ll l i  i ll i  iー17 ノ´ヽ1/
 .:`丶、  (⌒>f´ ̄ -- i  i i\.i l  ll l l //i l / /iノ ´ ̄ `ヽ
  .::.::  ≧⌒/⌒_ /   |  l l i 八 リ ノ ノ,ィ/// i //        }
-- /´   `丶、´     ハ 「〒テr     _..///  ノ/      /
ーi        `丶、    jヽ. `¨´    ゝ._フ ∠ __     , '
:.:八           `ー-、__  )    )、    リ´´⌒`ーrヘ  /     ツマンネ
:. /\__            //j´ ̄`ヽ     _,.イ{ i     >ヘ .i
     `>- 、     i〈く   iし'` ̄:..:    `しし1 {`ーへj
   .:::/    `丶、  |ノメ}_ノi´ \          ー'` ̄``ー---.:.
            ヽ.._j} } ) l    \:: .
              `Vj
921 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/04/23(木) 23:15:19.47 ID:dOYiZFc0
なんか、コンプティークの本編でようやくパティが出てきたらしいんだけど。
泉家にホームステイって、またえらくアニメ版やおまけ版と設定変わってるなと…。



そうじろうさんの勝ち組っぷりに拍車がかかりますな。
922 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/23(木) 23:38:36.80 ID:WjgVCKI0
>>914
ほのぼのしました。GJ!
真面目モードなパティも良いですねぇ。
923 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/24(金) 12:49:11.91 ID:VONJ7f20
つかさ「通りすがりのライダーだ!よーく覚えておけ!」
かがみ「・・・アンタいきなり何言ってんだ?」
つかさ「あ、かがみもち」
かがみ「おいテメェ表出ろ」
924 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/24(金) 14:57:22.34 ID:TcQPqYSO
光と闇の(ry
925 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/04/24(金) 16:52:33.38 ID:8k3Xd6SO
−よく分からない二人−

こなた「んっふっふー。大漁、大漁」
かがみ「また、豪快に買い込んだわねぇ。アンタ一体、趣味関係に今まで幾ら注ぎ込んだのよ?」
こなた「かがみ…キミは今まで食べたポッキーの数を覚えているかい?」
かがみ「四千七百三十六箱」
こなた「………参りました」
かがみ「嘘に決まってるでしょ。そんなの一々数えてないわよ」
こなた「…う…うわ〜ん、ばか〜…かがみの嘘つき〜…」ポカポカ
かがみ「あははは、ごめんごめん。痛いって、こなた〜」


つかさ「えーっと…なんなんだろ…?」
みゆき(…なるほど)
926 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/24(金) 17:23:58.28 ID:7TWHRdIo
トレーズ閣下wwww
927 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/24(金) 18:59:45.44 ID:D.Luhngo
>>925
何がなるほどなんだよみゆきwwww


次回コンクールのお題募集中〜?
928 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/04/24(金) 19:43:48.01 ID:8k3Xd6SO
−さらに分からない二人−

つかさ「ちょっと流行って、すぐ使わなくなった言葉っていっぱいあるよね…ほら、イナバウアーとか」
みゆき「そうですね」
つかさ「クラスの子から聞いたんだけど、アレって技を作った人の名前なんでしょ?」
みゆき「はい、時の戦国武将、稲葉右安ですね」
つかさ「………嘘だよね?」
みゆき「はい、嘘です」
つかさ「………」
みゆき「あ、あれ…?」


つかさ「………」ムッスー
こなた(いや、つかさ怖いって…)
みゆき(うう…なんでこうなるのでしょう…)
かがみ(…なれない事するから…)
929 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/25(土) 00:18:13.14 ID:yNwjLhc0
0NByKq.0です。

>>917
>>919
 ありがとーございます。最初は912で終ろうと思って書いてたんですが、
プチ鬱で締め括るには文章が貧弱過ぎたので、ひよりんの妄想オチに持って
ってしまいました(^^;

>>920
 912/914宛にも含まれてると思ってマジレスしとくと、どのへんツマンネか指摘
欲しいとこ。書いてて自分も少ししっくりきてないのですよ。

>>922
 ありがとーです。ハイテンションだけど、意外と地は真面目ってイメージ
で書いてみました。
930 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/25(土) 21:17:34.36 ID:j6kU1EDO
>>928
少し大人になったね
つかさ
931 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/25(土) 22:34:47.62 ID:.6BP3UAO
滑り込みでプチ祭りに参加!
タイトルっているんだったかな?
932 :ラプラスの悪魔「みwiki様」 [saga]:2009/04/25(土) 22:38:58.47 ID:.6BP3UAO
春風が涼しいある日、みwiki様がご覚醒なされ、みwiki祭りが開かれた。
「深夜アニメが終わる2時28分9秒に、おやつのために取っておいたコロネを食すため泉さんがキッチンへ上がります」
みwiki様は過去現在の全てを把握し、これから起こるであろう事象を寸分の狂いもなく予測する。かがみは問うた。
「私はどうすればいいのでしょうか」するとみwiki様が答えた。「泉さんが降りて来ましたら、かがみさんはコロネを目の前で食べなさい」



次の日の深夜

「かがみん!?」
「ふぁ、こにゃた」モグモグ
「うわ〜ん!」
「ひょっ、ひょっと!」」ガッシャーン
かかみに覆い被さるこなた
「あ……」

新しい展開がここに。
すべてはみwiki様のなせる業。
933 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/25(土) 23:06:45.58 ID:.6BP3UAO
もう一つ思い付いたので急いで書き上げました!
934 :これぞ日本のみwiki祭り[saga]:2009/04/25(土) 23:08:27.27 ID:.6BP3UAO
私の神社の桜が綺麗なのでこなちゃんやゆきちゃんを呼んでお花見をしました。

「すごい!」
「えぇ、春風を感じます」
「やあやあ、妹達がお世話になってます。お母さんが饅頭くれたよ」
「まつり姉さんありがとう。ここに座ったら?」
まつりお姉ちゃんはゆきちゃんの隣に座りながら言いました。
「これぞ日本って感じだよね」
「そうですね、元々は梅の花を見る事か…」

ここでこなちゃんが突然立ち上がって叫びました。
「みゆきさんがWikipediaのごとくウンチクを話して、まつりさんがそれを聞く!まさに『みwiki祭り』!!」
「こなちゃん、なんのこと?」
「…いえ、なんでもございません…。うん、この饅頭おいしっ」

とても楽しいお花見でした。
935 :命の輪の支えとなって[saga]:2009/04/26(日) 02:23:44.80 ID:3m519NE0
投下いきます。

命の輪、旦那バージョンの中編です。
936 :命の輪の支えとなって[saga]:2009/04/26(日) 02:24:47.52 ID:3m519NE0
「髪、撫でるの好きだね」
 もたれかかってされるがまま、俺に髪を撫でさせているこなたがそう言った。
 そのこなたに、俺は頷いて見せた。
 こなたの長くてボリュームのある髪を撫でるのはなんとなく心地よく、暇さえあれば俺はこうしてこなたの髪を撫でていた。
 ふと、俺はこなたがどうしてここまで髪を伸ばしてるのかが気になった。
「なあこなた、どうしてそこまで髪を伸ばしてるんだ?コレだけ長いと色々大変そうな気もするんだけど」
 俺の質問を聞いて、こなたは目を瞑った。
「お母さんがね、凄く髪が長かったんだ。だから、わたしもできるだけ伸ばしてみようかなって…ちょっとお母さんを真似してみようかなって思ってね」
「ふーん…そういや、こなたのお母さんって見かけないな。働きに出てるのか?」
「ううん。死んじゃったんだよ。わたしが凄く小さい頃に」
「…悪い、へんなこと聞いた」
 こなたは目を開けて、俺を真正面から見つめた。
「気にしなくていいよ。何をどうしても、お母さんがいないことは変えようがないから」
 そう言ってこなたは、いつの間にか撫でるのを止めていた俺の手を取って、自分の髪にさわらせた。俺は再びこなたの髪を撫で始める。
「髪、撫でられるの好きか?」
 俺はこなたにそう聞いていた。
「うん、好き。なんとなく安心できるんだ。人に触れるのも、触れられるのも好きだよ」
 こういうのは悪くない。本気でそう思う。こなたと恋人になったことを良かったと、最近は思うようになっていた。
 二人の間に流れる優しい時間。
「人が一生懸命料理してる傍でイチャつくなぁっ!!」
 その中で、かがみさんがぶちキレていた。


