長富蓮実「ザ・ラストガール」
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7:名無しNIPPER[saga]
2018/12/14(金) 23:11:33.02 ID:wXX+fiS7o
 
――――――

人生を変える出会いなんてものがあったとして、人はその出会いを何年も後になって振り返り、
「あぁ、確かにあの出会いは自分を変えてくれたのだな」とじわりじわり実感していくものです。
私にとって、それは突然にやって来て、あまりに強烈で、
そのときから「人生を変える出会いを手に入れた」と、実感できていたような気がします。

10歳の夏休みに母と初めて東京に旅行に来たある日の午後、
そのとき私はうっかり母とはぐれて街をうろうろしていました。
まだ携帯電話も持たされていなかったものですから、どうしようもありません。

人混みに流され右も左もわからないまま、たった一人で途方に暮れていたとき、
裏通りの古びたビルの、壁にぶら下がる雑多な看板の足下に小さな入り口を見つけました。
入ってすぐ下へと続く薄暗い階段になっていて、奥はなんだか騒がしい様子。
耳を澄ませてみればズンズンというくぐもった重低音とともに、時折挟まるかけ声と、
それに合わせるようにワァーという歓声が聞こえてきます。

立て看板を見ると、それはどうやら小さな小さな劇場だったようです。

これまで経験したことのないような得体の知れない雰囲気に、もしかしたら危ない場所なのかも……と感じたものの、
どうしても気になって、誘われるようにゆっくりと階段を降りていきました。
一歩進むごとに重低音がだんだんと大きくなり、耳だけでなく頭やお腹にまでその振動が伝わって来て、
乗り物に酔ったような、なんだかポーっとした気分になってきます。

一際大きな歓声が上がり、自分の身ごと震えるその感覚で、目の前にあった両開き扉の向こうがその音の源であることが分かりました。

おそるおそる、扉を開けてみると……


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