松田亜利沙「大好きを繋ぐレスポンス」
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15: ◆kiHkJAZmtqg7[saga]
2017/10/29(日) 23:19:37.24 ID:s1IKgLXf0
 胸のドキドキを残したままオーディション会場に辿り着いて、その始まりを待っている。
 周りにいるのはありさよりも実績と経験のあるアイドルちゃんたち。その一人一人が、ステージとは全く違った真剣さをはらんだ面持ちでじっと前を見つめている。
 あんなに天真爛漫に見えたスパーク☆めいでんちゃんでさえ、大ファンのありさが初めて見る表情をしているのだ。

「…………ムフフ」

 誰にもバレないように小さな笑みをこぼす。だってそれは、アイドルちゃんの激レアな姿に違いないのだから。

 この場所にいる誰もが鋭く澄んだキラメキをたたえていた。
 この前はそれを怖いって感じてしまったけど、それだってアイドルちゃんの魅力的な姿なんだって気づけたのだ。

「それでは、オーディションを始めます。そうですね……六番さん、皆さんを代表して意気込みをお願いします」

「はい! ……この場所にいる誰よりも輝いてみせます。私から、目を離さないでくださいっ!」

 スパーク☆めいでんちゃん、やっぱりカッコいい……!
 じゃ、なくて。背筋をぴんと伸ばして明朗な声で発された言葉が皮切りとなって、また一段と空気が張り詰めたように感じる。
 緊張は……どうしてだろう、そんなに感じなかった。

 ううん、本当は分かっているのだ。
 緊張なんて感じている暇もないくらいに、他でもないライバルのアイドルちゃんたちから現在進行形で元気を貰っているって。だから、限界だって振り切れると思うのだ。

 オーディションは指定された課題曲に合わせることを除いて、一切制約のないアピール合戦で行われる。
 アピールの手段は歌でもダンスでも、ポーズや表情でも構わないし、タイミングも一人一人がその場で判断する。
 だから、基本的にはどれだけ審査員さんの注目を集められるか、個性のぶつけ合いになるのが常だ。

 ありさは他のアイドルちゃんと比べても地力で劣っている。
 だけど、この混沌としたステージの中でオイシイ立ち位置を見極められれば、勝機はあると思うのだ。……そして、そんなことよりも。

 ありさは、今日ここにいるありさ含めて六人のアイドルちゃんが共演する、きっと一生で一度しかないステージを、これしかないってカタチで完成させたい。
 スパーク☆めいでんちゃんとご一緒できたことも……ううん、たとえそうでなくたって、この巡り合わせはキセキの賜物に違いないのだから。

 これはあくまでオーディション……なんてったってありさがキラキラしなくちゃ始まらない。
 でも、そのための方法はありさが好きにしていいし、もう、決まっていた。



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