- 命の輪の支えとなって -


937 :命の輪の支えとなって[saga]:2009/04/26(日) 02:25:38.84 ID:3m519NE0
「まったく…後ろでイチャイチャイチャイチャ、気が散ってしょうがないわよ」
 ブツブツと文句を言いながらかがみさんは、皿の上に今日の課題である卵焼きを盛り付けていた。
「大体アンタね、なんでわたしが料理習いに来てるときに、狙ったようにこなたんち来るのよ」
 菜箸で俺を指しながら、かがみさんがそう聞いて来た。
「そりゃあ…狙ってきてるからなあ。こなたに習いに来る予定日聞いて」
「…それは何?わたしに喧嘩売ってるわけ?」
 かがみさんが思い切りジト目で睨んでくる。視線だけで殺されそうなので、俺は目を逸らしておいた。
「別に喧嘩売ってるわけじゃなくて、試食で食費が浮くからだよ」
 俺の言い訳に、かがみさんがため息をついた。そして、こなたが泣き崩れていた。
「ダーリンはわたしに会いに来てくれてるんじゃないのね〜!かがみの料理が目当てなのね〜!」
 泣き方とかすごくわざとらしい。
「もういいから、さっさと食べてみてよ」
「へーい」
「ほーい」
 かがみさんに促されて、俺達は卵焼きを口に運んだ。
「………甘っ」
 卵焼きの形をした砂糖菓子。そんな感じの味が、口の中に広がった。
「かがみ…砂糖入れすぎだよ…今日のは大失敗だね」
 こなたもうんざりした顔で舌を出している。いつもは小失敗で済むのだが、たまに今日みたいな大失敗が混ざるので、試食はなかなかにスリリングだ。
「あ、あれ?おかしいなあ…」
 かがみさんは不思議そうに首を傾げて、自分の作った卵焼きを口に入れた。
「…う」
 そして、口を押さえて固まった。
「味見、してるの?」
 こなたがそう聞くと、かがみさんは冷や汗を垂らしながら明後日の方向を向いた。
「…わたしの心の中では」
「あやまれ。卵を産んでくれたニワトリさんに今すぐあやまれ」
「…ご、ごめんなさい」
 こなたの説教は、その後三十分ほど続いた。


938 :命の輪の支えとなって[saga]:2009/04/26(日) 02:26:23.53 ID:3m519NE0
「やほーっ!こなた、ひっさしぶりーっ!」
 やたらテンションの高い声がドアの方から聞こえた。正直、そちらを向くのも億劫だ。
「…あー、ねーさんおひさー」
 テーブルに突っ伏したまま、こなたがだるそうに挨拶をする。かがみさんも手を上げて何か言おうとしてたが、途中で力尽きて手を下ろした。
 かがみさん特製の激甘卵焼きは、予想以上の破壊力で俺たちを叩き伏せてくれていた。よく完食できたもんだ。
「…で、誰だ?」
 顔だけこなたの方に向けて、俺はそう聞いた。ねーさんとか言ってたから、身内ではあるんだろう。
「従姉妹の成美ゆい。ゆーちゃんのお姉さんなんだよ」
 成美さんの方を見てみると、半分気絶してるかがみさんの頬をぷにぷにとつついていた。
 反応の無いかがみさんに飽きたのか、今度は俺の顔を至近距離で覗き込んできた。
「な、なんですか?」
 思わず顔を上げ、後ずさってしまう。
「もしかして、君がアレ?噂に聞くこなたの旦那?」
 違います。
「きよたかさんほどじゃないけど、まあまあいい男だねー」
 誰ですか。
「ねーさん、わたし達まだ結婚してないよ」
 こなたが困ったように成美さんにそう言った。こなたも彼女のことは持て余し気味なのだろうか。
「あれ?そうなんだ?んー、ま、いっか…わたしのことは気軽にゆいねーさんと呼んでくれたまへ」
 血縁でもないのに、ねーさんは無いと思う。
「よろしく、成美さん」
「こなた〜、あんたの旦那さん反抗期だよ〜」
 俺の呼び方が相当不満だったのか、成美さんはこなたに泣きついていた。


 こなたの家からの帰り道、俺はずっと一つのことを考えていた。
 結婚。
 こなたと付き合い続けていれば、いずれはそうなるのだろうか。
 なんだか、全然実感が湧かない。
 上手くいってるとは思う。
 しかし、何かが足りないと俺は思っていた。

 そして、数ヵ月後。それは突然やってきた。


939 :命の輪の支えとなって[saga]:2009/04/26(日) 02:27:59.39 ID:3m519NE0
「結婚しよう」
 こなたは真剣な顔でそう言った。
 あまりにも唐突過ぎて、俺は何か言うのすら忘れていた。
「…な、何か言ってよ…不安になっちゃうよ…」
「あ、ああ…悪い…」
 しかし、何をどう言えば良いのだろうか?
 結婚ってのは人生の大事な決断じゃなかったのか?
 付き合い始めて、まだ半年しか経ってないのに、なんでまた急に?
 色んな疑問が頭を渦巻く中で、俺は告白を受けたときに感じた疑問を思い出していた。
「…何で、俺なんだ?」
 気が付くと、俺はそれを口に出していた。
 こなたはしばらく目を瞑って考えていた。
「一目惚れ…かな?」
 こなたは目を開けて、そう答えた。
「見かけてから、ちょっと気になってた。そういう勘には自信があるんだ。そんで、一か八かで告白してから本気になった…ホントはね、違う台詞を用意してたんだ」
「台詞?」
「うん、告白の時の台詞」
 あのとんでもない台詞か。
「ダーリンの顔見たら、頭ん中全部飛んじゃって、何か言わなきゃって思って、出たのがあの台詞。わたしが今まで聞いた中で、インパクトのあった台詞…あれ、わたしのお父さんが、お母さんに使った告白台詞なんだよ」
 どうにも、とんでもない親子だ。
「わたし、絶対にダメだって思った。お互い何にも知らないのに、あんな台詞絶対無いって思った」
 確かに、普通は思い切り引くだろうな。
「…でも、ダーリンは付き合うって言ってくれた。だから、わたしは思ったんだ…この人なら、わたしを受け容れてくれるんじゃないかって…わたしが普通の女の子とはズレてるって事くらいは、分かってるからさ…」
 胸の中がモヤモヤする。あの時、俺はそんな深く考えて答えたわけじゃない。
「わたしからも一つ聞いていい?」
 こなたの言葉に、俺は頷いた。
「ダーリンはさ、どうしてわたしと付き合ってくれたの?…それだけじゃない。わたしの言う事は、大抵きいてくれる。冗談で言ってるようなこと以外は、なんだって受け容れてくれてる…どうして?」
 俺は答えに困った。そんな事は考えたこと無かった。それでも、無理矢理答えを出すとすれば、多分こうじゃないだろうか。
「こなたの事が好きだから…かな」
「…それだけ?」
 こなたがキョトンとしている。長さか内容か、どっちかが予想外だったのだろう。
「うん、それだけ」
 言葉にしてしまえば、それが正しいと思えた。
「多分、俺も一目惚れだったんじゃないかな。入学した時から気にはなってたからな」
「そっか…そうだったんだ………あっ」
 こなたが何かに気が付いたような声を上げ、急にモジモジとしだした。
「どうしたんだ?」
「え、えっと…初めてじゃないかなって…ダーリンがわたしのこと好きって言ってくれたの…」
 そう言われれば、そうかもしれない。
「でも、それを言うならこなただって、俺の事好きだって言ったこと無いぞ」
「あ、あれ?そうだっけ?…え、えっと…それじゃ、その…わたしも、ダーリンのこと…す、好きだよ」
 言った直後にこなたの顔が真っ赤になる。許容量を超え、今にも転がりだしそうになったこなたを、俺は抱きしめていた。
940 :命の輪の支えとなって[saga]:2009/04/26(日) 02:28:49.56 ID:3m519NE0
「…それで、結婚の話だったな」
「…うん」
 俺に抱きしめられることで、こなたは落ち着きを取り戻していた。正直、俺も床を転げまわりたいと思っていたが、こなたを抱きしめることで耐えることが出来ていた。
 俺の中で、足りないものが埋まっていく感じがした。
「どうして急に、結婚なんて考えたんだ?」
「えっとね…夢が出来たんだ。どうしても叶えたい夢。それで、そのためにあなたが必要なんだよ」
 必要だという言葉は、素直に嬉しかった。
「我儘…かな?」
「いや、問題ないよ。それくらい」
「…わたしの夢がなんなのか、聞かないんだね」
「こなたの夢がなんであれ、俺の答えは変わらないと思うよ…こなたの事が好きだから」
「う、うん…そっか…そうなんだ…」
 こなたが俺の身体を強く抱きしめ返してきた。その存在感が、とても心地よい。
「…結婚、しよう」
「…うん」
 しばらく、そのまま抱き合い…こなたは急にプッと噴出した。
「なんだよ…」
「ご、ごめん…なんだかわたし達って滅茶苦茶だなって…」
「…そうだな」
 でも、俺達らしいとは思う。


