ロード・エルメロイU世「最初からそれがお望みだろう、レディ?」
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15:名無しNIPPER[sage saga]
2020/06/15(月) 23:08:37.81 ID:uimHEu7hO
「いいか、我が兄よ。冷静に聞いて欲しい」
「そんな余裕はないんだよ、こっちは!?」
「恐らく、我々はもう間に合わない。トイレは遥か彼方であり、手を伸ばすだけ無駄だ」

そう断じると、義兄は驚くべき行動に出た。

「いいから、黙って掴まっていろ!」
「わっ! お、お兄様? なにを……?」
「ボクは最後まで足掻いてみせる! トイレがどれだけ遠い彼方にあったとしても、だからこそ、手を伸ばすんだッ!!」

なんと、義兄は私を抱えて歩き出した。
鬼気迫る形相で、一歩一歩、前進する。
それは往生際の悪い、悪足掻きである。

しかしだからこそ義兄は価値があると言う。

「彼方にこそ、栄えあり!」

気づけば、部屋の扉まであと数歩の距離だ。

「届かぬからこそ、目指すのだッ!!」

下から見上げる義兄に征服王の面影を見る。
ドアノブに手をかけて、廊下へと進軍する。
そこから数メートル先にはトイレという名のオアシス、いやオケアノスがある。

最果ての海を目指す義兄は素敵だった。
思わず、同じ夢を追いたくなるほどに。
けれど、私の目的地はそこではない。故に。

「はむっ」
「んあっ!?」

廊下に出る前に義兄の耳を噛み、阻止した。

ぶりゅっ!

「ああっ!?」
「フハッ!」

これが所謂、抑止力というものだ。
故に義兄は漏らした。仕方ないのである。
わざわざオケアノスを目指す必要はない。
ここが、この地こそが、最果ての海である。


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