【モバマス】ほたる「わたしの不幸と、幸せと、不幸」
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45: ◆7PpQF0yG66[saga]
2017/07/02(日) 12:23:14.96 ID:YyjtO4V8o
ーーーー

「わたしは、どちらも怖いんです」

 閑散とした事務所の客間。わたしはそこにプロデューサーさんと向き合って座り、話し始めた。
以下略 AAS



46: ◆7PpQF0yG66[saga]
2017/07/02(日) 12:23:57.53 ID:YyjtO4V8o
「最初は、わたしはファンの皆さんを裏切ったり会社の皆さんに迷惑をかけることが嫌だったんです……。でもだんだんその嫌悪はわたしの保身からくるものだって、自分でわかってきて……!」

 ザアザアと、外では雨が降り始めていて雨雲でいつもより暗い。

窓に打ち付ける雨音に構わず、わたしは心中を露呈させた。
以下略 AAS



47: ◆7PpQF0yG66[saga]
2017/07/02(日) 12:24:55.39 ID:YyjtO4V8o
「 そんな自分自身が嫌になったとき、私の逃げる先はなくなりました。

 未来に希望が見えなくて、今を否定したくなって。

 そうしたらついこの前までの日常がいとおしく、同時にもうそんな日常は終わってしまったことを自分の感情から気取りました。
以下略 AAS



48: ◆7PpQF0yG66[saga]
2017/07/02(日) 12:25:22.88 ID:YyjtO4V8o
 わたしの言葉で紡がれて初めてわたしに認識できた“白菊ほたる”はあまりに見苦しく、わたしは自然と目を伏せる。


49: ◆7PpQF0yG66[saga]
2017/07/02(日) 12:26:29.67 ID:YyjtO4V8o
「 どこを見ても何も見えません。

 全て闇で、平衡感覚は全て失われて、選ぶ理由すらも分かりません。

 黒と黒。無と無。どちらの選択もわたしには同じものに見えます。
以下略 AAS



50: ◆7PpQF0yG66[saga]
2017/07/02(日) 12:27:49.57 ID:YyjtO4V8o
「どうやって選べと言うんですか……っ!」

 正解のない選択なんて美しくもなんともない!

「何も分かりません……っ!何も見えません……っ!」
以下略 AAS



51: ◆7PpQF0yG66[saga]
2017/07/02(日) 12:28:46.79 ID:YyjtO4V8o


 全て弾ける。涙は止まらない。


以下略 AAS



52: ◆7PpQF0yG66[saga]
2017/07/02(日) 12:29:28.48 ID:YyjtO4V8o
 わたしが喚くのを止めて、体を震わせるほどになったころになってからプロデューサーさんは呟きを漏らすようにして話す。

「――なあ、ほたる。俺は今からとても無責任なことを言う。だから――だか、ら……聞い、てくれ……よ……」

「……っ?……ぷろでゅーさー、さん……?」
以下略 AAS



53: ◆7PpQF0yG66[saga]
2017/07/02(日) 12:31:07.33 ID:YyjtO4V8o
 きっとわたしのために泣いてくれていて、それが悲しくて。プロデューサーさんの涙を拭おうと、手を伸ばして――。


 その瞬間にわたしはスーツのざらりとした感触に包まれていた。

以下略 AAS



54: ◆7PpQF0yG66[saga]
2017/07/02(日) 12:31:59.57 ID:YyjtO4V8o
「…………へ……?」

「お前を!白菊ほたるをプロデュースしてトップアイドルにしたいんだ!」

 わたしはプロデューサーさんの言葉に動揺して間の抜けた言葉を返してしまう。
以下略 AAS



55: ◆7PpQF0yG66[saga]
2017/07/02(日) 12:33:57.35 ID:YyjtO4V8o
「……じゃあ、お前がトップアイドルになりやすいと思う方を選んでくれ」

「そ、そんな簡単に……?」

「ああ。お前は自分が何も見えないって言ったけど。少なくともトップアイドルになりたいって夢は、見えてるんじゃないのか?」
以下略 AAS



56: ◆7PpQF0yG66[saga]
2017/07/02(日) 12:34:43.79 ID:YyjtO4V8o
「俺はほたると一緒にそこへ向かっていきたい。そこにほたるを連れていきたい」

「……で、でも。そのせいで事務所の人達が――」

「そんなことはない。事務所の仲間はみんなほたるの頑張りを知ってる。そしてみんなも同じように頑張ってる。ほたるの不幸なんかに負けたりしないさ」
以下略 AAS



57: ◆7PpQF0yG66[saga]
2017/07/02(日) 12:36:16.37 ID:YyjtO4V8o
「でも……!でも!」

 でも。なんだろう。確かにそれは何かが欠けているかもしれない。いろいろ間違えているのかもしれない。
 

以下略 AAS



58: ◆7PpQF0yG66[saga]
2017/07/02(日) 12:37:25.06 ID:YyjtO4V8o
 プロデューサーさんはわたしをちゃんと見てくれる。不幸なわたしも不幸でないわたしも見失わないでくれる。

 今、わたしのファンが求めているのは不幸な白菊ほたるだけかもしれない。

 でもプロデューサーさんは白菊ほたるをトップアイドルにしてくれる。他でもない白菊ほたるそのものをプロデュースしてくれる。
以下略 AAS



59: ◆7PpQF0yG66[saga]
2017/07/02(日) 12:38:36.40 ID:YyjtO4V8o
 小指の絡まるこの感触をわたしは忘れない。そして、いつか思い出すのだ。


 それはきっと、わたしがトップアイドルになったとき――――

以下略 AAS



60: ◆7PpQF0yG66[saga]
2017/07/02(日) 12:40:48.02 ID:YyjtO4V8o
――数日後 事務所

「おはようございます……。プロデューサーさん」

「ああ。おはよう、ほたる」
以下略 AAS



61: ◆7PpQF0yG66[saga]
2017/07/02(日) 12:44:29.32 ID:YyjtO4V8o

 けれどわたしにとってこの紙はもう何かを選ぶためのものではない。これからへの一歩を踏み出すためのものだ。


 前へ、前へ。これからも歩み続けるためのものだ。
以下略 AAS



62: ◆7PpQF0yG66[saga]
2017/07/02(日) 12:45:21.24 ID:YyjtO4V8o
 そしてその歩みは止まらない。いつか夢が夢でなくなる。わたしがトップアイドルになるそのときまで、
 

「わたしはこの不幸を――――」

以下略 AAS



63: ◆7PpQF0yG66[saga]
2017/07/02(日) 12:52:39.82 ID:YyjtO4V8o
以上で完結です。途中、「わたし」と「私」が表記揺れしてしまい申し訳ございませんでした。全て「わたし」に脳内変換していただけると幸いです。

今回が初トリップ作品なので過去作にトリップはありませんが、一応過去作です。

ミリP「どうやったら廃人ルート回避できますかね?」デレP「諦めろ」
以下略 AAS



64:名無しNIPPER[sage]
2017/07/05(水) 00:12:46.24 ID:5Nx5x1JZo
おつおつ
面白かった


65:名無しNIPPER
2021/06/23(水) 16:36:10.87 ID:/ab7kAz9o
乙乙


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