加群「鏡の向こうの」
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18:名無しNIPPER[sage]
2019/04/03(水) 21:22:36.95 ID:pOwoTKMWo

『行ってしまったな』

 一人残された脳幹は、視線を空へと向ける。
 そちらには、この街の主が住まう居城があるはずだ。

『思えば、彼はどこか君に似ていた気がするよ。アレイスター』

 窓のないビル。
 その中に住まうのは、自らの温かな居場所を奪った全てに背を向けた一人の男。
 彼の友人。

『もっとも、君ならばこんな結末は選ばないだろうが』

 あの“人間”の強さと弱さに関しては、彼はよく知っている。
 大いなる失敗に膝をつき涙を流すことはあっても、目の前の復讐の為に命を使うとは思えない。 
 あの愚か者ならば、わざわざより大きなものに立ち向かい、打ちのめされながらも前へ進み続けようとするだろう。
 実際これまでそうして歩んできたのだろう。

『なあ、アレイスター。君はその先にどんな結末を見せてくれる?』

 知性を得、感性を讃える一匹の獣は空へ吠える。
 彼の体は悲しい時に涙を流せるような仕組みにはなっていない。

『私は君とは違うんだ。こんな思いはもう御免だぞ……』

 だがもし仮にそうであったとしても、何かが変わるわけでもない。



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