31:名無しNIPPER[saga]
2017/09/21(木) 00:24:53.19 ID:x1eCXNrg0
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ティーカップはゆっくりと回転を始めていました。
ジャカジャカ、キュルキュル、ピコンピコン。
必要以上に複雑な装飾音の中、周りの景色がだんだんと溶け始めます。
「涙を吹っ飛ばすところ」とは、どうやらここのようでした。
目の前の鞠莉さんの笑みは不敵なものに変わっていき、ハンドルを握る手に力が入り始めました。
元気が出る魔法のハンドルよ、なんて妙なセリフまで言ってきます。
だからルビィだって、思いっきりハンドルを回してやるんです。
ぐるぐる、ぐるぐる。
溶け始めた景色は次第に色まで失っていきました。
鞠莉さんの顔と、カップの内側のパステルカラーだけが目に入り、耳にも膜が張りはじめました。
ルビィたちは、もう遊園地にはいませんでした。
ルビィと鞠莉さんは紅茶でした。
ぐるぐる混ざって、カップの中で渦をつくる、紅茶でした。
涙も、駄々も、願いも、想いも、全部が溶けた魔法の紅茶です。
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