【ミリマス】松田亜利沙「同級生から、コクハクされちゃいました……」
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2:自縄自縛 1/9[sage saga]
2021/03/05(金) 18:02:15.45 ID:sro8Zma60
 風の強い一日だった。飛ばされた帽子を追いかける小学生の男の子や、前髪を逆さまにされて額をおさえる中学生ぐらいの女の子が、自動車から見える景色を通り過ぎていく。並んだ自転車が将棋倒しになっているのも、視界の端に見えた。

 半ば徐行しながら大通りから三回曲がった所で、松田亜利沙の通う高校に到着したことをカーナビが告げた。校舎の外に出てくる者はまだいないようだった。

 正門の前でぽつんと佇む亜利沙には、笑顔が無かった。俯かせた顔はどこか真剣なようで、戸惑いも含んでいた。灰色の曇り空そのままの表情は、アイドル松田亜利沙らしいとは言えなかった。

「……お疲れ様です、プロデューサーさん」
「なんだ亜利沙。元気ないな。体調でも崩したか?」

 スイッチが急激に入ったのか、顔を上げた亜利沙はかっと目を見開いた。

「いっいつも通りですよ! えと、お仕事! 今日はお仕事の日ですから、気合入れてたんです!」

 振った首につられ、束ねた髪が大袈裟に揺れた。そのまま風に吹かれて、長い髪が顔に巻き付いている。亜利沙はそれを手で払いのけようとしていた。

「……そうか。それならいいんだが、ほら、乗りな」

 ぎこちない釈明をした亜利沙は、後部座席に座った。いつもは助手席なのに。

 何だか様子がおかしい。いつもにも増して今日は目を離さないようにしておこう。内心でそう呟きながら、男はアクセルを踏む足に力を入れた。

 ビニール袋が風に吹かれて、ぐねぐねと中空を漂っていた。


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