【たぬき】高垣楓「迷子のクロと歌わないカナリヤのビート」
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5: ◆DAC.3Z2hLk[sage saga]
2019/06/14(金) 00:41:07.41 ID:DTY4fa360

 スタジオ隅のベンチで一息つく頃には、外はすっかり夕方になっていた。

「じゃんっ♪」

 と、目の前にエナドリが差し出された。

「ああ。お疲れ様です、千川さん」
「あんまり根を詰めたらいけませんよ? これ、どうぞ」
「いいんですか? それじゃありがたくいただ」
「お給料から引いておきますね♪」
「アッハイ」

 千川ちひろさんは、俺のアシスタント仲間だ。

 なんでも17の頃からあちこちのテレビ局や芸能事務所でバイトを重ねて、大学卒業とともに念願の業界入りを果たしたとか。
 だからだろう、俺よりよほど仕事に慣れている。
 有能で気配り上手なだけでなく、どことなくちゃっかりしたお茶目さも併せ持ち、スタッフの間では結構人気が高かったりする。
 噂によると狙っている男性社員も少なくないとか――まあ、そこらへんは詳しくないのだが。

 彼女とは同期入社ということもあり、何かと話すことがあった。
 こうしてドリンクを渡したり渡されたりすることも一度や二度ではなく、このやり取りは一部で「ログボ」などと囁かれている。 




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