13: ◆ty.IaxZULXr/[saga]
2020/01/24(金) 21:20:18.71 ID:W4W9+UtG0
10
学生寮・2号館・343号室
結果から言うと、私の想定から外れた反応だった。
「奏さん、本当ですか?」
「え、ええ……おそらく」かな子は近づいてきた、話を詳しく聞きたげに。ホラー好きだったのね、意外だわ。
「どんな人でした?女の人でした?たれ目で優し気な?栗色のふわふわした髪の毛でした?」
「え?」全て正解、知ってる……?
「奏さん?」
「驚いたわ。かな子、見たことがあるのかしら」かな子の表情は華やいだ。甘いものを食べている時くらい。
「あの、悪いことされてませんよね?」
「そうね……深く眠り過ぎたくらい」金縛りは、言わなくてもいいわね。あの幽霊のせい、とは限らないもの。
「それなら、『キヨラさん』です♪」
「きよらさん……」きよら、清ら、幽霊の名前とは思えないわ。
「いいなぁ、私も会いたかったです♪」
「会いたかった、そんなことが言われてるの?」
「はい!『キヨラさん』が関わると良いことがあるんですよ」
「そうかしらね、私は肝が冷えたわ」こう言ったけれど、かな子の意見に同意しかけている。悪い存在ではない、はず。
「誰かと仲直りできたり、スランプが終わったり、病気が良くなったり……でも、イタズラ好きなんですって」
「へぇ、イタズラ好きには見えなかったわ。この部屋はイタズラされていないみたいね」漂ってるだけのようにも見えた。どこにも行けないから、私達を見ているだけの浮遊霊。
「奏さん、もっと詳しく教えてください!」
「別に起きたら部屋の中にいただけ……いえ、何かあったような……」近づいてきて、目を閉じる前に、何かあった。確か、幽霊の口が動いていた。
「何か?」
「そう思い出したわ。謝られたわ」ごめんね、と。
「謝られた?『キヨラさん』に?」
「何もされてないわ、本当よ」謝られる理由はないと思う。見ず知らずの幽霊に転校して来て1ヶ月の私が何かされていた、はずはない。
「うーん、そうだ!例えば、奏さんのご先祖様と『キヨラさん』に関係があるとか?」
「祖父母は東京出身じゃないし違うと思うわ。かな子、そういう小説でも読んでるの?」少女趣味、まぁ、想像通り。
「い、いけませんか?」
「良いと思うわ。お可愛いことで」お可愛いのはとっくの昔にわかっているわ。どうやら、かな子本人がわかっていないようなので、私もかな子の両親と同じ不安を抱えることになった。ご両親の不安解消のためにも言っておきましょう。
「もー、からかわないでください!」
「嘘はついてないわよ、本当のこと」こういう所も可愛いのよね、ずるいわ。ピンクの私服も似合うし、羨ましい。前世でも親族の因縁なんてものはないだろうけど、かな子の可愛い所が見られたから、『キヨラさん』には感謝しておくわ。
「本当……ですか?」
「そんなに私を覗き込んでも、わからないわよ?」嘘をつくのは得意だし、ミステリアスに見せるのも昔から得意だから。さっきの言葉は本心だけれど、誰にも本心だとはわからないくらいに。
「確かにわかりません……」
「言ったでしょうに。私も出かける準備をするわ、詳しくは後でね」寄ってきていたかな子を引き離して、出かける準備を始める。ゴールデンウィークの最終日は夏日の予報。
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