ダイヤ「──とある寶石の誕生日。」
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3: ◆tdNJrUZxQg[saga]
2017/12/31(日) 23:46:48.36 ID:B61C/0ev0




「ダイヤ、お前は黒澤家の跡取り娘として、常に強く、毅然と振舞いなさい」


──お父様にそのようなことを言われたのはいつのことだったでしょうか。

物心が付いたときには、すでにこの言葉がいつも頭の中で木霊していた気がします。

……もしかしたら、生まれたその日から言われていた──いえ、お母様のお腹の中に居た頃から、そう教えられていたのかもしれません。

わたくしはダイヤ──黒澤ダイヤ。

黒澤の家名を背負って、大きな命運を背負って、歩き続ける。世界一硬い、黒澤の宝石として。





    *    *    *





齢一つ半の頃──妹が生まれました。

名をルビィと言います。

もちろん、その名の由来は宝石の『ルビー』です。

石言葉は『情熱、勇気、威厳、活力、集中力、努力』

──たくましく、勇ましい子に育って欲しいと言う願いが込められていたのでしょうか。

ですが、今になってルビィを見ると──この願いはあの子には重すぎたのかもしれません。

そんな重い願いを無意識に汲み取った──のかはわかりませんが、1歳半の時分。

まだ物心も付いていないはずだったあの時のわたくしですが、新生児だったルビィがわたくしの小さな手を、更に小さなその手で握った、あのときから、

わたくしはこの子を守らなくてはいけない。

そのようなことを子供心──いえ、物心が付く前ですから、子供心ですらないのですが……。そのように思ったことを何故か覚えています。

──唯……唯、わたくしはあることで、ルビィに──『ルビー』に嫉妬したことが、二つだけありますの。

──噫、これはルビィには秘密にしてくださいませね。姉の威厳に関わりますから。

『ルビー』という宝石は、所謂モース硬度と言われる宝石の硬さではダイヤモンドに劣るのですが

──ダイヤモンドとルビーぶつけると、砕けるのはわたくしなのです。

靭性、と呼ばれる頑丈さの基準がルビーの方が大きいのです。

自分が最も硬く、強い石だと、言われ育ってきたわたくしはその事実を知ったとき、僅かながらショックを受けました。

──まあ、今になって考えてみるに、姉のダイヤにも負けないような強い子に──強い“意志”を持って欲しい。そのような願いも込められていたのかもしれません。

だから、こちらはいいのです。問題はもう一つの方。

『ルビー』──あの真っ赤な宝石にはもう一つ、大きな特徴があります。

それは、緑色の単色光──即ち赤色成分を一切含まない光源の中に置いても尚、赤く、紅く輝くと言う性質です。

わたくしのような、誰かの光を反射し綺麗にさせるだけの輝きと違って、あの子は──絶対に変わることのない色を持っている。

真っ赤な──紅い石。

両親がどこまで考えているのかは存じません。

ですが、わたくしとルビィは明確に違う。

わたくしは誰かの光があって初めて輝くのだと、

ルビィのように、自らが最初から持っている、光を──色を、わたくしは持っていない。

──わたくしは、誰かをより際立たせるために存在する……装飾品なのです。




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