57: ◆Xz5sQ/W/66[sage saga]
2018/08/08(水) 05:51:19.57 ID:4VsaTvqw0
「もう少し近づいてみましょうか〜」
口調は普段と変わらないが、その顔には男だけに理解できる僅かな緊張感があった。
普段はアイドルとプロデューサーとして、さらには聖母とその従者として
信頼を育んできた間柄だからこそ察する事の出来る感情。読み取ることのできる心理。
朋花は落ち着いた足取りで椅子の傍までやって来ると、
思い切ってその顔をプロデューサーの肩の辺りまで近付けた。
そうしてそのまま一度、二度。デジャヴを感じた男が慌てた様子で身をよじる。
「よせ朋花! 恵美も迂闊な行動を取ったから……」
「毒気に当てられてしまったと? 心配しなくても、今のプロデューサーさんからは何の妙な匂いもしてません〜」
朋花は事も無げに男へ答えると、もう一度だけ鼻をひくつかせる。
「……むしろ普段通りの匂いのような」
「そ、それならそれで恥ずかしいぞ。汗臭いかもしれないじゃないか」
さらに男はこうも思った。普段の匂いと比べられる程、
目の前の少女に自分の体臭が知られているという事実。
日頃から不快な思いをさせてなければいいんだが――
プロデューサーが持ち前の妙な生真面目さで
そんな事柄にうつつを抜かしていると、朋花がぽつりと言ったのである。
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