941 :命の輪の支えとなって[saga]:2009/04/26(日) 02:29:27.45 ID:3m519NE0
「さてダーリン、この難関を無事に突破しないと駄目なわけですが…」
「まあ、なるようになるだろう…」
 俺とこなたは、泉家の居間でその難関…こなたの親父さんを待っていた。
 交際を認めてもらうときはあっさりしたものだったが、今回はものが違う。
「…最悪『俺の屍を越えていけ!』とか言われるかも」
 こなたが物騒なことを言ってきた。
「…それじゃ、遺体を埋める場所を考えないとな」
 俺は物騒なことを言い返していた。
「おまたせ。で、話って何だい?」
 ガチガチに緊張している俺たちの前に、問題の難関が現れた。
「え、えっとね、お父さん…あの…」
 こなたが勇気とか色々なものを振り絞って、親父さんに向かい話を切り出した。

「そうか。まあ、良いんじゃないかな」
 あっさりとした返事。今度ばかりは、俺もこなたと一緒に椅子から転げ落ちていた。
「…お、お父さん…ホントにいいの?結婚だよ?」
 こなたがヨロヨロと立ち上がりながら、親父さんにそう聞いた。
「ああ、結婚だろ?二人で決めたことなんだったら、俺がそれに口挟むことは無いよ」
 なんだかあっさりしすぎてて、逆に不安になる。
「…と、言いたいが、一つだけ条件がある」
 やっぱり何かあったか。親父さんは俺の方を見た。思わず身構えてしまう。
「この泉家に婿入りして、この家に住むこと。それが条件だ」
 身構えるほどの条件じゃなかった。
「えっと…それだけ?」
「ああ…こなたが家出て行くのは耐えられんわ」
 唖然としながら聞くこなたに、親父さんは恥ずかしそうに頭をかきながら答えた。
「…難関、クリアしちゃったね」
「…みたいだな」
 あっさりしすぎて、全然実感が湧かない。
「まあ、いいや…めでたい日だし、今日の晩御飯思いっきり張り切るよ」
 こなたがウキウキとキッチンの方に向かう。そして、ドアに手をかけたところで俺の方を向いた。
「ダーリンも食べてくでしょ?」
「ん…そうだな。そうさせてもらうよ」
 俺はそう答え、何か手伝おうと床から立ち上がった。
「あ、ちょっといいかな?」
 ドアに向かおうとしたところで、親父さんに呼び止められた。
「なんでしょう?」
 俺は足を止め、親父さんの方を向いた。
「…こなたを支えてやってくれるか?」
 真剣な顔。真剣な声。俺は、思わず姿勢を正していた。
「親の俺がいうのもなんだけど、色々大変な娘だよ。でも、見捨てずに最後まで見ててやって欲しい…親の我儘だとは思うが、こなたをよろしく頼む」
 そう言って、親父さんは深く頭を下げた。
「…はい」
 俺は、それに負けないくらい深く頭を下げて答えた。


942 :命の輪の支えとなって[saga]:2009/04/26(日) 02:30:25.86 ID:3m519NE0
「お父さんと何話してたの?」
 晩御飯の準備を手伝う俺に、こなたがそう聞いて来た。
「娘を頼むってさ」
「お父さんが…ふーん」
 こなたはなにか感心したように頷いていた。
「どうかしたか?」
「ん、いやね…お父さん飄々としてたけど、ホントは凄く思い切った決断だったんじゃないかなって」
「…そうなのか?」
「うん…わたしのお母さんが死んでから、お父さんは男手一つでわたしをここまで育ててくれたんだ。大変なことも色々あったんだろうけど、わたしのこと大事にしてくれた」
 その大事なこなたと、俺は夫婦になろうとしているんだ。
「だから、その大事なものを譲られるって事、役目を託されるってことは凄いことなんじゃないかな?…って、わたしが言うと、自画自賛になっちゃうかな…」
 俺は、その重さを初めて意識した。
 俺に出来るだろうか?今更ながら、少しばかりの不安がよぎる。
「…どったの?」
 こなたが俺の顔を覗き込んでいた。
「いや、なんでもないよ…こなた」
「ん、なに?」
「幸せになろうな」
「そりゃ勿論」
 こなたがニコッと笑う。
 その笑顔だけで、全ての不安を越えられる気がした。


 それからしばらくして、俺の名字は『泉』となった。


- つづく -
943 :命の輪の支えとなって[saga]:2009/04/26(日) 02:31:30.62 ID:3m519NE0
以上です。

何気に、俺の書く長編でゆいねーさんが初登場だったり。
944 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/26(日) 21:47:54.59 ID:xp7FE2AO
>>943

やはり婿養子か





GJ
945 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/26(日) 22:06:47.74 ID:dFgcssAO
>>932
何者なんだとww

>>934
長くは持たないな、その祭

>>943
ニワトリの件がツボったwwてかどんだけ入れたんだよかがみ、味見がどうとか言うレベルじゃねぇ

嫁に出す訳じゃないとは言え、娘をやるんだから大きな決断だよな
乙!
946 :ぷち祭り参加作品「卒業式とお祭りと」2009/04/26(日) 23:49:37.10 ID:Btzt0N20
みWiki祭り、それは生徒会と一部の生徒達が主催した、卒業式後のイベントだった。
最後に皆で思い出を作りたい、
心の底から卒業を祝いたい、
それから送りたい。
そう考えていた生徒は少なくはなかった。
式が終わって数刻後のホール、照明の落とされた薄闇の中、生徒会長の開催の弁も早々に、
エレキギターがかき鳴らされた。
壇上は今や軽音楽部の独壇場、卒、在校生混成のライブ会場と化していた。
この日には似つかわしくないと教師達は嘆いたかも知れない。
でもホールは、彼等への声援で色めき立っていた。

幾つもの部活が続け様に作品を披露し、祭りは大盛況の内に閉幕した。

こなたとかがみはお別れを言いに行ったつかさとみゆきを校庭で待っていた。
「にしても、あっという間だったよね。たかが三年、されど三年」
「ほんとよね。明日起きたら制服着そうだわよ」
「つかさはやりそうだけどね」
「ほんとに」
「さてかがみさん」
「ん?」
「私は今、桜の袂にいます」
「そうね」
「今日は卒業式です」
「で?」
「言う事は?」
「卒業おめでとう、こなた」
「……かがみん、これ、EDだよ?ハッピーエンドになるか、バッドエンドになるか、瀬戸際なんだよ?」
「何の話よ」
「私から言わせないでよ……バカ」
「……ごめん、冗談だろうけど、私、そういう趣味、ないから」

