【たぬき】高垣楓「迷子のクロと歌わないカナリヤのビート」
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20: ◆DAC.3Z2hLk[sage saga]
2019/06/14(金) 01:07:10.82 ID:DTY4fa360

   〇


 入ったのは、路地裏にある小さな居酒屋。
 大将が一人でカウンターに立っているような、古式ゆかしいもつ焼きの店だった。
 チョイスの渋さに内心驚かされたが、出てきた串物はどれも絶品でまた驚いた。

 それらに輪をかけて驚きなのは、彼女がグラスを空けるペースだ。

 どうも行きつけの店のようでボトルキープがあったのだが、一升あったはずの中身が気付けば半分減っている。
 目に見えてガバガバ飲むわけでもないのに、気が付けばぺろりと枡ごと干してしまう感じだ。
 なんだか化かされているような気がした。


 胃の腑に酒を落とすと、なんだかんだで体が温まってくる。
 ずぶ濡れの男に店主は嫌な顔ひとつせず、何があったか聞こうともせず職人の仕事を進めていた。

「へいお待ち」
「ああ、これこれ♪ これが食べたかったんですよ」
「串……ですよね。何の肉ですかこれ? ……鶏?」
「ご存知ありませんか? ズンドコベロンチョです」

 ご存知ないです。なんだそれ。
 口にしてみればびっくりするほどうまかった。肉か魚かもわからない。むしろ豆腐かもしれないが、芋と言われても信じる気がする。



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