9:名無しNIPPER[saga]
2018/02/13(火) 18:43:04.14 ID:K48b6BSl0
「俺は、素直な子を好きになるって思ってた」
彼がつぶやく。
「うん」
彼のことを抱きしめたまま、私はそうやって先を促す。
「面倒くさい子なんて好きにならないって、そう思ってた」
「……うん」
「加蓮は正反対だな」
「素顔を褒めたら怒るような子だもんね」
少しだけ不機嫌に言うと、彼は困ったように苦笑する。面倒な子を相手にする時のように。
「本当に、どうしてだろうな。面倒で、いつもいつも困らせてくるような子なのに。今では、そうやって困らせてくることこそがかわいくて、愛おしいと感じてしまうんだから、不思議だよな」
「うん」
「どうしようもないな」
「どうしようもないね」
どうしようもない。本当に、どうしようもない話だ。
自分でもわけがわからなくて、でも、その気持ちだけははっきりしていて。
「やっぱり、悪趣味だね」
「何が?」
「面倒で、いつもいつも困らせてくるような子を好きになるなんて、悪趣味だな、って」
「それを言うなら、加蓮こそ。身だしなみはちゃんとしてなくて、デリカシーはなくて、なさけないところもいっぱい見せるような人を好きになるなんて悪趣味だ」
「どうしようもないよ。恋って事故に似てるもの」
私は彼を抱きしめたまま、その首をそっと撫でつける。無精髭がちくちくと刺さる。でも、その痛みこそが心地良い。
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