「遅くなってごめーん!」

そこにつかさとみゆきがやってきた。

春風がこなたの切なげな顔を優しく撫でた。

(……かがみの……バカ)
947 :ぷち祭り参加作品「晴心」2009/04/26(日) 23:58:54.32 ID:Btzt0N20
夜半、こなたはベッドの上で携帯を見ていた。
画面に写るのは、記念にと撮った幾枚もの写真だった。
教室に校舎、先生に級友、つかさとみゆき、その2人の間で白石がこちらにVサインを送っていた。
「相わらずウザイな、セバスチャンは」
覇気のない呟き。
帰宅するやこなたは、呟きと溜息ばかり吐いていた。
画像を送るこなたの指が止んだ。そこにははにかむかがみの画像があった。
他には誰もいない、かがみ1人だけの写真。
「冗談でもさ、悲しくなっちゃうじゃん」
次の画像も、また。
「キモいだろうけさ……」
こなたの瞳は揺れていた。
「傷つくよ」
次も……。
「何やってんだろ。現実とゲーム混同して」
電源に指を置いたその時、着信音が鳴り響いた。
かがみの名を画面に明滅させて。

「……もしもし?」
『こなた?あんたにさ、聞きたい事があるんだけど』
「聞きたい事?」
『昼間の、アレ、本気だったの?』
「何でまた」
『あれからあんた、元気なかったじゃない?』
「……ほ」
『こなた?』「本気なわけ、ないじゃん。私だってそんな趣味、ないよ」
『……そう。……あ、あのさ、映画のチケット貰ったの。○×、あんた好きでしょ?今度一緒に、どう?』
「……」
『……こなた?』
またかがみといられる、それが何より嬉しかった。
だからこなたは、ありったけの元気で答えた。
「うん!行く!」
2人の心の曇雲を、春風がかき消していた。
「そうそう、今日のみWiki祭りでさ!」
948 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/27(月) 00:05:35.78 ID:MHaO1sM0
>>946-947
こういう繋ぎモノっぽいのはやっぱりダメかね。
書いたはいいけどこなちゃん可哀想だろ、て事でもういっちょ書いちゃったんだが。
949 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/27(月) 00:14:09.26 ID:MHaO1sM0
これにて、第3回ぷち祭り「春風吹き荒ぶみWiki祭り」編、終了と致します。
参加者の皆さん、お疲れさまでした。
あちらに冷やしわかめを用意いたしましたので、よろしければご試食くだしあ。。。byみ○き
皆さん、ねん○ろいど『高翌良みゆき』大好評発売中ですよ?(^^
激レア則ゲットです!

こなた「……誰?」
950 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/27(月) 00:18:04.84 ID:ILe0jEAO
>>948

今までと違ってシリアスな展開だ!
こなたの恋は果たして叶うか
しかしみwiki祭りの名前のゆえんが気になるww

300文字って、そうか全角でいいんだよな。半角300文字で苦労して書いた俺涙目。

個人的にはいい話のような気がするけど、プチ祭り的にどうなんだろうな
951 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/27(月) 14:15:21.21 ID:pgPCnB2o
>>948
gj。このお題でシリアスとは恐れ入る……。
これはきっとTRUE END

俺の独断でokにさせてもらった。どっちもキーワードが入ってるし、単体でも成立してる様な気がするんで
3,4レスとかだったらあれだったけどww

宣言も乙!
952 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/28(火) 01:36:24.03 ID:ArnttMDO
空気も読まずに投下します
ななこ先生と「あいつ」ネタ

―卒業式後の校舎の屋上―
ふーやれやれ、終わったんやな、これで
さっきは教室で泣くところやったわ
ん?あれ、泉達やないか?
「つかさ〜卒業しても会えなくなるわけじゃないんだからさ〜そんな泣かないでよ〜」
「でも、ヒックこなちゃんヒックうぇぇぇ〜ん」
「でも、いつも顔合わせる訳ではなくなりますし…すこし寂しくなりますね…」
「みゆき…なら、寂しくなったらあたしの携帯にでも電話しなさいよ!いくらでも話相手になってあげるから!」
「かがみさん…」
「じゃ、あたし寂しいからかがみに電話毎日かけるー♪」
「こなた!オマエは自重しろ!」

卒業か…
そういや、同級生のあいつら今なにやってんのやろ?
「黒井センセ、なにやってんですか?こんなところで?」
んは!桜庭センセ!
アンタこそなんでこんなトコに!
「あー、あいつらいなくなって人寂しくってな。一人寂しく泣こうかな?と思ってさ…黒井センセもか?」
そんなところや
と、言いたいトコやけど
うちは…
…ゴォォォ…
来た「あいつ」や
うちは「あいつ」を待ってたんや

「なんだ?自衛隊の戦闘機?しかも4機も?」


「ねぇ、ゆきちゃん?またあの時の飛行機が…」
「うお!今度は4機も来て…」

バサバサバサ
ヒュバリバリバリバリ…

「「「「うひゃあああ!!」」」」
「なんですか?コレ?花びら?」
「何すんのさぁ!あの飛行機!」
「…もしかして私たちの卒業を祝って?」
「ふわぁ…なんか雪みたいできれいだねぇ…」

見たか!卒業祝いの花びら爆弾じゃ!
《こちらエンジョイフライトよりななこさんへ!こんなんでいいのか?オーバー》
「あいつ」から無線入る
あたしはこう答える
トランシーバを手に取りうちはこう答える
《上出来や!》
って
953 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/28(火) 18:24:15.35 ID:YyxWnNE0
           /ヽ/l
          //ヾ、 l
        . / ./   l l
       / ./    ,l_ l
     ,..‐"  ヽ_,-‐'´   ̄` ー 、 _
   _,‐'"    ´           ヽ
,.‐'"                      l  ここまでまとめたワン
                    _   l
                  ハ   l
                  弋ノ   ヽ _
                        . ̄弋リ
        l          ̄ ̄`ー、     .V
        l         ____      .l
        ∠             ,      l
        └,          , - '     ,、./
                /       /
                    _,.-−'"´
                ,、/"´
954 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/04/28(火) 19:16:36.93 ID:P7QWnsSO
−まとめ人への感謝の気持ち大吟醸−

こなた「まとめ、お疲れ様です」
かがみ「………」
こなた「………」
かがみ「…なんかしなさいよ」
こなた「かがみこそ…」
かがみ「………」
こなた「………あのね」
かがみ「…何?」
こなた「そう毎回ネタあるかー!!」
かがみ「なんでキレる!?ってか無いならやらなきゃいいじゃない!?」
こなた「…神がね…電波がね…」
かがみ「…帰ろ」
955 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/28(火) 19:40:19.56 ID:d2ogFoIo
>>952
自衛隊をなんてことに使ってるww

>>953
お疲れ様ッス!
956 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/28(火) 20:25:46.63 ID:IhV72cAO
>>952
『あいつ』GJ!
957 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/04/28(火) 22:16:22.00 ID:YyxWnNE0
>>954
こなたやべえw
958 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/29(水) 04:20:44.45 ID:E7Tto6DO
>>952を書いた者ですが
調子に乗って「あいつ」バージョンで前日談をひとつ

ここはとある居酒屋
例によって俺、ななこさんにまた引っ張ってこられまして…
ななこさんってばもう酔っ払ってるし
受け持ちの生徒達の進路がうまい感じにいって祝杯ってトコなんだろうけど…

でも、呑み過ぎです、ななこさん!
もう何呑んだか数えるのも面倒臭いです!いや、マジで!

