無価値な男「僕は人から必要とされる人間になりたい」無価値な女「私もそう思う」
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8:名無しNIPPER[sage saga]
2019/06/18(火) 20:52:18.27 ID:kXabp11vO
「ところで、あの2人、どう思います?」
「えっ?」

あれから電車で遊園地に向かい。
美人さんとイケメン君に付き従い。
しばらく、2人のデートを見守って。

不意に、付き添い君に、そう尋ねられた。

「お似合いだとは、思うよ」
「ですよね。本当にお似合いのおふたりです」

見たままの印象を述べると。
彼は頷いて、異論はないらしい。
しかしながら、それは困るのだ。
それを受け入れて貰っては、困るのだ。

「あの子、綺麗だよね」
「はい、とても綺麗ですね」
「とっても美人で、すっごく良い子なんだよ」
「ええ、そうらしいですね」

私の後ろの席の女の子は、美人だ。
しかも、すごく良い子。
同性の私から見ても、魅力的に思える。
ならば、付き添い君にだって、そう映る筈だ。

「あなたもあの子と付き合いたいって思う?」

何気なく、尋ねたつもりだった。
しかし、それを聞いた、その瞬間。
夕暮れの遊園地に冷たい風が吹いた気がした。

「……彼女は、僕の友人の好きな人ですよ?」

こちらに向けられた付き添い君の視線は。
印象の薄い彼のものとは、思えぬほど。
鋭利に尖り、私を射抜き、身動きが取れない。
眼鏡の奥の茶色い瞳に、怒りが見て取れた。

「横取りすることは……とても、悪いことです」

そんな正論を真正面から諭されて。
私は頷くことしか、出来なかった。
何ひとつとして、言い返せなかった。

『無価値であっても、無害であるべき』

彼も、その矜持を、持ち合わせているらしい。


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