高垣楓「あなたがいない」
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201: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/25(金) 23:38:59.90 ID:17bnaLyc0

 いつもの挨拶。でも今は、少しだけ違っている。

「ところで楓さん」
「はい?」
「今日は楓さんのところ、お邪魔してもいいですか?」
「はい。喜んで」

 もうちひろさんとは一緒に、共同生活をしていない。
 彼女は実家へ戻り、私はひとり暮らしを再開した。それは私の様子がここに来て安定してると、判断されたから。

「あ、でも今日は先約が」
「あら、じゃあ今日はやめますね」
「いえ、瑞樹さんと久々に店呑み、なんです。よかったらちひろさんもいかがですか? 私の歯止め役として」
「歯止め役、ですか。うふふ。じゃあ私もご一緒させてもらいますね」

 クリニックの先生からは、飲酒は極力控えるようにと言われているけれど、ほんの猪口っと、いえ、猪口じゃなくてグラス一杯くらいは、見逃して欲しい。
 今は彼女たちとの語らいが、とてもよく効く薬なのだと、思っている。
 だから私は、また次のステージに、向かうことができる。

「楓さん、じゃあミーティングを始めますか」

 プロデューサーが、我がチーム高垣を招集する。

「はい、今行きます」
「久々のライブですから、しっかりと安全に、いろいろ段取り決めていかないと」
「そうですね、よろしくお願いします」

 次のステージ。それは久々のライブ。あの事故以来の企画、もうああいうことを起こしてはならないと、みんな緊張している。
 私も、気をつけないと。




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