「あいつら卒業するんやなぁ淋しくなるわぁ…」
…そうでしょうね
とりあえず水頼みましょう水
「うち、あいつらの門出を祝うためになんかしてやれないかなぁ…」
いえ、あなたの『卒業おめでとう』って心からの一言がなによりの…
「そや!こないだの花束飛行機から落とすの!それと似たようなのでけへんか?」
はい?なに言ってんすか?ななこさん?
「その話!乗った!」
え?うそ?なんでこの人ここに?
「は?誰やアンタ?」
「こいつの乗る機体整備をやってる者だ!ところでお嬢さん?アレを応用して花びらをばらまくってのはどうかね?!」
「それ、採用や!」
あの、君たち?
「面白そーじゃん?俺らも参加すんよ?フライトリーダーはオマエな?」
「おー!いいね、いいね♪頼むぜ『エンジョイフライト1』?」
「ばらまいてやんよ!花びらをよ!ウケケ…白いのがいいなぁん?桜みたいな薄い桃色も捨てがたいかな?」
ちょ、なんで先輩達まで!!
「いや、オマエが美人教師と呑んでるって聞いて飛んできただけだか?」
…えーと、俺、どうすりゃ…
「まぁええやん!うちらから送る手向けっちゅーこって!頼んます!!みなさん!」
ザッ
「「「「「イエス!レディ!!」」」」」
…なんかななこさんにみんな敬礼してるし…ノリノリだし…
こうして「卒業祝い花びら爆撃作戦」が発動されたました…
959 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/29(水) 10:18:16.38 ID:d55zQgSO
>>958
こいつら大好きだwwww

960 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/29(水) 12:22:04.29 ID:1WFD6ISO
かがぶーインフルエンザなら感染しても良い
961 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/04/29(水) 13:56:53.46 ID:NKkbLQSO
−冷蔵庫−

かがみ「『あたかも』を使って文を作りなさい、ね…さ、やってみて」
こなた「冷蔵庫にプリンがあたかもしれない」
スパーンッ!!
かがみ「…古いネタやってないで、真面目にやれ」
こなた「…うぅ…スリッパ結構痛い…」


その夜
ゆたか「ねえ、こなたお姉ちゃん。冷蔵庫に入れてた、わたしのプリン知らない?」
こなた「…え?」


かがみ「まさかホントにあるとは」モグモグモグ
962 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/04/29(水) 13:56:58.72 ID:BhRdkxo0
投下行きます。
963 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/04/29(水) 13:58:00.36 ID:NKkbLQSO
−冷蔵庫−

かがみ「『あたかも』を使って文を作りなさい、ね…さ、やってみて」
こなた「冷蔵庫にプリンがあたかもしれない」
スパーンッ!!
かがみ「…古いネタやってないで、真面目にやれ」
こなた「…うぅ…スリッパ結構痛い…」


その夜
ゆたか「ねえ、こなたお姉ちゃん。冷蔵庫に入れてた、わたしのプリン知らない?」
こなた「…え?」


かがみ「まさかホントにあるとは」モグモグモグ
964 :第二次泉こなた内閣[saga]:2009/04/29(水) 13:58:09.70 ID:BhRdkxo0
1.復活

*幸星党幹部専用秘匿回線チャットログ
konakona:音を上げるのが早すぎるよ、みゆきさん。
miyumiyu:ですが、小早川さんは体力的にこれ以上もちません。
konakona:みさきちを立てればいいじゃん。体力はあり余ってるだろうし。
miyumiyu:当面はそれで何とかなるかもしれませんが、小早川さんに気になる動きがあります。
konakona:ゆーちゃんが?
miyumiyu:永森さんにパンピー党議員の個々の政治傾向を洗い出すように指示してます。先日、その報告を受けたようです。
konakona:うーん。思ってたより、流れが速くなってるかな?
miyumiyu:おそらくは……。
konakona:でも、それぐらいはみゆきさんで何とか対処できない?
miyumiyu:私一人では荷が重過ぎます。永森さんには既に指示を出しておきました。近日中には補欠選挙が行なわれます。戻ってきてください。お願いします。
konakona:みゆきさんのお願いじゃ仕方ないね。分かったよ。もう少しテツの世界に浸ってたかったんだけどね。
miyumiyu:お待ちしております。

 こなたは、ノートパソコンを閉じた。
 深夜の寝台列車。窓の外の風景は暗黒だった。
 隣でうとうとしていたかがみを起こした。
「うん、何よ?」
「ここから一番近い空港はどこかな?」
「何よ、突然」
「戻るよ、永田町に」



──小早川ゆたか首相、検査療養のため入院。首相代理は、高良みゆき官房長官。
──パンピー党○○衆議院議員、交通事故で死亡。
──パンピー党××衆議院議員、心臓発作で死去。
965 :第二次泉こなた内閣[saga]:2009/04/29(水) 13:59:06.89 ID:BhRdkxo0
 そんなニュースが流れる中、こなたとかがみは、永田町に戻ってきた。
 幸星党本部前。
「ソロモンよ、私は帰ってきた!」
「何のネタだよ?」
「うーん、ちょっと、古かったかな。でも、高齢オタク層の取り込みは、幸星党にとって重要なテーマだよ、かがみん」
「はいはい」

 復党をすませると、さっそく衆議院議員補欠選挙への立候補手続をすませた。
 先日、公選法を改正して、欠員が生じたつどすみやかに補欠選挙を行なうように規定が変わっていた。
 補欠選挙が行われた選挙区は、もともと幸星党の支持率が高いところで、先の選挙で幸星党が候補者を立てなかったことが不思議がられていたぐらいだ。
 当然、こなたとかがみは、あっさり当選を果たした。

 幸星党本部
「再選、おめでとうございます」
 みゆきは、そういってこなたとかがみを出迎えた。
 みゆきも、首相代理として忙しく、今まで復党した二人に会う時間さえなかったのだ。
「みゆきさん、ごくろうさん」
「大変だったでしょ、みゆき」
「ええ。お二人がいない間、ずっと働きづめでしたよ」
 みゆきがそんな愚痴をいうとは、本当に疲れているようだ。
「とりあえず、今後の段取りについて打ち合わせをいたしましょう」
 そういって、みゆきが歩き出したときだった。
 みゆきの目が急にかげり、その場に崩れ落ちた。
「みゆき!」
 かがみが、あわててみゆきの体を支える。

 永田町に救急車のサイレン音が鳴り響いた。

966 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/04/29(水) 13:59:28.87 ID:NKkbLQSO
−冷蔵庫−

かがみ「『あたかも』を使って文を作りなさい、ね…さ、やってみて」
こなた「冷蔵庫にプリンがあたかもしれない」
スパーンッ!!
かがみ「…古いネタやってないで、真面目にやれ」
こなた「…うぅ…スリッパ結構痛い…」


その夜
ゆたか「ねえ、こなたお姉ちゃん。冷蔵庫に入れてた、わたしのプリン知らない?」
こなた「…え?」


かがみ「まさかホントにあるとは」モグモグモグ
967 :第二次泉こなた内閣[saga]:2009/04/29(水) 13:59:57.26 ID:BhRdkxo0
 病院、個室。
「お恥ずかしい限りです。小早川さんはご自分の足で歩いて入院されたというのに、私がこの体たらくとは」
 みゆきは、そういってベッドから半身を起こした。
 診断結果は過労。少し療養すれば回復するとのことだった。
「ゆーちゃんは慣れてるからね。こういうのは、健康な人の方が危ないんだよ。限界を知らないから、それが来るまで気づかないんだ」
「泉さんのおっしゃられるとおりなのかもしれませんね」
「こんなになる前に、誰かみゆきを止める奴はいなかったの?」
「いたとしても、止まらなかったでしょ? みゆきさんは」
「そうですね」
「なら、自業自得だね」
「こなた、そんな言い方ないじゃないの」
「かがみさん。泉さんのおっしゃるとおりです。これは私の自業自得ですよ」
「でも……」
 かがみの反論を、こなたがあっさりさえぎった。
「まあ、今はゆっくり休んでよ。次の内閣でも、みゆきさんには重要ポストを当てるつもりだからね」
「結局、私はこき使われるわけですね?」



 首相と官房長官が入院するようでは、もはや内閣は死に体である。
 ゆたかは、病院の中から、幸星党総裁辞任と内閣総辞職を表明した。
 幸星党総裁選が公示される。
 立候補者はこなたのみ。無投票当選が確実視されていた。



