フロック「悪魔の眷属」
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4:名無しNIPPER[saga]
2017/06/24(土) 19:35:38.49 ID:T21yc21Y0
『……エルヴィン』

ふと、懐かしい声がした。私が生涯でただ一人、愛した女。

マリー  『いいのよ、もう。あなたは十分戦った。そろそろ羽を休めたって、許してもらえるわ』

エルヴィン(……そうか?)

マリー  『ええ。私はちゃんと知っているから』

光の中から差し伸べられた手。分かっているよ。君は今ごろマリアの家で子供たちと眠っているんだろう。
夫の友人でしかない私のことなんか、思い出すこともないはずだ。
なのに、最期に見る幻の君は、こんなにも優しい。

エルヴィン(ああ……結局、想いは告げられなかったが)

エルヴィン(俺は君を……)

エルヴィン「マリー……」ツーッ

「エルヴィンにはまだ、地獄が必要だ」

エルヴィン「!」

瞬間、幻のマリーも、神々しい光も消え失せる。首筋に当たっていたブレードが離れた。

フロック 「巨人を滅ぼすことができるのは、悪魔だ」

フロック 「悪魔を再び蘇らせるのが、生き残った自分の使命だ」

彼の手が、私の腹のあたりをまさぐっている。傷口に布が巻かれて、呼吸が少しだけ楽になった。

エルヴィン(……あたたかい)

顔を押しつけた背中はまだやわらかいが、たるんではいない。駐屯兵団からの補充兵だな。
私の命を繋ぎ止めているのは、この背中だ。

エルヴィン「……みの、なま……」

フロック 「フロックです。苗字はいいでしょう、別に」

とぎれとぎれの発語を、彼――フロックはしっかり聞きとった。

エルヴィン「そ、か……?」

フロック 「不満だったら、団長が思い浮かんだ苗字ってことでいいですよ」

エルヴィン「み、……こ、に……れて、く」

フロック 「あなたが、生き返る場所です」

ぎりっと奥歯を食いしばって、フロックは歩く。
私が首に回した手は、拒まれなかった。

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