北条加蓮「どうしようもない話」
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8:名無しNIPPER[saga]
2018/02/13(火) 18:41:50.80 ID:K48b6BSl0

「本当に、好きになるならそういう人って、思ってたんだけど」

「……」

 彼の喉が小さく音を鳴らす。私の胸が鳴らしているのと同じくらいに。

「どうしてなんだろうね。無精髭を生やしたままだったり、デリカシーのないことを言ったり、なさけないところもいっぱい見てるのに」

 どれも当てはまらないのに。好きになると思っていた人と同じところなんてどこにもないのに。

「恋って、まるで事故みたい」

 経験したことのように、私は言う。

「たまたま落ちた雷に当たるくらい予想できなくて、衝撃的なの。前と後とで、価値観がすっかり変わっちゃうの」

 そして、それは自分の意志ではどうにもならない。落ちている最中に浮き上がることなんてできやしない。人は空を飛べないもの。

「だから、どうしようもないよね」

 一度そうなってしまったら、どうしようもない。
 だらしないところも、なさけないところも、ぜんぶ、ぜんぶが愛おしくて。

 そう感じてしまうことは、きっと、どうしようもないことなのだろう。
 好きになったら、どうしようもない。



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