8:名無しNIPPER[saga]
2021/04/18(日) 01:48:38.54 ID:S9RXO5Th0
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さて、そんなこんなで車庫へと来た私は中を一通り探してみたが、どうにも人影になりそうなものはない。
小梅が慌てて逃げ出したからだろう、シャッターは空きっぱなしで、そこから夕陽が車庫の中へと流れ込んでいる。
これが人影らしきものを作ったのかしら?などとそこらに転がってるものを適当に夕日にかざしたりしてみたものの、そのような事は無かった。
せめて枯れた尾花でもあったらそれで解決なのだけれど、などと独り言ちてみるも、残念ながら辺りに転がるのは戦車や整備のため外された輪転や履帯、予備のパーツと工具ぐらいだ。
車庫に入ってかれこれ30分ぐらい経っただろうか。広い車庫とはいえ、これだけ探しても何も見つからず、埃や煤に汚れた手を見て私は一人溜息を吐く。
「……やっぱり小梅の見間違いね」
車庫は基本閉め切ってるのもあって空気が淀んでいる。
シャッターを開けているとはいえその付近以外は薄暗く、むしろ夕日の彩りが不気味に思えてくる。
控え目に言って一人でいるには落ち着かない場所だ。
そんな状態で一人やってきた小梅が物音に怯え、あるいは物陰に驚いた結果、在りもしない幽霊を見てしまったのだろう。
そう結論づけた私は、さっさと戻ろうと校舎に繋がる裏口へと向かう。
「あ、シャッター閉めないと」
開けっ放しで帰った日には大目玉を食らってしまう。
私は慌てて振り返り―――――足を止めた。
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