【たぬき】高垣楓「迷子のクロと歌わないカナリヤのビート」
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21: ◆DAC.3Z2hLk[sage saga]
2019/06/14(金) 01:09:03.39 ID:DTY4fa360

 妙ちくりんな時間だった。

 特に会話が弾むでもなかった。お互い何者かもわからない同士だし、彼女にしたって饒舌な方ではないらしい。
 ただ「あ、これおいしい」「そうでしょう」的なやり取りを散発的に交わして、お互いのペースはまったく不揃い。
 それでも、不思議と居心地は悪くない。

 酒を注ぎ合いながら、彼女がふと、口を開いた。

「何か、おありだったんですか?」
「え?」
「こう、私がくるっと回った時、ちょっぴり目が合ったでしょう。その時少し気になって」

 彼女もこちらを認識していたのだ。
 実感するなり急に気恥ずかしくなった。


「とても、悲しそうなお顔をしていたもので……」




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