2.再編

 病院、個室。
「ゆたか、大丈夫?」
968 :第二次泉こなた内閣[saga]:2009/04/29(水) 14:00:59.58 ID:BhRdkxo0
「うん。もう全然平気だよ。本当はもう退院できるんだけどね」
「そう」
「それでね、みなみちゃんに相談があるんだけど、聞いてくれるかな?」
「何?」
 ゆたかが、簡潔に内容を話すと、みなみはしばし沈黙した。
 そして、
「……そこまでしなくては駄目? 党内で多数派工作をする方がいいような」
「幸星党内の内紛は、パンピー党のオタク差別派に利することにしかならないよ。かといって、幸星党内のオタク至上派に与することもできないから。だから、これしか方法はないんだよ」
「……」
「みなみちゃん、私についてきてくれるかな?」
 ゆたかは、じっとみなみの瞳を見つめた。
 しばしの静寂。
「……なんてね。卑怯だよね。みなみちゃんが断れないことを知ってるのに、こんなことを訊くなんて」
「そんなことはない。私はゆたかについていく。これは私が決めたこと」
「ありがとう、みなみちゃん」


 数日後、幸星党本部。
「こうにも誘いがあったのね」
「やまとも来ねぇか?」
「お断りするわ。私はそれなりの組織の責任者だもの。手下を放り出して逃げることはできないわ。組織ごと移るには、小早川さんの主義と合わなすぎるし」
 組織の具体的な内容には触れない。それはタブーだから。
 幸星党直属の工作機関。それは公式にも非公式にも存在しないことになっている。
「そうか。でも、どんなに離れてもやまとは私の友達だからな」
「ありがとう、こう」


969 :第二次泉こなた内閣[saga]:2009/04/29(水) 14:01:55.40 ID:BhRdkxo0
 こなたが幸星党総裁に当選し、国会における投票で内閣総理大臣に指名された。
 その直後、無事退院していたゆたかが緊急の記者会見を開いた。
 幸星党からの離党と新党結成の表明であった。
 新党の名前は、新星党。
 何とも芸のない名前であるが、ゆたかにとって名前などどうでもいいことだった。要は中身だ。
「私たちは、パンピー党の一部のオタク差別主義にも、幸星党の一部のオタク至上主義にも与しません。最大多数の最大幸福。それが私たちの目指すところです。果たしえぬ夢であるかもしれません。しかし、私たちはそれに向かって努力し続けます。私たちは、この目的に賛同するすべての人たちに門戸を開いています」
 それから質疑応答がいくつかあり、記者会見は終了した。
 会見場の裏。
「大丈夫、ゆたか?」
 みなみが心配そうな顔で立っていた。
「大丈夫だよ。でも、少し緊張しちゃった。状況はどうかな?」
 みなみが紙を一枚渡した。
 今のところの入党者名簿だった。
 幸星党からは、事前に根回ししていたメンバー全員が入党を表明していた。
 そして、パンピー党所属議員の取り込みも計画どおりに進んでいる。目標は、パンピー党の6割以上の議員を取り込むこと。
 パンピー党は今ごろ恐慌状態だろう。


 幸星党本部。
 こなたは、ソファに座って、ゆたかの記者会見の様子をテレビで眺めていた。
「ゆーちゃんは立派になったね。首相を務めて政治家としての器が広くなったかな。面白くなってきたよ」
 そのこなたの隣で、かがみがうなだれていた。
「かがみんや。政治的立場とプライベートは別物だよ。その辺は割り切らないとさ」
「分かってるわよ、そんなことは……」
 つかさが新星党に参加していた。それについてくかのようにかがみを除く柊家も、新星党に参加していた。
「つかさも、いつまでもお姉ちゃんにべったりの子供じゃないってことだよ。むしろ、喜んであげなきゃ。なんなら、かがみもあっちに行くかい?」
 かがみがにらみつけるようにこなたを見た。
 こなたは、いつもどおりの調子をまったく崩さない。
「冗談だよ。かがみにブルータス役は似合わないからね」
「少し頭を冷やしてくるわ」
「そうした方がいいよ。政治の世界で感情的になるのはよくないしね」
970 :第二次泉こなた内閣[saga]:2009/04/29(水) 14:03:01.22 ID:BhRdkxo0
 かがみが退室するのと入れ替わるように、やまとが入室してきた。

「御依頼の件、報告にあがりました」
「ごくろうさん」
 やまとは、ゆたかの入院期間中に行われた検査結果、プライバシー権によって保護されているはずの情報を、こなたに告げた。
「やっぱりね。それがゆーちゃんを決断させたわけだ」
「で、いかがなさいますか? 小早川前総裁の動きを阻止しますか?」
「いや、いいよ。これは結党当初から織り込み済みのことだからね。ゆーちゃんがやらなくても誰かがやってたよ。むしろ、この際だから、目障りな連中を始末しとこうか。たとえカスでも純度が高くなると有毒だからね」
 こなたは、やまとにこう命じた。
「虫けらどもを捻り潰せ」

 パンピー党残留組のオタク差別主義者たちは、突如として沸き起こったスキャンダルと徹底的なネガティブキャンペーンによって政治生命を絶たれ、次々と議員辞職に追い込まれていった。



 旧パンピー党本部=新星党本部。
 新星党暫定総裁ゆたかは、足早に廊下を歩いていた。
 ここ数日あちこちを駆けずりまわっているが、疲労の色は全く見せてなかった。
 パンピー党残留組の壊滅は、最初から織り込み済みだった。
 誰だって二正面作戦は避けたい。ならば、こなたがどう動くかは容易に予想がつくというものだ。
 そのため、パンピー党本部の乗っ取りはあっけないほど順調に完了していた。

 ゆたかは、ある部屋に到達した。
「失礼いたします」
 部屋の窓から外の風景を眺めていた天原ふゆきが振り返った。
 そして、唐突にこう告げた。
「小早川さん。あなたは絶対安静でなければならない体ですよ」
「お気づきでしたか」
「他の人は騙せても、私の目はごまかせません」
「天原先生にはかないませんね」
971 :第二次泉こなた内閣[saga]:2009/04/29(水) 14:03:59.25 ID:BhRdkxo0
「ご用件は何ですか?」
「先生にお願いがあります。最期のお願いということになるかもしれません」
「そういう言い方は卑怯ですよ」
「分かっております。でも、なりふり構っていられる時間は私には残ってませんので」


To:みなみさん
From:高良みゆき
件名:情報連絡
内容:
 この情報をお知らせすることに他意はありません。
 内容を信じるかどうか、そしてどう対応するかは、みなみさん次第です。
 永森さんのところから盗った小早川さん入院時の診断結果の情報です。
  ・絶対安静で余命3ヶ月。
  ・病状回復の見込みなし。


 携帯電話に入ったそのメールを見た瞬間、みなみは走り出した。
 考えてみれば、おかしかったのだ。
 普段のゆたかからは考えられないほどの性急さと大胆さ。
 そのすべてが残された時間がわずかであるがゆえだということに、なぜ気づかなかったのか。

 党本部内を走り回ったすえに、みなみはその部屋にたどりついた。
 そして、そのときにはすべてが遅かった。
 床に広がる血。ゆっくりと崩れ落ちていくゆたかの姿。
「ゆたか!」
「岩崎さん、救急車を呼んでください。私は応急措置をとります」
 ふゆきは、吐いた血が気管につまらないように応急措置を施した。
 脈をとる。はっきりと分かるぐらいに、脈はどんどん弱くなっていた。


972 :第二次泉こなた内閣[saga]:2009/04/29(水) 14:04:59.66 ID:BhRdkxo0
3.最強の好敵手

 ゆたかの葬儀は、目も覚めるような快晴のもとで行なわれた。
 参列者は、親戚と親しい友人・知人のみ。マスコミの取材は完全シャットアウト。
 遺言状でそう指示されていた。
 ぐだぐだに泣きぬれている者、ただ呆然としている者、硬い表情で何かに耐えている者、あえていつもどおりに振舞っている者。人それぞれだった。


