佐久間まゆ「凛ちゃん聞いてください! まゆ、プロデューサーさんとキスしました!」
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6: ◆E055cIpaPs
2017/10/29(日) 13:28:20.43 ID:T3zoKt8I0
 ふわりと空に浮かんだ花束が手を伸ばしてもとても届かないような遠くの所へと落ちていく様子をよく覚えています。

 哀しいような、悔しいような、苦しいような、寂しいような、妬ましいような。

 そんなぐちゃぐちゃに散らばってしまいそうな気持ちを前に、もうどうにかなってしまいそうになったは、凛ちゃんとお互いの手を強く握りしめあって、その痛みを頼りに必死に意識を繋ぎとめながら参加した結婚式のことを、きっと一生覚えているのだとおもいます。




「ねえ、まゆ。アイドル、続けようね」

 スマートフォンの電話口から、そう祈るように呟く凛ちゃんの言葉が聞こえます。

 きっと、急いでまゆの所に向かってくれているのでしょう。

 どうやらタクシーを呼び止めてくれたようで、少し前から息切れの声に変わって少しばかりのエンジン音が響くようになりました。




「アイドル、続けようね」

 あの日、初めてその言葉を口にしてから凛ちゃんは、まるで取りつかれるように同じ言葉を呟き続けるようになりました。

―――私達はきっと、アイドルを続けなくちゃいけない

―――辞めてしまったらきっともう、何処にも行けないから

 あの日から、少しやつれたままの凛ちゃんは、同じようにやつれていくまゆに向かって、毎日のように同じ言葉を呟きつづけます。

 きっと、凛ちゃんは分かっているんだと思います。

 この言葉がなければ、まゆの膝はいつか落ちてしまうことを。

 そして、その言葉を呟きつづけないと、凛ちゃんだってもう、立ってなんていられないことを。



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