12:名無しNIPPER
2021/11/27(土) 20:44:13.59 ID:u50g9+A20
「文香は、なんでもかんでも集中しすぎちゃうんじゃないかな」
「ダンスをするには集中する必要があると思いますけど……」
「そうだけど、そうね。集中というより、入り込んじゃうというか。踊りをしなきゃって、思い込み過ぎてるのかも」
「……よく、分かりません」
「私も」
笑った私に文香はキョトンとした。
我ながら、ずいぶんと抽象的なことを言っていると思う。でも、あながち間違いではないように思えた。
私はエレベーターの中での、彼女の姿を思い出した。
「文香は本を読むときに、本を読もうって気合いを入れる?」
「なぜ、本を読むのに気合いを入れる理由が?」
「そういうこと、私がいいたいのは」
「はあ……?」
「文香は踊りをする時に、まず気合いを入れすぎちゃってるんだと思うの」
「あの、そもそも、本を読むのに気合いを入れる理由が分からないのですが」
本当に理解できないかのように呟いた文香に、私は笑ってしまった。
「それは出来る人のセリフね」
「えっと……」
上手く言い返せたつもりだったのだけど、まだ文香は理解できていないようだ。
これこそまさに、出来る人間の態度だ。
無自覚なのは、ちょっとズルイ。
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