 政治の世界に喪中は存在しない。
 誰が死のうと生きようと、流れは止まらない。
 葬儀の翌日に、第二次泉こなた内閣が発足した。

第二次泉こなた内閣
 内閣総理大臣 泉こなた(幸星党総裁)
 内閣官房長官 柊かがみ(幸星党幹事長)
 総務大臣 泉そうじろう
 法務大臣 田村ひより
 外務大臣 永森やまと
 財務大臣 高良みゆき
 文部科学大臣 魔天ぱとりしあ
 厚生労働大臣 小神あきら
 農林水産大臣 宮河ひなた
 経済産業大臣 白石みのる
 国土交通大臣 音無りんこ
 環境大臣 高良ゆかり
 防衛大臣 兄沢命斗
 国家公安委員会委員長 黒井ななこ
 金融担当大臣 高良みゆき(財務大臣兼務)
 沖縄及び北方対策担当大臣 永森やまと(外務大臣兼務)

973 :第二次泉こなた内閣[saga]:2009/04/29(水) 14:05:56.79 ID:BhRdkxo0
 だが、それ以上に注目を集めたのは、新星党の総裁選だった。
 立候補受付期限の最終日に立候補を表明し、そのまま無投票当選を果たしたのは、天原ふゆきだった。

 首相官邸でこの報を聞いたとたん、こなたは爆笑した。
 腹がよじれるくらいに爆笑して、
「さすがはゆーちゃんだ。こう来るとは思わなかったね。参ったなぁ」
「笑い事じゃないわよ、こなた」
 かがみがそうたしなめる。
「まあね。でも、参っちゃったのは事実だよ。私たちの中で、天原先生にかなう人なんていないんじゃないかな?」
 まさに、最強の好敵手の登場であった。

 一方、新星党本部。
「指導者なんて不向きだと思うんですけどね」
 ふゆきが、総裁室でそうぼやいていた。
「なら、なぜ引き受けたんだ?」
 ひかるがそう問う。
「小早川さんに最期のお願いだといわれれば、断れないですよ」
「確かにな。でも、今の新星党に必要なのは、何があっても軸がブレない磐石の安定性だ。そういう意味では、ふゆきが一番適任だ。小早川の人を見る目が確かだったな。惜しい人材を亡くしたもんだ」
「そうですね」
「で、まずは、どうするんだ? 幸星党の調子に乗ってる奴らにがっつりヤキを入れてやるか?」
「最初から喧嘩腰なのは駄目ですよ。党是に反します。最初に差し伸べられる手は開かれているべきです。武器を握るのは、それが振り払われたあとでいいのです」
「政治の本質は闘争だというがな」
「それは、一面的な見方ですよ。政治は妥協の積み重ねでもあります」
「そういう側面があるのも事実か。まあ、黒井さんが残ってくれたから、幸星党も私ら相手に極端に暴走することはあるまい。当面は淡々とやるしかないか」
「ええ。まずは、影の内閣(シャドーキャビネット)の編成と発表を行ないますよ」
「パンピー党はネクストキャビネットと言ってたな」
「英国の伝統に敬意を表すべきです。それに、私は影(シャドー)という言葉が好きなんですよ」
 ホラー好きのふゆきには、影(シャドー)という言葉が琴線に触れるところがあるのかもしれない。
974 :第二次泉こなた内閣[saga]:2009/04/29(水) 14:06:47.72 ID:BhRdkxo0
 翌日、新星党の影の内閣のメンバーが発表された。


新星党「影の内閣」
 内閣総理大臣 天原ふゆき(総裁)
 内閣官房長官 桜庭ひかる(幹事長)
 総務大臣 日下部あやの
 法務大臣 小早川ゆき
 外務大臣 岩崎みなみ
 財務大臣 八坂こう
 文部科学大臣 柊ただお
 厚生労働大臣 柊いのり
 農林水産大臣 柊つかさ
 経済産業大臣 成美きよたか
 国土交通大臣 柊まつり
 環境大臣 柊みき
 防衛大臣 日下部みさお
 国家公安委員会委員長 成美ゆい
 金融担当大臣 八坂こう(財務大臣兼務)
 沖縄及び北方対策担当大臣 岩崎みなみ(外務大臣兼務)
975 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/04/29(水) 14:07:24.79 ID:BhRdkxo0
以上です。
976 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/04/29(水) 14:22:33.89 ID:NKkbLQSO
すいません。

なんで、こんなことになったんだ…。orz
977 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/29(水) 14:30:11.66 ID:Jp13mmA0
>>960
かがぶーインフルエンザでパンデミックが起こり、人類がかがぶーになるんですねわかります

>>961 963 966
大事なことだから3回言ったんですねわかります

>>975
泉こなたVS天原ふゆきの仁義なき戦いが始まるわけですねわかります
978 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/29(水) 22:05:25.96 ID:rgSVVUco
次のコンクールを開催するか中止するかはっきりさせたい。みんな来てくれ
979 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/29(水) 22:28:19.87 ID:rgSVVUco
>>975
秘匿回線がネトゲにしか見えないww
王の帰還、とゆたかが死んだか……気になる展開になってきたなー
GJ!

>>976
かがみの食い意地がはりすぎなせいだろうたぶん
980 :おし☆らせ2009/04/30(木) 00:34:48.44 ID:YYj8I4co
☆★☆★☆

次回コンクールお題募集! 
お題はコンクール雑談スレの方にお願いします

★☆★☆★
981 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/30(木) 01:01:47.36 ID:NFiIF.I0
次スレを立ててみた。後悔はしていない
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1241020823/
982 :つかさの右腕[sage]:2009/04/30(木) 01:12:05.43 ID:enULwVU0
※元ネタは何となくわかると思いますが、あえて明言しません。わかった人だけニヤニヤしてください。

最近、つかさは長袖ばかり着ている。
おかしいと思うきっかけは家での出来事だった。

いままでつかさは私が一緒にお風呂に入るのを拒まなかった。
でも、少し前から私と一緒にお風呂に入らなくなった。
最初、つかさは姉離れしていると思った。

そして2か月たった。今は夏。それでも、毎日長袖を着ている。

「つかさ、暑くないの?」
「・・・だ、大丈夫だよ。」
そういうつかさは尋常じゃない汗をかいている。
私の不安は膨れていく。

「つかさ、あんたの部屋に行くわよ!来なさい!」
私はむりやりつかさを部屋に入れ、鍵を閉めた。

「つかさ、あんたどうして半袖を着ないの?正直に言いなさい!」
「半袖はなんとなく・・・えへへ・・・」
つかさは笑ってごまかそうとするが、私は真顔のままで動じない。
そして、もう一度・・・。
「正直に言いなさい・・・。」
つかさの顔が真剣なものになっていく。
「・・・お姉ちゃん、これ、内緒にしてね・・・。」
そういうとつかさは上の服を脱いだ。
そして私は言葉を失った。

「・・・つかさ、あんたどうしたの!」
つかさの右腕には赤い手の形、それも人ではない手の形をした痣があった。
「・・・2か月前ぐらいから、現れたんだ・・・。」
つかさは普段ではありえないほど真面目に答えた。
「あんた、みんなには・・・。」
「・・・言えないよ・・・。」
「そうよね・・・。」
部屋は沈黙に包まれた。

その沈黙を切ったのはつかさだった。
「でも、まだ今だからよかったかも・・・。」
「・・・そうね。高校の頃だったらこなたが・・・。」
また沈黙に包まれた。
983 :つかさの右腕[sage]:2009/04/30(木) 01:12:55.02 ID:enULwVU0
沈黙はつかさの嗚咽によって破られた。
「つか・・・!」
私はつかさに声をかけようとしたら、つかさに抱きつかれた。
「お姉ちゃん、怖いよ・・・。」
つかさの嗚咽は大きくなった。

私はつかさが甘えん坊であることを知っている。
あの高校の時の夏の時もすぐに私に泣きついた。
そのつかさが得体のしれないものを抱えて、
それも2か月も我慢して・・・。

