高垣楓「あなたがいない」
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32: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/14(月) 21:11:22.25 ID:Od9IjqsH0

 慌ただしい日々は続く。それでも。
 私はどうにか、告別式で焼香できる時間をひねり出すことに成功した。
 当日は収録の仕事が入っていたけれど、中抜けをして斎場に向かうことができるよう、事務所のスタッフが手配してくれていた。
 みんなギリギリの心理状態であろうに、本当にいくら感謝しても足りないくらい。

 テレビ局から中抜けし、車で移動する。そんな中ふと、漫画で読んだのだったか、火葬場で煙を見上げるというシーンを思い出す。
 しかし実際は近所の迷惑になるからと、煙は見えなくするよう工夫をしているのだそうだ。
 それを私に教えたのは、Pさんだった。
 なぜそんなことを知っているのだろうと不思議に思ったことを、私は覚えている。

 今、私は思う。
 煙が見えたなら、どれほど心がざわつくのだろうか。
 それを確かめる術は、ない。




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