速水奏「人形の夢」
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15: ◆ty.IaxZULXr/[saga]
2020/01/24(金) 21:22:05.57 ID:W4W9+UtG0
カワイイ衣装のメイドさんは行ってしまった。彼女から目を離すと、かな子は既にメニューを真剣に見つめていた。

「おっ!おふたりさん、いらっしゃい」

「店長さん、こんにちは」キッチンカーの中から昨日会った店長さんが声をかけてくれた。声はかけてくれたけど、調理の手は止めない。それにしても、あの量の髪をどうやって調理帽の中に入れているのか不思議だわ。

「うーん、悩んじゃいますね」

「迷ったらランチセットだじぇ。サラダに、ドリンクに、デザート付き!そっちのお嬢さんたち、お待たせ!」

「セットにするけれど、悩みどころはそうじゃないわね」メインはパスタ3種類かパンとシチュー、サラダも3種類、ドリンクはコーヒー中心に色々、ミニデザートも3種類、かな子は悩んでしまうわね。

「どうしようかなぁ」

「店長さん、おススメは何かしら?」かな子は楽しそうに悩んでいるけれど、永遠に決まらないのも困るので助け舟を出す。

「パスタはジェノベーゼがオススメだじぇ!香川産の国産オリーブオイルが一番味わえる!」

「店長〜、それは自分の出身地だからですよねぇ。はい、お水をどうぞ」

もう1人、別の店員さんが出て来た。笑顔になるとアヒル口になるみたい。名札には間中美里、綺麗な名前ね。

「ばれたか。美味しいのは変わらないじぇ!」

「パスタはジェノベーゼが私もオススメですぅ。サラダは、私はフレンチが好きですねぇ」

「店長イチオシはタマネギだじぇ」

「ドリンクは、クラリスさんが淹れるラテはオススメですよぉ」

「神戸生まれは流石。デザートの店長イチオシは一番下」

「3つ全部ずつですよぉ、人気です」

「どれも魅力的ね、かな子はどうするかしら?」かな子は嬉しそうに悩んでいたが、決めたようだ。私はかな子の回答を聞いてから。

「決めましたっ!ジェノベーゼ、タマネギサラダ、カフェラテ、デザートは3つ全部でお願いします!」

「うんうん、店長オススメを選ぶ正直者で好きだじぇ」

「わかりましたぁ。お連れさんはどうしますかぁ?」

「私は、ペペロンチーノ、サラダのドレッシングはフレンチ、エスプレッソ、デザートはガトーショコラにするわ」かな子と別のものにする。ガトーショコラだけは、今日の気分。

「お嬢さんは、ちょっとひねくれ者かな?」

「よく言われるし、そうだと思うけれど。今日の理由は違うわ。かな子、シェアしてちょうだい。いいかしら?」ひねくれ者なのは昔から。ひねくれ者で嘘つきの、女の子だもの。

「いいですよ♪奏さん、ありがとうございますっ」

「青春だじぇ。ユリユリも穏やかな学生生活に憧れたものよ……」

「店長、何言ってるんですかぁ。飲み物はデザートと一緒でいいですかぁ?」

「はい、お願いします」

「ええ、私もそれで」店長さんは遠い思い出に浸るように空を眺めている、そんなに遠い思い出の年齢ではなさそうだけれど。

「はぁい、オーダー入りましたぁ。ちょっとお待ちくださいねぇ」

「5人でがんばっているから、ご愛嬌を欲しいんだじぇ。本職ウェイトレスキャラは配役されてないんだ……」

5人……元気なスパナを持ってた人、カワイイメイドさん、異邦人、間中さん、それと店長。間中さんはともかく、他はウェイトレスのプロには見えない。お店を始めたのも最近なのかしら。

「そんなに急いでないもの、楽しみに待ってるわ」



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