私はつかさを抱きしめた。そして、
「つかさ、大丈夫。何があっても守ってあげるから。」
つかさの嗚咽は泣き声に変わった。
「おねぇちゃぁん!」
私はつかさが泣き止むまでつかさを抱きしめた。

つかさは泣き止んだあと、つかさは決心した。
「お姉ちゃん、私、このことみんなに言うよ。」
いきなりの宣言に私は
「え?」と聞きなおした。
「もう隠すのはいやだし、きっとお姉ちゃんみたいに受け止めてくれる。
なにかあってもお姉ちゃんが守ってくれるから。」
つかさの真顔に私は笑顔で返した。
「そうね。」

つかさはみんなに右腕の痣のことを話した。
茶化すこなたには私が鉄拳制裁をした。
ああ、きっとこなたの中の私凶暴伝説が増えたわね。

数日後、こなた、みゆき、つかさと私の4人で、遊びに行った。
といっても車に乗ってただドライブするだけだが。
当然つかさはやはり長袖だった。
その車中でのこと、つかさは右腕をめくり、痣をさらした。
「実はこの痣に少しだけ感謝してるんだ。」
みんな?顔だったが、つかさは続ける。
「みんな、高校出てから疎遠だったけど、この痣のおかげで
みんなと再び会えたから・・・その・・・この痣が『絆』を
取り持ってくれたって・・・。」
みんなの顔が笑顔に変わる。
「そうですね、つかささん。きっとそうですよ!」
「そうだね、つかさ、だから、腕を押えて『俺の邪気眼が』ってやって!」
私は高校時代みたいにこなたにつっこみをいれる。
「お前が勝手にやれ!」

この先、つかさにはきっと大きなことが待ち受けていると思う。
それが光か闇かはわからない。だけど、私はつかさを守っていきたいと思う。
だって、大事な妹だから・・・。
984 :つかさの右腕〜あとがき+α〜[sage]:2009/04/30(木) 01:26:30.52 ID:enULwVU0
以上です。
今回の元ネタはあれですが、わからなくても読めるようにしてみました。
ちょいみんなの口調がおかしいかもしれませんが勘弁して下さい。
985 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/30(木) 12:27:39.80 ID:L0GdGMSO
さっぱりわからない…。
986 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/30(木) 13:11:57.78 ID:xYwu8Xk0
初投下ですよろしく。
987 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/30(木) 13:46:33.64 ID:sAvbUQAO
>>986
新スレに投下した方がいいかも
988 :歌手永森やまと2009/04/30(木) 13:59:18.58 ID:xYwu8Xk0
浜○「はいH○Y!H○Y!H○Y!初登場は永森やまと」
やまと「よろしく」
松○「君聞きましたよー新曲」
やまと「ありがとうございます。」
松○「水島○ロ主演の映画の曲になっているからねーいちよう聞きました
けどいい曲なんだけどPV観たらなんかわからないPVだったよ」
浜○「お前PVみてないだろ!」
収録後
スタッフ「おつかれさまでした」
やまと「おつかれさま」
浜○「おう!やまと今日は酒飲みに行くか?」
やまと「ごめん今からレコーディングだからいけない。」
浜○「そうかなら明日飲むに行くか?」
やまと「わかった」
私は永森やまと職業は歌手。昔こうに自分が作曲した曲を聞かせたら絶賛されて
歌手になったほうがいいて言ってきた。最初は興味なかったけどあまりにもこうが
うるさかったから私は心は折れて歌手となった。
いちよう高校卒業してから歌手になろうと思ったけど、こうが勝手にレコード会社に送った所
20以上のレコード会社からのオファーが殺到した
どれにしようかと迷ったけど何とかきまった。
こう「やまとデビューおめでとー」
やまと「まだデビューがきまったわけじゃないわレコード会社と契約して事務所と契約して
そして方向性を決めて曲を作らないといけないからまだデビューしたわけじゃないわ」

989 :歌手永森やまと2009/04/30(木) 14:07:36.33 ID:xYwu8Xk0
こう「でもデビューするじゃん」
やまと「そうだけどでも心配だわ」
こう「どうしたの?どこが心配なの?」
やまと「歌手でやっていけるのか心配なの歌手の世界は厳しいから必ず売れるとは
限らんから」
990 :歌手永森やまと2009/04/30(木) 14:20:55.93 ID:xYwu8Xk0
こう「でもデビューするじゃん」
やまと「そうだけどでも心配だわ」
こう「どうしたの?どこが心配なの?」
やまと「歌手でやっていけるのか心配なの歌手の世界は厳しいから必ず売れるとは
限らんから」
こう「心配しないのまだ決まったわけじゃないからやまとならいけるって絶対!」
やまと「ありがとうまさかこうに勇気ずけられると思わなかったわ」
とゆうことがあって私は歌手となった。デビュー曲「新しい日」でデビューした。こうもこの曲を買って聴いてくれて嬉しかった。
不満だらけだったけど14位にランクインした、そして今に至る。
991 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/30(木) 14:25:50.57 ID:xYwu8Xk0
終わりました。初めてだったので色々と文法間違いや誤字脱字がありましたが何とか
できました。シリーズ物のに入れてください。あと間違え毛て書き込むを
押たので989は入れないでください。
992 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/30(木) 15:53:40.49 ID:3gsViR20
>>984
タイトルから楳図かずおの「俺の右手」を連想したけど全然違った。
日常から非日常へと変わり行く様がよく書けています。
健気なつかさと見守るかがみの姉妹関係もステキでした。
元ネタは分かりませんが単純に読み物として面白かったです。
>>991
ファンはいるのにSSどころか本編にほとんど登場しないやまと。
初(?)の主役に抜擢された彼女も本望でしょう。
続きものらしいのでオチらしいオチはありませんでしたがこれからの展開に期待します。
あと文字化けしてるのが妙に怖いです。
993 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/30(木) 18:18:12.33 ID:9eBsDgSO
>>984
そのうちこなた達にも痣が出て来てダークな人達と戦うんですねわかります

もしその元ネタで書いたとしても、上手く書けてるなぁー、と素直に思いました。
確かに元ネタが分からなくても読めるレベルですね。GJ
994 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/30(木) 18:40:23.56 ID:xYwu8Xk0
992、文字化けってなに?
995 :984[sage]:2009/04/30(木) 18:45:47.29 ID:enULwVU0
>>992さん、>>993さん、感想ありがとうございます。
元ネタは>>993さんの想像どおりです。
本当はもっとみwikiペディアでも発動させて、もっと伸ばそうかと思いましたが、
なんかgdgdになりそうなのでやめました。

これからもたまに頑張って書いていこうと思います。
本当にありがとうございました。
996 :989 2009/04/30(木) 19:00:07.37 ID:xYwu8Xk0
いちよう元ネタはとあるSSから参考しました。
997 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/30(木) 19:11:37.50 ID:L0GdGMSO
チェリー「そろそろ埋めても宜しいですかな?」

→はい
 いいえ
998 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/30(木) 19:11:49.35 ID:M..a7rI0
999 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/30(木) 19:11:55.76 ID:M..a7rI0
1000 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/30(木) 19:12:18.20 ID:M..a7rI0
1001 :1001Over 1000 Thread

 ,.――――-、
 ヽ / ̄ ̄ ̄`ヽ、   【呪いのパーマン Ver2.0】
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  ヽヽ___ノ    次スレを10秒以内に建てても死にます。

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1000超えたのでHTML化の依頼をするでござるの巻
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1002 :最近建ったスレッドのご案内★Powered By VIP Service
新しいクラシックが始まる!!! @ 2009/04/30(木) 19:13:06.29
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サーニャの隠れ家 @ 2009/04/30(木) 19:11:05.61 ID:I0QP.fgo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1241086265/

To LOVEるの作画はネ申\\\ @ 2009/04/30(木) 18:54:52.97
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4vip/1241085292/

光の速さでTo LOVEるしたらどうなるの? @ 2009/04/30(木) 18:40:55.61
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4vip/1241084455/

【ランボー】とID:jbulFD.0が恋愛して付き合い【結婚】 @ 2009/04/30(木) 17:56:52.26 ID:ZkAxhOs0
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