無価値な男「僕は人から必要とされる人間になりたい」無価値な女「私もそう思う」
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9:名無しNIPPER[sage saga]
2019/06/18(火) 20:54:28.88 ID:kXabp11vO
「……とはいえ」

まるで、ひと息つくように。
おもむろに眼鏡を外して拭きながら。
彼は話題を変えた。変えて、くれた。
そのことに、私は心から安堵する。

あのまま、彼が怒ったまま。
何も言わずに黙りこくって。
あの、冷めた目をし続けていたら。

きっと私は、泣いてしまっていただろう。

あの瞬間。
彼にとって、私は敵だった。
友達の女に手を出せと、そう口にしたのだ。
怒らない方がおかしい。

私は彼にとって、有害だった。

そのことに遅まきながら、気づく。
そして、彼がそれを赦したことも伝わった。
だから私は安堵した。安心した。

緊張の糸が切れて、結局、私は泣いた。

「……ご、ごめん、なさい」
「別に、もう怒ってませんよ。それよりも」

とにかく、謝ろうとしたのだが。
彼は強引に話題を変更しようとする。
それもまた、彼の優しさのように思えたので。
私は涙を引っ込めて、素直にそれに従う。

「……何?」
「あなたは、このままで良いのですか?」

なんのことだろうと思いつつ。
なんとなく、予感はしていた。
彼もまた、現状を良しとしていないのだと。

どうやら、私と同じ悩みを抱えているらしい。


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