松田亜利沙「大好きを繋ぐレスポンス」
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14: ◆kiHkJAZmtqg7[saga]
2017/10/29(日) 23:18:45.04 ID:s1IKgLXf0



 結局、学校とレッスンはまるまる二日ほど休んでしまった。
 もどかしい気持ちはあったけど、この二日間がなくちゃ見つからなかったものもあるってことは、ありさが一番わかっている。

 オーディションの戦略を練るために調べた、流行や過去の合格者のデータは全部ゴミ箱に放り込んで空にした。
 代わりに、ライバルのアイドルちゃんのオフィシャルサイトとか、SNSのアカウントとか、あるいはPVのブックマークとかがハードディスクの片隅にどんどんと積み重なっていった。

 オーディションの当日まで、何か特別なことができたわけでもない。
 公演のレッスンで毎日へとへとになって、自主レッスンを入れる余裕が生まれることはなかった。
 ありさの実力はそんなもので、基礎体力の大事さを改めて痛感もした。

 だけど、だからって負けても仕方ないなんて思うつもりはどこにもないのだ。


「ありさは今日まで、アイドルちゃんについて、沢山のことを考えてきました。……聞いて、くれますか?」

 オーディションが始まる、そのほんの少し前。
 会場へ向かう車を走らせるプロデューサーさんに言葉を向ける。
 数秒を置いて、答えを聞く前に話し始めた。

「ありさ、わかったんです! ありさは……ありさは他のアイドルちゃんに勝ちたいわけじゃないんだ、って! だって、ステキでキラキラしてるアイドルちゃんに貴賤なんてあるわけがありませんからっ!」

「そうか。……それじゃあ、今日のオーディションはどんな気持ちで受けるんだ? 聞かせてくれないか」

 とても穏やかな声だった。
 ハンドルを握って、ありさの方は見ていないけれど、口元をほころばせている様子は窺い知れた。
 言葉は、するするとありさの口からほどけていった。

「ありさは、アイドルちゃんが大好きですっ! アイドルちゃんを見てると幸せで、ありさもそんな風に誰かを幸せにしたかった……アイドルちゃんとして輝くために必要なのはたった一つ、その気持ちなんだって信じたい!」

「だから……ありさはアイドルちゃんが大好きなありさのままで、一番になりますっ!」

 車が止まる。信号待ちのほんの少しの時間で、プロデューサーさんと目が合った。

「亜利沙、いい顔してるぞ。前回とは違うってところ、存分に見せつけてやろう!」

「はいっ!」



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